【CLANNAD】椋「もうすぐチャイム鳴りますよ。教室に戻らないと」

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183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/06(水) 23:04:05.92 ID:kU+G+lEBo
184 : ◆/ZP6hGuc9o :2026/03/11(水) 23:20:10.79 ID:MNz/KIKl0
1.俺なんかで、いいのか。

→2.ごめん。俺は、お前の気持ちには……応えられない。
185 : ◆/ZP6hGuc9o [saga]:2026/03/11(水) 23:22:07.61 ID:MNz/KIKl0
朋也「ごめん。俺は、お前の気持ちには……応えられない」

椋「……ぁ……」

それが、俺の心に問いかけた結果出てきた答えだった。

朋也「今更なんだけどさ。俺、好きな人がいるんだ」

椋「……そうなんですか」

朋也「ああ。その人のこと、泣かせたくないんだ。そいつは、本当にお節介なやつで……自分の気持ちよりも、周りの人の気持ちを優先するようなやつでさ」

椋「………」

朋也「だから俺は、そんな周りの人の気持ちを優先してしまうあいつを、放っておけないんだ」

多分、あいつは―――杏は、椋の気持ちに応えなかった俺を、許さないだろう。

場合によっては、平手打ちの一発も覚悟しておいたほうがいいかもしれない。

でも、自分の気持ちに嘘は吐けなかった。
186 : ◆/ZP6hGuc9o [saga]:2026/03/11(水) 23:23:11.87 ID:MNz/KIKl0
朋也「………。ごめん、椋」

椋「……っ、いえ、いいんです。………正直、分は悪いと思っていたので……っ」

朋也「……椋……」

椋「ぁ……ごめん、なさっ……泣かない、ってっ……決めてたはずなのに……っ」

堪えきれなかったんだろう、椋の瞳からは、涙が零れていた。

椋「こっ、困りますよね、こんなっ……っ、す、すみませんっ、朋也くんっ!」

拭っても拭っても溢れてくる涙を見られたくなかったのか。

椋は、俺の横を通り抜けて教室から走って出て行ってしまった。

朋也「………はぁ」

俺のことを好いてくれている子に、なにもしてあげることができなかった。

これで、よかったのだろうか。

俺の選択は……正しかったのだろうか。

いや、そもそも、こういう問題にどちらが正しいなんてあるはずもなかった。

後味の悪さは残ってしまったが、これでよかったんだと、そう思うしかない。

俺の心は決まった。

あとは―――椋を泣かせてしまったけじめを、つけなければいけなかった。
187 : ◆/ZP6hGuc9o [saga]:2026/03/11(水) 23:23:57.49 ID:MNz/KIKl0


昼間にあいつと会った校舎裏へ、足を向ける。

あいつが―――杏がいる場所といったら、ここしか思い浮かばなかった。

そして、その思惑は。

杏「…………」

見事、的中していたのだった。

朋也「………杏」

杏「………朋也」

その手に握られているのは、中身が入ったままの袋。

昼飯を食べることもなく、あれからずっとここにいたのか、杏は。
188 : ◆/ZP6hGuc9o [saga]:2026/03/11(水) 23:24:29.25 ID:MNz/KIKl0
朋也「………言わなきゃいけないことは、色々あるけど。まずは、お前に謝らなきゃいけない」

杏「……なに?」

朋也「ごめん、杏。俺、お前の妹を泣かせちまった」

杏「……………」

朋也「お前、椋を泣かせたくないって言ってたよな。だから、ごめん」

杏「………。仕方、ないわよ」

朋也「………」

杏「おんなじ人を好きになっちゃったんだから……どっちかが傷つくのは、わかってたことなんだし……ね」

朋也「……そうか」
189 : ◆/ZP6hGuc9o [saga]:2026/03/11(水) 23:25:38.95 ID:MNz/KIKl0
杏「………。ねえ、朋也」

