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【R-18】由比ヶ浜結衣はレベルが上がりやすい
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517 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:05:55.43 ID:B9rqdRar0
そうして再び由比ヶ浜は目を閉じた。キス顔カワイイヤッター!
しかしお互いにどもって緊張して硬くなって、初々しさがなんかそれっぽい。
何時もの俺達って感じなのか……そう思えば緊張は和らぎ自然に動けるような気がする。
さっきよりは幾分柔らかいスピードや心持ちで、俺達は再び唇を合わせた。
「んッ」
再び喉を鳴らす由比ヶ浜。
感触はさっきよりも硬い。先に待つ物を思えば緊張は仕方無かろう。
でもそこをフォローすることは出来ない。
だから緊張より先に幸福や快楽があると信じて、俺は再び舌を挿し入れた。
「むン……ッ」
柔らかな唇を超え、再び歯にぶつかる。
今度は開かれているものの入り口はせまく奥まで入り込むのは厳しそうだ。
まだ拒まれてる?と考えてしまうが、舌だって口内の機関としては中々のサイズ。
小柄な由比ヶ浜の口中に男性の舌は大きすぎるのかもしれない。
しかし今度は扉が開かれていて、中から出て来た由比ヶ浜の舌が俺の舌先に触れた。
518 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:08:09.74 ID:B9rqdRar0
「んぅ……」
おずおずただ触ってきただけで、仕掛けてきた由比ヶ浜がピクリと反応する。
ちょんちょん、ちょんちょんと小さなヒット&アウェイを繰り返す。
未知に怯えて、でも知りたくて、付かず離れずを繰り返す気持ちは俺にも分かる。
しかしそんな様子が可愛くて、
触れてくる粘膜の感触をもっともっと知りたいと思ってしまう。
だから小突いてくる由比ヶ浜の舌を待ち構え、俺の舌で一気に絡め取った。
「んむッッ」
さっきとは比にならない劇的な反応で、一気に由比ヶ浜の全身が強ばる。
でも止めない、逃がさない。
絡めたまま舌を動かし、こねくり回すようにその柔らかさを味わう。
「んッ、ぅッ、んんッ、むぅッ」
絡む度、由比ヶ浜の身体に電流が走ったような反応。
けれど舌は緊張の硬さが次第に解れて、なされるがままに蹂躙されていく。
随分入念に歯を磨いたのだろう、
歯磨き粉の清涼感が由比ヶ浜の口内や唾液から伝ってくる。
俺も随分磨いたからお相子だな。というか磨いといて良かった……。
519 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:09:36.86 ID:B9rqdRar0
「むは、はむ、はふ、んん……」
暫く絡み合っていると、由比ヶ浜の身体から緊張が消えていく。
断続的な大きなショックはピクピクと小さな震えに代わり、
何時の間にか俺の背中に回されシャツを握る手を除き身体は完全に脱力していた。
変わらず開いたままの俺の目は、
薄開きの目蓋で熱に浮かされたような表情の由比ヶ浜を捉える。
伝えきれない気持ちを伝えるのに一番簡単で特別なキスというコミュニケーション。
それが今は簡素さを濃密さに変えて、
これでもかというほど刺激的な性接触に変わっていた。
ちゅるちゅる、ぴちゃぴちゃ
「うぶ、うぅ……ん、んれ、んぇ、ぇふう……」
じゅるじゅる、じゅるり
互いの唾液が混じり合うくぐもった音が、内側からの振動を通して鼓膜へ至る。
俺が由比ヶ浜の上に覆い被さるようにしている為、
俺の唾液が由比ヶ浜の口内に流し込まれるような形になっている。
俺に唾液を流し込まれ、溺れ、恍惚と受け入れる由比ヶ浜。
そんな構図を想像しては頭も下半身も発熱し、どうしようもなく興奮する。
520 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:11:10.62 ID:B9rqdRar0
キス、凄い。
べろちゅー、ヤバイ。
キスの力は一年前から分かっていたつもりだが、甘かった。
抱き締めて、触れ合うだけのキスをして、
それだけで交際の経験値を内心誇っていた俺は完全に井の中の蛙だった。
自分の感覚も相手の感触も全て混ぜ合って尚足りないような、こんな。
そうして俺の頭も甘く痺れて、自他の境界が曖昧になっていく。
……それはただキスの力ってだけじゃなく、もっと切実な理由もあって直ぐ顕在化した。
息。
苦しい。
「むぐ、むぅぅ……ふ、ぷはッ!」
快楽と苦痛の天秤は生命の危機を察知し一気に苦痛へ傾き、勢いをつけてガバッと離れる。
長く長く、どれほどの時間続けていたかも分からない長いキスから解放された。
「ひー、ひぃー……」
「はふ、はふ……」
互いにぜぇぜぇ肩で息をしている。
何も全く呼吸出来なかったわけじゃないが、
互いの呼吸器を至近距離で過度に興奮するようなことしてたんだから
単純に摂取する酸素量が減るのは自明なわけで。そりゃチアノーゼ気味にもなる。
人体の明らかな設計ミス、神の意表を突く行為――柳、お湯。
521 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:13:22.59 ID:B9rqdRar0
キスする時は鼻呼吸、とかどっかで聞いたような気がするけど
初のディープキスでそこまで意識出来るかよ。
あんな脳の奥の奥まで痺れて壊れてしまいそうな行為の中で、
何処まで正常な思考を保てるものか。
息も落ち着いてきて、由比ヶ浜はどうなっているかと視線を下げる。
これで顔色青紫でマジチアノーゼってたらどうしよう。
酸素マスクはラブホテルに備え付けてありますかね?
そんな悪い予想に反し、由比ヶ浜は何時ものキス後顔よりも緩んだ顔をしていた。
いや緩いという表現で正しいのか分からない。
エロいとか、やらしいとか、そう言えばいいのか。
目の焦点が合わず、はぁはぁと荒い息を繰り返し胸や腹が上下する。
顔は勿論赤く、半開きの唇の周りには自分のものか、
俺のかも分からない唾液でぬらり濡れている。
その顔を認識すると、酸素不足で朦朧としていた意識が一瞬で覚醒する。
酸素吸ってる場合じゃねぇ!と下から突き上げられる。
下半身さん元気ですね……。
その由比ヶ浜も俺の顔を認識したか、
「ひっきぃ……べろちゅぅ、すごいよぉ……」
掠れた声で囁くよう、甘えるように零す。
522 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:15:02.09 ID:B9rqdRar0
どくり、心臓が、跳ねる。
最終的には向こうからも絡んできたとはいえ、
殆ど一方的に貪られるような形の接触で恍惚とした顔をする由比ヶ浜。
そんな童貞の妄想のような光景が、どうしようもなく現実だった。
女性優位の体勢だのやり方ってのもあるらしいが、それでも異性間の身体構造や筋力差を鑑みれば
雄性が雌性を組み敷くのが人間という種のスタンダードな性交渉だ。
そして俺が今この場の雄、由比ヶ浜がこの場の雌だと考えればもうブレーキはおろか障害物すらない。
寧ろ障害物を取り除いていこう、そう決めた。
差し当たっての障害は目前にある。
「その、いいか? タオル、取っても」
隠すことで扇情される、ということはある。
だが今はただ由比ヶ浜の肌を見たい。
隠すもののない、純正純粋な由比ヶ浜結衣の身体を、見たい。
「あ、う、うん、いいけど……ヒッキーも、脱いで?」
……由比ヶ浜も、純正純粋な俺の身体が、見たい?
エロ漫画とか薄い本知識だと相手だけ脱がして竿役は着衣って結構あるから意外というか、
流石にこの場で二次エロを当て嵌め行動するのは死亡フラグとして露骨過ぎだから踏まないけどね?
まぁ自分だけってのは恥ずかしいのかもだから、そういうもんなんだろうきっと。
523 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:17:07.02 ID:B9rqdRar0
「か、構わんけど、由比ヶ浜も見たいのか?」
俺の裸を。
「うん、見たい。 見せっこしよ?」
あ、今の言葉八幡的にポイント高い。クッソ可愛い。
というかここまでですらポイント高過ぎだから、
終わるまでにどれくらいポイント溜まってるやら。
楽しみなような、怖いような。
「そ、そうか……じゃあ、脱ぐわ」
ということで一旦由比ヶ浜から離れ、もたもたシャツとズボンを脱ぎ捨てた。
他人の前で服を脱ぐなんてのはぼっちにとってはかなりハードルが高いもんで、
これを異性の前で直接、しかもセックスの為……なんて考えたら何時も通りの動作なんて望むべくも無い。
しかもズボン脱いでるときの下半身の引っかかりっぷりったらもう。
改めてテントになってる自分のパンツを見下げては嘆息し、
パンツだけは後にしとこうと再び由比ヶ浜に近づき、覆い被さる。
「わ、わ……これが、ヒッキーの……なんだ」
若干のインターバルで思考や呂律が回復したらしい由比ヶ浜が
ちょっと妖しい感想を口にしてくれた。
変な妄想が逞しくなるし、以前手でシてもらった時の台詞と被ってドキリとする。
524 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:18:35.24 ID:B9rqdRar0
「ど、どうなの? 女子的に」
「え、えと……なんかイイ、かも。 キレイだと思う」
キレイ、キレイかー……男的には喜んでいいのかどうか。
別段貧弱貧相なもやしっ子ってわけじゃないと思ってるが、
かといって運動部の連中とでは比較にならない程度が自己評価。
だからキレイ、というのは案外表現として間違ってはいないのかも。
これはぼっちアスリートへの道再び。バレエでも始めようか?
上半身裸の黒タイツでボレロ踊ろう。
「……それじゃあたしも、脱ぐね」
脱ぐというのが正しいかは分からないが、
ともかく由比ヶ浜もまた身を纏う布地に手を掛け、
しゅるり衣擦れと共に抜きさった。
そうして隠すもののない女体が露わになる。
その瞬間を、それこそ電気信号で回路が焼き切れんばかりに脳内へ焼き付けた。
焼き付けた。
焼き付けた。
大事な事は二度、ただのネットスラングを真理を突いた至言と勘違いする。
それほど衝撃的で、それこそ本能からすら心を奪うほどに、
525 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:19:55.89 ID:B9rqdRar0
「綺麗だ……」
完全に反射で言葉が漏れ出した。
「そ、そう……かな」
由比ヶ浜の顔は自信なげで、俺から目を逸らすように横を向いていた。
もどかしそうに動く手指は腹の前で組まれ、何を隠すでもない。
自信が無い。
それは姿形に係わらず由比ヶ浜の抱える陰の一つだろう。
誰しも同じような悩みは抱えていようが、
由比ヶ浜はそれを外に漏らしにくい代わりに自責という針で深く刺すことがある。
自分よりも、自分だけ……誰かと繋がることで輝く彼女でさえ逃れ得ない孤独な痛みだ。
だが、そんな由比ヶ浜の内心と関係無くその身体は女性の魅力に溢れている。
寧ろオタク気味な俺の抱く女性への幻想、美しさへの憧憬、その形と限りなく一致するようだった。
少し前に上半身だけならばその裸体を視界に収めていた筈なのに、
それで尚その印象が吹き飛ぶほどの引力を感じる。
大きく膨らんだ乳房と先端を彩る鮮やかな桃色。
なだらかな曲線を描く腰と腹の線。
そして足の根から……。
526 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:21:30.65 ID:B9rqdRar0
「あ、やッ、そこは、まだ……!」
俺の視線が下腹へと下がったところで、由比ヶ浜は『そこ』を手で隠した。
「あ、わり……その、つい」
「え、あの、あたしの方こそ、ごめんね?」
「謝んなよ、普通の反応だろ、多分」
仕方が無いところではある、のだろう。
俺だって由比ヶ浜にテントとか本身見られたとき超恥ずかしかったし。悶死。
男の俺ですらそうなのだから、
女性で且つそういう経験の無い由比ヶ浜にとっては更に重いだろう。
暴走するな、COOL、COOL、KOOL。
まぁ『そこ』は後の楽しみにしておくとしてだ。
今はとにかく、由比ヶ浜を褒めよう。
彼女への気遣いでもあるし、胸中に留まる感動を有りの侭吐き出したかった。
「それに、自信持っていいんじゃねぇの? 綺麗だし、その、滅茶苦茶エロいし」
「そ、それって喜んでいいのかな……なんか、やらしくて」
「よし良いこと教えてやる。 男子はな、やらしい女の子が大好きなんだよ」
思春期の男子であれば、一度は美痴女からのセクハラという夢を見る。
実際には痴女とエッチな女の子の間には隔たりがある(らしい)んだけどね、良いんだよ夢なんだから。
非実在青少年が何だ、こっちは非実在痴女だバカヤロウ。
527 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:23:17.86 ID:B9rqdRar0
「それも微妙だよ……や、やらしいの? あたし」
「……やらしいというか、何だ。 可愛くて、いじらしくて、なのに綺麗で、エロくて、スゲェ興奮してる」
もう隠すこともない、かつてない大噴火。もとい大興奮状態。
衝動という意味では少し前のアレは異常なレベルだったが、
意志と本能の方向性が合致した今の方が持続的な力は数段強く感じている。
流されるでなく、己の意志で先へ進む。
進みたい。
「だから……触っていいか? お前の身体に」
「……え、えと」
もじもじと言いよどみ迷っている由比ヶ浜の姿も可愛らしくて、仕草が一々扇情的に見えてくる。
このまま襲いかかってしまうか、そんなことも冗談でなく考えてしまう。
何秒かの逡巡を経て由比ヶ浜はキツく目を瞑り、
「やさしく、してね?」
そう囁くように言った。
だからもういい加減にしろ!
