【安価】メルトホライズン

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28 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2016/08/11(木) 15:19:31.79 ID:Zy8j8MECO



平時の俺からすると、気が狂っていたとしか言えない行動だったと思う。



今朝、学校を失って滅びを感じた時に、俺はどこかで日常を諦めてしまったのかもしれない。
滅ぶと分かったら日常なんかもう要らないと、どこかで決めていたのかもしれない。
この時代で日常を捨てた人は、殺したり壊れたり死んだりする。たくさん見聞きしてきた。

俺にとってそれは、お茶を飲むという事だった。


カラン。


愛「ぁ、」


ごくっ、ごくっ、ごくっ。



愛「たつとっ、それ、あ」



俺は、桧山の唇に気付いていながら、飲み干した。
半円の窓、彼女の粘膜のあとに、触れ合わせながら。
なんで俺の喉が鳴っているのか、何を飲んでるのかもよく分からない。



龍人「ごちそうさま」

愛「ねえ、それ……」



桧山は知っている。
普段の俺はそんな簡単な事に気がつかない男じゃないし、気付いてたらまず飲まないと。





桧山は、よく分からない表情で俺を見ていた。
初めて見る表情とも言えた。

頬が赤い。目の焦点が合っていない。息が浅いか、止まっている。

そこに居る桧山は初めて見るもので、俺からすれば初めて知り合ったようなもので、友達ではなく熱っぽい女がそこに居る。





俺の飲んだお茶も、酷い動悸の作用を持つ飲んではいけないお茶だったのだ。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/11(木) 18:43:25.31 ID:Zy8j8MECO



愛「あ、あたしが口付けたって、知ってた、よね……?」

龍人「ああ」



愛「そっ、それはダメな方のイタズラでしょ! まったく、もー」

龍人「……」

愛「う……」

龍人「……」

愛「そ、その顔、やめて? 笑うとかふざけるとかさー、ね? なに考えてるか分かんないよ、ねえたつとっ」

愛「ねえ、たつと……」



愛「ヤケクソになっちゃダメだよ……」



龍人「!!」

身体が硬直した。

愛「怖いのは分かる。辛いのも分かる。分かってないように見えるあたしかもしれないけど、そういう嫌な気持ち……あたしだってあるもん」



見抜かれた。
俺の気の迷いが、目的を見失った男女の欲が、何から来ているのかを。

愛「あたしも、ホントはボロボロなんだよ。分からないだろうし、そう見えるようにやってきたけど。ずっと龍人に助けられてきたんだよ」



愛「直球言うけど……龍人は、溺れるつもり?」



振り回されているように見えた桧山が、今度は俺に詰め寄ってくる。
思わずたじろぐが、それ以上に俺に踏み入ってくる。
彼女はにじり寄り、そして俺の肩に触れた。




愛「あたし、ダメだもん……」

愛「ねえ、おねがいだよ……」




よく、分からない。互いに頭が浮ついていて、話の内容も自分の気持ちも……よく。
何を、願われたのか。
俺は、どうするのか。

(非常に、重要な選択だ。)

>>+2
1.桧山に溺れる。
2.溺れては、いない。
3.謝る。
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/08/11(木) 19:24:21.97 ID:tud5SerK0
Kskst
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/08/11(木) 21:11:40.04 ID:gbUUCphjO
1
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/11(木) 21:25:09.86 ID:Zy8j8MECO



肩に触れた、彼女の手を取った。



愛「たつと」

取ってから、それは縋るように震えていたと分かった。

愛「あたし、あたし」



そのまま手を引き、彼女を抱き留めた。



愛「龍人ッ……!?」



そんな、絶望したような声で言わなくたって良いじゃないか。

俺は悲しいよ。

惹かれたって、惹かれ合ったって……。



愛「龍人ダメっ、あたし龍人のことっ、大事だけど今はッ!!!」








俺は桧山を更に抱き、うるさい口を胸元に沈めた。
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/11(木) 21:48:05.29 ID:Zy8j8MECO



