【シャニマス】P「よし、楽しく……」- Straylight編- 【安価】

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324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/09(水) 19:59:30.87 ID:VWil6+IjO
>>1です。

>>301>>302ですが、連投になってることに気づきました。

>>319では、細かいことですがわかりにくいと感じたので
P(立ち上がって手を差し出してきた愛依と握手をしようとした瞬間――愛依に引っ張られ……)
→P(立ち上がって、手を差し出してきた愛依と握手をしようとした瞬間――愛依に引っ張られ……)
とします。

取り急ぎ訂正をば。
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/17(木) 04:12:12.00 ID:kjqzZC7f0
2週間後。

〜事務所〜

P(第1回予選まで2週間とちょっとという時期になった)

P(1人でユニットを背負うことになった愛依の負担は……きっと、俺が想像する以上に大きいだろう)

P(楽天的で大雑把が愛依のアイデンティティみたいなところはあるが、一方で思慮深いというか、周りをよく見ている側面もあると思う)

P(この機会にあまり思いつめないといいんだが……)

はづき「ぷ、プロデューサーさ〜ん」

P「……あ、はづきさん」

はづき「お疲れ様です〜」

P「ええ、お疲れ様です」

P「あの……何かありましたか?」

はづき「それが〜……」


P「えっ、1週間子どもを預かってくれ……ですか?」

P「はづきさんいつの間に……」

はづき「わ、私じゃないですよ〜」

はづき「社長に近い人からどうしてもと頼まれたんです」

はづき「283プロで信頼できる人間に任せたいとかなんとかって」

P「その、はづきさんが預かるというのはダメなんですか?」

はづき「私はだめですよ〜」

はづき「大家族のために生活費を稼ぐのでアルバイトばかりですし、面倒を見るほどの余裕はちょっと……」

はづき「せっかく信頼されてるんですから、ちゃんと見ていてくれる人じゃないといけないんです」

P「それで俺ですか」

P「確かに仕事の掛け持ちとかはないからこの事務所で働く以外のことと言えばアイドルの仕事やレッスンについていくくらいですが……」

P「仕事の間はさすがに面倒見れないと思いますよ」

はづき「あ、それは大丈夫です〜」

P「?」

はづき「プロデューサーさんはまだ有給休暇を取ってないので、ちょうどいいかと」

P「俺の有給は子どものお守りで消化されるのか……」

はづき「すごく大人しくて全く手のかからない子って聞きましたよ〜」

P「それ、他人に預けなくても自分でどうにかなっちゃうタイプの子なんじゃないですか……?」

はづき「それでも独りにしておけないっていう親心なんじゃないですかね〜」

P「は、はぁ……」

はづき「ここだけの話、引き受ければ色をつけてもらえるそうですよ」ボソッ

P「……」

はづき ニコニコ

P「わ、わかりましたよ。別にそこまで嫌というわけでもないですし、お金ももらえて信頼も得られるならやりますって」

はづき「助かります〜! じゃあ、そういう話で進めますね」

P「は、はい」

P(引き受けてしまった……)
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/17(木) 04:37:59.11 ID:n91JNfeYO
翌日。

〜事務所〜

P「おはようございます」

はづき「あ、プロデューサーさん。おはようございます」

はづき「今日はお休みの日なのに、スーツで着たんですね〜」

P「はい……なんだか、いつもの癖で」

P「電車に乗って窓に映った自分を見て気づきました」

はづき「そんなお疲れなプロデューサーさんも、あそこにいる天使さんなら癒してくれますよ〜」

P「天使……?」

P(はづきさんに言われて視線をやった先には――)

「……」

P(――確かに、天使と形容されてもおかしくないと思えるような少女がいた)

P(肩までの長さの黒髪に色白の肌、顔立ちは整っていて――そこにある2つ赤い瞳はまだこちらに気づいていないように思えた)

P(白のワンピースに身を包んだおしとやかな女の子だ)

P(はづきさんは天使と言ったけど、その見た目はどちらかといえば和風かもしれない)

P(つい、その少女をまじまじと見てしまった)

はづき「どうかしましたか? もしかして、スカウトしたくなったとか」

P「あ、はは……」

はづき「大人びていますけど、小学校高学年にならないくらいなので、アイドルのプロデューサー目線では将来に期待してあげてください」

はづき「とりあえず、今はお仕事の話はナシです。そろそろ紹介しますね〜」

P「は、はい」

はづき スタスタ

P スタスタ

「……」

はづき「ふふっ、ちょっといいですか〜?」

「……?」

はづき「こちらが、今日から一週間面倒を見てくれるPさんです。普段はこの事務所でアイドルのプロデュースをしている人なんですよ〜」

「……」

P「初対面でいきなりだとは思うけど、よろしく……ね」

「……」

はづき「あはは……それで、この子は――」

プルルルル

はづき「――って、お仕事の電話ですね……行ってきます〜」

P「俺が出ましょうか?」

はづき「それじゃあ意味がないですよ〜。とりあえずプロデューサーさんはこの子と一緒にいてあげてください」

はづき「今はそれがお仕事だと思えば、お仕事人間のプロデューサーさんもわかってくれますかね〜」

P「わ、わかりました……」

はづき タタタ

P「……」

「……」

P「……」

「……」

P(どうすればいいんだ……!)
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/17(木) 04:58:39.10 ID:n91JNfeYO
数十分後。

P(あれから沈黙が続いている……)

「……」

P(参ったな……)

ガチャ

P(誰か帰ってきたのか?)

愛依「プロデューサーたっだいまー!」

P「お、愛依か……」

P(そういえば、今日は個人レッスンだったか)

P(……大会の予選も近いしな)

愛依「ど、どしたん? なんか疲れてる系?」

P「いや、なんていうか、な……」

愛依「?」

愛依「ね、プロデューサー」ボソッ

P「なんだ?」

愛依「前にいる子って、プロデューサーがスカウトしてきたん?」ヒソヒソ

P「あ、そういうことか……愛依にはまだ話してなかったよな」ヒソヒソ

P(一旦その場から離れて、愛依に事の経緯を説明した)


愛依「そっかー、プロデューサー、あの子のお守り任されてんだね」

P「そうなんだ。ただ、な……」

愛依「まだあの子と仲良くなれてない的なやつっしょ?」

P「情けない話だが、そうなんだ」

P「どう接していいかもわからなくてな」

P「はづきさんから事前に聞いてたのは、“すごく大人しくて全く手のかからない子”ってことだったんだけど」

P「無邪気に接してくれる子どもとは全然違うし、どうしたものかわからなくてお手上げでさ……」

愛依「なるほどねー。ちょっとムズいカンジかぁー……」

愛依「……」

愛依「プロデューサーは1週間あの子につきっきりで面倒見るんだよね?」

P「あ、ああ」

愛依「じゃ……その」

愛依「それさ、……うちとやんない?」

P「愛依と?」

愛依「う、うちならさ、下の子の面倒見ることあるし、世話するの好きだし……」

愛依「丁度イイ的な? って思ったんだけど……」

愛依「ど、どう?」

P「その提案はありがたいし、できれば愛依と一緒にあの子と向き合ってあげられればと思うんだけど」

P「レッスンとか、仕事――は今週はないのか――まあ、そういった予定もあるだろう」

愛依「レッスンの日なら、あの子と事務所に来ればいいんじゃね?」

愛依「オフの日はさー、それこそ3人で出かけたりして……良くねって思うんだけど。プロデューサーさえ迷惑じゃなきゃね」

P(愛依は大会を目前に控えてストレスを抱えているかもしれない。それなら、そういった形であれ発散させてやりたいと思う)

P「……そうだな。それじゃあ、お願いするよ。一緒にあの子の面倒を見てあげよう」

愛依「! う、うん!!」
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/17(木) 04:59:28.59 ID:n91JNfeYO
とりあえずここまで。
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/17(木) 07:30:56.99 ID:RInkiaLxo
おつー
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/17(木) 23:37:39.21 ID:ybYTVEfUO
愛依「やば……っ、なんか、キンチョーしてきたんですけど……!」

P「いやいや、ライブの前じゃないんだから……」

P「愛依が頼りなんだ。さ、ほら」

愛依「それ余計にプレッシャーだから!」

愛依「プロデューサー……もしかしてわざとやってる?」

P「……そんなことないぞ」

愛依「え〜? ホントかなー」

愛依「って、あははっ。なんか、キンチョーしなくなってきたかも」

愛依「……」

P「どうかしたか?」

愛依「ううん。プロデューサーやっぱすごいわって思っただけ」

P「別に何もしてないんだが……」

愛依「っし、じゃ、行こっか」


「……」

愛依「……どもども〜!」

P「待て待て、待て。芸人のノリだろ、それは」

P「まだ緊張してるんじゃないのか?」

愛依「ち、違うし! そういうんじゃないから!」

「……っ」

P「あ……」

愛依「ごめんね、驚かせちゃったカンジ?」

P「いや、この子……」

愛依「?」

「……」

愛依「笑って……る?」

「……」

愛依「まだ口がニコってしてるじゃん!」

愛依「〜〜っ、……かわいすぎか!」

P「ははっ、愛依が緊張したおかげだな」

愛依「も〜、またそんなこと言って〜」

愛依「あ、そだ。自己紹介? しないとね」

愛依「うちは和泉愛依ね。こっちはうちのプロデューサー」

P「さ、さっきぶりだけど、よろしく」

愛依「名前はなんていうん〜?」

「……」

P「……」

愛依「あ〜……、ま、いっか!」

愛依「しばらくプロデューサーに預けられるって聞いたけど」

愛依「うちも一緒に面倒見てあげたいな〜って思ってて」

愛依「ダメ……かな?」

「……」フルフル

愛依「よかった〜〜。なんかあったらさ、エンリョなく聞いてくれちゃっていいから! お姉さんのこと、頼ってね〜」
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/18(金) 00:02:43.64 ID:GhO3OuwaO
P「……そういえば、愛依」

愛依「ん〜? どしたん?」

P「どうだ、練習の調子は」

愛依「!」

愛依「……」

愛依「順調、だけど」

P「……そうか」

愛依「……」

愛依「プロデューサー」

愛依「やっぱ、もうちょっと練習したい」

愛依「自主トレしてくるわ」

P「わかった。……無理はしないでくれ」

愛依「ダイジョーブだって! うち、こんなんだから? プロデューサーに心配されなくてもなんとかなるっしょ〜って思ってるし」

P「なら、いいんだが……」

愛依「うん、平気だから。いまんとこ、ね」

愛依「ヤバくなったらちゃんと言うから、いまは――」

愛依「――うちを信じて」

P「……!」

P「ああ、そうだよな。プロデューサーの俺がアイドルを信じてやれなくてどうするって話だよな」

P「よし、行ってこい!」

愛依「うん! もうちっと頑張ってくるわ!」

愛依「そだ。この子にばいばいって言おっと」

「……?」

愛依「うちさ、いま大会の練習中なんだよね」

愛依「お姉さんちょっとお外で頑張ってくるから」

愛依「明日、また会おーね」ナデナデ

「……ん」

愛依「……」ニコ



P「……」


P『勝って……ストレイライトは単なるアイドルユニットを超える価値があるってことを、愛依と証明したいんだ』


愛依『うちもプロデューサーと勝ちたい気持ちでいっぱいだってわかった』


P(愛依と勝ちたいって――愛依を選んだのは俺だ)

P(それなのに、愛依のことを心配してばかりの自分がいる)

P(もしかしたら、俺は……)

P(愛依を心配するふりをして、愛依を選んだ自分を心配してしまっているんじゃないのか?)

P(それは……駄目だ。愛依に失礼だし、不誠実だ)

P「はぁ……」

「……っ」クイクイ

P「お、どうしたんだ。時計なんか指差して……って、もういい時間じゃないか!」

P「そうだな。……帰ろうか」
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/18(金) 01:47:20.73 ID:GhO3OuwaO
数日後。

愛依「あのさ、プロデューサー」

P「どうした?」

愛依「明日と明後日って、うち、オフだよね?」

P「えっと……そうだったと思うが、一応確認させてくれ」

P ポチポチ

P「……ああ。そうだな。明日明後日はオフだよ」

P「久しぶりの休みだし好きなようにしていい……と言いたいところだが」

P「2日間のうちどちらか一方は必ず休息に当ててくれ」

P「頑張ることと無理をすることは違うからさ」

愛依「うん、わかってる」

愛依「明日はちゃんとウチで休むつもり〜」

P「そうか……うん、それなら、明後日は愛依の好きなことをする日にしよう」

愛依「その……さ、明後日なんだけど」

P「?」

P「……あ、3人で出かけるって話か」

P「この前言ってたよな」

愛依「そう! それ」

愛依「友だちとどっか行っても楽しいと思うんだけどさ〜」

愛依「なんていうか……うちはプロデューサーと……」

「……」

愛依「……それと、この子」

愛依「なんかさ、いまは3人一緒がいいんだよね」

P「愛依がそうしたいなら、そうしよう」

愛依「ほんと!? ありがと、プロデューサー」

P「良い息抜きになるといいな」

愛依「うん!」

P「どこに行こうか」

愛依「どこにしよ〜」ナデナデ

「……ん」

「……」

「……」クイクイ

愛依「ん? どっか行きたいとこある?」

「……」

愛依「テレビ? あ、そっか……」

愛依「……海」

P「海に行きたいって言ってるのか?」

P「テレビを指差して……ああ、海が映ってるな」

P「海に行くってことで、いいか?」

「……」コクコク

P「ははっ、そうか」

P「じゃあ、3人で海に行こう」
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/18(金) 01:54:30.47 ID:GhO3OuwaO
とりあえずここまで。
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/18(金) 04:25:23.85 ID:7DGrgOdDO
海行かば〜
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/19(土) 17:30:37.17 ID:EIeQu2e90
意味深な少女が出てきたな
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/20(日) 02:00:33.30 ID:4hhxkMEgO
2日後。

〜某海岸付近〜

P「忘れ物はないか? 動き始めたらすぐには駐車場に戻れないから、ちゃんと確認してくれよ」

愛依「う、うちは大丈夫……」

P「?」

愛依「……あ、どう? 忘れ物、ない?」

「……」フルフル

愛依「っし。オッケーって感じ〜」

P「わかった。じゃあ、行くか」ピッ

ガチャリ

愛依「……」

P「どうしたんだ?」

P「着いてからずっとソワソワしてるが」

愛依「え? いや、なんつーかさ」

愛依「こんなイイ天気で海に来れてもうココロん中でテンションMAX的な?」

P「ははっ、そうか」

P(嬉しそうだな、愛依)

P(今は厳しい時期だけど、ここに来て正解だったのかもな)

「……」

P(この子には感謝だな)

P「叫んできたらどうだ? あんまり人いないし」

P「海辺のほうに行って、思い切りやってくればいいんじゃないか」

愛依「……うん!」

愛依「ほら、行こ!」

「あ……」

P「なかなか強引なお姉さんだな」ハハッ

愛依「もー、何言ってんの」

愛依「プロデューサーも一緒に行くに決まってんじゃん!」グイッ

P「うぉっ!?」

愛依「あっはは……」タタタ

P(愛依……)

愛依「……っとと」キュッ

「……ん」

P「急ブレーキだ」

愛依「〜〜〜〜〜〜〜っ」

愛依「海だーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

愛依「……はぁっ、ん〜〜サイコー!」

「……」ニコ

P「楽しそうな愛依を見て、この子も嬉しそうだぞ」

愛依「お! ホントじゃん! カワイイな〜もう」ムギュ

「……」ムムム

愛依「プロデューサーたちもどう? 一緒に叫んでみない?」

P「えぇ、この子はともかく、俺はいい歳だしさ……」
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/20(日) 02:13:42.13 ID:4hhxkMEgO
愛依「え〜? 疲れとかふっとんじゃうと思うんだけど」

