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男「川で全裸のエルフ拾った
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201 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 22:24:31.05 ID:0/G1P+FM0
国 王「どの口が言いやがる…… ちなみにその要件というのは、お前が連れてるお嬢さん二人にも関係あることか?」
男 「そうだ。っていうかニヤケ面の書状にも書いてあったんじゃないのか?」
国 王「……ああ、だがあれだけでは説明不足だ。もっと詳しく聞かせてもらおうじゃないか」
男 「最初からそのつもりだ」
国 王「さて、その前にこの馬鹿のせいですっかり挨拶が遅れてしまった。申し訳ない、お嬢さんたち」
エルフ「い、いえ!お気になさらず」
国 王「本当に申し訳ない…… ああ、どうぞおかけになってください」
エルフ「で、では……」
弓使い「失礼します」
国 王「さて、それじゃ早速だが聞かせてくれ。お前が何を考えているのか」
男 「人間とエルフの共存」
国 王「エルフとの共存か。なかなか面白いことを言う。それで、お嬢さんたちも同じ考えかい?」
エルフ「はい」
弓使い「ただ、エルフ側の理解を得るのは困難であるかと」
国 王「ふむ……」
202 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 22:26:19.18 ID:0/G1P+FM0
―――
――
―
老 犬「ヘッヘッヘッヘ・・・・」
国 王「……ふぅむ、なかなか難しい話だな」
男 「おっさんはエルフとの同盟が嫌なわけじゃないんだな?」
国 王「嫌なものかよ。森の賢者とまで謳われたエルフ族の知識や知恵の恩恵を受けられるというのは魅力的だ。共存共栄ができるというなら大いに大歓迎さ」
国 王「ただ、俺の意向で全てが決まるわけじゃない。少数だが、かつての貴族のような暮らしすることを望んでる者たちだっている」
国 王「そういう連中がエルフに危害を加えないとも限らない。その可能性を否定できない限り、エルフ側としては同盟を受け入れられないだろう」
国 王「それに森の保護というが、正直なところエルフの英知を授かったところですぐさま国が豊かになるわけじゃないだろう?」
国 王「やはり今の内はある程度は森林の開発も進めなくちゃならん。ただでさえ食糧難に陥る間際だというのにエルフの分も養うとなるとな」
国 王「いずれ食糧事情が安定すれば森林保護、それだけでなく植樹による森林面積の拡大にも手を出せるだろうが、そこまでエルフが辛抱してくれるかどうか」
国 王「他にも課題は山積みだ。さて、こういう状況であるが果たしてエルフは同盟を結んでくれるだろうか?どうかな、お嬢さんたち」
弓使い「……お聞きしてもよろしいでしょうか?」
国 王「何でしょう?」
弓使い「同盟下において、人間がエルフに危害を加えたり、一方的に利用するようなことはしない…… という明確な保証はできますか?」
203 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 22:28:26.17 ID:0/G1P+FM0
国 王「明確な保証か…… 難しいな。長期的な目で見れば不可能ではないが、同盟直後などは確実に様々な軋轢が生まれる」
国 王「産みの苦しみと言えば聞こえはいいが実体はどうか…… 何にせよ今は口先だけで語る他ない。森の賢者が言葉だけで俺を信用してくれるとは思えないが」
弓使い「そうですね……」
国 王「ただ」
エルフ「?」
国 王「ただ、エルフが苦境に立たされているというのなら助けたい、というのは私の心からの願いだ」
国 王「もっと言えば、自由と尊厳を奪われ虐げられている全ての者を助けたい。傲慢と言われるだろうが、本当にそう考えている」
国 王「だが、それを証明するのは言葉でしかない。言葉を尽くして語るしかない。稚拙な言葉を信じてもらうしかない」
弓使い「…………」
国 王「……どうかな?」
弓使い「……真っ直ぐな方だとお見受けしました。貴方が長であるならば私もエルフの長に安心してこの話を通せます」
エルフ「それに……」
老 犬「ヘッヘッヘ」
エルフ「この子もこの人なら大丈夫だって言ってます」
男 「そうか……」
204 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 22:30:10.55 ID:0/G1P+FM0
国 王「ありがとう、私を信じてくれて」
エルフ「あ、あとこの子がもっと美味しいもの食べたいって言ってました」
老 犬「ヘンッ」
国 王「この野郎」
男 「……とりあえず、こちら側としては同盟に全面同意という形になったわけだ」
国 王「それで、エルフ側の指導者と会談を開くことは可能なのかな」
弓使い「……貴方のことを疑っておきながら申し訳ないのですが、実はこの話は私たちしか知りません」
エルフ「まずはこの話を私たちの王に話します。そこからどうなるかは……」
国 王「エルフの王の考え次第だと?」
弓使い「ええ……」
男 「ここまでは予想通りだが、問題はやっぱりここから先だな……」
国 王「……この男を私の代理として君たちの代表者に会わせることはできるか?」
男 「へ?」
国 王「どうせ、というのも悪い気がするがこの同盟の話は君たちではなくコイツが言い出したことなんだろう?」
エルフ「はい、そうです」
205 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 22:32:02.81 ID:0/G1P+FM0
国 王「言い出しっぺの法則ってやつだ。自分の言動には責任を持つべきだよな」
男 「いや、俺は別にいいけどよ。エルフの里に人間が行っていいとは…… なぁ?」
弓使い「先ほど申し上げましたが、この話は私たちだけで決めた話です。それなのに里に人間を入れるというのは……」
エルフ「挑発的と言いますか、その……」
男 「やっぱり段階を踏んでからやるべきだぜ?おっさん」
国 王「かもしれん。だが、俺はそうした方がいいと思う。こういうときの勘ってのはよく当たるんだ」
エルフ「……わかりました。彼も一緒に連れて行って陛下とお話ししてみます。いいわよね?」
弓使い「……ええ、了解よ」
男 「本当にいいのか?」
エルフ「はい、きっと上手くいくはずです」
国 王「……多分君たちも何となく感じてるだろうがコイツには人、いや他者を動かす力がある。かくいう俺もそれで動かされた」
国 王「コイツの目に突き動かされて、できっこないことを馬鹿みたいにやって、気が付いたら一国の主にまでなっていた」
国 王「この国を変えたキッカケは本当は俺じゃなくてコイツなんだよ。多分この同盟の話もコイツが中心になって動くと思う」
弓使い「……それは私たちもなんとなくわかります。こんな馬鹿げた話、信じてみようと思わされたのもこの方のせいですから」
男 「この方のせいって…… いや、実際そうかもしれないが」
206 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 22:34:30.15 ID:0/G1P+FM0
―――――
―――
―
部 下「……本当にここまででよろしいのですか?」
男 「ああ、ここからは俺たちだけで行く。君が頼まれていたのは王都までの護衛と、あの書状を渡すことだろ?」
部 下「そうですが……」
男 「今度は国王陛下直々の依頼なんだ。悪いが……」
部 下「……了解です。それでは」
男 「ああ、また会おう」
弓使い「本当にありがとうございました」
エルフ「貴方たちもありがとう」
馬 「ブルルル・・・・」
部 下「道中お気をつけて…… ハッ」
男 「――――さて、次はいよいよ君たちの故郷か」
エルフ「はい、行きましょう」」
207 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 22:35:34.09 ID:0/G1P+FM0
―――
――
―
エルフ「――――ところで」
男 「ん?」
エルフ「その大きな袋には何が入ってるんですか?」
男 「これ?君たちの王様への貢物」
弓使い「貢物、ですか」
エルフ「中身は何なんです?」
男 「う〜ん、ま、2,3個くらいならいいか。ほら」
弓使い「これは…… リンゴですね!」
エルフ「これなら陛下もお気に召されますよ!」
男 「そうだといいんだが。あと、熟す前の若い奴をもらってきたんだけど道中もつかな?」
弓使い「此処からでしたら一月はかかりませんが…… ああ、それと陛下はモノにつられるような御方ではありませんのでご注意を」
男 「何も賄賂とかで懐柔しようとは思ってないぜ?」
エルフ「あむ…… あ、熟す前は少し酸っぱいんですね」
208 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 22:36:37.05 ID:0/G1P+FM0
―――――
―――
―
男 「そして夜です」
エルフ「夜ですね」
弓使い「この辺りは襲ってくるような獣は余り居ません」
男 「ああ、そこまで気を張らなくてもいいってわけだ」
弓使い「ですが、念のためいつも通り火の番を」
男 「あー……」
弓使い「はい?」
男 「いや、ニヤケ面ンとこの兵士がいなくなったからまた君と二人で交代かと思って」
エルフ「いえいえ、この辺りはさっきこの子が言った通りあまり動物がいません!だから、今回からは私もやりますよ」
男 「いや、でも」
エルフ「いーですからいーですから!」
弓使い「……この子は妙に頑固なところがありますので」
男 「うーん…… わかったよ、今夜はお言葉に甘えさせてもらおう」
209 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 22:37:56.59 ID:0/G1P+FM0
―――
――
―
男 「……おーい」
エルフ「すぅ…すぅ……」
弓使い「案の定寝てますね」
男 「ねー…… 確かにこりゃ大変だ」
弓使い「貴方がいなければ私は今頃寝不足で倒れていたかもしれませんね」
男 「ははっ、笑えねー……」
弓使い「……では、いつも通りに」
男 「ああ」
男 「ちなみにまだまだ先だとは思うけど君らの国までどれくらいあるんだ?」
弓使い「そうですね、この辺りなら星もきれいに見えますのでザワディが使えますね…… 今の時期であの星とこの星の位置がそこだから……」
弓使い「……この調子なら二十日くらいといったところでしょうか」
男 「マジで?そこまでリンゴが持つかなぁ……」
弓使い「さぁ、どうでしょうか?」
210 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 22:38:35.68 ID:0/G1P+FM0
男 「……ところで、君らも星を見て自分の位置とかわかるんだな」
弓使い「その言い方から察するに、人間もザワディ…… その技術を持ってるんですね?」
男 「ああ、森の中を走り回ってる内に自分がどこにいるかわからなくなったときとかに重宝する」
弓使い「なるほど…… 貴方が以前仰ったようにエルフと人間の文化は近いものがありますね」
男 「だろ?あ、そうそう、星を見ると言えば星座とかの話はエルフにもあるのか?」
弓使い「セイザ…… 思い当たる言葉はありませんね」
男 「ああ、そういうのはないんだな……」
弓使い「何ですか?その星座というのは?」
男 「そうだな…… 例えばあの星と、あの星とあれとあれと…… ああ、アレを線でつないで猪座とか」
弓使い「イノシシ……?猪というのはウルルアライのことですよね?……あれがウルルアライですか?」
男 「ウルルアライが猪かどうかはわからんが、昔の人は星と星をつなげてそこにいろんなものを見出してたんだとさ」
弓使い「……しかし、私にはあれがウルルアライ―――猪には見えません」
男 「俺にもそうは見えないな。まぁ、昔の人間は想像力豊かだったんだろ」
弓使い「そうですね……」
男 「線にどれだけ肉付けすれば猪になるんだよっていう」
211 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 22:40:20.89 ID:0/G1P+FM0
男 「あと、それにまつわる話もあったりする。猪座は元々は何でもかんでも喰ってしまって山ほどもあるそれは大きな猪だったそうだ」
弓使い「まさか…… それで?」
男 「当然村の人間たちが作っていた作物なんかもみんな食われてしまった。困り果てた村人は力持ちの神様に何とかできないか相談した」
弓使い「カミサマ?確か概念的なものですね。あまり深くは理解できていないのですが……」
男 「まぁ、神様ってのはすごい力を持った連中のことって思ってくれればいい。で、早速その猪に力持ちの神様は力比べを挑んだんだが……」
弓使い「その口ぶりからすると負けてしまったんですね?」
男 「先を読むなよ。まぁその通り、なんと神様のくせして負けてしまったんだ」
弓使い「すごい力を持っているのに?」
男 「ああ、だから力持ちの神様は今戦っても勝ち目がないから別の方法を思いついた」
弓使い「さて…… 罠に嵌めたとか?」
男 「罠、は違うな」
弓使い「……降参です。カミサマはどうやったんですか?」
男 「なんと猪の大好物を大空高く、そりゃあ遠くまで放り投げて、それを追いかけさせることで地上から追っ払うって方法だった」
弓使い「……無茶苦茶ですね」
男 「ところがその無茶苦茶な方法が大成功!結果猪は大好物を追って星になるくらい高く遠くまで行ってしまった…… っていうお話さ」
212 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 22:42:31.79 ID:0/G1P+FM0
男 「で、猪座の頭の少し先。わかるか?あの星が中心で周りの星をつなげるんだ」
弓使い「あれと、あれとあれとあれ……ですか?」
男 「そう、それがそのとき神様がぶん投げた猪の大好物が星座になったっていうトウモロコシ座だ」
弓使い「あれが?ああ、あれならトウモロコシと言われてもまだなんとなく形がわかります」
男 「そんな感じでけっこう色んな星座があるんだぜ。ほら、あっちのあの星とこの星」
弓使い「どれですか?」
男 「あれだよ、あれ」
弓使い「……何のセイザなんです?