俺の中で可愛いがゲシュタルト崩壊するくらいに一々可愛いんだよ!どうしてくれる!
そしてライオンは獲物を可愛い可愛いと愛でながら狩り殺すという……俗説だっけこれ。
528 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:25:18.81 ID:B9rqdRar0
ともかくそんな心境、今の俺はプレデターだ。戦闘宇宙人のことではない。
今は一方的に狩ったり殺すでなく、通い合う為にこそ肥大した欲望と力を使いたいと思う。
コントロールせねば。
「じゃあ、始めるから」
開始を宣言すると、目を瞑ったまま由比ヶ浜は無言でコクリと頷いた。
対する俺はゴクリと唾を呑み、由比ヶ浜に向かって手を伸ばす。
伸ばす先は大きく膨らむ丘陵……ではない。
「……ふぇ?」
場所と感触に疑問を覚えたらしい由比ヶ浜が目を開く。
右手は髪を、左手は頬に触れていた。
かなり明るい茶髪だと言うのに、梳いても抵抗なくサラリと流れ甘い香りが立ってくる。
ふっくらとした頬は予想通り見た目通りに柔らかな感触と体温。
それらが春の日溜まりのような彼女の人柄を表しているようで妙に嬉しくなった。
さらさら。
ふにふに。
……なんか癖になりそう。
529 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:26:59.72 ID:B9rqdRar0
「あ、あれ、ヒッキー? 触りたいの、そこなの?」
「いや、まずはって思って……こういう機会でもないと触れそうにないし」
「こんな機会でなくても触ればいいじゃん。 他の、か、カップルは、みんなやってるし」
「いや流石に恥ずいだろ、今はちょっと気持ち分かるけど」
言葉通り往来で髪や頬を撫でるバカップル共に唾吐いたこと数多だが、
今は気持ちが分ってしまう。
触れ合いっていいなぁ。一方的だけど。
「……恥ずかしくても、あたしはいつでも触って欲しかったし、触っていいよ?」
「お、おう。 その辺はその、追々な」
由比ヶ浜のストレートな言いぐさに押し負けたのを誤魔化すように再び手を動かす。
「はぅ……」
要求通り触れられるのが嬉しいのか、
由比ヶ浜の吐いた溜め息は幸福の色に満ちていた。
実際俺も女の子の手触り、それが由比ヶ浜結衣のモノを味わえている事実に
かつてない幸福感を抱いていた。
手は髪頬から耳、後頭部と撫でて背中へ下ろす。
そして抱き締める形で密着して自分の頬と由比ヶ浜の頬を擦り合わせた。
「んっ……あは、くすぐったいよー」
仰向けの由比ヶ浜と被さる俺が頬を合わせれば互いの顔は見えない。
しかし伝わってくる頬の寄りと振動、
何よりその声色で由比ヶ浜が笑っているのが分かる。
530 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:29:46.23 ID:B9rqdRar0
背中に回した手を肩へ移動しそのまま腕を伝って手指に至る。
頬に負けじと滑らかな肌の手触りもまた病みつきになりそうだ。
指を根から先までスルリ滑らせると
その一本一本を自分の指と組み合い絡ませる。
指に力を込めると、由比ヶ浜の方からも握り返してきた。
「……こ、恋人繋ぎ、はじめてだね」
そういえばそんな名前だったっけ。
そう名付けられると凄く大胆で不遜なことをしている気がしてくる。
だが身体を密着させて手と手を隙間無く絡ませていると、
それだけで心臓の底の方から沸き上がってくるモノがあった。
炎と言うほど熱くないが、それ故に心地よく心身を満たす暖かさ。
以前「スキンシップは共同幻想を続ける為の欺瞞」などと考えたものだが、
今はそう思えない。
ただ触れ合うだけで、俺は本当に由比ヶ浜結衣が好きなんだと確信できるから。
そのくらい分かり易くて、なんでもっと早くこう出来なかったのかと悔やむばかり。
極限状態は抜けつつも高速の一定でトクトク動く心臓を意識する。
俺の身体に圧されて形を変えている柔丘からも、それに負けじと響く振動を感じた。
531 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:31:37.50 ID:B9rqdRar0
「……ドキドキしてる?」
「――そうだよ、当たり前じゃん。 ヒッキーもだよね? わかるよ」
そりゃそうだ。
はじめて同士で、裸で、身体をくっつけて、それで鼓動が伝わらないわけ無い。
それで興奮しないわけがない。
何時もは緊張やマイナスの感情で心身を痛めつけるようにしか動かなかった心臓、
その鼓動が今は幸福と歓喜を呼び込んでくれているように感じる。
そして多幸感に満ちた心臓が脳に叫ぶ。
「先へ進め」と。
このまま心地よりぬるま湯に浸かって一時を終えたい欲求もある。
ささやかな温もりを尊ぶ慎ましやかさは農耕民族か儒教的で、
曲がりなりにもその遺伝子と魂を欠片でも継いでいる人種の心は
落ち着くことを善しとし、それを否定することは出来ない。
だが魂と対を為す魄は本能の先にある宴の快楽を求める。
ただ衝動的なだけでなく、魄は魂を飲み込み一つとなって
幸いあれと俺の道行きを祝福していた。
心か身体かではない。
まず身体の欲求を満たし、その隣に心の充足もある。
どちらがどちらを言い訳にするのではない。
どちらも真実だ。
だから、進む。
進もう。
「由比ヶ浜、そろそろ……いいか?」
532 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:33:20.13 ID:B9rqdRar0
密着していた身体を離し、それでも至近の距離から目を見つめながら問う。
正直照れっ照れ。うまい!(テーレッテレー)と叫び出したいくらいに照れてる。
だが言わなければ。
「うん、いいよ。 寧ろあたし、ここに来てからずっと心の準備はしてたから……さっきのシャワー中も、ヒッキーが入って来てもいいって思ってたし」
その問いかけに彼女は首肯し、またそんな嬉し恥ずかしなことを言ってくる。
あーもう、一度は落ち着いて自分のペースで行けるって思ってたのに直ぐコレだ。心臓ビクンビクン。
まぁようやく誰かと共に立って歩いて行こうって決めたばかりのヘタレ野郎と、
ずっと恋心を抱えて喜び悲しみ進んできた清純乙女とでは、
現時点で獲得経験値とかレベルだって圧倒的に差があろう。そう思えば仕方無い。
だからもう開き直ってしまえ。
「あ、そ、そう……そ、そーいうのもまた、追々、な」
「また、するの?」
しかしまたもあっさりカウンターを取られて膝下ガクガク。倒れそう。
国内とWBAルールでは1ラウンド3ダウンでKO負けなもんだから
今倒れるわけにはいかんのだ。
「い、嫌か? そうだったら無理強いは――」
「ううん、また、シよ? だから、今は……」
一緒に進もう。
俺を見つめる由比ヶ浜の目からも俺の本心と同じ意志を感じ取った。
錯覚じゃない。
絶対に錯覚なんかじゃない。
ここに至り、言葉ならずとも通じ合う……俺の理想が現実に見えた気がした。
533 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:35:06.52 ID:B9rqdRar0
それがどうしようもなく嬉しくて、その勢いのまま、
「――さ、さわる、ぞ」
言葉と同時に両手で由比ヶ浜の乳房に触れた。
「んぅッ」
ビクリ、由比ヶ浜が反応する。
しかしそれを気に掛ける余裕は無かった。
こうして彼女の乳房に触れるのは二度目だが、それでも最初の時は暴走気味な思考と
感情の余波で味わった体験や感覚を朧気にしか覚えていなかった。
だが今は理性と本能の行き先が合致してこの場に臨んでいる。
自意識と目的意識が明瞭、ハッキリとしているのだ。
故に両の指に伝わる柔らかさと温もり、頬の手触りより尚濃厚なそれ≠フ感触は、
指の神経を伝って脳髄に荒れ狂う磁気嵐を巻き起こした。
「う、わ……!」
思わず感嘆の息が漏れる。
柔らかい。
ただ、柔らかい。
皮膚に触れるだけでふるり震える手触り、僅かに力を込めればそれだけで指が沈んで行く。
それほど柔な印象なのに張りのある形を保っていて、
更に奥まで指を沈めていくと手応えも返ってくる。
そして、
534 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:37:08.03 ID:B9rqdRar0
「はぁ、ふ、ふ、はふ……」
指を動かす度に短く息を吐く由比ヶ浜の反応が極上のスパイスだった。
ただ触り感触を確かめるだけならそれこそ二の腕でも触っていれば良く、
その内空しさが勝り行為は止まるだろう。
だが今は想い人の感触を味わい、それにより想い人が反応する。
こんなもの、夢中になってしまう。
夢中になるに決まっているじゃないか。
そう思えば、頭は熱くなり衝動のまま両手を動かし、捏ねくり回す。
「あ、あぅ、ひ、ひん、ひぁ……!」
握りしめない程度の力でホールドして、円を描くように動かす。
外側から包み込み内側に寄せて谷を大きくする。
引っ張るように動かし、その伸縮性を目にして驚く。
何をしても反応があり、何をしても予想を超える。
それほどの包容力、物理的な大きさと容量を由比ヶ浜の乳房は持っていた。
所詮経験薄な童貞の思考や想像力なんてさもしいものとは分かっているが、
それでもこちらの入力に応じて如何様にも形を変えるこの乳房は、
悲観的になって以後深くへ封じ込めていた筈の万物への興味・好奇心を呼び起こし、刺激した。
535 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:38:48.35 ID:B9rqdRar0
「ふ、ふ、はぁ……ね、ねぇ、んっ、ヒッキー……」
時間の感覚を忘れて夢の世界へ飛び立っていた思考を引き戻したのは由比ヶ浜の声。
暴走だけはするまい、そう固く誓ってこの場に臨んでいた筈なのに
結構危うい領域に足を突っ込んでいた。学習しねぇな俺。
「な、なんだ? 痛かったりしたか?」
「ううん、そんなことないけど……あたしのことじゃなくて、ヒッキーは、どう?」
「どうって」
「あたしの、お、おっぱい、変じゃない?」
……だからさぁ、そういう言い方とか聞き方はさぁ。
何なんだよ本当、何なの。
俺の心臓を蜂の巣にするつもりか。今更だけど。
「……まともかどうか判断出来るような経験ねぇよ、俺だって、は、はじめて、なんだし」
「そ、そうだよね、変なこと聞いて、ごめんね?」
「あ、や、でもな、正直夢中になってたわ。 そのくらいその、ヤバいと、少なくとも俺は思う」
もうちょっと言い様とかあるだろう、とは自分でも思うが、
そんなストレートに睦言の類が出てくるわけもない。俺だし。
ヤバイヤバイヤバイわーマジヤバイわー。
しかし、
「え、あ……ス、スゴイ嬉しいんだけど……どうしよ」
既に赤い由比ヶ浜の顔が、こんな俺のこんな言葉に更に紅潮する。
俺もそういう反応が嬉しいです、嬉しいです……。
536 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:39:57.63 ID:B9rqdRar0
「あたしね、今まで胸大きくて良いと思ったことないんだ」
「え、そうなの?」
それを ほこれないなんて とんでもない!
