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瀧「22歳童貞です」三葉「25歳処女です」
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage saga]:2016/09/18(日) 03:18:48.42 ID:hIKyFdbm0
君の名は。のアフターSSです
ひたすらゲロ甘なんで、そういうのが苦手な人は注意
少しきつく締めていたネクタイを緩めながら、俺は逸る気持ちを抑えるように電車の窓から外の景色を眺めていた。
柔らかなオレンジ色に染まっていく街が見える。
ビルの群れの向こうに沈む夕陽のまぶしさ。
そして、まばたきの次の瞬間には夕陽が雲に隠れて、ただでさえ不確かで不条理な世界の境界が朧な形を作っていく。
光と影が混ざり合って、街の明かりと夜の闇と夕陽の光が不均等に混ざり合わさって、自分という存在さえ不確かになっていくような感覚。
こんな時間帯のことを何と呼んでいたっけ?
黄昏――誰そ彼――彼は誰……
瀧「いや、違う」
俺は無意識のうちに呟く。
カタワレ時だ。
『彼女』の住んでた地域に伝わる古い呼び名。
俺には聞き慣れない言葉のはずなのだが、この呼び名に不思議と違和感はなかった。
むしろ、ずっと昔から使っていたような、そんな――って、俺は何を言ってるんだ。
生まれてこのかた、旅行以外で東京を出たことがないってのに。
っていうか、何で俺、『彼女』の出身地のことなんて知ってんだっけ?
ふいに沸いた疑問が俺の頭の中をもたげる。
『彼女』と出会ったのは今朝がたのこと。
それもほんの少しだけ話して連絡先だけ交換してすぐに別れてしまったんだから、俺が彼女の出身地のことなんて知っているはずなんて――ないはずなのに。
瀧「これから会うんだよな」
スマフォを取り出し、画面に表示される『彼女』の連絡先を何度も何度も確認する。
もう、消えたり、忘れたりしないよな?
自分でもわけのわからない不安に駆られながら、俺は彼女に電話しようとして、結局やめる。
電車内での通話はマナー違反だ。
大体、夢じゃないんだから『彼女』の連絡先が消えたりするわけがないし、俺が『彼女』の名前を忘れたりするはずがない。
瀧「みつは……宮水三葉」
どこか懐かしい思いに浸りながら、『彼女』の名前を大事に大事に呟く。
うん、覚えてる。
忘れたりするわけがない。
もう絶対に忘れたりするもんか。
わけのわからない不安に駆られる自分が馬鹿らしくなり、俺は焦燥を打ち消すように首を振った。
これから俺は彼女と会うんだ。
そのための約束もした。
した……よな?
俺は不安になり、スマフォをいじる。
『突然、不躾ですが、今夜、大丈夫でしょうか?』
昼休み、『彼女』に送ったメールを確認。
『はい。待ち合わせは四ツ谷駅前に十九時でどうでしょう?』
『彼女』からの返信。
四ツ谷駅前。
そういえば五年前、それと何か月か前の先輩との待ち合わせの時も四ツ谷駅前だったな、なんてどうでも良いことを思い出しながら、俺は了承のメールを送った。
あと、もう少しで『彼女』とまた会える。
あの声を、空気を、温かさをまた感じられる。
『彼女』のことを思うだけで、いつの間にか胸の奥に空いていた空洞が満たされていくような感覚。
俺はずっと、『彼女』を、一人だけを探していた。
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage saga]:2016/09/18(日) 03:19:44.23 ID:hIKyFdbm0
改札口を出て、駅前の広場へ小走りに向かう。
待ち合わせの時間は十九時。
今はまだ十八時四十分。
約束の時間まで二十分以上あるんだから、急ぐ必要なんてないのに俺は逸る気持ちを抑えられなかった。
いや、本当は会社にいるときもずっと心は『彼女』のもとへ向かおうとしていた。
なのにそうしなかったのは、ギリギリで俺を拾ってくれた会社への恩義からか、あるいは『彼女』がそんな無茶を望まないことを俺自身が知っていたからか。
そう。
俺の知っている『彼女』は――
いた。
まだ二十分前だってのに『彼女』はそこにいた。
どこか不安げな表情で俯きながら。
俺は『彼女』を見つけた瞬間、言葉にならない安堵で朝に続いてまた泣きそうになる。
これまでの人生で一日に二度も泣いたことがあっただろうか?
『彼女』とこうしてまた会えた奇蹟。
泣きたくなるほど、それが嬉しかった。
彼女がふいに顔を上げる。
その視線が俺を見つける。
次の瞬間、彼女の不安げな表情は安心したような、ほっとしたような表情へと変わる。
そうして、俺は気付く。
『彼女』も同じだったんだ。
ずっと探していた。
だれかひとりを、ひとりだけを。
瀧「えっと、遅れてすみません。待ちました?」
三葉「……い、いえ、今来たところです」
『彼女』は、三葉は顔を真っ赤にして手を振った。
すぐにわかる嘘だった。
この様子だと三十分以上、待っていたんじゃないだろうか?
もしかしたら約束の一時間前にはもうここにいたのかもしれない。
そのことに対して申し訳ない気分になったものの、同時に嬉しくもなる。
どうしてそんな気持ちになるのかわからないが、相変わらず変なところで律儀な性格なんだな、なんて思いながら俺は彼女に手を差し出す。
瀧「それでは行きましょうか」
三葉「えっと……」
彼女は俺の手に視線を向けたまま少し固まっていた。
その反応に俺は自分のやっていることの大胆さに気付く。
会ったばかりの女の人の手をさっそく握ろうなんて、どんだけ餓えてんだよ。
これじゃ完全なナンパ野郎じゃねえか。
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage saga]:2016/09/18(日) 03:20:15.89 ID:hIKyFdbm0
瀧「す、すみません。そ、その、これはそういうつもりじゃなくて……」
しどろもどろになりながら俺が弁明していると、
三葉「はい、これでいいですか?」
彼女の柔らかな手が、引っ込めようとした俺の手を握っていた。
瞬間、心臓が早鐘を打つ。
彼女の存在を身近に感じられて、涙が出そうになる。
このまま精神がどこか別次元にトリップしそうな勢い。
三葉「あの、瀧く……立花さん、大丈夫ですか?」
彼女の怪訝そうな――俺のことを『立花』と呼ぶ声を聞いて正気に戻る。
瀧「え? あ、す、すみません」
さっきから謝ってばかりだな俺。
なんて思いながら、なんとなく寂しい気分になる。
彼女の口から『立花』なんて他人行儀な呼び方をされるなんて。
普通ならそれは当然のことで、そうしないことこそがおかしいはずなのに。
瀧「あの、俺から誘っといて何なんですけど、三葉……」
俺の言葉に彼女は一瞬、期待したような表情を浮かべ、
瀧「……宮水さんはイタリアンとか大丈夫ですか?」
とっさに言い直すと、落胆、そして何かを言いたそうな表情に変わった。
あれ?
俺、何か間違ったのか?
無意識のうちに彼女の名前を呼ぼうとして言い直しただけだ。
そりゃそうだろ。
出会ったばかりの相手の下の名前をいきなり呼ぶなんて、それが俺にとってどんなに自然なことに感じられても失礼すぎる。
だから、これは正しい判断のはず――本当に彼女と出会ったばかりなのか?
