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魔剣士「やはりフキノトウは最高だ」武闘家「えっ?」
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53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/05/31(火) 16:06:55.57 ID:f7XXDxWhO
ガラハドさんは元からハゲてるだろ!
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/03(金) 15:09:56.00 ID:ym+n70WsO
どおしで雑草なんか食べてきたのお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/03(金) 21:41:47.09 ID:giFJnquro
野草を確実に見分ける為に毒草を見つけたいんだけどうちの方は生えてないんだよな
56 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 15:44:33.68 ID:JmArPY5Oo
第三株 思春期
数日後、また別の町に訪れた。
魔剣士「ああっセルリアさんっ! 君はなんて美しいんだ!」
魔剣士「君の魅力に僕の心はすっかり奪われてしまったっ……!」
魔剣士「君のことを想うだけで胸に穴が空きそうなほどの痛みが走るんだ……」
魔剣士「ああ、どうか僕の元に来ておくれ」
魔剣士「僕達の間に種族の壁なんて存在しない!」
花屋「……お、お兄さん?」
魔剣士「お義父さん、娘さんを僕にください」
花屋「あ、ああ……その切り花なら一本400Gだよ……」
魔剣士「あ、この花嫁衣裳もお願いします」
花屋「花瓶と合わせて1200Gになるよ……」
57 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 15:45:44.34 ID:JmArPY5Oo
今夜の恋人はこの子だな。俺はセルリアの花芯の綿毛に口付けを落とした。
ふんわり柔らかくて最高だ。おまけに空も蒼く晴れ渡っている。
とても気分がいい。
ちなみにこの間のウィッグは蒸れるから外した。
道端に瑞々しいブタクサが生えていた。
迷わず俺はその草を食べ……いや、
これほど生き生きとしているのに食べてしまってはもったいない。
だがおいしそうだ。でもやはり……と葛藤していると、何やら声が聞こえてきた。
プティア兵1「カナリアーナ様!」
プティア兵2「国へお戻りください! 皆心配しておりますぞ!」
武闘家「いやー! ほっといて!!」
カナリアが自国の捜索隊に見つかったらしい。
彼等は私服を着ているが、身のこなしからして兵士だ。
一応王族の血を引いているらしいし、家出なんてしたら放ってはおかれないだろう。
あいつも大変だな。
58 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 15:47:22.82 ID:JmArPY5Oo
しばらくブタクサとにらめっこをし続けていると、また別の会話が聞こえてきた。
ローブの男1「あの町の支局もやられてしまったか……」
ローブの男2「ここより南の村の支局は尽く制圧されてしまったようだ」
ローブの男2「かの勇者様の指揮によってな」
ローブの男1「くそっ、旭光の勇者め……どうにかして始末せねば」
某うどんこ病教徒の方々のようだ。父さんも大変そうだな。
ローブの男1「東の大陸はどうなっている」
ローブの男2「一部の地域は順調だが、北西部は聖騎士ヴィーザルの守りが堅い」
ヴィーザル? 聞いたことある気がするけど誰だったっけ。
ローブの男2「東部はやはり金紅の英雄アキレスの存在がやっかいだ」
ローブの男2「だが、娘が家出をして以来引きこもりと化しているらしくてな」
ローブの男2「今が好機のようだ」
59 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 15:48:02.57 ID:JmArPY5Oo
まあなんかいろいろ大変そうだが、大人がなんとかするだろう。
俺は決意を固めた。ブタクサを食べよう。
ヨモギとよく似ているがために悪者扱いされてしまうこともあるこの草だが、
俺はこの草の味も好きなんだ。
何本かは摘んでお茶にしよう。
おいしい。おいしいよ。
若くて瑞々しくて生命のエネルギーに溢れている。素晴らしい。
目がじいんとする。涙が滲みそうだ。
俺に摘まれた草花は、俺の血肉となって俺の中で生き続けるんだ。
魔剣士「そう、僕達は一つになったんだよ」
交じり合って子供を成すことはできないけれど、ああ、こうして共に生きることはできる。
歓びと切なさが俺の胸を締め付けた。
警備兵「そこのお兄さん、ちょっと署までご同行願えるかな〜」
60 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 15:48:48.97 ID:JmArPY5Oo
憲兵「隊長が来るまで暇だな……あ、おまえ仕事見つけたのか」
警備兵「まあな」
警備兵「君さっきあそこで何してたの?」
魔剣士「草を食べていました」
警備兵「花屋では売り物に愛を囁いていたよね? どうしてあんなことしてたの?」
魔剣士「この子に愛情を覚えたからです」
警備兵「う〜ん……保護者の方はこの町にいらっしゃるのかな?」
魔剣士「この地の続く何処かにいます」
警備兵「カウンセリング受けてたりする?」
魔剣士「どんな精神科医でも俺を治すことはできませんでしたね」
警備兵「身分を証明できるものとか持ってる?」
魔剣士「学生証でいいですか」
61 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 15:50:00.73 ID:JmArPY5Oo
警備兵「エリウス・レグホニア君ね〜……南の方によくある名字だね」
警備兵「……え、この学生証本物? 17歳で大学院生? ありえないでしょ?」
魔剣士「あっ、あそこに飾ってある百合の花とセックスしていいですか?」
警備兵「え、ええ……?」
警備兵「ちょっと親御さんに連絡取りたいんだけど、連絡先教えてもらえるかな?」
魔剣士「いいですけど」
兵士1「おい、レグホニア隊長の御到着だぞ。……あ、君、先日はありがとう」
魔剣士「どもっす」
警備兵「え?」
数日前に滞在していた、香辛料の町カプシーにいた兵士達が何人か入ってきた。
戦士「ここに出張るのも久々だな……あ?」
魔剣士「父さんこの緑茶うめえよ」
警備兵「え? 父さん?」
戦士「おまえ何やってるんだ?」
魔剣士「不審者として取り調べされてる」
戦士「…………」
62 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 15:50:40.15 ID:JmArPY5Oo
戦士「何やらかしたんだ?」
魔剣士「花を口説いて道端で草食べてたら連行された」
警備兵「連行といいますか……保護しようと思いましてですね」
魔剣士「なああそこの鈴蘭の花可愛くね?」
戦士「おまえは父さんに恥をかかせたいのか?」
魔剣士「うん!」
戦士「…………はあ」
警備兵「……本当に、その……息子さんなんですか?」
警備兵「顔が……全然……人種も違うような……」
戦士「幸いこいつは家内に似たんだ」
憲兵「並べてよく見たら隊長とも似てますよ」
63 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 15:52:32.52 ID:JmArPY5Oo
魔剣士「なんでいんの?」
戦士「仕事だ仕事」
魔剣士「それは見ればわかるけど」
戦士「一時的にこの町の人員を増強し、オディウム教徒への警戒体勢を整えることになったんだ」
戦士「俺はこの町の支局を特定できたら他の町に行くけどな」
父さんの物探しの力は引っ張りだこらしい。
宗教の自由はほとんどの国で保障されている。だから、
ただアモル教以外の宗教を信仰しているだけならば決して罰せされることはないのだが、
オディウム教は犯罪行為を行っているため特別に取り締まりの対象となっているらしい。
宗教団体を装った犯罪組織とも言われているくらいだそうだ。
兵士1「そうだ、実は息子さん達のおかげで私達の町は平和になったんですよ」
戦士「……どういうことだ? 報告書にそのようなことは書いてなかったぞ」
兵士は事情を説明した。
先日、オディウム教徒と接触があったこと、
英雄の子供が狙われているらしいことは父さんに話したが、
戦ったことまでは話さなかった。無駄に心配をかけそうで面倒だったからだ。
戦士「一般人に任せたとはどういうことだ!!!!」
64 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 15:53:38.07 ID:JmArPY5Oo
戦士「おまえの町の兵教育はどうなっている!?」
兵士1「ひっ」
戦士「成人前の子供に頼るなど恥ずかしくないのか!?」
兵士2「ぁぅ……」
戦士「それでもおまえ達はこの国を守る兵士なのか!?」
戦士「大人の自覚を持て!!!!」
すごい剣幕で怒り出した父さんにビビって、兵士達は失禁した。
全く関係ないこの町の兵士達もつられて漏らしている。
戦士「来い!」
父さんは俺の耳を引っ張って駐屯地を出た。
魔剣士「あだだだだ」
戦士「カナリアちゃんは何処にいるんだ」
魔剣士「自国から連れ戻しに来てる奴等に追われてどっか行った」
戦士「探すぞ。もし追手を振り切って一人で町をうろついていたら危険だ」
魔剣士「ええぇ……」
めんどくさいな……。
65 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 15:56:57.91 ID:JmArPY5Oo
プティア兵3「くっ、見失ったか」
