女「私は鼻が効きますから」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/06/21(日) 22:47:04.45 ID:YHIwkFnj0
男「へ??」
女「なので探し当てることができました」
男「???」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1592747224
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/21(日) 22:49:04.77 ID:YHIwkFnj0
男(容姿端麗。眉目秀麗。仙姿玉質)

男(彼女を一言で言い表すならどれが相応しいのだろう)

男(才色兼備で高嶺の花。俺がどう足掻こうが決して掴むことの出来ない存在)

男(いや、俺だけじゃない。彼女は誰も寄せ付けない雰囲気を纏っている)

男(冷酷無情の如くバッサバッサと斬り捨てられた男達が何人もいるからだ)

男(そんな彼女に……)

男(そんな彼女に今俺は……何故か呼び出されているのだが……)
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/21(日) 22:50:51.22 ID:YHIwkFnj0
男「女さん、悪いけどもう一度言ってもらっていいかな?」

女「私は鼻が効きます」

男「鼻が……効く??」

女「嗅覚が敏感という意味です」

男「あ、はい」

女「なので人混みなどが苦手です」

男「う、うん?」

女「満員電車は以っての他です」

男「あー、うん」

女「教室も……汗や体臭、香水などの匂いが入り混じり、とても耐え辛い空間です」

男「えと、それは……なかなか大変ですね」

女「ええ」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/21(日) 22:52:11.12 ID:YHIwkFnj0
男「……えっと……」

女「……」

男「も、もしかして俺、なんか臭う?」

女「はい。とても」

男(ま、まさか呼び出しって!このことかぁぁぁ)ズーン

男「毎日風呂入ってるんだけど……そんな臭いなら朝シャンもしてくるよ……その、なんかごめん」ズーン

男(マジか……俺、そうだったのか……自分じゃ気付かないっていうけど……マジかぁぁ)
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/21(日) 22:54:42.29 ID:YHIwkFnj0
女「結構です」

男「え?」

女「そのままで結構です」

男「んん??」

女「教室に様々な臭いが入り混じる中、快然たる香りもありました」

男「か、かいぜんってなに?」

女「気になるなら調べてみては?」

男「う、うん」

男「かいぜん、かいぜんっと……」ポチポチ

男「あったあった。えっと……」

男「心地よいさま。気がかりのないさま。病気がよくなるさま」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/21(日) 22:56:06.60 ID:YHIwkFnj0
男「えーっと……つまり?」

女「私が今まで出会ったことのない匂い。それを辿ると貴方に行き着きました」

男「は、はい」

女「無粋ではありますが、一度嗅がせていただいても宜しいですか?」

男「ええ!?」

女「お願いします」

男「え、えーっと、制服でいいのかな?」

女「いえ。体臭です」

男「た、体臭!?」

女「はい」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/21(日) 22:57:30.29 ID:YHIwkFnj0
男「手……とか?」

女「色々な所に触れた手は雑臭がするので遠慮させて頂きます」

男「髪の毛……とか?」

女「わざわざ嗅がなくても判別できるので遠慮させて頂きます」

男「じゃあ具体的にどこの匂いを嗅ぎたいの?」

女「首筋を」

男「く、首!?」

女「駄目……ですか?」

男(な、なんで残念そうな顔してるの!?そんな顔されたら断りにくいじゃないかっ!)
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/21(日) 22:58:50.76 ID:YHIwkFnj0
男「……」

女「……」

男「臭くても責任とれないよ?」

女「はい。構いません」

男「じ、じゃあ……いいよ」

女「ありがとうございます」

女「では失礼しますね」スッ

フワッ

男(女さんが近付いて……!なんかすげー良い匂いがするっ!)
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/21(日) 23:00:30.00 ID:YHIwkFnj0
女「」クン

男「!!」

男(近いっ!想像以上に近い!!)

女「」スンスン

男(こ、こ、この距離は心臓に悪すぎるっっ!!)

女「ふ……はぁ……」

男「!!」

男(お、女さんの吐息が首に……っ!)

女「」スンスン

男「あ、あの……」

女「!」

スッ

女「失礼しました」

男「い、いえ」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/21(日) 23:01:53.86 ID:YHIwkFnj0
女「ありがとうございました」

男「……その、どうでしたか?実際嗅ぐとか想像とちょっと違かったりとか」

女「ええ。想像以上でした」

男(想像以上!?それって……どういうことだ??)

