げんきいっぱい5年3組 (オリジナル百合)

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1 : ◆/BueNLs5lw [saga sage]:2016/05/29(日) 13:47:21.97 ID:4yJ+Tv6jO
書きかけてるの終わらせてからとかって言ったけどあれは嘘だ

百合
思いつきで進む




痛みと熱の中、目が覚めた。
喉が痛い。ひりひりと、ちくちくと。
部屋の電気がついていた所を見ると、寝落ちしたみたい。
手元に何かあたって、視線を転じる。
写真だ。
たしか、部屋の片づけをしていたんだ。
ついつい夢中になってしまって。
父親が写真好きなこともあり、部屋の中には小さい頃から今までの写真が散在している。
いつ撮ったのか分からず中身が気になって手にとれば、それが最後、時間はいくらでも過ぎていく。

「……」

喉をさする。唾を飲み込むと痛みが走る。
少し重だるい体。意識がぼうっとする。
中学生までの写真とそれ以降のものには、ある線引きができる。
私の二人の幼馴染がいるかいないかだ。

『げんきいっぱい5年3組』

教室の壁に、恐らく担任が書いたであろう横長のポスター。
クラスの個性を表すPOPにしては、個性が無い。
なんて言ったら、悲しむかな。
写真の中央にいる女性――先生の名前は確か、『カズヨ』先生。
どんな人だったっけ。
忘れたな。
なんだか優しそうな顔をしている。
温かい人だったのかもしれない。
2 : ◆/BueNLs5lw [saga sage]:2016/05/29(日) 14:00:48.19 ID:4yJ+Tv6jO
写真の子ども達は男子と女子と別れて座っていた。
男の子はみな、おどけていて、大人しく座っていなかったのがよく分かって面白い。
女の子は割と大人しいけれど、この子は隣の子にちょっかいを出して――隣の子は私か。
ちょっかいを出しているのは、『みや』だ。みやちゃん。
ネコっぽい顔をしている。
確か、ネコが好きだった。
いつも、私に爪を立てていじってきたっけ。
私も私で、いじられて嬉しそうな顔をしている。
小学生の頃から真性のМか。

4列くらいに分かれていて、他にも、最前列のいじられやすそうな顔の女の子が、両隣から脇を責められている。
あー、いたいた。確か、左の子が『じっちゃん』。女の子なのに確かそう呼ばれていた。
顔もじいちゃんみたい。本人に言ったら、確か怒られたっけ。
でも、頼りがいがあった――ような気がする。
右の子は『きょん』。この子は確か当時では最先端の萌え系のオタクだったと思う。

思い出してきた。思い出すと懐かしくて、少し涙が出そうになった。
別にみんな死んでないだろうし、きっと会おうと思ったら会えるんだろうけど。
でも、それをしなくなってしまったから。
だから、会いたい時に、心のままに会えていたこの頃が本当に羨ましい。



3 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2016/05/29(日) 14:29:13.36 ID:4yJ+Tv6jO
よく、子どもの頃の自分が今の自分を見たらなんてこと言われるけど、
きっとこの子は何も考えてはいないんだろうな。
そして何も答えられない。
その時その時で、いつも精一杯だったから。
過去のことや未来のことなんて二の次。
それは、今も変わらない。

思い出せば、思い出すほど、幸せな記憶よりも苦味のあるエピソードばかり浮かんでくる。
子どものように我がままになり切れず、大人のように何かを捨てて最良の選択を選ぶわけでもない。
みやちゃんとだって喧嘩したこともあったし。
あれ、そう言えば、なんで喧嘩したっけ。どうやって解決したっけ。まあいいか。
女子同士のいざこざだってあった。グループがどうとか、なんだかそういうの。
そういう、めんどくさいもの。そんなことに気を取られてしまって。でも、やんわりと逃げてしまったような気がする。
だから、私たちの関係は永遠にはなれなかった。必死に繋ぎ止めようともしなかった。
その結果が、今だ。3人の幼馴染みはばらばらになってしまった。
今は、ほとんど連絡を取っていない。
あの頃、あんなに好きだったのに。
今だって、写真を見返してあの頃の3人に戻りたいと思うのに。

