【艦これ】大鳳「衣食住に娯楽の揃った鎮守府」浦風「深海棲艦も居るんじゃ」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

581 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/17(金) 10:08:26.72 ID:QPqQX1JnO
582 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/17(金) 10:14:40.88 ID:wUQgHIrSO
乙です
583 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/18(土) 15:44:54.75 ID:w5hCpDtto
自由人やなあw
584 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/02(日) 21:24:21.56 ID:W5EAzmGa0
 平凡な日常、平凡な生活、普通の女の子に憧れた。時折目にする、鞄を手に学校に向かう女の子達が羨ましかった。
 少女漫画の主役じゃなくて、その背後を通り過ぎるだけの名も無い女の子になりたかった。
 特別なんていらない。山も谷もない緩やかな生を送りたい。
 その願いだけは、結局叶えてもらえなかった。




「磯波、オ前処女ナノカ?」

「・・・・・・カモミールティーでも飲もうかな」

「オイ、無視スンナ」

「ヒャアァァァァ!? 首、舐めるのやめてって言ってるのに……」

「早ク抱イテ貰エヨ、ソノ為ニ下着買ッタンダロ?」

「あ、あれは叢雲がたまにはこういうのも買いなさいって無理矢理……」

「折角サイズモデカクナッタンダ、モット大キクシテモラッテコイヨ」

「レキ、誰からそういう話聞いてくるの?」

「漣」

「漣ちゃんか……じゃあやっぱり私はいいかな」

(今サラット失礼ナ事考エタナコイツ)

「私はただ普通に司令官とお話して、たまにお出かけして、時々一緒に寝られたら満足だし」

「ソウイウ事言ッテルト、アットイウ間ニアイツ爺サンダゼ?」

「……うん、そうだろうね」

「ケッ、ツマンネー。ジャアイッソ俺ガコノ尻尾デ磯波ノ――プギュ!?」

「レキ? そういう冗談私好きじゃないから、やめてね?」

(普段オドオドシテル癖ニ、コウイウ時ハ怖インダヨナ、コイツ……)

「――でも、いつかは司令官とそういうことするのも、普通と言えば普通なのかな」

「プハッ! ソリャソウダロ。年中盛ッテル奴モ居ルグライダ」

「アレは普通じゃないと思う」

「愛サレタイッテノハ普通ジャネ?」

「……レキって、意外とお節介なんだね」

「ソーカ? 磯波ハ悪戯ノシ甲斐ガアルカラ、カラカウネタガ増エタラ良イナッテ思ッタダケダゼ」

「うん、そういうことにしとく」

「……アーン」

「ヒャアァァァァ!?」




 私の新しい友達は、ちょっと色白で尻尾にもう一つ口がある手乗りサイズの女の子。
 口は悪いし、人の身体を舐めたり噛んだりするのが好きないたずらっ子だけど、優しい子。
 普通からはまた遠ざかってしまったけど、今はこの生活が、私の大切な日常。
585 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/02(日) 21:27:27.26 ID:W5EAzmGa0
・萩風『雑誌』、投下します

信じて送り出した萩風から左手の薬指に光るモノをつけた写真が送られてきた
586 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/02(日) 21:27:52.95 ID:W5EAzmGa0
「……」

「……」

 カリカリと書類にペンが走る音だけが、執務室に響く。この日の秘書艦は、着任してまだ日も浅い萩風だ。
 経緯が経緯であり、嵐程ではないものの彼女も提督や鎮守府自体に不信感を持っていた。
 それを重々承知している為、提督もこの機会を活かそうと事前にリサーチをして、とある萩風に関する情報を彼は入手していた。

「――萩風」

「何でしょうか」

「今日の昼、少し付き合え」

「……そういうことは他の子に言って下さい」

「パンケーキ食べ放題の店なんだが」

「そ、そんなもので釣られると――」

「今だけの限定メニューがあるらしいぞ」

「行きます!」

「お、おぉ」

 舞風と野分から雑誌に折り目が付いていて赤ペンで店に丸がしてあったと聞いており、それなりの反応は期待していた提督だが、予想以上の食い付きの良さに逆に不安にさせられていた。

(意外と簡単に騙されるんじゃないか、コイツ……)

 提督に対しては一度も見せたことのない上機嫌な顔で、萩風は着替えてきますと自室へ戻る。
 これが世間一般に言うデートになるという認識は、すっかり彼女の頭の中からパンケーキに弾き飛ばされていたのだった。
587 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/02(日) 21:28:18.18 ID:W5EAzmGa0
 目的の店は鎮守府から一時間以上かかる距離にあり、それなりの時間を要する。
 その間、終始無言というのも苦痛でしかなく、道中で鼻歌でも歌いそうな彼女の機嫌の良さに乗じて、提督は少しずつ会話を振っていく。

「あっちに居た頃は、嵐とずっと一緒だったのか?」

「そうですね、ずっと嵐と一緒でした」

「他に居た奴等とも仲は良かったのか? 長門とか足柄とかそれなりの数が居た様だが」

「昔はあまりそういう風でも無かったそうですけど、私達が所属した頃には制限はあれどかなり自由な雰囲気で、隊の仲間も全員良い人達でした」

「そうか……」

 提督が三日月から昔聞いた話と比べていくと、かなり特務部隊の内情が変わったことが窺い知れる。
 そのこと自体は既に分かっていた部分も多かったものの、実際に当人から聞くのとではまた違った印象を彼は受けた。

(うーん……一応検閲ってことであっちから来た手紙とか確認してたが、どう見ても萩風に好意持ってる奴のとかあったし、流石にやめてやった方が良さそうだな)

 ラブレター一歩手前の内容を検閲するのが苦痛でしか無かったという理由では断じて無いと心の中で呟きながら、提督は自由にあちらとのやり取りを許可する方向で加賀や霧島達に話を通そうと考える。
 そんなことを彼が考えているとは露知らず、萩風は今まで自由に出歩いたことが無かったのもあって、色々な店を興味深そうに眺めていた。

(あっ、あの喫茶店この前雑誌に載ってたところ。あっちの女の子キャラクターのポスターが一杯貼ってある店は何のお店なんだろ?)

 視線が一定の位置に定まることはなく、次から次へと何かを探して彼女は辺りを見回す。
 そして、気付かぬ内に今までならば絶対にやらなかったであろう行動を彼女は無意識に行なった。

「――ねぇ、あのお店に少し寄ってもいい?」

「ん?」

「あっ……い、いえ、その、あの、ごめんなさい。いつも隣に嵐が居たから、つい……」

「あそこか? いいぞ、パンケーキ食って帰るだけじゃ味気無いしな」

「えっ? あの、ありがとう、ございます……」

 つい引っ張った腕の感触に、今まで意識していなかった隣を歩くのが男性であるということを認識した萩風は、急な緊張感に襲われるのだった。
588 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/02(日) 21:28:44.75 ID:W5EAzmGa0
「……」

「……」

「……?」

「っ……」

 既にあちこち付き合わされて慣れきってしまっているが、提督のようなパッと見金を持っているとは思えない男性が居るのは違和感のある、ちょっとお高めなアンティークショップに彼等は居た。
 しかし、行きたいと口にした当の萩風の方が落ち着きがなく、商品よりも提督の方を気にしている。
 それに気付かないほど彼も馬鹿ではなく、何かあるのかと彼女を見ると、明らかに不自然に手近な商品を見るフリをして視線を避けた。

(さっきまでは普通に話が出来てたってのに、一体何だってんだ?)

