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【R-18】由比ヶ浜結衣はレベルが上がりやすい
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140 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/07(月) 06:46:57.95 ID:oyzVwH+so
乙!
続き待ってる
141 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/07(月) 19:44:46.65 ID:Icy5LoFuO
>>139
つべこべ言わずに出てけばいい
142 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/08(火) 22:53:37.06 ID:197Jugzvo
どうも
>>1
です
あんまり書き溜め進まず今日はちょっと無理っぽいかもです
奇跡的にキリのいいとこまで進むようなら投下アナウンス出しますが、多分明日の昼か夜になるでしょう
いずれにせよ期待せずお待ち下さい
143 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/08(火) 23:31:52.16 ID:de+QGBBvo
はーい
144 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/08(火) 23:40:30.87 ID:DdCvjpzpo
期待はして待ってる
145 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/08(火) 23:48:43.00 ID:/7MlhsZqo
期待
146 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/09(水) 18:36:06.01 ID:drvI9ANeo
どうも
>>1
です
やはり遅々として書き溜めは進まず、今日の投下分はちょい短くなりそうです
悪いのは時間泥棒のデレステであって
>>1
ではありません……ゆ、ゆるして
22時か、23時に投下予定なので時間までお待ち下さい
147 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/09(水) 18:37:32.70 ID:WMOV7HV+o
いいね
148 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/09/09(水) 22:22:15.38 ID:drvI9ANe0
お待たせしました、今から投下開始です
またも色気の無いエロスレにあるまじき展開ですが暫しお待ちを……!
149 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/09/09(水) 22:25:26.63 ID:drvI9ANe0
今日も今日とて必修科目の時間は過ぎ、二限が終われば昼飯時。
空きっ腹を抱えて何時ものように墓場へ向かう……ところなのだが、今日は生憎雨模様。
雨の中、傘を差さずに踊る人間がいてもいい。自由とは、そういうことだ……記憶の喪われた町で黒尽くめの交渉人はそう言った。雨の中、屋根の無い場所で食事する人間がいてもいい。自由とはそういうことだが生憎俺にはずぶ濡れになりながら飯を食う趣味はないので別の場所を確保しなければならないのだけど……何処に行ったものやら。
今日の雨は今年度初、つまり俺にとっても入学後初の降雨。これまで天候に恵まれたお陰で雨天時の飯場を探す必要は無かったのだがこれが迂闊もいいところ。これから四年間ずっと昼飯時に雨が降らない保証なんて無かったのだから、こうした時に備えて予め場所の検討はしておくべきだったのだ。
こそこそ由比ヶ浜とその取り巻きに見つからないよう盗賊ギルドも吃驚な隠密スキルで部屋を脱した俺(シャドウハイチュウ)は屋内で丁度良い食事場を探してあちこち流離ったわけだが……考えが甘かった。雨なんだから俺以外に屋外で飯食ってた連中も屋内に逃げ込んでくるのは当たり前で、テーブル付きのスペースは愚か椅子しかないような場所ですら軒並み占拠されていた。
これが中学高校であれば、席を離れてさえいなければ最低限自分の机というパーソナルスペースの確保は出来ていたのだが、ここは自由を冠に頂く弱肉強食の大学世界。時間や人の都合を付けられない弱者は飯(の場所)にすらありつけないのだ。
150 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/09/09(水) 22:28:35.32 ID:drvI9ANe0
ちなみに学食は端から考慮の外だ。そも屋根付きの食事スペースと言えば学食であり、入学間もない頃由比ヶ浜と一緒に訪れた学食はそりゃもう人人人の波。肉壁。同じ事を考えた新入生諸氏とかまだあどけない彼らをサークル勧誘やらナンパで拐かそうとした先輩方も多く居たのだろうが、今日が雨ということを考えれば先日とそう変わらない混雑が予想された。
ちなみに由比ヶ浜はそんな上級生の卑しい勧誘の嵐にあって辟易していた。俺も彼氏らしく彼女の盾になろうと奮闘したが、最初から俺のことなど視界に入っていないか存在を脳が認識していないくらいの扱いだったので役には立たなかった。比企谷君ふっとばされたー!というメッセージすら出なかった。理不尽。
……学食を忌避する理由は、その由比ヶ浜が理由でもある。
先週墓場に訪れて俺というゾンビ・グール・僵尸を善意か何かで光の下に引っ張り出そうとした牛くん猿くんの言を信じるなら、俺の予想通り由比ヶ浜は学食で昼を済ませているらしい。余計に顔を出せない。どうでもいいけど牛くん猿くんって響きが何処ぞの黒子じみたお笑い芸人っぽい。パ○ット☆マペッ○。
かつてはクラス内のトップカーストグループに属していた由比ヶ浜とグループどころかそのカーストにすら弾かれていた俺に接点はなかった。それは互いが互いを個として認識した後も変わらなかったが、それでも課外活動というクラスの縄張りの外で俺達は交流を持ち、それは俺の彼女に対する独占欲と、彼女との接点を求める有象無象に対する優越感を俺に抱かせた。薄暗く、そして切実な感情だった。
そんな環境から卒業して尚、俺達は接点を探している。違う、俺だけが俺だけに都合の良い接点を探している。
151 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/09/09(水) 22:31:20.83 ID:drvI9ANe0
周囲の目を気にせず俺との繋がりを手繰り寄せようとする彼女の姿はあの頃と同じだ。手繰り寄せた糸を俺が身勝手に切り離そうとする度悲しみに暮れ、涙を溢れさせた姿と同じ。
先週俺の部屋からの帰り際何かを期待して、しかしそれが叶わぬことを自覚してた彼女の顔。三度目を求めた俺の本能……否、本能とすら呼べないような淡い衝動にすら目を背けた俺の顔は、彼女の目にどう映っただろう――
「こんな所にいたのか」
入学してから何度目も知れない自虐回想に入りかけていた俺を現実に引き戻したのは何処かで聞いたバリトンボイス。
振り返れば奴がいる。見た目からガシリと強いその体格、牛くんこと牛山であった。
「何の……」
用だ、と最後まで口にする前に俺は気付いた。気付かされた。こいつの目的、狙いは先週聞いていたではないか……!
「……全く毎度何時の間にかスルスルといなくなって、俺の話をちゃんと聞いていたのか?」
やれやれと呆れ顔で言う牛くん、なんか様になってるイケメンってズルい。俺がやっても「中二乙www」ってレスしか付かないんだろうな。やれやれだぜ……。
152 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/09/09(水) 22:34:43.68 ID:drvI9ANe0
「なら同じ事を言うが、お前には関係無い。 飯食う場所探さなきゃならんからもう行くぞ」
先週と同じ理由を押し付けにくるのなら、俺がやることも先週と同じだ。突き放して背を向ける。こんな奴の好感度稼いだってエンディングの分岐には関係ないから扱い悪くしたって大丈夫、ぼっち通の攻略本だよ。
だが、そんなぼっちの常識で量れないくらいに牛くんは見た目通りの益荒男だった。
「待てヒキタニ」
背を向けた俺の肩をガシリと掴む牛くん、それだけで俺は彼我の戦力差を悟った。え、何このゴツゴツした手と微動だにしない腕。やだ、こんなの俺はじめて……。
「お、おい、離、離せよ」
「ダメだ、今日はこのまま学食に連れて行く。 飯食う場所を探しているなら丁度いいだろう?」
思わずどもった俺の様子など知ったことかと残った方の手で俺の腕をホールドし、そのまま俺をズルズル引き摺っていく牛くん、正しく屈強な農耕牛の如し……!つかこんな猛獣のような男に捕まったら俺じゃなくてもどもるって。怖すぎィ!
一瞬にして抵抗を無意味と悟り、しかし連行される修羅場を思うと素直に付いていこうという気にもなれず、俺は異物か可哀相なものを見る周囲の視線に晒されながらドナドナ状態に耐えざるを得なかった。ドナドナってどっちの立場でもここまで面倒じゃねぇよな……。
153 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/09/09(水) 22:38:15.31 ID:drvI9ANe0
学食は幸い屋根伝いに向かうことが出来たので俺達は濡れ牛と濡れドナドナにならずに済んだ……屋外を通りさえすればぬかるみで転んだフリして逃亡したりとか、牛くんの拘束が緩む可能性もあったろうがそんなドラマか映画みたいな逃亡劇をこんなしょうもないところでする気にもなれなかった。や、良い経験になった可能性は否定しないが。
入り口に辿り着く頃にはもう逃げる気も逃げられる気配もなく、牛くんに先導される形で俺は久方ぶりに学食へ足を踏み入れた。
案の定溢れかえる人々の川に辟易したが、先行する牛くんの威圧感が人波を切り裂き何の抵抗もあらんとばかりに進めてしまう。牛くんは重戦車だった……?
