結衣「おはようございます、御主人様」 八幡「!?」

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1 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [saga]:2016/05/14(土) 20:28:50.26 ID:BmIizrvPO
結衣「奥様もお呼びになっておられますよ」

八幡「は、え...何だって?」

結衣「ふふ、寝ぼけてらっしゃるんですか? もう朝ですよ?」

八幡「...」

辺りを見渡す。
広々とした空間に、大理石らしきもので作られたテーブルや、いかにも高級そうな革張り(?)のソファー...。
由比ヶ浜の向こうには、部屋の掃除をしている執事さん(?)...。
さらには、壁にはよく分からん絵画まで掛けられている。

結衣「御主人様、奥様に怒られてしまいますよ?」

...そしてコイツ。
同級生の由比ヶ浜が、何故かメイドの格好をして、俺を起こそうとしている。
黒を基調としたドレスに、白いカチューシャらしきものを頭につけて...いわゆる、ゴスロリメイドというやつなのだろうか。

だいたい、俺はいつも通り自分の部屋で一人で寝た。
こんな所に移動した覚えはないし、まして由比ヶ浜がいた覚えもない。

八幡「...よく分からんが、分かった」スクッ

色々と疑問は尽きないが、由比ヶ浜が困った顔をしていたので、とりあえず促された通りに動く。
由比ヶ浜の後について部屋を出ると、廊下もまた凄かった。
なんかシャンデリアとかあるんだけど...。

コンコン

由比ヶ浜「奥様、若様を連れてまいりました」

由比ヶ浜が凄い扉をノックして...っていや、おいおい。
若様って何だよ、若様って。

?「はーい。どうぞー」

扉の向こうから、気さくな声で返答が返ってくる。
毎日聞いている、聞き覚えのある声だった。
2 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [saga]:2016/05/14(土) 20:29:15.56 ID:BmIizrvPO
小町「はちまーん、遅いよー。小町、お腹ペコペコだよー」

結衣「すみません、奥様。私の手際がもう少し良ければ...」

小町「結衣ちゃんのせいじゃないよ。八幡の寝起きが悪いのがいけないんだもん」

...予想通り小町だった。
何故か、奥様と呼ばれている。
と言うことは、もしかして俺の母親が小町ということになるのだろうか?

小町「八幡、結衣ちゃんにごめんなさいは?」

...小さい子ども相手に話すような言い方なのは何故だ。
小町の方が明らかに年下だろ。

小町「ほら、はちまーん」

結衣「お、奥様、そんな滅相もございません!」

...なんかもうめんどくさい。
ちゃちゃっと言って終わりにしよう。

八幡「由比ヶ浜...すまん」

結衣「ご、御主人様も! おやめになってください!」

何なんだ、この茶番は。
って言うか、由比ヶ浜が敬語を使えていることが一番の驚きだわ。

小町「はい、よろしい。じゃ、ご飯にしましょー。結衣ちゃん、今日のご飯は?」

結衣「あ、はい...。本日の朝食は−−−」
3 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [saga]:2016/05/14(土) 20:30:02.36 ID:BmIizrvPO
糞みたいな茶番の後、これまた豪勢な朝食が出てきた。
朝からメロンとか出てきたし...。
いや、コイツの身体の話じゃないからね。

結衣「御主人様、朝食がお済みになられたら、一先ずお部屋に戻りましょう」

八幡「あ...おう」

小町「結衣ちゃーん、今日も八幡のことよろしくねー」

結衣「はい、承知しました」

ガチャ バタン

行きと同じように、帰りも由比ヶ浜の後ろに付いて歩く。

結衣「御主人様、本日はいつもの様に、10時から家庭教師の方がいらっしゃいます。お昼まで勉強した後、一時半から再開です」

え、家庭教師とか来るの?
って言うか、学校とか無いの?

ガチャ

とか何とか考えてたら、俺の部屋(?)に戻って来た。
改めて見ても、無茶苦茶広い。

パタン

結衣「...えへへ」

由比ヶ浜が突然笑い出した。
言っちゃあ悪いけど、少し不気味だ。
まあ、可愛いけど。

結衣「うーん、やっと空き時間だね、ヒッキー」ダキッ

八幡「!?」

そして、これまた突然抱きつかれた。
メロンが非常に主張してきて、色々とヤバイ。
あ、今度は身体に付いてる方。

八幡「ちょ、ちょっと待ってくれ! 由比ヶ浜!」

結衣「も〜、今は二人っきりなんだから、ちゃんと『結衣』って呼んでよ〜」

八幡「は、え、は!?」

こ、これはヤバイ...。
とりあえず、事情を話して分かってもらおう...。

八幡「...由比ヶ浜、じ−−−」

結衣「結衣」

八幡「...結衣、実はな−−−」
4 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [saga]:2016/05/14(土) 20:30:29.86 ID:BmIizrvPO
俺は元々、普通(だったはず)の男子高校生だったこと、由比ヶ浜が同級生であること、小町が妹であること...。
とにかく、現状の全てが分からないことを話した。
初めは訝しげに聞いていた由比ヶ浜だったが、徐々に俺の話を信用してくれたのか、本気で聞いてくれた。

