シンジ「君が、葛城ミサトちゃんだね」

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641 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:43:02.75 ID:3d5dCKQ9o
レイ「聞こえる?加持くん。シンクロ率が低下してるわ。いつも通り、余計な事は考えずに…」

加持「ああ……分かってる」


ヒカリ「シンクロ率8も低下…加持くん、最近調子悪いですね」

レイ「ええ…困ったわね…この余裕のない時に。やはりリツコちゃんの零号機を優先させましょう、今は同時に修理できるだけのゆとりはない」

アナウンス「弐号機左腕のマイトーシス作業は数値目標をクリア」

アナウンス「ネクローシスは、現在0.05%未満」

アナウンス「アポトーシス作業、問題ありません」

アナウンス「零号機の形態形成システムは、現状を維持」

アナウンス「各レセプターを第2シグナルへ接続してください」



シンジ(…あのアダムより生まれし物、エヴァシリーズ…)

シンジ(セカンドインパクトを引き起こした原因たるものまで流用しなければ…僕たちは使徒に勝てない)

シンジ(逆に…生きるためには、自分たちを滅ぼそうとしたものをも利用する)

シンジ「それが人間なんだ……」


トウジ「センセ!」
642 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:44:02.97 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「……エヴァ13号機までの建造開始?世界七個所で?」

トウジ「上海経由の情報や。ソースに信頼は置ける」

シンジ「…なぜこの時期に量産を急ぐの?」

トウジ「……エヴァを過去に2機失い、現在は2機も大破…。第2次整備に向けて予備戦力の増強を急いどるんやないか?」

シンジ「どうだろう…ここにしてもドイツで建造中の5・6号機のパーツを廻してもらってるから…。最近、ずいぶんお金が動くね」

トウジ「ここに来て予算倍増やからな。それだけ上も、せっぱ詰まっとる、って事やろ」

シンジ「……委員会も焦ってるんだ…」

トウジ「…ほなら、今までみたいな単独やなく、使徒の複数同時展開のケースを設定した…?」

シンジ「そうかもしれない…でも、非公式に行う理由がないよ。何か別の目的があるんだ…」
643 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:45:05.01 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「あ……煮付け、どうだったかな? いやっ、失敗したってわけじゃないけど。今日味見してなくて」

加持「すごく旨かったよ。いつも通り、な?」

ミサト「……うん」

シンジ「…あ、よかった……」


シンジ「……」

電話がなる

ミサト「あ、」

シンジ「あっ、いいよいいよ。僕が出るから」
644 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:46:02.71 ID:3d5dCKQ9o
加持「先輩かな?最近ご無沙汰みたいだし、ここいらで…」

シンジ「……」

ミサト「ごっ、ごちそうさま!あたし、部屋に…」

シンジ「……加持くん」

ミサト「!」

加持「うん?」

シンジ「電話だよ…お母さんから、国際電話」ニコ

ミサト(………ぅ…、)


ミサト(シンジさん……)


加持「はいはい。母さんね…」

加持「(外国語)」
645 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:47:02.69 ID:3d5dCKQ9o
ミサト(…浮いている。加持くんの明るい声だけ…)

ミサト(違う。浮いているのは私。シンジさんも加持くんもいつも通りにしようとしてくれてる。情けないのは私…)

ミサト(私の知っている加持くん、知らない加持くん…)

ミサト(家族と話す彼。…家族? 相手がお母さんなのに)

ミサト「……嬉しくないのね」

加持「ん? 何か言ったか」

ミサト「ううん、電話、終わったの?」

加持「ああ」

ミサト「…お母さん?」

加持「向こうでのね。血は繋がってないが、ずいぶん良くしてもらってる。たまに恋しくなるよ」

ミサト「嘘ばっかり…」

加持「……なんでそう思う?」

ミサト「分かるわよ」

加持「……」
646 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:48:01.73 ID:3d5dCKQ9o
ヒカリ「シンクログラフ、−12.8。起動指数ギリギリです」

レイ「……昨日より更に落ちてる」

シンジ「ごめん、綾波。最近気を遣わせることが多くて…疲れてるんだよ」

レイ「シンクロ率は表層的な身体の不調に左右されない。気のほうでしょうね…問題があるのは。ただしもっと深層の部分…」

レイ「…変更もやむを得ないわ、弐号機のコア…」

レイ「加持くん。上がっていいわよ」
647 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:49:02.24 ID:3d5dCKQ9o
アナウンス「第8動力システムの復旧作業は、本日18:00より再会の予定です」

レイ「酷く傷ついてるみたいね……彼の心」

アナウンス「第1発令所処理問題に関する定例会議は、定刻より行われます」

シンジ「昔のことは…もういいみたいに話してたのに。どうしたんだろう、加持くん…」


レイ「……暴かないことと、治すことは違うわ」


アナウンス「総務担当者は第2会議室にお集まりください」

シンジ「離れたほうがいいんだろうか……彼らにとって負担なら…」


レイ「…あなたもよ」

シンジ「え…?」


レイ「顔色が悪いわ…ここのところずっと」

シンジ「……」

シンジ「……ごめん、もう少し考えてみる」
648 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:50:01.91 ID:3d5dCKQ9o
加持「ウッ……」(吐瀉)

加持「………」


加持「……すまない、みんな…」





エレベーター前。

アナウンス「第7環状ルートは現在事故のため閉鎖中です。迂回ルートは12号線を利用してください」


加持「おっと、」

加持「調子はどうだい?って…俺が聞くことじゃないか」

リツコ「……」

加持「はは…」
649 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:51:02.72 ID:3d5dCKQ9o
リツコ「あなたは悪いみたいね、調子…」

加持「まぁね。スランプってやつかな? 望むところだよ」

リツコ「何か悩みごと」

加持「……なんで、そう思う…」

リツコ「元気がないみたい、あなたも、ミサトも…」


リツコ「エヴァは………いえ」

加持「なんだよ、気になるじゃないか」

リツコ「エヴァには心がある」

加持「何?」

リツコ「心があるから…心を開かなければ、動かないわ」

加持「……馬鹿な。あれは俺たちが動かして…」

リツコ「分かっているはずよ」
650 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:52:01.70 ID:3d5dCKQ9o
加持「………リッちゃん、君は…」

加持「…ウッ」

口許をおさえる加持

リツコ「大丈夫、」

加持「大丈夫、大丈夫だ……すまない、」

加持「……聞こえないんだ。昔は聞こえていた声が…」

加持「自分の声が煩くて…」

リツコ「……」

リツコ「聞こえるはずよ」

加持「……!はは…厳しいな」

リツコ「……」
651 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:53:07.24 ID:3d5dCKQ9o
加持「そんな顔で見ないでくれ……泣きたくなってくる」

リツコ「……、」

リツコ「いけないの」

加持「……ッ」

リツコ「泣いてはいけないの?」


リツコ「あっ、」

リツコに抱きすがる加持。

抱き返そうとするリツコの手が回る前に加持が体を離す

加持「すまない。……また」

閉じるエレベーター

リツコ「………」



加持「ないさ…そんな資格はない」

加持「……」
652 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:54:05.17 ID:3d5dCKQ9o
青葉「葛城、今日も来ないな。赤木はいつもの事として…」

