シンジ「君が、葛城ミサトちゃんだね」

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112 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:40:09.25 ID:lRBHXjHEo
日向「よせよ、女子たち、こっち見てるぞ?」

青葉「いいじゃないか。見せてくれてるんだろ」

日向「お前な…」

青葉「ふん…なーに淡泊ぶってるんだ?お前だってさっきから葛城ばっかり見てるじゃないか」

日向「なっ、み、見てない!」

青葉「おいおい。今さら隠すなよ、好きなんだろ?」

日向「それとこれとは別だろ!」

青葉「…葛城の胸、葛城の太もも、葛城のふくらはぎ…」

日向「よせよ!」



青葉「それにしても…赤木はいつも一人だよな…」

日向「赤木リツコか?」

青葉「ああ…マヤちゃんがちょいちょい声かけてる以外は。友達いないのかな」

日向「…作る気がないんじゃないのか?一人で寂しいってふうでもないし…」

青葉「それもそうだな…」
113 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:41:03.04 ID:lRBHXjHEo
アナウンス「エヴァ初号機は第3次冷却に入ります。第6ケージ内はフェーズ3までの各システムを落としてください」

ヒカリ「先のハーモニクス及びシンクロテストは異常なし。数値目標を全てクリア」

オペレータ「了解。結果報告はBALTHASARへ」

ヒカリ「了解」

オペレータ「エントリープラグのパーソナルデータはオールレンジにてMELCHIORへコピー。データ送ります」


ミサト「……」

リツコと父親が親しげに話している

ミサト「…、……」


オペレータ「MELCHIOR了解。回路接続」

オペレータ「第3時冷却スタートします」

ヒカリ「CBL循環を開始」

オペレータ「廃液は第2浄水システムへ」

オペレータ「各タンパク壁の状態は良好。各部問題無し」

オペレータ「零号機の再起動実験までマイナス1500分です」
114 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:42:05.02 ID:lRBHXjHEo
シンジ・ミサト宅

レイ「これは?」

シンジ「カレーだよ。市販のルーは使ってないんだ」

レイ「相変わらずね…」


レイ「…お肉はよけてくれる?」

シンジ「相変わらずだなぁ…」


シンジ「ミサトちゃん、つぐよ?」

ミサト「あ…いえ、大丈夫です。私は自分で…」ドヴァーッ

カップラーメンにカレーを投下するミサト


シンジ「えっ」

レイ「本気…?」

ミサト「えっ?あ…すいません…この食べ方が好きで…」

シンジ「い…いや、いいと思うよ。人それぞれだし」
115 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:43:03.70 ID:lRBHXjHEo
レイ「…じゃあ」

ミサト「いただきます!」


レイ・ミサト「ンッ!」


ミサト「〜おっいしい!」

レイ「おいしい…」

シンジ「はは…照れるな…」



ペンペン「クワッ」

レイ「……」

ペンペン「クワックワ〜」

レイ「……」


ミサト「あの…レイさんってペンペン苦手なんですか…?」

シンジ「ん?いや。はは…あれが綾波なりの愛で方なんだよ」
116 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:44:02.50 ID:lRBHXjHEo
レイ「はじめて見たときは驚いたけど…慣れると可愛いわ…」

ミサト「そうですよね、私もはじめて見たときは、……」カァ

シンジ「……」カァ

レイ「…碇君、あなた何かしたの?」

シンジ「なっ、何もしてないよ!何言い出すんだよ綾波」

レイ「じゃあ今何を思い出したの?」

シンジ「なっ…何も思いだしてないよ!」

レイ「…ミサトちゃん、やっぱり引っ越したほうがいいわ。いくら碇君でも自分の性には抗えないもの」

ミサト「い…いえ…その…あれは本当に…」

シンジ「もう!やめてよ綾波!ほんとに何もなかったったら!」

レイ「そうなの?ミサトちゃん」

ミサト「……」コクン

レイ「……そう…何もないならいいのだけど」

シンジ「だから最初からそう言ってるじゃないか…!」

レイ「確認は必要よ」
117 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:45:03.01 ID:lRBHXjHEo
レイ「……そう言えば。ミサトちゃん、ひとつ頼まれてくれないかしら」

ミサト「はい…?」

レイ「リツコちゃんの更新カード。渡しそびれてしまって…悪いんだけど、本部に行く前に彼女のところに届けてほしいの」

ミサト「わかりました」

シンジ「…リツコちゃんとはもう仲良くなれた?」

ミサト「いえ…ほとんど口聞いてなくて…」

シンジ「そっか…リツコちゃんあんまり喋らないもんな…」


ミサト「…リツコちゃんって、どんな子ですか?」

レイ「いい子よ……とても。ただ愛情表現が苦手みたい…その点はあなたのお父さんと似ているかもね」


ミサト「……父と……」

シンジ「……………」
118 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:46:03.18 ID:lRBHXjHEo
ミサト「ごめんください…」

ミサト「ごめんください、あの、いますか?…リツコちゃん?」

ミサト「………」

机の上に置かれた眼鏡

ミサト「…リツコちゃんのかしら…?」


ミサト「…?」クルッ

ミサト「うわ…ごめん、いたの…」

リツコ「ええ。何か?」

ミサト「あの…カードが、新しくなったの。えと…だから、レイさんに頼まれて、渡しに…」

リツコ「そう」

ミサト「えっと…(目のやり場に困るわ…)」

リツコ「そこに置いておいてちょうだい…着替えたら行くわ」

ミサト「…待っててもいい?その…一緒に行っても」

リツコ「別に…構わないわ」
119 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:47:03.05 ID:lRBHXjHEo
アナウンス「セントラルドグマは現在改装中です。技術班は第4直通ゲートを利用してください」


ミサト「…今日は再起動の実験よね。…今度は、上手くいくと良いわね」

ミサト「ねぇ、リツコちゃんは怖くないの?またあの零号機に乗るのが」

リツコ「なぜ?」

ミサト「なぜって…前の実験で大怪我したって聞いたから。その…平気なのかなって思って」

リツコ「…あなたは葛城指令の子どもでしょ?」

ミサト「? ええ…」

リツコ「信じられないの?お父さんの仕事が」

ミサト「……信じられるわけないわよ、あんな父親なんて」

ミサト「…だいたい、私たちみたいな子どもをあんな危険なものに乗せて、平気な顔してるのが分からないわ。それに私を遠くへやったときだってろくな説明もしないで…」

リツコ「……」

ミサト「ここに呼ぶときだって手紙で「至急来られたし」たったそれだけよ?」

ミサト「信じられるわけ…ちょっと、リツコちゃん聞いてる?」

リツコ「……あなたはよく喋るのね…」
120 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:48:02.83 ID:lRBHXjHEo
(葛城「大丈夫か、リツコ?」)


(レイ「その時パイロットが中に閉じ込められてね、葛城指令が彼女を助け出したの。加熱したハッチを無理やりこじ開けてね」)


(レイ「手のひらの火傷はその時のものよ」)



葛城「リツコ、聞こえるか?」

リツコ「はい」
121 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:49:04.50 ID:lRBHXjHEo
葛城「これより零号機の再起動実験を行う。第一次接続開始」

レイ「主電源コンタクト」

ヒカリ「稼動電圧臨界点を突破」

レイ「了解、フォーマットフェーズ2に以降」

オペレータ「パイロット零号機と接続開始」

オペレータ「回線開きます」

オペレータ「パルス及びハーモニクス正常」

オペレータ「シンクロ問題無し」

オペレータ「オールナーブリンク終了、中枢神経素子に異常なし」

オペレータ「再計算、誤差修正なし」

ヒカリ「チェック2590までリストクリア。絶対境界線まで後2.5、1.7、1.2、1.0、0.8、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、突破。ボーダーラインクリア」


ヒカリ「零号機起動しました」

リツコ「了解、引き続き連動試験に入ります」
122 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:50:03.79 ID:lRBHXjHEo
カヲル「…葛城君、未確認飛行物体が接近中だ…恐らく第五の使徒だろうね」

葛城「テスト中断。総員第一種警戒態勢」

カヲル「…零号機はこのまま使わないのかい?」

葛城「まだ戦闘には耐えない。初号機は?」

レイ「380秒で準備できます」


葛城「出撃だ」

レイ「はい」


葛城「リツコ、再起動は成功した。戻れ」


リツコ「……」
123 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:51:08.35 ID:lRBHXjHEo
ケンスケ「目標は遠野沢上空を通過」

