【艦これ】大鳳「衣食住に娯楽の揃った鎮守府」浦風「深海棲艦も居るんじゃ」

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605 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 16:47:32.51 ID:0VKNibKrO
>>604
fusianasanしないとsage出来ないぞ
606 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 17:46:37.17 ID:vhbxHbXuO
これで出来たかな?
607 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/13(木) 04:11:27.28 ID:ptpeqzKJo
ええなあ
608 : ◆7xTYM/aOv2 [saga sage]:2017/04/13(木) 16:35:14.62 ID:x7Iz+iVk0
続き、投下します
609 : ◆7xTYM/aOv2 [saga sage]:2017/04/13(木) 16:36:13.19 ID:x7Iz+iVk0
 いつものスク水ではなく、オレンジ色のフリルビキニ。見上げる彼女を見下ろせば、谷間が見える。押し付けられていることでそれは更に強調されていて、彼女が狙ってやっているのは明らかだ。
 そんなイムヤの誘惑に、提督はひねくれた形で応じた。

「っ……お尻?」

「一番手近にあった」

「何か、手つきがいやらしい」

「逆にそうじゃなかったらおかしいだろ」

 最初は撫でるように、徐々に揉むように刺激していく。その間、終始提督をイムヤは見上げていたが、表情に変化は無かった。
 何か気に障ったのかと思い提督が手を止めると、彼女の手がそっと彼の頬に添えられた。

「――司令官の目って、少し青いのね」

「そうなのか?」

「自分で気付いてなかったの?」

「昔は普通だったんでな」

「そうなんだ」

 見つめる。見つめ合う。互いの心の奥まで覗くように、視線を絡め合う。
 瞳の中に溺れていくような、沈んでいくような、それでいて心地好い感覚。包み隠さず全てをさらけ出しても構わないと互いに思えなければ、それは味わえない。

「ねぇ、司令官」

「何だ?」

「……溺れさせて」

 望まれたなら、彼は叶える。唇を塞ぎ、舌を絡め、息継ぎの間を与えぬ程、深く貪る。

「ん……ちゅ……んぅ……」

 身体という境界を越えて、一つに解け合うように互いを求める。まるで深海に潜っているかのように、今の二人には唇を重ねている相手の情報しか入ってこない。

「――っ……んはぁ……」

「……」

 潤んだ瞳、未だに唇と唇を繋ぐ透明の糸、火照ったように上気した頬。
 最初から止める気もなかったが、もう止まるはずがなかった。

「しれ――んむっ!?」

 唇を奪い、ビキニの中へ手を入れて胸をまさぐり、秘部をなぞる。
 布に包まれた柔らかな丘は手に吸い付く様にフィットし、中心が割れている丘からはプールの水ではない湿り気が感じられた。

「ふむぅ、んふぅっ!……んっ……」

 強張ったり、脱力したり、忙しなくイムヤは身体をくねらせる。初めて提督から積極的に攻められたこともあり、普段より彼女も興奮していた。
610 : ◆7xTYM/aOv2 [saga sage]:2017/04/13(木) 16:36:44.67 ID:x7Iz+iVk0
(溺れたい、か……俺だって、溺れそうだ)

 舌を絡め、息つく暇を与えぬまま、快楽へ誘う為に指を這わせる。
 下から掬い上げるように胸を揉みしだき、突起を指で弾く。秘部にもビキニ越しではなく直接触れ、中から溢れ始めた愛液を塗り込むように入り口をなぞる。

「はむ……んふぅ……んぅっ!」

 次第に布の感触がもどかしくなり、提督は乱暴に上をめくりあげる。綺麗な桜色の乳首が大気に晒され、自然とそこへ指が動く。

「んっ!? んふっ! んぅっ!?」

 つまみ、弾き、転がす。普段ならば少し痛みを感じていたかもしれないが、今の彼女には快感だけが突き抜けていった。
 秘部から溢れる愛液も多くなり、一度もプールにすら浸けていない彼の指はふやけていく。

(……このままだと気付かれそうだが、もう無理だな)

 気を遣って誰も近付かないとはいえ、流石に喘ぎ声が響けば屋外である以上響く。しかし、彼も彼女も既に撤退できるラインはとうに越えていた。

「――あっ……はぁ……やっダメ、待って、声――んぅぅぅぅぅっ!?」

 声を抑える心構えをしようとする間もなく、水着の横から一気に奥へと貫かれる。
 どうにか手で口元を塞ぎはしたものの、それも徐々に意味を成さなくなっていく。

「んむっ、ふあっ!? しれいか、ダメ、気付かれちゃうっ……あんっ! 奥、奥まで来るぅっ!」

 子宮口に叩き付けるように、提督は腰を突き上げる。その度に、もう我慢どころではなくなった彼女の声と、結合部から響く卑猥な水音がプールに響いた。
 そして、その耳からの刺激が更に行為を激しくさせていく。

「っ……イムヤ、出すぞ」

「ダメっ、あっ……来る、来ちゃうぅっ!?」

 吐き出される白濁液。力尽きて提督に倒れかかった彼女の身体は小刻みに痙攣し、その度に少し隙間の出来た秘部から二人の混ざり合った体液が溢れて伝い落ちていく。

「っ…………バカ」

「俺は悪くない」

「……でも、嬉しかった」

「……俺は悪くないからな」

「へっ? ちょっ、嘘!?」




――――鎮守府共用施設での夜戦はやめてください。

 ――――善処はする。

――――……外の方がいいの?

 ――――……そんな趣味はない、多分。
611 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/13(木) 16:42:40.10 ID:x7Iz+iVk0
次のリクエストはヒトキュウマルマルより三つ受け付けます

瑞加賀、鈴熊、近日投下予定
612 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/13(木) 19:00:06.42 ID:Diqeo5HSO
赤城さんと花見
613 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/13(木) 19:11:25.60 ID:k2bWR91IO
羽黒
614 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/13(木) 19:26:33.83 ID:0BGauy7to
由良
615 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/13(木) 19:44:58.87 ID:x7Iz+iVk0
・赤城『この一瞬を』

・羽黒『姉さんとの休日』

・由良『艦娘であるということ』

以上、三本でお送りします

616 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/14(金) 00:06:47.89 ID:Hg/0Dzzv0





 ――その日、初めて私は加賀さんと殺し合った。




617 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/14(金) 00:07:14.90 ID:Hg/0Dzzv0
 加賀さんに、私は挑み続けている。勝ちたい。勝って、あの人の後ろじゃなくて隣に立ちたい。
 これだけは、提督さんにだって叶えて貰うわけにはいかない。私が、私だけの力で、成し遂げなきゃならない。
 誰の力も借りない、誰にも邪魔されたくない。
 今日もまた、デートの待ち合わせ場所に向かうように演習場へ走る。絶対に先に行って待ったりしない、先に準備して静かに佇むあの人を見るのが好きだから。

「加賀さ――?」

「……」

 ゆっくりと振り返った、憎たらしい程憧れている先輩は、見慣れない、見慣れた紫の目をしていた。
618 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/14(金) 00:07:40.48 ID:Hg/0Dzzv0
 ――最強である必要は、もうない。

「本当に?」

 ――討ち果たすべき相手は、もういない。

「最強でない貴女に、皆は納得するの?」

 ――だから、私はここに居る。

「守れなくてもいいの?」

 ――私の仲間は、強いわ。

「だからといって、貴女が強くなくていい理由にはならないんじゃないかな?」

 ――今が、幸せなの。

「そっか。じゃあ――こうすれば貴女は強さを求めてくれるのかな?」

 ――っ!? 何、これは……あっ、やめ……やめてっ……提督、赤城さん、瑞鶴!……こんなの、嘘っ……!

「あれ? 貴女達が今生きていられるのは未知の驚異への対抗策としてなんだよね? だったら、大切な人達が死ぬ可能性はまだあるよね?」

 ――わたし、私、はっ!

「うん、今の貴女じゃ絶対に守れないよ? だって、こうして私にいいように遊ばれてるもの」

 ――あっ、ああ、ああアアアアアアッ!!




「――あら、ごめんなさい。失敗しちゃった」
619 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/14(金) 00:08:14.72 ID:Hg/0Dzzv0
「加賀さん……?」

「……瑞鶴」

「ねぇ、それ、冗談のつもり? 笑えないから、やめてよ」

「私ハ、貴女達を……」

「っ……前々から思ってたけど、加賀さんって意外とバカだよね」

「ず、イカクゥ!」

「――第一次航空隊発艦、目標バカな一航戦!」

 分かってる。きっと下らないことを考えてて、一人で悩んで、またあの時みたいに私達の気持ちなんて分かってくれてないんだ。

「っ……そんな状態でも、やっぱり加賀さんは加賀さんね!」

「鎧袖一触、蹴散ラシマス」

「出来るもんならしてみなさいよおっ!!」

 動きについていくだけで、神経が磨り減っていく。やっぱり、強い。まだ届かないかもしれない。

「――第二次航空隊、敵艦載機を殲滅して!」

「火ノ塊トナッテ、沈ミナサイ」

「くっ……まだよ、まだ終わってない!」

 バカ。バカバカバカ。どうして頼ってくれないのよ、どうして何も話してくれないの。そんなにまだ頼りないの、私。
 貴女だから、皆提督を安心して任せてたんだよ。別に弱音も愚痴も言っていいじゃない。完璧だから、ただ最強だから貴女に託してたんじゃない。

「私がっ! 私の憧れた貴女はっ!! そんな弱い人じゃないでしょっ!?」

「アアァァァァァッ!」

「これで最後よ! 目標、バカで、意地っ張りで、優しくて、お人好しで、笑うと可愛くて、戦う姿がカッコ良い、私の大好きな先輩! いっけぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 玉砕覚悟、練度も経験も劣ってるのは分かってる。だから、気持ちで勝るしかない。
 負けない。絶対に負けない。今だけは負けたりしない。貴女が私を思うより、私が貴女を思う心の方が、絶対に、強い。

(届け、届け、届け届け届け届け届けぇぇぇぇっ!!)

「っ!?」

 自分の爆撃と機銃の雨の中を、ただ真っ直ぐに進んだ。身体中痛い、多分、終わったら指一本動かせない。
 でも、それでも今、この手をあの遠かった背中に精一杯伸ばして、伝えなきゃいけない。

「――全く、手間かけさせないでよ」

「グッ……ウゥ……」

「そんな姿、提督さんに見せたら怒られるよ。だから、いつもの加賀さんに戻ってよ。私の、大好きな……貴女、に……」

 泣かないで、そんな顔しないでよ。私まで泣きたくなるの。ホント、バカなんだから。

「――瑞、鶴……?」




「あら、もう終わり?」
620 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/14(金) 00:08:41.31 ID:Hg/0Dzzv0
「……貴女は、何?」

 まだ覚醒しきっていない意識で、理解できたことは二つ。瑞鶴が私の為に無茶をしたことと、目の前で水の上に立つセーラー服の少女が自分に何かをしたこと。

「貴女を最強の艦娘に戻してあげようと思ったんだけど、失敗しちゃった」

「そんなこと、望んでないのだけれど」

「でも、そうじゃなきゃ守れないでしょ?」

「……」

 声だけが、聞こえていた。私を呼ぶ声。ずっと、真っ直ぐに、ひたすらに、全力でぶつかってきたこの子の声が。
 とうに認めて、一人前として扱っているというのに、それでも私を目標だと言ってはばからないバカな子。

(こんな傷だらけになって、綺麗な肌も髪も台無しね……ごめんなさい、瑞鶴)

 優しく、優しく頬を撫でる。幸い、入渠でどうにかなる範囲の負傷で済んでいる。

「誰か助けを呼べばいいのに、一人で挑むなんてその子もバカだよね。貴女に今まで一度も勝てなかったのに」

「――しないで」

「?」




「私の誇りを、バカにしないで」
621 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/14(金) 00:09:08.75 ID:Hg/0Dzzv0
「加賀さーん」

「何?」

「林檎剥いて」

「……私は貴女の召し使いではないのだけど」

「あー痛いなー傷が痛むなー」

「……」

「瑞鶴、あまり加賀さんを困らせてはダメよ?」

「えー? だって加賀さんのせいで私大変だったんだからー」

「……瑞か――」

「明日から、また挑むからね」

「……えぇ」

「それより林檎まだー?」

「――はい」

「・・・・・・へ?」

「食べないの?」

「……食べる」

「なら、早く口を開いてくれないかしら」

「……あーん」

「全く、手間のかかる子だわ」

「むぐぐぐぐむぐぅ!」

「駄々をこねて口を開けて食べ物を待つのは子供です」

「むぐぐぅ……」

(私、お邪魔かしら……)




(煙の様に消えたあの得体の知れない少女……大鳳が会ったのも、恐らく同じ。アレは、確かに妖精達と気配が似ていた。一体、何が目的で動いているの……?)
622 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/14(金) 00:57:11.17 ID:1nfSvL0J0
ずいかが凄く良い
更新おつおつです
623 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/16(日) 13:29:53.49 ID:O0yJKAfdo
おつずい
624 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/16(日) 16:17:22.24 ID:LglG4obSO
乙です
625 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/20(木) 19:15:05.37 ID:T0oi9kcP0
・赤城『この一瞬を』 、投下します
626 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/20(木) 19:16:24.93 ID:T0oi9kcP0
 ――ヒャッハー!

 ――那珂ちゃん、歌いまーす!

 ――はいはい並んで並んでー撮りますよー?

「まだ始まったばかりでこれか。相変わらずだな、うちの連中は」

「ふふ、提督もたまには一緒にはしゃがれてはどうですか?」

「あんなのに付き合ってたら身体がいくつあっても足りん」

「適度な運動は大事です」

「適度ってのはあそこでフリスビーを綿雲と一緒に追いかけてる奴等と遊ぶことか?」

 ――キャッヒっぴょい!

 ――夕立姉マジで口で取りやがった……。

 ――あの、綿雲に取らせてあげて下さい。

「……休息も大事ですね」

(見なかったことにしやがったなコイツ……)

「――ありがとうございます」

「礼を言われる覚えがない」

「じゃあ得したと思って下さい」

「後で目が飛び出るような食費が請求されたりしないよな?」

「最近は鎮守府にずっと居ますから」

「そういえばそうだったな」

「――提督は、桜はお好きですか?」

「毛虫が多いところを除けば、まぁ好きだぞ」

「私は、実はどちらかというと嫌いだったんです」

「なら、何で皆で花見なんぞと言い出したんだ」

627 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/20(木) 19:16:50.36 ID:T0oi9kcP0
「物の見方が変わったから、でしょうか」

「……こうして見るとまた増えたな、うちの艦娘も」

「はい、提督が居ますから」

「こないだ“艦娘ホイホイ”って誰かに言われたぞ」

「艦娘だけ、ですか?」

 ――ヲッ!

 ――金剛、紅茶ハマダナノ?

 ――桜餅、オイテケ!

「アレは無関係だ、誰が何と言おうと無関係だ」

「本当ですか?」

 ――春雨弁当美味しいね。

 ――間宮グッジョブ。

「……ちょっとはあるかもしれん」

「ふふふ」

「――綺麗だな」

「えぇ、そうですね」

「咲かせるのに栄養が大量に必要なのが玉に瑕だが」

「桜に肥料……いりませんよね?」

「そうだな」

「?……っ!?」

「青葉ー珍しい花が咲いてるぞー」

 ――珍しい花? どこどこ?

「――提督」

「ん――っ!?」

 ――おー……青葉、見せつけられちゃいました……。




 いずれは散る運命と分かっているからこそ、今を精一杯に生きられる。
 だから、私は一瞬一瞬を思い出として重ねよう。その時を、笑って迎えられるように。
628 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/20(木) 19:41:29.28 ID:eO/5xoVSO
リクエストしたやつきたか、乙です
629 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/20(木) 20:58:41.08 ID:2kfSx3MSo
赤城さん大胆/////
630 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/21(金) 00:08:13.53 ID:nEkGLb60O
赤城さん乙女だね〜実に良い
631 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/28(金) 20:48:43.02 ID:ZSTHyDXV0
 ――迷ったなら、その光が目印。彼女は必ずそこに居て、彼女を待っている。




「マジあり得ないんですけどー……」

 ちょっと気に入ったバンドのライブに誘い、最高に盛り上がった帰り道。人混みに揉まれ、気付けば隣に居たはずの同行者は姿を消していた。
 いつものこととはいえ、この状況下であの庶民派お嬢様を探すのは困難だ。

(どっちもスマホの充電切れてるとかホントあり得ないし……)

 お互いスマホの充電は切れていて、一人で熊野が最寄りの駅に辿り着くことすら出来ないのはもう分かりきってる。だから、駅で合流というのも難しい。

(ちゃんと終電までに帰らないと提督達に怒られるよね、絶対)

 褒められるのは好きだけど、怒られるのは大嫌い。それに何より、一人にしておきたくない。

「――目立つけど、あれっきゃないかー」

 もう随分と長い間、必要なかったもの。コントロールもある程度出来るようになって、提督と、その、アレの時にたまになっちゃったりするぐらい。

(ったくもー、世話の焼けるお嬢様なんだから)

 思い浮かべる。自分が迷った癖に、さも鈴谷がはぐれたみたいにやれやれって顔してる熊野。
 うん、ちょっとイラッとする。ちょっとイラッとするけど、それでいい。

(誰かの帰る場所、か……提督も良いこと言うよねー)

 人混みに逆らうように、少しでも遮るものの少ない場所を目指す。街中では路地を一本隔てば気付かれないかもしれない。

(ううん、気付くよね。だって、鈴谷と熊野は――)
632 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/04/28(金) 20:49:08.91 ID:ZSTHyDXV0
「あり得ませんわ……」

「それは鈴谷のセリフなんですけどー」

「いくら私でもあの人混みの中に入っていくの、相当勇気がいりましたのよ?」

「だから手繋ごって言ったじゃん」

「そ、そんな恥ずかしいこと出来ませんわ!」

「ライブ中変な奇声あげるより恥ずかしくないっしょ」

「奇声!?」

「相当目立ってたよ、熊野」

「そんなに、ですの……?」

「ツイッターでチラホラ熊野のこと書いてるの見かけるぐらいには」

「あ、あり得ませんわぁ……」

「にひひ〜有名になれて良かったじゃーん」

「そういう鈴谷こそ、さっきの一件で相当有名になったのではなくて?」

「うぐっ……そ、それより、ほら」

「? 何ですの?」

「手」

「……仕方ありませんわね、また鈴谷が迷ったら大変ですし」

「あーはいはい、終電間に合わなくなるから行くよー」

「途中でコンビニに寄りたいのですけど」

「ココアならさっき買ったし」

「あら、気が利きますのね」

「鈴谷は出来る子ですから」




 何度だって、何時だって、必ず眩い光で導こう。その笑顔を、曇らせたくはないから。
633 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/28(金) 23:46:32.40 ID:UNfUgfzL0
鈴熊可愛いな??
さて、ここの鎮守府のは改2は来るのかな?
634 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/29(土) 09:45:04.93 ID:2Py2325SO
>>633
気になるのなら次のリクエストで鈴谷改二という手もあるぞ

635 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/01(月) 13:51:04.03 ID:Wm4d1cW3o
おつん
636 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/06(土) 16:24:48.08 ID:DKFeaDm7O
>>663了解ですよ!
637 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/19(金) 14:58:36.34 ID:0BWktFKnO
・羽黒『姉さんとの休日』、投下します
638 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/19(金) 14:59:10.88 ID:eWeWcF970
 微かに聞こえてくる包丁の音。目覚めを誘うお味噌汁の匂い。今日も、また姉さんは早起きだ。
 言うと怒られそうだけど、私のお母さんのイメージは妙高姉さん。

「――あら、おはよう羽黒」

「おはよう姉さん。手伝うね」

「こっちは大丈夫だから、二人を起こしてきてもらえる?」

「うん、分かった」

 最近は秘書艦日ぐらいしか早起きしなくなった二人の姉さん。前より残念になったとたまに言われるけど、今の二人の方が私は好き。

「那智姉さん、足柄姉さん、朝御飯だよ、起きて」

「……ん……あぁ、朝か……おはよう、羽黒」

「んー……後五分……」

「おはよう那智姉さん。足柄姉さん、起きないと妙高姉さんにまた怒られちゃうよ?」

「ほら、起きろ足柄。顔を洗ってシャキっとしてこい」

「ん〜……んにゃーい……」

 寝起きの二人は大体こんな感じ。那智姉さんは比較的早く起きてくれるけど、長い髪で顔が隠れて見えない。足柄姉さんはなかなか起きなくて、寝ぼけている姿は可愛い。

「すまない羽黒、髪をまとめるのを手伝ってくれないか?」

「うん、いいよ」

 那智姉さんの髪をまとめるのも、最近は日課のようになっている。たまに子供に引っ張られて少し涙目の姉さんはとても可愛かった。

「姉さんみたいに、私も伸ばそうかな」

「大変だぞ、洗うのにも乾かすのにも時間がかかる」

「じゃあ姉さんも一度短くする?」

「いや、それは……」

 知ってる。姉さんは絶対に整えるだけで短くしない。
 元々司令官さんのこともあって髪は気にしてたけど、ある一件があってから今はより一層気にしているらしい。

「姉さんももうちょっとオシャレしてみたらいいのに」

「最低限人前に出れる服があれば十分だ」

 よし、今度那智姉さんを買い物に連れていこう。足柄姉さんと妙高姉さん、初風ちゃんも誘ったら、きっと楽しい。
639 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/19(金) 14:59:51.84 ID:eWeWcF970
「足柄姉さん」

