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【R-18】由比ヶ浜結衣はレベルが上がりやすい
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258 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/12(月) 01:10:34.09 ID:DgCzqnC6o
突然の事態、想定外。未知。何もかもが絡まりあって、今までの比ではないくらいに俺の全身は跳ねた。
だが由比ヶ浜結衣は狼狽えない。
「ん、れぇ」
そのまま逸物を優しく掴むと、竿から先端まで、縦に舌を這わせた。
「あ、あぅぁ、ゆ、ゆいが、はま……!?」
暖かく滑る線の感触が逸物から脊椎、脳内にまで刻み込まれて一気に舌が回らなくなった。勿論思考も。
「んちゅ……」
そのまま余すとこなく唇と舌で唾液を塗りたくり、ぴちゃぴちゃ音を立てて俺自身をなめ回した。
なんだこれ。
なんだこれ。
なんなんだこれは。
一ヶ月前の手コキも凄まじかったが、それでも自慰の延長線上にあると考えれば、今味わっているこの感覚は完全に未知の世界だ。舌が動く度に限界を超えて血が集まり、準備期間など必要無しと先走りが大量に溢れ出す。
「お、おま、おまえ、おまえ……こ、うぅ、こん、な……あぐッ」
理性が飛んだ。しかし本能すらあまりに鮮烈な感触に狼狽え戸惑っている。僅かに残った言語野は、辛うじて意味の拾える意味の無い言葉を口の端から辿々しく垂れ流した。
259 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/12(月) 01:12:24.14 ID:DgCzqnC6o
思考が混迷に混迷を重ねる中、身体の充足だけが急速に満たされていく。そして、
「あむッ」
それはまたも唐突に訪れた。
「あ」
由比ヶ浜は舐める動きから自然に、肉棒を口内に迎え入れ、咥え込んだ。
「あ」
限定的だった熱と柔らかさの範囲が一気に広がった。包まれ、迎え入れられた。
「あ」
由比ヶ浜が、あの由比ヶ浜結衣が、俺の股間の前に跪いて、俺の肉棒を、口中に、
「あ」
あまりの状況、あまりの感覚、あまりの光景に最早理性も本能も境はなくなり硬直している。ただ間抜けに一文字を口から垂れ流すだけ。
そして、そんな俺に更なる追い討ちがかけられる。
「あぷ、あむぅ……」
由比ヶ浜の口内が、舌がうねって絡みついてきた。
260 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/12(月) 01:14:24.44 ID:DgCzqnC6o
「あ」
さっきまでのなめ回しとはまた比較にならない密度と湿度が身体を支配し、末端の感覚は薄れ、ただ未知の領域の快感が体内を荒れ狂い、更に、
「んぢゅ、おふ、おぶッ」
じゅぽ、じゅぽ、じゅぽ。
水音を立てながら、由比ヶ浜の顔が前後した。
もう何の喩えようもなく、それは口淫だった。
由比ヶ浜結衣が、フェラチオに興じていた。
比企谷八幡が、由比ヶ浜結衣のフェラを堪能していた――。
「あ」
あ、
あ、
あ、
あ、
ああ。
261 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/12(月) 01:16:59.92 ID:DgCzqnC6o
「ああ、ああああ、あ、あぎッ」
最早過去も今も未来もなく、ただただ押し寄せる快楽の濁流に押し流される。
均衡など一切無い。これまで経験したことが無い程のスピードでせり上がってくる熱塊を感じ、忠告する間もなく、
「ぅあ、うあ! ああ、あああ!」
ただ快楽の赴くまま、流されるまま、俺は由比ヶ浜の口の中にありったけの精をぶちまけた。
「!? んぶッ、むぼッ!」
抜け出る度に脈動するように走る悦が殆ど無意識、反射的にビクビクとに身体を反応させる。ドクドクと容赦なく吐き出される俺の奔流に由比ヶ浜は目を見開き、しかし口を窄めて決して口に隙間を空けなかった。
「んぐ、んぐ、ぐぅ、んん、んぐ……」
眉根を寄せて苦しそうな顔で、それでも肉棒を吸い上げるような体勢のまま由比ヶ浜は俺の股間に縋り付いていた。俺のモノを口に含んだまま、白濁を零すことなく……身動きないまま微かに来る震え。恐らく飲み込んでいる。
脳細胞そのものが焼けるような強烈な性感、精を嚥下する由比ヶ浜。何もかもが鮮烈で強烈で、あまりに現実感を欠いた現実は射精を経ても俺自身の熱をそう下げてはくれなかった。それでも体力気力を根刮ぎ持っていくような放出は危険な領域を離脱するには充分過ぎる程だった。
「ん……んお……」
やがて全てが収まると、由比ヶ浜はゆっくりと口から肉棒を引き抜く。その際に口の輪が擦れる感覚で再び背筋が震えた。
262 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/12(月) 01:19:19.17 ID:DgCzqnC6o
「けほッ……やっぱり、ヘンな味だよ……」
軽い咳で嘔吐く由比ヶ浜。
エロ本エロ漫画同人誌の情報だが、苦いとか不味いとか、確かにいい話は聞かない。しかし眉を潜めながらも決して苦痛を感じさせない表情はさっきまでの光景を含めあまりに淫靡で、夢の中に沈んで行く感覚は消えなかった。
「おまえ、なんで、こんな……い、いつ覚えたんだよ、これ……」
頭はまともに働かないまでも、大いなる疑問の探求だけは忘れてはならない。
そう、何よりの疑問は処女である筈の由比ヶ浜が何故こんな……こんな、技術というか、淫蕩な行為を。
「な、なんで、口でするの、なんて、しって」
「……女の子向けでも、ちょっと変な雑誌に、男の子を夢中にさせる方法とか、載ってるんだよ……?」
え、そうなの? いや読む度頭の悪くなりそうな雑誌なら小町が所有していたことは知っているが、そんなディープでアナーキーな情報も載ってたりするの? いかんちょっと妹が危ない興奮する。お兄ちゃんそんなの許しませんよッ!?
「いやでも、なんか、すごい手慣れてる感が、その……」
更なる疑問はそこだ。例えフェラチオという行為そのものを知っていたとしてもさっきのは随分スムーズだった気がする。慣れてないと歯が当たって痛かったりするとか聞いたこともあるのに、歯は愚か擦りつけられる粘膜の感触は途絶えることなく性感を与え続け――思い出す度背筋が震える。これ以上回想するのはマズそうだ。
それとも読むだけで性技の熟練度が上がったりするのだろうか。最近の雑誌は凄ぇな……。
263 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/12(月) 01:21:21.40 ID:DgCzqnC6o
「れ、練習、してたから……ヒッキーの為に」
「そ、それ、お前……」
嬉しいこと言ってくれるじゃないの……いや、なんか、マジで嬉しい。唐突は唐突で未だ驚愕の余韻は去らないが、これが俺の為であるという事実が張り裂けそうなほど胸の裡を満たしていく。
「姫菜がね、こ、こーいうのに詳しくて……雑誌じゃなくても小説とか、漫画とか、色々貸してくれて……」
セクシーコマンド―(直喩)外伝 すごいよ!海老名さん。
確かに日本のオタクコンテンツに於いて性関係、その結びつきはかなり深いところにまで至っている。そしてそこそこにディープっぽい彼女であれば資料や教導もお手の物なのか、見た目ビッチの内面清純美少女を性的に指導するエロエロ眼鏡美少女……キマシ?
