開拓者「安価で町などを作る」

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589 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/18(火) 18:56:07.99 ID:s3g0Vkofo
開拓者「今のお前なら気功を使えたら効率がいいな。老師に会いに行こう」

弟子「その前に、ちょっと師匠に見てもらいたいものがある」

弟子「たしかあっちに……あった」

弟子「これってさ、戦いに使えないかな?」

道端に生えている雑草に弟子が手をかざすと、茎がうねうねと伸び始めた。

開拓者「……驚いたな」

開拓者「もっとブワーッと一気に伸ばせないか?」

弟子「いや、これが限界だ。だから今まで言うまでもないかと思ったんだけど」

開拓者「こんなことができる人間は普通いないぞ。誰でも使えるなら開拓地で重宝する能力だ」

弟子「そんなにすごいのか。昔からできたから、大したことじゃないと思ってたよ」

開拓者「これは一体何に分類される能力だ?」

開拓者「お前にも分かるわけないな。専門家に見せに行くぞ」
590 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/18(火) 18:58:59.21 ID:s3g0Vkofo
天文の町はその名の通り、天文台があることで知られる町だ。

天文台ではかつては占星術師が暦を作り、現代では宇宙物理学者が日進月歩で研究を行っている。

しかしこの町では昔からその研究の方向がどこかずれていた。

具体的に言うと、人間の秘めた潜在能力に着目したのだ。

運命論……魔術……呪い……体内時計……磁覚……上位存在や宇宙知的生命体との念話による交信……。

子供たちはそうした特殊能力の訓練をすることが義務付けられている。

ここは非科学の最先端。


弟子「……すげぇ趣味の悪い町を作ったんだな」

開拓者「人聞きが悪い。ここは俺の作った町じゃないぞ」

開拓者「現在の常識で見ると不気味だが、かつてはこの町こそが学問の都だったんだろう」

開拓者「才能を持って生まれた能力者を見て、努力すれば誰でも能力が使えるようになると思い込み続ける……ある意味で残酷なことだ」


超常現象研究所。

研究員A「精神強度1.53md/rl。干渉指数P=150。天性の覚醒者です」

研究員B「素晴らしい。小学校の首席卒業者レベルだ」

謎のヘルメットを被らされた弟子は、サイキックであることが発覚した。

弟子「褒められてるのか貶されてるのか分からない」

開拓者「おや、この杖はたしか、マナに反応して音が鳴る魔力検知機だったな」

研究員B「ご存じでしたか」

開拓者「握ると魔法の才能があるかどうかが分かるんだろう。前に使ったことがある」

弟子「へえ」ビーッ

研究員A「音が鳴りました。一定の魔力が体内に蓄えられています」

開拓者「お前は何をしても才能があふれ出るのか……」
591 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/18(火) 19:00:07.96 ID:s3g0Vkofo
弟子「オレって、魔法や超能力をなんでも使えるのか?」

開拓者「まだ素人だろう」

研究員「いくら手先が器用で技術者の才能があっても、はじめて使う工具をうまく使える人はいません」

開拓者「だろうな。効率のいい鍛え方はあるか?」

研究員「サイコパワーは精神力に比例することが分かっています」

弟子「たしかに、前より遠くの茎も伸ばせるようになってる」

開拓者「ああ、座禅の効果か。こんなところに活きるとは」


開拓者「そういうわけで、気功で武器を弾くことができないか聞きに来たんだ」

老師「それは私が得意とするところです」

開拓者「お前の武は戦わないためのものだったな。武器を使わせないようにする技があるのは自然か」

弟子は槍を持つよう指示された。

弟子「……本気で突きに行っていいのか?」

老師「もちろん」

弟子「おりゃあ!」

老師「まずはこうです」バシッ!

腕を叩いて手を開かせる技。

老師「もう一度」

老師「武器を持ってない腕なら、こう」スゥ グイッ

弟子「うおっ!?」

老師が腕をつかみ、軽く上に持ち上げるような動きをすると、弟子は意思に反して武器を放り出してしまった。

弟子「これだ……!」
592 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/18(火) 19:01:51.05 ID:s3g0Vkofo
弟子は短期間で気功を極めるため、大岩を割る、体を鉄の棒で殴られるなどの過酷な修行を自ら進んで行った。

老師には無理をするなと釘を刺されたが、やめるつもりは無かった。

休憩時間には魔法についての本を読み、相手が使ってきた場合のイメージトレーニングに集中した。

試しに魔法を使ってみたら、最初のうちは手から火や水を出すことに成功したが、すぐに出せなくなった。

どうやら東洋街では魔力を補給できないようだ。

並行して、今までに習得した技が衰えないよう、槍術や動体視力の特訓も続けた。


その激しい修行の記憶を思い出した後、一度記憶を頭の隅に追いやる。

そして、瞑想……。

弟子「…………」

弟子「…………よし」

開拓者「気合が入ったか」

弟子「ああ。予選の時より気の流れがいい」

弟子「勝ってくるよ」
593 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/18(火) 19:02:29.89 ID:s3g0Vkofo
●スキル
筋力T……全力で殴れば大人を気絶させることができる。
フットワークU……狼の群れも突破できる緩急自在な機動力。
体幹T……同世代の男性に比べて明らかに筋肉質。
精神力U……精神攻撃に強い耐性を持つ。
動体視力V……集中すれば銃弾もスローモーションに見える。
反射神経T……見えさえすれば大抵の攻撃は余裕で避けられる。
急所攻撃T……人体の急所となる部位と、それぞれの部位にダメージを受けたらどうなるかについて理解している。
★LVUP!! 気功V……体内の『気』を操り戦う。気は所持品や他人の体にも流れ込む。
槍術U……槍を自分の体の一部のように使いこなせる。突きは素早く、戻すのも素早い。
柔道T……投げ技、絞め技に特化した武道。東洋のレスリング。
★NEW!! 魔法T……魔法についての知識があり、少しだけ使うことができる。
★NEW!! 植物操作能力T……生育の早いツタを操ることができる。伸びる速さはアリの歩行くらい。
高跳び……槍を支えに棒高跳びの要領で跳びあがり、短時間だけ滞空できる。
槍投げ……槍を遠くまでまっすぐ投げる技。事前動作が大きく、使用すると武器を手放してしまうため、慎重に使う必要がある。

●ステータス
★UP! 攻撃力Lv.5
★UP! 耐久力Lv.5
リーチLv.3〜5
スピードLv.3

●総評
異能槍術家V。
気功以外の能力を隠すため、大会には気功槍術家としてエントリーしている。

巧みな槍術に気功を組み合わせて威力を増幅している武術家。
卓越した動体視力で、いかなる時も相手の隙を見つけ出す。
594 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/18(火) 19:05:27.05 ID:s3g0Vkofo
ナレーション「緑の町、農業局がお伝えしました♪」


使者「戦闘大会初出場の町が、急遽送り込んだ素性不明の青年!!」

使者「たとえ何者でも戦闘大会は拒みません!! 己の戦闘能力が身分証明だ!!」

使者「緑の町 最強の男! 気功槍術家ァァァッ!!」


弟子「オレの紹介ひでえ!」

開拓者(ほとんど空欄のプロフィールでエントリーしたからな……)

審判「……試合開始!」

立役者は腰に下げた剣の柄を握り、力強い目で対戦相手を見ている。

ざわっ

観客A「来るぞ……居合だ……!」

観客B「映画で見たのと一緒!」

観客C「まばたきするなよ!」

開拓者「観客が容赦なく戦法をばらしている」

観客のネタバレ情報に従い、まばたきせずに集中していると

立役者「ハァッ!」

ヒュオッ!

弟子「危なっ…!」

尋常でない動体視力を持つ弟子ですらおののく居合抜き、それに続く袈裟斬り、横斬り。

開拓者「あの剣は?」

忍者教官「……カタナでござる。東洋の刀剣の一種であり、とても切れ味が鋭い」

柔道家「忍者が来ているのは知っていましたが、侍も王国に来ていたとは。すでに皇国に全滅させられたとばかり……」

家政婦「でも本物の侍とは動きが違うような気がしますよ」

カンフースター「あれは演劇用の剣術……殺陣(たて)と呼びます」

開拓者「そうか、立役者とは殺陣役者のことだったのか!」
595 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/18(火) 19:09:57.50 ID:s3g0Vkofo
弟子(次の攻撃は、刃でない側が軽く当たるだけ。これは避けずに一突きを)

ガクッ

使者「おっと気功槍術家、崩れ落ちたーっ! 解説の代理人さん、これはどうしたことでしょう!?」

代理人「一体何が起きたんだろうな」

使者「分からないーっ!」


弟子(今の……電気か!?)

電気を蓄えたカタナは映画のようにパチパチと周囲に放電することは無かった。触れるまで電気が流れることには気づけない。

弟子(ヤバい、体が動かない。やられる……!!)


周辺に鉱山町を多く抱え、製鉄で栄えた鋼鉄の都。

この町が誕生した時点から存在していた魔法大学には、ある言い伝えが残っている。

鋼鉄の都の成立には一人の大魔法使いが関与していた、と。

大魔法使いは魔法によって雷を起こし、大地を操り、遠く離れた場所を繋いだという……。


弟子「っ……!!」ダンッ

弟子(気功で筋肉を動かして離脱できたけど……まだ力が入らねえ)フラフラ

ふらつく脚で後退は間に合わず、やむなく槍で受け止める。

パチッ

弟子(また電気! でもさっきより弱い……?)

ふと、目の前から立役者が消えた。

悪い予感。

弟子はすぐさま正面に槍を突き立て、気功の力も借りて棒高跳びで離脱した。

その瞬間、カタナが空を切る。
596 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/18(火) 19:13:17.02 ID:s3g0Vkofo
開拓者「何の前触れもなく背後に現れたぞ。あれはまさか魔法か?」

戦術魔導士「あれは短い距離のワープ。本来は利用価値のない初級の魔法だね」


弟子「ハア、ハア……」

立役者「素晴らしい。ここまで持ちこたえたのはあんたが初めてだ」

弟子(待ってくれるのはありがたい……)

弟子「お前、現れた時と全然雰囲気が違うじゃないか」

立役者「それは当然のこと。私は立役者」

立役者「男でも、女でも、善人でも、悪人でも、強者でも、弱者でも、演じることができる」

弟子「ああそうだな……ユニコーンさえ騙せるのか。本当のお前はこんなに冷たい殺気を放つ野郎なのによ」

立役者「それもまた一面を理解しているに過ぎない。私はサムライを演じているだけなのだから」

弟子(……なんかおかしくないか? ずいぶん待ってくれるな)

立役者「さあそろそろ始めようか」

弟子「ああ。おかげで調子が戻ってきたぜ」


立役者は本来、積極的に攻撃を仕掛けるよりも相手の攻撃に合わせたカウンターを得意としている。

しかし今回の相手はカタナよりリーチが長く、突きを得意とする槍術家。

普段の戦法に適した距離を保つのはむしろ危険であり、間合いを詰めなければならなかった。

グイッ

立役者(何者かに脚を掴まれた……!?)

弟子(かかった!)

弟子はそこを狙った。立役者の足首に植物が巻き付いていた。

1試合目の宣伝で超能力者が咲かせた花にまぎれて、蔓を忍ばせていたのだ。

弟子「くらえ!」

わずかにバランスを崩す立役者に対し、弟子は慌てずに一歩後退すると、槍を投げつけた。

立役者「くっ……!」

避けられない。立役者は仕方なくカタナで叩き落す。

すると、電光が槍を通って地面に流れるのが見えた。
597 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/18(火) 19:22:55.20 ID:s3g0Vkofo
弟子(やっぱりか! あのまま突いていたらまた電撃を食らってた)

弟子(でも、ここからどうする? 触れない相手をどう倒す?)

槍を回収し、構え直しながら、弟子は高速で対抗策を考える。


※ヒント1:短距離ワープは初級魔法
※ヒント2:電撃が弱いときがあった
※ヒント3:なぜか長話で弟子の回復を待ってくれた


1.できるだけ敵に触れないように回避し続けて、チャンスを狙う
2.積極的に攻めてチャンスを作る

↓1から 先に2票入った方
598 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/18(火) 19:26:03.56 ID:dlWkqa0M0
1
599 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/18(火) 19:36:10.86 ID:JW9McLjbO
2
600 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/18(火) 19:45:17.10 ID:dGiUBBQMo
2
601 :トリップで先に正解を出すのを忘れていました  ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/18(火) 20:13:20.85 ID:s3g0Vkofo
弟子(もう見抜いたぜ。お前の弱点!)

弟子(立役者。お前は、大した魔法使いじゃない!)

電撃にひるまず、弟子は攻撃を仕掛ける。

立役者はそれまで通りの気迫のこもった表情で、槍を避け、時にはカタナで払い、隙を見ては攻撃に転じた。

立役者(まずい……)

立役者(まずい、まずい!!)

しかし内心ではひどく焦っていた。

試合がここまで長引いたこと自体、彼にとっては想定外だったのだ。

立役者(なぜこの男は、電撃を浴びせても動き続けられる!?)