愛「ん、んう……!」



抵抗はするけど、離れはしない。
俺もそうだ。初めて「体の為」に抱き締めた桧山の感触に戸惑いこそあれど、離しはしない。



龍人「大丈夫だ」
愛「……! ん」



何がだろう。
俺には分からない。



龍人「大丈夫だ……桧山」
愛「たつと……」



大丈夫だ、もう大丈夫。
このまんまで、全部大丈夫だ。



愛「龍人は、大丈夫なの……?」



いつの間にか胸から抜けていた桧山が、問う。



俺はと言えば、
普段の彼女からは想像も付かない猫撫で声や
ふるふると揺れるまつ毛が分かる程の距離や
両腕の加減ひとつで意のままに感じられる柔肌と温もり
そんな、彼女には非情な事で頭がいっぱいだった。



龍人「おう、大丈夫だよ。」



愛「ああ……」

諦めたような声音のあと、桧山が抱き返してくる感触を味わった。
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/11(木) 22:05:54.72 ID:Zy8j8MECO


目的を持って、女と抱きしめあう。
それは恐ろしくキモチのイイ行為だった。

愛「ん、んう……」

柔らかい肉体。
甘い媚香。
とろける体温。


女性としてのステータスが欠けているように見えていた桧山の身体は、いや、とんでもない。


小さな胸が潰れるごとに、心拍が壊れ。
柔らかい毛先が首元をくすぐり、背筋を焼き。
腰を挟むように圧をかける太ももが、男の性を爆発させる。


小さい頃からの友人と、睦み合う安らぎ。
女の体臭と、甘く甘く香り始める本能。
耳孔を浸し身体を包み、彼女から働いてくる愛情。





初めてだからと言えばそうなのかもしれない。
とにかく、なんてことはない。
興奮しきっていた。





龍人「ひ やま」

愛「あい、って 呼んで……」



「んんっ……!!」



そのままの格好で唇を擦り合わせた時、幸福感が爆発するイメージに包まれ、頭が溶けた。
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/11(木) 22:24:27.82 ID:Zy8j8MECO


愛「んんっ、んっ、にゅううっ、んんぅ!」


唇の裏側がかすってしまった瞬間、お互いの本能が乾きより粘膜を求めた。
あっという間に頭の中がにゅるにゅるする事でいっぱい。
舌どうしがグルングルンと回り合う時、絶頂していないのが不思議なくらいの悦楽に浸される。


そのまま1分か2分か脳みそが絶頂する。



愛「んぅ、んぅ、んぅ、ぁんん、ぅぅぅ……!」



お互いの頭がこれ以上壊れないで済む、決まった舌の軌道に落ち着いてくると、
頭を焼く幸福よりも、内側から疼く深い快楽が制御できなくなってくる。



愛「んぅ、ぃう! にゅ、んん! んっ! ふぅん!」



彼女が鳴くたび、身体がおかしい。
わななく程の快楽が走る。
繋いだ唇から、脳裏にだけ響く声が電気信号のように襲ってくる。
しかも、だんだん積み重なってキモチ良さが大きくなる。


声で感じるなんて、あり得ないだろ……


そんな感想を抱き、もっと求めた。
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/08/11(木) 22:34:08.95 ID:Zy8j8MECO
全裸待機勢に申し訳ないので、今日は宣言して落ちます。
あと、彼らの行く末は決定しました。果てをお待ちください。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/08/11(木) 22:47:21.35 ID:0T+YdHvp0
そもそもこの>>1文章が分かりづらい
なんとなくミスった気配はするが
38 :ごめんなさいね [saga]:2016/08/12(金) 14:40:04.23 ID:mxMmMhfSO


