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【CLANNAD】椋「もうすぐチャイム鳴りますよ。教室に戻らないと」
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134 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2020/12/28(月) 22:48:20.01 ID:Nu6S4o660
杏「ちょうどいいわ。……ここなら、人の目もないし」
朋也「……なんだ?俺になんか話か?」
杏「逆よ、逆」
朋也「逆……?」
杏「前にあんたの呼び出しをブッチしたでしょ、あたし。……あの時は、ゴメン」
朋也「……あぁ」
そういや、そんなこともあったっけか。
杏「今度は、ちゃんと話、聞くから……」
杏はうつむいたまま、袋をギュッと握ると、今まで俺が座っていたベンチに腰掛けた。
まるで、俺のことをいつまでも待つ、と言うように。
135 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2020/12/28(月) 22:50:07.44 ID:Nu6S4o660
朋也「………」
春原『杏はさ。岡崎と一緒にいられなくなるのを何よりも恐れてるんだよ。今年はクラスも分かれちゃったし、その気持ちは更に強くなってるかもね』
昨日の夜、春原から聞いた言葉。
こんな俺のことを、椋だけじゃない、杏も好いてくれていると知った。
人から好意を寄せられるなんて、初めての経験だった。だから、俺にもどうしたらいいのかなんてわからない。
朋也「……隣、座っていいか?」
杏「……好きにしなさいよ」
朋也「じゃ、好きにさせてもらうぞ」
杏の隣に腰掛ける。
136 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2020/12/28(月) 22:52:00.51 ID:Nu6S4o660
杏「っ……」
朋也「ひとつな、聞きたいことがあったんだ」
杏「……なに?」
朋也「俺と椋の約束。なんでお前、それを知ってたんだ?」
杏「え……?」
朋也「ほら、遅刻せずに真面目に登校しろってあれだよ」
杏「………ああ、そのこと。別に、深い理由なんてないわ。ただ、中庭であんたと椋が話しているのが見えたから、思わず隠れて話を聞いちゃっただけ」
朋也「……あの会話を聞いてたのか」
杏「あの奥手な椋が、あんたに積極的に自分の意見を言うなんて、ってびっくりしたわよ。なんだか、椋が遠くに行っちゃったような気がして、ちょっと寂しいかなぁ」
困ったような笑顔を浮かべながら話す。
137 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2020/12/28(月) 22:53:22.04 ID:Nu6S4o660
朋也「……椋のこと、本当に大事なんだな、杏」
杏「そりゃ、あたしの双子の片割れだしね。だから椋には、幸せになってもらいたいの」
朋也「そっか……」
俺は、そんな杏が大事にしている椋を、二度も悲しませてしまった。
杏「………ねえ、朋也」
朋也「なんだ?」
杏「今更、なんだけどさ……やっぱ、これは聞いておいた方がいいかと思ってね」
朋也「………」
杏「もしさ、あんたのことを好きだって女の子がいたら、あんた、付き合うつもりある?」
杏からの質問。以前にも、同じ質問をされたことがあった気がする。
それに、こいつはどんな答えを期待しているのだろうか。
138 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2020/12/28(月) 22:55:16.42 ID:Nu6S4o660
朋也「そうだな……」
期待している答えになるかはわからないけど、正直に答えようと思った。
朋也「もし、俺のことを好いてくれる女の子がいたとして、その女の子が俺のよく知る人だったら……付き合うのも、ありかもな」
杏「……っ……そ、それ、って……」
朋也「………」
暗に、杏となら付き合うのもいい、と答えたつもりだった。
そして杏も、態度を見たところそう受け取ってくれたようだった。
杏「…………っ、そ、そっか。なら……椋と付き合うのも、ありってことよね」
朋也「……椋のことは、まだ俺はよくわかってないからな」
杏「朋也……」
139 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2020/12/28(月) 22:56:48.19 ID:Nu6S4o660
朋也「……じゃあ、俺行くよ。昼飯の邪魔して、悪かったな」
困ったような表情を浮かべる杏を横目に、立ち上がる。
朋也「……誤解しないでほしいんだが、俺はお前を困らせるつもりはなかったんだ。ただ、お前の質問に、正直に答えただけだ」
杏「………うん、わかってる」
朋也「俺は創立者祭を適当にぶらついてるからさ。もしお前も、一緒に回る相手がいないんだったら、この後で見かけたら声でもかけてくれ」
杏「……気が向いたら、声かけるわ」
朋也「ああ、サンキュ。一人で回ったって、お互い面白くもないだろ?」
杏「あたしは……その気になれば、友達にでも声かけるわよ」
朋也「……俺のダチっつったら、杏か春原くらいしかいないからな」
140 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2020/12/28(月) 22:57:58.22 ID:Nu6S4o660
杏「………………あたしたち、これからも友達でいられるわよね、朋也?」
朋也「え?」
杏「……………」
思いつめたような表情でつぶやいた言葉。
これからも友達で………か……。
朋也「……さあ、どうかな」
杏「っ……っ」
朋也「男女の友情は成立しない、なんて、よく言う話だからな」
そう言い残し、その場を立ち去ろうとする。
141 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2020/12/28(月) 22:59:17.08 ID:Nu6S4o660
と。
杏「……いや……」
右腕の裾を、杏に捕まれていた。
杏「………」
朋也「杏……?」
杏「聞いて、朋也」
朋也「………」
制服の裾を捕まれたまま、杏の言葉に耳を傾ける。
杏「あたし……あんた達と過ごす学園生活が、楽しいの」
朋也「……あぁ」
杏「周りの友達は、受験だ勉強だってピリピリし始めてるし、さ。あんたや春原と、こうやってバカみたいな話をして過ごすのが、楽しいの」
朋也「……まあ、少なくとも俺や春原はそういうことでピリピリすることはねえしな」
杏「だから、こうやって過ごせなくなるのは……いやなの……」
朋也「……杏……」
142 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2020/12/28(月) 23:00:12.30 ID:Nu6S4o660
杏「あたし、いいよね?あんたの傍にいても……いいよね……?」
朋也「………」
杏「好きなの……朋也……っ」
朋也「っ……」
杏からの……二度目の告白だった。
前は、返事はいらないって言われた。だから、俺も返事はしなかった。
なら、今回は……?