立役者(なぜこの男は、背後からの奇襲を回避できた!?)

苦戦していたのはお互い様。

武器の不利を悟っていた立役者は、早々に必殺の手札を二枚切り、そのどちらも決定打に至らなかった。

弟子「おりゃあ! ……うおっ」ガッ

弟子の足元の土が隆起し、つまずく。

弟子「ふんっ!」

しかしその程度の妨害で弟子が体勢を崩すことは無い。

立役者(完璧に決まったはず! なぜ転ばない!?)

片や、西洋の槍術と、東洋の気功。

片や、東洋の剣術と、西洋の魔法。

それらを組み合わせたオリジナルの戦闘術を使う二人は、似た者同士だった。

しかし決定的な違いは、サブウェポンの練度。

気功を鍛えた弟子の動きを、簡単な魔法で止めることは困難なのだ。
602 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/18(火) 20:18:27.81 ID:s3g0Vkofo
弟子(お前の電撃は、連続で使えないんだろ?)

弟子(さっきの背後へのワープも、地面を少しだけ持ち上げるのも、初級魔法だ!)

弟子(そんなお前の発電魔法は、剣に電気を貯めるスピードが遅い)

弟子(だからこそ、さっきお喋りで時間を稼いだし……頻繁に剣に当たっていればこの通り、静電気しか来ねえ!)

再び、背後へのワープ。

弟子は先ほどと同じように棒高跳びで離脱する。

立役者(やけくそになって攻撃しているわけじゃない……彼は冷静だ)

立役者(弱点を、見抜かれている)

心の隙。

その一瞬を、弟子は見逃さなかった。

弟子(受けてみろ……老師さん直伝、装備弾き!!)

その掌底は、まったく痛みを与えない。

しかしながら技を受けた者は必ず武器を投げ出してしまうのだ。

平和主義の老師らしい技である。

立役者「……勝負、あったな」

立役者「認めよう、あなたはとても強い」

使者「勝者、緑の町!!」

弟子「うおおおおおお!!!」


騎士「地味な試合だったな」

家政婦「まあ……一回戦の派手さに比べると、武器を振り回しているだけでは客席の反応は良くないみたいですね」

開拓者「そうだろうか」

開拓者「戦った本人たちにしか分からないことだが……」

開拓者「客には見えない技の応酬だったのかもしれないぞ」
603 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/18(火) 20:38:44.69 ID:s3g0Vkofo
治療班に電流のダメージを取り除いてもらい、控室に戻ってくるとすでに4試合目が終わっていた。


開拓者「4試合目は湾岸要塞の魔物ハンターと、食の都の竹槍戦士だったな」

弟子「どっちが勝ったんだ?」

騎士「湾岸要塞だった」

開拓者「残念だ。竹槍戦士が勝つと思っていたんだがな」

弟子「どんな戦い方をしてたんだ? 参考にするから教えてくれよ」

騎士「よく分からねぇ。ただ起こったことだけを言わせてもらうと……」

騎士「はじめは何もせず、ただ竹槍で刺されるままだった」

騎士「でもダメージを受けている様子は全然なかった」

開拓者「頑丈だったのか?」

騎士「いや……俺の目がおかしくなっちまったのか、体が衣服ごとへこんでるように見えたな」

騎士「そのあと、食の都の代表は鍛えた筋肉で絞め技をしかけた」

騎士「そうしたら、そいつは触った部分に大火傷を負ってた」

騎士「最後、食の都の代表に、湾岸要塞の代表は変な形の武器を突き刺して……食の都の方は動かなくなった」

開拓者「話を聞く限り、魔物ハンターというより魔物みたいな奴だな」

弟子「体温を上げる魔法でも使ってたのか?」

開拓者「何をされるか分からない相手は戦いにくいだろう。二回戦でも当たりたくない相手だ」
604 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/18(火) 22:16:32.46 ID:s3g0Vkofo
5試合目 エージェント(リゾートの町) VS 竜騎兵(牧場の町)



写真家「いよいよアタシの出番が来ました!」

開拓者「お前が出場するわけじゃないだろうに」

写真家「実際、出るんですよ。開拓者さんよりも先に」


写真を拡大印刷した巨大なパネルがスタッフに運ばれて、闘技場にずらりと並ぶ。

のどかな田園風景。品のある教会。うるうるとした瞳のひつじ。チーズフォンデュ。

ロングバレルの銃を発砲する男性。クワを振り上げる男性。

写真家「……」ガチガチ

写真家「……ア…タシはこの写真を撮っ……」

ざわざわ

観客A「なんて?」

観客B「聞こえないぞー!」

開拓者「まったく……世話の焼ける」

観客C「おい、あれって開拓者じゃないか?」

開拓者「王国の皆! 俺は開拓者だ!」

開拓者「この町を作ったのは、俺と、横にいる写真家の二人だ!」

開拓者「ご覧の通り、写真を撮りたくなるようなイカした町だ!」

開拓者「かわいい動物がたくさんいるし、銃の撃ち放題体験もできる!」

開拓者「城塞の都から出て徒歩5分!」

開拓者「フォトジェニックな牧場の町をよろしく頼む!」

写真家「た、助かりました……」


観客D「あいつ、まだ懲りずに町を作ってるのか」

観客E「でもさ、よく考えたらこの大会に出てる町ってほとんど開拓者が作ってない?」

観客F「俺は開拓者嫌いだけど、開拓者の作る町は好きだよ」
605 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/18(火) 22:17:15.45 ID:s3g0Vkofo
リゾート神「私はリゾートの町の市長、人呼んでリゾート神」

リゾート神「リゾートの町は毎日少しずつ姿を変える。何度訪れても新鮮な楽しみを提供することを約束しよう」

リゾート神「これから諸君に、私のリゾート開発をお見せする」パチン


リゾートの町の市長が指をはじくと、闘技場にヤシの木が生え、コテージが建ち、砂浜と海が出来た。

観客席から歓声が上がる。

写真家「えっ、ど、どうなって……?」

開拓者「彼はリゾート開発を極めた結果、『リゾートを創造し、リゾートを破壊する能力』に目覚めた、と聞いている」

開拓者「リゾート限定ではあるがまさに神のような、恐ろしい市長だ……」

パシャッ ジー

写真家「うわ、顔が真っ青。あの人と何かあったんですね」

※リゾート神の登場する孤島編は、http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1462605431/


使者「王国最新の観光地の目玉は……動物と、銃!!?」

使者「この町を好きになり移り住んだ誇り高き騎士は、愛馬とともに堂々と戦う!!」

使者「フォトジェニックな牧場の町 最強の男!! 城塞の都出身、竜騎兵ィィィィッ!!!」


使者「リゾートの景観を損ねずゲストを守る、マッチョでハンサムな男たち!!」

使者「リゾート開発の雄、リゾート神の直属の戦闘部隊、『守護天使』を代表してやってきた!!」

使者「南国リゾートの町 最強の男!! エェェェェジェントォ!!」


写真家「……建物とかビーチが残ったままですけど!」

開拓者「超能力者の作った花畑もそのままだったから、そういう方針なんだろう」

写真家「それにしたって地形を変えすぎじゃないですか!?」
606 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/18(火) 22:32:55.34 ID:s3g0Vkofo
馬に乗り、馬の上からライフルで精密な射撃をする竜騎兵。

人間としては規格外の機動力を持ち、体術とリボルバーによる射撃を織り交ぜて戦うエージェント。

二人の試合は激しい銃撃戦だった。


使者「百発百中の腕を持つ竜騎兵、しかし銃撃が当たらない!?」

代理人「銃弾に銃弾を当てて弾いているんだ。人間技じゃねぇな」


この大会では動物は武器として持ち込みが認められる。

竜騎兵は馬を突撃させて馬の脚で蹴る、または踏みつけるという戦法も用いていた。

しかしエージェント相手にそれをすることはできなかった。

なぜなら……
607 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/18(火) 22:40:53.70 ID:s3g0Vkofo
写真家「あれは反則でしょ! 壁を蹴って空中戦なんて!」

開拓者「なんでもありとはいえ、有利な地形に作り替えておくのはさすがに問題かもしれんな」

開拓者「魔法使いたちが足場を全部マグマにしておいて、出場者本人は飛んでおけばほとんど勝てるじゃないか」

写真家「絶対に戦えない地形以外はOKってルールでもあるんですかね?」

開拓者「あらゆる地形での戦闘に対応できてこそ最強……という意図はあるんだろうが……」


1.王様に抗議しに行く
2.リゾート神に抗議しに行く
3.諦めて応援する

↓1選択
608 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/18(火) 22:46:23.53 ID:xBct/Z6m0
609 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 16:05:34.34 ID:Ix+EQmkdo
写真家「リゾート神に抗議しに行きましょう! 何が神じゃい、卑怯者!」

開拓者「ああ、行ってこい」

写真家「……。……あの人が怖いんですか」

開拓者「ああ怖いさ! 長く開拓をやってきたがリゾート神はトップクラスの脅威だったぞ!」

写真家「開拓者さんのいくじなし! もうアタシ一人で行ってきます!」


開拓者「結局、心配で様子を見に来てしまった……」

リゾート神「つまり、私の部下にとっての足場とは、竜騎兵クンにとっての馬と同じなのだよ」

写真家「屁理屈です! あの壁は出場者であるエージェント本人が用意したものではありません!」

リゾート神は困ったような顔をした後、写真家の頭の上に手をかざした。

開拓者(写真家をリゾート化するつもりか!?)

リゾート神「分かってくれ写真家クン。すべてリゾートのためなのだ」パチン

写真家「…………リゾート万歳! リゾート万歳!」

開拓者(なんてこった! 写真家が洗脳されてしまった!)

写真家「リゾートの写真を撮りたい! 今すぐ撮りたい!」

リゾート神「ほら、リゾートならそこにあるじゃないか」

写真家「……リゾート? ……ここはリゾートじゃない。二人の男性が本気で戦ってる場所です」

リゾート神「……大会で勝てば勝つほどリゾートがバズるんだ。フェアな戦いなんてどうでもいいだろう?」

写真家「バズればいいってものじゃありません!」

写真家「こんな戦い方で勝っても、待っているのは炎上ですよ!」

開拓者(いいぞ写真家! 洗脳されても信念はそのままだ!)

写真家「アタシの大好きなリゾート神様のリゾートが炎上するなんて、耐えられない!」

開拓者(ダメそうだ)
610 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 16:28:09.40 ID:Ix+EQmkdo
リゾート神「もういい、興ざめだ」パチン

写真家「あれ……? 記憶が飛んだ……?」

リゾート神「出てきなさい開拓者クン」

開拓者「バレていたか」

リゾート神「わざわざ私に抗議してまでフェアな戦いを望むか」

リゾート神「その先に絶望しか待っていないとしても」

開拓者「何?」


審判「試合中断!」

使者「ここで中断です! リゾートの町の市長が、片付けを忘れていたとのことです」

代理人「まあみんな気になるよな、あれは」


即席リゾートと花畑が片付き、元の闘技場に戻った。

開拓者「よし、これで壁蹴りジャンプは封印した。竜騎兵が戦いやすくなるぞ」

写真家「あれ……? 嘘でしょ?」

写真家「壁が無いのに、飛んでる……」


使者「おっとエージェント、空気を蹴って飛んでいる! 非現実的です! 一体どうなっているのか!?」

代理人「これじゃ状況はさっきと何も変わらねえな」

代理人「いやむしろもっと悪くなったか。遮蔽物が無いから、馬が走りやすい代わりに撃たれやすくなってるように見えるぜ」
611 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 16:49:28.98 ID:Ix+EQmkdo
リゾート神「今回、出場させたエージェントは過去のエージェントたちに比べて体格が良くない」

リゾート神「その代わりに身軽でああいう芸当ができるんだよ」

リゾート神「できれば2回戦まで隠しておきたかったのだがね」


竜騎兵の銃は単発式。

リボルバーを使うエージェントとは連射力に差があった。

馬を走らせているとはいえ、再装填中は隙になる。

やっと装填しても、銃弾に銃弾を当てられて弾かれる。

竜騎兵「これ以上続けても、愛馬を傷つけるだけか……!」

竜騎兵は意を決して馬から飛び降りた。


開拓者「降参か」

写真家「やぶ蛇でしたね……」

開拓者「いや、情報を得ることができたから決して無駄じゃない」

開拓者「仇はとってやる。まだ俺の弟子が残っているからな」
612 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 17:03:14.56 ID:Ix+EQmkdo
開拓者「おかしい……旗が上がらないぞ」


機動力を失った竜騎兵はまだ敵に銃口を向けている。

降参の意思がないことは明白だった。

しかしリボルバーの連射は容赦なく竜騎兵を襲う。

銃弾に銃弾を当てられるほどの腕前の射撃だ。何発も被弾し、ライフルも弾き飛ばされた。


写真家「一瞬、期待しちゃいましたけど……もう……」


うずくまる竜騎兵は片手を掲げ……

竜騎兵「翔べ! 我が相棒よ!」

降参せず、そう命じた。


エージェントの脚力は、馬の速さに匹敵し、空気を蹴って空を跳ぶことすら可能だ。

鍛え上げた人間はこれほどまでに超人的な力を得るのだ。

それでは、鍛え上げた馬ならどうなるか――


竜騎兵(貴君が連射可能な弾丸は6発……相棒を今撃つことはできまい!)

