真・恋姫夢想【凡将伝Re】5

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81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/07(土) 14:58:33.54 ID:v7g7nKMNo
乙したー

うわぁ
徹底的に干上がらせるつもりだコレ・・・

タイトル案は「扇の奥、仮面の奥、胎の内」で
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/07(土) 20:13:33.01 ID:qkOmokyno
乙ですー

わぁい、リライト版では蜀側の人ちょっと増えるんか?と思ったらそんなことなかったでござるの巻
今更だけど、絡新婦強すぎない?まじバランスブレイカー、だがそれが好き

題案は
『鉛は入っていませんか?』
みたいな

昔の白粉は鉛入りですのでね、あんまり白粉を身中深くに入れると、中毒しちゃいますよ?大丈夫?
って感じで
……ホントにそれを見越して馬良が白粉付けてるとしたらネタバレになっちゃうのでスルーしてください
83 :青ペン [sage saga]:2022/05/08(日) 04:20:40.26 ID:Z9fwOvP6o
>>79
乙ーい。
結構先に良いの出されてて圧かかるわー…。

埋伏の絡新婦〜仕込みの毒を添えて〜
84 :81 [sage]:2022/05/08(日) 09:50:33.34 ID:PK+ykpqqO
>>81
タイトル案「扇の奥、仮面の裏、胎の内」
こっちの方が収まり良さそうなんでこっちで
85 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/05/09(月) 05:50:30.50 ID:PxzAG89B0
>>81
感想ありがとうございます。
まー、直接乗り込んでいくというのは
そっちもそうですが他にも要員があるということでひとつ

>>82
感想ありがとうございます。
キャラが増えたようで増えてない!
ここら辺の調整で時間を取られておりました
だってほら、一番警戒しないといけない覇王(まだ はおー)が洛陽からいなくなるんですから

>>83
期待してますとも

>>84
よきよきです
ありがとうございます!
86 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/05/09(月) 05:51:06.70 ID:PxzAG89B0
あっち掲載時はもちっと馬良さんのネタバレは控えるようにしようかなって
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/09(月) 20:05:51.53 ID:U12/r18W0
乙です
劉備陣営を語るうえで外せない人が来たー…あれ(笑)?
恥ずかしがり屋の頑張り屋さんですねえ(眉に唾つけながら)

さて……こう僕としてはあまり面倒なことは言いたくないのですが、公務員でないものが公務員を騙るのは犯罪に当たるんですよね(まあ軽犯罪程度ですが(笑)
デトロイド警察だ!とか歌詞警察みたいなネタをこの書き込み部分にやるくらいのことでどうこう言うほど狭量ではないですが、
名前の部分で警察を名乗られてしまうとそれを本気にしてしまううっかりさんとかが騒ぎ立てたりしてしまうものでして
せめて個人でやれる弁護士とかを名乗ってくれると助かります
88 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/05/12(木) 05:47:26.04 ID:wPjwCCNH0
>>87
どもです!

ちなみに登山家さんだとはわわの方が格上になるので
白眉さんになりました
つるかめつるかめ

あと、うんこさわるとうんこつくよ!
89 :赤ペン [sage]:2022/05/13(金) 15:52:32.97 ID:P7Y/ZGHT0
乙でしたー
>>78
>>馬良と呼ばれる、南皮馬家――あの馬家とは別である――の長女である人物のことである。    これだと【馬良】が偽名のように聞こえます(本名とは言ってない
○そう呼ばれる、南皮馬家――あの馬家とは別である――の長女である馬良という名の人物である。 前の文の「白眉〜〜」と合わせてこんな感じでどうでしょう
>>おずおず、と差し出す束はなにせ分厚い。   この文章は諸葛亮視点だと思ったんですがこれ束を差し出したのは馬良ですよね?
○おずおず、と差し出された束はなにせ分厚い。 それともお仕事お替り(強制)してる感じかしら
>>肩を抱えて震える馬良に諸葛亮は苦笑する。   上の方ですでに苦笑してるのでちょい足し
○肩を抱えて震える馬良に諸葛亮は苦笑を深める。 【笑みを深める】だと嘲笑交じりになりそう{そうよね、あなたみたいな醜女が…みたいな)なのでさすがに自重しました
>>いえ、そこまで気にすることはないと思いますけどね。
 ご主人様はそんなこと気にしないでしょうが あ、醜いってことは否定しないし【ご主人様は】気にしないだけで他の人がどう思うかはあれなんですかそーですか
いやまあ白粉塗ったくって仮面と扇で隠してて真面に見えないなら迂闊に否定するのもアレかもしれないけど
>>その指摘は微に入り細にいたっており、 慣用句としては【微に入り細に入り】なんだよなあ…ただこれだと神経質みたいな悪いニュアンスが入るらしいので
○その指摘は微に入り細を穿っており、  これだと≪細かいところまで心配りが行き届いている≫みたいなポジティブなニュアンスになるのでこちらの方が良いと思います
>>ここは蜘蛛の巣の奥の奥であった。       ここぼかすんです?……フーム
○それは咎人を許そうとする菩薩のようであった。 白粉の奥の顔は彼ら蜀陣営がやってることがいくら義があるとはいえ悪い事だと分かってても許したいという優しさに溢れたものだったんだよ!
えっ地獄に落ちたカンダタを許そうとした菩薩様が何をしたかって?ちょっと何言ってるか分からないです

名家なのに黄巾党とか反董卓連合とかで名前をあげてなかった南皮の人…か
何があったかは推測の域を出ないけどどう悪い方向で考えても袁家に返しきれない恩があると思うんですけど…馬超さん?恋に生きただけだから
90 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/05/15(日) 21:10:41.08 ID:jGQbvZwA0
>>89
赤ペン先生ありがとうございます!

>名家なのに黄巾党とか反董卓連合とかで名前をあげてなかった南皮の人…か
まあ、張家がバックグラウンドとして囲ってたんやなって
実際、白眉という特徴があったらだいたいセーフとか、すごくやりやすいですよね。。。

登山家は知らんw
91 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/05/16(月) 16:34:13.92 ID:pBXcb04y0
あ、やりやがった
はおーと絡新婦とほんわかねむねむ軍師がふわっと連携してしまった

うわー
うわー、そうだよね、そうなるよね・・・

色々とお察しくださいませ

ヒント:泣く子も黙る人が参戦してしまう件
92 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/05/16(月) 22:36:24.35 ID:YFoWzSuU0
「で、どこまでやる気なんだ?」

張紘の問いが室に響く。
義兄弟三人が集まり酒を酌み交わし、久闊を除していた席のことである。
まあ、宴席の場が紀霊の執務室であったのは多少の問題があるかもしれないがよくあることである。
なにせ、防諜的な意味では万全であるし、楽進や典韋などという最上級の料理人が料理を提供してくれるのだからして。
火酒に柑橘の汁を搾り湯で割ったものを喉に流し込み、いつになく饒舌な紀霊のふとした沈黙に問いかけたのは既定路線ですらあったかもしれない。

「経済制裁、やるなら母流龍九商会(うち)がその尖兵となるだろうからな。
 ある程度の見込みは聞いときたい」

素面では聞けないし言えない。
張紘というのはそれくらいには善性の人格である。それをよく知る沮授は黙って杯を重ねる。
常ならば茶化すところではあるが、話題が話題である。
そして、それ以上に興味があった。はたしてどこまでやる気なのか、と。

「蜀を干上がらせる、ということだがどこまでやる?」

張紘も杯を重ねる。
先ほどまでと違い、喉を駆け下りる炎が我が身を苛むようである。

「いや、無論二郎がそこまで考えていないのならそれでいいんだ。
 おいらたちに任せるということならばそれはそれでいい。
 そのあたり、沮授と考えるよ」

袁家の強みは分厚い実務集団を手にしていることである。
反董卓連合。
規模からいえば驚くほどに犠牲を少なくその目的を果たすことが出来たのは、富の集積があったのもあるがそれをきちんと運用したことが大きい。
なにせ、かつて売官という制度があった時には、漢朝全ての官職を袁家で占めてしまおうというくらいの気運であったのだから。
そしてその官僚の頂点に立ち、掌握しているのが沮授であるのは自他共に認めるところである。

そして張紘である。
反董卓連合の際に兵站に必要な物資を準備したのは沮授だが、実際に運用したのは張紘であったと言っていい。
物流をその手に収め、ただの一度も破綻させなかったその手腕を知る者はごくわずか。
いや。その尋常ならざる手腕と実績を「あの」曹操ですらこの時点では理解しきっていない。
無論可能な限り秘匿しているということも大きいのだが。

そしてその二人に補佐をされて、袁家の裁量を任されているのが紀霊である。
個人的武力、用兵、政治等々の能力については一流半から二流程度との自己評価は割と妥当なものであろう。
だが紀霊の強みはそのような一面の処理能力ではない。かつて、故馬騰が評した言葉。
「将の将たる器」
それこそが紀霊の真価であろう。沮授はそう思いながらにこやかな笑みを崩さずに杯を重ねる。
幼少時よりの付き合いだ。苦言や小言、或いは諫言。そういったのは張紘の役割なのだから。
そして、紀霊がどこまでやるにしても付き合う覚悟は定まっている。
それは張紘にしたって同じだろう。
なにせ、生まれた日は違えども死ぬるのは同日と誓ったのだからして。
93 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/05/16(月) 22:36:50.90 ID:YFoWzSuU0
◆◆◆

どこまでやるか。
聞いてしまった。聞かずにはいられなかった。即座に答えがなくてよかった。いや、ない方がよかった。
紀霊というのは袁家という、傍目には蟲毒の集団にいるとは思えないほど清冽で、善性で、快男児であった。
その人格は自分を拾ってくれたあの時と変わることなく、まぶしく映る。
だからこそ、彼にそんなことを決めてほしくなかった。選ばせるつもりはなかった。
そうして、生じた沈黙を都合よく解釈していたのだが。

「……田畑に塩、井水に毒まではやらない」

やりたいことではなく、やらねばならないことに真正面から向き合い、まっとうするのだ。紀霊という男は。
そして、今回についてもそうなのだな、と再認識する。

「すまねえ、辛いことを言わせちまったな」

やるべきことをやる。
それが正しいこと。正しくあること。正しくあり続けること。
どれだけの重荷を背負っているのだろう。

脳裏に浮かぶのは恋人の言。

「いや、正直私なら最愛の人を浚(さら)って逃げるね。いや、無論張紘、君のことだよ。
 なに、君一人の食い扶持くらいなんとでもなる。
 まあ、ある程度以上の贅沢を望まれたらば知恵を絞らないといけないかもしれないが」

その時は任せろと言われて言葉に詰まったものである。
94 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/05/16(月) 22:38:05.07 ID:YFoWzSuU0
「いや、すっきりした。これはきちんと。そう、きっちりと方針を発信せんといかんところだった。
 ありがとうな、張紘。いつだってお前は俺を正しくしてくれるよ。
 ほんと、お前に会えてよかったよ」

「よせやい、おいらこそ拾われた身さ。
 恩、って言うとお前は嫌うけどな。
 おいらは拾われたのが二郎でよかったと思ってるよ」

むしろ、とも思う。だから、多分、田畑に塩。井水に毒。
そんなことを言われても付き合ったろうなと思う。いや、もっと悪辣な施策であっても、だ。
民を数字として見ることに慣れすぎていて、それを自覚してなお前を向く。
顔も名前も知らない数字の一つのために世を糺す。
そしてきっと前を向くのだ。向かい風をなにするものぞと。
だから。

「おいらはね。二郎。
 ほんとに感謝してるんだぞ。
 おいらがこうしていられるのは二郎のおかげなんだからな」

万感。
込められた思い。
どれだけの気持ちが、思いが伝わるだろうか。
いや、伝わっている。それ以上に汲んでくれている。
だからこそ、目の前で懊悩している男を安心させてやりたい。

「だからな、二郎、二郎よ。
 おいらはどこまでも、いつまでもお前に付き合うって」

だからさ、と笑う。

「なに、三人寄れば文殊の知恵だったか?
 二郎にしては上手いことを言うと思っていたが、確かにそうさ。
 おいらたちが揃えばたいていのことはなんとかなるさ。
 な、そうだろ?」

優雅に茶を喫していた沮授もこれには苦笑する。

「そうですね張紘君。君の言うとおり。その通りと思いますよ。
 実際、たいていのことはなんとかなりますし、しますよ」

苦笑する沮授。彼こそ袁家で一番実務を担っている人物であるのは万人が認めるところである。
だからこそ、沮授に比類すると言われる張紘の存在はかけがいのないものだ。
その立ち位置を含めて。

「まあ、おいらたちは楽進殿と典韋殿の腕前に期待してきただけだしな。
 なにせ二郎もご自慢の腕前だったからな。
 楽しみにしてるよ」

弛緩した空気。
肩をたたき合う。そして空気を読まない男もいる。

「凪!流琉!
 ご指名だ!美味しいところ頼むぞ!」

違うそうじゃない。
沮授と張紘が同時に思ったことである。

なお、予想以上に振る舞われた料理は絶品だったようである。
95 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/05/16(月) 22:39:01.92 ID:YFoWzSuU0
本日ここまですー
感想とかくだしあー

今回の題名はなにかな
面子、くらいを考えていましたがちょっち違うわね

よろしくお願いします。
96 :青ペン [sage saga]:2022/05/20(金) 00:25:47.97 ID:AFguMuyvo
>>95
乙ーい。
梨園参弟、最後の悪巧みを練る

でどないよ?
97 :赤ペン [sage]:2022/05/23(月) 15:49:47.97 ID:FvPpxz/20
乙でしたー
>>92
>>ある程度の見込みは聞いときたい」 【見込み】だと結果がどうなるか、な感じがするので(こうしたら【どう】なるかの見込み、みたいな)
○ある程度の目安は聞いときたい」  【どう】やってそう(経済制裁)するのかを聞く感じなのでこの方が良いと思います
>>いや。その尋常ならざる手腕と実績を「あの」曹操ですらこの時点では理解しきっていない。 「」を使い分ける感じで
○いや、その尋常ならざる手腕と実績を【あの】曹操ですらこの時点では理解しきっていない。 何か別の物にしてみます
>>94
>>実際、たいていのことはなんとかなりますし、しますよ」     間違いではないです
○実際、たいていのことはなんとかなりますし、なんとかしますよ」 好みの問題ですので

自分の意思で地獄を作り出すとか吐きそう……お辛い
でも人間は愚かだからね、戦争に救いなんてなくてできる限り選ばない方が良いんだという失敗経験をいくつもいくつも積み重ねても理解できないんだ
悲しくて踏みにじられるような砂をかむような無為な行いだとしても万が一にでも戦争を取りやめる理由にできるなら、
戦争は出来る限り糞のような忌避すべき手段だと知らしめなければいけないんだ
でも二郎君は基本善人で只人だから糞塗ったくった武器で斬りつけたり、飢えた陣地に少量の肉を投げ込んだりする悪辣な効率的なことは出来ない弱い人間なんだ
2000年後の様々な知識の中にはちょっと聞きかじっただけでも十分に有効なものはいくらでもあるけど使えないんだろうなあ
98 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/05/24(火) 20:19:00.31 ID:tDbNv5dh0
>>96
ごっつええかんじ!