マヤ「それに加持くんも…。日向くんもまだ退院できないみたいだし」

青葉「…学校どころじゃないんだな、今や」




アナウンス「エヴァ弐号機のシグナル、問題なし」

アナウンス「VAの接合および融合は正常。増殖範囲は予定通りです」


加持「さぞ憎んでいるだろう……俺を」

加持(お前のせいで死んだ、お前が殺した)

加持「お前は俺の誇り…生きる意味」

弐号機 (沈黙)

加持「………もう誤魔化しはきかないな」

(沈黙)

ケンスケ「総員、第一種戦闘配置。対空迎撃戦用意!」

加持「…お出ましか」
653 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:55:01.64 ID:3d5dCKQ9o
ケンスケ「使徒を映像で確認、最大望遠です!」

トウジ「衛星軌道から動かん」

ケンスケ「ここからは、一定距離を保っています」

シンジ「ということは、降下接近の機会をうかがっているのか、その必要もなくここを破壊できるのか…」

トウジ「こりゃ迂闊には動けんな」

シンジ「…どの道目標がこちらの射程距離内にまで近づいてくれないと、どうにもならない。エヴァには衛星軌道の敵は、迎撃できない…」

シンジ「リツコちゃんは?」

ヒカリ「零号機共に順調。行けます!」

シンジ「了解、零号機発進、超長距離射撃用意、弐号機、加持くんはバックアップとして…」

加持「待ってくれ」

シンジ「加持くん」

加持「射撃は俺が。」

リツコ「……」

加持「………シンジさん。最後にチャンスをくれ」

シンジ「……分かった…」
654 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:56:04.89 ID:3d5dCKQ9o
トウジ「…ええのか」

レイ「本人がそう言うのなら。…覚悟があるのはありがたいわ」

シンジ「……」

ヒカリ「そんな……これまで、ってことなの…」

レイ「失敗したときは。…弐号機パイロットの変換、考えておかなくてはね」

ヒカリ「…ええ…」

トウジ「初号機は?出さんのか」

シンジ「凍結なんだよ、葛城司令の絶対命令で」

シンジ(…無理ないか、あんな事の後じゃ…)


待機する初号機、ミサト。

ミサト(……加持くん…!)
655 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:57:01.97 ID:3d5dCKQ9o
加持「これで駄目なら、所詮俺はそれまでの男…」

加持「……よくやったさ。もういいだろう」


ケンスケ「目標、未だ射程距離外です」

加持「…………」


加持「来る…!」



天から光線が注ぐ。



加持「……!」



シンジ「これは…!敵の指向性兵器…?」

ケンスケ「いや、熱エネルギー反応無し」

ヒカリ「心理グラフが乱れています、精神汚染が始まります!」

レイ「使徒が心理攻撃…まさか、使徒に人の心が理解できるの…?」
656 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:58:01.96 ID:3d5dCKQ9o
加持「…ッグ!アアアアッ!」


オペレータ「陽電子消滅」

ケンスケ「だめです、射程距離外です!」

ライフルを乱射する弐号機

ケンスケ「弐号機、ライフル残弾ゼロ!」

シンジ「光線の分析は!?」

トウジ「可視波長のエネルギー波!A.T.フィールドに近いが、詳細は不明!」

レイ「加持くんは」

ヒカリ「危険です、精神汚染、Yに突入しました!」
657 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 15:58:57.06 ID:3d5dCKQ9o
加持「っぐ、ぅ…ア……!」


加持「…め、ろ…」

加持「やめろ…ッ」


加持(!)


加持「やめろ!」


加持「駄目だ、そこは…嫌だ!!!」


加持「ぐ…ッ」


加持「…やめろ、それは…!」

加持「暴かないでくれ、」

加持「それだけは」



加持「俺を見るな!!!!」
658 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:00:01.87 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「加持くん!!」


ヒカリ「心理グラフ限界!」

レイ「精神回路がズタズタにされている…これ以上の過負荷は危険過ぎる」

シンジ「加持くん!戻って!!」


加持「うっ、う、ウッ……」


シンジ「加持くん!!加持くん!命令だ、撤退して!」


加持「……ォ、ア……」


シンジ「加持くん!!!」
659 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:01:02.09 ID:3d5dCKQ9o
オペレータ「加速器、同調スタート」

オペレータ「電圧上昇中、加圧域へ」

オペレータ「強制収束機、作動」

オペレータ「地球自転および重力誤差、修正0.03」

オペレータ「薬室内、圧力最大」

トウジ「最終安全装置、解除!全て、発射位置!」


リツコ「くっ…!」

弾道は使徒を捕らえるが、A.T.フィールドに阻まれ、分散する
660 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:02:01.96 ID:3d5dCKQ9o
ケンスケ「だめです!この遠距離で、A.T.フィールドを貫くには、エネルギーがまるで足りません!」

トウジ「すでに最大出力や、これ以上はない…!」

ヒカリ「弐号機、心理グラフシグナル微弱!」

レイ「L.C.L.の精神防壁は」

ヒカリ「だめです、触媒の効果もありません!」

レイ「生命維持を最優先、エヴァからの逆流を防いで!」

ヒカリ「はい!」


レイ(…この光は、まるで…加持くんの精神波長を探っているみたい……まさか、使徒は人の心を知ろうとしているの?)
661 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:03:07.21 ID:3d5dCKQ9o
加持(泣いている……)

加持(泣いているのは誰だ?俺か…)

加持(弟か……)



加持「どうしたんだ?男の子だろう…泣いてちゃだめだ」

加持「泣いてたって誰も助けちゃくれない。自分で何とかするんだ。でもお前は…」

加持「俺が守るから。待ってろ。食い物をとってくる」



加持「……どうした?泣いてちゃ分からないだろう…」


加持「はっ」



加持「泣かないんだ。死人は泣かない」


加持「俺が殺した…死ぬはずだった俺が」
662 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:04:02.76 ID:3d5dCKQ9o
加持「俺の…身体だけが大きくなる。仲間たちを置き去りにして」

加持「大きくなりたかったはずだ…その権利があった、」


加持(俺が置いてきた)



加持「……死人じゃない」


加持「これは俺だ…」


膝を抱えている加持。
663 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:05:03.36 ID:3d5dCKQ9o
オペレータ「弐号機、活動停止!生命維持に問題発生!」

ヒカリ「パイロット、危険域に入ります!」

ケンスケ「目標、変化無し、相対距離、依然変わらず!」

トウジ「零号機の射程距離内に移動する可能性は、0.02%」

シンジ(零号機を空輸、空中から狙撃するか…?いいや駄目だ、接近中に撃たれたら、おしまいだ…)

ミサト「……!」

ミサト「私が初号機で出ます!」

カヲル「いけない、目標はパイロットの精神を侵蝕するタイプだ」

葛城「今、初号機を侵蝕される事態は、避けねばならない」

ミサト「やられません!」

葛城「確証がない」

ミサト「でも、このままじゃ加持くんが!」
664 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:06:04.55 ID:3d5dCKQ9o
葛城「……」

葛城「構わん。リツコ、ドグマを降りて、槍を使え」

カヲル「ロンギヌスの槍を…?葛城君、それは…」

葛城「A.T.フィールドの届かぬ衛星軌道の目標を倒すには、それしかない。急げ!」

シンジ「しかし!アダムとエヴァの接触は、サードインパクトを引き起こす可能性があります!あまりに危険です、葛城司令、やめてください!」

葛城「……」

シンジ「……!」

シンジ(なぜ…危険はないのか…?セカンドインパクトは使徒の接触が原因ではない…?)


