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【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.3
	- 448 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/17(火) 22:30:53.87 ID:EamTORDe0
-   
 ルカ「これだ!」
 
 【解!】
 
 ルカ「死体の一部についてた焦げ跡……あれか?」
 
 あさひ「はいっす。夏葉さんの身体はバラバラになってたっすけど、その一部がまるで焼かれたみたいに真っ黒こげになってる部分があったっす」
 
 智代子「ほんとだ! 他はアンドロイド風の白っぽい素体なのに、ここの部分だけ黒くなっちゃってる……!」
 
 ルカ「死体がバラバラで若干気づきづらいもんだったし、当初はワイヤーを使用したロープウェーで推理を進めてた。だからこの焦げもワイヤーとの摩擦でついたものかと思っちまってたが……」
 
 ルカ「もしかすると、メカ女の本当の死因を指し示す証拠になりうるかもしれねえ……!」
 
 透「うーん……でもさ、アンドロイドになってたんだし、燃えただけで死ぬのかな」
 
 ルカ「あ?」
 
 透「あの体、多分めっちゃハイテクだよ。それこそモノケモノをぶっ飛ばすぐらいの力もあったし、ほかにも機能がいっぱいあった。並大抵のことじゃ壊れない……だから転落死っぽいなってなったし」
 
 あさひ「モノクマ! 夏葉さんの耐熱性を知りたいっす!」
 
 モノクマ「えぇ〜、なんだよ面倒くさいなぁ……そのぐらいのこと、自分で調べてよ」
 
 モノミ「何言ってるんでちゅか! こんなの、自分でどうやって調べるって言うんでちゅか!」
 
- 449 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/17(火) 22:34:33.85 ID:EamTORDe0
-   
 
 モノクマ「う〜ん……確かにオマエラの言う通り、有栖川さんの身体は並大抵のことでは壊れはしません。もともと小宮さんのおしおきに乱入して大けがを負った身体だったんですからね、それを補えるような改造を施しました」
 
 モノクマ「耐熱性はそれこそ災害救助マシンぐらいにはあるはずですね、ただ焼かれただけじゃ壊れるようなことはないんじゃないかな」
 
 透「……ってね」
 
 恋鐘「ふふーん、体が高熱になっただけじゃ夏葉の身体はびくともせんとよ! 残念やったね、ルカ!」
 
 ルカ「なんでお前が得意げなんだよ……それに、別に私はアイツの死因を焼死だと断定したつもりなんかねーぞ」
 
 ルカ「大体、焼死じゃモノクマファイルに矛盾が生じちまうからな。あいつがバカでかい衝撃を受けたことは間違いない……あの焦げ跡とその衝撃とを合わせて考えてみると、あいつの死因もだんだんと見えてくんだろ」
 
 冬優子「有栖川夏葉の本当の死因……」
 
 (……それなら私が教えてやるか、メカ女の本当の死因ってのを……!)
 
 -------------------------------------------------
 
 【発掘イマジネーション開始】!
 
 有栖川夏葉の本当の死因は■■■である!
 
 【指定の範囲内のコンマを出して結論を掘り当てろ!】
 
 
 1文字目 21〜40
 2文字目 41〜60
 3文字目 61〜80
 
 
 ↓1〜8
 
- 450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/17(火) 22:35:40.11 ID:KpU8yjF80
-  あ 
- 451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/17(火) 22:36:08.22 ID:NwZAJDej0
-  ぬ 
- 452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/17(火) 22:36:33.14 ID:KpU8yjF80
-  あ 
- 453 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/17(火) 22:37:13.35 ID:NwZAJDej0
-  ふ 
- 454 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/17(火) 22:37:36.15 ID:KpU8yjF80
-  あ 
- 455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/17(火) 22:37:50.90 ID:NwZAJDej0
-  む 
- 456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/17(火) 22:38:25.71 ID:NwZAJDej0
-  ゆ 
- 457 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/17(火) 22:38:52.47 ID:KpU8yjF80
-  あ 
- 458 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/17(火) 22:45:37.88 ID:EamTORDe0
-   
 【コンマ11 22 14 35 15 90 71 47】
 
 カンカンカンカン……
 
 【発掘完了!!】
 
 【ぞろ目ボーナス発動!】
 
 【モノクマメダル3枚を手に入れました!】
 
 _______________________
 
 有栖川夏葉の本当の死因は爆死である!
 _______________________
 
 ルカ「降りて来たぜ、天啓ってやつがよ!」
 
 【COMPLETE!】
 
 ルカ「爆死だ……あいつは、文字通りに爆発の衝撃で命を落としたんだ」
 
 冬優子「……なんだか、馴染みある響きね」
 
 智代子「ば、爆死ってあの……どっかーーーーーんっていう爆死!?」
 
 ルカ「ああ、今お前が想像したとおりの爆死だ。一見バカげてるようだが、ちゃんと要件は満たすだろ? 激しい炎に大きな衝撃、あいつの死体の状況にぴったりと符合する」
 
- 459 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/17(火) 22:46:35.65 ID:EamTORDe0
-   
 美琴「確かにそうだけど……それって変だよね」
 
 美琴「何度も確認するようだけど、彼女は生身の人間ではなかった。彼女を爆殺しようとするなら、かなり大きな爆発になったはず……」
 
 恋鐘「モノクマが花火大会に混入させた紛らわしか爆弾ぐらいの火力は必要になるたい!」
 
 智代子「あの花火って、今でも使えるのかな?」
 
 冬優子「前回の動機のときにあさひが悪用しないようにスーパーにあった花火は一通りふゆで回収したけど……あの巨大な花火はなかったわ」
 
 あさひ「わたし、ヘビ花火とかまだまだやりたかったのに冬子ちゃんずるいんっすよ!」
 
 冬優子「とにかく、スーパーにはそんな花火はないと断言できるわ。ふゆが回収して以降は花火も補充されてないようだから」
 
 美琴「それに、花火の有無以前の話だよ」
 
 美琴「彼女を殺害したタイミングで生じる爆音も衝撃も……私たちは知らないよね?」
 
 智代子「むむむ……確かにそんなのはここ最近では一度も味わってはいないかも」
 
 冬優子「有栖川夏葉を殺害するくらいの大規模な爆発。島を跨いでいたからと言って聞こえなかったでは通らなそうね……」
 
 冬優子「どう、ルカ。これに答えを提示できる?」
 
 (……どうだろう、あいつの死因は一番爆発がストレートにしっくりくる気がする)
 
 (でも、私たちのいずれもその爆発を知らない……そんなことがあり得るのか?)
 
 
- 460 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/17(火) 22:48:40.51 ID:EamTORDe0
-   
 というわけで少しぶつ切り気味ですが、本日はここまで。
 明日も21時ごろを目安に続きから進行します。
 しょっぱなから選択肢安価となります、よろしくお願いいたします〜
- 461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/17(火) 22:53:37.20 ID:NwZAJDej0
-  おつかれさまでしたー 
 バイキングにワイヤーで括り付けて3600度のすごい勢いの回転が生じる遠心力で射出して墜落したと思ってたけど全然掠ってなかった
- 462 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 21:06:55.71 ID:fabXzL/b0
-   
 美琴「彼女を殺害したタイミングで生じる爆音も衝撃も……私たちは知らないよね?」
 
 智代子「むむむ……確かにそんなのはここ最近では一度も味わってはいないかも」
 
 冬優子「有栖川夏葉を殺害するくらいの大規模な爆発。島を跨いでいたからと言って聞こえなかったでは通らなそうね……」
 
 冬優子「どう、ルカ。これに答えを提示できる?」
 
 (……どうだろう、あいつの死因は一番爆発がストレートにしっくりくる気がする)
 
 (でも、私たちのいずれもその爆発を知らない……そんなことがあり得るのか?)
 
 -------------------------------------------------
 
 ・爆発がいつ起きたのかを提示する
 ・爆発の音を消す方法を提示する
 ・爆発がどこで起きたのかを提示する
 
 【正しい選択肢を選べ!】
 
 ↓1
 
- 463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 21:16:12.77 ID:wh7OhgFY0
-  ・爆発がどこで起きたのかを提示する 
 
 遺体の発見現場と事件の発生現場が同じとは限らないかと
- 464 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 21:18:42.09 ID:fabXzL/b0
-   
 ルカ「これだ!」
 
 【解!】
 
 ルカ「確かに私たちは誰一人として、そんな爆発を見ても聞いてもいやしねえ。でも、だからといって爆発がなかったとは認められねえな」
 
 冬優子「それはつまり、あんたには答えがあるってことよね?」
 
 ルカ「ああ、私たちに気取らせずにメカ女を爆殺する方法がただ一つだけ存在するんだ」
 
 透「気づかせないで、爆殺……」
 
 雛菜「ん〜? そんな静か〜な爆発で人を殺せるんですか〜?」
 
 ルカ「いや、何も爆発を小規模に抑えるってわけじゃねえ。爆発自体はさっきも言った通りハチャメチャにデカかったはずだ。そうでもないとあの鋼鉄の身体は破壊できない」
 
 ルカ「犯人にとって重要だったのは、殺害する場所だ」
 
 智代子「殺害場所……はっ! そ、そういえば……さっきまでの議論で、夏葉ちゃんは本当の殺害現場から動かされたって話だったよね!?」
 
 智代子「そこに、犯人につながる重要な手がかりがあるからっていう……それ!?」
 
 ルカ「まだ私にはその犯人へとつながる手掛かりは見えちゃいねえが……有栖川夏葉が爆殺だったのだとすれば、現場はあそこを置いて他にないはずだ」
 
 冬優子「どこなのよ、ルカ……その爆発があった場所ってのは」
 
 -------------------------------------------------
 【スポットセレクト開始!】
 
 
 画像:https://imgur.com/a/LdQZuPO
 
 
 【夏葉が死亡した爆発はどこで起きたか指摘しろ!】
 
 ↓1
 
- 465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 21:37:56.74 ID:yk5iMFYC0
-  ファイナルデッドルーム 
- 466 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 21:40:46.85 ID:fabXzL/b0
-   
 【発言力:♡×7→♡×6】
 
 美琴「……ルカ、その場所は私が事件発生後に足を踏み入れているよ」
 
 美琴「爆発なんて起きた形跡、見かけなかったな」
 
 (違ったか……それに、ファイナルデッドルームは別に防音なんて話もなかった)
 
 (もっと明確に、外と隔絶された空間がどこかにあるはずだ……!)
 
 -------------------------------------------------
 【スポットセレクト開始!】
 
 
 画像:https://imgur.com/a/LdQZuPO
 
 
 【夏葉が死亡した爆発はどこで起きたか指摘しろ!】
 
 ↓1
- 467 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 21:46:23.84 ID:0whl+Is30
-  観覧車 
- 468 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 21:49:31.70 ID:fabXzL/b0
-   
 ルカ「ここだ!」
 
 【解!】
 
 ルカ「……やっぱり、この場所は事件に大きく関係していやがんだ」
 
 ルカ「観覧車、有栖川夏葉を爆殺するのならここ以上の現場はねえぞ……!」
 
 雛菜「え〜〜〜〜〜!?」
 
 雛菜「でも、観覧車って死体を移動させるために使ったんでしょ〜? そこで殺害までやっちゃうの〜?」
 
 美琴「……考えてみると、自然なことかもしれない」
 
 美琴「夏葉さんの身体は私たち一人で運ぶにはあまりにも重たい。死体の移動経路でもある観覧車と殺害現場が近しいところになるのは自然なことだよね」
 
 ルカ「しかも、あの観覧車には一つ大きな特徴がある。そうだよな、甘党女」
 
 智代子「わ、私!? あ、あのー……何か致しましたでしょうか……」
 
 ルカ「お前が何かしたんじゃなくて……最初に島が開いたとき、お前も私と同じタイミングで観覧車に行っただろ? あの時、モノクマが言ってたある特徴があるはずだ。思い出してみろ」
 
 智代子「特徴……特徴……あ〜〜〜〜〜〜!」
 
 
 智代子「もしかして、ナパーム弾でも壊れないっていう!?」
 
 
- 469 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 21:50:14.07 ID:fabXzL/b0
-   
 ルカ「ビンゴ。あの観覧車のゴンドラは、ほとんどシェルターみたいな仕様になってやがって爆弾でも壊れないし、その衝撃を漏らさない。内側で大規模な爆発があっても、そのゴンドラ内で完結するはずだ」
 
 モノクマ「さっすがイナセだねぇ、爆発しても大丈夫!」
 
 ルカ「だから私たちが音や衝撃を知らなくても何も支障はない。メカ女を爆殺したことを否定する材料にはなりえないはずだ!」
 
 
 【冬優子「Are you ready?」】反論!
 
 
 冬優子「……なるほどね、ゴンドラの中で爆殺すれば音も衝撃も問題なし」
 
 冬優子「あんたの言い分はよくわかったわ、見かけに似合わず観覧車が大好きってこともね」
 
 ルカ「はぁ……!? ち、ちげぇ……!!」
 
 冬優子「でもね、あんたは重要な見落としをしてる。転落死説が有力だったときは考えなくていい要素だったから忘れちゃってるんだろうけど……」
 
 冬優子「この問題がある限り、今のあんたの推理もただの仮説どまりだから」
 
 
- 470 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 21:51:50.53 ID:fabXzL/b0
-  ------------------------------------------------- 
 
 【反論ショーダウン開始!】
 
 発言力:♡×6
 集中力:☆×5
 
 コトノハ
 ‣【夏葉の眼球】
 ‣【島のパンフレット】
 ‣【泥】
 ‣【モノクマファイル4】
 ‣【おやすみスイッチ】
 ‣【ワイヤーフック】
 ‣【極上の凶器】
 
 
 冬優子「有栖川夏葉の死体の損壊状況」
 
 冬優子「死体についた焦げ跡」
 
 冬優子「併せてみると確かに一見すると爆殺風よね」
 
 冬優子「音と衝撃も観覧車のゴンドラなら問題なし」
 
 冬優子「だけどルカ、あんたは重大な見落としをしてるのよ」
 
 冬優子「この一点で、あんたの推理は瓦解するの」
 
 ◆◇◆◇◆◇◆◇
 
 【発展!】
 
 ルカ「推理の見落とし……? んなもん、どこにあんだよ」
 
 ルカ「私の推理に矛盾があるなら言ってみやがれ!」
 
 ルカ「あと言っとくけど、別に観覧車が好きだとか、そんなのは全く違うからな……」
 
 ◆◇◆◇◆◇◆◇
 
 
 冬優子「観覧車のゴンドラはさっきも確認した通り完全な密室」
 
 冬優子「しかも一定の高度以上では扉にロックまでかかる」
 
 冬優子「犯人もその密室からは出られないのよ」
 
 冬優子「そんなところで爆殺なんてしてごらんなさい」
 
 冬優子「有栖川夏葉と【共倒れ】じゃないのよ」
 
 冬優子「生憎ながら他の連中は全員無事」
 
 冬優子「爆殺なんかしようがないわ」
 
 
 【矛盾する発言を正しいコトノハでコンマ70以上で論破しろ!】
 
 
 1.発言する(コトノハと斬りつける先の発言を併せて指定安価)
 2.集中力を使う(コトノハの数が減る)
 
 ↓1
 
- 471 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 21:54:25.56 ID:0whl+Is30
-  【おやすみスイッチ】→【共倒れ】 
- 472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 21:55:35.44 ID:cqteCjU5O
-  共倒れ→ワイヤーフック 
- 473 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 21:58:48.86 ID:fabXzL/b0
-   
 【コンマ56】
 
 【ピトス・エルピスの効果によりコンマの値が+15されます】
 
 【最終コンマ71】
 
 
 ルカ「その矛盾、斬らせてもらうぞ!」
 
 【BREAK!】
 
 ルカ「確かにあのゴンドラは完璧な密室だ。だからこそ、あいつを殺害した爆発を私たちは感知せずに済んでるわけだしな」
 
 ルカ「でも、だからといって犯人もそれで必ずしも共倒れになるわけじゃない……」
 
 冬優子「はぁ……? 何よそれ」
 
 ルカ「何も犯人が同じゴンドラに乗っている必要はないんだよ。あいつだけ載せることができれば、あとは爆弾を勝手に爆発させればいい」
 
 あさひ「時限爆弾とかっすね。一定の時間が経った後で、勝手に爆発する仕掛けがあれば犯人がその場にいる必要はないっす」
 
 雛菜「あは〜! 確かに〜!」
 
 智代子「リモコン爆弾なんかもありかもしれないよね! 外から遠隔で爆発させれば犯人は無事だよ!」
 
 冬優子「ちょっと待ちなさい、そんなの……有栖川夏葉がまず抵抗するでしょ? 一切抵抗も何もなく、そのままあいつは爆殺されたっての?」
 
 ルカ「あいつは自分でとる睡眠の他に、押された瞬間強制でスリープモードに入るスイッチがついていた。犯人はそれを押して、無抵抗な状態になったメカ女を爆弾と一緒にゴンドラにぶち込んだんだ」
 
 ルカ「何も犯人が爆発の現場に居合わせる必要はない。メカ女は無抵抗なままにその爆破の衝撃を浴びてくれるんだからな」
 
- 474 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 21:59:52.06 ID:fabXzL/b0
-   
 透「じゃあ、今回の死因は爆死で確定?」
 
 雛菜「え〜? でも、爆殺された具体的な証拠はないんだよ〜?」
 
 あさひ「転落死は転落死で成立してないっす。可能性が高いのは現状爆死だと思うっすよ」
 
 冬優子「にしてもねぇ……なんか引っかかんのよね。そんな回りくどいやり方、普通選ぶ?」
 
 智代子「観覧車の条件が整っているからこそだよ! 爆殺をしても、あの観覧車なら問題ないんです!」
 
 恋鐘「モノクマファイルに死因は書いとらんけど……やっぱり転落死のことを言っとるよう
 
 美琴「……ルカの話は全部あくまで仮説だよね」
 
 ルカ「それはそうだけどよ……!」
 
 
 
 【モノクマ「そして議論はぶつかり合う!」】意見対立!
 
 
 
 モノクマ「盛り上がってきたぁ! 有栖川さんが命を落としたのは転落死なのか、はたまた爆死なのか……!?」
 
 モノクマ「この議論はそのどちらに軍配があがるんだ〜〜〜!?」
 
 (メカ女の死因はきっと爆死……だからこそ、犯人は殺害現場から死体をわざわざ移したんだ)
 
 (きっと、この死因に犯人へとつながる決定的な手がかりがあるはずだ……!)
 
 
- 475 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 22:01:26.78 ID:fabXzL/b0
-  ------------------------------------------------- 
 【意見対立】
 
 【議論スクラム開始!】
 
 「有栖川夏葉は転落死だ!」vs【有栖川夏葉は爆死だ!】
 
 発言力:♡×6
 集中力:☆×5
 
 
 恋鐘「モノクマファイルの死因もどうみても転落死のことを書いとるたい! ルカたちは勘ぐりすぎやけん!」
 
 雛菜「オイルは死体発見現場にぶちまけられてましたし、それってイコール死因なんじゃないですか〜?」
 
 恋鐘「観覧車から滑り落とすようにすれば、周りになんもなくとも夏葉を殺すことは可能やったと!」
 
 雛菜「ロボットを壊しちゃうぐらいにおっきな爆発があったら誰か気づくはずでしょ〜? 雛菜たちは誰もそんなの聞いてないよ〜?」
 
 冬優子「爆殺なんて言ったって……そんな爆発、どうやって起こすっていうのよ。花火大会の花火は全部使いきったはずよ」
 
 美琴「ルカの推理は全部仮説でしかない……どうして爆死だなんて断言ができるの?」
 
 -------------------------------------------------
 【意見スロット】
 
 【ロープウェー】
 【手段】
 【モノクマファイル】
 【可能性】
 【ゴンドラ】
 【オイル】
 
 -------------------------------------------------
 
 【意見スロットを正しい順番に並び替え、敵スクラムを向かい討て!】
 
 1.スクラムを指示する(解答)
 2.集中力を使う(一部スロットが自動で正答位置に並び代わる)
 
 ↓1
 
- 476 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:04:08.72 ID:0whl+Is30
-  【モノクマファイル】 
 【オイル】
 【ロープウェー】
 【ゴンドラ】
 【手段】
 【可能性】
- 477 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 22:07:45.34 ID:fabXzL/b0
-   
 【ルカ「退いてろ!」】
 
 恋鐘「モノクマファイルの死因もどうみても転落死のことを書いとるたい! ルカたちは勘ぐりすぎやけん!」
 【ルカ「甘党女!」
 智代子「モノクマファイルに書かれている死因は爆死でも十分成立するはずだよね!」】
 
 雛菜「オイルは死体発見現場にぶちまけられてましたし、それってイコール死因なんじゃないですか〜?」
 【ルカ「中学生!」
 あさひ「オイルがぶちまけられてても、それは殺害現場とは限らないっす。あくまで破壊されただけっすよ」】
 
 恋鐘「観覧車から滑り落とすようにすれば、周りになんもなくとも夏葉を殺すことは可能やったと!」
 【ルカ「ここは私が!」
 ルカ「さっき中学生の言った通りだ……ロープウェーの方法はとっくに破綻してんだよ」】
 
 雛菜「ロボットを壊しちゃうぐらいにおっきな爆発があったら誰か気づくはずでしょ〜? 雛菜たちは誰もそんなの聞いてないよ〜?」
 【ルカ「甘党女!」
 智代子「あのゴンドラはシェルターと一緒だよ! 爆発があったところで、その音も衝撃も漏らさないんだ!」】
 
 冬優子「爆殺なんて言ったって……そんな爆発、どうやって起こすっていうのよ。花火大会の花火は全部使いきったはずよ」
 【ルカ「浅倉透!」
 透「ファイナルデッドルーム。あそこなら可能性はあるよね」】
 
 美琴「ルカの推理は全部仮説でしかない……どうして爆死だなんて断言ができるの?」
 【ルカ「ここは私が!」
 ルカ「なにも決めつけてるわけじゃねえ……可能性はこっちの方が高いってだけだ!」
 
 -------------------------------------------------
 【CROUCH BIND】
 
 【SET!】
 
 【コンマの合計値360以上で相手のスクラムを打ち破れ!】
 
 ↓直下より六回連続でコンマ判定
 
- 478 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:08:54.34 ID:yk5iMFYC0
-  あ 
- 479 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:09:30.49 ID:VcmPALsiO
-  あ 
- 480 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:10:35.23 ID:VcmPALsiO
-  あ 
- 481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:10:41.45 ID:0whl+Is30
-  お 
- 482 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:11:21.40 ID:VcmPALsiO
-  あ 
- 483 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:13:07.68 ID:wh7OhgFY0
-  爆破で死亡したのか死後に爆破されたのか、それが問題だ 
- 484 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 22:17:54.56 ID:fabXzL/b0
-   
 【コンマ 34 49 23 45 40 68】
 
 【ピトス・エルピスの効果によりコンマの値が+15ずつされます】
 
 【最終コンマ 49 64 38 60 55 83】
 
 【合計値 349】
 
 【発言力:♡×6→♡×5】
 
 (ぐっ……結構やるじゃねーか)
 
 (でも、ここは絶対に譲れない……なんとしても乗り越えてやるぞ……!)
 
 -------------------------------------------------
 【CROUCH BIND】
 
 【SET!】
 
 【コンマの合計値360以上で相手のスクラムを打ち破れ!】
 
 ↓直下より六回連続でコンマ判定
- 485 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:18:18.20 ID:VcmPALsiO
-  あ 
- 486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:19:53.49 ID:0whl+Is30
-  むん 
- 487 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:20:31.06 ID:0whl+Is30
-  むん 
- 488 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:21:22.54 ID:0whl+Is30
-  にゃあ 
- 489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:21:58.07 ID:VcmPALsiO
-  あ 
- 490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:23:19.62 ID:0whl+Is30
-  コンマ50以上すら出てなさ過ぎて笑う 
- 491 :ピトス・タリナイ ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 22:26:58.00 ID:fabXzL/b0
-  【コンマ 20 49 06 54 07 62】 
 
 【ピトス・エルピスの効果によりコンマの値が+15ずつされます】
 
 【最終コンマ 35 64 21 69 22 77】
 
 【合計値 288】
 
 【発言力:♡×5→♡×4】
 
 (ぐっ……結構やるじゃねーか)
 
 (でも、ここは絶対に譲れない……なんとしても乗り越えてやるぞ……!)
 
 -------------------------------------------------
 【CROUCH BIND】
 
 【SET!】
 
 【コンマの合計値360以上で相手のスクラムを打ち破れ!】
 
 ↓直下より六回連続でコンマ判定
- 492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:27:30.92 ID:VcmPALsiO
-  たのむ 
- 493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:28:42.38 ID:0whl+Is30
-  むん 
- 494 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:29:27.48 ID:VcmPALsiO
-  そい 
- 495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:30:07.73 ID:0whl+Is30
-  がおー 
- 496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:31:54.90 ID:VcmPALsiO
-  ほわ 
- 497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:32:21.12 ID:0whl+Is30
-  むん 
- 498 :NICE ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 22:36:00.58 ID:fabXzL/b0
-  【コンマ 92 38 48 73 90 12】 
 
 【ピトス・エルピスの効果によりコンマの値が+15ずつされます】
 
 【最終コンマ 107 53 63 88 105 27】
 
 【合計値 443】
 
 【全論破】
 
 「「「「「これが私たちの答えだ!」」」」」
 
 【BREAK!】
 
 ルカ「確かに降ってわいたような可能性で、その裏付けも何もない。……だがよ、あの死体は確実にどこか別の場所から移されたもので、その死体には不自然な焦げ跡もある」
 
 ルカ「爆殺という殺害方法……一考の余地はあるんじゃねーか?」
 
 冬優子「……あんたたちの言いたいことは分かったわ。確かに観覧車のゴンドラを利用すれば、爆殺を行うこと自体は可能だろうし」
 
 雛菜「でも、それってすっごく大きな問題をすっ飛ばした議論ですよね〜」
 
 智代子「すっごく大きな問題……?」
 
 雛菜「うん、爆殺のための肝心の凶器がまだ分からないでしょ〜? 何度もみんなが言ってるけど、あの機械の体を破壊するほどのおっきな爆発はそうそうの事じゃ起こせないよね〜」
 
 雛菜「その爆発を、犯人はどうやって起こしたんですか〜?」
 
 透「確かに私たちはこれまでの島の生活じゃそんなのは見つけてないけどさ。可能性なら、残ってるよね」
 
 ルカ「ああ、お前が言ってるのはファイナルデッドルームのことだろ?」
 
 ルカ「あの部屋は極上の凶器の他にもたくさんの凶器が転がっていた、そうだったよな美琴」
 
 美琴「……うん」
 
 ルカ「なら、その中にあった爆弾を拝借してちょちょっと細工さえしちまえば____」
 
 
 美琴「爆弾なんてなかったよ」
 
 
 ルカ「……は?」
 
- 499 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 22:37:02.29 ID:fabXzL/b0
-   
 美琴「確かにファイナルデッドルームにはいろんな種類の凶器が揃えてあった。ナイフや銃、モーニングスターなんかもね」
 
 美琴「……でも、爆発物の類いは一つも入ってなかったよ。それは間違いないって断言できる」
 
 智代子「い、いやいや! 美琴さんは確か、最初の攻略者じゃあないんだよね?! それなら、先にクリアした真犯人が根こそぎ持ち去ってる可能性も……」
 
 美琴「それもないかな」
 
 冬優子「確かさっきも言ってたわよね、ファイナルデッドルームは初回クリア特典以外は即座に補充されるって。攻略すれば極上の凶器が手に入るっていう触れ込みを守るために、モノミの家の鍵も補充される」
 
 あさひ「なら、美琴さんが発見できなかったんならファイナルデッドルームにはもともと爆発物なんてなかったことになるっすね」
 
 ルカ「そ、そんなことが……」
 
 美琴「ルカ、どうやら振出しに戻らないといけないみたいだね」
 
 (美琴が嘘をついてる可能性だって……ないわけじゃない)
 
 (でも、こんな局面でわざわざそんな嘘をつく意味は美琴にもないはずだ……)
 
 (じゃあ、だとしたら……)
 
- 500 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 22:38:28.95 ID:fabXzL/b0
-   
 雛菜「これ、まずくないですか〜?」
 
 雛菜「転落死も爆死もどっちもないんだったら、今までの議論全部ムダだったことになっちゃいますけど……」
 
 あさひ「……」
 
 智代子「そ、そんな……ここまで議論を続けてきて、死因も特定できてないなんて、進展はまるっきりゼロですか!?」
 
 恋鐘「し、仕方なか! もっと、別の所から議論せんね! 時間もないし、急いで……」
 
 (……でも、私にはあの観覧車が無関係にはどうも思えない)
 
 (あの死体に残されていた手掛かりだって……私の勘違いだって言うのか……?)
 
 冬優子「まあ、この島に爆弾がない以上はこの議論も打ち止めだろうし……しょうがないわね」
 
 美琴「夏葉さんを殺せるほどの膨大なエネルギー出力……高さ、爆弾……ほかには何があるかな」
 
 
 (……?)
 
 
 
 (あいつを殺せるほどの、【膨大なエネルギー出力】……?)
 
 
 
 
- 501 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 22:39:47.03 ID:fabXzL/b0
-   
 ルカ「待て!」
 
 冬優子「何よルカ……突然大きな声なんか出して」
 
 ルカ「……そうだ、そうだよな。あいつの体はバラバラになってた、そりゃそれだけバカでかい衝撃、それをもたらすエネルギーが必要になったはずだよな」
 
 恋鐘「ル、ルカ? 何をぶつくさ言うとるばい?」
 
 ルカ「……私に一つだけ、心当たりがある」
 
 美琴「……」
 
 ルカ「確かにこの島には、爆弾は存在しなかったかもしれない。でも……メカ女の体をバラバラにするぐらいの【強い衝撃を与えうる何か】を持っていた人間なら、この中にいる」
 
 智代子「え、ええ……えええええ!? そ、それってつまり……犯人、だよね?」
 
 雛菜「議論の進展がゼロだと思ってたら、一気に犯人まで行っちゃうんですか〜?」
 
 ルカ「私たちの中でただ一人、メカ女の体をバラバラにできる【何か】を持っていたやつ……そいつは」
 
 -------------------------------------------------
 【怪しい人物を指摘しろ!】
 
 ↓1
- 502 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:41:08.67 ID:0whl+Is30
-  夏葉 
- 503 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 22:44:13.14 ID:fabXzL/b0
-   
 ルカ「お前だ!」
 
 【解!】
 
 ルカ「ほかならぬメカ女本人……こいつなら可能だったはずだ」
 
 智代子「な、夏葉ちゃん……? ちょ、ちょっと待ってよルカちゃん! 夏葉ちゃんは被害者なんだよ、犯人とは別なんだよ!?」
 
 透「あー……そういうこと、自殺なら可能性はあるんだ」
 
 恋鐘「じ、自殺ばい!?」
 
 透「被害者と犯人は同一人物だったってケース。それならあり得そうじゃない?」
 
 ルカ「いや、そうじゃねえ。私は何もメカ女の体をバラバラにできる何かを持っていた人間としてメカ女を指摘しただけで、それ以外の意図は何もねーよ」
 
 ルカ「あいつが自殺した、だとかそんなのは全く考えちゃいねえ」
 
 透「あれ」
 
 ルカ「私が言いたいのは、あいつの右手についてたロケットパンチの事だ」
 
 
 ≪夏葉「邪悪を打ち破る、正義の鉄拳を喰らいなさい!」
 
 夏葉「はあああああああああ!!!!」
 
 智代子「いっけええええええええ!!!!」
 
 ドッカーーーーーーン!!!!!
 
 夏葉「どうかしら、これが私の手に入れた新しい力……【ロケットパンチ】よ」
 
 あさひ「すごいっす〜〜〜!!!」≫
 
 
- 504 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 22:46:02.95 ID:fabXzL/b0
-   
 ルカ「実際、あいつの右手のロケットパンチは一撃でモノケモノを葬り去るほどの絶大な火力を持っていた。それはここに居合わせた全員が目撃したことだろ?」
 
 あさひ「確かに、あのロケットパンチはすごい衝撃だったっす。パンチを食らっていないわたしたちでもその爆風で吹き飛んじゃいそうなほどだったっす」
 
 雛菜「そういえばあのロケットパンチって軌道の制御も自由にできたはずですよね〜」
 
 雛菜「じゃあパンチを打った後に自分の体に当たるようにしたってことなんだ〜」
 
 透「え、結局自殺じゃん」
 
 ルカ「待て待て、結論を急ぐな。さっきも言ったが、あいつの体をバラバラにできるほどの衝撃を持ったロケットパンチをあいつは撃てたってだけの話であって、自殺だなんていうつもりはない」
 
 ルカ「それに自殺なんだったら、そもそもあいつの死体が殺害現場から動かされてるのが妙な話だろ?」
 
 智代子「死体が砂を被っていたことからも、高いとこから落ちたのはほぼ確定的だし、自殺の線は考えにくいかも?」
 
 ルカ「だから、犯人はあいつのロケットパンチを何かしらの形で利用したんだと思う。あの衝撃をそのままあいつ自身に跳ね返すような真似をしたんじゃねーのかな」
 
 恋鐘「犯人のカウンターパンチが炸裂したばい!?」
 
 冬優子「あんなアンドロイドと正面からボクシングでカウンターなんか決めれたら人間じゃないわよ……」
 
 透「衝撃を跳ね返すって言われても……鏡とかじゃないよね。ゲームじゃあるまいし」
 
 あさひ「殺害現場が観覧車のゴンドラなら、その中でロケットパンチを打っただけでも衝撃は跳ね返ってくるんじゃないっすか? あれ、相当に固いシェルターっすよ」
 
 美琴「少し弱いかな。それに、シェルターは衝撃を反射するんじゃなくて吸収するものだし……ゴンドラの中で撃ったとしても彼女の体は壊れないと思う」
 
 
- 505 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 22:47:39.57 ID:fabXzL/b0
-   
 (……あいつの体にロケットパンチの衝撃を返した方法か)
 
 
 (あのロケットパンチは大量の燃料と電力を消費し、ジェット噴射しながら拳が飛んでいく仕様だ。撃った時のノックバックもかなり大きいが、あいつの受けた衝撃はそんなものじゃなかったはず)
 
 
 (それこそ、その衝撃を爆発的に増して還元する……そんな何かが仕掛けられたのは間違いないだろう)
 
 
 あさひ「だとしたら、怪しいのはあの焦げ跡っすね」
 
 透「あー、そういえば……死体は一部が焼け焦げてたんだっけ」
 
 雛菜「だからこそ、爆殺って話になったんですもんね〜」
 
 
 (あと少し……あと少しだ)
 
 
 (あともう少しであいつの死因が、思いつきそうだ……!)
 
 -------------------------------------------------
 
 【発掘イマジネーション開始!】
 
 
 有栖川夏葉はロケットパンチで■■■した!
 
 
 【指定の範囲内のコンマを出して結論を掘り当てろ!】
 
 
 一文字目 1〜30の奇数
 二文字目 31〜60の奇数
 三文字目 61〜90の奇数
 
 ↓1〜8
 
- 506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:49:02.89 ID:ZDYFfflP0
-  奇数指定とか難易度高いw 
- 507 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:49:05.12 ID:0whl+Is30
-  えい 
- 508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:50:13.19 ID:ZDYFfflP0
-  ふふー 
- 509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:51:16.72 ID:0whl+Is30
-  もう2つ出てる 
- 510 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:51:44.57 ID:ZDYFfflP0
-  ぴえっ 
- 511 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:52:22.75 ID:0whl+Is30
-  1人で3連続で3つ出してる…… 
- 512 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:54:28.93 ID:0whl+Is30
-  のこりー 
- 513 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 22:54:56.81 ID:ZDYFfflP0
-  もっと苦戦するかと思ってたけど 
 我ながら草生えるなこの引き・・・
- 514 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 22:56:13.12 ID:fabXzL/b0
-   
 【コンマ 89 12 19 72 57】
 
 カンカンカンカン……
 
 【発掘完了!!】
 
 【規定回数より少ない回数で掘り当てたのでボーナスが発生します!】
 
 【モノクマメダル3枚を獲得しました!】
 
 _______________________
 
 有栖川夏葉はロケットパンチで自爆した!
 _______________________
 
 ルカ「そうか、わかったぞ!」
 
 【COMPLETE!】
 
 ルカ「ロケットパンチはあいつ自身の手で制御可能。となると、犯人がどうこうしたところであいつが自分自身に拳を突き立てるようなことは、まずなかっただろうと思う」
 
 美琴「自殺を試みたりしていない限りは、そんなことは起こらないだろうね」
 
 ルカ「でも、あのロケットパンチの他にメカ女の体をバラバラにできるような高出力の凶器は存在していない……となると、もっと別の方法で犯人は利用したはずだ」
 
 ルカ「あのパンチそのものではなく、パンチを撃ちだすための仕組みを利用したんじゃないか?」
 
 恋鐘「パンチば撃ちだす仕組み……? どがん意味か説明して!」
 
 ルカ「あのパンチはかなりの量の燃料と電力を消費して、ジェット噴射して飛んでいく仕掛け。ま、平たく言えば、ガキがロケットを描くときとかと同じで、火を出しながら飛んでいく絵面だ」
 
 ルカ「ロケットパンチを撃ちだした瞬間、その空間に引火性のガスなんかが充満していたらどうだ? 即座に化学反応が発生して大爆発が巻き起こる。要は自爆ってわけだ」
 
 智代子「なるほど……! それなら確かに観覧車のゴンドラはうってつけだね……!」
 
 智代子「衝撃を外部に逃がさないし、密閉性も抜群。ガスと一緒に夏葉ちゃんをゴンドラに入れておけばそれで準備もOKなんだ!」
 
 雛菜「なるほど〜、それなら確かに爆弾が無くても爆死の条件を満たしますね〜」
 
 美琴「じゃあ、その引火性のガスっていうのは?」
 
 ルカ「なんか、ドラッグストアとかにないのか? そういう感じのやつ」
 
 智代子「急に雑になったね……」
 
 ルカ「しょうがねーだろ、そもそも捜査も何もしてねーんだからよ。あのドラッグストアは常用薬からやべー薬まで一通り何でも揃ってたし、なんか一個ぐらい条件を満たすのが……」
 
- 515 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 22:56:55.06 ID:fabXzL/b0
-   
 
 
 
 
 あさひ「……ルカさん、その推理も行き止まりっす」
 
 
 
 
 
 
- 516 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 22:57:37.54 ID:fabXzL/b0
-   
 ルカ「……あ? んだよ、またなんかあんのか?」
 
 あさひ「その方法は、夏葉さんだけは殺害できないっすよ」
 
 美琴「……どういうこと?」
 
 あさひ「夏葉さんの機体には、【空気清浄機能】が搭載されてるっす。もしゴンドラの中をそんな有害なガスで充満させたら、その機能が作動してガスは分解されちゃうっす」
 
 ルカ「な、なんだと……そんなの、初耳だぞ……!?」
 
 智代子「たしかに……あさひちゃんの言う通りだよ、それ、夏葉ちゃんも言ってた! 私も聞いたよ!」
 
 透「え、それじゃ……また?」
 
 雛菜「振出しに戻る〜〜〜〜〜!!」
 
 (う、嘘だろ……ここまで詰めておいて、またダメだってのか……!?)
 
 (あいつのロケットパンチを利用した自爆殺人……クソ、これ以上なく通っていると思うのに)
 
 (被害者自身の機能ではばまれるなんて……!!)
 
 
 
- 517 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 22:58:53.49 ID:fabXzL/b0
-  ------------------------------------------------- 
 【ノンストップ議論開始!】
 
 発言力:♡×4
 集中力:☆×5
 
 コトダマ
 ‣【泥】
 ‣【夏葉の眼球】
 ‣【モノクマファイル4】
 ‣【死体に被さっていた砂】
 ‣【極上の凶器】
 ‣【ワイヤーフック】
 ‣【ハンマー】
 
 
 冬優子「有栖川夏葉の死体をバラバラになるまで破壊できる」
 
 冬優子「そんな爆発的な威力を持つのは、あいつ自身のロケットパンチだけ」
 
 冬優子「ゴンドラに可燃性のガスを充満させておけば」
 
 冬優子「着火した瞬間に大爆発が生じる」
 
 冬優子「それがルカの推理よね」
 
 あさひ「でも、夏葉さんには空気清浄機能がある」
 
 あさひ「可燃性のガスでも、人体に有害なものは全部分解されちゃうっす」
 
 あさひ「着火したところで、【爆発は起きない】と思うっすよ」
 
 美琴「ファイナルデッドルームには【爆弾はなかった】」
 
 美琴「他に彼女を爆殺する方法はないんじゃないかな」
 
 智代子「夏葉ちゃんの死因、またわからなくなっちゃったね……」
 
 恋鐘「いい加減議論を進めんと、タイムアップになってしまうばい〜〜〜〜!」
 
 
 【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】
 
 
 1.発言する(コトダマと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
 2.集中力を使う(コトダマの数が減る)
 
 ↓1
 
- 518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 23:04:30.59 ID:0whl+Is30
-  2.集中力を使う 
- 519 :ここの議論正直ガバ目です ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 23:06:36.20 ID:fabXzL/b0
-   
 【集中力を使用しました】
 
 【コトダマの数が減少します】
 
 【集中力:☆×5→☆×4】
 
 -------------------------------------------------
 【ノンストップ議論開始!】
 
 発言力:♡×4
 集中力:☆×4
 
 コトダマ
 ‣【泥】
 ‣【夏葉の眼球】
 ‣【死体に被さっていた砂】
 ‣【ワイヤーフック】
 ‣【ハンマー】
 
 
 冬優子「有栖川夏葉の死体をバラバラになるまで破壊できる」
 
 冬優子「そんな爆発的な威力を持つのは、あいつ自身のロケットパンチだけ」
 
 冬優子「ゴンドラに可燃性のガスを充満させておけば」
 
 冬優子「着火した瞬間に大爆発が生じる」
 
 冬優子「それがルカの推理よね」
 
 あさひ「でも、夏葉さんには空気清浄機能がある」
 
 あさひ「可燃性のガスでも、人体に有害なものは全部分解されちゃうっす」
 
 あさひ「着火したところで、【爆発は起きない】と思うっすよ」
 
 美琴「ファイナルデッドルームには【爆弾はなかった】」
 
 美琴「他に彼女を爆殺する方法はないんじゃないかな」
 
 智代子「夏葉ちゃんの死因、またわからなくなっちゃったね……」
 
 恋鐘「いい加減議論を進めんと、タイムアップになってしまうばい〜〜〜〜!」
 
 
 【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】
 
 
 1.発言する(コトダマと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
 2.集中力を使う(コトダマの数が減る)
 
 ↓1
- 520 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 23:10:59.28 ID:ZDYFfflP0
-  爆発は起きない→砂? 
 粉塵爆発をしたとか?
- 521 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 23:12:13.75 ID:0whl+Is30
-  【泥】→【爆発は起きない】? 
 気体じゃなくて液体なら大丈夫とか人体に有害じゃない水素が反応したとか……
- 522 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 23:14:09.65 ID:fabXzL/b0
-   
 【発言力:♡×4→♡×3】
 
 あさひ「……? あの砂は死体発見現場に合ったものと同じはずっす」
 
 あさひ「それに、粉塵爆発を起こすには不向きな材質だと思うっす」
 
 (……違ったか)
 
 (メカ女の死に爆発が関係しているのは間違いない……自爆に導いた可燃性のガス、考えてみるか……!)
 
 【スキル:アンシーン・ダブルキャストの効果でコトダマの数が減少します】
 
 -------------------------------------------------
 【ノンストップ議論開始!】
 
 発言力:♡×4
 集中力:☆×4
 
 コトダマ
 ‣【泥】
 ‣【死体に被さっていた砂】
 ‣【ワイヤーフック】
 ‣【ハンマー】
 
 
 冬優子「有栖川夏葉の死体をバラバラになるまで破壊できる」
 
 冬優子「そんな爆発的な威力を持つのは、あいつ自身のロケットパンチだけ」
 
 冬優子「ゴンドラに可燃性のガスを充満させておけば」
 
 冬優子「着火した瞬間に大爆発が生じる」
 
 冬優子「それがルカの推理よね」
 
 あさひ「でも、夏葉さんには空気清浄機能がある」
 
 あさひ「可燃性のガスでも、人体に有害なものは全部分解されちゃうっす」
 
 あさひ「着火したところで、【爆発は起きない】と思うっすよ」
 
 美琴「ファイナルデッドルームには【爆弾はなかった】」
 
 美琴「他に彼女を爆殺する方法はないんじゃないかな」
 
 智代子「夏葉ちゃんの死因、またわからなくなっちゃったね……」
 
 恋鐘「いい加減議論を進めんと、タイムアップになってしまうばい〜〜〜〜!」
 
 
 【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】
 
 
 1.発言する(コトダマと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
 2.集中力を使う(コトダマの数が減る)
 
 ↓1
- 523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 23:16:11.70 ID:0whl+Is30
-  【泥】→【爆発は起きない】 
- 524 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 23:16:17.48 ID:ZDYFfflP0
-  【泥】→【爆発は起きない】 
- 525 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 23:17:25.53 ID:fabXzL/b0
-   
 ルカ「見つけた……!!」
 
 【BREAK!】
 
 ルカ「……メカ女の体はバラバラで、更には焼け焦げた跡もあった」
 
 ルカ「死体発見現場にはオイルがぶちまけられていて、死体を引きずって移動したような可能性はない」
 
 ルカ「……現場にある手掛かりは、これで終わり。そう思っていた。オイルがこぼれている、だからこれは普通の事だと勝手に思い込んでいた。でも、よくよく考えればおかしいよな」
 
 ルカ「油は砂にそう簡単には浸透しない……あんな風に、現場に泥ができるのって考えづらいよな」
 
 美琴「……どういう意味?」
 
 ルカ「……あの死体発見現場にぶちまけられていたのは油だけじゃなかったかもしれないってことだよ。油ほどの多量ではなかったにしろ、砂を泥に替えるぐらいには十分な量の……水がな」
 
 恋鐘「み、水……」
 
 ルカ「……さて、ここで化学のお勉強だ。中学生、お前……水の化学式は分かるか」
 
 あさひ「えっと、H₂Oっすよね?」
 
 ルカ「じゃあ、次はその化学式を構成している元素は分かるか?」
 
 
 
 あさひ「……【水素】と、酸素」
 
 
 
- 526 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 23:18:37.33 ID:fabXzL/b0
-   
 あさひ「あっ」
 
 ルカ「そういうことだ、ここにいる連中も一回ぐらいは経験したことあんだろ? 水上置換の実験、そこで集めた水素で蝋燭を爆発的に燃やすアレ」
 
 透「あー……えっと……塩酸と……金属?」
 
 雛菜「透ちゃん賢い〜〜〜〜! 雛菜全然覚えてなかった〜!」
 
 ルカ「犯人はあの観覧車のゴンドラの中でその燃焼実験の再現を行ったんだよ。ロケットパンチに着火した瞬間に空気中の水素と酸素で化学反応が発生、その瞬間の大爆発は免れようがなかったろうぜ」
 
 ルカ「その結果、化合物として発生した水が死体に付着。死体を移動した際に周辺の砂に水がしたたり落ちて、それが泥になった。オイルとは全くの別にな」
 
 あさひ「確かに、水素なら問題なく爆発までこぎつけられるかも……それに、気体の問題をクリアすれば、他の条件は全部今の推理で説明がつく……」
 
 智代子「ルカちゃん、これって……もしかして……!」
 
 ルカ「ああ、やっとたどり着いた……これがメカ女の死の正体……あいつは、水素爆発で命を落としたんだよ!」
 
 美琴「……すごいね、ルカ」
 
- 527 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 23:19:32.70 ID:fabXzL/b0
-   
 
 
 
 
 美琴「これで、犯人も分かっちゃったもんね」
 
 
 
 
 
 
 
- 528 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 23:21:16.91 ID:fabXzL/b0
-   
 智代子「……え?」
 
 智代子「は、犯人……?」
 
 美琴「違う? 今のルカが言った通りの、水素爆発……明らかに一人、怪しい人物が浮上するよね」
 
 ルカ「……」
 
 智代子「ちょ、ちょっと待って! 今までずっと、議論の前提となる死因の特定の話をしてただけで……せいぜいこれで確定したのって、死因と事件現場ぐらいの物じゃないの?!」
 
 恋鐘「う、うちも全然見えてこんたい……美琴、頭の回転が速すぎてうちらを取り残してしもうとるよ!」
 
 美琴「じゃあ、ルカに説明してもらおうかな」
 
 美琴「夏葉さんが命を落とした原因が水素爆発だとわかった今、一番犯人だと疑わしい人物を指摘してもらったうえで」
 
 ルカ「み、美琴……!?」
 
 (……マジか)
 
 (いや、美琴だからこそ……か。この状況で私と同じ結論に到達できるのは、この場では美琴とせいぜいもう一人ぐらいのもの)
 
 (あの時、あの場に居合わせていた……あいつならば同じ結論に至るかもしれない)
 
 (でも、でも……)
 
 (そんな結論……私は……私は……)
 
 -------------------------------------------------
 【クロを指摘しろ!】
 
 ↓1
 
- 529 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 23:22:56.17 ID:0whl+Is30
-  冬優子 
- 530 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/18(水) 23:24:58.19 ID:fabXzL/b0
-   
 クロを指摘したところで本日はここまで。
 水素のくだりは正直文系化学なので温かい目で見てやってください……
 
 明日も21時ごろから更新予定です。
 それではお疲れさまでした。
 
- 531 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 23:34:16.77 ID:0whl+Is30
-  お疲れさまでした 
 クロは結論を急いでたところでおよそ見当がついて、反論でほぼ確信に変わって、水素爆発の可能性に至ったときに確信しましたね……
 前章で病院から水素の吸引機持ち出してたもんな……
- 532 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 00:00:47.90 ID:lUoTZCfC0
-  >>1乙 
 これあさひがもうもたないだろ・・・
 あとルカにとっても好感度MAXにした相手が
 同時に消えるとかあんまりだよ・・・
- 533 :日に日に早くなる ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 20:21:27.33 ID:kJ67nvvf0
-   
 ルカ「……」
 
 【解!】
 
 
 ルカ「第3の島が解禁されたとき、私は真っ先に病院に向かった。あの島で最も私たちの生き死にに関与する施設。それを狸に荒らされることは避けたかったからだ」
 
 ルカ「そこで、私と美琴は出会った。狸である可能性が最も高い中学生を擁するストレイライトの三人に」
 
 ルカ「奴らは言っていた、監視の目は常に張っている。中学生が何か怪しいことをしていたらすぐに止める。何かを持ち出させるのも防ぐってな」
 
 ルカ「でもな、一人だけ図々しくも設備を持ち出してるやつがいたんだよ」
 
 ルカ「……美容のため、私はそう聞いてたんだけどな」
 
 
 ≪冬優子「待って。ふゆたちもただ探索に来てるだけ、それに二人がかりでこいつには目を光らせてるから安心して」
 
 ルカ「……本当だな?」
 
 冬優子「あさひの手荷物もついさっき検査したけど、何も持ち出した様子はないわ。愛依とふゆが保証する」
 
 ルカ「……お前のその手に抱えてるのは違うのか?」
 
 冬優子「これは……水素の吸引機よ。ふゆが普段使いする用で持ち出すだけ」
 
 (それはいいのかよ……)≫
 
 
 ルカ「……冬優子、お前なのか?」
 
 冬優子「……」
 
 
- 534 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 20:22:49.89 ID:kJ67nvvf0
-   
 
 
 
 
 冬優子「……あんたね、何言ってんのよ」
 
 
 
 
 
- 535 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 20:24:04.52 ID:kJ67nvvf0
-   
 ルカ「……あ?」
 
 冬優子「確かにふゆは水素の吸引機を持ち出した。あれを使えばゴンドラの中を水素で満たすこともできたかもしれないけど……」
 
 冬優子「さっきもあんたが言った通り、水素なんていくらでも生成できんのよ。塩酸を金属にかければすぐにできるわけだし、水を電気分解したっていい」
 
 冬優子「それだけでふゆを糾弾しようなんて、あんたいい度胸してんじゃないの」
 
 ルカ「……クク、ククク……」
 
 冬優子「何笑ってんのよ、気持ち悪いわね」
 
 (……正直、安心した。冬優子が認めてしまえば……犯人がわかったとて、私はまた大事なものを失うことになる)
 
 (美琴との仲が悪くなっちまったから……余計に、その喪失はあって欲しくはなかった)
 
 冬優子「水素なら誰でも簡単に精製可能、くだらないこと言う前にちゃんと議論しなさい」
 
 智代子「えっと……それじゃあつまり、ふゆちゃんは別に犯人なわけではない……?」
 
 美琴「……」
 
 
- 536 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 20:26:19.03 ID:kJ67nvvf0
-   
 あさひ「冬優子ちゃん、違うっすよね? わたし……愛依ちゃん、果穂ちゃんに続いて……冬優子ちゃんとお別れなんかしたくないっすよ」
 
 冬優子「だから、くだらないこと言ってんじゃないって」
 
 あさひ「あだっ」
 
 智代子「恐ろしく優しい手刀……私じゃなきゃ見逃しちゃうね!」
 
 恋鐘「そいじゃあ議論に戻らんね! もともと今、なんの話しとったっけ……」
 
 透「死因と殺害現場はわかった……じゃあ次は……死体の移動方法?」
 
 透「確か、ロープウェーは出来ないって話で……残りはそのままだったよね」
 
 ルカ「おう、モノミの家でロープウェーの操作をする人間と死体の運搬をする人間で二人が必要になるからな」
 
 智代子「う〜ん……殺害現場は観覧車だけど、運搬を行ったのは別の場所なのかな」
 
 雛菜「あんな重たいの、人の力じゃ運べないと思いますよ〜? やっぱり、観覧車を何かしらの形で利用して運んだんじゃないですか〜?」
 
 
- 537 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 20:26:59.45 ID:kJ67nvvf0
-   
 透「あ、じゃあ何か物を持ち込んで運んだとか。台車とか、猫車とか、そういうの」
 
 あさひ「それ、普通に運ぶのとあんまり変わんないっすよ? それに、台車に乗せるのも大変っす」
 
 恋鐘「死体に風船を結びつけて浮きあがらせるのはどがんね!」
 
 冬優子「風船って、どこぞ老爺の家じゃあるまいし……」
 
 智代子「それじゃあロケット花火でぶっ飛ばして運んだとかは?」
 
 冬優子「なんか響きがヤンキー漫画みたいだけどそれ、大丈夫?」
 
 あさひ「ロケット花火は冬優子ちゃんに没収されてるからそれはないっす」
 
 冬優子「……絶望病の時、こいつが碌なことしなさそうだからスーパーから花火類は根こそぎ回収しておいたわ」
 
 あさひ「む〜、色々混ぜてどんな光り方するか確かめたかったのに〜」
 
 冬優子「ほらね」
 
 (……苦労人だな)
 
 
- 538 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 20:28:19.27 ID:kJ67nvvf0
-   
 冬優子「で、本題だけど……観覧車、なんて名前でも実際のところ移動なんて一ミリも出来やしない。あそこから死体を運び出すのは不可能だって結論にならなかった?」
 
 (……どうなんだろう、あいつを爆殺した手口は明るみになったし……それが可能なのは観覧車のゴンドラだけ。なら、観覧車から死体発見現場まで何かしらの方法で運び出されたはずだ)
 
 あさひ「夏葉さんの死体にはワイヤーフックが取り付けられてたっす。あれがある以上は何かしらの方法で運ばれたのは間違いないはずっす」
 
 透「……えっとさ、そのワイヤーフックって本当にワイヤーのフックなのかな」
 
 ルカ「あ?」
 
 透「だってさ、フックだけがついてるのって妙じゃない?
 死体を運ぶのにワイヤーを使ったんだったら、証拠隠滅のためならフックも両方普通外すよね」
 
 ルカ「……そういえばそうだな。現場には、あいつの死体を運んだであろうワイヤーの本体そのものは残っちゃいなかった」
 
 ルカ「死体を運び出したと言う事実を隠蔽するんだったら、ワイヤーだけでなくフックも両方隠滅するのが普通道理だよな」
 
 あさひ「あのワイヤーって、かなり緩めだったっす。老朽化してたのかもしれないけど、全然強度はなかったっす」
 
 あさひ「もしかすると、ワイヤーは犯人が外したんじゃなくて外れたのかもしれないっすね」
 
 (ワイヤーが……【外れた】……?)
 