>>97
赤ペン先生ありがとうございます!

>自分の意思で地獄を作り出すとか吐きそう……お辛い
だからその目論見を語らせるためにアルコールを入れる必要があったんですね
いやまあ、こいつら集まったらいっつも酒呑んでますけんどもw

>でも二郎君は基本善人で只人だから糞塗ったくった武器で斬りつけたり、飢えた陣地に少量の肉を投げ込んだりする悪辣な効率的なことは出来ない弱い人間なんだ
>2000年後の様々な知識の中にはちょっと聞きかじっただけでも十分に有効なものはいくらでもあるけど使えないんだろうなあ
まさにそうです
二人に語っていたことよりも悪辣なことを知ってはいますが、できない
そこまで察していただいたのが何より嬉しいです

そして二郎ちゃんはそこまで鬼になれないのですね
RTAはできません
だから、凡将伝なのですということで一つw
99 :赤ペン [sage]:2022/05/30(月) 11:43:36.80 ID:N5hQyIsh0
鬼になれ!鬼になると言え二郎!
100 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/05/30(月) 18:59:50.31 ID:/rmT1asd0
>>99
「……ない。
 ……ならない」

煉獄さんみたいに即答はできんやろなって
101 :赤ペン [sage]:2022/05/31(火) 11:19:03.71 ID:cGSELRrz0
死んでしまう!死んでしまうぞ二郎!
このままでは遠い未来に多くの無辜の民が死んでしまう!
102 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/05/31(火) 19:03:31.46 ID:6yYWqXSb0
>>101
「いやそこまで責任取れんし」

一気に他人事になるますw

未来はどうせ世界大戦とかコロナとかでえらいことになると達観しておりますわ
103 :赤ペン [sage]:2022/06/01(水) 11:29:48.98 ID:NjqJ5kAY0
まあ、せやなww
じゃあ『お前のその手から大切な物が零れ落ちるかもしれないぞ!(リライト前を見つつ)』
むしろ月詠、雷簿、韓浩を横目に……の方が効果あるかな(まあ彼らの死を二郎ちゃんが頑張れば覆せたかと言うと)
104 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/06/01(水) 20:32:04.22 ID:EJGPLh3s0
>>103
(覆せたかというと)無理ですねw

ルートが違えばまた違った未来もあったでしょうけんども
はおーが覇王になったり
戦争の天才が群れてる孫家とガチやりあったり
(比較的)得意分野の内政で全てで上をいかれる何進とやりあったり

どこいっても大変ですわw
105 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/06/06(月) 21:43:35.56 ID:WaWAh3II0
「これは、どういうことですかな?」

問う声は鋭く、傲然と立つその人物を貫く。
だが、桃色ふわふわ長髪の主は、その声色に小揺るぎもしない。

「そうね、これは私の我儘と言ってもいいのかもしれないわね。
 まあ、それはそうとして、よ。権官と言えど三公の一角に任じられたのは見知っているでしょう?」

ニコ、と笑って劉璋は厳顔を見据える。

「とは言え、若輩の身。諸事において至らないことは多いと思うのよね。
 だから、知己に助言を求めたいな、って思うのはおかしなことじゃないわよね?」

「助言、諫言はよろしい。いかにも労を惜しみませんとも。
しかし、これは軟禁と言うのではないですかな?」

じと、とした厳顔の目線。
かつてはこの目線に怯えていたのだなあ、などと思いながら劉璋は軽やかに応える。

「やあねえ。
漢朝に尽くすのだからして、ちょっとくらい不自由あってもおかしくないじゃない?
いつなんどき、助言を求めるかも分からないのだし」

くすり、と笑う劉璋に厳顔は感慨すら覚えてしまう。腹芸と言うには未熟。
だが。

「で、本音のとこはどうなのですかな」

ニヤリ、と軽く挑発したそれに劉璋はあえて、であろう。乗ってくる。

「北伐に当たって、不安要素は除いておきたいのよね……」

はあ、と劉璋は柳眉を顰める。
106 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/06/06(月) 21:44:20.06 ID:WaWAh3II0
「ほう?」

「ぬけぬけと言うわね……。まあいいわ。ぶっちゃけるとね、お母様の手を封じたいのよね」

「ふむ?ですが劉焉様は隠居なさっていますぞ?」

事実である。皇族である劉焉に対して、異例のことながら隠居を命じる旨が発されている。それに従い劉焉は隠居して、一切の公職から退いている。

「あのお母様が、それで。
それぐらいで大人しくするとは思えないのよね……」

やれやれ、と言った風に劉璋は嘆く。皇族としての影響力をもうちょっと違う形で活かさないのかなあ、と。

「それでもね。剛柔絡めて洛陽で動ける手駒って桔梗くらいでしょ?だから、よ。
 何を言い含められているかは知らないけど、封殺させてもらうわ」

「これはしたり。
劉焉様からは何も言付かっていないのですが?」

「それならそれでいいわ。お母様からの命を吐けと言うつもりもないしね。
 ただ、何もさせない。それだけ」

表情筋一つ動かさず、淡々と告げる劉璋に厳顔はニヤリ、と笑う。

「なるほど。血は争えませんな。流石は劉焉様のご息女といったところか」

「はいはい、お世辞は結構よ。大人しくしてなさいな」

――以前であればこの、安い挑発につられていたはず。
これは、見誤っていたか。いやさ。

「括目するべきでしょうな。
劉璋殿。よくぞそこまで」

「そうね、少なくとも桔梗のおかげではないわね」

さらり、と躱される。割と本音なのだがなあ、と厳顔は苦笑する。
107 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/06/06(月) 21:47:15.03 ID:WaWAh3II0
「ほほう、では一体全体どういうことでしょうかな?正直見違えるくらいですが」

揶揄混じりのその言葉。それに劉璋は考え込む。

「そうね。やっぱり二郎の、おかげかしらね……。
 うん、二郎が私の蒙を啓いてくれたのよ。
 だから、私はね。恩を返さないといけないと思うのよ。
 あの、曹操みたいな化け物とやりあわないといけないの。
 私ならできるって、言ってくれたの。
そんなのって、ないわよね。
言われたら、やるしかないじゃない!」

破顔一笑。
劉璋は笑って魅せる。

そうだ。そうなのだ。
あの男に、留守は任せたなんて言われたのだ。
血筋だけが存在の全て。そう言われていた自分に懸けられた期待、信頼。
それに応えずしてなるものか。

「だから、使えるものは何でも使うわ。できることは何だってする。
そうね。重かった劉姓、今はありがたいくらいよ。
 知ってる?
私って宮中では今上陛下の次に尊い血筋なのよね」

皇族であるということの重さ、そして何より、その血の力。
それを自覚し、溺れない。使いこなすのだと。

「まあ、それで辛うじて曹操の配下程度と遣り合えてるって感じなんだけどね」

正直、相当に手心を加えられているなあ、と思いもするのよね、と。
嘆息、ひとつ。

「話がずれたわね。
まあ、そんなわけで桔梗にはのんびりとしてもらうってわけよ。
 それでお母様に対する牽制にもなるしね。
 だからいつも通り昼間から呑んだくれてなさいな」

その言いぐさ。傲然とした支配者の振舞。
厳顔をして自然と膝をつかせるその在り様。

「お見事でございます。
 いや、流石と言うべきか。血は争えぬと言うべきか……」

その言に劉璋はフン、と鼻で笑う。

「お母様にも、桔梗たちからも何も貰ってないけどね。
 いえ、だからこそ。かしら?
 ほんと、二郎には感謝しないとね」

溢れる本音と恨み言。
それに怯む厳顔ではない。

「なるほどなるほど。
 恋する乙女は無敵、という奴ですな。
 いや、まことに結構!」

「ば、馬鹿じゃないの?
 誓ってそんなんじゃないし!」

相手が二郎とかほんとありえないという悲鳴を置き去りにして。

内心、これしきの言葉で乱れてほしくはなかったのだが。
これもお役目、いたしかたなし。

「ほほう、そこは詳しく聞いておきたいですなあ。
 何せこれから外出もままならぬことになるのですから」

むきー、と激昂する劉璋をあしらう厳顔。
――厳顔が果たして劉焉から「ある種の」密命を帯びていたのかどうか。
彼女はその生涯において言及することはなかった。
そしてその解釈は分かれて尚、魅力的な英傑であった。
108 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/06/06(月) 21:47:52.06 ID:WaWAh3II0
本日ここまですー

かんそうとかくだしあー

ねむいのが

よろしっくおあが
109 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/06/07(火) 02:50:29.37 ID:A3tbjNP/0
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110 :青ペン [sage saga]:2022/06/07(火) 23:51:56.14 ID:NLdNLTyio
>>108
おっついおっつい。

そうさなー。
【恩義と期待と恋心】
といっとく?
111 :赤ペン [sage]:2022/06/08(水) 15:33:49.27 ID:qCorN/+g0
乙でしたー
>>106
>>「ほう?」

>>「ぬけぬけと言うわね……。まあいいわ。 ぬけぬけと【言う】というほどではないですし
○「はて? この身は一切の私心無く漢朝を支えていると自負しておりますが」

○「ぬけぬけと言うわね……。まあいいわ。 【ぬけぬけと】ならこの位は言うかな? なお仕えてる主に私心があるかは言っていない
○「ほう?」

○「相変わらず人を食ったような態度ね……。まあいいわ。 惚けてるのか楽しげなのか分かりませんがそんな感じかな?
>>表情筋一つ動かさず、淡々と告げる劉璋に厳顔はニヤリ、と笑う。 上の方で【ニヤリ、と軽く挑発】してたので
○表情筋一つ動かさず、淡々と告げる劉璋に厳顔は笑みを深める。  半分くらいは成長した劉璋に喜んでそう
>>107
>>いや、流石と言うべきか。血は争えぬと言うべきか……」      上でも言ってるしちょっと言い方変えてみるかな
○いや、流石と言うべきか。若き頃の劉焉様を彷彿とさせますな……」 関心半分挑発半分で言いそう
>>――厳顔が果たして劉焉から「ある種の」密命を帯びていたのかどうか。 「」を使い分けしたい
○――厳顔が果たして劉焉から【ある種の】密命を帯びていたのかどうか。 個人的な好みの問題ですが

劉璋たんをカリカリモフモフしなくては(使命感
始祖(皇族)の血に覚醒してフルスペック発揮できるようになったか…全部終わったら留守番をやり切ったご褒美をあげないとね
喉をこちょこちょとかしたら喜びそう…
112 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/06/08(水) 21:26:56.77 ID:hDwE5MND0
>>110
どもです!

>【恩義と期待と恋心】
どうだろ。
恋心ってアリですか?
劉璋ちゃんって恋してそう?
ここだけ分からないんですよね。
きっとよほどのことがない限り二郎ちゃんと劉璋ちゃんって
結ばれることはないわけですよ。
それを承知な劉璋ちゃんなのですよ。
アリなのかないのか、どうなんでしょね。
まあ、このままいったらあったとしても封じ込めるんだろうなあとは思います。

>>111
赤ペン先生ありがとうございます!