男「あの、それって」

女「では私はこれで失礼します」

男「あ、はい」

スタスタスタ

男「行ってしまった……」

男「なんだったんだ一体……」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/21(日) 23:03:21.23 ID:YHIwkFnj0
――自宅

男(それにしても今日は驚いたなぁ)

男(想像以上ってきっと良い意味だよな?)

男(信じられない。あの女さんが)

男(あの高嶺の花である女さんが……もしかしてこれって……期待しちゃってもいいやつ?)

男「なんてそんな都合良くいくわけ……」

男「でも期待しちゃうよなぁ」デレ
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/21(日) 23:04:49.74 ID:YHIwkFnj0
――朝 教室

男(期待してた俺が馬鹿でした)

男(いつも通り話しかけるなオーラがプンプンと漂ってやがるぜ)

男(いや、別にショックはないよ?元々手の届かない存在だと思ってたし)

男(でも……折角だからもうちょっと仲良くなりたかったな……)

友「よう!男!」ポン

男「おはよ、友」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/21(日) 23:05:45.19 ID:YHIwkFnj0
友「今日の四限体育だぜ?腹が減ってる時間にきっついよなぁ〜」

男「ああ、そうだね」

友「しかも男子は持久走だと。今から憂鬱になるぜ」

男「はは……考えただけでも嫌になるな」

友「ま、お互い適当に頑張ろうぜ」

男「ああ」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/06/21(日) 23:06:53.21 ID:YHIwkFnj0
――昼休み

友「飯だ飯だ飯だーー!!」

友「もう汗だくでクタクタだわ……早く飯行こうぜ男!」

男「そうだね」

女「ちょっといい?」

男「!?」

友「え!?お、女さんっ!?どうしたの?」

女「彼に用事が……」

男「お、おれ?」

女「はい」

友「え?ええぇ!?」

男「えーっと、何かな?」

女「……」フラ

男(?なんか具合悪そうな気が……)
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/21(日) 23:10:12.56 ID:YHIwkFnj0
女「うっ……」

男「!?」

男(なんだ!?明らかに様子がおかしいぞ)

男「場所移そうか?」

女「ええ……人が、いない場所に……」

男「人が?……じゃあこっちに」

友「どういう事だ!?あの女さんがっ男に!?」

男「悪い友、先に飯食ってていいから!」

友「あ、ああ」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/21(日) 23:11:30.07 ID:YHIwkFnj0
――校舎裏

男「誰もいない場所って行ったらココくらいしか思いつかなかったけど……」

女「……」

男「本当にココでよかったの?保健室とかの方が……」

女「……」ブンブン

男「大丈夫?なんか具合悪そうだけど」

女「体育の後は臭いが……」

男「あっ……そうか、なるほど……」

女「……」

男「えっと、外の空気に当たってたら落ち着く?」

女「……せてください」ボソ

男「え?」

女「匂いを……嗅がせてください」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/21(日) 23:12:56.33 ID:YHIwkFnj0
男「ええ!!?俺も走って汗かいちゃったし……いくらなんでも臭いよ!」

女「お願いします」

男「でも!…………余計気持ち悪くなっても知らないよ?」

女「はい」

男「えと……じゃあ、どうぞ?」

女「失礼します」

スッ フワッ

男(うぅぅ……なんていい匂いなんだ女さん!俺なんかよりも君の方がとてもいい匂いのような気がするけど)
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/21(日) 23:15:50.89 ID:YHIwkFnj0
女「」スンスン

男(き、昨日と同じ首筋を……)

女「!!」

男「?」

女「」スンスンスンスン

男「……」

女「ふわぁ……」

男(これ、誰かに見られたらヤバイ絵面なのでは……)

女「」スンスン クンクン

男「……」

女「はぁ……ふぅ……」

男(な、艶かしい吐息ががが……!)

女「」クンクン スンスン

男「お、女さんっ、そろそろ」

女「!」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/21(日) 23:17:07.16 ID:YHIwkFnj0
スッ

女「失礼しました」

男「う、うん。大丈夫?」

女「はい。おかげ様で良くなりました」

男「昨日より臭かったと思うんだけど……」

女「はい。昨日以上に芳しい香りでした」

男「そ、そう?ならよかった……のかな?」

女「ありがとうございました」

男「でもこれじゃあ毎回体育の後なんて大変なんじゃない?」

女「今日はそれ用のハンカチを忘れてしまって……」

男「それ用のハンカチ?あ……あぁ!たまにハンカチで口元を覆ってる時あったけど、それってもしかしてこういう事態に備えて?」

女「はい。普段使い用のハンカチでは防げないので、別途それ用のハンカチを用意しています」

男「それを忘れちゃったんだね」

女「はい」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/21(日) 23:18:19.39 ID:YHIwkFnj0
男「なんていうか……お役に立ててよかったです」

女「助かりました」

男「あ、あの!もし今後、辛い時は遠慮なく頼ってくれていいから!」

男(言った!俺、頑張った!!)

