魔剣士「やはりフキノトウは最高だ」武闘家「えっ?」

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746 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/04/11(火) 23:17:46.35 ID:Io1ZmpR2o

魔剣士「見るのもいいけどローズティーにもしてえな」

貴族「メイドがこしらえたものがある。飲むかい」

魔剣士「ひえっ」

わりと近くにいることに気が付かなかった。

魔剣士「いただきます。できればテイクアウトもしたいです」

貴族「好きなだけ渡そう」

魔剣士「あざます」

貴族「…………」

魔剣士「なんでそんな悲しそうな顔してんすか」

貴族「…………」

いっけね聞いちゃいけないことだったかな。

貴族「……彼女と最後に会った時、私は彼女がアルカディアであることに気が付かなくてね」

貴族「酷いことを言ってしまった。……言わせてしまった」

魔剣士「…………」

貴族「君の姿を見ていると、その時のことを思い出してしまってね」

すみません。
747 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/04/11(火) 23:18:22.32 ID:Io1ZmpR2o

貴族「彼女にこの薔薇園を見せることが、子供の頃の私の夢だった」

……結婚指輪をしているから既婚ではあるのだろうが、
若い頃のことには何かと悔いが残っているのだろう。

魔剣士「見せたいなら、俺が見せますよ。写真になりますけど」

幸い携帯のカメラ機能は生きていた。

撮影が特別得意というわけではないのだが、被写体が植物の場合は別だ。
プロのカメラマン並みの写真を撮ることができる。

貴族「……彼女はいい息子をもった」

どうだろう。俺はろくな息子じゃないと思う。親不孝ばっかで。

……母さん達、生きてるのかなあ。
748 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/04/11(火) 23:22:23.95 ID:Io1ZmpR2o

貴族「君の車は修理に出している。……修理の見通しは立たないそうだ」

マジかよ……。

魔剣士「携帯とパソコンも修理に出したいんすけど、いい業者さんご存じじゃないですかね」

貴族「すぐに呼ぼう」

魔剣士「助かります」

メイドさん「ローズティーをお持ちいたしました」

魔剣士「どうも」

カップに浮かべられた花弁が何とも愛らしい。

魔剣士「……うめえ」

優雅な香りが神経を刺激する。

魔剣士「後で作り方教えてもらっていいすか」

メイドさん「すみません、門外不出でして」

貴族「いいよ」

メイドさん「え、いいのですか?」

魔剣士「あざっす。人に教えたりネットに上げたりはしないんで」

秘伝のレシピゲットだぜ。

精霊王「しかし美味だなこれ」

魔剣士「ほんと美味い」
749 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/04/11(火) 23:23:06.50 ID:Io1ZmpR2o

魔剣士(なんだ今の声)

精霊王「生命の結晶の力が琥珀に馴染んできてさあ」

精霊王「思念体として魂の部屋の外に出られるようになってきたんだよ」

魔剣士(は?)

精霊王「説明しよう。死後、精神体は主に己の魂にある自室で過ごすのだ」

精霊王「だが俺は極めて強力な生命のエネルギーを浴びたことにより、」

精霊王「この琥珀越しに魂の外の世界と干渉できるようになったのである」

魔剣士(は?)

精霊王「いやだからおまえの前世である俺がおまえに話しかけられるようになったんだよ」

精霊王「ピンチの時に琥珀光ってたろ、あれ俺が助けてやったんだよ」

魔剣士(ふーん)

魔剣士(……名前なんだったっけ)

精霊王「おまえの名前俺から来てるんだけど」

魔剣士(え、そうなの)
750 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/04/11(火) 23:23:39.89 ID:Io1ZmpR2o

精霊王「おまえの体に宿った時、おまえのおっかさんの夢の中で」

精霊王「『我が名はイウス!』って名乗ったら」

精霊王「エルディアナのエルとくっつけてエリウスになった」

魔剣士(マジかよ)

精霊王「これでもう忘れないだろう少なくともファーストネームは」

魔剣士(そういや似たような話母さんから何回も聞かされてたけど今の今まで忘れてた)

青い石「ひどい」

魔剣士(聞こえてんのかモル)

青い石「うん」

背後霊が増えてしまった。

白緑の少女「……イウス?」

精霊王「俺のスフィィィィィ!!」

白緑の少女「イウス、イウス!」

ユキが泣きながら琥珀にくっついている。
751 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/04/11(火) 23:24:21.88 ID:Io1ZmpR2o

そりゃあなあ、死に分かれた恋人と話せたら泣いて喜ぶよなあ。
薔薇の棘が突き刺さったかのような痛みが胸に走る。

精霊王「敵の術を捻じ曲げて助けてやったんだから感謝しろよなー」

魔剣士(琥珀に魔力をごっそり抜かれたの、あんたの仕業だったのか)

魔剣士(……ってことは、ラヴェンデルは)

精霊王「生きてると思うけど何処に飛んだかわからん」

精霊王「植物が生えてる場所にさえいれば、」

精霊王「多少時間はかかるかもしれんがそのうち精霊が情報を寄越すだろう」

魔剣士(砂漠のド真ん中や雪山に飛んでたら)

精霊王「諦めてくれ」

……生きている可能性があるというだけでも希望が持てる。
母さんに知らせないと。

精霊王「礼の1つでも言ったらどうだ」

魔剣士(ありがとうございます前世様!)

青い石「孫を助けていただきましてありがとうございますありがとうございます」
752 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/04/11(火) 23:25:01.69 ID:Io1ZmpR2o

魔剣士「…………」

精霊王「その体と魔力の回復し具合じゃあろくに行動できねえだろ」

精霊王「そわそわしてても仕方ないぞ」

魔剣士「…………」

精霊王「とにかく今は休んどけ」

「おい通せ! 中に入れろ!」

「どうかお帰りください」

「通せと言っている!」

貴族「また来たか……」

魔剣士「なんすかこの言い争い」

貴族「ローズティーのレシピを教えろとしつこく言ってくる喫茶店の店主がいてね」

魔剣士「よく貴族にそんなことできますね」

貴族「彼自身は平民なのだが、どこぞの王族の血を引いているらしくてね」

あーいるいる、先祖が王侯貴族だからって自分も偉いと勘違いしてる奴。
753 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/04/11(火) 23:25:36.49 ID:Io1ZmpR2o

執事「お引き取りくださ……あああああ」

喫茶店主「あのローズティーのレシピを寄越せ! 利益の一部は払ってやる!」

喫茶店主「悪い話ではないだろう。これ以上勿体ぶるのであれば手段は選ばんぞ」

貴族「ふう……」

魔剣士「脅迫じゃないですかねそれ」

喫茶店主「なんだこのボロボロの男は!」

魔剣士「俺なりにおすすめのレシピ教えるんで勘弁してさしあげてくださいませんかね」

喫茶店主「おまえのような若造がレシピの1つも持っているものか!!」

魔剣士「あ???????????」

魔剣士「俺一応料理の道では有名人なんですけど???????」

魔剣士「俺が運営してる料理教室サイトは毎日1000万PVいただいてるんですけどぉ!?!?!?!?!?!?」

喫茶店主「で、出まかせを……あっ」

喫茶店主「ししししかし所詮は平民だ!」

魔剣士「あんたこそ平民だろ」

腹が立ったので、回復しかけの魔力で簡単な魔法を発動した。
754 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/04/11(火) 23:26:15.30 ID:Io1ZmpR2o

喫茶店主「うっ」

青い石「何したの」

魔剣士(あいつの鼻に濃縮したとある成分を送り込んでやったんだが)

魔剣士(薔薇ととあるきったねえものはにおいの成分一緒だって知ってた?)

青い石「え、わかんない」

喫茶店主「うぉげえええげほっげほっ」

魔剣士(ヒントというか答えは『イッヒ フンバルト デ』)

青い石「ああうん言わなくていいよ」

喫茶店主「なんだこの臭いはあああああああ覚えていろ!」

奴は逃げ帰っていった。

魔剣士「ちょっと屋敷に簡単な術式を取り付けていいですかね」

貴族「か、構わんが」

魔剣士「……よし」

魔剣士「これであの人が来る度に、あの人の鼻を便臭が襲うんで」

魔剣士「あの人はもうこの屋敷に入れないっす」

貴族「う、うむ」

魔剣士「あ、バッテリーの補充はお忘れなく」

貴族「た、助かった……よ……?」
755 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/04/11(火) 23:26:42.21 ID:Io1ZmpR2o

魔剣士「善行を積むのって気持ちいいな」

青い石「やり方が汚すぎる」

……回復しきらない状態で魔法使ったから疲労がやばい。

魔剣士「薔薇園のど真ん中で寝てていいすか」

貴族「い、いいよ」

薔薇の精霊達に元気を分けてもらおう。
愛されてる子達はバイタリティに溢れてて最高だ。

魔剣士「ふぅー……」

白緑の少女「風邪、引きますよ」

魔剣士「ユキの愛があったかいから大丈夫だよ」

精霊王「あ、それ俺が奪ったから。というか返してもらったから」

魔剣士「ちょっと待てや」

白緑の少女「イウス!!!!」
756 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/04/11(火) 23:27:10.97 ID:Io1ZmpR2o