- 539 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 20:29:19.65 ID:kJ67nvvf0
-   
 
 恋鐘「そいなら、犯人は別んところに夏葉を移しとる最中にワイヤーが外れて死体が想定外の場所に落下してしまったとね?」
 
 あさひ「……だとしたら、最終地点に死体が到達してないことに気づいた犯人はもっと丁寧に誤魔化すと思うっす。それこそ、ワイヤーフックだって外したのかも」
 
 美琴「それこそ血眼になって落下した死体を探すだろうね、意図しないところに落ちたせいで妙な手掛かりになっても困るし」
 
 ルカ「それが無いってことは、犯人にとっては概ね想定通りだったってことだ。ワイヤーが外れて落下してもいい……つまりは死体発見現場と殺害現場が別になりさえすればよかったんだろう」
 
 冬優子「だから、また議論が逸れてるわよ。今話してたのはどうやって死体を運搬したのか。その方法が解決できない限りは、犯人の意図がどうとか関係ないじゃないの」
 
 
 (……観覧車を使った死体の運搬)
 
 
 (ゴンドラに一度乗り込んでしまうと……一定の高さになるとゴンドラは開かなくなってしまう)
 
 
 (ゴンドラの動きを停止させようにも、その操作はモノミの家じゃないとできない)
 
 
 (……一体、犯人はどうやって死体を運んだんだ?)
 
 
 
- 540 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 20:30:02.45 ID:kJ67nvvf0
-  ------------------------------------------------- 
 【ロジカルダイブ開始!】
 
 Q1.有栖川夏葉の本当の死因は?
 A.転落死 B.撲殺 C.爆死
 
 Q2.有栖川夏葉はどこで命を落とした?
 A.死体発見現場 B.観覧車 C.それ以外
 
 Q3.犯人は何を使って死体を運搬した?
 A.ロケットパンチ B.観覧車 C.ドローン
 
 Q4.犯人はどうやって死体を運んだ?
 A.遠隔操作 B.ロープウェー C.円運動 D.ワイヤーで手繰った
 
 
 【正しい道筋を選んで推理を組み立てろ!】
 
 ↓1
 
- 541 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 20:41:46.65 ID:dSdGFz7r0
-  CBBC 
- 542 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 20:47:27.07 ID:kJ67nvvf0
-   
 ルカ「推理はつながった!」
 
 【COMPLETE‼︎】
 
 ルカ「観覧車を運搬に活用しようにも、自由に操作するにはモノミの家にいることが必須。更にはゴンドラは地上から離れてしまうと扉も開かなくなっちまう」
 
 ルカ「その二つの条件があるせいで、私たちは観覧車を活用することを諦めてしまっていた……でも、そうじゃない」
 
 ルカ「今回の殺害現場がゴンドラの中で、死体発見現場とは別だと確定した今、死体運搬の方法がそこにあったのは明らかだ」
 
 智代子「その論理はわかるけど……でも、肝心のその方法がわからないんだよね」
 
 智代子「観覧車の内側は今ルカちゃんが言った通りの条件でがんじがらめだから……」
 
 ルカ「そう、それだ。観覧車に乗るというのを前提で考える以上は推理は行き詰まる。……それなら、乗らなければいい」
 
 恋鐘「観覧車に、乗らん……?」
 
 ルカ「観覧車の外枠を使ったんだ。観覧車の円周上にワイヤーを添わせるようにして、その先端にメカ女の死体を括り付ける」
 
 ルカ「あとは円運動の要領で観覧車をぶん回せば、そのまま死体は空中に投げ出されるって仕組みだ」
 
 美琴「そんな大胆な方法を……?」
 
 
- 543 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 20:47:59.57 ID:kJ67nvvf0
-   
 あさひ「なるほど、それでワイヤーフックはかなり緩いものを使ったんっすね。空中でワイヤーが外れて運動の勢いそのままに飛んでいくように犯人は狙ったんだ」
 
 ルカ「運搬というには不十分な方法だ。死体がどこに飛んでいくかも予想がつきづらい、とにかく観覧車から遠ざけられればそれでよかったんだもんな」
 
 冬優子「待ちなさい」
 
 冬優子「あんたたち……それ、本気で言ってる? 観覧車は確かに綺麗な円のかたちよ、でも……円の大きさも並みじゃないし、それにただの円じゃなくて観覧車、なのよ」
 
 冬優子「金属でできた観覧車の重量なんて数トンで収まる規模じゃないし、そんな滑車みたいに速度をもって回転すると思うの?」
 
 あさひ「難しいっすか?」
 
 冬優子「当たり前でしょ、大体普段から見てるでしょ。観覧車の回転する速度……一周に数十分かかるのが普通なんだから」
 
 ルカ「なあ、美琴。モノミの家で観覧車の速度を操作することはできるか?」
 
 美琴「……一応可能だったと思う。でも、あくまでそれは通常のアトラクションの運用の範囲内で。外枠に取り付けた死体を投げ飛ばすほどの遠心力が発生するような速度じゃないよ」
 
 美琴「後はせいぜい回転する方向の転換ぐらい。観覧車だけじゃルカの推理は成立しないかな」
 
 
- 544 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 20:48:44.16 ID:kJ67nvvf0
-   
 恋鐘「なんだかどんどん真実から遠ざかっとるような気がするばい……ルカはさっきから突拍子もないことばっか言っとらん?」
 
 あさひ「そうっすか? 今のって、美琴さんの言う通り……観覧車だけじゃ推理は成立しないかもしれないけど、ほかに何か別のものを利用すれば成立する可能性はあるっすよね」
 
 智代子「そうか! ロケットパンチの勢いをここでも利用したんだね!?」
 
 美琴「いや、ロケットパンチは一発一発にかなりの燃料を必要とするから……彼女の命を奪った一発のほかには打てないと思うよ」
 
 (円運動を助ける、何か別の物……)
 
 (要は、あの観覧車が高速で回転すればいいんだよな……?)
 
 (私の推理では、観覧車にはその演習場にワイヤーが巻き付けてあり、その端にメカ女の死体が括りつけてある)
 
 (……だとすれば、もう片方の端って……)
 
 (あと少し、あと少しだ……これでやっと、あの死体が移動したトリックが見えてくる……!)
 
- 545 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 20:49:48.94 ID:kJ67nvvf0
-  ------------------------------------------------- 
 【発掘イマジネーション開始!】
 
 犯人は夏葉の死体を運搬する円運動で■■■■■を利用した!
 
 【指定の範囲内のコンマを出して結論を掘り当てろ!】
 
 
 一文字目 01〜20
 二文字目 21〜40
 三文字目 41〜60
 四文字目 61〜80
 五文字目 81〜00
 
 
 ↓1〜12
 
- 546 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 20:50:39.76 ID:dSdGFz7r0
-  あ 
- 547 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 20:51:19.07 ID:dSdGFz7r0
-  あ 
- 548 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 20:52:25.87 ID:dSdGFz7r0
-  あ 
- 549 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 20:53:17.49 ID:dSdGFz7r0
-  あ 
- 550 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 20:53:57.45 ID:dSdGFz7r0
-  あ 
- 551 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 20:54:23.86 ID:dSdGFz7r0
-  あ 
- 552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 20:55:21.29 ID:dSdGFz7r0
-  あ 
- 553 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 21:04:21.70 ID:kJ67nvvf0
-   
 【コンマ 76 07 87 49 45 86 29】
 
 カンカンカンカン……
 
 【発掘完了!!】
 
 【規定回数より少ない回数で掘り当てたのでボーナスが発生します!】
 
 【モノクマメダル5枚を獲得しました!】
 
 _______________________
 
 犯人は夏葉の死体を運搬する円運動で糸車を利用した!
 _______________________
 
 
 ルカ「そうか、分かったぞ!」
 
 【解!】
 
 ルカ「……おいおい、マジかよ」
 
 美琴「……ルカ?」
 
 ルカ「今回の犯人、どこまで大胆な真似をしてくれてんだよ……! そんな、そんな方法があったなんてな……!」
 
 恋鐘「も、もしかして分かったばい!? 円運動を可能にした、別の何かの正体が……!」
 
 ルカ「おう、私の推理は不完全だったんだよ。犯人は円運動を生み出すために、観覧車を大きな大きな糸車に変えたんだ」
 
 智代子「い、糸車……って、あの……?!」
 
 恋鐘「まきまき……ふふ……上手に巻けました……♪」
 
 恋鐘「……の、糸車ばい!?」
 
 ルカ「ああ、糸じゃなくて、ワイヤーだけどな」
 
 ルカ「ワイヤーの片端を何か別のアトラクションにでも結び付けておくんだ。そして長さをうまいこと調整して、観覧車にある程度巻きついた状態にしておいて、もう片方の端は死体に結び付ける」
 
 ルカ「後は観覧車の回転する方向を合わせて、速度も高めに設定。そして端を結び付けられたアトラクションも起動する」
 
 ルカ「観覧車ではない方のアトラクションが動いてワイヤーを一気に巻き取ろうとする力が発生するのに合わせて、死体も一気に持ち上がる寸法だ」
 
 美琴「……なるほど、それなら観覧車の元々出せる限界以上の速度が発生するかもしれない」
 
 雛菜「そんな無茶なことしちゃったら、観覧車壊れちゃいませんか〜?」
 
 ルカ「壊れても別に構やしねーんだろ、死体を運び出せればそれでいいんだからな」
 
 透「じゃあ、そのワイヤーをくくりつけたアトラクションってのは?」
 
 ルカ「観覧車と直線状に在りつつ、ワイヤーを巻き取るような激しい運動もするアトラクションだ。その候補はおのずと限られるさ」
 
 -------------------------------------------------
 【スポットセレクト開始!】
 
 画像:https://imgur.com/a/LdQZuPO
 
 【観覧車と併せて使い、糸車を作り出したアトラクションを指摘しろ!】
 
 ↓1
 
- 554 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 21:05:40.48 ID:dSdGFz7r0
-  バイキング 
- 555 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 21:08:36.75 ID:kJ67nvvf0
-   
 ルカ「これだ!」
 
 【解!】
 
 ルカ「バイキング……船が前後に大きくスイングするアトラクションだな」
 
 智代子「ちょうどバイキングのスイングの方向と、観覧車の回転する方向も一緒だよ!」
 
 冬優子「なるほどね……確かにこれなら、バイキングが奥に行ったときには相当な力の牽引力が発生しそう」
 
 ルカ「ああ、それこそ滑車のように観覧車は回転したんだろうよ……メカ女の死体をぶっ飛ばすためにな!」
 
 あさひ「すごいっす! ついに死因も殺害現場も死体の運搬方法も分かっちゃったっす!」
 
 雛菜「ん〜……でも、ここからどうします〜?」
 
 雛菜「諸々は明らかになりましたけど〜、結局犯人が誰だったのかは絞れてなくないですか〜?」
 
 智代子「さっきは一応……ふゆちゃんが怪しいって話になったけど……」
 
 冬優子「あれはただの言いがかり。水素なんて誰でも簡単に入手できるでしょ?」
 
 美琴「少しは絞られるんじゃない? ほら、あの遊園地のアトラクションは特殊だったから。身長制限も異常な数値だったよね」
 
 透「あー、そういや……バイキングって身長制限160cmだったっけ」
 
 ルカ「イかれた制限してんな……」
 
- 556 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 21:09:42.70 ID:kJ67nvvf0
-   
 モノクマ「普通のバイキングとは大違い、前後どころかぐるりと一周してしまいますからね! かかるグラヴィティも桁外れ、それなりにがっしりした人間じゃないと近づくこともできませんぞ!」
 
 ルカ「こん中で160もないチビ助どもは……甘党女と中学生か」
 
 智代子「あ、あはは……これもまた個性なので……」
 
 あさひ「そっすね、わたしバイキングにも乗ろうとしたっすけど、柵の段階で止められたっすから」
 
 透「じゃあ、候補は……残りの6人?」
 
 雛菜「ほとんどさっきと変わらないね〜」
 
 (……水素爆発、観覧車を利用した円運動。身長が160よりもあればだれでも確かに犯行は可能だ)
 
 (ここから、どうやって絞っていくか……か)
 
 ルカ「……ここで一度、犯人の足取りをたどってみるか。犯人がメカ女を殺して、死体を運搬するその流れを見返してみると、何か分かるかもしれない」
 
 智代子「そうだね、何か見落としがあるかもしれないし! もしかしたら犯人に繋がる手掛かりもあるかもしれないもんね!」
 
 恋鐘「何事も予習と復習が大事やけんね!」
 
 美琴「……それじゃあ、振り返ってみよう。今回の事件について、今に至るまで」
 
 
- 557 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 21:11:13.36 ID:kJ67nvvf0
-  ------------------------------------------------- 
 【ノンストップ議論開始!】
 
 発言力:♡×4
 集中力:☆×5
 
 コトダマ
 ‣【モノクマファイル4】
 ‣【死体の焦げ跡】
 ‣【おやすみスイッチ】
 ‣【極上の凶器】
 ‣【ハンマー】
 ‣【夏葉の眼球】
 ‣【島のパンフレット】
 
 
 あさひ「夏葉さんが殺されたのは観覧車のゴンドラっす」
 
 あさひ「音も衝撃も通さないシェルターみたいなゴンドラの中で、犯人は水素爆発を起こさせたっす」
 
 雛菜「まず【背中についてた強制スリープボタンを押して】意識を失わせたんですよね〜」
 
 雛菜「その間にゴンドラに水素を充満させて〜」
 
 雛菜「目を覚ました被害者さんが【ロケットパンチを撃った瞬間に】どっか〜〜〜〜ん!」
 
 冬優子「ゴンドラの防御性能のおかげで誰にも気づかれずに殺害は完了」
 
 冬優子「殺害現場から目をそらすために犯人は死体の運搬を開始した」
 
 冬優子「【円運動】……だったっけ? 観覧車を糸車みたいにしてワイヤーを巻き取ったのよね」
 
 透「バイキングと被害者とにワイヤーの端同士を巻き付けたんだよね」
 
 透「で、観覧車を滑車みたいに経由させた」
 
 恋鐘「でも、こげんこつ、身長制限にかからんかったら【誰でも出来そう】ばい」
 
 恋鐘「犯人ば全然絞れんとよ」
 
 
 【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】
 
 
 1.発言する(コトダマと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
 2.集中力を使う(ロンパ候補の発言の数が減る)
 
 ↓1
 
- 558 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 21:15:41.91 ID:dSdGFz7r0
-  【島のパンフレット】→【誰でも出来そう】 
- 559 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 21:21:04.78 ID:kJ67nvvf0
-   
 恋鐘「バイキングに慎重制限があるのはもうわかっとーと!」
 
 恋鐘「うちが聞きたかはその先やけん、もっと頭数を絞る方法を教えんね!」
 
 (……クソッ、こいつじゃ説得には不十分らしい)
 
 (メカ女を殺害する一連の工程……バイキング以外に、行動が可能な人間を絞る方法は何かないか?)
 
 (……それこそ、犯人と被害者はどういう状況で相対したのか、とか)
 
 【スキル:アンシーン・ダブルキャストの効果でコトダマの数が減少します】
 
 -------------------------------------------------
 【ノンストップ議論開始!】
 
 発言力:♡×3
 集中力:☆×5
 
 コトダマ
 ‣【モノクマファイル4】
 ‣【死体の焦げ跡】
 ‣【おやすみスイッチ】
 ‣【極上の凶器】
 ‣【ハンマー】
 ‣【夏葉の眼球】
 ‣【島のパンフレット】
 
 
 あさひ「夏葉さんが殺されたのは観覧車のゴンドラっす」
 
 あさひ「音も衝撃も通さないシェルターみたいなゴンドラの中で、犯人は水素爆発を起こさせたっす」
 
 雛菜「まず【背中についてた強制スリープボタンを押して】意識を失わせたんですよね〜」
 
 雛菜「その間にゴンドラに水素を充満させて〜」
 
 雛菜「目を覚ました被害者さんが【ロケットパンチを撃った瞬間に】どっか〜〜〜〜ん!」
 
 冬優子「ゴンドラの防御性能のおかげで誰にも気づかれずに殺害は完了」
 
 冬優子「殺害現場から目をそらすために犯人は死体の運搬を開始した」
 
 冬優子「【円運動】……だったっけ? 観覧車を糸車みたいにしてワイヤーを巻き取ったのよね」
 
 透「バイキングと被害者とにワイヤーの端同士を巻き付けたんだよね」
 
 透「で、観覧車を滑車みたいに経由させた」
 
 恋鐘「でも、こげんこつ、身長制限にかからんかったら【誰でも出来そう】ばい」
 
 恋鐘「犯人ば全然絞れんとよ」
 
 
 【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】
 
 
 1.発言する(コトダマと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
 2.集中力を使う(ロンパ候補の発言の数が減る)
 
 ↓1
- 560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 21:23:08.03 ID:dSdGFz7r0
-  【夏葉の眼球】→【背中についてた強制スリープボタンを押して】 
- 561 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 21:29:36.21 ID:kJ67nvvf0
-   
 ルカ「それは違うぞ!」
 
 【BREAK!】
 
 ルカ「……いや、この方法は出来た人間はそう多くはないはずだ」
 
 智代子「ど、どうして? 条件はだいぶ緩いと思うけど……」
 
 ルカ「そもそもの話だ、思い出してみろ。被害者となったメカ女……あいつの強制スリープボタンを押すって……どうやるんだ?」
 
 透「え、そりゃ……背後に回って押せばいいんじゃないの」
 
 ルカ「じゃあ、どうやってあいつの背後を取る?」
 
 智代子「……そうだ、そんなの……普通出来るわけないよ! だって、夏葉ちゃんはこの中で誰よりも警戒心が強いし、身のこなしだって抜群で、気取られずに行動するなんてできるわけもない!」
 
 智代子「アンドロイドの体になってからはその性能も高いおかげで、背後を取らせることなんて……まず考えられない!」
 
 ルカ「ああ、それにあいつは私たちの大多数より背だって高い。不意打ちを噛まそうったってそううまくはいかねえだろうな」
 
 冬優子「だからこそ、普通はあいつを標的にはしないって……みんなそう言ってたんだものね」
 
 
- 562 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 21:30:47.00 ID:kJ67nvvf0
-   
 ルカ「だがな、あいつにとって唯一と言っていい弱点があるんだ」
 
 恋鐘「弱点……?」
 
 智代子「そ、そんな弱点なんかあるはずないよ! 夏葉ちゃんの目は夜の間でも日中と変わらずに物を見ることのできる【赤外線カメラ】だってついてるんだし……!」
 
 ルカ「そう、それなんだよ。メカ女の唯一の弱点はその赤外線カメラだ」
 
 智代子「え……?!」
 
 ルカ「お前らだって経験があるはずだ。ずっとトンネルの中を走った後、急に明るいところに出ると暫く目が見えなくなる現象」
 
 あさひ「ホワイトホール現象っすね。わたしたちの瞳孔の明るさの補正が追い付かないときに起きる現象っす」
 
 ルカ「赤外線カメラなんてものまで使って暗闇に必死に補正をかけている中で急に明るくなっちまったらどうなると思う?」
 
 美琴「……瞬時に適応することは難しいかもしれないね」
 
 ルカ「ああ、その瞬間だけはあいつの不意を突くことが可能になるはずだ」
 
 雛菜「じゃあ、犯人は懐中電灯を使ったとかですか〜?」
 
 ルカ「いや、そんなものを持っていたんだったらメカ女の高性能な赤外線カメラがそもそもその電灯を見抜くんじゃねーか?」
 
 
- 563 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 21:32:07.59 ID:kJ67nvvf0
-   
 ルカ「それこそ、光自体が何の前触れもなく、その本人の手から離れて発生するようなものである可能性が高い」
 
 あさひ「……? なぞなぞっすか?」
 
 透「あ、よく映画とかである閃光弾とか?」
 
 ルカ「イメージとしてはそれに近いな。そうじゃねえと、不意を突いたところで即座にボタンを押すような芸当もできないだろうし」
 
 美琴「でも、そんなもの……ファイナルデッドルームにもなかったよ?」
 
 (何の前触れもなく発光し、犯人が持っておく必要もないもの……)
 
 (そんなもの、この島では限られている。つまり……それを持っている人間こそが、犯人だ……!)
 
 -------------------------------------------------
 
 【ひらめきアナグラム開始!】
 
 発言力:♡×3
 集中力:☆×5
 
 
 け/び/っ/は/ろ/と/な
 
 
 【正しい順番に並べ替えろ!】
 
 
 1.解答する
 2.集中力を使う(一部文字が正しい位置に移動する)
 
 ↓1
 
- 564 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 21:32:50.06 ID:dSdGFz7r0
-  ろけっとはなび 
- 565 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 21:33:50.52 ID:kJ67nvvf0
-   
 ルカ「そうか、分かったぞ!」
 
 【COMPLETE!!】
 
 ルカ「メカ女の視界を一発で奪い去ってしまうような閃光弾のようなもの……ここにいる連中は全員がそれを一度は目にしてるはずだぜ」
 
 智代子「え、え〜……? そんなこと言われましても、まるで心当たりがないと言いますか……」
 
 恋鐘「なんのことばい……?」
 
 ルカ「いや、違うな。ノクチルの二人……お前らは見てない」
 
 透「え? なにそれ」
 
 あさひ「……そっか、花火っすね。千雪さんの事件のとき、ノクチルの二人以外のわたしたちはみんなで花火大会をやってたっす。確かに花火なら犯人が持っておく必要はそこまでないし、不意を突きやすいっす」
 
 ルカ「ああ、特にロケット花火なんかはうってつけだろうな。火花に加えて真正面に本体を飛ばせば、メカ女と言えど防御の姿勢を取らざるを得ない」
 
 恋鐘「そいやったら強制スリープボタンも押せそうたい!」
 
 美琴「なるほど……逆に言えば、そうでもしないと彼女の不意を突くことなんて出来そうもないかも」
 
 美琴「痛めつけようにもあの鉄壁の身体……彼女を正面から攻略なんかできるわけもないもんね」
 
 雛菜「じゃあ、犯人さんはそのロケット花火を撃つことができた人なんだね〜?」
 
 ルカ「……ああ、そうだ」
 
 ルカ「そして、それができた人間は……ただの一人だ」
 
 智代子「え、それってつまり……真犯人が、分かったってこと……?」
 
 (……やっと、たどり着いた)
 
 (随分と同じところで足踏みをさせられたような気分だが……これで明らかになった)
 
 ルカ「ああ、今回の事件……メカ女をぶっ殺したのは……お前だ!」
 
 -------------------------------------------------
 【クロを指摘しろ!】
 
 ↓1
 
- 566 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 21:35:47.13 ID:dSdGFz7r0
-  冬優子 
- 567 :黛冬優子は二度刺す ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 21:38:27.36 ID:kJ67nvvf0
-   
 ルカ「お前しか、いない……!!」
 
 【解!】
 
 
 
 「…………」
 
 
 
 ……この期に及んで、迷ってるのか。私は。
 
 
 頭の中に浮かんだ名前を口に出すべきこの局面で、私の口は中々動こうとはしなかった。
 口の中に突然沸いた唾液は接着剤のように口腔にべったりとくっついて、唇を持ち上げようにも錘がぶら下がったように重たい。
 
 この躊躇がどこから沸いたのか、その源泉は明らかだった。
 
 
- 568 :黛冬優子は二度刺す ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 21:40:13.18 ID:kJ67nvvf0
-   
 
 ____千雪に与えられた。
 
 
 何年も一緒にいた相手にもずっと出来ていなかったことを、たまたま一度うまく行ったからと言って、他の連中にも同様にすることを求める理不尽な命令を。
 何も私は友達なんて薄っぺらい関係性を求めていなかったし、美琴という存在が手元にある以上は満ち足りていて、それ以上を求める気もなかった。
 
 でも、千雪が命を落として……その命令は、優先されるべき義務になった。
 千雪の働きに少なからず感謝していたこと、それに言葉すらも送り返すことができていなかったこと。
 
 そういった要因が私にとってこれ以上ないモチベーションになって、その中で最初にできた相手が……【冬優子】だった。
 この瞬間から関係性が変わりました、なんて取り決めをしたわけではないが、三峰結華を引き摺り出したあの瞬間から確かに私の認識と感情は変異した。
 
 好き勝手な物言いをして、いいと思った人間はとことん振り回す。
 それでいて周りの人間のことはよく見ているし、実際気も回る。
 
 だが、自分が他の人にどう見られるかの意識が強い分、本当の自分を出すのには抵抗意識がある。
 私が惹きつけられたのは、その強さと弱さのチグハグさ。
 普段無理を推してトゲトゲしいカリスマを演じている自分に、勝手なシンパシーを抱いていた。
 
 
- 569 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 21:41:04.57 ID:kJ67nvvf0
-   
 なのに、どうして、こんなにもすぐにそれを手放さなくてはならないんだろう。
 せっかくできた相手を、どうして自分の手で殺さなくてはいけないんだろう。
 
 これまでにも私は3回自分の手で犯人を処刑台に送ってきた。
 無論それにストレスを一切感じなかったなんてことはない。どれもむせ返るような罪悪感に、思わず膝を砕いたものだ。
 
 でも、今感じているのはそれとは全く違う。
 真っ黒な泥濘に浸かっているような虚脱感。呼吸は妙に浅くなって、視界は僅かに揺れている。
 かと思えば、どんどん焦点は下に下に移っていき、気がつけば横一本の木材。
 
 私の立っている証言台の縁しかその視界には入っていない。
 
 
 
 
 「……顔あげなさい、ルカ」
 
 
 
 
 その声は、人を殺めた人間とは思えないほどに柔らかかった。
 
- 570 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 21:42:57.13 ID:kJ67nvvf0
-   
 この島に来てからよく慣れ親しんだ、聞いているだけで自然と頬が綻んでしまうような声。
 私の理性とは別に、糸で引っ張られるように勝手に体が面を挙げた。
 
 視界に突然入ったその姿は、なおも変わらず凛としていた。
 太い芯が一本通ったように、まるで影がブレていない。
 どこまでも逞しいその立ち姿に、思わず私は苦笑した。
 
 
 「で、誰なの? 有栖川夏葉を殺した犯人ってのは」
 
 
 私とこいつとの間で、振る舞いがあまりにも倒錯していたからだ。
 
 
 背筋を伸ばして、毅然とした態度を取るべきなのは_______
 
 
 
- 571 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 21:44:07.52 ID:kJ67nvvf0
-   
 
 
 
 「オマエだよ、黛冬優子」
 
 
 私だよな。
 
 
 
 
- 572 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 21:45:08.63 ID:kJ67nvvf0
-   
 智代子「ふ、ふゆちゃん……? 一つの裁判で2回目の糾弾……?!」
 
 ルカ「1回目は水素ってだけで確かにただの言いがかりだった。でも……今回ばかりは違う」
 
 ルカ「メカ女の不意を打つような芸当ができたのは間違いなく冬優子だけなんだ」
 
 冬優子「へぇ、言ってくれんじゃない。それなら説明してもらおうかしら。どうしてふゆしかできないのか」
 
 ルカ「お前は前回の事件の時、モーテルで中学生と小学生の面倒を見るためにスーパーマーケットにあった花火を根こそぎ回収したんだったよな?」
 
 冬優子「……それは」
 
 ルカ「有栖川夏葉に搭載されていた暗視補正機能付きのカメラ。夜に起きた事件で、その不意を突くなんて普通の人間には不可能。それこそ、お前だけが使用可能だった花火でも使わない限りはな」
 
 美琴「ロケット花火を夏葉さんめがけて射出すれば、視界は一気に明るくなって私たち人間以上にその対応は遅れてしまう」
 
 美琴「……よく考えてるよね」
 
 雛菜「そうやって不意をつくことで強制スリープボタンを押して、一連の犯行を行ったんですよね〜?」
 
 冬優子「……今のルカの推理はあくまで仮説でしょ」
 
 ルカ「確たる証拠はねーが……今のところ、それ以外にメカ女を殺害できる方法は考えられない。他の可能性があるってんなら提示してみろ」
 
 冬優子「……」
 
 
 
 
 【あさひ「それは違うっすよ」】反論!
 
 
 
 
 あさひ「ルカさん、何言ってるっすか? 意味わかんないっす」
 
 ルカ「……!! お前……!!」
 
 あさひ「冬優子ちゃんがクロ? そんなわけないっす、いい加減にしてほしいっすよ」
 
 あさひ「前々から狸だとかいろいろ言われてきて、わたしもずっと我慢してたっすけど……」
 
 あさひ「もう、これ以上黙っていられないっす。ルカさん、わたし……本気で行くっすよ」
 
 (こ、こいつ……なんて殺気だよ……)
 
 (……ここまでの相手は……初めてだ……!)
 
- 573 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 21:46:30.49 ID:kJ67nvvf0
-  ------------------------------------------------- 
 
 【真・反論ショーダウン開始!】
 
 発言力:♡×3
 集中力:☆×5
 
 コトノハ
 ‣【モノクマファイル4】
 ‣【おやすみスイッチ】
 ‣【島のパンフレット】
 ‣【泥】
 ‣【夏葉の眼球】
 ‣【極上の凶器】
 ‣【死体に被さっていた砂】
 
 
 あさひ「夏葉さんの不意を突くには」
 
 あさひ「暗視補正の赤外線カメラを利用して」
 
 あさひ「ロケット花火を正面から打ち込む」
 
 あさひ「確かにそれは成立するっすけど」
 
 あさひ「それを冬優子ちゃんがやった証拠はあるっすか?」
 
 あさひ「いい加減にしてほしいっす」
 
 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 【発展!】
 
 ルカ「ロケット花火を使わねーとあんな奴の不意はつけない」
 
 ルカ「それはお前も認めるところだろ……!」
 
 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 
 あさひ「でも、全部ルカさんの仮説っすよ」
 
 あさひ「大体推理がルカさんの都合のいいように展開してるっす」
 
 あさひ「不意を突くって言ったって、なんで暗闇で真正面から犯人と対峙している前提なんっすか?」
 
 あさひ「観覧車で爆殺が起きたって言うんなら」
 
 あさひ「夏葉さんは【観覧車に二回乗った】かもしれないっすよね?」
 
 あさひ「あの密室ならよけるのも難しいし、【個室の中でスイッチを押された】っす」
 
 あさひ「二回目で犯人がゴンドラを降りて、爆殺したかもしれない」
 
 あさひ「そんな可能性を考慮せずに冬優子ちゃんをクロだなんていわないでほしいっす」
 
 
 【あさひの敵意がすさまじい……発言力の受けるダメージが通常より大きくなりそうだ……】
 
 【矛盾する発言を正しいコトノハでコンマ80以上で論破しろ!】
 
 
 1.発言する(コトダマと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
 2.集中力を使う(コトダマの数が減る)
 
 ↓1
 
- 574 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 21:50:15.73 ID:dSdGFz7r0
-  【おやすみスイッチ】→【個室の中でスイッチを押された】 
- 575 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 21:56:06.32 ID:kJ67nvvf0
-   
 【発言力:♡×3→♡×1】
 
 あさひ「どういう意味っすか?」
 
 あさひ「このスイッチの状態を見れば、観覧車の外で押されたって言えるっすか?」
 
 あさひ「スイッチの防護ガラスの破片? それとも付着している破片?」
 
 あさひ「そんなもの、移動した後で風が吹けばどうとでもなる証拠っすよね?」
 
 (……くッ、違ったみたいだ……)
 
 (スイッチを観覧車の外で押したと証明することが、実質的に冬優子の罪を証明することになる)
 
 (どこかに……冬優子とメカ女が屋外で直面した証拠はないか……?)
 
 【スキル:アンシーン・ダブルキャストの効果によりコトノハの数が減少します】
 
 -------------------------------------------------
 
 【真・反論ショーダウン開始!】
 
 発言力:♡×3
 集中力:☆×5
 
 コトノハ
 ‣【モノクマファイル4】
 ‣【おやすみスイッチ】
 ‣【泥】
 ‣【夏葉の眼球】
 ‣【極上の凶器】
 ‣【死体に被さっていた砂】
 
 
 あさひ「夏葉さんの不意を突くには」
 
 あさひ「暗視補正の赤外線カメラを利用して」
 
 あさひ「ロケット花火を正面から打ち込む」
 
 あさひ「確かにそれは成立するっすけど」
 
 あさひ「それを冬優子ちゃんがやった証拠はあるっすか?」
 
 あさひ「いい加減にしてほしいっす」
 
 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 【発展!】
 
 ルカ「ロケット花火を使わねーとあんな奴の不意はつけない」
 
 ルカ「それはお前も認めるところだろ……!」
 
 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 
 あさひ「でも、全部ルカさんの仮説っすよ」
 
 あさひ「大体推理がルカさんの都合のいいように展開してるっす」
 
 あさひ「不意を突くって言ったって、なんで暗闇で真正面から犯人と対峙している前提なんっすか?」
 
 あさひ「観覧車で爆殺が起きたって言うんなら」
 
 あさひ「夏葉さんは【観覧車に二回乗った】かもしれないっすよね?」
 
 あさひ「あの密室ならよけるのも難しいし、【個室の中でスイッチを押された】っす」
 
 あさひ「二回目で犯人がゴンドラを降りて、爆殺したかもしれない」
 
 あさひ「そんな可能性を考慮せずに冬優子ちゃんをクロだなんていわないでほしいっす」
 
 
 【あさひの敵意がすさまじい……発言力の受けるダメージが通常より大きくなりそうだ……】
 
 【矛盾する発言を正しいコトノハでコンマ80以上で論破しろ!】
 
 
 1.発言する(コトダマと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
 2.集中力を使う(コトダマの数が減る)
 
 ↓1
- 576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 21:58:35.23 ID:dSdGFz7r0
-  集中力 
- 577 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 22:00:30.36 ID:kJ67nvvf0
-   
 【集中力ゲージを使用しました】
 
 【集中力:☆×5→☆×4】
 
 【コトダマの数が減少します】
 
 -------------------------------------------------
 
 【真・反論ショーダウン開始!】
 
 発言力:♡×3
 集中力:☆×4
 
 コトノハ
 ‣【モノクマファイル4】
 ‣【おやすみスイッチ】
 ‣【夏葉の眼球】
 ‣【死体に被さっていた砂】
 
 
 あさひ「夏葉さんの不意を突くには」
 
 あさひ「暗視補正の赤外線カメラを利用して」
 
 あさひ「ロケット花火を正面から打ち込む」
 
 あさひ「確かにそれは成立するっすけど」
 
 あさひ「それを冬優子ちゃんがやった証拠はあるっすか?」
 
 あさひ「いい加減にしてほしいっす」
 
 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 【発展!】
 
 ルカ「ロケット花火を使わねーとあんな奴の不意はつけない」
 
 ルカ「それはお前も認めるところだろ……!」
 
 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 
 あさひ「でも、全部ルカさんの仮説っすよ」
 
 あさひ「大体推理がルカさんの都合のいいように展開してるっす」
 
 あさひ「不意を突くって言ったって、なんで暗闇で真正面から犯人と対峙している前提なんっすか?」
 
 あさひ「観覧車で爆殺が起きたって言うんなら」
 
 あさひ「夏葉さんは【観覧車に二回乗った】かもしれないっすよね?」
 
 あさひ「あの密室ならよけるのも難しいし、【個室の中でスイッチを押された】っす」
 
 あさひ「二回目で犯人がゴンドラを降りて、爆殺したかもしれない」
 
 あさひ「そんな可能性を考慮せずに冬優子ちゃんをクロだなんていわないでほしいっす」
 
 
 【あさひの敵意がすさまじい……発言力の受けるダメージが通常より大きくなりそうだ……】
 
 【矛盾する発言を正しいコトノハでコンマ80以上で論破しろ!】
 
 
 1.発言する(コトノハと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
 2.集中力を使う(コトノハの数が減る)
 
 ↓1
- 578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 22:04:47.28 ID:dSdGFz7r0
-  もっかい集中 
- 579 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 22:06:13.64 ID:kJ67nvvf0
-   
 【集中力ゲージを使用しました】
 
 【集中力:☆×4→☆×3】
 
 【コトダマの数が減少します】
 
 -------------------------------------------------
 
 【真・反論ショーダウン開始!】
 
 発言力:♡×3
 集中力:☆×3
 
 コトノハ
 ‣【夏葉の眼球】
 ‣【死体に被さっていた砂】
 
 
 あさひ「夏葉さんの不意を突くには」
 
 あさひ「暗視補正の赤外線カメラを利用して」
 
 あさひ「ロケット花火を正面から打ち込む」
 
 あさひ「確かにそれは成立するっすけど」
 
 あさひ「それを冬優子ちゃんがやった証拠はあるっすか?」
 
 あさひ「いい加減にしてほしいっす」
 
 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 【発展!】
 
 ルカ「ロケット花火を使わねーとあんな奴の不意はつけない」
 
 ルカ「それはお前も認めるところだろ……!」
 
 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 
 あさひ「でも、全部ルカさんの仮説っすよ」
 
 あさひ「大体推理がルカさんの都合のいいように展開してるっす」
 
 あさひ「不意を突くって言ったって、なんで暗闇で真正面から犯人と対峙している前提なんっすか?」
 
 あさひ「観覧車で爆殺が起きたって言うんなら」
 
 あさひ「夏葉さんは【観覧車に二回乗った】かもしれないっすよね?」
 
 あさひ「あの密室ならよけるのも難しいし、【個室の中でスイッチを押された】っす」
 
 あさひ「二回目で犯人がゴンドラを降りて、爆殺したかもしれない」
 
 あさひ「そんな可能性を考慮せずに冬優子ちゃんをクロだなんていわないでほしいっす」
 
 
 【あさひの敵意がすさまじい……発言力の受けるダメージが通常より大きくなりそうだ……】
 
 【矛盾する発言を正しいコトノハでコンマ80以上で論破しろ!】
 
 
 1.発言する(コトノハと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
 2.集中力を使う(コトノハの数が減る)
 
 ↓1
- 580 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 22:06:53.83 ID:kJ67nvvf0
-  なんか発言力表示ミスってますけど 
 ♡×1のままです……
 
 再安価
 
 ↓1
- 581 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 22:11:21.16 ID:dSdGFz7r0
-  【夏葉の眼球】→【個室の中でスイッチを押された】 
- 582 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 22:14:44.76 ID:kJ67nvvf0
-   
 【発言力:♡×1→0】
 
 【発言力がゼロになりました……】
 
 【スキル:つづく、の効果が発動します】
 
 【……たしまりなにロゼが力言発】
 
 【♡×0→♡×1:力言発】
 
 【スキル:アンシーン・ダブルキャストの効果によりコトノハの数が減少します】
 
 -------------------------------------------------
 
 【真・反論ショーダウン開始!】
 
 発言力:♡×1
 集中力:☆×3
 
 コトノハ
 ‣【夏葉の眼球】
 
 
 あさひ「夏葉さんの不意を突くには」
 
 あさひ「暗視補正の赤外線カメラを利用して」
 
 あさひ「ロケット花火を正面から打ち込む」
 
 あさひ「確かにそれは成立するっすけど」
 
 あさひ「それを冬優子ちゃんがやった証拠はあるっすか?」
 
 あさひ「いい加減にしてほしいっす」
 
 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 【発展!】
 
 ルカ「ロケット花火を使わねーとあんな奴の不意はつけない」
 
 ルカ「それはお前も認めるところだろ……!」
 
 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 
 あさひ「でも、全部ルカさんの仮説っすよ」
 
 あさひ「大体推理がルカさんの都合のいいように展開してるっす」
 
 あさひ「不意を突くって言ったって、なんで暗闇で真正面から犯人と対峙している前提なんっすか?」
 
 あさひ「観覧車で爆殺が起きたって言うんなら」
 
 あさひ「夏葉さんは【観覧車に二回乗った】かもしれないっすよね?」
 
 あさひ「あの密室ならよけるのも難しいし、【個室の中でスイッチを押された】っす」
 
 あさひ「二回目で犯人がゴンドラを降りて、爆殺したかもしれない」
 
 あさひ「そんな可能性を考慮せずに冬優子ちゃんをクロだなんていわないでほしいっす」
 
 
 【あさひの敵意がすさまじい……発言力の受けるダメージが通常より大きくなりそうだ……】
 
 【矛盾する発言を正しいコトノハでコンマ80以上で論破しろ!】
 
 
 1.発言する(コトノハと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
 
 ↓1
- 583 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 22:15:35.91 ID:dSdGFz7r0
-  【夏葉の眼球】→【個室の中でスイッチを押された】 
- 584 :これは熱い ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 22:17:33.12 ID:kJ67nvvf0
-   
 ルカ「その矛盾、断ち切る!」
 
 【BREAK!】
 
 ルカ「甘ェ……甘ェな、中学生よォ! 観覧車の中ならだれでもスイッチを押しに行ける。んなことは私だって分かってたんだ」
 
 ルカ「でも、そうじゃねえ……メカ女は暗闇の中で不意打ちをされた、明確な根拠があるんだよ」
 
 あさひ「……えっ」
 
 ルカ「そうだよな、甘党女」
 
 智代子「う、うん……夏葉ちゃんの眼のカメラはね、周囲の明るさを自動で検出して赤外線カメラを起動したりするんだけど……レンズがそのたびに切り替わってるんだ」
 
 智代子「事件当時、死体となった夏葉ちゃんの眼を私も確かめてみたんだけど……あれは、暗所用のレンズだったよ」
 
 透「レンズって確か、厚さとか、構造とかで光の……くっせつ率?が違うんだよね?」
 
 透「暗闇でも見れるようにするには、その機能にあった屈折率が大事なんだって」
 
 あさひ「そんなの、わからなかった……」
 
 
- 585 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 22:18:15.96 ID:kJ67nvvf0
-   
 ルカ「破壊された後にいじくりまわされてカメラのレンズが切り替わった、なんてことは考えにくい。スリープモードに入った段階、つまりボタンを押された段階であいつは暗闇の中にいたんだよ」
 
 ルカ「観覧車のゴンドラなんて、明るい部屋の中じゃあない……! だから、そこで不意を打てたのは冬優子だけなんだ……!」
 
 ルカ「どうだ、冬優子……反論はあるか……」
 
 冬優子「反論、ね」
 
 
 
 冬優子「……ええ、当然あるわ。ふゆが私欲のために手を汚すような人間だと思われたいたなんて心外だから」
 
 
 
 あさひ「冬優子ちゃん……!」
 
 冬優子「……そんな顔しないで、こっちの胸が痛むから」
 
 (冬優子……?)
 
 冬優子「ルカがふゆにかけた嫌疑は大まかに分けて二つ。一つ目は有栖川夏葉の命を奪った爆発はふゆが以前病院から回収した水素吸引機を利用したものであるということ」
 
 冬優子「そしてもう一つは有栖川夏葉を暗所で不意を突けたのはロケット花火を唯一仕えた人間であるふゆだということ」
 
 冬優子「……耳の穴かっぽじってよく聞きなさい」
 
 冬優子「あんたの推理が大間違いだってこと、証明してやるから」
 
 
- 586 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 22:19:15.88 ID:kJ67nvvf0
-  ------------------------------------------------- 
 
 【ノンストップ議論開始!】
 
 発言力:♡×1
 集中力:☆×3.5
 
 コトダマ
 ‣【モノクマファイル4】
 ‣【死体の焦げ跡】
 ‣【おやすみスイッチ】
 ‣【夏葉の眼球】
 ‣【泥】
 ‣【島のパンフレット】
 ‣【ワイヤーフック】
 
 
 冬優子「あんたの推理はどれも確実性に欠けんのよ」
 
 冬優子「まず、有栖川夏葉を殺害した水素爆発」
 
 冬優子「これ自体は水素吸引機を使わなくても【可能】よね」
 
 透「わざわざ機械を使わなくても、化学反応を利用すればいいもんね」
 
 あさひ「水素の入手手段は沢山あるっす、手っ取り早いのが吸引機ってだけっす」
 
 雛菜「でも、ゴンドラの中に【充満させる】のって相当な量が必要だよ〜?」
 
 雛菜「一から集めなおすのってすごく大変だと思う〜」
 
 冬優子「それに有栖川夏葉の空気清浄機能が水素相手に【発動しなかった保証もない】んでしょ」
 
 冬優子「水素なんて普通の大気中には含まれない、ああいうのってガスそのものの有毒性じゃなくて含まれてる割合とかを感知するんじゃなくて?」
 
 モノクマ「うぷぷぷ……どうだろうね?」
 
 モノクマ「空気清浄機能なんてただのジョークだったりして!」
 
 あさひ「わたしは夏葉さん本人から聞いたっす、嘘なんてそんなのあり得ないっす!」
 
 冬優子「あいつの水素爆発は、そもそも疑問が残んのよ!」
 
 
 【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】
 
 -------------------------------------------------
 
- 587 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 22:20:47.64 ID:kJ67nvvf0
-   
 (……クソッ、あいつ以外の人間が水素を充満させた可能性。そもそも空気清浄機能が発動していたかどうかの断定。そのいずれも……今の私の手掛かりじゃ、わからない)
 
 (冬優子の奴め……最後の最後まであがくつもりだな)
 
 (……今の私の手持ちじゃ、あいつを論破することはできない)
 
 (それなら)
 
 (今ある手持ちを違った見方をしてみる。新しく見えてきた側面が……真実を切り開く可能性はあるよな……)
 
 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
 
 ☆検討プロセッシングについて
 
 相手に何とか反論したい、相手をどうにか言い負かしたい!
 それなのに、今の持っている情報では崩せない……そんな時、ございますよね?
 
 そこで今回ご紹介いたしますのが、『検討プロセッシング』でございます!
 事態を冷静に見極めて、情報の一つ一つを丁寧に精査。
 そうすることでコトダマを多面的に見つめ直し、あなた様に必要な情報を導き出すのがこの、検討プロセッシングなのです。
 やり方は簡単。択一式で出てくる斑鳩様の自問自答に対し、適切な道を選び続けるのみ!
 
 そう、ルートを考えるのです。考え……考え……ルート……
 ……そういえば、最近あちら方のシリーズも続編は出ないのでしょうか?
 寂しいものですね……
 
 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
 
 
- 588 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 22:21:34.23 ID:kJ67nvvf0
-  ------------------------------------------------- 
 
 【検討プロセッシング開始!】
 
 まず第一に、私が冬優子の言い分を論破するなら……
 
 A.【他の誰も水素を充満させることはできなかった】
 B.【空気清浄機能は発動しなかった】
 
 のどちらかを証明しなくちゃならない。
 どうだろう……どちらなら証明できるだろうか……?
 
 ↓1
 
- 589 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 22:26:19.23 ID:dSdGFz7r0
-  B.【空気清浄機能は発動しなかった】 
- 590 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 22:27:20.08 ID:kJ67nvvf0
-   
 【COLLECT!】
 
 そうだ……空気清浄機能が発動しなかったことを証明できれば、結果としてあのゴンドラに充満していたのが水素だと証明できるはずだ。
 そうなると、水素吸引機を持っていた冬優子の容疑はより濃くなる。
 
 だけど、メカ女の空気清浄機能の詳細が明らかじゃない今……それが作動したかどうかって確かめようはあるか?
 何か、利用できるものはないか?
 ……そうだ、空気清浄機能がよくわからないなら、その標的である水素の方で考えてみよう。
 水素の性質で、空気清浄機能が作動しないと断言できるものは何かないだろうか。
 
 A.【可燃性】
 B.【過剰な量でなければ吸引しても人体に悪影響は乏しい】
 C.【空気より軽い】
 D.【酸素と結合して水になる】
 
 ↓1
 
- 591 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 22:27:24.73 ID:lUoTZCfC0
-  A 
- 592 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 22:31:03.67 ID:lUoTZCfC0
-  スマンやらかした・・・ 
 リロード気づかんかった
- 593 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 22:31:57.92 ID:kJ67nvvf0
-   
 【発言力:♡×1→♡×0】
 
 【発言力がゼロになりました】
 
 【クリア後報酬が半減しました】
 
 【コンテニューを行うため発言力が最大まで回復します】
 
 
 (いや……可燃性であることは空気清浄機能とは大して関係がないはずだ……)
 
 (有害性の有無、それは論点じゃない……)
 
 
 水素の性質で、空気清浄機能が作動しないと断言できるものは何かないだろうか。
 
 A.【可燃性】
 B.【過剰な量でなければ吸引しても人体に悪影響は乏しい】
 C.【空気より軽い】
 D.【酸素と結合して水になる】
 
 ↓1
- 594 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 22:36:09.35 ID:dSdGFz7r0
-  C.【空気より軽い】 
 時間差の事故はね、仕方ないと思うの
- 595 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 22:36:10.79 ID:lUoTZCfC0
-  B 
- 596 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 22:38:35.54 ID:kJ67nvvf0
-   
 【COLLECT!】
 
 そうだ、水素の性質……確か水素って、空気より軽いんだったよな。
 ゴンドラに水素を充満させた時も……多分、空気より軽いから水素はゴンドラの上部に溜まるはずだ。
 これ、何かに使えないか……?
 何かと組み合わせると、大きな意味を持つはずだ……
 あのゴンドラの事件当時の状態を思い出してみよう。
 
 A.【ゴンドラの密閉性】
 B.【ゴンドラに載っている夏葉の体勢】
 C.【ゴンドラの強制ロック】
 D.【観覧車の回転速度】
 
 ↓1
 
- 597 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 22:40:18.23 ID:lUoTZCfC0
-  B 
- 598 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 22:42:29.36 ID:kJ67nvvf0
-  ------------------------------------------------- 
 B
 -------------------------------------------------
 
 【COLLECT!】
 
 そうか……メカ女は強制スリープボタンを押されているし、あの重量……きっと犯人は直立や座らせた状態では載せていないはずだ。
 だったら、水素が溜まっている上部に体が接することもなく、床に寝そべる形になっていたに違いない。
 それだったら……空気清浄機能も発動のしようがないよな!?
 だって、ほかならぬメカ女の身体が水素の混じった気体そのもの触れちゃいねえんだから……!
 なら、今の私に必要なのは事件当時水素がゴンドラの上部に溜まっていたことの証明だ。
 ゴンドラの上部に水素が溜まっていたなら、爆発が起きたのもゴンドラの全体ではなく、上部だけのはず。
 それを裏付けるような証拠はなかったか?
 
 【正しいコトダマを選べ!】
 
 >>402 >>403
 
 ↓1
 
- 599 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 22:43:18.66 ID:dSdGFz7r0
-  【死体の焦げ跡】 
- 600 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 22:45:40.45 ID:kJ67nvvf0
-  ------------------------------------------------- 
 【死体の焦げ跡】
 -------------------------------------------------
 
 間違いない……メカ女の死体はバラバラにはなっていたが、死体についていた焦げ跡はあくまで上半身だけ。
 それって直立の時に上半身部分だけで爆発が起きたことの証拠になるよな。
 そしてそれは、事件当時にゴンドラに溜まっていた気体が水素だったことの証明に他ならない。
 見えたぞ……冬優子の主張を論破する、強力な証拠が!
 