何にせよ放出で危険な領域をとりあえずは脱しつつある現状は海老名さんのサポートの賜だ、これは彼女には感謝してもし足りな――
「ひ、姫菜の貸してくれたのは、お、お、男の子同士の、だったけど」
前言撤回、なんてモノ見せてくれてんだよコラ。これを切っ掛けに由比ヶ浜が発酵……いや有害な菌活動だから腐敗だ、ともかく腐敗し始めたらどうすんだよ。俺、牛乳は牛乳で楽しみたいからヨーグルトとかチーズ化するのは勘弁して下さいマジで。
264 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/12(月) 01:23:14.84 ID:DgCzqnC6o
「そ、そうか……」
「うん……」
知ってしまえば何のこともない。いや由比ヶ浜と同じく未経験だろう海老名さん(未経験だよね? じゃないと多分戸部が泣く)の指導がどれほどのモノも分からないが、そこは由比ヶ浜に性技の才能があったという嬉し恥ずかしな妄想で補完するとして。
……気まずい。
事実の確認さえしてしまえば話題が話題、これ以上突っ込んだ話は地雷になりかねないわけで、必然会話は途切れる。
俺と由比ヶ浜には普段からあまり共通の話題がなく、一緒に居ても黙り込んでしまうことは多かった。ここに引っ越してから由比ヶ浜が幾度と遊びに来た時間も同様だったが、それでも黙って寄り添うだけで満ち足りる何かがあり、それは由比ヶ浜も同じように見えた。
だが今は、互いの格好とか、行為の余韻とか、直視するにはあまり気恥ずかしい状況で、沈黙は胸の裡を羞恥と焦燥で染め上げていく。
そう、俺は下半身を露出し局部を濡らした状態で、由比ヶ浜は上半身を露出しこれ以上なく女性らしさを主張していた。
……意識するとドツボだ。というか意識してしまっているが故にこの空気だ。肉棒にはぬらり濡れた感触が残り、欲望の火は消えきらないまま擽っている。このままこの空気が続いてしまえば、残り火は再び天を焦がす勢いで燃えさかるのではないか。
そうなる前に動かなければならないのに、空気は負荷のないまま固まって俺の動きを封じていた。
と、
265 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/12(月) 01:25:27.58 ID:DgCzqnC6o
「……ヒッキーの、汚れちゃってる」
そんな懊悩する俺を節目に、由比ヶ浜の視線は俺の逸物に注がれていた。ゆ、ゆいゆいのエッティ!
しかしその言葉、示唆する内容は今の俺には有益だ。使える。これを口実に風呂場へ直行、今度こそ自分で処理して完全に鎮火してしまえば――
「あ、そう、だな……よ、汚れたままはアレだから、風呂にでも」
しかし由比ヶ浜は、
「キレイに、しなきゃ……したげるね」
俺の台詞を喰い気味に、再び熱に浮かされたような顔で俺の股間に跪き、曰く「汚れちゃってる」肉棒に舌を這わせた。
ぬるり
「おふッ!」
予想だにしなかった再度の快楽。
「ん……んん……んちゅ、ちゅぅ……」
唾棄と先走りと白濁に塗れた俺の肉棒を外から舐め、吸い付き、綺麗にしていく由比ヶ浜……しかしそれは先走りと白濁を新しく唾液で塗り替えるだけ。そしてそれに付随する快楽は正しく暴風、突風。
「お、おい……そ、そんなこと、おまえ……!」
突風で一気に酸素を供給された火はあっという間に炎へと成長する。勃起の体裁を保っている程度の膨らみは最早後戻りの出来ない大きさと硬さを取り戻していた。
266 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/12(月) 01:27:20.16 ID:DgCzqnC6o
これもお掃除フェラ、と言うのか。これまで自慰の妄想の中で由比ヶ浜をそう≠オたことは、遺憾ながら何度もある。だが現実を妄想に出力する行為は何とも気恥ずかしく罪悪感を伴い、思い浮かべるシチュエーションは精々がノーマルなプレイの範疇だったわけで。こんな風に行為の後の『ご奉仕』なんて、少なくとも由比ヶ浜がそうなることなんて、想像もしなかった。
けれど今、現実は、
「んぅ……はぁ、はむ、はむ……」
一心不乱に肉棒を舐め尽くそうとする由比ヶ浜の姿は、正に小説より奇なりと言う外無く、ある意味先程の咥えられていた時以上に現実感の無い光景だった。
炎は、頭も身体も焼き焦がして、もう――
「ゆ、由比ヶ浜ッ!」
「あぅッ!」
由比ヶ浜の頭を掴んで股間から引き剥がし、それから再び肉棒を彼女の眼前に突きつける。今度は俺が、俺の欲望が歯止めを失う。
「も、もう一度……さっきの、もう一回、由比ヶ浜……!」
早く、早く、もう一度。あの素晴らしい愛≠もう一度。
焦って強ばり乱暴になる俺の行動に由比ヶ浜は戸惑いながらも、
「あ、ひっきぃ……シて、ほしいんだ……」
淫靡に微笑む。声は再び熱を帯び始める。日溜まりのような彼女が月光の陰に隠れるようなイメージに代わり始める、そんな現実でどうしようもなく脳が蕩けていく。
「ああ、シてくれ……お前に、シて欲しい」
267 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/12(月) 01:29:42.74 ID:DgCzqnC6o
「うん……いいよ」
俺の剥き出しの願望に彼女は待つことも待たせることもなく、
「あむ……ッ」
片手で俺の腰にしがみつくと再び肉棒を咥え込んだ。
「おお……」
先程の再現。敏感な部分を包む生暖かさは直接触れずともただそれだけで全身を奮わせる感触を生む。
「ん、んぅう……あぷ、あぅ、んむ、ん、ん、ん……」
燃えさかってから始まった故か段階的に進んでいったさっきとは違い絡む舌と口輪のストロークは同時に、勢いを乗せたまま始まった。
ちゅぷ、ちゅぷ
じゅぽ、じゅぽ
由比ヶ浜の息遣い。俺の呼吸。水音。感触。
何もかもが混ざり合って、でもコーヒーとホワイトという程には混ざり合わない斑模様。気の遠くなりそうな混迷の中、粘膜が擦れる度に走る快感だけが全身を現実に繋ぎ止める楔で、ただそれだけを求めて今俺の思考も身体も存在している。
走る電流はさっきと同じか或いはもっと強いのに、さっきの放出の量と濃さは頂点への距離を何処までも長く広げて辿り着けないもどかしさが大きくなっていく。自然、由比ヶ浜の頭を押さえる手にも力が入るが、それに比例するように由比ヶ浜の口淫も力が入る。
268 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/12(月) 01:31:36.38 ID:DgCzqnC6o
「んぶ、むぶ、ひぅ、ひん、ぐむぅ」
じゅぷじゅぷじゅぷ、じゅぽ、じゅぽ
揺すられるのは頭だけでなく、ストロークと音に合わせて由比ヶ浜の身体も揺すられていく。味わっているのは口内だけなのに、まるで由比ヶ浜の全身でこの快感を味わっているようで、一所に留まらず宙を彷徨っていた視線は彼女の身体……見下ろす彼女の頭と背中に固定される。
そこに違和感があった。
もぞもぞと動く背中。背中から連なる腰、尻が、頭の動きに合わせて背中よりも動いている。
もぞもぞ。もぞもぞ。振られる尻、それを隠すパジャマズボンの皺が不自然に動いている。
不自然に、一部が盛り上がっている。
俺の腰を掴む手に力が入っていく。
掴む手。片手だけ。
もう片方の手。その行方。
不自然に盛り上がるズボンの一部。
振られる尻。
「んぅ、んん、んふ、んぅ、ん、んぅ、んぅ」
声に、吐息に、喘ぎの色が混じっている。
これは、俺を口に含みながら、由比ヶ浜が、自身を、慰め、て。
269 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/12(月) 01:33:17.96 ID:DgCzqnC6o
「ん、ん……んぶぅッ!?」
爆発した。
欲望が暴発して、全てが炎に変わった。
頭に添えていた手が欲望のまま、視界に映らない由比ヶ浜の乳房を掴んだ。
咥えられたままの肉棒ごと、欲望のままに腰を振った。
「んぶ! むぶ! むぶ! むぶぅ!」
既に密着しているような状態だった為にグラインドの距離は短く、腰の動きは小刻み。しかし自身で揺すり得られる快感は由比ヶ浜に任せたままに走る感覚とはまた別種。更に俺の動きに由比ヶ浜が驚き為されるがままになっていたのは僅かな間で、俺が腰を引くのと同時に彼女も顔を引き、俺が腰を押し込むのと同時に彼女の顔も押し込まれた。押し込まれる度に先端に絡みつく舌の動きも激しくなっている。反復する動きに合わせて、両手に掴み手から零れそうな程に豊かな乳房を揉みしだく。
竿からカリまで余すとこなく濡れて、味わう感触も広く強く。強く。
「おぶ! おぶ! んぶ! んぶ! んぶ! んぶぅッ!」
じゅぽじゅぽじゅぽじゅぽじゅぽじゅぽじゅぽじゅぽじゅぽ
快感は男根から足先、また頭の天辺まで巡り巡って何もかも支配している。
速度の増した水音、更に口腔の奥までねじ込まれる感触。全てが濃密で、これが口淫であることを忘れてしまいそうになる。
270 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 01:33:58.53 ID:12T/iLRYo
誰だよ来ないなんて言ってた輩は
ちゃんと来てくれたじゃないか
271 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/12(月) 01:35:23.37 ID:DgCzqnC6o
そう、これは口淫なのか?