男 「鳥人座」
弓使い「トリジン?」
男 「そう、頭は鳥だが首から下は人間っていう」
弓使い「なんですかそれ、気味の悪い」
男 「なー、マジでどういう頭してたら思いつくんだよ
弓使い「その鳥人にはどんなお話が?」
男 「なんでも鳥好きな子どもの前に現れて、焼いた鳥の肉を串に刺したものを食べるらしい」
213 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 22:43:38.01 ID:0/G1P+FM0
―――
――
―
弓使い「――――他にはもうないんですか?」
男 「あー、もう知ってるのは今言った奴だけだな。まだあるとは思うんだが勉強不足なもんでもうわからん」
弓使い「そうですか……」
男 「自分のいる場所を知るための基準の星を基本的に調べてたからなぁ…… 悪いね」
弓使い「いえ、しかし人間にはそんな面白い話が伝わったりしているんですね」
男 「ああ、荒唐無稽な作り話だけどな。そんなんで星の並びができてるわけないだろうに」
弓使い「そうですね…… でも、私たちにとって星は季節と時間と場所を知るための指標でしかありませんでした」
弓使い「それが、こんなに面白い見方があったなんて…… これも人間の文化の一つなんですね」
男 「ああ」
弓使い「他にももっといろいろあるんでしょうか?」
男 「ああ、まだまだあるよ」
弓使い「……もっと、もっと知りたいです。おかしいですね、人間のことは好きじゃなかったはずなのに」
男 「人とエルフが共存できるようになればきっと、もっといろんなことがわかるようになる」
214 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 22:45:53.77 ID:0/G1P+FM0
―――
――
―
エルフ「ご、ごめんなさい〜!わたしすっかり寝ちゃってました〜!!」
男 「ああ、いいよ。元々こうなる気がしてたし」
弓使い「私はもう慣れてるわ」
エルフ「あうあう……」
男 「まぁ、引き続き火の番は俺と彼女でやるから、それでいいな?」
エルフ「……はい」
弓使い「さて、それじゃそろそろ出発しましょうか」
男 「おう」
エルフ「…………」
弓使い「どうしたの?」
エルフ「ねぇ、貴女たちまた前より仲良くなってない?私が寝ちゃってる間に何かあったの?」
弓使い「セイザっていうのを教えてもらってたのよ」
エルフ「セイザ?なにそれ、私も聞きたい!」
215 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 22:46:48.08 ID:0/G1P+FM0
―――――
―――
―
男 (――――しかしエルフの里への旅路は平和なものだった)
男 (野盗は当然として、獣の気配すらほとんどなかったので何時ぞやのように気を張り詰め続ける必要もなかった)
男 (で、エルフの王への交渉に向けてエルフの言葉の手ほどきを受けたりしているわけで)
エルフ「エクァステスフィキチータオッヘルサナシリウムトゥアイタルフェンオッティクス、はい」
男 「エクァスてすひきちー…… 何だっけ?」
エルフ「エクァステスフィキチータオッヘルサナシリウムトゥアイタルフェンオッティクス」
男 「エクァステスひきチータオッヘるさなしリウムつぁいたつイタルへんオッティうす」
エルフ「発音が駄目です。はい、もう一度。エクァステスフィキチータオッヘルサナシリウムトゥアイタルフェンオッティクス」
男 「エかステスフィキチータオッへるサナシリウムトゥあいたるフェンオッティクス」
エルフ「……及第点はまだあげられませんね」」
弓使い「『お初にお目にかかります。○○と申します』『ご機嫌麗しく存じます』『本日は是非聞いて頂きたい議が在り推参致しました』」
弓使い「この三つはスラスラと言えた方がいいでしょう。その努力を買われれば陛下のご心象もよくなるでしょうし」
男 「へーい…… ああ、道のりは果てしなく……」
216 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 22:49:36.94 ID:0/G1P+FM0
男 (――――で、時にはお互いの文化とか習慣の話もしたりなんかして)
男 「47掛ける11は?」
エルフ「517」
男 「えっと…… 合ってる。じゃあ、35掛ける13!」
エルフ「455」
男 「ちょっと待ってくれよ……」
男 「…………合ってる。これならどうだ!99掛ける97!!」
エルフ「9603」
男 「もう合ってるか確かめる気力もねぇわ…… なんだ、二桁の掛け算は全部暗記してるのか?」
エルフ「いえ、19掛ける19までしか暗記はしてませんよ?」
男 「19まで覚えてて『までしか』はねーよ」
弓使い「それ以上の二桁の掛け算は100より大きいか小さいかを比べて……」
男 「時間があるときにゆっくり聞くよ。今教えてもらっても覚えられそうにない」
男 「あー、しかしそんな速い計算方法があるならなんであのエルフは教えてくれなかったのかね?」
弓使い「きっと、貴方が人間である以上人間式の計算の方に触れることが多いと判断したからではないでしょうか?」
217 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 22:51:18.60 ID:0/G1P+FM0
―――――
―――
―
男 「――――で、何時の間にやらエルフの里に大分近づいていた、と」
弓使い「はい、その通りです」
男 「しっかし、鬱蒼とした森だよなぁ…… 昼間でもこんだけ暗いんじゃ迷っちまいそうで通る気も起きない」
弓使い「そうやって人間の足を遠ざけているんですよ」
弓使い「……さて、ここから先はまず私たちだけで行かせていただきます」
男 「ああ、よろしく頼む」
エルフ「ええ、陛下に伝えてきます」
男 「もし駄目だったら?」
エルフ「……ここでお別れです」
男 「あいよ」
弓使い「では、また後で……」
男 「そろそろリンゴがやばい。完全に駄目になる前に返事をもらえるとありがたいな」
エルフ「そうですね、それでは……」
218 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 22:53:54.02 ID:0/G1P+FM0
―――――
―――
―
男 (大分明るくなったな)
男 「……一日半、か」
エルフ「――――あ、いたいた!」
? ?「クツツ……」
男 「増えてるな」
弓使い「はい、陛下の御側役の方です」
使 者「ナウシィ」
男 「ナウシィ…… よろしく、だったっけか」
エルフ「陛下は話を聞いてくれるそうです」
男 「最初の関門は突破か。ま、これから先はもっと大変なんだがな」
弓使い「そうですね」
エルフ「それで申し訳ないんですけど…… 目隠しさせてもらいますね」
男 「場所を特定させるわけにはいかないってことか」
219 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 22:54:40.46 ID:0/G1P+FM0
弓使い「ええ、まだあなたは信頼されているわけではありませんので…… すみません」
男 「当然の判断だ。謝るこたないって」
使者「……随分と仲がいいのね」
弓使い「まぁ、それなりに長い時間一緒にいましたので」
男 「貴女もこちらの言葉を喋れたんですね?」
使 者「だから使者として私が来た」
男 「なるほど……」
エルフ「……よし、できました!」
使 者「確かめさせてもらうわ」
男 「ちょっとまってイタイイタイ、締め過ぎ締め過ぎ」
使 者「大丈夫そうね。次は手を後ろに回して」
男 「はい」
使 者「変な動きをしないように腕も縛らせてもらう」
男 「どうぞどうぞ」
エルフ「里につくまでの辛抱ですので、頑張ってください」
220 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 22:56:03.37 ID:0/G1P+FM0
―――
――
―
男 「……随分と複雑な道なんだな」
エルフ「ごめんなさい、わざと変な道を通ってます」
使 者「わざわざ言わなくてもいい」
エルフ「ごめんなさい」
男 「いや、それは当然の措置としてそれとは別に木から感じる気配が複雑に入り組んでいるというか……」
弓使い「先先代たちが人間が無暗に立ち入れないように迷いやすい造りにしましたのでこういうことになってます」
男 「植樹でもしたのか?」
エルフ「そうですね、他にも木々にこういう風な生え方をしてもらえるようにお願いしたり、森の力がうまく作用するようにしたりしてです」
男 「へぇ〜……」
使 者「だから、そういう余計なことは喋るなと……」
男 「大変ですね」
使 者「何を他人事のように言っている。まず貴様が余計な口を滑らせるな」
男 「申し訳ない、招かれざる客の分際でね」
221 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 22:57:43.93 ID:0/G1P+FM0
―――
――
―
エルフ「――――着きましたよ」
男 「じゃ、目隠しと拘束は?」
使 者「外しても構わない。ここまで来たからには逃げ出すことなど不可能だからな」
男 「では早速……」
弓使い「手伝います」
エルフ「あ、私も」
男 「いや、二人もいらんて…… ふぅ」
御側役「…………」
近 衛「…………」
男 (男なんだろうけど何とまぁ、美形の多いこと)
侍 従「ようこそ、エルフの里へ」
男 (人間語の浸透率高いな……)
侍 従「陛下はこの先におられます。さぁ、こちらへ」
222 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 22:58:33.16 ID:0/G1P+FM0
男 (まだ陛下の御前じゃなかったのか?ま、目隠ししたまま会うってのも無礼な話か……)
男 「ってうわ、キレーな人」
侍 従「私は人ではありませんよ?エルフです」
男 「あっ……」
侍 従「……ふふっ、貴方と初めて会ったときもそう言ってくれましたね?」
男 「へ?あ、ああ、もしかして……」
侍 従「お久しぶりですね。そうです、あの時のエルフです」
男 「お久しぶりです!いや、よかった!革命が成功した時どれだけ探してみても貴女がいなくて、もしかしたら…… なんて」
侍 従「ほら、泣かないで」
男 「な、泣いてません!」
侍 従「もう、相変わらずですね…… ごめんなさい、革命が終わった後すぐににあの方に連れられて里に戻っていたんです」
男 「そうでしたか、道理でいらっしゃらなかったわけですね」
侍 従「はい、それからはここで陛下に侍従としてお仕えさせてもらっています」
エルフ「それだけじゃなくて、この方は私たちに人間の言葉を教えてくれた先生なんですよ」
侍 従「昔貴方にいろいろ教えてあげた経験が活きました」
223 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 22:59:20.88 ID:0/G1P+FM0
男 「そうですか…… そうだ、昔と言えばあの時アイツに教えた北の国にある里って」
侍 従「大丈夫ですよ。あれは嘘でしたから」
男 「嘘?」
侍 従「そこに移り住むという話も上がったんですけど寒さが厳しいということで誰も住んではいませんでしたので。現にエルフは連れてこられなかったでしょう?」
男 「そうだったんですか……」
侍 従「それはそうと貴方にはお礼を言わなければいけないわね」
男 「はい?」
侍 従「この子たちをここまで無事に送り届けてくれてありがとう。深く感謝いたします」
男 「あ、いえ、たまたま全部が上手くいっただけですから」
侍 従「謙遜しないで。本当にありがとう」
男 「あ、はい、どういたしまして」
侍 従「本当は私が行くべきだったのだけど、片目で長旅は危険だって周りに止められてしまって…… 心配で心配でたまらなかったの」
男 「その御心配を杞憂で終わらせることが出来てよかったです」
弓使い「その点は私たちも大変感謝しています」
エルフ「ありがとうございました」
224 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 23:00:01.97 ID:0/G1P+FM0
男 「ああ、うん。別にいいって」
侍 従「それと私の目の心配をしてくれるのは嬉しいですけど、片目が不自由なのは貴方もでしょう?右目は大丈夫なの?」
男 「いえ、今もほとんど見えていません。ですが、あの子が積極的に右についてくれたので」
弓使い「なっ……」
侍 従「そうだったの。まぁ、あの子はとても優しい子だから……」
弓使い「……あう」
使 者「しかし、その話ぶり…… 貴女が話してくださった人間の男の子がこの男ということですか?」
エルフ「じゃあ、いつも先生が言っていた小さな子って……」
侍 従「シュィ、アウィグン」
弓使い「へぇ、そうでしたか……」
御側役「アウラ、ショウィグン……」
近 衛「『ポポルポ』…… ククッ」
男 「……何故だかエルフの方々の俺を見る目が何か生暖かいものに変わったんですけど…… 俺の何の話をしたんです?」
侍 従「……ふふっ、陛下がお待ちです。参りましょう」
男 「すいません、その前にここのエルフさんたちに何を言ったのか教えていただけないでしょうか?」
