P「あいつらに会いたい」

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1 : ◆nx90flyJCa6p [sage]:2020/10/19(月) 23:51:19.57 ID:0wVWj0kD0
春香「ミュージカル?」

P「ああ。オリジナルストーリーで、
  765プロのアイドル全員とスクール生に出演してもらう」

響「スクール生も?」

P「みんな来月にはうちと契約して
  正式に765プロのアイドルとして活動していくことになる。
  最初の大舞台としてこのミュージカルに出演してもらう」

律子「とはいってもあの子たちに大役を任せるのはまだ荷が重いでしょうから、
   アンサンブルキャストとして出てもらうことになるわね」

亜美「あ、あんちゃん……」

真美「ぶるどっぐ……?」

伊織「アンサンブルキャスト! 役名のない登場人物ってことよ」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1603119079
2 : ◆nx90flyJCa6p [sage]:2020/10/19(月) 23:53:27.94 ID:0wVWj0kD0
真「52人全員が出るのか〜。なんだか全然想像つかないや」

律子「私は出ないわよ」

真「えっ、律子出ないの?」

律子「今回は裏方に徹することにしたの。
   さすがにプロデューサー一人で52人をまとめ上げるのは困難でしょ」

P「俺としては律子にも出てほしいんだけどな」

亜美「え〜、律ちゃん出ないの〜?」

真美「出ようよ〜。律ちゃんのファンが悲しむよ〜?」

律子「それをいわれると弱いけど、
   プロデューサーとしての経験も徐々に積んでいかないと」

伊織「……律子、本当にアイドルを辞めてプロデューサーになるつもりなのね」

真「寂しくなるなぁ」

律子「ち、ちょっと、そんなしんみりしないでよ。別に765プロを辞めるわけじゃないんだから」

貴音「律子嬢が皆から愛されている証左ですよ」

律子「あ、愛されてるって……///」
3 : ◆nx90flyJCa6p [sage]:2020/10/19(月) 23:56:47.94 ID:0wVWj0kD0
雪歩「あのぉ、ミュージカルはどんなお話なんですか」

P「大切なものを失くしてしまう話なんだけど、これが台本」

千早「大切なもの、ですか」パラ……

美希「ねえ、配役は決まってるの? 主役は当然ミキって感じ?」

伊織「はぁっ? なにが当然よ。
   この大女優伊織ちゃんを差し置いてよくそんなことがいえるわね」

律子「役はオーディションで決めようと思ってるの。
   みんなの演技力は格段に上がってきているし、
   私とプロデューサーの独断で決めるよりも、その方がみんなも納得できるでしょ」

伊織「実力で主役の座をもぎ取れってことね。面白いじゃない」
4 : ◆nx90flyJCa6p [sage]:2020/10/20(火) 00:01:47.96 ID:jb5TYrq40
千早「……あの、プロデューサー、この台本印刷ミスがあります。
   所々台詞が抜けているみたいなんですけど」

響「ほんとだ、後半なんか全部真っ白だぞ」

P「え、そんなはずは……、ちょっと見せてくれ」パラパラ

P(……あれ、おかしいな。
  さっき目を通した時はこんな印刷ミスなかった気がするんだけどな……)

貴音「予備の台本は他にないのですか」

P「すまない、今手元にあるのはこの一冊だけなんだ。
  明日、きちんと印刷されたものを人数分用意してくるよ」

響「う〜、いいところだったのに生殺しだぞ」

千早「主人公は一体なにを失くしたのかしら」
5 : ◆nx90flyJCa6p [sage]:2020/10/20(火) 00:03:46.82 ID:jb5TYrq40
あずさ「プロデューサーさんは知っているんですか」

P「はい、それはですね……」



P「………………」



貴音「覚えておられないのですか」

P「め、面目ない……」

律子「……あんなに作家と打ち合わせしたのに本当に覚えてないんですか」

P「あ、ああ……」

亜美「兄ちゃん、ボケるにはまだ早過ぎるっしょー」

真美「一度、真美たちのパパに診てもらう?」

P「いや、大丈夫……」

伊織「本当に大丈夫なの?
   アンタ、前からワーカホリック気味なところがあるし、
   相当疲れが溜まってるんじゃ……」

P「大丈夫だよ、単にど忘れしただけさ。心配してくれてありがとな」

伊織「べ、別に心配してるわけじゃっ……」
6 : ◆nx90flyJCa6p [sage]:2020/10/20(火) 00:04:49.37 ID:jb5TYrq40
真「律子はなにを失くしたのか知ってるの?」

律子「もちろんよ。失くしたものは……」


律子「――よ」


P(……?)