でも、あれ以上深く交わることができなかった。
視線をもう一人の幼馴染――『やすは』に向ける。
写真は背の低い順で並んでいるから、やすはは私とみやちゃんから少し離れた後ろの列にいた。
色白で、少しくせのある髪。小首を傾げて可愛らしく笑っている。
やすはとは、今でも少し連絡をとることがある。
それは、みやちゃんよりも家が近所だったから。
みやちゃんより、少し仲が良かったから。
帰り道は一緒で、クラブ活動も一緒。

そして、私は、この頃から彼女のことが好きだった。
4 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2016/05/29(日) 14:40:37.37 ID:4yJ+Tv6jO
中学の時にやすはに彼氏ができた時、みやちゃんはあまり興味なさそうにしていた。
私も、恋愛にはあまり興味のないふりをしていたけど、内心ではかなりショックだった。
やすはと話すのもあまり気乗りしなくなって。
みやちゃんに彼氏ができた時は、むしろ好奇心の方が強かった。
私の中で、その違いを理解したのは中学2年生くらいだったと思う。

そこまで思い出して、時計を見る。
朝4時。
眠すぎて、気持ち悪い。
小学5年の最後に、クラスで旅行に行った時の写真があったような。
あれを見たい。
無性に。
みやちゃんとは確か班が分かれて、やすはと同じ班になって。
それで、どんな旅行になったんだっけ。
思い出せない。
写真、どこだろう。
ほとんど目を閉じながら、力を振り絞るも、私は睡魔に負けてしまったのだった。
5 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2016/05/29(日) 15:10:06.36 ID:4yJ+Tv6jO
次に目が覚めた時、喉の痛みは悪化していた。
いつも時計のアラームを二個セットしていて、その二個目で起きる習慣があった。
しかし、アラームはならなかった。
部屋の置き時計は1個になっていて、今まで使っていたものと全く違う時計が枕元に置かれていた。
いや、でも見覚えがある。
これは、昔使っていた――。
と、思い出に浸っている場合じゃない。
風邪だろうがなんだろうが、会社を休むわけにはいかない。
昨日徹夜して作った会議の資料を持っていかなくてはいけないのだから。

「あゆむ? 起きてるの? 学校遅れるわよ」

階下から母の声がした。
珍しい、いつもは遅刻しそうになっても、社会人だからと放っておくのに。
それにしても、学校って。
何言ってるんだろ。
歳も歳だし、ボケたかな。
言い返そうと思ったら、上手く声が出ない。
掠れて、ややハスキーボイス。
喋りにくい。


6 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2016/05/29(日) 15:18:22.77 ID:4yJ+Tv6jO
立ち上がって、ふらつく。
バランスが悪い。
背中の節々が痛いし、完全に風邪だ。
最悪。

「はあ……」

キッチンに入ると、部屋の模様替えが行われていた。
あれ、冷蔵庫新しく――いや、よく見ると前に使っていた古いタイプのにそっくりだ。
なんで、また古くしたんだろう。
寝ぼけた頭で、そこを突っ込むのもめんどくさく、半分寝ながら顔を洗いに行く。

「ご飯、机の上だから。もお、お父さん仕事遅れるわよ」

居間で新聞を広げる父。
改めて見ると、育毛剤を変えたのか、ついに諦めてカツラを購入にしたのか、頭頂部が黒い。
ん。
母さんがまた、何かおかしなことを言っている。
父さんはもうとっくに退職して、気楽な余生を送ってるじゃんか。
なに、バイトでも始めたの?
と、そんなことより。
鏡を見る間もなく顔を洗い終えて、朝食の席に着く。
7 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2016/05/29(日) 15:25:13.57 ID:4yJ+Tv6jO
「はい、お茶椀。ご飯とお味噌汁は自分で注ぎなさい」

