モバP「ここが159(いんごく)プロダクションか…」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/08/06(金) 21:17:03.27 ID:oIv+MMqD0
※全年齢向けSSです。

※モバマスのキャラクターを扱いますが、違和感があればよく似た名前の別人として見てください。

※某研究所の全年齢向けマンガのパロディがメインです。クロスオーバー要素はありません。

※全年齢向けです。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1628252222
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/08/06(金) 21:21:01.67 ID:oIv+MMqD0

「んっ…あんっ、はぁっ、はぁっ…あなた、あなたっ!あっ、あっ、ああっ!」

トントンッ

「―――はぁっ、んっ、誰?こんな時間に」

ギィッ

「誰もいない…あら?何かしらこのアタッシュケース…」


「…『リビドークロス』?」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/08/06(金) 21:26:23.71 ID:oIv+MMqD0

芸能事務所に勤めていた兄が入院した。

その兄の代理として、臨時でプロデューサーを務めることとなった。


その事務所の名は『159(いんごく)プロダクション』。

人気アイドルを多数輩出している大手芸能事務所だが、原因不明の活動休止や引退も相次ぐ謎多き事務所でもある。

噂では、内部で陰湿なイジメやセクハラ、犯罪行為が横行しており、事務所が隠蔽をしているとか。

最初に見舞いに来た時に兄も言っていた。


P兄「あの事務所には、本当に頭のおかしい連中がウジャウジャいる…特に女には…アイドルには気を付けろ」


不安は拭えないが、就活に失敗して路頭に迷っていた俺にとってはせっかくの棚からぼた餅だ。

コネ就職と言われようが、堂々と仕事に努めて、兄のメンツを潰さないようにしよう。

4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/08/06(金) 21:32:43.05 ID:oIv+MMqD0

センカワ「おはようございます、アシスタントを務めさせていただくセンカワ・チヒロと申します」

P「おはようございます、仕事のことは兄から聞いていますが、なにぶんこういうの初めてで、正直緊張します」

センカワ「ふふっ、慣れるまでは私が同行してサポートしますので、わからないことはなんでも聞いてくださいねっ」

P「はい、よろしくお願いします」

???「あら?もういらしていたんですねぇ」

P「あっ、サクマさん、この間はどうも」

センカワ「おはようございます、お二人はもう顔を合わせていらしたんですね」

P「ええ、兄の入院先でたまたま会って」

センカワ「サクマ・マユちゃんは、元々お兄さんの担当ということで、そのままプロデュースを引き継いでもらうことになっています」

P「そうか、兄さんと比べると頼りないかもだけど、改めてよろしく」

サクマ「そんな、マユの方こそ…スーツ、よくお似合いですよ」

P「ああ、ありがとう、サクマさんに言われると、なんか自信湧いてきた」

サクマ「でも…」スッ

P「えっ、さ、サクマさ―――」


―――アイドルには気を付けろ

5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/08/06(金) 21:43:00.89 ID:oIv+MMqD0


キュッ

サクマ「ネクタイ、曲がってましたよ」ニコッ

P「あっ、ああ、ありがとう…」

 (いきなり迫られてドキドキした…落ち着け俺、相手はアイドル、俺はプロデューサーだぞ、代理だけど)

センカワ「ふふっ、その様子だと、うまくやっていけそうですね」

サクマ「そうだ♪チヒロさん、オフィスへはマユが案内してもよろしいでしょうか?」

センカワ「ええ、レコーディングまでは時間がありますし、間に合うのであれば私から話を通しておきますね」

サクマ「ありがとうございます♪では行きましょうか、オトウトさん」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/08/06(金) 21:51:06.35 ID:oIv+MMqD0



P「オフィスって個室なのか…しかもすごくキレイなところだ」

サクマ「プロデューサーが仕事をしやすいように、マユも時々掃除をしていましたから」

P「サクマさんって、まだ高校生だよね?前は読者モデルもやってたって話だけど、それにしてもしっかりした子だよなあ」

サクマ「やだ、照れちゃいますよぉ♪プロデューサーの…あの人のことを考えてると、ああしなきゃ、こうしなきゃって、つい体が動いちゃうんです」

P「兄さんとは、いい関係を作れていたんだな」

サクマ「それはもう、あの人は、マユの運命を変えてくれた人ですから」

キュッ

サクマ「この薬指のリボンも願掛けなんです…今は別々の場所にいても、2人の距離が離れることなく結ばれたままでいますようにって」

P「早く兄さんが元気になって、戻ってくればいいな」

サクマ「はい、そのためにマユも、それにオトウトさんも、穴を空けないよう頑張らないと、ですね♪」

P「うっ、さりげなくプレッシャーかけられちゃったなぁ」

サクマ「これくらいの方が、しっかりお仕事できますよね?あっ、お仕事といえば―――」

P「ん?」

サクマ「そろそろ行かないと、パートナーを待たせちゃいますね」

P「サクマさんのパートナーって…」


7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/08/06(金) 22:14:21.67 ID:oIv+MMqD0