>劉璋たんをカリカリモフモフしなくては(使命感
のりこめーー
いやほんと、当初は存在しないはずでしたので、何がどうなるか分からないな、とw

>喉をこちょこちょとかしたら喜びそう…
愛玩動物的な劉璋ちゃんって最高に可愛い案件なんですが

いいキャラに成長してくれたなっておもいます

           /: : : : : : : : : :,: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
          ,. : ,: ': : : : : :  /. . . : : : : : : : : : : 、: : : : :   \: : : : : : .
            /: :/   . . ,: : :/: : : : : : : : : ∨: : : : :ヽ: : : : : : : ∨. .  :.
        ,. : /. . : : : : :/ : /: /: : : : : : : :}: }: : : : : : : ,: ,: : : : : : :,: : : : :.i
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          {: /: : : : : : : {:/!: |: ハノ: :、: : : :i`ー!-}:∧-イ:.|: :|: : : : : : :,: : : : i
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113 :赤ペン [sage]:2022/06/08(水) 23:42:51.45 ID:qCorN/+g0
これで恋してないって言うのはちょっと無理があるかなって
あとはいずれ遠い日に「私はあの人が好きだったのよ」とか言えば静かに初恋が破れる感じで
「私はあの人のことが好きよ、戯言だけどね」とか言ったらもはや愛と言っていいんじゃないかな
個人的には半年くらい人前に出ることが無くなってそのあと3年くらいしたら養子をとってどことなく二郎と劉璋に似てるとか好き
劉姓とかのしがらみを何もカンも無視して結婚式上げてくれても良いのよ…
権力には興味ないことの証に公的な職から身を引いて毎日畑に種まき(意味深)しても良い
114 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/06/09(木) 07:00:53.61 ID:QtDA+WBP0
>>113
旧作にては

>いずれ遠い日に「私はあの人が好きだったのよ」とか言えば静かに初恋が破れる感じで
>「私はあの人のことが好きよ、戯言だけどね」とか言った

完全にこれでしたが
今作ではどうなるかな・・・
多分メイン軍師次第だな・・・
115 :青ペン [sage saga]:2022/06/12(日) 18:15:36.52 ID:WQ3cUzzKo
>>112
赤ペン先生も突っ込んでくれてるし
桔梗姐さんもいってる通り
自覚してないだけで恋だとおもうじぇ?
116 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/06/12(日) 20:03:10.17 ID:FS/XJslm0
そうかな・・・
そうかも・・・
117 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/06/13(月) 21:50:34.75 ID:zQXbzPMN0
「疲れたなぁ……」

ぼそ、と諸葛亮が呟いたその言葉に鳳統は苦笑する。

「そうだよね。ちょっと根を詰め過ぎだよね。お茶でも淹れようか」

応えも聞かずに鳳統は室を去る。それを見送って諸葛亮はほう、と息を吐く。
幽州が蜀として漢王朝の正当を主張してから彼女は、彼女たちは休まる時もない。
物理的に、だ。些かの準備期間があったとはいえ、国の運営なぞ未知の領域。それをこれまでのところ大過なくこなしているのは最大限に賞賛されるべきであろう。
背後の苦笑する気配。支えてくれている彼女にぼやきという甘えを口にする。
す、と手元に現れた書類に目を通し、形のいい眉をひそめる。

「むー、なんでだろう。治安が悪化してるなぁ。襄平は問題ないのに、国境近いとこほど荒れてきてる……」

「もう、朱里ちゃん。ちょっとは休まないと!」

ぷりぷりと可愛らしく頬を膨らませながら鳳統がそれでも手際よく茶を淹れる。その香りが僅かに諸葛亮の疲労を癒す。
いつの間にか背後の気配は去っている。彼女の淹れてくれたお茶は癒やしとは対極で、のどごしも刺々しくはあったがあれはあれで味わい深いもので、気に入っていたのだ。

「うーん、やっぱり雛里ちゃんが淹れるとすごく香りが立つね!」

「そうでもないよ?単にいい茶葉を使っているだけだもん。私の腕は関係ないよ」

くすくす、きゃいきゃいと、親友でもある中華屈指の頭脳の持ち主たちは雑談に興じる。
それもこれも、これまでの国家運営が――それなりに――順調というのが大きいであろう。
軍政、民政。その二つがほぼ彼女らのか細い肩に圧し掛かっている危うい体制ではあるのだが。
そして軍政は鳳統、民政は諸葛亮と自然な分担が成立している。
無駄な政争なんて彼女らにはない――蜀全体でもあるはずのない――効率的な体制なのだ。
そして、その体制が盤石な理由がある。

「よ、二人ともお疲れさん!」

ふんわりと、仲良しの二人だけの空間。相当に弛緩していた空気だからこそ、その声に二人は引っくり返りそうになる。

「ご、ご主人様……!」

そう、彼女らの執務室への闖入者は、だ。
彼女らが主と仰ぐ男であった。

「二人とも、お疲れさま、だな」

そう言って二人の頭を撫でまわす。これが他の誰かであったら二人とも声を大にして抗議するであろう。子ども扱いするな、と。
だがしかし、北郷一刀のそれは別である。
心からの気遣い、それに二人とも恍惚とする。自分が、自分たちが如何に大事にされているかということを再認識するのである。

「俺には朱里と雛里の手伝いはできそうにないから、せめてもの差し入れ」

笑って包まれていた饅頭を取り出す。

「ちょっと冷めちゃってるけど、それでも。
……いやいや。それはそれで美味しいぞ?」

コンビニの肉まんよりはよほど美味しいしなあ、という呟きなぞ耳に入らないかのように、はぐ、はぐと。そして思ったよりも残されていた熱量。
そして弾む北郷一刀の鼓動にくすり、と笑う。幸福感に包まれる。恐らく冷まさぬように、と駆けてきてくれたのだろう。

「ご主人様、ありがとうございます。とっても美味しかったです」

万感の思いを込めてそう伝える。

「そ、そうか?いや、別にそんな高いモノじゃないし、そこまで喜んでくれるとは思わなかったな」

ま、少しでも二人の応援になったならよかったよ。
そう言おうとした彼に。

「あ、お兄ちゃん、ここにいたのだ!ひどいのだ!今日は鈴々と巡察の予定だったのだ!」
「ご主人様……。恋も……」
「ああ、分かった分かった。じゃな。朱里、雛理。頼りにしてるよ」
「もう、鈴々お腹が減っちゃったのだー」
「恋も……」
「いやちょっと待ってくれ?微妙に値上がりしてるから俺の小遣いで二人の胃袋を満足させられるかには不安がー?」

知るかとばかりに引きずられていく北郷一刀を見送りながら諸葛亮は呟く。

「はわ、わ……?」

その異常。その兆候に気づいたのは流石諸葛亮と言うべきかもしれない。

「――雛里ちゃん!伝票を!違う、そうじゃないね!
桃香様が即位するひと月前からの、食品の相場。できたら価格の推移が見れるものを!
大まかな品目だけでもいいから!」

杞憂であってくれたらそれでいい。
そう、想いながら諸葛亮はもたらされた資料を、人智を超えた速度で確認していくのであった。
118 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/06/13(月) 21:51:01.41 ID:zQXbzPMN0
◆◆◆

「いやー。高く買って安く売る。こんなに楽な商売ってわたしゃ知らないよー」

にへら、と表情を緩ませてどんどんと手持ちの物資を破格値で売りさばき、得た資金を惜しげもなく投下して物資を買い漁るのは魯粛である。
安く買って高く売るのが商売の基本であるからして、今現在彼女のやっているのは真逆の行いである。
ちなみに高く買うのは米、麦、粟、稗などの安価な食糧。安く売るのは肉、茶、酒、絹織物などの嗜好品である。

「しかしまあ、あの人も突拍子もないこと考えるもんだよねー」

背後に控える黒い影――としか言いようのないその存在に語りかける。確かにその場に在りながら、誰にも注目されぬ穏行。
それを為しながら市街の風景に溶け込むのは張?である。袁家の中でも特別扱いされる諜報専門の張家の主――最近代替わりしたらしい――は僅かに頬と唇を弛緩させながら応える。

「然り、然りですな。都市一つを干上がらせると言うのであれば過去いくらでもあったろうですが、州ひとつを干上がらせるなぞ、正気の発想ではないですな」

その声に我が意を得たりとばかりに魯粛はきゃらきゃらと笑む。

「でしょでしょー?そこに痺れるし。
むしろ憧れるよねって、ね」

だがしかし、結論から言えば紀霊のその案は現実的ではないと判断されたのである。
何となれば、幽州は中華有数の穀倉地帯。それを干上がらせるなぞ、正気の沙汰ではない。
食糧の備蓄については言うまでもなく、中華を支えんばかりの収穫量の穀物である。
いや、だからこそ穀物の値崩れを防ぐために袁家はこれまで積極的に備蓄を進めていたのではあるが。
だが、それにより蓄えられた物資の総量を鑑みれば、紀霊の発案はこう評される。現実的ではない、と。

「まあ、あの御仁の発想は兎角、突拍子もないことが多いからな」

淡々とした口調ながら、どこか可笑しげに張?はそう、評する。

「そうなんだよねー。
でも、方向性としては無視できないって言うかー。ぶっちゃけ私たちには思いつかない路線って言うかー」

どこか不満げに、或いは楽しげに魯粛が呟く。

「――姉も似たようなことを言っていた。その発想は突飛なれど、その着眼点は端倪せざるを得ない、と」

「げ、あの張勲さんがそこまで評価するんだ。
流石と言うべきか……」

どひゃ、と悲鳴じみた声を上げ。
げんなりとした表情で魯粛は呟く。あの女は敵にしてはいけない存在だと、一目で見破った魯粛の直感こそ賞賛されるべきものだ。
味方にしても特に益無く、敵にすれば厄介きわまりない災厄そのものであろう。
そう、張?などは思うのだが。

「まあ、私等(うちら)は役目を粛々と果たしてけばいいしねー。
実際気楽なもんさ、ってね」

その言に張?は苦笑する。紀霊の参謀たちが摂った策は、ある意味紀霊の発案よりも苛烈である。
残酷と言ってもいい。

「最低限の食料は買い上げ、奢侈品は安く売る、か。
結果、一時的に劉備政権の評価は上がるが……」

悪辣なことだ。一度覚えた贅沢を民は絶対に忘れない。そして、だ。

「はなから何も持っていない人は何も守るものなんてないんだよ?
でもね。一度守るもの――それが財貨であれ、愛する家族であれ――を得たらね、今手元の財貨、安寧だけじゃあ物足りなくなるんだよ。
 そう。袁家が蓄えた財貨。それはもう蜀のものだよ。それはしょうがない。でもね。それがどんどん目減りしていく……。
それに耐えられる訳がないよ」

魯粛は断言した。かつて富豪と言ってはばかりないほどに財貨を抱えながらも、骨肉相食むほどまで困窮した彼女の言に口を挟める者はいない。
その言の示す人の本質。その浅ましさ、貪欲さ。……或いは。

「だから、ね。大筋で賛成するよ?
食糧の買い上げ、相場への介入、操作……全部禁じられていたけどね。存分にやるともさ」
119 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/06/13(月) 21:51:53.25 ID:zQXbzPMN0
昏(くら)く、笑う。
これまで、母流龍九商会は相場の安定に尽力していた。
相場、それは高騰も急落も好ましくないのだ。求められるのは安定。相場が安定しているからこそ農民は安心して目の前の農作業に専心できるのだ。
それを崩し、値を吊り上げ、或いは意図的に暴落させようとしていた商人は珍しくなかった。だが、それも母流龍九商会の隆盛により息をひそめる。息の根を絶たれる。
だが、それを。相場の安定を担っていた母流龍九商会が自ら乗り出すとなれば――。

「王手、だね」

けらけら、と魯粛は笑う。まあ、この、ある意味挑発に乗ればよし。
乗らなくても……。

「張紘は十年くらい、って言ったけどね、三年もあれば追い込んでやるよ」

なんとも言えない顔をする張?に、魯粛はけらけら、と笑う。その笑みは深い。
目の前の男は気づいているだろうか?いや、知っているだろう。
自分たちを操る存在はもっとえげつない手を平気で使う。流石に井戸に毒を投げ、田畑に塩を撒くというのは止まったらしいが。

「そりゃ、物騒にもなるよね。中華全土の犯罪者が幽州に送り込まれているんだから」

それが、諸葛亮、鳳統が日々苦しむ治安の悪化であり、魯粛の護衛に張?という大駒が充てられている理由である。

「これはもうだめかもわからんね」

嘆息と共に吐かれた言の葉。
その真意を問う人物にはその場にはいなかった。
120 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/06/13(月) 21:53:21.57 ID:zQXbzPMN0
ttps://www.youtube.com/watch?v=Zhx1n6uvgUE

シン・ウルトラマン
面白かったです。

どんどこいきたいです、ので。
題名は本当にオナシャス。
121 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/06/14(火) 03:16:03.57 ID:1GjQUioD0
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122 :青ペン [sage saga]:2022/06/14(火) 22:20:05.11 ID:2G0aSmhOo
>>120
ふむふむ。
シンプルに行けばよさそうじゃの。
【兵糧攻めは酒池肉林】
でどない?
123 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/06/15(水) 05:40:23.30 ID:ykCgSGL/0
>>122
洒脱でよきですね
しっくりきましたのよ
ありがとうございます!
124 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/06/17(金) 22:31:42.70 ID:5pQtDyk00
魯粛からの報告書に目を通す。
経過は順調とのことだ。穀物等の、民の生活を支える食糧が凄い勢いで幽州から運び出されているのが付随した資料で分かる。
それによりじり、じりと価格が上昇しつつあるな。
逆に酒、茶、肉などの奢侈品については下落の一途(いっと)だ。この勢いは当分止まらんだろうという魯粛の私見も添えられている。どうやら母流龍九商会以外の商人たちもこの流れに乗って来たらしい。

これまでひたすら市場、相場の安定に努めてきた母流龍九商会が率先して市場を荒らすのだから、これに乗らん奴は商才がないと断言できる。
気の利いた豪農もそうだろう。穀物は買い上げ、奢侈品は売りさばく。これだけで濡れ手に粟(あわ)ってやつだからな。

「まあ、こうして見ると醸造所と蒸留施設を南皮に集中させたのは正解だったなあ」

俺が流し読みにする魯粛の報告書。それを俺の数倍(以上だろうが考えるだけ無駄)の速度で目を通すのは張紘。
俺の義兄弟にして今回の任務(ミッション)の総責任者であったりする。
いやまあ、今回のそれには思う所があるみたいなんだけんども。

「まあ、な。運び込んだ穀物を酒にできる。それをまた幽州に売りさばくって循環だ。
しかし。だ。これで幽州にも蒸留施設があったらいざ物資を絞る段になってあちらで供給されてしまうしなあ」

蒸留酒――火酒と呼称している――の扱い、製造方法については最上級の機密として扱われている。華琳を始め、色々技術供与の要請も多いのだが今のところこの技術をオープンにするつもりはない。
特に華琳には内緒だ。絶対にだ。だって絶対に面倒くさいことになるもん。

