【安価】 勇者「仲間とヌチャヌチャしたいから旅をする」

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19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 00:12:15.73 ID:3ubKW9DYo

勇者(あーつまんね)

勇者(せっかく雌豚共とパーティの日々だと思ってたのによ)

勇者(やってらんねー寝るわ)


『眠』


勇者(文字能力で一文字とはいえ魔力は消費するけど、眠れるなら回復するしいいか)

勇者(はい、じゃあおやすみ未来の肉便器ども)

20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 00:12:47.81 ID:vxjKHHeDo
馬に従を使って指示すればいいんじゃね?
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 00:19:29.04 ID:3ubKW9DYo


エルフ「勇者様、寝ちゃったね」

女騎士「一人で荷馬車を引いていたからな、疲れも出るだろう」

魔法使い「…………」

エルフ「なんか申し訳ないね?」

女騎士「そうだなー。 私たちも馬車くらいは引けるようにならないと勇者の負担が大きすぎる」

魔法使い「……同意」コクン

エルフ「でもちょっと勇者様って話かけ辛いよね?」

魔法使い「……それも同意」コクコク

女騎士「分かる! なんか変なことを考えてそうっていうか」

魔法使い「……コミュ障」

女騎士「それだ!」

エルフ「ちょ、ちょっと! ダメだよそういうこと言ったら! ぷふっ」

女騎士「あははは! なんだか勇者っていうからどんなのかと思ったらただの根暗だったな」

魔法使い「……そこまで言ってない。 ちょっと可哀そう。 ふふ」クス

エルフ「って魔法使い、笑ってるよー?」クスクス

22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 00:22:07.80 ID:3ubKW9DYo

……………………………………………………


勇者「んぅ……?」

勇者「ふぁぁ……よく寝た」

勇者「ん…… ん?」

>>23「あ、おはよう」

勇者「あぁー…。 >>23?」



>>23

@エルフ

A女騎士

B魔法使い
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 00:23:12.17 ID:RDvdWKpco
3
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/09(水) 00:23:25.90 ID:eZwKhb8x0
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 00:25:57.74 ID:3ubKW9DYo

魔法使い「……あ、おはよう勇者」

勇者「あぁー…。 魔法使いか」

魔法使い「…………」コクン

魔法使い「……よく眠れた?」

勇者「あぁ、おかげさまでな」

魔法使い「……そう、よかった」

勇者「あぁ」

魔法使い「…………」

勇者「…………」


勇者(え、気まずい! なに!? 何を話せばいいのこの子と!?)

勇者(とりあえずちゃんと会話したの初めてだけど恐ろしく無口だってことだけはもう分かったよ!?)

26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 00:26:23.20 ID:ht5ohmaQO
冒頭を見るにコミュ障はないと思うんだが
まず喋ったのか?
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 00:26:54.43 ID:ht5ohmaQO
会話してないのにコミュ障扱いとかこのパーティー抜けますね!
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 00:31:43.19 ID:3ubKW9DYo

勇者「え、えーとぉ? 他のみんなは?」

魔法使い「……女騎士は馬車の中で休んでる。 エルフは少し散歩してくると」

勇者「へー……そうなんだ」

魔法使い「……そう」

勇者「…………」

魔法使い「…………」

魔法使い「……ごめんなさい」

勇者「へ?」

魔法使い「……一人で馬車引かせてしまって」

勇者「あぁ? いいよそんなの気にすんなって」

魔法使い「私たちだけで楽しんで、勇者は寂しかったでしょ?」

勇者「あ……」

魔法使い「だから……ごめんね?」チラッ

勇者「お、おぅ」


勇者(あれ、魔法使いの顔を初めてちゃんと見たけど結構かわいい顔してるんだな)


魔法使い「……なに? そんなにまじまじと見られると恥ずかしい」プイ

勇者「あ! わりぃ! そういうんじゃなくてさ」

勇者「結構魔法使いかわいい顔してるんだなってさ」

魔法使い「…………」

勇者(あれ? これもしかして惚れられるパターンじゃね? 来てるんじゃね?)

魔法使い「…………」ジトー

勇者(あ、あれぇー…… なんか怪しいもの見てるような眼してるよこの子ぉ)

魔法使い「……ありがと」プイ

29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 00:36:46.34 ID:3ubKW9DYo

魔法使い「……みんなまだ勇者とどうやって話せばいいか分かっていないだけ」

勇者「そうかぁ?」

魔法使い「……私もそう」

勇者「お、おぅ」

魔法使い「勇者は口数が少ない。 相槌ばかり」

勇者「女の話をよく聞く男がモテるっていうしな」

魔法使い「……聞き上手と喋り下手は違う」

勇者「難しいなそれ」

魔法使い「……私が言えたことじゃないけど」

勇者「確かに」

魔法使い「きっとエルフや女騎士ならスッと話ができるはず」

魔法使い「あの二人は話が上手」

勇者「あぁーまぁ魔法使いよりは明るいしな」

魔法使い「……失礼」

勇者「でもさ、ちゃんと俺に最初に話しかけてきてくれたのは魔法使いじゃん? ありがとな」

魔法使い「……うん」

魔法使い「……勇気を出して話せてよかった」

魔法使い「……勇者、全然普通にいい人。 話してて、楽しい」

勇者「さいですか」

魔法使い「……うん」

30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 00:41:18.94 ID:3ubKW9DYo

…………………………………………

魔法使い「……それでね、エルフはとっても物知り」

勇者「へぇ? なんか見た目で言ったら魔法使いが頭良さそうだけどな?」

魔法使い「……私ももちろん勉強はしてる。 でもエルフはあぁ見えて450歳を超えてる」

勇者「はぁ!? なんだそりゃ!?」

魔法使い「エルフは長命。 私たちより遥かに長い時を生きて様々な経験をしていた」

勇者「マジかよ…… 俺エルフには敬語で話した方が良いかな」

魔法使い「……その心配はいらない。 エルフはとてもフレンドリー」

勇者「冗談に決まってるだろ…真に受けんなよ」

魔法使い「……む。 勇者の冗談はつまらない」

勇者「ダメ出しキツいっすね」

魔法使い「……そうでもない。 普通」

魔法使い「……私の冗談はおもしろい」

勇者「へぇ? そりゃ楽しみだ」

魔法使い「……冗談」

勇者「うわ、つまんね」

31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 00:45:01.06 ID:3ubKW9DYo

エルフ「あら?」

女騎士「やぁ、おかえりエルフ」

エルフ「ただいま。 あの二人仲良くなったんだね」

女騎士「そうみたいだな。 魔法使い無口かと思ったら結構楽しそうに話してるじゃないか」

エルフ「でも目は合わせられないんだよねー」

女騎士「そこいじめたくなるよな?」

エルフ「ちょっとやだぁ。 悪趣味だよ?」

女騎士「あはは、うそうそ」

女騎士「でも、魔法使いがあんなに1対1でちゃんと話せるなんて意外かも」

エルフ「そうだね、3人なら話せるけど2人っきりだと話しにくそうかもって思ってた」

女騎士「勇者の話がうまいのか、相性がいいのか」

エルフ「ちょっと勇者に興味湧いてきたね!」

女騎士「これから旅する仲間に興味ないってのもひどい話だけどな、あははは」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 00:46:35.87 ID:3ubKW9DYo
終わります

安価で話進めていくので書きためとかは基本出来ません

酒飲んだノリと勢いで書いてます誤字脱字抜け設定などあったらご指摘ください

魔法使いかぁーわうぃい↑↑
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 00:48:24.92 ID:vxjKHHeDo
おつ
魔法使いカワイイ
S設定の女騎士が安価とか行動でMになったりってするの?
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 00:49:46.05 ID:mERLkQf9o
おつー
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 00:52:01.29 ID:3ubKW9DYo
ごめんなさい、もう1つ追記