突如として、湧き上がる自問。
俺はずっと前から、ずっとずっと前から君を知っていたような――
三葉「立花さんにお任せします」
彼女の声に俺の思考は中断される。
俺が顔を上げると、彼女の顔に浮かんでいた落胆の表情は消えていた。
瀧「そ、それじゃあ、行きましょうか」
彼女の柔らかな手を握り、その暖かさに安堵しながら、けれど何かが違うと心のどこかで感じながら、俺たちはカタワレ時の終わった夜の街に向かった。
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage saga]:2016/09/18(日) 03:20:44.44 ID:hIKyFdbm0
瀧「あの、今朝は……本当にすみませんでした」
三葉「い、いえ、私の方こそ」
歩きながら俺たちは互いに謝り合う。
自分でもどうしてあんなことをしたのかわからなかった。
けれど、それは彼女も同じだろうという確信がある。
ただ一つだけ確かなのは俺たちは出会うべくして出会ったということ。
瀧「宮水さんを見たとき、ずっと探していた人を見つけた気がして、気が付いたら――」
三葉「うん、私も。立花さんを見たとき、ずっとずっと探していたのは君だったんだって、もう気付いた時には走ってて」
互いに気恥ずかしくて、少しだけ相手から目を逸らして、けれど手を繋いだまま歩く。
ああ、これじゃ付き合いたての中学生みたいじゃないか。
いい大人が情けねえ。
こんなとき、自分の恋愛経験の少なさが嫌になる。
俺はちらりと彼女に目を向ける。
すると彼女もちらりとこちらに目を向けていた。
互いの視線が重なり合う。
俺たちは慌てて視線を逸らした。
駄目だ、心臓がバクバクする。
奥寺先輩とデートした時とはまるで違う感覚。
自分が自分でなくなって、どこかに飛んでいってしまいそうな、でも意外と嫌な気分はしないどこか満たされるような感覚だった。
瀧「その……髪飾り、組紐……綺麗ですね」
つっかえながら、俺は言う。
瀧「すごく、似合ってます」
もうちょっとスマートに言えたらいいのに、俺はどうしてこう上手く言えないんだろう。
三葉「お気に入りなんです。理由はわからないけど、すごく大切な物な気がして、ずっと使ってるんです」
瀧「俺も同じ組紐持ってたんですよ。いつの間にかなくしちゃってたんですけど」
遠い昔、もう思い出せないけど誰かにもらった組紐。
それを俺は左手に巻いていたが、気付いたらいつの間にかなくなっていた。
五年前、飛騨に行ったとき、誰かに渡したような気もするが、あの時の記憶は曖昧でよく覚えていない。
ただ組紐をなくした喪失感はなくて、むしろようやく持つべき人に返せたという気持ちだけが残っていた気がする。
三葉「私もこの組紐、誰かに渡したことがある気がするんですけど、気が付いたら私の手元に返って来てて、あれって何だったのかな?」
俺は、俺たちはその答えを知っているはずなのに、互いに疑問符を浮かべたまま何も言えなかった。
けれでそれはなんだか嫌な気がしなくて、そのことがなんだかおかしくて、
瀧「はは、何なんですかね」
三葉「ふふっ、何なんでしょうね」
俺たちはいつの間にか笑い合っていた。
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage saga]:2016/09/18(日) 03:21:17.18 ID:hIKyFdbm0
瀧「この店なんですけど……」
俺が彼女と向かったのは高校のころバイトしていたイタリアンレストランだった。
選択肢なら他にもいろいろとあるはずなのだが、彼女なら絶対にこの店を気に入ってくれるはずだという、理由のない確信があった。
三葉「全然変わってない。なんだか懐かしい……」
しみじみと感慨深く彼女が呟く。
瀧「懐かしい?」
俺は勝手に彼女がこの店を知らないと決めつけていたが、東京に住んでいるんだから、来たことがあったとしてもおかしくなかった。
三葉「え? あれ? 私このお店に来たことないはずなのに、何でだろ?」
わずかに戸惑うような声を上げたものの、彼女はすぐに顔を上げる。
三葉「行きましょう、立花さん」
瀧「あ、はい」
返事をしつつ、俺は、俺の体はなんともいえない感覚に囚われていた。
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage saga]:2016/09/18(日) 03:22:04.20 ID:hIKyFdbm0
相変わらず、レストランは繁盛していた。
あの頃の俺と同年代くらいの男子たちがてんてこ舞いといった感じで、店内を右往左往している様は何というか、先輩として見ていて微笑ましかった。
瀧「宮水さん、どうですか?」
三葉「美味しい……このお店の料理、こんなに美味しかったんだ」
料理を口に運ぶ彼女の表情は新鮮な驚きに満ちていた。
かく言う俺も何か月か前、この店に来たとき初めてメニューを頼んだんだが、その時の反応は彼女と全く同じだった。
瀧「バイトのまかないは給食みたいでパッとしないくせに、客に出すメニューだけこんなに美味いなんて詐欺ですよね。もうちょっとまかないも美味かったら、俺だってバイト続けてたのに」
三葉「そうそう、そのくせシェフは早く食べて仕事しろってうるさくて――」
瀧「確かに。バイトの先輩たちは先輩たちで、奥寺先輩とちょっと仲良くしようものならすぐに文句言ってくるし」
三葉「あー、奥寺先輩、大人気だったもんね。でも、女の私の目から見ても綺麗やったし仕方ないかなーって」
瀧「あっ、そうそう、その奥寺先輩なんだけどさ、結婚するんだぜ」
三葉「えーっ、それ本当!?」
店内だってのに大声を上げて、他の客の注目を集める三葉。
はは、落ち着いたように見えて、そういうところは相変わらずなんだな。
三葉「ちょっと、それ初耳なんだけど、瀧く――あれ?」
疑問符を浮かべる彼女の表情に、俺もようやく疑問が頭をもたげる。
どうして彼女がこの店のことを、奥寺先輩のことを――
瀧「宮水さん、大丈夫?」
三葉「ご、ごめんなさい。私、ちょっとお手洗いに」
席を立ち、彼女は言った。
瀧「この店のトイレは少しわかりにくい場所にあって――」
三葉「うん、知ってる」
俺が声を掛けるよりも先に、彼女は店の隅にあるトイレにまっすぐ向かっていった。
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage saga]:2016/09/18(日) 03:22:35.00 ID:hIKyFdbm0
トイレから戻ってきた彼女と俺は色んなことを話し合った。
彼女は俺よりも三つ年上で、あの隕石落下の被害を被った糸守町の出身だという。
確かにそれは驚くべきことだけど、出身のことよりも俺は彼女が自分より年上だということに驚きと同時に、納得のいかない感情を抱いていた。
無意識のうちに彼女が自分と同い年だと思っていた俺が悪いんだが。
確かに彼女の落ち着いた雰囲気は社会人一年目の俺と比べても数段上だった。
そうか、よくよく考えれば奥寺先輩とほとんど歳が変わらないんだし、当然だよな。
だから彼女に対して、たまに自分の口から出そうになるタメ口に俺は戸惑っていた。
話が盛り上がった時や相槌を打つとき、思わずタメ口になってしまう。
奥寺先輩の時はこんなことなかったのに、彼女の時だけ、どうしてこんな口が軽くなってしまうんだろう。
まったく不思議な感覚だった。
瀧「――そういえば、宮水さんの糸守の知り合いって、結構こっちに来てるんですか?」
三葉「少しずつ糸守の近くに戻ってる人もいるみたいですけど、東京に完全に根を下ろしている人もちらほらいますね。私の幼なじみもこちらで結婚するみたいですし」
瀧「へー、テッシーとサヤちんがようやくかー」
俺は坊主頭のひょろ長い青年のタキシード姿と、前髪ぱっつんお下げの小柄な少女のウエディングドレス姿を想像して、何ともいえない懐かしさとあまりの似合わなさに吹き出してしまう。
そっか。
あの二人、結婚するのか。
奥寺先輩の時とはまた違った感慨深さだった。
三葉「あの、立花さん」
どこか困惑したような表情を浮かべて、彼女は俺の名前を呼び、
三葉「私、二人の名前、言いましたっけ?」
瀧「え? あれ?」
言ってなかったけ?
