魔剣士「やはりフキノトウは最高だ」武闘家「えっ?」

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847 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/18(火) 21:01:03.43 ID:yEea0tfSo

――ヴァールハイト国、勉学の都ミネルヴァブルク

北の大陸でも最高レベルの学校や研究施設が多く存在している。

この辺りもオディウムの白き粉の影響を受けているのだが、
持ち前の技術力ですぐに対策法を開発したためたいした被害はない。


俺の恩師も、この町のくっそ頭のいい大学出身だ。
なのにド田舎の大学なんかで研究してるのは、暖かい土地でのんびり過ごしたかったかららしい。

恩師の母校の門の前に立ち、校舎を見上げた。ゴシック様式の立派な建物だ。
ちなみに今は俺1人だ。たまにはゆっくり息抜きしたい。

構内に入り、医薬学部へと進む。気晴らしにちょっと覗いていこうと思ったのである。
花壇には黄色いドライアンドラの花が咲いている。花言葉は劣等感だ。

魔剣士「すんません、アポ無しなんですけど見学いいですか」

学生証を見せると、警備員はビビりながら通話器でどっかに連絡を入れた。

警備員「どうぞ」

俺の恩師の同級生という人がすぐに出迎えに来てくれた。
848 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/18(火) 21:02:16.85 ID:yEea0tfSo

教授友人「去年の学会で会った時よりも身長が伸びたねえ」

魔剣士「あ、どうも」

そういえば、学会の時とかに俺の恩師とよく喋ってた人のような気がするけど、
俺は人の顔を覚えるのが苦手であるためうろ覚えである。

外観とは違い、校舎の内装は最新のものだ。
廊下を通る学生や学者達の人種は様々で、ちょっと驚く。

うちの大学と違い、世界中から人材が集まっているからだろう。
うちは地元民や、精々大陸内の別の国から来た人間がほとんどだ。

教授友人「あっちが医薬学図書館だよ」

人材と同様、世界中の本が集められているみたいだった。
植物と子作りするヒントになるような文献ないかな。

読み漁りたいけどそこまでゆっくりする時間はない。

魔剣士「あっちの植物園見たいんすけど」

教授友人「ああ、いいよ」
849 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/18(火) 21:02:50.47 ID:yEea0tfSo

南じゃ滅多に見られない薬草がたくさん栽培されている。
あー癒されるー……。世界の危機といえども、やっぱり息抜きは必要だ。

魔剣士「きゃわいぃぃぃ」

教授友人「あ、相変わらずだね……」



教授友人「種をいくつかお裾分けしよう」

魔剣士「いいんですか!? あざっす」

教授友人「……何やら大変なようだが、もし落ち着いたらうちに留学しないかい」

教授友人「君の才能は世界最高峰の研究施設で生かされるべきだと思うのだけどね」

魔剣士「んー、留学っつうとちょっと重く感じるんで」

魔剣士「たまに遊びにきたいです」

教授友人「そうか。いつでも来ておくれ」

教授友人「場所にこだわらないところが彼とよく似ているよ」

魔剣士「今日はお忙しい中ありがとうございました」
850 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/18(火) 21:03:48.95 ID:yEea0tfSo

さっぱりした気分で校舎を出た。
しかし緊張が解けたせいだろうか。急激な疲労感に襲われた。

そういえば昨晩も激しかったな……。
うごけねえ。だっる。

医学部生「……大丈夫ですか?」

俺と年の変わらなさそうな男に声をかけられた。
路考茶色の短い髪、目は何故か懐かしく感じるオリーブ。

医学部生「エリウスレグホニアそっくりですね」

魔剣士「本人です」

医学部生「あ、やっぱり」

医学部生「肩貸そうか」

魔剣士「頼んます」

俺とちょっとだけ魔力情報が似ている気がしたが、
あんまり深く情報を読み取る元気はなかった。

宿まではちょっと遠い。大学構内の喫茶店で休むことになった。
851 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/18(火) 21:04:50.48 ID:yEea0tfSo

医学部生「俺、誰かわかる?」

魔剣士「どっかで会いましたっけ」

医学部生「実際に顔を合わせたのは10年くらい前に1回だけだね」

誰だっけ……。

医学部生「俺、エルナト・フォン・コーレンベルク」

魔剣士「俺のひいじいちゃんの曾孫か何か?」

医学部生「そうだよ」

思い出した。ひいじいちゃんと映像通話してる時にたまに端っこに映ってた奴だ。
ってことは、ええと……

魔剣士「はとこ」

医学部生「そうなるね」

なんか親近感湧くなあとは思ってたんだ。
エルナトはエルディアナばあちゃんの弟の孫だそうだ。
852 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/18(火) 21:05:19.73 ID:yEea0tfSo

医学部生「何処の具合が悪くて蹲ってたんだ」

魔剣士「全身の疲労感。腰痛。軽い頭痛もある」

医学部生「まだ若いのに……」

治療を施してくれた。

当然薬学部出の俺よりも医学部の奴の方が治療魔術の腕は上だ。
だいぶ楽になる。

魔剣士「貴族の次男三男はよく医者か弁護士を目指すとは聞くけど」

医学部生「俺は長男なんだけどね。どうしても医者になりたいんだ」

魔剣士「そりゃまたなんで」

医学部生「母さんを看てくれた産科医が素晴らしい人でさ。それで憧れたんだ」

魔剣士「へえ」

こいつもきっと良い医者になるんだろうなと感じさせる何かが雰囲気から滲み出ている。
笑い方がひいじいちゃんとよく似てると思う。
853 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/18(火) 21:06:43.14 ID:yEea0tfSo

俺は人の目を見るのが苦手なんだが、こいつのオリーブの目を見るのはなんでか平気だ。
でも、気味悪がられない程度に相手を見るっていうのができないから、すぐに目をそらした。

医学部生「君のお母様とおばあ様の目は、本当は俺のとおんなじオリーブだって、」

医学部生「ひいじい様がよく言ってたよ」

魔剣士「えっ……そうなのか」

知らなかった。そういえばセファリナの目もオリーブだ。母さんの遺伝だったのか。

魔剣士「医学部って忙しいだろ。大学行かなくて大丈夫なのか」

よく医学部の奴等に忙しい自慢されたなあ。今となっては懐かしい。

医学部生「今日は5限ないんだ。大丈夫だよ」

ちょっと一緒に遊ぶことになった。
店を出て、そこらへんの雑草に「ユキに晩飯は外で食べてくるって伝えてくれ」と情報を送る。
854 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/18(火) 21:07:45.02 ID:yEea0tfSo

校門に向かって少し歩くと、エルナトの知り合いらしきグループとすれ違った。

医学部生友1「ようピストン! ……隣にいるの有名人じゃねえか!」

医学部生「はとこなんだ」

医学部生友2「俺達も混ぜろよピストン」

医学部生「また今度な。2人でゆっくり話したいんだ」

魔剣士「……ピストンってなんだよ」

医学部生「俺の名前、『ツノで突く』って意味なんだよ」

医学部生「親はただ星の名前つけてくれただけなんだけどさ」

医学部生「天文学好きの奴に元の意味を指摘されて以来、あんな仇名で呼ばれるようになったんだ」

ひどい……思春期じゃあるまいし……。
エルナトは苦笑いしつつも怒ってはいないようだ。

器のでかい奴なんだろうなと思う。それとも慣れてるのかな。
なんだか、劣等感がじわじわと刺激されていく。
855 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/18(火) 21:08:34.74 ID:yEea0tfSo

俺はこいつほど穏やかじゃないし、器は小さいし、捻くれてるし。
親戚なのになんでこんなに違うんだろう。

特別な才能なんて要らないから、もっとまともな人間になりたかった。

……俺はいつまでこういうコンプレックスを抱え続けるんだろう。

どんな慰め方をされても、普通の人間とは違うコンプレックスを解消できることはなかった。
ユキに俺を肯定してもらえてるおかげで、だいぶマシにはなったつもりだけれど。

旅に出てから、コンプレックスを見ないふりすることが減ったな。
でもちゃんと向き合ってるわけでもない。

医学部生「どうした? 俺何か嫌なことでも言ったか?」

魔剣士「なんでもない」

医学部生「正直に言ってほしいんだけどな」

魔剣士「おまえが他人と当たり障りなく話してるのを見たらコンプレックスが刺激された」

医学部生「あ……ははは」

苦笑された。嫌味な感じはない。
856 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/18(火) 21:10:52.50 ID:yEea0tfSo