自由安価のところは基本何でも受け付けるようにはするけどさすがに無茶苦茶なのは勘弁してね?
文字能力使えばなんとでもなりそうだけどそれは安価次第ってことで
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 00:56:58.96 ID:vxjKHHeDo
>>1は酉つけていた方がいいんでね?
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 02:15:53.85 ID:06kOqhoHo
>>33
多分Mって書いてあげればいいと思う
「M」と「マゾ」だったら効果は違うのかな?
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 02:17:22.73 ID:vxjKHHeDo
Mもマゾも一緒じゃないの?
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 03:43:46.36 ID:pxiDxWoyO
乙、楽しみです
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 07:39:14.50 ID:4yPS2o20O
魔物使いはおらんのけ
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 10:17:16.82 ID:3ubKW9DYo
……………………………………

勇者「ふぁぁ……」

勇者「あー……だりぃ」

勇者「御者台ずっと乗ってると痔になるわこれ」

勇者「ケツいてぇ背中ゴリゴリストレスマッハまじつまんねぇ」

勇者「あー……なんかいいことねぇかなぁ?」


約3時間以上もガタガタと揺れる馬車を先導し、腰も背中も厚い鉄板が敷かれているような感覚になってきた頃、変化は訪れた

平和だった街道に禍々しい気配を感じたのだ
これはまさしく魔物の気。 幾度も鍛錬のために魔物を狩ってきた勇者には慣れ親しんだものであり、手綱を引くよりも剣を握ることの方が楽しいのは当たり前のことだった


勇者「きたきたきたぁー!!」

勇者「退屈な御者台からついに降りられるぜ!!」

勇者「狩りの時間だぁぁぁぁぁあああああ!!!」


42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 10:20:10.88 ID:3ubKW9DYo


早速手綱を引き馬に止まれの合図をする

いきなりグイと引っ張られた馬はやや不満そうに嘶くが従順にその場で足を止めた
女もこれくらい扱いが簡単ならいいのに。


内心でぼやきながらも、御者台からぴょんと飛び降り剣を抜くがまだ魔物は姿を見せない

ここら辺に住む魔物は比較的大人しく好戦的ではないためこちらから近づかなければ攻撃されることはあまり多くない
だがそれでも戦いはどうしても起きてしまうものだ。 襲われる旅人たちのためにもここはいっちょ魔物狩りをしておいてやろう。 決して俺が馬車を引くのが飽きたからではない。 断じて


自分にくだらない言い訳を言い聞かせているうちに気配だけを感じていた魔物が姿を現した
ブヨブヨとした体に幾本もの触覚が生えたホイミスライムと呼ばれる魔物数体と、同じくスライムの上に子供くらいの大きさの騎士が上に乗っかっているような形のスライムナイト数体だった


勇者「おぉーマジか……」


個々の強さは正直大したことがない。 どちらかというより腕のたつものなら容易く倒せるレベルの相手だ
しかし厄介なのはその数の多さとホイミスライムの存在である

例えばこちらが相手の一体を斬ったところでその横や後ろから他の魔物から攻撃をされたら堪ったものではない
しかもこちらが敵を一撃で倒せなければ魔物の使う回復魔法で傷を癒され、こちらがジリ貧になる可能性だってある


勇者「ま、なんとかなるっしょ」

43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 10:30:09.50 ID:3ubKW9DYo


女騎士「どうした!」

エルフ「わっ、魔物の群れ! 結構数も多いね」

魔法使い「……厄介」


俺の声を聞いてか女連中も馬車から降りてきた
魔物の姿を確認するや否やそれぞれが得物を構える

うろたえないあたりそこら辺の初心者旅人よりは使えるようだ


女騎士「援護するよ勇者」

勇者「お?」

エルフ「後ろは任せて!」

魔法使い「……一気に片付ける」


あれ、案外頼もしいんじゃないか?

女騎士はレイピアと呼ばれる特殊な剣を担いでいる
西の方の大陸に広く普及しているもので、普通の両刃の剣とは異なり柄から剣先までが円錐形となっているのが大きな特徴で、斬撃よりも刺突に重きを置いた武器だ


勇者「かっこいい武器使ってんじゃん」

女騎士「ふっ、戦い方もかっこいいぞ?」

勇者「そりゃ楽しみだ」


後衛の二人に目を向けると、エルフは腰に短剣を差し大きな弓を構える。 魔法使いは小さな体のせいかやたらに大きく見える木の杖を両手で抱えていた


勇者「ベタたなぁ魔法使いのそれ」

魔法使い「……これは魔法を嗜む者のスタンダードな武器」

勇者「体、ちっこいな」

魔法使い「……失礼。 杖が大きいだけ」

エルフ「ほーら! 遊んでないで敵が来るよ?」
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 10:32:36.70 ID:3ubKW9DYo

エルフに喝を入れられ意識を集中させる

初めてのパーティでの戦闘だし仲間との連携を確かめたい気もするけど、ここで俺が活躍して女共の心を奪うってのもありだなぁ


うーんどうするか


>>45

@セオリー通り普通に戦う

A仲間たちだけにやらせ、ヤバそうなら俺も加勢する

B女共の視線を釘付けにしてやるぜ
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/09(水) 10:37:00.30 ID:eZwKhb8x0
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 10:38:43.73 ID:vxjKHHeDo
好感度がある程度貯まるまでは堅実に行かないとね
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 10:52:24.55 ID:3ubKW9DYo

よし、ここは仲間と力を合わせて蹴散らしてやるぜ!


勇者「っしゃおらぁぁぁ俺は御者じゃねえんだぞぉぉぉ!!!」


最早怨念を込めた斬撃がスライムナイトAの兜を叩き割る
ガギンという金属同士がぶつかり合う甲高い音が響き、スライムナイトAが倒れた


勇者「よっしゃぁおらああああ!!」

女騎士「ちょっと! もう少し静かに戦えないの!?


俺の横から迫ってきていたスライムナイトBを、踏み込みののった素早い刺突がスライムナイトBの腕を貫く

ピギー! という耳をつんざく悲鳴に一瞬目を細めるが俺も女騎士もすぐに体勢を立て直し、後ろに飛び退く


エルフ「任せて!」


ぎりりりりと音が鳴るまで引いた弓からビュンと一直線に矢が飛んだ
それはホイミスライムの回復魔法よりも早く、そして確実にスライムナイトBの体躯を射抜いた


勇者「おぉーやるー!」

エルフ「はぁー! 緊張したぁー!」

女騎士「ナイスだエルフ!」

勇者「いけるか魔法使い」

魔法使い「…………」コクリ

魔法使い「……みんな離れて」


魔法使い「……焼き尽くせ、豪炎魔法ベギラマ!」


キラキラと光のカーテンのようなものが魔法使いから放たれる
魔法の詠唱が終わると同時にそれらは結晶のような綺麗な光の粒となり瞬く間に灼熱の炎の渦と変わった


メラメラと燃える炎の渦からは魔物の悲鳴すら逃れることも出来ず、その炎が鎮火する頃には真っ黒に焦げた魔物の姿があった

48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 10:58:08.23 ID:3ubKW9DYo

魔法使い「……ふぅ」

エルフ「すごい威力…!」

女騎士「こっちの肌まで焼けそうな熱量だったな」

勇者「!!」


皆が戦闘が終わったと気を抜きだした瞬間、俺の視界には魔法使いの後ろからスライムナイトがまさに飛びかかろうとしているのが映った

まずい!