(冷静に考えたら、こ、これってデート……? でも相手は司令だし、私と嵐は彼等を監視するのが任務で、だから――)

 目をグルグルさせながら、萩風は落ち着こうと必死になる。
 特務部隊時代にも男性の隊員と会話をすることはあっても、そこには必ず嵐や他の仲間が居た。こうして男性と二人きりという場面は今までに無かったのだ。
 それを言うなら執務室でも二人きりだったのだが、常に執務室が誰かによって監視されているのは彼女も知っており、鎮守府の外に居る今とは違うと認識していた。

「――萩風」

「ひゃいっ!?」

「おいっ!?」

 いつもの彼女ならばそんな醜態は見せないだろうが、手に持っていたティーカップを宙に舞わせた。
 それをキャッチしようと提督は手を伸ばすが、彼の反射神経では指一本届かず、店内にカップが割れる音が響く。

「お客様、どうされました?」

「あっ、あの、私――」

「お騒がせしてすいません、手を滑らせてしまって。割れてしまったこれと、こちらのセットを頂けますか?」

「あらあら、お二人ともお怪我はございませんか? すぐに片付けますので、あちらで少々お待ちください」

 店員に片付けを任せて、二人は客用のソファーに移動する。何かを言いたそうにしている萩風に先んじて、提督は口を開いた。

「気にするな。急に声をかけたのは俺だ、お前のせいじゃない」

「司令……」

「それより、本当に怪我とかないか?」

「はい、大丈夫です」

「そうか、じゃあ会計が終わったらそろそろパンケーキ食いに行くとするか」

「……はい」
589 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/02(日) 21:29:11.19 ID:W5EAzmGa0
「萩風! アイツと出掛けたってホントか!?」

「……うん」

「大丈夫か、何かされたりしなかったか!?」

「……うん」

「……そのティーカップとポット、何だ?」

「……ねぇ、嵐」

「?」

「私、ずっとここに居ようかな」

「・・・・・・はぁ!?」




――――提督、この買い物は何ですか?

 ――――……必要だったんだ。

――――そうですか。では今度私にもプレゼントして下さいね?

 ――――(大淀の持ってるのがゼクシィに見えるのは気のせいだと思いたい……思わせてくれ!)
590 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/03(月) 10:29:55.29 ID:O01M/O4SO
乙です
591 :名無し [aiorn1016@icoud.com]:2017/04/06(木) 22:02:18.21 ID:f1+kFZdsO
更新おつおつです
592 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/06(木) 22:10:52.76 ID:lONhgFYGO
うーんこの…
イタズラメール送っちまうぞ
593 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/06(木) 23:18:36.00 ID:1d11JkgA0
携帯のメアドじゃないとsageにならないぞ
594 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/06(木) 23:20:25.40 ID:Nzph8X0cO
名前欄に本名を書けばsageになるぞ
595 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/08(土) 23:08:21.35 ID:EkXhUXNT0
「――お久しぶりですね」

「あら、貴女もここに?」

「えぇ」

「他の皆はどうしているのか、知ってます?」

「長門はどこかの鎮守府でひっそりと暮らしているそうですよ。卯月は相変わらず、です」

「ふふふ、そう……信濃と川内は、還ったんですね」

「二人とも、私達より人間に最初から好意的でしたから」

「文字通り血路を開いて、ですか……」

「海に囲まれた日本が戦える環境を維持できたのは、彼女達の様な存在のお陰です」

「やっぱり、あの時の誓いは果たせませんでしたね」

「四人も生き残っていただけでも、奇跡じゃないでしょうか」

「……変わったわね、貴女」

「子供を庇って二十年も寝ていた貴女に言われたくないわ」

「これも運命、みたいなものかしら」

「……それを真に望むなら、私は口を挟みません。ですが――」

「その表情、衰えていても“鉄血”の風格は健在みたいですね」

「“狂笑”と呼ばれていた貴女に言われたくありません」

「安心して。あの子は私にとっても特別な存在なんですから」

「……その言葉に偽りが無いと、今は信じておきます」

「そういえば、あの軽空母は元気にしているの?」

「えぇ、龍驤もここに居ますよ」

「あらあら、ふふふ、ちょっと挨拶してきます」

「……程々にしてあげてね?」




――――ふふふ、久しぶりね?

 ――――げえっ……。

――――ふふふ、ふふふふふ。

 ――――ちょっ、こっち来んな鹿島!? うちはもうあの頃みたいにアンタのオモチャには……ぎゃあぁぁぁっ!?
596 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/10(月) 14:55:16.29 ID:sG+v5x9zO
本日帰宅後満潮と足柄の話を各一本と、イムヤR18導入投下します

イムヤはC
597 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/10(月) 19:17:52.43 ID:GZ0UxBMg0
 初めの仲間は腕が飛んだ、足が千切れた、頭が半分になった、上と下に分かれた、食われた、焼けた、裂かれた、皆、皆沈んだ、私は見てただけ。
 次の仲間は次々に狂っていった、最初に司令官を巡って秘書艦が壊れていった、その後姉妹艦が壊れていった、それから他の仲間も壊れていった、最後は数人残して皆解体された、私は見てただけ。
 次の仲間は無茶な作戦で皆沈んだ、私は入渠してただけ。
 次の仲間は、何だっけ、そうそう、司令官が首を吊って皆バラバラになった、私は発見しただけ。
 次の仲間は、姉妹が大半揃ってて、皆そこそこ仲良くやってて、でも、一人欠けて、それから陰で“疫病神”って呼ばれて、もう何もかも嫌になって、私は逃げただけ。
 最後の仲間は――。




「――満潮」

「何?」

「少しの間、綿雲の面倒をお願い出来る? 荒潮に呼ばれてるんだけど、流石に店には連れていけないから……」

「いいわよ、早く行ってきなさいな」

「ありがとう満潮、じゃあ行ってきます」

「行ってらっしゃい。……さて、と」

 ――わふ?

「散歩でも、しましょうか」

 ――わんっ!




 ――私に優しい居場所をくれただけ。
598 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/10(月) 19:18:18.51 ID:GZ0UxBMg0
 独断専行、撤退命令無視、無許可開発、無断外出等々、数々の命令違反を犯したその艦娘はとある鎮守府に引き取られた。
 てっきり解体されるものだと思っていた彼女は、恐らく何か良からぬ理由で取引材料にでも使われたのだろうと推測していた。

(演習の的とかそういうのはちょっと勘弁して欲しいわね……)

 出来れば無茶な作戦でもいいから出撃して、とにかく深海棲艦を一隻でも多く沈めたい。それが勝利に誰より執着している、足柄の願う処罰だった。
 とりあえず、入口で突っ立って居ても仕方無いと鎮守府の中へ歩を進めた彼女を待っていたのは――道のど真ん中で寝ている駆逐艦の姿であった。
599 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/10(月) 19:18:48.87 ID:GZ0UxBMg0
「ははははは、いや助かった。まさか荷物を取りに行かせたらそのまま道で寝てて、あまつさえ着任艦に荷物ごと運ばれてくるとはな」

「だって、重かったし……」

(一体どんなブラック鎮守府かと思ったら……なかなか良さそうね)

 本能的に、足柄はこの鎮守府を良い場所だと思った。何よりも直感を信じてきた彼女には、それだけで十分だった。

「挨拶が遅れてごめんなさい。重巡洋艦足柄、今日からここでお世話になるわね。――それで、どうして私を呼んだのかしら?」

「ん? 練度が高くて実戦経験豊富な重巡が問題ばっか起こして解体されそうって聞いたからだ」

「ここでも問題を起こすかもしれないわよ?」

「――お前の戦う理由は?」

「勝ちたいから」

「どうして勝ちたい」

「だって、勝てばそれだけ平和に近付くじゃない」

「なら、俺はお前の勝利の為に最善を尽くすことを約束しよう」

「えぇ、お願いするわね。変わり者の提督さん」

「それでな足柄、早速頼みがあるんだが」

「何かしら」

「……そこでもう一回寝ちまった初雪、部屋に連れていってくれ」

「ふふ、初任務、了解よ」
600 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/10(月) 19:19:16.61 ID:GZ0UxBMg0
「――で、あの頃のお前はどこ行ったんだ」

「ちょっと今話しかけないで提督!」

(何でうちの鎮守府こんなにゲーマーばっかなんだ……)

「んにゃー!? 負けたー!?」

「綺麗にヘッドショット喰らったな。もう少し隠れることを覚えろ」

「だって、そういうの苦手なんだもの」

「お前よくそれでそのゲームやろうと思ったな」

「……提督、指揮して」

「はぁ……相手は?」

「子多摩のところの球磨」

「だったら――」




 昔の足柄の願いは、平和。
 今の足柄の願いは、日常。
 それを奪おうとでもしない限り、彼女が再び牙を剥くことはない。




「妙高、お前の妹どうにかならないか?」

「どうにか?」

「ゲームに深夜まで付き合わされた挙げ句、今タンクトップにパンツ一丁で俺のベッドで寝てやがる……」

(……足柄も少しはそういう方面に成長したんですね)

