彼女達との思い出

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133 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/13(火) 09:53:32.17 ID:T1GUl1pYO
小さな事程大切な事が多いよな
134 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/13(火) 10:10:06.75 ID:ZFEkVD+S0
D案はすぐに終わるため、だいたい申請書が通る。
僕は課長にすぐさま判子を貰い、書類の片隅に入れておいた。

数日後、手が空いたので、ネットで情報を集めてみる。少し興味深い記事が、他分野で出ていた。
社内の意見書がデータベース化されているので、イントラネットで類似の要望がないか検索する。
全く同じ要望はなかったが、うちの商品を提供するにあたってこんなことができたらいいなという要望書に目が止まる。

年末に沢村さんと出かけた展示会に、ある商品が出ていた。その時は気にも留めていなかったが、組み合わせると・・・

僕「沢村さん。ちょっといいですか?」
沢村「ああ。会議があるから、それが終わってからならいいよ。」
僕「はい。えー。じゃあ1時間後ですかね。横の打ち合わせ室予約しときます。」
沢村「あいよ。すぐ終わる?」
僕「30分くらいで。」
沢村「OK」

1時間で、簡単にまとめる。

沢村「お疲れ。どうした?」
僕「実は、こんな案件が出てきたんです。で、この商品とこのサービスを組み込んで、このアイデアを使ったら、ちょっとした市場開拓になりませんかね?」
沢村「・・・ほう。」

沢村さんの目つきが、変わった。

僕「どうですか?面白くないですかこれ。」
沢村「市場規模は不明だが・・・」
僕「ですよね・・・」
沢村「作り手の立場としては、恐ろしくやりがいを感じる内容だな。」
僕「やっぱりそうですか。それでいて、大変な作業の割に、市場の規模が見込めない。」

沢村「なるほどな。でも、だからこそ、大手では手を出さない分野だな。」
僕「そこにチャンスがあるかなと。幸い、法改正に絡んでるので、僕なら詳しいですよこの分野。」

沢村「これは・・D評価か。今すぐ書き直せ。C評価に変更だ。いいクリエイター紹介してやるよ。あ、お前の名前だと他部署が動かないかもしれないな。俺の名前で書き換えとけ。俺も口出しできるし、お前も動きやすいだろう。」

僕は、言われるまま、申請書を書き直し、提案書を添付した。

紹介されたクリエイターは、その業界ならだれもが知る、超大物だった。
クリエイター(柴田恭平似、以下柴田さん)

柴田「お世話になります。ご無沙汰してましたね。」
沢村「いつもお世話になっております。お元気そうで何よりです。」

簡単に僕を紹介してくれる。名刺交換する。
沢村さんは、僕の原案を書き直し、柴田さんに提案書を出した。

柴田「なるほどね。なかなか面白そうじゃない。僕の仕事は何をすればいいわけ?」
沢村「今のところ、ちょっとぼやっとしてるので、具体的に、こんな商品・サービスに具現化できますという何らかの「形」が欲しいですね。イメージ図でもいいので、何か描けないですか。」

柴田「ふむふむ。1週間くらいもらえる?また打ち合わせしましょう。その時に、アイデアをいくつか出してみるよ。それを引き取るなら、アイデア料ね。」
沢村「承知しました。」

こんな感じで、スタートした。

135 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/13(火) 10:12:01.31 ID:ZFEkVD+S0
>>133
確かに。その積み重ねの中に、原石が紛れ込んでいる。そんな気分
136 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/13(火) 10:39:01.13 ID:ZFEkVD+S0
柴田さんのアイデアとラフは、この企画を一気に格上げするものだった。

すぐに、課長へ申請書を提出した。
課長は、何も言わずに判子を押してくれた。

課長「正直言うと、それほど需要は見込めないと思う。ただ、君たちがやる気になっているし、投資額は多くなさそうだ。俺の考えが古いのかもしれんから判断できない。お前たちがやりたいなら止めない。部長には話を通しておく。そこから先の他部署への交渉や進捗管理はお前たちがやれ。」

つまり、好きなようにやれというGOサインだった。
僕は、沢村さんの手助けの元、商品開発部に話を通した。

翼「竜也君、沢村さんの案件来たよー。面白そうだね。私も手助けすることになりそう。」
僕「お、そうなんだ。よろしくね。イメージや戦略の資料はそれなりにあるから、送るよ。」
翼「うん。うちの先輩に送ってあげて。あと、社内LANで共有かけておいて」
僕「そうだね。わかった。」

2月半ばになると、設計開発にも話が進んでいた。
淳「沢村さんの案件、こっちまで下りてきたぞ。俺も設計に加わるからな。」
僕「お、いいね。他部署の連携が感じられてうれしい。」
淳「ちょっと仕様がわからないところがあるから補足資料作ってくれ。」
僕「あいよ。あと翼ちゃんも絡んでるから、商品開発部にも確認取りやすいと思う。活用しなよ、横のつながり。」
淳「そうだな。参考にするよ。」

そして、経営企画・商品開発・設計開発が合同で会議し、正式にGOサインが出た。
その次の会議は、広報と生産管理も出席した。

沢村「・・・以上が、今回のプロジェクトの概要になります。」

相も変わらず、沢村さんの提案は全員を魅了した。
この会議には、商品開発の翼と生産管理の豊も、先輩と同行していた。

商品企画「発売日は・・GW前を予定しています。生産管理としてはどうですか。」
生産「ほぼ生産として何かやることはないから問題ないです。ラインナップに関して、現行品の在庫調整や変動が必要な予測ですか?」
広報「大々的に〇〇のラインナップをメインに商品展開していきますので、〇〇の在庫は増やしておいた方がいいかもしれないですね。」
沢村「どれくらいの需要が見込めるかは、今週中にウチの方から展開します。」

商品開発「開発としても、納期に問題はないです。」
広報「プロモーションは4月頭には行いますので、CGでも結構ですので3月20くらいまでには資料が欲しいです。」

・・・

商品企画「では、納期はシビアですが、『先んずれば制す』です。このプロジェクトは、市場に出したもの勝ちです。迅速にやりましょう。以上です。」

会議は終了した。
137 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/13(火) 11:21:00.92 ID:ZFEkVD+S0
事業部長に、うちの部長・課長が呼ばれたらしい。

課長「事業部長に呼ばれたよ。」
僕「何か言われましたか?」
課長「『この忙しい時期に、開発費をかけて無駄な投資をし、見込めない需要の商品展開をするとは何事だ。』だとさw」

僕「・・・じゃあ、プロジェクトは中止ですかね・・・」
課長「いや、ちゃんと君たちの資料を見せて通したよ。」
僕「ありがとうございます。なんか済みません・・」
課長「『こんなもの、月に5セット売れれば俺の負けだ』が捨て台詞だったw何としても月に5セット以上売ってくれw」

5セット。少ないと感じるかもしれない。
ちなみに、5セット売ると5万ほどの利益にしかならない。
しかし、この商品は特殊で、これ単品を購入しても意味がない。当社のラインナップを導入して初めて利用価値が出る。
つまり、5セット商品が売れると、当社のシステムが5件採用されることになる。
5件採用されると、純利益は100万にも上る。

だが、ライフサイクルを考えれば、会社を動かして展開するには少なすぎる額だ。

GW、A4用紙1枚で始まった案件が、プロジェクトとなり、商品として具現化し、発売された。
その発売は、業界に一石を投じることとなった。

法改正があって1年。市場が動いた。
前年に、公的機関から「理想モデル」と評された事案があったが、そのラインナップと今回の商品は抱き合わせで展開された。

広報「今回の販促費は、過去最高額だったよ。商品サンプルが高額過ぎた。」
沢村「そのかわり、反響も大きかったんじゃないですか?」
広報「ああ。初めてだよ。お客様から直接電話がかかってきて『こういうものを待ってた!』と喜ばれたのは。」

事業部長の予測は外れた。この商品発売前、展開していた事業のラインナップは月に50件程度の採用だった。商品発売後に問い合わせが殺到し、
ラインナップは月に平均300件以上売り上げるものとなる。
実際にその商品を組み込むお客様は月に100人ほど。その商品を組み込まなくてもいい。組み込めるよという対応力が受けた。

他社も、これから開発費と研究費をかけて追随するだろうと、うちの部長が言った。だがもう遅い。これから、価格競争が始まるだろう。
僕たちの商品は、先に発売し、他社が発売するまで、利益を貪る。

他社が同じものを出しても、うちと同じ金額では販売できない。また、割愛するが、他社では絶対に安くできない秘密の強みがあった。
完全に独占。鑑賞だった。

沢村さんの評価が、また上がった。
僕もうれしかった。

沢村「この案件はドル箱だったな。」
僕「そうですね。沢村さんはやっぱり凄いです。」
沢村「俺は今回手助けしただけだ。これはお前の仕事だと言っていいよ。」
僕「実際、僕が展開したら失敗してますよでも。」
沢村「ま、会社っていうところはそういうところだ。」

こうして、些細な提案は、当社の屋台骨を支える一環となった。

余談であるが、課長はこの案件が評価され、数年後に他の事業部へ「部長」として昇進する。

そして、沢村さん。
沢村さんは、この案件がきっかけで、

他業種から引き抜きを受けることになる。
138 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/13(火) 11:56:48.78 ID:ZFEkVD+S0
話は遡り、2月。
残業は慢性的であったが、週末はしっかり休めていた。
僕はスノボーにはまり、豊達と毎週出かけていた。もちろん、翼や結衣、淳とも滑りに行っていた。

僕「翼ちゃん、上手になったよね。中級くらいなら全然問題ない」
淳「そうだね。あーあ。俺も一緒にお泊りしたかったな!なんで内緒だったんだよ!」
僕「根に持つなって。下心丸見えのやつなんて呼べるかよ。」
結衣「あはは。それから何回か一緒に滑りに行ってるから許してよーw」
翼「私の目の黒いうちは、お泊り厳禁だよ!」

豊「あー。今日も楽しかったな。また滑りに行こうな。」
帰り際、相変わらず車を出してくれた豊が、そう言った。

僕「いつもありがとう。楽しかったよ。」
豊「あ、そうだ。あとで時間ある?」
僕「うん。解散後?」
豊「そう。」
僕「あるよ。じゃあコーヒーでも飲みながら。」
豊「OK奢るよ。」


僕「どした?」
豊「去年、ナンパした子覚えてる?」
僕「そういえば、そんなことしたな。」
豊「また会おうってことになった。」
僕「・・・すごいね。よくやるね。で、僕も誘ってくれるのかな。」
豊「そうなんだけど」
僕「そうなんだけど?」

豊「今から飲みに行くことになった」
僕「早いよ展開が!これから?!いいねそういう無茶振り大好き!」


土曜深夜23時。スノボー帰りに、その2人に会った。

上村愛子似(以下愛子)、広末涼子似(以下涼子)

豊「愛子ちゃん久しぶり!!」
愛子「久しぶりー。意外と近くに住んでてびっくりした。」
豊「運命だねきっとw」
愛子「はいはいw急に来てくれてありがとうねwあの日以来に涼子ちゃんと遊びに出かけて、今飲んでたの。」

僕「それで、あの日の話題になって、連絡くれたのかな?」
涼子「うん。ごめんなさい。愛子ちゃん、言ったらきかなくて・・」
僕「いいよいいよ。覚えていてくれてありがとう。
涼子「うん・・」

愛子は、よくしゃべる。そしてノリが良かった。
豊もよくしゃべる。明らかに愛子狙いだった。
2人は意気投合し、とても楽しそうだった。

反して、涼子はそれほど乗り気ではないようだった。
あまり表情を変えない。
涼子は背が高く、色白の美人だった。ただ、美人。それだけ。

僕は、差しさわりのない会話をしたと思う。
よく覚えていない。
少なくとも、盛り上がらなかった。
でもまあ、会社の話とかはした。
朧げに覚えているのは、彼女が個人経営に近い事務所の事務をしていて、とても優秀で、難関の国家資格取得に向けて勉強しているということだったと思う。

美人ではあったけれど、対して興味も湧かなかった。
相手も、楽しそうじゃなかった。

そして、その日は終了した。

だから、その翌日、涼子から「また時間が合ったらどこか行きませんか」というお誘いメールが来るなんて、想像もしていなかった。

139 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/13(火) 12:27:56.67 ID:ZFEkVD+S0
お互いに忙しい身だ。
2週間後くらいに再会した。

近くのマックで軽く食べ、当時流行っていた映画でも見ようという話になった。

僕「本当に近くに住んでるんだね。30分くらいで会えちゃうんだ。」
涼子「そうみたいですね。びっくりしました。」

涼子は、本当に美人だ。
その小さな口で、ポテトだけをつまんでいた。

僕「ポテトだけ食べるの?そっちのハンバーガーは残しちゃうの?」
涼子「うん。そんなにお腹が空かない人なんです。」
僕「さすが女子。ていうか、ハンバーガーもったいない・・」
涼子「ポテトだけ頼むのも、なんだか申し訳ないので。」

僕「あの、もったいないので、僕が食べてもいいかな?口つけてもいないみたいだし。」
涼子「え?・・・ええ。どうぞ。ファストフードでも、やっぱり捨てるのはもったいないですか。」
僕「もったいないよ。どんな調理過程でも、どんな内容物でも、やっぱり、頼んだ以上は残さない。僕はそうしてる。」
涼子「・・・そうですか。」

ちょっと、涼子の性格がわかった気がした。
僕「映画、好きなんだね。」
涼子「はい。大学時代から、文学として興味があります。」
僕「エンターテイメント性は求めないんだね。」
涼子「どちらかというと、フランス映画のような作品が好きです。」

僕「うーん、見たことがないから分からないなぁ」
涼子「あの、良くわからないエンディングがたまらないんです。」
僕「ふーむ?」
涼子「有名な映画だと・・・」

いくつか知っている作品を列挙してくれた。
僕「ああ、意外と知ってるもんだなぁ。ほら、この作品て彼女の出世作だよね?あのシーン、良かったよね。ここのセリフとか。」
涼子「??藤原君て、意外と物知りなんですね・・私もあのシーン、好きですよ。」