半ば本能的に、彼女の首を更に寄せる。
唇は余すところなく密着し、体勢を崩した愛がこちらにもつれて、そのまま倒れる。


龍人「……!!……!」

愛「ぁ……」


ぐりっ、とめり込んだ愛の太ももが、俺の性器を甘く圧迫していた。



愛「♪」



愛の瞳に悪戯の色が混じる。
床にべったり背を付けた俺に、容赦なく覆い被さってきて……



愛「あん……ちゅ、う。ちゅう、ちゅ、ん、んむ、んふふ……」
龍人「……っ! ぅ、あ」



俺を抱き枕にしたまま、身体を揺する!
キスをする口内にも抜き挿しの刺激が混じり始め、女体からもたらされる上下運動は本能に抗いがたい。



愛「んっ、んっふ、んう♪ んにゅ♪ んふふ、ちゅぷ、」



ああ、声が笑っている。
この悦びがバレてしまっている……恥ずかしい。
気持ち良い。

気持ちが、良い。
甘い。やばい。
いつまでも味わいたい、続けていたい。

一緒に感じたい、愛と感じたい、
もっと気持ちよくなりたい、
求めたい、求めて欲しい、抱き締めたい、抱き締めて欲しい……!



愛「……! んっ、んう! ふ、ぁ、んにゅ! んっ!」



腕が自然に揺れ始める。
腰が勝手に揺れ始める。

愛の細い身体を揺らし、そのわき腹をすり、すり、とさする。性的に、情欲のままに。
優しく擦れると気持ち良いんだろ。俺も手のひらが気持ち良い。
密着してても気持ち良い。重みで潰れて気持ち良い。温もりだけでも気持ち良い。


お尻。
もも。
首筋。


愛「ぁあ、んっふ、ぁ! ぁう!」


思い付くやばいところを何度もさする。
密着した身体がぶるりと震えるたび、一緒に高まる気がしてくる。

愛の指先も、いつの間にか耳の裏側に侵入し、こそばゆく俺を掻き立ててくる。
意識が散漫になった唇に、愛情のこもったキスをせがんでくる。
そうだな、にゅるにゅるもたまらないな。気持ち良い、気持ち良くなれ、気持ち良い……!
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/13(土) 03:38:39.15 ID:UZK6BgByO


愛「ん! ふっ、うっく、ふぅん! んんう!」
龍人「……! っ、う、!! っ、う!」


抱擁。
キス。
愛撫。


自分の悦ぶ事をして。彼女の喜ぶ事をして。
極上の3つを同時に味わい、5分もする事には、お互いとろけきって、切羽詰まって、疲弊していた。
これ以上このままだったら、身体も心も保たない。
この子とハグしているだけで、絶頂に連れて行かれそうなのだ。


龍人(もっと欲しい)


彼女が欲しい。
愛が欲しい。


愛「ぷは……ぅ」


お互いの舌から、つう、と糸が引く。
愛の潰れたおっぱいが、どっ、どっ、と鳴り始めた。
ああ、俺もだ。どうしようもなく興奮する。


愛「ねぇぇ……たつとぉ……」


背中から手を回し、愛の素肌に触れた。


愛「!!! あんっ!!」


愛は冗談みたいな声を上げた。
その時、俺の何かがプツンと切れた。


愛「あっ、たつとっ! ひぁ、ああ!! きゃ、ね、ねえこれ、うそ、あああ!!」


脱がす。
肌を揉む。
襲う。襲う。
脱がす。
愛する。
愛を注ぐ。
ねぶる。
抱き締める。
大切に想う。
愛しく想う。
腰を押し付ける。



……

頭が苦しい。

酸素を吸うと、ほんの少しだけ理性が返ってくる。

愛「たつとぉ……たつとぉ……」

そこには、裸に衣服を引っ掛けたままの、とろけきった愛がいた。

この甘い少女を抱いたら、どれだけ気持ちが良いのだろうか?