白緑の少女「…………」

魔剣士「両方好きでいていいよって言ったの俺だし」

魔剣士「俺にも愛を注いでくれたらそれでいいから」

ユキが申し訳なさそうにしながら添い寝してくれた。可愛い。

精霊王「なんだかんだで器のでかい今生だな」

どうだろう。

青い石「お父さんに似たんだよ」

自分に自信がないから諦めているだけかもしれない。
負い目を感じているユキに安心感を覚えるのも、やっぱり自信のなさの顕れなんだろう。

他人が失敗してるのを見たらほっとすることあるでしょ。
それと似たような……感じ…………ねっむ。

――――――――
――
757 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/04/11(火) 23:27:39.62 ID:Io1ZmpR2o

2日後

貴族「……随分回復したようだね」

寝まくってたし、ヴァルターさんが呼んだ治療師の腕が良かったから早く回復できた。

車も今日中に直るらしい。
見通しが立たないと言われたのは、俺の車がフルオーダーであるために車種が特定できなかったからだったらしい。
設計書を提出してからはスムーズに修理が進んでいる。

貴族「この記事を見てみなさい」

新聞を出された。この間の戦いについて記述されている。
アークイラが前に出て、トップには逃げられたものの呪術師連中のほとんどは倒したらしい。

やっぱばけもんだわあの人。
父さんも生きている。母さんについては……何も書かれていない。
758 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/04/11(火) 23:28:08.45 ID:Io1ZmpR2o

業者「携帯とノートパソコンをお届けに上がりました」

魔剣士「データは……」

業者「無事です」

よかった。

魔剣士「もしもし父さん」

戦士「……エリウス!? おまえ……」

魔剣士「ラヴェンデルも生きてるかもしれないんだ」

戦士「そうか……よかった」

魔剣士「……母さん、どうしてる?」

戦士「……アークイラ君に強力な眠りの魔術をかけてもらった」

母さんが起きたら、きっとオディウム神は更に憎悪を吸うだろう。
眠らさざるを得ないんだ。

魔剣士「こっちの詳細は後でメールで送るから」

もう一度新聞に目を落とした。
オディウム神は今にも復活しかかっているそうだ。
759 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/04/11(火) 23:29:40.67 ID:Io1ZmpR2o

車を引き取りに行くため外に出た。

魔剣士「あ……ピカピカだ……」

涙が出た。

魔剣士「……オディウム神って一体どうすりゃいいの」

精霊王「俺そういうのそっちのけで来世の体探し回ってたからあんまよくわかんねえや」

精霊王「とりあえず他の大精霊に話聞きに行くか」

白緑の少女「ここから最も近くにいる大精霊様は……シレンティウム様です」

精霊王「げっ、俺あいつ苦手なんだよなあ」

魔剣士「どんな奴だそれ」

精霊王「シレンティウム=ラピスラズリィ。融通が利かない堅物だ」

青い石「ラズ半島の守護神だよ」

魔剣士「ってことはモルの故郷に行きゃいいんだな」
760 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/04/11(火) 23:30:06.67 ID:Io1ZmpR2o

魔剣士「お世話になりました」

貴族「いつかまた顔を見せてくれ」

魔剣士「はい」

挨拶を済ませて町を出る。少々名残惜しいが、そう長く滞在する時間はない。

精霊王「他の大精霊のとこ行かない?」

白緑の少女「我がままを言う余裕はありませんよ」

ラズ半島……ラピスラズリの産地。母さんの故郷。

魔剣士「モルの墓参りかあ〜」

青い石「複雑な気分なんだけど」

南東に向かって車を走らせる。
南の空で、僅かに黒が揺れた気がした。
761 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/04/11(火) 23:32:38.14 ID:Io1ZmpR2o
ここまで
>>571でうっかり青い石が喋ってるのはあれです、消し忘れ的なミスです……
762 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/12(水) 09:43:41.65 ID:BFobnxWDO
乙ぅ
待ってたのよ
763 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/12(水) 19:19:36.73 ID:Xe7RpcvvO
待ってた‼乙‼
764 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/15(土) 13:26:01.60 ID:lp7JNG+/0
乙
765 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/15(土) 19:14:16.61 ID:WLY0sTWbo
待ってた乙乙
766 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:29:12.03 ID:QnccxTUoo
第二十七株 瑠璃の土地


シコシコシコシコ

精霊王「あー性感ってすげえな、人間の体気持ちいー」

魔剣士「ちょっ、喋んなや」

シュン……

魔剣士「っだーもう萎えたじゃねえか!!」

精霊王「頑張って復活させろ」

魔剣士「ちくしょう!!!!」

魔剣士「…………うっ」

精霊王「ふぅ……」

魔剣士「こんな最悪なオナニーは生まれて初めてだ」
767 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:29:45.06 ID:QnccxTUoo

魔剣士「勝手に感覚共有するのやめろ」

精霊王「えーだって人間の身体興味深いんだもん」

精霊王「琥珀を置いてこなかったお前の自業自得だ」

魔剣士「装備してなかったらなかったで不安なんだっつの」

精霊王「え? 俺のこと頼りにしてくれてんの??」

魔剣士「そうじゃねえよ」

生命の結晶の力が循環する経路が形成されているため、下手に手放すことができないのである。
魔法も琥珀があった方が強力になる。

精霊王「ちなみに琥珀を装備しなくても、口を利いたり感覚の共有ができなくなったりするだけで」

精霊王「おまえのやってることは全部見えてるからな」

魔剣士「俺のプライバシー……」

非常に憂鬱である。
賢者モードになり、性的な嫌な記憶がじわじわと精神を圧迫してきたことで更に気が滅入……

魔剣士「はっ、ぐ、ぅっ……」

上手く呼吸ができない。

精霊王「おいしっかりしろ!」

――――――――
――
768 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:30:29.21 ID:QnccxTUoo

魔剣士「う……」

白緑の少女「エリウスさん……よかった」

パニック発作を起こして失神していたらしい。まだ体がだるい。

魔剣士「ユキ、ユキ」

普通の人間サイズに実体化しているユキに抱きついた。

白緑の少女「もう、あんな目に遭うことはないんです。大丈夫ですよ」

トラウマはそう簡単には解消できない。

不能はもう治ってるし、性欲も普通に湧くから処理をしないといけないのに、
今でもフラッシュバックを起こすことがある。

今はわざわざ強姦されなくても、充分質のいい魔力を植物に供給することができるし、
身の守りを固めれば、余程のことがない限り人間にも襲われないだろう。

でもつらいものはつらいんだ。
769 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:30:57.94 ID:QnccxTUoo

魔剣士「そういやさあ、俺の恋愛対象が植物なのってさあ」

魔剣士「前世があんただから?」

精霊王「おまえが変態なだけだぞ」

魔剣士「あっそ」

精霊王「ごめん適当に言った」

魔剣士「……俺が普通の男だったとしても、ユキとだったら恋に落ちていたような気がする」

精霊王「そりゃ運命の相手だし」

精霊王「陰陽太極図を思い浮かべてみろ」

魔剣士「なにそれ」

精霊王「検索しろ」

勾玉が2個くっついたような図形だ。

精霊王「俺達の魂が黒い方の勾玉だとしたら、俺のスフィの魂は白い勾玉なのだ」

魔剣士「つまりぴったり型が合うと」

精霊王「そのとおりだ」
770 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:31:38.20 ID:QnccxTUoo

精霊王「型が合わない相手と恋に落ちることは全く珍しくないし、結婚することもある」

精霊王「しかーし! 運命の相手と出会ったら必ず惹かれ合うのである」

精霊王「己のセクシュアリティとは関係なくな」

精霊王「ゲイでありながら1人の女性と愛し合ったって話たまにあるだろ」

魔剣士「知らねえよ」

精霊王「ちなみに俺のスフィも人間は恋愛対象じゃないからな」

魔剣士「いちいち『俺の』って付けるな」

精霊王「お? 嫉妬か? お?」

魔剣士「ユキはおまえの所有物じゃない。もちろん俺のでもない。ユキはユキ自身のものだ」

精霊王「一枚上手なこと言いやがって」

魔剣士「おやすみ」
771 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:32:44.97 ID:QnccxTUoo

――ラピスブラオの町

白緑の少女「シレンティウム様の許には夜に伺った方がいいでしょう」

精霊王「あいつの波動夜のが活発になるもんな。弱ってるわけだし昼は寝てそうだ」

魔剣士「夜までは時間あるな……。モル、おまえの墓何処?」

青い石「あっちの丘」

魔剣士「黒髪青目率たけえなこの町」

青い石「ラズ半島に住んでたら『瑠璃の民』が生まれてくる確率が高くなるからね」

瑠璃の民……前にモルが言っていた「うちの民族」のことだ。



青い石「これが第一次レッヒェルン領襲撃事変の集団慰霊碑」

青い石「あっちが第二次の方みたいだね」

魔剣士(おまえの名前一番でかく彫られてるんだな)

魔剣士「安らかにお眠りください」ペコリ

青い石「私がまだ眠ってないのは君のことが心配すぎるからなんだけど」

魔剣士(ところでさ)

青い石「うん」
772 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:33:16.03 ID:QnccxTUoo

魔剣士(主にジジババ世代が俺の顔見てめっちゃ拝んでくるんだけど)

青い石「私の顔……というか、代々領主になる人間の顔を知ってる人は」

青い石「君の顔を見たら期待しちゃうかも」

青い石「『やっと瑠璃の民の族長になる人物が生まれたんだ』って」

魔剣士(奇行に走って幻滅してもらおーっと)

青い石「やめて恥ずかしい」

魔剣士「ドクダミおいしー」

青い石「うう……」



領主代理「あのー……」

魔剣士「はい」

領主代理「もしかして、エリウスさんですか」

魔剣士「はい」

20代半ばか30前後くらいの、真面目そうな眼鏡の男だ。
髪色はクリームだが目はアウィナイトの色をしている。

領主代理「族長が現れたという騒ぎを聞いて、もしかしてエリウスさんではと思いまして」

領主代理「私はこの土地の領主代理を務めているエーアスト・フォン・ハーメルです」
773 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:35:28.04 ID:QnccxTUoo

魔剣士(親戚?)