「妙高、どうして今の流れで涙浮かべてんだ」
601 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/10(月) 19:21:03.88 ID:GZ0UxBMg0
 その日、イムヤに鎮守府内にあるプールへと連れて来られた提督は、潜水艦娘も順調に成長しているなと彼女が水面に浮かぶ姿を見ながらぼんやりとしていた。
 盛り上がる二つの山は、イク程ではないが来た頃に比べればワンサイズは大きくなっていると彼は推測する。

「――司令官」

「んー?」

「あんまりジーって見られると、流石に恥ずかしいんだけど……」

「気にするな、お前達の成長の観察も俺のやらなきゃならんことの一つだ」

「だったら胸ばっか見ないでよね」

「前は見ろと怒られて、今は見るなと怒られる。何とも理不尽なもんだな」

「それは司令官が昔は誘っても逃げてたからでしょ。それよりほら、一緒に泳ご?」

(……たまにはこういう日があってもいいよな)

 プールサイドまで近寄ってきて、手を提督へと伸ばすイムヤ。この日は珍しくそういう気分だったのか、彼は逆に彼女を引っ張りあげようとする。
 抵抗さえ無ければ、提督でも潜水艦娘一人持ち上げるぐらいは可能だった。

「……浮上させてどうするつもりなの?」

「ここにあるお前のスマホで撮影でもするか」

「自撮り写真とか私のスマホにはいらないからやめて」

 普段は彼女が絶対に手放さないスマホも、提督と居る間だけは電源が切られていた。それだけ、イムヤにとってこの時間は大切なものということだ。
 今も提督の胸に顔を埋めながら、幸せそうな表情を浮かべている。

「お前、最近だとどこ行ったんだ?」

「イギリス」

「何でイギリスなんぞに」

「ちょっとSNSで知り合ったエリザベスさんに会いに行ってたの」

「……エリザベス、か」

「何? 今一瞬男と会ってたとか思った?」

「外出禁止、食らいたいんだな?」

「そんなことしたら司令官の部屋の中を毎日ムービーで撮影するから」

「それは……互いの為にならんだろ」

 割と本気で言っていそうなイムヤに冷や汗をかきつつ、提督は彼女の水を滴らせている髪を指で遊ぶ。
 鎮守府内でも五本の指に入る長さの髪は、水を吸って相当重い。

「……他の皆にも聞いたけど、司令官ってホント髪と足ばっか触るわよね」

「何だ、悪いか」

「悪い」

「何がだよ」

「――今、水着なんだけど」




 押し付けられている胸は、やはり以前より成長していた。
602 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/10(月) 20:38:13.03 ID:/AeHX7E8o
イムヤはいいぞ
603 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/10(月) 21:39:42.89 ID:O3UHIBMeo
やっぱりイムヤは最高だな
604 :sage :2017/04/11(火) 15:31:19.72 ID:m1jRL2EPO
更新乙です 次はまだかなぁ
605 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 16:47:32.51 ID:0VKNibKrO
>>604
fusianasanしないとsage出来ないぞ
606 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 17:46:37.17 ID:vhbxHbXuO
これで出来たかな?
607 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/13(木) 04:11:27.28 ID:ptpeqzKJo
ええなあ
608 : ◆7xTYM/aOv2 [saga sage]:2017/04/13(木) 16:35:14.62 ID:x7Iz+iVk0
続き、投下します
609 : ◆7xTYM/aOv2 [saga sage]:2017/04/13(木) 16:36:13.19 ID:x7Iz+iVk0
 いつものスク水ではなく、オレンジ色のフリルビキニ。見上げる彼女を見下ろせば、谷間が見える。押し付けられていることでそれは更に強調されていて、彼女が狙ってやっているのは明らかだ。
 そんなイムヤの誘惑に、提督はひねくれた形で応じた。

「っ……お尻?」

「一番手近にあった」

「何か、手つきがいやらしい」

「逆にそうじゃなかったらおかしいだろ」

 最初は撫でるように、徐々に揉むように刺激していく。その間、終始提督をイムヤは見上げていたが、表情に変化は無かった。
 何か気に障ったのかと思い提督が手を止めると、彼女の手がそっと彼の頬に添えられた。

「――司令官の目って、少し青いのね」

「そうなのか?」

「自分で気付いてなかったの?」

「昔は普通だったんでな」

「そうなんだ」

 見つめる。見つめ合う。互いの心の奥まで覗くように、視線を絡め合う。
 瞳の中に溺れていくような、沈んでいくような、それでいて心地好い感覚。包み隠さず全てをさらけ出しても構わないと互いに思えなければ、それは味わえない。

「ねぇ、司令官」

「何だ?」

「……溺れさせて」

 望まれたなら、彼は叶える。唇を塞ぎ、舌を絡め、息継ぎの間を与えぬ程、深く貪る。

「ん……ちゅ……んぅ……」

 身体という境界を越えて、一つに解け合うように互いを求める。まるで深海に潜っているかのように、今の二人には唇を重ねている相手の情報しか入ってこない。

「――っ……んはぁ……」

「……」

 潤んだ瞳、未だに唇と唇を繋ぐ透明の糸、火照ったように上気した頬。
 最初から止める気もなかったが、もう止まるはずがなかった。

「しれ――んむっ!?」

 唇を奪い、ビキニの中へ手を入れて胸をまさぐり、秘部をなぞる。
 布に包まれた柔らかな丘は手に吸い付く様にフィットし、中心が割れている丘からはプールの水ではない湿り気が感じられた。

「ふむぅ、んふぅっ!……んっ……」

 強張ったり、脱力したり、忙しなくイムヤは身体をくねらせる。初めて提督から積極的に攻められたこともあり、普段より彼女も興奮していた。
610 : ◆7xTYM/aOv2 [saga sage]:2017/04/13(木) 16:36:44.67 ID:x7Iz+iVk0
(溺れたい、か……俺だって、溺れそうだ)

 舌を絡め、息つく暇を与えぬまま、快楽へ誘う為に指を這わせる。
 下から掬い上げるように胸を揉みしだき、突起を指で弾く。秘部にもビキニ越しではなく直接触れ、中から溢れ始めた愛液を塗り込むように入り口をなぞる。

「はむ……んふぅ……んぅっ!」

 次第に布の感触がもどかしくなり、提督は乱暴に上をめくりあげる。綺麗な桜色の乳首が大気に晒され、自然とそこへ指が動く。

「んっ!? んふっ! んぅっ!?」

 つまみ、弾き、転がす。普段ならば少し痛みを感じていたかもしれないが、今の彼女には快感だけが突き抜けていった。
 秘部から溢れる愛液も多くなり、一度もプールにすら浸けていない彼の指はふやけていく。

(……このままだと気付かれそうだが、もう無理だな)

 気を遣って誰も近付かないとはいえ、流石に喘ぎ声が響けば屋外である以上響く。しかし、彼も彼女も既に撤退できるラインはとうに越えていた。

「――あっ……はぁ……やっダメ、待って、声――んぅぅぅぅぅっ!?」

 声を抑える心構えをしようとする間もなく、水着の横から一気に奥へと貫かれる。
 どうにか手で口元を塞ぎはしたものの、それも徐々に意味を成さなくなっていく。

「んむっ、ふあっ!? しれいか、ダメ、気付かれちゃうっ……あんっ! 奥、奥まで来るぅっ!」

 子宮口に叩き付けるように、提督は腰を突き上げる。その度に、もう我慢どころではなくなった彼女の声と、結合部から響く卑猥な水音がプールに響いた。
 そして、その耳からの刺激が更に行為を激しくさせていく。

「っ……イムヤ、出すぞ」

「ダメっ、あっ……来る、来ちゃうぅっ!?」

 吐き出される白濁液。力尽きて提督に倒れかかった彼女の身体は小刻みに痙攣し、その度に少し隙間の出来た秘部から二人の混ざり合った体液が溢れて伝い落ちていく。

「っ…………バカ」

「俺は悪くない」

「……でも、嬉しかった」

「……俺は悪くないからな」

「へっ? ちょっ、嘘!?」




――――鎮守府共用施設での夜戦はやめてください。

 ――――善処はする。

――――……外の方がいいの?

