田井中律誕生日記念SS2016(must was the 2014)

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

320 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 00:11:57.04 ID:RygLztCIo

*

17章

 昨夜は無茶が過ぎた。
後悔はしていないが、階段を一段上がる度に股に響いて難儀する。
それでも登校途中同様、律は腰部を支えられて部室の前まで辿り着いた。

 部室の扉の前で耳を澄ませば、唯達の声が聞こえてくる。
今日の部活の開始から二時間近く経っているはずなのに、練習している素振りもない。
自分と澪が見せた昨日のデートの話で盛り上がっているのだろうと、律は察した。
そうして時間を潰しながら、律に根掘り葉掘り訊ける時を心待ちにしているのだ。

 律は入室前にと今一度、自分の身体を眺め下ろした。
昨日と同じく、身に纏うチャイナドレスの下には下着など着けていない。
腕の輪も腿の輪も変わらず着けたままだが、一点、胸部だけは装いが異なっていた。
花弁を鮮紅に染めたバラが、律の胸に刺さっているのだ。

 このドレスの胸部に設えられた菱形の開きは、胸の谷間を露出させる仕様になっている。
殊に律の場合、ドレスが胸囲に比して小さめのサイズでオーダーされている為、
両の乳房が圧し合い菱形の中心部へと筋を走らせていた。
その圧力の中心部である筋へと捩じ込まれているのが、
昨夜に用いたロサ・ブランコの強靭な茎だった。
律の生命を削るような激しい一夜によって、
白かった花弁も奥にまで赤色が染み渡っている。
今も棘は肉を抉るように乳房の谷に刺さり、
押し合う圧力と相俟ってバラを固定する楔となっていた。
花弁からなのか棘からなのか、直上の鼻へと漂ってくる血の匂いが生々しい。

「先、行ってるね」

 言い置いて、律は扉のノブに手を掛ける。
そしてノックを三回連ねてから、一人で部室へと足を踏み入れた。
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 00:13:18.41 ID:RygLztCIo
「おっはよ。遅れちゃって、ごめんね」

 入った瞬間に視線を注いできた三人へと、挨拶と謝罪を口にしながら近付く。
律が察していた通り、三人は部室の奥、
ティータイム用の席で茶話の途中だったらしい。
律は席には加わらず、テーブルの傍らに立ち止まる。

「りっちゃん、おっはよ。まさかお家に寄らず、直行して来たの?
お疲れみたいだし、休んじゃっても良かったのにー」

 茶化す類の笑みを浮かべて、唯が口火を切った。
唯の言う通り、家には寄らず、ホテルから直行して来ている。
昨日の逢瀬と同じ服装なのだから、そこは見通されて当然だろう。
疲労も唯の言う通りである。だが、休むという発想は頭になかった。

「そうもいかないよ。今日は皆に大事なお話があるんだから」

「ええ、昨日はごめんなさいね。その、約束を破っちゃって」

 紬が心底から申し訳無さそうに目を伏せて詫びる。
律の言う大事な話が、違約を原因とする深刻な宣言にならないか、
危惧しているのかもしれない。

「大丈夫、あの時はちょっと怒りっちゃんだったけど、今はもう怒ってないよ。
私の方こそ、ごめんね。皆に、隠し事をしちゃってて」
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 00:14:16.17 ID:RygLztCIo
「あっ、いえ。約束を破ったのは私達なんですから、律先輩が謝る事ではないですよ。
あっ、律先輩も立ってないで、座ったらどうですか?」

 梓が席を勧めてくれたが、人を待たせて寛ぐ訳にもいくまい。

「いーの、いーの。お話があるって、言ったでしょ?
座ったままじゃ難しいと思うし」

「昨晩のin out, in outに付いて、ジェスチャー交えながらお話してくれるの?
あっ、分かっちゃったかも。危険日だからって張り切り過ぎて、
座れないほど腰とか痛くなっちゃったのかな?
あーあ、こりゃ当たっちゃったかもよー?
ガルバン兼ママさんバンドって、りっちゃんたらロックなんだからー。Oh, Oh, Oh!」