でも、そうでなきゃ俺が彼女の幼なじみのことなんて知ってるわけがないし。
三葉「あ、そうだ。私のことばかりじゃなくて、立花さんのことも教えてくださいよ」
瀧「そ、そうですね」
堂々巡りに陥る前に、彼女の提案に俺は乗ることにした。
この奇妙な感覚を追及してはダメだ、と直感が言っている。
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage saga]:2016/09/18(日) 03:23:26.37 ID:hIKyFdbm0
そうして、どれくらい話しただろうか。
俺の東京での生活、五年前の飛騨への旅行のこと。
彼女の糸守での暮らしの苦労――地元の有力者の後継ぎとしての重圧とか、周りの目が嫌だったこと、でもそんなでもやっぱり糸守が好きだったこと。
そんな彼女の話を聞きながら、俺は微笑ましい気持ちになる。
きっと彼女は否定するだろうけど、俺の東京での平凡な暮らしと比べれば、その生活はずっと輝いて聞こえた。
瀧「三葉はずっとこっちにいるつもり?」
三葉「まだ、決めてない」
いつの間にか自然に俺たちの間に敬語はなくなっていた。
どちらかがやめようと言ったわけでもない。
これが俺たちにとっての当たり前だったから、そうしただけだ。
三葉「お父さんがどうにかしようって、県の偉い人とか国の復興庁とかも回ってるみたいやけど、なかなか上手くいかんみたい」
瀧「そっか……」
五年前に見たあの光景を思い出し、俺は小さく頷く。
隕石という圧倒的な力で引き裂かれ、そのほとんどを湖に飲み込まれた町。
ただでさえ過疎化が進み、住民の平均年齢が吊り上がっていた地域だ。
住民のほとんどが無事だったとはいえ、避難先で亡くなった老人も少なくはないだろう。
三葉「ずっと帰りたがってた人もおったし、せめて骨だけでも糸守に帰してあげたいんやけどね」
瀧「それすらも叶わないのが現状か」
ずっと東京で暮らしていた俺には土地に根付くという感覚がよく理解できない。
どっか適当な場所に墓を買って、自分が死んだらそこに埋めてもらう。
それでいいんじゃないか。
なんて思うんだが、故郷を失った三葉を前にして、何より失われた光景の美しさを知っている身として、そんなことは口が裂けても言えなかった。
三葉「でも、いつかは戻れたらいいな、って思っとるんやよ。それがいつになるのかはわからんけど」
瀧「本当に糸守が好きなんだな」
三葉「うん。ずっとあんな町なんて大嫌いや。出て行ってやるーって思っとったのに、いざ無くなるとこんな気持ちになるんやね」
少し恥ずかしそうに三葉は言う。
俺はそれが少し羨ましかった。
人はその土地に生まれることで結び付き、その土地で生きていくことで根付いていく。
それは昔からあったことで、当たり前だったもののはずなのに、三葉のように思える人間の方が珍しくなっている。
俺を含めて、ここが自分のいるべき場所だと言い切れる人間が、この世界にどれだけいるだろうか?
三葉は絶対に恥ずかしがるだろうけど、そんな彼女が俺には輝いて見える。
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage saga]:2016/09/18(日) 03:24:09.24 ID:hIKyFdbm0
三葉「……瀧くん? ボーっとしてどうしたん? ねえ、瀧くんってば」
瀧「そんなに名前を連呼しなくても聞こえてるよ」
少し物思いに耽っていたようだ。
三葉と話していると普段、考えもしないようなことをいつの間にか考えてしまう。
三葉「もうすぐ閉店やって」
瀧「ああ、もうそんな時間か」
奥寺先輩と来たときはこんなに遅くまで話し込まなかったから気付かなかったけど、俺がバイトしていた時よりも閉店時間が早くなっていたらしい。
勘定の時、社会人の先輩として俺の分まで金を出そうとする三葉を押し留め、誘った俺が全額払おうとしたんだが、三葉は頑としてそれを認めず、結局、割り勘ということになった。
瀧「この意地っ張り」
三葉「瀧くんの方こそ、年上の言うことは聞くもんやよ」
だったら、年上の威厳を見せてくれっての。
最初は落ち着いた雰囲気だったのに、今は方言丸出しで清楚さなんて十億光年の彼方に飛び去ってしまった三葉。
おまけにこんな路上で言い合いなんて高校生かよ。
まったくいい大人が何やってんだか。
溜息を吐きながら、俺はいつの間にかにやけている自分に気付く。
ああ、本当にもう、
瀧「何やってるんだろうな、俺たち」
三葉「本当はもっと言いたいことがいっぱいあるはずやのに、瀧くんとおると余計なことばっかり」
そう言って愚痴る三葉の顔は、しかし、笑っている。
それに釣られて俺も笑った。
ああ、ずっとずっとこんな風に取り留めのないことを話して一緒にいられたらどんなにいいだろう、と俺は思ってしまう
時間が巻き戻って、三葉と出会ったとき、いやそれよりももっと前、俺が彼女を、彼女が俺をまだ知らないときまで遡って、これまで一緒にいられなかった時間を埋められたら、それはどんなに――
三葉「……そろそろ帰ろっか」
それまで笑っていた三葉が地面に視線を落としながら言った。
瀧「そう、だな」
どんなに楽しい時間でも永遠に続くことはない。
蝶々結びで結びついた糸は簡単にほどけてしまう。
片方を引っ張るだけで簡単に。
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage saga]:2016/09/18(日) 03:24:45.43 ID:hIKyFdbm0
駅までの道を手を繋いで歩く。
三葉との会話は相変わらず続いている。
互いの仕事のこと、これまでのこと。
けれど、どこか互いに上の空だった。
駅に近付くごとに歩みを進めるペースが落ちていく。
このまま駅が蜃気楼になって消えてしまえばいいのにと思ってしまうくらいに。
別れが、この手を離すのが、三葉の温もりを失うのが怖かった。
瀧「もう少しだけここにいようか」
三葉「うん、少しだけ」
駅前のベンチに俺たちは腰掛ける。
そうして取り留めのないことを話しながら、
三葉「ここはあんまり星が見えんね」
唐突に、ぽつり、と三葉が漏らした。
俺も空を見上げた。
東京の空は明るすぎて、星がよく見えなかった。
ああ、と思う。
こんな風に空を見上げたのはいつぶりだろうか?
五年前、飛騨の夜空。
あるいは八年前の隕石の時以来か。
瀧「糸守の夜空、綺麗だったな」
三葉「うん……」
いつも身近に、当たり前にあったものはいつも何の前触れもなく俺たちの前から無くなってしまう、
それは場所であったり、物であったり、人であったり。
そして残されるのはいつも言葉にできない喪失感だけ。
理不尽だ、と思う。
神様って奴がいるのだとしたら、そいつはとても性格が悪くて、理不尽で、きっと俺たちのことなんて歯牙にもかけてないんだろう。
瀧「また、行きたいな、糸守」
三葉「瀧くんは糸守、好き?」
その質問に俺はどう答えればいいのかわからなかった。
一時期、狂ったように糸守に惹かれ、色々と調べ回ったことがあった。
スケッチブックを自分で描いた糸守の風景で埋めたりもした。
どうしてあんなことをしたのか、自分でもよくわからない。
終いには自分の貯金を大きく切り崩して飛騨にまで向かっちまったんだから、あの頃の俺は本当にどうかしてたんだろう。
そして、思い出の場所が隕石でずたずたにされた光景にショックを受け――そのあとのことはよく覚えていない。
ただ自分の大切な半身を失ったような、そんな喪失感だけを抱いたことだけは確かだ。
大事な人、忘れちゃだめな人、忘れたくなかった人。
輪郭を失っていくその感情。
その感情さえも消えていく中、俺は寂しさだけを抱えて、確かこう言ったんだった。
瀧「君の、名前は?」
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 03:24:56.41 ID:CxJiDGrAo
V I P よ こ れ が ま と め 民 だ
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/ ̄ ̄ / |;;:: ィ●ァ ィ●ァ::;;| ヽ  ̄ ̄\
/ ●ァ ィ●ァ |;;:: ::;;| ィ●ァ ィ● ヽ
y●ァ y :|;;:: c{ っ ::;;| ヾ ィ●ゝ
ノ く、っ :|;;:: __ ::;;;| c > 、
(、っ '__ ;ヽ;;:: ー ::;;/ __ c )
'__ ヽー :::;;;;\;;:: ::;;/;;:: ー/: __
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12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 03:25:08.62 ID:pMx9+OXso
, -――- 、
/ ヽ
| ノ ー | それっておかしくねぇ?
|(・) (・) |
| ( |
ヽ O 人
>ー-― ´  ̄ ̄\
⊂ニニ ̄ ̄ ̄ヽ / |
くメ) _ノ | | | | |
(/ | | / | | |
| |/ /| | |
| ト / | | |
ヽ__/ | | |
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 03:25:18.82 ID:iKxIT6H5o
アイスコーヒーレギュラー買った
↓
容器を機械にセットするが
ビニールのラベル蓋を剥がすことを知らず全部外に溢れる
↓
まさかいちいち剥がすと思わずもしかしたらサイズを間違えたと思いデカいサイズのボタンを押すがやはり溢れる
↓
カップを確認するがやはり中に入ってなかったので故障かと思いもう一度ボタンを押す
↓
店員「ちょっとお客さん困ります、やり方わからないんですか?私やりますよ」
↓
俺「ハァ?それならなんでこの機械あるんだよ!全自動じゃないんか!!!そこまでやって100円じゃないんか!!!!!!!!!」
↓
頭にきたのでもうワンプッシュする
↓
店員が警察に相談すると言ったんで、ブチ切れて店を出た
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage saga]:2016/09/18(日) 03:25:23.69 ID:hIKyFdbm0
三葉「――みつは」
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 03:25:28.19 ID:pQ5rWUPPo
あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!)
