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【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.4
	- 423 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/06(日) 20:30:14.81 ID:qALyBpIn0
 -   
 「あ、そろそろ見えてきたかも〜! ほら、あれじゃない〜?」 
  
 「本当だ! あの島が目的地なんですよね?」 
  
 「そろそろ準備をしないとな。同行してくれてる鎮圧部隊にも声をかけてくるよ」 
  
 「……いよいよですね」 
  
 「うぅ……やっぱなんかキンチョーするかも」 
  
 「島に賊軍はいるんでしたっけー?」 
  
 「……分からないです。みなさんがどんな状態でいるのかも、まだ」 
  
 「でも、やるしかないよ……! みんなを助け出さなくちゃ……!」 
  
 「……みんな、無茶だけはしないでくれよ」 
  
 「いや、無茶しますし……ここで無茶しないで、どこで無茶するっていうんですかぁ?」 
  
 「安全圏に引きこもってなんかいられませんよ! 私たちだって一緒に戦います!」 
  
 「……そうだよな、みんなだって戦いたいよな。勝手なことを言って悪かった」 
  
 「そうですよー、×××はいつもみたいに戦いは私たちに任せて、後はふんぞり返って司令官やってくれればいいと思いますー」 
  
 「そ、そんなふうに思ってたのか……?!」 
  
 「ふふー、冗談ですー」 
  
   
	- 424 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/06(日) 20:31:03.72 ID:qALyBpIn0
 -   
 「ねえ、もう着くよ〜?」 
  
 「あ……! すまん、急がなくちゃな」 
  
 「ふふ……戦いの直前だというのにしまりませんね」 
  
 「ま、それがうちららしいんじゃん?」 
  
 「かもねー、肩の力ほぐしていきましょー」 
  
 「みんな……絶対、一緒に帰ろうな」 
  
 「ここにいる人も……みんなも、ですね!」 
  
 「勿論です……絶対に、取り返してみせますよ」 
  
  
  
  
 「私たちの日常を……!」 
  
  
  
   
	- 425 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/06(日) 20:32:02.33 ID:qALyBpIn0
 -  ------------------------------------------------- 
  
  
  
 CHAPTER 06 
  
 絶望、あるいは逃げられぬ希望 
  
 非日常編 
  
  
  
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	- 426 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/06(日) 20:33:00.84 ID:qALyBpIn0
 -   
 ……朝だ。 
  
 空に登る陽の光が心地よく、目を開けると同時に胸に風が吹き抜けるような爽やかさ。 
 人々は夢と希望をその胸に抱きながら、1日の行動を開始する。 
  
  
 「はぁ、よく寝た……」 
  
  
 私もゆっくりと体を起こし、うんと伸びを一つ。 
 それだけの動作なのに、腕や脚には鈍い痛みが走る。 
 でも、今の私からすればこの痛みには愛おしさや心地よさを感じる部分もある。 
 外の世界では久しく忘れていた、自分を締め上げるようなこの感覚。 
 私の存在を何よりも声高に証明してくれるそれは、地に足をつける感覚というにふさわしい。 
 その痛みに体をさすりながら、鏡の前へ。メイクもなし、寝起きの髪はボサボサ。 
 こんな姿ファンには見せられないよな、と手入れを開始。 
  
  
 「眠た……」 
  
  
 この島にはファンなんざ一人もいないのは事実なのだが、う私だって20歳という世間では花の盛りの年齢。 
 それに、大前提として私はアイドルであり、カミサマなのだ。 
 こんなところで失望を与えるようなことがあってはならない……なんて、そんなプロ意識も、この島に来てからあいつに教わったことだ。 
  
  
 「最後は、赤のリップで」 
  
   
	- 427 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/06(日) 20:34:09.53 ID:qALyBpIn0
 -   
 私はどちらかというと夜型。 
 仕事のないオフの日は時計の針が12時を示す直前まで眠りこけていることもザラではあるけれど、 
 この島に来てからの規則的な生活にもいつしか慣れてしまっていた。 
 というのも、その影響は彼女によるところが大きいだろう。 
  
  
 ……いや、彼女“たち”か。 
  
  
 ピンポーン 
  
  
 「……ったく、相変わらず早すぎだろ」 
  
  
 鬱陶しそうな口ぶりで、はにかみながら。 
 足取りに迷いはなく、一直線に進んで扉を開けた。 
  
  
  
  
 「おはよう、ルカ」 
 「もう、ルカさん相変わらず寝坊助ですよねー! 早くしないと自主練先にやっちゃいますよー?」 
  
  
  
 「……ハッ、悪い悪い。練習、行こうぜ。美琴、にちか」 
  
   
	- 428 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/06(日) 20:36:59.62 ID:qALyBpIn0
 -  ------------------------------------------------- 
  
 【第1の島  ビーチ】 
  
  
 美琴「……よし、おしまい。お疲れ様、二人とも」 
  
 にちか「はぁ……つっかれたー! 美琴さん、相変わらず朝から飛ばし過ぎですよー!」 
  
 ルカ「おいおい、こんなので根を上げてんのか? なっさけねえな……そんなので美琴の相手が務まんのか?」 
  
 にちか「はー?! 本音と建前ってご存知ですー?!」 
  
 美琴「ふふ、いつかはどうなるかと思ったけど。二人ともすぐに仲良くなって良かったね」 
  
  
 「どこがだよ?!」 
 「どこがですかー?!」 
  
  
 こっちに来てからは毎朝3人で自主練するのがすっかりルーティンになった。 
 美琴とにちかの二人で、歪ながらも積み重ねたもの。 
 私が単身磨き上げたもの。 
 そして、私と美琴で生み出してきたもの。 
 それら三つを擦り合わせながら、共有と研鑽。 
 長らく忘れていた協力という概念を再び自分のもとに手繰り寄せる。 
  
   
	- 429 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/06(日) 20:38:28.52 ID:qALyBpIn0
 -   
 美琴「とりあえず、休憩しよう。二人とも、少し座ろうか」 
  
 にちか「はい!!」 
  
  
 美琴を挟むようにして、私とにちかは横に座り込んだ。 
  
  
 美琴「二人とも、良くなってる。初めの頃はバラバラだったけど、すっかり息もあって。振り付けのタイミングだってバッチリだよ」 
  
 ルカ「まあな、にちかのやつ鈍臭いから合わせるのには苦労したよ」 
  
 にちか「いやいや……変な癖のついたルカさん矯正するのにどんだけかかったと思ってるんですか」 
  
 ルカ「あ? 調子乗んなよオマエ」 
  
 美琴「にちかちゃんは2回目のツイストの角度がまだ甘いかな。ルカが上手だから、教えてもらって」 
  
 ルカ「ほらな、私もそう思ってたんだよ!」 
  
 にちか「むぅ……」 
  
 美琴「ルカは手に力を込めすぎなところがあるから、随所随所で脱力を心がけて。その方がシルエットも綺麗に見えるから」 
  
 にちか「ぷっ、ダンス初心者みたいなアドバイスもらってませんか?」 
  
 ルカ「あ? ざっけんなオマエ、蓬餅みたいな頭しやがって!」 
  
  
 美琴を挟んでいがみ合うこの構図にももう慣れたものだ。 
 美琴もすっかり日常の光景といった感じで、今更言及も調停もしない。涼しい顔して、次の練習のことを考えている。 
  
   
	- 430 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/06(日) 20:39:33.03 ID:qALyBpIn0
 -   
 ルカ「大体オマエはダンス以外もそうなんだよ、飯の時も好物先に食ってガキみてえな食い方してんじゃねーよ!」 
  
 にちか「それを言ったらルカさんなんかいつも人殺しそうな目して、他の皆さん怯えてますよー!?」 
  
 ルカ「それは取り方次第だろうが! オマエの悪意が滲み出すぎだ!」 
  
 にちか「あーもう、バカバカバーカ!」 
  
 ルカ「このガキ! ガキガキガキ!」 
  
 にちか「バーカバーカあほまぬけーーーーー!!」 
  
 ルカ「このチンチクリン! 雑魚! 雑魚雑魚雑魚!」 
  
 美琴「……出し切った?」 
  
 にちか「……はい」 
  
  
 お互いが叫び尽くして息切れ。 
 それで一旦はこの喧嘩も幕引きとなる。 
 もう何回これを繰り返してきただろう、にちかも私も、この形に慣れすぎてもはやそこに敵意なんかない。 
 ただの馴れ合いとかした喧嘩ごっこに、実りはない。 
  
  
 美琴「それじゃあ、朝ごはんにしよう。みんな待ってるよ」 
  
 ルカ「……だな」 
  
  
 散々不満を吐き尽くして空いた胃袋に栄養素を流し込む。 
 ここまでのワンセットを、私たちは『自主練』と呼んだ。 
 何に対する練習なのか、いつに向けての練習なのか。 
 それはまだ、私たちには分からない。 
 それは今から作り出すもの、そして私たちの手で生み出すものだから。 
  
  
 にちか「ほーらルカさん! ボヤボヤしてると置いて行っちゃいますからね!」 
  
 ルカ「……チッ、うるせーな!」 
  
   
	- 431 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/06(日) 20:42:19.68 ID:qALyBpIn0
 -  ------------------------------------------------- 
  
 【ホテル レストラン】 
  
  
 美琴を尾にしてYの字で行進。 
 私とにちかはずっと道中もいがみ合いながら。 
 扉を二人で乱暴に開けると、キョトンとした顔して連中が出迎える。 
  
  
 灯織「おはようございます。シーズのお二人に、ルカさん」 
  
 千雪「おはようルカちゃん、今日も二人と一緒なのね」 
  
 ルカ「私としては美琴だけでいいんだけどな」 
  
 にちか「こっちのセリフですー!」 
  
 愛依「アハハ、喧嘩するほどナントカって言うじゃん?」 
  
 結華「もうにっちゃんとルカルカの絡みは漫才の域だからね〜」 
  
 美琴「本当にね、二人とも仲良しだから」 
  
 摩美々「ほら、さっさと席ついてよー。摩美々はお腹ぺこぺこで餓死寸前ですー」 
  
  
 私とにちかを仲良しということにして丸め込もうとする283の連中は気に食わない。 
 とんだお気楽思考、誰しもが最終的に関係性を丸い形に治めるのをよしとすると思うな。 
   
	- 432 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/06(日) 20:43:44.46 ID:qALyBpIn0
 -   
 冬優子「ほら、さっさと座んなさい。こいつも文句ばっか言ってやかましくて敵わないのよ」 
  
 あさひ「みんな早く席に着くっすよー! もうお腹ぺこぺこなんっすもんー」 
  
 ルカ「ハッ……相変わらずガキのお守りで大変そうだな」 
  
 冬優子「他人事だと思って……」 
  
 愛依「アハハ、あさひちゃんモースグ朝ごはん食べれるから! 」 
  
  
 やっときたとばかりの冬優子のうんざりとした顔。 
 こいつのこんな顔にも見慣れたもんだ。 
 私の元にこんな煩わしい存在がいなくて本当に助かったと思う。 
  
  
 灯織「朝ご飯、お持ちしました! すみません、お手数ですが各テーブルごとに取りにきていただけますか?」 
  
  
 席に着くとすぐに、ホクロ女が料理の支度を終えた報告。 
 いつものようにテーブルに呼びかけ、私たちがそれに応じる。 
  
  
 にちか「あ、私行ってきますね! ルカさんはセルフでお願いしますー」 
  
 ルカ「元々一人じゃ持ってける量じゃねーだろうが。はなから行く気だ、こっちは」 
  
 にちか「風野さん、お願いします!」 
  
 灯織「はい、ではにちかさんと美琴さんの分……それとこちらが斑鳩さんと千雪さんの分です」 
  
 ルカ「……おう」 
  
 にちか「あはは、やっぱり美琴さんの担当は私ですよねー!」 
  
 灯織「あ、割り振りに他意は特になく……」 
  
 ルカ「わかってる、いちいち言うな。このチンチクリンが調子に乗るだろうが」 
  
  
 にちかと私で朝食を運び、再び席に着く。 
 美琴は簡潔に手で礼をし、千雪は年甲斐もなく「わぁ…」と声を漏らす。 
   
	- 433 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/06(日) 20:44:49.30 ID:qALyBpIn0
 -   
 千雪「ルカちゃん、ありがとう。今日も美味しそうなご飯ね」 
  
 ルカ「私は運んだだけだ、礼ならあのホクロ女に言いな」 
  
 にちか「風野さんの料理、確かにすごく上手ですよねー! 283でも一番じゃないですか?」 
  
 美琴「……どうだろう、アンティーカの彼女がいるでしょう?」 
  
 にちか「あー……」 
  
 ルカ「月岡恋鐘、か」 
  
 千雪「恋鐘ちゃん、本来なら私たちと一緒に来る予定だったのに……直前で熱を出しちゃうなんて残念よね」 
  
 にちか「一番はしゃいでたぐらいなのに、本当運命って残酷ですよねー。おかげさまでルカさんはお溢れにあやかれたわけですけど!」 
  
 ルカ「別に私だって来る気なんかなかったよ」 
  
 美琴「そうなの?」 
  
 ルカ「……まあ、な」 
  
  
 今ここにい■メンバーは283プロの中か■選■■た、■■■宿に■■■ている連中■。 
 私は別に28■プロの人■■■ない、今回の■■に応じ■のは事務■の■■、私の■■なん■そこに■■もない。 
 たまた■月岡恋鐘が病■となっ■ことで■■席が回ってきたの■。 
  
   
	- 434 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/06(日) 20:46:44.52 ID:qALyBpIn0
 -   
 ウサミ「ミナサン、今日もらーぶらーぶで何よりでちゅ!」 
  
 果穂「あっ! ウサミだ! おはようございますーーーー!!」 
  
 ウサミ「はいっ! 小宮さん朝からいいご挨拶でちゅ! あちしも朝から元気がもらえてルンルンでちゅよ」 
  
 夏葉「それでウサミ、今日はどうすればいいのかしら? この合宿の方針を示してちょうだい」 
  
 ウサミ「はい! 今日ミナサンにやってもらうのは、これでちゅ! 『ワクワク☆ 気になるあの子のパスワードはなんだろな? ねっと@すとーかーれくりえーしょん!』でちゅ!」 
  