プティア兵4「なんとしても姫様にはお帰りいただくぞ!」
あの筋肉女でも「姫様」か……。
戦士「アキレスの意気消沈っぷりが酷くてな」
戦士「それがプティア軍の士気にも影響しているんだ」
戦士「このままではオディウム教の勢力が拡大してしまう」
魔剣士「無理矢理にでも送り帰すのか?」
戦士「せめて声だけでも聞かせてやろうと思う」
戦士「あいつ、毎晩俺に電話で泣き言を漏らしているんだ。……あまりにも不憫でな」
魔剣士「娘が一人で国を飛び出したらやっぱ心配なもんなのか?」
戦士「当たり前だ。まあ、あいつらの場合は家出前にいろいろあったようだが……」
父さんのインペリアルトパーズの力でカナリアの気配を追った。
66 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 15:59:52.07 ID:JmArPY5Oo
魔剣士「あ、いた」
戦士「ん? 何処だ?」
魔剣士「あの茶髪ロング伊達眼鏡。この間使った変装グッズだ」
戦士「舞台劇の観客に紛れているのか」
古代からある、扇形の野外劇場だ。大学のでかい講義室と似ている。
席の外側には立ち見をしている連中がいた。
カナリアはその中に隠れながら周囲の様子を窺っている。
演目は……【六英雄戦記】。
魔剣士「父さん達の劇じゃん」
魔王役「此処まで辿り着いたことを誉めてやろう」
魔王役「だが、貴様等の命もここまでだ! 我が暗黒の炎で焼き尽くしてくれる!」
英雄役「いや……焼き尽くされるのはおまえの方だ」
英雄役「見よ、正義の炎を!」
戦士役「暗黒の時代に、我が旭光の波動で夜明けを齎してみせようぞ!」
父さん役の役者は父さんよりもずっと美形だ。
魔剣士「めっちゃかっこいい台詞吐いてんな」
戦士「俺はあんなんじゃない」
67 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 16:00:36.73 ID:JmArPY5Oo
魔剣士「おいカナリア」
武闘家「きゃっ! なんだ、エリウスね……追手かと思って驚いちゃったわ」
戦士「……」
武闘家「あ……おじさん、お久しぶりです」
戦士「ええと……元気だったか?」
武闘家「は、はい……」
観客1「なあ、英雄アキレスって実は男装の麗人らしいぞ」
観客2「当時はとんでもない美少女だったらしいな……」
青い石「ああ……確かに可愛かったね……」
観客3「でも華麗なる魔術師マリナと結婚して子供もいるんだろ?」
観客1「女同士で子供を作ったのか?」
観客2「一体どうやったんだろうな……ごくり」
魔剣士「とんでもなく面白いデマが流れてんな」
武闘家「もういやあああああ!!」
魔剣士「あっおい」
68 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 16:01:18.60 ID:JmArPY5Oo
戦士「追いかけるぞ!」
魔剣士「待てって! カーナーリーア!」
武闘家「どうせあたしの父さんは夜な夜な女装して怪しいバーに出入りしてる変態よ!!」
武闘家「女装した状態で母さんに迫るようなド変態なのよおおおおお!!!!」
魔剣士「お、落ち着け」
青い石「いろいろ複雑そうだね……」
戦士「相当トラウマになってるなこれは……」
だから俺が女装しようとしたら必死になって止めたのか。
武闘家「いやああああああああ!!!!」
そう簡単には落ち着いてくれそうになかったから、俺は鞄に入れていたレタスを食べた。
武闘家「あああ……あ……ぁ」
戦士「……どんな成分を使ったんだ?」
魔剣士「ラクチュコピクリン。鎮静効果がある」
戦士「可愛い名前だな……」
69 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 16:02:35.98 ID:JmArPY5Oo
魔剣士「まあ梅昆布茶でも飲めよ」
戦士「渋いな」
武闘家「…………」
戦士「まあ、人生いろいろあるけどな、大人になるにつれてどうでもよくなるからな」
武闘家「……」
戦士「愚痴なら聞くぞ?」
武闘家「…………」
武闘家「あたし自身を見てくれる人のいない故郷には、とにかく帰りたくないんです」
そういやうちの親は、近所の住民や学校の先生に
「英雄の子供だからどうこう言うのはやめてくれ。他の子供と同じように接してほしい」
って必死に頼んでたな。
「英雄の子供のくせに云々」と否定的なことを言われたり、
本人が出した成果を「勇者の子供だからできたんだ」と評価されたりするのを防ぐためだ。
そうしてくれていなければ、今頃俺の兄弟達もグレていたかもしれない。
俺は我が道を行くタイプだから何を言われようが関係ないが。
武闘家「でも、それ以上に……」
魔剣士「ん?」
70 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 16:04:45.90 ID:JmArPY5Oo
武闘家「父さんに……会うのが嫌で……」
武闘家「……本当は小さい頃から薄々気づいていたけど、」
武闘家「父さんが女装癖持ちだって知って……もう、何もわからなくなって……」
武闘家「全部全部耐えられなくなったのよ!」
戦士「ああ……積もり積もった鬱憤が何かのきっかけで爆発することはあるよな」
かっこいいお父さん像が崩れてショックだったらしい。
昔はこいつも両親大好きだったのに。
武闘家「あたしが尊敬していた父さんは何だったの? 全部演技だったの?」
戦士「ま、まあ……お父さんも一人の人間だから……」
おそらく趣味の内容そのものを否定するつもりはないのだろうが、
父親に思わぬ二面性があった事実を受け入れきれていないようだ。
父親に女装趣味があると幼い頃から知っていればこうはならなかったのかもしれない。
武闘家「ただでさえ生理的に気持ち悪くて一緒の生活に耐えられなくなってたのに!!」
魔剣士「それ思春期の女にありがちなやつ」
戦士「う……」
魔剣士「アウロラもこんな感じだよな。そこまで酷くないけど」
アウロラとは一番上の妹だ。今年で16になる。カナリアも同い年だ。
71 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 16:05:30.18 ID:JmArPY5Oo
武闘家「父さんがあたしを大切に思ってくれていることはわかってるけどとにかく無理なの!!」
父さんは涙目になっている。娘に嫌われるというのは相当堪えるらしい。
戦士「……お袋さんとはどうなんだ?」
武闘家「母さんは魔術師気質だから……いつも『勉強しなさい』ばっかりです」
武闘家「どうせあたしはお兄ちゃんほど頭良くないわよ!!」
武闘家「だからといって弟ほどの格闘センスがあるわけでもないし!!」
戦士「んー……」
戦士「今は……家族から離れて自由に過ごしていた方がいいかもしれないな……」
戦士「オディウム教のことは心配だが、実戦経験を積まないと成長できないしな」
戦いの中に身を置く人間らしい発想である。母さんとは正反対だ。
父さんの携帯機が鳴った。
戦士「あ、すまん。親父さんから着信だ。こんな昼間にかけてくるなんて珍しいな」
72 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 16:06:38.75 ID:JmArPY5Oo
戦士「もしもし? あー、カナリアちゃんなら今一緒にいるんだが」
戦士「ほら、俺等もこのくらいの歳だった頃は旅してただろ。魔物だらけの世界をさ」
戦士「エリウスも一緒だし、しばらくは……」
携帯機から大きな泣き声が漏れている。
あまりの音量に、父さんは一旦携帯機から耳を離した。
戦士「視野が狭いと何かと悩みがちになることもあるだろう」
戦士「広い世界でいろんなものを見た方がいいこともあるって。心配なのはわかるけど」
武闘家「…………」
戦士「……すまないが、少しだけでいいから話をしてやってくれないか」
武闘家「……もしもし」
武闘家「…………」
武闘家「あーうん、気が向いたら帰るから捜索隊を派遣するのやめて」
カナリアは通話を切った。
73 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 16:10:01.49 ID:JmArPY5Oo
武闘家「……はあ」
武闘家「父さんには会いたくないけど、申し訳ない気持ちもあるから……余計につらくて」
魔剣士「父親を気持ち悪いと思うのは、近親相姦を避けるための本能だ」
魔剣士「つまり、おまえが正常に成長している証なんだよ」
魔剣士「思春期を過ぎたら落ち着くだろうし、過度に自分を責めることはないと思うぞ」
武闘家「……!」
魔剣士「関係を修復できなくなってしまうレベルの罵倒だとかは控えるべきだろうけどな」
魔剣士「大人になれば親のことを客観的に見ることができるようになるかもしれねえし」
親を「親」としてだけではなく、
「一人の人間」として認識することができるようになるには時間がかかる……らしい。
俺にはよくわからん。親がどんな人間だろうと俺の人生には関係ない。
戦士「おまえ……いいことを言うこともあるんだな」
魔剣士「いつまでも悩まれたらめんどくさいだろ」
俺は何処かで聞いたことを適当に言ってみただけだ。
戦士「ダグザさんも旅から戻ったら娘さんと仲直りできたそうだし、」
戦士「こればっかりは……時間の経過に頼るしかないかもな……」
74 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 16:10:27.74 ID:JmArPY5Oo
戦士「……はあ」
青い石「思春期の娘から辛辣に接されて悩むなんて……羨ましい」
武闘家「も、モルっち……?」
戦士「一旦署に戻るか……」
宿と途中まで方向が同じだ。
武闘家「あの、ありがとうございました」
戦士「あまり上手い助言をしてやれなくてすまないな」
武闘家「いえ……助かりました」
魔剣士「細かいこと気にする奴って大変だな」
戦士「おまえは……幸せな奴だよな」
