P「あいつらに会いたい」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

421 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/03(火) 20:04:30.87 ID:OdxR38lg0
愛梨「なんだか賑やかで楽しそうな事務所ですね。
   765プロが戻ったら遊びにきてもいいですか」

P「ああ、もちろん。歓迎するよ」

卯月「……」

美嘉「卯月、どしたの」

卯月「……765プロのみなさんにお願いしていました」

卯月「もう少しだけ、プロデューサーさんを貸してくださいって」

卯月「きっと、プロデューサーさんと離れ離れになって
   寂しい思いをしているだろうから」

美嘉「そだね……」

未央「君たち、少しはしまむーを見習ったらどうかね」

凛「ふーん」

莉嘉「へくちっ。うー、さぶっ」

P「そろそろ戻るか」

P(次この部屋へ来るときには、きっと温かくなっている)



――――――――――――――――
――――――――――――
――――――――
――――
――
422 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/03(火) 20:05:38.02 ID:OdxR38lg0
続きは明日でごぜーます
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/03(火) 22:04:02.04 ID:HPdsaCcfo
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/03(火) 23:37:34.34 ID:kOyKwBks0
やばい、一気に見ちゃった。
早く続きを明日の夜なんてまてん
425 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/04(水) 19:40:47.16 ID:e8XA5lnt0
P「今日からミュージカルの稽古を始める。台詞は覚えてきたか」

幸子「完璧に覚えてきました!」

蘭子「呪文を覚えるよりも容易かったわ」

莉嘉「ばっちしーっ!」

未央「おっ、えらいね莉嘉ちゃん」

美嘉「アタシが無理くり覚えさせた」

杏「……」

楓「……」

志希「〜〜♪」ピュー ピュー

未央「先生ー、ここに覚えてきてなさそうな三人衆がいまーす」
426 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/04(水) 19:41:57.63 ID:e8XA5lnt0
杏「……仕事が忙しくてさぁ」

まゆ「杏ちゃんが仕事をいいわけにしても説得力皆無です」

楓「……痛風がひどくてさぁ」

卯月「えっ、楓さん痛風だったんですか?」

愛梨「やっぱりお酒の飲みすぎで……」

凛「楓さん、それリアリティーがありすぎて冗談で流せない」

志希「一度台本に目を通せば覚えられるからまだいいかなーって」

アーニャ「一度で覚えられるなんてさすがは志希です」

杏「ずるいぞギフテッド」

志希「えへっ」

P「まあ、しばらくは読み合わせがメインだから、
  志希はもとより楓さんと杏ならその間に覚えられるだろ」

杏「おっ、お咎めなし?」

P「演出家さんは俺のように甘やかしてくれないからな。
  それじゃあ、稽古場へ移動するぞ」

杏「杏は甘やかして伸びるタイプなのに」

楓「楓は酒を飲ませて伸びるタイプなのに」

志希「志希は好き勝手させて伸びるタイプなのに」

美嘉「全部人をダメにする要素じゃん」



………………
……………
…………
………
……
427 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/04(水) 19:42:48.67 ID:e8XA5lnt0
杏「えっ、兄ちゃんが迷子? あずさお姉ちゃんじゃなくて?」

楓「いえ、あずさはあずさで行方不明です」

志希「あずさはともかくプロデューサーが迷子って珍しいね」




愛梨「すごいなぁ、もう台本なしで台詞いえてる」

まゆ「一度スイッチが入るとまるで別人ですよね」

凛「普段はアレなのに」

幸子「いいかたー」

未央「そういえば志希にゃん、LiPPSに加入するって聞いたけど」

美嘉「あぁ、うん、そう」

愛梨「そうなんだぁ、よかったね」

美嘉(……)
428 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/04(水) 19:43:56.21 ID:e8XA5lnt0
 ――数日前――


美嘉「マジ!?」

志希「ごめんね、抜けたり入ったり勝手ばかり」

美嘉「そんな、全然いいって!
   アタシ嬉しい! 志希ちゃんと一緒にユニット組めて」

美嘉「いつから入れるの?」

志希「7月からだって」

美嘉「え……」

志希「7月に次の曲をリリースするから、そのタイミングで正式加入させるって」

美嘉「でもアタシたち、5月の――」

志希「それはミュージカルが終わってからのお楽しみ。
   どうなのるかは誰にもわからない。神のみぞ知る」

美嘉「……」

志希「プロデューサーはあたしたちが消えないことを願ってる。
   あたしもまだ消えたくないし、もうちょっとアイドル続けたい」

志希「美嘉ちゃんたちと……LiPPSやりたい」

美嘉「……ねぇ、どうして最初参加するの辞退したの」

志希「もう、ダメなんだろうなって」

志希「別れの時が近づいてる。
   だったらその時がくるまで少しでも長く、あの人のそばに……」




……
………
…………
429 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/04(水) 19:44:24.09 ID:e8XA5lnt0
美嘉「消えないように頑張る、か」

愛梨「え?」

美嘉「ううん、なんでも」



………………
……………
…………
………
……
430 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/04(水) 19:46:07.01 ID:e8XA5lnt0
P「全員揃ったな。今日から曲の練習を始める。
  台本の通り、劇中にはライブパートがある」

P「今から聴いてもらう曲は
  実際に765プロのアイドルたちが歌って踊っていたものだ」

未央「おぉ、なんかドキドキする……」

P「トレーナーさん」

トレーナー「はい。では一通り流しますね」


 〜〜♪


幸子「へぇ、これが765プロの」

莉嘉「アタシ2曲目好きー」

トレーナー「それじゃぁ、全体曲から練習始めるわよ」



………
……
431 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/04(水) 19:47:00.96 ID:e8XA5lnt0
トレーナー「――オッケー。次のグループと交代。同じところから始めるわよ」



凛「ふぅ……」

まゆ「こうして実際に踊ってみると765プロの実感が湧いてきますね」

凛「……まぁね」

まゆ「……」

まゆ「凛ちゃん、ごめんなさい」

凛「……?」

まゆ「ずっと謝りたかったの。
   去年、プロデューサーさんの記憶障害で
   担当アイドルを凛ちゃんだけにするって話があったでしょ」

まゆ「私その時、凛ちゃんに八つ当たりを……」

凛「あぁ……。別に、気にしてない。
  もし逆の立場だったら私の方がもっと口汚く罵ってた自信あるし」

まゆ(否定できない……)
432 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/04(水) 19:48:31.75 ID:e8XA5lnt0
志希「ふー、あつあつ、お水お水」

凛「ねぇ、志希はいつから気づいてたの。765プロのこと」

志希「んー、最初から」

凛「さ……」

志希「確信したのはもうちょい後だけど」

まゆ「どうしてそんなすぐに気づくことができたんですか」

志希「なんかこう……、ビビッときたみたいな。
   前もいったけどなんの科学的根拠もないただの“勘”。
   きっと765プロはあるんだろうなーって、ただそれだけ」

凛「なんか意外。志希ってそういう非科学的なこと信じないと思ってた」

志希「信じないよ」

凛「え?」

志希「けどプロデューサーのことは信じてる。
   だって、あの人があたしに嘘ついたこと一度もないもん」

凛「……悔しいな。
  私はプロデューサーのことなにも信じてあげられなかった。
  妄想だと決めつけて、ちゃんと話を聞こうとしなかった」

凛「自分のことしか、考えてなかった」

まゆ「……」

志希「あたしだって同じだよ。
   ずっと前から気づいていたのに、ただ黙って見てた」

志希「あの人と、離れたくなかったから……」

凛「……志希ってさ」

まゆ「重いですよね」

志希「二人には負けるかなーっ!」


………………
……………
…………
………
……
433 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/04(水) 19:49:09.02 ID:e8XA5lnt0
続きは明日なの
434 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/04(水) 20:09:37.38 ID:ZLhpK96DO
うわぁぁん

ちょい出しばっかで、精神的苦痛なりぃ!
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/04(水) 20:38:04.46 ID:ZfeVou8I0
酷いや!
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/04(水) 23:22:14.08 ID:zaTqT5XBo

