【艦これ】旗風「誰が風を見たでしょう」

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1 :今回は1作目と似たような世界観です ◆3XajO/Hvp6 [saga]:2020/10/17(土) 22:21:45.80 ID:tgAgKwQx0




朝風:朝に吹く風

春風:春に吹く風

雪風:地吹雪、雪混じりの強風

天津風:空高く、天を吹き抜ける風

太刀風:太刀を振る勢いで生じる風

沢風:沢に吹く風





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1602940905
2 : ◆3XajO/Hvp6 [saga]:2020/10/17(土) 22:23:28.04 ID:tgAgKwQx0




───── 2020年 呉港



はたかぜ「護衛……もとい! 練習艦はたかぜ、本日付で練習艦隊第1練習隊に配属となりました。よろしくお願い致します」

かしま「はいっ、よろしくお願いします」


はたかぜ「……申し訳ありません。どうにもまだ護衛艦気分が抜けなくて」

かしま「ふふっ、護衛艦から異動の方は大体皆さんそうですよ」



3 : ◆3XajO/Hvp6 [saga]:2020/10/17(土) 22:24:53.04 ID:tgAgKwQx0




かしま「あ、そうだ。良かったらこれを」スッ

はたかぜ「これは?」

はたかぜ「第4護衛隊群の、広報誌……?」


かしま「妹さんの書かれた文が載っているんですよ」

はたかぜ「! しまかぜさんが……?」



4 : ◆3XajO/Hvp6 [saga]:2020/10/17(土) 22:26:23.10 ID:tgAgKwQx0




═ ═ ═ ═ ═ ═



誰が風を見たでしょう
僕もあなたも見やしない
けれど木の葉をふるわせて
風は通りぬけてゆく

誰が風を見たでしょう
あなたも僕も見やしない
けれど樹立が頭をさげて
風は通りすぎてゆく



これは、クリスティーナ・ロセッティというイギリスの詩人が書き、西条八十という日本の詩人により訳された「風」という詩です。

何年か前に有名なアニメ映画でも取り上げられたので、知っている方も多いかもしれません。

私の姉「はたかぜ」は、この詩が大のお気に入りでした。



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5 : ◆3XajO/Hvp6 [saga]:2020/10/17(土) 22:28:03.32 ID:tgAgKwQx0