P「……」

P(疲れ、ね……)

P「……やるか」

愛依「いいね〜、ノリ気じゃん、プロデューサー」

愛依「じゃ、3人一緒にいっちゃう系?」

P「いいんじゃないか?」

P「どうだ?」

「……」

P「あ、はは……」

愛依「まあ、とりあえずやってみるってことで」

愛依「すぅ……」

愛依「せーの……」

P ゴクリ・・・

「……」

愛依「海だーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
P「ぅ、海だぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」
「うみだー」

愛依「あっははは! プロデューサー、タイミングミスってんじゃん」

P「い、いいだろ別に……」

愛依「……」

愛依「……ねえ、今の、聞こえたカンジ?」ヒソヒソ

P「大声ではなかったが……確かに、うみだー、と」ヒソヒソ

愛依「鬼かわいくね?」ヒソヒソ

P「天使」ヒソヒソ

愛依 ナデナデ

P ナデナデ

「ん……」

愛依「よしよし」

P「ははっ」

愛依「……なんか、いいね。こういうの」

P「ああ、そうだな。愛依の言う通り、疲れが吹き飛んだようだよ」

愛依「うちが言いたいのは、その……」

P「?」

愛依「ううん。なんでもない!」

愛依「早速歩いてこ〜」
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/20(日) 02:25:42.81 ID:4hhxkMEgO
P「水着とか持ってきてないけど、本当によかったのか?」

愛依「あー、うん。大丈夫」

愛依「まあ、友だちと来たら海入ってはしゃぐってのもアリなんだけど」

愛依「今日は、別にそういうんじゃないしね」

P「愛依がそういうならいいんだが……」

P「……あ、海入りたいとかあるか?」

P「たぶん、水着買おうと思えば買えるんだよな」

P「どうだ?」

「……」フルフル

P「そういう気分じゃない、って感じかな」

P「風邪を引かせてもいけないし、まあ海には入らずのんびり過ごすのがちょうどいいって気もするのは確かだな」

愛依「そーそー。とりあえず、さ」

愛依「あそこ入ってみない?」

P「あれは……雑貨屋か? 個人経営の、こじんまりとしたところだな」

P(愛依らしくないって言ったら怒られそうだから言わないけど)

P(というか、愛依らしくないかどうかなんて、わからないんだよな)

P(俺が愛依のすべてを知ってるわけじゃないんだから)

P(例えば、そう……極度のあがり症になった原因とか)

P(黒ギャルらしくない、っていう言い方のほうが正しいかもしれない)

P「落ち着いた雰囲気だし、今日のテーマにあってるんじゃないか」

P「よし、行こうか」

愛依「それでいいカンジ〜?」

「……」コクッ

愛依「そんじゃ、決定ってことで」
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/20(日) 02:42:12.86 ID:4hhxkMEgO
〜雑貨屋店内〜

イラッシャイマセー

愛依「……」

P「……」

「……」

愛依「……」

P「……」

「……」

愛依「〜〜っ」

「……」

P「大丈夫か?」

愛依「だ、大丈夫だって!」

P(落ち着いた雰囲気が逆に愛依を落ち着かなくさせてるみたいだな……)

P「とりあえず、せっかく入ったんだし、いろいろ見ていくとしよう」

愛依「そだね……」

「……」

P キョロキョロ

P(見渡してわかったけど、割とおしゃれでもあるな)

P(アンティークっぽいものもある……特に、どう考えても無くて困らないのに買いたくなるようなものがたくさん……)

「……」

P「何か気になるものとかあるか?」

「……」

P「はは……まあ、ゆっくり見ていこうな」

「……」

P(このガラス細工……綺麗だな)

P(部屋に置いとくだけでも違うかな?)

P(……買いたくなるな、これは)

P「うーん……」

P(そういえば、愛依は何を見ているんだろう)

P「愛依――」

愛依「うわぁぁっ!?」ビクッ

P「――っと、すまん。急に後ろから声かけちまって」

愛依「え、あ、いや……別に大丈夫」
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/20(日) 03:01:22.03 ID:4hhxkMEgO
P「愛依は何見てるのかなって思ってさ」

愛依「うちが何を見てるか……」

愛依「……」

P「?」

愛依「……これ」

P「これは……リングか」

P「結構たくさんあるな。それに、可愛らしいものから綺麗なものまで多種多様だ」

愛依「ね。みんないい感じっしょ」

愛依「これとか……」

P「お、……綺麗だな」

愛依「いや〜、まあ、うちには似合わないかもしんないけどさ」

愛依「うち、こういうカンジだし」

P「そんなことないと思うぞ」

愛依「えぇ〜……そうかなぁ〜〜」

P「とりあえず、着けてみてくれ」

愛依「……ま、マジ?」

P「え? ああ」

P「そりゃあ、似合わないかどうかなんてつけてみないとわかんないだろ」ハハッ

愛依「わ、笑いゴトじゃないんですけど!」

愛依「じゃあ……はい。ほら、つけたよ」

愛依「ど、どうかな……?」

P「おお……」

P(愛依が選んだのは、シンプルながらも輝いて見えるシルバーのリングだった)

P(褐色の肌にひっそりとたたずむそれは、夜が明けたときの太陽の光のように優しく輝いていて……)

P「うん。似合ってる」

愛依「ほ、ホント?」

P「嘘ついてどうするんだよ。本心だって」

P「綺麗だよ」

愛依「そ、そっか」

愛依 キュポッ

愛依「……うん、いまはこんなとこ、みたいな?」スッ

P「戻しちゃっていいのか? 気に入ったのなら買ってあげようとも思ったんだが……」

愛依「まあ、プロデューサーに褒めてもらえたし、それでいいかな〜みたいな?」

P「そ、そうか……?」

P「まあ、愛依がそれでいいならいいんだ」

「……」

P「あ」

愛依「ご、ごめん! ほったらかしちゃって」

「……」フルフル

愛依「なんか欲しいもんとかあった?」

「……」

P「このくらいの歳の子だと、まだこういう店に欲しいものってないのかなぁ」
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/20(日) 03:16:09.80 ID:4hhxkMEgO
チリン

P「何の音だ?」

P「……というか、風?」

愛依「店員さんが空気入れ替えるので開けたみたい」

P「て、ことは……」

チリリン

P「そうか、風鈴……」

「……」

P「風情があっていいよな」

P「ちょっと見てみないか?」

「……」コクリ

愛依「いいんじゃん?」

P(夏の風物詩ではあるが……まあいつあっても不快じゃないよな)

P「風鈴もまたいろいろあるな」

チリン

「……」

P「……綺麗だなぁ」

「……」ジーッ

P(じっと見てるやつがあるみたいだな)

P「どれが好きなんだ?」

「……」ユビサシ

P「ん? あの……青いのか……?」

「……」コクッ

P「花の柄だな。……なんて花なんだろう」

P「調べてみるか……」ポチポチ

「……」

P「……お、これだな」

P「桔梗、か」

P「うん。いい色だ」

P「よし、これを買おう」

「……!」

P「気に入ってるみたいだしな。いらなくても、事務所に飾るし、いい買い物だろ?」

「……」

「……」ニコ

愛依「その風鈴買うん?」

P「ああ、この子が選んでくれたんだ」

愛依「そっか……。綺麗だね」

愛依「この子も嬉しそうだし、決まりっしょ」ナデナデ

「……ん」

P「だな。レジに持っていくか」
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/20(日) 03:33:08.29 ID:4hhxkMEgO
P「他に買うものあるか?」

愛依「ん〜……ない!」

愛依「あ、飲み物適当に3つかな。レジの横にあるやつね」

P「お前も他に欲しいものとかないか?」

「……」コクリ

P「じゃあ……すみません、この風鈴と、あとここにある飲み物で……お茶3つください」チャリン

「はい、ありがとうございます」

「ん……」ノビー

愛依「あれ、レジの上が気になるカンジ?」

愛依「結構高いもんね〜。ちょっと待ってて……っしょっと!」

「わ……」

P「おお……だっことは、結構力あるんだな。レッスンの成果か」

愛依「それもあるかもだけど〜、まあ、うち下の子の面倒もみるしね」

「……」ニコ

愛依「ほら、嬉しそうじゃん?」

P「ははっ、確かにな」

「こう若くて仲の良いご夫婦がいらっしゃると、この店の雰囲気も明るくなるというものですよ」

愛依「ふ、夫婦!?」

「違うんですか? 随分若いとは思いましたが、まあいろいろ苦労もあったのかと邪推してしまいました」

「でも……そうですね、なにより幸せそうに見えたもんですから」

愛依「も、も〜〜! マジなに言っちゃってるの〜〜」

愛依「プロデューサーも何か言って――」

P「よっ」ムギュ

「……んぶ」

P「ははっ、こういうおもちゃあるよな」

「ん……」

愛依「――何してるん?」

P「え? あ、いや、この子が頬を膨らませてたから、むぎゅっとして空気を抜いてやる遊びをだな……」

愛依「……はぁ」

愛依「あははっ、なにそれウケる!」

愛依「うちもやりた〜い」

「む……」

愛依「えいっ」ムギュ

「……んぶ」

愛依「かわいすぎか!」

「……」テレテレ

P「激しく同意」

「あの……やはり夫婦では……」

愛依「店員さんそれ以上はうちが死んじゃうから早く風鈴とお茶ちょうだい!」

「あ、はい。まいど……」

P「よし、じゃあ次行くか」

愛依「次どうしよっか〜」

「……ふふ、お元気で」
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/20(日) 03:34:05.99 ID:4hhxkMEgO
とりあえずここまで。
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/20(日) 03:36:20.09 ID:J3EKZ33So
おつ

桔梗:花言葉
「永遠の愛」、「変わらぬ愛」、「気品」、「誠実」

永遠ね……
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/21(月) 12:04:46.94 ID:s/L9AUWDO
桔梗……しゃっほーを思い出した



あと、それ千雪さん?
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/24(木) 23:42:40.06 ID:CO4IFs/NO
愛依「ん〜〜っ!」ノビー

P「ははっ。疲れたか? 愛依」

愛依「ううん、ぜんっぜん!」

愛依「レッスンで鍛えられてるかんね」

P「それは頼もしいな」

愛依「ま、こうやって誰かと出かけんのって久々だから、レッスンとかお仕事とは違う疲れ方? だけど」

愛依「なんていうか……こう、思い切り楽しんだーって、そんなカンジだから」

愛依「全然イイんだよね」

愛依「最初に買い物して、それから水族館行って、ちょっと歩いてご飯食べてさー」

P「3人でいろいろ見て回ったよな」

愛依「そーそー。その……さ」

P「?」

愛依「……っ、ほ、ほら」

愛依「うちらって、周りから見たら家族――に見えんのかなって」ゴニョゴニョ

愛依「うちがこの子のママで、プロデューサーがパパで……」ゴニョゴニョ

「……」

P「家族、か」

愛依「ちょっ……! 聞こえてたん!?」

P「え? あ、ああ……最初のほうだけ」

愛依「〜〜〜〜〜っ! まずった……」

P「何かまずいことでもあるのか?」

愛依「う、うちは別に嫌じゃないよ!?」

愛依「……うん。全然いやじゃない。むしろ、嬉しい、かも」

愛依「っ……」カァァッ

P「……そうだな。家族に見えるかもな」

愛依「!」

「……」

P「お前もそう思うか?」

「……」コクッ

P「ははっ。じゃあ、俺たちは家族……ってことでもいいのかも――なんてな」

愛依「ぷ、プロデューサー……もう」

「……」

愛依「……う、海!」

P「え?」

愛依「海の方いこ! 夕焼けキレイだし……さ。ね?」

P「本当だ……もうそんな時間帯なんだな」

P「まあ、せっかく海に来たんだし、海辺ならこの格好でもどうにかなるよな」

愛依「ほらほら、夕日すぐ沈んじゃうかもだし! 早く行こ!!」アセアセ

P「おいおい、そんな急かすなよ」ハハッ

「……」ニコ
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/25(金) 00:25:02.61 ID:ab5SzmrzO
P「ここから先は履いてるものを脱いだほうがいいぞ」

P「せっかくの砂浜だからな」

愛依「ん……っしょっと」

愛依「どう? 脱ぎ終わった?」

「ん……」コクリ

愛依「じゃ、足入れてみよーっと……」

「わ……」

愛依「砂あったか……!」

P「うん。太陽の熱なんだろうな」

P「……あ、待ってくれ2人とも」

P「何か落ちてる……足元、気をつけてな」

愛依「うん……。プロデューサー、これなんなん?」

P「……ああ」ヒョイ

P「ゴミ……じゃないな」

P「割れた瓶なら本当に危なかったけど、これは割れてないぞ」

P「コルクで栓がされてるし、中身があるみたいだ……」フキフキ

P「あ、これ……ボトルメールだ」

愛依「ぼとる……めーる?」

P「瓶の中に手紙を入れて海とか川に流すやつだよ」

P「いつか、どこかの誰かが拾って自分のメッセージを受け取ってくれるんじゃないかと、そうやって思いを馳せるんだ」

愛依「ふーん……なんか、いいね、そういうの」

P「ははっ、愛依もそう思うか?」

愛依「うん、うちにはムズカシイことはわかんないけど」

愛依「ステキ……ってやつ? って思った」

P「そうだな。ステキだ」

「……」

愛依「手紙にはなんて書いてあるんだろーね」

P「せっかく拾ったわけだし……開けても、いいんだよな」

P「素手でいけるか?」

P「っと、ふんっ……!!」

キュポ

P「……あ、開いた!」

愛依「おおっ! やるじゃん〜」

P「中の手紙は……」フリフリ

ハラリ・・・

P「……お、出てきたな。どれどれ――」ソッ

----------------------------------------------------------------------------------------
OS Version 2.8.3.2018424
[FILE : EMERGENCY]

>__________

----------------------------------------------------------------------------------------

P「――っ!?!?!?!?!?」バチィッ

愛依「ぷ、プロデューサー!?」

P「っ……てぇっ、ああぁっ……」フラフラ
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/25(金) 00:41:20.29 ID:ab5SzmrzO
愛依「大丈夫!? なんか急に痛がってたけど……」

P「あ、頭が……くっ……」ズキズキ

愛依「立てないカンジ?」

P「少し、横になれれば……」

愛依「じゃ、じゃあ……うちの膝かしたげるからさ」

愛依「これ枕にして、横になっといて」

P「すまない……」

P「誰が見てるかもわからないから、もうちょっと変装しておいてくれ……」

愛依「わ、わかった。たしかカバンにグラサンとでっかい帽子が……」ガサゴソ

「……」

P「うう……」

P「……」


30分後。

P「……ん」パチッ

愛依「あ、プロデューサー……」

愛依「目、覚めた?」

P「あ、ああ……心配させてすまなかった」

愛依「いいっていいって。そりゃ、いきなり頭痛がるからびっくりはしたけどさ〜」

P「ここって……さっきいたところよりちょっと離れてるよな」

愛依「ほら、念には念をってヤツ? ここまでくれば、意外と周りから見えなそうだったし」

P「俺、重くなかったか?」

愛依「まあ、引きずったし!」

P「……」

P「あの子は?」

愛依「遊んでるよ。砂浜んとこでね」

愛依「もう大丈夫そうなら一緒に行く?」

P「ああ、そうしよう」


「……」ガサガサ

P「ははっ、どうした、砂の中の探し物か?」

「……」フルフル

P「砂浜にはいろんなもんがあるからな」

P「流木とかあれば落書きして遊べそうなもんだけど……ないな」

P「タコノマクラとか、ビーチグラスとか、……うーん、どうだろう。ないかな」

P「……って、そうだ! さっきのボトルメールだけど」

愛依「ああ、これ?」つボトル

P「そ、そうだ」

愛依「なんかさ〜、プロデューサーがあんなカンジになっちゃうくらいだからどんな手紙なんだろって見てみたんだけど……」

愛依「なんも書いてないんだよね〜」ペラッ

P「本当だ……」

P「なんだったんだろうな。それ」

愛依「うーん、うちにもわかんない」

愛依「ま、せっかく拾ったワケだし、これも何かの縁? ってことで。とりあえずうちが持っとくよ」
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/25(金) 02:00:58.64 ID:0TvwkGhIO
「……」スック