346が消えて765が復活したらプロデューサーくんはどうするのっと
437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/11/05(木) 00:36:59.60 ID:LN88WT6W0
>>436
第三部かな?
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/05(木) 12:42:02.36 ID:0k5/5UAUo
業の深いループが始まってしまう
439 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/05(木) 19:43:25.03 ID:H6IxBIZH0
まゆ「みなさん集まりましたねぇ」

未央「集まりましたぁ……」

蘭子「淀みを感じるわ……」

アーニャ「まゆ、大事な話とはなんですか」

杏「まゆちゃんが集合かける時なんて大抵プロデューサー絡みじゃん」

まゆ「みなさん覚えていますか。
   ひと月前、まゆたちはある誓いを立てましたね」

莉嘉「誓い?」
440 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/05(木) 19:45:13.34 ID:H6IxBIZH0
  ――1か月前――



幸子「みなさん、今年のバレンタインはどうします。
   去年は全員で一つのチョコをプロデューサーさんに贈りましたけど」

未央「そういえばもうそんな時期かぁ」

幸子「最後のバレンタインですし、個別に渡すのもありではないかと」

志希「いいと思ーう」

莉嘉「アタシもさんせー!」

まゆ「いえ、今年も全員で一つのものを贈りましょう。
   数が多いと却って迷惑になります」

莉嘉「えーっ! でもうちのクラスの男子、
   女子にチョコくれーって、ちょーアピールしてくるよ。
   Pくんもいっぱい貰えた方が嬉しいんじゃない?」

まゆ「大人と子どもを一緒くたに考えてはいけません。
   プロデューサーさんの場合、仕事付き合いのある女性から
   毎年沢山のチョコをいただいています。去年は54個でした」

未央「ひえーっ、54!」

杏「なんで数を把握してんの」

まゆ「そのうち26個が本命でした」

美嘉「なんで特定できてんの」

蘭子(こわい)

凛「でもそれって作られた過去での話でしょ。本当の過去じゃそんなに貰えて……」

凛「……もらえて」

楓「貰えてるわね、間違いなく」

杏「あの人、プロデューサーじゃなくてアイドルやった方がいいんじゃないの」
441 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/05(木) 19:47:22.36 ID:H6IxBIZH0
まゆ「想像してみてください。
   54個のチョコを一人で食べなければいけない日々を。
   毎日毎日、明くる日も明くる日も、チョコ・チョコ・チョコ……」

蘭子「うっ……」

まゆ「そしてホワイトデーにはお返しが必要です。
   プレゼントにかかる費用は当然自腹です」

楓「去年だと66人分かしら。えらい出費になってそうね」

愛梨「ちょっとプロデューサーさんが可哀想になってきちゃった」

アーニャ「アーニャたちにお返しはいらないと断らなければいけませんね」

杏「ていうか、そんな食べきれないほどのチョコ貰ってるなら、
  杏にいえば喜んで食べてあげたのに」

まゆ「ですから少しでもプロデューサーさんの負担を軽くしてあげるべきかと」

杏「なら贈らないのが一番いいんじゃないの」

まゆ「それは乙女的にNOです」

美嘉「そんな事情があるなら仕方ないか。
   じゃ、今年も全員で一つのものを贈るってことで」

卯月「そのかわり13人分のありったけの気持ちを込めてチョコを作りましょう」

莉嘉「はーい」

未央「愛梨先生、今年もチョコ作りの指導よろしくお願いします」

愛梨「いいよ〜。じゃぁまずはどんなチョコにするかみんなで決めよっか」

 キャッ キャッ



まゆ(うふ、これで誰も抜け駆けできなくなったわね)シメシメ

杏(……とか思ってそう)




……
………
…………
442 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/05(木) 19:48:33.79 ID:H6IxBIZH0
まゆ「――あの日、まゆたちは密約を交わしました。抜け駆けはしないと」

杏「やっぱり狙いはそれか」

幸子「誓いから密約になってるし」

まゆ「それなのに……それを……よくも……まゆだって本当は……!」ワナワナ

まゆ「……今年、プロデューサーさんに贈られたチョコの数は72個。
   そのうち本命は34個でした」

未央「大幅に記録更新してる……」

美嘉「なんで当然のように数を把握してんの……」

楓「結局出費が増えたわね。プロデューサーの台所は火の車ね」

杏「あの人高給取りだし大丈夫でしょ」

美嘉「そういう問題か」
443 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/05(木) 19:50:14.62 ID:H6IxBIZH0
まゆ「ここからが本題です。
   今年プロデューサーさんが用意していたお返しの品は73個でした」

愛梨「73? 私たちの分はいらないから71個でいいはずだよね。
   2つ余分に用意していたってことは……」

幸子「まさか、この中に抜け駆けした者がいる、と?」

まゆ「裏は取れています。
   まゆたちのように多人数で一つのチョコを贈られた方は他にいませんでした」

杏「なんなのその興信所顔負けの調査力」

蘭子「こわい」

凛「で、その2人は特定できてるわけ?」

まゆ「いいえ、ですから名乗り出てほしいんです」

まゆ「なにもまゆはその方たちを咎めたいわけじゃないんです。
   ただちょっとお話をさせてほしいだけなんです。
   まゆのいか……悲しみをわかってほしいだけなんです」

未央「今『怒り』っていいかけたよね」

まゆ「このまま黙っていたって時間の無駄ですよ。
   まゆの力を以てすれば必ず捜し当てることができるんですから」



まゆ「ねぇ、ちひろさん?」
444 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/05(木) 19:52:15.85 ID:H6IxBIZH0
ちひろ「……っ」ビクッ


アーニャ「ちひろ?」

ちひろ「ま、待って!
    確かに私はプロデューサーさんにチョコを贈ったけど!
    そもそもそんな集まりがあったなんて私は知らなかったし!」

ちひろ「私はただ同僚として日頃の感謝を込めてチョコを贈っただけでそんな――」

まゆ「とても可愛らしいラッピングをされていましたねぇ。
   チョコは手作りですか」

ちひろ「……」

まゆ「あ、そういえば、
   ホワイトデーにプロデューサーさんと一緒に行かれたホテルはどうでしたか。
   最上階から望む夜景はさぞロマンティックで綺麗だったんでしょうね」

美嘉「ホ、ホテルッ!!?」

卯月「……///」カアッ

ちひろ「ディナーよ! ディナーを一緒にしただけ! それ以外なにもないから!」

凛「ふーん、
  私たちは渋るプロデューサーを説得してお返しを断ったのに、
  ちひろさんはホテルでディナーだったと」

凛「ふーん?」

ちひろ「……」ダラダラ

莉嘉「ズルーい! アタシもPくんとホテル行きたーい!」

幸子「り、莉嘉ちゃん、
   そんな誤解を招きかねないことを大声でいっちゃだめですよ!」

楓「どうして私を呼んでくれなかったんですか。絶対上等なワイン飲んだでしょ」

未央「そこ?」

蘭子「……二人は付き合ってるの?」

ちひろ「付き合ってません!」

愛梨「告白したんですか」

ちひろ「してません!」

まゆ「みなさん、この辺にしておきましょう。まだ後ろに2人つかえています」

未央「え、あと1人じゃないの」

まゆ「密約の場にいた者が2人です。
   ちひろさんは一番いい思いをされていたので名を挙げさせてもらいました」

ちひろ「ひどいっ!」

まゆ「残りの2人も名乗り出てくれませんか。
   実はその方々に対してはそれほど怒っていません。
   怒りの9割はちひろさんに対してですから。
   事実確認がしたいだけです」
445 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/05(木) 19:53:17.94 ID:H6IxBIZH0
アーニャ「……これは」