225 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 23:00:47.78 ID:0/G1P+FM0
侍 従「さぁ、こちらへ」
男 「いや、何を話したんですか!?教えてくださいよ!」
使 者「陛下のお近くで騒ぐな!」
男 「うぐっ…… そう言われると」
弓使い「ほら、行きましょう…… フフ」
エルフ「ふふふっ」
男 「何だよその意味深な笑みは……」
エルフ「何だと思います?」
男 「……いや、やっぱり教えてくれなくていいや」
男 (調子狂うなぁ…… おっさんとかニヤケ面とかならこうはならないんだが)
226 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 23:01:25.35 ID:0/G1P+FM0
使 者「――――オルウィスリャム」
女 王「シャルディグティ」
使 者「セッ」
女 王「……ようこそ、私がここにいるエルフたちの長です」
男 「お目通りを許していただき誠に有難く存じます。っと、私たちの言葉でよろしいのでしょうか?」
女 王「構いません。侍従の彼女のおかげで人間の言葉は一通り喋れますので」
男 「では、このまま話をさせていただきます」
女 王「はい。まずは彼女らの旅に護衛として同伴していただき、またここまで無事送り届けていただいたこと、深く感謝いたします」
男 「もったいなきお言葉、頼まれた仕事を只こなしただけのことです」
女 王「ご謙遜を」
男 「いえ…… それとこちらつまらないものですが、どうぞお納めください」
女 王「それは……?」
使 者「中を検めさせてもらうわ」
男 「どうぞ」
使 者「これは……!?」
227 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 23:02:44.31 ID:0/G1P+FM0
使 者「形はリンゴだが…… 赤い?」
弓使い「彼らの国のリンゴです」
使 者「リンゴ?」
女 王「それがリンゴ……?」
使 者「これが? ……はむ」
女 王「ど、どうですか?」
使 者「……甘い、甘いです陛下!それに瑞々しくて、甘くておいしいです!」
男 「駄目になる前にお渡しできてよかったです」
女 王「リンゴが甘いと……? 私にもそれを一つくれるかしら」
使 者「は、はい、ただいま!」
侍 従「私もいただけるかしら?」
男 「はい、どうぞ」
女 王「……確かに、甘くておいしいですね」
侍 従「人間が食べているのを見たことはあったけど、こんなに甘かったのね……」
男 「気に入っていただけたようで何よりです。もう少し早くお渡しできたらこれよりもっと甘く瑞々しかったのですが」
228 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 23:04:45.57 ID:0/G1P+FM0
女 王「なんと、これ以上の?」
男 「はい、いずれの機会にご賞味いただければ……」
女 王「それは楽しみですね……」
男 「有難きお言葉。……そろそろ本題に入らせていただいてもよろしいでしょうか?」
女 王「ええ、彼女たちから聞いていますがエルフと人間の共存共栄…… なんてことをお考えだとか」
男 「はい、その通りです」
女 王「それはどうして?」
男 「貴女方エルフにとっても大事な森を守っていくには、人とエルフとが手を取り合う必要があると考えたからです」
女 王「……確かに森は私たちにとってとても大切な存在。だからこそ急に力の弱まった西の森の調査を命じたのです」
女 王「その結果、森を伐採し弱らせていたのは人間だったのですね?」
エルフ「はい」
弓使い「間違いありません」
男 「…………」
女 王「そう、人間です。かつてと同じよう、にまた人間たちが私たちの住処を奪うのですね」
男 「かつてのように?」
229 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 23:07:14.28 ID:0/G1P+FM0
女 王「ええ、かつて森はこの大地のほぼ全てを覆い尽くし、私たちもまた世界に遍く住み暮らしていました」
女 王「しかし、私たちの存在が気に入らなかったのか貴方方の祖先は私たちの祖先を攻めてきました」
女 王「そして住処を奪われて更に森の奥深くに隠れ住んだエルフたちの末裔が今の私たちなのです」
女 王「かつても、そして現在もまた人間によって住処を奪われようとしています。いえ、住処どころか我々エルフを奴隷として慰み者にしているという始末……」
女 王「その怒りや恨みは年を重ね薄らいではいるものの、奴隷にされている仲間がまだ数多くいるなど、やはり人間そのものに対する忌避の念はぬぐえません」
女 王「それなのにどうして人間と手を取り合うことなどできましょうか?刃を向け合うことこそあれ、共存共栄など在り得ません」
男 「……ですが」
女 王「なんでしょう?」
男 「恐れながら申し上げます。仮にエルフが弓を取ったとして、人間にかなうはずがありません」
男 「一国と争うだけなら勝てる可能性は零ではないでしょう。しかし、一度エルフがその姿を人前に表せば全ての人間が敵となりましょう」
男 「陛下自身が仰られたように人間はエルフをその美しさ故に奴隷として手元に置いておきたがります」
男 「エルフが集団でいたとなれば何が何でも捕まえようとします。それはどの国でも同じことでしょう」
女 王「どの国も同じと言うのなら、それは貴方の国でも同じことではないのですか?」
男 「いえ、我が国の王は断じてそのようなことはいたしません。国王もまた奴隷であった故に」
女 王「上に立つ者というのは弁が立つもの、口先だけは美しく飾り立てているのやもしれません」
230 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 23:08:50.03 ID:0/G1P+FM0
男 「……私も同じく奴隷の出であり、長く彼の傍におりました。故に私は彼の人となりを知っています。ですから、そのようなことは在り得ません」
女 王「では改めて、何故私たちとの同盟を結ぼうと考えたのかお聞かせ願えますか?」
女 王「私たちの知識や知恵を得たいのならば、同盟などより私たちを蹂躙して根こそぎ奪い取る方を選ぶ」
女 王「……人間の本質とはそういうものでしょう?」
男 「そうかもしれません。しかし、我が国の王も、私もそのようなことは望んでいません」
女 王「……?」
男 「かつて私が革命に身を投じたのは、エルフへの仕打ちをこの目で見たからです」
男 「私は奴隷であった頃、貴族や権力者と呼ばれる連中に数多の辱めを受けていました。それこそこのような場で口にすべきでないような様々なことを」
男 「そしてそれは、同じく奴隷であったエルフも同様でした」
女 王「……そのエルフが貴女なのですね?」
侍 従「……はい」
男 「私は悔しくてたまりませんでした。身体も心も醜い奴らがあんなにも優しくてきれいなエルフを欲望の赴くままに弄ぶのが」
男 「それだけではありません。エルフでなくとも見目麗しい女であれば情婦とし、男であれば過酷な労働を強いるか闘技場で殺し合わせる始末」
男 「こんなことがあってはならない、こんなことが許されてはならない。奴隷であった頃、革命の最中にもその想いが常に私の根底にあり続けました」
男 「そして、今もその想いは変わっていません。エルフが、人間が、尊厳を踏み躙られ凌辱されることなどこれ以上許すわけにはいきません」
231 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 23:09:33.85 ID:0/G1P+FM0
男 「――――高慢と思われるでしょうが、私は人もエルフも守りたいのです」
女 王「……貴方は今リョウシなるものを生業にしていると聞いています」
男 「はい」
女 王「何でもリョウシとは生き物を捕らえてそれを食べたり通貨に換えたりして生活をする者だとか」
男 「はい、その通りでございます」
女 王「その辺りのことは文化の違いということで今回は不問にするとして、私が聞きたいのは何故貴方がそのような生き方をされていたのかです」
女 王「もし本当に虐げられた者たちを救いたいというお考えであったならば、そんな生き方はせず自身の国だけでなく他国でもエルフや奴隷を解放しようとするはずではないですか?」
男 「お言葉通りです。本来ならば私は猟師などしているべきではありませんでした」
男 「ですが、そこには私一人の責任では済まない様々な事情があったのです。想いだけではどうにもできない問題が」
男 「そもそも奴隷制度の撤廃を掲げる我が国は他国から見て面白いものではありません」
男 「例えば、仮に私が他国に潜入してエルフや奴隷を解放したとします。当然その国の兵士たちが追いかけてくるでしょう。そして私たちの逃げる先は我が国しかありません」
男 「逃げ延びることができたとしても、それは他国の財産を不当に奪ったと同義であり、連中に我が国を責める恰好の口実を与えることになるのです」
男 「そうなれば奴隷を奪われた国と我が国は間違いなく戦争となります。そしてそれは、どの他国においても同じことでしょう」
男 「虐げられた者たちを救うことが戦争につながるとなれば、私一人のせいで我が国は無辜の民の万の血と共に沈んでしまうのです」
女 王「……だから、助けたくても助けられない、と?」
232 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 23:10:27.41 ID:0/G1P+FM0
男 「はい……」
女 王「……個人的な興味ですが、どうして今仰られたことがリョウシになることへつながったのです?」
男 「今私が述べたことはかつて現国王やその側近に説かれたことです」
男 「しかし、当時の私はまだ幼く国際問題だのなんだのといった難しい話は理解できず、私を説き伏せようとする彼らに不満をぶつけるだけでした」
男 「そんな私に呆れかえった側近の一人が、間諜としての訓練を受けさせてみようと提案し、そういうことならと私は溜飲を下げたのです」
男 「それから数年間に渡り訓練を受けましたが、小さいころから持っていた気質のせいか隠密行動がなかなか上手くこなせず」
男 「一度一人だけの力で生きてみろ、そして自然が持つ大きな力を感じてみろ、との言葉と猟師道具を贈られ、そして今に至ったのです」
女 王「……そういうものなのですか?」
男 「そういうものなのでしょう。確かに私は一人の猟師として生きる中で人間一人の限界と自然の偉大さを感じました」
女 王「そうですか…… つまり、貴方自身虐げられた者たちを助けたいと願いつつもリョウシをやらざるを得なかった。そういうことですか?」
男 「はい、端的に言えばそうなります」
女 王「ならば、先ほど貴方が仰った言葉に嘘偽りはない。そう言うのですね?」
男 「はい、私は心からエルフと我が国との同盟を強く願うのです。同盟であれば他国が攻めてくる口実にも成り得ないはずです。貴女たちを護ることができるはずです!」
男 「我々がエルフを護るなどと身勝手な物言いだとはわかっています!ですが、このままでは貴女方はいずれあの貴族や権力者のような連中の所有物にされてしまう!」
男 「そうなる前にどうか、我々の手を取ってください!今ならまだ間に合うはずです!!どうか、どうか……」
233 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 23:12:38.35 ID:0/G1P+FM0
女 王「なるほど、ですが私たちエルフを物としか考えていないような者たちならば、物との同盟などとのたまい一笑に付すのではないですか?」
男 「それは……っ!いえ、同盟など認めないと言ったところで戦争をする大義名分とするには動機が弱すぎます」
女 王「そもそも私たちが貴方方の国と同盟を結ぶと言うことはエルフがその国にいると声高に主張するようなもの」
女 王「エルフが手に入るとなれば彼らは形振り構わず戦争を仕掛けてくるのでは?そうだとしたら、私たちはこのまま隠れ住んでいる方が安全ではないでしょうか?」
男 「しかしそれでは!」
弓使い「陛下、僭越ながら私の愚見を述べさせていただいてもよろしいでしょうか?」
女 王「かまいません。この方を連れてきたのは貴女たちですもの。彼を連れてくるだけの考えと理由があったのでしょう?」
弓使い「はい。西の森に向かうに当たり、私はこの男とそれなりの時を共に過ごしました。その上でこの男は信頼できる者だと確信しています」
弓使い「そして、その男が信頼している人間の王もまた信頼してもいい傑物と認識しています。彼らの虐げられた者への思いは本物です」
弓使い「信頼できる人間が一つの国の王として君臨している今を逃しては、エルフの未来は暗く閉ざされたものになると考えます」
エルフ「わ、私もそう思います!」
侍 従「陛下、私もこの機会を逃がすべきではないと思います」
侍 従「あの方が我々に危害を加えることはないはずです。あの方は信頼できるお方ですから」
侍 従「あの方は自ら私たちが里に帰るまでの道中の護衛をしてくださいました。そして、エルフの里の所在は知らずとも良いと引き返していきました」
