【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である【データ11】

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113 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/19(木) 22:54:31.17 ID:w3sm25Fvo
>>112ミス


天乃「ねぇ、九尾」

九尾「なんじゃ」

天乃「……死ぬのって、こういう感覚なのかな」

体の芯から冷めていく感覚

力がスーっと抜け落ちて

膝から崩れ落ちてしまいそうな、感覚

九尾「………………」

立ち尽くし

自分の震える手を見つめる主を見つめ、九尾は小さく息をつく

死ねない自分には、死ぬという感覚はわからない

どれだけの命を殺めようとも

死ぬという感覚だけは得ることができないからだ

しかし、今は

九尾「集中すべきことが、あるじゃろう。主様」

天乃「……そうね」

食い破ることに特化したバーテックスによって食い破られた結界の穴から

星屑が大挙して押し寄せてきている

通常のバーテックスに加え、星屑

その大群相手にはもはや、多勢に無勢

質と量で戦力的に大幅に劣ることとなった勇者に、余裕はなかった
114 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/19(木) 23:05:24.97 ID:w3sm25Fvo

銀「なんなんだ一体!」

波のように押し寄せる星屑を切り払いながら、

銀はいらだち混じりに声を荒らげた

バーテックスの中で最速を誇る双子座は

力がない分、その速度のみが武器といっても良くて

それを封じることができれば

ただの動く案山子でしかないにも関わらず

銀「くっ、邪魔だッ!」

星屑や他のバーテックスと移動速度を合わせ

単独での先行を絶対にしないように調節していた

そのせいで、双子座のバーテックスを狙い撃つことができず、

切り裂こうとすれば星屑に阻まれ

動きが止まった瞬間、他のバーテックスによる重い一撃が体を打つ

銀「はぁっ……はぁっ……っ」

出ることのない血と汗を拭くように額を拭い、

銀は迫り来る軍勢を睨む

銀「このままじゃまずい……っ」
115 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/19(木) 23:10:15.53 ID:w3sm25Fvo

頑張りに頑張っても

通常の状態では手数に限界がある

さらに、

星屑を一撃で屠ることができるとしても

バーテックスはそんなにやわではない

バーテックスの相手をする分だけ星屑は横から抜けていき、

星屑を相手にした分だけ

バーテックスは傷を負うことなく、万全の状態

そして、容易に攻撃を仕掛けることができる

銀「園子!」

叫んでも、返事はない

だからと言って振り返る余裕もない

振り返った瞬間

致命的な一撃を貰いでもしたら

一時的にでも離脱しなければならなくなる

そうなるわけにはいかないからだ

銀「周りの状況がどうなってんのか……星屑が邪魔すぎるッ!」
116 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/19(木) 23:17:13.09 ID:w3sm25Fvo

知りたくても知ることができない周りの状況

そして、

時々轟く爆発音や、重く揺れる樹海の木々が

銀の不安を煽っていく

銀「少なくとも、すぐ近くに若葉がいるのはわかるけど……」

合流は出来そうにない。と

強く唇を噛み、

銀は力強くバックステップを踏み

着地の瞬間、地を蹴り弾丸のような速度で水瓶座のバーテックスを突き飛ばし――一回転

水瓶座の体を切り裂くと

銀「どけぇッ!」

そのまま投擲し、周囲の星屑を刻む



片手の武器が消えた隙間を縫って

銀「っぐ――」

双子座が銀の体に突っ込み、

銀「っあ゛!」

樹海の木へとぶつかって、押しつぶした
117 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/19(木) 23:21:57.98 ID:w3sm25Fvo
では、此処までとさせて頂きます
普通に終わりません、失礼しました
あすもできれば通常時間から



↓現在の戦況(マップ)↓
http://i.imgur.com/DsQRotD.png


118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/19(木) 23:27:53.28 ID:A9Cr3vYUo

ヒエッ〜wwwwwwwwwwww
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/20(金) 04:36:44.45 ID:UzcJMhYrO
おつ
これは数がすさまじい…
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/20(金) 11:10:54.54 ID:2A9P/U9/0
ゲームだったら攻略wiki見るレベル
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/20(金) 13:53:50.60 ID:hxWub2Nso
イデオンガンかPDMもってこい!
122 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 22:14:34.37 ID:/gqzZLSRo

では、初めて行きます
123 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 22:16:59.64 ID:/gqzZLSRo

園子「数が多すぎて捌ききれない……」

この苦しい戦況は

園子にでさえ、余裕を与えることはなかった

いつもの間の抜けた声ではなく

不安のある声で、園子は言う

園子「天さんが大きいの二つに射手座を相手してくれてなかったら……全滅。してるかも」

広範囲攻撃を可能としている射手座

他のバーテックスを凌ぐ巨体と力を持つ獅子座

その獅子座ですらも凌駕する獅子座の進化系

それに加えて無数の星屑を相手にしてくれている天乃の存在

それが、

バーテックスにとっても、園子達にとっても一番大きなものだった

124 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 22:25:09.61 ID:/gqzZLSRo

久遠天乃を討ち取ることができれば

バーテックス側の勝利は確定したと言っても過言ではないし

久遠天乃さえ討ち取られることがなければ

樹海やこの世界は少なくとも守り通してもらえるからだ

園子「……やっぱり、天さんは要だね〜」

園子も決して弱くない

それは、

勇者チームの最終防衛ラインとしての役目を

ギリギリとは言えしっかりと守れていることからも伺い知ることができる

星屑の数には遥かに劣る遠隔式の槍

それでもなお、

各星屑の進行速度などから防衛ライン最接近を推測したりすることで

水際での完全撃退を行うそれはそうそう真似できることではない
125 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 22:30:34.33 ID:/gqzZLSRo

園子「でも、いずれ押し切られる……」

いくら園子でも

樹海全域をカバーできるほどの力は持ち合わせていない

だからこそ、

天乃のチーム、勇者部チームで

右と左に分かれている

もちろん、信頼していないわけではないが

それでも、厳しいと、園子は思い、首を振る

園子「私が気落ちしてたら――ダメだよねっ!」

穂先一つで星屑数匹を刺し貫き、消し去って

園子はなお迫る大群を眺める

園子「時間は稼ぐよ〜」

満開をしていいと言われるまで

その時間まで、園子は絶対に保ってみせると、足に力を込め

槍を振るった
126 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 22:44:09.71 ID:/gqzZLSRo

樹「久遠さん……」

星屑や

樹海の木々のせいで、天乃の姿は見えない

それでも

その方角に天乃を感じ、樹が目を向けると

樹海に阻まれようと

星屑に阻まれようと

絶対に視界に入ってくる規格外の巨体

その体の一部が切り崩されていくのが、見えた

樹「久遠さんっ」

見えなくても、聞こえなくても

久遠さんの一つ一つの行動が、勇気をくれる。力をくれる

樹「あんなに大きいバーテックス二体を相手にして。それでも、負けずに立ちふさがって……」

恋人がそんな頑張っているのに

自分は無数の雑兵ごときで手間取っていていいのかと、考え

樹「良いわけないッ!」

樹は叫ぶ
127 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 22:55:44.17 ID:/gqzZLSRo

樹「っ!」

右手から伸ばした光り輝く鶴で周囲の星屑を一掃し、

何層にも組み上げた光の罠を設置して、まるごと握りつぶす

樹「!」

それでも、油断はできない

倒した瞬間

どこからともなく星屑が湧き出てきたのだ

締め潰す?

防御?

それじゃ遅いっ!

瞬時に判断した樹が慌てて身を翻すと、星屑は通過して、

ドゴンッっと、

乙女座の爆弾が直撃して弾け飛ぶ

樹「っ……」

もしも回避できなかったら

そう思うと、樹は恐怖に手が震えて……唇を噛み締めた
128 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 23:07:31.25 ID:/gqzZLSRo

九尾「主様」

天乃「なによっ!」

怒鳴るように言い、跳躍した瞬間

さっきまでいた足場が弾けとんだ天乃は

次の足場に着地した瞬間、蹴り出して

目の前の星屑を切り伏せ、

隣の星屑を蹴り飛ばして後ろに飛び

もう一度勢いよく駆け抜け、獅子座のバーテックスの体の一部を切り崩す

天乃「はぁっはぁ……もうっ、用事があるなら手短にね」

いくら天乃であろうと、勇者であろうと

体力の限界というものがある」

たとえかすっただけでも、重傷足り得る天乃は

常に全力でいなければならず

相手のレベルも高いがために、もうすでに息が上がり始めていた

そんな中、九尾は言う

九尾「そろそろ満開をする。準備せい、我が愛しの主様」
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/20(金) 23:08:50.62 ID:MnWlUpRvo
ついに九尾の策が
っていうかこれ戦力さきつ過ぎてリスクの有無以前にこの策とってなきゃ詰んでたな
130 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 23:10:01.04 ID:/gqzZLSRo

では、ここまでとさせて頂きます
あすもできれば通常時間から


満開、無双……そして……
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/20(金) 23:15:13.55 ID:zurs3h1KO

樹ちゃん以外はこの満開の事は知らないんだよな…
状況が状況だし仕方ないとはいえみんながトラウマにならないといいけど…
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/20(金) 23:15:21.41 ID:MnWlUpRvo

とりあえず反撃だ!
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/21(土) 00:48:15.42 ID:zQffQBq40

久遠さん頑張って!みんなも!
にしてもここで溜め込んだ穢れも子供に受け継がれるのかな
だとしたら相当凄い存在になりそう
134 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/21(土) 22:22:48.38 ID:+fhtI+ZDo

では、初めて行きます
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/21(土) 22:26:50.44 ID:ImIEFLCTO
来てた
136 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/21(土) 22:33:30.44 ID:+fhtI+ZDo

天乃「……ッ」

九尾の言葉を聞き取ったのと同時に

周囲が強く輝きを放ち、天高くに大きな花が咲き誇る

結城友奈、東郷美森、犬吠埼風、犬吠埼樹、三好夏凜、乃木園子

現存している勇者達の、満開

そして

九尾「乃木若葉、土居球子、郡千景、伊予島杏、高嶋友奈、三ノ輪銀、久遠陽乃、白鳥歌野の分じゃ」

九尾は自分の胸元に手を充てがうと

八つの光を取り出して、空に咲く花へと登らせていく

天乃「貴女、まさか」

九尾「……否定するつもりはない。が、それを悪行であると認めるつもりはない」

九尾が持つ八つ

それに通ずるものを天乃は知っていて

だからこその言葉に、九尾はそれだけしか言わなかった

いや、それだけしか言えなかった

謝る気はなかった

悪いと想うつもりもなかった

全ては

九尾「我が、愛しき主の世界のために」

ただ、それだけだ
137 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/21(土) 22:44:45.02 ID:+fhtI+ZDo

ここまでに、いくつのモノを犠牲にしてきただろう

どれだけのものが犠牲になってしまったのだろう

誰も知らないだけで

誰も気づかないだけで

みんなが見て見ぬふりをしているだけで

足元が屍の山であることに、変わりない

天乃「……………」

何かを守るためには、何かを犠牲にしなければいけない

それは、絶対に変えることのできない理だ

理不尽な等価交換だ

天乃「罪は、私も背負うわ」

九尾「主さ――」

天乃「となると。犠牲にしたくせに。死ぬなんて罪深いことは出来なくなっちゃうわね」

天乃はくすくすと、笑う

多勢に無勢の状況で

圧倒的に不利な状況で

久遠天乃は、笑って――言う

天乃「見せてあげるわ。私の力を」

その力は全てを飲み込み、

全てに寄生して、全てを吸い上げていく
138 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/21(土) 22:52:59.57 ID:+fhtI+ZDo