楓「意外なメンツが揃ったわね」



志希「いやまったく」

杏「こりゃ予想外」



未央「君たちのことだぞー」

まゆ「まずは志希さんから理由を聴きましょうか。なぜこのような真似を」

志希「実験したかったんだよねー」

美嘉「実験? まさかチョコに変な薬でも混ぜたんじゃないでしょうね」

志希「惚れ薬を」

美嘉「コラ――――ッ!!!」

凛「なんてもの混ぜてんの!!!」

志希「でも失敗だったみたい。効果なかった」ハァ

美嘉「ほんっとこの子は……」

凛「ちひろさんより悪質じゃない」

まゆ「これはさすがに看過できませんね」

志希「ごめーん、許してー。完成したらみんなにも分けてあげるからーん」

まゆ・凛・美嘉「……っ」

未央「揺らぐな、揺らぐな」
446 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/05(木) 19:54:25.45 ID:H6IxBIZH0
凛「……で、杏の方はどんな理由」

幸子「杏さんがチョコを用意していたのは本当に意外ですね」

杏「いや、違うんだよ。
  杏もまさかお返しを貰えるとは思ってなくて」

蘭子「……?」

杏「バレンタインの日、自分用のおやつに板チョコを持ってきてたんだけど――」



杏『ほれ、プロデューサー、ハッピーバレンタイン。お返しは最高級キャンディーでいいよ』



杏「――って、1ピースほど恵んであげた」

未央「せこっ!」

卯月「板チョコ1ピースの対価が最高級キャンディー……」

凛「これも結構悪質じゃない?」

美嘉「用意してくる方も用意してくる方だけど」

杏「でしょ? 杏はなにも悪くないよ。冗談を真に受ける方が――」

凛「……」

杏「――悪くないな! 杏が悪かった!」

凛「まったく」
447 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/05(木) 19:55:37.79 ID:H6IxBIZH0
ちひろ「誠に申し訳ございませんでした」

志希「深く反省しております」

杏「平にご容赦ください」


美嘉「どうする?」

まゆ「不問に付しましょう」

楓「あら、お優しい」

凛「いいの?」

まゆ「実害が出なかっただけよしとします。次があるかもわかりませんし」

アーニャ「三人とも命拾いしましたね」

蘭子「ではこれにて一件落着!」

ちひろ・志希・杏「はは〜」



ちひろ(本当は集まりがあったこと知っていたけど)

志希(実はなにも混ぜてないんだよね)

杏(食べかけの部分をあげたっていったら怒り狂うだろうな)



まゆ「……なにか?」

ちひろ・志希・杏「なんでもない! なんでもない!」ブンブン



………………
……………
…………
………
……
448 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/05(木) 19:56:49.83 ID:H6IxBIZH0
莉嘉「お腹空いたー。なんか食べたーい」

杏・志希「みーとぅー」

美嘉「じゃぁ、ミーティングの前に腹ごしらえでもする?
   プロデューサーいい?」

P「ああ、いいよ」

莉嘉「やった! なんにする? なんにする?」ピョン ピョン

未央「あれ、なんかピザみたいな匂いしない?」

愛梨「ほんとだ。オリーブとチーズの香ばしい……」

P(まさか……)

志希(くふふ……)シメシメ

凛「でも今はピザって気分でもないかな」

美嘉「わかるー。もうちょいお腹が膨れそうなのが食べたいよね」

志希「……!」ガーン

P「はは……」

卯月「出前にしませんか。美味しいって評判の中華料理店があるんです」
449 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/05(木) 19:57:56.10 ID:H6IxBIZH0



美嘉「……お腹が膨れるとはいったけどさ」

アーニャ「すごい量ですね」

幸子「大盛りで頼みました?」

卯月「いえ、そんなはずは……」

楓「この炒飯、一人前で三人分くらいの量はありそうね」

杏「餃子も何個あるのこれ。ひーふーみー……」

愛梨「プロデューサーさんのいうこと聞いて正解だったね。4人前で十分だって」

蘭子「恐るべきかな佐竹飯店」

まゆ「とりあえずお皿に取り分けましょうか」
450 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/05(木) 19:59:03.16 ID:H6IxBIZH0
莉嘉「――ではみなさん手を合わせてください。いただきます!」

 イタダキマース

美嘉「うん、美味しい」

幸子「なかなか繊細な味付けをしていますね」

志希「はふはふっ!」

楓「なんだかビールがほしくなっちゃうわね。すみませーん、大ジョッキ一つー」

未央「ありませーん」

卯月「でもまさか765プロのスクール生がいるお店だったなんてビックリです。
   美奈子ちゃんでしたっけ」

P「ああ、明るく家庭的な子だったよ。
  そういえば回鍋肉は美奈子の得意料理だったっけ」

凛「……え、プロデューサー、その子の手料理食べたことあるの?」

P「ああ、とても美味しかったよ。この回鍋肉に負けなくらい」

凛「ふーん……。名前なんていうんだっけ。美奈子? 美奈子ね。覚えた」

蘭子(こわい)
451 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/05(木) 20:00:53.78 ID:H6IxBIZH0
P「――わるい、急な打ち合わせが入った。俺はすぐに出るけど、
  みんなは休憩が終わったら予定通りミーティングを始めてくれ」

美嘉「え、もうちょっとなんか食べてから行きなよ」

アーニャ「沢山食べないと力出ませんよ」

P「大丈夫、十分食べたよ。
  今日はもう戻って来れないけど代わりに千川さんが来るから。
  それじゃあ行ってくる」

未央「行ってらっさーい」


 ガチャッ バタン……


未央「……なんか、ここのとこずっと忙しそう」

幸子「まぁ、ミュージカル本番まで1か月切りましたからね」

楓「それだけじゃないわ。その後のことも踏まえて行動しているのよ」

未央「その後?」

楓「ミュージカルが終わった後。私たちが消えるのか、存在し続けるのか、
  あらゆる可能性を想定して手を打っている」

楓「私たちのプロデューサーとして、
  最後の最後まで責任を果たそうとしてくれている」

杏「ありがたいこって」

志希「その餃子もらってもいい?」

美嘉「だめ」
452 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/05(木) 20:01:55.70 ID:H6IxBIZH0
未央「今さらだけど、
   こんな重大なこと私たちだけで決めちゃってよかったのかな。
   他の人にも知らせるべきだったんじゃ」

杏「知らせたところで誰も信じてくれないよ。杏たちだってそうだったじゃん」

未央「それはまぁ、そうだけど……」

楓「いいんじゃないかしら。愛する人のために全てを犠牲にする。
  なかなか憧れるシチュエーションじゃない」

蘭子「カッコイイ!」

幸子「ボ、ボクは別に愛とかそんな動機じゃないですからっ!」

美嘉「ア、ア、アタシだって違うしっ!」

凛「マジありえないんだけどっ!」

杏「ほんとわかりやすいな、この人たち」



……………………
…………………
………………
……………
…………
………
……
453 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/05(木) 20:02:54.39 ID:H6IxBIZH0
今日はここまで。明日はお休み。土曜日の投稿で完結できるように頑張る。
454 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/05(木) 20:58:24.91 ID:D7oZ2USWo

あとちょっとかー
455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/05(木) 21:38:42.06 ID:EUOEeSYI0

ミリオン勢は「存在」はしてるんだな。アイドルではないが
小鳥さんや高木社長はどうなんだろう?
456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/05(木) 22:48:30.59 ID:lkNq+1bDO
ピヨと高木はあの漫画みたいな生き方を、ちょいちょい変えているんだろうな
457 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/06(金) 00:04:54.02 ID:a9aW3d440
>>42に765関係者全員消えたと書いてある
美奈子の料理は消える前に食べたことがあるってことじゃない
458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/06(金) 00:56:02.61 ID:n2TZXgxh0
そっか、佐竹飯店はあるけど美奈子はいないのか
459 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:14:07.67 ID:FlIW9w0M0


P「明日、ミュージカル本番当日を迎える。
  今日は早めに身体を休めて明日に備えるように」

460 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:15:36.03 ID:FlIW9w0M0
未央「いよいよ明日かぁ」