トウジ「初号機発進準備に入ります。第一ロックボルト、外せ」

ミサト「解除確認」

トウジ「了解。第二拘束具外せ」

オペレータ「了解」


ケンスケ「目標は芦ノ湖上空へ侵入」

トウジ「エヴァ初号機、発進準備よろし!」

シンジ「発進!」
124 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 00:52:08.09 ID:lRBHXjHEo
ケンスケ「目標内部に高エネルギー反応!」

シンジ「そんな…っ!?」

ケンスケ「円周部を加速、収束していきます!」

レイ「まさかっ!?」



シンジ「ミサトちゃん!!!!避けてっ!」


ミサト「えっ?」


ミサト「アアアアァァァァッッッッ、アアアァァァァ!!!」



シンジ「ミサトちゃん!!」






伍話分終わり
125 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:42:04.81 ID:lRBHXjHEo
ケンスケ「目標内部に、高エネルギー反応!」

シンジ「そんな…っ!?」

ケンスケ「円周部を加速!収束していきます!」

レイ「まさかっ!」


シンジ「ミサトちゃん!!避けてっ!!!」


ミサト「え!?」

ミサト「…ぁぁあああああ!」


シンジ「戻してください!早く!」


ケンスケ「目標、完黙!」

シンジ「ミサトちゃんはっ?」

トウジ「まだ生きとる!」

ヒカリ「初号機回収、第7ケイジへ!」

シンジ「ケイジへ行ってくる。後は頼むよ!」
126 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:43:03.23 ID:lRBHXjHEo
ヒカリ「初号機、固定完了!」

トウジ「パイロット、脳波乱れとる、心音微弱!」

レイ「生命維持システム最大、心臓マッサージを!」

トウジ「心臓マッサージ!」

トウジ「パルス確認!」

レイ「プラグの強制排除、急いで!」

レイ「L.C.L.緊急排水!」

ヒカリ「はい!」



シンジ「…早く、早くハッチを開けて!」

シンジ「ミサトちゃん…!」


処置室へ運ばれるミサト


シンジ「……」
127 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:44:02.28 ID:lRBHXjHEo
ケンスケ「敵、荷粒子砲命中、ダミー蒸発!」

シンジ「次!」

ケンスケ「12式自走臼砲消滅!」

シンジ「…なるほど…」

職員「これまで採取したデータによりますと、目標は一定距離内の外敵を自動排除するもの、と推測されます」

トウジ「エリア侵入と同時に荷粒子砲で100%狙い撃ち…こりゃあ、エヴァによる近接戦闘は危険過ぎるなァ」

シンジ「A.T.フィールドは?」

職員「健在です。相転移空間を肉眼で確認できるほど、強力なものが展開されています」

トウジ「誘導火砲、爆撃やらの生半可な攻撃じゃあ、泣きを見るだけやな…これじゃあ」

シンジ「攻守ともにほぼ完璧…まさに空中要塞か…それで、問題のシールドは?」

職員「現在目標はわれわれの直上、第3新東京市ゼロエリアに侵攻、直径17.5mの巨大シールドがジオフロント内、ネルフ本部に向かい穿孔中です」

トウジ「…敵さん、ここへ直接、攻撃を仕掛けるつもりやな」

シンジ「…到達予想時刻は?」

職員「あ、明朝午前0時06分54秒、その時刻には22層全ての装甲防御を貫通して、ネルフ本部へ到達するもの、と思われます」

シンジ(後10時間足らず…)
128 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:45:03.83 ID:lRBHXjHEo
ケンスケ「敵シールド、第一装甲版に接触!」

シンジ「こちらの初号機の状況は?」

レイ「胸部第3装甲板まで見事に融解。機能中枢をやられなかったのは、不幸中の幸いね」

ヒカリ「後3秒照射されていたら、アウトだったけど…」

ケイジ作業員「3時間後には換装作業、終了予定です」

シンジ「了解。ありがとう…零号機は?」

ヒカリ「再起動自体に問題ないけど、フィードバックにまだ誤差が残ってるわ」

レイ「実戦は…」

シンジ「まだ無理、か…」

シンジ「…ミサトちゃんの容体は?」

トウジ「身体に異常はあらへん。神経パルスが0.8上昇しとるくらいで、あとは許容範囲内や」

ケンスケ「敵シールド到達まで、後9時間55分!」

シンジ「状況は芳しくない、か…」

トウジ「白旗でも揚げるか?」

シンジ「…その前に、試してみたいことがあるんだ」
129 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:46:04.94 ID:lRBHXjHEo
カヲル「目標のレンジ外、超長距離からの直接射撃…?」

シンジ「…そうです。目標のA.T.フィールドを中和せず、高エネルギー収束帯による一点突破しか…方法はないと思います」

カヲル「成功するのかい?」

シンジ「………MAGIは」

カヲル「いや。君の見立てだよ…作戦部長としての」

シンジ「…残り9時間以内で実現可能、かつもっとも確実な方法かと思われます」

カヲル「ふふ…頼もしいね」

葛城「…反対する理由はない。実行してくれ」

シンジ「はい!ありがとうございます」
130 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:47:03.10 ID:lRBHXjHEo
レイ「しかし、よく通ったものね…こんな作戦が。MAGIは何と言ってるの?」

シンジ「…賛成2、条件付き賛成が1」

レイ「勝算は8.7%か…」

レイ「でも…うちのポジトロンライフルじゃ、そんな大出力には耐えられないわよ。…どうするの?」

シンジ「…耐え得るのを借りてくるよ」




シンジ「……以上の理由により、この自走陽電子砲は、本日15時より、特務機関ネルフが徴発いたします」

戦自の人「かと言って、しかし、そんな無茶な…」

シンジ「申し訳ありません…可能な限り、原形をとどめて返却するよう、努めますので。…では、ご協力、感謝します!」ペコッ

シンジ「…リツコちゃーん!持って行ってー!精密機械だから、そーっと、そおっとね!」

戦自の人「……………」

シンジ「……はは…」

トウジ「けどなぁ、A.T.フィールドをも貫くエネルギーっちゅうのは、最低1億8千万キロワットやぞ、それだけのもんを、どっから集めてくるんや?」

シンジ「…日本中だよ」
131 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:48:02.93 ID:lRBHXjHEo
TV(日向邸内)「番組の途中ですが、ここで臨時ニュースをお伝えいたします」

TV(伊吹邸内)「本日、午後11時30分より」

TV(街頭)「明日未明にかけて、全国で大規模な」

ヘリコプター「停電があります。皆様のご協力をよろしくお願いいたします」

放送「繰り返しお伝えいたします。本日午後11時30分より、」

宣伝カー「明日未明にかけて、全国で大規模な」

放送「停電があります。皆様のご協力をよろしくお願いいたします」



オペレータ「敵シールド、第7装甲版を突破」

シンジ「…エネルギーシステムの見通しは?」

オペレータ「現在予定より3.2%遅れていますが、本日23時10分には、何とかできます」

シンジ「ポジトロンライフルは?」

作業員「技術開発部第三課の意地にかけても、後3時間で形にして見せますよ!」

シンジ「…みんなありがとう。それで…防御手段は」

レイ「盾で防ぐしかないわね」
132 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:49:02.95 ID:lRBHXjHEo
ヒカリ「これが…盾?」

レイ「そう、SSTOのお下がり。二課の保証書付きよ?見た目はひどくても、もともと底部は超電磁コーティングされている機種だし、あの砲撃にも17秒はもつ」

シンジ「分かった。狙撃地点は?」

トウジ「目標との距離、地形、手頃な変電設備も考えると…やっぱりここやな」

シンジ「…うん…。これで理論上はいけるはずだ…」

シンジ「狙撃地点は二子山山頂。作戦開始時刻は明朝0時、以後、本作戦を、ヤシマ作戦と呼称します!」

トウジ「了解!」

シンジ(後は、パイロットの問題か…)



職員「初号機パイロットの意識が戻ったそうです。検査数値に問題なし」

シンジ「ありがとう。では、作戦は予定どおりに」

職員「了解」


レイ「…彼女、もう一度乗るかしら?」

シンジ「……」
133 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:50:03.25 ID:lRBHXjHEo
ミサト「ん?あぁ…?リツコちゃん…?」