と男の目線からは思うが、女性には女性ならではの悩みもあろう。
「だって重くて肩凝るし、体育のとき揺れて痛むし、そうでなくても女子から変にネタにされたり、やっかまれたり、逆に男子からは変な目で見られたりするし……皆と同じくらいで良かったのに、そういうとこ似なくて良かったのにってママのことちょっと恨んだこともあったよ」
同性の中では突出した個性が嫉妬の対象になり易いだろうし、
異性にとってもその畏敬の出所が性欲なら嬉しい視線にはなりづらかろう。
富める者には富める者なりの悩みや苦労があるのだ。
「でもね、ヒッキーが、あたしのに夢中になったって言ってくれて、そしたら今までの苦労が全部なくなっちゃうくらい嬉しくなって……お、おっきくて良かったって、思っちゃった。 馬鹿で、単純だよね、あたし」
未だその乳房に触れたままの俺の両手の甲に由比ヶ浜は手を合わせた。
手の平と甲が、それぞれ違う柔らかさと暖かさに包まれる。
あー、あーあー。
蜂の巣どころか、終わるまでに破片一つも残ってるか心配になってきたな心臓。
537 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:41:37.10 ID:B9rqdRar0
嬉しい。
由比ヶ浜のこんな言葉が、反応が、どうしようもなく嬉しい。
好きだ。
大好きだ。
寧ろこの娘を好きにならないなんて男としてどうかしてる。
由比ヶ浜のこんな一面を知ってしまえばこの世のあらゆる男が恋に落ちるだろう。
だがそれでも、由比ヶ浜結衣をこの世で一番好いているのはこの俺だ。
由比ヶ浜結衣がこの世で一番好いているのはこの俺だ。
ただそれだけで、俺は世界と向かい合える。
これを盲信や勘違いだなんて誰にも言わせない。
想いの丈は瞬時に臨界を越え、声帯を通して一気に出力される。
「好きだ、由比ヶ浜。 お前の身体も、馬鹿で、脳天気で、優しくて、暖かくて、変な所で自虐的になっちまう所も、全部、全部、好きだ。 どうにかなっちまうくらい、好きなんだよ」
言いながら、手の中で勃起していた乳首を指二本で摘み、クリッと転がす。
「ッ!?」
由比ヶ浜の身体が跳ねる。
ここまでで一番大きな反応に興奮は増し、手指の動きは止まらない。
そのまま親指の腹で先端を擦り、ゲームのコントローラーのスティックのように回す。
538 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:43:01.69 ID:B9rqdRar0
「い、いきなりは、あぅ! ひ、ひっきー!」
元々性感帯だったのか、それとも昂ぶり高まったタイミングだったからか、
局部への干渉の効果は絶大なようだ。
まだ先や奥がありそうだと思う故に心は逸り、左手を離すとそのまま口を近づけて、
「ひぃっ!?」
乳首を咥え、そのまま舌で舐め上げた。
当たり前だが甘い味などしない。しょっぱい。
そもそも母乳は成分が血液と同じで味も塩と鉄の赤い味だそうだが。
だが今味覚は関係無い。
柔らかさはありつつもコリコリとした独特の感覚を、今度は吸い付きながら口内で味わう。
「あ、あ、あ、あ、あぁあ、うぅ、ぅ、うぁ!」
舌で転がし、吸って白い肌ごと引っ張ったりする度に一々ビクビク反応する由比ヶ浜。
己の力で何かが変わる、そんな認識が清い青少年を中二病やら不良の道へ誘うのだろうが、
今正に俺の行為で、由比ヶ浜は反応する。性的な方向に変わっている。
そんな承認欲求と劣情と愛情が混じり合った魔女鍋が、頭の中でグツグツと煮えたぎっている。
鍋から勢いよく起ち上がる妖しい煙か蒸気がタービンを回す。
止まらない。
止まれるわけがない。
539 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:44:48.20 ID:B9rqdRar0
「ひ、ひっきぃ! んひっ! そ、そんなにぃ、んく、しても、で、でないよぉ!」
舌も手も、どんな風に動かしているのかすら埒の外にある俺の耳に由比ヶ浜の悲鳴が届く。
俺が幼児退行で赤ん坊返りでもしたと思ったか、
或いは乳首への執着それ自体の目的を履き違えたか、
そんな由比ヶ浜の誤解すら鍋を炊く燃料にしかならない。
いっそ本当に出るようにしてやろうか、という考えすら頭を過ぎる。
出るようにする為には……そこで互いの下半身を意識し、それでようやく正気に戻った。
……本当に反省がない。こんなの、それこそ前回の再現じゃないか。
ダメなんだよあれじゃ、ダメなんだよこれじゃあ。
口と手を止め離し、身体を上げる。
「あ……わ、悪ぃ、また、俺……」
眼下の由比ヶ浜は先のキスの時と同じ、或いはそれ以上に貪られ、
脱力したまま身体を投げ出していた。
その目に力はなく、為されるが侭のその姿に興奮し、
同時に矢傷とは別の胸の痛みが鋭く走る
「気に、しなくて、いいよぉ……ひっきぃが夢中になってくれて、あたし、うれしいもん……」
生気の薄れた瞳で微笑み放心気味に言ってくれる由比ヶ浜だが、でもそれじゃダメなんだ。
衝動を否定しないでも、ただ衝動の侭に動くだけでは積み上げとは言わない。
ただ一方的に受け取ることが心苦しく、せめて何かを返したいと再び密着し抱き締めた。
540 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:46:30.97 ID:B9rqdRar0
「でも、ただ俺だけがってのは、なんか嫌なんだよ。 お前にも何かって思う」
必死に搾り出した俺の言葉への反応を、
由比ヶ浜は俺の背中に力ない腕を回すことで返してきた。
「あたしは、たくさんもらったよ? ひっきぃが、あたしの身体を喜んでくれてるって、それだけで、いっぱい、いっぱい……」
いじらしい彼女の言い様には胸が熱くなる。
だが、それでもただそれを受け入れるわけにはいかない。
由比ヶ浜の言葉を信じないわけではないが、
一歩間違えばただの搾取になりかねないから。
貰った分は返す。
以前彼女が肯定した終わらないお返しの円環、そうでこそありたい。
今、俺が出来うる彼女への貢献やお返しは何があるか。
逡巡し、少しでも可能性の高い行為をと右手を恐る恐る下腹部へと伸ばし――。
「あッ! やッ!」
しかし、臍の下辺りに触れると由比ヶ浜の両手が瞬時に右手を止めた。
「だ、だめだよひっきぃ! そ、そこはまだ、まだだめぇ!」
「え、ダメ、か?」
「う、うぅ、だ、だめなの、まだ、だめ……」
541 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:48:16.11 ID:B9rqdRar0
先程までの愛撫で良くも悪くも警戒心や羞恥心は取り除けたものと思っていたのだが、
そうでもなかったか。
しかし幾ら何でも反応が過剰な気もする……。
でも嫌がってるのに無理矢理ってのもなぁ、うーん。
「なんでダメなんだ? まだ怖いか?」
「き、きかないでよぉ……」
眉を寄せて、涙目で回答を拒否する由比ヶ浜。
そんな様子に胸は痛むが、
ああも蕩けていた彼女が一気に緊張した理由を判明させないことには先へ進めない。
……周りから攻めてみるか。
止められた右手はそのままに、左手を足に這わせる。
右手の抑えに注意が割かれていたからか、ただ触れただけでまたも跳ねるように反応した。
「あっ、そ、そっちも!? や、やめてよ、ひくっ、まだ、だっ、だめだからぁっ!」
本格的に泣きそうなのか、しゃくりあげながら警告される。
最悪国境侵犯から強制送還・射殺も覚悟の上の左手芸だが、
少なくとも今そう≠キるつもりはない。
まず安心させなければ。
「大丈夫だ、その、そっちは触んねぇよ」
言いつつ、膝下から太股までを外からなぞる。
「ひぅっ!」
さっきまでとは違う、ぞわっと来たような反応。
まぁ足なんて普段触られたり触らせたりしないとこだもんなぁ。
それ故か、腕とはまた違う滑らかさ、抵抗感の薄い肌触りがまた興味深い。
542 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:50:17.72 ID:B9rqdRar0
「ひ、ひっきぃ……足も、さわりたかったの?」
「足、というか、由比ヶ浜の全部に、触ってみたい」
「あ、あぅ……」
俯いて縮こまる由比ヶ浜さんの姿がね、またね、可愛らしいんですよ本当に。
そんな可愛らしさに煽られ、このまま勢いに任せて
手籠めにしてしまいたいという火種も燻っているが、そこは抑え込む。
ゆっくりと全てを目にし、確かめながら進んでいきたいという気持ちもまた強い欲求だから。
すべすべの足をゆっくり撫で回していると、少しずつ緊張が解れていくのを感じる。
その中で次の機を見定めると左手を由比ヶ浜とシーツの間に滑り込ませる。
即ち、尻。
「え、ひゃぁ!」
うーんこの反応。
淫蕩淫靡なさっきまでのものとはまた違うが、こういう馬鹿っぽい明るさも実に由比ヶ浜。
その由比ヶ浜の臀部の感触は乳房よりも僅かに堅く、厚みのある重量感がまた興味深い。
無意識に、撫で回すより揉み込むことを優先してしまう。
モミモミ。
543 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:51:56.89 ID:B9rqdRar0
「わー、わー! ひ、ひっきぃが痴漢になっちゃったよぉ!」
「お前の中じゃ痴漢=尻スキーなのか……」
「うぅ、だって、ひっきぃの手付きが、う、やらしいんだもん……こんなにぎゅって触られたこと、ないけど」
……なんか聞き捨てならない台詞。
「触られたことはあんの?」
「ハ、ハッキリ『痴漢だ!』て感じのはないけど、んっ、女の子は皆そういう経験あるし……」
「よし分かった触った奴殺そう」
「いきなり極端だ!? ハッキリしてないんだから誰かって分かんないよ!?」
「じゃあ今度一緒に電車乗ったときそれっぽい視線向けた奴皆殺しにするか。 痴漢という民族に対するジェノサイドだ、社会正義だ」
「ひ、ひっきぃが今度は怖い人になっちゃった……」
「冗談に決まってんだろ、ジョーダン」
半分は、だけどな。
痴漢被害発覚で割と本気の殺意沸いたのはマジですマジ。
しかし何時も通りな会話の流れが混じったからか、強ばりはもう殆どない。
強引に右手をそこ≠ヨ届かせることも出来るだろうが、まだだめ、だ。
今はまだ暫し流れに身を任せよう。
544 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:53:09.02 ID:B9rqdRar0
「それはともかくだ……そういう経験あるってことは、尻触られるのって嫌だったりすんの? だとしたら、謝んなきゃだけど」
だが手を止める気はない、というか止められるかなぁ。
胸のような熱中こそ伴わないが、その分中毒性が高い気がする。
この具体的な手応えが、この、このこの。
「あっ、そ、そんなこと言って、全然止める気、ないじゃんっ、はうっ」
「いやすまん、でもこんなん夢中になるわ。 こんな身体してるお前が悪い」
「ほ、ほんとにひっきぃが痴漢みたいなこと言い出した! ひっ、んくぅ」
「でも、本当に嫌だったらちゃんと言ってくれよ? じゃないと多分止められん」
「い、いやなわけ、ないよ……ハッ、ハッ、ひっきぃに、痴漢されてるって、思ったら、変な気分に、なっちゃう……」
…………だからさぁ、もう省略するしかないくらい同じ感想しか出せねぇよ。
疑似痴漢プレイとかOKなの?
俺自分じゃそんなにアブノーマルな嗜好じゃないと思ってたんだけど、
変な方向にイっちゃいそう。
「変な気分になってんの?」
「な、なってるよ。 べろちゅーのときとか、おっぱい触られてたときとか、今も熱くて、熱くて、あたしの全部が、変になってるの……」
すべてが変になる――いや違うかこの場合。
すべてがHになる――……そういうパロAVとか出る?出そう?