結衣「じゃあ...ヒッキーは、私のことも覚えてないの?」

八幡「...そうだな。この世界のお前に関しては、何も...」

結衣「そう...なんだ」ジワ

事を理解した由比ヶ浜は、同時に、目尻に涙を溜めてしまった。
俺自身、訳が分からないながら、申し訳なくなってしまう。
だから、罪を償うため...いや、もしかしたら興味本位なのかもしれないが、彼女に問おうと思った。

八幡「もし良かったら...聞かせてくれないか?」

結衣「グスッ...何を?」

八幡「この家の...それと、俺とお前の状況を」

結衣「...うん」
5 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [saga]:2016/05/14(土) 20:30:57.38 ID:BmIizrvPO
結衣「何から話したら良いんだろ...」

うーん、と唸りながら、由比ヶ浜は宙を見つめる。
こういう何気ない仕草は、俺の見覚えのある由比ヶ浜そのものだった。

結衣「えっと...まず、ここは比企谷家のお屋敷」

八幡「ちょっと待て」

結衣「え、何?」

八幡「お屋敷ってどういうことだよ。俺ん家って金持ちなのか?」

結衣「あ〜...そこからか。えっとね、比企谷家の始まりは、大政奉還の動乱に乗じて、ヒッキーのお父様が−−−」

八幡「ちょっと待て」

結衣「も〜、今度は何?」

ヤバイ、頭が痛くなってきた...。
大政奉還?
親父がナンタラ?

八幡「あー...えっと、何時代? いや、年号は?」

結衣「時代は分かんないけど...年号は大正」

八幡「...」

昭和ですら無いのかよ!
いや、でも、大正って15年で終わるはずだし、もうすぐ昭和なのか...。
っつっても、どっちにしろ戦前...。
...戦前でも、日本にメロンってあったんだ。
6 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [saga]:2016/05/14(土) 20:31:24.28 ID:BmIizrvPO
結衣「えっと、説明続けるよ?」

そう言って、由比ヶ浜は説明を再開した。

結衣「その時に、旦那様...つまり、ヒッキーのお父様が事業を開始なさって、あれよあれよと言う間に大成長。今じゃ、日本屈指の大財閥だよ」

財閥...比企谷財閥か...。
なんじゃそりゃ...。

結衣「で、その旦那様がお建てになったのが、このお屋敷」

八幡「...なるほど」

そう言われてから改めて部屋を見回すと、どことなく大正ロマンっぽい気がしないでもない。
...すみません、なんとなく知ってる単語を使いました。

結衣「それで、私は比企谷家で奉公させてもらってるの」

八幡「女の子一人で?」

結衣「うん。でもね、普通こういう場合は...その、え、エッチなことされることも覚悟しとかないといけないんだけど、旦那様も奥様もお優しくって、全然そんなことなくて...」

八幡「そう、なのか...」

コイツも、結構な覚悟をして生きてるんだな...。
時代が違うと、ここまで違うもんなのか...。

結衣「あ、でも言っとくけど、ここで奉公させてもらうまでは実家で家業を手伝ってたから、そんな経験一度もないからね!」///

八幡「...何を突然言い訳始めてんだよ」

結衣「え...だって、私達、こ...恋人、なんだよ...?」
7 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [saga]:2016/05/14(土) 20:31:50.65 ID:BmIizrvPO
八幡「...え、マジ?」

結衣「...マジ」

...今気づいた。
これは絶対に夢だ、うん。
じゃないと、由比ヶ浜が俺の彼女なんてありえない。
だいたい設定がありえない。
とりあえず、定番のアレ...頬を抓ってみよう。

八幡「...」ギチチチチ

...痛い。
はい、夢じゃない。
じゃあなんだよこれ?

結衣「...ヒッキー、何してるの?」

八幡「いや、夢かどうかの確認...」ヒリヒリ

結衣「なんで?」

八幡「だって、お前みたいな可愛い娘が彼女とか、俺の妄想だとしか思えねえからな」

結衣「か、かわっ...!? もう、ヒッキーったら...」プイッ

そう言いつつも、赤面しつつニヤケるコイツの表情の破壊力は半端じゃない。
でも、それはすぐに消えてしまった。

結衣「でもさ...ヒッキー、私に関する記憶持ってないんだよね?」

八幡「...ああ」

結衣「じゃあ...私のこと、好きでもなんでも無いんだよね?」

そう問いかけてくる彼女の表情は、哀しみに満ち溢れていた。
由比ヶ浜のこんな顔は、向こうの世界でも見たことがない。
俺は、どう答えるべきなのだろうか?
8 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [saga]:2016/05/14(土) 20:32:18.12 ID:BmIizrvPO
そんなことを考えても、答えなど出るはずもない。
だから、今の気持ちをありのままに話した。

八幡「実は...向こうの世界でも、同じような状況だったんだ」

結衣「へ...?」

八幡「あっちでもな、お前は俺に好意を向けてくれていた...。でも、いろんな事情があって、俺はそれに応えるべきか否かを迷ってたんだ」

結衣「いろんな事情...っていうのは、こっちの世界でも続いてるの?」

いろんな事情...。
誤魔化したが、要は俺がカースト最底辺であるということ。
それと、人の好意を信じられないということだ...。
後者はともかく、前者は完全に消滅したと言っても過言ではない。