 ――――……そんな趣味はない、多分。
611 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/13(木) 16:42:40.10 ID:x7Iz+iVk0
次のリクエストはヒトキュウマルマルより三つ受け付けます

瑞加賀、鈴熊、近日投下予定
612 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/13(木) 19:00:06.42 ID:Diqeo5HSO
赤城さんと花見
613 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/13(木) 19:11:25.60 ID:k2bWR91IO
羽黒
614 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/13(木) 19:26:33.83 ID:0BGauy7to
由良
615 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/13(木) 19:44:58.87 ID:x7Iz+iVk0
・赤城『この一瞬を』

・羽黒『姉さんとの休日』

・由良『艦娘であるということ』

以上、三本でお送りします

616 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/14(金) 00:06:47.89 ID:Hg/0Dzzv0





 ――その日、初めて私は加賀さんと殺し合った。




617 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/14(金) 00:07:14.90 ID:Hg/0Dzzv0
 加賀さんに、私は挑み続けている。勝ちたい。勝って、あの人の後ろじゃなくて隣に立ちたい。
 これだけは、提督さんにだって叶えて貰うわけにはいかない。私が、私だけの力で、成し遂げなきゃならない。
 誰の力も借りない、誰にも邪魔されたくない。
 今日もまた、デートの待ち合わせ場所に向かうように演習場へ走る。絶対に先に行って待ったりしない、先に準備して静かに佇むあの人を見るのが好きだから。

「加賀さ――?」

「……」

 ゆっくりと振り返った、憎たらしい程憧れている先輩は、見慣れない、見慣れた紫の目をしていた。
618 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/14(金) 00:07:40.48 ID:Hg/0Dzzv0
 ――最強である必要は、もうない。

「本当に?」

 ――討ち果たすべき相手は、もういない。

「最強でない貴女に、皆は納得するの?」

 ――だから、私はここに居る。

「守れなくてもいいの?」

 ――私の仲間は、強いわ。

「だからといって、貴女が強くなくていい理由にはならないんじゃないかな?」

 ――今が、幸せなの。

「そっか。じゃあ――こうすれば貴女は強さを求めてくれるのかな?」

 ――っ!? 何、これは……あっ、やめ……やめてっ……提督、赤城さん、瑞鶴!……こんなの、嘘っ……!

「あれ? 貴女達が今生きていられるのは未知の驚異への対抗策としてなんだよね? だったら、大切な人達が死ぬ可能性はまだあるよね?」

 ――わたし、私、はっ!

「うん、今の貴女じゃ絶対に守れないよ? だって、こうして私にいいように遊ばれてるもの」

 ――あっ、ああ、ああアアアアアアッ!!




「――あら、ごめんなさい。失敗しちゃった」
619 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/14(金) 00:08:14.72 ID:Hg/0Dzzv0
「加賀さん……?」

「……瑞鶴」

「ねぇ、それ、冗談のつもり? 笑えないから、やめてよ」

「私ハ、貴女達を……」

「っ……前々から思ってたけど、加賀さんって意外とバカだよね」

「ず、イカクゥ!」

「――第一次航空隊発艦、目標バカな一航戦!」

 分かってる。きっと下らないことを考えてて、一人で悩んで、またあの時みたいに私達の気持ちなんて分かってくれてないんだ。

「っ……そんな状態でも、やっぱり加賀さんは加賀さんね!」

「鎧袖一触、蹴散ラシマス」

「出来るもんならしてみなさいよおっ!!」

 動きについていくだけで、神経が磨り減っていく。やっぱり、強い。まだ届かないかもしれない。

「――第二次航空隊、敵艦載機を殲滅して!」

「火ノ塊トナッテ、沈ミナサイ」

「くっ……まだよ、まだ終わってない!」

 バカ。バカバカバカ。どうして頼ってくれないのよ、どうして何も話してくれないの。そんなにまだ頼りないの、私。
 貴女だから、皆提督を安心して任せてたんだよ。別に弱音も愚痴も言っていいじゃない。完璧だから、ただ最強だから貴女に託してたんじゃない。

「私がっ! 私の憧れた貴女はっ!! そんな弱い人じゃないでしょっ!?」

「アアァァァァァッ!」

「これで最後よ! 目標、バカで、意地っ張りで、優しくて、お人好しで、笑うと可愛くて、戦う姿がカッコ良い、私の大好きな先輩! いっけぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 玉砕覚悟、練度も経験も劣ってるのは分かってる。だから、気持ちで勝るしかない。
 負けない。絶対に負けない。今だけは負けたりしない。貴女が私を思うより、私が貴女を思う心の方が、絶対に、強い。

(届け、届け、届け届け届け届け届けぇぇぇぇっ!!)

「っ!?」

 自分の爆撃と機銃の雨の中を、ただ真っ直ぐに進んだ。身体中痛い、多分、終わったら指一本動かせない。
 でも、それでも今、この手をあの遠かった背中に精一杯伸ばして、伝えなきゃいけない。

「――全く、手間かけさせないでよ」

「グッ……ウゥ……」

「そんな姿、提督さんに見せたら怒られるよ。だから、いつもの加賀さんに戻ってよ。私の、大好きな……貴女、に……」

 泣かないで、そんな顔しないでよ。私まで泣きたくなるの。ホント、バカなんだから。

「――瑞、鶴……?」




「あら、もう終わり?」
620 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/14(金) 00:08:41.31 ID:Hg/0Dzzv0
「……貴女は、何?」

 まだ覚醒しきっていない意識で、理解できたことは二つ。瑞鶴が私の為に無茶をしたことと、目の前で水の上に立つセーラー服の少女が自分に何かをしたこと。

「貴女を最強の艦娘に戻してあげようと思ったんだけど、失敗しちゃった」

「そんなこと、望んでないのだけれど」

「でも、そうじゃなきゃ守れないでしょ?」

「……」

 声だけが、聞こえていた。私を呼ぶ声。ずっと、真っ直ぐに、ひたすらに、全力でぶつかってきたこの子の声が。
 とうに認めて、一人前として扱っているというのに、それでも私を目標だと言ってはばからないバカな子。

(こんな傷だらけになって、綺麗な肌も髪も台無しね……ごめんなさい、瑞鶴)

 優しく、優しく頬を撫でる。幸い、入渠でどうにかなる範囲の負傷で済んでいる。

「誰か助けを呼べばいいのに、一人で挑むなんてその子もバカだよね。貴女に今まで一度も勝てなかったのに」

「――しないで」

「?」




「私の誇りを、バカにしないで」
621 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/14(金) 00:09:08.75 ID:Hg/0Dzzv0
「加賀さーん」

「何?」

「林檎剥いて」

「……私は貴女の召し使いではないのだけど」

「あー痛いなー傷が痛むなー」

「……」

「瑞鶴、あまり加賀さんを困らせてはダメよ?」

「えー? だって加賀さんのせいで私大変だったんだからー」

「……瑞か――」

「明日から、また挑むからね」

「……えぇ」

「それより林檎まだー?」

「――はい」

「・・・・・・へ?」

「食べないの?」

「……食べる」

「なら、早く口を開いてくれないかしら」

「……あーん」

「全く、手間のかかる子だわ」

「むぐぐぐぐむぐぅ!」

「駄々をこねて口を開けて食べ物を待つのは子供です」

「むぐぐぅ……」

(私、お邪魔かしら……)




(煙の様に消えたあの得体の知れない少女……大鳳が会ったのも、恐らく同じ。アレは、確かに妖精達と気配が似ていた。一体、何が目的で動いているの……?)
622 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/14(金) 00:57:11.17 ID:1nfSvL0J0
ずいかが凄く良い
更新おつおつです
623 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/16(日) 13:29:53.49 ID:O0yJKAfdo
おつずい
624 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/16(日) 16:17:22.24 ID:LglG4obSO
乙です
625 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/20(木) 19:15:05.37 ID:T0oi9kcP0
・赤城『この一瞬を』 、投下します
626 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/20(木) 19:16:24.93 ID:T0oi9kcP0
 ――ヒャッハー!

