【R-18】由比ヶ浜結衣はレベルが上がりやすい

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745 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/06/21(火) 00:09:08.58 ID:W7yU71Kbo
ベタ褒めやな笑
>>744のためにも頑張って完結させてくれ
746 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/06/29(水) 23:37:00.59 ID:oioWfhV3o
まだかーー
747 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/03(日) 21:04:19.63 ID:cZ4u6SFpo
我らエムラクール、つまりお前らもエムラクール、どうも>>1です

もう少しとか言いつつ二週間以上お待たせしてしまいすみません
一先ず今日明日で推敲含めて終わりそうなので、明日の夜に投下予定です
期待せずお待ち下さい
748 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/03(日) 21:17:52.22 ID:cZ4u6SFpo
>>744
何か色々と、恐縮です

このSSの投下と同日にエラい作品が始まってしまった、こっち空気じゃん!と戦慄したのも懐かしい
尊敬する作者様に凄いと言われて嬉しくはありますが、自分はただ漫然と書き散らしてるだけですし
原作の文体をリスペクトしつつ、キャラクターの心に優しく寄り添うようなあの展開はとても真似出来ません
嫉妬と言うなら自分も「何故あの作者のように出来ない!」と心中頭を抱えたのは一度や二度ではありませんでした
二次創作と言えど、貴方のような作者、生み出す作品に出会えたことは読者としても作者としても幸運幸福の極み
そしてそんな方に羨望の声をかけられたことはこれ以上ない誇りとして心に残るでしょう

これからは文字通り活動のフィールドが変わるようですが、変わった先でのご活躍、またその作品に出会えることを今から祈っております



某SSの最後のエアマスターネタ、突っ込んだの実は自分でした
749 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/05(火) 18:16:16.01 ID:zENMgwl/o
どうも>>1です、昨日は寝落ちてましたすみません

突発的ですが今から投下します
750 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:18:15.97 ID:zENMgwl/0



かくして俺と結衣の二度目の交合いが始まったわけだが。

「んぃッ! んぅ……くぅ、ぅああ、あぁあ……」

――蕩けたのは外殻だけに留まらず、侵食は一筋に非ず。

「あッ、あっあっあっ、ひっきぃっ! それ、へ、へんに、なるっ、なるからぁ……!」

自分が上手だなんて思ってない。
童貞卒業したての良いとこレベル2・奮発してこんぼう買っちゃいました勇者がキメラかゴーレム相手に勝てるわけもなく、
前回同様あくまで善戦・及第点を目指して極々慎重に事を進めるつもり……だったら強引に唇奪ったり許可無くおっぱい掴んだりゃしませんよねー。
ともかく、かいしんのいちげき前提にすまいと石橋を叩いて進むつもりだった。

だが、

「ゆ、結衣……気持ち良い、か?」

「う、うんっ! ひっきぃの、ぅ、してくれの……んくっ 全部、ぜんぶ、きもちいい……!」

誰だチートコード入れた奴ァ。
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:20:09.68 ID:zENMgwl/0

事態はあまりに俺に都合が良く戸惑いは隠せないが、結衣の反応は良好すぎるくらいだった。
ブラをズリ下げ直接脂肪の柔らかさや中心の突起に触れると熱い息を吐き、
ショーツの中に指を潜らせると全身を震わせ蜜を漏らした。

八幡君、確かに学校じゃ疎まれ虐げられるポジだったけど
鬱屈と抑圧の果てに催淫術に目覚めたりなんてしてないよ?

確かに前回の結衣の反応も処女とは思えないほど良かった。
いや処女の反応の平均値なんて知るよしもないが、
ただ男の行為に身を固くして耐えるしかないくらいまで想像していた身としては、
彼女の反応は嬉しさと安心感をもたらし……しかし、前回を超える今の痴態は安心すら超えた。

「一緒に、いじるぞ」

そう宣言して、左手と口で両乳首、右手で陰部をまさぐり、舐る。

「――――ッ! あッ、あッ、あぁ、あぁあっ」

三点同時となると流石にどの動きも覚束なくなるが、それでも結衣の震えと熱が正着を知らせてくれる。
乳房に唾液を滲ませ、下着を役に立たたさぬとばかりに諸共濡らす。

……打てば1km先まで響くような彼女の様子に不安を感じないわけではない。
彼女は何処かおかしいのではないか。或いは、そうさせている俺の方が何かおかしいのではないかと。
752 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:22:00.54 ID:zENMgwl/0

だがそれを冷静に考えられる状況ではない。
明け透けに乱れる結衣の様子に反し内で静かに、或いは同じく猛り盛り上がる物がある。
一物のことだけど。

如何に比企谷八幡が未だに思春期拗らせた鶏野郎とはいえ、
本能を司る神経へ過剰な電流が走っている状態でそれでも逃げを打てるほど人間やめちゃいない。
快楽目当てに突き進む情動も、失敗と痛みの予想に竦む臆病も、
ごちゃ混ぜに弾け合ってとっくにコントロール下を離れていた。

本当に、もう、結衣を犯さずには、いられない。

土壇場でストップをかけられても、それこそ殺されなければ止まれないと思えるほどに性欲が肥大化していた。

その勢いのままに告げる。

「結衣、俺……そろそろ、い、いれたい」

我ながらあんまりな言い様。
けれどこれまで自分の欲求すら自身の中で誤魔化していた俺だ、
きっと荒削りな幼さが本質により近いのだろう。

そんな欲望の原石を受け取った結衣は、

「うん……ひっきぃ、あたし、だいじょぶ、だから……」

はふ、はふ、と可愛らしく息を荒げ、


「……いれて、いいよ」

753 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:23:41.18 ID:zENMgwl/0


爆発。

暴発。

頭がカッとなるという経験はある、が、過去のそれらとは比べものにならないほど真紅。

ただあまりに衝撃的な鼓膜の振動は、逆に踏み止まる冷静さを僅かなりとも残してくれた。
戸惑い、嬉しく、生まれた化学反応は爆発と相殺を同時に起こす。

OK、落ち着け俺。
クールに、冷静に、しくじらなきゃ最高の体験が待っている筈だ。
だから、まずは、まずは……。

「じゃ、じゃあ、ぱ、パンツ、脱がせる……脱がせていい?」

「うん……」

さっきはまだ恥ずかしいと言っていたが、レールに乗ってしまえば拒む選択も無し、ということか。
不埒なサークルが酒や空気を過剰に注いで断れなくさせるが如し……いやこの喩えはないな。

酔わせるなら言葉で、気持ちで酔わせて、受け入れさせろ。
今は本気でそう思い、そうありたく願う。

劣情の激流に呑まれながら、結衣の下着に手をかけ下ろしていく。
その際足を上げ腰を浮かせてくれたのが、当然の行為だと分かりつつも嬉しくなった。
754 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:25:06.78 ID:zENMgwl/0

するり、抜き取った黒い下着は秘所の分泌液で濡れてただの布きれよりも僅かに重く、
指先に感じる生暖かさが失われ冷えていくのが妙に惜しかった。

「あ、んッ……」

そうして、仰向けに待つ彼女の下へ……膝を開かせ、自分の身体を割り込ませて密着する。
抱擁と同じような温もりと、結衣の足に挟まれ彼女の身体そのものに包まれる感触。

押し倒し組み敷いた姿勢。

もう彼女は抵抗出来ないという事実の補強。

そして、上気した頬と潤んだ瞳で、ただ俺を見上げて交尾の瞬間を待つしか出来ない愛しい人。

気分の乗った女性はそれはもう柔らかいとか。

結衣が何をされても気持ち良いとか。

今俺は、完全に落ちてる。
堕とされた。
空気と状況と、由比ヶ浜結衣に。
755 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:26:32.16 ID:zENMgwl/0

今この空間、この事象を構成する全ての要素が、ただ俺達の、俺の為にある。
かつて俺を孤独に追い込んだ勘違いとそれらは同質のもの。
だが今は正着か誤答かなんて単なる無粋か臆病と同じだ。

今を真実にする以外に、取るべき行動なんて無い。

乗ったレールに対する疑問なぞ皆無、ただ幸福だけを求めて腰を押し出――

「ひ、っきぃ……」

――そうとした瞬間、声がかかる。

囁くような声でも、何処か重みを持った響きで。
その重さは勢いあってもあまりに軽い俺の自意識に対して強力なブレーキになった。

「な、なんだよ」

何かある、のは分かるが返せる言葉はこんなもんだ。
情けないとは分かっていても、いざ喰らいつく寸前にお預け食うのは流石に辛い。
早く、早く、シたい。
だから早く、早く、言葉を、用事を、済ませてくれ。

「そのまま、するの?」
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:27:55.27 ID:zENMgwl/0

「――当たり前だろ」

何を言い出すかと思えば、この状態からどうしろと言うのだ。
ロマンチックな空気が足りないのか、それともあれで尚前戯が足りないのか。
何を損なっていようと既に止まれる空気じゃないと、もう前提は尽くしたと知れ。
それ以上は傲慢だ。

「あの、ね……あたし、今日、多分、危ない日、なの」

「へ」

あ、そう。ふーん。それで?