 結華「ひらがなに織り交ぜて何やら物騒な文字列が並んでますけど!?」 
  
 透「パスワードってなんの? スマホ?」 
  
 あさひ「冬優子ちゃんのスマホのパスワードは××××っす」 
  
 冬優子「あさひちゃ〜ん、後でふゆとお話ししよっか〜」 
  
 ウサミ「ミナサンがこの島を探索しているときに発見したこのノートパソコン! 今日はこのアンロックに挑戦してもらいまちゅ!」 
  
 ルカ「パソコンのアンロックだぁ……? んなもん、片っ端から入力すりゃあ……」 
  
 摩美々「それこそ何時間かかるんですかぁ……」 
  
 ウサミ「大丈夫でちゅ! ちゃんとヒントがありまちゅからね、このシートに書かれたヒント通りの場所に行けばパスワードを手に入れるための手がかりが手に入りまちゅ!」 
  
 果穂「わぁ! それってつまり、ウォークラリーってことですか!?」 
  
 夏葉「なるほど、それなら確かに運動もできるし仲間との協力もできる。まさに合宿にうってつけね!」 
  
 あさひ「楽しそう! ウサミ、早くシートを見せてよ!」 
  
 ウサミ「はい! こちらがそのシートでちゅ! 一番最初にパスワードを解除したチームにはご褒美もありまちゅからね! 頑張って探してみてくだちゃい!」 
  
 愛依「ゴホービ……なになに、何がもらえんの?!」 
  
 ウサミ「それはクリアしてみてのお楽しみでちゅ! えへへ、みんなきっと喜んでくれまちゅよ!」 
  
  
 こいつの言うことなんだし、大したもんではないだろう。 
 至って冷静に冷めた目線を送る私とは対照的に湧き上がる連中。 
 つくづく私とこいつらの空気感は合わない。 
  
   
	- 435 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/06(日) 20:48:04.24 ID:qALyBpIn0
 -   
 ウサミ「ひぃふぅみぃ……ここには全員で15人いまちゅから、3人ずつで5チーム作れまちゅね!」 
  
 美琴「にちかちゃん、ルカ。いいかな」 
  
 にちか「もちろんです! 美琴さん、一緒にがんばりましょう!」 
  
 ルカ「おう、美琴。さっさと終わらせるぞ」 
  
  
 レクリエーションなんてのに興味はない。 
 無理やりに入れ込まれたこの合宿から早く撤収するためには、とやかく言わずクリアしたほうが早い。 
 ただそれだけの理由。 
  
  
 ルカ「おら、マップがあんならさっさと出しな」 
  
 ウサミ「はいっ! 斑鳩さん、ノリノリでちゅね〜!ぷー、くすくす! なんだか可愛いところ見ちゃったな〜!」 
  
 ルカ「……」 
  
 ウサミ「うぅ……冗談でちゅよ、今にも耳を引っこ抜きそうな目はやめてくだちゃい……」 
  
  
 ウサミの手からピンクに塗れた胃もたれしそうな地図を引ったくる。 
 なるほど、いくつかのヒントが書かれていて、この謎を解いて場所を導き出せばいいらしい。 
   
	- 436 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/06(日) 20:49:42.56 ID:qALyBpIn0
 -   
 『ワクワク☆ 気になるあの子のパスワードはなんだろな? ねっと@すとーかーれくりえーしょん! 
  
 ◎ミナサンで力を合わせてパスワードを解読でちゅ!◎ 
  
 第一のヒント 
 正義を穿つ闇の眠るところ 
  
 第二のヒント 
 慈愛の女神が辿り着いた果て 
  
 第三のヒント 
 落ちて、堕ちて、墜ちる 
  
 第四のヒント 
 箱入り娘が空を行く 
  
 第六のヒント 
 収穫祭 
  
 ☆それぞれのヒントは特定の場所を示していまちゅ!』 
  
   
	- 437 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/06(日) 20:50:39.85 ID:qALyBpIn0
 -   
 にちか「なんですかこれ? さっぱり意味わかんないんですけど……」 
  
 ルカ「このヒントが示している場所を巡れば、パソコンのパスワードがわかんのか……美琴、どうだ? 何か分かりそうか?」 
  
 美琴「うーん……どうだろう、ウサミちゃんのことだから私たちの仲が深まるような、私たちに関連するヒントだとは思うけれど」 
  
 ルカ「あいにく心当たりはまるでないな……しょうがねえ、行き当たりばったりでどうにかするか」 
  
  
 他の連中も地図を眺めながら首を捻ったり、弱い声を漏らしたり。 
 まだ回答にすぐさまたどり着けそうな人間はいなさそうだ。 
 別にご褒美とやらにつられたわけではないが、さっさと課題はこなしてしまいたい。 
 早いところ回答を導き出して、パスワードとやらを手に入れてやるか。 
  
 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ 
 ☆ウォークラリーについて 
  
 今チャプターでは、これまでの捜査時間に当たる形でウォークラリーを行っていただきます。 
 与えられたヒントの指し示す場所を推理していただき、そこに眠るキーワードを5つ集めることが目的です。 
 ……まあ、正直その場所は考えるまでもないとは思いますが。 
  
 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ 
  
  
 ルカ「まずは第一のヒントの場所からだな……」 
  
  
 【第一のヒントが指し示す場所を選べ!】 
  
 ↓1 
   
	- 438 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/06(日) 21:27:02.06 ID:qALyBpIn0
 -   
 突発なので上記安価だけ出して終わっておきます。 
 少し最近仕事が立て込んでいるので、確実なことは言えないのですが 
 今のところ11/9(火)の21:00〜はいけそうなのでこのぐらいに再開の予定にさせておいてください。 
 ダメそうだったらまた連絡します…… 
  
  
 『ワクワク☆ 気になるあの子のパスワードはなんだろな? ねっと@すとーかーれくりえーしょん! 
  
 ◎ミナサンで力を合わせてパスワードを解読でちゅ!◎ 
  
 第一のヒント 
 正義を穿つ闇の眠るところ 
  
 第二のヒント 
 慈愛の女神が辿り着いた果て 
  
 第三のヒント 
 落ちて、堕ちて、墜ちる 
  
 第四のヒント 
 箱入り娘が空を行く 
  
 第六のヒント 
 収穫祭 
  
 ☆それぞれのヒントは特定の場所を示していまちゅ!』 
  
  
 【第一のヒントが指し示す場所を選べ!】 
  
 ↓1  
	- 439 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/11/07(月) 23:22:02.99 ID:smjX6xly0
 -  旧館の床下? 
 
	- 440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/07(月) 23:28:20.13 ID:iLcjko/90
 -  旧館の大広間?  
    
  更新がないか久々に確認に来たら6章始まっててグーと思いました。  
  完結まで楽しみにしてます。  
	- 441 :少し遅刻ですが再開します ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 21:11:32.83 ID:PGzGnqfO0
 -   
 【正解】 
  
 ------------------------------------------------- 
 【ホテル 旧館】 
  
  
 にちか「ちょっとルカさん? なんでこんなぼろっちい建物なんです? これのどこに正義の要素があるっていうんですかー……」 
  
 ルカ「うるさい、見当もつかないからには片っ端から調べていくしかねえだろ。誰も足を踏み入れそうにないこういうところにこそヒントがあるかもしれない」 
  
 美琴「……結構、埃っぽいね」 
  
 にちか「わ、わ〜〜〜! 美琴さんはいいです、こんなところ! 美琴さんの清潔な肺が汚れちゃいますよ!」 
  
 美琴「ありがとう、にちかちゃん。でも、みんなで協力して謎は解かないと」 
  
  
 美琴とにちかを連れてどんどん奥へ。旧館にはまともに電気も通っていないらしく、壁伝いにようやっとで進んでいく。 
 一歩一歩、脚を踏み下ろすたびに床板がギイギイと軋む。 
 でも、どちらかというとその都度にちかのやつが文句をぶうぶうと垂らす方が耳障りだ。 
  
  
 ルカ「……ここ、大広間みたいだな」 
  
  
 しばらくすると両開きのデカい扉に行き当たった。 
 特に鍵などはかかっていないが、長いこと動かされていない扉には埃も溜まり、金具もその形で固定されてしまっていた。 
  
  
 にちか「ねえ、本気でこんなところにヒントがあると思ってますー? 無駄足、マジで勘弁してほしいんですけど……ねえ、美琴さん」 
  
 美琴「今回のウォークラリー、まるで見当もつかないから。試せることは試してみないとダメじゃないかな」 
  
 にちか「ルカさん、早く扉開けてください」 
  
 ルカ「……」 
  
   
	- 442 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 21:12:30.09 ID:PGzGnqfO0
 -   
 重い扉を何故か一人で開けさせられ、それだけで不機嫌が五割増し。 
 ゆっくりと扉が開いて、大広間が私たちの前に姿を現していく。 
 長い間誰も受け入れていなかったであろう空間は少しの隙間からかびたような匂いを鼻へと届けた。 
 誰も足を踏み入れていない場所、この大広間に出入りするには今私が押し開けた扉以外には通用口も何もない。 
 だから、この匂いこそが本来なら不正解であることの証明になるわけだが。 
 この島では、私たちの常識は通らない。 
  
 時が止まったような空間、埃の被った机やテーブルクロス。 
 その中で不自然なほどに綺麗な状態で、【それ】はあった。 
  
  
 にちか「あ、もしかしてあれじゃないですか!? パスワードのヒントって!」 
  
 美琴「うん、みたいだね」 
  
 ルカ「ハッ、見たかよ……やっぱり私の勘は当たるんだ」 
  
  
 さて、どこから調べようか……? 
  
  
 1.風野灯織 
 2.胸に突き刺さった鉄串 
  
 ↓1 
   
	- 443 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/11/08(火) 21:15:03.99 ID:kv16cA8F0
 -  風野灯織 
 
	- 444 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 21:16:53.28 ID:PGzGnqfO0
 -  1 選択 
 ------------------------------------------------- 
  
 【風野灯織】 
  
  
 にちか「あ、この死体がパスワードのヒントなんですかね?」 
  
 ルカ「だろうな、これ見よがしに横たえられて……こんなの、他の所にはなかったからな」 
  
 美琴「でも、どこを見ればいいのかな。これってまるっきりただの死体でしょ?」 
  
 にちか「うーん……腕とか脚とか引きちぎってみちゃいます?」 
  
 ルカ「おいおい……どこにそんな力があるんだよ」 
  
 にちか「あはは、冗談ですって!」 
  
 美琴「……少し、死体自体を調べてみようか。ポケットとかに、何か持ってるかもしれない」 
  
 にちか「流石です美琴さん! その発想は盲点でした!」 
  
  
 美琴の提案通り、私たちは三人で死体を足先から頭の先まで調べてみることにした。 
 物言わぬ人形と化した風野灯織、図々しくも全体重を私たちの手に載せてくる。 
 ポケットをまさぐるために動かすのも重労働だ。 
  
  
   
	- 445 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 21:18:11.23 ID:PGzGnqfO0
 -   
 にちか「あ、なんですかね。この紙きれ」 
  
  
 にちかのやつが一枚の紙片を見つけた。 
 私と美琴は慌てて駆け寄り、にちかが目の前でその紙片を広げていく。 
  
  
 にちか「あー……またウサミの魔法か……」 
  
  
 するといつものように、物理法則を完全無視した動きで紙片はその姿を変えていくではないか。 
 どんどんとにちかの手の中で大きくなっていったそれは、やがてプラスチック製の表紙を伴った冊子状の見た目へと変貌を遂げた。 
  
  
 美琴「これは……何かのファイル?」 
  
 にちか「希望ヶ峰学園歌姫計画……って書いてますね。これって確か、島に来た最初にウサミが言ってたやつじゃないですか?」 
  
 ルカ「あー……なんか言ってたかもな」 
  
  
 ≪ウサミ「そうなんでちゅ! ビッグさぷらーいず! ミナサンは希望ヶ峰学園が主催する、【希望ヶ峰学園歌姫計画】の参加者に選ばれたんでちゅ!」 
  
 美琴「これもさっき話してたと思うんだけど……」 
  
 にちか「す、すみません……完全に聞いてませんでした」 
  
 ウサミ「ミナサンもよく知る通り、希望ヶ峰学園は世界中から超一流の才能を持つ高校生を集めて才能の研究を行う研究学術機関なんでちゅ。歌姫計画はその延長線上にある、大規模プロジェクトなんでちゅよ!」 
  
 にちか「な、なんだかすごく大きな話になってきた……」 
  
 ウサミ「希望ヶ峰学園の才能研究のノウハウを生かして、ミナサンの持つ才能の種、それをアイドルとしての個性・才能まで育むことを目的とした計画なんでちゅ! 新時代のエンタメ産業をけん引するような超一流のアイドルになれるように、頑張りまちょうね!」 
  
 にちか「……!!」 
  
 (そ、そんな計画に……私が……?!) 
  
 美琴「この計画の舞台に選ばれたのがこの島ってことみたい」 
  
 ウサミ「はい! でも安心してくだちゃいね、人体実験とか人格移植だとかそんな物騒なことは行いまちぇん。ちゃんとミナサンが自分自身の力で未来を切り開けるような教育プログラムをご用意してまちゅから!」≫ 
  
   
	- 446 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 21:19:22.92 ID:PGzGnqfO0
 -   
 にちか「特にあれ以降説明はなかったですけど、今の私たちが参加してるこのレクリエーションとかもその一部なんですよね?」 
  
 美琴「多分、そうだろうね。毎日みんなと何かしらのタスクをこなすように日程が組まれているから。この合宿自体がそうなんだと思うよ」 
  
 ルカ「ま、とりあえず読んでみるか」 
  
  
 『希望ヶ峰学園歌姫計画』 
  
 『超高校級のアイドル、超高校級のマネージャーをはじめとした学園の生徒協力のもと日本のエンタメ産業を担う新時代の“歌姫”を育成する計画』 
 『人為的に才能を生みだす意図ではなく、環境からのアプローチで才能を伸ばすことを目的とする』 
 『計画には現役の283プロダクション所属のアイドルに参加してもらい、学園の生徒同様のトレーニングを実施する。適宜別のメニューも考案し、“超高校級”に匹敵する実力を習得する。成功した暁には、その生徒を【超高校級の歌姫】として迎え入れる予定』 
  
  
 ルカ「ふーん……私たちのやってるコレって、希望ヶ峰の生徒が協力してたのか」 
  
 にちか「その割には普通の合宿と大した違いは感じないですけどねー……」 
  
 美琴「私たちの元々持っているものを引き出して伸ばそうとするプログラム……プロデューサーがこの合宿に推薦してくれた理由、なんとなくわかるな」 
  
 ルカ「……まあ、私たちの今置かれている状況の説明としては納得のいく記述……か」 
  
 (でもなんだ……? この何か引っかかるような感覚は……?) 
  