アナウンス「セントラルドグマ10番から15番までを開放、第6マルボルジェ、零号機、通過。続いて、16番から20番、開放」


シンジ(嘘…欺瞞だったんだ。そんな事でサードインパクトは起こらない……だったら、セカンドインパクトの原因は…?)
665 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:07:02.79 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「…早計なんじゃないかい」

葛城「抵抗手段はひとつではない」

カヲル「しかし…」

葛城「…渚。時計の針は止まってはくれないんだ」

カヲル「……」

葛城「今セカンドを失うわけにはいかない」

カヲル「老人たちが黙っていないよ」

葛城「ゼーレが動く前にすべて済ませる」

カヲル「かと言って、ロンギヌスの槍をゼーレの許可なく使うのは面倒だ」

葛城「理由が存在すればいい」


カヲル「…そううまく丸めこまれてくれるかな」


槍を引き抜く零号機

リツコ「……」
666 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:08:01.77 ID:3d5dCKQ9o
トウジ「弐号機のパイロットの脳波、0.06に低下!」

ヒカリ「生命維持、限界点です!」

ケンスケ「零号機、二番を通過、地上に出ます!」


シンジ「……!」

シンジ「あれが、ロンギヌスの槍…!」

ケンスケ「零号機、投擲体制!」

トウジ「目標確認、誤差修正よし」

ヒカリ「カウントダウン入ります、10秒前、8、7、6、5、4、3、2、1、0!」


リツコ「…、……っ!」

投擲。
667 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:09:03.01 ID:3d5dCKQ9o
ケンスケ「目標、消滅!」

ヒカリ「エヴァ弐号機、開放されます」

カヲル「ロンギヌスの槍は…」

トウジ「第一宇宙速度を突破、現在、月軌道に移行中」

カヲル「回収は不可能に近いな…」

トウジ「…今のところは。あの質量を持って帰る手段はない」





ヒカリ「弐号機健在、グラフ正常位置」

ケンスケ「機体回収は、2番ケイジへ」

オペレータ「第67番ルートを使用してください」


シンジ「加持くんは?」

トウジ「パイロットの生存は確認。汚染による防疫隔離は解除されとる」

シンジ「……そう」
668 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:10:02.42 ID:3d5dCKQ9o
回収される弐号機

加持「………」


ミサト「良かった、加持くん。本当に…」

加持「……ああ…」

ミサト「…加持くん…?」


加持「悪い。少し…休ませてくれ」


ミサト「……」





加持「…これは俺だ」

加持「死人じゃない……」



弐拾弐話分終わり
669 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:11:01.71 ID:3d5dCKQ9o
アスカ「…シンジ?あたしよ。あんたがこれを聞いてるときは…ずいぶん迷惑かけた後でしょうね。まぁ、あんたのことだから、自分より私の心配してるんでしょうけど」

アスカ「大丈夫よ、後悔はしてないわ…自分のためにやったことだもの。だから…シンジ、あんたもうじうじしてんしゃないわよ?」

アスカ「あんたが胸張らないから…あたしが叱らなきゃいけないんじゃない」

アスカ「次会うときくらい、優しくさせなさいよね」

アスカ「……」

アスカ「信じてるって言ってくれて…嬉しかった。…それじゃあ」




シンジ「…鳴らない電話、か…」




ミサト(シンジさん、今日も部屋から出てこない…)

ミサト(……加持くんも…)

ミサト「…今日も帰らない気かしら…」
670 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:12:02.30 ID:3d5dCKQ9o
加持(学校にも行かず、家にも帰らず、ずっと…)


「んっ………ねーえ、」

「うん?」

「寝よっか?」

「…お望みとあらば」

「ふふっ」

携帯のバイブ音

「ごめんね…私、邪魔かな?」

「そんなことないさ。こうやって俺を置いてくれてる」

「…それだけ?」

「どうかな…」

「…あっ…」


加持(……ここに俺はいない)

加持(いるのは誰でもいい、誰か…)
671 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:13:02.11 ID:3d5dCKQ9o
(通話)

レイ「そう…いなくなったの、あの子…」

レイ「そうね……猫ってそういうところ、あるもの…」

レイ「でもまだ分からないじゃない。いつもの場所は探したの?…うん、うん…」

レイ「分かったわ…時間ができたら一度帰るから…。それじゃ、また」



レイ「……そう、あの子が…」

レイ(…嫌な予感がする…)
672 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:14:01.93 ID:3d5dCKQ9o
ゼーレ「ロンギヌスの槍……回収はわれらの手では不可能だよ」

ゼーレ「なぜ使用した」

ゼーレ「エヴァシリーズ。まだ予定には揃っていないのだぞ」

葛城「使徒殲滅を優先させました。やむを得ない事情です」

ゼーレ「やむを得ないか。言い訳にはもっと説得力を持たせたまえ」

ゼーレ「最近の君の行動には、目に余るものがあるな」


葛城「…渚、審議中だぞ」

葛城「……分かった」

葛城「使徒が現在接近中です。続きはまた後ほど」


ゼーレ「その時君の席が残っていたらな」

キール「葛城、ゼーレを裏切る気か?」
673 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:15:02.64 ID:3d5dCKQ9o
車を走らせるシンジ

シンジ「後15分でそっちに着く。零号機を32番から地上に射出、弐号機はバックアップに廻して」

シンジ「そう……初号機は葛城司令の指示に。僕の権限じゃ凍結解除はできない」

シンジ「……!」

シンジ「使徒を肉眼で確認、か…」



オペレータ「零号機発進、迎撃位置へ!」

トウジ「弐号機は現在位置で待機!」

葛城「いや…発進だ」

トウジ「司令…!」

葛城「必要があるときにいなかったでは遅い。発進だ」

トウジ「…了解」
674 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:16:02.01 ID:3d5dCKQ9o
オペレータ「エヴァ弐号機、発進準備!」


加持(また乗っている…どうして?)

加持(誇りであるはずのエヴァ。自分であるはずの身体…)


ヒカリ「弐号機、第8ゲートへ。出現位置決定次第、発進せよ」


加持(発進…なんのため?)


