田井中律誕生日記念SS2016(must was the 2014)

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/06(土) 21:39:37.47 ID:8onyAH8e0
 けいおんの田井中律の誕生日SSです。
本日から律の誕生日である8月21日にかけて、毎日更新で投下していきます。
(最終日は0時を跨いで迎えたいので、実質的には20日深夜までの予定です)

 なお、タイトルは2014年に投下したかったネタだけど2016年になってしまった、という自省です。
特に意味等はございません。


注意事項及び補足は下記

・直接的な性交渉はありません。
但し、マニアックな描写や際疾い描写が一部にありますので、
念の為にSS速報Rに投下しております。
閲覧の際はご注意下さい。

・地の文有り。

・長いです。

・全17章構成ですが、日に2章分投下する事もございます。



 その他、所謂「何でも許せる人向け」の内容ではございますが、
ご海容頂ける方は高覧下さると幸いに存じます。
 以下より本文です。
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/06(土) 21:40:49.54 ID:8onyAH8e0
1章

 この順番も彼女、田井中律で最後だった。
秋山澪は興味ない風を装って、
昔日から愛用している白いバラへと目を落としたまま聞いた。
だが、田井中律の明かしたスリーサイズは、彼女の体躯と照らして納得できる値ではない。
澪は手に持ったバラの白い花弁から、律の身体へと視線を移す。
そして上から下へ、続いて下から上へと、切れ長の瞳を往復させた。

 改めて見ても、自分の抱いた感覚に自信を深めただけだった。
やはり律の体型は、彼女が自ら申告した値を備えているようには見えない。
夏休みの部室に集う面々も、思いを同じくしているようだった。
澪を含む四人の視線が一点、律の胸部へと注がれる。

「何処見てんだよぉっ。言っとくけど、脱ぐと凄いんだからぁー」

 集った視線の意味を悟ったのか、律が喚いた。
スリーサイズを打ち明け合った場では、律の大胆な物言いも自然と溶け込む。
学期内とは異なる雰囲気が、話題にも口走った言葉にも見て取れた。

 夏休み前と今で違うのは、唯の席の斜め後ろの窓周辺だけではない。
休暇入りの直後に工事が行われたその窓は、見目に目立って装いを一新していた。
伴って、その周辺の家具の配置も僅かに動いている。
だが、インテリアの変化など些事に思える程、
夏休みが彼女達の精神に与えた影響は大きかった。

 夏季休暇に入って十日以上過ぎ、暦は八月に突入している。
多感な年頃にある彼女達の話題を夏休みが毒すには、充分な時間だった。
長期休暇は気分に開放を齎し、人気の少ない学校は部活に閉鎖性を齎す。
その双糸が、彼女達を際どい会話に導いたのだろう

「そんな、ムキにならなくてもいいじゃないですか。
私達だって正直に言ったんだから、律先輩も本当の事を言っていいんですよ?」

 澪達が属する軽音部の中で、唯一の後輩である中野梓が苦笑交じりに言った。
部員五人の中で一人だけ色違いの赤いタイが、
律と同じくらいにしか見えない胸元で結ばれている。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/06(土) 21:42:12.48 ID:8onyAH8e0
「嘘なんかじゃないっ。澪やムギ、唯はともかく、梓には負けないんだからな。りっ」

 そう言って律が胸を突き出した。
胸に二つ尖る円錐の鋭角は、専ら梓のみへと向いている。
胸に鈍角の膨らみを盛り上がらせた紬や唯とは、張り合おうなどとしていなかった。
律も見目に明らかな分の悪さを理解しているのだろう。

 一方で、同程度の胸囲と思しき梓に対しては、対抗意識を剥き出している。
先輩としての矜持も透けて見えるようだった。
彼女に勝りたい気持ちが、律を詐称に走らせたのかもしれない。

「そぉ?ていうか、あずにゃんの方が少しだけ、大きく見えるような気もするけど。
少しだけ、ね」

 律や梓を構う好機と見たのか、平沢唯が茶化すような声音で割り込んだ。
唯は普段から、この二人へと頻繁に絡んでいる。
虐めと弄りは違うという思考の透けた、彼女なりの可愛がり方だ。

「もう。少しだけ、ってそんなに強調しなくてもいいじゃないですか」

 からかわれた梓が、棘のない穏やかな声音で唯に返す。
言葉とは裏腹に、律より上と認められた事で気を良くしているらしかった。
一方の律は不満露わに頬を膨らませ、唯と梓の胸部に険しい視線を送っている。

「駄目よー、身体の事をからかったりしたら。
りっちゃんに謝らないと、ね?」

 琴吹紬が唯を窘めた。
元々、律に甘い紬だが、それだけが擁護の動機ではないだろう。
紬自身、心無い人間から肥満だと嘲られる事が少なくない。
紬は虐めと弄りを同一視するらしく、そういった揶揄を許していないのだと推せた。