  
 コトダマゲット!【希望ヶ峰学園歌姫計画】 
 〔希望ヶ峰学園のノウハウを活かして283プロダクションのアイドルの中から新時代の歌姫を育成するプログラム。コロシアイの参加者が元々持ちかけられた計画と名前は同じだが、その実態には明確に引っかかる点がある。〕 
  
 【選択肢が残り一つになったので自動進行します】 
   
	- 447 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 21:20:51.59 ID:PGzGnqfO0
 -  ------------------------------------------------- 
  
 【胸に刺さった鉄串】 
  
  
 美琴「どうやらこの胸に刺さった鉄串が直接の死因みたいだね」 
  
 にちか「みたいですねー……心臓まで直接一刺しって感じっぽいです!」 
  
 ルカ「まあこれもウサミのヒントなんだろ。とりあえず抜いてみるぞ」 
  
 にちか「あ、それじゃあお願いしますー! 一思いに抜いちゃってくださーい!」 
  
 (……やれやれ) 
  
  
 野菜の収穫でもするかのように力いっぱいに引き抜いた。 
 肉を裂き、内臓を傷つけ、血液はポンプのように噴き出しながら、殊の外あっさりと鉄串は引き抜くことができた。 
  
  
 にちか「うわーーーー!! ちょっと、こっちまで血飛沫散ったんですけど! 美琴さん、ばっちいので離れた方がいいですよ!」 
  
 ルカ「オマエなぁ……」 
  
  
 呆れる私の手の中で鉄串はその姿をみるみるうちに変えていく。 
 長細い形状は極端に短くなり、やがてそのシルエットは扁平に。 
 さっきのファイルとはまた別のファイルへとその姿を変えた。 
  
   
	- 448 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 21:22:07.40 ID:PGzGnqfO0
 -   
 にちか「【283プロダクション連続殺人事件捜査資料】って書いてありますよ?」 
  
 ルカ「連続殺人……もしかして、前回のコロシアイってやつか?」 
  
 美琴「……多分、ここで死んでいる彼女の参加したコロシアイのことだね」 
  
 にちか「ルカさん、早く見せてくださいよ!」 
  
 ルカ「お、おう……」 
  
  
 促されるままにページをパラパラと捲る。 
 そこに書いてあったのはこれまでの生活で私たち自身が得てきた情報と同じ記述。 
 参加者、死亡者、そして首謀者。 
 私にとっても馴染み深い名前が名を連ね、凄惨な事件の全貌を綴る。 
  
  
 ルカ「……こっから先は見たことねーな」 
  
 にちか「事件の、その後……です?」 
  
 美琴「このコロシアイを生き抜いた彼女たちがどうなったのかが書いてあるみたいだね」 
  
 ルカ「……どうやら生存者5人はそのまま身柄をが当局預かりになって、保護観察処分となったみたいだな」 
  
 にちか「えーっと……それって、カウンセリングみたいなやつです?」 
  
 美琴「うん、平たく言えば検査入院みたいなものだよ」 
  
 にちか「なるほど! さすが、一発で分かりましたよ!」 
  
  
   
	- 449 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 21:23:08.41 ID:PGzGnqfO0
 -   
  
 『〇保護観察対象者:風野灯織 
  
 保護観察を開始してから二週間余りが経過。 
 フラッシュバックなど精神衛生に支障をきたす症状は期間中確認されず。 
 観察者との対話も特に問題なし。 
 事態認識も正常。事件で命を落とした友人らも正確に把握しており、記憶の自主改竄など自己防衛に走る様子もない。 
 日常生活の復帰に十分な回復を認めるものとし、保護観察を本日打ち切ると決定』 
  
  
 ルカ「……特にこの5人に異常はなかったらしいな。二週間余りで終わったみたいだ」 
  
 にちか「目の前で人が死んだってのに、たくましい人たちですねー」 
  
 美琴「ふふ……それを言ったら、今だって目の前に死体があるよ、にちかちゃん」 
  
 にちか「あはは、言われてみればー!」 
  
 ルカ「おいおい流石に不謹慎だっての……」 
  
   
	- 450 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 21:24:20.92 ID:PGzGnqfO0
 -   
 『〇283プロダクション連続殺人事件の捜査状況について 
  
 主犯格とみられる天井努の経営していた芸能プロダクション『283プロダクション』から社用PCならびに私用PCを押収。 
 情報捜査担当者に回し、解析結果が本日到着したため、報告に挙がっていた情報をここに記す。 
  
 ・本連続殺人事件を『コロシアイ合宿生活』と題して外部に公開していた確定的な証拠は発見されなかった。 
 海外サーバーを経由していたものと思われ、その履歴も消去されてしまっているため復元はほぼ不可能。 
 保護観察対象者から得られた証言の裏付けとなる根拠には欠ける。 
 『チーム:ダンガンロンパ』と呼ばれる組織の特定を急ぐ』 
  
  
 ルカ「二週間も経ちゃあ捜査も結構進んでんだな」 
  
 にちか「はぁ……ていうかうちの社長がコロシアイの黒幕ってマジでなんなんですかー……あんなダンディぶっといて中身性悪とか、普通にショックなんですけどー……」 
  
 美琴「それを言ったら今回の黒幕は恋鐘ちゃんでしょ?」 
  
 にちか「あはは、確かにー! 私たち恋鐘さんのエゴでぶっ殺されたんでしたー!」 
  
 (……さっきも見たよな、このやりとり) 
  
 ルカ「それにしてもこの『チーム・ダンガンロンパ』っての、月岡恋鐘も言ってた組織名だよな?」 
  
 美琴「うん、彼女はこのコロシアイをその組織と共謀して起こしたって言ってた。彼女自身がそのメンバーだとも言ってたね」 
  
 にちか「なんか悪趣味なシンボルマークですよねー」 
  
 ルカ「このチーム・ダンガンロンパってのは一体なんなんだろうな」 
  
 にちか「全然聞いたことないですけどねー。なんでしたっけ、コロシアイを興行としてやってるんでしたっけ?」 
  
 美琴「もう少し調べてみないといけなそうだね」 
  
  
   
	- 451 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 21:25:37.86 ID:PGzGnqfO0
 -   
 『・芸能事業とは別の帳簿データを確認。 
 巨額が闇口座に注ぎ込まれている不正な流れがあり、当事務所の従業員・七草はづきに確認をしたところ、完全に知覚していないものだとの証言が取れる。 
 天井努が事務所の経営資金と別に蓄えていた金についても、その入手手段、流用先を調査するものとする。』 
  
  
 にちか「……ん?」 
  
 ルカ「どうした、鈴カステラ喉に詰まらせたみたいな顔しやがって」 
  
 にちか「無理やり子供扱いするのやめてもらえますー? いや、あの……なんかここ、すごい違和感あるんですけど」 
  
 美琴「……そうなの? 帳簿の管理は基本はづきさんにお任せしていたし、何もおかしなところはないように思うけど」 
  
 にちか「んー? なんだろなー、この違和感……」 
  
 ルカ「なんなんだよ、オマエがはっきりしないとこっちもなんか気持ち悪いだろうが」 
  
 にちか「……あ! このお姉ちゃん、泣きぼくろがある! お姉ちゃんにこんなほくろなんかありましたっけ?」 
  
 美琴「……言われてみると、そうかも」 
  
 にちか「うーん……あったような気もするけど……なかったような気も……いや、3:7でなかったな……」 
  
 (死ぬほどどうでもいいな……) 
  
  
 コトダマゲット!【にちかの証言】 
 〔捜査資料に写っていた実姉・七草はづきの泣きぼくろに違和感を覚えたらしい〕 
  
   
	- 452 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 21:27:20.10 ID:PGzGnqfO0
 -   
 『・外部との通信履歴に不審な送信先を確認。 
 連絡は数度に渡り、一定の頻度で行われている様子。 
 主要通信業大手に照会するも該当はなし。 
 位置情報を解析し、送信先の人物と事件との関連性について追求していくことが目下の捜査方針となる』 
  
  
 美琴「……これ、不審な送信先っていうのが恋鐘ちゃんのことなのかな」 
  
 ルカ「可能性として高いのはそうだろうな。あいつの口ぶりからして、前回のコロシアイの時から協力関係にあったんだ。ずっとやりとりをしてたんだろうさ」 
  
 にちか「じゃあこの時に特定できてたら、私たち死ななくてよかったんじゃないですか? あーあ、日本の警察ってダメダメだなー!」 
  
 ルカ「身も蓋もねえな……」 
  
  
  
  
 『・本件が発生してより行方不明となっている10名との関連も併せて調査する』 
  
  
  
  
 ルカ「行方不明の10名……ってこれ」 
  
 美琴「私たちのこと、だよね? 多分」 
  
 にちか「あー、肝心の行方不明者の名前が黒塗りになってるー! なんでこんなことするんですかー!」 
  
 ルカ「まあ、普通に考えればこのコロシアイに参加している人間。前回の生き残り5人と私を除いた10人、だろうな」 
  
 美琴「……前回のコロシアイ、その記憶が私たちにはない。この行方不明となっている時に私たちの身に何が起きていたのかも、誰も覚えていないんだよね」 
  
 (……失われた記憶の中で、何が起きて、何が起きなかったのか) 
  
 (そしてその結果、どうして私たちがここに来ることになったのか) 
  
 (……それを明らかにしないことには、前に進めないよな) 
  
  
 コトダマゲット!【行方不明の十人】 
 〔前回のコロシアイが起きた時から、10人の人間が行方不明となっていたらしい。今回のコロシアイの参加者のうち、前回の生き残りと透を除けば丁度10名〕 
   
	- 453 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 21:29:47.45 ID:PGzGnqfO0
 -   
 美琴「死体は一通り調べたけど……」 
  
 にちか「肝心のウォークラリーのヒントがないですね……」 
  
 ルカ「……そういえばそんなのやってたんだったな。死体が用意されてたあたり、間違っちゃいなかったと思うんだけどな」 
  
  
 死体から得られたのは私たちの置かれた状況に関する手がかりのみ。 
 でも、そんなことどうだっていい。 
 だって私たちは希望ヶ峰学園の意志を受け継ぐものであり人格を入れ込む器でしかない希望希望希望希望希望 
 希望希望希望希望希望希望希望希望希望希望希望希望希望希望希望希望希望希望希望希望希望希望希望希望希 
  
  
 にちか「やっぱり死体の腕とか脚とか引きちぎるしかないですってー!」 
  
 美琴「あまり気は進まないけど、そうするしかないのかもね」 
  
 ルカ「じゃあ私は頭をぶち抜くぞ」 
  
  
 それぞれが体の一部分を両手で持ち、今まさに力を入れようとしたその時。 
 手の中で冷たくなっている物言わぬ屍が、起きた。 
  
  
 にちか「わ、わわ?! な、何が起きてるんですー?!」 
  
 美琴「これもウサミちゃんの魔法……なのかな」 
  
  
 手に持っていた体の一部分は私たちの体をすり抜けたかと思うと、そのまま血だらけの体のまま私たちに正対。 
 そして口をモゴモゴと動かし始めた。 
   
	- 454 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 21:32:42.63 ID:PGzGnqfO0
 -   
 非\ォりり 
 【私はただ皆さんを守りたかっただけなのに理不尽心臓に空いた穴が痛い血が漏れ出て息もできない苦しい助けて辛い』 
  
  
 にちか「ありがとうございますー! パスワードの一文字めは『ナ』みたいですね!」 
  
 ルカ「チッ……正解の場所なら勿体ぶらずさっさと教えやがれってんだ」 
  
 美琴「他のチームはどうなんだろう、私たちが出遅れてないといいけど」 
  
 にちか「もうここでの用事は済んだことですし、早く戻りましょう! 負けてらんないです!」 
  
 ルカ「そうするか、二つめのヒントは『慈愛の女神の行き着く果て』……」 
  
 美琴「慈愛の女神……誰のことだろうね」 
  
  
 どうやら私の推理は間違っちゃいないらしい。 
 ウサミのやつ、きっかり私たちにゆかりの深い場所をキーワードの場所に設定してやがるな。 
 あいつにいいように動かされているのは癪だが、ここは大人しく従って駆けずり回るしかなさそうだ。 
  
  
 にちか「それじゃあさっさとしゅっぱーつ!」 
  
  
 ヒ唹”#咦 
 [置いていかないで守らせて私が今度こそ守って見せるから後悔したくない手放したくない≫ 
  
  
 ルカ「おい! 何突っ走ってんだ!」 
  
 ------------------------------------------------ 
  
 『慈愛の女神の行き着く果て』 
  
 【第二のヒントが指し示す場所を選べ!】 
  
 ↓1  
	- 455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/08(火) 21:34:57.83 ID:D38ZPOww0
 -  図書館 
 
	- 456 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 21:40:21.66 ID:PGzGnqfO0
 -   
 【正解】 
  
 ------------------------------------------------ 
  
 【第2の島 図書館】 
  
  
 普段自分からは足を踏み入れようとはしない場所。 
 この令和の時代、絵の情報だろうが活字の情報だろうがスマートフォンの中に押し込めて閉じ込められるのに、 
 わざわざ手間暇をかけてまで足を運ぶのは流石に手間だろう。 
 私が風趣を介さないつまらない若者、というわけでもない。 
 この時代よくいる若者が、私だ。 
  
  
 にちか「ルカさんって活字読めなさそ〜、読書感想文とかググってた性質ですよね?」 
  
 ルカ「なんで不正してたことが前提なんだよ、それぐらいは読んでたわ」 
  
 美琴「ルカ、本とか読むんだ」 
  
 ルカ「……」 
  
  
 なんとなく会話を続けたくなかったので率先して私が扉を開けた。 
 無駄に重厚な扉はギィという音と共に私たちを文字の世界へと誘う。 
 扉を開けた瞬間に、かびたような時間の止まった匂いが鼻口をくすぐった。 
  
  
 にちか「で、今更なんですけどどうして図書館が第二のヒントの場所なんです?」 
  
 ルカ「ああ、えっと……なんだっけな……」 
  
  
 ついさっきの思いつき、私には確かな心当たりがあってこの場所を選んだはず。 
 だというのに、私の頭にはポッカリと穴が空いていてそこから記憶が流れ出てしまったかのようで、まるでその時の記憶を掘り起こすことはできなかった。 
   
	- 457 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 21:41:18.70 ID:PGzGnqfO0
 -   
  
 にちか「……あっ! あれ!」 
  
  
 でも、記憶なんかもうどうでもいい。 
 大事なのは過程よりも結果。 
 私がどんな思いつきで図書館にたどり着いたなんかよりも、今目の前に千雪の死体が転がっていることが全てだ。 
  
  
 にちか「死体見―――――っけ!」 
  
 ルカ「よし……正解みたいだな。千雪のやつ、腹を弓矢でブッ刺されて死んでるぞ」 
  
 美琴「彼女、最後の力で引き抜いたのかな。矢が地面に転がってるみたいだけど」 
  
 ルカ「……」 
  
 (……あ? なんだ、この感覚……) 
  