75 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 16:11:33.70 ID:JmArPY5Oo
ナレーター「五年の月日を経て、旭光の勇者ヘリオスは全ての聖玉を集めた」
ナレーター「しかし、彼には残酷な事実が待ち受けていた」
戦士役「嗚呼、我が師勇者ナハトは、封印と引き換えにその命を落としていたというのか」
ナレーター「英雄達は絶望した」
ナレーター「だが、彼等により救われた命もあった」
英雄役「おお友よ。見よ、あの光を」
ナレーター「魔族は、美しい貴族の姫君を捕らえていた」
ナレーター「そして、魔王は封印される寸前、姫君を道連れにしていたのだ」
ナレーター「扉から現れた姫君はヘリオスと結ばれた」
ナレーター「二人は南に向かい、幸せに暮らしている」
……ということになっている。
勇者ナハトの正体がうちの母親であることを知っているのは、
身内と、旅の途中で親しくなった一部の人達、そして救出に当たった関係者くらいらしい。
76 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 16:12:20.40 ID:JmArPY5Oo
武闘家「なんでこうなったんでしたっけ?」
戦士「ああ……穏やかに暮らすためだ」
――――――――
詩人『もし本当に彼女を助けられたとしてもだよ』
詩人『彼女は死んでいたことにした方がいいのではないかね』
戦士『え、何でだよ』
詩人『旅の途中で知ったのだがね、彼女は随分と人の恨みを買っているらしいじゃないか』
詩人『悪人達だけじゃない。一般人もだ。彼女に不貞を暴かれて崩壊した家庭は数知れない』
戦士『ああ……弟子である俺に復讐しに来る奴もたまにいるな』
詩人『彼女と結婚するつもりなのだろう?』
戦士『えっあっあの』
詩人『もし憎しみの矛先が、君の家族や、いつか生まれるかもしれない子供に向いたら……』
詩人『と、少々心配になってね』
戦士『……流石、頭良いなアポロン君』
戦士『アルカさんを助けることができたら提案してみるよ』
――――――――
ということがあったそうだ。
母さんは男が苦手だが、文学部のアポロン教授とは今でも仲が良い。
77 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 16:13:41.97 ID:JmArPY5Oo
戦士「そうだ、香辛料送ってくれてありがとうな」
戦士「アルバの喜びようがすごかったぞ」
父さんそっくりの上の弟のことだ。
戦士「母さんも、まさかおまえが家族に土産をよこすなんて、って泣いて喜んでた」
魔剣士「…………」
戦士「おまえなら心配要らんだろうとは思うが……油断はするんじゃないぞ」
戦士「単独行動も極力控えるんだ」
魔剣士「へーい」
戦士「あと、もうすぐ誕生日だろう。その日くらいは母さんからの電話に出てやってくれ」
魔剣士「えー……仕方ないな」
戦士「これは少し早い成人祝いだ」
魔剣士「ん?」
魔剣士「……ぉぉお! 木製の懐中時計だ!!」
ほとんどのパーツが木で作られている。
魔剣士「すっげえ」
魔剣士「ありがとう父さん」
戦士「……おまえの人間らしい表情を見るとほっとするよ」
78 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 16:14:40.70 ID:JmArPY5Oo
翌日、町を出て車を飛ばした。
少し風が強い。
魔剣士「そろそろ休憩するか」
俺は平原に横たわった。
武闘家「……なんで体に葉っぱ生やしてるの?」
魔剣士「最近食べた草を再構成して光合成してる」
魔剣士「飯を食う手間が省けるんだ」
武闘家「す、すごいわね」
武闘家「…………」
武闘家「ねえ、エリウス。あなた、その……人間の女の子に、全く興味は」
突然バイクに乗った男が現れた。
重斧士「エリウス・レグホニアだな」
男はヘルメットを取った。俺とそう歳の変わらなさそうな青年だ。
重斧士「俺の名はガウェイン」
重斧士「育毛剤探しの旅をしている」
79 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/04(土) 16:15:37.06 ID:JmArPY5Oo
kokomade
80 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/04(土) 17:38:53.68 ID:uqVnS5xZo
ハゲイン?
乙
81 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage ]:2016/06/04(土) 18:26:07.07 ID:u676wazuO
乙。ガウェインが子供世代とは面白いな(ガウェインはガラハドの親世代)。
82 :
◆qj/KwVcV5s
[sage]:2016/06/04(土) 18:54:28.03 ID:JmArPY5Oo
(※ガラハドの没名を流用してるだけなのでこの話は元ネタの伝説内容とは一切関係ないです)
83 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/04(土) 22:57:40.48 ID:tKj/0TEfO
花とセックス……どうやるんだ?
84 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/04(土) 23:49:22.75 ID:tKj/0TEfO
やっぱりハゲじゃないか…
85 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/04(土) 23:51:46.25 ID:nSkkX8qxO
俺
>>83
だけど
>>84
ではない
こんな人少なそうな板でID被り!?
86 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/05(日) 16:12:07.49 ID:QxloOSUYO
ガラハドの血筋は皆落ち武者スタイルなのてすね…
87 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/06(月) 01:52:28.70 ID:aLuFvB+do
携帯会社同じだったら被りやすかったりすんのかな
88 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/09(木) 02:06:10.98 ID:YfKtZEmmO
小説版は話の内容変わってるけどSS版準拠でいいのかな
89 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 13:49:18.37 ID:KFMlrqyGo
第四株 大待雪草
重斧士「剣士か。ならば話が早い」
重斧士「これから決闘を行い、俺が勝てばおまえには育毛剤を調合してもらう」
魔剣士「は?」
奴はやたらでかい戦斧を構えた。
重斧士「剣を抜け!」
魔剣士「え」
重斧士「どうした、怖気づいたのか!?」
魔剣士「今時決闘なんてやる奴いねえよ」
一昔前から、この辺りの国では決闘そのものが禁止されてもいる。
重斧士「その剣はお飾りか!?」
魔剣士「そうだよ!!」
重斧士「そうか。それはすまなかった」
奴は斧をしまった。
90 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 13:49:48.68 ID:KFMlrqyGo
武闘家「そういえば、あなたが剣を抜いたところを見たことがないわ」
魔剣士「本当は面倒だから剣なんて持ち運びたくないんだが、帯刀しろって母親がうるせんだよ」
武闘家「ああ、持ってるだけで牽制になるものね」
魔剣士「昔近所の道場で習ってはいたんだが実戦経験はない」
うちの村に道場ができたのは、俺が生まれる数年前だったらしい。
「父さんの子供の頃には道場なんてなかったのに、この村も変わったもんだなあ」
と父さんからは羨ましがられたが、俺は好きで剣を習っていたわけではない。
母さんに半ば無理矢理通わされていたのだ。
魔剣士「んで、育毛剤作ればいいのか?」
重斧士「か、金はいくらかかる」
魔剣士「そっちが材料を用意すれば金は取らねえよ」
重斧士「なっ……んだと?」
91 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 13:50:33.47 ID:KFMlrqyGo
重斧士「タダで依頼を受ける薬師がいるか!! 何を企んでいる!?」
魔剣士「何も企んでねえよ!」
重斧士「やはり決闘だ!!」
魔剣士「決闘で相手に言うことを聞かせようとするのがまずおかしいからな!?」
武闘家「ちょっと落ち着いて」
武闘家「ガウェイン? だっけ? どうして育毛剤を探してるの?」
重斧士「っ――!?」
重斧士「!?!?!?!?」
武闘家「な、なんであたしを見てそんなに驚いてるの?」
重斧士「そ、そんな……そんなことがあるはずがない……」
武闘家「?」
重斧士「い、今まで俺は……男にしかときめいたことがなかったというのに……」
重斧士「おまえを見て、俺の胸はこれまでにないほど高鳴っている!!!!」
武闘家「え?」
92 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 13:51:09.85 ID:KFMlrqyGo
重斧士「な、名前を教えてくれ!」
武闘家「か、カナリアーナよ……みんなカナリアって呼ぶわ」
重斧士「そうか……カナリアか……可憐な名だな……」
重斧士「い、いい筋肉をしているな」
武闘家「あ、ありが……と……?」
魔剣士「俺もうそろそろ出発したいんだけど」
重斧士「貴様、カナリアとどんな関係なんだ!?」
魔剣士「え? ただの知り合いっつうか」
魔剣士「成り行きで一緒に旅してるだけの同行者だ」
武闘家「……仲間とか、友達とか、もうちょっと暖かい言い方できない?」