龍人「……!」

その疑問を抱いた時、俺は答えるより先に脱衣していた。もう制御が効きそうにない。

愛「ぁは……おっきい……♪」

愛が、俺の性器を物欲しげに見つめる。
おっきかったら痛いだろうに。
優しく、愛して抱こう。


そんな事を考えるので、人生最後の酸素を使い切った。
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/13(土) 04:02:02.07 ID:R4wfgvRr0



………………



EX Day

level
minus 0.8m.






あれから


もう


どれだけ彼女を抱いたか、覚えていない


俺が最後に見たのは、


エメラルドの水平線で


共に躰を揺すり合う


俺の愛だった





産声が、ふたつ消えた。
http://i.imgur.com/CbxeYQp.jpg






まことの道を辿るには、己の結末と向き合い、その所在を RmC5d8C と書き換えよ
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/08/13(土) 14:01:45.76 ID:SVWewu8tO
>>27を1に変更でリスタート
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/14(日) 09:06:25.26 ID:rIUQyY5dO



特に意識する事もなく、口の付いてないコップを取る。
喉を通る冷たさを、気持ち良く嚥下した。



愛「ほう、いい飲みっぷり」

龍人「たまらんねえ」

愛「んく、んく、んく」



桧山は腰に手を当て、コップを逆さまになるまで傾けていく。
うなじを堂々晒しながら、ごくごくと動く喉を見守った。



愛「ぷああ゛〜っ!!」

龍人「やめい親父くさい」

愛「うえっへっへ、たまらんのう」

龍人「お前の親父像がそれだったら、透さん泣くぞ」

愛「知らんしあんなん!」


桧山は、飲んだものの代わりのように不満を吐き捨てる。
しかし、とても言いにくそうに口を開いた。


愛「お父さんがね。今週で店閉めて、次の連絡船で常無島出ようってさ」

龍人「……」

愛「本州で、やりくりするアテがみつかったんだって。借家も借りれるから、そこに行こうって」



俺や静流とは違った。
子供を守る事だけを考えている、親の鑑だった。
何を、怒る事があるのだろうか……?
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/14(日) 13:20:30.11 ID:x+yAPW2G0


静かに、深い怒りを湛えたまま、続ける。


愛「あたし、そしたら龍人としずちゃんにも予定を聞いてくるねって。一緒に行くって言ったの」

龍人「……桧山」

愛「でもね、お父さん」







愛「彼らは、ここで死ぬ気だよ」







愛「って。」

信じられない信じられないとでも言うように、頭を振る。

愛「そんなこと、ないよね。これからも、付いてきてくれるよね?」



静流と俺は、何も言わずとも、互いの事を知っていた。
振る舞い、オーラ、眼差しから、互いの覚悟を感じ取っていた。



俺たちはここで死ぬつもりで。
桧山とは、行けない。
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/08/14(日) 14:52:09.50 ID:rhpuhy7No
この文の感触大好き