「あ、うん……」

母の顔がおかしい。

「……母さん」

「なに? あら、声が変。風邪引いたの?」

心配をかけたくないので、

「ううん、ちょっと乾燥。大丈夫」

と言って、疑問を投げる。

「若くない?」

母は慌てた。

「何言ってるのッ……? でも、ありがとう」

お礼を言われた。
化粧品を変えたのか。
いや、でも母も仕事なんてしていないし、
化粧だって家ですることなんて滅多にない。
なんだろう。
違和感。
風邪のせいかな。
差し出された茶碗を見る。
これ、確か去年お母さんがあやまって落として、割れた奴。
同じのを買ってきたのか。
8 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2016/05/29(日) 15:32:55.40 ID:4yJ+Tv6jO
「いってらっしゃい」

母が父を玄関まで見送っていた。
最近はめっきり見られなくなった光景だ。
私はもう一度茶碗をのぞく。
自分の手より、大きく感じる。
座った椅子も、いや、何もかも。
母でさえ、大きく感じる。
食器棚のガラス戸に自分の姿がぼんやりと移っていた。

「なに、ぼけっとしてるの。やすはちゃん来るわよ」

「え、あ……え? やすは?」

「そうでしょ? え、登校班変わったの?」

登校班?
なにそれ。

「変わってないでしょ? ボケたこと言ってないで、もお、お母さん仕事あるから……鍵は外の倉庫の前のタンス棚に入れておいて」

と、エプロンのポケットから鍵を取り出して、私に投げる。

「わ……」

この光景。
デジャブ。
そうだ、確か、小さい頃によく。
小学校の頃、母も父も私より先に仕事に出かける人だったから。
今は、エプロンもしてないし、鍵だっていつもあの黒い棚に……棚がない。
9 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2016/05/29(日) 15:52:07.05 ID:4yJ+Tv6jO
今って。今は今だ。
今が今で。
母が玄関から出たのが分かった。

「ま、待って」

追いかけたが、外に出るとすでに誰もいなかった。
スリッパが脱げる。
これ、こんなに大きくなかった。
風邪のせいかな。
とりあえず、ご飯食べようかな。
席に座って、ウインナーを口にほうばった。
喉に物が通るたび、痛い。
風邪のせいで食欲もあまり湧かなかった。
あまり手をつけず、ラップをして全部冷蔵庫に突っ込んだ。

歯を磨くためもう一度洗面所の前に立つ。

「……」

鏡に映っていたのは、自分だった。
鏡をティッシュで拭いた。汚れてはいなかった。
顔を3回洗った。
歯ブラシを掴む。
名前が書いてある。
書いた記憶はない。
これも、昔使っていたやつにそっくり。
鏡に映っていた自分も、昔の自分にそっくり。

「え?」

なんだろう。
目がおかしいのか。
脳がおかしいのか。
ついに、脳梗塞でも起こしたのかな。
いや、でもまだアラサーだよ。
仕事のストレス?
幼児退行?
目だけ?
目だけ幼児退行って、そんなばかな。
意識の問題だよね。
まともに物事を認識できてないんだ。
もしかしたら、周りは今まで通りだけど、自分だけ別のように聞こえてるとか。
あ、風邪のウイルスが脳炎を引き起こしてるとか。
熱っぽいし。
子どもってそういうのよくかかるし。
いや、でも子どもちゃうし。
病院、病院に行かないと。
それより、上司に電話いれないと。
部屋に携帯をとりに戻ったけれど、携帯は無かった。
散らかした写真も無ければ、昨日徹夜して作った資料もない。
ない。
ない、ない。
10 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2016/05/29(日) 15:55:59.08 ID:4yJ+Tv6jO
なにもかもない。
会社に持っていく鞄もない。
代わりに、この間一掃した子供服があったり、玩具があったり。
捨てたはずなのに。
急に怖くなった。
幽霊でもいるんじゃないか。
精神病も幽霊もどちらにしても怖い。
一人、部屋でふらふらと挙動不審でいると、玄関のチャイムが鳴った。

