【シャニマス】P「よし、楽しく……」-L'Antica編-【分岐有】

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60 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/08/02(月) 01:28:17.93 ID:RuSGe5yw0
>>1です。

選択肢にご協力くださりありがとうございます。「↓2」を拾うまでに時間がかかったので、特に断りもなく更新を区切っていました。

いますぐには更新できないのですが、>>59の結果を元に話を進めていきます(なお、このSSは、安価の結果で話を作っていくものではなく、既に作って分岐有のシナリオを安価による選択を元にたどる形式です)。

テンポが悪くてすみませんが、一旦ここまで。
61 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/08/03(火) 00:32:31.31 ID:hou+lpKfO
P(冷静に考えて、先生のサポートを受けられるというのはデカいんじゃないか……?!)

P(まあ、公平のために限度があるのかもしれないけど、それでも……)

P(俺がプロデュースをすることになったのは校長の指示で、まさにそれを言い渡された場面ではづき先生は俺をサポートすると言ったんだ)

P(期待は……していいはずだ)

P(よし、はづき先生のサポートを活用しよう)

P「……」

英語教師「それじゃあこの部分の英訳を――」

P(――俺の名前が呼ばれた)

P「っ?! あ、はい……」

P(そうだ、今は授業中だった……)スタスタ


昼休み。

〜職員室付近、面談スペース〜

P「……と、言うわけで、はづき先生にもサポートをお願いしたいと思いまして」

はづき「なるほど〜、恋鐘さんを選んだんですね〜」

P「え? は、はい」

はづき「ふふっ」

はづき「いえ、プロデュースしろだなんて急な無茶ぶりなのに、前向きになってくれて、むしろ感心しているんですよ〜」

P「それは……ありがとうございます」

はづき「わかりました。サポートさせていただきますから、頑張ってください!」

P「心強いです。助かります」

はづき「まあ、教員という立場上、限度もありますけどね〜」

P「あ……やっぱりそうですよね……」

はづき「表向きはそうですよ。でも――」スッ

P(え、急に近……っ?!)

はづき「――贔屓したい気持ちはありますから」ボソッ

P(……からの耳打ち!)

はづき「なので、遠慮なく相談してください!」

P「あ、ありがとうございます……!」ドキドキ
62 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/08/03(火) 00:58:55.80 ID:hou+lpKfO
放課後。

〜ファミレス〜

P「よし、恋鐘。作戦会議だ。今後のことを考えよう」

恋鐘「う、うん……! よーし、頑張るばい!」

P「まず今後の行事予定表を見て欲しいんだが……」

恋鐘「……えっと、そん前に1つ聞いてもよかね?」

P「どうした? 何か気になることでもあるのか?」

恋鐘「気になることっていうか――」

はづき「……」

恋鐘「――なんではづき……先生がここにおると?」

P「なんでって、そりゃあアドバイザーみたいなところあるし」

恋鐘「学校の先生って忙しかやなかと? 授業の準備とか部活動とか……」

はづき「あ、ご心配なく〜」

はづき「校長がOKって言ってるんで大丈夫ですよー。この食事も経費で落ちますし」

恋鐘「落ちてしまうんか……」

P「まあ、そういうことだ。ツッコんだら負けだと思うぞ」

P(俺も気づいたら校長に呼び出されてプロデュースしろ素晴らしい結果を期待させてもらうとか言われたし)

P(状況にツッコんでいたらキリがない)

P「既に説明したように、はづき先生は俺たちをサポートしてくれる心強い味方だ」

恋鐘「そりゃあそうかもしれん……ばってん、うちはPと2人でも……」

はづき「男子生徒と女子生徒が2人きりで放課後を過ごしていると――」

P「――今後、恋鐘に男子のファンができたときに面倒になりそうだからな」

P(実際、恋鐘のスタイルに興味を持つ男子生徒だって多いはずだ)

P(ファンを獲得するのはそんなに難しいことじゃないと思うが、問題はその後だ)

P(生徒同士、学校という狭い社会……噂の影響は警戒しないといけない)

P「だから、こうして複数人にしているわけだ」

P「現状、俺たち2人以外に生徒の味方はいないしな……」

P(とりあえず、結華を頼るよりもはづき先生のサポートを選んだわけだし)

恋鐘「そ、そうよね。アイドルに恋愛はご法度やし……」

恋鐘「うぅ〜〜、ばってんそれやとPとの時間が〜〜」ボソボソ

はづき「さ、気持ちを切り替えて作戦を練りましょう〜」

P「はは……」
63 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/08/03(火) 01:33:12.86 ID:hou+lpKfO
P「エントリーは済ませてあるから、その先を考えよう」

P「えっと、W.I.N.G.に向けてアピールできそうな大きめの行事は……」

はづき「6月の球技大会、7月の終業式後のミニステージ、9月の体育祭、11月の文化祭、ですね〜」

はづき「いま言った4つのイベントの後にそれぞれ1回ずつ審査がありますよ〜」

P「あっ、ありがとうございます」

P「恋鐘、今、はづき先生が言った通りだ。アピールできる大きなイベントは4つ。審査もそれらとほぼ同タイミングだ」

恋鐘「おっけー! ばっちり理解したばい!」

P「球技大会は、素直に競技で活躍してもいいし、間にある長い休憩時間中のエントリー者によるゲリラライブ的なのがあるからそこでアピールしてもいい」

P「終業式の後のミニステージは……これは完全にW.I.N.G.を目指す女子生徒たちを意識した時間だな。短い時間でいかにアピールするかが問われそうだ」

P「体育祭は球技大会と似ているな。球技大会とは違った種目で、別のアプローチができるかもしれない」

P「文化祭にはW.I.N.G.出場をかけた大きなステージがある。エントリーしていて、かつその段階で審査を通過できている女性生徒たちが、各々自由にパフォーマンスをする時間だな。1人あたりのアピールできる時間も一番長い」

恋鐘「か〜〜っ、どれもばり注目されそうなイベントやね!」

P「ああ。一応、他にもアピールする機会は、小さいながらもあるぞ」

P「W.I.N.G.を目指すにあたって、エントリーした生徒には関係者限定の配信サイトにチャンネルが割り当てられている」

P「PVを作ってもいいし、生配信をしてもいい」

P「日常的なアピールも重要だ」

恋鐘「す、すごかね! 都会の学校にはこんなシステムがあると!?」

P「いや、うちの学園がやたらとこのイベントに力を入れているだけだと思う……」

P(マンモス校だし、学費も安くはないし、お金があるのかもな)

はづき「この学園最大の祭典ですから!」

P「は、はぁ……」

P(まあ、関係者限定のイベントとは言っても、芸能関係の人間の目にも触れているという噂があるし――)

P(――これをきっかけに声がかかったなんて話も聞く)

P(だからこそ……)

恋鐘「うち、ますます燃えてきたばい! えへへ」

P(……将来的にアイドルになりたいという夢を持った恋鐘を、W.I.N.G.の舞台に連れて行ってやりたい)

P「じゃあまず、6月の球技大会をどう過ごすか決めよう――……」
64 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/08/03(火) 01:43:27.06 ID:hou+lpKfO
2時間後。

〜帰り道〜

P「すっかり遅くなっちゃいましたね……」

はづき「確かに……ふふっ」

P「どうかしたんですか?」

はづき「いえ。なんというか、恋鐘さんに悪いな〜と思いまして」

P「恋鐘に……?」

はづき「さっき、途中の分かれ道で恋鐘さんだけが別の方向に行かないといけなかったじゃないですか」

はづき「その時の恋鐘さんがとても不満げだったので」

P「あ、ああ……そういうことですか」

はづき「信頼、されてるんですね」

P「ははっ……だと、良いんですが」

はづき「転校して間もない恋鐘さんと、突然プロデュースを命じられた立場で……」

はづき「よくこんな短時間でここまでやろうとしてくれたなって、そう思います」

P「……」

P「不思議なんです」

P「いきなりプロデュースとか言われてわけわかんないはずなのに、次から次へと考えが及んで、行動に移してて」

P「俺の知らない俺が背中を押しているような、そんな感じがするんですよ」

P「って、お前は何を言ってるんだって話ですよね。はは……」

はづき「……いいえ」

はづき「私は良いと思いますよ」

はづき「だって、いま、すごく活き活きしてますから!」

P「!」

P(そういえば、結華にも似たようなことを言われていた)

結華『今日のPたん、なんだかいつもと違うね』

P『そうか?』

結華『うん。こう、いつもより活き活きとしてるっていうか……』

P「……」
65 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/08/03(火) 01:56:22.11 ID:hou+lpKfO
1週間後の放課後。

〜グラウンド脇〜

P スタスタ

P(球技大会では、恋鐘は、競技でとにかく全力を出して、休憩時間中のゲリラで歌を披露することになった)

P(というのも、恋鐘の中で、今一番完成されているのが歌だからだ)

P(あの歌なら、最初の審査も通過できるはず……)

P(さらに磨きをかけるため、放課後ははづき先生によるサポートとともに、歌の練習に励んでもらうことにしている)

P(一方の俺はというと、恋鐘のチャンネルにアップロードするPVの制作に取り組んでいた――)

P(――と、過去形なのは、それが既に完了したタスクだからだ)

P(恋鐘は練習を頑張っているが、俺はどうしたもんかな……)

P(今、俺は自分の出る球技大会の種目のチーム練習を終えて、着替えの後で教室に戻るところだ)

P「真っ直ぐ帰ってもいいけど、時間はあるし、どこか寄り道してもいいな……」

P(恋鐘の出る種目の練習はさっき遠目に見たが、まだ時間がかかりそうだった)

P(どのみち、今は恋鐘と会うことはできない)

P「自分にやれることをやるだけ、なんだがなぁ」

P(さて、どうしようかな)


1. 真っ直ぐ教室に戻る。
2. 中庭で一服する。
3. 旧校舎エリアに行く。

選択肢↓1

(とりあえずここまで)
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/03(火) 02:36:49.61 ID:OpgWuxEEo
2
67 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/08/08(日) 00:45:15.70 ID:QlDIeBcf0
〜中庭〜

ガコン

P「っしょ、っと……」

P(いつもの自販機で缶コーヒーを買い――)

プシュ

P(――それを飲んで一服する)

P「……ぷはぁ」

P(何気なく選んだけど、これ、咲耶と初めて会ったときに買ったのと同じものだな)

P「……」

P(人伝に聞いた話だが、咲耶もエントリーしたようだった)

P(きっと、多くの女子ファンに支えられているんだろう)

P(サポーターが多いのは良いよなぁ……恋鐘の陣営はそういう意味じゃ弱小だ)

P(メンバーは、俺と、強いて言えばはづき先生だからだ)

P「はぁ……」

「おや、ため息だなんて。何かあったのかい?」

P「ははっ、何かあったのか、か……。別に、特別何かあったというわけではないんだ」

P「咲耶こそ、ここで何してるんだ?」

咲耶「アナタを見かけたからね。声をかけてみたんだ」

咲耶「迷惑だったらすまない」

P「迷惑だなんてことないよ。ちょうど、1人ぼっちだったところだ」

P「そういえば、咲耶もエントリーしたそうじゃないか。調子はどうだ?」

咲耶「ああ、順調だよ。おかげさまでね」

咲耶「天使たちのサポートは実に頼もしいものさ」

P「はは……それはいいな」

咲耶「……浮かない顔だね」

P「いや、なんていうかさ」

P「俺は恋鐘――同じクラスの月岡恋鐘をサポートしてるんだ。もっと言うと、プロデュースってやつを」

P「恋鐘はわかるよな。この前会っただろ?」

咲耶「ああ、あの時の子だね」

咲耶「そうか……アナタは彼女の側につくというわけか」

P「あ、ああ……」
68 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/08/08(日) 01:09:22.91 ID:QlDIeBcf0
P「い、いやぁ、でも咲耶はいいじゃないか」

P「俺たちの陣営は弱小もいいところだし」

P「ははっ、その分、俺が頑張んないといけないんだけどな」

咲耶「アナタという人が、一途に応援してくれているだなんて、私からすれば少し羨ましくもあるよ」

P「? そうか?」

咲耶「ああ、そうだとも。アナタはもう少し自分の価値に気づくべきだ」

咲耶「……私はその価値に気づいていたのに」ボソッ

P「咲耶?」

咲耶「なんでもないさ」

咲耶「まあ、これで、私たちは晴れて敵同士、というわけか」

P「お手柔らかに頼むよ」

咲耶「それはどうかな? 手加減はできないかもしれないよ」

P「はは……これは強力なライバルの登場だ」

P(それは、もとよりわかっていたことでもある)

P(咲耶の人気はすごい。はじめからファンが大勢いるなんて、ゲームでいえばチートみたいなものだ)

咲耶「おっと、そろそろ行かないといけないな」

P「わっ、もうこんな時間か。俺もそろそろ戻らないとな」

咲耶「フフ、素敵な時間というものは、あっという間に過ぎ去ってしまう」

P「そうかもしれないな」

咲耶「……」

咲耶「P、断言しようじゃないか」

咲耶「アナタは恋鐘を必ずW.I.N.G.に導く」

咲耶「私もW.I.N.G.に出る」

咲耶「それまで、お互いに健闘しよう」

P「ああ、そうだな」

P「ありがとう、咲耶」

咲耶「どういたしまして」

咲耶「それでは、またの機会に」クルッ

P「ああ、じゃあな」

咲耶 カツカツ

P スタスタ


咲耶 ピタッ

咲耶 クルッ

咲耶「P……確かに私たちは敵同士かもしれないけれど」

咲耶「私という1人の人間は、アナタのことを……」
69 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/08/08(日) 02:43:35.06 ID:QlDIeBcf0
〜校舎裏付近〜

P(例によって教室までの近道を行く)

P(そういえば、この前はショートカットしようとして霧子に会ったな)

P(今日もいるのだろうか)

P タッタッタッ

P(この角を曲がって……――)

霧子「〜♪」

P「っとと」

P(――聞き覚えある鼻歌が耳に届く)

P「霧子」

霧子「わ……あ、Pさん……ふふっ」

霧子「こんにちは」

霧子「でも……放課後だから……なんて言えばいいんでしょうか」

P「ははっ、まあなんでもいいよ」

P「霧子は、球技大会の練習はいいのか?」

霧子「?」

P(イベントに興味がないのだろうか)

P「あ、えーっと……」

P「……今も、花の世話をしているのか?」

P(この前はそうだったよな)

霧子「それは、ちょうどいま終わったところ……です♪」

P「ナスタチウムって言うんだよな」

霧子「覚えててくれたんですね」

P「まあな」

霧子「そうだ……保健室の中にも、花を生けてみたんです」

霧子「よかったら、見ていきませんか……?」

P(教室に戻るところだけど……)


1.「ああ、見ていくよ」
2.「今は急いでいるんだ(見ていかない)」

選択肢↓1

(とりあえずここまで)
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/08(日) 02:46:24.04 ID:0riEbbs9o
1
71 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/08/16(月) 01:13:01.80 ID:ri3q6dzZ0
P「ああ、見ていくよ」

霧子「ふふっ……じゃあ、一緒に行きましょう……♪」


〜保健室〜

P「静かだな」

霧子「えと……はい。……保健室、ですから」

P「それもそうか」

P(なんだか薄暗い――ここはいつもそんな気がする)

P(そして、例によって人はいないみたいだ。今いるのは、俺と霧子だけ……)

P「お、生けた花っていうのは、これのことか」

P(ピンク色の花が一輪ある)

霧子「はいっ……オキザリスさんです」

P「そういう名前なのか」

P(花言葉とか、あるんだろうな。俺は知らないけど)

P「なんだか、いいよな。こういうのって」

P「うまく言えないんだけど、癒されるっていうかさ」

霧子「ふふ……はい♪」

P「ありがとう、霧子。見せてくれて」

霧子「そんな……」

霧子「私も……嬉しいです」

霧子「Pさんとお話ができて……」

P「ははっ……それは照れるな」

P「あ、そうだ」

P「霧子はW.I.N.G.って興味あるか?」

霧子「?」

P「この学園で一番大きいイベントなんだ。学園一のアイドルを目指す大会だよ」

霧子「わあ、アイドル……ですか」

P「俺は月岡恋鐘って子のサポート……いや、プロデュースをすることにしたんだ」

P「よかったら、チェックしてみてくれ。生徒用のサイトからいろいろと情報を見れるからさ」

霧子「わかりました」

P(まあ、これも営業活動の一環……かな?)
72 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/08/16(月) 01:25:36.21 ID:ri3q6dzZ0
〜小型スタジオ(兼練習室)〜

ガチャッ

P「……っ、はぁっ、はぁっ」ゼェゼェ

P「す、すみません……! 遅くなりました!」

P(のんびり過ごしすぎた……!)