杏「………っ、朋也っ……」
握られた裾が、僅かに引っ張られる。
朋也「………いいのかよ」
杏「え……っ?」
朋也「……返事。してもいいのか、って聞いてんだ」
杏「っ……」
制服の裾越しに、杏の震えが感じて取れる。
143 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2020/12/28(月) 23:01:44.08 ID:Nu6S4o660
朋也「………」
杏「……もう少しだけ、待って」
掴んでいた裾を離し、俯いたまま、小さな声で、杏はそう言った。
杏「……あたし、あたしは……っ、ごめん、まだ、心の整理が出来てなくって……っ」
朋也「……いや、いいよ」
心の整理が出来ていない……。
それは……杏だけに当てはまる言葉なんかじゃなかった。
朋也(………多分……一番、心の整理が出来ているのは……)
朋也「……じゃあ、俺行くよ」
三度目の別れの言葉。
今度こそその言葉通り、俺はその場を後にするのだった。
144 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2020/12/28(月) 23:02:58.23 ID:Nu6S4o660
〜〜〜
それからは、どこを歩いたのかよく覚えていない。
周囲の喧騒にまぎれて、心を落ち着かせるのに精いっぱいだった。
杏からの告白。
椋からの誘い。
自分の気持ち。
それら全部が、頭の中でぐちゃぐちゃに絡まりあって、ほどくことができないでいた。
幸い……と言っていいのかはわからないが、その間、俺に話しかけてくるやつは、誰もいなかった。
145 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2020/12/28(月) 23:04:05.48 ID:Nu6S4o660
そうして、時間だけが過ぎて行って。
気が付けば、創立者祭ももうすぐ終わろうかという時間になっていた。
自身の気持ちに整理がつかないまま、カバンを取りに教室へ戻る。
そこに、椋はいた。
椋「………。待っていました、朋也くん」
廊下からは、創立者祭の後片付けの喧騒が聞こえてきている。
そんな廊下の喧騒が、やけに遠くに感じられた。
目の前にいるのは……俺たち3人の中で、恐らくは唯一、心の整理が終わっている人物。
真剣な眼差しを、俺に真っ直ぐに向けてきていた。
朋也「…………」
146 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2020/12/28(月) 23:05:43.19 ID:Nu6S4o660
椋「……初めての創立者祭は、どうでしたか、朋也くん?」
朋也「……ああ。正直、楽しめたとは言えないな」
今日一日、ずっと考え事をしていたようなもんだ。
そんな状態で、祭を楽しめるはずもなかった。
椋「そうですか。実はわたしも、今年はあんまり楽しくなかったです」
朋也「……悪いな。こう言ったら自惚れになるだろうけど、多分、原因は俺だろ」
椋「いえ、朋也くんは何も悪くないです。原因は、わたし自身が作ったようなものですから」
朋也「………」
椋にそう言われると、俺の立つ瀬がない。
147 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2020/12/28(月) 23:06:41.87 ID:Nu6S4o660
朋也(思い返してみたら、あの日から、椋にはカッコ悪いとこばっかり見られてる気がするな……)
授業をサボって空き教室で寝ているところ。
冗談を言って、泣かせそうになったところ。
遅刻の理由を問いただされ、ぶっきらぼうに返事をしたところ。
授業中に居眠りをしているところ。
俺が思い出せる範囲だと、こいつが俺のことを好きになる要素なんて、どこにも見当たらなかった。
148 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2020/12/28(月) 23:08:21.13 ID:Nu6S4o660
朋也「……で、なんだ。俺に用事か?」
椋「はい。大事な用事です」
朋也「………なんだよ」
椋「………っ……」
椋の言葉を待つ俺の前で、何度か深呼吸を繰り返す。
そして。
椋「わたし、朋也くんのこと……っ、好きです」
朋也「………」
椋「……好き、です……」
自身の言葉を確かめるように。
かみしめる様に、そう繰り返した。
朋也「ああ……ありがとう」
その告白に、そう答えた。
149 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2020/12/28(月) 23:09:06.99 ID:Nu6S4o660
椋「……ずっと、苦しくって……言わずには、いられなくって」
ゆっくりと、赤く染まった顔を俺に向けて、椋の言葉は続いた。
椋「だから、今日……頑張るって、決めたから」
朋也「………」
こんなにも真剣に、俺のことを想ってくれている。
椋「だから……朋也くん」
そうして、椋は、涙をいっぱいに溜めた瞳をぐっと閉じて。
椋「わたしと……付き合って、くださいっ」
ぺこりと、頭を下げた。
150 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2020/12/28(月) 23:10:15.27 ID:Nu6S4o660
朋也「…………」
椋からの告白を受けて、俺ももう一度、自分の心に問いかける。
なんにしても、答えを出さなければいけないところにまで来てしまっていた。
朋也(俺は……この1週間の間、誰を見ていた?)