深く、早く、濃く、腰を振って、快感を味わっている。
自慰だが、由比ヶ浜もまた性感を味わっている筈だ。
互いが陰部で快感を貪っているのなら、これはもうオーラルとすら付けずセックスと呼ぶのではないか?
俺と由比ヶ浜は今、予期せずセックスを堪能しているのでは……?
その考えに至り、つっかえたようなもどかしさは吹き飛んで一気に感覚が高まる。
限界。
リミット。
頂上へ、至る。
「で、る!」
もう。
「でる、から、でるから! だす、だしたい、ゆい、ゆいがは、ま……ッ!」
272 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/12(月) 01:38:41.36 ID:DgCzqnC6o
「むぼ、んんんんッ!」
由比ヶ浜が顔の反復を止めて、これまでに無い程の深さへ一気に肉棒を咥えて押し込み、吸い付いた。
新たな感触。それはきっと、喉の……。
「あ、が」
びゅる、びゅる、どくり
想像が最後のトリガーになって、俺は二度目の射精を迎えた。
二度目なのに、さっきの射精と量は変わらないか、多い。まだ最中なのにそれを想像させるほどに凄まじい悦が内側で荒れ狂って暴れ回る。
「ッ! ッッッッッッ!!」
さっきよりも奥、もしかしたら喉へ直接流し込まれているかもしれないのに、またも由比ヶ浜はその一切を吐き漏らすまいと出される端から震えながら精液を飲み下していく。
視界がチカチカと明滅して、身体を置き去りに意識だけが異界まで飛んでいる。
きっと人間は正負を問わず自分の限界を超えた感覚を覚えた時、その意識を昇るか堕ちるかさせる。ならばここは天国か、地獄か。どちらでも、この感覚を抱えたままならば何処に辿り着こうと後悔はない。
さっきまでのように時間の感覚すら壊れて、何時射精と快感が終わったのかも分からない。それは由比ヶ浜も分かっているだろうに、恐らくはお掃除≠フ為に決して口を離さず、舌が肉棒に絡みつかせている。本来なら三度の屹立すら促しかねないだろう感触も、精巣が空になったかと思うくらいの射精を経た俺の肉棒には何処か遠く妄想の中の小事だった。
273 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/12(月) 01:42:45.86 ID:DgCzqnC6o
「……んはぁ、ッ……」
由比ヶ浜のお掃除≠ェ終わる。彼女が口を離し息を吐くのと同時に俺は上半身を支えきれなくなり、乳房から手を離すとそのまま大の字に倒れた。
「んぅ、ああ。あ……」
自分の呻き声すら夢の中。ここ十数分か数十分のあまりに濃密な体験に現実感を失い切ると同時に体力の枯渇をようやく自覚し、意識は薄暗い靄に包まれ闇の中へと堕ちていく。
本来の意味で現実と夢の境界が曖昧になっていくと、あまりに現実から離れた今日の出来事は全て本当に夢だったのでは。ただ行き過ぎたネガティブ思考が心の平衡を保つために見せた幻覚だったのではと、半ば本気で疑ってしまう。
薄れていく意識の中で、ただ由比ヶ浜の存在が恋しくて、その行為の全てが幻だと思いたくなかったのに、抵抗も空しく消耗した心身は睡魔にあっさり敗北した。
眠りに落ちる寸前、胸板と唇に押し付けられるそれぞれ別種の柔らかさと温もりを感じたが、その正体がなんであるかすら考える間もなく全ては黒に溶けていった。
274 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 01:44:46.50 ID:DgCzqnC6o
今夜の投下はこれにて終了です。
後は二話のエピローグを残すのみですが、流石に眠いので続きはまた後日。
あと宣言警告無しでエロいのに突入してしまいましたすみません……。
275 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 01:55:45.09 ID:UyMP0z4fo
乙ですー!
276 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 01:57:03.31 ID:uDn1nD9yO
超乙
夜勤の俺を実に癒してくれた
途中だろうけど簡単に感想を
ちょっと説明クドい
文章レベルは最上級
なんか俺ガイルの名前を借りた官能小説を読んでるみたいな気分になった
結論、素晴らしい
277 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 01:58:39.55 ID:s9YHQ1UOo
乙です!
すごい量ですね
278 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 04:41:13.46 ID:OxJf+9Sbo
待ってたかいがあったわ、続きも楽しみにしてる
PCだと文章が右に伸びてて読みづらいからも少し改行挟んでくれると嬉しいかも
279 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 06:05:45.14 ID:fTnMQ28ao
もうそろそろおわりなのか?
280 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 09:00:16.55 ID:3DzcS8D60
内容に文句はなかったけど冒頭の自分語りと
どうも
>>1
ですの下りがキモいなと毎回みてて思った
281 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 12:38:24.85 ID:vGpVLRXuO
正直無駄に長い
282 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 13:21:36.92 ID:2souMjjbO
すごいでた
283 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 13:28:34.65 ID:07+Cgo5/o
素晴らしい
素晴らしい
284 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 17:45:56.70 ID:KeioslxY0
俺個人としては長くてもよし
最高
285 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 19:07:41.70 ID:kOoB+Pha0
乙です!
素晴らしかった
286 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/12(月) 23:05:47.56 ID:VReqLb2Bo
乙ですー
287 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/13(火) 21:27:36.17 ID:K+aCvZWro
素晴らしい
288 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/17(土) 17:49:14.97 ID:hwasjQKBo
CDってやっぱ割高よね、どうも
>>1
です
二話エピローグを今夜か明日に投下予定です
期待せずお待ち下さい
あとスレの最初の方で自分で「読みづらい」と思った部分を前回投下後に指摘して貰ったので
次回投下分から改行とか書き方とか色々試してみます
289 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/17(土) 17:52:50.74 ID:CF6b0Sj7o
期待
290 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/18(日) 18:36:31.18 ID:R/29QPn/o
どうも
>>1
です
オルフェンズ配信二週したので投下します
あと今回投下後解説の名目で言い訳タイムが始まるのでご注意
291 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/18(日) 18:39:09.98 ID:R/29QPn/o
「ヒキタニくんさぁ……マジでゆいゆいと付き合ってんの?」
「……まぁ、その、そうだけど」
雨の気配も無い快晴の昼休み、駒鳥さんと伴って接触してきた猿渡の問いに俺はそう答えた。
「……マジか」
「マジだよ猿渡クン、マジマジ」
「マジかよー」
駒鳥さんの相槌にくすんだ金髪をワシャワシャ掻いてオーバーに反応する猿野郎。
その様は如何にも滑稽だったが、そんな様子を見せるに躊躇のない、
或いは羞恥心が欠如した性根はひねくれ者の俺には少しばかり眩しくて、今は羨ましくもあった。
「ゆいゆいみたいな子にカレシいねーとかありえねーって思ってたけどさー、それでもヒキタニくんかよーマジかよォー」
「……悪かったな、俺みたいのがアイツの彼氏で」
「別に悪くねーべよ。 それはヒキタニくんの手が早かったか、ラッキーだったってことじゃん?」
幸運であったことは否定しようもないが俺の手が早いってのは……寧ろ遅すぎるくらいだったけどな実際は。
俺がスロウリィ!? その通りですとも。
ウザいし五月蠅いし見た目怖いしでお近づきにはなりたくないが、それでもこういう気っ風の良さが猿渡という人間の輝きであることは否定しようもなく、
だからこそ俺としては珍しいことだが突っ込んだ話を聞いてみたくなる。
292 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/18(日) 18:41:04.16 ID:R/29QPn/o
「猿渡は、その、由比ヶ浜のことが?」
「んー……ゆいゆいぐらいカワイイ子が彼女だったらなー、おっぱいデケェしなーってくらい? カレシいないって聞いたから、じゃあ好きになっちゃう? みたいなさぁ」
「あー……」
綺麗な言い回しではないし欲望ダダ漏れで感心は出来ないが、それでもそういう感覚は理解出来なくもない。
表現や形が違っても、悲観的になる前のかつての俺と方向性はそう変わらないのだから。
「でも滅茶苦茶ガード硬くて、全然遊び付き合ってくんないし、それで何か男と一緒に帰ってるとか聞いて嘘吐かれてたんかなって……最初ヒキタニくん見た時、これカレシはないわーって思ったんだけど俺の見る目無かったわ」
「……別に、普通は由比ヶ浜と俺みたいなのが付き合ってるなんて思わねぇだろ」
「まぁフツーに考えたらな……でもゆいゆいはなんかフツーじゃなくカワイイし、ならフツーにバカな俺よりフツーじゃなさそうなヒキタニくんの方が良かったんだろうなって、思ったり思わなかったり?」
ふつう の ほうそく が みだれる !