もはや壁を蹴ってジグザグに移動することもできない。身を隠すための遮蔽物も無い。

主人の重量から解き放たれ、空を翔ける馬の速さたるや、銃弾……いや、砲弾そのもの。

エージェントはあえなく蹴り落とされる。

突き進む馬はそのまま観客席のバリアを蹴り、闘技場の上空を舞った。


観客A「すげぇ……跳んだところの地面が陥没してる」

観客B「カッコいい……空飛ぶドラゴンみたい……!」


クレーターの中央で動かなくなっているエージェントを確認すると、審判は旗を振り上げた。

使者「勝者、牧場の町!!」
613 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 17:09:48.06 ID:Ix+EQmkdo
写真家「やったーーー!!!」

リゾート神「なんだと……!?」ガタッ

開拓者「あのエージェントも人間としては怪物だったが、馬にはかなわなかったようだな」

写真家「もう馬だけ出場すればいいんじゃないですか?」

開拓者「人間の頭脳が必要なんだろう。いくら凄まじい脚力があっても無策で突っ込むのは危険だ」

写真家「それじゃ、市長さん、地形を戻してくれてサンキューでした」

開拓者「実際、建物がそのままだったら負けていたはずだ。俺からも礼を言うぞ。ありがとう」

リゾート神「くっ……。まさか私の町が一回戦で落ちるとは……」


代理人「城塞の都にあれほどの実力者が隠れていたなんてな」

使者「例年は騎士、今大会に出場している騎士のお父上ですね。彼に敗れることが多かったようです」

使者「また、今大会が初出場の馬だそうです」

代理人「まさにダークホースってか」
614 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 17:16:11.15 ID:Ix+EQmkdo
6試合目 ダンサー(芸能の島) VS 達人(砂漠のカジノシティ)



観客(ショータイムだ……!!)

芸能の島の宣伝パートは、島のコメディアンや踊り手たちによるパフォーマンスだった。

夏を思わせる爽やかなロックミュージックと、トラディショナルな踊り、おかしな動きで笑わせるネタが特徴だ。

タレントA「それではまた、テレビでお会いしましょー!」

タレントB「王都では放送されてないのだ! うーむ残念!」

踊り手「芸能の島一同、出演依頼をお待ちしております」


観客(こっちもショータイムだ……!!)

砂漠のカジノシティの宣伝パートもやはり、町のコメディアンやミュージシャンによるパフォーマンスだった。

激しい重低音鳴り響くメタルと、マジックやパントマイムなどカジノ内で見られる芸が特徴だ。

ボーカル「スタジアムのみんな……カジノシティで待ってるゼェーーッッッ!!!!」

キーボード「ご清聴ありがとうございました!!」

パントマイマー「…………」パタパタ ペコリ

※カジノシティが作られる砂漠編は、http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1454661413/


使者「いやー、芸能の島VSカジノシティのパフォーマンス対決、素晴らしかったですね」

代理人「どちらの代表も見ごたえのあるパフォーマンスだったぜ」

代理人「芸能の島は遠く離れた孤島とは思えない洗練されたダンスと音楽が魅力的だった」

代理人「カジノシティは毎日お客に披露してる分、演者に余裕があるのを感じたな」

使者「うーん、優劣つけがたい!! ここは審判に判定していただきましょう! 会場の審判さーん!」

審判「そろそろ始めてください」

使者「えーと、はい」

使者「選手入場!」
615 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 17:18:07.10 ID:Ix+EQmkdo
使者「楽しいパフォーマンスを披露してくれた踊り手の一人が、引き続き戦いでも魅せる!」

使者「予選では強豪の格闘家たちに完勝! その勝利の秘密はこの試合で解き明かされるのか!?」

使者「最果てのアーティスト・アイランド 最強の男! ダンサァァァアア!!!」

ダンサー「ふふっ」


使者「徒手空拳での王国最強はすでに決定している!」

使者「とくと見よ! 最高峰の肉体と武術! これが強さの王道だ!」

使者「砂漠のカジノシティ 最強の男! 王国武術大会優勝者 達ジィィィィィンッ!!!」

達人「礼!」ペコリ


開拓者「武術大会は俺が提案して開いた大会だ」

弟子「ってことはあいつとも知り合いなのか」

開拓者「ああ、あいつには砂漠の町で一番才能があった」

開拓者「東洋街の老師と、それと同じくらい強い師範を倒して優勝した」

開拓者「武器防具無し、魔法や特殊能力無しのルールなら、王都代表ともいい勝負ができるだろう」

開拓者「芸能の島も俺が開拓した町なんだが……」

弟子「そっちもかよ」

開拓者「あの時、戦える者を育てた覚えはない。あのダンサーは何なんだ?」

弟子「しかもあいつ、武器を持ってるようには見えないぞ」
616 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 17:19:12.96 ID:Ix+EQmkdo
ダンサー「私のダンスには宿っている。島の神の力が」

達人「我は神を信じていない。信じるのは己のみ」

ダンサー「私はあなたのような強き者の姿を変えた。塩をまく者はナメクジに。知恵ある者は赤ちゃんに」

ダンサー「宣言しよう。あなたは島の名産、ナマコになる」


審判「試合開始!」

ダンサーは達人から離れながら軽快なステップを踏む。

神のダンスの始まりだ。

使者「思わず見とれてしまうようなダンスです」

代理人「たしかに目が離せなくなるな。達人の様子は……」

使者「おおっと達人、目を閉じている! ダンスを視界に入れない作戦か!?」


達人「我なりにそなたの技について考えてきた」

達人「我の出した答えは……何を企んでいようと見なければ良い」

達人はのしのしと、正面に向かって歩き出す。

この対処法は正しかった。

ダンサーの戦法の正体は、戦う相手に効果を増幅する魔法をかけておいた状態で使う、催眠術である。

目を閉じていなければ、今ごろ手も足も出せなくなっていただろう。


ダンサー(想定内です。あなたの対応)

予選で、力士はダンスからわずかに視線をそらしながらダンサーにつかみかかろうとした。

しかしこのダンスは視界に入っていれば不可避。あえなく地を這った。

クイズ王は足元だけを見て戦おうとした。

しかし相手を見ずに攻撃を当てることは不可能。ちらちらとダンスが視界に入るたび知性を失っていった。

対処法が分かっていても対処できない。

誰もが突然、視覚を失った状態での戦いを強いられる。
617 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 17:20:29.85 ID:Ix+EQmkdo
観客「あれ? 急に腕が重くなってきた……」

写真家「脚に力が入りません。た、立てない……」

開拓者「なるほど、催眠術か」

弟子「分かったのか、師匠?」

開拓者は弟子に催眠ダンスについて説明した。

開拓者「効果増幅の魔法を受けていなくても長時間見ていると危険だな。催眠が効きやすい者はすでに不調を感じているようだ」

忍者教官「……足音がしない。姿をとらえずに攻撃を当てるのは至難の業でござる」

弟子「いや。オレならあいつ、楽に勝てるぞ」

弟子は目を閉じて言った。


同じく目を閉じたまま棒立ちしていた達人が、走り出す。

ダンサー(なっ、こちらにまっすぐ……!?)

達人は素早くダンサーの脚を払う。

倒れたダンサーの顔を狙ったパンチは、寸前で止まる。

達人「足音は消せても、気配は消せないようだな」

ダンサー「……参りました」

達人「気配を消す技術さえ習得すれば、そなたはまだ強くなれる」

達人「機会があれば、また闘おう!」

ダンサー「もう結構ですよ。荒事は」


弟子「砂漠の町の代表も、気功が使えるんだな」

開拓者「それだけじゃないぞ。東洋街の武道家たちの多くが武道を教えに来ていた」

開拓者「達人はそのすべての技術を吸収していると言っていい」
618 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 17:21:50.00 ID:Ix+EQmkdo
7試合目 戦術魔導士(学問の都) VS 黒装束(端っこの都)


アナウンス「国立セントラル大学――。都立マイスター大学――。私立バイオ大学――」

アナウンス「願書受付中――!!」

学問の都のPRは、やはり大学の宣伝だ。

弟子「すごい都市だな……。端っこの都とは比べ物にならない」

開拓者「学問の都の中心街の発展ぶりは異常だからな。王都の次に栄えている大都市だ」


使者「戦場は男だけのものじゃない! 女性で最初の戦闘大会出場者は、今回も優勝に王手をかけるか!?」

使者「究極の魔法は立ちふさがる若人たちをまとめて吹き飛ばす!」

使者「温暖林州 最強の魔女! 魔法研究都市在住、学問の都代表! 戦術ゥゥゥ魔導士ィィィ!!!」


開拓者「あのばあさんは戦績がすごい」

開拓者「初出場からずっと準優勝している」

弟子「そんな強い選手だったのか!? どんな魔法を使うんだ?」

開拓者「戦争用の魔法を使うらしい」

開拓者「戦争用と言うからには、立役者やダンサーの使う魔法とは格が違うんだろうな」

弟子「何も知らないのかよ」

開拓者「俺も戦績しか知らないんだ」


観客A「ぶちかませババアー!! 一回戦だからって手を抜くんじゃねーぞ!!」

観客B「あなたは女性の希望よー! 隊長に勝ってー!」


開拓者「観客も当然彼女が勝つと確信しているようだ」

開拓者「だが、その相手はおそらく……」

弟子「ああ……征服者だ」
619 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 17:23:40.44 ID:Ix+EQmkdo
端っこの都のPRは、草原を走る列車の映像や、中心街の落ち着いた街並みだった。

弟子「オレの知ってる町じゃねーな」

開拓者「王国中に見せても恥ずかしくない部分だけを抜き出している」

弟子「貧民街を見せられないのは分かるけどよ。他にもあるだろ」

開拓者「市長は、中心街以外は全て恥だと思っているということか……傲慢だな」

開拓者「……! 出たぞ、あの男だ」

入場口から現れた黒装束の男は身の丈を超える巨大な鎌を携えている。

開拓者「なんと禍々しい……!」

弟子「あんな武器だったかな……?」


使者「皇国からやってきた黒装束の死神が、老女に死を宣告する!」

使者「その大鎌でいったいどれだけの魂を狩り取ってきたのか!?」

使者「平原州 最強の男! 端っこの都代表、葬送者ァァァアアア!!!」


弟子「……葬送者?」

開拓者「堂々と征服者と名乗るわけにもいかんだろう」

開拓者「皇国から来たと紹介された。特徴が一致している……やはり間違いないか?」


黒装束「……申し訳ない」

黒装束「……俺は魂を奪う以外の勝ち方を知らない」

戦術魔導士「そうかい」

戦術魔導士「その鎌が私に届くことはないから安心しなよ」
620 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 17:24:40.98 ID:Ix+EQmkdo
審判「試合開始――」

審判「うわぁっ!」

合図とともに恐ろしいほどの加速を見せる黒い影。

戦術魔導士は一歩も動かず……

人間二人分の直径を持つ火の玉が、彼女の頭上から出現すると同時に撃ちだされた。

葬送者はまるで慣性を無視したかのように直角に移動し、火の玉の進路から外れる。

しかしそれで回避したことにはならなかった。

火の玉は破裂し爆発を起こす。

その衝撃波だけで葬送者は宙を舞う。

ここまで一瞬。一連の動きが見えていたのはそう多くない。

弟子(あの異常な動き、やっぱりあいつが……っ!!)