何というのか。
お互いの休息。

静かな時間だった。
雑踏の中、周囲のざわめきを気にせず、何気ない風景になる2人。

涼子とは、月に数回、ちょっとした息抜きで、一緒に食事や休息を取る。そんな関係になった。
別に、彼女自体にはそれほど興味はなかった。
恋愛の対象には見えなかった。自分も忙しく、あまり恋愛に時間をかけたくない時期でもあった。
涼子も、それを望んでいるようには見えなかった。

食事の時は、涼子はあまり食べなかった。
だから、涼子の食事の半分は僕が食べた。
回数を重ねると、涼子は最初から自分の分を取り分けて、残りは僕にくれるようになった。

あの数か月は、僕にとっても涼子にとっても、平穏で安らげる空間を作り上げていた。

春を迎え、また涼子と会った。
涼子「すみません。花粉症なんです。」

その抜群のスタイルとセンスある服装。モデルのような体型でマスクをすると、芸能人であるように錯覚する。
会うたび、涼子はさらに綺麗になっていた。

その日は、夕方に会った。
そして、ちょっとオシャレなビルで、食事をした。

食事の際、ちょっと飲んだ。
2人で、並んで座っていた。

いつもと少し違う、物静かなレストラン。
お互い、特に会話もしない。それが少しだけ心地よかった。

開放的な窓から、夕日が差し込む。
いつしか、夕日が沈もうとしている。

とてもロマンチックで、とても静かな時間だった。
僕の腕が、涼子の腕に触れた。
涼子は、僕の手を、握ってきた。
僕は、自然と、手を握り返した。

涼子の頭が、僕の肩に乗せられる。
その瞳が、僕の瞳を追った。

僕と涼子は、レストランの風景のように、その場で、優しく、キスをした。
140 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/13(火) 12:44:24.74 ID:ZFEkVD+S0
次回更新は夜以降です。

お疲れ様でした。
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/13(火) 19:29:30.81 ID:ed8/7BIg0
映画のワンシーンみたいじゃないか
142 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/13(火) 22:27:50.49 ID:r7ul+eXo0
涼子とキスした。
そうは書けないかもしれない。

涼子と、キスをしてしまった。

感覚的にはこう書いた方がいい。
現に、なぜだか後悔しかない。

学生時代に自分で言った言葉。
「男女間で友情は成立しない」

社会人になって、男女の友情を目の当たりにすることがある。
僕は、男女の友情が羨ましかったのかもしれない。

結局、なぜキスしたのか。答えが出ない。
「好き」じゃない。相手も、特にそんな素振りを見せたことがない。

場の雰囲気に流された。

涼子とは、GWまで会わないことにした。



GWに入った。


大学時代のサークル友達に会った。なんだか、学生時代に戻った気分だった。
友人の一人が言った。

友人「そういえば、元カノの栞里ちゃん、今度、○○さんと結婚するらしいよ。」
僕「あー、そうなんだ。良かったじゃん。2人は大学時代から仲良かったし、お似合いだよ。」

○○さんというのは、栞里が「親友と呼べる男友達がいる」と豪語していた人物だ。
友人「感傷に浸ったりする?」
僕「それはないよ。幸せにはなってほしいとは思うよ。」

祐希「竜也君は、その後、どうなの?」
僕「んー、ぼちぼちかな。今は仕事が忙しくて、彼女とかいらないし。本気で仕事と結婚してる状態。」

祐希「私も。まだ3年目なのに、既にお局様とか姉さんとか言われてる。」
僕「祐希らしいよ。充実しているようで何より。」

軽く飲んで、皆と別れた。

祐希「あの」
僕「!!びっくりした!帰ったんじゃなかったの?」

祐希は、引き返してきたみたいだ。


祐希「良かったら、飲み直さない?」
僕「え?ああいいよ。」

祐希とは、たまにメールでやり取りしていた。
お互い、会うのは追い出し会以来だ。

薄暗いバー。
僕はブランデーをダブルのストレート。
祐希はドライマティーニ。

社会人になってからの、再会。
あの頃とはすこし違う2人。

143 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/13(火) 22:28:17.29 ID:r7ul+eXo0
祐希「あの頃は、子供だった。」
僕「それはそうさ。社会に出て、視野が広がったろ?」
祐希「うん。いいことも悪いことも、いろいろ見えてきちゃった。」

僕「社会人ってしんどいね。」
祐希「だねぇ。学生時代の、何にも知らない頃に戻りたい。」

祐希もまた、葛藤があったのだろう。



祐希「あのね。お願いがあるの。」
僕「・・・どんな?」

祐希「私は、あの日から、前に進めていない気がする。」
僕「追い出し会のこと?」

祐希「うん。」


僕「祐希は、立派な社会人だと思うよ?」
祐希「でも、狡賢い大人には、なり切れない。」
僕「狡賢くなる必要があるの?」

祐希「あるよ。それが大人の世界だもん。私は強くなって、この世界で生きていきたい。そして」
僕「そして?」

祐希「結婚もしない。一人で生き抜いて、一人で生涯を終える。」

僕「・・・まあ、いろんな生き方があるさ。」
祐希「強くなりたい。そのために、私のお願いを聞いて。」

僕「願い事によるけれど。」

祐希「私を、抱いて。」

祐希は単刀直入だった。

僕は、グラスに残ったブランデーを一気に飲み干す。喉が、焼ける。


僕「それは、できないな。」
祐希「どうして?私は、何の見返りも求めないよ?」

僕「自分を大切にしなよ。」
祐希「初めてを、あなたに捧げたいの。私は、その思い出だけで生きていけるの。」

そうじゃない。そうじゃないんだ。

僕「違うんだよ・・・僕は・・僕はそんな男じゃない。」


そんな男じゃない。


僕は、ただの、クズだ。


祐希は、泣きながら、帰った。

やっぱり、僕は、クズだ。
144 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/13(火) 23:47:56.47 ID:r7ul+eXo0
GWも後半に差し掛かり、僕は絵里奈と2人で会った。

僕「元気だった?」
絵里奈「元気だよ。でもお金がない・・・」

絵里奈は、保険のセールスレディだ。契約が取れないと、給与は低い。
決して、保険の契約を迫られたことはないが。

僕「大変だよね。ノルマ制は。」
絵里奈「明るさには自信あったんだけど。いざ契約ってなると、足元見られるのよね。」

僕「そっか。僕は会社から保険が斡旋されるし、さすがに入ってあげられない。」
絵里奈「そういうのは、求めてませんけど?」

そうだよね。
絵里奈は、以前より、大人びた。ぐっと、色気が出てきた。

僕「何か、心境の変化があったみたいだね。」
絵里奈「・・・うん。私ね。」

僕「だいたい察しが付くけど、どうした?」
絵里奈「彼氏が出来そう。いい人よ。誠実で。私と大違い。」

絵里奈に彼氏ができる。
当たり前だ。絵理奈はいい子だ。世間の男子が放っておくわけがない。

僕「そっか。良かったね。」
絵里奈「それだけ?」
僕「他に何を言えと。」

絵里奈「別に、何というわけでも。」
僕「僕は、うーん、うまく言えないや。」

僕「こうやって、互いに暇な時に、気軽にご飯を食べてくれる人がいなくなるのは、寂しいなと思っただけだよ。」

精一杯の嘘。

絵里奈「なにそれ。私は今まで通りでいいよ?私に彼氏が出来たって、竜也先輩に彼女が出来たって。同じようにしてくれれば。」

同じように。同じように。
僕は、いつも、絵理奈に、このセリフを言われる。

『同じようにしていいよ。キスまではしていいよ。それ以上はダメ』と言っているように聞こえる。

僕「そうだね。また連絡するよ。」

僕は、この関係を壊したくない。
今だから思う。
絵里奈も、関係を壊したくなくて、もう一歩先に進めたくなかったのだろう。


もう、絵里奈のことを忘れたい。
忘れられない。
でも、忘れたい。

GW最終日、僕は、勤務先に戻ってきた。
そして、涼子に、メールを入れた。
「付き合ってください。」

返事は、「会ってお話ししましょう」

だった。
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/13(火) 23:55:55.63 ID:ed8/7BIg0
いきなりだな
146 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/14(水) 00:05:46.11 ID:YGBVGcJs0
涼子「私、忙しい人です。それでもいいですか?」
僕「僕も忙しいから、お互いそんなに会えないかもしれない。」

涼子「仕事以外に勉強もしてます。支障が出ない程度の付き合いになるかもしれません。」
僕「その時は邪魔しないよ。僕も勉強したいことはたくさんあるから、その時は僕も勉強してるよ。お互い切磋琢磨しよう。」

なぜ、僕は涼子と付き合おうと思ったんだろう。
会社でもない。旧知の知り合いでもない。
だからこそ、自分の逃げ場が欲しかったのかもしれない。

涼子「・・・今、ここで、キスできますか?」
僕「この、コーヒーショップの、この椅子に座って?」
涼子「はい。」

僕は、特に気にせず、キスをした。

涼子「・・・本当にするとは思いませんでした。」
表情を変えず、涼子は言った。

僕「イヤなら、始めからそういう無茶ぶりはしないでほしい。」
涼子「いえ。そういう意味ではないです。ごめんなさい。」

僕「あ、ああ。」
涼子の考えることはわからない。表情に起伏が低い。

涼子「5月いっぱいは身動きが取れないので、6月からでいいですか。藤原さんのお宅にお邪魔したいです。」
僕「んー、そうだねそうしよう。僕も、新商品発売後で、問い合わせやプロモーションで忙しいんだ。あと、新人研修の資料も用意しなくちゃいけない。」
涼子「ちゃんと働いているんですね。意外です。」
僕「なんだよそれw僕が忙しい振りしてるとでも?w」
涼子「私の知ってる男子は、忙しい振りをする人が多いです。」

僕「あー、それはわかる気がするな。忙しい俺ってカッコイイ的な。」
涼子「それです。大して働いてないのにエラそうな人ってニガテなんです。」
僕「そんな人間、スキなやついないってw」

6月、涼子と僕の奇妙なカップルが誕生した。
147 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/14(水) 00:46:18.77 ID:YGBVGcJs0
感情の起伏が少ない涼子であったが、意外な面もあった。

まず、僕の家に来ると言い、着てすぐ、豪快に脱いだ。
あっけにとられるくらい、あっさりと。

涼子「・・・あまりジロジロ見られると、照れます。」

涼子は、本当に美しい。端正な顔立ち。すらりと伸びた肢体。大きくはないが、形の良い胸。
うっすらとした茂み。透き通るように白い肌。

表情は、特に変わらない。

僕「あ、ああ。ごめん。キレイだったから、見とれちゃった。」
涼子「お世辞でもうれしいです。」

涼子は、自分の脱ぎっぷりとは裏腹に、僕の服を、恐る恐る脱がせた。
時間がかかっていたので、僕はいきなり涼子を抱きかかえ、ベッドに放り投げた

涼子「えっ?」
涼子は、何が起こったかわからない感じだった。

僕「いいから。目をつむりなよ。」
涼子は、恐る恐るといった感じで目をつむった。

僕は、優しくキスをした。

涼子「ん・・・藤原さんのキス・・・・ん・・・好きです・・」

キスはやがて、頬になり、耳になり、首筋になり、肩へと移動していく。
涼子は表情を変えることはないが、びくっ。びくっと体をよじる。

僕「どこが気持ちいいとか、あるの?」
涼子「ごめん・・・なさいっ・・ん・・・よく。。。わからないです・・」

僕は、自分の服を脱ぐ。
涼子は、僕と同じ動作でキスを真似た。

涼子「あの・・・」
僕「・・うん?」

涼子「実は、・・・よくわからないです。」
僕「何が?」
涼子「どうしたらいいか、よくわからないです。」
僕「したことがないってことかな?」
涼子「いえ・・・すみません。経験はありますが・・その・・・以前の彼氏は、私の体を貪るだけで、私から何かをしたことがないんです。」
僕「ああ。そういうことね。うーん。そう言われてもなぁ。」

僕は、涼子の手を、僕の股間に誘導した。
148 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/14(水) 00:48:39.59 ID:YGBVGcJs0

涼子「あっ。どうしたらいいですか・・」
僕は、その手を僕のアレにあてがい、ストロークさせた。

みるみる、僕のアレが大きくなる。
涼子「あ、大きく・・・少しベトベトします・・」
僕「ちょっと実況しないでw」

涼子は、恐る恐るといった感じで、玉を撫でた。
ひんやりとした手が気持ちいい。

僕はそのまま涼子にキスをし、頭を抱いた。
涼子は目を閉じて、少し気持ちよさそうにしていた。

おもむろに僕は中腰になる。
意図が分からないといった表情の涼子の顔前に、僕のアレを見せつけた。

涼子「ああ。そういうことですか。やったことがないのでうまく行かないかもですがいいですか」
僕「だから、実況やめなさいw」

涼子「はむっ」
戸惑うことなく、僕のアレを口に含んだ。

僕「舌は使わなくていいからね。歯も当てないようにね。ただ口を開けて、僕のアレを包み込む感じで。」
涼子は、言われた通りにした。

僕は、涼子の頭を両手で抑え、腰を少しだけ動かした。
涼子「んっ・・・んっ・・・んっ・・・んっ・・・」

涼子は、特に表情を変えることなく、僕の行動をできるだけサポートできるように努めていた。アレを口から抜く。

涼子「んはっ・・・はぁ・・はぁ・・息が・・・苦しいです・・」
僕「あったかくて、気持ちいいんだこれ。」
涼子「そうなんですね。つぎはもっと長くできるようにがんばります。」

涼子は、今度は玉を口に含もうとしてきた。
僕「生卵を口に入れたつもりで。」
涼子「(はい)」
僕「その生卵の黄身を、潰さないように、舌で転がすイメージで。」
涼子「レロ・・・ん・・・ペロ・・・ん・・・」