天乃「私の満開は、とても毒々しい」

色の抜けた樹海

落下しながら砂となって消えていく星屑

身動きができなくなって倒れ伏すバーテックス

それらを眺める天乃は、

右手に握る刀を構えて、息をつく

天乃「…………………」

神樹様からではなく、

自分から繋いだせいか

次から次へと、自分の中の何かが吸い上げられていくのを感じる

気を抜いたら倒れるかも知れない

気づいたら、白い天井を見上げているかもしれない

気づいたら、お婆ちゃんになっているかもしれない

そんなことを考えながら、

この子は無事に生まれてきてくれるのかな。と

まだ妊娠すら確定してないお腹を撫でて、苦笑する
139 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/21(土) 23:08:58.80 ID:+fhtI+ZDo

天乃「ねぇ、九尾」

九尾「?」

天乃「私。ちゃんと帰って来れるのかしら」

九尾「………………」

目の前に広がる色の失われた世界

樹海も、自分の手も、刀も、何もかもが、色がない

そんな世界を見つめる天乃は

感じる不安の一片を、急日に訊ねる

けれど、九尾は答えてくれなくて

だから、もう一度言う

天乃「わた           」

九尾「確証はない」

耳が聞こえないから、きっと気づいてはいない

でも、天乃は耳だけでなく、声までもなくしていて

けれど、きっと同じことが言いたかったのだろう。と

天乃の声無き声に、

九尾は非情にもそう答えて首を振る

九尾「主様が抜かねば、誰も抜かぬまま。ただ抜かれていく」

天乃「             」

九尾「だからこそ。抜かねばならない。その手で」
140 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/21(土) 23:25:12.89 ID:+fhtI+ZDo

九尾の言葉は、

私が言ったはずの疑問への答えではなくて

声も出なくなっちゃったのかな。と、思って笑う

樹に迷惑をかけると思う

みんなに心配をさせると思う

でも、だけど

今いるみんなを守るために

失ったモノを奪われたモノを

取り返すために必要なことなのなら……と

天乃は軽く頷いて、刀を構えた

これは正真正銘の神の一撃

様々なものを犠牲にした上での一撃

現行の、とてつもなく大きな戦いへのピリオドを打つ一刀

天乃「         」

頑張ってくるね

頑張って、帰ってくるね

誰にも届かず聞こえないことを知りながら

天乃はそう思い、そう口にし

天乃は刀を――振るった
141 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/21(土) 23:26:48.13 ID:+fhtI+ZDo

では、此処までとさせて頂きます
あとは、樹視点でのエピローグになるかと思います



大赦職員八人の魂=死んだ勇者の代用
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/21(土) 23:27:18.73 ID:PvaXDDoWo
自己犠牲の権化だったクオンサンがこのメンタルなの見ると本当に今までの交流が良かったなあ
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/21(土) 23:27:46.18 ID:PvaXDDoWo
あ、乙です
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/21(土) 23:34:14.20 ID:ImIEFLCTO

みんなの為にも絶対に戻ってきてくれよ、久遠さん
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/22(日) 00:13:51.09 ID:m5DK1w4BO

8人の職員はそういうことだったのか…ってか歌野さんってニコ生観てたのか

歌野 天乃

うたの あまの

似てるなぁ
146 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 20:15:17.41 ID:7GetCZbGo

遅くなりましたが、進めていきます
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/22(日) 20:22:34.56 ID:3dksHwOiO
おお、待ってたぜ
148 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 20:30:30.53 ID:7GetCZbGo

樹「ぁ……」

捌ききれないほど溢れ出てくる星屑

その中に紛れて、少しずつ進行してくるバーテックスの軍勢

その全てが

何かに気づいて一点に群がっていく

平原に咲き誇る、たった一輪の花めがけてミツバチが集うように

全ては、そこに収束していく

そして、

空に咲き誇った光の花がその中央に、降りていく

樹「久遠さん……っ」

負けるとは、思っていなかった

世界が壊されちゃうとは、思ってなかった

不安はなかった

信じるとか、信じないとかじゃなくて

人が好きで、世界が好き

それなのに、世界に嫌われてきた人が

それでもなお、世界を守ると、みんなを守ると言ったから

その時の笑顔がこの圧倒的に不利な戦況でさえも

希望として、頭の中に、心の中にずっとあったから

私は、この戦いが絶対に勝利できるものであると、

信じるんじゃなく、安心していた
149 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 20:42:57.26 ID:7GetCZbGo

それでも、

怖くないかと聞かれたら

怖くないです。と

大丈夫かと聞かれたら

大丈夫です。と

不安じゃないかと聞かれたら

不安なんかじゃないですよ。と

本当に、そう言えるだろうか

本当に、そう思ってるだろうか

樹「ぁ……く……」

目の前で全てが終わっていく

世界に虐げられて

多くの人に蔑まれ、強要され、翻弄され

それでも、人を愛していて、世界を愛している

そのたった一人が全ての責任を背負って、長い戦いに終止符を打つ
150 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 20:55:34.60 ID:7GetCZbGo

それを、私は認めた。許した

死んでしまうかもしれないその行いを

大好きな人がしようとしているのを知りながら、

樹「だから……」

つーっと頬を何かが伝っていく

認めたはずなのに

許したはずなのに

それでいいと、覚悟は決めてあったはずなのに

帰ってくるといったから

それを信じて……信……

樹「っ」

どれだけ信じていても

樹「ゃ……」

どれだけ強く、覚悟を決めても

樹「……行かないで」

私は、私の心は

不安で、怖くて、悲しくて、辛くて、苦しくて、悲しくて

樹「行かないでくださいッ!」

心から強く、拒絶する

でも

樹「ずっと、ずっと一緒に、そばにい――」

その声は、その思いは届くことはなくて

世界にとっての希望の光が世界を――切り拓いてしまった
151 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 21:05:25.10 ID:7GetCZbGo

樹「ぁ……久遠さんっ!」

驚異が跡形もなく消え去って

世界を祝福するかのように、光の雨が降り注ぐ中

一心不乱に、駆け出す

樹「っ……」

途中で変身が解けても

体力が切れかかっても

久遠さんがいるであろう場所に、駆けていく

樹「久遠さん……久遠さんっ!」

樹海の根をよじ登って

滑り降りて

制服を汚し、足に怪我しながらも、ただ、走って

樹「はぁっ……はっ……けほっ……」

天乃「…………」

樹「見つけ、ましたっ」

久遠さんの元に、たどり着いた
152 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 21:23:29.70 ID:7GetCZbGo

樹「一人で、こんなところに行くから……時間、かかっちゃいました」

元々、耳が聞こえていなかった久遠さんに

そんなことを言っても無駄だと分かっていても

言葉を投げかける

一瞬で帰ってきてくれてないかな。なんて

淡い期待をして

でも

樹「………………」

わかってるんです

わかってるんですよ。久遠さん

そんな簡単な話じゃないって

直ぐに終わる話なわけがないって

でも

樹「っ」

抱きしめても

体を揺さぶっても

なんの反応も示してくれないことが

凄く……悲しかった
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/22(日) 21:29:03.26 ID:uQOmjjfFo
あばばばばば
154 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 21:54:54.79 ID:7GetCZbGo

風「樹っ、天乃っ!」

樹「お姉ちゃん……」

戦いが終わって、時間が経ったからか

樹海化が解けて学校の屋上に戻されると

お姉ちゃんがすぐに声をかけてきて

でも、私と私が抱き抱える久遠さんを見て

すぐに、喜んでいた表情が曇った

風「樹……?」

夏凜「なによ、どうし……」

友奈「園ちゃんも今は動けなくなっちゃったし。同じ状態になっちゃったの?」

東郷「ただの力の使いすぎ。なら、目を覚ますと思うけれど……」

園子さんを背負った友奈さんと

それを見守る東郷先輩は不安そうに言って

目をつむったままの久遠さんを見つめる

夏凜「と、とにかく。医療班を呼ばないと話にならないわ」

風「そ、そうね」
155 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 22:17:43.51 ID:7GetCZbGo

お姉ちゃんが呼んでくれた医療班の人たちは

久遠さんと園子さんを丁寧にストレッチャーに乗せると

私たちも検査が必要だからと、乗るように指示してきた

樹「私は、久遠さんの方に乗りたいです」

「しかし」

樹「一緒が、いいんです」

医療班の人たちが顔を見合わせて、困った顔をする

きっと、久遠さんと園子さん

特に、久遠さんは私たちとは別の病院に連れて行くつもりだったんだと思う

でも、私がもう一度願い出ると

「分かりました。仕方がありませんね」

と、渋々許可を出してくれた

断られたら車の屋根上にしがみつくつもりだった。とは

言わないでおいた

風「樹、天乃のこと。悪いけどよろしくね」

夏凜「何言ってんのよ。樹が言うならともかく。あんたがいうことじゃないでしょ」

風「それはそうかもしれないけどさ」

樹「大丈夫だよ。お姉ちゃん」

そう言って、笑顔を見せる

久遠さんが戻ってこない可能性を知っているという不安を

お姉ちゃん達にまで――感じさせないために
156 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 22:35:50.32 ID:7GetCZbGo

それから、一ヶ月が経過した10月

夏服も完全に終わって、冬服に衣替えをして

お姉ちゃん達三年生が受験だと、大慌てになり始める時期

樹「……久遠さん、受験はしないんですか?」

勇者部に仮入部している三年生のはずの久遠さんは

余裕綽々といった様子で、だんまりのままだった

樹「久遠さんなら一夜漬けでなんとか出来そうですけどね」

冗談ぽく、笑ってみせると

誰も、笑わず

私がしゃべるのを止めると、部屋は静まり返って

外の音が鮮明に聴こえてくる

樹「……っ」

もう一ヶ月

まだ一ヶ月

頭の中は、【まだですか?】と、催促していて

辛い気持ちが、手のひらに爪痕を残して痛みが走る
157 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 22:48:34.61 ID:7GetCZbGo

言いたいことは山ほどある

ぶつけたい気持ちがたくさんある

その全てを押し殺して、私は久遠さんにあるものを見せた

樹「見てください。検査結果が出たんですよ」

久遠さんは何も言わない

何も見ない

それでも、続ける

樹「久遠さん、ちゃんと妊娠。できてるんですよっ」

それでも……久遠さんは何も反応してくれない

樹「流石です。春信さんは。本当に、凄い人です」

少し前から、久遠さんの体温が

以前入院していた時の通常の体温よりも高い状態が続いていることを気にした看護師さんに

春信さんがもしかしたら。と、言ったことで検査をしてなければ。多分。まだ分かってなかった

その状態が続いてると妊娠してる可能性が高いなんて

私でも知らなかったのに

樹「凄く良く、勉強してて……負けられないなって思いました」
158 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 22:55:01.44 ID:7GetCZbGo

今はその話じゃないですよね。と

笑って話を区切らせて、久遠さんの手を握る

樹「もう一ヶ月……妊娠周期で言うと、六週目だそうで。胎嚢も確認できたそうです」

当たり前なことだけど

それは春信さんの子供だから

私にとってものすごく嬉しいことかと聞かれたら複雑ではあるけど

久遠さんが生きてる証だと考えれば

何よりの吉報だった

樹「このままだと、目を覚ましたら大きいお腹。ですよ?」

その驚くさまを見て

申し訳ないと思いつつ、苦笑する

きっと、とても可愛い驚き方、慌て方をするに違いない

赤ちゃんが危ないから、ちゃんと冷静にさせなきゃいけないよね。と

責任を感じて、息をつく
159 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 23:06:13.58 ID:7GetCZbGo

樹「久遠さん、文化祭がもう少ししたらあるんです」

三年生に関しては

受験もあるということで自由参加になってるけど

少なくともお姉ちゃんは参加する気マンマン

といっても、

一応受験の合間で、息抜きは必要で

中学生最後の文化祭ということもあって

三年生全員が、やる気に満ち溢れてたりするんだけど……

樹「……私達は劇をやります。しかも、私が主役のお姫様をやるんです」

そう言って

お姉ちゃんと園子さんが協力して作り上げた台本を

久遠さんに見せる

樹「勇者様を待つお姫様役です。本当は、友奈さんが主役の勇者のお話の予定だったんですけど」

お姉ちゃん達が私を気遣ってくれたのかもしれない

その友奈さんが主役のお話の別視点を、新しく書き出してくれた物語

樹「……私も、ちゃんと待ってます。ずっと。待ってます」

久遠さんの頬をそっと撫でて、キスをしようとして……離れて

樹「面会時間も終わりだと思うので、また明日来ます。久遠さん、また、明日です」

そう言い残して、何度も振り返りながら病室を後にした
160 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 23:07:44.29 ID:7GetCZbGo