着地を待たずして、次の火の玉が発射される。

空中にいて回避のしようがない葬送者は、戦術魔導士の周囲にいくつもの火の玉が浮いているのを見た。

まさに絶望的状況……。

戦術魔導士(終わりだね)

ついに火の玉が葬送者を飲み込んだ。

開拓者「やったか!?」


〜〜〜〜〜〜〜〜

戦術魔導士「私も参加させなさい!」

彼女がまだもう少し若いころ……王国戦闘大会に出場できるのは男性だけだった。

そんな中、60代の女性が男の世界である戦場に挑むと宣言したものだから、世間は嘲笑し、観客席からは過激な暴言で煽り立てた。

しかしその魔法の威力に出場者たちと観客は唖然とさせられた。

今までに出場した魔法使いとはレベルが違いすぎたのだ。

ただし、その快進撃は決勝戦で近衛兵の隊長に止められる。

世の男性たちはすっかり安堵した。別に隊長以外の男が負けた事実は変わらないのだが。

準優勝という好成績を収めたが、世間の反応は『やっぱり女は男に勝てないんだな』というものばかり。彼女は悔しさに震えた。

以来、ずっと隊長を倒すことだけを考え、他の選手のことは歯牙にもかけていなかった。

そう。油断していたのだ……。

〜〜〜〜〜〜〜〜


弟子「いや、まだ気を感じる!」

煙の中から葬送者が飛び出し――
621 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 17:26:18.69 ID:Ix+EQmkdo
葬送者が地に倒れ伏していた。

使者「勝者! 学問の都!」


開拓者「今のは負ける流れだっただろ!!」

弟子「えっ、征服者が負けた……? うそだろ……?」

開拓者「まあお前の仇敵とはいえ、王国の最強格の一人と戦えばこうなってもおかしくないが……」

弟子「もしかしてあいつ、征服者とは別人ってこと、ないか……?」

開拓者「特徴は一致していたが、偶然似ているだけだった可能性はある」

開拓者「だがそうだとすると、征服者は出場してないってことになるな」

弟子「……マジで?」

開拓者「……お前が聞いた噂はあの男の事だろう。他に特徴の一致する選手はいない」

弟子「やべえ、モチベーションが無くなった」


戦術魔導士「火の玉だけかと思ったかい?」

黒装束「……俺の身に何が起きたんだ?」

戦術魔導士「肉体強化魔法を使った私の手がお前の胴体を貫通したのさ」

戦術魔導士「決着がついたあと、私が時間を戻して蘇らせたんだよ」

黒装束「……そうか。俺が負けてしまうとは」

黒装束「……世界は広いな」
622 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 17:27:20.79 ID:Ix+EQmkdo
8試合目 忍者教官(高原の環境都市) VS 近衛兵隊長(王都)


〜♪

忍者「ニン! ニン! ニン! ニンジャ!」

籠を抱えた忍者たちが闘技場を行進していた。籠の中には野菜や果物がどっさり乗っている。

高原の環境都市の宣伝タイムだ。

ひとしきり行進が終わると、忍者たちは大きな布を広げた。

『ようこそ 忍者山アグリカルチュラルパーク』

『離宮もあるよ!』

使者「療養中の姫を影から守るのが我らのつとめ!」

使者「空気がおいしくごはんもおいしい健康的な都市から、なぜか忍者が見参!」

使者「高原の環境都市 最強の男! 忍者たちのリーダー、忍者……教カァァァン!!」

次の瞬間、すべての忍者が煙となって消えた。

忍者教官「……すべて拙者の分身でござる」


闘技場の入場口から国王が現れると、観客席の、そして中継先の、王国民たちは一斉に拍手で出迎えた。

忍者教官だけが拍手をしていなかった。シツレイ!

王「王国民たちよ!」

王「長く続いた開拓を終え、王国は大きな岐路に立たされておる!」

王「だが安心して欲しい!」

王「王国には数多くの、強き者たちがいるのだ!」

王「この戦闘大会にて、その頂点が決まる!」

王「この力強き国で、最強の称号を手にする者……新たな王者の誕生を、余とともに見届けようぞ!」

わあああああ

使者「選手入場!」

使者「歴代の戦闘大会、そのすべてで優勝したチャンピオンが堂々登場だ!」

使者「王家を守る近衛兵たちを率いる、王の盾にして王の鉾!」

使者「王都最強の男! 近衛兵、隊長!!!」

近衛兵隊長「一戦目から油断はしない」

近衛兵隊長「王家のため、優勝するのはこの私だ」
623 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 17:28:31.32 ID:Ix+EQmkdo
試合開始の合図とともに、忍者教官は猛攻撃を仕掛けた。

煙玉で身を隠し、様々な角度から手裏剣を飛ばすと、隊長はその場から動かず、最低限の動きだけですべてを回避する。

忍者教官「……ならばこれはどうでござるか」

大量の分身を作りだし、隊長を包囲。

すべての分身が走り回りながら代わる代わるクナイで攻撃を仕掛ける。

しかしやはり隊長はほとんど動かずにそれを避け続ける。


使者「さすが隊長! 圧倒的なスピードと手数で攻めても、びくともしない!」

代理人「忍者はいろんな道具を使って戦うようだ」

代理人「他にどんな物を使ってくるか、まだまだ目が離せないぜ!」


開拓者「忍者! もっと色んな技を使え! 単調な攻撃では歯が立たんぞ!」

忍者教官「……あれで全力でござるよ」

開拓者「うおっ!? 忍者!? って分身か」

開拓者「観客席にまで分身を出す余裕があるのか?」

忍者教官「……拙者は本物でござる」

忍者教官「……分身も出してはおらぬ」

開拓者「何? だったらあそこで戦っているのは誰だ」
624 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 17:29:49.54 ID:Ix+EQmkdo
忍者教官「……なぜ反撃しないでござるか」

近衛兵隊長「勘弁してくださいよ……職務上、貴方に攻撃を加えることはできませんゆえ」

近衛兵隊長「私は何をすればいいのですか。命じられれば降参いたしますが」

忍者教官「それでは意味がないでござるの!」

ドロン

姫「わたくしは、あなたを倒すために戦闘大会に出たんですもの!」

ざわわっ

観客A「えっ、あれって姫様じゃない?」

観客B「まさか身代わりの術で姫を盾に!? 汚いな! さすが忍者汚い!」

使者「姫様ぁ!? そこで何をしてらっしゃるんですか!?」

姫「パパ! 聞いてるかしら!?」

姫「わたくし、隊長を倒して王国最強になりますの!!」

近衛兵隊長「困ります。それでは我々の仕事がなくなってしまう」

姫「それが嫌ならわたくしを倒すことね! で、ござる!」

近衛兵隊長「倒してもクビ、倒されてもクビ、私はどうすればいいんですか……」

近衛兵隊長「おや、あそこに本物の忍者殿が!」

忍者教官「……む?」

近衛兵隊長「貴方は姫様より強いだろう! どうか、姫様の代わりに戦ってくれないか!」

近衛兵隊長「そうしたら、姫様に攻撃を加えずに、私が姫様に勝てることを証明できる!」

忍者教官「……そうなるか?」

近衛兵隊長「来ないのならばこちらから行くぞ!」
625 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 17:31:10.31 ID:Ix+EQmkdo
急遽、本物の忍者教官が戦うことになった。

忍者教官「……分身の術」

近衛兵隊長(すべてまとめて攻撃すればいい)

姫「変化の術と分身の術!」

忍者教官(姫)たち「「これぞ二重分身の術でござるわ!」」

近衛兵隊長(姫様が邪魔だ!! 忍者に化けた本物の姫を巻き込んでしまう!!)


忍者教官「……土壁の術!」

近衛兵隊長(壁を突き破れば問題あるまい)

姫「わたくしと戦いなさい!!」サッ

近衛兵隊長(近ッ、ブレーキィィィィッ!!!!)

頻繁に割り込む姫に攻撃を当てないように立ち回ることを強いられた隊長は、ひどく疲労した。


忍者教官「……もう負けた(ことにする)でござる」

近衛兵隊長「ありがとう。心から、ありがとう」

使者「勝者は王都代表!!」

審判「えっ、まだ旗を上げてないのに」

姫「納得いかない!」


開拓者「姫、予選で暗殺者を倒してたよな……。それで十分だろう」

のちに、隊長は今までの戦闘大会で最も苦戦した試合だったと語った。


観客A「あの忍者、なんども姫様を盾にしやがった!」

観客B「予選で姫様を暗殺しようとしてたのか? 許すまじ、金融都市!」

嫌な火種も残った。


観客C「あの病弱な姫様があんなにたくましく……環境って大事なんだな」

観客D「うちの子も高原で療養させようかしら」

町の最高の宣伝にもなった。
626 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 17:32:07.55 ID:Ix+EQmkdo
使者「これにて王国戦闘大会、一回戦のすべてが終了しました!」

使者「どうですか、解説の代理人さん」

代理人「今大会は初出場の町と選手が多かったが、一回戦でほとんどいなくなっちまった」

使者「まだ達人、魔物ハンター、竜騎兵、気功槍術家、家政婦の5人が残っています」

代理人「達人と魔物ハンターには期待しているぜ」

使者「そうですね。一回戦ではどちらもまったく苦戦する様子を見せませんでした」

代理人「一回戦はいつもの面々も苦戦してなかったように見えたな」

使者「二回戦では優勝候補同士の激突もありえます。熱戦が予想されますね」
627 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 19:22:17.76 ID:Ix+EQmkdo
開拓者「行くぞ。二回戦の相手を決めるくじ引きが始まる」

弟子「オレ、何のために戦ってるんだっけ……?」

開拓者「たしかに、お前の倒すべき相手はいなくなった。あるいは元からいなかった」

開拓者「だが、忘れたか? お前には優勝を目指す理由があっただろう」

弟子「……!」

開拓者「妹を救うんだろう? 一戦でも多く勝ち進めば王国中の注目を集められる」

開拓者「優勝すれば国王を頼れるかもしれない」

弟子「師匠……ごめん。忘れていたよ」

弟子「今できるのはオレの強さを示すこと。やれるだけやらなきゃな」


使者「皆さん集まりましたね。まずは二回戦進出おめでとうございます」

使者「それでは順番にくじを引いてください」


家政婦「あのー、開拓者さんとそのお弟子さん」

開拓者「どうした?」

家政婦「もし5番までの数字を引いても、あたしを指名しないでいただけると助かります……」

家政婦「あたしは約束があって、絶対に3回戦まで進まないといけないので……」

開拓者「亜熱帯の町か……」

家政婦「はい……。市長がそちらの宣伝を先にするとおっしゃったので、ここで負けると湖畔の楽園の宣伝が無くなります」

家政婦「そうなったら市長が許してもあたしが自分を許せません。先生に会わせる顔がないです……」
628 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 19:24:19.38 ID:Ix+EQmkdo
開拓者「分かった。だが、大丈夫か?」

開拓者「二回戦ともなると、戦いたくない相手しか残っていない」

開拓者「運よく残った人間は一回戦でふるい落とされる。残っているのは人間をやめているような者ばかりだ」

家政婦「そうですね……。もうあまり自信はないです」


弟子「おおおっ! 1番だ!」

弟子「師匠! オレは誰を指名すればいいんだ?」

開拓者「誰も指名したくないな……。ちょっと考えさせてくれ」

開拓者(どいつもこいつも化け物だが、誰かを選ばないといけない)

開拓者(知っている情報を整理してみよう)
629 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 19:29:51.14 ID:Ix+EQmkdo
フォトジェニックな牧場町代表:竜騎兵
攻5/耐3/リーチ5/速7〜10
情報:馬を走らせながら正確に的を撃つ、馬も強い、馬が傷つくとすごく怒る
追加情報:おそらく王国最強の馬、銃は単発式で連射できない


開拓者(知っていた情報よりも馬が強すぎた)

開拓者(竜騎兵の方を倒せばいいとはいえ、そもそも遠距離攻撃ができなければ一方的に攻撃され続ける強敵だ)

開拓者(そして、俺の弟子が倒してしまうと写真家に申し訳ないから、あまり戦わせたくない相手だ……)


常春の都代表:超能力者
攻10/耐2〜6/リーチ10/速5〜10
情報:超能力者らしいことは大体できる、気候を変えられる
予選:常春の都予選では優勝者が超能力者への挑戦権を得るが大抵手も足も出ずに負ける


開拓者(ベスト4常連。念動力、発火能力、瞬間移動、バリア……様々な超能力を使いこなす)

開拓者(超能力は思念の力だ。集中を乱すと使えなくなるという弱点は一応ある)

開拓者(しかし基本的に彼が集中を乱すことは無い)


学問の都代表:戦術魔導士
攻10/耐5/リーチ10/速1
情報:魔女の頂点、戦争用の魔法を使う
予選:パワードスーツを着た市長(兵器の町)を撃破


開拓者(いつも準優勝のばあさんだ)

開拓者(火炎魔法、強化魔法、その他様々な魔法。その一つ一つで簡単に大勢の命を奪うことができる)

開拓者(魔力が尽きると一時的に魔法が使えなくなるはずだが……どう考えても時間稼ぎができる相手じゃない)


砂漠のカジノシティ代表:達人
攻9/耐9/リーチ1/速4
情報:武道家の頂点、気功も使える
予選:王国武術大会優勝のため予選免除


開拓者(王国で一番強い武道家だ。俺が間接的に育てた)

開拓者(体術を極めている。気功も俺の弟子より強いだろう)

開拓者(リーチが短いためあらゆる武器や特殊能力が弱点と言えるが、簡単に倒れてくれそうにない)
630 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 19:32:09.45 ID:Ix+EQmkdo
湾岸要塞代表:魔物ハンター
攻3以上/耐10/リーチ2/速2以上
情報:体が変形しすべての攻撃を受け止める?、体から高熱を放つ?、奇妙な形状の武器を持っている
予選:戦艦を単独で制圧


開拓者(あまりにも情報が少ない。なぜか嫌な予感がする……)

開拓者(話を聞く限り、最もタフな選手だ)

開拓者(姿はおそろしく不細工な中年男性だ。脚が短すぎるし、顔が歪みすぎじゃないか?)