「んー?」

「今日は部屋に居るの?」

「居るわよ、どうかしたの?」

「最近駆逐艦の子達のところへいつも遊びに行ってたから、たまには私も姉さんと遊びたいなー、なんて」

 最近自覚したことの一つ、私は結構甘えっ子らしい。ほんの少しだけど、駆逐艦の子達が羨ましいと思っていたりする。
 逆に甘やかしてみたいと思ったりもするけど、それはそれ、これはこれ。

「そうね、今日は那智姉さんも妙高姉さんも居るし、四人で何かしましょうか」

「うん。じゃあ私お茶淹れてくるね」




「――ロン、一盃口タンヤオドラドラ」

「それ、私もロン、リーチ一発一通」

「ん゛にゃー!?」

「そんな地雷をよく踏みにいけるな……」

 ずっとニコニコしている妙高姉さん、堅実な那智姉さん、ガンガン攻める足柄姉さん。
 今日の夕飯担当は足柄姉さんに決まりそう。カレーはこの前食べたから、カツとじがいいな。

「もう半荘! もう半荘しましょ!」

「何だ足柄、デザートまで作るつもりか?」

「次は絶対に負けないわ!」




 カツとじとフルーツ白玉はとっても美味しかった。
640 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/19(金) 15:00:25.04 ID:eWeWcF970
「羽黒」

「何?」

「提督とはうまくいっているの?」

「何でそんなこと急に聞くの?」

「足柄はともかく、貴女もそういう気配が見えないから少し心配になってしまって……」

「そ、それは流石に姉さんでもあまり気にしないで欲しいな……後、足柄姉さんももうちょっと気にしてあげて」

「ごめんなさい。ちゃんとうまくいっているのならいいの」

「大丈夫、昔の私じゃないから」

「そう……もう書類と指輪を握り締めて気絶していた貴女じゃないものね」

「その話はやめて、思い出すと今でも恥ずかしいの!」

「ふふふ、最初はあんなに私の陰で震えていたのに」

 ダメだ、こうなったら妙高姉さんの話は長いし、色々恥ずかしい。何かで気を逸らさないと。

「――そういえば、足柄姉さんがこの前“勝負下着を買った”って言ってたよ」

「勝負下着……? 足柄、足柄!」

 よし、これでもう大丈夫。お風呂入ってこよ。




 今までは、背中にずっと隠れていた。だから、これからはちょっと前に出て姉さん達を振り回してみよう。
 それが私の精一杯の、姉孝行です。
641 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/19(金) 23:47:49.28 ID:eWeWcF970
・由良『艦娘であるということ』、投下します
642 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/19(金) 23:48:16.21 ID:eWeWcF970
 単装砲が好き。ゆらゆらと揺れる水面が好き。綿菓子みたいな雲が好き。皆が好き。ここには私の好きなものがいっぱいある。
 提督さんはいつだって私の好きを馬鹿にしなかった。ただ、笑って受け入れてくれた。
 でも、ふと最近思うことがある。




「提督さんは、艦娘じゃない私でも好き?」

「何だ急に」

「好き?」

「そうだな……お前は俺が提督じゃなかったとしても、好きか?」

「質問に質問で返すのは良くない」

「ちゃんと俺は答えたぞ」

「……提督じゃなかったら、まず出会えてないと思う」

「あぁ、そういうことだ」

「……えい」

「由良、今度はな……ぐ……お……折れ……」

「提督さんと会えないとか、嫌」

「だい……じょぶ……だから……力……抜け……」

「……うん」

「っはぁ……悪い、不安にさせたか?」

「うん」

「俺が言いたかったのはな、そんなものはただのきっかけに過ぎないってことだ」

「艦娘なのが、きっかけ?」

「学校が同じ、家が近所、趣味が一緒、共通の友人がいる、そういうのと一緒だ。それが無かったら出会わないかもしれんが、それで好きになったわけじゃない」

「提督さんは、私が私だから好きになってくれたの?」

「まぁ、そうなるな」

「瑞雲は別に好きじゃない」

「ボケにマジで返すな」

「だって、好きって聞きたい」

「……お前はどこか掴み所が無いように見えて、真っ直ぐだな」

「難しいの、疲れるから」

「そういうところに、やられたのかもしれん」

「私は、握手してくれたあの時からずっと好き」

「……もうそろそろ許してくれないか?」

「好き」

「……あぁ、俺も好きだ」

「うん。ずっと好きでいてね、ね?」




 艦娘で良かった。
 だって、こんなに大好きな人と出会えたから。
643 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/19(金) 23:52:41.31 ID:eWeWcF970
次のリクエストは明朝マルハチマルマルより三つ受け付けます

五隻着任確定、後数隻未定
644 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/20(土) 02:08:35.88 ID:JEnssBJhO
645 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/20(土) 08:00:01.27 ID:TgTq8o9co
鳥海
646 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/20(土) 08:00:07.91 ID:9R6KP/ENO
松風
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/20(土) 08:00:35.44 ID:te36TFBto
648 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/20(土) 08:03:15.99 ID:TgTq8o9co
訂正可能なら響でお願いします
649 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/20(土) 08:18:47.36 ID:drv7KaU8O
・響『悪くない』

・松風『ハイカラさん』

・漣『スカウト』

以上三つでお送りします
650 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/20(土) 11:39:59.39 ID:ipY4jdXyo
ね!
651 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/20(土) 18:49:47.82 ID:wnhDFETSO
了解です
652 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/22(月) 22:08:09.77 ID:sn78/4RX0
「司令官、お願いがあるんだ」

「何だ?」

「友人が訪ねてきたんだが、部屋に泊めてもいいかい?」

「悪いが流石にそれは許可出来ん。寮は一般人の立ち入りしていい範囲じゃない」

「そうか。なら、問題ない」

「……待て、嫌な予感がしてきた」

「紹介するよ、ロシアに行った時の友人で――」

「Гангут級一番艦、Гангутだ。よろしく頼む」

(落ち着け、泊まるだけだ、泊まるだけでコイツは帰るんだ)

「……分かった、泊まるだけなら許可する。一応そっちの国に連絡は入れるが、問題ないな?」

「あぁ、当然許可は得ている。こちらにも事前に連絡があったはずだが?」

「そんなものは……いや、なんとなく察した。どうせいつものだ」

「? とりあえず、少しの間だが世話になる。こちらに迷惑はかけないと約束しよう」

「じゃあ部屋に案内するよ、こっちだ」

「確か四姉妹だったな、会うのが楽しみだ」

(……まともに見えたが、何にせよちゃんと帰国するなら問題はないか)




 この時のことを提督は後にこう語っている。“長門だって、最初は普通だったな”と。




――――Гангутが鎮守府に遊びに来ました。
653 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/22(月) 22:08:47.98 ID:sn78/4RX0




 これは、まだ私が物だった頃のお話。




654 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/22(月) 22:09:23.56 ID:sn78/4RX0
 “人には心がある。だが、お前達兵器には心がない。だから何をしても許される”、それが、艦娘になって初めて貰った言葉。
 酷い話よね、そういうことにしてしまえば罪悪感から逃れて自分を正当化出来るんだもの。
 殴っても、蹴っても、叩いても、絞めても、焼いても、刺しても、切っても、突いても、犯しても、血を流しても、泣き叫ばれても、罵倒されても、許してと懇願されても、いっそ殺してと哀願されても、物相手なら心は痛まない。
 心の中でこう思ったわ、一体どっちが物なのかしら、って。
 朝も、昼も、夜も、ただただ物として扱われる日々。薄めて使われているのか分からないけれど、一日一回頭から被せられる修復材でも消えなくなっていく傷。
 次第に本当に物みたいになり始めて、考えることも放棄し始めた頃、見慣れない人と艦娘が部屋に入ってきた。

(かんむすをみるのはいつぶりかしら……あのこもものなのかしらね)

 どうでもいい、どうせ何かが変わる訳じゃない。そう思って目を閉じようとした瞬間、暗い海の底のような部屋の中に光るものが見えた気がした。
 ――涙って、綺麗なのね。
655 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/22(月) 22:09:53.12 ID:sn78/4RX0
「はい、採寸終わったわ」

「ありがとう、荒潮」

「それにしても、吹雪は胸が小さいままね〜」

「気にしてるんだからそれ言わないでよー」

「ふふふ、下着も用意しましょうか?」

「……考えとく」

「じゃあ服は出来たら部屋まで届けるから、待っていてちょうだい」

「ありがとう、また今度お礼するね」

「えぇ、楽しみにしているわ〜」

 プラス1センチ。微かでも、差はあっても、私達は人と同じ様に成長している。
 身体に刻まれた傷はそのままだけれど、それも含めて私。心の傷は司令官と皆が癒してくれたし、“手”に怯えることもなくなった。
 ヤンデレなんて言われることもあるけど、どうしようもなく火照っているのに相手してくれない司令官が悪いんじゃないかしら。
 最初は触れられそうになるだけで吐き気がしていたのに、今では軽く触られるだけですぐ達してしまいそうになる。

(……服を作り始めたの、欲求不満を解消するのが本当の理由なんて言えないわね〜)

 夜通し作業する時は、絶対に誰も作業場には入れない。
 ――だって、そういう趣味はないもの。
656 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/23(火) 08:38:04.26 ID:g03ys6Rao
おつー
657 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/28(日) 13:26:47.58 ID:vx39ZGTc0
・響『悪くない』 、投下します

その頃部屋で冷房ガンガンにされて暁はくしゃみをしていた
658 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/28(日) 13:27:48.81 ID:vx39ZGTc0
「響だよ」

「……突っ込まんぞ」

「不死鳥の通り名もあるよ」

「わざわざその達筆な偽ラベル作って貰ったのかお前」

「信頼の名は伊達じゃない」

「そういうところで信頼得てどうしたいんだよ……」

「司令官が気を良くして一緒に飲んでくれるかもしれないだろ?」

「水に一滴垂らす程度なら飲んでやる」

「酔った司令官が見たいんだよ」

「何度か醜態を晒したからもう絶対酔う程は飲まん」

「どうしてもダメかい?」

「ダメだ」

「……分かった、今日のところは諦めるよ」

「悪いな、付き合ってやれなくて」

「いいさ、その代わり別のお願いを聞いてもらうよ」

「出来る範囲でなら聞いてやる」

「……欲しい」

「ん?」

「お姫様抱っこというのを、して欲しいんだ」

「……酔ってるのか?」

「私だって、そういうものに憧れたりもするんだよ」

「お姫様抱っこか……長くは無理だぞ」

「して貰えるなら文句はないさ」

「じゃあこっち来い」

「……うん」

「――よし、いくぞ」

「あぁ、いつでもいいよ」

「せーの、っと!」

(これが、お姫様抱っこ……流石に人前でされるのは恥ずかしいな)

「ど、どうだ? ご期待にはそえたか?」

「悪くない」

「そうか、もう下ろしていいか?」

「後五分」

「無理だ」

「三分」

「落とすぞ」

「――じゃあ、これでもう少し頑張ってくれ」




――――頭がクラクラする……。

 ――――そんなに刺激的だったかい?

――――刺激的で酒の味がするキスをどうも……。

 ――――次はウォッカ味にしよう。

――――マジでやめろ。
659 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/28(日) 13:29:06.06 ID:vx39ZGTc0
「司令官、居る?」

「何だ?」

「友達が遊びに来てるんだけど、泊めちゃダメ?」

「……さっきもこの流れだったんだが、もしかして艦娘か?」

「うん、イギリスの艦娘さんなの」

「泊めてもいいがちゃんと国に帰らせろよ」

「すっごく綺麗よ?」

「ここは艦娘の駆け込み寺でも保健所でもない」

「とにかく泊めるわ、また後で本人にも会ってあげてね。ここまで来るのは大変そうだから」

「あぁ、分かった」

(……来るのに大変ってどういう意味だ?)




――――イムヤの友達のエリザベスが遊びに来ました。
660 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/05/28(日) 13:29:47.99 ID:vx39ZGTc0
「ボク、大きくなったらお姉ちゃんとけっこんするー」

「ほわー、文月と結婚したいのー?」

「うん!」

「ありがとー。でも文月ねー、もう結婚してるんだー」

「えっ、やだやだーボクもお姉ちゃんとけっこんしたい!」

「ごめんねー」




「小さい子にモテるな、文月は」

「長月とは違ってな」

「餌付けされているのもどうかと思うぞ」

「アレは好意を無下にしない為に受け取っているだけだ」

 ――よーし、当て鬼するよー。

 ――文月姉ちゃん手加減してよ?

 ――大丈夫大丈夫ー。

「ちゃんとお姉ちゃんしてる文月、か」

「姉だぞ、私達の」

「そんなことは分かっている」

「……文月は、アレでいいんだ」

「そうだな」

 ――あーやったなーお返しするよー?

 ――ちょっ、タンマ!さっき手加減するって言ったじゃん!

 ――大丈夫だよー。

「……無邪鬼だな」

「鬼級ぐらいなら御しやすいんだが」

「違いない」
661 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/06/04(日) 20:21:17.44 ID:6EouTNtnO
「気付いたら三年経ってた、時の流れって恐ろしいな……」

「こっち見ながら言わないで、老けたって言われてるみたいだから」

「姉さんはまだまだ老けとらんよ、大丈夫じゃ」

「何はともあれ更新がなかなか出来てないのに未だに付き合ってくれてる読者には感謝している、ありがとう」

「最近少し書いては寝落ちの繰り返しで全然進まないものね」

「ネタはあるのに文章にする気力がなくてな……」

「ストックは二桁あるのに勿体無いのぅ……」

「明日は久々に身体が動ける半日休みだから更新する」

「優しい心を振り撒きながら通る松風の話ね」

「映画化見てビックリしたわ、タイムリー過ぎて」

「脱線しとるよ、それじゃあこれからも続けられる限り続けるけぇ、見たってね」
662 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 23:09:50.26 ID:CkCDotC9o
663 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 07:23:41.64 ID:S8mCSXJ5o

もう三年も経ったのか……
664 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 10:06:28.70 ID:qlQ8v5FSO
乙です
665 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/06/05(月) 21:22:56.91 ID:g0cHkI0T0
・松風『ハイカラさん』 、投下します

いずれ誰かの顔に草履の跡をくっきりと残すかもしれない
666 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/06/05(月) 21:23:47.37 ID:g0cHkI0T0
「あーハイカラさんだー」

「ハイカラさん、って僕のこと?」

「そうだよー前にアニメで見たの」

(何だか少し間違えてるみたいだけど、まぁいいか)

「それで、僕に何か用?」

「うん、文月と一緒に遊ぼ」

「姉貴が来るのをただ待つってのも暇だし、いいぜ」

「じゃあ真似っこしよー」

「真似っこ?」

「んとねー、ここにいる皆の真似っこするんだよ」

「まだあんまりここの艦娘がどんな奴等か知らないぞ」

「だったらあたしが教えたげるね」

「うん、頼む」

「まずは天ちゃん!」

「天ちゃん?」

「ふふ、怖いかー?」

(あぁ……天龍さんか)

「次、ハイカラさん」

「僕にもやれって?」

「うん!」

「……ふふ、怖いか?」

「うん、上手上手ー」

(上手なのか……)

「次はねー夜戦さん」

「それで誰か分かるのも凄いよな」

「木をねーこうやって登るの」

「……まず僕はそんなクナイ型魚雷持ってないし、垂直に3メートルも飛べない」

「ほわーそうなのー? じゃあ文月と特訓だねー」

「特訓?」
667 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/06/05(月) 21:24:14.77 ID:g0cHkI0T0
「キミ、ちょっと聞きたいことがある」

「松風か、どうした?」

「ここの艦娘はアレが普通なのか?」

「何を以て普通とするか知らんが、ちょっと特殊な奴等が多いのは確かだな」

「それを聞いて少し安心したぜ。海の上なら僕もそれなりだと自負してるけど、陸の上であんな動き出来るのが普通ってんなら自信を無くしてたところだ」

「誰を見てそう思ったんだ?」

「文月」

「あぁ、じゃあ“真似っこ”したのか」

「アレはどういう理屈なんだ」

「理屈で説明しろってんならそういう才だ。見たものをそのまま吸収する。本人は遊びの延長程度にしか思ってないが」

「それはつまり、ここの艦娘の誰かが出来るってことか」

「見てないものは真似っこ出来ないからな、まぁそうなる」

「そうか……くっ……ふふ、あーはっはっは!」

「急に笑いだしてどうした」

「やっぱりここへ来て良かったよ、姉貴達が来るまで退屈することはなさそうだ。引き留めて悪かった、文月を探してくる」

「文月と遊ぶのはいいが、変なこと教えるなよ?」

「大丈夫だよ、じゃあね」

(……昔の記憶とは関係無さそうだし、問題ないな)




「えへへー待て待てー」

「そう簡単に捕まらないよ!」

「文月、楽しそうなのね」

「新しい遊び相手が増えると、いつもはしゃいでたもの」

「ほわー文月、ちょっと本気出しちゃうよー」

「本気? はっ、そうこなくっちゃ面白くない!」

「あら、風通しが良くなっちゃったわね」

「えっと、明石さんへ、駆逐艦寮の壁が壊れたので、修繕お願いします、と……」

「今日は風が気持ち良いわ〜」

 ――やったーハイカラさん捕まえたー。

 ――まさか三階の窓から飛び降りてくるとは思わなかったよ、やられたな。

 ――ねぇねぇ次は何して遊ぶー?

 ――そうだな……じゃあ的当てでリベンジだ。

 ――うん、いいよー。




 まつかぜ の れんど が 8 あがった!
668 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/06(火) 01:17:26.60 ID:WDzA8f2bo
フミィ
669 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/06/11(日) 12:15:21.58 ID:4zrqFRwA0
・漣『スカウト』、投下します

赤疲労だって怖くない
670 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/06/11(日) 12:16:06.32 ID:4zrqFRwA0
「ちょっとそこ行くお嬢さん、うちの店で働かない?」

「……漣、何やってんだ?」

「スカウト、お給料弾むから頼むよ長波ちゃ〜ん」

「嫌だね、他を当たれよ」

「一回だけ、一回だけだから!」

「お前絶対そのままなし崩しで働かせるつもりだろ、い・や・だ!」

「チッ……かくなる上はっ!」

「ちょっ、何やってんだ!?」

「お願いしますお願いします人手がマジで足りないんですレギュラー後一人居ないとキツいんです」

「分かった、分かったから土下座はやめろ!」

「貴女が神か!」

「……私、接客とかしたことないぞ?」

「大丈夫だ、問題ない」

「いや、あるだろ」

「じゃ、明日からよろしくー!」

「おい漣! ちゃんと色々説明しろー!」
671 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/06/11(日) 12:16:33.15 ID:4zrqFRwA0
「――で、言い残すことは?」

「ヘイ長波様、この頭を鷲掴みしているハンドを外して一旦落ち着こ、ね?」

「大丈夫、私はお前(の丈夫さ)を信じてるぜ」

「ノー! ミシミシいってる、ミシミシいってるから! 脳しょうぶちまけちゃらめぇー!?」

「どこぞの怪力達みたいに素手で頭砕く程握力無いっつーの。……で?」

「漣のちょっと本気は凄いでしょ、ね?」

「……」

「いだだだだだだ!?」

「こんな背中丸出しで谷間強調されてて屈んだら見えそうな服着れる訳ないだろ!」

「それでも長波様ならきっと着てくれるって、私信じてるかひゃぎゃあー!?」

「その頭の中にはプリンでも詰まってるのか? ん?」

「その笑顔、マジ怖い」

「ほら、さっさとまともなの出せ」

「……露出低くて屈んだりしても大丈夫なら着る?」

「それならまぁ、衣装も楽しんで貰う店ってのは理解してるし」

「じゃあ更衣室にあるんで、ちゃちゃっと着替えてきてくーださい」

「おい、準備してあるなら最初からそっち出せよ」

「ワンチャン着てくれるかなって」

「断じて無いから!」
672 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/06/11(日) 12:17:02.49 ID:4zrqFRwA0
「……おい」

「流石長波様! 着こなしもパーフェクト! じゃあ早速ホールで――」

「ちょっと待てバカなみ、このオマケは何だ」

「何って、肉球グローブと尻尾と猫耳ですが、何か?」

「何で私だけ着けなきゃいけないんだよ!」

「アレ? 言ってなかったっけ? 今日はそういうイベントの日なんで」

「そんなのちっとも聞いてないぞ!」

「露出は低くて屈んだりしても大丈夫、注文はクリアーしてるし問題ナッシッング、でしょ?」

「うっ……それは、そうだけど」

「あれれー長波ともあろう者が言ったことを曲げちゃうのかにゃー?」

「うぐっ……分かった、分かったよ! これ着けてやればいいんだろやれば!」

「オッケーではではよろしくお願いしまーす」




 翌日、秋雲のアシしてる方がマシだと魂の抜けた表情で口にする長波の姿があったそうな。
673 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/06/11(日) 12:17:34.56 ID:4zrqFRwA0
「長波落とすとかやるじゃん漣」