愛梨「なんかあっという間の半年間だったな〜」

美嘉「一日一日を大切に過ごそうとかいって
   結局いつも通りに過ごした感がハンパない」

凛「確かに」

アーニャ「ですが、アーニャにとって
     そのいつも通りの日常がなによりも大切でした。
     みんなと過ごした日々はアーニャの宝物です」

莉嘉「アタシも! みんな大好きっ!」ダキッ

志希「あたしも莉嘉ちゃん大好きっ!」ダキッ

  キャッ キャッ

まゆ「明日消えてしまうというのに、ほんといつも通りなんだから」

楓「不思議と恐怖感がまったくないのよね」

蘭子「運命を受け入れた我らに恐れなどあらず」

杏「正直今もピンときてないだけなんだけど」

幸子「どちらかといえば、
   ミュージカルに対しての高揚感の方が大きいですね」

卯月「私もです。とても楽しみ」

美嘉「泣いても笑ってもこれが最後」

美嘉「アタシたちの、最後のステージ……」


 「…………」
461 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:17:16.21 ID:FlIW9w0M0
未央「ねね、今からさ、みんなで自分の秘密を打ち明けない?」

杏「なんで?」

未央「いんじゃん、いいじゃん。これで最後なんだし。私からいうからさ」

幸子(あ、これ自分がいいただけのパターンだ)

未央「じゃぁ、いい? いうよ?」コホン

未央「実は私、プロデューサーのことが好きでした! ラブ的な意味で!」

一同「……」

未央「ごめん、しぶりん、美嘉ねえ、まゆちゃん。
   こんな強力なライバルがいたなんて驚くだろうけど……」

凛「いや、気づいてたし」

未央「……え?」

凛「え、まさか気づかれてないと思ってたの? そっちの方が驚くんだけど」

未央「え? えっ!? えぇっ!!? うそっ! なんで!?」

美嘉「なんでって、見てればわかるし」

未央「いつから!?」

まゆ「だいぶ前から」

凛「去年の夏みんなで海に行ったじゃん。その時の未央の水着姿を見て私は確信した」

美嘉「あー、確かにあの水着はヤバかった。未央らしからぬかなり攻めた水着だった」

まゆ「着ていた本人も顔真っ赤でしたね」

凛「ずっとプロデューサーのそばにいて離れようとしないし、
 『私を見て』アピールが露骨すぎて見てるこっちがいたたまれなかった」

美嘉「まさか未央があんな露骨な方法で男を誘惑しようとはねぇ」

まゆ「単純ですけど男性には効果抜群なんですよね。
   未央ちゃんスタイルいいですし。
   実際プロデューサーさんも少したじろいでいました」

未央「……」

未央「今すぐ消えてなくなりたい」

蘭子「明日まで待たれよ」
462 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:17:57.56 ID:FlIW9w0M0
未央「はいっ、次はしぶりんの番!」

凛「え、じゃぁ、私もそれで」

未央「それでってなに!? そんなの公然の秘密じゃん!」

凛「でも公言はしてなかったし」

未央「ズルい! 他の秘密を晒しなさいよ!
   これじゃぁ私が生き恥かいただけじゃん!」

凛「いやそれ未央が勝手に自爆したんじゃん」

まゆ「そもそもここにいる全員プロデューサーさんのことが好きですよね」

未央「……え」

美嘉「まぁ、そうでしょ」

未央「うそっ! マジッ!? しまむーも!?」

卯月「え……、は、はい……///」カァッ

未央「アーニャは!?」

アーニャ「好きですよ」

未央「とときんは!?」

愛梨「好き〜」

未央「……」パク パク

凛「いや、その三人かなりわかりやすく好意示してたから」

美嘉「女にあるまじき鈍さね」
463 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:19:10.56 ID:FlIW9w0M0
まゆ「なんだか未央ちゃんがあまりにも不憫なので、
   他のみなさんも一応告白しませんか」

莉嘉「ハーイ、アタシもPくん好き〜。絶対結婚するんだ〜」

アーニャ「結婚するのはアーニャですよ」

まゆ「まゆですよ?」

凛「は? 私だし」

美嘉「早速始まったよ」

幸子「ボクもプロデューサーさんが好きです!
   プロデューサーさんを想う気持ちは誰にも負けませんよ!!」

凛「声おっき」

杏「あ、プロデューサー、お疲れー」

幸子「え゛っ! わ――――っ!!
   ち、違いまっ、今のは違いますっ! いや違わなっ……! ///」アワワワッ

杏「うっそー。ここ寮なんだからいるわけないじゃん」ウッシッシッ

幸子「…………」

蘭子「魂が抜けてる」

凛「幸子で遊んでないで杏も告白しなよ」

杏「杏はべつに好きじゃないもーん。
  まぁ、養ってくれるっていうなら今すぐ婚姻届け持ってくるけど」

美嘉「やっぱ好きなんじゃん」

杏「違いますー。ただ一緒にいたいだけでーす」

アーニャ「杏も素直じゃないです」
464 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:20:19.16 ID:FlIW9w0M0
蘭子「わ、我も、わがと、とっも……」プルプル

蘭子「ぷ……ぷろでゅぅさぁがしゅきぃ〜 ////」プシュ〜

美嘉「オッケー。頑張った頑張った」

蘭子「こっ、これは禁断の呪文! 未熟な者が唱えれば呪いが返ってくる!」
  (とっても恥ずかしかった!)

凛「うんうん、そうだよね。わかるわかる」

楓「うっうー! 私もプロデューサーが大好きですーっ!」

杏「なんで急にやよいちゃんモード?」

アーニャ「面妖な」

楓「照れ隠しかなーって」

美嘉「楓さん、二度とやよいちゃんの真似をしないで」

未央「はい、最後はしきにゃんだよ」

志希「あたし? あたしもやよいちゃんモードでいっていい?」

美嘉「だめ。したら許さない」

志希「にゃはは、参ったな。ちょっと恥ずかしい」

志希「……」

志希「あたしもプロデューサーが好き」

志希「本当は765プロなんかどうだっていい。
   明日のミュージカルだって投げ出してやりたい」

志希「でも、あの人の泣いてる姿はもう見たくないんだ」

凛「……」

未央「誰か告白する?」

美嘉「しないしない」

幸子「返事もわかりきってますしね」
465 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:21:02.20 ID:FlIW9w0M0
ちひろ「あらみんな、まだ起きてたの」

卯月「ちひろさん」

愛梨「最後の女子会を開いていました」

未央「あっ、そうだ、ちひろさんも告白して!」

ちひろ「告白?」

美嘉「今好きな人暴露大会してんの」

未央「ちひろさん実はプロデューサーのこと好きなんでしょ!」

ちひろ「そうだけど?」

未央「えっ」

ちひろ「それがどうかしたの?」

未央「……この人動じない」

蘭子「強い」

ちひろ「ほらみんな、そろそろ休みなさい。明日に響くわよ」

凛「そういえばちひろさんはどうして765プロのこと信じる気になったの」

ちひろ「一番765プロの存在を信じたくないあなたたちが信じたんだもの。
    それなら私も信じてみようって」

ちひろ「明日のミュージカル、必ず成功させましょう」



………………
……………
…………
………
……
466 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:22:39.26 ID:FlIW9w0M0
 ――ミュージカル当日――



加蓮「おーい、凛ー」

奈緒「おーっす」

凛「加蓮、奈緒」

加蓮「アンタ感謝しなさいよ〜。
   こんな豪華なアンサンブルキャストなんて滅多にないんだから。
   次アタシたちが主役のミュージカルがあったら
   うんとこき使ってやるんだから覚悟しなさいよ」

凛「ふふ、わかった」



きらり「きらり、今日のミュージカルとぉーっても楽しみにしてた!
    みんなの力でぜぇーったい成功させるにぃ☆」

みりあ「みりあも頑張るーっ!」

莉嘉「アタシもちょー頑張るーっ!」

杏「おーおー、若者は血気盛んなこって」



藍子「未央ちゃん、ポニーテールとっても似合ってるよ」

茜「結わえた髪が元気に揺れてめっちゃイイ感じですよー!」

未央「そ、そう? 私ここまで髪長くしたことないから結構違和感が」アハハ
467 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:23:22.75 ID:FlIW9w0M0
美穂「う〜、緊張する〜。ミスしちゃったらどうしよう……」