 
 【FORGING!!】
 
 
 コトダマ【死体の焦げ跡】→【ゴンドラに充満していた水素】
 〔空気より軽い気体である水素はゴンドラの上部に溜まっていたと考えられる。そのため、水素爆発が発生した際でも燃焼が起きたのは夏葉における上半身のみであり、死体の焦げ跡も上半身についているのみである〕
 
 
- 601 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 22:46:40.12 ID:kJ67nvvf0
-  ------------------------------------------------- 
 
 【ノンストップ議論開始!】
 
 発言力:♡×10
 集中力:☆×3.5
 
 コトダマ
 ‣【モノクマファイル4】
 ▹【ゴンドラに充満していた水素】
 ‣【おやすみスイッチ】
 ‣【夏葉の眼球】
 ‣【泥】
 ‣【島のパンフレット】
 ‣【ワイヤーフック】
 
 
 冬優子「あんたの推理はどれも確実性に欠けんのよ」
 
 冬優子「まず、有栖川夏葉を殺害した水素爆発」
 
 冬優子「これ自体は水素吸引機を使わなくても【可能】よね」
 
 透「わざわざ機械を使わなくても、化学反応を利用すればいいもんね」
 
 あさひ「水素の入手手段は沢山あるっす、手っ取り早いのが吸引機ってだけっす」
 
 雛菜「でも、ゴンドラの中に【充満させる】のって相当な量が必要だよ〜?」
 
 雛菜「一から集めなおすのってすごく大変だと思う〜」
 
 冬優子「それに有栖川夏葉の空気清浄機能が水素相手に【発動しなかった保証もない】んでしょ」
 
 冬優子「水素なんて普通の大気中には含まれない、ああいうのってガスそのものの有毒性じゃなくて含まれてる割合とかを感知するんじゃなくて?」
 
 モノクマ「うぷぷぷ……どうだろうね?」
 
 モノクマ「空気清浄機能なんてただのジョークだったりして!」
 
 あさひ「わたしは夏葉さん本人から聞いたっす、嘘なんてそんなのあり得ないっす!」
 
 冬優子「あいつの水素爆発は、そもそも疑問が残んのよ!」
 
 
 【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】
 
 
 1.発言する(コトダマと撃ち込む先の発言を併せて指定安価)
 2.集中力を使う(コトダマの数が減る)
 
 ↓1
 
- 602 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 22:47:53.05 ID:dSdGFz7r0
-  【ゴンドラに充満していた水素】→【発動しなかった保証もない】 
- 603 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 22:48:00.14 ID:lUoTZCfC0
-  発動しなかった保証もない→ゴンドラに充満していた水素 
- 604 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 22:50:07.99 ID:kJ67nvvf0
-   
 ルカ「それは違うぞ!」
 
 【BREAK!】
 
 ルカ「……いや、水素だからこそ空気清浄機能は働かなかった。これは間違いないはずだ」
 
 冬優子「確かに水素は体に即座に害をなす物じゃない。医療品にだって使われているし、美容の現場にも持ち込まれてる」
 
 冬優子「でも、有栖川夏葉の空気清浄機能について詳細に分かってもいないのに確実に働いていないなんてどうして断言できるのよ。空気中に含まれる物質の割合を感知して、水素が異常値になった時点で分解するように働いていた可能性だって……」
 
 ルカ「違うんだ、メカ女の空気清浄機能がどんなものかなんてそもそも関係なかったんだ。犯人の手口が明らかになった今、あいつの空気清浄機能は何が起きようと働いていなかったと断言できる」
 
 冬優子「なんですって……?!」
 
 ルカ「考えてみろ。あいつはどうやって観覧車に載せられたんだった?」
 
 智代子「えっと……犯人がロケット花火を打って、不意を突いて強制スリープボタンを押したんだったよね?」
 
 ルカ「そう、あいつ自身に意識はなかったんだ。つまり、脱力しきった状態……しかもあの重量と来た。わざわざ犯人があいつを持ち上げて座らせたり立たせたりする理由がどこにある?」
 
 透「まあ、普通はそのまま乗っけるよね。ゴンドラの床とかに」
 
 冬優子「何よ、それがなんだって言うのよ」
 
 ルカ「メカ女はゴンドラの中で、寝転がった状態だった。これがとにかく重要なんだよ」
 
 恋鐘「ど、どういうことばい!?」
 
 
- 605 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 22:50:59.07 ID:kJ67nvvf0
-   
 ルカ「本日何度目かの化学の勉強のお時間だ。水素について……その性質を思い出してみろ」
 
 雛菜「水素の性質〜? 水を電気分解したら発生するとか、可燃性だとか、それ以外でってことですか〜?」
 
 智代子「な、何かあったっけ……?」
 
 あさひ「……空気より、軽い……」
 
 ルカ「さすがだな、中学生。その通りだ。空気より軽い気体なんだ、ゴンドラの中に充満するっつってもそれはゴンドラの上部だけなんだよ」
 
 冬優子「……!!」
 
 ルカ「メカ女が寝そべっているよりも高い地点に溜まっていく水素。どれだけ高機能な空気清浄機能だろうが、そもそも触れてもいない気体を検知することはできやしないはずだ」
 
 ルカ「そして目を覚まして、なんらかの理由によって脱出を試みたメカ女は機械が検知するよりも先にロケットパンチを射出。こうなっちまえば先に爆発が起きてしまう」
 
 ルカ「それを裏付けるのが、あいつの死体の焦げ跡なんだよ。あいつの身体はバラバラになっちまってから気づきにくかったがよ……焦げ跡がついてるのはあくまで上半身部分だ」
 
 ルカ「それって気体がゴンドラの上部にしか溜まっていなかったことの証明に他ならないだろ。ゴンドラ全体に充満していたってんなら全身に焦げ跡は及んでいたはずだぜ?」
 
 ルカ「死体発見現場の泥と合わせ、空気よりも軽い可燃性の気体だって話となると……それはもう水素しかねえ」
 
 ルカ「その水素をゴンドラに充満させられるほどのもんは……冬優子の持っていた水素吸引機ぐらいのもんだろうが!」
 
 冬優子「……」
 
 
- 606 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 22:52:02.43 ID:kJ67nvvf0
-   
 冬優子「あんたの言い分はよく理解した、確かに今の論証は水素爆発を裏付ける話かもしれない」
 
 冬優子「……でもね、ふゆが犯人だと断定する論理上には載ってない。他の人間に水素を充満させられなかったってわけじゃないんだから」
 
 雛菜「でも、化学反応をわざわざ起こして水素をためるなんて手間も時間もかかりすぎると思うし苦しいと思うけどな〜」
 
 冬優子「うっさい! ふゆは手元にあるカードは全部使う……どんなに小さな可能性だろうと、残る限りは追及させてもらうわよ!」
 
 美琴「あなたが追及するのは勝手だけど……あくまで学級裁判は多数決。他のみんなの心証がどちらに傾いているかは気にしたほうがいいと思うけどね」
 
 冬優子「……それは、そう……だけど!」
 
 冬優子「こんなところでふゆは負けてらんない……負けてらんないのよ!」
 
 (……冬優子、お前……)
 
 
 確かに、私たちは冬優子に対して確定的な証拠を突き付けているわけではない。
 あくまで可能性の高い二つの嫌疑をぶつけているというだけ。
 でも……これは正式な裁判ではない、あくまで学級裁判。
 私刑を下すのには十分な証明は為されているはず。
 既に天秤も殆どそちらに傾いているはず。美琴のように諦めるように促す言葉が出るのも納得はいく。
 
 
- 607 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 22:53:06.70 ID:kJ67nvvf0
-   
 だけど、私は知っている。
 そんな形勢など冬優子だって百も承知だ。
 もうここまで来れば逃げ場はほとんどないことを知っている。
 だからといって冬優子がおめおめ首を差し出すわけがない。
 
 冬優子は何も醜態をさらしているわけではない。
 自分の命に縋りついて、みっともなく生き残ろうとしているわけではない。
 
 冬優子は、責任を果たそうとしている。
 これまでにこの場で命を散らしてきた三人に対して、自分が手にかけた有栖川夏葉に対して、そして何より……自分の仲間たちに対して。
 自分の生を諦めるようでは彼女たちに申し訳が立たない。
 
 最後まで戦い抜くという責任。
 彼女はそのために刃先の折れた刀を何度だって構えなおす。
 何度だって私にその鋩を向ける。
 
 冬優子は私ならその責任のための闘いに応えてくれると知っているから。
 共に三峰結華を説得し、共に小宮果穂が殺めた二人に報いてきた戦友なら、その意図まで汲み取ってくれると信じてくれた。
 そうじゃないと、私にわざわざ犯人として指名などさせはしない。
 
 
 ……分かってんだよ、黛冬優子。
 だって、私もお前と……【同族】だからな。
 
 
- 608 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 22:54:08.89 ID:kJ67nvvf0
-   
 冬優子「水素爆発だって、ロケット花火だって……そんなの、ふゆ以外にだって可能だった。抜け道は存在してんのよ」
 
 冬優子「それをやったのが、ふゆだって断定するんなら確固たる証拠を示しなさい」
 
 智代子「そ、そんな証拠なんてあればとっくに突き付けてるよ……」
 
 あさひ「冬優子ちゃん……」
 
 ルカ「……ハッ」
 
 ルカ「……いいぜ、付き合ってやるよ。お前は私にとって、この島に来て初めてできた対等な……ダチだ」
 
 ルカ「だからよ……その最初で最後の喧嘩は最後まできっかり決着つけねーと、収まんねーよな」
 
 冬優子「上等よ、ルカ……あんたのその憎まれ口、ずっとイラついてたのよ」
 
 ルカ「おう、こっちだっててめェの空かした態度はずっとトサカに来てたんだ」
 
 冬優子「あら、奇遇ね。そんじゃやりましょうか、一世一代の大喧嘩。タイマンで」
 
 ルカ「ハッ……上等だよ、クソッたれ!」
 
 
 
- 609 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 22:54:52.42 ID:kJ67nvvf0
-   
 
 
 
 
 「「全力でぶっとばしてやる!」」
 
 
 
 
 
 
- 610 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 22:55:51.21 ID:kJ67nvvf0
-  ------------------------------------------------- 
 
 【パニックトークアクション開始!】
 
 
 冬優子「その程度でふゆに勝ったつもり?」【防御力50】
 冬優子「上等じゃないの」【防御力55】
 冬優子「これで決めます……!」【防御力60】
 冬優子「誰が終わりって言いました?」【防御力65】
 冬優子「あんたのことは、ふゆがちゃんと終わらせてあげるから」【防御力70】
 
 
 【盾の防御力をコンマで削り切れ!】
 
 ↓1〜5
 
- 611 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 22:56:11.95 ID:lUoTZCfC0
-  あ 
- 612 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 22:57:01.54 ID:dSdGFz7r0
-  あ 
- 613 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 22:58:04.79 ID:dSdGFz7r0
-  あ 
- 614 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 22:58:38.84 ID:lUoTZCfC0
-  あ 
- 615 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 22:58:39.54 ID:dSdGFz7r0
-  あ 
- 616 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:01:53.39 ID:kJ67nvvf0
-  ------------------------------------------------- 
 
 【コンマ 95 54 79 84 54】
 
 【ピトス・エルピスの効果によりコンマの値が+15します】
 
 【最終コンマ 110 69 94 99 69】
 
 【ALL BREAK!】
 
 ルカ「ぶっとばしてやるよ!」
 
 
 【冬優子「そもそも、ふゆがロケット花火を撃って不意打ちしたなんて証拠はどこにもないのよ!」】
 
 
 応/煙/反/硝
 
 
 【正しい順番に並び替えて、コンマ値70以上でとどめをさせ!】
 
 ↓1
 
- 617 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 23:02:30.31 ID:lUoTZCfC0
-  硝煙反応 
- 618 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 23:04:57.00 ID:dSdGFz7r0
-  (安価の順番と盾の順番が対応してるなら最後の1枚、ピトス足してもいちたりてない気がするけどまあいいか……) 
- 619 :なぜか普通に失敗の所を一度通していますがガバです ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:05:23.60 ID:kJ67nvvf0
-   
 【コンマ31】
 
 【ピトス・エルピスの効果によりコンマの値が+15されます】
 
 【最終コンマ 46】
 
 【発言力:♡×10→♡×9】
 
 冬優子「これがあんたの全力? ルカ……あんた、案外非力なのね」
 
 (ざけんな……このまま終わってたまるかよ……!)
 
 -------------------------------------------------
 
 ルカ「ぶっとばしてやるよ!」
 
 
 【冬優子「そもそも、ふゆがロケット花火を撃って不意打ちしたなんて証拠はどこにもないのよ!」】
 
 応/煙/反/硝
 
 【正しい順番に並び替えて、コンマ値70以上でとどめをさせ!】
 
 ↓1
 
- 620 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 23:06:06.85 ID:dSdGFz7r0
-  荘園反応 
- 621 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 23:07:32.74 ID:dSdGFz7r0
-  ふふっ、漢字変換ミスったわ 
- 622 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:07:56.73 ID:kJ67nvvf0
-   
 【コンマ85】
 
 ルカ「くらいやがれ!」
 
 【BREAK!!】
 
 ルカ「確かに今、私たちの手元にも……これまでにも、冬優子がロケット花火を撃った証拠は何かあったわけじゃない」
 
 ルカ「でもな、その証拠は……ずっと私たちの目の前にあったんだよ」
 
 智代子「私たちの……目の前……?」
 
 ルカ「それを確かめる術がないから、ずっと手をこまねいちゃいたが……冬優子がここまで食い下がるんだったらこっちだって手は選んじゃいられない」
 
 冬優子「どんな手があるっての、言ってみなさい!」
 
 ルカ「モノクマ! 手ェ貸せ!」
 
 モノクマ「えっ、ボクですか!? そ、そんな急に手を貸せと言われましても……ボクにできるのはせいぜい罪人を縊り殺すことぐらいでして……」
 
 ルカ「グチグチ言ってんじゃねえ、私たちに硝煙反応を調べさせろ」
 
 恋鐘「しょーえんはんのー……ってなんね!?」
 
 美琴「……サスペンスドラマのお仕事で何度か出会ったな」
 
 美琴「拳銃なんかを発射したときに衣服に付着する硝煙を検査する薬品。名前は忘れたけど……火薬が炸裂した時には付近に成分が散布されるんだよ」
 
 
- 623 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:08:27.08 ID:kJ67nvvf0
-   
 透「火薬ってことは……銃と同じなんだね。花火も、硝煙をぶちまける」
 
 雛菜「じゃあ、ストレイの人の身体には硝煙がべったり〜?」
 
 冬優子「……そ、それは!」
 
 ルカ「ま、それが実際どうかは……検証してみてからにしようぜ。なあ、モノクマ!」
 
 モノクマ「う〜〜〜ん……それってどうなの? この学級裁判ってオマエラの捜査と推理で犯人を導き出すのが目的であってさ、そういう化学捜査の領域にボクが介入するのってあんまりフェアじゃない気がするんだよね……」
 
 ルカ「んだと……?」
 
 あさひ「そうっすよ! 化学捜査をここでだけ解禁するのはおかしいっす! これまでの事件と条件が変わっちゃうっす!」
 
 (まずい……ここはなんとしても通さねえと……)
 
 あさひ「モノクマが公正にこのコロシアイを進行するって決めた以上はその言葉は守らないとズルっす!」
 
 モノクマ「う〜ん……やっぱりそうだよねぇ……」
 
 (私しかいない……私しか、もう冬優子を楽にしてやれる人間はいねえってのに……!)
 
 
- 624 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:09:28.96 ID:kJ67nvvf0
-   
 
 
 
 
 冬優子「いいわ、やってみなさいよ」
 
 
 
 
 
- 625 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:11:02.84 ID:kJ67nvvf0
-   
 ルカ「冬優子!? お、お前……!」
 
 冬優子「ルカ、あんたはこの検証をすれば満足するんでしょ? それならいいわ、引き受けてあげる。モノクマ、本人が承諾してるんだからそれを断る道理はないわよね?」
 
 モノクマ「え? う、う〜〜〜んと……まあ、いいのかなぁ……」
 
 あさひ「冬優子ちゃん、何言ってるんっすか?! なんで、そんなこと言うんすか!?」
 
 冬優子「あさひ、あんたさっきからキャンキャンうっさいのよ。耳が喧しくてたまんないわ」
 
 冬優子「いい。今から真実が明らかになるわけだけど……結果がどうであれ、それをちゃんと受け入れること。あんた、年の割には頭が無駄に回るんだから……真実から目を背けて騒ぐとか、そんなダサい真似をしたら許さないわよ」
 
 あさひ「冬優子ちゃん……」
 
 冬優子「ほら、モノクマ。さっさとやって頂戴。硝煙反応とやら、確かめてみましょうよ」
 
 (……冬優子)
 
 (ハッ……まだまだ私は甘い。これだけやっておいて、決定的な証拠は見つけられず)
 
 (結局……冬優子に助けられちまったんだもんな……情けねえ)
 
 
- 626 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:12:09.72 ID:kJ67nvvf0
-   
 モノクマ「わかりました! それではこれより、黛さんの硝煙反応を検査いたします!」
 
 
 モノクマ「てれれってれー! ジフェニルアミン〜〜〜〜〜〜〜!!」
 
 
 モノクマ「これはアニリンっていうのから合成される化合物なんだけど……まあ詳しい説明は文系なんで省略するよ」
 
 
 モノクマ「とにかく、さっき緋田さんが言った通りなのです! この薬品を拳銃などを使用した人間の衣服にぶっかけるとあら不思議! その衣服が紫色に変わ
 ってしまう優れもの!」
 
 
 モノクマ「これを黛さんにぶっかけたその結果はいかに……! 真実はクロか、それともシロなのか〜〜〜〜〜!?」
 
 
 ジャバァッ!!
 
- 627 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:14:06.23 ID:kJ67nvvf0
-   
 
 特殊な液体をかけられた冬優子の衣服。
 
 
 智代子「こ、これって……」
 
 透「あっちゃ〜……」
 
 恋鐘「冬優子、こいは……こん色の変わり方は……」
 
 雛菜「あは〜? 服、【紫】一色って感じですね〜?」
 
 
 それは私たちの目の前で……みるみると紫色に染まりあがっていった。
 つまり、黛冬優子がロケット花火を使用したという紛れもない事実……
 
 彼女が【クロ】であるという純然たる事実が、そこに浮かび上がったのだった。
 
 
 ルカ「硝煙反応が出たってことは、冬優子はロケット花火を撃っていたってこと。つまり……有栖川夏葉を不意打ちして強制スリープボタンを押した人間だってことだ」
 
 ルカ「これで認めてくれるよな、冬優子」
 
 
- 628 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:15:21.60 ID:kJ67nvvf0
-   
 冬優子「……」
 
 
 冬優子「…………」
 
 
 冬優子「…………………………」
 
 
 
 
 
 冬優子「……ゲームセット、ってとこね」
 
 
 
 
 
- 629 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:16:32.82 ID:kJ67nvvf0
-   
 あさひ「……なん、で……」
 
 
 私と冬優子の最初で最後の大喧嘩はこうして幕を下ろした。
 私の手からは何かが塵となって消えていき、冬優子の目の前には首を括るためにあるような綺麗な輪っかが垂れさがる。
 この喧嘩の幕引きは、どうあがいても最悪な形でしか終わらない。
 
 
 冬優子「あんた、もっと早くノックアウトしなさい。なんか不細工な終わり方になっちゃったじゃないのよ」
 
 ルカ「はいはい、検証が足りず悪うござんした」
 
 冬優子「ったく……まあ、ふゆの想定より証拠が隠滅されちゃってたから致し方ないけどね」
 
 
 だからって、私たちの表情が陰鬱の底に陥るかと言われればそれはノーだ。
 今この瞬間、感じているものだって黒々としたものなんて殆どない。
 そこにあるのは最後まで向き合い続けることができたという安どと、そして相手が自分を信じ続けてくれたということに対する確かな効力感。
 満ち足りたというと語弊があるが、そこに流れる汗は決して脂ぎったものではなかったことは間違いない。
 
 
- 630 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:17:25.93 ID:kJ67nvvf0
-   
 智代子「本当に、ふゆちゃんだったんだね。夏葉ちゃんを殺しちゃったの……」
 
 冬優子「……園田智代子。あんたの大事な存在を奪ってしまったこと……それはいくら謝っても足りるものではないと思う」
 
 冬優子「でも、一つ言わせてもらうとすれば……この事件、有栖川夏葉自身の望むところでもあったのよ」
 
 智代子「……えっ」
 
 
 クロが確定した今、被害者のユニットメンバーであった甘党女は当然ながら……両目に涙を浮かべながらその理由と今の心情とを尋ね求める。
 だが、冬優子はその要求をいったんは棄却した。
 
 
 冬優子「ま、細かいことは後にしましょうか。そういう長話は処刑の前にでもすればいいわ」
 
 智代子「ちょ、ちょっと待って……ふゆちゃん、それってどういう____」
 
 冬優子「まだこの裁判は終わってないわ」
 
 ルカ「……ハッ」
 
 冬優子「ルカ、付き合ってもらうわよ。ふゆがこの事件を起こしたのは……ここから先が目的なのよ」
 
 
- 631 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:18:11.05 ID:kJ67nvvf0
-   
 それは、何も想いを踏みにじるわけではなく、ほかに優先すべき事項があったから。
 冬優子にとって何よりも優先されるべきなのは……誰かを殺めた動機ではなく、もっとその大前提。
 
 この事件そのものに託した思い、そして策略である。
 自分自身が犯人だと確定した今、それをこの場で明らかにすることに冬優子は異常なまでの意欲を見せた。
 きっと、それは私と言う存在が今ここにいることに対しての甘えでもあったんだろう。
 斑鳩ルカならば付き合ってくれる、なんてカミサマに対してどこまでも不遜な態度だと思う。
 
 でも、それくらい罰当たりな方が崇められる立場の人間としても気楽なもんだ。
 
 
 ルカ「はぁ……ダチってのはこんな人使いが荒いもんなのか?」
 
 冬優子「そーよ、ほら文句言わずにやることやる」
 
 ルカ「チッ……それじゃあしょうがねえ、やってやるよ」
 
 ルカ「今からこの事件を最初っから全部振り返る。そんで……そこから先は、てめェの好きにやりな」
 
 冬優子「上出来、それでよろしい」
 
 ルカ「じゃあ、始めるぞ。これがこの事件の全部だ……!」
 
 
- 632 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:19:25.21 ID:kJ67nvvf0
-  ------------------------------------------------- 
 
 【クライマックス推理開始!】
 
 【act.1】
 
 ルカ「今回の事件、私たちははじめスタート地点を完全に見誤っていた。というのも、死体の発見現場が実際の殺害現場から大きく動かされていたんだが……死体のぶちまけたオイルがその誤認を招いたからなんだ。ただ死体が落下した時にぶちまけただけのオイル、それをあたかも私たちは殺害時にぶちまけられたものと勘違いしちまったんだよな」
 
 
 ルカ「実際の殺害現場は遊園地の観覧車、そのゴンドラの中だ。犯人はその中でなかなか突拍子もないトラップを仕掛けてメカ女の命を奪ったんだが……それは後に語るとするか。まず、前提としてメカ女をゴンドラに載せるってのが難題だからな」
 
 
 ルカ「メカ女は私たちよりも肉体のスペックも上、更に人体改造(物理)のせいで通常よりも死角が少なくなっている。ただの物理攻撃なんて受けつかない鋼鉄の身体だし、更には暗所では自動で赤外線カメラによって補正をかけることもできる。ただ、犯人はその赤外線カメラ自体を利用して犯行に及んだんだ」
 
 
 ルカ「被害者であるメカ女をなんらかの方法で呼び出した犯人は、不意打ちを仕掛けた。その際に使用したのがロケット花火だ。これは第三の事件発生時に、病院とモーテルに二手に分かれて私たちが行動した時に犯人が回収しておいたもの。犯人を置いて他に使用できる人間はいなかったんだが……そこはまあ証明は難しいな」
 
 
 ルカ「犯人の射出したロケット花火はメカ女の視界を一瞬にして光でいっぱいにした。それまでの暗所で補正をかけていた赤外線カメラはその瞬間に使い物にならないお荷物になる。完全に視覚情報が遮断されてしまったメカ女、その不意をつくことで犯人は強制スリープボタンを押すことを可能にしたんだ」
 
 
- 633 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:20:07.05 ID:kJ67nvvf0
-  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 
 【act.2】
 
 ルカ「強制スリープボタンを押して意識を奪ったメカ女を、犯人は観覧車のゴンドラに載せた。そのゴンドラは犯人が病院から持ち出しておいた水素吸引機で、水素を充満させたゴンドラだ。メカ女の重量は百キロを優に超える。ゴンドラに積むので犯人はきっと精いっぱいだったんだろう、その体は寝そべった状態でゴンドラに載せられたんだ」
 
 
 ルカ「その寝そべった状態ってのがなかなかネックでな。あいつの身体に搭載されている空気清浄機能は、空気より軽いためゴンドラの上部に溜まった水素は検出しなかった。そのままメカ女は何も気づかずスリープモードのままに空中へと運ばれて行った」
 
 
 ルカ「ゴンドラの速度もきっと調整しておいたんだろうな。一定の高さを超えたところでゴンドラは完全にロック。ナパーム弾すらも通さない鉄壁のシェルターカプセルが完成する。ここまですれば仕込みは完了。後は勝手にメカ女が目を覚ますのを待つだけだ」
 
 
 ルカ「メカ女にはきっと張り紙でもしておいたんだろう。お仲間の命を脅迫に取るようなメッセージなんかで……すぐにでも助けに行かなくては、脱出しなくてはと思わせるような誘導を行った。目を覚ますなりその誘導に連れられてしまったメカ女はゴンドラから脱出するために……自慢のロケットパンチをぶっ放した」
 
 
 ルカ「その瞬間、ゴンドラ内の水素が一斉に反応。ゴンドラの中で大爆発が起きちまったんだ。メカ女の身体はものすごい勢いでゴンドラに叩きつけられ、その衝撃で回路が破損。あいつは死亡することとなった。あわせて、ゴンドラの上部の気体で燃焼反応を起こしたため、上半身には焦げ跡もついた。水素爆発の化学反応で、水分もいくらか付着したかな」
 
 
 ルカ「とにかく、犯人はあの私たちの中で最も殺しづらいであろうメカ女をオートマチックに殺すことに成功したんだ。ほんの少しの化学の知識を用いることでな」
 
 
- 634 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:20:42.97 ID:kJ67nvvf0
-  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 
 【act.3】
 
 ルカ「とはいえ、ゴンドラには爆発の痕跡も残っているし、死体と一緒に発見されてしまえば真実にたどり着くのも時間の問題だろう。そう考えた犯人は次の工程に移る。それは死体の移動だ。この殺害現場から離れたところに死体を移すことでより事態を複雑にしようと試みたんだ」
 
 
 ルカ「そこで犯人が考えたのは、なんと観覧車をまるまる糸車にしてやろうというぶっ飛んだ方法。ワイヤーで観覧車を巻いた後、その端を別のアトラクションであるバイキングと死体そのものにくくりつければ準備完了」
 
 
 ルカ「後はファイナルデッドルームのクリア特典であるアトラクションの操作権限を用いて観覧車の回転方向と速度を弄り、バイキングを動かすだけ。バイキングと同じ方向に回転する観覧車、そしてバイキングの牽引力が合わさることで一気に死体ごとワイヤーは巻き取られる!」
 
 
 ルカ「持ち上がった死体は取り付けられたワイヤーフックがワイヤーから外れることでそのまま宙に投げ出され、あとは慣性で飛んでいく。犯人からすればどこに落ちるかなんてのはどうでもよかったんだろうな。とにかく、爆破に用いたゴンドラを見られないこと。それが重要だったはずだ。そしてその目論見は見事大成功」
 
 
 ルカ「落下した先で死体は衝撃でバラバラになり、中のオイルもぶちまけられたことで完全に現場はその落下先だと思わされちまった。犯人のやつ、そこまで食えない奴だとは思っちゃいなかったよ。……お前にしてはよく考えたよな」
 
 
 
 
 ルカ「これで満足のいく証明はできたか? 黛冬優子」
 
 【COMPLETE!!】
 
 
 
 -------------------------------------------------
 
- 635 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:21:40.34 ID:kJ67nvvf0
-   
 冬優子「やるじゃないルカ、カンペキよ。あんたの言う通り、事件は今あんたが言った通りの方法でやらせてもらったわ」
 
 
 冬優子は私の証明を一通り聞き終えるとご満悦と言った感じで何度か頷いた。
 私もそれを確認すると半歩後ろに下がる。ここから先の中心はこの犯人様にゆだねることにする。
 私自身、冬優子のすべてをまだ理解しちゃいない。
 その含みを訊かないことには、私も満足できやしないのだ。
 
 
 美琴「随分余裕みたいだね」
 
 冬優子「余裕……というよりも、まだふゆにはやることが残ってるから」
 
 ルカ「いい加減聞かせてくれよ、なんなんだよ……そのやることってのはよ」
 
 冬優子「そうね、ルカ……あんたの推理、多分正解なんだと思うけど……ちょっとだけふゆとしては否定したいポイントがあるのよね」
 
 恋鐘「な、なんだか容量を得ん言い回したい……冬優子は何が言いたかよ」
 
 雛菜「多分正解ってまるで他人事みたいな言い回しですよね〜」
 
 冬優子「そう、他人事なのよ。ルカの推理に出てきた行動の一部はね」
 
 ルカ「な、なんだと……!?」
 
 冬優子「今更有栖川夏葉を手にかけたこと自体は否定しない。それは間違いないわ、事件の犯人はふゆよ」
 
- 636 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:22:35.63 ID:kJ67nvvf0
-   
 
 
 
 
 
 冬優子「でもね、殺害してからその後……死体を運搬したくだりはふゆは一切関与していないわ」
 
 
 
 
 
 
- 637 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:23:43.82 ID:kJ67nvvf0
-   
 ルカ「死体を、運んでねーだと……?」
 
 冬優子「そ、糸車とかバイキングだとか……そこら辺のはふゆは知らない。やっちゃいないのよね」
 
 美琴「……それってつまり、事件現場を荒らす者がまた現れたってことだよね」
 
 冬優子「そうなるわね、どこぞの誰かさんが狸って呼んでたやつが現れたのよ」
 
 (……ってことはだ)
 
 
 当然私たちの視線は一気に中学生……芹沢あさひの元へと集まる。
 二回目の事件……千雪の事件でスケープゴート役にされた冬優子の元に届いた脅迫状。
 それはストレイライトのメンバーでなくては知ることのできない秘密の書かれたもの。
 アリバイなどの条件も絡み、狸として私が指摘したのは芹沢あさひなのだ。
 冬優子の事件現場を荒らした狸、その話題になれば当然疑いの目も向く。
 
 
 冬優子「ふゆの狙い通りにね」
 
 
 そんなメンバーの窮地に、冬優子はほくそ笑んだ。
 
 
- 638 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:24:43.38 ID:kJ67nvvf0
-   
 冬優子「狸ってのは相当にお間抜けらしいわね。ふゆに誘い込まれたとも知らないで、せっせと現場に工作なんかしちゃって……」
 
 ルカ「ど、どういうことだよ!? お前が……誘い込んだ?!」
 
 冬優子「ええ、ふゆが狸を呼び寄せてやったの。餌をぶら下げることでね」
 
 冬優子「これまでの狸の行動、思い返して御覧なさい。あいつは七草にちかの事件で暗視スコープを黒塗りにして、桑山千雪の事件でふゆを犯人に仕立て上げようとした。前者では事件を起こす下準備、後者では現場を荒らして真実を有耶無耶にしようとした。……その心は?」
 
 ルカ「……私たちを、学級裁判で殺そうとしてるのか?」
 
 冬優子「まあ、そうなるでしょうね。現場を荒らす理由なんて、それぐらいのものだもの。狸の行動には、ふゆたち他のメンバーに対する殺意が垣間見えているわ」
 
 冬優子「……なら、犯人があからさまな事件を起こした時、狸はどう思うかしら」
 
 智代子「なんとしても現場を荒らして……間違った回答に誘導しなくちゃいけない?」
 
 冬優子「そういうこと。狸は学級裁判で誤答させることを目的としているんだから、そんなあからさまな現場黙っちゃいられないのよ」
 
 透「まあ、そっか。犯人ですーってやつがいる事件、狸はやりたくないんでしょ」
 
 冬優子「だからふゆはあえて、現場に水素吸引機をそのままにしてやったわ。ルカでもあさひでも……みれば一発でわかるような証拠を残してやったの。ゴンドラも爆発の衝撃で中が少しひしゃげていたし、あの状態ならすぐに犯人がふゆだって誰でもわかったでしょうね」
 
 あさひ「水素吸引機……あの時の」
 
 
 冬優子「狸はそれを見て、すぐに死体を移さなきゃと思ったの。焦って焦って……【何故か】ゴンドラの脇に置かれていたワイヤーを手に取った」
 
 
 美琴「……え?」
 
 
- 639 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:25:25.12 ID:kJ67nvvf0
-   
 冬優子「そのまま【何故か】門が開いていて止まっていたバイキングの船頭にワイヤーをくくりつけた」
 
 恋鐘「ま、また【何故か】……?」
 
 冬優子「そして【何故か】逆回転に設定されていた観覧車とバイキングを動かして、死体を移動させたのよ」
 
 ルカ「お前……その【何故か】って」
 
 冬優子「ふふっ……ホント間抜けな狸さんよね、全部全部、ふゆの設計図通りに動いてくれちゃって」
 
 雛菜「それじゃ狸の行動は、ぜんぶぜ〜んぶ、狙い通りだったってことですか〜?」
 
 智代子「そ、そんなの……全部、ふゆちゃんは考えてたの?!」
 
 冬優子「ふゆの狙いはただ一つ。ルカ、あんたなら分かるでしょ」
 
 
 冬優子はそう言って、まっすぐに私の瞳を見つめた。
 冬優子から感じる一本の強く太い芯。これこそが、冬優子の今の行動原理……この事件を引き起こした一つの大きな動機なんだろう。
 一人の人間を殺め、そのうえで狸をおびき寄せるような罠を仕掛け、裁判で自らをクロだと私に証明させて、その結果今この瞬間がある。
 この瞬間の、そのために冬優子はすべてを尽くしてきたんだ。
 
 
 
 冬優子の、その狙いは_____
 
 
 
- 640 :最後の最後にクソ面倒なコンマ〜〜〜〜〜〜!!! ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:27:35.42 ID:kJ67nvvf0
-  ------------------------------------------------- 
 
 【発掘イマジネーション開始!】
 
 ■■■■■の■■を証明するため
 
 【指定の範囲内のコンマを出して結論を掘り当てろ!】
 
 
 一文字目 01〜30の奇数
 二文字目 01〜30の偶数
 三文字目 31〜60の奇数
 四文字目 31〜60の偶数
 五文字目 61〜90の奇数
 六文字目 61〜90の偶数
 七文字目 91〜00
 
 
 ↓1〜16
 
- 641 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 23:28:18.40 ID:lUoTZCfC0
-  あ 
- 642 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 23:28:48.52 ID:lUoTZCfC0
-  あ 
- 643 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/05/19(木) 23:29:18.56 ID:LIF4/FS1O
-  わっせ 
- 644 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/05/19(木) 23:29:33.05 ID:7XT+Vjty0
-  あ 
- 645 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 23:29:39.36 ID:lUoTZCfC0
-  あ 
- 646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 23:29:46.52 ID:dSdGFz7r0
-  推定ラスボスが多いこの裁判…… 
- 647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/05/19(木) 23:29:47.70 ID:LIF4/FS1O
-  わっせ 
- 648 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 23:30:16.74 ID:lUoTZCfC0
-  あ 
- 649 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 23:30:47.75 ID:dSdGFz7r0
-  ここまでほぼ全部四文字目 
- 650 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/05/19(木) 23:30:58.18 ID:LIF4/FS1O
-  わっせ 
- 651 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 23:31:19.52 ID:lUoTZCfC0
-  あ 
- 652 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/05/19(木) 23:31:46.52 ID:LIF4/FS1O
-  奇数が出ない 
- 653 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 23:31:50.78 ID:lUoTZCfC0
-  あ 
- 654 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/05/19(木) 23:32:17.08 ID:LIF4/FS1O
-  52何でこんなに出るんだよ 
- 655 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 23:32:20.99 ID:dSdGFz7r0
-  あと七文字目だけ? 
- 656 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 23:32:27.00 ID:lUoTZCfC0
-  あ 
- 657 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 23:34:45.22 ID:dSdGFz7r0
-  三文字目がダメっすかね? 
- 658 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:35:58.82 ID:kJ67nvvf0
-   
 【コンマ 40 52 56 05 36 52 70 74 75 18 52 52 78 08 99 00】
 
 カンカンカンカン……
 
 【ぞろ目の値が出ました!】
 
 【が、既定のコンマ内で採掘が終わっていないためボーナスは発動しませんでした……】
 
 カンカンカンカン……
 
 
 芹沢■さひの潔白を証明するため
 
 
 【指定の範囲内のコンマを出して結論を掘り当てろ!】
 
 
 三文字目 31〜60の奇数
 
 
 ↓1〜4
- 659 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2022/05/19(木) 23:36:24.14 ID:R0PohS9bO
-  わっせ 
- 660 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/19(木) 23:36:58.51 ID:dSdGFz7r0
-  高めのゾロ目2つ出たのにかなしい 
- 661 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/05/19(木) 23:37:15.04 ID:sASLsx2oO
-  すっす 
- 662 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/05/19(木) 23:38:20.64 ID:sASLsx2oO
-  っす 
- 663 :お疲れ様でした。 ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:39:37.24 ID:kJ67nvvf0
-   
 【コンマ14 51】
 
 カンカンカンカン……
 
 【発掘完了!!】
 __________________
 
 芹沢あさひの潔白を証明するため
 __________________
 
 
 ルカ「芹沢あさひの潔白を証明するためか……!」
 
 あさひ「えっ……」
 
 ルカ「あのアトラクションのバイキングは身長制限が160cmと異常に高い。ループをする部分があったり、特殊なつくりをしているからだと言ってたが……私の推理では犯行の行動に組み込まれていたこのバイキングが、狸によるものなのだとしたら」
 
 ルカ「その瞬間……私が今まで狸としてみていた芹沢あさひは……狸ではあり得なくなってしまう……!」
 
 智代子「そっか……あさひちゃんは私と同じであのアトラクションの身長制限に引っかかる……! あのアトラクションを使って死体の移動は出来ないよ……!」
 
 美琴「狸が偽装工作に使いやすいように、あえて偽装工作を途中辞めにしておいた。それを利用すれば、あさひちゃんが狸の嫌疑から外れるようになっていたなんてね」
 
 あさひ「冬優子ちゃん、わたしのために……わたしのために、罠を仕掛けてくれたんっすか?」
 
 冬優子「さあね。ふゆは恩着せがましい真似は好きじゃないの」
 
 (……なるほどな、さっきは甘党女を黙らせるために言ったのかと思ったが)
 
 (そう考えるとこの事件が有栖川夏葉も望むところってのは……あながち間違いじゃなかったのかもしれねーな)
 
 
- 664 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:40:45.18 ID:kJ67nvvf0
-   
 冬優子「ま、ふゆはこの裁判で死んじゃうわけだけど……生き残るあんたたち、忘れんじゃないわよ。狸は身長160cm以上の人間……あさひと園田智代子以外の中に混ざってる」
 
 冬優子「そのことは、ゆめゆめ忘れないように……わかった? ルカ」
 
 ルカ「ハッ……わーったよ」
 
 智代子「な、なんだかおこぼれで私まで容疑者から外してもらえちゃった……」
 
 美琴「……」
 
 
 冬優子が命がけで張り巡らせた策略。
 それは事件に決着がついた後に大きな展開をしてみせた。
 私たちがずっと抱き続けていた疑念を根底から瓦解させ、彼女にとって特別な存在を一気に解放させた。
 
 狸をドツボにはめた、事件のうちに隠したトラップ。
 それを本人こそ照れ隠しで認めはしないが、その目的は長く目をかけてきた憎むべきも愛すべき年下を守るために他ならなかった。
 
 
- 665 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:41:53.37 ID:kJ67nvvf0
-   
 俗な言い方をすれば、愛情なんて言えてしまうんだろうが……私にはその二文字に収まるものではないと思う。
 冬優子が芹沢あさひに向けているものはそんな単純なものじゃない。
 本気で煩わしい存在だと思っているし、本気でいない方が楽だと感じているときもある。
 その一方で、本気で自分には欠かせない存在だと思っているし、本気でずっと笑っていてほしいと思っている。
 そんなちぐはぐな二律背反を積み重ねた感情を、たった二文字で表現しきれるはずがない。
 
 
 ____ましてや、その果てに自分の命を懸けた証明があるのだから。
 
 
 冬優子「……モノクマ、とりあえず投票タイム。お願い」
 
 あさひ「……冬優子ちゃん!」
 
 冬優子「このガキがごねだす前に、早く」
 
 モノクマ「わかりました! それでは急いでまいりましょう!」
 
 モノクマ「投票ターイム! オマエラはお手元のスイッチでクロだと思う人物に投票してくださーい!」
 
 モノクマ「議論の結果導き出されたクロは正解なのか、不正解なのかー!」
 
 モノクマ「さあ、どっちなんでしょうかね?」
 
 
- 666 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:42:52.95 ID:kJ67nvvf0
-   
 -------------------------------------------------
 
 
 【VOTE】
 〔冬優子〕〔冬優子〕〔冬優子〕
 
 CONGRATULATIONS!!!!
 
 パッパラー!!!
 
 
 -------------------------------------------------
- 667 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:43:36.31 ID:kJ67nvvf0
-   
 
 
 
 
 【学級裁判 閉廷!】
 
 
 
 
 
 
- 668 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:47:00.94 ID:kJ67nvvf0
-   
 というわけで4章の学級裁判が終わったところで本日はここまで。
 ちょっとコンマ参照のゲームが多すぎましたね……
 ピトス獲得してなかったらもっと泥沼になってたな……
 
 次回裁判終了を投稿して、長かった4章もようやく終わりとなります。
 金土は予定が入っているので、更新できるとすれば日曜になるかと思います。
 また21時ごろより、安価はございませんがどうか本章も最後まで見守ってやってください。
 
 それではお疲れさまでした。
- 669 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/20(金) 00:06:49.07 ID:aOfenW/40
-  お疲れさまでした 
 冬優子……
 正直キャラ的に4章クロ枠っぽいよなあ……ってずっと思ってたから解釈一致ではあるけど悲しい……
 冬優子の反論をピトス込みでギリギリ上回ってるところとか、あさひの反論に復活からのピトス抜きでの突破とか、
 冬優子の反論の盾の耐久が最後の1枚の1だけ残るところとか、最後の発掘でやたら同じコンマが出てたりとか、
 よく見ると全体的にコンマがめちゃくちゃ頑張ってる裁判だった
- 670 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/20(金) 01:49:24.02 ID:2nqnjoEX0
-  >>1乙 
 
 最後に衝撃の事実・・・
 果たしてその狸は誰でそいつは次の章で散るのか?
 それとも最後の章で姿を表すのか?
 どちらにしろ美琴は透をその狸って疑う事になるんだろうなぁ
- 671 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/05/20(金) 02:43:20.21 ID:z4U57Ial0
-  VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな 
 VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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- 672 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/20(金) 03:19:18.50 ID:p5cuD51Y0
-  >>670 
 展開潰しする奴嫌い
- 673 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/20(金) 07:00:39.37 ID:2nqnjoEX0
-  誰にでも予想できることを言っただけで 
 展開潰しと申されましてもな・・・
 
 
- 674 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/20(金) 16:48:05.68 ID:5CiVek0YO
-  お疲れさまでした 
 検討プロセッシングすき
- 675 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/20(金) 17:18:20.98 ID:p5cuD51Y0
-  >>673 
 言い方が悪かったゴメン
 
 お前そのものが嫌い
 いつだか作中のトリックが理解出来なくてゴネてた奴を連想する
- 676 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/20(金) 22:15:14.35 ID:czaNATSK0
-  なんやこのちゃおラジみたいに性格の悪いやつ(困惑) 
- 677 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:38:00.76 ID:6yJfGnKD0
-  ------------------------------------------------- 
 
 
 
 CHAPTER 04
 
 アタシザンサツアンドロイド
 
 裁判終了
 
 
 
 -------------------------------------------------
- 678 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:39:22.66 ID:6yJfGnKD0
-   
 モノクマ「ピンポンピンポン! 大当たり〜! 超大学生級のアンドロイド、現代叡智の結晶とも言うべき美しき有栖川夏葉さんをメッタメタのガッチャガチャにぶっ壊して殺害したのは……」
 
 モノクマ「綺麗なバラにはトゲがある! 超専門学校生級の広報委員・黛冬優子さんなのでした〜!」
 
 
 犯人として指摘された。
 それはものの数十分と経たないうちに蹂躙されて、命を奪われることを意味する。
 
 それを前にして、冬優子はなおも態度を変えなかった。
 それは、これまでに私の見てきた冬優子のあり方と相違しなかった。
 
 人並みに悩んで、人並みに苦しむ彼女……
 それでも、自分自身の決断には人一倍の責任感を持ち、そしてその評価には正面から向き合う強さがある。
 元々備わっていたものなのか、それともアイドルとして活動する中で身につけた素養なのか、
 283の人間じゃない私からすれば分からないが、この点において彼女が私より遥かに『大人』であることは間違いない事実だ。
 
 
- 679 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:40:23.18 ID:6yJfGnKD0
-   
 智代子「……ふゆちゃん、もう聞かせてもらえるよね?」
 
 冬優子「……ああ、話さないといけないわね」
 
 
 園田智代子はただの遺された者ではない。
 一度黄泉より舞い戻ったと思った有栖川夏葉、その期待と喜びを踏み躙られるような形で奪われてしまった。
 冬優子の犯行によって生じた精神的ダメージはそれだけ大きい。
 それを裁判の最中、進行のためにと不意にされたことを芳しく思っていないのが見てとれた。
 
 
 智代子「さっき……学級裁判中、ふゆちゃんは言ってた。この殺人は夏葉ちゃんも望むところだったって」
 
 冬優子「ええ、言ったわ」
 
 智代子「本当に……そうなの? 夏葉ちゃんは自分から、ふゆちゃんに殺されにいったの?」
 
 
 だが、冬優子は園田智代子の言葉を前にして少しためらうような素振りを見せた。
 その言葉は間違ってはいないが、中央を正面から射止めたわけではない……そんな表情だ。
 
 
 冬優子「いや、そうじゃないわ……死はあいつも望むところだったけど……ふゆもそうだったの」
 
 智代子「えっ……?」
 
 
 そして実際冬優子が口にしたのは、これまでの想定とはまた異なった事実だった。
 
- 680 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:41:08.85 ID:6yJfGnKD0
-   
 
 
 
 
 冬優子「ふゆもあいつも、本気で殺し合った。どっちが死んでも、おかしくなかったのよ」
 
 
 
 ルカ「お、おい……どういうことだよ、それ!」
 
 
 
 
 
 
- 681 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:42:29.34 ID:6yJfGnKD0
-  ◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 
 
 
 真夜中だと言うのに電飾は灯ったまま。
 誰を載せるでもない観覧車はなおも動き続け、真っ黒な波にポツリポツリと丸い明かりを落とし続けている。
 夜の本来あるべき静けさを嘲笑うような場内BGMを耳にしながら、その時を待っていた。
 
 組んだ腕にはロケット花火を隠し持っている。
 数日前の絶望病の一件で隔離生活を強いられた時、あさひが悪用しないようにふゆが一通り押収したものだ。
 
 ……ふゆはこれで、命を奪う。
 正確にはロケット花火で視界を奪ってからいくつかの工程はあるけれど、直接的か間接的かくらいのもので、これが凶器の一部であることには相違ない。
 そして、これが凶器として作用しうる相手は限られている。
 
 
 「……あなただったのね、冬優子」
 
 
- 682 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:44:25.32 ID:6yJfGnKD0
-   
 標的は姿を表した。
 これから生死をかけたやりとりをしようと言うタイミングで、その標的は不気味なほどに物怖じをしていなかった。
 
 いや、彼女らしいと言えば彼女らしい。
 自信に満ちた表情を努めてみせようとしている彼女なら、命を落とす直前、そのコンマの一秒まで表情を崩すことはないだろうと思った。
 
 
 「悪いわね、こんなことに付き合わせちゃって」
 「何も謝ることはないわ、あなたも大きな決断を下した末の今なのでしょう?」
 
 
 有栖川夏葉の推測した通りだ。
 実際行動に移すには大きな障害があった。
 人を殺めるなんてことはこれまでに経験もないし、きっとその一線を超えてしまえばふゆはこれまでのふゆではいられなくなる。
 これまでのどれでもない、新しい自分を作り出さなければ到底耐えられない。
 でも、そんなことに耐えられる器などふゆに作り出すことができるのだろうか?
 ふゆはそこまで傲慢でも、図々しくもない。
 
 そして、自分が手を下した瞬間に生じるリスク。
 目の前に吊り下がる天秤を、正しき方向に傾けることができるのか。
 みっともなく生に縋り付くような真似をしてはしまわないか。
 絶対に完璧な黛冬優子を、最後の最後で自分の手で台無しにすることがあってはならないのに。
 
- 683 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:45:49.11 ID:6yJfGnKD0
-   
 そんなしがらみの一切を、ふゆはねじ伏せた。
 正確には目を瞑っただけかもしれない。
 それでも、いい。
 この一歩を踏み出すことには大きな意味があった、誰かが踏み出さなくちゃいけなかった。
 
 
 「あんたこそ、別に来なくてもよかったのに。一眼見れば分かったでしょ、この手紙の送り主は殺すつもりで送ってるって」
 「あなたと同じ気持ちなのよ。私も……あなたと同じで守りたいものがある。その志を同じくするものとなら、命をかけてもいいと思った」
 
 
 今更この場に置いて有栖川夏葉の見立てを否定する気もなかった。
 ふゆが犯行に及んだ理由は、誰の目に見ても明らかだったから。
 この島に来る前から、ずっとずっと口では否定して、心の中でも自分に言い訳をし尽くしてきたが……この局面になればそれは意味をなさないと思う。
 
 
- 684 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:47:08.71 ID:6yJfGnKD0
-   
 
 
 ____ふゆは、今。
 
 
 
 あさひを守る為にこの場に立っている。
 別に自分だけなら飢えて死んだって構いやしない。
 
 でも、あいつはただでさえ他の連中に不審な目を向けられているのに、それに加えてひもじい思いまでさせて、どんどん衰弱していっている。
 それを目の前で見せられて黙っているほど、ふゆはいい子ちゃんじゃない。
 きっと、愛依ならこの状況でも誰かを手にかけることなんて頭に浮かびもしないと思う。
 
 だとしても、ふゆはふゆだから。
- 685 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:48:20.72 ID:6yJfGnKD0
-   
 
 「だから……全力で行くわ。全力であなたの命を奪いに行く、全身全霊を持って殺させてもらう」
 
 
 有栖川夏葉はふゆを見据えて、低く腰を落とした。
 名家の生まれなのだ、武の心得だってあるんだろう。
 素人目にも感じる気迫が、ふゆの肌をチクチクと刺した。
 
 
 「上等、あんたこそ……殺されても文句言うんじゃないわよ」
 
 
 だからといってそれに臆するようなふゆでもない。
 こちらには対抗策だって用意してあるんだ、あとは一か八かの博打に挑むだけ。
 ギャンブルなら、弱みを見せた方が負ける。
 ふゆはこんなところで、負けてらんない。
 
 
 「それじゃあ、行くわよ。次に合図した時が、始まり」
 「ええ、いつでもどうぞ」
 「……それじゃ」
 
- 686 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:49:15.19 ID:6yJfGnKD0
-   
 
 
 
 
 「死んでもらうわ」
 
 
 
 
 
 
- 687 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:50:18.98 ID:6yJfGnKD0
-  ◆◇◆◇◆◇◆◇ 
 
 
 智代子「夏葉ちゃんとふゆちゃんで……殺し合った……?!」
 
 冬優子「……何も正面から殴り合いをしたわけじゃない。ルカの言った通りふゆがロケット花火で不意打ちをしたんだから激しい接触はなかったわ。でも、有栖川夏葉はふゆにスイッチを押されるその瞬間まで本気でふゆを殺そうとしていたわ」
 
 智代子「そ、そんなの……本気かどうか……」
 
 冬優子「わかるわよ、殺意をふゆは真っ正面から浴びたんだから」
 
 
 きっと、冬優子の言うことは嘘ではない。
 冬優子の口から語られたやりとりも、そこに込められている他の誰かを守りたいと言う想いも、これまでに見てきた二人と相違なかった。
 有栖川夏葉と黛冬優子、お互い一度は大切なものをその手から失ってしまった身……
 今回の動機で衰弱し、失われていく、最後の大切なものを前にして、黙っていることはできなかったのだろう。
 
 
- 688 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:51:48.01 ID:6yJfGnKD0
-   
 冬優子「だからといって責任逃れをするつもりもない。あんたから大切な存在を奪った事実は変わらないんだから、ふゆはその咎めと謗りとを受け入れる義務はある」
 
 冬優子「……存分に、詰ってくれていいわ」
 
 智代子「……」
 
 
 冬優子はそう言うと、黙って園田智代子を見据えた。
 相変わらず、憎たらしい女だ。
 そこまで堂々と語られたら、こちらの方が言葉に詰まる。
 実際……園田智代子は口を開かなかった。
 
 
 
 
 
 
 パンッ
 
 
 そして、その代わりに乾いた音が響いた。
 
- 689 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:53:20.34 ID:6yJfGnKD0
-   
 智代子「きっと、夏葉ちゃんが生きてたら『私と冬優子は真っ向勝負で雌雄を決したの。結果が不服であっても、それに茶々は入れないでほしいわ』って言うと思う」
 
 智代子「……だからこれは、果穂の時……ふゆちゃんが夏葉ちゃんの顔を叩いた分だよ」
 
 
 園田智代子の中にはやるせない思いが渦巻いていた。
 冬優子の言うことには信憑性もある。
 有栖川夏葉の死はきっと本人にとっては不本意なことでもない。
 その敗北を受け入れるだけの覚悟をして、事切れたと思う。
 
