女鍛冶師「魔剣の製造依頼?」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

97 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/23(日) 12:02:25.73 ID:hVjzGm0so
>>95>>96
それで合っています、描写不足で申し訳ない。

他作品に使用する予定のデータの一部を公開します



───── 再世紀1258年 ─────
「南の大国:オーク討伐隊が襲撃される」

※ 魔剣が主人公オークに拾われる
※ 約三ヶ月前に魔剣『無名』が女鍛冶師に造られた


・・ 【十二年の間に小さな集落や村を襲い勢力強化】 ・・

※ この間、魔剣『無名』と魔剣『歪風』がオークとそれぞれ五年間共にする

※ 語られなかったが魔剣二代目が『歪風』になったのは再世紀1264年である

※ 十年後の再世紀1268年の末には魔剣『深紅』が生まれている

(補足としてstory2終了時までは自身に名を付けておらず、エルフの娘の血を浴びて焼かれた事で『深紅』を名乗る事になる)


───── 再世紀1271年 ─────
「story2本編、魔剣『深紅』が完成するまで」

※ 魔剣が造られてから十三年後、三代目になって三年が経過。


───── 再世紀1273年 ─────
「nextstoryに続く前の女鍛冶師」

※ 再世紀1272年にオークとオーガの軍団を南の王が誇る騎士団がやっと潰し終える
(ここまでで>>26で語られた内容)


───── 再世紀1283年 ─────
「次回の物語が開始される」
「魔剣四代目が五代目を生む半年前からスタート」

(本編で語られないが魔剣四代目の名前は『不変剣・深紅』)
(性能に変化は無い代わりに、とある人物と会うまでは魔剣のイメージカラーが『血の色』となる)



これだけここに出しても分かりづらいかと思いますが補完の役に立てばいいなと

本日の午後前半でゲリラ投下開始予定

98 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/23(日) 16:36:20.54 ID:hVjzGm0so
< ガラガラガラガラッ

< ガタンッガタッ……!


男「もうじき王都に着く、そこでブツを売る」

男「お前らはこの冒険者プレートを身に付けとけ、後続の荷馬車にはダミーで火薬を積んである」

男「そっちに関しては後続の奴等に説明済みだ、お前らはお前らで上手くやれよ」


< 「任せろ」
< 「たまにゃ都市の娼館行きてぇなぁ」
< 「へへへ……」


商人「所で、都市には最近盗賊がいるそうだが大丈夫なのかね」

男「所詮は若いスラム上がりのコソドロ集団に過ぎない、敵ではないよ」

99 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/23(日) 18:21:07.90 ID:hVjzGm0so

【南の大国『サース』・王都】


憲兵「積み荷はなんだ」

商人「美術品が何点か、後は『西』からの輸入品ですな」

憲兵「ほう」

憲兵B「確認します」

商人「……」

憲兵「所で聞いたかい? 先日、西の大国で『魔女』が出たらしい」

商人「それはそれは恐ろしいですなぁ」

憲兵「伝説の『魔女』ってのも、中々可愛いらしい小娘だったそうだ」

商人「ほぉ」

憲兵「丁度、お前達の売った娘達と変わらない歳のな」

100 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/23(日) 18:37:50.15 ID:hVjzGm0so

< 「動くな! 『王の騎士団』であるッ!!」

< 「馬車の積み荷台、二重底になってるぞ!」


憲兵「……大人しくして貰えるな?」

商人「………」

商人「何故だ、私のやり方は常に騎士団や憲兵の目を欺いてきた筈だ」

憲兵「ほんの二年前に黒髪の娘が来てな、お前達が『西』で売ろうとしていた奴隷がオークに奪われた事があるだろう?」

商人「っ! 十年以上前の話だぞ……!!」

憲兵「だがそれで奴隷の密輸方法の一部が分かったわけだ」

憲兵「牢の中で聞かせてやるよ、その娘が体験した『人を助けるオーク』の話をな」


商人「ぐぅぅぅうッ……!!」


101 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/23(日) 20:16:08.73 ID:hVjzGm0so

【王都内部……『憲兵騎士団・兵舎』】


憲兵「こちらが今朝捕らえた闇商人達の積み荷です、騎士殿」

熟練騎士「うむ」

憲兵「恐らく奴隷が積まれていた馬車の積み荷、火薬等は目眩ましでしょうな」

憲兵「しかし美術品の積み荷、これは何処か正規のルートで売るつもりだったそうです」

熟練騎士「盗品の可能性は?」

憲兵「それはどうでしょうなぁ、どれも捌けば利益の出る有名な品が多い」

熟練騎士「……む、これは」


< シャキ・・・ンッ


憲兵「魔術師によると、低級の魔剣だそうで」

熟練騎士「低級? これが?」スッ

憲兵「素材は恐らくミスリルですが混ざりものらしいですな、微弱な魔力を感じる事から錆び防止程度かと」

熟練騎士「それにしては見事な……これほど深い赤の剣は見たことがない」

102 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/23(日) 20:21:58.84 ID:hVjzGm0so

熟練騎士「私が買いたい位だな、ははは」

憲兵「買い取りますか」

熟練騎士「む? 出来るのか?」

憲兵「押収品は通常、しかるべきルートで売却するか保管します」

憲兵「しかし最近、例の『怪盗』騒ぎのせいで規則に変更がありまして」

憲兵「返却予定の無い押収品はルートをバラバラにして売却する事になってるのです」

熟練騎士「なるほど、そこで私が買い取っても良いと」

憲兵「はい」

熟練騎士「ふぅむ、幾らだ」



憲兵「金貨二百相当だそうです」

熟練騎士(足元を見たな、この男)ヤルナァ…

103 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/23(日) 21:28:01.67 ID:hVjzGm0so

【熟練騎士邸】


妻「それで、この様な魔剣を買ってきたと」

熟練騎士「う、うむ……」

妻「どうするのですか、他にも何本も魔剣を屋敷に飾っているというのに」

熟練騎士「いや、そうだが……うむ」

妻「どうして駄目と言ってるのにやるんですか」

熟練騎士「どうしてと言われてもだな……」

妻「返してきてください」

熟練騎士「……出来ぬ」

熟練騎士「押収品から買ったのだ……」


妻「…………」ニッコリ


104 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/10/24(月) 01:34:43.67 ID:xUh9SpPE0
魔剣だらけの家か
面白いもっと書いてくれ
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/24(月) 02:26:35.27 ID:/oRQmksbo

#################



熟練騎士「はぁ、絞られてしまったよ」スタスタ…

娘「あははっ! パパかっこわるーい!」パタパタ

熟練騎士「言い訳も出来んな」

娘「それで、今度はどの剣を買ってきちゃったの?」

熟練騎士「見映えは良いのでお前の部屋に飾ることにしたんだ」

娘「うぇーっ、なんでー!」

熟練騎士「見映えは良いと言ったろう……?」


熟練騎士「私だ、取り付けは終わったか?」コンコンッ

< ガチャッ

侍女「終わりました、旦那様」

熟練騎士「夜にすまないな」

娘「侍女ありがとう!」

侍女「いえ」ニコッ

106 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/24(月) 02:46:34.08 ID:/oRQmksbo

娘「……わぁ、真っ赤だねぇパパ」

熟練騎士「綺麗だろう?」

娘「でもなんだか形が歪っていうか、あんまり好きじゃないかも」

熟練騎士「まだ剣に対する理解が足りてないな、娘よ」フッ

娘「パパみたいなのを病気って言うって、ママが言ってたよ」

熟練騎士「…………」

熟練騎士(たまには夫婦水入らずで息抜きさせてやるか……)




< キンッ




熟練騎士「ん?」

娘「どうしたの?」

熟練騎士「いや、廊下にある『囁きの剣』が鳴ったので気になった」

107 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/24(月) 03:19:11.64 ID:/oRQmksbo