いずれにせよ台無し感ハンパねぇ。
545 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:54:44.73 ID:B9rqdRar0
「……全部?」
「うん、全部、ぜんぶ、だよ」
「じゃあ、ここも?」
まだ機が熟したか判断は付かない。
しかし明確な岐路を待ってはそれこそ機を逃すかもしれない……そう思い、
もう抑えの体を為していない由比ヶ浜の両手をすり抜け、右手を下腹部へと滑らせる。
「あ!」
また一気に緊張が走るが、もう遅い。
指先がサワサワと柔らかい感触を捉えた。
陰毛だ。
エロ漫画とか薄い本だと存在そのものを省略されることも多いが、
由比ヶ浜も成熟した女性の身体を持つならば生えているのも当然。少しだけ夢が妄想の形を損なう。
しかしそんな生々しい現実も、今は由比ヶ浜の性を強く意識させる燃料だ。
だが、そんな実感も継いで触れた感触の前に全て吹き飛んだ。
にちゃり
546 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:56:28.32 ID:B9rqdRar0
「え」
指先に触れたのは、濡れた何か。
濡れた陰毛。
濡れた、下腹部。
「ひ、ひっきぃ……だ、だから、だめって、い、いって……ひくッ、うぅ……」
由比ヶ浜は守り通したかった秘密を暴かれ、その顔は更に赤く、
瞬く間に目に涙を溜めていく。
だからだめ≠セったのか。
由比ヶ浜はこれを隠したかったのか。
秘密というより、秘蜜。
由比ヶ浜の局部、秘所、陰唇は、触れられる前から濡れていた。
溢れた蜜が入り口に近い部分の陰毛まで濡らすほどに。
「ひ、ひとりで、シてたときだって、こ、こんな、さわってないのに、こんなになる、なんて、なかった、のに……ぅぅ」
中々衝撃的なカミングアウトも混じりつつ、
俺は事態の急変に呆然と――している場合じゃねぇ!
この流れはマジ泣きのアレか!それはマズイマズイそれだきゃあかん!
547 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:58:27.29 ID:B9rqdRar0
由比ヶ浜には悪いが、隠そうとしたところに思い至ったとき……興奮した。
同時に嬉しかった。
濡れる濡れないが女性の性的な興奮、また快楽のバロメータだとするなら、
俺は由比ヶ浜を気持ち良くさせることが出来ていたということだ。
女性をアンアン喘がせて上手いの何のと褒められるのなんて童貞男にゃありがちな妄想だが、
言葉が無くともそういう状態になってくれることの達成感と充実感は何にも代え難い。
その相手が誰よりも想う相手であればこそ、今胸に充ちるこの感動は伝えるべきなのだろう。
これは恥ずかしいことでも、汚いことでもない。
それが正常で、きっと幸せに繋がるものなのだと。
間違いによる暴発も覚悟の上で、俺の指は滑る陰毛の先……熱放つ入り口へと至った。
「ッッッ!!?」
また、由比ヶ浜の身体が跳ねた。
言葉にならない衝撃を呼吸で鋭く吐き出す。
女性の最もデリケートな部分に触れる感動は一先ず置いておき、
濡れに濡れて滑る愛液の源泉、その排出口に少しだけ指の先端を潜らせた。
「――――あぁッッ!」
548 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 21:59:56.02 ID:B9rqdRar0
柔らかく、そして濡れている。
幽波紋の名前っぽいが、ただ感じたままの言葉が脳細胞の奥に刻まれる。
今、俺は由比ヶ浜に触れている。
由比ヶ浜結衣の、最も大事な部分に、侵入しているのだ。
そんな事実にカッとなる頭を抑え付け、
割り入れた先端で浅い部分をゆっくりとかき回した。
「や、めッ、ひっきッ、あ、ひ、き、きたな、いッ、からッ……こ、こんな、あ、あたしの、なんてぇ……!」
小さく回す度、びくりびくりと如実に反応する由比ヶ浜。
この反応は悪くない……筈だ。
だから次は自らを堕とす彼女の言葉を否定していく。
「大丈夫、だ、由比ヶ浜……わ、悪いことじゃないだろ、これ」
「う、うそ、だよぉ……ひッ、ひぅ! こ、こんなの、やらしくッて、きたない、よぉ……ッ!」
「さっきも言ったろ、男はやらしい女の子好きだって。 それに、汚くなんて、ないから」
想いが伝わるよう、彼女が自分を許せるよう、静かに言葉を吐き出していく。
同時に浅く動く指が入り口の近く、濡れそぼった突起に、触れる。
549 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:01:08.43 ID:B9rqdRar0
「〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!??」
その反応はこれまでで一番大きく、声にならない声を呻き、身体を弓のように反らした。
ここが陰核だったか。
女性のデリケートゾーン、その中でも特に敏感な部位への接触。
その効果は絶大なようだ。
「その、さ、ぬ、濡らしてるってことは、気持ち良かったんだろ? 俺の、色々」
「わッ、わかんないッ! わかんないぃッ!」
己の感覚を誤魔化したいのか、震えつつもイヤイヤと首を振っている。
だがここは逃がさない。
「分からなくても、由比ヶ浜の身体だってもう大人の女なんだから、気持ち良くなって反応したんだろ、きっと。 そうだったら俺、スゲェ嬉しいよ……さっき由比ヶ浜が自分の身体に夢中になってくれて嬉しいって、それと多分一緒でさ」
ハッとなって顔を上げる由比ヶ浜。
目からはもう悲嘆か快楽の衝撃故か分からないくらい涙が溢れていた。
「その、好きな人に喜んで貰えるのって本当に嬉しくて、だから由比ヶ浜がこれを認めてくれたら、俺達二人で、滅茶苦茶幸せになれると思う……多分」
一旦指を止め、万感の想いを込めて囁く。
自分を優先出来ない、
誰かとかち合った幸せは誰かに譲ってしまう彼女にこそ幸せになって欲しい。
これを快楽だと、受け取って良い幸福なのだと認めてくれたら――。
550 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:03:08.01 ID:B9rqdRar0
「いい、の? こんな、あたしで、やらしいあたしで、ほんとにいいの?」
「良いんだよ、良いに決まってる。 俺は由比ヶ浜に幸せになって欲しいし、気持ち良くなって欲しい。 その為なら、俺の持ってる全部、何もかも、使ってやる」
さっきの公園での演説もかくやというほど熱っぽくて恥ずかしいことを言ってしまった。
が、これも本心なれば、一々峻巡している場合ではない。
鉄も言葉も、熱い内に。
「……うん、あ、ありがと、ひっきぃ……あたし、多分、きもちよかったし、今も、すごく、きもち、いいんだと思う。 まだハッキリとは、わかんないけど」
まだ涙を目に溜めて恥ずかしそうに、しかし真っ直ぐ言ってくれる。
性に対しては直情径行な男と違って女性の心身でそれ≠認めるのには抵抗もあっただろう。
そういう意味では俺の言葉や行いは彼女の羞恥心や道徳観を無視した酷いものかもしれない。
だが、どんなものであれ彼女の全てを認めて受け入れたい。
そして今由比ヶ浜はその入り口に立ち、
自らの全てをさらけ出しながら俺の差し出す全てを待っている。
551 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:04:42.31 ID:B9rqdRar0
そんな現実を目の前にしたら、俺は。
俺は。
「じゃあ、由比ヶ浜……もっともっと、気持ち良く、するから」
「うん、もっともっと、きもちよく、シて……?」
彼女の言葉に頷くと、浅瀬で止まっていた指をゆっくり、深くへと進めて行く。
「――――ぅあッ!」
より強い熱と蠢動、由比ヶ浜の嬌声を感じながら、深部へ辿り着いた指を掻き回した。
552 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:05:56.48 ID:B9rqdRar0
――どれほどの時間が経っただろう。
「あ、あふ、ひッ、ひぅ、はっ、はっ、はっ……はぁ!」
膣内を掻く中指のリズムに合わせて由比ヶ浜の身体が跳ね、揺れる。
最早俺の身体やシーツにしがみつく力もないのか、
骨も筋もなくしたようにただ俺の指に為されるがまま生み出される感覚に震え、
漏れ出る喘ぎも空間を桃色の液体が満たしていくような響きを伴い
何処か異次元にでも迷い込んでしまったような錯覚に陥っていた。
時折リズムを崩し、親指で入り口近くの突起を押すと、
「――ぃぎッ!」
なくしたように見えた力で一気に身体を反らし、痛みを堪えているように歯を食いしばる。
陰核への刺激が落ち着き切る前に、再び中指を中で折り曲げ、ストロークを再会する。
「ひぐッ、う、うはぁ、はぅ、うぅ、うぅぅ……んぁ、あ、ぁ、ぁ、ぁあ……」
継続的に与えられる電気と突発的に襲いかかる衝撃に、由比ヶ浜は完全に蕩けきっている。
正直これほど反応してくれるとは思わなかった。
553 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:07:52.78 ID:B9rqdRar0
ベッドイン前に確認したマナーうんたらで、
膣内を刺激するなら抜き差し出し入れよりも中の壁を押し擦る感じが良く、
陰核は敏感と言えどその分傷みやすい部位だからあまり執拗に触るものではない――、
そんな情報を仕入れておけたことが幸いだった。
結果由比ヶ浜の身体を(恐らく)痛めつけず、かつ彼女に性感を与えることが出来ている。
なんと素晴らしやネット情報。エロ情報はAVよりエロゲよりネットが一番や!
ともかく、時間感覚が無くなるほどに続く行為に終わり所が見えない。
由比ヶ浜の秘所から漏れ出した愛液は既に陰毛の全体、
股を濡らすまで広がり、刺激する俺の右手もビショビショのドロドロだった。
「あぅ、あぅ、あぅぅ、ぅ、んくッ、くはッ、はぁッ、はぁッ、はぁ――」
俺が、こんな俺が愛しい人に生物として根源的な快楽を与えることが出来ている。
その事実が胸中を満たし、行為を続けたいという欲求にコンマやピリオドを打たせない。
何時までも、永遠にでもこれを続けていたい。
それこそこの先の本番を無かったことにしてもいいと考えてしまうくらい。
俺の陰茎も本能も、入れたい、挿れたいと限界まで膨れ上がっている。
しかし奪う悦びは与える喜びに取って代わられ、衝動は行動に繋がるに至らない。
女性の絶頂がどういう条件でどうやって発生するのかは分からないが、
このままこの刺激でそこまで至れるというならこのまま由比ヶ浜を昇り詰めさせ、
その後由比ヶ浜の愛液で濡れた右手で自分自身を擦り上げればそれだけで互いに性的な充足が得られるだろう。
そこに苦痛はなく、ただ快感だけを得るだけの結果があり何の問題も挟まない。
それこそが理想の結末と言えるのではないか。
554 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:10:06.25 ID:B9rqdRar0
そんな思考を呼ぶ充足の根底に、怖じ気があることには気付いている。
分かってるんだよ。
「ッ!? ぁ、あぐッ! んぃ、ぎぃ! ぃう、うぁ! ぁ! あッ!」
自分の中の感情を見て見ぬ振りしようと、陰核を淡く摘み連続で擦って反応を大きくさせる
眉を寄せ、ただ快感に耐える由比ヶ浜の顔。
困っているように見えてもそこには悦楽があり、
ここから先に進めば必然的にそれを失わせることになる。
それどころか伴うのは痛みと苦しみだ。
そんな由比ヶ浜の苦痛と引き換えに、俺は陰茎の快楽と童貞を脱したという満足感を得るだろう。
誰より大切な人の苦しませて、得るのは俺自身の幸福?
ここまで誰よりも由比ヶ浜の心を苦しめてきた俺が、今度は身体を傷付けて気持ち良くなろうって?
なんて巫山戯た話だ。
たとえそれが男女関係の過程に必ずぶつかる壁だとしても、そんなものを認めたくない。
避けられない苦しみなら、俺が得るはずの快楽を失ってもそれの肩代わりをしたい。
けれど俺が男で、由比ヶ浜が女である以上その摂理は曲げられない。
555 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:12:43.72 ID:B9rqdRar0
ならば、そこに行き着くまでの代償行為で全て済ませるしかない。
済ませるしかないじゃないか。
幾ら何時間前かに決意したと言っても、
実際吊り橋の前に来て決意が揺らがないかなんて分からない話だ。
俺は結局、二人の幸せの重なる最後の橋の前で動けなくなってしまった。
本当に……言葉なんて、決意なんて、ただ言葉と決意でしかない。
そんなもの、ただの虚だ。
「あ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁあぁああぁ、ぁ……ぁ、ぁぁ……」
ここまでは緩急――中と突起を織り交ざった責めだったが、
今は急に集中したその刺激に由比ヶ浜は耐えられなくなったのだろうか。
全身がヒクヒクと絶え間なく震え始め、口は半開きで涎が垂れている。
喘ぎ声もただ「あ」の大小を連続させるだけ。
天井が近い……のか?