すぐにひっこめた
僕「ごめんw涼子ちゃんのせいじゃないんだけど、やっぱり怖いから玉はナシでw」
涼子「・・・はい。ごめんなさい。」

僕は、今度は涼子のアソコに指を入れた。
涼子「はぁ・・・・ん・・・あっ・・・・指・・・指が入ってます・・・」

形の良い眉が、少しゆがむ。
僕は、その指を2本にする。

涼子「んんん・・・・!広がって・・・刺激が・・・んっ。んっ。」
僕の腕を涼子が抱きしめる。

僕は太ももに舌を這わせ、そのまま涼子のアソコを舐める。
涼子「んっ・・・あん・・・ああっ・・!」

涼子の顔が苦悶のそれになる。
ビクンと、のけ反る。

涼子「ご、ごめんさない・・・ちょっと、敏感な状態になって・・・少し待ってください・・・少し・・あっ・・ちょっと・・あっ・・・」
また、ビクンとのけ反る。

僕は、いきり立ったアレにゴムを付け、そのまま挿入した。
涼子「ちょっと休憩・・あっちょっと・・・あっあっあっ・・・」

ビクン・ビクン・ビクン。

のけ反るのと当時に、腰を打ち付ける。苦悶の表情を見せる涼子だが、ぼくはそれを見ながら、意外と冷静だった。

僕は、なぜ涼子を抱いているんだろう。なぜ、付き合っていきなりこんなことをしているんだろう。

疑問は尽きない。

行為の後、僕はシャワーを浴びる。
涼子は、特にシャワーを浴びることなく。そそくさと服を着た。相変わらず、表情は薄い。

涼子「じゃあ、ご飯を食べに行きましょうか。」
僕「あ、ああ。」

僕と涼子は、付き合っていきなり事を成して始まった。思えば、この最初から違和感しかなかった。

気軽に、付き合ってしまい、気軽に関係を持ってしまった。


今でも、後悔している。
149 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/14(水) 00:54:30.28 ID:YGBVGcJs0
今日はここまでです。
明日の更新は不明です。

お疲れ様でした。
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/12/14(水) 05:10:14.31 ID:oo0yA+P20
>>149
151 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/14(水) 13:26:27.78 ID:sj/LjXhp0
7月に入り、経営企画室に、新人が2人配属された。
大柄な男(ガリガリガリクソン似、以下ガリ君)
無口な男(栗原類似、以下ルイ君)

ガリ君は、経営企画室の番長こと河村さん・鈴木さんの部下的立ち位置。ルイ君は、沢村さん・僕の部下的立ち位置の配属だった。

なんでも、経営企画的な考えをレクチャーすればいいだけらしい。2人とも優秀で、半年後には他部署に異動。他部署の幹部候補として活躍が見込まれているらしい。

僕「ああ、ルイ君。よろしくね。新人研修でとても優秀だったのを覚えてるよ。そうか。ここで少し勉強して、〇〇支社のお抱えになるんだね。」
ルイ「・・・よろしくお願いします・・」
僕「う、うん。でもあれだよ?配属された以上は、戦力として頑張ってもらうからそのつもりでね?勉強会のつもりで来たのかもしれないけど。」
ルイ「・・・貴重な場ですので、しっかり・・・頑張ります・・・」

支社のお抱えになる。きっと、重役のサポートとして、寡黙な仕事を要求されるのだろう。当然、経営の観点で物事を考えなければいけない。
僕は、利益計算、商品企画から発売・商品の廃止までの流れ、実際製造現場はどう考えて仕事をしてるのか、サービス提供の理想と現実など、多角的に会社を考えられるような資料を集めてもらった。自分で考えて、自分でまとめてもらった。

ルイ「・・・藤原さんのおっしゃる通り、結論は理解できます。しかし、・・・そこに至るまでの・・過程が納得できません・・」
僕「それは、ルイ君がまだ、『結論に至るまでの過程を、真に理解していない』からだよ。」

ルイ「藤原さん、意見が抽象的すぎます。」
僕「ここは学校じゃないんだ。書類も、教科書じゃない。数学の教科書みたいに、懇切丁寧に公式や定義が書いてあるわけじゃない。」
ルイ「その通りです。」
僕「その資料で、わからない単語にチェックしてみて。」
ルイ「・・・・この3か所でしょうか。」

僕「じゃあ、今チェックした3か所以外で、ここの「リスクを考え」という文言の意味は?」
ルイ「リスク、ですから・・・危険性、マイナス要素、でしょうか?」
僕「うん。通常だとそうだよね。でも、為替変動や生産性などを考えた時には、プラスに変動することも『リスク』だと考えるものなんだ。」
ルイ「?そうですか?なぜです?」
僕「円安になって海外でバカ売れして、生産が追い付かなくなって、国内が品薄になったら、どうなる?」
ルイ「・・・」
僕「利益は短期的に上がるよ?生産稼働率も上がるよ?いいことだらけかな?」
ルイ「国内が品薄になれば、生産設備の整っている大手が、国内市場を独占すると思います。」

僕「賢い。だったら、それもリスクだよね。」
ルイ「そうですね・・」
僕「まあそこまで深読みしなくても、売れすぎたら生産がパンクする。だから、生産能力には余裕を持たせなきゃいけないってことはリスク管理だね。」
ルイ「分かりやすいです。」
僕「ちょっと話がずれちゃったけど、つまり、ルイ君は、まだこの書類の文言を理解できてないんだ。それは、ルイ君が悪いんじゃない。まだ業界の知識が十分じゃないんだ。」

ルイ「はい。なんとなくわかってきました。」
僕「僕はともかく、この部署の人たちが作る書類には、この業界で生き抜いていくための情報があふれてる。まずは、その書類の情報を正確に把握できるようになることだ。」
ルイ「はい。そのために資料を自分で作って、自分の中の理解不足を補えと。」
僕「・・・ルイ君、ものわかりがいいね・・・頭の出来がいい子はちがう・・」

実際、ルイ君は優秀だった。ただ、PCでの作業は苦手なようだった。当時のOSはまだまだ発展途上で、利便性を上げるためには自分なりに工夫がいる時代。
彼にとっては、慣れが必要だ。

ルイ「藤原さんは、非常に優秀です。凄いです。知識が豊富で、しかも話が分かりやすいです。PCにも強い。」
僕「うーん、あれかな。大学時代、家庭教師をしててね。0の子に1を教える苦労を知ってるからかも。あと、ルイ君が賢いからだよ。PCだって、実際は沢村さんの足元にも及ばないよ。提案力なんて月とありんこだよ。」
ルイ「沢村さんは別次元の提案力ですが、僕からすると、藤原さんの方が凄いですよ。なんでも一人でできてしまう器用さがあります。」
僕「買いかぶりすぎだよ。あと3年経てば、きっとルイ君の方が凄くなってる。」

この頃、仕事は本当に上手く回っていた。慢性的な残業はあったものの、仕事の仕組みが分かり、自分の立ち位置が確立され、教える人もいる。

ちょっとした休息には、涼子がいる。僕は、日ごろのストレスのはけ口を求めるように、涼子に発散した。

涼子は、特に表情を変えることなく、僕の欲を、受け止める。
そして、受け止めた後、落ち着いて、こう言うのだ。

涼子「じゃあ、ご飯に行きましょうか。」

僕は聞けなかった。

「こんな関係、楽しいの?」

なんのために、涼子は付き合ってくれているのか。
なんのために、涼子はそのすらりと美しい肢を開き、どんな気持ちで受け入れてくれているのか。

お盆前、涼子が、また僕の部屋に来た。
相変わらず、綺麗な顔立ち。
いつものように、いきなり、服を脱ぐ。
その時、ふと気づいてしまった。

あれ?僕は、涼子のこと、好きなの?
そこにいるのは、確かに美しい女性だ。

しかし、なんの感慨もない。
頭の中で起きた混乱は、ぐるぐる回り、めまいを起こす。

涼子「?どうしました。。?」
僕「・・・いや。うん。なんでもない。」

突然だった。
僕は、突然、涼子を抱けなくなった。
152 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/14(水) 13:41:44.26 ID:sj/LjXhp0
僕「あはは・・なんだろう。上手くいかない。疲れてるのかな。」
涼子「・・・別に、私は気にしませんけれど。」

ショックだった。
いざという時に、維持できない。

涼子が口でしてくれたときは、僕のアレははち切れんばかりになる。
でも、いざ、挿れようとすると、元気がなくなる。

何を迷ってるんだ。涼子が待ってる。お前は挿入れたくないのか?そうじゃない。
でも、挿れてしまっていいのか?何のために挿れて、それが涼子にとって幸せなの?

僕は、何の感慨もなく、一人の女性を、満足させられるほど、立派な人間なの?
でも、涼子は待ってる。頑張らなきゃ。
でも・・・

ぐるぐる考え出したら、パニックになった。
初めてだった。

涼子「まあ、よくわかりませんけれど、ご飯に行きましょうか。」


お盆直前にも、会った。
また、出来なかった。

涼子「なんだか・・すみません。私の魅力が、足りないのかもしれませんね。」
僕「いや・・そうじゃないと思うんだけれど・・」
涼子「私は、こう、抱きしめてもらえているだけでも、十分ですが・・・」

罪悪感が強くなる。

僕「ごめん。今日は、帰ってくれないかな。疲れてるみたい。寝るねもう。」

涼子、「・・・お盆は、会えますか?」
僕「うーん、1日くらいなら。」

涼子「・・・わがまま、言っていいですか?」

涼子が、初めて、自己主張をした。
僕「どうしたの?」

涼子「泊りがけで、出かけたいです。いいですか。」
僕「あ、ああ。これから宿なんて取れるかな・・・」

涼子「愛子と以前泊まった所なら、いけると思います。予約しますので。」
僕「・・・そこまで言うなら。」

僕は、涼子と付き合うことに、限界を感じていた。

涼子に、申し訳ない。


そんな気分だった。
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/14(水) 23:15:23.55 ID:oo0yA+P20
みんな色々あるよな
154 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/15(木) 09:32:17.03 ID:MVK382n60
すみません昨日は急用があり途中で書けなくなりました。
155 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/15(木) 10:06:46.51 ID:MVK382n60
お盆に入り帰省し、大学時代のサークル友達と会った。

友1「久しぶりwたまには俺の勤務先(横浜)の方にも遊びに来いよ。」
僕「そうだね。中華街もたまには行きたいな。年末にでも行くよ。」
友2「お、いいね。俺も行きたい。」
友3「えーいいな。私も行く!」
友4「じゃあ私もー。」

こうして、年末は横浜で過ごすことになる。

友1「最近、調子はどうよ。」
僕「良くも悪くも。」
友1「彼女できた?」
僕「うーん。出来たけど・・・」

僕「別に好きでもない子と付き合ってる・・・かな。」

「「「ええええええ!!」」」

その後、質問攻めにあった。
そして、怒られた。
酷い。ただのセフレじゃないか。相変わらずお前は冷たいやつだ。

言われて、反省した。
僕「やっぱり、まずいよなぁ。関係をはっきりさせてみる。」
友2「まあお前の人生だから好きにすればいいけれど、人の道を外すことはないようにな。」

身に染みた。

156 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/15(木) 10:28:26.30 ID:MVK382n60
京介、堅、絵里奈、怜奈とも会った。
でも、涼子のことは言えなかった。

京介は、彼女を連れてきた。綺麗な子だった。気立てもよかった。
京介「ここで発表があります!」
堅「お、なんだなんだ。」
京介「俺たち、結婚します!」
一同「おおー!」

京介は幸せそうだった。
式は挙げず、入籍だけとのこと。京介らしい。

それを見ていた玲奈は、すこし羨ましそうだった。
堅は、遠い目で見ていた。

玲奈「いいなぁ。私も結婚したい。」
堅「ふーん。そうなんだ。」
玲奈「・・・何その言い方?」
堅「・・・別に・・・」

僕「そこ!めでたい時に不穏にならない!」
堅「・・・帰るわ。」
玲奈「帰れば?」
堅「いちいち突っかかるなよ。」
僕「あのー。」
玲奈「竜也先輩ー飲みましょー」
絵里奈「玲奈、ちょっと。」
堅「じゃあな。また連絡するわ。竜也。京介もごめんな。新居決まったら教えてくれ。竜也と遊びに行くから。」

僕達は、先輩であり、後輩であり、学生の時から遊んで、社会人になっても遊ぶ、友達だった。
時間の流れは、いろんな出来事を生む。

僕「じゃあ僕も帰るよ。」
玲奈「一緒に帰りましょー?」
僕「何言ってるの玲奈。玲奈と一緒にいたくないから帰るんだよ。玲奈と堅なら、僕は堅を取るよ。」
玲奈「うわホ〇だ。」
僕「玲奈、ちょっと頭を冷やせ」
絵里奈「玲奈、何があったかしらないけど・・・」
玲奈「絵里奈には関係ないよ。」

この日、気まずい雰囲気の中、解散した。
きっと、この5人という、狭くも心地いいコミュニティの中に、京介の奥さんという要素が入り、無意識に不安が生まれたからだと思う。
人は、安定を求める。心のよりどころのバランスが崩れる、漠然とした不安。


僕「みんな大人になったんだよなぁ。どんどん、変わっていく」
絵里奈「そりゃあそうよ。変わらないものなんて、ないよ。」
帰り道、絵里奈と帰った。

絵里奈の手は、温かい。
不意に、絵里奈を抱き寄せる。

絵里奈「んっ・・・・暑いw」
僕「絵里奈も、変わったの・・・?」
少し、強引にキスをする。

絵里奈「んむっ・・・・ちゅっ・・・どうかな。同じようで、変わったのかも。変わらないのは・・」
僕「変わらないのは?」


絵里奈「私と竜也の、仲だけよきっと。」


駅まで送り、改札で、キスして別れた。
いや、「キスだけをして」別れた。

変わらない関係。
終わらない関係。
157 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/15(木) 11:07:38.36 ID:MVK382n60
憂鬱な日。
涼子と会う日。

2人で、山の方へドライブ。
今までも、ドライブに出かけたことはある。特に、道中で話はしない。
今までは気にしなかったが、その日は、気まずさが際立った。

涼子「・・・特に、話すことないですね。」
僕「そうだね。んー、お盆直前にも会ってるし。あ、お盆出かけた?」

涼子「出かけてないです。」
僕「まさかとは思うけど、仕事?」
涼子「いえ。勉強を。」
僕「ああそうか。進んだ?」
涼子「・・・藤原さんと、次に会ったら、何の話をしようか・・・悩んでいました。」
僕「・・・どういう意味かな?」
涼子「藤原さんの方が、わかっているかと思いますが・・・」