ピン――ポン。
歯切れの悪い、チャイムだった。
誰。
誰って、やすは?
やすはって聞こえたけど、別の人と誤認してる?
私はゆっくりと玄関へ向かった。
11 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2016/05/29(日) 16:05:19.79 ID:4yJ+Tv6jO
玄関の戸口の前に小さい影が映っていた。小学生くらいの女の子。
じっと直立していたけど、しばらくしてから玄関の新聞受けを開いて、こちらを覗き込んだ。

「あゆむ、起きてる?」

心配そうに言った。
細く、透き通る声だった。
聞いた記憶がある。

「やすは……」

名前を呟いてから、私は呆然と立ち尽くした。
新聞受けから、少しだけ覗かせた瞳が細められる。

「……呼び方」

「え」

「やっちゃんじゃないの? いいけど」

「ご、ごめん」

なぜか謝ってしまう。
彼女は少し拗ねたように、新聞受けを閉じて、玄関を開く。

「まだ、パジャマなの? 時間、大丈夫?」
12 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2016/05/29(日) 16:15:08.65 ID:4yJ+Tv6jO
「が、学校、何時までに行かないといけないんだっけ」

「はい?」

やすはは――やっちゃんは、耳を疑うように聞き返した。
私は、もう一度言った。やすはは首を傾げながら、3班の出発はみんなが揃ってからだから、
何時にというのはないけど、7時30分までに学校に行かないといけない。
だから、30分前には出発できるように集合場所には行かないと、と呆れながら教えてくれて、最後に、

「頭、大丈夫?」

と言ってくれた。
大丈夫じゃないと思う。
思いたい。

「やすは、あの」

今じゃ絶対拝めない、やすはの天然くせっ毛をまじまじと見つめながら、

「思いっきり頬をつねって欲しいんだけど」

彼女は、頷くより早く私の頬を両手で引っ張った。

「いたッ、いたい?!」

「当たり前でしょ? というか、またやすはって」

夢じゃないのか。
やすはの小さな肩を掴む。

「私、小学何年生?」

やすは――やっちゃんは、同じように私の両肩を掴んで、

「5年生」

と、頭がおかしい人を見る目で言った。
13 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2016/05/29(日) 16:33:37.53 ID:4yJ+Tv6jO
ふいに、玄関にかけてあったカレンダーが目に入る。
なんだ、あれ。何年前のなの。西暦おかしくない?

「待ってるから、早く。学校行きたくないのは分かったから」

「ご、ごめん今日……風邪ひいてて」

「そんなに元気そうなのに?」

「え、えっと」

「あゆむは嘘つけないね」

笑う。
白い歯が見えた。
つい、見惚れてしまった。
いやいやいや。
相手は、小学5年生。
なんでやねん。
全く、状況を理解できないし納得できないし、
さっさと病院に行って調べてもらいたいのに。

「今日、クラス旅行の話し合いだよ。班分けするから、あゆむ休んじゃダメ」

腕を掴まれて、柔らかくていい匂いのする体を絡ませて、ヘッドロック。

「く、苦しい」

「最近、お父さんが読んでる漫画に出てて」

ヘッドロックは小学生にはまだ危険だよ!
14 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2016/05/29(日) 16:43:13.58 ID:4yJ+Tv6jO
「……声変。声変り?」

だから、風邪だって。

「あゆむ、男っぽいって思ってたけど、ついに」

「ついにッ? ついに、なに?」

「ううん」

なに。
なんか、この掛け合い懐かしい。
よく、このネタでいじられてたっけ。

「よくわからないけど、今日は一人で学校に行ってもらえるとありがたいというか」

「いやよ、なんで」

「うん、私ちょっと今日頭おかしいみたいだから」

「いつもじゃん」

「いつもなの?」

「だいたい、そうでしょ」

「やすはに変なこと言っちゃうと思うし」

「どんなこと」

いや、もう、すでにこれ変な会話になったでしょ。
その後も、なんとかはぐらかそうと思ったけど、やすはは私が学校をサボる口実を作っているだけ、と勘違いしたようで、
押し切られる形で、結局登校することになった。
15 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2016/05/29(日) 16:50:48.25 ID:4yJ+Tv6jO
そうして、30分歩かされた。
小学生の歩幅は小さく、学校までの道のりがとても遠く感じられた。
この距離なら、絶対に車で行くのに。
とは言っても、肉体的に疲労したわけではなく、私の体は案外と元気だった。

