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二宮飛鳥「みんなのきもちいい」
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1 :
◆.UigIU7V92
[sage saga]:2016/06/20(月) 23:27:36.79 ID:qnmljQBNO
キャラ崩壊
長い
よくあるネタ
2 :
◆.UigIU7V92
[sage saga]:2016/06/20(月) 23:28:43.84 ID:qnmljQBNO
モバP「よぉーし! 仁奈、今日の仕事良かったぞ!」
市原仁奈「ホントでごぜーますか!」
P「ああ! バッチリだった」
P「よく頑張ったな!」ナデナデ
仁奈「えへへー! 仁奈に任せやがってくだせー!」
P「よーしよしよし!」ナデナデ
仁奈「えへへ〜〜♪」
3 :
◆.UigIU7V92
[sage saga]:2016/06/20(月) 23:29:41.27 ID:qnmljQBNO
三船美優「お疲れ様です、プロデューサーさん」
P「あっ、美優さん! お疲れ様でした」
P「美優さんも良かったですよ。とっても堂々としていて」
美優「そ、そうですか? そう言って頂けるなら幸いです」
美優「今日みたいなお仕事は初めてでしたから、最初は不安だったんですけど……。うまくいって良かったです」
仁奈「美優おねーさん、すげーきれーだったでごぜーます!」
美優「ふふっ。ありがとう、仁奈ちゃん」
美優「きっと仁奈ちゃんが居てくれたから、私も頑張れたんでしょうね」
仁奈「仁奈のおかげでごぜーますか?」
美優「うん。もちろん」ナデナデ
仁奈「えへへ〜♪ 気持ちいいでごぜーますっ!」
4 :
◆.UigIU7V92
[sage saga]:2016/06/20(月) 23:30:21.20 ID:qnmljQBNO
P「さて。じゃあ車で送りますよ。美優さんは事務所までで?」
美優「はい。お願いします」
仁奈「………………」
美優「……? 仁奈ちゃん? ほら、行きましょう?」
仁奈「ん? うん、分かったでごぜーます」スタスタ
5 :
◆.UigIU7V92
[sage saga]:2016/06/20(月) 23:31:00.79 ID:qnmljQBNO
――車内――
P「いやー、あの時の美優さん、ホントに綺麗でしたね」
美優「そ、そんな……! そんなことないですよ!」
美優「それより、仁奈ちゃんのあの時の――」
仁奈「………………」
6 :
◆.UigIU7V92
[sage saga]:2016/06/20(月) 23:32:06.33 ID:qnmljQBNO
P「それからあの――」
仁奈「P、ちょっといいでごぜーますか?」
P「ん? どうした仁奈、忘れ物したか?」
仁奈「ちょっとPに聞きてーことあるですよ!」
P「ああ、なんだ?」
仁奈「今日のお仕事、仁奈、すげーがんばったでごぜーますけど――」
P「ああ、そうだな」
仁奈「でも、美優おねーさんもすげーがんばって、きれーで……とっても良かったでごぜーますよ!」
P「うん? そうだな。分かってるぞ?」
仁奈「ホントでごぜーますか?」
7 :
◆.UigIU7V92
[sage saga]:2016/06/20(月) 23:33:16.63 ID:qnmljQBNO
仁奈「じゃあなんで、美優おねーさんのことは、ほめねーんでごぜーますか?」
P「えっ? そうか……? 俺、結構べた褒めしてるつもりで――」
仁奈「でもP、美優おねーさんのこと、ナデナデしてねーですよ?」
P「へ?」
美優「仁奈ちゃん……?」
仁奈「仁奈はさっき、がんばったごほーびに、Pにも美優おねーさんにもナデナデしてもらったでごぜーます!」
仁奈「ナデナデされるとすっげー気持ちよくて、仁奈はうれしーでごぜーますよ!」
仁奈「でもP、おんなじがんばった美優おねーさんには、してねーですよね?」
仁奈「忘れてたんでごぜーますか……?」
P「あー、あはは……。そういうことか」
8 :
◆.UigIU7V92
[sage saga]:2016/06/20(月) 23:34:56.62 ID:qnmljQBNO
P「そうだなー……。確かに美優さんだって、今日はすごく頑張ってた。それはプロデューサーとしてよく分かってるけどな」
P「ただ、美優さんは大人だからな。褒めるのに、ナデナデするってわけにもいかないんだよ」
仁奈「……なんででごぜーますか?」
P「まあ、さすがに大人の美優さんにそういうことするのは、失礼だし……」
仁奈「しつれい……? 美優おねーさんにナデナデしちゃいけねーんですか?」
美優「え? そ、そんなことはないけど……うーんと……」
美優「――あのね、仁奈ちゃん。まだ仁奈ちゃんには難しいかもしれないけど……、大人になると、色々と気を使わなくちゃいけない
こととかが増えるから……」
仁奈「……?? 大人になったら、ナデナデは気持ちよくなくなるんでごぜーますか……?」
P「まあ、仁奈も大きくなれば分かるようになるさ」
仁奈「……???」
P「っと、仁奈、そろそろ着くぞー」
――――――
――――
――
9 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/20(月) 23:35:55.21 ID:qnmljQBNO
――翌日――
仁奈(昨日のPと美優おねーさんの言ってたこと、結局よく分からなかったなぁ……)
仁奈(大人の気持ちは――大人にならねーと、分からねー……?)ウーン
仁奈「……ん?」
飛鳥「…………」パラッ……パラッ……
10 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/20(月) 23:37:25.09 ID:qnmljQBNO
仁奈「飛鳥おねーさん! おはよーごぜーます!」
飛鳥「……ああ、仁奈か。おはよう」
仁奈「飛鳥おねーさん、ご本読んでたんでごぜーますか」
飛鳥「これかい? アーニャに借りたロシア語の本なんだ」
仁奈「飛鳥おねーさんはロシア語、分かるんでごぜーますか!」
飛鳥「いや――残念ながら、解るってわけじゃないけれど……」
飛鳥「しかしながら、この世界には、こうしたボクたちとは異なった言語、文化、思想が確かに存在し、今日も息づいている――」
飛鳥「そんな事実に、ちょっとこの手で触れてみたいと思ってね」
仁奈「……??」
11 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/20(月) 23:38:53.20 ID:qnmljQBNO
仁奈「えーと……」
仁奈「じゃあ、仁奈、静かにしてた方がいいでごぜーますか……?」
飛鳥「いや、そんな遠慮は不要だよ」
飛鳥「ここ最近のボクの趣味なんだ――こうして、まだ人の少ない時の事務所で過ごすのは」
飛鳥「人もまばらな事務所――それは普段は見せない裏のフェーズ、影に沈んだ深閑の空間」
飛鳥「そして、それが変化する瞬間――それが次々と出社してくる他の人たちによって破られる刻《とき》」
飛鳥「静止した時計が動き出すような――零が一になるような――裏が表になるような――」
飛鳥「同じ場所でありながら、確かにそれが切り替わる刹那」
飛鳥「静寂は解除され、停滞は破壊され――日常が創造される」
飛鳥「そのボーダーを跨ぎ、ボクという存在も確かに動き出す。そんな気配を感じるのは、ね」
飛鳥「だから――今日、この事務所の内包するセカイに、変革の時を告げるのがキミというのも、悪くないことさ」
仁奈「…………???」
12 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/20(月) 23:39:50.41 ID:qnmljQBNO
仁奈(飛鳥おねーさんの言うことは難しいでごぜーますね……)
仁奈(あっ、でも!)