 でも、それとは別に感情は湧くのだ。
 かけがえのない存在を失った相手を、本人がそうだったからとすぐに許せるほど甘口の人間でもない。
 かといって自分の感情の赴くままの行動をとれば、それは仲間の決意と死とを踏みにじる行為になる。
 その思慮の果ての平手打ちだった。
 あくまで仇討ちではなく、いつかのやり返し。
 そういう体をとって、想いをぶつけた。
 
 
 冬優子「……優しいのね、あんた」
 
 
 赤く染まった頬をさすりながら、つぶやいた。
 
 
 智代子「武士の情けだよ、ふゆちゃん」
 
- 690 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:54:44.86 ID:6yJfGnKD0
-   
 そして、順番は回る。次に冬優子が向き合うべきなのは他でもない自分の仲間。
 冬優子自身が、遺して逝く相手だ。
 
 
 あさひ「冬優子ちゃん、本当にわたしの為に……夏葉さんを殺したっすか?」
 
 冬優子「……」
 
 
 投票が終わった今、その回答を拒む理由が見つからない。
 冬優子は大きなため息をついてから、中学生の方に向き合った。
 
 
 冬優子「……あのね、目障りだったのよ」
 
 あさひ「……え?」
 
 冬優子「こっちのことなんか一切考えないで、自分の興味関心の赴くまま、それで散々振り回したかと思えば何故だか収まり良く事態がまとまっている。そういうあんたの持ってるところが、すごく目障りだった」
 
 あさひ「……冬優子ちゃん、わたしのことそんな風に」
 
 
- 691 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:56:10.71 ID:6yJfGnKD0
-   
 冬優子「でも、この島に来て、どんどん弱っていくあんたの方がよっぽど目障りだった」
 
 冬優子「他の人間に疑いの眼差しを向けられるわ、制約のある生活を強いられて自由を失うわ、果てには食事も取りあげられてどんどん弱っていくわ」
 
 冬優子「……あんたの、そんなところ見たくなかったのよ」
 
 冬優子「……鬱陶しくてしょうがないから。あんたを取り巻くあれこれを一気に解消したの、ただそれだけ。他意はないわ」
 
 
 あくまで字面上は、自分のためという体を装ってはいた。
 でもその文脈が、『ある特定の人物のため』であることは明白で、本人もそれを流石に解したらしい。
 初めこそ拒絶の言葉に面食らっていたが、すぐに前のように『ユニットのお姉さん』に向ける顔色に変わっていた。
 
 
 冬優子「まあ、でもよかったでしょ? これであんたにかかってた嫌疑は晴れた。ルカにかけられてた言いがかりも全部払拭して、自由の身よ」
 
 あさひ「……」
 
 
 ただ……それでも中学生には不服だったらしい。
 頬を少しだけ膨らませて、抗議の意思を込めた凝視。
 らしからぬ雰囲気に、冬優子も少しばかりたじろぐ。
 
 
- 692 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:57:40.10 ID:6yJfGnKD0
-   
 冬優子「……なによ、黙ってふゆの目なんか見て。あんたらしくもない」
 
 あさひ「冬優子ちゃんは、本気でそう思ってるっすか?」
 
 冬優子「……はぁ?」
 
 あさひ「わたしは、嫌っす。絶対絶対……冬優子ちゃんとお別れなんかしたくない。それなのに、冬優子ちゃんはやっぱり自分のことばっかり」
 
 冬優子「あんた聞いてた? ふゆが犯行に及んだのは、あんたを守るためで……」
 
 あさひ「違う、それはただの目的と理由で……冬優子ちゃんはその過程をわかってないっす」
 
 冬優子「何を言ってんの! ふゆがあんたのためにどんな決断をしたのか……」
 
 あさひ「もう今、8人しかいないんっすよ? それに、冬優子ちゃんが死んじゃったら7人になる。それに愛依ちゃんも、果穂ちゃんもいない……」
 
 あさひ「なんで、なんでそんなことをしたっすか? なんでみんな、わたしを一人にするっすか……?」
 
 冬優子「……あんた」
 
 
 あさひ「わたしの気持ちを考えないで、そんなことをするなんて……冬優子ちゃんらしくないっすよ」
 
 
 芹沢あさひの言う通りだ。
 冬優子が犯行に及んだ理由、それは独りよがりで押し付けがましい善意とも取ることができた。
 たとえ容疑が晴れようとも、空腹が解決しようとも、黛冬優子という存在を失うことが芹沢あさひにどれだけ大きな衝撃を与えるのかを無視した動機。
 自己正当化の出汁に使われていることに気づいた芹沢あさひは、その疑問を口にしたのである。
 
 
- 693 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:58:45.93 ID:6yJfGnKD0
-   
 冬優子「……それは、その」
 
 あさひ「わたしは他のみんなに疑われても、冬優子ちゃんが生きてる方がいいっす!」
 
 冬優子「そんなこと、言ったって……」
 
 あさひ「ねえ、冬優子ちゃん!!」
 
 
 それは、冬優子自身に教えられたこと。
 小宮果穂との死別を一度経験した彼女は、その死の間際に感情のありのままをぶつけ合うことで、そこに通わせたものを強く実感することができた。
 だから、今回も彼女は歳のままの等身大の子供として、冬優子の元に縋りついた。
 ごねたところで何が変わるでもないと知っていながら、その我儘を押し通そうとした。
 声の限り、自分の感情を吐き出し続けた。
 
 現実は当然、変わらなかった。
 この状況においても、モノクマはただ無表情に動くこともなく、時間が経つのを待ち侘びている。
 冬優子の死は、逃れられない運命。
 
 
 ……でも、冬優子自身の在り方には揺らぎの色が見えた。
 
- 694 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:59:40.13 ID:6yJfGnKD0
-   
 
 
 
 
 冬優子「ふゆを、これ以上……困らせないで……」
 
 
 
 
 
 
- 695 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:01:19.55 ID:6yJfGnKD0
-   
 ずっと、奥底に押し殺していたものが顔を出した。
 冬優子にも芹沢あさひだけが遺されるという事実はきっと理解していた。
 
 でも、自分が動かなければ結局彼女は救われない。
 自分の命と引き換えでしか掬い上げることはできない。
 そう考えた時から必死にその事実には目を瞑っていた。
 ただ、ありのままの感情を改めて自分の目で、耳で、受け止めれば話は違う。
 嫌だろうとなんだろうと、直視せざるを得ない。
 冬優子の心中に埋め込まれた支柱は、少しずつ、その根本から突き崩されつつあった。
 
 
 冬優子「何よ、どうすればいいわけ……? もう、取り返しは効かないのよ……? ふゆがあいつを殺したって言う事実はどうやったって覆らないの……!」
 
 
 やがて、冬優子の声にもすすり上げるような息が混ざり込む。
 後悔とも違う、自分の犯した行いとそれに生じた責任とに向けた半ば狂乱に近い感情の発露。
 壁や証言台が、彼女の声に応えるようにピシピシと軋んだ。
 
- 696 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:02:25.61 ID:6yJfGnKD0
-   
 
 
 冬優子「ふゆはあさひのために、何をしてやればいいの……?」
 
 
 
 そして、冬優子はその疑問を口にした。
 その疑問は過去なのか、現在なのか。
 我道を行く冬優子らしからぬ言葉だった。
 
 ただ、それは彼女自身の純粋な母性の表れ。
 共に長い時間を過ごし続けた仲間に対して、何かをしてやりたいというだけのこと。
 でも、冬優子自身からすれば、この好意というのは照れ臭さの裏に隠して、ずっと避けてきた道の一つでもあった。
 歩き慣れない道は、とかく迷いやすい。
 愛情表現を真っ向からはしてこなかった冬優子は、この局面で困り果ててしまっていた。
 
- 697 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:03:18.76 ID:6yJfGnKD0
-   
 
 
 
 
 ルカ「……頭の一つでも、撫でてやればいいんじゃねーのか」
 
 
 
 
 
 
- 698 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:05:03.76 ID:6yJfGnKD0
-   
 それならば、この島で共に生きてきた仲間として、そして何より……冬優子の理解者として。
 彼女が道に迷ったときには、その道標を示してやりたいと思った。
 私も愛情表現なんてものに親しみはないし、美琴とは実際今もうまくいってないわけで講釈を垂れるような権利はない。
 客観的な立場から、俗的な一意見を述べただけだ。
 
 
 ルカ「冬優子……悪いけど、オマエが死ぬことはもう私たちにもどうしようもできない。だけどよ、散り際をどうするかってのはオマエ次第……それって、オマエがいつも気にかけてることだろ?」
 
 ルカ「徹底したセルフプロデュース、それがオマエの持つ強みだと私は思ってる。それなら……最後の最後、その散り際を……綺麗事で飾り立ててやったって、バチは当たらねえさ」
 
 冬優子「ルカ……」
 
 ルカ「バチを与える側の、カミサマからの進言だ」
 
 
 最後にカミサマを出汁にしたのは、今から死にいくものへの餞には少しでも気休めになる言葉をかけたかったから。
 別に信心深いわけでもないし、死後の世界なんてものを論じる気もないが、神という存在を借りてでも安心させられる言葉を使いたかった。
 私を前にしたこんな時でも気負わないように、その荷を下ろしてやろうとした。
 
- 699 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:06:19.41 ID:6yJfGnKD0
-   
 その目論見は、実際成功したらしい。
 冬優子はどこか吹っ切れた様子で、腹を抱えて笑い出す。
 
 
 冬優子「……ぷっ、あはは! 何言ってんのよルカ、あんたクサすぎ!」
 
 ルカ「なっ……オマエが聞いたから答えたんだろうが!」
 
 冬優子「でもまあいいわ、そのクサさに乗じてあげる。あんたはふゆと同族なんだからね」
 
 
 同族という言葉が孕んでいるものを私はもう理解している。
 冬優子の軽口にはそれ以上水を挟まない。
 
 改めて芹沢あさひに向き合う、その姿は不器用という他ない。
 ぎこちなく手を伸ばし、これまたぎこちなく抱き抱えるようにして、極めつけにぎこちなく声をかけた。
 
- 700 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:07:26.94 ID:6yJfGnKD0
-   
 
 冬優子「……ほら、よしよし」
 
 あさひ「冬優子ちゃん、あんまり撫でるの上手くないっすね」
 
 冬優子「空気読みなさいよあんた……」
 
 あさひ「愛依ちゃんの方が上手だったっす」
 
 冬優子「それは……敵わないわ、悪いけど」
 
 
 ぎこちなさと満足感とは両立するらしい。
 お世辞にもうまいとは言えない甘やかしに、芹沢あさひは自ら首を伸ばすようにして、嬉しそうにしている。
 あくまで切なさに裏打ちされた嬉しさではあるが、冬優子の愛情を初めて正面から受け止めることができ、これまでに見せたことのない表情を作っていた。
 
 
 冬優子「……もっとこういうの、やってあげてればよかったわね」
 
 あさひ「いいっす、そんな頻繁にやられたら……それはそれで冬優子ちゃんじゃないみたいっすから」
 
 冬優子「どういう意味よそれ……ったく」
 
 
 
- 701 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:08:52.66 ID:6yJfGnKD0
-   
 
 
 そして、そういうタイミングを狙いすましたかのように……その時はやってくる。
 
 
 
 モノクマ「前菜はこの辺りにしておいて……そろそろ主菜に参りましょうか! 学級裁判というコース料理の花形も花形……血湧き肉躍るおしおきタイムの時間ですよ!」
 
 
 あさひ「……!! ダメっす、まだ……まだっすよ!」
 
 モノクマ「欲張りさんだなぁ、お別れの挨拶も済んだし愛情表現までしたってのにこれ以上を求めますか」
 
 あさひ「満足なんかまだまだしないっすよ……冬優子ちゃんは、だってだって……これが終わったらいなくなっちゃうんっすよ!?」
 
 モノクマ「そりゃそうでしょ、それが学級裁判なんだから」
 
 
 モノクマはなんとも思っていない様子で淡々と言い放つ。
 ただ裁判を進行する、ただおしおきを遂行する。
 人が一人、完全に死んでしまうと言うのに、それは大したことではないと断言しているよう。
 もう4度目にもなるが、胸の底から黒いものが渦巻いて澱む感覚には慣れそうもない。
 
- 702 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:10:24.12 ID:6yJfGnKD0
-   
 
 あさひ「嫌だ……冬優子ちゃん、冬優子ちゃん……!!」
 
 冬優子「……やめて、それ以上騒がれると覚悟が揺らぎそうだから」
 
 あさひ「……!!」
 
 
 だが、今回は今までの3回とは違った。
 これから処刑台に乗せられる張本人の冬優子は、その覚悟を決めていた。
 勿論それは体裁としての話で、心中が穏やかではないのは明らか。
 目に見えて体は強ばり、口元も妙に硬く結ばれているのがかえって不安を滲ませる。
 
 それでも……彼女は『怖がっていない』、死を前にして堂々と『黛冬優子』でい続けようとしている。
 そのことを、我々は尊重せねばならない。
 
 
- 703 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:11:36.13 ID:6yJfGnKD0
-   
 冬優子「あさひ、最後に年長者っぽいことできてよかったわ。そのやってやった感のまま、終わらせてちょうだい」
 
 あさひ「……うぅ」
 
 冬優子「それと、ルカ……あさひのこと、頼んだわ。今やもう、頼れるのはあんただけだし」
 
 
 初めの頃とは随分と扱いが変わったものだ。
 かけがえのない存在を預からせていただく立場にさえ就かせてもらえるなんて、光栄すぎるな。
 
 
 冬優子「……それと、パートナーともうまくやりなさいよ」
 
 ルカ「……おう」
 
 
 ……それはお節介だ。
 私はぶっきらぼうな返事をせざるを得なかった。
 
- 704 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:12:24.86 ID:6yJfGnKD0
-   
 
 
 モノクマ「今回も超専門学校生級の広報委員である黛冬優子さんのためだけに、スペシャルなおしおきを用意しました!」
 
 
 
 冬優子「ふゆはこの選択を間違っているとは思わない、ただ停滞して全員で共倒れなんて……そんなの意味がないじゃない」
 
 冬優子「……だから、ふゆと有栖川夏葉の想いを汲み取ってちょうだい」
 
 
 
 モノクマ「それでは張り切っていきましょう!」
 
 
 
 冬優子「ふゆたちは、あんたたちを生かすと決めたんだから。その命、雑に扱うような真似すれば……地獄の底からでも蘇って、ぶん殴るわ」
 
 冬優子「ふゆの死、無駄にしたら承知しないんだからね」
 
 
 
- 705 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:13:02.96 ID:6yJfGnKD0
-   
 
 
 
 
 
 モノクマ「おしおきターイム!」
 
 
 冬優子「ふゆの屍を超えていきなさい!」
 
 
 
 
 
 
- 706 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:14:03.07 ID:6yJfGnKD0
-  ----------------------------------------------- 
 
 
 
 GAME OVER
 
 マユズミさんがクロにきまりました。
 おしおきをかいしします。
 
 
 
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- 707 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:15:35.02 ID:6yJfGnKD0
-   
 世界でいちばんおひめさまな黛さん。
 キュートな衣装をバッチリ着こなしてますよね!
 
 普段から自分の魅せ方をよく研究しているんですから当然のこと。
 それだけ可愛いお姫様の元には当然おうじさまもやってきます!
 
 おひめさまを迎えにやってくるおうじさまと言えば当然『白馬の王子様』!
 ほら、今にやってきましたよ!
 筋骨隆々、目も血走って、すさまじい馬力で走り続ける白いチャリオットに乗った王子様が!
 
 ……あれ?
 
 どうしたんですか、黛さん?
 そんな、おうじさまを前にして逃げ出すなんてナシですよ!?
 
 散々人を惹きつけておいて、自分が轢かれるのはそんなに嫌ですか!?
 
 -----------------------------------------------
 
 
 
 SOS
 
 超専門学校生級の広報委員 黛冬優子処刑執行
 
 
 
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- 708 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:16:44.45 ID:6yJfGnKD0
-   
 おうじさまの熱烈アピール!
 恋の書状が結びつけられた矢が黛さんに向かって次々に飛んできます!
 
 チャリオットの猛追から逃げながらもなんとか体を捻って済んでのところで矢を回避!
 
 黛さんの元に本来届くはずだった恋文は岩石を砕き、地を穿ちます。
 
 次のアピールはプレゼント作戦!
 男女の駆け引きに、プレゼントのセンスは欠かせませんよね。
 ダイヤの飾り付けられた綺麗な円形の……チャクラム!
 あれれ、これもおひめさまのお気には召さないみたいです。
 黛さんがダンスで培った体幹を生かして華麗に回避!
 チャクラムに両断されて隣の巨木は根元からボッキリと折れちゃいました!
 
 最後のアピールは100万ドルの夜景で!
 それを飾り付ける最高の花火をプレゼント!
 あれ? そういえばどこぞの誰かが花火を利用して人を殺したんでしたっけ?
 まあいいや、それいけどっかーん!
 
 黛さんも流石にこれには目を奪われてしまった様子、少しばかり火傷を負いながらもなんとか回避。
 
 そしていよいよ目の前に見えてきたのは結婚式場の教会!
 なんだ、嫌よ嫌よも好きのうちというわけですか!
 白馬のおうじさまに迎えられて、今こそ一つになる時です!
 もう黛さんもボロボロで、外堀から埋められていよいよ腹を括る時ですよ!
 
- 709 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:17:36.38 ID:6yJfGnKD0
-   
 
 
 
 
 「ざけんじゃないわよ、バーカ」
 
 
 
 
 ……え?
 
 ちょ、ちょっと……!?
 そっちは、そっちはルート外ですよ!
 
 おひめさまはモノクマの用意した道から自ら外れ、真っ逆さま。
 本来おしおきから逃げ出せないように用意していたはずの保険であった巨大シュレッダーに自分から落ちていきました。
 
 刃が彼女を細切れにする直前、その一瞬に。
 黛さんはニッと笑って中指を立てていたとかいないとか……
 
 
- 710 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:19:17.35 ID:6yJfGnKD0
-  ------------------------------------------------- 
 
 モノクマ「な、なんだよ……消化不良だな……」
 
 あさひ「……冬優子ちゃん、自分から……?」
 
 
 黛冬優子のおしおきのクライマックス直前での自死、私たちではなくモノクマが一番困惑し、釈然としない表情をしていた。
 モノクマからすれば一番盛り上がるところに水を刺されたような思いなんだろう。
 
 
 モノクマ「フンっ、いっぱい食わせたつもりなのか何だか知らないけどさ。死んだのは死んだんだから、ボクの計画は何も崩れてないよ」
 
 モノクマ「ぶひゃひゃひゃひゃ! どれだけ可愛く飾り立てても、死ぬ時は結局みんなブッサイクな骸に成り果てるんだよね!」
 
 ルカ「……ハッ、それで勝ったつもりかよ」
 
 モノクマ「……うん?」
 
- 711 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:20:11.54 ID:6yJfGnKD0
-   
 
 ルカ「てめェがいくら冬優子の死ではしゃいだところで、あいつも私たちも、その死で塞ぎ込んだりしねえ」
 
 
 ルカ「あいつの死で、私たちは想いを引き継いだんだ。その想いとともに、私たちは生きていくんだ!」
 
 
 壮絶な裁判の果て、おしおきによる幕引き。
 何度経験しても慣れない絶望の波が押し寄せる感覚。
 今にも気を抜けば膝からその場に崩れ落ちてしまいそうな無力感を感じつつも、今回ばかりはそう簡単には折れない芯が自分の中に通る感覚があった。
 
 冬優子が最後の最後まで見せつけた姿、それは他でもない【希望】の姿だった。
 他の誰かを犠牲にして生き永らえる。
 そのことに負い目を感じ続けてここまできたが、冬優子は『自分の死を有効に使え』と言い残してくれた。
 
 それならば、今ここで悔いてはならない。
 悲しんではならない。
 
 
 
 今の私たちにすべきことは、明日のために……今何ができるか考えることだ。
 
 
 
- 712 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:21:43.68 ID:6yJfGnKD0
-   
 ルカ「そうだろ、あさひ」
 
 あさひ「ルカさん……はいっす!」
 
 
 それに、私はこいつを冬優子から託された。
 ガキのお守りなんざ、ガラじゃねえが……
 ダチと交わした約束を不意にするほど私も人でなしじゃない。
 
 
 智代子「うん……夏葉ちゃんが身を賭して私たちを生き残らせてくれたんだもの、こんなところでへこたれていられないよ!」
 
 透「うん、がんばろ」
 
 雛菜「やは〜! 雛菜も頑張る〜!」
 
 恋鐘「ここまで生き残ってきたうちらならもう大丈夫たい! もうこれ以上コロシアイなんか誰も起こさんよ!」
 
 美琴「……そうだね」
 
 
 これまでのどの裁判とも違う、誰一人として表情を曇らせない様子に明らかにモノクマはイラついている様子だった。
 私たちに何か言葉を投げつけてやろうとして、的確な嫌味が見つからず地団駄を踏む。
 
 
- 713 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:22:40.90 ID:6yJfGnKD0
-   
 モノミ「うぅ……あちし、感涙の極みでちゅよ! 黛さんの死でまた一つミナサンは強くなりまちた!」
 
 モノミ「すごい一体感を感じまちゅ。今までにない何か熱い一体感でちゅ! 風……なんだろう吹いてきてまちゅよ確実に、着実に、ミナサンの方に!」
 
 モノミ「絶望なんかに負けない、希望の風を感じまちゅ!」
 
 
 手のひらの中で熱く鼓動しているものが希望なんだろうか。
 それを胸に当てて私は一つ、深く呼吸をした。
 肺に通っていく風が、なんだかとても心地よく、私の視線はぶれずに前を見据えた。
 
 
 モノクマ「ぐぬぬぬ……ぐぬぬぬ……」
 
 ルカ「悪いなモノクマ、お前の目論み通りにならなくて。……それじゃ、私たちは帰るから」
 
 智代子「うん、夏葉ちゃんが取り戻してくれた分ちゃんとお腹いっぱいにしないとね!」
 
 あさひ「あ! 恋鐘ちゃんの朝ごはんがまた食べられるんだ!」
 
 恋鐘「ど〜んと任せるばい! 今まで食べさせてあげられんかった分、特盛サービスで食べさせちゃるけん!」
 
 美琴「楽しみだね」
 
 あさひ「やったー!」
 
- 714 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:24:14.37 ID:6yJfGnKD0
-   
 
 
 
 モノクマ「そんなお祭りムードのとこ悪いけどさ、オマエラ……それでいいの?」
 
 
 
 
- 715 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:25:36.93 ID:6yJfGnKD0
-   
 ルカ「……あ?」
 
 モノクマ「黛さんは命をかけて芹沢さんの無実を証明したけどさ……それって同時に、他の人間がぽんぽこ狸さんだって謎を提示したのと同義でしょ?」
 
 あさひ「……!」
 
 
 それは確かにモノクマの言う通りだ。
 私たちを学級裁判で殺そうと画策していた狸はまだ、私たちの中に紛れている。
 身長160cm以上という条件はあさひと甘党女以外の5人に当てはまるほか特定に至る証拠もない。
 
 
 
 
 ____だとしても。
 
 
 
 
- 716 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:26:24.84 ID:6yJfGnKD0
-   
 ルカ「言っただろ、お前の目論み通りにはならねえって」
 
 モノクマ「なぬ?」
 
 ルカ「例えこの中にまだ殺しを企んでる奴がいようとも、他の6人でそれを封殺する。私たちはもう誰も死なさない、事件なんて起こさせない」
 
 美琴「……ルカ」
 
 
 不振の波紋が広がる前に防波堤をつくった。
 お互いを疑い合う状況に落とし込まれるなんて、冬優子からすればこれ以上なく癪だろう。
 あいつが私たちを生きながらえさせたことの意味を考えれば、今ここでどう受け答えすればいいのかなんてことは考えるよりも先に言葉が出た。
 
 
 モノクマ「むむむむ……むむむむむ……」
 
 ルカ「用は済んだか? それじゃ、今度こそ行くぞ」
 
 モノクマ「むむむむむむむむむ……」
 
 美琴「それじゃあ、失礼するね」
 
 あさひ「バイバイ!」
 
 透「アデュオス」
 
 モノクマ「く、くそぉ〜……」
 
 
 背後にモノクマの弱々しい声が聞こえてくるのが、気分良かった。
 
- 717 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:27:25.52 ID:6yJfGnKD0
-   
 -------------------------------------------------
 
 裁判場を出て、私たちはそれぞれの個室へ戻っていった。
 何人かはこれまで禁止されていた分を取り戻さんとばかりにスーパーマーケットでお菓子なんかを大量に持ち帰っていた。
 きっと気分を切り替える意味合いもあったんだろう。
 私はというと、なんとなくあさひの元を離れがたくて、個室まで付き添って送り届けていた。
 
 -------------------------------------------------
 
- 718 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:29:19.97 ID:6yJfGnKD0
-  ------------------------------------------------- 
 【あさひのコテージ】
 
 あさひ「別に一人で自分の部屋ぐらい戻れるっすよ?」
 
 ルカ「……まあ、そうだよな。オマエもガキじゃねえんだし」
 
 あさひ「……? ルカさん?」
 
 
 気がついたら、あさひのことをじっと見つめていた。
 小柄な体躯に、済んだ目の色、生まれながらだろう髪色は鮮やかな色合いをしている。
 冬優子が最後の最後まで守ろうとした存在、改めてそう考えると、込み上げてくるものがあった。
 
 
 ルカ「さっさと寝ろよ、オマエも疲れてんだろうし」
 
 
 悟られないように、あえて突っ放すような口調で話した。
 
 
 あさひ「はいっす!」
 
 
 返事だけはいいのよね、と時々愚痴をこぼしていたことを思い出す。
 
 
 ルカ「……ちゃんと、寝るんだぞ」
 
 あさひ「あはは、それなんだか冬優子ちゃんみたいっす」
 
 ルカ「……るせえ」
 
- 719 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:31:00.35 ID:6yJfGnKD0
-  ------------------------------------------------- 
 【ルカのコテージ】
 
 あさひを送り届けてから自分の部屋へ。
 私も人のことを言えない、かなり疲労は蓄積している。
 瞼が重たくなるのを感じながら、ドアノブを握る。
 その時、部屋の前のポストがふと目に止まった。
 手前に引いて開ける扉は、何かにつっかえて半開きになっていた。
 そこに見えているのは茶封筒。
 縦長のシルエットを掴み上げて、部屋へと持ち込んだ。
 
 
 「……一体、誰からだ?」
 
 
 ベッドの上に腰掛けて、目の前で広げた。
 中には一枚の便箋と写真が一枚。
 先に便箋の方を確認することにした。
 
 
- 720 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:31:51.41 ID:6yJfGnKD0
-   
 『この手紙をあんたが読んでいるということはふゆはきっと裁判でおしおきを受けた後だと思う。別にそのことを悔いる必要はないし、負い目に感じなくてもいいから。
 
 ……まあ、どうせ杞憂だろうけど』
 
 
 流石は冬優子と言ったところか、気が行き届いているし、私たちのことをよく理解している。
 
 
 『事件の内容からして、もう知ってのことだと思うけどふゆはファイナルデッドルームをクリアした。どうやらふゆが最初の攻略者だったみたいでその時にモノクマから情報をもらった』
 
 
 そういえば裁判中美琴もそんなことを言っていた。
 美琴は二番目以降の攻略者で、最初にクリアした人間がもらう特典はもらえなかったんだったか。
 
 
 『その情報をルカに託します。ルカなら、ここに収められている情報を見極めて、有効に使ってもらえると思ったから。ちなみに拒否権はないので、諦めるように』
 
 「……マジか」
 
 
 手紙はここまでだった。
 相変わらず勝手な女だ。冬優子のやつ、一方的に情報を渡してきやがって。
 
 最後の最後まで冬優子らしいその様子に、少し可笑しく思いつつも、襟をただした。
 この封筒の持つ意味を改めて確かめる。
 私たちの未来さえも左右し得るほどに重要な代物だ。
 まだめくっていない写真に、一体何が収められているのか。
 生唾を一つ飲み込んだ。
 
 
 「……いくか」
 
 
- 721 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:33:07.76 ID:6yJfGnKD0
-  ------------------------------------------------- 
 
 【あさひのコテージ】
 
 
 「……もう、わたしだけになっちゃったんだ」
 
 「愛依ちゃんも冬優子ちゃんも、他のみんなももういない」
 
 「みんなを……学級裁判で殺そうとした狸は生きてるのに」
 
 「……」
 
 「……冬優子ちゃんは怒るかな」
 
 「せっかく生かしてやったのに、なんでそんなことすんのよって」
 
 「でも、わたしは知りたい」
 
 「学級裁判で何度も暴れた狸が誰なのか、どうしてそんなことをしてるのか、知りたい」
 
 「……例え冬優子ちゃんでも、わたしがわたしの命をどう使うのかは指図されたくない」
 
 「この身体が、命がある限り……わたしはわたしのために使いたい」
 
- 722 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:33:56.33 ID:6yJfGnKD0
-   
 
 
 
 
 「真実を知るために、使いたい」
 
 
 
 
 
- 723 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:35:05.87 ID:6yJfGnKD0
-  ------------------------------------------------- 
 
 「んだよこれ……!?」
 
 
 そこに写っていたのは私たち。
 この島にやってきた連中が全員横並びになって……目を瞑っている。
 目を瞑ってコールドスリープ用の機械に横たわっている姿が写っていた。
 
 だが、それで終わらない。
 この情報の持つ意味、その一番大きなところは……その上。
 
 
 「なんで、なんでこいつら……」
 
 
 風野灯織、田中摩美々、和泉愛依、園田智代子、市川雛菜。
 前回のコロシアイの生き残りだと名前が上がっていた連中は……白衣を着て、私たちを見下ろしていた。
 
- 724 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:35:58.36 ID:6yJfGnKD0
-   
 
 
 
 
 ____その機械でまるで、人体実験でもしているかのように。
 
 
 
 
 
- 725 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:36:57.44 ID:6yJfGnKD0
-  ------------------------------------------------- 
 
 
 
 CHAPTER 04
 
 アタシザンサツアンドロイド
 
 END
 
 残り生存者数 7人
 
 To be continued…
 
 
 
 -------------------------------------------------
- 726 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:37:55.63 ID:6yJfGnKD0
-   
 
 【CHAPTER04をクリアしました!】
 
 
 【クリア報酬としてモノクマメダル60枚を獲得しました!】
 
 
 【アイテム:くたびれたショッパーを手に入れました!】
 〔出かける際愛用していた買い物袋。自身の所属するユニットの缶バッジを隠れたところに着けていたこの袋も、今となっては血に汚れた〕
 
 
- 727 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:43:49.73 ID:6yJfGnKD0
-   
 というわけで4thやバンフェスを挟んで一か月以上に及んだ4章もようやく終了です。
 冬優子をクロにするのは中々悩んだところではあるのですが、お別れの直前のあさひとのやり取りは書きたいものが書けた感じがあったのでだいぶ満足しています。
 
 次はついに第五章。物語もここまで来ると、いよいよ大きく動きますね。
 また更新までにはしばらくお時間をいただきます、気長にお待ちください。
 
 それではお疲れさまでした、またよろしくお願いします。
 
- 728 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/22(日) 21:48:17.99 ID:QY0ikWxo0
-  >>1乙 
 次回もとてもたのしみにしてます
 >>1が描きたいものが描けたって言うだけあって
 ふゆのあさひとの最期の別れは本当に胸がえぐられたよ・・・
 
- 729 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/22(日) 23:37:51.79 ID:CvIGFVFz0
-  お疲れさまでした  
 冬優子……不器用で揺らぐこともあるけど誇り高く堂々たるその姿は最期まで綺麗だった……
- 730 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/24(火) 09:55:45.77 ID:mbg96msT0
-  なんとなく気になって数えたりしてたんだけど、  
 残り生存者全員のコミュを終わらせることは多分不可能なんですよね
 
 現状のモノクマメダルが多分96枚?だから、次の探索パートで多分100枚は超える
 これは283プロのシャツ換算で2枚分
 んで次が5章だから自由行動は最後で、前作を見る限り多分3回×2日の6回行動?
 残りのメンバーの親愛度が、恋鐘:5.5、ちょこ:6.0、あさひ:8.0、浅倉:MAX、雛菜:5.5、美琴:4.0
 コミュを終わらせてスキルもらおうと思ったら親愛度MAX+交流が必要だからその辺を考えると、
 仮にシャツ2枚買ったとして、親愛度は左から、9.5、10.0、12.0(MAX)、MAX、9.5、8.0になる
 ここで前にシャツを使ったときの挙動的に残り人数分の希望の欠片も手に入るので15+6×2=27個になると考えられる
 親愛度獲得の補助になる幸福のリズムの値段は30個なので購入は無理
 つまり1回の交流で上がる親愛度は1.0から2.0の範囲で確定
 こうなるとコミュを終わらせてスキル獲得に必要な最低回数の交流は左から、2回、1回、1回、2回、2回で合計8回 > 自由行動6回
 これって要はどれだけ最善手選べても全員のコミュを終わらせるのって不可能では?って結論
 あれだけぶっ壊れなシャツの暴力をもってしても足りないのか……
- 731 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/24(火) 10:57:58.03 ID:KnUE2cJ50
-  Tシャツがだめならジャンパーを使えばいいじゃない(ソラミミスト的発想) 
- 732 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/24(火) 19:01:34.11 ID:6bs6nxIu0
-  >> 730 
 原作のロンパだって生存者が最初からわかっていたらともかく
 初見じゃ絶対生存者全員好感度マックスとか無理だしそう言うもんだと諦めよう
 それにコミュで好感度上げたり安価次第で生存者が変わるスレでもあるまいし別に・・・って感じ
- 733 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/24(火) 19:28:35.94 ID:DGeFo0JpO
-  何なら展開されるシナリオの関係で「この人とは交流出来ません」とかも起こり得るでよ 
- 734 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/24(火) 19:52:59.45 ID:mbg96msT0
-  せっかくめちゃくちゃ強い効果のシャツがあるからもしかして全員いけるんじゃね?  
 って思ったから本当にできるか計算してみたら無理だったってだけの話なんですよね
 実際732の人の言う通り本来なら無理だしそういうものだとは認識はしてるんですけど、
 それはそれとしてもし現実的に可能だったら実現したらスキルがたくさん並ぶから気持ちいいなあって思っただけなので
- 735 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/26(木) 10:04:19.58 ID:ljHSiLK50
-  1回気になりだしたらモノクマが想定してた冬優子の本来のおしおきの結末が気になってきた  
 教会に逃げ込む前に靴が脱げてチャリオットで轢殺?逃げ込めるもののそのままチャリオットが突っ込んできて轢殺?
 チャリオットが突っ込んだ衝撃で教会が崩落して圧殺?夏葉の死因と合わせて逃げ込んだ瞬間に爆発して爆死?
 偽装工作に合わせて逃げ込んだ瞬間にどこかに吹き飛ばされて転落死?それともSOSが何かの略でそれに合わせた結末?
 考えても候補が多すぎるし突拍子のない結末もあり得るから考え出すと気になって仕方がないわ
- 736 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/26(木) 12:17:25.84 ID:/uLg3LVT0
-  >>1がまた補完で書いてくれると思う 
- 737 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/09(木) 22:17:24.45 ID:QNk4OO930
-    
 市民たちの喧騒止まぬ中、ギロチンはゆっくりと持ち上げられていきます。
 太陽の光を反射してギラつく、その下には鮮やかなオレンジ色の髪。
 色気あるうなじが、木の枷に嵌められて剥き出しになっています。
 
 彼女こそが、悪政を布く傾国の悪女!
 国を筋肉によって傾けようとするパワー系悪役令嬢、有栖川さんは断頭台の上に……!
 
 
 ------------------------------------------------
 
 
 
 パンがなければプロテインを飲めばいいじゃない
 
 超高校級の令嬢 有栖川夏葉処刑執行
 
 
 
 ------------------------------------------------
 
- 738 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/09(木) 22:18:13.10 ID:QNk4OO930
-   
 市民たちの怒りはどんどんヒートアップ!
 それもそのはず、こちとら炭水化物で腹を満たしたいのに、あんなザラついた液体で飢えを凌げだなんて納得できるはずもありません!
 ギロチンが最高地点に到達した時、市民から聞こえてくるのも別れを惜しむものではなく、むしろ歓声すら上がります。
 
 ええい、ままよ!処刑人のモノクマが紐を手放した、その瞬間!
 
 
 ____その瞬間でさえも、有栖川さんは諦めてなどいませんでした。
 
 
 やはり筋肉、筋肉はすべてを解決する!
 
 有栖川さんの火事場の馬鹿力、筋肉が全身で隆起したかと思うと、バキバキと音を立てて枷の一切が破壊されてしまったではありませんか!
 ギロチンは宙を掠め、首を切り落とすことなく断頭台に突き刺さる!
 
 
- 739 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/09(木) 22:19:05.66 ID:QNk4OO930
-   
 
 
 ☆有栖川夏葉、奇跡の生還……!?
 
 
 
 暴徒たちもさすがにこれには大歓声! 筋肉をほめたたえ、手を叩いて大喜び!
 
 
 
 …パンッ!
 
 
 
 ですが、拍手に交じって乾いた音が響きました。
 有栖川さんは生存を誇ったポーズのまま、何が起きたのかもわからずその場に倒れ込みます。
 群衆に交じっていたスナイパー、凶弾には流石の筋肉も無力だったのです。
 拿捕の網も被せられ、有栖川案の死体をずるずると退場。
 
 悪嬢の処刑、もとい鬼退治は呆気ない幕引きとなりましたとさ。
 
- 740 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/09(木) 22:26:43.07 ID:QNk4OO930
-   
 というわけで二週間と少しぶりでしょうか、お久しぶりです。
 いつもより少し早めですが5章更新の準備が出来てきましたので報告にやって参りました。
 
 
 >>737
 久しぶりに早速ガバ、「超高校級」ではなくて「超大学生級」ですね……
 
 >>735
 冬優子のおしおきは「冬優子が途中で台無しにする」前提で考えていたので、最後まで細かなことは特に考えてませんでしたかね……
 ロンパらしい終わり方となると逃げこもうとする教会はハリボテで、チャリオットと板挟みになって圧死がそれらしいような気もします
 「SOS」はソロ曲からとったタイトルですが、歌詞の恋の苦しみのサインが物理的な苦しみのサインに代わる意味合いでつけてます
 何かの略にするのもありですね……また考えてみます。
 
 
 さて、5章は特に問題がなければ6/11(土)の21:00あたりからの更新を考えています。
 ストーリーも佳境、どうかお付き合いください。
 それではまたよろしくお願いします。
- 741 :一時間も遅刻してしまいましたが始めます ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:02:50.96 ID:LUS5eqqE0
-   
 〇保護観察対象者:風野灯織
 
 保護観察を開始してから二週間余りが経過。
 フラッシュバックなど精神衛生に支障をきたす症状は期間中確認されず。
 観察者との対話も特に問題なし。
 事態認識も正常。事件で命を落とした友人らも正確に把握しており、記憶の自主改竄など自己防衛に走る様子もない。
 日常生活の復帰に十分な回復を認めるものとし、保護観察を本日打ち切ると決定。
 
 
- 742 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:04:09.61 ID:LUS5eqqE0
-   
 〇283プロダクション連続殺人事件の捜査状況について
 
 主犯格とみられる天井努の経営していた芸能プロダクション『283プロダクション』から社用PCならびに私用PCを押収。
 情報捜査担当者に回し、解析結果が本日到着したため、報告に挙がっていた情報をここに記す。
 
 ・本連続殺人事件を『コロシアイ合宿生活』と題して外部に公開していた確定的な証拠は発見されなかった。
 海外サーバーを経由していたものと思われ、その履歴も消去されてしまっているため復元はほぼ不可能。
 保護観察対象者から得られた証言の裏付けとなる根拠には欠ける。
 『チーム:ダンガンロンパ』と呼ばれる組織の特定を急ぐ。
 
 ・芸能事業とは別の帳簿データを確認。
 巨額が闇口座に注ぎ込まれている不正な流れがあり、当事務所の従業員・七草はづきに確認をしたところ、完全に知覚していないものだとの証言が取れる。
 天井努が事務所の経営資金と別に蓄えていた金についても、その入手手段、流用先を調査するものとする。
 
 ・外部との通信履歴に不審な送信先を確認。
 連絡は数度に渡り、一定の頻度で行われている様子。
 主要通信業大手に照会するも該当はなし。
 位置情報を解析し、送信先の人物と事件との関連性について追求していくことが目下の捜査方針となる。
 
 
- 743 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:05:12.23 ID:LUS5eqqE0
-   
 
 
 
 
 ・本件が発生してより行方不明となっている10名との関連も併せて調査する。
 
 
 
 
 
- 744 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:05:48.95 ID:LUS5eqqE0
-  ------------------------------------------------ 
 
 
 
 CHAPTER 05
 
 Killer×Miss-aiōn
 
 (非)日常編
 
 
 
 ------------------------------------------------
- 745 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:07:06.57 ID:LUS5eqqE0
-  ____ 
 ______
 ________
 
 =========
 ≪island life:day 22≫
 =========
 
 【ルカのコテージ】
 
 「……朝か」
 
 冬優子の裁判の翌朝。
 私の肩は妙に重たくて、少しだけベッドから身を起こすのに時間がかかった。
 肩にのしかかっているのは、いくつもの責任、タスクともいうべきか。
 ガキのお守りに美琴との和解、そして私たちの前に横たわる展望の見えない大きく、深い謎。
 一方的に押しつけて自分は早々に退場だなんて、最後の最後まで自分勝手な女だったと思う。
 私がそういうのを拒絶できない人間だとわかってやっているのが余計に癪だ。
 
 「……」
 
 まあ、それは私も同じなのだが。
 私が美琴に無理やり背負わせたものもそれなりにあるし、その背負わせ合いが人と人との繋がりというものなんだろう。
 つくづく煩わしいな、と思う。
 
 「行くか」
 
 とりあえずはすぐ手につくところから、ガキのお守りという一番身近なタスクからやっていくことにした。
 
 
- 746 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:08:22.86 ID:LUS5eqqE0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【あさひのコテージ】
 
 あさひ「あれ、ルカさん。どうしたっすか?」
 
 ルカ「メシだメシ。ついてこい」
 
 
 未だ冬優子の代わりを私が務めることに慣れていないのか、あさひは私の顔を見て目をパチクリさせた。
 ガラス玉のように綺麗な瞳に見つめられると、なんだかたじろいでしまう。
 
 
 ルカ「冬優子の代わりだよ、私が面倒みなきゃだろ」
 
 あさひ「ふーん……でも、冬優子ちゃんそんなお迎えなんかしてなかったっすよ?」
 
 ルカ「……それは、知らん」
 
 あさひ「そういうのは愛依ちゃんがやってたっす」
 
 
 聞いているだけで切なくなるようなことを、本人はこともなげに言う。
 
 
 あさひ「とりあえず準備するっすね。ちょっと待ってて欲しいっす!」
 
 
 その小さな背中が部屋の奥に消えていくのを見つめていた。
 
 
 ルカ「……」
 
 
 本当に、この島に来る前とは大違いだ。
 283プロと馴れ合うどころか、こんな風に故人との約束を律儀に守ろうとしているだなんて。
 自分の変貌ぶりにウッとなるのを堪えていた。
 
 
 あさひ「お待たせっす! さ、行くっすよ! 今日は恋鐘ちゃん、どんなご飯を作ってくれてるっすかね!」
 
 ルカ「……うるせえ、朝からキャンキャン騒ぐな。頭が痛くなる」
 
 
- 747 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:11:06.90 ID:LUS5eqqE0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【ホテル レストラン】
 
 透「おはよう、二人仲良しだね」
 
 あさひ「透ちゃんおはようっす!」
 
 ルカ「……よう」
 
 
 冬優子の死に際に見せたあの姿には一定の効用があったらしい。
 これまでの裁判の翌日は、どこか取り繕ったような重たい空気が朝食会にも漂っているものだったが、今回はそんなことはない。
 全員が全員吹っ切れたような様子で、変わらぬ日常を過ごしている。
 
 ……ただ、そこに美琴の姿がないだけだ。
 
 
 ルカ「……」
 
 あさひ「……? どうしたっすか?」
 
 
 あさひの顔を見つめてつい考え込む。
 ……私はどこに座るべきなのだろう。
 別に真隣に座る必要もないんだろうが、かと言って美琴の隣(だった)席に座るのもなんとなくバツが悪い。
 
 
 智代子「ねえ、もう人数もだいぶ減っちゃったし、今日からはこっち側の机でみんなで食べない?」
 
 恋鐘「8人掛け……うちも賛成たい、どうしても空席があると寂しくなっちゃうけん」
 
 (……助かったな)
 
- 748 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:14:08.10 ID:LUS5eqqE0
-   
 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 
 
 あさひ「恋鐘ちゃん、今日の朝ごはんも美味しいっすね! これ、なんて料理っすか?」
 
 恋鐘「ふふーん、今日のはタプシログばい! この前一緒に図書館に行ったとやろ? その時に読んだ本に書いてあったフィリピンの朝ごはんを作ってみたとよ!」
 
 智代子「このお肉、醤油の風味ですごく美味しいよ!」
 
 あさひ「ほうっふね!」
 
 (……口周りすげえソースで汚れてるんだけど、これを拭き取るのは流石に過保護か……?)
 
 (ああクソ……冬優子はどうしてたっけ……!?)
 
 恋鐘「ふふ! あさひ、口周り汚れとるよ!」
 
 あさひ「……? あ、恋鐘ちゃんありがとうっす!」
 
 (どれぐらい世話を焼いていいのかわかんねえ……)
 
 (283の連中、元々距離感が近いから余計に……)
 
 
 長崎女の作った朝食を口に運びながら今後の相談。
 4回目の事件をくぐり抜け、私たちの状況はまた変わった。
 そしてそれは、島の状況も同じはずだ。
 
 
- 749 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:15:14.69 ID:LUS5eqqE0
-   
 ルカ「今回はモノミのやつ、ちゃんと働いてくれるといいんだが……」
 
 あさひ「この前は夏葉さんのおかげで助かったっすけど、どうっすかね?」
 
 智代子「島も残すところあと一つ、だもんね」
 
 雛菜「でもそこに手がかりがなかったらしんどいですね〜」
 
 恋鐘「そんなことなか! 絶対にこの島を出るためのヒントは眠っとるばい!」
 
 透「……第5の島、か」
 
 
 新エリアの解放を待ち侘びて、手をこまねくばかりの私たち。
 そんな雑談ばかりの時間を数十分過ごしたところで、やつはようやっと姿を表した。
 
 
 バビューン!!
 
 モノミ「ミナサン! お待たせしました! いや、お待たせしすぎたのかもしれまちぇん……」
 
 ルカ「お、来たな……どうだった」
 
 モノミ「話が早いでちゅ……そうでちゅよね、あたちとミナサンの間にもう言葉なんて要らない……それが信頼ってやつでちゅ」
 
 透「あー……うん、そうだね」
 
 モノミ「適当に流されまちた……」
 
- 750 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:18:13.63 ID:LUS5eqqE0
-   
 あさひ「そんなことより新しい島に行けるようになったのかどうなのか聞かせて欲しいっす!」
 
 恋鐘「そうばい! どがんね、モノミ!」
 
 モノミ「結論からいいまちゅ……」
 
 モノミ「あちしはモノケモノに…………」
 
 モノミ「勝てま…………」
 
 モノミ「…………………………………」
 
 モノミ「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
 
 
 
 
 
 
 ガチャ
 
 美琴「新しい島、行けるようになってるよ」
 
 ルカ「み、美琴……!?」
 
 
 モノミのクソみたいな溜めをぶった斬って登場したのは美琴。
 レストランの入り口の扉にもたれ掛かるようにして、私たちに話しかける。
 
 
- 751 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:19:21.63 ID:LUS5eqqE0
-   
 美琴「……その様子だと、やっぱり知らなかったんだね」
 
 ルカ「いや、それはそうだけど……お前……」
 
 美琴「勘違いしないで、ただ伝達に来ただけ。私は今もその子と一緒に行動する気はないよ」
 
 透「……」
 
 美琴「それじゃあ、また」
 
 
 私たちが言葉を返す暇も与えずに、美琴はすぐに姿を消した。
 
 
 智代子「……まだ、一緒に行動はしてくれないんだね」
 
 ルカ「……悪い」
 
 恋鐘「ルカはなんも悪くなかよ!」
 
 透「……私、だもんね」
 
 ルカ「……」
 
- 752 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:20:52.31 ID:LUS5eqqE0
-   
 雛菜「でも、なんでわざわざレストランに顔を見せたんですかね〜? 透ちゃんがいるのなんてわかりきってるのに〜」
 
 あさひ「だからこそ、じゃないっすか? 美琴さんは透ちゃんを殺そうとした過去もある、そんな相手が何度も目の前に現れたら普通嫌っすよね?」
 
 ルカ「嫌がらせ、ってか……」
 
 あさひ「んー……というよりは、透ちゃんが弱るのを待ってるとかっすかね」
 
 
 精神的に衰弱するのを待っている、なんてまるで狩りみたいだ。
 今か今かとその隙を狙いすまして、弱った瞬間を討つ。
 サバンナに潜むライオンのように、その牙を研ぎ澄まして目を凝らしているのが今の美琴。
 アイドルとしてパフォーマンスを磨き上げていた時と同じ集中が、あらゆる干渉を拒んでしまっている。
 
 
 雛菜「透ちゃん、大丈夫だよ! 雛菜がず〜っと一緒にいて、守ってあげるから〜!」
 
 透「……ごめん、雛菜」
 
 (……)
 
 
- 753 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:21:30.43 ID:LUS5eqqE0
-   
 モノミ「あ、あの〜……ミナサン、あちしのことお忘れじゃないでちゅかね……?」
 
 あさひ「あ、まだいたんだ」
 
 モノミ「ぐすん……決死の思い出モノケモノにリベンジしたのに……完全にいいところを持っていかれちゃったでちゅ……」
 
 智代子「そんなことないよ! 私たち、自力じゃ島の解放なんて出来ないんだから……モノミにはすごく助けられてるよ!」
 
 雛菜「モノミちゃん、ありがとね〜〜〜〜〜!!」
 
 モノミ「ミナサンの優しさがフェルトの五臓六腑に染み渡りまちゅ……」
 
 ルカ「……まあ、とりあえず新しい島には行けるようになったんだ。とりあえず行ってみようぜ」
 
 あさひ「はいっす!」
 
 
 美琴のことで少し不穏な空気は流れたが、それよりも今は目の前の新しい手がかり。
 美琴に対する何か対抗策もあるかもしれない、今はとにかく新しい一歩。
 私たちはすぐにレストランを後にした。
 
 
- 754 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:22:34.31 ID:LUS5eqqE0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【第5の島】
 
 「これが第5の島……なんていうか、ラスボスって感じだな……」
 
 
 新しく踏み入れた島は、比較的私たちの日常に近しい形をしていた。
 コンクリートで整えられた地面、並ぶ高層の建造物。
 だが、それがかえってこの南国の諸島では不気味な雰囲気を漂わせる。
 あれほど照り付けていた太陽も、工場から噴き出す排気が光を遮り、目にやさしかった緑を上塗りするような灰色が気分を僅かばかりに沈めてくる。
 何とはなしに騒つく胸に、思わず手を当ててしまうような光景だ。
 
 
 「……美琴は、既にここにいるんだろうか」
 
 
 レストランで私たちに情報を与えてきた辺り、美琴は私たちより先に立とうとしている。
 もしかすると、この島にある何かで害をなそうとしている可能性もある。
 七草にちかの遺志に、殉じるために。
 
 
 (そんなものが、本当にあいつの遺志だって……本気で思ってるのかよ)
 
 
- 755 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:25:14.30 ID:LUS5eqqE0
-  ◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 
 
 電子生徒手帳のマップに目を通す。
 この島はやはり他の島とは異なった文明レベルのようだ。
 自然や海といったものは全く存在していない隔絶された空間。
 【軍事施設】なんてものがあるのがその象徴だろう。
 暴と知を体現する施設、これまでになかった情報が眠っているかもしれないな。
 
 【ワダツミインダストリアル】は工場のようなものらしい。マップ上ではその全貌は全く見えない、調査の必要があるだろう。
 それとは別に【モノクマ工場】もある。
 モノクマ管轄の工場といったところなんだろうが、流石にこの文字列は私でも不安になるな。
 比較的平穏なのは【屋台村】か?
 とはいえこんな島に設けられた施設、まともなもんは期待できそうにないか……
 
 
 ルカ「今回は一緒に来てもらうぞ、あさひ」
 
 あさひ「ルカさんと一緒に調べるっすか? 別にいいっすけど」
 
 ルカ「お前一人にしたらどこで怪我するかもわからねーからな、私の目の届くところに居てくれ」
 
 あさひ「……? そうっすか」
 
 (……やっぱ、過保護なのか?)
 
