魔剣士「やはりフキノトウは最高だ」武闘家「えっ?」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/25(水) 19:51:42.58 ID:+qOyp7LSo

第一株 植物愛

武闘家「なんかすごく苦いにおいがしてるんだけど」

魔剣士「この独特の風味がクセになる」

俺の最も好きな食べ物はフキノトウである。

武闘家「エリウス、今度は何の葉っぱ食べてるの?」

魔剣士「トリカブト」

武闘家「ちょっと……それ最凶レベルのやばい毒草じゃないの」

武闘家「植物に疎いあたしでも知ってるわ」

魔剣士「この苦み……たまらん。美味だ」

俺は植物であればなんでも食べるが、特に苦みや渋みの強い物が大好物だ。

普通なら灰汁抜きが必要な野菜だって未処理で食べるし、
どんな毒草も俺にとってはただの食材である。



・勇者「やっぱり処女は最高だね」戦士「え?」 の続編です。

・このSSに、実在する人物・団体等を誹謗中傷する意図は全くありません。

※エログロ注意(エロメインではない)
2 : ◆qj/KwVcV5s [saga]:2016/05/25(水) 19:53:50.90 ID:+qOyp7LSo

武闘家「うわあ……」

俺の隣にいる細マッチョ金髪美少女はドン引きしている。

つい昨日、とある出来事があって俺はこいつと共に旅をすることとなった。

――――――――
――

俺は植物研究のため、故郷を出て旅を始めた。

世界中の植物を食べて回りたくなったのである。
今年でもう18なんだ。親から離れたいというのもあった。

教授『研究室に籠りっぱなしも君にとってはつまらんだろう』

教授『行ってこい行ってこい。新たな発見があることを祈っとるぞ』

教授は快く送り出してくれた。

12歳になる年に飛び級で大学に入学した俺は、書類上は大学院生だが実質研究員だ。

植物学の権威である教授や一般企業と協力して研究を行っている。
3 : ◆qj/KwVcV5s [saga]:2016/05/25(水) 19:55:06.19 ID:+qOyp7LSo

ある町に訪れた。

生のホウレン草をかじりながら町中を歩いていると、
一人の女が怪しい男達に絡まれていた。

武闘家「あの、改宗とか興味ないんですほんと」

武闘家「お引き取りください」

勧誘員1「そう仰らず、どうぞこちらの喫茶店でゆっくり話を聞いていただきたい」

勧誘員2「うちに入信した方が絶対幸せになれますから!」

武闘家「すみません正直困ります」

彼女には見覚えがあった。彼女の名はカナリアーナ。通称カナリア。
俺の両親の旧友の娘だ。遠方に住んでいるが、数年に一度ほどの頻度で会っている。

しばらく見ない間にずいぶん筋肉がついたな。

武闘家「あ、エリウスー! 待ったのよ!」

彼女は俺を見つけると、駆け寄ってきて俺の腕を掴んだ。

そして小声で

武闘家「お願い合わせて。逃げるの手伝って」

と言った。
4 : ◆qj/KwVcV5s [saga]:2016/05/25(水) 19:55:53.51 ID:+qOyp7LSo

魔剣士「宗教勧誘か……」

珍しいこともあるもんだな。

今の時代は、アモル教という宗教が世界中で信仰されている。
大昔は大きな宗教戦争もあったそうだが、ここ数百年は落ち着いている。

現代でも一部の少数民族が独自の宗教を持っていることはあるが、
彼等が勧誘を行うことはまずありえない。

新しい宗教をわざわざ興そうとする人物でさえ今時稀だ。

つまり、宗教勧誘を行う人間なんて絶滅危惧種も同然なのである。
俺は天然記念物を見つけたような気分になった。

苦労して山に登り、洞窟を探索してヒカリゴケを発見できた時並みの感動である。

魔剣士「話を聞こうじゃないか」

武闘家「ちょっと」

俺の好奇心は、テッポウウリの種のように弾け出した。
5 : ◆qj/KwVcV5s [saga]:2016/05/25(水) 19:56:22.17 ID:+qOyp7LSo