いよいよ逃げ場も選択肢も限られてきて、ならば間違いだとしても進むしかない。
間違いなら間違いでいい、俺自身が決断したことならば。
傷付けない選択肢なんてない。
無意識に浮かび上がってくる何時かの言葉を振り切り、アクセルを限界まで――
「ぁ、ひ、ひっき、ひっきぃ、も、や、やめ、てぇ……と、めて……っ」
――踏み込もうとしたところで、由比ヶ浜が急ブレーキをかけた。
俺にだけ効く、慣性の法則を無視した強力なモノを。
556 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:14:07.61 ID:B9rqdRar0
一瞬だけ思考が真っ白に、言葉の意味を悟って再度真っ青に染まって慌てて指を引き抜いた。
「くひッ!」
引き抜きにも刺激が伴ったのだろう、由比ヶ浜は身体をビクリ震わせると鋭く息を吐く。
が、それを気に留める暇なんて無い。
「ど、どうした!? なな、なんかやらかしたか、俺!?」
ここで予想される最悪の状況、
由比ヶ浜の陰部への愛撫自体が快楽ではなく苦痛を伴っていた可能性。
だとすれば最悪にも程がある。
気持ち良くさせるつもりが実際は苦しめていただけで、
そもそも快楽の有無を判断していたのがただ俺の主観だけでしかなかったというのは、
元々ストップ安だった自分の株価の1050年地下行き待ったなし。これはもう死ぬしかない。
○ぬとかしぬ、氏ぬじゃない、本当に死ぬしかない。
最悪ってレベルを超えて本当に犯罪の領域、強姦と同じようなもんだ。
俺が、由比ヶ浜を強姦する、とか。
その場で射殺されて、否、苛烈な拷問の末に殺されたって当たり前で……。
「ち、ちがう、の、きもち、よくって、ほんとうに……へんに、なっちゃいそう、だったから」
しかし肩を上下させて荒く息を吐く由比ヶ浜は、呂律の回らない舌でそう言ってくれる。
あ、そうなの、一安心……どころじゃねぇ、嬉しい。嬉しすぎる。
へんって。
変ってそれ、実際もう天井寸前だったってことじゃ。
557 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:15:32.77 ID:B9rqdRar0
「そ、そう……じゃあ、続き」
「え、あ、だか、ら、とめない、と……まだ、つぎ、あるし」
だが、俺の満足感か葛藤など知ったことかと由比ヶ浜は現実を突きつけてきた。
つぎ。
次。
「……それは、いいから、まずお前を」
それでも、と逃げが口に出る。
熟々自分の臆病さに呆れるが、俺が選んだことならば。
間違いでも、選ばされたんじゃなく、俺が、自分で。
「……ひっきぃ、こわいんでしょ?」
――自分で、選んだ?
嘘を吐け。
怖くて、怖くて、選んだ振りをしていた癖に。
由比ヶ浜は、そんな俺の怖じ気を見抜いていた。
当たり前だ。
家の外、とても寒くて恐ろしい世界の中で俺のことを一番見てきたのは……
俺を一番分かっているのは、彼女だから。
558 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:17:16.67 ID:B9rqdRar0
「そんなこと、ねぇよ」
「そんなこと、あるよ?……だいじょぶ、あたし、だいじょぶだから」
由比ヶ浜は俺の手を、べとべとに濡れた俺の手を両手で淡く握ると胸の前に持ち上げた。
「ひっきぃがやさしいのも、怖がりなのも、あたし、知ってるから」
由比ヶ浜結衣は比企谷八幡のことを一番知っている。
知っているのに、やさしい?
何の冗談だろうか。
「……俺は優しくなんか、ねぇよ。 言ったじゃねぇか、前に」
「ううん、そんな風に思っちゃうところも含めて、ひっきぃはやさしいの……やさしいのと怖がりなのって、一緒だから」
衝撃――は受けなかった。
だが、呂律の回復しつつある由比ヶ浜のその言葉が、
意味が、鼓膜を通して全身に浸透して行った。
優しさと臆病さは、同じ。
559 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:19:11.43 ID:B9rqdRar0
「……あたしね、ずっと、今だってあたし自身はズルくて臆病な酷い子だって思ってる。 でもひっきぃも、ゆきのんも、色んな人があたしのことやさしいって言ってくれて、それはなんでなんだろうって考えたの……それで、ひっきぃとゆきのんのこと思い出して、たぶん、痛いのがつらいってわかってる人が、やさしくなれるんだって。 あたしもつらいのは、怖いから」
俺と雪ノ下と、そして由比ヶ浜。
三者三様、それこそ部活の繋がりがなければ関わり合うことすら無かったろう三人。
そんな三人が何故繋がり、関わり、あんな結末を迎えなければならなかったのか。
それぞれが対極に位置していても、その根底が酷似していたからではないか。
痛みを怖れて逃げ出して、それで行き着いた場所が離れていただけだ。
だから身近になって無視出来なくなった互いの痛みを避けようとして、全員が擦れ違った。
痛みを知るから、それを味わいたくない、味わわせたくないと誰かに優しくなる。
それが間違いなのだとしても。
……そういうことではないのか。
「……ひっきぃがあたしのこと気遣ってくれてるって、わかるよ。 あたしのこと好きだから、痛くさせたくない、怖がらせたくないって……嫌われたくないって思ってくれてるんだよね?」
ズバリ言い当てられる。
痛ませたくない。
苦しめたくない。
……本当は、その先にある嫌悪をこそ何より怖れている。
560 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:21:19.87 ID:B9rqdRar0
離れて欲しくない、一緒に居たい。
だから、間違いでもその思いの下に直進する。してしまう。
結果として、離れるようなことになったとしても。
ママさんの言っていたことを、それこそ心で理解出来た。
一年前、涙ながらに望みを捨てようとした由比ヶ浜のことも。
「でもね、だいじょぶなんだよ。 怖くても、辛くても、痛いのちょうだいって、言ったよ? 今更そんなくらいじゃ、あたしはひっきぃから離れないし、嫌いになったりしない……だからね」
顔はまだ赤く染まって、上下する胸の早さは残った疲労や余韻の大きさを示している。
けれど俺を見上げる彼女の目は、とても綺麗に澄み渡って。
「ヒッキーのを、痛いのを、あたしの一番奥に……ちゃんと、頂戴?」
――果報だ。
俺なんかには、本当に過ぎた幸福で、幸運だ。
由比ヶ浜結衣と知り合えたことが。
由比ヶ浜結衣と想い合えていることが。
今の俺の行動、思考、指針……何もかもの根源になり代わるくらい。
それを怪しいとも、危険だとも考えられないくらいに。
「……分かった。 由比ヶ浜と……本当に、最後まで、するよ」
561 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:23:12.03 ID:B9rqdRar0
「うん」
最後の最後まで促されて導かれて行為に及ぶ情けない俺に、それでも優しく微笑み頷いてくれる。
この想いを、本当に奥の奥まで届けたい。
今は無理でも、奥まで届けた想いでお互いが遜色ない等価の幸せを何時か得られるように。
「じゃ、じゃあ、ゴム、付けるから」
そう言って一旦由比ヶ浜から身体を離すと、ビニール袋の中にある小さな箱を取り出した。
箱を開けると出て来る銀紙の連なった四角。これが近藤さん……。
思春期の男子なら話の弾みに興味本位で買うこともあるだろうが、
ぼっち故に猥談の一つも出来なかった俺には初めて目にする避妊具。
なんか妙に感動。
しかしそれに浸っている暇はない。
幾ら由比ヶ浜を頂点スレスレまで昂ぶらせたと言っても、高まった熱は経過で冷えていくのが必然。
エントロピー増大則、宇宙は熱的死を迎える……で、良いのかどうか。
そもそも俺理系じゃないし、魔法少女を騙す詐欺師からの受け売りみたいなもんだし。
ともあれ一枚を千切って開封すると、濡れてもないのにヌルっとした質感のあるゴムが出てくる。
しかし今度は感動する時間は己に与えず、手早く装着する。
……本当は手早く装着できず手間取りまくって
その後ろ姿を見つめる由比ヶ浜にフフッと笑われてしまったのだが。
恥ずか死。
562 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:24:56.61 ID:B9rqdRar0
そうして再び由比ヶ浜の上に覆い被さる。
薄いゴム一枚纏ってはいるが、今度の俺はパンツも履いていない。
お互い裸で、向かい合っている。
「えと、それじゃあ……」
ゴムに包まれた陰茎の位置を合わせる……のだが。
「あ、あれ?」
何処がそう≠ネのか、見失っている。
流れに任せて始めてしまったから灯りは付いている。
だが由比ヶ浜の陰部に目をやるのは今更ながら照れるし、
由比ヶ浜自身も恥ずかしがりそうなので山勘で何とかしようとするがどうにも。
溢れた淫液でつるつる滑るし、入り口の場所も特定できない。
ヤッベェ滅茶苦茶焦る。さっきのゴムといい俺格好悪過ぎィ!
「ん、ヒッキー……ちょっと、待って」
俺の焦りを見て取ったのか、由比ヶ浜は手を下に伸ばすと、俺のモノを優しく掴んだ。
「うぁ……!」
ゴムの上からとはいえ、予想外の感触に背筋が震える。
しかし由比ヶ浜の手はそれ以上刺激することなく、陰唇まで先端を導いてくれる。
563 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:26:07.15 ID:B9rqdRar0
「んぅッ」
先端の、本当に先っぽの部分だけが入り口に呑まれた。
それだけで由比ヶ浜は喘ぎ、俺もそれだけで感じる熱さに震えた。
「ここ、だよ……」
「あ、す、すまん」
視線を下に向ける体で恥ずかしそうに顔を伏せる由比ヶ浜。
そんな彼女の態度が愛おしく、また己の醜態に恥ずかしくなる俺。
そんなでも、これから始まるのか。
これから俺のモノを由比ヶ浜の奥へと挿し込み入れる。
由比ヶ浜と、セックスを、する。
「――行くぞ」
「うん、来て……」
多分怖いくらいに緊張しているだろう俺の顔。
でも優しく微笑んで迎えてくれる由比ヶ浜。
覚悟なんて今も決まらないけど、もう止まれやしない。
今は苦痛も過程と信じ、後の結果で全てが報われると信じる。
そして錯綜し混じり合う想いはそのままに、腰を押し出した。
564 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:28:24.67 ID:B9rqdRar0
「ンぃッ……!」
由比ヶ浜の顔が歪み、身体が一気に強ばる。
対して突き出し呑み込まれていく俺自身は、その熱さと柔らかさに脊椎から脳髄まで一気に焼かれた。
これが。
これが、由比ヶ浜の、中。
「ぅぐッ! ぃ、ぃいぎ……!」
歯を食いしばる由比ヶ浜の軋みを、それでも気に留められる余裕が無い。
漫画やらで表現されるようなキツさや徹底的に外敵を拒む密閉感は感じず、
その気になれば一息で根本まで、奥まで侵入できそうだった。
だが、熱い。
一枚のスキンを介しているとはいえ、由比ヶ浜の体温を直に感じる。
その温もりを伝えてくる肉に包まれていく。
期待したものと違う、だが想像を超える感触に脳内の何もかもが消し飛んでいく。
これが、これに、全部、包まれたら――。
565 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:30:10.54 ID:B9rqdRar0
「ゆ、いが、はま……ッ!」
我慢なんて出来なかった。
劣情に突き動かされ、腰を突き動かす。
奥の奥まで、一気に。
ぐにゅり
音無き音が、聞こえた気がした。
「ぃい、あ、か、はッ……!」
貫かれた衝撃に、由比ヶ浜の顔は今度こそ苦痛に歪んで息を吐いた。
肺腑の中身を全て吐き出そうとするような短くて強い息。
だが、由比ヶ浜の身体を気遣う思考が安定しない。
根本まで埋まった肉棒が味わうはじめて≠ェ頭も身体も感情も全てを掻き乱している。
「ぅ、う、ぁあ、こ、れ……!」
刺激で言えば、握った方が強い。
生々しさで言えば、口の中が濃い。
だがそれらがただ一瞬や一時の快感でしかないことを思い知った。
感覚の逃げ場がない。
包まれて密着する生暖かくい柔らかさは、こちらの意志や力加減とは無関係に性感を与えてくる。
そして中にある限りその性感は一切外に逃げず、ただ昂ぶり、高まっていくしかない。
このまま動かずにいるだけでもいずれ射精してしまいそうな気すらしてくる。
566 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:32:07.42 ID:B9rqdRar0
そして感じるのは身体の快感だけでなく、心の器も暖かいもので満ちていく。
入っているのは身体のほんの一部だけなのに、
自分の何もかもを受け入れられて包み込まれるような錯覚。
内側から沸き上がって止まらない、郷愁のように胸を突く感傷。
これが交合。
生殖。
由比ヶ浜の、中。
気持ち良くて、嬉しくて、温かくて、申し訳無くて、乱れに乱れた内側は更に混沌を極めていく。
ああ。
なにか。
なにかが、あふれて――。
「ひ、っきぃ……?」
暴走する何かに文字通り我を忘れていた自分を現実に引き戻したのは由比ヶ浜。
その声色には色濃い戸惑いがあった。
「……どうして、泣いてるの?」
567 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:33:03.87 ID:B9rqdRar0
「え……?」
泣いている、誰が?