こういうのゲシュタルト崩壊って言うんかね。
293 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/18(日) 18:43:22.85 ID:R/29QPn/o
「俺の場合、普通じゃないのは人間性が平均値以下ってとこだけだけどな」
「だったらその分ヘーキン値以上のゆいゆいが穴埋めしてるってことじゃん? だったらやっぱフツーじゃない感じにお似合いなんじゃね?」
……そういうものなんだろうか。破れ鍋に綴じ蓋とは言うけども。
猿渡の言うことは、俺をフォローしているというよりは由比ヶ浜の選択が間違っていないか持ち上げる為の言でしかない。
だが自分のモノに出来る目が無くなっても相手を堕とさないというのは美徳だろう。
反りは合わないだろうし積極的に関わりたいとも思わないが、それでも由比ヶ浜と俺の縁が続いている限り、会えば挨拶くらいはしてやろう。
そう素直に思えるくらいには猿渡という人間は嫌いになれそうになれなかった。
そんな風に考えられること自体、俺自身変わりつつある証なのだろうか。
「まー俺からの話はそんなもんでこっから本題なんだけど、牛山がヒキタニくんとタイマンしたいって言ってるから講義終わった後にでも付き合ってやってくんね?」
294 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/18(日) 18:44:55.98 ID:R/29QPn/o
え。
「……タイマン?」
「タイマンタイマン、男同士一対一ってタイマンしょ」
牛は牛でも紳士牛だと思っていた牛山某もやはり野生の本能に抗えなかったか……いやいやマジで?
あの体格の益荒男と一対一? 俺病院送り? もしくは突然の死?
俺赤い服とかアクセサリーなんて身に着けてないんだけどなぁ。牛君迫真の興奮。
「猿渡クン、それタイマンと違うよ……牛山クンもヒキタニクンと話したいことがあるんだって」
「……ま、そりゃそうだよな」
猿野郎の語彙力と知恵足らず振りを見てれば概ねそうだろうとは思っていたとも。
でも学食に連れて行かれたときの馬力が未だ記憶におニュー。
あんなんと物理的に対立するなんて想像するだに恐ろしい。
だから一分一厘でもリアルファイトの可能性があるなら避けたいところ……なのだが。
「や、やっぱり牛山も……なのか?」
「そうそう、てか俺が言わんでも見てりゃ一発で分かんじゃん?」
猿と一緒で薄々感付いていた……というかある意味一等分かり易くもあったけど。
正直逃げたいが、俺と牛山だけの問題ならまだしも由比ヶ浜が絡むとあっては無視するわけにもいくまい。
人との関わりはそのまま荷物の増加を意味するが、それは得られるリターンとトレードオフなのだ。多分。
295 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/18(日) 18:47:19.10 ID:R/29QPn/o
「……牛山も話分からない奴じゃないとは思うけど、もしアレだったら俺も一緒に行っとく?」
「いや、大丈夫だ」
問題無い。しまったこの台詞はフラグになるじゃねぇか。
まぁ殴り合い(一方的)の可能性は0じゃないってだけで実際は杞憂なのだろうが。
牛山が裏表無く「出来た男」であるということを疑う余地はない。
ならば後は地雷をポンポン踏まないよう努めるだけだ……ヤバい、そこが一番自信ない。
「ま、牛山と話し付けたらゆいゆい誘ってみんなで遊びに行くべ? ヒキタニくんいねーとゆいゆいが来てくんないし」
「え、知らない男の人と遊ぶのってちょっと……」
「知らなくねーべ!? つか女の子だったらいいんかよ!?」
おおうテンションと声量過剰だが良い反応じゃないか。こういうのでいいのか、こういうので。
その後はボケツッコミを幾らか繰り返してから、
昼食を一緒にすると約束している由比ヶ浜を待たせられないと会話を打ち切りこの会合はお開きになった。
当然の如く猿渡は「俺らと一緒すればいーじゃん?」と言い出したが、そこは空気を読んだ駒鳥さんに諫められて収まった。
猿渡には悪いが、問題無くパーソナルスペースに他人を受け入れるには俺自身心の余裕が足りていない。
今はまだ風に飛ばされ行方不明になりそうな心の標を、由比ヶ浜という重石で固定するのが精一杯だから。
適当に手を上げて二人に別れを告げると、何時もの墓場ではなく由比ヶ浜が待つベンチへ足を向けた。
また数時間後に待っているだろう修羅場を想像すると風は勢いを増して心を浚いに来る。
でも数分後に由比ヶ浜と会えるなら、修羅場の後にも彼女の笑顔が待っているなら、耐えなければ。
痛みを望んだのは俺だ。全てを受容するのは無理でも、少しずつ受け入れて行きたい。
受け入れて行かなければならない。
296 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/18(日) 18:49:16.35 ID:R/29QPn/o
何時もより時間を短く感じた午後の講義、
終わってから俺の席に近づいてきた牛山の姿を認めると隣に座る由比ヶ浜へ先に帰るよう伝えて立ち上がる。
しかし由比ヶ浜は何時かのように俺の袖を引っ張ると
「待ってるから」
そう微笑んだ。
本当にタイマンを張るわけでもないのに緊張で雁字搦めになっていた心が解されていくのを感じ、
短く礼を告げてから牛山と合流して奴の先導で外へと向かった。
牛山が向かったのは意外なことに(若しくは俺に気を遣ったか)例の墓場が如き中庭だった。
偶然か牛山(リア充)の気配を察知したのか住人は一人もおらず、
夕暮れにもまだ早い時間だというのに寒々しさで震えそうになる。
それが単なる寒気に対する生理現象なのか、脅えて竦む心の有り様だったのか、区別は付かない。
喧嘩、真剣勝負、果たし合い……それらを称して立ち合いと言う。
人気の無い場所で立って向かい合う俺達には相応しい言葉だ。
だが俺は逃げそうになる足を止めておくのに必死、向かう牛山も俯きがちで何時より小さく見えた。
立ち合って数分、沈黙は続いている。
長く長く感じる時間の中、俺達は互いに出だしを掴めていない。
先手で有無を言わさず打ち据えるか、後の先で切って落とすのか、どちらが有利か分からない。
かつての俺ならとにかく出方を待ってから意図的に間違いを選択し、
相討ちによる明確な断絶を以て決着とするだろう。
例え間違いでも、最速最短で間違った選択という場所に居着いて安心することが出来るから。
しかし今の俺の心は逸った。
安心したいのは同じでも、その居場所を選びたいと思っている。
その為にも手加減はしない。出来ない。
297 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/18(日) 18:51:28.63 ID:R/29QPn/o
「由比ヶ浜の話、でいいんだよな」
俺の出だしに牛山は分かり易くビクリ……とは反応しなかった。まぁ俺じゃあるまいし。
だが反応して上がった顔は、苦渋とまで言わないまでも息苦しさを隠しきれない顔色だった。
「……そうだ」
その低い声には、何時もの力強さや安定感は感じられない。圧がない。
これは隙……なのか、そもそも相手を倒すことがこの場での目的でいいのか。
何を以てどうすればいいのか全てが闇の中。
それでも大切な物を競合する相手なら、負けるわけにはいかない。
全力で、斬る。
「悪いが、俺と由比ヶ浜は付き合ってる……ここに入学する前から、一年以上」
一息。
「……だから、お前が信じようと信じまいと、俺達には関係無い」
バサリ、一直線に走る見えない斬痕。
「上手く斬れば手応えは無い」とは何処かの時代劇漫画で見たが、正にその通り。
相手の弱みに付け込んだ時に感じるグズグズとした感触ではなく、
ただ通り抜けただけにも思えるような透明感。
斬った。
斬ってしまった。
寄りによって俺が、輝きで人目を惹く類の人間を。
そこに破壊の悦や解放の喜びなんて無い。
悪い夢だ……良い夢なんかじゃ、決してない。
298 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/18(日) 18:52:54.15 ID:R/29QPn/o
「……俺には、信じられない」
呟くように吐き出された言葉は、俺ではなく自分自身に言い聞かせるような響きを伴っていた。
「お前が……ヒキタニが悪いとか、そういう話じゃない……ただ、少なくとも今は間違っている筈のお前と、由比ヶ浜が……」
何故、そう牛山は問う。
それは俺に対して、由比ヶ浜に対して……何より己自身に問いかけているように見えた。
「……俺が間違ってるってのは否定しないが、さっき言った通り、お前の意見は関係無い」
「分かっている、分かっているが、それでも信じられないんだ。 お前は、何時から其処≠ノいて、何を見てきたんだ? どうすれば今のままで、由比ヶ浜と……お前は――」
何処へ行こうとしてるんだ?
