マミ「QBかく語りき」 QB「君らしいね」

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1 : ◆GXVkKXrpNcpr [sage]:2016/09/20(火) 02:06:27.39 ID:eDj2lchjo
ワルプル前
地の文
2 : ◆GXVkKXrpNcpr [saga]:2016/09/20(火) 02:09:17.81 ID:eDj2lchjo

まどかは夢を見ていた。






ようやくワルプルギスの夜を滅ぼすことに成功した。

マミと杏子が犠牲になった。

二人で示し合せてソウルジェムを暴発させたのだ。

それが魔女への最後の攻撃となった。

二人の死を目の当たりにしたまどかはショックで動けず、巨大な魔女の崩壊に巻き込まれそうになる。


「危ない!」


それに気づいたほむらがまどかを安全な位置まで避難させた。


「マミさん……杏子ちゃん……どうして」


崩れ落ちていく魔女を見上げながらまどかが呆然とつぶやいた。

どうしても納得がいかない。

彼女たちのグリーフシードはまだ残っていたはずだったから。


「こんなことって……」


そんなまどかのソウルジェムをほむらが取り上げ、浄化した。


「ほむらちゃん……やり直さないの?」


まどかが尋ねた。


「ええ」

「それは……私が生きているから?」

「まどか、聞いて」


ほむらがまどかの手を取って輝くソウルジェムを掌に包ませた。
3 : ◆GXVkKXrpNcpr [saga]:2016/09/20(火) 02:10:47.04 ID:eDj2lchjo
まどかは己が魂である宝石に目を落とす。

浄化されたばかりのそれは美しいきらめきを見せているが、まどかはそれが不思議で仕方がない。

なぜ魂が浄化できるのだろう。こんなに心が混乱しているのに。


「あなただけじゃなく、あなたのご家族も生きている。
あなたが願って人間に戻した美樹さやかも。もっとひどい結末を私はたくさん見てきた」

「ひどい、結末」

「魔法少女が二人犠牲になっただけ。最善ではなかったけれど上出来だと思う」


(だけ?)


ピシリと音がした。誰にも聞こえない音、心にひびが入る音が。


(…………そう)

(ほむらちゃんが正しいのだと思う)

(でも私は)

(……たえ、られ、、ない……っ)


まともに思考ができたのはそこまで。身体が震える。

何も見えない、何も聞こえない。

壊れていく。

浄化したばかりのソウルジェムがあっという間に黒々と光るグリーフシードに変わった。

クリームヒルトが出現する。
4 : ◆GXVkKXrpNcpr [saga]:2016/09/20(火) 02:12:35.36 ID:eDj2lchjo
そんな場面で目が覚めた。


「ええと……」


あまり寝起きはよくない方で少し頭がぼうっとする。


「……マミさんと杏子ちゃんが死んじゃって……私も、壊れちゃった……」


まどかはここ二週間程、毎晩欠かさずやけにリアルな夢の数々を見続けている。

最初の夢を見たのはほむらが転校してくる前の晩だった。

得体の知れない巨大な何かと戦う一人の少女。

夢の中の自分に話しかける猫ともウサギとも言えない謎の生き物。

もちろん今はもう「ほむらちゃん」と「QB」だったとわかっている。マミや杏子とも現実世界での邂逅を果たした。

予知夢というやつなのだろうか?

それにしてはあまりにも多くのパターンがあった。


(どうなっているのかな)


転校生、暁美ほむらのことを考えた。

初日に受けた警告について。
5 : ◆GXVkKXrpNcpr [saga]:2016/09/20(火) 02:15:58.55 ID:eDj2lchjo
(魔法少女になってはいけない。そういうことだよね)

(多分ほむらちゃんとしっかり話をした方がいい……と思う……)

(けれどなんて?)

(毎晩ほむらちゃんが夢に出てくるんだけど、どうして? って聞いてみる?)

(……おかしいよね……)

(夢はしょせん夢だしね……)


夢の中だと仲間として、あるいは親しい友人のように接しているほむらだが現実はまったく違った。

大変近づきがたい雰囲気を放ち、いつもひとりでいる。昼休みはどこにもいないし放課後もすぐに姿を消す。

そんな彼女と初日以来まどかはほとんど話をしていない。

日々は確実に過ぎていく。

QBやマミらとの接触も増え少しずつ夢の内容に意味が通っていった。


(……私このまま何もしないでいていいのかな……?)