「――幽州においては治安も悪化の一途とのことだ。
これも目論見どおりだな?」

こちらを見ようともしないで言う張紘の言葉に尖ったものを感じざるを得ない。いや、そんな奴じゃない。きっとそれは俺の後ろめたさだ。
中華全土の獄に繋がれていた凶悪犯、これから裁きを受ける死刑囚。それらは随時幽州へと放逐されている。更生なぞありえんような輩たち。それを提言したのは風であった。
事前から準備していたかのように、次々と追放される罪人たちをあちらこちらに振り分ける手腕には脱帽である。

閑話休題。

まあ、張紘も清濁併せ飲む器量があるから、色々と思う所があっても理解してくれていると思っている。張紘からして本当に駄目なことにはきっちりと言ってくれるはずさ。きっとね。

「にしても、二郎よ。軍の編成はいいのか?」

その声にひらひらと手を振って応える。

「いいのいいの。俺がいても邪魔なだけだし」

「……そう言われるとおいらの邪魔しに来たのかと思ってしまうんだが」

「そ、そんなことねーし!めっちゃ相談したいこととかあったし!」

ちなみにとっても頼りになる義兄弟の張紘君は北伐の物資の調達あれこれの手配をしています。北伐軍内部で必要とされる物資の概算、内部での差配については華琳が担当なんだが、それを用意するのが張紘ってわけだ。
無論出兵の規模が決まらんことには物資の手配もできんのだが、概ね十万前後になる予定で動いている。
俺としてはそれこそ百万の兵で蹂躙したろうと思っていたんだが。

「一声十万とは恐れ入ったよ。むしろ呆れたよ。なんだそれ。なんだよそれ」

そう。北伐軍が実際に準備を始めたら、幽州で彼奴等は募兵をしたんだよ。それはいい。
劉備が呼びかけたらあれだ。十万の兵が集まるとかどういうことなの……。
んでもってこっちが兵を増やせば増やすほどあっちも増員するってことで少数――ではいないんだけんども――精鋭でもって出兵することになった。
まあ、あまりに兵数が大きくても扱いきれなくなっても意味ないしな!俺に用兵の才とか多分ないし。

「ま、頼りにしてるよ」

俺の声に、あいよ、と応えて張紘は俺と馬鹿トークしながらもせっせと書きつけていた書類を放り投げてくる。

「まあ、なんだ。おいらは、どんなことがあっても二郎の味方さ。そこは安心しといてくれ」

気軽さを装い、照れくさそうに言い捨てて急ぎ足で室を辞していく。

ありがてえなあ。
125 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/06/17(金) 22:32:46.21 ID:5pQtDyk00
俺には過ぎた兄弟さ。張紘も、沮授も。
じんわりと温かいものを感じながら振りかえれば既に夜半。満月が東屋を照らし出している。
白湯(さゆ)でも啜って寝るかな、とぼんやりと考える。張紘と馬鹿トークしながらあれこれ摘まんだし、食事はいいや、抜いてしまおう。
なんて考えていたんだが。何だか喧噪がやってくるぞ?俺に面会とかだったら先触れが少なくとも俺の意向を確認するもんなんだが……。

「二郎さん、観劇に行きますわよ?」

おーっほっほという笑い声――ただしめっちゃ高貴であり、生半可な楽曲では太刀打ちできないほどの芸術性を備えている――に反応する暇すらなく、俺は声の主たる麗羽様に連行されることになったのである。

観劇は恙なく終わり、併設された酒家を借り切って余韻を楽しみながら茶を啜る。いや、俺が呑むのは火酒だけどね。
なお、檄の内容については割と頭に入らなかった。だって。

「……二郎さん、その。ご迷惑でしたかしら?」

 ちら、ちらと俺の様子を気にする麗羽様がいたからね!

「何言ってるんですか。
どのようなことであろうと麗羽様がお呼びとあらば即参上!です。
なんで、わざわざのお越しに恐縮至極だったりするわけですよ」

ちなみに演目は春秋戦国時代の仮面の美青年というお話でありました。仮面なのに美形とはこれいかに。

「なら、よろしいんですけど。
 その、少しでも二郎さんの気晴らしになれば、と思ったんですけれども」

 どこか甘えた風に、気にした風なお言葉がありがたい。

「これは参ったな、お気を使わせちゃいましたか」

確かにまあ、割と荒れてたからなあ、俺。

「いや、まあ、あれです。数で圧殺すれば楽勝と思ってたんですけどね。どうもそうもいかないみたいで」

なにせ、一声で十万の民が兵になるのだ。数で圧殺するのはいい。
だが、この戦いが終わったらば、幽州に民はいなくなり、残るのは焦土だろうよ。まったく腹立たしいことこの上ない!それを狙っての一手だと分かるだけに腹立たしさは倍率ドン!である。
……通商破壊は出来ても、焦土作戦には頷けないのはきっと俺の甘さなんだろう。
きっとそれが俺の限界なんだろうなあ、と思ってしまう。例えば華琳だったらどうするだろうか。なんて益体もないことを考えてしまう。

「まあ、世の中ままならんことばかり。いつものことですよ」

そうさ。これしきの逆風、大したことない。そう、自分に言い聞かせる。
いつだって時代は優しくないし、やることなすこと裏目に出るのは様式美。それでも、前を向いて、できることをするしかないんだよ。俺みたいな凡人は。

「二郎さん……」

気遣わしげな麗羽様の声がこの上なく癒しである。励みである。湧いてくる。気力が。そりゃもう、もりもりと。

「麗羽様の声に、すっごく励まされてます。
だから俺は頑張れます。頑張ります。そうです。そうなんです」

――麗羽を、よろしくね。

在りし日の袁逢様の声が甦る。そしてまだ幼い麗羽様を守ろうと決めたのだ、俺は。この、三国志にひどく似て、どこか歪なこの世界で。抗おうと。三国志なんてはじめさせないと、誓った。
最初は保身だけだった。でも、今は違う。違うと言い切れる。守りたいものができた。できてしまった。それも、たくさん。
126 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/06/17(金) 22:33:25.30 ID:5pQtDyk00
「ねえ、二郎さん?」

くすり、と笑って麗羽様が俺に問いかける。

「わたくし、二郎さんの主として相応しくあるかしら?」

その問い。
それに俺は暫し言葉を失う。

「何言ってるんですか。
麗羽様ほど光輝に満ちて、俺が全身全霊で仕えようとか。
他にはありえないほどのお方ですよ」

いやまあ、俺の勤務態度については弁解せんといかんと思うけどな!公務ぶん投げて放浪とかしてたしな!
いや、あれはあれでね、さすらって大正解だったと思うけど!思うけど!思うよね?
そんなアホなことを考えている俺をどう思ったのか。

「――本当ですの?」

いつになく、真剣なまなざしで麗羽様が俺に問うてくる。

「勿論ですよ。あの日、あの時に誓ったのは本心ですとも。
お疑いあるならば我が胸を麗羽様の剣で貫いてください」

恭しく跪いて懐にあった短剣をそ、と胸に当ててニヤリ、と笑う。

「もう。二郎さんってば。そういうことじゃないってお分かりでしょう?」

ツン、と口を尖らせた麗羽様。やっべ。めっちゃかわいい。

「いやいや、むしろ俺の方がですね。
お見限りにならないかって日夜ヒヤヒヤしてますってば」

自己PRしてくださいと言われたら言葉に詰まってしまう俺である。
兵を率いては星に及ばず、頭脳労働では言うに及ばない。
あれだ、家柄だ!あと財力か。金とコネが俺のアピールポイント……ってなんだこの漂う駄目駄目臭。
某スペースオペラが舞台ならF男爵ポジだな、と確信する。
うむ。いかんな。どうにも思考がマイナス方向に向かいまくっている。
と。

「ね、二郎さん?」

そ、と俺の側に腰掛けてこてん、と顔をもたれかけてくる。

「わたくし、これで、頑張ってきたのですわよ?」

囁くように俺に問うてくる。

「や、麗羽様はそりゃあ頑張っていましたとも」

田豊師匠の英才教育に泣き言一つ漏らさずに――多少は漏らしたかもしんない――立ち向かっていたし……うん。
なんか表現おかしいけど、立ち向かうというのが一番正しいと思う。
ねーちゃんからも可愛がられていたしな!体育会的な意味で!
うん、マジ麗羽様すげえわ。俺なら逃げ出すことうけあいである。

「……麗羽様の頑張り。多分俺が一番分かってると思います」

斗詩と猪々子よりも、だ。だって彼女らが御側役になるよりも早く俺は麗羽様にお仕えしていたんだもの。
うんうんと頷く俺をどこか可笑しげに麗羽様は笑う。くす、と。

「覚えていらっしゃるかしら。南皮の城壁の上で炊煙を一緒に見たことを。
 民の、竃(かまど)に立つ煙を。
 だから。二郎さんが何を悩んでらっしゃるかも、分かっているつもりですわ」

「――勝てばよかろう、と思っても。それができません。それが勝敗の最善手かもしれない。幽州の民を根絶やしにする。そうすれば勝てる。でも俺にはできません」

幽州には何度も足を運んだ。そこで、馬鹿をした。笑って、呑んで、吐いて。
周りで囃し立ててた人たちを、酒を酌み交わした人たちを、だ。
単なる数字の羅列として切り捨てることが、できない。
127 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/06/17(金) 22:34:49.59 ID:5pQtDyk00
「わたくしは、幽州の民に直接の面識はありませんけど。民は慈しむものでしょう?
 取るに足らないと処理されるひとり、ひとりに、精一杯生きている人生があるのでしょう?」

頷く俺に麗羽様はにこり、とほほ笑む。

「だったらそれでよろしいのですわ。二郎さんのことですもの。とっても、とーってもお考えになったはずですもの。
 その思いは、決断は正しいとわたくしが保証いたします」

不意に。
ちゅ、と唇を合わせて、耳元で囁く言の葉。

「万が一、それが間違っていても、責を負うのはわたくしですわ」

 くすり、と軽く漂わせる。その言の葉。その意味。

「や、それは!」

麗羽様に相談も報告もしなかったのは、俺が全ての責を背負うためなのだ。
そのための征夷大将軍である。

「ねえ、二郎さん。話を戻しますわよ?」

くすくすと笑いながら麗羽様は再びちゅ、と。

「わたくしが、色々頑張ったのは二郎さんのためなのですよ?」

は?
俺が麗羽様の言葉を理解する暇もなく、言の葉は連なっていく。

「お母様がね、おっしゃったの。誰にも文句を言わせるな、って。
 だから、わたくしは袁家の模範的な当主として、当主たるべく頑張ったのですわ。
 だって、そうしたならば、好いたお方と結ばれることも可能だって言うんですもの」

くすくす、と笑いながらも俺の腰に回された手はぎゅ、と強く掴んで。吐息は切なく。

「袁家なんてどうでもいい、なんて言いませんわ。でも、わたくしだって思う所はあります。お慕いする方と結ばれたいって、当たり前でしょう?
 だから、わたくし、頑張ってきました。
自分で主張するのは、相当はしたないと自覚してますけれども……」

わたくし、がんばったのです。

そう、全身で訴える麗羽様を抱きしめ、口づける。荒々しく。

「麗羽様……」

「ああ、嬉しい。本当に、嬉しいですわ。二郎さん。ずっと。
ずっとお慕い申しあげてましたわ……。
ええ。幼かった日から、ずっと。ずっと……」

唇を重ね、蹂躙する。
ぼう、とした麗羽様が纏うその薄絹を、そっと剥ぎ取る。

――抵抗は、なかった。
128 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/06/17(金) 22:35:27.57 ID:5pQtDyk00
本日ここまですー
かんそうとかくだしあー

題名案は
「覚悟完了」

なんですが雅が足りない気がしますのでよろしくお願いします。
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/17(金) 22:58:38.62 ID:iNRY7Bb90
くだしあー
とか言ってる時点で雅より知性や精神年齢が足りてない
130 :赤ペン [sage]:2022/06/18(土) 15:25:55.33 ID:2siTiNGD0
乙でしたー
>>117
>>幽州が蜀として漢王朝の正当を主張してから彼女は、彼女たちは休まる時もない。 【正当性】は権利とか…ざっくり言うとお互いに持ってるものをこちらも持ってると主張する感じで
○幽州が蜀として漢王朝の正統を主張してから彼女は、彼女たちは休まる時もない。 【正統性】は本筋というか一つしかないものをそれはこちらのものだと主張する感じ……かなあ
正当⇔不当、正統⇔異端 なので……めんどくさいので正統後継者を主張してるからこっちですよと言うことで
>>す、と手元に現れた書類に目を通し、形のいい眉をひそめる。 これだと誰かが隣から差し出したように読めますが状況的に二人しかいないっぽいので
○手元の書類にさっと目を通し、形のいい眉をひそめる。    速読と要点の掴みは出来そうだしこんな感じでどうでしょう
>>いつの間にか背後の気配は去っている。彼女の淹れてくれたお茶は癒やしとは対極で、のどごしも刺々しくはあったがあれはあれで味わい深いもので、気に入っていたのだ。 【去っている】だとどこかに行っちゃった感じですがこの後雑談してるので
○隣の椅子が引かれたので小休憩に入る。彼女の淹れてくれたお茶は癒やしとは対極で、のどごしも刺々しくはあったがこれはこれで味わい深いもので、気に入っているのだ。 対面で座ったら仕事モードで横並びの時は休憩モードとか決めてそう。あと【あれはあれで】だと今淹れられたお茶の事じゃないっぽく読めます
>>そして弾む北郷一刀の鼓動にくすり、と笑う。 抱きしめられたりしてるなら分かるでしょうけど頭撫でられてるだけですし
○そして北郷一刀の弾む呼吸にくすり、と笑う。 走ってきて息が荒いとかでもしくは【紅潮する頬】とかも考えたけどどうでしょう
>>知るかとばかりに引きずられていく          この子たちは欲望に正直なだけで悪気はないと思うんだ
○すでに食事に思いを馳せている二人に引きずられていく 【知るか】というよりは多分【聞こえてない(ガチ)】なんじゃないかな
>>118
>>だが、それにより蓄えられた物資の総量を鑑みれば、 上での【だが現実的では無い】から続いているので
○故に、それにより蓄えられた物資の総量を鑑みれば、 その総括として結ぶなら否定文だとおかしいかな
>>その着眼点は端倪せざるを得ない、と」 これだと端倪をしなければならない(しないわけにはいかない)。という意味になるんですが
○その着眼点は端倪すべからざる、と」  端倪(始め(1)を見て終わり(10)を推測する)しないで1から10までをしっかり見ないとダメだ。という意味で使ってると思うのでこちらかな、と
>>その言に張哈は苦笑する。紀霊の参謀たちが摂った策は、 【摂る】だと【摂取】系の取り込む物っぽいので
○その言に張哈は苦笑する。紀霊の参謀たちが採った策は、 【採用した】もしくは【執った(執行した)】が良いと思います
>>骨肉相食むほどまで困窮した彼女の言に口を挟める者はいない。  【口をはさむ】だと話を遮って喋る感じですが
○骨肉相食むほどまで困窮した彼女の言に異論を唱える者はいない。 この場合【そんなことは無い、という人はいない】的な文章だと思うので