湖畔の楽園代表:家政婦
攻8以上/耐4以上/リーチ3/速3以上
情報:元傭兵、得意武器は槍
予選:一度も攻撃をしていない


開拓者(彼女が本気で戦っているところをまだ見たことが無い)

開拓者(観客は舐めていたが、騎士は決して弱くない。その鉄壁のガードがあまりにも軽く打ち破られていた)

開拓者(頼まれなくてもわざわざ挑もうとは思わない……)


王都代表:近衛兵隊長
攻8/耐10/リーチ2〜5/速8
情報:これまでの戦闘大会ですべて優勝、剣士だが武器を持たなくても戦える
予選:王都予選は最もレベルの高い予選と言われる


開拓者(考えるまでもなく駄目だ)

開拓者(姫は勝てる見込みがあったのではなく、最初から隊長を超えることだけが目標だったから挑んだんだ)

開拓者(どちらにしろ勝ち進んだら決勝で当たることにはなるが……)
631 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 19:35:16.38 ID:Ix+EQmkdo
開拓者「誰を選んでも、一回戦とは雲泥の差だ……」

弟子「師匠! 時間がないぞ!」

開拓者(銃技と速度の竜騎兵か……)

開拓者(なんでもありの超能力者か……)

開拓者(破壊力の高すぎる戦術魔導士か……)

開拓者(純粋な強者、達人か……)

開拓者(正体不明の魔物ハンターか……)

開拓者(真の実力が分からない家政婦か……)

開拓者(ここであえての近衛兵隊長か……)
632 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 19:37:43.05 ID:Ix+EQmkdo
2回戦の相手は

1.竜騎兵

2.超能力者

3.戦術魔導士

4.達人

5.魔物ハンター

6.家政婦

7.近衛兵隊長

↓1から 先に2票入ったもの
633 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/21(金) 19:38:50.90 ID:zaX2Z6ur0
5
634 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/21(金) 19:40:51.62 ID:P0+HoETDO
2
635 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/21(金) 19:43:24.93 ID:pTs6mzK10
636 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/21(金) 19:44:29.04 ID:IInq8wZL0
2
637 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 21:01:38.91 ID:Ix+EQmkdo
開拓者「……超能力者だ」

弟子「分かった。師匠がそう言うなら、オレにも勝ち目があるんだな」

弟子「オレの相手は、超能力者にする」

超能力者「へえ。ここで俺を選ぶのか」

開拓者「お前の弱点は知っているからな」

超能力者「……あれはしょうがないだろ?」


使者「では2番の方」

近衛兵隊長「2番は貴方だぞ」

魔物ハンター「……」

目の焦点が合っていない醜い男は、無言で達人を指さした。

達人「触れることのできない者との闘いか。良い試練だ」

戦術魔導士「長く生きてきたけれど、薬指で指さす人は初めて見たよ」


達人「3番は我だ」

超能力者「俺、4番」

家政婦「えっ。順番が回ってくると思ってなかった」

使者「あなたの指名が終わると、残った二人の試合が決まります」

家政婦「何も考えてませんでした……」

家政婦「どうしましょう、開拓者さん」

開拓者「俺に聞くなよ」

開拓者「まあ、消去法でいいんじゃないか」

残っているのはいつもの優勝者と準優勝者。そしてもう一人。

家政婦「あっ、そうか。では、竜――」
638 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 21:03:04.78 ID:Ix+EQmkdo
戦術魔導士「おや、5番を持っているのは私だよ」

家政婦「はい? そんなわけ、あれ? なんで?」

家政婦「さっきまで確かにあたしのくじに5番って書かれてたのに……!」

戦術魔導士「私はお前と戦うことにするよ。なに、ケガさせやしないさ」

家政婦「そんな!?」

開拓者「家政婦、お疲れさま」

弟子「もう自分の町の宣伝した方がいいと思うぞ」

超能力者「おい、ばあさん……すり替えたろ?」

戦術魔導士「フフフ、証拠はどこにあるんだい?」

超能力者「隊長とは決勝で戦いたかったんだろ。このタイミングでぶつかって負けたら、連続準優勝記録も途絶えてしまうから」

戦術魔導士「それは証拠にならないねえ」

戦術魔導士「あとね、その理由は的外れだよ。準優勝にこだわりなんて無い。今年勝つのは私だからね」

戦術魔導士「ただ……お楽しみは最後に取っておくべきだろう?」

超能力者「ほとんど自白じゃないか」


竜騎兵「我の相手は隊長か」

近衛兵隊長「残念だったか?」

竜騎兵「騎士に臆病風は吹かぬ! ただ最善を尽くすのみ!」


使者「一回戦と同じく、試合順はこちらで適当に決めます」

使者「準備ができるまで待っていてください」
639 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/21(金) 23:51:36.96 ID:Ix+EQmkdo
決勝トーナメント二回戦

1試合目 竜騎兵(牧場の町) VS 近衛兵隊長(王都)

2試合目 気功槍術家(緑の町) VS 超能力者(常春の都)

3試合目 魔物ハンター(湾岸要塞) VS 達人(砂漠のカジノシティ)

4試合目 家政婦(湖畔の楽園) VS 戦術魔導士(学問の都)
640 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/22(土) 00:02:04.19 ID:x3rSenYGo
1試合目 竜騎兵(牧場の町) VS 近衛兵隊長(王都)



使者「お待たせしました!」

使者「これより、王国戦闘大会、二回戦を開始します!」

観客A「結構待ち時間が長かったね」

観客B「周りの親子連れがいなくなってるけど、どうしたんだろう」

使者「それでははじめに、映像をご覧ください!」

それは王国の歴史を15分にまとめたドキュメンタリーだった。

観客を睡魔が襲った。

観客A「ああ、これ子供は退屈かも……」

観客B「せめてもうちょっとアップテンポなBGMをつけて欲しかった……」

使者「続いて、牧場の町のPRに移ります!」

観客席のバリアに投影された映像が消えると、1m四方に分割されたバリアがそれぞれ回転し、映像が投影される面が闘技場側に向いた。

ざわざわ

観客A「今の、何か意味あるの?」

観客B「あそこ! 何か出てくる」

入場口から現れたのは……
641 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/22(土) 00:02:57.80 ID:x3rSenYGo
使者「夢の世界から人間を萌え殺しにやってきたのか!?」

使者「あざとさ最凶のどうぶつ! ひつじぃぃ!!」

ひつじ「めぇ〜♪」

使者「小さな王子様がみんなを食べちゃうぞ!」

使者「将来はきっと最強のどうぶつ! ライオンの赤ちゃああん!!」

ライオンの赤ちゃん「れおお〜ん!」

使者「そして、どうぶつ軍団だぁ〜!!」

たくさんの小動物が、闘技場を埋め尽くす!

観客席と闘技場を隔てるバリアに、牧場の町のパノラマ写真が投影される!

使者「出張版ふれあい牧場 オープンでございます!」

使者「混雑防止のため、13歳未満のお子様は入場を制限しております!」

使者「小さなお子様は、保護者の方とご一緒に入場してください!」

PR勝負では牧場の町に軍配が上がった。
642 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/22(土) 00:03:55.19 ID:x3rSenYGo
使者「選手入場!」

使者「一回戦では圧倒的な強さで姫様……ではなく忍者に勝利した隊長が、早くも再登場!」

使者「対するは、リゾートの町のエージェントに逆転勝利を収めた、竜騎兵!」

使者「鍛えぬいた馬と銃の腕は、果たしてどこまで通用するのか!?」


竜騎兵「我が愛馬よ。試合が始まったらすぐに走り出せ」

近衛兵隊長「……」シャッ


開拓者「隊長が剣を抜いた」

弟子「さっきは結局どんな戦い方をするか分からなかったからな。ちゃんと観察しとこう」

開拓者「あまり期待すると拍子抜けするぞ」

弟子「なんでだ? 強いんだろ?」

開拓者「まあ、期待しすぎずに見ておけ」


試合開始。

竜騎兵は普段のセオリー通り、相手から離れて馬を走らせながら銃で相手を狙い撃つ。

しかし今回の相手は最強と名高い近衛兵隊長。

剣を片手に走る隊長は、馬の走力に匹敵していた。

使者「馬を追いながらもしっかりと銃弾を避けていく! 隊長には銃弾が見えている!」

代理人「闘技場は広いが、いずれ壁際に近づく瞬間が訪れる。そこが隊長の攻撃チャンスだ」

しばらく経ち、代理人の解説の通り、闘技場の壁際で隊長と馬の距離が近づいた。

剣の鋭い一振り。

竜騎兵は寸前で馬から飛び降りる。主人が降りたことで背中が軽くなった馬も加速し、斬撃から逃れる。

隊長は竜騎兵に狙いを絞った。

竜騎兵は至近距離での発砲で抵抗するも、銃口の向きを見切られ回避される。
643 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/22(土) 00:17:10.00 ID:x3rSenYGo
開拓者「明らかに実力で負けている。だが……」

弟子「まだ馬がいる!」


地を連続で蹴り激しく加速する馬。

動体視力の弱い観客には、姿が消えたように見えたことだろう。

まるで彗星のごとき突進は、冷静に、小手で受け流された。

壁に激突する馬を後目に、隊長は剣を振り上げる。

竜騎兵「無念!」


使者「勝者、王都!!」

近衛兵隊長「わざわざ一度死なずとも、降参すればいいものを……」

近衛兵隊長「しかしその騎士の矜持、立派であった」


開拓者「隊長は、派手な攻撃も、異常な速さや耐久力も、特殊能力も持たない」

開拓者「一般的な武器と防具を使って、シンプルに戦うんだ」

弟子「でも純粋にめちゃくちゃ鍛えてる。そうだよな?」

開拓者「ああ。できれば達人と戦って欲しかった。究極の肉弾戦が見たかったな」

弟子「……よし、次はオレの出番だ」
644 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/22(土) 00:24:36.65 ID:x3rSenYGo
2試合目 気功槍術家(緑の町) VS 超能力者(常春の都)



ナレーション「まるでデザート、スイートコーン♪」

ナレーション「そのままガブっと、スイートコーン♪」

ナレーション「スイートコーン村のスイートコーン。とってもスウィート!」

〜〜〜〜

母役「休日は?」

父役「やっぱりステーキ!」

子供役「ハンバーグ!」

ナレーション「牛々レストランのジューシーなお肉に家族で大満足!」

ナレーション「今なら付け合わせ一品無料!」

一家「ごちそうさまー!!」

ナレーション「……ビーフ村ッ!」

〜〜〜〜

ナレーション「お魚の栄養素、足りてますか?」


開拓者「これは緑の町の宣伝じゃないぞ!」

生産者「町長さんからわたしが枠をもらったの〜」

開拓者「緑の町は農業局の宣伝しか無かったのか」

生産者「あの辺りにある農業や畜産系が盛んな村は、緑の町にも関係なくはないからね〜」

生産者「開拓者も枠をもらって宣伝したら?」

開拓者「いや、遠慮しておく」

開拓者「一回戦の時点で半分くらい俺の作った町の宣伝だったからな……」

生産者「あ〜。やっぱりすごいね開拓者は」
645 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/22(土) 00:26:50.20 ID:x3rSenYGo
CMが終わると、急に闘技場の照明が落ちる。しかし闘技場に天井は無い。

生産者「あれ? 夜になっちゃった」

開拓者「時間帯まで変えられるのか? 一体どうなってるんだ」

生産者「超能力? 気温変えるのとか便利だよね」


闘技場の中央に、超能力者が浮いていた。

超能力者「天文の町が、皆さまをプラネタリウムにご招待!」


生産者「わ〜、きれーい」

開拓者「常春の都の宣伝も一回戦で終わりだったのか」

生産者「ううん。出場者の出身地の宣伝をすることもよくあるらしいよ」

二人は偽物の星空を見上げて、10分間のショーを楽しんだ。


使者「二回戦の二試合目は、気功 対 念力! 不思議な力の激突だ!」

使者「巨大な工事用車両すら破壊する超能力者のパワーに、謎の槍使いは耐えきれるのか!?」


超能力者「その表情……何か秘策があるって顔だな」

弟子「お前は取り乱すと超能力が使えなくなるんだろ」

超能力者「あはは! 俺に精神攻撃できるのは戦術魔導士さんか神様くらいだよ」

弟子「そうか……」

超能力者「まさかそれだけってことはないよな」

弟子「……どうだろうな」ニヤッ
646 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/22(土) 00:30:46.53 ID:x3rSenYGo
審判「……試合開始!」

審判の合図とともに、強烈な念動力が弟子を襲った。

弟子(やべっ……想像以上だ!)

だが弟子は踏ん張っている。気を重心に集中させて体を浮かせようとする力に耐える。

決して重量が増えているわけではないが、体に流れる気の力が念の力を防いでいるのだ。

超能力者「やるな……。じゃあ、これでどうだ?」

周囲の空気ごと持ち上げる念動力。

今度は、成すすべなく持ち上げられる。

超能力者「そして、こうだ!」

手のひらから少し離れた空間に火球が浮かび上がる。

それを投げつけると、炎が膨張して弟子を襲う。

パイロキネシス。念の力で炎を生み出す。

弟子「けほっ……」

わずかにダメージを負うも、今の弟子は簡単には火傷しない。

超能力者「これなら一回戦の方が楽しめたかな」

弟子(こいつ、遊んでる……!)