衛 兵「彼女の言う通りです。あの男は貴族と呼ばれた者らの残党が消えた辺りで私に後のことを任せ去っていきました」
234 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 23:14:26.41 ID:0/G1P+FM0
男 「もしかしてあの衛兵って」
エルフ「はい、牧場の主の下にいたエルフが彼です」
侍 従「もしあの方が我らエルフ族を所有物にしたいのであったなら、今頃この里は人間のものになっているはずではありませんか?」
女 王「…………」
衛 兵「……人間はこと闘いにおいては非常に優秀です。この地を守るために我らが武器を取ったとてすぐに攻め落とされるでしょう」
侍 従「そもそも数が違い過ぎます。戦ったとしてもエルフの未来は暗く辛いものしか残りません」
弓使い「最早それは戦いとは言えないでしょう。一方的な虐殺、蹂躙…… 生き延びたとしてもそこに尊厳も自由もありません」
エルフ「それに、このままでは森はどんどん切り拓かれていってしまいます。殆どの人間は森は共に生きていく存在だとは思っていないんです」
男 「……人は森から奪って生きることしか知らないのです。森と共に生きるということを知らないのです」
男 「ですから、人も森と共に生きる術を知れば森の伐採や開拓・開発を止めるかもしれません。止めるはずです。いえ、止めてみせます!」
男 「ですから…… ですからどうか、この同盟を受け入れていただきたいんです!エルフと森を護るためにどうか、どうかお願いします……!!」
女 王「…………」
女 王「――――かつて我らは人間に住処を奪われ人間から逃れるためにこの地に移り住みました。しかし、今尚数多くの同胞たちが人間に虐げられ続けている」
女 王「そして、自分たちのことしか考えない資源の使い方。無秩序に森を切り拓き、あげく住処を奪われた動物たちを目の仇にして殺している……」
男 「…………」
235 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 23:15:55.10 ID:0/G1P+FM0
女 王「――――ですが」
弓使い「?」
女 王「ですが、それが人間の全てというわけではないのでしょう」
女 王「彼の言葉、かつて人間に虐げられていた貴女たちの、そして人間と共に旅した貴女たちの言葉…… そのどれもが真の心から出た言葉でした」
女 王「木々や動物の心を読み取れる私たちですが、同族・人間に至ってはその心を読むことはできません」
女 王「しかし、貴女方の言葉に騙されているような響きも、彼の言葉に私たちへの害意の響きも感じ取れないのです」
女 王「その言葉が真実であるか否か、それはこれから分かることなのでしょうね」
男 「……ということは」
女 王「一度、貴方の国の王と話をさせていただけますか?」
男 「はい!承りました!」
侍 従「しかし陛下、どこで会談を開かれるおつもりですか?」
衛 兵「この男をここまで通しただけでも異例中の異例。一国の王ともなれば護衛など浮くめて相当数になります」
衛 兵「それだけの人間を里に入れることを民たちが認めるかどうかは甚だ疑問であります」
男 「王に話を通せば、王一人での訪問も可能ですが」
侍 従「さっき貴方自身仰ったでしょう?様々な事情があるのです。国の王ともなれば一人で好きに動くことはできませんよ」
236 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 23:16:41.13 ID:0/G1P+FM0
衛 兵「我らとて陛下御一人で会談に参加させることなどできない。貴様らを信じないということではないが損得や利害が絡む場となればそうはいかんのだ」
弓使い「国全体に関わってくることを個人の意思だけでは行えません。国を治める者としては個の意思ではなく全の意思を示さなければならないのですから」
エルフ「それに王が玉座を離れるということは何かを成そうとしている証左です。よくないことを考えてる者たちにとっては看過できないことです」
侍 従「つまり、あの方がこちらに来るのであればそれを追ってどんな人間がこの里に近づいてくるのかわからないのです」
男 「では、陛下が我が国に?」
衛 兵「それもまた難しい。彼女らを里の外に出しておいてなんなのだが、やはりエルフが里を離れるの望ましくない。王となれば尚更だ」
弓使い「どこに人間がいて、何時正体がばれるとも限りません。私たちの場合はそうなった時のために口の中に自決用の毒を仕込んでいましたが」
男 「マジ?」
エルフ「ええ」
侍 従「ですが、陛下の場合不測の事態が起きたとしても自決して頂くわけにはまいりません。故に陛下が里を出るというのはそもそも……」
エルフ「陛下が人間に変装するというのはどうでしょう?」
衛 兵「何を馬鹿な。陛下をそんな危険に晒すわけにはいかない。人間の王がするべきだ」
弓使い「しかし、あの国の規模を見るにそれは難しいと思われます。お忍びで出掛けるのにも苦労される有様だそうですので」
女 王「……ねぇ?私、当事者なんだけど、話に置いてけぼりにされてる気がするんですけどー?」
男 「奇遇ですね。ホントなら私が人間側の事情を話すはずなんですがどうにも蚊帳の外ですね」
237 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 23:17:46.72 ID:0/G1P+FM0
―――――
―――
―
男 「――――最終的に、おっさんが国境警備の一団に慰問に訪れて、陛下と側近の方たちがその中に変装して紛れると」
侍 従「はい、そうです。ですが、絶対条件としてその場に居合わせるのは貴方方が信頼を置ける者だけです」
男 「そこはぬかりなくさせていただきます」
エルフ「それにしてもようやくこれで一歩前進…… ですね」
男 「ああ…… 君らが口添えしてくれたのが大きかった。ありがとう」
弓使い「いえ、私自身そうすべきだと思ったことを言ったまでです。今回の旅で改めて森は日々失われていると理解しましたので」
弓使い「あの場にいた人間だけでもかなりの数でした。森を糧にする人間全てとなると、その数は私たちの何倍にもなるでしょう」
男 「ああ」
弓使い「つまり、最早エルフだけでは森を守ることはできません。森どころかエルフ自身さえも」
弓使い「でしたら、この先エルフと森が生き残るためには…… 人間と敵対するのではなく人間と共に生きることを選択すべきではないかと」
弓使い「こんなこと、先生とこの子の話を盗み聞きした時は何を馬鹿げたことを、そう考えていました。ですが……」
弓使い「貴方と共に旅して、そして貴方の国の王とお出会いして、この考えが荒唐無稽な話ではなかったと思い至りました」
弓使い「そして、エルフと人が理想的な共存共栄をを成せるのは今この時この国を除いてはもう二度とないとも思えました」
238 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 23:22:20.26 ID:0/G1P+FM0
弓使い「ですから、僭越ながらあの場で発言させていただきました。それにしてもまさか私がその馬鹿げた考えを自ら率先して実現させようとしたなんて」
弓使い「あの時の私が聞いたらどんな顔をするでしょうか?」
エルフ「フルトトみたいにぽかーんとした顔するんじゃない?」
弓使い「フルトト?」
侍 従「まぁ、陛下はこの話を最初に貴女たちに聞いた時からこの話を受けるつもりでいらしたようですけどね?」
男 「え?」
侍 従「……陛下は常々私たちエルフの行く末を憂いておられました」
侍 従「このままではやがて森は枯れ果て、エルフは緩やかな滅びを迎えるのではないか……と」
侍 従「現状を維持し続けるだけではどうしようもない、何か大きな変化が必要だと……」
男 「それこそ人間との共生とか?」
侍 従「ええ、その通りです。自ら人間の言葉を学ばれていたのも恐らくはエルフが人と共に歩む未来を見据えていたからでしょう」
エルフ「じゃあ、どうして陛下は否定的な態度をとっていらっしゃったんですか?最初から受けるつもりだったならあんなに詰問しなくても」
侍 従「確かめたかったんじゃないでしょうか?この同盟を申し出た人間は、真にエルフと人とが共に生きていく世をつくるつもりなのかって」
侍 従「もし人間の利益だけを考えているような人間でだったら、それはきっとエルフにとって良くない結果になるはずですから」
弓使い「……彼をお連れする前に私たちからも彼とあの王は信頼できるとお伝えしたはずですが」
239 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 23:23:30.69 ID:0/G1P+FM0
侍 従「やっぱりそこは自分の目で確かめたかったのよ、きっと」
男 「……じゃあ俺は陛下のお眼鏡にかなったというわけですか?」
侍 従「ええ、合格だと思うわ。それにあの方については前々から陛下にお話ししていたし、きっとこの会談は上手くいくでしょうね」
男 「会談は上手くいく……?」
弓使い「会談だけなら王も陛下も互いに信頼を結べるでしょう。しかしいざ同盟となるとそう簡単にいくわけではありません」
エルフ「まず、エルフたちが同盟を認めるかどうか…… 陛下の一存だけでは決め切れないと思います」
侍 従「幸い私は片目になるだけで済みましたけど、人間の下から里に戻ってきた子たちの中にはそれはもう酷い目にあっていた子もいます」
侍 従「その子自身やその家族、友人と言ったエルフたちがそんな目に合わせた人間との同盟を受け入れてくれるかは……」
男 「……厳しいでしょうね」
弓使い「同じ痛みを知っている者が貴方の国の王なので、多少理解を得やすくなるとは考えられますけど」
男 「だといいけどな。おっさん大丈夫かな?信用してもらえっかな……?」
エルフ「そこはほら、貴方がいろいろフォローするんですよ!」
男 「でもおっさんあれだしなぁ……」
弓使い「あら、先ほどまでの威勢はどうしたんですか?」
男 「あー、うん…… まぁ、精一杯やるよ」
240 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 23:24:59.64 ID:0/G1P+FM0
侍 従「それに同盟を受け入れるかどうかはエルフ側だけの問題ではありませんよ?」
弓使い「確かに。貴方の国の中にも同盟には反対する勢力がいるかもしれません」
エルフ「王様が仰っていたかつての権力者のような暮らしを望んでいる人間、同盟よりも支配した方がいいと考える人間」
侍 従「仮にそういった方たちを押さえつけられたところで次は他国との問題が出てきます」
男 「エルフとの同盟の結果、我が国は言い方は悪いですがエルフを数多く所有している国家となる。それが問題なんですね?」
侍 従「ええ、他国の人間が私と貴方を虐げていた人間と同じような人間ばかりだとすれば、エルフを寄越せと言ってくるに違いありません」
弓使い「断れば武力行使に出てくるでしょう。お話から察するに貴方の国は他国と戦争するだけの余裕はないのでしょう?」
エルフ「それに、そういう国は一つや二つじゃないんでしょう?」
男 「悲しいけどそういう人間ばかりだからなぁ…… 敵対は免れないだろ」
侍 従「同盟とは言いつつもしばらくは私たちの存在を秘匿してもらわなくてはなりませんね」
男 「でも、エルフの持つ農耕技術や畜産技術は欲しいし、他国の目の届かないところで隠れっぱなしでいてもらうわけにはいかない」
弓使い「技術譲与するエルフの数を絞りつつ、その正体がバレないように配慮していただく必要もあるでしょう」
弓使い「どこから情報が漏れるかわかりません。厳しい監視体制が必要です」
侍 従「でも、厳しい監視下ではエルフにも不満や鬱憤が溜まるでしょう。それにも配慮しないと……」
男 「問題はまだまだ山積みだよなぁ……」
241 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 23:51:45.95 ID:0/G1P+FM0
―――――
―――
―
隊 長「……よぉ!何日ぶりだ?」
男 「それぐらい覚えとけよ」
隊 長「ははは、まぁそんなことはどうでもいいか。ここで待っておけばいいんだろう?」
男 「ああ、アンタらがもうすぐ到着するってことは既に伝えてある。直にエルフの女王陛下御一行が来るだろう」
隊 長「ちなみにどうやってエルフの里とやり取りしてるんだ?」
男 「プワカーク。伝書鳩みたいなもんで、まぁ言わば伝書梟ってところか」
隊 長「ほ〜ん…… ま、いよいよお前の言ってた人とエルフの共存共栄とやらが実現するんだな。ははは、全く実感がしねぇな」
男 「まだ決まったわけじゃない。気が早過ぎる。これから陛下とおっさんとの会談を経て今後がどうなるか決まるんだからな」
隊 長「で、俺たちは慰問団としてエルフ御一行様に出会うわけだな?」
男 「ああ、知ってると思うが会談のことは公にしていない。下衆な連中に悟られないように、万一知られたらソイツを……」
ニヤケ面「任せろ、闘技場の見世物だった頃から俺の取り得は剣の腕だけだからな」
男 「頼りにしてるよ」
ニヤケ面「ただ、西との国境は隣の政情のせいか亡命者が増えてきててな。正直ここに集まった連中みんながみんな腕っこきってわけじゃない。その辺は勘弁してくれや」