涼子は、賢い。
僕の考えていることくらい、分かるんだろう。
僕は逆だ。
涼子の考えていることなんて、まったくわからない。
いや、分かろうとする努力が、足りない。

僕「鋭い。さすが。」

僕は、この旅行が終わったら、涼子と別れるつもりでいた。

涼子「じゃあ、旅行が終わったら、話し合いましょうか。」
僕「・・・うん。旅行を楽しもう。あれ?楽しめるのかなこれって。」

涼子「え?ええ。私は楽しいですよ?」
僕「そうなんだ。いつも、こう、表情がないというか、淡々としてるから、楽しくないのかと思ってた。」
涼子「ああ。まあそう見えますよね。よく言われます。楽しくなさそうだって。」

僕は、努めて明るくした。
涼子は、相変わらずだった。

宿に着いた。ロッジ風の、素敵な所だった。
チェックインをする。
部屋に入ると、ツインのベッド。温かい基調で統一されたところだった。

涼子は、おもむろに、服を脱いだ。
そして、僕の服に手をかける。

僕「もう、やめよう。こういうこと。」
涼子「・・・」

涼子は、手を止めない。
僕「涼子、やめよう。」

僕は、語気を強くした。
涼子の手が止まる。

涼子「だめですか。」
僕「うん。きっと、上手くできないよ僕。もう無理なんだ。」
涼子「なぜですか?」

もう、止まらない。

僕「旅行が終わるまでは、言わないでおこうって決めたのに、やっぱり、無理だよ。」
涼子「そう決めたのなら、旅行が終わるまでは、今までどおりに行きましょう。」

僕「もう、耐えられない。罪悪感しかない。付き合った時からそうだった。僕は・・・」
涼子「・・・わかりました。今聞きます。」
僕「ごめんなさい。僕は、最初から、涼子のことを、好きじゃなかったみたいだ。」

言ってしまった。
158 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/15(木) 11:33:51.88 ID:MVK382n60
涼子「最初から、ですか。」
僕「たぶん・・・」

涼子「今聞くのもどうかと思いますが、なぜ、私と付き合いたいって言ったんですか?」
僕「ごめんなさい。」
涼子「謝罪が聞きたいのではなくて・・・素朴な疑問です。」
僕「んー、強いて言えば、んー、一緒にいる時間が、心地よかったからかな。でもやっぱり、好きって感情が持てなかった。あと、」
涼子「あと、なんでしょう。」
僕「あのレストランから見た夕日が、ロマンチック過ぎた。」
涼子「ああ。本当ですよね。あの夕日が、2人の距離を縮めました。私も、あの時は流されました。」

僕「今はもう、会うたび、罪悪感しかない。涼子も、そんなに楽しくなさそうだし、2人で会う意味はあるのかなと考えてしまって・・」
涼子「ええと・・はい。一応聞きますが、別れたいという結論は、もう出てしまっているのですか。」

僕「うん。ごめんなさい。涼子はいい子だとは思う。でも、好きじゃない。別れたい。」
はっきり言った。

涼子「もう、結論の出ている人に、何を言っても無駄なことはよく知っています。わかりました。別れましょう。」
僕「宿は、どうする?無理して泊まらなくてもいいし、帰ってもいいよ。ちゃんと送る。」

涼子「いえ。大丈夫です。あ、提案があります。」
僕「なんでしょう。」
涼子「この旅行中、私のいうことを聞いてください。そうしてくれたら、別れます。」
僕「抱いて、は無しでお願いします。」
涼子「はい。服着ますね。」

僕「何を命令されるのやら。」
涼子「変な命令はしません。普通に過ごしてほしいだけです。あそこの美術館に行って、あそこのお寺に行って、一緒にご飯を食べ、同じ部屋で寝て、同じ車で帰って、さようならをしてほしいだけです。」
僕「わかったよ。涼子がそう望むなら。」

涼子の表情は、変わらなかった。

159 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/15(木) 12:05:33.19 ID:MVK382n60
涼子は、本当にいつもと変わらなかった。
帰りの道中も、いつも通りだった。

僕「お腹空いたな。SA寄っていい?」
涼子「え、まだ食べるんですか。いつも思ってましたが、あんなに食べて、太らないんですね。」
僕「普段は、あまり食べないから。ゆっくり食べる時間もないし。涼子と食事に出かけるときは、食が進んだなぁ。」

涼子「え・・えと・・あ、はい。そうですか。私の分も食べてくれましたものね。」
僕「美味しい料理が多かったな。下調べしてくれてたんでしょ?いろんなお店が知れて嬉しかったよ。」
涼子「・・はい・・・」
僕「僕が具合悪くて、隠してたのに、あの日、涼子は、良く休憩をとったよね。頻繁にトイレに行ってた。僕の体調に気づいてさりげなく席を外してくれたんだよね。気が利く子だなと思ってた。」
涼子「・・気づかれてましたか。」
僕「だから、よけいにわからない。なんのためにそこまでするのか。疑問だった。」
涼子「表情に出ないだけですよきっと。よく言われます。藤原さんとは、いつも楽しく過ごしてましたよ。」

そういう表情は、淡々としていた。

SAで、串物を何か頼んだ。
僕「涼子も食べる?」
一口勧める。
涼子「・・・いえ、お腹はそんなに空いてないです・・あ、やっぱり、一口だけ頂きます」
僕「なかなか美味い。不味いんだけど、美味い。不思議だよね。」
涼子「SAだから許される不味さですよね。」

そう言うと、涼子は踵を返し、こう言った。
涼子「そろそろ行きましょうか。」
僕「あ、ああ。行こう。」

僕のマンションに着いた。
涼子は、部屋まで入ってきた。

涼子「では、これで最後です。最後のお願いです。」
僕「・・・うん。」

涼子「正座してください。」
僕「え?正座?はい。」

なんとなく予想がついた。

涼子「私が今から何をしても、怒らないでください。」
僕「・・・はい。」

涼子「私が、いいというまで。。。。いい・・いいというまで、目を・・瞑ってて。」
僕「わかりました。」

僕は、目を、ギュッと瞑った。
これは、バカな僕でもわかる。あの淡々とした顔、端正な顔は、冷酷なまでに無表情だった。

バイオレンスな事態が起こるんだ。
僕は、正座をし、背を正し、来たるべき痛みに備えた。

160 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/15(木) 12:48:40.54 ID:MVK382n60
5分だろうか・・・
10分だろうか。

僕「・・・あの・・・」
涼子「黙ってて!」
僕「はいごめんなさい。」

何も起きない。
そう、何も起きないのだ。

ただ、僕が正座をし、目を瞑り、それだけ。

静寂が僕の部屋を支配し、僅かに、時計のカチコチという音だけが聞こえる程度。
意味が分からなかった。僕は、ひたすら耐えるしかない。
涼子の、来たるべき鉄拳制裁は、来なかった。

もう無理だ。
僕は、目を、恐る恐る・・開けた。

号泣だった。
涼子は、その端正で美しい顔をぐしゃぐしゃにして、涙もその他の液体も垂れ流しながら、声を押し殺して、ただただ泣きじゃくっていた。

涼子「目を瞑って!そう言ったじゃないですか!」
僕「涼子・・・ごめんなさい。」
涼子「約束破ったから、別れるのはナシ!そうですよね!私、別れません!うわああああああ!!!!」

恥も、外聞もなかった。
ただただ号泣していた。

僕はタオルを濡らし、固く絞って、涼子に渡した。ぐしゃぐしゃになった顔を拭く。
声にならない声だった。

涼子「ずっと、大好き・・・いやだ・・・別れないで・・・」

涼子は、今までのことを、堰が切れたように話し続けた。

美味しそうに食事をする姿が好きで、いつも取り分けて食べてもらっていた。
何気ない気遣いが、うれしかった。
仕事のことを話す姿が、とても格好良かった。
勉強の応援をしてくれた。頑張れた。
緊張しっぱなしだった。ドキドキした。
好きでいてもらえるよう、綺麗になる努力をした。
薄々気づいていた。好かれていないと。でも、会いたかった。
繋ぎとめる手段が、抱かれることだと思っていた。それで良かった。


泣きながら、延々と、繰り返し、別れたくないと言われた。
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/15(木) 12:58:48.40 ID:IsUh0/LhO
こんな女いたなぁ
懐かしい
162 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/15(木) 13:01:20.81 ID:MVK382n60
僕は、さらなる罪悪感に襲われた。

僕「ごめんなさい。」
涼子「嫌です!」
僕「僕は、涼子のそんな気持ちもわからない、愚かな人間なんです。」
涼子「でも!今!知りましたよね?!じゃあいいじゃないですか!」
僕「僕は、涼子が思うような、いい人じゃないんだ。ごめんなさい。別れて。」
涼子「嫌です!悪いところは直します!やり直します!」

僕も涼子も、疲れ果てていた。
涼子は、最後まで、抵抗した。でも、その抵抗が無意味であると、悟った。

涼子「・・・帰ります。さようなら・・・」
トボトボと、部屋を、出ようとする。

何も言わず、玄関まで送る。
涼子「そう言うところです。最後まで・・捨てる女にまで、優しくエスコートするところが・・相手を・・その気にさせるんですよ・・・」
僕「・・・気を付けて帰って。帰ったら、帰ったことを、連絡して。」
涼子「・・・連絡はもうしません。子ども扱いしないでください。」
僕「おやすみ。」

涼子は、抱きついてきた。そして、涙を流して、キスをしてきた。
僕が経験した中で、最も長く感じられた、最も悲しいキスだった。

163 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/15(木) 13:02:56.04 ID:MVK382n60
>>161
冬になると、思い出すことってあるよね。
164 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/15(木) 14:00:19.39 ID:MVK382n60
お盆明け、沢村さんに呼ばれた。

沢村「竜也、時間取れるか?」
僕「10時まででしたら。」
沢村「OK。打ち合わせ室取っておいてくれ」
僕「はい。」

沢村「お前、この前の査定はどうだった?」
僕「・・・ありがたいことに、A判定でした。沢村さんのおかげだと思います。」
沢村「俺もAだ。今回もなかなかいい査定だったよ。お前の案件があったからなんとか行けたんだと思う。」
僕「そんなことないですよ。むしろ、沢村さんはSじゃないんだとびっくりです。」
沢村「S評価は、滅多に出ないんだよ。前回はまぐれさ。」

僕「それで・・?」
沢村「他の人は、BとCだ。この意味は分かるか?」
僕「僕が沢村さんのおかげで高評価ということくらいですかね。わかるのは。」
沢村「そんなわけないだろう。3年目でAが二回のヤツなんて、聞いたことがない。たぶん、この秋、少なくとも来春には、お前は副主任に昇格だ。」

ちなみに、沢村さんは主任だ。

僕「・・・にわかには信じられませんが。」
沢村「お前は優秀だよ。もう、お前に教えることなんて特にない。」
僕「え?いつも教えてもらってばかりですよ?」

沢村「それは、知識だ。知識なんて、長くやれば勝手に増えてくる。」
僕「すみません。話の内容が見えてこないですが・・」

沢村「おお。そうだな。実は・・・」
僕「はい」

沢村「全く別の業界から、俺に、引き抜きの話が来ている。俺は、その話に乗ろうと思ってる。まだ誰にも言ってない。お前に最初に話してる。」

頭が、真っ白になった。
165 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/15(木) 14:18:08.96 ID:MVK382n60
僕「えと・・・話は分かりましたが。。。突然ですね。」
沢村「ああ。お前の案件、手助けしたろ?あれに俺の名前を使ったからな。『以前から目をつけていたけれど今回の件で引き抜こうと決めた』と言われたよ。」

僕「実際、沢村さんの案件みたいなものですしね。」
沢村「堂々巡りだな。とにかく、」

沢村さんは、ポンっと僕の肩をたたいた。

沢村「お前は、もう一人前だよ。俺がいなくてももう大丈夫。俺は会社を去るが、お前がいれば安心だよ。」

違う。買いかぶりだ。
僕は知っている。沢村さんの凄さを。
僕にはサポートが合っている。

僕「去る者は追わず、ですね。違う分野でも、頑張ってください。」
沢村「ああ、当たり前だよ。9月いっぱいまでは引き継ぎをするために残るから。お前が全部やるわけじゃないだろうが、頼んだよ。」
僕「きっと河村さんや鈴木さんが引き継ぎそうですよ。」
沢村「かもな。残り少ない期間だが、出来るだけ財産は残していくからな。」

沢村さんは、数多くの財産を残していった。
9月まではあっという間に過ぎ、上期が終わった。
部署内も、つかの間の休息が訪れる。

沢村さんは、退職した。
そして、辞令が通達された。

僕には、副主任という役職が付いた。
166 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/15(木) 15:09:07.91 ID:MVK382n60
いつも、沢村さんを追いかけていた。

クローゼットの中は、色物や柄物のYシャツになっていた。
ネクタイも、カフスも増えた。
靴は、名のある革靴になった。
髪は、行きつけの美容院で手入れしていた。
車は、燃費の悪いスポーティなものに変わっていた。
部屋には、専門書や洋酒が並ぶようになった。

全部、沢村さんが教えてくれたものだ。
皆、僕を見ていない。
僕を通して、沢村さんを見ているのだ。

攻めるべき矛がなく
守るべき盾がない。

副主任と言っても、やることは今までと変わらない。
だが、周りの反応は、冷ややかだった。

部長・課長は「沢村がいなくても、お前がいれば別になんとかなるだろう。実務はお前がやってたんだから」というスタンス。
鈴木さんや河村さん、伊藤さんは「まあ、大変だろうが頑張れや」というスタンス。