ケンスケ「目標接近、強羅絶対防衛線を通過」


加持(俺のため…人類のためか どっちだったか…)

加持(……)
675 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:17:01.81 ID:3d5dCKQ9o
ケンスケ「目標は、大涌谷上空にて滞空。定点回転を続けています」

トウジ「目標のA.T.フィールドは依然健在」


レイ「遅いわ」

シンジ「ごめん、状況は!」

ケンスケ「膠着状態が続いています」

トウジ「パターン青からオレンジへ、周期的に変化しとる!」

シンジ「どういう事…!」

ヒカリ「MAGIは回答不能を提示しています!」

ケンスケ「答えを導くには、データ不足か」

レイ「ただあの形が固定形態でない事は確かだわ」

シンジ「先に手は出せないか…」
676 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:18:01.65 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「リツコちゃん、しばらく様子を見よう」

リツコ「…いえ、来る……!」


変形する使徒


シンジ「リツコちゃん!応戦して!」

トウジ「間に合わん…!」

応戦する零号機。

ライフルを撃ち込むが、効かない

リツコ「……!」

ケンスケ「目標、零号機と物理的接触!」

シンジ「零号機のA.T.フィールドは?!」

ヒカリ「展開中、しかし、使徒に侵蝕されています!」

レイ「使徒が積極的に一次的接触を試みているの?零号機と…!」


リツコ「……っ、う……っ!」
677 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:19:02.11 ID:3d5dCKQ9o
ヒカリ「危険です!零号機の生体部品が侵されて行きます!」

シンジ「エヴァ弐号機、発進、リツコちゃんの救出と援護を!」

ヒカリ「目標、さらに侵蝕!」

レイ「危険よ…!すでに5%以上が生体融合されている」



シンジ「加持くん!後300接近したらA.T.フィールド最大で、パレットガンを目標後部に撃ち込んで!」

シンジ「エヴァ弐号機、リフトオフ!」


シンジ「…加持くん…!どうしたの、加持くんは…?!」

ヒカリ「だめです、シンクロ率が二桁を切ってます!」

シンジ「まずい…!」



加持「動かない…」


加持「死体だ。死体は俺……」




シンジ「駄目だ!このままじゃ餌食にされる」

シンジ「戻して!早く!」
678 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:20:04.42 ID:3d5dCKQ9o
リツコ「誰…?」

リツコ「私。エヴァの中の私」

リツコ「いいえ、あなたは私じゃない…」

リツコ「あなたは誰?…使徒?私たちが使徒と呼んでいるヒト…?」

使徒「私を抱いて。私とひとつにならない?」

リツコ「嫌よ。あなたとは繋がりたくない」

使徒「そう。でもだめ、もう遅いわ」

使徒「あなたを抱いてあげる。抱き返してあげる…私の心を分けてあげるわ」

使徒「温かいでしょう、ほら、心がポカポカする…」

リツコ「温かい…?違うわ、寂しいのね」

使徒「サビシイ?分からないわ」

リツコ「寂しいから隙間を埋めようとするの」

リツコ「隙間が埋まったら、心も埋まった気がするから…」

リツコ「それを、寂しい、というのよ」

使徒「それはあなたの心よ。悲しみに満ち満ちている。あなた自身の心よ」
679 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:21:03.49 ID:3d5dCKQ9o
リツコ「私の心…?」

リツコ「……あ、」

リツコ「泣いているのは、私…」


変容し膨れ上がる零号機


シンジ「リツコちゃんっ!」




葛城「…初号機の凍結を現時刻をもって解除、直ちに出撃させろ」

シンジ「え…」

葛城「出撃だ」

シンジ「…はい!」




加持「……声なんてない」

加持「…死人は口を利かないんだ…」
680 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:22:01.89 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「A.T.フィールド展開、リツコちゃんの救出急いで!」


ミサト「はい!」



リツコ「…ミサト…!」


シンジ「ミサトちゃんっ!!」

使徒が初号機を襲う

シンジ「プログナイフで応戦してっ!」

ミサト「はっ!」

悲鳴を上げる使徒

リツコ「これは、私の心…!」

リツコ「ミサトを…?」

リツコ「だめ…っ!」
681 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:23:02.41 ID:3d5dCKQ9o
ヒカリ「A.T.フィールド反転、一気に侵蝕されます!」

レイ「まさか、使徒を……!」

シンジ「駄目だリツコちゃんっ!機体は捨てて、逃げて!」

リツコ「いいえ……私がいなくなったらA.T.フィールドが消えてしまう…!」

レイ「……!」

シンジ「リツコちゃん!!」

ヒカリ「コアが潰れます、臨界突破!」



リツコ「!」

走馬灯。人々の温かな笑顔
682 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:24:01.53 ID:3d5dCKQ9o
光の輪を宿す零号機

消滅。辺りが光に包まれる


ミサト「……、…」



ケンスケ「目標、消失…」

シンジ「……現時刻をもって、作戦を…終了します。第一種警戒態勢へ移行」

トウジ「了解、状況イエローへ、速やかに移行」

シンジ「零号機は……?」

ヒカリ「エントリープラグの射出は、確認されていません…」

シンジ「…生存者の確認と救出、急いで」

レイ「……」
683 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:25:03.02 ID:3d5dCKQ9o
男「綾波博士…」

男「レベルCの…は、南西方向に広がっています」

レイ「…この事は極秘とします。プラグは回収、関係部品は処分してください」

男「了解」

男「作業、急げ!」

レイ「……」
684 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:26:01.60 ID:3d5dCKQ9o
ゼーレ「ついに第16の使徒までを倒した」

ゼーレ「これで、ゼーレの死海文書に記載されている使徒は、後一つ」

キール「約束の時は近い。その道のりは長く、犠牲も大きかったな」

ゼーレ「左様。ロンギヌスの槍に続き、エヴァ零号機の損失」

ゼーレ「葛城の解任には十分すぎる理由だな」

ゼーレ「渚を無事に返した意味の分からぬ男でもあるまい」

ゼーレ「新たな人柱が必要ですな、葛城に対する」

キール「そして事実を知るものが必要だ」




レイ「……」

机の上。ゲヒルン時代の写真
685 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:27:01.31 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「ミサトちゃん、入るよ…」


ミサト「……シンジさん。涙、出ないんです……どうしてだろう とても悲しいのに…」


ミサト「…もう嫌、もう忘れたい…シンジさん」

ミサト「忘れさせて…」


シンジの手に自分の手を重ね、身体を預けるミサト

シンジ「っ、」


シンジ「……ミサトちゃん…!」

ミサトの肩を押し身体を離すシンジ

シンジ「ミサトちゃん…自分を捨てちゃ駄目だ」

シンジ「…僕には何もできないよ。ごめん……」


ミサト「……」
686 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:28:06.68 ID:3d5dCKQ9o
ミサト(アスカさんのことがあるから?違うわね。私がいけないんだわ…)

ミサト「ペンペン、おいで…」

ペンペン「……」

ミサト「……最低だ、私って…」






ネルフ地下、3号分室

散乱した書物。倒された机


カヲル「……綾波博士か…」

カヲル「…愛する者を失った今…彼女の心は深い絶望の底だろう」

葛城「……」

カヲル「……話してはやらないのかい」

葛城「彼女が望んだのは…ここで生きた赤木リツコの未来だ」

カヲル「……」

カヲル「希望の依り代とはならないか…」
687 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:29:05.79 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「はい…もしもし………えっ…!」

シンジ「ミサトちゃん!」



アナウンス「第一内科のウガイ先生、ウガイ先生、至急、第二会議室へご連絡ください」




ミサト「リツコ!」

リツコ「……」
688 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:30:01.74 ID:3d5dCKQ9o
ミサト「ばか、バカァ!心配したじゃないのよ…!」