 
 さて、どこから調べるか。
 
 -------------------------------------------------
 【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】
 
 1.軍事施設
 2.ワダツミインダストリアル
 3.モノクマ工場
 4.屋台村
 
 ↓1
 
- 756 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/06/11(土) 22:27:13.39 ID:JBBrDmjn0
-  1 
- 757 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:33:18.95 ID:LUS5eqqE0
-  1 選択 
 
 【コンマ判定39】
 
 【モノクマメダル9枚を手に入れました!】
 
 【現在のモノクマメダル枚数……94枚】
 
 ------------------------------------------------
 
 【軍事施設】
 
 この国にも一応軍隊はある。
 名義を違えているので、あくまで国防のためであり、原義での暴力的な意味合いには薄いが……
 
 でも、多分この島にあるこれは原義寄りの方だろう。
 必要以上に大きな砲台を携えたヘリコプター、家ごと押し潰してしまいそうなほどに大きなキャタピラの戦車、宝石箱のように手榴弾の詰め込まれたクランク……
 『制圧』という言葉が目的にふさわしいであろうだけのものがその場には並んでいた。
 
 
 あさひ「すごいっす! これ、全部動かせるっすかね〜?!」
 
 ルカ「おい、むやみに触んな……危ねえだろ」
 
 
 肩にランチャーを抱え込んだあさひから慌ててひったくる。
 なるほど冬優子の生前の気苦労がよく知れる。
 こいつの手綱を握るのはなかなかハードなことだろう。
 ……いや、あいつもしっかりと握れていたのかと言われると疑問符が浮かぶのだが。
 
 
- 758 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:35:51.81 ID:LUS5eqqE0
-   
 透「よっす」
 
 ルカ「浅倉透、お前らもここの調査中か?」
 
 透「まあね、あれ……見てよ」
 
 
 浅倉透が親指で後方を指差す。
 促されるままに視線をやると、そこにあったのは巨大な送風機。
 船のプロペラと言われても信じるような、あれほど大きな物は_______
 
 
 
 ______以前にも見たことがある。
 
 
 
 小宮果穂の命を奪ったあの悪趣味なおしおき。
 命の灯火を掻き消そうとしたあの送風機にどう見ても相違なかった。
 
- 759 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:37:04.66 ID:LUS5eqqE0
-   
 ルカ「な、なんでこれが……こんなところに……?!」
 
 透「……ここにある兵器っていうのは人の命を奪うためにあるんだろうね」
 
 雛菜「もしかして、この戦車とかもおしおきに使うようなの〜?」
 
 透「かもね」
 
 
 あんな砲身から放たれた弾に当たればひとたまりもないだろう。
 それこそ一瞬で消し炭に、生命というものを軽んじて弄ぶ、モノクマらしい趣向だ。
 
 
 あさひ「……? これ、なんっすかね?」
 
 
 並んでいる残虐な兵器に目を奪われていると、あさひが奥から何か手のひら大の大きさのものを引っ張り出してきた。
 先ほどの手榴弾の入っていたものとはまた別の収納からの様子。実際、その武器の色合いや形状も異なっている。
 
 
 ルカ「……あ?」
 
 
 手に取ってみると、ふざけた塗装。
 ネズミをモチーフにしただろうマスコットが下品な笑顔を浮かべていた。
 ジョークグッズか何かの類いだろう。
 
 そう思って放ろうとした、その時。
 
 
- 760 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:37:54.07 ID:LUS5eqqE0
-   
 
 
 透「_____待って」
 
 
 浅倉透がそれを制した。
 
 
 
 
 ルカ「なんだよ」
 
 透「それ……私のだ」
 
 ルカ「は? これが?」
 
 透「私の……黒幕への対抗策。ほら、前に話したでしょ、電波を断絶する、黒幕の干渉を拒むアイテム。それが、これ」
 
 
 ≪透「……そもそも、私が連絡取れてたのはモノクマからの干渉を拒める手段があったからなんだよね」
 
 透「この島にいる限り、モノクマには全部知られちゃうんだよね。何をしてるか、何を話してるのかも。全部」
 
 透「だから、そこら辺をクリアにする機能を持ったのがあったんだけど……今はもう使えない、取り上げられちゃったから」≫
 
 
 
- 761 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:38:57.02 ID:LUS5eqqE0
-   
 透「それは『エレクトボム』って言って、炸裂すると辺り一体に妨害電波を発生させてさ。電子機器の類は使えなくなるし、特定の電波以外は通さなくなっちゃう」
 
 ルカ「マジか……んなもんあったら、モノクマの監視カメラも」
 
 透「そういうこと。島の中に安息地が作れちゃう」
 
 透「大体半径百メートル? しかも球でね」
 
 ルカ「ドローンなんかが飛んでても、落ちちまうのか……」
 
 雛菜「でも、それモノクマに奪われてたんだよね〜? なんでこんなところにあるの〜?」
 
 あさひ「黒幕が研究し尽くした後、とかなんすかね?」
 
 ルカ「もう対処法を見つけて用済みだってことか?」
 
 あさひ「かもしれないっすね、わたしたちに返す理由が特にないっすから」
 
 ルカ「じゃあこれは無用の長物ってやつか……」
 
 透「……」
 
 雛菜「透ちゃん〜?」
 
 透「これ、とりあえず預かってていい?」
 
 ルカ「ん? まあ、元々お前のやつだしな……でも、むやみに使うなよ、さっきあさひが言った通り手の内は知られてるんだ」
 
 透「ん、オッケー」
 
 -------------------------------------------------
 【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】
 
 1.ワダツミインダストリアル
 2.モノクマ工場
 3.屋台村
 
 ↓1
- 762 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/11(土) 22:47:20.52 ID:G6swC7Fw0
-  1 
- 763 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:49:11.66 ID:LUS5eqqE0
-  1 選択 
 
 【コンマ判定52】
 
 【モノクマメダル2枚を手に入れました!】
 
 【現在のモノクマメダル枚数……96枚】
 
 ------------------------------------------------
 
 【ワダツミインダストリアル】
 
 ルカ「ここは、なんだ……?」
 
 
 外観は昔見た洋画に出てくる敵組織のアジトのようだった。
 蜂の巣のようにくっついた立方体の装飾が前衛的で、まるで内装を窺わせない。
 恐る恐る壁に取り付けられたボタンを押すと、仰々しい音と共にシャッターが持ち上がった。
 
 
 あさひ「中、入ってみるっすよ! ルカさん!」
 
 ルカ「あっ、コラ、走んな!」
 
 
 あさひが我先にと潜って駆けていくので慌てて跡を追う。
 金網と鉄板で作られた足場を勢いに任せて登っていく。
 天井の中央に取り付けられた大きな電灯に近づくにつれて、やがて視界は開け……ついに建物の中の全貌が私の視界に飛び込んできた。
 
 
- 764 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:49:47.60 ID:LUS5eqqE0
-   
 天井から垂れ下がる巨大なロボットアームは忙しなくその巨体に何か機械をあてがい火花を散らす。
 足元のケーブルは極太の静脈のように複雑に絡み合い、ネオン色の発光をしている。
 そうやって壮大で丁重な世話を受けているのは、私たちの背丈の何倍はあろうかというような人柄の機械。
 
 
 ルカ「なんだよ、これ……」
 
 モノケモノとはまた別の機体がそこに6体も並んでいたのである。
 
 あさひ「なんなんすかね、このロボット」
 
 ルカ「……碌なもんじゃねーのは確かだ」
 
 
 災害救助用なんかでは間違ってもない。
 人間で言う手と思しき部分にはガトリング銃のようなものが備わっており、足の部分はスプリンターのように異常な形状をしている。
 血に飢えた悪魔がこんな姿だと言われたら、すぐに飲み込めそうな悍ましき造形だ。
 
 
 智代子「このロボット……『エグイサル』って言うんだって」
 
 ルカ「なんだ、その……どこぞの男性グループを敵に回したようなネーミングは」
 
 
- 765 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:50:19.09 ID:LUS5eqqE0
-   
 智代子「あっちのコンピュータにあったデータなんだけど……どうやらコロシアイに私たちが従わなかった時の強要の武力手段みたい」
 
 智代子「通常モードとは別に嬲るための手加減モードまであって……用意周到って感じだったよ……」
 
 あさひ「モノケモノの改良版、みたいなもんっすかね」
 
 ルカ「……改悪だよ、こんなの」
 
 
 赤、緑、青、ピンク、黄色、白。
 ハの字に並んだ機体が私たちを見下ろしているこの空間はなんとも居心地が悪い。
 
 
 あさひ「……」
 
 ルカ「おい、もういいだろ。いくぞ」
 
 
 あさひは、私とは魔反対の反応を見せていたが。
 一体、このロボットの何がそんなに心を射止めたのか。
 本当に、よくわからないガキだな。
 
 -------------------------------------------------
 【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】
 
 1.モノクマ工場
 2.屋台村
 
 ↓1
- 766 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/11(土) 22:58:37.94 ID:G6swC7Fw0
-  1 
- 767 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:00:02.52 ID:LUS5eqqE0
-  1 選択 
 
 【コンマ判定 94】
 
 【モノクマメダル4枚獲得しました!】
 
 【現在のモノクマメダル枚数……100枚】
 
 ------------------------------------------------
 
 【モノクマ工場】
 
 もしこの世界に醜悪な建造物を決めるコンテストがあるなら、この建物はかなり上位に食い込むだろう。
 モノクマそのものを象ったドーム状の天井が、汚く濁った黒い煙を吐き出して空を穢す。
 見ているだけで胸やけがしそうな光景だ。
 
 
 あさひ「これ、何作ってるっすかね?」
 
 ルカ「……まあ、碌なもんじゃねえだろうな」
 
 
 工場には倉庫も隣接して建てられているらしい。
 一応後で確認しておいた方がいいか?
 
- 768 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:01:07.92 ID:LUS5eqqE0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【工場内部】
 
 ルカ「な、なんだよ……これ……!?」
 
 
 工場に大蛇のように縦横無尽に張り巡らされたベルトコンベア。
 その上に載せられているのは寸胴な形をした素体。
 それがコンベアを進むにつれて毛を纏い、彩色され、そして頭部や手足を身につけて行く。
 最後には腹部に不細工な臍を取り付けて完成。
 
 
 そこで作られていたのは_____
 
 
 
 
 あさひ「モノクマの工場っす!」
 
 ルカ「おいおい……なんだよこれ……」
 
 
 
 確かにあいつはスペアの存在を仄めかしてはいたが、そんなレベルの話じゃない。
 私たちの頭数の何十倍かという数のモノクマが息を吸って吐いての間に量産されているのだ。
 
 
- 769 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:02:48.92 ID:LUS5eqqE0
-   
 あさひ「あれ、全部一つ一つに爆弾が埋め込まれてるっすよ?」
 
 ルカ「……」
 
 あさひ「それに、武器もちゃんと全部に取り付けられてるし……あ、カメラもスピーカーも!」
 
 
 立ち眩みがした。
 この島に逃げ場はない。そんなことは分かり切っていることだと思っていた。
 でも、まだまだ認識が甘かった。
 私たちに課せられているのは制限付きの区画ではなく、絶対的な監視と拘束に紐づけられた、檻。
 視界の端々まで連なる格子が、途端に実態を伴って現れたのだ。
 その壮大さと荒唐無稽さの前に、膝を折る以外の反応など示せようもない。
 
 
 モノクマ「やあやあ! ボクの生まれ故郷にようこそ!」
 
 あさひ「あ、モノクマ! ここで作られてるのって……」
 
 モノクマ「うん、ボクそのものだよね。いまこうやってお話している『ボク』と性能に何ら遜色ないボクが今この瞬間も量産されているんだよ」
 
 あさひ「じゃあ、モノクマはいくら破壊しても意味ないってことっすか?」
 
 モノクマ「なんでそんな物騒な質問をするのかは置いといて、実際その通りだね。ゴキブリ以上の繁殖能力を持つボクを一体一体潰しても無駄だし、そもそも校則違反でオマエラが死んじゃうよ」
 
 ルカ「……こんなに量産して、お前はいったい何を企んでんだよ……!」
 
 モノクマ「企む? うーん、何って言われてもなぁ……しいて言うなら、世界デビューかな?」
 
 ルカ「はぁ?」
 
 モノクマ「これだけの数があれば、世界中にばらまいても足りるでしょ? モノクマの名をワールドワイドにするその足掛かりにでもしようかな!」
 
 (こいつは何を言ってるんだ……)
 
 あさひ「……」
 
 あさひ「ねえ、モノクマ。あっちの部屋は何っすか?」
 
 モノクマ「ん? ああ、あれはバックヤードで、別に何も面白いものはないよ? 掃除用具とか、そういうのの簡易的な物置さ」
 
 あさひ「へぇ……」
 
 
 モノクマの馬鹿げた数と、馬鹿げた展望とに頭痛を起こしながら私は工場を後にした。
 
 -
 
- 770 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:03:29.40 ID:LUS5eqqE0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【工場倉庫】
 
 
 ルカ「……あいつの言ってた世界進出とやら、案外本気なのか」
 
 
 倉庫を開けた瞬間にげんなりする。
 そこら中に転がるのはモノクマの等身大パネルに、マスコットサイズのぬいぐるみ。
 雑多な用品も並んではいるものの、埃をかぶっているあたり普段から使われてはいない様子。
 
 
 あさひ「何か使えそうなものとかないっすかね?」
 
 ルカ「……特にはない、か」
 
 
 辺りを一応調べては見るが、何も実用的なものはなさそうだ。
 工具などの専門的なものはそもそも使い方も分からない。
 ここは、そういう空間があったで納得するしかなさそうだ。
 
 
- 771 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:04:43.88 ID:LUS5eqqE0
-   
 そう諦めて、出ようとしたその時だった。
 1枚のすすけたファイルが視界に入る。
 青色のファイルには、簡素なテープが貼り付けられ、マーカーペンで何か書かれてある。
 
 
 ルカ「『ジャバウォック島再開発計画』……?」
 
 あさひ「……? 変っすね、この島ってもともと観光地だったっすよね? そんな場所で再開発をするっすか?」
 
 ルカ「……ちょっと読んでみるか」
 
 
 パラパラとめくって確かめていく。
 そういえば、この島に来てまだ日も浅い時……風野灯織が何か言っていた気がする。、
 
 
 ≪灯織「皆さんは中央の島の公園には行かれましたか?」
 
 夏葉「ええ、確か巨大な銅像が置いてあったわね。動物を模したものだったはずよ」
 
 愛依「あー! あのあさひちゃんが登ってたやつ!」
 
 にちか「えぇ……?」
 
 灯織「あの銅像を見た時に、以前聞いた話を思い出したんです。太平洋に浮かぶ小さな島で、風光明媚な常夏の楽園という呼び方をされるにふさわしい島の存在を……」
 
 灯織「中央の小さな島を中心にして、“5つの島”から構成されるその島々は同じく“神聖な5体の生物”を島の象徴にしているらしいんです」
 
 にちか「えっ……?! そ、それって……」
 
 灯織「確か、その名前は【ジャバウォック島】」
 
 雛菜「ふ〜ん? 雛菜はあんまり聞き覚えない感じですね〜」
 
 夏葉「……以前父の海外赴任の際に一度耳にした名前だわ。でも灯織、それっておかしくないかしら」
 
 果穂「おかしい……ですか?」
 
 灯織「はい……ジャバウォック島は確か……もう人が住んでいないはずなんです」
 
 恋鐘「ふぇ? でも実際島には誰もおらんよ?」
 
 摩美々「そうじゃなくて、管理する人間もいないぐらいの廃島ってことでしょー?」
 
 灯織「はい……こんなに環境が整備されているというのがなんだか気になって」≫
 
 
- 772 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:05:28.65 ID:LUS5eqqE0
-   
 この島はもともと廃島になっていた、それなのにこれほどの設備環境が、手入れをされた状態で残っている。
 希望ヶ峰学園歌姫計画とやらで連れてこられたと聞いていた私たちは、あれほどの資金のある組織ならと納得していたのだが……
 
 このファイルに記されている開発元の名前は『希望ヶ峰学園』ではない。
 
 
 ルカ「……『未来機関』ってのはなんだ?」
 
 あさひ「……このロゴ、何かで見たことあるっすね」
 
 ルカ「私もだ……でも、一体……どこで見た?」
 
 
 妙に角ばった書式の2文字。
 それとにらめっこすること数十秒。
 凝り固まった記憶の奥底に、該当するものを掘り出すことに成功する。
 
 
 ≪ルカ「とりあえず近づいてみるぞ」
 
 千雪「あっ……待って!」
 
 
 近づいてみたが、あるのは私の身長を優に超す大きさの扉。
 しかもドアノブがあってそれをひねって開けるような単純な扉ではなく、もっと電子的で近未来的な……全く見なれない扉だ。
 
 
 ルカ「……これ、なんなんだ?」
 
 
 しかもその扉の表面にはデカデカと『未来』の二文字。
 私たちの良く知る漢字で掘られている……ということは、この遺跡は私たちと同じ文化圏のものだということになる。それもまた妙な話だ。≫
 
 
 
- 773 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:06:32.87 ID:LUS5eqqE0
-   
 ルカ「……第二の島の、遺跡か……!」
 
 あさひ「ああ、あのツタの絡まってたところっすね!」
 
 ルカ「あの遺跡……何やら厳重な装備がされてたよな……そういえば、あそこのパスワードも結局分からずじまいだよな」
 
 あさひ「……ルカさん、これどういう意味っすかね?」
 
 あさひ「ジャバウォック島の中央に位置する行政施設を改築し、未来機関の活動拠点にする……そんな建物、中央の島にあったっすか?」
 
 ルカ「……いや、あの島にはモノクマロックと、モノケモノの入ってた銅像しかない。それ以外には、何も無いぞ」
 
 あさひ「……それに、ほかにもおかしなところがあるっすよ。手付かずの無人島になっていたこの島で、被検体を見つけたとか……敵対組織が根城にしてたとか……ちんぷんかんぷんっす」
 
 ルカ「被検体……何か実験でもしてたのか?」
 
 ルカ「……」
 
 ルカ「……!」
 
 
 実験、その言葉を口にした瞬間に昨夜の写真がフラッシュバックする。
 あそこに収められていたのは、前回のコロシアイとやらで生き残ったとされる連中が昏睡している私たちを眼前に白衣を着こんだ姿。
 実験と言う言葉に当てはめるならあれ以上にうってつけの材料はない。
 
 
 そしてそうなると、ここにあるもう一つの言葉『敵対組織』というものが当然紐づいてくる。
 もしかすると、あのコロシアイを生き延びた5人はその組織とやらに所属していて未来機関との間に何か衝突を起こしていたのではないか?
 
 
 
 となると……私たちにとって味方となるのは、そのどちらなんだ?
 
 
 
 
- 774 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:06:59.64 ID:LUS5eqqE0
-   
 ルカ「……」
 
 
 でも、その疑問を口にすることはできない。
 冬優子が託した手掛かりは不安と疑念を振りまくためのものではない。
 真実にたどり着くための一ピース、切りどころはしっかりと見極めないと。
 
 
 まだ、あさひにも言うべきじゃない。
 
 
 ルカ「それにしても、聞いてた話とあまりにも違うな……この様子だと、無人島ですらなさそうだよな」
 
 あさひ「うーん……人が過ごしてたっぽい形跡……あんまり感じなかったっすけどね……」
 
 ルカ「この島で言ってるジャバウォック島と、私たちのいるジャバウォック島って本当に同じものなのか……?」
 
 
 ふつふつと湧き上がる疑問を前に、首をひねるしか出来ないのがはがゆい。
 せめてこの島の事を知っていた風野灯織か有栖川夏葉でも残っていれば話はまた違ったんだが……
 
 -------------------------------------------------
 【残り選択肢が一つになったので自動で進行します】
 
 【コンマ判定によりモノクマメダルの獲得枚数を決定します】
 
 ↓1
- 775 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/11(土) 23:14:49.42 ID:G6swC7Fw0
-  むん 
- 776 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:20:06.90 ID:LUS5eqqE0
-   
 【コンマ判定 42】
 
 【モノクマメダル2枚を手に入れました!】
 
 【現在のモノクマメダル枚数……102枚】
 
 ------------------------------------------------
 
 【屋台村】
 
 
 恋鐘「あ、二人とも〜! ちょっと食べて行かんね〜?」
 
 
 黒と灰色で作られた無機質な街並みの中に突然姿を現す、人々の活気ある声が聞こえてきそうな軒の数々。
 そこかしこから香ばしい香りが鼻をくすぐり、提灯の明かりも目を引いた。
 
 
 ルカ「よう……ここは?」
 
 恋鐘「見ての通りたい。でも、お祭りとかをやっとる雰囲気じゃなかね」
 
 あさひ「とんこつラーメン、おでん、焼き鳥……なんだか社長さんが好きそうなものばっかりっす」
 
 ルカ「梯子酒でもしろってか……?」
 
 恋鐘「別にここにならんどる食べ物に害はなかよ、小腹が空いたらつまんでもいいと思うばい」
 
 
 試しに近くのおでんの屋台から大根を引き抜いて口に運ぶ。
 ……うまい。
 出汁がよく染み込んでいるし、型崩れもしていない。
 島の外の店にも全く引けを取らない味だ。
 
 ……でも、どうして?
 なんでこんなところに食べ物を用意する必要が?
 
 
 ルカ「何か手掛かりの類いはなかったのか?」
 
 恋鐘「んー……ざっと見た感じは特にはなさそうたい」
 
 ルカ「おいおい……いよいよなんのためなんだ、これ」
 
 あさひ「モノクマ、無意味なことも好きっすからね」
 
 ルカ「にしてもなぁ……」
 
- 777 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:21:10.92 ID:LUS5eqqE0
-   
 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 
 最後の島の探索は私たちに更なる謎と威圧感とを齎した。
 圧倒的な武力を前にして私たちに抵抗の手段などないだろうし、この島の暮らしに希望的な展開は待っていない。
 それを改めてまざまざと見せつけられたような気分だ。
 
 
 あさひ「うーん、手がかりないっすね……」
 
 
 冬優子に押しつけられたガキの世話にも手応えがないし、美琴のことは言うまでもない。
 私たちの背中にのしかかるものばかりが増えていく。
 パンクしてしまうのも時間の問題といったところか。
 
 
 ルカ「……病んだ」
 
 
 口癖のように、乾いた悲鳴をあげた。
 
 
 あさひ「ルカさん?」
 
 ルカ「ああいや……とりあえずレストランに戻るか、情報共有だろ」
 
 あさひ「はいっす」
 
 
- 778 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:22:26.99 ID:LUS5eqqE0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【ホテル レストラン】
 
 智代子「モノクマ……黒幕は、モノケモノ以上の武力を持ってたよ。量産されるモノクマに、新型の人型破壊兵器……軍事基地のものも合わせたらひとたまりもないかも」
 
 恋鐘「それとは対照的になぜか屋台が並んでいる区画があったばい、何の目的があってあんなもん作ったとやろ」
 
 
 レストランに持ち帰った情報も、どれも不穏なものばかり。
 口々の報告のいずれもその言葉尻は重たい。
 
 
 あさひ「そういえばルカさん、あの工場の倉庫で見たファイルの話はいいんすか?」
 
 ルカ「……! ああ、そうだったな」
 
 雛菜「ファイルですか〜?」
 
 ルカ「ああ、あの悪趣味な造形した工場。そのすぐ隣にはちいさな倉庫があってな、そんなかで見つけたやつなんだよ」
 
 ルカ「『ジャバウォック島再開発計画』、ってな」
 
 智代子「再開発……? あれ、でもジャバウォック島はそもそも廃島だったんだよね?」
 
 恋鐘「そいを希望ヶ峰学園が買い取って改造した島とやろ?」
 
- 779 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:22:56.68 ID:LUS5eqqE0
-   
 ルカ「だが、そこに書いてあった内容は大違いだ。どうみてもこの島には人が住んでいるコミュニティが存在していたし、更には……未来機関の敵対組織もいたらしい」
 
 雛菜「未来機関……なんか聞いたことだけはあるかも〜」
 
 透「第二の島の遺跡、あれだよね」
 
 ルカ「ああ、厳重なロックでとても出入りはできやしねーけどな。浅倉透、お前は何か知ってるか?」
 
 透「……未来機関自体はあんまり。島の外のことはあまり知らないし」
 
 雛菜「ふ〜ん……」
 
 あさひ「なんだかわたしたちの知ってる情報とチグハグな感じがして気持ちが悪いっす」
 
 ルカ「だな……まあ分かっちゃいたが、答えを与えてはくれないのがこの島だ。手がかりを探しながら考えるしかねー」
 
 
 未来機関の話を持ち出しては見るものの、それを知っている人間など要るはずもなく。
 結局のところ私たちはただ行動範囲を広げただけで、それ以上の意味もそれ以下の価値もない。
 結局はこの鬱屈とした南国生活を延長するほかないのである。
 
 
- 780 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:24:08.43 ID:LUS5eqqE0
-   
 ルカ「……なあ」
 
 ルカ「誰か、美琴の姿は……見なかったか?」
 
 
 そんな中で私は切り出した。
 聞いたところでどうにかなるわけでもないのに、それでも縋ってしまうのは我ながら情けないと思う。
 第4の島ではジェットコースターと言う明確な協力の動機があったが故、あいつの姿を追うことができたが、今回はあいつの影を掴むことすらできなかった。
 今朝がたレストランで見てから、それっきり。
 今のあいつは、あれだけの物騒な品の数々を見て何を思っているのだろうか。
 
 
 智代子「……ごめん、ルカちゃんには悪いけど美琴さんは見かけてないよ」
 
 恋鐘「美琴も第5の島の探索はしとったはずやけん、誰か一人でも見とってもおかしくなかと思うけど……」
 
 透「……見てないかな」
 
 雛菜「うん、ここの人たち以外は見かけてないです〜」
 
 あさひ「わたしたちもっすよね」
 
 ルカ「……チッ」
 
 
 闇の中に身を隠す美琴、それが異様に不気味で胸がざわついた。
 かつての相方に向ける感情としてはあまりにもそれはザラついていた。
 
 
 
 
- 781 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:24:59.08 ID:LUS5eqqE0
-   
 ルカ「……こんなこと言いたかねーけどよ、今の美琴はマジで狂ってる。どこで誰に刃を向けるとも限らねーんだ。警戒しとけよ」
 
 あさひ「……」
 
 
 無意識なんだろう、あさひは私の裾を握っていた。
 ユニットの仲間の死を2回も経験したこいつも、自覚しないうちに精神の衰弱を迎えている。
 他の連中も下唇を少し強く嚙んだようにして、身を寄せ合う。
 どこからやってくるかもしれない外敵に対する、生物の本能から来る防衛機制だ。
 
 
 透「あ、それじゃあ」
 
 
 そんな空気の重たいレストランで、浅倉透が一歩踏み出した。
 懐を少しまさぐって、少し大きめな石ぐらいの大きさの巾着をいくつか取り出した。
 それを机の上に並べて、私たちを見やった。
 
 
 透「これ、お守り……全員分あるからさ、使ってよ」
 
 
 不細工な装丁には283プロダクションのマークが縫い付けてある。
 これは、こいつ本人がやったのだろうか?
 私はその所属ではないのだが、一応は手に取って証明に掲げてみる。
 
 
- 782 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:25:54.20 ID:LUS5eqqE0
-   
 あさひ「これ、何が入ってるっすか?」
 
 透「中は……今は見ないで、いざというときに使ってほしい」
 
 智代子「いざというときって……」
 
 恋鐘「自分の命ば危なくなったときってことたい……?」
 
 透「それは……任せた。でもきっと、みんなの役に立つから」
 
 
 開けるなのお達し通り、かなり厳重に巾着の口も縫い付けてある。
 よほどがない限りはこのままにしておけと言うことなのだろう。
 私は素直に従い、懐にしのばせることにした。
 
 
 透「……前に言ってたでしょ。もう事件は起こさせないって」
 
 
 ≪ルカ「言っただろ、お前の目論み通りにはならねえって」
 
 モノクマ「なぬ?」
 
 ルカ「例えこの中にまだ殺しを企んでる奴がいようとも、他の6人でそれを封殺する。私たちはもう誰も死なさない、事件なんて起こさせない」》
 
 
- 783 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:26:38.02 ID:LUS5eqqE0
-   
 透「私も、そうしたい。もう誰にも死んでほしくなんかないから」
 
 透「生き残ろ。絶対」
 
 智代子「うんうん! 透ちゃん、ありがとう! 透ちゃんの想いのつまったお守りがあると心強いよ!」
 
 恋鐘「うちもおんなじ気持ちばい! ここにいるみんなで揃って島を出る、これはもう確定事項やけんね!」
 
 
 ここにいるみんな、にここにいない一人が含まれるのか尋ねるのはやめておいた。
 もしそれに漏れているのなら、枠に戻してやるのはそもそも私の役目だから。
 
 それができるのかどうか、正直なところ自身は毛ほどもないが……
 
 
 ルカ「このお守りが、それを助けてくれる……だろ?」
 
 透「うん、神様が見てくれるよ。プリーズ、ご加護」
 
 
 
 ……自覚がない皮肉が、少しだけ胸を刺した。
 
 
 
 
- 784 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:27:26.90 ID:LUS5eqqE0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【ルカのコテージ】
 
 日が沈んで夜が覆い、外は草木の息吹だけが響く。
 この島に私たち以外の人気はない。
 人数が少なくなるにつれ、その静寂は増す一方だった。
 
 そんな静寂の中に、身を隠して殺意を研ぎ澄ます。
 あいも変わらずも眩い満月を見上げると、自然とお守りを握る手にも力がこもった。
 
 神頼み、ではないが標にはなる。
 私は一人で戦っているわけではないというだけの指標で、心もとはない。
 それでも妥協して、私は扉に手をかけた。
 
 
- 785 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:28:45.44 ID:LUS5eqqE0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【第5の島】
 
 この島はやっぱり異様だ。
 他の島と違って草木が風に靡くような音は聞こえてこない。
 コンクリートで取り囲まれた環境は、うるさすぎるほどの静寂を生む。
 自分の靴音だけが響く静けさに、思わず耳を覆った。
 
 
 ______ガガ
 
 
 音が指の隙間から飛び込んできた。
 遠くの方から、怪獣が一歩を踏み出したような音。
 思わず首を振り回して音の主を探してしまう。
 
 何度首を振ってもどれだけ目を凝らそうともすぐにはわからない異音に、自然と足が動き出す。
 
 その音は少しずつ、ゆっくりと大きくなり、近づいている。
 
 「……美琴!」
 
 その名前を口にしながら、駆け出した。
 
 
- 786 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:29:15.48 ID:LUS5eqqE0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【ワダツミインダストリアル】
 
 その音は、夜の裂け目から。
 高く高いシャッターの隙間から見える光の奥で影が動くのが目に入る。
 照明を足元から浴びているのか、その影は異様に大きく、そしておおよそ人とは思えない輪郭をしていた。
 妙に角ばった形に、細長い線が付きまとう。
 シルエットだけでは何か伺い知れず、息を殺しながらシャッターに近づいた。
 気取られないように、そっと首を伸ばした。
 
 ____ガガ
 
 聞こえていた異音は機械音。
 ゆっくりと動かすその腕と、処理をするCPUが呟く声。
 
 ____ガガ
 
 悠然と我が物顔で手足を動かしているそれは、先ほど称した通り怪物そのものに見えた。
 腕の先には尖った爪のような備わり、どっしりとしたその脚は家屋も踏み倒してしまいそう。
 その怪物に、私は見おぼえがあった。
 
 つい昼方に初めて見たばかり……
 私たちが黒幕の持つ力について、その認識と恐怖とを新たにした火付け役。
 
 
 
 ……エグイサルが、動いていた。
 
 
 
- 787 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:30:01.58 ID:LUS5eqqE0
-   
 「……こ、こいつ動くのかよ……!?」
 
 まだ実践で投入されることはないだろうと高をくくっていた。
 反抗的な口は聞きつつも、コロシアイには参加してしまっていた私たちは黒幕にとって脅威でも何でもないはず。
 そう思っていた。
 
 でも、とっくにお相手は痺れを切らしていたようだ。
 今すぐにでもと言わんばかりの暴力を目の前にして、思わずその場にへたり込む。
 
 一瞬にして全身の血の気が引いた。
 と、同時に冷めていく体温の中で少しだけ脳は醒めていた。
 ここまでの生活の中で麻痺していた部分が、かえって役に立つ。
 恐怖よりも先に立った冷静が、眼球を動かした。
 
 今エグイサルが動いているということは、動かしている人間がいるということ。
 
 そして、それは私たちにとっての敵に他ならないだろう。
 狸なのか、はたまた黒幕なのか……なんにせよそれを知っておくことには大きな意味がある。
 息を呑んで目を見張った。
 
 ……でも、そこに人の影はなかった。
 エグイサルの足元、奥、整備のための鉄橋、隅々まで目を凝らしても人の姿はない。
 
 
 「もしかして……入ってやがんのか?」
 
 
 となると、残される空間はただ一つ。
 エグイサル、そのものの内部だ。
 コックピットの中になら、その姿を潜ませることができる。
 でも、どうやってその正体を探ればいいというのだろうか。
 今ここにいるのだって危険なのに、そもそも近づくなんて自殺行為。
 
- 788 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:31:13.78 ID:LUS5eqqE0
-   
 
 「……チッ」
 
 歯がゆさに舌打ちした。
 
 
 
 
 ……それがまずかった。
 
 
 
 
 _____ブー! ブー!
 
 
 「な、なんだ……?!」
 
 何がきっかけになったのかはわからない。
 だが、私の舌内を皮切りに辺り一帯に鳴り響きだすブザー音。
 侵入者を感知したと声高に叫ぶそれに呼応して、地響きが始まった。
 
 
 エグイサルが、こちらに近づき始めていた。
 
- 789 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:32:40.69 ID:LUS5eqqE0
-   
 (ま、まずい……!)
 
 見つかったら私なんて二秒で肉塊だ。
 慌てて辺りに身を隠せるところを探す。
 
 ……が、見つからない。
 そんなもの、あるはずがない。
 この島には自然がそもそも無いのだから。
 開けた無機質な視界には、障害物と呼べそうなもの一つ見当たらなかった。
 
 (……終わった)
 
 万事休す、その言葉が脳裏によぎった瞬間。
 
 
 
 
 
 バッ!!
 
 
 
 
 「……!?」
 
 
 私の身体は強い力で引っ張られ、その場に崩れ落ちた。
- 790 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:33:45.36 ID:LUS5eqqE0
-   
 
 そしてその直後、真っ暗闇に染まる視界。
 思わず抵抗しようともがく。
 
 
 
 「……動かないで、じっとして」
 
 
 
 そんな私を厳しく諭すように、耳元で呟いた。
 
 
 
 「……美琴」
 
 
 
 
 その声には、聞き覚えがあった。
 
 
 「大丈夫、このシートの裏に隠れていれば見つからないから」
 「な、何を……」
 「夏葉さんと同じ……赤外線カメラは、アルミシートの裏にあるものを判別できない」
 「……!」
 「……静かにしてて」
 
 
 私に覆いかぶさるようにしているその重みに、身をゆだねた。
 
 
- 791 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:34:12.87 ID:LUS5eqqE0
-  ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 
 
 そこから何分が経っただろうか。
 辺りに鳴り響いていたブザーが鎮まり、地響きも完全に収まった。
 とりあえずは、凌いだということなのだろう。
 
 私の視界にもゆっくりと星明りが差し込んでくる。
 
 
 「……危ないところだったね」
 
 
 ゆっくりと視界がその明るさに慣れていく。
 目の前に立つ長身のシルエット、その全貌も見えてきた。
 グラデーションがかった毛先、赤と黒のブルゾン、あのころと変わらないペンダント……
 
 
 「美琴……オマエ、どうしてこんなところに」
 
 
 やっぱり緋田美琴に変わりない。
 
 
 「ちょうど用事があって立ち寄ったところだったの。でもちょうどよかった、ルカには死んでほしくないから」
 (私、には……)
 
 
 その瞳には、かつてのハイライトはもう灯っちゃいない。
 
 
 「用事ってなんなんだよ、こんな島に何の用事があるって……」
 「分かってるでしょ?」
 「……!」
 
 
 美琴の肩には頑丈なつくりをしていそうなバッグがかかっていた。
 最近はやりのフードデリバリーのカバンを小ぶりにした代わりにポケットを増やした感じだ。
 そのポケットの所々から、何か柄のようなものが見えているのが、嫌。
 
 
 「私も口だけじゃいられないから。そろそろちゃんとしないと」
 「ざけんな……冬優子の裁判の時の私の言葉、忘れたとは言わせねえぞ……!」
 「殺しを誰かが企んでも、残りの6人で止める、だっけ?」
 「そうだよ! だから、美琴もいい加減に____」
 
- 792 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:35:28.40 ID:LUS5eqqE0
-   
 
 
 
 
 
 「本当に止められると思ってる?」
 
 
 
 
 
 
- 793 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:36:08.09 ID:LUS5eqqE0
-   
 美琴はこれまでと違って、私の前から逃げようとはしなかった。
 むしろその逆、覗き込むようにしながら、一歩ずつ距離を詰めてくる。
 思わず私はその迫力の前にあとずさり。
 
 
 「あ、当たり前だろ……! 美琴だって、体格は私たちより大きいかもしれないけど全員で押さえつけられたらどうしようもないし……!」
 「……ルカ。さっきの、見たよね?」
 
 
 一歩、一歩。
 
 
 「さっきの……だと……?」
 「エグイサル。もし、あれを使って誰かが誰かを殺そうとしたとして、止められるの?」
 「は、ちょっと待て……」
 「ファイナルデッドルームなんかもあったよね、あそこにも武器は沢山」
 「み、美琴……!」
 
 
 いよいよ背中に壁がぶつかった。
 
- 794 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:37:06.53 ID:LUS5eqqE0
-   
 
 
 
 
 「無理だと思う。私は」
 
 
 
 
 
 
- 795 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:38:39.73 ID:LUS5eqqE0
-   
 壁にもたれかかって、ズルズルとその場に座りこんだ。
 私を見下ろす美琴の背後で満月が笑っている。
 
 
 「美琴……」
 
 
 名前を呟くしかできなかった。
 手足から力が抜けきってしまっていたから。
 
 
 「それじゃあ、おやすみ。ルカ」
 
 
 アルミシートを乱雑にまとめ上げて、背を向けた。
 美琴の姿はすぐに闇夜に呑まれて輪郭を見失う。
 
 
 「……」
 
 
 30分ほど、そこに座っていた。
 
- 796 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:47:00.09 ID:LUS5eqqE0
-   
 というわけで本日はここまで、物語の終わりの始まり、5章がついに幕をあけました。
 なかなか5章は事件もその後の展開も考えるのにカロリーを使いましたが、楽しんでいただけるものになっていると思います……!
 どうかお付き合いください!
 余談ですが今章のチャプタータイトルは「アイオーン」のラテン語表記と言う力技です。
 滅茶苦茶好きな曲なので、なんとか章題にねじ込みたかった……
 
 次回更新は6/13(月)の21:30前後を予定しています。
 それではまたよろしくお願いします、お疲れさまでした。
 
- 797 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:48:14.60 ID:LUS5eqqE0
-   
 【5章段階での主人公の情報】
 
 ‣習得スキル
 ・【花風Smiley】
 〔毎日の自由行動回数が2回から3回になる〕
 
 ・【アンシーン・ダブルキャスト】
 〔学級裁判中誤答するたびにコトダマの数が減少する〕
 
 ・【つづく、】
 〔学級裁判中発言力がゼロになった時、一度だけ失敗をなかったことにしてやり直すことができる(発言力は1で復活する)〕
 
 ・【cheer+】
 〔発言力ゲージを+5する〕
 
 ・【ピトス・エルピス】
 〔反論ショーダウン・パニックトークアクションの時コンマの基本値が+15される〕
 
 ‣現在のモノクマメダル枚数…102枚
 
 ‣現在の希望のカケラ…15個
 
 ‣現在の所持品
 
 【ジャバの天然塩】×2
 【ファーマフラー】
 【ジャバイアンジュエリー】
 【オスシリンダー】×2
 【多面ダイスセット】
 【家庭用ゲーム機】
 【携帯ゲーム機】
 【マリンスノー】
 【ジャパニーズティーカップ】
 【絶対音叉】×2
 【七支刀】
 【オカルトフォトフレーム】
 
 
- 798 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:48:41.02 ID:LUS5eqqE0
-   
 ‣通信簿および親愛度
 
 【超高校級の占い師】風野灯織…0【DEAD】
 【超社会人級の料理人】 月岡恋鐘…5.5
 【超大学生級の写真部】 三峰結華…0【DEAD】
 【超高校級の服飾委員】 田中摩美々…0【DEAD】
 【超小学生級の道徳の時間】 小宮果穂…1.0【DEAD】
 【超高校級のインフルエンサー】 園田智代子…6.0
 【超大学生級の令嬢】 有栖川夏葉…12.0【DEAD】
 【超社会人級の手芸部】 桑山千雪…10.5【DEAD】
 【超中学生級の総合の時間】 芹沢あさひ…8.0
 【超専門学校生級の広報委員】 黛冬優子…12.0【DEAD】
 【超高校級のギャル】 和泉愛依…0【DEAD】
 【超高校級の???】 浅倉透…12.0
 【超高校級の帰宅部】 市川雛菜…5.5
 【超高校級の幸運】 七草にちか…0【DEAD】
 【超社会人級のダンサー】 緋田美琴…4.0
 
- 799 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:21:46.54 ID:/lNWkEhY0
-  ____ 
 ______
 ________
 
 =========
 ≪island life:day 23≫
 =========
 
 ------------------------------------------------
 
 【ルカのコテージ】
 
 ようやっと手足の実感が戻ってきた。
 萎びてしまった気力から、シワシワにでもなっていないかと思ったがさすがにそれは無かった。
 ただ、手足はなんだかいつも以上に細く見えて血管が鮮明に見えた。
 
 
 「……気色悪い」
 
 ピンポーン
 
 
 そう呟いたところでインターホンが鳴る。
 気色悪い指で髪をかき上げながらドアを開けた。
 
 
 あさひ「ルカさん、おはようっす!」
 
 ルカ「……あ?」
 
 
- 800 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:22:51.48 ID:/lNWkEhY0
-   
 あさひ「なんでそんな不思議そうなんっすか? 朝ご飯食べないっす?」
 
 ルカ「いや、そりゃオマエ……つい昨日お迎えはいらねえって」
 
 あさひ「冬優子ちゃんはしてなかったってだけっすよ? ルカさんは一緒に行きたいのかなって」
 
 ルカ「……そんなわけねーから、その言いぐさはやめろ。気色悪い」
 
 あさひ「……?」
 
 ルカ「わかった、わかった。とりあえず準備するから、中で待っとけ」
 
 あさひ「はいっす!」
 
 
 無邪気な返事をするあさひ。
 こいつに絡まれているところをほかの人間に見られたくないからあわてて部屋の中にしまい込んだ。
 ……もう見るようなやつもそんなに残っちゃいないのに。
 
 
- 801 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:25:34.68 ID:/lNWkEhY0
-   
 ルカ「いいか? どこも触んなよ、準備はすぐ終わんだから!」
 
 あさひ「はいっす!」
 
 
 相変わらず信用の置けない明朗な返事にため息。
 ベッドの上に座り込ませてそそくさと支度を開始した。
 
 
 あさひ「……」
 
 あさひ「……」
 
 あさひ「……」
 
 
 ずっと背後のあさひが気にかかって仕方ない。
 別に見られて困るようなものもないのだけど、自分の空間に人が割り込むというのはそれだけでかなりの異物感だ。
 ましてこいつともなるとその異物感も倍に増す。
 どこかで爆発でも起きるんじゃないかというざわつきばかりが加速した。
 
 
 ルカ「……あ」
 
 あさひ「ルカさん、どうしたっすか?」
 
- 802 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:26:29.12 ID:/lNWkEhY0
-   
 見られちゃまずいもの……あった。
 裁判終わり、ポストに投函されていた冬優子からの手紙。
 あれに同封されていた写真……
 見られるわけにはいかない。
 コロシアイを防ぐのを本格化しようという段階で、前回のコロシアイの生き残り連中が私たちに何かを仕掛けていた写真は不信を振りまく種になりうる。
 まだことの詳細がわからぬうちに見せびらかすわけにはいかない。
 
 
 ルカ「別に、なんでもねーよ」
 
 あさひ「……? そっすか?」
 
 
 とはいいつつ強引にベッドの脇のキャビネットから封筒を引っ張り出して自分の懐に忍ばせた。
 ガッツリその動作を見られはしたものの、中身は見られていないはず。
 
 
 ルカ「おら、準備できたぞ。さっさと出ろ」
 
 あさひ「入れって言ったり出ろって言ったりよくわからないっす」
 
 ルカ「飯食うんだよ、ほら!」
 
 
 そしてとにかく秘密からは目を逸らさせる。
 準備は中途半端になってしまったが、まあこの島にはパパラッチなんかもいない。
 多少不恰好でも許されるだろう。
 今はあさひの関心をよそに飛ばす方が優先される。
 
 私はあさひの背中を無理に押して、後ろ手に扉を閉めた。
 
 
 ルカ「ついてきな」
 
 あさひ「……? はいっす」
 
- 803 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:28:11.73 ID:/lNWkEhY0
-   
 
 
 
 
 あさひ「……ルカさんも、もらってたんだ」
 
 
 
 
 
- 804 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:29:40.15 ID:/lNWkEhY0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【ホテル レストラン】
 
 恋鐘「おはよ〜、ルカ! 今日もあさひと一緒ばい?」
 
 あさひ「恋鐘ちゃんおはようっす! 今朝はわたしが迎えに行ったっすよ!」
 
 透「おー、懐かれてるじゃん。やるね、女ったらし」
 
 ルカ「最悪の言葉選びだな」
 
 
 レストランに着くと昨日と同じ8人掛けの机に既に他の連中が腰掛けていた。
 私とあさひも促されるままに席に着く。
 
 
 ルカ「……そういえば、昨日あの後美琴に会った」
 
 智代子「えっ?! 美琴さんと?!」
 
 ルカ「ワダツミインダストリアル、あそこで開発されてたエグイサルが夜の間に誰かに動かされててよ。その現場で美琴に鉢合わせた」
 
 智代子「じゃ、じゃあ美琴さんがエグイサルを操縦してたの……?」
 
 ルカ「いや、そうじゃねえ。あいつは私が見つかりかけたところを守ってくれた。操縦してたのはまた別の誰かだ」
 
 
 一応は昨日のことを報告することにした。
 エグイサルが既に実用段階であることは周知しておかなくてはならないし、美琴への対策もやはり必要なのを確認した。
 これ以上の死者を出さないと冬優子の裁判で決意したからには、誤魔化すわけにはいかないのだ。
 
 
 
 
- 805 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:31:39.66 ID:/lNWkEhY0
-   
 恋鐘「そ、そがん危なかこと……一人でそげなところに行ったらいかんばい!」
 
 ルカ「……悪い」
 
 あさひ「なんで美琴さんはそんなところにいたっすかね。操縦してたわけでもないのに」
 
 
 瞬間、あのときの美琴の荷物を想起する。
 鞄から見える柄のような物、その先にはきっと肉を割くには十分すぎる刃物。
 
 
 ルカ「浅倉透」
 
 透「……うん」
 
 ルカ「美琴は、本気だからな」
 
 雛菜「透ちゃん、大丈夫だよ。雛菜がずっと一緒にいるから……絶対、守ってみせるから」
 
 透「雛菜……サンキュ。でも私だってただお姫様やるわけにはいかないし」
 
 透「争うよ」
 
 ルカ「……下手な接触はしないようにな」
 
 透「分かってるって」
 
 恋鐘「透、困ったときはルカだけじゃなくてうちらにも遠慮なく言って!」
 
 智代子「わ、私も微力ながら助太刀いたしますよ!」
 
 透「やば。めっちゃいるじゃん、用心棒」
 
 ルカ「だからって気抜くなよ、美琴は私たちの誰よりも背丈だって高い。そう簡単に抑え込めるわけじゃない」
 
 智代子「それに美琴さんはファイナルデッドルームもクリアしてるし、武器だって私たちの予想以上のものを持ってるかもしれないよ!」
 
 恋鐘「毒薬だってドラッグストアから調達しとったけん、不意打ちにも注意せんばね!」
 
 ルカ「……そう考えると、恐ろしいな。美琴のやつ」
 
 雛菜「あなたが弱気になっちゃ一番ダメじゃないですか〜?」
 
 
 
- 806 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:33:23.63 ID:/lNWkEhY0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【ルカのコテージ】
 
 何も一人じゃないんだ。
 私たちは全員が全員、協力する下地ができている。
 誰かが狙われようものなら、きっと他の全員で守ることができる。
 私も本気でそう考えている。
 
 考えている、のに……
 
 
 『無理だと思う、私は』
 
 
 「……チッ」
 
 
 【自由行動開始】
 
 -------------------------------------------------
 【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
 【現在の希望のカケラ…15個】
 
 1.交流する【人物指定安価】
 2.モノモノヤシーンに挑戦する
 3.自動販売機を使う
 4.休む(自由時間スキップ)
 
 ↓1
- 807 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/13(月) 21:47:44.31 ID:HICo9pII0
-  1 智代子 
- 808 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:54:56.94 ID:/lNWkEhY0
-  1 智代子選択 
 
 【第5の島 屋台村】
 
 
 ルカ「……まあ、オマエはここだろうと思ったよ」
 
 智代子「あ、ルカちゃん! ちょうどよかった、いい感じにここのおでん煮えてきてるよ!」
 
 ルカ「さっき朝飯食ったばっかじゃねえのか……?」
 
 智代子「おでんは別腹と昔の偉い人も言ってたじゃないですか!」
 
 ルカ「どこの誰が言ってたんだよ……」
 
 
 暖簾に油煙が纏う空間は、朝だろうと爽やかさとは無縁だ。
 よくもまあこんなところで朝の日差しを浴びることが出来るものだといっそ感嘆した。
 
 ……これくらいの気丈さが、自分にも欲しいところだ。
 
 -------------------------------------------------
 ‣現在の所持品
 
 【ジャバの天然塩】×2
 【ファーマフラー】
 【ジャバイアンジュエリー】
 【オスシリンダー】×2
 【多面ダイスセット】
 【家庭用ゲーム機】
 【携帯ゲーム機】
 【マリンスノー】
 【ジャパニーズティーカップ】
 【絶対音叉】×2
 【七支刀】
 【オカルトフォトフレーム】
 
 プレゼントを渡しますか?
 1.渡す【所持品指定安価】
 2.渡さない
 
 ↓1
- 809 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/13(月) 22:00:23.69 ID:ryCc/2O30
-  1:【ジャパニーズティーカップ】 
- 810 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 22:05:50.82 ID:/lNWkEhY0
-   
 【ジャパニーズティーカップを渡した……】
 
 智代子「こ、これは……?! ただの水をも、至極の一杯に変えてしまうという伝説の……?!」
 
 ルカ「……いや、知らねえけど……そんなすげえもんなのか?」
 
 智代子「こ、これを私がちょうだいしても……よろしいんですか?」
 
 ルカ「やたら仰々しくなるのは何なんだ……」
 
 智代子「ははーっ!」
 
 ルカ「……」
 
 【PERFECT COMMUNICATION】
 
 【いつもより親愛度が多めに上昇します】
 
 -------------------------------------------------
 
 智代子「いやぁ〜、やっぱりおでんは大根が正義だねぇ! 味が染み染みで口当たりもまろやか……!」
 
 ルカ「私は牛筋のが好きだけどな」
 
 智代子「お、ルカちゃんも通だね! さてはお酒のあてにしてちょくちょく楽しんでたり?」
 
 ルカ「……私はそんな、酒とか」
 
 
 呑まなくはないが、そんな加齢臭の染みつくような飲み方はまだ未経験だ。
 ……おっさんくさいのみかたなんて、チャンチャラ御免。
 
 
 智代子「……どうしたの、ルカちゃん?」
 
 ルカ「……いや、別によ」
 
 
 でも、こう酒に浸されたような淀んだ空気の漂うところでは、飲み交わさずとも変な酔いが回る。
 ジジイ連中が酒の席でぐだぐだと愚痴をこぼすのにも、この時ばかりはある程度の理解を示すことができた。
 言わなくてもいいのに、言わない方がいいだろうに、口が勝手に暴れ出す。
 
 
 ルカ「……冬優子の事件、悪かった」
 
 智代子「やだなあ、もうあの事件はふゆちゃんと手討ちにしたんだし、終わったことでしょ?」
 
 ルカ「……あれは、オマエの本意なのか?」
 
 
 聞かなくたっていい。そんなの答えは分かり切っている。
 
 
 智代子「……本意かそうじゃないかって言われたら……そりゃ、ね……」
 
 ルカ「……だよな」
 
 
 なんのための確認なんだ。
 ……この確認に、一体何の意味がある?
 