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 03:25:39.30 ID:uzHj803bo
っ
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'\ っ
/ ノ^ヽノノノノ^ヽ、ヽ フェェァ―――――!?
| / へ へ ヽ | っ
(|─[ ‐ ]ー[ ‐ ]─|ノ マァァァ―――――??
| ,ノ(、_, )、 |
| ;‐=‐ヽ u | ア゛ー落としたァ!!
| `ニニ'´ |
ヽ、 ,,_,, / ●●●を落としちゃった!!!
/``-ー――-"\
< どうか、しましたか?
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'\
/ ノ^ヽノノノノ^ヽ、ヽ
| / へ へ ヽ |
(|─[ ‐ ]ー[ ‐ ]─|ノ
| ノ(、_, )、 | _人人人人人人人人人人人人人人_
| ´,r=ニ=イ` | > 女を落としてしまったのですが…<
| `ー' |  ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
ヽ、 `ー-‐'' / ニヤァ
/``-ー――-"\
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 03:25:50.08 ID:zFU8jSJho
日頃から弊社へ格別のご理解を賜りまして深く御礼申し上げます。
さて、平成23年3月13日付で、弊社人事グループ担当社員より発信しました弊社採用活動に関する文書の中に、不適切かつ配慮に欠く表現が多々ありましたことを深くお詫び申し上げます。
先ず、東日本大震災発生の2日後に、罹災した地域への配慮を欠いたかたちで書類選考用紙等をメールし、締切を15日消印有効としたことは言語道断であります。
また、随所に平等を欠く表現もありました。さらに、弊社担当者の立場上の驕り昂ぶりが現れた言葉遣いが随所にあり、重ね重ねお詫び申し上げます。
早速、公に発信する文書の事前社内校閲ルールを設置し、再発を防止してまいりますと同時に、当該担当者を厳しく指導しました。
改めてこの度、不適切かつ配慮に欠く文書を発行しましたことを深くお詫び申し上げます。
平成23年3月14日
トンボ鉛筆 総務部ゼネラルマネージャー
長尾弘司
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 03:26:02.04 ID:/Wkv7/q+o
ルイズ!ルイズ!ルイズ!ルイズぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!ルイズルイズルイズぅううぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!ルイズ・フランソワーズたんの桃色ブロンドの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
小説12巻のルイズたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
アニメ2期放送されて良かったねルイズたん!あぁあああああ!かわいい!ルイズたん!かわいい!あっああぁああ!
コミック2巻も発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!コミックなんて現実じゃない!!!!あ…小説もアニメもよく考えたら…
ル イ ズ ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!ハルケギニアぁああああ!!
この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?表紙絵のルイズちゃんが僕を見てる?
表紙絵のルイズちゃんが僕を見てるぞ!ルイズちゃんが僕を見てるぞ!挿絵のルイズちゃんが僕を見てるぞ!!
アニメのルイズちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!!!僕にはルイズちゃんがいる!!やったよケティ!!ひとりでできるもん!!!
あ、コミックのルイズちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
あっあんああっああんあアン様ぁあ!!シ、シエスター!!アンリエッタぁああああああ!!!タバサァぁあああ!!
ううっうぅうう!!俺の想いよルイズへ届け!!ハルゲニアのルイズへ届け!
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage saga]:2016/09/18(日) 03:26:12.01 ID:hIKyFdbm0
ハッと俺は三葉を見る。
彼女は、大丈夫だよ、私はここにいるよ、と俺の手を握りしめながら、こちらを見ていた。
三葉はここにいる。
幻じゃない。
それがとんでもない奇蹟のように思えた。
三葉「君の、名前は?」
同じように三葉が言う。
俺の名前、俺の名前は――
瀧「――たき」
答える。
三葉「うん、知ってた。ずっと知ってた。ずっとずっと前から知ってた」
瀧「俺も探してた。ずっと探してた。まだあったことのない君をずっと探してた」
この感覚の名前を俺は知らない。
デジャブとか既視感とも違う何か。
感情が溢れてくる。
彼女が、三葉が愛おしくて堪らない。
そっと彼女を引き寄せる。
ぎゅっと抱きしめる。
相変わらず三葉の体は細くて柔らかくて、俺が少し力を込めたら、そのまま折れてしまうんじゃないかってくらい華奢で、
とても温かかった。
とくん、とくん、と鼓動が聞こえる。
それは自分のものなのか、あるいは三葉のものなのか。
もう一つの鼓動がとくん、とくん、と鳴っているのが聞こえた。
それは俺のものなのか、あるいは彼女のものなのか。
かつて、奥寺先輩は俺に言った。
『君も、いつかちゃんと、しあわせになりなさい』と。
あのときは何も言えず、言葉を濁すしかなかった。
けれど、今なら言える。
先輩、俺はこんなにもしあわせです、って。
瀧「三葉、三葉」
何度も何度も噛みしめるように彼女の名前を呼ぶ。
もう忘れたりするもんか、絶対に絶対にもう手を離したりしない。
三葉「瀧くん、瀧くん」
あの頃に戻ったように三葉も俺の名前を呼ぶ。。
これまで引き離されていた分を取り戻すように、何度も何度も。
きっと周りから見たら、俺たちは頭のおかしいカップルにしか見えなかっただろう。
このときのことを後から思い出すと、きっと俺たちは恥ずかしさのあまり、床に転がって頭を抱えてしまうはずだ。
けれど、今はそんなことどうでもいい。
もっともっと彼女を感じていたい。
もっともっと彼女と繋がっていたい。
そう、思ったんだ。
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 03:26:13.08 ID:9c2hKCAMo
:;:;:;ヽ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ノ:;:;:;|゙ヽ、
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. ヽ:;:;:;:;:;:;:;ヽ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/:;:;:;:;:;:/ヾ,::::::::::::::::::::,f'''ヽ、
ヽ:;:;:;:;:;:;:;:ヽ:;:;:;:;:;:;/:;:;:;:;:;:/ .`ー:、:::::::::::l lヽ ヽ
ヽ:;:;:;:;:;:;:;:ヽ,ィ'゙:;:;:;:;:;:/ .>,<::::t ヒ 〉゙i
't ̄ ̄ ̄ヘ:;:;:;:/ ,.:ィ‐==ヽv'ィ′ゞ:::ゝ、/ j:、
ヾ------''゙ ,.ィ'´: : : : : : :ヽ. \::、 人)\
゙t゙t _,,.ィ"(: : : : : : : : : : i ヾ: Y i\
ゞ>=''"'''''ヽ^'ゝ、: : : : : : :ノ : : :゙i, .l j \ とっとと画像貼れよ
f´ : : : : : :゙i `゙`''''''''''" : : : :゙i l !j' `ヽヘ
ヽ: : : : : : :.l゙:. ,r-:、 : : : : :li,!,! / \
ゝ、: : : ,ノ t ,;:::;ノ;,,,,;;:::::;;;,, . : : : : ノ,/ / \
``ヾ′ `ー,.r;;;;;;;;::-‐'ヲ'''' . : : : : ://i ,r'" ,.r-ー――-=::、ヽ、
`ヽ、:;;;;;;r''_,,.ィ',ノ′ : : : : : /イ i,/ ,/ ``ヽ
゙ヾ:;:'‐-=''"_,,_ : : : :,/'// / /
ヽ、 '´ .` :,:ノ //',/
`ヽ、 ,.,.ィ'´ / /
`~/ ヽ、 /ノ
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 03:26:24.54 ID:Z5fcVsVAo
. |
.\ / ____ , -‐……‐--. . . 、 \ | /
\ / /. : : : : : : : :ヽ-‐.: :_;. --- .._: : : : : : : :\ \ /
_ も _ /, -‐==ミ: : : : _,ィニ-‐……ー-: 、`ヽ、: : : : ヽ、 _ 争 _
_ っ _ . .:´: : : : : : : ≠:7: : : : : : : : : : : : :ヽ、 ヽ| : i : : :, _ え _
_ と _ /.: : : : -‐: :7´: : /:,ハ : : : :ヽ : : : ゝ-- :\ | : :! : : : , _ : _
_ .争 _ /, -‐/.: : : : :i : : /ィ:爪: : :\ :\ : : :\: : :`ト : !: : : :′ _ : _
え 〃 /. : : : : : : |.:イ :ハ:| \: .、\: : xィ¬ト、: :| : : ! : : : : :,
/ : \ /:.: :/.: : : : /l : |/Гト、 / |_,ノ0:::ヽ : : :i : : : : / \
/ | \.| .:/.:/. : : :i: i : | |ノ0:::ト ::::::::::::: |: :∩::::::ト: : : !: : : : : : :, / | \
∨i: |: : : : |: :ヽ| |::∩::| :::::::::::::::: !.::∪::::::| |: : :i : : : : : : ,ィ /〉
|: |: : i : :', : | |::∪::| :::::::::::::::: !: : : : : :||: : i : : : : : : : / レ厶イ
ヽハ: : :、: :ヽ| l : : : |::::: , ::::└――┘ ! : : i : : : : : : : / ⊂ニ、
い、: :\/  ̄ ̄ ', : : i : : : : : : : : , -‐' ⊂ニ,´
r 、 _ ヽ: :〈 <  ̄ フ |: : : ! :: : : :,.-‐T _,. -‐'´ ̄
くヾ; U| | : \ /| : : :i : :: :_, ‐' | /
r―' ヽ | : : : \ イ: : :| : : :i_,.-‐ |/
`つ _ ̄ ̄Τ`ー-- L: : : : : `: : . . . __ .:〔: : :|: : :r┬' |
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 03:26:35.19 ID:GVny9Xswo
/_/ . . -‐‐- . .