「どこぞの漫画家が出す無茶苦茶な注文をこなす万能アシが居るって聞いたら、即スカウトしかないでしょ」

「最近色々あって忙しそうだもんな、どこの店も」

「働いてる鎮守府がブラック過ぎて私はもうダメかもしれない」

「それ、ネタって分からないと袋叩きされかねなくね?」

「相手選んでるからへーきへーき」

「――鎮守府イベントの収入とかってどうなってんの?」

「今んところプラマイゼロ、宣伝費って割りきってるからモーマンタイ」

「月トータルでのプラスは?」

「微増傾向、ビスマルクさんのところみたいにオープンテラスも追加しないとキャパ上限でそろそろ頭打ち」

「それで長波投入って訳か」

「何人か他に候補は居たけど、うちの面子と組むなら長波かなって」

「こっちも忙しい時期は貸さないかんね?」

「大丈夫、秋雲の制服も用意したから」

「それなら安心安心……はぁ!?」

「たまには観察する側から観察される側に立ってみるのも、ありだと思うの」

「……でジマ?」

「でジマ」

「……際どいのは勘弁して」

「どの口で言ってんの?」




 月月火水木金金、疲労がなんだ、忙しいのがなんだ。
 三百六十五日、恋する乙女の本気は凄いんだから。
674 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/06/11(日) 12:19:24.24 ID:4zrqFRwA0
次のリクエストはヒトナナマルマルより三つ受け付けます
675 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/11(日) 17:00:21.52 ID:tGM8FBiLo
伊8
676 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/11(日) 17:00:21.55 ID:uVgFngBP0
五月雨ちゃんお願いします!
677 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/11(日) 17:30:40.85 ID:5cTFhOzSO
鈴熊航改二でお願いします
678 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2017/06/11(日) 17:46:00.95 ID:4zrqFRwA0
・伊8『積み本の山』

・五月雨『私を集めたら最上さんになるんですか!?』

・鈴熊『資格給』

以上三本でお送りします
679 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/06/25(日) 23:59:19.19 ID:xMR0hBDa0
・伊8『積み本の山』、投下します

メガネ×スク水×白衣?
680 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/06/26(月) 00:00:26.64 ID:rrDMXnbz0
undefined
681 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/06/26(月) 00:02:19.78 ID:rrDMXnbz0
undefined
682 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/06/26(月) 00:04:58.51 ID:rrDMXnbz0
とりあえず買う。そして積む。買う。積む。買う。積む。積む。積む。
 つむつむと書くと繋げれば消えそうだが、実際は溜まる一方で減りはしない。
 片っ端から色々な場所に寄贈しているものの、それすら追い付かない。
 挙げ句の果てには他鎮守府のハチとネットワークを作り本を交換し始め、更に収拾がつかなくなっていた。 
 流石にこれはマズイとイムヤ達が提督に相談した結果、彼女は今とある場所に連れてこられていた。

「提督、ここは?」
 
「どっかの兎がコツコツ貯めた金を使って建てた施設だ。歳を取ると、こういうことがしたくなるらしい」

「それ、聞かれたら首刈られますよ」

 自分達の住む場所で聞きなれた、元気な子供の声。その施設の敷地に二人が足を踏み入れると、声はピタリと止んだ。
 
「……どちら様ですか?」
 
「警戒しなくていい、兎のお姉ちゃんの知り合いだよ。今日はアイツに頼まれてな、コイツを連れてきた」

 周囲の子供より少し年上と判断できる少女が、恐る恐る二人の素性を尋ねる。明らかにその後ろで怯えている子供達の警戒も解こうと、提督はしゃがんでから笑顔でここの事実上の責任者と知り合いだと告げる。
 その態度よりも寧ろ、横に立つハチの似合わないことをしているなという顔を見て少女は警戒を解いた。

「話は聞いてます。こちらへどうぞ」
 
 広い庭の奥に見える建物へと歩いていく栗色の髪の少女。その背を追いながら、ハチは提督に問うような視線を送るが、頭を振って答えるだけだった。
683 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/06/26(月) 00:05:43.43 ID:rrDMXnbz0
「よく来たね、あの嬢ちゃんから話は聞いてるよ。そっちの子がそうかい?」
 
「えぇ、期待に添えると思いますよ」

 通された部屋で待っていたのは、絵本に出てくる魔女のような老婆だった。ニタリと笑うその魔女にハチを差し出す提督。
 どういうことか説明してくれと今度は涙目で訴えるように見てくるハチに、彼は先程案内してくれた少女を視線で示した。

「お前の得た知識、どうせなら役立ててみないか?」
 
「その子の先生になれ、ということですか?」
 
「その子だけじゃないよ、ここの子全員さね」
 
「人に教えた経験なんて無いです」
 
「別に教師になれとはいってない、ただお前が知っていることを話してやればいいんだ」

 言葉にしての会話と、言葉にしない会話。鋭い眼で二人の会話を聞く老婆は、昔から知っているひねくれものの人を見る目は濁っちゃいないと再認識していた。

(この子達の事情を真っ先に聞こうとしたらすぐに叩き出そうと思ったんだけどねぇ、一応頭は使えるみたいじゃないか)

「――連れてこられた理由は分かりました。でも、それは私じゃなくてその子達が決めることじゃないでしょうか」

「だそうだよ。アンタはどうだい?」

「……私は――」
684 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/06/26(月) 00:06:24.20 ID:rrDMXnbz0
「まず、自己紹介からしましょう。私はハチ、はっちゃん、アハト先生と呼んでください」

「ハチさん、何でスクール水着の上に白衣を着てるんですか?」

「先生気分を出すためです」

「……この人に頼んで良かったのかな」

「次は貴方の番ですよ?」

「まいな、十四歳、趣味は創作料理です」

「まいな、ですね。ではまいなの知りたいことを教えてください。どんな話が聞きたいですか?」

「ハチさんの、ハチさんの話を聞かせてください」

「いいですよ。私の話、私の仲間、鎮守府のことを話しましょう」

 一から、最初から、物語を読むように、ハチは話し始める。大鳳が子供達に聞かせたよりも、少し深いことも含めて、少女に語る。
 楽しかったこと、苦しかったこと、辛かったこと、一つ一つ伝えていく。
 昔は少しおバカな面も見せていたハチも、今では幅広い知識を手に入れている。だからこそ、これが少女にとってとても大切なことだと理解出来た。

「――こうして、はっちゃんは提督に恋しました」

「のろけ話が大半だった気がするんですけど……」

「学校とかじゃ教えてくれないことです」

「いや、そういう問題じゃねーだろ」

「なるほど、そっちが素なんですね」

「あっ……乱暴な言葉遣いしたのバレたらお小遣い減らされるんで、シスターには黙ってて下さい」
 
「ふふっ、女の子同士の秘密、です」

「ハチさんって、何歳になるんですか?」

「……永遠のアハツェーンです」




 本は相変わらず積まれている。だが、今まで読まれるだけだったそれは、教科書という別の役割を持つようになった。
 ――さて、今日はどれを話の種にしようかしら。
685 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/06/26(月) 00:09:58.21 ID:rrDMXnbz0
スマホ変えてエラー猫に襲われただけなので失敗した書き込み二つは気にしないでください
686 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/26(月) 11:47:36.34 ID:rsM67BBRo
おつかれなのー
687 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/26(月) 11:52:06.17 ID:qpULeVBSO
乙です
688 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/07/10(月) 23:21:19.30 ID:a8Wzxblz0

・五月雨『私を集めたら最上さんになるんですか!?』、投下します
689 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/07/10(月) 23:21:44.70 ID:a8Wzxblz0
「そんなことになったらスーパー超絶ドジっ子な最上の出来上がりだな」

「何人集まったらなっちゃうんですか? 教えてください提督!」

「そもそもドジって合体出来ないってオチしか見えないから心配しなくていい」

「最近は一日に二回しか白露姉さんにぶつかってませんし調味料も一つしか入れ間違えなくなったんだからそんなにドジって言わないでください!」

「あーはいはい、悪かったから怒るな怒るな」

「もう……でも、今はドジで良かったかもって思っちゃうときもあるんです」

「そう思えるなら、それでいいんだろうさ」

「はい、これからもたくさん迷惑かけるかもしれませんけど、宜しくお願いします、提督」

「あぁ――早速で悪いが、とりあえず秘書艦業務出来る服に着替えてこい」

「?……あっ!? すぐに着替えてわきゃあっ!?」

「……寝巻きで駆け込んできたのと、書類にコーヒーぶちまけたのは、その捲れて見えてるパンツではチャラにならんぞ?」

「うぅ……ごめんなさーい……」

「白」

「……興奮、しちゃった?」

「いや、朝早くから書いててようやく終わった書類がコーヒーまみれになった俺の頭の中と一緒の色だと思っただけだ」

「……えへ」

「可愛いな、だが許さん」

「わーん、ごめんなさーい!」
690 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/07/10(月) 23:22:13.45 ID:a8Wzxblz0
「五月雨がいっぱいとか、日本吹き飛んじまうね」

「国が吹き飛ぶほどじゃないもん」

「ドイツって過ごしやすいかな……」

「白露、長女が逃げちゃダメだよ」

「一蓮托生っぽい?」

「そもそも一ヶ所に集めることすら難しいんじゃないかしら?」

「五月雨、方向音痴だもんね」

「ンなことより夕飯まだ?」

「ちゃんともうおかずは作ってあるから、ご飯が炊ければ――」

「炊飯器、動イテナイゾ?」

「えっ!? 嘘!?」

「やっぱり、五月雨は一人で十分だわ」

「とりあえず、江風が我慢できそうにないから夕飯にしようよ」

「ねぇねぇ五月雨、因みに今日の献立は?」

「明太子、明日葉と卵の炒め物、豚肉の味噌漬け、大根のお味噌汁です!」

「……米、必須じゃん」

「私、どこかで余ってないか聞いてきます」

「春雨食エバ解決ダロ」

「それは貴女と春雨だけね」

「……ごめんね」

「謝る暇があったら料理暖めてきなって、今日のは今までで一番の出来って言ってたろ?」

「へー、それは僕も楽しみだな」

「夕立も早く食べたいっぽい!」

「……はい!」



 五月雨を、集めてはやし、最上川。
 激流になっている間はとても危険で近寄りたくないかもしれないが、いずれ穏やかな姿を見せる。
691 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/11(火) 21:39:16.98 ID:STX1hRRko
>スーパー超絶ドジっ子な最上
いつもより多く三隈にぶつかってそう

乙カレー
692 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/12(水) 09:48:47.67 ID:0uGaco1SO
乙です
693 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/07/22(土) 01:14:53.79 ID:S2GLzvb50
 風雨に晒され、時の流れのなかで、朽ちていく。それが自然の理で、誰であっても、何であっても、逆らえはしない。
 歴戦の艦娘であればあるほど、何かしらの不調をその身に抱えて生きている。
 ――彼女も、そんな艦娘の一人である。




「初めまして、Admiral。私がElizabethです」

「イムヤから話は聞いてる。滞在中は好きに鎮守府の施設は使ってくれて構わない。ただ、外部の者には立ち入りを許可していない区域もあるというのを理解してもらえると助かる」

「えぇ、心得ているわ。Don't worry、イムヤに迷惑がかかるようなことはしたくないもの」

「あぁ、そう言ってもらえると有難い。――因みにこれは確認だが、手を貸すのは無礼にあたるのか?」

「純粋な好意や善意を無下にするようなことはしないわ」

「そうか、うちにはお節介焼きが多いんで念のために確認させてもらったが、問題無さそうだな」

「ふふ、Dinnerぐらいは私のペースで食べさせてもらえるのかしら?」

「そこまでじゃ……ない、多分」

「――イムヤから聞いてはいたけれど、本当に不思議な人ね」

「普通だぞ、ただのどこにでもいる軍人だ」

「普通のAdmiralは国を越えて名前が知れ渡ったりしないわ」

「普通の艦娘も国を越えてその武勇が伝わったりしないけどな」

「……Sorry」

「こちらこそ悪かった。ここではエリザベスとしてもてなすから、安心してくれ」

「Queenとして?」

「跪いて手の甲に口付けでもすればいいのか?」

「面白そうだけれど、イムヤに怒られそうだからやめておくわ」

「そりゃ残念だ。じゃあゆっくりしていってくれ、お姫様」

「えぇ、そうさせてもらうわ」




(あの作戦で無理をし過ぎて解体されたと聞いていたが、生きてたのか……イムヤの奴、どうやってイギリスの神器なんかと知り合ったんだ?)
694 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/22(土) 22:52:53.42 ID:3my/5BI2o
おつん
695 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/08/03(木) 00:17:14.72 ID:J7Sg5r270

・鈴熊『資格給』?、投下します

インテリア家具
696 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/08/03(木) 00:18:28.77 ID:J7Sg5r270
「あり得ませんわ!」

「いや、仕方ないじゃん? お給料も上げてくれるっぽいしさ」

「仕方なくありませんことよ!」

「……話を続けてもいいか?」

「あーはいはい、続けてー」

「改二で軽空母になれば、偵察機よりも監視の精度は上がる。今までとは艦装がだいぶ変わるが、警備員の仕事には差し支えないだろう」

「提督的にはそれで問題ない感じ?」

「お前らが航巡だろうが軽空母だろうが、有事の際にはそれに合わせるだけだ。鈴谷と熊野が望んだことなら、何も問題はない」

「だから、私は納得出来ませんわ!」

「ドラム缶部屋に持っていっていいからちょっと落ち着け」

「部屋に……それは素敵ですわね」

「ちょっ、鈴谷も相部屋なんだからやめてって! 部屋にドラム缶とかちょー邪魔なんですけどー?」

「インテリアとして見ればよろしくってよ」

「話を戻すぞー。今までも陸奥や長門では即座に察知できない案件に対応して貰ってきたが、軽空母なら更にカバー出来る範囲も増えてくる。それに応じて若干支給額に色を付けていいと大淀達も認めている。後はお前達がどうありたいかなんだが、どうする?」

「鈴谷はなるよ、軽空母」

「熊野は?」

「……ドラム缶、約束でしてよ?」

「……本当に置くのか?」

「鈴谷はんたーい!」

「先に勝手に決めたのは鈴谷ですわ。私も勝手に決めます」

「別に鈴谷だけなってもいいし」

「そんなの絶対許しませんことよ」

「続きは部屋でやれ、明石と夕張には伝えておく」

「熊野はドラム缶と仲良くしてればいいじゃん」

「この前の賞味期限ギリギリのプリンのことまだ根に持ってますの?」

「べっつにー」

「……いいから部屋に帰れ!」
697 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/08/03(木) 00:19:32.85 ID:J7Sg5r270
「熊野ー」

「何ですの?」

「嫌なら別にいいよ、無理してなんなくて」

「別に嫌じゃありませんわ」

「大好きなドラム缶、標準装備出来なくなるよ」

「無理矢理載せます」

「いやいや、流石に無理……ってここじゃ言い切れないのが怖いわー」

「鈴谷にも載せてあげてもよろしくってよ?」

「あっ、うん、大丈夫」

「……どうして、今更新しい改装の話など出たのか不思議ではなくて?」

「そりゃーアレよ、もしものためってやつ?」

「もしも、なんて考えたくもありませんわ」

「そう難しく考えなくてもお給料弾んで貰えてラッキー、でいいじゃん」

「……鈴谷はいいですわね、悩みが無さそうで」

「これでも鈴谷ちょー悩み事あるんですけどー?」

「明日のランチや次に遊びに行くのはどこがいいか、とかではなくって?」

「そういうのも大事じゃん」

「はぁ……呆れてものも言えませんわ」

「じゃあ鈴谷が勝手に決めて良いよねー」

「ちょっとお待ちなさい! 私は次こそロイヤルホストがよろしくってよ!」

「えー、それならサイゼでいいじゃん」

「今回ばかりは譲りませんわ!」

「鈴谷今月あんまりお金使いたくないんですけどー……」





 知っていましてよ、今の仕事にやりがいを感じていること、軽空母になれば万が一の時も直ぐに探せると考えていること。
 ずっと隣に居て気付かないとかあり得ませんわ。お調子者に見えて実は真面目で、嘘が下手なんですから。
 心配されて悪い気はしないけれど、私だって同じ様に大切に思っていることを忘れないで欲しいですわ。
 ――それにしても、ドラム缶、どこに置くのが一番ベストか悩みますわね。
698 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/08/03(木) 08:38:23.92 ID:J7Sg5r270
次のリクエストは今日のヒトフタマルマルより三つ受け付けます
699 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/03(木) 09:57:31.69 ID:vB0LGmHD0
了解です。
それにしても熊野のドラム缶愛は誰にも止められないな
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/03(木) 12:00:00.27 ID:OdkJpgljO
天津風と汗だくセックス
701 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/03(木) 12:00:11.20 ID:vB0LGmHD0
赤城さん(R18)
702 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/03(木) 12:00:17.83 ID:ZvVmp89BO
秋月
703 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/03(木) 12:00:37.25 ID:6HQ3mvW5O
衣笠
704 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/08/03(木) 13:40:44.01 ID:J7Sg5r270
・天津風『真夏の秘め事(R-18)』

・秋月『妹が個性的すぎて私の影が薄い気がする』

・衣笠『衣笠丼』

以上三本でお送りします
705 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/08/12(土) 22:13:55.38 ID:JLyLhH+h0
undefined
706 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/08/12(土) 22:15:56.48 ID:JLyLhH+h0
 私の主人は足が速い。急に走り出して、追いかけるのが大変なこともよくある。
 昔は寂しげな表情を浮かべて全てを振り切るように海を航行していたが、今はもっぱら陸を縦横無尽に笑顔で駆け回っている。本当に、とても楽しそうに。
 きっと、私の体が彼女達に近ければ、言葉が話せたなら、主人も孤独感をあんなに感じずに済んだのだろう。ただただ、その後ろをついていくことしか出来なかったことが、とても歯痒かった。
 兵器ではなく、ただの友人として彼女と過ごせたなら、それはとても幸せなことだっただろう。
 いずれ、この身は主人より早く役目を終えてしまう。だけど、同時に主人がいつまでも笑って暮らせる世界が訪れたということだ。
 その隣にいれないのは凄く寂しいけれど、あの笑顔が永遠に曇らないなら、私に悔いはない。
 ――だから、それまでは精一杯隣に居よう、同じ物言わぬ仲間と共に。



「何たそがれてるの連装砲ちゃん、行くよ!」

(行くってどこに――ちょっと待ってってばー島風ちゃん!)
707 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/08/12(土) 22:44:32.87 ID:JLyLhH+h0
 一日の始まりは大抵、日の出前後。老人はどうしてこう朝が早いのか。
 寝癖を軽く整えて、寝間着のまま台所へ直行すると、夕べのうちにタイマーセットしておいた炊飯器の米をかき混ぜる。
 釜で炊けとか言っていたボケ老人には釜を全力で投げつけたが受け止められた、まだまだしぶとそうだ。
 朝食の献立は焼き鯖、大根の味噌汁、筑前煮、茄子のおひたし。昨日の残り物もあるから調理にそう時間はかからない。
 味が薄いと最近うるさいが、歳を考えろと言うとおとなしくなる。念のために言っておくが、健康診断で引っ掛かられると面倒なだけで心配など微塵もしていない。
 食事の準備を済ませ、着替えてから庭に回り、手近な小石を木刀の素振りをしている背後から投げ付ける。
 ――残念ながら、今日も弾かれた。



 食事を終えて暫くすると、迎えの車が到着する。基本的に、完全にスイッチを入れるのはここからだ。
 二人が家に居る間は、朧・曙・潮の三人が交代制で周囲を警戒している。水入らずの時間を少しは取って欲しいという配慮らしいが、別にどっちでもいい。ただ、多少気を抜けるのは有り難いのでお言葉に甘えている。
 最近でこそ平和になったが、闇討ちや狙撃、爆弾などのトラップは飽きるほど経験してきた。後処理が非常に面倒なので、本当にやめて欲しい。
 どうせ老い先短いくたばりぞこないなんだから、放っておけばいいのに。
708 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/08/12(土) 22:45:08.16 ID:JLyLhH+h0
機密って何だっけというレベルで露出している艦娘の今後についての議論。予算、情報規制、必要性のアピール方法、安全性のアピール方法、各国との連携、野良艦娘の保護等、議題は尽きない。勢いを失ったとはいえ、艦娘否定派が完全に消えたわけではない。愛人だろうという下卑た視線も、恐ろしいものを見るような視線も、未だに感じる場面は無くならない。
 それでも私は、この場に立つことを苦痛とは全く思わない。




「とうとう気でも触れたんですか?」

「冗談で娘をくれなどとぬかすから脅したまでじゃ」

「本気だったら?」

「三枚におろしてやるわい」

「嫁にすらいかせてもらえないんですね」

「儂の目の黒いうちはやらん」

「さっさとくたばるぴょん」

「いーやーじゃー」

「……じゃあ、しょうがないですね」




 他の誰かにこんな面倒な老人任せられない。仕方ない。しょうがない。
 ――だから、これ以上面倒を増やす奴は首置いてけぴょん。
709 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/12(土) 22:54:41.18 ID:5G+tmPuaO
うーちゃん?
710 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/08/12(土) 23:10:36.36 ID:JLyLhH+h0
ヴォーパルバニー卯月です
711 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/08/12(土) 23:11:16.17 ID:JLyLhH+h0
undefined
712 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/08/12(土) 23:11:48.43 ID:JLyLhH+h0
「いててて……そりゃこっちの台詞だ、今にも泣きそうな顔でフラフラと歩いていきやがって。この辺道路の反対側に渡る場所少ないから苦労したぞ」

「あー、アレね、目にゴミが入っちゃってさー」

「目にゴミが入った程度で弱るような奴だったか?」

「うるさいなー、北上様だってそういう日もあるんだよー」

 泣いていた顔を見られたくなくて、咄嗟に北上は顔を背けた。しかし、気になることもあるのでそれを確認する。

「さっきの女の人、置いてきて良かったの?」

「あぁ、下らない用事ならもう終わったから問題ない。今頃結婚記念日ドッキリの準備に取りかかってるだろうよ」

「結婚記念日、ドッキリ?」

「さっきのアイツ、海軍学校の同期でな、同期同士で結婚して退役したんだが、旦那にドッキリ仕掛けるから付き合えと無理矢理呼び出されたんだよ……それで、浮気ドッキリ用の腕組んだ写真は提供してやったから後は知らんと逃げてきた」

「……鼻の下、伸びてたじゃん」

「……根掘り葉掘り聞かれてたんだよ、色々と」

「色々って、何を?」

「色々は色々だ、ほら、さっさと帰るぞ!」

「ちょっ、気になるじゃんかさー教えてよ」

「うるさい、勘違いして泣いてた奴は黙って歩け」

「教えないと大井っちにチクるよ?」

「おいコラ、冤罪で海に沈めようとするな」

「はいはい、分かりましたよーだ」

「――バーカ」

「ん? 何か言った?」

「何でもねぇよ。ついでだからラーメンでも食って帰るか」

「おっいいねぇ、じゃあゴッテゴテのギットギトのにしましょっかね」

「断固拒否する!」
713 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/08/12(土) 23:12:29.15 ID:JLyLhH+h0
「元気そうだったよ、アイツ」

「何で来てねぇんだよ、あのバカ」

「私の色仕掛けなんてサラッと流して、自分のところの艦娘見つけて血相変えてすっ飛んでっちゃったのよ」

「はっはっは、話には聞いてたけどあんな偏屈で頑固な奴を落とした艦娘達にゃ一度会ってみてぇなぁ」

「一度会いに行ってみる? まだいっぱい話聞きたいし」

「そうだな、会いに行ってやるとするか。我等が英雄様の鎮守府にな」

「今から目に浮かぶわ、物凄く嫌そうな顔が」




――提督、海に沈めるって言いましたよね?

