このスレッドは1000レスを超えています。もう書き込みはできません。次スレを建ててください

【咲-saki-】京太郎「ウルトラマンの力」咲「光よ!」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/30(月) 03:18:38.10 ID:Kwl+OOY70
乙!
最近京太郎スレ増えてきて楽しい
安価もあるみたいだしまさかのベリアルでこれから楽しみだ
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/30(月) 13:58:43.94 ID:1v51NnELO
和との会話でちゃっかりベリアルしてて大草原
18 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 21:53:15.45 ID:cgG/lPJ50
おっし、再開してくよん

>>17
そこに気づくとは、やはり天才か
19 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 22:10:50.41 ID:me+r5grG0

構えを取るベリアルを前に、ベムラーが威嚇するように咆哮をあげた

京太郎はベリアルの中で自分自身がベリアルになっているという違和感に顔をしかめる


京太郎『な、なんなんだよこれっ!』

ベリアル『チッ、妙な姿で蘇えらされたな』


その言葉に、少しばかりの違和感を感じるも、今すぐに指摘できるほど心の余裕もない


ベリアル『おい小僧、合わせろ!』

京太郎『あ、合わせろっても』


突如、ベムラーへと走り出すベリアル

引っ張られるような感覚に、京太郎は逆らわないように体を動かす

走り出したベリアルが、爪を立てた右腕を振るう


ベリアル「ハァッ!」

ベムラー「―――!!?」


振るわれた右手、それは斬撃へと変わりベムラーの強固な鱗を引き裂き攻撃を通す

その感覚に驚愕する京太郎だが、すぐ左側の動く感覚にあわせて左腕を振るった

左拳をベムラーの胴体に打ちつけて、その巨体を後退させる


ベリアル「ハッ!」


ベリアルに合わせて背後に跳ぶと、青い炎が先ほどまでいた場所を燃やす


京太郎『っぶね〜!』

ベリアル『ハ! はじめてにしちゃぁ悪くねぇ……人間と融合なんざ俺も初めてだから普通どんなもんかもわかんねぇがな』

京太郎『ゆ、融合っすか?』

ベリアル『なんも知らねぇみたいだな』


その言葉に、恐る恐る肯定で返す

ベリアルがなにかを話し出そうとするも、ベムラーが接近して尻尾を横薙ぎに振るう

再び、合わせるように跳んでそのままベムラーの背後へと回る


ベリアル「ハァッ!」


素早く手から光弾を撃ち出し、ベムラーを攻撃

倒れるベムラーがビルを破壊する


京太郎『あっ! 街がっ!!』
20 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 22:19:45.48 ID:me+r5grG0

立ち上がるベムラーがさらに尻尾を振るう

後ろへと下がるベリアルだが、ベムラー周囲のビルが破壊されていく

それを見て、京太郎は歯を噛みしめた


ベリアル『チッ、しぶといな……』

京太郎『え、えっと、ベリアル、さん!』

ベリアル『あぁ? なんだ?』

京太郎『なるべく街を壊さないように戦えませんか!』


ベリアルが、ベムラーを見据えたまま左手を顎に添えて首を左右に振るう

ゴキゴキと関節が鳴るような感覚を感じた

この短い間で、おそらくベリアルがどういう人物(?)かはある程度見えたつもりだ


京太郎『頼みますっ、街を守れなきゃ俺は……ここで戦う意味がない!』


素直に聞いてくれるとは、思っていない

だが自分がやれることは、それでも頼みこむのみ、だ


ベリアル『守るもの、ねぇ……ハッ! ならどうする?』

京太郎『え?』

ベリアル『街に被害が無いようにあいつを仕留めるために、だ』


試すような言葉に、京太郎は頷く

なんとなくだが戦い方も、使える技すらも感覚的に理解してきた

所謂“必殺技”の使用や威力、その他の攻撃もまた然り


京太郎『ベリアルさん! 力、お借りします!』
21 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 22:42:45.55 ID:me+r5grG0

ベリアルがベムラーに駆ける

口から吐き出される青い炎を、前に転がるように避けて懐に入るとそのまま爪撃を放つと同時に背後へと斬り抜ける

叫びをあげ尻尾を振るうベムラー


ベリアル「ハッ!」

ベムラー「―――!!」


前へと転がって回避するベリアルが、即座に振り返る

京太郎もまったく誤差の無い動きで着いていく


京太郎『そこぉ!』


手の平から光弾を三度放つ

ベムラーがその攻撃に火花を散らしながら下がるも、すぐに怒りに震える姿が見えた

作戦通りと、京太郎が笑みを浮かべる


ベムラー「―――!!」


走り出すベムラー


ベリアル『来るぞ、合わせてやる―――やってみせろ小僧!』

京太郎『オオォォォォ!!!』


それに合わせて走り出すベリアル

◆BGM:DREAM FIGHTER【http://www.youtube.com/watch?v=2bJEDgeuVtE



道路を踏みしめて、ベムラーへと駆けだす

二つの巨体がぶつかりあう―――その直前


京太郎『ここだぁっ!』


即座に身体をかがめると、背を地につけた

走る勢いそのままのベムラーの腹を、受け流すように蹴り上げる

空へと勢いよく飛ぶベムラー


京太郎『ベリアルさん!』

ベリアル『ハッ! おもしろい!』


即座に立ち上がったベリアルの右手が赤い稲妻を纏う
22 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 22:55:33.04 ID:me+r5grG0


ベムラー「―――!!」


空のベムラーが自由落下を始めようとしている

その前に―――


京太郎『やる!』


腰を少し落とすと左手を水平に、その後ろの赤い稲妻を纏う右手を垂直に


数多の宇宙に広がる光の巨人の伝説

この宇宙にこそ、その伝説はない―――今までは


これから後世に続くであろう伝説、その始まり!


京太郎・ベリアル 『デスシウム光線!』


赤い稲妻を纏った光線

その一撃が空のベムラーへと放たれる

真っ直ぐに、夜を照らす輝き―――


ベムラー「―――!!?」


―――そして、爆発

23 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 23:11:38.06 ID:DoAjmxbH0


空中で爆散したベムラー

爆煙から輝く何かが落ちる

ベリアルは右手を払うように振るうと、首を再び鳴らす


ベリアル「……ハァッ!」


両手を上に向けて、ベリアルは空へ―――消えた



―――【丘の上】


熊倉トシは、静かに事の良く末を見守っていた

その表情に浮かぶのは混乱か安心か


トシ「……ベリアルが、京ちゃんに合わせた?」


やはり混乱だったのだろうか、熊倉トシは軽く丘の柵を飛び越える

数メートルを落下するも軽く着地して、さらに歩き出す


トシ「相性の問題? それとも―――息子に殺されれば嫌でも変わる、か?」

24 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 23:25:46.77 ID:DoAjmxbH0

―――【街中】


走る京太郎、その右手にはゼットライザー

燃え盛る街の中を息を切らしながら走る

体力の消耗は、初めての戦い故か―――


京太郎「ハァッ、ハァッ……」

ベリアル『戻った途端に、せわしない奴だ』

京太郎「な、なんか落ちたんだ……怪獣が、出た原因かもっ!」


その言葉に、ベリアルは興味なさげに息をつく

破壊されたビルの瓦礫を飛び越えて、京太郎は―――見つけた


京太郎「あれっ!」

ベリアル『なんだ?』

京太郎「せ、妹尾さん!?」


妹尾佳織―――鶴賀学園の麻雀部、二年生

一応、部活の繋がりで数言か交わした記憶はある

急いでそちらへと駆け寄るとすぐに抱き上げた


京太郎「妹尾さん!」

佳織「うっ……」カランッ


なにかが落ちた音がして、京太郎はそちらを見やる


京太郎「これ……メダル?」

ベリアル『ほう、こいつがこのメダルの持ち主だったわけだ』

京太郎「っ」


そのメダルに描かれているのは怪獣―――ベムラー
25 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 23:35:09.72 ID:DoAjmxbH0


佳織の上体を片手で支えている京太郎は、そのメダルに驚愕しながらもホルダーにしまった

レスキュー隊が近くに来ているのか声が聞こえる

すぐにそちらへ向かって佳織を預けようとも動こうとする


??「待った」

京太郎「っ……トシさん」ハァ

トシ「こっち」


そう言って歩いていくトシ

佳織を抱き上げるとそちらへと歩き出す京太郎

別に大きな怪我などがある様子はないものの、危なければトシが放っておくとも思えないと行く


ベリアル『おい小僧、あれは?』

京太郎『熊倉トシさん、よくわかんないですけど……助けてくれたっていうか、ベリアルさんと会わせてくれた、人?』

ベリアル『きな臭いな』

京太郎『ごもっとも』


瓦礫の少ない道を行き、徐々に破壊されていない街中へと入っていく

野次馬を避けて裏道を行くトシはこの街の立地にかなり詳しく見えた


トシ「さて、ここで良いだろう」

京太郎「?」


ただの道路だった

歩道で立ち止まったトシの後ろで立ち止まる京太郎

佳織をお姫様抱っこで抱えたままで、職質に怯えながら周囲を見渡す


トシ「ほら来た」

京太郎「車?」
26 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 23:44:48.48 ID:DoAjmxbH0


◇大変! プロがきた!


1、瑞原はやり

2、野依理沙

3、三尋木咏

4、戒能良子

5、赤土晴絵(プロ?)


◇5分間で↓1からコンマが一番高い人物
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/30(月) 23:46:10.34 ID:Kwl+OOY70
1はやりん
28 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 00:02:26.63 ID:I/gkF6ga0
(まぁ正直1↓で良いかなって思ってた!