医学部生「ちょっとついて来てくれるかな」

進む方向が変わった。
さっき俺が伺ったのとは別の棟に向かっているみたいだけど、建物自体は繋がっている。

同じく医学系の施設だろう。

魔剣士「アスペの当事者会でも紹介してくれるのなら大きなお世話だけど」

医学部生「そうじゃないよ」

魔剣士「じゃあ何? 俺より重度の奴でも見せてくれんの?」

医学部生「違うよ。まあ、知り合いにいっぱいいるけどね。ほら、こっちだよ」

一般論で慰められるのにはもう飽きている。
でも、エルナトはそういうことをするつもりじゃないみたいだ。

地下に降りていく。

医学部生「俺の専門じゃないんだけどね」

扉が開かれたその先には、たくさんの画面と、見たことのない機械がたくさんあった。

エルナトは部屋の中にいた人々と軽く挨拶をして、俺の方へ振り返った。
857 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/18(火) 21:12:10.04 ID:yEea0tfSo

医学部生「一般世間には公表していない技術がこの町にはたくさんある」

医学部生「その1つがこの部屋にあるんだよ」

医学部生「君のコンプレックスの原因を治す技術は、実はもう理論上存在しているんだ」

魔剣士「え……?」

医学部生「今はまだ実験段階だけれど、全ての被験者の障害は改善されつつある」

医学部生「当然、すぐに障害の特徴が全て消えるわけじゃない」

医学部生「けれど、これらの装置で、発達障害者の神経細胞の働きを定型発達に近づけ、」

医学部生「リハビリを行うことによって、コミュニケーション能力や、」

医学部生「能力の偏りを大幅に……」

魔剣士「ちょ、ちょっと待ってくれ」

魔剣士「急すぎて思考が追いつかない」

目と耳を疑った。

発達障害の原因でさえもはっきりしていないと一般世間では言われているのに。
死んでイウスと融合しなくても、今、生きてる状態で、治療できるなんて。

まあ障害が治っても、多分性的嗜好はそのままだろうから、完全に普通になれるわけじゃないだろうけど。
それでも“普通”に近づける。
858 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/18(火) 21:14:51.84 ID:yEea0tfSo

医学部生「被験者になってくれれば今すぐにでも治療を始められるし、」

医学部生「不安だったら、もう数年待ってくれたら世間にも公表できる治療法になるだろう」

医学部生「どうする?」

どうする、って……。

医学部生「もちろんデメリットはあるよ」

医学部生「特別な才能が失われる可能性は著しく高い」

魔剣士「…………」

医学部生「君はギフテッドではなくなるかもしれないんだ」

自閉が治っても、植物の成分を操る能力は残るだろう。
でも、能力を使いこなし、ものを開発する頭脳は失われる。

俺は研究が好きだ。人との関わりを避けながら、研究にばかり打ち込んできた。
普通になりたい。でも、研究できない俺なんて俺じゃない。

おかしいな。

才能よりも、マジョリティに溶け込めるようになることを望んでいたはずなのに。
いざ実現できると告げられると、自分が自分じゃなくなるのが怖くなってしまった。
859 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/18(火) 21:15:26.52 ID:yEea0tfSo

自宅に、俺宛てのたくさんの手紙が届くことを思い出した。
全てお礼の手紙で、俺が作った薬や健康食品だとかで救われたって内容だった。

最初は嬉しかったけど、段々慣れて、いつの間にか手紙を受け取っても何も感じなくなっていった。
やっぱり普通との違いに悩んで自己嫌悪に陥った。

俺にしかできないことがあるって、今までいろんな人から散々言われ続けた。
その度に耳を塞いでいた。


今、才能を捨てたら、助けられるはずの人々も、植物達も、助けられなくなる。

医学部生「君は今の君のまま成長していけばいいと俺は思うけどね」

魔剣士「……いつか、人生に耐えられなくなったら、その時は頼ると思う」

医学部生「うん。それがいいよ」
860 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/18(火) 21:15:52.11 ID:yEea0tfSo

望めば、いつでも“普通”に近づける。だから、今のままでいい。

それは、いつでも自殺できるんだからと自分を誤魔化して頑張るのと似ているかもしれないけど、
でも、それよりもずっと心は上を向いている。

魔剣士「ありがとう」

医学部生「どういたしまして」

屋外に出ると、再びドライアンドラの花が視界に入った。

良い意味の花言葉もあったっけな。自分の価値を評価する、だっけ。
さっき見た時よりも、なんだか綺麗に見えた。




861 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/18(火) 21:18:24.91 ID:yEea0tfSo

重斧士「なんかおまえ、暗い感じっつうか……あれだ、厭世的な感じがしなくなったな」

魔剣士「難しい言葉覚えたじゃねえか」

重斧士「使い方合ってるよな?」

魔剣士「ああ」

更に南下し、(モルは嫌がってたけど)ひいじいちゃんの所に顔を出して、港町に出た。

道中、俺が生きていることに気が付いたオディウム教徒の連中に襲われることも何度かあったけど、
特に問題なく戦闘は終わった。

父さん達はずっと膠着状態らしい。
はやく終わらせないと。

海岸に立ち、サントル中央列島の方角を見る。

大樹の蒼いシルエットと、水平線から空に向かって渦巻く黒。
嫌でも覚悟が固まっていくのを感じた。
862 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/18(火) 21:19:15.35 ID:yEea0tfSo
kkmd
863 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/19(水) 01:37:50.51 ID:zLcty/nj0
今までで1番良かった乙
864 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/19(水) 10:02:01.83 ID:RCoxmFCpo
選択の余地って大事だよな
今回も面白かった乙乙
865 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/19(水) 21:13:29.39 ID:ZfhqcJlmo
乙です
866 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/26(水) 19:34:51.62 ID:m8bMPIqxo

第三十一株 キンセンカ


魔剣士「栄養ないからってキュウリを馬鹿にするんじゃないぞ」

魔剣士「熱中症・夏バテ予防には塩揉みしたキュウリがとても効果的なのだ」

魔剣士「シャリシャリとした食感を楽しみながら、」

魔剣士「水分と塩分、ビタミンB群やミネラルを補給できる」

重斧士「うめえ」

魔剣士「だろ?」

重斧士「食欲ねえ時もこれなら食えるな」

魔剣士「表面の緑色が濃く、いぼが鋭いものを選ぶのがコツだ」

白緑の少女「梅キュウリにしてもおいしいですよ」シャリ

重斧士(植物の精霊が植物食ってる……共食い……)
867 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/26(水) 19:35:23.23 ID:m8bMPIqxo

精霊王「エリウス君に嬉しいお知らせ」

魔剣士「んだよ」

精霊王「ラベンダー色のあの子が見つかりました」

魔剣士「マジでか!?」

青い石「ほんと!?!?」

精霊王「うおっハンドル操作ミスんなよ」

魔剣士「何処にいるんだよ!」

精霊王「竹とか桜とかたくさん生えてる島」

魔剣士「竹? 桜……?」

魔剣士「じいちゃんが取引してる商人の島か?」

精霊王「せーかい!」

魔剣士「あああじゃあすぐ迎えに行かねえといやでもうどん粉病野郎どうにかするのが先だしうわああどうしよう!!」

精霊王「落ち着け!!」
868 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/26(水) 19:36:12.31 ID:m8bMPIqxo

魔剣士「ラヴェンデルはまだ全然喋れねえのに」

魔剣士「ほっといたらどうなっちまうか」

精霊王「まあ聞け」

精霊王「保護されてしばらく経った頃に、おまえのじいちゃん家のことを知ってる商人が身元を証言してくれたみたいでな」

精霊王「もう村には連絡が行ってるそうだ」

魔剣士「あーよかったー……はあ」

アクアマリーナの町に着いた。父さんも今はそっちにいるらしい。
車を停めて、軍が駐在している建物に向かう。

魔剣士「あっいたいたとうさーん!」

魔剣士「ラヴェンデルがっはあはあ、ラヴェっ、ぜっ、ぜえっ」

戦士「落ち着け」
869 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/26(水) 19:36:45.33 ID:m8bMPIqxo

戦士「生きててくれてよかった」

一瞬ハグされた。

戦士「母さんの顔、見てくか」

魔剣士「うん」

病人ではないけれど、母さんは医療棟で寝かされていた。
まるで死人のようだ。

青い石「アルカディア……」

ルツィーレは母さんを見守っているが、いつもの元気はない。

次女「エルお兄ちゃん!」

俺を見つけると、すぐに抱き着いてきた。

次女「お兄ちゃん、お兄ちゃん」

魔剣士「……よしよし」
870 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/26(水) 19:37:39.54 ID:m8bMPIqxo

次女「お母さん、いつになったら起きていいの?」

魔剣士「もうすぐだよ」

次女「ラヴェンデルは?」

魔剣士「見つかったんだ。ちゃんと生きてる」

次女「お兄ちゃんとお父さん、また戦うんだよね? 死んだりしないよね?」

魔剣士「もちろん生き残るよ」

魔剣士「……母さん」

母さんの右手を両手で握る。

魔剣士「母さんが安心して目を覚ませる世界に、絶対、してみせるから」

僅かでも、オディウムに母さんの憎しみを吸わせるわけにはいかない。
ラヴェンデルは生きていたけれど……まだ、眠りの魔法を解くわけにはいかないんだ。
871 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/26(水) 19:38:33.55 ID:m8bMPIqxo

今すぐにでもうどん粉病の神を倒しに行きたいけれど、慌てても仕方ないので空いた時間に中庭に出た。
俺がやることを各国の軍人だとかに説明して、作戦を練らなきゃいけないため、少々時間がかかるのである。

中庭には木が植えてあって、花も咲いている。休むには適した環境だ。
終わりかけている深い黄色の花はキンセンカだ。別名はカレンドラ。

カレンデュラが正しい発音だけどちょっと言いにくい。
花言葉は「寂しさに耐える」。元気な見た目の花なのに、花言葉は悲しい感じだ。

精霊王「エリウス君に残念なお知らせ」

魔剣士「んだよ」

精霊王「君の苦手な人がこっちに向かってきてまーす」

足音のする方向へ振り向くと、そこには

魔導槍師「……」

げっ、って思った。でも、前ほど怖くはなかった。全く怖くないわけじゃないけど。
障害のことを馬鹿にされたって、今なら跳ね返せる。

魔剣士「何の用?」

魔導槍師「死に損ないの顔を見ようと思いまして」
872 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/26(水) 19:39:05.18 ID:m8bMPIqxo

この人の目は、相変わらず俺を蔑んでいる。
……あれ?

