【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である【データ11】

Tweet

82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/17(火) 19:11:00.25 ID:locwpdQNo
このスレ、この週だからこその絡みだな
その夢の共演ももう終わりか…
83 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/17(火) 22:00:01.23 ID:2wlBp5bro

では、初めて行きます
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/17(火) 22:04:36.14 ID:ywrF8/QFO
よしきた
85 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/17(火) 22:13:40.81 ID:2wlBp5bro

天乃「園子、球子。バックアップは任せるわ」

園子「りょ〜かーい」

球子「任せタマえ!」

天乃「銀、若葉。園子の守備範囲内でうまく散開して。必ず、一人にはならないように」

若葉「了解した」

銀「で? 天乃はどうするんだ?」

各員に指示を出す天乃を見つめ、銀は問う

ふざけていたのが何かを隠しているとは思っていないし

あそこに無理があったとも思っていない

けれど……聞かなければいけないと思った

天乃「私は全体のカバーに入るわ」

銀「天――」

天乃「言っておくけど、死ぬつもりはないわよ。まだ、樹の声すら……聞けてないしね」

その笑みは

その声は

銀を黙らせるには、十分なほど真実に満ちていた

銀「可愛い声してる。と、思う。園子的癒し効果があるぞ」

天乃「ふふっ、それは期待に胸が膨らむわね」

球子「膨らむなーっ!」

若葉「そろそろ無駄話はやめろっ! 来るぞ!」

若葉がそう叫んだのと同時に、空を無数の矢が覆い隠した
86 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/17(火) 22:33:01.76 ID:2wlBp5bro

園子「……わぁ」

球子「そ、園子?」

園子「久しぶりだねぇ」

あの時は、気づいたときにはもう遅かった

ギリギリで防いで

ボロボロになって

大切なものを奪われた、最初の……一撃

園子「待ちわびたよ〜」

園子はそのトラウマを思い返し

されど震えず、恐れず、にこやかな笑みを浮かべ、手を挙げる

その瞬間、降り注ぐ矢の雨は一閃に巻き込まれ掻き消えた

園子「この時を……ね」

球子「た、タマの出番……なさそうだな」

そう言うのも無理はない

というのも

園子は精霊を21体有しているが、

天乃のように身体機能を完全に補って五体満足にしてくれるような力のある精霊はいない

なら、どうするか。どうなるか

それは必然的に――園子の武装強化へと回される

ゆえに

ニッコリと笑みを浮かべた園子の周囲には

数十もの槍の穂先が浮遊しており、その全てを園子が一括管理している

それはもはや、中距離戦闘要員ではなく

近―遠の隔たりのない

ある種の固定砲台だと、言えるかも知れない
87 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/17(火) 22:47:01.89 ID:2wlBp5bro

園子「あの時の悲劇はもう、繰り返さない」

銀「…………」

園子「大丈夫、だからね? ミノさん。安心して?」

銀「園子こそ、安心してくれ。アタシは二度と。園子を置いていったりなんかしないからな」

園子「……うん」

二人は言葉を交わし、互をその瞳に捉える

けれどそれはほんの数秒間で

銀は背を向けて――駆け出す

銀「今度も守る……守らなくちゃ、いけないッ!」

叫び、

樹海の根を掻き分け、一直線にバーテックスへと向かう

左右で轟く爆音と勇者の叫び

空に舞い上がる黒煙

降り注ぐ矢とそれをかき消す園子の槍

さっきまでの明るい賑やかさとは一転した空気を肌に感じる銀は

ピリっとした嫌な気配に気づき、勢いそのままに身を翻す

刹那

ズドンッ! っと、蠍座の尾先が目の前を叩き潰した
88 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/17(火) 23:00:57.56 ID:2wlBp5bro

銀「ッ!」

衝撃に体が揺れ、足が止まると

背後の木をへし折り、牡羊座が銀の――

若葉「はぁぁッ!」

目の前に叩き落とされ、沈黙する

銀「若葉っ」

若葉「先行しすぎだ。主様の指示を忘れたか?」

銀「いや、一応園子の守備範囲内だと思ったんだけどな……」

若葉「分かってるならいいが、銀。私達は一人じゃない。それを忘れるな」

銀「……わかってる」

刀と斧

武器の異なる二人は共に顔を見合わせ、頷く

封印の施されていない牡羊座、蠍座はまだ健在で

そして、若葉が付けた牡羊座の傷は――

銀「?」

若葉「どういうことだ?」

――傷は、塞がらなかった
89 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/17(火) 23:11:52.59 ID:2wlBp5bro

樹「御霊がっ!」

東郷「………………」

御霊はバーテックスの体内にあるのだから

封印しなくてもそれが目視できるようになることに関しては

疑問はない

しかし問題は、バーテックスが再生していないという点だった

バーテックスの再生阻害の力を持っているのは天乃だけ

つまり、それ以外の勇者は封印を施さなければ行けず

そのまま倒すことは出来ないはずだった

でも、

風「たぁぁぁっ!」

友奈「っ!」

風の一撃、友奈の一撃

東郷の銃弾、夏凜の一撃、樹の一撃

どの攻撃を受けても、

バーテックスは体を再生させることはなくて

このままでも倒すことはできるのだと……勇者達の心に、僅かな安心

針穴ほどの余裕が、生まれた
90 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/17(火) 23:16:58.03 ID:2wlBp5bro

では、此処までとさせて頂きます
あすもできれば通常時間より



球子「見タマえ! ミタマがタマのおかげで出てきたぞ! やはり、あとはタマに任せタマえ。諸君!」

若葉「その言葉、もう少しなんとかならないのか?」

園子「気になるなら、ワカ。を、付ければいいんじゃないかな〜」

若葉「付けるかッ!」
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/17(火) 23:23:02.48 ID:ywrF8/QFO
乙
これはチャンス到来か、それとも不吉の前触れか…さてどうなる
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/17(火) 23:23:52.21 ID:48fvzbMYo
乙
93 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/18(水) 22:07:18.72 ID:emq6BQpdo