 
 つくづく自分の身勝手さ、不器用さには辟易する。
 
 
 1.自分のおでんを一本やる
 2.無言でおでんを食べる
 
 ↓1
- 811 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/13(月) 22:11:51.18 ID:HICo9pII0
-  1 
- 812 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/13(月) 22:13:19.16 ID:ryCc/2O30
-  1 
- 813 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 22:20:30.21 ID:/lNWkEhY0
-  1 選択 
 
 まずいことを言った、という自覚がある。
 口に入れていた筋が妙に固くて、なかなか飲み込めない。
 目の前にある数本が、とてもじゃないが食べきれないことに気づいた。
 
 
 ルカ「……悪い、これ詫びな」
 
 智代子「……ルカちゃん」
 
 
 詫び、と言うかたちで一本を甘党女の皿の上に置く。
 キョトンとした顔でそれを甘党女はしばらく眺めていたが、すぐに何を思ったのか急にべらべらとしゃべり始めた。
 
 
 智代子「お別れってね、残されるほうが辛いんだって最近知ったんだ」
 
 智代子「向こうはあえなくなるってのを知ったままでいけるけど、こっちはそれすらも知らないから……突然に全部を奪われてしまう」
 
 智代子「……夏葉ちゃんと交わしたい言葉、夏葉ちゃんから聞きたい言葉」
 
 智代子「見たい夏葉ちゃんの姿だって、色々いっぱいあったんだ」
 
 
 どうやらこいつも暖簾が吸い上げたアルコールに中てられているらしい。
 梁の向こう、遠いものを見つめながら話す、その口調には回顧が染みついている。
 
 
 智代子「本当なら、それをどこまで追求したかったし。それを奪った相手を糾弾したかった」
 
 智代子「でもね、そんなことをすれば……その相手に遺される人に、申し訳ないかなって」
 
 智代子「別れは人の数だけ、無限にあるから……誰かがちょっとでも声を挙げちゃったら全部に伝播しちゃう。それは必ずしもプラスじゃないのかなって」
 
 
 お人よし、とはこういう奴のことを指すのだろうと悟った。
 こいつは二回も奪われた。理不尽の前に目の前でユニットのメンバーが二回も命を散らした。
 だったら、少しぐらいわがままを言ったところで罰は当たらないだろうに。
 それでもこいつは、『甘口』であり続けた。
 
 
 智代子「……なんだか私も変なこと口走っちゃったかも」
 
 
 徹底したチョコアイドルっぷりに、私は思わず息を漏らす。
 
 
 ルカ「……ハッ」
 
 智代子「もう! なんで笑うの、ルカちゃん!」
 
 ルカ「……別に、こんな場で自分の意志と別に本音を漏らすなんて。ジジくせえなっていう自虐だよ」
 
 
 ……やっぱり、私じゃ283プロのアイドルにはなれやしない。
 
 
 -------------------------------------------------
 
 【親愛度が上昇しました!】
 
 【園田智代子の親愛度レベル…8.0】
 
 【希望のカケラを手に入れました!】
 
 【現在の希望のカケラの数…16個】
- 814 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 22:23:43.95 ID:/lNWkEhY0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【ルカのコテージ】
 
 後になってさっき口にしたおでんが効いてきた。
 寝起きに、しかも朝飯をある程度食ったうえで口に入れるものは、少なくとも普通おでんではない。
 
 こってりとした味付けに、煙の独特な香りが染みついて、後悔を覚えずにはいられなかった。
 
 余計なことを言ってしまったのに関しても、余計なことを訊いてしまったのにも関しても。
 
 あれを聞いてしまったからには、見て見ぬふりなんてもう出来やしない。
 
 
 「……面倒だよな」
 
 
 【自由行動開始】
 
 -------------------------------------------------
 【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
 【現在の希望のカケラ…16個】
 
 1.交流する【人物指定安価】
 2.モノモノヤシーンに挑戦する
 3.自動販売機を使う
 4.休む(自由時間スキップ)
 
 ↓1
- 815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/13(月) 22:30:21.05 ID:ryCc/2O30
-  1:あさひ 
- 816 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 22:33:06.11 ID:/lNWkEhY0
-  早いですが、本日はここまででお願いします。 
 次回あさひ選択より再開します……
- 817 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 22:34:13.01 ID:/lNWkEhY0
-  次回更新は6/18(土)の21:00前後と少し先になります、申し訳ない……! 
- 818 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/13(月) 22:36:46.31 ID:HICo9pII0
-  お疲れ様でした 
- 819 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/06/14(火) 03:15:50.58 ID:1GjQUioD0
-  VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな 
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- 820 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/15(水) 16:18:11.77 ID:3BnpKID90
-  5章更新始まってるのに気づくのめっちゃ遅れた……  
 冬優子のおしおきが仮に完遂されたらハリボテの教会との板挟みで圧死するの、
 ハリボテの教会の飾り付けられた表側とそうじゃない裏側が冬優子の二面性の写像とすると、
 救いを求めた結果取り繕った面に阻まれて死ぬことになるわけだし、
 最後は壊れたセットのきれいじゃない裏側をメインに映す感じでカメラが抜かれて映像が終わりそうで、
 情景を想像してたら悪趣味でとてもおいしいと思った
 なんだったら圧死した後に冬優子だったものの跡とかハリボテの教会とかに一切フォーカスすることなく、
 衝突したチャリオットを心配する感じとか何も関係ない光景とかをカメラが抜いたりするのも、
 みんなを魅了しようとしてた冬優子という存在を映す価値なしみたいにめちゃくちゃ愚弄してる感じがあってそれもそれでおいしい
- 821 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 21:31:25.04 ID:hWUH9Ue/0
-  1 あさひ選択 
 
 【第5の島 ワダツミインダストリアル】
 
 昼の自由時間、何かと手持ち無沙汰になることはあったがこんなふうにソワソワと落ち着かないことはあまりなかった。
 美琴がどこにいるのか、何をしているのかその懸念こそずっと抱いてはいるものの。
 私にはそれ以上には目下の不安材料がその未体験のざわつきを抱かせていた。
 
 ルカ「……勝手に一人でぶらついてんじゃねーよ」
 
 あさひ「あっ、ルカさん! どしたっすか?」
 
 ルカ「どしたっすか、じゃねえ。こんな危ねえところ、一人で来ちゃダメだろ」
 
 あさひ「……? 危ない、っすか?」
 
 ルカ「テメェの後ろにあるそいつはなんだ? ただの置物か?」
 
 あさひ「あはは、エグイサルはロボットっす。置物じゃないっすよ、ルカさん変なこと言うっすね」
 
 ……もう説得なんかも面倒だ。
 いっそ首輪でもつけちまうか?
 
 -------------------------------------------------
 ‣現在の所持品
 
 【ジャバの天然塩】×2
 【ファーマフラー】
 【ジャバイアンジュエリー】
 【オスシリンダー】×2
 【多面ダイスセット】
 【家庭用ゲーム機】
 【携帯ゲーム機】
 【マリンスノー】
 【絶対音叉】×2
 【七支刀】
 【オカルトフォトフレーム】
 
 プレゼントを渡しますか?
 1.渡す【所持品指定安価】
 2.渡さない
 
 ↓1
- 822 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/18(土) 21:41:13.31 ID:t+E20L+80
-  1 【多面ダイスセット】 
- 823 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 21:47:37.04 ID:hWUH9Ue/0
-  1 選択 
 
 【多面ダイスセットを渡した……】
 
 あさひ「何っすか? これ、さいころ?」
 
 ルカ「おう、ただのさいころじゃなくて複数面……かなり多い数だろ。私には使い道はよくわからねえがオマエならなんか適当に暇つぶしに使えるかと思ってよ」
 
 あさひ「……これ、出る目の確率とかってどうなるっすかね」
 
 ルカ「……随分知的な好奇心だな」
 
 あさひ「あはは、最近学校で習ったっす!」
 
 (……確率の計算、か。もう忘れちまったな)
 
 【PERFECT COMMUNICATION】
 
 【いつもより多めに親愛度が上昇します!】
 
 -------------------------------------------------
 
 あさひ「あっ、あっちの機械見てみたい!」
 
 ルカ「おいコラ、だから勝手に行くなって!」
 
 
 あさひの関心のスイッチはいつ何に向けられるのか分からない。
 目を離した隙に姿を消すし、触れてはいけないものほどよく触る。
 この危機管理能力でよくもここまで生き残っているものだともはや感心する。
 
 
 ルカ「……はぁ、なんでオマエはこう自由なんだ」
 
 あさひ「ルカさん?」
 
 
 ……その感心は、慢心にも似ていた。
 
 
 ルカ「……ったく、冬優子のやつはどうやってこいつの面倒を」
 
 あさひ「……冬優子ちゃん」
 
 ルカ「……ッ!」
 
 
 迂闊だった。
 自分の中だけに押しとどめているつもりだった言葉が漏れ出ていた。
 きっとあさひ本人も無自覚にやっていたこと。
 自分の関心にいつも以上に従順になって走り回っているのはその喪失を僅かにでも忘れるため。
 気を紛らわさせるために、直視をさせないために別のものを自らに仕向けているはずだったんだろう。
 でも、私が手綱を握ろうとするあまり、余計なものまで引っ張り出してしまった。
 剥き出しになった喪失感が、あさひの手を緩め、床に金属が衝突する音を響き渡らせる。
 
 
 ルカ「……悪い、オマエだって辛いのに思い出させちまった」
 
 
 とりあえずの弁解。
 されどあさひの水面には重たく大きな石が既に投げ込まれた。
 波紋はそう簡単には止まない。
 
 
 あさひ「……」
 
 
 俯いたまま、言葉を発さない。
 自分の影を見つめるまま、その奥にないものを探す。
 
 ……これは、まずったよな。
 
 
 1.今は辛いけど、前に進むしかない
 2.いつまでも目を背けてても仕方ないだろ
 
 ↓1
- 824 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/18(土) 22:01:24.53 ID:t+E20L+80
-  1 
- 825 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:10:36.19 ID:hWUH9Ue/0
-  1 選択 
 
 どう申し開きをすればいいのか、というところから思考は始まった。
 でも、それは私向けじゃない。
 直面し続けた美琴との軋轢から目を背け、逃げ出した人間がどう謝るというんだ?
 私は逃げて逃げて逃げた末になんとかそのチャンスをつかんだだけの事。
 しかもそれを、既に逃してしまっている。
 
 
 ルカ「……うざってえな」
 
 
 なら、私がすべきことは申し開きじゃなくて、開き直りだ。
 自分の口から出た言葉を無責任に肯定して、押し付ける。
 それで乗り切るほかない、無茶するしかない。
 そんな無茶でもしない限りは、この少女を救い上げられない。
 
 
 ルカ「いつまでも他人に気を遣わせてんじゃねえ。ここは外の世界じゃねえんだ、オマエだって他の連中と同じ一つの数頭に入ってる」
 
 ルカ「現実に目を向けられない、そんなの甘えに過ぎねえんだよ。どれだけ辛くても前に進まなきゃならねえ、実際冬優子はそうしてただろうが」
 
 あさひ「……冬優子ちゃん、が」
 
 ルカ「せっかく救い出した三峰結華は死んだ、長い間ユニットを組んだ仲間の和泉愛依も死んだ。それでもオマエと言う存在がいたから、あいつは凹む時間も惜しんで前に進んだ」
 
 ルカ「あいつがその感情を乗り切ったかと言われれば答えはノーだ。でも、だとしてもあいつは前に進むことを選んだ。引きずりながらでも前に進むことを選んだ」
 
 ルカ「オマエもあいつを慕ってんなら……その後ろ姿を見習うぐらいしやがれ」
 
 
 本当に無責任な言葉だ。
 自分にもできていないことを相手に要求する、ここにインターネットの眼なんてあろうものなら大炎上だろうな。
 でも、ここは絶海の孤島。
 誰にも干渉されない、干渉を求めることもできない。
 自分に向けられた言葉は、自分で噛み砕くほかない。
 
 
 あさひ「……難しいっす」
 
 ルカ「……」
 
 あさひ「ルカさんの言葉、難しいんですぐには分からないっす。……でも、分かりたい、理解したいって思ったっす」
 
 あさひ「……だから、ちょっとだけ待ってもらっていいっすか?」
 
 ルカ「……ちょっとだけな」
 
 
 ……言葉が響いたのかどうか、感触は分からない。
 ただ、彼女が俯いていた顔を面に上げたのだけは確かだった。
 
 私とあさひはそのまま、言葉を交わすことなくホテルへと戻った。
 
 -------------------------------------------------
 
 【親愛度が上昇しました!】
 
 【芹沢あさひの親愛度レベル…10.0】
 
 【希望のカケラを手に入れました!】
 
 【現在の希望のカケラの数…17個】
 
- 826 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:12:50.51 ID:hWUH9Ue/0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【ルカのコテージ】
 
 分かれるその瞬間まで、珍しくあいつは押し黙っていた。
 帰り道をきょろきょろと見まわしていたのは、そこに幻影を追っていたからなのか。
 流石にそれを問いただすような残酷な真似はやめておいた。
 
 あさひが自分の中で冬優子の背中らから何を学ぼうとするのか、その答えを見つけるまで私は待つだけだ。
 
 「……私も、いい加減答えを」
 
 無責任さには、目を伏せて。
 
 
 【自由行動開始】
 
 -------------------------------------------------
 【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
 【現在の希望のカケラ…17個】
 
 1.交流する【人物指定安価】
 2.モノモノヤシーンに挑戦する
 3.自動販売機を使う
 4.休む(自由時間スキップ)
 
 ↓1
- 827 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/18(土) 22:15:00.27 ID:Lq4Dl7En0
-  1.あさひ 
- 828 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:21:29.50 ID:hWUH9Ue/0
-  1 あさひ選択 
 
 【あさひのコテージ】
 
 解答をせかすようで、少しだけ悪いと思った。
 でも、きっとどれだけ時間を与えても同じことだ。
 頭がどれだけいい人間でも、この問題の答えは分からないだろうし、それに自身も持てまい。
 
 だとしたら、私たちがすべきはその正誤の判定ではない。
 解答を練り上げるための議論、検討なんだ。
 
 そのためには、同じ空間にいること、同じ時間を過ごすことこそが重要なのだと思う。
 
 ピンポーン
 
 
 あさひ「ルカさん、早いっすよ。まだモヤモヤしたままで、よくわかんないままっす」
 
 ルカ「……悪い」
 
 あさひ「……」
 
 ルカ「……」
 
 あさひ「……帰らないっすか?」
 
 ルカ「……とりあえずの答えを聞こうと思ってな」
 
 あさひ「……っす」
 
 
 -------------------------------------------------
 ‣現在の所持品
 
 【ジャバの天然塩】×2
 【ファーマフラー】
 【ジャバイアンジュエリー】
 【オスシリンダー】×2
 【家庭用ゲーム機】
 【携帯ゲーム機】
 【マリンスノー】
 【絶対音叉】×2
 【七支刀】
 【オカルトフォトフレーム】
 
 プレゼントを渡しますか?
 1.渡す【所持品指定安価】
 2.渡さない
 
 ↓1
- 829 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/18(土) 22:31:32.84 ID:Lq4Dl7En0
-  1.【絶対音叉】 
- 830 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:48:23.23 ID:hWUH9Ue/0
-  1 選択 
 
 【絶対音叉を渡した……】
 
 あさひ「わっ、何これ! 見たことない!」
 
 ルカ「おいやめろ、鼻に突っ込む道具じゃねえ。音叉……一応音楽関連のもんだが、まあアイドルとはあんまり関係ないからな。音同士が共鳴した時に生じる振動を利用して医療とかに活用しているらしいぞ」
 
 あさひ「へぇ……音で、すごい発想っすね」
 
 ルカ「まあこれは破壊兵器として使うみたいだけどな。音で色々ぶっ壊しちまうみたいだから、使い方には気を付け……」
 
 あさひ「透ちゃ〜〜〜〜〜ん! これ一緒に叩いてみるっすよ〜〜〜〜〜〜〜!」
 
 ルカ「バッカ……!!!! おい、やめろ!!!! やめろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 
 【PERFECT COMMUNICATION】
 
 【親愛度がいつもより多めに上昇します!】
 
 -------------------------------------------------
 
 あさひの部屋は、案の定片付いてはいない。
 そこらの床には乱雑に紙が散らばり、彼女の関心が尽きたであろう使い道も分からない機材の数々は適当に箱に突っ込まれている。
 そこに、彼女に対する認識のずれはない。
 私も芹沢あさひと言う少女はそう言うものだと思うし、彼女がここで過ごす時間があったならおのずとそうなるだろう。
 それでも違和感がぬぐえないのは、ここに出入りしたであろう人間ならこのままにしていなかっただろう、というところから。
 
 
 ルカ「……どうだ、冬優子と向き合ってみて」
 
 
 尖った言い方をした。冬優子はもういない、あくまであさひが向き合うべきなのは『今は亡き冬優子』、あさひの中にいる冬優子、そしていない冬優子だ。
 
 
 あさひ「ルカさんの言ってることはなんとなくだけど、分かった気がするっすよ。確かに冬優子ちゃんはどんな事件があった後でも、落ち込んだり、凹んだり……じっとしていることはなかったっす」
 
 あさひ「きっと、ルカさんの言うように、わたしのためにそうしてくれてたんっすよね。愛依ちゃんがいなくなってからは、余計に」
 
 
 冬優子の死に際の光景がどうしても蘇る。
 あの不器用すぎる頭を撫でる動作、冬優子の思いの丈がそこに滲み出ていた。
 
 
 ルカ「……冬優子は、最後になんて言っていた?」
 
 あさひ「自分の想いを、汲み取ってくれって」
 
 ルカ「……そうだったな」
 
 
 では果たして……冬優子の最後の想い、とはなんなのだろうか。
 私がさっき投げかけた言葉のように、辛くても前に進めということなのか。
 それとも自分を代償に生きているのだと自覚しろと言うこと?
 
 
 ルカ「あさひは、冬優子はどう思ってると思う?」
 
 
 私にも、その答えは測りかねる。
 だから、それはあさひに託した。
 私よりもよっぽど長い時間を共に過ごして、熱心に彼女の観察を続けてきたあさひなら、きっと納得のいく答えを見つけられる。
 それは私が冬優子から引き継いだ、『信頼』だった。
 
 
 
 
 あさひ「……わかんないっすね」
 
 
 
 
- 831 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:50:01.45 ID:hWUH9Ue/0
-   
 あっけらかんとして、あさひはそう答えた。
 それは何も、解答の放棄ではない。
 むしろ考えて、考え抜いたからこそ見つけられた答え。
 自分の都合に無理やり手繰り寄せた、恩着せがましい責任感ではない。
 
 
 あさひ「あはは、他の人がどう考えてるのか、どう思ってるのか、なんてことはわたしもわかんないっす」
 
 あさひ「でも、それって悪いことじゃない。当り前じゃないっすか。冬優子ちゃんもよく言ってたっす。他人なんて何を思ってるのか分かんないんだから、用心なさいって」
 
 あさひ「だから、わたしも冬優子ちゃんの考えてることなんてわからないっす。わたしが冬優子ちゃんのために何をすればいいのか、なんて」
 
 あさひ「あ、でもこれじゃ答えにならないっすよね。ちょっと待ってくださいっす、解答を用意するんで」
 
 
 あさひがあさひらしくある所以、彼女のアイデンティティとも言うべき無責任だった。
 誰かにゆだねられて生きるなんて、あさひらしくない。
 そんな生き方を、冬優子が望むわけない。
 冬優子は誰よりもそばであさひを見続けて、誰よりもねたみ続けてきて、誰よりもその生き方を理解しようとしていた人間だ。
 だとしたら、その羽に枷をはめようなんざ思うはずもない。
 
 
 あさひ「冬優子ちゃんが最期に行っていたのは自分の命を雑に使うなってことだったっす。それなら、わたしは……後悔の無いように生きる。自分は自分のしたいように生きる」
 
 あさひ「冬優子ちゃんがやってたのと似てるかもしれないっすけど、これは私の生き方っす。ちょっとだけ違うんっすよ」
 
 あさひ「えっと、だから……引きずる、とも違うし……えっと」
 
 
 偶然にも私と同じ結論に帰結していたことに、少しだけ口角を上げながら私は苛立った。
 きっとこれは、冬優子の読み通りなんだろうから。
 冬優子と私は同族、ということはつまり……その理解者であるあさひもまた同族なのだ。
 遺される同族を守れるのは同じ同族だけ、そういう意味で私をあてがっていたのだろう。
 ヤロウ、どこまでも私を利用しやがって、気に食わねえやつだ。
 
 
 ルカ「……ハッ、わかったよ。もうそれ以上は、いい」
 
 ルカ「オマエの言葉なんて元々よくわからねえんだ。無理やり言葉を紡がれても不格好でいけねえ」
 
 あさひ「……? そうっすか?」
 
 ルカ「……これは、私の決めた生き方だ」
 
 
 そう言って私は掌を差し出した。
 こいつと同じく無責任に、その場だけの感情で差し向けた掌。
 そこに引き継ぎも何もあったもんじゃない。いますぐにだってこの鎖をほどこうと思えば、ほどいてやれる。
 
 ……でも、それをしない。
 今は、私がこれをしたいから、それだけの理由だ。
 
 
 あさひ「あはは、ルカさんの手のひら、冷たいっす!」
 
 
 偶然、こいつともその『やりたいこと』は今、一致していたらしい。
 
 -------------------------------------------------
 
 【芹沢あさひとの間に確かなつながりを感じる……】
 
 【芹沢あさひの親愛度レベルがMAXに到達しました!】
 
 【アイテム:遊園地のぬいぐるみを獲得しました!】
 
 ・【遊園地のぬいぐるみ】
 〔いつか遊園地に行ったときに持ち帰ったぬいぐるみ。ウサギとネコとクマ、さんたいのぬいぐるみに愛を注いでいたら、不思議なことに一瞬だけ一人でに彼女たちが動いたとあさひは語る〕
 
 【スキル:ジャンプ!スタッグ!!!を習得しました!】
 
 ・【ジャンプ!スタッグ!!!】
 〔集中力を使用した際の効果が増幅する〕
 
- 832 :あさひのイベントと少し表現に矛盾が出る部分が出てくるかと思いますがご容赦ください ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:51:12.48 ID:hWUH9Ue/0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【ルカのコテージ】
 
 閉塞とした空気感が時計をせっつかす。
 いつもよりも早く進んだ時計の針が、太陽を地中に埋めて一度の夜がやって来る。
 今日と言う日はあっという間に過ぎてしまった。
 
 
 「……そういえば、あさひのやつはどうしてんだ」
 
 
 冬優子に名指しで託された手前、どうしても思考の片隅にあいつの存在がある。
 憎たらしい言葉に自分勝手な行動、正直愛想をつかすには十分すぎるほどの理由があるのだが、それ以上の義務感がそれをせき止める。
 多分冬優子も生前は一緒だったんだろう。
 鬱陶しさと煩わしさと同じくらいに、放っておけない感じが付きまとって仕方がない。
 
 
 「……顔見るだけ、な」
 
 
 あいつ自身もこれまでの生活で変化して、多少は聞き訳は良くなったんだと思う。
 今朝も部屋に入れたところで好き勝手荒らす様子はなかったし、必要以上に出歩きはしないし、危険に身は置かないとは思う。
 それでも、過去の前例から得られた信頼の値のあまりの低さに、黙っていることはできなかった。
 
 
- 833 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:52:54.72 ID:hWUH9Ue/0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【ホテル】
 
 部屋を出る。
 コテージの個室はこう見えて防音性が高いらしく、窓を閉めていると風の音すらまるで聞こえてはこない。
 今こうして外に出ることで初めて虫が鳴いていることに気が付くくらいだ。
 
 
 「……何の虫だろうな、これ」
 
 
 都会の私たちは虫の名前を知らない。
 どれだけ心地の良い声であろうとも、その持ち主は永久に分からないままだ。
 
 
 「……あさひなら、知ってるか」
 
 
 照れ隠しの言い訳にちょうどいい都合が見つかったとばかりに左を向いた。
 あさひの個室はこの向こう。
 中央の桟橋を挟んだ別ブロックに彼女の部屋はある。
 
 ぎしぎしと音を立てて板橋の上を歩き始めたその先。
 
- 834 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:54:26.49 ID:hWUH9Ue/0
-   
 
 
 
 
 「……やめて〜〜〜!!」
 
 
 
 
 
 
- 835 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:55:55.62 ID:hWUH9Ue/0
-   
 向こうの木に留まっていた鳥たちが一斉に散っていった。
 夜を引き裂くばかりの絶叫は、私の背後から。
 ソールを横にすり減らして方向転換。
 奥歯をバネに、その声のした方へと即座に駆け出した。
 
 声に混ざっていた怒り、憎しみ、悲しみ、苦しみ……それらをすべて絞り出したような切迫。
 一秒を争う事態が起きているのは、耳から脳へと情報を明け渡すよりも先にわかった。
 
 
 
 そして本能が嗅ぎつけた緊急は、実際間違ってなどいなかった。
 
 
 
- 836 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:57:16.15 ID:hWUH9Ue/0
-   
 
 
 「……な、何やってんだよ……オマエ……!」
 
 
 
 半開きの扉から明かりが漏れ出していた。
 コテージは入ってすぐに生活空間が見える間取り、廊下らしい廊下もないボックス型の部屋は、その事態を観測するには優れたつくりだった。
 
 
 
 美琴が、
 
 
 
 ____その手に持ったサバイバルナイフで、能天気女の左手をぶっ刺していることがすぐに見て取れたのだから。
 
 
 
 
- 837 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:58:23.91 ID:hWUH9Ue/0
-   
 美琴「邪魔しないで……!」
 
 雛菜「痛い痛い痛い……!」
 
 
 肉に深く突き刺さり刃先は貫通している。
 だがそれが却って刃にとっては返しとなって、ナイフを抜き取るには障害となっているようだ。
 美琴は二の手が撃てない焦りを額の汗で滲ませた。
 
 
 ルカ「……畜生……!!」
 
 ドンッ
 
 
 その不意を突いて私は頭から美琴の脇腹に突っ込んだ。
 
- 838 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:59:29.34 ID:hWUH9Ue/0
-   
 ルカ「お、おい……大丈夫か!?」
 
 
 すぐに私は能天気女の手を取った。
 ひどい有様だ、血は止まらないし、断面からはもはや骨が見えてしまっている。
 しかも、この刺さり方はまずい。指の根本の神経が密集する部分を狙っているかのような突き刺さり方。
 激痛を感じるどころではないはずだ。
 
 
 透「雛菜……?」
 
 
 まるで魂が抜けてしまったかのようにへたり込んでいる浅倉透。
 彼女はまだ事態が飲み込めていない様子だった。
 
 
 ルカ「クソ……何がどうなってやがる……! とりあえず、包帯……なんか応急処置できるもんはねえのか……!」
 
 雛菜「痛い……痛いよ……」
 
 
 私は突然居合わせただけの存在。
 夜に照明と赤とが混ざるこの異様な空間に身を置いて、体を火照らせる以外の反応が未だ示せずにいた。
 
- 839 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:00:27.31 ID:hWUH9Ue/0
-   
 その一方で、一度強制的に隔絶を行われたせいで襲撃者は冷静さを取り戻しつつあった。
 
 
 美琴「……ルカ、邪魔しないで」
 
 ルカ「み、美琴……!」
 
 
 美琴はゆっくりと体を起こしたかと思うと、そのまま二本目を取り出した。
 能天気女の手に刺さっているナイフと同等かそれ以上の刃渡り。
 そんなナイフを両手で持って、浅倉透に向き直る。
 
 
 雛菜「だ、ダメ……」
 
 美琴「……今度こそ、必ず」
 
 ルカ「バカ……何やってんだ……! 落ち着けって……!」
 
 
 慌てて遮るようにして前に出る私と能天気女。
 能天気女は傷の手当ても何もしていない。体を少しよじるだけでパタタッと音を立てて血のしずくが床に落ちる。
 でも、そんな痛切な状態でさえも美琴の視界には入らない。
 美琴が見ているのはただ一つ、憎しみを向けるべき存在。
 
 ____標的の、浅倉透だけだ。
 
 
- 840 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:01:20.50 ID:hWUH9Ue/0
-   
 美琴「……私は冷静だよ。むしろ他のみんなの方がおかしいんじゃないかな。自分は浅倉透を騙る偽物、更にはこの島に私たちを連れてきた張本人だっていう本人の証言もある」
 
 美琴「にちかちゃんは最初から、ずっと……この子の怪しさに気づいていたのに」
 
 美琴「……どうして、どうして……この子を受け入れて、にちかちゃんを拒絶するの……!?」
 
 ルカ「ち、違う……! 私たちは七草にちかを拒んだりなんかしてねぇ、こいつも……それだから敵になるってわけじゃない、私たちに協力を宣言してくれてんだ……!」
 
 美琴「言葉なんか何の信用になるの……!」
 
 
 聞く耳を持たない人間に説得なんか無意味だ。
 言葉は万能じゃない。
 燃え盛る油に水を注げば却って激しく燃え盛る様に、美琴は私の言葉で逆上する。
 ヘビが獲物を締め上げるような動作で、柄を持つ手にぎゅっと力がこもる。
 
- 841 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:02:05.90 ID:hWUH9Ue/0
-   
 
 
 
 美琴「私は……こんなところで止まっていられないの!」
 
 
 
 身体の震えが、止まった。
 
 
 (……来る!)
 
 
 踵が床から離れた。
 この部屋はそう大きなスペースではない。
 美琴のすらりと長い脚ならば、ほんの数歩のうちに私たちのもとに到達するだろう。
 ナイフを持った手なら更に前に伸ばすことだって。
 刃が届くまでの時間となると、もはやコンマの世界だったのだろう。
 そんな世界、感知しえない。
 人間の反射神経ぎりぎりの世界は本能で観測するほかない。
 
- 842 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:03:17.33 ID:hWUH9Ue/0
-   
 
 
 
 
 ____私の本能は、ギリギリまだ生きていた。
 
 
 
 
 
 
- 843 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:04:16.66 ID:hWUH9Ue/0
-   
 ルカ「……痛ェな……」
 
 美琴「ルカ……!?」
 
 
 不思議な感覚だった。
 こんなにも冷たいものを触っているのに、両手は焼け落ちそうなくらいに熱い。
 掌では生暖かいものが蠢いて、ぐじゅぐじゅと音を立てる。
 その生暖かい何かは散々蠢いたかと思うと、わずかな隙間から零れ落ちて、床で破裂し、赤く染め上げる。
 それを見ているうちに、じんわりと、それでいて確実に。
 ズキズキとした感覚が腕を伝って、全身の力を抜いていく。
 
 両手で、ナイフの刃先を掴んでいた。
 
 
 ルカ「痛いんだよ、バカ野郎……!!」
 
 
 砕けそうな腰を軸にして、弱弱しく美琴の腹を蹴った。
 美琴はさっき以上の軽さで吹き飛んだ。
 
 
- 844 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:05:55.64 ID:hWUH9Ue/0
-   
 透「ちょっ、なんで……なんでそんな……」
 
 ルカ「ああ?! 知らねーよ……私だってなんでこんな真似してんのか……」
 
 
 浅倉透に手首を掴まれた。
 翻して証明の元に晒された掌はパックリと切れており、血に塗れていた。
 
 
 ルカ「それに、私より市川雛菜だろうが……!」
 
 
 でも、私の切り傷はあくまで表面上にとどまる。
 肉を多少割いていたとしても、まだリカバリーは効く。
 市川雛菜のそれは、レベルが違った。
 ナイフを掴んだことに当惑するばかりの私たちをよそに、市川雛菜はその場にうずくまる。
 ナイフの突き刺さった手を腹部の下に隠すようにして、背中を丸めている。
 
 
 ルカ「クソ……ナイフを下手に抜くわけにもいかねえ……モノミ、モノクマでもいい……! 早く治療してやってくれ……!」
 
 雛菜「うぅ……」
 
 
 私が余裕なく叫ぶと、すぐにトテトテと場に不似合いな素っ頓狂な足音とともにモノミが姿を現した。
 
 
- 845 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:07:07.31 ID:hWUH9Ue/0
-   
 モノミ「な、何が起きてるんでちゅか……!? 市川さんに斑鳩さん……いや〜〜〜〜〜! スプラッタでちゅ〜〜〜〜!」
 
 ルカ「スプラッタでもオモプラッタでもねえ! さっさと治療しろ! このままじゃ市川雛菜の手は……!」
 
 モノミ「は、はい! わかりまちた……斑鳩さんも、治療しまちゅから一緒に病院に行きまちゅよ!」
 
 
 モノミは市川雛菜に肩を貸すようにしておぶると、私に同行を促した。
 見た目の割に力はある、モノケモノを撃退していただけのことはあるらしい。
 
 
 透「雛菜、しっかり……大丈夫だから」
 
 
 モノミの背中で浅く呼吸をする市川雛菜に声をかける。
 それに応じて、首をしんどそうに傾げて浅倉透の方を見た。
 
 
 雛菜「透ちゃん……怪我はない〜……?」
 
 透「ないよ、ありがとう……その、だから」
 
 
 浅倉透の言葉はたどたどしい。
 いつも多くを語るような人間ではなかったが、それに動揺が拍車をかけていた。
 
- 846 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:08:45.75 ID:hWUH9Ue/0
-   
 
 雛菜「あは〜……それならまあいいや〜……」
 
 透「なんで……私、本当の『浅倉透』じゃないんだよ……ただのコピーでさ、雛菜が体を張ってまで守る意味なんて……」
 
 
 いつものような余裕がその言葉からは感じられなかった。
 自分自身の存在と言う負い目が、この恩義を否定しようとしていた。
 
 
 雛菜「ん〜……よくわかんないけど〜……」
 
 雛菜「幼馴染だからとか、透先輩と同じ見た目だからとか、そういう理由じゃなくて」
 
 
 
 雛菜「雛菜が守りたいと思ったから! それだけじゃダメ〜?」
 
 
 
 失血していくさなか、顔色の悪い笑顔だった。
 痛々しいその右手で不格好なピースをつくり、プルプルと持ち上げて。
 私でも、その光景には感じ入るものがあった。
 
 
- 847 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:09:48.24 ID:hWUH9Ue/0
-   
 ___でも、あいつはそうではなかった。
 
 
 美琴「……」
 
 
 美琴はお腹を抑えるようにして気配無く立ち上がり、そのまま私たちの横をすり抜けていく。
 
 
 ルカ「ま、待て……美琴!」
 
 
 掴んだ裾に、私の手のひらの血がべったりと付着した。
 
 
 美琴「……ルカ、ごめんね」
 
 ルカ「謝んのは私じゃねえだろ……!」
 
 
 
 美琴「……もう、目の前に姿は現さないから」
 
 
 
- 848 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:10:28.83 ID:hWUH9Ue/0
-   
 ルカ「……あ?」
 
 美琴「……それじゃあ」
 
 
 どうやら私の傷も浅くはないらしい。
 がっちりと指で挟んで掴んでいたはずの裾はスルリと離れ、その影はすぐに夜の闇と馴染んでしまった。
 あいつだって何度も突き飛ばされて無傷でもないはず、それなのに全く追いつけなかったのはその体に背負い込んでいるものの重量の差。
 私の足は部屋の内側には軽いが、外側には重たかった。
 
 
 モノミ「……これ以上の危害を加えてくる気はないんでちゅかね……?」
 
 透「……多分、相方を傷つけたからじゃないかな」
 
 ルカ「……」
 
 透「雛菜を刺したことよりも、多分そっちの方がずっとずっと……痛いんだと思う」
 
 ルカ「……チッ」
 
 
 私たちはモノミのすぐ後に続いて、部屋を後にした。
 
 
- 849 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:13:28.83 ID:hWUH9Ue/0
-  ------------------------------------------------ 
 【第3の島 病院】
 
 私の傷はナイフを掴んだために皮膚がぱっくりと切れ、一部筋肉を傷つけた程度。
 気が飛ぶほど沁みる消毒をした後に、包帯をぐるぐる巻きにすることで何とかなった。
 
 だが、問題は市川雛菜。
 明らかに貫通していたナイフを、美琴は抜き取ろうとあがいたことで更に傷を広げていた。
 不幸なことに骨とぶつかることもなく突き刺さってしまったがゆえに、出血も激しく病院に着くころには市川雛菜は気を失ってしまっていた。
 モノミにとりあえず委ねるほかなく、私と浅倉透はロビーの椅子に腰かけてその時を待った。
 
 
 ルカ「……突然、押し入ってきたのか」
 
 透「うん……二人で部屋にいたところに、インターホンが鳴って」
 
 ルカ「扉、開けたのか? 不用心だな」
 
 透「……実は、これ」
 
 
 懐からくしゃくしゃになった紙を目の前で広げる。
 罫線が数本横にひかれた長方形の紙、手紙の様式だ。
 私はそれを引っ手繰るようにして目を落とした。
 
- 850 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:15:24.97 ID:hWUH9Ue/0
-   
 
 
 『今晩大事な話がある。夜のアナウンスが鳴ってから十分ほど経ったら部屋に行くから入れてくれ』
 
 
 
 ルカ「……は?」
 
 
 成程二人はあらかじめアポイントを受けていたのだ。
 これを受け入れてしまっていたがために、美琴の来訪だというのに不用心にも扉を開けてしまい、結果として刺されてしまった。
 その流れは飲み込めた。
 でも、どうしても飲み込めない一つの事実がある。
 
 それはどれだけ頭を捻ろうとも答えが見つからない、嚥下するにはあまりにも大きくていびつな形をした謎。
 
 
 
 _____その手紙は、完全に私の筆跡だったのだ。
 
 
 
- 851 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:17:07.86 ID:hWUH9Ue/0
-   
 どこの教室に通ってもいない、誰にも師事をしていない、ぶっきらぼうで直線的なボールペンの字は私がスケジュール帳に殴り書いた文字と完全に同一。
 だが、当然ながら身に覚えなんてない。
 私はあの時扉を開けたのは、あさひの様子を見に行くため。
 それにアポイントなんかとるつもりもなかったし、そもそも人の都合を伺って訪問をするような几帳面な人間でもない。
 それなのに、その筆跡には数年着古したジャケットにそでを通した時のような順応感があった。
 
 
 透「……この手紙があったから、きっとルカさんが来るもんだと思って」
 
 ルカ「違う、私はこんなの出しちゃいねえ……」
 
 透「……えっ」
 
 ルカ「意味わかんねえ……なんで、なんで私の文字でこんなのが書かれてやがんだ……!」
 
 
 夢遊病の類いだろうか。それとも別人格?
 私が無自覚なうちにこんな手紙を書き記して、浅倉透の部屋に投函してしまったのかもしれない。
 ……そんなわけない、あるはずがない。
 
 まだ傷がふさがっちゃいない、手のひらの包帯はすっかり血に染まって真っ赤だった。
 
 
 ルカ「……わけわかんねえ……これを美琴が用意したってのか……?」
 
 透「……」
 
- 852 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:18:35.73 ID:hWUH9Ue/0
-  ____ 
 ______
 ________
 
 モノミ「……手術は終わりまちた」
 
 
 それから数十分後、モノミがようやっと姿を現した。
 ピンクと白のツートンの毛はすっかり血の赤色に染まっており、B級ホラー映画の殺人人形のような見た目だ。
 だが、そんな映画の中の人形のように狂気的な笑顔を浮かべるでもなく、モノミはただ俯いている。
 言葉など聞かずとも、その意味は理解できる。
 
 
 ルカ「ダメ、だったのか……?」
 
 透「そん、な……」
 
 モノミ「……命を落とすようなことはありまちぇん。輸血も間に合ったので、失血死なんてこともないでちゅ」
 
 モノミ「……でも、市川さんに重篤な後遺症が残ることは間違いないでちゅ。右手の神経は、もうどうしようもありまちぇんでちた」
 
- 853 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:19:45.17 ID:hWUH9Ue/0
-   
 
 
 
 
 モノミ「市川さんは今後もう自分の手でお箸を握ることも、誰かと手をつなぐこともできないでちゅ」
 
 
 
 
 
- 854 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:20:57.70 ID:hWUH9Ue/0
-   
 言葉を失う、という表現はきっとこの場にはふさわしくない。
 もっと前から言葉を咽喉から持ち上げることは出来かねていたし、頭に浮かんだ言葉はシューティングゲームのようにその悉くを撃ち落としていた。
 私がこの場において、言うべき言葉なんて何一つない。
 喋るべきでない。
 だから、多分正しい表現は呼吸をすることも忘れる、なのだと思う。
 一人の人生が大幅に歪められてしまった、その場に居合わせることの重大さを前に、私は口を固く締めあげて、空気をかみちぎった。
 
 
 透「……う、そ」
 
 モノミ「……あちしには、義手に挿げ替える技術はないでちゅ……モノクマのように大幅な人体改造もできないんでちゅ……本当に、ごめんなちゃい……」
 
 
 地面に額を擦り合わせるようにして許しを求めるモノミ。
 本当に不細工なマスコットだ。こいつがしているのはただの自己満足。
 自分の実力及ばずと言うのを、悲劇のヒロインぶることで解消しようとしている。
 人間の醜さを体現したような在り方に虫唾が走った。
 
 
- 855 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:21:47.25 ID:hWUH9Ue/0
-   
 透「……」
 
 
 浅倉透もそれは感じ取っていたのか、モノミに言葉をかけようとはしなかった。
 背を向けて、力なく再び椅子に落ちるようにして腰かけた。
 
 
 透「何やってるんだろ、私」
 
 透「……みんなを守るために、ここにいるのに」
 
 透「何も守れず、私のせいで……失って」
 
 透「……キツイなー、人生」
 
 
 煙のように天井に吐き出した言葉に、天井が軋んだ。
 
- 856 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:24:15.46 ID:hWUH9Ue/0
-   
 というわけで本日はここまで。
 あさひの親愛度がマックスになったり、夜襲があったり、色々と起きましたね……
 
 次回更新は明日21:30頃を予定しています
 それではお疲れさまでした、またよろしくお願いいたします。
 
- 857 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/18(土) 23:28:50.69 ID:oOVPKMGo0
-  >>1乙 
 好感度マックスになったのは確かなんだけど
 >>1がここであさひの名前を出すのなんか不穏なんだけどまさかね・・・
- 858 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/19(日) 01:04:55.29 ID:EQ8hP+wk0
-  大胆な邪推はイナゴの特権・・・(迫真) 
- 859 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/06/19(日) 03:01:06.44 ID:mMoGzpGu0
-  VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな 
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- 860 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:34:28.25 ID:zQ5P2I1e0
-  ____ 
 ______
 ________
 
 =========
 ≪island life:day 24≫
 =========
 
 ------------------------------------------------
 
 【第3の島 病院】
 
 ……徹夜だ。
 市川雛菜の顛末を訊き遂げてから、この場を離れようにも靴底がのり付けされたように動かず。
 そして掌の痛みも相まってすっかり目も醒めてしまっていた。
 眠気を全く感じることもなく、気が付けば真っ暗な空がすっかり太陽の熱で溶け消えてしまっていた。
 
 
 ルカ「……朝らしいな」
 
 透「……」
 
 ルカ「メシ、取ってこようか? オマエ、ここから離れる気ないんだろ」
 
 透「……ん」
 
 ルカ「……わかった、ちょっと待ってろよ」
 
 
 こいつの気持ちも察して余りある。
 流石にここで黙って飯を食いに離れられるほど私も血の通っていない人間ではない。
 浅倉透は目線をこちらにくれることもなく、幽かな声量で返事した。
 私もそれ以上は言わず、ゆっくりと立ち上がる。
 長く座った膝は、それだけでパキッと鳴った。
 
- 861 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:36:27.25 ID:zQ5P2I1e0
-   
 その瞬間、
 
 
 
 「あれ〜? ご飯食べに行くんですか〜? 雛菜もそろそろお腹すいた〜〜〜〜!」
 
 
 
 廊下には、あいつが立っていた。
 いつものようにキンキンとうるさいトーンとボリューム。
 あからさまなくらいな笑顔で、ブンブンと左手をこちらに向かって振っている。
 昨日とほとんど相違ない市川雛菜が、そこにいた。
 
 
- 862 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:38:46.17 ID:zQ5P2I1e0
-   
 ルカ「お、オマエ……! 目、覚ましたのか……!」
 
 
 駆け寄る私に先行して浅倉透が肩を揺さぶった。
 
 
 透「雛菜……雛菜……!」
 
 雛菜「あは〜、透ちゃん痛い〜」
 
 
 でも、その手を払いのけることはしない。
 いや、できないんだろう。
 ここまでのわずかなやりとりでもわかる、体はどこか傾いたようになっていて比重がうまくのっていない。
 完全に動かなくなってしまった右手との帳尻が合わない体は、見ていてもどこか違和感を孕んでいた。
 
 
 雛菜「起きたのはついさっきで〜、アナウンスが聞こえたんで朝ごはん食べに行こ〜って!」
 
 ルカ「だ、大丈夫なのか……? その、昨日の今日で……」
 
 雛菜「ん〜、大丈夫じゃないですね〜。お箸もスプーンも持てないし、ごはんは雛菜一人じゃ食べれないので〜」
 
 透「……っ!」
 
- 863 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:39:41.37 ID:zQ5P2I1e0
-   
 
 雛菜「だから、透ちゃんは雛菜にあ〜んしてね〜?」
 
 
 
 ちょっと転んで擦りむいたぐらいのテンションだった。
 これ見よがしに傷を見せびらかすこともせず、なんなら話題をさっさと流そうとすらしていた。
 今後一生に関わる話を、日常会話のようなトーンで話す。
 彼女のスタンスには従いたいのも山々だが、当事者足る私たちはそれに流石にただ乗りはできず。
 
 
 ルカ「ちょ、ちょっと待て……その傷、痛むんだろ? 無茶すんなって……」
 
 雛菜「痛いことは痛いですけど〜……え、雛菜がご飯食べちゃなんかまずいんですか〜?」
 
 ルカ「いや、そうじゃなくて……私たちにもなんか……言いたいこととかあんじゃねえのか……?」
 
 透「私は……雛菜の一生を傷つけたんだ」
 
 雛菜「え〜?」
 
 
- 864 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:42:38.07 ID:zQ5P2I1e0
-   
 でも、むしろそれを市川雛菜は鬱陶しそうにあしらった。
 
 
 雛菜「ん〜、これ昨日も言ったと思うんですけど〜。雛菜は雛菜が守りたいと思ったからやっただけなので、別に透ちゃんもあなたも悪く思う必要なんてないですよ〜」
 
 
 雛菜「結果として、誰も死ななかったしそっちの方が雛菜はしあわせですよ〜?」
 
 
 どこまでも単純な論理だった。
 市川雛菜にはずっと迷いがない。仲間のことで思い悩むことはあっても、そこから導き出される結論に、彼女自身が絶対の信頼を置いている。
 
 だからぶれない、悔やまない、立ち止まらない。
 この島にいる誰よりも、自分自身の在り方と歩み方を持っているのだと今この瞬間に理解した。
 ジェットコースターで浅倉透を『透ちゃん』と呼んだ時のような爽やかさが頬を撫でる。
 
 
 
- 865 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:45:29.42 ID:zQ5P2I1e0
-   
 透「……雛菜」
 
 雛菜「ん〜?」
 
 透「朝ごはん食べたら作ったげる。特大のバケツで、プリン」
 
 透「醤油もかけ放題」
 
 雛菜「あは〜〜〜〜〜♡」
 
 
 私はこの島に来る前の283プロの連中のことはそこまで知らない。
 でも、この二人を見ていたらどんなものだったのか察しはある程度つく。
 
 ノクチルとかいうグループはとんだ問題児の集まりだったんだろう。
 等身大の彼女たちがぶつかり合って、補い合って。
 他の何かで形を変えない、変えようとしない、それぞれがそれぞれを繋ぎ止めて、他が割って入れないほどの結束感のあるグループ。
 
 そういう厄介な集まりだったのだろうと得心がいった。
 
 
 
- 866 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:46:15.86 ID:zQ5P2I1e0
-   
 雛菜「じゃ、そういうわけで雛菜たちは行きますね〜!」
 
 透「アデュー」
 
 ルカ「おう……じゃあな、気をつけろよ」
 
 雛菜「は〜い!」
 
 
 ルカ「……」
 
 
 ルカ「…………」
 
 
 
 ルカ「…………………………………………ん?」
 
 
- 867 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:48:05.68 ID:zQ5P2I1e0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【ホテル レストラン】
 
 一人取り残されたことに納得のいかなさをはじめは感じていたが、二人だけの時間が必要だったのだろうということで折り合いをつけた。
 それに前もって二人がレストランに行っておいてくれたおかげでことの説明の手間も省けた。
 私がついた頃には既に後の3人も昨晩の襲撃のこと、そして市川雛菜の手のことも一応情報としては飲み込んでいた。
 
 
 智代子「そんな……雛菜ちゃん、大丈夫……じゃあないよね、そんな状態じゃ……」
 
 雛菜「まあ不自由は不自由ですけど〜、放クラのお姉さんに比べたら雛菜は生身のままですし〜」
 
 透「ほら、雛菜。あーん」
 
 雛菜「あ〜ん♡」
 
 恋鐘「うちらで雛菜の生活も面倒見てあげんといかんね……片手だけだとシャワーもまともに浴びれんたい」
 
 あさひ「もう手は痛くないっすか?」
 
 雛菜「今は鎮痛剤打ってるのでマシですね〜。でも、薬が切れた瞬間多分凄まじい痛みなので!」
 
 智代子「そんな明るく言うことじゃないよ……」
 
 
 やはりここでも当事者より周囲の方が事態を重く捉えている様子。
 陽の光が差し込んで明るく照らされているはずのテラスで、なぜか陰陽を感じてしまう程。
 あっけらかんとした様子に、なんだか私も心配するのが馬鹿馬鹿しくなってきた。
 
 
- 868 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:49:39.70 ID:zQ5P2I1e0
-   
 ルカ「おら、私たちも飯食うぞ飯。片腕使えねえやつより食い終わるのが遅いとかお笑いかよ」
 
 智代子「ル、ルカちゃん流石にそんな言い方って……」
 
 雛菜「あは〜、そうですね〜! 雛菜もう腹六分くらい来ちゃってますよ〜?」
 
 あさひ「あ! 朝ご飯冷えてきちゃってる!」
 
 透「食べて食べて。ほら、遠慮せずに」
 
 恋鐘「もう、透? そいは朝ご飯作ったうちん台詞たい!」
 
 智代子「……うぅ」
 
 
 段々と市川雛菜の作り出す空気に満ちていく。
 心配する方が悪いと言う心情が声のトーンを無理矢理に引き上げる。
 
 
 雛菜「この傷跡は、犯行を食い止めることができた証拠なんですよ〜?」
 
 雛菜「そんなに憐れむような視線向けないで欲しいかも〜」
 
 雛菜「みんなが笑顔で食べてくれないと、ご飯も美味しくないですし〜!」
 
 
 これには流石に甘党女も観念した様子。
 それ以上市川雛菜に同情をかけるような素振りを見せるのはやめた。
 私としても、いい形に落ち着いたとは思う。
 ここまでに私たちは多くのものを失いすぎた。
 塞ぎ込む時間なら、既に供給過多。そこにカロリーを割いている余裕は私たちにはない。
 
 
- 869 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:50:29.01 ID:zQ5P2I1e0
-   
 あさひ「それにしても、美琴さんはどうやって透ちゃんの部屋に入ったっすか?」
 
 雛菜「ん〜、雛菜はそこの人だと思って扉を開けちゃったんですよね〜」
 
 智代子「え? ルカちゃん?」
 
 ルカ「……美琴が来る前に、ポストにコレが投函されてたらしい」
 
 恋鐘「なんね? ……こいはルカの筆跡じゃなか?」
 
 ルカ「……ああ、どっからどうみても私の字だ」
 
 ルカ「でも生憎私にこんなの書いた覚えなんて全くない。そもそも人の部屋に行くのにアポ取ったりしないっつーの」
 
 智代子「それはそれで問題だね……」
 
 あさひ「じゃあ、この手紙はなんなんすか?」
 
 ルカ「……」
 
 恋鐘「美琴に聞いてみるしかなさそうたい……こいを投函したのは美琴とやろ?」
 
 ルカ「どうだろうな……」
 
 
 当然ながら私たち以外の人間にも心当たりなどない。
 この手紙はどこで生まれ、誰が投函したのか。
 どれだけ時間が経とうとも、答えが提示されることはなかった。
 
- 870 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:53:39.14 ID:zQ5P2I1e0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【ルカのコテージ】
 
 市川雛菜はあの後浅倉透に介助されながら部屋に戻っていった。
 とりあえずのところは、浅倉透に任せておけば問題はないだろう。
 改めて二人には誰がきても扉を開けないようにと釘も刺して置いたし、今日のところは安心していいはずだ。
 
 「……気が落ち着いたら、眠たくなってきたな」
 
 徹夜明け、朝食も食べたばかり。
 瞼はだいぶん重たくなってきた。
 
 ……今日はどう過ごそうか。
 
 
 【自由行動開始】
 
 【事件発生前最終日の自由行動です】
 
 -------------------------------------------------
 【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
 【現在の希望のカケラ…18個】
 
 1.交流する【人物指定安価】
 2.モノモノヤシーンに挑戦する
 3.自動販売機を使う
 4.休む(自由時間スキップ)
 
 ↓1
- 871 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/19(日) 22:05:26.62 ID:jmo6JafG0
-  1 智代子 
- 872 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 22:10:08.27 ID:zQ5P2I1e0
-  1 智代子選択 
 
 【第3の島 病院】
 
 朝飯を食った時は市川雛菜に言われるがまま、無理やりにお気楽なムードを作ってやり過ごした。
 だけど、やっぱりあいつはそのまま飲み込めていたわけではない。
 つい数日前に、自分の大切な存在が肉体を失ってしまったことを重ね合わせていたのか。
 いつになく遅いペースで食事を口に運んだかと思うと、食後はふらふらとどこかへ一人で歩いて行ってしまった。
 
 その後を追ってたどり着いたのが、ここだ。
 
 
 ルカ「……何する気だよ」
 
 智代子「あ、あれ……? あはは、私も自分で気づかないうちにここに来ちゃってたみたい……?」
 
 ルカ「……」
 
 
 ……痛々しいな。
 
 -------------------------------------------------
 ‣現在の所持品
 
 【ジャバの天然塩】×2
 【ファーマフラー】
 【ジャバイアンジュエリー】
 【オスシリンダー】×2
 【家庭用ゲーム機】
 【携帯ゲーム機】
 【マリンスノー】
 【絶対音叉】
 【七支刀】
 【オカルトフォトフレーム】
 
 プレゼントを渡しますか?
 1.渡す【所持品指定安価】
 2.渡さない
 
 ↓1
- 873 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/19(日) 22:14:45.47 ID:5gQxeq7s0
-  1:マリンスノー 
- 874 :開幕寝落ちかまして申し訳ありませんでした ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 21:04:31.99 ID:lnzqQySY0
-  1 選択 
 
 【マリンスノーを渡した……】
 
 智代子「わぁ……! ルカちゃん、すごくキレイだよこれ!」
 
 ルカ「ハッ、こんなので目を輝かせちまってガキじゃあるまいし」
 
 智代子「純粋にプレゼントを喜んでるだけなんだけど……」
 
 ルカ「どのみち私にはいらねえもんだ。欲しいんならくれてやるよ」
 
 智代子「ルカちゃん、ありがたく頂戴します!」
 
 (……まあ、普通に喜んだか)
 
 -------------------------------------------------
 
 ルカ「やっぱり、思い出しちまうか。有栖川夏葉の事」
 
 
 本人は無自覚にふらふらとたどり着いた認識なのだろうが、私からすればなぜ甘党女が病院にまでやってきたのかの理由など想像にたやすい。
 肉体の欠損、それを一番間近で見ていたのは彼女だ。
 
 
 智代子「思い出す、っていうのは多分違うかな。夏葉ちゃんのこと、一秒だって忘れるわけないし、どっちかと言えば『重なった』んだと思う」
 
 ルカ「……そうだな」
 
 智代子「今朝の雛菜ちゃん、本当に夏葉ちゃんにそっくりだったんだ。右手が使えなくなっちゃったこと、とかじゃなくてね」
 
 智代子「何よりも自分が一番不安なはずなのに、それを周りに悟らせないように強い姿を見せているところとか」
 
 ルカ「……!」
 
 
 ≪夏葉「智代子に果穂……そして、283プロのみんな……この島にいるのは多くが私よりも年下でしょ……?」
 
 夏葉「だから……私が、守らないと……助けてあげないと……その責任があるって言うのに……」
 
 夏葉「こんな、病気なんかに……侵されて……」
 
 ルカ「……お前」≫
 
 
 私は絶望病の騒ぎがあった頃を思い出す。
 寝台の上、高熱にうなされ朦朧とする中であいつが初めて漏らした本音。
 年長者として感じている責任、そして不安。私だけの秘密にしておくつもりだったが、そもそもの前提からして違っていたらしい。
 
 
 ルカ「やっぱり、よく見てんな」
 
 智代子「そりゃあ私たちは友達だもん!」
 
 友達、だなんて用地が過ぎる関係性。波長が合うというだけで何の拘束力も実効性もない結びつき。それをどうしてこうも自信満々に言い放てるのだろう。
 
 智代子「友達ってね、言葉や行動にしなくても分かっちゃうんだよ。今日はいいことあったんだ!とか逆に何か嫌なことでもあったんだ!とか〜」
 
 
 1.オマエにはそれほどまでに大きい存在だったんだな
 2.それだけのことを思われてあいつも幸せだろうよ
 
 ↓1
 
- 875 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 21:24:07.99 ID:HSLKjFms0
-  2 
- 876 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 21:35:50.07 ID:lnzqQySY0
-  2 選択 
 
 
 ルカ「それだけのことを思われて有栖川夏葉も幸せだろうよ」
 
 ルカ「死んでなお、オマエは友達だって胸を張って言えるんだからな。……まあ、私からすれば荒唐無稽な話だけどな」
 
 智代子「ううん、夏葉ちゃんだけじゃないよ。放クラのみんな、283プロのみんな、この島のみんな。ルカちゃんだってそれには入っちゃってるからね!」
 
 ルカ「はあ? 私はそんなの認めた覚え……」
 
 智代子「ルカちゃんが私のことを励まそうとしてくれてること、分かってるよ」
 
 ルカ「……ッ!」
 
 
 俄かに顔が熱くなる。
 別にこれは自分の感情とかではない。
 何を勝手に勘違いしているのか知らないが、さも見透かしていますとでも言いたそうな言葉を臆面もなく出してきたことに対する共感性羞恥だ。
 
 
 智代子「ごめんね、ルカちゃんにも心配かけちゃったよね」
 
 智代子「雛菜ちゃん本人はああ言ってたけど、弱音を中々はけない人のことを私も知っちゃってるから。つい勘ぐりすぎちゃったのかな」
 
 
 本当にこいつはお人よしだ。
 友達と言う関係性に落とし込むハードルが低いせいで、余計なところまで気を回し、自分自身が追い詰められてしまう。
 
 
 
 ルカ「……ハッ」
 
 
 
 ≪ルカ「……お前は確かに立派だよ、自分だけじゃなくいつも他の連中のことも気にかけて。そんだけの責任感があってこその行動なんだろうなって私でも思う」
 
 ルカ「だけど……だからこそ、そんな風に自分を追い込む必要なんかないんじゃねーのか」≫
 
 
 ルカ「……なんつーか、似た者同士だよな。オマエら」
 
 智代子「き、急にどうしたの!?」
 
 
 -------------------------------------------------
 
 【親愛度が上昇しました!】
 
 【園田智代子の親愛度レベル…9.5】
 
- 877 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 21:36:53.75 ID:lnzqQySY0
-  ------------------------------------------------- 
 【ルカのコテージ】
 
 
 類は友を呼ぶ、なんて言葉があるが実際のところ「類」と「友」はどちらが先に立つのだろうか。
 ふと自分のことを思い返してみると、美琴に出会ってからは染め上げられた自覚は多分にあった。
 必死に美琴の後を追い、横に立とうと努めて来れば、それも当然の事か。
 
 ……今はどうなんだろう。
 二人の関係性は一言で称するにはこんがらがりすぎる。
 
 その志向性は、今や。
 
 【自由行動開始】
 
 -------------------------------------------------
 【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
 【現在の希望のカケラ…18個】
 
 1.交流する【人物指定安価】
 2.モノモノヤシーンに挑戦する
 3.自動販売機を使う
 4.休む(自由時間スキップ)
 
 ↓1
 
- 878 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 21:59:50.76 ID:HSLKjFms0
-  1 雛菜 
- 879 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:09:51.89 ID:lnzqQySY0
-  1 雛菜選択 
 
 【第1の島 ロケットパンチマーケット】
 
 
 甘党女と別れてから、なぜだか喉の渇きのようなものを感じてスーパーマーケットへと足を運んだ。
 別にのどを潤すだけならレストランでも事足りるのだが、私の無意識はなぜだかそれを拒んだ。
 見えない糸に引っ張られるようにして足を踏み入れた先で目にしたのは、目を背けたくなるようなその姿。
 
 
 雛菜「あっ、こんにちは〜。お買い物ですか〜?」
 
 ルカ「お、オマエ……なんでこんなところに……」
 
 雛菜「なんで、って買い物以外何かあります〜?」
 
 
 動かない右手をカートの上に添えるようにして、もう片方の手で商品を持つ。
 何不自由してません、といった顔とは対照的に痛ましいが過ぎるだけの不自由が曝け出されていた。
 
 
 雛菜「何か勘違いしてそうですけど、透ちゃんと一緒ですよ〜? 今はちょっとトイレに行ってるんでいませんけど〜」
 
 ルカ「そ、そうか……そうだよな……」
 
 -------------------------------------------------
 ‣現在の所持品
 
 【ジャバの天然塩】×2
 【ファーマフラー】
 【ジャバイアンジュエリー】
 【オスシリンダー】×2
 【家庭用ゲーム機】
 【携帯ゲーム機】
 【絶対音叉】
 【七支刀】
 【オカルトフォトフレーム】
 
 プレゼントを渡しますか?
 1.渡す【所持品指定安価】
 2.渡さない
 
 ↓1
 
- 880 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 22:24:28.07 ID:HSLKjFms0
-  1 【絶対音叉】 
- 881 :書いてたら安価とるべき部分もない感じになったのでもうこのまま行きます ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:40:07.13 ID:lnzqQySY0
-  1 選択 
 
 【絶対音叉を渡した……】
 
 雛菜「なんですか、これ〜? サスマタ〜?」
 
 ルカ「一応音楽用品だよ、共振を起こして医療の現場で使ったりするやつの強化版だ」
 
 雛菜「ふ〜ん……」
 
 雛菜「あは〜、でも雛菜今この音叉を持ったら手いっぱいなんで共振どころじゃないかもですね〜」
 
 ルカ「えっ」
 
 雛菜「まあ透ちゃんに叩くなりしてもらえばいっか〜」
 
 (……背筋が凍るようなこと言うなよ)
 
 (……まあ、普通に喜んだ……よな?)
 