仁奈(そんな飛鳥おねーさんなら――難しいを知ってる飛鳥おねーさんなら……)
仁奈(もしかしたら、仁奈が分かんねーことも、分かるかもしれねーですっ!)
仁奈「あ、飛鳥おねーさんっ!」
仁奈「仁奈、ちょっと飛鳥おねーさんに、聞きてーことあるんでごぜーます!」
飛鳥「ボクに、かい? 構わないけど……」
仁奈「ありがてーですっ!」
仁奈「実はですね、昨日――」
――――――
――――
――
13 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/20(月) 23:42:25.01 ID:qnmljQBNO
飛鳥「――なるほど。何故、美優さんは頭を撫でてもらえなかったのか、ね」
仁奈「人間って、大人になるとほめてもらえなくなるんでごぜーますか?」
飛鳥「……まあ、キミのその考えも、あながち間違っていないのかもしれない。少なくともボクはその推察を、完全に否定できるだけの事象を知らない」
飛鳥「キミよりはある程度、俗世ってやつを知っているが故に、ね」
飛鳥「ただそれでも――キミが今抱いているようなイメージは、とりあえずここでは払拭しておくべきだろう」
飛鳥「別に、大人だからって、その成果に対する相応の報酬がもらえなくなるわけじゃないさ」
仁奈「じゃあ、なんで美優おねーさんはナデナデ、してもらえなかったんでごぜーますか……?」
飛鳥「『してもらえなかった』というのが間違いだね」
飛鳥「大人でも、成果に対する対価は与えられる」
飛鳥「ただし――大人にとっては『頭を撫でられる』という行為が、その努力や成果の報奨、評価とはならないということさ」
14 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/20(月) 23:44:57.45 ID:qnmljQBNO
仁奈「ひょうかにならねー、ですか……?」
飛鳥「つまりは、子供のキミと、大人の美優さんとの――価値観の相違ってことだね」
仁奈「かちかんのそーい……?」
仁奈「うーん……。飛鳥おねーさんの言うことはやっぱ難しいでごぜーますね……」
仁奈「仁奈じゃよく分かんねーですよ……」シュン
飛鳥「あ、ああ……そ、そっか……」アセアセ
飛鳥「うーんと……ええと……」
飛鳥「……簡単に言えば――仁奈は頭を撫でられるのが好きでも、美優さんはそうとは限らないってことさ」
飛鳥「例えば、仕事を頑張ったご褒美に高級な寿司をご馳走されたとして――みくさんとナターリアとでは、その反応は違うだろう……?」
仁奈「なるほど! それなら分かりやすいです!」
仁奈「つまり……好き嫌いの違い、ってことでごぜーますか?」
飛鳥「まあ、そういうことかな」
15 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/20(月) 23:47:42.00 ID:qnmljQBNO
仁奈「じゃあ、美優おねーさんは、ナデナデされるのが嫌いなんでごぜーますか?」
飛鳥「そこまでは分からないけど……」
飛鳥「……でも、髪を触られるという行為は、よほど親しい間柄でもないと抵抗があるのも事実だね」
飛鳥「ボクのエクステンションも――人工の作り物とは言え、おいそれと触らせたいものじゃないし」
仁奈「飛鳥おねーさんも、ナデナデ、嫌いでごぜーますか?」
飛鳥「……正直、あまり歓迎はしないかな」
仁奈「それは、飛鳥おねーさんが大人だから?」
飛鳥「さて……どうだろうね。ボクなんかはまあ、大人に成り切れず、子供を棄て切れない、といったところなのかな」
飛鳥「しかし、ボクみたいな年齢でもそう思うんだ。大人にとっては頭を撫でられるなんて、むしろ侮蔑の意で取られてもしかたないかもね」
仁奈「仁奈はナデナデ、気持ちよくて好きでごぜーますけど……嫌いな人もいるんでごぜーますね……」
飛鳥「子供は成長して大人になるけれど――成長とは、つまり緩慢な変容だからね。それは自分で選択できる部分もあれば、否応なく、余儀なくされる部分もある」
飛鳥「だから、もしかしたら仁奈もこれから大きくなっていくにつれて、頭を撫でられることが、自身の評され方として不満になる時が来る……のかもね」
仁奈「それって……仁奈もナデナデが嫌いになるってことですか……?」
飛鳥「――逆に言えば、他のことが気持ちよく感じる、ってことだよ」
仁奈「他のこと……」
16 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/20(月) 23:49:46.73 ID:qnmljQBNO
仁奈「ナデナデ以外の気持ちいい、でごぜーますか。だったらモフモフでごぜーますけど……」
飛鳥「モフモフ……ねぇ。それだって、大人に対する態度としてマッチするとは思えないけれど」
仁奈「で、ごぜーますか……」
仁奈「うーん……それ以外の気持ちいい……。仁奈にはちっと、思い当たらねーです……」
飛鳥「……ふむ」
飛鳥「ならば、ちょっと見にいくのはどうだい?」
仁奈「見に……?」
飛鳥「ああ」
飛鳥「幸いというか――このアイドル事務所には、様々なキャラクターのアイドルたちが所属している」
飛鳥「そこはまさに個性の宝庫――存在の坩堝だ」
飛鳥「彼女たちを観察することで、彼女たちの持つ各々の価値観を観測することで――まだキミの知らない様々な事象への視点、キミの言うところの様々な『みんなの気持ちいい』を知ることができるんじゃないかな」
飛鳥「そしてそれらを知ることができたならば――美優さんの気持ちってやつも少しは分かるようになるんじゃないかい?」
仁奈「みんなの気持ち――みんなの気持ちいい、をお勉強するんでごぜーますか……!」
17 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/20(月) 23:51:13.33 ID:qnmljQBNO
飛鳥「この世には、キミにもボクにもまだまだ知らない思考が、信条が――セカイが遍在している」
飛鳥「何よりもまず、そういったものが『ある』んだと知ることこそ、それらが存在するためには必要なプロセスだ」
飛鳥「丁度、ボクもこの事務所の個性的な彼女らについては興味を持っていてね」
飛鳥「その……キミさえ良ければ、だが……」
飛鳥「ボクのそんな、セカイを巡る道程に付き合ってみる気はないかい?」
仁奈「飛鳥おねーさんと一緒ですか! うおぉー!」
仁奈「みんなの気持ちいい探し、飛鳥おねーさんと一緒なら、すっげー楽しいでごぜーますね!」
飛鳥「そ、そうかい」
飛鳥「そう、言ってもらえるなら……うん……」
飛鳥「わ、悪くはない、ね……///」
仁奈「えへへ〜♪」
18 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/20(月) 23:52:15.71 ID:qnmljQBNO