魔導槍師「ああ、この目の色ですか。戻ってしまったんですよね」

魔力の色――琥珀みたいな、蜂蜜みたいな色に染まっていた目が、元の草色になっていた。

魔導槍師「『魔人』の力が弱かったらしいんですよね。本当は維持したかったのですが」

魔剣士「……魔人って、なんだよ」

魔導槍師「ああ、知りませんでしたか?」

魔導槍師「『他人の魔適傾向を上げる能力をもつ魔適体質者』のことですよ」

魔剣士「なんでそんな呼び方してんだよ」

まるで魔族みたいじゃないか。

魔導槍師「魔族に穢されて魔適体質者となった者は、通常の魔適体質者とは異なりますからね」

魔導槍師「彼等の魔適傾向は『穢れ』の種が発芽するにつれて上昇し、」

魔導槍師「そして彼等のみが他者の魔適傾向を上昇させることができます」

魔導槍師「“穢れた母”をもつあなたが知らないとは」

魔剣士「は?」

魔導槍師「あなたの母親は魔族と性行為をしたことで魔適体質者となったのですよ」

魔導槍師「魔適傾向が下がったのは、聖玉の浄化作用を直に受けたからです」

青い石「…………」
873 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/26(水) 19:39:31.87 ID:m8bMPIqxo

母さんは、極端に男を恐れている。

アウロラ達が性的な暴力を受けないかどうかも、いつも過剰に心配してたし、
俺が大学の女に襲われかけた時も泣き叫んでた。




『汚いお母さんでごめんね』




魔剣士「…………」

魔導槍師「ショックでしたか? そうでしょうね」

魔導槍師「母親が父親以外と、ましてや魔族と関係をもっていたなんて」

魔導槍師「くくっ」

喉の奥から押し出すような嗤い。
874 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/26(水) 19:39:58.25 ID:m8bMPIqxo

魔剣士「黙れ!」

魔剣士「母さんを侮辱することは許さねえ!」

ぶん殴ろうとしたけれど、あっさり俺の右手首は掴まれてしまった。
俺の動きが固まったところで腹に膝蹴りを食らわされる。

鈍いが激しい痛みに耐えきれず、俺は地面に倒れた。

精霊王「おい、しっかりしろ」

それでもアークイラを睨み返す。
こいつの目からは、もう笑みは消えていた。

やけに虚しい蔑みの目で俺を見下ろしている。
しゃがんだと思ったら、俺の前髪を左手で掴み、軽く顔を持ち上げた。

どうしてこの人は、こんなに俺のことを憎んでいるのだろう。
875 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/26(水) 19:40:38.75 ID:m8bMPIqxo

殴られるのかなと思ったけれど、アークイラは一瞬建物の方を見ると去っていった。
走ってくるのは、アークイラと同じ髪の色の女の子だ。

武闘家「エリウス!?」

そういや、こいつらの名字……この花の名前だったっけなあ。
カナリアの姿を捉えたところで、視界が真っ暗になった。

精霊王「あの男、おまえを侮辱しているようで、本当は――」





武闘家「ねえ、何があったの?」

武闘家「お兄ちゃんとエリウスの気配がしたから、まずいんじゃないかと思って中庭に向かったのだけれど」

魔剣士「……喧嘩しただけだよ」

武闘家「喧嘩ってレベルじゃないわよ。暴力事件じゃない」

魔剣士「先に殴り掛かったの、俺だから」

武闘家「殴らせるようなことをお兄ちゃんが言ったんでしょ!?」

魔剣士「……心配してくれてありがとな」

やっぱり苦々しい記憶と恐怖が蘇ってぎこちなくはなったけど、
カナリアとちゃんと話せた。

細かいことを気にする余裕がなかったのも大きいけどさ。
876 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/26(水) 19:41:22.54 ID:m8bMPIqxo

こいつ、お兄ちゃん大好きなのに。
大好きなお兄ちゃんが他人を傷つけて、どんなに苦しいだろう。

魔剣士「……多分なんだけどさ」

魔剣士「あの人、家族から嫌われたら、もっと歪むと思う」

魔剣士「だから、あの人が何しても、おまえはあの人のことを嫌いにならないでいてあげてほしい」

生育環境のせいであんな性格になったのかもしれないし、可哀想だとは思うけど、
俺がいじめられる筋合いはない。これ以上の八つ当たりは勘弁だ。

武闘家「エリウス……ごめんね、ごめんね」

泣かれた。

聖騎士「貴様ー! よくもカナリアーナを泣かせたな!」

窓からいきなり現れたのはプラチナブロンドの男だ。来てたのかこいつ……。

重斧士「おいヴィーザル、言っとくけどカナリアは俺の女だからな」

聖騎士「私はそのようなことを認めてはいない!」

武闘家「ちょっと静かにしてよ!」

魔剣士「いいじゃん、喧嘩させとけよ。俺はもう行くから」

武闘家「あ、まだ動いちゃだめよ」

魔剣士「もう治ってるよ」

内臓にダメージを受けた場合、治療を受けてもしばらくは安静にした方がいい。
しかし、俺の身体は生命の結晶のおかげで回復力が上がっている。動いても大丈夫だ。
877 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/26(水) 19:41:48.59 ID:m8bMPIqxo

魔剣士(アーさんの感情ってオディウムのエサになんないの?)

精霊王「ならねえこともねえけど、オディウムが好む憎しみの情とは違うっぽい」

精霊王「なんつうか、あの男の負の感情は……寂しさから来てるものなんだよな」


英雄「うっぐすっ」

戦士「何泣いてんだよ」

アキレスさんだ。来てたのか。

英雄「アーキィも俺も国を離れるのはまずいって陛下に渋られてたところを、」

英雄「無理矢理こっちに応援に来る許可をもぎ取ったのにさあ」

英雄「兵士達が酷い噂してるの……聞いちゃって……」

アーキィってのは多分アーさんのことだ。
878 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/26(水) 19:42:31.24 ID:m8bMPIqxo

戦士「どうしたんだ」

英雄「アーキィが……汚い手段で普通の男の子をメス堕ちさせてセフレにしたって……」

戦士「げっほっ。子供の性的な話はきついな」

英雄「しかも5人も……」

戦士「いつの間にそんな」

英雄「全員マリナっぽいきつめな印象の黒髪美女に仕上げたんだって」

英雄「俺のせいだ……」

戦士「…………」

英雄「あの子が“男が演じてる理想的な美女”と上辺だけの恋しかできなくなったのは明らかに俺のせいだし、」

英雄「あの子にばかりきつくあたるマリナを諭しきれなかったのも俺だから……」

戦士「全部が全部おまえの責任ってわけじゃないって」

体育座りで泣いているアキレスさんを、どう慰めればいいのか父さんは困っているみたいだ。
俺は気配を消しつつその場を去る。
879 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/26(水) 19:43:01.76 ID:m8bMPIqxo

メルクはどうしてるかな。
建物をうろつくと、死んだ魚のような目をした女の子と2人で座っているメルクを見つけた。

クレイオーが、少し離れた所からあいつらの様子を伺っている。

歌姫「理詰めでリモンさんの洗脳を解いたんですのよ」

魔剣士「解けたんだ。よかったじゃん」

歌姫「しかし、彼女はオディウム教に協力していた罪の重さを自覚してしまったことで、」

歌姫「生きていく気力を失いかけてますの」

歌姫「カウンセリングには時間がかかるそうですわ」

魔剣士「そっか」

魔剣士「おまえは彼氏が浮気しないか見張ってんのか」

歌姫「ちっ違いますわよ。嫉妬はしてますけれど、あたくし、彼のことは信じてますもの」

歌姫「ただ、ただ気になってるだけですわ」

魔剣士「そりゃ好きな男が他の女と2人きりってのはなあ」

魔剣士「浮気の可能性がなくても複雑だよな」

歌姫「わかったような口を利かないでくださいまし!」
880 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/26(水) 19:43:30.25 ID:m8bMPIqxo