センカワ「お疲れ様です、こちらは担当の一人でマユちゃんとユニットを組まれる、タチバナ・アリスちゃんです」

タチバナ「初めまして、タチバナです。お兄さんにはお世話になっています」

P「ご丁寧にどうもアリスちゃん、まだ小さいのに礼儀正しくてえらいねぇ」

タチバナ「タチバナです」ギリッ

P「えっ?」

タチバナ「お言葉ですが、私もサクマさんたちと同じく事務所と正式契約を結んでいるアイドルですから、子供扱いはやめてください」

P「あっ、はい…失礼しました、タチバナさん…」

 (なんかこの子、サクマさんと違ってとっつきづらいな…ずっと真顔でなんか怖いし)

サクマ「ふたりでレコーディングするのは初めてですね、お互い頑張りましょう、タチバナさん♪」ニコッ

タチバナ「はい、よろしくお願いします」マガオー

P「あの…センカワさん?」ヒソッ

センカワ「どうしました?」

P「なんか二人の印象、真逆って感じなんですけど、ユニットとして大丈夫なんですか?」ヒソヒソッ

センカワ「あなたのお兄さんが決めたことですし、それに、まぁ見ててください」


8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/08/06(金) 22:27:19.71 ID:oIv+MMqD0



サクマ「〜♪」

P(…!)

タチバナ「〜♪」

P(これは…)

センカワ「どうですか、二人の歌声は?」

P「いや、その…失礼な話ですが…二人ともちゃんとプロなんですね」

センカワ「ふふっ、ただのカワイイ女の子とでも思ってました?」

P「正直…でも、兄さんが二人を組ませた理由、なんとなくわかった気がします」

センカワ「今はあなたがプロデュースを任されるんですから、しっかり見てあげてくださいね」

P「はい!」

 (なんだ…兄さんの言葉で少し警戒してたけど…思ったほど悪いところではないのかも)





  少なくともこの時だけはそう思っていた…






9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/08/06(金) 22:39:09.89 ID:oIv+MMqD0



センカワ「では、私とプロデューサーは打ち合わせがありますので、お二人はゆっくりしていてください」

タチバナ「サクマさん、空き時間を自主レッスンに使いたいのでご一緒できますか?」

サクマ「ごめんなさい、マユ、どうしても外せない用事があるので、一度失礼してもいいですか?」

P「ああ、大事な用事なら、いいですよね、センカワさん?」

センカワ「ええ、気を付けていってらっしゃい」

タチバナ「…」



10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/08/06(金) 23:01:24.00 ID:oIv+MMqD0



P「ふあぁ〜、打ち合わせ長かったなー…とりあえず休憩もらったし、一服しとくか」

タチバナ「お疲れ様です」

P「あれ、タチバナさん?この後何か予定あったっけ?」

タチバナ「ちょっとお話いいですか?」

P「えっ、何?」

タチバナ「さっきのサクマさん、どう思いました?」

P「どうって…用事があるから席を外したんだよね?」

タチバナ「あの人、またプロデューサーのお見舞いに行ったんです、今日何回目になるやら」

P「えっ、いや、アイドルが担当Pのお見舞いに行くってそんな変な話じゃ―――」

タチバナ「はぁ…お兄さんから聞いてないんですか?」

P「えっ、何?何が言いたいの?」

タチバナ「あの人は読モ時代からずっとプロデューサー、あなたのお兄さんのストーカーをしていたんですよ!」

P「す、ストーカー?サクマさんが?まさかぁ」

タチバナ「正式所属になってからも、プロデューサーの動向をGPSで追跡したり、無断でオフィスに侵入して物色したり、女性スタッフと話しているときに狙ったように連絡してきたり、問題行為は数えきれません」

P「いや、でもそんな悪いするような子にはとても―――」

タチバナ「確かに普段はおとなしそうに見えますが、プロデューサーが絡むと話は別です」

    「お見舞いだって何かにつけて一日のうちに何回も行ってるし、はっきり言って異常です」

    「そもそもプロデューサーが倒れたのだって、あの人が原因に違いありません」

P「そ、それはさすがに言いがかりじゃ―――」

タチバナ「今問題が起きれば、ユニットを組む私の活動にも影響するんですから、そうなる前にちゃんと注意してください、いいですね!」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/08/06(金) 23:29:23.87 ID:oIv+MMqD0



P(と言われても、連絡先聞いてなかったから、呼ぶ手段がないな…オフィスを探せば番号とかどこかにないかな…)ガサゴソ

 (それにしてもパートナーに対してひどい言いようだ…)

 (注意ったってなんて言えばいいんだ?『あんたストーカーだろ』とはさすがに言えないし…)

 (はぁ、何か胃が痛くなってきた…勤務初日から面倒なことに…ん?)