卯月「大丈夫、美穂ちゃんならできるよ」

響子「うん、あれだけ練習したんです。自分を信じて!」



乃々「もりくぼも緊張しすぎてむぅりぃ〜。机の下に帰りたぁい……」

美玲「ビビるなって! ライブと同じでなんか楽しんでりゃ成功するって!」

幸子「なんたるアバウト」

まゆ「乃々ちゃん、まゆたちがついています。一人じゃないですよ」

小梅「うん、この子たちも一緒に頑張ろうって」

輝子「この子たちって……どの子たち?」

小梅「ほら、幸子ちゃんの後ろの」

幸子「え? ボクの後ろって誰もいない……」

一同「……」

 キャーッ
468 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:24:08.62 ID:FlIW9w0M0
飛鳥「存外セカイとは単純なのかもしれないね。
   なにせ歌い踊ることで物語を紡ぐことができてしまうのだから」

蘭子「そう、セカイを混沌に陥れているのは私たち。
   ただそれに気づいていないだけ」

飛鳥「ならばボクたちが示してあげるんだ。
   セカイはこんなにも簡単で、光に満ち溢れていることを……」



フレデリカ「よーし、うえきちゃん役頑張るぞー」

美嘉「そんな役はない!」

奏「今からサメに襲われるシーンが待ち遠しいわ」

美嘉「そんなシーンもない!」

周子「どれ、ちょっくら売店で八つ橋売ってくるか」

美嘉「公演もう始まるから!」

志希「みんな頑張って! あたし客席からみんなのこと見守ってる!」

美嘉「アンタはメインキャストでしょうが〜っ!」
469 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:25:06.75 ID:FlIW9w0M0
P「――みんな、時間だ」

楓「さぁ、渋谷凛グになりましょう」

美嘉「ごめんねー、円陣組みましょーって意味だよー」


 ゾロゾロ……


美嘉「メインキャストは真ん中ー」

愛梨「莉嘉ちゃんこっちだよ〜」

莉嘉「狭ーい」

杏「ちょいちょい通して通して」
470 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:26:20.17 ID:FlIW9w0M0
楓「みなさーん、渋谷凛グになりましたかー」

 ハーイ

凛「それやめてー」

未央「みんなー、しまむーにちゅーもーく!」

アーニャ「卯月」

卯月「はいっ」

卯月「みなさんよろしくお願いします。
   力を合わせて最高のミュージカルにしましょう。
   それではいきますよ」


卯月「すぅ……」


卯月「CGプロー……ファイト―!!」


一同「オーッ!!!」

 ワー パチパチパチ


 「キャストのみなさんはスタンバイお願いします」

幸子「プロデューサーさん、それでは行ってきます」

まゆ「まゆのこと、片時も目を離さないでくださいね」

蘭子「しかと括目せよ!」

P「ああ、みんなのことちゃんと見てるよ。行っておいで」

一同「はいっ!」



 『ただいまより、ミュージカル“アイドルマスター”を開演いたします――……



……………
…………
………
……
471 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:27:08.15 ID:FlIW9w0M0
『これにて、ミュージカル“アイドルマスター”は閉演いたします。
 ご来場、誠にありがとうございました――』


 パチパチパチ……


愛梨「みんなお疲れさま〜、ありがと〜」

かな子「おめでと〜、大成功だったね〜!」

雫「すっごく楽しかった〜!」



美波「お客さんの反応すごくよかったし、公演数増やしてもいいんじゃないかな」

みく「うん、一度きりの公演なんてもったいないにゃ!」

アーニャ「……そうですね」



ちひろ「メインキャストのみなさんは楽屋に集まってくださーい」



楓「……それじゃぁ、行ってきます」

瑞樹「ええ、打ち上げの席でまた会いましょう」

早苗「たらふく飲むぞー!」

楓「……」
472 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:27:42.62 ID:FlIW9w0M0
 タッタッタッ…… ガチャッ


莉嘉「Pくん、生きてる!?」

P「えっ、う、うん、生きてるよ」

莉嘉「よかった〜」

未央「公演中にポックリいかれたらどうしようかと思ったよ」

美嘉「病気で死ぬみたいにいわないで」
473 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:28:28.74 ID:FlIW9w0M0
P「みんな、あらためてお疲れさまでした。最高のミュージカルだった」

杏「そりゃよかった」

未央「これで……終わりなのかな」

楓「でしょうね」

美嘉「じゃ、最後に一言ずつ別れの挨拶して終わりにしよっか。
   それくらいの猶予はあるでしょ」
474 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:29:52.26 ID:FlIW9w0M0
卯月「プロデューサーさん、1年間お世話になりました」

未央「短い間だったけど楽しかったよ。元気でね」

杏「あんまり頑張りすぎないでね。杏くらいがちょうどいいんだから」

美嘉「今までありがと。765プロのみんなによろしくね」

莉嘉「バイバイ、Pくん。アタシをプロデュースしてくれてありがと。
   Pくんののおかげで毎日がキラキラだった」

まゆ「どうかお元気で。
   まゆはプロデューサーさんをいつも見守っています」

幸子「さようなら、プロデューサーさん。
   世界一カワイイボクをプロデュースできて幸せでしたね。
   ……そうですよね?」

愛梨「時々でいいから、私たちのことを思い出してください」

蘭子「うむ、忘れてはならぬぞ、我らがいたことを」

アーニャ「忘れたらオバケになって出てきます」

楓「オクトバーフェストの夢はプロデューサーに託します」

志希「……ばいばい」

ちひろ「一年間お疲れさまでした。あなたは素晴らしいプロデューサーでした」

未央「ほら、しぶりんも」

凛「……」

P「……」フッ

P「みんな、今日までありがとう。みんなと出会えて本当によかった。
  みんなのこと、絶対に忘れない」

P「凛も、ありがとう」

凛「……」コクッ

P「それじゃあ」





凛「プロデューサー、す――――



――――――――
―――――――
――――――
― ― ― 
…………
……
475 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:30:43.77 ID:FlIW9w0M0
春香「千早ちゃん?」

千早「春香、おはよう」

春香「おはよう。どうしたのこんな朝早くに。もしかして千早ちゃんも事務所に?」

千早「ええ、そういう春香も?」

春香「うん。せっかくのオフだけど家にいても落ち着かないし、
   友達と遊んでいても心から楽しめないし、
   なんか、自然と事務所の方へ足が向いちゃうんだよね」

千早「そう……」

千早「もう、一年になるのね。プロデューサーがいなくなってから」

春香「……」
476 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:31:39.08 ID:FlIW9w0M0
小鳥「あら」

春香「おはようございまーす」

千早「おはようございます」

小鳥「おはよう。どうしたの、今日は二人ともオフだったわよね」

春香「なんだか家にいても落ち着かなくて、
   ちょっと事務所にお邪魔させてもらおうかなぁって」

千早「迷惑のかからないようにしますので、いさせてもらえませんか」

小鳥「それは構わないけど……」
477 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:32:14.62 ID:FlIW9w0M0
 カチッ ガチャッ


小鳥「……!」

 ドサッ

春香「小鳥さん? 鞄落としましたよ」

小鳥「プロデューサーさん……」

春香「え……」

千早「……!」ハッ


P「……」


春香「プロデューサーさん!!」



…………
………
……
478 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:33:08.73 ID:FlIW9w0M0
P「……」パチッ


P「……」


P「……!」


P「はっ」ガバッ

P「ここは……病院……?」キョロキョロ

P「どうなったんだ、みんなは……」


 ――ガチャッ


P「……!」

春香「……!」

P「は、春、香……?」

春香「……っ」ブワッ

春香「うっ、うぅ……」

千早「春香、もう少ししたらみんなもこっちに来――」

千早「……!」

P「……!」

千早「プロデューサー……」

P「あ……」
479 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:33:39.88 ID:FlIW9w0M0
 タッタッタッ――


 「何号室!?」 

 「502号室!」

 「早く早くっ!」

 「コラッ、病院は走らない!」

 「あった、ここだ――!」
480 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:34:23.24 ID:FlIW9w0M0
 ――ガチャッ!