< バサッ

娘「パパ!パパ! いつもの子守唄っ、歌って!」

熟練騎士「またあのお伽噺か? 仕方ないな」

熟練騎士「では聞かせてやろう」



################



< キンッ

< キンッ


< ボソボソボソ……


< ケラケラケラ


< ………………

< ………ネェ………

< ……キイテミヨウカ………




< ………オーク………………




108 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/25(火) 00:16:36.25 ID:r5r2SO7Ko

─────── 昔、南の国に一人の女がいた。


女は身分こそ貴族だったが質素な生活を好み、心優しい娘であった。

朝は早くから服を縫い、昼は町の人々の手伝いをし、夜は剣を携えて町を歩き回った。


< 「それって質素なのパパ?」

< 「いつもそれを聞いてくるな……質素なのだ」


女は、いつも人々の笑顔を見ていた。

何処か浮かない顔をしていたなら、それに歩み寄って話を聞き……

彼女は力になれることならばどんな事にも協力をして、助け合っていた。


そんなある日、娘が町へ買い物に出掛けた時の事だ。

彼女は侍女を雇っていなく、何日かに一度は買い出しに行っていたのだ。


109 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/25(火) 00:41:07.01 ID:r5r2SO7Ko

そこで、女は町の人が何か困った顔をしているのに気づいた。

一体どうしたのか、と訊ねた。


『中央山脈に棲む竜が町の近くに来ていて、故郷の村から戻って来ていた子供と妻が帰ってこれずにいるのです』


そう聞いた女は町の人を慰めると、きっと大丈夫だと言って帰って行った。

大丈夫という言葉に根拠はない彼女だったが、自信はあった。

自分で竜を退治するつもりだったからだ。


直ぐ様、女は家へ戻ると一本の魔剣を……

< 「すー……すー……」


熟練騎士「……ふ、寝たか」

娘「…すぅ……すー……」

熟練騎士「おやすみ」チュッ

110 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/25(火) 01:06:13.28 ID:r5r2SO7Ko

【翌日】


熟練騎士「では頼んだぞ」

侍女「はい、行ってらっしゃいませ」

妻「今日からは職務上の付き合いでも酒場で酒を飲んではいけませんからね?」

熟練騎士「う、うむ……分かっている」

妻「もう」

< チュッ

妻「気を付けて下さいね、女神の御加護がありますように」

熟練騎士「ああ」

111 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/25(火) 01:40:10.62 ID:r5r2SO7Ko

################


娘「はぁ、もう終わりでいい? 疲れてきたぁ」

侍女「そうですわね、そろそろ昼食の準備に入りますのでお勉強はここまでにしましょう」

娘「わーい!」

侍女「それでは失礼します」ペコリ

< ガチャッ

娘「どーしよっかなぁ」


娘(そういえば、パパが買ってきた剣ってやっぱり魔剣なんだよね)

娘(赤い刃の剣なんて初めてみたよ)

娘「……」スッ


< ピトッ……つつー……


娘(変な溝……どうやって造ったんだろ)

112 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/25(火) 11:33:48.58 ID:r5r2SO7Ko

【夕方】


娘「ん……」コックリ…コックリ…

娘「……すぅ……」


< スタスタ……

侍女「あら? お嬢様寝てしまいましたか」

侍女「ベッドに移しますね?」スッ

娘「んぅ……侍女……」

侍女「起こしてしまいましたね、まだお夕食の時間まで暇がありますので寝ていて良いですわよ」

娘「うん……」ギュッ

侍女「ふふ」

娘「ね……あれ聞かせてー」

侍女「旦那様がお作りになったお伽噺ですか?」

娘「ん」

侍女「ええ、喜んで」ニコッ

113 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/25(火) 11:42:43.28 ID:r5r2SO7Ko

─────── 昔、南の国に一人の女がいました。


女は身分こそ貴族だったが質素な生活を好み、心優しい娘でした。

朝は早くから服を縫い、昼は町の人々の手伝いをし、夜は剣を携えて町を歩き回ります。

女は、いつも人々の笑顔を見ていました。

何処か浮かない顔をしていたなら、それに歩み寄って話を聞いて

彼女は力になれることならばどんな事にも協力をして、助け合うことに喜びを感じていました。


そんなある日、女が町へ買い物に出掛けた時の事です。

何日かに一度買い出しに行っている彼女は市場へ向かいます。


そこで、女は町の人が何か困った顔をしているのに気づきました。

「どうかしましたの?」、とたずねました。


『中央山脈に棲む竜が町の近くに来ていて、故郷の村から戻って来ていた子供と妻が帰ってこれずにいるのです』

『ああ、どうか無事でいてくれると良いが……』


そう聞いた彼女は町の人に、きっと大丈夫だと言って一度戻りました。

大丈夫という言葉に根拠はない彼女でしたが、自信はありました。

私ならば竜を倒せる、と。


直ぐ様、彼女は家へ戻ると一本の魔剣を手に取りました。

とある女鍛冶師に譲り受けた、銀の剣でした。

114 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/26(水) 08:37:26.21 ID:Q0KgKcoco

銀の剣は邪悪な存在だけを斬る、聖なる刃を持っていました。

彼女は銀の剣を携えて、皮の鎧を身に付けると町の外へ出ていきました。



巨大な竜を見つけると女は恐れる事なく勇敢に立ち向かっていきます。

町の人を守るため、その家族を護るため、彼女は剣を振るいます。


しかし竜は傷を負っても瞬きをする間に治してしまいました。

女はそれでも諦めずに剣を振りましたが、巨大な竜には傷をつけることも出来ずにいました。

次第に彼女の身体に増えていく傷と疲れ。

そのうち、膝をついたのは女の方でした。

そして、竜が彼女にトドメを刺そうと鋭い爪を振り上げた時。


彼女が最後の力を振り絞って剣を薙ぎ払ったのと同時に、極光にも似た光の柱が竜を貫いたのです。

それは女の諦めない心と、人を思う優しさから生まれた勇気によって作られた光の刃でした。

竜は叫び声をあげるとそのまま逃げ出し、遂に女は竜に勝ったのでした。

町へ戻った彼女は町の人々に感謝され、その後一人の若い騎士と結ばれ幸せに暮らしました。

115 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/26(水) 08:41:39.76 ID:Q0KgKcoco


侍女「……めでたしめでたし、ですね」

娘「すぅ……すぅ……」

侍女「……」

侍女「ふふ」スッ


< スタスタ……

妻「あら、ここに居たのね侍女」

侍女「はい、彼女に少し『昔話』をしてあげていました」

妻「あの人が作ったお話ね、もう……恥ずかしいわ」

侍女「いえ……私は好きですよ、貴女様のお話」

妻「あなたまでそうやって……ふ、ありがとうね」

116 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/26(水) 10:26:06.13 ID:Q0KgKcoco

【数日後】


妻「今夜は戻らないのですか?」

熟練騎士「うむ、どうも『北』で何かあったらしくてな……我々『王の騎士団』が調査に向かうことになった」

妻「まあ!……何事も無ければ良いのですが」

熟練騎士「あぁ、伝説の『魔女』が現れないことを祈っている」

妻「気を付けて」チュッ

熟練騎士「すまない、娘を頼む」


117 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/26(水) 10:40:19.28 ID:Q0KgKcoco

侍女「兵舎に残っていた他の騎士様にお聞きしました、北の大国で大規模な天災があったそうです」

妻「天災……」

侍女「それが火事なのか、地揺れなのか、はっきりとしたことが伝わってないらしいですわ」

妻「そうなの、それなら『魔女』の心配はしなくて大丈夫そうね」

侍女「はい」


娘「ママー! お外の門に誰か来てるよー!」


妻「侍女」

侍女「はい、お客様でしょうか」

118 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/26(水) 10:47:05.62 ID:Q0KgKcoco

