その剣士、サキュバス憑きにつき。

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159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/16(水) 11:55:35.54 ID:JG8n/Dz5O
キタ━(゚∀゚)━!
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/16(水) 18:46:50.98 ID:1Wh+wIvGO


……………………



少女「終わったー!」

モノが減った分、部屋は以前より綺麗になったかもしれない。
いつになく良い汗をかいてしまった。

昔も、こうして手伝いをしていたな。


少女「ほれ、ご飯」

剣士「いいのか」

少女「給料だ!」


投げ渡された握り飯を食べる。
量は足りないが、それがいっそう腹に染みる。

少女も食べ終わると、整えたベッドに身を横たえた。

少女「ああ、疲れた」

剣士「……寝るのか?」

少女「あー? 眠くなったらな」


目を閉じ、こちらを信用したのか完全に油断しきっていた。
俺と同じく額に汗を浮かべ、投げた幼い腿が服から覗いている。


少女「お前も寝るか?」

剣士「やめておく」
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/16(水) 19:05:43.10 ID:1Wh+wIvGO

少女「じゃ、適当にくつろいでてくれ……」



それだけ言い残し、少女は瞳を閉じる。
軽く丸まり、毛布を抱くようにして落ち着いてしまった。

剣士「……」

戸締りをするにも、鍵がどこか分からない。外に出る事は難しいか。



…………

少女「すぅ……すぅ……」

どうやら、本当に寝てしまったようだ。
くつろいでてくれと言われても、片付けたばかりの部屋を物色する興味も、毒かも分からない食べ物をかじる勇気も無く、視線を結局は少女に移すことになった。



少女「すぅ……すぅ……」



規則正しい寝息が、部屋を静かに漂う。深く休んでいるようだ。

剣士「なぜ、このようないたいけな少女が……」

柄にも無く、この少女の境遇に思いを馳せてみる。
どれだけの修羅場をくぐり抜けて、あれだけの哀しみを宿せるのか。
生きるためには強くなくてはならない。


夢魔と理解しあった事のひとつが、頭を奔る。
同情と共感の入り交じった気持ちが手を伸ばした。


少女「すぅ……すぅ……」

寝顔はこんなに可愛らしいのに。
そして髪の毛は柔らかい。

俺がそっと手を離すとき、




少女「……」




紅い瞳の少女と目が合っていた。
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/16(水) 19:36:40.30 ID:1Wh+wIvGO


剣士「……!?」

足が痺れたと思った時には遅かった。痺れは全身に回り、たちまち動けなくなっていく……!
どうしてこう、最近の俺は迂闊なんだ!




少女「うふふ、上手くいった」

剣士「何を……まさか、魔族?」

少女「うーん、半分正解。分からないかしら?」



ああ。大方そんなところだろうと思っていた。



剣士「どこをほっつき歩いてると思ったら、いつから『入って』いた」

少女「ずっとよ。貴方に入っていたように朝から」

剣士「今度はどんな茶番がお望みなんだ」



少女「すぐ分かるわ。天井のシミでも数えてればすぐ終わるわよ? ふふっ♪」



瞳の色が黒に戻ると、もそりと布団を退けた少女が起き上がる。

少女「昨日……とんでもないもの見せられちまったんだ。夢の中で。ああ、思い出したくねえ」

少女「あれは……もう、ダメだったよ。あんな悪夢、壊れちまう。アタシは5秒で降参して、悪魔女の言うことを聞くことにした」

少女「アンタの使い魔だったとは、驚いた。そりゃ嵌めたし蹴ったし、怒るわけだ。ふたりとも悪かったよ」

少女「何とか許してもらって、今に至るってワケさ」
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/16(水) 19:59:55.31 ID:1Wh+wIvGO

剣士「それで、何故それを黙ったまま動き、何を吹き込んでいた……鞍替えでもする気か」

少女「あっはっは、それはねーよ。ずいぶんアンタ気に入られてるみたいでさ。あの人の世界で、直接顔を合わせたいだなんて言ってて」



少女「とても楽しいデートだった、と」



…………。

緊張を解いた。
本当に茶番じゃないか、何だったんだ一体。




少女「さて」

剣士「いや、待て。それなら、何で俺は縛られているんだ?」

少女「喜んでたけど、こうも言ってたぜ」





少女「昨晩、あれだけ働いてもうお腹ペコペコなのに、いつまで経っても精を補給してくれないって」

そ、それは直接言え……!

少女「アタシとちゃんと一緒に寝てくれればこうはしなかった、とさ。契約の事を忘れられてて怒っちまったみたいだぜ」









腕を取られ、体重のままベッドに引き込まれた!
抱き着かれたまま動けない俺は、嫌な予感に再び硬直する。

少女「精液よこせよ。」

衝撃的な囁きと、吐息の熱さが脳を撫ぜていった……。
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/16(水) 22:18:26.16 ID:xi0Gpww5O
ほう...!

楽しみじゃあないか
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/17(木) 16:56:35.49 ID:GNDx2Ma+O

少女「ん、しょ」

しなだれ掛かる肢体を振り払えないまま、上半身が引き込まれていく。
口でしている呼吸は熱く、耳に甘い。

少女「やっぱ、ガッシリしてんな……」




剣士「っ、やめろ」

年相応ではない低い声は耳元でだけ強く震え、それでいて女の声である。
唇の皮が耳を掠めた時、ようやく我に返ってくる事が出来た。

こ、これで押し切られてはいけない。精を与えなければいけない事はそうなのだが、夢魔の見ている前で、しかも、こんな幼い少女にそんな。



しかし気持ちとは裏腹に、睦み合う男女のように身体は寝所でもつれ合う。



少女「――アタシさ。いつも好き放題に使われるもんだから、好き勝手できるのは新鮮だわ」

剣士「な、なら尚更よせ! された側がその後どれだけ虚しくなるものか知っているだろう!」

少女「うるさいなぁ」

剣士「おい夢魔、見ているんだろう。すまなかった、止めてくれっ」



少女の細腕は背に回り、首と首を密着するように抱き合わせる。



少女「もう動けないんだし、諦めなって。今度は殺そうってワケじゃないんだしさ……ちゃんと、良くしてあげるから」

剣士「お前のような幼子に、こんなことをさせるわけにはいかん。そっちこそ、諦めてくれ」

少女「やだよ、結構腹ペコみたいだし。それとも何、他の男を食べに行っても良いの?」

剣士「それは、別に……」





少女「…………」

剣士「…………」





少女「もうヤっちゃえってさ。まあ、アタシも怒るわ。そりゃ」

な、何でなんだ……!?
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/17(木) 21:44:27.67 ID:GNDx2Ma+O

剣士「そもそも、人の精を受けたからといって憑いている人間を介して補給する事は出来るのか」

少女「出来るってよ。……へへ、その気になったか?」

剣士「それとは別だ。すぐに眠るから、勘弁してくれ……」





ぴったりと固定されたハグ。
呼気にも声にも熱い蒸気が混じり、寒気がするほどに耳腔を焼いていく。
続けざま、ゼロ距離の会話。
何度かもう、びくりと身体は竦んでいる。





少女「じゃあ、眠ってみろよ。本当に悪魔娘にワビを入れたいってんなら、すぐにでも眠れるよな……?」


剣士「この膝立ちでどうやって寝ろと、っ!?」

少女「ちゅむ……」




熱い粘膜が耳に吸い付いたその時……無様なほど、俺は震える。

少女「……な、気持ちいいんだろ。ちゅぷ……」


幼い肢体がアンバランスに蠢きだす。
水音とくぐもった声が、男の洗脳を始めた。
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/18(金) 15:33:31.54 ID:LHAJ1c+CO

剣士「っ……寝れるか、馬鹿」

少女「じゃあ、アタシに弄ばれるしかないなぁ……れろっ」

剣士「や、めろ。っく」






少女「耐えても無駄だぞ……時間はいくらでもあるんだから」

剣士「この調子だと、朝日が拝めそう、だな」

少女「へへへ、今は強がってろよ……お前から、楽にしてくれってせがむまで……ちゅぷ、れる」

剣士「っ。く……」

少女「眠れないよな……無理だよなぁ? しょうがないんだから、諦めて楽しもうぜ……」


…………。
どうやら、気勢を削ぐ事は無理なようだ。
言い返しても息は乱れるし、勝手に喋らせておく。

どこが……その、感じるかを、悟られてしまうのも、悔しかった。



少女「だんまりか……ちゅぷ、れぇ……」

少女「はむ、んちゅ……」

少女「……れる。……れる。……れる。」

先ほど舐めた、耳と頭の境を何度もなぞる。
耳が口の中に含まれて……甘く、ねっとりと。
どく、どくという口腔の脈が、少女から受け取るには生々しすぎた。

剣士「……ぅ」

不意打ちに身体が震えることはないが、……もう、本当に気持ちが良いと認めざるを得ない。ダメだ、いやらしい。
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/19(土) 09:16:30.54 ID:UltopfNtO

少女「こういうのは……?」

剣士「っ」

首に回されていた腕が解け、中指が耳にあてがわれだ。
するりと穴を塞ぎ、残りの指でさわさわと触れるように愛撫する。

少女「こうするとさ、アタシの声しか聞こえなくなるだろ。頭の中で、響かねえか?」

剣士「……、……」



少女「じゃ、もっかい。はむ、んん……くちゅる……」

剣士「……!」

少女「ちゅぷ、れるれるれる……ちゅうう」

剣士「ぁ……くぅ」



少女が紡ぐ水音が、塞がれた片耳で反射して、波のように揺れる。
娼婦のような舌遣いのせいで、思考がどんどん鈍くなっていく。息も上がる。
何度も、何度も、何度も。静かな部屋で、長い時間を。

俺の分身は、既に膨らみきっていた。





少女「ぷは……嬉しいなぁ。ちゃんと興奮してくれるんだ」

剣士「っ、ふ、はぁ……」

少女「なあ、少し聞いてくれるか」
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/19(土) 13:45:10.15 ID:UltopfNtO