青い石「そうだよ。前は彼の両親がこの土地を管理してくれていたんだ」

領主代理「もしよろしければ、領主の館にお招きしたいのですが」

魔剣士「え、泊めてもらえるんですか」

領主代理「はい」

そういえばまだ宿を取ってなかった。


青い石「実家が建て直されてる……ありがたいなあ。外観そのままだし」

青い石「ああ、エントランスの構造も昔のままだ……」

魔剣士(良い家に住んでたんだなおまえ……そりゃ大貴族だもんな)

青い石「意外と置き物とかも残ってて嬉しいな」

領主代理「こちらがあなたの祖父、モルゲンロート氏の肖像画です」

モルだけじゃなく、モルの兄弟や両親らしき人物も描かれている。

魔剣士「アルクスかと思った」

描かれているモルは10歳ほどの子供だ。アルクスが成長したらこんな感じになるだろう。

領主代理「アルクスさんのことは伺っております」

領主代理「私がきっとアルクスさんを立派な領主に育て上げてみせますよ」

魔剣士(え?)
774 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:35:56.50 ID:QnccxTUoo

魔剣士(どういうこと)

青い石「あー、えっと」

青い石「アルクスは瑠璃の民の族長、即ちレッヒェルン領の領主となる存在だから」

青い石「12歳になったらこっちに来ることが決まってるんだよ」

魔剣士(本人の意思と関係なくか?)

青い石「なんというか……代々当主となる人物は、この土地を守ろうとする本能があるから」

青い石「いずれ自ら来たがると思う」

魔剣士(母さんもこっちに来るわけじゃないんだろ)

魔剣士(あんなに母さんべったりなのに大丈夫なのかよ)

青い石「それ私もヘリオス君も心配してる」

よくわからんが、レッヒェルン家には「瑠璃の民の族長となる人物」が生まれてくるらしい。
んで、そいつ等は代々同じような顔をしていて、ラズ半島を守ろうとする本能があると。

それ以外の人物が領主になろうとしても、なかなか民から認めてもらえないらしい。
だからエーアストさんはあくまで領主“代理”なのだそうだ。
775 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:37:01.21 ID:QnccxTUoo

アルクスのことを大して可愛いと思ったことはなかったが、少し可哀想に思えた。
あいつ絶対母親離れできねえもん。
母さんも子離れできないだろうし……。


エーアストさんに晩餐をご馳走になって、それから鉱山に向かった。

精霊王「やっぱり行゛き゛た゛く゛ね゛え゛よ゛お゛」

魔剣士「うるせえぞ……」

白緑の少女「ええと、あの洞窟におられるようです」

魔剣士「暗っ……」

急な坂が続いている。

精霊王「だいぶ下まで潜る必要がありそうだぞ」

魔剣士「俺運動神経鈍いんだけど」

何度も怪我を負い、その度に回復魔術を使って洞窟の下層部に進んだ。

精霊王「可哀想なほど不器用な奴」

魔剣士「うっせ」
776 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:37:53.82 ID:QnccxTUoo

魔剣士「ちわ〜っす……」

瑠璃精霊「……来おったか、とちくるって我が眷属に転生した阿呆め」

精霊王「ほっとけ」

洞窟の奥にいる大精霊は、髪も目も夜空のような深い青だ。
そしてラピスラズリのように金が散っている。肌は白い。

勇者ナハトを彷彿とさせる容姿である。

青い石「私と顔立ちそっくりー」

精霊王「オディウムのことなんだけどさあ」

精霊王「多分大精霊達で協力して毎回封印してたんだろ」

精霊王「でもおまえらもう力残ってないじゃん」

瑠璃精霊「おまえ1人が欠けたおかげで、我等がどれほど苦労したか」

瑠璃精霊「おまえは知る由もないだろう。色ボケ男は一生死んでいればよかったものを」

精霊王「そう言うなよ……」

一生死んでいるというのもなかなか特殊な表現である。
777 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:38:50.07 ID:QnccxTUoo

精霊王「俺だって好きで転生し損ねたわけじゃないしー!」

瑠璃精霊「我等はオディウムが復活する度に蘇生術を使用した」

瑠璃精霊「戦う力を取り戻すには、まだあと数万年は要する」

魔剣士「蘇生術?」

瑠璃精霊「滅亡の危機に瀕した際、我等大精霊にのみ使用を許される術だ」

瑠璃精霊「瑠璃の民は私が人間の死体と魂を基に創った。おまえはその末裔だ」

精霊王「一応俺が直接治めていた土地の人間の子孫でもあるからな」

魔剣士「え、そうなの」

精霊王「おまえの親父さんの祖先は今で言うアクアマリーナから南に移住したのだ」

魔剣士「ふーん」

精霊王「あ、ついでに言うとおまえのおっとさんは俺の下僕のうまれかわ」

瑠璃精霊「話を戻すぞ」
778 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:41:38.26 ID:QnccxTUoo

瑠璃精霊「オディウムが完全に復活すればこの世は滅びる」

瑠璃精霊「おそらく自らの信徒をも皆殺しにするであろう」

瑠璃精霊「奴は生を司る神々を深く憎んでいるからな。命ある者全てを闇に葬るに違いない」

精霊王「対処法は」

瑠璃精霊「無い」

瑠璃精霊「……と思っていたのだがな」

瑠璃精霊「この世で唯一、奴と戦っておらぬ大精霊がいるだろう」

精霊王「俺じゃん」

瑠璃精霊「わかっているならば話は早い」

精霊王「いや俺自体は生きてないし全盛期の力は使えねえよ」

瑠璃精霊「使う手段はあるだろう」

精霊王「そりゃあるけど」
779 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:42:22.72 ID:QnccxTUoo

瑠璃精霊「幸いオディウムの復活は不完全だ。今ならばおまえ一体の力で葬ることができる」

精霊王「やだー! 怖ーい!」

白緑の少女「イウス、そんなことを言っている場合じゃないでしょう」

魔剣士「前世様が戦うってつまり俺も神様レベルの存在と戦わなきゃいけないんじゃ」

精霊王「もっとさあ、大精霊全員の回復速度を速める方法とかさあ」

瑠璃精霊「あったら苦労しておらぬ」

精霊王「マジかよ」

魔剣士「で、どうやったらおまえの力を復活させられるんだよ」

精霊王「1.おまえの中にある生命の結晶の力をフルに使って俺と相性の良い木を急成長させます」

精霊王「2.この肉体を捨ててその木に宿ります。以上」

魔剣士「あ、それなら多分すぐにでき……」

魔剣士「……俺はどうなんの? それ」

精霊王「死ぬ」

魔剣士「ええー……」

青い石「やだー!」
780 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:42:52.88 ID:QnccxTUoo

魔剣士「どうしても死ななきゃおまえの力復活させられねえの?」

精霊王「少しくらいならこの前のように琥珀越しに使えるんだが」

精霊王「フルパワーを出そうとしたらこの肉体は弾け飛ぶだろうな」

魔剣士「…………」

瑠璃精霊「我が加護の力を強めてやろう。その青き石を渡すがよい」

シレンティウムさんはアウィナイトを手に取り、力を注ぎ込んだ。

青い石「あっすごい。温泉に浸かってる気分」

瑠璃精霊「数ヶ月しかこの力は持続せぬが、少しは体が丈夫になるだろう」

瑠璃精霊「……疲れた。私は眠る精々健闘することだな」
781 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:43:45.41 ID:QnccxTUoo

精霊王(スフィに聞こえねえようにおまえの脳内に直接話すけど)

精霊王(俺の精神体と融合すればおまえの精神は死なずに済むぞ)

魔剣士(融合?)

精霊王(スフィは二股をかけていることに負い目を感じている)

精霊王(俺とおまえが1人になれば、スフィを罪悪感から解放してやれるわけだ)

魔剣士(…………!)

精霊王(融合といっても、魂の中にある互いの部屋を繋ぐだけだ)

精霊王(おまえが強く表に出ることだってできるし、面倒な時は引っ込んでいられる)

精霊王(不要な感情を意識的に抑えることができるから人間よりも遥かに楽だ)

精霊王(ただ一つ、愛を求める感情だけは抑えられねえけど)

魔剣士(……それってさ、自閉症治んの?)