魔術師「お初に御目にかかります、熟練騎士殿の奥方殿」

魔術師「私は宮廷魔術師を王より任されております、魔術師と申します」

妻「夫に何か用があるのでしょうか?」

魔術師「いえ、実は王の命により参りました」

妻「王の……!」

魔術師「正式な書状もあります、どうかご自分でご確認を」スッ

< バサッ

妻「侍女」

侍女「はい、私も確認します」


119 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/26(水) 10:52:48.30 ID:Q0KgKcoco

妻「1週間ほど前、夫の買ったあの魔剣を調査……?」

魔術師「我等が王は全てを見通しておられる、恐らく何かあって私に調査を命じたのでしょうな」

妻「……ではご案内しますわ」

妻「侍女は娘を見ていて」

侍女「はい」


魔術師「………」

魔術師(噂に聞く『魔剣姫の屋敷』か、外に居ても感じられる魔力からして、どれほどの魔剣があるのやら)

魔術師(だが確かに、何処かから……異質な魔力の放ち方をしている物がある)

魔術師(まるで魔力を抑えているかのような……)

120 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/10/26(水) 11:56:13.66 ID:ZT1E0DLWO
超期待
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/26(水) 19:12:14.32 ID:Q0KgKcoco


< シャキ・・・ンッ

魔術師「……赤い刃の剣」


妻「夫の聞いた話では、低級の魔剣だと」

魔術師「私の同僚が見たと言っていたのはこれでしたか」

魔術師「そうですな……」

魔術師(見た所ではその通り、低級の魔剣)

魔術師(だがこの溝の彫り方は人の手では有り得ない……人ならざる者が製作したのか……)




魔術師(柄に刻まれた紋に見覚えが無ければ、そう判断していたな)


122 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/26(水) 19:25:37.98 ID:Q0KgKcoco

魔術師「…………低級の魔剣ですね」

妻「本当に?」

魔術師「ええ、ただこの魔剣の色は塗られた物ではなく、特殊な材質で変色させた訳でもない」

魔術師「魔剣が何らかの意思を持ってその色を吸収したと見るのが正しいですな」

妻「それは、呪いとは別ですか」

魔術師「悪しき気配は無かったので問題はないかと」

妻「それは……ああ、ほっとしましたわ私」

魔術師「無意味にご心配をお掛けしました、奥方殿」


魔術師「私はこれで王に報告はします故、どうか遠征中の熟練騎士殿が戻った際は宜しくお伝え下さい」

妻「分かりましたわ」

魔術師(さて……王に伝えねばな)

魔術師(魔剣の製作者は彼の有名な鍛冶師であったと)

123 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/27(木) 09:43:38.97 ID:A6QNj0HPo


【数ヵ月後】


熟練騎士「そうか、王があの魔剣を……」

妻「でも問題は無かったみたい」

熟練騎士「良かった、これで私が買ったあの魔剣に問題があればどんな事を言われるか分かったものではない」

熟練騎士「ところで」

妻「はい?」

熟練騎士「さっき侍女から聞いたのだが、娘が……男の子とよく遊んでいるそうだな」

妻「ええ、町の商人の息子さんです」

熟練騎士「………」

妻「まだあの子もその子も五つなったばかりですよ、あなた」

熟練騎士「いや、まぁ、うむ……分かってはいるが、うむ……」

124 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/27(木) 15:39:50.81 ID:A6QNj0HPo

< カチャッ

< スタスタ……


熟練騎士「……こんな小さな体でも、いずれは女として男と結ばれるのだな」

娘「すぅ……すぅ……」

熟練騎士「私は別に、商人の息子が相手でもいいのだが」

熟練騎士「……はぁ」

熟練騎士「何のために、あんな話を聞かせていたのだか……いやこれは私の我が儘だが、だが……なぁ」


熟練騎士「……」

熟練騎士「おやすみ」スッ


娘「パパぁ……?」ムクッ

熟練騎士「起こしたか」

娘「んー……しっし行く」

125 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/27(木) 15:57:39.49 ID:A6QNj0HPo

##############


娘「ね、パパ」

熟練騎士「どうした」

娘「あれ、聞きたいの」

熟練騎士「もう夜も遅い、このまま寝なさい」

娘「んー……あのね、いつもあのお話聞いてから、次の日に男の子に聞かせてあげてるの」

娘「そうしたら、僕もそんな騎士になりたいって……喜んでたの」

熟練騎士「…………」

熟練騎士「そうか、それなら……今夜も聞かせてやろう」


熟練騎士「昔、南の国に一人の女がいた……」


126 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/27(木) 16:08:46.68 ID:A6QNj0HPo


────────── 心優しい娘であった。
                ……いつも人々の笑顔を見ていた。 ─────

          ───── …力になれることならばどんな事にも協力をして… ─────

    …………竜が町の近くに来ていて…… ──────
 ────── 自分で竜を退治する……




……女は家へ戻ると一本の魔剣を手に取った。 ──────────







────── とある女鍛冶師に譲り受けた、銀の剣だった。 ──────

─────…… 女が最後の力を振り絞って剣を薙ぎ払ったのと同時に、極光にも似た光の柱が竜を貫いた …… ─────







127 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/27(木) 17:25:15.66 ID:A6QNj0HPo


【更に数ヵ月後……北の大国『ノルド』、国境】



騎士団長「総員、抜刀! 『北』の国境を越えたトカゲ共を一匹たりとも逃がすんじゃない!!」

老騎士「団長、『北』から再び使者が!」

騎士団長「!」

老騎士「『我々、竜には手を出さず』……完全に奴等、竜の群れに関して知らぬ存ぜぬを通すおつもりですぞ!」

騎士団長「チッ……この竜の群れすら奴等が用意したと聞いても不思議ではなさそうだ」


蛇竜「キシャァァアアッ」ぞぞぞッ

騎士団長「破ァッ!」

< ズドォンッ!!


騎士団長「地を這う蛇竜は正面から切り伏せよ! 空を滑る翼竜は弓手が撃ち落とせ!」

< 「「応!!」」


128 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/27(木) 17:32:50.02 ID:A6QNj0HPo

熟練騎士「ヌゥゥッ……!」ガギィンッ

蛇竜A「シュゥゥッ…! キシャァァッ」ギチギチッ…

熟練騎士「でぇえあああッ!!」


< ゴシャァッ

熟練騎士「っ……はぁ、はぁッ」

騎士「熟練騎士殿、ご無事ですか!」ガシャッ

熟練騎士「うむ……齢四十にもなると体力が落ちていかんな」

騎士「貴公は奥方に体力を奪われてそうですからな、ははっ」

熟練騎士「……」

騎士「まさか本当に……?」

熟練騎士「も、元々は活発な娘だったのでな、あの妻は」


熟練騎士「それより騎士よ、貴殿はどう思う?」

129 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/27(木) 17:43:59.53 ID:A6QNj0HPo

騎士「この状況ですか」

熟練騎士「然り、数ヵ月前は幾つかの村が竜の群れの襲撃を受け、今は国境である『オクチデント草原』で無意味に火を放つ竜達」

熟練騎士「何故、この草原を焼き払う? そして私や他の騎士が見た事から考えるにコイツら……」

騎士「我々が到着したと同時に、進軍を開始した……ですか?」

熟練騎士「そうだ、これは『進軍』だ」


< キィィ ──────ンッ!


熟練騎士「!」
騎士「お任せを」バッ

翼竜「ギャァオオオオッ!!」

騎士「雷の精霊よッ」ビュッ!!

< パキッ

────────── バリバリッ ゴバァアアアアッッ


< ズゥンッ!