242 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 23:52:25.16 ID:0/G1P+FM0
男 『――――まぁ、結局陛下との会談を聞きつけてやって来たと思われる不審者は出なかった』
男 『革命の時にその戦いぶりから鬼神とまで呼ばれたあのニヤケ面のことを知らない者はこの国にはいない』
男 『そんな奴と戦わねばならないリスクを冒すような無謀な奴はいないということか』
男 『で、ここから先が正念場だ。人とエルフの行く末を決める一大事が…… 挨拶もそこそこにおっさんと陛下との会談が始まった』
男 『お互い目指しているものは同じなのだが、陛下は事が事だけに相手であるおっさんが本当に信頼できるのか探っているようだった』
男 『何せ人間は昔からエルフを迫害し続けてきた。慎重に慎重を重ねて対応したいんだろう』
男 『おっさんもその辺の事情が分かっているんだろう。些末な質問にも嫌な顔せずに対応している』
男 『やがて陛下の顔から険が取れてきた。国をひっくり返すなんて大それたことに大勢の人間を巻き込んだ人たらしの本領発揮だ』
男 『そこで俺たちは一気に思いの丈をぶつけた。陛下は黙ってそれを聞いていた…… そして最後に』
女 王「……最後に一つだけ聞かせてください」
国 王「どうぞ」
女 王「貴方方が仰った言葉…… 本当に信じてもよろしいのですか?」
国 王「……信じていただくほかありません。どうか信じてください」
女 王「……分かりました、貴女方を信じます」
男 『こうして、我が国とエルフの里は、人とエルフが共に生きていくための第一歩を踏み出した』
男 『問題は山積みだが、それでもその一歩はとても大きな第一歩だった』
243 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 23:54:03.77 ID:0/G1P+FM0
男 『――――が、それからは大変だった。俺はエルフ族から最も信頼できる人間の一人として選ばれてしまったのだ』
男 『まぁ、同盟の言いだしっぺは俺だから「どうめいきまったはいそうですかさようなら」というわけにはいかないとは思ってたが』
男 「……こんな重要な仕事をやらされる羽目になるなんてな」
弓使い「文句言わない。ズィエルスィウリューシャ、フェンアナティ。はい」
男 「あー、ズぃエルスィうるーしャ、フェんあなてぃ」
エルフ「要所要所で発音が違っちゃいますねー。もう一度」
男 「ズィエルスィウルーしャ、フェんあなティ」
エルフ「惜しい!」
男 「あー、難しいー」
男 『二つの種族を繋ぐ者、調停官となった俺はこうしてエルフの言葉を覚えることに尽力している』
男 『あの子たちも調停官になって俺の傍らでサポートしてくれるがいつまでも通訳が必要じゃいかんだろうしな』
男 「あー、あーあー、ズィエルスィウリューシャ、フェンアナティ」
エルフ「その発音です!忘れないようにもう一回!!」
男 「ズィエルスィウリューシャ、フェンアナてぃ」
244 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 23:56:32.31 ID:0/G1P+FM0
弓使い「……やり直しですね」
隊 長「はっはっは、大変そうだな」
男 「ああ、アンタみたいな脳筋にゃあ到底できないことさ」
隊 長「脳筋か、褒め言葉だな!見よこの筋肉!なんてな」
男 「誰が見るか。暑苦しい上に見苦しい」
エルフ「わぁー、すごい!あの、あの、触ってみてもいいですか?」
隊 長「いいよー、はっはっは」
男 「やめときなさい、馬鹿がうつるから」
隊 長「はっはっは。それは否定できねーな」
エルフ「え゛? バカってうつるんですか!?」
男 「……で、こんなところで油売ってていいのか?」
隊 長「なに、これから戻るところさ」
男 「やっぱり増えてるか、エルフ狙い」
隊 長「ああ、連中ネズミ以上の速さで増えてるんじゃないか?」
男 『大変なのは俺個人だけじゃなかった。この当時エルフとの同盟はまだ公にされていなかったはずだが、どこからかそのことを嗅ぎつけた連中がいた』
245 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 23:58:20.24 ID:0/G1P+FM0
男 『同盟から約半年、そういう野盗や奴隷商人どもがこぞってエルフを掻っ攫おうとこの国に侵入してきてる』
男 『国が関わってくるとボロい商売ができないからか、国家規模で介入してこなかったのは不幸中の幸いって奴だったろうか』
男 『ニヤケ面はそういう連中をぶっとばすべく多くのエルフが住んでいる首都周辺の警備をしているんだがやはり数が多すぎるらしい』
男 『練度は大したことないが、数が多すぎるのでこうやって隊長殿御自ら報告を兼ねつつ増員を願いにちょくちょく来ていた』
男 『――――エルフとの同盟から2年、農地改革も進み且つ最早エルフの存在を隠しきれないと悟ったおっさんは諸国に向けて我が国とエルフとが同盟を結んだことを宣言した』
男 『すると早速「貴重な愛玩奴隷たるエルフの独占とは何事か」と諸々の国が抗議をしてきたそうだ』
男 「おっさんは我が国には奴隷制度がない、身分の差など存在せずあらゆる種族が手を取り合って生きる国だと主張したが当然のように聞く耳持たなかったらしい』
男 『連中、同盟というのは形だけで実質俺たちがエルフを支配していると思ってるらしく、おっさんにちょくちょくエルフを寄越せと言ってきたそうだ』
男 『無論おっさんはエルフは同盟相手で奴隷なんかじゃないと突っぱねたが、連中は性根が腐ってるからふざけんなと逆ギレしたとかで』
男 『交易を停止するとかそういった政治的制裁だなんだとおっさんに圧力をかけていたと聞いている』
男 『もっとも、草花の声や風の声とやらを聞けるエルフの手を借りて国内での食糧生産量は着実に増加したのでさして問題にはならなかったそうな』
男 『噂じゃどこぞの国が女王の懸念通り「エルフをくれないなんてとんでもない!」などとトチ狂って戦争を仕掛ける準備をしてたとかなんとか……』
246 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/05(金) 23:59:31.29 ID:0/G1P+FM0
男 『――――程なく、度の過ぎた阿呆が本当に攻め込んできやがった。貴重な資源の独占……つまりエルフの独占は両国間の条約に違反する、それが大義名分だ』
男 『それに呼応して幾つかの国も立ち上がり、連合軍となった連中の数はこの国の軍隊を遥かに上回った』
男 『エルフを慰み者としてししか見ようとしない最低の連合軍だ。エルフはモノや奴隷じゃないってのに』
男 『まぁ、そんなことを考えるような人間だったら戦争なんて仕掛けてこないだろう。かくしてくだらない戦いの火ぶたは切って落とされてしまった』
男 『争いを好まないエルフだが、今回ばかりは戦争に参加してくれた。この国が負けたらエルフの未来はないからな』
男 『しかし、蓋を開けてみれば開戦当初から我が国は優勢だった。相手の兵士とこっちとじゃ練度が全然違っていた。こちとらの兵士は奴隷時代の経験から足腰の粘りが違う』
男 『練度の違いというのも、連合軍の主力である奴隷兵士たちが最初の交戦時にこちらに寝返ったことにより残ったのは正規の兵士だけということだ』
男 『交戦前は圧倒的な戦力を持っていた連合軍は一日も経たないうちに半壊、戦力は五分五分になった』
男 『そしてエルフで構成された弓・鉄砲混成部隊が何より凄かった。敵の指揮官クラスが指示を出す前にノックアウトされるのが日常茶飯事だった』
男 『まぁ、それよりなにより戦場に出てこない連中の下衆な欲望のためだけに駆り出された相手方の兵士の士気が元より低かったのもあるだろう』
男 『そこに我が国の建国直後から進めていた他国への援助とそれによる奴隷の一斉蜂起が成功したのも大きかった』
男 『敵国は我が国と戦争していたせいで国内に戦力も碌に残っておらず反乱軍相手に劣性、当然我が国との戦線維持も困難』
男 『やがて相手方の食糧の供給が滞り始めたらしく、見るからにひもじそうな顔の兵士が大半を占めるようになった』
247 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/06(土) 00:00:09.19 ID:v2expOE80
男 『それに対しエルフの知恵と知識を得た我が国はまだまだ食料には余裕があった。寝返った敵兵が兵糧をパクって来たのも大きい。そこで俺たちはある作戦に出た。それは……』
エルフ兵「どうか、剣を納め弓を捨て投降してください。こちらには食べ物がいっぱいありますよ〜」
男 『見目麗しいエルフの女性の優しい微笑みと手にした豊富な食料、案の定下卑た権力者に嫌気がさしていた敵の兵は次々に寝返った』
男 『それに伴い国の人口もかなり増えたが、先にも述べた通り食料自給率は伸びているのでさして問題なし』
男 『で、その合間合間におっさんはエルフから得た技術を時刻と戦争していない諸国に提供していた』
男 『ちなみに「教えてほしいからエルフを寄越せください」と言ってくる国にはエルフの技術を学んだ人間を派遣していましたとも』
男 『その結果、そういった諸国も食糧生産量が向上し、彼らはエルフへの認識を「奴隷」からまさに「森の賢者」であると改め始めた』
男 『続々と国力を増していく他国、次々に投降する兵士、抑えきれない内乱。最悪の状況に遂に敵国は折れ、終戦協定が結ばれることになった』
男 『おっさんは遺恨を残さないようにと寛大な処置を施し、敵国にも積極的に技術提供した』
男 『――――かくして人とエルフは強く結び付き、幾つかの国と同盟の輪を広げ連合国となったこの国は人の科学とエルフの知恵が融合した新たな技術が栄えた』
男 『自然と科学が調和した新たな文化は畜産・農業・建築などあらゆるものに活かされ、この国には自然が溢れ人工物と草花が共存する空間が広がった』
男 『国王夫妻による積極的な技術提供の恩恵を受け、戦争を仕掛けねばならないほど困窮したり、進退窮まった国は無くなった』
男 『国王夫妻…… これは言うまでもないと思うがおっさんとエルフの女王が人とエルフの共存の新たな形として結婚したってことだ』
男 『西の隣国も大分豊かになり、この度何と我が国と同盟を結ぶことになった。それに伴い西の森の開発は中止され、失われた森の再生が進められている』
248 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/06(土) 00:00:50.28 ID:v2expOE80
男 『ちなみに俺たちも人とエルフの共存の象徴の一つとして国を挙げての結婚式…… なんて柄じゃないので、その辺はご勘弁いただいた』
男 『森も力を取り戻しつつあり、人の争いも無くなった…… と、言いたいところだが戦争の火種は未だ煌々と赤く燻り続けている』
男 『諸国も豊かになったとはいえこの国への羨望や妬み、そして美しいエルフへの邪な欲望などが完全に無くなったわけじゃないからだ』
男 『最近までエルフを奴隷にしていた国なんかは完全に自業自得だが、エルフの反乱や復讐を恐れていたりするし』
男 『それに火種は国内に在る。エルフと人間の寿命の差からやがてこの国の主権を全てエルフに取られるんじゃないかという懸念してる連中もいる』
男 『エルフ側にも、そんな邪な連中からエルフを守るべく打ち出された体制が逆にエルフの自由を奪っているとの不満の声も出始めている』
男 『今の平和なんて所詮は仮初のもので、砂に描いた絵のように簡単に消えてしまうものなのかもしれない』
男 『だが、それでも俺はこの平和がこれから先もずっと、永遠に続くことを願わずにはいられない』
男 『――――人間の本質は、エルフの本質は、生き物の本質は、利己的で結局は自分のことしか考えていない』
男 『やはり、それは間違っていないだろうと思わざるを得ない。でも、俺たちはその本質をさらけ出した世界がどれだけ醜いかを知っている』
男 『だからこそ、その醜悪な本質を清い理性で押さえつけ、宥めすかせて、美しい世界を維持していけると信じている』
男 『天下泰平こともなし、そういう世の中をつくることができると信じ…… いや、そういう世の中をつくっていくんだ』
男 「――――そろそろ生まれてくるだろう俺と嫁さんとの子どものためにもな」
???「何をブツブツ言ってるんです?」
男 「……いや、愛しい嫁さんともうすぐ出会えるかわいい子どものために、未来に向けての決意表明をば」
249 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/06(土) 00:03:34.76 ID:v2expOE80
__
 ̄ ̄ ̄二二ニ=-
'''''""" ̄ ̄
-=ニニニニ=-
/⌒ヽ _,,-''"
_ ,(^ω^ ) ,-''"; ;,
/ ,_O_,,-''"'; ', :' ;; ;,'
(.゛ー'''", ;,; ' ; ;; ': ,'
_,,-','", ;: ' ; :, ': ,: :' ┼ヽ -|r‐、. レ |
_,,-','", ;: ' ; :, ': ,: :' d⌒) ./| _ノ __ノ ?