少女「諦めろとは言ったけどさ」

少女「アタシも危ない時は、いろいろとクソじじい共に舐め回されたりしてさ。やっぱ嫌だったわけだけど」

少女「人ってさ、気持ち良いところに気持ち良いことされると、しょうがないじゃん。気持ち良くなるもんじゃん」

少女「身体は正直だな、とか言うけど、アタシそういうのマジ嫌いでさ。身体と気持ちはやっぱり別のもんだと思うんだよ」

剣士「……」

この身の事が脳裏をよぎる。
心はままならず、力は持て余している。

少女「だからさ」





少女「もし、本当に嫌だったら言って。綺麗な身体じゃないしさ……すぐ、楽にするから」

剣士「お前は優しいな」

少女「……」



少女「……///」



少女「お前、シラフでさらっと言うな! 余裕ないくせに」

剣士「分かった、お前の好きにして良い。あと、お前を汚いとは思っていない」

少女「……ありがとよ」



少女の指先から、光が奔る。
見覚えがあるような紋様を描いた時、俺は立ち上がり、その眼前に盛り上がりを突き付けた。

剣士「お前に好き放題されたい」

少女「……」

剣士「……」

いや、空気を読め。夢魔よ。
あと、素直になるマジックはやめろと言った。
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/19(土) 17:41:09.79 ID:UltopfNtO

体質なのかは知らんが、一気に少女の顔が紅潮する。

少女「おまっ……誘ったけどよ! 誘ったけど、そんな事考えてたのかよ!///」

剣士「割と早い段階からそうなる。可愛いお前にああもされれば、興奮するのは当たり前だ」

俺の口は留まるところを知らない。もういい。もう良いだろう。やめてくれ。
やめてくれよ……。



少女「かわ……!///」

剣士「ああ。もっと強引に犯してくるかと思ったら、あんなに焦らして、俺に許しまで請おうとする。だがそれがいい。」

少女「……」

もういい。もういいんだ俺。夢魔よ。もう十分辱めたろう。

剣士「さあ、もう先が濡れてるんだ。ひと思いにやってくれ」

少女「はいよ……」

少女が、半分覚めたような目でズボンに手をかける。




人間が、自分の思考や感情を抑圧するのは、とても怖い事に繋がるのだと知った。
あと、もう恥ずかしくて消えてしまいたい。




下着ごとズボンをおろされ、糸を引いた愚息が勢いよく飛び出る。

剣士「もう、殺してくれ……」

そして、最悪のタイミングで自我を返しやがった。

少女「あ、意識戻った? 大変だな、お前も……」
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/12/20(日) 04:46:35.64 ID:a5bDKInn0
ロリコンでMとかこの剣士救えない
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/20(日) 07:41:09.50 ID:9JNSP6xYo
剣士が可愛すぎて笑える
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2015/12/20(日) 16:23:41.28 ID:ddDKKc+0O
素晴らしすぎてくさ生える
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/20(日) 20:39:39.89 ID:i22MF0LC0
ここに来て剣士のイメージ崩壊。だが、それがいい。
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/23(水) 20:25:21.46 ID:xNvvfe/hO

少女「ホントだ、もう垂れてら……へへ」

つるりとした先の方に、丸い雫が浮いている。
それを眺めるのは恋人でもなく婦人でもなく、俺を殺そうとした盗賊で、幼子であるというそのギャップ。
既に羞恥は通り越し、世間から堕ちていくような興奮をもたらした。



少女「……熱いな。手、冷たくねえか?」

剣士「っく、ぁ」

ついに触れた手が柔らかくて小さくて、それどころではない。
軽く添えられただけのはずなのに、長く刺激を求めていた幹に響く。






少女「こすってれば、あったかくなっかな」

剣士「あっ……!」

少女の手コキが始まった。
圧力は優しく、速度はゆるい。
感動と錯覚するような、じいんとした快感が全身に広がる。

このままでも、長く耐えられない。そう直感するのに十分な痺れ。



すっ、すっ、すっ。
しゅりしゅり。



剣士「く、くうっ」

こんな早漏ではない筈なのに……それ程までに、心身が深く絡め取られてしまったのか。




しゅっ、しゅっ、しゅっ……


少女「へへ♪ そうだよ。声、我慢すんなよ」

剣士「く、くそっ、悪魔め……!」

少女「……今はアタシがしてんの。悪魔さんの事はあとでな」


ぴと、にちゅ……。


親指が先端にかすり、音の変化に目を丸くする。
意地の悪そうな笑みを浮かべると、両手の親指でくりくりと塗りたくった。
驚くほどの気持ち良さに、勝手に身体が反応する。


少女「はは、すげー我慢汁。もう出てんじゃねーの?」

剣士「んなっ、わけあるか……!」

少女「そっか。じゃあ出せよ。」


甘く包む手が、そのまま二本に増えた。
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/23(水) 21:08:34.55 ID:xNvvfe/hO


くち、くち、くち。
にちゅにちゅ……


剣士「っ、あ、あ……」

少女「なあ、こんな時で悪いけどさ、聞いてくれないか。」

剣士「っ……?」



少女「アタシは、本気で敵わない奴なんて今までいなかったし、生きるためには優しい奴にも酷い事しなくちゃいけなかったし」

少女「嫌われるような事して、嫌われて生きてた」

少女「気に入った奴も、利用しなくちゃいけない。アタシから離れて行っちまう……だから、悲しい事なんか覚えてられないように、深く入れ込まないようにしてた」

少女「……だってさ、ガキだし! そんな上手く生きてけねえもん!」

少女「でもさ?」

少女「アタシをマジで打ち負かして、アタシの事を認めてくれて、それでただ許してくれた、お人好しな奴がいたんだよ」


少女「アタシはな。お前のことは忘れられそうにない。」


剣士「……!」

少女「お前もいつか行っちゃうだろうけどさ。アタシのこと、忘れないでくれ」



くちくちくちくち!



剣士「う、あ……!」

祈るような手が、俺が逃げてしまわないように優しく包む。

拙く悲しい生の紡ぐ、戯れじゃない手練手管。
俺がいってしまう前の、ただこの短い時のために。
そんな、ものを受けたら、俺は、俺は……!


少女「……おっけー、部屋汚すなよ。んちゅっ」

剣士「!? うっ、あ、あ……!!」



どくん!



あの口に吸い込まれると思った時、気持ちの良いものが弾けた。
今は、どこへもいかない。
そんな気持ちが愛おしそうに俺を吸う、少女の頭に手を添えていた。
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/23(水) 21:53:47.48 ID:xNvvfe/hO

少女「んっ、んっ、んふ」

剣士「あ、はぁぁ……!」



どくん、どくん、どく、……



剣士「っ、吸われ……!!」

それは精神的な絶頂を迎えたと思った。
脈動に合わせ、ぷにぷにと吸い付く唇を見つめた時、たまらない快感が流れる肉体に意識がいった。

少女「んふふ、れるれる……♪」

剣士「っ!?」

少女「んちゅ、ちゅううう……」


どく、どく、どく、どく……


まだ絶頂する肉棒が、年端もいかぬ少女に翻弄される。
柔らかい粘膜が這い、長い長い気持ちの良い射精を味わわされる。





少女「ふっふふ。ごく、ごく」

剣士「っ、あ」

少女「ぷあっ。へへ……///」

嬉しそうな笑顔と、飲み干される大量の精液。


衝撃的な体験、倒錯的な快感。それは彼女の望み通り、嫌でも忘れられそうにはなかった。



……………………
…………
……
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/12/23(水) 22:32:59.91 ID:yBI7F0kC0
イイ…
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/23(水) 22:36:14.18 ID:PeUZb6FHo
>>178
うるせぇsageろks
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/23(水) 23:45:05.37 ID:xNvvfe/hO

かつて、勇者を取り巻く仲間には数多くの役職が存在した。
戦士や狩人、魔法を扱う者から神に仕える僧侶まで。
それぞれの道に精通し、到達した者だけが名乗り得る職業。

剣士「……」

しかし、男性として精通したものが、到達した際に賢者を名乗る事は、古今東西おなじみの事である。





少女「そんな落ち込んでメシ食うなよ、な? あんま気にしてないから、裸に鞭打たれてヒイヒイ言う奴もいるし、そんなのに比べれば全然」

剣士「そんなのと比べられる高さまで持ち上げないでくれないか……」

少女、淫行、絶頂。
己の罪状はこれだけでまとまる。
これから俺はお日様に顔を向けて生きていけるのか。



剣士「ごく、むぐ……」

温めてもらった粗製のスープを飲み、かなり硬いパンをかじる。
味わえる心境ではなく、あっという間に腹におさまった。

少女「んく、ごくっ……」
少女『ふっふふ。ごく、ごく』

剣士「……」



いや、口元を注視するな、俺!!!



