カルネアデス・プリズム(名探偵コナン×竜とそばかすの姫)

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210 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/06/03(火) 22:29:48.57 ID:a51+AsHv0
それでは今回の投下、入ります。

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>>208

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喫茶店「ポアロ」の店員安室透は、
店内で一人、客待ちの支度を進めていた。

「いらっしゃい」

そして、ドアを開けて入って来た、
現在同店と同じビルに住まう江戸川コナンの来訪を愛想よく迎える。

「安室さん、昨日は有難う」

テーブル席の一つに着席したコナンが、
注文のアイスコーヒーを差し出す安室に言った。

「こちらこそ、毛利先生には上手く執り成してくれたんだね」

「うん」

愛想よく笑う安室に、コナンはにっこり笑って答えた。

「事件の事をすごーく早く知ってたのはいいとしても、
あっちの高校の内情、随分詳しかったね。
ボクからの依頼で、たまたま手が空いてた安室さんが
大急ぎであの学校関連のネット情報を検索した、って事になってるけど、
あそこまで詳しいとちょっと厳しいかなその言い訳」

「手厳しいなぁ、ギリギリ言い訳出来る範囲にしておいたんだけどね」

「うん。前から調べてたとしても、特定の高校の生徒の世論や人間関係。
実際にあそこまで詳しく調べるってなると、
少なくとも生徒同士で使ってるグループSNSを
横から把握する為の協力者が必要になるかな。
それだけじゃ足りないよね。
やっぱりベルの事かな?お得意の」
211 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/06/03(火) 22:33:10.21 ID:a51+AsHv0

「コナン君は、ベルの影響力を知ってるかい?」

「『U』で活動してる人気歌手だよね」

安室の問いにコナンが答える。

「CMにも出てたし、すごーく人気があるのは知ってるけど」

「三千万」

コナンの答えに安室が続けた。

「『U』の中で、ベルの誕生と歌唱、歌はほぼ同時に始まっている。
当初は文字通り鳴かず飛ばずだったけど、
ある日突然賛否真っ二つの有名歌手の仲間入りを果たした。
その時跳ね上がったフォロワー数が一日で三千万を超えて四捨五入で四千万」

「凄い、ね」

淡々と述べる安室の言葉に、コナンが言葉少なに言った。

「初の大型ライブの視聴者は二億を超えたと言われる」

「大型ライブって、もしかして竜に潰されたって言う」

「正解だよコナン君。やはりよく調べてる」

「えへへー」

コナンの発言の正否を告げた時、
安室はカウンターでサンドイッチナイフを掲げている所だった。

「いただきまーす」

そうして、テーブルに置かれたハムサンドの試作品をコナンが口にした。
212 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/06/03(火) 22:36:55.43 ID:a51+AsHv0

「『U』のアカウント数は五十億。ベルは事実上三千万四千万のスタートで
数カ月で二億からの視聴者を呼び寄せた。その数字は今でも微増を続けている。
世界規模の『U』では貨幣価値が全く違う国もあるけど、
例えば、一億が一人頭百円を出したとしても百億円に到達する」

「百億の女、か」

言いながら、コナンはポケットからスマホを取り出した。

「ちょっとごめん。もしもし灰原どうした?ああ、それ、和葉ちゃんのだ。
ほら、こないだ由衣刑事から電話があってこっちで合流した時の。
帰りに探してたから、ちょっと預かっててくれ。すぐこっちで預かるから」

一旦席を立ち、すすすとガラス壁近くに移動していたコナンが、
通話を終えて電話を切る。

「お願い出来るかな?」

安室が言い、コナンがその視線を追ってガラス壁の向こうを見る。
そのままコナンは表に出て、
ドアに掛かっていた準備中の札を引っ繰り返した。

「いらっしゃい」

「あっつー、残暑が厳しいざんしょー。アイスコーヒーちょうだい」

「私も同じものを」

ドアを開けて店内に現れたのは、
店内にいた二人も顔見知りのミニパト交通取締担当女性警察官
宮本由美警部補と三池苗子巡査部長だった。

「コナン君、昨日も西多摩で事件だったって?
それで千葉君が出張出ちゃってるから、
三池がもう夜になると寂しいとか
あっちでハチキン美女と浮気してるんじゃないかとか、もー大変なの」

「もーっ、やですよ先輩。たった一日の出張くらいでそんな、
丸で私が束縛強めのストーカーとかヤンデレとか愛が重過ぎるとか
危ない人みたいにあらぬ誤解を招くじゃないですかオホホホホ」

由美の言葉に、苗子はにこにこ応じてストローを吸う。
213 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/06/03(火) 22:41:12.43 ID:a51+AsHv0

「ああそうそう、美和子が高木君から押収したってんだけどこれ、
厄介ファンに絡まれてる所にたまたま千葉君と通りかかって追っ払ったとかで、
テレビドラマのロケに来てた
ハチキンヒロイン以下三姉妹役の女優さんとファンサ写真撮らせてもらったって」

「………」ミシッ

「苗子さん、千葉刑事ってベルのファンなの?
詳しかったみたいだけど」

由美から渡されたスマホを手にしたスー○ーサ○ヤナエコの鎮静化を待って、
安室共々笑顔を張り付かせていたコナンが尋ねる。

「凄く熱心、って感じじゃないけど好きなシンガーだと思う」

「ベルと言うのは、『U』のシンガーですね」

答える苗子に安室が口を挟む。

「そ。だから、昨日の事件の後で三池が千葉君に聞いたら、
『U』の歌は世界を変えるかも知れない、って真顔で言われたって。
いや、アニメじゃないんだからさ。
いい歌だしそんだけの数字持ってるってのは解るけど」