騎士「ふっ、と」スタッ

熟練騎士「見事だ」

130 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/27(木) 17:54:16.03 ID:A6QNj0HPo

騎士「……なるほど、確かにこれは進軍と言うに間違いありません」

熟練騎士「そうだ」

熟練騎士「どの竜も大した敵ではないが、我々を突破せんと連携しているのが分かるのだ」

騎士「目的は我が国でしょうか」

熟練騎士「分からん、だがそれ以上に『北』の対応が腑に落ちぬ」

熟練騎士「民が竜による被害で命を失われている、なのに奴等はそれを無視している」

騎士「許せませんね」


< ゴゴォッ……ドォオンッッ!!


騎士「っ!?」

熟練騎士「団長の方向だ……一体何が!」

131 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/27(木) 18:09:39.40 ID:A6QNj0HPo


騎士団長「……油断していた、か」ゴフッ

老騎士「団長……!」

騎士団長「爺、水晶で全騎士に通達しろ」


騎士団長「『魔女』に汚染された竜が現れたと……ッ」




黒翼竜「グルルル・・・」ズシッ


黒翼竜「バグルルルッ!!」ザッ




老騎士「ここは私めに!」

騎士団長「よせ、爺!」


────────── ザクッッ


132 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/27(木) 20:21:13.75 ID:A6QNj0HPo

  バシャッ……ボタタッ


老騎士「ご……ぉッ」

騎士団長「爺ッ!! やはりこの翼竜、周囲に無色の魔剣を展開している!」

老騎士「団長ォ、撤退……をぉ……ッ」

騎士団長「喋るな!」


黒翼竜「ヴルルァァアアッ!!」


騎士団長「くっ、魔導騎士! 撤退だ!!」



##################



魔導騎士「!」

魔導騎士「こちら水晶班! 全騎士に告ぐ! 団長からの命令!」

魔導騎士「撤退だ! 詳細は不明、しかし会話から察するに『魔女』に汚染された竜が出現している!」

魔導騎士「繰り返す! 全騎士撤退、『魔女』に汚染された竜が出現した!」


133 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/27(木) 20:28:11.14 ID:A6QNj0HPo

< 『撤退だ! 全騎士、撤退せよ!』


熟練騎士「汚染された竜だと?」

騎士「熟練騎士殿、確か『魔女』に汚染された生物は……!」

熟練騎士「凶暴化し人間を狙って攻撃するようになり、魔力を編んで生成した剣を使う」

熟練騎士「極めて危険な存在だ、それがまさか竜に起きるとは……」

騎士「とにかく撤退です、 水晶班のいる地点まで走りましょう!」

熟練騎士「ああ!」


< ドゴォォオッ!


熟練騎士「!」

騎士「あっちは……水晶班の待機している位置じゃ……」

熟練騎士「急ぐぞ!」


134 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/27(木) 20:37:11.57 ID:A6QNj0HPo


< ゴォォォオ・・・!


騎士「くっ、何だこの炎はッ」

熟練騎士「誰かまだ居るのか!」

< 「こっちだ……っ」

熟練騎士「大丈夫か! 今瓦礫をどかす……!」



魔導騎士「う……ぐ……ッ、あの黒い翼竜……一直線にここへ来た……」ガララッ

熟練騎士「他の魔導騎士は?」

魔導騎士「最初の爆撃で殺られた……俺も、もう……」ドロッ…

熟練騎士「っ、直ぐに止血を!」

騎士「待ってください、体内に何か刺さっていませんか!? 癒しの精霊が治せないと言っています!」

熟練騎士「なに!?」


魔導騎士「……奴の、魔剣だ……ご丁寧に魔力を編んだ脆い刃を身体に散りばめて……っ」ゴポッ

魔導騎士「う、ぐ……ゴハッ…」

熟練騎士「しっかりしろ! 糞、何か……」


魔導騎士「……王に、報せるのだ……お前達が……」
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/27(木) 20:49:13.23 ID:A6QNj0HPo

騎士「僕達が……!?」

魔導騎士「頼む、王都に……奴が、辿り着く前に……」スッ

< キィィインッ

熟練騎士「……」

熟練騎士「貴公の最期は、必ずや王に!」

騎士「ぼ、僕もです……!」


魔導騎士「……ふ…たの……んだ………」

魔導騎士「女神キロクノの知を……ここに……!」


< フッ


魔導騎士「…………っ」ゾクッ

魔導騎士「死にたく……な……」


< 「……」ドサッ


136 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/27(木) 20:56:18.64 ID:A6QNj0HPo


【王都】


< フッ

熟練騎士「騎士、城へ行くぞ!」バッ

騎士「はっ!」バッ


熟練騎士「我等が王ならば、汚染された竜だろうと一太刀で倒してくれる筈だ……ッ」

騎士「しかし敵は単騎ではありません、他の竜が到達する前に策を……」







< ォォォオオオオオッ……!!







騎士「 ──────── まさ……か 」


熟練騎士「ッ……速すぎる、何なのだあの黒い翼竜は!!」


137 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/27(木) 21:11:53.29 ID:A6QNj0HPo

################


妻「……? 今、何か聞こえなかった?」

侍女「いえ……風の音かと思いましたが」

妻「そう、なら別に…


< 「きゃぁあっ! ママー!!」


妻「なにっ!? 娘の声……!」

侍女「私が見て参ります!」


138 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/27(木) 21:21:11.05 ID:A6QNj0HPo

< アァハハハハハハハハハ・・・!


娘「わぁぁあ!!」

侍女「落ち着いて下さい、この声は何処から……」

娘「廊下の、緑の短い剣が……っ!」

侍女「囁きの魔剣が……?」バッ


< 「ハハハハハハハハッッ」

侍女「……これは一体」


妻「侍女! この声は誰なの!?」

侍女「ご安心下さい、囁きの魔剣が何故かこれほどの笑い声を……」

妻「囁きの!?」

妻「侍女、今すぐお城へ逃げるわよ!!」

139 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/27(木) 21:31:29.47 ID:A6QNj0HPo

##################


黒翼竜「バグルルルッ、ヴルルァァアアッ!!」

< ドゴォォオッ!!



< 「ぎゃぁぁ……ッ」

< 「騎士団は、騎士団は何処へ……っ」

< 「うがぁあああ!! 誰か火を消してくれ!!」




熟練騎士「町が……ッ」ギリッ

騎士「熟練騎士殿、このままでは城下町が!」

熟練騎士(どうするも何も、町の人間を見殺しには出来ん……)

熟練騎士(通信魔術が使える者が近くにいない以上、最善策は……)

熟練騎士「騎士、貴公は城へ急げ」シャキッ


騎士「熟練騎士殿!?」

熟練騎士「私とて団長と共に戦ってきた騎士だ……王もここまで来れば直ぐに気づいてるかもしれん」

熟練騎士「行け! 私は奴と戦うッ」


140 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/27(木) 21:39:57.53 ID:A6QNj0HPo

────────── ズガァンッッ!!


黒翼竜「ッ……!」ズキッ


熟練騎士(私は魔術が使えん)スタッ

熟練騎士(出来ることは長年愛用してきた『不壊の魔剣』を、鍛え上げた剣術で振るうのみ……!)ギシッ


    ボッ……!

黒翼竜「ヴルルァァアアッ!!」ギュルンッ


熟練騎士「ッ!」バッ

< ズバァァッ
          ブシュッ!!

熟練騎士(ブレスを吐くと見せかけ、魔剣の投擲……!)

熟練騎士(だが、浅い!)ザッ…!

熟練騎士「うおおおおおおおおお!!!」


141 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/27(木) 21:45:37.35 ID:A6QNj0HPo

< ズンッッッ

黒翼竜「 ギィッ……─────────!!? 」

熟練騎士(竜は、己の力を過信している)

< グリッ……ズヂッ

黒翼竜「グルァア……ッ!!」

熟練騎士(狡猾さも、自身の見た目も、その膂力と能力の強さもまさに化け物……それを貴様は知っている)

熟練騎士「……『自分が正面から刺されるとは思わなかった』か、竜……!」


黒翼竜「ヴルルルルゥアアアッッ!!!」

< バギィンッ!!