リツコ「明日、午前0時より発動される、ヤシマ作戦のスケジュールを伝えます」

リツコ「葛城、赤木の両パイロットは、本日1730、ケイジに集合」

リツコ「1800、初号機および零号機起動」

リツコ「1805、発進」

リツコ「同30、二子山仮設基地到着」

リツコ「以降は別命あるまで待機」

リツコ「明朝日付変更と同時に作戦行動開始」



リツコ「これ…新しいものよ」

リツコ「寝ぼけて、その格好で来ないでね」

ミサト「ん?…きゃっ!……」
134 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:51:03.40 ID:lRBHXjHEo
リツコ「食事は?」

ミサト「…何も、食べたくないわ…」

リツコ「60分後に出発よ」

ミサト「…また、あれに乗らなきゃならないの…?」

リツコ「ええ」

ミサト「私は……嫌よ…リツコちゃんみたいに、強くなれない、逃げ出したい……」

リツコ「………」

ミサト「リツコちゃんは…!なぜ平気なの、暴走したんでしょう…!?前の実験で……。もう嫌…私は…もうあんな痛い思いは…!」

リツコ「…なら寝ていたら?」

ミサト「ね…寝ていたら、って…?」

リツコ「初号機には私が乗るわ…。綾波博士が初号機のパーソナルデータの書き換えの用意をしてる」

ミサト「レイさんが?」

リツコ「じゃあ、碇一尉と綾波博士がケイジで待っているから」

リツコ「さようなら」

ミサト「……」
135 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:52:03.37 ID:lRBHXjHEo
日向「ずいぶん遅いな…。もう避難する時間だぞ?」

青葉「親父のデータをちょろまかして見たんだ。この時間に間違いない」

日向「…だが、出てこないぞ?」

青葉「ん?」

男子生徒「おおっ?」

日向「…山が、動いてる…!」

青葉「エヴァンゲリオンだ!」



男子生徒「おおっ!」

男子生徒「すっげーっ!」

男子生徒「ミサトちゃーん!」

男子生徒「頼んだぞー!」

男子生徒「好きだーっ!」

男子生徒「エヴァンゲリオ〜ン!」

男子生徒「頑張れよー!」
136 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:53:01.85 ID:lRBHXjHEo
ケンスケ「敵シールド、第17装甲板を突破!本部到達まで、後3時間55分!」

トウジ「四国および九州エリアの通電完了」

オペレータ「各冷却システムは試運転に入ってください」

レイ「精密機械だから、慎重にね」

ミサト「でも、こんなヘンテコな兵器、役に立つんですか?」

レイ「仕方ないわよ、間に合わせなんだから」

ミサト「…大丈夫ですよね」

レイ「理論上はね。でも、銃身や加速器がもつかどうかは、撃ってみないと分からないわ。こんな大出力で試射したこと、一度も無いから」

シンジ「本作戦における、各担当を伝達します」

シンジ「ミサトちゃん」

ミサト「はい」

シンジ「初号機で砲手を担当」

ミサト「はい」

シンジ「リツコちゃんは零号機で防御を担当して」

リツコ「はい」
137 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:54:03.42 ID:lRBHXjHEo
レイ「これは、ミサトちゃんと初号機の方が、シンクロ率が高いからよ。今回はより精度の高いオペレーションが必要なの」

レイ「陽電子は地球の自転、磁場、重力の影響を受け、直進しません。その誤差を修正するのを、忘れないでね」

レイ「正確に、コア一点のみを貫くのよ」

ミサト「えっ、ど、どうやって…」

レイ「大丈夫、あなたはテキストどおりにやって、最後に真ん中のマークがそろったらスイッチを押せばいいの。後は機械がやってくれるわ」

レイ「それと、一度発射すると、冷却や再充填、ヒューズの交換などで、次に撃てるまで時間がかかるから」

ミサト「じゃあ、もし外れて敵が撃ち返してきたら…?」

レイ「…今は余計なことを考えないで。一撃で撃破することだけを考えて」

ミサト(大ピンチ、ってワケね…)


リツコ「…私は初号機を護ればいいのね」

レイ「そうよ」

リツコ「分かりました」


シンジ「…時間だ。2人とも、…無事を祈ってるよ」

ミサト・リツコ「はい」
138 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:55:02.66 ID:lRBHXjHEo
ミサト「これで死ぬかもしれない…」

リツコ「なぜそう思うの?」

ミサト「……」

リツコ「あなたは死なないわ」

リツコ「私が守るもの」

ミサト「……」


明かりの消えた街。見下ろすミサト、リツコ


ミサト「…リツコちゃんはなぜこれに乗るの?」

リツコ「…これしか出来ることがないから」

ミサト「そんな…」

リツコ「そうよ。それに、恩もある…」

ミサト「…お父さんに?」

リツコ「みんなによ」
139 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:56:02.13 ID:lRBHXjHEo
ミサト「やっぱり……強いのね、リツコちゃんは…」

リツコ「……」

リツコ「…ほかに何も無いだけよ」

ミサト「……!」

ミサト「ほかに何も無いって…」



リツコ「時間よ。行きましょう」


リツコ「じゃあ…さようなら」
140 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:57:03.12 ID:lRBHXjHEo
時報「ただいまより、0時0分0秒をお知らせします」

トウジ「作戦、スタート!」


シンジ「ミサトちゃん、日本中のエネルギー…君に預けるよ」

シンジ「頑張って…!」


ミサト「はいっ!」


シンジ「第一次、接続開始!」

トウジ「第一から、第803管区まで、送電開始!」

オペレータ「電圧上昇中、加圧域へ!」

トウジ「全冷却システム、出力最大へ!」

オペレータ「温度安定、問題なし!」

オペレータ「陽電子流入、順調なり」

シンジ「第二次、接続!」

オペレータ「全加速器、運転開始!」
141 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:58:03.35 ID:lRBHXjHEo
ヒカリ「強制収束器、作動!」

オペレータ「全電力、二子山増設変電所へ!第三次接続、問題なし!」

シンジ「最終安全装置、解除!」

トウジ「撃鉄起こせ!」

オペレータ「地球自転、および、重力の誤差修正、プラス0.0009。電圧、発射点まで、後0.2」


トウジ「第七次最終接続、全エネルギー、ポジトロンライフルへ!」

トウジ「8、7、6、5、」

ヒカリ「目標に高エネルギー反応!」

トウジ「4、」

レイ「早い…っ!」


トウジ「3、2、1!」

シンジ「発射!」
142 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 01:59:02.73 ID:lRBHXjHEo
ミサト「ぅううううッ!」


レイ「あぁっ!」

シンジ「…まずいっ!」


ケンスケ「敵シールド、ジオフロントへ侵入!」

シンジ「第二射、急いで!」

トウジ「ヒューズ交換!再充填開始!」


オペレータ「銃身、冷却開始」

ヒカリ「目標に再び高エネルギー反応!」

シンジ「まずい…!」



ミサト「う…っ!」


シンジ「ミサトちゃん!」
143 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 02:00:03.27 ID:lRBHXjHEo
ミサト「……はっ…!リツコちゃ…っ!」

リツコ「………っ!」



レイ「盾がもたない!」

シンジ「時間は!?」

トウジ「後10秒!」


ミサト「早く…」


ミサト「早く!」


第二射発射


シンジ「やった!」
144 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 02:01:02.21 ID:lRBHXjHEo
ミサト「リツコちゃんッ!」


ハッチを抉じ開ける


ミサト「うぅ……ぐぅぅぅ…うぅぅぅぅ…っ!」

ミサト「……ちゃん、…リツコちゃん…!」

ミサト「リツコ……!大丈夫!?」

リツコ「……………」

ミサト「自分には…自分にはほかに何も無いなんて、そんなこと言うんじゃないわよ…!別れ際に、さよならなんて…っ、うっ…言うんじゃ、ないわよ…!」

リツコ「…泣いているの…?」

リツコ「……ごめんなさい、でも、私にはああするしか……」

ミサト「馬鹿……っ!」

ミサト「……無事でよかった……」ギュッ

リツコ「………」

リツコ「……」キュ…

六話分終わり
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/24(火) 12:49:01.58 ID:tzveXElV0
このままだとミサトちゃんがシンジにキスして「帰ったら続きやるわよ」って出撃するようになるのか?
かっこ良すぎだろ
146 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 19:59:18.46 ID:lRBHXjHEo
25話辺りか
気長に待っててくれ
2週間以内には終わらせる
147 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:01:04.19 ID:lRBHXjHEo
(通話)