はづき「あ、お疲れ様です〜」

P(ガラスの向こうには、マイクの前で歌っている恋鐘の姿が見えた)

P「今やってるのって……」

はづき「実際に収録された自分の声を聞いてもらうために、本格的な機材で録音してるところですよ〜」

はづき「恋鐘さんの歌のクオリティは元々高いので、後はいかに磨き上げていくかということを念頭においています」

P「な、なるほど」

P(さすがはづき先生、的確だな……)

P「何から何まですみません……他のお仕事もあるでしょうに」

はづき「いいえ〜、私がやりたくてやってるんですから」

はづき「謝る必要なんてないんですよ〜」

P「は、はい」

P「じゃあ……こう言わせてください――ありがとうございます」

はづき ニコッ


恋鐘 ムムム・・・

P(恋鐘は今、収録した自分の歌っている音源を聞いているところだ)

恋鐘「……」

恋鐘 パカッ

P(恋鐘がヘッドホンを外す)

恋鐘「こう……自分の声ばこがん近くで聞くとは、なんか変な感じがするばい」

P「どうだったんだ? 聞いてみた感想は」

恋鐘「やっぱうちの歌は日本一やね!」

P「ははっ、そうか。それは良かった」

P「俺にも聴かせてくれないか?」

恋鐘「うん!」
73 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/08/16(月) 01:41:43.32 ID:ri3q6dzZ0
P「……」

P パカッ

P(……プロの音源を聞いてるみたいだった)

P「恋鐘……」

恋鐘「? 何?」

P「お前……」

恋鐘「え、な、何!? うち何かやってしもうた!?」

P「ああ、とんでもないよ」

恋鐘「うぅ〜、一体どがん失敗ばしてしもうたんやろ……」

P「いや、失敗だなんてとんでもないよ」

P「すごすぎて言葉を失っていたんだ」

P「恋鐘の歌は既に素人の域をはるかに超えてると思った」

P「はづき先生も、そう思いませんか?」

はづき「はいっ、素敵な歌声だと思います!」

恋鐘「P……はづき……!」

恋鐘「えへへ、ばり嬉しかー……」

P「って、おいおい先生を呼び捨てかよ」

はづき「いいんですよ〜」

はづき「呼び捨て、しちゃいます?」

P「い、いえ……俺は」

はづき「え〜、そうですか〜?」

P「じゃ、じゃあ……はづきさん」

P「それから恋鐘」

恋鐘「?」

P「恋鐘の歌声を、まずは皆に知ってもらう必要がある」

恋鐘「あ、そうやね!」

P「はづきさん、今の音源でいけそうですかね?」

はづき「大丈夫だと思います。一発撮りなのにまったくミスがないですし」

P「じゃあ、一発撮りの音源だということも概要欄に書いておきます!」

P「恋鐘、チャンネルにさっきの歌声を載せるぞ。いいよな?」

恋鐘「もちろんばい! ……〜〜っ、ついにこん時が来た〜〜!!」
74 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/08/16(月) 02:03:08.67 ID:ri3q6dzZ0
球技大会一週間前、昼休み。

〜教室〜

P(あれから――つまり恋鐘の歌声をアップロードしてから、その反響はというと、それはもう大きかった)

P(エントリーしていた女子生徒の中でも、恋鐘の歌のクオリティは群を抜いていたし、そもそも歌で攻めようという人はあまり多くなかったようだ)

P(間違いなく注目を浴びている……勢いのある“アイドル”と言えよう)

P(その後にも何本か映像付きで恋鐘の歌をアップしたが、どれもすごい伸び様だ)

ガヤガヤ

P(恋鐘の周りには多くの生徒が集まっている)

P(恋鐘と比較的仲の良い女子生徒たちが周りにいて、うまくガードの役割を果たしているようだ)

P(実際、下世話な感情から興味を持って近づいてくる生徒だって少なくない。治安維持という意味ではこれを利用しない手はないだろう)

P「……」

P(人が集まっていて、自分の席は居心地が悪いな……恋鐘のちょうど1つ前だし)

P(“プロデューサー”である俺が目立つ必要はないんだ。今はここにいる必要もないだろう)

P(少し外に出るか)

P スタスタ


恋鐘「あ、うちの歌聞いてくれたと? ありがと〜!」

恋鐘「W.I.N.G.で優勝ば目指すけん、よろしゅう……ね……」

P スタスタ

ガララ

ピシャリ

恋鐘「……」

恋鐘「……え? なっ、何でもなか!」



〜旧校舎エリア〜

P「……」スタスタ

P(何気なくこの辺に来てしまったな……)

P(思えば、この先にある銅像を破壊したことがきっかけで――)

P「――いやいや、俺が壊したわけじゃないけど……」

P(それまでは縁のない場所だったのに、急に因縁が……)

P「そういえば、あいつ、どうしてんだろうな」

P(あれ以来、会っていない)

摩美々「ふふー、まみみが気になりますかぁー?」
75 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/08/16(月) 02:17:40.38 ID:ri3q6dzZ0
P「?!」クルッ

P(振り返ると、そこには摩美々がいた)

P「な、なんだよ……びっくりさせるなって」

摩美々「別に驚かせようとしたわけじゃないですしー」

摩美々「Pが勝手にびっくりしたんじゃないですかぁ」

P「それは……って、なんで俺が悪いみたいになってるんだ……」

摩美々「ふふー……たしかにー」

摩美々「悪い子といえば、このまみみなのにー」

P「あっ、そうだよ」

P「結局、あの後、銅像破壊の疑いで大変だったんだからな……!」

摩美々「それはどうもー」

P「気にしてないな……まったく」

P(逃げ足が速いんだもんなぁ)

P「もう、こういうことはするなよ」

摩美々「どうでしょうねー、悪い子なのは変わりないですしー……」

P「摩美々」

摩美々「……っ、な、何急に見つめてるんですかぁ? そういうの、ハラスメントって言うんじゃないですかねー?」

P「摩美々」

摩美々「……」

P「やっていいことと、悪いこと、わからないか?」

摩美々「……」

摩美々「ごめんなさい」

P「ああ、まったくだ」

P「でも、まあ、摩美々には何もないようで良かったよ」

摩美々「?」

P「俺が1回呼び出されただけで済んだんだしさ」

P(それ以外にもあるけど……黙っておこう)

摩美々「Pは、私が先生たちに罪に問われてなくて、安心してるんですかぁ?」

P「まあ、転校してすぐ罪人っていうのもなぁ……ははっ」

P「これからこういうことをしなきゃいいよ」

P「そういう意味では、迷惑かけて、心配もさせて、でも安心してる」

摩美々「っ……そ、そうですかぁ」
76 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/08/16(月) 02:36:04.49 ID:ri3q6dzZ0
P「さて、と」スタスタ

摩美々「え、歩くの早……」

P「あ、早かったか?」

摩美々「あ、いや、別に一緒に歩こうとか思ってないですしー……」ワサワサ

P(摩美々は目を逸らしながら自分の頭の両側にぶらさがった髪をいじっている)

P「ははっ、いいよ、一緒に行こう」

摩美々「だから、そういうつもりじゃないのでー」

P「例の銅像を見ようと思ってさ」

摩美々「?」

P「もう直ってるのかな、とか」

摩美々「興味あるんですかぁ?」

P「まあ、暇だしさ」

摩美々「私も暇ですケドー」


P「直って…………ないな」

摩美々「ですねー」

P(俺らが壊した――いや俺は壊してないが――あの時から恐らくまったく変わっていない)

P(MAYUZUMIと彫られたネームプレートを持つ女性の姿をした銅像は、頭の左右につけた房のうち、片方を失った状態でそこにいた)

P「欠けちゃってるのは……この銅像から見て右か」

P「あれ、そういえばあの時に落ちた部分ってどこにあるんだ?」

摩美々「んー、無いみたいですねー」

P(先生が回収したのか……?)

摩美々 ナデナデ

P「何してるんだ?」

摩美々「頭を撫でてみましたぁ。特に理由はないですけどー」

P「……」

P(なぜだろう、銅像から“覇気”を感じる。気のせいだろうか)

摩美々「ふふー」

P「そろそろ昼休みも終わるし、戻るか」

摩美々「Pが戻るなら戻りますー」

P「ははっ、なんだそりゃ」スタスタ

摩美々 スタスタ

P「……」クルッ

P(銅像の方を一瞥する。あの時と同じで――それは当たり前ではあるけど――苦しそうな姿勢でそこにいた)
77 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/08/16(月) 02:44:14.06 ID:ri3q6dzZ0
摩美々「じゃあ、私はこっちなんでー」

P「ああ、またな」

摩美々 スタスタ

P「……あ、ちょっと待ってくれ!」

摩美々「なんですかぁ?」

P「摩美々はW.I.N.G.って知ってるか?」

摩美々「なんとなくー……聞いたことなら」

P「そうか。それなら、月岡恋鐘をよろしく頼む!」

摩美々「……Pって、アイドルみたいな、そういうのって興味あるんですねー」

P「というか、俺はファンでもあるんだけど、プロデュース的なことをしているんだ」

摩美々「プロデュース……」

P「ああ、だから、恋鐘をW.I.N.G.の舞台に連れて行って、優勝させてやりたいと思ってる」

P「もし、摩美々さえ良ければ……一緒に応援してくれないかなって思ったんだ」

摩美々「……私、そういうのは別にいいんでー」

P「興味……ないか」

摩美々「その恋鐘って人を応援してもなぁって感じですー」

P「そ、そうか……すまない、引きとめて」

摩美々「ふふー、でも――」

摩美々「――Pが何かしてるなら、摩美々は興味あるかもしれませんねー」

P「え、それってどういう……」

摩美々「覚えておきますよー」

摩美々「ではー……」スタスタ

P「っ……俺は本気なんだ!」

摩美々「っ!?」

摩美々 クルッ

P「ははっ、まあ、協力してくれたら俺は嬉しいよ」

P「覚えてもらえているだけでもいい」

P「じゃあ、またな」

P タッタッタッ

摩美々「……」
78 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/08/16(月) 02:45:25.38 ID:ri3q6dzZ0
(選択肢は少し先ですが、とりあえずここまで)
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/29(日) 20:27:09.79 ID:MzgazQAKo
みてるや
80 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/08/31(火) 00:13:30.07 ID:RosepUzEO
>>1です。

>>79 ありがとうございます。

ここ最近忙しすぎて全く更新できていない状況です。すみません。

遠くないうちにタイミングを見計らって続きを投下したいと思いますので、今後も見てくださる方がいましたら、そのときはよろしくです。
81 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/09/08(水) 23:39:28.34 ID:MDP1/vAO0
球技大会当日、午前。

P(球技大会の日がやってきた)

P(恋鐘には、ここで目立ってもらう必要がある)

P(あの歌があれば最初の審査は問題なく通るだろうけど、その後のことも考えないといけないからな)

P(競技に全力を注いでもらいつつ、休憩中のゲリラライブで学校関係者たちを魅了する――)

P(――それが今日の恋鐘の動きだ。まあ、予定だが)

恋鐘「P!」

P「うおっ……って、恋鐘か。どうした?」

恋鐘「え〜? 別にどうということもなかよ?」

恋鐘「特に用はない!」

P「そ、そうか……」

恋鐘「えへへ」

恋鐘「……ほんとは、ちょーっぴり緊張しとったい」

恋鐘「やけん、Pに話しかければなんとかなるかなって」

P「ははっ、そういうことか」

P「大丈夫、恋鐘ならやれるさ」

P「競技は普通に楽しめばいいんだ。その代わり、できるだけ全力で、な」

P「ゲリラライブのことは……まあ、緊張はするだろうけど――」

P「――恋鐘の歌があればきっとうまくいく、俺はそう信じてるよ」

恋鐘「P……」

P「自信を持ってくれ」

恋鐘「誰に言いよーっと? うちはアイドルになるために生まれてきた女やけん、自信ありまくりばい!」

P(胸を張って――慣用句的にも物理的にも――得意げに言う恋鐘)

P「ああ、それでこそだ」

P(今日は、恋鐘の、学園の“アイドル”としての初イベントの日と言っても良いだろう)

P(しかし、不安はない。恋鐘なら、きっと……)

P「……っと、そろそろ始まる時間か」

P(最初の競技は恋鐘が出るやつだったな)

P(俺のはだいぶ後だ)

恋鐘「そうやね。じゃあ、行ってくるばい」

P「ああ、いってらっしゃい」
82 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/09/09(木) 00:14:58.30 ID:ZSwhyTAo0
数十分後。