剣士「あああ……!」

少女「……どうしたんだ頭振り乱して」

違う、これは違う。
俺はこんなに揺らぎやすい人間だったのか……?
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/24(木) 12:29:41.38 ID:atB4hdi2O

…………

少女「んじゃ、そっちのソファー使って良いから。おやすみ」

剣士「ああ……」

少女「これで許してくれるんだよな? ……オーライ、殺されるかと思ったぜ」

剣士「……」

正直、眠りたくない。
どんな仕置が待ち受けているのか、恐ろしい……。



少女「明かり消すな」

剣士「ああ……」

少女「……もう一発するか?」

剣士「!? もうしないぞッ!」

少女「たははは、冗談だって。明日よろしくな」


少女は眠りについたのか、ここには俺がひとり。
暗い部屋が、来るべき悪夢を予想させるようだ。



剣士「……zzz」



ただ疲れていたのは確からしく、身体はソファーに沈んでいった……。
182 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage ]:2016/01/01(金) 10:32:37.31 ID:p/04288SO
まだか
剣士はまだか
183 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/02(土) 17:10:07.31 ID:eS/Bq8yeO



夢魔「……お目覚めかしら」



夢に落ちると、そこはベッドの上だった。
ただそのベッドに果てはなく、薄く心地の良いシーツが延々と広がっている。

それをベッドと理解できるのは、傍らに座る存在のあるが故か。


剣士「あと5分……と言ったらどうする」

夢魔「貴方は、私を5分も我慢できる気でいるの?」

剣士「お前のする事で、時々歯止めの利かない激情に襲われる」

夢魔「あら、私は罪な女ね……」



柔らかい布に手を付き、起き上がる。
女豹か狼のように襲いかかろうとする使い魔が、赤い視線を向けていた。



夢魔「では、改めてこんばんは。ご主人様、何か言い残すことはあるかしら?」

剣士「弁明を。」

夢魔「それは聞いてあげない。大丈夫よ、別に取って食おうという話じゃないの」

剣士「……済まなかった」

夢魔「済んじゃったものね。まあ、私から言うことと言えば」





夢魔「この変態。」





剣士「…………」

これは、堪えるな……。
184 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/02(土) 17:39:14.88 ID:eS/Bq8yeO

夢魔「あの子を通して頂いた、あの濃厚な精液。最高に美味しかったわ、それはもう、腹立たしいほどに」

夢魔「このところ、口に苦い良薬ばかり飲まされてて舌が狂っていたかと思ってたけれど、安心したわよ」




夢魔「お陰で、その中身までハッキリと味わうことが出来たわ。はぁ……」




……何?
中身?

夢魔「良い? ご主人様」




夢魔「なんで私のキスより感極まって興奮してるのよ!!」




剣士「な、なんでそう言い切れる」

夢魔「分かるわよ味で!! 宿の娘ちゃんといい、貴方は小さい女の子なら何でも良いの!?」

剣士「!? それは誤解だ……!」

夢魔「なら、ああやって身体を売ってる女に興奮する性癖なのかしら!? 変態じゃない!!」

剣士「売女が好きとも売女が嫌いとも言っていない!」

夢魔「それは幼女ならどっちでも良いってことでしょう!? この変態、変態!!」

剣士「一言も言っていない!!」



……………………
…………
……


夢魔は初め、男に媚ぶのは嫌だとは言っていた。

ただ、女は女だったらしい。

女は、分からない。



そんな感想が、ヒステリックな問答の間に木霊していた……。
185 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/02(土) 17:53:12.80 ID:DCnmjuVDO
これはwwww
186 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/02(土) 21:01:44.54 ID:+SgucArS0
夢魔かわいい
187 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage ]:2016/01/02(土) 21:07:31.27 ID:uhEkaymL0
夢魔の嫉妬てらかわ
188 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/03(日) 10:11:34.09 ID:LZ0x2VJho
あらあらwwwwww
189 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/06(水) 11:51:30.94 ID:loCTq9bqO



剣士「……」

夢魔「……」



背中と合わせた筋肉が、揺れる羽に合わせてピクピクと動いている。
横でシーツを叩く尻尾もペチペチペチ……と、どこか落ち着きがない。


ひとしきり言いたい事を吐き出したあとで、しおらしくされても困るのだが。


剣士「夢魔よ」

夢魔「……何よ」

剣士「あまり気取るな」

夢魔「どういう意味かしら」

剣士「先ほどのように、自分の思った事は言った方が良い」



……ペチペチ。



夢魔「……」

剣士「口調も、砕けていた方が良いだろう。そのように見える」

夢魔「貴方に言われたくないわ」

剣士「俺は元よりこうだ。すまない」

夢魔「……あのねえ!」




夢魔「寂しかったの!!」




壁に返らない無限の世界に、彼女は鳴く。
俺は驚いてる事を自覚し、しかし胸の中にあるよく分からないものを持て余していた。

剣士「…….悪かった」

夢魔「もう言わないからね」

剣士「夢魔」

自然と肩に手が伸びる。振り向き、振り向かせ、押し倒す。
開く瞳孔、はためく長髪、開いた唇。



夢魔「な、何あなたっ、んっ……!」



可愛いと思う事に、説明は要らない。
190 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/06(水) 12:11:28.33 ID:gEPrkdrG0
うっひょおおおおおおおおおおおおお
191 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/06(水) 12:23:21.49 ID:loCTq9bqO


夢魔「ん、んぅ……!?」

魅せられてても良い。
狂ってても良い。
堕ちていっても良い。

夢魔「ん、んんっ、んちゅ」

可愛い。

夢魔「ちゅ、ちゅう……」

可愛い。

夢魔「ふあ、んんっ……」

ああ、可愛い……。

夢魔「ちゅぷ、あふ……♪」


あと、不味くてすまない。

夢魔「……んう。ぷは」




ぬるついた舌を抜くとき、びりりと気持ち良い。
赤い頬と、不満そうな顔が、また火を付けてしまいそうだ。


夢魔「……少し、癖はあるけど。今の、美味しかったから」

剣士「夢魔」

再び、襲いかかろうという俺の身を制す。

夢魔「あ、あの、お腹いっぱい、もう」

剣士「……そうか」

夢魔「露骨に残念そうにしないの……」

夢魔「余計なこと考えないで、またさっきみたいなご飯を、ご飯が、欲しいな」



夢魔「……///」



この、胸に宿るよく分からないものは何だろうか。
遠い昔に、自分が凍らせてしまったものが、ほんの少し融けたような。

剣士「……」

言葉にするのは難しいので、掻き抱いた。
192 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/06(水) 12:30:26.13 ID:m9uUr1eMo
うひょう!
193 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/06(水) 12:34:37.13 ID:MaqZp2e50
えんだあ?
194 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/06(水) 13:02:32.85 ID:9IEtbqYWo
いやぁ?
195 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/06(水) 16:15:41.70 ID:loCTq9bqO

…………

剣士「zzz」

夢魔「別に、お気に入りなのは公言しちゃった事だもの。今更」

夢魔「……///」



夢魔「でも、ね……私、サキュバスだし」

夢魔「私の気持ちも、彼の寵愛も」

夢魔「…………。明日、空いた時間に文献でも漁ろうかしら。いや、明日はご主人様のサポートに回らなくちゃ」





夢魔「そんな、疲れること考えるもんじゃないわね。お休みなさい、貴方様」
196 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage ]:2016/01/07(木) 16:54:36.67 ID:kKwJQQf90
この世界では一夫多妻はありならいいなぁ
197 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/08(金) 09:22:43.05 ID:3j3O9G23O

……………………
…………
……


剣士「……」

少女「よう、起きてたのか」



夢魔「ほら、挨拶くらい返したら?」

あ、ああ。



剣士「……ああ、おはよう」


少女は薄暗い部屋の中で荷物をまとめ、服の中に何やらガサガサと仕込んでいた。
陽が半分顔を出した頃のことである。





少女「飯、そこのパン。支度できたらいこーぜ」

剣士「すまない、いただく」

少女「へへ、昨晩は楽しかったか?」

剣士「楽しくなかった、ということは、ないな……」

少女「へぇ〜?」




夢魔「何言ってるのよ……」

どう返せと……。




剣士「ご馳走様」

少女「うい。準備は出来てるか?」

愛用の剣を抜く。
油は薄く伸ばしてあり、刃も異常ない。

剣士「ああ」





少女「じゃ、行こうか。」

ああ。

夢魔「ええ。」
198 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/08(金) 12:59:36.80 ID:3j3O9G23O



剣士「しかし、ギャングという実態の薄いものをどう潰すつもりだ」

少女「実態がどーちゃらと言われても分かんねーけど、隠し事の多いやつらだから口は固いだろうなあ」




秘密主義の強い組織なら、揺すろうとそう壊れる事はない。

夢魔「そうね。舐めてかからない方が良いと思うわ」

当然だ、緊張すらしている。
無法者の集まりに見えて、その手の輩は異様なほど人を束ねる事に長けているものだ。

夢魔「まあ……私もおんぶに抱っこじゃ困るだろうし、期待してても良いわよ?」

俺の身体を使う時は言え。了解したら明け渡してやる。




少女「さて、あそこに見える商社が元締めなんだけど」



大きな倉庫と合わさったような、高い建物が見える。卸売業でも手掛けているのだろうか。



剣士「ああ。策はあるか」

少女「アタシ、お前のことは本当に信じるからな」

剣士「策は無いんだな」

少女「へへ」

剣士「まったく……飾った言葉はあとで聞いてやるから、誤魔化すものではない」





正面からズカズカと門に近付いていく少女。

少女「〜〜〜〜〜」

当然門番に止められるが、何やら見せると舌打ちをしながら道を譲る。

少女「おい、お前も来いよ」

剣士「あ、ああ。良いのか?」

少女「偉くはないけど元構成員だからな。門番くらいじゃアタシが末端で寝返った事なんて知らねーだろ」

199 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/08(金) 13:22:38.70 ID:3j3O9G23O




少女「さって、ここらで受付なんだけど……覚悟は良いか?」




剣士「構わんが、二手に分かれるのは御免こうむる。道案内は欲しい」

少女「離れたら先にアタシが殺られるわ。よろしく頼むよ……!!」



懐から白い塊を取り出し、少女は前方に投げ付ける。
塊は煙を噴き出し、建物の玄関を覆う!



少女「煙幕と神経毒のハイブリッドさ! ねーちゃん、代わんな!」

マスクを着用した少女が煙に突っ込む。
建物内には既に声が沸き始めている……!

剣士「早速か……夢魔!」

OK、頼りにしてくれるわねぇ。



……っ!
魔剣士「っ、接続完了よ。貴方の期待に応えてあげる」



タッタッタッタ……!