驚くほどに冷静に見え一気に思考が加速する
誰もそのスライムナイトには気がついておらず、しかも勇者が今からは知ったとして到底間に合う距離ではない

仕方がない

49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 11:04:04.01 ID:3ubKW9DYo

俺は指先に意識を集中させ、走り書きとも呼べないほどの汚さで文字を紡ぐ

書いた文字は


『力』


全身に文字通り力がみなぎるのを感じ、大地に足を強く踏みしめる

地面が砕けるほど強く踏みこみ、俺は文字通り弾丸となってスライムナイトへと跳ぶ


まさにスライムナイトの剣が魔法使いへと到達する瞬間、俺の拳がスライムナイトの身体を捉えた

拳に肉を貫き、骨を粉々にする嫌な感覚が伝わり、思わず顔をしかめるが動きを止めない
そのまま一気に拳を振り抜き、魔物は即死した


50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 11:06:32.86 ID:3ubKW9DYo

魔法使い「……ふぇ?」


弾丸のような恐ろしい速さで飛んできた勇者に素っ頓狂な声をあげる魔法使い

ちょっと可愛いななんて内心思いつつも、俺の動きは自分でも止められなかった


やばいやばいやばい!!


地面に足がつかず、空を飛んだまま目の前には大きな岩が迫る


勇者「あ」


死ぬかも。 なんて思った頃にはもう岩に俺は頭から激突していた


勇者「……かっこわり」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 11:15:08.39 ID:3ubKW9DYo

女騎士「じゃあ明日も早いしそろそろ寝るか」

エルフ「そうね」

魔法使い「……おやすみなさい勇者」

勇者「おう」


エルフに回復魔法をかけてもらったがまだ若干痛みが残る中、右腕をあげて応える

テントの収容人数は2人だけ
1人は荷馬車の中
残る1人は火の番兼見張りだ


火に枯れ木を入れるとパチパチと小気味のいい音を立て、暖かな熱をくれる

結局やっぱりまだうまく仲間と馴染めなかったな
どうやったら女共を侍らせられるんだ?
ていうか魔法使いのさっきの声可愛かったな

なんて取りとめもない考えが頭の中をぐるぐると廻る
いつもそうだ。 火を見てると不思議と変なことを考えたり、悲しい気持ちになる


勇者「はぁ……」

52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 11:16:11.87 ID:3ubKW9DYo

>>53「どうしたの?」

勇者「ん?」



>>53声をかけてきたのは誰か


@女騎士

Aエルフ

B魔法使い
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 11:17:02.99 ID:vxjKHHeDo
3
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 11:20:55.91 ID:eZwKhb8x0
魔法使いメインヒロインは珍しいのでもっとやれ
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 11:21:44.96 ID:3ubKW9DYo

勇者「はぁ……」

魔法使い「……どうしたの?」

勇者「ん? なんだ魔法使いか」

魔法使い「……なんだってなに」

勇者「そんな怒んなよこえぇな。 魔法使いは荷馬車で寝るんじゃなかったのか?」

魔法使い「……まださっき助けてもらったお礼言ってなかったから」

勇者「あぁ」

魔法使い「……ありがとう」ペコリ

勇者「いいってそんなの。 仲間だろ」

魔法使い「……うん。 そうだね」

勇者「…………」

魔法使い「…………」

勇者(やっぱり相変わらず気まずいわ!!)
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 11:22:04.10 ID:vxjKHHeDo
目的はハーレムだけどこのタイミングなら魔法使いちゃんだよね?
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 11:27:55.89 ID:3ubKW9DYo

魔法使い「……で、なんでため息ついてたの」

勇者「あぁん? ついてたか?」

魔法使い「…………」コクン

勇者「あぁいやなんでもないんだけどさ」

勇者「仲間と仲良く出来ねーって」

魔法使い「……そう?」

勇者「そうだよ」

魔法使い「……そんなことない」

勇者「はぁ? お前には仲良く見えんのか? 陰でなに言われてるか分かったもんじゃねえ」

魔法使い「……それこそ被害的な妄想。 みんな勇者のこと褒めてた」

勇者「お?」

魔法使い「すごく連携が取りやすい戦い方だったって。 味方に気を使ってくれてるっていうのが分かる動きだったってエルフも女騎士も言ってた」

勇者「お、おぅ……そうか」

魔法使い「信頼して戦っていけそうだって」

勇者「……そりゃなによりだ」

魔法使い「……顔もいいって」

勇者「はッ!! マジで!? よっしゃ今日1番テンションあがるー!!」

魔法使い「……冗談」

勇者「……うわー今日1テンション下がったわ」

魔法使い「……今のは私が思ったこと」

勇者「……ちょっと上がった」

魔法使い「……ふふ」

58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 11:31:36.14 ID:3ubKW9DYo


魔法使い「……さっきの勇者の動き、すごかった」

勇者「あぁ?」

魔法使い「すごい速さで飛んできて、あっという間に魔物を倒した」

勇者「あー……あれね。 その後岩にぶつかって糞ダサかったけどな」

魔法使い「…………」フルフル

魔法使い「……びっくりしたけど、嬉しかった」

魔法使い「……あそこで勇者が助けてくれなかったら、私は怪我をしていた」

勇者「そうだな、下手すりゃ死んでたかもしれねえ」

魔法使い「……うん、勇者かっこよかった」

勇者「お?」

魔法使い「……冗談」

勇者「けっ、分ーってるよ」

魔法使い「……ふふ」

59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 11:41:23.29 ID:3ubKW9DYo

魔法使い「……でもあの動きは少し人間離れしてた」

魔法使い「……速度倍加魔法を使ってもあんなに早くは動けない」

勇者「あぁ、あれか? あれは勇者様の特権ってやつだ」

魔法使い「……勇者の特権?」

勇者「そ。 俺には特別な能力を授けられてんの」

勇者「指で書いた文字が実現する能力」

魔法使い「……え?」

勇者「例えば俺がここで『火』って文字を書くとするだろ?」

魔法使い「……うん」

勇者「そうするとこうやって…… ほら」


ブォッ!


魔法使い「……わっ!」

勇者「他にも『岩』って書けば……ほら」


ドゴォッ!!


勇者「ああやって岩が現れるのさ」

魔法使い「……すごい。 魔法の摂理を無視した超越した能力」

勇者「だろ? まさしく女神の与えてくれた力ってわけ」

勇者「まぁ、ちょっと魔力の消費がデカすぎてしんどい上に、失敗するととんでもないことになるんだけどな」

魔法使い「……失敗?」

勇者「そ。 頭の中でイメージがうまく出来ないまんま文字を書いたり、強力すぎる文字を書くと反動がすごくてな」

勇者「しばらく動けなくなったり、前は目が見えなくなったりしたぜ」

魔法使い「……それは魔力枯渇症状と似ている。 体内の魔力が無くなって様々な症状を引き起こすもの」

勇者「そう、まさにそれだ」

勇者「昔、試しに『死』って文字を書いたんだ。 そしたら案の定失敗して3日くらい体を絞られるような痛みと五感が全く利かなくて死んだのかと思ったぜ」

魔法使い「……諸刃の剣」

勇者「使い方をミスっちまうとな」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 11:45:14.47 ID:3ubKW9DYo