律子「これは―――と――の物語なの。
   ―――で――――――――を失ってしまうの」



P(なんだ? 律子の声がよく聴こえな――)



やよい「えーっ! そんな―――――なんですかー!」

伊織「なるほどね。―――――――ってそういう……」

真「ボク、この―――にすごく――――しちゃうなぁ。
  ボクも――――――が――だもん」

雪歩「私も。もし―――――――――――――――――――かもしれない」

響「ま、――――――――――――――――――――ないさー」

あずさ「そうね、――――――――。
    ――の―――をきちんと――――――んだから」



P(律子だけじゃない、他のみんなの声も……)
7 : ◆nx90flyJCa6p [sage]:2020/10/20(火) 00:07:21.85 ID:jb5TYrq40
春香「プロデューサーさん? どうしました」

P「春香、みんなの声が……」



貴音「しかし、主役を演じるには相応の覚悟と決意が必要なようですね」

伊織「そうね、まったくプロデューサーも律子も人が悪いわ。
   よりによってこんな役を私たちにやらせようなんて」

律子「あらそう? 大切なものを知っているあなたたちだからこそ、
   ぴったりな役だと思うけど」

亜美「わー、りっちゃんがわっるい顔してる」

真美「そんな子に育てた覚えはないのにぃ……」



P「……聞こえる」

春香「はい、聞こえますけど?」

P(……本当に疲れているのか、俺……)

春香「プロデューサーさん?」

P「や、なんでもないんだ。気にしないでくれ」

春香「はあ……」
8 : ◆nx90flyJCa6p [sage]:2020/10/20(火) 00:08:32.59 ID:jb5TYrq40
美希「あっ! いいこと思いついたの! ハニーが主役をやればいいって思うな!」

P「お、俺?」

伊織「なんでプロデューサーがミュージカルに出演するのよ! それも主役で!」

美希「主人公のハニーは愛するヒロインのミキと離れ離れになって、
   ミキの大切さをあらためて実感するの。
   そして再会した二人は永遠の愛を誓い合うの!」

雪歩「そ、それはちょっと……」

響「話はともかく、仮にプロデューサーが舞台に立ったらブーイング間違いなしだぞ」
9 : ◆nx90flyJCa6p [sage]:2020/10/20(火) 00:10:04.39 ID:jb5TYrq40
春香「で、でも、プロデューサーさんが相手なら私もその話やってみたいな〜、なんて……」

あずさ「私もやってみたいわ〜。プロデューサーさんが相手なら熱演できちゃいそう」

真「ボ、ボクもプロデューサーとラブストーリーやってみたい!」

亜美「いやいや、まこちんの場合、男二人の友情物語になるっしょー」

真「なっ!」

伊織「わ、私も立候補してあげてもいいわよ! 
   別にプロデューサーとのラブストーリーなんてぜんっぜん興味ないけど?
   女優としての演技の幅は広げたいし?」

真美「ま、真美もやってみたい……」ゴニョゴニョ

美希「ち、ちょっと! これはミキとハニーのラブストーリーなの! 
   ヒロインはミキの指定席って決まってるんだから!」

千早(その前に、ミュージカルは
   プロデューサーとのラブストーリーではないのだけれど……)

貴音「ふふ、罪な方ですね、あなた様は。皆、あなた様をお慕いしているようですよ」

P「はは……」

やよい「プロデューサーは大切なものってありますかー」

P「俺? 俺の大切なものは……」

律子「ほうら、あなたたち、馬鹿なこといってないで、
   これからオーディションの説明するからちゃんと聞いてなさいよ」



………
……
…
10 : ◆nx90flyJCa6p [sage]:2020/10/20(火) 00:13:06.59 ID:jb5TYrq40
高木「やあ諸君、お疲れ」

P「社長、お疲れさまです」

高木「アイドルたちは皆帰ったようだね。
   彼女たちがいなくなると祭りの後のように事務所が静まり返るなあ」

小鳥「そうですね、少し寂しいくらい」

律子「デスクワークをするにはこのくらい静かな方が捗りますけどね」

高木「そのデスクワークが終わるならこの後どうかね。
   ミュージカルの前途を祝して一杯でも。もちろん私が奢るよ」

小鳥「わあ、いいですね。お二人は終わりそうですか」

律子「私の方はもう。プロデューサーは?」

P「俺はまだ終われそうにないな。
  どうしても今日中に未来たちのプレゼン用の資料を作っておきたいんだ」

律子「でしたら私も手伝いますよ」

P「律子はまだ正式なプロデューサーじゃないだろ。
  これからミュージカルも重なってより忙しくなるだろうし、
  今日くらい思いっきり羽根を伸ばしてこいよ」

律子「でも……」

P「気持ちだけ受け取っておくよ。社長、折角ですが俺は事務所に残ります」

高木「そうか。では、キミとはまた違う日に一杯やろう」

P「はい、その時を楽しみにしています」

小鳥「それではプロデューサーさん、お先に上がらせてもらいますね。
   最後、戸締りよろしくお願いします」

律子「プロデューサーもあまり無理しないでくださいね。お先に失礼します」

P「ああ、お疲れ」


 ガチャッ バタン……


P「……さて、もうひと踏ん張り」



………
……
…
11 : ◆nx90flyJCa6p [sage]:2020/10/20(火) 00:14:58.84 ID:jb5TYrq40
P「くあ、疲れたぁ……って、もうこんな時間か」