P「もういいのか?」

「……」コクッ

P「そうか」

愛依「そだ。3人で浜辺歩いてかない?」

P「ははっ、それはいいな」

愛依「その……手、つないでさ」

愛依「プロデューサー……覚えてる?」

愛依「前にうちとショッピングモールで買い物したとき」

愛依「パパとママと、それから子どもの3人で……」

P「ああ――」


イッセーノセー
キャッキャッ

P『なんか、さ』

P『俺たちは荷物だけど、持ち方はなんとなく似てるよな』

愛依『っ! ちょ、ちょっとなに言ってんの……もう』


P(子どもが両親の間にいて、片手を父親、もう片方の手を母親に握られて、タイミングよく両親にひっぱられてブランコ遊びをしている)

P(そんな、よくある日常の中の微笑ましい光景を、俺と愛依はあの時に見たんだ)

P「――覚えてる」

P「ほら、手出してくれ」

「……?」

P「こっちを俺が持つから、反対は愛依に持ってもらうんだ」

「……」

愛依「あんとき見たのと、おんなじ……だね」

P「そう……だな」

愛依「……」

P「と、とりあえず歩かないか?」

愛依「そっ、そだね……」

P「よし、じゃああれやるか!」

愛依「あはは、うん!」

「……?」キョトン

P「いくぞ……」

P/愛依「いっせーの……」

P/愛依「……せーっ!」グイッ

「わー……」

「……」ポスッ

P「いい感じにブランコできたと思うんだけど、どうだ?」

「……ん」ニコ

P「喜んでくれたみたいだな」

愛依「ほんとカワイイんだから〜もうヤバすぎ!」ナデナデ

「……」
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/25(金) 02:31:23.50 ID:0TvwkGhIO
P「……あ。おおっ」

愛依「どしたん?」

P「いや、ほら」

P「夕日、やっぱり綺麗だな……って」

愛依「うん。すっごく……ね」

「……」

愛依「……プロデューサー」

P「ん? どうしたんだ、愛依」

愛依「うち、……いま、しあわせ、なのかも」

愛依「きょうだいとか友だちと遊びに行ったり、アイドルでレッスンとかお仕事したり……そういうのとは違って」

愛依「あ〜〜、なんかさ、うまくは言えないんだけど」

愛依「いまみたいな時間がもっと続いたらいいのにな〜って」

愛依「マジでそう思う」

P「愛依……」

愛依「夕日がさ、もう……沈んじゃうじゃん?」

愛依「そしたらさ〜、このしあわせなのも終わっちゃうみたいに思えて……」

愛依「グスッ……あれ、ヤバ。ちょっと、これ、あはは……」

「……?」サスサス

愛依「ご、ごめんね! お姉さん別に大丈夫だからさ! 心配しないで」

「……」サスサス

愛依「なんだろね、これ……」

愛依「……うちにとって、今日がめっちゃ特別でさ。それが終わっちゃうのは、いやっていうか」

P「終わりじゃないよ」

愛依「え?」

P「終わりじゃないさ。また、こうして3人で海に来よう」

愛依「ほ、ホント?」

P「ああ。……な?」

「……」コクリ

P「俺とこの子は、また来る気だけど、愛依はそうじゃなかったか?」

愛依「……あはは」

愛依「そんなわけないし! うちだって、また来たいに決まってんじゃん」

愛依「夕日が沈んだら終わっちゃうとか、んなわけないのにね〜」

愛依「うちってばちょいイタイ系かもだわ」

「……」ニコ

P「せっかくの“家族”なんだ。思い出を作っていこう」

P「3人だけの思い出だ」

愛依「そだね。いいかも、それ」

愛依「……あ、日沈みそーだし、写真撮ろ! 自撮りはうちがやるからさ」

P「よし、それじゃあ3人寄って……」

「……」

カシャ

愛依「……――さ、帰ろ!」

愛依「次どこいくか、いまから楽しみだわ!」
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/25(金) 02:31:59.08 ID:0TvwkGhIO
とりあえずここまで。
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/25(金) 06:49:17.54 ID:WctsQjlDO
もしかしてこの子、noctchillの四人のうちの誰か?
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/25(金) 12:14:37.23 ID:+9U0CovKO
おつおつ
ファイル日付、?なんだ……
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/27(日) 17:14:16.09 ID:9wZBJhlNO
約1週間後。

P(それから、時間の許す限り、3人で過ごすようになった)

P(厳しいレッスンで1日のほとんどを終えるような日であっても、愛依は3人で会うことを望んだ)

P(愛依がオフの日は、3人で出かけて……遊んだり飯を食ったり、いろんなことをした)

P(期間限定の“家族”は、愛依にとって、大会の予選を迎えるまでの心の拠り所になっているようだった)

P(うまく言葉で形容できないが、3人一緒のときの愛依は本当に幸せそうだったから)

P(きっと、これで良かったんだ――と思う)

P(ストレイライトの他の2人――冬優子とあさひにも事情は話し、理解を求めた)

P(あさひは愛依と過ごせないことに対して不満げで、一方の冬優子はそれを宥める――最初はそんな感じだったが)

P(2人とも、愛依のことを思って、愛依の意思を尊重してくれた)

P(…………)

P(……今日は、大会の第1回予選の前日だ)

P(そんな日が、この子との別れの日になるなんてな……)


〜事務所〜

愛依 チラチラッ

P(愛依……さっきからテレビに映る時計をしきりに確認しているな……)

「……」

愛依「……あはは」

愛依「なんか、さ……ほんと、マジ、……あっという間すぎでしょ」

愛依「っ……」グッ

「……」

P「……」

愛依「あー、もう! うちってば涙腺弱すぎなんですけど……!」

愛依「あははっ、まいったなー……」

「……」

愛依「ね、2人とも」

P「!」

「……ん」

P「どう、したんだ」

愛依「ソファー……うちが座ってるほうに来てよ」

愛依「3人並んで座ろ、ね?」

P「……ああ」

P「ほら、愛依のところに行こう」

「……」テテテッ

「……」ボフッ

P「よいしょ……っと」ギシッ

P(俺と愛依が両端に座り、3人で身体を寄せ合うようにして座る)

愛依 ナデナデ

「……?」ポカン

愛依「っ……グスッ」ナデナデ

P「……」ナデナデ

「……ん」
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/27(日) 17:43:14.89 ID:9wZBJhlNO
P「……今日で今生の別れになるわけじゃないんだ」

P「また、こうして……この1週間くらいを一緒に過ごしたみたいに、3人で……」

愛依「うん……そう、だね。うちってば、レッスンのしすぎでおかしくなっちゃったのかも」

「……」

愛依「一週間、か〜。なんか、うまく言えないんだけど、もっと長くて、もっと短かった――」

愛依「――そんな感じだったわ」

P「ああ、そうだな」

愛依「……プロデューサー」

P「なんだ?」

愛依「明日から、……大会じゃん?」

P「……うん」

愛依「正直さー、いまでもプロデューサーがうちを選んでくれたのが夢なんじゃねって、そう思うときあんだよね」

愛依「大会に出るのがいやとかじゃないよ? それでも、あさひちゃんみたいな才能も、冬優子ちゃんみたいなストイックさ? ……も」

愛依「そうじゃないうちを、なんでプロデューサーは選んでくれたのかなーって」

愛依「ま、いまでもわかんないんだけどさ! あはは」

P「愛依、それは……」

愛依「いーのいーの! 言わないで」

愛依「自分でもなにカッコつけちゃってんのーって思うけど、この答えはうちが自分で見つけたいから」

愛依「うちが自分で出した答えとして、ちゃんと納得できるようなのを……」

愛依「で、その間にうちができることは何なのかなって思ってね」

愛依「レッスンとか自主練は当たり前だけど、それ以外の何か」

愛依「……」ナデナデ

「……?」

愛依「プロデューサー、冬優子ちゃんにあさひちゃん、ファンのみんな……」

愛依「それだけじゃなくて、うちはこの子のためにも頑張りたいって思ったんだよね」

愛依「あと、その……言っててハズいけど、この“家族”のために、さ……」

愛依「ほら、この子ってあんまり表情に出ないじゃん? ときどき、リアクションはあるけど」

愛依「うちが大会に出て活躍できれば……この子に感動ってやつを教えてあげられるかもしれない」

愛依「他にも、いろんな感情? ……を教えてあげられるかもしれない」

愛依「そんでさ、次に3人で会うときにはもっと笑顔の絶えない3人になれるんじゃないかって」

愛依「だから、あんましうまく言えなかったけど……よーするに、だから大会がんばるしかないっしょ! ってこと」

P「ああ、この子もきっと、愛依が活躍するところを見てくれるさ」

P「このお姉さんな、明日からアイドルの大会に出て頑張るんだ。応援してやってくれないか」

P「……いや、違うな。一緒に応援しよう。たとえその場に一緒にいなくても、心は一つってやつだ」

「……」コクリ

愛依「……サンキュー、2人とも」

愛依「うん。よくわかんないけど頑張れる気してきた!」

ガチャ

P「お、はづきさんかな?」

愛依「!」

P「そっか、思ったよりも早かったな」

愛依「そう……だね」

「……」
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/27(日) 18:33:04.66 ID:9wZBJhlNO
はづき「プロデューサーさn……っと、3人一緒だったんですね〜」

P「ええ、まあ……」

愛依「……」

「……」

はづき「……ふふっ、なんだか私、悪者ですね〜」

はづき「あるいは〜……、お邪魔虫?」

はづき「その子のお迎えに来ました。あとは私が責任を持って送りますよ〜」

愛依「……っ」

P「愛依……」

はづき「そ、そんな顔しないでください……。私も仲睦まじい3人を引き離すようで辛いんですから〜」

「……」ツンツン

愛依「……ん? どしたん? 耳? ……ああ、耳打ちね」

愛依「っしょっと。はい、どーぞ」

「―――」ヒソヒソ

愛依「……そっか。うん」

愛依「ありがとね」

愛依「グスッ……また、ね」

愛依「それさ、プロデューサーにも教えてあげて」

P「お、俺がどうかしたのか?」

愛依「いいからいいから」

P「あ、ああ……」

P「ほら、しゃがんだぞ」

「―――」ヒソヒソ

P「……」

P「そうか」

P「ははっ……ありがとな」ナデナデ

「……ん」

P(その時、俺は初めてこの子の名前を知った)

P(もっと言えば、初めてこの子から言葉というものを受け取ったのかもしれない)

P(自分の名前と、……それから自分の思い)

P(耳打ちでそれを伝えてくれた)

愛依「っしゃ。悲しい顔してんのもアレだし、笑ってよーよ」

愛依「ね? プロデューサー」

P「ああ。そうだな」

はづき「もう……大丈夫そうですかね〜」

はづき「では、行きましょうか」

「……」

愛依「うち、頑張るから! 1人でも独りじゃないから!!」

愛依「次会うときはめっっっっっちゃすごいアイドルになってっから! 待ってて!!」

「……っ」クルッ

愛依 ニコ

P「またな――」

――■■■。
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/27(日) 18:54:59.33 ID:9wZBJhlNO
翌日。

〜大会 予選会場〜

P(最初の予選の日がやってきた)

P(参加登録しているアイドルは実におよそ1500名だという)

P(この大会は3回の予選と1回の決勝で構成されている)

P(まず、1回目の予選で参加登録したアイドルたちがランダムに4つのグループに振り分けられる)

P(各グループにおける上位20%が2回目の予選に進むことができる)

P(2回目の予選では、残ったアイドルたちが再びランダムに4つのグループに振る分けられ、やはり各グループの上位20%が次に進むことになる)

P(3回目も同様だ)

P(最後の決勝では、それまでの審査員に加えて大御所をゲストに迎えたメンバーによって優勝と準優勝が決定される)

P「……」

P(そろそろ、だな)

P「……お」

P(1回目の予選のグループ分けの番号が発表になった)

P「グループ3だってさ、愛依」

愛依「へー……。っていっても、知ってる人とかいんのかな〜」

P「さ、さぁ……」

愛依「ま、イメトレとか、練習以外することないし、もう控え室いこっかな」

P「まだ、スタンバイまでは時間あるぞ?」

愛依「……うん。でもいい」

愛依「うちは大丈夫。独りじゃないからね」

P「ははっ、そうだな」

愛依「……」

愛依「プロデューサー、行ってくる……」

P(モードが切り替わったな、愛依)

P「ああ、行ってこい」

愛依「……見てて」

愛依「精いっぱい、やってくるから」

愛依「守りたいものを守れるように……――」

愛依「――絶対、後悔しないように」

358 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/27(日) 18:57:22.17 ID:9wZBJhlNO
一旦ここまで。
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/27(日) 19:07:54.12 ID:wzhfx1Mb0
たんおつっ!

和泉愛依のこと調べてみたら……
いかにも気性の強そうな顔してた(^^)
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/27(日) 19:15:16.03 ID:lm85JvFDo
おつお
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/28(月) 00:18:01.05 ID:Qq3bwMUBO
〜グループ3 控え室(大部屋2)〜

愛依「……」

愛依(ミステリアスでクール……ってことになってっから、黙ってればいいってのは楽だけど)

愛依(空気感ちょーヤバい。なんていうか、重い)

愛依(うち……すごいとこに来ちゃったんだね〜)

愛依(改めて実感したわ)

愛依「?」

ヒグッ、グスッ、ウウッ

愛依「……!」

愛依(そうだよね……。泣く子もいるよね〜……)

愛依(たぶん、泣きたい子は他にもたくさんいる……)

愛依(うちは――どうなんだろ)

愛依(泣きたい……のかな?)


P『……そうだな。家族に見えるかもな』

愛依『!』

『……』

P『お前もそう思うか?』

『……』コクッ

P『ははっ。じゃあ、俺たちは家族……ってことでもいいのかも――なんてな』

愛依『ぷ、プロデューサー……もう』


愛依『うち、頑張るから! 1人でも独りじゃないから!!』

愛依『次会うときはめっっっっっちゃすごいアイドルになってっから! 待ってて!!』

『……っ』クルッ

愛依 ニコ


愛依(ううん。うちは大丈夫)

愛依(泣かなくても――大丈夫)

愛依(たぶん、笑えるから)

愛依(うちには、笑っていたい理由があるから)

愛依(だから、泣かない)
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/28(月) 00:35:55.25 ID:Qq3bwMUBO
数十分後。

愛依(しばらく楽にしてたけど、時間が経つと逆に落ち着かなくなってくるわ、うち)

愛依(何気なく控え室を出てうろうろしてるけど……)

愛依(ま、特に目的があるわけじゃないんだよね〜)

オ、オイ。ソロソロヒカエシツイッタホウガイインジャナイカ?