勇者「でも、すっげぇ便利な能力には代わりねえんだよ」

勇者「人にも使えるってのがデカいな」

魔法使い「……というと」

勇者「例えば魔法使いに『従』って書けば俺の言うことをなんでも聞くし」

勇者「『恋』って書けばきっと俺に恋しちゃうぜ?」

魔法使い「……へ?」ボン

勇者「ん?」

魔法使い「……な、なんでもない」

勇者「お、おぅ? どうした? 顔真っ赤だぞ?」

魔法使い「き、きのせい! 焚火のせいでそう見える、だけ……」

勇者「おぉ、そうか?」

魔法使い「……うん」

魔法使い「……恋って書かれたのかと思った」ボソッ

勇者「ん? なんか言った?」

魔法使い「ううん!! なんでもない! なんでもない」

勇者「お、おぅ…… お前もデカい声出るんだな」

61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 11:48:22.49 ID:3ubKW9DYo

魔法使い「……あ、見張り交代の時間」

勇者「あぁ、本当だ。 早かったな」

魔法使い「……うん。 勇者はもう休んで」

勇者「あ?」

魔法使い「……昼間ずっと馬車を引いて疲れたでしょ。 私が代わるからもう休んでほしい」

勇者「あー……」

勇者「>>62



>>62

@「一緒に見張ってるよ」

A「隣で寝ていいか?」

B「膝枕してよ」

C「ヤラナイカ」

D「じゃあそうするわ、おやすみー」

E自由安価
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 11:49:54.36 ID:zEfm4UFNO
6
魔法使いともっと仲良くなりたいから一緒に見張るよとか言って居座る
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 11:56:04.82 ID:3ubKW9DYo

勇者「せっかくだしな魔法使いともっと仲良くなりてぇから、一緒に見張ってるよ」

魔法使い「……へ」

勇者「……なんだよその間抜けな顔」

魔法使い「……間抜けじゃない」

勇者「んだよ」

魔法使い「……勇者疲れてるでしょ」

勇者「うるせぇな嫌なのかよ」

魔法使い「……嫌じゃ、ないけど」

勇者「けど?」

魔法使い「……なんでもない」ブルブル

勇者「寒い?」

魔法使い「……少し。 まだ夜は冷える」

勇者「そうだな。 よっこらショット」スッ

魔法使い「……なにそれ」

勇者「よっこらセーックス」ドスッ

魔法使い「……そんなこと言う人はこっちに来ないで」

勇者「んだよーつれねえなー寒いんだろー?」

勇者「ならこうしてくっついてたほうが暖かいだろうが」

魔法使い「……邪気を感じた」

勇者「今まで感じなかったのか? まだまだ甘ぇな」

魔法使い「……こんなのが勇者だなんて」

勇者「でも旅するのわりと嫌じゃないんだろ?」

魔法使い「……まぁまぁ」コクン
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 12:07:04.04 ID:3ubKW9DYo

勇者「なぁ、魔法使いのこともっと教えてよ」

魔法使い「……私のこと?」

勇者「そ、どこで生まれて、何をして育ってきて、なんで旅をしようと思ったのか、とかさ」

魔法使い「……難しい」

勇者「そうかぁ!?」

魔法使い「……私が生まれたのは、とても魔法が栄えていた国」

魔法使い「…………」

勇者「で!?」

魔法使い「……え?」

勇者「続きねえのかよ。 家族は?」

魔法使い「……両親と姉がいた。 両親は魔法の国の中でも随一と言われていた魔法の使い手で、とても魔法が上手だった」

勇者「へー。 だから魔法使いもその歳で中級の攻撃魔法なんか扱えるのか」

魔法使い「……私なんかは大したことがない。 姉さんは両親の魔法の才を受け継いでとても優秀な魔法使いだった」

魔法使い「まだ教会学校に通いながらも既に魔法の道を探求する魔法研究所というところで学び、働いていた」

勇者「すげぇんだな姉ちゃん」

魔法使い「…………」コクン

魔法使い「……姉さんは家族の誇りだった。 国中からも注目をされていて、次世代の魔法の発展に大きく関わるんじゃないかと期待されていた」

魔法使い「もちろん、私も姉さんが大好きだった。 いつも一緒に遊んで、魔法のことを勉強して、分からないことは色々教えてくれた」

魔法使い「……でも私は姉さんほど才能がなかった」

65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 12:12:22.36 ID:vxjKHHeDo
この時間の連取りってありですか?
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 12:13:58.09 ID:eZwKhb8x0
阻止してやる
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 12:16:09.98 ID:3ubKW9DYo

魔法使い「……両親はいつも私と姉さんを比べた」

魔法使い「……学校の成績も悪くは無かった。 でも姉さんに比べたらダメだといつも叱られた」

勇者「…………」

魔法使い「……大好きだった魔法も上手に出来なくて、なんでこんな簡単なことが出来ないんだとお父様に叱られた」

魔法使い「……母さんにはいつも失望の溜め息をつかれた」

魔法使い「……それが辛くて、魔法も嫌いになったの」

勇者「そうだったのか」

魔法使い「……でも姉さんはいつも私に優しかった。 泣きじゃくる私を慰めて、頑張ろうって励ましてくれた」

魔法使い「……帰りが遅くなって、私が一人で泣きながら寝ていた日はベッドにもぐりこんできて優しく抱きしめてくれた」

魔法使い「……いつもいい匂いがして、暖かくて、姉さんのことが大好きだったの」

魔法使い「姉さんみたいな立派な魔法使いにはなれないかもしれないけど、それでも魔法は楽しいから。 姉さんと繋がっている大切なものだから頑張ろうって思ってたの」

魔法使い「……でもまだ小さかった私は頑張りきれなかった」

勇者「…………」

68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 12:17:24.09 ID:vxjKHHeDo
お、いるじゃん!
連取りしてやる!
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 12:22:32.10 ID:3ubKW9DYo