――喫茶店

勧誘員1「あなたは……先程から何故ホウレン草をかじっておられるのですか?」

魔剣士「小腹が空いていたものですから」

武闘家「小腹が空いたら生のホウレン草をおやつにするの?」

魔剣士「ああ」

魔剣士「灰汁抜きしてないからえぐみがあって美味いぞ」

武闘家「だ、大丈夫なの?」

俺は無表情のまま右手をサムズアップの形にした。

勧誘員2「……そのような食生活を送って、あなたは幸せですか?」

勧誘員2「お可哀想に。まともな料理を食べずにお育ちになったのでしょう」

そんなことはないし憐れまれる筋合いもない。失礼だな。

母さんの料理の味は年々向上してるし元から不味くはない。

俺のわがままで食べなかったことはあったが。
6 : ◆qj/KwVcV5s [saga]:2016/05/25(水) 19:57:08.99 ID:+qOyp7LSo

魔剣士「俺が何を食べて幸せを感じようが俺の自由です」

俺は鞄からホウレン草をもう一株取り出してかじった。

勧誘員1「えええ……」

小綺麗な喫茶店故に飾られている草花も小ぶりで可愛らしいのだが、
流石に食べるのは我慢した。美しい植物には食欲と性欲をそそられる。

魔剣士「あ、店員さん注文いいですか」

魔剣士「アールグレイとダージリンをお願いします。使った茶葉もください」

店員「は、はい?」

数分後、俺は紅茶を飲みつつ茶葉も食べた。

魔剣士「おかわりお願いします。紅茶だけじゃなくて茶葉も」

武闘家「茶葉入りの焼き菓子を食べるのならまだわかるんだけど……」

勧誘員2「そ、そろそろ……本題に入らせていただきます……」
7 : ◆qj/KwVcV5s [saga]:2016/05/25(水) 19:58:23.80 ID:+qOyp7LSo

勧誘員1「現在、世界はアモル教の支配下にあります」

勧誘員1「はっきり言って彼等は偽善的な独裁者です」

勧誘員2「人はアモル教の洗脳から解き放たれなければなりません」

魔剣士「ほーう?」

魔剣士「具体的にどう洗脳されているのか説明していただけますかね」

宗教戦争に疲れた昔の人間達は、ある時

『最低限の道徳を教えてあとは何でもアリの適当な宗教を作ろう』

と思い至った。そして生まれたのがアモル教である。

アモル教は多神教であり、他の宗教を弾圧することもない。
『来る者拒まず去る者追わず』主義だ。

長時間祈りを捧げたりする必要もなく、非常に楽に信仰できる。
信心深くなくとも教会でサービスを受けることさえ可能だ。

他に類を見ない程ゆるゆるである。
その結果、いつの間にか世界中の宗教がアモル教に融け込んでいた。

勧誘員1「アモルとは愛の意。アモル教は愛の宗教」

勧誘員1「彼等は愛が世界を救うと謳っています」

勧誘員1「しかし、そのような綺麗事で世界を救うことができたら苦労はしないのですよ」

魔剣士「ふむ」
8 : ◆qj/KwVcV5s [saga]:2016/05/25(水) 19:58:53.17 ID:+qOyp7LSo

武闘家「ちょっと……この人達の話を聞いちゃ駄目よ。危ないわ」

魔剣士「まあまあ」

勧誘員1「世界は唯一神オディウムを信じることでのみ救われるのです」

魔剣士「ふふっ……」

魔剣士「オ、ディ……ウ、ムッ……くそっ……」

俺は吹き出して笑ってしまった。

勧誘員2「な、何がおかしいのですか!」

武闘家「……?」

魔剣士「オディウムってつまりうどん粉病じゃねえか! ははははは」

野菜の天敵である。

勧誘員1「な、何を言うか!! オディウムとは太古の言語で憎しみという意味であって」

魔剣士「うどん粉病教か……!」

勧誘員2「我等が神を愚弄するか貴様ァー!」

魔剣士「ぎゃはは」

武闘家「憎しみの神様を信仰してるなんて、とても入信する気にはなれないわね……」
9 : ◆qj/KwVcV5s [saga]:2016/05/25(水) 19:59:37.15 ID:+qOyp7LSo