程なく目的地に着いてしまったのか……否、牛くんが止まるより先に俺の視界は由比ヶ浜の姿を見つけてしまった。二人の友人――見知らぬ女学生と、例の猿くん――に囲まれ楽しそうに談笑する彼女の姿が何時かのトップカーストでの光景と被り、俺の胸は静かに軋んだ。
由比ヶ浜は俺……というか牛くんの姿に気付くと、
「あ、牛くん! 用事って何を……え?」
しかし挨拶を果たせず、俺の姿を確認してその表情を淡く驚きに染めた。どうでもいいけどお前も牛くん呼びなのな……予期せぬシンクロニシティ、ちょっと嬉しい。
「ヒ、ヒッキー!? え、どうして、う、牛くん!? 何がどうなってるの!?」
はわわ!ヒキが来ちゃいました!とでも言わんばかりの由比ヶ浜の様子に周囲の視線が痛い……のもあるが、殊更驚いているのは取り巻きの三人だった。
まぁ分からないでもない。こういう由比ヶ浜のオーバーの反応は極一部でしか見れない……それこそ昔日の三浦グループですら稀だったろう。この顔を知っているのはここじゃ俺だけ……かつてのようなじめじめして情けない優越感が胸を満たしてどうしようもなく嬉しくなる。どうしようもないな俺、本当に。
154 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/09/09(水) 22:41:41.86 ID:drvI9ANe0
「ちょ、ゆいゆい驚き過ぎじゃね!?」
「結衣ってこーいう反応する人だったんだー」
お前も大概声でけぇけどなという猿くんの驚愕と対照的に、驚きつつも自分を置き忘れない安定感……細く高い、鳥の囀りのような声は由比ヶ浜の正面に座る女学生だ。彼女は俺に向き直ると、
「貴方がヒキタニくん? それともヒッキー?」
そう尋ねてきた……いいけどね、もう。俺の名前は本当に親しい人だけ知ってればいい。真名ってそういうもんだし。
「……ヒキタニで頼む」
「そーそーヒキタニくんよヒキタニくん! でもネクラっぽいからヒッキーって超合ってンよな、ゆいゆいのネーミングセンスパネェわー」
「あ、あはは……」
困ったように笑う由比ヶ浜。うん改めてお前のネーミングセンスパネェわ、マジドン引き。
「そ、それはともかく、なんでヒッキーが学食に?」
「あー、それn」
「俺が連れてきた、この雨で何時も飯を食ってる場所に行けず困っていたようだったからな」
俺の言葉を遮るバリトン牛くん。いやあながち間違っちゃないけどドナドナしてきたお前がドヤっていうことじゃないからね?
155 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/09/09(水) 22:45:30.14 ID:drvI9ANe0
「そうなんだ……と、ともかく座ろうよヒッキー! 牛くんもさ!」
困惑は残りつつも、嬉しそうに笑う由比ヶ浜。その陽気に暖かい魅力を感じ、同時に俺が逃げ回ることでこの笑顔を損なわせていた事実を再認し俺の思考は何時もより粘度の高いネガティブの沼に沈み込んだ。
それを顔に出すほど長年ぼっちはやっていない、何食わぬ顔で由比ヶ浜が促した席に。
席に……。
「あ、ヒッキーの席ないや」
悪いなヒキオ、このテーブル四人用なんだ!……本当に四人分しか席確保してなかったよ、牛くんが元から確保してた席に座ったら俺の入り込む隙間ないよ。俺の居場所はここじゃない……。
「ちょ、ゆいゆい! マジ! それマジヤバイ! ヒキタニくん超カワイソウじゃん!」
言葉とは裏腹に爆笑する猿野郎。本当に可哀相と思うならそんなにゲラゲラ笑わないで貰えませんかね……人の不幸は蜜の味、過剰な悲劇は喜劇と紙一重とは言うけどさ。あと牛くんも顔逸らしてブフブフ息漏らすの止めてくれ、元はと言えばこの状況に追い込んだのは手前だぞオイ。
「し、しょうがないけど……でも、間が悪いねー」
鳥のような囀りが笑いで更に甲高く耳に響く。不快な感じはしないのが逆に辛い。
かなり目立つ面々で元々周囲の視線を集めていたせいで俺達……というか俺だけ晒し者になっていた。クスクス前後左右から聞こえる。え、何これ。しねばいいのかな俺。
156 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/09/09(水) 22:49:26.34 ID:drvI9ANe0
「え、えーと……あ! あたしの席に座りなよ!」
とはこの空気に気付いたらしい由比ヶ浜。気遣い屋の彼女らしい提案だ、バカなのも含め。
「バカかよ、そしたら今度はお前が立つことになるんだぞバカ」
「バっ、バカはやめてよ! じゃ、じゃあ半分椅子空けるから!」
「……こんな衆人環視でそんなアホみたいな密着すんの?」
「え!? あ……あたしは、別に……」
赤くなって俯いてぽしょぽしょ言う由比ヶ浜が可愛いんですが何か。いやいやお前、そういう反応をこういう場所でするんじゃないよ色んな意味で。俺も恥ずかしくなってきただろ。
そんな由比ヶ浜の様子を見て猿くんと鳥ちゃん(仮)は、ほーっと何処か感心したような様子だった。牛くんは……何故か呆気に取られており、俺の視線に気付くとハッとなって、
「い、椅子だけなら確か余りがあった筈だ……ここは端のテーブルだし、持ってくれば大丈夫だろう」
そう教えてくれた。確かに食器の回収口近くに背もたれのない椅子が縦に積まれていた。
よし来たと俺がそちらへ向かうより前に由比ヶ浜がガタリと露骨に反応した。
157 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/09/09(水) 22:53:13.29 ID:drvI9ANe0
「じゃああたしが持ってくるよ! ヒッキーが座れないのあたしのせいだから!」
「いやお前は特に関係無いだろ、俺が持ってくるから座ってろよ」
「で、でもあたしだけ座ってるのも……あ! そしたらあたしが半分持つよ!」
「あんな軽そうな椅子に二人がかりとかそれこそバカじゃねーか、いいから座ってろ」
でもでもと食い下がる由比ヶ浜を強引に押しとどめると、俺は足早に椅子を取りに向かった。
背後からは過剰な反応を問い詰める三人と、それに焦ってしどろもどろになる由比ヶ浜のやり取りが聞こえてくる。
俺にとっては何時も通りの由比ヶ浜に、取り巻きの三人は少なからず戸惑っている様子だった。それは俺の感じる由比ヶ浜結衣と三人にとっての由比ヶ浜結衣が同じ人間であっても別像であるということ。
同じ人間であっても表と裏、本音と建て前がある。そして社会という集団はその使い分けを個人に強いる。どうしようもなく相容れない人間は誰にでもいて、時として本音を抑制しなければ無用な軋轢や争いが集団を崩壊させかねないからだ。調和の為にこそ虚像、嘘は時に本音や真実よりも求められるものだ。
俺という個に対する由比ヶ浜と、三人という集団に対する由比ヶ浜。どちらかが表で裏、本音と建前。
気にしたって仕方のないことだし、これまでの彼女との関わりでほぼ確信を得ているようなものだが……それでも比企谷八幡に対してこそ由比ヶ浜結衣の本音や真はあってほしいと、どうしようもなく俺の心は求め、ざわめくのだった。
158 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/09/09(水) 22:55:44.83 ID:drvI9ANe0
というわけで本日の投下は終了です
首尾良く行けば次回ようやっとえっちぃのが……首尾良く分割されなければ、ですが
いずれにせよ明日の投下はちょい難しそうなので、続き明後日以降と見てお待ち下さい
159 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/09(水) 23:00:52.61 ID:OkS7NTG9o
乙ですー
160 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/09(水) 23:01:53.26 ID:WMOV7HV+o
乙です
161 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/09(水) 23:38:59.94 ID:7fa32L+rO
モブどもとガハマが何したいのかさっぱりだわ
162 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/10(木) 00:07:30.30 ID:+XaMEodAo
絵に描いたような誰得シリアスだな
163 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/10(木) 01:50:03.58 ID:0gs5Qr+9O
たぶんヒッキーが面倒くさいだけだと思うんですけど
164 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/12(土) 21:32:05.84 ID:9S3NzYhDo
どうも
>>1
です
執筆遅れて土下座状態です申し訳ありません……
キリの良いところまで進めば今夜0時以降に投下できるかもしれないので、本当に期待せずお待ち下さい
165 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/12(土) 21:48:26.02 ID:lT8bOr6+o
投下時間には期待せず中身には期待して待ってます
166 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/12(土) 22:02:46.84 ID:WbUMV7RxO
遅れても全く問題なし
がんばれ
167 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/12(土) 23:44:30.91 ID:9S3NzYhDo
ドーモ、
>>1
です
今のペースだと投下可能になるのが26時以降になりそうなので
明日の昼頃に分割せず投下出来るよう調整しますです
ご迷惑をおかけしますがお付き合い頂けると幸いです
168 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/13(日) 00:12:02.20 ID:GvJZYh0bo
期待
169 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/16(水) 00:43:50.25 ID:Cwb64VW4o
待ってるぞ
170 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/16(水) 07:16:16.24 ID:sft4h9v8o
どうも
>>1
です
諸々予定ブッチして申し訳ありません、現在絶賛産みの苦しみ中です……
とりあえずは二話が完成し次第投下する予定です
遅くとも土曜には投下出来るよう調整しますので期待せずお待ち下さい
171 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/16(水) 17:26:39.91 ID:9hCkiaJGo
時間かけても待っとるぞ
172 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/16(水) 21:50:44.91 ID:4YvESmMi0
待ってる
173 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/23(水) 07:38:53.39 ID:ddMNRV2fo
どうも
>>1
です
またも予定ぶっちして申し訳無く……そもそもかなり無茶なプロットだったと根底から見直しておりました
しかし全部ひっくり返すわけにも行かず現在急ピッチの突貫工事で進めており連休最終日の今日中にはある程度形にと思ってます
本当に期待せずお待ち下さい
174 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/23(水) 07:41:05.70 ID:6eqfF/oJo
待ってる
175 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/23(水) 08:00:30.65 ID:x8N7nszKo
酉つけた方がいいんでね?