P(あれから、しばらくの間は恋鐘が競技に出ているのを見ていた)

P(結論から言えば、恋鐘の一挙手一投足が“パフォーマンス”だ)

P(それも、全力で参加しているからだと思うが)

P(あのスタイルで激しい動きをする恋鐘には注目せざるを得ない)

P(さらに、時々転ぶドジな一面も見せている。そこにあざとさはない。……本物だ)

P(期待通り、恋鐘は注目の的となっていた)

P(しかし、この競技というのが、1つあたりの時間が長く、流石に誰が見ても飽きてくるのだ)

P(というわけで、実は今の俺は校内を適当にブラついている)

P(恋鐘を信頼しているからこそ、後はまかせた、という気持ちでいる)

結華「あ、Pたんだ!」

P(この声、この呼び方は――)

P「――結華」

結華「さっきのこがたんはすごかったね〜。最初から最後まで目が話せなかったよ〜!」

P(そうか、今終わったところか)

P「ははっ、だろ?」

結華「なんでPたんが得意げなのさ〜」

P「まあ、これでも、一応あいつをプロデュースしているからな」

結華「っ、そっか。そういえばそうだった」

P「こがたん、って、そうやって呼ぶ仲なのか?」

結華「三峰としてはもっとお近づきになって仲良くなろうかなーってところかな」

P「なるほど」

結華「こがたんとの今後に期待って感じ!」

結華「というか、Pたんは何か重要なことを忘れてはいませんかな?」

P「重要なこと……?」

結華「ドルオタだってことをだよ!」

P「ああ……」

結華「学園のアイドルも三峰の守備範囲だからね〜」

結華「気になってるアイドルはあだ名で呼びたいなって思ったり」
83 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/09/09(木) 00:35:59.39 ID:ZSwhyTAo0
P「おお、応援してくれるのか」

結華「今後も注目し続けるかどうかは、Pにかかってるかもね?」

P「ははっ……それは良いプレッシャーだ」

結華「もちろん、Pのことも応援してるからさ」

結華「頑張ってよ」

P「ありがとう、結華」

P「期待に応えられるように努めるつもりだ」

結華「うん……」

結華「あ、私、次の競技に出ないとだった!」

結華「……じゃあ、行くね?」

P「頑張ってな」

結華 タッタッタッ

P「……」

P(もしかして、結華と話すのは久しぶりだったんじゃないか?)

P(恋鐘が転校してきてから、結華と接する時間は短くなったような気がする)

P(気のせい……だろうか)

結華『……じゃあ、行くね?』

P(哀愁漂う表情というのは、ああいう顔のことを言うのだろうか)

P「……移動するか」



P「あれ」

ガヤガヤ

P(人だかりができているな)

P ピョンピョン

P「あ、見えた……」

P(人だかりの中心にいたのは、咲耶だった)

P(恐らく、先ほどの競技――2つめ――も終わったんだろう)

P「きっと、すごく活躍したんだろうな」

P(そういえば、恋鐘も同じ競技に出ていたな)

P(どうやら、欠員が出た分を引き受けて、最初の2つに連続で出場しないといけなくなったらしいのだ)

P(俺はそれを当日、つまり今日に知らされたわけだが)

P「恋鐘はクラスの場所に戻っているかな」

P(俺もそこに戻ることにした)
84 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/09/09(木) 01:13:32.51 ID:ZSwhyTAo0
ガヤガヤ

P(恋鐘のまわりには、咲耶のそれと同じか、あるいはそれ以上の人だかりができていた)

P「こ、これはすごいな……!」

P(全然近づけそうにないぞ)

P(ゲリラライブのことについて最後の打ち合わせをしようと思ったんだがなぁ……)

P(まあ、実のところ、打ち合わせは何度もしているから、今から本番とかでも大丈夫なのかもしれないが)

P(ライブという形式でのアピールは初めてだから、流石に神経質になるというものだ)

P(球技に参加するのとはワケが違う)

P「はぁ……」

P(あの人だかりを崩すのも違うよなぁ)

P(そもそも、俺は裏方として、目立たずに恋鐘を支えるのがベストなんだ)

P「……」

P(恋鐘は次の協議の間休んでいるし、その時でも大丈夫か……)

P スタスタ

P(俺は再び、校内を徘徊することにした)



P(球技大会の喧騒の中、俺は校内をうろついている)

P(自分以外の人間が団結しているのに、こうして勝手なことをするのは、なかなかどうして背徳感があるな……)

P(悪いことをしているわけじゃないんだが)

P(まあ、恋鐘を取り巻く生徒たちがはけるまでの間だけだ)

P「しかし……」

P(恋鐘にとって大事なイベントがある日だと思って、昨日までは落ち着けない自分がいたが)

P(いざ当日になってみれば、思ったよりもすることはないし、気持ちは不思議と平然としている)

P(そう思ってブラブラしていると、死角から出てきたある人と目が合った)

P「はづきさん」

はづき「あ、こんなところで何してるんですか〜?」

P「いえ、何、ということもないのですが」

はづき「始まりましたね、本格的に」

P「そうですね。出だしは好調という感じです」
85 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/09/09(木) 01:15:21.91 ID:ZSwhyTAo0
キリが悪いですが、とりあえずここまで。
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/09(木) 07:01:44.69 ID:yQvIDItDO


大丈夫。いっぱい待つから
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/28(火) 08:47:02.53 ID:v1Q131Weo
まだ
88 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/10/02(土) 23:12:51.15 ID:UuSmQKj+0
>>84 誤植訂正:
P(恋鐘は次の協議の間休んでいるし、その時でも大丈夫か……)
→P(恋鐘は、次の競技の間は休んでいるし、その時でも大丈夫か……)
89 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/10/02(土) 23:22:03.14 ID:UuSmQKj+0
はづき「ふふっ」

P「え?」

はづき「ごめんなさい、つい……」

P「お、俺の顔に何かついてますかね?」

はづき「そうじゃないですよ〜」

はづき「なんだかんだ、楽しんでるなと思いまして」

P「そう……なんですかね」

P「やるからにはちゃんとやろうと思っていますけど」

P(でも、確かに――)

P「――想像以上かもしれません。やらされている感じとかはなくて」

P「不思議と、性に合っているように思えるんです」

P(最近はそうだ)

P(自分の知らない自分に出会えているような感覚の連続で)

P(何の面白みもない普通の高校生活には別れを告げたようなものだ)

はづき「はい。私からもそう見えますよ〜」

はづき「校長にも、楽しんでる、って伝えておきますね〜」

P「そ、それは、なんというか……まあ、はい」

はづき ニコニコ

P(否定はできなかった)

P(それはそうと……)

P ソワソワ

はづき「恋鐘さん、ですか?」

P「えっ?! あ、ええ……」

P「ゲリラライブをする予定じゃないですか。だから、その前にもう一度話しておけたらな、と」

はづき「それなら、ほら――」

P(はづきさんの指差す方向を見ると……)

P「――あ」

P(……こちらに手を振っている恋鐘の姿が見えた)

90 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/10/02(土) 23:34:23.35 ID:UuSmQKj+0
P「……という感じだ。再生数が一番伸びている歌で勝負、今日はなんと言ってもこれだ」

恋鐘「わかっとーよ。何度も同じ話されたら流石に覚えるばい」

P「まあ、そうなんだが……」

P「すまん。これじゃあ、恋鐘のことを信用し切れてないみたいだよな」

恋鐘「あ、別に全然よかよ? うち、嫌やとは一度も言うとらんけんね」

恋鐘「むしろ、Pとこうして話す時間は……す――」

P「恋鐘?」

恋鐘「――……っ!!」

恋鐘「な、なんでもなか!」

P「そ、そうか」

P「まあ、人前でパフォーマンスをするのはこれが初めてだけど」

P「大きなチャンスでもある。アイドルとしての初ステージと言ってもいい」

P「俺から指示することはほとんどない。ただ、楽しんできてくれ」

P「アイドル月岡恋鐘を、皆に見せてやってくれ」

恋鐘「うん! Pがいるし、うちが怖がるもんはなんもなかよ!」

恋鐘「これもアイドルになるための一歩やけん。大事にしたか」

P「ああ、そうだな」

P「俺からは特にないんだが、恋鐘はどうだ?」

恋鐘「……見てて」

P「?」

恋鐘「うちのこと、見とってね!」

恋鐘「で、よそ見できんくらい釘付けにしちゃるばい!」

P(それは――)

恋鐘『……』

P『月岡さん?』

恋鐘『うち、決めたばい』

恋鐘『W.I.N.G.に出る!』

恋鐘『で、Pがよそ見できんくらい釘付けにしちゃるばい!』

恋鐘『よーく見とってね!』

P『ああ、うん――』

P『――応援するよ』

P(――ついこの間なのに既に懐かしいような、そんな記憶に重なる言葉だった)
91 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/10/03(日) 00:07:43.03 ID:dAXGKB/G0
〜運営側テント前〜

P(事前にマイクと音響設備を貸してもらえるように手はずは整えてある……)

P(あとは恋鐘に任せるだけだ)

恋鐘「み〜ん〜な〜〜〜〜〜!!!」

フォオォオォオオン

P(やばい、ハウリング……!)

P「す、すみません! 音響の調整お願いします!」

フォン、フォン、フォン・・・

・・・

P(び、びっくりした――きっと、誰もがそう思っていることだろう)

恋鐘「びっくりした〜!!」

P(それは恋鐘も例外ではなかった、と)

恋鐘「と、とにかく〜」

恋鐘「もううちが歌ってる動画は見てくれた?」

オ、オー!

ミタヨー

スゴカッタ!

恋鐘「えへへ……ありがと!」

恋鐘「でも、今日は一味違うばい!」

恋鐘「画面の向こうの動画じゃなく、うちが目の前で歌うとやけん!!」

オォォォォォ!!!

恋鐘「みんなも応援してよ!」

ワァァァァァ!!!!!

P(イントロが始まる)

P(いや、始まったのは曲のイントロだけではない)

P(恋鐘のアイドル人生も、だ)

P(恋鐘が歌って、踊って、ファンたちを魅了して)

P(俺はそんな恋鐘をトップに連れて行く――)

P(――アイドルマスターだ)
92 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/10/03(日) 01:19:43.72 ID:dAXGKB/G0
球技大会終了後。

〜中庭〜

P「……お、また伸びてる」

P(恋鐘のゲリラライブは無事終了し大成功を収めた)

P(サビの直前でコケかけた時には肝を冷やしたが……)

P(一番乗りでゲリラを仕掛けたせいか、チャンネルの登録者数も再生数もうなぎのぼりという感じだ)

P(ライブ後は、個人的には恋鐘の周りに人だかりができることを気にしていたんだけど)

P(周りの生徒たちは圧倒されていて、群がることすら忘れているようだった)

P(正気を取り戻す前に恋鐘には隠れてもらったが、あれは正解だったな)

P(はづきさんが用意してくれた小会議室にしばらくの間こもって、ライブの振り返りなどをした)

P(振り返りと言っても、感極まった恋鐘の紡ぐ言葉の数々に耳を傾けていた時間がほとんどだったけど)

P「まあ、それでいいんだろうな」

P(それで、俺はというと、その後に自分の出る種目で適当に過ごして、今はこうして中庭で恋鐘のチャンネルの動向を観察している)

P(裏方であることを実感するな、これは)

P「ははっ……性に合ってる、か」

P(そうなのかもしれない)

咲耶「やあ」

P「お、咲耶か」

咲耶「こんなところでどうしたんだい?」

P「恋鐘のチャンネルの様子をちょっと……な」

咲耶「なるほど……フフ」

P「どうした?」

咲耶「いや、こういう言い方もなんだけど、見るまでもないんじゃないかと思ってね」

咲耶「彼女のあのパフォーマンスを見たら、誰だってまた見たくなる。自ずとチャンネルも伸びるというものさ」

P「ま、まあ、そうなのかもしれないが」

P(そういえば、咲耶は競技中に仕込みの生徒たち――おそらく親衛隊だ――と一緒にダンスをしていたらしいな)

P(していた“らしい”というのは、それが恋鐘とはづきさんとの3人で小会議室にいる間に行われたようだからだ)

P「その、すまん。実は、咲耶のパフォーマンスを見れていないんだ」

咲耶「そうなのかい? それは残念だ……自分で言うのもなんだけど、かなりうまくいったんじゃないかと思うよ」

P「ああ、それは評判を聞く限り、間違いないんだろう」
93 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/10/03(日) 02:08:07.77 ID:dAXGKB/G0
咲耶「周りの評判はそうだね。あなたからの評価も聞きたかったが」

P「申し訳ない。アーカイブでは見させてもらうから、勘弁してもらえないだろうか……」

咲耶「ああ、アナタはアナタで、自分の担当する子が大事なんだ。それは私もわかっているつもりだよ」

咲耶「無理強いしたみたいになってすまないね」

P「いや、気にしないでくれ」

咲耶「しかし、アナタの担当する子――月岡恋鐘のすごさは、私も身をもって実感したよ」

咲耶「確かに私のダンスパフォーマンスは成功した」

咲耶「けれど、それは想定を下回る盛り上がりを見せたんだ」

P「そうなのか?」

咲耶「前に彼女の歌があれば、ジャンルは違えど比較されてしまうものだろう?」

P「あ、それは……」

咲耶「いいんだ。それ自体にどうこう言うつもりはないさ」

咲耶「あなたのアイドルがすごいんだと、そういうことが言いたかったんだよ」

P「ありがとう。咲耶にそう言ってもらえると、俺としても自信がつくよ」

咲耶「フフ、それはなによりだ」

咲耶「ただ、私としても、このままでいるつもりはないよ」

咲耶「今日みたいなことがあって、今の私は燃えているんだ」

咲耶「今度は、たとえ彼女の後の出番だったとしても、絶対的な輝きをもって、皆を魅了してみせる――とね」

咲耶「もちろん、アナタも、だよ」ズイッ

P「お、おう、楽しみにしてる」

咲耶「ああ、きっと、楽しませてあげるよ……」

P(近い近い! 近いぞ、咲耶)

咲耶「……っと、名残惜しいがここまでか」

P「?」

咲耶「これから、私を応援してくれている子たちと話し合う時間があってね」

咲耶「まあ、所謂陣営というやつだよ」

P「俺たちと同じだな」

P(規模は段違いだけど)

咲耶「それじゃあ、また」

咲耶 スタスタ

P「……」

P「…………ふぅぅぅ」

P(軽く緊張してしまった)
94 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/10/03(日) 02:23:14.10 ID:dAXGKB/G0
最終下校時刻。

〜図書館〜

P「……」zzzZZZ

P「すぅ……」zzzZZZ

P「……」zzzZZZ

P「……んあっ?!」

P「はっ、あ、あれ?」

P(やばい、誰もいないし人気(ひとけ)もない!)