250 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/06(土) 00:11:23.99 ID:IvYMCKUm0
乙……でいいのかな?
こんな閑所で書いてるのがもったいないほどいいSSだった
??はどっちなのかそれともどっちでもないのか
251 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/06(土) 00:23:15.02 ID:Xn8a0zGG0
乙
R板じゃなくて普通の板の方でやってよかったんじゃないかと思う
252 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/06(土) 00:52:18.08 ID:Ym5z3ByAO
乙
??は好きな人を当てはめろってことかな?
R板じゃなく向こうでも良かったと思うが良作だった
253 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/06(土) 01:13:48.25 ID:v2expOE80
まぁ落ち着け。銃を突きつけられてはビビッて話もできやしねぇ。
……SSは終了だ大佐。少なくとも今のところはな。
この先に進むかはあんた次第だ。
,, <ヽヽヽヽヽヽ
彡,, ´ ̄´''''''` ̄`ヾ
彡ミ( ( )ミ
彡ミ| ,______` ´_____、iミ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ミミiノ _< ・> |< ・>、ミ; | 作者の自慰を見たければ
{6( ヽ、 /. 」.\ ); < 誓約文に同意しろ。
ゝ( ,,,;;;;;;;;;;,,, ノ |
彡、 ' `ー-´ ' ノミ | オーケイ?
'ゝ_''iiiiiiiiii''_/ \__________
( n __ノ i.二.i ヽ_
(__)___〉::::::::〈__ヽ
( y ll:::::::::l(⌒⌒)ハ
しノ ll:::::::::ll\/E )
254 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/06(土) 01:14:31.90 ID:v2expOE80
ヽヽヽリリノノノノノ ミ
.ミシ" ̄'` ̄ ̄ ヾミミ
.ミ| ( iミミ ______________________________________
.ミト_,,,,, ハ ,,,,,,,,,_ 〈ミミ |
.v ,-・-l -・-_ iミミ | 私は18歳以上です。これより先、本SSを読み進める上で起こる全ての出来事を
ト _L_, イ〉5} | 自己の責任において処理し、本SS作者にその責任を問わない事を誓約いたします。
| ( ,-ー-、 ) |シ | ______
ヽ` ,⌒ ´ / | i OK! i
ゝ__ イ\ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/ヽ_` _/ `ヽ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
( ) V ( ,)
(,,..... ,O_ (,,,.....,,,)
く m●)ゝ.ioi⌒⌒ ) ノ
255 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/06(土) 01:34:20.78 ID:d7bbE73Co
OK!(ズドン
256 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/06(土) 01:36:56.86 ID:Ddk9JYPAo
何が始まるんです?
257 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/06(土) 01:38:51.27 ID:WeY+SJK4O
こんなのKENZENじゃないわ!
ただの良作SSよ!
258 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/06(土) 02:23:20.18 ID:aufqXti1O
乙
一気に読んだ面白かった
259 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/06(土) 03:44:39.19 ID:kgXY6YaDo
いい話を読めた上に不健全なお話も読めるんですか!?やったー!
260 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/06(土) 04:46:32.98 ID:KWFvJSWgo
久々にいい話が読めた、大変乙
261 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/06(土) 05:52:37.66 ID:v2expOE80
ヽソソソソノノノノノノv
ミシ´ ̄'` ̄ ̄ ヾミミ
ミ| ( iミミ
ミト_,,,,, ハ ,,,,,,,,,_ 〈ミミ
ヤ_-・-l -・-、` iミミ
ト ,_|__,\ イ〉5}
___/ ̄/ | ( ,-ー-、 ) |シ / ̄/___ _ノ ̄/ / ̄/
/___  ̄/ ┌── .ヽ` ,⌒ ´ /. ──┐ / __ .__/ / ̄ / / /
_ノ ,: / ̄ └── ゝ__ イ\ ──┘ /__ノ_,/ /  ̄/ / /_/
/_ノ,___/ /ヽ_` _/ `ヽ /_ノ /__/ /_/
( ) V ( ,)
(,,..... ,O_ (,,,.....,,,)
く n●)ゝ.ioi⌒⌒ ) ノ
`ーi`,ー-´'-'ーーi'´
, ,´
,, <ヽヽヽヽヽヽ , ´ ´-
彡,, ´ ̄´''''''` ̄`ヾ ´
彡ミ( ( ● )ミ ー - ズドーン!
彡ミ| ,______` ´_____、iミ
ミミi/_《; ゚,》 |《; ゚》、ミ;
{6( ヽ、 /. 」.\ );
ゝ| ,,,;;;;;;;;;;,,, ノ
彡、 ' i-rー,i ' ノミ
\_''iiiiiiiiii''_/
_ノ i.二.i ヽ_
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ミノV y ll::::::::::ll y V\__彡
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T ( )「
ii ̄| | ̄| | ii
_ii_ |____| .|____| ii__
(___) (___)
以下、男と嫁さんの間に子どもができる前のこぼれ話
262 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/06(土) 05:53:16.30 ID:v2expOE80
―――
――
―
男 「……暇だねぇ」
???「何言ってんですかい、書類まだ片付いてねーんでしょ?」
男 「うるせぇなぁ…… なんだ、郵便屋か」
配達人「なんだとはなんだ。ほい、手紙だべ」
男 「どうも」
配達人「しかし珍しいだすな、奥さんじゃなくあんたの方に手紙なんて。何か悪いことしたんか?」
男 「うるせぇ、余計なお世話だ。っと、差出人は…… あの子か。結構分厚いな、何が入ってんだ?」
配達人「返事は集積所まで持ってきてちょ〜よ」
男 「わかってるよ!え〜と、なになに…… 『二人ともお元気ですか』」
エルフ『私は調停官を続けている中で、技術供与や商取引基準の摺合せ……などはさておき、お互いの民族文化への相互理解はまだまだ低いと気づきました』
エルフ『そこで私はそういったエルフの民族的・世俗的文化を人間に広めるべく本を執筆してみることにしました』
男 「『今回お送りしたのはその草稿です。奥様(笑)と一緒に見て頂き添削してもらえたら幸いです』……か」
男 「……どれ、いっちょ読んでみるか」
263 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/06(土) 05:55:15.90 ID:v2expOE80
―――
――
―
男 「へえ、こんなんもあるんだ…… っと」
弓使い「……ただいま戻りました」
男 「おかえりぃ!!」
弓使い「きゃっ!」
弓使い「もう…… いきなり抱きつかないでください」
男 「だって久しぶりの愛しの嫁さんだぜ?これが抱きつかずにいられますか?いや、いられません」
弓使い「わかりました、わかりましたから…… ただいまの挨拶ですよね?」
男 「うん」
弓使い「……なんでこんな人間と夫婦になってしまったんでしょう」
男 「それは言わない約束でしょ、おとっつぁん」
弓使い「なんですか、それ?」
男 「さあ?古典芸能の『お約束』のひとつらしい」
弓使い「はぁ…… よくわかりませんが少々疲れましたのでお風呂入りますね」
264 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/08/06(土) 05:56:52.59 ID:v2expOE80
男 「――――で、どうだった?」
弓使い「公務はそれなりに」
男 「身の危険とかは感じなかったか?」
弓使い「またそれですか…… 会席で既婚者だと言ってるのに言い寄ってくる男性が多くて大変でした」
男 「……やっぱり俺もついていくべきだった」
弓使い「貴方は他のお仕事があったでしょう?まぁ、ずっと隊長殿に傍にいていただいたので、身の危険はありませんでしたが」
男 「あのニヤケ面…… 俺の嫁さんに色目使ってたんじゃねーだろうな」
弓使い「またそんなこと言って…… 後でちゃんとお礼を言っておいてくださいね?」
男 「はーい、お疲れ様でした。で、何か飲む?」
弓使い「では、いつもより少し甘めの林檎茶をいただけますか?」
男 「あいよ。大分お疲れみたいだけどこの後どうする?とりあえず寝る?」
弓使い「いえ、その、久しぶりに一緒にいられるんですから…… あら?」
男 「どったの?」
弓使い「何ですか、この本……?」
男 「あの子からの贈り物。エルフの文化を紹介する本書いたんだって」
265 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 06:01:49.24 ID:v2expOE80
弓使い「エルフの文化、ですか…… そういえばそんなことを言ってたような」
男 「まだ未完成らしいから君にも見てもらって添削してくれだってよ」
弓使い「そういうことでしたら、ビシバシ添削いたしましょう」
男 「うん、しかし俺もまだまだだな。調停官なんてやってんのに知らないのが結構あったよ」
弓使い「そうですか…… でも、貴方のことですからこんなのはもう知っておいでですよね?」
男 「わわっ、ちょっと、急になんだよ?お湯持ってるから危ないぞ?」
弓使い「クルルルル・・・・」
男 「くすぐったいな…… で、えーっと、ごめん。わかんない」
弓使い「そ、そうですかっ!あは、あはははは……」
男 「悪いな…… で、どういう意味なのそれ?」
弓使い「な、何でもありません!」
男 「あ、おい…… せっかくお湯沸かしたのに部屋行っちゃうのかよ」
男 (そうだ、もしかしてこれに載ってるか?えーっと、両方の耳の内側を擦って、喉を鳴らす……っと)
男 「……あった。なになに、エルフの女性が男性の両耳を撫でながら喉を鳴らすのはそれ即ち――――」
男 (…………!?)
男 「林檎茶淹れてる場合じゃねぇ!!」
――――このあと滅茶苦茶
男 「腹筋した…… 何故ならこのスレはID腹筋スレだからな。
>>1
に書いておいたろ?わかんねぇなら
>>1
の俺たちの台詞の一文字目を上から順に読んでみな」
エルフ「【上流下蒸二相でい不っ今すレ!】=【うえるかむtwoあいでいふっきんすレ!】=【welcome to ID腹筋スレ!】=【ようこそID腹筋スレへ!】ということです」
∧,,∧
( `・ω・) welcome to ID腹筋スレ!