八幡「−−−って感じだ。半分消えて、半分残っている...ってところか」

結衣「なるほど...」

...そうだ。
俺はまだ、コイツを信用できない。
コイツは、向こうの由比ヶ浜と完全に同一人物であるという訳ではない。
もし仮にそうでも、周りの状況によって、人の取る行動は変わってくる。

結衣「...ヒッキーが何で悩んでるのかは分かんない。無理に聞こうとも思わない。でも...ヒッキーに認めてもらえるように、私...頑張るから」

そう言って、由比ヶ浜は笑った。
ただ、その笑顔が無理に作られたものであるのは容易に分かった。

結衣「それとさ」

八幡「ん?」

今度は、先程と打って変わっていたずらっぽい笑みを浮かべている。
表情の豊かさも相変わらずだ。

結衣「ヒッキーは、『事情があるから』私の好意に応えるべきか否かを迷ってるんでしょ?」

八幡「...」

結衣「ってことは...むふふ」

なるほど、言いたいことは分かった。
それと、コイツの言いたいことだけでなく、コイツ自身が厄介で、なかなか切れ者であることも...。
向こうの由比ヶ浜と違って、こっちの由比ヶ浜は鋭い。
9 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [saga]:2016/05/14(土) 20:32:47.52 ID:BmIizrvPO
結衣「...っと、もうそんなに時間がないね」

由比ヶ浜が見ている方向を俺も見る。
そこには、大きな時計が掛かっていた。
俺からしたらレトロなデザインで、振り子がゆらゆらと揺れていた。

結衣「あと20分くらいで先生がいらっしゃるから、そろそろ切り上げないと...」

『先生』と、彼女はそう言った。
さっき言っていた、家庭教師というやつだろう。
ふと、気になったことがある。

八幡「なあ、由比ヶ浜」

結衣「...」

八幡「...あれ、どうした?」

結衣「ヒッキーが今までのヒッキーとは違うっていうのは分かってるけど...でも、結衣って呼んでくれない?」

八幡「え...」

結衣「ワガママだって分かってるけど...ダメ、かな?」

そう言いながら、上目遣いでこちらを見てくる。
俺じゃなければ、速攻で落ちているだろう。
しかし...。

八幡「...ダメだ」

結衣「あはは...だよね」

八幡「俺は...こんな中途半端な気持ちのまま、お前に『こっち側の俺』を思い出させるような真似はしたくない」

結衣「へ...?」

八幡「だから...俺の気持ちにちゃんと整理がついてから、呼び方を変えるかどうか、改めて決める」

結衣「ヒッキー...。へへ、やっぱり、ヒッキーはヒッキーだよ」

ふと、彼女がそんなことを言い出した。
ぶっちゃけ、意味が分からない。

結衣「そうやって、真摯に私の気持ちに向き合ってくれる...そんなところに、私は惹かれたの」

そう言いながら、彼女は頬を紅に染める。
俺も、おそらくそうなっているだろう。

結衣「だから...待ってるね」

八幡「...おう」
10 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [saga]:2016/05/14(土) 20:33:16.10 ID:BmIizrvPO
リンゴーン

結衣「わっ、マズイマズイ...先生がいらっしゃった...。私、これからお迎えに上がるけど、その時に時間稼ぐから、その間にヒッキーは着替えてて!」

八幡「ちょ、ちょっと待て!」

慌てて部屋から飛び出ていこうとする彼女に、既のところで声をかける。
二人とも慌ててあたふたしてしまっている。

八幡「ふ、服ってどこだよ!?」

結衣「あわわ、えっと...そこ! 向こうの大きいクローゼットの中! それじゃ、行ってくるね〜!」

ガチャ バタン

大きな音を立てて、由比ヶ浜はすっ飛んで行った。
俺もわちゃわちゃと服を選んでいるとき、ふと思った。
クローゼットって、この時代から既に日本にあったんだな。
11 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [saga]:2016/05/14(土) 20:33:43.75 ID:BmIizrvPO
八幡「...なんとか着替えられた」

クローゼットの中には、ものすごい量の服が入っていた。
種類は様々で、洋服も和服もあった。
しかも、どの服も高価そうで、肌触りも凄かった。
...その分、と言って正しいのだろうか?
無茶苦茶着こなしが大変だった。

コンコン

軽快に二度、扉がノックされた。
これはアレか?
俺が何か言うべきなのだろうか?