P(時刻は――ってもうこんなに経ったのか)

P(恋鐘がはづきさんとみっちり練習をすると聞いて、俺の出番は今日はないだろうからと図書館でなんとなく過ごしていたが……)

P(いつの間にか眠ってしまっていたようだ)

P「帰らないと……」ガサゴソ

P スタスタ



〜校門前〜

P「はぁ……」

P(どうして、こう、やってしまった感がすごい寝起きというのは、こんなにも重く苦しいんだろうか)

P トボトボ

トントン

P(肩を叩かれた?)

P クルッ

ツンッ

P(あ、指で頬を突かれるありがちなやつだ)

P(そして、それをやった犯人は――)

P「――恋鐘か」

恋鐘「えっへへー。うちよ?」

P「練習は終わったのか?」

恋鐘「うん! ……って言うても、実はもうちょっと前に終わっとって」

恋鐘「Pを待っとったばい」
95 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/10/03(日) 02:45:14.37 ID:dAXGKB/G0
P「あんまり2人でいるとよくないぞ……」

恋鐘「もう、わかっとーよ。うちもそこまで頭弱くなか」

恋鐘「人気が出るほど、Pと一緒にいるのは良く思われないんやろ?」

P「あ、ああ……」

恋鐘「やけん、今日はうちもPも遅か、チャンスやと思ったんよ」

恋鐘「はづきにも聞いたばい。もううちら以外ん生徒はとーっくに全員帰ってしもうたって」

恋鐘「今日は部活もなか日やし」

P「そうなのか」

P(それなら大丈夫……なのか?)

恋鐘「一緒に帰るくらい……よかやろ?」

P「まあ、それもそうだな」

P「ずっとここにいても変だし、帰ろうか」

恋鐘「うん!」



恋鐘「また分かれ道ばい……」

P(恋鐘はここで俺とは別方向に行かないといけないんだよな)

P(前にも似たようなことがあった)

P(あの時は、はづきさんも一緒だったけど)

恋鐘「Pと話しとったらあっという間についてしもうたばい」

P「ははっ、そうだな」

恋鐘「……」

P「恋鐘?」

P(恋鐘は名残惜しそうにこちらを見ている)

恋鐘「……家まで送らんね」ボソッ



〜恋鐘の自宅(一人暮らし)の前〜

恋鐘「またあっという間〜!」ジタンダ

P「こらこら……まあ、それだけ、楽しいってことだろ?」

恋鐘「! そ、そうやね……! えへへ」

P「もう大丈夫そうか?」

恋鐘「う、うん。ごめんね、付き合わせてしもうて」

P「いいよ。俺も楽しいんだから」

恋鐘「……じゃ、また、ね」

P「おう」

恋鐘「……」スタスタ

恋鐘 クルッ

恋鐘「うちはアイドルになるために生まれてきた女ばい!」

恋鐘「ばってん、うちにとってアイドルになるっていうとは、Pに会うってことで――」

恋鐘「――やけん、うちはPに会うために生まれてきたと思う!!!」

P「!」

恋鐘「じゃ、じゃあ、今度こそおやすみ!!!」ダダダ

P(そうだ。そうだった)

P(俺は――とっくの昔に、月岡恋鐘に魅了されていたのだ)
96 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/10/03(日) 02:47:44.13 ID:dAXGKB/G0
とりあえずここまで(遅くなりましたが、更新できました)。
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/03(日) 06:22:49.61 ID:ATeqqluDO




一人ぐらし……ゴクリ
98 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/10/17(日) 01:14:11.20 ID:AhTv4rKH0
7月上旬某日。

〜教室〜

結華「はぁ、なんかあっという間だねー」

P「急にどうしたんだ?」

結華「いや、ほら、新年度だー新学期だーって思ってたら、もう期末試験が近づいてきてるんだよ?」

結華「このままでは気づけば2学期に……ハロウィンに……はたまたクリスマスになって大晦日が来て年を越しちゃうってもんですよ」

P「それは言いすぎ――」

P(――……どうだろう)

P(確かに、今日まではあっという間だったかもしれない)

P(日常が新鮮さで満ち溢れていても、日常から新鮮さが失われていても……)

P「……気づけば長い時間が過ぎている、か」

結華「だからこそ、1日1日を大切にしなければならないのです」

P「ははっ、なんだよ、それっぽいな」

結華「それっぽいとは失敬な! 大事なことだよ?」

P「まあな」

P(恋鐘のアイドル活動も、俺のプロデュースも、どんどん先へ先へと進んでいる)

P(恋鐘は1つ目の審査を無事乗り越えた)

P(次の舞台は、7月の終業式後にあるミニステージだ)

P(それが2つ目の審査における判断基準とされる)

P(今のところ特に目立った問題もないどころか順調とさえ言えるが……)

P(油断大敵。現状維持もまた敵だ)

P(新しいことを考えるのは……まあ、そう簡単ではないんだけど)

結華「Pたん、今何考えてるのか当ててあげよっか」

P「え? どういうことだよ……」

結華「どういうことも何も、そのままの意味ですよーだ」

結華「こがたんのことなんでしょ?」

P「……そうとも言える」

結華「ふうん? なんだか煮え切らないみたいですが」

P(結華は呆れたような笑顔で俺に言う)
99 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/10/17(日) 01:58:43.15 ID:AhTv4rKH0
結華「Pたんはさ」

P「?」

結華「どうしてプロデュースをしてるの?」

結華「純粋にそういうことがしてみたかったとか?」

結華「それとも、こたがんだから……?」

P「ゆ、結華……」

P(……校長に言われたから)

P(しかし、果たしてそうだろうか?)

P(きっかけはどうあれ、俺は今の状況を楽しんでいるのではないか?)

P(それは、こういう裏方稼業が好きだからなのだろうか)

P(それとも、結華が最後に言ったように、恋鐘だから……?)

結華「ごめん、いまのナシ。ほんとナシで!」

結華「私ったら何聞いてるんだろうね」

結華「忘れて」

P「結華……」

P(煮え切らないのはお互い様、か)



〜保健室〜

P(昼休みになったが、あんな会話の後で、なんとなく結華のいる教室には居づらかった)

P(そういうわけで、ここに来ている)

P(相変わらず養護教諭のいない保健室だ)

P(そして、いつも決まって霧子がいる)

霧子「ふふ……オキザリスさん、今日も元気です……♪」

P「それは……この前の時の花か」

霧子「は、はい……そうです」

霧子「……」

P「どうかしたか?」

霧子「あっ、そ、その……」

霧子「……Pさんも、元気そうだな、って……」

P「ははっ、そう見えるか?」
100 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/10/17(日) 02:33:53.16 ID:AhTv4rKH0
霧子「はい……!」

霧子「お花さんもプロデューサーさんも元気です……」

P「霧子には花の気持ちがわかるのか?」

霧子「どう、でしょうか……でも」

霧子「このオキザリスさん、Pさんに会えて喜んでるみたいです……♪」

霧子「あ、えっと……そんな気がします……」

P「そうか」

P(元気そう……ね)

P(楽しそうとか元気そうとか)

P(最近はそういうのばかりだな、俺)

霧子「……何かいいことでも、あったんですか……?」

P「いいこと……そうだな」

P「アイドルのプロデュースが順調なんだ」

P「ははっ……なんてな」

霧子「アイドル……? プロデュース……」

P「ほら、前に話しただろう?」

P「学園一のアイドルを目指す大会で、この学園で一番大きいイベントなんだ」

P「W.I.N.G.だよ」

霧子「……あ、Pさん、前に言ってました」

P(あんまり興味ないのかな)

P(霧子のビジュアルなら出場も夢じゃないような気もするが)

P(もちろん、歌とかダンスを見ていないから、なんとも言えないとはいえ……)

P「……十分に可能性はある」

霧子「?」

P「あ、すまない。気にしないでくれ」

霧子「はい……」

P「……」

霧子「……あの」

霧子「また、ここに来てください……♪」
101 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/10/17(日) 02:44:53.64 ID:AhTv4rKH0
〜学校前の通り〜

P(放課後になった)

P(今日も恋鐘ははづきさんと一緒に練習だ)

P(いや、練習だけではない)

P(今日は収録も行うからだ)

P(そして、まだ披露していない歌の音源を、事前に取っておいた恋鐘の写真や映像とともに……)

P「……家に帰って編集の準備をしないと」

P(帰路についているとはいえ、これから休んでいられるわけでもないんだ)

「ふふー、忙しそうですねー」

P「その声は――摩美々」

摩美々「はいー、摩美々ですー」

摩美々「恋鐘って人のプロデュースですかぁ?」

P「ああ、そうだよ」

摩美々「ふうん……」

摩美々「一生懸命なんですねー……」

P「まあな」

P「やるからにはちゃんとやりたいんだよ」

摩美々「とか言ってー……ちゃんと楽しんでるじゃないですかー」

P「そ、そうだな」

P(俺も変なところで素直じゃないな)

摩美々「Pにプロデュースされるって、どんな感じなんだろー」

P「それを俺に聞いてもな……」

摩美々「えー」

P「……恋鐘に聞いてみればわかるのかもしれないな」

摩美々「そういうことじゃないんですケドー」ボソッ

P「何か言ったか?」

摩美々「別にー……なんでもないですよー」

摩美々「……」
102 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/10/17(日) 02:52:40.19 ID:AhTv4rKH0
摩美々「もしも」

摩美々「Pがまみみをプロデュースするとしたら」

摩美々「おんなじくらい一生懸命になるんですかぁ?」

P「……」

P(またこの話題だ)

P(俺は何のためにこんなことをしているのか、という)

P(別にいいじゃないか、成り行きでも何でも)

P(そんなに答えが必要なのだろうか)

摩美々「どうなんですかぁ」

P(いや、摩美々は純粋な疑問で聞いているのかもしれない)

P(そうに違いない)

P(今日はたまたま、そういうのが気になる日ってだけなんだ)

P「そうだな……」


1.「もちろん、同じくらい頑張るさ」
2.「……恋鐘だからかもしれない」

選択肢↓1

(とりあえずここまで)
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/17(日) 03:54:25.53 ID:cwVK36ZWo
1

おつ
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/17(日) 04:55:29.06 ID:pVhy8TMDO
三峰は雪歩二号になるのかなぁ
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/31(日) 05:24:02.43 ID:WQ1b2RPL0
キャラのためにもなるべく早く交代してほしいわね
106 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/11/14(日) 23:17:32.62 ID:ijBjeQmv0
お久しぶりです。>>1です。

例によって多忙ゆえ更新できない状況が続いていますが、とりあえずこのスレを忘れたわけではないという報告まで。
(ストレイライトのときよりも更新頻度が低くなってしまっていますが、続けていきます。)
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/14(日) 23:48:01.32 ID:2o1k6WOso
報告おつ
待ってます
108 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/11/24(水) 01:06:44.44 ID:sT3OeCku0
P「もちろん、同じくらい頑張るさ」

摩美々「へぇー……」

P「な、なんだよ」

摩美々「……んふー、別にー?」

摩美々「まあ、いいこと聞いちゃったかなーとは思いましたケドー」

P「いいことって……」

摩美々 ニィッ

P(何を考えているのか、相変わらずわからないな)

P(ただ、何かを企んでいそうな笑みとともに肩を上下させている)

摩美々「じゃあ、プロデュースするのは私でも良かったんですねー」

P「?」

摩美々「だからぁ、その恋鐘って人である必要はなかったってことですよねー?」

P「そ、そんなわけ――」

摩美々「だって、まみみをプロデュースするとしても同じくらい頑張るって、そういうことじゃないんですかぁ?」

P「――だから、違うって。俺は恋鐘のこと……」

P(……いや、駄目だ。それを言うのは、プロデューサーである以上、いけない)

摩美々「質問には答えてもらわないとー」ケタケタ

P「……」

摩美々「……それなら」

摩美々 グイッ

P「うおっ?!」

P(ね、ネクタイを引っ張られた……?!)

P(摩美々の顔が文字通り目と鼻の先に迫る)

P(互いの息遣いがわかる距離――仕掛けた本人の緊張も伝わってくる)

摩美々「この距離……誤解されそうな感じー」

P「だ、だから止めたほうがいいぞ……」

摩美々「Pは彼女とかいるんですかぁ?」

P「……いない」

摩美々「誤解されても問題なさそー」

P「そ、それはだな」
109 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/11/24(水) 01:24:13.84 ID:sT3OeCku0
P「もういいだろ、止めよう、摩美々」

摩美々「止めて欲しかったらー……ふふー、来年はまみみをプロデュースしたいって言ってくださいー」

P「え……」

摩美々「だってー、別にいいじゃないですかぁ」

摩美々「Pがそう言ったんだしー」

P「……」

摩美々「言わないとー……んふっ」

P「言わないと、なんだ?」

摩美々「さあ? ただ、いま私が背伸びをしたら、唇どうしがついちゃいそうだなーって」ニッ

P(摩美々はイタズラのつもりなんだろうが、でも、本当にやりそうでもある)

P(それくらいの距離だから)

P(俺は恋鐘を――……だったら、この状況は良くないに決まってる)

P(誰かに見られでもしたら、噂だって広まるかもしれないし)

P「わかった」

摩美々「早くしてくださいー」

P「……俺は」

P「っ、来年は摩美々をプロデュース……したい……」

摩美々「!」

摩美々「……」


摩美々 チュ


P「……え」

摩美々「ありがとうございますー、来年は期待しておきますねー」

P(何が……起きて……?)

P(目の前にいる少女を見る――摩美々だ――でも、いつもみたいな余裕は感じられない)

P(頭の両側をいじる仕草は時折見受けられるものだが、そうする指先は普段とは違って震えている)

P「まみ、み……?」

摩美々「……ふふー」

P(摩美々は、逸らしていた目を俺の方に向ける――)

P(――否、見ているのは俺ではなかった)

P(そう、俺の後ろのあたりだ)


摩美々「そういうことみたいらしいですー」
110 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/11/24(水) 01:40:18.89 ID:sT3OeCku0
P(誰だ……? 摩美々は、誰に話しかけている?)

P(その答えは、俺のすぐ後ろにある。簡単なことだ。振り返ればいいだけなのだから)

P(しかし、簡単な話ではない。何故か、振り返るのが怖い)

P(何か、深刻な事態に陥っているようで……)

P(……目を逸らし続けているわけにもいかず、とうとう後ろを見た)

P(振り返って視界に映ったのは――)


P「――恋鐘……?」


恋鐘「P……こ、こがんとこでなんばしとーと?」

P(そんな……まさか、見られた?)