期待
45 :ありがとうございます [saga]:2016/08/14(日) 18:21:12.05 ID:x+yAPW2G0


愛「……」


桧山が怒っているのは、透おじさんがこれからも共に行けると思っていた俺たちの事を邪険にしたからと、そう感じているからだろう。

だが、静流と俺は違う。歴史からここでドロップアウトする。



龍人「桧山」

愛「……」

龍人「俺たちは、沈
愛「馬鹿言わないでッ!!!」



答えを告げた時、呆然とした様子も無く激昂したのは、既に答えを感じていたからだろう。
俺が、桧山が告げたがっていた事を察したように。



龍人「……悪いな」

愛「悪くない! 悪くなんてないから、理由を聞かせてよ!!」

龍人「永らえる事に価値を見いだせない。本州に蔓延る、今の常世で生きたくない」

愛「あたし、馬鹿なの。知ってるでしょ、分からないように言わないでよっ、逃げないでよっ」

龍人「沈む事に怯えて、誰かを下に引きずり下ろし、上へ上へと行きたがる。俺たちはそんな場所に移り住んだって……ダメなんだ」

愛「……蜘蛛の糸?」

龍人「馬鹿のわりにモノ知ってるじゃねえか……まあそれだ」

愛「龍人もしずちゃんも、人の糸にはすがらないし誰かを蹴落としたりはしない。あたしが保障する」

龍人「その糸は、まさに連絡船って呼ばれてるんだっつの。自分が滅ぶと分かって心を壊してしまった人たち皆が、死んでから掴みたいと分かった糸だ。」



龍人「桧山……きっとお前になら分かるだろ? 壊れてしまった人たちこそが、むしろ生きたかったんだ」



愛「……」

龍人「……」

愛「……………………」

桧山は顔を伏せ、動かなくなってしまった。
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/14(日) 23:54:14.64 ID:rIUQyY5dO




愛「間違ってる」


桧山が不意に静寂を破った。
強い言葉ながら、存外感情的な色が見えない。



愛「死んでから掴みたかった糸を知っているのに、どうして死のうとするの。おかしいじゃん」

龍人「死に急いでるのとはワケが違う! 誰かの筈の居場所を埋めてまで、移りたい世界が無いんだ!」

愛「……。そんなに、本州が怖いの?」

龍人「こわ、怖くなんかっ……!!」



いつの間にか、俺の息が荒い。
立場が先と逆転している。



愛「怖いよ。あたしも。」

愛「お父さんが連れてくれる新しい場所……どこかもわからないし、土地や住所の問題だけじゃなくて隣近所に何が居るかもわからない」

愛「お父さんの腕が外で如何程か分からないけど、あたしも働かなくちゃいけないかもだし」



本州の情報、情勢については島に届く限られた電波の中で知り得る事だ。
しかしながら、その限定的な情報でさえ崩壊・滅亡する社会のひずみをありありと伝えてくる。
桧山も知らないという事はないだろう。

まともに働いてまともに飯が食えるかも怪しい。
俺たちには力も無ければ自己も無い。
内外の混沌に耐える依り代も無い。


仮に一緒に行っても……俺は桧山の友人としてその依り代には成り得ない。弱すぎるのだ。


愛「そもそも。」
愛「龍人としずちゃんが似片寄ってるとは言えど、龍人の理屈の半分はしずちゃんの借り物でしょ?」

龍人「……。確かに、そういう見方もあるわな」

愛「あたしが見る限りはそうなの。しずちゃんも同じ、龍人の思う事言う事が半分は入ってると思うな」



訂正しよう。
この少女が馬鹿だなんてとんでもなかった。
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/15(月) 00:14:45.37 ID:V5WVJCnfO



愛「龍人。しずちゃんにもう一度聞いてみた方が良いと思う。ハッキリと、正直に」

愛「龍人としずちゃん、すごく近しいけど同じじゃないんだよ?」

愛「龍人もそう……しずちゃんの事を抜きにして、ちゃんと考えた方が良いと思う」



…………


桧山が部屋から消えて、飯を作って帰ってくるまで、俺は何も考えられずに呆けていた。
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga sage]:2016/08/17(水) 12:04:40.04 ID:VXqaIlHuO


…………


透「お、もう良いのかい?」

龍人「はい、用は済みましたから」

透「今、外暑いから気を付けてね」

龍人「はい、お邪魔しました」





透「話したんだね?」

愛「どうして分かったの?」

透「ふたりの顔見りゃ、分かるよ」

愛「……。ピーク過ぎたでしょ、お皿洗ってくる」

透「はいはーい」
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/17(水) 17:55:49.68 ID:VXqaIlHuO


ミーンミンミンミン……


龍人「……」

せっかくの好物、桧山家のハンバーグも食った気がしない。



『しずちゃんの事を抜きにして、ちゃんと考えた方が良いと思う』



静流は……家に居るだろう。
この暑さの中、ひとりで出掛けるタチではない。



……ひとりで、か。
何をするにもというわけじゃないが、確かに俺の思考と静流が切って離された事はあまり無いのかもしれない。



さて、俺は南区と中央区の境で固まっていた。今は独りになりたいが、どうしたものか。


(この選択は、少し重要だ。おおごとにはならない)