では、此処までとさせて頂きます
あすもできれば、通常時間からとなります


月単位で飛ばしたりなんだりでやっていく予定ですので
うまくいけば今週中には終わるかと思います
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/22(日) 23:11:43.26 ID:qVorNigk0
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/22(日) 23:13:49.88 ID:vYfI2xTMo

そういや九尾はどうしたんだろ
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/22(日) 23:16:44.85 ID:3dksHwOiO

もしかして久遠さんの子供の誕生までいくのだろうか

それにしても二周目もついに本当に終わりが近いんだな…
最後まで見届けねば
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/23(月) 09:38:46.76 ID:EX6ZW/j7o
春信が勉強してる分>>1も勉強してるってことなんだよな
セックスだったり妊娠だったり神様関連だったり
俺なんか妊娠周期とか一ヶ月でなんで6週なんだよって感じだし


次週あるんだろか
今さら久遠さん以外のキャラって辛いとこあるけど…
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/23(月) 13:40:32.67 ID:XpK2fUa9o
いきなり次っていうか結構長いことやったしキリもいいから

・天乃と東郷さんのわすゆ時代
・春信さんの子育て奮闘記
・陽乃ののわゆ時代
・青年バット続き
・九尾周りの設定の話

みたいな細かい短編集が見たい
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/23(月) 14:41:00.05 ID:EX6ZW/j7o
久遠さんと東郷さんは鷲尾編
陽乃さんのわゆ時代と九尾周りはのわゆ編をやるしかないんじゃない?

というかあるなら久遠さんが良いってだけで
次週はあるか解らないよ
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/23(月) 17:01:38.52 ID:OFpx7bho0
ちょっと特殊な設定のストーリーも短編でいいから読んでみたい
テレビ本編その後の世界に飛ばされる久遠さん...みたいな
共に過ごした記憶は久遠さんにしか無いけど、戦いの無い世界でどう付き合っていくのか
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/23(月) 17:40:45.60 ID:ntJbpVmyO
久遠さんオリキャラながらホント愛されてるなあ

とはいえまずは完結が最優先、後できるか否かは>>1の予定次第だぞ
169 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 22:03:11.76 ID:QkCN6ve0o

では初めて行きます
170 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 22:12:45.93 ID:QkCN6ve0o

そのお見舞いの日から、一週間くらい経った日のことだった

いつも通り久遠さんの所に行くと

珍しく、春信さんとお医者さんがいて

何か、真剣な話をしていて

春信「犬吠埼さんか……丁度いい所に。とは、言えないかもしれないが……」

樹「?」

春信さんは私に気がつくと、

少し複雑な表情でそう言って

お医者さんに一礼して、席を外すように言うと

「では、また後ほど」

樹「ありがとうございます」

「ううん。貴女も。いつもご苦労様」

産婦人科のお医者さんは笑顔で私に挨拶して

そのまま病室を出ていく
171 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 22:20:59.85 ID:QkCN6ve0o

樹「何か、あったんですか?」

春信「……そうだな」

樹「?」

春信「……………」

春信さんはとても言いにくそうで

その表情は、私を不安にさせるような

ちょっと、怖い表情で

私が一歩近づくと、春信さんは息をついて首を振って

春信「黙っていても仕方がないな。犬吠埼さん。驚かないでくれ。とは言わないが。落ち着いて聞いてくれ」

樹「え?」

春信「彼女をさらに詳しく検査した結果、心音が二つ確認できた」

樹「ふた……つ?」

春信「そうだ。彼女の場合一卵性双生児を……解りやすく言えば、現段階で。彼女は双子を身篭っている」

凄く、衝撃的なことを言った
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/23(月) 22:26:35.02 ID:61wD9OEMO
なん…だと…?
173 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 22:28:00.83 ID:QkCN6ve0o

樹「双子って、双子。ですか?」

春信「そうだ。先ほどの医師によればそれは確定事項だということだ」

樹「……………」

春信さんは

この先何か不幸なことが起きない限り

久遠さんは双子を産むことになる。と言う

信じがたいことだったけれど

春信さんがそんなウソをつかないことと

お医者さんの診断書を見せられては、信じるしかなくて

春信「……双子の場合、一人よりも母体への負担は大きくなる」

樹「それくらいは、知ってます」

春信「だが、彼女は。久遠さんはきっと。それでも、と、言うだろう」

樹「久遠さんも、子供も。無事に出産を終えられる可能性はどのくらいなんですか?」
174 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 22:42:23.97 ID:QkCN6ve0o

春信さんの言葉を無視するような形で、

当たり前の疑問を尋ねると、

春信さんは少し暗い表情で首を振ると

久遠さんを一目見て、私へと向き直った

春信「健常な母体であっても……ハイリスクな出産だ」

樹「はい」

春信「彼女の場合、絶対安静という条件はクリアできるだろうが、この状態だ」

樹「春信さ――」

春信「っ」

春信さんの握りしめた拳の音が聞こえて

私の、答えを催促する声は押し込まれて消える

その音が、春信さんの辛さを、苦しさを

そんな事を考えるのなんて嫌なんだという気持ちを伝えてきた

春信「母体のことを考えなければ、帝王切開を施したりすることで。100%ではないが、子供を無事に摘出できる可能性は高い」

樹「久遠さんは……」

春信「今の彼女に麻酔を使えば、二度と目を覚まさなくなる可能性は格段に上がるだろう」

樹「………………」

春信「残念だが、彼女が目を覚まさないまま出産時期に入った場合。久遠さんは諦めるしかなくなる」
175 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 22:56:38.26 ID:QkCN6ve0o

樹「あ……諦める?」

諦めるって、なんですか?

諦めるって、どういうことですか?

頭の中、心の中

湧き上がる強い感情が、口元から響いたブチッっという音で一気に引いて

ポタッと……病院の白い床に、赤いシミが一つ。ついた

春信「……私は。君と同じ気持ちだと並べることはできないと思っている。だが、私も彼女を諦めたくはない」

樹「………………」

春信「まだまだ、出産の時期は遠い。それまでに彼女が戻ってくる事を願おう」

春信さんはそういうと

手持ちのカバンの中から、白い箱を取り出して

私の手に、持たせた

春信「妊婦用のケアクリームだ。彼女が自分で行えない代わりに、君がやってあげると良い」

私には、荷が重い。と

春信さんは少しだけ笑って私の方を叩いた

春信「君だけで難しいのなら、いくらでも。私たちが手を貸そう」

樹「…………」

春信「だから、君はできる限りのことしてあげてくれ。それができるのは私ではなく、君なのだから」

そう言い残して、春信さんは病室を去って

私と、久遠さんだけが取り残された
176 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 23:14:38.35 ID:QkCN6ve0o

樹「……久遠さん、双子だそうです」

多分、春信さんたちの話を聞いていたなら、

わかってるかもしれないけど。と、笑ってみせる

でも、笑顔よりも涙が先に来た

喜ぼうとしても

このまま失ってしまうかもしれないという悲しさが前に出た

樹「久遠さんっ!」

ギュッと、

痛いと言われそうなくらいに強く。手を握る

それでも、久遠さんはなんの反応も示さなかった

ピクリとも動かなかった

それでも、体は温かくて……

泣いたらダメだと押さえ込む私の心を強く、揺さぶる

それでも。私は

樹「元気な双子の赤ちゃん。産んでくださいね」

泣くまいと唇を噛み締めて、笑ってみせた
177 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 23:22:48.35 ID:QkCN6ve0o

では、此処までとさせて頂きます
あすもできれば通常時間から

エピローグの最中ですが今後はまだ未定です
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/23(月) 23:24:07.38 ID:XpK2fUa9o

まさかの双子
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/23(月) 23:28:41.84 ID:61wD9OEMO

久遠さんのみならず樹ちゃんにも厳しい世界だなあ
なんとか報われて欲しいものだ

それにまさかの双子とは…久遠さんの力が強かったのか春信さんがよほど濃いのを出したのか

180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/24(火) 00:37:11.53 ID:l/ZQdodm0

何気に勇者であるシリーズにいないんだよな双子
名前はどうなる久遠さん家の双子ちゃん...あと女の子なのか男の子なのか
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/24(火) 03:26:19.79 ID:Sxokxaw4o
おつ
双子とはまた…
勇者になったらコンビネーションと母親譲りの戦闘力でとんでもなく強そう
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/24(火) 13:08:14.44 ID:ImVAaWpco
双子とは予想外だった…良い意味で驚かせてくれるな
ただ双子で殺し会うとか
双子を産んで久遠さん死ぬとかは無しで頼む
マジで
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/24(火) 19:01:26.90 ID:qTv773Xoo
まだエピローグあるから焦るなよwwww
184 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/24(火) 22:15:16.53 ID:WOCcOyNKo

では、進めていきます
185 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/24(火) 22:32:37.36 ID:WOCcOyNKo

樹「もう、大丈夫そうですね」

時間が経つのは、あっという間で

気づけばカレンダーにつけたバッテン11月の半ばに差し掛かっていて

常に誰かが付き添っていなければいけないほど酷かったつわりも

段々と、収まってきていて

お見舞いに来たら口から吐瀉物が溢れかけてる。なんていうことも

なくなった

樹「……でも」

そっと手を握ると

あれだけ温かかった体温は下がっていて

このまま完全に冷え切ってしまうんじゃないか。と不安にさせる

ううん、不安にさせられることはない

だってずっと……

元から。私は不安なんですから
186 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/24(火) 22:42:33.93 ID:WOCcOyNKo

久遠さんのおなかの中には双子がいる

まだ、性別が分かる段階にまでは来てないけれど

でも、晴海さんたちが言うには、女の子の双子らしい

片方は神樹……様由来の女の子

片方は戦いによる穢れを担った女の子

相反する二つの力を共存させるのではなく

分け合い、そして手を取り合う形へと

何かの力が働いて、変化した可能性があるらしいです

難しいことは、私にはわかりません

でも

樹「これはきっと、世界にとって私達にとって。とっても大きな分岐点なんだと思います」

久遠さんなら双子だけに? と、茶化してくれるかも知れない

でも、そんなことを言ってくれる人のいない寂しさが

我慢に我慢を重ねる心を、撫でる

樹「っ………」

泣かないと決めた久遠さんの前で。私は

もう、泣きそうだった

泣きたかった

泣けば叱ってくれるんじゃないかというなんの根拠もないちっぽけな希望が

私の疲れた心を、押し出そうとしていた
187 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/24(火) 22:51:19.73 ID:WOCcOyNKo

夏凜「別に、我慢する必要なんて。ないんじゃないの?」

樹「!」

不意にかけられた声にハッとして手を離し、

声のした方へと振り向くと

夏凜さんが困った様子で、息をついた

夏凜「天乃だって、あんたが無理するよりは泣いてくれた方が良いっていうと思うけど」

樹「……泣いたら、久遠さんが責任感じちゃいます」

夏凜「あるんだから、仕方がないじゃない」

樹「………………」

私が咄嗟に答えられずにいると

夏凜さんは深々とため息をつき、私のことを……抱きしめた

樹「は、放してくださいっ」

夏凜「疚しい気持ちなんかないわよ。ただ、さ」

樹「夏凜さ……」

夏凜「樹にはこういうのが、足りてないんじゃないかって。思うのよ」
188 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/24(火) 22:57:36.22 ID:WOCcOyNKo