イイジャン。

ナニガイインダヨ。

ダイジョウブ。ワタシナラ。

愛依(……あれ、この声って)

愛依 ススス

愛依「……」サッ

愛依(なんか、陰から見てるやべーやつみたいになっちゃった……)

愛依(でも、やっぱり聞こえたのって――)

P「まあ、久しぶりに会えたっていうのはあるけどさ……別の事務所だし、透には他にやることだってあるだろ?」

透「えー……。大丈夫って、言ってるのに」

P「そうは言ってもな……」

愛依(――プロデューサーの声)

愛依(それと、一緒にいるのは……誰?)

愛依(おんなじ大会でてるコなのかな)

愛依(……めっちゃキレイな顔)

P「しょうがないな。あと5分な」

透「10分」

P「5分」

透「……わたs――僕と話したくない?」

P「そうは言ってない。ただ、透は他所のアイドルだし、俺が話すことで邪魔になっちゃまずいだろ」

P「余計なことしたってそっちの事務所から思われたくないしさ」

透「あー……うん。わかった」

透「……」

P「……10分な」

透「やった」

P「そういえば……今でも自分のこと僕って言ってるのか?」

透「ううん。そうでもない」

P「そうでもない……?」

透「うん。普段は、私。アイドルのときも、私。でも、今は、そのどっちでもないから」

P「? そ、そうか……」

愛依(なんか……めっちゃ仲良さそうだね)

愛依「……」

愛依(なんだろ、これ)

愛依(変な気分だわ〜……)

愛依「……部屋戻ろ」

愛依 スタスタ
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/28(月) 01:03:08.47 ID:Qq3bwMUBO
〜グループ3 控え室(大部屋2)〜

愛依(イメトレもしたし、軽く通しで動いてみたし……)

愛依(いよいよやることがね〜〜。ま、あとは本番、ってカンジなのかな)

「……あのー」

愛依「……は」

愛依「!」

「隣、座ってもいい?」

愛依「う、うん……」

「ありがと」

愛依(話しかけてきたの――隣座ってきたの、さっきの子じゃん……)

透「よいっしょっと」

透「……」

愛依「……」

透「……」

愛依「……」

透「283プロの、和泉愛依さん」

愛依(って向こうから話しかけてきたー!)

愛依「そう……だけど」

愛依「あたしに何か用?」

愛依(キャラ的には正解な反応かもだけど、う〜ん)

愛依(フツーに無愛想だよね)

透「いや、なんていうか」

透「“あのプロデューサー”のアイドル……なんだなーって」

愛依「プロデューサー……?」

愛依(さっき覗いてたから、知り合いなのは知ってるけど……)

透「幼馴染なんだ」

透「あなたのプロデューサーと、ね」

愛依「そう、なんだ」

愛依(幼馴染か〜……そーゆーね)

愛依(……)

透「あー……なんていうかさ」

透「あなたから見たプロデューサーって、どんな人?」

愛依「え……」

愛依「……かっこいい人」

透「……」

愛依「顔とか、そういうんじゃなくて」

愛依「大事に守ってくれて、困ったときには助けてくれる」

愛依「そんな人……かな」

透「……そっか」

愛依「うん」
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/28(月) 01:16:07.75 ID:Qq3bwMUBO
愛依「幼馴染って……」

透「あ、うん」

愛依「……よく一緒に遊んでた?」

透「まあ……そう、かな。もう、だいぶ前になっちゃったけど」

透「あの人は、まだ中高生だった」

透「公園で一緒に……ジャングルジムで遊んでた」

愛依(中高生男子が小学生以下の女子とジャングルジムで遊ぶのって……)

愛依(う〜ん、この子が……昔は活発な女の子だった系?)

透「それから、しばらく疎遠になって、いろいろあって私はアイドルになって……」

透「……それで、偶然、仕事の現場にあの人がいるのを見つけた」

透「他のところで、プロデューサーやってた」

愛依「……」

透「なんかね、評判良いみたい」

透「私のいるプロダクションにも噂が届くくらいに」

愛依「……そう」

透「それで、私のとこの偉い人が引き抜きたいって言ってたから」

透「もしそうなったら、私のプロデューサーになって欲しいなって」

透「そう思った」

愛依「……え??」

愛依(引き抜くって……プロデューサーいなくなっちゃうん?)

愛依(そ、そんなの、うちは……)

愛依 ドッドッドッ

愛依(ヤバ……本番前なのに、こんなとこでストレスとかシャレにならないっしょ……!)

愛依「スゥ……ハァッ……」

愛依(とりま深呼吸……っと)

透「別に、Pを取っちゃおうってわけじゃなくて」

透「Pから来てくれたら、嬉しいなって」

透「だから、気にしないで、いいと思う……」

愛依「……は?」

愛依(すぐにダメな態度だってわかった)

愛依(でも……言わずにはいられなくて)

愛依「プロデューサーは、出て行かないから」

透「そう?」

愛依「絶対」

愛依「うch……あたしとプロデューサーで守ってるものがあるから」

愛依「引き抜きなんてさせない」

透「ふーん……」

愛依「あたしの信じるプロデューサーは、自分から守るものを投げ出したりしない」

愛依「プロデューサーから行くなんて、あり得ない」

愛依「残念だけど、……諦めて」

透「そこまで言うんだ」

愛依「……言う」

透「……」
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/28(月) 01:34:21.93 ID:Qq3bwMUBO
透「っと」スック

透「そろそろ本番だし、準備準備……」

愛依「……」

透「……あー」クルッ

透「なんていうか、さ」

透「ガラじゃないから……こういうの、言わないんだけど」

透「ふふっ……でも、言うわ」

愛依「?」

透「Pは――」

――私を選ぶと思う。

愛依「……!」

透 タッタッタッ

愛依(プロデューサーがうちを選ばないなんてこと……)

愛依「っ!」ダッ

愛依(ずっと、あんまし考えないでいた)

愛依(プロデューサーのコト――どう思ってるか、って)

愛依(なんとなく〜でもいいと思ってた。けど……)

透『Pは――私を選ぶと思う』

愛依(あんなこと言われて、もうじっとしてらんなくて)

愛依(プロデューサーに、会いたくて)

愛依「はぁっ……はぁっ……」タッタッタッタッ

愛依(まだ、あそこにいるかな……)

P ポチポチ

愛依(……いた!)

愛依「プロデューサー!」ドンッ

P「うおあぁっ!?!? め、愛依!?」

P「どうしたんだ? あと少しで本番だろ?」

P「……何か、あったのか?」

愛依「いや、ってゆーか」

愛依「ひとこと、言いたくて……」

P「?」

愛依「耳貸して。耳打ち、することあるから」

P「お、おう……?」

P「……よし、こい」

愛依「すぅ――」

――だいすき。愛してる。だから、ずっと一緒にいて。

P「って、え!?」

愛依「あははっ。な〜んだ、カンタンに言えたじゃん!」

P「???????」

愛依「ま、そーゆーことだからさ! うち……頑張ってくる!!」


――――第1回予選 グループ3 通過者一覧――――

………………… 283プロ和泉愛依 …………………
___プロ トオル 
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/12/28(月) 01:35:53.19 ID:Qq3bwMUBO
>>365 訂正:

――――第1回予選 グループ3 通過者一覧――――

………………… 283プロ和泉愛依 …………………
___プロ トオル 


↓訂正

――――第1回予選 グループ3 通過者一覧――――

………………… 283プロ和泉愛依 …………………
___プロ 浅倉透



とりあえずここまで。 
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/28(月) 02:52:03.06 ID:+iKsASOUo
おつおつ
こっちでくるか!
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/28(月) 16:24:21.45 ID:z6zsV6kDO
それより少女の名前が気になる
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/06(水) 01:41:05.83 ID:N4Njl6QdO
>>1です。

なかなか時間が取れないため、更新はもうしばらくお待ちください。

気づけば年が明け、Straylight編もはじまって4ヶ月が経ちました。noctchill編よりも分量が多いのは“仕様”です(つまり、予定通りです)。

読み続けてくれる方はこれからもよろしくです。
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/06(水) 08:19:06.83 ID:nzKy51O8o
あけおめです
今年もよろしくお願いします
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/19(火) 21:24:38.52 ID:097O9LmFO
2週間後。

〜事務所〜

ガチャ

愛依「ただいま〜」

P「おかえり、愛依」

愛依「ハァ〜〜……っしょっと」ボフッ

P「……」

P(無理……してるのかもな)

P(1回目の予選を通過してから、愛依からは焦りや空回りといったものを感じる)

P(余裕が無いんだ。たぶん)

P「今日は社長も、はづきさんも、他のアイドルもいないから――」

P「――そのままソファーで好きなだけくつろいでていいぞ」

愛依「マジ〜? うーん……」

愛依「そんじゃ、ま、お言葉に甘えて〜」ゴロ

P「はは……」

P(頑張ろうと、頑張らなければいけないと、そう思ってる相手に「休め」とか「頑張るな」って言うのは酷だよな)

P(言いたい気持ちのある俺がいる)

P(愛依は……もっと明るくて、言葉数も多くて、周りに人がいるのが当たり前みたいな子だったんだ)

P(今は、そのどれもがあてはまらない)

P(俺にできることは……)

愛依「……ん? どしたん?」

P「えっ?」

愛依「いや、なんかうちのことずっと見てるからさ」

愛依「なんかついてる?」

P「そ、そんなことないぞ」

愛依「???」

愛依「……ま、いーわ。ちょっと寝るね」

P「あ、ああ……」

P(よし、そろそろ……)


愛依「zzzZZZ」

ツンツン

愛依「……ぅーん」

ユサユサ

愛依「ん〜〜? もう、なあに、プロデューs……」

「……ん」

愛依「……」

「……」

愛依 パチクリ

「……」

愛依「え、……えええええ!?!?」

「……」ニコ
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/19(火) 21:54:07.25 ID:097O9LmFO
愛依「ちょ、え? え?? な、なんでっ!?」

愛依「いや、会えてちょー嬉しいけど!」

P「ははっ、よかった」

P「喜んでもらえたかな?」ナデナデ

「……ん」

愛依「プロデューサー……?」

P「この子に大会での様子を見てもらったんだよ」

P「それで、今の愛依がどんな感じかって話したら……」

「……」フンス

P「応援したいみたいでさ」

愛依「そ、そっか……」

P「その、な……」

P「あくまで俺からみた感じ……ではあるんだが」

P「愛依に余裕が無いように見えてさ」

愛依「……!」

P「最初の予選を突破してからというものの……愛依のことが心配だったんだ」

P「もちろん、次の予選も通過できるように頑張ってるのはわかる」

P「レッスンや自主練に費やす時間だってもっと長くなってるし」

P「なにより、前より言葉数が少ない気がしてさ」

愛依「あはは……なんだ、全部わかってんだね、プロデューサーは」

愛依「って、いまさらか!」

愛依「うん、そうだね……」

愛依「ヨユー、なかったわ」

P「愛依……」

愛依「あ、ずっと立ってないでうちの膝おいで?」

P「そうか、じゃあ遠慮なく……」

愛依「いやそっちじゃないから!」

愛依「も〜〜、この子に言ったんだってば」

P「冗談だよ」

「……」チョコン

愛依 ナデナデ

「……ん」

愛依「あ〜〜〜……」ナデナデ

愛依「なんか、落ち着く……」ギュッ

P「……」

愛依「……って、これじゃうちがいままで落ち着いてなかったみたいだよね」

愛依「ま、そうなんだけどさ」
373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/19(火) 22:53:14.57 ID:097O9LmFO
P「言いたくなかったら言わなくてもいいんだが」

P「大会で……何かあったのか?」

愛依「!」

P「愛依が余裕なさそうにしてるのはあの予選の後からだし、次の予選までは今のところレッスンと自主練だけだからさ」

P「もちろん、プライベートなこととか、俺が無関係のことだったら、無理にとは言わないんだ」

P「俺が関係してることなら……本音を言えば教えて欲しい気持ちもあるが、でも強制はしない」

P「俺はただ、愛依の力になりたいだけだ」

愛依「あはは……もう、プロデューサーってば、いつのまにそんなイケメンになったん?」

P「ちゃ、茶化すなよ」

愛依「……」

愛依「……幼馴染」

P「? 幼馴染?」

愛依「大会んときにさ、プロデューサーと2人で話してるのが見えて」

P「あ……」

P(透のことか)

P(あの場に愛依もいたのだろうか? 全く気づかなかったが)

愛依「その後に控え室の大部屋で向こうから話しかけられて、少し話したんだよね」

P「その幼馴染っていうのは、浅倉透ってやつだったか?」

愛依「あさくら……? あ、でも、プロデューサーが透って呼んでるのは聞こえた」

P「そっか……。うん、そいつは俺の幼馴染で間違いないよ」

愛依「めっちゃ綺麗な人だよね」

P「あ、ああ……。まあ顔は良いな。綺麗だと思うよ」

愛依「……」ジーッ

P「どうした……?」

愛依「……別になんでもないけど」

愛依「あれ、何の話だっけ」

P「透に話しかけられたっていう……」

愛依「そそ、それそれ」

愛依「もう、いきなり話しかけられてほんとびっくりっていうか〜」

愛依「うちのこと知ってるんだ〜〜って」

愛依「けどね〜、なんか聞いてるとさ、うちに話しかけたかったっていうより、プロデューサーのことを聞きたかったっぽいんだよね」

P「俺のことを……か?」

愛依「プロデューサーと幼馴染〜〜ってところから始まって」

愛依「どんな人とか聞かれたり……」

愛依「それに……」

P「それに?」

愛依「……っ」

愛依「透ちゃんの事務所、プロデューサーのこと欲しがってるんだって」

P「え……!?」

愛依「引き抜くとかなんとか、そんなこと言ってたし」

P「まてまて、初耳だぞ、俺は」

愛依「そ、そうなんだ」

愛依「とにかくさ〜、それ聞いてなんか変な気分になっちゃって……。いつかプロデューサー辞めちゃうん? って思って」
374 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/20(水) 00:25:36.45 ID:VAksbVvnO
P「そんな話があったのか……」

P「その、愛依はなんて言ったんだ?」

愛依「うちは……」


愛依『プロデューサーは、出て行かないから』

透『そう?』

愛依『絶対』

愛依『うch……あたしとプロデューサーで守ってるものがあるから』

愛依『引き抜きなんてさせない』

透『ふーん……』

愛依『あたしの信じるプロデューサーは、自分から守るものを投げ出したりしない』

愛依『プロデューサーから行くなんて、あり得ない』

愛依『残念だけど、……諦めて』


愛依「……諦めて〜って、そう言ったよ」

愛依「うちとプロデューサーで守ってるものがあるからって」

P「そうか……」

愛依「初対面でいきなりプロデューサーの引き抜きの話してくるとか、ちょっとヤバすぎでしょ」

愛依「プロデューサーから行くなんてあり得ないから諦めてって言っちゃった」ケラケラ

P「ははっ、アイドルのときのキャラの愛依にそれ言われたら、あいつもびびってるかもな」

愛依「え〜? そうかな〜〜」


透『ふふっ……でも、言うわ』

愛依『?』

透『Pは――』

――私を選ぶと思う。


愛依「――……」

P「愛依?」

愛依「あ、ううん! なんでもない!」

P「今日はもうレッスンないよな?」

愛依「まあね〜。大会も近いし自主r……」

愛依「……は、うん、今日はいいや!」

愛依「もういい時間だしさ、3人でゴハンいこーよ、プロデューサー」

P「ああ。俺もそれを提案しようと思ってたんだ」

P「お前もそれでいいか?」

「……」コクッ

愛依「やったね。じゃあ決まりってことで」

愛依「そういや、いつまでこっちにいるん?」

P「今回はいきなりだから1泊2日なんだ」

愛依「そっか〜〜……じゃあ、またしばらく、だね〜……」

P「今度は愛依の家に泊まるように向こうの親御さんにも話してみるよ」

愛依「! それめっちゃいい!」

愛依「いまからちょー楽しみだわ!」

P(笑顔も言葉数も戻ってきたな、愛依)
375 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/20(水) 00:26:26.45 ID:VAksbVvnO
とりあえずここまで。
376 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/20(水) 00:30:55.40 ID:Ax3KN1/do
おつですー
377 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/20(水) 05:46:01.47 ID:65RTrGBDO
最後まで話さなかったのは、吉と出るか凶と出るか
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/24(日) 01:06:13.51 ID:HVH/ZSMFO
1週間後。