 ――那珂ちゃん、歌いまーす!

 ――はいはい並んで並んでー撮りますよー?

「まだ始まったばかりでこれか。相変わらずだな、うちの連中は」

「ふふ、提督もたまには一緒にはしゃがれてはどうですか?」

「あんなのに付き合ってたら身体がいくつあっても足りん」

「適度な運動は大事です」

「適度ってのはあそこでフリスビーを綿雲と一緒に追いかけてる奴等と遊ぶことか?」

 ――キャッヒっぴょい!

 ――夕立姉マジで口で取りやがった……。

 ――あの、綿雲に取らせてあげて下さい。

「……休息も大事ですね」

(見なかったことにしやがったなコイツ……)

「――ありがとうございます」

「礼を言われる覚えがない」

「じゃあ得したと思って下さい」

「後で目が飛び出るような食費が請求されたりしないよな?」

「最近は鎮守府にずっと居ますから」

「そういえばそうだったな」

「――提督は、桜はお好きですか?」

「毛虫が多いところを除けば、まぁ好きだぞ」

「私は、実はどちらかというと嫌いだったんです」

「なら、何で皆で花見なんぞと言い出したんだ」

627 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/20(木) 19:16:50.36 ID:T0oi9kcP0
「物の見方が変わったから、でしょうか」

「……こうして見るとまた増えたな、うちの艦娘も」

「はい、提督が居ますから」

「こないだ“艦娘ホイホイ”って誰かに言われたぞ」

「艦娘だけ、ですか?」

 ――ヲッ!

 ――金剛、紅茶ハマダナノ?

 ――桜餅、オイテケ!

「アレは無関係だ、誰が何と言おうと無関係だ」

「本当ですか?」

 ――春雨弁当美味しいね。

 ――間宮グッジョブ。

「……ちょっとはあるかもしれん」

「ふふふ」

「――綺麗だな」

「えぇ、そうですね」

「咲かせるのに栄養が大量に必要なのが玉に瑕だが」

「桜に肥料……いりませんよね?」

「そうだな」

「?……っ!?」

「青葉ー珍しい花が咲いてるぞー」

 ――珍しい花? どこどこ?

「――提督」

「ん――っ!?」

 ――おー……青葉、見せつけられちゃいました……。




 いずれは散る運命と分かっているからこそ、今を精一杯に生きられる。
 だから、私は一瞬一瞬を思い出として重ねよう。その時を、笑って迎えられるように。
628 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/20(木) 19:41:29.28 ID:eO/5xoVSO
リクエストしたやつきたか、乙です
629 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/20(木) 20:58:41.08 ID:2kfSx3MSo
赤城さん大胆/////
630 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/21(金) 00:08:13.53 ID:nEkGLb60O
赤城さん乙女だね〜実に良い
631 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/28(金) 20:48:43.02 ID:ZSTHyDXV0
 ――迷ったなら、その光が目印。彼女は必ずそこに居て、彼女を待っている。




「マジあり得ないんですけどー……」

 ちょっと気に入ったバンドのライブに誘い、最高に盛り上がった帰り道。人混みに揉まれ、気付けば隣に居たはずの同行者は姿を消していた。
 いつものこととはいえ、この状況下であの庶民派お嬢様を探すのは困難だ。

(どっちもスマホの充電切れてるとかホントあり得ないし……)

 お互いスマホの充電は切れていて、一人で熊野が最寄りの駅に辿り着くことすら出来ないのはもう分かりきってる。だから、駅で合流というのも難しい。

(ちゃんと終電までに帰らないと提督達に怒られるよね、絶対)

 褒められるのは好きだけど、怒られるのは大嫌い。それに何より、一人にしておきたくない。

「――目立つけど、あれっきゃないかー」

 もう随分と長い間、必要なかったもの。コントロールもある程度出来るようになって、提督と、その、アレの時にたまになっちゃったりするぐらい。

(ったくもー、世話の焼けるお嬢様なんだから)

 思い浮かべる。自分が迷った癖に、さも鈴谷がはぐれたみたいにやれやれって顔してる熊野。
 うん、ちょっとイラッとする。ちょっとイラッとするけど、それでいい。

(誰かの帰る場所、か……提督も良いこと言うよねー)

 人混みに逆らうように、少しでも遮るものの少ない場所を目指す。街中では路地を一本隔てば気付かれないかもしれない。

(ううん、気付くよね。だって、鈴谷と熊野は――)
632 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/28(金) 20:49:08.91 ID:ZSTHyDXV0
「あり得ませんわ……」

「それは鈴谷のセリフなんですけどー」

「いくら私でもあの人混みの中に入っていくの、相当勇気がいりましたのよ?」

「だから手繋ごって言ったじゃん」

「そ、そんな恥ずかしいこと出来ませんわ!」

「ライブ中変な奇声あげるより恥ずかしくないっしょ」

「奇声!?」

「相当目立ってたよ、熊野」

「そんなに、ですの……?」

「ツイッターでチラホラ熊野のこと書いてるの見かけるぐらいには」

「あ、あり得ませんわぁ……」

「にひひ〜有名になれて良かったじゃーん」

「そういう鈴谷こそ、さっきの一件で相当有名になったのではなくて?」

「うぐっ……そ、それより、ほら」

「? 何ですの?」

「手」

「……仕方ありませんわね、また鈴谷が迷ったら大変ですし」

「あーはいはい、終電間に合わなくなるから行くよー」

「途中でコンビニに寄りたいのですけど」

「ココアならさっき買ったし」

「あら、気が利きますのね」

「鈴谷は出来る子ですから」




 何度だって、何時だって、必ず眩い光で導こう。その笑顔を、曇らせたくはないから。
633 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/28(金) 23:46:32.40 ID:UNfUgfzL0
鈴熊可愛いな??
さて、ここの鎮守府のは改2は来るのかな?
634 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/29(土) 09:45:04.93 ID:2Py2325SO
>>633
気になるのなら次のリクエストで鈴谷改二という手もあるぞ

635 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/01(月) 13:51:04.03 ID:Wm4d1cW3o
おつん
636 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/06(土) 16:24:48.08 ID:DKFeaDm7O
>>663了解ですよ!
637 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/19(金) 14:58:36.34 ID:0BWktFKnO
・羽黒『姉さんとの休日』、投下します
638 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/19(金) 14:59:10.88 ID:eWeWcF970
 微かに聞こえてくる包丁の音。目覚めを誘うお味噌汁の匂い。今日も、また姉さんは早起きだ。
 言うと怒られそうだけど、私のお母さんのイメージは妙高姉さん。

「――あら、おはよう羽黒」

「おはよう姉さん。手伝うね」

「こっちは大丈夫だから、二人を起こしてきてもらえる?」

「うん、分かった」

 最近は秘書艦日ぐらいしか早起きしなくなった二人の姉さん。前より残念になったとたまに言われるけど、今の二人の方が私は好き。

「那智姉さん、足柄姉さん、朝御飯だよ、起きて」

「……ん……あぁ、朝か……おはよう、羽黒」

「んー……後五分……」

「おはよう那智姉さん。足柄姉さん、起きないと妙高姉さんにまた怒られちゃうよ?」

「ほら、起きろ足柄。顔を洗ってシャキっとしてこい」

「ん〜……んにゃーい……」

 寝起きの二人は大体こんな感じ。那智姉さんは比較的早く起きてくれるけど、長い髪で顔が隠れて見えない。足柄姉さんはなかなか起きなくて、寝ぼけている姿は可愛い。

「すまない羽黒、髪をまとめるのを手伝ってくれないか?」

「うん、いいよ」

 那智姉さんの髪をまとめるのも、最近は日課のようになっている。たまに子供に引っ張られて少し涙目の姉さんはとても可愛かった。

「姉さんみたいに、私も伸ばそうかな」

「大変だぞ、洗うのにも乾かすのにも時間がかかる」

「じゃあ姉さんも一度短くする?」

「いや、それは……」

 知ってる。姉さんは絶対に整えるだけで短くしない。
 元々司令官さんのこともあって髪は気にしてたけど、ある一件があってから今はより一層気にしているらしい。

「姉さんももうちょっとオシャレしてみたらいいのに」

「最低限人前に出れる服があれば十分だ」

 よし、今度那智姉さんを買い物に連れていこう。足柄姉さんと妙高姉さん、初風ちゃんも誘ったら、きっと楽しい。
639 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/19(金) 14:59:51.84 ID:eWeWcF970
「足柄姉さん」