 そう言う唯が、身振りを交えている。
椅子の座面を跨いで座り、腰を上下に振って跳ねていた。
幼い子の行為ならば乗馬ごっこに見えるだろう。
だが、唯は性交を卑俗なやり方で喩えているに過ぎない。
紬も唯の品のなさには呆れているらしく、眉を潜め無言で咎めていた。

「唯先輩、止めて下さい。いくら女だけの場所とはいえ、下品ですって。
でも実際、大丈夫ですよね?
仮に、その、事に及んだとしても、その辺はちゃんと気遣ってくれましたよね?」

 梓は唯に抗議した後で、律に向かって言い難そうに付け足していた。
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 00:15:46.69 ID:RygLztCIo
「もー、あずにゃんったら、にゃん被っちゃって。
ぶってないで、もっとダイレクトに聞いちゃいなよ。
ヤったにしても、避妊はちゃんとしたのかって、そう聞きたいんでしょ?」

 唯は焦れたように梓へと苦言を呈してから、律を眇めて言い足す。

「まー、ゴムやピルの有無は分かんないけどさ。ヤるにはヤったんでしょ?
りっちゃんの胸にバラを挿したのだって、どうせサング君の指示でしょ?
大体、昨日だって私達の目の前で、りっちゃんを嬲りものにしてたじゃん?
そんなドエスが、こんなにエッチな格好してるりっちゃんを見て、
ヤらず帰すなんて有り得ないでしょ」

「まぁ、あれは確かに、真性のサディストだなって思いましたけど。
こんな色っぽい格好してる律先輩を、あんなに高々と掲げちゃって。
剰え自分の顔面に、あんな事を」

 梓はコスモワールドでのサングの振舞いを思い起こしたらしく、苦い表情になった。
ここは恋人として擁護しておく必要があるだろう。
梓にとっても、尊敬すべき部活の先輩がその正体であるのだから、尚の事だ。

「だからサドな一面もあるって言ったでしょ?
でもね、良い所だって沢山あるんだよ?
このチャイナドレスだって、彼からのプレゼントだし」

「ああ、それ、彼氏さんからのプレゼントなのね。
似合ってるわよ。昨日も見惚れちゃった」

 紬が両手を合わせながら言う。

「そうそう。それ、気になってたんだよね。ブラもショーツも履いてないでしょ?
その下って、丸出しだよね?」

 唯が息せき切って食い付いてきた。
紬とは違って、性的な話に対してまるで抵抗を見せていない。
今日の唯はいつにも増して、本能が剥き出されている。
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 00:16:45.33 ID:RygLztCIo
「うん。チャイナドレスって、下着を付けずに履くものだって、彼が言うから。
もしかして、匂っちゃってたりする?するよね?」

 律が上目で問うと、三人は顔を見合わせた。
その仕草で律は確信を深める。匂っているのだ、と。

「あっ、匂っているって言っても、不快な匂いじゃないわよ?
何ていうのかしら、甘いっていうか、甘酸っぱいっていうか、
何かこう、嗅いでいて私の方まで変な気分を醸されちゃう香りっていうか……。
やだ私、何を言っているの」

 自分達の仕草が肯定の答えとなってしまったと、紬も悟ったらしかった。
慌てて言い繕っている。
だが、自分の言いたい事を上手く言語化できず、
話している内に動揺して頬を赤らめてしまった。

 見かねたらしい唯が、律の恥丘を指差しながら溜息混じりに言う。

「ムギちゃんはね、其処からのフェロモンが凄いって言いたいみたいだよ。
まーね、そういう匂いだったらプンプン漂ってるよ。
やった後にシャワーを行水程度にしか浴びていないとか、
ここに来る途中の炎天で汗が滲んで蒸れちゃったとか、
後は興奮して濡れちゃったとか、そんな感じじゃないの?」

 紬は唯の訳で概ね間違いないらしく、代弁してくれた唯に小さく頭を下げている。
ただ、代弁は発言の冒頭のみで、後は唯の推測だった。
だが律にしても、その推理に異を唱える積もりはない。その全てが正解だからだ。