確かに近藤さんのセーフ率は100%で無いとは聞くが、それでもその防護の信用性あってこそ
近代の性交渉はコミュニケーションの一つとして成立しているのだろう。
どんなに当たり前の事象だろうと医者や科学者がそう簡単に100%を口に出来ないように、
そんなものは誤差レベルのものでしかないと――

あれ。
ちょっと待て。
757 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:29:22.40 ID:zENMgwl/0


そもそも俺、着けてたっけ?


「……だから、このまましたら、出来ちゃう、かも」

見上げる結衣の顔は不安の色濃く、それでもその裏にあるものを見間違えはしない。

「で、でも、でも、ひっきぃが、そうしたいなら、欲しいなら、それなら、あたし――」

期待と、悦びが、そこには、確かに

「い、いやいやいやいやまてまてまてごめんごめんごめんごめんなさいわすれてましたわすれてましたごめんなさい」

さぁと血の気が引く……のはいい加減何度目だよオイ。
咄嗟に跳び引いてそのまま手と額をベッドに付ける。
ああ、俺のはじめて(土下座)は恋人相手になってしまった……。


758 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:32:12.31 ID:zENMgwl/0



そして暫く。
下手な鉄砲なんとやらの精神で己のミスを埋め尽くし急場を凌いだ。凌げたよね?

興奮で火照っていた結衣は妙な方向の急展開に適応出来きていたか怪しく見えたが、
俺の暴走じみた吶喊と謝罪に一先ず安心したようだ。

それでも惜しむような気配を感じたのは気のせい……ということにしておきたい。

俺の中にも「あのまま気付かなければ」「結衣の言うこと無視してれば」という
危険な欲望と後悔がうじうじ愚痴を繰り返しているのだ。
二度目のブレーキを踏める自信は正直ないから、この思考に拘るのは危険だ。

そしてとにかく無心でゴムを装着し、先程と同じ体勢に俺達はなっている。

「そ、それじゃあ改めて、なんだけど……大丈夫か?」

「うん、だいじょぶだよ。 さっきので緊張ほぐれたし、ありがとヒッキー」

「あ、ハイ……それならよかった」

由比ヶ浜結衣は良いところを見てくれる、褒めてくれる、ありがたい。
……ありがたいがこの場合ちょっとでも責めてもらった方が救われたかもしれない。
俺自傷癖は無いんだけど、こうなったら自分で自分の手首切るしかないじゃん。メンヘラーメンヘラー。
759 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:33:36.74 ID:zENMgwl/0

ともあれ状況は戻った、さっき出来なかった最終確認。

まず自分。ピッチリ覆われる感触は確かにあるが、それでも触って確かめる。
ぬるり、どこか油のような粘質さはコンドーム特有のものだ。確実に装着している。
しかしあんな醜態を晒してた癖にそれでもお堅いままなんだから愚直じゃないか八幡二号。
これは恥じるべきか。

そして次は、

「ぁんッ」

結衣の秘所に再び手をやる。
中までは触れず、入り口をなぞるようにそっと触れたが、彼女の方もまだ濡れている。
男の方も同様だが、生の潤滑油はどうも乾燥し易いようなのでこちらも一安心。
濡れてないまま挿入して痛めつけるなんて論外だし、
そもそも処女だろうと性交で出血というのは逆に危険な兆候だとか。
故にこういうのも最低限の男のマナーだろう。

「じゃあ、その、いくぞ」

「うん、来て」

そして、今度こそ最後の意思確認。
結衣がそうだと言ったように、さっきの失態で俺の方も緊張がほぐれたらしい。
まぁこういうのも怪我の功名だ。そう開き直って位置を直し狙いを定め、

押し出す。
760 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:35:04.70 ID:zENMgwl/0

「んく……ッ!」

押し出した。

包まれる感触、その二度目。
音無く侵入するがその行為が気付かれないわけがなく、
肉壁は蠢動して俺自身を迎え入れる。

まだ二度目だが、変わらず熱く、柔らかく、溜まらない。

「ぉ、う……!」

俺の呻きは無意識。
自身の容量を超えた快楽に理性は反応しきれず、
それはあたかもノイズのように。

「ふっ! うっ!……ん、んんぅ、ぅぅ……!」

受ける結衣も呻き、喘ぐ。
だがこちらは固く、それが快楽に起因するものでないとハッキリ分かる。
761 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:38:04.62 ID:zENMgwl/0

粘膜を、中を抉られる感覚とはどんなものなのだろうか。
口も耳も鼻も、粘膜と言えど外気に晒されることが前提だ。
女性の膣と比べられるものではない。

気遣いたいが、想像が及ばない。
どうすればいいかと言えば行為を止めればいいのだが、
それはそれで互いの心情を無視した勝手な振る舞いになるのだろう。

だから時間はかけず、一先ず落ち着ける地点を目指し、また押し出す。

「ひぐっ、う、うぅうぅぅッ!」

突き出し、進む。
結衣の中は過度な刺激に戦慄きうねる。
それがどうしようもなく俺自身も刺激し、震えながらもやがて到達した。

「ふ、くぅ……!」

ぶつかるような感触は無いが、根本まで入り込み密着した身体が限界を証明している。
深奥までの交合を実感すると思わず息が漏れた。

「ふぅ、ふぅ、ふぅぅ……!」

結衣も呼吸荒く、しかし落ち着こうと必死になっている。
その様子から悦楽を見出すことは出来ないが、
それでも不快感を口にはせず己を律しようとする姿はいじましく、
愛しさと罪悪感で刺さった棘ごと胸が軋んだ。
762 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:39:09.06 ID:zENMgwl/0

「は、入ってる、よ、な……?」

「うん、うんっ、はいって、るっ、はいってるよぉ……!」

この上なく交合の感触を味わっている癖に、間抜けな感想しか出てこない自分の口舌が恨めしい。
ともすれば結衣の女性器を貶めたようにすら受け取れる言葉だったが、
俺以上に挿入の実感を得ているだろう結衣は息も絶え絶えにありのままの事実をただ口にする。

言葉は耳朶を通じて脳の奥底へ届き性交の実感に輪郭を与え、
脊椎は上から下から染み込んでくる快感と幸福感で壊れそうなほど電流が交錯した。

まだ、入っただけ、なのに。

初めてじゃないのに。

セックスってのは、何処まで。

どこ、まで。

「ゆ、い……!」

思考は上手く働かないし、身体は直ぐにでも暴発しそう。
そんな行き場のない衝動を誤魔化すように結衣を抱き締める。
763 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:40:28.48 ID:zENMgwl/0

「んぃ、ひっきぃ……」

柔らかくて、暖かくて、甘くて美味しい、彼女の身体。
抱擁で心は僅かに落ち着き、抱き返されると新たに生まれる肉の震えで身体の方は余計落ち着かない。

密着し形を変える乳房は呼吸の上下で微妙に感触を変える。
挿入したとはいえ、彼女の反応それだけで全ては変化し劣情は煽られた。
それでも暴走まで身体が振り切れないのは、
先程の失態から彼女に対する負い目が錨となっているから……だと思う。

頬を寄せ合い、そのまま暫しもどかしい停滞を抱えて悶々としていたが、

「ひっきぃ……気持ち、良い?」

耳元で、ぼそり。


ぞわ


「ひっ」

不意打ちのような囁きが鼓膜を貫き直接脳のパルスへと変換される。
意図せぬ信号は存分に脊髄を刺激し、身体が一物ごとガタと震えた。

「んぐッ」

その振動をもろに受けて結衣は喘ぐ。
甘い響きなんてない、固い呻き。
764 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:42:33.37 ID:zENMgwl/0

「わ、わり、痛かった、よな」

「う、ううん、へーき、だよ」

同じく不意でもこちらは快楽、相手は苦痛。
あまりに一方的な関係性は「こうあってはならない」という先日の決意を嘲笑うよう。
顔を上げ結衣の顔を見つめれば、いじらしく耐える愛らしさがやり場のない後悔を生み、
その黒い水を吸って棘は杭へ、心臓の傷を圧し広げていく。

痛みを望んだ彼女と、痛みを与えた俺。
その形の意味を、その答えを、まだ俺は出せていなかった。

「それよりさ、気持ち良い? あたし、ちゃんと出来てるかな……」

再度の問いはそのまま前回のリフレイン。
辛みをぶつけてくれればある意味楽になれたかもしれないが、彼女はただ献身の出来を問う。
分かり易い罪を彼女は相手に背負わせない。
ただ良心の所在を、呵責の有無を無自覚に問うてくる。


由比ヶ浜結衣は誰よりも優しい。

けれど甘やかしてなんてくれない。

何時だって彼女は答えを欲し、求めてくるのだから。


だから俺はこれから、何時だって彼女と向き合っていかなければならないのだろう。

前回みたいに特別じゃない、今のような普通の時間に、当たり前みたいに繋がる為に。
彼女との時間を当たり前にしていく為に。
765 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:44:29.48 ID:zENMgwl/0