「んー?」

「今日は部屋に居るの?」

「居るわよ、どうかしたの?」

「最近駆逐艦の子達のところへいつも遊びに行ってたから、たまには私も姉さんと遊びたいなー、なんて」

 最近自覚したことの一つ、私は結構甘えっ子らしい。ほんの少しだけど、駆逐艦の子達が羨ましいと思っていたりする。
 逆に甘やかしてみたいと思ったりもするけど、それはそれ、これはこれ。

「そうね、今日は那智姉さんも妙高姉さんも居るし、四人で何かしましょうか」

「うん。じゃあ私お茶淹れてくるね」




「――ロン、一盃口タンヤオドラドラ」

「それ、私もロン、リーチ一発一通」

「ん゛にゃー!?」

「そんな地雷をよく踏みにいけるな……」

 ずっとニコニコしている妙高姉さん、堅実な那智姉さん、ガンガン攻める足柄姉さん。
 今日の夕飯担当は足柄姉さんに決まりそう。カレーはこの前食べたから、カツとじがいいな。

「もう半荘! もう半荘しましょ!」

「何だ足柄、デザートまで作るつもりか?」

「次は絶対に負けないわ!」




 カツとじとフルーツ白玉はとっても美味しかった。
640 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/19(金) 15:00:25.04 ID:eWeWcF970
「羽黒」

「何?」

「提督とはうまくいっているの?」

「何でそんなこと急に聞くの?」

「足柄はともかく、貴女もそういう気配が見えないから少し心配になってしまって……」

「そ、それは流石に姉さんでもあまり気にしないで欲しいな……後、足柄姉さんももうちょっと気にしてあげて」

「ごめんなさい。ちゃんとうまくいっているのならいいの」

「大丈夫、昔の私じゃないから」

「そう……もう書類と指輪を握り締めて気絶していた貴女じゃないものね」

「その話はやめて、思い出すと今でも恥ずかしいの!」

「ふふふ、最初はあんなに私の陰で震えていたのに」

 ダメだ、こうなったら妙高姉さんの話は長いし、色々恥ずかしい。何かで気を逸らさないと。

「――そういえば、足柄姉さんがこの前“勝負下着を買った”って言ってたよ」

「勝負下着……? 足柄、足柄!」

 よし、これでもう大丈夫。お風呂入ってこよ。




 今までは、背中にずっと隠れていた。だから、これからはちょっと前に出て姉さん達を振り回してみよう。
 それが私の精一杯の、姉孝行です。
641 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/19(金) 23:47:49.28 ID:eWeWcF970
・由良『艦娘であるということ』、投下します
642 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/19(金) 23:48:16.21 ID:eWeWcF970
 単装砲が好き。ゆらゆらと揺れる水面が好き。綿菓子みたいな雲が好き。皆が好き。ここには私の好きなものがいっぱいある。
 提督さんはいつだって私の好きを馬鹿にしなかった。ただ、笑って受け入れてくれた。
 でも、ふと最近思うことがある。




「提督さんは、艦娘じゃない私でも好き?」

「何だ急に」

「好き?」

「そうだな……お前は俺が提督じゃなかったとしても、好きか?」

「質問に質問で返すのは良くない」

「ちゃんと俺は答えたぞ」

「……提督じゃなかったら、まず出会えてないと思う」

「あぁ、そういうことだ」

「……えい」

「由良、今度はな……ぐ……お……折れ……」

「提督さんと会えないとか、嫌」

「だい……じょぶ……だから……力……抜け……」

「……うん」

「っはぁ……悪い、不安にさせたか?」

「うん」

「俺が言いたかったのはな、そんなものはただのきっかけに過ぎないってことだ」

「艦娘なのが、きっかけ?」

「学校が同じ、家が近所、趣味が一緒、共通の友人がいる、そういうのと一緒だ。それが無かったら出会わないかもしれんが、それで好きになったわけじゃない」

「提督さんは、私が私だから好きになってくれたの?」

「まぁ、そうなるな」

「瑞雲は別に好きじゃない」

「ボケにマジで返すな」

「だって、好きって聞きたい」

「……お前はどこか掴み所が無いように見えて、真っ直ぐだな」

「難しいの、疲れるから」

「そういうところに、やられたのかもしれん」

「私は、握手してくれたあの時からずっと好き」

「……もうそろそろ許してくれないか?」

「好き」

「……あぁ、俺も好きだ」

「うん。ずっと好きでいてね、ね?」




 艦娘で良かった。
 だって、こんなに大好きな人と出会えたから。
643 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/19(金) 23:52:41.31 ID:eWeWcF970
次のリクエストは明朝マルハチマルマルより三つ受け付けます

五隻着任確定、後数隻未定
644 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/20(土) 02:08:35.88 ID:JEnssBJhO
645 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/20(土) 08:00:01.27 ID:TgTq8o9co
鳥海
646 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/20(土) 08:00:07.91 ID:9R6KP/ENO
松風
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/20(土) 08:00:35.44 ID:te36TFBto
648 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/20(土) 08:03:15.99 ID:TgTq8o9co
訂正可能なら響でお願いします
649 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/20(土) 08:18:47.36 ID:drv7KaU8O
・響『悪くない』

・松風『ハイカラさん』

・漣『スカウト』

以上三つでお送りします
650 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/20(土) 11:39:59.39 ID:ipY4jdXyo
ね!
651 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/20(土) 18:49:47.82 ID:wnhDFETSO
了解です
652 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/22(月) 22:08:09.77 ID:sn78/4RX0
「司令官、お願いがあるんだ」

「何だ?」

「友人が訪ねてきたんだが、部屋に泊めてもいいかい?」

「悪いが流石にそれは許可出来ん。寮は一般人の立ち入りしていい範囲じゃない」

「そうか。なら、問題ない」

「……待て、嫌な予感がしてきた」

「紹介するよ、ロシアに行った時の友人で――」

「Гангут級一番艦、Гангутだ。よろしく頼む」

(落ち着け、泊まるだけだ、泊まるだけでコイツは帰るんだ)

「……分かった、泊まるだけなら許可する。一応そっちの国に連絡は入れるが、問題ないな?」

「あぁ、当然許可は得ている。こちらにも事前に連絡があったはずだが?」

「そんなものは……いや、なんとなく察した。どうせいつものだ」

「? とりあえず、少しの間だが世話になる。こちらに迷惑はかけないと約束しよう」

「じゃあ部屋に案内するよ、こっちだ」

「確か四姉妹だったな、会うのが楽しみだ」

(……まともに見えたが、何にせよちゃんと帰国するなら問題はないか)




 この時のことを提督は後にこう語っている。“長門だって、最初は普通だったな”と。




――――Гангутが鎮守府に遊びに来ました。
653 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/22(月) 22:08:47.98 ID:sn78/4RX0




 これは、まだ私が物だった頃のお話。




654 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/22(月) 22:09:23.56 ID:sn78/4RX0
 “人には心がある。だが、お前達兵器には心がない。だから何をしても許される”、それが、艦娘になって初めて貰った言葉。
 酷い話よね、そういうことにしてしまえば罪悪感から逃れて自分を正当化出来るんだもの。
 殴っても、蹴っても、叩いても、絞めても、焼いても、刺しても、切っても、突いても、犯しても、血を流しても、泣き叫ばれても、罵倒されても、許してと懇願されても、いっそ殺してと哀願されても、物相手なら心は痛まない。
 心の中でこう思ったわ、一体どっちが物なのかしら、って。
 朝も、昼も、夜も、ただただ物として扱われる日々。薄めて使われているのか分からないけれど、一日一回頭から被せられる修復材でも消えなくなっていく傷。
 次第に本当に物みたいになり始めて、考えることも放棄し始めた頃、見慣れない人と艦娘が部屋に入ってきた。