「もー、唯ったら、変な話になると多弁なんだから。
それで、そろそろいいかな。大事な話があるって言ったでしょ?
その件なんだけど」

 あまり待たせたから、そろそろ立腹しているかもしれない。
唯のペースに乗せられて、意図せず話が長引いてしまっている。
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 00:17:51.82 ID:RygLztCIo
「あ、待ってください。澪先輩がまだ来てませんよ?
そろそろ来るはずなんですけど」

 今度は梓が手を挙げて制した。
律も澪も、ライントークで部員を登録したグループへと、遅刻する旨を投稿している。
送信するタイミングのみ二人の間隔を空けたものの、
部活の開始時刻に二時間程度遅れる、という遅刻の時間帯は同じだった。

 遅刻する羽目になったのは、起きる時間が想定よりも遅れてしまったからに他ならない。
その為、チェックアウトの前にゆっくりシャワーを浴びる余裕もなかった。
昨夜の消耗が激しかった所為で、寝過ごしてしまったのだ。

「澪ちゃんからも通知着てたけど、そろそろ来る時間のはずだよね。
大事な話があるなら、澪ちゃんが来てからにすれば?」

「そうね。りっちゃんがどんな内容の話をするのか、分からないけれど。
澪ちゃんが居ても問題ない話なら、揃うまで待つべきだと思うわ」

 唯も紬も、梓に同調した。
澪が昨日の逢瀬に顔を出さなかったことを、彼女達は気にしているらしい。
この上で仲間外れのような扱いをしたくないのだろう。

「いーの、いーの。澪はもう承知済みだよ。
だから今度は皆に、っていう訳」

 律の言葉に、三人は再び顔を見合わせた。

「まぁ、澪先輩が本当に承知しているのなら、
聞いてみるのも悪くないんでしょうね」

「うーん、どうせすぐ来るんだし、待ってもいいと思うけど。
でも澪ちゃんがどうせ知っている話なら、待つまでもないのかもね」

 梓と唯が、誰にともなく独り言のように呟く。
決断には至らずとも、澪を待たずに聞いてしまうという方向に傾いているらしい。
自然、決定は紬に委ねられる格好となる。
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 00:18:57.78 ID:RygLztCIo
「それって、どんなお話なの?
昨日の話、って訳じゃないのでしょう?」

 紬は少しの間考える素振りを見せた後、律の瞳を見据えながら言った。
警戒しているのか、表情が硬い。
昨日の話ならば澪だけが知っている状況は不自然であり、
また、昨日以外の話ならば何も無理に今日を選んで話す必然もない。

 ただ、その疑問は勿論、律の彼氏の正体を知らないからこそ湧き出るものだろう。

「昨日の話だよ。
皆、私の彼氏の顔とかパーソナリティとか、気になってたでしょ?
会わせてあげるね。紹介しちゃうから」

 昨日、褥の上で澪から指南された通りに律は言った。
瞬間、三人の顔へと一様に驚きが広がる。

「えっ?彼氏に、ですか?
そりゃ見たかったですけど、会うとなると考えますよ。
というか、やっぱり澪先輩は、律先輩の彼氏に付いて知っていたんですか?」

 真っ先に声を取り戻したのは梓だった。
思い付くままといった様子ではあるが、言葉を矢継ぎ早に放っている。

「会わせてくれるの?急にどういう風の吹き回し?
あんなに頑なだったじゃん。で、澪ちゃんだけは別途誘って、断られてるの?
それで、具体的に紹介してくれるのっていつ頃になりそう?」

 唯も梓同様、言葉を矢継ぎ早に連ねてきていた。
ただ、即断を避けた梓とは違い、律の恋人に会う事は既に決定しているらしい。
それが当初の唯の要求でもあった。
その所為か、急に態度を豹変させた律に不審を抱きつつも、
律の提案に留保を付ける事はしなかった。
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 00:19:53.18 ID:RygLztCIo
「あの素敵な彼氏さん、紹介してくれるの?
楽しみね。りっちゃんを幸せにしてくれるよう、頼まなきゃいけないわね。
そうだ、澪ちゃんにも会ってもらいましょう?
澪ちゃんは意地になってるかもしれないけど、
きっとりっちゃんの幸せを願っているはずだから。
安心させてあげましょうね。澪ちゃんの説得は私も手伝うから」