目の前で俺の返事を待つ少女。
二度、俺に自身の気持ちを告白してきた少女。
どっちを見ていたのかなんて……俺自身、今もわかっていないのかもしれなかった。
朋也「………なあ、椋」
椋「は、はいっ」
下げていた頭をあげて、俺の言葉を聞いてくれる椋。
151 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2020/12/28(月) 23:11:49.99 ID:Nu6S4o660
朋也「ありがとう。その、椋の気持ちは、嬉しいよ」
椋「は、はい……っ」
朋也「この前も、今日も、椋は俺を創立者祭に誘ってくれたよな。それだって、本当に嬉しかった」
椋「………」
朋也「こんな俺と一緒にいたい、って思ってくれる人がいるなんて、思いもしなかったからな」
……これは、誰に向けた言葉なんだろうか。
朋也「……椋と一緒に過ごした時間は、正直、まだ長くもない。だから、お互いにお互いのことを知れていないな、って思うんだ、俺」
椋「……」
椋の表情が、少しずつ暗くなっていく。
152 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2020/12/28(月) 23:12:41.83 ID:Nu6S4o660
朋也「それにさ。俺、お前に好いてもらえるようなことなんて、なにひとつしてない」
椋「それは……っ」
朋也「思い返してみたらさ、俺、お前に格好悪いとこばっか見せてる」
椋「そ、そんなことないです!朋也くんのいいところ、わたしにはわかります!」
俺の言葉を遮り、必死な様子で椋は言ってくれる。
椋「そんな朋也くんだから、わたしは好きになったんです!」
朋也「……。椋」
椋「っ……なんですか」
朋也「………」
153 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2020/12/28(月) 23:13:55.45 ID:Nu6S4o660
1. 俺なんかで、いいのか。
2. ごめん。俺は、お前の気持ちには……応えられない。
154 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2020/12/28(月) 23:16:06.07 ID:Nu6S4o660
本日の投下、以上です
次の投下までに、一番多かった安価で話を進めようと思います
どちらを選んだとしても、次が最後の投下になります
投票がひとつもなかった場合は、自動的に1で進めることとします
では
155 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/12/28(月) 23:30:18.24 ID:LfgTV/9Bo
1
156 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/12/29(火) 01:24:34.13 ID:n91i+oqEO
1
157 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/12/29(火) 14:49:20.14 ID:2uumsdSfo
1
158 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/12/30(水) 17:37:12.26 ID:k1LrgQllo
1
159 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/01/01(金) 00:58:14.98 ID:bdJAPFzmo
1でしょ
160 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2021/01/01(金) 21:44:10.28 ID:byTC2hRx0
→1.俺なんかで、いいのか。
2.ごめん。俺は、お前の気持ちには……応えられない。
161 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2021/01/01(金) 21:45:39.09 ID:byTC2hRx0
朋也「俺なんかで、いいのか」
椋「………え?」
朋也「今言った通り、俺は、お前に好いてもらえるような心当たりなんて、なにひとつない」
椋「……」
朋也「そんな俺でも、いいのか」
椋「……朋也くんでいいんじゃ、ないんです。わたしは、朋也くんがいいんです」
朋也「………ありがとう、椋」
椋からの告白を受けて、俺は、ようやく答えを出せそうだった。
162 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2021/01/01(金) 21:47:25.77 ID:byTC2hRx0
朋也「正直なところ、俺、椋のことあんまり知れていない。だから、椋のことを好きだ、って、まだ自分に自信を持って言い切れない」
椋「っ………」
朋也「だからさ。これから少しずつ、椋のことを知っていきたいって思う」
椋「朋也……くん……」
なんとも、中途半端な答えだと自分でも思う。
でも、これが俺の嘘偽りない気持ちだった。
163 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2021/01/01(金) 21:49:25.52 ID:byTC2hRx0
朋也「………椋。返事は、今すぐにはできない。けど、これからも俺と一緒に、いてくれるか?」
椋「は、はい!返事は、いつでもいいです!わたし、朋也くんに好きになってもらえるように頑張ります!」
朋也「ありがとう。ごめんな、はっきりとしない答えで」
椋「いえ、いいんですっ……わたし……嬉しいっ……です……!」
緊張の糸が緩んだのか、椋の瞳からは、涙があふれてきていた。