 ――俺はやましいことは何もしとらん。

――北上さんを泣かせた時点でギルティです。

 ――北上、お前からも何か言え。

――そういえばあの時、息を荒げて変態みたいに襲おうともしてきたよねー。

 ――北上ー!?
714 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/08/12(土) 23:15:04.75 ID:JLyLhH+h0
 近場のコンビニに出掛けるときは、上下ジャージ、サンダル、勿論ノーメイク。戦いが終わってからは以前にも増して緩い雰囲気で、マイペースが歩いているようだとどこかのあぶなんとかが言っていた。
 何故か駆逐艦になつかれるようで、ウザいウザいと言いながらお菓子をあげていたりもする。常に渡す為に多めに買っているのではと指摘すると、にへらーと笑うだけだった。
 ――だから、彼女のその表情はとても貴重なものだろう。
715 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/08/12(土) 23:15:41.21 ID:JLyLhH+h0
(提督と、露出の高い、うちの艦娘じゃない、女)

 コンビニに出掛けた北上と道路をはさんで、女性と歩く提督の姿。それを見る彼女の顔には、表情がなかった。
 自然とその足が二人の方へ向かい始めたのも、唯一の装飾品である指環を右手で固く覆うように握っているのも、無意識だ。

(母親、にしては若すぎるよねー。姉妹、一人っ子って言ってたじゃん。誰なんだろうねー、あの女)

 鎮守府の誰と歩いていようが、それは普通のことだ。だが、一般人とおぼしき女性と提督が歩いているのは異常――そこに思考がたどり着いた時、北上は足を止めた。

(……まぁ、現状の方が異常なんだよねー)

 提督は人だ、普通に一般人として生活する選択肢も存在する。彼がそれを万が一にも望んだとしたら、否定する権利は自分にはないと北上は来た道を戻ろうとした。
 しかし、何故か徐々にぼやけていく視界がおかしくて、立ち止まって目を擦る。擦っても擦っても一向に視界は鮮明にならず、脇道の壁に寄りかかって蹲る。

(おっかしいね、整備不良かな、全然止まんないや)

 あり得ないと頭で分かっていても、心はそれを受け入れない。結婚式の時、ケッコンカッコカリした時、自分を迎え入れてくれた時、想い出が、胸を締め付ける。

(いやーまいったね、意外に乙女だ、私)

 この程度でここまで取り乱していることに驚きつつも、徐々に冷静さを取り戻してきた彼女は、目の前に息を荒げて自分を見下ろす男の存在に気づく。こんな時に変態か何かか、とより冷静になった北上は立ち上がるのと同時に拳を振り抜き、顎を打ち抜いた。

「弱ってる女の子の前で息を荒げてたんだから、今のは正当防え――ありゃ?」

「おはへ、おへひはんはふらひへほはるのは?」

「……提督、何やってんの?」
716 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/08/12(土) 23:16:19.68 ID:JLyLhH+h0
「いててて……そりゃこっちの台詞だ、今にも泣きそうな顔でフラフラと歩いていきやがって。この辺道路の反対側に渡る場所少ないから苦労したぞ」

「あー、アレね、目にゴミが入っちゃってさー」

「目にゴミが入った程度で弱るような奴だったか?」

「うるさいなー、北上様だってそういう日もあるんだよー」

 泣いていた顔を見られたくなくて、咄嗟に北上は顔を背けた。しかし、気になることもあるのでそれを確認する。

「さっきの女の人、置いてきて良かったの?」

「あぁ、下らない用事ならもう終わったから問題ない。今頃結婚記念日ドッキリの準備に取りかかってるだろうよ」

「結婚記念日、ドッキリ?」

「さっきのアイツ、海軍学校の同期でな、同期同士で結婚して退役したんだが、旦那にドッキリ仕掛けるから付き合えと無理矢理呼び出されたんだよ……それで、浮気ドッキリ用の腕組んだ写真は提供してやったから後は知らんと逃げてきた」

「……鼻の下、伸びてたじゃん」

「……根掘り葉掘り聞かれてたんだよ、色々と」

「色々って、何を?」

「色々は色々だ、ほら、さっさと帰るぞ!」

「ちょっ、気になるじゃんかさー教えてよ」

「うるさい、勘違いして泣いてた奴は黙って歩け」

「教えないと大井っちにチクるよ?」

「おいコラ、冤罪で海に沈めようとするな」

「はいはい、分かりましたよーだ」

「――バーカ」

「ん? 何か言った?」

「何でもねぇよ。ついでだからラーメンでも食って帰るか」

「おっいいねぇ、じゃあゴッテゴテのギットギトのにしましょっかね」

「断固拒否する!」
717 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/08/12(土) 23:16:54.12 ID:JLyLhH+h0
「元気そうだったよ、アイツ」

「何で来てねぇんだよ、あのバカ」

「私の色仕掛けなんてサラッと流して、自分のところの艦娘見つけて血相変えてすっ飛んでっちゃったのよ」

「はっはっは、話には聞いてたけどあんな偏屈で頑固な奴を落とした艦娘達にゃ一度会ってみてぇなぁ」

「一度会いに行ってみる? まだいっぱい話聞きたいし」

「そうだな、会いに行ってやるとするか。我等が英雄様の鎮守府にな」

「今から目に浮かぶわ、物凄く嫌そうな顔が」




――提督、海に沈めるって言いましたよね?

 ――俺はやましいことは何もしとらん。

――北上さんを泣かせた時点でギルティです。

 ――北上、お前からも何か言え。

――そういえばあの時、息を荒げて変態みたいに襲おうともしてきたよねー。

 ――北上ー!?
718 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/08/12(土) 23:20:39.93 ID:JLyLhH+h0
また失敗した…

・連装砲ちゃん物思いに耽る

・首狩りウサギの日常

・魚雷乙女

でした

リクエストはもうちょっと待ってください……
719 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/08/13(日) 07:09:06.46 ID:JRuqMZdF0
連装砲ちゃんめっちゃええ子やん……
720 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/13(日) 09:39:04.41 ID:EFthoRGF0
乙です
721 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/09/07(木) 23:38:23.06 ID:EIQq/S7e0
・天津風『真夏の秘め事』投下します
722 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/09/07(木) 23:38:49.01 ID:EIQq/S7e0
 ニュースで流れる現在の気温は三十六度、人間の体温とあまり変わらない。日本の夏は湿度の高さのせいで不快指数が高く、クーラーの効いた部屋から出たくないと思う人間は少なくない。
 だから、こんな暑い中でくっついてる二人が居るとすれば、夏で浮かれているか頭が暑さでおかしくなっているかの二択である。
 彼等が前者であるか、後者であるか、それは見る人の主観次第だ。




「暑い」

「暑いわね」

「一つ提案があるんだが」

「嫌よ」

「……頭の匂い嗅いでやろうか?」

「この炎天下の中、島風と追いかけっこしたいならどうぞ?」

「熱中症には気を付けないとな、だから少し――」

「嫌よ」

「汗でブラのライン浮いてるぞ」

「だから?」

「ホック外しちまうぞ」

「フロントだから難しいんじゃない」

「……離れないと揉むぞ」

「そんなに離れて欲しいの?」

「離れたいんじゃなくて暑いんだよ、この和室に扇風機しかないのはお前も知ってただろ」

「たまにはこういうのもいいじゃない」

「普通汗だくになるのって嫌がらないか?」

「何だか背徳的な感じでいいと思うけど」

「お前も大概変わってるな」

「アナタにだけは言われたくないし」

「……少し大きくなってるよな」

「それが分かるぐらい揉まれたもの」

「ちょっとは色のある反応をしてくれ」

「……わざわざ汗で透ける服選んだんだから察してくれない?」

「変態だな」

「アナタの髪と足フェチも大概よ」
723 : ◆7xTYM/aOv2 [sage saga]:2017/09/07(木) 23:39:46.35 ID:EIQq/S7e0
 シャワーすら浴びず、汗だくのまま互いに身体を求め始める。
 唇を重ねれば、汗の味。透けている服は肌にへばりつき、とても脱がせにくい鎧のようになっていた。

「あんまり乱暴にしないで、ボタン取れちゃうから」

「ボタンぐらいすぐに縫えるだろ」

「……これ、アナタから奪ったシャツなの」

 少し恥ずかしそうに顔を背け、奪ったと告白する姿は、とても提督には愛らしく見えた。と、同時に嗜虐心も鎌首をもたげた。

「っ……いきなりね」

「脱がすのが面倒になった、濡れてるし問題ないだろ」

 ショートパンツの中へ手を突っ込み、強引に指を滑り込ませる。汗以外の液体で指先が濡れるのを感じながら、提督は少し中を乱暴にかき回す。
 急な刺激に身体を震わせた天津風の体から汗が飛沫のように舞い、彼の頬へとかかった。

「ちょっと待って、あんまり掻き回しちゃ……んぅっ!?」

「あんまり動くな、ボタンが飛ぶぞ?」

「……今日は一段と意地悪ね」

「人のシャツを盗んだ罰だ」

「黙って持っていったのは悪かったけど、これは……」

「誘ったのはそっちだろ、何か不満か?」

「……もう、好きにすれば?」

 承諾を得たなら遠慮はいらないと、もう片方の手をシャツの下から突っ込み、ブラの下にある桜色の突起を親指と人差し指で転がすように弄る。それと同時に首筋に舌を這わせ、恥じらう顔を横目に眺めた。
 多少身長差のせいで提督にとっては体勢が辛いのもあり、余計に指に力が入って擦りあげられた快感に堪えきれず、軽くイッた顔は、女の匂いと相まってとても妖艶に彼には思えた。
724 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/07(木) 23:49:07.41 ID:Z+OZCIGkO
わっふるわっふる
725 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/09(土) 14:20:31.65 ID:VxpKSbzqo
ふぅ
726 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/09/25(月) 22:42:47.43 ID:om2j+I5c0

・秋月『妹が個性的すぎて私の影が薄い気がする』、投下します
727 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/09/25(月) 22:44:02.97 ID:om2j+I5c0
「秋月姉、一緒に遊ぼー」

「私ト遊ブンダヨネ、秋月姉」

「姉さん、缶詰のストックが足りないから買い足してきた」

「今洗濯物畳んでるんだから引っ張らないで、初月は備蓄食料って言葉の意味を辞書で調べてきて」

「じゃあ終わったら一緒に遊ぼ」

「何スル? 的当テ? 潜水艦ゲーム?」

「馬鹿にしないでくれ姉さん。備蓄食料は腹が減っては戦ができぬからすぐに食べられるよう確保しておく食料のことだろう?――この鯖缶もなかなか美味いな」

(……贅沢かもしれないけど、長十センチ砲ちゃんと二人の頃の静かな生活が恋しい)

「秋月姉」

「秋月姉ッテバ」

「間宮さんにシュールストレミングを仕入れて欲しいとお願いしたら断られたんだが、買っても構わないか?」

(……きっとお母さんってこんな感じなんだろうなぁ)

 深海棲艦と双子みたいになっている妹、気付けば缶詰を食べている妹、二人に比べれば普通という自己認識をしている秋月からすれば、少し羨ましいと思う面もあった。
 しかし、長女であるからしっかりせねばと自由奔放な妹達の面倒を見るので精一杯で、最近は秋月自身の自由な時間が無く、何か趣味の一つでも持とうにも余裕がない日々である。
 そんな彼女に、いつものように悩んだ様子もなく彼はこう言った。



「クレー射撃でもやってみるか?」
728 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/09/25(月) 22:44:42.20 ID:om2j+I5c0
 妖精さんの仕事は早い。提督から言われた翌日には、新たな娯楽施設がそこには誕生していた。

「ここに弾を込めて、こうやって撃つ」

「若葉、やったことあるの?」

「ゲームセンターだけでは満足できなくなって、色々とやってる」

(初霜が部屋に色々物騒なものが増えたって言ってた気がするけど、若葉のだったんだ……)

「艦載機程不規則には飛ばないが、風の影響を受けやすいし射撃時に微妙な調整が必要だ。艤装とは多少勝手が違うのに注意した方がいい」

「うん、教えてくれてありがとう」

 とんでも兵器を量産している妖精さん達からすれば、クレー射撃用の銃を作ったり安全に加工したりは至極簡単で、今秋月が持っているものも彼女に合わせて調整されていた。
 試しに構えてみると、驚くほど手に馴染み、早く撃ってみたいという気持ちが秋月に沸き上がってきた。

「的一つにつき二射まで、最初だから的は十個にしておく」

「分かった。じゃあお願い」

 横で応援するように長十センチ砲ちゃんがぴょこぴょこと動いているのを撫でてから、構えて集中する。
 最初は色々と戸惑いもあったが、今の彼女には目の前に飛んでくる的のことしか頭になかった。

(――来た。軌道を読んで……今!)

 一射目、命中。

(次は……ここ)

 二射目、命中。

(よし、次も――あっ)

 三射目、失敗。

(今度は風もちゃんと計算して……ここ!)

 四射目、命中。

(このまま最後も絶対、当てる!)

 五射目、命中。

「――――ふぅ」

「どうだった?」

「思っていた以上に楽しかったかも」

「そうか、それは良かった」

「……もう一回やってもいい?」

「気が済むまでやっていくといい」

「うん!」




「流石は防空駆逐艦だな」

「いいストレス解消になっている」

「不要なガラクタとかを再利用してるからエコにもなる」

「外すと勿体ないと言っていたぞ」

「勿体ないって、アイツらしいな……」

「提督、お前もどうだ?」

「遠慮しとく」 
729 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/09/25(月) 22:45:11.84 ID:om2j+I5c0
「秋月姉、最近ちょっとおかしくない?」

「クレー射撃ノイメトレダッテ」

「よし、今日は大和煮の缶詰にしよう」

(急な風が吹いても対応できるようにこうして……でもこれだと低空に合わせづらいかな……)
730 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 21:59:28.25 ID:WZYCY9st0
これで涼月もくるんですよね、、、頑張れ秋月さん
731 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/11/11(土) 00:20:14.98 ID:70WzCzds0

・衣笠『衣笠丼』?、投下します
732 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/11/11(土) 00:21:07.80 ID:70WzCzds0
「衣笠さん食べられちゃうの!?」
 
「食わん、最近胃もたれが酷い」

「そういう問題なの……?」

「それより、自分の名前の食い物だ、しっかり共食いしろ」

「言い方!」

「油揚げと玉葱、シンプルだが美味いぞ」

「提督、衣笠さんの扱い雑じゃない?」

「俺の扱いが雑になってる奴が多すぎるせいだろ」

「それだけ信頼してるってことだと思うよ。提督だって、今更気を遣われたら居心地悪くない?」

「一理ある。ただな、忘れてると思うが、俺、お前らの提督な」

「ねぇねぇ提督、このゆずシャーベット後で頼んでもいい?」

「……衣笠茸のシャーベットを作らせて食わせてやる」

「うん、絶対食べないからゆずシャーベット頼むね」

「青葉もお前も段々からかいがいがなくなってきてつまらん」

「慣れもするってば、青葉なんて大体秘書艦日の次の日はベッドで悶えてたし」

「じゃあ今度心霊ツ――」

「そういうのは青葉の担当だから普通にデートしよ?」

「今してるだろ」

「次は水族館行きたい!」

「寿司か?」

「食べることから離れてよ」

「気付かないうちに営業再開してたんだな、水族館」

「生態系の異常な変化がないかとか、深海棲艦が潜んでないかとかで、結構時間がかかったみたい」

「流石に青葉のアシか、そういう情報には詳しいよな」

「あの子の嗅覚にはまだまだ敵わないけどね、どっから仕入れてくるのか分かんないネタの山でいっつも整理が大変なの」

「……危ないネタにはあまり深く触れないように釘刺しといてくれ」

「心配しなくても大丈夫だって、ちゃんと手綱は握ってるから」

「そうか、ソロモンの狼もリードがついてりゃ問題ないな」

「――何より、提督を悲しませるようなことをあの子がするはずないし」

「そりゃ助かる」

「じゃあそろそろ行こうよ提督」

「あぁ、そうだな」



――――何かあの魚、イ級っぽいね。

 ――――(イ級は流石にうちの奴等みたいになってないはず……だよな?)
733 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/11/11(土) 23:12:56.94 ID:70WzCzds0
今から3つ受け付けます
734 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 00:06:18.32 ID:I8fTA6PZO
マックス r-18
735 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 00:09:14.60 ID:VY17aDrcO
神風
駄目なら春雨
736 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 00:11:13.97 ID:YJyxzkkro
舞風
737 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 00:33:33.77 ID:7SltDVENO
夕張
738 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2017/11/12(日) 10:24:26.73 ID:9DOpqGys0
・マックス『ふーん』(R-18)

・神風『陸』

・舞風『野分が野分を呼んできた』

以上三つでお送りします
739 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 17:39:33.52 ID:4uKslUAC0
了解です
740 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/20(水) 03:41:33.57 ID:ANfjM/JmO
ほっしゅ
741 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/02/09(金) 23:42:12.92 ID:E/iVPKx40
・マックス『ふーん』(R-18)?、投下します
742 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/02/09(金) 23:45:22.49 ID:E/iVPKx40
 特別、私は秀でてはいない。寧ろ、平凡という評価が相応しい。
 レーベもそうだ。私達二人は、別に優秀だから日本に送り出されたわけではない。
 ただ選ばれた、それだけ。本国との関係性がある限り最低限の生活は保証される。
 だから、何があっても問題ない――はずだった。



「ふーん……ふーん……ふー……ん?」

「ねぇマックス、僕には不思議なものが見えてるんだけど、君にも見える?」

「えぇ、見えるわ」

「そっか、僕がおかしくなったわけじゃなかったんだね」

 地図を頼りに馴れない土地をさ迷いながら、たどり着いた鎮守府。そこで待ち受けていたのは――。

「『おいでませドイツ艦娘!』……」

「歓迎、されてるのかな?」

「そうなんじゃない」

「あはは、ちょっと予想外だったね」

 入口にでかでかと掲げられた看板。あまりにも鎮守府という場所にそぐわない異物に若干戸惑いながら、私達はそこへ足を踏み入れた。
 その時の私達はまだ知らなかった。ここが、なんと呼ばれているのかを。
743 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/02/09(金) 23:46:17.64 ID:E/iVPKx40
「――いや、これは、その、待て」

「ふーん……朝からインスタントのズッペ……ふーん」

(ヤバい、だいぶ怒ってる)

「それを飲んでいるなら私のズッペはいらないわね」

「飲む、飲むからとりあえずその寸胴を置け」

「ふーん……飲むのね」

「その良い匂い嗅いで飲まないって選択はないだろ」

「じゃあ、全部飲んで」

「・・・寸胴鍋いっぱいのそれをか?」

「嫌なの? ふーん……そう、別にいいけど」

(どうしてうちの艦娘はたまにフードファイトさせようとするんだ、俺は赤城じゃないんだぞ)