魔剣士「煙の量が多いわね」

少女「ねーちゃん、こっちだ!」

少女はナイフを抜き、カウンターに迫る。



少女「『ホウレンソウ』は素早くやるもんだ。グッバイ」

受付嬢「っ!?」



少女は肩の上に飛び掛かり、喉と頸動脈の二箇所を素早く突き刺した。

少女「ビビんな! ズラかるぞ!」

本当に、殺しに躊躇はないのね……。

剣士「眺めるのは後だ、追え!!」
200 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/08(金) 13:34:51.98 ID:3j3O9G23O


キャアアア!!
おい、敵襲!敵襲だ!!
くそっ、頭が痛ぇ……!




魔剣士「この煙は沈む?浮かぶ?」

少女「沈むはずだ。地下の奴らも牽制できるだろ」





通したら親父に殺される!


剣士「……殺気」


クソ野郎がッ!!


剣士「夢魔、伏せろ!!」

魔剣士「っ、少女ちゃん!!」


ガバッ!!
ダァン!!


少女「ってぇ、何すんだ」

魔剣士「撃たれるところだったわよ!」

剣士「怯むな、右だ!!」

魔剣士「クッ、右よ……!」

ダァン!!

少女「痛って!? ……くうっ、この野郎!」



少女は横腹を押さえながら、持っていたナイフを水平に投擲する。
視界の悪い中、回転するそれは見事胸元に突き刺さった。



魔剣士「撃たれた!?」

少女「大事ねぇ!! 来い、上だ!!」
201 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/12(火) 16:49:46.09 ID:dQmgm0kUO

煙の海を逃げ出すように階を上がり、少女はその踊り場でへたり込んだ。


魔剣士「少女ちゃん」

少女「大事ねえって言ったろ。……痛いけど、深くねえ」

抑えていた手の指からは、既に血が溢れ始めている。

剣士「バカを言うな、これは浅いわけがない。臓を抉られているはずだ」

魔剣士「少女ちゃん、無理は絶対に駄目よ」

少女「処置の用意くらいしてるに決まってんだろ? っと、いてて……」



マスター。

剣士「どうした?」

少女ちゃんを撃ち抜いたあの野郎、どう思うかしら?

剣士「……俺の考えが甘かった」

違うのよ、そうじゃなくて!
もっとこう、正直に言いたい事があるでしょう?

剣士「撃つなら……俺の身体にすればよかったものを」

そうじゃなくて、マスター。
もっと正直に、ねえ。
負の感情は、抑えつけちゃいけない……生き物には必ず、必要なものよ。



少女『嫌われるような事して、嫌われて生きてた』
少女『……だってさ、ガキだし! そんな上手く生きてけねえもん!』
少女『アタシはな。お前のことは忘れられそうにない。』



剣士「よくも少女を――」

自分の中にある、恐れていた力が灯ってしまう。
恨み、怒り、恨み、悔しさ、怒り、怒り怒り怒り。
っ、思いの外に強い。抑え付けなければ……!


魔剣士「協力ありがとう、マスター。喪われゆく生命よ、命の力よ……!」

しかし、にっこりと笑った俺は掌を少女にかざし、暴れ出る力をその腹部に向けた。

少女「う、くっ?」
剣士「これは……!?」

魔剣士「癒しの力よ。今、代謝に力を加えて炎症を抑えたわ。こう見えても私、魔法使いの弟子なのよ?」



少女の傷は塞がるに至らないが、血はすぐに止まり、顔色を見るに痛みも緩和されていると見える。
暴れかけていた俺の激情も薄れていく……なんとも、頼もしい悪魔だ。



剣士「成る程、俺から力を引き出したかったのだな」

勘違いしないでマスター、貴方の強い力を魔力に変えられるのは、起因する負の感情を私が把握できる時だけ。

剣士「それはどういう事だ?」

平たく言うとね。私も、ムカついたからよ。

剣士「そ、そうか……」

協力、というよりは、共感してくれてありがとう。
ふふっ、こうしてふたりで寄り添える限り、この力は貴方のものよ。



少女「なんか、すげーし分からねーけど……ありがとな、ねーちゃん!」

魔剣士「あら、どう致しまして。さてマスター、私の出番は終わりよ」

分かった……!
202 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/12(火) 17:03:32.03 ID:Gl0CJRFRO
良い二人だな
203 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/13(水) 10:08:12.20 ID:VnB5L5qhO



夢魔「っ……消耗するわね」

っ……平気か。

夢魔「そうね、ふふっ。今夜は楽しみにしてる」



剣士「待たせたな、行くぞ」

少女「おっけー、アンタから頼む」

剣士「分かった……追っ手はどうする」

少女「ほいっと」

少女は白い塊をもうひとつ階下に投げ込む。
階下の人間は更に悲鳴を上げ、ドタバタと離れていったようだ。



剣士「2つあったのか……」

少女「今のは玉ねぎ爆弾さ。嗅ぐなよ、ねーちゃんでも鼻痛くなるから」

マスクを取り去り、気合を入れ直したように後ろを付いてくる。

少女「こっから上にいる人間はクズばかりさ。殺っちまえ」

剣士「……お前がその許可を下しても困る」

少女「まあ、気兼ねなくやってくれって事だよ」

剣士「なら、俺からは手を下そう」



「出たぞ、ってー!!」「うらうらうらうら」「蜂の巣だっちょお!!」



最後の段を登り切り、すぐ近くのテーブルを蹴飛ばす。
宙に浮いた木の机に風穴がいくつも開いた。
204 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/13(水) 10:12:12.10 ID:VnB5L5qhO


少女「チッ……!」

剣士「金を」

剣士「よこせええええ!!!」

羨望、嫉妬、財欲。
いや、そんなに執着があるわけではないのだが……確かに、小さく自分にある事を認め、制御できる力を振るう。

贅沢な身体しやがって……。

「ぷげぇ!?」

突き出した拳が机を突き破り、そのままふとましい男の頬を張り飛ばす。


ダダダダ……!


剣士「おっと撃つなら肉を撃つんだな」
「ひ、ひいっ」

「く、くそ」「アニキィ!」




少女「当てられない銃なんか持つんじゃねえよ」

ダァン、ダァン!!


「がっ……」「ぐあっ!」


少女の銃撃がそれぞれの拳銃を撃ち落とす。

剣士「悪くない」

少女「えー、ちゃんと褒めてくれよ」

間合いの長い獲物で固まって戦う理由が俺には分からない……お陰で、一振りで足りそうだ。


ズバン!!


剣の速さも長さも悟らせはしない。
居合の線上に首が2つ舞った。

「よ、よくもボクのぶきゃを……!」

少女「後ろだよおじちゃん」



ダァン!!
205 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/14(木) 10:24:01.63 ID:b/QoVJomO

……。


剣士「……ふん」
少女「ほれ、こっちこっち!」



ギャアアア!!!
ごは、ああっ……。
へ? あ、あ、ああー!


夢魔「………………」



夢魔(頑張ってくれている2人には悪いけれど)

彼の中に眠る使い魔は、主人の目を通して伝わる惨劇に口を押さえていた。
首も瞳もままならぬ、彼と添い遂げるに決して目を逸らせない光景が流れ込み、聴覚から伝わる断末魔が頭をおかしくする。

夢魔(吐き気が……)


慣れたつもりでも、身体と心は拒絶反応を起こす……それは生き物としての本能か、過去の傷跡か。


彼が生き物を殺す様子は何度か見ている。だがそこに負の感情がぶつけられている事が、恐怖を与えるのかもしれない。





夢魔(……集中。魔法陣を書き足して、接続を強固に……)
206 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/14(木) 10:43:17.81 ID:b/QoVJomO



屍と荷物の散らかった3階を突破し、4階へ。
金細工のされた仰々しいドアノブに手をかける。



剣士「……。鍵か」

少女「いや、アタシは分からねーぞ?」

剣士「下がっていろ」




剣士「おおおおッ!!」




バキィ!!

剣士「……破れんとは」

剣の柄で挑んでみたが、手応えはない。
今、何か憎むような、負の感情を呼び起こせることがあるだろうか……。

夢魔「この変態。」

剣士「ぬおおおおおおァ!!!」



バキャア!!!
もうもう……。



素直になるマジックのくだりは、指折りの屈辱である。

夢魔「あら、いい火力ねえ」

覚えていろ……。








?「……おいおい、ご挨拶だなァ」

誇りと木屑の中から姿を現したのは、スーツに身を包んだ男だった。
207 :誇り→埃 [saga]:2016/01/14(木) 11:53:10.54 ID:b/QoVJomO

?「はぁん、強そうジャン」

正装で固めてはいるが、前は大きくはだけ、胸元が覗いている。その雰囲気はどうにも締まらない。
俺は、この男に何か覚えのあるような感覚……あるいは、悪寒を覚えていた。

剣士「少女。こいつと会うのは初めてか」

少女「ん。たぶんボス」





夢魔「待って、この男……」

知っているのか、夢魔。

夢魔「知らないけど、でも、これ……」



?「そいじゃ、遊ぼうぜ」



男の瞳が赤く光る、その一瞬前。
何度も経験したおかげもあって、何とか目を逸らした!


剣士「少女!」

少女「う、ぐぁ……頭が……いてえ……!」

?「はぁ? おい、オマエ縛術避けるとか何様なワケ?」



やはりか。
夢魔「ええ、犯罪組織の元締めは……」



剣士「人間様だよ。悪魔」

?「……くっくっく、コイツは面白え。テメエ何もんだよ」

剣士「金が欲しくて、ここを壊しに来た。それだけの者だ」




少女「っく、やめろ、頭に、入るなよぉ……!」

夢魔、これは大丈夫なのか?

夢魔「良くないわ。精神が覗かれて、蝕まれてる……」

どうにか出来るか?