葛城「…また君に借りができたな」

アスカ「いーですよ。どうせ、返すつもりもないんでしょ?それと…あいつらが情報公開法をタテに迫っていた資料、ダミーも混ぜてあしらっといたから」

アスカ「政府は裏で法的整備を進めてるけど…近日中に頓挫の予定よ。で、どうするの?例の計画もこっちで手を打つ?」


葛城「いや、君の資料を見る限り、問題はない」

アスカ「そう。…なら、シナリオ通りに」
148 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:02:02.00 ID:lRBHXjHEo
ミサト「…おはよう、ございます…」

シンジ「おはよう。よく眠れた?」ジュワッ

ミサト「ふわぁ…はい…」

シンジ「あはは…はい、半熟」

ミサト「ありがとうございます……あ」

シンジ「うん?」

ミサト「す…すいませ…今日の食事当番…!」

シンジ「ああ。いやいや、いいよ。僕も勘違いして起きてきちゃったんだ」

ミサト「………シンジさんって、どうして独身なんですか…?」

シンジ「ぶっ、…どうしたの、急に…」

ミサト「いえ、だって。とってもいい人なのに」

シンジ「そんな…買いかぶりすぎだよ」

ミサト「そんなことないです!ご飯だって美味しいし!」

シンジ「あはは…お粗末さま」
149 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:03:01.26 ID:lRBHXjHEo
ミサト「今日…ほんとに学校くるんですか?」

ミサト「うん、進路相談だからね…あ…やっぱり嫌かな?でも綾波は今日…」

ミサト「ち、違います!…仕事で、忙しいのに…」

シンジ「なんだ。そんなことか。気にしなくてもいいよ、これも仕事のうちだから」

ミサト「仕事…ですか…?」


「ピンポーン」


シンジ「はい?…ああ、わざわざありがとう。うん、少し待っててね」

シンジ「ミサトちゃん」

ミサト「わ、わかってます…!」


シンジ「ふふ。気をつけてね?」

ミサト「いってきます!」
150 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:04:01.77 ID:lRBHXjHEo
日向・青葉「あっ…おはよ〜葛城さん!」


ミサト「…!(ちょっと!声、大きいから!)」シーッ


青葉「…ん?静かにしろってさ」

日向「しまったな…姿が見えたから、つい…」


日向「あ」

シンジ「ミサトちゃんをよろしくね〜」フリフリ

青葉「は〜い!」


ミサト「はっ、早く行きましょ!」




シンジ「…やっぱりモテるんだろうな…ミサトちゃん…可愛いし。変な奴に付きまとわれなきゃいいけど……。まぁ、あの二人とは仲いいみたいだし…安全かな?」

電話「はい、もしもし」

シンジ「今家を出たので、後のガードお願いします」
151 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:05:01.40 ID:lRBHXjHEo
青葉「お、シンジさんだ」


女子「誰あれ!大学生?」

女子「え!?葛城さんの保護者!?」

女子「どこどこ!?」

女子「なんか、さわやか美青年、って感じ!」

女子「キャー!こっちに手を振ったわよ!」



青葉「…女子はああいうのがいいのか…」

日向「どうだろうな。年上の男が珍しいんだろ?」

青葉「お前…やめとけよ」

日向「何が」

青葉「男の嫉妬は見苦しいぞ?」

日向「…嫉妬なんてしてない」
152 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:06:01.66 ID:lRBHXjHEo
日向「…でもまぁ」

青葉「うん?」

日向「あの歳でネルフの作戦部長ってのは…確かに凄いよな」

青葉「だな」

ミサト「そうなの…?」

青葉「んん?あぁ…まぁ…」


青葉「…マコト、やっぱりシンジさんは敵じゃないんじゃないのか…?」ボソッ

日向「そう断じるのはまだ早いさ…」

ミサト「…? (なにコソコソ喋ってるんだろう…)」
153 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:07:02.49 ID:lRBHXjHEo
女子「え!?料理に、掃除洗濯まで得意なの!?」

女子「なにそれ〜!完璧じゃん!」

女子「なんで独身なんだろ〜。普通ほっとかないよね〜?」

ミサト「…うん。わたしもそう思う」



日向・青葉「!!!」


日向「ほらな…」
154 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:08:01.88 ID:lRBHXjHEo
ヒカリ「初号機、冷却値をクリア、作業はセカンドステージに移行してください」

ミサト(また乗ってる……でも、最初よりは慣れたかな…)

ミサト(…エバー。ネルフの秘密兵器、世界再建の要。……エバーって何なのかしら。なぜ動いてるのか…乗っていても分からない…血の匂いがするエントリープラグ。なのに、どうして落ち着くんだろう)

ミサト(考えても無駄か……科学の結晶だもんね…)


レイ「零号機の胸部生体部品はどう?」

ヒカリ「大破だったから、新作するけど…追加予算の枠、ギリギリね」

レイ「…ドイツから弐号機が届いて、少しは楽になるといいけど」

トウジ「逆かも分からんなァ。なんせ地上でやっとる使徒の処理も、タダや無いんやし」

シンジ「…本当、どうにかしてほしいよ…。人類の命運がかかってるのに…」

レイ「…仕方ないわ。人はエヴァのみで生きているわけではない。…生き残った人たちが生きていくにはお金がかかるのよ」

シンジ「予算、か。じゃあ司令はまた会議?」

レイ「ええ、今は機上の人よ」

ヒカリ「司令が留守だと、ここも静かね…」
155 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:09:46.06 ID:lRBHXjHEo
男「失礼。便乗ついでに、ここ、よろしいですか?」

男「サンプル回収の修正予算、あっさり通りましたね」

葛城「委員会も自分が生き残ることを最優先に考えている。そのための金は惜しまないだろう…」

男「使徒はもう現れない、と言うのが彼らの論拠でしたからね」

男「ああ、もう一つ朗報です。米国を除く全ての理事国がエヴァ六号機の予算を承認しました」

男「まあ、米国も時間の問題でしょう。失業者アレルギーですしね、あの国」

葛城「君の国は?」

男「八号機から建造に参加します。第二次整備計画は、まだ生きてますから」

男「ただ、パイロットがまだ見つかっていないという問題はありますが」

葛城「…使徒は再び現れた。われわれの道は彼らを倒すしかないだろう」

男「私も、セカンドインパクトの二の舞は、ごめんですからね」
156 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:10:21.32 ID:lRBHXjHEo
ミサト「…じゃあ、南極大陸が蒸発した、セカンドインパクトって…」

レイ「そう。歴史の教科書では大質量隕石の落下による大惨事となっているけど……事実は往々にして隠蔽されるものなのよ」

レイ「15年前、人類は最初の「使徒」と呼称する人型の物体を南極で発見した」

レイ「でもその調査中に原因不明の大爆発を起こした…それがセカンドインパクトの正体」

ミサト「じゃあ、私たちのやっていることは…」

レイ「予想されうるサードインパクトを未然に防ぐ、そのためのネルフと、エヴァンゲリオンなのよ」


レイ「ところで例の件……明日、予定通りやるそうよ」

シンジ「…分かった」
157 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:11:01.45 ID:lRBHXjHEo
ペンペン「クワァッ!」

シンジ「おはよう」


ミサト「お、おはようございます」

シンジ「…今日はちょっと仕事で遅くなるから、先に食べちゃってていいからね」

ミサト「あっ、はい…」


シンジ「じゃあ、戸締りよろしくね」





シンジ「ここがかつての大都会か…なんだか寂しいところだね…」


レイ「着いたわ」


シンジ「何もこんな所でやらなくってもいいのに。…それで、その計画、戦自は?」

レイ「今回は介入してこないそうよ」

シンジ「…道理で自由がきくんだ…」
158 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:12:00.85 ID:lRBHXjHEo
時田「本日はご多忙のところ、わが日本重化学工業共同体の実演会にお越しいただき、まことにありがとうございます」

時田「皆様には後程、管制室の方にて、試運転をご覧いただきますが、ご質問のある方はこの場にてどうぞ」

レイ「…はい」

時田「これは、ご高名な綾波レイ博士、お越しいただき、光栄のいたりです」

レイ「…質問をよろしいでしょうか?」

時田「ええ、ご遠慮なくどうぞ」

レイ「先ほどのご説明ですと、内燃機関を内蔵とありますが」

時田「ええ、本機の大きな特長です。連続150日間の作戦行動が保証されております」

レイ「しかし、格闘戦を前提とした陸戦兵器に、リアクターを内蔵することは、安全性の点から見てもリスクが大きすぎると思われます」

時田「5分も動かない決戦兵器よりは、役に立つと思いますよ」

レイ「……遠隔操縦では緊急時の対処に問題を残します」

時田「パイロットに負担をかけ、精神汚染を起こすよりは、より人道的と考えます」

シンジ「やめてよ…張り合わなくてもいいよ、綾波…」
159 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:13:01.94 ID:lRBHXjHEo
レイ「…人為的制御の問題もあります」