由比ヶ浜のことじゃないのか。
現に彼女の目尻には苦痛に耐えた結果か、大粒の水滴が浮いている。
だがそうじゃなくて、俺?
俺が、何故?
指を伸ばして自分の頬に触れる。
温かい。
温かい湿り。
ああ、本当に泣いている。
「え……? 俺、お、れ……?」
乱れていた意識と感覚がハッキリとして、ここで改めて自分が泣いていることに気が付いた。
そしてそれが崩れかけた堤防を切るスイッチで、後はもう止めどなく涙が溢れてきた。
掻き乱された胸中が痛みで纏まり、その痛みが更なる落涙を誘発する。
……バッカじゃねーの、俺。
568 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:34:17.31 ID:B9rqdRar0
「ど、したの、ぅく、ひっきぃ……あたしの、変だった? い、たい、の?」
今泣いたりしたら、由比ヶ浜はこんな風に言うって分かってる筈だろうに。
由比ヶ浜の顔を歪ませている原因はただ破瓜の痛みだけじゃない、
己の不手際・不能を自分で責めている。
「痛くなんか、ねぇよ……気持ち良すぎて、どうにかなっちまいそうなくらい、いい……ッ」
由比ヶ浜の心配を止めたい一心でのフォローだが、嘘じゃない。本当にどうにかなりそうだ。
……どうにかなった結果がキモさ爆発の泣き顔ってわけかよ、笑えねぇ。
そもそも泣きたいのは痛みしか感じていないだろう由比ヶ浜の方で、
この上ない快楽を享受している俺の方が泣き出すとか、何なんだ。
「じゃあ、なんッ、で、泣いて……」
なんで、なんでだ。
まるで自然と溢れ出るように流れ落ちた涙の源泉は何処だ。
それを探る為に心の中に潜って、直ぐ原因は見つかった。
何のことはない、何時だって強く深く感じていたことだ。
569 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:36:14.55 ID:B9rqdRar0
「……俺、お前とこんな風になれるなんて、想像もしてなかった」
ぽつり、零し始める。
熟考の後に整然と語り始めるものでなく、衝動に駆られた行き当たりばったりの放言。
ただ感じたまま思ったままが声帯を通して出力されていく。止まらない。
「前は専業主夫になりたいって割とマジで考えてたけど、それは将来の生活の為であって、主夫として愛する誰かを支えたい……家を守りたいなんて思ってもなかった」
それは結局傷付かず生きていく為の方便。
温かな閉所に籠もって外界との接触を必要最低限まで断てば楽に生きられる。
それは一片の真実で、今でも否定しようのない魅力的な選択肢だ。
だがそれは合理的であっても感情の一切を慮外に置いた愚考で、それが今なら分かる。
如何にも堪えがたい痛みと、何にも代え難い温もりがそれを証明している。
「だから主夫として認められても愛情とか、ましてやセックスなんて望むべくもなくて……こんな俺が今更誰かの愛情なんて得られないし、こんな俺の愛情なんて迷惑なだけ、だから専業主夫とか言って真っ当になれない理由だけ探して、それで」
人はパンのみにて生くる者に非ず。
伝わる言葉の意味は誤用であっても、それもまた真理だ。
生きていれば誰だって腹は減り、それが身体の不足と言うなら同様に心も飢える。
それぞれの充足が互いの助力となっても根本の隙間が埋まるわけじゃない。
専業主夫という義務のみを果たすだけだった俺の指針は、それを意識していただろうか?
腹さえ満ちれば心は餓えても良い、そんな覚悟をしていただろうか?
……あり得るか、愚か者め。
570 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:37:57.35 ID:B9rqdRar0
「それでも……お前と、お前に、こうやって迎えられて、俺の、全部ッ、受け入れられて……あったかいって、気持ちいいって、それで、む、むねの中、ぐちゃぐちゃに、もう、わけわかんねぇ……と、止まんねぇよ、もう……!」
剥き出しの芯を守っていた理屈の囲いはボロボロで、
中を満たしていた汚水は残らず蒸発した。
洗いざらいを吐き出して、残るのは裸の心。
どこまでもどこまでも、ひたすら弱い魂の恥部だけ。
身体は粘膜の快楽に、心は受容の暖かさに包まれてただただ悲鳴を上げる。
今の自分が嬉しいのか、悲しいのかすら分からず、ただ情動に任せて泣くしかなかった。
格好悪い、情けない、みっともない。
彼女との初体験で泣き出す男とか何なんだ。
たとえ見せかけだけだとしも、
誠意を示し安心させなければならない立場の筈だ、俺は。
本当に惨めで、こんな、こんな男が、由比ヶ浜を、その純潔を、本当に――。
「ひっきぃ」
不意に、引き寄せられた。
涙に濡れた顔面が柔らかいものに包まれ、由比ヶ浜に抱き寄せられたことに気付いた。
571 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:38:58.09 ID:B9rqdRar0
「ッッ!!!」
体勢の変位は必然的に密着した互いの粘膜が擦過することを意味して、
新たな刺激に俺も由比ヶ浜も悶絶した。
それぞれ出所は正反対なのだが。
身を走る感覚の余韻を抑え付けながら、胸に埋められた顔を上げて由比ヶ浜を見やる。
「――いいんだよ、ひっきぃ」
彼女も、泣いていた。
だがそれでも微笑んでいた。
「弱いとこ、ちゃんと見せてくれた……それでいいんだよ、それがいいの」
そして放たれた言葉が、感謝が、俺の剥き身の心を包み込んだ。
「……なんだよ、男の情けないとこ見る趣味でもあんのかよ、お前」
「そんなんじゃないよ……あたしね、今すごくうれしいんだ。 身体も心も、ひっきぃとピッタリくっついてるの、感じられたから……あたしがひっきぃのいちばん近くにいるの、わかったから」
そうして微笑みは笑みに、彼女はえへへと何時ものように笑って見せた。
眉は涙と苦痛の余波で八の字に歪み、瞳から涙を零しても、
何時もの日溜まりがそこにはあった。
誰もが欲して止まない、人の心の太陽が。
572 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:40:57.12 ID:B9rqdRar0
「ひっきぃはいつも強がって、痛くないように、傷付けないように、一人でいて……あたしじゃ隣にはいられないって思ってたこともあって、だから、うれしいよ」
「……違う、過大評価だ。 俺は、そんな」
「違わないよ。 隣にはいられなくても、ひっきぃの優しさだけは、誰よりもわかってるつもりで……ずっと、ずっと見てたから、だから、だからね……?」
それ以上は言葉にならないのか、由比ヶ浜は両手で顔を鼻まで覆って嗚咽を漏らし始めた。
俺は誰よりも自分を客観し、理解して進んできたつもりだった。
けれど人間、本当は自分のことだって碌に分からない。
そうでなきゃ医者の苦労なんて今ほどではないし、
誤解による擦れ違いだってもっと少なくなる筈だ。
卑屈で逃げ腰な俺を、彼女は優しいと言う。
弱くてズルいと己を評する彼女を、俺は優しいと感じている。
誰よりも分かっているから大切な人なのか。
大切な人だから誰よりも分かっていたいのか。
そこに答えはないが、それでいい。
今こうして繋がって互いが涙を流すほどの喜びを、嬉しさを感じているということ。
それだけが結果で、真実だから。
573 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:43:01.12 ID:B9rqdRar0
「由比ヶ……ゆ、結衣……俺も、俺のほうこそ、ありがとう……受け入れてくれ、好きになってくれて……」
ここで本当にプライドも羞恥心も捨て去った。
もう距離感など知ったことかと、本当に何も挟まず密着したいと、
衝動のままに呼び名を変えた。
もっと、もっと、近づきたい。
裸になってくっつくだけじゃ足りない。
身も心も全て合わせて混ぜ込んで、一つになってしまうくらいに近く。
「あ、な、なまえ……ひっきぃっ……!」
それを受けた由比ヶ浜……否、結衣は手を外して、
更に涙を溢れさせて俺に抱きついてきた。
俺もまた結衣の背中に手を回し、
始まったばかりの時のように頬を合わせて密着した。
涙の熱さを感じながら、それこそ性器まで隙間無く触れ合っている。
身体も心も満ちに満ちて、
童貞にありがちな想像妄想でも及ばないような充足が俺の全てを包んだ。
きっと結衣も同じだ。
傍から見れば、涙を流しながら抱き合い交合う男女なんて滑稽なのだろう。
惨めで情けない傷の舐め合いにしか見えないのかもしれない。
だがそんなもの知った事か。
俺達の為の時間と俺達だけの行為に、俺達の満足感以外は一切が不要だ。
この喜悦こそが人の生きる根源であり活力なのだと心から思う。
俺はきっと、今日という日、この時間の為に生まれてきたんだ――。
574 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:44:25.87 ID:B9rqdRar0
暫くは俺も結衣も動かなかった。
涙は止まり、お互いの呼吸音だけが空間に泳いで散っていく。
動きさえしなければ痛みはないのか、
密着した胸から伝わる結衣の心音は落ち着いていた。
対する俺は……さっき感じたとおり、
動かずとも少しずつ絶頂に近づいている実感がある。
だが俺は既にこの場の目的を果たしたような気分になっていて、
いっそ動かぬままイッても良いと思ってしまっている。
どちらにせよ気持ち良くなれるのなら、このままでも……。
「ね、ひっきぃ。 う、動かなくて、いいの?」
しかし由比ヶ浜結衣は正しい選択肢や道筋を見据えている。
頬を離して目を見つめ、おずおずと囁く彼女の声がくすぐったく、
また言葉の示唆するところが嬉しくもある。
だが逆に、やはり俺の選択肢や考えは間違っている。
ここまで来てもより痛ませない過程を経られるなら、
正しくなくともそっちを選びたいと思ってしまう。
「あー、そのな……やっぱり、なるべく、ゆ、結衣を痛がらせたくないな、と」
「うん……ひっきぃの気持ちは嬉しいけど、あたしはちゃんとしてほしいな。 それとも、やっぱりあたしの、その、気持ち良くない?」
「い、いやいや、正直このまま動かないでも出ちまいそうなくらいイイから……だからって、思う、けど」
575 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:46:13.17 ID:B9rqdRar0
そしてそんな俺達だから、こんな時でも食い違うし擦れ違う。
想い合っていても重ならず、同じ形にならない。
「……でも、動いた方が気持ち良いんだよね?」
「えー……多分」
「じゃあ、動いてほしい……ひっきぃがもっともっと気持ち良くなってくれたら嬉しいし、ひっきぃの気持ち良くなるとこ、見たいから」
そして照れて直裁に話せない俺と、
ストレートに欲求をぶつけてくる彼女とでは勝敗は明確。
「……じゃあ、分かった。 イクまで、動くぞ」
これからもこうして俺が最後に折れることで停滞を打破し、進んでいくのだろう。
間違った俺と正しい彼女があちらこちらへ行ったり寄ったりしながら、
それでも最後は真っ直ぐに。
それだってきっと幸福なことなのだ。
「う、うん。 たくさん、気持ち良くなって……ね?」
何処までも俺のことばかり気に掛ける彼女の態度が心苦しく、しかし嬉しくもある。
そんな彼女の言葉に押されるように腰を引き、
「ひぐ……ッ!」
そして、また押し込む。
576 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:48:02.64 ID:B9rqdRar0
「ッッ!!!」
一瞬、視界が歪んだ。
ゴム越しの感触だというのに、たった一度のグラインドで
溶けかけていた俺の肉棒を完全に溶解させた。
そう錯覚するほどの性感だった。
結衣は一層強く、耐えるように俺の背中にしがみついていた。
声に苦痛が混じるのが避けられないからか、
唇をきゅっと結んで息一つ漏らすまいとしている。
しかし対照的に荒くなる鼻の呼吸が隠しきれない苦しみを表している。
本当にいじらしい。
完全には隠し通せていないところがまた庇護欲をくすぐる。
満ち足りていたはずの心の器が、中から沸騰して荒れ出すのを感じた。