/ ∽ |
しー-J
ここはとにかく書き込み、出たIDの数字の回数だけ基本の300回に+αして腹筋をするという、
18歳未満お断り、大人のきのこの山派なトレーニングスレなんだな、これが。
例1 ID:wwh7KM12 ID抽出 の場合 7+12=19 なのでそこに基本の300回を足して219回頑張れよ。
例2 ID:bicycle. ID抽出 の場合 数字がないので基本の300回がんばってねぇん。
さあ、最低300回は腹筋するんだな、これが!↓(`・ω・´)「でい」が苦しい?いつものことなんだな、これが!
266 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/06(土) 06:34:03.70 ID:kgXY6YaDo
(´・ω・`)は?
267 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/06(土) 07:04:14.62 ID:DBGtHYMxo
あ?
268 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/06(土) 08:08:20.13 ID:8DhPznwFo
お?
269 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/06(土) 09:32:35.88 ID:WwJ+bhNN0
ん?
270 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/06(土) 10:07:00.49 ID:3DMgDKpAO
俺が皆の分まで腹筋したるからはよ
271 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/06(土) 12:30:32.67 ID:SMlT2QqFO
まさかあれだけの良作をこれをするためだけに書き上げたのか……?
アホか(褒め言葉)
272 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/06(土) 12:33:26.55 ID:FmHDsXOno
乙だ
273 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/06(土) 12:37:48.08 ID:WQ0vAryCo
ワロタ
274 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/06(土) 15:08:05.63 ID:aufqXti1O
ふぇぇ300回もしたら死んじゃうよぉ
275 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/06(土) 15:35:53.82 ID:Xct6qtt4o
300+19=219
276 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/06(土) 15:36:49.73 ID:ELDJzrmOo
楽しかったよ乙
さぁ腹筋すっか
277 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/06(土) 17:52:37.78 ID:XwWzi8ezo
この腹筋パターンどこかで...
乙!
278 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 18:02:50.33 ID:v2expOE80
よく見たら
>>45
さんになんか怒られてたのでエロいの書き溜めます
とりあえずほんのお目汚しですが、ショタ成分が多すぎて本編から削った過去編をば……
あと、SS深夜VIPとトリップ違うんですね
ホントは「◆7.jSb0K4QQ」と申します
279 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 18:03:34.15 ID:v2expOE80
―――――
―――
―
醜男『ハア、ハア……』
ショタ『あ、あっ、ああ……』
醜男『……うっ! ……ふぅ』
ショタ『あっ、あ゛ぁ、あぁぁ……!!』
醜男『へへっ、ケツも大分こなれてきやがったな』
ショタ『はぁ、ひぃ……ん…………』
醜男『最初は痛がって散々泣き喚いて嫌がってた癖によぉ』
ショタ『は〜、は〜……』
醜男『買ってから男だと気づいたときには無駄金を使っちまったと思っていたが…… 存外悪くない買い物だったな』
ショタ『…………』
280 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 18:04:07.55 ID:v2expOE80
ショタ『あっ、あん…… んぅぅっ』
醜男『いいぞ!そのままケツ穴締めとけよ、おっ、オオッ!!』
ショタ『ああっ…… いっぱい、でてるぅ…………』
醜男『ふぅ……』
ショタ『はっ…… はっ……』
醜男『……そろそろ飽きてきたな』
ショタ『……え?』
醜男『ガキだからまだ農奴や鉱奴にするのは無理だな…… かと言って捨てちまったら完全な無駄金だ』
ショタ『…………』
醜男『そうだ、アイツのところに行って……』
281 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 18:04:45.57 ID:v2expOE80
〜〜〜〜
貴族『まったく、奴隷を交換してほしいだと?』
醜男『そうなんだよ。おっと、農奴や闘奴じゃねーぜ?あれは足りてる』
貴族『足りてる?はっ、農奴はともかく貴様のところの闘奴は酷いもんじゃあないか』
醜男『だからそいつらはどうだっていいんだ。お前のとこの女をくれって言ってんだ』
貴族『で、交換したいってのがそのガキか』
ショタ『…………』
醜男『男だが尻穴の具合は悪かねぇぜ。なんなら今すぐ試してみるか?』
貴族『貴様の中古品でしかも男だとぉ?儂は男色じゃないんだぞ、おぉ?』
ショタ『…………』
貴族『だが、この目が気に入った。いいだろう、コイツの代わりに一つ持っていくがいい。ただし、エルフは渡さんぞ?』
282 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 18:05:48.85 ID:v2expOE80
〜〜〜〜
ショタ『ん゛っ、う゛ぅっ……』
貴族『くぅっ、なるほど、確かにいい具合だ!』
ショタ『あっ、ありがと…ございまっ、あぁっ!?』
貴族『やはり食わず嫌いは良くないな、これからはガキなら男でも買ってみるか?ふっ』
ショタ『はっ、あっ、あッ!』
貴族『フンッ、フンッ、フッ、フォォっ!出る、出るぞっ!出っ…る……ッ!!』
ショタ『あ、はッ!あっ…!』
貴族『ぬふぅ、うっ、ふぅ……』
ショタ『はぁ… は…………』
貴族『クフフ、こうやって女のように啼かせ続ければお前はどんな奴になるのだろうな?』
ショタ『え……?』
貴族『クフフフフ…… 男でも女でもない何かになるのだろうな?ほれ、ぼーっとしとらんで舐めて綺麗にせんか』
ショタ『……あむっ、んぢゅ、ぢゅずずずっ』
貴族『おぁうっ!あ、案外うまいじゃないか…… もう一戦したくなってきたではないか』
283 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 18:06:14.10 ID:v2expOE80
〜〜〜〜
貴族『いつもご苦労、労働者諸君。今日は君たちの日頃の労をねぎらって私からほんの心ばかりだが、一つ差し入れをやろう』
ニヤケ面『差し入れっておい、このガキ…… 男だろ?』
貴族『そうだ、いつも女ばかりでは君たちも飽きるだろうと思って今日は違う趣向を用意してみたんだが…… オイ、鞭だ』
側近『はっ』
ショタ『……?』
隠者『や、やめろ!』
ショタ『ヒギィッ!!?』
貴族『このクソガキがッ!お前がっ、しっかりとっ、誘わんから!儂が恥をかいた!だろうがっ!』
ショタ『アグゥゥッ!アウッ、フギィィィイッッ!!』
奴隷『やめろ!やめてくれ!!』
貴族『ほらっ!しっかりと、おねだりをっ、せんか!して見せろぉッ!!』
284 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 18:07:00.16 ID:v2expOE80
ショタ『う…ぁ…… お、おねがいします…… オチンチンください、ぼく、オチンチンがほしくて、お尻に入れてほしくてたまらないんです……』
ニヤケ面『ぐ…… うぐぅ…………』
貴族『ほらぁ、もっと大きな声で言わんかぁッ!!!』
ショタ『ウギィィイイイッ!!ぼ、ぼくのお尻を!オチンチンでぇっ!メチャクチャについてっ、ください!ぼくをおんなのこにしてください!おねがいします!!』
農奴『…………』
貴族『ふむ、やればできるじゃないか?で、どうかね労働者諸君。この淫乱なガキのお願いを聞いてやってはもらえんかね?』
奴隷『……わかった。差し入れ、有り難く使わせてもらう』
貴族『うむ、遠慮はいらんぞ。早速だが存分に尻を犯してやってくれ。いつものことだが儂のことは気にするな…… ほらぁ、お礼はどうしたァ!!』
ショタ『ヒィィッ!ありがとうございます、ありがとうございますぅ!!』
貴族『クハハハハハハハッ!!!』
奴隷『ぐぅぅぅ…………』
285 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 18:08:10.69 ID:v2expOE80
〜〜〜〜
側近『このガキをエルフと同じ檻に?』
貴族『なに、この前奴隷どもにコイツを使わせたときにふと思いついてな』
ショタ『…………』
貴族『このガキにエルフの情を移させる。そうすれば…… クフフ』
側近『旦那様は本当に頭の良いお方、流石でございます』
貴族『ほれ、ここが今日からお前の住む部屋だ』
エルフ『…………?』
側近『愚図愚図するな!とっとと入れ!!』
ショタ『あぅっ……』
エルフ『……大丈夫?』
ショタ『……きれーなひと』
エルフ『私は人ではありませんよ、エルフです』
ショタ『えるふ?』
エルフ『ええ』
286 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 18:10:50.24 ID:v2expOE80
〜〜〜〜
側近『――――ったく、旦那はやるだけやって後始末はいつも俺だ。ほれ、もう少しだ。キリキリ歩け!』
ショタ『あ……う…………』
エルフ『こんな小さな子を…… ひどい』
側近『おら、さっさと入りやがれ!』
ショタ『あぐぅっ、う、うぅ……』
エルフ『いくらなんでもあんまりではないでしょうか!こんな傷だらけなのにその上投げ飛ばすなんて!』
側近『売女が!口答えすんじゃネェ!!』
エルフ『あうっ!』
側近『かわいそうだと思うんならテメェが面倒見てやれ!奴隷如きに人間様の看病なんて必要ねえ!』
エルフ『くっ……』
ショタ『うぁ…あ……』
エルフ『大丈夫? ……あまり清潔じゃないけど、私の服で包帯をつくるしか』
ショタ『……ありがと、おねーちゃん』
287 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 18:11:15.57 ID:v2expOE80
〜〜〜〜
ショタ『……できた』
エルフ『どれどれ…… うん、ちゃんと計算合ってます』
ショタ『おねーちゃん、これほんとにだいじなこと?』
エルフ『ええ、読み書きと算術は絶対に覚えておかなくてはなりません。いつの日か解放され…… しっ』
ショタ『きたんだね?』
エルフ『勉強の跡は消しておきます。貴方はいつものように寝たふりをしてください』
ショタ『うん』
貴族『……ガキはもう寝たか?』
エルフ『はい』
ショタ『スゥ…』
貴族『では、今夜も相手してもらおうか?』
エルフ『はい、喜んで。旦那様……』
ショタ『…………』
288 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 18:11:49.07 ID:v2expOE80
〜〜〜〜
エルフ『どういたしましては、レムルストゥニ。はい』
ショタ『レムルすトゥニ』
エルフ『う〜ん、惜しいですね』
ショタ『おねーちゃん、どうしてエルフのことばも覚えるの?』
エルフ『……いつか人間とエルフが手を取り合うべき日が来たときに、貴方が――――いつもよりずっと速い、どうして?』
ショタ『…………』
貴族『フフン、この時間なら起きてるな。久方振りに相手をしてもらおうか?』
エルフ『お待ちください旦那様、伽でしたら私が!』
貴族『女ならお前以外にも腐るほど居るわ。儂はお前ではなくこのガキをだな』
エルフ『そんな…… 約束が違います!』
貴族『おっと、そうであったそうであった。では今日もお前の相手をしてやろう。ただし、ガキも一緒だ』
エルフ『旦那様!』
貴族『安心しろ、手は出さん。趣向を変えるだけよ…… クフフフフ』
エルフ『…………』
289 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 18:12:23.59 ID:v2expOE80
―――
――
―
貴族『クハハハッ!このガキが随分と、お気に召したようだな!ええ?』
エルフ『ん、ひぃぃ…んんっ、ひぁあぁっ!?』
貴族『子どもでもっ、できたような気分か!』
エルフ『ひゃうっ!?あっ、あ゛っ、あぁぁん!んぁああ……っ!』