夏凜「私も、天乃達に会う前まではそうだった」

厳密には少し違うけど。と

夏凜さんは付け加えて、続ける

夏凜「そんなのは要らないとか。大丈夫だとか。言い聞かせて。結局、全然大丈夫じゃなかった」

樹「……………」

夏凜「天乃の担当になって、嫌だ何だ言いながら。私何してたか覚えてる?」

樹「それは……」

夏凜「手話よ。手話。さんざん嫌味言っときながら、話し相手が、関わることのできる相手ができて。私は嬉しかったのよ」

自分のことを話しているのに

夏凜さんは呆れ混じりに話し続けて

困ったように笑う

夏凜「強がってた頃の私に今の樹は似てんのよ」

樹「…………」

夏凜「……無理すんな。強がんな。樹は一人じゃない。みんながいるから。だから、辛かったら。ちゃんと泣け」
189 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/24(火) 23:10:42.41 ID:WOCcOyNKo

夏凜「あんたと同じくらい。天乃を好きだって自負はあんのよ。私だって」

夏凜さんはそう言って

抱きしめる腕の力を少しだけ強くした

それは凄く痛かった

凄く苦しかった。凄く辛かった。

体がじゃなくて……心が

樹「っ」

一ヶ月や二ヶ月経っても

目を覚ますどころか体の反応は全くなくて

それどころか

生きているのか死んでいるのかわからなくなりそうで

このまま死んでしまうんじゃないかと不安にさせるような状態の久遠さんの手を、強く握り締めた

樹「私にいろんなことがしたいって、言ったじゃないですかっ!」

なのに

なのに……っ

樹「ぅぅっグスッ」

溜め込んでいた涙が溢れていく

耐えてきた言葉が抜け出していく

樹「私だって……したいことたくさんあるのにッ!」

けれど

泣いても、叫んでも

久遠さんは……目を覚ましてはくれなかった
190 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/24(火) 23:24:08.89 ID:WOCcOyNKo

樹「ぐすっ……うっ……なんでっ」

夏凜「……………」

樹「なんで何も……言ってくれないんですかっ!」

自分の気持ちを投げつけたのに

久遠さんはいつもと変わらず、目を閉じたままで

夏凜さんは何も言わないで

ただじっと久遠さんを見つめて首を振ると、振り返って出口へと向かう

夏凜「今日は帰るわよ。樹」

樹「嫌です」

夏凜「明日も学校でしょうが」

樹「学校なんて――」

夏凜「樹!」

樹「っ……」
191 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/24(火) 23:27:15.55 ID:WOCcOyNKo


夏凜「天乃の為に看護師になるんじゃなかったの? 学校のテストが近いんじゃなかったっけ?」

夏凜さんの抑揚のない冷たさの感じる声に耳を傾け

目では久遠さんを見て、目をギュッと瞑って席を立つ

樹「また来ます……テストで100点を一科目ででも出して見せますっ」

一人で勝手に作った約束

久遠さんは何も言わなかったし反応もなかったけれど

病室を出ようとした瞬間、「期待してる」と、言われたような気がして振り向く

夏凜「樹?」

樹「……何でもないです」

九尾さんは言った

神樹様に完全に同調してしまう可能性があるって

そして

園子さんは言う

時々、天さんを近くに感じるんだ。と

最悪の結果は

現状で最も可能性の高い……結末だった
192 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/24(火) 23:28:44.61 ID:WOCcOyNKo

では、此処までとさせて頂きます
あすもできれば似たような時間から


今週中目標
乃木若葉の続きが出る前に。なんとかできればな。と
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/24(火) 23:30:30.58 ID:qTv773Xoo

クオンサンだおうなってしまうのか……
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/24(火) 23:34:50.14 ID:Q8XR9Xt7O

樹ちゃんがこんなになるまで待っているんだ
久遠さん頼む、目を開けてくれ!
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/25(水) 00:26:48.08 ID:+lgfI6230
久遠さん...成せば大体なんとかなるよね!?いっつんの為にも帰ってきておくれ
196 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/25(水) 22:13:22.29 ID:VkhdN3oto

では、初めて行きます
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/25(水) 22:14:50.74 ID:+IrQLCWRo
おk
198 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/25(水) 22:24:59.79 ID:VkhdN3oto

友奈「樹ちゃん」

樹「っ」

友奈「今日も……久遠さんのところに行くの?」

学校が終わってすぐ、

下駄箱に来たはずなのに、

友奈さんは私のところに駆け寄って、声をかけてきた

でも

そんな会話は必要ないと思った

だって

行くのは、当たり前のことだ

樹「行きますよ。友奈さんも行きますか?」

友奈「う、うん。行く……というか」

樹「?」

友奈「私が行くから……たまには。その。部室に顔を出そう?」
199 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/25(水) 22:35:46.22 ID:VkhdN3oto

樹「……もう、12月の中盤なんです」

友奈「それは分かってるよっ。えへへ……テストがあるし」

友奈さんはおとぼけた様子で笑うと

あんまり自信ないんだよねーと、明るい声で言う

無理してポジティブな考え方をしようとしてるのか

それとも

私のために無理をしてくれてるのか

友奈さんの声も、雰囲気も

どこか……影が差していた

樹「3ヶ月以上経ってるんです……だからきっと。もう起きてくれるはずなんです」

友奈「………………」

樹「だから、ごめんなさい」

自分が友奈さん達に気を使わせているんだって自覚はある

でも、

今日こそは、今日こそはと

時間が経つたびに、そんな際限のない希望が頭の中で産まれては消えて

産まれては消えて

また……産まれていた
200 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/25(水) 22:43:10.02 ID:VkhdN3oto

友奈「じゃ、じゃぁ私も一緒に行くっ!」

樹「無理しなくてもいいんですよ?」

友奈「無理はしてないよ。私も。久遠さんのことは気になるからね」

友奈さんはそう言うと

すぐに履き替えるからね。と言って

友奈「お待たせっ!」

私が靴を履き帰るよりも早く、回り込んできた

そんなに急がなくても

そんなに慌てなくても

いなくなったりは……しませんよ。友奈さん

樹「早いですね、下着が見えかけましたけど」

友奈「ぇっ!?」

樹「嘘です」

友奈「え……ぁ、だ、だよねっ!」

恥ずかしそうに笑う友奈さんも、可愛いと思う

でも

私の頭の中、記憶の中の久遠さんの照れ笑いには

やっぱり勝てないと、思って笑った
201 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/25(水) 23:11:58.80 ID:VkhdN3oto

樹「こんばんは、久遠さん」

友奈「こんばんはーっ」

がらっと、病室に入ると

看護師さんが私たちを見て笑みを浮かべて

何かあったら呼んでね。と、病室を出ていく

友奈「どっか行っちゃったよ?」

樹「私と入れ替わりでいてくれる担当の看護師さんです。久遠さんを一人にはできませんから」

友奈「へー……そう考えると。樹ちゃんは看護師さんだねっ」

樹「まだまだ勉強不足ですけど、そうなるのが夢ですっ」

友奈さんの嬉しい言葉に

いつかぶりかの明るい返事を返して、久遠さんの体に負担をかけないように気を遣いながら

少しだけ、寝巻きをはだけさせる

友奈「久遠さん、今どのくらいなんだっけ?」

樹「22-23週ですね。双子なので。もうちょっぴりお腹が出てきてるんですよ」

友奈「もう、そんななんだね……」

樹「そうなんですよ」

友奈さんの疑問に答えながら

久遠さんの体にクリームを優しく塗り、足や腕のマッサージを負担が掛からない程度に行った
202 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/25(水) 23:16:23.53 ID:VkhdN3oto

では、此処までとさせて頂きます
あすもできれば通常時間から


風「樹はまだ……大丈夫」
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/25(水) 23:25:23.89 ID:iFbGCdlhO

何気に原作の友奈ちゃん以上に意識不明の状態が続いてるんだな
久遠さん…
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/26(木) 00:15:50.80 ID:kHDECtmXo

22-23週のクオンサン……ゴクリ
205 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/26(木) 22:31:00.93 ID:bAtsVSpTo

では、初めて行きます
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/26(木) 22:37:38.58 ID:wOC5UKCs0
よしきた
207 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/26(木) 22:41:18.84 ID:bAtsVSpTo

友奈「手馴れてるね、樹ちゃん」

樹「毎日の日課ですから。怠ると、目を覚ましてから大変なので」

友奈「……大変じゃない?」

樹「好きなことをするのに、大変かそうじゃないかは関係ないんです」

友奈さんの問いかけに答え、クリームをしまって振り返ると、

友奈さんは驚いた様子で私を見ていたけれど

すぐに、「そっか」と、嬉しそうに笑った

友奈「私も、東郷さんのお手伝いするのは全然、大変じゃなかったなぁ」

感慨深そうに、友奈さんは呟く

東郷先輩もまた、

久遠さんと同じようにひとつ前の世代から勇者で

両足と記憶を満開によって失っていた

でも、久遠さんのおかげで徐々に機能を取り戻した東郷先輩は

もうだいぶ前から、歩けるようになって

友奈さんが車椅子を押す必要はなくなったのだ
208 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/26(木) 22:52:47.37 ID:bAtsVSpTo

樹「……………」

友奈さんの懐かしむような様子から目をそらして

なんの反応も示さない久遠さんを見つめ、手を握る

そして、興味本位で。聞く

樹「寂しいとは、思ったりしないんですか?」

友奈「寂しい?」

樹「はい……東郷先輩にいつもしてたことをする必要がなくなって。東郷先輩から、友奈さんの必要性が消えて……」

それで、寂しいとか

勿体無いとか

なにか思ったりしなかったんですか?

と、聞くと

友奈さんは困ったように、髪を掻く

友奈「そんなこと考えてなかったから、必要性が消えたっていうのはグサッと来ちゃった」

樹「……………」

友奈「でも、確かにそうだよね。東郷さんから……私を必要とする理由の一部は消えちゃったのかも」
209 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/26(木) 23:03:43.88 ID:bAtsVSpTo

しょんぼりとした友奈さんだったけれど

でもね。と、すぐに笑みを浮かべた

友奈「その分。東郷さんと出来ることが増えたんだ」

樹「デートとかですか?」

友奈「で、デートじゃないけど……前と後ろじゃなくて。並んで歩けるのは。すごく嬉しかった」

友奈さんの語る笑顔は嘘じゃないし無理もしてない

本当の、本心からの言葉だった

友奈「確かに樹ちゃんの言うとおりかもしれないけど。でも。その分。それ以上に、嬉しいことや楽しいことが増えた」

樹「……………」

友奈「幸せだって思えて。東郷さんに私が必要。じゃなくて、私に必要なんだなってことも思えた」

友奈さんは恥ずかしいのかもしれない

ちょっぴり頬を赤らめて、半笑いになりながら、言う

友奈「な、何が言いたいのかっていうと。つまり、全然。勿体無いとか寂しいとかは思わないよーってことかなっ」
210 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/26(木) 23:21:38.04 ID:bAtsVSpTo

私の興味があっただけの言葉にも

友奈さんは本気で、全力で答えてくれた

もちろん、私だって同じ気持ちだ

久遠さんの介護が必要なくなって

久遠さんの中から私の必要性が薄れちゃったとしても……

できなかったことができる嬉しさと、楽しさと、幸福感を得られるのなら

樹「私は、目を覚まして欲しいです」

心のどこかで、

久遠さんが目を覚ますことなく

ずっと、自分便りな久遠さんで居て欲しいと思っているのかもしれない

なんて

目を覚まさない原因を自分の中に探し出した私の言葉に

久遠さんはやっぱり……何も言わない

樹「……………」

友奈「樹ちゃん……」

樹「わかってた。ことですから」

心配そうな声に、笑ってみせて

私はいつも通りに自習セットを鞄から取り出す

夢のため、久遠さんのため

一生懸命になっている時だけが……唯一。嫌なことを考えなくていい時間だった
211 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/26(木) 23:26:36.54 ID:bAtsVSpTo