続く言葉に俺の方がビクリと反応した。予期せぬ反撃で俺の心臓も貫かれた。
だがその威力とは裏腹に弱々しい響き、
それを吐く表情と切り分けられた肉から覗く内面に牛山という男の芯が見えた気がした。
299 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/18(日) 18:55:12.63 ID:R/29QPn/o
気が付けば陽が落ちかけて、構内の人影も疎らになっていた。
そんな中夕暮れに照らながらベンチに座る由比ヶ浜の姿に
何時かの悲壮な決意を思い出して、不意に胸が締め付けられた。
「……よぉ」
「あ、ヒッキー」
何時もと変わらない簡易に過ぎる俺の挨拶は
今に限れば沈みがちな心中を悟られない為の作法だ。
そんな俺を正しく花の咲いたような微笑みで迎えてくれる由比ヶ浜の姿が眩しくて、
反射的に目を瞑りたくなった。
「お話、終わったんだ」
「ああ」
「……だいじょぶ?」
「殴り合いしてきたわけじゃないんだし、心配することなんてねぇよ」
「ヒッキーがそう言うなら、いいけど」
そう言うことにしておいてくれ、心中で呟くと校門へ向けて歩き出す。
立ち上がったらしい由比ヶ浜が小走りで追いついて俺の横に並んだ。
腕と腕が触れ合いそうなくらいに近いその距離は、
錯覚でなく彼女の温もりを感じさせられる。
300 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/18(日) 18:56:59.18 ID:R/29QPn/o
校門から出て歩道へ、夕日を浴びながら駅へと向かう。
無言。
靴と地面が擦過する音と疎らな車の走行音だけが鼓膜へ入り込む。
何時もは会話が途切れて沈黙するのも珍しくなくて、
それが気まずいとは思っていなかったのに今は後ろめたい。
「……その、あれだな」
「ん、なに?」
「牛山って良い奴だな」
「そうだよ、いい人だよね」
好きな娘にいい人認定されるのは辛いなぁ……なんて心中でも茶化せない。
話を終えて振り返る。牛山は由比ヶ浜に惹かれつつも、
如何にも社会不適合な俺のことを心配していた……とかそんなニュアンスを受け取った。
それは牛山もまた俺とは相容れない類の人間で、その根は猿渡や駒鳥さんよりも深いことの証明だった。
真っ直ぐでお節介で苛々するくらい正しくて、だからこそ奴が善良な人間であることは確かで、
そんな牛山が俺という路傍の石に躓き転んだ事実が今は重かった。
大きなお世話だと、鬱陶しいと思っていても牛山の気遣いは俺にすら否定出来ないものだったから。
だというのに俺もまた、意図的でないにしろ奴の過剰な脚力で蹴っ飛ばされた痛みが残っている。
お互い攻撃しよう、傷付けようなんて思ってもいなかった筈なのに。
301 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/18(日) 18:59:15.30 ID:R/29QPn/o
「……彼奴に、俺は間違ってるんだって言われた」
足を止めて言う。
歩きながらだと、風で足を取られて転んでしまいそうだと思ったから。
「何が正しいかなんて分かんねぇし、自分が正しいとも思ってない……でも、間違ってるって誰かに言われて、不安になった」
「……うん」
由比ヶ浜も足を止め、俺と向き合っている。
抽象的で要領を得ない言葉を受け止め、俺の顔を見つめて頷く。
正しいとか間違ってるとか幾度となく考えてきて、
その蓄積が今の俺を形成していた筈なのに、全て真っさらになったように今は感じている。
口にした通り不安だった。
本当に、由比ヶ浜だけが今の俺を繋ぎ止める楔だった。
だから、
「お前も、俺が間違ってるって思うか?」
そう尋ねずにはいられなかった。
否定して欲しかった。由比ヶ浜結衣にさえ言って貰えれば、それだけで良かった。
かつての俺ですら唾棄するような女々しさで、無遠慮に由比ヶ浜に体重を預けようとしている。
恥だ。
破廉恥だ。
それでも求めずにいられないというなら、これを恋とか愛と呼ぶのだろうか?
302 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/18(日) 19:01:17.14 ID:R/29QPn/o
「んー……」
問われた由比ヶ浜は人差し指を唇に当てて思案顔になり数秒、
「何のこと言ってるか分かんないから答えようがないかな?」
破顔した。
「……ですよねー」
うん、大概抽象的だった。
つか黒歴史ノートに追記確定の痛々しい問答だこれ。架空バスケ部並にペインフル。
この流れを由比ヶ浜が陰湿な匿名掲示板に投稿してコピペ化しちゃったらどうしよう、○ぬか俺。
……否定して欲しかったのは本当だが、今のこの流れも望んだモノの一つだった気がする。
ウダウダジメジメ訳の分からん理屈を捏ねくり回して、それを由比ヶ浜がバカっぽく受け止める。
在りし日の部活の光景を思い出させる郷愁が溜まらなく暖かく、胸を締め付けた。
「変なこと言って悪かった……帰ろうぜ」
「うん、帰ろ」
また歩き出す。隣に並ぶ。
近すぎるくらいの距離は変わらなかったが、一つだけ。
303 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/18(日) 19:02:58.44 ID:R/29QPn/o
「ね、ヒッキー」
由比ヶ浜の手が俺の手に触れた。
「正しいとか、間違ってるとか、良く分かんないけど……でもね」
少しの力で壊れてしまいそうな小さな指に力が込められる。
「正しくても、間違ってても、あたしにとってヒッキーはヒッキーなんだ」
俺の手を握って、由比ヶ浜は言う。
「だから、そういうの関係なしで、あたしは傍にいるから」
その温もりは直接的で、さっきの距離よりもっと深く伝わってきた。
何より生々しいその感覚はいっそ切なくなるくらいに暖かかった。
「お前の言ってることも大概抽象的で分かんねぇな」
「……分かんない、かな?」
「いや……」
この温もりを少しでも何かに変えたくて、返したくて、俺も手を握り返す。
一方的だった力のベクトルは向かい合って、手を繋ぐ形になった。
「分かるよ」
「うん」
俺の返答に、由比ヶ浜は嬉しそうに笑って見せた。
304 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/18(日) 19:05:16.02 ID:R/29QPn/o
この間の危うすぎるスキンシップと、今の笑顔と、手を伝う温もり。
ダメだ。もう俺は、少なくとも俺からは由比ヶ浜結衣から離れられない。
そう実感した。
だからこそ、先の牛山との遣り取りは寧ろ深く心に刻み込まれる。
「何処へ行こうとしているんだ?」
その言葉で奴は俺の立ち位置を問うた。
かつて沼に沈み込んでいく連中の手を取り救い上げてきたという男の目は、
日溜まりの中に在る由比ヶ浜と暗がりの中の俺との繋がりを歪と捉えた。
そんなことは分かっている。
歪でも、それが俺達の繋がりであればそれは他人からとやかく言われるものではないと思っていた。
ただ由比ヶ浜を好く俺と、そんな俺を好く由比ヶ浜が在りさえすればそれ以上は必要ないのだと。
だが俺は、由比ヶ浜の手を握ったまま何処へ向かっているのだろう。
305 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/18(日) 19:06:57.83 ID:R/29QPn/o
彼女を暗がりへ引き込みたいのか、それとも彼女に日溜まりへ引っ張って欲しいのか。
それとも何処とも知れない明後日の方角へ暴走しているだけなのか。
分からないが、それでも先行きを考えないまま、
半端な立ち位置のままで誰かと共に在ることは出来ないと今は思ってしまっている。
手を繋ぎ、唇を触れ合い、そして次……そこに至るには、何処かで明確な答えが必要なのではないか。
視界に差し込まれる黄昏の橙色。
それはそのまま期待と不安とが入り混じる俺の心の映しだと錯覚してしまう程に美しかった。
光の中で徐々に空へせり上がってくる夜闇の青を見つめながら、
俺は抽象的な思考を転がしたまま由比ヶ浜と並んで家路を急ぐ。
黄昏時は逢魔が時、魔の差す時間帯だと言われている。
そんな危うい時間を超えて、俺は危難の無い夜と満たされた黎明を迎えることが出来るのだろうか。
相反する二つの感情はそれぞれ衝動を打ち消しあって、残った一つが握る手の力を僅かに強めた。
306 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/18(日) 19:08:59.55 ID:R/29QPn/o
というわけで二話エピローグ、つまり二話完結です
長いことお待たせしてしまい申し訳ありませんでした
解説言い訳云々は飯他雑事を済ませたら投下するので興味ある方だけお付き合い下さい
それではまた後程
307 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/18(日) 19:45:44.21 ID:nH5vpo7To
三話以降もあるんだよな?