熟練騎士「!?」


熟練騎士(馬鹿な、不壊の魔剣を破壊しただと……一体どうやって!?)


142 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/27(木) 21:51:22.71 ID:A6QNj0HPo

< ドサッ!

熟練騎士「ぐっ……!」

黒翼竜「グルルル……ッ」バサァッ


< ブワァッ!


熟練騎士(逃げた…?…俺から離れようと……)

熟練騎士「それなりに効いたというわけか……ッ」

熟練騎士「だか、はぁ、はぁ……あの方向は……町の外に近い…………」





熟練騎士「……俺の、屋敷がある…………」



143 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/27(木) 22:04:50.37 ID:A6QNj0HPo



───── 『とある鍛冶師が打った剣を、偶然にも魔剣を集めていた騎士が買った』



侍女「…………」ガタガタ…ッ

『様々な魔剣が屋敷のあちこちに飾られ、静かに魔剣達が互いに知識を交わす』


妻「……侍女」

娘「ま、ママ……」

『とある鍛冶師の元を離れて、初めて魔剣はそこで自分以外の魔剣を知った』

『しかしどの魔剣も、誰を斬ったのかは語らなかった』

『そこで語られていたのは、小さな世界で起きている小さな幸せの物語だけだったのだ』

『幸せな家族の、何気無くも儚い……小さな幸せの世界』





妻「娘を連れて、逃げなさい!!」



黒翼竜「ヴルルルルゥアアアッッ!!! ヴグルァアアアッッ!!」




144 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/10/28(金) 06:25:53.19 ID:GTfi7E0K0
いいとこで切るなぁ
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 13:32:14.35 ID:pM17Uz8Po

『屋敷の門扉の柱に付けられた魔剣は言った』

『魔剣姫の屋敷へようこそと歓迎した』


妻(あの黒い障気、『魔女』に汚染されたの? そもそもこの竜は何処から……!)


黒翼竜「ヴゥルァアッ!!」バサァッ


妻(あの翼の動きは囮、本命は無色の魔剣による不意討ち!)バッ


    ドカカカカッッ!!


妻(っく……避けきれなかった)ブシュッ

妻「昔はあんなに動けたのにね……っ」


『エントランスで絵画の隣に飾られた二本の魔剣が言った』

『この屋敷の主は熟練騎士であるが、殆どの魔剣はその妻に収集された物だと』

『食堂に飾られた十数本の魔剣達は口々に語った』

『この屋敷で働く侍女は、その昔に熟練騎士の妻に救われた家族の娘だと』


< ギュボォッッ!!


    ゴッッ ───────!!

 ドガッ >

妻「〜〜ッ……熱っ、ぁ……く……!」バサバサッ!

妻(今の私じゃ、魔力も能力も無い……逃げ切るのも難しい)

妻(侍女が娘を少しでも遠くへ連れて逃げてくれれば……)

    ドスッ

妻「……ッ


146 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 14:04:27.48 ID:pM17Uz8Po

妻「ぁッ、ああぁぁ……っ!!」


『二階の熟練騎士夫妻の寝室、そこを守るように飾られた一本の錆びた魔剣は言った』

『お前の母に、私も造られたと』

『そしてその魔剣は疲れたように口を閉ざして』

『小さな、子供部屋の前の廊下に飾られた、変わった魔剣が代わりに語ってくれた』


妻「ぁぁあ……ッ!! はっ、ぅぐううう……」

妻(痛い、痛い……! 無色の魔剣……予備動作無しに、あぁ、足が……ッ)

妻(この竜今までとは……っ)

妻「抜け、なぃ……っ!」ギチギチッ…


< ズシンッ

< ズシンッ


黒翼竜「カハァァァア・・・」
    ガパァッ

妻「 ───────っ 」


『かつて、貴族の娘は一本の魔剣を手に黒い障気を漂わせる竜と戦った』

『都の騎士団が到着するまで数時間』

『魔剣が如何に優れていようと、傷が塞がってしまえば意味はなく』

『彼女にとって時間は敵となっていた』


『そして力尽き、絶体絶命の窮地に陥った彼女は手にしていた魔剣を握り締め』


『……自害しようとした』


147 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 21:02:02.28 ID:pM17Uz8Po


────────── ビュォッ・・・!



『銀の魔剣はその時、一人の青年騎士が現れたと言った』

『しかし丸腰だったその青年は銀の魔剣を奪い取って、竜と対峙した』

『そして』



熟練騎士「うぉおおおおおおおおッ!!!」

   ドゴォッッ・・・!!

黒翼竜「ッヴグルォァッ!?」



『雄叫びを上げて、竜へ立ち向かったのだ』

『他でもない、娘を守るために』


妻「あなた……!」

熟練騎士「チィッ、籠手が一瞬で砕けた……どうなっているあの竜!」ザッ

熟練騎士「……その足の止血は出来るか?」

妻「ごめんなさい、魔剣が抜けないの……っ」

熟練騎士「……」ギリッ


148 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 08:46:48.29 ID:lOqvR7Tdo

『囁きの魔剣は語った』

『当時の銀の魔剣は、ある「引き金」を引く事でしか力を発揮できずにいた』


< ガランッ

妻「……?」


『それはとある鍛冶師が何気無く造った時に、特に理由も無しに組んだ術式だった』


妻(この剣の紋章は……!?)


『所有者の感情に合わせて消費魔力を上下させ、刃を砲身に見立てて放出口を固定』



< 「あなた!!」

熟練騎士「!」

妻「これを使って……!」バッ


   パシンッ


熟練騎士「これは……あの赤い魔剣?」

熟練騎士「いや……」

熟練騎士(確か刃の形状は歪だった筈だ、直剣になっていないか……まるで、あの時の?)



『所有者の魔力を限界まで吸出してでも敵を討つ為に、銀の魔剣は全力を振り絞る』

黒翼竜「ヴグルァアアアッッ!!」


─────── キィンッッ


『後は水の入った筒を振り下ろすように』

妻「その剣を信じて、竜を倒して!!」

熟練騎士「……ッ!」チャキッ


『剣を振り下ろす瞬間に術式が発動するのだ』

熟練騎士(無色の魔剣が生成される音、奴が不意を突かれて地に落ちていること)

熟練騎士(剣に対して絶対の防御を誇っているという自信、それがあの竜をここに縫い付けている……!)



熟練騎士「三十年前を思い出すなぁ! 妻よ!」

< ビュォンッ

熟練騎士「頼むぞ、魔剣 ───────!! 」



149 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 08:55:33.52 ID:lOqvR7Tdo


『とある鍛冶師が打った魔剣は聞いていた』


『数々の名だたる先達である剣のどれもが語る、たった二人の物語を』


『その二人の物語がまだ続いている証を』


『侍女が小さな子に聞かせた子守唄』


『熟練騎士の妻が小さな子に語った苦くも美しい過去の子守唄』


『熟練騎士が、未来に続く子に託したい幻想の一端』



『魔剣はその物語を同じように自身の子に語り聞かせた』



『そして』

『魔剣は産声を上げるように天高く名乗る』



『剣先から放たれた赤い光は黒き竜を飲み込み、柱となって空へ昇る』



『新たに語り継がれるであろう、魔剣』

『その名は』



150 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 08:56:29.79 ID:lOqvR7Tdo








       【nextstory..3】

       【魔剣五代目】

    【その名は……「幻想剣・子守唄」……】







151 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 08:57:13.61 ID:lOqvR7Tdo








       【story..3】

       【魔剣五代目】

    【その名は……「幻想剣・子守唄」……】







152 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 09:05:53.82 ID:lOqvR7Tdo