時田「制御不能に陥り、暴走を許す危険極まりない兵器よりは、安全だと思いますがねぇ」

時田「制御できない兵器など、まったくのナンセンスです。ヒステリーを起こした女性と同じですよ、手におえません」

客「ハッハッハッハッハッ」

レイ「そのためのパイロットとテクノロジーです」

時田「まさか。科学と人の心があの化け物を押さえるとでも?本気ですか?」

レイ「もちろんです」

時田「人の心などと言う曖昧なものに頼っているから、ネルフは先のような暴走を許すんですよ」

時田「その結果、国連は莫大な追加予算を迫られ、某国では2万人を超える餓死者を出そうとしているんです」

時田「その上、あれほど重要な事件に関わらず、未だにその原因が不明とは。せめて、責任者としての責務は全うしてほしいもんですな」

時田「良かったですねえ。ネルフが超法規的に保護されていて。あなたがたはその責任を取らずに済みますから」

レイ「…なんとおっしゃられようと、ネルフの主力兵器以外、あの敵性体は倒せません」

時田「A.T.フィールドですか?それも今では時間の問題に過ぎません。いつまでもネルフの時代ではありませんよ」

客「ハッハッハッハッハッ」
160 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:14:02.11 ID:lRBHXjHEo
シンジ「…大丈夫?綾波…。…あの人も、あそこまで言わなくてもいいのにね」

レイ「…大丈夫よ、問題ない」

レイ「自分を自慢し、誉めてもらいたがっている…健全な子どもよ」


シンジ「…でも、なんであの人たちがA.T.フィールドのことまで…」

レイ「極秘情報がだだ漏れね」

シンジ「諜報部に呼びかけておかないとね…」
161 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:15:02.23 ID:lRBHXjHEo
時田「これより、JAの起動テストを始めます。何ら危険は伴いません。そちらの窓から安心してご覧ください」

オペレータ「起動準備よし」

時田「テスト開始!」


オペレータ「全動力、開放!」

オペレータ「圧力、正常」

オペレータ「冷却器の循環、異常無し」

オペレータ「制御棒、全開へ」

オペレータ「動力、臨界点を突破」

オペレータ「出力、問題なし」
162 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:16:02.29 ID:lRBHXjHEo
時田「歩行開始!」


オペレータ「歩行、前進微速、右足、前へ!」

オペレータ「了解、歩行、前進微速、右足、前へ!」

客「おお!」

オペレータ「バランス正常」

オペレータ「動力、異常無し」

オペレータ「了解、引き続き、左足、前へ!」

オペレータ「よーそろ!」


シンジ「すごいね。ちゃんと歩いてるよ。確かに自慢するだけのことは…」


レイ「……」
163 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:17:02.07 ID:lRBHXjHEo
時田「どうした?」

オペレータ「変です、リアクターの内圧が上昇していきます!」

オペレータ「一次冷却水の温度も上昇中!」

時田「バルブ開放、減速材を注入!」

オペレータ「だめです、ポンプの出力が上がりません!」

時田「いかん、動力閉鎖、緊急停止!」

オペレータ「停止信号、発進を確認!」

オペレータ「受信されず!」

オペレータ「無線回路も、不通です!」

オペレータ「制御不能!」

時田「そんなバカな!」

客「うわぁぁぁぁ!」
164 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:18:03.18 ID:lRBHXjHEo
シンジ「ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、…まずい、あっちには…!」

オペレータ「加圧器に異常発生!」

オペレータ「制御棒、作動しません!」

オペレータ「このままでは、炉心融解の危険もあります!」

時田「信じられん…JAにはあらゆるミスを想定し、全てに対処すべくプログラムが組まれているのに…このような事態はありえないはずだ…」

シンジ「…時田さん、落ち着いてください。炉心融解の危機が迫っているんです…!」

時田「こうなっては、自然に停止するのを待つしか方法は…」

シンジ「…自動停止の確率は?」

オペレータ「0.00002%。まさに奇跡です」

シンジ「…そんなものを待つわけにはいきません。教えてください…停止手段を!」

時田「方法は全て試した!」

シンジ「……まだすべてを白紙に戻す、最後の手段が残っているはずです。そのパスワードを教えてください」

時田「全プログラムのデリートは最高機密。私の管轄外だ!口外の権限はない!」

シンジ「だったら命令を貰ってください!」

シンジ「人の命がかかってるんです!早く!!!」
165 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:19:01.71 ID:lRBHXjHEo
時田「あ、私だ。第2東京の万田さんを頼む。そう、内務省長官だ」

万田「ああ、その件は矢杉君に任せてある。彼に聞いてくれ」

矢杉「そういう重要な決定事項は口頭ではねぇ。正式に書簡で廻してもらえる?」

時田「では、吉沢さんの許可を取ればよろしいんですね?ええ、ウィッツ氏の承諾は得ておりますから!はい、では!」


シンジ「くそ…たらい回しか…」


時田「今から命令書が届く。作業は正式なものだ」

シンジ「そんな、間に合いませんよ!爆発してからじゃ、何もかも遅い!」


オペレータ「ジェットアーロンは厚木方面に向かい、進行中」

シンジ「時間が無いんです。…これより先は、僕の独断で行動します」
166 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:20:03.76 ID:lRBHXjHEo
シンジ「もしもしトウジ?」

シンジ「厚木にナシつけといたから…うん、ミサトちゃんと初号機をF装備でこっちに。うん。緊急事態なんだ」

レイ「無駄よ…碇一尉。どうやって止めるつもりなの?」

シンジ「人間の手で、直接」




時田「本気ですか?」

シンジ「はい」

時田「しかし内部はすでに汚染物質が充満している!危険過ぎる!」

シンジ「うまく行けば、みんな助かります」

オペレータ「ここの指揮信号が切れると、ハッチが手動で開きますから、」

オペレータ「バックパックから進入できます」

時田「…………」

時田「希望…プログラム消去の、パスワードだ」


シンジ「……ありがとうございます」
167 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:21:02.09 ID:lRBHXjHEo
シンジ「目標はJA、5分以内に炉心融解の危険があります。ですから、目標をこれ以上人口密集地に近づけるわけにはいきません」

シンジ「トウジ」

トウジ「なんや」

シンジ「エヴァを切り離した後は速やかに離脱、安全高度まで上昇して」

トウジ「…了解」
168 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:22:01.53 ID:lRBHXjHEo
シンジ「ミサトちゃん」

ミサト「はい」

シンジ「目標と並走し、僕を背後部に取り付けて。以後は可能な限り目標の移動を塞き止めてね」

ミサト「えっ…乗るんですか?シンジさんが?」

シンジ「そうだよ」

ミサト「そんな…無茶です!」

シンジ「分かってる…だけど他に方法がないんだ」

ミサト「…でも!危なすぎます!」

シンジ「大丈夫、エヴァなら万が一の直撃にも耐えられるよ」

ミサト「違います!私じゃなくて、シンジさんが!!!」

シンジ「……やれることはやっておきたいんだ。後悔は、したくないから」

トウジ「目標を肉眼で確認!」

シンジ「…さぁ、行こう」
169 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:23:01.79 ID:lRBHXjHEo
トウジ「エヴァ、投下位置!」

シンジ「ドッキングアウト!」

ミサト「了解!」


ミサト「追いついた!」

シンジ「後4分も無い…このまま乗り付けて!」

シンジ「ミサトちゃん!乗りつけるんだ!」


シンジ「うっ、……っ!」

ミサト「シンジさん!」


ミサト「気をつけて!」


シンジ「凄い熱だ…長くはもたない…!」


ミサト「止まれ!こンのぉーッ!」

JAを押さえつける初号機

ミサト「…シンジさん、急いで!」



シンジ「ここか……」
170 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:24:01.53 ID:lRBHXjHEo
シンジ「…エラー?何だこれ…」