>>+1
1.諦めて帰宅する
2.家を通り過ぎて、海へ散歩
3.北へ戻り、漁港の方へ
4.今だけは本当にひとりになりたい
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/08/17(水) 17:56:39.41 ID:A/fCVv+wo
5
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/08/17(水) 17:57:06.11 ID:A/fCVv+wo
すまん間違えた2
52 :おk [saga]:2016/08/17(水) 18:14:16.37 ID:VXqaIlHuO


ミィーンミンミンミン……


龍人「ぐぅ……」


流石に日差しが辛すぎる。
エアコンの効いた家は諦め、次善の策として気温の低い海岸へ向かうことにした。




……………………


ザァ……

今日の波は穏やかだ。
誰が空けたのかも覚えていない家屋の陰で、涼を取る。

コンクリートは熱いが、腰は下ろしたい。




「やっほ、お兄さん。涼みに来たの?」




静流とも桧山とも違う、友人の声がした。
汗が引くどころか増えかねない、ぞわっとした悪寒を伴って。



龍人「……ああ。久しぶりだな、白鳥」




振り向くと、そこには生気のない色白の少女がいた。
肩にツイてる。


「びっくりした?」

龍人「慣れたわ」

「手で払わないでよ。汚くないよ」


その少女は、白鳥由紀(しらとりゆき)と言う。
この辺に漂う地縛霊だそうだ。
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/18(木) 12:35:10.41 ID:zDdx1apcO


足の先こそ無いが、同じように脚を伸ばして隣に腰掛ける。


由紀「どうしたの、お兄さん。元気ないね」

龍人「ああ……色々とな」

由紀「ふーん」



白鳥は俺の視線の先を追った。
不透明なエメラルドの海が、陽光を受けキラキラと揺れている。

俺はこのメルティウムと化した、劇物でもある海が……実は好きだ。



由紀「お兄さんにも悩み事ってあるんだ」

龍人「おい、失礼だな?」

由紀「だって、いろいろ頓着しないように見えるし」



白鳥は、2年前に自殺して亡くなった。
理由は……この世界でわざわざ言う事でも無い気がする。

彼女は、どうも俺にしか姿が見えず、声も聞こえない。誰かといるとどこかへフラフラ消えてしまう。
生きていれば丁度俺と同い年であったが、妹のように扱っていた。



龍人「バーカ。さっき、お前の事を話してた頃だよ」

由紀「うえっ? マジ?」

龍人「色々隠して、だけどな。」



壊れてしまった人こそが、掴みたかった糸。
あれは当てずっぽうな思想で口にした訳ではなく、先達者として佇む、隣の少女を思って出た言葉だ。
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/26(金) 20:54:24.49 ID:eJ9Fl88GO



龍人「……沈み始めたな、白鳥」

由紀「そりゃ知ってますよーだ。わたしの方がずっと長く海見てるんだよ」

由紀「他に見るものないもん。せいぜいお兄さんくらい」



せいぜいとはなかなかだ。せっかく、少し心配したのに。

この地に囚われた彼女は、死の恐怖に怯える事のない代償として糸に縋る権利を失った。
命があるかどうかに関わりなく、すぐ沈むかいつか沈むかの選択肢を失う事は、この世界で苦しい事だと思う。



龍人「まあ、せいぜい困ったら言えよ」

由紀「……」



海と俺しか見ないのであれば、海に悩みを吐くわけにもいくまい。



由紀「そんなもやもや顔で、優しいっぷりして」

龍人「悩んでない奴なんかいない。俺もだ」



俺も逝くとは言わなかった。
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/09/07(水) 19:12:48.82 ID:Cvnh7lTzO



龍人「お前さ、もしもだよ? 幽霊でも船乗れるとしたら、連絡船乗って本州行きたいか?」

由紀「えっ? 行きたいワケあると思います?」


……疑問系で返されてしまった。愚問なのだろうか?


