石ノ森アベンジャーズ

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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/30(火) 23:30:53.47 ID:D6Cig8H1o
【宇宙】

ザー…

『通信開始。こちら日本宇宙開発機構。聞こえてるか?』

飛鳥五郎(宇宙飛行士・エンジニア)「シャトルより。聞こえてる。子ども達が待ってるんだろ。早くテレビ局に繋いでくれよ、早川」

早川健(日本宇宙開発機構オペレーター)『まあそう急くなって、ハハ……』

宇宙開発機構所長『早川君、いくら友人とは言え私語は厳禁だ。今日は飛鳥飛行士と子ども達のリアルタイム交信イベント。そして―』

早川健『分かってますって』

早川健『我が国初の『新型宇宙服』の起動テスト―』

飛鳥五郎「明日の新聞のトップはもらったな。期待しててください、皆さん」

早川健『どうかな。俺は今日の野球の試合の方が気になるけど』

飛鳥五郎「早川!」

早川健『全く……トンだ夢想家だよ。お前は……宇宙探索なんてデカすぎる夢……俺はムリだと思っていたが……』

早川健『その一歩をこんなにも早く叶えちまうなんてな』

3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/30(火) 23:43:04.93 ID:D6Cig8H1o
【シャトル内】

日本宇宙開発機構オペレーター『会場に繋ぎます』

子どもたち『きょうはよろしくおねがいします』

飛鳥五郎「はい、よろしく」

飛鳥五郎「」キョロ…

(中継先の画面奥にいる女性が飛鳥に手を振る)

(彼女の名前は『飛鳥みどり』、子どもたちの引率の保母であり飛鳥五郎の妹)

飛鳥五郎「」ホッ…

飛鳥五郎「さーて、質問したい子は誰かな」

『はい!』『はーい!』『はい!』

飛鳥五郎「じゃあ前から2列、青い服の子!」

『はい!』

『おじさんはどうして宇宙飛行士になったんですか?』

飛鳥五郎「そうだな……」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/30(火) 23:53:43.24 ID:D6Cig8H1o
飛鳥五郎「おじさんには友だちがいてね。そいつはおじさんの親友でもあって、憧れでもあった」

飛鳥五郎「すごいんだ。なんでも一番で―」

飛鳥五郎「おじさんはそいつに追い付きたくて、たくさんそいつのマネをしたんだ。うらやましかったんだ」

飛鳥五郎「でも追い付けなかった。悔しかったなあ……」

飛鳥五郎「そんな中、おじさんは気付いたんだ。もっと大事なことにね」

子ども『だいじなこと?』

飛鳥五郎「夢を持つことさ。他人を真似するんじゃなくて、自分だけの夢を持つこと」

飛鳥五郎「それがおじさんにとっての『宇宙開発』だったんだ」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/01(水) 00:21:58.97 ID:gb+wHkLoo
飛鳥五郎「みんなも『夢』を大事にね」

飛鳥五郎「さて、次の質問は誰かな〜?」



飛鳥五郎「質問はこんなところかな」

日本宇宙開発機構スタッフ『ではこれより飛鳥飛行士による『新型宇宙服』の起動テストを行います』

飛鳥五郎「これが僕の開発した『新型宇宙服』です!」

(沸き立つ子どもたち)

飛鳥五郎「この新型宇宙服はケニアのピュンマ博士との共同開発により完成した世界でも最軽量のものです」

飛鳥五郎「今回のフライトではシャトルの整備に使われる予定ですが、行く行くは月面探査、環境適応能力から更には今まで着陸不可能だった惑星への単独着陸、探検なんかも可能になると考えています」

飛鳥五郎「広大な宇宙の探査範囲の増大は世界にとってさらなる発展の足がかりになるでしょう」

飛鳥五郎「では、早速この宇宙服を僕が着て試してみましょう」

飛鳥五郎「この新型宇宙服の最大の特徴とも言える『これ』を是非ご覧ください」

飛鳥五郎「『ZUBAT』装着シークエンス」ピピ…

ガシャガシャ…

子どもたち『かっこいい〜!』

飛鳥五郎(ZUBAT着用)「この新型宇宙服の特徴の1つ。『装着機能』。今まで、重さや装備の大きさの問題から一人で着ることができなかった宇宙服。ですがこの『ZUBAT(新型宇宙服)』は違います」

飛鳥五郎(ZUBAT着用)「登録された人間の体型データを元に自動で装着することが可能なのです!」

(歓声)

飛鳥五郎(ZUBAT)「着用試験は終了。次は実際に宇宙空間に出て、作業を行っていきたいと思います」

6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/01(水) 00:29:22.27 ID:gb+wHkLoo
【日本宇宙開発機構】

(新型宇宙服実演に沸き立つ人々を尻目に)

早川健「夢……夢……夢……」

早川健「臭すぎて鼻が曲がりそうだ」

早川健「俺は出来ることをやってるだけ―」

早川健「やれないことからうまく逃げているだけ―」

早川健「買い被り過ぎだぜ、飛鳥」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/01(水) 20:26:19.70 ID:gb+wHkLoo
【シャトル外】

飛鳥五郎(ZUBAT着用)「動作良好……」

(ZUBATを着用した飛鳥五郎は軽やかにシャトルの周りを飛び回りミッションをこなしていく)

飛鳥五郎(見ろよ……早川、地球はこんなにも青くて……宇宙はこんなにも広い)

飛鳥五郎(登って来いよ、早川!)