「あー……とにかく、それはそこのコンロの上に置け。流石に冷める前には飲みきれん」

「――ふふっ、冗談よ。一緒にブロートもどう?」

「ビスマルクのやつか?」

「今日は私が作ったの」

「ほー、そりゃ楽しみだ」

「ビスマルク程上手には作れなかったけど、このズッペには合うと思うわ」

「マックスのズッペも評判がいいのは聞いてるぞ、何故かプリンツが自慢してたが」

「プリンツが来てから集客はいいのよ、心底不思議だけど」

「ははは、割とドジだが憎めん奴だからだろ」

「――私は、どうなの?」

「隠れファンが居て、店の客の一割はお前目当てだって青葉が調べてたぞ」

「ファン、私に……?」

「レーベやプリンツのファンとは違ってふれあいとかを求めてるわけじゃなくてな、ズッペを綺麗に飲んで会計の時に今日もありがとうって帰っていくそうだ。レーベが嬉しそうに話してたよ、マックスも裏方ばっかりやってないでホールもたまにやってくれたらもっとお客さんが増えるのに、ってな」

「ふーん……そう」

「お前ももうちょっと自分に自信を持て、少なくとも俺は今嬉しいぞ」

「――なら、そうしてみるわ」
744 : ◆7xTYM/aOv2 [sage saga]:2018/02/09(金) 23:47:06.02 ID:E/iVPKx40
 執務室の椅子に向い合わせで座り、ギュッとしがみついて普段はなかなか伝えきれない感情を身体で表現する。積極的に、大胆になれと言った彼の言葉を、彼女はただ実行しただけである。だからして、今の提督の置かれた状況は自業自得である。

「マックス、お前、何して……」

「舐めてるわ」

「俺は味見する必要ないだろ」

「そうね」

「そうねじゃないが」

 欲しい。もっと欲しい。求めるままにマックスは提督を襲う。舐めるだけでは満足できず、首筋に噛みつき痕をしっかりと残す。
 少し痛みで身体を強張らせるも、彼も抵抗せずそれを受け入れていた。

「ドイツにも吸血鬼が居たんだな」

「流石にこれはお店でズッペとして出せないわ」

「出されてたまるか」

 丹念に傷口を舐めた後、背徳的な行為に火照ってきた身体をもて余すかのように、更に激しく身体を抱き締め、唇を貪る。当然ながら、彼女が絡ませた舌からは血の味がした。
 見上げるその目は潤んでおり、頬は上気している。ここまで求められて、与えないという選択肢が、今の提督には存在しない。

「んっ……なに……?」

「この制服、手間が省けていいよな」

「っ……着替え、持ってきてな――んんっ!?」

「もう遅いだろ」

 指を這わせ、擦り、なぞり、押す。背中に爪をたて、肩を噛み声を抑えるが、マックスのその姿が更に提督を昂らせた。
 首を横に振る彼女の弱々しい制止を優しく押し退け、指を更に中へと滑り込ませる。

「ふぅん……こういう時は、強引っ、なのね……」

「じゃあやめるか?」

「……ズルいわ、貴方は」

 深く、もう一度唇を交わし、お互いに想いを重ねる。既にほぼ脱がされかけていた下着はその役割を全うできなくなっており、簡単に彼女の秘部に提督のそれは宛がわれる。

「――痛く、しないでね」

 か細く耳元で発せられたその願いは、今まで提督が聞いてきたマックスの言葉のなかで、一番可愛らしいものだった。
745 : ◆7xTYM/aOv2 [sage saga]:2018/02/09(金) 23:48:22.12 ID:E/iVPKx40
「くぅっ……ふー……んんっ!」

 濡れてはいても狭い中を、押し広げ、進めていく。時折身体を激しく震わせる彼女を気遣いながら、提督は必死に自制する。
 たっぷりと時間をかけて、ようやく抵抗の一番強い場所へたどり着くと、マックスの方から再びキスをせがんだ。

「――ふぅっ……貴方のモノに、して」

 聞き終えると同時ぐらいに、提督は腰を深く彼女の中へと突き出す。ヌルリと何かを抜けた感触を味わいながら、奥まで深く貫かれ今までにない刺激に身を震わせつつも耐えるマックスの表情を、彼はじっと眺めていた。
 最初は虚ろだった視線が徐々に定まり、見つめられていることに気付くと恥ずかしそうに顔を背けた。
 だから彼は、何の前触れもなく服の中に下から手を突っ込んだ。

「えっ? あっ、ダメ、んぅっ!?」

 彼がささやかな膨らみを両手で揉み上げると、同時に少し彼女の体が浮き、手の力を抜くと彼女の中をまた提督のモノが突き進んだ。

「やめて……これ、恥ずっ……あんっ!」

 とうとう耐えきれず出た喘ぎ声に、更にマックスは顔を真っ赤に染める。決して激しくはないが、初めての感覚に翻弄され続け、彼女は為されるがままになっていた。
 そして、知らず知らず声はより艶のあるものに変わっていた。

「もう、ダメ、変、これ、んんぅっ!?」

 既に挿入に抵抗はなく、提督は徐々にペースをあげていく。マックスの体力もそろそろ限界だと判断し、反応が一番強い辺りを一気に攻め立てる。

「マックス……」

「何、何か、来る……提督、提督ぅっ!」

 しがみつく彼女の中に白濁した液体が注がれ、そのままマックスは提督へと崩れ落ちるように身体を預ける。繋がったままの結合部からは、体勢を変えた拍子に下へ白いものがこぼれていった。

「……提督」

「……何だ」

「ダンケシェーン」




「後、腰が抜けて動けないわ」

(暫く誰も来ないことを祈るか)
746 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/02/10(土) 00:07:11.28 ID:waPrQ81u0
「えへへー」

「こら、重いからやめろ」

「あたし、そんな重くないよー」

「昔に比べたら重い」

「女性に向かって重い重いって言うのはいけないことだってむっちゃん言ってたよ?」

「いいから降りろ、今から新しく迎える子供と初顔合わせだってのに何で寝間着のままなんだ」

「司令官、選んでー」

「お前なぁ……普通にセーターとスカートでいいだろ。長門が頭から湯気出しながら選んだヤツ」

「じゃあそうするー」

「早く着替え――ってここで着替えるやつがあるか!」

「だって、司令官に見られてもあたし恥ずかしくないよ?」

「……見られて恥ずかしくない身体だから隠せ」

「えへへー司令官のエッチー」

「いいからとっとと着替えて行ってこい!」

「はーい」

(……全く、成長ってのは恐ろしいな)




「身寄りのない子供を引き取りたい、だと?」

「うん、あたしね、皆と楽しく遊んでるのが一番好き。でもね、一度だけ急に来なくなっちゃった子が居たの。お父さんもお母さんも事故で死んじゃって、遠くの施設に引き取られたって他の子が教えてくれたんだ。その子、ずっと泣いてたんだって……あたしね、司令官やむー姉達が文月をここに連れてきてくれて本当に嬉しかったんだ。だから、あたしも何か出来ないかなって、思って……」

「……」

「やっぱり、無理、だよね……」

「――手続きや申請、艦娘という立場、色々と問題を挙げればキリがない。何かあればここの存続にも大きく関わりかねない。正直言って、鎮守府にとってはデメリットしかない」

「うん……」

「だが、俺はお前達のやりたいことをやらせてやる為にいる。本気でそう思ったなら、ちゃんと責任を持って全力で行動しろ」

「っ……はい!」
747 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/02/10(土) 00:08:01.59 ID:waPrQ81u0
(あれから地獄のような書類と話し合いの末に、安全面を押しに押して“特別保護施設”として国に認めさせるまで五年……今じゃ四人もチビの面倒を見るお母さん、か)

「嬉しくもあり、寂しくもあるな」

「何を黄昏てんだよ。あのチビ達が危なくないように、しっかり頼むぞ警備長」

「当たり前だ、この長門が居る限り、不審者など一歩たりとも近付けさせん」

(こいつもあの頃と比べれば変わったな、未だに部屋は凄い有り様だが……)



 
「おかあさんは、どうしておとうさんとけっこんしたの?」

「えへへー司令官はねー、あたしのヒーローだったの」

「おとうさん、おかあさんよりつよいの?」

「おとうさんはねー、すっごく弱いよ。でも――」




 ――テメェ何考えてやがんだ! たかだか一作戦の功労者争いの為に何人も犠牲を出すつもりか!

 ――分かった。うちの戦果はそっくりテメェにくれてやる。だから今からその文月はうちの艦娘だ! それで文句ねぇな!?

 ――その、なんだ……成り行きでこうなっちまったが、嫌じゃなければうちに来るか?




「――すっごく、優しいの」
748 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/02/10(土) 00:10:30.12 ID:waPrQ81u0
なんとなく文月

もっちーと鳳翔もそのうち書いてるの気まぐれ投下予定
749 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/02/10(土) 08:01:55.72 ID:Aoi7GYuPO
750 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/02/10(土) 09:40:09.32 ID:nHNrsfvx0
乙です
751 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/02/26(月) 14:34:18.25 ID:FrkCOtyt0
・神風『陸』?、投下します
752 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/02/26(月) 14:35:25.97 ID:FrkCOtyt0
「――最近の艦娘は普通に着任しちゃいけない決まりでもあるのか?」

「流石僕の姉貴、意表をついてくれる」

「神風、推参しました。司令官、これからよろしくお願いします」

「あぁ、よろしく頼む。――で?」

「その水槽、何?」

 提督と松風と着任したての神風は今、執務室にいる。提督は椅子に、松風はその横で立っていて、神風はというと――カート台車の上の水槽で水に浮かんでいる。

「これは、その、やむにやまれぬ事情があって」

「まぁそういうのには慣れてるからいいが、普通にここで生活するには不便そうだな」

「この際だから全面バリアフリーにでもするかい?」

「それもありかもしれん」

(何この司令官、松風も平然とし過ぎじゃない……? だって水槽よ? このレベルのおかしさに慣れてるって、どれだけこの鎮守府変わり者だらけなの?)

 ――かみかぜは こんらん している。

「提督、遊ビニ来テアゲタワヨ」

「リト、ちょっと今忙しいから金剛のところにでも行ってろ」

「アラ、ワザワザ来テアゲタ私ヲ無視――ッテコラてーとく、私ハ金剛ノトコロニ行クナンテ一言モ言ッテナァァァァ……」

「相変わらず面白いね、あの子達」

「あんな奴等に負けかけてたかと思うとたまに虚しくなる」

(今のって大きさはだいぶ縮んでるけど深海棲艦、よね? ここに住んでるの? 普通に暮らしてるの?)

 ――かみかぜは ますます こんらんしている。

「それで神風、部屋なんだが――」

「提督、ヒトゴマルマル、午後の甘味はいかがですか?」

「帰れ!」

「今のはほっぽの真似なのか? 全然似てなかったよ」

「そういうのいいから早くソイツ追い出せ!」

「かしこまりました。すぐにこの二人を追い出して瑞穂と二人っきりになりましょうね」

「お前に言ったんじゃない!」

「瑞穂は今日も平常運転のようだ」

(……この鎮守府、まともな人居ないのかも)

 ――かみかぜは かんがえるのを やめた。
753 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/02/26(月) 14:36:10.60 ID:FrkCOtyt0
 ――数日後。

「どうだ神風、不自由なことはあるか?」

「お陰様で大丈夫です。強いて言うなら……」

「何だ、何かあるなら遠慮なく言ってみろ」

「普通に対応され過ぎて逆に怖いです」

「そのうち嫌でも慣れるから安心しろ、ここの半数以上が歩んできた道だ。水槽に入ってる程度なら気にもならなくなる」

「……どうしてこうしてるかは、書類で知っているんですよね?」

「書類にあったことだけはな」

「私、陸に上がると動けないほど気持ち悪くなるんです。最初は目眩程度だったのがどんどん悪化して、今ではこうして海水の入った水槽がないと海から上がることすら出来ないんです」

「艤装を常時着用は弾薬とかを込めなきゃ問題ない。別に邪魔になるわけでもない。後はその不便さの解消と、特にこれをこうしてほしいとかはあるか?」

「……ここから出ろとは言わないのね」

「出たいなら出ればいい、それを決めるのはお前だ。俺じゃない」

(本当に自由なのね、ここって。じゃあ少しお言葉に甘えても、いいかな)

「――このまま自力で動けるようにって、出来る?」




「まずはありとあらゆる施設のバリアフリー、それからオートバランサーの付いた手動自動切り替え型の歩行水槽。勿論強度は最高クラスだ、頼めるか?」

「メカ夕張、推定作業時間は?」

「二百時間もあれば可能です」

「よし、じゃあまずは榛名さんと武蔵さん、大和さんに協力要請。それから明石に神風ちゃんの個人データ送って発注。着工スケジュールは霧島さんに出来次第送って施設の解放時間の打ち合わせ。手が足りないようなら日向さん、利根さん辺りに頼んで」

「オッケーです、マスター」

(……予想の遥か上過ぎて怖い)

 ――かみかぜの りくにたいするきょうふが ご あがった。
754 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/02/26(月) 14:38:00.24 ID:FrkCOtyt0
鎮守府を猛スピードで駆け抜ける水槽
755 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/02/27(火) 01:43:50.67 ID:EDNlJc0po
おつなのさ
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/02/27(火) 10:58:43.32 ID:d4TVTuTl0
乙です
他にあの水槽に乗りたい(入りたい)って言う人いるだろうな
757 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/02/27(火) 21:01:07.66 ID:JLhFD6rK0
舞風『12時に切れる魔法』に変更します

投下は来週までには出来る予定です
758 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/05(月) 02:53:44.37 ID:XCstBv/A0
>>756
sage進行のスレをなぜわざわざageんの?
759 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/03/05(月) 21:52:10.32 ID:HEzz1bxk0
舞風『12時に切れる魔法』、投下します
760 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/03/05(月) 21:53:07.16 ID:HEzz1bxk0
 ――踊る、踊る、優雅に踊る。

「ダンス、覚えてくれたんだ」

 ――踊る、踊る、少女は踊る。

「足、踏まない程度にはな」

 ――踊る、踊る、心は踊る。

「ドレス、変じゃない……?」

 ――踊る、踊る、胸が踊る。

「あぁ、よく似合ってる」

 ――踊る、踊る、夜空に踊る。

「何か、全部夢みたい」

 ――踊る、踊る、月が踊る。

「夢で、いいのか?」

 ――踊る、踊る、世界が踊る。

「うん、だから――これでおしまい」
761 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/03/05(月) 21:53:55.65 ID:HEzz1bxk0
「もういいのか?」

「いいの、もう十分」

「あれだけ踊りたがってたくせに、えらくあっさりしてるな」

「だって、幸せすぎて夢から覚められなくなりそうだから」

「――ガラスの靴を、置いていけばいいだろ」

「私にお姫様なんて似合わないって」

「それなら俺だって王子って柄じゃない」

「ほらね? だから、終わりでいいの。私は艦娘で、提督は提督。ここはお城じゃなくて鎮守府で、皆と暮らす今を守るのが私のやりたいこと」

「……魔法が解けるには、まだもう少しあるな」

「提督……?」

「お前がそんなに夢から覚めたいっていうなら、望む通りにしてやるよ」

「それって――」




――――舞風、舞風ー?……ダメね、全然聞こえてないわ。

 ――――(昨日の提督、カッコ良かったなぁ……またあんなキスして欲しいな……)
762 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/03/05(月) 21:55:33.68 ID:HEzz1bxk0
次のリクエストは3月6日マルマルマルマルより3つ受け付けます
763 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/03/05(月) 21:56:30.45 ID:HEzz1bxk0
 戦った。戦い続けた。腕が折れたこともあった。足の骨が見えたこともあった。それでも私は戦った。ただただ敵を葬り続けた。
 ある時、急に体にガタがきた。既に前線で戦っている最初の仲間は私一人になっていた。その仲間の一人に頼まれ、後進を育成することになった。
 どうすれば艦載機は意のままに動き、敵の攻撃を掻い潜り、仕留められるかを毎日毎日骨の髄まで叩き込んだ。
 鬼、悪魔、血の通っていない鉄の女、そう陰で呼ばれていたこともあった。ただ生き残り、ただ敵を倒す術を教えていただけだというのに、彼女達には仲間の血と肉で作られた航路の上を歩いている自覚が無いのだろうと、私は思った。
 こうしている間にも、前線では仲間が一人、また一人と散っている。無為に命を散らせての現状維持など、何の意味もない。

(あの二人が残してくれた活路、絶対に守らないと)

「――その顔、どうにかならないの?」

「……笑い方なんて、忘れてしまいました」

「そんなんじゃお嫁の貰い手がなくなるぴょん」

「貴女は別の意味で無さそうですね」

「大きなお世話でぇーっす」
 
「――ねぇ、卯月」

「何だぴょん?」

「ここで私がこうしていることが、本当に終戦への手助けになっているんでしょうか」

「少なくとも、あのまま前線で戦い続けて沈まれるよりはなってるぴょん」

「まだ、普通になら戦えます」

「――貴女は敵を倒したいの? それとも仲間を守りたいの?」

「……さぁ、もう分からなくなってしまいました」

「だったら、一度思い切って戦いから離れてみたらどう?」

「そんなこと出来るわけ――」

「卯月を、誰の秘書艦だと思ってるぴょん」

「……貴女が羨ましいわ」

「結構大変よ、老人の介護って」

「いつかは、貴女みたいに見つけられるのかしら」

「“手を伸ばさぬ者は願うなかれ”、まずは自分で色々やってみるぴょん」

「あの御方の言いそうなことですね。――それにしても、いつの間にか似てきたわね、貴女」

「それ、全然嬉しくない」



(私の、私だけの為すべきこと……本当にそんなもの、あるのかしら)
764 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/06(火) 00:00:12.28 ID:cMzRbdmMO
イムヤR-18
765 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/06(火) 00:00:32.33 ID:35QWmSSAO
朝風
766 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/06(火) 00:00:41.20 ID:nrvF3XY0O
秋月
767 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/03/06(火) 00:14:49.98 ID:cL1/napS0
・イムヤ『忘れられない』R-18

・朝風『三分の一』

・秋月『病気』

以上三本でお送りします
768 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/06(火) 09:58:53.61 ID:saEjmAsG0
了解です
769 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/03/08(木) 23:39:21.72 ID:NfR/XS+M0
 宛もなく、目的もなく、ただ逃げていた。野草を食み、海で魚を獲り、その日をただ生きていた。
 理由なんて無かった。ただ色々なことがどうでも良くなって、フラリと散歩でもするように逃げ出した。
 逃げてから数十回目の日没と日の出を見た頃、どこかの鎮守府の裏手の山で野宿していたら、楽しそうな声に目が覚めた。

(一……二……三……艦娘三人と人間が一人か)

 スコープ越しに覗いた先には、夜空を見上げてはしゃぐ駆逐艦と、その保護者のような男が一人。ラフでそんな雰囲気は一切無いが、艦娘と一緒に居る以上司令官と見て間違いない。

(……アタシもあんな風になれる可能性があったんかねぇ)

 自分には与えられなかった、信頼と信用が生まれるかもしれない日常。気付けば、スコープの先へと右手を伸ばしていた。

(――もう遅い、か)

 伸ばした手を引っ込め、スコープから顔を背ける。そこにある幸せは、自分には眩しすぎたから。
 ただ、暫くここに居るぐらいはいいかもしれないと、そう思った。
770 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/03/08(木) 23:40:05.77 ID:NfR/XS+M0
undefined
771 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/03/08(木) 23:40:49.80 ID:NfR/XS+M0
「――そんな話はなかったが、拾ったのなら面倒を見ろ。着任申請は出しておく」

 翌日提督執務室に連れていかれたアタシを待っていたのは、尋問や睦月への叱責でもなく、まるで捨て猫を拾った子供への対応だった。
 この鎮守府、大丈夫なのかと悩むアタシの横では、ぴょんぴょん跳ねながら嬉しそうに腕を引っ張る姉の姿。うん、やっぱりダメかもしれない。っていうか眼鏡がずれるからやめて欲しい。

「あのさ、ちょっといい?」

「何だ? 分からないことは睦月に聞けば問題ないぞ」

「食料庫に忍び込んでた素性の知れない艦娘に何も聞かないの?」

「言いたいなら言えば良い。結果は変わらずここで面倒を見るだけだ。腹を空かせてボロボロの服で鎮守府に忍び込むしかないようなお前を放り出しなんぞしたら、俺はお前の姉に一生恨まれる。帰りたい場所があるなら話は別だが」

「それは……」

 迷う。その言葉を信用していいのか、ここに居ていいのか、そもコミュニケーションというものがほぼ皆無な環境だったのだから、より一層頭の中で思考が縺れていく。
 答えが出ず、急に渇いてきた喉が更に言葉をつまらせる。そんな時、不意に体が横へ引っ張られた。

「えと、何……?」

「大丈夫、大丈夫だよ」

 心臓の音が、聞こえてくる。素性がバレていないかとか、ここに居たら迷惑をかけるんじゃないかとか、そんな考えが頭に浮かんでは、スーっと消えていった。優しく、温かい体温に包まれていると、自然と複雑に絡んでいた思考がほどけて、一つだけが残った。

「――アタシ、ここに居たい」




 ――目標を確認、これより特務を開始します。
772 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/03/08(木) 23:41:31.58 ID:NfR/XS+M0
 ここに今居る睦月型は睦月・如月の二人。気を遣われたり、昔の話を聞かれたりもせず、ただ妹として迎え入れられ、逆に落ち着かないのが数日鎮守府で過ごした感想だ。
 牽制の為に司令官へ面倒事は一切引き受けないと言ったが、自分のことを自分でするならそれで構わないと返され、本当に普通の生活というものが送れていた。
 幾つかの鎮守府を見てきたけれど、ここ以上に“日常”というものを感じさせるところはなかったように思う。
 ――だからこそ、それは由々しき事態だった。