その他の人は、「なんであいつが副主任?」だった。

僕と沢村さんはよく一緒に仕事をしたが、事務の女性が一人サポートをしてくれていた。
なので、3人での仕事が多かった。

3人での仕事が、2人になった。

僕「この資料が明後日までに必要なのですが、用意をお願いします。」
事務の女性「できません。」


僕「・・・えっ?」
事務の女性「ですから、できません。」


僕「えと・・理由を教えてください。」
事務の女性「残業しないと間に合わないので、できません。」

当時、事務職の人は、残業代を出さない方針だった(今の社会なら違法ですよね)
でも、今までは残業をしてくれていた。

『あなたのために、残業してまで働く気はありません』

そう言っているのだ。

僕「分かりました。自分でやりますので、他の仕事をお願いします。」
事務の女性「なにそれ。私に対するあてつけですか?副主任?」

僕「・・え?いえ。そういうつもりではないです。すみません。」
事務の女性「もう行っていいですか?やることあるので。」

この女性は、10月いっぱいで退職した。

3人でやっていた仕事は、僕一人でやることになった。
167 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/15(木) 16:46:54.49 ID:MVK382n60
僕は、沢村さんじゃない。
僕は、沢村さんじゃない。

誰もが、僕に、沢村さんの後釜を求めた。

「こんなの作ってね。今日中に何とかお願い」
「あー、悪いんだけどさ、営業所の問い合わせで・・・」
「この案件だけど・・・」

僕は、定時に出社し、昼食の時間まで仕事。食堂で10分で食事をして仕事。
午後はずっと会議と来客。
夕方から仕事。また食堂で10分で食事をして仕事。日によってはそれすらもできない日がある。
そして、メールを各部署に送って仕事。22時を回ると、フロアに残るのは数人。
24時を回ると、誰もいなくなる。

2時になり、仕事を終え、フロアを消灯。
たまに、警備のおじさんが見回りに来て、差し入れで総菜パンをくれる。それがありがたかった。

2時半に帰宅、その姿のまま就寝。
翌朝、4つの目覚ましで起き、シャワーを浴びてコンビニで栄養ドリンクを買い出勤。
土曜も終日出勤。日曜は半日出勤。残りの半日で洗濯やクリーニングや買い出し。

こんな生活が、年末まで続いた。
残業は、休日出勤含めて200時間を超えた。

僕の残業代は計上されなかった。基準に収まる程度の、微々たるものだった。

ただただ、仕事をこなすだけの毎日。
罰だ。

これは、僕が今までしてきた行ないへの罰なんだ。
12月に入ると、自然と、涙が出るようになった。

メールの回数がめっきり減り、皆から心配のメールが来る。それを、確認することもなくなった。

年の瀬。もう数日でやっと今年が終わる。
僕の生活は、奇妙なほど規則的。規則的に不規則だった。

朝、シャワーを浴びる。ふと、鏡を見た。
そこには、別人がいた。

あれ?これ、誰の顔だ?
僕って、こんなに老けてたっけ。

体重計に乗った。
60キロあった体重が、50キロに迫る勢いだった。

最近撮った写メを見る。
痩せてはいたが、よく知る、自分の顔だった。

大丈夫。
大丈夫だ。あと数日したら休みだ。長期休暇だ。

横浜に行って、美味しいものを食べて、バカ騒ぎして、帰省して、絵里奈に会って、新年を迎えて、豊とスノボーに行けるんだ。

僕は、コンビニに寄って栄養ドリンクを買い、その場で飲む。
少しスッキリする。

出社し、デスクに座る。
朝一から会議、か。
席を立ち、会議室へ向かう。

異変は、その時に起きた。

168 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/15(木) 16:57:26.85 ID:MVK382n60
急に、目の前が、眩しく光り輝いた。
え?何?

頭のてっぺんから、むず痒い、ムズムズした感覚が、広がっていった。
むず痒さは、やがて、脳を覆っていく。
と、視界が、すこしずつ、暗くなっていった。

やばい。
これはやばい。

僕は、右足を、前に出そうとした。
思うように、足が出ない。

がんばれ、頑張れ、僕の右足!
僕は、右手で、思いっきり頭を殴った。

視界がクリアになる。

今度は、両手で自分の頬を叩いた。
鈴木「ん?どうした?藤原?」

意識がはっきりしてくる。
僕「ああ、すみません。大丈夫です。会議に行ってきます。」
鈴木「おう。行ってきな。」

足を動かす。動く。大丈夫だ。

目の前には階段。
明るいフロアから、少しだけ薄暗くなる。

その瞬間。
一気に来た。

一気に、視界が暗くなった。

マズイ。会議に行かなきゃ。
自分がやらなきゃ。

今目を閉じたら、きっと、人生が終わる。
目を開けたい。前に進みたい。今、目を閉じたら、もう、一生目を覚まさない。
よろよろ、かろうじで、あるこうとする。

階段にたどり着く前に、僕は、崩れ落ちた。
固い踊り場の床。

とっさに、頭を守った。
ふわっとする感覚が、自分を包んだ。
あれ。
床って柔らかいんだな。
冷たくて気持ちいい。

ああ。
もういいんだ。
もう頑張らなくてもいいんだ僕。

好きなだけ寝ていいんだ。やった。

もう、どうでもいいや。
僕、頑張ったよね?

涼子、ごめんね。泣かせちゃった。
絵里奈、さようなら。
祐希、頑張れよ。
結衣、元気かな。
・・・
・・・

僕の意識は、ここで途絶えた。
169 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/15(木) 17:26:30.52 ID:MVK382n60
肌寒い感覚で、目を覚ました。
病院だった。

目の前には、特に誰もいない。
現状を把握する。

よく、起きた瞬間はぼうっとしているとか、しばらく記憶がないとかいろいろ言われるが、そんなことはなかった。
僕はすぐ、倒れたことを思い出し、病院にいることで現状をほぼ把握した。

右手には点滴。近くにはナースコール。

なんにせよ情報収集だ。僕はナースコールを押してみた。

すぐにナースが来る。

ナース「藤原さん、目が覚めたみたいね。気分は?」
僕「・・・特に問題ないと思います。えと、鏡ありますか?僕のスーツの上着に入っていたかと思うんですが。」

手鏡を受け取る。顔色は、いい。怪我も見受けられない。腕が少し痛むぐらいだ。

ナース「自分のお名前、わかります?」
僕「はい。藤原竜也です。おそらく、会社の階段付近で気を失って倒れたんだと思います。」

ナース「あら。意外と軽傷なのかしら。今、先生呼んできますね。えと、上司の方にも、連絡を入れておきます。」
僕「助かります。」

簡易的に先生があれこれチェックしてくれた。
先生「とにかく、栄養出張だよキミ、しばらく安静にしないと。あと、脳のダメージがあるといけないから、数日は検査入院ね。」
僕「仕事があるんですが・・」
先生「あのねぇ。藤原さん?あなた、死にかけてたんだよ?自分の命と仕事、どっちが大事なの?」
僕「ですが・・・休んだ分だけ自分に返ってきてしまうので・・・」
先生「これは命令だよ。検査しなさい。」
僕「しかし・・」
先生「あなたの上司には、私から言うから。あなた、仕事中に倒れてるんだよ?あなたに何かあったら、最悪、会社に業務停止命令が出るよ?その意味わかる?」
僕「逆に迷惑がかかりますね。わかりました。」

夕方、課長がやってきた。
僕「すみません。ご迷惑をおかけします。」
課長「本当に迷惑だよ、君は。」
僕「すみません・・・」

課長「そうじゃない。なんでもっと早くサインを出さないんだ。君は、「大丈夫です」しか言わない。」
僕「・・・」
課長「助けてのサインを出さないと、逆に、皆に迷惑がかかる。それだけは覚えておいてくれ。」
僕「おっしゃる通りです。申し訳ありませんでした。」
課長「それと・・・ここまで放っておいて、すまなかった。誰もが、お前の境遇を知ってたのに。。手助けできなかった。」

僕「うっ・・・うう・・・」

僕は、課長の前で、泣いた。

課長「とにかく、年内は休め。年明けからは、事務の子だけれど、2人付くから。」
僕「・・・そうだったんですね。」
課長「え?お前にも言ったはずだが・・・」
僕「聞いたのかもしれませんが、忘れてたんだと思います・・」

課長「・・親御さんに連絡しないとな。」
僕「いえ、結構です。やめてください。」
課長「身の回りの世話や、泊まるんだから準備もあるだろう。どうするんだ。」
僕「つてがあるので、そちらをあたります。」

課長「そうか。とにかく安静にな。」
僕「はい。ご迷惑をおかけしました。」

僕は、淳に連絡を取り、着替え等を持ってきてもらった。翼と結衣も一緒だ。
淳「社内は騒然だぞ。過労死したかと思った。」

意外と元気そうな僕を見て、淳はほっとしていた。

結衣「びっくりさせないで・・心臓泊まるかと思ったよ・・・」
僕「よせ。縁起でもないw」
翼「あなた副主任なんでしょ?しっかりしなよ。」

僕「しっかり頑張ろうとした結果がこれさ。」
翼「・・・ごめん。」
僕「なーんか、頑張ってみたけど、無理だ。僕には。」
結衣「・・・うん。」
僕「僕は、沢村さんにはなれないや。部署内も、他部署も、誰も僕の仕事なんて信用してない。誰も動いてくれない。」
翼「え。そりゃそうよ。まだ3年目が会社を動かせるわけないじゃん。」

僕「本当だw悩んで損したww」
淳「お前は頑張りすぎるんだよ。気軽に行こうぜ。」
僕「・・・・ありがとう。」
結衣「また寄るね。困ったことがあったら言ってね。」

僕「みんなありがとう。みんなしか頼れないから、頼らせてもらうよ。」
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/15(木) 17:43:03.41 ID:N08+BN5N0
いい連れがいて良かったな
171 :テスト ◆71vVbFpf.c :2016/12/15(木) 18:27:17.96 ID:DMk5FfOHO
そうですね。当時のことを思い出す時は欠かせないです。
未だに交流ある子もいるし。
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/15(木) 22:16:55.17 ID:N08+BN5N0
何でか長く交流がもてるのは女性が多いな
俺の場合は
173 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/16(金) 00:08:32.62 ID:8LkUaL5W0
鈴木さんが、お見舞いに来てくれた。

鈴木「お疲れ。具合はどうだ?」
僕「お疲れ様です。無理した結果、このざまです。」

鈴木「元気そうで良かったよ。無理しすぎたな。」
僕「・・・はい。」

鈴木「お前の案件、ちゃんと整理されてたから、俺たちで手分けして、簡単な奴はやっておいた。」
僕「助かります。ありがとうございます。」

鈴木「やってて思ったけどさ・・・」
僕「はい。」

鈴木「お前、やらなくていい仕事が多いな。」
僕「・・・そうでしょうか。」

鈴木「ああ。多い。他の部署のやる仕事を、お前がやってる。なんでお前が原価計算してるんだ?生産管理の仕事だろう。」
僕「・・・はい。しかし、自分でやった方が正確に出せる気がして・・」
鈴木「なんでお前が部品発注先を決定してるんだ?それは購買の仕事だろ。」
僕「・・・そうですが、購買の方で手間をかけるまでもないかなと・・・」

鈴木「違うよ。お前は、他の部署の仕事を横取りしてるんだよ。個人事業ならまだしも、お前は会社の社員だ。与えられた仕事をしなくちゃダメだろう。」
僕「・・・はい。」
鈴木「お前は賢い。キレる。だから、きっと、お前がやった方が早いだろう。そして正確なんだろう。でもそれは違う。結果、お前は仕事を抱えパンクした。」
僕「言い返せません。」

鈴木「俺はお前に沢村の代わりを望んでない。ありゃ無理だ。お前はお前の良さがある。それを伸ばさないと。」
僕「・・・はい。」
鈴木「これだけは言える。沢村ができて、お前が出来ないこと。それは、「人に頼る」ということだ」
僕「頼る。ですか。」

鈴木「沢村は、人を使うのが上手かった。だからあいつは自分の好きなことだけが出来た。お前はそれが出来ない。なぜなら、一番年下だから誰にも指示できない。経験が少ない。そして、自分ですべてを背負おうという意志が強すぎる。」

そうかもしれない。
実際、沢村さんは自分の好きなこと以外、僕に任せるかアウトソースに出したりしていた。
入社したての頃、沢村さんの提案書には裏付けの資料がないと思っていたが、それは資料を用意する時間を省いていたんだ。

僕「その通りですね。これから、もっと人に頼ろうと思います・・」

鈴木さんが帰ったあと、考えていた。
どうやったら、仕事がこなせるか。
どうやったら、仕事が進むか。
そして、どうやったら、他人を自分の味方にできるのか。

どうやって手を抜くか。

年末は、病院で過ごした。検査の結果、異状はなかった。
年始は、帰省も遊びもせず、マンションの部屋で自問自答していた。

こうして、1月を迎えた。
174 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/16(金) 00:15:19.07 ID:8LkUaL5W0
眠いです。
何人の方がみてるのか不明ですが、ありがとうございます。おやすみなさい。
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/16(金) 05:08:30.87 ID:gP6wma8V0
176 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/16(金) 11:55:43.29 ID:RavIwk5f0
年が明け、もうすぐ会社が始まる。
僕は、会社の就業規則や社内規約を読みふけっていた。

もうやめよう。
自分には限界がある。
僕は沢村さんじゃないから、同じことはできない。
僕なりにやろう。

会社が始まった。

辞令が出た。
まず、新人君(ルイ君とガリ君)は移動した。予定通りだ。

ルイ君は、それなりに理解力を持って行ったと思う。活躍を願った。
入院中、挨拶に来た。

ルイ「申し訳ありませんでした。ご負担ばかりかけて」
僕「ルイ君それは違うよ。僕はルイ君の資料に助けられていたから。」
ルイ「・・・そうですか。」
僕「これからの活躍、期待しているよ。」
ルイ「・・・不安しかありませんが・・」
僕「不安が出るってことは、ちゃんと頑張ったから不安になるんだよ。」
ルイ「・・・そうかもしれませんね」

ガリ君は、恐るべき変貌を遂げた。
経営企画室の番長こと河村さんに別の意味で鍛えられ、ガリガリガリクソン君の容姿・服装だったものが、ムキムキのゴーレムのようになった。
ガリ「ウッス!これくらい余裕ッスよ!」
僕「お、おう。」