#############


魔術師「屋敷が全壊してますな、熟練騎士殿」

熟練騎士「はは……魔剣を何本か売って新しく建て直さねばな」

熟練騎士「それよりも、妻の容態は……」

魔術師「王の名にかけて必ずや足の傷すら残さず治して見せましょう」

熟練騎士「頼んだぞ……私は少し、眠る……」



< 「あー眠ると良いぞ、妾もそれが好ましい」



熟練騎士「!!」ガバッ

魔術師「熟練騎士殿、ご無理をなさいますな、貴公は魔力を限界まで搾り取られているのだ」

熟練騎士「し、しかし……!」


153 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 09:16:39.31 ID:lOqvR7Tdo


女王「ククク、妾は構わぬ」

女王「此度の竜討伐は見事であった、同時にあの『光の剣』も実に見事であったぞ?」


熟練騎士「有り難き幸せ……!」ザッ

女王「さて、先ほど魔剣を何本か売ると言っていたな? 貴公」

熟練騎士「はっ! 恐れながら、それほど金銭に余裕のある身ではないので……家族の為にも剣を手放すつもりでした」

女王「ではそこの赤き魔剣、妾が買い取ろう」

熟練騎士「!?」

女王「異があるなら聞こうぞ」

熟練騎士「いえ……!!」


女王「では決まりだ、その魔剣……」


154 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 09:17:52.66 ID:lOqvR7Tdo




────────── 「……妾の剣とする」





       【nextstory..4】

       【魔剣六代目】

    【その名は……「王ノ道化」……】







155 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 09:18:40.64 ID:lOqvR7Tdo
映画見てきます
FGOの実写

次も短め
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/10/29(土) 09:23:24.44 ID:M/fOeJhOo
おつおつ
157 :携帯から>>1 [saga]:2016/10/29(土) 12:24:42.59 ID:O1Qh7jTdO

補足【この世界における竜種とモンスター(魔獣)】


story3に登場した蛇竜と翼竜

蛇竜
※ 成体で約三十メートル超になる大理石に近い鱗を持った蛇。
当然、締め付けられるまでもなく一瞬で飲まれるし粉砕される。
(総重量250トン以上でビルみたいなのが音速で噛み付いてくる)

翼竜
※ 幼体は五十センチから成長し、僅か半年で成体として約二十メートルになる。
ファンタジーのドラゴンとは違い鋼の鱗を持った鷹の様な姿をしている。
通常はブレスと呼ばれる魔力を混ぜた吐息による爆撃で対象を『追い詰めてから』、手足を食い千切った後に丸呑みにする。

黒翼竜
※ ある『魔女』によって存在そのものを黒く汚染された翼竜。
何らかの能力付与により、触れた『武装の過去』を根本から消失させる事で破壊された様に崩壊させる鱗を持った。

ブレスは膨大な魔力を混ぜるのではなく、炎に転換している。
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/10/29(土) 12:40:37.90 ID:zwbgT881O
クラウン・クラウン
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/10/29(土) 19:37:52.54 ID:73qc9ziJ0

今回も素晴らしかった
先代の記憶・記録は剣の中に残ってるって言ってたけど武器としての能力は最新世代のものしか発動できないのかな?
あと屋敷を見る限り魔剣に知覚があるのはわりと普通のことなんだろうか
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 21:26:05.74 ID:lOqvR7Tdo
>>159
能力については本編で触れるので知覚について

魔剣五代目の視点では、どの魔剣も会話能力は無いですが、
寝言で今までの記憶を常に一から現在まで語り続けている。
という事になっています。
何より未だ女鍛冶師の魔剣に会話のキャッチボールが出来ないので

しかしそれは魔剣視点での話
実際に分析するなら『他の魔剣に刻まれた過去の記録を読み取っている』というのが、本来の魔剣の様子です
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 21:27:51.25 ID:lOqvR7Tdo

< ガキンッ


女王「楽にせよ、客人」

女王「……む、違うな! あははは! 客『剣』であったな!」

女王「そなたの製作者が何者か、大体は調べている」

女王「面白い人間が面白い存在を生み出したものよ」

女王「なぁ、竜殺しの魔剣」


< ……


162 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 21:31:09.53 ID:lOqvR7Tdo

女王「今日より妾の玉座の左に立つ事を許そう」

女王「臣下達は不思議な顔をするだろうがな」

< ……

女王「これから毎日、妾の隣に立つ事が許されるなどそうは無い」

女王「否、これが初めてなのだからな」

女王「ククク、あぁ楽しい」


< ……


163 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 21:40:23.76 ID:lOqvR7Tdo

################


女王「晩餐会から戻ったぞ」

< ……

女王「……」

女王「なるほど、これまでそういった食事の場に行ったことがないか」

女王「勿体無いものだ、食は万物に共通する概念であるが人間は特にそれを追求する」

女王「人間に限らず、一部の生命はそれに近いものを求めているものだ」

女王「命を彩り、飾り付ける」

女王「そして食すのだ」

女王「記憶しておけ、魔剣よ」クックッ


< ……


164 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 21:43:48.01 ID:lOqvR7Tdo

女王「そういえばそなたにはまだ名乗っていなかったな」

女王「妾はこの南の大国『サース』の王、ジークフリード三世である」


< ……キシッ


女王「…………フッ」

女王「はははは! やはりそうか、そなた……妾が女の姿として見えているか!」

女王「実に見事」

女王「如何にも妾は女である、生粋の美女であるぞ」クックッ


165 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 21:46:41.56 ID:lOqvR7Tdo

女王「妾に名は無い」

女王「生前……いや、かつては名が在ったが、王を名乗る存在となってからは名を持ってない」

女王「妾がこの世界に生まれた時から、妾は王であったが故な」

< ……

女王「だから妾の事は『いつか』好きに呼べ」

女王「歓迎してやろうぞ、ククク」

166 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 21:55:30.98 ID:lOqvR7Tdo

女王「『幻想剣・子守唄』か」

女王「良い名だ」

女王「その名に至るまでに何を経験したかは知らぬが、妾は良いと思うぞ」

女王「自身に名を付ける事は、在り方を決めるに等しい」

女王「どの程度の年月を経てそなたが変わるのかは分からぬが……それまでの在り方としては悪くない」


< ……

女王「最も、あの竜によって出た妾の騎士団での犠牲者は五十は越える」

女王「当面はそなたの力が必要になるような事態は起きない事を願う」

女王「起きたら妾が十秒で終わらせるがな」

167 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 22:03:06.17 ID:lOqvR7Tdo

################


女王「良い朝だな、幻想剣」スッ

< ガキンッ

女王「そなたの存在意義はあくまで剣である、なら所有者として使おう」チャキッ

女王「…………」

女王「ククク、面白い」

女王「剣の刀身に術式が幾つも組まれているな、そなたがこれまでに作り上げたか」

女王「では上には上がいると教えてやろう」ブンッ



─────── ビキィッ!!