(かんむすをみるのはいつぶりかしら……あのこもものなのかしらね)

 どうでもいい、どうせ何かが変わる訳じゃない。そう思って目を閉じようとした瞬間、暗い海の底のような部屋の中に光るものが見えた気がした。
 ――涙って、綺麗なのね。
655 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/22(月) 22:09:53.12 ID:sn78/4RX0
「はい、採寸終わったわ」

「ありがとう、荒潮」

「それにしても、吹雪は胸が小さいままね〜」

「気にしてるんだからそれ言わないでよー」

「ふふふ、下着も用意しましょうか?」

「……考えとく」

「じゃあ服は出来たら部屋まで届けるから、待っていてちょうだい」

「ありがとう、また今度お礼するね」

「えぇ、楽しみにしているわ〜」

 プラス1センチ。微かでも、差はあっても、私達は人と同じ様に成長している。
 身体に刻まれた傷はそのままだけれど、それも含めて私。心の傷は司令官と皆が癒してくれたし、“手”に怯えることもなくなった。
 ヤンデレなんて言われることもあるけど、どうしようもなく火照っているのに相手してくれない司令官が悪いんじゃないかしら。
 最初は触れられそうになるだけで吐き気がしていたのに、今では軽く触られるだけですぐ達してしまいそうになる。

(……服を作り始めたの、欲求不満を解消するのが本当の理由なんて言えないわね〜)

 夜通し作業する時は、絶対に誰も作業場には入れない。
 ――だって、そういう趣味はないもの。
656 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/23(火) 08:38:04.26 ID:g03ys6Rao
おつー
657 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/28(日) 13:26:47.58 ID:vx39ZGTc0
・響『悪くない』 、投下します

その頃部屋で冷房ガンガンにされて暁はくしゃみをしていた
658 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/28(日) 13:27:48.81 ID:vx39ZGTc0
「響だよ」

「……突っ込まんぞ」

「不死鳥の通り名もあるよ」

「わざわざその達筆な偽ラベル作って貰ったのかお前」

「信頼の名は伊達じゃない」

「そういうところで信頼得てどうしたいんだよ……」

「司令官が気を良くして一緒に飲んでくれるかもしれないだろ?」

「水に一滴垂らす程度なら飲んでやる」

「酔った司令官が見たいんだよ」

「何度か醜態を晒したからもう絶対酔う程は飲まん」

「どうしてもダメかい?」

「ダメだ」

「……分かった、今日のところは諦めるよ」

「悪いな、付き合ってやれなくて」

「いいさ、その代わり別のお願いを聞いてもらうよ」

「出来る範囲でなら聞いてやる」

「……欲しい」

「ん?」

「お姫様抱っこというのを、して欲しいんだ」

「……酔ってるのか?」

「私だって、そういうものに憧れたりもするんだよ」

「お姫様抱っこか……長くは無理だぞ」

「して貰えるなら文句はないさ」

「じゃあこっち来い」

「……うん」

「――よし、いくぞ」

「あぁ、いつでもいいよ」

「せーの、っと!」

(これが、お姫様抱っこ……流石に人前でされるのは恥ずかしいな)

「ど、どうだ? ご期待にはそえたか?」

「悪くない」

「そうか、もう下ろしていいか?」

「後五分」

「無理だ」

「三分」

「落とすぞ」

「――じゃあ、これでもう少し頑張ってくれ」




――――頭がクラクラする……。

 ――――そんなに刺激的だったかい?

――――刺激的で酒の味がするキスをどうも……。

 ――――次はウォッカ味にしよう。

――――マジでやめろ。
659 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/28(日) 13:29:06.06 ID:vx39ZGTc0
「司令官、居る?」

「何だ?」

「友達が遊びに来てるんだけど、泊めちゃダメ?」

「……さっきもこの流れだったんだが、もしかして艦娘か?」

「うん、イギリスの艦娘さんなの」

「泊めてもいいがちゃんと国に帰らせろよ」

「すっごく綺麗よ?」

「ここは艦娘の駆け込み寺でも保健所でもない」

「とにかく泊めるわ、また後で本人にも会ってあげてね。ここまで来るのは大変そうだから」

「あぁ、分かった」

(……来るのに大変ってどういう意味だ?)




――――イムヤの友達のエリザベスが遊びに来ました。
660 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/28(日) 13:29:47.99 ID:vx39ZGTc0
「ボク、大きくなったらお姉ちゃんとけっこんするー」

「ほわー、文月と結婚したいのー?」

「うん!」

「ありがとー。でも文月ねー、もう結婚してるんだー」

「えっ、やだやだーボクもお姉ちゃんとけっこんしたい!」

「ごめんねー」




「小さい子にモテるな、文月は」

「長月とは違ってな」

「餌付けされているのもどうかと思うぞ」

「アレは好意を無下にしない為に受け取っているだけだ」

 ――よーし、当て鬼するよー。

 ――文月姉ちゃん手加減してよ?

 ――大丈夫大丈夫ー。

「ちゃんとお姉ちゃんしてる文月、か」

「姉だぞ、私達の」

「そんなことは分かっている」

「……文月は、アレでいいんだ」

「そうだな」

 ――あーやったなーお返しするよー?

 ――ちょっ、タンマ!さっき手加減するって言ったじゃん!

 ――大丈夫だよー。

「……無邪鬼だな」

「鬼級ぐらいなら御しやすいんだが」

「違いない」
661 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/06/04(日) 20:21:17.44 ID:6EouTNtnO
「気付いたら三年経ってた、時の流れって恐ろしいな……」

「こっち見ながら言わないで、老けたって言われてるみたいだから」

「姉さんはまだまだ老けとらんよ、大丈夫じゃ」

「何はともあれ更新がなかなか出来てないのに未だに付き合ってくれてる読者には感謝している、ありがとう」

「最近少し書いては寝落ちの繰り返しで全然進まないものね」

「ネタはあるのに文章にする気力がなくてな……」

「ストックは二桁あるのに勿体無いのぅ……」

「明日は久々に身体が動ける半日休みだから更新する」

「優しい心を振り撒きながら通る松風の話ね」

「映画化見てビックリしたわ、タイムリー過ぎて」

「脱線しとるよ、それじゃあこれからも続けられる限り続けるけぇ、見たってね」
662 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 23:09:50.26 ID:CkCDotC9o
663 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 07:23:41.64 ID:S8mCSXJ5o

もう三年も経ったのか……
664 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 10:06:28.70 ID:qlQ8v5FSO
乙です
665 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/06/05(月) 21:22:56.91 ID:g0cHkI0T0
・松風『ハイカラさん』 、投下します

いずれ誰かの顔に草履の跡をくっきりと残すかもしれない
666 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/06/05(月) 21:23:47.37 ID:g0cHkI0T0
「あーハイカラさんだー」

「ハイカラさん、って僕のこと?」

「そうだよー前にアニメで見たの」

(何だか少し間違えてるみたいだけど、まぁいいか)

「それで、僕に何か用?」

「うん、文月と一緒に遊ぼ」

「姉貴が来るのをただ待つってのも暇だし、いいぜ」

「じゃあ真似っこしよー」

「真似っこ?」

「んとねー、ここにいる皆の真似っこするんだよ」

「まだあんまりここの艦娘がどんな奴等か知らないぞ」

「だったらあたしが教えたげるね」

「うん、頼む」

「まずは天ちゃん!」

「天ちゃん?」

「ふふ、怖いかー?」

(あぁ……天龍さんか)

「次、ハイカラさん」

「僕にもやれって?」

「うん!」

「……ふふ、怖いか?」

「うん、上手上手ー」

(上手なのか……)