「砲撃も魚雷も対空も赤点、ある意味すごいなお前」

「しゃーないじゃん、戦ったことほとんどないし」

(海の上では、だけど)
 
「んー……まぁ慣れれば問題ないだろう。とりあえず、睦月達と暫く海の上で鬼ごっこでもしてろ」

「鬼ごっこって、普通演習とかじゃねーの?」

「まずは海上での動きに慣れろ、陸上と一緒の感覚で動くから反動で照準がブレるんだ」

「……りょーかい」

 今までほとんど任務は陸の上。海はほぼ移動経路でしかなく、反動のキツイ装備は固定して使用が基本だった為、単装砲すら撃てばブレてしまう。
 こんなことなら、多少なりともアイツみたいに海上での戦闘も経験しておくべきだったかもしれない。




「あっ、鬼は神通な」

「それごっこじゃなくね?」
773 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/03/08(木) 23:42:16.80 ID:NfR/XS+M0
 徐々に鎮守府での生活も慣れてきて、ただの艦娘としてこのまま過ごしていけるかと思った、秋の夜。姉二人より先に風呂から上がり部屋へ戻ると、昔のように音もなく、彼女は窓辺に立っていた。

「――久しぶり、“月光”」

「……」

「とりあえず、表出てからでいい? 今は風呂入ってるけど、十分もしたら二人とも戻ってくるし」

「十分もいりません。このまま――特務を遂行します」

「相変わらず融通きかねぇなー全くもうっ!」

 接近主体の元相棒の力量はよく知っている。正直言って、本気で来られたら一分ももたない。
 それでも、せめて僅かの間楽しい時間を過ごせたこの部屋を自分の血で汚したくはなかった。

(なんとか気を逸らして外へ――)

「随分、甘くなりましたね!」

「ぐぅっ!?」

 脇をすり抜けようとした途端、横っ腹に強烈な一撃をもらい壁まで吹き飛ばされる。なんとか受け身はとれたものの、状況は絶望的だった。

「……殺らないの?」

「……」

 目の前で鈍く光っている鉄の爪。彼女がその気になれば、一瞬で自分の首は宙を舞うだろう。
 しかし、いつまで経ってもその瞬間は訪れなかった。

「……て」

「?」

「どうして?」

 消え入りそうなか細い声と、頬を伝い落ちた雫。それを見たとき、ようやく気付いた。
 ――私は、逃げ出した理由を置いてきてしまっていたんだ。

「……三日月ってさ、シャンプーとか使ったことある?」

「シャンプー……? いったい何を言って――っ!?」

 咄嗟に手元に隠したトラベル用のシャンプーを顔に向かって投げつけ、同時に突進して押し倒す。長い付き合いで反射的に爪で防御することはわかっていたからこそ、出来たことだ。
 物騒なものが床に当たって忙しなく音を立てているが、気にしている余裕はない。

「こっの、ちょっ、暴れんなってば!?」

「私は、零番隊旗艦として特務放棄を許すわけにはいかないのっ!」

「そんなめんどくさいもんに縛られて生きてて楽しいのかよっ!」

「だって、私も貴女もそれしか生き方を知らないじゃない!」

「ずっと見てたなら分かんじゃん!」

「分かりません!」




「――おりょ? 喧嘩?」
774 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/03/08(木) 23:43:00.53 ID:NfR/XS+M0
「……」

「やばっ、むー姉逃げて!」

 出会ったときと同じように、何の敵意も、警戒も見せず、ただ部屋の入り口からこちらを眺める姉。見られた以上、三日月が彼女を放置するはずがない。
 それだというのに、いつもと変わらず満開の花のような笑顔で、とてとてと歩み寄ってくる。正直、ここまで頭の中がお花畑だとは思っていなかった。

「――月影、これが貴女の選択の代償です」

「待て三日月!」

 動揺で緩んでいた拘束を振りほどき、三日月が姉へと迫る。
 ――ダメだ、間に合わない。

「っ……え?」

「喧嘩するのはいいけど、ちゃんと仲直りしないとダメだよ? こんなのつけてたら邪魔だから外すにゃしぃ」

「な、何するの、放してっ」

「ん〜、また妹が増えて睦月、感激ー」

「むぐぅぅぅっ!?」

(……マジで?)

 向かってくる爪を押し退けた左手から血を流しながら、力一杯姉は三日月を抱き締めている。アレは普通に怪我を負うより痛いはずなのに、そんなことはお構いなしだ。
 あまりの事態に混乱してもがいている三日月を見ていると、どういうわけだか笑いが込み上げてきて、大声で笑ってしまった。
 その後、髪を乾かして戻ってきた如月姉にお願いして司令官を連れてきてもらって彼女の処遇を決めてもらったり、ケガしてることすら忘れてはしゃぐむー姉を如月姉と手当てしたり、どうしていいか分からず戸惑う三日月に色々な話を聞かせたり、一晩中その日は賑やかに過ごした。
 結局、この話で何が伝えたかったかって言うと――私達姉妹は、皆むー姉には頭が上がらないってこと。




――――今もその時の傷、残ってるよ?

 ――――どうしてそれをそんな嬉しそうに見せられるのさ……。

――――だって、三日月がここに来た記念にゃしぃ。

 ――――(やっぱむー姉もいい意味でだけどぶっ飛んでるわ)
775 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/03/08(木) 23:46:35.15 ID:NfR/XS+M0
むつきがたはいいこばっかりです
776 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/09(金) 10:32:39.82 ID:ziYCpjZLo
睦月の圧倒的包容力
777 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/03/12(月) 00:57:28.95 ID:FJwxr0YXO
「うーちゃん、人間とか正直どうなろうが知ったこっちゃないぴょん」

「はっはっは、そりゃ困ったな」

 私達の出会いは、こんな風だった。今よりもひねくれていた私と、今よりも能天気な当時は少将だった元帥。
 協力的な艦娘達に対してですら、何か化物を見るような視線が大半だというのに、非協力的な私にしつこく話しかけてきたのが、あの人だった。
 不自由はないか、飯はどうだ、好きなものはあるか、気になるものはあるか、とにかくついてきて話しかけてくるので凄く鬱陶しいと何度も思った。
 どうせ戦わせる為のご機嫌取りだろう、そう思って意地悪なことも何度も言った。しかし、予想に反してある程度は要望に応え、出来ないときは“今は無理だ”と頭を下げてきた。
 それでも当時の私は意地が悪く、酷いことを言ったり、変わらず非協力的な姿勢を貫いていた。今にして思えば、見た目通り子供だったのだと思う。
 やがて、少しずつ深海棲艦との戦いに艦娘が投入され、私にも出撃命令が出された。
 行かない、と口にした私を、あの人は叱責した。行け、責務を果たせ、と。結局他の人間と変わらない、所詮はコイツもただ戦わせたいだけだったんだと思った。何故か胸が苦しくなったのを無理矢理誤魔化すように、私は海に出た。
 あまり語られてはいないが、私を含めた“始まりの艦娘”は最初からそこそこの強さと僅かながら特異な能力を持っていた。それでも苦戦するほどに、最初期の戦況は壮絶だった。
 ――だから、そこへ送り込むという選択しかなかったあの人の心中など、あの時の私はこれっぽっちも知りはしなかった。
778 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/03/12(月) 00:58:23.96 ID:FJwxr0YXO
「卯月!」

「うるさいぴょん」

「どうして撤退命令を無視した!」

「勝ったんだから文句言われる筋合いないでぇーっす」

「馬鹿者っ! 大局を見て動けっ! たかだかあの程度の作戦で轟沈などしてみろ! いい笑い者だ!」

「っ……別に人間にどう思われようがどうでもいいぴょん」

「お前という奴は……次に命令に背いた時は厳重処罰も覚悟しておけっ!」

「――大丈夫だったかぐらい、言ったらどうなんだぴょん」




 今にして思えば、この時もあの人は色々な事を考えてくれていたのだろう。艦娘が命令に背けば反対派の攻撃材料になりかねず、艦娘の立場も危ぶまれる。取るに足らない作戦で轟沈が出れば、所詮はその程度と評価される。
 そんな危うい行為をした後も私達が普通に過ごせていたのは、きっとあの人が身を粉にして艦娘という存在を守ってくれていたからだ。
 ――あの厳しい言葉の一つ一つに込められた想いに私が気付けたのは、もう私達が半分に減ってしまった後の事だった。
779 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/03/12(月) 00:59:12.22 ID:FJwxr0YXO
「……何でだぴょん」

「……」

「何で……何であの二人を見殺しにした!」

「お前達の、私達の、未来の為だ」

「ふざけるなっ! 神通はお前を慕ってた! 信濃はいつか皆で平和な世界を旅しようって、それなのに何で……何で二人が沈まなきゃいけなかったのっ!?」

「そうしなければ、作戦は失敗していた」

「……そっか、そうだ。所詮は、ただの道具だもんね、私達。沈もうが、体が吹き飛ばされようが、敵に食われようが、胸が痛むはずないもんね」

「……必要だった」

「黙れ」

「あぁするしか、なかった」

「黙って」

「尊い、犠牲だった」

「いいから黙れっ!」

「黙ってなどいられるかあっ!!」

「っ!?」

「あの犠牲を誇らねば、あの二人は名すら残せない! あの犠牲を乗り越えて進まねば、あの二人は無駄死にでしかない! あんな犠牲を出さねば戦況を覆せなかった現状を、世に知らしめることができない! もうあんなことはたくさんだ! 決死の覚悟で戦場を駆けるお前達を、安穏と遠くから眺める奴に笑われてなるものか! 俺の頼もしき戦友を、優秀な部下を、愛すべき娘達を、誇れぬ世などあっていいはずがない!」

「……ただの夢想を叫んで、どうしたいの?」

「夢想で終わらせる気など毛頭ない。俺は人と艦娘が共に歩める世界を作る。それが、俺に出来る唯一の手向けだ」

(――あぁ、そっか。だから二人とも最期は笑って……)

「……やるぴょん」

「む?」

「お前一人じゃ出来そうにないから、手伝ってやるぴょん」

「人間は嫌いなんじゃなかったのか?」

「今も嫌いだぴょん。でも――」




 ――――不細工なその泣き顔は、嫌いじゃないぴょん。
780 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/03/12(月) 01:00:09.09 ID:FJwxr0YXO
 ――聞こえるか?

「聞こえないぴょん」

 ――よし、聞こえとるな。

「どうして出撃中までその声を聞かなきゃいけないぴょん」

 ――まぁそう言うな。交戦中は通信を切っておくし、邪魔はせんさ。

「それで? 用件は何だぴょん」

 ――いや何、ようやくお前を俺の秘書艦とする手筈が整ったのを知らせておこうと思ってな。

「勝手にうーちゃんを秘書艦にするんじゃねーぴょん」

 ――ふむ、では武骨大将がお前を気に入っとるようだからあちらに行ってみるか?

「……帰ったら覚えてろぴょん」

 ――かっかっか、おぉ怖い怖い。

「そろそろ、交戦開始するぴょん」

 ――うむ、待っとるぞ。

「…………」

 水平線の彼方に、揺らめく敵が見える。数は四十と少し。
 対してこっちはたったの一人。先の大規模作戦で主力を半数も失い、まともに敵の主力級と戦えるのはたったの三人。後進育成なんてとてもじゃないけど間に合わない。比較的安全になったのは近海付近のみで、沖に出れば相変わらず深海棲艦は掃いて捨てるほどいる。前線の戦況は最初期に比べれば多少マシといったところでしかない。
 それでも、不思議とこの身は戦意に高揚している。

「ふふっ、くふふっ、あはははははっ!」

 清々しい。本当に清々しい。これでようやく、下らない大義名分を放り投げて自分の為だけに戦える。どうしようもなくバカな夢想の為だけに、この命を賭けられる。
 ――さぁ、さっさとその首を置いてくぴょん。
781 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/03/12(月) 01:01:01.57 ID:FJwxr0YXO
「そういえば、結局卯月ってどのぐらい戦果上げたの?」

「そんなの覚えてないぴょん」

「元帥は“バカな夢想を実現できる数じゃ”って言ってたけど」

「朧、あのクソジジイの言うこと真に受けちゃダメだぴょん」

「ふーん、じゃあ毎年カレンダーにこっそり丸してるあの日は何の日なの?」

「あっ、うーちゃん用事思い出したぴょん。その話はまた――」

「それ、私も気になってました」

「ちょっ、何鍵かけてるぴょん」

「卯月ちゃんはもうちょっと素直に色々と私達に話してくれてもいいと思う。ね、曙ちゃん」

「うえっ!? べ、別に私はどっちでも……」

「ほら、曙ちゃんも気になってるみたいだし」

「一言もそんなこと言ってないぴょん!」

「それで、何の記念日?」

「……娘に、された日」

「じゃあその日は二人でどこかにお出かけだね」

「うん、そうだね」

「スケジュール、ちょっと調整しとくわ」

「別に気を遣わなくていいぴょん」

「逆だよ卯月ちゃん。私達に気を遣いすぎ、少しぐらいわがまま言ってくれていいんだよ」

「二人が喜ぶなら、私達も嬉しい」

「あんた達二人とも働きすぎなんだから、ちょっとは休めば?」

「余計なお世話だぴょん。……でも、今回はお言葉に甘えます。ありがとう」




――――あー、いい湯じゃ。

 ――――……。

――――何じゃ卯月、珍しく静かじゃの。

 ――――……せ。

――――む?

 ――――背中、流しましょうか、お父さん。
782 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/15(木) 03:18:51.74 ID:KC88wasA0
ええ話や
783 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/28(土) 18:57:33.42 ID:d6PWD8QZo
784 : ◆7xTYM/aOv2 [sage saga]:2018/04/30(月) 19:30:40.13 ID:/YlOTnzV0
イムヤ『忘れられない』、投下します
785 : ◆7xTYM/aOv2 [sage saga]:2018/04/30(月) 19:31:09.84 ID:/YlOTnzV0
 提督が目を覚ました時、彼女はもうそこに居た。いつものスマホは携帯しておらず、その視線は彼だけに向けられている。
 表情に翳りがあるわけでもなく、何か思い詰めた表情をしている訳でもない。それだというのに、提督が彼女を抱き締めたのは、何度もその目を見てきたからかもしれない。

「今日は朝からどうした」

「司令官の顔が見たくなったの」

「こんな面で良ければ好きなだけ見とけ」

「うん」

 綺麗な桃色の瞳に見下ろされながら、ただただ彼女が満足するまで待つ。大抵は五分もすればいつものイムヤに戻るので、あまり提督も気にはしていなかった。
 しかし、この日はどこか様子が違っていた。

「――ねぇ、司令官」

「ん?」

「イムヤのこと、ずっと忘れずに居てくれる?」

「そんな薄情な奴だと思うか?」

「言葉ではどうとでも言えるもの」

「じゃあどうして欲しいんだ」

 聞いてから提督は気付く。それはこの鎮守府で何度も感じ、その度に大変な目に遭った感覚。
 ――狙われている、という感覚に。



――――忘れられないように、するの。
786 : ◆7xTYM/aOv2 [sage saga]:2018/04/30(月) 19:32:01.40 ID:/YlOTnzV0
「んっ……はむっ……」

 奪う、という言葉が相応しい程にイムヤは提督に繰り返しキスをする。息継ぎもせず、ただただ求め続ける。唾液を全て交換するかのように舌を絡める。このまま私に溺れてしまえばいいと、ひたすらに、ただひたすらに。

「――ふぅ」

 離れるのを惜しむように、唇と唇の間に糸が紡がれる。その糸が切れるのを見計らって提督は口を開こうとするが、再び柔らかい唇がそれを塞いでしまう。

(……安心するまで、好きにさせ――いや、ちょっと朝からこれはマズイ)

 股間を這う手。以前から積極的な行動を見せることも多かったイムヤだが、今回は最も積極的だと言えた。
 提督は少し考えた後、“執着”を避け、画面越しに世界を見ることを望んだ彼女を引き戻した責任を取るべきだと抵抗せずに受け入れることを選んだ。

「――司令官、イムヤは司令官のものなんだよ?」

「そうだな」

「イムヤは、ここに居るんだよ」

「ちゃんと掴んでるぞ」

「なら、もっと求めて、イムヤを」

 イムヤは握られた手を自分の胸へと引き寄せ、押し付ける。心臓の鼓動が手を通じて伝わり、確かにここに居るのだと提督に証明する。

「んっ……もっと強くしてもいいよ?」

「脱がなくていいのか?」

「この服、可愛い?」

「あぁ、似合ってる」

「――うん、脱がせて」

 提督の上から一度降り、足元へとイムヤは座る。フリルブラウスにデニムパンツ、普段から活発さと可愛らしさを兼ねた服装を好む彼女らしい服装だ。
 上を脱がせた後、ベッドに寝かせて下も脱がせていく。その最中も、何度も何度もイムヤはキスをせがみ、力強く提督を抱きしめた。
 もうお互いの唾液を二往復ぐらいはさせたのではないかと感じるぐらいの時間をかけて、ようやくイムヤの上下を提督は脱がし終える。普段は結んでいる髪の毛も、自然とその最中にほどけてベッドに広がっていた。

「ねぇ司令官、スク水とこういう普通の下着、どっちがいいの?」

「どっちも」

「どうして欲しい?」

「お前はどうされたい」

「激しく、して」
787 : ◆7xTYM/aOv2 [sage saga]:2018/04/30(月) 19:32:47.07 ID:/YlOTnzV0
 首筋に刻んで欲しい、求められている証を。名前を呼んで欲しい、“私”が必要だと。包み込んで欲しい、どこにも行けないように。満たして欲しい、寂しくないように。
 きっと、彼女は分かっている。そのどれもがもう今更願わずともよいことに。



「そこっ! 突いて、もっと、もっと!」

 部屋中に響く声で、髪を振り乱して、欲望をさらけ出す。呑み込んだモノを思うように動かし、ただただ快楽を追求する。
 間違いなく、翌日ベッドで深く潜航して悶絶しているのが予測できるが、“今”の彼女も提督は受け入れる。

「出すときは、言ってね? 私も一緒に、イクからっ!」

 提督が突き上げるのに合わせて腰を深く落とし、うねらせ、喘ぎ、誘う。これだけせめられてまだ出していないのは、これから先を考えるとなるべく体力を温存したいというのが彼の本音だった。

「好きっ、好きよ司令官っ! いいよ、イッて!」

 一番深くまで何度も潜り既に限界まではりつめていたものを、彼女の奥底にぶちまける。それを全て受け止めた後、提督の耳元まで顔を近付けてポツリとイムヤは呟く。




――――子供、出来るようになったら何人欲しい?
788 : ◆7xTYM/aOv2 [sage saga]:2018/04/30(月) 19:33:35.83 ID:/YlOTnzV0
「お昼、何が食べたい?」

「“朝飯”、な」

「うっ……だって仕方無いじゃない。あぁなりたくてなってるわけじゃないもん」

「とりあえず、体力回復出来るもんにしてくれ」



 翌日、イムヤは本当に布団から出てこなかったそうな。
789 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/04/30(月) 19:38:28.96 ID:/YlOTnzV0
「Admiral」

「エリザベスか、どうした?」

「先ほど廊下で不思議なものを見かけたのですが、あれは何ですか?」

「あぁ、多分神風の水槽だろ。訳あって作らせたんだ」

「Japanの技術力は流石ね。私の国にあそこまでのtechnologyはありませんでした」

「日本というか、妖精と暇人達の暇潰しの結果だ。時折オーパーツが出来てるから目を離せんのが玉に瑕だが」

「例えば、アレは正式に依頼をすれば私のこれも作ってもらえるのですか?」

「――艤装一体型の車椅子は、悪いが作ってやれん」

「Sorry、少し考えれば分かることでした」

「すまんな。その代わり、整備や調整ならいくらでも言ってくれて構わん。大事なイムヤの客人に変わりはない」

「それだけでもとても嬉しいわ」

「……こっちへは休養みたいなものか?」

「えぇ。勿論、イムヤに会いに来たついでですけど」

「護衛の必要性は無いにしても、よく許可が下りたな」

「私はもう浮き砲台にも等しいただの一隻の艦娘です。着の身着のまま旅をしても別に不思議なことはないわ」

「――質の悪い浮き砲台も居たものだ」

「うおっ!? 何だ、武蔵か」

「初めまして、武蔵。貴女達の活躍はよく知っています」

「それは光栄だな、英国最強のオールドレディーに知ってもらえているとは」

「今の私は、ただの旅行中のElizabethです」

「……ふっ。それはすまなかったな。ここはとても居心地がいい、帰る気がなくならないように精々気を付けることだ」

「おい、縁起でもないことを言うな」

「Don't worry.その時は貴女に迷惑はかけません」

「あぁ、そう願っているぞ」

「言うだけ言って行きやがったなアイツ……もう国に帰りたくないとか言い出さないよな?」

「それは絶対にあり得ないわ。でも……sorry、admiralに言っても仕方ないことね。私もこれで失礼します、Bye.」

「あぁ、またな」



(私だけの幸せ、本当に私に見つけられるのでしょうか、Queen)
790 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/02(水) 23:18:25.61 ID:4JGiCw2lo
乙カレー
791 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/05/06(日) 21:20:32.31 ID:bYGiu8qd0
・朝風『三分の一』?、投下します
792 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/05/06(日) 21:21:08.56 ID:bYGiu8qd0
「……何なのかしら、この既視感」