精霊王(この肉体を捨てれば脳に精神を支配されることはなくなるからな)

精霊王(そういったエラーからもおさらばだ)
782 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:44:47.13 ID:QnccxTUoo

精霊王(たかだか数十年しか生きられないおまえでも、俺と融合すれば永遠にスフィと共にいられる)

精霊王(悪い話じゃないだろ)

魔剣士「…………」

魔剣士(俺さ、自分のことがあんまり好きじゃないし、)

魔剣士(ユキと一緒にいられるなら、おまえと1つになることには抵抗ないんだけど)

魔剣士(俺はやっぱり父さんと母さんの子供だから)

魔剣士(2人が生きている限りはエリウス・レグホニアでいたい)

精霊王(そうか)

精霊王(ならしゃあねえな、他の方法考えるか)

精霊王(おまえが生きたまま敵を倒す方法をな)

魔剣士(わりぃ)
783 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:48:09.94 ID:QnccxTUoo

白緑の少女「あの……」

魔剣士「ん」

白緑の少女「難しい顔をしておられるので、イウスが妙なことでも言ったのではと……」

魔剣士「まあ、いつものことだから」

魔剣士「ほら、掴まって。鉢植え持ったままじゃ上手く登れないでしょ」

白緑の少女「ありがとうございます」

ユキは実体化を保ったまま空を飛べるが、飛行は消費魔力が多く、今は念のため魔力を節約している。
分身だから魔力容量が小さいのである。

実体化しなければ別に浮遊は何の負担でもない。

魔剣士「つらかったら俺が鉢植え持つから実体化解いてもいいよ」

精霊王「おまえがすっころぶからスフィは自分で依り代運んでんだろ」

魔剣士「うっせ!!!!」

苦笑いしているユキの細い手を掴む。

花弁のような、滑らかでひんやりとした肌触りだ。
ずっと繋がっていたい。
784 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:48:47.24 ID:QnccxTUoo

町に戻った。

少女「お父さん、晩御飯おいしかったね! また食べに行こうね!」

父親「ああ、今度はお母さんの誕生日にな」

父親が小さな女の子を両手で持ち上げて抱っこした。

青い石「いいなあ」

青い石「私は……この腕で娘を抱き上げることができなかった」

青い石「あんまり早く死んじゃだめだよ」

魔剣士「そうしてえわ」

白緑の少女「……もしかしたら、私の本体を使えば、」

白緑の少女「エリウスさんの命を犠牲にしなくても、」

白緑の少女「イウスの力を復活させることができるかもしれません」

魔剣士「ほんと?」

白緑の少女「悠久の時を生きた私の体なら、イウスの力の大きさに耐えられるでしょう」

白緑の少女「相性も問題ないはずです。ただ……」

魔剣士「ただ……なに?」
785 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:50:21.68 ID:QnccxTUoo

白緑の少女「その……ヒトの倫理的にはあまり女性が口にすべきことではないのですが」

精霊王「事前に魔力を交換して馴染ませなきゃいけないんだろ」

魔剣士「それはつまり」

精霊王「セックス」

魔剣士「…………」

魔剣士「普通に魔力送り込むのじゃだめなの」

白緑の少女「エリウスさんは人間ですから、肉体的に深く交わる必要がありますし、」

白緑の少女「そして、できるだけ昂っている魔力が望ましいので……」

魔剣士「…………」
786 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:50:57.73 ID:QnccxTUoo

白緑の少女「オディウム神の影響で不安定になっていた本体との通信状況も、」

白緑の少女「ある程度回復してきました」

白緑の少女「できれば、今のうちから……」

精霊王「良かったなあ一線を越える大義名分ができて!」

魔剣士「ちょっと待って」

未婚の状態でそんなことしたら母さんに去勢される……なんて言ったらマザコンだと思われそうだ。

魔剣士「……する前に、その……人間の価値観を押し付けるようで申し訳ないんだけど」

魔剣士「結婚の証が欲しい」

閉店時間間際の貴金属店に駆け込んで対の指輪を買った。
案外夜まで営業してる店ってあるもんだな。
787 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:51:29.01 ID:QnccxTUoo

俺達に用意された部屋は、まあ貴族のお屋敷なのでロマンチックだ。
初夜を迎えるには申し分ない。

俺だけ気持ち良くなるのはなんかやだなあと思っていたのだが、
ユキレベルの精霊は性感も再現できるらしい。

精霊王「はやくはやくー」

魔剣士「頼むから黙っててくれ」

魔剣士「……ユキ、こっち来て」

ユキと手をつなぎ、寝台に引き入れ、そっと押し倒した。
月光で彼女の白い肌がよく映える。

魔剣士「…………」

えっと……これからどうすればいいんだっけ。
788 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:52:28.86 ID:QnccxTUoo

やばい。

愚息だけじゃなく、全身が緊張でガチガチだ。

そもそも俺は人間の女性を抱いたことがない。
植物とはいえ、今現在人間の姿をしているユキをどう抱けばいいのかなんてわからないのである。

いや知識としては一応知っているのだがそれはあくまで生殖の知識であってうわああああ!!

白緑の少女「……エリウスさん、落ち着いてください。大丈夫ですよ」

ユキは俺の首に腕を回した。

白緑の少女「私に任せてください」

あ、あれ……俺、いつの間にユキの下に寝かされてたんだろ。
一つ一つシャツのボタンが外されていく。

魔剣士「ゆ、ユキっ……あの……」

なされるがまま愛撫され、愚息を口に含まれるとすぐに達してしまった。
普段はここまで早漏じゃないのに。嘘だろ……。



しかもこの後俺は自ら後ろを犯してほしいとねだってしまった。

疼いて仕方がなかったとはいえ……あー…………。
何かとやり直したいことの多い人生ではあるけど、せめて一晩だけでも時間を戻したい。
789 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/06(土) 22:52:58.26 ID:QnccxTUoo
ここまで
790 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/07(日) 01:29:22.35 ID:MovQ5wWpO
久々
素晴らしく乙
791 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/11(木) 22:19:41.33 ID:ajS1yEwUo

第二十八株 花言葉は「実りある人生」


魔剣士「…………」

白緑の少女「あの……エリウスさん」

魔剣士「…………」

白緑の少女「可愛かったですよ」

魔剣士「…………」

白緑の少女「…………」

魔剣士「…………」

白緑の少女「……嫌、でしたか?」

魔剣士「嫌じゃない! ただ……」

こっちがリードして、もっとロマンチックな初夜を過ごしたかったんだ。

白緑の少女「ごめんなさい。私、あなたと体を重ねた精霊達に対する嫉妬心を募らせるあまり」

白緑の少女「あなたに欲をぶつけてしまいました」

精霊王「おまえは抱かれる側じゃなきゃ満足できない体になっちまってるからあれで納得しとけ」

魔剣士「…………」

情けなすぎる。
792 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/11(木) 22:30:12.13 ID:ajS1yEwUo

白緑の少女「私の……私のエリウスさん」

ユキがべったりと俺を抱きしめた。ひんやりとしているが、不思議と優しい温もりがある。

求めて止まなかった体温。木と花の柔らかい香り。

抱きしめ返したかったけど、あんまりにも面映ゆくて、俺はユキの顔さえ見ないまま寝台から降りた。

魔剣士「あだっ」

ずっこけた。足腰が立たない。

精霊王「生まれたての小鹿かよぎゃはははは」

白緑の少女「ち、治療します!」

つらい。……つらい。
793 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/11(木) 22:30:45.54 ID:ajS1yEwUo

客室を出た。

領主代理「昨晩は大変でしたね」

魔剣士「えっ」

領主代理「歩き方がぎこちないですね……余程お体に負担がかかったのでしょう」

お、おかしい……ユキが防音結界を張ってくれたはずだ。バレているはずがない。
い、いや、夢中になっている内に結界が弱まっていた可能性も……。

領主代理「氏神様とは無事にお会いできましたか?」

魔剣士「え、あっ……はい」

なんだ、そっちか……吃驚した。
氏神様とはシレンティウムさんのことだ。

エーアストさんに結果報告をした。
794 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/11(木) 22:34:00.86 ID:ajS1yEwUo

領主代理「なるほど……。念のため、あなたの身体の守りを固めた方が安全でしょう」

領主代理「ここから西南西に向かうと、グレンツェント国の首都・ディアマントブルクの町があります」

領主代理「その町では、大精霊様の御力を借りた英傑が身に着けていたと言われている、」

領主代理「大粒のダイヤモンドがオークションにかけられています」

領主代理「しかしなかなか落札者が決まらないらしく……」
領主代理「もし手に入れることができれば、きっとお役に立つでしょう」

精霊王「ああ、あった方がいいかもしんねえな」

精霊王「スフィの身体を借りるにしても、おまえ自身が強いに越したことはないし」

魔剣士「あざます」

領主代理「ご健闘を祈ります」
795 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/11(木) 22:36:33.16 ID:ajS1yEwUo

――――――――
――

魔剣士「でっけえ……流石都会の首都だな」

貴族の屋敷がくっっっそたくさん並んでいる。
富裕層御用達であろうお高い店も……これはすごい。

魔剣士「オークションが始まるまでにはまだ時間があるな」

魔剣士「宿探さねえと」

精霊王「セックスが盛り上がりそうな豪華なホテル探そうぜ!」

魔剣士(言われなくてもそうするつもりだっつの!!!!!!!)