怒られたので俺に用意された部屋に帰ることにした。
扉を開けるとそこには……

白緑の少女(本体)「おかえりなさい、エリウスさん」

白緑の少女(分身1)「戦いに備えて、準備を最終段階に進めようと思うんです」

白緑の少女(分身2)「お体の負担が大きいでしょうけれど、がんばってくださいね」

白緑の少女(分身3)「ああ、シャワーは終わった後で大丈夫ですよ。あなたの汗のにおい、好きですから」

白緑の少女(分身4)「さあ、こっちへ」

魔剣士「……うん?」

目を疑った。最愛のユキがたくさんいる。

白緑の少女(本体)「ここは私の土地。分身はいくらでも増やせるんです。驚きましたか?」

うん。

魔剣士「ちょっと分身同士でいちゃいちゃしてみて」

白緑の少女(分身1)「こうですか?」

白緑の少女(分身2)「もう。人間の男の人って、どうしてこういうのがお好きなのかしら」

とても幸せな光景である。
881 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/26(水) 19:43:57.47 ID:m8bMPIqxo

でも、こんな時にお嫁さんとのいちゃいちゃを楽しんでいいのだろうか。

白緑の少女(本体)「素直に、幸福に溺れていいんですよ」

白緑の少女(本体)「あなたの正の感情が、何よりも大きなエネルギーになるんです」

セックスしないとオディウム神には対抗できないし……大事なのは気持ちの切り替えだよな、うん。

ベッドに引き込まれた。

たまには夕方にやるのもいいかな。
……前も後ろももたない気がする。
882 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/26(水) 19:44:52.65 ID:m8bMPIqxo

……。
…………。

食堂に来た。メニューは日替わりらしく、今晩のメインはカレーだった。
食事をしている兵士達のほとんどは疲れ切った顔をしている。空気が重い。

戦士「遅かったな。もう30分くらいで閉まるぞ」

魔剣士「うん……」

戦士「フラフラじゃないか」

魔剣士「うん」

次女「ち」

戦士「やめなさい」

おっさんみたいな冗談を言っているものの、やはりルツィーレのテンションは著しく低い。

次女「ねえエルお兄ちゃん」

魔剣士「なんだ」

次女「救急車が遠くに行くと音が変になる現象ってなんて名前だっけ? どっぷんちょ効果?」

魔剣士「ドップラー効果な」
883 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/26(水) 19:45:36.52 ID:m8bMPIqxo

次女「じゃあ水で流れないトイレの名前ってなんだっけ? だっぷんべんじょ?」

魔剣士「げほっ……ボットン便所だろ。そもそも食事中にする話じゃねえ」

次女「カレーってうんちと似てるよね」

戦士「いい加減にしてくれ」

近くで食事をしている兵士達はむせたり笑いをこらえたりしている。
ルツィーレは真顔だ。

次女「食堂のおばちゃんにね、カレーを巻きグソ型に盛ってって頼んだんだけどね、」

次女「下痢うんちみたいにドロドロだから上手くいかなかったんだよ」

父さんは頭を抱えた。

次女「お兄ちゃんのコップに入ってるの、おしっこみたいな色してるね」

魔剣士「ウコン茶だよ」

次女「ウンコ茶? 苦そうだね」
884 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/26(水) 19:48:16.61 ID:m8bMPIqxo

「げほっがふっ」

「ぷっくすくすくす……」

「俺の地元では汲み取り式便所のことポッチャン便所って呼んでたんだけど」

「俺の村だとゴットンだった」

「ちょっとかっこいいな」

「俺のとこゲッダン」

「切ない気持ちが揺れて廻って振れてそうな呼び方だな」

戦士「……部屋に帰るぞルツィーレ」

次女「えー」

戦士「アニメ見させてやるから」

次女「クレパスしんくんとジャングルの覇者ターさんね」

戦士「……わかった」

どっちも下ネタが多いタイトルだ。父さんは溜め息をついた。
……食堂の雰囲気が随分和らいだ。

しかし、すぐに再び重苦しくなることになる。
885 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/26(水) 19:49:29.77 ID:m8bMPIqxo

兵士達、特にプティアの軍服を着ている人達の動きが緊張で硬くなった。

魔導槍師「先程は手加減したはずだったのですが、どうやら内臓を傷つけてしまったようで。すみませんでしたね」

言葉だけの謝罪だ。目には嫌な笑みを浮かべている。

魔導槍師「カナリアに叱られましたよ」

魔剣士「あんたさ、そんなに俺に構ってほしいの?」

アーさんは豆鉄砲を食った鳩みたいな顔をした。
俺がこんなことを言うなんて思ってもみなかったらしい。

魔剣士「暇ならセフレとでも遊んでればいいじゃん。なんでわざわざ大っ嫌いな俺なんかに話しかけるんだよ」

魔導槍師「……植物などと愛し合っている異常者が」

魔剣士「俺の頭のおかしさを大勢の前に晒すためにわざわざ出向いたわけ?」

魔剣士「あんたのその精神のがよっぽどおかしいと思うけどね」

魔導槍師「ほう? 随分と偉そうな口を利くようになったじゃありませんか」

人の視線は苦手だ。でも、俺はしっかりと相手の目を見据えた。

魔剣士「……確かに俺は異常だよ。でも、俺とユキは心の底から恋をして愛し合ってるんだ」

魔剣士「お遊びの恋しかできないあんたに口を挟まれたくない」

プティア兵は俺達を見てガクブルしている。
アーさんに口答えできる人間なんてほとんどいないだろうから、彼等にとっても俺の反応は意外だったようだ。
886 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/26(水) 19:50:01.47 ID:m8bMPIqxo

魔剣士「……もしかしてさ、あんた、本当はかなり臆病なんじゃないの」

魔剣士「いつもいつも親がいないところばかり狙ってさ。今だって俺の父さんが出てったから入ってきたんだろ?」

魔剣士「恋愛対象は女だっつってるわりに、女装男ばかりと遊んでるのだって、」

魔剣士「本気で他人を愛するのが怖いからだろ」

かなり適当に喋ってる。合っているかは知らない。
でも、今までの鬱憤を晴らしたくて、何か言わずにはいられなかった。

魔導槍師「…………」

どんな言葉を返されるのだろう。
俺よりもずっと会話が得意な人だ。かなりきついことを言われるかもしれない。


覚悟したけれど、アークイラはもう何も言ってこなかった。
887 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/26(水) 19:50:30.18 ID:m8bMPIqxo
kkmd
888 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/26(水) 20:07:44.00 ID:krifQAQU0
889 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/27(木) 10:08:13.88 ID:fzxPCbLkO
乙です
890 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/30(日) 16:44:19.60 ID:H3LjpQBko
ほも
891 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 19:53:38.76 ID:wOYlwML9o

第三十二株 クロユリ


オディウム教の呪術師は、倒しても倒しても何処かから人員補充しているらしい。
また、復活しかかったオディウム神もどきの力を利用して更に強力な呪術を使うようになっている。

そして、こちらからあまり派手に攻撃することもできなかったそうだ。
奴等はオディウム神(もどき)が復活しかかっていることを利用して、
「入信すれば救われる」と民間人の不安を煽り、入信者を増やしている。

一般人を戦いの犠牲にすることは極力避けたいというのが各国の軍の意向だった。

精霊王「オディウムの活動には波がある」

精霊王「一番活発な瞬間を狙うぞ」

精霊王「封印の外部からはこっちからも攻撃できねえからな」

精霊王「最もあいつの力が溢れ出している時なら、封印の“穴”になってる遺跡にこっちの力を注ぎ込むことで、」

精霊王「封印の内部まで浄化できるんだ」

ということらしいので、どう戦うか何度か軍人達と会議を重ねた。
アウェイ感が半端ない。軍人達のほとんどはガチムチマッチョだ。
892 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 19:54:23.82 ID:wOYlwML9o

魔剣士「問題は俺の身体がもつかどうかだろ」

精霊王「散々慣らしたし大丈夫だとは思うんだけどな」

ダイヤモンドを手に握る。
剣もあるし、アウィナイトの加護も強化してもらったし、きっと持ち堪えてみせる。

戦士「あいつらはあらゆる手を尽くして人の憎しみを煽り、封印を弱めている」

戦士「オディウムと戦うのは少しでも早い方がいいだろう」

戦士「洗脳された一般人を犠牲にできないなんて言っていられる余裕ももうない」

戦士「多国籍軍は本気で戦い、おまえを守る」

俺がうどん粉病の神の呪いを浄化する力をもっていることは既に敵に知られている。

仮にそうじゃなかったとしても、俺達が遺跡に直接攻撃を加えていることに気づいたら妨害してくるだろう。
オディウム神もどきへの攻撃に集中するためには軍の協力が必要不可欠だ。
893 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 19:56:33.58 ID:wOYlwML9o