八幡「...はい?」

思わず疑問系になってしまった。
まあ、問題はないだろう。

結衣「由比ヶ浜です。先生がいらっしゃったのですが、入ってもよろしいでしょうか?」

予想通り由比ヶ浜だ。
先程とは異なり、堅苦しく敬語をバリバリ使っている。

八幡「ああ...どうぞ」

ガチャ

結衣「失礼します。先生、どうぞ」

八幡「...は?」

思わず、素っ頓狂な声を出してしまった。
由比ヶ浜が連れてきたのは、よく見知った人物であり、まさしく俺とその人の間柄そのものだったからだ。

静「いやあ、久しぶりだな比企谷。と言っても、たった3日ぶりだがな」
12 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [sage]:2016/05/14(土) 20:36:17.73 ID:BmIizrvPO
SS速報VIPで書いていた作品ですが、エロを入れることが決定したため、こちらで建て直しました。
今夜、引き続き投稿しますが、都合上説明ばっかりになってしまうので、最後にまとめを載せるので、そちらをご覧ください。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/14(土) 21:17:19.62 ID:s47LHaLlo
移転しても見てる
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/14(土) 21:38:21.31 ID:MUT6F5yTo
支援
頑張って
15 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [sage]:2016/05/14(土) 22:58:23.10 ID:Uymew88V0
>>13 >>14
ありがとうございます
めっちゃ嬉しいです

では、続きを投下します
16 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [saga]:2016/05/14(土) 22:58:48.62 ID:Uymew88V0
静「さあ、授業を始めるぞ。今日は確か蘭学からかな。...あれ、教科書が無い」

八幡「...」

...静ちゃんか〜。
ここで静ちゃん来るか〜。
ってか、蘭学ってなんだよ。
いや、オランダ語でしょ?
それは分かるけどさ...。

静「すまん、比企谷。君の教科書を見せてもらいながら授業を進める」

八幡「は、はあ...」

静「む、どうした? また彼女と喧嘩でもしたか?」

八幡「え...」

この人は俺たちが付き合ってることを知ってるのか...。
なんで教えちゃったの、この時代の俺...。

静「まったく、若いな...。君は時々、女心を完全に無視するような言動を取るからな。だが、それで彼女を怒らせてしまうと、君は女々しく落ち込む」

...あれ?
静ちゃんが普通に恋愛について話してる...ってことは?
...既婚、なのか?
明るい表情で、彼女は語っていた。
...が。

静「...羨ましいよ」

八幡「...へ?」

静「私なんか、子供の時から可愛かったから、たくさん男が寄って来てな...。完全に体目当てな奴もいたし...その時、既に私のスルースキルは完成されつつあった」

ヤバイ。
これ、俺がいた世界と一緒な奴だ。
先程とは一変して、哀しみ、憎しみ、恨み...。
様々な負の感情が、彼女の顔を歪ませているのがハッキリと分かる。

静「そうやってスルーし続けていたら、いつの間にか女学校を卒業していた...。私の代では私ただ一人が、だ!」

語調が次第に強くなっていく。
そう言えば、前に何かで読んだことがある。
明治やら大正の頃、女学生たちは、在学中に結婚して中退するのが普通で、卒業するのは恥ずかしいことだったらしい。

静「まあ、そのおかげで、男尊女卑のこの御時世には珍しく、女が家庭教師なんてできているわけだが...辛いよ」

これまた一変し、先程の禍々しさや力強さは消え失せて、落胆の色が浮かぶ。
お願い、早く誰かこの人を貰ってあげて!
17 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [saga]:2016/05/14(土) 22:59:14.42 ID:Uymew88V0
とりあえず、この世界(?)に来て気づいたことがある。
それは、俺が元々いた時代と、人々の喋り方や性格がほとんど同じである、ということだ。
...まあ、まだ3人しか会ってないけど

静「比企谷、どうかしたか?」

俺は今、迷っている。
静ちゃんに、俺が未来から来たことを打ち明けるかどうか...。
元の時代の静ちゃんなら、きっと親身になってくれるだろう。
しかし...本当に信じても良いのだろうか?

八幡「あの...先生」

静「ん? 何だ?」

...試してみるか。
命懸けの賭けだ。

八幡「彼氏もいないんで−−−」

ドゴッ!!!

八幡「」

静「おおっと...すまん比企谷。体が勝手にな...。椅子が壊れてしまったな。後で弁償しよう」

八幡「は、はは...」

静「私の聞き間違いでなかったらな」

あ、これ本物だ。
うん、信じていいな。
いいけど...命が危うい。

八幡「あの...」

静「何かね?」

八幡「俺の話を...聞いてもらえますか?」
18 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [saga]:2016/05/14(土) 22:59:44.30 ID:Uymew88V0
基準はともかく、この時代の静ちゃんも信用できると踏んだ俺は、由比ヶ浜に話したのと同じことを、彼女にも話した。
初めは怪訝そうに聞いていたが、話を進めるうちに静ちゃんの表情は真剣味を増していった。

静「なるほどな...君の話は分かった。にわかには信じ難いが...ふむ」

右手を顎に添えて唸る彼女の仕草は、凛々しささえ感じさせた。
...男の俺なんかより、よっぽど男らしい。

静「...比企谷、何か変なことを考えてないか?」

八幡「あ、いえ、何も」

ふえぇ...。
静ちゃん怖いよぉ...。

静「ふむ...つまり、君は未来から来たと?」

八幡「そう...なんですかね? 正直、よく分かりません」

静「...いくつか質問をする」

八幡「はい」

静「大正は何年間続く?」

八幡「15年です」

静「現時点で、日本が関わった最も大きな戦争は?」

八幡「今、西暦何年か分かりませんが...第一次世界大戦ですかね。まだ起こってなかったら日露戦争です。『大きい』の定義にもよりますが」

静「...生き物の細胞の構成物質をいくつか上げてくれ」

八幡「構成物質...。細胞壁や細胞液、あとは...核やミトコンドリアとか...ですか?」

静「ほう...よし、いいだろう。君の言う事を信じよう」

八幡「ほっ...」

静「ただし」

八幡「はい...?」

静「厳密に言えば、君は未来から来たわけではないようだ」
19 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [saga]:2016/05/14(土) 23:00:20.14 ID:Uymew88V0
八幡「...どういうことですか?」