「えーっ?からかったりなんか、してないよー」

 唯が口を尖らせた。まだ、と頭に付ければ、その通りの発言ではある。
体型の事で茶化そうとしている態度を察せられ、紬が機先を制した。
それくらい、澪にも分かる。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga sage]:2016/08/06(土) 21:43:28.87 ID:8onyAH8e0
「律も意地を張るなよ。大きければ良いって訳じゃないんだから」

 公平を期す訳ではないが、澪も律を諭しておいた。
唯は不満気だが、甘い物でも与えれば機嫌は直る。
だが、律は根に持つ性格だった。
紬の擁護を受けた今もまだ、瞋恚に燃えた瞳で唯と梓の胸を睨んでいる。
自分の主張が通らない事で、拗ねているのだ。

「意地なんて張ってないし。本当の事だもん」

 律は澪に対しても口を尖らせ反駁してきた。
反抗的な語勢が癇に障った澪は、バラの切っ先で律の口を指しながら睨み付ける。
生意気な態度も躾けてやらなければならない。

「まー、でも、大きければ良いって訳じゃないのは、その通りだけどー」

 途端に律は態度を軟化させ、澪の言を援用してきた。
惚れた側の弱みに違いないと、澪は所期の効果に内心で笑んだ。
付き合ってこそいないが、律は自分に惚れているという自信があった。
惚れた相手を前にして、真っ向から反目する度胸など律にはないだろう。

 それでも胸囲以外の事で迎合の姿勢を示すあたり、
律は主張の本旨を覆してはいなかった。

「あれー?りっちゃん、負け惜しみー?」

 唯は席を立って窓の前へと移動し、挑発的に胸を揺らしながら煽った。

 部室の窓枠のほぼ全てには、奥へスライドする方式の小窓が六つ装着されている。
唯の後方の窓も、夏休みの前までは例外ではなかった。
六つの小窓を一つの片開きの窓へと統合したのが、この夏休み初頭の工事である。
工事した窓の周辺は赤いビニールテープで囲まれており、
唯はそのビニールテープの作る四角い空間の中に位置を占めていた。

 目立つ場所に立ってまで律を挑発する唯の姿に、澪も呆れざるを得ない。
そこまでして、律に構ってもらいたいのだろうか。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga sage]:2016/08/06(土) 21:44:24.74 ID:8onyAH8e0
「違うっての。事実じゃん。
大きいからって、唯は見せる相手も揉ませる相手も居ないじゃんかぁ。
サイズじゃないっていう、いい証拠だよ」

 律も唯の挑発を捨て置けば良いのに、彼女の掌の上で吠え立てていた。
自分の横槍が唯に付け入る隙を与えてしまっただろうか。
紬に任せておけば良かったかもしれないと、澪は思わないでもなかった。

 だが、律の胸は澪の肉欲をそそるに十分な用を為している。
自分に惚れているのなら、自分に対してだけ扇情的であれば良い。
婉曲であっても、その思いを宣せずには居られなかったのだ。

「そうだねぇ。でも、りっちゃんも居ないでしょ?
どうせ居ないなら獲得に有利な方、つまりは胸の大きい私の勝ちですなーあ」

 勝ち誇った笑みを唯が見せる。
対照的に、律の顔には悔しさが滲んでいた。

 そろそろ、唯の方を咎めるべきだろうか。
律を諭した所で、唯を調子に乗らせるだけだろう。

「もう。駄目よ、唯ちゃん」

 唯を叱ろうとした矢先に、紬が先行していた。
澪は出かけた言葉を、喉の奥へと押し戻す。
こういう役は、自分よりも紬の方が向いているとの判断からだ。
万事淑やかな彼女なら、場を荒立てずに唯も律も収められる。
そう思い、澪は黙って紬の次の言葉を待つ。

「居るもん」

 だが、澪の鼓膜を叩いた声は、穏やかな紬の声ではなかった。
激しい感情の籠もった、律の声音だ。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga sage]:2016/08/06(土) 21:45:35.83 ID:8onyAH8e0
 紬と梓と唯の三様に呆けた顔が、一様に律へと向く。
彼女達と同じ表情を浮かべている自分の顔が、澪の脳裡を過ぎった。
律の言った事が理解できない。
それどころか、幻聴との区別さえ曖昧だった。