「……気持ち良いに決まってんだろ、だから、悪い、本当に」

「悪いなんてことないよ、気持ち良いなら、よかったぁ……」

そうして顔は綻んだ。
緩やかで暖かな、由比ヶ浜結衣らしい笑顔。
でも、違うんだよ。
俺だけが心身両方の充足を得ている限り、

「悪いんだよ……どうしたって気持ち良いのは俺だけで、お前は痛いだろ?」

「えと、もう痛いのはそんなになくて、それよりカタいのがいっぱいになって、苦しい、みたいな」

「え、あ、そうスか」

固い、硬いか、無自覚だよなこれ。
また興奮するぞオイ。

「でも苦しいんじゃねぇかよ、しつこいかもだけど、俺だけってのはやっぱりズルくて、ダメだろ」

「ズルくなんてないよ。 苦しくても、ひっきぃのが、な、なかに、あって、それが幸せで、だから」

「俺だってお前の、その、中にあって、それも幸せだから、不公平でさ」

「でも……」

「でもだな……」

譲歩のような、勝手な言い分を差し合い行ったり来たり。
766 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:46:20.09 ID:zENMgwl/0

本当に噛み合わない。
比企谷八幡と由比ヶ浜結衣は、何処まで行ってもこうなのかもしれない。

でも互いに想い合って、お前の方が幸せになんて、不毛な押し付け合い。
心と気持ちで触れ合う幼さまで含んだようなくすぐったいじゃれ合いは、
爛れたスキンシップの中でも自然に溶け込んでいる気がする。

人はそれを愛とか、そんな風に呼ぶのだろう。

流石に直截過ぎて恥ずかしいから口には出せない。
でもそんな物が中にあると分かっていれば、それ以上望むものはきっと無い。

少なくとも、心の上では。

「……ひっきぃは、あたしが楽になったらいいの?」

「楽、でいいのか……まぁ、多分」

「じゃあさ、やっぱりひっきぃが気持ち良いようにして、それが良いよ」

「いや、それを気が咎めるって話をしてんだろ」

767 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:48:07.14 ID:zENMgwl/0

「わかってるよ、でも……あたし、というか女の子はさ、たくさんシないと……き、きもちよく、なれないんでしょ?」

……それを寄りによって俺に聞くのか。
本当に楽な道を選ばせてくれねぇな。

「い、一般論ではそういうことになってるけど、実際はどうか分からん」

「男の子ってこういうのは詳しいんじゃないの?」

「妄想と現実は似て非なる物だってのを見て見ぬ振りしてるだけだよ、思春期男子は」

「ふーん……でも、そういうものだって言われてるんだよね?」

「それは、そうだな、うん」

質問の意を量りかねる俺の曖昧な返答、
それを聞くと結衣は再び俺の耳元に唇を寄せて、

「あたしも、ひっきぃので、ひっきぃと一緒に、きもちよく、なってみたくて、だから」

だから――
768 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:49:38.24 ID:zENMgwl/0


「――ひっきぃに、たくさん、シてほしい」


ぞわり


「たくさん、シて?」



いいよ、とは付けなかった。

引き金を、自ら引いた。

その意味を本能は勝手に解釈して、
勝手に背筋を泡立て、
勝手に盛り上がって、

勝手に。

「……分かったよ、じゃあ、動くからな」

「うん」

頷く彼女の愛おしさ、そのままに腰を引き、

「んくッ」

押し出す。
769 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:51:26.00 ID:zENMgwl/0

「ぅッ」

熱。

前回同様抵抗感はなく、その滑りをゴム越しに受ける部分が感じる熱のまま溶けて体積を減らす。
そんな錯覚。
自慰のように曖昧に高まっていく感じじゃない、一動作で確実に絶頂へ近づく。
そんな実感

「ふ、ぉ……!」

そんなものを受ければ、俺の喘ぎも無意識だ。耐えられるものじゃない。

人間というのは苦痛には耐えられても快楽には耐えられない、とは何処かの格闘漫画だったろうか。
結衣は身を固くしても呻くだけで弱音を吐かず、対する俺は肉欲の赴くまま暴れて果てる。
あまりに情けない構図だがそれは真実であったということ。
真のまま、最短距離で昂ぶり飛べればどれほど気持ち良くなれるだろうか。

だが、今は耐える。
少しずつ、揺するように小さく、ゆっくり腰を動かしていく。
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:53:02.30 ID:zENMgwl/0

「ぅ、ん、い、ぁ、あ、ぅ」

小刻みな動きに合わせて、喉の奥から声に鳴りきらない音が漏れ落ちる。
ぎゅうと俺にしがみついて耐える結衣は、前回ほど強ばっていない。筈。

痛みの多寡は自己申告で、優しい彼女は俺に負い目を感じさせない為に嘘を吐いた可能性も否定は出来ない。
だが感じる力の具合に嘘はない。一先ずはそれを信じる。

ずっ、ずっ、ずっ、音は鳴らないが感触を擬音化するならそんなところだろうか。
動くというより緩慢に震えているようなものだが、それ故に快楽も小さく俺は俺自身を制御できている。

「ん、ねっ、ひ、っきぃ、ぅ、きもち、いい?」

そして、同じ言葉を結衣は何度も繰り返す。何度でも問うてくる。

「ああ、気持ち、良い、から……お前も、苦しかったら、ちゃんと、言えよ」

だから俺も出来うる限りの言葉を、同じことだとしても何度も返す。

「う、うんっ、だいじょーぶ、だいじょぶ、だから、あ、んぐっ」

最後に彼女らしい強がりを受け止め愛でて、そのまま行為は続けられる。
771 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:54:50.60 ID:zENMgwl/0

本当に結衣のことを想いその身体を気遣うならば、最短距離でとっとと射精した方が良い。
動きを小さくしてもただ緩慢になるだけなら、その分結衣を苛む時間が長くなるだけだ。
それは実際に苦しむ彼女と、早く出したい俺の身体の望みを切り捨てるようなもの。

今の俺の動きはただ結衣の心身を長く味わっていたいという、
比企谷八幡の心の我が侭でしかない。
一分一秒でも長く彼女と触れ合い繋がっていたいというエゴだ。
そのエゴを、両者の心は共有していると身勝手に信じている。

「んッ、ひっきぃ、あ、そ、それぇ、ひっきぃ……!」

腰を揺するだけじゃない。
俺の手は髪に、耳に、頬に触れ、また肩に、腕に、胸に触れていく。

別種の感覚が苦痛を和らげるかどうかは分からないし、
ただ俺が触れたいだけということもある。
でも触れ合うことが嬉しいなら、これもきっと結衣の幸福に繋がる筈だ。

そうして暫く、局部から伝わってくる痺れが徐々に下半身、
また上半身へも伝播し筋の強ばりを奪っていった。

幾らスローペースだと言っても経験の浅い俺だ、この弛緩が全身へ至るとき終焉はやってくるだろう。
その瞬間を俺と結衣がどれだけ甘く満ち足りた状態で迎えられるか、
その為の手法を湯立った頭で考えていた。
772 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:56:40.01 ID:zENMgwl/0

その時だった。

「ひ、くぅ、ふ、ふは、はぅ、はぅ、はぁ――」

何時の間にか、結衣の声が変わっている。それに気付く。
質が変わった?
硬さが抜けたような、角が研磨されたような、丸みを帯びている。

「ゆ、い?」

「! ひぅ、ひぅぅ、あ、あ、ん、んん、ぅぅ」

心配するような声が無意識に漏れ、そのまま彼女の頬に触れ、
びくりと反応しまた桃色の響きが強まる。
それはまるで挿入より前、彼女の入り口や中と俺の指が戯れていた時のような。

それだけでなく、彼女の声に合わせるように中の感触も変わっている。
柔らかな圧力の一定は所々で震え、蠢くようになっている。
当然、

「ゆ、ゆい、それ……!」

中の俺自身がモロに影響を受ける。
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:58:08.79 ID:zENMgwl/0

もぞ、もぞり


肉に圧されたまま、その厚みが蠢き揺れる。


ひく、ひくり


脈打つような俺自身の性感の波長、その盛り上がりに変化が重なり、絶頂が間近に迫る。
一瞬全身が麻痺、抑えや弁が壊れ……しかし寸前で止める。止まってくれた。

「うぐ、ぉ……ふ、ぅ……!」

腰を止め、引く波に足を浚われないよう見送る。息を吐く。

不意に訪れる興奮、絶頂へ至る圧倒的な圧。
自慰に浸っている時に幾度と経験したことがあった。

一人の時はその波を見つけて乗ってしまうが早く有り難いが、
今は堪えられたことに安堵する。

確かめなければならないことが、あるから。

「お、おい……だいじょうぶ、か?」

ただでさえ柔らかい結衣の身体が更に柔らかい。
ただでさえ暖かい結衣の中が更に熱い。

その意味を都合良く解釈しようとする本能を抑え込み、問う。
問わなければ、溜まらない。
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 18:59:19.15 ID:zENMgwl/0

「え、ぅ、な、なにも、な、ン、だいじょぶ、だよ……?」

バレバレの嘘。
或いは彼女自身自覚していないのか。

呆けたように怪しい呂律で零す結衣の姿に、
蕩けて緊張を忘れたようなその表情に、
自覚しきらない『なにか』を期待してしまう。

「き、気持ち良かったのか? さっき」

「あ、え……わ、わかんない」

「わかんないって……苦しいの分かって、気持ち良いのは分からないのか?」

「う、ぅ、だって、まだ二度め、だし、ひっきぃので、その……きもちよくなるの、まだ、しらないし」

蕩けつつも眉を顰め、ぷいと横を向いてしまう結衣が、まぁ大層可愛いわけだが。
775 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 19:01:02.42 ID:zENMgwl/0