「朝……朝はまだなの……」

「あっもしもし浦風? 散歩の途中でいつもの光景に出くわしたんだけど、ちょっと神風か松風探してもらえない? 多分、この服だと同型艦だと思うの。――特徴? えっと、朝ってずっと言ってるからもしかしたら川内と真逆なんじゃないかしら」

「朝日……朝日を……」

「とりあえず、このままにしておけないから連れて帰るわ。提督にも連絡しておいて貰える? えぇ、えぇ、ありがとう。それじゃあ切るわね――ふぅ、これでよし、と」

「夜なんて……無くなればいいのに……」

(川内とは仲良くなれそうにないわね……)

 行き倒れ艦娘を拾い、夜の散歩から帰る大鳳。通りすぎた警官が会釈だけで何も聞かない辺り、この町での彼女たちへの信頼が窺い知れる。
 最も、色々と騒動を起こして顔が広い、というのが大鳳の場合は主な理由である。

(終戦後も次々に増えてるけど、やっぱり提督から艦娘を引き寄せるフェロモンでも出てるのかしら)

 まだ正式に所属していない艦娘や提督とケッコンカッコカリしていない艦娘も、いずれはどうせ出られなくなっていくんだろうなと、大鳳は自分の昔を思い返しながらゆっくりと帰路を歩くのだった。



「えーこちら鈴谷ー大鳳がお姫様だっこで艦娘を連れ帰る事案が発生ー」

「仕方ないでしょ、背負うよりこっちのが楽だったんだから」
793 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/05/06(日) 21:22:08.38 ID:bYGiu8qd0
 ――翌朝。

「朝日! 朝日よ!」

「お、おぅ……」

「うちの妹がすみません……」

(こうして見ると、ボクだけ普通だな)

「それで、何で行き倒れてたんだ?」

「昼にはここへ着くはずだったんですけど、ちょっと道に迷ってしまったの」

「半日で行き倒れって……お前の妹は燃費がとんでもなく悪かったりするのか?」

「いえ、単純にこの子の場合は……」

「どうせ姉貴のことだから、朝以外に動くのがてんでダメなんだよ」

「松風、そんな昔の夜戦大好きなアイツみたいな奴が――」

「昼と夜なんて無くなってしまえばいいのよ」

(居たのか……)

「朝! 朝! 朝! でいいの。東から朝日が昇った後に西からも朝日が昇って、順番に四方から太陽が昇ればずっと朝だわ」

「地球が終わって朝どころじゃなくなるがな」

「長女は水槽の中、次女は朝日大好きっ子、ホントボクの姉妹は面白いな」

「ちょっと松風、私は別に好きで水槽の中にずっと居るわけじゃないからね?」

「ここって凄い物が作れる艦娘が居るんでしょ? ここだけずっと朝に出来る機械とか作れたりしないの?」

「仮に作れても絶対に作らせねぇよ、そんな危険物」

「何よ、ここって艦娘の願いを何でも叶えてくれる魔法の鎮守府じゃないの?」

「どんな噂が広まってるか知らんが、ここは普通の鎮守府だ」

「え?」

「ははっ、その冗談はちょっと無理があるよ司令官」

「とにかく、別にここへの着任は拒みはしないが、その願いは却下だ!」

「……いいわ。ここに居れば、幾らでも機会はあるもの」

(最近は瑞穂で手を焼いてるってのに、また手のかかりそうなのが増えたな……はぁ)



――太陽を増やそうとする艦娘、朝風が着任しました。
794 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/06(日) 21:49:14.39 ID:aPXfWbQ8o
おつ
795 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/05/07(月) 00:00:54.10 ID:hBvHVUF60
 馬鹿にされるのは慣れている。でも、本気でそうなりたいと願った気持ちに偽りはない。
 ブレず、めげず、曲げず、路線変更なんて絶対にしない。
 いつだって笑顔で、苦しい顔なんて見せず、誰かの希望になれる存在でありたい。
 この歌は誰かの為に、この踊りは明日の為に、絶望なんて笑顔で吹き飛ばしてしまいたい。
 ――艦隊のアイドル、そう名乗り続ける限り、私は何だって出来る。



「今日もレッスンか?」

「うん、今日も那珂ちゃんゼッコーチョー」

「よくあの神通のメニューこなしてそれだけ動けるな」

「これぐらい出来なきゃ、艦隊のアイドルなんてなれないもん」

「あぁ、そうだな。初ライブを成功させるためにも、とっとと戦況を引っくり返すぞ」

「――提督は、あの時どうして笑わなかったの?」

 初めて会ったあの日、提督はアイドルになりたいと言った私に真剣に応えてくれた。正直言って、まともな神経なら真剣に応えてくれるはずがないのは理解してる。
 だから、その理由がどうしても気になった。

「“那珂ちゃん”を認めたのは、どうして?」

「お前の目は本気だった。あの時も、そして今も。ここはそういう奴等を否定しない場所にしたい。だから――お前が思うように、全力でやってみろ」

 この時だけだった。あの大戦中に“那珂ちゃん”からただの“那珂”に戻ったのは。
 そして、決意したのもこの時だった。いずれはこの人の為だけのアイドルになろうと決めたのは。
 絶対に、絶対に夢中にさせてみせる。那珂ちゃんスマイルはいつだって無敵なんだから。
796 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/05/07(月) 00:02:16.38 ID:hBvHVUF60
「よくよく考えると、神通と川内にいつも合わせてきた那珂が一番体力あるんじゃないのか?」

「那珂ちゃんはアイドルだから皆の声援があればいつだって元気だよー?」

「ある意味、軽巡で一番底が知れんのはお前だったりしてな」

「んー、アイドルだから熊と素手で殴り合うのはちょっとNGかな」

「……球磨型も大概だったな、確かに」

「――それとも、アイドル辞めた“私”が見たくなった?」

「ファン第一号としてそりゃ許可出来んな」

「……なーんて那珂ちゃんジョークだよ、次のライブ早く考えてね?」

「あぁ、考えとく」



 きっと、私はこのままずっとアイドルを続ける。例え提督と二人きりでも、私は“那珂ちゃん”であり続ける。
 だって、“那珂ちゃん”こそが提督と私の絆そのものだから。




――――小さくなっても歌って踊れるんだな、アイツ。

 ――――あの……三人小さくなった状態でライブをしたいと那珂が……。

――――色々な意味でそれだけはやめてくれ。
797 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/15(火) 12:40:33.87 ID:ZVhGZMaqo
4Pぞ
798 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/05/16(水) 22:37:39.60 ID:h8iiIMe80
undefined
799 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/05/16(水) 22:38:28.87 ID:h8iiIMe80
undefined
800 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/05/16(水) 22:39:19.45 ID:h8iiIMe80
 春の穏やかな昼下がり、山城は縁側で寛いでいた。彼女が愛してやまない姉の扶桑は現在秘書艦日を満喫中でここには居ない。
 特に予定もなく、時雨達も出掛けていて訪ねてくる人物などいるはずもない――はずだった。

「――私に何の用?」

「お姉さん、今幸せ?」

「見て分からない、縁側でお茶飲んでるのよ」

「へー、幸せなんだ。あんなに不幸だったのに、良かったね」

「……大鳳と加賀が会ったって言ってたの、貴女ね」

 猫を抱いた謎の少女、二人から聞いた特徴と服装も一致しており、山城は警戒を強める。話だけでは分からなかった不気味という印象も、実際に相対してみて彼女も同じものを感じていた。

「凄いよね、絆の力って。だいぶ堕ちてたのに、あんな簡単に引き戻しちゃうなんて」

「……」

「ねぇ、お姉さんはどうかな? 戻ってこれる?」

「――ふふっ」

「?」

「あー、不幸だわ。ホントに不幸。舐められたものね、今更トラウマを抉られても絶望を突き付けられても苦でも何でもないわ。ゼロどころかマイナスから始まった第二の生がまたゼロに戻ったって、上を向いて歩ける今の私に、精神攻撃なんて無駄なの。分かったら出てって、今日は暴れる気分じゃないんだから」

「そっか、お姉さん“を”攻撃するのは無駄なんだ。じゃあ時雨って娘? それとも満潮? ねぇ、誰がいい?」

「勝手にすれば? 加賀が戻れたならあの子達も必ず戻れるんでしょうし、無駄だと思うけど」

「へー、本当に揺らぎもしないなんて、これはちょっと予想外だったかな」

 楽しそうに、心底楽しそうに少女は笑っている。山城は何故この少女に不気味という印象を受けたのか、理解した。
 どう足掻いても得たいの知れないモノの掌の上にいる、そんな感覚がずっと拭えないのだ。

「……貴女、何が目的なの?」

「人生には適度な刺激が必要って言うでしょ? そんな感じ」

「もう人間の一生分ぐらいの刺激があったからいらないわよ」

「――ねじれたものが元に戻るとき、元通りになるとは限らないから」
801 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/05/16(水) 22:40:42.54 ID:h8iiIMe80
「ちょっと、それってどういう意味?」

「そろそろ怖いお姉さんが二人来そうだから行くね、バイバイお姉さん」

「待ちなさい、まだ話は――何だったのよ、アイツ……」

 最初から存在しなかったかのように少女は消える。それと同時に、少女以外の存在が消えていたかのように静かだった周囲の音が、山城の耳へと戻ってきた。
 すっかり冷めたお茶を飲み干し、彼女が今のことを報告しに行こうと部屋を出ると、扉の前には意外な二人が立っていた。

「鳳翔さんと、鹿島?」

「……逃げられてしまったようですね」

「そうみたいね」

「二人とも、もしかして――」

「ごめんなさい、詳しくは聞かないで頂けますか?」

「あんなモノに関わらない方が、貴女のためにもなりますよ」




 ――まだもう少しこのまま、もう少しだけ見ていようかな。人と人ならざるあの子達の選択の行く末を。
802 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/19(土) 03:42:01.36 ID:rmoznnMA0
おつ
803 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/05/24(木) 22:00:59.64 ID:92Q53J6P0
・秋月『病気』、投下します
804 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/05/24(木) 22:02:16.68 ID:92Q53J6P0
 妹のご飯を作ってから行きます、朝にそう秋月から連絡があり提督は執務室で一人書類を整理していた。朝食を作っているだけにしてはやけに遅いなと提督が思っていると、早いリズムのノックから返事も待たずに扉が開く。

「提督」

「初月か、急にどうした」

「秋月姉さんの様子がおかしい」

「おかしいって、何かあったのか?」




「味噌汁に味噌が入ってなかった」
805 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/05/24(木) 22:02:53.32 ID:92Q53J6P0
 どうしても自分でなければ片付けられない書類の処理を終え、提督は廊下をフラフラと歩いてきた秋月を私室へと連れていく。
 彼女が執務室とは違う方向に引っ張られていることに気付き、色々と何か言おうとしているのを完全に無視し、部屋へ着くと早々に提督は秋月はベッドへと放り投げる。

「い、いきなり何するんですか」

「病人はおとなしくそこで寝てろ」

「別に私は病気なんて――」

「斬新な節約だな、味噌無しの味噌汁とは」

「アレは、おすましにするつもりで」

「とにかく今日は休め。初月から“提督が見ておかないと秋月姉さんは絶対に何かしようとするから見張っててくれ”って言われたんでな、諦めて俺にここで見張られてろ」

「……執務はどうするんですか?」

「悲しいことにはい分かりましたで引き継ぎ完了だ。とっとと行けのオマケ付きでな」

「私の体調管理が不十分だったせいでご迷惑をおかけする訳には――」

「仲間が熱を出してんだ、誰が迷惑がるってんだよ」

 優しく頭を撫でながら、提督は起き上がろうとする秋月を制する。大人びていても、まだ少女と呼んで差し支えない彼女を気遣ってやれなかったのは自分に責任があると、提督は悔いる。

「今日は一切気を遣わず俺に甘えろ、妹の目もないから心配するな」

「……はい」
806 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/05/24(木) 22:03:57.87 ID:92Q53J6P0
 観念してベッドに顔を埋めた秋月。その頭上から提督は優しく語りかける。
 長十センチ砲ちゃんも今は空気を呼んで照月のところだ。

「ルキはどうだ? 照月と相変わらず喧嘩してるのか?」

「はい、毎日朝から晩まで喧嘩です。片方だけ構うともう片方が拗ねちゃいますし……」

「たまにはほっといて趣味に没頭してもいいんだぞ」

「没頭し過ぎると今度は初月が買い置きの缶詰を食べ尽くしちゃうので……」

 赤城とまではいかないが、大体何かを食べている場面にしか遭遇しないのが初月だ。秋月の言う通り、本当に部屋の備蓄を全部駆逐されていても不思議ではない。

「今も、少し心配です」

「大丈夫だ、流石にアイツもそこまで大喰らいじゃないだろ」

 心の中で提督が多分、と付け加えたのは朝の去り際も何かを食べていたのを思い出したからだ。自分の目でも確認しているので、秋月の不安にも納得せざるを得なかった。

「――でも」

「?」

「やっぱり、あの子達が来てくれて、本当に……」

「……寝たか」

 腰かけている提督の服を掴んだまま、秋月は規則正しい寝息を立て始める。その寝顔を見ながら、今度姉妹全員を何処かへ連れていく計画を彼は立てるのだった。




――――(秋月姉ぇ、早く良くなって……)

 ――――どうした、食べないのか?

――――鯖ノ味噌煮ト鯖ノ水煮ト、シーチキンノ缶詰……全部缶詰ジャン!
807 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/05/24(木) 22:07:54.14 ID:92Q53J6P0
次のリクエストは二十三時より3つ受け付けます
808 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/24(木) 23:00:08.86 ID:V+/jP1oYo
弥生とえっち
809 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/24(木) 23:00:29.01 ID:z1WxZg7FO
ブランデーケーキを作る舞風
810 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/24(木) 23:00:46.07 ID:nsmpeTfyO
不知火改二
811 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/05/24(木) 23:06:16.62 ID:92Q53J6P0
・弥生『まぐろって、なんですか』(R18)

・舞風『取り扱い注意』

・不知火『伝えきれない』

以上三本でお送りします
812 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/25(金) 18:44:02.94 ID:eeCGvPcr0
了解です
813 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/06/19(火) 21:11:52.33 ID:HVQU41Ch0
地震の影響で更新が遅れます、申し訳ないです
814 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/20(水) 00:29:18.16 ID:q5Tnj11fO
お見舞い申し上げます
お身体の方は大丈夫でしょうか
無理せず頑張ってください
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/20(水) 15:58:58.01 ID://8GHX4Io
無理せんときやー
816 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/07/08(日) 11:44:06.80 ID:VMaqrNxl0
・弥生『まぐろって、なんですか』(R18)?、夜戦前まで投下します

夜戦部分はなるべく近いうちに
817 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/07/08(日) 11:44:54.07 ID:VMaqrNxl0
 個人差、人それぞれ、比べるだけが人生ではない。酒を飲んで大声で笑いながらドンチャン騒ぎする艦娘も居れば、その光景を嬉しそうに微笑みながら眺める艦娘も居る。
 要は、何を良しとするかは当人次第でしかないのだ。



「……司令官」

「弥生、どうした?」

「子供に、泣かれました。お姉ちゃんは、無表情で怖い、って」

「それで、弥生はどうしたいんだ」

「弥生も、みんなに好かれるお姉ちゃんになりたい、です」

「だったら、何も問題はないはずだ。どうしたいか分かってるなら、後はどうするかを考えてみろ。お前を引っ張り出すために色々とやらかしまくったアイツみたいにな」

「……ん」
818 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/07/08(日) 11:45:33.22 ID:VMaqrNxl0
「――で、色々とやった結果が文月と同じく子供達の保護施設で働く道にたどり着いた訳か」

「やよ姉、物静かで怒ると怖いけど、急に突拍子もないことしたり構って欲しそうな子をすぐ察知するから子供にも好かれてるんだー」

「経験を活かしてってヤツだな、どこぞの万年悪戯卯もちょっとは役に立ってるらしい」

「あのねあのね司令官、これ見てー」

「――ほぅ、こりゃいいな」

「でしょー。やよ姉、子供達と居るとホントよく笑うんだー」



 心を閉ざした子達を、心に傷を負った子達を、卯月が弥生を連れ出してくれたように、弥生もあの子達を救いたい。
 だから、怖がらないで、弥生はずっと側に居るよ。
819 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/07/08(日) 11:46:18.60 ID:VMaqrNxl0
「――で、何だって?」

「司令官、ここ数回弥生と夜戦してくれない、です」

「いや、子供の世話で疲れてたり次の日の準備で忙しそうにしてるのに夜戦しようって言うのは無神経すぎるだろ」

「弥生はいつでも大丈夫、です」

「天井を凝視しながら一切無反応は俺の心が大丈夫じゃないから勘弁してくれ」

「アレは、次の日の子供達の昼の献立に悩んでて……」

「だったらそういうときは無理しなくても――」

「今日は、大丈夫、です」

(感情表現というか、意思表示が年々力強くなりすぎてきた感が凄い)

「司令官は、弥生と夜戦するの好きじゃない、ですか?」

「いや、そんなことは――」

「じゃあ問題ない、です」

「弥生、待て、まだ昼だ。もう少しゆっくりと……」

「待たない、です」

(抵抗は――無理だな、軽々子供二人抱えてるだけあって引きずられる。コイツにぶっ飛ばされて懲りずに突っ込んでいく辺り、アイツも大概だな)
820 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/13(金) 02:37:11.83 ID:OoQRgS+Uo
可愛い
821 : ◆7xTYM/aOv2 [sage saga]:2018/07/18(水) 01:52:20.17 ID:eVUeyjCE0
 弥生は、口より目や行動で訴えかけることが多い。ただ、大事なことや口にすべきことはしっかりと自分の言葉で伝えるようにしている。
 ただ、時折言葉と行動が同時、もしくは行動が先になる場合もある。

「司令官、脱いで」

「脱ぐ、脱ぐから引っ張るな、服が破れる!」

「ボタン、邪魔です」

「ほら、子供の服を脱がせる時みたいにだな――」

「後で、縫います」

「弥生ー!?」

 壁に妹をめり込ませる力に対抗出来る服のボタンなど存在するはずもなく、ボタンは一気に部屋中に飛び散る。この若干暴走気味な弥生の行動に下手な抵抗は危険だと判断した提督は、大人しく彼女のなすがまま事の成り行きを見守ることにした。
 その後も終始いつもの表情のまま彼をパンツ一丁にまで脱がすと、弥生は満足したように上に覆い被さった。

「落ち着き、ます」

「そうか、こっちは暴漢に襲われる女性の気分だったぞ」

「司令官は男、です」

「そこを掴みながら言うな」

「大きくなってない、です」

「流石にならんわ、さっきの状況で」

 そう言われて弥生は少し考えた後、おもむろに立ち上がり――足で提督の股間を刺激し始めるのだった。
822 : ◆7xTYM/aOv2 [sage saga]:2018/07/18(水) 01:53:10.16 ID:eVUeyjCE0
「お前、そんな知識どこで……」

「乙女の秘密、です」

「とりあえず如月だな」

「どう、ですか?」

 長月ほどでは無いにせよ、力加減を間違えないようにし過ぎているせいで、伝わる刺激も快感には程遠い。だが、必死にそちらに集中している彼女の太ももは提督には眼福だった。

「弥生、もう十分だから交代だ」

「……まだ、です」

「弥生?」

「教えてもらったことが、まだまだ残ってます」

(……子供達、ある意味しっかり育てられてそうだな)

 空気に晒され上を向いた自分のモノを真剣に穴が開くほど見つめる弥生の姿に、提督は全てを諦めるのだった。
823 : ◆7xTYM/aOv2 [sage saga]:2018/07/18(水) 01:54:03.34 ID:eVUeyjCE0
 腰を浮かせて、落とす。

「ん……」

 奥まで咥えて、くねらせる。

「これ、いい、ですか……?」

 粘りのある音が、繋がっているところから動く度にする。このままずっとこうしていたら、あの子達みたいに可愛い子が自分にも出来たらいいのにと、本当に考えてしまう。

「弥生の中、もっといっぱい、欲しい……です」

 太股辺りでこぼれ落ちた司令官の出したモノが乾いてしまっているが、まだまだ数回出来なかった時のを取り返せてはいない。今日はとにかく司令官と、夜戦がしたい。

「好き、です……司令官」

 さっきから口数も減って呻いてるような声を出しているけど、大きくなってるから、きっと大丈夫。唇にキスをして、また腰をくねらせる。
 汗で背中に髪が張り付くのが少し鬱陶しいけど、司令官が好きだから我慢する。

「んっ……いつでも、好きに、出してっ……んんぅっ!」

 抜かずにこれで四回目、流石にもう出ないのか、そんなに勢いがなかった。司令官もかなりグッタリしてるので、ギュッと抱き付いてそのまま寝ることにした。
 ――まだ昼だから、起きたらきっと司令官も元気になってるはず。次は荒潮に聞いたの、試してみよう。



――――どしたぴょん、顔に生気がないぴょん。

 ――――お前の姉に搾り取られた、今日は何もする気が起きん。

――――ちょっと待つぴょん! うーちゃんだってしたいぴょん!