 紬は警戒から一転、瞳を輝かせていた。
落ち着いた所作を見せている紬も、恋愛への好奇心と興味は唯に勝るとも劣らない。
また、律は既に澪を誘ったが断られてしまった、
という話も脳内で補完しているらしかった。

「澪ちゃんの説得から入るの?
じゃ、りっちゃんが紹介してくれるの、かなり後になっちゃうかもね。
澪ちゃんたら、頑なだから。先に私達から会っちゃわない?
澪ちゃんにも会ってもらうよう説得するのは、その後にしようよ」

 紬の提案に、唯が異を唱えた。
無用の議論へと発展してしまう前に、律は口を開く。
いつ会うのか、その日その時はもう既に決まっているのだから。

「タイミングは問題にならないよ。だって紹介するのは今からだし。
ほらもう、部室の前に待たせてあるよ」

 律の言葉に、唯達三人の視線が一斉に扉へと向く。
振り向く際の彼女達の表情には、驚愕と半信半疑が入り混じって浮かんでいた。
一方の律は、彼女達と同じ方向に視線を送っていなかった。

 律が見つめる先は、唯が座る席の斜め後方にある窓だった。
部室を扉から入って直線上に設えられているこの窓だけが、他の窓とは構造が違っている。
以前は他の窓と同じく、奥へスライドする方式の小窓が六つ装着されていた。
だが、行政より消防法を根拠とする指摘が入ったらしい。
曰く、この構造の立地及び空間に於いては、
扉とは別に避難可能な出口を用意する必要がある、と。
近年の本邦を襲った相次ぐ災害の所為か、チェックも法規も厳しくなったのだ。
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 00:20:41.78 ID:RygLztCIo
 そこで、窓の一つを人が通れるよう、
六つあった小窓を一つの窓に統合して、片開き窓とした経緯がある。
緊急時にはここから救助袋を降ろして避難する、という構造となった。
この避難用の出口の周辺に物を置いては法規違反となる為、
予め家具・調度類が側に置かれてない窓が選定の規準となったらしい。

 それが、律が今見つめている、この窓だ。
避難用である事の表れで、足元には赤いビニールテープで縁取られている。
この範囲内に物を置いてはいけないというサインだった。

 この窓なら、運動場に居る者からも見える事だろう。
噴水のある正門の方向は人が少なかったが、運動場には部活に勤しむ多くの生徒が居る。
来る途中に一応目視で確認はしていたが、
一昨日までの経験則に照らしても容易に推測できた。

「ねぇ、りっちゃん。本当に今、部室の前に居るの?」

 傍らの唯が声を掛けてきた。

「うん、居るよ」

 窓から唯へと意識を転じて、律は短く答えた。
合図さえすればすぐにでも入ってくる。だが、まだ準備が整っていない。
昨夜、澪から指示された内容を今一度、律は頭の中で反芻した。
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 00:21:46.83 ID:RygLztCIo
 思い返した後には覚悟も固まっていた。

「ねぇ、りっちゃん。りっちゃんっ?」

 唯は焦れたように律の名を呼んで、直後には驚いた声音で律の名を呼び直していた。

「えっ、律先輩、何を?」

「りっちゃん?えっ?」

 唯の声に只事ではない様子を感じ取ったのか、梓と紬が相次いで律を振り返る。
そして揃って、驚愕に目を見開いていた。

 無理もない。
彼女達の目には、裸になろうとしている律が映っているのだから。

 ファスナーを下ろしたチャイナドレスから、律は身体を抜いた。
腕輪と脚環は外さないが、これでも充分に全裸と言えるだろう。
乳房も、性器も、全て晒してしまっているのだから。

 服を脱いでも、胸部のバラは抜けなかった。
肉に食い込む棘が、錨のように繋ぎ止めている。

「りっ、律先輩?急に、どうしちゃったんですか?」

 問い掛ける梓の声は、動揺故か震えていた。

「だって、私は何も着ない格好が一番綺麗だって、彼が言うから。
見せ付けろって。
それにっ、私、脱ぐと凄いって言ったでしょ?
だから、実際に脱いでるのっ。うー」

 律も羞恥で声が震え、顔が茹だった。
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 00:23:04.98 ID:RygLztCIo
 唯も紬も、声を忘れたかのように律の裸体に魅入っている。
梓も、もう反論はしてこなかった。