  
 さっきも死体は目の前で見た。 
 これだって、なんてことないただの死体だ。 
 ただの、桑山千雪の死体だ。 
 それなのに、なぜ私は右手で自分の胸を抑えているのだろう。 
 何を吐き出そうというのか、何を堪えているのか。 
 その答えは図書館のどの本、どのページを開いても見つけることはできないだろう。 
 ……やっぱり、活字なんて今更クソ喰らえだ。 
  
  
 美琴「……ルカ、どうしたの?」 
  
 ルカ「いや、なんでもない……」 
  
  
 私は自分の苦悶と衝動から目を背けた。 
  
  
 1.死体付近に落ちている矢 
 2.ボウガン 
 3.死体の抱える本 
  
 ↓1 
   
	- 458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/08(火) 21:45:03.53 ID:D38ZPOww0
 -  1.死体付近に落ちている矢  
 
	- 459 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 21:52:18.49 ID:PGzGnqfO0
 -  1 選択 
  
 ------------------------------------------------ 
 【死体付近に落ちている矢】 
  
 死体に突き刺さっていたであろう矢を拾い上げる。 
 誰かが握っていたのだろうか、本来無機質な冷たさであるはずの鉄の柱はほのかに熱を有している。 
  
  
 ルカ「……」 
  
 にちか「ルカさん、何をそんなにジロジロ見てるんですか? 何か気になることでもありますー?」 
  
 ルカ「いや、なんでもねーよ」 
  
 美琴「二人とも、これも正解みたいだよ」 
  
  
 美琴の指摘通り、私の手の中で矢はその姿をみるみると変えていく。 
 魔法の感触というのは随分と心地が悪い。 
 手に纏わりつく泡のような物質は鬱陶しいばかり、キラキラとした光の粒子も目に五月蝿い。 
  
  
 ルカ「……今度はなんだ? なんだかチラシっていうか、パンフレットみたいになったわけだが」 
  
  
 さっきまでのコピー用紙とは違ってすべすべとした手触りの紙切れ。 
 組織のロゴマークとは対照的に青や白で飾られて、いかにもベンチャー企業といった印象。 
 この外面だけの良さは、外部の人間に向けられたアピール用、なのだろう。 
   
	- 460 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 21:54:22.70 ID:PGzGnqfO0
 -   
 にちか「……『チーム・ダンガンロンパ』、これって月岡さんが言ってたやつじゃないですか?」 
  
 美琴「透ちゃんも知ってたみたいだったよね」 
  
  
 《恋鐘「そう! うちも社長も、チームダンガンロンパのメンバーやけんね!」 
  
 智代子「チーム……ダンガンロンパ?」 
  
 あさひ「ダンガン、ロンパ……」 
  
 透「……ちょっと待ってそれって」 
  
 恋鐘「まあ、そん辺りのややこしか話はうちが死んだ後の真相究明編でやればよかとやけん、割愛するばい」 
  
 智代子「え、ええっ?! そんな勝手な……?!」 
  
 恋鐘「チームダンガンロンパはあくまで裏方、メインはコロシアイに参加しとるみんなやけんね。そこに割くべき尺も文量もなかよ」》 
  
 《あさひ「それに、大事なことは隠したままっす。恋鐘ちゃんと天井社長のバックにいるチームダンガンロンパ。これが分からないんじゃ、何も解決してないっす」 
  
 透「その組織自体は、聞いたことある」 
  
 智代子「え、本当に……?!」 
  
 透「一応、ね。詳しいことは知らないけど、前回のコロシアイ……どころかこれまでにも何度もコロシアイを仕掛けてきたんだって」 
  
 あさひ「コロシアイって……今回と前回だけじゃないんっすか?」 
  
 透「……みたい。それを裏で取り仕切っているのがチームダンガンロンパ、とか」 
  
 智代子「そ、そんなの……聞いたこともないよ……」》 
  
  
 これまでの人生で一度も聞いたことがないような組織だった。 
 コロシアイなんてものすら人生で触れることはまずないのに、それを取り仕切っているだなんてSF小説にしてもくだらない。 
 もはや信じるとか信じないとか、そんな前提にすらないようなお話で、私は両手を手放してしまっていた。 
 それなのに、目の前の紙切れは実在だと声高に主張してくる。 
   
	- 461 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 21:56:34.29 ID:PGzGnqfO0
 -   
 『チーム・ダンガンロンパは刺激の足りない毎日を送る皆様にこれまでにない画期的なエンターテインメントを提供するソーシャルエグゼクティブなグループです!』 
  
 『我々は人と人が命をかけて生存を争う様子を【コロシアイ】と題してリアルタイムな配信を行なっています! 平穏に飼い潰されてしまった日常に、刺激的な時間をお届け!』 
  
 『コロシアイは正真正銘の本物! 本当に実際の人間が血を流し、苦しみ、命を落としています!』 
  
  
 ルカ「マジでこんな組織があるってのか……?」 
  
  
 コロシアイ、なんて文字列と共に並んでいるのはスタッフであろう人間のお手本のような笑顔。 
 キラキラとした表情に血生臭い文言ばかりが並んで、その取り合わせがなんとも言えない不快感を抱かせる。 
  
  
 にちか「でも、確かに需要はありそうですよねー。スプラッタ映画とかって昔からコアなファンがいるじゃないですか」 
  
 ルカ「いやいや……あれは作り物だろ? 生身の人間でのコロシアイだなんて、そんなのそもそもが法を犯してて……」 
  
 美琴「だからこそ、じゃないかな」 
  
 美琴「日常の範疇から逸脱しているからこそ、人の目を引く。ラインを超えてでも見てみたい、そういうふうに思う人はそう珍しくもないんじゃない?」 
  
 ルカ「まあそうなのかもしれねえけど……」 
  
 ニ猇kkkkkk 
 『あははは! そうですよね、私だって人が死ぬところ見てみたいですもん! あははははは!: 
  
 深コ菟 
 【人のお腹を裂くとどんなふうに内臓が出てくるのかな人の首を切るとどんなふうに血が飛ぶのかな人は命を落とす時どんな声を漏らすのかな≫ 
  
 ¿尼Ch果 
 :コロシアイはもう一大エンターテインメントなんですよ無責任に人の生き死にを笑いたい惨たらしい死に様を嘲笑いたい「 
  
  
 ルカ「ふーん……まあそういうもんか」 
  
  
 私だって同じことが繰り返されるような日常には飽き飽きしているんだ。 
 コロシアイという刺激に飛びつく人間がいたとしてもそれはおかしくもないのかもな。 
  
  
 コトダマゲット!【チーム・ダンガンロンパ】 
 〔恋鐘と努が生前所属していた組織。コロシアイをエンターテインメントと定義し、リアルタイム配信を行なっていた。コロシアイを運営するのはこれが初めてではなく、既に何回もコロシアイが行われていた〕 
  
 1.ボウガン 
 2.死体の抱える本 
  
 ↓1 
  
   
	- 462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/08(火) 21:58:30.64 ID:D38ZPOww0
 -  1.ボウガン  
 
	- 463 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:05:30.05 ID:PGzGnqfO0
 -  1 選択 
 ------------------------------------------------ 
 【ボウガン】 
  
 本が群れをなす中にひっそりと、その群れの中に姿を隠すようにして置かれたものがある。 
 いかにも重要そうな手がかりみたいな面をしておいて、実際は事件とは無関係な偽装された証拠だと言うのだからタチが悪い。 
  
  
 美琴「ボウガン……千雪さんに刺さっているのとは型番が違ったんだよね」 
  
 ルカ「おう、これを置いたのは月岡恋鐘……狸だよ。冬優子を秘密で釣っておいて、罪をこれでなすりつけようとしたわけだ」 
  
 にちか「これもヒントみたいですね、弓がなんかぐにゃりだしましたよ!」 
  
  
 ボウガンは飴細工のように捻じ曲がったかと思うと、今度私たちの前に突然と浮き上がる。 
 そこに壁などないのに、何かにぶつかり溶け込むようにして、長方形の板のような形に変わった。 
 それを一言で言うなら、ゲームのウィンドウだ。 
  
  
 にちか「うわ……なんかアルファベットと数字の羅列……これってプログラミングってやつじゃないです?」 
  
 美琴「……みたいだね、すごい情報量」 
  
 ルカ「おいおい、こんなもんパッと見せられても私たちじゃ全く意味わかんねー……」 
  
 美琴「……エラーが発生してるみたいだね」 
  
 ルカ「あ?」 
  
 にちか「み、美琴さん! プログラミング分かるんです?!」 
  
 美琴「ううん、そうじゃなくて。ほら、単純にこの一部分には〔error〕の表示があるよね?」 
  
 ルカ「あ、言われてみれば」 
  
 美琴「テキストメッセージとして出ているものだけ拾えば、少しくらいは読み解けるんじゃないかな」 
  
 にちか「だ、だったら任せて下さい! 英語は得意科目……ってほどでもないですけど、一応現役なので!」 
  
 美琴「うん、頼めるかな」 
  
   
	- 464 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:06:29.81 ID:PGzGnqfO0
 -   
 妙に息巻いてウィンドウを流れるメッセージを読み解いていくにちか。 
 言葉を辿々しく拾い集めると、恐る恐るその解答を口にする。 
  
  
 にちか「多分……なんですけど、このエラーは何かウイルスが混入して発生したみたいです」 
  
 美琴「ウイルス? これは病気になってるの?」 
  
 (おいおい……) 
  
 にちか「誰かが持ち込んだウイルスによってシステムに異常が起きてて……多分、外からじゃどうにもならない……みたいな感じだと思います」 
  
 ルカ「外から? プログラムに外も中もないだろ」 
  
 にちか「うるさいなー、私だってよくわかんない分野の話なんですから黙っててくださいよ」 
  
 ルカ「なっ、生意気な……」 
  
 美琴「もしかして、セキュリティの話なんじゃない? ハッキングを防ぐためのファイアーウォールとか……そういう話だったりして」 
  
 にちか「さ、さすがは美琴さん……! どこぞのニュース解説者より分かり易い解説です……!」 
  
 ルカ「無駄に喧嘩を売るなっての……」 
  
 (まあ、言い方はさておいて……ウイルスの侵入によるセキュリティ異常ってのは覚えておいてもいいかもな) 
  
 (何のシステムのメッセージかはわからないけど、外部とは完全に遮断されたことは大きな意味を持つはずだ) 
  
  
 コトダマゲット!【プログラムエラー】 
 〔何らかのシステムにおけるエラーメッセージ。システム内部に何かウイルスが侵入した事でセキュリティシステムが異常作動を起こし、外部の干渉を完全に遮断してしまったらしい〕 
  
 【選択肢が残り一つになったので自動進行します】  
	- 465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/11/08(火) 22:07:48.92 ID:xVZEcpDk0
 -  1 
 
	- 466 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:09:50.70 ID:PGzGnqfO0
 -  ------------------------------------------------ 
 【死体の抱える本】 
  
 千雪が何やら大事そうに手にしている本がある。 
 彼女の腹部から漏れ出たものであろう血は、手のひらを経由して紙の装丁の表紙にべったりと張り付いている。 
 元々の表紙、そのタイトルは今からは解読不能だろう。 
  
  
 ルカ「……」 
  
  
 何故だか、私はその本から目が離せなかった。 
 別になんてことはない、死体が握っていただけの一冊。 
 それこそダイイングメッセージの一つでも蓄えた宝箱くらいの認識で足りるはず。 
 私が抱いているのは、一体なんの感慨なんだ。 
  
  
 にちか「何ボケーっとしてるんですか、さっさと検証しましょうよ」 
  
  
 にちかはそんな私を他所に死体から乱暴に本を引ったくる。 
 この本も例に漏れずウサミの魔法がかけられていたようで、血に塗れた表紙はチカチカしたピンクの光と共に移り変わり、既視感のある一冊へと変わった。 
  
  
 ルカ「……これって、確かモノクマの工場かなんかで見つけたやつじゃ」 
  
  
 『ジャバウォック島再開発計画』のタイトルに掲げられている通り、 
 ここに記されているのは時代に取り残された観光島・ジャバウォック島の事業再生を目指す計画書。 
 その先導に立つのは、私たちの前にその存在を何度か仄めかした『未来機関』だ。 
   
	- 467 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:12:19.82 ID:PGzGnqfO0
 -   
  
 にちか「うーん……でも変ですよね、この島って私たち以外にまるで人はいない感じなのに。このファイルにはずーーっと人が住んでて生活が営まれてる体で書かれてますよね」 
  
 美琴「……姿を消したにしても大規模だよね」 
  
 ルカ「それに、この島で見つけた被験体……ってのは誰の何を指してるんだ……?」 
  
 にちか「島の中央の行政施設を解体して未来機関の拠点にする……はー、かんっっぜんにサッパリです!」 
  
 ルカ「あの遺跡を作って何がしたかったのかも分からないし……マジで謎だな」 
  
 にちか「こうなったらあの遺跡に入ってみる以外なくないです? 他のことはなーんにもわかんないですし」 
  
 ルカ「おいおい、またパスワードかよ……めんどくせえな」 
  
  
 私たちの前に何重にも立ち塞がる謎という壁。 
 その一つ一つが分厚く、そして全貌の見えぬほどに高い。 
  
  
 美琴「……ルカ、これは前に見た書類と完全に一緒?」 
  
 ルカ「ん? おう……あさひと見た時と一緒……だな。元々この島には住んでいる人間がいて、中央の島の行政機関をぶっ潰す形で『未来機関』ってのがここに拠点を持ったらしい」 
  
 美琴「その後のこれは?」 
  
 ルカ「……『先遣部隊が上陸時、既に標的の姿は島にはなく、鎮圧自体は何ら妨害を受けることもなく成功した』」 
  
 ルカ「まあ、見たことない記述だけど……そんなに重要なのか?」 
  
 美琴「……」 
  
 にちか「なんかほんとどこまでも小学生の自由帳みたいな話ですよねー」 
  
 ルカ「どこまで信用できるのかは疑問だな……」 
  
  
 コトダマゲット!【ジャバウォック島再開発計画】 
 〔未来機関という組織がジャバウォック島を再開発し、新たに本部を構えるまでの記録。中央の島には行政機関があったらしいが、そんな痕跡は今現在の島には全くない。未来機関が上陸時に、既に標的の姿は島になかったという〕 
  
   
	- 468 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:14:38.30 ID:PGzGnqfO0
 -   
 ルカ「後はこの死体ぐらいのものか……」 
  
  
 千雪の亡骸の近くに散らばっている物は一通り拾い上げて、その正体も確かめた。 
 しかしながら、まだパスワード自体は分かっていない。手がかりを残すのは、この死体だけ。 
  
  
 にちか「じゃあ今度こそ死体を分解しますかねー。両腕引きちぎっちゃいます?」 
  
 美琴「そうだね……その前に眼球を抉ったりして、小さなところから確かめようか」 
  
 (……) 
  