では、再開していきます
94 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/18(水) 22:17:39.62 ID:emq6BQpdo

バーテックスの驚異は複数あるが、

その中でも厄介なのが回復力だ

圧倒的な巨体と火力を持っていても、

削り通すことができれば倒すことが出来る

終わりがあるという安心感がある

その安堵を打ち消し、絶望へと叩き落としてきたからだ

それが、今

失われている

ゆえに

友奈「行ける、やれるよっ!」

風「封印しなくていいって言うなら、話は早いッ!」

夏凜「全力でたたきつぶすッ!」

勇者たちの活気に満ちた声が上がる。雄叫びが上がる

流れは、勇者たちの味方をして

少女たちはみな、その勢いに乗って行く
95 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/18(水) 22:29:04.54 ID:emq6BQpdo

そんな友奈達を後方支援する園子は

総毛立たせる悪寒を感じ、身震いする

園子「……嫌な予感がする」

球子「なに、言ってるんだ?」

園子「わからないけど、なんだか……」

なんだか、嫌な予感がするんだ

心の中で繰り返すのと同時に

生唾を飲み込んでいることに気づき、園子と

その隣にいた球子は目を見開いて、顔を見合わせる

球子「回復力はタマ達にとって、最悪のハンデだった」

園子「それを失ったということは、限界が近いということかもしれない」

本当の本当に、総力戦なのかもしれない

けれど、

もしも

そうではないのだとしたら……
96 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/18(水) 22:35:59.86 ID:emq6BQpdo

流れをつかみ、勢いに乗れば乗るほど

園子は不安になっていく

友奈、夏凜、風、樹、

銀、若葉、天乃

みんなが獅子奮迅の動きを見せ、

ことが有利に進んでいる中で、園子は……思う

ならば、バーテックスにとってもっとも驚異なのは何か。と

それは……

園子「天さん……? 天さん?」

球子「ん?」

園子「天さんだ……バーテックスにとって厄介なのは天さんとその力」

回復に対し機能不全を起こさせる最強の力

もし、それに対抗するのを諦めたとしたら

そんなものは、あるだけ無駄だと考え、回復力を自ら捨てたのだとしたら……

園子「それがもしも……捨て駒として利用されてすらいるのだとしたら」

そこまで考え、

園子はバーテックスの狙いに気づき、声を張り上げる

園子「油断しないで―――っ!」

けれど、それは――遅すぎた
97 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/18(水) 22:47:03.52 ID:emq6BQpdo

友奈「たぁぁっ!」

力強く握った拳で、牡牛座の頭を穿つ

砕け、飛び散る欠片

その奇怪な美しさの雨の外

迫る蠍座の尾に気づき、友奈は打ち返すために身構える

今まではその回復力ゆえに

物理攻撃に関しては回避以外の余地がなかった

防御してもダメージが通るし

打ち壊しても回復されて意味がなくなるからだ

でも、その部位欠損によって力を削ぐことができるのなら

真っ向から打ち合うことにも意味はあると、考えた

だから友奈は

友奈「一つでも、多く!」

蠍座の尾を打ち返し

――カッ!

友奈「えっ?」

ズドンッ! という爆音とともに、吹き飛んだ
98 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/18(水) 22:59:48.39 ID:emq6BQpdo

若葉「なっ」

流れを叩き割る、炸裂音

天高く舞い上がった砂塵の中から飛び出す

桃色の矮躯

勢いに乗りつつあった勇者のそれを止めるには十分で

心にできた隙間

余裕、その小さな隙をこじ開けるには……十分だった

風「友――」

樹「お姉ちゃんよそ見しちゃダメッ!」

風「!」

ぴたりと足の止まった風の足元の地面がひび割れ、うお座が飛び出し

風「うわぁぁっ!」

ぐるりと回転した天秤座の一撃が風を打ち飛ばす

若葉「くっ」

一人一人

東郷「優位性を犠牲にしての賭けなん――っ!?」

ズドォォォンッ

一つ一つ

銀「っ!」

削り取っていく

殺せなくても

完全には倒せなくても

最強最悪の厄介者との戦いに、邪魔が入らないようにと排除する
99 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/18(水) 23:09:02.30 ID:emq6BQpdo

天乃「人気者は辛いわね」

九尾「のんきなことを言うとる場合ではないぞ」

天乃「……うん」

もちろん、天乃の周囲から邪魔者を一掃するだけが目的ではない

天乃の目の先、バーテックスの進行方向から

瞬きする瞬間にも、樹海が侵食されていく

一つ、久遠天乃の排除

二つ、神樹以前。樹海の侵食による結界解除

その二つのために、バーテックスは自らを囮として

犠牲として、突き進んできていたのだ

よく見ると、

バーテックスの巨躯に隠れた星屑とは別種の丸い球体が

樹海を……食べ進んできていた

天乃「稲荷」

稲狐「……………」

天乃「ご主人様に、奉納を」

だから天乃は、稲荷の使いではなく

稲荷そのものを、呼び起こす
100 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/18(水) 23:18:49.76 ID:emq6BQpdo

神樹や樹海

この結界を守ることに特化した、神

二度目に現れたその姿は

九尾と同じく衣に身を包んだ女性らしい容姿で

狐のお面をかぶっていた

天乃「貴女なら、あの程度の侵食に打ち勝てるでしょう?」

稲神「…………」

稲荷は何も言わず、ただ頷くと

じっと天乃を見つめて首を振る

九尾や死神のように言葉を持つことができなかった神の身を案じている空気に

天乃は苦笑を返して、息をつく

天乃「今ここでやらなくて。誰がこの世界を守るのよ」

稲神「……………」

天乃「私たちしか守れないのなら。私達が守るしかない。穢れは全て私が貰ってあげるから。全力で――舞いなさい」

主の自信に満ち満ちた言葉

拒否も拒絶もできるわけはなく

稲神はこくりと頷いて……世界のために舞い始めた
101 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/18(水) 23:21:18.42 ID:emq6BQpdo