ともかく彼女の申告からは無自覚であることが判明。
……いや信じ切るには怪しいが、これ以上は確認しようがない。

どう足掻いても野郎の身で女性の性を実感することなんて出来ないし、
指での刺激と棒での圧迫では感覚が別種だと言われたら否定も出来ない。

それでも食い下がらずにはいられない。

「い、入れる前の、指でしたのと、違う?」

「え、ま、まだ聞くの? うぅ、その……は、はずかしいんだけど」

「いやでも気になるし、教えてくれって」

「わ、わかんないっ! しらないっ!」

どうも強情だな。
まぁ俺だってこれまでのオナニー体験でどんなのが気持ち良かった?
なんてインタビューされたらブチ切れ金剛する自信あるが。

いや待てそれを言うとさっきから結衣が聞いてくる「きもちいい?」アピールは何なんだ。
いじらしくて滅茶苦茶可愛くて素晴らしいとこだが本質は同じじゃないのか。
776 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 19:02:11.72 ID:zENMgwl/0

未だ中で結衣を感じていることとか、
射精を我慢して寸止めみたいになっていることとか、
色々合わさって、特に理不尽でもない筈の言葉に妙に腹が立ってくる。

イライラするし、ムラムラしてくる。

だから、確かめてやる。

そうして無言で、押し込む。

「ひぃ!?」

突然の刺激に、背を反らして可愛らしく悲鳴を上げる。
この反応が、これが快楽じゃないなんて、あり得るのか。

ぐつぐつ煮立っていく欲望に押されるように結衣の奥を小突いていく。

「あひっ、ひん、ひく、ひっ、ひぅっ! い、いきなり、は、だめっ!」

そういえば、何かするときはその前にちゃんと言ってとお願いされてたな。
でもいいか、悪いのはハッキリしない結衣だし。
777 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 19:03:15.87 ID:zENMgwl/0

開き直る心と、声に合わせて蠢動する中で震える肉棒。
動きはあくまで小さく、動きで彼女に問う。

気持ち良いだろう、気持ち良い筈だ、と。
俺ので、俺と一緒に、気持ち良くなりたいとか、言ってただろ。

中にいる俺がこんなに気持ち良くて、お前はどうなんだ――。

「ど、どうなんだよ、指と、なんか、違う、のかよ……!」

「はぁ、はぅっ! わ、わかんないって、い、いったじゃん! ふぁ、ぅっ」

「似てないのか、かすっても、ないのか、ちゃんと、教えてくれたら……」

教えてくれたら、何だろう。
そもそも知ってどうなる。
後のことなんて何も考えてなかった。

でも知りたいから、知りたい。
エゴの押し付け合いを良しとするなら、それも良いんじゃないか。

だから、このまま俺が果てる前に、教えてくれ。
778 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/05(火) 19:03:18.53 ID:NU+L7RGWo
待ってた
779 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 19:05:05.85 ID:zENMgwl/0

「で、でも、でもぉ……!」

「頼む、から、教えてくれよ、はやく、はや、く」

「う、うぅ、ぅうぅぅぅ、ぅぅうっ!」

さっきの耐えるようなものとはまた違う。
恥ずかしそうな、悔しそうな、そんな呻き。

限界が近づいてくる。
動きは小さいまま、間隔は一定のまま、きっと上手なんて言えない拙さ。

それでも合わせて揺れる肉に俺はもう限界で、

結衣が、

結衣が、

気持ち良いって言うなら。

言ってくれたら。

「ひ、ひっきぃっ! わかんない、けどっ、あたし、ひっきぃの、き、きもちいい……!」

言って、くれたら。

言ってくれた、ら。

「だから、きもち、いいっ、から、と、とめてっ、やすませて、よぉ……!」
780 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 19:06:45.69 ID:zENMgwl/0


こみ上げ。


一気に。


「ぅぎッ!」

砕けんばかりに歯を食いしばる。

再度の決壊寸前、全身全霊を局部に集中して、漏れ出る刹那にブレーキ。
結衣の要求通り動きを止め、歯を鳴らしながらギリギリで踏み止まった余韻に全身を震わせた。

「はぁ、はぁっ、はぁっ、はっ、はっ……」

俺の肩にしがみついて、結衣も息を荒げている。

気持ち良い、そう言った。

そういうことで、いいのか。

「ゆい……さっき、きもちいい、って、おまえ」

「はぁ、はふ、そ、そうかも、だけど……きもち、よかった、かも」

「そ、そう……なの?」

「わ、わかんないって……でも、す、すごかった、から、いまは、やすませて……」

途切れ途切れに吐き出すと、結衣は俺の肩に顔を預けるよう、深呼吸を始めた。
781 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 19:08:16.12 ID:zENMgwl/0

気持ち良い。

気持ち良いのか。

互いが充足出来ているのか。

その準備が出来たのか。

まだ二度目だけど、まだ二度目なのに。

俺達は、セックスが、ちゃんと出来ているのか。

寸止めの余韻が冷めやらぬ中、それでも結衣の呼吸のリズムを、
肌や髪の甘やかな香りを楽しめるくらい沸き立つ心の落ち着きを実感出来ている。

ああ、そうか。



もう何も、問題無いのか。



ずぶり


782 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 19:09:28.71 ID:zENMgwl/0



「――っッッ!?」

不意に呼吸の間隙を突かれた、声にならぬ結衣の声。

ああ、そうだ。

もう、問題、無いから。

「ゆ、い、ゆいっ、ゆいっ、ゆいゆいゆいゆい……!」

我慢ならず、思いも纏まらず、ただ名前を呼び、繰り返す。

問題無いなら、俺ももう、壊れていいのか。

どちらかが快楽を得られないなら、あくまで心の為の触れ合いであろうとした最初。
未熟な精神と経験で上手く立ち回ろうとした無様。
ギリギリを我慢し続けて甘くも暗い痺れでおかしくなった身体。
殆ど壊れかけの全部で、ただひた走る。

大波が引いて荒れた水面、でも追いすがれば波に乗れる
まだ間に合う。

間に合うから。
783 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 19:11:21.64 ID:zENMgwl/0

「あ、あっあっあっ、ひっき、ひっきぃ! やめ! やすませ、ひぐ! あぅ! ああっ!」

気遣いがどうとか、もう何も分からない。

全部忘れた。

全部忘れて、

ひたすら腰を動かして、

俺の肉と、ゆいの肉を擦って、

震えて、

すごく、すごく気持ち良い。

ガツガツと打ち込んで、無理矢理に走って、走って、走って。

互いの言葉も、反のうも、ぜん部、気もち良いなら。

どこかにだけ我慢させなくていいなら。

おれも、きもちよくなるから。
784 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 19:13:22.67 ID:zENMgwl/0

「ゆいっ、ゆいゆい、ゆい……!」

もう、なまえいがい、いらない。

なかがきゅうきゅう、ぞわぞわ、あつくて、うごいてる。

かんじるものが、ゆいのにくであることがわかれば、よぶだけで、それだけで。

「ひ、ひっきぃ! ひっきぃ、あ、んひゅっ、とめ、とめ、や、め、ふぁ、んくあっ! ひ、ひっき、ひっき――」

ゆいも、おれのこと、よんでる。

ならだいじょうぶ。

もうくるから。

もうだめだから。

もう、もう――
785 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 19:15:02.23 ID:zENMgwl/0







「いぎ、いぐ、い、ぐ……!」

でた。

でて、でてる。

びくびく、

びゅくびゅく、

しんぞうが、ぜんぶ、したの、でるのに、なったみたいで。

「ひ、ひ、ひ、ひふ、ふぁ、うぁ、ぁぁ……!」

ゆいのこえ、いきが、すごく、せつなくて

もっと、もっと、あ、

あ、

あ、

あ、

でて、でてる、でてる。

ゆいのなか、

ゆいのにくで、でて、でて――

786 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 19:16:20.16 ID:zENMgwl/0



――時間の感覚はもう全部ぶっ飛んでる。

結衣の中に入って、まだ冷静だった時から、ずっと。

「はっ、はっ、はっ、はっ――」

燃え尽きた。
真っ白だった。
白痴という言葉、字の意味をこれ以上なく実感した。

真っ白な中、ただ欲望だけが肉の中で暴れ、
幼児の手紙のような言葉の羅列が飛び散っていた。

射精の麻痺が落ち着くと、まず感じたのは憑きものが落ちたように虚脱する本能。
脳内麻薬か何かで消されていた湿っぽい熱、汗の感触で全身に滑りを感じた。

次いで荒く、暴れる心臓に合わせた俺の呼吸と、

「ひ、ひっ、ひっ、ひっ、ひく、ふぅ……!」

か細く響く、結衣の呼吸。
787 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 19:17:32.10 ID:zENMgwl/0

そう、オナニーじゃない。

俺は結衣とセックスをして、互いに気持ち良くなって、今。
何度も味わった射精後の虚の中に、広がり満ちていく感情がある。

「ゆい……」

前回だって思ったけど、共有出来た今回こそ強く感じるもの。

気持ち良くて、愛おしくて。

それを共にした相手のことが、由比ヶ浜結衣が、俺は好きなんだ。

好きだから、セックスをして、気持ち良くなって、愛おしくなるんだ。

「ゆい、結衣、俺、お前が――」

充ち満ちて、溢れそうで、それでいい。

溢れた分は全部言葉とか、結衣と触れ合う何かに変えて。

そしたらもっと、きっと。


「……ぐす」

788 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 19:19:17.44 ID:zENMgwl/0


……え?