1、瑞原はやり


目の前に勢いよく止まる車

4WDタイプの四輪駆動車両

その窓が開くと、そこにはどこかで見た女性


???「お待たせしました〜」

トシ「いや、丁度良い到着だ……京ちゃん、あんたは後ろへ」

京太郎「あ、はい」


トシがドアを開けると、京太郎は少し高くなっている後部座席へと佳織共に乗り込む

少しばかり大きな車なだけあって、中もそこそこに広い

佳織をどうにか座らせると、支えるように京太郎も座る


???「出発しま〜す」

トシ「ん」


助手席に座ったトシの返事を機に、車が走り出す


京太郎「えっと……状況が読めないんですけど」

トシ「ああすまないね、それはこのあと……紹介するよ。あたしの協力者」


バックミラー越しに運転席の女性と眼が合う

ニコリ、と聞こえてきそうな笑みを浮かべた女性


???「こんにちは、瑞原はやりです☆」

京太郎「……はやりん!!?」

ベリアル『……誰だ?』
29 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 00:18:37.14 ID:amw9zL0U0

十数分走った車が、施設に入る

敷地に入り、真っ直ぐに走っていくと車庫が開く

自動なのか手動なのか、そこに入ると電気がつきハイテク機器が並ぶ車庫だとわかる


京太郎(すげぇな……なんだここ)

ベリアル『おい、この地球には“そーゆー組織”があるのか?』

京太郎『え、そうゆうって?』


その疑問に、ベリアルは応えることはなかった

小首をかしげる京太郎をよそに運転席のはやりと助手席のトシが降りる

それに続くように京太郎は佳織を支えながらドアを開け、抱えて降りた


京太郎「えっと」

はやり「こっちにきて?」

京太郎「あ、はい」

トシ「余計なとこ行ったり触ったりしないでね」

京太郎「俺は子供ですか」

トシ「子供だよ」

京太郎「……まぁ、はい」

ベリアル『情けねぇ』

京太郎『うっ』


閉まって行くシャッターを横目に、近くのドアから二人の後を追って施設に入る

白い壁、明るい蛍光

研究所とか言葉が脳裏をよぎる


京太郎『ついてきちゃって良かったんですかね?』

ベリアル『今更だ、それにいざとなれば俺がやる』

京太郎『あはは……いざって時が来なきゃいいけど……』
30 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 00:29:33.82 ID:amw9zL0U0


少し歩くと部屋に案内され、自動ドアが開いて二人に続いて中に入る

ベッドが置いてあり、他にも機器が設置してあった

はやりが手でそちらを差す


京太郎「妹尾さんを?」

はやり「うん」


その言葉に従うほかないと、そちらに佳織を寝かした

京太郎が言葉を発そうとした瞬間、自動ドアが再び開く

入ってきたのは、これまた見覚えのある女性


はやり「裕子ちゃん☆」

裕子「妹尾佳織さん……鶴賀の麻雀部、役満を上がっている」

はやり「はやぁ、リサーチが早いねぇ」

裕子「一応メディカルチェックをします。出て行ってください」

はやり「はいはい、いこートシさん、須賀君?」

京太郎「あ、はい!」


彼女がクルッと身体を回して出口へと向く

それと共に揺れる二つの豊満な果実


京太郎(くっ、伸びる! 鼻の下が伸びる!)

はやり「?」


なにかおかしい京太郎を覗き込むはやり

そんな風にかがまれるともちろんシャツの間から谷間が見えるわけで


京太郎『ぐおぉ! ベリアルさんここ不味いっす!』

ベリアル『鼻の下を伸ばすな、ヒッポリト星人か』

京太郎『誰か知らんけどたぶん悪口!』
31 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 00:39:25.14 ID:amw9zL0U0

―――【施設】


二人についていき、一つの部屋に案内された

大きなモニターと大きなテーブル、機器が沢山ある

椅子に座るトシとはやり


はやり「どーぞ☆」

京太郎「し、失礼します」


椅子に座る京太郎、あまりこういう雰囲気には慣れていない

というより、慣れている人の方が珍しいだろう


京太郎「えっと……妹尾さんは?」

トシ「とりあえず検査待ち、まぁ運がいい方だと思うよやっぱり」

京太郎「ど、どこがっすか」

トシ「さぁ、どうとらえるかは自由だけども……」


その言葉に、京太郎は小首をかしげた


はやり「えっと、どこまで説明しましたか?」

トシ「全然さ、その前に……変身してもらったから」

はやり「じゃあ須賀君が?」

トシ「ああ……さっきの“ウルトラマン”だ」


勢いよく立ち上がる


京太郎「ええ!? そういうの言っちゃうんですか!?」

トシ「まぁ、こいつにはね」

はやり「信頼されてるね〜☆」

トシ「一応ね」

はやり「はやや、一応って」

京太郎「……俺、なんなんですか?」

トシ「……父親から、いやそれ以外からでもなんかもらった?」

京太郎「え、なんかって……あ! お守り!」

トシ「それだ。それに入ってたんだろうね……ウルトラマンベリアルの力の入った、カードかカプセルか……メダル」

京太郎「メダル……」

32 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 00:55:25.09 ID:c6JmA97W0

おそらくメダルだと、謎の確信があった

父からのお守り、だがそれがなぜ


京太郎「メダルがなんだってんですか?」

トシ「それがベリアルメダルだったんだろうね。あんたが死にかけた時に、同化した」

京太郎「俺が死にかけ……あ!」


確実にあれだ。というより“彼女”が言っていた


京太郎「あのあと、俺はその……ベリアルさんのメダルと?」

トシ「ぶふっ!」


珍しいリアクションに、京太郎が疑問符を浮かべる


トシ「い、いや……ベリアルを、さん付けっ」

京太郎「なにがツボだったんです?」

はやり「さぁ?」

ベリアル『失礼な奴だな』


そんな声に軽く苦笑を返す


トシ「こほん……ともかく、そのあと外に捨てられてた京ちゃんを私が見つけて家に運んだと」

京太郎「俺、運ばれたんだ」

トシ「そういうこと、色々あってあんたの父親が鍵を握ってるんじゃないかって思ったら……」

京太郎「俺の父親知ってるんですか?」

トシ「知ってると言えば知ってる。ただ“ここの京ちゃんの父親”ではないけど」

京太郎「?」

トシ「ウルトラマン好きなんだよ。あんたの父親……なろうと思ってゼットライザーを作っちゃうくらいには」

京太郎「親父、こっち側なんだ……しかも変な感じ」

ベリアル『なにに憧れたんだかな、くだらん』

京太郎『ウルトラマンからの意見ですか?』

ベリアル『さぁな……それとオレはオレをウルトラマンなんざだと思ってねぇ』


なにか、複雑な理由があるのだろうと勝手に解釈して深く聞くのをやめた

今やるべきはそんなことでもない

自分の身の周りで起きたことの詳細、それを聞く方が先決だ


京太郎「それで、親父は一体?」

トシ「それは知らない」

京太郎「え〜」

トシ「あとは“怪獣”について、かね」

はやり「ん、それについては私からかな☆」

京太郎「お〜」
33 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 01:10:34.97 ID:c6JmA97W0


スーツ姿の瑞原はやり、説明を始めるために立ち上がった

コンピューターのキーボードを軽く叩くとモニターに映るのは怪獣

先ほどのベムラー


はやり「まぁ実際に怪獣が出たのは……今回が初めてだけどね」

京太郎「の割に、瑞原さん落ち着いてますね」

はやり「はやりで良いよ」


そう言うと、さらにキーボードになにかを打ちこむ

怪獣の映像が小さくなり、映るのはメダル

それは沢山の画像があるようで、怪獣が描かれたメダルが複数表示された


はやり「鍵はね、麻雀なの」

京太郎「……は?」

ベリアル『麻雀?』

はやり「ホントだよ?」

京太郎「ああいや、信じてないわけではないです。麻雀でその、殺されかけたんで」

ベリアル『ちょっとおもしろいな』

京太郎『おもしろくないっす』


自分も和と麻雀をして、死にかけたのだ

あの体を突き抜けるような激痛、遠のく意識


トシ「そもそも“この宇宙の麻雀”は……能力ってものが作用する」

京太郎「え、ああまぁ……聞いてはいます」

トシ「ここでは麻雀ってのは、異能を引き出すものでもあるわけだ。そのエネルギーに目を付ける奴がいてもおかしくないだろ?」

京太郎「麻雀の異能で発するエネルギー……ってことですか?」

トシ「そういうこと」


脳裏に浮かぶのはインターハイ

自らの仲間たちが戦った、数多の異能を持つ雀士たち


トシ「で、ちょっと話は変わるけど、どっかにこの星に害をなそうと言う奴がいた」

京太郎「この地球、に?」

トシ「まず人間を掃除するのに怪獣を使おうと思ったわけだ」

京太郎「あの、ベムラー?」

トシ「そういうこと、ただ怪獣を持ってくるよりもっと効率が良いモノがあった。怪獣の力の一部が入れられたメダル」


ベリアル『なるほどな』

京太郎『いや全然わかりませんけど』


トシ「その怪獣の力を持ったメダルと、この世界の雀士の異能を使う力を共振させれば」

はやり「……この通り」


再び大きく映し出されるベムラー

今までは水面下で凌いでいたが、とうとう怪獣が現れてしまったということだろう
34 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 01:28:12.18 ID:wVNMeWmW0

京太郎「じゃあ、和は?」

トシ「実際に見ていないけど、たぶんメダルを入れられたんだろう」

京太郎「メダルを?」

トシ「あんたと一緒だ」


自分と一緒、だと説明されてもハッキリとしない

京太郎自身とベリアルは、どちらかが支配している関係、では無いと思う

思いたいのだ、まだ出会ったばかりだが……


京太郎「……」

トシ「まぁメダルにも相性ってもんがあるからなんともだけどね」

京太郎「相性ですか?」

トシ「……まぁその時の感情だったり、相性だったり、状況だったり?」

京太郎「俺と、ベリアルさんは?」

トシ「さて、そこまでは知らないよ」


静かに息をつくトシを前に、京太郎は顔をしかめた


はやり「はやや、私の出番だったんじゃ?」

トシ「ん、すまないね」

京太郎「あ、それで……なんでしたっけ?」

はやり「……麻雀の話」


少し沈んでいるはやり

苦笑しながら眼を逸らす


京太郎「あ〜で、なんで今更、負けたぐらい俺は死にかけたんですか?」

はやり「たぶん、その原村和ちゃんに入っていたメダルがかなり強いんだろうね。強いメダルはそのぶん適合しないと弾かれるはずだけど」

京太郎「強い、メダル……あの天使」

はやり「まぁ強いエネルギーを持ったメダルと強い異能、それに負ければ……それも大差なんてただじゃすまないよね」


そう言いながら、そっと京太郎の傍による


はやり「でも、死までいくなんて……こわかったよね?」


やわらかな手が、頭の上に置かれる

妙に気恥ずかしくなって俯く

一方のはやりは暖かな笑みを浮かべて手を離した


はやり「うん、強い子だ……でもそんな君に、頼ることになる」

京太郎「?」


寂しげな声に、京太郎は首をかしげた


はやり「まぁなにはともあれ、メダルを入れた雀士が止まらずに勝ち進むと……エネルギーはどんどんと溜まっていく」

京太郎「……まさか、それで?」

はやり「そう、エネルギーが溜まると……メダルが覚醒する。怪獣が、現れるんだよ」
35 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 01:34:58.51 ID:wVNMeWmW0