重斧士「そうか! 付き合ってるわけじゃないんだな!!」
魔剣士「俺女どころか人間に興味ないし」
93 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 13:52:00.82 ID:KFMlrqyGo
重斧士「俺はガルブ大陸の最北端の辺りから来たんだが……おまえは?」
ガルブ大陸……ここから西の方にある大陸だ。
砂漠が広がっているイメージが強いが、緑が豊かな土地もある。
南部の方は熱帯雨林が広がっているし、最北端であれば亜寒帯か温帯のはずだ。
武闘家「東のエスト大陸よ」
重斧士「そ、そうか……」
魔剣士「なあ、育毛剤は?」
重斧士「あ、ああ……そうだったな」
重斧士「親父のハゲが年々進行していてよぉ」
重斧士「ある時、俺の妹がこう言ったんだ。『禿げたパパなんてカッコ悪い』ってよ」
重斧士「親父は意気消沈して仕事をしなくなっちまったし、」
重斧士「お袋は腑抜けた親父を毎日罵倒するしよぉ……」
武闘家「あ、あらぁ……」
94 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 13:52:40.43 ID:KFMlrqyGo
重斧士「元々幸せな家庭じゃあなかった」
重斧士「お袋が精神的に参ってる親父を決闘で負かし、半ば無理矢理手籠めにしてできたのが俺だし、」
重斧士「親父には他に好きな相手がいたんだ」
武闘家「……二十年ちょっと前から、無理矢理……とかはできなくなったはずよね?」
重斧士「山に籠っているところを狙われたんだそうだ」
大抵の町村や街道には、性犯罪を抑止する結界が張られている。
性犯罪以外の違法行為を防止する術も研究されていて、実現できているものもあるが、
必要な魔力量の問題であまり普及していない。
技術が発達すればするほどたくさんの魔力を必要とする時代となっているため、
いかに魔力を節約するかが現代の課題である。
重斧士「俺はグレた。バイクを乗り回してはケンカに明け暮れたぜ」
俺はこいつの身の上話になんて興味はないんだが、カナリアは興味深そうに聞いている。
重斧士「だけどよお、健気だった妹までグレちまったのを見て……」
重斧士「このままじゃ駄目だと思ったんだよ」
武闘家「まあ……」
95 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 13:54:08.20 ID:KFMlrqyGo
重斧士「髪が生えたところで何の解決にならないもかもしれねえが、」
重斧士「親父が自信を取り戻せば、」
重斧士「もしかしたら……幸せな家族生活って奴を築くきっかけを作れるかもしれねえ」
こいつも将来禿げそうだなと思った。前髪から後退していくタイプな気がする。
魔剣士「まず、薄毛や抜け毛は生活習慣の改善が重要だ。ただ育毛剤に頼るだけじゃ効果は薄い」
魔剣士「だがまあ、わざわざ遠方から俺を訪ねてきたわけだしな……これが材料のメモだ」
魔剣士「本当はおまえの親父さんの体質に合わせた物を作るのが一番なんだが、」
魔剣士「本人がいないのは仕方ないからおまえの容姿から勝手に判断した」
重斧士「ほ、本当にタダでやってくれるのか……!?」
魔剣士「金を取る理由がない」
いかにも貧しそうな奴から金を取る気にはなれなかった。
96 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 13:55:12.45 ID:KFMlrqyGo
重斧士「す、すまねえな……! カナリアがいなかったらおまえに惚れていたところだ」
魔剣士「やめろ」
尻が危機感を覚えた。
魔剣士「おまえ……本当に男が好きなのか?」
重斧士「親父はゲイだった。だから俺もゲイなんだ」
性的嗜好とは遺伝するものなのだろうか。大学に帰ったら遺伝学の先生に聞いてみよう。
重斧士「だが……俺は確かにカナリアに熱い感情を覚えている……!」
武闘家「て、照れるわね……」
随分オープンな奴だ。
本人が気付いていなかっただけで、ゲイじゃなくバイだったのかもしれない。
青い石「ふぁ〜よく寝たよ」
青い石「……む、この男……どことなく既視感が……」
97 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 13:57:27.47 ID:KFMlrqyGo
重斧士「おまえ、勇者ナハトと似てるらしいじゃねえか」
重斧士「親父がネットでおまえの写真を見て驚いていたぞ」
ネットができる前から、意図的に情報を画像や映像として魔鉱石に記録する技術はあったが、
当時、その術を使えるのはごく一部の魔術師だけで、
ある程度の金持ちや規模の大きな組織じゃないと彼等に依頼することはできなかった。
今の映写魔術とは保存形式が異なっていることもあり、ネット上に勇者ナハトの写真は出回っていない。
精々似てるかよくわからん肖像画くらいだ。
今の母さんの写真もネットには上がっていない。
だから、俺と勇者ナハトが似ていると騒ぎ立てているのは、
主に勇者ナハトの顔を実際に見たことがある連中である。
重斧士「親父の片想いの相手、勇者ナハトだったらしいんだ」
ん?
98 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 13:58:22.61 ID:KFMlrqyGo
重斧士「親父は勇者ナハトに結婚を求めて決闘を挑み、敗北した」
重斧士「一旦身を引く決意を固めたものの諦めきれず、」
重斧士「お袋から逃げながら、再戦に備えて鍛錬を続けていたそうだ」
重斧士「そんな中、勇者ナハトがその身を犠牲にして魔族を封印しちまってよお」
重斧士「すごい落ち込みようだったそうだ」
重斧士「お袋との決闘で負けた原因もそれだったらしい」
青い石「あぁ、君のお父さんが誰か察しがついたけど君お父さんのこと誤解してる」
青い石「君のお父さん、勇者ナハトが女の子だって気付いてたから。ゲイじゃないから」
カナリアは気まずそうにガウェインから顔を逸らした。
青い石「駄目だ私の声聞こえてない」
自分のことをゲイだと思い込んでいるノンケの可能性も出てきた。
人の性的嗜好とは不思議なものである。本人の思い込みであることもあるからだ。
思春期の女子なんかは、濃ゆくなり出した男子を汚いからと嫌悪し、
なんちゃってレズと化すことがある。
99 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 13:59:17.95 ID:KFMlrqyGo
重斧士「勇者ナハトの生まれ変わりだって言われてるおまえに会ったら、」
重斧士「もしかしたら喜ぶかもなあ」
魔剣士「普通に考えてみろ、更に家庭が崩壊するぞ」
重斧士「あ、それもそうだな」
青い石「会っちゃだめ!! というか私が会いたくない!!」
(どんな奴だったんだよ)と俺は心の中でモルに訊いた。
俺はかなり集中すれば魔力でモルと会話することができる。
魔力を分解してこの石の波動に合わせなければならないためちと疲れるが。
青い石「根は悪い奴じゃなかったね。でも思い出しただけで胃がムカムカするよ」
(モルおまえに胃はないだろう)
青い石「段階すっ飛ばして馴れ馴れしく肩を抱こうとしたりして!!」
青い石「決闘して勝ったら結婚してくれっていうのがまずUnsinn!!!!」
青い石「強引だったし!! 全然アルカディアの意思を尊重しないし!!」
(ほーん)
青い石「その点ヘリオス君はかっこよかったよ」
100 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 13:59:51.92 ID:KFMlrqyGo
重斧士「決めた。俺はおまえ達についていくぞ」
武闘家「え?」
魔剣士「いやおまえ育毛剤の原料集めるんだろ」
重斧士「おまえ達と一緒では集められないのか?」
魔剣士「そういうわけでもないが」
重斧士「一人で集めて間違えるよりは、一種類一種類おまえに確認取った方が無難だろう」
魔剣士「ああ確かに」
重斧士「カナリア!」
奴はカナリアの手を握った。
武闘家「え」
重斧士「その……」
武闘家「えっと、あたし達知り合ったばかりだし、」
武闘家「あたし、そういうのはちょっと……」
重斧士「そ、それもそうだな」
重斧士「じゃあ友達から始めさせてくれ!」
武闘家「ええっと……」
重斧士「よろしくな!!」
青い石「押しの強さがお父さんそっくりで胃痛が」
101 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 14:00:43.72 ID:KFMlrqyGo
――
――――――――
魔剣士「今夜はここらで野宿か」
重斧士「晩飯の獣を狩ってくる」
武闘家「ワイルドね」
青い石「カナリアっち」
武闘家「なあに? モルっち」
青い石「ガウェっちのことどう思う?」
武闘家「う〜ん」
武闘家「まだなんだかよくわからないんだけど」
武闘家「いろいろと急で面喰っちゃったわ」
武闘家「でも、今まで逆玉狙いで寄ってくる男はけっこういたのだけど」
武闘家「あんなに真っ直ぐな男の子は初めてよ」
魔剣士「だが見た目で惚れられるのも面倒だぞ」
武闘家「中身で幻滅されたりするから?」
魔剣士「勝手に幻滅してくれるのならいい」
魔剣士「中身を知っても尚容姿目当てで迫ってくる奴が厄介だ」
武闘家「く、苦労してそうね……」
102 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 14:01:25.17 ID:KFMlrqyGo
青い石「まんざらでもない感じ?」
武闘家「そ、そういうわけじゃないわよ!」
武闘家「あたしは……」
武闘家「……………………」
武闘家「エリウス、さっきからパソコン開いて何してるの?」
魔剣士「画像に写ってる植物の種類を割り出すアプリ作ってる」
武闘家「え、すごいわね」
魔剣士「魔術のプログラミングと基本は同じだからそんな難しくもないぞ」
武闘家「そ、そうなの?」