/ ∠:: /⌒>,, `ヽ
く は 植 7__ /ニ、{{∠∠二、 li ハ
れ や 松 / /. -‐…'''⌒ヽ ij _」
| く | / 、__ ,'{ r‐…''⌒ヽーi .<⌒ヽ
| き | {/ヽ) ! iヽ.).:.:.:.:.:.:.:xこ| |i ト、 !i
| て | >''´} ', ',.:.:.:/⌒し':::::::| ij )ノ リ
| | >イ ', V^)⌒V⌒/7 >こノ
| ! ! ! ! >ノ 丶ヽ.__ー__彡' /
っ \ーァ'⌒ヽ.._ \  ̄ {x‐/.:.
! ! ! ! r‐一.:.:.:.:.:/.:.:`ヽ/ ノ __//.:.:.:.:
///l/ ̄`ヽ∧j:.:.〈.:/.:.:.:.:.:.∠二 { ∠´/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 03:26:48.07 ID:ZkeRKceVo
三葉「……瀧くん? ボーっとしてどうしたん? ねえ、瀧くんってば」
瀧「そんなに名前を連呼しなくても聞こえてるよ」
少し物思いに耽っていたようだ。
三葉と話していると普段、考えもしないようなことをいつの間にか考えてしまう。
三葉「もうすぐ閉店やって」
瀧「ああ、もうそんな時間か」
奥寺先輩と来たときはこんなに遅くまで話し込まなかったから気付かなかったけど、俺がバイトしていた時よりも閉店時間が早くなっていたらしい。
勘定の時、社会人の先輩として俺の分まで金を出そうとする三葉を押し留め、誘った俺が全額払おうとしたんだが、三葉は頑としてそれを認めず、結局、割り勘ということになった。
瀧「この意地っ張り」
三葉「瀧くんの方こそ、年上の言うことは聞くもんやよ」
だったら、年上の威厳を見せてくれっての。
最初は落ち着いた雰囲気だったのに、今は方言丸出しで清楚さなんて十億光年の彼方に飛び去ってしまった三葉。
おまけにこんな路上で言い合いなんて高校生かよ。
まったくいい大人が何やってんだか。
溜息を吐きながら、俺はいつの間にかにやけている自分に気付く。
ああ、本当にもう、
瀧「何やってるんだろうな、俺たち」
三葉「本当はもっと言いたいことがいっぱいあるはずやのに、瀧くんとおると余計なことばっかり」
そう言って愚痴る三葉の顔は、しかし、笑っている。
それに釣られて俺も笑った。
ああ、ずっとずっとこんな風に取り留めのないことを話して一緒にいられたらどんなにいいだろう、と俺は思ってしまう
時間が巻き戻って、三葉と出会ったとき、いやそれよりももっと前、俺が彼女を、彼女が俺をまだ知らないときまで遡って、これまで一緒にいられなかった時間を埋められたら、それはどんなに――
三葉「……そろそろ帰ろっか」
それまで笑っていた三葉が地面に視線を落としながら言った。
瀧「そう、だな」
どんなに楽しい時間でも永遠に続くことはない。
蝶々結びで結びついた糸は簡単にほどけてしまう。
片方を引っ張るだけで簡単に。
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage saga]:2016/09/18(日) 03:26:54.60 ID:hIKyFdbm0
どちらともなく、抱き締めていた腕を、そっと少しだけ話す。
ちょっと動けば触れてしまいそうなくらいの至近距離で互いを見つめ合い、そうして唇を重ね合わせた。
びくん、と三葉の体が驚いたように固まる。
けれど抵抗はない。
俺はそのまま彼女の体を抱きしめながら、キスを続けた。
唇を重ね合わせるだけのキス。
それ以上のことはできない。
というか、やれない。
ああ、こんなことなら、奥寺先輩にもっといろいろと教えてもらうんだった、とか考えてしまったけど、そんなことしたら絶対に三葉に怒られるよな。
だから、これで良かったんだ、と俺は自分を納得させた。
唇を離す。
もっとこうしていたかったけど、これ以上やったら自制が利かなくなっていただろうから仕方ない。
三葉「はぁ、はぁ」
少し目を向けると三葉は口で呼吸をしていた。
顔が赤い。
それは気恥ずかしいという気持ちだけの赤さではなく、
瀧「もしかして、息とめてた?」
三葉「瀧くん、なんか慣れとらん?」
俺の質問に対し、返ってきたのは追及だった。
ジト目の三葉に睨まれながら、俺は目を逸らす。
瀧「い、いや、そんなことないっすよ」
三葉「ふーん、まあ、いいけど」
俺だって、こういう時のために色々と練習してきたんだよ。
色々とな。
何だか疑いの目でこちらを見ていた三葉だったが、
三葉「あっ、もうこんな時間。本当にそろそろ帰らんと」
時計を見て立ち上がる。
お別れの時間だった。
これで三葉と会えるのはまた明日。
もう彼女が消えたりしないことはわかっていても、胸を覆っていく寂しさを誤魔化せはしなかった。
瀧「そうか、明日もお互い仕事だもんな」
社会人である以上、この別れは当然で必然で仕方のないこと。
そんなことはわかっている。
俺だっていい大人なんだ。
なのに、
三葉「手、離してくれんと困るよ」
俺の手は三葉の手を掴んだまま離そうとしない。
本当に俺はどうしちまったんだろう。
彼女を困らせたりしたくないのに。
心と体が切り離されたみたいにいうことを聞いてくれない。
もっと彼女と一緒にいたい、ずっとずっと彼女と一緒にいたい。
そう、体が、心がうるさいくらいに訴えかけてくる
だから、次に口から出てきた言葉は自分でもびっくりするようなものだった。
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 03:26:58.95 ID:qI5oChAko
トイレから戻ってきた彼女と俺は色んなことを話し合った。
彼女は俺よりも三つ年上で、あの隕石落下の被害を被った糸守町の出身だという。
確かにそれは驚くべきことだけど、出身のことよりも俺は彼女が自分より年上だということに驚きと同時に、納得のいかない感情を抱いていた。
無意識のうちに彼女が自分と同い年だと思っていた俺が悪いんだが。
確かに彼女の落ち着いた雰囲気は社会人一年目の俺と比べても数段上だった。
そうか、よくよく考えれば奥寺先輩とほとんど歳が変わらないんだし、当然だよな。
だから彼女に対して、たまに自分の口から出そうになるタメ口に俺は戸惑っていた。
話が盛り上がった時や相槌を打つとき、思わずタメ口になってしまう。
奥寺先輩の時はこんなことなかったのに、彼女の時だけ、どうしてこんな口が軽くなってしまうんだろう。
まったく不思議な感覚だった。
瀧「――そういえば、宮水さんの糸守の知り合いって、結構こっちに来てるんですか?」
三葉「少しずつ糸守の近くに戻ってる人もいるみたいですけど、東京に完全に根を下ろしている人もちらほらいますね。私の幼なじみもこちらで結婚するみたいですし」
瀧「へー、テッシーとサヤちんがようやくかー」
俺は坊主頭のひょろ長い青年のタキシード姿と、前髪ぱっつんお下げの小柄な少女のウエディングドレス姿を想像して、何ともいえない懐かしさとあまりの似合わなさに吹き出してしまう。
そっか。
あの二人、結婚するのか。
奥寺先輩の時とはまた違った感慨深さだった。
三葉「あの、立花さん」
どこか困惑したような表情を浮かべて、彼女は俺の名前を呼び、
三葉「私、二人の名前、言いましたっけ?」
瀧「え? あれ?」
言ってなかったけ?