青い石「懐かしいな〜この町……」

魔剣士(来たことあんのか)

青い石「この国との国境を治めていたからね」

青い石「自分の国の首都よりもたくさん来てたと思う」

魔剣士(領主ってすげえコミュ力が要る仕事だっただろ)

青い石「コミュ力は基礎の基礎だね……それ以上に交渉力とか」

青い石「裏を読む力とか……駆け引きをする能力がないとすぐに食い潰されるよ」

魔剣士(俺には無理だな……)

魔剣士(にしてもやっぱり白い肌の人間だらけだな)

ラズ半島にある町の方が似たような容姿の人間は多かったが、この顔のせいで少々目立ってしまっていた。
この町ではそんなことはないため、特に浮くことはない。落ち着くのである。

青い石「あ、あっち! よくお世話になってた理容店だよ」

青い石「流石に代替わりしてるだろうけど、今でもお店自体はあったんだね……嬉しいな」

髪伸びてきてたし切るか。
796 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/11(木) 22:37:54.57 ID:ajS1yEwUo

理容店主「お客さん〜私が子供の頃によくいらっしゃってた貴族の方にそっくりなんですよ〜」

理容店主「ああでも目尻だけ違うかな〜」

魔剣士「そんな大昔に会った人の顔なんてよく覚えてますね」

理容店主「可愛がってもらいましたからね〜」

青い石「彼にブルーベリーキャンディをあげたらいつも喜んでたよ」

青い石「舐めて小さくなったのを鼻に詰めて遊んでたなあ」

青い石「一回それで取れなくなっちゃってね、病院沙汰になったんだ」

魔剣士(髪切ってもらってる最中に笑わせにくるのやめろ)

理容店主「この頃物騒ですよね〜おっかない神様が復活したとかで」

理容店主「でもまだ特に何も被害が出てないので、皆危機感持ってないんですよね〜」

魔剣士「その神様をどうにかするためにこの町に来たんすよ」

魔剣士「英傑が使っていたとかいうダイヤモンドが欲しいんすけど」

理容店主「ああ〜……持ち主が財政難らしくてねえ」

理容店主「事業を立て直すのに必要な資金を得るために家宝をオークションにかけたらしいんですけど」

理容店主「最低落札価格が高すぎてねえ。誰も落札できないそうなんですよ〜」
797 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/11(木) 22:39:01.08 ID:ajS1yEwUo

理容店主「しかし怖い話も聞きましてねえ」

魔剣士「怖い話?」

理容店主「誰も落札しないうちに盗もうとしてる輩がいるらしいんですよ〜」

理容店主「落札するおつもりでしたらお気をつけくださいね」

魔剣士「あざっす」

上手く落札できたとしても背後を狙われそうだな……。

魔剣士「ブルーベリーキャンディたくさん持ってるんですけどどうですか」

おすそ分けした。エーアストさんにいただいたものだ。
ブルーベリージャムとかもいただいている。
あの土地はブルーベリー栽培が盛んらしい。

理容店主「ああ、ありがとうございます。懐かしいなあ……」
798 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/11(木) 22:40:12.53 ID:ajS1yEwUo

白緑の少女「さっぱりしましたね」

魔剣士「いい男でしょ」

魔剣士「ユキも髪型変えよ?」

ツインテだったのをポニテにしてもらってみた。
長い優雅なポニテであるため大人っぽい。

そういやダイヤの出品者ってどんな事業やってたんだろ。
一応調べるか……と思ったところで携帯が鳴った。

工学院生『もしもしエリウス君?』

魔剣士「ようセド」

工学院生『できたんだよ! 太陽光魔力変換装置!』

魔剣士「マジかよ! よくやった!」

工学院生『ところで頼みがあるんだけどさ』

魔剣士「なんだ」

工学院生『君の下の弟さんの写真……』

魔剣士「やらねえよ」
799 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/11(木) 22:41:58.01 ID:ajS1yEwUo

オークション会場はこの町でもトップクラスのホテルにあるでかいホールだ。
俺は田舎者なので内心ビビっているのだが、それを顔に出すのはかっこ悪い。

余裕をかましている体を装った表情を浮かべて席を取る。

他の客は皆大金持ちなのだろう。高級な服を着ている。
ちゃんとした服を拵えてくればよかった。



司会「えー、最後はこちら! 今夜こそ落札者は現れるのか!?」

司会「大英傑のダイヤモンドです! 5億Gから!」

手を上げる人間はいない。

魔剣士「じゃあ俺最低落札価格で落札します」

司会「な、なんと」

会場がざわついた。

「なんだあの男の格好は……平民じゃないか」

「でもレッヒェルン家の人間の顔してるわよ」

「確か有名人じゃないか?」
800 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/11(木) 22:42:39.64 ID:ajS1yEwUo

大商人「ま、待て! 私が落札するぞ! ローンを組めるだろう!? 5億5千万Gだ!」

魔剣士「んー、じゃ10億G、一括で」

青い石「待って待って待ってそんなにお金持ってたっけ!?」

魔剣士(購入したまま忘れてた株があってさ)

青い石「え、株なんて興味なかったでしょ」

魔剣士(付き合いの都合で仕方なく買ったのがあったんだよ)

大商人「ぐぬぬ……」



魔剣士「あ、出品者の方と色々話したいことがあるんすけど」

司会「連絡を取ってみましょう」
801 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/11(木) 22:45:10.72 ID:ajS1yEwUo

オークションが行われたホテルにある小さな会議室を借りた。

社長「君……いえ、あなたが落札してくださったのですね」

魔剣士「どうも。あ、携帯いじっててすみません。今振り込み完了したんで」

社長「う、うむ……この頃は携帯ですぐに金銭のやり取りができるのか……便利な世の中になりましたね」

魔剣士「あなたの会社では環境保全活動をしていると聞きました」

社長「……はい」

魔剣士「利益よりも自然環境を優先し過ぎて倒産しかけているとも」

社長「…………」

社長「私は愚かでした」

社長「いくら世界のための活動を行っても、社員の生活も大事にしなければ、」

社長「会社が成り立たないのはごく当たり前だというのに……」

社長「技術は足りず、社員の心も見えず、目標ばかり大きかった」

魔剣士「組織マネジメントのことはよくわからないですけど、技術面ではお力になれるかもしれないんですよ」

魔剣士「実はうちの大学でこんな研究をしてまして」
802 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/11(木) 22:46:54.78 ID:ajS1yEwUo

社長「……太陽の光から、魔力を?」

魔剣士「技術自体はもうできてるんで、後は実用化です」

魔剣士「あなたの会社のご協力を得るができれば」

魔剣士「魔力不足問題が解決される未来はぐっと近づくと思うんですよ」

社長「…………」

魔剣士「どうですかね」

社長「倍の額で買っていただけた上に、これほど素晴らしい話を……」

社長「ありがたい。あなたは私の……我が社の恩人です」

ちょっと照れくさい。

社長「ああ、あなたは誰かに似ていると思っていたのですが」

社長「子供の頃、馬車にはねられて怪我をした私を助けてくれた男性に瓜二つです」

社長「あの方がくださったブルーベリーキャンディはおいしかった……」

魔剣士(また飴かよ)

青い石「子供好きだったから……飴ちゃんを子供達に配るのが楽しくて楽しくて」

魔剣士「この飴要ります?」

社長「!?!?!?!?」

社長「な、なんと……まさか生まれ変わり……?」

魔剣士「孫なんすけどね……」

社長「え?」
803 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/11(木) 22:48:06.30 ID:ajS1yEwUo

――――――――
――

夜の街を歩く。

魔剣士(ねえおじいちゃん)

青い石「『じ』の付く呼び方しないで私まだ24歳」

死んだら精神年齢伸びないのか……?

魔剣士(多分おまえはブルーベリー使った料理よく食べてただろ)

魔剣士(どんな料理があったのか教えてよ)

体質に合うのか、北の土地の食べ物を食べると調子が良くなる。
どうせならご先祖が食べていた料理も味わいたい。

殺し屋1「ちょっと待て、そこの兄ちゃん」

魔剣士「ん?」

殺し屋1「ダイヤを置いていってもらおうか」

魔剣士「……落札したがってた太ったおっさん、そこに隠れてんだろ」

大商人「…………」
804 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/11(木) 22:49:29.41 ID:ajS1yEwUo

大商人「あのダイヤは出品された当初から私が目を付けていたものだ」

大商人「返してもらおう」

元々おまえのもんじゃねえ。

白緑の少女「……穢れた魔力。いつもあくどい手段で利益を得ているのでしょう」

仮に落札できたとしても、入金前に盗んでたんだろうな。

魔剣士「渡すわけねえだろ」

大商人「やむを得ないな。かかれ!」

50人くらい殺し屋が出てきた。

魔剣士「囲まれてることくらい最初っから気づいてんだよ!」

精霊王「俺の力を使ういい練習台になるな」

俺の魂からグリーンアンバーに、グリーンアンバーから身体にイウスの力を流し込み、
俺の魔力と混ぜて魔術を発動していく。

魔剣士(身体がバチバチいてえ)