飛鳥五郎(あんなところで燻ってないで……!)
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/01(水) 20:42:24.19 ID:gb+wHkLoo
【日本宇宙開発機構】

「早川、今日どうだ? いつものバーで。今日こそダーツでお前に勝ちたい!」

早川健「いいねェ」

「じゃ仕事終わりに! 待ってるぜ」

早川健「ああ」

早川健「……」

日本宇宙開発機構所長「早川くん、ちょっと」

早川健「ええ」



早川健「次の管制チームのリーダー、ですか」

日本宇宙開発機構所長「そうだ。悪くない話だと思うが。君もまだ諦めた訳ではないだろう、宇宙を」

早川健「……宇宙は俺には広すぎますよ。他を当たってください」

早川健「それに気が早すぎます。俺はまだ飛鳥のサポートをしなくちゃあいけない」

日本宇宙開発機構所長「そうか。まあ、結論を出すのはお互い早い。この件は頭の隅にでも入れておくように」

日本宇宙開発機構所長「皆も言っているが、オペレーターの椅子に座らせておくには惜しい男だ。君の体、技術、頭脳は我が国、いや世界をも……」

早川健「買い被り過ぎですって、ハハ」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/01(水) 22:09:24.08 ID:gb+wHkLoo
【時間は流れ…】

【日本宇宙開発機構】

早川健「宇宙生活最終日、シャトルが名残惜しいかい」

飛鳥五郎『ハハ……そうだな。だけど、みどりやお前の顔もモニター越しじゃなく直に見たいと思ってたところさ』

早川健「そいつぁ良かった。戻った時の為に良い酒を用意してある。無事に戻った時は2人で―」

飛鳥五郎『ああ、そうだな!』

「これより、飛鳥飛行士の地球帰還シークエンスに入ります。各オペレーターは持ち場に付いてください―」

10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/03(金) 16:43:58.85 ID:H1AQqyYgo
早川健「飛鳥飛行士カプセル搭乗確認」

「カプセルはフロリダに着水予定。着水後、現地スタッフにより保護されます」

早川健「これより射出シークエンスに入る。カウントダウン」

「5」

「4」

「3」

「2」

「1」

ザザ…

早川健「射出!」

早川健「……」

早川健「射出も無事完了、と。待ってるぜ、飛鳥」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/03(金) 16:52:09.77 ID:H1AQqyYgo
「……ん? これおかしくないか?」

「落下軌道がシミュレートの時と違う」

「どういうことだ!」

「飛鳥飛行士との連絡途絶! 10分後には大気圏に突入します!」

早川健「おいおいおいおい……これは……ちょっとシミュレータを貸せ!」

早川健「……これは!」

早川健「外部からカプセルの軌道を変更するプログラムを打ち込まれている!」

早川健「このままじゃ地上に激突する可能性もあるぞ!」

日本宇宙開発機構所長「……!」

早川健「俺に策がある。リアルタイムで軌道を変更する。大気圏に突入するまで10分はあるんだろう! それぐらいあれば十分だ!」

日本宇宙開発機構所長「できるのかね!」

早川健「やるんですよ!」

早川健「飛鳥……! 必ず助けるからな……!」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/03(金) 16:57:01.12 ID:H1AQqyYgo
「時間がありません! あと7分!」

早川健「急かすな! 今やっている!」

早川健「間に合え……間に合え……!」

早川健「飛鳥――!」



「大気圏突入まで1分」

早川健「死なせやしない」

早川健「間に合ってくれ!」

早川健「俺ならできるはずだ……!」

早川健「いけ……ッ!」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/03(金) 17:05:08.93 ID:H1AQqyYgo


ワアアーッ!!

早川健「はぁ……はぁ……はぁ……」

「脱出カプセルの軌道修正成功」

「地表への激突する可能性は無くなりました!」

「着水予定時刻は前後しますが、予定通り地球に帰還することができます!」

早川健「……」ドサッ

「さすがだぜ早川!」

「よくやった!」

日本宇宙開発機構所長「素晴らしい……」

日本宇宙開発機構所長「本当にここにいるには惜しい男だ……」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/03(金) 17:21:16.09 ID:H1AQqyYgo
【フロリダ沖:謎の小型船】

ハッカー「なぜだ! 僕のハッキングは完璧だったはず!」

ハッカー「シャトルからカプセル射出、大気圏突入までに何かが起きて……」

ハッカー「そうだ! リアルタイムで軌道修正をかけた奴が……!? そんなバカな! そんな高い技術を持った人間が日本なんかに――」

?「言い訳は必要ない。組織に失敗した者は要らない」

ハッカー「あ、ぁ」

(謎の男は手にしていた金剛杖に仕込まれた刀を抜き、ハッカーの首をはねる)
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/03(金) 17:32:09.90 ID:H1AQqyYgo
(謎の男の名はXan(ザン))