176 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/25(金) 23:57:23.54 ID:bsE3EfCAO
エタったな(確信)
177 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/25(金) 23:58:54.35 ID:wkEr7B6Bo
1の報告は来てるんだから気長に待とう
178 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/26(土) 07:23:06.52 ID:1zz89u3io
どうも
>>1
です。
エタらせるつもりは……気持ちだけは誰にも負けません、気持ちだけ
二話は書き終えてから投下するつもりでしたが、場合によっては現在の書き溜め分を分割して投げる可能性はあります
その場合は予告するのでご注意を
あと酉ですが、ここのように読者も少ないだろう零細スレではあまり必要性は感じないのが現在の正直なところ
もし荒し・なりすましが発生するようなら導入考えます
179 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/26(土) 08:47:51.63 ID:+gyDRbbAO
>>178
うるせえお前いつもそればっかりじゃねーか
180 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/26(土) 09:22:33.08 ID:MRZ9B4FFo
頑張って
181 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/26(土) 09:43:12.07 ID:W5FvY+hKo
文句言うなら読むなよ
モチベ下がることしか言わないとか書き手だけじゃなく読み手に対する嫌がらせだろ
そんなにエタらせたいの?
182 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/26(土) 10:31:01.20 ID:+gyDRbbAO
散々ブッチしてる奴に何を期待してるんだかな
むしろエタる機会をわざわざ作ってやってるんだから
感謝して欲しいくらいだわ
183 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/26(土) 11:35:42.25 ID:v4B+1P0xO
なんなのこの勘違い野郎……
184 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/26(土) 12:00:52.55 ID:W5FvY+hKo
勘違いというか「読んでやってるんだから早く書け」という自分勝手なお子様だから
185 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/26(土) 21:12:33.19 ID:ozeuR71Co
外野がうるさいスレはエタる
186 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/28(月) 23:33:38.77 ID:GOjfkLRAO
結局エタっちゃうのか
期待してた俺ガ馬鹿だった
187 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/29(火) 00:39:28.52 ID:7TDG3ZPGo
待ってるから
188 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/02(金) 01:54:17.85 ID:SNjX+zg10
まってるよ
189 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/07(水) 07:00:12.32 ID:T1FCS0ZUo
どうも
>>1
です、お待たせしてしまって申し訳ありません
書けども書けども終わらず、そもそも一話中に全部詰め込める話でなかったかと見通しの甘さを反省しております
しかし一先ずの目処は立ったので最低限分割の前半部、出来れば前後両方完成させて今週末に投下する予定です
期待せずお待ち下さい
190 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/07(水) 07:29:49.74 ID:aum53mOAO
よっし!
191 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/07(水) 08:02:18.38 ID:FIh+e8W4o
期待します
192 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/10/08(木) 13:54:15.17 ID:mkPiRsKj0
これ面白いな。
由比ヶ浜好きだし、これは期待せざるおえない。
ところでちょくちょくMTGネタが入るってことは、作者さんもMTGやってるのかな。
どこかであったらお手合わせを……
193 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/08(木) 14:00:50.86 ID:V3xN1K7zo
スタン落ち直後の忙しい時期だし書くのが遅くなってもしゃーない
194 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/08(木) 19:12:53.62 ID:XjroydwsO
期待
195 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 08:49:15.74 ID:8fpHBoT9o
どうも、2マナのT氏ぐらいにはやる気も実力もないPWの
>>1
です。
現在推敲中で、やはり随分な量になったので昼頃に前半部投下予定です。
推敲、修正の進行具合では後半部の投下は明日以降になるかもしれませんのでご注意を。
期待せずお待ち下さい。
196 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 09:29:21.31 ID:uDHf4HW9o
待ってる
197 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 21:43:44.01 ID:8fpHBoT9o
鉄血のオルフェンズ面白すぎ、どうも
>>1
です。
昼と認識できる時間は全部寝てました申し訳ありません。
飯食って諸々の雑事を終えたら投下します。
198 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 22:18:51.59 ID:hstsJkY5o
オルフェンズの面白さには同意
だからはよしろ
199 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:04:26.29 ID:8fpHBoT9o
投下開始します。
200 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:06:04.78 ID:8fpHBoT9o
ワイワイガヤガヤ。
喧々諤々。
混雑を極める学食内にあって俺が(物理的な意味で)末席に身を置くテーブルの賑やかさ……もとい、騒がしさは際立っていた。
「にしてもさっきのゆいゆい、いつもと違ってちょい子供っぽいっつかチョー明るくってー……ポジティブ? ポジってる感じ! シンセンでイイと思うンだよねー」
「それポジティブとは違うよ猿渡クン、でも気持ちは分かるかも……童顔の面目躍如みたいな、私的にはこっちの方が寧ろしっくり来る気がするなぁ」
「ど、童顔って……気にしてるんだからあんまり言わないでよー」
「いやでも、いいんじゃないか? 俺としては少し違和感あるが、それも由比ヶ浜らしいと言えなくはない……と思う」
とまぁ先程の椅子を巡る俺と由比ヶ浜の何時ものノリが取り巻き's達には大層珍しかったらしく、テンションageで由比ヶ浜をageる流れ……というか何というか。
かつて三浦という分かり易い女王様が持ち上げられる光景を「それ」のイメージとして擦り込まれていた俺としては、ヨイショと弄りが混じった「これ」をストレートに受け取ることも出来ず、しかしそれも由比ヶ浜らしいのかとなんとなく納得しておく。
201 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:08:58.39 ID:8fpHBoT9o
それに俺にとってはバカで可愛くて知恵足らずでガキっぽくて可愛い由比ヶ浜であるが、そうした面が主に俺とその周辺の関わりでしか表れていないことを知っているし、寧ろ人との距離感を測る能力に長けた彼女は時折吃驚するほど大人っぽく見えることもあった。子供だ童顔だと生意気な年下に接するように対応していると、ふとした瞬間見せる女≠フ色気に心臓が跳ね上がり……は、関係無いな。うん。
入学してからの彼女がこういう取り巻き達とどういう関わり方をしているか俺は知らない。知らないが、彼女を求める側の心はかつて葉山の周囲に集まっていた連中と同じなのではないか。目の前の光景を見ながらなんとなく思う。
誰かや何処かに重きを置くでなく、誰もが惹かれ担ぎ上げたくなるヒーローの幻像を作り出す。葉山はそれを半ば狙って行っていたし由比ヶ浜にそうした意図はないだろう。だが同年代、同じステージに立つ人間からすれば視界を遮らない暖かな光は良かれ悪かれ人を惹き付ける。由比ヶ浜結衣の持つ光は、その領域に足る輝きを持っているのだと嫌でも実感する。俺自身ですらその光に寄ってきた羽虫ではないかと考えてしまうほどに。
202 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:11:05.15 ID:8fpHBoT9o
もそもそと惣菜パンを囓る。
幸いここの学食は外から食べ物を持ち込んでも席を使えるタイプで、授業前に買っておいたパンは本来使えるスペースのないテーブル端でも問題無く食べられる。
だが目前の四人が皿に盛られた温かな料理を飾りに談笑する中、一人黙々と冷たいパンを囓ることに疎外感を覚えた。それ自体は何時ものことなのに、その中に由比ヶ浜結衣がいるというだけで棘が深くまで刺さる感覚が生まれる。
何時ものように思考は暗い方へと沈下していく。
ここは俺の居場所じゃない――さっきは冗談めかして脳内を走った言葉が鎖となり、実感は重さとなって心臓を責める。
……とっととパンを食べきって、トイレへ行く体で逃げ出してしまおう。これ以上この空気を吸うこと――この空気に由比ヶ浜結衣が適応している事実に、これ以上はきっと耐えきれない。耐えきれなくなった俺がどんな醜態を晒すかなんて想像したくも無い。
が、そんな俺の内心と裏腹に、
「――でさヒキタニクン、高校の時はどうだったの?」
美声で囀る女学生……椅子を確保した際、駒鳥と名乗った彼女は俺に話を振ってきたのだった。
203 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:13:12.55 ID:8fpHBoT9o
「え、何が」
「何がって話聞いてなかったの? 高校の時って結衣はどんな感じだったのかなって」
「あ、あたしさっき言ったじゃん! なんでわざわざヒッキーに聞くの!?」
「自己申告は情報として信用が低いからに決まってるじゃないの……で、どうなのどうだったのよヒキタニクーン」
焦りに焦る由比ヶ浜を無視してニヤニヤ笑いながら俺に問いかける彼女は、お伽噺か童話に出てくるようなゴシップ好きのお喋りな鳥そのものだった。うーんウザい、そして可愛い。繋げてウザ可愛いがこの場合あんまり有り難くない。
「どうって……」
「お、それ俺も気になんよー、ヒキタニくんぶっちゃけてみ!」
「まぁ友達≠フ言うことの方が信憑性はあるかも、な」
ここぞとばかりに猿と牛も乗ってくるし、あんまり期待されても俺すべらない話し方なんて知らないよ?寧ろ全スリップ。比企谷八幡のすべる話でDVD発売まである。
204 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:15:21.58 ID:8fpHBoT9o
「ヒッキー、変なこと言わないでよ!?……へ、変なとこなんてないけど!」
「いやお前、そういう態度を突っ込まれてるんだから自覚しような? 俺の前だからって――」
安心してんのか、とまで口から出そうになるのを止める。
俺の前だから安心している
危ない言葉だ。少なくとも今この場では……そう判断しての急ブレーキだったが、
「俺の前だからって……なに?」
上空から地上を俯瞰する鳥の目敏さから逃げることは叶わず、ニヤニヤとブレーキ痕を指さし俺を問い詰める駒鳥さんである。いや急ブレーキの擦過音って滅茶苦茶響くから見えて無くても関係無かったかもだけどね?