「もう、何さ、凝視しちゃってぇ。皆エッチなんだから。
さ、約束通り、彼氏を紹介するからね」

 まだ、澪から受けた指示を完遂した訳ではない。
呼ぶ前にもう一つ、やっておく事がある。

「本当に彼氏が来てるの?女子校なのに?
しかも何で紹介するのに脱いでるの?
まさかここで、挿したり抜いたり射ったりを始める訳じゃないよね?」

 律の裸体を無遠慮に眺めていた唯が、我に返ったように反応した。
律の裸体に関心を引かれはしたが、
律の恋人を見るという本来の望みも忘れてはいないらしい。

「それはしないよ。あ、分かんない
その予定はないってだけか」

 ここでの性交までは、澪から訊いたプランには入っていない。
だが、迫られれば断り切れまいと、避難用の窓を開け放ちながら律は思った。

「ちょっと、りっちゃん?
そんな格好でそこの窓を開けたりしたら、外の人にも見られちゃうわよ」

 紬が制止の声を上げたが、間違いなくそれが目的の指示だ。
外の人に見せ付ける、その為にこの窓を指定したのだ。
人が避難できる、即ち、人が身を乗り出せるサイズの窓を。

 準備は出来た。いよいよ、唯達に恋人を紹介する時が来た。
思えばこの時を、自分も相手も、ずっと待っていた。
その本願を邪魔していたジレンマが昨日、氷解したのだ。
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 00:23:55.87 ID:RygLztCIo
 律は息を吸ってから、叫んだ。

「私の彼氏は、みぃおだよっ。
入ってきて、私に空を飛ばせてっ」

 それが、合図だった。後方で、音を立てて勢いよく扉が開く。
律は振り返らず桟を踏み、開け放った窓へと身を乗り出した。
後方から、大股に歩く澪の足音が聞こえてくる。
向かってくるショートヘアの澪を、唯達も視認しているだろう。

 その唯達は混乱しているのか、何も言い出せていなかった。
何から口に出せば良いのか、整理も付いていまい。
それでも、律の澪が彼氏であるとする告白と、
短くなった澪の髪型が事実としてあるのだから、
サングの正体は言わずとも分かってくれるだろう。
今はただ、律と澪が付き合っている事だけ見届けてくれればいい。
細かい説明は、その後だ。
昨日、澪がベッドの上でそうしたように。

「りっちゃん、危ないわよ」

 窓に身を乗り出した律へ向けて、紬が叫んだ。
言いたい事、訊きたい事の山を脇に置いて、
喫緊のものとして律の身を案じてくれているらしい。
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 00:24:48.49 ID:RygLztCIo
「危なくなんかないさ」

 紬に応える澪の声が、近くから聞こえる。
直後、律は腰部を澪の両手で支えられていた。
絶対に落ちないよう、力強く掴んでくれている。
律は安心して身を前傾させ、両手を左右へ向け水平に広げた。
十字架へと磔にされた受難者のように。
或いは、タイタニックのローズのように。

 その時、ロサ・ブランコが胸部から落ちた。
両手を左右水平に伸ばした事で胸が開き、棘も抜けてしまったのだろう。
真っ赤な花弁を携えたバラが、地に向けて落下してゆく。
澪もパフォーマンスの一環か、ロサ・ブランコを幾度となく高所から落としている。
だが、その花弁はいずれも白いままだった。
花弁の色の変化は、自分が交わった証に他ならない。
これからも澪が欲するのならば、彼女のお気に入りの品種に色を添えよう。
自分の王である澪の、お気に召すままに。

「I'm the king of the World!」

 全校の生徒の注目を一気に引くような声量で、澪が咆哮した。

「りーっ」

 応えて、律も嬌声を添えた。

<FIN>
463.16 KB Speed:0   VIP Service SS速報R 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)