超能力者「次。こんなのはどうだろう?」

弟子「がッ……!?」

弟子(頭が、割れるように痛い……!)

強力な念波で対象の脳に負荷をかける技だ。

超能力者「まだまだ強くしていくぞ」

弟子「ぐっ、ああッ……」

苦痛の中で、弟子の頭の中にぼんやりと修行風景が蘇ってきた……。
647 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/22(土) 00:32:47.17 ID:x3rSenYGo
7週目

●スキル
筋力T……全力で殴れば大人を気絶させることができる。
フットワークU……狼の群れも突破できる緩急自在な機動力。
体幹T……同世代の男性に比べて明らかに筋肉質。
精神力U……精神攻撃に強い耐性を持つ。
動体視力V……集中すれば銃弾もスローモーションに見える。
反射神経T……見えさえすれば大抵の攻撃は余裕で避けられる。
急所攻撃T……人体の急所となる部位と、それぞれの部位にダメージを受けたらどうなるかについて理解している。
気功V……体内の『気』を操り戦う。気は所持品や他人の体にも流れ込む。
槍術U……槍を自分の体の一部のように使いこなせる。突きは素早く、戻すのも素早い。
柔道T……投げ技、絞め技に特化した武道。東洋のレスリング。
魔法T……魔法についての知識があり、少しだけ使うことができる。
植物操作能力T……生育の早いツタを操ることができる。伸びる速さはアリの歩行くらい。
高跳び……槍を支えに棒高跳びの要領で跳びあがり、短時間だけ滞空できる。
槍投げ……槍を遠くまでまっすぐ投げる技。事前動作が大きく、使用すると武器を手放してしまうため、慎重に使う必要がある。

●ステータス
攻撃力Lv.5
耐久力Lv.5
リーチLv.3〜5
スピードLv.3

●総評
異能槍術家V。
気功以外の能力を隠すため、大会には気功槍術家としてエントリーしている。

巧みな槍術に気功を組み合わせて威力を増幅している武術家。
卓越した動体視力で、いかなる時も相手の隙を見つけ出す。



開拓者「無事、気功を極めたようだな」

弟子「いや、まだ上があるって言われたよ」

開拓者「それはそうだが、いくら才能に溢れたお前でも一朝一夕じゃその領域にはたどり着けんだろう」

弟子「オレもそう思う。あと二週間しかないから、他の何かを伸ばしたい」
648 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/22(土) 01:05:41.37 ID:x3rSenYGo
弟子「質問なんだけど、超能力って他にどんな技があるんだ?」

開拓者「俺もそんなに詳しいわけではないが、念動力、発火、念話、読心、テレポート、アポート、空中浮遊、」

開拓者「バリア、植物操作、透視、未来予知……と、まあ他にもある」

弟子「それ全部使える人っているのか?」

開拓者「俺が聞いた話だとそうでもないようだ。得意分野が存在するらしい」

開拓者「俺の知り合いは戦闘向きの超能力ばかりで、ESP系はさっぱり使えないと言っていたな」

開拓者「たぶん彼も戦闘大会にも出場するだろう」

弟子「ESPってなんだ?」

開拓者「テレパシーや透視、予知能力などのことだ」
649 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/22(土) 01:08:18.91 ID:x3rSenYGo
弟子「もしバリアと瞬間移動を使われたら全然攻撃が当たらないよな……」

開拓者「バリアは一定以上の威力があれば何とかなる」

開拓者「瞬間移動は……どうすればいいのか俺にも分からん」


安価↓1、2、3 特訓内容を指示します(上げる能力を直接指定してもOK)
650 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/22(土) 01:09:09.52 ID:E7RokEGHo
ESP
651 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/22(土) 01:09:42.46 ID:/I2tZRt2o
雪山のトラウマを呼び起こせ!吹雪魔法(まだ難しいなら氷魔法)
652 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/22(土) 01:12:13.66 ID:REhENJXXo
相手の思考を読んで瞬間移動先に攻撃する訓練
653 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/25(火) 00:40:16.75 ID:rNyH+utzo
開拓者「しかしESPが戦闘に向いていないとは思えん」

開拓者「戦闘中に相手の考えが読めれば優位に立てるだろう」

開拓者「相手が右に避けるか左に避けるか、とかな」

弟子「気を読めば避ける瞬間は分かるけど、方向まで分かると便利だな」

弟子「でも超能力って才能が無いとどうしようもないんだろ。都合よくオレにESPの才能があるかな」

開拓者「ある」


天文の町で精神感応のテストをした。

エスパー「あった」

弟子「マジか」

開拓者「ほらな。お前は才能の神か何かに愛されている」

研究員「エスパーの才能とサイキックの才能を同時に発現するのは珍しいことです」

エスパー「でも、一つ忠告させて……」

エスパー「人の心の声が聞こえても、未来が見えてもいいことないよ」

弟子「あー、よくある話だ」

エスパー「人の心は醜いとは言わないけど……悪いことを考えている人は多いから」

開拓者「それはそうだろうな。誰かを殺したいと思ってもそれを実行に移す者は少数だ」

エスパー「それとね……みんなに嫌われる」

エスパー「だから、使えるようになっても普段はできるだけ使わないで、知ってしまったことも口外しないようにして」

弟子「使わないようにできるのか?」

エスパー「ええと、口に物を入れなければ味はしないでしょ?」

開拓者「ほう、そんなにシャットアウトできるなら便利だな」

研究員「彼女は先天性のエスパーなので、耳をふさいだ時くらいには聞こえているようです」

開拓者「強い感情や意思は騒音のようにすり抜けるか……。生きづらそうだ」
654 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/25(火) 00:44:25.85 ID:rNyH+utzo
弟子は今までの特訓の復習に加えて、人の思考を素早く読む訓練を中心にエスパー修行を始めた。

エスパー「私にタッチできたらクリア。いい?」

弟子「テレポートは使えないんだよな? 余裕だろ」サッ

ひらっ

弟子「このっ、おりゃっ! これでどうだ!」シュッ シュッ ブンッ

エスパー「キックは危ない!」

弟子「ダッシュなら読めても避けられないだろ!」ダダダッ!

くるっ

弟子「うわあっ!?」ドテッ

エスパー「ちなみに私、天文の町で一番のテレパシストで、二番目の予知能力者だから」

弟子「はぁ!? 予知されたら何やっても無理だろ!?」

エスパー「身体能力はあなたの方がずっと高いんだから、こちらの動きが読めれば触れるよ。がんばって」


そして数日後……

開拓者「どうだ? 心が読めるようになったか?」

弟子「師匠、距離取りすぎ……」

開拓者「ある程度近くにいないとテレパシーは使えないと聞いたからな」

弟子「そうだな。それと、考えてることを一字一句正確に読み取れるわけじゃないみたいだ」

弟子「分かるのは大体どういうことを考えているかだけ」

弟子「師匠に気になってる女性がいるのは分かるけど、顔や名前までは分からない」

開拓者「この距離でも読めるのか……」

弟子「集中すればだけどな。あー、その人は、絵を描く人か」

開拓者「おい、やめろ」

弟子「手首が細くて綺麗な指の女の人だ」

開拓者「もうやめるんだ!」

弟子「師匠はその人とエッチなことをしたいと思ってる」

弟子「それと師匠は、心を読まれることを恥ずかしがってるな」

開拓者「俺は余計なことを習得させてしまった!!」
655 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/25(火) 00:50:57.53 ID:rNyH+utzo
開拓者「その能力、普段は封印しておいてくれ」

開拓者「そうしないのならば、俺は逃げる」

エスパー「じゃあ何のために習得させたの?」

開拓者「戦闘大会のためだ」

弟子「わかった。下手に使うと人間関係がめちゃくちゃになるって釘刺されてたしな」

弟子「大会まで取っておくよ」

開拓者「いや。大会でも、使わないと勝てない時まで封印した方がいい」

開拓者「気功以外はできるだけ奥の手として隠しておけ」

開拓者「手の内は隠しておきたい。お前の技は多彩だが、見られれば対策はそう難しくないものばかりだ」


開拓者「それと、お前にプレゼントだ」

弟子「短い棒? トレーニング器具か?」

エスパー「それは製氷の杖。魔力を消費して氷を生み出せる、業務用の魔法道具ね」

エスパー「魔法の知識や技術が無くても、魔力さえあれば使える便利アイテム」

エスパー「氷のサイズは自由自在で、一度に出す量も調節できる。小粒の氷を一気に出せば吹雪も起こせるわ」

開拓者「俺の台詞! かなり詳細に読んだな!」

エスパー「脳内でしっかり文章化してたから、つい」

開拓者「それだけ自分で言いたかったんだ、分かるだろ……」

弟子「……業務用?」

開拓者「危険な魔法道具は一般人には売ってくれない」

弟子「でも氷って、これが効くのか?」

開拓者「送風の杖よりは効きそうだろ」
656 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/25(火) 00:54:45.12 ID:rNyH+utzo
●スキル
★NEW!! ESPT……透視、念話、予知。カードの裏の模様を当てたり、念じることで意思を伝えたり、嫌な予感がよく当たったりする。
★NEW!! 読心U……集中している間、相手の思考をある程度詳しく読み取れる。
★NEW!! 吹雪魔法……製氷の杖を使用して吹雪を起こす。現在の弟子の魔力では一回きりしか使えない大技。

●総評
異能槍術家V。
気功以外の能力を隠すため、大会には気功槍術家としてエントリーしている。

主に槍を使って戦うが、相手にあわせて様々な異能で対応を試みる戦士。
鍛え上げた気功と動体視力、テレパシーによって相手の動きを読み取る。
657 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/25(火) 01:00:20.55 ID:rNyH+utzo
超能力者は今までに戦ってきた、ガンマン、カンフースター、立役者とは全く異なる相手だ。

決して槍の間合いに入らず、念動力は動体視力での回避が不可能。

前試合で使った植物操作による拘束も通用しない。

気の力で抵抗して意のままにされることを防いではいるが、思うようにフットワークを発揮できない。

今は遊んでいるため地上にいるが、本気を出せば飛んで逃げ回られて、手の付けようがなくなる。


開拓者(弟子が勝利するためには超能力を封じるしかない)

開拓者(製氷の杖を用意しておいて正解だった)

開拓者(超能力者には、雪山の神に精神を破壊された経験がある……)

開拓者(さあ! 吹雪で奴のトラウマを刺激しろ!)


超能力者「そろそろ気を失うんじゃないか?」

強力な念波に苦しむ弟子は、震える手で製氷の杖を取り出し正面に構える。

弟子(どうせ一回しかまともに使えないんなら、魔力の全てを注ぎ込んでやる!)

小さな氷の粒を大量に放出。

その勢いは凄まじく、吹雪というよりも雹に近かった。

業務用の製品も使いようによっては凶器になるのだ。

だが当然、バリアを張っている超能力者に直接ダメージを与えることはできない。

超能力者「……嫌なことを思い出すな!」

少し怒った超能力者は、熱風を作りだして吹雪にぶつける。

氷を融かした熱風はそのまま渦を巻き、闘技場全体を包み込んだ。

気候さえも塗り替える、念動力と発火能力の応用技だ。
658 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/25(火) 01:01:33.49 ID:rNyH+utzo

使者「これは熱い! まるで砂漠に沸いた温泉のよう!」

代理人「火傷するほどじゃないから実況席にもすり抜けてくるのか!」

使者「ええ、魔法バリアの換気性能が裏目に出ましたね」


超能力者「今ので終わりか?」

弟子(くそっ……)

超能力者の精神は強靭だ。

ただ吹雪を再現した程度では、雪山の恐怖に心を縛られはしない。

しかし、わずかな油断を生んだ。

念動力による押さえつけが途切れたのだ。

弟子はそのチャンスを逃さず、走り寄る。

弟子(この一撃で決める……!)

槍の柄の中央を持ち、大きく後ろに引く、槍投げの構え。

それを見た超能力者はいつものようにテレポートをした。


この時、テレポート先を念じることにより、念波が発生する。

通常の思考よりも強い念波は、テレパシストにはしっかりと伝わるのだ。

しかしすでに重心を後ろに引き、あとは投げるだけの体勢。

ではどうするか。

ここでも気功の出番だ。

弟子は気を移動させて軸足を中心にぐるりと回転し、勢いを殺さずに槍投げの方向を変更。

驚愕の表情を浮かべる超能力者に向けて、槍を構えた腕を全力で振りぬいた……。
659 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/25(火) 01:02:08.21 ID:rNyH+utzo
開拓者「な、何が起きたんだ……!?」

騎士「……アポートだ」


弟子(空振り!?)