現在、オディウム教徒は遺跡に呪いの結界を張って立てこもっている。
聖玉の結界を破壊することもまだ諦めていないらしいが、父さん達は刺客の撃退に成功している。

俺のいとこ軍団が誘拐されかかる事件もあったらしいけどなんやかんやで阻止できている。
……父さんのすごい人数の兄弟には、同じようにすごい人数の子供がいる。

俺はいとこの人数を把握できていない。

レグホニア家の娘を嫁にもらったら孫に恵まれるとか、
逆にレグホニアの男に娘を嫁がせたら孕まされすぎて大変だとかと地元ではよく言われているけどそんなことはどうでもいい。

戦士「もうあんな思いは勘弁だ。死ぬなよ」

魔剣士「わかってるよ」

精霊王「……はあ」

魔剣士(何溜め息みたいな声出してんだよ)

精霊王「死んでからはすごい速さで時が進んでさ」

精霊王「気づいたら知ってる人間は皆死んでた」

魔剣士(寂しいな)

精霊王「つらいから悲しい感情は全部封じ込めてた」

精霊王「でも、やっぱ生まれ変わりは過去世と雰囲気似ててさ」

精霊王「つい昔のことを思い出しちまう」

魔剣士(ふーん)
894 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 19:57:05.53 ID:wOYlwML9o

突然空気が凍りつくようにピリリとした。

白緑の少女「呪術師です!」

黒い気を纏った男が現れた。
一瞬でここまで転移してきたんだ。相当高位の呪術師だろう。

呪術師「勇者ノ 眠リ 憎シミ 解放ヲ」

様子がおかしい。とりあえず狙いは母さんみたいだ。
念じて剣を具現化する。

戦士「おい下がれ!」

魔剣士「大丈夫だ!」

呪術師は呪いを放ったが、俺は呪いごと呪術師を斬った。
イウスの力を剣に纏わせれば、黒い気は浄化できる。
895 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 19:57:31.78 ID:wOYlwML9o

呪術師の身体からは黒い気がもやもやと煙のように出ている。

魔剣士「こいつ……本当に人間なのか?」

戦士「この頃現れる奴の多くはこんな感じなんだ」

白緑の少女「……オディウムの力で、無理に高位の術者となったのでしょう」

白緑の少女「力に呑み込まれ、彼本来の人格はほとんど消失していたものと思われます」

戦士「道理で倒しても倒しても強い連中が湧き続けていたのか」

魔剣士「ねー父さん俺腕を上げたでしょ」

戦士「確かに太刀筋は綺麗になったが……運動神経の鈍さは相変わらずだな」

戦士「剣が強いだけだろ」

ちくしょう。
896 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 19:59:38.47 ID:wOYlwML9o

精霊王「ねえ明日すぐ軍動かせる? オディウムの活動が活発になりそうなんだけど」

戦士「なんだ今の声」

魔剣士「ごめん俺の前世が喋った」

戦士「おまえにもちゃんと過去世があったんだな……」

魔剣士「なんで喋れるのかは後で説明するよ」

戦士「ええと……軍はいつでもすぐに動かせる。問題ない」

精霊王「そっか」

戦士「なんにせよそろそろ総攻撃を仕掛けようと思っていたしな」

魔剣士(なんで父さんと喋ったんだよ)

精霊王「だって構ってほしくて」

魔剣士(あっそ)
897 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 20:00:18.70 ID:wOYlwML9o

翌日。

多国籍軍が仕掛けようとしている気配に感づいたのか、オディウム教徒達も臨戦態勢らしい。
アクアマリーナの山を登る。車道が続く限りは車での移動だ。

メルクと兵士数人が護衛として同行してくれている。



クロユリの花が咲いている。
ある株の根元に、ユキの散った花が落ちていた。

対照的だな、と思った。
クロユリの花言葉は“呪い”だ。
898 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 20:01:20.88 ID:wOYlwML9o

魔剣士「この花って確か伝説あったよな」

白緑の少女「古い時代、この土地はアレカレスという一族に治められていました」

白緑の少女「ある代の当主にはリリィという名の美しい側室がいたのですが、」

白緑の少女「リリィは最も深く当主の寵愛を受けていたために、他の側室の妬みを買い、」

白緑の少女「不義の噂を立てられ、怒り狂った当主に切り殺されてしまいました」

白緑の少女「その際、リリィは言いました」

白緑の少女「『この山にクロユリが咲く時、私の呪いであなたの一族を滅ぼしましょう』と」

白旅人「悲しい伝説ですね」

白緑の少女「あの時はすごかったです」

魔剣士「実話だったんだ」
899 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 20:02:20.71 ID:wOYlwML9o

白緑の少女「呪術にもさまざまな種類があります」

白緑の少女「リリィの呪いは愛から生まれた憎しみによる呪い」

白緑の少女「オディウム教徒の呪術は、もっと純粋な憎悪によるもの」

白緑の少女「あ、あそこを見てください。昔、あの榎の所に行けばリリィの霊に会えたんですよ」

白旅人「流石にもう成仏なさっているのですか?」

白緑の少女「ええ。根も葉もない噂を信じてすまなかった、と当主の霊が土下座し、」

白緑の少女「2人の憎しみは浄化され天へと昇っていきました」

白緑の少女「愛から生まれた憎しみは、愛によって浄化され救われます」

魔剣士「オディウム教徒の呪いはどんな原理で浄化してんだ」

精霊王「相反する属性の神の力をぶつけることで相殺してる感じ」

精霊王「あれは単純な愛の力だけじゃ浄化できねえからな。」

魔剣士「ふーん」

専門じゃねえから結局よくわかんねえや。

精霊王「あ、でも俺とスフィの愛の力はすげえ強力な浄化のエネルギーになるからな!」

魔剣士「せめて“俺等とユキ”って言ってくんねえかな」

精霊王「だってなんか嫌じゃね……?」

魔剣士「仕方ねえだろ……」
900 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 20:02:47.05 ID:wOYlwML9o

白旅人「白いユリも咲いているんですね」

魔剣士「カサブランカだな。綺麗だ。好きなのか? 白百合」

白旅人「いえ、クレイオーさんに似合いそうだと思いまして」

魔剣士「まああいつ顔はいいからな。でかくて綺麗な花ならなんでも似合うだろ」

白旅人「あなたにとって、クレイオーさんはどんな人ですか」

魔剣士「え? んー、ひたすらうざくてめんどくさい奴」

白旅人「それだけですか?」

魔剣士「うん」

魔剣士「小さい頃からずっと、あいつ俺のこと嫌いなくせにひっついてきてさ」

魔剣士「馬鹿にしてくるくせにおせっかい焼いてくるんだぜ。嫌いなら離れりゃいいのにさ」

白旅人「聞き捨てなりませんね」

魔剣士「え?」

白旅人「……わかって言ってるわけじゃないんですよね?」

魔剣士「ちょっと待って意味わかんない」

白旅人「まあ、過去は過去なのでいいですけどね」

青い石「この子そういう機微は察せないから……」
901 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 20:04:46.44 ID:wOYlwML9o

ユキと2人(+霊体2人)で大樹に上る。
頂上付近から北方を見下ろす。人が米粒のようだ。丁度戦いが始まっている。

呪術師がこちらに感づいている気配はない。

精霊王「じゃあ始めるぞ」

精霊王「おまえの身体からスフィに俺の力を流して浸透させるからな」

俺のものとは異なる魔力が胸から湧き溢れる。
この頃漸く慣れてきた感覚だ。

精霊王「痛くないか」

魔剣士「平気だ」

精霊王「スフィ、大丈夫そうか」

白緑の少女「問題ありません」

精霊王「スフィを俺で満たす作業には時間がかかる。つまり暇だ」

白緑の少女「お父様達の様子でも窺いましょうか」

白緑の少女「目を閉じてください」

白緑の少女「魔力を同調させている今なら、共に遠視の術を使うことができます」
902 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 20:06:02.17 ID:wOYlwML9o

言われたとおり目を閉じると、スコープで拡大したような映像が瞼の裏に表れた。
父さんは……前線にはいない。まだ後方にいるみたいだ。

すぐ傍にアキレスさんもいる。

英雄「俺そろそろ部下連れて前線行くね」

戦士「死ぬなよ」

英雄「もちろん。それに今日は怪我だってするわけにはいかないんだ」

英雄「うっかり女性用の下着つけてきちゃってさ」

英雄「こんなの見たら、治療班の子がびっくりしちゃう……うふ」

戦士「…………」

カナリアの気持ちがちょっとわかった気がする。父親がこれだとつらい。

佐官「あの、レグホニア中将」

前は大佐だったような。昇格したんだ。

佐官「何故か女装してる隊があり、他の部隊員が精神統一に支障をきたしているという苦情が入ってます」

英雄「あっごめんそれ俺の部下達〜」
903 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 20:06:50.13 ID:wOYlwML9o