 -------------------------------------------------
 
 ……一応は、解決のかたちを見た。
 浅倉透のことを守れたので満足はしている、手を失ったことよりもその方がメリットとしても大きい。
 何よりも、これ以上自分の手のことで落ち込むのを良しとしない。
 こういうもの、としてその場を流すことを何よりも本人が求めているのだ。
 
 
 雛菜「ん〜? なにか言いたいことでもあります〜?」
 
 ルカ「……その」
 
 
 でも、いざこうして二人きりになると私としては言葉に詰まらざるを得ない。
 だってこの惨状をもたらしたのは他でもない自分の相方。更には自分自身がその場に居合わせていたのだから。
 
 拳を握り込んで肩を震わせる私を見れば、流石のこいつも私の心境を理解したらしい。
 
 
 雛菜「あは〜……」
 
 
 こいつは普段あっけらかんとして、ワガママに生きている……様に見える。
 でもその実誰よりも客観的な姿勢で、今の世の中にそうあるべきものとして認識されている固定概念だって捉えなおせる。
 明確な我の中から、正しいものを見定めることができる。
 そのしたたかさこそが、市川雛菜がアイドルたる所以なのだと思う。
 
 
 雛菜「……朝も言いましたけど、あなたのことを恨んだりとかはないです〜」
 
 
 だからこいつは、今この局面においてもなあなあになっている現状を確かめ直すことができた。
 私が胸に抱える罪悪感と、実際自分の身に起きた出来事。
 それと釣り合うだけの回答を淀んだ水面の奥底から掬い上げる。
 
- 882 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:41:32.83 ID:lnzqQySY0
-   
 
 
 雛菜「でも、相方さんのことは雛菜だって恨んでますよ〜」
 
 
 
 ルカ「……えっ」
 
 
 何が「えっ」なのか、自分の口から出た音に吐き気を催す。
 それは腐った現実世界で生きていたがゆえに浸されていた詭弁の味。
 私自身も腐っている。どんな状況でも許されることに、慣れてしまっていた。
 
 
 雛菜「雛菜だって、まだまだ二十にもなってないんですからやりたいことは山ほどあった。でも、その悉くは奪われちゃったわけですし」
 
 ルカ「……」
 
 
 でも、そうじゃない。
 加害側だって本当は許されることを求めているわけじゃない。
 むしろその逆、憎まれて憎まれて、一生許されないことで初めて割に合う。
 だからこそ現実では残酷なことに許しが与えられてしまうのだ。
 それが一番加害側にとって苦しいことだから。
 
 
 雛菜「そこに嘘はつけないですし〜、ついたところで嘘って丸わかりだもんね〜」
 
 
 だから私からすれば事なかれ主義が横行する世の中で黙殺され続けてきた感情、それをこうして曝け出してくれたことに感謝こそしていた。
- 883 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:43:50.26 ID:lnzqQySY0
-   
 
 しかし、私はこれでもなお市川雛菜を見誤っていた。
 
 
 
 雛菜「でも、恨んでるからってそれが全部憎しみになるわけじゃないと思うんですよね〜」
 
 
 
 市川雛菜はそれでは終わらない。
 
 
 雛菜「雛菜だって、シーズの人たちと仲良くしてもらった時間はあるし、この島での暮らしのこともあっておかしくなっちゃう気持ちは分からなくもないです〜」
 
 雛菜「だから雛菜は、『今』じゃなくて『次』の話がしたいかな〜」
 
 
 やっぱりなんだかんだ言ってワガママではあるんだと思う。
 ただ、それは独善とは違う。自分の都合で動きながらも、それに振り回される人間も彼女の持つ幸福の軌道上に載せられる。
 
- 884 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:44:25.29 ID:lnzqQySY0
-   
 
 雛菜「この恨みに見合うだけの、『次』。雛菜のために何かしてくれないかな〜って! ほら、芸能界でも悪いことをしたら代わりに良いことをして補填しますよね〜!」
 
 
 彼女は自分自身の幸福を追うと同時に、周囲に幸福を振りまく存在でもある、ということらしい。
 私と美琴がまさにそう、許されないという最高の利益を被ると同時に、喜びの共有と言う贖罪の機会まで与えられる。
 
 
 雛菜「一緒に甘いもの食べに行ったり、雛菜を遠くに連れてったり! 右手を失った“おかげで”できる体験が雛菜は欲しいかな〜」
 
 
 これほどの回答が果たしてあっただろうか。
 
 
 ルカ「……は、ハハッ……オマエ、やっぱバケモンじみてるよ」
 
 
 私より年下で、ここまでのことが言えるなんて末恐ろしいとしみじみと感じた。
 
 
 透「……あれ、なんかいる」
 
 ルカ「……悪い、邪魔した」
 
 雛菜「……? さよなら〜」
 
 
 浅倉透が戻って来るのに合わせて背を向けた。
 これ以上あの場所にいるのはまずい。
 
 今の顔を見られるのは、ひどく恥ずかしいからだ。
 
 -------------------------------------------------
 
 【親愛度が上昇しました!】
 
 【市川雛菜の親愛度レベル…7.0】
 
 【希望のカケラを手に入れました!】
 
 【現在の希望のカケラの数…19個】
- 885 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:47:23.00 ID:lnzqQySY0
-  ------------------------------------------------- 
 【ルカのコテージ】
 
 
 部屋に戻ってからもなんだか体が震えていた。
 市川雛菜の発した言葉が、妙に私の中に響いていた。
 
 美琴の発した言葉、起こした行動。
 その一つ一つに市川雛菜の言葉がぶつかって跳ね返り、私の中で乱反射している。
 
 能天気能天気とひとり脳内で悪態をついていたが、あいつはそんな器じゃない。
 
 ……本当に、化け物だ。
 
 
 【自由行動開始】
 
 【事件発生前最後の自由行動です】
 
 -------------------------------------------------
 【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
 【現在の希望のカケラ…19個】
 
 1.交流する【人物指定安価】
 2.モノモノヤシーンに挑戦する
 3.自動販売機を使う
 4.休む(自由時間スキップ)
 
 ↓1
- 886 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 23:06:14.14 ID:HSLKjFms0
-  1 智代子 
- 887 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 23:15:43.91 ID:lnzqQySY0
-  1 智代子選択 
 
 【第1の島 ロケットパンチマーケット】
 
 そういえば前回の事件の騒ぎでコテージの備蓄もなくなっていたなとふと思い出す。
 別に今行かなくてもいい用事、それなのになぜわざわざこのタイミングを選ぶのだろう。
 自分でも分からない答えを、棚の中に探す。
 でも見つかったのはその答えではなく、向こうの棚の奥に切り取られた甘党女の顔。
 
 
 智代子「あ、ルカちゃん! ルカちゃんもお菓子?」
 
 ルカ「……別に、暇だっただけだよ」
 
 
 -------------------------------------------------
 ‣現在の所持品
 
 【ジャバの天然塩】×2
 【ファーマフラー】
 【ジャバイアンジュエリー】
 【オスシリンダー】×2
 【家庭用ゲーム機】
 【携帯ゲーム機】
 【七支刀】
 【オカルトフォトフレーム】
 
 プレゼントを渡しますか?
 1.渡す【所持品指定安価】
 2.渡さない
 
 ↓1
- 888 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 23:31:13.08 ID:HSLKjFms0
-  1 【ジャバの天然塩】 
- 889 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 23:36:21.38 ID:lnzqQySY0
-   
 【ジャバの天然塩を渡した……】
 
 智代子「おぉ……まさに塩、そのもの……」
 
 ルカ「……流石に直は行くなよ?」
 
 智代子「い、行かないよ! こういうのは料理にちょいたしするからこそ美味しいんだって、ちゃんと知ってますから!」
 
 ルカ「あぁ……天ぷらにつけたりな」
 
 智代子「そうそう! 調味料をちゃんと使えてこそいっぱしの料理人だよ!」
 
 ルカ「どこに料理人がいんだよ」
 
 (まあ、普通に喜んだか……)
 
 -------------------------------------------------
 
 智代子「クッキーもいいな〜、でもやっぱり定番のアーモンドチョコも外せないし……」
 
 ルカ「……太るぞ?」
 
 智代子「太らないよ! ……いや、太るんだけど……!!」
 
 ルカ「……はぁ」
 
 
 そういえば、花火大会の時もこいつはこんな具合だったか。
 ほんの一晩の催しだというのに、食いきれないほどのお菓子をこれでもかとカゴに放り込んで。
 それが本当に一晩でなくなってしまったのだから驚きだ。
 
 
 智代子「だ、大丈夫! ばっちり運動すればいくら食べても大丈夫だって、昔の偉い人が言ってたし……!」
 
 ルカ「どこの誰が言うんだ、そんな煩悩丸出しの言葉」
 
 智代子「ま、松平……定信……さん……?」
 
 ルカ「大飢饉凌いだ偉人に何言わせてんだ」
 
 
 ふざけたことをしゃべりながらもお菓子をカゴにぶち込む手は止まらない。
 いつものこいつなら、ただ欲望のままに動いているだけとしてみるのだが。
 
 
 ルカ「……」
 
 智代子「とにかく元気をつけなくっちゃ! 甘いものはいつだって私たちの味方だよ!」
 
 
 ……流石に今回限りは、私も邪推してしまう。
 ついさっきまでの表情を裏返したような明るい言動。
 自分の好きなものを選び取ったかごに入れていくその動作が、なんだかいつも以上に幼く見えた。
 きっとそれは私の目が曇っているから。
 先入観や偏見と言ったものを捨てきれない私だから、こいつの動作を『痛ましい』と感じてしまうのだろう。
 
 
 ルカ「……なあ」
 
 
 1.吹っ切れたのか?
 2.もう全部、解決したのか?
 
 ↓1
 
- 890 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 23:47:30.32 ID:HSLKjFms0
-  1 
- 891 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/06/21(火) 23:47:59.86 ID:vKEXs3me0
-  2 
- 892 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 23:51:36.30 ID:lnzqQySY0
-  1 選択 
 
 
 ルカ「……吹っ切れたのか?」
 
 
 私の問いかけに、甘党女の手が止まる。
 私がこの質問に込めた意味を確かめているのか、息を一つついてから、斜め上を見つめた。
 ついさっきのことだ、仲間と過ごした記憶やそこから生じる感傷に囚われ、引き摺られ続けて気を病んでいるところを目撃したばかり。
 そんな最中で鉢合わせるなりに私を引っ張ってお菓子の棚に来て、何も思うところがないとは言わせない。
 
 
 智代子「……ううん、まだ。というよりも、私はずっと吹っ切れるなんてことはないと思う。果穂のことも、夏葉ちゃんのことも……前回のコロシアイで命を落とした樹里ちゃんと凛世ちゃんのことも……何もかも」
 
 智代子「それに、私自身このことで吹っ切れるなんてしたくないんだ。私で勝手にひと段落つけるのって、なんだか寂しい気がして」
 
 智代子「だからね、決めたんだ。私は変わらなくていい、無理に前に進まなくたっていいって。ほら、チョコレートだって甘い物だけじゃなくて、ビターなものだってあるよね?」
 
 
 はじめこいつの肩書を見た時に抱いたのは『くだらない』という感想。
 名前をもじってその場でぱっと思いついたような『チョコアイドル』、どうせそこに大した戦略も展望もない、キャラ付けどまりの記号なんだと思っていた。
 
 でも、こうしてこいつと直面するとその認識は誤りだったと思わされる。
 
 ただ甘いだけじゃない、どれだけ厳しい現実だろうと、どれだけの苦境に立たされようとも、
 向き合い続けることができる。向き合う誰かを支えることができる。
 
 それだけの覚悟とともに背負い込んだのが『チョコアイドル』という看板だったんだろう。
 
 
 
 智代子「私は、チョコアイドルだから。ちょっとくらい苦いぐらいが隠し味だよ!」
 
 
 
 ……こうも誇らしげに言われれば、その看板も認めざるを得ないだろう。
 
 
 ルカ「……ハッ」
 
 
 -------------------------------------------------
 
 【親愛度が上昇しました!】
 
 【園田智代子の親愛度レベル…11.0】
 
 【希望のカケラを手に入れました!】
 
 【現在の希望のカケラの数…20個】
 
- 893 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 23:53:50.66 ID:lnzqQySY0
-   
 というわけで自由行動終了にて本日はここまで。
 突発的な更新となったのにお付き合いいただきありがとうございました。
 次回はいよいよ事件発生、捜査パートまで進みます。
 第4章が長かった分若干駆け足っぽく感じますが、その分事件や裁判パートは濃くなっていると思うので対戦よろしくお願いします。
 
 次回更新は6/22(水)21:00ごろで予定しています。
 それではお疲れさまでした。
- 894 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 23:59:05.29 ID:HSLKjFms0
-  お疲れさまでした 
- 895 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 12:18:26.09 ID:75KkGKZ/0
-  突発的とはいえ更新に気づかなかったとは不覚……  
 最終日の自由行動、てっきり残りで唯一コミュ完走できそうなちょこ先輩連打してスキルもらいに行くのかと思ってたから雛菜行っててびっくりした
 でもそういう個人の勝手な思い込み通りに動かないのが安価スレの醍醐味だし、それに雛菜、かわいいしつよいから仕方ないか〜
 
 ところで多分6章だと自由行動がないと思っているので個人的な興味から作者の方に質問なんですけど、
 【Scoop up Scrap】の効果でわかるアイドルに喜んでもらえるプレゼントって全部終わった後にでも一覧などで公開するつもりってありますか?
 単純にどういうプレゼントだと喜ぶ想定だったのかとか逆にマイナスだったのかとかちょっと気になるので可能であれば前作のもの含めて知りたいです。
 それと可能であればコミュを完走したときにもらえるアイテムとスキルについても、こちらは金の鍵の使用に影響するのでフェアに行くためにも全部完結してからでいいので、前作含めて知りたいです。
 これは単純にデータベースを眺めるのが好きだから知りたいだけなので、無理にとは言わないのでよろしければ一考のほどよろしくお願いいたします。
- 896 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:19:26.74 ID:SuCOeezb0
-  >>895 
 【Scoop up Scrap】のアイテム判定はその場その場で持っているアイテム内で考える予定だったので特にリストとかはないですね
 100個のアイテムに15人の判定つけるのは流石に無理でした
 コミュ完走時のアイテムとスキルは用意してあるので、物語が終わったら載せたいですね〜
 最後の一章がまた長いんですけどね……
 
 
 それではそろそろ再開します
- 897 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:21:52.36 ID:SuCOeezb0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【ルカのコテージ】
 
 昨日の今日で、夜はまだ熱を持っているように感じた。
 まだ目や耳に焼き付いている昨夜の衝突。
 飛び散る血と汗、苦悶の叫び、掌の痛み、そして美琴の独白。
 下手なドラマよりもよっぽど壮絶だ。
 あの光景が未だこの夜に混じっているような錯覚が、喉元に汗を伝わせた。
 
 
 ルカ「……美琴」
 
 
 美琴が別れ際に言い残した「もう姿を見せることはない」、という宣言。
 それが妙に奥深くに突き刺さって、忘れられない。
 もしかして本当に、今度こそ美琴は遠くに行ってしまうんじゃないか。
 この絶海の孤島、逃げ道などどこにも無いというのにその危惧が付き纏って離れない。
 
 
 嫌に冴えた瞳孔に、無理やり瞼で蓋をした。
 
 
- 898 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:23:43.10 ID:SuCOeezb0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【???】
 
 
 「……冬優子ちゃんは、これでもダメって言うのかな」
 
 「わたしが、狸を止めなかったから……美琴さんは誑かされて、雛菜ちゃんとルカさんを刺しちゃった」
 
 「雛菜ちゃんはもう右手が動かなくなっちゃった」
 
 「もう一生、動かない」
 
 「今回はコレで済んだけど……狸はきっとこれじゃ終わらない」
 
 「次は守れるかどうかもわからない。次はどんな犠牲を払わなきゃいけないかもわからない」
 
 「……わたしは、これ以上失いたくない」
 
 「これ以上さみしくなりたくない」
 
 「わたしは……わたしは……!」
 
- 899 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:24:51.50 ID:SuCOeezb0
-   
 
 
 
 
 「そのためなら、命だってかけてもいい」
 
 
 
 
 
- 900 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:26:03.42 ID:SuCOeezb0
-  ____ 
 ______
 ________
 
 =========
 ≪island life:day 25≫
 =========
 ------------------------------------------------
 
 【ルカのコテージ】
 
 一晩経ったが、まだナイフで裂けた傷は塞がらない。
 寝起き早々に手が真っ赤に染まっていて言葉を失った。
 自分でやったことではあるものの、傷としては残りそうだし、少し憂鬱になる。
 顔を洗おうにも両の手で水を掬ったりはしづらいし、物を握るのも痛みが伴う状態。
 どうしたものかと首をもたげた。
 
 
 「……まあ、あいつはそれどころじゃないんだろうけど」
 
 
 市川雛菜のことを思うと、そんな嘆きもしょうもなくかんじられる。
 私は一時的でも、あいつは一生。
 ずっとずっと不便がつきまとう。
 それだけでなく、安息を不意に奪うような痛みも不定期に現れる。
 この先数十年の人生に落とした影は、思う以上に濃い。
 
 
 「……それでも、あいつはきっと笑顔なんだろうな」
 
 
 レストランで待ち受けているだろう顔を想像しても、曇っているものは考え付かなかった。
 
- 901 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:27:34.90 ID:SuCOeezb0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【ホテル レストラン】
 
 恋鐘「おはようルカ〜〜〜!」
 
 智代子「おはようルカちゃん!」
 
 ルカ「よう……」
 
 
 出迎えた二人にも、その表情に曇りはない。
 むしろうざったいくらいの声量で、こちらの表情が曇るくらいだ。
 
 
 恋鐘「今日は何でか知らんけど、厨房の冷蔵庫は使えんくなっとったばい……故障ばしとるとやろか?」
 
 智代子「えっ……それじゃあ今日の朝ごはんは……」
 
 恋鐘「ばってん、うちに妥協はなか! 冷蔵庫の食材は使えんくても、他のもんで何とでもなるけん! 新鮮なフルーツでとっておきの朝ごはんを用意しておいたばい!」
 
 智代子「いよっ! その言葉を待っていた〜!」
 
 ルカ「……相変わらずオマエらは能天気だな」
 
 
 連中はすっかり市川雛菜のペースに飲まれてしまったらしい。
 昨日は後遺症やら襲撃やらでとても笑顔なんて余裕がなかったというのに、今ではすっかり元の調子。
 体中の力が抜ける、間の抜けた食卓が帰ってきていた。
 
- 902 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:28:31.45 ID:SuCOeezb0
-   
 恋鐘「ほら、ルカもた〜んと食べんね! 料理は食べられてこそばい!」
 
 
 相変わらず問答無用で朝食を皿に盛り付ける長崎女。
 
 
 智代子「ルカちゃん、そのベーコンエッグ……要らないなら助太刀致しますぞ」
 
 
 やたら仰々しい口調で余り物にありつこうと集ってくる甘党女。
 
 
 雛菜「次はヨーグルトが食べたいかな〜」
 
 透「ウィウィ、ちょっと待って。箸だとなかなかむずいから」
 
 雛菜「透ちゃん、スプーン使わないの〜?」
 
 透「あー……あったんだ」
 
 
 ギャグ漫画でもないようなやり取りでこちらの頭を痛くするノクチルの二人組。
 
 レストランの卓には、私が苦手で苦手で仕方ない、それでも無いなら無いで違和感を覚える喧しさがあった。
 
 
 
 
 ……一部分を失した形で。
 
 
 
 
 
- 903 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:30:10.85 ID:SuCOeezb0
-   
 智代子「……あれ、そういえばルカちゃん」
 
 ルカ「あ? どうしたよ」
 
 智代子「あさひちゃん、今日は一緒じゃないんだね」
 
 ルカ「あさひ……?」
 
 
 今朝の私は完全に抜けていた。
 傷ついた自分の体を慰めるのに夢中だったのか、
 荒れ果てたかつての相方を見て傷心を引き受けたからか、
 悲運を悲運と見ない滑稽とすら感じる開き直りに感化されたからか、
 この日ばかりの私は、かつての鋭さの全てを失った形でここに座っていた。
 絶対に見落としてはいけないものに、視界の外にいることを許可してしまった。
 
 
 ルカ「だ、大丈夫だろ……すぐに来るって」
 
 智代子「……行ってあげて、ルカちゃん。不安な気持ちを隠す必要なんかないよ!」
 
 ルカ「……誰が」
 
 恋鐘「素直にならんね、もううちらん前でカッコつける必要なんかなか!」
 
 ルカ「……チッ!」
 
 
 なぜ手綱を離してしまったのだろう。
 散々冬優子から聞かされていた『神出鬼没』、行動の予測がまるでつかない芹沢あさひという存在。
 誰よりも彼女の理解者たる冬優子ですら、匙を投げていた。
 それにこの島のルールという危険因子が絡んでいる今、ほんのわずかな間の所在なさですら私たちの血の気を引かせるには十分すぎた。
 
 音を立てて引いた椅子、その足を蹴飛ばすようにして入り口へ。
 もつれかける足取りも他所に、ドアノブに手をかけた。
 そこで思いっきり引けば、あの嫌味ったらしい快晴の太陽が私たちを見下ろしている。
 
- 904 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:31:03.51 ID:SuCOeezb0
-   
 
 _____そのはずだった。
 
 
 
 「……え?」
 
 
 
 
 ガスマスクの向こう側、ガラス玉のような碧い瞳は、私のことを見上げていた。
 
 
 
 
- 905 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:31:44.01 ID:SuCOeezb0
-   
 
 
 ブシュウウウウウウ!!
 
 
 
 
- 906 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:32:49.80 ID:SuCOeezb0
-   
 (なんだ……何が起きた……?)
 
 真正面から煙を浴びて、後退。
 もといた机の足元に不格好にも尻餅をつく形で倒れ込む。
 どうして私がこうも不細工な転倒を晒したといえば、手足の末梢から徐々に弛緩を始めていたため。
 口から入った煙は一瞬で全身に行き届き、既に体は言うことを訊かなくなっていた。
 
 ガッシャーン!!
 
 おかげさまで机の上のコーヒーまでひっかけてしまった。
 ただ、もうそれを拭うほどの力も手には籠らない。
 お腹のあたりにコーヒーの温度を感じながら、悶える声だけを漏らす。
 徐々に意識と体をつなぐ縄は解け、糸になり、やがて宙ぶらりん。
 
 頬に感じるフローリングの冷たさと低空の埃っぽい空気を感じながら、閉じゆく瞼に彼女の姿を捉えていた。
 
 顔は見えずとも、小柄な彼女のシルエットは見紛うはずもない。
 
 
- 907 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:33:43.70 ID:SuCOeezb0
-   
 
 
 
 
 _____あさひそのものだった。
 
 
 
 
 
 
- 908 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:34:42.28 ID:SuCOeezb0
-   
 
 _____
 
 
 _______
 
 
 __________
 
 
 
- 909 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:36:41.12 ID:SuCOeezb0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【???】
 
 
 「う、うぅ……」
 
 
 
 まず感じたのは居心地の悪さ。
 
 自分の意思でなく折り畳まれた体はそれだけで痛むし、この狭っ苦しい空間ではすぐに手脚を伸ばすこともできず。
 身を捩っただけで筋肉痛のようなものが走る。
 
 体をあちこちにぶつけながら夜目ができてくると共に、自分のいるこの空間もその正体がわかってきた。
 やけに頑丈なつくりで、洞穴のようにゴツゴツとした表面。
 それでいて私が横になってちょうどくらいのサイズ感の空間。
 そこら中でネオン色の部品が発光していることを見ても、
 今私がいる空間を称するのにふさわしい言葉は【コックピット】というものだと納得した。
 
- 910 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:39:13.31 ID:SuCOeezb0
-   
 頭をぶつけないように、ゆっくりと前屈みに身を起こした。
 よくみるとすぐそばに操縦桿と座席とが一体になったコーナーがある。
 ずっと床に転がっていたせいで体がバキバキだ。
 少しでも柔らかい材質に触れたくて、私は椅子の上に腰掛けた。
 
 所詮は乗り物のシート。
 そこまで上等な感触では無かったが、床に転がっているよりはマシだ。
 ふぅっと息をついて、やっと事態を把握する気が起きた。
 
 
 ……さて、これはどうしたことだろうか。
 
 
 レストランで何者かが突然姿を表したかと思うと、私の意識はすぐに体を離れていき、体中を暗黒が浸した。
 かと思うと、次に瞼を開けたときには既にこのコックピットの中。
 全身に鈍い痛みを走らせながら、ここでどれほどの時間を過ごしたのだろう。
 
 
- 911 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:40:19.13 ID:SuCOeezb0
-   
 それに大体、誰が私をここに?
 なんのために? どうやって?
 そして、ここは一体なんのコックピットなんだ?
 
 冷静が疑問の五線譜を作り出し、私の神経回路は脳髄の指示に従って活動を開始。
 五感でコックピットのその先を手繰り寄せる。
 
 聞こえてくる音は、火花の音。
 機械のメンテナンスをどこかでしているのか、バチバチとした音が遠くに聞こえる。
 
 感じる匂いは、オイルの匂い。
 私が今いる場所は、どうやら何かの整備場のよう、ガソリンスタンドで嗅いだ匂いが鼻をくすぐる。
 
 触れる機械は、初めてのもの。
 見たこともない操縦桿はちゃんとした手順を踏まないと動作しそうにない。
 私では一ミリ前に進めることすらできなさそうだ。
 
 
 
 ……そして何よりも。
 
 
 
 
- 912 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:41:08.34 ID:SuCOeezb0
-   
 私のいるコックピットの上半分はガラス張りになっていた。
 私の乗る『何か』の状態に応じて視認性は良くなるらしい。
 今はスリープ状態なのか、ガラスは少しすりガラスのようで薄靄のかかったような視界だ。
 それでも一番の情報は目から入る。
 とにかく事態を見極めるべく、眼球がガラスにぶつかるぐらいの距離まで目をそこに近づけた。
 細めにして、片開き。
 
 ガラス一枚隔てた世界を見定めるべく、近づけて……
 
 
 
 ___【それ】を、見た。
 
 
 
 
- 913 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:42:39.64 ID:SuCOeezb0
-   
 
 
 
 
 【首のない死体が、エグイサルの取り囲む中央で椅子に座っていた】
 
 
 
 
 
 
- 914 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:43:44.33 ID:SuCOeezb0
-  ------------------------------------------------ 
 
 
 
 CHAPTER 05
 
 Killer×Miss-aiōn
 
 非日常編
 
 
 
 ------------------------------------------------
- 915 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:45:10.52 ID:SuCOeezb0
-   
 
 昏く、狭い、箱舟の中。
 
 
 大波に揺られ、嵐に押され、その中に大事に保管された命をどこまでも運んでいく。
 外からの声など届くはずもなく、外からの光だけがわずかに差し込んでくる。
 内側から外側を見ることも許されず、運ばれる者はただ、その暗闇と静寂の中で己自信と対峙して時間を流れるのを待つだけ。
 
 永遠とも一瞬ともとれるだけの時間が経って、ようやく。
 
 天板が外れ、やっと陽の光を浴びるときがやってくる。
 箱舟を出、手を天に向かって掲げ、うんと伸びをして初めて。
 
 
 ____運ばれた者は、滅んだ世界を目にすることになる。
 
 
 
- 916 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:46:38.11 ID:SuCOeezb0
-  ------------------------------------------------ 
 
 厚みはどれほどだろうか。
 
 私の通う事務所の窓は多分1cmの厚さもない。
 小動物や風に運ばれた小石が部屋に侵入するのを防げさえすればいい、それだけの窓なのだからそれで十分なのだ。
 
 では、この窓はどうだろう。
 おそらく軍用の機体であるこの『エグイサル』のコックピットを覆う窓がそんなやわなものと一緒で許されるはずもない。
 きっと多少の銃弾なら防げるぐらいには分厚くて、特殊な加工もなされているはず。
 その甲斐あって私はこのコックピットの中で、外の世界で何が起きているのかを悟ることすらなく、
 そしてすべてが起き、終わった後でも……近づくことすらできなかった。
 
 
 「おい……なんだよ、あれ……何が起きてんだ……誰が死んでんだ……!!」
 
 
 エグイサルが取り囲む中、椅子に座って無い首から血をだくだくと流している変死体。
 コックピットの中で狼狽えるほかない私を嘲笑うように、アナウンスが鳴った。
 
- 917 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:48:38.44 ID:SuCOeezb0
-   
 
 ピンポンパンポ-ン!!
 
 『死体が発見されました! 一定の自由時間の後、学級裁判を開きます!』
 
 
 3人以上の人間が死体を発見すると鳴るアナウンス。
 これが鳴り響いたということは、私で3人目にカウントされるということだろうか。
 その推理すら成立しないほど、このコックピットからでは状況がまるで見えてこない。
 
 そしてモノクマはどこから姿を現すかと思うと……
 
 ザザッ……
 
 『……大丈夫? 相当参ってるみたいだね。無理もないか……突然こんなことに巻き込まれちゃって』
 
 
 コックピットのガラスの表面に突然に浮かび上がってきた。
 
- 918 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:51:17.24 ID:SuCOeezb0
-   
 ロボットアニメなんかで見たことがある、このガラスはスクリーンモニタも兼ねているのだ。
 同じ舞台を組む仲間や、戦闘中に地図を画面上に展開して戦闘を補助する近未来的な技術。
 それが標準搭載されているらしく、モノクマは悠々とワイングラスを傾けながら私たちの前に姿を現した。
 
 
 「モノクマ……! これはどういうことなんだ、説明しやがれ!」
 
 
 画面にかじりついて問いただすも、モノクマはその表情を少し動かさない。
 
 
 『やれやれ……説明だなんだと言われましても、それはこっちのセリフなんだよね。ボクはこのコロシアイのゲームマスターではあるけど参加者ではないんだ』
 
 「だからって……オマエには説明義務があるだろ! コロシアイを……学級裁判を強いるんだったら、自分たちの置かれている状況を知る権利が私たちにはあるはずだ!」
 
 『……まあ、最小限の情報だけ教えてやるけどさ。お察しの通り、オマエラは今、全員エグイサルのコックピットの中にいます。きっかり一台につき一人ね』
 
 
 なるほど、死体発見アナウンスが流れたのはそう言うことか。
 このガラスは外から内側が見えにくい作り。今こうして他の機体のガラスが真っ暗に見えていてもその裏には見知った顔の誰かが潜んでいるという訳だ。
 
- 919 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:52:55.67 ID:SuCOeezb0
-   
 
 『そして、エグイサルが収められているのは探索の時と同じくワダツミインダストリアルだよ。ここの整備工場の中で事件は起きたんだ』
 
 
 遠くに聞こえる火花を散らすような音の正体もこれで説明がついた。
 あの工場では常に軍用兵器と思しきものを取り扱っており、耳を劈くような音がそこら中で鳴り響いていた。
 この遮音性の高そうなコックピットでもその音が聞こえてくるのは、今も工場が稼働中だからなのだろう。
 
 
 『オマエラの目の前……中央で座っている首のない死体。これから始まる学級裁判ではオマエラにこの死体を殺したクロを議論してもらいます』
 
 「……ちょっと待て、なんだその口ぶりは」
 
 『ん?』
 
 「あの死体は誰なんだ? それを知らないことには学級裁判なんて____」
 
- 920 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:54:09.08 ID:SuCOeezb0
-   
 
 
 
 
 『さあね? その死体が誰かなんて……ボクも教えられないな』
 
 
 
 
 
- 921 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:55:01.62 ID:SuCOeezb0
-   
 「……は? オマエ、何言って……」
 
 『うぷぷぷ……今回のクロには、ボクはすごくす〜ごく感謝してるんだ。これで事件も5つ目、展開的にも誰が死ぬかなんて見えすいてきたし、いい加減事件もマンネリ』
 
 『そんなところで、こんなスパイスを混ぜてくれるんだから!』
 
 
 モノクマは私の狼狽っぷりを認めるなり矢継ぎ早に言葉を並べ立てる。
 命を己が掌に載せ、圧倒的優位に立っている側だからこその余裕綽々っぷりで悦に浸る。
 その言葉が続くたびに私の胸は不愉快な鼓動を繋ぎ、そしてそのたびに不穏な埃が心臓を包んだ。
 
 そして、モノクマの浸っていた悦の正体が徐々に姿を現していく。
 未就学児のような無邪気さで、嬉々として命を弄ぶ残酷さで、空想小説のように突き抜けた突拍子のなさで塗り固められた、ガチガチの『悦』。
 
 それを一言で称するなら、『好奇心』なんだと思う。
 私たちが命を懸けて臨む場で、どう転がるのかを見て、笑ってやろうというのがあまりにも透けて見えているのが不愉快を極めた。
 
- 922 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:56:34.02 ID:SuCOeezb0
-   
 
 
 
 
 『今回の学級裁判は誰が死んだのか、そして誰が生き残っているのかもわからない状態で議論をしてもらいまーす!』
 
 
 
 
 
 
- 923 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:58:10.09 ID:SuCOeezb0
-   
 「……は?」
 
 『今言った通りだよ! オマエの他にも、ここにあるエグイサルにはそれぞれ生存者が一人ずつ搭乗しております。ですが、その正体を見た目からは勿論、声からも当てることは不可能です!』
 
 『学級裁判ではそんなアンノウンな状態の相手と舌戦を行い、時には協力して、推理を行い犯人を明らかにしてもらいます!』
 
 
 ……馬鹿げている。
 あまりにも、馬鹿げすぎている。
 これまでに挑んだ4つの学級裁判だって荒唐無稽な話だ。
 齢20前後の女を集めて、その中に潜む殺人犯を見つけ出す……なんてどこのB級映画だという話。
 それなのに、誰が死んだか誰が生きているかも話からに状態から犯人を見つけ出せ……なんて。
 
 
 「いい加減にしろよテメェ……!」
 
 『ん?』
 
 「ただでさえ博打みたいなもんなのに、そんな目に賭けてられっかよ……!」
 
 『ふーん、もしかして自信がないの? お仲間の顔を見ながらじゃないと安心して議論ができないの?』
 
 「そんな安い挑発に乗るかよ……私たちは自分の命を懸けて学級裁判をやってんだ、そんなオマエの一回の思いつきに振り回されるわけにゃいかねえんだよ」
 
- 924 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:59:30.23 ID:SuCOeezb0
-   
 『そんなこと言われてもなぁ……今のこの状況に持ち込んだのはオマエラの中のクロなんだよ?』
 
 「あ?」
 
 『あの死体が誰かわからないように細工をしたのも、エグイサルの中に他の人間を乗せたのも、ぜ〜んぶやったのはオマエラの中に潜むクロ! ボクの思いつきっていうよりはクロの犯行計画なんだよね』
 
 『ボクはその意思を汲んで、このルールを提示しただけ。むしろここでオマエラの要求する情報を開示するとフェアじゃなくなると思うけど』
 
 
 もはや公平だとか不公平だとかそういう議論の上にはないのだが、モノクマは譲る気はなかった。
 そりゃそうだ、こいつからすればクロのこの一策は最高の酒のつまみ。
 私がいくら正当な主張をしても認めないのは目に見えた。
 
 
 「……でも、どうやって学級裁判なんかやるんだよ。このコックピットからじゃ議論なんかできねえし、動くことだってままならねえぞ」
 
 『ああ、それは大丈夫だよ。エグイサルはリモートコントロールが可能だからね。すぐに外が見れるように電気もつけてあげるし、時間になれば裁判場まで連れて行ってあげる』
 
 『それに議論は……うぷぷぷ、とっておきの機能があるからお楽しみに!』
 
 
- 925 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:00:36.75 ID:SuCOeezb0
-   
 神経を逆撫でする喋り方だが、どうやら学級裁判の進行には問題なし、捜査もできるとのことらしい。
 ウダウダいう前にとにかくやれ、と言わんばかりにすぐに電子生徒手帳にはモノクマファイルの情報がダウンロードされた。
 
 
 『今回の被害者は不明。死亡推定時刻は午前10時前後、殺害現場となったのはワダツミインダストリアル内エグイサル整備工場。首は根本から両断されており、頭部は確認できず。体の部分にはローブのようなものが被さられ、シルエットが見えなくなっている。胴と首を切り離した瞬間に即死だったと断定』
 
 
 ……まあそりゃそうだよな。
 首をぶった切られて生きていられる生物はもはや生物ですらない。
 しかし、犯人の奴はどうやって首を切ったというんだろう。
 人間の首には人体でも随一の太さと強度を誇る骨が通っているはずだ。
 生半可な刃物では骨に傷をつけることもままならない。
 無論それでも動脈を傷つければ失血死には足ると思うが、わざわざ犯人は切り離すところまでやっている。
 凶器を特定することが、解明への大きな一歩となりそうだ。
 
 
 コトダマゲット!【モノクマファイル5】
 〔今回の被害者は不明。死亡推定時刻は午前10時前後、殺害現場となったのはワダツミインダストリアル内エグイサル整備工場。首は根本から両断されており、頭部は確認できず。体の部分にはローブのようなものが被さられ、シルエットが見えなくなっている。胴と首を切り離した瞬間に即死だったと断定〕
 
 
- 926 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:02:01.19 ID:SuCOeezb0
-  ------------------------------------------------- 
 
 「で、捜査ってのはどうやればいいんだよ。まさかこのエグイサルを操縦しろっていうんじゃないだろうな」
 
 『そんなことは言わないって。エグイサルの操縦には専用のリモコンが必要だしね、内部のマニュアル操作は……なんかめんどくさいからパス!』
 
 「はぁ……」
 
 『その代わり、エグイサルアイは自由自在に使えるよ! 窓から見たいところをピンチアウトしてくれれば自動でズームするから、隅々まで見てやってちょうだいな!』
 
 『あと動かしてみたいとか要望があればその都度ボクを呼んでね! できる範囲で協力するよ!』
 
 
 本当にこの状態のまま操作を行うんだな…
 
 ……今頃他の連中もエグイサルの中で同じ説明を受けているんだろう。
 コミュニケーションどころか言葉を交わすこともできないんじゃ協力は難しいが、戦っているのは私一人じゃない。
 それぞれがこの手足を伸ばしてやっとの空間で出来ることをやる。
 
 ……他のことなど何もできないんだから。
 
 
- 927 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:03:05.40 ID:SuCOeezb0
-   
 流石に不可解な状況では私にも蒙昧とした不安が付きまとった。
 こんなところで得られる情報でどこまで戦えるのか、自分の手で触れぬ証拠に信用ができるのか。
 そして、これから先に待ち受ける学級裁判がどんなものになるのか。
 何よりも怖いのは、『わからない』ことだと嫌でも痛感する。
 人は指針に縋って生きている。
 依り代らしい依り代が無い状況下では、何も無くとも胸がざわついて、呼吸が浅くなるらしい。
 
 そこで私は、昔気まぐれに読んだ小説を思い出した。
 イギリスかどこかの国で、脚を弱らせた老人がパイプをふかしながら探偵業を営む。
 狭い居住空間から一歩も出ることもなく、椅子の上で論理を転がして事件を解決する。
 そんな話だった。
 確かガキの頃に、ママにたまには活字でも読んでみろと渡された本だったように思う。
 
 どうしてこんなものを思い出したのか、それは目先の縋るものを失った本能が、過去に縋るものを求めたから。
 ただその見苦しい姿勢はこの局面ではある種正解だったのかもしれない。
 
 安楽椅子に腰かけた老爺の姿を思い浮かべると、体の震えが止んだからだ。
 
 ……あんな耄碌一歩手前のジジイにできること、私にできないはずもない。
 
 私が座っているのはコックピット。
 古ぼけた木製の椅子に比べると、随分と座り心地もいいし、この椅子は機能性だって抜群だ。
 
 
 
 
 ____上等。
 
 
 
 
 【捜査開始】
 
 
 
- 928 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:04:55.77 ID:SuCOeezb0
-  ------------------------------------------------ 
 
 さて、どうやって調べたものか。
 エグイサルの操作ができないのは再三確認している通り。
 あくまでここから動かないで捜査を行うのが今回のスタンスだ。
 つまり基本的には『視る』ことに頼らねばならない。
 ここから目視で調べるべきだと思うのは……
 
 やはり【死体】は外せない。
 ……ここからも首の断面が確認できて少し気分が良くないが、致し方ないだろう。
 
 そして、今自分たちの乗るエグイサルもいる工場、その【工場内設備】は調べたいな。
 ワダツミインダストリアルも何度か足を踏み入れてはいるが、そこまで入念に調べたことはない。
 
 工場を調べるなら、今のコックピットからは死角になっている【エグイサルの背後】も見ておきたいな。
 モノクマは要望さえ出せば応じてくれそうな態度だったし、これくらいなら許されるだろう……
 
 加えて、私の乗っている以外の【並んでいるエグイサル】も注視しておこう。
 自分の乗っている機体と同機種、外観を見ておくことは意味があるはずだ。
 
 忘れちゃいけないのが、この【コックピット内部】の捜査だ。
 私たちの放り込まれているこの空間だって、何の意味もないはずがない。
 出来る範囲で情報を拾い集めるぞ。
 
 更には、今回の事件は【私自身】も当事者なんだ。
 自分が知らずのうちに情報を握っている可能性も十分にある。服とかポケットとか、忘れずに確認しておこうか。
 
 大体調べられるのはこのあたりか?
 調べ忘れが無いように、入念に当たっていくとするか……
 
 1.死体
 2.工場内設備
 3.エグイサルの背後
 4.並んでいるエグイサル
 5.コックピット内部
 6.ルカ自身
 
 ↓1
- 929 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 22:08:40.34 ID:Z9qDEv5C0
-  1 
- 930 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 22:10:03.41 ID:Lqsa33W30
-  1 
- 931 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:13:33.51 ID:SuCOeezb0
-  1 選択 
 ------------------------------------------------
 
 【死体】
 
 まあまずはあの死体をよく見てみないことには何も始まらないよな……
 顔を窓に近づけて、死体を指でピンチアウト。
 窓の液晶には凄惨な首無し死体がデカデカと映し出された。
 
 
 「……チッ」
 
 
 見れば見るほどに異様だ。
 首は見事なキレ筋というべきか、一切乱れのない直線ですっぱりと切れている。
 どれほど切れ味のいい刃物でも、なかなかこうはならない。
 それに、死体の身元特定を妨げるためか全身にローブのようなものがかけられてシルエットが隠されている。
 
 
 「あの布……何だか妙だな」
 
 
 しかし、シルエットを隠す目的にしては布は妙にぎらついていた。
 天井の照明をこちらに反射させ、擦れた時にはかしゃかしゃという音が立つ。
 
 
 「あれ……アルミシートか」
 
 
- 932 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:14:31.93 ID:SuCOeezb0
-   
 
 ≪「大丈夫、このシートの裏に隠れていれば見つからないから」
 「な、何を……」
 「夏葉さんと同じ……赤外線カメラは、アルミシートの裏にあるものを判別できない」
 「……!」
 「……静かにしてて」≫
 
 
 つい最近、私はあのシートを見た。
 それどころかあれを被りすらした。
 第5の島が解禁されて間も無く、当日夜。
 このワダツミインダストリアルに忍び込んだ私はエグイサルに存在を感知され、あわや襲われかけた。
 そこを赤外線センサーを無効化するアルミシートを美琴に被せられ九死に一生を得たのだった。
 
 
 「あのシート、この工場の中に置いてあったのか……?」
 
 
 工場に置いてあったからうってつけ、ということなのだろうか?
 死体の素性を隠すための布にしては、目立つすぎるような気もするが……気にしすぎだろうか?
 
 
 コトダマゲット!【死体上のシート】
 〔死体のシルエットを隠して素性を隠す目的でかけられたアルミのシート。数日前に美琴がこのシートをエグイサルの索敵から逃れるために用いた〕
 
 
- 933 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:15:33.99 ID:SuCOeezb0
-  ------------------------------------------------ 
 
 「しかし犯人はどういうつもりなんだろうな……」
 
 
 学級裁判で争われるのは犯人が誰か、ということ。
 被害者が誰であろうとその中身を問われることはない。
 無論、候補者の選定に一定の妨害効果はあるだろうが……ここまでして隠蔽を行う必要はあるのだろうか。
 
 
 「……周到だな」
 
 
 特に手袋まで死体に着用させている辺り、余念がない。
 市川雛菜と私は掌にあからさまな傷跡がある。
 死体の掌を明らかにすればそれが私たちかそうでないかすぐに分かり、候補を絞ることになりかねない。
 ちゃんとそこまで考えられているようだ。
 
 
 「……ん?」
 
 
 レザー製の手袋を観察すると、一部分に気になった場所がある。
 あらためてそこをピンチアウト。
 ズームにズームを重ねることで流石に解像度は落ちるが……私の違和感を明らかにするにはそれでも足りた。
 
 その手袋は、左手の一部分、指先だけが少しだけ破れているのだ。
 本当に少し、糸のほつれぐらいの違いだが……新品同然に見える手袋だと際立って見える。
 
 
 「……一応、覚えておくか」
 
 
 コトダマゲット!【死体の手袋】
 〔首のない死体の着用していた手袋。レザー製で新品同然だが、左手の指先だけ破れている〕
 
 
- 934 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:16:54.87 ID:SuCOeezb0
-  ------------------------------------------------ 
 
 捜査の基本と言えば死体から流れた血、その跡を辿ること。
 これまでの事件でも、死体が動かされた可能性や別の場所で争った可能性を検討するうえで何度も調べてみたものだが今回はどうだろうか。
 
 今回の死体は見た目の異様さも際立つ。
 死因となったであろう首の両断はかなりの血しぶきも跳んだだろう。
 不自然な血痕の流れがあればすぐにわかるはずだ。
 死体の足元付近からその周りを指先でピンチアウトする。
 
 何かを引きずったり、持ち出したりしたような分かりやすい形跡は見当たらない。
 死体の首はなくなっているし、持ち出した時に血が垂れたりしそうなものだがそれがないということは、
 犯人は布か何かにくるんでどこかによこしたのだろうか?
 
 
 「しかし、この犯行でこうも証拠を残さないなんてことがあり得るのか?」
 
 
 私が引っ掛かるのは手口の割に証拠が少なすぎること。
 先ほども言及したが、首を両断すればそれだけの返り血を受けるのは必然。
 レインコートを着ていようがなんだろうが、液体が付着すれば当然滴り落ちる。
 犯人の行動を示す何らかのものは残らねばいけないのだ。
 
 だが、まるで犯人はその場で忽然と姿を消したようで、靴の痕も全く残っちゃいない。
 
- 935 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:18:32.36 ID:SuCOeezb0
-   
 「どうやって犯人は首を刎ねたっつーんだ……?」
 
 
 まさか遠距離で首を刎ねるような方法でもあるのだろうか。
 結局、今回もその手口を明らかにせねば真実に近づくことは難しそうだ。
 
 
 「……ん?」
 
 
 はじめは気づかなかったが、よく見ると証拠がないわけではない。
 靴のような分かりやすい形状でないし、他の血しぶきと混ざっているから分かりづらいが……一部だけ、散らばっている『点』に不自然なものがある。
 同じ大きさの『点』の血痕が部分的に連なっている箇所があるのだ。
 しかもその『点』はどこに辿り着くでもなく、突然に終わりを迎える。
 そこにはエグイサルは勿論扉などもなく、見上げた先にダクトがあるだけ。
 人間の力じゃどうやっても辿り着かない場所だ。
 
 これも犯人の工作の一部なのだろうか……?
 