「と、特に意味はねぇけど」
「ふーん、でもその俺の前≠ナ結衣の態度が違うのが気になってるわけだからさー」
ああ、これはあかんタイプだ。
ゴシップへの関心、その源である興味と悪意を自覚しながら隠そうとしない。それでいて醜悪にならず悪意を善意に見せかける技術に長けている……そういうタイプの女性とかち合うのはおよそ一年振りで、それに伴う記憶のフラッシュバックは思考回路に予期せぬ負荷をかけた。
205 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:17:15.86 ID:8fpHBoT9o
「……その、アレだ、誰に対しても同じ顔で接せられる人間もそういないだろ。 この中では一応、一応由比ヶ浜とは俺が一番つ……見知った時間は長いわけだし」
正論だが苦しい言い訳だと自分でも分かる。
誰に対しても同じ顔で接する、それが完全でなくても高次元で行える希有な例を俺は幾つか知っているし、正直由比ヶ浜はそこに近いタイプであると思う。だからこそ由比ヶ浜を中心に目前の人間はグループを形成しているのだ。
そんな彼女が人付き合いの外面を崩して相対する人間がどんな存在であるか。
「そうかも知れないけど、私が気になるのはその見知った時間≠ネわけでして」
元より穴だらけの防壁、会話の風に乗って軽やかに滑空する鳥は穴をすり抜け核心へと迫ろうとしている。
「ぶっちゃけて聞くけど……二人って付き合ってるんでしょ?」
206 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:19:42.69 ID:8fpHBoT9o
時間が停まった……そんな錯覚は起こらなかった。まぁ普通に考えりゃ由比ヶ浜の態度とか行動とか露骨だもんね?
「ちょ、コマちゃーん!? 相手ヒキタニくんだしそれはないっしょ! ないない!」
「す、すまんがその……俺もそれだけは無いと思うんだが」
更に男二人の反応が喧噪に拍車をかけた。内容は否定なんだが。
思わず熱々の丼ラーメンを「そぉい!」と脳天にブチ込んでやりたい衝動に駆られるが、天秤の釣り合いを考えればそれも一つの推理として正しい形ではあるだろう。それを常に言い訳に使ってきた俺が言うんだから間違いない。
それにこの二人が由比ヶ浜に近づいてきた理由も凡そ察しは付くから、こういう反応も予想出来る範囲ではあった。
計画通り……ではなく想定通り。
自覚無自覚関係無く薄暗い根暗男をオトす流れは俺の良く知るところであり、慣れた空気は俺の思考を僅かでも正常化させる一助になった。
なったが、
「……」
話題の中心である由比ヶ浜は、この致命的なゴシップに戸惑うこともなく静かだった。
207 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:21:31.70 ID:8fpHBoT9o
何時もなら、また俺の前ということを加味すれば一番過剰に反応しそうなものだが、今の彼女は気持ち俯きその顔に僅かな陰を作っている。
空気を読んだのだ。
自分でなく、俺の望む状況を考えて自分の感情を押し殺している……何度も見てきた青と黒。
ズキリ
またも棘が大きく、杭に変化していくのを感じる。
いつまでも癒えぬ傷口が無理矢理に押し広げられていく幻痛。しかし痛覚の電流を介さない痛みは、それが単なる逃げの言い訳であると理性に認識させ、肉体的な苦痛より寧ろ俺の心を責め立てた。
本当に、なんて都合が良い心臓だろう。
罰が欲しければ痛みを与えて罪悪感を誤魔化し、耐えられなくならないよう物理的な痛みにはならず……きっと白木の杭を打ち立てても灰になどなるまい。
「……俺と、由比ヶ浜が?」
笑う。
「二人の言うとおり、ありえねぇよ」
208 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:23:25.40 ID:8fpHBoT9o
自嘲。
顔面ハンデの名は高く笑顔がキモいと評判の俺でも負の笑いなら様になる。本心からであれば尚更だ。
言った瞬間どこかホッとした顔になる男二人の様子が無性に腹立たしく、しかし狙い通りの反応であることに安心もする。
しかし、杭からの痛みは爆発的に増大した。
俺の言葉と笑いに、由比ヶ浜がビクリと反応したのが見えたから。見えてしまったから。
彼女が傷付くと、痛がると分かっていて、尚それを。
「えー、でも結衣の反応は如何せんオーバーというか」
それでも食い下がるお喋りな鳥に小さくない怒りを抱くが、それを顔に出すこともしない。ただこれ以上付き合ってやる気もない。
もうパンは残っておらず手元には包装のビニールだけ。それを握り潰すとそのまま席を立つ。
209 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:25:15.41 ID:8fpHBoT9o
「……トイレ行ってくるわ」
「あ、ヒッキー……」
「三限の準備もあるしここには戻らんからな」
結局俺は別の意味で耐えられなくなった。俺が自分の情けなさ故に由比ヶ浜をまた傷付けた事実と、未知の傷より既知の痛みを選んだ臆病さに。
きっと縋るような目をしていただろう由比ヶ浜の方は極力見ず、他三人の声を意識の外へ追い出しながら足早に学食を後にした。
だが学食を出てすら開放感はなく、曇って薄暗い灰空も、落ちてくる水の粒と雨音も全てが気に障ってどうしようもなく神経が削られていく。誰かや何かが傍にいることが、堪らない。
そのまま人の中に飛び込む勇気なんて有る筈もなく、俺は三限に出席することなく大学を後にした。
それもまた由比ヶ浜と彼女の傷から逃げ出すための口実であったこと、それを自分の中で誤魔化す余裕すら残っておらず、俺は自宅へ……薄暗い己の巣穴へと逃げ去るしかなかった。
210 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:27:25.31 ID:8fpHBoT9o
家に着いてから、俺は何をする気にもなれず布団の上に転がっていた。
パソコンに向かうこともなく、携帯ゲーム機に集中も出来ず、本を読んでは頭に入ってこない。閉め切った窓の外から途切れず聞こえてくるくぐもった雨音の干渉だけ受け入れて、それ以外に力も意識も割くことは無かった。
スマホは例の如く振動すらないサイレントモードで、手に取ろうという気にすらなれない。手に取った先、痛みが待っているのが分かっているからだ。
石橋を叩いて渡り、水溜まりは長靴に履き替えてから踏み越え、平野を歩くのに金属探知機は欠かさない。それだけやって尚神経を太く太く保っていなければ痛みに折れず生きていくことは出来ない。それが高校の三年間で得た一つの結論だ。
誰だって痛いのは嫌だ。怪我なんてしたくないし、病気なんて以ての外。それでも人生は寒風熱気まきびしに地雷だらけ、空調完備の飛行機で人生のトラップなど関係無しと悠々生きていけるのはほんの一部の貴族だけ。その貴族だって飛行機内の人間模様次第で安寧の部屋は苦痛の匣へと変わってしまう。
なればこそ痛みに耐えることを美とする風潮は、避けざる痛みを徳と定めて心に麻酔を打つ欺瞞に他ならない。それは一片の真実だ。
だが一片は一片、少年探偵には悪いが真実は一つじゃない。
211 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:29:55.36 ID:8fpHBoT9o
俺は由比ヶ浜結衣が好きだ。
彼女の幼くも可愛らしい顔立ちが好きだ。
その幼さに反するような色香を詰め込んだ豊満な肢体が好きだ。
くるくる変わる多彩な表情が好きだ。
中でも底抜けに明るい輝く笑顔が一番好きだ。
自分を置いても誰かの傍に寄り添う優しさが好きだ。
俺だけに見せてくれる涙と感情が、溜まらなく愛おしくて大好きなんだ。
だが好きであればあるほど、俺と彼女の在り方が理想とズレていることにこれ以上ない痛みを感じてしまう。
ベストな結果はほぼあり得ず、その中で苦しみながらベターを探していくしかないという現実が更に苦痛を伴う。