疑問と焦燥を募らせているうちにさやかがQBと契約を交わしてしまう。


「いやあ〜ごめんごめん! 危機一髪ってとこだったね〜」


魔法少女となったさやかによって命を救われた時、まどかは親友への深い感謝とともに激しい後悔に見舞われた。

まどかが本気になった。
6 : ◆GXVkKXrpNcpr [saga]:2016/09/20(火) 02:20:16.59 ID:eDj2lchjo



「佐倉杏子」

「どこかで会ったか?」


またほむらの新たな一ヶ月が始まったが今回はいつもと少し勝手が違った。

佐倉杏子が見滝原に最初からいた。

半年ほど前、見滝原の急激な魔女増加を危惧して巴マミが呼び寄せたということだ。

杏子にしてみれば絶好の狩場と住み家、なにより三食が保証されるというので二つ返事だったらしい。

マミの部屋に入り浸ってゴロゴロしているようだ。

おかげで問題の多いマミの無茶企画、まどかとさやかを魔女結界内に入れて連れ回す「魔法少女体験ツアー」は一度も実行されなかった。

杏子が頭から反対したと聞いた。

「素人を連れ回すなんて正気なのか?」という正論に押されてしぶしぶマミが引いたという。

二人の代わりに杏子がマミと一緒に行動している姿をよく見かけた。

結果マミはほむらと険悪な関係になることはなかったしお菓子の魔女に殺されることもなかった。

問題はさやかだ。またしても彼女の契約を止めることができなかった。
7 : ◆GXVkKXrpNcpr [saga]:2016/09/20(火) 02:23:04.83 ID:eDj2lchjo
さやかの件でまどかと話す機会があった。

彼女の方から話しかけてきたのだ。

魔法少女になったさやかとの共闘を願うまどかに「美樹さやかはあきらめて」と告げる。

これはいつも通りのことだったが。


「あの……ほむらちゃんは本当にそう思っているのかな?」


これまで聞いたことのない返しがきた。


「私がどう思っているのかは関係ない。
美樹さやかは助からない。
そしてあなたはQBと絶対に契約するべきではない。
もういいかしら」


ほむらとしては噛んで含めるように説明してから返事を待たずにその場を離れようとした時、まどかがほむらの制服の袖をつかんだ。


「待って!」


ほむらは無言で向き直り、まどかに正対する。強く出てくるまどかは珍しい。

それだけさやかのことを心配しているのだろう。

目を合わせるとまどかの瞳が揺らいだが視線は外されなかった。
8 : ◆GXVkKXrpNcpr [saga]:2016/09/20(火) 02:25:27.25 ID:eDj2lchjo
「ええっと……あの、ほむらちゃんは、その……」

「?」

「なんなのかなって」

「!」

「ちょ、ちょっと待って、今のなし! そうじゃなくてあの
私に何か言っておくこととかない?」

「言いたいことはさっき全部伝えたわ。手を放してくれる?」

「あ、ご、ごめん……」


歩き去るほむらの後姿を無力感に沈みながら見送った。


(……これじゃまるで私こそが本物の電波さんだよ)


まどかは彼女の笑顔も泣き顔も見たことがあるし、やさしい気遣いを受けたことも憶えている。励まし合って一緒に戦ったこともある。何度も何度も助けてもらった。

ただしすべて夢の中でのことで、現実とのギャップに驚いてしまう。

ただ心の奥底で「夢で見ている世界も正しい」と主張する自分がいる。


(どうなっているんだろう)

(……考えなくちゃ、私に何ができるのか)
9 : ◆GXVkKXrpNcpr [saga]:2016/09/20(火) 02:31:43.75 ID:eDj2lchjo


尊敬してやまない巴マミの説得にすら、さやかは耳を貸さなかった。

マミが「お願いだから使って」と手に取らせようとしたグリーフシードも頑として拒み、うなだれるマミを残してふらふらと街に消えた。

そしてゆっくり衰弱していった。

近日中に魔女化するだろう。

ほむらは自分でも気づかないまま小さなため息をついた。

これまで見てきた数多の時間軸においてさやかは魔女に変貌を遂げている。

そもそも彼女が叶えた他者のための願いが魂を蝕む危険をはらんでいるのであり、最初から詰んでいるとも言える。


(惜しい)


この時間軸には大きな可能性があった。

戦闘力の高いマミが生きていて険悪な人間関係もない。

だがさやかの魔女化によって杏子が消え高確率でマミも失われることになる。

この流れは何かの呪いのように固着している。

以前の時間軸で彼女らに繰り返した無駄な説得を思い出す。

またほむら一人でワルプルギスの夜と戦うことになる。

まどかはどこかの時点で契約してしまうだろう。

ワルプルギスの夜より遥かに巨大なあの魔女を見上げることになるのだろうか。

その前に苦しむまどかのソウルジェムを砕くことになるのか。
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