P(これは帰る頃には日を跨いでるな……)

P「ふぅ……」

P「……」

P(ミュージカルの台本……)パラパラ

P(……駄目だ、どうしても思い出せない。
  なにを失くしてどんな結末を迎えるんだっけ……)



やよい『プロデューサーは大切なものってありますかー』



P(俺の大切なもの……そんなもの、考えたこともなかったな)

P(たかが二十年あまりの人生だけど精一杯生きてきた)

P(辛いことも楽しいこともそれなりに経験してきたけれど、
  大切なものを見つけようだなんて、なに一つしてこなかった)

P(アイドルたちは皆、大切なものを共有しているみたいだけど、
  それは一体なんなんだろう……)

P「大切なものかぁ」

P(俺の大切なものってなんだろう……)

P「おれの、たいせつな……」ウトウト

P「……」スースー


……………………
………………

― ― ― 

…………
……
12 : ◆nx90flyJCa6p [sage]:2020/10/20(火) 00:17:17.95 ID:jb5TYrq40
 「プロ―――」

 「――さん、プロデューサーさん、起きてください」

P「……ん」

 「もう、また徹夜したんですか」

P(……しまった、寝落ちしてしまったか。あと少しで資料ができたっていうのに)

 「駄目ですよ。無理が祟って身体を壊したら元も子もないですよ。
  ただでさえ不規則な業界なんですから、ちゃんと身体を休めてください」

P「はい、すみません、音無さ……」



P「…………」



 「ほら、顔を洗ってきてください。みんなもそろそろ来ますよ」

P「あ、あの……」

 「はい?」

P「どちらさまでしょうか」

 「……寝ぼけてるんですか」

P「い、いえ、本当にどなたなのか……」
13 : ◆nx90flyJCa6p [sage]:2020/10/20(火) 00:18:20.21 ID:jb5TYrq40
 ガチャッ


 「おはようございます」

 「あら、おはよう、凛ちゃん。今日は早いのね」
14 : ◆nx90flyJCa6p [sage]:2020/10/20(火) 00:20:17.94 ID:jb5TYrq40
凛「おはよう、ちひろさん。ちょっと卯月と未央と約束があってね」

凛「おはよう、プロデューサー」

P「……」

凛「プロデューサー? どうしたの」

ちひろ「プロデューサーさん、また徹夜してちょうど今目覚めたばかりなの。
    まだ頭が覚醒してないみたい。ただ今お寝ぼけ中なの」

凛「また?」

P「……」

凛「プロデューサー、私たちには体調管理を怠るなって口酸っぱくいうくせに、
  自分の体調には無頓着過ぎるよね。
  こういうのって人にとやかくいう前に、まず自分ができてからじゃないの」

ちひろ「凛ちゃんのいうとおりです、プロデューサーさん。肝に銘じてください」

P「……」

凛「プロデューサー?」
15 : ◆nx90flyJCa6p [sage]:2020/10/20(火) 00:21:54.56 ID:jb5TYrq40
P(……なんなんだ、誰なんだこの二人は。ここは一体どこなんだ)

P(俺は765プロの事務所にいたはず。こんな所、俺は知らない)

P(なにが、一体なにがどうなっている……!?)
16 : ◆nx90flyJCa6p [sage]:2020/10/20(火) 00:26:30.98 ID:jb5TYrq40
ちひろ「ちょっとプロデューサーさん、本当にどうしちゃったんですか。
    なにか様子が変ですよ」

P「……ドッキリですか」

凛「ドッキリ?」

P「そうか……、番組の企画かなにかでしょう。
  きっと、どこかに隠しカメラがあって……!」

ちひろ「ち、ちょっと、プロデューサーさん?」

P「なあ、そうなんだろ律子! どこかの部屋から見てるんだろ!  
  ああ、こんなイタズラ企画なんだから真美と亜美のコーナーか?
  二人がどこかに隠れてプラカードなんか持ってたりして!?」

凛「プロデューサー」

P「もうバレてるんだ、早く姿を見せてくれよ!!」

凛「プロデューサー!」

P「……!」ビクッ

凛「どうしちゃったのプロデューサー、なにを混乱してるの?
  さっきからプロデューサーがなにをいってるのか全然わからないよ……」

ちひろ「落ち着いてください、プロデューサーさん。深呼吸して。
今、お水をお持ちしますから」

P「……」ハァ ハァ
17 : ◆nx90flyJCa6p [sage]:2020/10/20(火) 00:28:58.14 ID:jb5TYrq40
凛「リツコって誰のこと? それにマミ、アミって……」

P「……待ってくれ。その前に、君は一体誰なんだ」

凛「誰、って……」

P「きっとどこかのプロダクションのタレントなんだろうけど、
  そろそろ種明かしをしてくれないか」

凛「……本気でいってるの?」

P「すまない、ひどく混乱してて……。ええと、どこかで会ったことあるかな。
  それともうちのアイドルたちの知り合いとか……」

凛「……」

P「あ、あの……」

P(なんだ、どうしてそんな悲しそうな顔をする……?)
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