精霊王「ダイヤで身体を強化しろ」

魔剣士(マルチタスクは苦手なんだよ!)
805 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/11(木) 22:52:35.10 ID:ajS1yEwUo

殺し屋25「こいつがどうなってもいいのかー!?」

一般人を人質にとってやがる。卑怯だ。
殺し屋達はやけに装備が整っている。

人数は多いし慣れない力を使っているしでちょっときつい。

魔剣士「あいだだだだイウスちょっと力抑えろ!」

精霊王「ヘタクソォー!」

ついでに腰の痛みも再発した。原因はセックスのし過ぎである。

白緑の少女「エリウスさん危ないっ!」

うっわやっべと思ったが、敵の攻撃が当たることはなかった。

重斧士「おいしっかりしろ!」

聞き覚えのある声だ。

魔剣士「ガウェイン!? なんでここに」

重斧士「着拒否のままにしやがって!!」

残りの殺し屋はほとんどガウェインがどうにかしてくれた。
806 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/11(木) 22:54:06.02 ID:ajS1yEwUo

重斧士「ボスはこいつか?」

大商人「ひぃっ!」

国家憲兵が駆けつけた。あとは兵士に任せよう。



魔剣士「なんでここにいるんだよ」

重斧士「おまえを探しに来てやったに決まってるだろ」

魔剣士「いやでも……どうやってこんな北まで……高速で飛ばしてもこんなすぐに移動できないだろ」

重斧士「暴走族なめんな。あ、一応ギリギリ違法行為はしてねえからな」

魔剣士「…………」

重斧士「おまえあんまりしっかりしてねえしよ。ボディガードは必要だろ」

魔剣士「……ありがとな」

気まずいのと嬉しいのとで顔を合わせられず、横を向いたまま礼を言った。
807 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/11(木) 22:55:16.67 ID:ajS1yEwUo

魔剣士「飯食うかー」

重斧士「俺もまだ食ってなかったな」

すぐ近くにあった酒場に入り、カウンターに座った。
がやがやした音が頭に響いてつらいが、一刻も早く腹を満たしたかった。

ユキは実体化を止めて休んでいる。

重斧士「おまえの親父さんから大体の居場所は聞けたからよ」

魔剣士「あくまで大体の居場所だろ……相当走り回ったんじゃないのか」

重斧士「まあな」

魔剣士「……カナリアはどうしてる」

重斧士「おまえのことをすげえ心配してた」

重斧士「でもおまえには会わない方がいいだろうからって」

重斧士「俺についてこようとはしなかったな」

魔剣士「……そっか」
808 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/11(木) 22:57:30.50 ID:ajS1yEwUo

重斧士「おまえ、なんか雰囲気変わったよな」

魔剣士「しばらく前に父さんからも言われたけど……今度は何処が変わったんだ」

重斧士「ヘラヘラした感じが薄くなった」

魔剣士「……色々あったからなあ。あんまりヘラヘラする余裕がねえんだよ」

全くヘラヘラしないわけではないけど、ああいった笑みを浮かべることは確かに減ったと思う。



雑兵1「せっかく平和な時代になってたってのになあ」

雑兵2「魔王が復活したってのはデマで、こわーい神様が現れたのがマジなんだっけか?」

雑兵2「昔みたいに異常に強い勇者でもいれば少しは希望がもてるんだけどな」

雑兵1「そういやディオさん、あんた勇者ヘリオスと会ったことあるんだっけか?」

元騎士「ああ、あいつはおっかなかったな。危うくスパイ活動中に両腕と股間を切り落とされるところだった」

雑兵2「ひっ」

元騎士「見た目の割りに純で温厚な奴なんだが、キレると容赦がなくなるんだ」

雑兵1「絶対怒らせちゃ駄目なタイプってことかあ」
809 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/11(木) 22:58:02.41 ID:ajS1yEwUo

雑兵1「そういや、勇者ナハトが女だって説あるよな」

元騎士「俺あいつの胸揉んだことあるぜ」

は?

雑兵2「えっマジかよ」

元騎士「ご存じのとおり俺はあいつに恨みがあったわけなんだが」

元騎士「あの時は少し気が晴れたな」

雑兵1「ディオさんパネェ」

元騎士「手にすっぽり収まるサイズでよ」

元騎士「乳首は可愛い桜色で、くりくり〜っとしてやったら可愛く啼いてたぜ」












810 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/11(木) 22:59:29.37 ID:ajS1yEwUo















重斧士「おい、そのへんにしとけ」

魔剣士「……え?」
811 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/11(木) 23:00:14.52 ID:ajS1yEwUo

足元にはボロボロになった金髪のおっさんが倒れている。

魔剣士「これ……俺がやったのか?」

重斧士「憶えてねえのかよ……」

キレすぎて記憶が吹っ飛んでいる。

魔剣士「俺、こんなことができるほど腕力ないはずなんだけど」

このおっさんの方がずっと体格がいい。
ヒョロガリの俺に殴りかかられたところで負けはしないだろう。

重斧士「普段のおまえなら到底できないような器用な動きでこのおっさんの重心を崩して」

重斧士「関節技を決めて動けなくなったところをボコボコに殴りまくってたんだぞ」

幼い頃身に着けた合気道の技を使っていたのだろう。

元騎士「キレ方が親父そっくりなんだよ……! うっ」

魔剣士「あ、えっと……治療費置いときます」

視界がチカチカする……。

自分で治療する気は起きなかったし、そもそも精神が安定してなくて治療術を使うのは困難だった。
頭を押さえながら店を出る。
812 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/11(木) 23:00:46.01 ID:ajS1yEwUo

魔剣士「あれ……」

重斧士「どうした」

魔剣士「草にやけに白い粉ついてるなって」

よくよく観察してみた。イチゴやキュウリがなりやすい某病気とよく似ている。

白緑の少女「これは……!」

ユキが驚きながら実体化した。

白緑の少女「ああ、なんという……」

魔剣士「これなんなの」

白緑の少女「……オディウムがこの世にもたらず呪いの1つに、“白き粉”があります」

白緑の少女「あの神は……この粉を撒き散らし、草花を枯らすことで生命のバランスを崩そうとするのです」

魔剣士「は……!?」

魔剣士「やっぱりうどん粉病の神じゃねえか!!!!」
813 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/05/11(木) 23:01:24.98 ID:ajS1yEwUo
madekoko
814 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/12(金) 10:08:31.74 ID:hLbrp8/OO
乙
やはりうどん粉病w
815 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/06/09(金) 20:52:35.10 ID:rDmS2C07o

第二十九株 花のローレライ


魔剣士「んーむ……」

重斧士「何見て……!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

重斧士「なっなんでっ……おまえがっ……そんな物をっ」

魔剣士「あ?」

重斧士「それは! 普通に女が好きな男が見る至って健全な!」

重斧士「ごく普通のエロサイトじゃねえか!!!!」

魔剣士「俺の嫁を見てみろ」

ユキは俺の携帯でレディコミを読んでいる。

重斧士「人間みてえな姿してんな」

魔剣士「だから参考程度にな」

重斧士「ああ……そうか」

魔剣士「納得したか?」

重斧士「納得っつうか……安心したぜ。すごく」
816 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/06/09(金) 20:53:00.93 ID:rDmS2C07o

魔剣士「ちなみにこっちは樹木性愛者向けエロサイト」

重斧士「なんで存在してんだ」

魔剣士「んで、こっちが俺が作った樹木性愛者専用SNS」

重斧士「全アカウント数20……意外といるんだな……」

白緑の少女「…………」

魔剣士「あ、俺等そろそろ自分の部屋帰るわ」

重斧士「おう。宿代ありがとな」

魔剣士「ああ」

魔剣士(今夜こそ俺の方から……)









魔剣士(駄目だった……)
817 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/06/09(金) 20:53:27.39 ID:rDmS2C07o

重斧士「よく眠れ……なかったのか? げっそりしてるぞ」

魔剣士「熟睡はした……んだけど……」

搾り取られた。5年分くらい。

魔剣士「おまえの絶倫具合を少しでもいいから俺に分けてくんねえかな……」

重斧士「……凄腕絶倫トレーナーを知ってるんだが、紹介してやろうか?」

魔剣士「……おまえの知り合いってことは掘られそうな気がするから遠慮しとくわ」

重斧士「まあ、そうだな」

重斧士「あれ、おまえの嫁は」

魔剣士「今日は緊急事態が起きない限り寝るらしい」

今晩はもっと張り切るんだそうだ。
……恐ろしい。触手何本生やすつもりなのかな。

精霊王「ん、そこの木が何か言いたそうだぞ。ちょっと近づいてくれ」

魔剣士「なんだろ」
818 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/06/09(金) 20:54:04.53 ID:rDmS2C07o

精霊王「ここの近くの土地が、白き粉の呪いを強く受けちまったらしい」

魔剣士(精霊からの情報理解するの俺より早いなおまえ)

精霊王「そりゃあな」

携帯で地図を出した。

魔剣士(どの辺?)