英雄「女装で敵の精神をかき乱す作戦、俺よく使っててさ……だめ?」

戦士「やるなら事前に会議で言え!!」

佐官「どうしましょう」

戦士「気にせず戦闘に集中しろと命令を下してくれ」

佐官「……がんばります」

英雄「ところでさ、キャロルさんが男ってほんと?」

戦士「今する話なのかそれ」

副官「ほんとですよ〜」

英雄「すごい……女性にしか見えないよ。美しさを保つコツとかあるの?」

副官「毎晩ちゃんと寝るといいですよ〜」

戦士「この戦いが終わってから話せ!!」


白緑の少女「愉快な方々ですね」

魔剣士「うん……」

オディウム教徒よりも多国籍軍の方が圧倒的に人数が多いのになかなか決着がつかないのは、
やはりオディウム教徒の使う術が厄介だからだ。

でも多国籍軍は対抗策を次々と編み出した。負けはしないだろう。
904 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 20:09:20.64 ID:wOYlwML9o

精霊王「あ、そうだ」

精霊王「今ならおまえの術、遠視の術を使った原理を利用して遠くまで飛ばせるぞ」

魔剣士「あ、まじで?」

鞄を漁って毒草を食べ、ユキの力を借りて戦場に飛ばした。
数十人のオディウム教徒は嘔吐・下痢により戦闘不能になった。ざまあ。

精霊王「んー、もうそろそろよさそうだ」

精霊王「剣を構えろ」

魔剣士「はい」

遺跡の方に切っ先を向ける。

精霊王「行くぜ相棒!」

魔剣士「もう1人のボクとは呼ばねえからな」
905 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 20:11:16.80 ID:wOYlwML9o

大樹に流し込んだ力を剣に集中させ、白と緑の光を放った。
直接膨大なエネルギーを俺から剣に流すと俺が死ぬため、わざわざ大樹に力を溜め込んだのである。

精霊王「おまえが破裂する寸前にまで出力上げるからな!」

ちょっと怖い。恐れを覚えた瞬間、ユキが俺の手を強く握った。
大丈夫だ。戦える。


光が遺跡に落ちた手応えが不思議と感じられた。
しかし憎しみの黒は浄化しきれない。量が多すぎる。

長時間耐えなきゃいけなさそうだ。
呪術師達がこっちの攻撃に気づいたようだ。

でも、ユキの身体全体はイウスの力で覆われているから遠距離攻撃は効かないし、
近づいた敵はメルクと兵士が倒してくれる。

父さん達が戦ってくれているから、大勢でこっちを襲うこともできないだろう。
大して気にする必要はない。
906 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 20:12:22.53 ID:wOYlwML9o

精霊王「気をつけろ!」

カラスの大群のような“闇”が形を変え、襲い掛かってきた。
遺跡への攻撃を中断し、剣を振るう。

精霊王「反射神経にっぶ」

魔剣士「うっせ!!」

多少動きが鈍くても靄は浄化できている。気持ちいい。しかしいかんせん疲労が溜まる。

魔剣士「あんまり激しく動くと枝から落っこちそうでこええな」

白緑の少女「落ちても私が助けます! 思いっきり戦ってください!」

背後から針のような形になった闇が襲い掛かってきた。速い!

魔剣士「やばっ!」

青い石「ああもうっ!」

勝手に素早く体が動いた。

青い石「ちょっと体借りるから!」

魔剣士「正直助かる」

剣を極めたモルの方が俺よりも上手く戦える。
これやると後から気持ち悪くなるけど仕方ない。
907 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 20:14:59.22 ID:wOYlwML9o

白緑の少女「――イウスの力との融合率が上がりました。私からも行きます!」

大樹のあちこちから光が放たれ、闇を浄化していく。



闇の靄の動きに隙ができた。
モルの憑依を解いてもらって、辺りに漂う靄を一気に浄化し再び遺跡へと力を放つ。

精霊王「封印の内部に光を押し込むぞ!」

白緑の少女「エリウスさん、血が!」

吐血した。

魔剣士「っまだ大丈夫だ!」

このままならオディウムを倒せる。

そう思った瞬間、奇妙な違和感に襲われた。
力の一部が黒く染まり、逆流している。

精霊王「嘘だろっ!?」

それは剣から俺の右手へ流れ、胸を撃った。
908 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 20:15:46.90 ID:wOYlwML9o























負の感情が蠢いている。
909 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 20:18:26.76 ID:wOYlwML9o

目を開けると、見るに堪えない悍ましい色が空間を漂っていた。
低い、脳を揺らすような声が聞こえる。

『人は誰でも憎しみの感情をもっている』

『大精霊の生まれ変わりたるおまえも同じことだ』

『我は浄化の力に混じっていたおまえの憎しみの情によりおまえを引きずり込んだ』

嫌な記憶がぐるぐると頭を回った。


馬鹿にされたこと、逆恨みされたこと、マスコミに追いかけられたこと。
理解してもらえなかったこと、誤解されたこと。

何度も犯されて殺されかけたこと。
910 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 20:18:52.66 ID:wOYlwML9o

『この世界は、救うに足る世界なのか?』




「おまえさ、もうちょっとまともに喋れねえの?」

「たまに喋ったと思ったら全然空気読まないじゃん」

やめろ

「うわ、こっち見ないでよ」

「ごめん、もうついてこないで。ちょっと優しくしただけで、こんなに依存されても困るよ」

ごめんなさい、もう関わりません。ごめんなさい。




『おまえの人生は、愛されることよりも、憎み憎まれることの方が遥かに多かった』

『おまえを救うのは憎しみによる復讐のみだ』
911 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 20:20:32.76 ID:wOYlwML9o

魔剣士「……そんなことねえよ」

涙が止まらない。でも、幸せだった記憶を必死に思い返す。

魔剣士「生憎、絶望はもう乗り越えてるんだ」

魔剣士「おまえなんかに洗脳されやしねえよ」

『――おまえに外の世界を見せてやろう』


……空が黒い。地上は血と肉の山で覆われている。


兇手「くくっふはははは! ついに倒したぞ! この俺が最強だ!」

戦士「っ――」

父さんの胸が、剣で貫かれた。

魔剣士「父さん!」

身体を支えようとしたけれど、すり抜けた。

次女「やだ! 放して!!」

次女「いたいー!」

魔剣士「ルツィーレ!」

ルツィーレが……男達に蹂躙されている。

次女「おとうさん! 助けて! お父さーん!」

妹の太ももを血が伝った。

魔剣士「やめろ……やめろ!!」
912 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 20:21:17.58 ID:wOYlwML9o

悪寒が背筋を走った。振り向くと、母さんが呆然と立ち尽くしていた。
眠りの魔法が解けて、ここに駆けつけたのだろう。

母さんは膝をつくと、傍に落ちていた剣を拾い、立ち上がった。

勇者「……皆殺しだ」

やめろ、母さんが人を斬るところなんて見たくない。
血に染まった母さんなんて、見たくない……!


……携帯が鳴った。メールだ。誰からだろう。
あまり折り合いのよくない大学の知り合いからだ。

「これ、おまえだよな?」

本文にはURLが貼られている。
押すと、動画サイトに飛んだ。

魔剣士「あ……」

誰が、いつの間に、撮っていたんだろう。
俺が、精霊に犯されているところ。
913 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 20:22:03.71 ID:wOYlwML9o

嘘だろ。他にいくつもアップロードされている。削除は追いつかないだろう。
再生数はどんどん増えている。仮に全て削除しきれたとしても、もう……。

『この世界におまえの居場所はない』

まともに呼吸ができない。

『母の愛を拒絶したおまえは、我が肉体に相応しい』

『憎悪に染まれ』

泣き叫ぶ母さんの壊れた笑い声が、耳に響いた。


もう、この破壊衝動にすべてを任せてしまった方が、楽かもしれない。
914 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/07/31(月) 20:22:35.75 ID:wOYlwML9o
kkmd
915 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/31(月) 20:39:18.29 ID:6ozLj9kvo
otu
916 : ◆O3m5I24fJo [sage]:2017/07/31(月) 23:51:16.67 ID:wOYlwML9o
>>153誤字
四歳下じゃなくて四歳上
917 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/08/01(火) 20:20:08.32 ID:q0MlyY+Zo

第三十三株 ユカリ


足元の血溜まりを見つめる。
生きていたって仕方ないや。


背中から誰かに優しく抱きしめられた。
おかしいな。人に触ろうとしてもすり抜けたんだ。誰かと触れ合えるはずないのに。



「大丈夫だよ。これ、全部嘘なんだから」



聞き覚えのある声だ。

魔剣士「……モル…………?」
918 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/08/01(火) 20:24:48.47 ID:q0MlyY+Zo

「よく見るんだ。意外とちゃっちいよ、これ」

指差された方を見る。
服が大きく裂けたアキレスさんの死体が転がっていた。

魔剣士「……女物の下着つけてない」

幻影だわこれ!