静「君は...そうだな。言わば、異世界から来たようだ」

八幡「異世界...」

静「ああ、そうだ。まず、今は1928年...大正17年の10月だ」

八幡「...なるほど」

俺の記憶している限り、大正は1912年から1926年までの15年間だけだ。
これだけでも、俺が元々いた時代...いや、世界とは違うことが分かった。

静「あと、日清戦争以来、日本は戦争に関わっていない...というより、世界大戦なんて起こってない」

八幡「...ロシアは?」

静「できてすぐに、何百もの少数国家に分裂した。おそらく、私のように教師をやっている者以外、一般人は覚えてすらないだろうな」

...習った歴史と違いすぎて、頭がこんがらがってきた。
それと、気になることが一つ。

八幡「俺がこれだけデタラメ言っているのに、なぜ信じてくれたんですか?」

静「お前が、細胞について...すなわち、不変の真理の一つを知っていたからだよ」

不変の真理って...。
やたらカッコイイ言い方するな、この人...。

静「歴史というのは、人の行動で簡単に変わりうるものだ。しかし、自然の摂理というものはそう簡単には変わらない」

八幡「...なるほど」

静「君にはまだ生物に関することは詳しく教えていない。君が率先して図書館などで調べた可能性も無くは無いが...君は数学系、理科系のことは全く興味を示さないからな」

俺が文系ってことは、世界が変わろうとも変わらないのか...。
それはそれで少しショックだ。

静「とりあえず、君は何処か別の世界から来た。ということは、君は大きな問題を抱えたわけだ」

八幡「と言うと...?」

静「もしこのことが世間にバレてでもしてみろ。君は拘束され、尋問され、様々な情報を吐かされるだろう」

八幡「うわっ...」

静「バレないように、君はこっちの世界の常識を身に付けなければならない」

八幡「...みたいですね」

静「まあ、君の素性がバレる云々が無くとも、君は比企谷家の御曹司だ。主として身につけるべきものはたくさんある」

八幡「...善処します」

静「うむ。...それでだな、比企谷」

八幡「何ですか?」

静「結局、君はさっき何て言ったんだ?」

八幡「」
20 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [sage]:2016/05/14(土) 23:01:16.02 ID:Uymew88V0
以上です

まとめ
・八幡はタイムスリップした訳では無い
・この世界では、あまり戦争の無い平和な社会が築かれる
・静ちゃんは独身
・八幡は文系
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/15(日) 01:01:55.33 ID:syAA3D9Ro
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/15(日) 01:03:01.16 ID:wiD4DHjvo
素晴らしい
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/15(日) 04:28:57.54 ID:/z3ldD38o
乙です
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/16(月) 22:21:25.51 ID:XRgpscB/O
バス女いないの?
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/18(水) 17:44:51.31 ID:K1IWy/Dzo
待ってる
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/18(水) 20:43:28.01 ID:TRhmj6kq0
おもろいやん
27 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [saga]:2016/05/21(土) 05:36:27.83 ID:W3c9mnhHO
静「よし、午前の授業はここまで」

八幡「お...お疲れ様でした」

静「うむ、お疲れ」

無茶苦茶ハードだった...。
恐らく、さっきの彼氏発言を根に持たれたのだろう...。
進むスピードは早いわ、内容は濃いわでギッチギチに詰め込まれた。

静「それにしても...やはり、君が最初『未来から来た』みたいなことを言っていたが、確かに文明はそちらの方が発達しているようだな」

八幡「まあ...多少ですけど、こっちの方が勉強の中身は簡単ですね」

静「そうだろう。その分、午後の授業からはもっと厳しく行くからな」

八幡「げ...」

静「午後の授業は2時から開始する。しっかり休んでおけよ」

そう言い残して、静ちゃんは部屋を後にする。
やはり、静ちゃんはどこの世界でもカッコイイ先生なのだろう。
ここまで後ろ姿が様になる人はそういないと思う。
28 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [saga]:2016/05/21(土) 05:37:10.17 ID:W3c9mnhHO
八幡「...さて」

何をすればいいんだろうか...?
これまでは、学校が終わったら奉仕部に行くか、本読むか、寝るか...。
そんなボッチライフだったからなあ...。

コンコン

色々と考えていると、ノックの音が響いた。
誰だろうか?