では、此処までとさせて頂きます
頑張れば戦闘は明日で終わるかもしれません

だいぶ省略もしているので……
おそらくですが、終わりまで安価はないかもしれません
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/18(水) 23:23:10.41 ID:Z+HTOl8+o
乙
まあこの段階にきて安価もらってもフレーバー的なやつ以外悩むしありがたい
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/18(水) 23:26:20.67 ID:336XY7AiO
乙
久遠さん、ホントどうか死なないでくれよ…
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/18(水) 23:54:43.90 ID:is6fWh+6o
おつ
天乃大丈夫だろうか…
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/19(木) 18:07:23.75 ID:Zm023VYm0
乙
とあるバイクアニメで「負けてたまるかぁー!!」のセリフ聞いたときこのスレの勇者の現在の状況思い出した
皆頑張れ!
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/19(木) 18:41:26.57 ID:Fp0cZ/MYo
久遠さんが生きて帰るって言ってんだ!
俺たちが信じなくて誰が信じるんだ!

とかいうヒロイン的達位置
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/19(木) 18:42:20.67 ID:Fp0cZ/MYo
たつ位置ぃ
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/19(木) 20:48:38.96 ID:A9Cr3vYUo
勢いで笑った
109 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/19(木) 22:17:49.67 ID:w3sm25Fvo

では、初めて行きます
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/19(木) 22:20:52.26 ID:IsZ36DHzO
あいあいさ
111 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/19(木) 22:28:35.40 ID:w3sm25Fvo

稲荷神が舞い始めてすぐ

樹海全体がパッっと明るさを増して、光り輝くと

侵食された部分

食い抜かれた部分

その全てが包み込まれ、修復されていき

その分だけ、天乃の体は汚染されていく

天乃「んっ」

急激かつ、大量に流れ込んでくる不快なものに

天乃は思わず呻いて、足を止める

体の底からじわっと広がっていく不快感

今までは一瞬だった

気づかないうちに穢れていた

それが、今は

じわじわと自分の体が穢れていっているのを感じさせられている

天乃はその初めての感覚に、体の冷たさを感じた
112 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/19(木) 22:51:24.91 ID:w3sm25Fvo

天乃「ねぇ、九尾」

九尾「なんじゃ」

天乃「……死ぬのって、こういう感覚なのかな」

九尾「………………」

立ち尽くし

自分の震える手を見つめる主を見つめ、九尾は小さく息をつく

死ねない自分には、死ぬという感覚はわからない

どれだけの命を殺めようとも

死ぬという感覚だけは得ることができないからだ

しかし、今は

九尾「集中すべきことが、あるじゃろう。主様」

天乃「……そうね」

食い破ることに特化したバーテックスによって食い破られた結界の穴から

星屑が大挙して押し寄せてきている

通常のバーテックスに加え、星屑

その大群相手にはもはや、多勢に無勢

質と量で線よくて気に大幅に劣ることとなった勇者に、余裕はなかった
113 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/19(木) 22:54:31.17 ID:w3sm25Fvo
>>112ミス


天乃「ねぇ、九尾」

九尾「なんじゃ」

天乃「……死ぬのって、こういう感覚なのかな」

体の芯から冷めていく感覚

力がスーっと抜け落ちて

膝から崩れ落ちてしまいそうな、感覚

九尾「………………」

立ち尽くし

自分の震える手を見つめる主を見つめ、九尾は小さく息をつく

死ねない自分には、死ぬという感覚はわからない

どれだけの命を殺めようとも

死ぬという感覚だけは得ることができないからだ

しかし、今は

九尾「集中すべきことが、あるじゃろう。主様」

天乃「……そうね」

食い破ることに特化したバーテックスによって食い破られた結界の穴から

星屑が大挙して押し寄せてきている

通常のバーテックスに加え、星屑

その大群相手にはもはや、多勢に無勢

質と量で戦力的に大幅に劣ることとなった勇者に、余裕はなかった
114 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/19(木) 23:05:24.97 ID:w3sm25Fvo

銀「なんなんだ一体!」

波のように押し寄せる星屑を切り払いながら、

銀はいらだち混じりに声を荒らげた

バーテックスの中で最速を誇る双子座は

力がない分、その速度のみが武器といっても良くて

それを封じることができれば

ただの動く案山子でしかないにも関わらず

銀「くっ、邪魔だッ!」

星屑や他のバーテックスと移動速度を合わせ

単独での先行を絶対にしないように調節していた

そのせいで、双子座のバーテックスを狙い撃つことができず、

切り裂こうとすれば星屑に阻まれ

動きが止まった瞬間、他のバーテックスによる重い一撃が体を打つ

銀「はぁっ……はぁっ……っ」

出ることのない血と汗を拭くように額を拭い、

銀は迫り来る軍勢を睨む

銀「このままじゃまずい……っ」
115 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/19(木) 23:10:15.53 ID:w3sm25Fvo

頑張りに頑張っても

通常の状態では手数に限界がある

さらに、

星屑を一撃で屠ることができるとしても

バーテックスはそんなにやわではない

バーテックスの相手をする分だけ星屑は横から抜けていき、

星屑を相手にした分だけ

バーテックスは傷を負うことなく、万全の状態

そして、容易に攻撃を仕掛けることができる

銀「園子!」

叫んでも、返事はない

だからと言って振り返る余裕もない

振り返った瞬間

致命的な一撃を貰いでもしたら

一時的にでも離脱しなければならなくなる

そうなるわけにはいかないからだ

銀「周りの状況がどうなってんのか……星屑が邪魔すぎるッ!」
116 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/19(木) 23:17:13.09 ID:w3sm25Fvo

知りたくても知ることができない周りの状況

そして、

時々轟く爆発音や、重く揺れる樹海の木々が

銀の不安を煽っていく

銀「少なくとも、すぐ近くに若葉がいるのはわかるけど……」

合流は出来そうにない。と

強く唇を噛み、

銀は力強くバックステップを踏み

着地の瞬間、地を蹴り弾丸のような速度で水瓶座のバーテックスを突き飛ばし――一回転

水瓶座の体を切り裂くと

銀「どけぇッ!」

そのまま投擲し、周囲の星屑を刻む

が

片手の武器が消えた隙間を縫って

銀「っぐ――」

双子座が銀の体に突っ込み、

銀「っあ゛!」

樹海の木へとぶつかって、押しつぶした
117 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/19(木) 23:21:57.98 ID:w3sm25Fvo
では、此処までとさせて頂きます
普通に終わりません、失礼しました
あすもできれば通常時間から