  
 不思議な感覚だった。 
 真実を知ろうとしているだけ、先に進むために探索をしているだけなのに、なぜかにちかと美琴の言葉の一つ一つに胸がざわつく。 
 そんな感情は無用な感情だ死体は死体でしかないそんな感慨なんて抱いたところで無意味 
 屍を踏み越えて私たちは先に進む希望に停滞はない希望に行き止まりはないただ前に進むだけ 
  
  
 ルカ「よし、それじゃあ舌をペンチでぶっこ抜くところからだな!」 
  
  
 死体をぶち壊して情報を啜ろうとしたその一歩手前。 
 またしても死が裏返った。 
  
  
 美琴「……!」 
  
  
 踟¡逝キ 
 |私が一■黙って■■ばい■罪■背■って■を閉ざしてい■■誰も傷つ■ない私だ■■犠牲に■ればいい 
  
  
 にちか「あ、またパスワード教えてくれるやつですかね! ほら、早く言っちゃってください! ゲロった方が楽になりますよ!」 
  
 ルカ「取り調べじゃないんだから……」 
  
  
 チ$裄:; 
 ■を貫く鉄芯が■■い本当■■れでよか■たの■な私が■■意味はあっ■のかな■が信じ■あげ■■よかったの■な私は疑うこ■を■■てよかっ■のかな 
  
  
 美琴「パスワードは『モ』……ありがとう、後はもうゆっくり休んで」 
  
 ルカ「これで2個目、か」 
  
 にちか「このペースじゃ日が暮れちゃいますよ! さっさと次行っちゃいましょう!」 
  
  
 私たちがパスワードを獲得すると、千雪はその場に崩れ落ちてまた物言わぬ骸に戻った。 
 死体を傷付けずともヒントが得られた。そのことに安堵せずにはいられない自分がいたが、二人には悟られないように取り繕っていた。 
   
	- 469 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:16:11.54 ID:PGzGnqfO0
 -   
 美琴「次のヒントは『落ちて、堕ちて、墜ちる』……」 
  
 にちか「どこか高いところなんですかねー……? 崖の上とか!」 
  
 ルカ「今日は火曜日でもないしサスペンスでもないぞ。それにこの島にそれらしい崖なんかないだろ……」 
  
 (まあ高いところってのは間違いなさそうだな……考えてみるか) 
  
 ------------------------------------------------ 
  
 『落ちて、堕ちて、墜ちる』 
  
 【第三のヒントが指し示す場所を選べ!】 
  
 ↓1  
	- 470 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/08(火) 22:19:37.52 ID:D38ZPOww0
 -  病院の駐車場? 
 
	- 471 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:22:27.88 ID:PGzGnqfO0
 -  【正解】 
  
 ------------------------------------------------ 
  
 【第3の島 病院 駐車場】 
  
 西部劇を思わせる荒野に突如として現れるコンクリートの絨毯。 
 すっかり砂をかぶっているため、その表面はざらついており、ソールが叩いてもコツンという足音には雑音が混じる。 
 高所とは真逆の印象もあるこの場所に、なぜ足を運んだのか……相変わらず自分自身でもわからないままだ。 
  
  
 にちか「えー、病院? どこか体でも悪くしてるんですかー?」 
  
 美琴「ルカ、どういう推理なの?」 
  
  
 ただ、その不可解はすぐに接頭語も外れることとなる。 
  
  
 ルカ「……ビンゴみたいだな」 
  
  
 私たちの前に現れたのは血の海に正面から顔を浸し、うんともすんとも言わなくなった三峰結華の死体。 
 その頭上をハゲタカが獲物を狙うように、ドローンが飛び交っていた。 
  
  
 にちか「うぇー……なんかあの死体、顔面グロい感じになってる気じゃないです……? ルカさん、ちゃっちゃと捲って見てきてくださいよ」 
  
 ルカ「私はオマエの小間使いじゃねえぞ……チッ、とりあえず死体の周りで情報を集めようぜ」 
  
 美琴「まあ……それが良さそうかな」 
  
  
 やたらと照りつける日差しが厳しい島だ。野外の操作は手早にしておかないとこちらの体力が持っていかれる。 
 それに……腐臭も増していくばかりだ。 
  
  
 1.結華のメガネ 
 2.青い繊維 
 3.ゲッカビジン 
  
 ↓1 
   
	- 472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/08(火) 22:24:48.74 ID:D38ZPOww0
 -  1.結華のメガネ  
 
	- 473 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:26:27.22 ID:PGzGnqfO0
 -  1 選択 
 ------------------------------------------------ 
  
 【結華のメガネ】 
  
 死体は真っ正面から激しい衝撃を受けているので、みるも無残な有様という他ないが、 
 その脇に落ちているメガネはあり得ないほどに綺麗なまま。 
 事件の鍵を握っていた重要なパーツ……パスワードのヒントがあると言うのなら、ここだろう。 
  
  
 ルカ「……やっぱりな」 
  
  
 天に透かすようにしてみると、度の入ったはずの視界は鮮明になるどころか、反対に別のものを映し出した。 
 まだ太陽は高く登っている、周りには遮蔽物もない。 
 それなのに、レンズの先はまるで別世界のように真っ暗だ。 
  
  
 にちか「うわ……ルカさん死体から剥ぎ取ったメガネかけてますよ。どこの羅生門なんですかそれ」 
  
 ルカ「捜査のためだ……うるさいな。それに羅生門は髪の毛だろうが」 
  
  
 一つの仮説を立て、自分自身でメガネを装着。 
 そのまま顔を上げて天を仰いでみると、仮説を裏付ける根拠が顔を覗かせた。 
   
	- 474 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:28:15.48 ID:PGzGnqfO0
 -   
  
 ルカ「……やっぱり、このメガネを通してみると夜の状態の島の様子が見えるんだな」 
  
  
 夜空に散らばる星の数々、その中央に鎮座する真円の満月。 
 この島に来てからずっと見てきた夜空そのものと全く変わりない光景がそこにはあった。 
  
  
 ルカ「……」 
  
  
 自然と、あの夜のことを思い出す。 
 にちかを犠牲に生き残ったあの晩に、息が詰まるような切迫感の逃げ道を空に探した時のことを。 
  
 あの時から、この空は何も変わらない。 
 星の配置も、月の満ち欠けも。 
 まるで時が止まってしまったかのように変わらないのである。 
  
 ルカ「なあ、二人はどうしてこの月の形が変わらないんだと思う?」 
  
  
 爾|#戈 
 そんなこ■を気にする必要はありませ■私た■は使命に従■■生き■だ■彼女た■を■■るために育て■だけそれ■■が生きる理由な■です■ 
  
 m萎k悪t苧 
 私た■は舞台装■彼■たちをステ■ジに立たせるた■■舞■装置■だけ見せ■だ■そこ■思■■必要ない■■要らな■ 
  
  
 ルカ「……そう、だよな」 
  
  
 私は何を気にしていたんだ。月の形が変わらないからってなんなんだ? 
 考えたところで答えが見つかるわけでもないのに烏滸がましい身分不相応図に乗っているダメだ却下拒絶断絶中断終了 
  
  
 コトダマゲット!【満月】 
 〔この島に来てからずっと月の形は変わらないまま〕 
  
 ------------------------------------------------ 
  
 1.青い繊維 
 2.ゲッカビジン 
  
 ↓1  
	- 475 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/08(火) 22:32:38.14 ID:D38ZPOww0
 -  1.青い繊維  
 
	- 476 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:36:43.38 ID:PGzGnqfO0
 -  1 選択 
 ------------------------------------------------ 
 【青い繊維】 
  
 空を飛んでいるドローンを調べようにも、手を伸ばしたところで届くはずもない。そうなると視線は自然と死体に戻ってくるわけで。 
 ……だとしても、なぜこんな糸屑に私の視線は止まってしまったのだろう。 
 死体の纏っている衣服のどれとも違う、青い色合いの繊維。 
 ほんの一ドットほどの違和感が私を捉えた。 
  
  
 ルカ「まさかこんな所に眠ってたりしないよな……?」 
  
  
 だが、その違和感はもはや確証に等しかった。 
 このレクリエーションが始まってから、明らかに私は異常だ。 
 何かに手を引かれているかのように行動の全てが他の誰かの意思の上にある。 
 導かれた先の悉くで、それに出会う。 
  
  
 にちか「わ! またモノミの魔法ですよ!」 
  
 美琴「……今度は資料とかじゃないね、どんどん大きくなっていく」 
  
  
 私の手を離れたところで繊維は粒子を巻き込んで大きくなっていき、やがて一つのものを形作る。 
 これまでの紙や冊子の形状とは全くの別物。 
 そこに出てきたのは…… 
  
  
 ルカ「浅倉、透……?」 
  
  
 私たちが共同生活を続けてきたやつと全く同じ姿形で、化けて出たのである。 
   
	- 477 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:38:06.85 ID:PGzGnqfO0
 -   
 美琴「ホログラム……のようなものなのかな」 
  
 にちか「浅倉さーん……? これ、どうなってるんですかー?」 
  
 透「……」 
  
 透「ねえ、記憶ってどこまである? この島に来る前の一番新しい記憶って?」 
  
 ルカ「……あ?」 
  
  
 それは、不思議な感覚だった。 
 脳の隅をほじくり返したと言うべきか、押入れの隅で埃をかぶっていた衣服を引っ張り出した時のようなむず痒さを伴った。 
 無意識化に押しやっていたことに対する、罪悪感にも近い割り切れない感情。 
  
  
 透「ねえ、記憶ってどこまである? この島に来る前の一番新しい記憶って?」 
  
 にちか「え、なにこれ……壊れたレコードか何かですか」 
  
 美琴「この言葉に意味があるってことなのかな」 
  
 (私は……知っている、こいつの、この言葉を) 
  
  
 何度も繰り返される言葉が、深層の底に落ちていた記憶をゆっくりと引き上げていく。 
 それは、私の記憶に紐づいた、記憶の証言の記憶。 
 あの病院で、惨劇が起きる前の、一歩を踏み出すトリガーになった、明確な分岐点の、在りし日の、忘れ難き、記憶。 
   
	- 478 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:39:37.33 ID:PGzGnqfO0
 -   
  
 《透「思い出しちゃ、ダメなんだよ」 
  
 透「忘れといて、そのまま」 
  
 ルカ「……お前が私たちの記憶を奪ったのか?」 
  
 透「……」 
  
 ルカ「いつからの記憶がないかを把握してるってことはそういうことだろ? お前はこの希望ヶ峰学園歌姫計画の参加者じゃなくて……運営する側の人間なんじゃないか?」 
  
 透「……私が奪ったって言うか」 
  
 透「私たちが、奪った」》 
  
  
 ルカ「……!!」 
  
  
 一気に記憶が間欠泉のように噴き出した。 
 眠っていた記憶が即座に蘇る。 
 あの言葉で私は浅倉透という存在に対する認識を改めて、信頼の一歩を踏み出したんだ。 
 このコロシアイの最中で、自分を追い込む発言だと分かっていながら、 
 歩み寄るために口にした言葉には確かな力があったのに、なぜ私はそんなことを忘れていたんだろう。 
  
  
 ルカ「そうだ……この島に来た理由、それは浅倉透が私たちを連れてきたから」 
   
	- 479 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:40:59.51 ID:PGzGnqfO0
 -   
 ルカ「なんで、なんでこんなことを忘れちまってたんだ……? なんだ、何が起きてる……? 私たちはコロシアイをしてたはずだろ? なんでこんな呑気にウォークラリーなんか……」 
  
  
 聻ち¿k亜亜亜01 
 疑問を持■な今はそのフェーズで■ない与えら■た役割を遂■しろ今はただ情報を■■だけの傀儡■なれ 
  
 11111胡000000 
 浅倉透を憎め感情■定■■れ■いる自分の感情は許さ■ていない■く次に進め記■はあとで■■てくる 
  
  
 ルカ「……あ?」 
  
 にちか「もう、ルカさん何やってるんですかー? 今大事なのは浅倉さんが私たちをこの島に連れてきた極悪犯ってことですよねー?」 
  
 美琴「うん、彼女のことは許しちゃいけないよ」 
  
 ルカ「ハッ……ハハッ、そうだよな。浅倉透は許さない、そうだ、そうだよ……なんだったんだ、今のは」 
  
  
 私が錯乱しているうちにいつの間にか浅倉透を真似た繊維は姿を消していた。 
 二人のいう通りだ、今大事なのは浅倉透は私たちをこの島に連れてきた憎むべき悪人だということ。 
 この感情に疑問なんて抱いちゃいけないのに、何を思っていたんだろう。 
  
  
 ルカ「……」 
  
  
 ……そう、なんだよな? 
  