「彼氏、居るもんっ」

 呆けた澪達に突き付けるように、律が叫んだ。
それは空気を震わせて迫り、容赦なく鼓膜に叩き付けられる。
澪の中で現実と幻聴の区別が、別たれた。

「冗談、ですよね?」

 未知の物に触れるような口振りで放たれた梓の問いは、
取りも直さずに澪の嘆願を代弁していた。

 律が今まで自分に対して取ってきた、行動や言動の一つ一つが脳裏を巡る。
そこから恋情を汲み取っても、不自然ではないと思えるものばかりが。

「あーら、失礼な事言っちゃってぇ。
私にだって彼氏くらい居るし」

 だが、眼前の律は、澪の見通しを木端微塵に粉砕する発言ばかり続けている。
律から感じていた好意は、勘違いに過ぎなかったのだろうか。
或いは、勘違いさせられていたのか。
澪の自信が揺らぎ、変わって怒気が腹の底から湧いてくる。

「りっちゃんたら、逸早く抜け駆けしてたのね。いいなぁ」

 憧憬を滲ませた声音で紬が言う。
律を見つめる彼女の眼差しも、羨望に満ちていた。
澪には紬同様の態度で、律の発言を遇する事などできない。
落胆と怒りが視線に籠もらないよう、自分を抑えるだけで精一杯だった。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga sage]:2016/08/06(土) 21:46:48.73 ID:8onyAH8e0
「えーっ?りっちゃんは私より先に彼氏を作ったりしないよねぇ?」

 唯が眉根を寄せて、律に問う。

「ふーんだ。胸ばっかり出てて度胸を出さずに、のろのろしてるからだ」

「りっちゃんの癖に」

 唯は頬を膨らませて、そっぽを向いてしまった。
拗ねた態度を隠そうともしていない。
唯にせよ紬にせよ、素直な反応だった。

「いや、やっぱりおかしいですって。
何で彼氏が居るって事、隠してたんですか?」

 梓も倣うかと思いきや、正面切って疑問を浴びせていた。
言われてみれば、と澪も胸中で同意する。
もし、律が恋人を作っていたのならば、自分が気付いているはずだ。

「隠してた訳じゃないって。別に訊かれてもいないのに、自分から言う事でもないからさ」

 梓に対しては、そうかもしれない。自慢のように聞こえて、宣する事は憚られるだろう。
だが、澪に対して一言も相談しないとは考えづらかった。
些細な事でさえ、律は澪の意見を求めてきている。
異性との交際など、澪に頼り切りの律が一人で処理できる事柄ではない。

 それ以上に、恋愛の当事者という重要な変化を遂げておきながら、
いつも傍に居る自分に勘付かれなかった事が不自然だ。
一体何時、逢瀬の刻を持ったと言うのだろう。

「隠れてなければ、気付くと思うんですけど。
そうだ、澪先輩。律先輩から彼氏が居るような素振りを感じたりしてました?」

 梓もそこに思い至ったらしい。
自分達はまだしも、澪には勘付かれるはずだ、と。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga sage]:2016/08/06(土) 21:47:44.51 ID:8onyAH8e0
「おいおい、私に聞くなよ。
別に律なんかの一挙手一投足に注意を払ってる訳じゃないんだからさ。
どっかで男を誑してても、気付きやしないよ」

 澪は突き放すような語勢で答えた。
不自然な点を見つけたからと言って、澪の怒りは収まっていない。

「ほーら、澪先輩だって気付いていないみたいですよ。
で、何で隠してたんですか?それとも」

 梓は意味深に言葉を切ると、細めた目で律を見つめた。
律の事など興味がないと澪は言った積もりであったが、梓の受け取り方は異なっている。
自説に有利な部分だけ抽出し、律への詰問に充てていた。

 律に恋人ができると、梓にとって不都合な事でもあるのだろうか。
そう思わせる必死さが、彼女の論法に見え隠れしている。

「いいじゃない、きっと恥ずかしかったのよ。
大丈夫よ、りっちゃんの彼氏さんなんですもの。いい人、なのよね?」

 浮かれていた調子から一転、紬が声を引き締めて問うた。
同時に、梓の瞳が真剣さを帯びる。
澪も梓の真意を理解した。それは間を置かず、共感へと変わる。

 梓は律が悪い男に誑かされていないか、心配なのだ。
箱の外に疎い律が男を選るに当たり、自衛まで見据えられるとは考えづらい。
逆に、甘言に釣られてしまう危うさがあった。

「うん。いい人だよ。ダァったら、恰好良くって、頭も良くって、スポーツも得意なんだ。
優しくて甘やかしてくれるし、お姫様みたいに扱ってくれるんだけど、
でも、恥ずかしい事もやらせてきたりして。
うん、辱めてきたりもする、サディスティックな面も持ってて。
りーっ」

 言っているうちに恥じ入ったのか、律は赤く染まった顔を両手で覆って呻く。
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga sage]:2016/08/06(土) 21:48:38.43 ID:8onyAH8e0
「それ、りっちゃんの願望?そんな都合の良い人、居ないよねぇ」

 唯にしては珍しく、世間の人間像に拠った意見だった。
だが、当事者の心理状態にまでは寄り添っていない。
痘痕も笑窪。
欠点が多く長所の少ない相手でも、強烈に惚れてしまえば完璧な人間像をそこに見る。