P(聞かれもしただろうか)

P(いや、そんなことは、恋鐘の反応を見ればわかることだった)

P「違うんだ! これはそういうんじゃなくて……」

P(そういうんじゃなくて、なんなんだろう)

P(今なんて言えば良いのかがわからない)

恋鐘「さ、流石やね〜! Pは……もう来年んことまで考えとーなんて!」

P(恋鐘は笑顔だ――同時に、目にたくさんの涙を溜めている)

P「こ、恋鐘……!」

恋鐘「うち、勘違いしてしもうてた。Pにとって、うちは特別なんやなかかと思っとった」

恋鐘「Pにとっても、そうなんやろって、勝手に……」ポロポロ

恋鐘「……そがんわけなかね」

恋鐘「うちの思い込みばい」

P「そんなことはない!」

P(俺は恋鐘のことが――その先が言えない)

P(プロデュースする立場で言っていいことじゃないと思うからだ)

P(言ったとして、見られてみろ、聞かれてみろ、恋鐘の夢を叶えることは途端に難しくなる……!)

P(今だって……ここには摩美々という第3者がいるんだ)

P「……っ」
111 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/11/24(水) 01:56:15.35 ID:sT3OeCku0
恋鐘「か、買い物の途中やったばい! はよ用事ば済ませてはづきのとこに戻らんば!!」ダッ

P「恋鐘っ!!」

P(走っていってしまった)

P「……」

P(よりによって恋鐘に見られてしまうだなんて……!)

P「……摩美々」

摩美々「な、なんですかぁ?」

P「……」

摩美々「……そうやって無言で迫られるとー、ドキドキしちゃいますよー?」

摩美々「でも、ちょっと怖いかも」ボソッ

P「冗談を言うつもりなんてない」

P「摩美々にとってはイタズラをしてるだけなんだろうけど」

P「今回ばかりは、っ、流石に……!」

P(流石に、なんだろうか)

P(摩美々が悪いといえばそれはそうなんだが、ここで怒りをぶちまけてどうにかなるものだろうか?)

P「……クソっ」

P(感情が高ぶって荒くなった息の1つ1つが重たく感じる――ただ、それだけだ)

摩美々「……P?」

P「っ、摩美々!!」

摩美々 ビクッ

P「……」ハァッハァッ

摩美々「……」ゴクリ

P「……1人にしてくれ」

摩美々「あ、その、ごめ……」

P「来ないでくれないか……!」

摩美々「……!」

摩美々「……はい、わかりましたぁ……」

P スタスタ
112 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/11/24(水) 02:11:01.88 ID:sT3OeCku0
その晩。

P(あれから考えがまとまることもなく、嫌な汗をかきながら自宅の自室で悶々とするだけの時間を過ごした)

P(もうすぐミニステージもあるというのに、どうすればいいんだ……)

P(摩美々の真意はわからない――確実なのは、彼女を責めても何も生まれないということだけだろう)

P(スマホを見るのが怖くてしばらく電源を切っていた。ついさっき電源を入れて確認したら、はづきさんからのメッセージが届いていた)

P(恋鐘は練習に来なかったそうだ)

P(連絡しても出ないので、俺が何か知っているのではないかと思ったらしい)

P「……」

P(一体、何が正解で、何がそうでないのか)

P(まったく、わからない)

P(俺が自分の想いに正直になっていれば良かった……? ……これは考えと行動との乖離が著しい)

P(摩美々のイタズラを無理やりにでもやめさせれば良かった……? ……これはできたはずだ)

P(単に、最初に「恋鐘だからプロデュースを頑張れる」と言うべきだった……? ……)

P「……」

P(スマホをタップしては通知が来ていないことを観測するだけ)

P(時折、ロックを解除してチェインにある恋鐘とのトークを眺める)

P(つい先日まで楽しく会話をしていた相手であるはずなのに、なんだか変な感じだ)

P「……はぁ」

P「このまま何もしないのも、なぁ……」

P(別に、恋鐘のプロデューサーを降りたわけじゃない)

P「そうだ。そうじゃないか」

P(俺の中の何かが変わったわけじゃないはずなんだ、たぶん)

P(だったら……)

P「……っ」


1. 恋鐘に電話をかける。
2. 恋鐘にメッセージを送る。
3. 何もしない。

選択肢↓1

(とりあえずここまで)
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/24(水) 03:31:10.33 ID:BgjeZBDDO
1
114 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/12/18(土) 01:35:11.87 ID:ubFum9dmO
P(電話だ)

P(恋鐘に電話をかけよう)

P(逃げちゃいけないんだ……これは)

P(向き合わないと――……そして、解決しなければ)

P ポチポチ

P「……」

P(あとは、このボタンを押せば電話は発信される)

P(この瞬間がとんでもなく苦手だ)

P(押すまでに動く親指がめちゃくちゃ重く感じる)

P「……っ」ポチッ

〜♪

P(呼び出し音が流れる――この待ち時間も好きじゃない)

P(特に、呼び出し音が突然に途切れて相手が話し始めるまでの間は)

P「……」

〜♪

P「……出ないな」

P(少し時間を空けてから再度試してみるか……?)

P「仕方ない、一旦切r――」

〜♪ ――……

P「――っ?!」

P(恋鐘が、出た)

P「……」

P(どうしよう。何を言えばいい?)

「……」

P「っ、こ、恋鐘……夜遅くにすまん」

「……ううん」

P「恋鐘には、ちゃんと言わないといけないことがあるんだ、だから……」

「それって放課後んことやろ? それならうちはいっちょん気にしとらんばい」

P「……い、いや、でもな?」

「うちには関係んなかことやけんね! Pとあの子が何をしとっても、別に……」

P「だから、それは違うんだ! 俺に、ちゃんと説明をさせてくれないか?」
115 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/12/18(土) 01:50:38.65 ID:ubFum9dmO
「……ばってん、うち、どがんしたらよかかわからんばい」

P「……」

P「……いつもの分岐点」

「?」

P「一緒に帰ると恋鐘だけ別方向に行かないといけない場所があるだろ?」

P「そこで待ち合わせよう」

P「会って話したほうがいいと思うんだ」

「……」

「わかったばい」

P「じゃあ、今から向かうぞ」

「うん、うちもそうする」

ピッ

P「……」

P(電話が切れた直後のこの静寂は……案外嫌いじゃないかもだな)



P(思ったよりも早く着いてしまった)

P(恋鐘はまだ来ていない)

P(まあ、女子なら出かける前の準備が多いのだろう)

P「さて、ああは言ったものの……」

P(……具体的に何を言うのか、実はそれをちゃんと思いついていたわけではなかった)

P「誤解を……誤解を解かないとな」

P(摩美々はきっと単なるイタズラであんな行動に出ただけだろう。そうに違いない)

P(今回ばかりは、ただの冗談で済ませることのできるものではないが)

P(起きてしまったことはもう変えられない)

P(今の自分に何ができるか、そしてその結果どのような未来が待っているのか)

P(それが重要だ)

恋鐘「お、おまたせ〜」ドタドタ

P「!」
116 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/12/18(土) 02:07:46.81 ID:ubFum9dmO
恋鐘「お、遅うなってしもうた〜!」

恋鐘「待った?」

P「大丈夫だ。さっき来たばかりだからさ」

恋鐘「そう? それならよかばってん」

P(恋鐘の顔を見る。夜なので街灯と月明かりしか照らすものがないが、それでもわかる――)

P(――薄くてもきちんと化粧をしていて、人前に出れる状態だ)

P(たかが俺1人のために、だ)

恋鐘「P?」

P「……恋鐘」

恋鐘「うん」

P「俺は陰から恋鐘を支えて、W.I.N.G.で……そしてアイドルとしてもトップに連れて行きたいと思っているんだ」

P「そのためにも、俺は目立っちゃいけない」

P「恋鐘にも必要以上に関わってはいけない、執着してはいけない、と」

P「そう、思っていた……んだ」

恋鐘「……うん」

P「今日の放課後――あの場にいた子は摩美々っていう後輩でな、イタズラ好きな奴なんだ」

P「俺はからかわれているだけなんだよ」

P「恋鐘が思っているようなことは、おそらく、何もないんだ」

P「いや、その話は今はとりあえずいらないか、すまん」

P「で、恋鐘でなくとも同じくらい頑張れるとか、来年は摩美々をプロデュースしようと思ってるとか、そういう発言なんだけどな――」

P「――あれは、方便だよ」

P「俺が恋鐘を……その、えっと、だな……」

恋鐘「?」

P(今なら、言えるか)

P「……っ、お、俺が恋鐘を好きだってことが知れたら!」

恋鐘「っ!?」

P「それは……恋鐘がアイドルをやる上で、良くないことなんだ」

P「だから、できるだけ俺が恋鐘にこだわっていないように見せるしかなかった」

P「そう思っていたんだ」

P(言ってしまった……)
117 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/12/18(土) 02:29:55.59 ID:ubFum9dmO
P「って、なんだか言い訳じみてるかもな……」

P「格好悪いというかなんというk――」

ギュッ

P「――……」

P(目の前にいた少女が一気に距離を詰めて俺の体をホールドしている)

P(それは飾り気のない表現で、有り体に言えば抱きしめられていた――)

P(――恋鐘によって)

P「こ、恋鐘……」

恋鐘「いまは何も言わんで……」

P「……」

P(こんなところを見られたら――と言おうとしたが)

P(我ながら――そしてまさに自分が当事者でありながら――無粋だったかもしれないと思った)

恋鐘「うちも苦しかったんよ?」

恋鐘「Pとおんなじようなこと思っとった」

恋鐘「アイドルになりたいのはほんとのことやけど……」

恋鐘「……Pのこと、す、すす、好きなんもほんとで」

恋鐘「もうどがんしたらよかかわからんくなっとったばい」

恋鐘「そ、それに……! 何よりも……」

恋鐘「Pがうちんことどう思っとるのかわからなくて」

恋鐘「それで……諦めんばって、そう、思うこともあって……」

恋鐘「そがんときにPが後輩とキスばしとーとば、見てしもうたけん。もうショックでわけわからんくて」

恋鐘「でも……えへへ」

恋鐘「そがんことやったんやね、P」

P「ああ。そうなんだ」

P(もっと早く、言っても良かったのだろうか)

P「ははっ、お互いに空回りしてたのかもな」

P(運の悪さもあるが)
118 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/12/18(土) 02:43:48.02 ID:ubFum9dmO
恋鐘「じゃ、じゃあ……!」

恋鐘「うちとP、好きどうしってことばいね!?」

P「そ、そうだな……改めて言われると何だか照れるけど」

恋鐘「えへへ……P」

P「どうした?」

恋鐘「好きばい」

P「お、おう」

恋鐘「え〜〜っ! もっと嬉しそうにせんね!?」

P「慣れてないんだって、こういうのは……」

恋鐘「……Pからももう1回聞きたか」

P「っ……そうだな」

P(改めて言うとなると、めちゃくちゃ恥ずかしいな)

P「好きだ」

恋鐘「! ……は、はぃ」

P「……」

恋鐘「……」

P「…………」

恋鐘「……………………」

恋鐘「P、うちんほう見て」

P(言われるがまま、下を向く)

チュゥ

P「?!」

P(例によってそれはいきなり訪れるもので……)

恋鐘「ん〜〜!」

P(唇が離れそうになると、恋鐘が逃がさないようにと必死に口を押し付けてくる)

P「……!!」

P(い、息が……!! 苦しい……!!)

P「ぷはぁっ! ちょ、ちょっと待ってくれ! それじゃあ呼吸ができないぞ……」ハァハァ
119 : ◆bXCm/le03U [saga]:2021/12/18(土) 02:57:36.82 ID:ubFum9dmO
恋鐘「ご、ごめん……!」

P「い、いや、別に謝ることじゃない……」

P(突然のことで照れる間もなかったな……)

恋鐘「いくらうちとPが好き合うとったとしても、あん後輩とキスしとったってことは変わらんもん」

恋鐘「やけん……もっとすごかことばしたかねって思って、それで」

恋鐘「……〜〜〜っ」

P(どうやら恋鐘には今更恥ずかしいという感情が襲いかかってきているようだ)

P(思わず頭を撫でてしまう)

恋鐘「ふぇ?」

P「焦る必要はないぞ」

P「これから、まだまだ時間はたくさんあるんだ」

P「今はやるべきこと……目指すべきものもある」

P「その中にやりたいことが加わっただけで」

P「それから、好きという感情もか」

P「これからも、一緒に歩んでいこう」

P「それでいいんじゃないか?」

恋鐘「うん……うち、まだパニックなんかもしれんばい」

恋鐘「Pの言う通りやと思う」

P「大丈夫。恋鐘自身にも、俺たちの未来にも、時間や可能性はいくらでもあるからさ」

P「1つ1つこなしていけばいいよ」

恋鐘「えへへ、ありがとう! P」ニコ

P「今日はもう遅いからな。お互いに早く帰ったほうが良さそうだ」

恋鐘「うちはもう少し一緒におりたかとやけど……」ボソッ

P「どうかしたか?」

恋鐘「う、ううん! なんでもなか!」

P「……そうだなぁ。よし、とりあえず、恋鐘の家まで送ってくよ」

恋鐘「そのまま上がってくれてんよかとに……」ボソッ

P スタスタ

恋鐘 テクテク

P「……いつか」

恋鐘「?」

P「そのうち、迷惑じゃなきゃお邪魔させてもらおうかな」

恋鐘「! うんっ!!」

恋鐘「楽しみにしとーね!」


一旦ここまで(なんかこのままエンディング……っぽい切り方にも見えますが、まだ終わりません)。
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/18(土) 10:40:32.62 ID:zDBIXBqDO


翌朝、股をひょこひょこさせたこがたんが見られるわけですな
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/18(土) 16:20:56.92 ID:yXh7GJ3Xo
おつおつ
しましたね???
122 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/01/20(木) 22:26:49.32 ID:KUPmnQDXO
夏休みのある日。

恋鐘「うっ……うっ……」

はづき「辛いですよね。よしよし」

恋鐘「ずびっ……、う、うちっ……Pと……Pとぉ……!」

はづき「恋鐘さんの気持ちはわかります。楽しみにしていればしているほど、それが叶わなかったときの悲しみは堪えますよね」

恋鐘「う〜〜〜〜…………」

はづき「はいはい」トントン

恋鐘「はづき……」



恋鐘「宿 題 が 終 わ ら ん !」



恋鐘「地元におったときん高校はもっとぬるかったとよ……」

はづき「まあ、うちは大学進学率もそこそこありますからね〜」

恋鐘「うう……うちはそこまで望んどらんのに……」

恋鐘「宿題――こんなもん燃やしちゃる〜〜! 成績なんて知らんばい!!」

はづき「そんなことしたらあの人とのお出かけどころか校内アイドル活動もできなくなっちゃいますよ〜」

はづき「学校ですからね〜成績はしっかり見られちゃってます」

恋鐘「そ、そがんこと言うても〜〜……」

恋鐘「Pもなんか反論せんね!」

P「無茶言わないでくれ……」




夏休み開始直後。

P「夏休み……か」

P(夏休み期間中の校内アイドル活動はオンラインに限定される)

P(補習や部活動といった学校本来のあり方を乱さないためだそうだ)

P(9月以降のアピールのための準備期間という話も聞く)

P(当然、俺たちも夏休みが終わった後に備えて、いろいろと考えていかないといけない――)

P「――んだけど、うーん」

P(そうなると、恋鐘には無理のない範囲でコンスタントに練習を継続してもらう他ない)

P(俺が直接口出しするような機会は、今までに比べて、一時的ではあるがかなり減るだろうな……)
123 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/01/20(木) 22:45:38.61 ID:KUPmnQDXO
P「宿題でもやるか……」

P(俺の学年を担当する教員勢は、今年は当たりだと思ったのだが、夏休みの宿題に関しては想像をはるかに上回る量を課してきた)

P(普段の課題が少なめだっただけに、これはキツい――と思っていた)

P「はぁ……思ったよりも暇なんだよな」

P(手持ち無沙汰な感じに耐え切れなくなった俺は、恋鐘のチャンネルの整備を適当に済ませてから、宿題に取り組み始めた)


P「……んんーっ、割と進んだな」

P(古典の品詞分解の課題をネットの情報を見ながらこなし、気づけばかなりの割合を片付けられていた)

P「……」

P(そこそこ頑張った自分へのご褒美という気持ちでスマホをいじる)

P「あれ、メッセージ来てるな」

P(恋鐘からだ。ほんの数分前に届いたものらしい)

恋鐘<やっほー!