仁奈「じゃあ早速、しゅっぱつしんこー!」
仁奈「まずは誰の気持ちいいでごぜーますかね?」スタスタ
飛鳥「ふむ。そうだね……」
「へんしんっ!!!」
仁奈「ん? どっかからか声がしやがりますね……?」
飛鳥「どうやら屋上からのものみたいだけど」
仁奈「行ってみるでごぜーますよ!」タッタッタ
19 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/20(月) 23:55:19.30 ID:qnmljQBNO
――屋上――
南条光「うーん……。もっと動きにキレがほしい……」
光「よし、もう一回!」
光「はぁぁああ……」
光「変身っ!!」
仁奈「あっ、光おねーさんでごぜーます!」
仁奈「光おねーさん! おはよーごぜーますよ!」
光「ん? 仁奈ちゃんに飛鳥ちゃんじゃないか! おはよう!」
仁奈「光おねーさん、今やってたのはなんでごぜーますか?」
光「何って、変身ポーズの練習だよ」
光「今度、ヒーローショーに出られることになったんだ! だからその時、恥ずかしくないようにしっかり変身の練習しとかなきゃって思ってさ」
20 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/20(月) 23:56:55.60 ID:qnmljQBNO
光「二人こそどうしたんだ? こんな屋上に」
飛鳥「いやなに――ちょっとした探究、かな」
仁奈「今、仁奈たちは、『みんなの気持ちいい』を聞いて回ってるでごぜーます!」
光「みんなの気持ちいい?」
飛鳥「この事務所の個性的なアイドルたち、それぞれの『気持ちいい』――それら様々なセカイの存在を観測し、自らの知識の深度を増やそうと、そういうことさ」
飛鳥「そこで丁度、キミの声が聞こえたんでね」
仁奈「光おねーさんの気持ちいい、はなんでごぜーますか?」
光「アタシの?」
21 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/20(月) 23:57:55.22 ID:qnmljQBNO
光「そうだなー……」
光「それはやっぱり、さっきみたいに変身ポーズを決めることかな」
光「アタシなりの気合の入れ方っていうか……。これやると、力が湧き上がってきて、心が引き締まるんだ!」
仁奈「あっ、知ってるでごぜーます! そのベルトが光って変身するんでごぜーますね!」
光「あはは……。まあ、これはただのおもちゃだけどね……」
光「でも――例え変身グッズは本物じゃなくても、これをつけると、心にある正義の炎が湧き上がるのは本当さ!」
22 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/20(月) 23:59:58.71 ID:qnmljQBNO
飛鳥「ふむ。なるほど……」
飛鳥「重要なのは客観的な現実ではなく、主観的なある種の信念……」
飛鳥「それがあるならば、例え玩具だとしてもそれは己を変える――変革のキーとなるわけか」
仁奈「きゃっかん……? しんねん……?」
仁奈「えーと、えーと……」
飛鳥「ああ、仁奈」
飛鳥「つまり――光は例えおもちゃであっても、あのベルトをつけることで、自らの『気持ちいい』状態になれるってことさ」
仁奈「なるほど!」
仁奈「つまり光おねーさんは、オモチャで気持ちよくなるんでごぜーますか!」
光「あはは! まあ間違ってはいないかなー!」
23 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:02:50.81 ID:RXynR1msO
光「考えてみたら、仁奈ちゃんのそのキグルミも、『変身』だな」
仁奈「おおー、たしかにそうだ! 仁奈はキグルミを着て色んな動物の気持ちになるでごぜーますから!」
光「そっか。仁奈ちゃんにも、変身で湧き上がる想いってやつがあるんだね」
光「よし、仁奈ちゃん! 良かったらこの変身ベルト、つけてみる?」
光「同じ『変身』とその心を持つ者同士、何か新しいことが分かるかもよ」
仁奈「ホントでごぜーますか! じゃあおねげーしますよ!」
光「よーし、ちょっと待ってね……」カチャカチャ
光「って、あれ……。ちょっとサイズが合わないか……」カチャカチャ
仁奈「仁奈じゃベルト、つけられねーでごぜーますか……?」
光「ごめん仁奈ちゃん……。ちょっと仁奈ちゃんには大きいみたいだ」
仁奈「そ、そうでごぜーますか……」シュン
飛鳥「………………」
24 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:03:33.92 ID:RXynR1msO
飛鳥「仁奈、そう落ち込むことはないよ」
飛鳥「物事にはなんでも順序ってものがあるんだ」
飛鳥「今日、キミは光の中の信念ってやつに触れた――とりあえずそれが最初の第一歩だ」
飛鳥「そのベルトがつけられないのは、単に次のステップにはまだ早いと言うだけさ」
飛鳥「次の一歩を歩むための一歩として――光にも、そして自分にも同じ信念があるということ」
飛鳥「まずはその結果を得たことを喜ぶべきだ」
光「お、飛鳥ちゃんいいこと言うな!」
光「そうだよ仁奈ちゃん! 確かにカッコイイフォームとかは大事だけど……」
光「でも、一番大事なのは、やっぱり心さ!」
光「どんな姿でも――自分の信じた正義を持ってるってことが大切なんだ!」
仁奈「せいぎ……でごぜーますか……」
光「このベルトは、仁奈ちゃんがもう少しおっきくなったらつけられるようになるよ」
光「だからそれまで、仁奈ちゃんは、自分の心の正義を大切にしておくんだ!」
25 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:04:25.62 ID:RXynR1msO
仁奈「分かったでごぜーます!」
仁奈「仁奈も、自分のキグルミのせいぎを信じるでごぜーますよ!」
光「うんうん!」
仁奈「それで、大きくなったら――」
仁奈「大きくなったら仁奈も、オモチャで気持ちよくなりてーでごぜーます!!」
飛鳥「受け継がれし想い、だね」
26 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:05:26.95 ID:RXynR1msO
――――――
――――
――
仁奈「そういえば、飛鳥おねーさんのえくすても、変身なんでごーぜますか?」
飛鳥「これは……どうだろう……。どちらかと言えば――仮面、かな」
仁奈「かめん……? じゃあやっぱり変身でごぜーますか……?」
仁奈「ん?」
27 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:08:35.03 ID:RXynR1msO
姫川友紀「よーし……! 気合入れてー……」
日野茜「おおお……」
<カキーン!!