景色が下方に流れ落ちていくように消え去った。


『馬鹿な……! 封印の内部へはこの男1人しか引きずり込まなかったはず!』

「私も人間だからね。負の感情を同調させてここまで追いかけるのはそう難しくなかったよ」

さっきまでが嘘みたいに、憎悪の感情が心から流れ去っていった。

「エリウス、聞こえるだろう? 君を呼ぶ声が」
919 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/08/01(火) 20:25:40.89 ID:q0MlyY+Zo

白緑の少女「このままでは精神体が死んでしまいます!」

精霊王「戻ってこいエリウス!」

精霊王「俺はおまえが胎児の頃からずっと見守ってきたんだ。自分の子供みてえに思ってる」

精霊王「おまえに死なれたくねえんだよ!」

白緑の少女「もう私を置いていかないで!」

帰らなきゃ。

「この子を憎しみの塊に渡しはしないよ」

『おのれ……おのれ!』

青い光に守られている。もう幻影を見せられることはないみたいだ。
920 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/08/01(火) 20:26:45.27 ID:q0MlyY+Zo

俺とよく似た少し年上の、でも目尻は吊り上っていない男がこっちを向いて微笑んだ。

   「もう、大丈夫だね。君は大人になったんだから」

魔剣士「なんだよ、心配してばっかで、全然俺のこと信頼してくれなかったくせに」

   「はは。実は、君が他のことに集中している間に、こっそりヘリオス君に訊いたんだ」

   「どうしてエリウスのことを信頼できるのかって」

   「『親が子供を信じてやらないと、子供は自信をもてないじゃないですか』って答えられたよ」

   「同じ人の親として負けたなって思った」

魔剣士「…………」

   「私は、これから何があっても君は乗り越えられるって信じることにしたよ」

魔剣士「……じいちゃん」

   「一緒にいられて楽しかった」
921 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/08/01(火) 20:27:21.96 ID:q0MlyY+Zo

目を開けると、元の景色が見えた。

白緑の少女「エリウスさん!」

精霊王「エリウス!」

魔剣士「もうひと踏ん張りだな!」

闇の靄がまとわりついてくる。でも負ける気はしない。

精霊王「封印の内部から奴を引っ張り出すぞ!」

魔剣士「このままじゃ駄目なのか?」

精霊王「封印の中に奴を残すと、いずれ奴は再び憎しみを吸って復活する。同じことの繰り返しだ」

精霊王「俺の母さんの言葉を思い出せ」

『余剰となっている憎しみを削り、その後は少しずつ争いを治めていくのが最良の歴史となるでしょう』

精霊王「憎しみを敢えてこの世界に解き放ち、緩やかに浄化しなきゃいけねえんだよ」

魔剣士「……わかった」

釣竿を引き上げるように、闇を引きずり出した。
922 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/08/01(火) 20:28:11.29 ID:q0MlyY+Zo

白緑の少女「まだ……もっと、もっと浄化してください」

白緑の少女「……今です!」

浄化を止め、赤ん坊くらいの大きさになった憎しみの塊を光で包む。

精霊王「これを分割して世界にばら撒く」

精霊王「これからこいつは、憎しみに翻弄される運命を背負った者として転生するだろう」

精霊王「だが、小さな憎しみであれば浄化は容易い」

精霊王「生ある者として生まれ変わり、愛を学べば尚更だ」

精霊王「だから、争いの種をばら撒くことに、おまえが責任を感じる必要はないからな」

剣で細かく切り刻み、イウスの力によってオディウムは世界中に散っていった。

あれは厄災の種だ。
責任を感じなくていいと言われても、やっぱり少しは罪悪感を覚えてしまう。

魔剣士「……はあ」

オディウム教徒達は信じる神を失い、途方に暮れて攻撃をやめた。
終わったんだ。

ユキの枝に腰を下ろす。随分疲れた。
……もう、激しすぎるセックスはしなくていいんだ。ほっとした。
923 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/08/01(火) 20:29:09.40 ID:q0MlyY+Zo

胸元のアウィナイトに、もう祖父はいない。
魔力を使い果たして成仏したんだ。

魔剣士「……悲しくないよ。ちょっと寂しいけど」

魔剣士「本当はとっくの昔にあの世に逝っているはずの魂が、漸くあるべき場所に還っただけなんだから」

白緑の少女「…………」

魔剣士「あれ……でもおかしいな……」

目頭が熱い。

白緑の少女「泣いて、いいんですよ」

ずっと一緒にいた家族が、いなくなった。

あんなに鬱陶しかったのにな。
突然去られて、思考が感情に追いつかないんだ。
924 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/08/01(火) 20:29:41.56 ID:q0MlyY+Zo

ユキの胸を借りてしばらく泣いた。

泣いてる間に癒しの術をかけてくれたらしくて、
イウスの力を使ったことによるダメージは癒えている。

白緑の少女「もうそろそろ降りましょうか」

魔剣士「……ちょっと待って」

腹が……生命の結晶が埋め込まれたあたりが熱い。
なんだろう。今なら奇跡を起こせそうな気がする。

魔剣士「ユキ、俺さ……すごくセックスしたい」

ユキはちょっと驚いたみたいだけど、俺の手を引いてくれた。

白緑の少女「いいですよ。こちらへ」

なされるがままユキについていくと、樹皮をすり抜けて木の内部に入れた。
925 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/08/01(火) 20:30:58.52 ID:q0MlyY+Zo

白緑の少女「大樹の内部は私の精神世界になっています」

オディウム神もどきが封印されていた空間と違って、
すごく綺麗で淡い色彩が浮いている。

白緑の少女「通常、私以外の存在がここに入ることはできません」

白緑の少女「どうやら、私達の魔力と、生命の結晶や緑の聖結晶が共鳴しているようです」

神聖な波動が魂を揺さぶる。

白緑の少女「ドロドロに、溶け合いましょう」

ユキに押し倒された。

魔剣士「……俺、男だから」

ユキの肩を掴み、上体を起こして組み敷いた。
やっぱり、俺には男のプライドがある。たまには抱かれるんじゃなくて抱きたい。

ユキは微笑んで、俺の首に手を回してくれた。
926 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/08/01(火) 20:31:30.00 ID:q0MlyY+Zo

――
――――――――

戦士「なあ、エリウスは」

白旅人「まだ降りてこられないんです。だいぶ経つのに」

戦士「まさか死んだんじゃないよな……」

白旅人「遠すぎて魔力を追えません。大丈夫だとは思うのですが」

戦士「トパーズで探すか」

白旅人「!? 急速にエリウスさんの魔力が降りてきています!」

魔剣士「いでっ!」

戦士「うわっ!?」

勢いをつけすぎて、幹の中から思いっきり飛び出してしまった。

魔剣士「あっ父さん!」

戦士「今の見間違いじゃないよな……? おまえ、木の中に入ってたのか?」

魔剣士「父さん……俺、妊娠した」

戦士「は?」
927 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/08/01(火) 20:32:02.19 ID:q0MlyY+Zo

魔剣士「受精したのはユキの霊体の中でなんだけど〜人間の体温を覚えさせた方がいいからって〜」

戦士「ちょっと待ってくれ、おまえが何を言っているのか全くわからない」

魔剣士「父さんの孫ができたんだよ? 嬉しくないの?」

戦士「あ……ああ? そうか、俺ももうおじいちゃんか……40だもんな……」

父さんは状況を理解しようと必死に考えている。後でちゃんと説明しよう。

父さんの部下が運転する車が近くに停まった。
後部座席から降りてきたのは母さんだ。

勇者「エル!」

魔剣士「母さん」

抱きしめられた。おっぱい柔らかい。

魔剣士「俺、悪い奴やっつけたよ。もう心配要らないんだ」

抱きしめ返す。

戦士「えらい素直になったな……」

勇者「ちょっと、反抗期が長かっただけだもんね、エル……」
928 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/08/01(火) 20:33:02.43 ID:q0MlyY+Zo

――――――――――――
――――――――
――

旅は続けるつもりだけれど、最初の子は慣れた環境で産み育てたかったから里帰りした。
久々の我が家だ。

四女「かーしゃ!」

次女「ラヴェンデルー!」

勇者「ラヴィ! よかったぁ……」

戦士「なあ、おまえの子供って……何処から産まれるんだ?」

魔剣士「へその辺り突き破って生まれてくるって」

戦士「うっ……痛そうだな……」

父さんは腹を押さえた。

ちなみに普通の赤ちゃんほど腹の中で大きくなることはない。
産まれてくる時の大きさはクルミくらいだ。

俺とユキの子供は、人間であり、植物であり、精霊でもある。
人と草木の間に立ち、共存のために働くことができる新たな種族だ。
929 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/08/01(火) 20:33:51.32 ID:q0MlyY+Zo