P「……!」

一同「……!」

美希「ハニ〜〜〜ッ!!」ガバッ

P「わっ、み、美希!?」

真美・亜美「兄ちゃ〜〜ん!!」ガバッ

P「真美、亜美?」

やよい「プロデューサ〜、よがっだ〜!」ウワーン!

伊織「このバカッ! 今までどこほっつき歩いていたのよっ!」

響「すっごく心配したんだからねっ!」

律子「あんたたち病院は静かにしなさい!」

貴音「律子嬢もお静かに」

雪歩「プロデューサー……」グスッ

真「はは、ほんとにプロデューサーだ……」

あずさ「プロデューサーさん……」ウルッ

P「みんな……」

高木「キミ……」

P「社長……」
481 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:35:29.54 ID:FlIW9w0M0
P「――俺が、一年もの間、行方不明……」

伊織「そうよ。水瀬の総力を挙げて世界中捜し回ったんだから」

P「それで今朝、事務所で倒れていた俺を春香たちが発見し、現在に至ると……」

P「美希、いいかげん離れてくれ」

美希「やっ! 絶対離さないの!」ギュッ

P「……警察に捜索願を届け出なかったのか」

律子「もちろん出しましたよ。
   けど、事件性は薄いと判断されて捜査までには至らず」

P「世間に公表は」

高木「していない。
   本当は会見を開いて広く情報を募ろうとしたんだが、
   キミのご両親に固辞されてね」

高木「『息子なら必ず帰ってくる』と、そう仰られていたよ」

P「そうですか……」
482 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:36:25.05 ID:FlIW9w0M0
貴音「この一年間、どこでなにをなされていたのか、
   本当に覚えていらっしゃらないのですか」

P「……ああ、覚えていない」

響「自分たちがどんな活動をしていたのかも?」

P「全く知らない」

真「でも去年起きた世の出来事は知っているんですよね」

P「多少なりの記憶違いはあるだろうけどな。
  概ね、みんなの記憶と一致していると思う」

雪歩「不思議ですね。
   そんなピンポイントで記憶を失くしちゃうなんて」

真美「そっか。兄ちゃんは知ってはいけないことを知ってしまったんだね……」

亜美「謎の組織に拉致され、記憶を抹消されてしまったと……」

やよい「知ってはいけないことって?」

真美「それはぁ……あれだよ。
   やよいっちがもやし炒めに使う秘伝のタレとか」

やよい「別に秘伝じゃないよ? スーパーで売ってる普通のソースだもん」
483 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:37:18.71 ID:FlIW9w0M0
P「それにしても真美も亜美も一年見ない間に随分と大人びたな。驚いたよ」

真美「でっしょー? 真美、育成に大成功ー! って感じだよー。
   これは将来あずさお姉ちゃんを超える器かもしれんね」

亜美「兄ちゃんを悩殺できる日も間近だぜぇ」

美希「ハニー、ミキは? ミキもグッと大人っぽくなったでしょ?
   もう15歳だよ? 結婚する?」

P「しません」

真「プロデューサー、ボクはどうですか。
  前より女の子っぽくなったと思いません?」

P「ああ、真、髪伸ばしたんだな。ボーイッシュな印象が大分薄れたよ」

真「でしょ! 本当はもう少し伸ばしたいんですけど
  みんなに止められているんです」

美希「だってそれ以上伸ばしたら王子さま感なくなっちゃうもん」

雪歩「うん、真ちゃんは今くらいが丁度いいよ」

P「あずささんはショートに変えたんですね。思い切りましたね」

あずさ「はい、自分では結構気に入っているんですけど、どうでしょうか」

P「もちろん似合っています。伊織もそのヘアスタイル似合っているよ」

伊織「当然じゃない」
484 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:38:33.35 ID:FlIW9w0M0
P「律子のそのスーツ姿は」

律子「申し遅れました。
   私、765プロダクション・プロデューサーの秋月律子と申します」

P「完全にアイドルから転向したんだな」

律子「あなたがいないのに誰がこの子たちをプロデュースするんです?」

P「律子一人でみんなを見ていたのか。よく一人で持ち堪えたな」

律子「もちろん私一人の力ではありません。
   社長が、小鳥さんが、アイドルのみんなが協力してくれたおかげです」

高木「律子くんも新米プロデューサーとは思えない働きをみせてくれてね。
   キミの抜けた穴を見事に埋めてくれたよ」

P「へぇ、すでに俺を追い抜いたんじゃないか」

律子「まさか。周りの助けがなかったらすぐ潰れていましたよ」

P「それは俺だって同じさ。よく頑張ったな、律子」

律子「ま、まぁ、どうも……//」

美希「でも律子、オニみたいに厳しいの。ミキはやっぱりハニーがいいの」

律子「律子?」

美希「さん」
485 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:40:02.32 ID:FlIW9w0M0
P「スクール生のみんなは今どうしています」

高木「765プロ所属アイドルとして元気に活動しているよ」

P「無事全員と契約できたんですね」

亜美「そうだ、聞いて聞いて兄ちゃん。亜美ね、今、
   いおりんとあずさお姉ちゃんと一緒にユニット組んでんだよ。
  『竜宮小町』っていうの」

亜美「捕まってた謎の組織で聴かなかった? 『SMOKY THRILL』って曲。
   知らぬが〜♪」

伊織「こら、病院で歌わない」

律子「みんな、そろそろ時間よ。もう行かないと」

P「仕事か」

律子「はい、みんな仕事の合間を縫ってここに駆けつけたもので。
   春香と千早はオフですけど」

千早「プロデューサーがお疲れなら私たちも帰ります」

P「いや、至って元気さ。なんなら今すぐ退院して事務所へ戻りたいくらいだ」

律子「だめですよ。精密検査して健康状態が確認できるまでは退院させませんから」

伊織「うちのボディーガードもつけておくわよ。
   本当に誘拐されていた可能性もあるんだから。
   用がある時は彼らを呼びなさい」

あずさ「それではプロデューサーさん、失礼します」

雪歩「ほら、美希ちゃんも行こ」

美希「やっ! ミキもここに残るの!」

真「響、美希をプロデューサーからはがすの手伝って」グイッ

響「ほ〜ら美希〜、仕事の時間だぞ〜」グイッ

美希「あ〜ん、ハニ〜ッ!」ズルズル……
486 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:41:07.41 ID:FlIW9w0M0
P「相変わらずだな。なんか、戻ってきたって実感するよ」

春香「あはは」

P「二人は元気だったか」

春香「はい、とっても元気に――!」

春香「…………元気な、振りをしていました」

P「……」

春香「プロデューサーさんならきっと大丈夫、必ず戻ってくる、
   そう信じてこの一年間頑張ってきました」

春香「でも、ふとした時にやな想像しちゃって、
   プロデューサーさんが危険な目にあっていたらどうしよう、
   二度と会えなくなったらどうしようって」

春香「そう思うと不安で、心配で、胸が苦しくてっ……!」ボロボロ

P「春香……」

春香「私、わだぢっ、
   プロデューサーさんが無事に戻っでぎでぐれで本当によがっだ〜」ウアーン

千早「春香、泣きすぎ」

P「ごめんな、心配をかけた」


P「俺も、みんなとまた会えて本当に良かった」



………………
……………
…………
………
……
487 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:42:50.61 ID:FlIW9w0M0
 ――ガチャッ


小鳥「お帰りなさい、プロデューサーさん」

P「ご無沙汰です、音無さん。ただいま戻りました。
  今まで大変な心配と苦労をかけました」

小鳥「いえっ、プロデューサーさんがご無事でっ、本当にっ……!」ブワッ

春香・雪歩・やよい「うえ〜〜」

伊織「なんであんたたちも泣くのよ」

亜美「兄ちゃん、こっちこっち」

亜美「紹介するね。765プロの新しい仲間のみさきちだよ」

美咲「初めまして。今年の春に入社した青羽美咲です。
   主に劇場の事務員としてみなさんのサポートをさせていただいております」

P「話は聞いています。これからよろしくお願いします、青羽さん」

美希「美咲すごいんだよ。ライブの衣装作ってくれるの」

貴音「職人と見違えるほどの腕前です」

伊織「明らかに就職先間違えてるわよね」

律子「こら」

美咲「いえ、もともとかわいい衣装を着るアイドルが大好きでしたから。
   765プロに就職できて本当によかったです」
488 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:43:33.75 ID:FlIW9w0M0
真美「どーお、兄ちゃん。1年ぶりの事務所は」