夢魔「超遠方からの夢干渉と、支配してからの精神侵食では……ごめんなさい。勝ち目は、ない……」
208 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/14(木) 14:09:02.70 ID:r0oIDtguO
こらどういうこっちゃ
209 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/14(木) 14:31:19.57 ID:b/QoVJomO

俺に乗り移っても、少女に成り代わっても駄目なのか?

夢魔「……私の術は、あくまで被術者の精神に私が入り込むもの。あれは術者の制御を離れ、被術者の精神を攻撃し崩壊させるもの……先に倒すわよ。」

了解した。



相手は悪魔。
竜より身体能力は劣るとはいえ、人間より優れた力と狡い魔術を有する種族。
扉を割った時にこちらの力量も割れているだろう……時間はかけられない。



剣士「……行くぞ」

ひとまず、深く斬るように剣を振り抜く。
それなりに素早く詰めたつもりではあったが、かすってはいない。

悪魔「っと、あぶねえ」

剣士「ふっ!」

悪魔「ほっ!」

剣士「たっ」

悪魔「ヒューッ」

剣士「穿て……!」

悪魔「おっとっと!」



身のこなしが軽い。こちらの力量を測られているか。



悪魔「オシマイ?」


不愉快な奴だ。

夢魔「……同感よ」



悪魔「じゃ、悪魔らしいことでもしてみるかなァ? クラァ!!」

悪魔の指先に光が奔る。
魔力は稲光を伴い、動けない少女を襲う!




少女「に、げろ……!」


剣士「!」
夢魔「!」
210 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/14(木) 14:33:30.08 ID:b/QoVJomO



バリバリバリ!!



夢魔「く、卑怯な……!!」
剣士「今さら逃げるか!!」


痺れより、熱い……!
稲妻が肌を焼け付く!


少女「! ば、かっ」

剣士「……う、ぐ」

悪魔「へへ、バッカでー。オラオラオラオラ!!」


バリバリバリバリバリバリ!!!




剣士「ぐ、あああっ!!」




夢魔!
力を貸してくれ!

夢魔「Yes, my master……!」





 
211 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/14(木) 17:46:20.14 ID:/yYf2VY7O
アツイ
212 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/15(金) 10:39:20.86 ID:0VEKPgznO


少女「あ、あああ……」


少女は、強く生きてきた。
しかし、強い子供ではなかった。

剣士「……」

傷付けられれば弱り、何かを失えば泣いた。
人にそれを悟られないよう、付け入られないよう、ひとりで。
そして今もまた、大切なものを、目の前で。


バリバリバリバリ……




……。

雷が、剣士の手のひらで止まっている。
まるで吸い込まれるように。
たくましく足腰を踏ん張り、冷たく敵を睨む。

少女「え……」
悪魔「何だ?」



剣士「その辺に」
魔剣士「しておきなさい」



剣士のごとき、鋭い闘気。
魔術士のごとき、聡い眼差し。


悪魔「テメェ、憑き物がいやがったか……!」


左手を頼む。
ええ、踏ん張ってね。

バリバリバリバリ……!

剣士「く、う」

左手に灯された光が、剣士の意思や思考を離れ、紋様を描く。
反動に押される体躯は、夢魔の意思や思考とは関係なく、力強く踏み止まる。


少女「え、どっち……?」


共感、とは共通の「感情」なのか。
共通の「感覚」なのか。
あるいは共通の「感応」なのか。
あるいはそのすべてで、絆と呼ぶのだろうか。

芽生え始めた小さな繋がりは、両者の身体と心を分かち合い、前代未聞の力を育む。





悪魔「チッ」

雷が退いた。
213 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/15(金) 10:46:58.03 ID:tzbiiLK5O
良い展開だ...!
214 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/15(金) 11:33:14.15 ID:0VEKPgznO

少女「ぐ、へへ……心配、させんなよ……」

剣士「少女、もう少し待っていろ」
魔剣士「すぐ終わらせてくるわ」



悪魔「アタマが2つに増えたところでよォ!」

剣士「変わるさ」


悪魔は直接戦闘に持ち込もうと、長く伸ばした爪を振り下ろす。
右の剣を返して追い返したところに、左手が静かに牙を剥いた。

魔剣士「燃え上がりなさい!」

悪魔「ぐわっち!! んのヤロウ……!」


放たれた火の玉が直撃する!
体勢を崩したまま雷をこちらに差し向けるが、しかし俺を守るように左手が立ち塞がる。

魔剣士「三流ね」

悪魔「テメッ」

剣士「俺を忘れるな」


ズバン!


悪魔「アギャア!」

胴を狙った一閃が、ついに悪魔を捉えた。
大きく血が溢れ、悪魔はたたらを踏む。



仕上げだ。
ええ。



何も言わずとも、両の手で剣が握られる。
強い殺意と魔力が、ふたりの剣に炎を上げる!

剣士「……暴れていいか」
魔剣士「構わないわ、殺すわよ」

赤熱する光が、この町の悪魔を切り裂く!



剣士&魔剣士「「死ねえええええええ!!!」」
悪魔「あ、アグオオオオオ!!」



どちらが果たして本当の悪魔なのかは分からず、しかしてどちらが本当に強いのかは明白となった。
215 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/15(金) 11:53:16.92 ID:0VEKPgznO


ズシャッ!


身体に刻んだ焼け跡は、血の跡も残さない。
すべてが丸く収まるわけではないだろうが、これで良いのだろう。

少女「っ、く」

魔剣士「少女ちゃん!」

代わるか?
いえ、大丈夫なんだけれど……。



魔剣士「大丈夫? 私が分かる?」

少女「……へへ。そんな声で聞かれても、カマホモにしか見えねえよ」

ペチンッ。

少女「あだっ」

剣士「聞こえてるぞ。さ、盗るものがあるならさっさとしろ。済んだら逃げるぞ」

少女「そうだった! おお、これ宝石っ」



治療はいるかしら? ひりついて痛いでしょう。
ああ。

ただ、今は何を憎む気にも、妬む気にもなれないな……。

ふふ、そう。分かったわ。なら……。


剣士「っ?」


全身の感覚が薄くなる。雷で受けた痛みも同様に。


半分こよ♪ ね、ご主人様。
……。


この状態なら、心の声にあげなければ思案はバレないのだろうか。助かった。
何故かと言えば、無性に彼女を撫で回したくなっていることを、悟られないで済んだからだ。
216 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/16(土) 18:19:09.31 ID:AwF054xyo
仕方ない、自分を撫で回そう
217 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/18(月) 10:53:46.02 ID:d2XP+GmcO


……………………
…………
……



夢魔「こんばんは、マスター」

剣士「……ああ」



その夜。
夢で待つ夢魔はいつもの悪魔らしいボンテージではなく、町娘のような、柔らかい印象の普段着を身にまとっていた。
呼び出された場所も、整った石畳の印象的な街道。いつか呼び出された場所である。

総じて、佇む彼女は可愛らしかった。



剣士「初めて見る服装だ」

彼女を照らす街灯に入ると、夢の世界で俺たちだけがスポットされたかのように感じる。
コツコツと刻む足音も、ふたりを急かすことはない。

夢魔「その、似合う? ……私のイメージと違うかな」

剣士「似合っている」

夢魔「ふふ、お世辞でも嬉しいわ」

剣士「いや。その姿も、愛らしい」

夢魔「――。」

剣士「どうした、目を見開いて」

夢魔「いえ、あの、貴方がそんなこと言うなんて、思ってなくて……」


見上げていた、ガーネット色の瞳を伏した。
尻尾は服の中に隠れているようだが、背中の羽はピコピコと動いている。


夢魔「……///」

小ぶりな耳が赤い。


くしゃり、と。

俺はガサついた掌を、そっと夢魔の頭に乗せた。

夢魔「えっ」

剣士「今日は、世話になった。ご苦労様」

夢魔「……うふふ。身構えて損したわ」



しばらく、夢魔はされるがままに身を寄せていた。
218 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/19(火) 07:39:21.55 ID:GDy/bA7MO
剣士のデレが止まらないな
219 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/19(火) 09:53:26.28 ID:/mEdVXjAO


夢魔「少し、歩きましょう?」

剣士「……構わないが」

歩き出した夢魔に、半歩遅れて進む。
彼女はこちらを向かず、静かに遠くを見ていた。


夢魔「ふふっ」

剣士「?」

夢魔「闇夜の逢瀬ってところかしら」

剣士「……さあな」



少し足を早め、横に並ぶと目が合った。
隠す様子もなく彼女は上機嫌で、何も言わず眼を細める。



剣士「この町は、お前にとって大事なところなのか?」

夢魔「ええ。大事というか、私の住んでいるところよ」

剣士「逃げてきた夜、悪魔に拾ってもらった……」

夢魔「そう、その町。そうね、今の私にとって一番大切な場所だわ」





ポツポツとした明かりに導かれ、やがて小さな石橋にたどり着く。
そこだけは街灯も小さく、転落を防ぐためだけの間接光が灯っていた。


夢魔「ここ、何だか分かるかしら」

剣士「川に架かる橋だな。日ごろ息抜きに来ている場所か?」

夢魔「あら、当てられちゃった……んだけど、それは日中の話なの」


夢魔「ねえ、ご主人様。分からないかな」


夢魔の瞳が、次第に赤い光を帯びてゆく。
魔性を伴うものというよりは……どこか、本能的に熱を込めたような瞳。

気付けば、胸板が触れ合うまでの距離にまで近付いていた。



剣士「分かるさ。これは逢瀬なのだろう?」

夢魔「ふふ、本当に分かってる……? じゃあ、答え合わせを、シて」


合わせたのは唇だった。
220 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/19(火) 10:34:25.38 ID:/mEdVXjAO