212 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:32:25.63 ID:8fpHBoT9o
それでも、その痛みの先でしか彼女と共にいられないのなら俺は喜んでそれを請け負おう。確実な幸福の為の痛みなら、いっそマゾヒストを演じても良い。個々の性癖や痛覚への耐性・質などは関係無く、道が見えていればこそ経過の一つとして望まれる痛みもある。
ならばこそ避けたくない、そんな痛みなら欲しい。是非その痛みを請け負いたい。
……請け負いたかったのに、そんな痛みへの願望すら俺個人のものであるとしたら……そんな想像が俺と俺の望む道、未来を蝕んでいる。彼女が痛むことを何より怖れ、それでもその為に彼女を傷付けなければならない矛盾。
何故男女の関係というものがただ二人だけの間で完結しないのだろう。
何故不特定多数の有象無象との関わりすら配慮して関係を築かなければならないのだろう。
今の由比ヶ浜を取り巻き人間達は俺にとっては誰もが有象無象の障害でしかないが、由比ヶ浜本人にとってはそうではない。端から光の中に居ることを諦めた俺と、そもそも光源である彼女とで社会との関わり方を合わせてはどちらかが立ち行かなくなる。
ロミオとジュリエットとまで気取るつもりはないが、心と立ち位置で何故すれ違いが起こってしまうのだろう。
今の俺を取り巻く世界に在るのが俺と彼女だけなら良かった。
痛むのは俺だけで良かった。
何をしたって俺だけが痛いなら、それだけで良かったのに――。
213 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:34:46.15 ID:8fpHBoT9o
ふと気が付くと、外は暗かった。
雨音は依然変わらず不定のリズムを一定に保って続いている。
恐らくネガティブの沼に沈み込んでいる内に意識が眠りを選んだのだろうが、変わらない外の音色が視覚と聴覚のバランスを崩して意識を曖昧にしていたのだと言われても多分信じてしまう。そのくらい現実感が希薄だった。
時間を確認したくて無意識にスマホへ手を伸ばしスリープを解除した瞬間己の迂闊さを呪うが、ロック画面に着信の情報はなく頼んでもいないメルマガが一件届いているだけだった。ぼっちにとっては何時も通りの画面の筈なのに、頭の中を安堵と寂しさが半端に混じった感覚が支配する。それを暫く弄ぶも、腹腔の訴える空腹感がそれを打ち切った。
時刻は19時前。
時間は頃合いだしこの雨模様では外食も億劫、冷蔵庫の中身もそこそこなので本日の夕食は自炊をすることに決めた。
金銭的にも献立のルーチン的にも外食ばかりで腹を満たすわけにもいかぬと引っ越し前から自炊の有無は考慮していたところで、最初は戸惑い面倒だった手順も少しずつ馴染んできたところだ。
まな板と包丁を洗い清め、家を出る際に「これを小町だと思って、大事にしてね……!」と押し付けられた飾り気のないエプロンを纏い冷蔵庫から食材を取り出そうという、その瞬間。
ピンポーン
呼び鈴が鳴った。
214 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:36:55.90 ID:8fpHBoT9o
住処が住人の性質を表すのか、部屋すらステルス性を発揮しているらしくここに棲み着いて一ヶ月新聞とか宗教とか怪しげな勧誘が玄関に立ったことはない。かといって通販を頼んだ記憶もない。そもそも今のところこの部屋の呼び鈴を鳴らしたことがあるのは由比ヶ浜と小町だけだ。
……普段の俺ならばこの時点で来訪者が誰であるか察し、受け入れるか否かを考えたろう。しかし今の俺の精神状態は平時より不安定で、料理という作業の切れ間が集中力の断絶を生み、更に何時もは有る筈のスマホへの連絡が皆無だったことでその可能性に思い至っていなかった。
或いは、それを無意識に望んでいたからこそ本能が理性と記憶を切り離していたのか。
殆ど無意識に玄関を開けた俺の前には、今の俺にとって誰よりも会いたくて誰よりも会いたくなかった人が、
「……あ、ヒッキー」
由比ヶ浜結衣が立っていた。
215 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:38:59.39 ID:8fpHBoT9o
「ンまい!」
てーれってれー。
「ヒッキーこれンまい! スゴいよヒッキー!」
「いいから飲み込んでから話せ、な?」
口から内容物を零しそうな勢いでモゴモゴ感動している由比ヶ浜。しかし俺と彼女の前に置かれているのは簡素な炒飯とインスタントのフカヒレ玉子スープという熱烈中華食堂も吃驚なお粗末さである。
男飯なんぞ「切る」「混ぜる」「焼く」の三拍子で済ませるのが仕儀であり、炒飯焼き飯は今昔問わず男の台所事情を支えるベストパートナーなのだ。
「んぐんぐ……ぷは。 いやでも本当に美味しくて吃驚しちゃった……もしかしてヒッキー、あたしより料理上手い?」
「こんなもん誰でも作れるだろ……まぁ由比ヶ浜の場合料理以前の問題だからそも勝負の土俵にすら立っていない」
「ちょ、失礼だし! あたしの料理はオママゴトって言いたいの!?」
「お飯事でも食材を扱ってる意識はあるんだよなぁ」
「い、意識くらいあるし! 農家の皆さんにちゃんと感謝してるし! バカにし過ぎだからぁ!」
俺の軽口にズレた返答でギャーギャー騒ぎ出す由比ヶ浜の姿にホッコリしつつもつつがなく食事は進む。
216 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:40:45.10 ID:8fpHBoT9o
「……でも、あたしがチャーハン作るとべちゃべちゃになっちゃうし焦げるし玉子もおっきく固まっちゃうし、ヒッキーがこんなに美味しいの作れるのちょっとショックかなぁ。 ちゃんとお店のチャーハン!って味だし」
「まぁお前の場合はもっと意識しなくちゃいけないところが多いんだろうが、炒飯自体は基本さえ押さえてれば所謂『店の味』には簡単に近づけるんだよ」
「え、そうなの?」
「そうなの」
炒飯の基本は「中華鍋、フライパンは白い煙が上がるくらいに熱する」「パラつかせるのには冷や飯の方が向いている」「かき混ぜるも調味料の投入もスピーディに」の三つで、これさえ守れていれば最低限パラパラの炒飯にはなる。
味は好みが分かれるところではあるが、所謂「お店の炒飯」というのは大抵味の覇王的中華スープの素を使っているため、味付けには塩胡椒にスープの素を加えれば驚くほどお店感が出るのだ。これはネットの炒飯考察、小町のアドバイス、そして俺の経験からの結論である……ということを由比ヶ浜に説明してみた。
「でもそういうスープの素って身体に悪いんじゃなかったっけ?」
「それは一部におけるソースの無い誹謗中傷みたいなもんで統計上それが原因の健康被害は出ていない筈……まぁ主成分がナトリウムとは言うから、摂り過ぎは良くないってレベルで考えれば良い」
某新聞社員とU山とその生みの親には悪いがデマゴーグはいけないと思います。
217 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:42:27.95 ID:8fpHBoT9o
「ふーん……やっぱりヒッキーは物知りだね」
「殆ど受け売りだけどな」
「でもでも、あたしは今まで何にも知らないで作ってたんだなって思ったから……」
「お前の場合レシピすら見ないで作ってるもんな」
「……」
「……そこで黙らないで貰えませんかねマジで」
やっぱり料理以前の問題じゃないか。どんな料理でもレシピ無しのソラで作れるようになるまではそこそこの研鑽が必要であって、最低限の下積み経験すら無しで見た物食べた物をハイレベルで再現出来るとかどこのラノベの主人公だ。お料理チートラノベか、多分流行らない。
とまぁそんなこんなで食事も終わり、今回は会心の出来だったと少しだけ気分を良くしながら今は食器を洗っていながら、なんともなしにテレビを見つめる由比ヶ浜……一時間前の彼女の姿を思い出す。
218 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:44:26.75 ID:8fpHBoT9o
誰だ?