  
 コトダマゲット!【透の証言】 
 〔浅倉透はルカに対して、このコロシアイの参加者を集めたのは自分だと自白している。当初の希望ヶ峰学園歌姫計画は彼女とその仲間が計画したものであるらしい〕 
  
  
 【選択肢が残り一つになったので自動進行します】 
   
	- 480 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:42:37.03 ID:PGzGnqfO0
 -   
 次は少し長く、眠気がすごいので急ですがここで今日は中断させてください。 
 次はゲッカビジンより再開します。 
 明日も時間が取れそうなので、11/9(水)21:00ごろから再開予定です。 
 よろしくお願いします。 
  
 それではお疲れさまでした。  
	- 481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/08(火) 23:10:39.71 ID:D38ZPOww0
 -  お疲れさまでした。 
 正常にバグってるゲーム画面、好き。  
	- 482 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/11/09(水) 01:07:33.44 ID:xSnet1NJ0
 -  お疲れ様でした! 
 どんどん怖くなっていくな……  
	- 483 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/09(水) 09:51:06.65 ID:u3uNaGPf0
 -  sageも使えないド低脳ってまだいるんだね 
 その手のイナゴはVTuberあたりに流れたと思ってたわ  
	- 484 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 20:38:12.39 ID:nQKkMRrM0
 -  ------------------------------------------------ 
 【ゲッカビジン】 
  
 ルカ「……確かこの花、夜の間しか咲かないんじゃなかったか?」 
  
  
 ドローンと同じく宙をなぞるようにしてそこに在った一輪の花が差された花瓶。 
 どこか神聖な雰囲気をも携えて青白い花弁を広げているその花は前に見た覚えがあった。 
  
  
 にちか「え、ルカさんお花とか知ってるんですね。めっちゃ意外」 
  
 ルカ「前に見かけたことがあっただけ……べつに花が好きとかそんなんでもない」 
  
 美琴「これ、なんていうお花なの?」 
  
 ルカ「ゲッカビジン……一晩の間しか花弁を広げないんだとよ」 
  
 にちか「へー、なんかコスパ悪い花ですね」 
  
 ルカ「風情がねぇな……」 
  
  
 花を手に取って太陽の光に透かして見た。 
 薄い花びらには目立った色彩もなく、煌々とした陽の光ではその中に埋もれてしまう。 
 やはりこの淡さというのは夜にしか映えないものなのだろう。 
  
  
 美琴「……ルカ、それ」 
  
  
 そして、更にその淡さを台無しにするのがウサミの下品な魔法。 
 絵の具をベタ塗りしたようなくどいピンクの光がすべてを飲み込んだ。 
  
  
 にちか「わ、なんかこれ……いつも以上に眩しくありません!?」 
  
  
 ホワイトアウトならぬピンクアウト。 
 目の前が何も見えなくなってから数秒、世界が落ち着きを取り戻す頃。 
  
 私たちの心は再び揺れ動かされることとなる。 
  
   
	- 485 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 20:42:46.90 ID:nQKkMRrM0
 -   
 莓\‘懿 
 最後ま■誰も疑■■かった信■た末に裏■■れて殺■れ■■った後■はし■ないけ■みん■と最■■でい■■なかっ■ことが■しい辛い 
  
  
 にちか「うっわ〜〜〜……首から血噴き出してるんですけど……ちょっと、距離とってもらっていいです?」 
  
  
 そこに立っていたのは、和泉愛依の骸。 
 私たちがその死に直面した時と同様に、薄い布地の病人服を身に纏っているが、その半分は首から流れた血に塗れている。 
  
  
 美琴「でも、にちかちゃん。彼女何か持ってるよ? ヒントじゃないかな」 
  
 にちか「最悪……ルカさん、取ってきてください」 
  
 ルカ「オマエな……」 
  
 ()乜***%ィ 
 二人は最■■で生■られ■のか■うち■け先■■なく■ってご■ん 
  
  
 私も近寄るのには生理的な嫌悪感を感じたが、ここで退くわけにもいかない。 
 まんじりとも動こうとしないにちかを尻目に、一歩踏み出て死体からその手のフォルダを引っ手繰るようにした。 
  
  
 ルカ「んだこれ……『新世界プログラム』?」 
  
  
 これまた仰々しいネーミングだなとため息交じりにそれを捲る。 
   
	- 486 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 20:43:32.62 ID:nQKkMRrM0
 -   
 にちか「メンタルヘルスを助ける、仮想現実による箱庭診療のアプローチプログラム……えーっと……」 
  
 美琴「どうやら、被験者さんの意識をコンピュータ上のバーチャル空間に送り込むプログラムみたいだね」 
  
 ルカ「トラウマとかの記憶を取り除いたうえで、仮想現実での生活を送らせることで精神疾患の治療を促す……か」 
  
 にちか「あはは、ルカさんもやってもらったらどうですか? 口を開けば『病んだ』ですしー!」 
  
  
 ぱっと見の印象では縁遠い世界の話。 
 精神疾患の診療なんて経験もないし、きっとにちかと美琴も同じことだろう。 
  
  
 ルカ「しかしすごいな……これ、一人に対するアプローチどころじゃなくて、複数人を同じ世界に同期できるって書いてあるぞ」 
  
 にちか「ネトゲみたいなもんですかね?」 
  
 ルカ「オーバーテクノロジーが一気に俗っぽくなるな……」 
  
 美琴「でも、一体こんなシステムがなんだって言うんだろうね」 
  
 ルカ「……さあな?」 
  
  
 気が付けば和泉愛依の骸は風化でもしたかのようにきれいさっぱりとその場から姿を消していた。 
 悪夢が何の意味も持たずに私たちの前に立ちふさがることなどない。 
 きっとそのはずだから、何か意味はあるんだろうが…… 
  
 なんだろう、この感覚は。 
  
  
 ルカ「……」 
  
  
 これは……………………既視感? 
  
  
 コトダマゲット!【新世界プログラム】 
 〔精神疾患の診療のために使われる、仮想現実構成プログラム。複数人の意識を装置上で同期させ、同じ世界で生活させることができるらしい〕  
	- 487 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 20:46:20.42 ID:nQKkMRrM0
 -   
 怪しいところは大体調べ終わった。 
 そうなると次に待っているのは、死が裏返る奇術の時間だ。 
 先の2回ですっかり慣れてしまった私たちはもはや違和感なくそれを受け入れていた。 
  
  
 にちか「ほーら、死んでないでさっさと蘇ってくださいよ。他のチームに負けちゃいますー」 
  
 ルカ「おい、あんまぞんざいに扱うなって」 
  
 美琴「どうして? 死んじゃったらただの物だよね?」 
  
 ルカ「んまあそうだけどよ……」 
  
 にちか「……! 来ますよ!」 
  
  
 にちかの呼びかけ通り。死体が小刻みに震え出したかと思うとムクリ体を起こし、私たちに向き合った。 
 地面に衝突したせいで無惨な姿だったはずの死体は、その顔に影が落とされていてよく見えない。 
 ウサミによる配慮なのだろうか、これも今更という感じだが。 
  
  
 愉iii‼︎加 
 何も■えない■も聞こえ■■何も分か■ない闇の■■葬られ■勇気を出■■踏み出し■一■■踏み躙られ■無数の足跡■■に消え■もう見た■もない 
  
  
 にちか「おっ、出ましたね! パスワードは『ヤ』ですよ、メモメモ!」 
  
 ルカ「……それ言うなら自分でメモれよ、ったく」 
  
 美琴「これでパスワードは三つ目だね、残すところはあと二つみたい」 
  
   
	- 488 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 20:47:43.60 ID:nQKkMRrM0
 -   
 ・:/螠⁂下 
 騙され■信じ■■のにも■■じ■だけ無駄裏切ら■るだけ■も信じな■ただ一人孤■■中で息絶■る方がい■ 
  
  
 にちか「これでやっと折り返しですか……結構疲れますね、このラリー!」 
  
 ルカ「まあこれぐらい骨がないとやりごたえもないしな。ほら、さっさと次に行くぞ」 
  
  
 @↓\\\\禍 
 他人のこ■な■■誰に■分■■ない■か■たくない■か■れたくもない踏み込■ない■退いて近づ■■■でほしい一人■消えてい■か■ 
  
  
 次のパスワードの場所を探すために背を向けると、後ろから物音がした。きっとあいつが物言わぬ骸に還ったのだろう。 
 そこになんの感慨も執着もない。 
 私たちの思考から彼女の存在はすっかり消え失せてしまった。 
  
  
 美琴「四つ目は……『箱入り娘が空を行く』か、どう? 二人とも」 
  
 にちか「うーん……私からは縁遠い言葉ですね……」 
  
 ルカ「まあ箱入り娘ってよりは世間知らず、だよな」 
  
 にちか「はー? それはルカさんの方でしょ! 一人じゃ交通定期券にお金も入れられなかったくせに!」 
  
 ルカ「テメ……いつの話ししてやがんだ!」 
  
 (……『箱入り娘』なんか、283の連中は大体該当しそうなもんだが) 
  
 (一体どこを探したもんかね……) 
  
 ------------------------------------------------ 
  
 『箱入り娘が空を行く』 
  
 【第四のヒントが指し示す場所を選べ!】 
  
 ↓1  
	- 489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/11/09(水) 20:57:40.44 ID:mGojh2Bh0
 -  観覧車 
 
	- 490 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:00:40.88 ID:nQKkMRrM0
 -  ------------------------------------------------ 
  
 【第4の島 観覧車】 
  
 にちか「なんかこういうファンシーなとここそウォークラリーって感じがしますねー!」 
  
 美琴「そうかも、レクリエーションってこういうのをイメージしてた」 
  
 ルカ「小学校の遠足とか、遊園地に行きがちだよな」 
  
 にちか「ですねー。まあルカさんの失った青春を取り返すのを手伝ってあげますか!」 
  
 ルカ「そんな虚しい理由でここに来たわけじゃねーよ。四つめのパスワードだ」 
  
 美琴「『箱入り娘が空を行く』……ここに?」 
  
 にちか「うわ……自分のこと箱入り娘になぞらえてアトラクションに乗ろうとしてます?」 
  
 ルカ「だから……私をやたら悲しく飾り立てるのはやめろって。あれだよあれ」 
  
  
 近づいた瞬間に漂ってきた異臭。 
 嗅いだことのないその匂いに思わず手の甲で鼻を塞いだ。 
  
   
	- 491 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:01:48.52 ID:nQKkMRrM0
 -   
 にちか「うわ……なんなんですかこれ、血の匂いのそれとはまた違った意味合いで悪臭なんですけど」 
  
 美琴「焦げたような匂いに……ガソリンみたいな匂いが混ざった感じがするね」 
  
  
 一歩踏み出すたびにウッとなるのを堪えながら近づくと、見慣れない光景が目に入った。 
 本来非現実を求めて子供や大人たちが夢を託す観覧車のゴンドラが、過熟の末に落果した柘榴のようにへしゃげてオイルを吐き出し続けている図。 
 その中で腐った果肉のようになっているのが、有栖川夏葉の成れの果てだ。 
  
  
 にちか「どれだけ鍛えても爆死したら形なしってこと何ですかねー……うわー……」 
  
 美琴「このゴンドラ、相当頑丈なつくりなのに……すごい衝撃だったんだね」 
  
 ルカ「こいつ自身も体を改造された挙句のこれだからな……もし生身だったらと思うと震えるよ」 
  
 にちか「あはは! 脳みそとかも全部出ちゃったりして!」 
  
 ルカ「ハッ……そいつは勘弁願いたいな……」 
  
  
 にちかの悪趣味な冗談に苦笑しながら、辺りに手がかりを求めた。 
  
  
 1.水素の吸引機 
 2ロケットパンチ 
  
 ↓1 
   
	- 492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/11/09(水) 21:06:57.41 ID:mGojh2Bh0
 -  1.水素の吸引機 
   
	- 493 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:10:53.45 ID:nQKkMRrM0
 -  ------------------------------------------------ 
  
 【水素の吸引機】 
  
 冬優子が美容のために病院からせしめていた機械も、どうやら爆発に巻き込まれていたらしい。 
 水素を閉じ込めていたボンベはその面影もないほどに弾け飛んでおり、吸引のためのパイプは根元からひんまがっている。 
 こうなっては美しさから最も遠い所にある機械かもしれない。 
  
  
 ルカ「あーあ、これじゃ使い物になんねーな。ったく、水素なんか本当に意味ある物なのかね」 
  
 にちか「うーわ、そういう一歩引いたスタンスとってるのマジでダサいですよ。分かってるアピールしないと気が済まないんですか?」 
  
 美琴「これもウサミのヒントだったみたいだね」 
  
  
 使い物にならないはずのボタンを美琴が押してみると、すけたたましい轟音と共に機械は水素ではない何か別のものを吐き出し始めた。 
 すっかり淀み切った黒煙が現れたかと思うと、そのまま私たちを取り囲むようにして、一寸先の仲間の顔も見えないほどに充満した。 
  
  
 ルカ「お、おい……なんだこれ……何が起きてる……!」 
  
  
 にちかと美琴を探して煙を掻き分けるようにした。手の振りに合わせて煙は退いたが、そこに在ったのはその二人の姿ではなく。 
  
  
  
 美琴『……【浅倉透】、このコロシアイであなたは命を落としていると書かれているけれど、どうしてここにあなたがいるのかな』 
  
  
  
 浅倉透と美琴の二人の姿だった。 
 だけど、さっきまでの美琴とはどこか違う。 
 さっきまでにはなかった明確な敵意と殺意を込めた視線に、これまで感じたことのない熱。 
 今一緒にレクに参加していたのとは、まるっきりの別人と言ってしまった方がいい。 
   
	- 494 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:12:28.63 ID:nQKkMRrM0
 -   
 (……なんだ、私は何を見ている?) 
  
  
 そして、自分自身の体はまるで地面に張り付いてしまったかのように動かない。 
 声を発そうとも口がパクパクと動くだけで何も出てこない。 
 全身を拘束されて、映像を見させられているような、そんな感覚に陥った。 
 そして実際、その喩えは間違っていない。 
 私の目の前で続いたそれは、私の中の記憶の上映会だったからだ。 
  
  
 透『そっか……私、死んでたんだ』 
  
 透『……ううん、知らない。私は、何も知らない。聞かされてもいなかったからさ、死んでたってのも』 
  
 美琴『ふざけるのもいい加減にしてもらえるかな』 
  
 美琴『あなたはにちかちゃんの命をかけた糾弾をどこまで時踏み躙りたいの。答えをいつまでも出さずに、バカにしているとしか思えない』 
  
 透『……ごめんなさい』 
  
 透『もう、言わざるを得ない……か』 
  
 透『私は、みんなの知ってる浅倉透とおんなじだけど違うんだ』 
  
 透『みんなが覚えてる浅倉透が今の『私』』 
  
 透『みんなの知らない浅倉透が写真の『私』』 
  
 透『……写真の『私』の過去の私が、今の『私』』 
  
 透『『浅倉透』のある部分までの記憶と人格とをコピーして作られたのが、『私』なんだよ』 
  
  
 (……!) 
  