八幡「はい」

ガチャ

結衣「失礼します。部屋のお掃除に参りました」

先程と同じ服装の由比ヶ浜だった。
後ろには、執事さんと思しき人もいる。

八幡「ああ...由比ヶ浜か。いいよ、自分でやっとくから」

結衣「え...!?」

執事「わ、若様...? ここは我々にお任せ下さい」

八幡「え、あ...そっか。...分かった」

咄嗟に『自分でやる』と言ってしまったが、よく考えれば俺は今は、所謂坊ちゃんなのだ。
普通に考えれば、楽だから良いのだが...いざこんな立場になると、何というか罪悪感がある。
それに俺はこの間、一体何をすればいいんだ...?

執事「若様、私共のことはお気にせず、いつもの様に勉学に励んでください」

おおう...そういうパターンですね、休めないんですね。
...とは言え、静ちゃんに絞られた後に習ったオランダ語は、かなり難易度が高かった。
所々英語と似通った部分があるものの、やはり本質的には全く違うものだと感じた。
あと、蘭和辞書の名前が奇妙な感じだった。
ハマルとか何とか...。

結衣「...御主人様、掃除が終わりました」

八幡「え、ああ...ありがとう」

結衣「はい。それでは失礼します」

執事「失礼します」

ガチャ パタン

...やっぱり、由比ヶ浜が敬語なんて似合わんな。
しかも何だよ、『御主人様』って。
男子高校生だったらエロい妄想しちゃうよ?

八幡「...いや、待てよ?」

俺達はこの世界では恋人だったわけだ。
ということは...もしかしたらもしかする?
...いやいや。
あいつは、そんな経験は一度も無いと言っていた。
まだそこまでは至ってないのだ。

それに、流石にそんなことで由比ヶ浜と付き合うか否かを決めるわけにはいかない。
...とはいえ、こんなことを考えられるようになったのも、少しは冷静になった証拠だろう。
如何せん、現状を全く把握出来てないからな。

コンコン

思案に耽っていると、部屋の扉がノックされた。
そういえば、自室の扉がノックされること自体、俺にとっては珍しいことだった。

八幡「どうぞ」

結衣「由比ヶ浜です。失礼します」

ガチャ パタン

八幡「え、お前だけで来たのに敬語使うのか?」

結衣「だって、廊下から声掛けてたからさ。ドア締めてたら大丈夫なんだけど、ここの廊下って結構声が響くんだよね」

八幡「ふーん、そうなのか」
29 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [saga]:2016/05/21(土) 05:37:45.86 ID:W3c9mnhHO
結衣「...ヒッキー、疲れた顔してるよ? 大丈夫?」

八幡「え、そうか?」

結衣「うん。いつもよりも雰囲気が暗いよ?」

八幡「そう、なのか...」

結衣「あはは、ヒッキーは昔からそうだもんね」

八幡「...昔から?」

結衣「あ、そっか。ヒッキー知らないんだったね。私、11歳の頃からここで奉公させてもらってるんだ」

八幡「え、じゃあ...7年間も一緒にいるのか?」

結衣「そうだよ」

11歳というと、小学5年生か...。
その頃から働いていたなんて...。

結衣「でも最初の一年ちょっとは、ここのお家に慣れるように、ヒッキーと遊んでるばっかりだったんだ」

八幡「あ、そうなのか」

結衣「うん。その次の年からは、徐々に仕事始めたけどね」

八幡「...スゲエな」

結衣「へ?」

八幡「そんな小さい頃から働いてるなんてスゲエって言ったんだよ」

素直にそう思った。
俺は昔から、如何に楽するかばかりを考えてきた。
目標も専業主夫だ。
年をとろうがとるまいが、仕事をするなんてまっぴらなのだ。

結衣「あはは、このくらい普通だよ。それに、私からしたら勉強してるヒッキーの方が凄いし」

八幡「んなこたねえよ。俺は周りに流されてやってきただけだから」

結衣「ん? なんかよく分かんないけど...でも、ありがとね」

八幡「何がだ?」

結衣「褒めてくれたこと。なんだかんだ言っても、そうやって気遣ってくれるヒッキーだから、私は好きなんだ」

...そんなことは無い。
いつも気遣ってくれるのは、由比ヶ浜...お前だ。
前の世界でも、雪ノ下や俺のことを気にかけてくれていた。

結衣「ヒッキー、どうかした?」

八幡「...何でもねえよ」

少し、胸が傷んだ。
30 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [saga]:2016/05/21(土) 05:38:13.28 ID:W3c9mnhHO
結衣「もう...また暗くなっちゃってる」

八幡「だから何でもねえって...気にすんな」

結衣「...うん、分かった。じゃあ、私は戻るね」

八幡「ああ。...由比ヶ浜」

結衣「うん?」

八幡「ありがとな」

結衣「...うん! また後でね、ヒッキー」

カチャ バタン

由比ヶ浜が部屋から出ていくと、一気に静寂が訪れた。
アイツはどこの世界にいても、ああやって騒ぎまくって、周りを明るくしてくれるのだろう。

ガチャ

結衣「忘れてた!」

...ここまでの頻度だと、流石に鬱陶しくなるけど。
まあ、ここでは言及しないでおこう。

八幡「...どうした?」

結衣「あのね、ヒッキーにお屋敷の案内をしてあげようと思って」

八幡「あ〜...なるほどな」

よく考えると、俺は寝惚けた状態でリビング(?)に一度行っただけで、それ以外は自室から出ていなかった。
住人がその家のことを全く知らないとなると不便だし、周りの人に奇妙に思われるに違いない。