由紀「まず向こうにわたしの欲しいものなんか無いですしー……えーと、落ち着ける土地も恐らくないし?」

由紀「今さら何かを見に行く事も無いし、興味もわきませーん。大体、本州が魔境だって知っての質問?」

龍人「ああ、悪いな。お前テレビ見てないだろうけど、お前が知る頃より更に酷くなってるよ」



ニュースで、自殺者数と殺害件数が折れ線グラフに出来るくらいには酷い。
こないだのピックアップされてた月は……31000人だっけか?



由紀「あらそうですか、バカですかー。もう。そんなところにおっ飛ばしたいだなんて、わたしお兄さんに嫌われてるのかな」

龍人「べっつに、そうじゃねえよ。お前となら船乗っても良いかなって思っただけ」

こいつが地縛霊なのは聞かされているので、この会話は最初から冗談だ。

由紀「あっ? え?」


それでも少し嬉しそうな顔を向けてくれた時、取り消すに取り消せなくなったのだ。


…………
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/09/07(水) 19:46:19.68 ID:x8BBIQPao
きたか
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/09/07(水) 20:44:06.07 ID:Cvnh7lTzO


龍人「んじゃ行くわ、ありがとな」

由紀「あ、行っちゃうの?」

龍人「悩みが晴れたわけじゃねえけどな。家に帰るくらいにはマシになった」

由紀「そっか、また来てねお兄さん」



手をヒラヒラさせて、踵を返す。



由紀「おにーさーん!」



幽霊らしからぬ大きな声。



由紀「お兄さんは、向こう行くのー?」



向こうに行く、か。
こっちに来るのとは言われていないが、究極的には同じだ。


重ね重ね、白鳥の姿や声は他の人間には認識できない。不審なので、大声で答えるのは一度きりだ。


龍人「……すぅ」





(この選択は、後出しジャンケンのようなものだ。おおごとにはならない)

>>+1
1.いくぞー!!
2.いくいく!!
3.(答えない)
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/09/07(水) 20:52:43.79 ID:zQb6kP+lo
3
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/09/07(水) 21:01:53.50 ID:HgPXHkJW0


龍人(……いや)


あらぬ誤解を与える必要はない。
吐くために吸った息を無駄に吐いた。




白鳥「……」

もう一度手をヒラヒラし、海辺をあとにした。


………………



白鳥「お兄さん……」

それも誤解を生むとは知らずに。
60 :氏名は名前で書いてるの忘れました。白鳥由紀です。 [saga]:2016/09/07(水) 21:11:48.09 ID:Cvnh7lTzO


ガチャ


龍人「ただいまー。静流ー」


返事はない。
時刻は2時ごろ、静流は昼寝でもしているかもしれない。





階段を上がり、自分の部屋のエアコンをつけてから無造作に静流の部屋へ侵入した。





……





静流「す…………す…………」



静かな、ごくごく静かな呼吸。
静流は寝ていた。

龍人「……」

特に珍しい事ではなく、休日に暇であれば静流はすぐ寝てしまう。
体質に問題があるわけでもないので、単にベッドで安らぐのが好きなだけだろう。




静流「す…………す…………」




俺はベッドの横にもたれ、静流に背を向けながらその呼気を聴いていた。
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/09/07(水) 21:27:09.20 ID:HgPXHkJW0