青い石「現代技術はすごいね……旧い魔導学しか知らない私にはさっぱりだよ」
青い石「きっと売れるだろうね」
魔剣士「世界中の植物のデータをぶちこめばまあ需要はあるかもな」
青い石「エリウスは偉いね、妹や弟達のためにいっぱい稼いで……」
武闘家「家族のためにやってるの?」
魔剣士「別に」
103 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 14:02:22.12 ID:KFMlrqyGo
魔剣士「俺にはもう生きてる理由がないからな」
魔剣士「それなら好きなことやって余生を過ごそうと思ったんだ」
青い石「余生とか言う歳じゃないでしょ」
魔剣士「んでまあ、趣味に走ってたら勝手に金が入ってくるようになったんだが、」
魔剣士「ただ貯金されるだけの金には存在意義が無い」
魔剣士「それなら未来のある兄弟達の養育費に充てた方が生産性あるよなと」
魔剣士「そう合理的に判断した。金が無いと喘がれても面倒だしな。それだけだ」
いくら父さんの稼ぎが多いとはいえ、流石に兄弟が増えすぎた。
ただ食っていくだけなら困らないが、
もし全員が進学を望んだら金はいくらあっても足りないだろう。
そうならないよう父さんは子供をそんなに増やす気はなかったらしいんだが、
母さんがやたら産みたがったんだ。
武闘家「生きてる理由がないって、どうして?」
魔剣士「もう喋るのめんどくせえ」
青い石「答えてあげなさい」
魔剣士「ちっ」
青い石「こら! 舌打ちしないの!!」
魔剣士「植物と子孫を残す方法を見つけるのが俺の夢だった」
魔剣士「だが生物を学んでわかったことは、その夢の実現が不可能であることだけだった」
武闘家「……誰かと結婚することは、考えたことないの?」
104 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 14:03:02.78 ID:KFMlrqyGo
魔剣士「ねえな」
魔剣士「人間でも、植物みたいに静かな……そうだな、」
魔剣士「スノーフレークみたいな奥ゆかしそうな子だったら結婚できるかもしれねえけど」
スノーフレーク、別名スズランスイセンの花が辺りに咲いていた。ムラムラした。
その向こうには森が広がっている。
魔剣士「俺、相手を人間として尊重したりとかできないからな」
武闘家「そ、そう……」
青い石「まったくこの子ったら」
重斧士「イノシシ狩ってきたぞ」
武闘家「まあ!」
重斧士「あとなんか森で迷ってる連中拾ってきた」
黒服大男「た、助かった……」
黒服女刀士「あっあの二人は」
ローブを着た連中が数人ぞろぞろと現れた。
連中は服にメダルを付けており、それらにはオディウム教の紋章が彫られていた。
魔剣士「おいそいつら敵」
重斧士「え」
105 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 14:04:51.09 ID:KFMlrqyGo
黒服大男「結界石に魔力を込めろ! 奴の魔力を流し込まれないようにな!!」
魔術師じゃなくても防護壁を張れるように術を施された魔導石だ。
どうやら物理攻撃を防ぐ物ではなく、他人の魔力を遮断することに特化しているタイプのようだ。
あれほど質の良い物はなかなかいいお値段がするはずなんだがな。
全員一つずつ所持しているなんてとんでもないことだ。
大男はローブを脱ぎ捨てた。すごい筋肉だ。
黒服剣士「この男の命が惜しくば武器を捨てて手を上げろ!」
重斧士「おおう」
植物を利用した術には対策を立てられた。
通常の魔術で結界を破壊しようにも、かなりムラムラしているため発動は困難である。
カナリアが使う魔術は主に身体強化術らしく、遠距離は不得意だそうだ。
武闘家「くっ……」
魔剣士「おまえが連れてきたんだからなんとかしろ」
重斧士「おう」
ガウェインはローブを着た剣士を軽々と投げ飛ばした。
黒服女刀士「何っ!?」
奴等は全員間を取ってローブを脱ぎ、臨戦態勢をとった。全員ムキムキだ。
この場にいる人間は俺以外皆武闘派らしい。
106 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 14:07:29.83 ID:KFMlrqyGo
重斧士「久々のケンカだ!! 腕が鳴るぜ!!」
武闘家「はっ! ていっ!」
乱闘と化した。
黒服格闘家「でやっ!」
魔剣士「わー待てって! 俺はケンカとか無理だから!!」
魔剣士「口喧嘩なら負けねえ自信あるけどな!!!!」
急いで地面からスモールソードを拾い上げて抜刀したが、俺は逃げてばかりである。
その昔ケンカを吹っ掛けられた時は、
じいちゃんと取引している商人から習った護身術を使ってその場を凌いだこともあったが、
その術もそう極めたわけじゃない。攻撃を躱すことだけはやたら得意になったが。
黒服格闘家「その剣はお飾りか!?」
魔剣士「だからその通りなんだよ!!」
魔剣士「俺は肉体派じゃねえええええ!!!!」
黒服二刀流「逃がさん!!」
魔剣士「ぎゃあああ!」
魔剣士「研究室に引きこもりっぱなしの院生の軟弱さナメんじゃねえぞ!?」
重斧士「おまえヒョロガリだよなあ」
ケンカ慣れしているガウェインは余程余裕があるらしい。
戦闘中にも拘らず笑いながら話しかけてきた。
107 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 14:08:18.66 ID:KFMlrqyGo
重斧士「肌も妙に白いしまるでモヤシだ」
魔剣士「うっせ! おわっ! ひいっ!」
重斧士「頭は黒いから黒豆モヤシだな!」
魔剣士「誰がブラックマッペだ!! ちくしょう!!」
研究室でのあだ名はユウレイタケだった。そこまで真っ白じゃないわ。
タヌキノショクダイと呼ばれることもあるがそんなことはどうでもいい。
青い石「白い肌に黒髪碧眼はうちの民族の特徴なんだよ」
黒服二刀流「はっ!」
魔剣士「ひうえぇぇ! 暴力反対!!」
黒服二刀流「それでも勇者ヘリオスの息子か!?」
黒服大男「似てねえし母親が浮気でもしたんじゃないのか」
魔剣士「ありえねえよ!! 天地がひっくり返る以上に!!」
俺は無意識の内にスモールソードで大男を斬っていた。
斬るためというよりは突くための剣なのだが、
断ち切り用の剣の訓練を受けていたためか自然と斬撃を繰り出していた。
108 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 14:09:05.21 ID:KFMlrqyGo
使い方を習ったのと違うタイプの剣を帯刀しているのは、
単純にスモールソードが軽くて持ち運びが楽だからだ。
今のヒョロガリっぷりでは重量のある剣をまともに扱える気がしないのもある。
魔剣士「うわあああ斬っちまった! 感触生々しいぃぃぃ!!」
黒服大男「ぐっ……」
黒服二刀流「隙あり!」
魔剣士「うおう!」
どうにか全員倒して縛り上げた。通報したからすぐに兵士が逮捕しに来るだろう。
魔剣士「ぜー……ぜー……」
重斧士「体力ないな! がはは!」
魔剣士「ほっとけ」
俺は後衛なんだ。肉体で解決するよりも頭を使って裏から操る方が得意なんだ。
しかし奴等、結界石を持っていたとは……こちらも何かしら対策しねえと。
109 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 14:10:07.35 ID:KFMlrqyGo
武闘家「運動したらお腹空いたわね。」
イノシシ「ブヒ……」
武闘家「それにしても、よくこんな大物獲れたわね」
重斧士「へへ……もうちょっと待ってろ、今血抜きして解体するからよ」
魔剣士「ひえっ」
重斧士「何ビビってんだよ。狩りやったことねえのか?」
魔剣士「ねえよ、精肉店で売ってる肉しか食ったことねえし」
魔剣士「肉自体あんま食べねえ」
重斧士「だからそんなに貧弱なんだよ。男なら肉食え」
魔剣士「嫌いではないんだが……体質的にどうもな……」
重斧士「そういや、人類最強の男と謳われた勇者ナハトは細身でありながら大剣を振るったって聞いたぜ」
魔剣士「あれチーターだから」
重斧士「チーター? 勇者ナハトは人間じゃなく肉食獣だったのか?」
魔剣士「そうじゃなくてだな、チートをしてる奴って意味で」
武闘家「おいしー」
魔剣士「おいそれ生肉」
110 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 14:10:36.59 ID:KFMlrqyGo
武闘家「あたし実は生肉好きなのよ」
魔剣士「細菌とか寄生虫とかやべえって」
武闘家「何故だかあたしは平気なのよ。生肉食べて体壊したことないの」
魔剣士「おまえ……俺が毒草食ってるの見てドン引きしてた癖に……」
重斧士「お、俺も食ってみようかな」
魔剣士「やめとけ!!!!」
重斧士「えーでもよぉ」
魔剣士「解体さえ済ませたら俺が調理するから!!」
武闘家「エリウス、あなた随分料理上手よね」
魔剣士「母さんがくたばってる時は俺が作る時もあったし」
青い石「へたばってるの間違いだよね?」
魔剣士「一生独り身だからこれくらいはな」
武闘家「そ、そう……」
重斧士「すげー」
111 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 14:11:22.94 ID:KFMlrqyGo
魔剣士「この辺の食べられる野草もたくさん入れた」
魔剣士「素材そのものも好きなんだが、」
魔剣士「加工することにより新たな魅力を引き出すこともできるからな」
魔剣士「料理は趣味の範疇だ」
魔剣士「肉や魚の調理法はあんま詳しくないが、普通に食えるくらいにはできる」
重斧士「充分うめえぞ」
武闘家「おいしい……おいしいわ」
重斧士「複数人でメシ食うのは久々だな……涙が出そうだ」
武闘家「あなたもいろいろ苦労してそうだものね」
重斧士「ああ……家族全員でテーブルを囲んでいた頃が懐かしいぜ」
重斧士「お袋、親父と仲はあんまよくねえが、俺達のことは可愛がってくれてよお」