>>無駄な政争なんて彼女らにはない――蜀全体でもあるはずのない――効率的な体制なのだ。 無駄じゃない(必要な)政争もなあなあで収めて起こらなさそう
>>流石に井戸に毒を投げ、田畑に塩を撒くというのは止まったらしいが。 二郎ちゃんが明言しなかったら止まらなかったんやなって……効果的だからね、仕方ないね
昔本郷たちが任じられた土地はどうなったんやろなあ……前任者が問題なく収めて備蓄してた蔵の中身をばら撒いてたけど
百日後にバブルがはじける蜀かな?
131 :赤ペン [sage]:2022/06/18(土) 17:08:11.10 ID:2siTiNGD0
さて続きを
>>124
>>しかし。だ。これで幽州にも蒸留施設があったら 【。】が多いかな
○しかし、だ。これで幽州にも蒸留施設があったら の方が良いと思います
>>少数――ではいないんだけんども――精鋭でもって ちょっと違和感
○少数――ではないんだけんども――精鋭でもって  の方が良いと思います
>>125
>>なお、檄の内容については割と頭に入らなかった。 これはケアレスミス
○なお、劇の内容については割と頭に入らなかった。 ところで満月が空にあるような時間にも劇やってるのね……これが不夜城か
>>この上なく癒しである。励みである。湧いてくる。気力が。そりゃもう、もりもりと。 【。】が多いかな
○この上なく癒しである。励みである。気力が、湧いてくる。そりゃもう、もりもりと。 の方が良いと思います
>>126
>>ねーちゃんからも可愛がられていたしな!体育会的な意味で! 土曜7時の≪炎の≫なあれかな?
○ねーちゃんからも可愛がられていたしな!体育会系な意味で! 気合いだ―!とか言いながらうさぎ跳び100回させるけい

>>気軽さを装い、照れくさそうに言い捨てて急ぎ足で室を辞していく。 これだと張紘が出て行った感じですけど二郎が張紘の仕事場にお邪魔してたんですよね?(効率の面で考えても雑用係が控えてるだろうから便所でもなけりゃ出ていけんし……ああ、便所って言って顔洗いに行ったのかな
麗羽様の大願成就……いや、ここはまだ通過点に過ぎない、盛大に結婚式をあげないとな「この戦いが終わったら、俺結婚するんだ。ステーキとパインサラダで祝ってくれよ」

良作や傑作や名作の作者は優れた人格をしているなどというナイーブな考えは捨てろ、精神年齢が足りていても持ち込まれた原作をビリビリに引き裂いたりする
知性があっても何回も自殺したり心中して自分だけ助かって生き恥晒したりする
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/18(土) 21:48:42.26 ID:BeGY4CaRo
乙ですー
メインヒロインがようやっと結ばれる瞬間というのはやはり、かくも美しいものですね…

題案は
『光輝の衣は月光に融け、かの日の夢が今叶う』
長ければ『光輝の衣は月光に融けて』だけでもいいかなー、って

この夜に麗羽様は薄絹とともに光輝を脱がされて一人の少女に戻り、想い人と結ばれたいという夢を叶えた、って感じです
麗羽様の日輪の如き輝きが、同じく日輪の輝きを反射しただけにも関わらず真逆の柔らかさと静謐さを持つ月光の元で融け消え、そこにはただ一人の少女だけが残る、みたいな
133 :青ペン [sage saga]:2022/06/19(日) 09:44:09.32 ID:2n81inXIo
>>128
おっついおっつい。

>>132氏のが出来いいなぁと思いつつも
出しとくかね。

【薄絹を纏いし主のなか心】

と。
134 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/06/19(日) 22:08:29.23 ID:aymvopFt0
>>130
赤ペン先生ありがとうございます!

>昔本郷たちが任じられた土地はどうなったんやろなあ……前任者が問題なく収めて備蓄してた蔵の中身をばら撒いてたけど
多分沮授くんあたりがフォローしてしれっと穴埋め補填とかやってるんじゃないですかね

>百日後にバブルがはじける蜀かな?
百日紅に空目しましたw
まあ、バブルというかデフレに近い?
贅沢がすてきな世界

>麗羽様の大願成就……いや、ここはまだ通過点に過ぎない、盛大に結婚式をあげないとな「この戦いが終わったら、俺結婚するんだ。ステーキとパインサラダで祝ってくれよ」

ご丁寧なフラグ、全部踏んでやりたい気持ちがw

あと、うんこさわったらうんこつくとおもいます!

>>132
感想ありがとうございます。

>メインヒロインがようやっと結ばれる瞬間というのはやはり、かくも美しいものですね…
ようやくここまで来ました

>『光輝の衣は月光に融け、かの日の夢が今叶う』
>長ければ『光輝の衣は月光に融けて』だけでもいいかなー、って
素晴らしい言葉のチョイス
短縮版を仮採用です

>>133
どもです!

>【薄絹を纏いし主のなか心】
これもいいでち
薄衣、素敵な言葉

お盆までにはなんとか完結までもってきたいと言いながら
年末くらいになりそうな予感です
135 :赤ペン [sage]:2022/06/22(水) 09:35:09.20 ID:CwtJD5R40
逆に考えるんだ、誰よりも早く書き込んでる点を踏まえて
あいつはツンデレのかまってちゃんでいつもスレに一ノ瀬さんの書き込みがないかを待ちわびているだけの熱烈なファンなのだと……

ところでこれ貸し切りにしてるとは言え酒家……酒と肴を出す店員くらいはいるだろうし「ゆうべはお楽しみでしたね」不可避では
136 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/06/22(水) 20:29:12.00 ID:V2kv128u0
ポジティブシンキング
私の好きな言葉です

ゆうべはお楽しみでしたね・・・
言えそうなのはメイン軍師くらいじゃないかなあw
137 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/06/23(木) 03:00:35.27 ID:k+R7HOdm0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/23(木) 06:08:28.87 ID:K4oZ0RWt0
懲りもせず頭悪い書き込みして人生楽しいのかね
139 :赤ペン [sage]:2022/06/23(木) 19:05:16.94 ID:Yuxrf4W90
公僕()はやりたくないこともやらなきゃならないから仕方ない
今もどこかで犯罪が起きてないかとか犯罪者を捕まえるために面倒なことをやってるんだろうさ
140 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/07/04(月) 23:05:52.64 ID:ib3VgL1k0
一陣の風が大地を駆け抜ける。
その風に関羽は僅かに柳眉をひそめ、髪を整える。その黒髪は荒野にいながらも、あの曹操をして絶賛させるほどの艶をさらに増しているかのようである。

「どうしたどうした!」

厳しい訓練にへたり込む兵を鼓舞する。その声によろ、と兵たちは立ち上がり、槍を手にする。その、死力を尽くしている様に関羽の口が僅かに綻ぶ。その、満足気な関羽の表情に兵達の士気は否応なく上がっていく。

とは言え、もうそろそろ限界だな、と内心で関羽は断をくだす。

「訓練の方がきっついくらいでちょうどいいのさ。戦場の方が楽だなんてことは稀によくある。
 うちのスレた古参兵なんかはさ、実戦の方がいい飯が食えるって笑ってるくらいさ。
 所詮死ぬときは何やっても死ぬんだって、な。でも、な」

勝つためじゃない。生き残るため、生き残らせるために兵をしごくのさ、と彼が漏らした言葉は真情に満ちていた、と思う。
そして、自分がやっているのはきっと彼からの受け売りなのだろう。
――もっとも言い放った本人はそんなことを言ったことなぞ忘れているであろうが。

最後の一駆けを命じて関羽は同じく兵の鍛錬に尽力している黄忠、陳宮に連絡を取る。宿営場所、糧食の手配など仕事はいくらでもある。幸い、正規軍を率いていた二人がそこいらについては滞りなく手配をしていてくれている。

「こんなにも、大変なのだな……」

生真面目な関羽のことである。二人のその労苦を少しでも軽減できるように尽力しているのだが、思い知らされるのは自分の未熟ばかりである。

「まあ、愛紗ちゃんは戦場での勇が本職だから……」

「そんなに自分の無能を気に病むのであれば薄物一つで兵達を慰問すればいいと思うのですぞ」

温かい気遣いの一言、容赦ない一言すらもありがたくすら感じる。
そして、ちくり、と痛みが胸を刺す。

私は、なにをやっているんだろう。

そんな思いが湧き上がってしまう。
雑念だ。そう思っても、振り切ることができない。

「俺?いや、天下泰平になったらすぐさま隠居してやんよ。え?蒼天の行く末?
 ば――っかじゃねえの?そんなん、俺よりデキる奴が何とでもするだろうさ。
 俺の仕事は、そういう奴らが仕事しやすいようにお掃除することさね。
 んでもって今はそのお掃除役を探してるとこなんだわ。
 あー、どっかに既存の政治勢力とは無縁でなお高潔で見識があって分別があって武に秀でた人材はいないかなー」

酒席の上とは言え。ちら、ちらとこちらを見る彼が大層うっとおしかったのではあるが、その薫陶――であったのかは不明だが――は関羽の中に息づいている。
そして、思う。

「私は。何をやっているのだ……」

だが、それでも。自分が主君と仰いだ劉備。その声で招請された兵卒たち。彼等が生き残れるように、せめて、生き残れるようにと関羽は全力を尽くすのである。
――何か、これではいけないのかもしれない、と思いながら。
141 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/07/04(月) 23:06:18.88 ID:ib3VgL1k0
◆◆◆

「黄忠殿、どう思われますかな」

しかつめらしく問う陳宮を、かつての黄忠ならば微笑ましく思ったであろう。
若年でありながら主筋に尽くそうというその意気は好ましいものだ。それをきちんと導いてやるのが先達の役割。ではあるのだが。

「そうねえ……。とてもまだまだ実戦には出せるものじゃないわね」

「そうなのですか。弓兵の運用においては黄忠殿の右に出るものはおりませんからな。その言、知見。確かなものでしょう。
 そしてお恥ずかしながらねねの運用することになる騎兵についても芳しい報せがないのが現状なのですぞ」

深刻ぶって、と言うのは不当な評価である。彼女は、陳宮こそは。あの袁家が仕切った反董卓連合と相対して生き残った数少ない董家幹部の一人なのだからして。死線を潜った数では譲らなくとも、深度では。

だが、そうではない、と黄忠は頭を振る。
一体、自分は何をやっているのか、と思うのだ。軍務からは身を引いて、愛娘の教育のために北方へきたはずなのだが。

あれよあれよという間に弓兵の指揮を任じられ、こうして訓練に精を出す。漢朝に弓引くことになっている。幾度か劉備に問うたのだが、彼女の言、諸葛亮の言葉を聞くとそれが妥当と思ってしまう。だからこうしている。

かつての学友でもあった徐庶からはしきりに文が届く。彼女らしく、そこに内応の打診なぞはない。ひたすら自分と娘の心配をしてくれている。
もし自分が斃れたならば、娘は彼女に託そう。そう、思えば。軍務にも励めるというものである。
142 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/07/04(月) 23:06:44.76 ID:ib3VgL1k0
◆◆◆

「馬鹿げているのですぞ」

陳宮は誰にともなく、呟く。だが、それは紛れもなく彼女の本音である。
一体全体、分かっているのか、と言いたい。問い詰めたい。一刻でも二刻でも問い詰めたい。それくらい陳宮は現状に焦りを覚えている。全てが絶望に変換されそうなあの時のようなそれ。そしてその焦燥感は馴染み深いものである。
かつて、真正面から自分を含む董家一同は袁家に挑んだ。そう、漢朝と言うよりは袁家に挑んだのである。
あるとき黄忠に問われ、淡々と応えた。

「まあ、それは散々だったのですぞ」

今でも思い出すのだ。あの切迫感、絶望感。じわり、と追いつめられるあの感覚はなんと言えばいいのだろうか。
打つ手、全てを見透かしたような反撃。いや、そうではない。此方が打つ手全てを読まれていたとは思わない。だが、それら全てを圧倒して飲み込む波濤が如き分厚い打ち筋、手数。

諸葛亮、そして鳳統。二人のいずれかを手にすれば天下を取れると、水鏡と言う人物は言ったという。
陳宮は笑う。笑うしかない。かつて自分たちと道を同じくしていた彼女は、その二人に勝るとも劣らなかった。身近でその人を見ていたのだ。
賈駆という少女の智謀は幾多の戦場において最優。そしてそれを後見する馬騰、皮肉げに哂う韓遂によって研ぎ澄まされ、輝きを日々増していたものだ。
彼女の智、そして覚悟。それを間近で見ていた陳宮は思うのだ。
蜀を自称するやつばらは、まだまだその覚悟、気構えが生ぬるい、と。