朋也「え、あ、椋っ?」
椋「ごっ、ごめんなさい、朋也くっ……どんな結果になっても、泣かないって、決めてたのに……っ」
朋也「………」
俺みたいな不良に告白するって、それだけで勇気のいることに違いない。
それでも、椋は自分の気持ちを正直に告白してきてくれたんだ。
俺みたいなやつを、涙が出るほどに好きになってくれたんだ。
164 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2021/01/01(金) 21:51:22.66 ID:byTC2hRx0
椋「っ……も、もう大丈夫です。ごめんなさい朋也くん。いきなり泣いちゃったりして」
まだ赤い目をこすりながら、それでも椋は泣き止んで俺に笑顔を向けてくれる。
朋也「いや、いいよ。それだけ、真剣だったってことだろ」
椋「………はい、そうです」
朋也「これでまたひとつ、椋って子のことを知ることができた。俺としては、一歩前進だ」
椋「っ、はい!」
そうして、俺と椋の創立者祭は、幕を閉じた。
はっきりとした答えは出せなかったが、それでよかったんだと思う。
俺のことを、真剣に好きだと言ってくれる椋という女の子に、俺も真剣に向き合っていきたい。
165 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2021/01/01(金) 21:52:38.67 ID:byTC2hRx0
*
教室で椋と分かれ、俺はある場所へと足を向けていた。
椋の気持ちに向き合うと決めたのだ。その報告を、しなければならなかった。
俺のことを好きだと言ってくれた、もう一人の女の子に。
これから向かう先には、つらい場面が待っているのに、それでも行かなければならなかった。
それが、俺の出した答えに対するけじめだったから。
166 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2021/01/01(金) 21:55:13.71 ID:byTC2hRx0
朋也「………やっぱ、ここにいたか」
向かった先は、昼間に飯を食べた校舎裏。
そこには、今なお一人の少女がベンチに腰掛けたままだった。
その手には、中身が入ったままの袋。
杏「…………」
朋也「隣、座っていいか?」
杏「………」
杏は何も答えなかった。まるで、俺のことを拒絶するかのように沈黙したまま。
朋也「………ダメなら、このまま話すぞ」
杏「………っ。……なによ」
ようやく、杏は口を開いてくれた。
167 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2021/01/01(金) 21:57:19.83 ID:byTC2hRx0
朋也「………教室で、椋と会ったよ」
杏「……そう」
朋也「そして、椋から告白された」
杏「……っ……」
朋也「…………杏。お前からの告白の返事……聞いてくれるか?」
杏「……うん。覚悟は……できてるから」
そう言う彼女の持つ袋から、小さくこすれる音が聞こえてくる。
怖くて、震えているんだろうか。
それでも、聞いてもらわなくてはならなかった。
168 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2021/01/01(金) 21:58:55.77 ID:byTC2hRx0
朋也「…………………俺は。杏の気持ちには………応えられない」
杏「っ……!」
169 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2021/01/01(金) 22:00:30.86 ID:byTC2hRx0
朋也「ごめん、杏。俺、気になってる子がいるんだ」
杏「………」
朋也「普段は気弱で、引っ込み思案で、冗談も通じないようなやつなんだけどさ。それでも、こんな俺のことを好きだって言ってくれる子なんだ」
杏「………」
朋也「気弱で引っ込み思案なくせに、妙な行動力なんかもあってさ。授業をサボる俺のあとをついてきたりなんかもしてくれてさ」
杏「………」
朋也「俺のこと、ここまで気にかけて、好きだって言ってくれる子のことが、気になるんだ」
杏「…………そ……っか……」
朋也「その子には、まだ返事はできない、って言ったんだけど。これから、その子のことを知っていきたいって思ってる」
杏「うん。………朋也の気持ちは、よくわかった」
朋也「………ごめん、杏。返事が遅くなったうえに、こんな答えで」
杏「ううん……いいの。同じ人を好きになった時点で、どっちかが傷つくのは、わかってたことなんだから……っ」
朋也「……そうか」
170 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2021/01/01(金) 22:03:48.56 ID:byTC2hRx0
杏「っ……っ、あーあ、朋也に振られちゃったかー!」
朋也「………」
杏「ま、仕方ないわよね!椋が相手なら、あたしは大人しく身を引くわ!」
朋也「杏……」
杏「こっちも、ごめんね、朋也。あたしたち姉妹のこと、本当に真剣になって考えて答えてくれたんだもんね。悩ませちゃって、ごめん」
杏だって、つらいはずなのに。無理に明るく振舞ってくれている。
その姿は、痛々しくて……でも、俺が目を背けるわけにはいかなかった。
杏にこういう振舞いをさせているのは、他でもない、俺自身だったから。
この強がりにも、正面から応えなければ、彼女に対して失礼になってしまう。
朋也「いや……いいんだ。俺みたいなやつを好きになってくれたんだし、な。その気持ちに、俺なりに真剣に応えたかったんだ」
171 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2021/01/01(金) 22:07:22.84 ID:byTC2hRx0
杏「それと、ありがとう」