308 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/18(日) 20:32:50.30 ID:Mkykij6wo
乙です!
期待
309 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/18(日) 21:12:19.73 ID:zPynVUruo
ウォーミングアップは終わったと思うので、そろそろ本気で行きましょうよ
310 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/18(日) 21:15:36.45 ID:R/29QPn/o
どうも
>>1
です
話題は幾つかあるので分けて投下します
311 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/18(日) 21:22:35.88 ID:R/29QPn/o
・遅れについて
まずは丸々一ヶ月待たせてしまい申し訳ありません
遅くとも二週間ほどで二話は締める予定でしたが、完全に見通しが甘かったです
元のプロットでは場面転換は倍以上、書いてる内に際限なく文量が増え続ける
自分の悪癖を考えれば文字数は三倍四倍になった可能性もあり
流石にこのままでは書ききれないし締められない、と思ってバッサリカットし再構築しました
お陰で登場人物の情緒不安定感マシマシ、心理心情唐突過ぎと我ながら酷い内容にはなりましたが
そんなんなるなら最初から扱い面倒なオリキャラなんて出すんじゃねーって話ですな
ハハハ……いや本当に申し訳ありませんでした
312 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/18(日) 21:28:54.07 ID:R/29QPn/o
・改行について
一番最初の投下時に読みにくさに関しては実感していました
しかし投下後の反応では特に読みづらくはない、とのことだったのでそのままにしてましたが
PCでは矢張り読みづらさも出ているようなので今回はちょこちょこ手を加えました
しかし台詞に関しては改行するのも変に感じたのでそのままですし、
単純に本文一行が長くならないようただ改行しただけなので今回不格好さはかなり強めな感じ
今後は掲示板投稿というフォーマットに合わせて文章も考えるべきか、などと思案中です
なお最初の段階でツッコミが入らなかったことに関しては
スマホで読んでいる方が多かったのかな、などと予想しています
実際どうなんでしょう
313 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/18(日) 21:37:39.74 ID:R/29QPn/o
・今後について
二話で完結?と感じられている方もおりますが、まだまだ続きます
>>113
でも書いた通り今の面倒臭い流れは次回までになる予定で
以降は普通のイチャエロスレになる筈です
とりあえず今は「三話とっとと書かねば」というところ
一応次回更新は長めに見積もって二週間辺りを目安に考えてます
勿論早く仕上がったり、区切りの良いところまで進んだらその都度投下する予定です
期待せずお待ち下さい
今日はこんな愚痴までお付き合い頂き有り難う御座いました
314 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/18(日) 22:26:40.36 ID:7Tmt+4+ao
乙! 気長に待ってる
315 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/18(日) 22:42:34.35 ID:qHueoxpb0
乙!待ってます
316 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/19(月) 12:42:07.93 ID:V/zounz6o
言いたい奴には言わせておけばいい
ROMっててもってる奴はいるから
317 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/19(月) 23:33:57.34 ID:glqjVHaYo
ヒッキーの今後の頑張りに期待
318 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/21(水) 12:59:49.90 ID:fLAJrhjzo
なかなか魅力的なオリキャラだったと思うぜ、特に牛さん
>>298
あたりの問答がとてもよかった
319 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/21(水) 13:21:24.15 ID:wZu/8DsAO
いちいち部外者がしゃしゃり出てくるなよと思ったが、
一年付き合っといてまだカースト云々で悩んでるとか
端から見たら異常だよな
320 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/22(木) 18:48:33.91 ID:YPnDLvF7o
真のぼっちとは個々の環境にギリギリ適応出来ても広義での社会性は上がらないのである
どうも
>>1
です
とりあえずプロットは出来たので導入部だけでも週末に投下予定です
期待せずお待ち下さい
321 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/23(金) 23:04:22.16 ID:Cxggbywfo
どうも
>>1
です
短いですが切りの良いとこまで書けたのでゲリラ的に投下します
322 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/23(金) 23:06:47.83 ID:nAOdQdypO
ぬん
323 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/23(金) 23:06:48.24 ID:Cxggbywfo
Bその恋人達から零れそうな涙の色は
カラカラカラカラ
キリキリキリキリ
フィルムの回るノスタルジックな快音が鼓膜を震わす。
薄暗い空間の中にあって視界にはセピア調の映像が投写されたスクリーンが映っていた。
所狭しと規則的に並んだ椅子と座る人々の様子まで踏まえ、ここは映画館であると認識する。
上映されている映画は何処か見覚えのあるようで、
しかし細部はボヤけ音声もノイズ混じりでどうにも作品に入り込めない。
324 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/23(金) 23:09:34.01 ID:Cxggbywfo
それでも断片的な情報から判断できるのは、この映画がC級以下の駄作であるということだ。
学校が舞台のようで、暗い目と表情をした偏屈そうな男子と彼を囲む二人のヒロインの話らしいが、
曖昧な屁理屈で困難から逃げ回る主人公はどうもイライラして、何故こんな男が二人の美少女に囲まれているのか
理解出来ず空き缶の一つでも投げつけてやりたい衝動に駆られる。
逆にヒロインらしき二人の少女は非常に美しく目を惹かれたが、主人公のいい加減な態度に怒り、
心ない言葉で悲しむ姿に胸が痛むばかりでただフラストレーションだけが溜まっていった。
どれだけ時間が経ったか、何かを欲しがっているらしい主人公を中心に物語は収束していき、
気が付けば二人のヒロインは一場面に一人ずつしか映らなくなっていった。
ある場面、夕暮れに照らされる放課後の教室らしき空間で、
長く艶やかな髪と凜とした表情を持ったヒロインの片割れが憂いと決意を帯びた表情で主人公に語りかけている。
相変わらずノイズの混じった雑音のような声だが、台詞の一部がハッキリと耳に届いた。
325 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/23(金) 23:11:21.04 ID:Cxggbywfo
――……たしは、―――君の……が、――
瞬間、衝撃を受けた。
聴覚の拾った振動が鈍器で殴ったような直接的なエネルギーとなり、脳髄を強引に覚醒させる。
すると映像は輪郭を持ち、音声も透明感を取り戻す。
ああ、俺は知っている。
この顔を、この声を、この場面を知っている。俺自身が知っている。
自覚すると衝撃の余波は痛みとなって胸へ至り、心臓を痛撃した。
それと同時に周囲の観客がパラパラと席を立ち始める。
バラバラと物音を立てながらスクリーンに背を向ける。
隣の客も席を立つ。
見上げれば、その顔は良く知った顔だった。
326 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/23(金) 23:13:34.47 ID:Cxggbywfo
今さっき見ていた顔だ。
スクリーンに映った顔だ。
誰より何より知っている顔だ。
アレは――俺だ。
見渡すと、館内を埋めていた観客達は皆俺だった。
スクリーンに映るどうしようもない男は俺だった。
二人のヒロインは、誰より近く何より遠い、かけがえのない人達だった。
映画は、追憶だった。
やがて何事かの意見の交換を終え、ヒロインの―――が涙を流したところでブラックアウト。
数秒の後、シーンは切り替わった。
327 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/23(金) 23:15:41.86 ID:Cxggbywfo
マズい。これ以上はマズい。
さっきの場面が―――の――なら、次に待っているのは
それ以上にどうしようもなく惨めで痛くて大切な記憶だ。
出来れば心の奥底、幾十も鎖と鍵で閉じ込めて二度と浮き上がらないよう、
しかし喪わないよう大切にして置きたかった感傷だ。
気付けば館内には俺――この席に座っている俺だけ――しかいない。
もういい、俺も立とう――そう思うのと同時に再び心臓に衝撃を受けた。
見れば、胸から杭が伸びていた。
磔にされていた。
座席ごと貫いた杭から血管のように細かい根が伸び、
俺の手足に食い込んで身動きを許さない。
逃がさない
無言にして無音だが、その杭は何より雄弁に語っていた。
328 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/23(金) 23:17:52.80 ID:Cxggbywfo
ならばせめて、そう思って背けようとした顔すら逃がさぬと
根は首まで伸びてスクリーンの方角へ固定した。