< パキッ……ミシッ……

女王「妾の魔力を一割以下……一分だけ流し込んで振った結果、砕ける寸前だ」

女王「さぁ、当分は妾の隣で休んでいるがいい」

< ガキンッ

168 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 22:23:43.85 ID:lOqvR7Tdo

【数ヶ月後】


女王「……?」

女王「そなた、思ったより早く見映えを変える事が出来るのだな」

< ……

女王「許せ」

女王「『あの』人間が造った剣がどれ程の物か、壊すつもりで振った」

女王「考えを改めるとしよう」

169 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 23:16:44.76 ID:lOqvR7Tdo

< ガコォン……

< 「陛下……騎士団が一人、騎士団長参上致しました」


女王「騎士団長、そなたにこの魔剣を使用する事を命じる」

騎士団長「……はっ!」

女王「期間は半年だ」

女王「その頃までに飽きたなら返しても良いがな」

騎士団長「使わせて頂きます、王よ」スッ

騎士団長「……」

騎士団長(もしやこの魔剣が、例の竜殺しか……?)ガキンッ


女王「刃零れはすまい、存分に使え」


170 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/30(日) 20:39:10.69 ID:J/60kwISo
################


騎士団長「……ということがあってな、この剣ではないか? お前が竜を倒した魔剣とは」カチャッ

熟練騎士「如何にも、しかし王は何故その剣を……?」

騎士団長「やはり何かお考えあっての事だろうが、気になるだろう?」

騎士団長「そこで貴公に会いに来たのだ、例の竜殺しの一件……この魔剣でどうやればあの光の柱を出せたのか」

熟練騎士「!」

熟練騎士「……と、申しましてもな……」

騎士団長「なんだ勿体振って」

熟練騎士「特に何か方法や術式をもってやった訳ではないのです、無我夢中で剣を振っただけで」

171 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/30(日) 21:32:08.18 ID:J/60kwISo

################

【王城・亜空間訓練場】


騎士団長「無我夢中で、か」

騎士団長「……」

騎士団長(精神の集中、同時に呼吸を停止)スゥッ

騎士団長(酸素排出、意識をギリギリ保てる位置を……)


騎士団長「……」

騎士団長「……」スチャッッ

   シャキィッ


< ビュィンッ


騎士団長「……」

騎士団長「ふぅ……なるほど、王が俺に渡した意味も解る」

騎士団長「射程は恐らく対象に触れるまでならば何処までも届き」

騎士団長「その破壊力は今の手応えが確かならば……」

騎士団長(使い手に依存している、これは扱う者次第で恐るべき兵器になる)

172 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/30(日) 21:55:31.01 ID:J/60kwISo


< ヴヴヴヴ・・・


騎士団長「……副団長か」

女副団長「団長様ぁ、ご機嫌うるわしゅうございますぅ」

騎士団長「何用だ、今は訓練場内の空間法則を変えてある、危険だから出ろ」

女副団長「そんなつれなぁい、我が王からのメッセージをお伝えしにきたのにぃ」

騎士団長「……?」


女副団長「『五つ見つけられたら褒めてやる』、との事でございますわぁ」


騎士団長「五つ、か」

騎士団長(まだ何かあるのか、この魔剣)チャキッ…

173 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/30(日) 22:27:38.18 ID:J/60kwISo

【八日後】


女王「ほう? 見つけてきたか」

騎士団長「は、陛下の御言葉通り幾度と剣を振り、或いは岩を斬って研鑽して参りました」

女王「して、どうであった」クックッ

騎士団長「第一にこの魔剣は『錆びない』」


騎士団長「次にこの魔剣は『修復機能』を備え……」

騎士団長「『少女』だ」


女王「…………」

女王「予想外で興味深い、続けろ」

174 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/10/30(日) 23:30:12.99 ID:aW1EFVoz0
面白い、続けろ

いえ続けてください
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/31(月) 19:23:24.79 ID:YrHjgEwFo

騎士団長「刀身に掘られた溝のような紋様は、剣を投擲した場合の空気抵抗次第で『軌道を変える』」

騎士団長「何故この剣が投擲に適した物に造られたのかは解りませんがね」

騎士団長「そしてこの数日苦労したのが、例の竜殺しの光」

騎士団長「『赤き光刃』、これが現状確認できる中で最強の術式です」


女王「ククク……推定で、その魔剣のレベルはどの程度だと考えている?」


騎士団長「上級を越えて対魔獣級、かと」

女王「ハズレだ」

騎士団長「……上級でしたか」

女王「上級も怪しいわ、その様な扱いに困る剣など中級が似合いだろう?」

女王「だがその前に」スッ


女王「先に言った『少女』とは、どういう意味なのかを妾に聞かせて貰えると面白いのだが?」クックッ


176 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/31(月) 19:46:12.58 ID:YrHjgEwFo

騎士団長「は……信じ難い事にこの魔剣は、成長に似た……進化をしていました」

騎士団長「宮廷魔術師の何人かを呼び、三日かけて魔剣の内部構造を調べた所」

騎士団長「常時、ゆっくりではあるもののミスリル銀や金剛鋼、鉄や石に近い性質の金属が密度を変動させています」


女王「それで?」


騎士団長「変動に法則が見られました」

騎士団長「周囲の環境……極端に言えば『音』に反応し、この魔剣が『視認』した物や人物によって速度も密度も成分も変える」

騎士団長「最も変動が激しかったのは私が触れている時でしたか」

女王「ククク……それで? それで……その様を見てそなたは」

女王「『少女』だと、思ったわけか?」

騎士団長「……は」コクン


177 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/31(月) 19:58:09.44 ID:YrHjgEwFo

騎士団長「この魔剣は未完成、或いは未熟と表現するのが正しい」

騎士団長「何も分からず、何も知らないが故にこの魔剣は世界を観測する事で己の正しい姿を作り出そうとしている」

騎士団長「他の魔剣やただの剣を真似て」

騎士団長「それを持つ人間の状態を観察して」

騎士団長「完成させようとしているのです、己の生き様を」


騎士団長「故に、他者の目や親の姿に翻弄されながらも背伸びする姿を、私は『少女』だと思ったので ─────

女王「あはははははは!!」


女王「団長、騎士団長! おま、ククッ、お前は……その魔剣が何故に女だと思ったのだ?」クックッ

女王「今の話ではただの赤子とでも表現出来そうだが?」


騎士団長「 ────────── 」

騎士団長「…………ああ、失念しておりましたな」

騎士団長「私はこの魔剣から剣としての美しさを感じなかったのですよ」

騎士団長「代わりに感じたのは刃を彩るこの深紅の輝き……」

騎士団長「赤いドレスを着た女を目にしていると言えば良いですかな?」


女王「ほう」

女王「暫くそなたには休暇をやるから寝ていると良いぞ?」ニコッ


騎士団長「へ、陛下! 疲れているわけではないのです!!」ガバッ

178 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/31(月) 20:08:51.22 ID:YrHjgEwFo

################


< カタンッ

女王「あー、それにしても昼間の騎士団長が面白かったな」

女王「どうだった奴との数日間は? ククク」

< ……

女王「あれは的を射ていたろ、まぁ妾はそなたが女だと知っていたが」

女王「何せあの人間が造った魔剣なのだからな」

女王「若いあの騎士が頼まなくとも、いつか近い物を造りかねないと妾は思っていたのだ」クックッ

女王「あれは狂っているからな」

179 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/31(月) 20:15:36.56 ID:YrHjgEwFo

女王「妾は『政』には手を出さない」

女王「王であるが、妾は王の中の王であるが故にな」

女王「妾は一つの物事に対し、適した者に適さぬ命を下し、そしてそれを必ず達成させる」

女王「失敗は決して起きない」

女王「そなたにそれが如何に他の『魔女』を凌ぐ特異性を持っているのか、まだ分からぬだろうが」

< ……

女王「いずれ、そなたに国や王の話を改めてしたいものだ」

女王「妾の友としてな」スッ

< ガキンッ

180 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/31(月) 20:25:13.78 ID:YrHjgEwFo

女王「誰かおらぬか」


< ガチャッ

女副団長「ここに」ザッ


女王「この魔剣を宝物庫へ安置せよ」

女王「妾が取りに行くまでは封印する」


女副団長「御意」

< シャキ・・・ンッ


女王「次は少し退屈になるぞ」ボソッ

女副団長「……?」


181 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/31(月) 21:19:41.10 ID:YrHjgEwFo
【玉座の間】


──────── 「良かったの?」


女王「何がだ」

女王「あれは騎士団長の言う通り未熟、妾と肩を並べるにはまだまだ時が必要である」


眼鏡少女?「……そう」

眼鏡少女?「幻想剣・子守唄は五代目、あれが次に成長し世代交代するのは約四年と二ヶ月」

眼鏡少女?「それまで宝物庫にしまっておくの?」


女王「いいや」

女王「その前にあれは、己の運命に導かれてこの城を旅立つだろう」

182 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/10/31(月) 21:27:02.95 ID:pCRXnEz8o
魔剣は特性を受け継いでるのね
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/31(月) 21:30:33.75 ID:YrHjgEwFo