京太郎「……つまり、雀士を止めれば怪獣は」


見えてきた答えを口にしようとした瞬間、扉が開く

入ってきたのは先ほどの女性

ようやくそこで京太郎は理解した


京太郎『佐藤裕子さん……』

ベリアル『誰だ』

京太郎『あ、え〜と……女子アナ?』

ベリアル『なんだそれは』

京太郎『ですよね』


なにかがわかったのか、裕子は三人を前に息をつく


裕子「身体に別状はありません……体内にメダルも、良くないエネルギーもデビルスプリンターも確認されませんでした」

京太郎「デビルスプリンター?」

トシ「ま、そこは良いよ。とりあえず別状はないんだね?」

裕子「はい、精神ダメージがあるのかまだ眠っていますが数値自体は至って正常です」

はやり「だって」

京太郎「良かったぁ」ハァ

トシ「運が良いねぇ……」

京太郎「でも、勝ち続けてしまったから……ベムラーになったんですよね?」


ベムラーメダルが入ったホルダーに手を添える


トシ「……ま、話の続きは明日でいいか」

はやり「夜も遅いですしね☆」

京太郎「あ、いや」

トシ「急いても仕方ないよ。ゆっくりしすぎてもしょうがないけど……」

京太郎「……はい」
36 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 01:42:43.27 ID:wVNMeWmW0


はやりに話をしていた部屋こと作戦室から少し離れた部屋に案内される

壁から伸びたテーブル、白いシーツが敷かれたベッド

椅子に小さな冷蔵庫なんかもあった


京太郎「ここは……」

はやり「一応、宿舎……で良いのかな」

京太郎「ありがとうございます」


ペコリ、と頭を下げると、はやりは笑って手を前で振る


はやり「こちらこそ、ありがとう……街と人を守ってくれて」

京太郎「いえ、俺なんてベリアルさんに」

はやり「それでも京太郎くんの、力でもあるんだよ」

京太郎「……はい」コクリ

はやり「それじゃあ、おやすみ」

京太郎「はい、おやすみなさい」


笑顔を浮かべて別れる二人

京太郎はそのまま、ドサッとベッドに倒れ込む

今日一日で色々とありすぎて、思うことが多すぎる


京太郎『ベリアルさん、俺たちどうなっちゃうんでしょう』

ベリアル『ハッ! オレは気に入らないものをぶっ潰す。それだけだ』

京太郎『できれば、それが怪獣であることを願いますよ』


それだけを言って、眼を瞑る

すぐに睡魔が襲い掛かってきた

心につっかえているのは和、彼女はどうなってしまうのだろうということ


京太郎(みんな、無事でいて欲しいけど……)


一抹の不安を抱えつつも、意識は微睡の中に沈んでいく


ゆっくり……ゆっくりと……

37 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 01:45:13.47 ID:wVNMeWmW0


   第一話【幻影を継ぐ者】  END

38 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 02:11:53.84 ID:wVNMeWmW0

―――次回予告


京太郎:消える雀士! 消える怪獣! もーわけわかんないっすよ!

京太郎:なにがなんだかわかんないけど、この力で人を守れるなら、俺戦います!

京太郎:って麻雀、かと思ったら麻雀じゃないしぃ!


次回【雀士で戦士】


ベリアル:おもしろい、斬ってみるか!

京太郎:あ、おもち
39 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 02:15:07.43 ID:wVNMeWmW0

これでエンドマークだ!(ここまで!)

はやりんが登場、まぁ他のプロ勢も別で出番はあるけども

ようやく一話終了、説明多かったのは反省している
次回からはサクサク話が進んでいくといいなぁ
ラブコメ風なこととかしたい

そしてなんとなく次回予告してみたけど次にするかはわからない

次は水曜とかかな?
そんじゃまたー
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/31(火) 02:23:47.42 ID:m+KrL3HU0
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/31(火) 03:12:59.81 ID:RFMEHvHU0
乙です
まだ一話目だけど結構伏線っぽいのばら撒いた感じか?
次回予告は何出るかすぐわかるなww
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/01(水) 07:48:51.71 ID:1PNYXinjO
かおりんの次にモモ(?)ってことは最初の方は鶴賀編って感じか?
それと質問なんだが安価って一話に一回ぐらいのペースである?
43 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/01(水) 21:28:56.41 ID:2s5yzSvb0
よっしやってくー

>>42
安価は大体一話に一回ぐらいかなーって感じっす
多いかなとも思ったけどー
44 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/01(水) 21:40:17.68 ID:2s5yzSvb0


―――【???】


胸を焦がす感情

熱いほどの野心と闘争心

なにかが、心を覆う、邪悪なナニか、深き闇―――


「っ……なんだよ、これ」


呟くように、言う


「ベリアルさんっ!? いないんすか!」


今、最も頼りになる相手、自らの半身

死の淵から救ってくれた“英雄-ヒーロー-”に近き者


「こんな闇っ」


その闇に戸惑いながらも

それでも

胸を焦がすその感情には、憶えがあった


つい最近も抱いた―――狂おしいほどの、憧憬を超えた感情


「嫉妬、妬み……」
45 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/01(水) 21:49:01.41 ID:2s5yzSvb0

―――【???:京太郎の部屋】


京太郎「ッ!!」バッ


勢いよく起き上がった京太郎

純白のシーツに汗のシミを残し、荒々しい呼吸をしながら自分の手を見る

一瞬だけ、自分の手に【漆黒の爪の生えた手】が重なって見えた


京太郎「っ!」ビクッ

ベリアル『なんだ? 起きて早々』

京太郎「あっ……すみません」


肩で呼吸をしながら、ベッドから降りる

着替えもなかったので下着姿で眠っていたので、エアコンからの冷風に少しばかり寒気を感じた

まず、着替えて部屋から出ようと、立ち上がった―――その瞬間


ウィン

はやり「おはよー☆」

京太郎「あ」

はやり「……」

京太郎「……」


沈黙、ただただ沈黙

京太郎とはやり、ただ沈黙

ベリアルは興味はないのか、なにも言わない


京太郎「……あの、とりあえず閉めてもらっても?」

はやり「はやぁっ!!? ごごご、ごめんねっ!!」ボンッ


真っ赤な顔のはやりがすぐさま背を向けて、自動ドアがゆっくりと閉まる


京太郎「……さて、着替えるか」

46 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/01(水) 21:55:45.89 ID:2s5yzSvb0


     第2話【雀士で戦士】

47 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/01(水) 22:03:04.37 ID:2s5yzSvb0

―――【???】


自動ドアが開いて、京太郎が出る

昨日と同じ服なので少しばかり匂いを気にしながらだ

出てすぐ横に、はやりが壁を背に立っていた


京太郎「お待たせしました」

はやり「はやっ!? ぜぜぜ、全然!!?」

京太郎(初心だなぁ


48 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/01(水) 22:15:16.12 ID:UMGkm6dA0
(間違えて途中送信しちゃった

京太郎(初心だなぁ)

はやり「と、とりあえず昨日の話の続きをしようか、とりあえず作戦室に行って」

京太郎(そもそも、ここってなんの施設なんだ? てかこの人らもなんなんだ?)

はやり「まずは」


瞬間、はやりのスーツのポケットから音が響く

着信音なのか、音の元たる端末を取り出してはやりはボタンを押す


はやり「どーしたの?」

裕子『協力な反応を検知しました。おそらくメダルを持った雀士です』

はやり「っ! すぐに行くよ!」

トシ『頼んだ。京ちゃんも……』

京太郎「え、俺もっすか!?」

トシ『頼んだよ。今の内に止めとかないと昨日みたいになる』


頭の中をよぎるのは昨日の街

火がと鉄となにかが焼けるような異臭

破壊された建物


京太郎「っ……」

はやり「私だけでも、まだ間に合うなら」

裕子『いつ“覚醒”してもおかしくありませんよ。この波形』

はやり「だからって戦いたくない子供をっ」

京太郎「行きます」

はやり「っ」

京太郎「……戦います。守りますよ俺が」

トシ『……京ちゃん、頼んだ』

京太郎「はい」


熊倉トシの言葉に、ハッキリと返事を返す

見えないだろうけれどしっかりと頷いて、だ

はやりは複雑そうな表情を浮かべる


京太郎「よくわかんないけど、戦います。街を、人々を守るために!」

ベリアル『……ふん』


おそらく、機嫌がよろしくないのは理解できた

自分の発言故なのかはわからない

しかし、ベリアルの力を借りなくてはならないのも事実だ


京太郎『ベリアルさん、お願いします!』

ベリアル『……』

京太郎『ベリアルさん?』

はやり「行こう、京太郎くん!

京太郎「あ、はい」
49 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/01(水) 22:28:08.34 ID:UMGkm6dA0


昨日と同じ車に乗り込む

今回は運転席にはやり、助手席に京太郎と二人だけ

目的は一つ―――怪獣メダルを持った雀士を止める


京太郎「ところで、俺はなにをすれば?」

はやり「あ〜話が途中だったもんね」


その言葉に頷く京太郎

改めてスーツ姿の瑞原はやりに違和感を覚えるが、今はそこに突っ込める雰囲気でもない


はやり「私は良くわかんないんだけどね……トシさんからの情報しか」

京太郎「はぁ」

はやり「……麻雀をしてもらうんだよ。私と一緒にね」

京太郎「……」

はやり「……」

京太郎「はぁ!!?」
50 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/01(水) 22:46:58.99 ID:TOJ3oX3q0


田舎道を走る車その車内で、なんとなく事情は説明された

未だに納得はできないが、それでも……やらざるをえないだろう

自分でも、役に立つなら、守れるなら


京太郎『ベリアルさん、俺にできますかね?』

ベリアル『さぁな、オレはまだお前のことを何も知らねぇ』

京太郎『確かに……』

ベリアル『ただこれだけはわかる』

京太郎『な、なんっすか』


おもしろそうに言うベリアルに、小首をかしげる

隣のはやりは車に装備されたカーナビを見ながら走っているようだった


京太郎『聞かせてくれないんですか?』

ベリアル『……さてな』


ケラケラ笑うベリアルに、顔をしかめる京太郎

隣のはやりが京太郎の方を横目で見て、なにかを察したのか苦笑する

―――瞬間、車に通信が入ったのか車内に声が響く


裕子『はやりさん! 雀士の真横を通り過ぎました!』

はやり「はやっ!?」

京太郎「え、今誰かいました?」

裕子『反応だけは確かなんですけどっ……近くに雀荘は!』

はやり「あるけど、と、通り過ぎるなんて」

裕子『歩いてます!』

はやり「はやっ!?」

京太郎「ど、どういう……」

ベリアル『ほぉ』


楽しそうなベリアルの声をよそに、車が止まると京太郎とはやりの二人が後ろの道を見返す

ただの道路、誰もいないように見える

京太郎とはやりは顔を合わせて、困惑に首をかしげた
51 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/01(水) 22:59:34.30 ID:8W6qAzpz0


車を近くのパーキングに止めて二人で歩く

はやりはサングラスをかけていてポニーテール

おそらくバレるのを防ぐためなのだろうけれど……


京太郎(おもちがっ! おもちが凄い!)