魔剣士「ああ、すみませんすみません」

魔剣士「あなた方は何故オディウム神フフッ を信じてるんですか?」

まだ笑いが漏れてしまう。

勧誘員1「くっ……」

勧誘員2「……我等が神オディウムは、罪深き人間を憎み罰する神」

勧誘員2「オディウム神に懺悔し、己を律することで、人は厄災から解放されるのです」

勧誘員1「私は入信したことで仕事のストレスから解放され、金運にも恵まれました」

勧誘員2「私も恋人ができました。彼女いない歴30年だった私がですよ」

胡散臭いにもほどがある。

勧誘員1「あ、ところであなた方は学生さんですか?」

魔剣士「はい」

武闘家「……」

勧誘員1「毎朝毎晩三十分ずつお経を唱えることで、テストの点数が上がりますよ」

魔剣士「どういう仕組みでですかね?」

勧誘員1「お経を唱えると、全てを知ったも同然になるのです」

ここも笑うところだろうか。

勧誘員1「魔物が跋扈していた時代も、」

勧誘員1「オディウム教徒だけは一人も魔物に襲われなかったそうです」

25年程前に魔王が倒され、魔族を産み出す『魔の核』が封印された。
それまでは魔族が暴れ回る時代が数十年続いていたらしい。

勧誘員1「こちらが我等の会報となります」

勧誘員達はテーブルに怪しい紙を広げた。胡散臭い文章が長々と綴られている。

紙の上の方には、古い言語で書かれた短い文があった。

【 Ira odium generat. 】
10 : ◆qj/KwVcV5s [saga]:2016/05/25(水) 20:03:33.42 ID:+qOyp7LSo

勧誘員2「『イーラ・オディウム・ゲネラト』と発音します」

勧誘員2「イーラは怒り。ゲネラトは生むという意味です」

勧誘員2「怒りは憎しみを生む……我等オディウム教徒の合言葉のようなものです」

魔剣士「怒りはうどん粉病を生む……ふふっ」

勧誘員1「コホン。オディウム神を信じなければ、あなたにも厄災が降りかかるでしょう」

勧誘員1「いえ、既に不幸な状態に陥っているようですね」

勧誘員1「下茹でをしていないホウレン草や使用済みの茶葉を食べるなんて……」

勧誘員2「オディウム神の力は、人の憎しみの感情を吸って強くなっています」

勧誘員2「一刻も早く入信してください。真の厄災が降りかかる前に。入会費はタダです」

勧誘員1「毎月発行される会報もたったの250Gですよ」

勧誘員2「オディウム神は万能。信じればあなたも神の力で幸せになることができます」

勧誘員1「人を真に救いはしない曖昧なアモル教と違い、本当の幸福を授けられるのです」

魔剣士「世界中の人間が入信したらオディウム神の力はどうなるんですか?」

魔剣士「憎しみを吸えなくなって弱体化するんですか?」

勧誘員2「え、ええと……あくまで破壊の力が強くなるという意味であって……その……」

魔剣士「それって万能だとは言えなくないですかね」

武闘家「あら確かに」

こいつらは胡散臭い幸運グッズの販売員と同じだ。
主張している内容が支離滅裂である。

勧誘員1「そ、それは……」
11 : ◆qj/KwVcV5s [saga]:2016/05/25(水) 20:04:02.41 ID:+qOyp7LSo

勧誘員2「と、とにかく! 入信しなければ不幸になるのです!」

勧誘員1「さあ署名を!」

魔剣士「お断りですわ、ガキの頃うどん粉病にイチゴをやられてるんすよ」

勧誘員1「くっ、こうなったら……」

勧誘員が指を鳴らすと、武装した男達が現れた。

勧誘員1「無理矢理にでも我等が祭殿に連れていくぞ!」

武闘家「っ……!」

カナリアは戦闘態勢をとった。

店員「きゃああ!」

魔剣士「物騒だな……店に迷惑だろ」

武闘家「あなたも構えなさいよ!」

魔剣士「構える必要もない」

魔剣士「もう勝ってる」

武闘家「え?」

兇手「ぐわああああああああああ!!」

刺客A「あぁああ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

刺客B「いっでええええええええええええええええええ!!!!」
12 : ◆qj/KwVcV5s [saga]:2016/05/25(水) 20:04:44.09 ID:+qOyp7LSo

勧誘員1「い、一体どうしたというんだ」

武闘家「次々と股間を押さえて蹲り出した……?」

勧誘員2「くっ、英雄アキレスの娘だけでも捕らえなければ」

武闘家「!?」

魔剣士「あ、おまえ等にもかけとくからな」

勧誘員1「!? ぎゃああああ!!」

勧誘員2「息子があああああああああああああ!!!!」

魔剣士「シュウ酸の力を舐めるなよ」

勧誘員1「ま、まで! いっだいなにをじだ」

魔剣士「尿道に石をちょこっとな」

魔剣士「あんたらが何を信じようが勝手だが、それを他人に押し付けるのは迷惑だ」

魔剣士「じゃあな」

店長「もしもし国家憲兵ですか。ええ、怪しい男達が……」

魔剣士「店員さん、お勘定頼むわ」

店員「は、はい」

兇手「うぐ……あの目尻、間違いない……」

兇手「奴は……あの男の息子だ……!」
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