目すら閉じさせぬと根は目蓋まで伸びて瞬きすら許してくれなかった。
やがて新しいシーンが始まる。
煌びやかな夜、美しい建築、何処かのテーマパークで向かい合う二人。
精一杯めかした俺と、さっきのヒロインとは違う少女。
片方にだけ結わえた髪の、幼い顔立ちをした活発で愛らしい少女……だった筈が、
今は悲嘆と悲愴を纏い俯いている。
その瞳からは今にも零れそうなほどに涙が溜まっている。悲しみの青い涙が。
やめろ、やめろ、やめてくれ。
やがてスクリーンの俺が、少女に向かって想いを吐き出した。
どもって、回りくどくて、しかし切実で真剣な言葉。
やめてくれ、やめてくれ、やめて。
329 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/23(金) 23:21:05.68 ID:Cxggbywfo
――違うよ、――――が好きなのは、――――だよ。知ってるから、あたし――
今の貴方は偽っている、間違っていると笑顔で……涙を堪えた悲痛な表情で少女は俺の言葉を拒絶した。
――違う、俺は、お前のことだけ、―――のことだけが――
――違わないよ、――――は優しいからそう言ってくれるの……でも、その嘘が、優しい方が、辛いことも、あるんだよ――
二人はもう取り繕うことも出来ず、互いに涙を流しながら懇願と拒絶を繰り返した。
眺める俺の全身にはもう痛みしかなかった。
痛みに痛みを重ね痛みを縫い付け更に痛みが加速した。
かつての過ちとか、黒歴史とか、ただの打撲か擦過程度だったと思い知るに充分なその感覚。
スクリーンの彼らだけではない、眺める俺も涙を流していた。
痛くて、悲しくて、何時までも変われない俺自身が情けなくて、
閉じられない瞳から止めどなく熱を溢れさせた。
330 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/23(金) 23:23:13.16 ID:Cxggbywfo
――もう、いいよ、あたしに気を遣わなくて、いいんだよ……――
――……――――が、あたしのことを気にして前に進めないなら、あたしは、もう――
――……――――と、――――とは、もう……――
やがて少女が笑顔すら保てず、それでも自分を抑え込んだまま沈んで行こうとしたところで、
『な゛ぁ〜』
場違いな猫の声が拷問部屋を跡形もなく消滅させた。
331 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/23(金) 23:24:56.92 ID:Cxggbywfo
――……睡眠のトンネルを抜けると、そこは猫面だった。
「……ブッさ」
脊髄反射で漏れ出た台詞にノータイムで猫パンチ。
痛くはないが起き抜けにこれってのは飼い主冥利に尽き過ぎて疲れる。
目覚めて数秒のやりとりで夢とか微睡みの余韻は欠片も残っていなかった。
332 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/23(金) 23:26:56.31 ID:Cxggbywfo
眠気も無いのに布団inしてても仕方無しと起き上がる……より一瞬前、
その気配を察したのか布団の上に乗っかっていた猫は軽やかにフローリングへ着地した。
床。
壁。
天井に家具。
ふてぶてしく居座る猫。
何処か違和感を感じる、けれど見慣れて安心する光景。
一人暮らしの男の城ではない何年も過ごしてきた己の一部。
実家の自室、飼い猫のカマクラ、そして、
「お兄ちゃーん、カー君部屋に居るー?」
マイシスター小町の声。
今日はゴールデンウィークの初日。
俺は連休を期に実家へと帰省していた。
333 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/23(金) 23:29:18.53 ID:Cxggbywfo
実家で夜を明かすのは二ヶ月ぶり……ということもなく、生活用品に本やゲームの回収にと
今のところ二週間に一度程度のペースで帰っているので帰省と言ってもあまり有り難みがない。
そもそも安らぎの揺りかごから俺を追い出したのは家族達なんだから
寧ろ有り難がってなどやるものか。あ、有り難がってなんかないんだからねッ!
……などと脳内で益体もない寸劇を繰り広げるのも連休の朝には不毛過ぎると打ち切って、
もう眠くもない目をそれでも擦ってドアを開ける。
「おはよーお兄ちゃん……あ、やっぱりお兄ちゃんの部屋にいたよカー君」
今日も朝から可愛いな小町ちゃん!……なんて思う間もなく待ってましたとばかりに兄妹とドアの隙間をするりすり抜ける愛猫。
件の小町も俺への挨拶もそこそこに滑らかしなやかなカマクラの諸動作を目で追っていた。
334 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/23(金) 23:31:06.44 ID:Cxggbywfo
「どうしたのお兄ちゃん、カー君が恋しくなって一緒に寝てたの?」
「アレが恋しくなるくらい久方ぶりの帰省ってわけじゃねぇし……なんか、朝起きたら布団の上に乗っかってた」
勿論部屋に入れた覚えは無い。ちゃんとドアも閉めた筈だ。
しかし賢く図々しい飼い猫は閉じられたドアを開けることもあるという。
それに加えてウチのカマクラはドアを閉めるまでこなすぜスゲェ!本当に全く有り難くない!
「うーん、カー君の方がお兄ちゃん恋しくな……る訳ないか、カー君だって比企谷家の一員だもんね」
「オイ待て、その言い方だと俺って比企谷家の一員は漏れなく俺に対して当たりキツイってことにならねぇか?」
「え、今更でしょ?」
今更かー、確かに誕生日忘れられてたり色々あったもんなぁ。
何より俺自身俺に対して当たりキツイからなハッハッハ……泣いていいよね、俺。
335 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/23(金) 23:33:09.90 ID:Cxggbywfo
「しかしカー君の朝ご飯用意してたんだけど、食べに行ったのかなぁ……それともお兄ちゃんが朝ご飯に食べる? カー君のカリカリ」
「カリカリのベーコンエッグか、確かに食いたいが猫に食わせるには些か塩分過多じゃね?」
「返し上手いけどしてやられた感で小町的にちょっとポイント低い……じゃ、お兄ちゃんの朝ご飯はベーコンエッグね」
何時も通りと言って良いやり取りをしながら朝食の為に階下へ向かう。感じる少しの違和感。
小町ともカマクラとも久方ぶりというい程の感慨はないが、
実家住まいだった頃には感じなかった郷愁のような心の湿り気が、涙を流して渇いた心には今度こそ有り難かった。
あの夢は正直効いた。
これまで見てきた黒歴史の追憶夢や恐怖小説映画の追体験よりもずっと重く、心の深くへ痛打が響いた。
アレら≠ヘ本当にあったことだ。
互いの急所へナイフを突き立て、突き立てられ、忘れられない傷痕を残し合ったどうしようもなく陰惨で切実な真実。
だがそれを経て今の幸福――と言い切っていいかは情けないことにまだ迷うところだ――が構築されているのなら
それはただ苦しく痛いだけの思い出ではなく、だからこそ忘れてはならない過去なのだと思っている。
それでも出来れば振り返りたくない、心臓の棘を自覚した日のこと……夢に見るのは初めてだった。
336 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/10/23(金) 23:35:25.71 ID:Cxggbywfo
それだけ良くも悪くも印象に残った出来事ならば
もっと早くに夢見て魘されて良いだろうに、何故今更見てしまったのだろうか。
……いや、理由に心当たりはある。
あるが、それを回想することで再び痛打を浴びることになるのは分かりきっている。
だから敢えて深く詮索はしない。
ただ一つ、カマクラの猫らしい空気を読まない干渉には感謝していた。
痛みは避けられずとも、致命傷に行き着くまでに強引に覚醒させてくれたのは
らしからぬファインプレーと言えよう。
猫が人の感情に何処まで聡いかは分からないが、猫には人に見えないモノが見えると言うし、
カマクラなりに家族へ助け船を出した結果なのかも知れない。
ペットとの付き合いはそのくらい脳天気で前向きに考えた方が幸せなのだろう。
ちなみに俺達に遅れてダイニングに現れたカマクラ氏は自分のカリカリには目もくれず
小町が用意した俺のカリカリ(なベーコンエッグ)に飛びついて一悶着あったのだが、それはまた別の話。
三味線にしたろうかこの駄猫め。
337 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/23(金) 23:38:24.76 ID:Cxggbywfo
本日の投下は以上になります
何かの拍子でまた一月待たせるようなことになるのも忍びないので
今後は今回のように短い投下も挟んで行こうと考えています
濡れ場はなるべく一気に投下したいですが
また次の投下も宜しくお願いします
338 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/23(金) 23:41:28.07 ID:bPGzpLlEO
地味すぎだろ
練った文書いて悦に入るのは結構だが小説ではなくssなんだからもっと話に動きがほしい
339 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/23(金) 23:53:50.88 ID:+YReo1xgo
乙です
340 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/23(金) 23:55:43.03 ID:Cxggbywfo
あと一応補足ですが、今回は三話の導入でまだ続きます
はようゆいゆいを書きたい
341 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/23(金) 23:58:36.89 ID:tH66R/Eqo
乙
俺もゆいゆいでカキたいよ(意味深)
342 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/24(土) 07:58:40.96 ID:4DXpHg6Fo
乙、俺はここまでちゃんと書いてくれるSS見るのは久しぶりだから期待してる
投稿スピード上げて今までみたいなのが書けないなら普通にまったり投稿の方がいいかな
343 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/10/27(火) 06:11:04.54 ID:X1V+CIsM0
まだけ?