(Xanは懐から電話を取り出す)

Xan「プランA、失敗。プランBに移行する」

(Xanは脇に居る部下に合図した)

(小型船は動き出し、近くに停まる日本宇宙開発機構の船に寄る)

(Xanらは日本宇宙開発機構の船に侵入し、スタッフらを殺害)

(悲鳴が僅かに聞こえた後、海は静かになった)
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/03(金) 17:42:31.58 ID:H1AQqyYgo
【飛鳥五郎の乗る脱出ポッド】

(ポッドが開かれる)

(飛鳥が見た物は刀を構える男Xanと銃を構えた手下達だった)

飛鳥五郎「……!」

Xan「初めまして、飛鳥五郎。早速だが着いてきてもらおうか」

Xan「ZUBATは我が組織に必要な物だ。金も技術も全て用意してある。それでもまだ足りないなら更に用意しよう」

Xan「その力を人類の為に使うのだ」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/06(月) 17:31:43.50 ID:5zj3h5iCo
【1月某日 飛鳥みどり宅】

TV「飛鳥五郎宇宙飛行士のシャトル離脱時の脱出カプセルの落下軌道ハッキング、及びその後の失踪から2ヶ月。年も明け―」

飛鳥みどり「……」(机に伏す)

(チャイムの音)

飛鳥みどり「兄さん!」

(ドアを開ける)

早川健「やあ」

飛鳥みどり「早川さん! こちらは?」

東条進吾「飛鳥と早川の大学の時の友だち。東条と言います」

飛鳥みどり「ああ……どうぞ上がってください」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/06(月) 17:54:09.30 ID:5zj3h5iCo
飛鳥みどり「警察も2ヶ月も経てば捜査にあまり協力的じゃなくなってきて」

東条進吾「いやあ……ハハ、すいません」

飛鳥みどり「?」

東条進吾「いや」

飛鳥みどり「最近は兄さんはもう死んだなんて言われることもあるんです」

飛鳥みどり「それでも私……そんな実感がなくて……」

早川健「みどりちゃん、あまり気を落とさずに。君のお兄さんは必ず俺が……」

早川健「いや必ず警察が探して見つけてくれるよ」

飛鳥みどり「……はい」

東条進吾「……」

東条進吾「ちょっとお手洗いを借ります」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/06(月) 17:56:32.94 ID:5zj3h5iCo
早川健「……」

早川健「みどりちゃん、ごめん。お茶をもう一杯いただけるかな。外が寒くてね」

飛鳥みどり「あっ、気が回らないですみませんっ」

早川健「いいんだ。気にしないで」

飛鳥みどり「ちょっとお台所へ……」

早川健「……」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/06(月) 18:17:42.15 ID:5zj3h5iCo


早川健「おじゃましました。じゃあみどりちゃん、俺達にも何かできることがあるなら言ってくれよ。必ず力になるから」

飛鳥みどり「ええ、ありがとうございます。私……あきらめません」

早川健「そうだ。いい子だ。きっと……きっと大丈夫だから」

飛鳥みどり「はい……!」

(ドアが閉まる)

早川健「東条」

東条進吾「風呂場にカメラ、台所脇に盗聴器2機」

早川健「さすが。俺はリビングにカメラと盗聴器1つずつだ」

東条進吾「俺が刑事だとバラさなくて良かった。警察ってのは、こういう渦中の相手にはそれだけでイヤな顔をされることもある」

東条進吾「……なるほどな、早川。警察(身内)もクロだ。土竜がいる」

早川健「実際のところ捜査の進み具合はどうなんだ」

東条進吾「聞くなよ。一応あのシマは海外との合同捜査。情報は俺のような課外の下っ端には何も回っちゃこない。だが、これなら外国の警察もグルと見るな」

東条進吾「……ハラは決まってるんだろ、早川」

早川健「警察の土竜の動きを見るに、早川は何者かに何らかの目的を持って拐われた。だが、早川は逃げた。だから身内の動きにこれだけ敏感なんだ」

早川健「飛鳥は生きている!」

早川健「東条、悪いな。この件、目を瞑ってくれよ。俺は飛鳥をこの手で探す!」

東条進吾「あーあ、これで俺も悪徳刑事の仲間入りだ」

東条進吾「死ぬなよ、早川」

早川健「この俺が死ぬと思うか」

東条進吾「殺されても死ななそうだ」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/12/06(月) 18:25:17.97 ID:5zj3h5iCo
東条進吾「それにしても早川。お前変わったな」

東条進吾「いや……昔のお前に戻ったみたいだ。こう言っちゃ不謹慎だが、活き活きしてる」

早川健「……ほっとけよ」

東条進吾「今までのお前はどうしたんだ? オールNO1、無敵の早川。宇宙飛行士になる夢まで諦めて今は宇宙飛行士のオペレーター」

早川健「今だって悪くない職場サ」

早川健「だが……」

東条進吾「だが?」

早川健「虚しくなったんだ。自分の『強さ』に」

東条進吾「……」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/16(日) 19:47:58.05 ID:/HYtaVBzo
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