P「……空っぽじゃない」

真美「え?」

P「いや、全てが懐かしいよ。なにも変わってないな」

律子「プロデューサーのデスクもそのままにしてありますよ」

小鳥「やよいちゃんが毎日、プロデューサーさんのデスクを拭いてくれたんですよ」

P「ありがとな、やよい」

やよい「えへへ、プロデューサーがいつ戻ってきてもいいように、
    ピカピカにしておこーって」
489 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:44:19.01 ID:FlIW9w0M0
P「……!」スッ

あずさ「それ、企画していたミュージカルの台本ですね」

雪歩「そういえばミュージカルの話をした翌日でしたね、
   プロデューサーがいなくなったのは」

響「確かその台本ってところどころ台詞が抜けてて、
  後半はページ全部真っ白だったよね」

P「……」ペラッ

千早「でもこれ、ちゃんと台詞が書かれていますね。
   白ページもないみたい」

真「別の台本ですか」

P「……わからない」

P「『企画していた』ということは、このミュージカルはやらなかったのか」

律子「はい、永久凍結にしました」

P「なんでまた」

律子「大切な者を失くすのは、もうこりごりですから」



………………
……………
…………
………
……
490 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:46:08.42 ID:FlIW9w0M0
P(どうやら世界は元に戻ったらしい)

P(この世から、CGプロの痕跡が跡形もなく消えている)

P(あらゆる情報媒体を調べてもCGプロに関する情報は一切見つからず、
  CGプロのビルや女子寮が建っていた敷地には全く別の施設が建っていた)

P(家の写真立てに飾っていた凛のシークレットライブの集合写真は、
  765プロのみんなで撮った花見の集合写真に戻っていた)



P「律子、シンデレラガールズプロダクションって知っているか」

律子「いえ……、初めて聞きますけど、芸能プロダクションですか」

P「いや、知らないならいいんだ」



P(俺は大切な者を取り戻し、そしてまた、大切な者を失った)

P(だが不思議と寂しくはなかった)

P(必ずあいつらとまた会える。なぜかそんな気がしてならなかった)



………………
……………
…………
………
……
491 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:46:45.91 ID:FlIW9w0M0


未来『みんなーっ、ありがとーっ! また会おうねーっ!』


 ワァーッ!

492 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:47:47.07 ID:FlIW9w0M0
未来「プロデューサーさーん!」

加奈「どうでした? 私たちのステージ」

P「よかったよ、正直驚いた。
  スクール生だった頃とは比べものにならないくらい、
  歌もダンスも上手くなっている。二人とも成長したな」

未来「でへへ〜」

加奈「えへへ〜」



静香「プロデューサー」

志保「二人を甘やかさないでください」



未来「はっ! 静香ちゃん!?」

加奈「志保ちゃん!?」

静香「未来、あなたまたBメロの出だしを右足から始めたでしょ。
   Bは左足からだって何度間違えれば気が済むの」

志保「加奈、サビの音程が外れていたわよ。
   気持ちよくなるとすぐ周りの音が聴こえなくなるんだから」

静香・志保「帰ったら反省会よ」

未来・加奈「あわわわっ」

P「はは……」
493 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:48:34.93 ID:FlIW9w0M0
P「しかし本当に『見ないうちに』ってやつだな。
  まさかここまで力をつけているとは思わなかったよ」

律子「去年はとにかく場数を踏ませましたからね。
   ライブの数でいったら春香たちよりも多いくらいです」

律子「あの子たちもあなたの帰りをずっと待っていました。
   あなたが帰ってくるまでにうんと力をつけて驚かせてやろうって」

P「……それなら、彼女たちの努力に報いなければいけないな。腕が鳴るよ」

律子「期待していますよ、プロデューサー殿」



……………
…………
………
……
494 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:49:38.96 ID:FlIW9w0M0
P「どうだった、ここのラーメン」

貴音「真に美味しゅうございました。黄金色に輝くスープはまさに絶品。
   東京の名高いらぁめん店は全て網羅したと思っておりましたが、
   まだ私の知らぬ名店があるようですね」

P「連れて来れてよかった。
  偶然通りかかった時にここを見つけたんだ」

貴音「それはいつの話で」

P「えっ…と、いつだったかな。だいぶ前だったから覚えてないな」

貴音「……あなた様がいなくなる前、私たちは東京中のらぁめん店を巡りました。
   二人で調べ上げ、知り得た情報を共有し、そこに齟齬はなかったはず」

貴音「それなのに、私は今日までここのらぁめん店を存じておりませんでした」

貴音「あなた様の仰る『だいぶ前』とは、
   あなた様がいなくなった『後』の話ではないでしょうか」

P「……敵わないな、貴音には」
495 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:52:58.76 ID:FlIW9w0M0
貴音「やはり、覚えておられていたのですね」

P「貴音は知っているんじゃないのか。俺がこの一年、どこでなにをしていたのか」

貴音「あなた様は少し、私を誤解されているようですね」

貴音「確かに私は謎多き乙女と自負しておりますが、
   なにも不思議な力が備わっているわけではありません」

貴音「もしかような力が備わっていたのなら、このような事態にさせておりません」

P「それもそうだな」

P「……いろいろあったんだ。面妖なことが」

貴音「どうやらそのようで。無理に真相を聞き出すことは致しません。
   誰しもトップシークレットの一つは持っているもの。
   時には明かさず、胸のうちに秘めておくことも大切です」

P「……ありがとな、貴音」

貴音「では、もう数軒梯子しましょうか」

P「えっ」



………
……
496 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:53:48.75 ID:FlIW9w0M0
貴音「ふぅ、お腹と心が満たされました。
   こうして再びあなた様とらぁめんを食べることができて、
   私は大変嬉しく思っておりますよ」

P「……俺もだよ……」ウップ

貴音「夜風が涼しいですね。ゆっくり歩いて帰りましょうか」

P「あ、ああ」

P(……ん)

P(花屋がある)



 ――今、似合わないって思ったでしょ



P「……」

貴音「どうされました」

P「いや、なんでもない。行こう」

P(まさかな。いるわけがない)
497 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:54:28.24 ID:FlIW9w0M0



 「……」

 「ねぇ、ちょっとそこの花器運ぶの手伝って」

 「……うん」



………………
……………
…………
………
……
498 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:55:07.34 ID:FlIW9w0M0
律子「プロデューサー、以前よりもタスク管理が上手くなっていません?」

小鳥「ほんと、ブランクがあるとは思えない仕事ぶりですね」

P「そ、そっか? 一年分の遅れを取り戻そうと必死なだけだよ」ハハ……

高木「キミたち、私の部屋まで少しいいかね」

P・律子・小鳥「はい」




真美・亜美「……んっふっふ〜」キラーン
499 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:55:43.84 ID:FlIW9w0M0
真美「……」ピターッ

亜美「……」ピターッ

貴音「真美、亜美、また社長室に聞き耳を立てて。
   律子嬢に気づかれたら雷が落ちますよ」 

響「聴診器まで持ち出してやりすぎだぞ」

亜美「ちっちっち。聴診器は最先端のトレンドアイテムなんだぜ。
   アイドルたるもの流行にビンカンでなくてはいけませんなー」

貴音「なんと、それは真ですか」

響「真じゃないぞ」

真美「……えっ、兄ちゃんが346プロに?」

貴音・響「……?」
500 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/08(日) 00:57:03.12 ID:QSMr9x7N0
>>492
可奈警察だ!お縄につけ!!👮‍♂️
内容は素晴らしいぞ!
501 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:57:06.57 ID:FlIW9w0M0
P「わかりました、では俺が――」


 ドア バーンッ!!!