朋也「ああ……なんだ?」

杏「あたし、椋を泣かせた人のことは、許したくない」

朋也「………覚悟はしてるよ」

杏「でもね、あの子を泣かせた責任は……あんた一人にあるとも思わない」

朋也「……」

杏「あたしにも、あの子を泣かせた責任はあるから……だから、あたしは自分のことも許せそうにない」

朋也「………お前は、それでいいよ」

杏「………」

朋也「俺は、自分よりも、周りの人のことを優先する杏のことを、放っておけなくなったんだ。だから、そのままでいいよ」

杏「朋也……」
190 : ◆/ZP6hGuc9o [saga]:2026/03/11(水) 23:27:43.84 ID:MNz/KIKl0
朋也「………遅くなっちまったけど、杏からの告白の返事。しても……いいか?」

杏「………うん」

朋也「じゃあ……。俺、杏のことが好きだ。だから、杏と一緒にいたい」

杏「朋也っ……」

朋也「これが……俺の答えだ」

そう言って、杏の隣に腰掛け、杏の肩を抱き寄せる。

杏「朋也ぁ……っ」

堪えきれなくなったのか、杏はボロボロと涙を零す。

朋也「椋だけじゃなく、杏まで泣かせちまったか……最低だな、俺は」

杏「あたしっ……あたしはっ……っ」

朋也「ごめんな……遅くなって。でも、やっと気付けたから。椋にとっては不本意だったかもしれないけど……俺が気付けたのは、椋のおかげだ」

杏「あたしも……ずっと、朋也のことが好きだった!だからっ……もう離さないからね、馬鹿っ!」

朋也「離されちゃ困る。俺も、杏のことが好きだから」

抱き寄せていた杏の肩を離し、杏の顔に正面から向き直る。

そうして、涙で濡れる彼女の唇に、自身の唇を重ねた。
191 : ◆/ZP6hGuc9o [saga]:2026/03/11(水) 23:28:13.77 ID:MNz/KIKl0


ようやく気付けた自分の気持ち。

椋がきっかけを作ってくれなければ、気付くことができなかったかもしれないこの気持ちを。

これからも、大事にしようと、そう強く、誓った。


192 : ◆/ZP6hGuc9o [saga]:2026/03/11(水) 23:29:54.91 ID:MNz/KIKl0


創立者祭が終わって、どれくらいの時間が経っただろうか。

俺と椋は―――あの日から、距離ができてしまったままだった。

当然と言えば当然の結果だ。

杏も言っていた。

告白して、断られたら、もう友達としてもいられなくなるかもしれない、と。

『あたしとしては、ちゃんと椋の気持ちにも向き合ってほしいんだけどさ。でも、朋也の気持ちもわかるわけで』

『あの子は、あたしやあんたよりも強い子だから。あの日あんたに振られた時点で、自分の気持ちの整理はついてるんだと思う』

『だからね、朋也の納得できるようにしたいなら、あたしからは何も言わないわ。けじめだって言うんなら、好きにしたらいいわよ』

『あ、でも、もう二度と椋を泣かすんじゃないわよ?もし泣かせたら、いくら彼氏だからって許さないんだからね!』

朋也「………」

俺は、杏と一緒にいることを選んだ。

そのきっかけをくれたのは、誰でもない、椋だった。

椋が望んだ結果とは違う結末にしてしまったけれど。

そのお礼は、言っておきたかった。
193 : ◆/ZP6hGuc9o [saga]:2026/03/11(水) 23:30:33.69 ID:MNz/KIKl0
椋「あ……」

放課後、いつもなら誰もいないであろう教室に残っていた人物を見て、椋が小さく声を上げる。

朋也「……よう、委員会、ごくろうさん」

椋「はい。お姉ちゃんを待っていたんですか?委員会終わりましたから、お姉ちゃんも教室に戻っていると思いますよ」

朋也「いや、お前を待ってたんだ、椋」

椋「えっ、わたしを、ですか?」

朋也「ああ。……あれから、まともに話もできなかったからな」

椋「……それは、そうですよ。わたしは、朋也くんに振られたんですから」

朋也「………ああ」
194 : ◆/ZP6hGuc9o [saga]:2026/03/11(水) 23:31:55.84 ID:MNz/KIKl0
椋「それで、なんの話ですか」