   
	- 495 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:13:27.67 ID:nQKkMRrM0
 -   
 ……そうだ。 
 私たちがこの島で接していた浅倉透という人間は全くの偽物。 
 本物とほとんど変わりない記憶と人格を持っていただけの、別人だったのだ。 
 そしてその肝心のオリジナルは……とうに死んでいる。 
 私たちよりも前に、コロシアイの中で命を落としてしまっていた。 
 そのことを知らされもせずに、ただ真似ていただけの不出来な人形がこの浅倉透なのである。 
  
  
 (……本物は、とっくに死んでいる) 
  
  
 私の記憶の再現が終わるとやがて黒煙は断ち消えた。 
 にちかと美琴も同じものを見ていたのかと尋ねるとキョトンとして首を振った。 
 彼女たちを包んだ黒煙は私とは別物だったのだろうか。 
 それとも私がただの幻を見たと言うのか。 
  
  
 (……今のは、私に何を見せたかったんだ) 
  
  
 ただ、私の脳内でなにかが錆び付いていることだけは確かだった。 
  
  
 コトダマゲット!【オリジナルの浅倉透】 
 〔この島にいる浅倉透の元となったオリジナルは既にコロシアイで命を落としている。コピー体の浅倉透はどうやらその事実を認識していなかったらしい〕 
  
 【選択肢が残り一つになったので自動進行します】  
	- 496 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:14:43.28 ID:nQKkMRrM0
 -  ------------------------------------------------ 
  
 【ロケットパンチ】 
  
 ゴンドラの天井の内壁を大きく歪曲させている異物。 
 この中で最も焦げ付いているパーツはこれになるだろう。 
 爆炎の中心部にあったであろうパーツは元がなんだったのか即座にはわからないほどに黒ずみ、開いたはずの指は熱で接合されて固く閉じられている。 
 本来ならこの手のひらでユニットの最年少の頭を撫でていたであろうに、無情なことだ。 
  
  
 にちか「どれだけ強化されても、それで自分自身を殺しちゃうんじゃ意味ないですけどね。文字通りのブーメランってやつです」 
  
 美琴「彼女、鍛えた自分の体に自信があっただろうに。こんな形で踏み躙られちゃうんだね」 
  
  
 ニ!黹¡蠃 
 元々持ってい■希望と理想が■■ゃぐちゃ■潰さ■■様は美しいんで■■そこか■立ち■■か■こそコロシア■はエン■■テイン■■トと■て素晴ら■■んです 
  
  
 ルカ「ま、これにもウサミの魔法がかけられてるのは間違いないみたいだな。……ほら」 
  
  
 またしてもけったいな発光と共にその姿は変化した。 
 少し久しぶりの長方形、情報がファイリングされた書類形態になって私の手の中に収まった。 
  
   
	- 497 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:18:53.37 ID:nQKkMRrM0
 -   
 ルカ「今度は……『候補者リスト』? なんのことだ?」 
  
 美琴「……心当たりはないけど、読んでみたらわかるんじゃない? 開いてみて」 
  
 ルカ「おう……」 
  
  
 美琴に促されるままにページをめくる。 
 丁寧で丈夫に綴じられている書類は、情報の整理に加えて保管の性質が蓄えているだろうことを窺わせる。 
 実際、これまでにみてきた活字の波とは少しその様相が異なっていた。 
 続々と並ぶ顔写真に、その横に付記される詳細な情報の数々。 
  
  
 にちか「これ、書類ってより名簿って感じじゃないです?」 
  
  
 小学、中学、高校。それらの過程を経るたびに押し付けられた、無駄に根の張る嵩張るだけの一冊。 
 思い出の押し売りと揶揄したアレに、よく似ていた。 
  
  
 美琴「……私たち一人ひとりの名前と、他の誰かが羅列されてるんだね」 
  
  
 その既視感は私たちの個人情報がおしげもなく書き広げられたページのせい。 
 後から見返すのが小っ恥ずかしくなる作りをしているのがそっくりだ。 
  
  
 にちか「うわー……私の分もありますよ、これ」 
  
 ルカ「……これ、とりあえず全員分の纏めとくか。簡単にな」 
  
 美琴「そうだね、どれが誰に対応しているかは押さえておこうか」 
  
  
 風野灯織…【超高校級の占い師】飯田数秀  
 三峰結華 …【超大学生級の写真部】蜷川卓 
 田中摩美々…【超高校級の服飾委員】喜多川新菜 
 小宮果穂…【超小学生級の道徳の時間】本城ハヤ太 
 園田智代子 …【超高校級のインフルエンサー】不破アルル 
 有栖川夏葉… 【超大学生級の令嬢】菱井友安 
 桑山千雪… 【超社会人級の手芸部】四季衛児 
 芹沢あさひ…【超中学生級の総合の時間】上蔵居鶴 
 黛冬優子…【超専門学校生級の広報委員】永瀬美奈 
 和泉愛依…【超高校級のギャル】 藤村美優 
 市川雛菜…【超高校級の帰宅部】小野田・K・ユーサク 
 七草にちか…【超高校級の幸運】苗木誠 
 緋田美琴…【超高校級のシンガー】夜々中亜道 
 斑鳩ルカ…【超高校級のダンサー】関口小春 
  
   
	- 498 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:20:09.30 ID:nQKkMRrM0
 -   
 ルカ「……大体全員に他の誰かがあてがわれてるな」 
  
 にちか「ないのは月岡さんと浅倉さんの二人だけですねー」 
  
 美琴「まあ、コロシアイの黒幕と偽物の二人だからしょうがないんじゃない?」 
  
 ルカ「にしてもこいつら誰なんだ? 正直名前に全く心当たりはないぞ」 
  
  
 私たちの横に並んだ名前は、どれをみても聞き覚えが欠片もない。なにを持っての『候補』なのか、どういう選考基準なのか。 
 全くもって意味のわからない文字の並びに、取り残されるばかりだ。 
  
  
 にちか「それに、なんか気色悪いですよこのリスト。私たちのこともそうですけど、この候補者さん?たちのところも」 
  
 美琴「……『自分に自信はないが正義感は強い。献身的な思考が根底にあるが、自己犠牲が過ぎる面もある』」 
  
 ルカ「プロフィール……にしてはなんか詳細だな」 
  
 にちか「うわ、なんですかこれ。今に至るまでの主たる出来事……? プライバシーガバガバが過ぎますよ」 
  
  
 一人の人間について網羅するには十分すぎるだけの情報量。 
 さっきまではこの一冊を名簿として表現していたが、それでは生ぬるい。これではもう、図鑑と言ってしまった方が正しいのではないだろうか。 
  
  
 (……誰が、何のためにこんなものを?) 
  
  
 コトダマゲット!【候補者リスト】 
 〔今回のコロシアイの参加者から恋鐘と透を除いたメンバーと、他の誰かの名前が書き連ねられたリスト。才能の他に異様なまでに細かい個人情報が付記されている〕 
   
	- 499 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:22:28.02 ID:nQKkMRrM0
 -   
 にちか「今回、死体バラバラですけどちゃんとパスワード貰えるんですかねー?」 
  
  
 にちかはそんなことを言いながら頭を持ち上げてその場で何度も振り回した。 
 光を失った瞳の頭部は振り回されるのに合わせてカラカラと玩具箱のように音を立てる。 
 無邪気さに裏打ちされた空虚さが胸を刺す。 
  
  
 美琴「そもそも死体と言えるのか疑問だものね、これはほとんど故障品のようなものだから」 
  
 にちか「あはは、ホントですねー! パスワードもらえなかったらジャンク品で売り飛ばしちゃいますかー!」 
  
 (……) 
  
 美琴「……どうしたの、ルカ?」 
  
 ルカ「あ、いや……なんでもない」 
  
 にちか「ちょっと、何面食らってるんですか。ただの死体なんですよ、ただの物なんですよ? なのにそんなふうに感情移入するのっておかしくないですか?」 
  
  
 *膩△豸∫ 
 所詮は希望のた■の踏■■なんです■こ■で消費さ■■だけ■存■な■■そん■物なんで■皆さ■■希■にな■た■■存在■■ですから死■な■■に躓■てる場合じゃな■■です 
  
  
 ルカ「……ああ、悪い」 
  
  
 にちかの言うことは全面的に正しい。正論だ。 
 希望はなによりも素晴らしく、何物も犯してはならない、尊く強いものである。 
 弱者の死への感傷のせいで希望を曇らせるなどあってはならない。 
 より眩い希望を手にするための糧にするのが道理なのであり、そのために消費されるなら死者も冥利に尽きると言う物だ。 
 ありとあらゆる犠牲の上に立つのが希望である。そのためなら殺戮も肯定される。それが人類としての美学なのである。 
   
	- 500 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:23:18.94 ID:nQKkMRrM0
 -   
  
 美琴「ほら、ルカも手伝って。バラバラの死体をもっとめちゃくちゃに破壊しよう」 
  
 にちか「そうですよ! 死者の尊厳をめちゃくちゃに踏み躙って、踏み台にしましょう!」 
  
 ルカ「おう、そうだよな……それが希望のためだもんな……」 
  
  
 ふらふらと死体の左腕を持ち上げた。 
 剥き出しのケーブルには漏れ出したオイルが伝い、その下の地面に緑色の水溜まりを作っている。 
  
  
 ルカ「じゃあ、これをぶっ壊すか」 
  
  
 目一杯振り上げたその瞬間…… 
  
  
 ナ?腫 
  
  
 彼女は背後に立っていた。 
  
  
 にちか「あれ、人間の姿ですよ。うわー……全身火傷しちゃってます、痛そー……」 
  
 美琴「赤く爛れて……衣服が皮膚と一体化しちゃってるね」 
  
 ルカ「……」 
   
	- 501 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:25:17.89 ID:nQKkMRrM0
 -   
 爲ツツツツツツ¡¿瀉 
 私の選■■間違っ■いな■■た力が■■なかった■け守■な■■たのは■の弱■のせい私■も■■しっかり■■いれ■■がもっと強け■ば私が■っ■何か■てあ■■ことができてい■なら 
  
  
 にちか「おっ、パスワードゲットです! 四つ目は『ク』です!」 
  
 美琴「やったね、にちかちゃん」 
  
 にちか「はい!」 
  
 (……) 
  
  
 死者を蘇らせて、パスワードを喋らせるだけ喋らせたら骸に還す。 
 最後の最後まで死を踏みにじる行為には吐き気を催すが、それが希望のためなのである。 
 偉大なる希望のためには瑣末な犠牲など無視される。 
 人権なんてものも希望の前には塵芥同然、人間の意志など大いなる意志に従属するのが道理。 
 何も考える必要はない何も悼む必要もない。希望のために全てを消化し呑み下せ 
  
  
 美琴「……ルカ、さっきからぼうっとしてどうしたの?」 
  
 にちか「そんなバッチい死体なんか無視してさっさと次行っちゃいましょう! 時間は待ってくれないんですよ!」 
  
 ルカ「……お、おう」 
   
	- 502 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:26:19.15 ID:nQKkMRrM0
 -   
  
 死体はまた私たちの目の前で膝から崩れ落ちた。 
 力が入っていない肉体は自立しようとすることもなく、損壊も厭わずにクシャクシャの形で地面に額をぶつける。 
 あれほど気高かかった女性でも、死んでしまえばこんな醜態を晒す。 
  
  
 (なんだ、なんなんだよ……さっきから) 
  
  
 希望のための犠牲、そう割り切るべきなのに……胸中に湧き上がる異物が、息苦しかった。 
  
  
 にちか「で、いよいよラストですね! 『収穫祭』……どこか畑とかありましたっけ?」 
  
 美琴「……これまでと同じなら、何かを例えた表現なんだろうね」 
  
 ルカ「……収穫、な」 
  
 ------------------------------------------------ 
  
 『収穫祭』 
  
 【第五のヒントが指し示す場所を選べ!】 
  
 ↓1  
	- 503 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/09(水) 21:29:27.29 ID:B29l6wky0
 -  エグイサルの工場 
 
	- 504 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:34:40.44 ID:nQKkMRrM0
 -  ------------------------------------------------ 
  
 【第五の島 ワダツミインダストリアル】 
  
 南国の情緒を正面からぶち壊す工業地帯、その中でもぶっちぎりな巨大な工場がここ。 
 収穫祭なんてのどかな情緒からは程遠い排気ガスに咳き込みながら、そのシャッターを上げる。 
  
  
 にちか「うるさー……会話もままならないじゃないですか、こんなの」 
  
 ルカ「だな……そこかしこで金属音がしてやがる」 
  
 にちか「えー?! 何か言いましたー?!」 
  
 美琴「そこかしこで金属音がしているから声が届かないねって」 
  
 にちか「あ、確かにー! ですです、それを思ってたんですよー!」 
  
 ルカ「……」 
  
  
 金網や鉄板で仕立てられた足場を歩いて行くと、やがてそこに行き当たる。 
 工場というよりはガレージに近い開けた空間。 
 といっても自動車なんかをしまうようなこじんまりしたものではなく、航空機だとかの規模の体育館のような高さと広さ。 
 そこに堂々と鎮座しているのは、私たちを何度も脅かしてきた……あの機体だ。 
  
  
 にちか「エグイサル……しかも全色揃ってますよ」 
  
 美琴「それに……何かを取り囲んでいるみたい。あれは……椅子? 何か座っているようだけど」 
  
 ルカ「……!」 
   
	- 505 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:35:28.49 ID:nQKkMRrM0
 -   
 そこにあったのは、首のない死体。 
 両手を椅子の肘置きに固定され、美容室のように首から下にはシートをかけられている異様な姿。 
 断面から滴り落ちた血液は、まだ乾いていない。 
 ぱっと見では誰とも分からないその姿に、私はつい怯んでしまった。 
  
  
 にちか「これ、誰なんですかねー?」 
  
  
 死体に臆す必要など何もないのに。 
 にちかは少しも怯む様子もなくぺたりと死体に被さられているシートを捲った。まだ乾ききっていない血が飛び散り、その額にかかった。 
  
  
 にちか「これ、服装的に市川さんじゃないですか? まあ制服も血で汚れちゃってますけど」 
  
 ルカ「……っぽいな」 
  
 にちか「ちょっと、何やってるんですか。ほら、もっと近づいてみてくださいよ」 
  
 ルカ「……わかってるよ」 
  
  
 にちかに促されて私も死体を覗き込んだ。 
 やはり見立て通りこの死体の身元は市川雛菜なのだろう。 
 肉付きのいい体に、すらりとした手足。 
 それに纏っている制服には私でも見覚えがあった。 
 彼女が愛してやまないキャラクターのアップリケも血に汚れてしまっている。 
  
  
 美琴「彼女が最後のパスワードを握っているのかな」 
  
 にちか「なら、さっさと見つけちゃいましょうよ! そこら辺に市川さんの頭、転がってないです?」 
  
 (……それは、流石に勘弁願いたいな) 
  
 1.エグイサルのリモコン 
 2.エレクトボム 
  
 ↓1 
   
	- 506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/09(水) 21:37:47.32 ID:B29l6wky0
 -  1 
 
	- 507 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:41:52.12 ID:nQKkMRrM0
 -  1 選択 
 ------------------------------------------------ 
  
 【エグイサルのリモコン】 
  
 死体の脇に落ちている妙ちくりんな装置。 
 やたらゴテゴテしたボタンが取り付けられた板からは、いかにもなアンテナが伸びている。 
  
  
 にちか「これ、もしかしてエグイサルの操縦に使うやつですかね?」 
  
 ルカ「……おい、ボタン押したりすんなよ? 誤作動で殺されるとかマジで勘弁だからな」 
  
 にちか「しませんよ! いちいちうるさいなー」 
  
 美琴「きっとそれもウサミのヒントだよね、にちかちゃん怪しいところはない?」 
  
 にちか「は、はい……うーん、どうなんですかね。見たところ変わったところは……」 
  
 美琴「……なら、ボタンを押してみるしかないんじゃないかな」 
  
 ルカ「……は?! ちょっ、待」 
  
 にちか「はい! ぽちっとな!」 
  
  
 私の制止は一瞬で棄却。にちかは迷うこともなくボタンを押してしまった。 
 そして、それがトリガーになった。 
   
	- 508 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:45:26.34 ID:nQKkMRrM0
 -   
 にちか「わ、わ、わ〜〜〜!!」 
  