無骨で不器用で、そして愛を注ぐ男。
可憐で蠱惑的で、そして彼を欲する少女。

如何にその生が歪であろうと、今のこの時は街角で語らう男女と変わらない。




剣士「ん……」
夢魔「ん、ん……」


ふたりはひたむきに唇を合わせたまま、胸に抱き、抱かれる。


夢魔「ん、ふ、んぅ……」


可愛い。愛らしい。愛おしい。

憧れだった。普通の恋人みたいな、キスがしたかった。


ついに、唇から伝わる想いは相互のものとなり、伝わるたびに強くなる。
精は主従関係のままに流れているが、性に流される事はなく、舌を挿れないキスが続く。







剣士「……ふ」
夢魔「んは……っ」

頭がおかしくなる前に、ふたりは唇を離す。

剣士「夢魔……」
夢魔「うん……」




「んんっ……!」

やっぱりおかしくなってしまいたかった。
221 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/19(火) 10:50:25.53 ID:9tkjeNBkO
イイ...
222 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/19(火) 11:22:56.78 ID:/mEdVXjAO

…………。

剣士「さて、路銀というには足りすぎているし、明日からどうするか……」

夢魔「金も身体も狙われないとは言えないし、発つなら早い方が良いと思うわ」


熱に浮かされるような、そんな甘い口付けはいつしか終わっていて、俺たちはすぐ横にあるベンチで休んでいた。
何となく、今夜はお互いに満足してる感はある。これ以上じゃれあって空気を壊したくなかったのもあって、今度の会話はさっぱりとしていた。


……

少女『おい、マスター! 言われた通り、壊してきたぜ!』

マスター『……マジみてえだな、嬢ちゃん』

少女『これ、これとこれ宝石だしっ、これ札束に、金貨! にししっ、改めて見るとすんげー!』



あれから、その日のうちに運び込まれた盗品は大した量になった。
トップを失い瓦解した組織からは、自壊するかのように構成員が抜け出ていった。
示し合わせたように飛び込んでいく火事場泥棒と相まって、むしろ脱出する時の方が混沌としていた。


少女『んで、これ……あちこちの店の権利書。全部取り返せなかったけど、悪い奴に取られる前にさ、泣いてた奴に返してやってくれ』

マスター『……良いのかい。俺だって善人じゃねえぞ』

少女『アタシなんて大悪人さ。今日も何人殺ったか覚えてねえ! ははは』

マスター『一丁前ぶりやがって。分かったよ、責任を持って俺が預かる……よくやったな』


そこに子供らしい健やかな成長があったとは言い切れないが、俺と夢魔は口元を緩めていた。
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/21(木) 11:41:32.20 ID:8PY6O9OaO

マスター『じゃ、報酬はキッチリ渡さんとな』

少女『金貨10枚だっけ?』

マスター『まあ、本当にやってくれちゃったからなぁ……約束は守るさ。んで、2人で山分けするのか?』

少女『そうだな……』



少女は盗品の入った袋の中から、宝石類やその他価値のありそうなものを取り出し、むしろ主人に叩きつけた。



少女『アタシは要らねえ! 金貨10枚、全部こいつにくれてやんな!』

剣士『おい、少女。お前にこそ金は必要なものだろう』

マスター『へえ、何企んでんだか知らねえが』

少女が大声を出したせいで、酒場の視線が一点に集まり、あちこちでどよめき始める。
金貨10枚もあれば……例えば、あの母娘が居た村であれば3年も暮らせるだろう。

少女『アタシは、この札束でもあれば充分さ』

剣士『だからと言って、こんなに貰っても俺が困る。マスター、俺は1枚もあれば良い』

少女『だってよ。マスター、貰っときな』

マスター『……はあ。その宝石、全部寄越せ』



マスター『……すぅ』

マスター『野郎ども、聞いてんだろう!! 今晩は、ウチの店全部タダだァ!!!』



・・・。

ワァァァァァ!!!



マスター『俺は生まれてこの方、あぶく銭の使い方なんざこれ以外に知らなくてな』

少女『へへっ、ちげえねえ』

一番良い酒!
俺もだ!!
マスター肉喰いてえ!!

マスター『っと、わーったよ!! ……おい。忙しくなる前に取っとけ』

剣士『……。多いぞ』

マスター『旅にアクシデントは付き物さ、多くて悪い事はねえ。さあ野郎ども、この町の勇者様のご退店だァ!!!』



汚い喝采が、万雷の如く降り注ぐ。
それがこの町での、最大の賛辞であるらしかった。



勇者、か……。

夢魔『そうよ、勇者様。』



少女『さ、今日は帰ろうぜ。相棒!』

剣士『……誰が相棒だ』
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/21(木) 17:16:35.62 ID:8PY6O9OaO

……

夢魔「あの時、正直言って気分良かったでしょう?」

剣士「……紛れもない悪業だがな」

夢魔「でも、ちょっと嬉しそうにしてたの、分かるわ。貴方と繋がってたんだもの」


翌朝目覚めた時には、懐に3枚の金貨が眠っているだろう。
やはり、人に認められる事は俺にとっても小さな救いになるものだ。




夢魔「さて、今日はもうお休みする?」

剣士「そうだな……」

夢魔が俺の肩に頭を寄り添わせる。
こないだのベンチとは逆だ。

夢魔「名残惜しい?」




夢魔「私は、名残惜しいな」

剣士「……なんだその甘えた声は」

夢魔「きのう、気取るなって言ったじゃない……」

今度は俺の腕を取り、さらに身を寄せてくる。
温かい。




すがりつき、そっと囁く声。



夢魔「私のご主人様は、意外と深い愛情を持ってるのね」

剣士「……知らん」

夢魔「私も、どれくらいが普通かなんて知らない……でも、私が思っていたよりは、ずっと」

夢魔が俺の胸板を軽くつつくと、町の明かりがスッと消えていく。
それに合わせて目を閉じる。今日はいささか疲れた。





夢魔「お休み。また明日逢いましょう」


身体の温かさと、心の安息を感じながら、俺の意識は闇に沈んでいった。
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/23(土) 00:45:15.62 ID:s2Fx1qzEO
いい…
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/01/23(土) 18:42:22.93 ID:T//MDvUvO
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/23(土) 18:47:58.71 ID:k+sGRh7Co
>>226
いちいちageんなks
228 :更新遅くてごめんなさいね [saga]:2016/01/24(日) 12:12:01.49 ID:NDZqBQAZO

……………………
…………
……



ほい次はこっちの肉だァ!
150から、200!?
出るか出るか〜?
うー210!
215!220!……
ッターン!


チュンチュンチュン……。

少女「っと。朝這いは失敗か」

ソファの綿が沈む感触で目が覚める。
静かに目を開けると、小さな身体がのしかかっていた。

剣士「……もっと修業を積んでから出直せ」

少女「ははは、修業かぁ、そりゃいい。花嫁修業で良いか?」

剣士「気配の消せる嫁は勘弁願う。ほら、どいてくれ」



夢魔「ふふ、結局懐かれちゃったわね」

同じ女からは、そう見えるか。

夢魔「あら、女と乙女は別の生き物よ? とにかくおはよう、ご主人様」

おはよう。



少女「さ、飯食いに行こうぜ、相棒!」



……これは、乙女なのか?

夢魔「ふふ、乙女の目よ。可愛いじゃない」


少女「へへっ、早くしろよー!」

剣士「行くから、引っ張るな」
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/24(日) 13:28:20.84 ID:+YDEetOeO

……

剣士「ご馳走様。しかし、良いのか」

少女「食い物屋で金貨出すバカがどこにいるんだよ。奢られとけ」

剣士「恩に着る」



今日は砦を目指す為の旅支度を整える事にしていた。
幸いにしてここは貿易街であり、食糧の他にちょっとした装備なども物色できそうである。

剣士「ところで、頼んだものは作れそうか」

少女「アタシを誰だと思ってんだよ。手先は器用だって知ってるだろう?」



手で筒を作って上下に動かしている。……。



夢魔「思い出したら、分かってるわよね?」

怖気がした。
思い出すな。思い出すな、俺。

少女「にしし、指に食べカス付いてたわ。れろ……」

そのまま親指を立て、ねぶるようにしゃぶり始める。柔らかかったあの舌が、れろんれろんと爪をなぞっている。
俺はもう見ないように下を向いた。

少女「ひっひっひ、ウブだなぁ」

剣士「……外でやるな」

少女「へへへへ」




夢魔「うん、マイナス10点ね」

思い出してはいない、はずだ。勘弁してくれ。

夢魔「貴方の視線は私の視界にも映るのよ? 変態さん」

あれを忘れたいのは、俺も一緒なんだ……やめてくれ……。

夢魔「まあでも、今の点数は加点法だから。おべっかでもしてみる?」

……いや、加点法がどうやったらマイナスに行くんだ。
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/25(月) 10:17:06.55 ID:kOvUMfR0O

……

剣士「武具の揃う店はあるか」

少女「あー、こっちの通りに……」

…………

剣士「こっちの砥石と、これは、柄の手入れ用……」

少女「ま、ゆっくり見なよ。アタシも自分のもの買ってくるよ」

……………………

剣士「じゃあ、これで」

結局小さな砥石とナイフだけを購入する。
金貨を差し出すと、サッサッサッと手早く釣りが出てきた。

店主「お、噂の兄ちゃんだな。これ、釣りだ」

店主が釣りと一緒に俺の手を握る。
心底嬉しそうにその手をブンブンと振った。

店主「あのいけすかねえヤツらをぶっ飛ばしてくれてありがとうよ。アンタはこの町の恩人だ」


お釣りを握らせるように店主は俺の手を離し、



少女「待ちな。ジジイ」



そして買い出しから戻ってきた少女が店主の前に出た。


店主「あん、なんだい嬢ちゃん」

少女「釣りを取る音が足りねえ。あと2枚銀貨が出てくるはずなんだがなぁ」

剣士「っ、そのようだ」

手の中を見ると、明らかに金が足りていない!
よく聞いていたな……危なかった。

店主「ケッ……ほれ、満足かよ」

少女「小遣い稼ぎなんかするんじゃねえよジジイ。ねーちゃんと遊ぶ金稼ぐより、店先の掃除でもしたらどうだ」

店主「この、クソガキ! 出てけ!」



バタン!!