344 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/27(火) 15:47:16.96 ID:54/+nt/t0
まだ序盤しか読んでないがいい文を書くのになんで余計なことを書いてしまうのか
345 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/11/03(火) 01:27:31.19 ID:qtO6m/qLo
今一番の楽しみだ
ここからが本番だろうし続きにも期待にしてるぞ
346 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/11/03(火) 19:20:16.88 ID:VgyszyCPo
もう二度と秋刀魚なんて捕りに行かねぇぞ、どうも
>>1
です
遅れてしまって申し訳ありません……なんとか今日の深夜か明日、遅れても今週末には投下する予定です
期待せずお待ち下さい
347 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/11/07(土) 13:35:26.84 ID:j6j2F3JJ0
待ってるぞーい
348 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/11/08(日) 15:32:17.79 ID:FwRKI0Dwo
どうも
>>1
です、現在推敲中です
多分21時には投下出来ると思うんで期待せずお待ち下さい
349 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/11/08(日) 16:16:56.41 ID:/9noCIkuo
あいよー
350 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/11/08(日) 16:18:38.30 ID:nbH8QQ3jo
おうよ
351 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/11/08(日) 18:13:37.89 ID:Y6wk8qwjo
全裸待機
352 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/11/08(日) 21:10:07.86 ID:FwRKI0Dwo
どうも
>>1
です、第三話の続き投下します
が、今回は注意点多し
・比企谷家の家庭事情(若干)捏造
・某スレと展開(若干)被り
・ゆいゆい登場せず
・故にエロも無し
以上了承頂けるならお付き合い下さい
353 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/11/08(日) 21:13:43.60 ID:FwRKI0Dw0
俺の主義とは反するドタバタ騒がしい朝食を終え今日は岩のように大人しくしていようと思ったものの、
一人でいれば夢の余韻で心を蝕み、かといって居間にいれば小町だけでなく
(祝日に休める程度には本当に時間の余裕が出来たらしい)両親から質問攻めに遭い疲れ切ってしまった為、
逃げ去るように実家を後にしていた。
いや俺、家族内じゃ影か空気みたいな扱いだった筈なんだけど、皆なんでそんなに八幡君に興味津々なの。
実は家族全員ツンデレで俺のこと好きだった? それともモテ期なの?
限界集落の住民みたく単にゴシップに餓えてただけだってのは分かってますとも、ええ。
それでも小町と比較して十対一、33-4くらいに注がれる関心や愛情に差があると思っていたから、
向けられる好奇はウザったいしくすぐったくて、なんだかんだ家族なんだなと変なところで納得していた。
大学合格強制独り立ちの決まった後日、それでもお祝いと回らない寿司屋に連れて行かれた時も
母親の生暖かい視線に感慨深そうな表情で何時もより酒のペースが早い親父の様子が珍しく、
どれだけ近くで暮らしていても知らないこと、知らなかったことはまだあるんだと思わされたばかりなのに。
354 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/11/08(日) 21:15:33.73 ID:FwRKI0Dw0
実際やり過ぎなくらいには小町との愛情格差はあったがそれも両親が俺を疎んでいたとかではなく、
俺が良くも悪くも自己完結した子供で手がかからなかったからではと今は考えることが出来る。
手間のかかる子ほど可愛らしいとは言ったもの、小町がどれだけ愛らしくしっかり者に見えても
独りぼっちの留守番に耐えかねて家出するくらいには不安定且つ行動的だったわけで。
それだけ愛情のリソースが必要な子供がいれば平等な扱いなど難しいものだ。
一方俺は友達のいないぼっちの癖してただ生きていくことに疑問を感じない程度には鈍感で、
けれど妹には気を遣えて、それはひたすら忙しい大人にとってはさぞ頼もしく見えたことだろう。
大人の目線からの信頼もある意味家族の認定。だが大人の信頼が子供を満たすかどうかはまた別の話で、
それが全ての元凶と言うつもりはないが結果として俺は立派に捻くれ育ってしまった。
距離が近ければ分かり合えるわけじゃないし、本心を伝えられるわけでもない。
それでも今は環境の変化に起因した親族の未知を、痛みからではなく興味を以て見つめることが出来る。
まぁ、その……多分悪い家庭ではなかったのだ、比企谷家は。
355 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/11/08(日) 21:18:20.03 ID:FwRKI0Dw0
とはいえ今はその愛情とか家族の証がひたすらウザい。
俺がいない間に小町が何を吹き込んだのか彼女がどうとか連れてこいとか言い出して冷や汗かいた。
無理矢理振り切って家を出る際に
「あれ、まさかお兄ちゃん結衣さんとデート……!?」
とか分かりきった小悪魔スマイルで言い出した小町は大層可愛らしく憎らしさもマシマシ。
後でシバくと心に誓ったが、でもこの分じゃ家帰ってもさっきの再現にしかならんかな……。
もう俺の家は一人暮らしのあの部屋なんだ、家に帰りたい。
と言っても実際ノープランで家を飛び出して、
この後どうするかと考えた時真っ先に思い浮かんだのは由比ヶ浜の顔で……突発的でも誘ってみるか?
と歩きながらたっぷり二十分悩んでいると件の由比ヶ浜からメール。
以心伝心、渡りに舟と喜び勇んで開いてみると
『今日は優美子と姫菜と遊びに行くんだ〜、ヒッキーも来る?(デコ略』
……行けるわけないだろ! いい加減にしろ!
と、夢も希望も無い展開に絶望した俺はそれでも救い(ソウル)を求め町を彷徨っていた。
人間性を捧げよ。
356 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/11/08(日) 21:20:27.55 ID:FwRKI0Dw0
歩いて、駅について、電車に乗って次の町へ。
特に目的もなく流離う一人旅は、これが案外悪くない。
運動したり太陽光を浴びると鬱を誘発する脳内物質が減少するとかなんとかで、その効果を実感していた。
運動は鬱に効く、故に悠々快適ぼっちライフの為には部屋に籠もりきるのではなく適度な外出や運動が不可欠。
これはぼっちアスリートの道が開けている……?
山にでも登ろうか孤高っぽいし、神々の山嶺は原作も漫画版も超面白かったしな。
ぼっちであることをひたすら想え。想え――。
なんぞと変に前向きな思考を走らせつつ、それでもゴールデンウィーク故かなんでもない町中にも人は溢れている。
そんな中に紛れては疲労もして、次第に重くなっていく足を思うと運動趣味というのも中々厳しそうだ。
やはりぼっちアスリートへの道は険しい。俺には無理だった。
357 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/11/08(日) 21:22:46.48 ID:FwRKI0Dw0
しかし疲労するということは考えが散漫になるということで、
これも思考が大きな穴だけに留まらないという運動に於ける鬱予防の効果の一つなのだろう。
体力と引き替えに僅かな心の平穏を得て、このまま何処に行こうかと悩んでいたところで、
「あれ、ヒッキーくん?」
聞き覚えのある声と呼び名が背中を叩いた。
足と相応に心も弱っていたのかヒッキー≠ニいう部分のみに反応し
俺は由比ヶ浜の存在を期待して反射的に振り向いた。
そしてその包容力を示すような柔らかい声と君付けの呼び方が、
由比ヶ浜は由比ヶ浜でも由比ヶ浜結衣でないことを再認したゲシュタルト崩壊in由比ヶ浜。
「やっぱりヒッキー君じゃない……えーと、やっはろー?」
その挨拶は年甲斐ない、とは言えないくらいに若々しく瑞々しい大人の女性。
由比ヶ浜結衣の母親、俺呼んで由比ヶ浜マが立っていた。
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