恋鐘<Pの夏休みん予定ばどうなっと?

恋鐘<いきなりごめん!

P<チャンネルの管理と9月以降の方針を考える以外には特にないかな

恋鐘<既読早!笑

P<笑

P<まあ、どちらかと言えば暇だよ

P(自分のメッセージを送って、直後にはスマホをスリープにしてその辺に放る)

P(既読が付いて返信が来るまでの間を眺めるのって、なんだか苦手なんだよな……)

P「あ」

P(すぐにスマホのロック画面が明るくなった)

P(チェインの通知が表示されたからだ)

P「まあ、仕方ないか」

P(ロックを解除して再び恋鐘との個人チャットを開く)

恋鐘<暇なんや!

恋鐘<Pは長崎に行ったことある?

恋鐘<よかったら案内しちゃろうかなって思って

恋鐘<うちとしては帰省もできるし……どがんね?
124 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/01/20(木) 23:03:44.60 ID:KUPmnQDXO
P「長崎か……」

P(なかなか行く機会がないのは確かだ)

P(それに、恋鐘と出かけられる機会だし)

P「……」

P(今はまだ、恋鐘も、あくまでも学校の中のアイドルなわけで)

P(ましてや俺は何の変哲もない一般人だ)

P(長崎まで行ってしまえば、一時的であるとはいえ、2人で過ごすことができるだろう)

P「……」

P<いいのか?

P<恋鐘さえよければ是非

P(アイドルの息抜きに付き合うのもプロデューサーの仕事……だろうか)

P(よこしまな気持ちは……いやいや)

恋鐘<やったー!!!

恋鐘<じゃあ決定ね!!!!!

P<よろしくな

P<それなら行く時期を決めないとだ

P<泊まる所を探さないといけないし

恋鐘<うん!

恋鐘<うちん実家に泊まってく?笑

P<いやいや、そんな悪いよ

恋鐘<うちは構わんのに〜

P「……」

P(なんて返信を続ければいいんだ……?)

P(そう思って入力しては消してを繰り返していたら、数分が過ぎていた)

恋鐘<無理にとは言わんけんね!

恋鐘<ごめん忘れて

P<全然大丈夫

恋鐘<Pはいまなんしよーと?

P「何って――そりゃ」

P<夏休みの宿題
125 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/01/20(木) 23:04:55.64 ID:KUPmnQDXO
P「長崎か……」

P(なかなか行く機会がないのは確かだ)

P(それに、恋鐘と出かけられる機会だし)

P「……」

P(今はまだ、恋鐘も、あくまでも学校の中のアイドルなわけで)

P(ましてや俺は何の変哲もない一般人だ)

P(長崎まで行ってしまえば、一時的であるとはいえ、2人で過ごすことができるだろう)

P「……」

P<いいのか?

P<恋鐘さえよければ是非

P(アイドルの息抜きに付き合うのもプロデューサーの仕事……だろうか)

P(よこしまな気持ちは……いやいや)

恋鐘<やったー!!!

恋鐘<じゃあ決定ね!!!!!

P<よろしくな

P<それなら行く時期を決めないとだ

P<泊まる所を探さないといけないし

恋鐘<うん!

恋鐘<うちん実家に泊まってく?笑

P<いやいや、そんな悪いよ

恋鐘<うちは構わんのに〜

P「……」

P(なんて返信を続ければいいんだ……?)

P(そう思って入力しては消してを繰り返していたら、数分が過ぎていた)

恋鐘<無理にとは言わんけんね!

恋鐘<ごめん忘れて

P<全然大丈夫

恋鐘<Pはいまなんしよーと?

P「何って――そりゃ」

P<夏休みの宿題だよ
126 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/01/20(木) 23:06:36.03 ID:KUPmnQDXO
すみません、>>124は最後が書きかけでした。>>125を採用します。
127 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/01/20(木) 23:19:23.68 ID:KUPmnQDXO
現在に戻る(「夏休みのある日。」)。

恋鐘「うっ……うっ……」

P「こうしてはづきさんが応援に来てくれてるわけだし、頑張ろう、恋鐘」

はづき「ファイトですよ〜」

P(教員側だから本当に応援してくれるだけなんだな……)

P「俺も手伝うからさ」

恋鐘「ごめん……ありがとう」

P「いいよ。恋鐘がアイドルやれなくなるのは俺も嫌だからな」

P カキカキ

恋鐘 カキカキ

P「……」カキカキ

恋鐘「うー……」

P「……」カキカキ

恋鐘「ふわぁぁぁ」

P「恋鐘」

恋鐘「うわぁっ!? さ、サボろうとしてなんかなかばい!!」

P「あ、いや、そういうつもりじゃなくてだな」

P「いつか行こうな、長崎」

P「楽しみにしてるよ」

恋鐘「……!」

P(2人の時間はお預けになったが)

P(一緒に過ごせていることには違いない)

P(今はこれでもいいのかもしれない)

P(今はこういうのも悪くないと思う)

P(大切なのは、「どこで」ではなく、「どのように」なのだから)


P(こうして、俺たちの夏休みは終わった)

P(明日からは、いよいよ後半戦だ)

P(頑張ろうな、恋鐘)
128 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/01/20(木) 23:56:48.49 ID:KUPmnQDXO
9月、体育祭前日。放課後。

〜???〜

P(夏休みは宿題も無事に終わり、始業式が終わってからは専ら体育祭でのアピールのための準備に励んでいた)

P(とはいえ、頑張っているのは恋鐘――とはづきさん――であり、俺は相変わらず裏方で細々とやっている)

P(今も2人は小型スタジオで準備中で……)

P(……俺は――)

P「――っと、忘れないうちにやっておかないと」

P「明日披露する歌の動画の一部をチャンネルで限定公開……これで注目度のアップを図る……」

P(放送委員の無線をジャック――といっても許可は取ってあるから演出だが――しての歌披露だ)

P(このくらい刺激的なほうが見る側も楽しめるというものだろう)

P「これで、よし……っと」

「ひと段落……ですか?」

P「あ、ああ。独り言が多かったかもな。すまん」

「いえ……」

P「体育祭直前で盛り上がってる連中がいて落ち着かないからさ」

P「こうして保健室の居させてくれるのは助かるよ、霧子」

霧子「前に言ってた……アイドルのプロデュース……やってるんですね」

P「そうなんだ。明日の体育祭はW.I.N.G.優勝を目指す子たちにとって大きなイベントの1つになるからな」

P「霧子は見てくれたか? 恋鐘の動画とか、もう結構アップしてきたんだけどさ」

霧子「あ、ごめんなさい……どうやって見ればいいのか……わかりませんでした」

P「そ、そうか」

P(パソコンやスマホを持っていないとかだろうか)

P(学校には情報教室があって開放時間もあるが……あそこで見るのは勇気がいるかもな)

P「よかったら今一緒に見るか?」

霧子「わあ……いいんですか?」

P「ああ、もちろんだ」

P(自分のパソコンに恋鐘の歌っている動画の1つを表示して、霧子のほうに画面を向け、再生ボタンを押した)

霧子「……」

P「……」

霧子「この人が……恋鐘ちゃん……」

P「俺のプロデュースするアイドルなんだ」

P「よかったら応援して欲しい」

P「月岡恋鐘をよろしくな」

霧子「はい……♪」
129 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/01/20(木) 23:58:09.07 ID:KUPmnQDXO
とりあえずここまで。
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/21(金) 00:34:21.25 ID:8BBAl0yCo
おつあつ
131 : ◆bXCm/le03U :2022/03/17(木) 23:43:28.29 ID:cTj2hUrs0
>>1です。ただ忙殺されているだけであると(一応)記しておきます。ご了承ください。
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/18(金) 00:46:03.64 ID:vfnOf3uqo
報告ありがとう
御自愛下さい
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/08/23(火) 00:09:22.81 ID:sAUHrTRu0
いつまでも待ってる…!
134 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/09/08(木) 12:11:14.48 ID:Yg2hFwDF0
>>133

>>1です。ありがとうございます。このスレを捨てたわけではないのでご安心ください。
忙しさに難儀しています。
135 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/10/06(木) 00:01:19.41 ID:oZAoSis40
霧子「Pさんは……恋鐘ちゃんの、プロデューサーさん……」

P「え? ああ、そうだな」

P(「プロデューサーさん」と呼ばれることに対して、どこか懐かしさのようなものを覚える)

P(あるいはそれはデジャヴであるような感覚)

P「どうしたんだ、改まって」

霧子「プロデューサーさんとアイドルって、どんな関係なんだろうって……思ったんです」

P「?」

霧子「この場合は、普通のアイドルのことじゃなくて――」

霧子「――Pさんと恋鐘ちゃん、みたいな」

霧子「わたしの知ってる“アイドルのプロデューサーさん”って、もっとアイドルからは遠くて、ひょっとしたら別のことをしていそうな」

P「ま、まあ、俺たちは弱小だし、プロデューサーとアイドルとは言っても、高校生が青春の一環でやってるようなものでもあるからなぁ」

P(その割には結構本格的なところも多いが)

P「どうしてそんなことが気になったんだ?」

霧子「えっと……どうしてでしょう……?」

P「ははっ、なんだそれ」

霧子「ふふっ、ごめんなさい」

P「いや、謝るようなことじゃないけどさ」

霧子「でも――」

霧子「――Pさんがわたしを選んだらどうなるんだろう……とは、ちょっと思ったかも」ボソッ

P「えっ?」

霧子「あっ、違うんです!」

霧子「ごめんなさい……」

P「だから謝ることじゃないって」

P(そもそもボソボソ言ってたからよく聞こえなかったし)

霧子「大変なんですか? プロデュース、って」

P「うーん、難しい質問だな。簡単じゃないけど、本当に大変なのは、俺じゃなくて恋鐘だからさ」

P(あとははづきさんの助力もある)

P「大事なのは、大変かどうかよりも、やってて自分が満足できるかどうかだと思う」
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/10/06(木) 00:57:09.72 ID:lOVtW5c70
きりこかわい
137 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/10/06(木) 01:29:21.92 ID:oZAoSis40
霧子「いいな……」

P「いい?」

霧子「はいっ。そこまで考えてもらえてる恋鐘ちゃんも、自分を自分で振り返れてるPさんも」

霧子「いいな、って」

P「ははっ、そうか?」

霧子「いい感じ……♪」

P(なんだろう、この子に見惚れてしまった時の気持ちと純粋な可愛らしさが合わさって――)

P(――霧子に惹かれて、その瞳に吸い込まれそうで……)

P「……って、いかんいかん。俺には恋鐘がいるんだ」

霧子「恋鐘ちゃんが……いる?」

P「あっ、いや、違うんだ」

霧子「恋鐘ちゃんはここにはいません……」

P「は、はは、そうだよな。おかしなことを言ったよ」

霧子「おかしなPさん……ふふっ」

P(危ない危ない。俺と恋鐘が好き合ってるなんてスキャンダルは、W.I.N.G.優勝を目指している以上、致命傷になる)

P(情報源によって被害にも差が出るだろうし、霧子なら口止めもできそうだが)

P(用心するに越したことはない)

P「もうこんな時刻か」

霧子「あ、Pさん……」

霧子「お帰り……ですか?」

P(霧子は眉をひそめて言う。その表情には、どこか寂しさを感じさせるようなものもあって――)

P(――その表情は反則だろう、と思った。が、しかし)

P「そうだな。明日が大切だし、備えるためにも、今日は帰って――できることをやって十分に休むよ」

霧子「こころとからだのおやすみのじかん……ですね♪」

P「そんなところだ」

霧子「切っても切れない、心と身体も、アイドルとプロデューサーさんも、それに……」ボソボソ

P「じゃあな、霧子」

霧子「は、はいっ……」

霧子「……また、いらしてくださいね」
138 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/10/06(木) 01:43:28.49 ID:oZAoSis40
体育祭当日、昼休み直前。

P(午前中の恋鐘はいろいろと凄かった)

P(あのスタイルでドジっ子属性をこれでもかというくらいに発揮してくれていた)

P(当然のことながら、大変注目を浴びていた。人気にも火が……というか火に油を注ぐくらいにはなるかもしれないな……)

P(恋鐘のことが好きだと認めてしまっている今となっては、少しもどかしいというか、なんだか面白くない気分がないとは言い切れないが)

P(今の俺はプロデューサーだ――恋鐘をアイドルとして輝かせるための……)

P「……いや、うん。いいんだ」

P「プロデューサーは裏方。これからが、俺にとっての本番だ」

P(昼休みになったら、放送委員の無線をジャック――する演出で恋鐘に歌を披露してもらう)

P(その歌の一部は、昨日のうちにチャンネルで期間限定公開にして、今は見れなくなっている――)

P(――要するに“伏線”というやつだ)

P「ドジっ子による刺激」

P「楽しみにしてろよ、“お前ら”」

P「ははっ、なんてな」
139 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/10/06(木) 02:08:48.75 ID:oZAoSis40
体育祭当日、昼休み。

放送委員「午前の競技が終わりましたので、現時点での各クラスのスコアについて報告します――」

P(このアナウンスにはもれなく流れてもらう。俺たちのステージは、その後だ)

P(今話してる放送委員と俺たちは“つながってる”)

P(俺の連絡・合図で音楽収録室にいる恋鐘のマイクに回線が切り替わることを、はづきさんとのチェインで確認済みだ)

P(ははっ、学校生活にしては非日常というか……どこか背徳感のある高揚感を覚えるところがあるな)

放送委員「――以上が、クラス対抗スコア合戦の途中経過の報告になります。続きまして、校長先s……の……ント……ジジジッ、ブツッ」

ザワザワ

アレー?