そう思わず口にしてしまいそうになるほど、普段の彼女からかけ離れた空気を纏っていた。
髪型、体格、輪郭、服装、顔立ちまで全て由比ヶ浜結衣なのに、その全体像から受ける印象はまるで異なっていた。
服の端々を濡らし、俯き足下を見つめる彼女の姿は何時もよりずっと小さく――元々小柄ではあったが――見えた。
ドアを開けた俺の姿をゆっくり見上げた彼女、その蔭りを正面から見つめる。灯りが落ちた、光のない由比ヶ浜結衣。
「……ごめんね、急に来ちゃって」
これは俗に言う「ピンポーン→来ちゃった☆」というアポ無しの到来により無防備迂闊な姿状態を見られ破局に繋がるパターンか愛故の暴走とその無遠慮さに疲れ果てやっぱり破局に繋がるって黄金パターンだな!?……などと口に出せるはずも無く、その弱々しさに息を呑んだ。
「……いいから、入れよ」
「いいの?」
「結構濡れてるし、流石にそのまま放置する気はねぇよ……細かい話は後でな」
「うん……」
今日の雨が豪雨というわけでもないしずぶ濡れでもないが、それでも締め出し放置するなんてあり得なかった。
219 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:46:26.77 ID:8fpHBoT9o
聞きたいこと、言いたいこと、思うこと、感じること……色々あったが、きっと原因は俺の態度や行動に起因することなのだろう。そう思えばこそ再び胸は痛み出し、問題から逃亡してもただ選択肢が減少していくことだけなのだと改めて実感していた。
その後は彼女にシャワーを貸し、曰く「突発的お泊まりイベントの為の備え」と小町から渡された女物のパジャマを渡し(その際何故こんなもの持っているのか訝しがられたが、小町の差し入れと告げると納得された。小町ェ)、調理実食を経て今に至る。
何時もより気を使って作った炒飯は好評。シャワーで身体、ご飯で腹を暖めた由比ヶ浜の空気はある程度上向いたようだ。
お腹が一杯になったら多少でも機嫌が直るとかちょっと……と、今は思えない。寧ろちょっとしたトリガーでメンタルのバランスが取れるその性質が羨ましくもあった。
それが彼女のなりの俺に対する配慮、演技である可能性には目を伏せた。
220 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:48:47.31 ID:8fpHBoT9o
「……ほれ」
「あ、ありがと……」
洗い物は終えたが、そのまま戻るのも気が引けたので二人分のコーヒーを淹れて差し出す……コーヒーと言っても粉末タイプのカフェオレという安っぽさ。
マッ缶ほどでないにしろ糖分乳成分過剰な甘味飲料だが、それでも薫るコーヒーの匂いがざわつく心を幾分落ち着けてくれる。
由比ヶ浜の方も、ずずと小さく音を立て啜ると、
「おいしい」
そう頬を緩め、周囲の空気は蕾が微かに花開いたように陽気を振りまいた。
何処か言い訳じみた気遣いの代価としては貰いすぎなくらいだったか……そんなことを思いながら彼女の正面に座る俺もカフェオレを啜り始める。
ず、ずず、ずずり。
啜る音が近く、何をやっているのかも知れないテレビ番組の音声が遠くなる。
俺も由比ヶ浜も啜る途中でチラチラと相手の顔を窺い、目が合っては視線をカップに移してまた啜る。
ず、ずず、ずずり。
時間の感覚が引き延ばされては縮み、舌と口内の粘膜を焼くような熱いカフェオレと軽くなっていくカップだけが現実感の指標だった。
221 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:51:13.65 ID:8fpHBoT9o
やがて熱を保ったままカップは空になり、どちらともなくテーブルへ下ろす。
コト、という軽い音がテレビの音声を現世に引き戻すスイッチ。雨音は何時の間にか疎らで小さく、雨脚はようやく弱まりつつあるようだ。
「……三限」
ぽつり、由比ヶ浜が呟いた。
三限、今日のことだろう。
「三限、出てなかったよね」
視線を落としたままの問い。多分これは会話のとっかかりで、内容自体はどうでもいいのだろう。
それでもその確認、少なくとも俺が三限に出席していなかったことを把握している彼女は、きっと俺のことを探し待っていたのだろう。その気持ちは優しく有り難く、しかしチクリと痛みを胸に残す。
「……何かあった?」
「別に……ちょっと体調が悪くなってな」
「そう、なんだ……今は大丈夫なの?」
「ああ、帰ってから直ぐ寝たし」
「うん……」
俺の言っていることは勿論嘘で、それは由比ヶ浜も把握していることだろう。
222 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:53:26.95 ID:8fpHBoT9o
俺の様子がおかしくなったこと、そしてその直後に三限だったこと。
それを由比ヶ浜が目撃していたこと。
……言い訳の仕様がない。ただ口にさえしなければ学食での一件が原因であると、俺と由比ヶ浜の関係への言及が引き金だったことを無に出来るのではないか……少なくとも俺はそう思っていた。浅ましく情けない、逃げの染みついた卑屈な性根がそれでも俺の本性だった。
また沈黙。
特に有り難くもない食レポを行っているらしいテレビの脳天気な音声に僅かな苛立ちを覚え、しかし空間を完全な静寂へ落とすことを妨害していると考えれば縋り付きたくもあった。俺の気持ちも考えずにただ緩慢なやり取りを繰り返してくれる、そんなことも救いになる。
だがそんな俺の内面を知って知らずか、由比ヶ浜はリモコンを拾うとテレビの電源を落とした。
沈黙は静寂へと近づき、しとしと小雨の音のみが部屋を満たしていく。
そして、
「今日ね、皆で遊びに行ったの」
223 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:55:29.02 ID:8fpHBoT9o
ぽつり、由比ヶ浜は話し始める。皆、とは学食の面子のことだろう。
由比ヶ浜の周囲に寄ってくる人間は何もあの三人だけではないが、それでも一個人としての付き合い、その距離まで近づけているのはあの三人だけだろう。俺のような種類の人間とは決して相容れる存在ではないが、それでも三人は由比ヶ浜と同じく「光っている」側の人間であるのは分かる。
手っ取り早く誰かとの距離を詰める手段、それは相手と同じステージに立つことだから。
「今までは、ずっと断ってたんだ」
「そうか」
「……なんでって、聞かないの?」
「……自惚れでなりゃ、俺と一緒にいるためなんじゃねぇの」
「うん、自惚れじゃないよ」
俺と家路を共にする為に誘いを断っている、そんな話も聞いていた。
かつてのクラスと部活の両立、それとは訳が違う。その時よりも由比ヶ浜を取り巻く環境は広く浅く、或いは狭く深くなっている。前者は学校社会での振る舞いであり、後者は俺のことだ。高校という枠を取っ払えば、前者と後者の距離は果てしなく離れていく。
選択肢が増えるということはそれだけ道の種類や行き先が増えるということで、進めば進むほど隣合う道は減りそれぞれが交差することも無くなっていく。大学という自由は異なる道や可能性に踏み出す場であると同時に、異種間を引き離す壁のようでもあった。
224 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 23:58:31.65 ID:8fpHBoT9o
「誘ってくれたのは牛くんで、本当はヒッキーも一緒にって……学食に連れてきたのもそういうことだったみたい」
「見知らぬ連中に混じって遊ぶとか、そりゃぞっとしないな」
「あはは……」
何時もの俺の自虐に何時ものような苦笑で応え、由比ヶ浜は続ける。
本当は今日も俺との帰宅を選ぶつもりだったが、俺のサボりで予定が宙ぶらりんになってしまったところに誘いがあったこと。
気にすることも無いだろうに、俺に対する後ろめたさで連絡を取れなかったこと。
新しい友人達に囲まれ遊ぶことは楽しかったということ。
そして、今彼女が俺の部屋を訪れた切っ掛け。
「ゆとりがね、昼間のこと謝ってきたんだ。 無遠慮だったって」
ゆとり――昼間に俺達の関係に言及してきた駒鳥ゆとりのことだ。
ゲーセンで男二人が遊んでいる隙に謝罪してきたらしい。
225 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 00:00:53.81 ID:DgCzqnC6o
彼女に悪意はあったろう。だがその悪意は好奇心と裏表、決して誰かを傷付ける意図があったわけではない。それはそれで独自の質の悪さはあるだろうが、今回に関しては俺達の関係……というより俺の面倒臭さに地雷の位置を読み違えただけだろう。
だからといって俺の彼女に対する印象がプラスになるわけではないが、内面が見えれば割り振る懐の深さも変わる。少なくともかつての魔王のようだった女性と比べればまだ可愛いものだ。
何より俺と由比ヶ浜の関係について彼女の予想は当たっているし、今回のことも異性からのアピールをそれとなく躱し続ける由比ヶ浜の振る舞いから、助けるつもりで周囲への牽制も目的に含んで話を振ったということらしい。
俺としてはノータッチで居て欲しかったんだけどなぁ心の平穏的に。Yesぼっち!Noタッチ!