魔剣士「俺今日父さんと母さんと川の字になって寝るー!」

戦士「いや、流石に気持ち悪い」

魔剣士「子供の頃充分に甘えられなかった分取り戻したいんだけど」

勇者「一晩くらいいいでしょ?」

戦士「アルカさんがそう言うなら……いや……しかし……」

三男「おかあさんにちかづくなあああうわああああ!!」

魔剣士「押さないで! 殴らないで! お腹に赤ちゃんいるから!!」

戦士「アルクスはアウロラと一緒に寝てくれ」

三男「いやだああああああああ」

魔剣士「母さんもーらい」

三男「ぐずっうぇぇ……うえええええん! あっちいけー!」

四女「かあしゃー、とおしゃ」

戦士「ラヴェンデルはベビーベッドな……」

魔剣士「久々に母さん独り占めしちゃうもんねー!」

戦士「なんだこの状況……」
930 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/08/01(火) 20:34:25.94 ID:q0MlyY+Zo

戦士「ベッドが狭いんだが」

魔剣士「かあさーん」

戦士「マザコンは……嫁さんに嫌がられないか……?」

魔剣士「俺のお嫁さん1億歳だよ? 細かいこと気にしないよ」

戦士「そ、そうか」

戦士「……でかくなったもんだなあ」

勇者「もう……大人だもんね」

魔剣士「成人しても、俺が父さんと母さんの子供であることは変わらないよ。ずっと」

かつて拒絶してしまったこの温もりが、ひどく愛おしい。

戦士「暑い……」
931 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/08/01(火) 20:34:52.26 ID:q0MlyY+Zo








魔剣士「なあユキ、ちょっと散歩しよ」

白緑の少女「ええ」

真夏の日射し。たまには暑い中歩くのもいいかな。
また旅に出たら、たまにしか故郷には帰ってこないんだから。
932 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/08/01(火) 20:36:13.76 ID:q0MlyY+Zo

しばらく歩くと、アポロン先生がふらふらしていた。
散々泣いた後なのだろう。目が腫れている。

魔剣士「ちわっす」

詩人「ああ……やあ、エリウス君……」

魔剣士「娘が彼氏作って帰ってきたのがショックなんですよね」

メルクはクレイオーと一緒にこの国に来た。リモンさんも一緒らしい。

詩人「その通りだよ……」

詩人「悪いところまで僕に似てしまって、なかなか貰い手が見つからなかったからほっとしているんだ」

詩人「でも……なんだろうねこの気持ちは。涙を禁じ得ないよ」

非常にげっそりとしている。それでいて妙な美しさがあるのはすごいと思う。

詩人「アウロラちゃんが彼氏を連れてきた時のヘリオス君はどんな様子だったか教えてくれるかい?」

魔剣士「父さんは、子供にはドライなところがある人ですから」

魔剣士「『ふーん』って感じでしたよ。元々知ってる相手でしたし」

詩人「そうか……」

俺の娘が彼氏を連れてきた時、俺はどんな気持ちになるんだろう。
余程変な男じゃない限りは素直に祝福できる父親になりたいな。
933 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/08/01(火) 20:37:03.78 ID:q0MlyY+Zo

まだまだやらなきゃいけないことはたくさんある。
自然破壊を止めるNGOでも立ち上げようかな。

でもまずは……

魔剣士「子供の名前、どうしよっか」

白緑の少女「ゆっくり考えましょう」


青空の下で深い緑が輝いている。



人と草木を繋ぐ新たな理。生命の結晶と、ユキとの絆から生まれた奇跡。
より良い世界を、きっと築いてみせる。
934 : ◆O3m5I24fJo [saga]:2017/08/01(火) 20:38:38.92 ID:q0MlyY+Zo

END





ごっそり修正したいのでこっちのスレは転載禁止で
書くのに時間かかりすぎた
近日中に番外編スレに後日談いくつか投下して終わります
935 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/02(水) 02:11:20.22 ID:3ZEeR/Lzo
お疲れ様でした

終わってしまうのは悲しいけど、番外編楽しみにしています
936 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/02(水) 07:46:22.38 ID:0crK9aTLo
カモノハシみたいにアナルから産めばいいのに
937 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/08/02(水) 08:26:51.78 ID:G5PCElfc0
心から乙
938 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/02(水) 12:36:01.56 ID:b2SOU8qBO
乙でした‼
番外編楽しみ
939 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/02(水) 20:57:52.30 ID:1AHlnSIWO

とても面白かった…
940 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/03(木) 10:46:42.32 ID:OyZ/IMy5o
乙乙
とても面白かった!番外編楽しみにしてる
941 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/03(木) 14:01:55.01 ID:MBXOgxHA0
乙カーレ
良かった
942 : ◆O3m5I24fJo [sage]:2017/08/03(木) 17:46:37.12 ID:6fPzesjTo
後日談ここからです
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1475058552/460
943 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [age]:2021/12/22(水) 00:35:38.46 ID:rrDaGIejO
Steam(PC)オープンワールドハードコアRPG

『KENSHI(剣士)やる』
(23:19〜放送開始)

https://www.twitch.tv/kato_junichi0817
944 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2021/12/22(水) 02:37:37.54 ID:7pfa9W8q0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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945 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [age]:2021/12/23(木) 00:19:49.26 ID:rirMQINvO
Steam(PC)
オープンワールドハードコアRPG

『KENSHI(剣士)やるDay2』
(23:52〜放送開始)

https://www.twitch.tv/kato_junichi0817
946 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2021/12/23(木) 10:11:49.92 ID:fax62cTS0
日本人はカス民族。世界で尊敬される日本人は大嘘。

日本人は正体がバレないのを良い事にネット上で好き放題書く卑怯な民族。
日本人の職場はパワハラやセクハラ大好き。 学校はイジメが大好き。
日本人は同じ日本人には厳しく白人には甘い情け無い民族。
日本人は中国人や朝鮮人に対する差別を正当化する。差別を正義だと思ってる。
日本人は絶対的な正義で弱者や個人を叩く。日本人は集団イジメも正当化する。 (暴力団や半グレは強者で怖いのでスルー)
日本人は人を応援するニュースより徹底的に個人を叩くニュースのが伸びる いじめっ子民族。

日本のテレビは差別を煽る。視聴者もそれですぐ差別を始める単純馬鹿民族。
日本の芸能人は人の悪口で笑いを取る。視聴者もそれでゲラゲラ笑う民族性。
日本のユーチューバーは差別を煽る。個人を馬鹿にする。そしてそれが人気の出る民族性。
日本人は「私はこんなに苦労したんだからお前も苦労しろ!」と自分の苦労を押し付ける民族。

日本人ネット右翼は韓国中国と戦争したがるが戦場に行くのは自衛隊の方々なので気楽に言えるだけの卑怯者。
日本人馬鹿右翼の中年老人は徴兵制度を望むが戦場に行くのは若者で自分らは何もしないで済むので気楽に言えるだけの卑怯者。
日本人の多くは精神科医でも無いただの素人なのに知ったかぶり知識で精神障害の人を甘えだと批判する(根性論) 日本人の多くは自称専門家の知ったかぶり馬鹿。
日本人は犯罪者の死刑拷問大好き。でもネットに書くだけで実行は他人任せ前提。 拷問を実行する人の事を何も考えていない。 日本人は己の手は汚さない。
というかグロ画像ひとつ見ただけで震える癖に拷問だの妄想するのは滑稽でしか無い。
日本人は鯨やイルカを殺戮して何が悪いと開き直るが猫や犬には虐待する事すら許さない動物差別主義的民族。

日本人は「外国も同じだ」と言い訳するが文化依存症候群の日本人限定の対人恐怖症が有るので日本人だけカスな民族性なのは明らか。
世界中で日本語表記のHikikomori(引きこもり)Karoshi(過労死)Taijin kyofushoは日本人による陰湿な日本社会ならでは。
世界で日本人だけ異様に海外の反応が大好き。日本人より上と見る外国人(特に白人)の顔色を伺い媚びへつらう気持ち悪い民族。
世界幸福度ランキング先進国の中で日本だけダントツ最下位。他の欧米諸国は上位。
もう一度言う「外国も一緒」は通用しない。日本人だけがカス。カス民族なのは日本人だけ。

陰湿な同級生、陰湿な身内、陰湿な同僚、陰湿な政治家、陰湿なネットユーザー、扇動するテレビ出演者、他者を見下すのが生き甲斐の国民達。

冷静に考えてみてほしい。こんなカス揃いの国に愛国心を持つ価値などあるだろうか。 今まで会った日本人達は皆、心の優しい人達だっただろうか。 学校や職場の日本人は陰湿な人が多かったんじゃないだろうか。
日本の芸能人や政治家も皆、性格が良いと思えるだろうか。人間の本性であるネットの日本人達の書き込みを見て素晴らしい民族だと思えるだろうか。こんな陰湿な国が落ちぶれようと滅びようと何の問題があるのだろうか?
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