八幡「なら頼むわ」

結衣「うん、任せてよ!」

『フンスッ!』という効果音が目に見えるようだ。
彼女は胸を張ってそう言った。
双丘が激しく主張しているのはここだけの話...。

八幡「あ、でもその前に...」

結衣「うん?」

八幡「トイレ行かせてくれ」
31 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [sage]:2016/05/21(土) 05:39:54.72 ID:W3c9mnhHO
以上です
たくさんのコメント嬉しいです!
ただ、更新は週1くらいになりそうです...
それと、申し訳ないのですが、来週はお休みさせていただきます

エロにはいつ行けるんだろう...
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/21(土) 07:16:35.72 ID:6YfEhPE7O
ハルマ和解か
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/21(土) 08:07:40.12 ID:ZtjGNQc6O
再来週に完走まで書くとか半端ねえな
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/21(土) 10:25:04.00 ID:B1lCiWlQo
乙です
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/22(日) 04:29:03.72 ID:2c28XN26o
定期的に更新してくれるだけで嬉しいわ乙
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/24(火) 22:05:55.67 ID:W3K65osk0
クソみたいなコテハンからの恵まれた定期更新
すこ
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/29(日) 01:21:48.49 ID:JjPrEObwo
おつ
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/04(土) 23:41:44.02 ID:vr5pn7NQ0
おうあくしろよ
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/05(日) 18:10:22.32 ID:cO6yCJINo
来週は休む(再来週休まないとは言ってない)
40 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [saga]:2016/06/07(火) 23:56:38.95 ID:Qg91+UAs0
その後、家を案内してもらったり、飯を食べたり、また勉強したり...それはまあ忙しかった。
学校だったら、それなりに休憩があったり、居眠りできたりするんだけどなあ...。

結衣「−−−ッキー。ねえ、ヒッキー」

八幡「あ、おお...どうした?」

結衣「どうしたっていうか...なんだかボーッとしてたみたいだから」

八幡「いや...ちょっと疲れちまってな。何でもねえよ」

結衣「...なら、いいんだけど」

...由比ヶ浜の対応に違和感を感じる。
彼女からは、いつもの快活さは感じられなかった。
...これは、俺から質問してもいいのだろうか?

八幡「...なあ」 結衣「ヒッキー」

八幡「あ、な、何だ?」

結衣「あ、ううん、ヒッキーから...」

八幡「...やっぱお前から言ってくれ」

結衣「えっと、じゃあ...」

...今のは、決してビビった訳では無い。
そう自分に言い聞かせても、引き締まった由比ヶ浜の顔を見ると、心が揺らいでしまう。

結衣「私...ちょっと分からなくなっちゃったんだ」

八幡「...何がだ?」

結衣「...ヒッキーのことも、ちょっとよく分かんなくなっちゃって」

八幡「...そうか」

何とも言い難い告白だった。
いや、これは告白...というより、振られたのだろうか?
うん...振られたんだな。

結衣「私の中で勝手に比べちゃってるだけなんだけど...前のヒッキーと今のヒッキーじゃ、少し違うんだ」

当然だ。
見た目や名前は同じだが、生まれも育ちも違うのだ。
そして...そんな2人を同じように慕うことなど、不可能だ。

結衣「私の知ってるヒッキーはね、いつも暗いんだけど、いつも私のことを引っ張ってってくれて...」

えぇ...俺、そんなオラオラ系じゃないからなあ...。
そりゃあ愛想つかせても仕方ない。

結衣「...私の勝手な像を押し付けちゃって、ごめん」

八幡「良いんだよ。それが普通だ」

結衣「...うん」

この後、夕食の時間になるまで、俺と由比ヶ浜の間の空気は淀んだままだった。
41 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [saga]:2016/06/07(火) 23:57:06.07 ID:Qg91+UAs0
昼食の時もそうだったが、夕食時にも静ちゃんは同席していた。
どうやら、授業がある日はいつもこうらしい。

静「んん...このシチュー、とても良い味ですね」

小町「そう言ってもらえると嬉しいです!」

あちらの2人は楽しげに談笑しながら食べているが、俺は心にモヤがかかったままだった。
そんな心境を見透かされていたのだろう、静ちゃんから時折、怪訝そうな視線が飛んでくるのが分かった。