シンジ「間違いない……プログラムが変えてあるんだ…」



オペレータ「動力炉、臨界点まで後0.2!」

オペレータ「制御棒、作動しません!」


シンジ「…後には戻れない…やるしかない」


シンジ「ぐぅぅぅぅ!」


ミサト「シンジさん!逃げてっ!」
171 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:25:06.84 ID:lRBHXjHEo
シンジ「…うぅ、動けーっ!このぉーっ!」


ミサト「シンジさん…!」


シンジ「ぐぅっ!」

オペレータ「臨界まで、後0.1!」

オペレータ「だめです、爆発します!」


時田「駄目か…」


ミサト「シンジさん!」

シンジ「ぐぅ、ぅう……っ!」
172 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:26:02.43 ID:lRBHXjHEo
オペレータ「やった!」

オペレータ「内圧ダウン!」

オペレータ「すべて正常値!」

オペレータ「助かったぞ!」

オペレータ「やった!やった!やった!」


レイ「……無茶して…」

ミサト「シンジさん、大丈夫ですか、シンジさん!」

シンジ「…はは、うん。なんとか…」

ミサト「良かった、無事なんですね!良かった、本当に良かった…!すごいです、シンジさん。本当に奇跡を起こすなんて…!」

シンジ「うん……ありがとう、皆のおかげだよ」

シンジ(違う…奇跡は用意されていたんだ。誰かの手によって……)




レイ「……初号機の回収は無事終了しました。汚染の心配はありません。…碇一尉の行動以外は、全てシナリオどおりです」

葛城「……そうか」
173 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:27:05.53 ID:lRBHXjHEo
シンジ「そろそろ来るころだね」


ミサト「んぐ、もぐ、んぐ、んぐ、ごほっ」

シンジ「はは…落ち着いて食べなよ」



日向・青葉「か〜つら〜ぎさ〜ん!」


シンジ「あ…ごめんね。ミサトちゃん、今日寝坊しちゃって…ちょっと待っててくれるかな?」

青葉「はは。ゆっくりでいいって伝えてください」

日向「始業までまだ時間がありますから」

シンジ「うん…ありがとう」



ミサト「いってきます…!」

シンジ「いってらっしゃい」
174 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:28:03.26 ID:lRBHXjHEo
日向「…いいよなぁ、シンジさんは」

ミサト「? どうして?」

青葉「葛城と暮らせてってことだろ?」

日向「そうじゃない!」

ミサト「で…でも、迷惑掛けてばっかりよ?私、シンジさんに」

日向「………」

ミサト「ず…ズボラだし、がさつだし…昨日だって食事当番忘れて……」

青葉「そういうとこだろ」

ミサト「えっ?」

青葉「迷惑掛けて、頼って、甘えて…本当の姿を見せられる」

ミサト「…!」

青葉「家族じゃないか?そういうのが」



七話分終わり
175 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:31:01.66 ID:lRBHXjHEo
葛城「そうだ。その問題はすでに委員会に話は付けてある。荷物は昨日佐世保を出港し、今は太平洋上だ」





青葉「わっはっ…!こいつは凄いな…!」

日向「よせよ、子どもみたいに」

青葉「いやいや、子どもだろ。お前こそもっとはしゃげよ」


日向「なんだか…すみません。関係ない俺たちまで連れてきてもらって」

シンジ「あはは。賑やかなほうがいいかなと思って」
176 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:32:01.38 ID:lRBHXjHEo
ミサト「どうして私たちを?」

シンジ「毎日同じ景色だと、息が詰まるだろうから。ここなら…気分転換できるかと思って。…船、苦手だった…?」

ミサト「い、いえっ!誘ってもらえて…その、嬉しいです…」

シンジ「よかった」

日向「……」



シンジ「ミサトちゃん、そんな帽子持ってたんだ」

ミサト「あ…はい…へ、変ですか…?」

シンジ「そんなこと。すごく似合ってるよ」

ミサト「あ…ありがとうございます…!」カァ



日向「………」

青葉「お前、顔怖いぞ」
177 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:33:01.77 ID:lRBHXjHEo
ミサト「で…どこ行くんですか…」

シンジ「あはは…流石にただのクルージング、ってわけにはいかないかな…」

青葉「おお…あれ空母か?でかいなー」

日向「できるのか…?気分転換…」


青葉「葛城様様だな…普通こんなとこ来れないぞ」

ミサト「でっか…」

シンジ「…こんな古いのによく動いてるなぁ…」

青葉「すげー…壮大だ…今なら良い詩が書けそうな気がする…」



OTR艦長「ハッ…、いい気なもんだ。オモチャのソケットを運んできよったぞ。ガキの遣いが!」
178 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:34:02.41 ID:lRBHXjHEo
青葉「見渡す限り戦艦だな…あれいくらするんだろ」

日向「関係ないさ、俺たちには」

青葉「一生遊んで暮らせるんだろうなぁ…」

日向「……」


ミサト「あっ…帽子がっ」


加持「……ん?」



加持「これ、君のかい?」

ミサト「あ…どうも」
179 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:35:01.50 ID:lRBHXjHEo
シンジ「あっ…加持くん!」

加持「やあ、シンジさん。しばらく」


シンジ「ホントに…久し振りだね。…また背、伸びたんじゃない?抜かれるのも時間の問題かな…」

加持「まぁね。こちとら成長期さ」

シンジ「ああ…紹介するね。彼はエヴァンゲリオン弐号機専属パイロット、セカンドチルドレンの…」


加持「加持、リョウジだ……よろしく。サードのお嬢さん」チュッ

ミサト「!!!」


日向「なっ、何して…!」

加持「…あいさつさ。こっちじゃやらないのか?」

日向「……!」

青葉「…こりゃ強敵だ…」
180 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:36:02.75 ID:lRBHXjHEo
加持「…いやはや。女の子だとは聞いていたが、まさかこんなに可愛いとは。…で、そっちの彼らは?ファンクラブの子たちかい?」

日向「な……」ワナワナ

青葉「よせって…半分本当だろ…」


シンジ「もう。違うよ。ミサトちゃんの友達だよ」

加持「…なるほど、「友達」ね。そりゃ羨ましい」

日向「……」ピキピキ
181 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:37:02.24 ID:lRBHXjHEo
艦長「おやおや、ボーイスカウトの引率かと思っていたが、それはどうやらこちらの勘違いだったようだな。」

シンジ「……ご理解いただけて幸いです、艦長」

艦長「いやいや、私の方こそ、久しぶりに子供たちのお守りができて、幸せだよ」

シンジ「このたびはエヴァ弐号機の輸送援助、ありがとうございます」

シンジ「こちらが非常用電源ソケットの仕様書です」

艦長「ハッ、大体この海の上であの人形を動かす要請なんぞ、聞いちゃおらん」

シンジ「…万一の事態に対する備え、と…理解していただけないでしょうか…」

艦長「その万一の事態に備えて、われわれ太平洋艦隊が護衛しておる。いつから国連軍は宅配屋に転職したのかな?」

OTR副長「某組織が結成された後だと、記憶しておりますが」
182 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:38:02.98 ID:lRBHXjHEo
艦長「オモチャ一つ運ぶのにたいそうな護衛だよ。太平洋艦隊勢揃いだからな」

シンジ「ですが…その…エヴァの重要度を考えると、足りないくらいで…」

シンジ「…あの、この書類にサインを…」

艦長「まだだ!エヴァ弐号機および同操縦者は、ドイツの第3支部より本艦隊が預かっている。君らの勝手は許さん!」

シンジ「…では、いつ引き渡しを…?」

副長「新横須賀に陸揚げしてからになります」

艦長「海の上は、われわれの管轄だ。黙って従ってもらおう」

シンジ「う…分かりました。ですが…有事の際は、われわれネルフの指揮権が…その、最優先であることを…」


青葉「うーんなんだか…」


ミサト「カッコ悪い…」
183 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:39:04.45 ID:lRBHXjHEo
アスカ「相変わらず、鈍っ臭いわね」

加持「あ、アスカ先輩」


シンジ「……!!!」


艦長「惣流君!君をブリッジに招待した覚えはないぞ!」

アスカ「入ったらどうだって言うのよ?子どもと年寄りがいるだけじゃない」

艦長「なんだとっ!!!」


シンジ「でっでは!!!これにて失礼します。新横須賀まで輸送、よろしくお願いします…っ!」


日向「…これが気分転換…?」


青葉(すごい美人だ…)
184 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:40:01.13 ID:lRBHXjHEo
艦長「チッ、子供が世界を救うというのか?」