〜事務所〜

P カタカタ

P カタッ

P「……ふぅ」

P(もう1週間経つのか。早いな)

P(あの子を愛依に会わせたのはやっぱり正解だったよな)

P(あれから、余裕のなさとか空回りしてる感じはだいぶなくなったし)

P「それにしても……」

P(まさか、透が、な……)

P(なんで、俺のヘッドハンティングの話を愛依にしたんだろう)

P(愛依を動揺させるため? でも、そうだったとして、それは何のために……)

P「……」

P(まあ、今それを考えても仕方ないか)

P(俺は愛依のプロデューサーであり続ければいいんだ)

P(俺がしっかりしていればいい……よな)

ピンポーン

P「あ、はーい……」

P(この時間に来客……? 誰だろう)

ピッ

P「はい。何かご用でしょうか」

「……用、か。どうだろう」

P「?」

「特にないかも」

P「あのー……どちら様でしょうか?」

「あ、そうだ。言ってなかった」

透「私……透だよ」

P「透か。いきなりどうしたんだ?」

透「なんていうか、まあ……会いに来た」

P「会いに来たってお前……ここうちのプロダクションの事務所なんだけど」

透「だめなら帰るよ。どうかな」

P「……まあ、せっかく来たんだ。今は俺一人だし、他の事務所からの客人ってことにしておくよ」

透「やった」

透「雛菜、いいってさ」

「やは〜。やった〜」

P「友だちも連れてきてるなんて聞いてないぞ……」

透「他の事務所からのお客さんってことなら、むしろ普通なんじゃない? こういうのも」

P「わかったよ……今開けてやるから」
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/24(日) 01:21:23.91 ID:HVH/ZSMFO
P「はい、どうぞ……」コト

雛菜「やは〜! ケーキだ〜〜」

雛菜「紅茶もある〜」

P「来客、だからな」

透「あ、お構いなくー……」

雛菜「あー……むっ。……ん〜〜!」

雛菜「おいひ〜」

P「連れは早速食ってるみたいだけど……」

透「ね。ウケる」

P「まあ、いいんだけどな。そのために出してるし」

P「透もいいんだぞ」

透「ふふっ、ありがと」

透「じゃあ、遠慮なく……」パク

透「……」

透「このお菓子、おいしいね。めっちゃ美味い味する」

P「ははっ、なんだそりゃ」

雛菜「あの〜」グイッ

P「おっと……、どうしたんだ?」

雛菜 ジーッ

P「……?」

雛菜「……ううん。なんでもないです〜」

P「そ、そうか?」

雛菜「あ、やっぱなんでもある〜」

雛菜「雛菜、あのソファーでごろ〜んってしたいな〜〜って思うんですけど……」

P「あ、ああ……軽く横になるくらいならいいよ」

雛菜「やは〜、ありがとうございます〜〜」

雛菜「ごろ〜ん♡」

雛菜「〜〜〜〜〜!」

雛菜「雛菜このソファーすき〜〜」

P「透、今更だけどあの子は……」

透「雛菜」

透「市川の雛菜ちゃん」

透「ほら、自己紹介」

雛菜「やは〜……、は〜い」ゴロ・・・

雛菜「よいしょっと」

雛菜「市川雛菜、高校1年生です〜〜〜」

雛菜「透先輩とおんなじ事務所なんだ〜」

透「でもユニットは別」

雛菜「雛菜それやだ〜〜……。透先輩と一緒のユニットがいいのに〜」

透「仲が良すぎるからって言われたね」

雛菜「それが理由〜?」

透「たぶんね」
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/24(日) 01:57:30.93 ID:HVH/ZSMFO
P「そうだ、透」

透「なに?」

P「今日はいきなりどうしたんだ?」

透「?」

透「どう、・・・・・・って?」

P「いや、何の用なのかってことだよ」

透「えー……」

透「用がないと来ちゃだめかな」

P「そんなことはない――って言いたいのは山々だけど、こっちも仕事中だしな。そもそも、ここは言うなれば仕事場だし」

透「冷たいね」

P「そう言うなって」

透「泣いちゃうかも」

P「嘘だろ?」

透「ふふっ、嘘だけどさ」

P「ったく……」

透「割と大事な話、……ある」

P「……というと?」

透「P」

P「?」

透「うちの事務所と契約して、私のプロデューサーになってよ」

P「QBか何かなのか、お前は……」

透「あれ、驚かないんだ」

P「愛依からその話されたって相談を受けたからな」

P「あんまりうちのアイドルにストレスを与えないでくれよ」

透「ごめんごめん」

透「その、さ。うちのプロダクションの……えっと、あのおじさん……いや、とにかく偉い人がね」

透「あのプロデューサーは是非うちに欲しい……とか言ってて」

透「だから、そういうこと」

P「そうか……」

透「突然言い出してごめん」

透「でも、私は――」

透「――この話を受けてくれたら嬉しい、かな」

P「……」

P「俺は――」

透「いまじゃなくていいんだ」

P「――……」

透「また、聞くから」

透「そのときに答えてくれればいいかなって」

透「むしろ、いまはPの答え……聞きたくない」

P「……そうか」
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/24(日) 02:40:08.91 ID:HVH/ZSMFO
P「ちなみに、そちらは……」

透「あ、雛菜?」

雛菜「雛菜は付き添いだよ〜〜」

雛菜「でも、雛菜ここに来て良かったかも〜! 透先輩の会いたい人がこんなステキなお兄さんだなんてね〜〜」

P「て、照れるな……」

透 ムスッ

雛菜「やは〜……雛菜、お兄さんのこと結構好きかも〜〜」

P「よしてくれ……」


数十分後。

ガチャ

P「ん? 誰か帰ってきたか?」

タッダイマ-!

P「! ……愛依」

タタタタタ・・・

愛依「プロデューサー! ただいm……」

透「あ」

雛菜「?」

愛依「……っ」

透「こんにちは」

愛依「ど、どうも……」

透「……雛菜」

雛菜「ん〜〜?」

透「そろそろ帰ろう」

雛菜「うんっ」

愛依「……」

P(愛依……)

透「ケーキ、ごちそうさま。ありがと」

雛菜「ごちそうさまでした〜」

P「ど、どういたしまして」

透「じゃ、また今度」

P「ああ。気をつけてな」

P「君も」

雛菜「は〜い! お兄さん、またね〜!」フリフリ

P「またな」

P(2人はそのまま荷物を持って帰っていく)

P(雛菜という名前の子が、愛依とすれ違う瞬間に何かを囁いたように見えたが――)

愛依「!?」ビクッ

P(――気のせい、だろうか?)


愛依(あん時の子……とその友だち。もう帰るみたいだけど)

愛依(あれ、一緒にいる子……うちのコト見てる?)

雛菜「あは〜……――」

雛菜「――家族ごっこって楽しいですか〜?」ボソッ
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/24(日) 02:40:43.24 ID:HVH/ZSMFO
とりあえずここまで。
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/24(日) 02:49:09.35 ID:073F/7JMo
おつ
ひなな〜てめぇ〜…!
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/24(日) 04:56:34.38 ID:67er8jYDO
noctchillのダブル核地雷さんか……
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/25(月) 01:33:26.59 ID:ulRd3VHqO
愛依『うちらって、周りから見たら家族――に見えんのかなって』

愛依『うちがこの子のママで、プロデューサーがパパで……』

『……』

P『家族、か』

P『……そうだな。家族に見えるかもな』

愛依『!』

『……』

P『お前もそう思うか?』

『……』コクッ

P『ははっ。じゃあ、俺たちは家族……ってことでもいいのかも――なんてな』


愛依「プロデューサー……」


「ふふっ、なにそれ」

愛依「!?」クルッ

「自分の都合……だよね」

愛依「な、なんなん……!?」

「私のほうが――僕のほうが、あの人を知ってる」

「あの人を……わかってるから」

愛依「何言って……」

「ショッピングモールで――」

愛依「?」

「――『親子3人で仲良しの人たちを見て……あの人たちはきっとしあわせなんだろうなって思った』、だっけ」

愛依「!」

「自分もそうなりたかったんだ? Pと」

愛依「だ、だから何だって言うわけ?」

「よそはよそ、うちはうち……でしょ」

「他人事じゃん」

「そもそもあなたは、Pの奥さんじゃない」

「前提からおかしいよね」

愛依「や、やめて……!」

愛依「いまはそんなん考えなくってもいいんだし!」

「その程度の想いってこと?」

愛依「違う!!」

「ふーん」

愛依「……っ」

愛依「なんでそんなこと言われなきゃいけないわけ!? うちは、……うちはっ」

「やは〜。でも〜、変じゃないですか〜〜?」

愛依「……なにが」

「お兄さんって、あなたの恋人じゃないし〜」

「あ、もしかして〜」

愛依「……」

「お兄さんに好き〜って言われたことないんだ〜〜!」

愛依「!!!」
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/25(月) 01:47:01.52 ID:ulRd3VHqO
愛依「っっっ」ガバァッ

愛依「はぁっ、はぁっ……」

愛依 キョロキョロ

愛依「ゆ、夢……」

愛依「……」


『その程度の想いってこと?』


愛依「っ……」


『あ、もしかして〜』

『お兄さんに好き〜って言われたことないんだ〜〜!』


愛依「……やだ」

愛依 フルフル

愛依「……」

愛依(確かに、うちは――)


愛依『すぅ――』

――だいすき。愛してる。だから、ずっと一緒にいて。


愛依(――プロデューサーに告って……)

愛依「……」

愛依(返事はもらってないけど)

愛依(プロデューサーがアイドルに手出せないのなんて当たり前だし)

愛依(うちも返事聞くの怖くて……話題にできてないし……)

愛依「ほんと、どうしたらいいわけ……?」


雛菜『――家族ごっこって楽しいですか〜?』


愛依「っ……グスッ」

愛依(そんなこと言わなくてもよくね? ……って思う、けど)

愛依(一番悔しいのは、何も言い返せないコト)

愛依(何も、間違ってないから……)

愛依「プロデューサー……」

愛依(ここにプロデューサーがいたら、うちがこうして泣いてるの見たら――)

愛依(――プロデューサーは、慰めてくれるのかな)

愛依(抱きしめて欲しい。ずっと、うちだけを見て欲しい)

愛依(うちのこと、家族だって思って欲しい)

愛依「あはは……アイドルやってて、大会にも出てんのに、うちってばアイドル失格かな……?」

愛依「うっ……ううっ……」ポロポロ

愛依(独りも1人もやだよ、プロデューサー……)
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/25(月) 02:19:44.21 ID:ulRd3VHqO
1週間後。

〜大会 予選会場〜

P(2回目の予選の日がやってきた)

P(技術的な面に関して心配な点はなかった。レッスンも自主練も、無理のない範囲で着実にやっていた)

P(鍵となるのはメンタル面だろうが……)

P「……」

P(正直に言えば、不安が残る。あの子を会わせてからはだいぶ良くなっているのだが、大会1週間前は時々心ここにあらずという様子が目についた)

P(俺が話しかけてもどこかそっけないような感じがした。大会の直前に良くない刺激を与えてもいけないと思って、こちらからはあまり追及しなかったけど……)

P(事務所でも仮眠を取ることが増えていたし。まるで、寝ていれば人とかかわらなくて済むと言うかのように)

P(考えすぎだろうか……)

P(深く掘り下げないという俺の判断は正しかったのだろうか)

P「……」

P(って、俺が悩んでどうする)

P(愛依のほうがしんどいに決まってる。俺は、今できることをやるしかないだろう)

P(愛依が安心してステージに立てるように、見送ってやらないとな)

P「そういえば……」

P(……減った)

P(上位20%しか残らないというのは形式的な手続きとして知っていたが、ここまで人が減るものなのか)

P(第1回予選のときとは違い、会場は静けさすら感じ取れるほどだった)

P(第3回はもっと人が減るんだろうな)

P「……お」

P(2回目のグループ分けの番号が発表になった)

P「グループ1だって」

愛依「……」

P「愛依?」

愛依「わあっ!?」

P「っと、悪い。驚かせるつもりはなかったんだが」

愛依「あ、ううん! うちこそごめんね。ぼーっとしてたわ」

P(愛依……)

P「今日のグループの番号は1だそうだ」

愛依「1か。おっけー、まかせて!」

P「そうだ、まだ本番まで時間あるし、その、なんだ。ほら、最近あんまり話せてなかっただろ? だから、愛依と話でm……」

愛依「あ! うち自主練しないとだわ!」

P「……え」

愛依「早く場の空気? ってやつに慣れないとだしさー」

愛依「うちもなんだかかんだ言ってもうプロのアイドルだし、気合入れないとね〜」

P「そ、そうか……」

愛依「ステージ終わったらいっぱい話そ?」

P「……わかった」

愛依「っ」

P(愛依、その表情は……)

P「俺はいつだって愛依の味方だし、プロデューサーだよ。愛依が俺のことを想う以上に、俺は愛依のことを想っていると……そう思っていてくれ」

愛依「……そっか。ありがとね。……行ってくる!!」ダッ
388 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/25(月) 02:39:01.00 ID:ulRd3VHqO
〜グループ1 控え室〜

愛依(前は1つのグループでいっぱい大部屋使ってたのに……)

愛依「……」

愛依(……2回目で大部屋1つになっちゃうんだ)

愛依(あ、そういえば……)

愛依 キョロキョロ

愛依「……ふぅ」

愛依(透ちゃんはいない、か)

愛依(なに安心してんだろ、うち)

ヒグッ、グスッ、ウウッ

愛依「……!」

愛依(あれ、この前泣いてた子じゃん)

愛依(勝ち残れたんだ)

ネエ、アレミテヨ

ナンカナイテナーイ?

ナキタイコナンテイッパイイルノニ、カッテダヨネー

ピャウッ!?