朋也「? なにがありがとうなんだよ」
杏「ちゃんとした答えを出してくれて、ってこと。正直さ、応えずに逃げられるかも、って思ってた部分もあったから」
朋也「………」
杏「失礼なこと考えちゃってたわ。だから、ごめんと、ありがとう」
朋也「……そうか、杏の中では、俺はそんなヘタレなキャラだったんだな」
杏「なによ、だからちゃんと謝ってるじゃないの」
朋也「それはちゃんとと言えるのか」
杏「本人が言ってるんだからちゃんとしてるの!」
朋也「なら、今後は認識を改めてくれ。俺は逃げることもしない、ヘタレなやつじゃなかったってな」
杏「もう改めたわよ、失礼ね」
172 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2021/01/01(金) 22:09:06.97 ID:byTC2hRx0
気が付けば、俺と杏はいつもの調子で話せていた。
これからも、俺と杏はこういうやり取りを、続けて行けるだろうか。
『友達』として、彼女との関係を続けて行けるだろうか。
そしてそれは、杏も望んでくれる形になっているだろうか。
答えは、彼女の中にしかないだろうけど。
そうであってほしい、と。そう思った。
173 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2021/01/01(金) 22:12:45.22 ID:byTC2hRx0
*
創立者祭が終わり、俺には、新しい日常が始まりつつあった。
クラスメイトの女の子と、友達以上の関係が。
始まったばかりの頃は、俺と椋の二人でいることが多かった。
杏が顔を出すことは、ほとんどなかった。
たまに廊下ですれ違えば、相変わらず杏とは他愛のない話をすることができていた。
杏は、無理していないだろうか、なんて考えてしまうが、それを口に出すのは杏に失礼に当たるだろうと思い、心の中で留めていた。
174 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2021/01/01(金) 22:14:39.50 ID:byTC2hRx0
そうして、椋との関係が続いていく。
二人で、デート(と呼んでいいのかはわからないが)にも行った。
商店街の中を、女の子と二人きりで歩く。
そんな中で、クラスの中で少しずつ、俺と椋が付き合っている、なんて噂が流れ始めていた。
俺の耳に入るくらいだから、当然椋の耳にも入っているに違いなかった。
直接俺に問いかけてくる人物はひとりしかいなかったが、そいつには「付き合ってはいない」と正直に答えた。
俺が告白の返事をしていないんだから、その俺が嘘をつくわけにもいかない。
夏が過ぎて、吹き付ける風が肌寒く感じられる季節へ。
175 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2021/01/01(金) 22:15:38.95 ID:byTC2hRx0
そんな日々が続いた、ある日の放課後。
椋「朋也くん、お待たせしました」
委員会が終わり、教室へと戻ってきた椋が、俺にそう声をかけてくる。
朋也「いや、いいよ。委員会お疲れさん」
椋「はい。それじゃ、帰りましょうか」
机の中のものを全てカバンへ入れ終え、カバンを持つと椋は俺に向き直る。
176 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2021/01/01(金) 22:16:42.09 ID:byTC2hRx0
朋也「ああ……いや、ちょっと待ってくれるか」
椋「はい?どうかしましたか?」
朋也「……いい加減、答えを出そうと思って、な」
椋「……答え、ですか」
そう呟き、椋の顔が一瞬強張る。
朋也「ああ。いつまでも先延ばしにしていても、仕方ないしな」
そう言って、椋の席へと近づいていく。
朋也「聞いてくれるか、椋。あの日の……創立者祭の時の、返事」
椋「………はい、もちろんです」
177 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2021/01/01(金) 22:17:53.22 ID:byTC2hRx0
朋也「………」
大きく、1、2回深呼吸をする。
朋也「椋。俺も、お前のことが好きだ」
椋「っ! ………」
朋也「だから……付き合おう、椋」
椋「あ……ありがとう、ございます」
朋也「ずいぶん返事、遅くなっちまった。……ごめんな」
椋「いえ、返事はいつでもいいって言ったのはわたしですから。……ありがとうございます、朋也くん」
朋也「えっと……なら、今から椋は、俺の彼女ってことで、いいか?」
椋「はいっ!これからも、よろしくお願いします、朋也くんっ!」
真っ赤な顔で、目じりに涙を浮かべながら、椋は笑顔でそう言ってくれる。
178 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2021/01/01(金) 22:19:32.35 ID:byTC2hRx0
そんな椋を愛おしく感じ、彼女を抱きしめた。
椋「とっ、朋也くんっ?」
朋也「あー、バカだな、俺」
椋「な、なにがですか?」
朋也「………こんなにかわいい子のこと、今まで待たせてたなんて、もったいないことしたなって思って」
椋「は、恥ずかしいですよ、朋也くん……」
朋也「でも、もういいんだよな、俺たち。付き合ってるんだもんな?」
椋「はい。……わたしは、朋也くんの、彼女ですから」
179 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2021/01/01(金) 22:20:42.12 ID:byTC2hRx0
抱きしめていた椋を解放し、正面から彼女の顔に向き合う。
椋「………」
朋也「………キスして、いいか?」
椋「……聞かなくても、いいですよ」