少女「ったく、腑抜けてんなよ」

剣士「すまない、気が付かなかった」

少女「へへ、カッコよかったろ? 小金持ちなのは割れてんだから、気を付けろよ」
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/25(月) 12:20:14.36 ID:kOvUMfR0O

迂闊に人を信用するのも、考えものか……。

夢魔「キチンと自衛する事は人を信じるためにも必要な事よ。まあ、少女ちゃんに感謝しましょう」



少女「あと、頼まれたものは買っといたぜ。飯やらなんやらは自分で調達してくれや」

剣士「ありがとう」



この町に生きる少女は、活き活きしてるように見えるな。

夢魔「貴方が横にいるからじゃない? ふふ、得意そうよ」

少女「今日の夕飯どうすっか? せっかくだし美味いもんでも」

剣士「美味しいものは嬉しいが、落ち着いて食べたい」

少女「あいよ、そしたら市行って美味い肉でも探すかぁ!」





夢魔「良い居場所が出来たわね。」

居場所……。

夢魔「ええ。貴方が帰る事の出来る場所」

翌朝には、もう発ってしまうだろうがな。

夢魔「あら。貴方は娘ちゃんの村には帰らないつもりなの?」

いや。いつか。

夢魔「なら、それと同じよ。少女ちゃんもきっと、どれだけ時間が経っても貴方を受け入れてくれるわ」



……。

夢魔「捨てるには惜しい世じゃない、ねえ?」
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/25(月) 12:41:07.65 ID:lBd8Apxgo
少女はなんか途中で死にそう
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/25(月) 17:23:34.61 ID:B/E3qnpM0

…………


剣士「ご馳走様」

少女「おう、ごちそうさま」

上等な厚切りの肉に、麦の粉と香辛料をまぶして焼いただけのご馳走。玉ねぎと一緒にパンに挟み、冷まさないままかじる。
少女が一番良いと言うのなら、これが最高の夕餉なのだろう。



少女「あとは寝るだけなんだけど、湯でも浴びに行くか? そういう店あるぜ」

剣士「やめておく。気が進まない訳ではないが、落ち着いて休みたい」

少女「そうだよな。明日、行っちまうんだもんな……」



ベッドの上の少女は既に身体を拭き終わり、こちらに背を向けている。
俺も裸になった上半身と服の中、局部の周りを良く拭き、硬い布地を洗った。

剣士「干させてくれ、翌朝持っていく」

少女「……どーぞ」

鈍感な俺にも分かるくらい、彼女の背中は寂しい。



少女「あのさ」

剣士「どうした」

少女「この町に居てくれないかって、思ったんだよ」

剣士「……」

少女「でも、アンタはするべき事があって旅してんだろ? アタシには分かる」

剣士「するべき事……」

少女「ああ。腰据える場所を探してる感じでもねえし、何となくだけど」



少女「だから、アタシが旅に着いてっちゃいけねえかなって、思ったんだけどな……」

剣士「それは」

少女「あーあーあー、みなまで言うな。分かってんだよ足手まといって事も足手まといとは思わないで居てくれるって事も!」

少女「それに、アタシが着いて行くべき事じゃないって事も」





少女「あーあ……良い奴だよな、お前」

少女は布団に倒れ込み、小さな電灯を見上げる。
焦点が定まっていないようで、ここではない、どこか遠い場所を見ているようにも見えた。
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/25(月) 18:32:02.65 ID:B/E3qnpM0

何も言えない。

夢魔「……マスター」

これは、贖罪の旅だ。
慰みの旅とはいかない。

夢魔「貴方が連れて行きたいのなら、構わないのよ」



いや。
……この子を死なせたくない。

夢魔「うん。分かったわ」





剣士「少女よ」

少女「……おう。どしたい、改まって」

剣士「その気持ちだけで、俺は」

声を、声を絞り出せ。
照れを堪え、恥ずかしさを捨て。
負の感情とは反対の。
謝罪とも感謝とも違う、俺に足りないものを。





剣士「俺は、……嬉しい」





とても、大きいとは言えない吐露だった。
それでも俺の心は叫ぶつもりで、伝えようとした。
自分にとって大切な事だった。

少女「……へへ。嬉しいか」

剣士「ああ。必ず、またこの町に戻る」

言い切れた。必ずと。
その時俺は、笑顔になれた。

少女「へへへへ。頼むよ、あいぼー……」





顔を拭う幼い少女を、そっと撫でた。
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/25(月) 18:35:31.71 ID:dX0kXHwAO
かわいい
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/01/25(月) 21:27:33.02 ID:zBAJtjReO
素直な感情の出し方をしらない剣士が可愛いと同時に辛い
でも段々と言えるようになってきてる剣士はかっこいい
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/25(月) 22:55:31.65 ID:xCiXFUNJ0
キリコ?
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/26(火) 10:35:03.77 ID:Fn6GgyuyO

……



少女「ここを……こうして……」

縫い物なんか、ほとんどしない。
ボタンは付けたことないし、ほつれた毛布もそのままだ。

剣士「……zzz」

小さなランプを頼りに、小さな糸を手繰る。





夢魔「こんばんは、少女ちゃん」

少女「!」

夢魔「あら、ごめんなさい。ビックリさせちゃった?」

い、いや。なんだ、アイツのところに居なくていいのか?

夢魔「ええ、今日はちょっとね。少女ちゃんは夜なべかしら?」

ああ。

夢魔「じゃあ、見ててもいいかしら」



……うーん。
内緒だぞ?

夢魔「うふふ、約束するわ」




チクチクチク……




少女「いでっ」

夢魔「あら大丈夫?」

難しいな、けっこう。

夢魔「ふふ、頑張って」

おう……!



チクチクチクチクチクチク…………





……………………
…………
……
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/26(火) 10:58:03.87 ID:eyd2KgxUO
健気
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/26(火) 11:51:54.62 ID:Fn6GgyuyO


剣士「んん、ん……?」


ここは、夢、いや、朝?
昨日寝たままと同じ光景に、日が差し込んでいる。

昨日は夢を見なかったのか……夢魔、いるか?


夢魔「んん、おはよう……ご主人様……」


お前も寝起きか。
眠いなら、もう少し寝ていても構わないんだぞ。

夢魔「うう、仮眠よ……さっきまで起きてたんだから」

先ほどまで……?
俺の夢に現れなかったのは、寝ていたからではなかったのか?

夢魔「私用よ。ごめんなさいね」

いや、お前も生活があるだろう。構わん。



少女「…………zzz」

よく寝ているな。
起こすのは忍びないが、そろそろ……。

夢魔「ちょ、それはダメよ。許さない」

そ、それほどの事か。分かった、朝食でも作って待とう。



少女「んゃ……もう食えないよぉ、んへへへぇ……」

241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/01/26(火) 11:55:15.24 ID:/RLFjrkv0
ダンジョン×プリンセス終了〜他衰退 併 婦女子シネ ツイート荒し 課金要素邪魔 課金厨【運営】死にたい
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/26(火) 12:16:34.46 ID:Fn6GgyuyO

少女「ふわ、ぁ、いい匂い……?」




剣士「……起きたか、台所を借りたぞ。朝食だ」

少女「え、アンタ料理できんの……?」

剣士「もとは旅人だ」

……

少女「じゃ、これ食べたら行くんだな」

剣士「ああ。砦の方まで」

少女「けっこう長くなるだろうから、気を付けろよ」

剣士「地図はある。問題ない」

…………

剣士「ところで、指先に血の痕があるが。いつ怪我をした?」

少女「あっ? ああー、ちょっとな! 気にすんな!」

剣士「腹の銃痕もそうだが、あまり痕を残すなよ。花の盛りに差し障る」

少女「花のサカリ……?」

剣士「……気にするな。早く治せ」

……………………





少女「ごちそうさん。美味かったぜ」
剣士「……お粗末様」
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/27(水) 01:07:31.67 ID:Z0VuCvZDO
おつおつ
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/29(金) 11:16:15.18 ID:Y/veV+shO


……




町の入り口に立つ。
日は高く、空は青い。

少女「行くんだな」

剣士「ああ」



別れの時だ。



少女「これ、頼まれてた奴な」

剣士「ありがとう」

少女から白い塊をいくつか受け取る。

少女「これが煙幕、これが火薬、これが睡眠薬。一応、どれがどれかは書いてある」

剣士「分かった」



少女「なあ、1分だけ、悪魔の姉ちゃんに外してもらってても良いか?」

剣士「ん?」

夢魔「あら? 良いわよ、ちょっと抜けてるわね」

剣士「構わないそうだ」



少女「ありがとな……」

少女は一度、息を大きく吸い込んだ。
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/29(金) 12:17:33.84 ID:Y/veV+shO


少女「頑張れよ」

剣士「……ああ」

少女「死ぬなよ」

剣士「ああ」


少女の息が詰まった。
もう一度息を吸う。


少女「あんま、無理するなよっ」

剣士「ああ」

少女「っ、嫌になったら、いつでも帰ってこいよ!」

剣士「ああ」

少女「っく、う……」


思いごと、むせた。
彼女の目から光が流れる。


少女「っう、こ、これ」

固く握った掌から、紐のついた小さい包みを渡される。

剣士「これは?」

少女「……お守り」


中に、粉状のものが入っている。


少女「ぐしっ……アンタ、竜とやり合うってんだろ! 竜が嫌いだっていう実を、探してきて、砕いて入れた!」

少女「もし、本当にダメになりそうになって、終わりだって時」

少女「諦めるなら、自分より先にアタシとの事を諦めろ!」



少女「アンタにも、大事に思ってくれてる人がいるって事……肝心なときに忘れたら怒るからな」

剣士「――。」



少女「だから、アタシとの事なんていい。竜に食わしたっていい」

少女「でも、無事でいて欲しいから……お守り。」


曲がって見える景色を直そうと、何度も何度も瞬きをする。
ポロポロと溢れる光が、俺にはとても尊いもののように見えた。
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/29(金) 12:41:01.15 ID:Y/veV+shO