重斧士「作る料理も粗かったが、味は悪かぁなかった」
武闘家「そう……」
武闘家「あたしの母さんが勉強に厳しかったのは、あたしを想ってのことだし……」
重斧士「どうあっても生みの親だからなあ……」
武闘家「やっぱり、親って……憎めないものよね。ね、エリウス」
魔剣士「さあな」
112 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 14:12:11.38 ID:KFMlrqyGo
武闘家「え……」
重斧士「何言ってんだよおまえ」
魔剣士「俺は母親に愛情を覚えたことなんて一度もねえんだよ」
青い石「こら! この子ったら!! またそんなこと言って!!」
魔剣士「ごっさま。……しばらくこいつ預かっててくれ」
青い石「ちょ」
俺はモルが宿っている石をカナリアに手渡した。
武闘家「何処行くのよ。単独行動は控えるよう言われてるでしょ」
魔剣士「おまえらは離れんなよ」
武闘家「ちょっと!」
魔剣士「性欲は魔術師の大敵だからな。シコってくるんだよ」
武闘家「あ…………そう」
月明かりに照らされたスノーフレークが幻想的で綺麗だ。
重斧士「あいつも反抗期か?」
武闘家「どうなのかしら」
青い石「いつからあんなに素直じゃなくなっちゃったんだろ……」
113 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/11(土) 14:12:38.98 ID:KFMlrqyGo
kokomade
114 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/11(土) 16:41:27.58 ID:jv9S3nswo
乙乙
115 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/12(日) 02:27:25.64 ID:axUt+eAbo
乙
続編待ってた
116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/12(日) 10:13:55.96 ID:h/++tNewo
素直すぎると思う
117 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/12(日) 11:10:01.97 ID:HY4AVdEBO
アルカの浮気を疑われた時に無意識に敵を切ってた=自覚ないけど怒った可能性
根が深そう
118 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:05:06.31 ID:NxR8Nj8go
第五株 紫蘇
魔剣士「おまえ、本当に俺達についてくるならこれからも危険な目に遭うぞ」
魔剣士「奴等、俺とカナリアは生け捕りにしようとしてるらしい」
魔剣士「だから俺達はすぐに殺されることはないだろうが、」
魔剣士「おまえに対しては容赦がないかもしれん」
重斧士「構わん」
重斧士「無償で薬を調合してもらうのはやはり性に合わなかったからな」
重斧士「俺のことは護衛に使ってくれ」
魔剣士「それならまあ助かるな」
やたら強いようだし、前衛が増えるのはありがたい。
魔剣士「あ、わりい電話だ」
車を停めて電話に出た。知らない番号からだ。
119 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:06:53.12 ID:NxR8Nj8go
次男『にいちゃーん! もりもり?』
魔剣士「アルバか?」
次男『進学祝いに携帯買ってもらったんだ!』
魔剣士「おーよかったな」
五歳下の弟のアルバは上級学校に入学した。卒業後は士官学校に進むつもりらしい。
父さん似だが眉尻は垂れ下がっていて人懐っこく、愛嬌がある。
駄洒落が好きなところは母さんそっくりだ。
小さい頃は気が優しすぎていじめられることもあったが、今は元気に過ごしている。
魔剣士「一人部屋はどうだ」
次男『めっちゃたのしー! ありがと兄ちゃん!』
俺が使っていた部屋はアルバに譲った。
俺はこの旅が終わっても実家に帰るつもりはない。
そのうち大学の近くで下宿するか家を買うかしようと思っている。
120 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:08:02.31 ID:NxR8Nj8go
武闘家「アルバ君? あたしも話したーい!」
次男『あーカナリア姉ちゃんだー!』
カナリアはアウロラやアルバと仲が良い。
ちなみにアルバの名付け親はアキレスさんだ。
彼の国の古語で日の出という意味の言葉らしい。
武闘家「久しぶり、元気? うん、うん、また一緒に遊びたいね!」
武闘家「そっかあ、皆楽しくやってるんだね」
武闘家「じゃあね!」
重斧士「おい、アルバとは何者だ! どんな関係なんだ!?」
魔剣士「俺の弟だ。カナリアとはただの友達だから落ち着けって」
重斧士「そ、そうか」
重斧士「弟か……欲しかったな」
武闘家「あたしにも弟はいるけど……小さい頃は可愛かったのになあ」
武闘家「段々生意気になってきちゃって」
121 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:09:29.74 ID:NxR8Nj8go
魔剣士「アルバは今でも素直だな。アルクスは元から俺のことが嫌いみたいだが」
下の弟は今年で四歳になる。
生まれた時に虹がかかっていたため、古代言語で虹を意味する言葉を名前にしたらしい。
武闘家「あなたそういえば今何人兄弟?」
魔剣士「自分を含めて七人だ」
武闘家「あら〜増えたわね〜」
重斧士「おまえの親……仲良いんだな……」
青い石「弟……あーくん……」
武闘家「モルにも弟さんがいたの?」
青い石「年の離れた弟がね」
重斧士「……誰と喋ってるんだ?」
武闘家「ああ、この石に魂が宿ってるのよ」
重斧士「お、おう?」
122 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:10:01.50 ID:NxR8Nj8go
青い石「エリウスー北の大陸行こー」
魔剣士「ええぇ……やだよ寒いじゃん。俺寒いの苦手なんだって」
青い石「ヤダ!! あーくん! あーくんに会いたい!!」
青い石「『にいちゃま、にいちゃま』っていつもついてきたあーくん……!」
青い石「あ゛あぁーぐぅん……うううぅぅぅぅぅううう!!!!」
魔剣士「そういうところ母さんとそっくりでイラつくんだよ!」
青い石「ほんとあーくん可愛かったんだから!!」
魔剣士「いくら可愛かったにしても今はもう50代のおっさんじゃねえか!」
青い石「北の大陸!! 行きたい!!」
魔剣士「わかったから! 真夏にな!!」
青い石「ヤッタァァアアア!」
武闘家「……前から気になってたけど、モルって一体何者なの?」
魔剣士「俺の母方のじーちゃん」
武闘家「え……にしては随分扱いがぞんざいよね」
青い石「ほんと困っちゃう」
重斧士「会話に……入れねえ……」
123 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:11:17.41 ID:NxR8Nj8go
町に着いた。
カナリアはこの公園のすぐ傍の店で日雇いの仕事を見つけ、
ガウェインもそれについていった。客寄せをやっているようだ。
青い石「ブロードソードでも買ったらどうだい?」
魔剣士「やだよ重いしかさばるし」
青い石「じゃあスモールソードの使い方を憶えようか」
魔剣士「えー、適当に振ってりゃそれでよくね」
青い石「刺突用の剣には刺突用の剣の効率のよい攻撃方法があるんだよ」
魔剣士「指南書でも買えばいいのか」
青い石「その必要はないよ。スモールソードの扱い方なら私がよく知っているからね」
青い石「当時の貴族にとって、スモールソードは装飾品であると同時に護身具だったんだ」
青い石「生前は剣術大会で優勝し続けたこともあってね」
青い石「スズメバチのモルちゃんと名を馳せたものだったよ」
魔剣士「貴族のお遊びの剣術じゃないだろうな」
青い石「失敬な。ちゃんと実戦で通用するレベルだったよ」
魔剣士「ふーん」
124 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:12:44.67 ID:NxR8Nj8go
青い石「まあ、憶えないよりマシだから」
魔剣士「で、どう構えればいいんだ?」
青い石「ちょっと体動かすよ」
モルが自分の魔力を俺の魔力の一部に同調させた。
青い石「こう相手を見据えて……刺す!」
魔剣士「おおう」
魔剣士「俺が憶えなくても、おまえが俺の体を使って戦えばよくないか?」
青い石「無理無理ずっと起きてられるわけじゃないもん」
しばらくモルに操られて剣を振るった。
魔剣士「意外とこの剣も力要るんだな」
青い石「筋力が足りないね。タンパク質摂らなきゃ」
魔剣士「大豆食うか……」
輸入品であればこの季節でも売っているはずだ。
「ふざけおって!!」
カナリアが働いている店の方から怒鳴り声が聞こえた。
125 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:13:43.45 ID:NxR8Nj8go
どうやら怒っているのは老年の貴族のようだ。肌の白さは北の大陸の住民のものだ。
従者達はめんどくさそうな表情で控えている。
老貴族「このシャツはいくらすると思っている!?」
店長「申し訳ございません!!」
店員が貴族の服にトマトソースをこぼしてしまったらしい。
店の連中は平謝りしている。貴族相手だしさぞ怖かろう。
老貴族「あああ痒い! 私はトマトアレルギーなんだ!!」
従者「旦那様、すぐにお召し替えを」
老貴族「こんなところで脱げるか!」
店長「君、タオルを持ってこい!! すぐにだ!!」
貴族の怒りが収まる様子は無い。
老貴族「客を殺す気か!?」
店長「まことに申し訳ございません……すぐにお詫びの品を用意いたしますので」