< ペラッ……カキカキ……

眼鏡少女?「記録した」

眼鏡少女?「貴女の城の封印は厳重な筈だけど、本当に誰かが持ち去ると?」


女王「さぁな、妾の見立てではそう単純ではないだろうが」

女王「……」

女王「妾は王だ」


眼鏡少女?「そうね」


女王「妾の上に立つ者は、いずれも次元の違う強敵ばかりである」

女王「肩を並べられる者も、もうそなたしかおらぬしな」

女王「だから妾はあの魔剣には期待しているのだ」

女王「あれは際限無く進化し続ける、時間が許す限りどこまでも」


眼鏡少女?「……そんな剣や武装はこれまでに一度も出てきてない」パラパラ

眼鏡少女?「理由は明白、強力な武器は必ず私達が破壊してきたから」パタンッ


女王「本の虫め、常に新しき存在が生まれる時は異例に決まっている」

女王「妾はな、知ってほしいのだ」

女王「この世界を生きる上で何が必要なのかを」

184 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/31(月) 21:38:17.59 ID:YrHjgEwFo

女王「いつか」

女王「いつか、あの魔剣は辿り着く筈なのだ」

女王「『魔女』と同じ領域、妾の横に」


眼鏡少女?「……私達と同じということは、あれがいずれ認められると?」


女王「然り」


眼鏡少女?「たった数ヶ月で随分気に入ったのね」


女王「…………」

女王「『西』と『北』が何者かに支配され、妾の友を一人、二人と奪った者……」

女王「奴等を倒すのは妾ではないと予感しているのだ」

女王「だが、それまでは……」


185 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/31(月) 21:52:44.38 ID:YrHjgEwFo


『とある鍛冶師が打った剣は、南の国を治める一人の王の手に渡った』

『その王は、誰よりも気高く、強く、賢い王として民に愛されていた』


『ただ、その側面は偽りであると魔剣は知っていた』


『魔剣が気付いた事に、王も気付いた』

『まるで視線が交差するように』

『純粋に、王としてではなく景色の一部として、無垢な視線が見つめているのに気付いたのだ』


『魔剣は知らない』

『女王がどんな存在なのか、どれ程の存在に怯えているのか』

『彼女が何を思って魔剣を知ろうとして、何を知ったのか』

『最後の別れ際に何故、自分を宝物庫に封印したのか』


186 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/31(月) 22:00:53.27 ID:YrHjgEwFo


『四年後』

『宝物庫へ女王は、騎士団長に命じて様子を見てくるようにした』


『国の備えとして様々な財宝や呪いの品を置いている宝物庫』

『光輝くその様は豪華絢爛』

『その深奥で封印されていた魔剣を見て、騎士団長は言葉を失った』

『魔剣は淡く赤い光を放ちながら、その刃を「鏡」に変えていたのだ』


『美しい財宝と、自身の姿を映す剣の妖しい光』

『騎士団長は女王へそれを報告する為に、再び宝物庫を閉じた』


『招かれざる者が共に入り込んでいたとも知らずに』


187 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/31(月) 22:08:36.62 ID:YrHjgEwFo



騎士団長「申し訳ございませんッ!! 此の身がいながら、賊如きに宝物庫に侵入されるとは……!!」


女王「良い」


騎士団長「……!?」


女王「盗まれたのは封印していたあの魔剣だけだと言ったな、確かか?」


騎士団長「間違いありません……ッ」ギリッ

< スッ

女王「ならばその賊については不問とする」ナデナデ

騎士団長「や、はっ……!?」ビクッ

女王「それよりも妾が命じた事を遂行せよ」

女王「あの魔剣は鏡になったのだな?」

騎士団長「は、はい……!」


騎士団長「あれは美しい……しかし、剣としての役目をまるで失われた様に見えました」

騎士団長「性質上、再び戦いの中に晒せばあの力を見せるかとは思いますが……」


女王「…………く、ククク……」

女王「そうか」クックッ

188 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/31(月) 22:15:03.81 ID:YrHjgEwFo




女王(あの魔剣は他者に振り回されている)

女王(刃を振るのではない)

女王(力を振るのではない)


女王(在り方すら自身の意思で決める事が出来ない、未熟な剣)

女王(やはりそなたは……妾の元で研鑽するよりも先に学ぶべきだ)

女王(人間がどれだけ自由か、意思を持つことが如何に美しいか)



女王(剣ならば、真っ直ぐ生きて見せよ)

女王(そして再び妾の元に来るが良い)


女王(……願わくば……)






189 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/31(月) 22:16:47.10 ID:YrHjgEwFo



──────────  「妾のような道化には成り果てるな」






       【story..4】

       【魔剣六代目】

    【その名は……「王ノ道化」……】







190 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/31(月) 22:35:59.64 ID:YrHjgEwFo


【二年後……南の大国『サース』城下町】



ハゲ男「よぉ、お前足を洗ったって?」

< カランッ……ゴクッゴクッ……

ハゲ男「羽振りも良いって聞くぜ、一体どんなお宝を盗んだんだよ?」

ローグ「……別に、剣を一本拝借しただけだ」

ハゲ男「ほー! その腰のか?」

ローグ「ああ」

ハゲ男「見せてくれよ」

ローグ「駄目だ」

ハゲ男「あ? 何だよケチくせぇぞ」


ローグ「この剣は見る者を狂わせちまうのさ」


191 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/31(月) 22:42:03.38 ID:YrHjgEwFo

ハゲ男「見る者を狂わせちまうのさ」キリッ

ハゲ男「だってよぉ! ひゃはぁーっかっくぃい!」バンバンッ

ローグ「うるせぇぞハゲ」ゴクッゴクッ

ハゲ男「はぁおもしれえぇ……で、今は何の仕事してんだ? 元『怪盗』さんよ」

ローグ「冒険者ギルドで依頼を受けて、仕事を片付けて、金を貰う」

ハゲ男「裏では?」

ローグ「それだけだよ、俺はもう盗みも人殺しもしない」

ハゲ男「この二年音沙汰ねぇと思ったら、綺麗になっちまいやがって」

ハゲ男「理由はなんだ? 町の裏組織の連中にお前は狙われてただろ」

ローグ「奴等は軽くあしらえる、俺を捕まえる事なんて出来やしない……ただ」




ローグ「……足を洗ったのは、女に惚れたからだ」


192 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/31(月) 22:43:25.35 ID:YrHjgEwFo








       【nextstory..5】

       【魔剣七代目】

    【その名は……「愛/憎」……】







193 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/10/31(月) 22:45:21.12 ID:YrHjgEwFo
一旦切ります
調子良ければ日付変わった辺りから開始
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/10/31(月) 23:42:01.45 ID:pCRXnEz8o
おつ
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/11/01(火) 02:18:57.25 ID:J+sZI/aN0

続きがすごい気になる
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/11/01(火) 21:21:17.63 ID:xBLyFS2fo

    「こんばんは」

    「実は私、頼りになる冒険者の方を探していまして」

    「急ぎの依頼があるんです」

    「……え? 冒険者じゃ、ない……?」

    「ごめんなさい私ったら……」

    「でもどうしよう、このままだと……妹が……」

    「貴方がもし依頼を受けて下さるのなら、金貨四百は出せます」

    「お願いします……私の妹が男達に拐われてしまって、助け出さないと……」


    「本当ですか!? ありがとうございます!」


    「申し遅れました、私は……」


    「……貴方の、お名前は?」


201.41 KB Speed:0   VIP Service SS速報R 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)