でも、そうでなきゃ俺が彼女の幼なじみのことなんて知ってるわけがないし。
三葉「あ、そうだ。私のことばかりじゃなくて、立花さんのことも教えてくださいよ」
瀧「そ、そうですね」
堂々巡りに陥る前に、彼女の提案に俺は乗ることにした。
この奇妙な感覚を追及してはダメだ、と直感が言っている。
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 03:27:08.89 ID:0WhLEcPco
改札口を出て、駅前の広場へ小走りに向かう。
待ち合わせの時間は十九時。
今はまだ十八時四十分。
約束の時間まで二十分以上あるんだから、急ぐ必要なんてないのに俺は逸る気持ちを抑えられなかった。
いや、本当は会社にいるときもずっと心は『彼女』のもとへ向かおうとしていた。
なのにそうしなかったのは、ギリギリで俺を拾ってくれた会社への恩義からか、あるいは『彼女』がそんな無茶を望まないことを俺自身が知っていたからか。
そう。
俺の知っている『彼女』は――
いた。
まだ二十分前だってのに『彼女』はそこにいた。
どこか不安げな表情で俯きながら。
俺は『彼女』を見つけた瞬間、言葉にならない安堵で朝に続いてまた泣きそうになる。
これまでの人生で一日に二度も泣いたことがあっただろうか?
『彼女』とこうしてまた会えた奇蹟。
泣きたくなるほど、それが嬉しかった。
彼女がふいに顔を上げる。
その視線が俺を見つける。
次の瞬間、彼女の不安げな表情は安心したような、ほっとしたような表情へと変わる。
そうして、俺は気付く。
『彼女』も同じだったんだ。
ずっと探していた。
だれかひとりを、ひとりだけを。
瀧「えっと、遅れてすみません。待ちました?」
三葉「……い、いえ、今来たところです」
『彼女』は、三葉は顔を真っ赤にして手を振った。
すぐにわかる嘘だった。
この様子だと三十分以上、待っていたんじゃないだろうか?
もしかしたら約束の一時間前にはもうここにいたのかもしれない。
そのことに対して申し訳ない気分になったものの、同時に嬉しくもなる。
どうしてそんな気持ちになるのかわからないが、相変わらず変なところで律儀な性格なんだな、なんて思いながら俺は彼女に手を差し出す。
瀧「それでは行きましょうか」
三葉「えっと……」
彼女は俺の手に視線を向けたまま少し固まっていた。
その反応に俺は自分のやっていることの大胆さに気付く。
会ったばかりの女の人の手をさっそく握ろうなんて、どんだけ餓えてんだよ。
これじゃ完全なナンパ野郎じゃねえか。
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 03:27:20.39 ID:B1ue98lzo
トイレから戻ってきた彼女と俺は色んなことを話し合った。
彼女は俺よりも三つ年上で、あの隕石落下の被害を被った糸守町の出身だという。
確かにそれは驚くべきことだけど、出身のことよりも俺は彼女が自分より年上だということに驚きと同時に、納得のいかない感情を抱いていた。
無意識のうちに彼女が自分と同い年だと思っていた俺が悪いんだが。
確かに彼女の落ち着いた雰囲気は社会人一年目の俺と比べても数段上だった。
そうか、よくよく考えれば奥寺先輩とほとんど歳が変わらないんだし、当然だよな。
だから彼女に対して、たまに自分の口から出そうになるタメ口に俺は戸惑っていた。
話が盛り上がった時や相槌を打つとき、思わずタメ口になってしまう。
奥寺先輩の時はこんなことなかったのに、彼女の時だけ、どうしてこんな口が軽くなってしまうんだろう。
まったく不思議な感覚だった。
瀧「――そういえば、宮水さんの糸守の知り合いって、結構こっちに来てるんですか?」
三葉「少しずつ糸守の近くに戻ってる人もいるみたいですけど、東京に完全に根を下ろしている人もちらほらいますね。私の幼なじみもこちらで結婚するみたいですし」
瀧「へー、テッシーとサヤちんがようやくかー」
俺は坊主頭のひょろ長い青年のタキシード姿と、前髪ぱっつんお下げの小柄な少女のウエディングドレス姿を想像して、何ともいえない懐かしさとあまりの似合わなさに吹き出してしまう。
そっか。
あの二人、結婚するのか。
奥寺先輩の時とはまた違った感慨深さだった。
三葉「あの、立花さん」
どこか困惑したような表情を浮かべて、彼女は俺の名前を呼び、
三葉「私、二人の名前、言いましたっけ?」
瀧「え? あれ?」
言ってなかったけ?