副長「時代が変わったのでしょう。議会もあのロボットに期待していると聞いてます」

艦長「あんなオモチャにか!?バカどもめ!そんな金があるなら、こっちに廻せばいいんだ!」





シンジ「……なんでアスカがここにいるんだよ…!」

アスカ「あら、悪い?加持の随伴よ、ドイツから出張」

シンジ「…それにしたって、なんでアスカが…」

アスカ「あーもうゴチャゴチャうっさい!」

シンジ「うわっ!…やめてよ、狭いんだから…!」
185 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:41:03.58 ID:lRBHXjHEo
アナウンス「第3小隊は予定どおり発艦、到着の第7小隊は、第2デッキに上がってください」


アスカ「ちょっと。バカシンジ」

シンジ「その呼び方やめてよ…」

アスカ「今、付き合ってる奴、いるの?」

シンジ「な…っ、そんなの、アスカには関係ないだろ…!」

アスカ「ふーん?偉くなったもんねぇ…どうせいないくせに」

シンジ「あ…アスカだって…その性格直さないと、次は無理だと思うよ?」

アスカ「ハア?言ったわね…私が奪ってやらなきゃ、ファーストキスもまだだったくせにっ!!!」


ミサト・日向・青葉「…えぇ〜っ!!!」


シンジ「なっ、なっ、なっ、何言ってるんだよ!」

アスカ「…ふん!慌てちゃって馬鹿みたい。何よ、キスくらいで」

シンジ「やっ、やめてよ、もう…!子どもたちの前で…!」
186 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:42:02.72 ID:lRBHXjHEo
アスカ「子ども…ああ、あんたね?葛城ミサトって」

ミサト「えっ、ええ…あの、どうして私の名前を?」

アスカ「そりゃあ知ってるわよ。この世界じゃ、アンタは有名だもの。何の訓練もなしに、エヴァを実戦で動かしたサードチルドレン」

ミサト「いや、そんな…偶然です…」

アスカ「偶然なんてない。アンタの才能よ。…そんなことくらい自覚させときなさいよね、バカシンジ!」



アスカ「じゃ、また後で」

ミサト「はい…」

シンジ「はぁぁあ……こんなことなら…綾波に…」




アスカ「葛城ミサト、か……あんたはどう見る?」

加持「……良い子だね。口説き甲斐がある」

アスカ「ばーか。余裕ぶっこいてんじゃないの。いきなりの実戦でシンクロ率40パー出してんのよ?」

加持「へぇ…そりゃ凄いな」
187 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:43:01.72 ID:lRBHXjHEo
青葉「しかし高圧的な艦長でしたね」

シンジ「…きっと、プライドが高い人なんだよ。皮肉くらいで済むなら…まぁ良しとするよ」

ミサト「何ていうか…はっきり物を言う人ですね、アスカさんって」

シンジ「…はっきり言いすぎだよ、まったく、昔っから…」


青葉「せっかく綺麗なのにな」

日向「あんなに口が悪くっちゃな…」



加持「葛城!」


ミサト「えっ」


加持「…ちょっといいかな?」
188 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:44:02.19 ID:lRBHXjHEo
ミサト「…赤いんだ、弐号機って。知らなかった…」

加持「…珍しいかい?俺には馴染みの色さ…」


加持「…初めての実戦で、シンクロ率40%を叩きだしたんだって?しかも訓練なしで」

ミサト「や…それは、…あの時は、必死だったから…」

加持「誰にでも出来ることじゃない…誇っていいことさ」


加持「…俺も誇りに思ってる…。初めて作られた実戦用のエヴァンゲリオン、そのパイロットである自分…」


ミサト「…あの…なんでここに?」

加持「君に見せたかったのさ。俺と、その相棒をね」
189 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:45:01.97 ID:lRBHXjHEo
爆音

ミサト「なっ、なに!?」

加持「水中衝撃波…!」

加持「近いな…」


ミサト「あれ…!」

ミサト「まさか…使徒!?」

加持「…あれが…!」


ミサト「どっ、どうしよう、シンジさんのところに戻らなくっちゃ…!」


加持「…ついてるぞ…!」
190 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:46:01.94 ID:lRBHXjHEo
アナウンス「各艦、艦隊距離に注意の上、回避運動!」

副長「状況報告はどうした!」

無線「シンベリン沈黙、タイタス・アンドロニカス、目標、確認できません!」

艦長「くそぉ、何が起こっているんだ」


シンジ「…!おそらく、使徒です。エヴァの出動許可を!」

艦長「戦闘中だ!見学者の立ち入りは許可しておらんぞ!」

シンジ「…そんな!他に敵なんて…!」


艦長「全艦任意に迎撃!」


シンジ「無理です、使徒相手じゃ…!」



加持「この程度じゃ、A.T.フィールドは破れない、か」



シンジ「でも…なぜ使徒がここに…まさか、弐号機?」
191 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:47:01.38 ID:lRBHXjHEo
ミサト「ねぇ、どこ行くの!?」

加持「エヴァの所にね。…ここにいてくれ。すぐ戻る」

ミサト「えっ、ちょっと…」



ミサト「…ねぇ?何して…」

加持「おっと。今ちょっと障りがあるんだ。失礼」

ミサト「ごっ、ごごごごめん!」

加持「かまわないさ。…男性用で悪いが、君もこれを」バサッ

ミサト「えっ…」


加持「俺は向こうに行ってる…終わったら来てくれ」



加持「…行ってくるよ…みんな」
192 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:48:03.69 ID:lRBHXjHEo
艦長「なぜ沈まん!」

青葉「やっぱエヴァじゃないと、太刀打ちできないな」

艦長・副長「ぐっ!」




ミサト「ねぇ、エバーに乗るの?」

加持「そうさ。…弐号機で敵を倒すんだ」

ミサト「でも…シンジさんの許可もなしに?」

加持「そんなものは、勝ってから貰えば良い」


加持「…なぁに。どの道エヴァには出撃命令が下る。使徒はエヴァでなければ倒せないからな。それなら早いほうがいい。軍のためにも…俺のためにもね」

ミサト「あなたのため?」

加持「見せ場が増えるだろ?」
193 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:49:02.16 ID:lRBHXjHEo
シンジ「変だな…まるで何かを探しているみたいだ…」


(通話)

アスカ「…こんな所で使徒襲来なんて、話が違うわよ?」

葛城「そのための弐号機だ……最悪の場合、君だけでも脱出しろ」

アスカ「…了解」





加持「L.C.L. Füllung, Anfang der Bewegung Anfang des Nerven anschlusses.Ausulösung von Rinkskleidung.Synchro-Start.」

ミサト「えっ…? 英語……?」

加持「あ…すまない。ついいつもの癖で…ごほん。思考言語切り替え、日本語をベーシックに!」

加持「…動け、と念じてくれるかな。…一緒に使徒を倒そう」


ミサト「……」コクン


加持「…エヴァンゲリオン弐号機、起動!」
194 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:50:08.02 ID:lRBHXjHEo
無線「オセロウより入電、エヴァ弐号機起動中!」

艦長「なんだと!?」

シンジ「よしっ!」

艦長「いかん、起動中止だ、元に戻せ!」

シンジ「なっ…何言ってるんですか!相手は使徒ですよ!?」

艦長「黙れ!エヴァおよびパイロットは、われわれの管轄下だ!勝手は許さん!」

シンジ「…っ、かまわない、加持くん!発進だ!」

艦長「おい!」


副長「しかし、本気ですか?弐号機はB装備のままです」


艦長・シンジ「えっ!?」
195 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:51:02.23 ID:lRBHXjHEo
ミサト「…海に落ちたらまずいんじゃない?」

加持「落ちないようにやるさ」


シンジ「え…ミサトちゃんも乗ってるの!?」


ミサト「す…すいません!必ず勝ちます…!」


艦長「子供が2人…!」


シンジ「これは…いや…でも…」

シンジ「二人とも、出して!」
196 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:52:02.37 ID:lRBHXjHEo
ミサト「……来たっ!」

加持「行きます!」


加持「どこ行った?」

ミサト「あっち!」


ミサト「後58秒しかない!」

加持「オーケー、十分だ。…シンジさん!甲板に非常用外部電源の用意を!頼む!」


シンジ「分かった!」


艦長「何をするつもりだ!」


加持「さぁ…跳ぶぞっ」


ミサト「跳ぶ?」
197 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:53:10.01 ID:lRBHXjHEo
甲板作業員「予備電源出ました!」