ナンカオカシクネ?

P「よし、ざわめきだしたな――今だ!」ポチッ


P<GOです。


恋鐘「絶対に……W.I.N.G.で優勝する」

ナンダナンダ?

恋鐘「それもそのはずよ、だって――」

恋鐘「――うちは、アイドルになるために生まれてきた女やけん!」

コノコエッテサー

アーモシカシテ!

P(曲のイントロが流れ始めた。このあたりは、チャンネルを見てる人は知ってるような箇所だ)

P(まあ、実は少し構成が違っていたり長くなっていたりしてるんだけどな! ははっ)

恋鐘「み〜ん〜な〜〜〜〜〜!!!」

オォォォォォ!!!

P(今日の歌はカッコいい系だ。このジャックもどきの演出にも合ってるだろう)

P(恋鐘がこういう歌を歌うのに、一切の違和感を抱かない自分に、謎の――違和感ではないが既視感のような気持ち――を覚える)

P(ま、まあ、それはいい)

P(しかし、これは――)

ワァァァァァ!!!!!

P(――成功、なんじゃないだろうか)
140 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/10/06(木) 02:29:02.53 ID:oZAoSis40
P(いや、まだ終わりじゃない)

P(この後の流れは、間奏の間に恋鐘が朝礼台にこっそりやってきて、大サビからは皆の前で歌うというものだ)

P(それが全部終わらないと、成功とは言い切れない)

P(来る途中とか壇上に上がる時とかにコケないといいけど……)

P(俺は既に朝礼台の近くに移動して待機をしている)

オー!

スゴカッター!

P(よし、間奏に入った!)

アイカラズスゴイネー

イヤイヤコノキョクハマダオワッテナインダッテ

マジカヨ!?

コガタンマッテルヨー!!!

P(お、見えてきた見えてきた)

P「ここまでは順調、だな」ボソ

P(恋鐘が朝礼台のすぐ近くまで来てる――って、あれは?)

P(俺は、一瞬――いや、本当に一瞬と呼べるくらいしか時間がなかったのだが――目の前の光景を理解できなかった)

P(霧子が、通り過ぎる恋鐘を呼び止めて何やら耳打ちをしたのだ)

P(言伝はすぐに終わり、恋鐘は予定通りにのぼるべき壇上の前にたどり着く)

P(霧子の伝えた内容が気になったが、それを気にしている余裕はなかった)

P(恋鐘が、無線マイクを受け取り、そのまま……って!)

P「こ、恋鐘っ、接続されてるのは有線のマイクのほうだ――」

P(駄目だ、間に合わない……! しかし、裏方の俺が目立ってしまっては……どうしようどうすれば)

P(こんなとき、プロデューサーならどうする!?)

恋鐘「〜♪」

P(あ、あれ?)

P(普通に、流れて……る?)

P(同時に、俺は目を見張る光景を前にする)

P(有線マイクの長いケーブルに脚を引っ掛けて転んでいる生徒がいたのだ)

P(自分のことでまったく気づけないでいたのだ)
141 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/10/06(木) 02:45:19.63 ID:oZAoSis40
P(もし無線マイクを受け取っていなかったら……)

P(しかし、恋鐘は何故それを知っていた……?)

恋鐘「えへへ……ありがと!」

恋鐘「みんな〜〜! ほんなこてありがとう〜〜〜〜〜!!!」

P(大成功だ)

P(それは間違いないのに)

P(俺は1人……、それは朝礼台の後ろなのかどこなのか、とにかく置いてけぼりになっていた)


P(恋鐘の周りにはギャラリーやファンが押し寄せて近づけそうにない)

P(はづきさんをはじめとする教員の人たちが迫り来る生徒たちを抑えて恋鐘に危険がないよう配慮してくれている)

P(それもそのはずだ。はづきさんに頼んで、そうなるように手配してもらっていたから)

P(でも、俺にとってはそんなこと……“そんなこと”と思えてしまうほど)

P(この成功の裏が気になって仕方なかった)

P「どうせ、しばらく恋鐘には近づけないんだよな」

P(今日は体育祭だ。まだ午後の競技が残っているし、恋鐘ははづきさんと一緒に化粧直しがある)

P(俺は1人、適当に目的もなく校内をぶらついた)


〜保健室〜

P「ここにたどり着いてしまった……」

P(それは、偶然か、必然か)

P(恋鐘に耳打ちをした霧子の姿があったから、どちらかといえば必然なのかもしれない――)

P(――そんなことを思いながら戸を開ける)

ガラガラ

P「失礼します」

P(相変わらず、どういうわけなのか――いや、今日は体育祭だから本当に別の場所に用があっていないのか――わからないけど)

P(養護教諭はいない。代わりにいたのは……)

P「……霧子」

霧子「あっ、Pさん」

霧子「恋鐘ちゃんのお歌、ちゃんとうまくいきました……♪」
142 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/10/06(木) 02:46:14.90 ID:oZAoSis40
とりあえずここまで。
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/06(木) 09:59:47.83 ID:cHcvvb3So
おつおつ
霧子……
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2022/10/06(木) 18:58:45.28 ID:qJdujydDO
今回の裏は誰が握っているんだ……



万が一にも声優ネタはやめて欲しいけど
145 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/10/11(火) 00:24:42.87 ID:1IRGnGGk0
>>143 >>144
8ヶ月を超える期間更新できていなかったのに読んでくださってありがとうございます。

>>144
このSSを思いついたのは、例の事件の3〜4ヶ月以上は前なので、心配されているようなネタが使われることはないです(事件後でも使いませんが……)。
146 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/10/11(火) 00:39:50.86 ID:1IRGnGGk0
P「あ、ああ……そうだな。おかげさまでうまくいったよ」

P(一体、“何のおかげさま”なんだろうか)

アナウンス「午後の開始まで、残り5分となりました。午後の最初の競技に出られる方は直ちに……」

P(校内放送が頭に入ってこない)

P(恋鐘が壇上で歌った時からずっとそうだ)

P(別に、このアナウンスが空虚に感じるからじゃない)

霧子「Pさんは、行かなくても……いいんですか?」

P「俺が出る競技まではまだ割りと時間があるからな。大丈夫だ」

P「霧子はどうなんだ?」

P(そうだ。霧子だ)

P(恋鐘に耳打ちをして、トラブルを回避させた――かもしれない――霧子だ)

霧子「わたしは……行かないんです……」

P「午前中で出る競技は全部終わったのか?」

霧子「すみません、何て言えばいいのか……」

P「?」

P「午後は?」

霧子「午後もです」

P「そうか」

P(どういうことなんだろう)

P(どうにも要領を得ないな)

P(単刀直入に聞いてしまおうか)

P「霧子……さ、恋鐘が朝礼台に上がる前に、あいつに何か言ってたよな?」

P「こう、耳打ちする感じで」

霧子「えっ、あっ、は、はい……」

P(それは認めるんだな。いや、認めてまずい事情がなきゃ、そりゃそうなんだろうけど)

P「そ、その――」

P「――恋鐘には、なんて伝えたんだ?」

P(そう、それが俺の知りたいことだ)
147 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/10/11(火) 01:02:21.12 ID:1IRGnGGk0
霧子「えっと、あのあの……!」

P「うん」

霧子「が、がんばってくださいっ、って……言いました……」

P「へ?」

霧子「Pさんのアイドルさんだから、わたしも応援したいなって思って、それで――」

霧子「――とっさに思いついたのが、あの方法だったんです」

霧子「ご迷惑……でしたか?」

P「い、いや、いやいや! そんなわけないぞ!」

P「そっか……そう、だよ、な……」

P(俺は一体何を気にしていたんだろう――霧子からの、予想だにしない、けれども常識的な回答に、俺は戸惑ってしまっていた)

P(霧子は純粋に応援してくれていただけで、あのマイクの件は単なる偶然で――)

P(――そういう可能性だって、十分にあるじゃないか)

P(というか、普通はそうなんじゃないか?)

P「……」

P(考えすぎというか、俺はどうにかしていたのだろうか)

P(どうして、妙な因果を考えてしまったんだろう)

P(霧子が事前にマイクのことを知っていて、それでトラブルを回避できるように進言していた、だなんて)

P(心のざわめき……この感覚はなんだ)

P(不思議なのは、そんなミステリーじみた体験を記憶のどこかで体験していたような、そんな気もしていることだ)

P(俺は……一体……)

P「……」

霧子「あの」

P「わっ!?」

霧子「ご、ごめんなさい……! なんだか、落ち着かない様子のようなので、それで」

P「あっ、ああ、心配かけたか?」

霧子「ちょっぴり……」

P「ちょっぴりか」

霧子「……実は結構心配してます、ふふっ」

P「ははっ、なんだよ、それ」
148 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/10/11(火) 01:13:28.17 ID:1IRGnGGk0
P「少し疲れてるのかもしれない」

霧子「体育祭の競技……大変でしたか?」

P「あ、そうじゃなくて、プロデュースのこととか、いろいろ」

P「俺がこんなこと言ってちゃ駄目なのかもしれないけどさ」

霧子「……そんなこと、ありません」

P「霧子?」

霧子「Pさんが無理をしないといけないなんて、そんなこと、ないです」

霧子「だって、だって……! 十分に頑張って、頑張って、……頑張ってるから」

霧子「だから――」

P「――ありがとう、霧子。そこまで言ってくれるだけでも励みになるよ」

霧子「Pさん……」

霧子「救われ……ないのかな」

霧子「大変な人」ボソッ

P「なんだって?」

霧子「なんでも……ありません」

P「俺は大丈夫だよ」

P「まだ、やれると思うんだ」

P「ベストというか、全力というか」

P「全力を尽くしてこそ、俺は心からこう言えるんじゃないかって思う――」

P「――よし、楽しく話せたな」

P ズキッ

P(頭痛!? ……あれ、一瞬でおさまったな)

P「ってさ、ははっ」

霧子「!」

霧子「それは……ううん」

霧子「そう、ですね」

霧子「Pさんなら……できます♪」

P「ああ、やってやるさ!」
149 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/10/11(火) 01:31:26.98 ID:1IRGnGGk0
体育祭終了後。

〜小会議室〜

P(体育祭が完全に終了した後、俺と恋鐘と、それからはづきさんの3人で、反省会をしていた)

P(体育祭というイベントを通じてアピールをしたW.I.N.G.エントリー者は恋鐘以外にもいる)

P(特に、やはりというか、白瀬咲耶が強力なライバルだ)

P(俺たちは陣営が弱小な以上、どうしても奇襲のようなやり方に頼ってしまう)

P(技術と演出力でカバーしているつもりだが、それに限界がないわけじゃない)

P(咲耶たちは陣営の大きさを活かして、各競技での振舞いそのものをアピールにしてしまうというやり方をとっていた――)

P(――集団競技では競技そのものを半ば放置して咲耶を中心とする騎馬や隊列を魅せるといった具合に、だ)

P(パフォーマンス後はきちんと競技に戻っているとはいえ、咲耶陣営はその後で生徒部に叱られている)

P(しかし、その叱咤など些事だ。この学校のアイドルイベント・大会は、その程度のことで揺るぐほどお遊びではない)

P(マンモス校で、しかもマジョリティである生徒が主体・味方となって推し進められるものなのだ)

P(むしろ炎上商法としては成功していると言っていい)

P(規模と回数――この2点において、俺たちは負けた。これは事実だ)

P(もちろん、ファンの反応が重要だから、その負けが決定打とはならない――と信じたい――が)

P「ひとまず、今回も審査を通過できるくらいの位置にはいると思いますが……」

はづき「絶対的にはそうなんですけど、相対的にはどうしても咲耶さんが手ごわいですね〜」

恋鐘「うう〜、やっぱうちん予想は的中しとったばい」

P「……」

P(俺は、咲耶がW.I.N.G.エントリーを決めたその時の出来事を思い出す)


P『あ、そうだな。紹介するよ。俺と同じ学年・クラスの月岡恋鐘だ。この前、九州からここに引っ越してきたんだと』

P『恋鐘、1年生の白瀬咲耶だ。もしかしたらもう知っt――』

恋鐘『――ばりかっこよか……』

恋鐘『実際に見ると圧倒されるばい……やっぱり、噂どおりやった』

P『転校生でも知ってるとは……さすがだな、咲耶』

咲耶『フフ、それほどでもないさ』

恋鐘『W.I.N.G.に出られたら絶対に手ごわかライバルになるって踏んでたんよ』

咲耶『私は、別にまだエントリーすると決めたわけじゃ……』

恋鐘『あ、そうと? それなら安心やね』

恋鐘『Pに無事優勝するうちん姿ば見せられるばい』

咲耶『……今、Pに、と言ったかな?』

恋鐘『そうよ? Pはうちの大事なファン1号やし、Pのために頑張る言うても過言やなかばい!』

恋鐘『それに……頑張るうちば見て、きっと……』

恋鐘『……えへへ』

咲耶『……。……P』

P『どうした?』

咲耶『W.I.N.G.優勝……目指そうと思う』

恋鐘『えぇぇ〜〜!?』

P『突然だな……なんでまた』

咲耶『それをアナタが聞くのかい? いや、私がW.I.N.G.優勝を志す意味を気づかせてこそ、か……』
150 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/10/11(火) 01:48:14.64 ID:1IRGnGGk0
P(咲耶は何のためにW.I.N.G.優勝を目指すのか――それが俺にはよくわからなかったが)

P(わかれば咲耶対策というか、恋鐘が優勝できる可能性を少しでも高める良い案が思いつくとかはないだろうか)

はづき「とりあえず、次に第一に考えるべきなのは――」

P「――文化祭の大ステージ、ですね」

はづき「はいっ、その通りです」

P(文化祭であれば、専用のステージが用意されている。言うなれば“合法的”ってことになる)