女「……」

男「……?」

女「見返りを要求されても困るのでハッキリ申し上げておきますが、私にはお礼の言葉を口にすることしかできません」

男「見返りなんて求めないよ!ただ、少しでも……その、仲良くなれたら……」

女「……」

男「えと、その……」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/21(日) 23:19:47.85 ID:YHIwkFnj0
女「誤解のないよう事前に申し上げます」

男「?」

女「私は貴方に対して好意はありません」

男「あ、うん」

女「今後好意を抱く事もありえません」

男(ありえない、と明言された……いや、分かってたけどね……分かってたけどさぁ)

女「貴方が今後、私に対して特別な感情を持ってもそれには応えられません」

男「そんな事は!……思ってもないし、考えてもないよ……」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/21(日) 23:21:10.18 ID:YHIwkFnj0
女「ただ私にとって貴方は快然たる香りの持ち主だという事は事実です」

男「は、はい」

女「それを踏まえた上で利用させて頂けるという事でしたら、その時はまた宜しくお願いします」

男「うん、全然気軽に頼って下さい」

女「では失礼します」

スタスタスタ

男(告白してもないのにフラれた気分だ)

男(俺も元々女さんに好意を抱いていた訳じゃないし、手の届かない存在だと思ってる)

男(けど、ここまでハッキリ釘刺されると……笑うしかないよなぁ)

男「はは、は……」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/21(日) 23:22:52.23 ID:YHIwkFnj0
――教室

友「おい!男!どういう事だよ!説明しろ!」グラグラ

男「別にお前が思ってるような事じゃないって」

友「でもあの女さんだぜ?こんなこと今まで一度もなかったのに!」グラグラ

男「たまたま……困ってるのを助けてただけだよ」

男(嘘は……言ってないよな?)

男(女さんの体質のこと、俺の口から言うような事じゃないと思うし)

友「それでもあの女さんと接点持ったんだろ?羨ましい奴だぜ、コンチクショー!」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/21(日) 23:24:45.88 ID:YHIwkFnj0
男「あ、ははは……友が思うような事はありえないから安心していいよ」

友「当たり前だろ。難攻不落で有名な女さんだぜ?俺らのような取り柄もない人間がどうこう出来るお人じゃない!」

男「うんうん」

友「ほら見ろよ、あの儚げな表情……美しいよな……」

男(知ってしまうとあれはただ、教室の臭いを我慢してるだけなんだよなぁ)

男(あ、そういえば……)

男(ハンカチを忘れたって言ってたな)
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/21(日) 23:27:09.79 ID:YHIwkFnj0
――放課後

男「」コソコソ

男「女さん、そのままでいいから聞いて」ボソ

女「……」

男「帰りの電車は大丈夫なの?」

女「……」

男「もし必要なら……利用する?」

女「……」チラッ

男(否定がないって事は……やっぱり辛いのか)

男「最寄り駅は?」

女「……」

男「……」

女「〇〇駅」

男「!」

男(俺の最寄駅の隣!?そんな近くに住んでたなんて知らなかった!)

男「俺、その隣の××駅だから……どう?」

女「……」コクン

男「じゃあ先に駅のホームで待ってるから」

女「……」コクン

男(逆方向でも送るつもりだったけど、まさか隣の駅だったなんて)

男(よし、行くか)
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/21(日) 23:29:01.50 ID:YHIwkFnj0
――駅 ホーム

女「あ……」

男「お、きたきた」

女「お待たせしました」

男「ううん。考えなしに誘っちゃったけど、電車内で密着するわけにもいかないし、あまり意味ないかもなーって後から思った……ごめんね」

女「いいえ。隣にいるだけで中和されますから」

男「中和……そんなもんなの?」

女「はい。鼻が効くので」

男「ははっ、そっか」

男「あ!ちょうど電車来たみたいだね」
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