177 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/16(金) 11:56:22.17 ID:RavIwk5f0
新たに配属されたのは、事務で年上の先輩だった。
扱いに困るが、僕がリーダーとして紹介された。

課長「若いけれど、藤原君がリーダーだから、2人とも指示を仰ぐように。」

「「はい」」


靖子さん(沢口靖子似)「宜しくお願いしますね。沢村さんのことはよく知ってるんですよ。」

靖子さんは2児の母。育児休暇明けだ。無理はさせられない。
この部署にも、以前、配属経験があるらしい。
心強かった。各部署にも顔が利くみたいで、別の意味でも助かりそうだ。


菜々子さん(松嶋菜々子似)「宜しくお願いします。なんでもやりますので!」

菜々子さんは、年明けからの希望配属先を経営企画室にしたという、やる気のある先輩だった。

僕「確認ですが、PC操作はどれくらいのスキルですか?アクセス・エクセル・フォトショップ・イラストレーター・社内CAD・・・」
菜々子「アクセスとエクセルは前の部署でも使っていましたよ。アドビ製品は使ったことがないですが、頑張って覚えます!」

出来るかどうかは別として、前向きなのはうれしい。

挨拶が終わり、菜々子さんには当面電話番や社内メール展開・社内LANに載せるデータの管理と更新をお願いした。
靖子さんには、もう少し実務的な、各関係資料の抜き出しとまとめをお願いした。初日から即戦力だった。

僕はその足で、部長に時間を割いてもらえないかお願いに行った。

僕「部長、お時間よろしいですか?」
部長「今かね?」
僕「はい。」

部長「・・・では、打ち合わせ室で。10分ほどでいいかな。」
僕「ありがとうございます。」

僕は、休み中に作った申請書を提出した。

部長「・・・これは?」
僕「お休みをいただいている間に、社内の規則を読み、自分なりに考えたことを申請書にしました。」

内容はちゃんとした申請書だが、そこから導き出される主張は以下の通り

・僕は、以前のように働きません。
・キャパを超える、あるいは他人でもできることで、守秘義務の薄いものはすべてアウトソースに出します。予算が出ない場合はその仕事はしません。
・部下に残業をさせません。させるときは、残業を申請し、事務職であっても残業代を出してもらいます。通ったら、命令して残業させます。
・僕自身は、以前ほどではないけれど、残業します。ただし、ある程度は申請書を出すので、以前より残業代をください。もらえないのなら残業しません。
・休日出勤はしません。ただし、必要であれば喜んでします。そのかわり、休日出勤手当ではなく、代休を申請します。

僕「判子をいただけないでしょうか。」
部長「え?あ、うん。いいよ?」

あっさり通った。拍子抜けした。

僕「自分で出しておいて、あれですが、簡単にとおるとは思っていませんでした。」
部長「キミ、勘違いしてるよ?」
僕「勘違い、ですか。」
部長「これ、みんな、暗黙の了解でしていることだよ。それが紙として出されただけだ。」
僕「・・・そうだったんですね。知りませんでした。」

部長「キミの悪いところでもある。なんでも、自分でやらなくてはと思い込んでる。ここは会社だ。一人だけでは何もできない」
僕「おっしゃる通りです。」
部長「正直、辞表を出されるのかと思って、怖かったよw」
僕「さすがに無責任なことはしませんww」

部長「まあ、こうやって書類として残していくことが必要でもあるな。藤原君、」
僕「はい。」
部長「これから、気づいたことや改善した方がいい事象があったら、どんどん書類として残しておいてくれ。僕の判子でよければいくらでも押すから。」
僕「・・・ありがとうございます。・・・やはり、独りよがりだったんですね。私は。」
部長「誰もが通る道さ。若い時は、根を詰めるもんだ。で、上手くサボることを覚えるんだよ。」

僕「きっとそうです。ご意見ありがとうございます。」
部長「他の人を上手く使っていくことも、『副主任』の役割だよ。ま、気負わずにやって行きなさい。」
僕「はい。失礼します。」

こうして、1月の激務が始まった。
178 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/16(金) 12:34:21.00 ID:RavIwk5f0
それなりの規模の会社となると、途中で会社を辞め、独立する方もそれなりにいる。
所謂、「身内みたいなアウトソース先」である。
また、うちの部署で贔屓にしている発注先もかなりあった。

僕も、沢村さんに同行することも多かったので、顔が利いた。
1月は、アウトソース先に仕事を出しまくった。不安しかなかったが、それしか仕事を回す手段がなかった。
当初は、僕がやった方が早かった。しかし、数週間もすると、あっというまに僕がやるよりも早く正確に資料が出来上がっていった。
流石である。流石、それで飯を食っている人達だ。

外注先「お客さんの要望が見えてこれば、だいたいの資料は作れるものだよ。藤原さんの求めてるものが分かってきたから、これからは早いよ!どんどん注文出して!」
僕「いやぁ。助かります。僕、沢村さんみたいに美的センスがないから、こんなに素敵にレイアウトしてくれるなら、最初から頼めばよかったです。」

靖子さんには、子育ての中、申し訳なかったが、無理のない範囲で残業してもらった。
靖子「しっかり残業代が出るなら、残業しますよ。気を使わないでくださいね。」
僕「本当に助かります!お子さんの体調が悪い時は、有給でも代休でも早退でも遅刻でもなんでも判子おしますから!ちょっと出るだけなら、ナイショで出ていいですからね!」
靖子「逆に助かります。ありがとうございます。」

菜々子さんであるが・・・
こちらは、正直、期待外れだった。
簡単に言うと、「やる気はあるけれど、理解するまでに時間がかかる」のである。
たとえば、
僕「2y=4 ということはy=2ですよね?」
が理解できない。なぜなら、
菜々子さん「え。yはyという文字であって、2は数字ですので、yは2ではないですよ?」

PC作業も、使っていたといったが、実際はあらかじめ組まれたマクロの入力欄に、与えられた数字を入力していた、ということらしい。
つまり、全く使えなかった。

そうは言っても、やる気だけはある。そして明るい。僕は与えられた人材、資源でやりくりしていくしかない。

ファッションにはうるさかったので、思い切って提案書のレイアウトや色使いなどの「感覚的」な仕事をお願いした。
僕にはない、女性らしい、(若干ファンシーな)資料が、全く想像しないアプローチで出来てきた。
僕はそれに資料を添えて、外注に出すことにした。

根気強くやれば、なんとか仕事が回せる気がしてきた。

今までは、他部署へのお願いメールは夕方から夜に送っていたが、1月からは帰宅直前に送るようにしてみた。
今まで19時くらいに来ていたメールが、突然22〜24時に送られてくる。効果はてきめんだった。
返事が必ず来るようになり、他部署も足並みを揃えてくれるようになった。
また、納期が厳しい時は、こちらから出向いて行った。

僕「この前の資料なんですけど・・・」
生産管理「ええ・・・わざわざ来たの?」
僕「はい。もし何か僕の不手際で仕事が止まってしまってはいけないと思って。」
生産管理「あー、ちょっと待ってね。ここのあたりがよくわかんなくてね。そのまま放置していた。申し訳ない。」
僕「いえ。説明不足で申し訳ありません。追加資料を『今日中に』送りますので、『明日』、概要だけでも出してもらえませんか?」
生産管理「明日?うーん。明後日ではダメ?」
僕「それでは間に合いません。僕は、明日いただいた資料を『明日中』にまとめて翌朝の会議で使いたいんです。」
生産管理「そこまで言うなら用意するよ。でもそこまで大事?この資料。」
僕「当たり前です!生産管理さんの裏付けがなかったら、僕の仕事なんて誰も見てくれないですよ!」
生産管理「よく言うよwwwわかったちゃんと出してやるよww」

こうして、気づけば2月も終わりを迎えようとしていた。
179 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/16(金) 12:53:04.55 ID:RavIwk5f0
結衣「竜也君!休憩しよう!」
僕「ふー。体がなまってる!あちこちが痛い!!」
僕は、ウェアに着けているペットボトルから、水を補給する。

僕と結衣、翼、淳は、3月の休みにスノボーに来ていた。
淳「今年初めての割には、鈍ってないじゃん。」
僕「本当?よかった。一発目は怖かったよ。」
翼「そお?私よりも全然上手かったけど。」
僕「翼と一緒にするなwデキが違うんだよデキが!」

結衣「本当に・・・元気になったんだね・・・」
僕「勝手に重病人にしないでw」

結衣「今だから言うけど、当時、社内で噂になってたよ。沢村さんが辞めた後の竜也君は、毎日青白い顔で、胃を痛そうにして仕事してるって。」
僕「・・・態度や顔に出してないと思ってたけど、思いっきり出てたのか・・」
淳「まあ、そう言っても、何もできなかったけどな。俺たちは俺たちで自分の仕事に精いっぱいさ。」

翼「竜也君が倒れて救急車で運ばれたとき、誰もが『ああ、やっぱり』って思ったよ。」
僕「悲壮感漂ってるなぁ。」

僕「ま、仕事の話はやめよう。もうちょっと滑ってくる!!」
結衣「待って!私も行く!」
翼「私も!」
僕「上級者コースだよ!」
翼「パス!」
淳「www」

みんな、ありがとう。

帰り、皆で焼肉に行った。
格安の、食べ放題に近いお店だったけれど、
すごく美味しかった。

180 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/16(金) 14:10:15.20 ID:RavIwk5f0
3月も終わりに近づいた。
事務の女性2人は、すっかり馴染んでいた。

靖子さんは、本当に仕事が早い。言われた通りのものを、言われた通りにこなしてくれた。
型にはまった仕事の速さと正確さは断トツだった。
旧知の人も何人かいるので、すぐに馴染んだ。

菜々子さんは、仕事はイマイチだった。しかし、持ち前の明るさで馴染んでいた。
しかも美人であるため、特に男性社員からは絶大な支持が集まった。

僕は、事業部長に呼ばれ、頭を下げた。
僕「申し訳ありませんでした。」
事業部長「今後気を付けてくれよ。誤報は時として致命的な信頼低下に直結するんだからな。」
僕「その通りです。本当にご迷惑をおかけしました。」
事業部長「うん。まあ、あれだ。ミスに気づいてすぐに報告してくれたから、すぐに取り消せた。社内だけで済んだから。次からはしっかりチェックしてからやるようにな。」

菜々子さんに用意してもらった資料の引用データが古く、誤った情報を社内展開してしまった。
僕の指示した引用場所を使わず、独断で違うデータを引用したのが原因だった。
口頭で確認を取っただけで、中身を精査しなかった自分が悪かった。社内展開後にちょっと確認した時に気づき慌てて部長に報告に行った。
なんとか社内展開の段階で食い止めたが、危なかった。

菜々子さん「私が適当な仕事をしたばっかりに、本当に申し訳ありませんでした。」
菜々子さんは、今まで見たことのないような顔つきで、神妙に反省していた。
僕「いえ、やらせたのは僕で、僕の名前で出した資料です。しかも、僕は確認を怠った。謝らなくてもいいですよ。これからまた気を付けてやりましょう。」
菜々子さん「本当に・・・ひっく・・済みません・・ひっく・・・でした・・」
僕「え?いや・・その。。本当に気にしてないんですけど?と、とりあえず打ち合わせ室とるから、いったん落ち着こうか?」

菜々子さんは2つ上。お姉さんのように振る舞ってくる。仕事に関しては僕の方が上であるが、やはり年上としてのプライドもあったんだと思う。
彼女は、彼女なりに頑張っていた。それは知っている。年上である自分が、後輩の指示をうまく処理できず、尻拭いを後輩がする。仕事とは言え、キツいよなぁ。

菜々子「・・・私、なにをやっても上手くいかないですね・・お役にたちたいと思ってるんですけど、失敗ばかりで。」
僕「あー、まあ、正直言って申し訳ないですけど、優秀とは言えないです・・・でも、頑張ってるのは誰もが知ってますよ。優秀でもやる気のない子はイヤです。」
菜々子「でも、後輩の竜也さんに迷惑をかけっぱなし。情けないです・・・」
僕「前任みたいに、仕事放棄するより全然マシですけどねw」

僕は、ちょっとくだらない、何気ない話をした。
と、急に、菜々子さんが真面目な顔をした。

菜々子「私、竜也さんに、迷惑のかからないように、頑張って仕事します。」

初めて見る、菜々子さんの顔だった。
この日以来、菜々子さんの、仕事に対する姿勢が、明らかに変わった。

年上ではあるが、本当の意味で、僕に、部下ができた。

181 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/16(金) 14:23:35.13 ID:RavIwk5f0
4月に入ると、菜々子さんは、自主的に残業・休日出勤するようになった。
菜々子さんに課した仕事は残業させるレベルではないので、申請もしていないしお金も出ない。

それでも、菜々子さんは僕の仕事を手伝いに残ってくれた。

菜々子「自主的に来ているので、気にしなくていいです。」
僕「いや・・それでも・・流石にこれは気が引けるし・・」
菜々子「自分の勉強です。家でやるか、竜也さんの前でやるかの差ですよ。」

菜々子さんは、少しずつではあるが、仕事の内容を、着実に理解していった。
簡単な仕事なら、自主判断で資料を集められるようになっていた。

僕は、気づかないふりをした。
たとえ、休憩時間にコーヒーを入れてくれても。
たとえ、休日出勤に同行し、お弁当を差し入れてくれても。
たとえ、毎日メールをくれても。
たとえ、早く会いたいと言われれも。
たとえ、休日に、どこかに行きませんかと誘われても。
それでも、気づかないふりをした。
僕は、菜々子さんの上司。
仕事のパートナー。

そう、思い込むことにしていた。
182 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/16(金) 14:53:05.62 ID:RavIwk5f0
GWは、前半を市場調査に費やした。とある地域を回った。資料をまとめた。
後半は、堅、絵里奈と3人で遊びに行った。玲奈は来なかった。敢えて、理由は聞かなかった。

堅「大変だったんだな。そこまで追い詰められてたとか。」
僕「何とかなってよかったよ。こうやってまた遊びに行ける。」
絵里奈「ようやくメールが帰ってきてくれるようになって嬉しいよ。また遊んでよね。」