P(アピール時間だって長い。ただ歌って踊るだけじゃなくて、トークを入れたり寸劇をやったりなんでもありだ)

P(だからこそ……)

P「……恋鐘がどうありたいか、つまりどういうアイドルでいたいかが重要なんだ」

恋鐘「うちが……」

P「俺たち裏方はサポートするだけだからさ」

P「ここからは――いや最初から実際にはそうなんだけど――恋鐘が本当に主役なんだ」

P「もちろん、レールの上を行く台本の上の主役じゃなくて、自分からレールを走る物語の書き手としてな」

恋鐘「どんなアイドルでもうちの右に出るもんはおらん!」

恋鐘「そんなアイドルになってみせるばい!」

P「ああ、そうだ」

P「そのためには、恋鐘はどうしたい?」

P「どうすれば、いい?」

恋鐘「うう〜、難しか〜。ばってん、大事なことやって、うちもわかってるんよ?」

恋鐘「言葉にするとが難しかっさね」

はづき「そうですね〜」

P「……」

はづき「いいんじゃないでしょうか、恋鐘さんは、恋鐘さんで」

恋鐘「?」

P「……ああ」

はづき「ふふ〜」

恋鐘「P?」

P「恋鐘は今までにないまったく新しい恋鐘というジャンルのアイドルを目指すんだ」
151 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/10/11(火) 02:05:30.85 ID:1IRGnGGk0
恋鐘「うちっちゅうアイドル……」

恋鐘「……うん、うん!」

恋鐘「Pがうちならなれる言うんなら、絶対なれるはずばい!」

P「ああ、恋鐘なら誰にも真似できないアイドルになれる!」

P「恋鐘らしさ、一緒に考えていこう……いきましょう!」


はづき「なんですか〜、恋鐘さんに席を外してもらってまでしたい話って」

はづき「恋鐘さん、すごく不満そうにしてましたよ」

P「いや、それはそうなんですけど、本人を前にしては言いづらいことでして……」

P(ましてやあの流れならなおさらだ)

P(恋鐘本人にも、あまり聞かせたくはないような類の話だからな)

P(けれども、重要なことだ)

P「恋鐘らしさ、大切ですよね」

はづき「はい、もちろんです」

P「恋鐘が自然に魅力を出せる方法……もちろんいくつかはあるんでしょうけど」

P「やはり自明なのが――露出です」

はづき「不健全ですね〜」

P「し、しょうがないじゃないですか! 男子ファンの獲得を意識して、これまでにもこっそりちょっとだけそういう要素がアピールに混ざるようにしてたんですよ」

はづき「それは私も気づいてましたけど〜」

P「え、あ、そうなんですか」

はづき「男性の下心に対しては、女性は敏感なものですから」

P「次はせっかくの文化祭における大舞台ですし、これでもかってくらい恋鐘を前面に押し出す良い機会なんです」

P「W.I.N.G.のステージのための練習にもなりますし」

はづき「さっきから、なんだか言い訳をしているように聞こえてしまいますね〜」

P「そ、そんなこと……!」

はづき「大丈夫ですよ、わかってますから」

はづき「頑張ってくださいね、“プロデューサーさん”♪」


P「こういう衣装なんてどうだ?」

恋鐘「P、その……露出が多いというか……」

はづき「ちょっと派手ではありますね」

P「そ、そう! 派手なんだ! こうすると、恋鐘の良さは存分に発揮できるぞ!!」

恋鐘「Pがそう言うなら……。あと、振り付けなんやけど――」

P「――こういうのは妖艶さって言って、恋鐘の中でも大人な魅力が伝わるんだ!」

恋鐘「大人なうち……それは良かね!」

P「お、おうよ」

はづき「ふふっ」
152 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/10/11(火) 02:07:18.78 ID:1IRGnGGk0
とりあえずここまで。
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2022/10/11(火) 05:33:14.29 ID:yuo4P+ADO


さくやんもきりりんも怖いよ〜
154 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/10/12(水) 00:48:40.54 ID:cTyfLQsb0
10月。文化祭まで残り1ヶ月と少し。
放課後。

〜校舎内 某所〜

P(俺は行くあてもなく学校の中を歩いていた)

P(この学校は広い。だから、歩き続けていても同じ景色の中を何度もループするようなことはそうそうない)

P(それでもループしてしまったということに気づいたのは、放課後になって、さらに日が沈んでからのことだった)

P(そのくらいの時間を、俺は考え事をしながら彷徨っていたのだ)

P「はぁ……」

P(何度目のため息だろうか)

P(あと2ヶ月遅ければ、目の前に真っ白な湯気を作っていただろう)

P「結華が言ってたな、4月下旬くらいから約32週間でW.I.N.G.は幕を閉じる――」

P「――2ヶ月も後には、もう結果が出てるってことかよ」

P「いや、その前に最後の審査がある」

P(そう、文化祭だ)

P(今、恋鐘にはダンスのスキルを磨いてもらっている)

P(Vocal、Dance、Visual――なんでこんな発想に至ったかは自分でも不思議なのだが――の3要素に分けるとしたら……)

P「……今の恋鐘は圧倒的にDance不足だ」

P(これまでと違って、文化祭のステージではその辺のごまかしがきかない)

P(リアルタイムでもあるしな。緊張だってするだろう)

P「……」

結華「あっ、Pたんだ。おーい」

P「……」

結華「あれま、無視――とは考えにくいし、これは気づいていなさそうですかな?」

結華「やっほー、大丈夫?」ズイッ

P「わっ! び、びっくりした……」

結華「あっはは、ごめんごめん」

結華「Pたんったら、この三峰が呼んでるというのに無視するんだもん」

P「無視したわけじゃないんだ、ちょっと考え事をしてて……な。悪い」

結華「いいよ、私はわかってるから」
155 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/10/12(水) 00:58:38.34 ID:cTyfLQsb0
結華「プロデューサーとして、頑張ってるって感じでしょ?」

P「はは……頑張ってるのは恋鐘のほうだけどな」

結華「Pたんだって頑張ってる」

P「そうか?」

結華「そーです。そうですとも」

結華「……」

P「……」

結華「なんかさ、こうやって話すのもなんだか久しぶりだよね」

P「え? 教室では他愛もない話をするじゃないか」

結華「他愛もない話だけじゃ味気ないとは思いませんかね〜」

P「っと……うん?」

結華「いーや、なんでもない。ほんと、ほっんとに、なんでもないですから!」

結華「期待しちゃだめだって、わかってるのに、なんだかなぁ」ボソボソ

結華「いつまでしてたんだろ、期待」ボソッ

P「どうしたんだ?」

P「結華のほうこそ、様子がおかしいように見えるけど」

結華「三峰のこと心配してくれるの〜? やっさしいなぁ、Pたんは」

結華「へーきへーき! 放課後は図書館で勉強してたから、それで流石にちょっと疲れたってだけですよーだ」

P「なんでちょっといじけた感じなんだよ」

結華「その理由は、今のPたんにはわからないだろうなぁ」

P「ははっ、そうか?」

結華「イエス」

結華「このままご帰宅……とはならなさそうだよね」

P「帰ってもいいんだが、気がかりなことがあってな」

結華「それは残念。不肖三峰、一緒に帰ろ♪ 的なイベントをご用意していたのですが」

P「すまん、また今度で」

結華「今度――か」ボソ

P「?」

結華「ううん、なんでもない! じゃね」

結華「頑張れよ、プロデューサー」ポンッ
156 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/10/12(水) 01:11:24.79 ID:cTyfLQsb0
P(結華……どこか元気がなさそうだったな)

P(大丈夫だろうか)

P(気になるところではあるが……そろそろ俺は行かないといけない)

P(そろそろ、恋鐘のダンスの練習が終わる時刻だ)

P(レッスンルーム的に使わせてもらってる部屋に行って恋鐘に会いに行こう)

P(不調なときこそ、俺が対話してやらんでどうする)

P(俺は、プロデューサーだ)


〜校内アスレチックセンター 多目的ルーム〜

P(今日はダンス部が使っていてダンスレッスン場は空いてなかったんだよな)

P(まあ、俺たちは小規模だから、抑えること自体が難易度高めだが)

P「恋鐘、入るぞ。いいか?」コンコンコン

恋鐘「あ、P! よかよ〜」

P「失礼します」ガチャ

P「あ、今日ははづきさんはいないんだな」

恋鐘「Pははづきに会うためにここに来たと〜?」ムスッ

P「いやいや、そういうんじゃないって」

P(今日は自主レッスンだったというわけか)

P「恋鐘に会いに来たんだよ」

恋鐘「ほんなこて……ほんと!?」パアァッ

P(わかりやすいな。表情とかリアクションとか)

P(それが恋鐘の良いところでもあるんだ)

P(良いところ……好きなところ……)

P(いかんいかん、今はプロデューサーとして接しないと)

P「どうだ? ダンスの調子は」

恋鐘「もちろん、自分でも上達はしとーと思うばい」

恋鐘「ばってん、よう間違えてしまう箇所とか、まだできるようになっとらんステップとか――」

恋鐘「――いろいろと問題があるとよ」
157 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/10/12(水) 01:26:25.38 ID:cTyfLQsb0
P「そうか……」

P(恋鐘の言う通り、上達はしてる。というか、それに関しては驚くほどのスピードだ)

P(しかし、だからこそ、できない部分が目立っている)

P(残すところあと1ヶ月ちょっと……時間はまだあるほうだと信じたいが、確実にできるようになるという保証もないからな……)

恋鐘「自分の至らんところはわかっとる」

恋鐘「1ヶ月もあればできるようになるかもしれんってことも」

恋鐘「ばってん、大事なのは本番」

恋鐘「これまでは、いろんなやり方で、Pとはづきの助けもあって、うまくいっとったけど」

恋鐘「次んステージで、うちは1人ばい」

恋鐘「これまでのうちん人生――」

恋鐘「――肝心なところでコケてしまうことが多かったばい」

恋鐘「そう思うと……怖くて……」

恋鐘「はづきに相談したら、みんな笑っち許してくれるって……」

恋鐘「……ばってん、ホントにそれでよかとかいなって」

P「恋鐘……」

恋鐘「実際、こん学校ん中でアイドルやってみたら……手ごわいライバルもいて……」

恋鐘「他ん人と比べたら……できんこと、ばっかりで……」

P「不安になってしまったんだな」

P(それはそうだ。なんたって、最大級の相手としてあの白瀬咲耶がいる)

P(ライバルっていうなら、他にもちらほらと)

P「はづきさんの言うこと、俺は間違ってないと思う」

P「ドジをしてしまっても、それは恋鐘の良さなんじゃないか」

P「恋鐘が頑張ろうとするから、そうなってしまうこともある、ってことだろう?」

P「周りの力量と比較する気持ちはわかる」

P「でも、恋鐘には恋鐘の良さがあるんだから、それでいいんだよ」

恋鐘「そう、なんかな……」
158 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/10/12(水) 01:37:10.42 ID:cTyfLQsb0
P「大事なことを教えてやる」

P「恋鐘にはファンがいるんだぞ?」

恋鐘「ファン……」

P「そうだよ。恋鐘のことを応援してくれる人たちだ」

P「もちろん、俺だってそうだ!」

P(それ以上の気持ちは、今は、抑えて……抑えて……)

P「恋鐘が周りを気にして小さく丸まってしまったら、きっとファンはがっかりする」

恋鐘「Pもがっかりすると?」

P(うっ……そう返してくるか)

P「こ、恋鐘らしくないって、思ってしまうよ」

P(返答になっては……いないよな)

P(と、とにかく)

P「俺を含めたファンのみんなで、どこまでも一生懸命な恋鐘を応援してるんだ」

P「そんな恋鐘が好きだからな」

P(どさくさに紛れて「好き」という言葉を使った)

P(1人のファンとしてではない「好き」が何パーセントか混じってしまっていたかもしれない)

恋鐘「そっか……そうばい」

恋鐘「うち、自分が失敗することばっか考えて、Pもファンのみんなのことも、信じられてなかったんやね」

恋鐘「失敗とか、できんとか、そういうことやなかとよね」

恋鐘「みんなが喜んで……楽しんでくれるかが、一番大事なことやった!」

P「ははっ、気づいたか」

恋鐘「ありがとう、P!!」ギュッ

P「おっ、おい……」

P(ま、まずい、これは、非常に、その……)

P(アイドルとプロデューサーだからとかいう以前に物理的な“ショック”が身体を“包んで”くる……!)

恋鐘「やっぱ、うち、Pと一緒にW.I.N.G.優勝目指してよかったばい!!」ギュウウ

P「こ、恋鐘……」
159 : ◆bXCm/le03U [saga]:2022/10/12(水) 01:52:37.32 ID:cTyfLQsb0
恋鐘「あっ、つい勢いでPにハグしてしもうた」パッ

P「く、苦しかったけど、悪くはなかったと思います」グッ

恋鐘「?」

P「い、いや、なんでもないぞ。ああ」

P「恋鐘、そういうのは勢いでやっちゃ駄目だからな」

P「恋鐘はアイドルなんだから」

恋鐘「違う違う! うち、Pが相手だから抱きついてしもたのよ!?」

恋鐘「誰にでもするわけじゃなか……」

P「それなら良い……いや良くはないが」

P(校内アイドルとはいえ、この学校の規模を考えると、スキャンダルは絶対にNGだ)

P「とにかく、気をつけるんだぞ」

恋鐘「わ、わかっとる……!」

P「次は文化祭だ! 気を引き締めていこう!!」

恋鐘「お、おー!!」

P「……」

恋鐘「はぁ」

恋鐘「もう……Pはホントにうちんこと好きなんか?」

P「えっ」

恋鐘「さっき、ファンとして〜みたいな話はあったけど」

恋鐘「長らくちゃんとPから言ってもらえてない気がするばい」

P「そ、それは――」

恋鐘「――P?」ズイッ

P「……す、好きです」ボソッ

恋鐘「え〜?」

P「言ったから! もう、言ったから! はい、今日は終了〜!!」

恋鐘「なんか釈然とせん……最近のPはプロデューサー然としててちょっと距離感感じとったんばい」

P「か、勘弁してくれ……」

恋鐘「ふふ〜、顔真っ赤やね〜! かわいか〜」

恋鐘「その反応で今日のところは許しちゃる!」

恋鐘「ん〜、こがん感じで話すのも久しぶりやなあ」

P「確かにそうかも――」

結華『なんかさ、こうやって話すのもなんだか久しぶりだよね』

P「――しれないな」

P(俺は、つい、恋鐘に会いに来る直前の出来事を重複させてしまっていた)

P(“久しぶり”の“会話”――両者の間は同音異義語のような温度差があった)
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