そういうと、椋は静かに目を閉じる。
その彼女の唇に、自身の唇を重ねた。
180 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2021/01/01(金) 22:22:05.70 ID:byTC2hRx0
しなくてもいい遠回りをしてしまったけれど、ようやく俺たちの本当の関係が始まったのだ。
俺をこんなにも好きだと言ってくれる椋を、本当に愛おしく思う。
今まで待たせてしまった分、これからは彼女にもっと好きになってもらえるよう、努力していこう。
きっかけは、椋がくれた。
そのきっかけを、無駄にしないようにしよう、と。
心の中で、そう強く決意するのだった。
END
181 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2021/01/01(金) 22:26:03.42 ID:byTC2hRx0
以上で、投下終了になります。
以下、どうでもいい独り言。
CLANNADリメイクでもなんでもいいから、おまけ程度で終わらせるんじゃなくしっかりとした椋シナリオが読みたいです。
しかしもう発売から何年も経ってるから、望みは薄いんだろうなぁ…と。
そう思い立って、今作を書こうと思い至った次第です。
楽しんでくれたなら、幸いです。
では、またどこかのSSスレにて会いましょう。
182 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/01/01(金) 23:18:42.10 ID:wagQuS7Mo
おつでした
183 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/01/06(水) 23:04:05.92 ID:kU+G+lEBo
乙
184 :
◆/ZP6hGuc9o
:2026/03/11(水) 23:20:10.79 ID:MNz/KIKl0
1.俺なんかで、いいのか。
→2.ごめん。俺は、お前の気持ちには……応えられない。
185 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2026/03/11(水) 23:22:07.61 ID:MNz/KIKl0
朋也「ごめん。俺は、お前の気持ちには……応えられない」
椋「……ぁ……」
それが、俺の心に問いかけた結果出てきた答えだった。
朋也「今更なんだけどさ。俺、好きな人がいるんだ」
椋「……そうなんですか」
朋也「ああ。その人のこと、泣かせたくないんだ。そいつは、本当にお節介なやつで……自分の気持ちよりも、周りの人の気持ちを優先するようなやつでさ」
椋「………」
朋也「だから俺は、そんな周りの人の気持ちを優先してしまうあいつを、放っておけないんだ」
多分、あいつは―――杏は、椋の気持ちに応えなかった俺を、許さないだろう。
場合によっては、平手打ちの一発も覚悟しておいたほうがいいかもしれない。
でも、自分の気持ちに嘘は吐けなかった。
186 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2026/03/11(水) 23:23:11.87 ID:MNz/KIKl0
朋也「………。ごめん、椋」
椋「……っ、いえ、いいんです。………正直、分は悪いと思っていたので……っ」
朋也「……椋……」
椋「ぁ……ごめん、なさっ……泣かない、ってっ……決めてたはずなのに……っ」
堪えきれなかったんだろう、椋の瞳からは、涙が零れていた。
椋「こっ、困りますよね、こんなっ……っ、す、すみませんっ、朋也くんっ!」
拭っても拭っても溢れてくる涙を見られたくなかったのか。
椋は、俺の横を通り抜けて教室から走って出て行ってしまった。
朋也「………はぁ」
俺のことを好いてくれている子に、なにもしてあげることができなかった。
これで、よかったのだろうか。
俺の選択は……正しかったのだろうか。
いや、そもそも、こういう問題にどちらが正しいなんてあるはずもなかった。
後味の悪さは残ってしまったが、これでよかったんだと、そう思うしかない。
俺の心は決まった。
あとは―――椋を泣かせてしまったけじめを、つけなければいけなかった。
187 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2026/03/11(水) 23:23:57.49 ID:MNz/KIKl0
*
昼間にあいつと会った校舎裏へ、足を向ける。
あいつが―――杏がいる場所といったら、ここしか思い浮かばなかった。
そして、その思惑は。
杏「…………」
見事、的中していたのだった。
朋也「………杏」
杏「………朋也」
その手に握られているのは、中身が入ったままの袋。
昼飯を食べることもなく、あれからずっとここにいたのか、杏は。
188 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2026/03/11(水) 23:24:29.25 ID:MNz/KIKl0
朋也「………言わなきゃいけないことは、色々あるけど。まずは、お前に謝らなきゃいけない」
杏「……なに?」
朋也「ごめん、杏。俺、お前の妹を泣かせちまった」
杏「……………」
朋也「お前、椋を泣かせたくないって言ってたよな。だから、ごめん」
杏「………。仕方、ないわよ」
朋也「………」
杏「おんなじ人を好きになっちゃったんだから……どっちかが傷つくのは、わかってたことなんだし……ね」
朋也「……そうか」
189 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2026/03/11(水) 23:25:38.95 ID:MNz/KIKl0
杏「………。ねえ、朋也」
朋也「ああ……なんだ?」