「そうですか?なんか聞いてて、澪先輩みたいな人だなって思いましたけど。
律先輩には、澪先輩みたいな人が似合うかもしれませんね。
実際、似ているんですか?」

 邪気のない梓の声に、澪の心臓が跳ねた。
自分だけが律に似合っている。
それは、澪が長らく確信してきた命題だ。

「はぁ?全っ然っ違うし。何を聞いてたんだよぉ」

 律は梓の謳ったテーゼに、偽と回答するらしい。
殊に、喚き散らす強い語勢が、澪の癇に障った。
そこまで嫌なのか、と詰め寄りたくなる。
澪の気分をこの上なく害す、生意気で反抗的な態度だ。

「ああ、全く以って似てないな。大体、私がこんなのをお姫様扱いするか。
優しくする気にも、甘やかす気にもなれないな」

 澪は怒りの侭に言い放つ
尖る言葉も刺す語調も構わずに突き放してやった。
律の強張る顔を見ても、溜飲は下がらない。
その頬を張ってやったら、少しは怒気も収まるだろうか。
このバラの白い花弁が赤く染まるまで傷付けてやったら、気も晴れるだろうか。
いっそ、押し倒してしまおうか──
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga sage]:2016/08/06(土) 21:49:45.50 ID:8onyAH8e0
「いや、あの。似てるって言っても、完璧な所が、って意味で。
澪先輩、恥ずかしい事とかはやりたがらないし、やらせたりもしませんものね」

 律と澪の反論の勢いが予想外だったらしく、梓は慌てたように言い繕っていた。
悪意のない軽口を咎めた形になって、澪も決まりが悪い。

「ああ、分かってるよ、冗談だって事くらい。
第一、私は完璧じゃないからな」

 澪は朗らかに笑って、詫びに代えた。
反面、笑顔の裏に隠した心中で呟く。
唯の言うように律の願望であるならば、恥ずかしい振る舞いを強要するに吝かでない、と。

 一方の律は発言を繕う事なく、黙ったままだった。
自然、話の流れに間が訪れる。

「ねー、りっちゃん。その彼氏とは、いつデートしてるの?」

 話の切れ目に唯が割り込んで、話題を変えてくれた。
尤も、雰囲気の軟化に加勢した訳ではないだろう。
間が空く機を見計らうかのように、唯は律から視線を逸らしていなかったのだから。

「いつって。そりゃ、時々、としか。学校も部活も、唯達との約束もない時にしてるんだよ」

「ははぁ。ヤリ目ですなぁ。遊ばれてたりして?」

 唯の言葉に、特徴的な紬の眉根が眉間に寄る。
そして梓と律の反応は、殊に顕著だった。

「唯先輩っ?」

「はぁっ?どういう発想だよぉっ。信っじらんないっ。唯ったら何なのよ、もー」

 梓は唯の名を叫んで固まり、律は忙しく言葉を並べて抗議している。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga sage]:2016/08/06(土) 21:51:14.79 ID:8onyAH8e0
「いやぁ。だって、私達と居ない時って言うと、夜でしょ?
その時間なら、やる事は決まってるよねー?
脱いだら凄いんだもんね?」

 唯は律と梓の反応を楽しむように、二人を窺いながら言った。
唯は本当に、恋人が居るという律の話を信じていないようだ。
故に、恋人が居るように繕う律と、それに釣られて右往左往する梓が愉快で堪らないらしい。

「何言ってるんだよ。部活だって毎日ある訳じゃないし。
そういう時に毎回、澪と会ってる訳じゃないんだよ。
空いた日にデートしてるのっ」

 律も唯から信じられていない事を認識したのか、返す言葉に苛立ちが篭っている。

「夏休みはいいけど。学期中は大変だったよねー。
私達と会わない休日の日中に、誰の目にも付かずにデート、だもんね」

 唯が楽しげな笑みを崩さぬまま言った。
唯は虚言を証す材料を、一つ明かした気で居るらしい。

 だが、決して白昼に逢瀬を重ねられる日がなかった訳ではない。
第一、唯の推量は、昼の逢瀬の困難さを指摘しただけに終わっている。
唯が冗談交じりに言及した、夜に会って褥を共にしている可能性は残り続けるのだ。

「あーら、仰る通り、大変でしたのよーだ。
でももう、周知の話になっちゃったから、予め言わせてもらうからね。
今月の私の誕生日だけど、部活休む。ダァとデートするんだもん」

 皮肉の込もった声音で唯の言葉を肯んじた後、
律は一転させた毅然たる声調で逢瀬を宣していた。
嘘を尤もらしく見せる方便かもしれないし、
本当に恋人と誕生日を共に過ごすのかもしれない。
澪は判断の量りを一方に傾かせる事ができぬままだ。
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