「ぐす、ひぐっ、ぅう……やめて、とめてって、い、いった、のに、ふぐ……!」

あれ?

「こ、こわかった、ふえっ、こわかったよぉ……ばか、ひっきぃの、ばかぁ……!」

泣いてる。

結衣が、泣いてる。

なんで泣いたのって、全部、言ってるじゃん。


……やらかしちゃったよ、オイ。

789 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 19:20:46.47 ID:zENMgwl/0

その後暫く、しゃくり上げる結衣をあやすのに力を尽くした。

事後の熱や余韻なんぞ一瞬で醒め引き、代わって恐怖や戦慄の冷たさが心臓だけでなく
胃にも杭を打ち付けギリギリ痛みを走らせては狼狽え噛みまくるただキモいだけの男がそこにはいた。
俺のことだよハハッ。

そうして今は二人、ベッドの上に座って向かい合っている。

「お、おちついた?」

「……ぅぅ」

すん、と返事のように鼻奥を鳴らす音が聞こえた。
俺の慰めテクニック(初級)がどれだけ作用したか、ともかく今は落ち着いて見える。

さてまぁ落ち着いたとして、良かった。
良くない。
涙は治まっても、その原因足る俺の軽挙が無くなるわけもなく、ここからは楽しい楽しい尋問タイム。
楽しくねぇ。

「……なんで、とめて、くれなかったの」

語尾に疑問符は付いていない。
痴漢はあったのか、という調査ではない。
何故痴漢したのか、と尋問されているのだ。

寄りによってなんで例えを痴漢にした俺。
790 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 19:22:12.86 ID:zENMgwl/0

「えーと、その節は、真に申し訳無く……」

「ごめんじゃなくて、なんでって、聞いてるんだけど」

……謝罪倒しで有耶無耶にする作戦は失敗した。

「き、気持ち良かったって、言われたので、つい」

「……その時、やすませてって、とめてって、言ったじゃん」

「……ハイ」

「ひっきぃ、あたしのこと見えてないみたいで、こわかったんだよ?」

「……ハイ」

その追求はゴールデンウィーク、初ホテルの前の問答が如し。
同じことの繰り返しと思えば、後に許しのあったことを思い出し心も晴れやか……といってもあの時は事前、
今は事後にこれもんなので事態の深刻さは比べるべくもなく。だめだこりゃ。
791 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 19:23:19.75 ID:zENMgwl/0

「き、きもちよかった、かも、だけど……分かんないのはこわいって、ひっきぃもそうだよね?」

「仰るとおりで……」

多分痛みなら既知で、快楽は未知。男はそれが逆。
よくよく考えれば、というか考えるまでもなくそういうものだと気付けよ俺。
快楽であれば飛びつくと考えるのはあまりに男性思考過ぎる。

セックスはオナニーと違う。
そう嘯きながら、結局俺がやったことはオナニーの延長でしかなかった。
そういうことなのか。


「……でも、気持ち良いって言われたら、それは」


それでもと、ぼそり、呟く。

呟いてしまった。
792 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 19:25:14.45 ID:zENMgwl/0

「……なに、ひっきぃも言いたいことあるの」

勿論聞かれてるし、拾われる。
先と同じく疑問符が付かない、釈明する気なら聞くぞというゴッドファーザーが如き威容。
やっぱり女帝じゃないか。

「いや、な、男からすると、気持ち良いっていうの、それだけで問題無しになっちまうくらいの、アレなんだよ」

「……へぇ」

「何時だって妄想逞しくて、アレはどんなだろう、コレは凄いんだろなとか、知らないことも全部輝いて見えてな」

「……そう」

「だから、気持ち良いって言われると、何もかんも全部肯定されてるみたいな……ほら、お前だって俺が気持ち良いの嬉しいとか、そ、そういうこと言ったろ、お、同じじゃないかなーとか」

「……そーなんだ」

「気持ち良くなってみたいって言われて、そんで実際気持ち良いって、それもう全部OKだってことじゃないかって、その思ったり、思わなかったり……」

「……ふーん」

793 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 19:26:37.42 ID:zENMgwl/0

おざなりな相槌で背筋を恐怖で煽られながら、言わなくて良いことまでぽろぽろ零す。
ああやっぱり俺のアドリブじゃ精々他人を煽るくらいが精々で、
許しを請うたりとか出来ないんだな。
平塚先生に散々ねじ込まれたもんな実際……。

しかしどうなんだこれ、今後どうなる。

快楽と幸福感は別だと始まる前に言われたし、そこを履き違えて勝手に振る舞ったわけで。
期待や希望という幸せな絵に泥を塗ったようなものだ。
そうなると結衣が性行為に負い目や忌避感やを感じるのは当たり前、
今後の恋人関係に悪影響は免れないだろう。


そもそもこんなキモくて気が利かない上に自分勝手なセックスしか出来ないような男なんて幻滅されて当たり前だしそんな俺との恋という悪夢から醒めた彼女に侮蔑の目線と言葉を貰いそのまま縁切りさようならってことにもなりかねない寧ろそうなって当然ヤッベェもちっと考えて話せよ俺全然反省してないし逆に煽ってるんじゃ執行猶予無しの即豚箱絞首電気椅子で落伍者確定そもそも和姦でもその後女性側が無理矢理されたって交番に駆け込まれたら男の立場じゃ反論しようがないんではヤバイヤバイ何をどうして――
794 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 19:27:51.70 ID:zENMgwl/0

「……じゃあ男の子は、きもちよければ怖くないんだ?」

「え、アッハイ」

正しく暴走する思考と感情の回路に振り回される俺は、突然の問いに反射でしか応じられなかった。

「本当に?」

「それこそ、分かんねぇけど……多分」

気持ち良いと怖いは男の中だと両立しない……んじゃないかなぁ。分からんけど。
しかし何だってまだこんな問答を続けるのだ。もう有罪確定みたいなもんだってのに。

「……分かった」

何を思うか俯き姿勢で低く零す由比ヶ浜結衣。
不意に背筋を伸ばし、童顔に似合わずキッと俺を睨め付け、


「リベンジ、するから」

795 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 19:29:14.74 ID:zENMgwl/0


……why?


「今日は、ひっきぃにされるだけで、れ、練習してたこと、全然出来なかったけど……そういうの、今度、全部するから」

え。

あれ、どうしたの。
なんで嬉しい宣言されてるの、バグった?

「全部で、全部して、やめてって言うまで、し、シちゃうからっ! そしたら、あたしと同じになって、それで相子でしょ?」

思い出されるは春先の彼女の手と、雨の日の口の感触。

全部。

それらも含めて、全部?

まだ知らないこともある?
796 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 19:30:46.63 ID:zENMgwl/0

「え、マジで?」

「ちょ、ヒッキー!? なんでそんなに嬉しそうなの! こ、こわがってよ!」

「いやだって、色々シてもらうとか、男子的には夢だろ。 さっき言ったじゃねぇか全部OKだって」

「も、もー! 反省してよ! 反省させるから! 絶対させるから! 今から後悔しても遅いんだからね!?」

……そんなこんなで、言われるまでは正に恐怖で震えていたのに斜め上の提案が吹き飛ばしてしまった。

これが正常な関係性だとか平均値かなんてのは分からないが、男女の性の観点は正しく逆であるらしい。
何とか首が繋がり、それどころか次の予告まで頂いては期待する名という方が無理というものだ。

こんなのが続いていくなら、ちょっとやそっとのやらかしじゃ恋人って関係性は崩れないのだろう。

なんだ案外いけるじゃないか大丈夫大丈夫。



……大丈夫だよね?



797 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/05(火) 19:34:32.73 ID:zENMgwl/o
というわけで第四話の投下終了です、お付き合い有り難う御座いました

いや本当に長らくお待たせしてしまい申し訳ありません
やっぱり何もないことを面白く書くなんて無理だったんや日常系とか無理やでホンマ……
あとどうでもいいことですが四話のサブタイは『strawberry garden』になります

次回はガハマさんの言うとおりリベンジ編です
798 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/05(火) 20:49:44.34 ID:izMKej49o
待ってました。結衣の「こ、こわがってよ!」が超かわいい
799 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/05(火) 23:35:49.70 ID:kV4IbyViO

ヒッキーカッコ悪くて、情けないwww
でもそれがいいんだよなぁ
800 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/06(水) 00:59:39.64 ID:ZTvOmh3Yo
この結衣は嗜虐心煽ってくるな
陵辱したい
801 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/06(水) 01:06:55.97 ID:0lXxqLDho
乙です
802 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/10(日) 19:15:54.93 ID:svIRqvkCo
スパムよりコンビーフ、どうも>>1です