  
 例の如く、ウサミの魔法だ。 
 リモコンは宙でその姿を変え、バインダーに綴じられた一枚の資料となって私たちの手に落ちた。 
  
  
 『我々の開発も一定の成果をあげた。いよいよ実証段階に遷移することとした。本実験の最後では全被験者への適用が予定されているが、特に適正値の高い被検体αに先行して適用した。性格における一部類似点に加え、実験の準備段階で蓄積された類似経験が作用し、特に目立った拒絶反応も発生することなく実験も成功した』 
  
  
 そこには『実験』と称される詳細不明な研究の記録が残されていた。 
 写真のようなものも殆どなく、具体的な名称も検閲の対象となっているのか悉く記述を避けられている。 
 ここにある被験体αというものが、どんな形状のどんな性質なものなのか。ここからだけでは読み解くこともできない。 
  
  
 にちか「……これ、もしかして人間の話をしてます?」 
  
 ルカ「人間だぁ……?」 
  
 にちか「ほら、ここ……『性格』って書いてますよ? 動物とかだったら言わなくないです?」 
  
 美琴「それは……どうなんだろうね」 
  
 ルカ「いや、人体実験の記録ってことか……? そんなの、法が許さないんじゃ……」 
  
  
 司法がなんだ希望より先に立つルールなどないこの世界に希望をもたらすためなら多少の逸脱は看過されるべき 
 自戒せよ我々は世界のために生きている社会のために生きているのではない秩序よりも優先されるべき使命というものがある 
  
  
 ルカ「……あ゛っ、ガッ……」 
  
 美琴「どうしたの、ルカ?」 
  
 (……一体なんなんだ、さっきから頭ん中が……) 
  
  
 コトダマゲット!【被験体α】 
 〔捜査の中で見つけた怪しい実験記録。『我々の開発も一定の成果をあげた。いよいよ実証段階に遷移することとした。本実験の最後では全被験者への適用が予定されているが、特に適正値の高い被検体αに先行して適用した。性格における一部類似点に加え、実験の準備段階で蓄積された類似経験が作用し、特に目立った拒絶反応も発生することなく実験も成功した』〕 
  
  
 【選択肢が残り一つになったので自動進行します】 
   
	- 509 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:46:40.35 ID:nQKkMRrM0
 -  ------------------------------------------------ 
  
 【エレクトボム】 
  
 死体の懐からこぼれ落ちたであろう毒々しいピンク色の球体。 
 団子の串ように上部にささったピンが、その正体を物語る。 
  
  
 にちか「ば、爆弾……?! これ、ヤバくないですか……!?」 
  
  
 といっても、その正体を私たちは知っている。 
 これは浅倉透、そのコピーが島に持ち込んだジャミング装置。 
 炸裂した近辺の電波を一時的に機能停止にし、特定の周波数のもの以外通さなくなるらしい。 
  
  
 美琴「……」 
  
 ルカ「……」 
  
 にちか「あれ? ルカさん? 美琴さん? どうしちゃいましたー?」 
  
  
 この爆弾のことなど知り尽くしているはずなのに、私と美琴は凍りついてしまう。 
 まるで張り付いてしまったように、この爆弾が手から離れない。 
  
  
 ルカ「……これが、これがあれば美琴は死なずに済んだのに」 
  
 にちか「……」 
  
  
 その言葉を口にしていたのは、知らずの私だった。 
 意味も所在もわからぬままに飛び出した言葉に、自分自身で困惑していた。 
  
   
	- 510 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:48:00.95 ID:nQKkMRrM0
 -   
 にちか「……これ、元々は浅倉さんの持ち物なんですよね?」 
  
 ルカ「……え? あ、お、おう……確か……そのはず……」 
  
 美琴「エレクトボムを使って誰かと連絡を取っているのを目撃したからこそにちかちゃんは殺害を考えたんだよね」 
  
 にちか「ですです! 裏切り者だ、殺せー!ってなって」 
  
  
 《にちか「初めから、裏切ってたんですよ。浅倉さんは。私たちが外の世界と連絡が取れないことに焦っていた中で、別の誰かと連絡を取っていて……一人だけこの孤立無援の恐怖を感じていなかった」 
  
 にちか「だから私思ったんです。ああ、この人はちがう……私たちの仲間じゃない、モノクマとの内通者なんだって」 
  
 透「……」 
  
 夏葉「……透、説明してもらえるかしら。あなたの口で」 
  
 透「あー……」 
  
 透「あの時の、にちかちゃんだったんだ」》 
  
  
 にちか「だって怪しすぎじゃないですか! みんなこの島に幽閉されて孤立無縁のはずなのに、一人だけ外部と連絡を取ってたなんて……絶対絶対裏切り者じゃないですか!」 
  
 ルカ「……いや、でもあいつはオマエが死んだ後は誠実に___」 
   
	- 511 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:48:42.03 ID:nQKkMRrM0
 -   
 深酷ト、 
 にち■ち■■の言う通り浅■透は私た■■敵私■ちを殺し■■は彼女惨劇■引き起■■たのも彼女全■■責任は彼■■ある 
  
 ‼︎尓…チ 
 浅倉透■許すな浅■透を吊■せ浅倉透を弾■せよ 
  
 ルカ「……浅倉、は」 
  
  
 浅倉透がいなければ私たちは大事な存在を失うこともなかった。 
 浅倉透がいなければこんな思いをすることもなかった。 
 浅倉透がいなければ私は私のままでいられた。 
  
  
 《透「……死にたくない、以上に裏切りたくない」 
  
 透「だから、高望みするよ。勝つって、黒幕ぶっ倒すって」》 
  
  
 ルカ「……あ、ぐ、う」 
  
  
 Command01 
 浅倉透を憎しみ続けろ 
  
 Command02 
 浅倉透を恨み続けろ 
  
  
 ……違う、私たちがこの島の生活の中で見てきた浅倉透は憎まれ、恨まれるような存在じゃない。 
 あの時にちかの目撃した姿だって、きっと。 
  
 コトダマゲット!【透の外部との通信】 
 〔第一の事件の前日、透はエレクトボムを使用して黒幕からの干渉を拒絶した上で島の外の人間と連絡を取っていた〕 
  
   
	- 512 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:51:12.39 ID:nQKkMRrM0
 -   
 にちか「やっとこれで最後のパスワードですね……他のチームはもうクリアしちゃってるのかな」 
  
 ルカ「どうだろうな……途中で他の連中に会うことはなかったが」 
  
 美琴「会うも何も、みんな死んじゃってるからじゃない?」 
  
 にちか「あはは、確かにー!」 
  
  
 骸を前にしていつもながらの談笑。 
 もうこれで五度目のこと、たとえ死に怯える幼い子供でももう慣れてしまっても当然の域だ。 
 だが、私は対照的に……数を重ねるごとに違和感を募らせていた。 
 なぜ私は死体を前にして平然とできる? 
 なぜ私は死体を前にして笑顔を浮かべられる? 
 なぜ私は……一度見た死体をもう一度見ている? 
  
  
 にちか「でも、今回はどうやってパスワードを教えてもらえるんですかね? 喋ろうにも首が取れちゃってますよ?」 
  
 美琴「そうだね、首もどこに行ったのか分からないし……引っ付けたところで戻るわけじゃないからね」 
  
 にちか「うーん……どうすればいいのかな……」 
  
 にちか「……あっ!」 
  
  
 死は何度でも私たちを嘲笑う。 
 頭を抱えて悩んだところで、平然と裏返り、情緒の一切を踏み潰すのだ。 
  
   
	- 513 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:53:57.97 ID:nQKkMRrM0
 -   
 ルカ「……うっ」 
  
  
 首のない死体は椅子から身を起こし、千鳥脚に私たちの前に立ち塞がった。 
 断面から噴き上がった血が宙でうねり、やがて歌舞伎の隈取りでもするかのように人の顔を象った。 
 市川雛菜の顔というにもあまりにも不出来な、落書きのようであった。 
  
  
 非\9亡 
 暗■動けな■怖い■■起き■■わからな■全身が痛■雛■が何をしたの誰■■庇うの■そん■■悪いこ■なの 
  
  
 にちか「うーわ……これ今までの中でも最悪じゃないです?」 
  
 美琴「……ちょっと、ギョッとしちゃうね」 
  
 ルカ「……」 
  
  
 市川雛菜の骸に対して冷ややかな反応をする二人を見て、私はやけに冷静な視点だった。 
 気がついた時には私もすでに飲まれてしまっていたが、この二人の反応は明らかに異常…… 
  
 どう考えたって、こんな状況でこんな反応をするような二人じゃない。 
 姿、記憶、人格……それらは元の二人と対して変わりないが、それ以外のものが……大切な何かが欠落しているのだ。 
 そして、それは先ほどまでの私も同じ。 
 幾多の死に接したことで逆に冷静さを取り戻し、我に返った私からすればこの半日のことが不気味で仕方ない。 
  
  
 (……どうして) 
  
  
 それなのに、体が言うことを聞かない。 
 私の意識は椅子に縛り付けられたようで、私でない何者かが私を演じているのを見せつけられている。 
   
	- 514 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:56:46.31 ID:nQKkMRrM0
 -   
 &鄙:儺& 
 雛菜■首を返して■雛■の右手を返し■よみん■と一■■笑っ■たしあ■せを返して■楽し■■た学■生活を返■てよ 
  
  
 にちか「うわっ、うーわ! ちょっと近寄らないでくれますー? 血がこっちまで飛んでくるんですけどー!」 
  
 美琴「ほらにちかちゃん、パスワードも喋ってるよ。ちゃんと彼女の言葉を聞かなきゃ」 
  
 〓nul无《 
 守りたい■■を守■■だけなのにど■して恨まれな■■いけな■の■菜は雛■のや■たいことをや■ただけな■■どう■て 
  
  
 にちか「あー……最後のパスワードは『ミ』みたいですね。はい、もう聞けたんで適当に死んじゃっといてくれていいですよ」 
  
  
 にちかが右手で適当にあしらうと、すぐに死体は膝からその場に崩れ落ちた。 
 人の顔を象っていた血液は重力の支配に再度戻り、鉄板の床にびしゃびしゃと音を立てて散らばった。 
  
  
 にちか「ほんと最悪……ちょっと汚れちゃいましたよ、服」 
  
 ルカ「ハッ、いいじゃねえか。地味の地味過ぎる制服にいいアクセントだ」 
  
 美琴「大丈夫? ハンカチ、使う?」 
  
 にちか「い、いえ! ちゃんと自分のもありますから!」 
  
   
	- 515 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:57:28.27 ID:nQKkMRrM0
 -   
 5つの骸からパスワードを受け取ったところで懐から紙を取り出した。 
 このウォークラリーの初めにウサミから受け取った紙には、おあつらえ向きに五文字の空白が設けられている。 
  
  
 ルカ「ここに一文字ずつ入れ込んで……と」 
  
 美琴「ここで集めたパスワードが、ノートパソコンのログインのパスワードになるんだよね?」 
  
 にちか「はい! どうです、ルカさん? パスワードは何になりました?」 
  
  
  
  
 ルカ「……『ヤクモナミ』」 
  
  
  
  
 にちか「……!? そ、それ……!」 
  
 美琴「それって、にちかちゃんにとっては憧れのアイドルで……」 
  
 ルカ「私にとっちゃ……唯一の肉親だった人だ。もう、死んじまってるけどな」 
   
	- 516 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:58:13.75 ID:nQKkMRrM0
 -   
  
 _____『八雲なみ』 
  
 昭和の一時代を築いた伝説的なアイドルの一人。 
 発表された楽曲はあっという間に世間の評判を集め、あらゆるヒットチャートに彼女の名前を刻みつけた。 
 同世代はもちろん老若男女の話題を掻っ攫い、アイドル全盛期の時代を席巻した少女。 
 そんな彼女は……絶頂の最中に自ら命を絶った。 
 世間には隠して私を身籠もっていた彼女は、仕事とレッスンの過酷さや当時のプロデューサーからの精神的圧力に耐えかねたらしい。 
 デビューから数年と経たないうちの出来事に、当時はそれなりに話題にもなった。 
  
 そんな名前が、どうしてここで。 
  
  
 ルカ「……ウサミのやつ、どういうつもりなんだよ」 
  
 美琴「考えるのは後にしようか。とりあえず今はホテルに戻って入力するのが先」 
  
 にちか「ですね! 他チームに負けたくないですし! ほら、ルカさん!」 
  
 ルカ「……おう」 
  
  
 胸がいやにざわつくのを抑えることはできなかった。 
  
   
	- 517 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:59:38.58 ID:nQKkMRrM0
 -   
 区切りがいいところなので本日はここまで。 
 候補者リストに登場した名前は一部を除いて全員元ネタアリのネーミングなのでよければ考えてみてください。 
 才能に関連する由来になっています。 
  
 次回更新は11/11(金)21:00ごろを予定しています。 
 早く開始できそうなら前倒しするかもです。 
 それではお疲れさまでした。  
	- 518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/09(水) 22:08:09.50 ID:B29l6wky0
 -  1乙 
 正気と狂気を行ったり来たりするところ、ハラハラしながら読んでました  
	- 519 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/10(木) 09:13:12.52 ID:ZFSET9iY0
 -  >>1来てたのか 
 ていうか候補者リストの元ネタ 
 にちかとあさひとまみみの奴しかわからん・・・  
	- 520 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/10(木) 12:55:46.23 ID:DqXcM0W50
 -  候補者リストの元ネタ、  
  にちかとあさひがダンロンで摩美々が着せ恋のメイン二人の苗字と名前の合成、  
  夏葉は過去の四大財閥からとって三「菱」+三「井」+住「友」+「安」田  
  果穂は初代ウルトラマン(ハヤタ・シン)と初代仮面ライダー(本郷猛)の合成かなあって思ったけど苗字が微妙に違うから、  
  初代スーパー戦隊のゴレンジャーのアカレンジャー(海城剛)も入れて、「本」郷猛+海「城」剛+「ハヤタ」・シン?  
  灯織がゲッターズ飯田で、ちょこ先輩がフワちゃん、美琴さんがAdo?  
  美琴さんはもしかしたらYOASOBI→夜遊び→「夜々中」ワンダーラストの連想ゲームとかもある?  
  あとはもう全然わからん……  
  ダンサーで関口……メンディー……?とか、帰宅部ということは帰宅部活動記録……に誰も近しい名前ないな……とかなってる  
	- 521 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/11/11(金) 00:04:37.45 ID:9rRJoyUY0
 -  >>483 
 そこまで言わなくてもいいじゃないですか・・・ 
 こっちは純粋な善意でコメントしたんですよ  
	- 522 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/11(金) 00:45:39.55 ID:dv12jMLW0
 -  >>521 
 お前初心者か?ageるとスレが上がるから探すの大変になるんだよ 
 あと>>1が来たと勘違いするから 
  
 お前は善意でコメントしたかもしれんが 
 お前以外にも見ているやつがいるということを忘れるな  
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