ミサト「良かった。本当に良かった…」ギュ

リツコ「……」

ミサト「…あ、ごめん…まだ体キツいわよね」

リツコ「……」

ミサト「他は誰も来てないの?薄情ねえ みんな忙しいのかしら…」

リツコ「……」

ミサト「……まだ、ちゃんとお礼言ってなかったわね」

ミサト「ありがとう、助けてくれて」

リツコ「…何が」

ミサト「……何が、って…零号機を捨ててまで助けてくれたじゃない」

リツコ「私が?」

ミサト「そうよ!……覚えてないの…?」

リツコ「…いいえ、知らないの」

リツコ「多分私は二人目だと思うから」
689 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:31:03.33 ID:3d5dCKQ9o
リツコの部屋。

リツコ「……」

眼鏡を手に取るリツコ

リツコ「これが、涙…?初めて見たはずなのに、初めてじゃないような気がする。私、泣いてるの?…なぜ、泣いてるの…?」





葛城「そうだ、ファーストチルドレンは現状維持だ。新たな拘束の必要はない。セカンド、サードに関しても同様だ。監視だけでいい」

カヲル「赤木リツコが生きていると分かれば、議長らが黙っていないだろうね」

葛城「………」


カヲル「それで……彼女を代わりにか。つくづく君は…敵を作る」

カヲル「だが恨んではくれないだろうね」

葛城「……」
690 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:32:01.80 ID:3d5dCKQ9o
キール「われわれも穏便に事は進めたい。君にこれ以上の陵辱、辛い思いはさせたくないのだ」

レイ「私は何の屈辱も感じていません」

ゼーレ「気の強い女性だ。葛城がそばに置きたがるのも分かる」

ゼーレ「聞けば…君は自ら名乗り出たそうじゃないか。代理人として」

ゼーレ「零号機パイロットの尋問を拒否…では、君なら応えてくれるのかね?」


レイ「私で……代わりになるのなら」
691 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:33:01.70 ID:3d5dCKQ9o
アスカ「あんたが欲しがっていた真実の一部よ」


アスカ「他に36の手段を講じてあんたに送ってるけど、そっちはたぶん駄目ね」

アスカ「確実なのはこのカプセルだけ」

アスカ「これは私のすべてよ。あんたに託す。好きにしなさい」

アスカ「パスコードは私たちの最初の思い出」

アスカ「それじゃ、しっかりやんなさいよ」




シンジ「鳴らない電話を待つのはもうやめだ…」

シンジ「アスカの心は無駄にしない…」
692 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:34:02.25 ID:3d5dCKQ9o
ゼーレ「良いのか?綾波博士の処置」

ゼーレ「渚とは違う。彼女は返した方が得策だ」

ゼーレ「さよう…まだ利用価値はある」

ゼーレ「いま少し役に立ってもらうか。われわれ人類の未来のために…」

ゼーレ「エヴァンゲリオン、すでに八体まで用意されつつある」

ゼーレ「残るは後四体か」

キール「第3新東京市の消滅は、計画を進める良き材料になる」

キール「完成を急がせろ」

キール「約束の時は、その日となる」
693 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:35:01.68 ID:3d5dCKQ9o
ミサト「はい、もしもし」

レイ「そのまま聞いて。あなたのガードを解いたわ。今なら外に出られる」

ミサト「レイさん……」




ターミナルドグマ入り口。カードキーを差し込むレイ

レイ「……、…!」

シンジ「無駄だよ。僕のパスがないと」

レイ「……そう…アスカの仕業ね」

シンジ「綾波博士。…ここの秘密、見せてもらうよ」

レイ「…いいわ。ただしこの子も一緒に…」

ミサト「……」

シンジ「…分かった」
694 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:36:02.24 ID:3d5dCKQ9o
ミサト「……まるでリツコの部屋…」

レイ「…彼女の部屋よ。生まれ育ったところ」

ミサト「ここが?」

レイ「そうよ、一人目のね」

ミサト「…、……!」


レイ「リツコちゃんの深層心理を構成する光と水は、ここのイメージが強く残っていたのでしょうね…」

シンジ「何を……!言ってるんだ、綾波…!目的の場所はここじゃない!」

レイ「…分かっているわ」
695 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:37:02.08 ID:3d5dCKQ9o
ミサト「エバ…?」

レイ「その失敗作…。10年前に破棄されたの」

ミサト「…エバーの墓場…」

レイ「……そうね」


レイ「あなたのお母さんが消えたところでもあるわ」


レイ「あなたも見ているはずよ…あなたのお母さんが、魂を亡くした姿を…」

ミサト「……!」

シンジ「…、綾波!」


レイ「……こっちよ」

シンジ「……」


レイ「あなたが知りたかった真実…」



レイ「……」
696 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:38:02.01 ID:3d5dCKQ9o
ミサト「赤木…リツコ…?」

ミサト「……!!」

シンジ「まさか、ダミープラグの…!」

レイ「そう、ダミーシステムのコアとなるもの……その生産工場よ」

シンジ「これが…?」

レイ「ここにあるのはダミー。そして赤木リツコのためのただのパーツに過ぎない」

レイ「……人は神様を拾ったので喜んで手に入れようとした。だから罰が当たったの。それが15年前…」

レイ「せっかく拾った神様も消えてしまった」

レイ「……でも今度は神様を自分たちで復活させようとしたの。それがアダム」

レイ「そしてアダムから神様に似せて人間を作った。それがエヴァ…」

ミサト「ヒト…人間なんですか…?」

レイ「そう、人間なのよ。本来魂のないエヴァには、人の魂が宿らせてあるもの」

レイ「みんな、サルベージされたものなのよ」
697 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:39:13.57 ID:3d5dCKQ9o
レイ「魂が入ったのは赤木リツコ、一人だけだった……あの子にしか魂は生まれなかったの。ガフの部屋は空っぽになっていたのよ」

レイ「ここに並ぶ赤木リツコと同じ物には魂がない。ただの入れ物なのよ」

レイ「だから壊すの」

レイ「怖いから…」


リツコたち「……」


シンジ「……! やめるんだ、綾波!そんなことしたら…!」


レイ「したら、何…?入れ物が壊れるだけよ。この中には何もないの。ただ人の形をしたもの…」


レイ「……これ以上ない生命に対する侮辱よ…」


レイ「代わりはいくらでもいる。…そんなことはもう、言わせないわ…」

レイ「あの子が優しいんじゃない、私が愚かだった……」
698 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:40:15.45 ID:3d5dCKQ9o
レイ「…私たちのために死んだあの子は、もういないの」


レイ「…初めから、こんなもの……っ、作るべきじゃなかったのよ…!」


レイ「うっ、うぅ…うっ…」

ミサト「……」

シンジ「綾波…」




シンジ(エヴァに取り憑かれたヒトの悲劇……)

シンジ(僕も…同じか…)




弐拾参話分終わり
699 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:41:01.90 ID:3d5dCKQ9o
「リョウジ、お手柄だな!」

「ちょろいさ、こんなもん」

「よくやったな加持くん」

「当然です。それが俺の役目」

「フルスコアだ。その調子で頼むよ」


(リョウジ!)