魔法使い「……私も魔法研究所に入りたいと思って受験してみたの」

魔法使い「……でもそこは見たこともない魔法理論や原理、魔法組織ばかりでとても力が及ばなかった」

魔法使い「……自分の無力さを痛感した。 私なんかが入れるような世界じゃなかったんだって思った」

魔法使い「……姉さんはもっと勉強してから入ればいい、時間はたくさんあるって慰めてくれたけど…… 私には姉さんがうらやましかった」

魔法使い「……だって姉さんはもうその時の私の歳には魔法研究所に入っていたから。 私ももしかしたらなんて思ってた」

魔法使い「……羨ましくて、妬ましくて、虚しかった」

魔法使い「……だから、姉さんに当たってしまった」

魔法使い「姉さんに私の気持ちなんか分かるわけない。 姉さんなんかどっかいけって……」

魔法使い「……それで、私は姉さんから逃げたの」

勇者「そうか」

魔法使い「……本当に今思うと最低。 その時の姉さんの泣き顔が今でも瞼に焼き付いてる」

70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 12:27:46.09 ID:3ubKW9DYo

魔法使い「……散々ひどいこと言って、その日は別々に寝たの」

魔法使い「次の日の朝、腫れた目をして真っ黒なくまをつけながらも、優しいいつもの姉さんだった」

魔法使い「……おはよう魔法使いって優しく挨拶してくれたの」

魔法使い「……その時、私はなんでこの人は笑っていられるんだろう、気持ち悪いって思って」

魔法使い「……ドアをバンって閉めて、逃げ出したの」

魔法使い「……そのまま教会学校に泣きながら行ったのをよく覚えてる」

勇者「姉さん優しいな」

魔法使い「……うん、私の自慢の姉さん」

魔法使い「……でも、でもね……」

魔法使い「……うっ……姉さんが……」

魔法使い「……姉さんがいた魔法研究所で……その日に……」

魔法使い「……原因不明の大爆発事故があったの」

71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 12:31:39.72 ID:3ubKW9DYo

魔法使い「……国中がてんやわんやの大騒ぎだった」

魔法使い「……本当にすごい爆発で三日三晩かけて消火活動が行われた」

魔法使い「……その間姉さんは家に帰ってくることは無かった」

魔法使い「……中にいた人は……全員……即死だったろうって…… 身体の一部すら残らない大爆発だった」ポロポロ

魔法使い「うっ……ひっく……」

魔法使い「……うぅ……ぐすっ……」

勇者「そうか」ギュッ

魔法使い「……ぐすっ……ごめんね……」

72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 12:36:15.66 ID:3ubKW9DYo


魔法使い「……それから両親は代わった」

魔法使い「……前にも増して私を軽蔑し、暴力を振るわれることも少なくなかった」

魔法使い「……理不尽なことも沢山言われて、魔法の実験だなんていって攻撃魔法を当てられることだってあった」

勇者「……まじか」

魔法使い「…………」コクン

魔法使い「……もう耐えられないと思って、両親に家出をするって言った」

魔法使い「……そしたらお前みたいな出来損ない生むんじゃなかった。 姉を返せって……」

魔法使い「……そんなのひどいと思わない? 私だって……姉さんを……返してほしい……」

魔法使い「……ひどいこと言って、姉さんを泣かせたまんま仲直り出来なくて……辛いのは私だって一緒なのに」

魔法使い「……せめてごめんなさいって一言、言いたかった!!」

魔法使い「…うぅ……」

勇者「…………」

73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 12:39:23.83 ID:3ubKW9DYo

魔法使い「……はぁ。 いっぱい泣いた」ゴシゴシ

魔法使い「それから私はさっきの街まで逃げてきたの」

魔法使い「……両親から。 姉さんのいた街から」

魔法使い「……罪滅ぼしじゃないけど、姉さんみたいな魔法使いになれたらなと思って日々修行中」

魔法使い「……終わり」

勇者「……おう」

魔法使い「……ごめん、つまらない話聞かせた」

勇者「…………」


>>74

@抱きしめる

Aキスをする

B自由安価



休憩します
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 12:40:24.92 ID:vxjKHHeDo
3
抱きしめて頭を撫でてあげる
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 12:43:00.54 ID:D618uh2Jo
たんおつ
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 13:18:36.34 ID:3ubKW9DYo


勇者「そりゃ辛かったな」

魔法使い「……ふぁ!?」


優しく、包み込むように魔法使いの身体を抱きしめる
身体を強張らせた魔法使いもすぐに力を抜き、俺の背に腕をまわしてくる


魔法使い「……暖かい」

勇者「姉ちゃんみたいか?」

魔法使い「……ふふ、ちょっと硬い」

魔法使い「……でも優しくて……色々……思い出しちゃうよ……」


俺の胸に顔をうずめ、震える魔法使い
背にまわされた腕がぎゅっと俺を掴み、また過去の辛さを吐きだすように嗚咽する

左腕で泣きじゃくる魔法使いを離すまいと抱き、右腕でその綺麗な銀髪を優しく撫でる

小さな泣き虫はそのまましばらくの間泣き続けた

77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 13:21:41.08 ID:3ubKW9DYo

魔法使い「……ねぇ勇者」

勇者「ん」

魔法使い「……姉さんは私を許してくれるかな」

勇者「許すも何も、泣き腫らした目をしながらおはようって言ってくれたんだろ?」

勇者「そんな優しい姉ちゃんが魔法使いのこと嫌いになるわけないだろ」

魔法使い「……だといいな」

魔法使い「……うぅ…」

勇者(また泣いちまった)

勇者(まぁ、しょうがねえか)
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 13:31:39.00 ID:3ubKW9DYo

魔法使い「……ごめん、もう大丈夫」

勇者「おぅ」

魔法使い「……えへへ、恥ずかしい」

勇者「そうか? 俺は魔法使いのことが知れて嬉しかったぞ」

魔法使い「……ん」

魔法使い「……ちょっとそんな見ないで」プイ

勇者「なんだよ」

魔法使い「……んー!」

魔法使い「……もういっかい」ガバッ

勇者「んぉ!?」

魔法使い「……受け止めてよ」

勇者「ちゃんと受け止めただろうが」ナデナデ

魔法使い「……ん」

勇者「なぁ、魔法使い」

魔法使い「……んー?」

勇者「お前帽子無い方がかわいいぞ」

魔法使い「……そう?」

勇者「おう」

魔法使い「……そっか」

魔法使い「……じゃあ勇者といる時は帽子しない」

勇者「おう」

魔法使い「……ふふ」

魔法使い「もっと撫でて」

勇者「おう」ワシャワシャ

魔法使い「……わー」

勇者「すっげぇ棒読み」

79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 13:33:54.68 ID:3ubKW9DYo

魔法使い「……ねぇ勇者」

勇者「あぁん?」

魔法使い「……すき」

勇者「はぁ? 聞こえねえって」

魔法使い「……なんでもない」

勇者「んだよ……気になるだろ」

魔法使い「……もう言わない」

勇者「なんだよ!」

魔法使い「…………」チラ

勇者「……?」

魔法使い「……お返し」ワシャワシャー

勇者「うわっやめろ! 馬鹿!」

魔法使い「……ふふ」クス

80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 13:34:34.85 ID:3ubKW9DYo
きゅうけー

なぁこいつら付き合ってないんだぜ?
魔法使いだけ俺の中で人気急上昇中なんだけど
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 13:36:50.49 ID:vxjKHHeDo
私の中でも急上昇なんだが(脳内再生キャラめぐみん)
これからは魔法使いのコミュをしながら他とのやり取りもしないとな
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 13:37:22.45 ID:eZwKhb8x0
長門の眼鏡みたいな会話してんなこいつら
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 13:38:18.66 ID:vxjKHHeDo
それものすごい分かる
めぐみんだったのに長門になった起訴
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 13:39:50.32 ID:3ubKW9DYo
どっちも見たことねえんだけど()
長門ってそんな可愛いキャラならハルヒ見てこようかな
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 13:44:27.84 ID:vxjKHHeDo
長門はくっそ健気でいいキャラ。見るのをおすすめするけど、エンドレスエイトは地獄
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 14:44:32.90 ID:L1x4/7ls0
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 16:42:35.43 ID:3ubKW9DYo

…………………………………………

勇者「そりゃないぜエルフさんよぉ?」

エルフ「ごめんなさいごめんなさい!」

勇者「この落とし前はどうつけてくれるんだぁ? あぁん?」

エルフ「ごめんなさい!本当にごめんなさい!」

勇者「金だよ金ェ! 銭が払えねえってんなら……その身体で払うしかねぇよなぁ? あぁ?」

エルフ「そ、それだけは……ご勘弁を……」プルプル

勇者「けっ…… 連れてけ」

女騎士「……おう」

エルフ「きゃぁぁ! お願い助けてください勇者様ぁー!!」


パン!!


魔法使い「……遊び過ぎ」

勇者「……ごめんなさい」



88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 16:45:20.81 ID:3ubKW9DYo

勇者「だってよぉエルフがさぁ! 見張り中に寝て焚火消したんだぜ?」

エルフ「本当にごめんなさい」

女騎士「火種を作るのも楽じゃないしな」

エルフ「うぅー…… ごめんなさいぃ」

魔法使い「……はぁ。 それは分かったけど今のは何」

女騎士「闇金と借りた貧乏人女のコント」

魔法使い「……それも分かる」

勇者「じゃあなんだよ?」

魔法使い「……なんでそんなことをしていたの」

勇者「楽しかっただろ?」

エルフ「ドキドキしました」

勇者「あれー?」

魔法使い「……はぁ」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 16:47:25.95 ID:3ubKW9DYo