↓現在の戦況(マップ)↓
http://i.imgur.com/DsQRotD.png


118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/19(木) 23:27:53.28 ID:A9Cr3vYUo
乙
ヒエッ〜wwwwwwwwwwww
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/20(金) 04:36:44.45 ID:UzcJMhYrO
おつ
これは数がすさまじい…
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/20(金) 11:10:54.54 ID:2A9P/U9/0
ゲームだったら攻略wiki見るレベル
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/20(金) 13:53:50.60 ID:hxWub2Nso
イデオンガンかPDMもってこい!
122 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 22:14:34.37 ID:/gqzZLSRo

では、初めて行きます
123 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 22:16:59.64 ID:/gqzZLSRo

園子「数が多すぎて捌ききれない……」

この苦しい戦況は

園子にでさえ、余裕を与えることはなかった

いつもの間の抜けた声ではなく

不安のある声で、園子は言う

園子「天さんが大きいの二つに射手座を相手してくれてなかったら……全滅。してるかも」

広範囲攻撃を可能としている射手座

他のバーテックスを凌ぐ巨体と力を持つ獅子座

その獅子座ですらも凌駕する獅子座の進化系

それに加えて無数の星屑を相手にしてくれている天乃の存在

それが、

バーテックスにとっても、園子達にとっても一番大きなものだった

124 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 22:25:09.61 ID:/gqzZLSRo

久遠天乃を討ち取ることができれば

バーテックス側の勝利は確定したと言っても過言ではないし

久遠天乃さえ討ち取られることがなければ

樹海やこの世界は少なくとも守り通してもらえるからだ

園子「……やっぱり、天さんは要だね〜」

園子も決して弱くない

それは、

勇者チームの最終防衛ラインとしての役目を

ギリギリとは言えしっかりと守れていることからも伺い知ることができる

星屑の数には遥かに劣る遠隔式の槍

それでもなお、

各星屑の進行速度などから防衛ライン最接近を推測したりすることで

水際での完全撃退を行うそれはそうそう真似できることではない
125 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 22:30:34.33 ID:/gqzZLSRo

園子「でも、いずれ押し切られる……」

いくら園子でも

樹海全域をカバーできるほどの力は持ち合わせていない

だからこそ、

天乃のチーム、勇者部チームで

右と左に分かれている

もちろん、信頼していないわけではないが

それでも、厳しいと、園子は思い、首を振る

園子「私が気落ちしてたら――ダメだよねっ!」

穂先一つで星屑数匹を刺し貫き、消し去って

園子はなお迫る大群を眺める

園子「時間は稼ぐよ〜」

満開をしていいと言われるまで

その時間まで、園子は絶対に保ってみせると、足に力を込め

槍を振るった
126 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 22:44:09.71 ID:/gqzZLSRo

樹「久遠さん……」

星屑や

樹海の木々のせいで、天乃の姿は見えない

それでも

その方角に天乃を感じ、樹が目を向けると

樹海に阻まれようと

星屑に阻まれようと

絶対に視界に入ってくる規格外の巨体

その体の一部が切り崩されていくのが、見えた

樹「久遠さんっ」

見えなくても、聞こえなくても

久遠さんの一つ一つの行動が、勇気をくれる。力をくれる

樹「あんなに大きいバーテックス二体を相手にして。それでも、負けずに立ちふさがって……」

恋人がそんな頑張っているのに

自分は無数の雑兵ごときで手間取っていていいのかと、考え

樹「良いわけないッ!」

樹は叫ぶ
127 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 22:55:44.17 ID:/gqzZLSRo

樹「っ!」

右手から伸ばした光り輝く鶴で周囲の星屑を一掃し、

何層にも組み上げた光の罠を設置して、まるごと握りつぶす

樹「!」

それでも、油断はできない

倒した瞬間

どこからともなく星屑が湧き出てきたのだ

締め潰す?

防御?

それじゃ遅いっ!

瞬時に判断した樹が慌てて身を翻すと、星屑は通過して、

ドゴンッっと、

乙女座の爆弾が直撃して弾け飛ぶ

樹「っ……」

もしも回避できなかったら

そう思うと、樹は恐怖に手が震えて……唇を噛み締めた
128 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 23:07:31.25 ID:/gqzZLSRo

九尾「主様」

天乃「なによっ!」

怒鳴るように言い、跳躍した瞬間

さっきまでいた足場が弾けとんだ天乃は

次の足場に着地した瞬間、蹴り出して

目の前の星屑を切り伏せ、

隣の星屑を蹴り飛ばして後ろに飛び

もう一度勢いよく駆け抜け、獅子座のバーテックスの体の一部を切り崩す

天乃「はぁっはぁ……もうっ、用事があるなら手短にね」

いくら天乃であろうと、勇者であろうと

体力の限界というものがある」

たとえかすっただけでも、重傷足り得る天乃は

常に全力でいなければならず

相手のレベルも高いがために、もうすでに息が上がり始めていた

そんな中、九尾は言う

九尾「そろそろ満開をする。準備せい、我が愛しの主様」
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/20(金) 23:08:50.62 ID:MnWlUpRvo
ついに九尾の策が
っていうかこれ戦力さきつ過ぎてリスクの有無以前にこの策とってなきゃ詰んでたな
130 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 23:10:01.04 ID:/gqzZLSRo