超能力者「君の槍ならここ」

弟子「なっ……!?」

超能力者「ああ、掴んだわけじゃないよ。流石にちょっとヤバいと思ったから手元に引き寄せただけだ」

続けて、槍が忽然と消え失せる。

超能力者「槍はどこかに飛ばした。もう槍投げは使えないな」

超能力者(俺のテレポート先、読んだんだろ? 残念だったな)

超能力者(ここから武器無しでどうやって戦うつもりなんだ?)

超能力者「遊びは終わりだ」

弟子「うああっ!」

弟子は念動力で高く持ち上げられたあと、落とされる。

さらに、吹き飛ばされて観客席の下の壁に激突する。

弟子「……」ヨロヨロ

超能力者「まだ立ち上がるのか!? 思ったよりタフだな。バリアもないのによくやるよ」

常人なら死んでしまう衝撃だが、弟子は読心能力で先を読み、気功と受け身で威力を殺していた。

しかしもう攻撃手段が無い。

超能力者は宙に浮き、バリアを常に張っている。

手元にもう一本槍があってもまったく倒せる気がしてこない。

立ちはだかる、王国トップ5の壁。


騎士「終わりだな。俺たちのような武器に頼る選手にとってあいつは天敵だ」

開拓者「いや、まだだ……」

開拓者(俺の弟子は、あと一回の回想を残している……!!)


弟子は完全に追い詰められている。

この時、超能力者も、審判も、観客さえも、もうすぐ降参するだろうと思っていた。
660 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/25(火) 01:04:06.79 ID:rNyH+utzo
しかしこの数秒後……

追い詰められていたのは超能力者の方だった!

超能力者「そ、そんな力を隠していたのか……っ!!」

弟子(一週間前から始めた特訓の成果、まだ身についていないかもしれないけど!)

弟子「付け焼刃でも、ぶつけるしかない……!!」

弟子「これが、オレの力の全てだ!!」


〜〜〜〜〜〜〜〜


8週目

●スキル
筋力T……全力で殴れば大人を気絶させることができる。
フットワークU……狼の群れも突破できる緩急自在な機動力。
体幹T……同世代の男性に比べて明らかに筋肉質。
精神力U……精神攻撃に強い耐性を持つ。
動体視力V……集中すれば銃弾もスローモーションに見える。
反射神経T……見えさえすれば大抵の攻撃は余裕で避けられる。
急所攻撃T……人体の急所となる部位と、それぞれの部位にダメージを受けたらどうなるかについて理解している。
気功V……体内の『気』を操り戦う。気は所持品や他人の体にも流れ込む。
槍術U……槍を自分の体の一部のように使いこなせる。突きは素早く、戻すのも素早い。
柔道T……投げ技、絞め技に特化した武道。東洋のレスリング。
魔法T……魔法についての知識があり、少しだけ使うことができる。
ESPT……透視、念話、予知。カードの裏の模様を当てたり、念じることで意思を伝えたり、嫌な予感がよく当たったりする。
読心U……集中している間、相手の思考をある程度詳しく読み取れる。
植物操作能力T……生育の早いツタを操ることができる。伸びる速さはアリの歩行くらい。
高跳び……槍を支えに棒高跳びの要領で跳びあがり、短時間だけ滞空できる。
槍投げ……槍を遠くまでまっすぐ投げる技。事前動作が大きく、使用すると武器を手放してしまうため、慎重に使う必要がある。
吹雪魔法……製氷の杖を使用して吹雪を起こす。現在の弟子の魔力では一回きりしか使えない大技。

●ステータス
攻撃力Lv.5
耐久力Lv.5
リーチLv.3〜5
スピードLv.3

●総評
異能槍術家V。
気功以外の能力を隠すため、大会には気功槍術家としてエントリーしている。

主に槍を使って戦うが、相手にあわせて様々な異能で対応を試みる戦士。
鍛え上げた気功と動体視力、テレパシーによって相手の動きを読み取る。
661 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/25(火) 01:06:27.56 ID:rNyH+utzo
戦闘大会まで、あと一週間。

開拓者「…………」

弟子「師匠、オレは優勝できそうか?」

開拓者「……トップクラスの面々に通用するだろうか」

開拓者「征服者とやらがどの程度の強さなのか分からんが……」

弟子「オレは逆に王国の強い人たちを知らないから、分からないな」

開拓者「征服者が王国のトップよりも強いと仮定した場合……」

開拓者「お前の課題は、遠距離攻撃の少なさだ」

弟子「ああ、吹雪は一回きりの魔法だったな……。二回目はちょっとしか出てこなかったし」

開拓者「槍投げと合わせても二回だ」

開拓者「素早くて遠くから攻撃してくる相手……例えば竜騎兵には、その二回で仕留められなければ終わりだ」


開拓者「離れた相手に追いついて攻撃できるなら、遠距離攻撃の手段は要らないがな」

弟子「うん、征服者はそうしてた」

弟子「武器を頭上に構えて回転しながら飛んできた。猛禽類みたいに」

開拓者「猛禽類は回転しない」

開拓者「しかしどうやるんだ、その動きは」

弟子「オレが知るかよ」
662 : ◆GD89ryLcdg [saga]:2020/08/25(火) 01:13:03.18 ID:rNyH+utzo
トリップは準決勝の相手です


※最後の回想(安価で強化パート)です

※超能力者に勝った後の、準決勝と決勝の相手も意識する必要があります

※準決勝の相手は『近衛兵隊長』『魔物ハンター もしくは 達人』『家政婦 もしくは 戦術魔導士』の誰かです
663 : ◆iBgSzvk3hw [saga]:2020/08/25(火) 01:15:33.39 ID:rNyH+utzo
トリップは決勝の相手です


超能力者攻略情報

※ヒント1:今の弟子の気功+槍術ならバリアは割れる
※ヒント2:超能力者は精神力と判断力がとても高い
※ヒント3:アポートが無ければ投げた槍が刺さって勝ってた
664 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/25(火) 01:22:39.06 ID:rNyH+utzo
開拓者「なあ、エスパーは予知能力があるんだろう」

エスパー「うん。予言者さんほどじゃないけど」

開拓者「俺の弟子が戦闘大会で戦う相手について予知してくれないか?」

エスパー「いいけど、負ける姿が見えちゃうかもしれないよ」

開拓者「誰と戦うかだけ分かればいい。もしくは強敵がどんな戦い方をするのか、弱点は何かが分かればなお良い」

エスパー「そこまで細かく分かるとは限らないけれど」

開拓者「構わん」

エスパー「代金はこれくらいでどう?」スッ

開拓者「……高いな!」


1.準決勝の相手について
2.決勝の相手について
3.隊長の情報
4.魔物ハンターの情報
5.達人の情報
6.家政婦の情報
7.魔導士の情報

↓1、2選択
665 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/25(火) 01:23:20.41 ID:LzCW3Ckro
4
666 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/25(火) 01:40:31.80 ID:yfd19vHno
2
667 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/25(火) 01:51:37.45 ID:rNyH+utzo
エスパー「見える……見える……」

エスパー「決勝戦の様子が見える……」

開拓者「おおっ! 弟子がそこにいるか!?」

エスパー「それは見えない……」

エスパー「剣を持った男の人が見える……」

開拓者「相手は剣士か」

エスパー「魔法を防ぐ装備品を自慢しているのが見える……」

エスパー「ブーツも自慢しているのが見える……」

開拓者「なんて自慢気なんだ」

エスパー「軍楽隊の演奏が見える……」

エスパー「王様の姿も見える……」

開拓者「もういいぞ」

エスパー「いいの?」

開拓者「誰のことか分かったからな。次は決勝以外の情報を教えてくれ」
668 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/25(火) 01:52:04.81 ID:rNyH+utzo
エスパー「見える……見える……」

エスパー「不細工なおじさんが見える……」

開拓者「弟子と戦っているのか?」

エスパー「それは見えない……」

エスパー「戦ってるうちに、ますます不細工になっているのが見える……」

開拓者「殴られて顔が変形している……?」

エスパー「おじさんが光ってるのが見える……」

エスパー「周りの人が喜んでるのが見える……」

開拓者「不細工なおじさんが光ってなぜ喜ぶんだ」

開拓者「まさか適当なこと言ってないだろうな」

エスパー「人の形の何かが見える……」

エスパー「大きなドラゴンと、大きな鳥と、空間を操れそうな生き物が見える……」

開拓者「おい、もうやめていいぞ」

エスパー「うん……私も意味がわからなかったよ」
669 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/25(火) 01:54:29.07 ID:rNyH+utzo
弟子「どこ行ってたんだ?」

開拓者「エスパーに戦闘大会のことを予知してもらったが、あまり役に立たなかった」

開拓者「決勝の相手は分かったが、対策を打てる相手じゃなかったな。とにかく鍛えるぞ」


安価↓1、2、3 特訓内容を指示します(上げる能力を直接指定してもOK)
670 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/25(火) 02:03:27.78 ID:MUFaMRIio
気功弾(身体でも槍からでも飛ばせる)
671 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/25(火) 02:06:34.78 ID:MUFaMRIio
槍術
672 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/25(火) 02:12:02.72 ID:lIkDmqyMO
ドラゴンをテイム
673 : ◆CpUz7d.S3o [saga sage]:2020/08/25(火) 02:50:10.32 ID:rNyH+utzo
同じ人が2つ書き込んでいるので>>670の方だけ採用
あと1つ

安価↓1
674 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/25(火) 03:46:38.90 ID:+vZJBWKH0
時間停止
675 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/28(金) 00:29:44.31 ID:q2vbU3s6o
開拓者と弟子が出会ってから2か月、修行の仕上げとして選んだ場所は……魔界林。

開拓者「何度も来ていい場所ではないとは思うが、ここより修行に適した場所も無いだろうからな」

弟子「どういう攻撃を仕掛けてくるのか分からない変な生き物だらけだ」

最後の一週間、弟子は魔界林に住み、寝る間も惜しんで魔物と戦った。

時々、開拓者も様子を見に来た。


弟子「旨そうな弁当だなー。師匠が作ったのか?」

開拓者「いや、これは……知人が作ったんだ」

弟子「一緒に住んでる女の人か」

開拓者「おい、心は読むなと言っただろう!」

弟子「あっ、そうだった。悪い悪い」


そして、一週間はあっという間に過ぎ去った。

開拓者「仕上がったか?」

弟子「バッチリだ!」

開拓者「すまんな。最終的に、遠距離攻撃などの課題について的確な指示をできなかった」

弟子「大丈夫。答えには自力でたどり着いたさ」

弟子「まだ実戦で上手く使いこなせるかどうかは微妙なところだけど」

開拓者「奥の手は極力使うんじゃないぞ」

弟子「分かってるよ。オレもあまり使いたくない技だしな」
676 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/28(金) 00:30:51.07 ID:q2vbU3s6o
●スキル
気功弾……自らの気をエネルギー弾にして放つ奥の手。強力だが多用すると危険。
時間停止魔法……独自に習得した魔法。止められる時間は1秒にも満たないが、近接戦闘においてコンマ数秒の差は極めて大きい。

●仲間
(ドラゴン)……詳細未確定。

●ステータス
攻撃力Lv.5
耐久力Lv.5
UP! リーチLv.3〜6
UP! スピードLv.3〜7


〜〜〜〜〜〜〜〜


超能力者は不意を突かれた。

突然、バリアが割れ、見えない力で上半身を強打されたのだ。

超能力者「……ッ!?」ドサッ

超能力者(この激痛! 骨がいったか……!?)


使者「おおっと!? 万事休すかに思えた気功槍術家、謎の攻撃で一矢報いたか!?」

代理人「気功を使ったんだと思うが、一回戦では見せていない技だな」


開拓者「あいつは何をしたんだ?」

老師「これは良くない……」

開拓者「来ていたのか」

老師「気功弾は、体内の気を放出して飛ばす危険な技です」

老師「本来、気功とは気の流れを操るのみ……気の量は減りません」

老師「外に気を放出するということは、自傷に他なりません」

開拓者「使うたびに体力が減る技か……。しかし出す量を調節すればそこまで危険ではないんじゃないか?」

老師「あの威力を生み出すには相当な量の気を失います」

老師「あのまま気功弾を使い続ければ、衰弱し、死に至ることでしょう……」

開拓者「うむ、それはまずい……か?」

開拓者「死んでしまっても蘇生できるから問題ないと思うが」

老師「そうですか……」

開拓者「弟子は、死に物狂いで勝利を掴もうとしているんだ。それを止めるわけにはいかない」
677 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/28(金) 00:32:13.39 ID:q2vbU3s6o
まったく油断はしていなかった。

だが念動力と同じく、気功弾も目に見えない攻撃である。

しかもほとんど予備動作が無い。射線を見抜くか思考を読まなければ回避は困難だった。


超能力者「そ、そんな力を隠していたのか……っ!!」

弟子「付け焼刃でも、ぶつけるしかない……!!」

弟子「これが、オレの力の全てだ!!」

二発目。

超能力者は飛んで逃げようとするが、あえなく撃ち落とされる。

しかし同時に弟子も膝をつく。

弟子(やべえ、気を失いかけた……!)