はやり「こっちの方のはず……」


通信機にもなっている携帯端末を持って歩くはやり

そのあとをついていく京太郎だが、確かにその先には雀荘が見えた

先ほど、すれ違ったというのがいまだにわからない


京太郎「なんだろ」

はやり「そこの雀荘にいるのは間違いなし、ここまでだよ」


そう言いながら、はやりが中に入る

次いで京太郎も入るのだが、中は普通の雀荘―――と言いたいところだが、雰囲気が異様

この雰囲気を京太郎は知っている。昨日味わっている


京太郎(そういや一日しか経ってないんだよなぁ……)

はやり「いるね。でも……」


卓数は8つ、はやりが端末を左右に振るが、反応が近いためか細かくはわからないようだ


京太郎「……」

はやり「逃げただけでは、ないはずだけど……」

京太郎「あ」

はやり「ん?」

京太郎「わかったかも」

はやり「え、ほんと!?」
52 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/01(水) 23:07:01.27 ID:8W6qAzpz0


憶えはある。あったはずだった

話したことこそないものの、確かに彼女のことは聞いている

消える雀士、それにはあの原村和も崩されかけた


京太郎「……」キョロキョロ

はやり「京太郎くん?」

京太郎「はやりさん、あの三麻の卓」


指差した先の卓、三麻をやっているように見えるが、雀牌はしっかりと置かれていた

意識しだしてようやく違和感を感じたのかはやりも“なるほど”と頷く


京太郎「……消える雀士」


揺れる空気、倒れる牌

決着は着いてしまったのだろう

相手どっていた雀士三人が倒れた


京太郎「っ」

はやり「他の人は気にもならないよ。しばらくしないとね」

京太郎「随分、都合が良い力なようで」

ベリアル『ハッ、おもしろい力だな……』


徐々に、その姿を捉えられるようになってくる


京太郎「鶴賀学園……」

シュゥゥゥッ

京太郎「東横、桃子……」


桃子「……」ニヤッ

53 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/01(水) 23:25:22.77 ID:8W6qAzpz0


倒れた一般人をそっと壁際に寄せる

はやり曰く『病院に連れて行ってどうにかなるものでもない』らしい

京太郎とはやりの二人が東横桃子の座る卓につく


京太郎「素直にやってくれるんですね」

はやり「まぁ強い雀士を倒した方が覚醒が近づくからね……トシさんからの情報だと」


つまり―――


京太郎・ベリアル『飛んで火に入る夏の虫、か』


二人の声が重なる


京太郎「……っていうか、俺にほんとにやれるんですか?」

はやり「メダルを入れた雀士は強くなるからね、ベリアルメダルの入った京太郎くんなら」

京太郎「ベリアルさんのおかげで、ですか……」

はやり「まぁね……それは敵も一緒だけど」


自分も相手も強化をされているらしい

だが、元が弱い自分がベリアルメダルを入れるだけでそれほど強くなれるのか甚だ疑問でもある

それでも、自分は頼られた―――自分は、頼られたのだ


ベリアル『……』

京太郎「役に、たちますか?」

はやり「うん、トシさん曰く京太郎くんとベリアルメダルの相性は、かなりいいらしいから」

京太郎「わかり、ました……」

はやり「それと」

京太郎「はい」

はやり「これもトシさん情報だけど……ビックリしすぎないでね?」

京太郎「は、はい……?」
54 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/01(水) 23:33:05.87 ID:8W6qAzpz0


自動卓のボタンを押すのは、桃子

ガラガラと音を立てて、牌が自動卓の中で移動していく

東横桃子から溢れだすのは、オーラ


京太郎「っ!」

ベリアル『ハッ、くるぞ小僧!』

京太郎『……はい!』


消える東横桃子、だがその淀んだ邪悪な闇が、ハッキリとわかる

手元にせり出てくる雀牌

それに触れて、感覚が妙に鋭くなっていくのがわかる


京太郎(え、てかこれ鋭くなるってか……視界が、細まるって、いうか……)

55 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/01(水) 23:44:25.19 ID:8W6qAzpz0


―――【???】


しっかりと、眼を見開いた

雀卓の前に自分はいた―――はずだ


京太郎「はず、なんだけど……」


街―――だった。

そこは街で、先ほどまでいた雀荘の前

田舎道にある雀荘だ


京太郎「えっと……」

ベリアル『そういうことか』

京太郎「え、わかります?」

ベリアル『ハッ! 別にそれほど珍しいことじゃない』

京太郎「そうなんっすか?」

ベリアル『夢の中に出る怪獣の話を聞いたこともあるしな』

京太郎「え、どうやって倒すんですか?」

ベリアル『寝て戦うに決まってるだろうが』

京太郎「えー」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/01(水) 23:48:26.15 ID:3pU3szVC0
ティガにそんな怪獣いた気がするww
あれは夢の中に出たとは違うけど
57 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/02(木) 00:00:45.60 ID:39PjmD9I0


京太郎「にしても、俺は一体これからどうすれば―――」


瞬間、轟音が響く

ビクッと体を震わせてそちらに目をやれば

少し離れた場所に―――


京太郎「なんもいない……」


しかし建造物は倒れている

次の瞬間、さらなる轟音と共に近場の木々が潰された

焦って走り出す京太郎


京太郎「なんだよぉ!」

ベリアル『怪獣だな、ハッ……あいつは確か』

京太郎「と、ともかく!」


取り出したゼットライザーのトリガーを引くと前方に現れるゲート

背後の道が潰される音が響く

ナニカに潰されるより早く、京太郎はゲートへと飛び込んだ


京太郎「い、命拾いしたっ!」

ベリアル「ハッ! 早くしろ! 暴れたい気分だ!」

京太郎「りょ、了解っす!」

ベリアル「それにここなら、好きなだけ暴れられるしなァ!」


頷いて、京太郎が左手にウルトラアクセスカードを持つ

それを右手のゼットライザーにセットするとブレードを稼働させる


ベリアル「いくぞ小僧!」

京太郎「ベリアァル!」


トリガーを引き、叫ぶ!

58 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/02(木) 00:27:09.86 ID:gzXPI60Z0

空から降りてくるのは白銀の巨人

ウルトラマン、とベリアルは呼ばれたくないとは言っていた

故に呼ばなかったのだが―――ウルトラマン。そう言うにふさわしいと京太郎とて思ってはいる


京太郎『……ベリアルさん、東横さんを助けるために戦いましょう!』

ベリアル『……良いだろう』


意外といえば意外なのだ

粗暴な雰囲気を出すベリアルがここまであっさり自分に協力してくれるのは……

だが、それで助かっているのも事実

そして、まだ変に踏み込んで聞くほどの関係ではないと京太郎とて理解していた


ベリアル『ボケッとしてるな、いくぞ小僧!』

京太郎『はい! ……ってどこに?』

ベリアル『こいつは……』

????「―――!!」


瞬間、咆哮が聞こえた

それと共に衝撃で吹き飛ばされるベリアル

当然変身している京太郎自身も、ダメージを受ける


京太郎『ぐああっ!』

ベリアル『ぐっ……このオレが!』


吹き飛ばされて、身体はそのまま民家を押しつぶして倒れた

顔をしかめる京太郎は、ベリアルの身体を気遣いつつ起き上がる

もちろん京太郎が起き上がればベリアルの身体も起き上がるのだが……


????「―――!」

ベリアル「グアアッ!」


“なにもない空間”から電撃

それを受けてベリアルは黒煙を上げながら、膝をつく

咆哮が聞こえる


京太郎『ベリアルさん! 動きましょう!』

ベリアル『当然だ!』


すぐに横に転がると、先ほどまでいた場所に電撃が直撃していた

京太郎とてなんとなく理解してる

ベリアルの能力は本来ならばもっと高いはずだ


京太郎『すんません、足引っ張って!』

ベリアル『……』

京太郎『でも、それでもっ!』
59 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/02(木) 00:44:01.43 ID:gzXPI60Z0


京太郎『俺は……戦う、東横さんを助ける!』


転がるベリアルがさらに電撃を避ける

京太郎はハッキリとその願望を口にし、闘志を込めた瞳を虚空に向けた

ベリアルの笑い声が聞こえる


京太郎『ベリアルさん?』

ベリアル『フハハハ! 小僧、ちったぁ戦士らしい眼をする』


そう言うと、京太郎と共に構えを取るベリアル

爪を透明な虚空に向け、しっかりと足を踏みしめる

ベリアルの胸のカラータイマーが点滅を始めた


京太郎『これは?』

ベリアル『不安定な状態じゃ、動ける時間に限界があるってことだ』


つまり、見えない敵を相手に、一方的に攻撃してくる相手に、時間制限までついた

頭を回転させる京太郎

先ほどからの電撃攻撃、破壊された建物


京太郎『もしかしたら!』

ベリアル『やってみろ』


両腕を前に構えるベリアル

その瞬間、右側からの電撃が直撃する


ベリアル「グゥッ!」

京太郎『右ぃ!』


そちらへと顔を向けるベリアル


京太郎『デスシウムロアー!』


顔の、口あたりから放たれる破壊音波

それが攻撃するのは地面であり、巻き起こる砂埃


ベリアル『ハッ! おもしれぇ』
60 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/02(木) 01:01:59.26 ID:rPNSB7PE0