では、ここまでとさせて頂きます
あすもできれば通常時間から


満開、無双……そして……
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/20(金) 23:15:13.55 ID:zurs3h1KO
乙
樹ちゃん以外はこの満開の事は知らないんだよな…
状況が状況だし仕方ないとはいえみんながトラウマにならないといいけど…
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/20(金) 23:15:21.41 ID:MnWlUpRvo
乙
とりあえず反撃だ!
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/21(土) 00:48:15.42 ID:zQffQBq40
乙
久遠さん頑張って!みんなも!
にしてもここで溜め込んだ穢れも子供に受け継がれるのかな
だとしたら相当凄い存在になりそう
134 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/21(土) 22:22:48.38 ID:+fhtI+ZDo

では、初めて行きます
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/21(土) 22:26:50.44 ID:ImIEFLCTO
来てた
136 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/21(土) 22:33:30.44 ID:+fhtI+ZDo

天乃「……ッ」

九尾の言葉を聞き取ったのと同時に

周囲が強く輝きを放ち、天高くに大きな花が咲き誇る

結城友奈、東郷美森、犬吠埼風、犬吠埼樹、三好夏凜、乃木園子

現存している勇者達の、満開

そして

九尾「乃木若葉、土居球子、郡千景、伊予島杏、高嶋友奈、三ノ輪銀、久遠陽乃、白鳥歌野の分じゃ」

九尾は自分の胸元に手を充てがうと

八つの光を取り出して、空に咲く花へと登らせていく

天乃「貴女、まさか」

九尾「……否定するつもりはない。が、それを悪行であると認めるつもりはない」

九尾が持つ八つ

それに通ずるものを天乃は知っていて

だからこその言葉に、九尾はそれだけしか言わなかった

いや、それだけしか言えなかった

謝る気はなかった

悪いと想うつもりもなかった

全ては

九尾「我が、愛しき主の世界のために」

ただ、それだけだ
137 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/21(土) 22:44:45.02 ID:+fhtI+ZDo

ここまでに、いくつのモノを犠牲にしてきただろう

どれだけのものが犠牲になってしまったのだろう

誰も知らないだけで

誰も気づかないだけで

みんなが見て見ぬふりをしているだけで

足元が屍の山であることに、変わりない

天乃「……………」

何かを守るためには、何かを犠牲にしなければいけない

それは、絶対に変えることのできない理だ

理不尽な等価交換だ

天乃「罪は、私も背負うわ」

九尾「主さ――」

天乃「となると。犠牲にしたくせに。死ぬなんて罪深いことは出来なくなっちゃうわね」

天乃はくすくすと、笑う

多勢に無勢の状況で

圧倒的に不利な状況で

久遠天乃は、笑って――言う

天乃「見せてあげるわ。私の力を」

その力は全てを飲み込み、

全てに寄生して、全てを吸い上げていく
138 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/21(土) 22:52:59.57 ID:+fhtI+ZDo

天乃「私の満開は、とても毒々しい」

色の抜けた樹海

落下しながら砂となって消えていく星屑

身動きができなくなって倒れ伏すバーテックス

それらを眺める天乃は、

右手に握る刀を構えて、息をつく

天乃「…………………」

神樹様からではなく、

自分から繋いだせいか

次から次へと、自分の中の何かが吸い上げられていくのを感じる

気を抜いたら倒れるかも知れない

気づいたら、白い天井を見上げているかもしれない

気づいたら、お婆ちゃんになっているかもしれない

そんなことを考えながら、

この子は無事に生まれてきてくれるのかな。と

まだ妊娠すら確定してないお腹を撫でて、苦笑する
139 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/21(土) 23:08:58.80 ID:+fhtI+ZDo

天乃「ねぇ、九尾」

九尾「?」

天乃「私。ちゃんと帰って来れるのかしら」

九尾「………………」

目の前に広がる色の失われた世界

樹海も、自分の手も、刀も、何もかもが、色がない

そんな世界を見つめる天乃は

感じる不安の一片を、急日に訊ねる

けれど、九尾は答えてくれなくて

だから、もう一度言う

天乃「わた           」

九尾「確証はない」

耳が聞こえないから、きっと気づいてはいない

でも、天乃は耳だけでなく、声までもなくしていて

けれど、きっと同じことが言いたかったのだろう。と

天乃の声無き声に、

九尾は非情にもそう答えて首を振る

九尾「主様が抜かねば、誰も抜かぬまま。ただ抜かれていく」

天乃「             」

九尾「だからこそ。抜かねばならない。その手で」
140 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/21(土) 23:25:12.89 ID:+fhtI+ZDo

九尾の言葉は、

私が言ったはずの疑問への答えではなくて

声も出なくなっちゃったのかな。と、思って笑う

樹に迷惑をかけると思う

みんなに心配をさせると思う

でも、だけど

今いるみんなを守るために

失ったモノを奪われたモノを

取り返すために必要なことなのなら……と

天乃は軽く頷いて、刀を構えた

これは正真正銘の神の一撃

様々なものを犠牲にした上での一撃

現行の、とてつもなく大きな戦いへのピリオドを打つ一刀

天乃「         」

頑張ってくるね

頑張って、帰ってくるね

誰にも届かず聞こえないことを知りながら

天乃はそう思い、そう口にし

天乃は刀を――振るった
141 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/21(土) 23:26:48.13 ID:+fhtI+ZDo

では、此処までとさせて頂きます
あとは、樹視点でのエピローグになるかと思います



大赦職員八人の魂=死んだ勇者の代用
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/21(土) 23:27:18.73 ID:PvaXDDoWo
自己犠牲の権化だったクオンサンがこのメンタルなの見ると本当に今までの交流が良かったなあ
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/21(土) 23:27:46.18 ID:PvaXDDoWo
あ、乙です
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/21(土) 23:34:14.20 ID:ImIEFLCTO
乙
みんなの為にも絶対に戻ってきてくれよ、久遠さん
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/22(日) 00:13:51.09 ID:m5DK1w4BO
乙
8人の職員はそういうことだったのか…ってか歌野さんってニコ生観てたのか

歌野 天乃

うたの あまの

似てるなぁ
146 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 20:15:17.41 ID:7GetCZbGo

遅くなりましたが、進めていきます
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/22(日) 20:22:34.56 ID:3dksHwOiO
おお、待ってたぜ
148 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 20:30:30.53 ID:7GetCZbGo