では、此処までとさせて頂きます
あすもできれば通常時間から



友奈「……東郷さんにはもう。私って必要ない?」

東郷「悲しそうな友奈ちゃんなら、必要ないわ」ギュッ
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/26(木) 23:33:34.92 ID:kHDECtmXo

樹かわいそう
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/26(木) 23:35:22.44 ID:+DqcuDipO

樹ちゃんの心がどんどん疲弊していくな…ここから逆転できるのだろうか
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/27(金) 18:49:07.43 ID:wb9z8xXwo
バレ来てるけど>>1はどこまで想定内何だろうか

それはそうと…ハッピーエンドだよな?
215 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/27(金) 22:10:00.34 ID:brc9tF/bo

では、初めて行きます
216 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/27(金) 22:42:01.90 ID:brc9tF/bo

最近、良く夢を見る

ゆっくりと、欠けていく夢

気づいたらドアの前に立っていて

私は入っていいですか? と、ノックする

ドアを開けると、つまらないくらいに何もなく

ただ、窓際にベッドがポツンっと、置いてある

すべての夢で共通しているのはそこまでだ

最初はそのベッドに、久遠さんがいる

久遠さんは「あら、いつ来たの?」と

窓に映る私に気づいて振り向いて

嬉しそうな笑顔で「樹だけに」なんて。つまらない冗談を言う

私は何言ってるんですかと、苦笑いしてて

久遠さんも暇だったんだもん。と、笑う

それから他愛もない話をして、楽しんで

明るかった窓の外は暗くなって、

久遠さんが寂しそうに「もう、お別れね」と、言う

私はまた来ますから。と、名残惜しそうに返して――目を覚ました
217 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/27(金) 22:50:12.69 ID:brc9tF/bo

次は、部屋に入ると

窓際のベッドにいる久遠さんらしき人が

私に振り向いて「無理してこなくてもいいのに」と、言う

らしき人。というのは

窓から差し込む光が、その人の顔を隠しちゃうからだ

私は無理しなくていいと言われたので

その人に「無理じゃないですよ」と、ちょっぴり不満げに返す

すると、

相手の女の人は「そんなことないわ。だって、疲れた顔してるわ」と

近くの椅子に座ってる私の頬に触れながら

どこか申し訳なさそうに言う

窓に映る私は、私からしてみれば普通だった

でも、その人から見れば疲れているように見えるみたいで

手で追い払うような仕草をすると「来るのは時々でいいわ。私よりも。自分を大切にしなきゃ」と、言う

そこで私が、それでも毎日来ます。久遠さんの笑顔が見たいから。と

久遠さんであろう人に言ったところで……目を覚ました
218 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/27(金) 23:08:29.85 ID:brc9tF/bo

次は部屋に入ると

その時から既に窓際のベッドにいる人は私を見ていた

やっぱり顔は見えなかったけれど

その人が見ているということだけは理解った

私が「起きてたんですね」と、いうと

その人は少し黙り込んで、くすくすと困ったように笑う

だから、どうして笑うんですかと、

ムッとして言うと

その人は「別に。起きてるわけではないからね」と、ちょっぴり悲しげに言う

ベッドに横になっているその人は

体が不自由で、立って歩くことができない

それを言ったんだろうと「私が手を貸しますよ」と、言うと

その人は手だけを差し出し「じゃぁ、握ってて。貴女のことを感じたいから」と、言った
219 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/27(金) 23:20:05.57 ID:brc9tF/bo

私が車椅子には乗らないんですか? というと

その人は「必要ないわ」と、申し訳なさそうに言う

その人とは他愛ない話をした。と、思う

でも、私は終始……その人の名前を呼ぶことはなかった。と

目を覚ましてから気づいて

樹「……久遠さん」

自分が泣いていたことに、気づく

なにかの前兆かもしれないと思って

色々な面で警戒していたけれど

その日も久遠さんは目を覚ますことはなく、

状態が悪化することもなく時間だけが過ぎて行った

そして、夜、寝る前に

樹「お姉ちゃん」

風「?」

樹「私、疲れてるように見える?」

と、聞いてみた
220 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/27(金) 23:44:34.50 ID:brc9tF/bo

風「ん……まぁ、疲れてると思うわよ」

樹「そう、かな」

風「少なくとも。そう聞いてくる時点で疲れてるってことだと思うわ」

樹「………………」

風「天乃を想う気持ちも分かるけど。会った時に疲れた顔してたらダメなんじゃない?」

おねえちゃんはそう言うと、

私の頭を優しく撫でて、おやすみ。と部屋に入っていく

樹「……………」

夢の中で、久遠さんに疲れてるって言われて

お姉ちゃんも

はっきりとは言わなかったけど、疲れてるように見えてるんだと思う

樹「久遠さん……っ」

考えるだけ、思うだけ

それだけで寂しさがどっと押し寄せてきて

一気に目頭が熱されて、ポロポロと涙がこぼれ落ちていく

樹「声が聞きたい、表情が見たい、手を握って欲しい、抱き締めて欲しい……」

寂しいよ。辛いよ

苦しいよ、悲しいよ

怖いよ、不安だよ

樹「久遠さんっ」

久遠さんがあんな状態になってから三ヶ月半

私はきっと……体ではなく心が疲弊しきっていたんだと思う

その日、私だけの部屋で

泣き疲れて気を失うまで……泣いていたんだと

後から、お姉ちゃんに聞かされた
221 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/27(金) 23:45:03.17 ID:brc9tF/bo

では、此処までとさせて頂きます
あすもできれば似たような時間から
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/27(金) 23:45:51.28 ID:uXilhnUxo

もう樹ボロボロやんけ
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/27(金) 23:46:32.10 ID:fGJ+Rw0VO
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/27(金) 23:56:20.84 ID:+Qp0b+DOO

どうか久遠さんと樹ちゃんに救いの手を…
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/28(土) 09:58:00.23 ID:wyISmufUo
三ヶ月半だもんな…
辛いよな…このまま死んじゃうかもしれないんだもんな…
嫌だよな怖いよな…


…ここで樹ちゃんに言い寄れば落とせるんじゃ無かろうか
NTRそう
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/28(土) 14:10:24.51 ID:yJQTvCI7o
樹ちゃんはしっかりしてるから大丈夫大丈夫
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/28(土) 15:51:10.72 ID:iNP4/BW+O
樹ちゃんは久遠さんLOVEだしね
絶対になびかないよ
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/28(土) 18:17:12.21 ID:bzNUodE4o
そんなこと言ったらブチ切れそう…
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/28(土) 19:05:21.35 ID:wyISmufUo
天乃なら自分が待たせたのが悪いって諦めてくれるだろ
春信もいるしな
230 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/28(土) 23:36:30.52 ID:EiVFKSeHo

では、本日も非安価となりますが進めていきます
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/28(土) 23:36:57.81 ID:yJQTvCI7o
いえい!
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/28(土) 23:48:43.50 ID:KhNw3sbBO
見逃すとこだったぜ
233 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/29(日) 00:14:17.51 ID:EKZay+Uno

「樹ちゃんはクリスマス、どうするの?」

樹「え?」

「クリスマスだよ。ク リ ス マ ス 」

テストが終わって、返却された冬休み前最後の日

クラスメイトは楽しげな顔で、そう聞いてきた

「樹ちゃんはやっぱり勇者部の人達と?」

樹「………………」

「樹ちゃん?」

樹「あ、ぇ? なに?」

「大丈夫?」

クラスメイトは心配そうに言うと

自分の額と私の額に手を当てて、熱はないみたいだけど。と、呟く

「最近……というか、だいぶ前から上の空なこと多いよね」

樹「そうかな……」

「それはもう。恋をしたあの人へ、想いよ届け、フライングマイハート! 的な具合に」

樹「……………」

「あれ、図星?」
234 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/29(日) 00:22:59.08 ID:EKZay+Uno

樹「図星……なのかな」

「誰か意中の相手でもいるの?」

樹「……でも。その人はずっと遠くに居るんだ。すごく近いのに。すごく遠いんだ」

当たり前だけど

クラスメイトは久遠さんを知らない

私が毎日誘いを断って病院に行っていることは知っているけど

それがなんでなのか、誰と会っているのか

クラスメイトは追求してこなかったし

私も言おうと思ったことがないからだ

だから、急にそんなことを言ったとき

クラスメイトは唖然とした表情で私を見つめて

すぐに、私の頬をムギュっとつまんだ

「それって、樹ちゃんが毎日会いに行ってる人?」

樹「………………」

「治るかどうか不安で、気にしすぎて。だから、テストも赤点ギリギリだったの?」

意外に、鋭い
235 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/29(日) 00:35:53.41 ID:EKZay+Uno

クラスメイトは勘が鋭いのか

私がそう思ったのと同時に、

ちょっとばかりムッとして、私の頬を解放して息をつく

「それが悪いことなんて言わないけどね。樹ちゃん、すぐ顔に出てくるんだよ?」

樹「…………………」

「悩んだら相談。なんでしょ? 勇者部は」

クラスメイトがそう言って、肩を叩く

ちょっぴり痛いと思いながら、クラスメイトを見ると

クラスメイトは教室の入口を見ていて

その視線を追うと

東郷「……ちょっと。お話できる?」

樹「東郷先輩?」

東郷先輩が呼んでいて

私は躊躇しながら、クラスメイトを見ると

行ってきなさいよ。と、背中を押された
236 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/29(日) 00:49:46.87 ID:EKZay+Uno

東郷「ごめんね、来てもらっちゃって」

樹「いえ、なにかしていたわけでもないですから」

私の返しに、東郷先輩は特に何も言わず、

しばらく黙り込んで、私を見る

その目は力強くて

でも、その表情は悲しさを感じさせる

そんなどちらでもない東郷先輩は私の手を握ると

ちょっと暑いわね。と、優しく囁く

そして

東郷「久遠さんは何もできないだけで意識がある可能性があるわ」

と、

私が唖然としてしまうことを、平然と伝えてきた
237 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/29(日) 00:50:31.35 ID:EKZay+Uno

では、此処までとさせて頂きます
明日はできる時間はわかりましたが、出来そうな時間に勧めていく予定です
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/29(日) 00:51:01.60 ID:E2cRP2Hbo

なん…だと……
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/29(日) 14:29:51.08 ID:tqZ2ps3i0

マジか...って思ったら友奈ちゃんもそうだったな
240 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/29(日) 20:48:26.37 ID:EKZay+Uno


では、本日も進めていこうかと思います
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/29(日) 20:49:32.89 ID:27l7ePYaO
よしきた
242 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/29(日) 21:02:43.84 ID:EKZay+Uno

樹「どういう……ことですか?」

東郷先輩が嘘や冗談を言うとは思わない

でも

そんな簡単に受け入れることができるものでもなかった

なんの反応も示さない

でも、意識だけはある。なんて……

東郷「久遠さんは別に脳の機能が停止してる脳死とは違うわ」

樹「それは……はい。植物状態のようなものだと聞いてます」

東郷「そこで思ったのよ。脳波の測定をしてみたら、なにか希望が見えてくるんじゃないかって」

樹「……………」

東郷先輩の声色は明るくて

きっと、それが悪い結果ではなく

いい結果だったんだろう。と、なんとなく想像できて

けれど、疲れきった心は舞い上がることなんてできなくて

私は、喜んで食いつきたいと思いながらも

言葉は出ず、感情も表に出てこさせられなかった
243 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/29(日) 21:11:33.85 ID:EKZay+Uno

そんな私に、東郷先輩は優しい目を向けた

もうちょっとだよ。と、優しい言葉をくれた

ポンポンっと、優しく肩を叩いてくれた

東郷「ちゃんとね、反応があったの」

樹「っ……」

東郷「樹ちゃんの名前を出すとね。グンっって大きく動くの」

樹「そんなの……っ」

偶然だ

儚い希望

風前の砂粒だ

そう思おうとする私の心と、でももしかしたらと考える思考の食い違いに

頭痛がして、ふらつく

それでも歯を食いしばって

東郷「これを見てみて」

東郷先輩が鞄から取り出した封筒を受け取る
244 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/29(日) 21:29:20.23 ID:EKZay+Uno