勇者「なんで俺が食糧探しに行かなきゃいけねえんだよ!!」

勇者「おかしくねぇ!? 悪いの俺だけじゃないじゃん!」

勇者「ていうか別に悪いことなんかしてないし!!」

勇者「あーマジ昨日一瞬でも魔法使いのことが可愛いって思って損したわー」

勇者「やっぱ貧乳女子は器小さくてダメだわ―」

勇者「時代は巨乳女子だわー」

勇者「……ん? あれは……」

勇者「……おいおいマジかよ」

勇者「メタルスライムじゃねえか!」



90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 16:54:48.93 ID:3ubKW9DYo

メタルスライム
数多くいる魔物種の中でも稀少な種類のスライム

全身は流動性の鋼のような硬さを誇り鉄壁の防御力を有していると同時に、まるで羽が生えているかの如く俊敏な動きを見せる
それら故に討伐が非常に難しく、超一流の冒険者ですら倒すのは困難とされている

しかしそれを倒した暁には非常に多くの経験値が貰え、いわゆるレベルと言われる人の潜在的な能力を引き出し、戦闘など日常的な多くの能力をあげることが出来る
更にそのメタルスライムを筆頭としたメタルシリーズの素材は非常に高値で取引されており、この素材は超一級の武器や防具に利用される

つまり倒すといいことづくしの敵が目の前におり、しかもこちらに気付いていないのだ


勇者「潜在一隅のチャンスじゃねこれ」

勇者「え、どうしよう? 普通に斬りかかる? いやムリムリ俺の剣じゃ絶対通らねえし」

勇者「となると文字能力だよな……」

勇者「あーでもなんて書こう?」

勇者「一撃で殺すためには? いや動きを止めるか? がぁぁぁくっそう!!」

勇者「ええい! いけ!!」


>>92


>>92文字安価

91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 16:58:18.01 ID:RoSR0S6hO
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 17:01:50.91 ID:tBA85DY90
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 17:21:07.04 ID:3ubKW9DYo

勇者「ま、王道で行くのがセオリーだな」


『止』


指で紡いだ字をピンと弾き、見事にそれがメタルスライムへと命中する

するとポヨンポヨンと跳ねて遊んでいたメタルスライムの動きが中途半端な姿勢のままピタッと止まる


勇者「わはは! ざまぁみろ畜生め!」


余裕ぶって魔物の目の前から近づいてもやはり逃げることはなく、文字能力が適切に効果を発揮していると感じた


勇者「なっはっはっは!! 俺様最強だぜ!!」

勇者「あー! でもせっかくだしみんな呼んでおくか? それからぶっ殺そうそうしよう」

勇者「おーい! みん……


みんなーと声をかけようとした瞬間、メタルスライムから光のカーテンのような不思議な光が発せられた

94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 17:27:22.96 ID:3ubKW9DYo

やべぇ!

そう感じた時には遅かった

光のカーテンは霧散、光の粒がキラキラと綺麗に光り、メタルスライムから火球魔法メラが発せられた

慌てて右に回避するも左腕にパン程度の小さな火球が当たる


勇者「ぐあぁッ!!」


メラは下級火球魔法。昨日の魔法使いが行ったベギラマに比べれば下位の魔法である
しかしそれでも魔法の威力は絶大だ

服の上から肌をこれでもかと焼き、強烈な痛みが襲ってくる


勇者「いってぇな畜生!!」


歯を食いしばりながらメタルスライムに目を開けると、なんと次弾の詠唱を行っているではないか


勇者「おいおいおいおい!! 嘘だろ!!」


カーテンが霧散、キラキラと光の粒が瞬いた瞬間、メラが3連発こちらに向かって発せられた


95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 17:30:35.55 ID:3ubKW9DYo

勇者「くっそ!!」


慌ててメラの軌道から横に走って逸れ、なんとか回避する


勇者(落ちつけ、動きは止めても魔法は撃ってくる)

勇者(だけどおそらくメタルスライムが使えるのはメラだけだ。 メラは直線的にしか飛ばねえからな、来るのが分かってたら回避自体は難しくねえ!!)


そう考えている間にもやはり詠唱を終えたメタルスライムから火球が1発2発3発と飛んでくる


勇者「あぶねぇな! ちくしょう、仲間呼んでる場合じゃねえじゃねえか!!」

勇者「ええぃめんどくせぇ! ぶっ殺してやるよ!!」

96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 17:36:46.84 ID:3ubKW9DYo

灼熱の球体を避けながら剣を左手で抜き、右手で文字を紡ぐ

書いた文字は『貫』

剣に魔法を当てると赤色の優しい光が剣を一瞬包み込み、消える
これで準備は完了だ


横に逃げるように動かしていた足で踏みこみ、一気にメタルスライムへと近づく

慌ててメタルスライムも次の魔法の詠唱を行うが、遅い


勇者「じゃあな」


鋼よりも硬いその身体を剣はまるで豆腐でも刺したのではないかと錯覚するほどに抵抗なく貫いた

メタルスライムは悲鳴をあげることなく、そのまま絶命
辛くも俺は勝利した


テレレ、テッテッレー♪


97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 17:39:45.03 ID:KEOItejl0
結構、チート能力じゃない?
夜桜カルテット(だっけ?)の口にしたものをつり出すやつを思い出した
安価下
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 17:42:19.02 ID:3ubKW9DYo

勇者「いてて……」


レベルが上がったことで少し力が漲るようになった気がしなくもないが、そんなことよりもさっきメラを受けた左腕が痛んで全くテンションが上がらない


勇者「ねえわ……マジねえわ」

勇者「頻繁に使うとマジ疲れんだぞ……ったく」


『治』


それを左腕に書くと、火傷となっていた腕、そして黒焦げになった服が元通りになった

左腕を軽く回し、痛みがないことを確認すると疲れたように仲間たちの元へと戻る


魔法使い「……遅い」

勇者(……厳しいっすね)

99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 17:47:04.82 ID:3ubKW9DYo

…………………………………………

勇者「ヴォゥエエェェェェ疲れたぁぁぁぁぁ!!」

女騎士「なんだその声」

魔法使い「……汚い」

勇者「少しは労えってんだよ。 お前らも馬車くらい引けるようになれよ!」

エルフ「あはは…… ありがとね勇者」


やっとの思いでついたのは小さな村
いや、村と呼んでいいのかも分からない小さな集落だ

それでも宿屋くらいはあるだろう。 どんな家だろうと野宿なんかよりは百倍マシだ
魔物を警戒し、外にずっと身を置いているのは想像以上に堪えるものだ

正直馬車引いて魔物と戦って野宿っていう1日で心が折れかけていた

100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 17:53:26.29 ID:3ubKW9DYo

勇者「こんちゃーっす」


農作業をしていた村人に声をかける


村人「あぁ、これはこれは…… 旅人さんですかぃ?」

勇者「うーっすそうでーっす」

村人「そうですか……」

勇者「……あ?」


なにやらあまり歓迎されていない雰囲気を感じ、首を傾げてしまう
おいおい変な話だ、俺まだ何もしてないぜ? っていうか勇者様だぞゴラ


勇者「あのーすんません宿屋ってあります?」

旅人「あぁ……あっちです」


顎で方向を示され、さすがにこちらもカチンとくる


勇者「なんだコイツ……」

女騎士「おい、勇者」

勇者「あぁ? んだよ取り込み中だ!」

魔法使い「……たいして取りこんでない」


女騎士に声をかけられ妙な事に気がついた
あちこちから視線を感じる。 それはまるで招かれざる客が来たみたいな雰囲気すら感じるほどに


勇者「あー…… あー?」

魔法使い「……歓迎されていないみたい」

エルフ「辺境の村々にはたまにあることだよ。 この村はあんまりよそ者を歓迎しないのかも」

勇者「めんどくせぇ…… なんでもいいよ宿屋にいけりゃーさ」

女騎士「夜襲かけられないといいけど」

エルフ「やめてよ縁起でもない!」

101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 17:56:33.53 ID:3ubKW9DYo

「おい、そこの兄ちゃん」


誰かに声をかけられ振り返ってみるとそこには6歳くらいの男の子がいた
とても子供らしい気に食わないものを見る正直な目をしている
それが気に食わないんだけどな! お前俺様を誰だと思ってんだ?