<打ったー! ホームラン! 逆転サヨナラホームランです!!
友紀「おっしゃぁぁああああー!!」
茜「おおっ!! 打ちました! 入りました! 回りましたっ!!!」
友紀「やったよー!! 逆転! キャッツ逆転ーー!!」
茜「ボンバー!!」
仁奈「友紀おねーさんと茜おねーさんでごぜーますね」
飛鳥「ふむ。どうやら、野球のテレビ中継を見ているようだね」
28 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:11:08.83 ID:RXynR1msO
仁奈「友紀おねーさん、おはよーごぜーます!」
友紀「おっ! 仁奈ちゃんに飛鳥ちゃん!」
友紀「聞いて聞いて! キャッツ勝ったよ! 逆転勝利っ!!」
友紀「いやー! 今夜は宴だー!」
仁奈「おお、すげー! ねこっぴーが跳ねてるでごぜーます!」キラキラ
29 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:12:09.70 ID:RXynR1msO
仁奈「って、あっ! そうだった」
仁奈「友紀おねーさん。仁奈、おねーさんに聞きて―ことがあるんでごぜーます」
友紀「うん? なになに? キャッツの選手の活躍?」
仁奈「えーと……」
飛鳥「今、ボクと仁奈とであることを見聞していてね」
飛鳥「――この事務所のアイドルたちの、それぞれの『気持ちいい』。多様なアイドルたちの持つ多様なセカイ」
飛鳥「その探究――そして蒐集を二人でやっているんだ」
飛鳥「良ければ友紀さんも、少し協力してくれないかな」
仁奈「友紀おねーさんの『気持ちいい』を教えてほしーでごぜーます!」
友紀「おー、なるほどー!」
30 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:13:32.74 ID:RXynR1msO
友紀「あはは、そういうことなら勿論いいよー!」
友紀「っていうか、このタイミングなら言うまでもないよねー!」
友紀「あたしの気持ちいいって言ったら、やっぱ野球でしょ!」
友紀「特にキャッツが勝ったからねー! これ以上の『気持ちいい』なんてないよー!」
飛鳥「ふむ。なるほど……」
飛鳥「闘争の経た果ての終幕――勝ち取った達成感」
飛鳥「『勝利の美酒』と言うけれど、その杯はどうやらオーディエンスたちにも与えられるもの、と言うことか……」
友紀「まあ、あたしは野球は見るのも好きだけど、やるのだってもちろん好きだけどね!」
31 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:14:48.82 ID:RXynR1msO
仁奈「しょうりのびしゅ……? おーでえんす……?」
仁奈「えっと、えーと……つまり……?」
飛鳥「つまり――友紀さんは、野球なら見るのもやるのも好きってことだね」
仁奈「なるほど! つまり――」
仁奈「友紀おねーさんは、見てるのもやるのも気持ちいいんでごぜーますか!」
飛鳥「まあ、そういうことだね」
32 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:16:00.89 ID:RXynR1msO
友紀「おっと! そういえば、あたしの『気持ちいい』にもう一個欠かせないものがあった」
飛鳥「もう一個?」
仁奈「それは?」
友紀「もちろん、このキンキンに冷えたビール!!」グビグビ
友紀「ぷはっー!」
友紀「あはは、まさに勝利の美酒っていうか、祝い酒っていうか――」
友紀「やっぱ一勝負のあとの、特にキャッツ勝ったあとのビールは最高だよねー!」
仁奈「友紀おねーさんは、ビールも気持ちいい、でごぜーますか」
仁奈「ビールって、そんなにうめーんですか?」
飛鳥「さてね。当然ながら、ボクも賞味した経験はないけど」
友紀「うーん……まあぶっちゃけ、あたしも初めて飲んだ時は苦いって思ったけど……」
33 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:19:19.12 ID:RXynR1msO
仁奈「に、にげーんですか? でも、それが気持ちいいんですか?」
仁奈「仁奈にはちっと分かんねーです……」
友紀「ものにもよるんだろうけど――ビールって、どっちかっていえば味より喉越しを楽しむもんだからねぇ……」
仁奈「のどごし。ゴクゴクーってことですか!」
友紀「そうそう」
友紀「あとはまあ、なにより、その場の雰囲気のため、かな?」
仁奈「ふいんき……?」
友紀「うん。なくてもいいけど、あった方が楽しいっていうか……」
友紀「白熱の野球観戦のお共に、キンキンのビールとおつまみがあると嬉しいし……」
友紀「って、あんま未成年にする話じゃなかったかな?」
飛鳥「……ふむ。なるほど」
飛鳥「ボクは経験がないから、その手の楽しみについて感ずるのに、言えることは多くはないけれど……」
飛鳥「しかしあえて述べるなら――こういう場合に重要視されるのは、各々のパーツの質云々よりも、それらが揃って組上がるそのシチュエーションである、ということか」
友紀「お祭りで、ヤキソバとか食べたくなるのとか、映画館で高くてもポップコーン買っちゃうのとかと同じだね」
仁奈「おのおののぱーつ……に、しちゅえーしょん、でごぜーますか……?」
34 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:21:49.06 ID:RXynR1msO
仁奈「ううーん……なんかこんがらがってきやがったです……」
飛鳥「えっと、仁奈、大丈夫かい……?」
仁奈「いったんせーりさせてくだせー!」
仁奈「ビールはにげーけど、ゴクゴクだとうめぇ……」
飛鳥「そうだね。そして、ビールは友紀さんにとって、白熱の野球観戦する上ではあると嬉しいもの、ということだよ」
仁奈「なるほど! 分かったでごぜーます!」
仁奈「つまり友紀おねーさんは、白熱してるとにげーのをごっくんするのも気持ちよくなるんでごぜーますね!!」
飛鳥「まあ、そういうことだね」
友紀「!?」ブフッ
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/06/21(火) 00:23:56.98 ID:mrAZmZJ4o
ワロタ
36 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:24:12.11 ID:RXynR1msO
友紀「ゴホっ……ああ、いや……間違ってないけどね……?」
友紀「ただ、なんかその言い方だとちょっと……」
仁奈「なんかダメですか?」
友紀「うん、あの――」
茜「ううむ! お互いに全力を尽くした熱き試合……!!」
茜「なんだか私も燃えてきました!! この溢れる情熱! 湧き上がる熱気!!」
茜「我慢できませんっ! ちょっと走ってきますっ!!!!」
茜「ボンバァァアアアアーー!!!!!」バリーン
友紀「うわっ!? 茜ちゃん!?」
友紀「ちょっとマズいって! この前もガラス割って怒られたでしょー!」
ボンバァァアアア
マッテー!!