椋にそう問いかけられ、俺は一度深く深呼吸する。

朋也「―――……ありがとう、椋」

椋「………えっ?」

朋也「あの日の……椋の占い、当たってたんだな、って今は思う」

椋「あの日の占い、ですか?」

朋也「ああ。言ってくれただろ?『ちょっとしたきっかけで真面目になれる人間だ』ってさ」

椋「………」

朋也「椋のあの占いのおかげで、俺、自分の気持ちに気付けたって思うんだ。だから、ありがとう」

椋「………そうですか。わたしがきっかけになれたのなら、良かったです」
195 : ◆/ZP6hGuc9o [saga]:2026/03/11(水) 23:33:07.70 ID:MNz/KIKl0
朋也「それで、これは俺からのお願い……というか、提案なんだが」

椋「? 提案……ですか」

朋也「ああ。椋さえいやじゃなきゃ、なんだけど。これからも、友達として俺と接して欲しいんだ」

椋「友達として……ですか」

朋也「いますぐに、ってのは難しいかもしれないけどさ」

椋「………いいんですか?」

朋也「いいも何も、俺がそうしてほしいって話なんだよ」
196 : ◆/ZP6hGuc9o [saga]:2026/03/11(水) 23:33:53.64 ID:MNz/KIKl0
椋「………っ……」

朋也「え、あ、え?椋、なんで泣くんだよっ?」

椋は肩を震わせ、静かに涙を流し始めていた。

椋「いえ、これは……違うんです、朋也くっ……うれしいはずなのにっ……なんで、泣いてるんでしょうか、わたしっ……」

口元を押さえ、声を必死に押し殺しながら、しかし涙は止まる様子がなかった。

朋也「と、とりあえず泣き止め!泣き止んでくれっ!俺がなんか変なことを言ったんなら、謝るから!」

もしこんな場面をあいつに……。

杏「おまたせー、椋!かえ……ろ……」

杏に……見られでもしたら……。
197 : ◆/ZP6hGuc9o [saga]:2026/03/11(水) 23:34:37.34 ID:MNz/KIKl0
杏「―――……朋也?」

朋也「き、杏……い、いや、違うぞっ?これは、あの……」

杏「なーに人の妹を泣かせちゃってくれてんのかしら……?あたし、言ったわよね?もう二度と椋を泣かせないでよねって……」

朋也「り、椋っ!お前からもなんか言ってやってくれよ!?」

椋「っ……お、お姉ちゃん……」

杏「大丈夫、椋?この馬鹿になに言われたの?」

杏に宥めすかされ、ようやく泣き止んだ椋に、杏は詰め寄る。

椋「………うん。朋也くんと、これからも友達でいられるんだって思ったら、うれしくて……」
198 : ◆/ZP6hGuc9o [saga]:2026/03/11(水) 23:36:10.13 ID:MNz/KIKl0
杏「……………はぁ。あのねぇ、朋也」

朋也「な、なんだよ?好きにしたらいいって、杏も言ってただろ?」

杏「好きにしたらいいとは言ったけどね!振った女の子に対して『これからも友達で』なんて言う、普通!?」

朋也「お前だって、告白して振られたら友達としても一緒にいられなくなるって言ってただろうが!だから、俺は俺なりに気遣ったつもりなんだぞ!?」

杏「あたしと椋を一緒にするんじゃないわよ!この子はデリケートなの!」

朋也「デリケートってなんだよ!前に杏が言ってただろ、椋は俺や杏よりも強い子だって!」

杏「強い子であることとデリケートであることは両立するに決まってるじゃない!第一、椋がそれを望んだとでも言うの!?」

朋也「ちゃんと了承は得たし、うれしいって本人も言ってただろうが!まさかそれで泣かれるなんて思わなかったんだよ!」

杏「そもそもね、これからも友達でってのは、振られた方が言う言葉であって、振った方が言う言葉じゃないわよ!」

朋也「いーやそんなことないね!お前の持ってる漫画でも振る時のセリフでそういうのがあったのを見たことあるぞ!」

杏「あんなの方便に決まってんじゃないのよ!」

椋「ちょ、ちょっと二人とも……」

杏・朋也「椋は黙ってて(くれ)!」

椋「あ、あう……」

おろおろしている椋をしり目に、杏と言い合いを続ける。

俺たち、恋人同士になったんだよな?なんだか、前とやっていることは変わっていない気がした。

まあでも、これが一番俺たちらしいのかもしれなかった。
199 : ◆/ZP6hGuc9o [saga]:2026/03/11(水) 23:37:29.03 ID:MNz/KIKl0
杏「とにかく!椋を泣かせたんだから、謝りなさいよ!」