年始のリクエスト採用、もとい参考にしたオムニバスを始めました
気分転換兼ねて1シナリオ分割して短いのをちょくちょく投稿って形になりそうです
ピクシブのR-18なんでログインしないと見れないですが、こちらも宜しくお願いします

http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6999975
803 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/10(日) 22:50:36.77 ID:ZLuurL21o
乙、読んできたぞ笑
804 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/11(月) 02:42:58.92 ID:UbtGK+fso
ふたりに色んなプレイしてほしいなー赤ちゃんプレイとか
805 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/21(木) 10:29:41.79 ID:Hmnjni2Wo
続きはよ
806 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/31(日) 17:23:34.74 ID:TOUJaGB4o
待ってる
807 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/31(日) 21:14:34.88 ID:hwfZHnb6o
ガハマさん抱き枕にムラムラきたんですがまだでしょうか
808 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/08/14(日) 19:07:53.33 ID:YK5q6rQNo
どうも>>1です
十天衆取得に忙し……もとい、諸々に忙殺されて筆進んでませんでしたすみません

とりあえず渋の方更新しました
今書いてる話を書き終え次第こっちに戻ってくるので暫しお待ちを

http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=7128156
809 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/08/14(日) 22:46:57.53 ID:0Z8bHmsBo
待つ
810 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/08/15(月) 01:39:39.15 ID:VaHZtDWno
待ってるよ
811 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/08/18(木) 12:48:52.77 ID:0Z92ZTZ60
小町ちゃん、陽乃さん、ルミルミの三人はお助けキャラやチートキャラ扱いです。
あとしっかり絡ませようと思います。
いろはちゃんは大好きですが悩み中です。
すいません。

この番外編は友達の結婚が決まったので作りました。

次の話。
停学明けに葉山君達と川崎さんに会う間の話です。




八幡の話は私の実話。
本当に小さい頃、夢遊病がひどく。
寝る時は窓に内鍵、外鍵、扉にも内鍵、外鍵をしてました。

戸塚君の話は私の小学生の頃からの男友達の話ですが、なんと二人は結婚しています。
出会いを男友達に聞いて書いてます。

戸部君の話も私の実話です。
同級生の話です。
クラスの皆でお見舞いに行ったら、作品の言葉を言って皆を笑わせてました。


材木座君の話が今回、結婚が決まった男友達です!おめでとう!
先日、報告がてらの前祝いの会で、酔った勢いで出会いの話を聞いて、許をとり書いてます。金言?も本当に言ってました。

ちなみに金言?を聞いた私の同級生でもある、お兄ちゃんは本当に苦虫を噛み潰した顔をして、苦しそうでした。

一言『あんな奴に俺の妹が』と呟いてました。

まあ、二人は親友なのですけどね。

私事ですいませんでした。

本当におめでとうございます。

あと、ゆきのんの話は私の親友の話を書きます。
812 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 01:14:36.29 ID:CWjLyP7Ho
待ってるで
813 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/09/17(土) 16:20:15.42 ID:Uu7oXvpL0
エロシーンも勿論いいんだけど、八幡と結衣のあったかい関係がたまらなく好き、続きいつまでも待ってます。
814 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/10/07(金) 22:31:40.37 ID:SEu7b/Myo
もう終わっちゃった?
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/10/25(火) 02:51:48.48 ID:J4iKWbVnO
【咲】京太郎「…………俺は必ず帰ってみせる」【安価】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1477320276/

京豚は害悪です
あなたが好きな作品とキャラがレイプされるかも知れません
816 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/11/01(火) 03:17:22.12 ID:BTKS81Kb0
待ってるぞ
817 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/11/28(月) 20:04:34.73 ID:PeHRWJLZo
待ってる
818 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/05(月) 21:29:19.99 ID:nZus1q0ao
5ヶ月たったかー
ここはスレが落ちる心配とかはしなくていいんかな
819 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/15(日) 07:08:01.72 ID:TWGD2xiro
ガハマさんのおっぱいペロペロ
820 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/02(木) 00:18:27.75 ID:dFyIsEw0o
まだ?
821 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:21:54.89 ID:RJhXyT9p0
涙がこぼれそう、どうも>>1です

長いスランプの上に色々ありすぎてこんなにも時間が経ち原作者に指差せる立場ではなくなってしまいました、申し訳ありません
ですが原作でどんな目に遭わされても俺にとってはこっちが原作だぜゲハハと言い張る為に何とか完結まで持って行きたい所存

いつにも増してガバガバな出来ですが第五話導入ですどうぞ
822 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:23:33.34 ID:RJhXyT9p0


『あなたが──蜘蛛だったのですね』



複雑に絡み合った因縁と遠謀は同心円状に美しい紋様を描き、冒頭と同じ文句で物語は幕を下ろした。


閉頁。

嘆息。

満足。


煉瓦の如き文庫本の読破から得られる快感は脳や心だけでなく、
その重量を支える腕にも解放感という形で訪れた。
ページを捲り始めてから優に一週間は経っている為殊更だ。

読書趣味を自認しているとはいえビブリオマニアとまでは行かない乱読派であり、
それ故に分厚い物は無意識に避ける傾向があったが、一念発起しシリーズを読み進めていった甲斐があったというものだ。

脳内麻薬でも分泌しているのだろう、脳髄の奥底に達成感と快楽を刻み込むと1000ページを超える文庫本をパタリと閉じ、

「――終わったの」

……小説の内容をなぞるが如きじとじと湿った響きが俺に向けられた。
823 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:25:10.38 ID:RJhXyT9p0

チラリと前を見やれば、そこには言葉と同様湿った視線を向ける不機嫌そうな犬が一匹。
かのクリストファー・ウォーケン、トム・ベレンジャーを超える今世紀最大の犬チックこと由比ヶ浜結衣である。
渋谷駅前の忠犬や疲れた少年と一緒に召されたセントバーナードにも負けない千葉最大級の御犬様だ。

そんなワン公女子が入り浸って久しい比企谷別邸アパートの一室、読書を開始してから優に二時間は経過していた。

「えー、うん、読み終わった、です」

「スゴい集中してたけど、面白かったの」

「アッハイ」

「そう」

ぶつ切りというか、なんというか。
何時もは喋り始めりゃ一人でも姦しい彼女には珍しく、単なる確認で会話は終わる。
そも会話なのかこれ。

遊びに来た彼女を放って二時間も読書に耽る糞野郎が俺であるが、
根っこの部分が未だペニシリンの培養にも使えない青カビの出来損ないな性分としては
ここに至る経緯を認識すればこの手の逃避も仕方無いと思いたい。

何せ勘違いの暴走状態で強か……和姦の上で失敗したのが昨日のことだからだ。
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:27:10.02 ID:RJhXyT9p0

そう、新家具であるベッドの確認という名目で彼女が我が家にやって来て誘惑してきたのが昨日。
妙な空気で終わった逢瀬から今の状況まで二十四時間も経っていない。しかも学校帰り。

良いも悪いも女性はサッパリ振り切るし、うじうじしつこいのは男性と話は聞く。
だが昨日の今日の気まずさでアウェーまで踏み込んでくるとは予想外デス。
いやここが既も彼女の縄張りと言われれば否定出来ないけど。実際昨日マーキングしてたし。

更に言えば、今日は学校で彼女と顔を合わせてからずっと同じ仏頂面。
視線が合う度一々「むむー」とか口に出すくらい徹底した馬鹿、もとい不機嫌ぶりだった。
誤魔化し半分からかい半分で「今日はなんか可愛いな」とか言ってやると力を緩め
「そうかなえへへ」と最高の照れ顔を披露してくれた辺りは如何にも由比ヶ浜結衣らしいことである。

迂闊にもそれを指摘してこれまでに無い程不穏な顔をさせて今に至ることは公然の秘密。
825 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:28:44.84 ID:RJhXyT9p0

……まぁこんなことを考えつつも昨日のやらかしを後悔し反省しているのは本気だし、
これまでの負の積み重ねを思えば不機嫌さを隠そうともしない様子に不安を覚えるなと言う方が無茶な話だ。

じっとり心身に張り付く湿った空気。
梅雨前と言えど初夏も過ぎようという時期にあってこの湿気は気候のみが原因にあらず。
頭蓋の内外が膨張か圧迫されるような錯覚と合わさって如何ともし難い居心地の悪さがたっぷり二時間俺を苛んでいた。

でもこんな状況下で逃避目的とはいえ読書には集中出来るんだから我ながら大層な面の皮である。
826 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:30:11.86 ID:RJhXyT9p0

「……」

「……」

「……なぁ」

「なに」

「な、なんか飲む?」

「いらない」

「あ、うん」

「……」

「……」

これと同じ遣り取りが帰宅直後にもあったのだ。学習しろよ俺。
827 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:31:39.69 ID:RJhXyT9p0

くそぅなんだこれ。
かつては気を遣った結果会話よりも沈黙に重きを置いていた俺が、
今は沈黙に耐えかねて慣れない気遣いを口にすることになろうとは。
しかもバッサリ。救えねぇ。

矢張りこれは、もう取り付く島もないと、
お前はやり過ぎたのだと、
それにつけてもカルタゴ滅ぶべしと、そういうことなのだろうか。

由比ヶ浜が如何に出来た$ォ格をしていようと、
それは俺という人間の不始末全てを抱え込んで尻ぬぐい出来るということを意味しない。
そんなのは出会ってからここ数ヶ月で嫌というほど思い知ったことだ。
だから一晩経って、改めて俺なんかと付き合いきれないと思い直したっておかしくないのだ。