久遠さんの入院している病院名が書かれた大きな封筒

その中には数枚の紙が入っていて

端の方に、久遠さんの名前と脳波測定結果という文字が書いてあって

分類別のグラフが大きく乗せられていた

樹「………………」

真横に伸びてる直線が三ヶ月前

同じく真横に伸びている直線が二ヶ月前

同じく真横に伸びている直線が一ヶ月前

そして、

直線だった線が大きく乱れているのが、先週

東郷「今朝、届いたの」

樹「……ずっと。やっていたんですか?」

東郷「目を覚まさないまでも。樹ちゃんが少しでも気が楽になればと思って」

樹「この、反応がなかったグラフも。全部東郷先輩がとどめておいてくれたんですか?」

東郷「……ええ」
245 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/29(日) 21:35:06.40 ID:EKZay+Uno

東郷先輩は一瞬。躊躇った

でも、きっと

ここで嘘をつくわけには行かないと思ったんだと思う

少し辛そうな表情で頷く

樹「………………」

東郷先輩も

私たちと一緒に久遠さんのところに行った時に

何度も声をかけて

手を触れて

意識が戻るかも知れない。と、頑張ってくれていた

それなのに

それが全部無駄だったと

何も聞こえず何も感じてはもらえていなかったと

そんな現実を毎回突きつけられていた東郷先輩は

どれくらい……辛かったんだろう

どれくらい……苦しかったんだろう

どれくらい……悲しかったんだろう

そう思うと

ただ反応がないというだけで折れかけていた自分がとたんに情けなくなった
246 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/29(日) 21:59:06.35 ID:EKZay+Uno

東郷「私は知らなかった。樹ちゃんと違って。何も知らなかった」

東郷先輩はそう言って、俯く

九尾さんは士気が下がるからと

東郷先輩達みんなの満開全てを久遠さんが引き継ぎ、

さらに大きな満開を

本当の満開を行うということを伏せていた

その結果、久遠さんが今の状態になると分かっていたからだ

東郷「樹ちゃんはそれを知っていたのに黙ってた」

樹「それは」

東郷「だから、おあいこ」

東郷先輩は笑った

疲れの見える笑顔を、私に向けた

ずっと

この三ヶ月半の間ずっと

重すぎるものを背負って、隠して

私たちに接してくれていた東郷先輩の笑顔は

いまだ疑念を抱こうとする私の心を。支えてくれた
247 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/29(日) 22:16:04.52 ID:EKZay+Uno

支えられた心は、歪まなくなって

見たこと、聞いたこと

その全てを真っ直ぐに受け止めてくれて

樹「っ……ぅ……」

久遠さんがまだ反応できなくても

少しずつ、しっかりと戻ってきていることを感じ取って

信じて、留めて、受け止めてくれて

耐え難い熱に、ポロポロと……涙がこぼれ落ちていく

東郷「よく頑張ったわ。樹ちゃん」

東郷先輩は私の体を抱きしめると

背中を軽く叩きながら、声をかけてくれた

頑張っていたのは東郷先輩も一緒なのに

なのに……東郷先輩は私のことを気遣って

優しく。抱きしめ続けてくれた

その小さくて大きな希望を胸に

私はもっともっと。頑張ることを決めて

今までと同じように。それ以上に明るく、楽しく

久遠さんに語りかけて、接するようにした

ううん、自然とそうなっていた
248 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/29(日) 22:31:21.51 ID:EKZay+Uno

√ 12月31日 夜(病院)


1、二人で年末を過ごす
2、みんなで 年末を過ごす


↓2
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/29(日) 22:32:44.46 ID:E2cRP2Hbo
まさかの選択肢、影響なければいいけど
とりあえず1で
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/29(日) 22:32:52.23 ID:27l7ePYaO
2
251 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/29(日) 22:48:27.35 ID:EKZay+Uno

東郷先輩から心の支えを貰ってから早くも数日が経って

気づけば、年末

無事復帰した園子さんも交えた勇者部全員で

久遠さんの病室で年を越すことにした

別に示し合わせたわけじゃなかった

でも

夏凜さんが年末をどう過ごしたいか

そう、みんなにメッセージを送った結果が

満場一致で久遠さんの病室だった

風「病室で集まって年を越すなんて。二度とないでしょうね」

夏凜「あって欲しくないわよ」

園子「でも、みんなで集まるって言うのはこの先も続けたいな〜」

東郷「そうね……風先輩が高校生になっても。また」

夏凜「……高校生になれればいいけど」

風「今の時期にそういうの止めてっ」

樹「…………………」
252 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/29(日) 22:58:03.08 ID:EKZay+Uno

病室はとても明るかった

とても賑やかだった

お腹が大きくなった久遠さんを囲むようにして椅子に座っているからか

まるで、久遠さんも話に参加しているような気分だった

でも、みんなは久遠さんが聞こえたりしていても

何も言わず何も反応していないことを知らないわけじゃない

時々、ちらっと久遠さんを見ては

ちょっぴりと残念そうな顔をして時計を見る

夏凜「ふわぁ……ふぅ。あと、何分?」

風「10分くらい? 眠いなら寝ていいのよ? お子様にはきついでしょ?」

夏凜「あんたねぇ……」

友奈「でも、確かにちょっと眠くなってきちゃったかも」

東郷「いつもは寝ている時間だからね」

園子「zzz……はっ、寝てないよ〜……zzz」

樹「園子さんは限界ですね」
253 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/29(日) 23:24:09.73 ID:EKZay+Uno

チッチッチッチッ……と、

全員に見えるように置かれた時計が時間を刻んでいく

あと9分

あと8ふ……

風「年越しうどん。も一回食べる?」

東郷「唐突過ぎませんか?」

風「いやぁ、ほら。乃木に夏凜に友奈。ウトウト組が増えてきたし」

樹「それとこれとは関係ないよ。お姉ちゃん」

東郷「まさか……お腹が空いたんですか?」

風「そういうわけじゃないんだけど。眠気覚ましに。ね」

お姉ちゃんは東郷先輩の視線に冷や汗を流しながら、否定して

欠伸をするような素振りを見せて、苦笑する

うどんを食べるのが眠気覚ましになるのか。という疑問はないらしく

東郷先輩は太りますよ。と、痛恨の一撃を加え、お姉ちゃんの目を覚まさせた
254 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/29(日) 23:37:18.58 ID:EKZay+Uno

樹「……久遠さん」

ぎゅっと、手を握る

当たり前のように何も言わず

瞬き一つしない人形のような久遠さんを見つめると

お姉ちゃんが私の頭を軽く撫でてきた

風「今年は本当に良く。頑張ったわね。樹」

樹「お姉ちゃん……」

風「出来なかったこと。やらなかったこと。それを頑張って、出来るようにしていった樹は本当に偉い」

お姉ちゃんは嬉しそうに言いつつも、

目元に涙を携えていて

風「花嫁修業みたいだって、思ってたけど。本当にそうなっちゃって」

東郷「炊事洗濯等に加えてお裁縫も頑張って習得してましたね」

樹「まだ、完璧とは言えないですけど。でも」

ちらっと、久遠さんを見る

それもこれも全部、久遠さんにしてみせたかったことなんですよ。と

何度も伝えてきた言葉を心の中に浮かべる
255 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/29(日) 23:56:07.46 ID:EKZay+Uno

樹「……久遠さん」

とうとう、今年中に戻ってきてくれることはなかった

それが言えるようになってしまうまでの残りの5分間

私は時計を見続けた

久遠さんの手を握ったまま、ずっと。時計を見続けた

東郷「友奈ちゃんたち。起こします?」

風「無理に起こすこともないんじゃない?」

東郷「夏凜ちゃんに後で小言言われても知りませんよ?」

風「やっぱり起こす」

お姉ちゃんと東郷先輩が寝ちゃっていた友奈さんたちを起こして……残り一分

園子「ふわぁ……あと何秒かな〜?」

東郷「20秒……19……18……」

園子「……そっかぁ」

園子さんは久遠先輩を一瞥して、辺りを見渡して、息をつく

今年中は難しいと思ったのかもしれない

それはみんなも一緒で

除夜の鐘が聞こえるまでの間に、全員が久遠さんの手に手を重ねて目を閉じる

そして

ゴーン……ゴーン……

どこかから鐘の音が聞こえて、

一年が終わり、一年が始まった
256 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 00:06:43.02 ID:4aFCOiSZo

友奈「………………」

みんながゆっくりと目を開けて、

久遠さんの方を見つめる

何も言わない

なんの反応も示さない

風「……と。というわけで! 今年もよろしく!」

その空気をまずいと思ったのか

お姉ちゃんが声を張り上げて、空気を裂く

東郷「よろしくお願いします」

それを皮切りに、

園子「今年から。が正しいかもしれないけど。よろしくね〜」

多少、明るさを削がれながらも

友奈「よろしくお願いしますっ」

一人ずつ、挨拶をしていく

そして皆が皆を見渡す中で

樹「よろしく……お願いします」

私だけは見渡したあとに、久遠さんを見つめて言う

一番言いたかった相手

一番最初に言い合いたかった相手

その人は、言い返しては――

天乃「……うどん食べてないから。年越しキャンセルで」

樹「え?」

そうやってふざけて……

樹「っ」

天乃「ダメ?」

樹「ダメですっ!」

言い返しては、くれなかった
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 00:25:32.25 ID:CQMXKFzzO
!?!?
258 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 00:27:12.59 ID:4aFCOiSZo

夏凜「……は、ぁ、あんた!」

天乃「?」

夏凜「なんなのよ! なんでっ!」

今までの辛さ、苦しさ、悲しさ

それらをすべて押し流すようなあっさりとした久遠さんの姿勢に、

涙さえなく、夏凜さんが怒鳴ると

久遠さんは小首をかしげて、頷く

天乃「よくわからないけど、若葉が助けてくれたのよ」

九尾「若葉は元々、素戔嗚尊として主様に遣えていたからのう」

風「きゅ、九尾!」

九尾「年神を連れゆくのは当然じゃろう」

くすくすと、どこからともなく現れた九尾さんは笑う

なにがなんだかわからない

それは私だけじゃなくみんなが同じで

困惑して、唖然としているにも関わらず、

久遠さんだけはいつもの調子で

天乃「マーボ丼を食べたいわ」

樹「……体、壊しちゃいますっ!」

天乃「そうよね……残念」

悩むことも、考えることも

何もかもを……放棄して――


1、抱きしめる
2、キスをする
3、天乃の頬をつねる
4、遅いじゃないですか。と、怒鳴る
5、今度、作ってあげます。と。言う


↓2
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 00:29:30.80 ID:4wu3BpXFo
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 00:29:33.56 ID:4ige1UAno
やっと起きたか
2
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/30(月) 00:30:27.88 ID:0QIRdb3jO
1
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 00:36:04.41 ID:4ige1UAno
結局どれくらい寝てたんだろう
半年くらい?
263 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 01:02:14.79 ID:4aFCOiSZo

樹「久遠さん」

一度はしようとして

天乃「な――っ」

けれども諦めた――キスをする

久遠さんは接触の一瞬だけ驚いて

すぐに、受け入れてくれた

見開いていた目をゆっくりと閉じて

驚きに戸惑っていた唇を解して

久遠さんは私に全てを委ねて、ベッドへと横になっていき

私は唇同士をつなげたまま、

そのあとを追うようにして折り重なる

みんなの視線を感じる

けれど、誰ひとりとして言葉を発することはなくて

私達は私たちの世界へと、入り込んでいった
264 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 01:03:55.59 ID:4aFCOiSZo

では、此処までとさせて頂きます
明日は早めの再開となる予定ですが
エピローグですので、おそらく安価はなしとなります



寝ていたのは約4ヶ月ですね
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 01:05:26.61 ID:4ige1UAno