(加持くん)

(兄ちゃん!)
700 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:42:01.76 ID:3d5dCKQ9o
病室


(沈黙)


古い倉庫


(沈黙)


仲間に駆け寄る加持

抱き上げる。血が滴っている


加持「はっ」
701 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:43:01.63 ID:3d5dCKQ9o
廃墟のバスタブ

加持「分かったんだ。俺は誰も守っちゃいない。守りたかったものはもういない。置いてきた……」


諜報課員「加持リョウジだな」




トウジ「諜報二課から。セカンドチルドレンを無事保護したそうや」

シンジ「……そう。ずいぶん…遅かったね」

トウジ「いけ好かん奴らや。地味な嫌がらせしくさって…」

シンジ「……」

シンジ(……そして今日、加持くんの代わりのフィフス到着…話が出来過ぎてる、これもシナリオ通りか…)





ミサト(ダミープラグ…赤木リツコ…魂の入れ物?父はいったい何をしているの…?)

過去の記憶。病室の母。安らかな寝顔

ミサト(何をしたの…!)
702 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:44:04.21 ID:3d5dCKQ9o
レイ「葛城司令…」

葛城「……」

レイ「猫が…死んだんです。家で飼っていた……。とても可愛がっていたのに。突然、もう二度と会えなくなるんですね」


葛城「……君には、辛い役割を負わせた…」

レイ「いいえ…いいえ。私が望んだんです。後悔はありません」

葛城「……赤木リツコの容態は」

レイ「落ち着いています。記憶に…混濁は見られますが……」


レイ「……う…っ」

泣き崩れるレイ
703 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:45:02.16 ID:3d5dCKQ9o
レイ「……あの子をよろしく、と…!そう言われた日に破壊すべきだった!」

レイ「彼女は人間なんです!…代えのきく人形じゃない」


葛城「……すまない」


(ナオコ「…所長。お話があります」)


葛城「いつか君には真実を話す」

葛城「もう少しだけ……耐えてくれ」


閉まるドア

レイ「…う…っ、先生……」

レイ「教えてください…」
704 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:46:01.94 ID:3d5dCKQ9o
(通話)

カヲル「…そうだ、拘束だ。形式上のものでいい。…誰にも知られるな」

カヲル「ああ、頼んだよ」


葛城「……」

カヲル「…名目は破壊行為への懲罰…。不満だったかい?」

葛城「……いや」

葛城「そのほうが安全だろう…」
705 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:47:02.83 ID:3d5dCKQ9o
ミサト(どこに行ったんだろう…加持くん…)

ミサト(でも会ってどうするんだろう…リツコの話でもする…?)


ミサト(日向くんも青葉くんも…みんな家を失って他のところへ行ってしまった。友達は…友達と呼べる人はいなくなってしまった…誰も…)


ミサト(……リツコには会えない…その勇気がない。どんな顔をすればいいのか、分からない。加持くん、シンジさん、お母さん…私はどうすれば…どうしたらいいの…?)




マリ「しっあわせは〜あるいてこ〜ない」

マリ「だ〜からあるいていっくんだねぇ〜」

ミサト(…なに、この子…)

マリ「歌はいいよねぇ」
706 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:48:02.42 ID:3d5dCKQ9o
ミサト「……」

マリ「いいよね?」

ミサト「……」

ミサト「…私に言ってる?」

マリ「君しかいないジャン!」

ミサト「あぁ、そうね…まぁ…」

ミサト(なんなのこの子…)

マリ「……辛いから明るく歌うの。面白い文化だよね。せつな〜くてあったかくてさぁ…」


マリ「君はどう思う?葛城…ミサトちゃん」


ミサト「なんで、私の名前…」

マリ「なっんででしょ〜〜〜?」
707 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:49:07.59 ID:3d5dCKQ9o
ミサト「……まさか、あなた。新しいパイロット?」

マリ「そ。真希波マリ。よろしくねん♪」

ミサト「……」

マリ「…あっ!ちょっとー!」

マリ「待ちなってば」



(加持「最後のチャンスをくれ」)

ミサト(……)
708 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:50:10.39 ID:3d5dCKQ9o
トウジ「フィフスチルドレン…到着したそうや」

シンジ「真希波マリ…過去の経歴は抹消済み。リツコちゃんと同じ…」

トウジ「……ここが気になるな。生年月日、セカンドインパクトと同日…」

シンジ「…委員会が直接送ってきた子どもなんだ、必ず何かある…」

トウジ「マルドゥックの報告書も、フィフスの件は非公開になっとる。せやから……ちーとばかし、諜報部のデータに割り込んだ」

シンジ「なっ…、トウジ、そんな危ないこと…!」

トウジ「お小言はあとや。確かに危ない橋やったが…その甲斐はあった」

トウジ「…綾波レイの居場所」

シンジ「……!」


トウジ「フィフスのシンクロテスト。どないする」

シンジ「…小細工してもしょうがない…。見せてもらおう。彼女の実力がどの程度のものなのか…」
709 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:51:05.48 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「…後、0コンマ3下げて」

ヒカリ「はい」

カヲル「……」

カヲル「このデータに間違いは…?」

トウジ「全ての計測システムは、正常に作動しとります」

ヒカリ「MAGIによるデータ誤差、認められません」

カヲル「……まさか、コアの変換も無しに弐号機とシンクロするとはね…」

ヒカリ「しかし、信じられません!…いえ、システム上、ありえないです…」


シンジ「それでも…事実なんだ。事実をまず受け止めてから、原因を探ってみて」
710 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:52:01.79 ID:3d5dCKQ9o
マリ「君がリリスの器?」

リツコ「私は……赤木リツコ」

マリ「ん〜。やっぱ似た匂い…」

リツコ「……あなたは?」

マリ「私? ヒ・ミ・ツ」

リツコ「……」




カヲル「…フィフスが赤木リツコと接触したそうだよ」

葛城「…そうか」

カヲル「今、フィフスのデータをMAGIが全力を挙げて当たっている」あらっている



シンジ「にもかかわらず、未だ正体不明。何者なんだ…?あの子は…」


シンジ「ミサトちゃんも未だ戻らず、か……ダメだな…」

シンジ「……父親役が…聞いて呆れるよ…」
711 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:53:02.75 ID:3d5dCKQ9o
ヒカリ「現在、セントラルドグマは開放中。移動ルートは3番を使用してください」



マリ「おっまたー♪」

ミサト「…待ってないわよ。……ついて来ないで!」

マリ「な〜んでさぁ。仲良くしよ〜よ〜」

腕を回そうとするマリ。振り払うミサト

マリ「……」

ミサト「……」

マリ「つれないにゃ〜…なんで?」

ミサト「……」

ミサト「…知らない子だもの…」

マリ「……ふぅ〜ん?」


ミサト「……ついて来ないでよ」

マリ「あたしもそっちに用があるの〜」
712 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:54:05.84 ID:3d5dCKQ9o
マリ「…なんか、悩みごと?」

ミサト「……」

マリ「私でよかったら、聞くよ〜?」

ミサト「……」

マリ「……加持くんのことかな〜」

ミサト「…っ」

マリ「それとも、赤木リツコ?」

ミサト「なんで…っ」

(加持「俺は手を取ってもらえて嬉しかったよ…」)



ミサト「……あんたには、関係ないでしょ…!」


シャワールームを出るミサト

マリ「……」

マリ「…なるほど。繊細だねぇ」
713 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:55:01.64 ID:3d5dCKQ9o
マリ「ちゃんと乾かさないと、風邪引いちゃうよ?」