 ――――恨むなら自分の行為の結果を恨め。
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/18(水) 20:10:43.30 ID:+IhvF6wIO

マグロとは提督の事だったのか
積極的な弥生可愛い
825 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/19(木) 00:03:39.52 ID:hNjJ9abao
ふうっ
826 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/10/15(月) 23:46:21.39 ID:miaEc6AJ0
続きが読みたい…
827 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/10/18(木) 00:01:26.05 ID:DP9O5HBO0
・舞風『取り扱い注意』?、投下します
828 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/10/18(木) 00:01:53.62 ID:DP9O5HBO0
「駆逐とブランデーケーキって何でだよ」

「えー? だって見た目と実年齢って関係無いし、洋酒ケーキって強烈なのじゃなきゃ子供でも食べたりするよ?」

「それにしたって、どうしてお前なんだ」

「ダンススクールのレッスンに来てたんだって、三越の会長のお孫さん」

「うちとまた変な繋がりが増えたか……まぁ、悪い縁ではないな」

「因みにこれ、私がプロデュースして実際に作ったやつだけど、提督も味見……する?」

「そうだな、三時のおやつの時間だしな」

「もー、子供扱いしないでよー」

 頬を膨らませる仕草は幼く、可愛らしい。舞風は成長が緩やかな方で、終戦後も見た目はそのままだ。
 暗い雰囲気や寂しい雰囲気は今も苦手で、騒がしいといつの間にかしれっと混ざっていたりする。
 そんな彼女の“素”を垣間見るのは、酒を飲んだときである。
829 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/10/18(木) 00:03:04.35 ID:DP9O5HBO0
「なぁ舞風、これかなり酒キツくないか?」

「そう? ちゃんと適量入れたよ?」

「俺が弱いからそう感じるだけか……?」

「提督はホントお酒弱いねー」

「体質の問題なんだから仕方ないだろ。お前や早霜達と一緒にするな」

「そうそう、偶々その早霜とお酒の話になって、レッスンに来てたお孫さんが好きなら是非にって話になって、気付いたら決まってたんだよね」

「どうせ大本営はイメージの為に許可するだろうし、お前が満更でもないなら俺としては止める理由もなかったしな」

「――ねぇ、提督」

「ん?」

「こういうのに選ばれる私は、ちゃんと魅力があるってことかな?」

「そりゃいくら何でもダンススクールの生徒だからって理由だけで、お前を推薦しようとはしないだろ」

「じゃあ、提督もそう思ってる?」

「少なくとも魅力が無い艦娘はここには一人も居ないと思ってる」

「……そっか。じゃあ提督、もっと甘いおやつあげるね」

「あまり甘過ぎるのは――」



「ヤバい……アレはヤバい……」

「戻ってきてからずっとあんな感じだけど、舞風どうかしたの?」

「ブランデー濃い目のケーキ食べながらブランデー飲んで、提督にディープキスして襲ったらしくて……」

「あぁ……なるほどね」

(私もやっちゃったけど、提督も酔うとヤバい……二度とやらないようにしなきゃ……)
830 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/18(木) 02:05:07.24 ID:tmrVkEBho
ほう…kwsk
おつかーレ
831 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/18(木) 09:22:41.29 ID:X7gMvVIM0
乙です。
長期間の鯖落ちなんだったんだろうな
832 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/12/02(日) 12:05:41.44 ID:ZzoyC+Zao
833 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/12/27(木) 22:25:38.45 ID:eU7JvC/h0
・不知火『伝えきれない』?、投下します

色々あって遅くなり申し訳ありません
834 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/12/27(木) 22:26:13.05 ID:eU7JvC/h0
 戦いは終わった。嬉しい。もう陽炎も、黒潮も、他の姉妹も、司令も、傷付かない。
 でも、だとしたら、戦いの終わった今、ここで不知火に出来ることなんてあるのだろうか。
 この眼以外に何も持たない不知火は、これからどうすべきなのだろうか。
 ――その答えは、不意な知らせと共に訪れた。



「改二になってどうだ? どこか変わったところはないか?」

「……」

「どうした、執務室なんて見慣れてるだろ?」

「――不知火は、ずっと思っていました。不知火がもっとうまく立ち回れたら、陽炎達はもっと苦労せずにいられたのでは、と。鎮守府でも、作戦中でも、気苦労をかけずに済んだのに、と」

 呟くように、零すように、不知火は言葉を紡ぐ。いつかの彼女もそうだったように、自分の出来の悪さを悔いていた。
 ただ、今の不知火に以前のような翳りはない。ずっと全てを取り零さないように足掻いていたその“眼”で、提督を正面から見据える。

「司令、不知火は今まで落ち度だらけでした。だから、これからは不知火でもしっかり出来ることを頑張ろうと思います」

「一応聞いておくが、答えるかはお前に任せる。何があった、もしくは、何を知った?」

「ほんの些細な、今となってはどうでもいいことです。強いて言うなら――不知火は、司令や、陽炎や、黒潮や、この鎮守府の仲間が、大好きだと再認識しました」

「……そうか。じゃあ、陽炎達にもその改二姿をお披露目してやってこい」

「はい、失礼しま゛っ!?……しつれい、します」

(……落ち着いたように見えたが、落ち度は健在のようだな)
835 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/12/27(木) 22:27:24.11 ID:eU7JvC/h0
「で、たんこぶのお披露目だっけ?」

「違います。改二です。陽炎がまだだからあうっ!」

「んー? いつからそういう小生意気なことが言えるようになったの、不知火ー?」

「やめ、痛っ、陽炎、デコピンは、痛いっ」

「そのへんにしといたげ。はしゃぎたいんは分かるけど、あんまりやると不知火の落ち度が酷なるかもしれんやろ?」

「黒潮、地味にそれも失礼です」

「はいはい、それで改二の調子はどうなの? どこか変わった感じは?」

「特にはこれといって、こんな風に――」

「んっ!?」

「ある程度この“眼”がどういうものか知ったぐらいです」

(動けない!? 何で!?)

「深海棲艦だけじゃなく、艦娘にも制限はありますが有効のようです」

「ちょっと、本気で動けないんだけど!?」

「暫くそのままで居てください」

「不知火、何するつもり? さっきのを怒ってるなら謝るってば、ねぇ、聞いてる? ちょっ、待っ――」

「……陽炎と出会えたから、今の不知火があります。これからも、不知火と居てください」

「へ? あぁ、うん、言われなくてもそのつもりよ。だからそろそろ解放してくれない?」

「嫌です」

「嫌って、アンタねぇ……」

「皆ー、今なら陽炎に抱きつき放題みたいやでー?」

「こら、黒潮何余計なこと言ってんのよ!?」




 ――改二化により、不知火の“処理落ち”が軽減されました。
836 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/12/27(木) 22:27:55.13 ID:eU7JvC/h0
「湯飲みは飛んでこないけど、茶葉入れすぎ。料理も辛すぎたり甘過ぎたりが大半。完成しない、爆発する、ってのは無くなったんだけどね……」

「前よりは並行して出来るんやけど、どっか抜けるんは相変わらずやわ」

「つまり?」

「不知火は不知火ね」

「せやなぁ」

「だよなぁ……」



 ――不知火に、何か落ち度でも?
837 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/12/28(金) 03:56:20.12 ID:TACKgml10
次のリクエストは6時より3つ受け付けます
838 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/12/28(金) 07:13:56.10 ID:pbCeEjJc0
山風
839 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/12/28(金) 08:24:52.76 ID:kSad7GIDO
羽黒
840 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/12/28(金) 08:28:22.63 ID:afpL0XEV0
羽黒R18
841 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/12/28(金) 08:31:44.33 ID:afpL0XEV0
あ、>>839の通常でもう羽黒出てるのか…
この場合はどうなるのでしょうか?
842 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2018/12/28(金) 12:48:59.65 ID:TACKgml10
・山風『名は体を表す』

・羽黒『明石印の医薬品』

・羽黒Rー18『副作用』

以上、3つでお送りします
843 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/12/28(金) 16:40:14.50 ID:kp1fHNWV0
了解です
844 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/12/29(土) 03:22:42.31 ID:cTo+ChW6O
来てたのか
見逃してたわ…
845 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/12/29(土) 08:35:08.12 ID:ZC3hb9X80
更新待ってました
846 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/12/29(土) 17:38:34.59 ID:L7Vad18Oo
おつぬい
847 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/05/30(木) 02:35:17.29 ID:Miuwfs90o
まつぬい
848 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/07/07(日) 15:04:40.42 ID:gLuB2t90o
まつわ
849 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/12/19(木) 00:56:52.44 ID:WonQsatM0
保守です?
850 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/12/19(木) 15:34:12.59 ID:WonQsatM0
保守です?
851 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/01/27(月) 08:18:16.64 ID:pYC5o9/Fo
まーつーわー
852 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/02/09(日) 05:00:31.14 ID:Dj3mmJ3i0
くるかな
853 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2020/02/09(日) 05:01:36.58 ID:Dj3mmJ3i0
まってる
854 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/02/10(月) 11:11:56.61 ID:kJnsnLo8o
>>852
sageられない悪い子が居る限り来ませんよ
855 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/02/16(日) 20:35:43.47 ID:ZjQZF/m00
申し訳ない…
856 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2020/05/12(火) 23:43:21.34 ID:AYwNKrtc0
テステス
857 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2020/05/12(火) 23:48:16.86 ID:AYwNKrtc0
・山風『儚いモノ』、タイトル変更で途中まで書いてたとこまで投下しときます。
858 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2020/05/12(火) 23:48:49.62 ID:AYwNKrtc0
 希薄、希薄、何もかもが希薄。ここで、ただ消え去る時を待とう。
 どうせ、きっと、誰にも−−。



「艦娘の幽霊?」

「幽霊クマ」

「艦娘の幽霊が、なんだって?」

「裏山に出るらしいクマ。木曾が様子を見に行ったっきり帰ってこないクマ」

「幽霊は俺の担当外だ、他を当たれ」

「つべこべ言わずに来るクマ」

「ちょっ、待て、絞まる、襟首掴んで引きずぐぇっ!?」

「何人か助っ人も呼んでるクマ、急ぐクマー」

「わがっだ、わがっだがら、じぬ」

 それは、いつものように舞い込んだトラブル。もう日常と化していて、何だいつものことかとすれ違う艦娘達は気にもとめない。
 −−そこに、確かに何かが起きていることに変わりはないというのに。
859 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2020/05/12(火) 23:49:25.96 ID:AYwNKrtc0
 大木の虚(うろ)、その中に大柄な影と、それに覆われるような影が一つ。
 先にここへ来ているはずの数名が見当たらないのは、これを見たからだ。

「帰りが遅いから心配して来てみれば、何やってんだクマ」

「添い寝」

「いや、そういうこと聞いてんじゃないと思うぞ」

 クマにしがみつかれながら寝転がっている妹に溜め息を吐きつつも、球磨は近付いていって臆病なペットと妹の頭を乱暴に撫でる。
 幽霊とやらは真っ昼間でも現れるらしく、木曾も一度は遭遇したものの見失い、ここで再度出現するのを待っていたとのことだった。

「先に来た奴等はどうしてるクマ?」

「周辺の見廻りに行ったぜ。一人はそこだ」

「うあー……だりー……」

「人選ミスだろ、アレ」

 近くの木の上の方でだれきって、なまけものよりなまけている睦月型の脱力系。一応、一緒になって寝転がっていないだけマシなのだが、やる気は皆無といっていい。

「相方はどうした?」

「あっち、さくてきちゅー」

「そうか。で、他には誰が来てるんだ?」

「はいはーい、私だよ!」

「……で、他は?」

「時雨と龍驤に声かけたクマ」

「ちょっ、無視はひどくない!?」

「山で何か起きてお前が動いてないわけないだろ。現状報告」

 木々の枝を飛び移りながら現れた川内曰く、目標はやはり艦娘であり、発見しても追跡は困難。そして何より、誰の目にも彼女は艦娘であることしか分からなかった。

(厄介だな。どの“目”にも引っ掛からないってことは相当特殊な艦娘か個体ってことか)

 認識阻害、存在の希薄性、他にも原因は考えられるが、一々確認していてはキリがない。ざわざわと木々が騒ぐのを聞きながら、提督は幽霊のような艦娘をどうすれば捕捉出来るかと考えに耽るのだった。
860 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2020/05/12(火) 23:49:55.96 ID:AYwNKrtc0
 楽しそう。きっとあの艦娘達は優しさに包まれている。
 私からは全てが抜け落ちていくだけ、もうほとんど“私”は残ってない。
 だから、もう放っておいて、探さないで、希望なんて、何処にもありはしない。





 提督達のたった数十メートル先、そこに立っていた艦娘は、音もなくその場から去っていった。
861 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2020/05/12(火) 23:51:05.01 ID:AYwNKrtc0
「やっぱり空からやと木が多くて、ちと難しいわ」

「そもそも広範囲索敵だと難しいかもね、視認してて見失うぐらいだから」

「時雨呼んだんは“運”頼み、って訳でもなさそうやな。それなら雪風呼ぶやろし」

「どちらかというと“勘”かな。今日はなんとなく、僕が行かないといけない気がしたんだよ」

「私ともっちーは何で呼ばれたのかしら」

「嵐に追われてるから、かもね……」

「時雨? 何か言った?」

「いや、なんでもないよ。次はあっちを探してみようか」

(うち、今回いらんのと違うかコレ。まぁ暇やしえぇけど)

 どこか察した龍驤は、頭をガシガシと掻いてから艦載機をくるくると旋回させて遊ぶ。彼女が空に描いた文字は、少し間が長く開いている“嵐”という漢字だった。
862 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2020/05/13(水) 00:58:03.15 ID:Ry0QatC80
 少しして、提督と合流した時雨達。結局件の艦娘は見付からず、当事者ならぬ当クマは相変わらず木曾にベッタリとくっついている。

「さて、三日月、望月、お前らから見てどうだ?」

「確かに何かが居るような雰囲気はするんですけど……」

「そこ止まりだね、スコープで覗いた瞬間気配が霧散するって感じ」

「龍驤は?」

「さっぱりやわ、うちら以外の反応は艦載機からやとなーんもあらへん」

「球磨」

「毛が逆立つ感じはないし、少なくとも敵意とかはないと思うクマ」

「時雨」

「そうだね……そこ、かな?」

 そう言うと、時雨は誰も見ていない方向を急に指差す。それは、ほんの数メートル先で、今まで誰もそこには存在していない、はずだった。

「誰!?」

「川内、大丈夫だよ。アレは−−僕の妹だと思うから」

 淡く消えてしまいそうな程存在が希薄なその艦娘は、ただボーっとそこに立っていた。感情の読み取れない表情、辛うじて白露型の艦娘と同じ出で立ちをしていることは認識できたので、他の面々も時雨の言葉に納得する。

「ねぇ、どうしてこんなところに一人で?」

「……」

「聞こえてないのか?」

「違う、と思う。あの表情は、僕もよく知ってるから。だから多分、必要なのは……“見付けたよ、山風”」

「……!」

 名前を呼んだ声に呼応するように、山に風が吹き荒れる。落ち葉が舞い、全員が目を閉じた。
 そして、風が止み目を開けた者達の目に映ったのは、新しい鎮守府の仲間が時雨を押し倒して頬擦りしているシーンだった。

「時雨姉時雨姉時雨姉時雨姉」

「僕も会えて嬉し−−いや、山風? そこに頭突っ込んじゃ、だ、誰か止めて!?」

(こりゃまた凄そうなのが来たクマ)

(あー……姉妹の再会だ、そっとしておこう)

(球磨姉も抱き着いたらこんな風に落ち着くのかな……)

「ホントにダメ、助けて、助けてってば!?」



 −−−−山風が着任(?)しました。
863 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/13(水) 08:08:30.98 ID:Wcz7o7sIO
一年以上越しにキター!
864 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/13(水) 09:45:34.76 ID:n/m2OL3f0
久しぶりの投下乙です
865 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/13(水) 16:45:49.46 ID:LQe/IhOuo
待ってた甲斐があった
866 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2020/05/18(月) 01:28:01.60 ID:KMWHr9Kg0
undefined
867 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2020/05/18(月) 01:29:18.05 ID:KMWHr9Kg0
「提督、あなた様の瑞穂です」

「断じて違う」

 こんなやり取りが繰り返されて何度目か分からないが、提督は瑞穂に対しての苦手意識がどうしても拭えずにいた。好意を向けられることには馴れてきたものの、鎮守府に来た当初から彼女の態度はストーカーレベルであった為、恐怖が先に立つのだ。

「俺はお前にそうまでさせるようなことを何かしたのか? 全く身に覚えがないんだが」

「ふふふ、提督にはそうだと思います。ただ、瑞穂は知っているのです。五十鈴さんや龍驤さん達のように、私はあなた様のことを知った上で此方へやってきました」

 五十鈴と龍驤、その名前が出たことに少し提督は驚きを見せる。確かに二人とも流れ着いてきたのではなく、自らの意思でこの鎮守府へ志願してやってきた変わり種の一角だ。
 ただ、対外的には明確にその二人だけがそうであると分かるような噂は当時流れてはいなかった。にも拘わらず、瑞穂は明らかにそれを事実として知っている体で話していた。
868 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2020/05/18(月) 01:30:02.28 ID:KMWHr9Kg0
「……どこから仕入れた」

「提督は自分が思っていらっしゃる以上に有名人ですよ。元帥の教え子であり、西の軍神と朱姫の同輩」

 嫌な名前の羅列に露骨に顔をしかめたくなったものの、それよりも完全に一部の人間しか知り得ない情報が出てきて更に提督は語気を強める。

「お前、本当に何者だ?」

「あなた様の瑞穂です」

「以前に居た鎮守府はどこだ、何の作戦に参加した」

「過去は捨てました」

「これは命令だ、答えろ」

「……蛇大将筆頭秘書艦、よく知っておられるであろう呼び名でしたら−−」

「お前があの“拷問姫”、だと……? いや待て、今も蛇大将は瑞穂を秘書艦としていたはずだ」

「影武者です」

「影武者って、お前……」

「立場的にこちらへ来るのに少々問題がありまして」

 人相手なら明らかに非人道的だと非難される作戦や実験を数々と実行してきた大将。人相手にも一切容赦なく大将の障害を排除してきた秘書艦。
 敵も多く、機密情報もそこそこ抱えた艦娘、更には大将の秘書艦娘ともなれば簡単に転属など出来ようはずもない。

「蛇大将も影武者の方もよく納得したな」

「元々お互いのことには口を挟まないという条件で秘書艦娘になっておりましたし、影武者の子も喜んで引き受けてくれました」

 それが真にせよ嘘にせよ、今までの中でも上位に入る厄介な存在だと分かり、提督は頭を抱える。その姿を見て、瑞穂はうっとりとした表情を浮かべた。

「うふふ、提督はやはりその何かに困っている状態のお顔が一番素敵です」

(よし、コイツとだけは絶対にケッコンカッコカリしない)



 翌日、提督の半径二メートルに近づくことを禁止された瑞穂が距離を保って常に追いかける微笑ましい光景が鎮守府にはあったそうな。
869 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/20(水) 10:44:09.85 ID:gKioafxYo
おかえり
待機しててよかった(ง ˙-˙ )ง
870 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2020/05/24(日) 00:19:38.65 ID:1DRKBrmR0
・羽黒『明石印の医薬品』、投下します
871 : ◆UeZ8dRl.OE [sage saga]:2020/05/24(日) 00:20:19.42 ID:1DRKBrmR0
「司令官さん、どうですか?」

「とりあえずこっちに来て後ろ向いて動くな」

 秘書艦日に軽いサプライズを用意していた羽黒。早速反応があり、ドキドキしながら言われた通りにする。

「この感じ、エクステとかじゃないな。この短期間に伸ばせる訳がないし……明石にでも頼んだか?」

「出来ませんかってお願いしたら、需要がありそうって作ってくれました」

 一口飲めばあら不思議、短髪だったあの子がものの数分でロングヘアーに大変身。明石印の艦娘長毛剤、近日発売予定。

「いつもの羽黒ぐらいの長さも好きだが、こうしてロングになるとまたイメージが変わるな」

「えへへ、司令官さんが喜んでくれて嬉しいです」

 色々と後ろから髪を弄りながら楽しそうにしている提督を見て、羽黒は穏やかな笑みを浮かべる。特別何かをしている訳でも、何かを出来るわけでもない今の彼女からすれば、こういった日常の中のほんの些細なサプライズを考えるのが羽黒なりの提督へのアピールだった。

「那智も色々と弄らせてもらったが、羽黒だとまた違った印象になるな」

 編んだり括ったりと子供のようにはしゃぐ提督の手を、羽黒はとてもいい笑顔で、掴む。

「? どうした? やりすぎたか?」

「司令官さん。実はこの薬、とっても嬉しい副作用もあったみたいなんです」

「副作用、だと? それ、大丈夫なのか?」

「大丈夫です。ねぇ、司令官さん……」

 気付く。羽黒の息が荒い。顔は紅潮し、手から伝わる体温も高い。

「昔は見られたら恥ずかしくて恥ずかしくて耐えられなかったんです。でも、今は−−見ても、触っても、いいんですよ?」



 注、副作用として多少媚薬のような効果が出てしまう場合があるので、ご注意ください。
872 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/23(金) 19:35:21.09 ID:/Fc+BzM5o
待つわ
873 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/12/22(水) 00:57:32.81 ID:4Y0Nj1iK0
まちます
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