アハハハと笑って言う由美の前で、苗子も苦笑いする。

「由美さんも『U』を使ってるの?」

「まあー、使ってはいるけどね。
『U』ってサブアカとか作れないでしょ?変な事する気は無いけど、
私達仕事柄プライバシー的な拒否権がゼロに等しいから、
必要最低限以上の事には使い難いわぁね」

由美が苦笑気味に言った。

「確か警察官は色々と届出や同意書があるんでしたっけ?
警察が所属する警察官に対して何時でも内部調査が出来る様に」

「ま、そんなトコ」

安室の言葉に由美が応じる。
214 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/06/03(火) 22:43:03.01 ID:a51+AsHv0

「それで、『U』のアカウントは生体認証で一人一つだけ。
ちょっと躊躇しちゃうよね」

「しかも、どういう仕組みなのか、
あの機械は外見だけじゃない要素まで読み取ってAsを生成してるって言うから、
怪盗キッドとか整形そっくりさんとかが探偵に化けて事件現場に現れたり
歌手に化けてステージして勝手にイメチェンしたり、
なんて事はリアルでは出来ても『U』だと却って難しくなるって千葉君が」

由美に続けて苗子が言う。

「だから、アニメじゃないんだからさ、
そんな簡単に探偵やら歌手やらに化けられるかっつーの。
コナン君だって、事件が関わった歌手のコンサートで
声がそっくりだからってちょっと代役やろうとして
非難囂々だったとか聞いてるわよ」

「は、ははは」

由美の言葉に、探偵に化けた怪盗キッドとか整形そっくりさんには
心当たりのある小さな名探偵が乾いた笑いで応じる。

「只、ベルはそんだけの影響力はあるし、
竜の時やアンベイルの時もネットで相当騒ぎになってたからね。
捜査一課もかなりナーバスになってるみたい」

「今の所、マスコミでも大きく取り上げられてはいないよね」

由美の言葉にコナンが言う、

「そう。特にベル関係の事件って事は表になってないから
その辺結構きつく保秘かかってるわね。
だから、私から話振っといてなんだけど、
コナン君も安室さんもその辺の事は気を付けて」

「ええ、分かっています」

「はーい」

段々と真面目な口調になった由美に安室とコナンが答えた。
215 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/06/03(火) 22:46:49.39 ID:a51+AsHv0

「『U』の歌は世界を変えるかも知れない」

女性警察官二人が休憩を済ませて出て行った後、コナンが呟く。

「前々から、お得意のやり方を使ってでもマークしてた理由はそれだね。
ベルはそれまでの業界の外から出て来た謎の歌姫、
それも、蓋を開けて見たら一介の女子高校生だった。
アジテーション、プロパガンダ、何に利用されるか解らないし、
それだけの影響力があって間違った誘導をしたら大変だよね。
それが脅威になるだけの数字も持ってる」

「コナン君」

推測を述べたコナンに、安室が呼びかける。

「ベルを、聞いた事はあるかい?」

「あるよ。当たり前に掛かってるし、今回の事件の後も聞いてみたけど」

「どうだった?」

「いいと思う。人気が出るのも解るし」

「脅威になるたけの数字を持ってる。
確かにね。人数、金額、記録されている数字を見ても」

そう言った安室とコナンの目が合った。
216 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/06/03(火) 22:49:50.54 ID:a51+AsHv0

「戻りましたー」

玄関ドアから、ウエイトレスの榎本梓が紙袋を抱えて入って来た。

「お帰りなさい、梓さん」

「コナン君、例の試食?」

「うん」

「さっき、由美さん達のパトカーとすれ違ったけど」

「ええ、さっきまでここで休憩してましたよ」

「ごめんなさい、買い物の追加、ちょっと遅くなっちゃって」
217 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga]:2025/06/03(火) 22:55:46.47 ID:a51+AsHv0

「いえいえ。ところでコナン君」

「何?安室さん」

「昨日は蘭さん達とカヌー大会を見に行って、
蘭さん達のお友達とも待ち合わせて一緒だったとか」

「うん、ミチル姉ちゃんと」

「その人もカヌーを?それとも応援?」

「応援。ミチル姉ちゃん港南高校の空手部で蘭姉ちゃんの友達なんだけど、
黒い学生服着て応援団もやってるから」

「へえー、空手部で学ランの応援団の女の子?
なんかカッコ良さそう」

安室とコナンのやり取りに梓も食いついて来た。

「うん、凄く格好いいよミチル姉ちゃん。園子姉ちゃんもそう言ってる」

「港南高校の応援団って、確か野球部が今年甲子園も行ってたね」

「うん。ミチル姉ちゃんも格好良かったけど、
港南高校の野球部、甲子園の決勝戦で
四番サードが九回裏ツーアウトからの同点ホームランとか、
もう漫画みたいに凄い試合だったから」

「あーそれ、お店でも盛り上がってたなぁ」

後の映像の記憶も交えて安室に答えるコナンの言葉に、
梓も明るく思い出し笑いする。

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2025年令和7年6月3日 投下了

今回はここまでです>>210-1000

続きは折を見て。
218 :探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [sage]:2025/06/25(水) 02:46:58.31 ID:nEs+LRRQ0
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