とまぁ駒鳥さんに関してはそれで良かった。
問題だったのは男二人……というかその片割れだった。
「その後に牛くんからね……甘やかしてもヒッキーの為にならないって、言われたの」
226 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 00:03:18.41 ID:DgCzqnC6o
『由比ヶ浜の優しさは美徳だが、それでアイツの間違いを正すことは出来ない……誤解されるような態度や距離感を続けるべきじゃない』
あの男はそう言ったらしい。
それは駒鳥さんと同じく踏み込み、そして牽制。
「牛くんね、あたしとヒッキーが付き合ってるなんて冗談でも信じられないって、そういう質の悪い冗談はあたしにもヒッキーにも毒だって……からかう感じもなくて、まっすぐ、言われて……」
次第に顔を伏せ、声のトーンも下がっていく。
光源から夜闇の先を見通すことが出来ないように、光の中に居る人間には闇の中にいる人間のことを伺い知る事は出来ない。
猿野郎が俺のぼっち事情を理解出来なかったように、友人というだけならまだしも由比ヶ浜という光が俺という陰と深く交わっていることが信じられない……というより常識の外、物理法則をねじ曲げるが如き不条理なのだろう。
人は自分の想像力、認識を越えた事象を信じ受け止めることは出来ない。
牛山という人間は由比ヶ浜が正しく俺が間違っていることを認識し、その上で正しい由比ヶ浜と間違っている俺の距離感そのものが間違っていると、あり得ない不条理だと言い切ったのだ。そこにより強い光への憧憬はあっても悪意はない。
薄暗がりにいるのは可哀相だと土竜や吸血鬼を太陽の下に引っ張り出そうとする感性。正しい人間が正しく持つ正しい価値観による正しい傲慢さ。
……牛山に限った話ではなく、闇を遠巻きに眺めるだけで育ってきた人間はきっと皆同じだ。
己の正着を疑わない者は何より強く、そして強い者は殺意すら抱くことなく地這う虫共を蹂躙出来る。
227 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 00:05:14.99 ID:DgCzqnC6o
「あたしと、ヒッキーが……そう誤解されたら、困るだろうって、あたしとヒッキーじゃ、男女のどうとか、それ以前にしか見えないって……言われてたら、つらくなってきて、我慢、できなくて……」
それで三人の下から離れ、逃げ去るようにここまで来たのだと。
「ごめん、ヒッキー……ヒッキーは、あたしのこと考えて、学校じゃ離れてるって、分かってるのに……違うって、ヒッキーとはそんなんじゃないって、あたしから言わなきゃいけなかったのに、こんな風に、急に来られても迷惑だって、分かってたのに、ごめんね……」
途切れ途切れに搾り出すような由比ヶ浜の言葉は、泣いていないのが不思議なくらいに悲痛な響きを伴っていた。
「本当は、一緒に帰ったりとか……ダメなのに、あたしがズルいから、自分のことだけ考えてて、ヒッキーのことなんて、全然考えて無くて……」
ズルい
自分のことだけ
きっと由比ヶ浜に他意はない。
精神攻撃とか、良心の呵責を刺激しようなんて意図は無い筈だ。
だが俺の心の棘は、杭は、言葉の度に罪悪感という槌で打ち付けられている。
打たれる度に心臓は脈動し、血流で砕け散ると錯覚するくらいに痛みを伴う。
痛みで自責を希釈する、自分の心だけを守る為の防衛機能。浅ましく生き汚い俺自身の証明。
だが、それでもこの痛みはきっと俺だけのものではなくて、その源泉は。
228 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 00:07:16.41 ID:DgCzqnC6o
「ほ、本当は、あたしも、分かってるのに、ヒッキーは、あたしと全然お似合いじゃ、なくて、誤魔化さなきゃいけないくらい……なのに」
俺が本当に由比ヶ浜のことが好きなのならば、由比ヶ浜に感じる罪悪感は彼女の傷や痛みに対してのものである筈で。
ならばこそ俺はこの痛みを例え僅かでも、和らげなければいけないのではないか。
そうしなければならない筈だ。
「ヒッキーと、付き合えたってだけで、それだけで舞い上がっちゃって……う、牛くんの言うとおりだよ、あたし……本当は分かってるのに、ヒッキーは、あたしなんかより……」
「由比ヶ浜、それは違う」
これ以上を言わせてはならない。
彼女の自傷と、それを眺めて痛みを共有する俺の自傷。その両方を止めなければならない。
既にかつての自分への退路は断たれ、このままでは前にも進めむことはできない。
留まる選択肢なんて、無い。
229 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 00:09:13.90 ID:DgCzqnC6o
「違わないよ、あたし、ずっとヒッキーのこと見てきたから、分かるもん……ヒッキーとあたしじゃ……ヒッキーは、あたしよりも」
「そうじゃない、そうじゃないんだよ……」
確かに俺と由比ヶ浜では釣り合わず、また似合いの二人とも言えないだろう。
光があれば影が出来るのは必然。だが光を遮る何かがあってこそ影は生まれ、俺という障害物が由比ヶ浜の近くに在ればそれによって本来浴びるはずの光を遮られた者達の不興を買う。
俺のように集団から孤立して生きている人間が、由比ヶ浜のように誰かや何かと繋がることで輝く人間の傍に居ること自体が歪なんだ。だからこそ俺は何時までも煮え切らず、対外的には実情を隠してただ自分達だけが知っている関係性を持っているというだけで満足した振りをしていた。
だがそれは所詮外野の事情でしかなく、俺の想いの丈と裡はそんなものと関係無いはずだ。きっと由比ヶ浜の気持ちも。
だから、伝えなければ。
「俺が好きなのは、お前だけだ」
230 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 00:11:15.58 ID:DgCzqnC6o
だが、
「違うよ……ヒッキーは優しいから、嘘吐くの。 あたし、知ってる、から……」
言ったから分かるというのは傲慢なんだよ
以前自分の言ったことが、今その形を縄に変えて俺の首を締め上げている。悲観と諦観で結われた強固な縄は、掻いても掴んでもその力を緩めない。
息の詰まるような苦痛に耐えながら思い出す。かつて俺達の中で、由比ヶ浜が一人大人だった。
言っても分からないと、現実は残酷だと、悲観的に世界を呪うか拒絶するしかなかった二人を余所に、一人だけ伝えようと、感じようと、必死に藻掻いていた。欲しいから、諦めたくないから、幸せになりたいから……何時如何なる時でも力を尽くす、そんな彼女の直向きさは成熟した心の形を証明していた。
その果てに、逆に一人悲観へ沈んでいこうとしたこともあった。それはきっと今も同じで、俺が伝えないから、俺が諦めているから、またこんな事を繰り返してしまう。縄と重力に身を任せれば、一時の苦痛の果てに安寧が待っているのだと。それもまた必要な痛みなのだと。
でも、俺だって欲しかった。
違う、今も欲しいんだ。
誰を殺しても、何を壊しても、手に入れたいんだ。
言葉で手に入らないならどうするかなんて、それこそ考えるまでもないことだ。
231 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 00:13:17.97 ID:DgCzqnC6o
だから、
「由比ヶ浜」
俺は彼女を引き寄せ、抱き締めた。
力の加減が分からない。それでも壊さないよう、けれど逃がさないよう力を込める。
一年以上前、彼女に想いを伝えたとき以来の温もりと柔らかさが縄も杭も皮膚も心も焼き尽くしていく。
「や、やめてよ……これ以上、やさしくしないでよ、つらいから、あたし……」
身体に力はなく、それでも強ばった身を捩り逃げだそうとする由比ヶ浜だが、逃がさない。逃したくない。
「……俺は嘘吐きかもしれないが、優しくなんてない。 だから、今お前が辛いとしても、離さないし、言うのも止めない……好きなんだ、由比ヶ浜」
「うそ、だよ……信じられないよ」
「でも信じてくれるまで、続ける……それしか、俺には出来ないから」
一息。
「好きだ由比ヶ浜、俺には今までも、これからも、お前だけなんだ」
232 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 00:15:40.24 ID:DgCzqnC6o
……何時かのように、後で思い返してのたうち回ってスーサイドるのが分かりきった睦言。
でもその程度の痛みで済むなら、黒歴史なんて幾らでもノートに書き加えてやる。
痛むことを諦めるんじゃない、自分の在り方を諦めるのでもない。
諦めないために、変わろう。それを許容出来るくらい強くなりたいんだ。
今この時の為に……由比ヶ浜と、由比ヶ浜を好きな俺自身の為に。
「……でも、それで、あたしが良くても、ヒッキーが……ヒッキーが辛くなっちゃったら……」
「いいんだよ、もう、なんだ、その……覚悟はして……否、出来てなかったから、さっき覚悟した」
かつて彼女と想いの交換をしたとき、俺は自分と異なる、寧ろかけ離れた所にいる存在と寄り添い繋がる覚悟をした……つもりだった。けど実際は言葉だけ、実の伴わない三日坊主の思いつきでしかなかった。だから今、改めて覚悟する。