 
 コトダマゲット!【点の血痕】
 〔死体発見現場にあった不自然な血痕。同じ大きさの点が連なり血だまりから伸びているかと思うと、ダクトの下で突然に消えていた〕
 
 ------------------------------------------------
 
 さて、ここで調べられるのはこれくらいか……
 
 1.工場内設備
 2.エグイサルの背後
 3.並んでいるエグイサル
 4.コックピット内部
 5.ルカ自身
 
 ↓1
- 936 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 22:21:09.88 ID:Z9qDEv5C0
-  1 
- 937 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:23:04.96 ID:SuCOeezb0
-  1 選択 
 ------------------------------------------------
 【工場内設備】
 
 工場内の設備を観察する。
 コックピットのガラスがあるので流石に360度まるまるというわけにはいかないが、天井を仰ぎ見ることぐらいはできた。
 
 エグイサルを収容するだけあり天井はかなりの高さ。
 高校の体育館、あるいはそれ以上の高さがあるだろう。
 そんな高みを支えているのが分厚い鉄板と太い鉄骨。
 灰色の骨組みが剥き出しになった構造は、マニアからすれば垂涎ものの建築だろう。
 でも、この時私の目を引いたのはその無骨な作りではなく、それに付随するもの。
 蝿が料理に止まったかのように、さりげなく、そこにあった。
 
 
 「……監視カメラか」
 
 
 私たちを見下ろすように取り付けられたカメラ。
 その画角からして、エグイサル六台をしっかりととらえた上で、中央の死体の座る椅子も収められていることが予測できた。
 
- 938 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:24:10.08 ID:SuCOeezb0
-   
 
 「おい、モノクマ! あの監視カメラの映像……見られるか?」
 
 『はいはい、ちょっと待ってね! コックピットのモニターと同期いたしますぞ!』
 
 
 ブブ……ブーン
 
 
 暫く待つと、目の前の窓に私たち自身が乗るエグイサルを見下ろす構図の映像が流れ始めた。
 時刻は午前9時半ごろ、レストランでの騒動が起きてから暫く経った時刻で、モノクマファイルに記載されていた事件発生時刻から少し前の時刻に当たる。
 
 この場にいるエグイサル全員を俯瞰するような構図。
 エグイサルが円形に並んでいることもあり、画角として収まりは悪くない。
 その中にぽつんと置かれたアルミ製の椅子。
 
 そこに腰掛けているのが……
 
 
 
 「あさひ、か……?」
 
 
 
- 939 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:25:36.55 ID:SuCOeezb0
-   
 私たちをレストランで襲った時と同じくガスマスクを装着した状態であさひはそこにいた。
 顔の前面が覆われてはいるものの、髪色や服装、それに小ぶりなシルエットからしても本人まず間違いはないだろう。
 あさひはあさひらしからぬ大人しさで、そこにじっとしていた。
 
 
 「何やってんだ……?」
 
 
 何も起きていない、ただ座っているだけなのになぜか胸がざわついた。
 このまま映像を見ていると、きっと良くないことが起きる。
 そんな予感が走ったのも束の間。
 
 
 ザザザザザ…!!!
 
 映像に亀裂が走る。
 突如として砂嵐に覆われ、エグイサルもろともあさひも闇の中へ。
 
 
 「お、おい……!? なんで……!?」
 
 
 画面に抗議の声を上げるも無論私の意思は跳ね除けて、モニターは黙り込む。
- 940 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:26:39.12 ID:SuCOeezb0
-   
 苛立ちが募る最中、モノクマが画面に割って姿を表した。
 
 
 『あー、映像データが破損しちゃってますねこりゃ』
 「ふざけんな! 破損も何も、オマエの恣意的な編集なんじゃねーのか?!」
 
 
 当然の帰結だ。
 こんな状況下で、与えられる情報にさらに制限がかかるようなら私だって黙っちゃいられない。
 でも、モノクマは平然と真っ向から私の訴求を棄却する。
 
 
 『それは言いがかりというやつだよ。根拠もない、ただの感情の当てつけで罪を被せられても参っちゃうなあ』
 「じゃあこりゃ一体何なんだ! 説明しろ!」
 『最初に言ったでしょ? 映像データが破損しちゃってるって。これは誰かが意図的に切り取ったんじゃなくて、カメラ側のアクシデント! わかる? ドゥユーアンダスタン?』
 
 
 確かに誰かが編集したにしてはお粗末すぎる。
 砂嵐で画面を覆い尽くして不都合を消す、なんてこの部分を疑ってほしいと言っているようなもの。
 やるならちゃんとしたカット編集なりなんなりを施すはずだ。
 モノクマの主張には一定の妥当性が認められた。
 
- 941 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:28:15.33 ID:SuCOeezb0
-   
 『破損している部分を確認するのは諦めてもらうしかないけどさ、続きなら見れそうだからそれで勘弁してよ』
 「……チッ、だったらその続きとやらをさっさと見せな。これ以上イラつかせるなよ」
 『はいはーい』
 
 
 モノクマが姿を消すと、砂嵐は倍速で流れていった。
 そのまま待つこと数十秒、モニターには再びあの構図の映像が流れ始めた。
 
 
 「……は?」
 
 
 でも、砂嵐で途切れる前と後では、大きな違いがあった。
 それは……エグイサルに取り囲まれた中心。
 あの椅子に腰掛けている人物。
 
 
 
 芹沢あさひが先ほどまで腰掛けていた椅子には、首のない死体が鎮座していたのである。
 
 
 
 「お、おい……これって……!?」
 
 
 コトダマゲット!【監視カメラ:ワダツミインダストリアル内部】
 〔ワダツミインダストリアルの工場天井に取り付けられていた監視カメラ映像。エグイサルが一つの椅子を取り囲む画角で撮影されており、はじめはあさひがその椅子に腰掛けていた。途中で映像データの破損を挟むと、その椅子に座っていた人間が首のない死体にすり替わっていた〕
 
 
- 942 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:29:59.50 ID:SuCOeezb0
-  ------------------------------------------------ 
 
 「モノクマ……これ、どういう意味だよ!? この映像……まるで、あさひが死んだみたいな……!」
 『映像の解釈に関してはノーコメント! そこから先の領分はオマエラで話し合うことでしょ?』
 「……クソッ!」
 
 
 違う、そんなわけない。
 そうと分かっていながらも、この映像を見せられると流石に私も正気じゃいられない。
 叫び出しそうな気持ちをなんとか抑え込みながら、改めて映像を検証する。
 重要なのは、この破損した部分のデータであるのは間違いない。
 この空白の時間のうちに、椅子の上には首のない死体が現れる。
 つまり本来は殺害現場もその証拠が撮影されていたはずなのである。
 なのに、都合よくそこだけ映像データが破損するなんて……
 
 どうにか破損部分に繋がる情報がないか、映像を巻き戻したり早送りしたり、あれこれ試行錯誤していると私はあるものが気になった。
 
 
 「そういえばあさひのやつ……このガスマスク、どうしたんだろうな」
 
 
- 943 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:31:30.76 ID:SuCOeezb0
-   
 それは本筋とは異なった関心。
 何度も映像を繰り返すうちに、あさひの顔を隠しているそれが気になった。
 死体では頭部が消失していることもおそらく起因するのだろうが、
 天衣無縫な彼女がゴテゴテとしたものを身につけていることがもの珍しく、私にはその理由が気になって仕方なかった。
 
 
 「なあ、モノクマ。このガスマスク……詳細はわかるか?」
 
 『ガスマスク? ああ、この人がつけているマスクのことだね?』
 
 (個人名はあくまで伏せるんだな……)
 
 『このマスクはロケットパンチマーケットで購入可能なもので何も特別なものではないよ。呼吸フィルターに灰色のガラス、強化プラスチックとご家庭にご用意可能な素材で製作されております!』
 
 「どこがだよ……」
 
 
 材料のことはさておいて、あさひが私たちを眠らせてからワダツミインダストリアルにいる時もずっとガスマスクをつけていたことは記憶しておいた方がいいかもな。
 この映像も裏付けになるし、あさひの行動を辿るヒントになりそうだ……!
 
 
 コトダマゲット!【ガスマスク】
 〔ロケットパンチマーケットで入手可能なガスマスク。呼吸フィルターに灰色のガラス、強化プラスチックで作られている。レストランの襲撃時から事件当時まで、あさひはずっとマスクをつけていた〕
 
 ------------------------------------------------
 
 さて、ここで調べられるのはこれくらいか……
 
 1.エグイサルの背後
 2.並んでいるエグイサル
 3.コックピット内部
 4.ルカ自身
 
 ↓1
 
- 944 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 22:33:00.72 ID:J6Y7OAnE0
-  4 
- 945 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:35:15.46 ID:SuCOeezb0
-  4 選択 
 ------------------------------------------------
 
 【ルカ自身】
 
 エグイサルを出て捜査は出来ずとも、今私自身が何か証拠を持っている可能性はないだろうか?
 レストランで意識を失ってここに至るまで、結構大掛かりな移動をしているわけで。
 無意識のうちに何かを掴んでいたり、ポケットに突っ込んでおいて何かが役に足ったり、そんなことに縋らざるを得ない状況下だ。
 ごそごそと自分の懐をまさぐってみると、指の先に服の元は違った布地が当たる。
 すべすべとして上質な布は、つぼみのように物を包み込んで上部で口を閉じている。
 
 
 「……これは、浅倉透にもらったお守りか」
 
 
- 946 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:36:09.08 ID:SuCOeezb0
-   
 第五の島が解禁されてすぐ、浅倉透が生き残っている面々に手作りのお守りをプレゼントした。
 私たちが無事にこの難局を乗り切れるように、もう誰も欠けることがないように。
 神にも縋る気持ちで作ったんだろう。
 そんなものを大事に持っている私も、いつからか考えると信じがたいものだ。
 
 
 「……」
 
 
 こんなことを思うのも不躾だとは思う。
 願掛けに実際の効用なんて期待する方が悪い。
 それは当然その通りではあるのだが……
 
 
 「全く、お守りの効果はなかった……な」
 
 
 コトダマゲット!【透のお守り】
 〔第五の島が解禁されてすぐに浅倉透が生き残りのメンバーに手渡したお手製のお守り〕
 
 
- 947 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:37:21.12 ID:SuCOeezb0
-  ------------------------------------------------ 
 
 他に何かないかともう片方のポケットも探ってみる。
 すると今度はカサッという音を立てて乾いた感触が指先を刺激した。
 折り目正しくきっちりと折られていて、それでいて私自身も丁寧に取り扱っているので汚れひとつない。
 
 
 「冬優子……オマエの期待に応えられなくて、悪かったな」
 
 
 あさひが私の部屋に入ってきてやむなくポケットに突っこんだままだった冬優子の黄泉からの手紙が、まだそこにあった。
 前回の事件、有栖川夏葉殺しの裁判終わりに私のコテージ前ポストに投函されていた1通の手紙は冬優子が裁判に挑む前に遺したもの。
 最後の最後まで冬優子らしく、有無を言わさず私に無理やり謎を押し付ける手紙。
 なかなかカチンとくる文面ではあるのだが、冬優子亡き今、私とあいつとを繋ぐものはこれ1枚きり。
 そう雑に扱うことなどできないのだ。
 
 
 「……あさひを、私に託してくれたのに」
 
 
 他ならぬ存在となった私と冬優子。その別れ際に目にかけてきた大切な妹分を私に託してくれた。
 私なら、あさひを冬優子に代わって守れると信じてくれた。
 
- 948 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:38:09.32 ID:SuCOeezb0
-   
 でも、実際はどうだ?
 あいつの手綱を握るどころか御しきれず、しまいにはこんな事件まで引き起こされてしまった。
 もしこれで裁判に負けて私が死にでもしたら、地獄行きは免れられないことだろう。
 
 ……いや、その前に冬優子にひっぱたかれるだろうな。
 
 
 「チッ……」
 
 
 冬優子のやつにひっぱたれるのも癪だし、やはり私には生き残る以外の選択肢はないらしい。
 そうでないと、あいつが託したもう一つの物も報われないからだ。
 それは……写真。
 前回のコロシアイの生き残りとされる五人、そして私をはじめとした今回の参加者。
 それが一枚に収まったあの写真を検証もまだしていないし、検証すべきかどうかも分からない。
 ただ、謎を謎のままで終わらせるべきでないことだけは確かだ。
 
 
 
 ____やっぱり、死ぬわけにはいかない。
 
 
 
 コトダマゲット!【冬優子の手紙】
 〔前回の事件終わり、ルカの部屋のポストに投函されていた冬優子からの手紙。裁判前に書かれたもので、詳細不明の一枚の写真も同封されていた〕
 
 
- 949 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:39:24.11 ID:SuCOeezb0
-  ------------------------------------------------ 
 
 そういえば……私は意識を失う直前に卓上のコーヒーを引っかけたんじゃなかったか?
 催眠ガスを吸い込んですぐに力を失って手がぶつかり、腹のあたりにコーヒーをかけてしまった。
 意識があればすぐにぬぐったんだが、時間も経ってしまっているだろうし、もう落ちないシミになっているだろうな……
 
 そう思って自分の腹のあたりに手を触れる。
 経った時間がどれほどかは分からないが、流石にコーヒーが渇くほどではないらしく、すぐに布の湿った感触がした。
 
 ああ、結構気に入っている服ではあったのに……
 今度は目視でそのシミを確認してやろうとした。
 
 でも、私の目が捉えたのはコーヒーの黒茶色のシミなんかではなかった。
 
 
 「な、なんだよこれ……」
 
 
- 950 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:40:23.54 ID:SuCOeezb0
-   
 そこにあったのは、こすれた部分が青色に変色していた異常なシミ。
 凡そコーヒーからは抽出できないだろう色素がそこに鎮座していたのである。
 
 思わずさっき触れた手を鼻のあたりに近づける。
 香りは確かにコーヒーだ。
 だが、よく味わってみるとなんだか匂いの中には異物が混ざり込んでいるような気もする。
 妙な甘ったるさと言うか、コーヒーとは決して相いれない風味だ。
 
 「これは一体……?」
 
 私があの時口にしようとしていたコーヒー……なんだか妙だぞ……
 
 
 コトダマゲット!【コーヒーのシミ】
 〔ルカが意識を失う直前に、自分の服に引っ掛けて作ったコーヒーのシミ。なぜか青色の色素の混じったシミになっていて、匂いも純粋なコーヒーのものではない〕
 
 ------------------------------------------------
 
 さて、ここで調べられるのはこれくらいか……
 
 1.エグイサルの背後
 2.並んでいるエグイサル
 3.コックピット内部
 
 ↓1
- 951 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 22:43:01.27 ID:J6Y7OAnE0
-  1 
- 952 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:45:41.22 ID:SuCOeezb0
-  1 選択 
 
 ------------------------------------------------
 【乗っているエグイサルの背後】
 
 エグイサルは死体を取り囲むようになっているので、自然と目線カメラもその方向に向く。
 全員で死体を見下ろすような視点と考えればいい。
 とはいえ、ここはワダツミインダストリアルという建物の中。
 エグイサルが見ている場所以外にも当然空間は広がっている。
 
 
 「背後の検証がしたい……視点を変えることはできるか?」
 
 
 モノクマに協力を要請。
 他の部屋への移動とまではいわずとも、視界を変えることぐらいは許してもらえるはずだ。
 普通に立っていれば振り向くことなんて日常動作だし、捜査のためにモノクマも加担しすぎというほどではない。
 
 
 『エグイサル自体を動かすわけにはいかないから……別カメラを同期して、それをモニターに映させてもらうね?』
 
 
 するとモノクマがどこからともなくエグイサルの見下ろす先で姿を現した。
 私の腹の高さほどの身長でバズーカ砲のようにテレビカメラを抱え込み、私に向かって飛び跳ねて手を撥ねる。
 あんなに小さな身体のくせに、どこからその出力が来るのだろうか……
 
- 953 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:47:07.98 ID:SuCOeezb0
-   
 モノクマはトテトテのエグイサルの足の間を抜けていった。
 すぐにモニターにもモノクマが撮影しているだろう映像が流れだす。
 
 
 『気軽に気になるところを指示してね! 接写なり調査なりなんなりとお申し付けください!』
 
 
 妙に協力的過ぎて気持ちが悪いが、せっかく利用できるなら利用しない手はない。
 モノクマの流している映像を隅々まで丁寧に確かめる。
 工場内には特に変わった様子はなさそうだ。
 設備の破損や見慣れない物資の出現と言った露骨な証拠はない。
 
 
 「視点、もう少し上にしてくれ」
 
 
 それなら普段見ないところを確かめてみる。
 エグイサルを収容可能な建造物ということで天井はかなり高め。
 照明もその分いかつい見た目の高出力なものになっている。
 その陰に隠れているのが、小型ながら高範囲をとらえる監視カメラ。
 この工場内ではエグイサルを見下ろすものともう一つ、入り口を監視するカメラが取り付けられているようだ。
 
 
- 954 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:48:11.78 ID:SuCOeezb0
-   
 「モノクマ、今度はあの監視カメラの映像をよこせ」
 
 『もう、クマづかいが荒いんだから……ちょっと待ってね、すぐ送ってあげるから』
 
 
 暫くするとモニターの映像は全くの別角度に移り変わる。
 ワダツミインダストリアルの入り口の巨大スライドドアをとらえた定点カメラだ。
 録画開始時刻は午前9時前、私たちがレストランで眠らされる前だ。
 代り映えのしない映像をじっと見つめていると、動きがあった。
 扉を開いて工場を出ていく何者かが、バッチリとその姿をとらえられていたのである。
 
 
 「……おいおい、特撮映像でも見てるわけじゃねえよな」
 
 
 その姿はあまりにも巨大、そしてあまりにも角ばっている。
 金属製でケーブルの通った指で取っ手を掴み、仰々しい動作で腕を動かした。
 
 
 
 
 「エグイサルが……出て行ってる……!?」
 
 
 
 
 白いエグイサルの退室シーン、この監視カメラはその衝撃的なシーンをとらえていた。
 
- 955 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:49:44.65 ID:SuCOeezb0
-   
 そして、衝撃はそれだけでは終わらない。
 大体一時間ほど後だろうか、開けっぱなしになっていた扉の隙間から、影が姿をのぞかせた。
 そのシルエットはつい先ほど見たばかり、それと異なるのは、その掌に何かを載せ帰ってきたということ。
 
 長細く、起伏あるシルエット。
 それぞれ別な格好で、手足を投げ出して転がっている。
 そのいずれも瞼を下ろして、ほかに反応を示さない。
 
 
 「これ、私たちか……!?」
 
 
 意識を失った状態の私たち六人の姿がそこにあった。
 私たちを落としてしまわないようにか、お盆を運ぶような動作でエグイサルは画面を抜けていった。
 
- 956 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:50:40.78 ID:SuCOeezb0
-   
 時間の表示を確かめる。
 丁度事件発生の一時間ほど前、そして私たちが眠らされた後の時間帯。
 つまり、この映像は昏睡状態の私たちをレストランからワダツミインダストリアルに運んだ時の映像と言うことになる。
 どうやって六人もの人間を移動させたのかとずっと疑問に思っていたがこれなら納得もいく。
 どれほど非力な人間だろうが、これほどの重機を用いることができたなら地平線の果てまでだって連れて行くことが可能だろう。
 
 そして、この映像はそれを実行した人間をも炙りだす。
 
 
 
 ____芹沢あさひ
 
 
 
 あの映像に唯一映っていなかったのは彼女だけだった。
 
 レストランでガスを散布したのも彼女だったので当然と言えば当然なのだが、この映像によってその行動の多くの裏付けが取れたことになるだろう。
 となると、白いエグイサルのコックピット内にいたのも必然的に彼女になる。
 各色エグイサルに誰が乗っているのか分からない現在、大きなヒントとなる情報を手にすることができた。
 
- 957 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:51:31.47 ID:SuCOeezb0
-   
 監視カメラの映像検証は一定の結果を得ることができた。
 その一方、一つ浮上するのが大きな疑問。
 
 
 「というか、あさひのやつはなんでエグイサルを操縦できてるんだ……?」
 
 
 エグイサルは第五の島が解禁されてからずっと誰でも触れられる場所に保管されていた。
 とはいえ、ほかで見たこともない新開発の軍事兵器。
 操縦方法はおろか、乗り方すら知らないのが私たちの共通ステータスのはずだ。
 それなのにあさひは細やかな操作で工場を出入りし、更には私たちの運搬なんて作業すらこなしているではないか。
 
 ふと脳によぎるのは、一度完全に放棄した可能性。
 
 
 
 
 ___芹沢あさひは“狸”である
 
 
 
 
 
 ……いや、まさかな。
 
 
 コトダマゲット!【監視カメラ映像:ワダツミインダストリアル入り口】
 〔事件現場のワダツミインダストリアル工場入り口に設置された定点カメラの映像。白いエグイサルが工場を自分の手で退室し、ルカたちを掌に載せて戻ってくるまでがバッチリ記録されていた〕
 
 ------------------------------------------------
 
 さて、ここで調べられるのはこれくらいか……
 
 1.並んでいるエグイサル
 2.コックピット内部
 
 ↓1
- 958 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 22:54:27.21 ID:J6Y7OAnE0
-  2 
- 959 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:57:20.94 ID:SuCOeezb0
-   
 行動選択したところで本日はここまで。
 ついに第五章の事件発生です。
 だいぶ挑戦的な事件になっています、裁判を書くのもいつも以上に頭を悩ませました。
 毎度のことながら、核心的なネタバレ予測コメントは控えていただけると助かります。
 
 さて、次回更新は6/23(木)21:30ごろを予定しています。
 捜査パートのおしまいまで、短めの更新になると思います。
 
 次回更新時にスレ立てもしておいて、学級裁判は新スレで進めていく形にしたいですね。
 それではお疲れさまでした、またよろしくお願いいたします。
- 960 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 23:05:20.59 ID:J6Y7OAnE0
-  >>1乙 
 エグイサル出てきた時点で被害者クロが誰かわからないパターンは
 予想してたけどその更に斜め上の展開が待ってるとは思わなかった
- 961 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 23:09:24.19 ID:Z9qDEv5C0
-  お疲れさまでした 
 前作の5章が1の5章と2の5章の合わせ技みたいな味わいだったから今度はV3の5章みたいに
 被害者とクロが分からない裁判かと思ってたらもっと斜め上ですごくびっくりした
 これ、学級裁判中のセリフ管理とかそもそもの学級裁判の組み立てとかめっちゃ大変そう……
- 962 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 23:13:29.40 ID:Lqsa33W30
-  最高に悪趣味な事件をありがとうございます(褒め言葉) 
- 963 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/06/23(木) 02:59:56.00 ID:k+R7HOdm0
-  VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな 
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- 964 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/23(木) 05:32:56.04 ID:K4oZ0RWt0
-  褒め言葉と言い訳すれば煽っても許されるって風潮 
- 965 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/23(木) 09:57:07.46 ID:l0HY+ZumO
-  962ですが、別に作者さんを煽るつもりはありませんでした。ただダンガンロンパの2-5事件や作者さんの前作の5の事件のように無惨で悪趣味な殺害方法だとこの先どうなるんだろうとワクワクするので、単なる褒め言葉として書き込んだつもりでした。誤解を招く表現をして申し訳ありませんでした。最後に、前作からずっと応援しています、これからの展開が楽しみです!! 
- 966 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/23(木) 18:17:17.72 ID:vQfUQJ9QO
-  >>964  
 ダンガンロンパは初めてか? 力抜けよ
- 967 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:34:31.95 ID:5L/Kr65C0
-  >>964 
 ロンパスレなので悪趣味の言葉の指すところは分かってます、大丈夫ですよ!
 意地の悪さを褒めていただけて嬉しいです。
 
 予定よりずいぶんと早くなりましたが、安価もないですし始めてしまいますね。
 次スレも立てておきました、非日常編がこのスレ内で終われば学級裁判からの開始となります。
 とりあえずはこのスレでの再開です。
 
 【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.4
 https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1655983861/
- 968 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:35:52.98 ID:5L/Kr65C0
-  2 選択 
 ------------------------------------------------
 【コックピット内部】
 
 しかしこのコックピットでの捜査は慣れない。
 結局自分の手で何かを触ることもできないというのはそれだけで情報にも制限がかかるし、自分の手元に武器が揃っている実感に乏しい。
 
 
 「せめてこのエグイサルをどうにか操縦できればな……」
 
 
 適当にあちらこちらを弄ってみるものの、反応はなし。
 そもそもボタンを押していいものかの躊躇いもあって、触れられないところも多々ある。
 構造も理解しないままに裁判に挑んでいいものかと首を捻ったその時。
 
 
 「……ん?」
 
 
 座席の左手にグローブボックスのようなものが見つかった。
 特に鍵などもかかっておらず、取っ手を引けばすぐに開きそうだ。
 
- 969 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:37:29.90 ID:5L/Kr65C0
-   
 考える間も無く私はすぐにその中を確かめる。
 左上をホッチキスで閉じてあるリーフレット。
 どうやらこれは画像付きで説明文の書き添えられた説明書であるらしい。
 エグイサルの操作についての基礎的な事項が書き連ねられている。
 
 
 『自立二足型戦闘重機:モデルAX-00 通称【エグイサル】
 ワダツミインダストリアルがこれまでに開発してきたモノケモノなどの戦闘重機のノウハウを結集して作り上げた最新兵器。脚部を重点的に強化したことにより、悪路でも問題なく戦闘できるほか、跳躍により多次元的な戦闘やこれまでネックだった輸送の困難さの解消を可能にした」
 
 『そして操作にも専門的な技術を要さない。専用のリモコンを使えば未経験者でも直感操作で殺戮が可能。即実践投入が図れる。リモコンはユーザー設定のパスコードセキュリティによって外部の人間に不用意に乗っ取られる心配もない』
 
 『コックピット内部でのマニュアル操作も可能だが、特殊重機操縦免許第1級相当の技術が必要。緊急の用事に迫られない限りはリモコンでの操作を推奨』
 
 『装甲も前回モデルより大幅に強化。防弾性は勿論のこと、防炎性、電波干渉防止も性能上昇。コックピットに搭乗中のパイロットの身の安全を徹底的に確保するつくり。また、コックピット内部で動作不良などの緊急事態が感知された場合にはメインシステムとは別付けの単独機構が作動し、オートマチックにコックピットが展開し、脱出できるようになる』
 
 
 なるほどエグイサルの操作にはリモコンが必要になるらしい。
 コックピット内部を見回してみてもそれらしきものは見当たらないし、私が今すぐにどうこう出来るものではないというのが結論のようだ。
 パスコード付きのリモコン……か、そんなものどこで手に入れるんだろうな。
 
 
 コトダマゲット!【エグイサルのリモコン】
 〔エグイサルの操縦に必須のリモコン。ユーザー設定のパスコードセキュリティを採用しているらしい〕
 
- 970 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:38:14.05 ID:5L/Kr65C0
-   
 そして、見た目通りの頑丈な作りをしているらしいな。
 そりゃこれだけ装甲が分厚ければよっぽどのことがない限りは中は安全だろう。
 そのせいで外で何が起きてしまったのか私たちは知ることもできなかったとも言えるし、
 今の私たちからすればその頑丈さが外に逃さない檻としても機能している。
 
 
 「動作不良などの緊急事態……ねぇ」
 
 
 リモコンはなくとも外に出ること自体は可能。
 とはいえそう都合よくエグイサルが壊れているはずもないわけで……
 今はこのまま操作を続けるしかないみたいだな。
 
 
 コトダマゲット!【エグイサル・アーマー】
 〔改良に改良を重ねたエグイサルの装甲。防弾性、防炎性、対電波干渉機能に優れている〕
 
 コトダマゲット!【緊急脱出システム】
 〔エグイサルに標準搭載されている緊急脱出機構。内部の動作不良などの緊急事態を感知するとメインシステムとは別のシステムでコックピットが展開して脱出が可能になる〕
 
 
- 971 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:39:46.49 ID:5L/Kr65C0
-  ------------------------------------------------ 
 
 コックピット内部の装置を自分から操作はし兼ねる、がモニターのように常時稼働しているものならそこから情報を得ること自体は可能だろう。
 操縦席向かって下側、球状になっている装置には十字の表示が覆いかぶさり、そこにいくつかのマークが浮かんでいる。
 同じ赤丸のマークが円を描くように六つ並ぶ。
 
 
 「……これは、エグイサルを指してるのか?」
 
 
 こんな並びのもの、この工場内では他にない。
 このマークをエグイサルと仮定して、他のマークを確かめてみるとそれらはいずれも電子機器類に反応しているようだった。
 
 
 『それはエグイサルに標準搭載されている高機能レーダーだよ。電波感知に赤外線感知、さらにはサーモグラフィーまで切り替え可能で索敵性能も抜群なんだ!』
 
 
 なるほど、センサーの切り替えには特別な操作は必要ないようだ。
 ガイドに従って画面端のボタンをおせばすぐに切り替わる様子。
 これを使えば工場内に誰かが潜んでいても見落とすことは基本的にないと言えるだろう。
 
- 972 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:41:25.40 ID:5L/Kr65C0
-   
 適当にセンサーを弄り、工場内設備と見比べる。
 今この状況で有用なのは電波感知だろうか。
 私たちの知らない機械を犯人が使った可能性だってある。
 そう思って確かめていたのだが、私の目に留まったのは別の異常。
 
 
 「……ん? モノクマ、オマエだけ表示がなんかおかしいな」
 
 『そりゃそうさ! ボクはとっておきのオーダーメイド、他の鉄屑連中とは異なった電波波長で動いてるんだよ!』
 
 
 まあ、それもその通りか。
 モノクマのあの俊敏な動きが他の機械と同じように作動しているとは思い難い。
 どれだけ高性能な技術が無駄に注ぎ込まれているのだろうか。
 
 ……なんかため息が出てきたな。
 
 
 コトダマゲット!【エグイサルのセンサーシステム】
 〔エグイサルは電波感知、赤外線感知、サーモグラフィーの三種類のセンサーが使用可能。これによるとモノクマは他の機械とは異なった電波の波長で動いているらしい〕
 
 ------------------------------------------------
 
 【選択肢が残り一つになったので自動進行します】
 
 
- 973 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:42:32.94 ID:5L/Kr65C0
-  ------------------------------------------------ 
 【他のエグイサル】
 
 そういえば私以外のエグイサルを観察して見て……何かわかるところがないだろうか?
 それこそ、エグイサルが犯行に使われていたのならば、何か証拠が残っていてもおかしくない。
 死体の首をはねるなんて芸当、人間の力じゃ及ばぬところであり、エグイサルという手段を真っ先に思いつくわけだが……
 
 
 「……どれもこれも、気味悪いぐらいに綺麗なもんだな」
 
 
 並んでいるエグイサルは赤、青、緑、桃色、白色の5色。
 確かこの工場内にはあと黄色のエグイサルがあった気がするが……多分それは私が今載せられているものだろう。
 そのいずれも、特に汚れているような痕跡はない。
 人の首を刎ねれば返り血が付着しそうなものだが、そんなものはほんの少しも見当たらない。
 
 
 「エグイサルは犯行には利用されなかったってことか……?」
 
 
 コトダマゲット!【並んでいるエグイサル】
 〔ワダツミインダストリアルに並んでいる五体のエグイサルはいずれも返り血が付着していない。死体の首をはねるのに利用したとは考えづらい〕
 
 
- 974 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:44:14.82 ID:5L/Kr65C0
-   
 とはいえ返り血なら拭きとった可能性もないわけではない。
 そうなると私たちには証拠を見つけることが困難なはず。
 もっと別の手がかりはどこかにないだろうか?
 
 
 「……ん?」
 
 
 観察を続けると、どのエグイサルにも共通する要素が見つかった。
 全体的な見た目もそうだが、背中に繋がれているケーブルが目につくのだ。
 確か最初にこの工場に足を踏み入れた時には、こんなものはついていなかったはずだ。
 ケーブルの先を辿ってみると、大きなコンピュータへと繋がっているではないか。
 
 
 「モノクマ、このケーブルは何だ?」
 
 『はいはい! えっと……これはですね……ちょっと解析しますよ……』
 
 「……? オマエもわかってないのか?」
 
 『元々ボクが付けてたものじゃないからね、全くどこからもって来たんだか……』
 
 
 ぶつくさ言いながら数十秒。
 向こうに見えるコンピュータがモノクマの手で起動され、内部の情報がモニタに開示された。
 
- 975 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:45:06.26 ID:5L/Kr65C0
-   
 
 「これは……動作ログ、か?」
 
 
 そこにあったのは各エグイサルの機体番号と起動状態のステータス表示。
 エグイサルが動いた時にはその時間と共に記録されるらしい。
 実際、白いエグイサル……機体番号05のエグイサルはレストランの襲撃前に動作のログが入っていた。
 そのあと、事件が発生した11時前後でワダツミインダストリアル内に収容されて、それ以降の動きはない。
 
 
 「……何の情報も入っちゃねえな」
 
 
 しかし、他にも特に怪しいデータが記録されているわけでもない。
 これが示しているのは、ただどのエグイサルもいい子して動かなかったという事実。
 いよいよもってこのエグイサルは犯行には用いられなかったことになる。
 全く、見かけの割に使えない機械みたいだな。
 
 
 コトダマゲット!【動作ログ】
 〔ワダツミインダストリアル内に並ぶエグイサルはいずれも動いた時にはログがとられるようになっていた。白いエグイサルの他には特に動かされたログは残っていない〕
 
 
- 976 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:46:29.29 ID:5L/Kr65C0
-  ------------------------------------------------ 
 
 なんとも実感も得られない捜査がひと段落ついたタイミング。
 私が息をついた瞬間を狙ったかのように、それは始まった。
 
 
 キーンコーンカーンコーン……
 
 『世間でもてはやされて、テレビや各種メディアに引っ張りだこになった人のことを時の人って呼ぶけどさ。あれって本当に残酷な表現だよね』
 
 『時は流れる、その人の人気は必ずいつか途絶えて、没落するところまで織り込み済みでそんな表現をしてるわけでしょ? それを褒め言葉として使ってる現代人の認識ってガチヤバだよね』
 
 『だから我々が目指すべきなのは時の人なんかではなく、時代そのものを作るクリエイターなのです!』
 
 『HeyHeyHey! You、時にはムーブメント起こしちゃいなよ!』
 
 『学級裁判場で、オマエラが起こす一大ムーブメント、見せてくれYO!』
 
 
 モノクマのいつも通り何が言いたいのかいまいち芯を食わないアナウンス。
 この聴後のいい知れぬ不快感を感じると、いよいよその時が来たのだと認識するのだが今回はどうしたものか。
 学級裁判場に来いと言われても、私たちはここから身動きが取れない。
 手足を動かしたところでどこへもいけない、エグイサルのコックピットで完全な監禁状態にあるのだから。
 
 
- 977 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:48:14.52 ID:5L/Kr65C0
-   
 『あれあれ、オマエラ早く行かないと! 遅刻はペナルティものですよ!』
 
 「わかり切ったこと抜かしてんじゃねえ、私たちがどうやって裁判場に行くってんだよ」
 
 『そりゃ両足でしっかりと地面を踏みつけて、手を振り回した勢いでえっちらおっちらと前に進んでいただいて……』
 
 「……」
 
 『……もう、わかってるよ! 分かってます! なんだよノリ悪いな! オマエラ全員、ボクがちゃんと裁判場までお連れしてあげますので、そこで待機!』
 
 『座席について、シートベルトを装着してください! 総員衝撃に備える準備!』
 
 
 モノクマに促されるまま、コックピットの座席に腰を下ろし、シートベルトをつけた。
 座席は新幹線のシートぐらいにはやわらかい。
 まあ寛ぐような余裕も時間も私たちにはないのだけれど。
 
 そのまま待つこと数十秒。
 
- 978 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/23(木) 20:48:24.30 ID:K4oZ0RWt0
-  無惨で悪趣味とか褒め言葉として使うなんてどんな家庭で育ったんだか 
 まぁ虐待されて育った者は自身も虐待に走るって言われてるしそういう事なんかね
- 979 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:49:10.52 ID:5L/Kr65C0
-   
 
 _______ブゥゥゥゥン
 
 
 コックピット内部の装置の数々が突然に息を吹き返した。
 外殻を覆っているネオン管が俄に灯り出し、中からは駆動音も聞こえ出す。
 途端に熱を持った装置の数々が内部の空気を一変させた。
 
 
 『今、中央制御に切り替えたからオマエラの乗っているエグイサルは全てボクの支配下にあります! 後はどこへ連れて行くもボクの思いのままってわけ!』
 
 
 その言葉通り、これまで仏像のように微動だにもしなかったエグイサルがいよいよ体勢を変えた。
 手足を小刻みに動かして旋回、私の眼前には開け開かれたワダツミインダストリアルの入口が姿を現した。
 
 
 『それでは地の底の学級裁判場まで、283プロご一行をご招待〜〜〜!!』
 
 
 エグイサルの性能を侮っていたのだと悟った。
 私があの晩に見た姿はまだ試運転レベルの話。
 エグイサルの兵器としての性能の1割も見てはいなかったのだろう。
 
 私たちを乗せたエグイサルは、宙を飛んだ。
 
 歩くでもなく、走るでもなく、【跳んだ】のだ。
 俊敏な動きで連続して跳ね、外の景色はみるみるうちに変わっていき、あっという間にモノクマロックへとたどり着いた。
 
 
- 980 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:50:40.53 ID:5L/Kr65C0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【中央の島:モノクマロック】
 
 
 「……あ?」
 
 
 もう見慣れたはずのモノクマロック。
 どこかの国の観光資源並みに巨大な岩山は見上げるほどで、そうそう様相など変わるはずもない……そう思っていたのだが。
 私たちがこれまでの四回の裁判で足を踏み入れた時とは明らかにその見た目が変わっていた。
 並んだモノクマの石像の、懐のあたり。
 鋼鉄製の格子の向こうには複雑そうな機械やワイヤーが顔をのぞかせている。
 いつの間にこしらえたのか、モノクマロックの動体部は綺麗に繰り抜かれ、エレベーターになっていたのだ。
 エグイサルが6体入っても大丈夫なほどの空間のそれはもはや部屋というよりも洞穴の規模。
 
 
 「これに乗るってのか……」
 
 
 ガッチャガッチャと轟音をたてながら私たちを乗せた機体が乗り込むと、
 
 
 
 ____いつも以上の揺れとと共に、下降が始まった。
 
 
 
- 981 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:52:07.16 ID:5L/Kr65C0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【モノクマロック エレベーター】
 
 
 ゴウンゴウンと大きな音を立てて下降するエレベーター。
 コックピットの強化ガラス越しでも聞こえているのだから、その音はいつもの数倍どころではないんだろう。
 
 もう5回目になる音と重力とを感じながら、これまでと違う今回の状況を噛み締めていた。
 これまでには、裁判場……戦いの舞台に赴くのでもいつも誰かしらがそばにいた。
 別に私はそれを頼るわけではないし、自分以上に信じられるものもない。
 
 でも、他の連中の存在で死なずに済んだ場面があったことは否定できない。
 きっとそれは今生き残っている全員がそうなのだと思う。
 誰かしらが知らずのうちに他の誰かが生き残ることに貢献して、それが輪廻のようにつながったことで今この瞬間がある。
 
 だというのに、今回の裁判ばかりはその連鎖を無理やりに断ち切られてしまう。
 私が今このエレベーターに同乗しているのは誰なのか、そして共に行くことができなくなってしまったのは誰なのか。
 それを知らないことがここまで恐ろしいとは思いもしなかった。
 
- 982 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:53:25.77 ID:5L/Kr65C0
-   
 コックピットの中は空調も完備されている、熱くなりすぎることも寒くなりすぎることもない。
 それなのに寒気を感じるのは、きっと内側からの底冷え。
 臓器がきゅっと軋むような鈍い痛みが肉を突き抜け、肌を震えさせている。
 
 ……以前までなら、誰かがそんな私に上着を一枚貸してくれたかもしれない。
 千雪なら自分の来ているものを脱いででも押し付けてくるだろう。
 冬優子は多分震える私を小ばかにしてくる、でもそのおかげで緊張は解けるだろう。
 
 
 美琴は……気づいてくれるんだろうか。
 
 
 少なくとも、シーズになる前の美琴は多分気づかない。
 あの頃の美琴は、自分のパフォーマンス、自分の立つステージ以外は眼中になかった。
 命のかかった場面でも、生き残った先のことしか頭にない。
 
- 983 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:55:20.94 ID:5L/Kr65C0
-   
 この島で七草にちかを喪ったことで皮肉にも美琴は他の人間の存在に気づくことができた。
 だから私は今度こそ存在を認知され、再び手をつなぎ直すことができた。
 
 でも、美琴は自分の目で周りを見ていたわけではなかった。
 七草にちかが最期に託したもの、七草にちかの眼から通してみる世界を美琴は引き継いだだけ。
 死に際に遺した禍根は美琴の奥深くに浸透し、気づけば私たちとの間に軋轢を生むまでになった。
 
 浅倉透への不信はいつしか浅倉透を受け入れた私たちへも広がりを見せ、美琴は単独行動をするように。
 その単独行動の裏では、美琴は着々と浅倉透殺害の準備を進めていた。
 私は夜のたびに美琴の後を追い、すんでのところでそれを食い止めてきたが……
 市川雛菜の右手への凶刃は防ぐことができなかった。
 
 ……ダメだな、一人でいるとどうしても思考がマイナスに偏る。
 
 いつかの自分の部屋にこの空間が似ているからというのもあるだろう。
 人一人寝転がってやっとの空間でスマホをつついて、嘆きの言葉ばかりを吐き出していたあの頃。
 
- 984 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:56:35.15 ID:5L/Kr65C0
-   
 
 
 
 私は……あの時と変わることができたのだろうか?
 
 
 
 
 コトダマゲット!【美琴との軋轢】
 〔透への不信を募らせた美琴は、ルカたちのことも信用をしなくなっていた。単独行動を繰り返し、夜ごとに透の殺害計画を推し進めていた〕
 
 ------------------------------------------------
 
 チーン!
 
 目的地に着いたことに気づいたのは、それからしばらくしてからだった。
 
 
- 985 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:58:24.18 ID:5L/Kr65C0
-  ------------------------------------------------ 
 
 【学級裁判場】
 
 
 モノミ「い、いや〜〜〜〜〜! なんでちゅか、これ! エグイサルが大量に入ってきまちたよ!? 血の七日間でちゅか!?」
 
 モノクマ「おお……さすがにこうやって並んでみると壮観な光景だね」
 
 
 コックピットから見下ろす裁判場はいつもより手狭に見えた。
 特に証言台も変わったわけではない、いつもの私たちの席が用意されているだけ。
 
 
 モノクマ「えーっと……意思疎通は今はできそうにないし、一方的にこちらから話させてもらうね」
 
 モノクマ「エグイサルに乗ってはいるけど、学級裁判自体は普段のルールと何ら変わりなく行うよ。議論もしっかりとそのエグイサルに乗ったまま行ってもらうから!」
 
 モノクマ「当然、今のままじゃ議論どころじゃないけど……対処法も用意してあるからそこは安心しておいて!」
 
 モノミ「た、対処法……まさかジェスチャークイズでちゅか!?」
 
 モノクマ「あのバカウサギは放っておいて、とりあえずは証言台につこうか。オマエラも仲間同士で会話できないんじゃ、そこで突っ立ってる理由も特にはないでしょ?」
 
 
- 986 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:59:53.04 ID:5L/Kr65C0
-   
 モノクマの確認に肯定も否定も示す方法はなく、向こうで勝手に了承として受理する様子。
 またエグイサルは私たちの意志とは無関係に動き出し、証言台の前まで歩みを進めた。
 席の配置はいつもと違う、今回は奥まったところに立たされた。
 とことん中身をひた隠しにしたい、ということなのだろう。
 
 
 モノクマ「さ、それじゃあもうちょっとしたら始めちゃうからね。今のうちにトイレとか深呼吸とか済ませといてね〜」
 
 モノミ「トイレ……機体の中にあるんでちゅか?」
 
 モノミ「そりゃもうディスカバリーチャンネル方式でヨロ!」
 
 モノミ「それって要は大自然スタイルってことでちゅよね……」
 
 
- 987 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 21:01:15.88 ID:5L/Kr65C0
-   
 
 ……始まる。
 
 
 被害者も生存者も不明の前代未聞の学級裁判が。
 今こうして向き合っている相手も、分厚いガラスの向こう側で表情一つ伺い知れない。
 
 相手からしても、私は得体のしれない存在に映るはずだ。
 そこにいるのは、この島で暮らしを同じくしてきた連中であることには間違いない。
 
 なのにこんなにも不安を感じてしまうのは、きっとこの隠匿性の裏に確かに見え隠れしている人間の悪意のせい
 仲間として同じ時間を過ごした相手を椅子に縛り付けて首を刎ねたという、悪意と言う言葉でも生易しいほどの凶行を私たちは知ってしまっている。
 その認知が、私たちの心中に影を落として、これまでにあった信頼を掴ませるのに躊躇をさせているのだ。
 
 
- 988 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 21:02:55.19 ID:5L/Kr65C0
-   
 
 
 「だったら、何だよ」
 
 
 
 それは最初の事件の時に七草にちかにも誓ったこと。
 人間結局は一人なのだ。生まれてから死にいくときまでずっと誰かと一緒にいるなんてことは不可能だ。
 だから、別にいまの隔絶だって、元あるべき姿に戻っただけともとれる。
 信頼が見込めないのなら、今自分の持てるものを振るうしかない。
 縋るものが無いだけに、百パーセントを超えた自分自身を出すことができる。
 その理由づけには最適という言葉すら持ちだせた。
 
 私ははじめっからこのスタンスだったはずだ。
 牙を抜かれて、弱さを覚えて、すっかり忘れてしまっていた。
 
 【私は、私のやりたいようにやる】
 
 どんなに謎に満ちた裁判だろうと、どんなに悪意に満ちた犯人だろうと、関係ない。
 
 今の私は……この状況が気持ち悪いから、全部全部ぶっ飛ばしてやりたい。
 秩序も、責任も、柵も何も関係ない。
 私が苛立っているから。
 理由はそれだけ。それだけあれば、私は戦える。
 
- 989 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 21:03:56.62 ID:5L/Kr65C0
-   
 
 
 
 
 _____それが、斑鳩ルカだったはずだろ?
 
 
 
 
 
 
- 990 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 21:07:44.49 ID:5L/Kr65C0
-   
 というわけで本日の更新はここまで。
 なんとかスレ中に非日常編が終わりました。
 残り10レスほどは次回の裁判までの準備パートの投票に使ってください。
 
 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
 【裁判前準備パート】
 ☆裁判を有利に進めるアイテムを獲得することができます
 何か購入したいものがある場合は次回までにその旨を書き込んでください。
 指定が多ければ多数決、特に購入指定が無ければ何も購入せず裁判を開始します。
 
 ‣ルカの現在の状況
 【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
 【現在の希望のカケラ…20個】
 
 〇スキル
 ・【花風Smiley】
 〔毎日の自由行動回数が2回から3回になる〕
 
 ・【アンシーン・ダブルキャスト】
 〔学級裁判中誤答するたびにコトダマの数が減少する〕
 
 ・【つづく、】
 〔学級裁判中発言力がゼロになった時、一度だけ失敗をなかったことにしてやり直すことができる(発言力は1で復活する)〕
 
 ・【cheer+】
 〔発言力ゲージを+5する〕
 
 ・【ジャンプ!スタッグ!!!】
 〔集中力を使用した際の効果が増幅する〕
 
 -------------------------------------------------
 
 【自動販売機】
 ≪消耗品≫
 【ヒーリングタルト】…5枚
 〔誰の口にも合いやすいマイルドな口当たりの優しい甘さ。裁判中に使用すると発言力を2回復できる〕
 
 【ヒーリングフルーツタルト】…10枚
 〔フルーツをトッピングして満足感アップ。裁判中に使用すると発言力を4回復できる〕
 
 【高級ヒーリングタルト】…15枚
 〔国産フルーツを贅沢にトッピングした高級タルト。裁判中に使用すると発言力が最大まで回復する〕
 
 【プロデュース手帳】…15枚
 〔これは彼と彼女たちが過ごしてきた美しき日々の証。誰よりも理解者たる彼は、いつだってそばで戦ってくれる。裁判中に使用するとノンストップ議論・反論ショーダウンを無条件クリアする〕
 
 
 ≪希望のカケラ交換≫
 
 【Scoop up Scrap】必要な希望のカケラの数…30個
 〔他のアイドルとの交流時に、所持品の中で何が渡すと喜ばれるプレゼントなのか分かる〕
 
 【霧・音・燦・燦】必要な希望のカケラの数…10個
 〔発言力ゲージが+2される〕
 
 【幸福のリズム】必要な希望のカケラの数…30個
 〔他のアイドルとの交流時の親愛度上昇が+0.5される〕
 
 【I・OWE・U】必要な希望のカケラの数…20個
 〔発言力ゲージが+3される〕
 
 【われにかへれ】必要な希望のカケラの数…20個
 〔集中力ゲージが+3される〕
 
 【おみくじ結びますか】必要な希望のカケラの数…10個
 〔集中力ゲージが+2される〕
 
 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
- 991 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/23(木) 21:13:14.04 ID:3mK3pNHb0
-  >>1乙 
 消耗品高級タルト2個、プロデュース手帳2個はあってもいい気はする
- 992 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/06/23(木) 21:45:11.39 ID:s2S+H5vn0
-  >>1乙 
 「霧・音・燦・燦」と「おみくじ結びますか」は1つずつあったほうがいいと思う。どっちも減る時はすごい減るし
- 993 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/23(木) 21:59:26.25 ID:4qpedlZq0
-  ノーコンテで安定させるための高級タルト2個と難易度高いところ飛ばせる用のプロデュース手帳2個はとても同意見  
 余ったら多分次回に持ち越せるだろうし損がない
 
 後はラインナップからTシャツ消えてるからこれ以上希望のカケラの追加はなさそうだし、
 集中力はそんな枯渇するぐらいには使われてないから【I・OWE・U】で発言力伸ばしてもいいんじゃないかしらとも思ってたんだけど、
 確かに集中力は減るときは一気に減ってたし、途中で回復するとは言ってもややこしいのが連続で来られたら困るし、
 【霧・音・燦・燦】と【おみくじ結びますか】のほうが良さげっすね
- 994 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/24(金) 22:02:37.43 ID:RvQZmCc90
-  >>1を急かすつもりはないけど次の更新日書いてもらえると非常に助かるんですがいつになりますか? 
- 995 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/24(金) 22:13:04.22 ID:D5O6sUjG0
-   
 アイテムとスキルの購入を一晩待ってから改めて更新の連絡はするつもりでした。
 自分の中で勝手に決めて、何も言ってませんでしたね。申し訳ない……
 学級裁判パートの更新は新スレッドにて6/25(土)22:00〜を予定しています。
 
 ◇新スレッド◇
 https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1655983861/
 
 そしてスキルの表記にピトスが消えてましたが、ちゃんと習得していますのでご安心ください。
 
 購入するのは
 【高級ヒーリングタルト】×2、【プロデュース手帳】×2
 【霧・音・燦・燦】、【おみくじ結びますか】で良さそうですかね。
 特に異論なければこの状態で学級裁判を開始します。
 
- 996 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/24(金) 22:54:19.49 ID:RvQZmCc90
-  >>1 
 報告ありがとうございます
- 997 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/27(月) 21:19:24.58 ID:vRycRthN0
-  あ 
- 998 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/27(月) 21:19:58.73 ID:vRycRthN0
-  あ 
- 999 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/27(月) 21:20:42.60 ID:vRycRthN0
-  あ 
- 1000 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/27(月) 22:53:18.74 ID:vRycRthN0
-  あ 
- 1001 :1001 :Over 1000 Thread
-                | ///////i!、\ \ ヽ
 、 ,          |/// / ツ/// /i 1!、 \ ヽ ヽ
 エIIエ ふ イ 大. お  |// //// // /.| ||i;゛、   ヽ ヽ  、
 .Eヨ     | .申 , れ  .|/ /リ{ {{{{// / i | ||i .!ヾ   ヽ `、 ヽ
  ̄    |.//{ Y'''''/ /ノ |.|!||! 、i ヽ    `、 、
 、 ァ .つ | 十    |///| { ,,;;;;i :: |.|ii ii、 i  !    i  i
 ┐用 .う  .レ.cト、   |シ从|.|,,,;;;" ̄~"|.|.ii ヾ、、 ヽ    i  i|
 ~ー‐ 、、    、、  |//i、.|| ii!' ,,, -‐.|.| 乂 \  \   i
 ┼ __  -|―|‐    |i i.i|. r| li!く  ゚ |ト /  i;; \  \  i
 ノ 、__   !_    | ii ||/"| l!`ミニ=ニ||'  /;;;;;: \  `、、_
 { |、{{..(| ll! i!;;;;;;; /|  '、:::...:  \  `ー-
 |-    /       | i!|1ト、|lili! !;;;;;;;/ .!  ii|il= il!   .` ー
 .cト、   /⌒し    |!i从/i∧i! i::::    ili!'__iI!--―'' ナ`-ト
 、、   |/いi|l!∧ ::  ー'''''二 ==--一"ヲ/  ||
 O  -|―|‐    .|./i i i|/∧ : :: ヾ-'"        / ;;;::リ'
 !_       | .|/i i!!リi ヽ:: :: ::|li、´ ̄ ̄ ̄ ̄ン ;;;: /
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