目が覚めてよかったなあ
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 01:46:44.32 ID:PQHjb2I20
乙!!
うおおおぉぉぉぅぅぅぉぉ!!!!!
あまりの喜びに変な叫びしちゃって家の人に怒られちった
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 05:00:48.05 ID:ZttVu1dk0
乙やね
よかったよかった
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/30(月) 07:59:34.53 ID:/iXAswcOO

いかにも久遠さんらしい復活で安心したわ
269 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 16:11:24.65 ID:4aFCOiSZo

では、進めていきます
270 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 16:24:41.51 ID:4aFCOiSZo

ごめんねと、久遠さんは言う

待たせちゃったねと、申し訳なさそうに言う

だから私は

樹「そう思うなら、言うべき言葉がほかにあると思います」

と、言い返す

久遠さんは「怒ってる?」と聞いてきたけれど

自分のほほの膨らみを感じながら、私は答えずに久遠さんを見つめる

きっと、久遠さんには睨んでいるように見えてるに違いない

押しに弱い久遠さんは、

元々自分が悪いということも相極まって

困った顔で、お姉ちゃんを見る

天乃「ふ、風……」

本当、こういうところが可愛くて仕方がない

困りに困って右往左往してる久遠さんの瞳が愛らしくて仕方がない

そんな自分を悪い子だと評する心に、これは久遠さんが悪いから。と、もう暫く様子を見ていると

久遠さんはハッとしたように目を開く

天乃「あけましておめでとう、いつ――」

樹「ふざけてます?」

天乃「……割と真面目だったんだけどな」
271 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 16:33:19.99 ID:4aFCOiSZo

年始の言葉をかき消すと、

久遠さんは自分の大きなお腹を一瞥して、息をつく

天乃「ありがとね。待っててくれて」

樹「………………」

天乃「改めて言おうと思うと気恥ずかしくて。ついつい先延ばしにしちゃったんだけど」

久遠さんは照れくさそうな表情で私を見て、

お姉ちゃんたちに視線を巡らせて、私へと戻す

そして

天乃「ただいま」

樹「っ」

久遠さんは満面の笑みでそう言った

ずっと聞きたかった言葉

言われたかった言葉

ありがとう、ごめんなさいよりもずっと

久遠さんが帰ってきてくれたことを心身ともに実感できる

とても簡単で、誰もが使う。一言

樹「……お帰りなさいっ、久遠さんっ!」

久遠さんらしい適当なやり取りの遠回りで引きかけていた涙が溢れていく

自分がどんな顔しているのか分からないほどに、ぐちゃぐちゃで

でも、嬉しさに満ち満ちている心が、笑顔だよ。と、囁く


私の待ち続ける生活は、一年とともに去っていった
272 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 16:57:35.58 ID:4aFCOiSZo

風「天乃が目を覚ましたら、怒るつもりだったんだけど」

夏凜「全くよ。怒るに怒れないわ」

園子「天さん、感動する空気すら壊しに来たからね〜」

園子さんの困り声に、

お姉ちゃん達はうんうんと頷いて、

友奈さんもちょっぴり困り顔で笑う

まとまりがないように見える

喜んでいないようにも見える

でも、みんな内心はすごく喜んでいるんだと

醸し出される空気感は物語る

全ての元凶である久遠さんを見てみると、

悪気がないどころか

してやったりというような満足気な微笑みを浮かべていた

多分、

そういうふうに、騒がれるのが気恥ずかしかったのかもしれない

私と二人きりだったらどんなふうな年始になっていたんだろうかと、ちょっと。気になった
273 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 17:07:10.47 ID:4aFCOiSZo

天乃「そういえば、樹」

樹「は、はい」

天乃「この調子だと。文化祭はちょっと見に行けないと思うわ」

樹「あ………」

天乃「そこだけはごめんね」

久遠さんは残念そうに呟く

そうだ

久遠さんはもう妊娠30週近くで

もちろん、動くなとか外出するなというほどではないけれど

私と同身長

つまり、同年代の久遠さんが妊婦として、何も知らない人たちの前に姿を現すことは

あまり、勧められたことじゃないし

そこで早産になってしまったりなんかした場合、大変なことになる

ただでさえ、一卵性双生児という普通より大変なことになってるんだから

わがままは、通せない

樹「久遠さんが無事に子供を産むためですから。文句はないですよ」

天乃「うん、ありがと」
274 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 17:17:53.60 ID:4aFCOiSZo

夏凜「じゃぁ、うちの兄貴にでも。文化祭の撮影班でもやってもらうわ」

園子「にぼっし〜さすが〜」

天乃「なかなか良質なダシが出るじゃない」

夏凜「ダシなんか出てないわよっ!」

園子さんと久遠さん

園子さんの「にぼっしー」呼びは諦めたみたいだけど

久遠さんは久しぶりなせいか、まだ諦めきれないらしい

……諦めるしかないというのが

夏凜さんには可愛そうですけど

夏凜「と、とにかく。天乃をそうしたのは兄貴だし。そのくらいはね」

天乃「どちらかと言えばして貰ったんだけどね。春信さんの都合がつくようならそうしてくれると嬉しい」

夏凜「有給でも取るでしょ。兄貴なら……まぁ、取らなきゃ溜めるだけなんだから。使わせとかないとね」

天乃「体調。気をつけるように言ってね? 私がご飯作ってあげられればいいんだけど。この通りだから」

風「そんなこと言うと樹がヤキモチ妬くわよ」

樹「久遠さんはそういう人だって知ってるから平気だよ。お姉ちゃん」

東郷「その平気という言葉は正しいのかしら?」
275 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 17:25:08.74 ID:4aFCOiSZo

会話に久遠さんが混じってくる

普通の人からしてみれば当たり前で、些細な変化

でも、私達はそれが嬉しくて

私たちだけじゃなく

眠たそうだった友奈さんや夏凜さん、園子さんまですっかり目が覚めて

年越しのことなんてすっかり忘れ

時間も気にせず話し込む

久遠さんが眠っている間に何があったのか、何をしていたのか

これからどんなことをする予定で、どんなことがあるのか

語って聞かせていたことを

久遠さんの言葉を交えて……会話とする

樹「えへへっ」

当たり前を

普通を

日常を

私達は噛み締めて生きていく

当たり前であること、

普通であること

日常であること

それが実はとても脆く、儚く、特別なことであることを

私達はこの一年で強く、思い知らされたからだ
276 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 17:48:18.00 ID:4aFCOiSZo

√ 4月?日 (病院)



天乃が目を覚ましてから、数ヶ月経ったある日のこと

分娩室の近くの待機椅子には樹以外の勇者部

そして

そのすぐ横の壁に寄りかかる春信の姿があった

春信「……………」

夏凜「落ち着いてるわね」

春信「……そう見えうのなら、何も言うな」

夏凜「……そのほうがよさそうね」

夏凜は春信と一言交わしただけで察して、息をつくと

そわそわとしていたり

ウロウロと落ち着きのない勇者部一同を見渡す

夏凜「あんた達が緊張してたって、なんにもならないでしょ。少し落ち着きなさい」

風「だ、だって……姪が。もうすぐ姪が生まれんのよ!?」

夏凜「それは私のはずなんだけど」

風「天乃は犬吠埼家なんだからあたしよ。アタシ!」

夏凜「はぁ……」

緊張してるのは私もなんだけど……風を見てると嫌でも落ち着けるわね

大事な唯一の家族

その恋人が子供を産むんだから仕方がないといえば仕方がないけど
277 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 18:00:40.43 ID:4aFCOiSZo

友奈「二人共女の子なんだよね?」

東郷「ええ。そうみたいよ」

友奈「双子の女の子かぁ……久遠さんに似てるのかな? 春信さんに似てるのかな?」

銀「それ、後ろ側だったらどうなるんだ?」

園子「ミノさんみたいなイケメン女子の誕生だよ〜」

銀「アタシは別にイケ……そ、そんなくっつくな〜っ!」

言いながら身を寄せてくる園子と

それに対して照れくさそうに押し返す銀

そのふたりを眺めながら、若葉は深く息を吐く

若葉「平和だな」

球子「……過去がどうだったか。タマ達がどうだったか。なんて、今ここには関係ないぞ」

若葉「分かっている。ただ、私達が見てきた陽乃のアレとどうしても比べてしまうんだ」

球子「……若葉」

若葉「分かっている」

球子「だったら――暗い顔すんなーっ!」

若葉「っゃ――球子ぉっ!」

むぎゅっとお尻を鷲掴みにされ、若葉が怒鳴る

その騒がしさは、分娩室の中にまで届いていた
278 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 18:08:54.98 ID:4aFCOiSZo

樹「聞こえてますか?」

天乃「っ、ぅ……ちょっ、ひっぁ……」

樹「っ!」

手を握る手が強く握り締められて、

樹は思わず叫びそうになって歯を食い縛る

今叫ぶべきは自分じゃない

叫んでいいのは

ものすごく大きなお腹で

分娩台に横たわって、必死で子供を産もうとしてる久遠さんだ

そして、今から出てくる子供だ

樹はそう強く心に決めて

握り締められるだけの痛みなんてちっぽけなくらい痛い思いをしている天乃を見つめ、

汗に濡れた顔をタオルで拭う

天乃「はぁっはぁっ……っ、さ、裂けるかもっ」

「大丈夫ですよ、ゆっくり。ゆっくりでいいですから。息を吸って……吐いて……」
279 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 18:18:17.74 ID:4aFCOiSZo

助産師の指示に従ってゆっくりと頑張って、

それでも激しい痛みに呻く天乃を、樹はじっと見つめ続けた

痛い、辛い、苦しい

ずっと聞いてきた出産というものを目の前で見て

それでも、自分はその全てを分かるなんて言えないんだろうな。と

樹は思い至って、天乃の頬を拭い、手を握る

経験しなければ、わからない

経験しなくても知ることはできる。学ぶことはできる

でも絶対に、理解はできない

だから、頑張ってなんていないけれど。と

樹は天乃に優しく笑みを向けて

樹「そばにいますよ。ちゃんと、この手を握ってます」

それだけを告げる

辛そうで、苦しそうで、痛そうで

荒い呼吸も収まらない中で、天乃は「ありがと」と、樹に答える
280 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 18:24:11.70 ID:4aFCOiSZo

これは絶対にしなければいけないことだ。と強制された出産だ

そうしなければ生きていくことはできないからと

諦めたからこそ行うことになった出産だ

ゆえに、それは望んでいないことだったと言えるのかもしれない

けれど、

天乃も樹も生まれてくる子供にそんなことなんて関係がなくて

そんなことで愛されない理由にも、愛さない理由にもならないと分かっている

だから

どんな子供が生まれてくるのかと、楽しみで、待ち遠しくて

頑張って、頑張って、頑張って

そして

樹「ぁ……」

一人の頭が見えて、ゆっくりと体が見えて

ぬるっとした小さな小さな子供が完全に姿を現して元気な声が病院の中に響き渡る

そしてそのすぐ後にもう一人……

双子の女の子がこの日。産まれてきた
281 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 18:40:49.05 ID:4aFCOiSZo

天乃「……見て、ほら。顔が一緒」

樹「まだ生まれて十数分ですからね」

分娩室から出れるようになるまでの二時間程度

樹と天乃とその子供は四人でとどまって、

子供を刺激しすぎないように小声で話す

天乃は嬉しそうで、

樹も嬉しそうで

影から見守る九尾は、昔はどうだったかと思い返し

懐かしんで、首を振る

昔は昔、今は今だからだ

樹「そういえば、春信さんがもう早速出生手続きとかしに行こうとしてるらしいですよ」

天乃「気が早いわね」

樹「さっきちらっと見ただけですけど。看護師さんがすごく困ってました」

天乃「どうして?」

樹「子供の名前が記入されてないからです。決めてませんよね。名前」

天乃「……そう。だったわね」
282 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 18:51:23.84 ID:4aFCOiSZo

