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高森藍子が一人前の水先案内人を目指すシリーズ【ARIA×モバマス】
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1 :
◆jsQIWWnULI
:2020/08/08(土) 18:22:26.85 ID:b+VIQ/E60
いちいちスレを新しくするなと言われたので、今度からここで書きます。
以前に書いたものも、すべてここにのせます。
ARIAの新しい映画は2021年の春に延期になってしまいましたが、オレンジぷらねっとが中心の話らしいので楽しみです。
よろしくお願いします。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1596878546
2 :
◆jsQIWWnULI
:2020/08/08(土) 18:23:20.41 ID:b+VIQ/E60
高森藍子「目指せ!水先案内人!」
『本日は、太陽系船宙社東京=ネオ・ヴェネツィア便をご利用いただき、まことにありがとうございます』
『当機はまもなく、惑星アクアの大気圏に突入します』
前略
今、ネオ・ヴェネツィア行きの船の中で、このメールを書いています。
初めての体験ではないらしいのですが、どうやら忘れてしまっているようで、まるで初めての体験をしているみたいな気分でした。そして、宇宙に飛び出すということに興奮して、眠れませんでした。
宇宙を揺蕩う中、写真を何枚か撮ったので、添付しておきますね。
もうすぐ、新天地に着きます。
『かつて火星と呼ばれていたこの惑星が、惑星地球化改造されてからはや150年。極冠部の氷の予想以上の融解で、地表の9割以上が海に覆われ今日では水の星として親しまれています』
『当機は間もなく、目的地ネオヴェネツィア上空に達します』
『21世紀後半まで地球のイタリアに存在していた水の街。ヴェネツィアをベースに造られた、水と共に生きる港町でございます』
ひと段落したら、また書きますね。
追伸
心配しないでくださいね。私は元気です、いつでも。だって、ずっと憧れだった夢の、スタート地点に立てるのですから。
地球暦2042年4月2日 高森藍子
「なります。『水先案内人』!」
私は書き終えると、そう小さく呟いた。そして呟いた後、急に恥ずかしくなって、隣の人に聞こえていないかこっそり確認。隣のおじさんは、新聞を読んでいる。私の声には気づいていなさそうだった。
『ご搭乗の皆様にお知らせします』
『本船は、ただ今電離層を抜けました』
『到着までしばしの間……』
『眼下の景色をお楽しみください』
3 :
◆jsQIWWnULI
:2020/08/08(土) 18:28:46.48 ID:b+VIQ/E60
アナウンスの女性がそう言い終わると同時に、船内の底からグオンと音がした。そして、床が開いていく。私はこの時初めて床が透明だったことを知る。そして、目に飛び込んできたのは眩いほどの青。ネオ・アドリア海だった。
「うわぁ……」
私はため息にも似た感嘆を漏らしながら、座席にかけてあったカメラへと無意識に手を伸ばす。そして、カメラを手探りで探すと、ひと時も目を話したくない光景に意識の半分以上を持っていかれながら、何とか胸元にまでカメラを手繰り寄せる。そして、少しだけ震えた手でカメラを持ち上げ、ファインダーをのぞく。
パシャリ。
私の言葉では言い表せないほどに素敵な海の青いきらめきが、カメラを通して私の目を優しく撫でる。私は二枚目を撮ろうとして、でもやっぱり止めてしまった。今はきっと、この光景を目に、脳に、なによりも胸に焼き付けておいた方がいいと、そう感じたから……
『水の惑星”AQUA”へようこそ』
4 :
◆jsQIWWnULI
:2020/08/08(土) 18:33:36.66 ID:b+VIQ/E60
『マルコポーロ国際宇宙港へようこそ』
『ネオ・ヴェネツィアに観光のお客様は三番窓口を……』
宇宙船から降機して、二番ゲートを通った私は、多くの人で溢れているロビーを抜け出し、出口へと駆ける。
「……スゥ……」
そして、出口から出てまず最初に思いっきり息を吸い込んだ。鼻腔を通って身体全身に巡るのは、マンホームでは嗅げない匂い。なんだかとっても懐かしい気分にさせてくれる、海の匂いを胸いっぱいにためる。
「……ぷはぁっ!」
そして、吐いた。これだけでもう、ネオ・ヴェネツィアの一員になれた気がして、私は無性に嬉しくなった。
目の前にはすぐ海が広がっていて、私はその生みの近くへと歩いた。潮風が、少しウェーブがかった私の髪の毛を、優しく持ち上げる。
「んん〜。気持ちいい〜!」
長旅で固まった身体を伸ばしながら、もう一度大きく深呼吸する。私の故郷は確かにマンホームだけれど、たしかになぜか懐かしい匂いが私を包んで離さない。
「ここが、水の都……」
私は遠くにある太陽を薄目でみながら、そう呟いた。
「ばいちゃい!」
「うわわわ!?」
私が薄目で太陽をみていると、謎の声と一緒に湿ったものが私の腕を撫ぜた。
「ぶいにゅ」
首を下ろしてみてみると、私の目の前には巨大な猫さんが立っていた(座っていた?)。
「火星猫、初めて見たかも……」
私はリュックサックの横にかけてあるカメラを取り出しながら、その猫と同じ目線になるようにしゃがんだ。そして、私がその猫さんに向かってカメラを向けると、
「ばいにゃ!」
と言って、その猫はポーズを取り始めた。触ったら絶対に気持ちいいであろう、もちもちのお腹を惜しげもなく、自慢げに突き出しながら、次々とポーズをとる猫。私はまるで専門のカメラマンのように、次々と写真を撮っていく。一定のリズムで切られるシャッターの音にだんだん楽しくなっていって、次第にその猫さんとの撮影会に熱が入っていった。
「良いですよ〜、猫さん。次、もう少しひねりを加えたポーズをお願いします」
「ぶいにゅ!」
猫さんは私の言葉通りにひねりを加えたポーズをとる。そして、すぐさまそれを私が撮る。パシャパシャと連続で撮影して、私たちは撮影会を続ける。
「あ、今のいい表情ですね〜、もう一枚!」
「ぷいぷい!」
「下からのアングルも素敵ですよ〜」
「ぶいにゃ!」
私とその猫さんがいつまでも撮影会をしていると、後ろから声が聞こえてきた。
「何してるんですか、アリア社長」
「にゅ?」
「はわっ?」
私が振り向くと、そこには一人の女性が立っていた。その女性は、ウンディーネの制服に身を包んでおり、両腕を腰に当てている。
「早めに仕事が終わったから、気になって様子を見に来てみれば……アリア社長?」
「……にゅ?」
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