彼女の胸の裡は既に傷だらけなのだと、他ならぬ彼女自身から告げられたばかり。
昨日の出来事が一日遅れでトドメになっていないと信じられるほど楽天的ではない。
積み重ね始めた端から、倒れようのない横置きの積み木を吹き飛ばしてしまうのも比企谷八幡なのではないか。
828 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:33:10.52 ID:RJhXyT9p0

鉄球を丸呑みしたかのような負荷が内蔵を、不気味な動悸が血管を痛めつけ、
彼女にどう接すればいいかと考える余裕すらなくしかけていた。

その時である。

「……カーテン」

「へ?」

予想外の一言。

対する俺の間抜けた返事。

事態は由比ヶ浜が動かした。

「カーテン、閉めてあるの?」

言っていることの意味は分かるが、理由を飲み込めない。
829 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:34:38.82 ID:RJhXyT9p0

「えー、あー……き、昨日のまんまだから、多分、閉めてある」

そもそも見れば分かる話ではあるが、カーテンは昨日のまま閉まっている。
部屋の状態を戻すのも億劫に感じていたということはあるが、
ぼっちの習性なのか暗がりとか狭い場所にどうも愛着を覚えるものでして……半年一年そのままにしていた可能性が微レ存。
どころか倍率1.1倍以下の鉄板。

「……そう」

またもその二文字で確認のリピート。
最低限の遣り取りで目的を果たすのだから効率化至上主義足る現代の風潮に合致し、
故に人の間の交流としては寒々しい。

何の為の確認か、と考えるも、彼女もまた過ぎた沈黙に耐えかねたのかもしれないと落ち着く。
内面がどれだけ沸騰するか凍てついていようと彼女は彼女で、
声帯鼓膜の無振動も、陽の光の射さない部屋も、本来苦手にしているのだ。
そうした内面の発露が無意識に行われていたと考える方が妥当なんだろう。

そんな「らしさ」を蔑ろに「らしくなさ」を強要しているのだとしたら。
やはり比企谷八幡には誰かと寄り添い生きることなど不可能で、
ましてや相手が由比ヶ浜結衣であることなど泡沫の夢でしかなかったということなのか――。
830 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:36:37.39 ID:RJhXyT9p0

「……ちょっと暑いね」

ぼそり、新たな響き。
囁きとも言える小さな声だったが、
悪い未来の予知か想像に混乱している脳と鼓膜はそれでもその意味を拾い上げた。

あつい。
あー、暑い。じめってる。

そりゃぼっちの棲家はじめじめするだろうし五月にしてこの湿気というのも
お前の存在が梅雨の梅雨らしい所以なのだぼっちメン!と遠回しに言ってくれてるのかなハッハッハ泣きそう。

女性って一度嫌ったものに対する評価は死んでも変えないそうだよお兄ちゃん、

なんてネットで拾った俗説が愛する妹の声で記憶の底からリフレインして脳震盪起しそう……。

「あ、あつい、ねー、あついなー」

ああ、そんなにもお前がカビの温床なのだ消えろイレギュラー!と仰りたいのか……
と脳を虐めるストレスに流されて考えたのが一瞬。

……んん?

831 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:38:09.52 ID:RJhXyT9p0

「あっついなー、もうー」

棒読み。

「な、なんでこんなに、あついのか、なー」

大根。

なんだこの、なんだ。
暑いというかもう春も過ぎ去った陽気ではあるんだが、そんなに暑い?
いやこれはバイキン男か夜叉猿の爪もビックリするような雑菌塊がお前じゃい!
という気の利きすぎた比喩の流れであって字面は何も関係な……。

「も、もうー、こまっちゃうよねー」

しかし由比ヶ浜、ここでシャツの襟をパタパタ。
夏場とかで特に効果もないのに外気を取り入れて冷えた気分になるアレ。

なんかその速度が妙に遅く、しかも下気味に範囲が広い。
あんたそれ、お山と渓谷が見えちまう奴でっせ……!

「……チラ」

そして口に出してチラ見。
薄暗くじめじめどんより、という空気は斜め上の疑問符で別方向の重さを増しつつある。
だが「良い船です」としか言いようの無い痴情もつれまくりな空気より
ソフトでウェットに摩擦0で行うシュールギャグで寒々しい方が八幡君適正高いからな!
832 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:40:05.09 ID:RJhXyT9p0

「……何やってんのお前」

ツッコミだ。ツッコミしかない。
これが今俺に許された唯一の特火点……それトーチカじゃねぇか守ってどうする。
ともかく今何か選択肢があるとすればここでの一転突破だ。後のことなど知ったことか。

「なにって……いや、あついなーって」

「いや不自然すぎるだろ色々……熱でもあんの?」

「べ、別にフツーだし……あ!」

「急に大きな声だすなっt」

「今あたしの、む、むね見たでしょ! うわやらしー、ひっきーの、すけべー」

斜め上、或いは下。

生谷間in由比ヶ浜にドギマギせんこともないが、
今の状況のあまりの不自然さと数秒前より更に磨きのかかった棒読みに折角のエロハプニングは台無しになってしまっている。

つか既にスローペースどころか襟下に引っ張ってるだけのお前に視線向けたら否が応でも見えるでしょー。
……だから乳にだけ反応してstand up to the victoryしてくれるなよ愚息よ。
833 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:41:32.34 ID:RJhXyT9p0

「今朝サブレに噛まれた? 水怖がって痙攣したりしてない?」

「それ狂犬病! ちゃんとワクチン打ってるし日本安全じゃん!」

「何だ、由比ヶ浜の癖に詳しいなエライねぇ〜」

「そりゃ犬飼ってるし……ていうかその馬鹿にした言い方なんなの!バカにしすぎだからぁ!」

「由比ヶ浜、酸素欠乏症にかかって……」

「よ、よくわかんないけどバカにされてることは分かるし!」

とまぁ神風特攻は功を奏したのか、いつもの様な俺達のリズムに戻る。
これがいつもってのも別の意味で問題な気がするが今は見ない振りをしておく。

ともあれ、

「まぁ諸々置いといて、お前今朝からなんかおかしいだろ……何かあった?」

ここまでノリが元に戻るなら別れ話とかそういう致命的なアレはないと信じたいところ。
……こうでもしないと彼女の奇態にすら口出し出来ないんだから俺ってやっぱ俺なんだなぁ。
834 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:43:08.57 ID:RJhXyT9p0

「何か、って……」

「そのさ、頼りないかもしんないけど、てか実際頼りないけど、か、彼氏だろ俺。 何かあるなら、言ってほしいなとか、頼って欲しい、的な……」

そして決め台詞もどもりまくる実に比企谷八幡。これでも渾身なんですよ……。

「……もう忘れたの?」

「へ?」

「き、昨日のこと! あんなことあったのに、もうバカ!」

「昨日の……」

やっぱり昨日の件じゃないか!
先までの奇行との関連は分からず意図も読めないが、やはりこれはもう挽回不可能、
我々の恋仲の比喩たる豊かなチュニス湖東岸に塩を撒いて引導を渡してくれるわという意思表示だったんだなぁ。
……練炭と混ぜたら危険な洗剤の組み合わせってどっちがお手軽なんだろなー?
835 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:44:14.05 ID:RJhXyT9p0

「いや、忘れてないから……ごめんなさい、すぐしにます」

「し、しななくていいから! 大袈裟すぎるっ!」

「いやだって、もうあんたとは付き合いきれんわぁって話じゃないのかこれ」

「なんでお笑い芸人っぽいの……そんなことないし、その、昨日のことは気にしてるけど、それだけで嫌いになんてならないから……」

「そ、そうスか……」

良かった……いや本当に良かった。
ここで別れたりなんかしたら自決できなくともマジモンのヒッキー確定ってところだったぜ……!


しかし、最大の懸念が解消されても疑念は消えていないのである。

836 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:45:17.99 ID:RJhXyT9p0

「そ、それはともかく、じゃあさっきの……暑いとか、アレなんだったんだよ」

「わ、わかんない?」

「サッパリ分からん」

目に見えない妖精が部屋埋め尽くすレベルで分からんわ。ハートを大切にね!