いつまでも変わらないものがあるのか。
わからない。
その日、記憶がなくなるくらい、3人で飲み明かした。

気づくと、堅がトイレで突っ伏して寝ていた。
絵里奈は、僕の横に、しがみついて寝ていた。

僕が目を覚ましたのに気づき、絵里奈も周りをキョロキョロする。
絵里奈「うわ・・変な時間に起きちゃったよ・・・」
僕「うん・・・ああ・・頭痛い・・・」
絵里奈は僕にキスすると、冷蔵庫から炭酸水を取ってきてくれた。

僕「・・・ふぅ。喉痛い。堅がトイレに陣取ってるからトイレ行けない。」
絵里奈「またいですればw」
僕「間抜けw」

絵里奈は抱きついてきた。
僕「・・・ん?」
優しくキスする。

絵里奈「もう・・・無茶しないでね・・」
僕「ああ。ありがとう。」
絵里奈「ところで・・・私の太ももに当たってるんですけど・・?w」

僕のアレは、膨張しまくっていた。
絵里奈は、さすってきた。

僕「・・・きっと、無理だよ。」
絵里奈「・・・そうなの?」

僕は、絵里奈の胸を、そっと揉む。
絵里奈「んっ・・」

絵里奈は、ビクっとして、そのまま身を預けてきた。
どうしようもない興奮と、表現できない恐怖が、頭を駆け巡る。
Tシャツの下の、下着をつけていない、柔らかな感触が僕の手に収まる。

僕は、固くなった絵里奈の乳首を、軽く摘まんだ。
絵里奈「やっ。んん・・っ」

学生の時以来、絵里奈の胸を、見た。
成熟した大人のものに変わっていた。

優しく、口に含んだ。
絵里奈は、何も言わず、ただ体をびくっびくっとさせていた。
絵里奈の手が、僕の股間に伸びる。
優しく、僕のアレを愛撫する。

きっと無理だ。
僕は直感していた。

絵里奈は、僕の上に乗り、アレを自分の股間にあてがった。
僕のアレの先端が、絵里奈のアソコに触れる。ヌルっとした感触があった。
その瞬間だった。

絵里奈「えっ?」
僕のアレは、急速に衰えた。

僕「僕にとって、絵里奈は・・・妹みたいなもんなんだ・・・無理だよ・・・」
絵里奈「・・・妹・・・か・・・そんな気がしてた・・」

嘘。ただの嘘だった。

あてがわれる瞬間。僕の脳裏に、涼子の泣き顔が浮かんだ。
ああ、僕は、女性を泣かせるクズなんだ。どうしよう。でも絵里奈に挿入したい。
念願をかなえたい。そうしたら、また不幸な人が増える。それでもいい。よくない。
絵里奈に彼氏がいるのに、それでいいの?よくない。お前みたいなクズが、人の人生を狂わせていいのか。

いろいろ考えたら、パニックになっていた。
僕は自覚していた。

僕は、女性が怖くなっていた。
そして、確実に、EDになっていた。
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/16(金) 16:54:48.96 ID:Vq+FNaaQO
まじか?
立たないのか
184 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/16(金) 22:14:52.13 ID:8LkUaL5W0
>>183
自分が行ってきたことの報いだと思ってる。
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/16(金) 22:59:04.29 ID:gP6wma8V0
>>184
それだと俺はもっと早く終わってる
今もバリバリだぞ
186 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/17(土) 00:22:56.82 ID:BIgl5WuF0
知られてはいけない。
知られてはいけない。

知られたら、嫌われる。
そんなプレッシャーがあった。

だから、誰と仲良くしても、愛撫まで。そんな付き合いしかできなくなった。
性欲がなくなったわけではない。自己処理する分には問題ないのに、相手がいるとダメなジレンマ。

僕「僕、下手だよ?だからやめよう」
僕「乗り気じゃない」
僕「今日は飲んでるからダメ」
僕「萎えた。キミとじゃ無理」

幾度となく、このセリフを吐いた。
その度に、女性は離れていった。

これから僕は、何度も、女性を気付付けていくことになる。
全ては僕の身勝手なウソのためだった。
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/17(土) 01:22:24.44 ID:mZSc5n9e0
辛いな
188 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/17(土) 02:05:21.62 ID:BIgl5WuF0
菜々子さんのアプローチは、日々エスカレートして行った。

もはや、気付かないフリはできなくなっていた。
菜々子さんの好意は、フロア中の誰もが知っていた。

菜々子さんはその持ち前の明るさもあって、皆から好かれている。
彼女の想いを成就させようという動きが起きたのは、無理のない、自然な流れだったのかもしれない。

菜々子さん「でね。結局、私が買いたいものが買えなくて。何のために行ったんだかわかんないよねw」
僕「ねえ、菜々子さん?」
菜々子さん「はい!」
僕「今、勤務中なので、お話はその辺にしてもらっていいですか?」
菜々子さん「はい!」

クスクス

僕「・・・何笑ってるんですか?」
鈴木「いや、夫婦漫才・・・w」
僕「・・・もういいです。」
課長「お、何なら打ち合わせ室空けておいてやろうか?w1時間くらいなら大目に見てやるぞw」
河村「竜也は3分で終わるからそんなに時間いらないっしょw」
菜々子さん「エヘヘw」

調子が狂った。

菜々子さんは、美人で愛嬌があって、皆から好かれる。
頭の回転は遅いが、努力家でもある。
でも、僕は、関係を持とうとか、そんな気分になれなかったし、社内恋愛しかも同じ部署同士なんてありえないと考えていた。

僕が菜々子さんに感じているものと、
かつて僕が涼子に感じているものは、似ていた。

つまり、その後に訪れる結果も、予測できた。
絶対に、受け入れてはいけない。
しかし、完全に拒否して、退社でもされたらたまらない。

どうしていいかわからなかった。

僕「課長、お願いがあります。」
課長「うん?改まってなんだ?」

僕「菜々子さんのことですが・・・他部署へ移動して別の方を呼ぶというのはできないでしょうか・・」
課長「うーん。難しいな。イヤなのか?」
僕「彼女は努力家ですが、適材とは思えません。」
課長「それをどう生かすのかが、お前の技量だよ。」
僕「それはまあ、その通りです・・・」

課長「・・彼女の好意が迷惑か?」
僕「複雑ではあります・・・」
課長「2人とも若いんだから、楽しめばいいじゃないかww」
僕「僕は、真剣に言ってるんです・・・」
課長「彼女も真剣だぞw」

課長はいつのまにか、菜々子さんに懐柔されていた。

189 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/17(土) 02:06:15.43 ID:BIgl5WuF0
とある休みの日、課長に誘われて、釣りに出かけた。
僕は、たまの趣味で、シーバス釣りをしていて、課長も釣り好き。朝のマズメ時に同じ釣り場で鉢合わせしたこともある。

待ち合わせ場所に行くと、菜々子さんもいた。
僕は、毎回、菜々子さんからの誘いをなんだかんだ理由をつけて断っていた。
やられた。
菜々子さんは、課長を使って僕を呼び出したのだ。

菜々子さん「課長さんとお話ししてたら、竜也君と一緒に釣りに行くって言ってたの!私もご一緒させてください!」
課長「いやー、男2人だと暑苦しいけど、女の子がいると華があっていいね。美人だと更にいい!」
菜々子さん「やだ課長さんw美人だなんて本当のことをw」
課長「ハハハ楽しいね!いや実にいい休日だ!」

もう、課長を海に落としてやりたい気分だった。
菜々子さんは、釣りは初めてだった。
複雑な気持ちはあったが、釣り自体に罪はない。僕は、釣りの魅力を教えるべく、ルアーの説明や結び方、テクニック等をレクチャーした。
菜々子さんはそれほど釣りをすることなく、僕をニコニコ見ていた。

マズメ時は逃してはいけない。
僕はトップウォーターを選択し、派手にアクションを入れた。
『バシャッ!』
一気にルアーが持っていかれる。
それを見計らって、一気に竿を引き上げる!

僕「っしゃ!ヒット!」
課長「お、型は小さそうだがいい引きだな!今日は派手目がいいのかな?」
僕「どうで・・しょうかね!よっと。課長の、少し蛍光色のミドルあたりにしてみたら・・・どうですか・・・?」

菜々子さん「え?なになに?!釣れる?!すごい!!」

それほど長くないファイトの後、タモで引き寄せる。
60cmくらいかな。
ストリンガーに遠し、休憩。

課長「!!!これはデカイぞ!」

ぼくのシーバスに触発されたのか。課長もヒットした。
80cmくらいだろうか。僕のよりも2回りほど大きな獲物をゲットした。
ほくほくの課長。

課長「どうする?俺はもう帰る。なんなら一緒に血抜きしてやるぞ。」
僕「そうですね。早いですが帰りますか。」

一緒に血抜きをした。
菜々子さんは特に動じることもなく、手伝ってくれた。

課長「俺、こんなに食べられないから、交換しよう。」
上司なりの優しさなのだろう。ありがたく受けることにした。

僕「いいんですか?じゃあ、淳も呼んで、今日食べます。」
菜々子さん「あ、じゃあ、私が料理しますよ。得意なんです。」
僕「・・・わかりました。お願いします。」

課長の車で来た菜々子さんは、帰りは僕の車に乗った。
淳には申し訳なかったが、2人にはなりたくなかったので呼んだ。
以外にも淳は喜んで来た。

正直、助かった。
190 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/17(土) 02:15:05.77 ID:BIgl5WuF0
>>187
こっからの話は、だいたいEDが絡んでくるから、エロいシーンが減る。
それも辛いw
191 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/17(土) 02:15:57.94 ID:BIgl5WuF0
週末のUPは未定。
おやすみなさい。お疲れ様でした。
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/17(土) 02:17:58.60 ID:mZSc5n9e0
>>190
近づく女は全部頂いた
よく歯止めが効くな
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/17(土) 02:18:30.03 ID:mZSc5n9e0
おやすみ
194 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/17(土) 22:00:30.19 ID:BIgl5WuF0
淳はなぜか、結衣も連れてきた。

結衣「お魚大きい!どういう風にします?」
菜々子さん「半身はムニエルにして、残りは軽く湯引きしてサラダとか、揚げ物にしてもいいね。」
結衣「ムニエルなら、ポワレやペルシヤードみたいなお洒落なのにします!」
菜々子さん「いいね!なら、すこしアクアパッツァに回して・・・」

淳「知らん名前が多い。後は任せた。」
僕「僕たち、あれだ。実験台だ。」

こうして買い出しは豪華になり、僕の家で、4人が集まり料理が始まった。
まあ、淳と僕はただ飲んでるだけだったが。

菜々子さん「はいはい、男性陣は座ってて!」
僕「そのつもりです・・」

僕は、白身魚に合いそうな辛めの白と、乾杯用のスパークリングを用意した。
後は適当にボールやカクテルを用意。

適当なBGMを流す。
さながら、こじんまりとした隠れ家レストランのようだ。
荷物は淳の家に放り込んでおいた。こういう時、お隣さんだと助かる。

その日は、スズキ尽くしだった。
非常に美味しかった。

酔いも回った。

菜々子さんはもともと商品開発部で、結衣と面識があった。
この時は、皆、楽しかったと思う。

僕「結衣、ありがとうね来てくれて。」
結衣「ううん。楽しかったよ。・・・また、呼んでね?」
僕「・・・ああ。いつでも。」
淳「おいおい。俺も呼べよな。」
僕「却下。」
菜々子さん「何です?結衣ちゃん、竜也さんねらい?あれ?実は竜也さんも?あれ私も入ったら三角関係?!どーしましょう。」
僕「あの菜々子さん・・・」
結衣「(苦笑)竜也君は私のよき相談相手ですよ。」
淳「俺もね!」
結衣「却下!」
菜々子さん「ww」

夜も更ける前、3人は帰る。
淳「じゃあね。」

鍵を閉める。すると、チャイムが鳴る。
イヤな予感しかしなかったが、一応出る。

菜々子さん「竜也さん、ちょっとお時間いいですか」
ですよねぇ。

女性を外で待たせるわけにもいかない。

僕「・・どうぞ。」

菜々子さん「あの、竜也さん、私・・・まだ帰りたくないです。」
195 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/17(土) 22:29:58.27 ID:BIgl5WuF0
僕「あの、一応僕も男ですし、女性が夜に男性の部屋に一人でいるというのは色々とマズいと思うんです。」
菜々子さん「はい。そうですよね。わかってますよ?私は、竜也さんにならいいですよ?」

僕「いや、そういうことは冗談や軽いことじゃなく・・」
菜々子さん「もう、これだけははっきりさせておきたくて。私は、竜也さんのこと、好きです。」
僕「・・・えっと・・・うーん・・」

菜々子さん「・・・ご迷惑ですよね・・・」

迷惑極まりない。
好きとか嫌いとかではなく、同じ部署のしかも同じグループの女性と関係を持ったら・・・
もし断ったら・・・
いや、軽い気持ちで深い関係になったとして、いざという時に役立たずだとバレたら・・・
様々な不安だけがよぎる。

最低だとは思うけれど、保身のために、曖昧な返事しかできなかった。

僕「色々、んー、考えることがあって・・・そういうのは・・あ、決して菜々子さんが嫌いとかではないですよ?明るいし、一生懸命働いてくれるし、美人だし・・・」
菜々子さん「じゃあ、いいんですね?OKなんですね?」
僕「えっと、それはちょっと・・・」

菜々子さん「嫌われていないんでしたら、それでいいです!私、頑張りますから!私、バリバリ仕事する姿が大好きなんです!」
僕「ええ・・・いや好きだと言われれば嬉しいですけど、仕事に支障が出てしまうのは、あの・・」
菜々子さん「認めてもらえるように、これからも頑張りますね!」
僕「え?ええ。じゃあ頑張ってください・・・あの、ちゃんと帰れますか?」

菜々子さん「固いですよ!プライベートの時はタメ口で!呼び捨てでお願いします!」
僕「それは失礼で・・」
菜々子「まず、そういうところから打ち解けていきましょう!そうしてくれないと帰りませんよ!」