「俺はもう、お前の人付き合いとか、外面とか、気にしない……学校でも何処でも、俺の傍に、居て欲しい……居てくれると有り難いというか、出来る限りその可能性を考慮して貰えると、なんだ……」
……覚悟できてねぇなぁ。当方に迎撃の用意無し。でも言い出せただけ今までよりはマシなんだろう。
233 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 00:18:19.56 ID:DgCzqnC6o
「……ヒッキー、その言い方はちょっと格好悪くない?」
「う、うるせぇな、仕方無いだろ……」
今はまだ俺は俺なんだから。格好いい大人な比企谷八幡君はこれからってことでオナシャス。
胸の中でクスクスと笑い始める由比ヶ浜の感触がくすぐったくて、けれど強ばっていた彼女の身体が少しずつ解れていく感触に俺の心も少しずつ平静を取り戻していく。
「ヒッキーの言いたいことね、分かったよ」
「そ、そうか……じゃあ」
「でもね、まだちょっと足りない」
「え」
「ヒッキーのこと信じたいけど、でも、もうちょっとだけ、ヒッキーの気持ちが欲しいな……そしたら、信じられる、かも」
な、何が欲しいんですかね……いや殆ど予想は付いてるんですけど、そこは炒飯お代わりとかだと有り難い。
「……キス、して?」
234 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 00:20:15.49 ID:DgCzqnC6o
ですよねー、二人は幸せなキスをして終了ですよねー。
一旦緊張が途切れると、さっきまでの覚悟は何処へ行ったかというくらい比企谷八幡は鶏肉になってしまうのだ。違う、チキンになってしまうのだった。
……しかしキスをねだって上目遣いな由比ヶ浜が、涙の零れる寸前だったのだろう由比ヶ浜の瞳が、表情が、あまりに、あまりに、可愛くて、綺麗で、愛しくて、俺の心臓はさっきまでと全く違う角度・方向からの衝撃で今度こそ粉々に砕け散った。
していいのか。
キス。
接吻。
口づけ。
口吸い。
していいんだな。
「わ、分かった」
「うん……」
答えると、由比ヶ浜は俺の顔を見上げたまま目を閉じた。
235 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/12(月) 00:22:19.78 ID:DgCzqnC6o
それだけで、期待している彼女の表情だけで、どうしようもなく頭の中が滅茶苦茶になっていく。
俺自身も待ちきれなくなって、一度だけ深呼吸をするとそのまま顔を近づけていく。
初めてではないのに、まるで一番最初の時のような……或いはそれ以前、親しい異性などいない状態で「それ」に憧れ妄想を逞しくする中学生のような心持ち。
狙いを外すのが怖くて目は開けたまま、近づけ、近づき……やがて、唇同士が触れ合った。
「ん……」
くぐもった由比ヶ浜の喉の音。
柔らかい、柔らかい、柔らかい唇の感触と温もり。感じながら、目蓋を閉じる。
彼女の腕が俺の背中に回され、指が淡い力で俺の服に皺を作る。
由比ヶ浜の匂い。
触れる髪の毛。
荒れる脳内。
暴れる心臓。
満たされる心。
もどかしい感性。
何もかもない交ぜで、その全てが唇の感触に集約される。
236 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/12(月) 00:24:30.61 ID:DgCzqnC6o
動けない。動きたくない。
そのままどれだけの時間が経ったかも分からず、浅い鼻呼吸だけではいい加減苦しさを覚え始めると、どちらともなく顔を離した。
「はふ……」
息を漏らす由比ヶ浜の顔は桃色に染まっている。とろりと焦点の合わない夢見るような瞳は先程より更に潤みを増し、臨界を越えてとうとう目尻からこぼれ落ちた。
「ひっきぃ、もっと……もっと欲しいよ……」
涙を流しながら、彼女は更に欲しがった。
断る理由なんて無い。
今度は予告も何もなく、勢いで歯をぶつけない程度のスピードで顔を近づけ、再び触れ合う。
触れ合うだけでなく、擦りつけるように、啄むように、唇に動きを付けた。
新しい刺激が加えられる度に由比ヶ浜はピクピクと身体を反応させ、その度俺の動きを真似るように行為は濃密さを増していく。
これ以上ない触れ合いの幸福感と、まだアクセルを踏み込もうとする飢餓感。
満ち足りている唇と裏腹に不足を訴える首から下を慰めるため、より身体を密着させる。
ビクリと大きく反応した由比ヶ浜だったが、彼女も同じ気持ちだったのか押し付けられる俺の身体に自身の身体を揺すり擦るようにして応えてくれた。
237 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 00:26:52.02 ID:DgCzqnC6o
そしてまたどれだけ時間が経ったのか、どちらともなく身体を離す。
涙は収まり、しかし更に表情は熱を増して、呆けたように力無く何かを誘い待つような危険な雰囲気を醸している。
そんな由比ヶ浜も愛おしくて、暫く夢見る彼女の顔を眺めている。
すると、ぽつり、
「……だいじょうぶ?」
そう問うてきた。
「大丈夫、て……」
それは寧ろ俺の方が聞きたいくらいなんだが、二度のキスで現実の境界が曖昧になりつつあるのは確かに大丈夫ではないかもしれない。由比ヶ浜の表情もそんな危うい状態を俺と同じく抱いていることを想起させ――
「ひっきぃ……」
俺を呼ぶ彼女の視線が下へ移動する。
下へ。
下。
……。
…………あ。
238 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/12(月) 00:29:35.91 ID:DgCzqnC6o
「……す、すまん、というか、ごめん、というか」
お前のドリルで天を突け。
個人戦士俺ダム。
戦士再び。
比企谷テント村。
赤字で強調されそうなコメント群が脳内を埋め尽くす。ALERT!WARNING!
……想定しておくべきだった、思い出しておくべきだった。
キスってヤバいんだ。何がヤバいって、ヤバいくらい息子が反応する。
勃起のメカニズム、ちょっとした欲望との接続でも文字通り脊髄反射的に硬くなる息子事情を考えれば、本番以外で最も性的な接触とも言えるキスに反応しない筈がない。これまで過去二回のキス、それこそ触れ合うくらい淡いものですら過敏に反応し、その後はテント状態にならないよう位置やら加減に苦労したものだったが、今回はそういう意識が飛ぶくらい長く濃密なキスだった。身体を擦り合わせたときにビクって反応してたのはこれがバレてたからだな寧ろなんで気付かないんだよ俺○ねよマジで。
幾らなんでも台無し過ぎる。僕は死にましぇん!と叫びながら社会の窓がフルオープンアタックとか、そこに愛はあるのか?と問う男が返り血レッドだったりとか、事件は会議室でなく現場で起こってるんだという引きこもり万年事務員とか、そういう物に通じる残念さが今ここにある。しかし我ながらなんでこんなに例えが古いんですかね、何処でネタ拾ってたんだ俺……。
決して外には漏らせない懊悩で脳神経回路をグルグル回している俺を余所に、粗末なテントをボーッと眺める由比ヶ浜。気分は乱暴されてる現場を恋人に見られてしまう女性の気分。み、見ないでぇ!
そしてまたいつぞやのように由比ヶ浜の手が山の頂に……って、え。
239 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 00:31:20.21 ID:DgCzqnC6o
ぎゅむ
「ヒッ!」
握る、というか揉み込むような刺激にそれこそ脊髄反射で背筋が伸びた。そりゃ間抜けな声も出る。仕方無いんだよ仕方無いんだって。
そしてその刺激は一瞬一回では終わらず、頭頂部を掌で擦りつつ指先は様々な角度から強弱を付けて魅惑の感触を与えてくる。コ、コイツ何時の間にこんな技術を……!
「お、おま……やめ、や、なに、して……う、うぁ」
思い出されるのは何時ぞやの由比ヶ浜による……て、手コキ。おっかなびっくり素人臭いやりとりではあったが(勿論玄人の経験がある訳ではない)、あれはあれで自分の慰めが如何に無力であるかと思い知ったもので、由比ヶ浜には申し訳無いがあれから何度もあの夜をネタに使ってました。だって……しょうがないじゃない……。
そして今貰っている刺激はそれだけで絶頂を迎えるような強さこそないものの逃げ場がなく、少しずつでも強制的に高められていく快感は理性の危機感を余所に本能は大いに喜び身動きがとれないままに更なる感覚をと強請り始めている。捻り鉢巻きの漁師がドヤった決め顔。マグロ!ご期待下さい。
俺の言葉が聞こえてるのかいないのか、由比ヶ浜は熱っぽい瞳のままふぅふぅと興奮を示す呼吸を繰り返しながら行為に没頭していく。その様は熱暴走と呼ぶべきか。
いい加減感覚を誤魔化す為の揶揄的思考もネタ切れになり、このままゆっくりでも昂ぶりを受け入れ果てに到達しても……そんな期待か諦観か判別の出来ない感覚を抱えて堕ちていくことを覚悟したところで、唐突に刺激は止まった。
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