樹「ぁ……」

捌ききれないほど溢れ出てくる星屑

その中に紛れて、少しずつ進行してくるバーテックスの軍勢

その全てが

何かに気づいて一点に群がっていく

平原に咲き誇る、たった一輪の花めがけてミツバチが集うように

全ては、そこに収束していく

そして、

空に咲き誇った光の花がその中央に、降りていく

樹「久遠さん……っ」

負けるとは、思っていなかった

世界が壊されちゃうとは、思ってなかった

不安はなかった

信じるとか、信じないとかじゃなくて

人が好きで、世界が好き

それなのに、世界に嫌われてきた人が

それでもなお、世界を守ると、みんなを守ると言ったから

その時の笑顔がこの圧倒的に不利な戦況でさえも

希望として、頭の中に、心の中にずっとあったから

私は、この戦いが絶対に勝利できるものであると、

信じるんじゃなく、安心していた
149 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 20:42:57.26 ID:7GetCZbGo

それでも、

怖くないかと聞かれたら

怖くないです。と

大丈夫かと聞かれたら

大丈夫です。と

不安じゃないかと聞かれたら

不安なんかじゃないですよ。と

本当に、そう言えるだろうか

本当に、そう思ってるだろうか

樹「ぁ……く……」

目の前で全てが終わっていく

世界に虐げられて

多くの人に蔑まれ、強要され、翻弄され

それでも、人を愛していて、世界を愛している

そのたった一人が全ての責任を背負って、長い戦いに終止符を打つ
150 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 20:55:34.60 ID:7GetCZbGo

それを、私は認めた。許した

死んでしまうかもしれないその行いを

大好きな人がしようとしているのを知りながら、

樹「だから……」

つーっと頬を何かが伝っていく

認めたはずなのに

許したはずなのに

それでいいと、覚悟は決めてあったはずなのに

帰ってくるといったから

それを信じて……信……

樹「っ」

どれだけ信じていても

樹「ゃ……」

どれだけ強く、覚悟を決めても

樹「……行かないで」

私は、私の心は

不安で、怖くて、悲しくて、辛くて、苦しくて、悲しくて

樹「行かないでくださいッ!」

心から強く、拒絶する

でも

樹「ずっと、ずっと一緒に、そばにい――」

その声は、その思いは届くことはなくて

世界にとっての希望の光が世界を――切り拓いてしまった
151 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 21:05:25.10 ID:7GetCZbGo

樹「ぁ……久遠さんっ!」

驚異が跡形もなく消え去って

世界を祝福するかのように、光の雨が降り注ぐ中

一心不乱に、駆け出す

樹「っ……」

途中で変身が解けても

体力が切れかかっても

久遠さんがいるであろう場所に、駆けていく

樹「久遠さん……久遠さんっ!」

樹海の根をよじ登って

滑り降りて

制服を汚し、足に怪我しながらも、ただ、走って

樹「はぁっ……はっ……けほっ……」

天乃「…………」

樹「見つけ、ましたっ」

久遠さんの元に、たどり着いた
152 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 21:23:29.70 ID:7GetCZbGo

樹「一人で、こんなところに行くから……時間、かかっちゃいました」

元々、耳が聞こえていなかった久遠さんに

そんなことを言っても無駄だと分かっていても

言葉を投げかける

一瞬で帰ってきてくれてないかな。なんて

淡い期待をして

でも

樹「………………」

わかってるんです

わかってるんですよ。久遠さん

そんな簡単な話じゃないって

直ぐに終わる話なわけがないって

でも

樹「っ」

抱きしめても

体を揺さぶっても

なんの反応も示してくれないことが

凄く……悲しかった
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/22(日) 21:29:03.26 ID:uQOmjjfFo
あばばばばば
154 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 21:54:54.79 ID:7GetCZbGo

風「樹っ、天乃っ!」

樹「お姉ちゃん……」

戦いが終わって、時間が経ったからか

樹海化が解けて学校の屋上に戻されると

お姉ちゃんがすぐに声をかけてきて

でも、私と私が抱き抱える久遠さんを見て

すぐに、喜んでいた表情が曇った

風「樹……?」

夏凜「なによ、どうし……」

友奈「園ちゃんも今は動けなくなっちゃったし。同じ状態になっちゃったの?」

東郷「ただの力の使いすぎ。なら、目を覚ますと思うけれど……」

園子さんを背負った友奈さんと

それを見守る東郷先輩は不安そうに言って

目をつむったままの久遠さんを見つめる

夏凜「と、とにかく。医療班を呼ばないと話にならないわ」

風「そ、そうね」
155 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 22:17:43.51 ID:7GetCZbGo

お姉ちゃんが呼んでくれた医療班の人たちは

久遠さんと園子さんを丁寧にストレッチャーに乗せると

私たちも検査が必要だからと、乗るように指示してきた

樹「私は、久遠さんの方に乗りたいです」

「しかし」

樹「一緒が、いいんです」

医療班の人たちが顔を見合わせて、困った顔をする

きっと、久遠さんと園子さん

特に、久遠さんは私たちとは別の病院に連れて行くつもりだったんだと思う

でも、私がもう一度願い出ると

「分かりました。仕方がありませんね」

と、渋々許可を出してくれた

断られたら車の屋根上にしがみつくつもりだった。とは

言わないでおいた

風「樹、天乃のこと。悪いけどよろしくね」

夏凜「何言ってんのよ。樹が言うならともかく。あんたがいうことじゃないでしょ」

風「それはそうかもしれないけどさ」

樹「大丈夫だよ。お姉ちゃん」

そう言って、笑顔を見せる

久遠さんが戻ってこない可能性を知っているという不安を

お姉ちゃん達にまで――感じさせないために
156 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 22:35:50.32 ID:7GetCZbGo