そうして動きは単発から脱し、ピストンへ移る。
ぬち、ぬちゅ、ぬちゅ、ぬちゃ、ぬち、ぬち
接合部から擦れる度に粘着質な水気を含んだ音を聞く。
「んッ! んッ! んッ! んぅッ! んッ!」
動く度に、口中で消しきれない結衣の喘ぎが低く伝わってくる。
動く度に、擦れ合う結衣の膣壁と逸物の境界が分からなくなっていく。
577 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:50:02.13 ID:B9rqdRar0
手淫や口淫と違って、性的な刺激の先に絶頂があるんじゃない。
中にあること自体が性的な刺激で、動くのはただただ射精に至る為だけの儀式だ。
肉棒は精液を吐き出す為の器官で、膣は精液を搾り取る為の器官だと今更ながら確信する。
結衣の方は行為に快楽の伴っていないからそれもまだ一方的でしかない。
だがそれでも今のこの快楽の享受を我慢することなど出来ない。
後はただ結衣の苦痛が少しでも小さく、また早く終わるように。
心は少しでも早く彼女がこの行為で快楽を得られるよう祈り、
身体は本能の赴くまま腰を動かした。
「んぃッ、んくッ! んぅぅッ!」
耳朶から脳を侵していくような低い喘ぎに蕩けながら、
あっという間に昇り詰めていく下半身を意識する。
元々長く中に留まっていたことで昂ぶっていた性感は
動きを得たことであっという間に高まっていく。
もう長くは保たない、後何往復かで絶頂に至る。
気持ち良い。
気持ち良すぎる。
かつてない快感に逸る心は、
行き着くべきゴールを視認すると速度を限界まで上げた。
578 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:52:00.38 ID:B9rqdRar0
もっともっと気持ち良くなりたい。
出したい。
たくさん、出したい。
「ゆ、結衣っ! ゆいッ! も、で、出る、でる、イく、いくッ!」
「んぃ、ひっき! ひっきぃッ! い、いって、きもちよく、なって……ッ!」
本当に、最後まで俺のことばかり。
そんな彼女の姿を見せられ聞かせられれば、我慢することも、
また我慢する理由も消えてしまう。
次の瞬間肉棒の肉が消失し、中の管だけが感覚を伝えてきた。
精が、漏れ出る。
579 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:53:30.30 ID:B9rqdRar0
「んぐッ、ぉ……ッ!!」
止めどない呻きと共に白濁を吐き出し始める。
精液が外へと抜け出る度に下半身は力を失い、
荒れ狂う快感に為す術なく蹂躙されていく。
「〜〜〜〜〜〜ッッ!!!」
ゴム越しとはいえ射精の度に震える肉棒の感覚を捉えているのか、
結衣はただ俺にしがみついて震えていた。
結衣にしてもらった手淫も、口淫でも、その時の快楽や放出の長さは既知の外だった。
だが今回はそれらと比較しても尚……、
或いは比較なんぞ出来ないほどに脳を焼かれているのか。
走馬燈のように巡る思考や記憶の嵐、それらに実体を与えない性感の渦。
やがてそれらも収まり、残ったのは呼吸を荒くする俺と結衣。
頭と下半身ばかりでなく、上半身すら力を無くしかけていた。
だがまだ、最後にしなければならないことが残っている。
ただ出して終わりなんて勝手過ぎるから、
せめてこの経験の素晴らしさを伝えたかった。
580 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:55:17.87 ID:B9rqdRar0
「ひ、っきぃ……あたし、ちゃんと、できた……?」
だが、ここでも先を取ったのは結衣だった。
それも自分の出来不出来を問う言葉。
ああ本当に、彼女は由比ヶ浜結衣だ。
こんな彼女の処女を貰えて、彼女が俺のはじめて≠フ相手で、本当に良かった。
「ゆ、ゆい……すっげぇ、気持ちよかった」
だから、せめてもの報いにとストレートに伝える。
これが今の彼女に対する最良の返答だと信じて。
「よかった……あたし、ちゃんとできたんだぁ……」
「ああ、だから心配とか、いらねぇから……ありがとな」
「ううん、あたしのほうこそ、ありがと、ひっきぃ……」
互いに感謝を応酬して目を見合わせると、どちらともなく破顔した。
そして自然と顔が近づき、口づけを交わした。
舌は絡ませない、ただ触れるだけを長く、長く。
581 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:56:28.50 ID:B9rqdRar0
一つの盛りと流れが切れると心身の溢れんばかりの充足は終わりを告げ、
しかし唇を通して伝わる温もりが虚脱した心身に一つの実感を与えてくれた。
大それた、中二病のそれにも近いような勘違い。
「今の自分達は、世界で最も幸せな二人だ」と。
582 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/19(土) 22:58:47.00 ID:B9rqdRar0
以上で本日の投下は終了です。
投下しながら「流石に長くし過ぎたか」と反省してました。
次回で三話は終了です。
何とか年内に投下出来たら、と思ってます。
お付き合い有り難う御座いました。
583 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/12/19(土) 23:10:41.91 ID:mOi/0LNuo
これは公式のアンソロジーにしてもいいレベル
乙でした
584 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/12/19(土) 23:16:47.41 ID:NC8dDblto
乙
585 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/12/19(土) 23:17:19.32 ID:vPZkBu8so
乙
凄く良かった
586 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/12/19(土) 23:19:19.50 ID:S638qxuDO
乙乙
ガハマさんが聖母すぎてヤバイ
587 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/12/19(土) 23:26:55.61 ID:8GUIhwxwo
乙です!
588 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/12/20(日) 00:13:51.59 ID:iFEI4lK50
乙
待ってた甲斐があった
589 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/12/20(日) 00:39:27.91 ID:Qd9Ue8Qw0
乙です!
590 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/12/20(日) 19:24:54.19 ID:0C/jSU6vO
乙です
591 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/12/21(月) 08:57:21.95 ID:Sjn1Wjbeo
すき
592 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/12/23(水) 16:20:45.53 ID:2WBYBHo/0
ようやく追いついた。乙
593 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/12/28(月) 20:25:44.76 ID:ND36cw5Z0
はよ……続きはよ……
594 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/12/29(火) 07:36:11.68 ID:QQX2gPcdo
どうも
>>1
です、年末進行に忙殺されて進行が大分滞っております申し訳ありません
決してナルメアとSSR仁奈引いたのが嬉しくなってタブレットを手放せなくなっていたわけでは以下略
今日から休みなので今年の残り三日でなんとか三話エピローグを完成させようと思ってます
間に合わなくとも三が日でなんとか……というわけで期待せずお待ち下さい
595 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/12/29(火) 09:50:44.85 ID:nRUoSBdwo
年末進行ほと予定を狂わすものもないから気にするな
596 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/12/31(木) 18:11:29.57 ID:C5iodEB8o
このタイミングでグレンラガン無料配信とか殺す気なの?どうも
>>1
です
なんとか書き上げこれから推敲です……きっと年内には間に合います、多分
出来れば22時には投下したいとこですが、期待せずお待ち下さい
597 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/12/31(木) 18:34:23.17 ID:Q6nUctmro
期待
598 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/12/31(木) 22:17:21.41 ID:C5iodEB80
どうも
>>1
です。三話エピローグ投下します。
今回は流石に短めです。
ではどうぞ。
599 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/31(木) 22:19:32.67 ID:C5iodEB80
ホテルを出たら既に宵闇……なんてことはなく、
沈みかけの夕日が目肌を刺してクラッとした。
夕暮れ、黄昏。
カラスが鳴いたら帰ろうという、一抹の寂しさを匂わせる僅かな一時。
淡く胸を締め付けるような橙色の光の中を由比ヶ浜と並んで歩いている。
ホテルを出る前、事が済んだらシャワー浴びて時間ギリギリまでこう、イチャイチャしていた。
手を握ったり、頬や唇を合わせたり、撫でたり、撫でられたり、
具体的な性刺激以外のスキンシップは軒並みやったと思う。
睦言も吐けるだけ吐いた。
もう唾液が水飴の如く、乾燥させたらサッカリンにでもなりそうなくらい甘々。
冗談抜きにこれまでの人生で口にした以上の回数「好き」「愛してる」を伝えた。
暖かで、甘やかで、何にも代え難く満ち足りた時間だった。
しかし大切な時間は何時だって早く過ぎ去って、
ホテル――部屋を出た瞬間から魔法は解けてしまった。
そうして夢から醒めた俺の内側は一つの感情に支配されている。
600 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/31(木) 22:21:08.65 ID:C5iodEB80
恥。
恥。恥。
恥恥恥。
恥恥恥恥恥恥恥恥恥恥恥恥恥恥恥。
羞恥羞恥羞恥羞恥羞恥羞恥羞恥恥辱羞恥羞恥羞恥羞恥。
……かように、赤字の弾幕で俺の脳内は埋め尽くされた。
いやだって俺だよ?
比企谷八幡だよ?
女々しさと切なさと心弱さに定評のあるダメ男クズ男の千葉代表だよ?
その俺が好きとか愛してるとか裸で抱き合ったりとか、
あまつさえ脱童貞の感動で噎び泣いたんだよ?
恥。
恥。恥。
恥恥恥。
恥ずか死。
これは恥ずか死ぬ。
要は皮一枚、羞恥によっても人は死ぬのだ。
七丁歩いたらモツが飛び出す勢い。
それだけでなく、こうして二人並んで歩く妙齢の男女、
周囲からは間違いなくカップルと思われているだろう。それがかなりキツい。
一部ではあらあらまぁまぁと微笑ましく、
大部分ではあんなナリ(男の方だけ)でカップルとかプッwwwと嗤われ、
陰からは爆発しろ爆散しろと大量にして強力無比な呪詛を向けられているだろう。
勘違いなんかじゃない、そうだ、そうに決まってる!
窓に!窓に!