「次はねー夜戦さん」

「それで誰か分かるのも凄いよな」

「木をねーこうやって登るの」

「……まず僕はそんなクナイ型魚雷持ってないし、垂直に3メートルも飛べない」

「ほわーそうなのー? じゃあ文月と特訓だねー」

「特訓?」
667 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/06/05(月) 21:24:14.77 ID:g0cHkI0T0
「キミ、ちょっと聞きたいことがある」

「松風か、どうした?」

「ここの艦娘はアレが普通なのか?」

「何を以て普通とするか知らんが、ちょっと特殊な奴等が多いのは確かだな」

「それを聞いて少し安心したぜ。海の上なら僕もそれなりだと自負してるけど、陸の上であんな動き出来るのが普通ってんなら自信を無くしてたところだ」

「誰を見てそう思ったんだ?」

「文月」

「あぁ、じゃあ“真似っこ”したのか」

「アレはどういう理屈なんだ」

「理屈で説明しろってんならそういう才だ。見たものをそのまま吸収する。本人は遊びの延長程度にしか思ってないが」

「それはつまり、ここの艦娘の誰かが出来るってことか」

「見てないものは真似っこ出来ないからな、まぁそうなる」

「そうか……くっ……ふふ、あーはっはっは!」

「急に笑いだしてどうした」

「やっぱりここへ来て良かったよ、姉貴達が来るまで退屈することはなさそうだ。引き留めて悪かった、文月を探してくる」

「文月と遊ぶのはいいが、変なこと教えるなよ?」

「大丈夫だよ、じゃあね」

(……昔の記憶とは関係無さそうだし、問題ないな)




「えへへー待て待てー」

「そう簡単に捕まらないよ!」

「文月、楽しそうなのね」

「新しい遊び相手が増えると、いつもはしゃいでたもの」

「ほわー文月、ちょっと本気出しちゃうよー」

「本気? はっ、そうこなくっちゃ面白くない!」

「あら、風通しが良くなっちゃったわね」

「えっと、明石さんへ、駆逐艦寮の壁が壊れたので、修繕お願いします、と……」

「今日は風が気持ち良いわ〜」

 ――やったーハイカラさん捕まえたー。

 ――まさか三階の窓から飛び降りてくるとは思わなかったよ、やられたな。

 ――ねぇねぇ次は何して遊ぶー?

 ――そうだな……じゃあ的当てでリベンジだ。

 ――うん、いいよー。




 まつかぜ の れんど が 8 あがった!
668 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/06(火) 01:17:26.60 ID:WDzA8f2bo
フミィ
669 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/06/11(日) 12:15:21.58 ID:4zrqFRwA0
・漣『スカウト』、投下します

赤疲労だって怖くない
670 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/06/11(日) 12:16:06.32 ID:4zrqFRwA0
「ちょっとそこ行くお嬢さん、うちの店で働かない?」

「……漣、何やってんだ?」

「スカウト、お給料弾むから頼むよ長波ちゃ〜ん」

「嫌だね、他を当たれよ」

「一回だけ、一回だけだから!」

「お前絶対そのままなし崩しで働かせるつもりだろ、い・や・だ!」

「チッ……かくなる上はっ!」

「ちょっ、何やってんだ!?」

「お願いしますお願いします人手がマジで足りないんですレギュラー後一人居ないとキツいんです」

「分かった、分かったから土下座はやめろ!」

「貴女が神か!」

「……私、接客とかしたことないぞ?」

「大丈夫だ、問題ない」

「いや、あるだろ」

「じゃ、明日からよろしくー!」

「おい漣! ちゃんと色々説明しろー!」
671 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/06/11(日) 12:16:33.15 ID:4zrqFRwA0
「――で、言い残すことは?」

「ヘイ長波様、この頭を鷲掴みしているハンドを外して一旦落ち着こ、ね?」

「大丈夫、私はお前(の丈夫さ)を信じてるぜ」

「ノー! ミシミシいってる、ミシミシいってるから! 脳しょうぶちまけちゃらめぇー!?」

「どこぞの怪力達みたいに素手で頭砕く程握力無いっつーの。……で?」

「漣のちょっと本気は凄いでしょ、ね?」

「……」

「いだだだだだだ!?」

「こんな背中丸出しで谷間強調されてて屈んだら見えそうな服着れる訳ないだろ!」

「それでも長波様ならきっと着てくれるって、私信じてるかひゃぎゃあー!?」

「その頭の中にはプリンでも詰まってるのか? ん?」

「その笑顔、マジ怖い」

「ほら、さっさとまともなの出せ」

「……露出低くて屈んだりしても大丈夫なら着る?」

「それならまぁ、衣装も楽しんで貰う店ってのは理解してるし」

「じゃあ更衣室にあるんで、ちゃちゃっと着替えてきてくーださい」

「おい、準備してあるなら最初からそっち出せよ」

「ワンチャン着てくれるかなって」

「断じて無いから!」
672 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/06/11(日) 12:17:02.49 ID:4zrqFRwA0
「……おい」

「流石長波様! 着こなしもパーフェクト! じゃあ早速ホールで――」

「ちょっと待てバカなみ、このオマケは何だ」

「何って、肉球グローブと尻尾と猫耳ですが、何か?」

「何で私だけ着けなきゃいけないんだよ!」

「アレ? 言ってなかったっけ? 今日はそういうイベントの日なんで」

「そんなのちっとも聞いてないぞ!」

「露出は低くて屈んだりしても大丈夫、注文はクリアーしてるし問題ナッシッング、でしょ?」

「うっ……それは、そうだけど」

「あれれー長波ともあろう者が言ったことを曲げちゃうのかにゃー?」

「うぐっ……分かった、分かったよ! これ着けてやればいいんだろやれば!」

「オッケーではではよろしくお願いしまーす」




 翌日、秋雲のアシしてる方がマシだと魂の抜けた表情で口にする長波の姿があったそうな。
673 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/06/11(日) 12:17:34.56 ID:4zrqFRwA0
「長波落とすとかやるじゃん漣」

「どこぞの漫画家が出す無茶苦茶な注文をこなす万能アシが居るって聞いたら、即スカウトしかないでしょ」

「最近色々あって忙しそうだもんな、どこの店も」

「働いてる鎮守府がブラック過ぎて私はもうダメかもしれない」

「それ、ネタって分からないと袋叩きされかねなくね?」

「相手選んでるからへーきへーき」

「――鎮守府イベントの収入とかってどうなってんの?」

「今んところプラマイゼロ、宣伝費って割りきってるからモーマンタイ」

「月トータルでのプラスは?」

「微増傾向、ビスマルクさんのところみたいにオープンテラスも追加しないとキャパ上限でそろそろ頭打ち」

「それで長波投入って訳か」

「何人か他に候補は居たけど、うちの面子と組むなら長波かなって」

「こっちも忙しい時期は貸さないかんね?」

「大丈夫、秋雲の制服も用意したから」

「それなら安心安心……はぁ!?」

「たまには観察する側から観察される側に立ってみるのも、ありだと思うの」

「……でジマ?」

「でジマ」

「……際どいのは勘弁して」

「どの口で言ってんの?」




 月月火水木金金、疲労がなんだ、忙しいのがなんだ。
 三百六十五日、恋する乙女の本気は凄いんだから。
674 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/06/11(日) 12:19:24.24 ID:4zrqFRwA0
次のリクエストはヒトナナマルマルより三つ受け付けます
675 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/11(日) 17:00:21.52 ID:tGM8FBiLo
伊8
676 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/11(日) 17:00:21.55 ID:uVgFngBP0
五月雨ちゃんお願いします!
677 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/11(日) 17:30:40.85 ID:5cTFhOzSO
鈴熊航改二でお願いします
678 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/06/11(日) 17:46:00.95 ID:4zrqFRwA0
・伊8『積み本の山』

・五月雨『私を集めたら最上さんになるんですか!?』

・鈴熊『資格給』

以上三本でお送りします
679 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/06/25(日) 23:59:19.19 ID:xMR0hBDa0
・伊8『積み本の山』、投下します

メガネ×スク水×白衣?
680 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/06/26(月) 00:00:26.64 ID:rrDMXnbz0
undefined
481.83 KB Speed:0.2   VIP Service SS速報R 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)