でも、そうでなきゃ俺が彼女の幼なじみのことなんて知ってるわけがないし。
三葉「あ、そうだ。私のことばかりじゃなくて、立花さんのことも教えてくださいよ」
瀧「そ、そうですね」
堂々巡りに陥る前に、彼女の提案に俺は乗ることにした。
この奇妙な感覚を追及してはダメだ、と直感が言っている。
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage saga]:2016/09/18(日) 03:27:22.18 ID:hIKyFdbm0
瀧「もっとずっと一緒にいたい。俺んちに泊まっていかないか?」
三葉「瀧くん……」
俺をじっと見て、三葉は名前を呼んだまま何も言わない。
瀧「嫌なら断ってくれていい」
別にこれで彼女との糸が切れるわけじゃない。
もう彼女との繋がりが断たれることがないことを俺はわかっている。
だから、これは俺のただの我儘だ。
そんな自分勝手に三葉が無理やり付き合う理由はない。
嫌なら嫌だとすっぱり断ってくれ。
三葉は口を開き何かを言おうとして、呆れたように溜め息を吐いた。
瀧「あの、三葉、本当に嫌なら――」
三葉「もうっ、瀧くん、ずるいっ。そんなの嫌なわけないやよ」
恥ずかしそうにむくれながら三葉は言った。
三葉「私だってずっとずっと一緒にいたいんやから」
こうして、俺の家に三葉が来ることになった。
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 03:27:31.70 ID:+2URSAfTo
そうして、どれくらい話しただろうか。
俺の東京での生活、五年前の飛騨への旅行のこと。
彼女の糸守での暮らしの苦労――地元の有力者の後継ぎとしての重圧とか、周りの目が嫌だったこと、でもそんなでもやっぱり糸守が好きだったこと。
そんな彼女の話を聞きながら、俺は微笑ましい気持ちになる。
きっと彼女は否定するだろうけど、俺の東京での平凡な暮らしと比べれば、その生活はずっと輝いて聞こえた。
瀧「三葉はずっとこっちにいるつもり?」
三葉「まだ、決めてない」
いつの間にか自然に俺たちの間に敬語はなくなっていた。
どちらかがやめようと言ったわけでもない。
これが俺たちにとっての当たり前だったから、そうしただけだ。
三葉「お父さんがどうにかしようって、県の偉い人とか国の復興庁とかも回ってるみたいやけど、なかなか上手くいかんみたい」
瀧「そっか……」
五年前に見たあの光景を思い出し、俺は小さく頷く。
隕石という圧倒的な力で引き裂かれ、そのほとんどを湖に飲み込まれた町。
ただでさえ過疎化が進み、住民の平均年齢が吊り上がっていた地域だ。
住民のほとんどが無事だったとはいえ、避難先で亡くなった老人も少なくはないだろう。
三葉「ずっと帰りたがってた人もおったし、せめて骨だけでも糸守に帰してあげたいんやけどね」
瀧「それすらも叶わないのが現状か」
ずっと東京で暮らしていた俺には土地に根付くという感覚がよく理解できない。
どっか適当な場所に墓を買って、自分が死んだらそこに埋めてもらう。
それでいいんじゃないか。
なんて思うんだが、故郷を失った三葉を前にして、何より失われた光景の美しさを知っている身として、そんなことは口が裂けても言えなかった。
三葉「でも、いつかは戻れたらいいな、って思っとるんやよ。それがいつになるのかはわからんけど」
瀧「本当に糸守が好きなんだな」
三葉「うん。ずっとあんな町なんて大嫌いや。出て行ってやるーって思っとったのに、いざ無くなるとこんな気持ちになるんやね」
少し恥ずかしそうに三葉は言う。
俺はそれが少し羨ましかった。
人はその土地に生まれることで結び付き、その土地で生きていくことで根付いていく。
それは昔からあったことで、当たり前だったもののはずなのに、三葉のように思える人間の方が珍しくなっている。
俺を含めて、ここが自分のいるべき場所だと言い切れる人間が、この世界にどれだけいるだろうか?
三葉は絶対に恥ずかしがるだろうけど、そんな彼女が俺には輝いて見える。
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 03:27:44.50 ID:UFA4jhjho
三葉「……瀧くん? ボーっとしてどうしたん? ねえ、瀧くんってば」
瀧「そんなに名前を連呼しなくても聞こえてるよ」
少し物思いに耽っていたようだ。
三葉と話していると普段、考えもしないようなことをいつの間にか考えてしまう。
三葉「もうすぐ閉店やって」
瀧「ああ、もうそんな時間か」
奥寺先輩と来たときはこんなに遅くまで話し込まなかったから気付かなかったけど、俺がバイトしていた時よりも閉店時間が早くなっていたらしい。
勘定の時、社会人の先輩として俺の分まで金を出そうとする三葉を押し留め、誘った俺が全額払おうとしたんだが、三葉は頑としてそれを認めず、結局、割り勘ということになった。
瀧「この意地っ張り」
三葉「瀧くんの方こそ、年上の言うことは聞くもんやよ」
だったら、年上の威厳を見せてくれっての。
最初は落ち着いた雰囲気だったのに、今は方言丸出しで清楚さなんて十億光年の彼方に飛び去ってしまった三葉。
おまけにこんな路上で言い合いなんて高校生かよ。
まったくいい大人が何やってんだか。
溜息を吐きながら、俺はいつの間にかにやけている自分に気付く。
ああ、本当にもう、
瀧「何やってるんだろうな、俺たち」
三葉「本当はもっと言いたいことがいっぱいあるはずやのに、瀧くんとおると余計なことばっかり」
そう言って愚痴る三葉の顔は、しかし、笑っている。
それに釣られて俺も笑った。
ああ、ずっとずっとこんな風に取り留めのないことを話して一緒にいられたらどんなにいいだろう、と俺は思ってしまう
時間が巻き戻って、三葉と出会ったとき、いやそれよりももっと前、俺が彼女を、彼女が俺をまだ知らないときまで遡って、これまで一緒にいられなかった時間を埋められたら、それはどんなに――
三葉「……そろそろ帰ろっか」
それまで笑っていた三葉が地面に視線を落としながら言った。
瀧「そう、だな」
どんなに楽しい時間でも永遠に続くことはない。
蝶々結びで結びついた糸は簡単にほどけてしまう。
片方を引っ張るだけで簡単に。
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage saga]:2016/09/18(日) 03:27:52.12 ID:hIKyFdbm0
瀧「ちょっと狭いと思うけど、あっ、コーヒーと紅茶、どっちがいい――って、コーヒー切らしてたか。紅茶しかないけど、いいかな?」
三葉「うん、瀧くんに任せる」
瀧「そこら辺にある本、勝手に読んでていいから」
やかんを火にかけながら、我ながら随分と大胆な真似をしちまったな、と思う。
家の中に女を連れ込むなんて。
親父が出張中で本当に良かった。
こんなところを見られたら、どんな皮肉を言われるやら。
あの親父、俺が全然彼女作らないから、人のことホモか何かと勘違いしてる節があったからな。
あんたの息子はホモじゃねえっての。
こんな風に女を家に連れ込むし、キスだって――
瀧「キス、しちまったんだよな……」
無意識のうちに唇を触る。
カサカサの俺の唇と違って、三葉の唇はしっとりと濡れていて、とても柔らかかった。
それに何だか甘い匂いがして、少し興奮したし、どこか懐かしい気がした。。
ああ、こんなことなら舌を入れておけば良かったな……なんて俺は変態かっ。
不埒な考えを頭を振って外に追い出しながら、俺はコップに紅茶を淹れた。
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 03:27:54.89 ID:RzA+17Vwo
駅までの道を手を繋いで歩く。
三葉との会話は相変わらず続いている。
互いの仕事のこと、これまでのこと。
けれど、どこか互いに上の空だった。
駅に近付くごとに歩みを進めるペースが落ちていく。
このまま駅が蜃気楼になって消えてしまえばいいのにと思ってしまうくらいに。
別れが、この手を離すのが、三葉の温もりを失うのが怖かった。
瀧「もう少しだけここにいようか」
三葉「うん、少しだけ」
駅前のベンチに俺たちは腰掛ける。
そうして取り留めのないことを話しながら、
三葉「ここはあんまり星が見えんね」
唐突に、ぽつり、と三葉が漏らした。
俺も空を見上げた。
東京の空は明るすぎて、星がよく見えなかった。
ああ、と思う。
こんな風に空を見上げたのはいつぶりだろうか?