店員「ごべんなざいぃぃぃ」
126 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:15:41.55 ID:NxR8Nj8go
老貴族「まったく、せっかくの引退旅行だというのに……」
老貴族「覚悟しておけ、この店には相応の報いを受けてもらうぞ」
店員「わだじが全財産払ってお仕事辞めまずがら! どうかお店はお助けぐだざい!」
従者「旦那様、命に係わるわけではございませんし」
従者「ほんのちょっと飛んだだけじゃないですか」
老貴族「黙れ!」
従者「う……怒り出したら止まらないんだから」
武闘家「相応の報いとはどういうことですか?」
武闘家「服とアレルギーに関してはお気の毒に存じます」
武闘家「しかし、服のクリーニング代と治療費、法に沿った額の額の慰謝料を払うだけでは足りませんか?」
店長「か、カナリアちゃん」
老貴族「なんだこの生意気な小娘は! 私を誰だと思っている!?」
武闘家「過剰な賠償の請求を行いますか。それとも権力を濫用し、このお店を潰しますか」
武闘家「いずれにせよ犯罪です。貴族であっても処罰の対象となります」
重斧士「かっけぇ……」
老貴族「うぐぐぅぅううう」
127 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:16:45.27 ID:NxR8Nj8go
魔剣士「炎症を起こしているところを見せていただけますかね」
老貴族「なんだおま……えは…………」
老貴族「…………!?!?」
青い石「あーこのじいさんもしかして」
魔剣士「ちょっと失礼。ここか……赤くなってんな」
武闘家「今度は何食べてるの?」
魔剣士「シソの実の塩漬け」
魔剣士「治療しました。ついでに魔法で服も綺麗にしておきます」
魔剣士「しみ抜き<ステイン・リムーブ>」
弟や妹がよく服を汚すため、汚れを落とす魔法は習得している。
老貴族「きさっ、もっもるっもっもっるげっ」
魔剣士「これでもう何も問題ないでしょう」
老貴族「ひぃぃぃぃぃぃぃ」
魔剣士「なんなんだよ……」
青い石「ごめんちょっと体貸して」
魔剣士「ちょ、おい」
128 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:19:20.56 ID:NxR8Nj8go
魔剣士(モル憑依)「ギーゼル? ギーゼルベルトじゃないか?」
老貴族「もるげっろっろっ」
魔剣士(モル憑依)「ほら、落ち着いて。深呼吸」
老貴族「すー、はー……すーげほっ」
老貴族「モルゲンロート!?」
魔剣士(モル憑依)「いやあ久しぶりだね、何十年ぶりだい?」
老貴族「成仏しとらんのか!?」
魔剣士(モル憑依)「うむ。今は孫の体を借りているのだよ」
重斧士「どうしたんだあいつ」
武闘家「後で説明するわね」
店員「えぶえぇぇぇええごめんなざいぃぃぃぃ」
魔剣士(モル憑依)「ほら、あの女の子、あんなに謝っているじゃないか」
魔剣士(モル憑依)「そろそろ許してあげないかい」
老貴族「わかったから! もう怒らんから成仏しろ幽霊!」
129 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:20:11.40 ID:NxR8Nj8go
魔剣士(モル憑依)「しかし、こんなことで店を脅すなんて一体どうしたんだ」
魔剣士(モル憑依)「他に何か悩みでもあるんじゃないのかい」
老貴族「き、貴様には関係ない!」
魔剣士(モル憑依)「ここで再会したのも何かの縁だ。相談に乗らせてはもらえないかね」
老貴族「なんか目尻は吊り上がっとる気がするが、」
老貴族「その物腰の柔らかさ……本当にスズメバチのモルちゃんなのだな……」
武闘家「立ち振る舞いが変わっただけで別人に見えるわ……中身は本当に別人なのだけど」
俺の体返せや。
老貴族「アレルギーを妻に理解してもらえなくてな……」
魔剣士(モル憑依)「おお、結婚していたのだね! おめでとう!」
老貴族「嫌味か? エルディアナを娶った貴様に祝われても全く嬉しくなんだが?」
魔剣士(モル憑依)「まあまあ続けてくれ」
老貴族「……孫の教育に悪いから好き嫌いを直せと言われてしまったのだ」
老貴族「好き嫌いとアレルギーは違うというのに」
魔剣士(モル憑依)「ふむ」
130 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:20:50.05 ID:NxR8Nj8go
老貴族「先程もそのことで喧嘩してしまった」
魔剣士(モル憑依)「それでトマトに過剰反応してしまったのだね」
老貴族「完全にカッとなっていた……」
老貴族「トマトだけでなく、ナスやパプリカ、ジャガイモも食べられなくてな」
ナス科がだめなんだな。
老貴族「本当は食べたいのだがな……昔は普通に食べることができたのだ」
老貴族「はあ……」
後天性のアレルギーか。食べたくても食べられないのはつらいだろう。
老貴族「妻の理解を得られないと、このままでは死んでしまう……」
魔剣士(モル憑依)「ううむ……どうにか理解してもらいたいものだね」
老貴族妻「ちょっとあなた! こんなところにいたのね!」
魔剣士(モル憑依)「おお……クラリッサじゃないか……そうか、彼女と結婚したのか」
131 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:21:20.62 ID:NxR8Nj8go
老貴族「しばらくほっといてくれ……」
老貴族妻「ほら、トマトを克服するわよ!」
老貴族「無理だと言っておるだろう」
老貴族妻「少しずつ慣らせば治ります!」
アレルギーの原因を少しずつ食べてアレルギーを治療できた例はあるっちゃあるが、
専門家の監督下でないと非常に危険だ。
魔剣士(モル憑依)「待ちたまえ」
老貴族妻「!?!?」
老貴族妻「エリウス!? エリウス・レグホニアじゃないの!!」
老貴族妻「キャーほんとモル様そっくり! 私ファンなんです!」
貴族の奥さんは若返ったかのようにはしゃぎ出した。
老貴族「もうやだ」
132 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:22:12.13 ID:NxR8Nj8go
老貴族妻「この人ったら、ある時からトマトを食べられなくなってしまったんです」
老貴族妻「好き嫌いが直るお薬はありませんでしょうか」
(おいモル代われ俺が説明する)
魔剣士「……ふう」
魔剣士「好き嫌いとアレルギーは違うものでして」
魔剣士「薬により症状を抑えることは可能ですが無理に食べさせると死にます」
アレルギーの危険性について説明した。俺の言うことは素直に聞き入れたようだ。
老貴族妻「私は……主人に酷いことをしていたのですね……」
魔剣士「アレルギーの治療について研究している知り合いを紹介しましょう」
魔剣士「治る可能性は0ではありません」
老貴族「お、おお……すまないな」
魔剣士「じゃあ俺はこれで……うっ」
133 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:24:39.41 ID:NxR8Nj8go
ぶっ倒れて店の奥に運ばれた。
無理にモルの魔力が俺の魔力の一部を侵食して体を操っていたせいで気持ちが悪い。
店長「あなたには助けられました。どうぞここで休んでください」
魔剣士「ざけんなよクソじじい」
青い石「ごめんって……生前の知り合いと会ったらつい懐かしくなっちゃって」
老貴族「……何故成仏しとらんのだ」
魔剣士「未練たらたらの状態で死んで、今は惰性でこの世に留まってるらしいっすよ」
老貴族妻「モル様……」
老貴族「おまえは私とあいつのどっちが好きなんだ!」
老貴族妻「愛してるのはあなただけよ! 好きの種類が違うの」
老貴族「うう……やはり私はモルゲンロートが嫌いだ」
老貴族妻「あなたこそいまだにエルさんのこと好きなんじゃないの」
老貴族「とっくの昔に過去の思い出として葬っとるわ」
老貴族「しかしまあ……奴も立派な孫を持ったもんだな」
老貴族「何か礼をしたいのだが、欲しい物はないかね」
魔剣士「……亜鉛がたくさん含まれた食いもんがほしいっす」
店長「あ、私も用意します!」
いつ襲われても通常の魔術を使えるよう毎朝抜いているのだが、
その分亜鉛の消費量が増えてしまっている。俺は禿げたくない。
134 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:25:11.85 ID:NxR8Nj8go
しばらく休んで店を出た。歩いて吐き気を誤魔化したかった。
青い石「あいつが平民相手に威張ってるのを窘めたら決闘する流れになって、」
青い石「見事私が勝利したんだけど、それがコーレンベルク卿の目に留まってね」
青い石「そこからエルディアナとの交際がスタートしたんだ」
魔剣士「そうだ、北の大陸行くならひいじいちゃんの顔も見とくか」
魔剣士「もう九十近いだろ」
青い石「え……」
魔剣士「会いたくないのか?」
青い石「合わせる顔が無い」
魔剣士「どういうことだよ」
青い石「一生娘さんを守りますって彼に誓ったのに、私あっけなく殺されちゃったから」
魔剣士「相手が魔王だったならしゃーねえだろ」
青い石「とにかく申し訳なくて」
魔剣士「俺がひいじいちゃんに会ってる間は寝てりゃいいだけだろ」
青い石「お義父さんの魔感力は凄まじいから絶対ここにいるのバレる……つらい」
魔剣士「……なあ」
135 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:28:24.63 ID:NxR8Nj8go
魔剣士「モルってそんなに俺と似てたのか」
青い石「そうだね。エリウスはお母さん似というよりは私に似ているよ」
青い石「男女差もあるし、世間で言われているほど『勇者ナハト』と瓜二つじゃない」
魔剣士「そうか」
青い石「まあ、誰に似ていようが、君は君だよ」
自分の容姿に関してはいい思い出が何一つない。