愛依(うーわ、感じ悪……)

「ねぇ、あんたさぁ」

「ぴゃ!? ななな、なんですか……?」

「泣きたい子なら他にもいるのよ。なのに、そうやって目立つように泣いちゃって……」

「ご、ごご、ごめんなさい……っ」

「申し訳ないと思うなら一人で目立たないところで泣いてろよ、ほら、出てけって」

「そ、そんな……」

愛依「ちょっと」

「あ?」

愛依「あたしの友だちなんだけど、なにしてんの?」ギロォッ

「っ!?」ビクッ

愛依「いじめようとしてんなら、絶対に許さないから」キッ

「……ちっ。行くよ」

「え、ええ……」

愛依「……」

愛依「……はぁ」

愛依「大丈夫?」

「ぴゃっ!? ゆ、ゆゆ、許してください……!」ビクビク

愛依「え、いや、あたしはそういうんじゃないから」

愛依「とりあえず、もうちょっとここ離れよ? ね?」

愛依「1人でいるより、うちといたほうが安全っしょ」ヒソヒソ

「……はい」

愛依 ニコッ
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/25(月) 02:57:16.42 ID:ulRd3VHqO
「さ、さっきは助けてくれてありがとうございます……!」

愛依「いいっていいって。あいつらマジちょー感じ悪かったし」

愛依「弱いものいじめとかくだらないことやってるヒマなくね? って思うわ、ホント」

「よ、弱いもの……」

愛依「あ、ごめん! そういうつもりじゃ……って、あはは。それはうそか」

「いいんです。実際弱いですし」

愛依「えー、なにそれ」

愛依「そういえば、名前なんて言うん?」

「あ、はい。わたしは――」

小糸「――福丸小糸、です」

愛依「小糸ちゃんね。うちは和泉愛依、よろしく〜」

小糸 ボーッ

愛依「ど、どしたん?」

小糸「い、いえ……知ってるキャラと全然違うから……」

愛依「あ、そだね。あははっ」

愛依「アイドルのときは、こう……」

愛依「よろしく……」

愛依「ってカンジ?」

小糸「は、はいっ。そんな感じです」

愛依「小糸ちゃんのコト、なーんか放っておけなくてさー」

愛依「うちのこと怖がってたみたいだから、安心させようと思ったんだけど……つい素のキャラが出ちゃったわ!」

愛依「いや〜、まいったまいった。うちってば疲れてんのかな?」

小糸「だ、誰にも言いませんよ……!」

愛依「あはは、サンキュね」

小糸「えへへ」

愛依「!」

愛依「いま気づいた……小糸ちゃんめっちゃカワイイんですけど!?」

小糸「か、可愛いだなんて……そんな……えへへ」

小糸「お世辞でも……う、嬉しいです。ありがとうございます」

愛依「お世辞じゃないってば〜。本当に可愛いって!」

愛依(やっぱ、大会勝ち残ってるだけあるってことなのかな〜)

愛依「……小糸ちゃんはどう? 大会は順調なカンジ?」

小糸「え、ええ……まあまあです、たぶん……」

冬優子「そっか」

小糸「わたし、だめだめなんです」

小糸「こんな一人ぼっちで放り出されても、泣いてることしか、できませんから……」

コイト「いっぱい練習して、なんとかここまで来れたけど……わたし一人にできることなんて……」

愛依「はいっ、暗いのやめ! もっと楽しくやろ?」

小糸「楽しく……」

愛依「良いコト考えようよ。嬉しかったこととかさ」

小糸「……」

小糸「そういえば、今回はわたしの幼馴染が応援してるって言ってくれました!」

小糸「雛菜ちゃん、わたしのこと見ててくれてるかなぁ……」
390 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/25(月) 03:01:18.90 ID:ulRd3VHqO
とりあえずここまで。
391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/25(月) 05:38:41.87 ID:L7rpX/ODO
一瞬、コイト表記だったけど何かあるのかな?

わくわくする
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/25(月) 10:56:03.37 ID:ulRd3VHqO
>>391

>>1です。ご指摘ありがとうございます。カタカナになっているのはミスです。訂正します。すみません。


>>389 訂正:

コイト「いっぱい練習して、なんとかここまで来れたけど……わたし一人にできることなんて……」
→小糸「いっぱい練習して、なんとかここまで来れたけど……わたし一人にできることなんて……」
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/26(火) 00:46:39.65 ID:pHJp8MS8O
愛依(ヒナナ……? どっかで聞いた気がするんだけど、うちの気のせい?)

小糸「中学は別々だったから……本当に久しぶりで」

小糸「ず、ずっと疎遠だったんですけど、わたしが昔プレゼントしたアクセサリーは大事に持っててくれたんです!」

小糸「それが話のきっかけで……わたしとまた仲良くしてくれるって……」

小糸「わ、わたしのこと、応援するって……」

愛依「ふーん、いい友達? ……じゃん!」

小糸「え、えへへ……」

小糸「昔からつかみどころがなくて不思議な子なんですけど、と、友だちでよかったなぁって、そう思っちゃいました」

小糸「小糸ちゃんは決勝まで進んで、できれば優勝して、しあわせ〜になってって、そう言ってくれたんです」

愛依「うんうん。応援してくれる友だちがいるって大事なことだな〜って思うわ」

愛依「うちはさ、プロデューサーとユニットのみんなのためにも、頑張りたい」

愛依「応援してくれてると思うし、うちにできることって言ったら、もう勝つことしかないじゃん? 的な」

小糸「ユニットの友だち……」

愛依「?」

小糸「あ、いえ! なんでもないです」

小糸「……」

愛依「……」

愛依「うちら、一緒に次に進めたらいいね」

小糸「! ……は、はいっ」

愛依「この大会始まってからさ、他のアイドルの子たちとの接点ってあんましなくて」

愛依「なんかー、うちに足りてなかったのって、そういうのもあんのかな……って」

小糸「わ、わたしも……あんまり誰かと話すとかは……ないです」

小糸「その……ちょ、ちょっと怖くて……」

愛依「あっはは、うちのことも怖がってたもんね」

小糸「ぴゃ……ごめんなさい」

愛依「別に謝んなくていーから! 実際、うち、こんなだしさー」

小糸「で、でも、格好いいって、……そう思います」

愛依「ありがと。そう言ってもらえると、なんていうか、やってきた! ってカンジするし」

愛依「うちもいつか、本当の自分でアイドルやりたいな……」

小糸「え?」

愛依「あー、いーの! 気にしないで!」

愛依「まあ、ともかくさ」

愛依「お互いがんばってこ? 小糸ちゃん」

小糸「は、はいっ! わたしも頑張ります!」

小糸「だから、その……頑張ってくださいね……!」

愛依「うんっ!」
394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/26(火) 01:03:43.20 ID:pHJp8MS8O
〜予選会場 ロビー〜

P(透のやつ……いきなり呼び出してどうしたんだ)

P(断ってもしつこく連絡来るからとうとう来てしまったが……)

P「……」

タッタッタッ

P(……来たか)

透「はぁっ、はぁっ……ごめん。急に呼び出して」

P「ああ。お前は自分のことに集中しなきゃだめだろ」

P「俺なんかと話してる時間なんてないんじゃないのか?」

透「……」

透「冷たいね、P」

P「冷たくもするさ。他所の事務所のアイドルの邪魔なんてできないだろ。大会の真っ最中なんだし」

P「いくら幼馴染とは言っても、俺はもう大人だし、お互い仕事をしてるんだ」

透「でも、来てくれた」

P「……」

P「……はぁ」

P「何度も連絡をよこすからだよ」

透「そうすれば来てくれるかなって」

P「お前な……」

透「……」

P「話は聞いてやる。何の用なんだ?」

透「移籍の話だけど……」

P「それか……」

透「どう? 考えてくれた?」

P「ああ」

透「ふふっ、そっか」

P「移籍はしない」

透「っ……」

P「俺は、今プロデュースしてるアイドルをてっぺんまで連れて行ってやりたいんだ」

透「! てっぺん……」

透 ギリッ

P「?」

P(露骨に不愉快そうな顔をするなんて……透らしくないな)

P(何か気に障ることでも言ったか?)

透「それが、プロデューサーの考えなんだ」

P「そうだ。何度も言わないからな」

P「透。俺はお前のこと、幼馴染としてこれからも仲良くしたいと思ってるよ」

P「けどな、仕事の……アイドルのこととなれば話は別だ」

P「こういう言い方はしたくないんだが……その……」

透「邪魔しないで、って?」

P「……」

透「優しいね、Pは」

透「うん。いいんだ。そう思われても」
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/26(火) 01:18:48.86 ID:pHJp8MS8O
透「ぼk……私からも、言っていいかな」

P「……なんだ?」

透「今日言いたいのは、お願いじゃないってこと」

P「?」

透「選択、してもらうから」


〜舞台裏付近〜

雛菜「〜〜♪」

「えと、ここからの順番の確認なんだが……」

「あ、はい。次が和泉愛依さん。その次が福丸小糸さんです」

「ありがとう、あと2人でとりあえず一区切りだからな」

「やっと休憩ですね。まあ、頑張りましょう」

「ああ」

雛菜 タッタッタッ

「?」

「どうした?」

「今……女の子がいませんでしたか?」

「え、冗談だろ? 今のシフトに女子はいないけど」

「見間違えですかね」

「お前今日あれじゃん。3時間睡眠」

「あー、確かに。ロングスリーパーなんですよね、自分」

「ちゃんと寝とけって。幻覚なんか見ちまってよー」

「はいすみません」


〜予選会場 ロビー〜

P「選択? 何のことだよ」

透「そのまんまの意味」

P「いや、だからそれをだな……」

透「Pは、あの人……和泉愛依って人と、決勝に行きたい?」

P「何言ってるんだよ。そんなの、当たり前じゃないか」

透「そっか……」

P「な、なんだよ」

透「もし、私のいる事務所に来てくれればあの人は勝ち進める……って言ったら?」

P「は?」

透「それでも、Pの答えは変わらない?」

P「おいおい、俺がお前の事務所に移ることと愛依が決勝に進むことの間にどんな関係があるっていうんだよ」

透「質問しないで」

P「え……」

透「私が聞いてるでしょ」

P「透」

透「Pは選ぶだけ」

透「それだけだから」
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/26(火) 01:31:42.05 ID:pHJp8MS8O
〜舞台裏付近〜

雛菜「〜〜♪」

「なあ、審査員の評価はぶっちゃけどうなんだ?」

「お、審査員に親友がいる俺にそれ聞いちゃう?」

「気になるからなー。教えてくれないか?」

「まあ、お前とも付き合い長いしな……」

「頼むよー」

「まず、グループ1はレベルが高い」

「……それは思った」

「性格悪そうなやつも多いけどな……!」

「……まあ」

「んで、もう先に進めるやつはだいたい決まってて、残るのは1枠だとか」

「へぇー」

「ちょうど、この次に続いてる……そうそう、愛依ちゃんって子と、小糸ちゃんって子」

「この2人が?」

「その1枠の候補だって話だぜ」

「どっちかなのか……」

「ああ、このグループに振り分けられたのは運がなかったな」

「進めそうなのは?」

「今の審査員の予想だと、恐らく同点って」

「こわいな。もうそういうの考えて決めてるのか」

「じゃねーの、知らんけど。まあ、実際に見て決まらなきゃ審議だろ、この2人に関しては」

雛菜 テテテテテ

「……あれ?」

「どうしたんだよ」

「今、女の子がいたような……」

「お前、それはあれだよ」

「?」

「球場に魔物、ステージに妖精ってことだろ」

「えー」

「ほら、そろそろ仕事に戻ろうぜ」

「へーへー」


〜予選会場 ロビー〜

P「選ぶだけって……」

透「個人的なおすすめは、私の事務所に来ること、かな」

P「……」

ヴーッ

透「あ、ごめん。LINE来たわ」

透「もうちょっと待ってて……っと」

透「送信」
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/26(火) 01:50:38.61 ID:pHJp8MS8O
〜ステージ(予選) 舞台装置周辺〜

雛菜「っしょ、……っと!」タンッ

雛菜「とうちゃ〜く」

雛菜「透先輩にLINEしよ〜っと。……まだ〜ってね〜〜」

ポチッ

雛菜「……」

ピロンッ

雛菜「! もう返信来た〜」

雛菜「もうちょっと待ってて……かぁ〜」

雛菜「お兄さん、まだ選んでないんだね〜」

雛菜「雛菜的には……ま、どっちでもいいか〜」

雛菜「小糸ちゃんが進んだら幼馴染としてしあわせ〜になれるし〜〜」

雛菜「お兄さんのアイドルの人が進めば、透先輩がしあわせ〜になって――」

雛菜「――透先輩だいすきな雛菜もしあわせ〜ってなるもん!」

雛菜「早く返信来ないかな〜」

シーン

雛菜「……準備して待と〜っと」


〜予選会場 ロビー〜

透「タイムリミットだよ」

P「透、お前、何をしようとしてるんだ」

透「っ」ガシッ

P「ちょ、おま……」

P(いきなり胸倉を掴まれた!?)

ダッダダダ・・・

ダンッ

P「がっ……」

P(くそ、力任せに押されて暗がりに追いやられた……)

P(高校生の女の子に不意打ちとはいえ力で押し負けたことに情けないなと思いつつ)

P(この腕力は日々のレッスンの賜物か、だなんて。そんなことを思ってしまう自分に呆れる)

P「透、何するんだ、やめ――」

透 チュ

P「ん〜〜!!」

P「ぷはぁっ。……お前」

透「私も、二度は言わないつもりなんだ」ジイッ

P(目が据わってる……)

透「もう一度聞くから」

透「Pは、私のところに来てくれる?」

透「それとも、来てくれない?」

透「どっち……かな」

1. 透の誘いを断る。
2. 透の誘いに乗る。

選択肢↓2

(とりあえずここまで)
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/26(火) 02:23:45.25 ID:QKFfDjSDO
1 断る
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/26(火) 03:10:39.51 ID:sz+jsWFLo
断る
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/26(火) 09:43:34.27 ID:PErzPpyzO
ひななの黒幕適正が高過ぎて困る
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/26(火) 13:11:35.83 ID:QKFfDjSDO
ヤンデレモードフルドライブのまゆや琴葉でも負けそう……

闇落ちこずえなら勝つだろうけど、闇落ち由愛がいるからなぁ
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/26(火) 19:36:57.98 ID:Tt2gx2JZO
アイドル曇らせすこすこ部はここですか
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/31(日) 00:45:02.21 ID:+d6Xp6ptO
〜予選会場 ロビー〜

P「……断る」

P「俺は愛依と、……ストレイライトと、283プロでトップを目指すんだ」

P「だから、透のところには行けない」

透「……」

P「俺も、二度は言わないからな」

透「……そっか」

P「ああ」

透 クルッ

透 スタスタ

P「お、おい……どこに……」

透「……どこって、ステージだけど」

透「本番、これからだからさ」

P(透は、再びこちらを向くことなく、俺を背にしながら言った)

P「そ、そうか」

透「じゃあね」

P「……」

P(これで、良かったんだ……よな)

P(なぜ、胸のざわめきがなくならないんだ?)

透『もし、私のいる事務所に来てくれればあの人は勝ち進める……って言ったら?』

P(あれは――)

透『それでも、Pの答えは変わらない?』

P(――どういう意味だったんだろう)


〜ステージ(予選) 舞台装置周辺〜

ピロンッ

雛菜「あっ、透先輩からだ〜」

雛菜「ふむ〜〜……」

雛菜「……」

雛菜「そっか〜、透先輩……」

雛菜「フラれちゃったんだ〜、かわいそ〜〜」

雛菜「てことは〜……お兄さんのアイドルが……」

雛菜「……ま、仕方ないよね〜」

雛菜「うんうん! こればかりはしょうがない〜」

雛菜「雛菜が気にすることでもないよね〜?」

ワァァァ

雛菜「あ、そろそろだ〜」タタタ

雛菜 カチャカチャ

雛菜 ギイッ

雛菜「……やは」

雛菜「よかったね、小糸ちゃん」
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/31(日) 01:01:21.90 ID:+d6Xp6ptO
〜ステージ(予選)〜

ワァァァ

愛依「はぁ……はぁ……」

愛依(や、やり切った……!)

愛依(2回目も、うち、ちゃんとできた!)

愛依(会場の盛り上がりも、うちが見たことないくらいすっごい……)

愛依(うち、勝てたかな……)

愛依(プロデューサー、■■■、見てる?)

愛依(うち、輝いてるかな?)