超能力者の頭部からは血が流れている。

バリアが無ければ彼はもろい。

それでも、強靭な精神力で耐え抜く。

超能力者(相手も、限界だ……! まだ、俺は負けない……!)

王国トップ5の誇りを守るため、彼は勝利を諦めない。


超能力者にも、見えない弾で撃たれたことだけは理解できていた。

闘技場はとても広い。

距離を取って旋回すれば、当てにくいだろうとすぐに予測できた。

超能力者(頭が痛い……。あんまり高く飛ぶといざという時危ないかもな……)

弟子は狙い撃たず、標的へと走る。

確実に当てなければいたずらに自分の体力を削るだけだ。

超能力者(真後ろへのテレポートだ……回転している間に移動すれば逃げ切れる……!)

三発目。

背後へのテレポートを読み取っても、弟子は振り向かない。

後ろに蹴り上げ、かかとから気功弾を撃つ。

弟子(この技は、体のどこでも撃てる……!!)


ここで弟子の記憶は途切れる―――。
678 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/28(金) 00:33:20.06 ID:q2vbU3s6o
弟子「あれ……?」

弟子「ここはどこだ? 超能力者はどこに行った?」

開拓者「お前が勝利した」

弟子「勝ったのか? 覚えてない……」

写真家「意識が戻らなくて、医療班が少しだけ時間を戻したんですよ」

医療班「症状としては、栄養失調もしくは過労に近いものでした。後遺症はおそらくありません」

開拓者「どうやら、大量のエネルギーを消費して力の塊を撃ち出す技らしいな」

開拓者「それを結局5回もやったんだ。疲れ果てて動けなくなるのが自然だ」

弟子「次の試合に間に合うのか……?」

医療班「回復が間に合わなければ休憩時間も設けますのでご心配なく」

医療班「王様も観客の皆様も、万全の状態での試合を希望していますから」

騎士「おい、次の試合が始まるぞ。見なくていいのか?」

開拓者「ほう。治療室にも中継映像があるのか。ありがたいな」
679 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/28(金) 01:35:20.61 ID:q2vbU3s6o
3試合目 魔物ハンター(湾岸要塞) VS 達人(砂漠のカジノシティ)


輪郭の不自然な男は、黒いユニコーンにまたがって現れた。

弟子「あの馬は立役者が乗ってきた馬だよな?」

写真家「立役者さんの馬はこの写真。こう並べると全然違うんですよ」

騎士「あいつは一回戦でもあの不気味な馬に乗ってきた」

開拓者「黒いユニコーン? どこかで見たな」

開拓者「持っている武器も見覚えがあるような気がする……」


魔物学者「皆さまに世にも珍しい本物の魔物をお見せしましょう」

ブレイン「この私を見世物にするか」

ブレイン「ふむ、魔界では珍しい人間もこれほど大量に集まるとありがたみが無いものであるな」

魔物学者「まったく危険はございません。この膜に包まれた脳みそのような魔物は、頭がいいだけでとてもひ弱な魔物です」

ブレイン「なるほど、確かに私は虚弱な魔物だ。しかしあなどるな。私の知性は人間を遥かに上回っている」


開拓者「思い出したぞ!」

開拓者「黒ユニコーンも、手に持っている武器に見えるものも、魔界の魔物だ!」

写真家「え? どこで知ったんですか?」

騎士「魔界行ったことあんのか」

開拓者「いや……湾岸要塞の研究所で見たんだ」

開拓者(危ない。これは一般人に話してはいけないことだった)

開拓者(知られるわけにいかん……俺が魔界で数多くの魔物たちを生み出してしまったことを!)


※魔界開拓の様子は、http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1477723880/
680 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/28(金) 01:36:56.59 ID:q2vbU3s6o
砂漠のカジノシティの宣伝映像は、富裕層をターゲットにしたラグジュアリーな施設とサービスの紹介だった。

ナレーション「私達の町が誇る屈強な武道家たちがあるゆる危険からゲストを守ります」

映像が終了。

使者「その武道家の頂点に君臨するのがこの男。達人だ!!」

使者「対するは、まるで魔物のような、おっと失礼。恐ろしい魔物を捕らえる男。魔物ハンター!!」

使者「一回戦ではありえない頑丈さを見せた魔物ハンターは、達人の拳にも耐えることができるのか!?」


審判「試合開始!」

合図とともに達人は距離を詰める。魔物ハンターも接近戦に応じるようだ。


写真家「変なパンチしてますね。調理器具が冷めてるかどうか確かめるときみたいにつっついてる」

騎士「正解だ。あの野郎の体は触れると火傷するくらい熱い」

開拓者「あの動き、図書の町のクイズ王に近いな」

弟子「ずっとツッコミたかったけど、なんでクイズ王が強いんだよ」

開拓者「戦闘に関連する本を大量に読み、その内容のすべてを会得しているらしい」

開拓者「そして優れた思考力で相手の先を読み、神経が集まっている部位や関節の隙間を早押しすることで、効率的に敵の戦力を削ぐ、と聞いた」

写真家「今、達人も同じことをしてるってことですか?」

開拓者「そうだな。他の町の格闘家の戦い方も勉強していたようだ」


達人は指の先で突く、いわゆる貫手で魔物ハンターの急所を破壊する。

触る時間が短く回数が少なければ、火傷の対策になると考えたのだ。

しかし幾度突こうとも、竹槍戦士が戦った際と同様に体表面がへこむだけ。

不細工な顔と体型がますます不細工になっていく。
681 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/28(金) 01:38:57.70 ID:q2vbU3s6o
魔物ハンターも武器を振り回してはいるが、雑な攻撃が達人に当たることはない。

達人(急所が存在しないのか?)

達人(ならば、威力を上げてみよう)

達人は突如、身をかがめると、地面に手を付いて蹴り上げた。

ぐらつく魔物ハンター。

達人は続けざまに、一歩分の助走をつけ、右足で踏み切って回転。

その勢いのまま、顔面にかかとを叩きつける。


写真家「何あのアクロバットな技! 超カッコいい!」

開拓者「跳び蹴りと、回し蹴りと、かかと落としか?」

弟子「あの吹き飛び方だと、気功も使ってると思う」

開拓者「蹴り技の無い柔道と相撲以外の、砂漠の町で学んだすべての技術を融合させているのか」

騎士「他にもっといい蹴り方があんだろ」

弟子「あれは足の裏で蹴ってるんだ」

開拓者「ああ。足の裏は皮膚が厚い。高熱を気にせず攻撃ができる」


魔物ハンターの顔面が完全に陥没していた。

しかしそれでも倒れない。痛がる様子も見られない。

使者「これは一体どうなっているのか!?」

代理人「あれだけされて血が一滴も出てないのもおかしいな」


達人(この男、人外か……!)

覚悟を決め、達人は拳を握りしめ走る。

目がつぶれているはずの魔物ハンターは正確に達人へと武器を振るが、当然のように払いのけられた。

達人「覇ァッ!!」ゴウッ!

鍛え研ぎ澄まされた剛拳が、魔物ハンターの腹部を貫き、風穴を空けた。
682 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/28(金) 01:41:21.79 ID:q2vbU3s6o
死んだ。

観客の誰もがそう思った、次の瞬間。

魔物ハンターの傷口が塞がり、達人の腕を拘束する。

達人「……ッ!!」

融けた金属に手を突っ込んだかのような、熱と痛み。

達人は憤怒の形相で、自身の腕と融合した男を何度も地面に叩きつける。

ようやく拘束が解除されたとき、達人の右腕は真っ黒に焼け焦げていた。

だが会場の視線はその腕には向いていない。


パシャッ ジー

写真家「な、なんですか、あの光の塊は。思わず撮っちゃいました」

騎士「……あれが本当の姿か」

流動し発光する不定形の魔物。

開拓者(見たことあるような気がする)


光の塊はリング状に変形し、宙に浮かんだ。

達人「何者だ、貴様は……!!」

幻精霊「キャハハ」

光の塊はさらに光量を増していき……

キラッ

まばゆい爆発は、観客席からの視界をすべて塞いでしまう。


戦術魔導士「驚いた……。私に匹敵する魔法使いじゃないか」
683 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/28(金) 01:42:04.77 ID:q2vbU3s6o
達人「がはっ……!」

幻精霊「あれれ?」


使者「な、なんと達人、生きていたー!!」


騎士「はあ!? あんなの俺の爺さんでも防げるかどうかってところだぞ!?」

弟子「気で体の表面に膜を張ったのか? 映像だけじゃ分からないな……」

開拓者(間違いない。あいつは幻精霊。魔界の魔王城で遭遇した上級魔物だ)


達人「魔法で我は倒せぬぞ、魔物!」

幻精霊「上を見てー」

達人「……!?」


弟子「でもなんで戦わないんだ? まだ左手と脚は残っているのに」

開拓者「上を見上げているな……。何も無いように見えるが……」

写真家「……えっ」


轟音と地響きが闘技場の外まで伝わった。

達人が立っていた場所にあったのは、巨大な拳の形をした何か。

前腕の部分を含めた全長は塔のように高く、闘技場の最上階を超えている。

金属のように見えるそれが空から落下して、達人を物理的に押しつぶしたのだ。

現れた瞬間は誰も目撃していない。

使者「勝者……湾岸要塞!! ……でいいんでしょうか?」
684 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/28(金) 01:42:56.06 ID:q2vbU3s6o
光の塊が巨大な拳に触れると、拳も光に変わり、塊へと吸い込まれていった。

幻精霊「回収ー」

グネグネ

魔物ハンター「……」

ざわざわ

観客A「何よあれ!?」

観客B「魔物だろ! 絶対に魔物だろ!!」


王国兵「開拓者さん。使者さんがお呼びです」

開拓者「ああ、そんな気はしていた」

弟子「……行っちまった」

写真家「やっぱりあの人何か知ってますよね?」

騎士「魔界に行ったことあるんだろ」

弟子(魔界林をスムーズに案内してたってことは、そういうことなんだろうな……)
685 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/28(金) 01:47:14.40 ID:q2vbU3s6o
1か月前、城塞の都で船員と再会し、共同生活の準備のために開拓事務所に一旦戻った時のこと。

使者「どうも」

開拓者「うおっ!? なぜここで待ち構えているんだ」

開拓者「もしや、クビの件、考え直してくれたのか?」

使者「開拓者さん」

開拓者「どうした。新たな仕事か?」

使者「魔王軍と名乗る魔物の集団が王国へ攻撃を始めました」

開拓者「ぶっ!?」

ひょんなことから魔界の開拓を強いられた開拓者は帰還後、自分が魔物を強化したという点を伏せて、国王と使者に報告していた。

つまり開拓者は重要参考人である。

使者「あなたにはこの一件の責任を取っていただきます」

開拓者「俺は事故の被害者だぞ」

使者「関係者ではありますよね?」

使者「責任を取ると言っても刑罰ではありません。あなたには対策会議の一員に加わっていただきます」

開拓者「なるほど……それならまあいい」

開拓者「しかし、ますます忙しくなるな……」



船員「開拓者さん、仕事が忙しいのに王都にも寄ってるって、何しに行ってるんだ?」

開拓者「……まあ、元王国お抱えの開拓者として、いろいろと事後処理があるんだ」

開拓者(他の仕事と違って他人に話せない……!)
686 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/28(金) 01:48:15.42 ID:q2vbU3s6o
そして現在。

開拓者「あの魔物は幻精霊と呼ばれていた」

開拓者「知っているのはそれだけだ」

使者「十分です。念のため呼びましたが本当に知ってたとは思いませんでした」

開拓者「まさか戦闘大会に潜入されるとはな」

使者「何が目的なんでしょうか? こちらの最高戦力がどの程度のものか偵察するだけなら、観客席に潜むはずですからね」

開拓者(なんとなく察しはつくが、黙っておこう)

使者「このままでは魔王軍の存在が王国中に知れ渡ってしまいます」

開拓者「今まで国民には無秩序な魔物の群れと認識されていたんだったな」

使者「どうにか捕獲できればいいんですが……」

開拓者「今のところ、一般人に危害を加える様子はない」

開拓者「試合で無力化もしくは死亡させ、蘇生の際に捕獲すれば騒ぎを起こさずに済むだろう」

使者「……あれに、誰か勝てるんですか?」

開拓者「分からん……」
687 : ◆CpUz7d.S3o [saga]:2020/08/28(金) 01:49:25.99 ID:q2vbU3s6o
家政婦「先生より強い魔法使い……はぁ、どうしよう」

家政婦「あっ、開拓者さん。あたし、どうすれば……」

開拓者「だから俺に聞くなよ」

開拓者「まあ……あのばあさんが相手じゃ落ち込むのも分からんでもない」


1.宣伝が終わったらすぐに降参すればいい
2.負けるにしてもやるだけやってこい

↓1選択
688 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/28(金) 03:39:25.02 ID:lZsp6RzDO
2
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