【ミリマス】松田亜利沙が写真撮影を依頼される話

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8 :ベストショットを求めて 7/8 [sage saga]:2020/11/27(金) 00:08:35.86 ID:zlRaz8c80
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 翌日、劇場のエントランスで会ったプロデューサーさんは、とてもすっきりした顔をしていました。写真を撮られることを意識していたのか、髪もいつもよりしっかりセットされています。

「やあ亜利沙。昨日はどうもありがとう。あの薬がよく効いたのか、夜の九時から朝までぐっすり眠れたよ。こんなに気分がいいのは久しぶりだ」

 元気なお顔が戻って来たようで、ありさは心底ホッとしました。プラシーボが効果を発揮するには、お薬を処方する人と受け取る患者さんとの間の信頼関係が重要な要素になる、と風花さんが話していました。だから、今日のプロデューサーさんの調子が良さそうなお顔は、きちんとお薬を飲んで、夜更かしせずに早く寝てくれたという行動の裏にある、アイドルちゃん達への信頼を証明していたのだと思いました。うう、ありさ感激ですっ!

「じゃあ、後で写真お願いします。『はい、撮りますよ〜』っていうのじゃなくて、プロデューサーさんが自然にしている所を撮りますので、ちょっとの間、同行させて下さいっ」
「了解だ。よろしく頼む」

 長い髪を、今日は結んでまとめてきました。首からは、パパから借りているデジタル一眼レフを提げてあります。スマートフォンのカメラでも十分に役目は果たせると思いましたが、ありさはベストを尽くしたかったのです。シャッターストロークの浅いカメラなので、ありさのイメージする一瞬を切り取るには、きっとこちらの方が都合もいいでしょう。

 撮影にあたって、ある程度はもう決めてありました。育ちゃんに見せてもらったB4サイズの紙に貼るのは、横向きの写真です。カメラを縦にする必要はありません。男性のポートレートなら背景の暗い所の方が貫禄が出る、とパパから教えてもらいました。だから、暗めの背景にもなってくれるステージの舞台袖は好都合でした。

 明日の公演に向けてリハーサルを行っているアイドルちゃん達を、プロデューサーさんは瞬きをするのも惜しんで見ています。真剣な目つきです。この写真は使わないと分かっていても、フレームの中に収まった横顔に何度かシャッターを切りました。雑に思える写真の中にも、思わぬ一枚が混ざるものです。バッテリーの充電は十分、データ容量のことも心配する必要がありませんでしたから、今日は思いのままに撮ります。アイドルちゃんを撮る時の興奮とはまた違った意味で、ありさの血が賑やかに騒いでいます。

 舞台袖に来てから、ありさはまだ一言も喋っていません。決定的な瞬間はまだ訪れていなかったのです。やがて通しの一曲が終わり、歌った後の立ち位置とMCの流れを確認し終えた所で、環ちゃんが舞台袖に駆け込んできました。脇からずっと見ていたプロデューサーさんに飛び掛かりそうな勢いでしたが、急ブレーキをかけて停止しました。

「おやぶん! 今の見てた? レッスンの時はダメだったのに、ステップ全部できたぞー!」
「おう、よく出来てたじゃないか、環。今日はヒーローだな」

 レンズ越しの世界で、プロデューサーさんが環ちゃんの頭に手を伸ばして、たてがみのような髪をそっと撫でています。

――あっ、来ました。

 これです。あの人の優しさが全面に出た、いい笑顔です。ありさはこれを待っていたんです。撮れた。もう一枚。今のは目を閉じていたかも。もう一枚。少しズームアウトして、環ちゃんもフレームに収めてもう一枚。一番いいのは後で選ぶんです。ここは数を稼がなければと夢中になって、ありさはシャッターを押しまくりました。これなら、きっと育ちゃんも喜んでくれるはずです。
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