仁奈「茜おねーさんにも聞きたかったですけど、行っちゃったでごぜーますね」
飛鳥「どうやら彼女にとって、勝利の美酒とは甘く染み渡るものではなく、その身を焚き付け、燃え上がらせ、奔走に駆り立てる燃料、だったようだ」
仁奈「ねんりょう……ほんそう……」
仁奈「えーと、つまり――」
仁奈「茜おねーさんは、見てるだけじゃ我慢できなくなっちゃうんでごぜーますか!」
飛鳥「そうだね。そういうことだ」
――――――
――――
――
37 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:26:21.48 ID:RXynR1msO
仁奈「野球――たしかに仁奈も、前に一緒に見たとき、楽しかったでごぜーますよ!」
飛鳥「チームの活躍、そして勝利――なによりそれを渇望する想い」
飛鳥「他者を応援することで、それを共有する――本来、千差万別であるはずの個々のセカイの共鳴」
飛鳥「実に興味深いね」
仁奈「この調子で、どんどん『みんなの気持ちいい』を見つけるでごぜーます!」
「あら?」
38 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:30:53.49 ID:RXynR1msO
速水奏「あら。仁奈ちゃんに飛鳥ちゃん」
仁奈「あ、奏おねーさんでごぜーます!」
奏「おはよう。ふふっ、二人で仲良くお散歩かしら?」
仁奈「おさんぽじゃなくてたんきゅーでごぜーますよ!」
飛鳥「まあ……ちょっとした人間観察の一環さ」
仁奈「飛鳥おねーさんと一緒に、みんなの気持ちいいを探してるんでごぜーます!」
奏「みんな気持ちいい、ねぇ」
仁奈「奏おねーさんの気持ちいいはなんでごぜーますか?」
39 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:31:43.53 ID:RXynR1msO
奏「気持ちいい……? 私の?」
奏「そうねぇ……。それはやっぱり――」
ちゅっ
仁奈「わっ!」
奏「ふふっ……」
奏「やっぱりコレ――キス、かしらね」
仁奈「きす! ちゅーでごぜーますか!」
40 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:32:13.89 ID:RXynR1msO
奏「仁奈ちゃんのほっぺ、つるつるぷにぷにでとっても気持ち良かったわ」
仁奈「奏おねーさんは、つるつるぷにぷににちゅーすると気持ちいいでごぜーますか」
奏「ふふ、そうね。それも間違ってはいないけど……」
奏「でもキス――口づけを本当に気持ちいいと感じるのに大事なのは、やっぱり相手への想い、かしら」
仁奈「おもい……?」
奏「ええ。気持ちいいキスには、気持ちが大事ってこと」
奏「その相手にどんな想いを持ってるか。言葉でなく、その身を以って自分の情念を伝えたい相手かどうか」
奏「本当にそう思える相手に対して、瞼を閉じて、ただ唇を重ね、身も心も相手にゆだねる――」
奏「そこで初めて口づけは、情熱的で蠱惑的な魅力を孕むものになるのよ」
41 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:32:44.71 ID:RXynR1msO
飛鳥「ふむ……」
飛鳥「結果として見れば、それはただ身体の一部が触れ合っただけの出来事――」
飛鳥「しかしながら、当人同士の感情によって、その結果は愛情の表現へ変換され、完成する」
飛鳥「目に見えるモノを、目に見えないモノで以ってして、意味の変容を成す――」
飛鳥「なるほど。中々に考えさせられる事象だね」
42 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:33:44.95 ID:RXynR1msO
奏「ふふっ。仁奈ちゃんにはまだ早いでしょうけれど――」
奏「でも飛鳥ちゃんは、そろそろ分かる話なんじゃないかしら」
奏「もしかしたら近いうちに、『ただ身体の一部が触れただけ』なんて言えなくなるかもよ?」
飛鳥「……どうかな。ボクのセカイはボクで成り立っているからね」
飛鳥「それが世界に起こることと、ボクがそれをセカイに受け入れることとは、また別問題さ」
43 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:34:33.46 ID:RXynR1msO
仁奈「えーと、うーんと……」
飛鳥「ああ、仁奈。つまり――」
仁奈「つまり、奏おねーさんはおくちで気持ちよくなるんでごぜーますね!」
飛鳥「そうだね」
奏「!?」
44 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:37:38.27 ID:RXynR1msO
仁奈「なるほどー……。おくちで気持ちよくなるのは、仁奈、はつみみでごぜーますよ」
飛鳥「確かに、ボクも聞かされるまで、考えさせられるまでは想像できなかったな」
奏「ま、まあ……そういう認識でも構わないけれど……」
奏「でも、仁奈ちゃん……? その言い方は、いささか誤解を招くことがあるから――」
小松伊吹「おーすっ! 三人とも、何してんの?」
仁奈「あっ! 伊吹おねーさん!」
45 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:38:28.03 ID:RXynR1msO
仁奈「今、仁奈たちはちしきのたんきゅーの最中でごぜーますよ!」
伊吹「ちしき……知識の、探究? なになに、奏に勉強でも教えてもらってたの?」
仁奈「べんきょーじゃねーですけど、教えてもらったでごぜーます!」
伊吹「へぇー。何を?」
仁奈「奏おねーさんは、おくちで気持ちよくなるって!」
伊吹「えっ……」
奏「ちょっ!!」
46 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:39:32.67 ID:RXynR1msO
伊吹「お、おくちって……あの……///」
奏「ち、違うわよ!? あのね――」
仁奈「さっき、仁奈もおくちでしてもらったですよ!」
伊吹「!!?」
仁奈「ねっ! 飛鳥おねーさん」
飛鳥「うん? ああ、さっきの(キスの)ことか」
飛鳥「そうだね。仁奈もしてもらっていたね」
伊吹「奏……アンタ……」
奏「落ち着いて、話を聞いてちょうだい……!」
仁奈「えへへ〜♪ 仁奈の(ほっぺ)はつるつるぷにぷにってほめてもらったですよ!」
伊吹「!??!??!?」
奏「だから違うわよ! あのね――」
仁奈「そういえば、飛鳥おねーさんはしてもらってねーですね」
伊吹「だだだだだめ! だめだよ! そんなの!!!」
仁奈「……? なんででごぜーますか?」
伊吹「ななななんでって! そんなの……!!」