ダァンッ

愛依「?」

愛依(あれ、なんだろ、いまの音)

ザワザワ

愛依(え? さ、さっきまであんなに盛り上がってたのに、なんで……)

愛依(なんで、うちのほうを見て、みんなそんな顔……)

愛依(何か言ってる? ちょっと遠くて聞こえない系なんですけど)

愛依(なんかあったのかな。みんなちょっとヤバそうなカンジだし)

愛依(とりあえず出番終わったしステージから降りなくちゃ……)スタスタ・・・

シュルルル

愛依「え――」

ガンッ

ドサッ

ゴロロロ・・・

愛依「――……」


〜予選会場 ロビー〜

P(もうとっくに愛依のステージは終わってるよな)

P(ちょっと遅いが……気にしすぎか?)

P(透とのやり取りが終わってから、どうにも不安に駆られている自分がいる)

P(様子を見に行ってみるか……)スタスタ・・・


〜ステージ前席付近入り口〜

P(くそ……外に出ようとする人に押されてなかなか入れない……)

P(なんだってこいつらは出ようとしてるんだよ。まだ予選のステージは終わってないだろ?)

P(終わったのは愛依の出番だけのはずだ)

P「す、すみません! 通してください……!」グイグイ

P(観客たちを押しのけて先へ進み、ようやく中に入ることができた)

P「はぁっ……はぁっ……」

P(あれ? 次の子の出番じゃないのか……)

P(いや、一般人が外に出ようとしてるんだから、何かあったと考えるべきだよな……)ダッ

透『もし、私のいる事務所に来てくれればあの人は勝ち進める……って言ったら?』

P「……あ。そんな――」ピタ

P(ステージの上がよく見える位置まで移動すると、視線の先には、自分のアイドルが血の海に伏せている光景があって……)

P「――愛依ッッッ!!!!!」
405 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/31(日) 01:17:32.78 ID:+d6Xp6ptO
〜???〜

愛依「……ん」パチッ

P「あ、愛依……」

P「目、覚めたか?」

愛依「あ……うん」

愛依「ここって……海?」

P「まあそうだが……今更どうしたんだ」

P「また3人でここに来ようって話だったじゃないか」

P「忘れたのか?」

愛依「……ううん。忘れてない」

愛依「そっか。ここ、あのときの海か……」

愛依(あれ、うち、確か大会の予選でステージの上にいて、それから……)

愛依(……それから?)

愛依(すぐ海に行くなんて話、あったっけ)

愛依「あ、そだ。あの子は?」

P「ほら、あそこ」

P「浜辺の砂で遊んでるよ」

愛依「ホントだ。かっわいー」

P「一緒にやってあげたらどうだ」

愛依「そだね。じゃあ――」

愛依「――プロデューサーも一緒にやってよ」


P「ふぅ……」

「……」ニコ

愛依「いや〜、ずいぶん立派なお城になったってカンジ?」

P「だな……。一度波に流されたことは涙なしには語れまい……」

愛依「あっはは、なにそれ〜」

愛依「ま、ここなら波も来なそーだし、大丈夫っしょ!」

「……」コクッ

P「っと、気づけばもう日が沈む寸前か」

P「……帰ろうか」

P「ほら、手繋ごう。愛依、■■■」

「……ん」

P スタスタ

「……」テテテ

愛依「……え。ちょっ……! そっち海じゃん!! 帰り道はあっちっしょ!!!」

P「ほら、愛依も早く来いよ」

「……」フリフリ

愛依「……」ザッ

P「早く早く……」

愛依 ザッ・・・ザッ・・・

――愛依ッッッ!!!!!

愛依「!」
406 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/31(日) 01:24:22.05 ID:+d6Xp6ptO
――戻って来てくれ、愛依!!!

愛依「……プロデューサー」

P「どうした? 早く行こうぜ」

「……」

愛依「違う」

P「?」

愛依「うちが行きたいのは……行かなきゃいけないのは、そっちじゃない」

――くっ、くぅぅっ……愛依……。

愛依「もう……プロデューサー……」

P「こっちには、来てくれないのか」

愛依「うん。うちにはさ、待ってくれてる人、いるから」

P「そうか……」

愛依「じゃね! お城作り、チョー楽しかった!」

愛依 クルッ

愛依 タッタッタッ

愛依(帰らなきゃ……)

愛依 タタタタタ

愛依(戻らなきゃ……!)

愛依「プロデューサー!!」

愛依(あそこにある駅で電車乗って行けば……)

愛依「はぁっ、はぁっ……」

愛依「あと、少し……」グラッ

愛依(あ、あれ……?)

愛依(なんか、カラダが思うように動かないっぽいんだけど……)

愛依(やば、もう……)フラッ

ドサッ
407 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/31(日) 01:34:37.09 ID:+d6Xp6ptO
〜???〜

チリン

愛依「……ん」パチッ

愛依「っと、……うち寝てたんだ」

P「起きたか、愛依」

愛依「プロデューサー……」

チリン

愛依「あ、風鈴」

P「あの時に3人で買ったやつだよ。あの子が事務所に持ってきてくれたんだ」

愛依「ここは……事務所なんだ」

P「ははっ。どうしたんだよ」

P「愛依が今いるのは283プロの事務所のソファーじゃないか」

P「まだ寝起きみたいだ。コーヒーでも飲むか?」

愛依「いや、大丈夫……もう目覚めたし」

P「そうか」

愛依「んーっ!」ノビー

愛依「っはぁ……」

愛依(うちは……帰ってこれたカンジ?)

愛依「あれ、あの子は?」

P「……」

愛依「プロデューサー?」

P「ははっ。さあ、どこだろうな」

愛依「?」

サッ

愛依「わっ!?」

愛依(急に目の前が真っ暗になったんですけど!)

「……」

愛依「く、暗い……何がおこってるん?」

「……だれだー」

愛依「……」

「……」

愛依「……ぷっ」

愛依「あっははは。そーゆーコトね」

愛依「いいの? うち当てちゃうよ?」

「……ん」

愛依「■■■でしょ」

「……」パッ

愛依「わ、まぶし……」クルッ

愛依「……あったり〜。うち、せいか〜い」

愛依「も〜、いつからそんないたずらする子になったん?」

「……」

愛依「そんな悪い子にはくすぐりの刑〜〜!」コチョコチョ

「……!」ケラケラ
408 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/31(日) 01:49:11.28 ID:+d6Xp6ptO
愛依「って、もうこんな時間じゃん!」

愛依「プロデューサー……そろそろこの子帰らせないとまずくね?」

P「ん? なんでだ?」

愛依「……え?」

P「だって、俺たちは3人でここに住んでるじゃないか」

P「帰るも何もないだろう」

愛依「……」

P「俺たち“家族”3人、事務所のビルの中で仲良く暮らしてるんだ」

P「愛依も、それで問題ないだろ?」

愛依「……」

P「“家族”は……嫌か?」

愛依「ううん。そんなわけない」

P「じゃあ、帰らなくてもいいだろ」

P「愛依が望んでるんじゃないのか?」

P「家庭を持って仲良く暮らすということを」

愛依「それは……」

――起きてくれ、頼む……!

愛依「!!」

――愛依……お前が目を覚まさないと、俺は……。

愛依「……」

P「どうかしたのか?」

「……」

愛依「ごめんね。うち、やっぱ帰んなきゃだわ」

P「え、どうして……」

愛依「うちさ、プロデューサーのことが好き。ううん……大好き」

愛依「3人で過ごした時間は……うちにとって宝物みたいなもんだよ」

P「じゃ、じゃあ……ここにいればいいじゃないか……!」

愛依「ま、それも悪くないかもなんだけどさ」

P「ここでなら、愛依の理想は……望めばいくらでも叶うんだぞ?」

P「それでも、行くって言うのか?」

愛依「うん! 行かないと」

愛依「思い通りに行かないことも全部、乗り越えないといけないから」

愛依「うちを呼んでる人、待ってる人、一緒に戦ってくれる人がいるんだよね」

愛依「うちがいるべきなのは、そこなんだと思う」スタスタ

P「愛依……」

愛依「大丈夫。うちを信じてよ」

愛依「あんたも、プロデューサーなんでしょ?」

愛依「ならさ……応援しててくれるほうが、うちは嬉しいかな」

P「……わかった」

愛依「あれ、割とすんなり受け入れた系?」

P「言ったって聞かないんだろ。なら、俺は“プロデューサーとして”、自分の足で歩む愛依を見送るよ」

愛依「あっはは……サンキュね」ガチャ

愛依「いってきます」ダッ
409 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/31(日) 02:06:22.29 ID:+d6Xp6ptO
〜病院 病室(2人部屋)〜

ピッ・・・ピッ・・・

P「愛依……」

ガラララ

冬優子「ほら、売店で水買ってきてやったわよ」

P「……」

冬優子「……あんた、やっぱ一昨日から寝てないでしょ」

冬優子「お仕事ですぐに駆けつけられなかったけど、それくらいわかるわよ」

P「……」

冬優子「ふゆだって、心の中はぐっちゃぐちゃだし泣きたい気持ちもあるけど」

冬優子「それはふゆの問題。愛依にそんなふゆを見せたくないの」

冬優子「だから……あんたもよ」

冬優子「目を覚ました瞬間にやつれたあんたの顔を拝まされる愛依の気持ちも考えなさい」

P「……すまん」

冬優子「ふん、謝罪ではなく感謝を要求してやるわ」

P「……そうだな。ありがとう」

P「あさひはもう帰ったのか?」

冬優子「はづきさんが送ってくれたみたい」

P「そうか……良かった……。もう、遅いからな……」

P「……」

冬優子「隣、座るわね」

P「……ああ」

冬優子「っしょ、っと」

P「……」ボソッ

P「……」ブツブツ

冬優子「……はぁ」

冬優子「もしかしてあんた、自分を責めてるの?」

P「っ!?」ビクッ

冬優子「わっ……急にビクってしないでよね。こっちまで驚いたじゃない……」

冬優子「一体、何があったの……?」

P「……何があったのかは、俺にもわからない」

P「けど、……けど!」

P「俺は選んでしまった……!」

透『もし、私のいる事務所に来てくれればあの人は勝ち進める……って言ったら?』

P「あの時、事務所を移るって言っていれば……あるいは……」

冬優子「……話してみなさい」

P「え?」

冬優子「ふゆがあんたの話聞いてあげるって言ってんの」

P「……言ったって、俺のことを頭のおかしいやつだと思うだけだよ」

冬優子「安心していいわ。もう頭のおかしいやつだって思ってるから」

P「……」

冬優子「じょ、冗談に決まってるでしょ……! ったく……」

冬優子「ふゆはちゃんと聞くわよ。いいから、話してみて」
410 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/31(日) 02:27:09.95 ID:+d6Xp6ptO
P「……と、いうわけなんだ」

冬優子「……」

P「冬優子?」

冬優子「あ、え? ご、ごめん……」

P「なんで冬優子が謝るんだよ」

冬優子「う、ううん。なんでもない」

冬優子「そう……選択を迫られたのね」

P「俺が透の事務所に行くって言っていれば、こんなことはならずに済んだんだ……!」

P「愛依は、俺のせいで……」

冬優子「……それは違うわ」

P「……え?」

冬優子「あんたは何も悪くない」

冬優子「ふゆが保証するわ」

冬優子「だいたい、事務所を移ればいいってどういうことよ。それこそ、ふざけんなって話じゃない」

冬優子「あんたは自分の選択に自信を持っていい……ううん、持たないといけないの」

冬優子「ずっとふゆたちの……愛依のプロデューサーで在り続けるって決めたんでしょ?」

冬優子「あんたがそれを諦めちゃったら、ふゆたちは……愛依はどんな顔すると思う?」

P「それは……」

冬優子「だいたい、幼馴染だかなんだか知らないけど、その透とかいうやつに踊らされるなっての!」

冬優子「自分のそばにいるのは誰なのか……それをちゃんと考えてよね」

P「……そうだな」

P「ありがとう、冬優子」

冬優子「お礼を言われる筋合いなんてないわよ。当たり前のことをわかってないやつに、当たり前のことを突きつけてやっただけなんだから」

P「ははっ……」

冬優子「もう……」

冬優子「ま、あんたはそういう顔してたほうがいい」

冬優子「聞いた話だけど、愛依がステージから出ようとした瞬間の事故で、うまく急所を避けて致命傷にはなってないみたいだし」

冬優子「ふゆたちは、……あんたは」

冬優子「愛依が目を覚ましたときのことを考えてりゃいいのよ。たぶんね」

P「俺たちが暗いムードじゃ、愛依も気が滅入るってもんだよな」

冬優子「……駄洒落?」

P「……違う」

冬優子「そ……」

P「……」ウトウト

冬優子「いまにも寝そうじゃない」

P「いつ愛依が目を覚ますかわからないんだ……俺は起きていたい……」

冬優子「ばっかじゃないの? 寝ない限りそのやつれた顔は治んないわよ」

冬優子「……もう1人のベッドはいま空いてて部外者はいない、か」

冬優子「ほら、特大サービスでふゆの膝を貸してあげる」

冬優子「いまはそれで妥協して。ま、愛依が目を覚ませば、いくらでもやってもらえるんだろうけど」

P「でも……愛依の前でそれは……」

冬優子「ふゆはここまでの移動中に結構寝てるから、夜明けくらいまでは大丈夫。そのときか愛依が目を覚ますまでは、ふゆが起きて膝貸してあげるから、しっかり寝て回復すること」

冬優子「ちゃんと、愛依が起きる頃には――愛依の大好きなあんたでいてあげなさい」
411 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/31(日) 02:28:09.61 ID:+d6Xp6ptO
とりあえずここまで。
412 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/31(日) 03:07:44.33 ID:n1revpZfo
おつおつ
うう…冬優子……
413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/02/01(月) 01:32:53.44 ID:J3Dhi4ZsO
〜病院 病室(2人部屋)〜

P「zzzZZZ……」

愛依「プロデューサー、もういい時間だし起きたほうがよくね?」

P「……ん」

P「ふわぁぁ……いま何時だ?」パチッ

愛依「もう昼の12時だよ」

P「そんなに寝てたのか……」

P「……」

P「……って、め、愛依!?」

愛依「わっ、びっくりした」

P「お前……目が覚めたのか?」

愛依「あっはは、起きてる相手にそれ聞くのってなんか変じゃね?」

P「い、いや、それはそうなんだけど……!」

P「そうか……良かった、良かった……!」

愛依「ごめんねー、プロデューサー。心配かけちゃって」

愛依「……寝てるときにさ、聞こえたんだよね」

愛依「プロデューサーが戻って来てくれって言うのが」

愛依「だからさ、うち、プロデューサーに応えたよ」

P「ああ……、ああ……!」

愛依「もー、そんな顔しないー!」

愛依「どうせなら喜んでよ。ね?」

愛依「嬉しいときは笑うもんっしょ?」

P「ははっ……そうだな。そう、だよな」

愛依「そーそー、そんな感じがいいって」

P「怪我は……」

愛依「あー、それ聞いちゃう?」

P「す、すまん。でも、本人からどんな感じなのかは聞きたくてな」

愛依「怪我はねー……うん、ハッキリ言ってちょーヤバい」

愛依「身体は動かそうとすれば動くんだけど、もう骨とかヤバい折れてるから痛くてムリだし」

愛依「頭は……中身は大丈夫なんだけど外は傷だらけってゆーか」

愛依「ま、生きてるからオッケーって思ってるとこ」

愛依「医者の先生もチメイショー? はいろいろと避けられてるって言ってたし」

愛依「いまはこんなんだけどさ、ちゃんと元気な状態になって帰りたいなって思ってる」

P「愛依……」

愛依「はい、その顔禁止! プロデューサーが悪いわけじゃないんだし、落ち込まれるとうちまで悲しくなっちゃう」

P「っ……」

P(俺は悪くない、か……)

P(結局のところ、それについて自分で納得できていないのは確かだった)