◆BGM:DREAM FIGHTER【http://www.youtube.com/watch?v=2bJEDgeuVtE


その砂埃は敵の姿を映しだす

静電気により、その怪獣の姿が見えるようになった

形は曖昧だが、おおよそは理解できる


京太郎『四足歩行?』

ベリアル『ネロンガか』

京太郎『……知ってましたね?』


おそらく、自分を試したのだろう


ベリアル『上出来だ。もうしばらくは、お前の身体を使ってやる』

京太郎『あはは、ありがたいことで……』

ベリアル『それにしてもネロンガ、相手をするのは初めてだな』


そう言うと、素早くその場から退く

迸った電撃がベリアルの真横を奔った


ベリアル『おもしろい、斬ってみるか!』

京太郎『はい!』


ベリアル・京太郎『デスシウムリッパー!』


胸の前で両手を水平に振るう

放たれる斬撃が、ネロンガの頭部にあった角を斬り裂いた

咆哮を上げるネロンガの姿が露わになる。今度はハッキリと


ベリアル「デヤァッ!」


跳び上がり、ネロンガを飛び越えるその瞬間、爪撃をくわえる


京太郎『まだまだぁ!』


さらに斬撃、斬撃、打撃

怒涛の攻撃に、ネロンガはひるみ、吹き飛んで倒れる

まだ立ち上がろうとするネロンガを前に、ベリアルは右手に紅い稲妻を纏う


京太郎『東横さんを、返してもらうぞ!』


そして水平に構えた左腕の後ろに、垂直に右腕を構える


京太郎・ベリアル『デスシウム光線!』

61 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/02(木) 01:11:58.40 ID:rPNSB7PE0


光線の直撃と共に、爆散するネロンガ

その爆煙を前に、ベリアルは静かに立つ

赤いカラータイマーが点滅し、音を鳴らしている


京太郎『……やりましたね』


なにも言わぬベリアル

地を蹴り、上空へと飛び上がり―――精神世界から去る

京太郎は、東横桃子の無事を願いながら

62 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/02(木) 01:26:01.06 ID:rPNSB7PE0


―――【雀荘】


意識がはっきりと戻ってくる

だが突如、京太郎の脳内に溢れる記憶


京太郎「ッ!」

ベリアル『ほう、そういうことか』


ハッキリと、記憶があるのだ

東横桃子、瑞原はやりの二人と―――麻雀をやった


京太郎「これは……」

はやり「京太郎くん?」

京太郎「あ、はやりさん……」


桃子の方に視線をやると、意識を失っているようだった

視線をはやりの方へ移すと、安心したような表情を浮かべている


はやり「話に聞いていたより全然、麻雀強いね」

京太郎「そう、なんですかね……」


手に感触もある。自分が打ったと言う経験すら残っていた

精神世界で戦った自分と麻雀を打った自分、どっちが本当かわからない

あるいは両方が本物だからおかしな感覚なのだろう


京太郎「……」

ベリアル『どうでもいいことだ。お前は……戦うだけだ』

京太郎「雀士として、戦士として……」

はやり「……京太郎くん、東横さん連れて行こう? 今ならまだ、認知されてない」

京太郎「え、あ、はい」


周囲のだれも気にしていないようだった

立ち上がった京太郎

昨日ほどの倦怠感はないものの、疲労は確かにあった

京太郎「よっと」

はやり「行こう」
63 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/02(木) 01:36:00.42 ID:rPNSB7PE0


車に乗り込むはやりと京太郎

後部座席に桃子を横に寝かした状態にする

息をついて座席に身体を預ける京太郎


はやり「ありがとう、京太郎くんが……きっと戦ってくれたんだよね。私の知らないとこで」

京太郎「……いや、はやりさんも麻雀してましたし」

はやり「ううん、勝ったのは京太郎くんだから」


確かに、喜んだ感覚すらも存在するが、自分が自分の力だけでそんな結果生み出せるわけがないのだ


京太郎「……複雑ですけど」

はやり「割り切れると良いね。借りものだとしてもそれは京太郎くんの力だよ」

京太郎「そう簡単に割り切れませんよぉ」


苦笑するはやりが車を動かす

少しの揺れと共に、来た道を引き返していく

今はハッキリと東横桃子の姿が視認できる


京太郎「……」チラッ

桃子「……」ガタンッ タユン

京太郎「あ、おもち」

はやり「おもち?」

京太郎「なんでもないです!」
64 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/02(木) 01:43:47.87 ID:rPNSB7PE0
とりあえず今回はここまでー
次回は第二話後編、安価もある

まだ設定というか世界観説明みたいになってる
もうちょっと明るい話とかもいれられるようどんどん進めてくよー

次はたぶん金曜日になりますー
そんじゃまたー
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/02(木) 01:53:33.96 ID:oC++A9Jm0
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/02(木) 11:06:48.54 ID:Pd5teehk0

京太郎はしっかりウルトラマンやりはじめたな
今後も長野で戦ってく感じか?
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/03(金) 03:31:40.71 ID:7hkduUvP0
麻雀も強くなりつつ事件解決してく感じなのか
次の安価はどんなのだろう
68 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 14:04:55.66 ID:GvpZ09gL0
こんな昼間っからちょっとだけやるー

>>66
全国もいくよー
第一部長野的な
69 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 14:16:23.39 ID:2W1DMbNk0

―――【???】


車が昨日と同じく施設内の車庫へと入る

息をつくはやりが隣を見れば、そこには眼を閉じて眠っている京太郎

背後の東横桃子も、眠っているようだ


はやり「こんな子供に、守ってもらっちゃって……」


そっと、京太郎の頬に触れる

脳裏に浮かぶのは、昨日のウルトラマンベリアルの姿


はやり「それは京太郎くんで……」


少しばかりの溜息をつきながらも、自身の頬を二度叩く

やることは一つ、今は目の前の少年のサポートと、街を―――世界を守ること


はやり「さて……起きて京太郎くん」ユサユサ

京太郎「んぁ……え?」

はやり「おはよう」フフッ

京太郎「……すみません!」バッ

はやり「いいよ、お疲れさまだね……東横さんをお願いして良い?」


頷くと、京太郎はすぐに車を降りて桃子を抱える

そんな姿を見て、少しばかり眉をひそめはやりは笑った
70 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 14:39:11.50 ID:0daSruSx0

―――【???:作戦室】


京太郎は、東横桃子を裕子に預け戻ってくる

佳織の方の精密検査の結果はもう出ていると聞いた

その話を聞くためにも、トシとはやりの二人を眼前に席に着く


京太郎「お待たせしました」

トシ「いいや、こっちも積もる話だらけだからね……」

京太郎「そりゃそうか……ところで」

トシ「妹尾佳織なら心配ない。全ての数値が正常だね」

はやり「後は起きるのを待つだけだね……今までのパターンと一緒」

京太郎「麻雀で倒したパターンとってことですよね?」

トシ「ん、ところで東横のメダルは?」

京太郎「え、麻雀で倒してもメダルって出るんですか?」

トシ「そりゃね、身体から出たメダルを手に入れないと、どうにもならないし」

はやり「元を断たないとってことだね」


そう言って、はやりが取り出すメダル

先ほどの怪獣ネロンガが描かれているところを見れば、やはりそれは昨日のベムラーと同じ


京太郎「……怪獣メダル。こんなもの」

ベリアル『ハッ、地球はどこも狙われるもんだ』

京太郎「地球は、どこも……?」

ベリアル『ともかくだ、気にいらねぇ……怪獣の力はともかく……』

京太郎「ともかくって……?」

トシ「デビルスプリンターは?」

はやり「はや? ああ例の、そっちに関しては……倒した時に同時に、消滅を確認してます」

トシ「なるほどね」


頷くトシに、京太郎は小首をかしげた

ベリアルはなにを言うでもない
71 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 14:55:26.04 ID:0daSruSx0

少しばかりの沈黙

三人とも考えることは山ほどあるということだろう

そして、京太郎は沈黙を破る


京太郎「そういえば、今日って平日ですよね……俺、学校が」

トシ「そっちは大丈夫、それに妹尾や東横の方も大丈夫にした」

京太郎「した?」

トシ「ああ、した」


その言葉に、京太郎が小首をかしげた


京太郎「した、って……どういうことっすか?」

はやり「そのままの意味だよ。公休扱いでどーにでもできるってこと」


そこにきて、根本的な疑問が浮かぶ

昨日と今日でそれどころでは無かったものの……


京太郎「……ここ、なんなんです?」

トシ「……言ってなかったっけ?」

はやり「なかった?」

京太郎「ないっすよ!」

トシ「……じゃあ改めまして」


そう言ってキーボードを叩くトシ

モニターに表示されるのは逆三角のエンブレム

なにやらしっかりと装飾もされていた


トシ「政府極秘公認、特異災害及び特異現象及び超常現象対策課……略して特異課」

はやり「まぁ……お金全然ないけどね」

トシ「実際に怪獣も超常現象も起きてるんだ、こっからだよ。経費使い放題」

はやり「お酒飲み放題ですね」

ベリアル『欲望まみれだな、ハッ!』

京太郎「えっと……とりあえず学校のことは特異課にお任せするとして」
72 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 15:07:27.92 ID:0daSruSx0


もう一つの疑問が思い浮かぶ

京太郎ははやりが置いたネロンガメダルを手に取った

そこに描かれるネロンガ、そしてホルダーのベムラー


京太郎「和は、原村和は……学校に? それにまこ先輩と、南浦数絵とか」

トシ「……秘匿されてるけど、今は珍しくないんだよ」

京太郎「え?」

トシ「雀士の行方不明」

京太郎「……ま、じっす、か」

はやり「うん、メダルを入れられて敵になっているのか……それとも」

京太郎「嘘でしょ。ゆ、優希! 片岡優希と竹井久さんは!」


焦ったように聞く京太郎に、トシは手を前に出す

落ち着けと言いたいのだろうと理解するが、そう簡単にできるものでもない

はやりが横に来てそっと背中に手をそえた


はやり「わかる、私の友達も行方不明だから……」

京太郎「はやりさん……」

はやり「私たちがやらなきゃだから、今は……ね?」

京太郎「っ……はい」コクリ

トシ「正直に話すとだ、行方不明さ。今あげた全員」

京太郎「なら」

トシ「でも必ず動き出す。それは間違いない……」

ベリアル『後手後手だな』

京太郎「……待つしか、ないか」


そう言って肩を落とす京太郎

トシは静かに、背もたれに身体を預けた

京太郎の背中に添えられていた手が、離れる



はやり「ゆっくり、それまでしっかり休まないとだね」

京太郎「……はい」コクリ


二人が部屋から出ていく


トシ「……明確に全国に広がる前に、なんとかしないと、だねぇ」フゥ

73 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 15:21:58.12 ID:0daSruSx0

―――【特異課施設:京太郎の部屋】


部屋に入った京太郎が、背を伸ばした

徒歩10分の道のりでコンビニまで行って買ってきた紙パックの飲み物にストローを差す


京太郎「みんな、行方不明……きっと、咲も」


幼馴染を思い浮かべる

数々の出来事、この夏での仲間たちとの……

咲と、麻雀部の者達と、あの―――


京太郎「っ」


燻るような感覚


ベリアル『ハッ……』

京太郎「なにがおもしろいんっすか?」

ベリアル『さぁな』


投げやるような言葉に、京太郎は顔をしかめた

ベッドに体を投げて自らの手を真上に向ける

今朝見えたのはなんだったのかと思い出す

ベリアルの白銀の指先でなく、黒い爪


京太郎「俺は、どうすればいいんだ」

ベリアル『振りかかる火の粉全部、吹き飛ばしゃ良いんだよ』

京太郎「爆風消化ってレベルじゃないっすね」ハハッ

ベリアル『ああ、それで見えた火の元を……叩き潰す、だろ?』


その言葉に、頷く

言葉こそ粗暴、しかし言っていることに間違いを感じない

やることは一致している


自分とベリアル、今はまだ、相棒なのだ……

74 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 15:30:18.12 ID:0daSruSx0


     第2話【雀士で戦士】 END

75 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 15:41:01.27 ID:0daSruSx0


◆次にやることとは?