男の子「おい! 聞いてんのかよ!」

勇者「んだようるせぇなチビ! 俺を誰だと思ってんだ!」

男の子「知るか!」

勇者「知らねえのかよ!」

男の子「知るわけないだろ馬鹿じゃねえの!?」

勇者「はぁ!? 馬鹿とか言うな馬鹿!」


女騎士「なぁ、なんであいつ子供とマジ喧嘩してんだ?」

エルフ「どっちも子供だねぇ」

魔法使い「……はぁ」

102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 17:57:33.15 ID:vxjKHHeDo
疲れて機嫌が悪いんだね
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 18:00:51.30 ID:3ubKW9DYo

勇者「で、何の用だクソガキ」

男の子「あんたたち、冒険者だろ」

勇者「じゃなきゃ何に見えんだ? 女神様にでも見えんのか? 目腐ってんのかっつぅの」


ギリッと歯を食いしばって睨みつけてくる男の子に少したじろぐ
やべ、言い過ぎたかな。 なんて思いながら半歩下がってしまう自分の気の小ささに恥ずかしくなってくる


男の子「冒険者はみんなそうだ! そうやって人を見下してひどいことばかりする!!」

勇者「はぁ? なんの話だ。 お前こそいきなり噛みついてきて田舎の子供ってのはみんなこう馬鹿なのか?」

男の子「……うっ……くそっ……」ボロボロ

勇者「ってえぇー…… 泣くことねえだろ」

男の子「泣いてねえよばかぁ…!」

エルフ「…………」

魔法使い「……あーあ」

女騎士「さいてーだな」


えー……
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 18:07:28.82 ID:3ubKW9DYo

大の大人が子供にマジ謝りしながら話を聞いていると、どうやら最近この村に冒険者が立ち寄るらしい
厄介なのがその冒険者は品物を強引に値切ったり、持っていったりとかなり好き放題やっているそうだ

悔しそうに歯を噛み締めながら語る男の子には同情する


勇者「冒険者っつっても所詮は人間だろうが。 そんなの村人総出で追いだせばいいだろ」

男の子「それが出来たら苦労しないよ。 あいつらすっごい強いんだ」

男の子「もし怪我人を出すくらいなら耐えようってみんなが……」

勇者「ふーん」

魔法使い「……気の毒」

女騎士「そうだな、私としては助けてやりたいところだが」チラ

勇者「そんな目で見るなよ…。 俺らには関係ない話だろ? ていうかそんなに強いんだったら俺らがどうにか出来る問題じゃねえって」

エルフ「そうかもしれないけど…」

勇者「デカい街から兵隊でも連れてきてもらうしかねえだろ? それかもっと腕の立つ冒険者にでも依頼するんだな」

男の子「そ、そんな! 助けてくんないのかよ!」

勇者「馬鹿言うな。 なんで俺が無料働きしなきゃなんねえんだよ! こっちは疲れてんだっての」

男の子「畜生…… 冒険者ってのはこれだから嫌いなんだ……!」

105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 18:15:03.47 ID:3ubKW9DYo


バギィィッ!!


宿屋に向かって歩いていると、突然木が割れるような大きな音が響く

とりわけ耳のいいエルフが驚きのあまり思わず飛んでいたのに少しクスリとする


エルフ「な、なに!?」

女騎士「おい、みろ!」


その大きな音がした方の家から誰かが吹き飛ばされてきた
その異様な光景に俺はドン引きする


「ぐあぁぁ……!」

「あんだとぉ? もういっぺん言ってみろぉ〜?」

「おいおい、あんまり手荒なことはしたくないんだけどなぁ? 分かる? スマートに行こうよ」


リンゴをかじりながら出てきたデブと、櫛で髪をとかしながら現れた高身長で細身の男の二人
なんかいかにもーって奴らだな


男「こ、これ以上は…… こちらも限界なんです…!」

デブ「あんだとぉ〜? 僕がリンゴを寄越せって言ってるんだぞぉ〜?」


地べたに這いつくばりながら悶える男の顔面をデブが蹴り上げる
少なくない鮮血が当たりに撒き散り、それを見ていた村人たちから悲鳴があがる


勇者「田舎の三流ヤンキーかよ……」

エルフ「た、助けなきゃ!」

女騎士「待て、あいつらふざけた身なりだが隙がないぞ。 もっと慎重に…!」

勇者「ふぁぁ……興味ねえ」

106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 18:20:47.78 ID:3ubKW9DYo


男の子「やめろぉー!!」


先ほど俺が散々泣かした男の子が走り寄る
おーやるじゃんあいつ。 よっぽど傍観してる他の村人たちより男気あるよ、うん



櫛男「ん? なんだい坊や? そんな大きな声を出して、スマートじゃないな」

男の子「父ちゃんをいじめるな糞冒険者共!!」

櫛男「はぁー……全くなんて汚い言葉づかいなんだ? もっとエレガントな言葉を使いなよ、少年」

男の子「出ていけ! お前らのせいで村のみんなが苦しんでるんだ!!」

櫛男「ふーん」

デブ「お、俺、もっとリンゴ食いたい!」

櫛男「後でにしようぜ。 まずはこの少年をどうするかだ」

デブ「お、俺らにたてついた! 俺がリンゴ食いたいって言ってるんだぞぉ〜?」

男の子「お前らに食わせるリンゴなんかない! 帰れ!!」

櫛男「……もううるさいなぁ、君」


パァン!
とここまで聞こえるほどの平手打ちが男の子の顔に見舞われた
そのまま尻もちをついてもキッと睨みつけるあたりなかなか見所あるなあいつ

107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 18:27:34.21 ID:3ubKW9DYo

男「お、お願いします冒険者さん! 息子、あの馬鹿を助けてください!」

勇者「えぇー興味ないって」

男「私らではどうしようもないんです! だ、だけど外に助けを求められるほど金も時間もないんだ!!」

勇者「馬鹿言ってんじゃねえよ。 無償の正義なんかあるわけねえだろうが」

勇者「そんなもんは馬の糞の中にもねえよ」

男「くっ……!」

勇者「あるとしたらそれは勇者とかいうふざけた野郎だけだろうな」

勇者「勇者なんて、どうせただの大馬鹿野郎だぜ?」

男「そう、だな…… 勇者はまだ……始まりの街で修業をしていると聞くし……」

男「そうだ…… 無償でなければ、いいんだろう?」

勇者「は?」

男「うちの店に出来ることならなんでもする! 素材さえあれば無料で武器や防具を作ろう!」

勇者「あーいいっていいってそういうの。 興味ねえから」

男「くっ……そうか。 仕方がないな、これは私たちの問題だ。 巻き込んで悪かった」

勇者「…………」


女騎士「おい、勇者。 そろそろだ」

エルフ「そうだよ、助けてあげようよ」

魔法使い「……勇者」

男「勇者……?」

勇者「おっさん、無償の正義なんてものはこの世には勇者くらいしかやらねえって言ったけどよ」

勇者「よかったな、俺がその勇者様だ」

108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 18:36:07.41 ID:3ubKW9DYo


デブ「お、お前、覚悟は出来てるんだろうなぁ〜?」

男の子「帰ればかやろー!!」

櫛男「Oh.耳がつんざくんだよ。 スマートにいこうって言ってるだろう?」

デブ「す、少し、だまれぇ〜!」


まさに殴られるその瞬間、誰もが息を飲んで目をつむる


「ぐごえぇぇ〜!!?」


だが殴られたのは男の子ではなく、デブ張本人
しかも殴られた所ではなく、地面がまるで拳のように突き出てきたのだ
バカみたいな質量がいきなりぶつかってきたのだ、ただで済むはずがない