P(冬優子はああやって言ってくれたのにな……)

愛依「せめて腕が動けばな〜。プロデューサーのことぎゅーってしてあげられんのに」

P「ははっ、それはなんとも……その、恥ずかしいな」

愛依「あっ、……だ、だって、この部屋いま2人きりだし!」

愛依「うちプロデューサーのこと好きだし、別にいいんじゃん……?」ボソボソ
414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/02/01(月) 01:57:11.42 ID:J3Dhi4ZsO
P「あの……前からそう言ってくれてるけど、その「好き」って……」

愛依「ま、まあ……ブだけど」

P「?」

愛依「だからー! ラブのほうだって!」

愛依「最初の予選のときだって、あ、愛してるってちゃんと言ったし!」

P「いや、疑ってるとかじゃないんだ! ただ、なんというか、ギャルが急にそうやって言い切るっていうのは、どこか“ノリ”のようなものを感じてしまってな……」

愛依「マジか! うちギャルやめようかな……」

P「まあ、俺の偏見もあるんだ。すまない」

P「ギャルはやめなくてもいいぞ」

愛依「ちなみに……さ、プロデューサーは、その……どうなん?」

愛依「一応? うちは告ったわけだし、返事とか」

愛依「あ、アイドルのプロデューサーだから〜とかはナシ! うちのこと、ただの女の子だと思ってさ、プロデューサーもプロデューサーじゃないって思って答えてほしいなって」

愛依「〜〜〜っ! なんか言っててちょーハズかしくなってきたんですけど! 怪我で顔隠せないしヤバすぎ……」

P「……」

P「言い訳にしかならないが、これまでは良くも悪くも忙しい日々を過ごしてきたと思う」

P「ストレイライトとして、1人のアイドル「和泉愛依」として愛依は頑張ってきて……」

P「……俺はプロデューサーとして支えてきたつもりだ」

P「プライベートで一緒に過ごしてきた時間はまだ短い。最近まではほとんどなかったと言ってもいい」

P「けど……そうだな。あの子がそれを変えてくれたかもしれない」

P「あの子が……愛依という1人の女の子と過ごすことの意味を教えてくれたような気がする」

P「愛依との家族……それを実感の湧く形で想像できた。それで気づいたんだ。俺は最早仕事という範疇を超えて愛依のことを想っていると」

P「だから……うん」

P「これから約10秒ほど、俺は期間限定でプロデューサーを辞めて喋ろうと思う」

P「……」

P「俺も愛依が好きだ。愛している」

愛依「P……」

P「ずっと一緒にいたいと、そう思っているよ」

P「っと、たった今プロデューサーに戻ったところだ」

愛依「あはは……なんだ、めっちゃ嬉しいんですけど……」グスッ

P「ど、どうして泣くんだよ」

愛依「え〜? 嬉しいから?」

P「嬉しい時は笑うんじゃないのか?」

愛依「だから笑ってるじゃん。泣いちゃだめとは言ってないからセーフ」

P「なるほど……」

愛依「……ねえ、プロデューサー」

愛依「もう1回だけプロデューサー辞められない?」

P「そこだけ切り取るとすごい発言だな……。なんでだ?」

愛依「その……さ。……ス、してよ」

P「?」

愛依「もー、……キス! うち怪我してて全然動けないから、して欲しいの!」

P「おまっ……突然何言って……」

愛依「早くしてよ……。もうハズくて辛いんだから」

P「あ、ああ……。じゃあ、いくぞ……」ソーッ
415 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/02/01(月) 02:24:18.40 ID:J3Dhi4ZsO
あさひ「プロデューサーさん! 目は覚めたっすか!?」ガラララ

P「……」

愛依「……」

あさひ「あれっ。なんで2人ともそっぽ向き合ってるんすかね」

冬優子「きっとお邪魔だったのよ、ふゆたちがね」

あさひ「???」

冬優子「あんたにはまだ難しいってこと」

あさひ「えー、それじゃあわかんないっす!」

冬優子「新しいタイプのあっちむいてホイよ」

あさひ「ホントっすか!? わたしにも教えて欲しいっす!」

冬優子「はいはい、それはまた今度。ここは病院なんだから」

あさひ「うー、つまんないっす」トボトボ

冬優子「はぁ……」

冬優子「2人とも、そろそろ普通にしたら?」

P「……なんでもないぞ」

冬優子「嘘乙」

愛依「……うちが負けたんだよね」

冬優子「新しいあっちむいてホイの設定続けなくていいから。あんたは首痛めてるんだから変に動かすんじゃないわよ」

あさひ「あれっ」

P「どうした、あさひ。俺の顔なんか覗き込んで」

あさひ「愛依ちゃんはなんとなく元気そうなんすけど……プロデューサーさんはそうじゃないみたいっすね」

P「そうか……? 別にそんなことは……」

冬優子「……あるわよ。まだ寝足りないんでしょ。ったく」

P「ははっ……これは参ったな」

冬優子「他人の心配もいいけど、自分の心配を忘れてるのよ、あんたは」

冬優子「愛依はちゃんと目を覚ましてて、怪我は回復を待つだけなんだから」

あさひ「愛依ちゃんと早く遊びたいっす〜」

愛依「ごめんね〜あさひちゃん。しばらくムリっぽいわ」

愛依「怪我治ったら絶対あそぼ! ね?」

あさひ「はいっす! 約束っすよ、愛依ちゃん!」

P「……はは、なんだか懐かしいな」

あさひ「?」

P「いや、なんでもないよ。ただ、当たり前がこんなに嬉しいなんて……って、そう思っただけだ」

P「俺はずっと狭い視野で戦っていたのかもな……」

愛依「ま、それは大会のやり方的にしょーがないっしょ」

愛依「大会はもうダメだけどさ、とりあえずまたアイドルやりたいし、それまでは全力で治すから」

愛依「絶対に、3人で――ストレイライトで、プロデューサーとトップ目指したい」

愛依「うちはそう思ってる」

冬優子「当然。ふゆもそのつもり」

冬優子「あんたはどうなの、あさひ」

あさひ「あ、ベッドの下に何か隠してるとかはないんすね」モゾモゾ

冬優子「……」

P「ま、まあ。あさひだってきっと同じ気持ちのはずだ」
416 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/02/01(月) 02:25:09.17 ID:J3Dhi4ZsO
眠すぎるので一旦ここまで。
417 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/01(月) 10:49:49.72 ID:xy2OhVEgO
おつおつ
膝枕してくれて愛依が起きるまでには退散ってふゆいい女すぎひん……?
418 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/02/03(水) 01:03:10.16 ID:79rSCjCkO
冬優子「っと、そろそろね。……あさひ!」

冬優子「行くわよ」

あさひ「?」ヒョコ

冬優子「レッスン。今日はトレーナーの都合で遅い時間だから」

あさひ「あ、そうだったっすね」

あさひ「じゃ、愛依ちゃん、プロデューサーさん、また後で!」

冬優子「今度こそふゆたちは帰るから、2人とも好きにしていいわよ」ニッ

愛依「も〜! 冬優子ちゃん……」

P「か、からかうなって……」

冬優子「はいはい」

冬優子 ガラララ

冬優子「……あ」

冬優子「プロデューサー」

P「俺か?」

冬優子「連絡。はづきさんからあると思うから。見といて」

P「お、おう。わかった」

フユコチャーン ハヤクイクッスヨー

冬優子「そういうことだから」

P「……冬優子!」

冬優子「……何?」

P「ありがとう」

P「……それが言いたかった」

冬優子「ふふっ、あっそ」

ガラララ

ピシャッ

P「……」

愛依「……」

P「……」

愛依「また、2人きり〜みたいな?」

P「そ、そうだな」

愛依「……っ」

P「ははっ……こんな時、どんなことを言えばいいのか……なんだかよくわからなくてな」

愛依「あはは、なにそれ」

愛依「別にいいって、そういうんはさ」

愛依「うちは……プロデューサーには一緒にいてもらえたら満足だし」

P「愛依……」

愛依「……あのね、プロデューs――」

イヤァァァァァッ

愛依「――っ!?」

P「な、なんだ……!? 叫び声が聞こえた気がするが……」

愛依「病院ってこういうことあるん?」

P「さあな……静かなイメージがあったけど」

P(悲鳴の声が聞き覚えのあるものだったような……気のせいか?)
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/02/03(水) 01:29:24.00 ID:79rSCjCkO
コンコンコン

P(ノック……?)

ガラララ

「失礼しますねー」

P(車椅子に乗った老人が、挨拶をしながら入ってきた看護師に押されて部屋にやってきた)

P(そういえば……ここは2人部屋だったな)

P(愛依が入院することになり、俺は当然個室を希望したのだが、どうしても空きがなく、一時的にこの部屋に入ることになった――というのが経緯だ)

P(もっとも、今来た老人がこの部屋にいることは珍しく、数日くらいなら貸し切り状態だと言われていたんだが……)

P(既に愛依は芸能人だし、部外者がいる状態でのやり取りには気をつけないとな……)

P(まあ、老人の状態を見るに、気にしなくても大丈夫なように思えてしまうが、それでも俺たちはプロだから注意しなければならない)

「あ、個室の件なんですけど」

P「えっ、あ……はい」

「無事退院された方がいまして、明日には個室の方を案内できますので、今日だけ相部屋になってしまいますが、ご容赦いただければ……」

P「わかりました。ただ、準備が整い次第、個室に案内するようにしてください」

「承知いたしました」

P「よろしくお願いします」

愛依「あ、うち部屋移動するん?」

P「愛依も立派なゲーノー人……いや、アイドルだからな」

愛依「そっか……そうだね」

愛依「でも、そっか〜……。プロデューサーに立派なアイドルとか改めて言われると照れるわ〜!」

P「ちょっ、声がでかい……!」

愛依「ヤバっ、ごめん……」

P「……はぁ。……ははっ、なんだか、愛依は元気だな」

愛依「え〜? なんで笑うし」

P「いや、だって今そんな状態じゃん」

愛依「確かにミイラみたいになってるけどさー……あ、いまの自撮りして投稿したらウケるかも!」

P「腕は動かせないから自重しような……」

愛依「う〜、つまんないっす〜」

P「なんだよそれ。あさひの真似か?」

愛依「そんなとこ。なんとなくやってみたくなった」

P「ストレイライトが恋しいか?」

愛依「そりゃー……ね。最近あんまし揃ってなかったしさ」

P「また、事務所で“いつも通り”ができたらいいな」

愛依「うん」

P「……あ。そうだ。冬優子にはづきさんからの連絡を見るよう言われてたんだ」ポチポチ

P「っと……先週から来週までの冬優子とあさひの仕事のまとめか」

P(愛依の予定の振り替えも書いてあるが、今は読むだけで会話では触れないでおこう)

P「……ここまで、か。……いや、違うか、これは……」

P(メールの末尾を見ると、俺が1週間休職することが確定したと書いてあった。はづきさんなりの配慮なのかもしれない)

「あのー、すみません」

P「えっと……はい。なんでしょうか」

「いまお連れした患者さんなんですが、ああ見えてアイドルの番組を観てるときが一番落ち着くみたいなんです。ベテランの看護師の先輩が教えてくれまして」

「何かおすすめの番組とかあれば……。私はアイドルのことをあまり知らないので」
420 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/02/03(水) 01:55:30.99 ID:79rSCjCkO
P「そうですね……。宣伝するようで恐縮ですが、もう少しするとうちの黛の出ているバラエティ番組が始まります」

P(ちょうど今はづきさんからの連絡で見たことだからすぐ出てきたな)

P(放送局を伝えると、看護師はテレビのリモコンを操作して件の番組を観る準備をしてくれた)

P(何かあればナースコールを、と老人に言って、看護師は部屋を出て行った)

P(しかし……、この老人がアイドルの番組を……)

P(人を見た目で判断するのもどうかと思うが、全く想像のつかない趣味を持つものだと思ってしまった)

P(どのような顔の老人だったか……そう思って改めて顔を見る)

P「……!」

P(一瞬、目が合って、睨まれたような気がした)

P(いや、気のせい……だろうか)

P(老人は、俺から視線を外すと、俺と愛依のいる方をじぃっと眺めてから、はじまった番組のあるテレビの方に視線を戻した)

P(俺も、愛依のほうに視線を戻す)

P「愛依――」

愛依 ウトウト

愛依「……っ、プロデューサー。ごめん、うち寝ちゃってたみたい」

P「――いや、いいんだ。むしろ、怪我人なんだからちゃんと休まなきゃだめだぞ」

愛依「わかった……じゃあ、ちょっと寝るわ」

愛依「おやすみ、プロデューサー……」

P「ああ。おやすみ、愛依」

愛依「……プロデューサー」

P「なんだ?」

愛依「うちの手……握ってて。手は、別に怪我とかないし」

P「わかった。……こうか?」ギュッ

愛依「うん。ありがと」キュッ

P(そう言って、愛依は弱く握り返してきた)

愛依「……あったかい」

愛依「あんしん、する……」

愛依「……」

愛依「……zzzZZZ」

P(今まで、どれほどのものを愛依は抱え込んできたんだろう。愛依は、明るい性格だし大雑把で楽天的なところもあるが――)

P(――だとしても、アイドルとしてはキャラを作っているわけで、大会で1人で戦う中でかなり消耗したのではないかと思う)

P(皮肉にも、今回は愛依をきちんと休ませることができてしまっているのかもな……)

P(俺にできることは……少なくとも今は一緒にいて寄り添うことだろうか)

愛依『うちは……プロデューサーには一緒にいてもらえたら満足だし』

P「大丈夫だ。俺はどこにも行かない」

P(そう。あの時だって――)

P『俺は愛依と、……ストレイライトと、283プロでトップを目指すんだ』

P『だから、透のところには行けない』

P(――そう胸を張って言ったんだ)

ヴーッ

P「……通知?」

冬優子<あさひがまた消えて捜索中な件。

冬優子<あ、見つけたわ。というわけで心配しなくて大丈夫だから。
421 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/02/03(水) 02:00:25.82 ID:79rSCjCkO
とりあえずここまで。
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/03(水) 02:21:49.56 ID:mUq4GL2DO
悲鳴に老人……まだまだ波乱は続く
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/02/13(土) 00:16:11.19 ID:bbZhcn2eO
3週間後。

〜病院 病室(個室)〜

P(あれから、愛依はすぐに個室へと移動することになった)

P(結局、俺の臨時休暇が終わってからは、仕事の都合で一度も見舞いに来てやることができなかった)

P(今日はようやく時間がとれて1週間ぶりくらいに病院に来た形だ――が……)

P「……愛依がいない」

P(いきなり来てしまったというのはあるけど、まさかいないなんてな)

P「……」

ガララ

「あ、和泉さんの」

P「え、あぁ……いつも愛依がお世話になっております」

「プロデューサーさん、でしたよね」

P「はい、そうです」

「和泉さんでしたら、今はリハビリ中ですよ」

「様子を見るとかであれば、こちらに……」

P(看護師に案内され、俺はリハビリをしているという愛依のもとへと向かった)


〜リハビリテーション室〜

カツッ、カンッ

愛依「……っ、く……」

カンッ

愛依「っし……!」

スルッ

愛依「あ――」

ドタッ

愛依「――っ」

愛依「……」


「あちらです」

P「あ、はい……」

P(愛依、頑張ってるな……)

P(でも、遠くから見てもわかる。わかって、しまう――)

P(――愛依が、辛い思いをしながらあそこにいるということを)

「では、私はこれで」

P「……」


カツッ、カンッ

カンッ

カツッ

愛依「……った」

愛依「はぁっ……はぁっ……」
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