1、清澄高校に向かう

2、鶴賀学園に向かう

3、桃子か佳織が起きるまで待つ




76 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 15:45:02.45 ID:0daSruSx0
一旦ここまでー

再開は本日の21時30分から22時の間ぐらいの予定ー
多少ストーリー変わるけども、ここは多少

そんじゃまたあとでー
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/03(金) 16:35:43.53 ID:7hkduUvP0
乙ー
多少の変化ならモモとの絡み求めて3だな
78 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 21:25:57.83 ID:7wrwALsG0
帰ってきたー
とりあえず安価から、30分からやってきますー
変化は多少のことなんで気にせずどうぞ
79 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 21:30:07.82 ID:7wrwALsG0

◆次にやることとは?


1、清澄高校に向かう

2、鶴賀学園に向かう

3、桃子か佳織が起きるまで待つ


◇5分間で↓1からコンマが一番高いルート
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/03(金) 21:31:20.79 ID:7hkduUvP0
3
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/03(金) 21:35:12.29 ID:R94A1aAKO
2
82 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 21:37:47.02 ID:7wrwALsG0


3、桃子か佳織が起きるまで待つ

83 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 21:48:40.71 ID:7wrwALsG0

あれから五日が経った

京太郎はと言えば、家に帰って荷物を取って来たり寝たり

少し運動したり、ベリアルやはやり、それに裕子と話をしたり

―――戦ったり、の日々である



森林地帯。ここもまた精神世界

二足歩行の怪獣、シルバゴン


京太郎・ベリアル『デスシウムリッパー!』


水平に腕を振るえば放たれる斬撃

それが真っ直ぐに―――シルバゴンの首を落とした


ベリアル「……ハッ!」


そして白銀の巨人、ベリアルは空へと消えていく
84 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 22:00:32.90 ID:7wrwALsG0

―――【特異課施設:作戦室】


ドアが開いて、京太郎が入ってくる

肩をぐるぐる回しながら、欠伸を噛み殺す


京太郎「戻りました〜」

裕子「あ、お疲れ」

トシ「お疲れさん」

京太郎「うぃっす」


軽く返事をして、ググーッと体を伸ばした


京太郎「あれ、トシさん三日ぶりです……てか怪獣倒した時ぐらいしか来ないじゃないっすか」

トシ「これでも忙しいの」

裕子「今回は風越の麻雀部生徒だったみたいね」

京太郎「はい、詳しくは知りませんけど


そう言う京太郎に裕子も『レギュラーメンバーじゃない』ということを伝える

知っている顔ばかりがこうなるものと思っていた京太郎だったが、三日前の“戦い”でも知らない他校の生徒だったことを思いだす


京太郎「ここ二回とも余裕でしたけどね」

トシ「麻雀の腕も能力も、妹尾や東横と比べれば……だからね」

京太郎「不思議なもんですね。それで怪獣の強さが変わるなんて」


そんな言葉に、裕子は苦笑する


裕子「こっちから見てる分には麻雀してるようにしか見えないけれど」

京太郎「そっすよね……」

トシ「それとメダルとの相性もそれほど良くないんだろう」

京太郎「そういうもんっすか?」

トシ「そういうもんさ」
85 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 22:10:40.47 ID:7wrwALsG0

さらに、ドアが開いて入ってくるのははやり

スーツ姿で、身体を伸ばしながら

見慣れたそんなはやりを前に、京太郎は頷く


京太郎「お疲れさんです」

ベリアル『アイツは麻雀打ってただけだろ』

京太郎「そんなこと言わない」

裕子「え?」

京太郎「ああいやなんでも!」


未だに裕子は、京太郎の中に“ウルトラマン”がいることを知らない


はやり「……お疲れ様だね、京ちゃんも」

京太郎「うっす」フッ

トシ「仲良くて結構」

はやり「まぁバディですし?」

トシ「あんたと京ちゃんでバディ・ゴーと」

京太郎「ボケました?」

トシ「どっちの意味か知らないけど、場合によってはぶつよ」

京太郎「すみません」メソラシ


謝って視線を逸らすと、丁度裕子と眼が合う

裕子がハッとしてポンと手の平を拳で叩く


京太郎「?」

裕子「妹尾さんと東横さんが起きました」

京太郎「……えっ!?」

はやり「はやっ! 早く言ってよ!」

トシ「それじゃ、行くかね」
86 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 22:23:02.83 ID:7wrwALsG0


     第3話【連続車両失踪事件】

87 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 22:30:58.91 ID:7wrwALsG0

―――【特異課施設:休憩所】


丸テーブルがいくつも置かれた場所

その一つのテーブルを囲むようにいる京太郎、はやり、裕子、トシ

そして……


桃子「えっと……」

佳織「そのぉ……」


東横桃子と妹尾佳織の二人

入院患者のような服を着ている二人の前に、京太郎は冷静さを保つのに精いっぱいだ

深くは語るまい……


ベリアル『こいつら、ただの人間だな』

京太郎『そりゃそうですよ、俺の知ってる二人です』

トシ「二人共別状ないようでなにより」

桃子「別状どころか、記憶も曖昧で」

佳織「私なんてほとんどないよぉ」


その方が幸せだとは言うまい、と京太郎は目を伏せる

桃子はともかく佳織はあんまりだ

トシはラッキーだと言っていたがどこがだ、と京太郎は心の中で悪態をつく


トシ「さてと……じゃあ説明を始めようか」

京太郎「どこまで?」

トシ「怪獣のメダルと、身に降りかかったことについてね……」

88 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 22:40:34.69 ID:7wrwALsG0

説明したのは、文字通りおおよそのことだ

最近このあたりで起きたこと、メダルを入れられたこと

それによって、麻雀をしてどういうことがおこったのかということ……


京太郎(さすがに、妹尾さんの怪獣化までは話さなかったけど……)

ベリアル『いずれわかることだろ』

京太郎『それでも、ですよ……今はね』

ベリアル『ふん』


苦笑する京太郎は佳織と桃子の二人に視線を向けた

どういう状況か、飲み込もうとしていはいる。いるのだが……


桃子「か、怪獣メダルで……」

佳織「雀士が大暴れで雀士が大変?」

トシ「まぁ、大体そんな感じ?」

京太郎「そんな感じですか?」

はやり「誰にメダルを入れられたとか、わからない?」

桃子「えーっと」

佳織「どうして、いつ……」


二人が頭を抱えている

それを見て、京太郎はトシの方に視線を移す

言いたいことは理解できたのか、トシは頷く


トシ「まぁ良いよ、その内思い出すだろ……」

はやり「そういうものかなー?」

トシ「そういうもんだよ」

裕子「それじゃ今日は解散で、妹尾さん東横さん、二人もゆっくり休んでね」

桃子「は、はい!」

佳織「え、えっと……お、お願い、します?」


はやりと裕子の二人が笑みを浮かべて頷いた

89 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 22:56:40.44 ID:1PSdxxpq0


それからしばらくして、京太郎は先ほどと同じく休憩所

一度、部屋に戻ったもやることもないとそこで麻雀のアプリをしている

はやりが一度通って、世間話をしたが忙しいのか去って行った


京太郎「んー」

ベリアル『おい、テレビを見ろ』

京太郎「あ、またっすか?」


点いていたテレビに映っているのはベリアル

あの日、ベムラーと戦う姿

ここ数日はずっとこうだが、それもまた仕方ないことだ


京太郎「よく雀士が消えてることだけでも隠せてるよなぁ」

ベリアル『ハッ、時間の問題だろ』

京太郎「ですけどね」

??「一人事っすか?」

京太郎「うおっ!?」ビクッ


突然の声に驚きながら首を声のした方へと向ける


京太郎「東横さん……」

桃子「私とかおりん先輩があんなことになってる内に、とんでもないことになってたんっすね」

京太郎「あ〜、あはは、らしい」

桃子「怪獣にウルトラマン、なにがなんだか……」

京太郎「……俺もだよ」ハハハ
90 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 23:06:18.65 ID:1PSdxxpq0


桃子と二人で話す

そんな機会があるとは京太郎とて夢にも思っていなかった

不思議な感覚を覚えながらも、会話は止まらない


桃子「須賀さんも大変っすねー」

京太郎「まぁお互いだけど……先輩、だっけ?」

桃子「はい、どうやら学校に行ってたり雀荘に行ってたりで、足取りつかめてるって言ってたんで安心ですけど」

京太郎「そりゃなによりです」


ただ、純粋にその言葉を送る

だが桃子の方はというと、少しばかり眉をひそめる


桃子「あ〜清澄はその」

京太郎「麻雀部、全員行方不明らしいから……まぁ内、和にやられてっけど」

桃子「じゃあそのかたき討ちのために?」

京太郎「……そんなつもりじゃないけど」


そんなつもりではないはずだ。だが、実際はどうなのだろうか?

街を、人々を守りたいから戦っているのではないのか?