甲板作業員「リアクターと直結完了!」

甲板作業員「飛行甲板待避!」

甲板作業員「エヴァ着艦準備よし!」

副長「総員、耐ショック姿勢!」


艦長「でたらめだ!」


加持「エヴァ弐号機、着艦します!」


青葉「うわぁ、もったいない…」


アナウンス「目標、本艦に急速接近中!」


ミサト「来るわ…!左舷9時方向!」

加持「外部電源に切り替え!」
198 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:54:02.05 ID:lRBHXjHEo
加持「…切り替え終了!」

ミサト「でも、武装が…!」

加持「プログナイフがある」



加持「はは、近づくとデカいな」

ミサト「どうするの!?」


加持「受け止める…!」



艦長「どうするつもりだ!?」


シンジ「…使徒を倒すには、近接戦闘がベストです」


シンジ「…止めたっ!」


艦長「冗談じゃない、飛行甲板がめちゃめちゃじゃないか!」
199 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:55:03.25 ID:lRBHXjHEo
艦長「……落ちたじゃないか!」


シンジ「…加持くん!B型装備じゃ水中戦闘は無理だ!」


加持「…やってみるさ。フォローよろしく!」


青葉「はぁぁぁぁ、もったいなぁい…」


シンジ「ケーブルの長さは!?」

副長「残り、千二百!」

艦長「どうするんだね!?」

シンジ「何とかします…!」
200 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:56:02.10 ID:lRBHXjHEo
ミサト「何とかしなくちゃ…」

シンジ「二人とも!ケーブルがなくなるから衝撃に備えて!」

加持「! まずいっ」


アナウンス「エヴァ、目標を喪失!」

青葉「まさかまた機会が巡ってくるとはなぁ…」




アスカ「おーいバカシンジぃー!」

シンジ「あっアスカ!?」

アスカ「私、先に抜けるから。後はちゃんとやりなさいよ〜!」

シンジ「なっ…なんだよそれ…!」

アスカ「急ぎの届け物があんのよ!…さっ、出してちょうだい」


日向「…逃げた…」


アナウンス「目標、再びエヴァに接近中!」
201 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:57:01.05 ID:lRBHXjHEo
ミサト「来た!」


加持「さぁ来い…今度こそ…!」

停止する弐号機

加持「? おっと…やっぱりマズかったか…」

ミサト「ど!どうしよう…!」

加持「来るに任せる…しかないだろ?」

ミサト「そんな…!何か考えがあるんじゃ…!」

加持「生憎と、ね。…大丈夫、エヴァの装甲はそんなにヤワじゃない…」

ミサト「……」

加持「はずだ…」


ミサト「…来たっ!」

加持「口っ!?」

加持・ミサト「うわぁあああっ!」
202 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:58:01.41 ID:lRBHXjHEo
アナウンス「エヴァ弐号機、目標体内に侵入!」


青葉「それって、食われたってことじゃないのか!?」

日向「なっ、だ、大丈夫なんですか!?」

シンジ「ミサトちゃん!加持くん!!」


ミサト「やば…使徒に食べられちゃったわよ!?私たち」

加持「そのようだ…さてどうするか…」

ミサト「…何とか、離れないと…!」

加持「まずいな。面子的にも」

加持「このままじゃ餌になるために来たようなもんだ」


ミサト「餌……」
203 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 20:59:01.87 ID:lRBHXjHEo
シンジ「加持くん!ミサトちゃん!聞こえる!?」

ミサト「!シンジさん!聞こえます、私たち…!」

シンジ「分かってる。今は落ち着いて、こちらから何か作戦を…」

ミサト「あの!使徒を…釣り上げることって出来ませんか!?」


シンジ・加持「使徒を」

青葉・日向「釣り上げる???」
204 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 21:00:02.18 ID:lRBHXjHEo
シンジ「なるほど…釣りか…」

青葉「よく思いついたもんだな、敵の腹の中で」

ミサト「加持くんが…餌って言ったのを聞いて…」


シンジ「…確かに、それならエヴァが動けなくても…」

日向「それで、使徒を引き上げた後は!?」

シンジ「それはこちらでなんとかする。…ミサトちゃん、加持くん!」

シンジ「ミサトちゃんの案を使う。こちらの状況を整えるから、それまで…なんとか持ちこたえて!」

ミサト・加持「はい!」




シンジ「艦長」

艦長「なんだ」

シンジ「ご協力をお願いします」
205 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 21:01:03.53 ID:lRBHXjHEo
艦長「生き残った戦艦2隻による、ゼロ距離射撃!?」

シンジ「そうです。アンビリカルケーブルの軸線上に無人の戦艦2隻を自沈させ、罠をはります」

シンジ「その間に、エヴァ弐号機が目標の口を開口、そこへ全艦突入し、艦首主砲塔の直接砲撃の後、さらに自爆、目標を撃破します」

艦長「そんな無茶な!」

シンジ「無茶かもしれませんが…無理ではないと思います」


艦長「……分かった」




アナウンス「総員退艦、繰り返す、総員退艦!各フリゲートは、漂流者の救助を急げ!」

艦長「しかし、エヴァはどうする?」

シンジ「心配ありません。あの2人なら…」
206 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 21:02:01.34 ID:lRBHXjHEo
加持「驚いたな。一応俺の弐号機なんだが…」


シンジ「2人とも、用意はいい?合図を送るから、それまでに使徒の口をこじ開けて」

加持「…できなきゃ、一緒にドカンってわけか…」

シンジ「決して無理はしないで。開口が不十分な場合、砲撃は出来ない。でも…その中にいることも危険なんだ。なるべくなら…一発で仕留めたい」


ミサト「やってみます…!」


シンジ「ありがとう…!頼んだよ」
207 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 21:03:01.53 ID:lRBHXjHEo
アナウンス「全艦、キングス弁を抜きました。Z地点に対し沈降開始」

シンジ「了解、ケーブル、リバース!」

アナウンス「エヴァ、浮上開始!接触まで後70!」


加持「…これは、ヤバいことになってきたな…!」

ミサト「…早く口をこじ開けないと、私たち…!」


アナウンス「接触まで後60!」

シンジ「使徒の口は!?」

艦長「まだ開かん!」


アナウンス「戦艦2隻、目標に対し沈降中!」

アナウンス「エヴァ、浮上中!接触まで後50!」


ミサト「…開かない!」


加持「くっ…」
208 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 21:04:02.13 ID:lRBHXjHEo
アナウンス「目標はテンペストの艦底を通過!」

シンジ「限界か……!」


加持「美少女と心中も悪くないが…まだ命は惜しいな」

ミサト「な…変なこと考えないでよ!」

加持「とにかく、意識を集中するんだ。この口を開くことだけに!」

ミサト「分かってるわよ…!」


アナウンス「接触まで後20!」


アナウンス「接触まで後15!」


ミサト・加持「開け、開け、開け、開け…っ!」




シンジ「撃てッ!!」
209 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 21:05:01.77 ID:lRBHXjHEo
レイ「…よく無事だったわね…」

シンジ「ごめん…」

レイ「責めてるんじゃないわ…はい、これ」ペラッ

シンジ「…?」

レイ「その時の数値よ」

シンジ「! これって…」

レイ「ええ」



青葉「おおぉ…ペアルック…」

日向「……」



レイ「シンクロ値の記録更新ね」

シンジ「…でもたった7秒間か…火事場のバカ力ってやつかな」

加持「あれ、アスカ先輩は…?」

シンジ「…先に帰ったよ…!ほんとに…信じられないよ…!」
210 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 21:06:02.08 ID:lRBHXjHEo
アスカ「まったく…こんなに疲れる船旅は初めてよ…。原因はこれでしょ?」

アスカ「…ここまでの復元には成功したわ…。硬化ベークライトで固めてるけど、間違いなく生きてる」

アスカ「…人類補完計画の要ね」


葛城「そうだ。最初の人間…アダムだよ」






日向「…ほんと、キザったらしくて、嫌な奴だったよ」

青葉「ま、そうカッカするなよ。もう会うこともないんだし…」

日向「俺たちは、だろ!…それがまた不愉快なんだよ…!奴はネルフで…」

日向「! なっ…!?」


加持「どもっ」

加持「ドイツから日本に越してきました、加持リョウジです。よろしくっ」

八話分終わり
211 : ◆gcWj88zLkc [sage sage]:2020/11/24(火) 21:09:01.22 ID:lRBHXjHEo
続きは土曜
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