俺が書いた文字は『殴』

へぇ地面に当てれば地面が殴ってくれるのか、有能すぎんだろこれ


櫛男「お、おいどうした!?」

デブ「…………」ピクピク


勇者「おいおい、やめとけってあんたら」

櫛男「なんだお前!?」

勇者「そんな子供寄ってたかってさー? 恥ずかしくねえの?」

勇者「まぁ、俺さっきそのガキ泣かしちまったんだけどさ」

男の子「に、兄ちゃん!? なんで!?」

勇者「あぁ? 言ってなかったっけ?」

勇者「俺様は勇者だからな助けてやるよ」

勇者「ナイスガッツだったぜ糞ガキ。 あとは任せろ」

109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 18:45:56.87 ID:3ubKW9DYo

櫛男「お前が弟をやったのか?」

勇者「そうだぜぇ? ほらほらかかってこいよぉおっさん」

櫛男「おっさんじゃない! 俺はまだピチピチのナインティーンだ!!」

勇者「うっそ俺の一個上? 老けてんなぁ」

櫛男「黙れぇぇぇ!!」


櫛男が剣を抜き、一気に踏み込んでくる
なるほど結構な速さだが、こいつの剣、いや、身体ごと飛び越え、宙返りをする
やべ、俺今の動きかっけぇ


櫛男「子癪な!! 俺よりエレガントな動きをするんじゃない!」

勇者「俺が言うのもなんだけどうるせぇなぁお前!」


懐から投げナイフを取り出し、櫛男めがけて投擲する

一直線に櫛男に飛んでいくが、読みやすい軌道だからこそ簡単に剣で弾かれてしまう


櫛男「そんなものが効くとでも思ったか? スマートじゃないね」

勇者「そう?」


ザクッ!!!


櫛男「ぐあぁ!?」

櫛男「な、何故だぁ!?」


あらかじめ投げる前にナイフに文字能力を仕込んでおいた
書いた文字は『必中』

二文字の大きな魔力を消費してでも文字能力の効果を高めることは大きい
前にこの『必中』で検証したことがあった

的に向かって『当』と書いたナイフをなげると確かに一直線にナイフは跳び、刺さった
しかし遮蔽物やなにかに当たってしまった場合、このナイフは目標に刺さることは無かったのだ

そこで二文字の『必中』
これを試したところ、遮蔽物を避け、また何かに当たってもそのナイフは軌道を修正し当たったのだ

二文字は魔力消費が大きい代わりに文字の持つ意味を叶える力を増幅させることを俺は知っていた


勇者「残念だったな、三流ヤンキー」

勇者「お前じゃ俺様には勝てねえよ」

110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 18:50:14.98 ID:3ubKW9DYo

櫛男「ぐぅ……ッ!」

額に脂汗を浮かべうめき声をあげる


勇者「ははっ全然スマートじゃねえな」

櫛男「だ、黙れくそがぁー! 舐めるなぁ!」

勇者「おいガキ」

勇者「こいつ、どうしてやりたい?」

男の子「え?」

男「へへっ、そうだな…… そのうざったい髪の毛を無くしてやりたい!」

勇者「そいつはナイスアイディアだ」


やっとの思いで立ちあがってきた櫛男の頭に向かってやはり文字を飛ばす


『燃』


それが頭に到達するや否や髪の毛がよく燃える燃える


櫛男「ああああ!!! 熱い!! 熱いいいいいい!!!」

勇者「あっははは!! ざまぁねえなぁ!!」

男の子「へへっ」


魔法使い「……う、うわぁ」

エルフ「や、やりすぎじゃないかな?」

女騎士「うぅ……あの悲鳴ゾクゾクする!」

111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 18:53:11.11 ID:3ubKW9DYo

勇者「もう飽きたからさ、寝てろよ」

櫛男「ぐぅ!?」


助走をつけ体重を乗せた全力顔面パンチ


櫛男「ぐぉぉおお!?」


歯が3本くらい抜けて宙を舞い、意識を失う櫛男

はは、ウケる


勇者「お前の分まで殴っておいたぞ」

男の子「……サンキュー兄ちゃん! スカっとした!!」


テレレ、テッテッテッレー♪

112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/09(水) 18:53:36.31 ID:3ubKW9DYo
休憩します

安価すればよかった
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 19:42:23.29 ID:eZwKhb8x0
ま、男多かったし多少はね?
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 19:43:50.77 ID:RoSR0S6hO
【悲報】まだぬちゃぬちゃしてない
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/09(水) 19:46:14.51 ID:eZwKhb8x0
目的がそう簡単にはかなわないでしょ
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/10(木) 00:16:06.78 ID:diwD06Rio

男「このお礼はなんと言ったらいいか」

男の子「サンキューな兄ちゃん」

勇者「おう、俺に足向けて寝んじゃねえぞ」

男の子「足向けて……ってどういうこと?」

勇者「はぁ……馬鹿だなクソガキ」

男の子「なんだよ」

勇者「あ? やんのかゴルァ?」

魔法使い「……勇者」

女騎士「ガキはどっちだか」

117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/10(木) 00:21:15.49 ID:diwD06Rio

男「ここが俺の店なんだ」

男「あんたのおかげで商品も無事だよ」

勇者「へぇ、武具も売ってるのか」

男「あぁ品揃えに自信もあるぜ。 昔は自分で作っていたんだ」

勇者「マジ?」

勇者「じゃあさ、頼みがあるんだけど」


そう言ってポーチから取り出したのはさっき倒したメタルスライムの素材だ
それを見せるや否や店主の男の目がかまぼこみたいにカッと開かれる


男「おいおいあんた…! こりゃメタルスライムの素材じゃねえか! あんたもしかしてあれを倒したのか?」

勇者「おう。 今朝たまたま出くわしてな」

女騎士「お、おい! そんな話聞いてないぞ?」

エルフ「メタルスライム倒したんですか!? 私だって長いこと生きてるけど数回しか見たことないのに」

勇者「お前らも呼びたかったけどいなかったんだっての。 こうなるのがめんどくせえから黙ってたのによぉ」

魔法使い「……私もみたかった」

勇者「す、拗ねんなって。 機嫌直せよ魔法使い」

魔法使い「……ふん」
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/10(木) 00:28:26.94 ID:diwD06Rio

男「で、この素材をどうするんだい? 売るか? それとも何か作ろうか?」

勇者「あーそうだなぁ。 売ったらちなみにどれくらい?」

男「綺麗な素材だしね。 相場はざっと50万Gってところかな?」

男の子「ご、ごじゅうまん!?」

勇者「そりゃすげぇ! 1年は遊んで暮らせるぜそれ!」

エルフ「わ、すごい……」

女騎士「冒険者廃業だなこれは」

勇者「じゃあその素材使ってどんなんが作れんの?」

男「そうだねぇ…… メタルスライム一匹分の量だからね…… あまり大きなものは作れないかな」

男「武器なら短剣とかのサイズのものだね。 防具ならよくて胸当てとか小手かな」

男「でも世界トップクラスの素材だからね! 武器ならどんなものでも貫く攻撃力! 防具ならなんでも弾き、魔法にも強い防御力の高いものが出来るよ!」

勇者「ふーむ…… そうだなぁ売ってもいいし何か作ってもよさげじゃん?」

男「そうだね、悪いようにはしないと約束するよ!」

勇者「じゃあどうすっかなぁー……」



>>119

@売る

A武器を作る→何を作るか、誰にあげるかも安価

B防具を作る→同上

C自由安価
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