 (机の下に、妙にオシャレな本が…何だこれ、日記帳?)

 (兄さんの趣味とは思えないし…中を見たら持ち主がわかるか…)ペラペラッ
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/08/07(土) 00:32:33.32 ID:v9kGr6gD0

今日はあの人と撮影のお仕事―――            いっぱいほめてもらえ―――       
                        すき                  声―――
    すき    髪をかく仕草―――          前とは違うシャンプー―――       すき
                       すき
  お部屋をお掃除―――       すき          新しい写真を―――     すき
             すき                          すき      今日は―――
                 カフェでコーヒーを飲んで―――   
    今日は―――                       すき      例の女が長々と―――
           声――           すき                         すき
               今日も―――         すき      あの女のニオイが――― 
       すき              今日も―――
                                      こっそり消臭剤―――       
     お弁当を作って―――              すき     
                  最後に隠し味―――
   困った顔―――    すき              食べてくれた――― 
           すき            すき               まゆの―――  があの人の中に―――
                                    すき 
          倒れた―――          入院した―――          すき   いない―――
     すき                            会えない―――                              
                 なんで―――                      なんで―――

 
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで




「オ ト ウ ト さ ん ?」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/08/07(土) 00:36:23.43 ID:v9kGr6gD0

P「うわっ!?さ、サクマさん!」

サクマ「あっ、それマユの日記!病院かと思ったらオフィスで落としちゃったんですね」

P「あー、やっぱり病院に行ってたの?兄さんのお見舞いに」

サクマ「はい、日記を置いていったと勘違いして…マユ、おっちょこちょいですみません♪」

P「いや、そんな…とりあえず返すよ」

サクマ「ありがとうございます」ニコッ

P「で、そのお見舞い、何回目?」

サクマ「…はい?」

P「その…お見舞いなんだけど、何回も言ってるって聞いて、できれば減らしてもらえないかなって」

サクマ「…」

P「ほら、空いた時間をレッスンとかに回す方がサクマさんのためになるし、それに―――」

サクマ「誰に言われたんですか?」

P「―――え?」

サクマ「誰かから言われたんですよね?みんな言うんですよ、マユのことをおかしいって」

P「いや、サクマさん、それはその―――」

サクマ「あなたもそういう目でマユを見ているんですか?」

P「サクマさん落ち着いて―――」

サクマ「マユはあの人のことを誰よりも想っているだけなのに、どうしてそんなこと言われなきゃいけないの?」

P「別に変とか思ってるわけじゃ―――」

サクマ「あなたにマユとあの人の何がわかるっていうのっ!!」

P「ひぃっ!!」



サクマ「あっ…ごめんなさい、急に大声で…今日はこれで失礼しますね」

P「あっ、サクマさ―――」

サクマ「 な に か ? 」

P「……気を付けて帰って」

14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/08/07(土) 00:49:32.60 ID:v9kGr6gD0



P「ふぅー、あー心臓ヤバかった…」

タチバナ「お疲れ様です、ちゃんと言ってくれましたか?」

P「まぁ、一応見舞いを減らすようには言ったよ?OKかどうかは、微妙だけど…」

タチバナ「はぁ…いい大人が情けないですね、『俺の兄貴に近づくんじゃねぇこのストーカー』くらいビシッと言えないんですか」

P「タチバナさんの中の俺って何キャラ?」

タチバナ「こんな調子で大丈夫とも思えませんし、今後も動向を監視するよう、お願いしますね」

P「えぇ、そんなことしたら俺の方がストーカーじゃ―――」

タチバナ「 お ね が い し ま す ね 、それとここ禁煙ですよ」

P「えっ、マジで!?そんな表示どこにも見当たらないけど」

タチバナ「未成年がいる場所なんですから実質禁煙に決まってるでしょう」

P(暴論すぎる…この子もまともに見えて実はけっこう問題児だったりしないか?)


15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/08/07(土) 00:58:35.08 ID:v9kGr6gD0



サクマ「んっ…あんっ、はぁっ、はぁっ…」

   (なんでっ、なんでマユばっかりダメって言われるの?)

   (あの人のそばにいることの何がダメなの?)

   (あの子たちの方こそ、お世話になっておきながら、一度もお見舞いに来ない薄情者のくせにっ!)

   (そうよ、だいたいあの人が倒れたのもあの子たちのせいなんだから!マユは悪くないっ!)

   「『そうだ、マユは悪くないよ』あなた…『マユ…』あなたっ!『マユっ!』あっ、あっ、ああっ!」


トントンッ


サクマ「―――はぁっ、んっ、誰?こんな時間に」

ギィッ

サクマ「誰もいない…あら?何かしらこのアタッシュケース…」



   「…『リビドークロス』?」


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