小町「あ、そういえば八幡。今日は何習ったの?」

八幡「...え?」

突然話を振られた。
ボーッとしていたので、ちゃんと聞いてなかった。

小町「抜き打ちチェックだよ。もし分かってなかったら、次回からは授業をもっと厳しく−−−」

八幡「歴史を習った。つっても、江戸時代末期あたり」

静「...お母さん、最近の比企谷の伸びは目覚しいものがあるので、心配しなくて大丈夫ですよ」

小町「う〜ん、なら安心ですね!」

受験意識で叩き込んでいる最中のところだったが、正直余裕だった。
時代が近いとはいえ、この時代だと情報を整備する環境が整って無いのかもしれない。

結衣「熱っ...!?」

そんな時、厨房の方から由比ヶ浜の声が聞こえた。

小町「結衣ちゃん、どうかした?」

結衣「あ、いえ...大丈夫です、奥様」

執事「...火傷したみたいだな」

結衣「すみません...シチューを零してしまいました」

小町「え、大変! すぐに油塗らなきゃ!」

...油?
油ってどういうことだ?
アロエとかなら聞いたことあるけど...。
普通は流水で2,3分冷やすだろ。

執事「...火傷用の油が切れております」

小町「えぇっ、どうしよどうしよ...」

結衣「奥様、このくらい大丈夫ですので...」

...手際の悪さに、少し苛立ってしまった。
そのせいで、語調が強くなってしまったかもしれない。

八幡「そういう時には流水で冷やした方がいいぞ」

結衣「え...?」

そのことに気づき、少し呼吸を整えた。
厨房に向かって蛇口を捻る。

八幡「ほら、手ぇ出せ。このほうが治りが早いから」

結衣「っ...。 い、いや、水がもったいないよ」

八幡「多少関係ねえよ。何なら食器洗いながら冷やせ」

結衣「...分かった」

そう言うと、由比ヶ浜は渋々と自らの手を冷やし始めた。
なぜそうも頑なになるのかは分からなかった。

小町「先生、もしかして医学も教えてくださってるんですか?」

静「え、ええ...。とは言っても、本格的には教えてません。実生活で役に立つレベルのことだけです」

静ちゃんは、先ほどとは打って変わって厳しい視線を送ってきた。
少し口を出しすぎたかもしれない。

結衣「...このくらいじゃ、別に」/// ブツブツ
42 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [saga]:2016/06/07(火) 23:57:31.76 ID:Qg91+UAs0
夕食の後、出された課題を済ませてベッドに飛び込む。
本当に今日は色々あった。
気付いたら訳の分からない状況になっていた。
由比ヶ浜に好きと言われ、その後振られて...。
上げて落とされるとは、まさにこのこと...。

コンコン

そんな落ち込んでいる俺の部屋の扉が、軽快に二度鳴った。
こういう時、普通の小町が来てくれたらな〜。

八幡「はい」

結衣「ヒッキー、さっきはありがとね。それでさ、お茶にしようよ!」

八幡「...え?」

結衣「うん? どうしたの?」

八幡「いや、なんか...」

あれ?
さっき俺は振られたはず...。
一体どうなっているんだ?

結衣「ああ、手ならもう大丈夫だよ。ちょっとスースーするけど」

八幡「あ、ああ、なら良かった。−−−じゃなくてだな」

由比ヶ浜は首を傾げる。
本気で分かっていないようだった。

八幡「いや、だってお前な...」

結衣「あ、さっき暗くなってたのなら、もう大丈夫だよ」

八幡「はあ? 大丈夫ったって...お前、さっき俺のこと振ったのに」
43 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [saga]:2016/06/07(火) 23:57:58.56 ID:Qg91+UAs0
結衣「...え、振ったって、私が!? ヒッキーのことを!?」

八幡「ち...違うのか?」

結衣「違う違う! 私、一言もそんなこと言ってないし、っていうかどっちかと言うと振られたの私だし!」

言ってなかったか...?
そう言われれば、直接的な表現は用いていなかったような...。

結衣「もう、ヒッキー早とちりしすぎ」

八幡「そ、そうか...。いや、そういう状況だと思ってたのにお前が明るい感じで入ってきたから、ちょっと驚いたわ」

結衣「ふふ、ちょっとね〜」

そう呟く由比ヶ浜の頬は、だらしなく緩んでいる。
それが不快に感じない...それどころか可愛いとさえ思ってしまうのだから、美人というのは狡い。

結衣「さっきのヒッキー、今のヒッキーじゃないみたいに頼りがいがあったから、ちょっとね」

八幡「...頼りがいが無くて悪かったな」

結衣「ふふ、良いんだよ」

八幡「何が良いんだよ?」

結衣「前のヒッキーももちろん好きだったんだけどね、こんな感じでたまに頼れて、いつもは私にも隙を見せてくれる...。そんなヒッキーもアリかなって」

八幡「...何だそれ」

正直、由比ヶ浜の言っていることはよく分からなかった。
しかし、行為を改めて向けられたことは容易に分かった。
頬が緩むのを感じる。
きっと、先ほどの由比ヶ浜とは違って、それはそれは醜いものであろう。

結衣「ちょ、ヒッキー笑い方キモイ...」

ほらな。

結衣「...にしてもさ」

八幡「ん?」

結衣「さっき落ち込んでたのは、私に振られたと思ってたからだよね? ってことは、やっぱり...」

...やはりこっちの由比ヶ浜は鋭い。
今朝はそのことを厄介だと感じたが、今は不思議と嬉しく感じた。
ただ、それを認めるのは少々悔しさもあった。

八幡「...どうかな」
44 :いいいい ◆CcW4KPdZhU [sage]:2016/06/07(火) 23:58:56.77 ID:Qg91+UAs0
以上です。
結局ほぼ3週間開けてしまった...。
テスト勉強辛いです...。
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