……




龍人「……」

呼気が変わった。




もぞ。

静流「あ……いたの。たつと」

対して驚いた風でもない。

龍人「居たよ。ただいま」

静流「ん、おかえり……」



もそりとベッドから起きる静流。
長髪が立ち上がり、優美な曲線を描く。



静流「なに。待ち伏せでもしてた」

龍人「いんや、別に。」

そのまま起床しようという静流のお腹に手を置き、制する。

龍人「寝てたら?」

静流「な、なに。どうしたの」

龍人「なんもしないよ……」

昨日までは貴重な昼下がりで、今日からは毎日過ごせる昼下がり。
静流と過ごすのは悪くない。

静流「……嘘つき。なんかあったから、わたしの所に来たんでしょう」

バレていた。
まあバレるだろうとは思っていたが、やはり敵わない。





龍人「分かった、言い直す。そこに居て、姉ちゃん」

静流「ん」

この返事が好きだ。
何の感情も乗せず、肯定も否定もせず、ただ了解しただけの、静流の返事が。
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/09/12(月) 12:29:39.83 ID:lJZ27BzCO



閉じ込めた静流の体温が温かい。
ゆるやかに冷風を吐く部屋の中で、手を置いた布団だけが有機質である。

龍人「……」
静流「……」

何も言わなければ何も言わないでくれる温もりが、俺の疑問を拒むことがあるだろうか。
怖がらずに打ち明けてみる決心がついた。



龍人「静流」

静流「……どうしたの」

龍人「静流は……常無島に残るの?」



静流は、窓の外に視線を移した。
海が見える。


静流「どうしよっかな」


静流は少し困ったように、笑っていた。
蕎麦かラーメンか悩む程度のように。


静流「わたしも、まだ決めてない」

龍人「……」

静流「龍人?」


俺はというと、少し驚いたというか裏切られたというか、アテが外れたような気がして、呼びかけに応えるのに時間を要した。

静流は、俺と逝くのではなかったのか?


龍人「いや、なんか」

静流「……。どっちだと思ってた」

龍人「沈むものかと」

静流「まあ、そう見えるかもね」


かもではない。そう見えていたのだ。
俺が静流に理解されているくらいは、俺も静流を理解していると思っていた。
あるいは、理解しているが故に気持ちの隠し方も知っているのか。




静流「……龍人は沈むつもりなの?」

龍人「俺は……。……」

沈まないなら本州に向かうよりない。それは俺の望まない事だった。
しかし俺死にますと言うのは難しい。桧山には濁して言えたのに。

言葉に詰まると、静流の腹部に置いていた手に両手が添えられた。
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/09/12(月) 17:59:43.56 ID:lJZ27BzCO



静流「それじゃ、聞き方変える。龍人は沈むのが嫌?」

龍人「沈んで、それで、楽になるなら」



静流「違う。……じゃあいいわ、龍人死にたい?」



手がキュ、とわずかに握られる。
ふと、静流の顔を見た。硬い。

恐ろしい質問は、投げかける側だって怖くないわけがない。
その手から伝わる恐怖こそが静流の望む答えを示していて、俺が出すべき答えでもあった。


龍人「死にたくない」

静流「わたしも」



そこは双子だった。純粋な気持ちで言えば死にたい理由なんてどこにもないのだ。

龍人「ふふ、そうだったわ」

静流「そうよ」

これなら気楽に今後の事を話せる。






龍人「なあ静流、桧山ん家が次の船で出て行くとよ」

静流「え。本当?」

龍人「ああ。透おじさん、向こうでアテが付いたんだと」

静流「ついに、か……」


静流はある程度は予見していたらしい。
姉ちゃんは、俺だけでなく色んなところでどうにも察しが良い。
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/09/16(金) 12:44:11.69 ID:fyL/wtqCO


静流「それで、わたしたちはどうしよっかって?」

龍人「そう。現実、片方で動くわけにもいかないだろ」


片方。
自然にその言葉をチョイスした事が、桧山の言う通りである証拠なのかもしれない。


静流「そうね……」


静流は、俺と同じく思っているのだろうか?
逆に、桧山は何を思っているのだろうか、静流と何が違うのだろうか?





静流「喉乾いたから、下行かせて」

龍人「あ、ああ」

龍人も、もう少し考えたら。
そんな言葉を付け足され、それ以上の答えは先送りにされてしまった。
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