悩む京太郎


京太郎「……」

??「あ、モモちゃんと須賀君」

桃子「かおりん先輩!」

京太郎「妹尾さん、大丈夫そうっすね」

佳織「あ、うん……聞いたよ。須賀君が助けてくれたって、ありがとう」ニコッ タユン

京太郎「あ、はい」

京太郎(めっちゃおっぱい揺れるやんけー!)ヒャッホー


そして悩みが吹き飛ぶ京太郎だった

91 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 23:13:26.28 ID:1PSdxxpq0


―――深夜【道路】


長野の地を走る一台の車

真紅のRX-7が風を切って走る

そして、その運転席に座るのが……


はやり「いや〜! やっぱ自分の車が一番だなー!」


自分が出した曲を流しながら走る

特異課の4WDとはまったく違う爽快感


はやり「ん〜今度は京ちゃんも乗せてあげよー」

ピーピーピー

はやり「はやっ?」


車の速度を落として、改造して装備したカーナビに触れる

モニターに映るのは裕子の顔

眠そうな顔をして眼をこすっている


はやり「どしたの?」

裕子『ふぁ〜えっと、その近くにぃ、特異反応がぁ』

はやり「寝てたね」


そう言いながら、カーナビの画面に表示された方へと走る
92 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 23:29:23.43 ID:1PSdxxpq0


反応をたどって車でやってきた

砂利道を走り、街灯も民家も少ないそこで止まる

倉庫のようなものがいくつもあるが、それだけだ


はやり「ん〜……」


車を降りて、はやりは背を伸ばす

綺麗な空気を肺一杯に入れて深呼吸

そしてケータイを取り出して歩き出す


はやり「ライトつけないと危ないかぁ」


ケータイでライトをつけて車から離れて歩く


はやり(というか、一人って危ない気も……いやいや)


懐から取り出すのはメタリックな銃―――のようなもの

トシ曰く【ガッツハイパー】とかいう名前、円柱型のカートリッジをいくつか左手に持って歩く

ライトを点け目の前を照らしながら……


はやり「ちょっと怖いなぁ……」

ガシャンッ

はやり「はやぁっ!!?」


大きな音に驚いて、ケータイを落とす

少し地面が揺れる感覚を覚えるが、きっと動揺しているからだろう

ケータイを拾って周囲を見渡すが、なにもない


はやり「はやぁ、京ちゃんに来てもらえばよかったぁ」


そこで気づいて、後ろへと振り向く


はやり「え?」


さらに、周囲を見渡す


はやり「え……え?」


おかしい、そんなわけがない

93 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 23:33:32.37 ID:1PSdxxpq0


ライトが左右へと振られる

はやりの目もくるくる回っていく


はやり「は、は……は……」


倉庫しかない。そう、なかった

“倉庫しか”なかったのだ


はやり「は、はやりの車アァァァァァァァッ!!!!????」

94 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/03(金) 23:43:54.81 ID:1PSdxxpq0

―――朝【特異課施設:休憩所】


京太郎が作った朝御飯を、桃子と佳織の二人と食べる

昨日の話の流れからそうなったのだが二人共満足そうでなによりと頷く


京太郎「さて、今日は……」

裕子「あら須賀君」

京太郎「ああ裕子さん、どしたんですか?」

裕子「いやぁ、作戦室で寝ちゃって〜異常反応があって〜」

京太郎「へぇ〜」


そう返事をしながらテレビへと視線を向ける

裕子も欠伸をしながらそちらを見て……なにかを思いだそうとしていた


桃子「え〜この辺のニュースっすよ」

佳織「結構、この辺のニュースに敏感になってるみたいだね、みんな」

京太郎「車が一晩で何十台も消えた?」

裕子「なんか思い出しそう……」

京太郎「なんかって……あ、はやりさん」

裕子「そうそう! 瑞原さん!」


そう言った瞬間、止まる

京太郎は小首をかしげて裕子の背後の方を見ていた

裕子の脳内に昨夜のことが、鮮明に思い出される


京太郎「ってどうしたんっすか?」

はやり「……」


振り返る裕子

俯いているはやりは、少しばかりボロっとしているようにも見えた

この季節といえど数十キロも歩いたせいか汗もかくだろうし、髪もぼさっとしているし


裕子「ごごご、ごめんなさい」メソラシ

京太郎「はやりさんどうしたんっすか?」


そう言って、近づいていく京太郎

俯いていたはやりが顔を上げると―――その瞳には一杯の涙

ギョッとする京太郎


京太郎「どどど、どうしたんっすか!?」

はやり「は、はやりの車ぁぁぁぁ」ビエーン

京太郎「く、車……車ぁ!!?」


桃子「……なんか大変そうっすね」

佳織「だねー」

95 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/04(土) 00:08:18.89 ID:hctyo9Wo0


―――【特異課施設:作戦室】


集まっているのは京太郎、トシ、はやり、裕子の四人

イツメンというやつである

超常現象だということで色々と情報を整理しようとも思ったのだが……


京太郎「えっと……」

はやり「うぅ〜」エグエグ

京太郎「なんつーか、はい」


泣いているはやりの背中を撫でる

昨日キラキラの瞳で出かけて行ったはやりが脳裏を浮かぶ

哀れである


京太郎「えっと……怪獣ですか? リアルに」

トシ「だろうねぇ、想像つくけど」ハァ

京太郎「さすがっすね

裕子「どんな怪獣なんですか? 周囲のものを砂に分解するとか?」

ベリアル『そう言われると波動生命体を思い出す』

京太郎『知ってるんですか?』

ベリアル『まぁ今回は違うと思うがなぁ』

京太郎「?」

トシ「昨日、はやりが行ったとこの地図出せるかい?」

裕子「あ、はい」


キーボードを叩く裕子

モニターに映し出される上空からの映像


京太郎「倉庫が沢山……」

裕子「元、廃車ばかり置いてあった場所らしいけど」

はやり「なかったよ? 視えるのはシャッターばっかで……」

トシ「ん〜なるほどね」

京太郎「なるほどって?」

トシ「倉庫かぁ」
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/04(土) 00:10:30.28 ID:liNF0+G40
ギャグ回かww
はやりんかわいそうww
97 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/04(土) 00:18:42.07 ID:hctyo9Wo0

手を顎に当てて言うトシに、京太郎が小首をかしげた


京太郎「倉庫がなんかあるんですか?」

トシ「まぁーあくまで予想だけどね」

京太郎「予想? えっと、波動なんとかですか?」


その言葉に、トシが少し眉をひそめる

ベリアルからの知識だと理解したのだろう


トシ「メザードにしちゃ被害が少ないからその可能性は低い」

はやり「少なくないですぅ!」クワッ

トシ「あ〜はいはい、そうだね、被害甚大甚大」

はやり「ばかにしてぇ〜!」

トシ「京ちゃん、はやくはやり連れて調査! 裕子も!」

裕子「はい」コクリ


すぐに立ち上がった裕子に習って京太郎も立ち上がった

スーツ姿のはやりの背に手を添えて立たせる


京太郎「あ〜行きましょうはやりさん」

はやり「ぶっころしてやるぅ〜」

京太郎「牌のお姉さんがそんなこと言わない」

98 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/04(土) 00:37:29.97 ID:hctyo9Wo0

―――【廃車場】


トシの指示に従って、京太郎たちは昨日の場所へとやってきた

消えた車の行方を追って、並びに怪獣探しだ

いざとなった時のために京太郎も来たわけなのだが……


京太郎「車ねぇ……」

ベリアル『……』

京太郎『ベリアルさん、心当たりあるんでしょ?』

ベリアル『あるが……まぁ一応周りは見といてやる』


頷く京太郎が、周囲へと視線を向ける

懐からトシから受け取った【ガッツハイパー】を手に、はやり、裕子と共に周囲を探っていく

それでもおかしいところなど見当たらないのだ


京太郎「え〜倉庫の中とか、探りたくないんですけど」

はやり「昨日はやりはもっと怖い思いしたんだからねっ!」

裕子「あ〜はいはい」

はやり「信じてない! 歩いて帰る羽目になったしぃ!」ナミダメ

京太郎「ま、まぁまぁ……」

はやり「じゃあ探索!」

京太郎「あーはい」コクリ

99 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/04(土) 00:52:12.52 ID:SUs7zei00

警戒しつつ移動する京太郎たち

ガッツハイパーの射撃訓練は、京太郎とて一応していた

万が一のために、ではない……直近の“使命のため”だ


京太郎「ところで、なんですけど」

はやり「はや?」

京太郎「車、ですか?」


隣のはやりに聞くと、戸惑い気味に頷く


はやり「え、うん」

京太郎『ベリアルさん、車を消す怪獣っていうか……それに近しいのが、いるんですか?』

ベリアル『……ああ、食う、じゃねぇか、運ぶ怪獣がな』


車を運ぶ怪獣。どこに、など些細な問題だ

一番の問題、今ようやく京太郎が辿りつけそうなその問題

裕子がシャッターを遠隔操作で一つ一つ開いていく


京太郎「妹尾さん、東横さん……間に何人かいたけど、鶴賀は五人、そのうちの二人」


あの五人の仲の良さは咲たちからも聞いている

清澄と同じく人数ギリギリの団体戦出場、基本五人でしていた練習

インターハイが終わってからもだと聞いている


京太郎「……それで、車」


一度だけ、故あって乗せてもらった記憶があった

その答えに辿りつけそうな瞬間、地響きが鳴る


京太郎「蒲原智美?」

はやり「はやぁっ!!?」

裕子「そうきたかぁ」


少し離れた場所にある、倉庫が―――“立ち上がった”


裕子「あ、ああ……あーーーー!!」

はやり「倉庫が、倉庫が建ったーーー!!」

裕子「今うまうこと言った!」

京太郎「言ってる場合ですか!」

ベリアル『クレージーゴンか!』
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/04(土) 00:58:36.56 ID:liNF0+G40
ふざけすぎだろww
101 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/04(土) 01:02:47.47 ID:SUs7zei00

立ち上がった倉庫ことクレージーゴン

脚はあるが腕が、右が巨大で左が小さい

右は大きなクレーンのようにも見える……というよりクレーンなのだろう


はやり「て、撤退!」

裕子「はやく車へ!」

京太郎「っ」


走りながら、三人がガッツハイパーを撃つ

その攻撃にひるみもせずクレージーゴンは京太郎たちの方を向く


京太郎「二人はそのまま車へ!」

はやり「っ……わかった!」

裕子「え、はやりさん!?」


狼狽える裕子の腕を掴んで、はやりが4WDの車へと走る

京太郎はそんな裕子たちと離れながらガッツハイパーを撃ちつつ倉庫の影に隠れた

一応周囲を見渡してから頷く


京太郎「っし! いきますよベリアルさん!」

ベリアル『ハッ! 久しぶりのシャバだ……暴れさせろ!』


ゼットライザーのトリガーを引き、ゲートへと飛びこむ
102 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/04(土) 01:15:52.82 ID:SUs7zei00