「ボクは、月のためにいるの」

その言葉は陳宮の底に響く。今でも。主のために最善を尽くすという在り方。それも彼女から学んだ。
ああ、そうだ。自分は呂布のためにいるのだ。そうなのだ。
うち捨てられていた自分を拾ってくれたのは、あの優しい目をした彼女。だから自分は彼女のために生きている。
彼女のために生きているのだ。

だが、と、思う。

「恋殿……」

彼女を永らえるのは、支えるのは何なのだろう。結局、軍師を自認しても彼女のことをまるきり理解できていないのではないか。

「――情けない」

戦う前から気持ちで負けてどうするとばかりに陳宮は声を張り上げるのだ。
幾度諭しても聞き入れなかった主のために。
そしてその主の言は。

「それでも、一刀は……ご主人様は恋を呼んでくれたもの。
だから、ご主人様のために今度こそ恋は頑張る……」

厄介者であった彼女らを受け容れてくれるのは、この蜀しかなかった。なかったのである。
そして主が蜀の、北郷一刀のために力を尽くすと決めたのだ。
だったら、彼女に救われた自分は付き従うべきであろう。
なに、彼女がいなければ野犬の餌になっていたのだ。それに勝ち目がないわけでもない。

「恋殿!ねねがきっと、きっと勝ちを掴ませるのですぞ!」

今度こそ、とわが身を奮い立たせる。心を決める。

「え、袁家なぞ何ほどのものか、ですぞ!恋殿の武勇あればどうとでもなるのですぞ!」

弱気を打ち払うための言葉。そして決意。
だからこそ、最善を尽くす。伝聞でも分かるその危機。かつて洛陽で散々に苦しめられた経済制裁が蜀全土に及ぼされているのだ。
その脅威を味わったからこそ分かる。今はまだ大人しいであろうが、その流れは大河の奔流のごとく一切合財を台無しにしてしまうのだ。

「時は味方なぞしてくれないのですぞ……」

その貴重な知見。

「わかりますとも」

いつの間にかいた知己に笑みが浮かぶ。

「馬良殿、貴女くらいなのですぞ。
 袁家の脅威を分かってくれるのは」

嬉々として茶の準備をしようとする陳宮。
馬良はこくり、と頷き茶菓子を供する。

常ならば漏らさないような愚痴、弱音。
それら全てを馬良は受け止める。
受容、共感。そして。

「陳宮様のご尽力、もっと評価されていいのに……」

厚い化粧が剥がれるほどに涙する馬良。

「なに、そんなこともないのですぞ。
 これしきの逆境、どうということもないのですぞ!」

高らかに、朗らかに笑う陳宮を馬良は優しく笑みで肯定するのであった。
143 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/07/04(月) 23:07:20.28 ID:ib3VgL1k0
本日ここまですー
かんそうとかくだしあー

なんとかお盆までには完結したいでs
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/05(火) 09:46:04.93 ID:yP1nkvK7o
乙したー
時間と共に毒が廻っていくのが・・・・・・
経済制裁で更に時間に余裕がないので、ろくな練兵も出来なさそうですね

タイトル案は「振り上げた拳は、しばし震えて」で
145 :赤ペン [sage]:2022/07/05(火) 12:56:12.60 ID:1dqA71qV0
乙でしたー
>>140
>>その声によろ、と兵たちは立ち上がり、槍を手にする。      間違いではないですが
○その声に、よろめきながらも兵たちは立ち上がり、槍を手にする。 【よろ、と】ってすごい軽い挨拶みたい ヨロ―
>>――もっとも言い放った本人はそんなことを言ったことなぞ忘れているであろうが。 これだと関羽がそう考えてるようにも読めるので
○――もっとも言い放った本人はそんな発言なぞコロッと忘れていたりするのだが。  あとはコトコトを言い換えたりちょこちょこと
>>141
>>だが、そうではない、と黄忠は頭を振る。          文脈を整理したい
○違う、今考えるべきことはそれではない、と黄忠は頭を振る。 【陳宮すげーなー】…【いや、そうじゃなくて、私なにやってんの?】と思考をがらりと変えるのでこんな感じでどうでしょう
>>142
>>だが、と、思う。 【、】が多いので
○だが、と揺らぐ。 【呂布の為に生きる】と決めたけど【そもそも呂布のことが分からない、だから呂布の為になっているのか分からない】と不安になって根っこ部分が揺れてる感じかな?

>>自分が主君と仰いだ劉備。 マジレスすると貴女のご主人様は一刀君じゃなかったかしら?
えーマジ―?二君仕えが許されるのは内通者だけだよねーキャハハハハハ(メスガキ風
>>皮肉げに哂う韓遂によって研ぎ澄まされ、 拙者こういうの大好き侍、はたから見れば明らかな奸雄で本人も悪びれもせずに背中を刺してくるけど
ごく一部の知り合いの中だけで共有するでもなく共感してる感じが堪らん
どいつもこいつも芯がぐらぐらで草生える…まあ仕方ないね、カリスマ性(笑)に惹かれただけでその信念に共感したとかじゃないもの
関羽は劉備の言う争いのない世界の夢に焼かれたけど、月詠死刑の時の二郎の血反吐を吐くような魔王っぷりに自分の手が血に濡れてることを自覚しちゃったし
なんで袁家と争ってるんです?(現場猫
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/06(水) 16:30:47.27 ID:/s8SFLq80
一刀「(戦略的に駄目なら朱里たちが止めてくれるだろうし戦術的に駄目なら愛紗たちが止めてくれるだろうから)ヨシ!」
桃色「(ご主人様もいけるって言ったし皆が支えてくれるなら大丈夫だから)ヨシ!」
軍師「(天の御使いの後押しと守る側で戦場を選べることと劉備のカリスマによる人の和がある…つまり天地人が揃ってるから)ヨシ!」
将の方々「戦えと命じられたなら全力を尽くすまで、戦うかどうかを決める上の方々が誰も反対してないから)ヨシ!」
ダブルどころかトリプルを超えたクワトロチェックによる完璧な体制だぞ、これは問題なんてあるはずないな、ヨシ!
147 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/07/06(水) 21:10:06.36 ID:xdeZJp2e0
>>144
感想ありがとうございます。

>経済制裁で更に時間に余裕がないので、ろくな練兵も出来なさそうですね
内実は・・・というやつです
まあ、兵力だけは無限に補充できるんですけどね

>タイトル案は「振り上げた拳は、しばし震えて」で
よきですね
ねえ、どんな気持ち?というニュアンスがお見事です

>>145
赤ペン先生ありがとうございます!

>えーマジ―?二君仕えが許されるのは内通者だけだよねーキャハハハハハ(メスガキ風
こやつめ ハハハ

>はたから見れば明らかな奸雄で本人も悪びれもせずに背中を刺してくるけど
>ごく一部の知り合いの中だけで共有するでもなく共感してる感じが堪らん
多分期待の若手でかわいがってあげてたと思うんですよね、彼なりに、ですがw

>関羽は劉備の言う争いのない世界の夢に焼かれたけど、月詠死刑の時の二郎の血反吐を吐くような魔王っぷりに自分の手が血に濡れてることを自覚しちゃったし
関羽関連は本当に予定外の楔が入っちゃった感ありました

>>146
どもです!

>ダブルどころかトリプルを超えたクワトロチェックによる完璧な体制だぞ、これは問題なんてあるはずないな、ヨシ!
草が生い茂りますw
何だが知らんがとにかくヨシ!
148 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/07/08(金) 21:26:37.93 ID:AC71ApIn0
選挙には、行きましょう
そして、人生はそれでも続く
くそう
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/08(金) 22:38:25.02 ID:pFsE36Jso
志半ば、無念であるだろうなぁ
安らかに・・・
150 :赤ペン [sage]:2022/07/09(土) 09:05:50.55 ID:mn2KPIz50
阿部さんが嫌いとか気に食わないとかはいいんだ…なんだったら殺したいほど憎んでいたというならそれもまあ仕方ない
遊説中に撃つとか、言葉を失うよ
151 :青ペン [sage saga]:2022/07/10(日) 05:42:09.29 ID:Tbuv2KEdo
>>143
終焉に向けての算上が始まる…。

【揺れるココロ、染み込む毒】
152 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/07/12(火) 23:00:06.92 ID:6xcK/G6F0
驚いているのが、安倍さんの一件の衝撃
心が死んだら創作できないじゃん!
という危機感は置いといて頑張ります

いや、義務感になったらそれこそリテイク前の精神状況なんですけどね
とにかく終わらせようというあの感覚でやりたくはないのです
垂れ流しではありますが、凡将伝については自分なりのベストをお送りしたいと思っております

がんばります
153 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/07/13(水) 02:58:35.54 ID:c0yqZk8W0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/13(水) 06:07:12.99 ID:Km9gdqFm0
相変わらず頭おかしい書き込みだなぁ
知性や品性を疑う、馬耳東風だろうけど(笑)
155 :赤ペン [sage]:2022/07/16(土) 09:41:09.29 ID:fMZURWHP0
疑うなんて優しい人だな
私なんぞ最早亡いものとして決めつけているよ>>知性、品性、心
156 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/07/24(日) 22:51:15.21 ID:48A9us7B0
北伐軍。それを迎え撃つ。
その結論に関しては蜀の中枢において異論は発生しなかった。当然と言えば当然である。降りかかる火の粉は払わねばならぬ。そうして実に十万もの兵が動員されることになった。
だが、北伐軍はいっこうに幽州に迫る様子を見せない。
だが、それは悪いことではないと関羽は思う。いかんせん、兵の質が悪すぎるのである。それはそうだ。つい最近まで武器なぞ手にしたこともないような者たちなのだ。

「よいではないか。正直まだまだ実戦に出せるほどに兵の質は高くない。時は私たちにとって味方だろう?」

実際、ひどいものだと関羽は思う。数は集まった。だがそれだけだ。烏合の衆とは言わない。主の呼びかけに応じた者たちなのだ。だが、実際足りない。
足りない。経験が足りない。覚悟が足りない。そして何より武器防具が足りないのだ。幽州の常備軍の想定は最大で一万ほど。その想定の十倍の兵卒が集まったのだ。
本郷一刀が冗談混じりに語った、竹槍に竹鎧もやむなしかというところまで追い詰められている。
それに対する軍師二人の反応は真っ二つに分かれる。軍事担当の鳳統は関羽の主張に大きく頷いた。対して諸葛亮はくすり、と関羽の懸念を切り捨てる。

「此度(こたび)の戦い。皆さまの不安は妥当と思います。が、勝機はあります。いえ、千載一遇の機会が目の前に転がってきています。
 一戦すれば天下は私たちの手に転がり込みます」

「ん?朱里、どういうことだ?」

諸葛亮の言葉と態度に北郷一刀は問う。
よく分からない、と。

「現在の漢朝を牛耳る袁家。その扇の要。
 即ち紀霊。かの魔王を討てばよいのです」

くすくすと笑みを漏らす諸葛亮に黄忠が問う。

「決戦を挑む。それはいいでしょう。それに勝つ、それもいいでしょう。だけれども、たった一人の生死でそんなにも状況が動くものかしら」

その問いに、我が意を得たりとばかりに諸葛亮は応える。

「袁家は元来、多数の派閥の相克によって成り立っていました。
 ですから、現状は、非常に危ういのです。一枚岩なぞ、失笑ものです。
 そして、その危うい袁家を実質束ねているのは紀霊です」

それを排除すれば袁家は自壊する、と諸葛亮は断言する。

「私と雛里ちゃん。その全知を尽くしてもあと一手足りませんでした。桃香様の、ご主人様の軍師としてお恥ずかしい限りです。ですが、ですから私たちの全てを絞って届かなかった一手。それを戦場にて掴んでほしいのです」

さすれば、世界は正しくなるだろう。
諸葛亮は確信する。あの、紀霊さえ除けば勝ちなのだと。
世情、袁家の内情なぞは後付け。

「魔王討伐。それこそが私たちの使命」

それさえ果たせば世界は思うままである。それを確信する。

「ですから――」

そうして、蜀は兵を発する。
襄平には黄忠を主将として千余を残すのみ。
乾坤一擲、その覚悟である。


◆◆◆
157 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/07/24(日) 22:52:07.61 ID:48A9us7B0
その動きを紀霊が知ったのは、数日後。
魯粛からの急報にニヤリ、と笑った。

「何だ、思ったより堪え性がないな。もうちょっと粘ると思ったんだが」

そして、北伐軍がいよいよ動き出すことになるのであった。

◆◆◆

「まあ、しかし思ったより堪え性がなかったな」

俺の予想ではあと一年くらいは粘って戦力を増強するかなーって思ってたんだが。

「魯粛さんの工作が、実に効果は抜群だったのかと〜」

くすり、と笑みをこぼすメイン軍師。北伐の準備という一言に集約される諸業務のあれこれを統括しているから超忙しいのが彼女である。
いや、忙しいのは実務を俺がほぼ丸投げしているからなんだけどね!
俺の横で呑気に茶とか酒を喫してていいのかなという疑問を抱くのもむべなるかな。
メイン軍師曰く。

「くふ、これは異な事を。風は二郎さんのひそみに倣っているだけですから〜。
 実務については張家、母流龍九商会、紀家。そして漢朝の官僚さんたちが抜かりなくやってくれてますから〜。
 風は彼らの利害調整をするくらいですし〜」

いやそれすごーく大変な役割だと思うんだが。

「そこはそれ、風がここにいることが重要となるのです〜。
 風で判断に困ったら二郎さんに決をいただけばいいので〜」

「いや一度も何か俺に決断迫られたことないんだけど?」

くふ、と風はおかしげに笑う。

「だって風は二郎さんのメイン軍師なのですから〜」

するり。対面だった席を猫のような滑らかな動き。流体のように俺の膝の上に腰掛けて。

「万事お任せ下さい、なんて言いませんよ〜。
 微妙な政治的判断は二郎さんに押しつけるので、ご安心くださいませませ〜」

頬を俺の胸にこすりつけ、顔を押しつける。
可愛いので抱きしめたらその身体の華奢さが愛しくなる。

「ご報告いたしますね〜」

すりすり、と微妙にじゃれる風をあやしつつ各種報告を聞く。

ふむ、と頷く。俺が骨子を考えた経済制裁。俺の考えたふわっとした素案。それを整え、容赦ないプランにしたのは当代きっての頭脳集団である前述の彼らだ。
なにせ、治世の実務に関わっているからね。何をすれば世情が乱れるかというのは知り尽くしている。そして、それは蜀が兵を発した瞬間に更に苛烈さを増している。
なにせ、これまでは肉や茶などの贅沢品が安価で供給されていたのだ。それがなくなり、むしろ吸い上げるように物資を買収している。
物価はじり、じりと上昇を継続し売り惜しみ、買占めが横行。潤沢に供給されるのは酒精のみときたもんだ。どこの英国紳士(ブリカス)だという話である。
それもこれも蜀の統治機能に対する飽和攻撃の一環。物資がなくなるわけではない――最低限の食料ならば各地の義倉に十年単位で蓄えられている――からして。まあ、あれだ。

「それでもぶっちゃけ、嫌がらせでしかないからな」

ただしその効果は抜群だったようだが。
蜀の頭脳。そこに負荷をかけ、一戦してこちらを叩こうと思わせるくらいには。
目減りしていく財産。頭のいい奴ほどそれに耐えられるもんじゃない。
勝ち目のあるうちに一発逆転を狙うのは無理のないこと。

いやまあ、俺自身は十年単位で干殺しも覚悟していた。時は味方さ。
ただし漢朝向けの言い訳とあっちの無辜の民の被害者が俺を苛(さいな)むだけである。
風は思わせぶりに、お任せ下さいとか言ってたけどさあ。
158 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/07/24(日) 22:52:33.02 ID:48A9us7B0
そして。

「漢朝の栄光。それを背負う北伐軍。それを率いる征夷大将軍……」

二郎さん?