精霊王「エーデルヴァイス領って書いてあるとこ」

魔剣士「えー……」

あそこの大叔父ちょっとめんどくさいんだよな……。
良い人なんだけど、愛情表現がオーバーで。

っていうかちょっと遠い。イウスは近いって言ってるけど遠い。
車で数時間飛ばさないと着かない。

精霊王「寄るぞ。ちょっと探し物もしてえし」

精霊王「あ、緑色の魔鉱石の玉を用意してくれ。魔力伝導率は低くてもいいから、」

精霊王「容量ができるだけでかい奴。それに俺達の魔力を込めて浄化の石にするから」

魔剣士(わかったよ)

まあ、顔出してくか。モルが大叔父……弟に会いたいって前ダダこねてたし。
819 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/06/09(金) 20:54:41.57 ID:rDmS2C07o

――道中

重斧士「前世か……」

魔剣士「知ってもそんないいことないぞ」

魔剣士「気になるなら前世が見える人紹介するけど」

重斧士「おまえほんと色んな知り合いいるよな」

魔剣士「まあ、クレイオーのお母さんなんだけどさ」

――――――――

占術師「……あなた方の魂は、非常に縁が深いようです」

占術師「一代前は、互いに想い合っていたものの、身分の差により結ばれることが叶わなかったみたいですね」

占術師「それより前も、結ばれることもあれば、引き裂かれることもあったようです」

戦士「はあ」

勇者「素敵だね。そんなに昔から、何度も出会っていたなんて」

魔剣士「ケーキどうぞ」

手作りのケーキとお茶を出す。

詩人「すまないね。いつもご馳走になって」
820 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/06/09(金) 20:55:44.26 ID:rDmS2C07o

次男「兄ちゃんゲームしよ」

魔剣士「いいよ」

勇者「あの子達には、どんな魂が宿っているの?」

占術師「アルバ君は……今のアルバ君自身とよく似た少年と遊んでいる光景が見えます」

戦士「!」

占術師「野山を駆け、楽しく遊んでいます。30年ほど前にこの村で暮らしていたわんちゃんのようですね」

戦士「ジョン…………ジョン!」

父さんがアルバに抱き着いた。

次男「お父さんどうしたの? ……泣いてるの!?」

戦士「ジョン……! うぅ……」

子供と精神的に距離を置いている父さんが、
まさか子供に抱き着いて泣くなんて……と驚いたのを覚えている。

占術師「エリウス君は……何も見えません。長らく転生していない可能性が高いです」

占術師「私が視ることができるのは、大体500年前まで」

占術師「どれほど集中しても、精々1000年前までですから……ごめんなさい」

――――――――
821 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/06/09(金) 20:56:12.40 ID:rDmS2C07o

重斧士「まあそのうち気が向いたら訊いてみてえな。カナリアと一緒によ」

魔剣士(そういやイウスって人の前世とかわかるのか?)

精霊王「見れるけど今の状態じゃ疲れるからあんまやりたくねえな」

精霊王「知ってる奴の魂だったら会えばすぐわかるけど」

魔剣士(ふうん)

精霊王「カナリアとかいう娘っ子はまあ多分肉食獣だろうな」

精霊王「じゃなきゃ平気で生肉食ったり謎の筋力を発揮できたりしねえもん」

魔剣士(前世が肉食獣なら生肉食えるもんなのか……?)

精霊王「稀にいるんだよ前世の力が染み出してる奴。おまえがそうだろ」

魔剣士(あー、なる)

魔剣士(……おまえって俺の記憶どのくらいもってんの?)

精霊王「全部」

魔剣士(俺のプライバシー……)
822 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/06/09(金) 20:59:05.37 ID:rDmS2C07o

――エーデルヴァイス領

名のとおりエーデルワイスの花が領のシンボルとなっている。

インクルージョンやクラックがたくさん入ったエメラルドの玉を手に入れ、
イウスの言う場所に移動した。町のすぐ近くだ。

精霊王「そうそうこの辺。ここが呪いの中心地」

魔剣士「こりゃひでえな……白い粉だらけになってやがる」

精霊王「魔法陣展開するぞ。おまえの身体越しに発動するから耐えろよ」

魔剣士「えっちょっあいだだだだだだだだだだ!!!!!!」

玉を中心に魔法陣が展開された。多分直径20メートルくらい。

重斧士「おい、大丈夫か?」

魔剣士「大丈夫じゃねえええええええええええええ」

精霊王「いくらスフィの力を借りれるにしても、おまえ自身が俺の力に馴れなきゃ何もできねえんだからがんばれよ!」

魔剣士「むりぃぃぃぃぃ!!!」

精霊王「はい終わりー」

魔剣士「う……うっ……」

重斧士「泣くほどいてえのか……」

精霊王「しっかりしろ」

魔剣士「う ご け な い」

重斧士「担いでくか」
823 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/06/09(金) 21:00:06.66 ID:rDmS2C07o

少しずつこの土地からうどん粉が浄化され、美しい緑が戻っていく。

魔剣士「いっけねえ宿のネット予約すんの忘れてた」

重斧士「親戚いるんだろ? 泊めてもらえねえのかよ」

魔剣士「もらえるだろうけど……」

町に入る。

伯爵「あーーーーーーーーーーー! エリウス君!!!!!」

魔剣士「はい?」

なんでいるんだ。

伯爵「胸騒ぎがして来てみたら!! 体調悪いの!?!? 大丈夫!?!?!?」

伯爵「来るなら連絡入れてくれたらよかったのに!!!!!!!!」

青い石「あーくん? あーくん!!」

伯爵「ああっ兄さん!!」

寝たい。さっさと寝たい。
伯爵は石の声を聴く能力はそんなにないそうなのだが、モルの声を聴くことはできるらしい。
824 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/06/09(金) 21:01:26.49 ID:rDmS2C07o

――伯爵の屋敷

青い石「うちの民族は家族との繋がりがすごく強いから、」

青い石「身内に危機が迫ってたりすると電波みたいなのが飛んでくることがあるんだよ」

魔剣士「めんどくせえ……」

貴族のお館のベッドだけあって寝心地は非常にいい。
部屋にはエーデルワイス……セイヨウウスユキソウの鉢植えがあるが、欲情する元気は残ってなかった。

伯爵「エリウス君大丈夫!? うちの領地を救ってくれてありがとね!!」

魔剣士「この石お貸しいたしますんで、兄弟水入らずでどうぞ話してきてください俺は休みたいです」

モルが宿った石をベッドサイドテーブルに置き、俺は布団を被った。

魔力はごっそり減るしイウスの力が流れ込んできたせいで身体は痛むしでとてもつらい。
人と喋る元気なんてない……。
825 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/06/09(金) 21:01:58.67 ID:rDmS2C07o

……数時間後。寝て起きた。

重斧士「おいエリウス」

魔剣士「ん。入っていいぞ。なんだ」

ガチャリと扉が開く。

重斧士「……貴族の館って、落ち着かねえもんだな」

魔剣士「そりゃあな。仕方ない」

魔剣士「カナリアと付き合ってんなら豪華なもんにも馴れとけよ。一応あいつ王族なんだし」

重斧士「ああ、そうだな。晩飯だってよ。動けるか?」

魔剣士「なんとか」

こいつとまた友達として一緒にいられるのが妙に嬉しい。
826 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/06/09(金) 21:02:44.23 ID:rDmS2C07o

伯爵「エリウス君少食だよね? 量多かったら言ってね」

伯爵「シェフに頼んで、お肉はあっさりめにしてもらったからね」

魔剣士「あ……どうも」

良い人なんだよな。
愛情表現の仕方が母さんそっくりで、鬱陶しいけど憎めない。

母さん……まだ眠ってのかな。

伯爵「本当に兄さんそっくりだなあ。レッヒェルン領に行った時騒ぎになったでしょ」

伯爵「明日にはもうこの地を離れるのかい? しばらくここにいてほしいなあ」

伯爵「ああでもそんなことを言っていられる場合じゃないもんね」

重斧士「この人すごい喋るな」

魔剣士「…………」

青い石「エリウスもいつかこうなるよ」

魔剣士(ならねえよ……)
827 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/06/09(金) 21:03:35.06 ID:rDmS2C07o

晩餐が終わり、部屋に戻って月を眺める。
世界のピンチなんて忘れてしまうほど綺麗な夜空だ。

魔剣士「そういや前世様、探し物ってなんだ?」

精霊王「俺のおかんである女神ユースティティアが持ってるもの、わかるか?」

魔剣士「わかんねえ」

精霊王「剣だよ、剣」

魔剣士「剣? 俺あんまり剣の必要性感じてないんだけど」

精霊王「あれはただの剣じゃない。俺の力を高濃度で込めることができる」

魔剣士「俺の身体に負担をかけずに浄化の力を使えると」

精霊王「そうなる。今持ってるちっこい剣よりはでかいが、おまえの身体によく馴染むはずだ」

精霊王「おまえは俺の生まれ変わりなんだからな」

魔剣士「んで、その剣は何処にあんだよ」

精霊王「この領地にある山岳地帯」

魔剣士「……体力要りそうだな」

精霊王「体を鍛えるいい機会だろう」
828 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/06/09(金) 21:04:15.89 ID:rDmS2C07o