「どっち向かってるの」

うろ覚えで教室に向かおうとして、
ランドセルを掴まれた。
後ろに引っ張られる。

「こっちでしょ」

「あ、そうだった」

そうそう。

「おはよー」

横から声。そして、軽く突き飛ばされる。

「うひゃッ」

「おはよう」

やすはが言った。
突き飛ばしてきたのは、みやちゃんだった。

「みやちゃん……」

ハスキーボイスも合わさって、信じられないものを見たような声が出た。
16 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2016/05/29(日) 17:00:49.34 ID:4yJ+Tv6jO
「なに、その声? 声変り?」

同じ事を言われた。

「風邪だって。さっきから、頭おかしいの」

「いつものことじゃん」

やすはとみやちゃんが頷き合う。

「ええッ」

「冗談、冗談。ごめんごめん」

みやちゃんが、頭をわしゃわしゃとかき混ぜる。
わ、懐かしい。
猫と同じように扱われてたっけ。

「下にもついた?」

下?
なんのこと。

「だから、ここだって」

股下を触られる。

「やッ!?」

「みやちゃん、ほんと変態だよね」

「なんでよ」

やすはがみやちゃんの手を掴む。
私を守ってくれたようだ。

「胸もないんじゃないの」

と、やすはは言って後ろから胸を揉みしだいた。

「はうあ!?」

刺激に耐えきれず、どさりと地に伏した。

「やすはもね」

頭上でみやちゃんの声が聞こえた。
17 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2016/05/29(日) 17:12:41.63 ID:4yJ+Tv6jO
小学生のやることは訳が分からない。
と、思いつつも、よく考えれば酔っぱらった女は、だいたいこんな感じだから、
精神年齢は小学生の時からみんな変わっていないに違いない。

教室に半ば強引に引きずられ、案内される。
最初に目に飛び込んできたのは、『げんきいっぱい5年3組』と書かれた横長いポスターだった。
オープン教室になっていたため、廊下やしきりがなかったのを思い出した。
教室の外の壁にポスターは張られていた。
他にも、習字の作品が並べて張ってあった。
この字、何回も直しをくらった気がする。

「おっはー、あゆむ君」

「おはよう……」

じっちゃんだ。
その隣のキョンは何やら怪しげなグッズをたくさん机の上に並べている。
教室を見渡す。
小学生がたくさんいる。
それは、当たり前なのだけど。
腕相撲をする男の子。
鉛筆を転がして遊ぶ男女。
教室の端の洗面台の縁に腰掛けて話す女の子。
この小さな空間はあまりにも見覚えがあった。
18 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2016/05/29(日) 17:21:27.81 ID:4yJ+Tv6jO
しかし、同時にあまりにも鮮明過ぎて頭を抱えた。
いくら病気とかって言っても、こんなに細かくリアルに覚えておけるものなんだろうか。

「ねえねえ、班分けどうやって決めるか聞いた?」

みやちゃんが教科書をしまい終わったのだろう、私の席に腰掛ける。
やすはも隣の席に腰掛けていた。

「いや、知らないけど、自由がいいよね」

やすはの言葉にみやちゃんも頷いていた。
班分けは確か――、

「くじ引きだったと思う。男女に分かれて」

二人が、私を見た。

「え、いつ聞いたの?」

やすはが言った。

「いつって」

もう、十何年も前に。

「こ、の前職員室に行った時に聞こえてきて」

「最悪だー……」

みやちゃんが机に突っ伏した。

「一緒の班になれないかも……ってことだよね」

「班が違っても、部屋とか外出の時に集まろうよ」

みやちゃんを慰めるように、やすはが言った。

「うん、そうしよー」

「ところで、あゆむ」

「うん?」

やすはが横腹をつつく。

「いつまで背負ってるの?」

「あ」
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