一同「だめ〜〜〜っ!!」バタバタバタッ

P「……!」ビクッ

春香「反対! 絶対に反対ですよ、反対!」

伊織「一体なに考えてるのよ!
   プロデューサーを346プロに移籍させるなんて!」

あずさ「そんなこと、私たちは到底受け入れられません!」

雪歩「せっかくみんな揃ったのに……」

美希「ハニーが346プロに行くならミキもついていくの!」


 ギャー ギャー


高木「キミたち落ち着きたまえ、誤解しているよ。
   一時的に346プロのプロデューサーになってもらうんだよ」

響「一時的?」

高木「346プロが新しくアイドル事業に進出することになってね。
   その新人アイドルたちを期限付きで彼にプロデュースしてもらうんだ」

一同「……」

真「じゃぁ、プロデューサーが765プロを辞めるわけじゃないんですね」

P「辞めないよ」

亜美「な、なんだ、もー、驚かさないでよー」

真美「まったく人騒がせですなー」

伊織「それはあんたたちよ」

律子「真美、亜美、また盗み聴きしていたわね」

真美・亜美「……逃げろー!」ピューッ

律子「くぉらっ、待ちなさーいっ!」
502 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:58:43.45 ID:FlIW9w0M0
千早「あの、どういった経緯で346プロのアイドルを?」

高木「実はかつてない大規模なフェスが計画されていてね、
   今回はそこに複数の事務所からなる
   スペシャルユニットを参加させたいと思っている」

高木「まだ確定ではないが、
   我が765プロと283プロ、そして346プロの3社で組むことになる」

真「283プロって確かそこも新しく出てきた事務所ですよね」

高木「うん、新興ながら今一番勢いに乗っている事務所だね。
   キミたちに引けを取らない実力を備えたアイドルたちが沢山いる」

伊織「そんな中に346プロのアイドルを混ぜて大丈夫なの?
   デビューすらまだなんでしょ」

高木「フェス開催はちょうど一年後。
   それまでにキミたちと同じステージに立てる力をつけてもらう」

伊織「たった一年で?」

高木「現にキミたちは一年でトップアイドルを目指せる位置まで上り詰めた。
   そしてそのアイドルを育てたプロデューサーがここにいる」
503 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 00:59:32.23 ID:FlIW9w0M0
千早「プロデューサーの腕が確かなのは
   プロデュースをされている私たちが一番よくわかっています」

千早「けど、プロジェクトのためとはいえ、
   ライバル事務所のアイドルを育てる義理はないと思いますけど」

響「同感だなー。ペットは責任持って自分で育てないと」

真「ペットじゃないし」

高木「キミたちのいいたいこともわかるがこれもアイドル界を盛り上げるた――」

伊織「ビジネスのためだってはっきりいえば?」

高木「……うん」
504 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 01:00:32.17 ID:FlIW9w0M0
伊織「ま、別にいいじゃない。会社の利益になるなら」

千早「水瀬さん、結構ドライなのね」

伊織「現実を見ているだけよ」

美希「ミキはヤだな。
   やっとハニーが戻ってきたのにプロデュースしてもらえないなんて」

P「大丈夫、みんなのこともちゃんとプロデュースしていく。
  一緒にいてやれる時間は確かに少なくなるけど、今は律子だっているし」

P「それに純粋に楽しみなんだ。
  ライバル事務所のアイドル同士でユニットを組めることが」

P「美希やみんながその中でどんな輝きを放てるのか見てみたいんだ」

美希「……」

高木「向こうのアイドルをうちで預かるかたちになるから、
   彼と会えなくなるわけではないよ」

美希「……浮気しちゃだめだからね」

高木「早ければ来週からプロデュースが始まる。
   顔を合わす機会もあるだろうから仲良くしてあげてほしい」

春香「どんな子たちなんだろうね」

やよい「会えるのが楽しみですねー!」



…………
………
……
505 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 01:03:09.61 ID:FlIW9w0M0
律子「本当に引き受けちゃってよかったんですか。
   うちのアイドルだけでも51人いるのにさらに13人ですよ。
   ちゃんとプロデュースしていけるんですか」

P「なんなら律子もアイドルに復活していいんだぞ」

律子「茶化さないでください」

P「わるい。だがみんなを信頼しているからこそ引き受けたんだ」

P「今回の件で俺がいなくてもみんなは成長できることを証明してくれた。
  俺の力なくしてもトップアイドルを目指していける」

律子「……なんか、別れ際の台詞みたいに聞こえるんですけど」

P「俺が想定していた以上に律子の腕が確かだったってことだ」

律子「……」

P「今年は律子のやりたいようにプロデュースしてみるといい。
  俺が全力でバックアップするから」

律子「あ、ありがとうございます……//」モジモジ

律子「そ、それにしても346プロのアイドルってどんな子たちなんでしょうねっ!」

P「かなり個性豊かな面々と聞いているけど」

律子「個性でうちのアイドルたちの右に出る者なんていないと思いますけど」

P「確かに」クスッ



………………
……………
…………
………
……
506 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 01:04:48.33 ID:FlIW9w0M0
 ――ガチャッ


P「お疲れさまです、ただいま戻りました」

小鳥「あ、お帰りなさい、プロデューサーさん。
   ちょうどいいタイミングで戻りましたね」

P「……?」

小鳥「つい先ほど、346プロのアイドルたちが到着したところです。
   みんな社長室にいますよ」

P「そうですか、どんな子たちだろ」

小鳥「プロジェクト資料も届いてますけど見ます?」

P「ありがとうございます」

P「……」ペラッ



P「……!」
507 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 01:05:50.46 ID:FlIW9w0M0
 ――コンコン ガチャッ!

P「失礼します!」

高木「おお、キミか」

高木「ちょうどいい、紹介しよう。
   彼がキミたちを担当するプロデューサーだ」



 「ふーん、アンタが私たちのプロデューサー?」




          ――――まぁ、悪くないかな




                    おわり
508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/08(日) 01:16:59.20 ID:zugngacLo
真よき物語でした
お疲れさま、ありがとう
509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/08(日) 01:32:24.17 ID:gbm+aVr2o
乙!
510 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/08(日) 01:53:05.96 ID:w0Cn4U+go
乙!
いやー、綺麗に纏まりましたな
511 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/08(日) 01:59:32.69 ID:Ja1CP0iio
おつ
512 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/08(日) 02:04:04.89 ID:5ib1Mxtuo
513 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/08(日) 02:28:33.65 ID:V207Qb8x0
514 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/11/08(日) 02:32:10.39 ID:gFry4XzC0
こんないいアイマスssは久しぶりに見たな
15周年記念の劇場版を観たような気分です
本当に一さん乙!ありがとう
515 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/11/08(日) 03:29:33.69 ID:gFry4XzC0
こんないいアイマスssは久しぶりに見たな
15周年記念の劇場版を観たような気分です
本当に一さん乙!ありがとう
516 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/08(日) 03:51:03.86 ID:GDbEldho0
お疲れさまでした!
Pが「ちょっと違う世界」に転移してプロデュースするSSは色々と名作があるけど
これも本当に素晴らしい名作でした

最初の時の記憶の混同のゾクゾクするホラー感が良かったです
向こうの世界ではまた元のPに戻ったのかな
517 : ◆nx90flyJCa6p [sage saga]:2020/11/08(日) 10:09:31.83 ID:FlIW9w0M0
長いことお付き合いしていただき誠にありがとうございます
お暇なら大分昔に書いたこっちもよろしく


春香「ムラムラするなぁ」

美希「神さま、お願いします」
518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/08(日) 13:58:07.33 ID:3JRsFS0nO
良かった…
519 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/09(月) 01:42:12.59 ID:8gKXGPbyo
>>517
過去作もご馳走様でした
520 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/11(月) 00:44:41.04 ID:5H17Ilgb0
忙しくてリアタイでは追えなくて、ブクマだけしてたら読み終わるのが大変遅くなってしまいました…
けど、一度読み始めたら一気に読んでしまうくらい面白かったです。
遅ればせながら、お疲れさまでした!
386.70 KB Speed:0.4   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)