精霊王「正邪を図る天秤は地球の裏っ側にあるし今は要らないか」

白緑の少女「……あの、エリウスさん」

魔剣士「ああ、ユキ、おはよう」

白緑の少女「今日、お疲れ……ですよね……」

魔剣士「……疲れない日なんて当分なさそうだし……一回くらいなら……」

精霊王「ヤッてる途中でちょっと多めに俺の力流し込むから覚悟しとけよ」

精霊王「まあおまえの身体は被虐趣味に目覚めてるから心配ないだろうけど」

魔剣士「目覚めてねえよ萎えるわ!!!!」

前世様に時折口を挟まれて腹を立てつつも結局3ラウンド致した。
829 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/06/09(金) 21:04:54.21 ID:rDmS2C07o

青い石「あーくんと話せて嬉しかった」

魔剣士「そうか」

青い石「もう思い残すことないかも」

魔剣士「そうか、もうお別れの時か。あの世でも元気でな」

青い石「半分冗談だから……」


――エーデルヴァイス領・山岳地帯

咲き始めのエーデルワイスがとても美しい。

魔剣士「ああ、なんて可憐なんだ」

魔剣士「かつて険しい場所でしか咲き誇ることができなかった君達は、」

魔剣士「“花のローレライ”と呼ばれ、多くの罪人を死に至らしめたそうだね」

魔剣士「君達の気高さに僕はもう」

重斧士「人の背中の上で花口説いてんじゃねえよ」

魔剣士「ごめん」
830 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/06/09(金) 21:05:39.96 ID:rDmS2C07o

すぐに体力切れを起こしたのでガウェインに背負ってもらっている。

白緑の少女「…………」

重斧士「しかも嫁さん怒ってんじゃねえか浮気者」

魔剣士「ごめん。つい癖で……」

精霊王「俺の彼女を泣かせやがって」

魔剣士「一億年も放置してたくせに彼氏面してんじゃねえ」

精霊王「一億年なんて大した時間じゃねえもん!」

魔剣士「いやどう考えてもなげえだろ!」

重斧士「俺には独り言言ってるようにしか聞こえねえんだが」

精霊王「おまえには俺の声聞こえるようにしとくわ」

重斧士「おおう」

白緑の少女「……長かったです。寂しかったです。イウスのバカ」

精霊王「ごめん……」
831 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/06/09(金) 21:06:49.09 ID:rDmS2C07o

魔剣士「まだ剣がある場所まで着かねえの?」

精霊王「もうちょっと先ー」

魔剣士「てかなんでこんなとこにあるの」

精霊王「人間に悪用されないよう隠したんだよ」

重斧士「にしても白骨化死体が地味に多いな」

魔剣士「採集しに来た連中が足を滑らせたんだろ」

魔剣士「エーデルワイスの花は採集されすぎて極端に減っちゃったことがあってさ」

魔剣士「断崖絶壁とかにしか生息できなくなったんだよ」

重斧士「それを摘もうとした奴が死んだのか」

現在は手厚く保護されているため、この辺りではたくさん咲いている。

重斧士「……けどよ、あの死体とかちょっと新しくねえか。あれも」

魔剣士「特に崖とかもないのになあそこ。普通に転んだのかもしれないけど」

白緑の少女「……花を守ろうとする人もいれば、利益のために罪を犯す人もいます」

白緑の少女「密かに採集しようとした人間に怒った精霊が、彼等を死に至らしめたのでしょう」

魔剣士「…………」
832 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/06/09(金) 21:07:49.09 ID:rDmS2C07o

白緑の少女「声をもたないがために、警告を出すこともできず」

白緑の少女「命を奪うことしかできなかったのでしょう」

白緑の少女「しばしば起こることです」

似たような話は散々聞いた。そのせいでとんでもない目にも遭ってきた。

白緑の少女「この世には足りないのです。人と草木を繋ぐ理が」

橋渡しをすることができるのは、俺の魔力。
しかし俺一人でできることは限られている。もどかしいな。

オディウム神を倒してからも、大学に戻らずに旅を続けようかな。
少しでも多くの植物を助けたい。犯されるのと殺されかけるのだけは勘弁だけど。
833 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/06/09(金) 21:08:23.77 ID:rDmS2C07o

精霊王「この岩壊して」

魔剣士「攻撃魔術使う元気ない」

重斧士「俺に任せろ」

斧で割りやがった。頼りになる男だ。
ここからは自分の足で歩く。

洞窟内は水晶がテラテラ光っている。草花の魔力の影響を受けているのだろう。
しかし、足元を確認するにはちょっと暗かった。

魔法で明かりを灯す。

魔剣士「あれ」

水晶が激しく輝いた。眩しいくらいだ。

精霊王「俺達の魔力に反応してるんだ」

精霊王「女神ユースティティアに愛された魂の持ち主にのみ反応する」

奥に進むと、大きな水晶の中に閉じ込められた剣が地面に突き刺さっていた。
834 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/06/09(金) 21:10:15.77 ID:rDmS2C07o

精霊王「触れてみろ」

おそるおそる手を伸ばす。
空色の水晶には淡い虹色が揺れていて、まるで青空の下に色とりどりの花畑が広がっているようだ。



表面に手が触れた瞬間、目映い光が視界を覆った。

――いらっしゃい、愛しの我が子――

優しい声が聞こえた。

白い空間に、水晶と同じ彩が緩やかに流れている。
俺の目の前で光が集まって、それはやがて人の輪郭を形作った。

女神「イウス、そしてエリウス」

精霊王「ママーーーーーッ! の残留思念!!!!」

女神「この子ったら」

可視化したイウスが女神に抱き着いた。こいつマザコンかよ。
とりあえず俺はサングラスをかけた。視覚過敏のある俺にこの空間は眩しすぎる。
835 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/06/09(金) 21:11:39.34 ID:rDmS2C07o
kkmd
836 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/09(金) 22:18:25.39 ID:orCQO64To
おつ
837 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/10(土) 08:37:45.02 ID:yxoBkXfUO
おつー
838 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/10(土) 21:10:59.62 ID:B2X5VlY8o
おつおつ
839 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/12(月) 23:31:26.97 ID:1WSOS5yD0
乙
840 : ◆O3m5I24fJo [sage]:2017/07/12(水) 23:56:32.67 ID:ZZyY/WDno
self hoshu......himagahoshii
841 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/13(木) 00:12:53.63 ID:Cd23eMgVo
ganbatte
842 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/13(木) 15:16:42.39 ID:0Z7F7fsHO
syatikudamashiwomisero
843 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/18(火) 20:54:55.04 ID:yEea0tfSo

第三十株 アーチン・ドライアンドラ


精霊王「ままー」

女神「……馬鹿な子。次に生を得る時は、安易に命を捨てちゃだめよ」

精霊王「ごめんなさい」

あれ見てたら俺もちょっと母さんに甘えたくなってきた。

大精霊は、神の代理としてこの世に生み出された存在だ。
本来は自分の後継を生み出す前に死んではいけなかったらしい。

女神「“概念”には“対”となるものが必ず在ります」

女神「生と死。愛と憎しみ。陰と陽が双方存在していなければこの世は成り立ちません」

女神「しかし、あれは本来存在した憎しみの神ではありません」

女神「オディウム神の抜け殻が、この世の憎悪を吸い取り続けて生まれた偽神」

女神「それがあれの正体。されど神に等しい力をもっています」

女神「あまりにも大きく膨らんでしまったあれは、」

女神「自らは理解しえぬ“愛”を憎しみで食い潰そうとしています」

精霊王「この世のバランスが崩れちまうわけだ」

魔剣士「母親に抱き着いたまま語るな」
844 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/18(火) 20:55:30.18 ID:yEea0tfSo

女神「しかし、あれが膨れ上がったのと同様、古き時代よりもこの時代は愛が溢れています」

女神「故に、あれを消滅させてはなりません」

魔剣士「え?」

女神「急にあれを完全に消し去ってしまえば、この世を占める愛の割合が大きくなり過ぎてしまうのです」

女神「両者が釣り合うよう、あれを小さくしなければなりません」

ややこしいことになってきた。

女神「愛が世を占める割合の方が大きいに越したことはありません」

女神「ただ、変化が緩やかでならないと秩序が崩壊するのです」

女神「余剰となっている憎しみを削り、その後は少しずつ争いを治めていくのが最良の歴史となるでしょう」

魔剣士「え、え? ええ?」
845 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/18(火) 20:56:06.95 ID:yEea0tfSo

精霊王「かーさん、それじゃどのくらいオディウムを浄化すればいいのかわかんないよ」

精霊王「正邪の天秤取りに行く余裕ないよ」

女神「スファエラ=ニヴィス。彼女は愛の子。天秤の役割を担ってくれるでしょう」

そういえば、ユキがどんな神様の加護を受けているのか知らなかったな。
生まれてから神様に愛されたらしいから、大精霊とはちょっと違う存在らしい。

女神「……エリウス、もっとこちらへ寄りなさい」

戸惑いながら近づくと、抱きしめられた。

女神「たくさん理不尽な目に遭ってきたのですね」

女神「納得できないことの多い人生でしょう。人との違いに孤独を覚えることも多かったでしょう」

女神「けれど、悲観する必要はありません。あなたは、心の痛みを知っている人です」

女神「大丈夫。幸せになれますよ」

胸が熱くなった。

恋みたいな激しいドキドキじゃなくて、もっと穏やかで、
まるで母さんに抱きしめられてるみたいな暖かさだ。
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