47 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:40:25.91 ID:RXynR1msO
奏「落ち着いて。よく考えて」
奏「あなただって分かるでしょ? ほら、口で、私がいつもしようとしてる――」
伊吹「いつもしようとしてたの!?」
伊吹「知らない! アタシ知らないよ!?」
奏「だから、キスよ! 仁奈ちゃんのほ――」
伊吹「キスって!! どっち方!?」
奏「どっちってなに!?」
48 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:41:38.74 ID:RXynR1msO
伊吹「そそそそっかぁ……。そうだよね……奏、進んでるものね……」ガクガク
奏「待って、話し合いましょう。今のあなたは冷静じゃないわ……!!」
伊吹「いや、その……でも……さすがに仁奈ちゃんは……まずいと……」ソローリ
奏「待ってお願い。距離を取らないで……!」
伊吹「だ、ダイジョウブ! こういう時は、冷静に、冷静に……」
奏「そうよ。冷静になって、それで考えればすぐ分かるわ」
奏「私は――」
伊吹「早苗さぁぁーーーん!!」ダッ
奏「待ってっ!!!」ダッ
仁奈「二人はどうしたですか?」
飛鳥「さぁ……?」
49 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:46:31.13 ID:RXynR1msO
――――――
――――
――
仁奈「キスでごぜーますか」
仁奈「でも仁奈はやっぱり、ナデナデされるのが好きでごぜーますよ!」
飛鳥「ふむ。まだまだ序盤ながら、中々バラエティーに富んだ『気持ちいい』たちに出会えたね」
飛鳥「やはりこの事務所は多様性の宝庫のようだ」
仁奈「次は誰でごぜーますかねー!」キョロキョロ
仁奈「あっ!」
財前時子「………………」フキフキ
50 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:47:59.01 ID:RXynR1msO
仁奈「時子おねーさん! おはよーごぜーます!」
飛鳥「どうも、時子さん」
時子「……仁奈に飛鳥か」
時子「おはよう」
時子「…………あいさつが済んだのならとっとと行きなさい。私は今忙しいの」
仁奈「でも仁奈、時子おねーさんに聞きて―ことあるですよ!」
時子「アァン? 聞きたいこと?」
時子「それは、この私の手を止めさせて、時間を割かせるだけの価値があるものなのかしら?」
51 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:50:59.95 ID:RXynR1msO
仁奈「手を止める……。そういえば時子おねーさん、さっきから何してるですか?」
時子「見て分からないかしら。手入れよ、鞭の」
仁奈「むち……。たしかにおねーさん、いつもそれ持っていやがりますね」
仁奈「それ、何に使うんでごぜーますか?」
時子「『何をしてるか』、『何に使うか』……」
時子「愚かね」
時子「自分で考えもせず、疑問ばかり並び立てる愚か者は嫌いよ」
時子「でも、そうねぇ……」
時子「まあ、アナタはまだ子供だし。それに無知な子供でありながら、この私に教えを乞おうとした――その判断は褒めてあげるわ」
時子「だからそれに免じて教えてあげる」
時子「この鞭はね――」
『鞭に無知……ふふっ』
時子「誰だいまの」
52 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:52:15.63 ID:RXynR1msO
時子「この鞭は調教用よ」
時子「これで愚かしい――哀れな豚どもを躾けてあげるの」
仁奈「ぶた……? ぶたさんでごぜーますか?」
時子「アナタの思ってる豚じゃないわ」
時子「それよりもっと愚かで、なお醜く、殊更哀れな――」
時子「しかしながら、この時子様の調教にあずかる名誉を受けた豚、よ」
仁奈「………………???」
仁奈「……お、ろか……? め、いよ……?」
仁奈「そんなぶたさんがいるんでごぜーますか……?」
時子「……あのプロデューサーのことよ」
仁奈「おお、そうなんでごぜーますか!」
時子「ったく、これだからガキは嫌だわ……」チッ
53 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:53:52.32 ID:RXynR1msO
仁奈「ちょーきょーよーのむち、をお手入れでごぜーますか!」
時子「この私が使うものだもの。ならば道具としては常に万全のものでなくてはいけないわ。例え、それを振るう相手があの愚か者だったとしてもね」
仁奈「分かるでごぜーますよ! 仁奈もキグルミは自分で洗うでごぜーますから!」
時子「へぇ、そう。まあ、無知な子供ながらに、アナタにはアナタなりのこだわりがあるってことね」
時子「――で?」
時子「何かこの私に聞きたいことがあるんでしょう? ……愚鈍は罪よ。とっとと言いなさい」
飛鳥「おや、意外だね。応じてくれるのかい?」
時子「私は寛大で、そして賢い女なの」
時子「アナタたちの些末な疑問なんて、すぐに片付けてやるわ」
54 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:55:05.71 ID:RXynR1msO
仁奈「じゃあ時子おねーさん!」
仁奈「時子おねーさんの気持ちいい、教えてくだせー!」
時子「気持ちいい……?」
飛鳥「事務所の皆に聞いて回っているのさ。自分たち以外の価値観ってやつを知るってことでね」
時子「ふぅん……」
時子「私の高貴な行いが、アナタたちなんかに理解できるとは到底思えないけど――」
時子「まあ、いいわ」
時子「その少ない脳みそで、私の教えを享受できることを感謝しながら聞きなさい」
時子「『気持ちいい』……。最近の私のそれは、あの無礼な豚に仕置きを与えること、かしら」
55 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 00:57:58.37 ID:RXynR1msO
仁奈「しおき……。おしおき、が気持ちいいでごぜーますか……?」
仁奈「うぅ……。おしおきってこえーもんですよ……?」
時子「別に分かってもらう必要はないわ。むしろ、軽々しく分かったように語られるのは不愉快だしね」
仁奈「おしおきって……時子おねーさんは楽しいですか?」
時子「楽しい……? ええ、愉しいわよ」
時子「あの愚か者に覚えた苛立ちを、愚か者自身の身体で償わせるのは……!」
時子「クククッ……。ああ、あの豚のどうしようない顔……、悲痛な鳴き声……!!」
時子「アーッハッハッハッッ!!!」
56 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 01:00:16.56 ID:RXynR1msO