601 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/31(木) 22:23:22.41 ID:C5iodEB80
睦み合いの光景が僅かでも脳内でフラッシュバックする度、
俺はまたとんでもないことをやらかして、現在進行系でやらかしているのだと、
俺以外の全員にそれが分かっているのだと、
四方から精神の鉛玉をしこたまブチ込まれている気分だった。
よって部屋……はともかくホテル出た瞬間から由比ヶ浜とは一言も喋れていない。
こんな状態で口聞いたらどんなキモどもりや勘違い発言が飛び出すか分かったもんじゃないし。
そして部屋から出た途端に呼び方が下の名前から
上の名前に戻ったことも既に隣の彼女から突っ込まれている。
なんか「むぅ」って膨れちゃったけど。そういうのスゲェ可愛かったけど。
ともあれ愛の城は魔法の城。外に出れば結界の影響は消えてしまう。
賢者とは魔法使いの行き着く先ではなく、
魔法の世界を抜け出て現実を見据えてしまった者のことを言うのだと実感した。
発射した後の冷静さで世界平和とか考えても長続きしないんだよなぁ。
だが今の俺は賢者ではない。
脳も心臓も現実の負荷ですっかり参ってしまっているが、ただ一つ魔法の解けていない部分があった。
俺の右手と由比ヶ浜の左手。
俺達の手は、指は、何を言うでも示すでもなく自然と繋がっていた。
互いの握力が互いの手をホールドして離さない。
ホテルを出る前からずっと、俺達の手は指一本一本を組み合わせた恋人繋ぎのまま。
602 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/31(木) 22:25:01.83 ID:C5iodEB80
それこそ脳は数時間、数十分前の己の痴態を思い出しては発狂し、
周囲の視線を意識しては悪い意味で心臓は跳ねに跳ねた。
それでも繋がったままの手は言うことを聞かない……否、離そうだなんて思いもしない。
この人の手を離さない。僕の魂ごと離してしまう気がするから
昔そんなキャッチフレーズのゲームがあって、正にそんな気持ちだ、
組み合わさって、互いの異なる体温が一つになっている。
今こうして、かつての俺なら一人逃げ出していただろう羞恥から
逃げずにいられるのはこの温もりを失いたくないからだ。
どれだけ歪でも、一度手に入ってしまった物を失わない為に人は間違いを繰り返す。
そんな一般的な情の維持を欺瞞と見下し、
また同じような状況に置かれては誤りに誤った俺が、また失うことを怖れている。
人の出会いは一期一会
本物の繋がりは意識しなくとも続いていくし、そうでない偽物なら維持する必要は無い
今は、そんな風には到底考えられない。
どんな関係も、維持しようとしなければ続いていかない。
それを痛い程に思い知ったから。
放って置いても深まっていくのなんて借金か重病くらいのもんだ。
603 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/31(木) 22:26:49.24 ID:C5iodEB80
チラと横を見やる。
チラとこちらを見つめていた由比ヶ浜と視線がかち合い、急いで目を反らす。
二人同時に、逆方向に。
由比ヶ浜の方もさっきからずっとこの調子だ。
魔法が解けたのは同じだったのか、ホテルを出てからこっち由比ヶ浜も黙り込んだまま。
でも繋がった手から前向きな感情や気持ちが伝わってくるようで気まずくはない。
少しでも力を緩めると、その分を埋めるかのように向こうの握力が強まるくらいだ。
恥ずかしいが、嬉しい。
手を繋いだままどこまでも、永遠にでも歩いていたいと思う。
だが今俺達が向かう先は由比ヶ浜の家で、手に残った僅かな魔法を消し去りに行くのだ。
始まったものは何時か終わる、だが俺達の関係が一時だけってわけじゃない。
それでもあの時間と明確な断絶を作ってしまうことが惜しかった。
604 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/31(木) 22:28:13.75 ID:C5iodEB80
何時までも今日であって欲しかった。
何時までもあの部屋の中にいたかった。
何時までもこの手を繋いでいたかった。
でも、終わってしまう。
これから由比ヶ浜と俺が歩んでいくということは、
こうした喪失と向き合い続けるということなのだろうか。
それは幸せな展望なのだろうが、反面とても寒くて寂しいことだと思えてならない。
由比ヶ浜の温もりと隣に在れる幸福を身に受けながらも、
僅か先の時間にそれを失うことを想像しては
今でさえ裡側に残るネガティブな執着が駄々っ子のようにグズり震え始めるのを感じた。
605 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/31(木) 22:30:14.61 ID:C5iodEB80
不意に由比ヶ浜が足を止めた。
見渡せばそこには見覚えがある。
二年前の夏、浴衣の由比ヶ浜と並んで歩いた道だ。
その後の記憶と比べればまだ小さく淡いものだが、
それでも由比ヶ浜の気持ちから逃げた思い出は心臓の棘を軋ませた。
「……ここまででいいから」
由比ヶ浜は小さくそう告げる。
それは魔法を解かす最後の合言葉。
この一言で俺達は切り離され、特別な時間は終わってまた日常が戻ってくる。
かつてはそういう特別さを不運不幸と割切っては身を伏せてやり過ごし、
戻ってくる日常だけを頼りに生きていた。
けれど今は足が止まる。
進めない、進みたくない。
特別な時間は何時までも特別で、終わらないが故に特別なのだと信じたかった。
どうしてもそんな気持ちが途切れず、途切れない気持ちは握力を緩めなかった。
606 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/31(木) 22:31:51.25 ID:C5iodEB80
「ここまでで、いいから……だからヒッキー、手を離してよ」
でもそれは、由比ヶ浜も同じ。
「お前こそ離せって。 帰れねぇぞ、それじゃ」
俺の手が離れないように、由比ヶ浜の握力もまた緩まなかった。
「あ、あたしはもう力抜いてるし。 ヒッキーが離さないんじゃん」
「ばっかお前、既に脱力状態だっつの。 お前の方こそ離せよ」
「うわヒッキー久々にキモい! そんなバレバレな嘘であたしの手を、ぎゅ、ぎゅってしてたいんだ!」
「お前も久々にうっぜぇ勘違い女だなおい、女から男でもセクハラって成立すんだぞ? 知ってた?」
「そ、そのくらい知ってるし! 逆セクハラって奴でしょ!?」
「はい浅知恵確定ー、性別問わず性的な接触や交流の強要をセクハラと呼ぶのであって逆って付けるのはジェンダー的には蔑称なんだぞ」
「……べっしょ?」
「そこに引っ掛かるのかよ……」
何時かのような馬鹿馬鹿しいやり取り。
それですらただこの時間を引き延ばすための言い訳なのだろう。
607 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/31(木) 22:33:02.78 ID:C5iodEB80
けれどそんな無理矢理な時間の確保は直ぐに止まる。
蔑称の話題はそこから「う」の字を抜いた俳優の名前に届いた辺りでストップした。
目的の無い会話を続けるには俺の方がその手のスキルに乏しいし。
「……えーと」
それでも由比ヶ浜はどうにか話を続けようと脳を回転させているらしい。
そんな姿が微笑ましく、だからこそここは俺が動かねばならないのだろう。
意を決しその部分の霊体を切り離すが如く、今度こそ手から力を抜いた。
「――え?」
俺の脱力に驚いたらしい由比ヶ浜も力が緩み、
その隙を逃さず由比ヶ浜の手から逃げ出した。
「あ……」
その瞬間、由比ヶ浜の眉は八の字に寄った。
悲しいのか、寂しいのか。
それを見てはまた心臓がギシリと痛む。
608 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/31(木) 22:34:34.18 ID:C5iodEB80
仕方無いことだし、傷付けたわけではないだろう。
でも仕方が無いのに、一時の終わりがこうも胸に穴を空けるなんて。
お互い随分手汗をかいたのだろう、
ほんの僅かなそよ風で残った温もりが急速に失われていくのを感じた。
きっとこの未練は正しい。
誰かを大切に、また誰かから大切にされていることの何よりの証明だから。
でもそれで足踏みを続けることはきっと正しくない。
だから切り離すのはあくまで俺の役目……なのに。
「えー、その」
何も出てこない。
さっきみたいな脊髄反射の軽口でいいのに、何か言わなければいけないのに。
このまま黙って別れてそれでどうにかなる浅い絆じゃないけれど、
それでも何か残さなければいけなかった。
義務感なのだろうか。
そうして俯いて何分か、ひょっとしたら数十分。
大切な言葉を残そうと果てなく言語野の粘土を捏ねくり回して、
まだ形が定まらない。
あれこれ悩んでいる内に由比ヶ浜が、
「えと、じゃあ、あたしもう……」
そう切り出してくる。
609 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/31(木) 22:36:03.89 ID:C5iodEB80
「あ、いや、ちょっと」
過剰に熱を放出していた脳が焦って更に発熱し始める。
そうなれば余計に粘土は柔らかく、寧ろ解けて液状になりつつあった。
ああ、どうすればいい。
何か、何か言え。
大切なんだ、大切なモノを残さなければ。
大切なのモノがそんな直ぐに出てくるか馬鹿め。
何分も考えてそれかよ情けない。
数分とか一瞬に決まってるだろいい加減にしろ。
とうとう思考は内側で仲違いを始め、
由比ヶ浜はそんな俺のことを知ってか知らずか今度こそ言い切ってしまう。
「あたしもう、行かなきゃ」
寂しげな顔は、別に俺を責めたわけでも俺がやらかしたせいでもない。
ただ俺は高望みして、何か綺麗な締めをこの場に用意したかっただけだ。
でも、残したいんだ。
特別な時間が終わる、それが避けられないならせめて特別な終わり方が欲しい。
ここまで情けなく格好悪い俺でも、そのくらいの欲や贅沢があってもいいじゃないか。
610 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/31(木) 22:37:20.70 ID:C5iodEB80
でも、何を言おう。何を残そう。
特別な重さを持った、責任ある言葉。
しかしその重さに足を取られて動けなくなったのが今の俺だ。
逃げに逃げ続けた俺の心にここ一番で発揮する馬力なんてありはしない。
……だったら、責任を放り投げるしかない。
「ゆ、由比ヶ浜!」
もう背を向けようとしていた由比ヶ浜に向けて、必死に呼びかける。
でも上擦って裏返りかけてた。うわ俺キモッ!
しかしそれを咎めるようなことはなく、由比ヶ浜は再び俺と向き直ってくれる。
「な、何? ヒッキー」
こんなキモい俺がこれから何を言おう。
大切な時間を締めくくる重石を放棄して、チャラくていい加減な言葉を残すのか。
俺だから?
仕方無いから?
ああでも、何もないなら、そのくらいなら――。
611 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/31(木) 22:38:23.74 ID:C5iodEB80
「えと、何だ、その」
軽くて、チャラくて、無責任。
でも大切な言葉。
次へ繋げるための。
次。
未来。
明日
「……また、明日な」
612 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/12/31(木) 22:40:19.56 ID:C5iodEB80
自然と口に出たのは、それだった。
受け取った由比ヶ浜は瞬間目を見開き、
「――うん! また明日!」
その顔も一瞬で華になった。
あまりに濃密な一日だったから忘れていたけど、
今日はゴールデンウィークの初日なんだ。
その初日が何処までも突発的なイベントで埋め尽くされていた。
だから、そんな風に放り投げたって何の問題も無いじゃないか。
また突発的な、どんな形になるかも分からない口約束だけど、繋がりさえすればいい。
あやふやなまま続いたって、それでも今日のように大切な時間になっていく……そう信じよう。
どんな形だって今は過程で、その先に幸福な結末はきっと待っている。
「じゃあ帰ったら連絡するわ」
「そだね、あたしも家着いたら超メールするから! あ、電話の方がいい?」
「いや落ち着け、とりあえずお互い帰宅してからな?」
613 :
以下、2016年まであと4683秒。。。
[sage saga]:2015/12/31(木) 22:41:57.90 ID:C5iodEB80
何時ものようにはしゃぎ回る由比ヶ浜を見ると、
さっきまでの重圧や疲労が嘘のように吹き飛んで行く。
言って良かった。
無責任でも、動けて良かった。
「そんじゃ俺も帰るわ……また、明日」
「また明日ね、ヒッキー」
繋げよう。
繋げ続けよう。
それが俺のやるべきことなんだと、心から思う。
背中を向けて家を目指し、でもことある毎に振り返って手を振ってくる由比ヶ浜を
呆れ半分嬉しさ半分で見つめながら、終わる今日への寂寥が鳴りを潜めているのに気が付いた。
さっきまでグズっていた胸中のネガい子供は、はにかむように笑っていた。
「……帰るか」
由比ヶ浜の姿が見えなくなってから俺も踵を返す。
614 :
以下、2016年まであと4607秒。。。
[sage saga]:2015/12/31(木) 22:43:13.01 ID:C5iodEB80
もう夕暮れの気配は消え去り、辺りはすっかり夜。
しかし夜空には雲一つ無く、黒よりも透き通って広がる濃紺が全天を埋め尽くすようだった。
ポケットに手を突っ込みながら、見るとも無しに上空を見上げる。
――良い夜だ。
何を思うでもなく、自然そんな言葉が脳裏に浮かんだ。
中二病を患っていた頃の苦い記憶が蘇ってきそうなものだが、痛々しさは感じない。
綺麗な夜空だって、そう思っただけだ。
その夜空と同じように澄み渡っていく心を感じながら、
今までにない軽い足取りで駅へ向かっていく。
明日もきっと、良い日と良い夜になるだろう。
そう信じている。
615 :
以下、2016年まであと4474秒。。。
[sage saga]:2015/12/31(木) 22:45:26.01 ID:C5iodEB80
が、それでも一日が綺麗に締まらないのはやっぱり俺。
帰宅した俺を待っていたのはゴシップに餓えた両親と小悪魔な妹で、
俺の帰宅を待ちきれなかったのか由比ヶ浜が小町に送ったメールの文面を巡って
夜も遅くまで舌戦・烈戦・超激戦を繰り広げ、
何十通と待ちぼうけのメールを送ってきた由比ヶ浜に気付かず家族をあしらい疲弊した俺は
激おこな由比ヶ浜に電話で深夜まで謝り倒したのだった。
やっぱ俺の人生ってクソだわ。
616 :
以下、2016年まであと4155秒。。。
[sage saga]:2015/12/31(木) 22:50:46.14 ID:C5iodEB80
これにて第三話、また今年の投下は終了となります。
次回から始まる第二部・性春激闘編をお楽しみに。
嘘です。でも第二部に入る予定です。
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