ミサト「…ついて来ないでって、言ってるでしょ」

マリ「…心配しなくても加持くんの居場所とったりしないよー」

ミサト「……、いいかげんに…っ」

ミサトの口に人差し指を立てるマリ

マリ「続きはさっ、私の部屋で話そーよ」

マリ「一人だと退屈なんだよね」

マリ「ほらっ!早く早く〜」


促すマリ。立ち尽くすミサト

ミサト(……)
714 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:56:02.92 ID:3d5dCKQ9o
ゼーレ「ネルフ。われらゼーレの実行機関として結成されし組織」

ゼーレ「われらのシナリオを実践するために用意されたモノ」

ゼーレ「だが、今は一個人の占有機関と成り果てている」

ゼーレ「さよう。われらの手に取り戻さねばならん」

ゼーレ「約束の日の前に」

キール「ネルフとエヴァシリーズを本来の姿にしておかねばならん。葛城、ゼーレへの背任、その責任は取ってもらうぞ」




初号機のケージ。

葛城「われわれに与えられた時間は残り少ない…」

葛城「希望であるロンギヌスの槍は手を離れた」

葛城「まもなく最後の使徒が現れる。今はそれを消すことだ」


葛城「……信じている」

葛城「…お前も、そうだろう…」
715 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:57:01.54 ID:3d5dCKQ9o
リツコ「私は…なぜここにいるの」

リツコ「なぜまた生きているの」

リツコ「何のために」

リツコ「誰のために…」


リツコ「フィフスチルドレン…」

リツコ「…あの子から、私と同じものを感じた…」

リツコ「なぜ…?」
716 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:58:01.72 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「ここが街外れで良かった…。ペンペンが巻き込まれずに済んで…」

シンジ「…でも、この次の保証はないんだ…だから、明日からは伊吹さんちのお世話になるんだよ…」

シンジ「…しばらく、お別れだね…」

ペンペン「クワァッ」

シンジ「ペンペン……」ギュ…
717 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 16:59:02.54 ID:3d5dCKQ9o
ミサト「……こういうのって、普通お客が上なんじゃないの…?」

マリ「知らない子だも〜ん」

ミサト「……」

マリ「…それで、居づらくなって逃げ出してきたんだ?」

ミサト「あんたが無理やり誘ったんでしょ」

マリ「そりゃあ、君の中に逃げたいって気持ちがあったからデショ」

ミサト「……」

マリ「…図星?」

ミサト「知らないわよっ。もう寝る」

マリ「え〜」
718 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:00:01.62 ID:3d5dCKQ9o
マリ「……」

マリ「とりゃっ」

ミサト「ちょっ…!自分のとこで寝なさいよ…!」

マリ「ん〜?寒いから。ここで寝る」

ミサト「…パーソナルスペースってもんがあるでしょっ」

マリ「い〜じゃんい〜じゃん〜。袖振り合うも多生の縁、って言うし」

ミサト「意味分かんないわよ、もう」

ミサト「だったら、私は上に…」

マリ「うにゃっ!」

ミサト「!、ちょっと…!」

マリ「い〜じゃん。あったかくて、やわらかいし…」

マリ「あたしも柔らかいっしょ?うりうり〜」

ミサト「ちょっと……、もう…」
719 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:01:05.76 ID:3d5dCKQ9o
マリ「お? 大人しくなった」

ミサト「……馬鹿らしくなっただけよ。まともに取り合うのが」

ミサト「……はぁ…」

マリ「ん〜…ぬくぬく」

ミサト「……」


ミサト(誰かと寝るなんて、いつぶりかしら…)


ミサト(生温かい…人の呼吸、落ち着かない…)

ミサト(いや、落ち着くの…?誰かの体温)


ミサト(鼓動……)


ミサト(……)


ミサト「……おかぁ、…さん…」

マリ「……」
720 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:02:02.07 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「どうだった、あの子のデータ」

トウジ「これや。イインチョに借りた」

シンジ「これは…!」

トウジ「…公表できんのも納得や、こんなもん…」

シンジ「理論上ありえない…エヴァとのシンクロ率を自由に設定できるなんて」

シンジ「それも、自分の意志で…!」

トウジ「謎やな…探れば探るほど」


シンジ「……もう、正攻法ではいかないか…」
721 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:03:02.20 ID:3d5dCKQ9o
レイ「……よく来られたわね」


シンジ「…聞きたいことがあるんだ」

レイ「…ここでの会話は録音されるわ」

シンジ「構わないよ。あの子の…フィフスの正体は何なの?」

レイ「……」

レイ「……おそらく、最後のシ者…」
722 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:04:01.89 ID:3d5dCKQ9o
マリ「さ…行くよ、アダムの分身。そしてリリンの僕…」


空中に踏み出すマリ。



トウジ「エヴァ弐号機、起動!」

シンジ「そんな…!? 加持くんは!」

ケンスケ「303病室です。確認済みです!」

シンジ「じゃあいったい誰が…!」

ヒカリ「無人です、弐号機にエントリープラグは挿入されていません!」

シンジ(誰もいない?フィフスじゃないのか……!?)

トウジ「セントラルドグマに、A.T.フィールドの発生を確認!」

シンジ「弐号機!?」

トウジ「…いや、パターン青!間違いない!使徒や」

シンジ「使徒……!」

シンジ「あの子どもが…!」
723 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:05:02.91 ID:3d5dCKQ9o
オペレータ「目標は第4層を通過、なおも降下中!」

ケンスケ「だめです、リニアの電源は切れません!」

オペレータ「目標は第5層を通過!」

カヲル「セントラルドグマの全隔壁を緊急閉鎖!少しでも時間を稼ぐんだ!」

アナウンス「マルボルジェ全層緊急閉鎖、総員退去、総員退去!」

カヲル「……まさか、ゼーレが直接送り込んでくるとはね…」

葛城「連中は予定を一つ繰り上げるつもりだ。われわれの手で…」
724 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:06:01.46 ID:3d5dCKQ9o
ゼーレ 02「最後の使徒がセントラルドグマに侵入した。現在降下中だ」

ゼーレ「予定通りだな」

キール「葛城。君はよき友人であり、志を共にする仲間であり、理解ある協力者だった。これが最後の仕事だ。初号機による遂行を願うぞ」





ケンスケ「装甲隔壁は、エヴァ弐号機により突破されています!」

トウジ「目標は、第2コキュートスを通過!」

葛城「……!」

葛城「エヴァ初号機に追撃させろ」

シンジ「はい!」

葛城「…いかなる方法をもってしても、目標のターミナルドグマ侵入を阻止するんだ」
725 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:07:03.18 ID:3d5dCKQ9o
シンジ(……使徒はなぜ、弐号機を…!)