五年前、飛騨の夜空。
あるいは八年前の隕石の時以来か。
瀧「糸守の夜空、綺麗だったな」
三葉「うん……」
いつも身近に、当たり前にあったものはいつも何の前触れもなく俺たちの前から無くなってしまう、
それは場所であったり、物であったり、人であったり。
そして残されるのはいつも言葉にできない喪失感だけ。
理不尽だ、と思う。
神様って奴がいるのだとしたら、そいつはとても性格が悪くて、理不尽で、きっと俺たちのことなんて歯牙にもかけてないんだろう。
瀧「また、行きたいな、糸守」
三葉「瀧くんは糸守、好き?」
その質問に俺はどう答えればいいのかわからなかった。
一時期、狂ったように糸守に惹かれ、色々と調べ回ったことがあった。
スケッチブックを自分で描いた糸守の風景で埋めたりもした。
どうしてあんなことをしたのか、自分でもよくわからない。
終いには自分の貯金を大きく切り崩して飛騨にまで向かっちまったんだから、あの頃の俺は本当にどうかしてたんだろう。
そして、思い出の場所が隕石でずたずたにされた光景にショックを受け――そのあとのことはよく覚えていない。
ただ自分の大切な半身を失ったような、そんな喪失感だけを抱いたことだけは確かだ。
大事な人、忘れちゃだめな人、忘れたくなかった人。
輪郭を失っていくその感情。
その感情さえも消えていく中、俺は寂しさだけを抱えて、確かこう言ったんだった。
瀧「君の、名前は?」
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 03:28:09.38 ID:IVAKbIE8o
ハッと俺は三葉を見る。
彼女は、大丈夫だよ、私はここにいるよ、と俺の手を握りしめながら、こちらを見ていた。
三葉はここにいる。
幻じゃない。
それがとんでもない奇蹟のように思えた。
三葉「君の、名前は?」
同じように三葉が言う。
俺の名前、俺の名前は――
瀧「――たき」
答える。
三葉「うん、知ってた。ずっと知ってた。ずっとずっと前から知ってた」
瀧「俺も探してた。ずっと探してた。まだあったことのない君をずっと探してた」
この感覚の名前を俺は知らない。
デジャブとか既視感とも違う何か。
感情が溢れてくる。
彼女が、三葉が愛おしくて堪らない。
そっと彼女を引き寄せる。
ぎゅっと抱きしめる。
相変わらず三葉の体は細くて柔らかくて、俺が少し力を込めたら、そのまま折れてしまうんじゃないかってくらい華奢で、
とても温かかった。
とくん、とくん、と鼓動が聞こえる。
それは自分のものなのか、あるいは三葉のものなのか。
もう一つの鼓動がとくん、とくん、と鳴っているのが聞こえた。
それは俺のものなのか、あるいは彼女のものなのか。
かつて、奥寺先輩は俺に言った。
『君も、いつかちゃんと、しあわせになりなさい』と。
あのときは何も言えず、言葉を濁すしかなかった。
けれど、今なら言える。
先輩、俺はこんなにもしあわせです、って。
瀧「三葉、三葉」
何度も何度も噛みしめるように彼女の名前を呼ぶ。
もう忘れたりするもんか、絶対に絶対にもう手を離したりしない。
三葉「瀧くん、瀧くん」
あの頃に戻ったように三葉も俺の名前を呼ぶ。。
これまで引き離されていた分を取り戻すように、何度も何度も。
きっと周りから見たら、俺たちは頭のおかしいカップルにしか見えなかっただろう。
このときのことを後から思い出すと、きっと俺たちは恥ずかしさのあまり、床に転がって頭を抱えてしまうはずだ。
けれど、今はそんなことどうでもいい。
もっともっと彼女を感じていたい。
もっともっと彼女と繋がっていたい。
そう、思ったんだ。
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 03:28:34.68 ID:Qxss8LyQo
>>1-10
三葉「……瀧くん? ボーっとしてどうしたん? ねえ、瀧くんってば」
瀧「そんなに名前を連呼しなくても聞こえてるよ」
少し物思いに耽っていたようだ。
三葉と話していると普段、考えもしないようなことをいつの間にか考えてしまう。
三葉「もうすぐ閉店やって」
瀧「ああ、もうそんな時間か」
奥寺先輩と来たときはこんなに遅くまで話し込まなかったから気付かなかったけど、俺がバイトしていた時よりも閉店時間が早くなっていたらしい。
勘定の時、社会人の先輩として俺の分まで金を出そうとする三葉を押し留め、誘った俺が全額払おうとしたんだが、三葉は頑としてそれを認めず、結局、割り勘ということになった。
瀧「この意地っ張り」
三葉「瀧くんの方こそ、年上の言うことは聞くもんやよ」
だったら、年上の威厳を見せてくれっての。
最初は落ち着いた雰囲気だったのに、今は方言丸出しで清楚さなんて十億光年の彼方に飛び去ってしまった三葉。
おまけにこんな路上で言い合いなんて高校生かよ。
まったくいい大人が何やってんだか。
溜息を吐きながら、俺はいつの間にかにやけている自分に気付く。
ああ、本当にもう、
瀧「何やってるんだろうな、俺たち」
三葉「本当はもっと言いたいことがいっぱいあるはずやのに、瀧くんとおると余計なことばっかり」
そう言って愚痴る三葉の顔は、しかし、笑っている。
それに釣られて俺も笑った。
ああ、ずっとずっとこんな風に取り留めのないことを話して一緒にいられたらどんなにいいだろう、と俺は思ってしまう
時間が巻き戻って、三葉と出会ったとき、いやそれよりももっと前、俺が彼女を、彼女が俺をまだ知らないときまで遡って、これまで一緒にいられなかった時間を埋められたら、それはどんなに――
三葉「……そろそろ帰ろっか」
それまで笑っていた三葉が地面に視線を落としながら言った。
瀧「そう、だな」
どんなに楽しい時間でも永遠に続くことはない。
蝶々結びで結びついた糸は簡単にほどけてしまう。
片方を引っ張るだけで簡単に。
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage saga]:2016/09/18(日) 03:28:35.70 ID:hIKyFdbm0
瀧「お待たせ。あんまりいい茶葉じゃないけど」
三葉「ううん、ありがとう、瀧くん」
俺から受け取った紅茶にふーふーと息を掛けて冷ましながら、三葉は少しずつ飲んでいく。
それを見ながら、俺は紅茶になりたいな、なんて少しだけ思った。
瀧「そのスケッチブック……」
ベッドに座っている三葉の隣りに腰掛けながら、俺は彼女の手元にスケッチブックが置いてあるのに気付いた。
三葉「なんだか気になって。勝手に見てごめんね」
瀧「いや、別に謝らなくていいよ。高校の時になんとなく描いたやつだし」
三葉「ううん、そんなことない。すごく良く描けとるよ。私の記憶の中の糸守と同じ。そういえば、瀧くん、糸守に行ったことあるんやよね?」
スケッチブックをゆっくりとめくりながら、三葉は遠い昔を懐かしむような優しい声で言った。
瀧「うん、五年前にね。一時期、糸守にすごく関心を持ってた時期があってさ。今でも何でなのか理由はわかんないけど」
三葉「五年前かー。八年前なら私もまだいたんやけどなー。って、それやと瀧くんは中学生か。高校生と中学生じゃ犯罪かな?」
冗談めかして三葉は言う。
瀧「そんなこと――」
ないとは言えなかった。
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 03:28:56.25 ID:InatWafgo
>>2-11
三葉「……瀧くん? ボーっとしてどうしたん? ねえ、瀧くんってば」
瀧「そんなに名前を連呼しなくても聞こえてるよ」
少し物思いに耽っていたようだ。
三葉と話していると普段、考えもしないようなことをいつの間にか考えてしまう。
三葉「もうすぐ閉店やって」
瀧「ああ、もうそんな時間か」
奥寺先輩と来たときはこんなに遅くまで話し込まなかったから気付かなかったけど、俺がバイトしていた時よりも閉店時間が早くなっていたらしい。
勘定の時、社会人の先輩として俺の分まで金を出そうとする三葉を押し留め、誘った俺が全額払おうとしたんだが、三葉は頑としてそれを認めず、結局、割り勘ということになった。
瀧「この意地っ張り」
三葉「瀧くんの方こそ、年上の言うことは聞くもんやよ」
だったら、年上の威厳を見せてくれっての。
最初は落ち着いた雰囲気だったのに、今は方言丸出しで清楚さなんて十億光年の彼方に飛び去ってしまった三葉。
おまけにこんな路上で言い合いなんて高校生かよ。
まったくいい大人が何やってんだか。
溜息を吐きながら、俺はいつの間にかにやけている自分に気付く。
ああ、本当にもう、
瀧「何やってるんだろうな、俺たち」
三葉「本当はもっと言いたいことがいっぱいあるはずやのに、瀧くんとおると余計なことばっかり」
そう言って愚痴る三葉の顔は、しかし、笑っている。
それに釣られて俺も笑った。
ああ、ずっとずっとこんな風に取り留めのないことを話して一緒にいられたらどんなにいいだろう、と俺は思ってしまう
時間が巻き戻って、三葉と出会ったとき、いやそれよりももっと前、俺が彼女を、彼女が俺をまだ知らないときまで遡って、これまで一緒にいられなかった時間を埋められたら、それはどんなに――
三葉「……そろそろ帰ろっか」
それまで笑っていた三葉が地面に視線を落としながら言った。
瀧「そう、だな」
どんなに楽しい時間でも永遠に続くことはない。
蝶々結びで結びついた糸は簡単にほどけてしまう。
片方を引っ張るだけで簡単に。
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