春信と天乃の子供ではあるが

恋人の関係があるのは樹で

誰がどう決めるべきかのかと悩んで、考えて、相談しているうちに

名前が決まるよりも先に子供が生まれてきてしまったわけだ

春信はそのことなんて頭から抜けて

手続きしなければ。と、焦ったに違いない

そんならしいようならしくないような

ちょっと残念なミスをする春信を思って、くすくすと笑う

天乃「まぁ、春信さんがちゃんと結婚相手を見つけて。その相手が出産した時の練習になったなら良かったかな」

樹「あまり、良くはない気がしますけど」

でも

子供たちには呆れられちゃいそうだけど

そんな風にちょっぴり緩いのが自分たちなんだと、樹は苦笑する

大人になったらしっかりできるだろうか

それは分からない

でも、少なくとも

天乃や勇者部のみんなと一緒に大人になることができるのだと

樹は嬉し涙をこぼし、拭って


樹「子供の名前、決めましょうか」


そう言って、笑みを浮かべる

誰一人として欠けることのなかったこの世界は

これからもずっと……続いていく

そして

新たに生まれた二人の子供が成長し、

その力に気づいたとき――世界は大きく動くのだろう
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 18:56:04.22 ID:PQHjb2I20
ハッピーエンド...だよな?ハッピーエンドなんだよな!?
284 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 19:03:08.62 ID:4aFCOiSZo


クリアデータ:久遠天乃は勇者である(happy endC)

データを保存


……………………


・久遠天乃のデータを使用することが可能です
・伊集院沙織のデータを保存しました
・夢路瞳のデータを保存しました
・相反する双子のデータは保存することを許可されていません
・乃木若葉のデータの保存に失敗しました
・土居球子のデータの保存に失敗しました
・久遠陽乃の初期データが不正に作成されています
・久遠陽乃のデータを使用することが可能です
・九尾の∀※#@§error!!  error!!


・乃木若葉は勇者であるを開放しました
・久遠陽乃は……であるを開放しました?
285 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 19:11:17.08 ID:4aFCOiSZo

では、今回の物語もこれにて終了とさせていただきます
今回もありがとうございました。お疲れ様でした

いろいろなっていますが、
物語に関してはしっかりとハッピーエンドなので安心して頂ければな。と



ニューゲームに関しては特に考えていなかったのと
二作通して久遠さんを主人公としてやってきて
今更久遠さん以外で改めてやり通せるのかという疑問もあるので
とりあえず、一旦休憩を挟みたいと思います
21時ころには戻れるかと思います
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 19:16:01.91 ID:kpZsmLt1O
お疲れ様でした!
ハッピーエンドでよかったよかった
しかしまた意味深な…
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/30(月) 20:42:50.83 ID:/iXAswcOO
二周目完走お疲れ様でした
原作と久遠さんへの愛が凄く伝わるいいラストだった

>>1的にまだまだ行けそうなら引き続き応援していくよ
288 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 21:23:12.69 ID:4aFCOiSZo

では、初めて行きます
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/30(月) 21:24:19.19 ID:kl7QK9VR0
あいあいさ
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 21:31:46.19 ID:4ige1UAno
おk
291 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 21:39:19.17 ID:4aFCOiSZo

舞台設定としては


・久遠天乃は勇者である(今回作成したデータ再利用)

・結城友奈は勇者である

・鷲尾須美は勇者である

・乃木若葉は勇者である

・久遠陽乃は……である?(久遠天乃は勇者であるの西暦版)


の5つです

久遠天乃、久遠陽乃に関しては、キャラメイクなしでのスタートとなります
それ以外に関してはキャラメイク等から行います


まずはじめに舞台設定の選択となりますが
45分頃からの多数決とさせていただきます
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 21:40:36.42 ID:4ige1UAno
あれクオンサン以外キツイって話だったのにキャラメイクあるの?
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/30(月) 21:42:21.17 ID:kl7QK9VR0
選択肢が増えて良い意味で迷うな
294 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 21:44:11.83 ID:4aFCOiSZo

>>292
キャラメイクなしだと選択肢が狭いかなと
久遠さんスレで問題がなければ削ってしまいます
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 21:45:41.13 ID:4ige1UAno
いや>>1のモチベ大丈夫かな?って
個人的は天乃か陽乃のどっちかでいいけど
296 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 21:52:38.35 ID:4aFCOiSZo


では、申し訳ありませんが
今回も完結するために、
いずれにしてもキャラメイクを抜かせていただこうかと思います

久遠さんの設定変更または、再利用になります。ご了承ください


55分からやらせていただきます

297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/30(月) 21:53:13.36 ID:/iXAswcOO
了解
298 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 21:58:27.42 ID:4aFCOiSZo

1、久遠天乃は勇者である(前回設定流用)
2、結城友奈は勇者である
3、鷲尾須美は勇者である
4、乃木若葉は勇者である
5、久遠陽乃は……である?(前回の西暦編)


↓1〜↓3
299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 21:58:59.37 ID:kl7QK9VR0
1
300 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/30(月) 21:59:10.67 ID:/iXAswcOO
1
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 22:03:59.02 ID:4ige1UAno
1
302 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 22:13:51.39 ID:4aFCOiSZo

久遠 天乃(くおん あまの)

中学3年生(学校には通っていない) 髪:ピンク 瞳:橙 髪型:ポニー(ロング)

身長148cm バスト84cm  誕生日6月6日

家族構成(姉、兄、父親、母親、祖父、祖母)

麻婆が好きできのこが嫌い

カラー:黒 武器:素手・刀  性格:自由気まま

過去:先代勇者(ステータス前回のを若干引用します)

現在:園子とお祀り状態

満開:7回(味覚、聴覚@、聴覚A、記憶@、片腕(左)、片足(右)、片足(左))

精霊(大熊猫、天火明命、スサノオ、カワウソ、稲荷、穿山甲、死神、九尾 )



前回の設定を流用だとこちらになります


現在置かれている状況の変更が可能です

また

精霊を
久遠天乃は勇者であるの最新版(銀、若葉、球子、カワウソ、稲荷、死神、九尾、天火明命)へと更新が可能です



1、精霊を更新する
2、現在の状況を変更する
3、両方を変更する
4、変更しない


↓1〜↓3
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/30(月) 22:15:43.25 ID:/iXAswcOO
2
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/30(月) 22:16:33.59 ID:kl7QK9VR0
3
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 22:22:03.25 ID:4ige1UAno
2
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 22:23:50.41 ID:4ige1UAno
っていうか満開の回数変わったら勝手に精霊も変わるんじゃ
そもそも満開してないってなったら精霊いないことになっちゃうし
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 22:29:57.14 ID:PQHjb2I20
そういえばキノコ関連の話題出たこと無いような
308 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 22:34:04.50 ID:4aFCOiSZo

現在の状況を変更します


1、自宅療養
2、保健室の主
3、行方不明(死神による隠密と、九尾によるまやかし)
4、勇者部の設立者で特別クラスの三年生


↓1〜↓3
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 22:34:39.01 ID:4ige1UAno
3
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/30(月) 22:35:54.54 ID:/iXAswcOO
4
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/30(月) 22:43:22.94 ID:kl7QK9VR0
4
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/30(月) 22:47:56.16 ID:kl7QK9VR0
4押して思ったけどこれ風とは顔見知りなのか?
313 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 22:53:29.60 ID:4aFCOiSZo

久遠 天乃(くおん あまの)

中学3年生(学校には通っていない) 髪:ピンク 瞳:橙 髪型:ポニー(ロング)

身長148cm バスト84cm  誕生日6月6日

家族構成(姉、兄、父親、母親、祖父、祖母)

麻婆が好きできのこが嫌い

カラー:黒 武器:素手・刀  性格:自由気まま

過去:先代勇者(ステータス前回のを若干引用します)

現在:勇者部の設立者で特別クラスの三年生

満開:7回(味覚、聴覚@、聴覚A、記憶@、片腕(左)、片足(右)、片足(左))

精霊(大熊猫、天火明命、スサノオ、カワウソ、稲荷、穿山甲、死神、九尾 )



では、こちらでのスタートとなります
勇者部設立者となるので、風とは知り合いの関係になりますので
後ひとつ安価を取ります


1、樹に会ったことがある
2、樹には会わないようにしていた


↓1〜↓3
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/30(月) 22:55:05.45 ID:kl7QK9VR0
2
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/30(月) 23:16:04.53 ID:GUDvFLxMO
もう↑のでいいんじゃない?
316 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 23:25:11.87 ID:4aFCOiSZo

では、それで進めていきます
あとは開始時点での絆値判定になります


友奈+4 樹+1 東郷+2


↓1  コンマ一桁 +5  +個人差 
317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 23:25:34.50 ID:4ige1UAno
はい
318 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 23:28:58.66 ID:4aFCOiSZo

風+7  園子・九尾・死神・稲荷+10


  ↓1コンマ一桁 +10
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/30(月) 23:29:36.35 ID:GUDvFLxMO
ほい
320 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 23:36:37.51 ID:4aFCOiSZo

物語開始前 まとめ

変更・現在の状況
祀られから、勇者部の設立者へ


物語開始前 絆値


  乃木園子との絆 25(中々良い)
  犬吠埼風との絆 22(中々良い)
  犬吠埼樹との絆 16(普通)
  結城友奈との絆 19(普通)
  東郷三森との絆 17(普通)
     九尾との絆 25(中々良い)
      死神との絆 25(中々良い)
      稲狐との絆 25(中々良い)
      神樹との絆 5(低い)
321 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/30(月) 23:39:03.20 ID:4aFCOiSZo

では、この設定で明日からまた初めて行こうかと思います
ありがとうございました


スレに関しては、こちらを落として
また別でスレを立てる予定となります
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/30(月) 23:41:18.51 ID:kl7QK9VR0

二周目のifストーリーみたいになりそうな予感
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/30(月) 23:53:05.25 ID:GUDvFLxMO
おつ
何気に最初から勇者部にいるパターンは初か
楽しみな反面またしても不自由な状態でスタートするのか…
前回は受け身が多かったし今度は自分から接触出来るといいな
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/31(火) 00:19:35.29 ID:P/uZ/ehyO
陽乃編やらないんだな…いくら天乃とはいえ友奈編三連続はダレるんじゃないか?

安価取れなかったから文句って訳じゃないが
何でまたしても友奈編なのか知りたい下三つ全員友奈編だしそれなりの理由あるんだろう?
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/31(火) 11:28:52.71 ID:pqBJ19W00
重たい話にならないといいな。
設定引き継いだ時点で、望み薄だけど。
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/31(火) 12:39:39.44 ID:wdbBdDbfO
前作の設定引き継ぎとなるとたしか初期精霊のうち2体は死神が作ってたから満開回数って厳密には5回分になると思うんだけどどうなんだろ(違ってたらごめん)

すでに話の流れが決まってるようなら無理にとは言わないけどそのまま引き継いで>>1がやりにくいようなら方耳や片足辺りは復活させてもいい気がする
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/31(火) 17:44:50.95 ID:wVo2HUN1O
東郷さん以上の重度の障害がネックだなあ
せっかく久々の学校に通っている設定だし世界観は引き継ぎつつ細かいところをもう少し変えるのも手かもね
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/31(火) 18:00:14.05 ID:crwfDHbO0
若葉ちゃん達はまた精霊からか
くあゆ時代の話dと望み薄だけど>>1の書く歌野ちゃんも見てみたいな
329 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/31(火) 21:55:44.46 ID:f90cRPKyo
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【一輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1464699221/


では、上記のスレからリスタートとなります

満開での代償箇所等、微調整はしていく予定です
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/31(火) 22:06:06.56 ID:eQze76G1O
乙ー
さすがにそのままは厳しいと思ってたから調整してくれるのはありがたい
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2023/07/06(木) 23:52:31.87 ID:XyyD7rB/O
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