それから、一ヶ月が経過した10月

夏服も完全に終わって、冬服に衣替えをして

お姉ちゃん達三年生が受験だと、大慌てになり始める時期

樹「……久遠さん、受験はしないんですか?」

勇者部に仮入部している三年生のはずの久遠さんは

余裕綽々といった様子で、だんまりのままだった

樹「久遠さんなら一夜漬けでなんとか出来そうですけどね」

冗談ぽく、笑ってみせると

誰も、笑わず

私がしゃべるのを止めると、部屋は静まり返って

外の音が鮮明に聴こえてくる

樹「……っ」

もう一ヶ月

まだ一ヶ月

頭の中は、【まだですか?】と、催促していて

辛い気持ちが、手のひらに爪痕を残して痛みが走る
157 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 22:48:34.61 ID:7GetCZbGo

言いたいことは山ほどある

ぶつけたい気持ちがたくさんある

その全てを押し殺して、私は久遠さんにあるものを見せた

樹「見てください。検査結果が出たんですよ」

久遠さんは何も言わない

何も見ない

それでも、続ける

樹「久遠さん、ちゃんと妊娠。できてるんですよっ」

それでも……久遠さんは何も反応してくれない

樹「流石です。春信さんは。本当に、凄い人です」

少し前から、久遠さんの体温が

以前入院していた時の通常の体温よりも高い状態が続いていることを気にした看護師さんに

春信さんがもしかしたら。と、言ったことで検査をしてなければ。多分。まだ分かってなかった

その状態が続いてると妊娠してる可能性が高いなんて

私でも知らなかったのに

樹「凄く良く、勉強してて……負けられないなって思いました」
158 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 22:55:01.44 ID:7GetCZbGo

今はその話じゃないですよね。と

笑って話を区切らせて、久遠さんの手を握る

樹「もう一ヶ月……妊娠周期で言うと、六週目だそうで。胎嚢も確認できたそうです」

当たり前なことだけど

それは春信さんの子供だから

私にとってものすごく嬉しいことかと聞かれたら複雑ではあるけど

久遠さんが生きてる証だと考えれば

何よりの吉報だった

樹「このままだと、目を覚ましたら大きいお腹。ですよ?」

その驚くさまを見て

申し訳ないと思いつつ、苦笑する

きっと、とても可愛い驚き方、慌て方をするに違いない

赤ちゃんが危ないから、ちゃんと冷静にさせなきゃいけないよね。と

責任を感じて、息をつく
159 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 23:06:13.58 ID:7GetCZbGo

樹「久遠さん、文化祭がもう少ししたらあるんです」

三年生に関しては

受験もあるということで自由参加になってるけど

少なくともお姉ちゃんは参加する気マンマン

といっても、

一応受験の合間で、息抜きは必要で

中学生最後の文化祭ということもあって

三年生全員が、やる気に満ち溢れてたりするんだけど……

樹「……私達は劇をやります。しかも、私が主役のお姫様をやるんです」

そう言って

お姉ちゃんと園子さんが協力して作り上げた台本を

久遠さんに見せる

樹「勇者様を待つお姫様役です。本当は、友奈さんが主役の勇者のお話の予定だったんですけど」

お姉ちゃん達が私を気遣ってくれたのかもしれない

その友奈さんが主役のお話の別視点を、新しく書き出してくれた物語

樹「……私も、ちゃんと待ってます。ずっと。待ってます」

久遠さんの頬をそっと撫でて、キスをしようとして……離れて

樹「面会時間も終わりだと思うので、また明日来ます。久遠さん、また、明日です」

そう言い残して、何度も振り返りながら病室を後にした
160 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 23:07:44.29 ID:7GetCZbGo

では、此処までとさせて頂きます
あすもできれば、通常時間からとなります


月単位で飛ばしたりなんだりでやっていく予定ですので
うまくいけば今週中には終わるかと思います
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/22(日) 23:11:43.26 ID:qVorNigk0
乙
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/22(日) 23:13:49.88 ID:vYfI2xTMo
乙
そういや九尾はどうしたんだろ
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/22(日) 23:16:44.85 ID:3dksHwOiO
乙
もしかして久遠さんの子供の誕生までいくのだろうか

それにしても二周目もついに本当に終わりが近いんだな…
最後まで見届けねば
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/23(月) 09:38:46.76 ID:EX6ZW/j7o
春信が勉強してる分>>1も勉強してるってことなんだよな
セックスだったり妊娠だったり神様関連だったり
俺なんか妊娠周期とか一ヶ月でなんで6週なんだよって感じだし


次週あるんだろか
今さら久遠さん以外のキャラって辛いとこあるけど…
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/23(月) 13:40:32.67 ID:XpK2fUa9o
いきなり次っていうか結構長いことやったしキリもいいから

・天乃と東郷さんのわすゆ時代
・春信さんの子育て奮闘記
・陽乃ののわゆ時代
・青年バット続き
・九尾周りの設定の話

みたいな細かい短編集が見たい
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/23(月) 14:41:00.05 ID:EX6ZW/j7o
久遠さんと東郷さんは鷲尾編
陽乃さんのわゆ時代と九尾周りはのわゆ編をやるしかないんじゃない?

というかあるなら久遠さんが良いってだけで
次週はあるか解らないよ
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/23(月) 17:01:38.52 ID:OFpx7bho0
ちょっと特殊な設定のストーリーも短編でいいから読んでみたい
テレビ本編その後の世界に飛ばされる久遠さん...みたいな
共に過ごした記憶は久遠さんにしか無いけど、戦いの無い世界でどう付き合っていくのか
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/23(月) 17:40:45.60 ID:ntJbpVmyO
久遠さんオリキャラながらホント愛されてるなあ

とはいえまずは完結が最優先、後できるか否かは>>1の予定次第だぞ
169 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 22:03:11.76 ID:QkCN6ve0o

では初めて行きます
170 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 22:12:45.93 ID:QkCN6ve0o