ショタ『やめて…… おねーちゃんにひどいことしないで』
貴族『ひどいことぉ?何を言う、コイツ自らやってほしいと儂にお願いしとるのだ。なあ?』
エルフ『んっ、んむぅ…ちゅっ…… ええ、そうよ。これは私が、旦那様に…お願いしたことなの』
ショタ『え……』
貴族『クハハハハッ!!この淫乱め!フンッ!』
エルフ『んぁああぁ……ッ、あぁっ、あぁあアアッ!!』
貴族『儂の精液をくれてやるっ!ガキの前で、無様にイクがいい!!ぬふぅっ!?』
エルフ『んひぃっ!?いっ、いぃいいぃぃいいいい―――――ッ!!?』
ショタ『おねーちゃん……』
290 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 18:12:52.37 ID:v2expOE80
貴族『ふぅ…… さて、次は…… ん?』
エルフ『あ…… ぁ……』
貴族『気を失っておる…… だらしのない奴め、ガキの分まで儂の相手をするとはよう言えたものよ』
ショタ『おねーちゃん……』
貴族『このエルフが姉、か。クフフ、では情けない姉に代わってお前に相手を……』
エルフ『お、お待ちください旦那様……』
貴族『おぉん?』
エルフ『わたし、が、わたしが…お相手しますから……』
貴族『クハハ、そんなにこのガキを守りたいか!ならば次は喉を使ってやろう!』
エルフ『おぶぅううっ!?』
貴族『クフフ、いいぞっ、その澄ました顔をもっと無様に歪めろ!おっ、おおっ!』
ショタ『おねーちゃん!もういいよ!ぼくもだんなさまのお相手するから!!』
エルフ『ぶはっ、はぁっ、あ、い、いいの。これは、私が旦那様のためにやっていることなの』
貴族『そういうことだ。お前はそこで黙って見ていればいい』
ショタ『うぅ… うぅぅっ…………』
291 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 18:13:18.24 ID:v2expOE80
―――
――
―
エルフ『…あ、は…… あぁ…………』
貴族『ふん、結局はこの様か……』
ショタ『……だんなさま』
貴族『おぉん?』
ショタ『ぼくもだんなさまの…お相手をしたいです。させてください……』
貴族『ほほぅ、姉をかばうか。しかし、お前には手を出さんというのがコイツとの約束だからなぁ……』
ショタ『だんなさま!』
貴族『ふむ、何しろこちらはお前の姉との約束を破るのだ。大切な約束を破るからにはそれ相応のものが必要だろう?』
ショタ『それそうおう……?』
貴族『はっ、奴隷のガキには難し過ぎたか。まぁいい、ようするにお前も儂と約束しろ』
ショタ『はい』
貴族『いいか、コイツに手心を加えてやる代わりにお前はコイツのいた場所を教えろ』
ショタ『え……?』
292 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 18:13:52.48 ID:v2expOE80
貴族『お姉ちゃんと毎日仲良くお話ししているそうじゃないか?そう言うことも聞いているだろう?』
ショタ『いえ、ぼくは聞いてません。聞いたことないです』
貴族『本当かぁ?まぁいい、聞いていないのなら明日にでも聞き出せ。いいな?』
ショタ『あう……』
貴族『ほれ、返事はどうした?』
ショタ『……だめです、ごめんなさいだんなさま。それは聞けません』
貴族『……なんだと?』
ショタ『ごめんなさいだんなさま!ぼく、できません!』
貴族『このガキャア!コイツがどうなってもいいのか!ああっ!!?』
ショタ『それもいやです!どっちもいやです!!』
貴族『これだからガキはぁ…… 頑固なときはとことん頑固!まぁいい、まだほかに手はある!』
ショタ『あうっ!……ひぎいぃいいっ!!?』
貴族『グフゥ、久しぶりだなぁこのキツイ締まり具合…… フンッ、フンッ!』
ショタ『ふぐっ、ぐっ、うぐぅ…… あ、はっ…はあぁ……っ!』
貴族『フッ、フンッ、ほれ、起きんか!起きんか雌豚ァッ!!』
293 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 18:14:24.80 ID:v2expOE80
エルフ『うっ、うぅぅ………』
貴族『クハハハハッ!久々のチンポが嬉しいか?ギュウギュウに締めつけてきおってからにっ!!』
ショタ『あっ!んんぅ、ひぐっ…んぁぁあああっ、ああっ!』
エルフ『――――だっ、旦那様!約束が違います!その子にはもう手をださないと!』
貴族『ああん?このガキ自ら俺の相手をしたいと言ってきたのだ。応えてやらねばなるまいよ』
エルフ『そんな、そんなはずありません!』
ショタ『あひ、いぃっ、いいの、いいのおねーちゃん…… これは』
貴族『クフフ、かわいそうか?かわいそうだよなぁ?しかし、お前の答え次第ではやめてやらんこともない』
エルフ『私の、答え……?』
貴族『ああ、お前のいたところを、エルフの里の場所を言え。そうすればコイツを解放してやる』
ショタ『おねーちゃん、いっちゃダメェッ!!』
貴族『黙ってろ!』
ショタ『アブッ!アウゥ……ッッ』
エルフ『やめて!やめてください!』
貴族『やめてなどという言葉はいらん…… エルフ共の住処はどこだ?』
294 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 18:16:13.70 ID:v2expOE80
エルフ『それは…… それは…………』
ショタ『お、ねぇちゃん…… だめ…………』
エルフ『……トゥーリャシア、トゥーリャシア、です』
貴族『つーらしあ?ええい、下等な畜生の言葉など使うな!人間様の言葉で答えろ!』
エルフ『で、ですが!私はエルフの言葉以外でその土地を現すことを知りません……』
貴族『チッ、ならば…… ほれ、その地図だとどこになる』
エルフ『ええと、旦那様のお屋敷はどちらに?』
貴族『こ・こ・だっ!』
エルフ『はい、では…… 恐らくここの、更に上の方…… になりますでしょうか?』
貴族『なんだと……? 北の国ではないか!』
エルフ『そうなのですか?』
貴族『そうなんだよ!ええい、忌々しい!!他国ではおいそれと手が出せんではないか!!』
ショタ『あうぅっ!あっ、ああんっ…… ひぁああっ!』
貴族『クソッ!クソクソクソッ!クソがぁっ!!』
エルフ『旦那様!やめて!やめてください!!旦那様ぁっ!!』
295 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 18:16:43.25 ID:v2expOE80
〜〜〜〜
エルフ『ごめんなさい、ごめんなさい……』
ショタ『……いいの、ぼくがだんなさまの言うこときかなかったから。あやまらないで、おねーちゃん』
エルフ『言うこと?』
ショタ『だんなさまに言われたの。おねーちゃんをたすけたかったら、おねーちゃんがどこからきたのかきいてこいって』
エルフ『え……?』
ショタ『でも、それは言っちゃダメだと思ったから聞かなかったの。そしたらこーなっちゃたの』
エルフ『ごめんね、ごめんね……』
ショタ『おねーちゃんやさしいね。あったかくて、ふわふわしてて…… ぼく、おねーちゃんだいすき』
エルフ『……ありがとう。ごめんね…… ごめんね……』
ショタ『もういいよ、おねーちゃん…… それより、お里のこと言っちゃってよかったの?』
エルフ『うん、いいの。もういいのよ…… いいの』
ショタ『……ごめんなさい、おねーちゃん。ごめんなさい』
エルフ『あやまらないで、貴方は何も悪くない、悪くないのよ……』
296 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 18:17:22.23 ID:v2expOE80
〜〜〜〜
ショタ『ふわぁ…………』
貴族『クフフ、これだけ大勢の貴族を見るのは初めてか』
ショタ『……ここどこです?』
貴族『クフフ、面白い催し物が見れるところだ』
エルフ『…………』
観衆『『『『『『『『ワァァァアアアアア!!!』』』』』』』』
ショタ『ひっ…… な、なにがはじまるの?』
貴族『楽しい楽しい、奴隷共の決闘の始まりだぁ!』
ショタ『あれって……!』
ニヤケ面『…………』
闘奴『…………』
『ころせぇえ!!』『今日こそ負けやがれ!!』『連勝期待してるぞぉぉ!!』『殺せ!殺せ!殺せ!』
審判『……ハジメェェィッ!!』
297 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 18:18:41.96 ID:v2expOE80
〜〜〜〜
隠居『ほっほっほ、貴方のところのあの闘奴、連勝数をまた一つ上げましたな』
貴族『クフフフフ、偶々ですよ』
青年『偶々なわけないでしょう?何か秘密があるんじゃないですか?』
貴族『クフフ、実は私、たまに奴隷共に女を宛がってやっているのですよ。奴らとて性欲はありますからなぁ』
子爵『なるほど……』
貴族『なかなか面白いものですよ?新入りがいるときなどは特に面白い』
男爵『ほうほう』
貴族『最初女を与えてやっても同じ奴隷として同情があるのか手を出そうとせんのです。そこで女の方に鞭を与えてやるのです』
隠居『女の方に?』
貴族『ええ、奴隷に大義名分、言い訳を与えてやるのです。女を鞭から守るために仕方なく犯す、とね。そこからは本当に滑稽だ。私がやめろというまで連中は女を犯し続けるのですよ!もう鞭はないと言うのに!!』
男爵『ははっ、所詮は薄っぺらい同情というわけですな。本当は女を抱きたくてたまらないくせに、恰好だけはつけようとする』
貴族『全くです。連中なぞ人語を解する猿の分際に過ぎんというのに愚かにも人間様の真似事をしようとするのですよ!クハハハハハ』
ショタ『…………』
エルフ『…………』
298 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 18:19:21.59 ID:v2expOE80
〜〜〜〜
貴族『さて、お喋りはここら辺にしてそろそろ宴を始めましょうか?』
男爵『そうですな。実は先ほど闘技場で奴隷の血を見てから興奮が収まらんのですよ』
子爵『今宵は最近のお気に入りを持参いたしました。南部の生まれで程よい小麦色の肌をしております』
隠居『私は3匹ほど連れてまいりました。どいつもこいつも痛みや蔑みを悦ぶ淫乱ばかりですよ。お気に召しますかな?』
青年『貴方様は今宵はどんなものを』
貴族『クフフ、エルフと変わり種をばご用意いたしました』
ショタ『…………』
エルフ『…………』
隠居『エルフ!?いやはや、エルフを抱くのは久しぶりですなぁ!老い耄れながら血がたぎって参りましたぞ!』
青年『やはり美しいですなぁ、エルフは。どうすれば手に入るので?』
貴族『下世話な話になりますが、やはり金を積まぬことにはまず無理でしょうな』
醜男『ははは、ならば貴公にはまだまだ無理な話では?』
青年『ぐぬぬぅ……』
299 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 18:20:05.69 ID:v2expOE80
貴族『まぁ、近いうちにもっとエルフを簡単に手に入れられるようにしてご覧にいれますよ』
隠居『なんと!誠ですかな!!』
貴族『ええ、このエルフから里の位置を聞き出しました。北の国にあるそうです。下等言語では「つーらしあ」だとか』
醜男『北の国……』
貴族『あの国は貧しい国ですのであまり気にしていなかったのですが、エルフの隠れ里があるのなら話は別です』
男爵『手はあるのですか?』
貴族『扱いやすそうな小物に金を握らせて向こうで人手を集めています。私の右腕も送り込んでおりますので、必ずや皆様に吉報を届けてみせますよ』
青年『流石は大貴族であらせられる!実に有り難い!!』
貴族『クハハハハハハ』
隠居『……ところで、変わり種とは?』
貴族『コイツです。知人から譲り受けたのですがこう見えて実は男なのです』
子爵『なんですと!いやはや、実は私、美しい少年に目がないのです。皆様にそう言う趣味はないと今まで伏せておりましたが……』
男爵『なんと…… しかしお二人のご様子を見るに少年というのもなかなか良いものなのですかな?』
貴族『食わず嫌いはよろしくありません。今連勝中のあの闘奴も大層気に入った尻穴です。ぜひ味わってみてください』
ショタ『……よろしくおねがいします』
300 :
◆1ysUccrJmGua
[saga]:2016/08/06(土) 18:20:43.20 ID:v2expOE80
エルフ『旦那様……』
貴族『儂は手を出しておらんぞ?おぉん?』
子爵『はぁ、はぁ、こ、この少年の桃尻へは私が一番乗りさせてもらってもよろしいですかな?』
隠居『では、エルフの味見を私が一番にさせて頂こう』
エルフ『……ありがとうございます』
貴族『小麦色の少女は私が頂ますね』
褐色女『……よろしくお願いします』
男爵『では私めはこの乳に鈴をつけたこの助平女をば』
鈴女『あうっ!い、痛いです……』
ショタ『……よろしくおねがいします。せいいっぱい、ごほうしさせていただきます』
子爵『ハア、ハア、だいじょうぶだよぉ〜、おじさんはねぇ、おとこのこをきもちよぉくさせてあげるがとくいなんだぁ〜』
ショタ『あ…… あう…………』
青年『夜は長い、存分に楽しみましょう』
醜男『我らの栄華、ここに極まれり、ってな』
貴族『クフフフフ、この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば』
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