その、麗羽様の呼びかけに意識を切り替える。俺は征夷大将軍にして怨将軍にして、魔王なのだと。
舞台袖から颯爽と白一色の装束を翻(ひるがえ)して麗羽様の下に向かう。麗羽様が身を包むのは金色の衣装。
その意匠は何進の身に付けていた物を更に洗練させたもの。ただでさえ神々しい麗羽様の光輝がとんでもないことになっている。あえて言おう。天元突破であると!

「紀霊、ここに」

恭しく跪く。

「大将軍として命じます。蜀と名乗る不遜の輩。その討伐を。
 そして漢朝の威光を示すのです。ええ。
 雄々しく、華麗に。
――優雅に!」

そして、漢朝のために命を懸ける皆さんに祝福を――。

ぶわ、と可視化できるようなほどの熱が、波が俺に染み入り、更に通り越して場を染め上げる。麗羽様の言葉。
それが細胞の一つ一つまで染み込むように活力が溢れるのを感じる。
にこり、とほほ笑む麗羽様。その笑みは優雅で、華麗で――俺を雄々しくさせる。まさに勝利の女神(アテナ)の微笑。

すく、と立ち、控える兵達を見る。将たちに向かい合う。
にしし、と猪々子は笑い、くすり、と斗詩は微笑む。
稟ちゃんさんは表情を変えず、風は居眠りだ。凪と流琉は気合い十分。
白蓮は生真面目にうなずき、蒲公英は愛嬌をふりまく。星は飄々としながら気炎万丈。蓮華と穏は思わせぶりな目線をくれて。それらを秋蘭はおかしげに見やる。
そして、兵達の士気は天を衝くほど。こんな時に長口上はいらない。
三尖刀を振りかぶり、地を穿つ。

「賊軍、討つべし!」

賊軍、討つべしと兵達が連呼する。叫ぶ。
その熱を冷まさぬように愛馬の烈風に跨り、軍を発する。つまり。

いざ、出撃、である。
159 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/07/24(日) 22:53:41.31 ID:48A9us7B0
本日ここまですー
かんそうとかくだしあー

いざ鎌倉でもキャバクラでもなく北伐です

タイトル仮案は「出撃」です

いと、をかしな感じでオナシャス
160 :青ペン [sage saga]:2022/07/25(月) 14:56:55.11 ID:HFaajUVto
>>159
乙ーい。
そうね、どうしようか。
【北伐激突直前〜砕けるは何処の扇の要なりや】
とでも。
161 :赤ペン [sage]:2022/07/26(火) 10:17:05.49 ID:GOMcZQgQ0
乙でしたー
>>158
>>まさに勝利の女神(アテナ)の微笑。     あなたにはまだ命が残っているではありませんか!の印象が強すぎて…そうでなくても大体糞なのがギリシャクオリティー
(そもそも戦を司るのであって勝利を司ってる訳じゃないしねと重箱の隅をつついてみる
○まさに勝利の女神(ニケ)の微笑。      同じギリシャならガチの【勝利の女神】の彼女か(えっ顔が分からない?じゃあ
○まさに勝利の女神(ヴィクトーリア)の微笑。 ヴィクトリーの語源な彼女の方が良いと思います

>>時は味方さ。 戦術的に言えば時間をかけるほど袁家が有利だけど戦略的に言えば時間をかけるほど中華にとっては…ままならねえな
相手に情報を押し付けて思考誘導するとかやるじゃねえか二郎…諸葛亮に一杯食わせるとかなかなかできることじゃないよ
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/26(火) 15:22:09.49 ID:Q4xrY4bZo
乙したー
全員集合シーンはやはり燃えますなぁ

タイトル案は「金色の光輝、背に受けて」で
163 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/07/26(火) 21:34:59.82 ID:zw825pXE0
頑張ります
164 :赤ペン [sage]:2022/08/17(水) 15:24:47.08 ID:AZn40Oid0
頑張れ❤頑張れ❤
165 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/08/22(月) 21:27:30.74 ID:XnSWc36z0
「ふむ。決戦、とな」

蜀との決戦においてメイン軍師たる風。そして稟ちゃんさんが選んだ戦場は南皮の北に広がる平野だ。幽州の南端に広がるそこが防衛ラインというわけである。賊軍を漢朝の版図になんぞ入れるわけにはいかないのである。
いや、幽州だって漢朝の版図ではあるんだけどね。建前というのは必要なんだなって。今更。
そして、見晴らしのいい平地を決戦場に選ぶのは蜀の小細工を防ぐためである。なんだっけ、八門禁鎖とか遁甲とか、そういうの、いいです、お断りです。
だからまあ、比較的こちらが地の利を押さえられるとこで、大軍が正面決戦できる場所というのは限られてくる。そして決戦場に選ばれた平地に名前がないということで官渡ということにした。
まあ、御使いさんがいればこのシチュエーション、食いつかないはずがない。

「十面埋伏とか、割とロマンだよな……」

袁家が曹操にぼろかすにやられたのだ。ただし、こことは違う世界軸で。
彼奴(きゃつ)らが、御使いがそれに乗らないわけがない。決戦の場としては申し分ないだろう。

「馬岱さん。貴女には後方撹乱をお願いしますね〜」

埒もないことを考える俺をほっといて風が蒲公英に指示を出す。
蒲公英には五百ほどの騎兵が。いずれも馬家軍の最精鋭だ。
北方最強を謳(うた)い、匈奴を真正面から駆逐していた馬家軍。当主が出奔して賊軍に身を落とした汚名を雪(そそ)がんと馳せ参じたのだ。
これはガチで頼もしいやつである。ほんと頼もしい。

「まーかせて!ここで名誉挽回しないと馬家もやばいしねー」

「だからこそあの韓遂が馬家の最精鋭の動きを黙認したのでしょう。
つまり、我らが不様を晒したならば、韓遂は掌を返すでしょう。
その時に障害になりそうな存在を放逐したとも言えます」

その、稟ちゃんさんの言葉に蒲公英は異を唱える。

「韓遂の叔父様だからそう思うのも無理はないけど……。
多分考えすぎじゃないかな?
 割と普通に応援してくれているんじゃないかなって」

くすくすと笑いながら、蒲公英は俺にしなだれかかる。かわいい。
うむ、役得というやつだな。むしろ肩に手を回して抱き寄せてやろうよ。
いや、そんな可愛い挙動想定していなかったが。

「まあ、任せてよね。
二郎様。少数での浸透突破、後方撹乱は馬家のお家芸なんだよ!」

にしし、と蒲公英は笑う。その笑みにはかつてのような儚さはない。
アスファルトを割いて咲く花のようなしぶとさがそこにはあり。 
だから、言うのだ。

「頼んだ」

「それが聞きたかったんだよ」

にまりと、我が意を得たりとばかりに。
そうして蒲公英は馬家軍を率いて出撃していった。
166 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/08/22(月) 21:27:57.64 ID:XnSWc36z0
◆◆◆

「なんとも慌ただしいですねぇ」

くすくすと笑むのは穏。
言葉を継ぐのは蓮華。

「蜀の本拠。任せなさいな」

言葉少なく。
戸惑う俺ににこり、と笑い穏を伴い歩き出す。

「蜀と自称する不逞の輩。
安息の場所なぞないと思い知らせてやりましょうね、ということですよ」

にこり、と笑いながら穏が囁き、発つ。
なるほどなあ、とか思う。
脱力。頼もしいことこの上ないじゃないかって。

そこにとどめがきた。
改めて向かい合う。

「まあ、幽州は私の庭さ。好きなようにやらせてもらうとも」

白蓮である。
誰よりも雄々しく、誰よりも優雅に。
その胸の内を察すると流石に俺も灼熱である。

そして白蓮が瞳に炎を宿して言の葉を浮かべる。

「まあ、ちょっと心細いから夏侯淵を借りるぞ。
いいだろ?」

無論、白蓮の申し出に否やを唱える俺ではない。

そして。だ。
167 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/08/22(月) 21:28:23.72 ID:XnSWc36z0
「アニキー、燃えてきたー!」

「もう、文ちゃんってば……」

官渡に据えられる主戦場。そこに挑むのは袁家の武を背負う俺たちで。腕が鳴るというものである。のだが。

「ああ、紀家の当主が陣頭で特攻するとか今回に於いては封印してくださいね」

なん、だと……。

「え、でも総大将の陣頭突撃が紀家の伝統で、それにより士気が……」

「だまらっしゃい!」

ぴしりと稟ちゃんさんは柳眉を逆立てる。

「此度の決戦。蜀の勝利条件。その大きなところは貴方を討ち取ることなのです。それを分からぬわけがないでしょう!」

「そうは言うがな……」

最前線で命を張ってこそ、皆がついてきてくれる。そいつが紀家のやりかた。とーちゃんもそうした。だから俺もそうする。と、決めていたのだが。

「主(あるじ)よ。某(それがし)では足りないかな?」

くす、と笑いながら気炎万丈。
一騎当千趙子龍である。

「や、星が足りないなんてあるはずないし」

「では、任せてもらいたい。
 きっと某(それがし)はそのために武を磨いてきたのだからして。
 部下の晴れ舞台、邪魔はしないだろう?」

「おうよ。そこまで言われたならば、引っ込んどくよ。だからさ」

熱く燃える星を軽く抱きしめて、突端の囀りを愛してから、笑う。
にこやかに送り出す。死地へと。

「天下無双にしてやるって、約束したよな。だから、みっともなくとも、死ぬな。
 生きてたら色々何とかなる。だから、死ぬなよ」

きゅ、と星が俺の耳をつまみ、握り、捻って――痛い!痛い!

「主よ。そうじゃない。そうではない。
 命じればいいのだ。勇ましく、な。
 ――勝ってこい、とな」

にまり、と笑う星。それでも。

「知るかよ。星に勝てとか、蛇足にもほどがあるだろうが。
 勝つのは俺たちは勝つさ。きっとね。
 だから、死ぬな、と俺は言う。
 頼むから、死んでくれるなよ。どんなにみっともなくてもいい」

ぼすり、と俺の下腹に拳をねじ込んで星がにまりと笑う。

「主よ、それでは足りんよ。某(それがし)はこの中華で最強を、至強の座を勝ち取ると誓ったであろう。
 それに、そんなに張りつめているのは主らしくないぞ? 
 もっとゆるーく、無責任に振舞ったらいいのだ。
 なに、下手の考え休むに似たりとはよく言ったもの。考えるのは稟と風に任せればよい」

そして、槍を振るうのは自分の仕事だ。
趙雲はにやり、と笑う。不敵で無敵。それを証明するのだ。

――そして、戦端は開かれる。
遭遇戦、である。
168 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/08/22(月) 21:29:12.29 ID:XnSWc36z0
本日個コマです
かんそうとかくだしあー

頑張っていきたいです
どんどこどこどこ
169 :赤ペン [sage]:2022/08/25(木) 17:59:51.94 ID:BIxgEpQ70
乙でしたー
>>167
>>勝つのは俺たちは勝つさ。きっとね。 大事な事だから2回言いました?
○勝つのは俺たちさ。きっとね。    もしくは【俺たちは勝つさ。きっとね。】2回言うなら【勝つさ、俺たちは勝つ。きっとね。】とかどうでしょう
後は 某(それがし)の2回目以降の読み仮名は無くても良いかな、と思いますね

>>つまり、我らが不様を晒したならば、韓遂は掌を返すでしょう。 やりそう。厄介ファンな顔して解釈違いですって言いながらやりそう
それぞれがそれぞれの最善に向けて動いてますね、それでも普通なら戦略的最善の違いを突いて伏龍鳳雛が罅を入れてくるんだろうけど
とは言えどいつもこいつもちょっとやそっとの揺さぶりでどうこうなるほど頭が緩くないからそれほど気にかけなくても大丈夫だろう…出奔した人たち?そうねえ
ところでふと思ったんだけどさ、二郎ちゃんって子供いないの?やっぱりツンぼてさんが最も早く孕む因果を持ってるから逆説的に他の子は孕まないんだろうか
それとも女性陣に卑しい子がいなくて律義に皆しっかり今度産む的避妊をしてるんだろうか
170 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/08/26(金) 22:53:19.07 ID:u1dzGFjB0
>>169
赤ペン先生ありがとうございます!