仁奈「な、なんだか時子おねーさん、こえーですね……」
飛鳥「時子さんの話――それは、一般的に言うところのサディズム、サディストというものだろうね」
飛鳥「そう呼ばれる彼ら彼女らは、他者を屈服させ、隷属させることに喜びを覚える」
飛鳥「支配こそが、彼らの『気持ちいい』、ということさ」
仁奈「し、しはい……」
時子「フンッ……。別にどう思われようと、そんなことは些事、だけれどね」
時子「でも少し、その認識のされ方は不服かしら」
飛鳥「……と、言うと?」
57 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 01:03:37.76 ID:RXynR1msO
時子「やれサディズムだマゾヒズムだなんてのは、どっかの誰かが便宜上設けた括り」
時子「他者を見下ろし、愚者を見下し、下僕に崇拝され、仰ぎ見られるべき女王が――そんなもので分類され、十把一絡げにされるのは我慢ならない」
時子「私は女王。そして女王は上に立ち、前を征く存在」
時子「だったら、そういう括りは、私が設けるべきもの」
時子「私は縛られるのではなく――縛り、括り、定めるべき立場なのよ」
飛鳥「ほう……なるほどね……」
飛鳥「前を見る先駆者たる者にとっては、誰かの定義や定理は、あくまで踏み台――」
飛鳥「それらは時には手段であっても、常識や自己を縛る鎖ではない」
飛鳥「そして自らのセカイがセカイたるファクター、それは他者のセカイへの干渉をも含む」
飛鳥「ともすれば傲慢だが――しかし、抜きんでた強者たる者にとっては、それは必然であり必須――なのかもしれないね」
時子「あら。なかなかいいことを言うわね」
時子「おべっかは嫌いだけれど、今の言葉は私に送るのに中々相応しいものよ」
58 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 01:05:09.55 ID:RXynR1msO
仁奈「せんくしゃ……ていり……」
仁奈「つまり……どういうことでごぜーますか……?」
飛鳥「簡単に言えば、時子さんは、誰かが設けた枠に嵌められるより、自らその枠を造り、他を嵌めるべき存在でいたい、ということさ」
仁奈「な、なるほど! つまり――」
仁奈「時子おねーさんは、ハメられるよりハメるほうが好きなんでごぜーますかっ!!」
飛鳥「理解が早いね」
時子「!?」ブフッ
59 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 01:12:22.21 ID:RXynR1msO
時子「ハメ……ゴホンっ!」
時子「まあアナタたちにどう思われようと構わない、構わないわ……」
時子「ただ――無知なアナタたちに一つ、忠告してあげるわ」
時子「いい? 他所でその言い方は――」
♪〜〜〜〜!!
飛鳥「ああ、すまない。電話だ」
飛鳥「少し外すよ」スタスタ
モシモシ、ボクダ
アア、ランコカ。ドウシタンダイ?
仁奈「それで、時子おねーさん」
仁奈「Pにおしおきって――どういうことをするんでごぜーますか……?」
仁奈「すっげー怒って、けんかするんでごぜーますか?」
時子「アァン? 喧嘩? そんなことしないわよ」
時子「察しが悪いわね。……まあいいけど」
時子「あの豚への仕置きなんて言うまでもないわ」
時子「この鞭で、ビシバシ叩いてあげるのよ」ヒュン
仁奈「ええ!?」
60 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 01:13:10.63 ID:RXynR1msO
テスト? ガッコウノカイ?
アア、タシカニボクモソンナモノヲセオワサレテイタネ……
ベンキョウカイ? タンキュウノウタゲカ……ワルクナイネ
仁奈「うぅ……。それって、すげーいてーんじゃ……」
時子「愚問ね。痛くなければ意味がないでしょう?」
時子「豚には人間の言葉なんて通じないわ。痛みと恐怖でもって、立場を分からせてあげる必要があるのよ」
仁奈「でも、いてーのはいやでごぜーますよ……!」
時子「むしろ喜ばれては困るわ。躾けなのだもの――褒美になってはいけないでしょう?」
仁奈「でも……Pがかわいそうでごぜーます……」シュン
時子「うっ……。……あんな豚に哀れみなんて、向けるだけ勿体ないわ」
61 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 01:14:07.53 ID:RXynR1msO
ソウダナ……
ボクハ、セイブツガスコシオクレテイテネ。
アア。
ホケンタイイク? ソウイエバソンナノモアッタナ
ワカッタ。ジャアコンヤ――
仁奈「時子おねーさんは、そんなおしおき、が気持ちいいでごぜーますか……」
時子「……まあ、アナタみたいなのが聞くにはまだ早かったかもね」
時子「――精々、それで学習しなさい。向上心は立派だけれど、身の程知らずに物事を追い求めるのは、ただの莫迦よ」
仁奈「分かったでごぜーます……」
時子「そう。だったらとっとと――」
仁奈「時子おねーさん!」
仁奈「仁奈を叩いてくだせー!!」
時子「!!?」
62 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 01:14:50.16 ID:RXynR1msO
時子「ハァ!? 何言って……」
仁奈「さあ、えんりょはいらねーですよ!」
時子「ちょ、ちょっと待ちなさい! なにバカなこと言ってんのよ!?」
時子「アナタ、痛い思いがしたいの……?」
仁奈「たしかに仁奈、いてーのはいやですよ……」
仁奈「でも――同じくらい、Pがいてー思いするのもいやでごぜーます!」
仁奈「だからおねーさん! 叩くなら、おしおきなら仁奈にしてくだせー!」
時子「なんでそうなるのよ!?」
仁奈「時子おねーさんはおしおきできてうれしくて、仁奈はPがいてー思いしねーなら、それでうれしいでごぜーます!」
仁奈「うぃんうぃんでごぜーますよ!」
仁奈「だから――」
時子「ちょ、ちょっと落ち着きなさい……!」
63 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 01:15:55.64 ID:RXynR1msO
仁奈「さあ、おねーさん! やってくだせー! ひとおもいに!」
仁奈「仁奈で気持ちよくなってくだせー!」
仁奈「それで仁奈も満足でごぜーます!」
時子「待って! 待ちなさい! ちょっと――」
持田亜里沙「………………」ニコニコニコ
時子「!!!???」
64 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 01:16:37.47 ID:RXynR1msO
時子「なっ、待ちなさい亜里沙! これはね、あの――」