インナースペースと呼ばれる空間

外の世界とは流れる時間が違うそこで、京太郎は静かに息をつく

なにはともあれ、現実で戦うのはまだ二回目


京太郎「……」フゥ

ベリアル『怖気づいたか?』

京太郎「まさか、俺は自分の使命を果たすだけです……!」

ベリアル『使命、か……ハッ!』


笑うベリアルに、少しばかり気になることもある

だが、京太郎がやることとベリアルがやること、目的は違えど手段は同じ


ベリアル『まぁ良い、この不愉快な感覚を全て潰すまでは、付き合ってやる!』

京太郎「ベリアルさん、お願いします!」


頷いてウルトラアクセスカードを差し込む


ベリアル『さぁ、ぶっ潰してやる!』

京太郎「ベリアァル!」

103 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/04(土) 01:25:28.36 ID:SUs7zei00
今回はここまでー
色々余裕が出てきた感じの話でしたー

被害者のみんなと仲良くなったり、はやりんと仲良くなったり
そしてはやりの車は犠牲になった

明日も似たような時間からやる予定でござい
そんじゃまたー
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/04(土) 02:08:27.15 ID:liNF0+G40

箸休めのギャグ回良かった
地味に背景の説明入れてるのも楽しいし
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/04(土) 02:42:36.72 ID:fqkriOT/0
106 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/04(土) 21:16:41.37 ID:UFvEmmJL0
よっし再開だじぇ
安価は今回の最後の方になりそうー
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/04(土) 21:20:43.44 ID:liNF0+G40
きたか
108 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/04(土) 21:29:09.71 ID:UFvEmmJL0

ロボット怪獣クレージーゴン

それがはやりと裕子の乗る4WDへと迫る

右腕の大きなクレーンを振りかぶったその瞬間―――


ベリアル「デヤァッ!」

クレージーゴン「―――!!?」


―――現れた白銀の巨人“ベリアル”が蹴りを放つ

後ろに下がって、そのまま倉庫を踏み潰すクレージーゴン

ベリアルは爪を立てた指先を開いたまま、両腕を構える


京太郎『はやりさんたちが逃げるまでの時間かせぎを!』

ベリアル『ハッ! 倒しゃ済む話だろ!』

京太郎『ごもっとも、でぇ!』


勢いよく飛び出したベリアルが腕を振るう

別に鋭い爪があるわけでもないが、斬撃が奔りクレージーゴンに確かなダメージを与える


はやり「うわぁっ!」

裕子「はやく! はやく!」

はやり「わかってるよぉ!」


即座にシフトをリバースに入れ、アクセルを踏み込む

勢いよくタイヤが回転して車が後ろへと下がっていく

その上を、行くベリアルが迫るクレージーゴンに両手で光弾を撃つ


ベリアル「ハァッ!」
109 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/04(土) 21:44:39.85 ID:UFvEmmJL0

その光弾がクレージーゴンに直撃するも、そちらはあまり効いている様子はない

まだ車も離れておらず、突っ込んでくるクレージーゴンを避けるわけにもいかず両手で押さえようとする


ベリアル「グウァ!」


両腕でクレージーゴンの身体を押さえるも、大きな右腕がベリアルの身体を打つ


京太郎『ぐぅ! こっちが大人しくしてりゃ良い気になりやがってぇ!』

ベリアル『気張れよ!』


クレージーゴンへと、勢いよく蹴りを打ち込み素早く爪撃を三度撃ち込んだ

多少よろけるが大したダメージではなさそうだ

車が離れていくのを見て、身体を横へと転がして少しばかりの距離を取った


京太郎『ベリアルさん! ここらへんなら民家もない……存分にやりましょう!』

ベリアル『あろうがなかろうが、オレはどっちでも良いがなぁ!』


勢いよく飛びかかり、素早く爪撃を撃ちこむ

さらに流れるように拳を数度打ち込み、背後へとジャンプした


京太郎『痛って〜! 硬っ、パンチはやめときましょ!』

ベリアル『クローで攻撃してもそんなダメージが通りそうにねぇな』

京太郎『くっ、こんな硬いのがいるなんてなぁ……』
110 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/04(土) 21:57:23.47 ID:VCgdBPbf0


クレージーゴンの右腕が振るわれる

それがそのままベリアルの身体に打ち付けられた

吹き飛んだベリアルが倉庫を潰す


ベリアル「ガァアッ!」

京太郎『くっそが!』

ベリアル『クソ、こんな雑魚を相手に!』


融合しているせいか、それとも別の要因か

本来の力で戦えないベリアルが歯がゆさに悪態をつく


京太郎『つえぇ……最近の奴らと格が違うっ!』


膝をつくベリアルの、胸のカラータイマーが赤くなり点滅を始める

離れていく車の中で、はやりがそれを見ている


はやり「ッ!」


素早くガッツハイパーを取り出す

窓を開けると、裕子と目を合わせて頷く

二人で窓から身を乗り出してトリガーを引いた


クレージーゴン「―――ッ!!」


ダメージなど入っていないのだろうが、クレージーゴンはそちらを見る

頭部からビームが放たれた


はやり「ッ!」


車両はなんとかそのビームを回避するも、周囲の爆発の衝撃は凄まじいだろう

それでもクレージーゴンの敵意を釘付けにするためにはやりと裕子の二人は射撃を続ける

クレージーゴンははやりたちの方へと歩き出そうとしていた


はやり「今だよ! ベリアル!」
111 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/04(土) 22:14:35.97 ID:3ez9bDKm0


ベリアルが立ち上がり、再び構えを取る

赤いカラータイマーは動ける限界が近いことを示していた

クレージーゴンは銃撃をするはやりのほうへと向かっていく


ベリアル『ハッ! 余計な真似しやがって』

京太郎『はやりさん! サンキューです!』


◆BGM:DREAM FIGHTER【http://www.youtube.com/watch?v=2bJEDgeuVtE


素早くクレージーゴンへと接近していくベリアル

クレージーゴンが、接近するベリアルに気づいて右腕を振るう


ベリアル「ハァッ!」


頭を下げて回避すると、素早くクローで右腕を攻撃する

大したダメージでないのはわかっていた


ベリアル『機械が相手なら良いのがある!』

京太郎『この距離ならなァ!』


右腕をクレージーゴンの身体に近づける

掌底を撃ちこむようにクレージーゴンへと掌を向けた


ベリアル「フハハハッ!」


掌から放たれる赤い雷が、クレージーゴンの全身へと流れる

狂ったように左右へと体を振るうクレージーゴンから、ベリアルが距離を取った

腹のシャッターが勢いよく開閉する


京太郎『これならば!』

ベリアル『ハッ、バンダ星人もお粗末なロボットを作るもんだぜ!』
112 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/04(土) 22:23:38.86 ID:3ez9bDKm0

ベリアルが、両腕を構えた

右腕に赤い稲妻が奔る


ベリアル『こいつで決まりだ!』

京太郎『こいつでハコ割れだ!』


水平に構えた左腕を前に、垂直に構えた右腕を後ろに……

クレージーゴンを見据えて、ベリアルは必殺の光線を放つ


ベリアル・京太郎『デスシウム光線!!』


放たれた光線が真っ直ぐに、クレージーゴンの開いたシャッターへと奔る

光線はそのままクレージーゴンの背中から突き抜けて空へと消えた


ベリアル「……フンッ!」


光線が消えると、立ったベリアルが右腕を振るう

倒れたクレージーゴンが、その場で大爆発を起こした

それを見据えたベリアルが、両腕を空に、飛び上がる


ベリアル「ハァッ!」


そしてそのまま、ベリアルは空へと消えた
113 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/04(土) 22:30:03.60 ID:3ez9bDKm0


車から降りたはやりと裕子の二人

爆散するクレージーゴンを見るはやりの瞳から、涙が流れる


はやり「……ローン、まだ残ってるのになぁ」ツゥー

裕子(哀れ……)

オーイ

裕子「え……あ、あれは!」


走ってくる姿が見えて、裕子の表情がパァッと明るくなった


京太郎「おーい!」ブンブン

裕子「須賀君……よかったぁ」ホッ

はやり「はやりの……」

京太郎「どこか怪我でも?」

裕子「大丈夫、気にしないであげて」

京太郎「あ、はい」

114 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/04(土) 22:39:37.07 ID:3ez9bDKm0


その後、京太郎とはやりは車を裕子に任せてクレージーゴンの爆散した地点へと向かう

歩いている二人、炎もすっかり消えているようだった


ベリアル『見つけたぞ……』

京太郎「え、やっぱり……蒲原さん!」


倒れている少女を見つけてそちらへと走っていく京太郎

それに続いて、はやりも“蒲原智美”へと駆け寄る


京太郎「蒲原さん!」

ベリアル『嫌な感じが消えたな……おい小僧』

京太郎「あ……クレージーゴンのメダル」


傍に落ちていたその小さなメダルを拾うとホルダーに入れた

すぐに智美を抱き上げると、車の方へと歩き出す


はやり「お疲れ様……二人共」

京太郎「……うっす」フッ

ベリアル『ハッ、造作もなかったな』

京太郎『そうですか? まぁ、これからもそうであることを、願いますよ』

115 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/04(土) 22:58:32.62 ID:3ez9bDKm0


―――【特異課施設:作戦室】


部屋に入るのは京太郎、はやりの二人

裕子は蒲原智美の検査らしい

桃子と佳織の二人も付き添っているそうだ


京太郎「ただいまです」

トシ「おかえり」

はやり「はぁ〜」

トシ「……京ちゃん、良い感じだねぇ。戻ってくる時とか完璧」

京太郎「どゆこと?」

はやり「さぁ?」


まぁトシがわけのわからない話なんて、今更だ

ホルダーに入っているメダルを取り出す

ベムラー・ネロンガ・ガギ・シルバゴン、そして今回のクレージーゴン


京太郎「トシさん……次は」

トシ「ああ、行方不明なのは津山睦月だね」

京太郎「津山さん……」

トシ「ってことで、新しい協力者がきたよ」

京太郎「なにが『ってことで』なんですか?」

はやり「まぁまぁ」


扉が開き、誰かが入ってきた

744.64 KB Speed:0.9   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む

スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)