………
……………



───── 1993年



こんごう「私から目を離しちゃNoなんだからネ!」ジャーン

<アレガ「コンゴウ」カー
<スゲー



しまかぜ「イージス艦かぁ」


はたかぜ「……」

はたかぜ「ごめんなさいね、しまかぜさん」


しまかぜ「え?」



6 : ◆3XajO/Hvp6 [saga]:2020/10/17(土) 22:30:24.07 ID:tgAgKwQx0




はたかぜ「本当はもっと賑やかな姉妹になるはずだったのに……私の性能が足りないから」


しまかぜ「……」

しまかぜ「えーいっ!」ボスッ

はたかぜ「きゃっ! ど、どうしたのしまかぜさん!?」


しまかぜ「別にいいの。賑やかじゃなくても、2人姉妹でも」

しまかぜ「私にはお姉ちゃんがいるもん。それでいいの!」


はたかぜ「しまかぜさん……」


しまかぜ「へへへっ」

はたかぜ「……ありがとう」



7 : ◆3XajO/Hvp6 [saga]:2020/10/17(土) 22:31:46.88 ID:tgAgKwQx0




しまかぜ「ところで!」

はたかぜ「! な、何でしょう?」ビクッ

しまかぜ「さっきから何を読んでるのかなーって思って」

はたかぜ「あぁ、これは『詩集』ですよ」

しまかぜ「ししゅー?」

はたかぜ「そう。色々な詩が載っているんです」

しまかぜ「ふーん……」



8 : ◆3XajO/Hvp6 [saga]:2020/10/17(土) 22:32:57.25 ID:tgAgKwQx0




はたかぜ「しまかぜさんも読んでみたらどうですか? 貸してあげますから」

しまかぜ「でも、詩って何だか難しくって。それに字だけの本読んでると眠くなっちゃうから……」

はたかぜ「私も決して詩の意味を全部理解している訳じゃないけれど、自分なりに解釈をして読んでいくのも楽しいですよ?」

しまかぜ「なるほどねー」



しまかぜ「……ちなみに、お姉ちゃんはどの詩が一番好きなの?」



9 : ◆3XajO/Hvp6 [saga]:2020/10/17(土) 22:33:49.71 ID:tgAgKwQx0




═ ═ ═ ═ ═ ═



その問いの答えとして返ってきたのが、先述の「風」という詩でした。

私たち姉妹はイージス以前の歴代DDG同様「〜かぜ」という艦名を名乗るので、てっきりそこに親近感を抱いているのかなと思っていたのですが───



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10 : ◆3XajO/Hvp6 [saga]:2020/10/17(土) 22:35:20.10 ID:tgAgKwQx0




しまかぜ「これってどういう意味なの?」


はたかぜ「えぇと……しまかぜさんは、そもそも『風』を見たことがありますか?」

しまかぜ「え? そりゃあるよー! 今もほら、信号旗が揺れてるじゃん」

はたかぜ「それは『風ではためいている旗』を見ているだけでしょう?」

しまかぜ「おうっ!?」


はたかぜ「ふふっ……。つまり、風というものは目には見えないから存在しないかのように思えるけれど、旗をはためかせるように、木の葉をふるわせるように、確かにそこにある───こんなところかしら」



11 : ◆3XajO/Hvp6 [saga]:2020/10/17(土) 22:36:26.75 ID:tgAgKwQx0




はたかぜ「……この詩は、私たちのことを言っているように思うんです」


しまかぜ「私たちのこと……?」


はたかぜ「一見存在しないように思えても、確かにそこに存在している」

はたかぜ「『防衛力』というものは、まさにそうあるべきだと思うから」



12 : ◆3XajO/Hvp6 [saga]:2020/10/17(土) 22:37:15.48 ID:tgAgKwQx0




しまかぜ「……」


はたかぜ「存在をアピールすることも……例えば観艦式のような形で時に必要となるけれど、力を必要以上に誇示したりはしない」

はたかぜ「その上で、こちらの力を『相手』に悟らせて、攻める意欲を削ぐ」


はたかぜ「……これが、私たちが達せられる唯一の『勝利』だから」



13 : ◆3XajO/Hvp6 [saga]:2020/10/17(土) 22:38:35.64 ID:tgAgKwQx0




しまかぜ「……厳しい戦いだね」


はたかぜ「そうですね。何せ……もう40年近く続けている戦いなんですから」

しまかぜ「40年? ……あ、創隊からってこと?」

はたかぜ「ええ。もっとも、海上警備隊時代から言えば40年を過ぎている訳ですが」



14 : ◆3XajO/Hvp6 [saga]:2020/10/17(土) 22:39:39.80 ID:tgAgKwQx0




しまかぜ「じゃあ、この40年勝ち続けなんだね私たち。曲がりなりにもさ」

はたかぜ「言われてみれば、そうかもしれませんね」


しまかぜ「よぉーし! これからも勝ち続けるぞー!」エイエイオー

はたかぜ「おー! ……ふふっ」

しまかぜ「にひひっ」



……………
………




15 : ◆3XajO/Hvp6 [saga]:2020/10/17(土) 22:42:00.45 ID:tgAgKwQx0




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今回この文章を書くに当たり、この時のことを思い出していると、ふと先日見たテレビ番組の内容が頭を過りました。

それは奈良の正倉院についての特集だったのですが、国宝であり世界遺産でもあるこの建物は、遠く奈良時代から現代まで数多くの貴重な文化財を伝えているそうです。

これら文化財が盗難されず現代まで残っている理由、それは勅命により為された封印、すなわち「勅封」があったからにほかなりません。

しかし、現実の勅封は、やろうと思えば誰にでも破ることのできそうな麻縄と紙でしかありません。

それが破られていないのは、人々に「これを破ってはならない」という、言わば「心の鍵」をかけたからだったのではないでしょうか。



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