杏「あたし、椋を泣かせた人のことは、許したくない」
朋也「………覚悟はしてるよ」
杏「でもね、あの子を泣かせた責任は……あんた一人にあるとも思わない」
朋也「……」
杏「あたしにも、あの子を泣かせた責任はあるから……だから、あたしは自分のことも許せそうにない」
朋也「………お前は、それでいいよ」
杏「………」
朋也「俺は、自分よりも、周りの人のことを優先する杏のことを、放っておけなくなったんだ。だから、そのままでいいよ」
杏「朋也……」
190 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2026/03/11(水) 23:27:43.84 ID:MNz/KIKl0
朋也「………遅くなっちまったけど、杏からの告白の返事。しても……いいか?」
杏「………うん」
朋也「じゃあ……。俺、杏のことが好きだ。だから、杏と一緒にいたい」
杏「朋也っ……」
朋也「これが……俺の答えだ」
そう言って、杏の隣に腰掛け、杏の肩を抱き寄せる。
杏「朋也ぁ……っ」
堪えきれなくなったのか、杏はボロボロと涙を零す。
朋也「椋だけじゃなく、杏まで泣かせちまったか……最低だな、俺は」
杏「あたしっ……あたしはっ……っ」
朋也「ごめんな……遅くなって。でも、やっと気付けたから。椋にとっては不本意だったかもしれないけど……俺が気付けたのは、椋のおかげだ」
杏「あたしも……ずっと、朋也のことが好きだった!だからっ……もう離さないからね、馬鹿っ!」
朋也「離されちゃ困る。俺も、杏のことが好きだから」
抱き寄せていた杏の肩を離し、杏の顔に正面から向き直る。
そうして、涙で濡れる彼女の唇に、自身の唇を重ねた。
191 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2026/03/11(水) 23:28:13.77 ID:MNz/KIKl0
ようやく気付けた自分の気持ち。
椋がきっかけを作ってくれなければ、気付くことができなかったかもしれないこの気持ちを。
これからも、大事にしようと、そう強く、誓った。
192 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2026/03/11(水) 23:29:54.91 ID:MNz/KIKl0
*
創立者祭が終わって、どれくらいの時間が経っただろうか。
俺と椋は―――あの日から、距離ができてしまったままだった。
当然と言えば当然の結果だ。
杏も言っていた。
告白して、断られたら、もう友達としてもいられなくなるかもしれない、と。
『あたしとしては、ちゃんと椋の気持ちにも向き合ってほしいんだけどさ。でも、朋也の気持ちもわかるわけで』
『あの子は、あたしやあんたよりも強い子だから。あの日あんたに振られた時点で、自分の気持ちの整理はついてるんだと思う』
『だからね、朋也の納得できるようにしたいなら、あたしからは何も言わないわ。けじめだって言うんなら、好きにしたらいいわよ』
『あ、でも、もう二度と椋を泣かすんじゃないわよ?もし泣かせたら、いくら彼氏だからって許さないんだからね!』
朋也「………」
俺は、杏と一緒にいることを選んだ。
そのきっかけをくれたのは、誰でもない、椋だった。
椋が望んだ結果とは違う結末にしてしまったけれど。
そのお礼は、言っておきたかった。
193 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2026/03/11(水) 23:30:33.69 ID:MNz/KIKl0
椋「あ……」
放課後、いつもなら誰もいないであろう教室に残っていた人物を見て、椋が小さく声を上げる。
朋也「……よう、委員会、ごくろうさん」
椋「はい。お姉ちゃんを待っていたんですか?委員会終わりましたから、お姉ちゃんも教室に戻っていると思いますよ」
朋也「いや、お前を待ってたんだ、椋」
椋「えっ、わたしを、ですか?」
朋也「ああ。……あれから、まともに話もできなかったからな」
椋「……それは、そうですよ。わたしは、朋也くんに振られたんですから」
朋也「………ああ」
194 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2026/03/11(水) 23:31:55.84 ID:MNz/KIKl0
椋「それで、なんの話ですか」
椋にそう問いかけられ、俺は一度深く深呼吸する。
朋也「―――……ありがとう、椋」
椋「………えっ?」
朋也「あの日の……椋の占い、当たってたんだな、って今は思う」
椋「あの日の占い、ですか?」
朋也「ああ。言ってくれただろ?『ちょっとしたきっかけで真面目になれる人間だ』ってさ」
椋「………」
朋也「椋のあの占いのおかげで、俺、自分の気持ちに気付けたって思うんだ。だから、ありがとう」
椋「………そうですか。わたしがきっかけになれたのなら、良かったです」
195 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2026/03/11(水) 23:33:07.70 ID:MNz/KIKl0
朋也「それで、これは俺からのお願い……というか、提案なんだが」
椋「? 提案……ですか」
朋也「ああ。椋さえいやじゃなきゃ、なんだけど。これからも、友達として俺と接して欲しいんだ」
椋「友達として……ですか」
朋也「いますぐに、ってのは難しいかもしれないけどさ」
椋「………いいんですか?」
朋也「いいも何も、俺がそうしてほしいって話なんだよ」
196 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2026/03/11(水) 23:33:53.64 ID:MNz/KIKl0
椋「………っ……」
朋也「え、あ、え?椋、なんで泣くんだよっ?」