「えと……何も思わなかった? 感じなかった?」

「ばかだねぇ、じつにばかだね、とは思った」

「なんでドラちゃん風なの!? バカにしすぎ!」

「いやだって、なぁ」

「も、もう! 本当にもう!」

本日現時点で最大の激昂を見せた由比ヶ浜結衣、そのままこちらに掴みかかり……って、え?
837 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:46:36.81 ID:RJhXyT9p0

「お、おま、何!?」

由比ヶ浜の左手が俺の肩にかけられ、一気に距離を詰めてくる。
かけられる力は彼女の見た目に相違なく強くはないが、
その勢いと気迫は永世名誉鶏肉男子を圧するには十分な力があった。

え、DV? DVなの? 猟奇的な彼女なの? ギンタマンなの!?
そもそも家庭内暴力って俺まだ由比ヶ浜と結婚してるわけじゃないんだよなぁってかまだってなんだまだって結婚するつもりなんてそりゃいつかはって思ってるに決まってんだろつかこの思考スピードはなんだよ走馬灯なのこんな乱雑なのがそうなの死ぬの俺――

だが、

「これで、どう!? 何にもないの!?」

(由比ヶ浜結衣にしては)精一杯の怒気が込められた声で、左で俺の肩を抑えたまま、
乗り出した身を俺の目前に、右は再びシャツの襟からバレーがアップ……て、え。


バレーが、

谷間。

山が、

熟れた果実で。
838 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:48:18.19 ID:RJhXyT9p0

「え、お、おま」

至近距離、文字通り目と鼻の先。
白くて、豊かで、何よりも柔らかいことを俺が知っている、

由比ヶ浜の、胸が。

目前に、

乳が。

「ど、どう!? これでもコーフンしないの!?」

「あ、え、それは、します」

しますとも……なんで敬語。

「ふ、ふーん、じゃあコーフンしたヒッキーは、どうしたいの?」

「いや、どうもしません、です」

「なんで!?」

自分が悪いという前提でなら差し障りの無い返答が脊髄反射レベルに染み付いたナチュラルボーン謝罪人間比企谷八幡の本領発揮である。
……いや由比ヶ浜の反応的には明らかに失策なんだけど。
839 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:49:43.73 ID:RJhXyT9p0

これはあれか、昨日と同じで、誘惑してるつもりだったのか。
だからカーテン気にしてたのか。
そういう案件なのか。

「胸見えたってだけで興奮はともかく、その、盛るって、痴漢じゃあるまいし」

「そ、それはそうなんだけど……でも、こ、こいびとの、む、むねが見えてても、何もないの?」

「いやそれはほら、親しき仲にも礼儀ありとか、昔の人は言いまして」

「それもそうだけどー……」

みるみる萎んでいく由比ヶ浜の覇気であった。改めて自分の水差す才能に惚れ惚れするぜ……。

まぁしかし、誘惑というか、そういう方向に持って行きたかったのは何故なのか。
それも昨日のようなことがって、それでも昨日の今日でそうしたというのは。
問わねばなるまい……見えてる地雷なのかもしれないが、
それでも踏み込んでいくのは彼氏とか、恋人ってヤツの責務ではないか、と思う。

出来うる限り丁寧に、丁寧な配球を心掛けて。
840 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:51:16.63 ID:RJhXyT9p0

「あのさ、その……シ、シたかったの? セックス」

ごめん、デッドどころかビーンボールになった。

「そ、そーいう聞き方はデリカシーとか、ないよ……」

「わ、悪い。 いやでも、その、そーいうこと、なの?」

事前にデバフってたお陰か由比ヶ浜の反応に激したものはない。
そして言葉から察するに、渇望やら欲求を否定してはいない。

これは、まさか、本当に――?

今日一日のジェットコースターの締めくくりが昨日の再現であると、
あらぬ期待に下半身の神経が俄かに強張り始める。

「……言ったじゃん」

「へ?」

「リベンジするって、昨日言ったじゃん。 だから……」
841 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:52:39.89 ID:RJhXyT9p0

俯いて、由比ヶ浜らしからぬ低い調子で呻く様に。
あれやこれやですっ飛んでいた記憶、それは確かに昨日、自分の耳朶から脳細胞に刻み込まれた言葉だった。
リベンジすると、やり返すのだと、俺が茶化して冗談半分にしてしまったそれを、彼女は真であると言うのか。

「マジで!?」

「だからなんでそんなに嬉しそうなの!? む、無理やりシちゃうんだよ!?」

「逆に考えるんだ、無理やりして貰えると考えるんだ」

「うぅ、もしかしてヒッキー、変態なの……?」

世界のS・M比率なんて知るべくも無いが、年上お姉さんの上からご奉仕的なのとか、ジャンルとしちゃメジャーですよ?
まぁ由比ヶ浜は同い年だしお姉さん面しても大層バカで可愛らしくなってしまうからミスマッチかもしれないが。

「でまぁリベンジはいいとして、さっきの……その、胸がどうだの、あれ何か関係あんの?」

「……い、言わなきゃダメ?」

「駄目とは言わんけど、変だったし、気にはなるし」

それが誘惑であることの裏付けは取れたようなもんである。
しかし何かシチュエーションの意図があったのは察するがどうも杜撰で、ある種の疑念と興味は尽きない。
842 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:54:13.20 ID:RJhXyT9p0

「……えと、む、胸が見えちゃって、そしたらヒッキーはコーフンする、でしょ? するよね?」

「まぁ、それは、さっき言ったとおり」

「う、うん……それで、コーフンしたヒッキーがあたしに……それを、まだダメーって止めて、シたいです、シてくださいってお願いしてくるまでストップさせて、し、躾ちゃう、みたいな」

ぼそぼそ俯きがちに話す由比ヶ浜の意図を聞き、ようやく合点がいった。
主導権を握りたかったと。
そうだったのか、そういうシチュエーションを期待していたのか。

「バカだろお前」

「ま、またそういう言い方して! 何度もバカにし過ぎだから!」

「そもそも脚本も演出もなってないし、それに俺が無理やり、手篭め、とか、そういうのしようとしたらどうするつもりだったんだよ」

「て、手篭めって」

「力ずくでとか、それこそお前の言う無理矢理って奴だよ」
843 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:55:48.60 ID:RJhXyT9p0

まぁそういうことである。
由比ヶ浜のガバガバストーリーラインはともかく、スポーツもトレーニングもしているわけでもない彼女が、
同じく運動経験薄いとはいえ成人前の男性に腕力で訴えられたらどうするつもりだったのか。
緩そうに見えても男子の下心からスルスルと慣れた調子で逃げ回っていた彼女らしからぬミスというか。

「それは、その……」

俺の指摘に今更気付かされた由比ヶ浜は、口中でもごもごと声ならぬ言葉を泳がせて、

「……やさしく、してね?」

上目遣いで、頬を赤く、怯えと甘みを響きに含み、仰ったのだ。

ハイ死んだ! 今俺の心臓死んだよ! 何度目だよ!
844 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:58:11.15 ID:RJhXyT9p0

「い、いやお前、それ何の解決にもなってないし、その、お前それ……」

「で、でも、そうなっちゃったら、そうするしかないし……ヒッキーなら、聞いてくれるかもって」

「いやまぁその可能性は否定しないけどな……そもそも逆襲されてんじゃん、リベンジ返しじゃんよ」

「あぅ……」

何を期待されてんだ俺は……そもそも優しく出来なかったからリベンジ云々って話になってたんじゃないのか。
支離滅裂な由比ヶ浜の言いようも、全部彼女の可愛らしさで引っかきまわされて『わや』になる。
なんかもう大変で、疲れるのに、どうしようもなく幸福感で満ちてしまうのは、それは。

「うぅ、リベンジ失敗しちゃったよ、どうしよヒッキー……」

それを俺に聞くのかよ、と思いつつも声には出さなかった。
何故ならば。

「ま、まぁ面接?は失敗しても、この試験は実技で取り返せるぞ、多分」

「そ、そうなの?」

期待して、
期待して、
俺の方がもう止まれなくなっているから。
845 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 17:59:41.64 ID:RJhXyT9p0

昨日の己の失敗を彼女に転嫁しているようなものかもしれないが、
由比ヶ浜が「シてくれる」という、その希望が己の失態を無視して走っている。
昨日の今日でこれなのだから、俺が自分の失態を本当の意味で反省することはありえないのかもしれない。

罪悪感はあるが、それすら超えて張り詰めた神経が血流となって勃ち上がってしまっている。
ならばもう行く道は一つしかない。

「じゃ、じゃあ……リ、リベンジ、お願いします」

「は、はい……リベンジ、し、します」

こうして、何故か俺の主導により由比ヶ浜結衣の逆襲は始まったのだった。
846 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 18:02:17.02 ID:RJhXyT9po
というわけで第五話導入でした。次回からエロい展開になります。きっと
あと五話のサブタイは「怒れる小さな茶色い犬」になります。いつも入れ忘れ。
847 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 18:05:36.46 ID:RJhXyT9po
あと今後の投下予定ですが、
まとめ読みしたいという要望に沿って書き続けてはみたものの個人的なペースには合ってないようなので
サキサキの人を見習って今後は小まめな投下を心がけ一定ペースで進められるよう努めたいと思います
というかサキサキの人は凄いっスよね……

渋の方も折を見て更新していきたいと思いますので期待せずお待ちください
848 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 18:22:57.82 ID:O2Xb6qhuO
生きとったんか我ぇ!

続き待ってるぜ
849 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 18:38:49.98 ID:mDAwQFBbO
イッチ生きてたんか(驚愕)
とりあえず乙
この頃八結書きが復活して嬉しいなぁ
850 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 18:55:28.89 ID:Jtb7VRvRO
乙です
期待してます!
851 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 20:01:09.01 ID:NAJy0bBDO
ありがたい
長い間全裸大気しててよかった
852 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 21:32:11.71 ID:Xe2WHdsFo
おつーもう戻ってこないかと思ったけど待ってて良かったわ
原作はもうデレデレだからこういう馬鹿っぽいやり取り妙に新鮮な感じ
853 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 11:57:15.65 ID:R8SytgMTo
乙です
854 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/28(土) 16:36:58.23 ID:8EkyUQL/0
待ってる。
855 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/20(火) 23:32:57.17 ID:ZlsOBocVO
新巻出たしここも更新されねえかなぁ
856 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2019/11/20(水) 12:13:10.99 ID:c3V4tHB90
原作終了
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