カヲル「まさか…弐号機との融合を果たすつもりなのか」

葛城「あるいは破滅を導くためか…」





ミサト「あの子が、使徒……?」

ミサト「…嘘よ。だってあの子は…」

シンジ「本当なんだ。ミサトちゃん」

シンジ「出撃の準備を」

ミサト「……」

シンジ「ミサトちゃん…!」
726 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:08:02.10 ID:3d5dCKQ9o
マリ「おっそいな〜」

マリ「…ちょっとからかいすぎちゃった、かな」



オペレータ「エヴァ初号機、ルート2を降下!目標を追撃中!」


(マリ「加持くんの居場所とったりしないよー」)


ミサト「……!」

ミサト「馬鹿にして…!」

ミサト「汚させやしない、加持くんの、弐号機を…!」
727 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:09:01.87 ID:3d5dCKQ9o
ケンスケ「初号機、第4層に到達、目標と接触します」



ミサト「…いた!」

マリ「おっそ〜い。待ちくたびれたよ」


ミサト「マリ…ッ!」

マリ「あー。はじめて!名前呼んでくれたね」

ミサト「ふざけんじゃ、ないわよ…っ!」


にらみ合い、掴みあう弐号機と初号機


マリ「今さら向き合ったって。許してあげないよ!誰でもよかったくせに」

ミサト「…! じゃあ、あんたはどうして…ッ」

ミサト「私に近付いたのよっ!」

プログナイフで斬りかかる
728 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:10:01.86 ID:3d5dCKQ9o
弾かれる

ミサト「うっ」

マリ「無駄だよ」

マリ「弐号機は今、誰とも会いたくないって。」


ミサト「これは…!A.T.フィールド…!?」


マリ「驚くこたないじゃん。誰だって持ってる。A.T.フィールドは心の壁」

ミサト「心の壁…!?」

マリ「そう。こうやって、土足で上がることだって…!」

ミサト「グッ」

マリ「できる!」

ミサト「アアアッ」
729 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:11:02.17 ID:3d5dCKQ9o
オペレータ「エヴァ両機、最下層に到達」

オペレータ「目標、ターミナルドグマまで、後20」


シンジ「……く…っ!」

シンジ「……初号機の信号が消えて、もう一度変化があったときは…」

トウジ「分かっとる。その時は…ここを自爆させるんやな」

シンジ「…トウジ、僕は…!」

トウジ「このワシがセンセ一人置いていくわけないやろ。死ぬときは一緒や」

ケンスケ「はは。俺はできれば死にたくないかな」

トウジ「アホ!何をウジウジ言うとんのや。ちゃんとタマンキついとんのか!?」

ヒカリ「ちょっと!やめなさいよ、こんなときに…」

トウジ「もとより覚悟の上や!…ついて行くで」


シンジ「……ありがとう、みんな…!」
730 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:12:01.79 ID:3d5dCKQ9o
マリ「…ヒトの宿命か…。いじけてたって何にも楽しいことないのに…」

ミサト「…なんなのよ…!」

マリ「遺伝子レベルでの欲求に対する疑問…ヒトの限界だよ…」





シンジ「いったい、これは…!」

トウジ「これまでにない強力なA.T.フィールド…!」

ケンスケ「光波、電磁波、粒子も遮断しています!何もモニターできません」

シンジ「結界…!?」

ヒカリ「目標およびエヴァ弐号機、初号機、共にロスト、パイロットとの連絡も取れません!」
731 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:13:01.72 ID:3d5dCKQ9o
最深部に落下する両機


ミサト「んっ…!う、うぅ…っ!」

ミサト「待ちなさい、よ…っ!」

弐号機に足を掴まれる

ミサト「!」

マリ「……」

マリ「諦めちゃいなよ」

ミサト「……!」

マリ「もう無理だって」

ミサト「無理じゃない……!」




ケンスケ「最終安全装置、解除!」

トウジ「ヘヴンズドアが、開く…!」

シンジ「……!」

シンジ「たどり着いたのか、使徒が…!」
732 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:14:01.70 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「みんな…」

トウジ「……」


猛攻。


ミサト「……ぁああああっ!」


弐号機に掴みかかる初号機


ミサト「はっ!」


シンジ「…状況は!」

トウジ「A.T.フィールドや!」

ケンスケ「ターミナルドグマの結界周辺に先と同等のA.T.フィールドが発生」

ヒカリ「結界の中へ侵入していきます!」

シンジ「まさか、新たな使徒…!」

ケンスケ「だめです、確認できません!…いえ、し、消失しました!」

シンジ「消えた?!使徒が?!」
733 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:15:02.65 ID:3d5dCKQ9o
マリ「…おまたせ。アダム…ようやく会えたね…」

マリ「……!」

マリ「違う、これは…!」

マリ「…なるほど。」

マリ「リリンの狙いはこれか…」


横たわる弐号機。


マリ「悔しいなあ……」


初号機の手がマリを捕らえる


マリ「……あとちょっとで勝てると思ったのに。」


ミサト「あんた…っ!なんで、こんなこと…!」


マリ「生きることに……理由なんていらない。ただ生きていたいじゃん?」


マリ「生み落とせば次が待ってる。できるからやればいい。そうやって繰り返し、生命は巡ってきた…」

マリ「疑問なんて…持ってるみたいだからサ、面白くって。もうちょっと見ていたかったけど…」
734 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:16:02.62 ID:3d5dCKQ9o
マリ「でももう終わり。今回は生命に懐疑的なほうが生き残る」

ミサト「…なに、言ってんのよ…」


マリ「…ま。それも面白いか…」


ミサト「わけ、分かんないわよ…!どうしろって言うのよ、私に…!」



マリ「受け取ってよ、リリンの代表として」

ミサト「……」

マリ「私のキモチ」


ミサト「…!」



ミサト「なによ…なんなのよ、ずっと!最初から…」

ミサト「勝手なことばっかり言わないでよ、あたし、あたしは…!」
735 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:17:02.13 ID:3d5dCKQ9o
マリ「知ってるよ?」


ミサト「!」

マリ「最初から好きじゃなかった…気に入らなかった。だよね?」


ミサト「…ッ」

マリ「殺しなよ。そうすれば君たちの世界はそのまま」


マリ「…このまま死んで、心に残るのも悪くない……」

ミサト「……」

マリ「…悪かったね。パーソナルスペース汚しちゃって」

ミサト「……、」

ミサト「馬鹿…!」
736 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:19:08.81 ID:3d5dCKQ9o
洗浄される初号機

葛城「……」

リツコ「……」





ミサト「あの子は…」

ミサト「マリは……使徒じゃなかった」

ミサト「温もりがあったもの…」

ミサト「好きじゃなかった…でも、嫌いでもなかった…」

ミサト「……何も違わなかった。私たちは…っ」
737 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:20:01.74 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「……彼女は死を望んだんだ。ミサトちゃん、君は生を…」


ミサト「違う!」

ミサト「違う、違う、違う違う!私は逃げただけ…!」

ミサト「何も選びたくなかった…だから、あの子の言うことを聞いた…そのほうが、自分が傷つかないもの」

ミサト「嘘ばっかり…知ってるなんて、ぜんぶ嘘…!」

ミサト「あの子も生きたかったんだわ……」

シンジ「……」


扉を閉めるシンジ

布団に踞るミサト

ミサト「……寒い…」




弐拾四話分終わり
738 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/06(日) 17:21:05.54 ID:3d5dCKQ9o
続きは明日
739 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 21:56:02.54 ID:KdkUNOgoo
>>317

>>212

大人ぶってる少年、でなんとか(脳内山寺に)演ってもらうしかないな…
740 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/07(月) 21:57:13.25 ID:KdkUNOgoo
期待コメもありがとう 読むほうも乙!

あと少しなので付き合ってくれ
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