> やりそう。厄介ファンな顔して解釈違いですって言いながらやりそう
超めんどくさいですね韓遂。どう考えてもめんどくさい。これで実力あるのがほんとめんどくさい。

>それぞれがそれぞれの最善に向けて動いてますね、それでも普通なら戦略的最善の違いを突いて伏龍鳳雛が罅を入れてくるんだろうけど
凡将伝での伏龍鳳雛は経験値を与えてもらえてないので・・・

>ところでふと思ったんだけどさ、二郎ちゃんって子供いないの?やっぱりツンぼてさんが最も早く孕む因果を持ってるから逆説的に他の子は孕まないんだろうか
ネタバレになるのですが、完結までは子どもができない設定をしております
いや、実はな設定もあるんですが、正直鬱展開の情報なのでカットカット

お子様情報は後日談ないしエピローグでの言及予定でございます
171 :青ペン [sage saga]:2022/08/27(土) 14:03:58.89 ID:5nqxleQPo
>>168
おっついおっつい。

今回はやっぱりこのフレーズが刺さったからここを切り取る。
【生き残ってこその天下無双〜開戦、官渡の戦い〜】
172 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/09/27(火) 22:41:22.02 ID:qET6GXW20
安倍さんへのデジタル献花の期間が九月末まで延長されたそうです
クッソみたいな奴らはともかく、安倍さんへの弔意を示す方は是非
ttps://offering-flower.com/bgm?path=%2F

作品は鋭意編集中です
多分土曜にはできますと思います
173 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/10/03(月) 19:37:03.22 ID:SN9kABrZ0
遅くなりましたがやります

「遭遇戦」
174 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/10/03(月) 19:37:40.75 ID:SN9kABrZ0
さて、馬岱である。
彼女は自分のことを強運の持ち主だと信じている。いや、確信していると言った方がいいであろうか。
驚異的な速度で進軍できているのは馬家軍でも最精鋭の兵と馬が揃ってのこと。自分の実力だけではないとわきまえている。
そして、本来ならば四方八方に斥候を放ち、発見した敵。それに再集結し、機動力で翻弄するのが定石なのだが。

「わー、これどうしよっかなー」

出くわしてしまった、という表現が正しいであろう。目指す獲物を見つけた幸運に歓喜するしかないな、と馬岱は苦笑する。
何せ、所在をどうやって掴もうかと思っていた存在が目の前に居るのだ。つまりは兵站、補給を担う部隊である。ただし。

張の牙門旗――言うまでもないが張飛のことだ――と無地の黒旗、だ。

「張飛と黒山賊とか、ちょっとこれはないかなー」

こちらは五百。対して、あちらは万を超す大軍である。いくら補給が大事と言ってもこれはないだろう。
そう思いながらも馬岱は冷静に見極める。張飛の指揮下の兵は精々千程度。残りは黒山賊と見繕う。
真正面から挑めば瞬殺されてしまうであろう。果たしてこの絶望的な兵力の差から何かを為し得ることができる将帥がいるのであろうか。
いるのである。

ここにいるぞ、とばかりに馬岱はぺろりと唇を湿らせる。
そして選んだのは舌戦。
真正面から寡兵で相対する。

「ああ、誰かと思えば……。誰だっけ?おっぱいばいんばいーんな人たちに囲まれて埋没してたよねー。
正直可哀想でならなかったなー。これが格差か!って感じ?
 まあ、しょうがないよねー。妥当だよねー。
つるぺたで、女らしさなんて欠片もないもんねー」

馴れ馴れしく、張飛に呼びかける。知らない仲ではない。馬家軍と劉備一行はそれなりの期間、行動を共にしていたのだからして。
そう、知らない仲ではない。
大好きな、馬家の当主として盛り立てようと思っていた従姉が籠絡されてしまうほどには関係があったのだ。
だから馬岱は圧倒的な兵力差にも怯まない。
それは率いる兵も同じこと。馬岱の一挙手一投足に応じるために集中すれども、そこに怯えなぞない。
静かに昂ぶり、それを漏らさず控える。

「な、うるさいのだ!お兄ちゃんは鈴々を可愛いって言ってくれたのだ!」

「またまたー。強がらなくていいんだよ?
つるぺたなおこちゃまだもんね。背伸びしてもしょうがないけど、戦わなきゃ。現実と!」

にしし、と煽る。

「鈴々は嘘なんてついてないのだ!お兄ちゃんは鈴々を可愛いって言ってくれたのだ!
いくら翠の従妹でも許さないのだ!」

「おお怖い怖い。でもねー。できもしないことを言っちゃうの、子供だなって思うんだー。
 いいよ、知らない仲じゃないからね、見逃してあげてもいいよ?その、御大層に守ってる物資を破棄するならね!」

にし、と笑う馬岱に張飛は激昂する。

「ふざけると痛い目を見ることになるのだ!どう見てもそっちのが劣勢なのだ!
 目にもの見せてやるのだ!」
175 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/10/03(月) 19:38:05.30 ID:SN9kABrZ0
「そうだね、やっちまいな。安心おし。ここの物資はきちんとあたしたちが届けてやるさ。
 張飛殿はさくっと本懐を遂げればいいさね」

ここまで無言であった張燕がニヤリ、と笑いながら煽る。

「ここまで虚仮にされて退いたらもう、負けたも同然さね。退けないあんたの矜持は分かるよ。だから、思い知らせてやんなよ」

我が意を得たとばかりに張飛は頷き。

「ええと、吐いた唾を……。
 にゃ!とにかく、けちょんけちょんにしてやるのだ!」

弾丸の如く張飛は吶喊する。手には蛇矛を振り上げて。

「わー、逃げろー」

言った時には既に戦場を離脱する勢いである。ただし、挑発しながら。

「こっこまでおいでー」

あっかんべーしながらお尻をぺちぺちと叩いて張飛を挑発する。馬上で。

「ば、かにするなあ!なのだ!」

ギュン!と張飛の駆ける速度が急上昇する。だが、それも馬岱の想定内。

「はは!その大層な矛、重そうだよねー。投げ捨てたらたんぽぽに追いつくんじゃない?
 ねえ、将帥としてありながら自分も兵卒も憔悴してるこの状況、どんな気持ち?どんな気持ち?
 ほらほら、単騎特攻はいいけどもっと視野を広くしないと愛しのご主人様は失望するんじゃないかなー。むしろもう、失望して貴女のことなんかどうでもいいとか思ってるかもねー」

「にゃー!
おにいちゃんはそんなこと言わないのだ!ぜったい許さないのだ!」

その殺意を馬岱はことごとく躱し、翻弄する。
ただの一度も干戈を交えず、逃げ回り、逃さない。
実に三日という期間、張飛を挑発して嘲笑ったのだ。

そして、張飛は肝心の決戦に参戦叶わなかったのである。
176 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/10/03(月) 19:38:46.71 ID:SN9kABrZ0
◆◆◆

更に、蜀陣営には衝撃が走る。
帰参し、無事に物資を届けた張燕はにこやかに告げる。
そこは蜀陣営の物資集積場。張燕にしても初めて訪れる重要拠点である。
本来ならばここまでの誘導は張飛単独で当たるはずであった。

「ああ、張飛殿は野盗を追ってったよ。なに、治安維持を意識する。大したもんさね」

ニヤリと張燕は笑い、ほくそ笑む。

「まあ、火のないところに煙は立たぬ、ってね。ほら、煙がとんでもないことになってるよ」

もくもく、と物資の貯蔵庫から昇る黒雲に出迎えた諸葛亮は瞠目する。その間隙を逃さぬ張燕ではない。

「もらった!」

諸葛亮に放たれた横薙ぎの一撃を関羽が辛うじて防ぐ。

「貴様ぁ!」

「ちい!仕留めそこなったか!
だがね!あたしゃね、故あらば、寝返るのさ!」

張燕は懐から包みを取り出し、投擲する。赤黒い塊が空間を支配して。

「く、小癪な!」

「はは!そこに突っ込まないとは恐れ入った!
赤霞の術、ってことさね!」

その実体は辛子と胡椒の粉末なのだが、その影響は大きい。その影響下であれば関羽だとしても討ち取れると算段していたのだが。

「まあ、そこまで猪でもないか」

人知れず張燕は苦笑する。だが、重大なのはそこではない。
焼き払われた食糧をはじめとした膨大な物資。これにより蜀陣営は短期決戦を強いられることになるのである。

「さて、ここから先は風まかせ、さね」

追いすがる兵を鼻歌交じりに翻弄し、義理は果たしたとばかりに張燕は笑う。

そして彼女は自分の賭けた男の勝利を確信していたのである。

「なにせ、賭け事は胴元に限るらしいからねぇ」

……彼女は胴元が賭場に介入したときの惨状をこれ以上になく知っていたのだから。
177 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/10/03(月) 19:39:22.37 ID:SN9kABrZ0
本日ここまですー
かんそうとかくだしあー

ギアを上げていきたい
※激務がちょっと片付いたす
178 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/10/04(火) 19:41:48.95 ID:v+VS7v4j0
Bでしょ
ビブラートが違う
179 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/10/04(火) 21:54:34.60 ID:v+VS7v4j0
馬岱と張飛のそれは完全に偶然がもたらした遭遇戦であった。
対してこれは必然。

公孫賛は淡々と陣形を確認する。
だが内心は、感情は、燃焼は最高潮にある。

「そう、ここしかないよな!」

幽州の牧としてあらゆる地形を把握している公孫賛である。
洛陽に至る道についても把握しているのだ。

「残念だったな!ここは通行止めなのさ」

応じるのは蜀騎兵の主。馬超である。

「は、白い馬を並べてご満悦の田舎者!騎兵のなんたるかを教えてやろうか!」
「ぁわ……翠さん、白馬義従は伊達ではありません。そして公孫賛があのような言。
何かあります」

補佐するのは鳳統である。
馬超の、些か短絡的な行動を補佐するための一手。そして馬超率いる軍勢の重要さを示す一手でもある。

その様子を見据えて公孫賛はにまり、と笑う。

「ああ、誰かと思ったら……ええと、ええと。本当に誰だっけ?
 騎兵を率いて世に名が知れているのは、神速と異名がある張遼くらいだもんな。
 まあ、有象無象相手ならば楽ができるってもんさ!これはついてる!」

「ふざけるな!中華最強の騎兵は馬家だ!
どっかの田舎者が何をいうのか!」

「ほう?
なるほどなるほど。頭が悪い方の馬家の息女であったか。
 これは失笑ものだな。
 草葉の陰で馬騰殿も泣いているだろうよ!
貴様のような低能が馬家の跡継ぎとか冗談にもほどがある!
 色に狂って漢朝に矛を向けるなぞな!
 程度が、知れるというもの……。
ああ、かつて錦馬超などと持てはやされてれていた色狂いよ。
貴様に錦という二つ名はもったいない。
私から失、の字を更に与えよう」
180 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/10/04(火) 21:55:00.41 ID:v+VS7v4j0
「は?何を言っているんだお前は」

「なに、簡単さ。失禁馬超ということよ。
聞いたぞ、未だに夜尿症(おねしょ)が治まらないらしいじゃないか!
 いかにも幼稚くさい貴様にお似合いだと思わんか」

かぁ、と馬超の顔に朱が差す。
馬超のその様子を見て。
公孫賛は、はっはは!声高らかに笑う。
穏健、良識の人と評される公孫賛であるが。
その気になればいくらでもこのような口は叩けるのだ。

「まあ、騎兵最強とか言うだけ言えばいいのさ。
 色に狂った失禁馬超!」

「吐いた唾、後悔しろおおおおおおおお!」

熱、熱く。馬超は突撃する。鳳統も制御できないくらいのその熱量。

「貫けええええ!」

馬超の指揮官先頭。それに引きずられるように従う騎兵たち。
待ち構える公孫賛の陣をあっさりと割る。まっぷたつに。そして騎兵の弱点である背後に襲い掛かろうとする。

「なかなか、やるじゃないか!」

公孫賛は、ニヤリと笑う。中央突破、背面展開。既視感がある。なるほど。受けると、こういう感じだったのか。
それは韓浩との模擬戦で幾度も試されたのだ。そして韓浩はさらりと受け流してくれたものだ。そして!

「喰らい付けぇ!」

中央突破しつつある軍を背後から襲う。騎兵の弱点は背後にあるのだ。突撃する軍の後背を襲う。

「なに!」

馬超からすれば思いもよらない事態。そんな、非常識な!
慌てる馬超に構わず鳳統は指示を飛ばす。これ故に自分は馬超に随行しているのだ。
 乾坤一擲の一撃。それを確実なものにするために。必死に!

「もっと追ってください!」

鳳統の指示は簡にして単である。陣を追うその背を追うのだ。
結果、ぐるりと円を描くような陣になる。それは公孫賛にとってはいつの日かの再現。

「なるほど、やはりこうなるか!」

ちい、と舌打ちする。このままでは千日手。
かつてはそうして引き分けていた。だが。

「速い方が勝つ!分かり易いな!」

騎兵の尻をごりごりと押す馬超に公孫賛は苦笑する。
そのままであればじりじりと馬超率いる軍が勝ったかもしれない。だが、何のために膠着状態を作り出しているのか、という話である。
そして現状に違和感を覚え、打開すべく献策しようと鳳統が口を開こうとする。

それを阻むのは、銀の閃光。

「あ……」

眉間、喉、胸。三条の光が鳳統を貫く。
一矢一殺。それの三乗。
その智謀の真価を発揮することなく、鳳統はその命を散らす。胸に秘めた幾百幾千、或いは幾万の策。それは遂に発揮されることなく霧散する。
そして、そのことにより、其処の地名は後世、落鳳破、と名付けられることになる。
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