この国の生まれなのに外国人扱いされたり、女に執着されたり、
男からは無駄に僻まれたりと面倒なことばかり起きる。
クラスで劇をやることになった時は、髪と肌の色を理由に白雪姫役を押し付けられそうになったし、
大学の学祭では先輩の頼みで勇者ナハトのコスプレをさせられた。ちくしょう。
父さんに似たアルバが羨ましいくらいだ。
青い石「いくら前の依り代よりも魔力伝導率がいいとはいえ、力を使い過ぎちゃったな」
青い石「当分寝るよ」
魔剣士「さっさと永眠しろよ……」
女「おまえ!!」
魔剣士「うおう」
三十代ほどの女に投げられた石をすかさず掴んだ。
136 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:28:59.68 ID:NxR8Nj8go
女「勇者ナハトの生まれ変わり……!」
魔剣士「ちげえよ」
女「覚悟!」
女はでかい石を拾って俺に襲いかかってきた。
戦いの経験なんてない、ただの一般人だろう。余裕で攻撃を避けることができる。
だが、下手に反撃すればこっちが加害者扱いされかねない。適当に逃げよう。
女「おまえのせいで私の人生は滅茶苦茶だ!」
魔剣士「知るかよ」
女「おまえのせいで!! おまえのせいで!!!!」
目にはとんでもなく強い殺意が宿っている。
女「また壊しに来たのか!! 私の家庭を!!」
やべえ、体が上手く動かない。尻もちをついた。
魔剣士「意味わかんねえよ」
137 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:29:56.30 ID:NxR8Nj8go
女「おまえの前世に、私と父さんに血の繋がりがないことが暴かれた」
女「私は父さんにも母さんにも捨てられてこの世を彷徨うことになったんだ!!」
「ナハト」として生きていた頃の母さんはこの地方には来ていない。
この女は恐らく相当遠くからここに流れ着いたのだろう。
魔剣士「母親が浮気してたってことか? 恨むなら母親のだらしのなさを恨めよ」
女「おまえさえいなければ幸せに暮らせたのに!!」
魔剣士「おまえさっき『また壊しに来たのか』っつったよな」
魔剣士「おまえ自身が後ろめたいことでもやってんのか?」
女「ち、違う! 私はやってない!!」
女「今すぐ殺してやる!!」
女は石を握った腕を振り上げた。
子「おかあさーん、どこー!?」
子「!?」
子「なにやってるの!?」
138 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:30:35.21 ID:NxR8Nj8go
女「あ……」
子「お兄さん大丈夫!?」
女「…………」
子「お母さんどいて!!」
女「あのね、これはね、家庭を、あなたを守るためにね、この人は悪魔の生まれ変わりだからね、」
子「そんなんだからお父さんに浮気されるんだよ!!」
女「っ……」
女「知って、たの? お父さんが、浮気してること……」
家庭を維持するために、旦那の浮気を見て見ぬふりをしていたらしい。
子「うちの家庭なんてとっくに崩壊してるんだよ」
子「教会にも疑われてるから、罰されるのも時間の問題だ」
女「あ……ぁ…………いやああああああああああああああああ!!!!」
うるせえ。
女「全部……全部あいつのせい……ナハトが来てから私の人生は……」
子「お兄さん、怪我してませんか? ごめんなさい。うちの母、思い込みが激しいんです」
子「訴えられても文句は言えません」
魔剣士「……まあ、よく自分の母親を見とけよ」
139 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:31:31.39 ID:NxR8Nj8go
クラクラする。やっぱ寝とけばよかった。
武闘家「いた! 心配したんだから!」
魔剣士「……」
武闘家「一人でこんな人気のない所をフラフラしてたら危険でしょ」
武闘家「変装もしてないし、体調だって悪いのに」
魔剣士「ずっと他人の一緒ってのも疲れるんだよ」
武闘家「気持ちはわかるけど、いつオディウム教徒が襲ってくるかわからないじゃない」
重斧士「カナリアの言う通りだ」
魔剣士「わかったわかった。もう仕事は終わったのか?」
武闘家「うん。お給料だけじゃなくて、食材とかいろいろいただいちゃった」
武闘家「今夜はあたしが何か作るわね」
魔剣士「ああ、そうか」
……母親がどれほど恨まれていようが、どれほど汚い人間だろうが、
俺には一切関係ない。
関係ないんだ。
140 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:31:59.65 ID:NxR8Nj8go
翌朝。
筋肉痛はするものの、体調は一応よくなったから厠に行って抜いた。
朝っぱらから疲れた。俺は寝台に倒れ伏した。
重斧士「おまえ、抜き終わるの早くないか?」
魔剣士「早漏だって言いたいのか?」
重斧士「そうじゃなくてよ……一回あたり十回は出すだろ?」
魔剣士「出さねえよ?」
どんだけ体力があるんだこいつは。
しかし、それだけ出すなんて……。
魔剣士「……おまえも亜鉛摂っとけよ。禿げるぞ」
重斧士「出すと禿げるのか?」
魔剣士「らしいぞ。ほどほどにしとけ……」
141 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:35:24.60 ID:NxR8Nj8go
武闘家「おはよ。朝ご飯も用意したわよ」
重斧士「カナリアの飯は個性的で美味いな」
武闘家「こっちの地方の食材はあんまり詳しくないんだけど、」
武闘家「それっぽく料理できてよかったわ」
魔剣士「エスト大陸っぽさがあっていいな」
武闘家「そう? おいしい?」
魔剣士「ああ」
武闘家「よかった……昨晩はあなた反応なかったから」
魔剣士「疲れて食欲なかったからな……」
重斧士「おかわり頼む」
町中に出て植物の観察に向かった。
しかし、いくら精液を空にしても、植物を見ると僅かだが性欲が沸いてつらいな……疲れてるってのに。
道行く男が何か話している。
男「くくく……旭光の勇者ヘリオスも大したことはなかったな」
今、なんて言った?
男「はーっはっはっはっはっは!!!!」
142 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/06/15(水) 18:36:00.22 ID:NxR8Nj8go
ここまで
143 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/06/15(水) 23:39:16.67 ID:6Hy2YoUJo
変態過ぎる方が気になって重要そうな台詞をスルーしそう
144 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/06/16(木) 21:57:10.70 ID:HhKsltcMO
変態だー!
145 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/06/19(日) 23:33:55.63 ID:tqkG85/IO
ハゲ
146 :
◆qj/KwVcV5s
[sage]:2016/06/24(金) 00:36:22.19 ID:1NI8P9+2o
生きてますが少し忙しいので更新まで時間かかりそうです
147 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/06/24(金) 01:49:07.60 ID:u9EFyy4y0
了解です
148 :
◆qj/KwVcV5s
[sage]:2016/06/30(木) 22:28:21.02 ID:vXM7S42/O
明日か明後日には更新します多分
149 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/06/30(木) 22:42:50.41 ID:jp6ygg/8o
待ってた
150 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/06/30(木) 23:14:07.75 ID:Ko6gl987O
乙
151 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/07/01(金) 22:46:06.95 ID:adNNrz6Bo
第六株 熱帯林
男「まさか辛い物大食い大会で奴に勝っちまうとはなあ!」
男友「おまえそれ二ヶ月前からずっと言ってるじゃねえか」
男「別にいいだろお嬉しいんだからよぉ」
なんだそんなことか。心配して損した。
武闘家「お絵描きしてるの?」
武闘家「あら、上手ね……」
魔剣士「植物を描くのだけは得意だ」
武闘家「今時お手軽に写真撮れるのに、どうして絵にしてるの?」
武闘家「あ、別に馬鹿にしてるわけじゃなくてね、ただ気になって」
魔剣士「自分の手で植物の魅力を表現するのが楽しいんだ」
魔剣士「絵と写真とでは表現できるものが違うからな」
武闘家「そう……それもそうね」
152 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/07/01(金) 22:46:32.86 ID:adNNrz6Bo
武闘家「これだけ上手ければ、イラストレーターとしてやっていけるんじゃない?」
魔剣士「もうやってる」
武闘家「え?」
魔剣士「自己満足のために描いていた植物画をまとめて出版したらそこそこ売れた」
自慰用の植物画は昔からしばしば自作している。
魔剣士「それ以来、時折挿絵の依頼が入るようになってな」
武闘家「あなた……本当に多芸よね」
魔剣士「そうか?」
魔剣士「特技がやたら多い奴なんていくらでもいる」
魔剣士「大学行ってみろ、変な奴たくさんいるから」
武闘家「…………」
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