少女「アタシは……この町が好きなんだ」

少女「いつ産まれたのか分かんねーし、ロクでもねえ奴しかいねえけど」

少女「それでも愛着があって、居心地が良くて」

少女「金も大事で、モノも大事で……でも、アンタからもっと大事なものをもらった」

少女「だからここがアタシの世界なんだ。だから残る」

少女「心配すんなよ。アタシもちゃんと、生きてくから」







少女「……ずずっ。さ、行け!」

呼吸を落ち着かせると俺を振り向かせ、町から飛ばすように背中を強く押す。
そのまま、背中に体重をかけてきた。




夢魔「ご主人様、終わっ……」

少女「――帰ってきたら、今度はクチでしてやるから」




剣士「! ちょ、ま、待て」

少女「はははは、しーらね!! へへへ、行ってこーい!!」

剣士「ぐっ……!?」

そのまま思い切り突き飛ばされると、仕方なく歩き始める。
ふたりとも知る事はなかったが、ふたりとも振り向く事はなかった。



夢魔「……さて。何の話をしていたのかしらねえ。」

剣士「弁解の余地は。」

夢魔「ないわよ。」



うな垂れてみせて、笑った。
もっと早く、こう生きてみたかったものだ。





「虚飾の町 おわり」
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/29(金) 12:43:10.93 ID:SL8LN7tHO
(´;ω;`)ブワッ泣いた
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/29(金) 12:50:05.32 ID:xUAybq6e0
もう既にいい女だけど帰って来たらもっといい女になってるだろうなぁ
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/29(金) 14:53:55.52 ID:yfZ+f47AO
綺麗だなあ
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/29(金) 19:04:42.06 ID:f8mMXhWJO
素晴らしい
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/30(土) 13:41:52.74 ID:/MVd30ccO



……閑話休題……



【その後】


少女「あぁーあ、行っちまったかぁ」

剣士たちを見送ったのち、少女はあてもなく路地裏をふらついていた。
途方に暮れているわけでもなく、悲しみを紛らわしているわけでもなく、ただ今日やる事が思い付いていなかっただけの事である。

このまま今日はゆっくりして、あとの暮らしは明日考えよう。



そんな矢先の事である。



少女「あ」

黒服「お?」
黒服「あれ」


曲がり角の先に、剣士と出会った日、足を洗った組織の人間がいた。
ふたりでアイスクリームを食っていた。


少女「……」

黒服「……」
黒服「……」



少女「えーと、あれだ。お邪魔しました」

タッタッタ……!

黒服「ま、待てやゴラァ!」
黒服「誤解じゃオラァ!」
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/30(土) 14:55:58.94 ID:CrwUWcFMo

よく間違って使われるけど、閑話休題って逸れた話(余談など)を本筋に戻すときに使う言葉だよ
253 :その通りみたいだ 閑話そのものという事にしてください [saga]:2016/01/30(土) 15:11:40.83 ID:cfqeItD6O

少女「チッ……!」

アタシは必死で走りながら懐をまさぐる。
ナイフが1本、拳銃が……あ、家に忘れた。
あとは、ない。何もない。
こないだと違い備えがない……!




黒服「チッ、またこの道か!」
黒服「今度こそ手篭めにしてやんよォ」


少女(もし捕まったら……死ぬか?)



指先の傷に、もう片方の手で触れる。
チクリとした。確かに、甘くはない。
それでも、アタシはこの町で生き抜くんだ、必ず。



歩幅の差を埋めるべく必死に足を回転させる。格子状の路地を駆け回り、策を練りながら角を何度も曲がり時間を稼ぐ。





少女「はっ、はっ、はぁ……!」

黒服「っし、行き止まりだァ!」
黒服「捕まえたぞクラァ!」

「追い付かれる前に」行き止まりに到着した。
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 10:56:13.86 ID:ifwfyxroO

…………

昨夜、お守りを縫っていた時の事である。



夢魔『あ、そういえば』

どうした?

夢魔『体術の話をご主人様としていたと思ってね』

ああ、そんな話があったな。
あれって姉ちゃんの技だよな、教えてくれるのか?

夢魔『一朝一夕に身につくものじゃないけれど、明日行っちゃうしねぇ。簡単な事なら教えられるわよ』

いっちょ、いっせき? まあいいや、頼む。


チクチク、チクチク……


夢魔『そうねえ、身のこなしはもともと軽いみたいだし。例えば、人が飛んで壁を蹴った時、人はその後どこに落ちると思う?』

そりゃ、跳ね返って下に落ちるんじゃねえのか?

夢魔『ええ。じゃあ、後ろに引っ張られながら床を歩こうとした時に、貴女は前に進めるかしら?』

……引っ張る強さによるだろ、そりゃ。



夢魔『そういう事なのよ。頭の中を、横に半分回して頂戴。下に引っ張る身体の重さより、思い切り壁を歩く事が出来れば』

……確かに、なるほどな! それで登れるのか?

夢魔『本当はそこまで上手くいかないんだけどね。そんなイメージで身体を動かせば、いずれは。じゃあ、具体的な方法を教えるわね。……』

……



夢魔『まず、慣れない内は壁の角に向かって駆け上がりなさい。歩く床も、くぼんでた方が踏ん張りやすいでしょう?』


タッタッタ……!


黒服「なんだぁ?」
黒服「へへへ、そっちは壁だぞ〜」

夢魔『足よりも、つま先に思い切り力を入れて。壁に突き刺すみたいに、全力で身体を上に』

少女「ぐっ」


ガッ!


少女「くぅぅ……!」
夢魔『その時、カカトを付けたらダメよ。身体をぶつけるくらいの勢いで、壁から離れないように、離れないように』

ガッ! ガッ……!

少女「たぁ!!」
夢魔『もう無理だと思ったら、思い切り蹴って、後ろを向いて。飛び降りたい場所を見ながら、身体のバランスを直すの』


黒服「なに!」
黒服「高っ……」


少女(ここに、確かメシ屋のダクトが……!)
夢魔『慣れない内は、掴まれるものを探して飛んだ方が良いわ。思い切り捕まるのは怖いけど、思ったより壊れないものよ』


ギシッ!



夢魔『……そうしたら、上から飛び掛かりなさい。身体が小さいから、頭か首がベストね』

少女「っし、だああっ!!」
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 11:12:40.55 ID:ifwfyxroO

少女(やっべ、飛びすぎた……でも)



慣性の支配するままに、曲げた膝が下を向く。
逆光を味方に、小さな体躯の全体重をぶつける!



少女(高え!! 気持ち良いッ!!)

黒服「うおっ!?」
黒服「あっ!?」



ゴキャア!!
ミシッ。



少女「あ、クビいった」

首の後ろに、高空からの飛び膝が突き刺さる。
たぶん即死はしていないだろうが、嫌な感触があった。



反応をなくした男の背中をクッションに、見事着地する。
綺麗に胸からいったな、あばら大丈夫かな。

黒服「お前っ、首折れっ……! てめええええ!!」

少女「っと、もう一人居たんだった!」


飛びかかる大男に、しゃがんだままナイフの柄を突き出す!


ずにゅっ。


少女「あ。」

黒服「!!! ――ぁふっ」

少女「わ、わりい……」

思ったより柔らかい。少女はそんな感想を抱いた。
……両手を太ももに差し込んだまま、男は倒れ伏した。




黒服「」
黒服「ん、ぁ、う……」

少女「じゃ、じゃーな。なんかすまんな……」

食べかけのアイスクリーム2つを残し、路地裏を後にしたのだった。
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 11:27:03.78 ID:ifwfyxroO


…………



少女(てんけー、ってのは分からないけど。アタシもちっとは良い子にして、マトモに生きてみるか……)

少女(そしたら、本当に壁を登って、この町を越えて、いつか空に飛んでいける。そんな気もすんだよ)




店主「ほい、アイスクリーム3つ! 嬢ちゃん、持てるか?」


少女「あー、1個アタシの口に突っ込んでくれ」

店主「ははは! ほい、アーン」

少女「ふもっふ。……んふふふ」

店主「毎度あり! 落とすなよー!」




少女(ちゃんと謝る時って、なんて言うんだっけな。申し訳ございませ……ございます? えーと、ありがとうございますはございますだから、あれ?)

少女(ま、いっか)


舌を甘やかす甘味に、ご機嫌な調子で路地裏に戻ってゆく。

いつの日か、この見上げる空の狭い町を飛び立つのか。
それはまだ、知る由もない。
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 11:48:20.92 ID:ifwfyxroO

【その後2】



お得意様を失ったあとの宿屋は、どうにも寂しいものであった。

娘(剣士さん、元気にしてるかな……)

母「しけた面すんじゃないよ。ほら、食いな」

娘「あ、うん」





しかし、父の死を境にどこかねじれていた家庭も、少しずつかつての姿を取り戻しつつある。
その手始めとして、使用頻度の低い空き部屋に診療所を引っ越したのがきっかけであった。

住まいを同じにするというのは、大きな意味がある。



しゅぽん。

母「ふいぃ……」

娘「ご馳走様。あんまり飲んじゃダメだよ」

母「あいよ。洗っとくから、先に休みな」



サー……。



娘「あ。雨だ」

娘(窓は閉めた、夜干しはしてない、戸締りも……したかな?)

ガチャ。

娘(やっぱり開いてた。危ない危ない)

バタン……ガチャリ。

娘(そういえば)

剣士と出会った日も、今日のような雨が降っていた。

……………………
…………
……
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/02(火) 07:27:24.99 ID:HBBosIeDO
乙!!
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