亜里沙「………………」ニコニコニコ
時子「わ、私は何もしてないわ! この子が勝手に言い出したことで――」
亜里沙「………………」ニコニコニコ
時子「は、ハン! 大体、な、何かしらその態度!」
時子「女王たるこの私に指図でもしようっての!? み、身の程を弁えることもできないのかしら――」
亜里沙「………………」ニコニコニコ
時子「この私が、あ、アナタなんかに命令されるような――」
65 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 01:17:37.17 ID:RXynR1msO
亜里沙「時子ちゃん」
時子「……はい」
亜里沙「来なさい」
時子「…………はい」
トボトボ
飛鳥「すまないね。それで、時子さんの話は聞けたかい?」スタスタ
仁奈「時子おねーさんなら、亜里沙おねーさんと一緒に行っちまったですよ」
飛鳥「そうなのかい。何か用でもあったのかな?」
66 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 01:19:12.97 ID:RXynR1msO
仁奈「おしおきが気持ちいい……。今までで一番難しい、『気持ちいい』でごぜーました……」
飛鳥「理解が困難なら、それを無理に解ろうとする必要は必ずしもあるわけじゃないさ」
飛鳥「むしろ無理な理解をしようとして、そこから曲解を得てしまうほうが問題だと、ボクは思うけどね」
飛鳥「まずは、それが現実としてあったと――それだけ知り、己に記すことも成長さ」
仁奈「そーいえば、分かんねー時は分かんねーって素直に言うのも大事って、瑞樹おねーさんが言ってたでごぜーます!」
飛鳥「ふむ。それはいわゆる、無知の知――というやつかな」
仁奈「むちむち……? 瑞樹おねーさんは、まだまだぴちぴちだって言ってたでごぜーますよ?」
飛鳥「……そう」
67 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 01:19:51.10 ID:RXynR1msO
仁奈「でも、飛鳥おねーさんとの『気持ちいい』探し、楽しいでごぜーますね!」
飛鳥「そ、そうかい……?」
仁奈「一緒は楽しいでごぜーますよ!」
飛鳥「う、うん。そうか……///」
仁奈「さぁー、お次はどんな気持ちいいだー?」
「ん?」
68 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 01:21:26.76 ID:RXynR1msO
向井拓海「仁奈に飛鳥じゃんか」
拓海「なんだ、オマエらオフじゃなかったか?」
仁奈「あ、拓海おねーさん!」
拓海「んでもって、今日は休日だろ? わざわざ事務所にいるなんて物好きだな」
飛鳥「いやなに、休日だからこそ、普段は見られないものが見聞きできるというものさ」
飛鳥「丁度、今もその最中なんだ」
拓海「ふぅん?」
69 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 01:28:01.73 ID:RXynR1msO
仁奈「拓海おねーさん、顔が黒いでごぜーますね!」
仁奈「それになんか、変な臭いするですよ……?」
拓海「ああ、コレか? ちっとさっきまでバイクいじってたからな」
拓海「オイルと煤がべったりだから、シャワー借りようと思ってさ」
仁奈「バイク……。あのブォオーンってやつですか!」
拓海「まあな。アクセル全開で突っ走るのは気持ちいいぜー?」
仁奈「気持ちいい!? それが拓海おねーさんの気持ちいいでごぜーますか!!」
拓海「うん? まあそうだけど?」
拓海「なんだ仁奈、バイクに興味あんのか?」
70 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 01:28:33.83 ID:RXynR1msO
飛鳥「ボクたちが興味があるのは、バイクと言うより、拓海さんの方さ」
拓海「アタシ……?」
仁奈「仁奈たち、みんなの『気持ちいい』ってものをちょうさしてるですよ!」
拓海「はぁーん。そんで、さっき食いついたのか」
仁奈「拓海おねーさんの気持ちいいは、バイクでごぜーますか?」
拓海「ん、そうだな」
拓海「エンジン鳴らして、峠とかをトバすのはいい気分だぜ」
拓海「スピードに乗って、風を全身に感じてるとさ――なんていうかこう、テンション上がるっていうか……」
拓海「疾走感で、アドレナリン、バンバン出てるカンジがしてな!」
仁奈「拓海おねーさんは、バイクは早えーほうが好きなんでごぜーますか」
拓海「おう! 早ければ早いほどいいぜっ!」
71 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 01:29:20.13 ID:RXynR1msO
拓海「あと気持ちいいつったら、そうだな――」
拓海「まあ? 大人数相手に、ケンカ吹っ掛けた時とかな……」
拓海「こう、迫ってくるチンピラどもをちぎっては投げ、ちぎっては投げって……」
仁奈「……きんぴら?」
拓海「ああ、いや……なんでもねえ。これはオメーらにする話じゃなかったな……」
72 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 01:30:29.94 ID:RXynR1msO
仁奈「でもバイクに乗るって、いっつも、そんな真っ黒にならねーといけねーんですか?」
拓海「いや、コレはメンテしたからだけど……」
飛鳥「バイクのメンテナンスか。詳しくないんだが、そういうのは結構、手間なんじゃないのかい?」
拓海「うーん? まあ、そうだなぁ……」
拓海「確かに色々世話してやることはあるけどよ。でも、そうやって自分で面倒見てやって、それで気持ちよく走れんだと思えば、それを面倒だとは思わねぇな」
拓海「それに自分のメンテでしっかり走ってくれりゃ、いつもの気持ちよさに加えて、達成感も感じるってもんよ!」
飛鳥「ふむ、なるほど……」
飛鳥「得られる成果、訪れるべき結果」
飛鳥「それを満足のいくものにするためなら、それを成すための苦難の道のりさえ、喜びとなる、ということか……」
73 :
◆.UigIU7V92
[saga]:2016/06/21(火) 01:31:51.57 ID:RXynR1msO
仁奈「えーと、つまり……?」
飛鳥「つまり拓海さんは、バイクに乗るだけじゃなく、それをいじっているのも好きってことさ」
仁奈「なるほど!」
仁奈「拓海おねーさんは、乗るのも自分でいじるのも気持ちいいんでごぜーますね!」
拓海「はっはっは! いじってから乗れば、さらに気持ちいいぜ!!」
仁奈「おぉー! なんかすげーですよ!」
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