そのお見舞いの日から、一週間くらい経った日のことだった

いつも通り久遠さんの所に行くと

珍しく、春信さんとお医者さんがいて

何か、真剣な話をしていて

春信「犬吠埼さんか……丁度いい所に。とは、言えないかもしれないが……」

樹「?」

春信さんは私に気がつくと、

少し複雑な表情でそう言って

お医者さんに一礼して、席を外すように言うと

「では、また後ほど」

樹「ありがとうございます」

「ううん。貴女も。いつもご苦労様」

産婦人科のお医者さんは笑顔で私に挨拶して

そのまま病室を出ていく
171 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 22:20:59.85 ID:QkCN6ve0o

樹「何か、あったんですか?」

春信「……そうだな」

樹「?」

春信「……………」

春信さんはとても言いにくそうで

その表情は、私を不安にさせるような

ちょっと、怖い表情で

私が一歩近づくと、春信さんは息をついて首を振って

春信「黙っていても仕方がないな。犬吠埼さん。驚かないでくれ。とは言わないが。落ち着いて聞いてくれ」

樹「え?」

春信「彼女をさらに詳しく検査した結果、心音が二つ確認できた」

樹「ふた……つ?」

春信「そうだ。彼女の場合一卵性双生児を……解りやすく言えば、現段階で。彼女は双子を身篭っている」

凄く、衝撃的なことを言った
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/23(月) 22:26:35.02 ID:61wD9OEMO
なん…だと…?
173 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 22:28:00.83 ID:QkCN6ve0o

樹「双子って、双子。ですか?」

春信「そうだ。先ほどの医師によればそれは確定事項だということだ」

樹「……………」

春信さんは

この先何か不幸なことが起きない限り

久遠さんは双子を産むことになる。と言う

信じがたいことだったけれど

春信さんがそんなウソをつかないことと

お医者さんの診断書を見せられては、信じるしかなくて

春信「……双子の場合、一人よりも母体への負担は大きくなる」

樹「それくらいは、知ってます」

春信「だが、彼女は。久遠さんはきっと。それでも、と、言うだろう」

樹「久遠さんも、子供も。無事に出産を終えられる可能性はどのくらいなんですか?」
174 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 22:42:23.97 ID:QkCN6ve0o

春信さんの言葉を無視するような形で、

当たり前の疑問を尋ねると、

春信さんは少し暗い表情で首を振ると

久遠さんを一目見て、私へと向き直った

春信「健常な母体であっても……ハイリスクな出産だ」

樹「はい」

春信「彼女の場合、絶対安静という条件はクリアできるだろうが、この状態だ」

樹「春信さ――」

春信「っ」

春信さんの握りしめた拳の音が聞こえて

私の、答えを催促する声は押し込まれて消える

その音が、春信さんの辛さを、苦しさを

そんな事を考えるのなんて嫌なんだという気持ちを伝えてきた

春信「母体のことを考えなければ、帝王切開を施したりすることで。100%ではないが、子供を無事に摘出できる可能性は高い」

樹「久遠さんは……」

春信「今の彼女に麻酔を使えば、二度と目を覚まさなくなる可能性は格段に上がるだろう」

樹「………………」

春信「残念だが、彼女が目を覚まさないまま出産時期に入った場合。久遠さんは諦めるしかなくなる」
175 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 22:56:38.26 ID:QkCN6ve0o

樹「あ……諦める?」

諦めるって、なんですか?

諦めるって、どういうことですか?

頭の中、心の中

湧き上がる強い感情が、口元から響いたブチッっという音で一気に引いて

ポタッと……病院の白い床に、赤いシミが一つ。ついた

春信「……私は。君と同じ気持ちだと並べることはできないと思っている。だが、私も彼女を諦めたくはない」

樹「………………」

春信「まだまだ、出産の時期は遠い。それまでに彼女が戻ってくる事を願おう」

春信さんはそういうと

手持ちのカバンの中から、白い箱を取り出して

私の手に、持たせた

春信「妊婦用のケアクリームだ。彼女が自分で行えない代わりに、君がやってあげると良い」

私には、荷が重い。と

春信さんは少しだけ笑って私の方を叩いた

春信「君だけで難しいのなら、いくらでも。私たちが手を貸そう」

樹「…………」

春信「だから、君はできる限りのことしてあげてくれ。それができるのは私ではなく、君なのだから」

そう言い残して、春信さんは病室を去って

私と、久遠さんだけが取り残された
176 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 23:14:38.35 ID:QkCN6ve0o

樹「……久遠さん、双子だそうです」

多分、春信さんたちの話を聞いていたなら、

わかってるかもしれないけど。と、笑ってみせる

でも、笑顔よりも涙が先に来た

喜ぼうとしても

このまま失ってしまうかもしれないという悲しさが前に出た

樹「久遠さんっ!」

ギュッと、

痛いと言われそうなくらいに強く。手を握る

それでも、久遠さんはなんの反応も示さなかった

ピクリとも動かなかった

それでも、体は温かくて……

泣いたらダメだと押さえ込む私の心を強く、揺さぶる

それでも。私は

樹「元気な双子の赤ちゃん。産んでくださいね」

泣くまいと唇を噛み締めて、笑ってみせた
177 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 23:22:48.35 ID:QkCN6ve0o

では、此処までとさせて頂きます
あすもできれば通常時間から

エピローグの最中ですが今後はまだ未定です
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/23(月) 23:24:07.38 ID:XpK2fUa9o
乙
まさかの双子
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/23(月) 23:28:41.84 ID:61wD9OEMO
乙
久遠さんのみならず樹ちゃんにも厳しい世界だなあ
なんとか報われて欲しいものだ

それにまさかの双子とは…久遠さんの力が強かったのか春信さんがよほど濃いのを出したのか

180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/24(火) 00:37:11.53 ID:l/ZQdodm0
乙
何気に勇者であるシリーズにいないんだよな双子
名前はどうなる久遠さん家の双子ちゃん...あと女の子なのか男の子なのか
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/24(火) 03:26:19.79 ID:Sxokxaw4o
おつ
双子とはまた…
勇者になったらコンビネーションと母親譲りの戦闘力でとんでもなく強そう
149.34 KB Speed:0   ↑ VIP Service SS速報R 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可):

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行


スポンサードリンク


Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2026/05/10 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)