椋は肩を震わせ、静かに涙を流し始めていた。
椋「いえ、これは……違うんです、朋也くっ……うれしいはずなのにっ……なんで、泣いてるんでしょうか、わたしっ……」
口元を押さえ、声を必死に押し殺しながら、しかし涙は止まる様子がなかった。
朋也「と、とりあえず泣き止め!泣き止んでくれっ!俺がなんか変なことを言ったんなら、謝るから!」
もしこんな場面をあいつに……。
杏「おまたせー、椋!かえ……ろ……」
杏に……見られでもしたら……。
197 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2026/03/11(水) 23:34:37.34 ID:MNz/KIKl0
杏「―――……朋也?」
朋也「き、杏……い、いや、違うぞっ?これは、あの……」
杏「なーに人の妹を泣かせちゃってくれてんのかしら……?あたし、言ったわよね?もう二度と椋を泣かせないでよねって……」
朋也「り、椋っ!お前からもなんか言ってやってくれよ!?」
椋「っ……お、お姉ちゃん……」
杏「大丈夫、椋?この馬鹿になに言われたの?」
杏に宥めすかされ、ようやく泣き止んだ椋に、杏は詰め寄る。
椋「………うん。朋也くんと、これからも友達でいられるんだって思ったら、うれしくて……」
198 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2026/03/11(水) 23:36:10.13 ID:MNz/KIKl0
杏「……………はぁ。あのねぇ、朋也」
朋也「な、なんだよ?好きにしたらいいって、杏も言ってただろ?」
杏「好きにしたらいいとは言ったけどね!振った女の子に対して『これからも友達で』なんて言う、普通!?」
朋也「お前だって、告白して振られたら友達としても一緒にいられなくなるって言ってただろうが!だから、俺は俺なりに気遣ったつもりなんだぞ!?」
杏「あたしと椋を一緒にするんじゃないわよ!この子はデリケートなの!」
朋也「デリケートってなんだよ!前に杏が言ってただろ、椋は俺や杏よりも強い子だって!」
杏「強い子であることとデリケートであることは両立するに決まってるじゃない!第一、椋がそれを望んだとでも言うの!?」
朋也「ちゃんと了承は得たし、うれしいって本人も言ってただろうが!まさかそれで泣かれるなんて思わなかったんだよ!」
杏「そもそもね、これからも友達でってのは、振られた方が言う言葉であって、振った方が言う言葉じゃないわよ!」
朋也「いーやそんなことないね!お前の持ってる漫画でも振る時のセリフでそういうのがあったのを見たことあるぞ!」
杏「あんなの方便に決まってんじゃないのよ!」
椋「ちょ、ちょっと二人とも……」
杏・朋也「椋は黙ってて(くれ)!」
椋「あ、あう……」
おろおろしている椋をしり目に、杏と言い合いを続ける。
俺たち、恋人同士になったんだよな?なんだか、前とやっていることは変わっていない気がした。
まあでも、これが一番俺たちらしいのかもしれなかった。
199 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2026/03/11(水) 23:37:29.03 ID:MNz/KIKl0
杏「とにかく!椋を泣かせたんだから、謝りなさいよ!」
朋也「わかった、わかったよ!悪かったな、椋!デリカシーがなかった。いやだったら、もう俺のこと無視してくれて構わない」
杏「なによその謝り方!ほんとに反省してんの、あんた!?」
朋也「他にどう言えってんだよ!」
椋「………ふふっ」
相変わらず杏との言い合いが続いているのを見ていた椋が、不意に笑った。
杏「り、椋?ごめんね、ほんとこの馬鹿は人の気持ちも理解できないもんだから」
朋也「悪い、椋。人前でするようなことじゃなかったな」
200 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2026/03/11(水) 23:38:37.86 ID:MNz/KIKl0
椋「いえ、いいんです。それじゃ、朋也くんとわたしは、これからも友達ってことで、よろしくお願いします」
朋也「お、おう……本当に、無理すんなよ?」
椋「はい、もう大丈夫です。あれから、随分と日も経ちましたし、わたしも自分なりに、心の整理はついているので」
朋也「……遅くなったのは、悪かったよ。俺自身、本当に言っていいもんなのか、わからなかったからな」
杏「ほんとねぇ、随分と遅くなっちゃったわよ」
朋也「お前には言われたくねえけどな」
杏「なに言ってんのよ。あたしはもうちゃーんとけじめ付け終わってるんだから。ね、椋?」
椋「うん、お姉ちゃん」
朋也「仲のよろしいこって。んじゃ、俺は久々に春原の部屋にでも行くから、今日は姉妹仲良く帰れよ」
201 :
◆/ZP6hGuc9o
[saga]:2026/03/11(水) 23:39:34.92 ID:MNz/KIKl0
椋「あ、ごめん、わたし、先に校門前まで行ってるね!」
杏「え?あ、椋!……行っちゃった」
多分……だけど、気を遣ってくれたんだろう、椋は。
杏「まあいいわ。それじゃ、悪いわね朋也。ま、こんな時間まで朋也が残ってるとは思ってなかったんだけど」
朋也「………俺とお前、付き合ってるんだよな?」
杏「え?付き合ってるわよ?」
朋也「なんか、冷たくねえ?」
杏「なにがよ。悪いわねって言ってるじゃないの」
朋也「彼女が学校に残ってんだから、彼氏なら待つのが普通じゃねえの?」
杏「っ、そ、それは……って、朋也が待ってたのは椋じゃないの?話したいことがあるって、今朝言ってたじゃないのよ!」
朋也「そりゃ、目的の半分はそうだけどさ……ったく、いいよもう」
また不毛な言い争いになりそうだったから、話を切り上げて教室を出ようとする。
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