朋也「わかった、わかったよ!悪かったな、椋!デリカシーがなかった。いやだったら、もう俺のこと無視してくれて構わない」

杏「なによその謝り方!ほんとに反省してんの、あんた!?」

朋也「他にどう言えってんだよ!」

椋「………ふふっ」

相変わらず杏との言い合いが続いているのを見ていた椋が、不意に笑った。

杏「り、椋?ごめんね、ほんとこの馬鹿は人の気持ちも理解できないもんだから」

朋也「悪い、椋。人前でするようなことじゃなかったな」
200 : ◆/ZP6hGuc9o [saga]:2026/03/11(水) 23:38:37.86 ID:MNz/KIKl0
椋「いえ、いいんです。それじゃ、朋也くんとわたしは、これからも友達ってことで、よろしくお願いします」

朋也「お、おう……本当に、無理すんなよ?」

椋「はい、もう大丈夫です。あれから、随分と日も経ちましたし、わたしも自分なりに、心の整理はついているので」

朋也「……遅くなったのは、悪かったよ。俺自身、本当に言っていいもんなのか、わからなかったからな」

杏「ほんとねぇ、随分と遅くなっちゃったわよ」

朋也「お前には言われたくねえけどな」

杏「なに言ってんのよ。あたしはもうちゃーんとけじめ付け終わってるんだから。ね、椋?」

椋「うん、お姉ちゃん」

朋也「仲のよろしいこって。んじゃ、俺は久々に春原の部屋にでも行くから、今日は姉妹仲良く帰れよ」
201 : ◆/ZP6hGuc9o [saga]:2026/03/11(水) 23:39:34.92 ID:MNz/KIKl0
椋「あ、ごめん、わたし、先に校門前まで行ってるね!」

杏「え?あ、椋!……行っちゃった」

多分……だけど、気を遣ってくれたんだろう、椋は。

杏「まあいいわ。それじゃ、悪いわね朋也。ま、こんな時間まで朋也が残ってるとは思ってなかったんだけど」

朋也「………俺とお前、付き合ってるんだよな?」

杏「え?付き合ってるわよ?」

朋也「なんか、冷たくねえ?」

杏「なにがよ。悪いわねって言ってるじゃないの」

朋也「彼女が学校に残ってんだから、彼氏なら待つのが普通じゃねえの?」

杏「っ、そ、それは……って、朋也が待ってたのは椋じゃないの?話したいことがあるって、今朝言ってたじゃないのよ!」

朋也「そりゃ、目的の半分はそうだけどさ……ったく、いいよもう」

また不毛な言い争いになりそうだったから、話を切り上げて教室を出ようとする。
202 : ◆/ZP6hGuc9o [saga]:2026/03/11(水) 23:41:05.94 ID:MNz/KIKl0
杏「あっ、待ちなさいよ朋也!」

そんな俺のあとを、杏が追ってくる。

杏「わかった、わかったわよ。付き合ってる証があればいいんでしょ?」

朋也「付き合ってる証?って、なん―――」

言葉の途中で、唇が塞がれる。

杏「―――……これで、いいでしょ、もう」

朋也「………」

杏「な、なによ?なんか言いなさいよ」

朋也「え、ああ……いや、うん……。そうだな、付き合ってるんだよな、俺たち」

杏「だから、何度もそう言ってるじゃないの……」

照れたような、拗ねたような表情をしながら、杏はもう一度俺の唇に自身の唇を重ねてくる。

杏「ン……」

朋也「…………」

彼女の息遣いが、何よりも近くに感じられる瞬間。

そして、確かに俺たちの関係が変わったことを実感できる瞬間だった。
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