有り余るエネルギーのまま、ハグをされる。
菜々子さん「・・・本当に、大好きなんです・・・ずっと・・・こうしていたい・・・」
僕「・・それはまあ、悪い気はしないですが・・・やっぱりその」

柔らかな唇が、僕の口を塞ぐ。
大人の女性の、甘い香りがした。

僕「・・・遅くなっちゃいますよ」
菜々子さん「さすが・・・動じないんですね。・・・私、帰らなくてもいいんですよ?」
僕「気を付けて帰ってください」

菜々子さんは、にこやかに笑った。
素敵な笑顔だった。

菜々子「そういうところも、好きですよ。おやすみなさい。」
僕「ええ。おやすみなさい。また会社で。」
菜々子「はい!私、頑張りますから!」

嵐のような週末が終わった。

196 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/17(土) 23:06:05.73 ID:BIgl5WuF0
鈴木「お疲れさん。」
僕「お疲れ様でした」

社内のプレゼンが終わり、僕と鈴木さんは一息ついた。
季節は、夏になっていた。

鈴木「今回の流れ、いい感じだった。説得力もあったし、見やすかった。いいプレゼンだったよ。」
僕「ありがとうございます。鈴木さんが予行演習に付き合ってくれて助かりました。」

鈴木「お前のプレゼン方法に興味があったからな。お前は勉強熱心だよ。あのソフトでよくここまで作り込めるもんだ。」
僕「凝り性なんです。だから残業ばっかりなんですよきっと。」
鈴木「・・・」
僕「・・・・はい?どうしました?変なこと言いました僕?」

鈴木「違うよ。・・・お前はもう一人前だ。沢村が抜けてどうなるかと思ってたけれど、もう何の問題もない。むしろ、お前との方がやりやすいよ。」
僕「・・・もうすぐ1年ですからね。いつまで泣いてても始まらないですから。」

靖子さん「リーダー、さすがのプレゼンでした。」
僕「え?はい。ありがとうございます。資料集め、お疲れ様でした。」
靖子さん「私は言われた資料を用意しただけです。わかりやすくて、みんなが納得したと思います。」
僕「ベースは沢村さんのものですけれどね。」

靖子さん「謙遜はいいですよ。話し方も良かったですよ。私、自分で買いたいと思いました!」
僕「えw買ってどうするんですかw個人じゃ役に立たないですよあれw」

菜々子さん「お疲れ様!肩もみしますよ!」
僕「セクハラ!」
菜々子さん「じゃあ私の肩を揉んでください!」
僕「そっちの方がセクハラです!」
菜々子さん「そのまま、私の体中を、竜也さんの手が・・」
僕「はいそこまでー!」

菜々子さんは相変わらずだった。
危うい均衡を保ちながらだったが、僕たちのグループはなんとか回っていた。

次期基準の展望が行政から示され、またこれから慌ただしくなる。
僕は、課長の出張に同行することも増えてきた。

どうやって知ったのかわからないけれど、僕の携帯に直接末端のお客様から電話がかかってくることもあった。
海外からのバイヤーには、通訳もつけてもらえるようになった。

休みの日には、釣りやドライブ。絵理奈や堅と遊ぶこともある。
菜々子さんは相変わらず積極的に誘ってくるが、それほどは一緒に出掛けたり食事したりはしなかった。
また、暇な日に、なんとなく外で食事に行きたくなった時、付き合ってくれる女性も何人かいた。

それは菜々子さんや翼・結衣も含まれるが、他にもいた。同じ部署の子だったり、派遣社員だったり、他部署に行ったときに誘われたり。
いままで書かなかったが、当時流行していた出会い系のサイトでも募集していた。
僕が露骨な下心を出さない(実際は出せない)ので、軽い付き合いならOKという女性にはちょうどいい男なのだろう。

女性「いいの?奢ってもらっちゃって。」
僕「え?いいよ。もし奢られるのが苦手じゃなければ。付き合ってもらってるし。」
女性「じゃあ、遠慮なく。楽しかったわ。」
僕「ああ、僕も。じゃあ、またね。」
女性「帰っちゃうの?近くに美味しい珈琲が飲めるから、一緒にどう?お返しに奢るわよ。」
僕「んー、じゃあ、戴くよ。」

ひょっとしたら、強引に誘えば、何人かは受け入れてくれるだろう。
でも、そんな気分にはなれなかった。どうせうまくできない。


197 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/18(日) 01:18:41.42 ID:HdVC0mRt0
ボーナスが出た。
僕の査定は、まさかの「A」だった。
びっくりした。

河村「竜也、ちょっと見せてみろよw」
僕「あ、ちょっと!」
河村「お、やるな。Aじゃねーか。。。。まあ・・・うん・・そうだよな。お前は頑張った。もう沢村の代わりなんて言えないな。」
僕「どのみちあの人には勝てないっすから。」
河村「あいつは天才だったからなw。でももうどんな奴だったか忘れたよ。」

そんなものなのかもしれない。

伊藤「俺はむしろ、Sじゃないのか?って思ったよ。」
僕「沢村さんだって、2回しかとったことないって言ってましたよ。無理ですよ僕じゃ」
伊藤「・・・あいつよりお前の方がしっかりしてるよ。」
僕「そうですか?」
伊藤「あいつは、自分の信念がなかったからな。」
僕「信念、ですか。」
伊藤「そう、信念。お客さんの望んだ資料を作るのはうまかったが、根拠がない。お前は、自分で考えて、自分で資料を集めて、自分で予測をしてる。正しいかどうかは別として、お前の主張はよく理解できる。」

僕は、開き直っていた。
自分のできることはこれまでです。
それ以外はやりません。
良かったのか悪かったのかは今ではもうわからない。

毎日が慌ただしく過ぎていく。
専門書などを読む時間はとっくに無くなっていた。
常に時代は変わり、情勢は変わり、根本である法律まで変わる。
多様化・複雑化する世の中に対し、情報をいかに早く処理するか。いかに情報を発信して情報源になるか。
まさしく、会社・上司・顧客のコマだったと思う。

198 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/18(日) 01:19:11.37 ID:HdVC0mRt0
お盆前、部署主催のお疲れ様甲斐があった。幹事は僕を含めた数人だ。
泊りがけのものだった。

僕は、幹事であったけれど、宿泊せず途中で帰ると伝えてあった。
菜々子さんに対して若干恐怖心があり、一緒に宿泊したらなにかされるかもしれないと思っていたからだ。

僕「え?僕、宿泊しませんよ。」
菜々子さん「そうなんですか・・・じゃあ私も、参加しますが、宿泊ナシでお願いします。」

やはり・・・

そして当日夕方、他の幹事に、都合がついたから宿泊すると伝えた。幹事は別部屋で幹事部屋がキープしてある。
菜々子さんは一般参加者なので、宿泊する部屋を当日手配が出来ない。完璧だ。

お疲れ様は始まった。

菜々子さん「え?竜也さん、宿泊するんですか?!」
僕「はは・・・都合がついたから・・幸い、幹事の部屋は空きが1つだけあったから。」
菜々子さん「じゃあ、私も宿泊に変更できないですか?」

僕「今からはさすがに無理だと思います。」
他幹事「そうだねぇ。空きがもうないんだよ・・ごめんね。」

よし。勝った。
その夜、驚愕した。

菜々子さんは、男性の先輩方が酔っていることをいいことに、上手に先輩方に懐柔し、宿泊場所を確保しないまま、各部屋を夜通し周り、お酒を注いだり雑談したりして過ごしていた。
菜々子「私、先輩方と夜通し飲みますよ!眠くないし!」
先輩方「まじで?!嬉しい!眠くなったら適当にどっかで寝ればいいよ。泊まって行け泊まって行けw」

僕は、今まで、伊達に菜々子さんの相手をしていない。
実は、万が一、彼女が無理やり宿泊するという不測の事態に備え、幹事の部屋がどこなのか、だれにも情報公開していなかった。
自分の宿泊部屋を知られたくなかったからだ。

しかし、菜々子さんは僕の予測を上回る根性を出した。

僕達幹事が手配したホテルは、有数の巨大ホテルであったが、彼女は、各部屋をノックして誰がいるのかを確認する暴挙に出たのだ。
相手は美人の女性である。
気分を害する人もおらず、部屋を間違えたことを謝り、和やかに扉を閉めてはまた次の部屋をノックして回った。
僕の宿泊する階に来た。遠くから、ノックのする音が聞こえる。談笑が聞こえる。
しばらくすると、またノックの音が聞こえる。

ノックの音は、次第に大きくなり、だんだん近づいてくる。
その時の恐怖は、今でも覚えている。

「コンコン。あの、失礼します。」
疑う余地もなく、聞きなれた声がした。

他の幹事が、何の躊躇もなく扉を開ける。
幹事「はい。あ、菜々子ちゃん!どうしたの?あ、竜也君かな?いるよー」

はいアウト。

菜々子さん「もー、竜也さん!どこにいるかくらい教えてくれてもいいじゃないですか!私、下から全部屋ノックしてきたんですよ!」
僕「ええ・・・根性やばいですよそれ・・・」

菜々子さんはビール瓶片手に、グラスまで用意して、僕に注いでくれた。
僕「はぁ・・うん。まあ、お疲れ様です。」
菜々子さん「ええ!お疲れ様でした!朝まで、ご一緒しますよ!」

違和感があった。
あれ?何かがおかしい。

気付くと、この部屋には、僕と、菜々子さんしかいなかった。

後日、他の幹事に聞いたが、「え?みんな気を利かせて部屋からこっそり出て行ったけど?」
本当に意味が分からない。

かくして、酔っぱらった菜々子さんの逆襲が、始まった。
この日の菜々子さんのことは、今でもよく覚えている。

199 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/18(日) 03:52:19.79 ID:7qNbEM/w0
ゴクリ
200 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/19(月) 12:58:45.90 ID:OJ7I3Q2u0
菜々子さん「私・・・本気ですよ?軽い気持ちじゃないです。」

何度も言うが、彼女は美人だ。
その瞳が潤み、僕を見据える。

僕「え・・ええ。まあ、そうだとは思いますけど・・あの・・一応、お疲れ様会ですし・・・」
菜々子さん「いつもそうやって、ごまかしますね。曖昧なまま。」

ビールを注がれる。
僕は軽く飲み、彼女にも注ぎ返す。
じれったそうに、彼女はビール瓶とグラスを僕から奪い取った。

菜々子さん「・・・ちゃんと私を見てください。私、美人だと思いませんか?」
僕「世間から見れば、まあ、美人という人が殆どだと思います・・」
菜々子さん「竜也さんからは、どう見えますか?」

彼女は、タイトな黒いスカート、白のブラウスというシンプルな服装だった。スカートからはスラリとした脚が伸びる。
おもむろに、僕の座っているベッドに忍び寄る。スカートが少し、めくりあがる。
セクシーなガードルがチラリと見え、僕は目を逸らす。

僕「僕は、女性を外見で判断しませんので。年上の方は基本的に敬います。」
菜々子さん「もう、そういうことじゃないでしょう?・・・私が・・魅力的かどうか・・それを・・聞いてるんですよ・・・?」

そういいながら、僕の頭を、首筋を、耳筋を、指で、なぞる。
清楚なのに、官能的。そのなぞり方は、触れるかどうかのギリギリのライン。ゾクゾクする感覚が、僕を刺激する。

僕「魅力的かどうかは・・・問題じゃないんです・・・」
菜々子さん「・・・そうですか?・・本当に・・?」

普段は透き通るくらい白い顔が、この日は、少し赤らんでいた。アルコールが、普段よりも、彼女を大胆にした。
すこし、前かがみになり、まるで女豹のような格好をし、僕の肩に手を置く。

白のブラウスから、胸元が垣間見える。
黒いブラジャーが、たわわな胸を、包み込んでいる。白と黒の対比が、目に飛び込んでくる。

僕の視線に気づき、彼女は、悪戯っぽく笑い、胸元を隠す素振りをする。
菜々子さん「・・・見たい・・ですか・・・?」

僕「いえ・・そういうわけでは・・」
僕の話など聞かず、彼女は、ブラウスのボタンを、少し、外した。
そして、スカートに入っていた裾を出す。
セクシーな胸元から、くびれた腰までが、ブラウスの隙間から、露わになる。

菜々子さん「ねえ・・年上の女性に、ここまでさせて、竜也さんは、平気なんですか・・?そこまで、子供なの?」
僕「・・・子供だと思いますか?」
菜々子さん「素敵な・・男性だと・・・証明してくれる・・?」

彼女は、そのまま、僕に、柔らかなキスをした。
舌が、遠慮なく入ってくる。
柔らかな舌だった。

201 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/19(月) 12:59:35.58 ID:OJ7I3Q2u0
その舌は、僕の舌を絡めるに飽き足らず、僕の歯を、僕の歯茎を、僕の口の中のすべてを、艶めかしく撫でて行った。
気持ち良かった。痺れる感触だった。

菜々子さん「・・・キス・・・お上手ですね・・・もっと・・していいですか・・?」
僕「ぷはっ・・・・はぁ・・・んっ・・キスは好きですよ・・・情熱的ですね。」

僕は思いっきり押し倒された。
そして、スーツをはぎ取られる。

僕「ちょっと・・菜々子さん・・?」
彼女は、僕の全身を舐めまわした。
耳から、眉から、目じりから、鼻から、もちろん唇も、首筋も、のども、脇も、腕も、指も、胸も、その先も、臍も、ふとももも、足の先も。
全身、くまなく、舐めてきた。

僕「汚いので・・・あの・・」
菜々子「竜也さんのだったら、汚くないですよ・・・いい匂い・・すべて・・んっ・・」
僕はなすがままだった。

気持ち良かった。
気持ち良さに、負けた。

菜々子さんが僕の足を思い切り開き、僕のお尻を・その穴を凝視する。
ためらうことなく、彼女は、僕の穴を、チロチロと舐めてきた。

僕「っ。。気持ち・・・いい・・・」
その声を聞き、一層舐める彼女。その指は、僕のアレをつかむ。優しくない。力強く僕のアレをつかみ、はげしくしごき出した。
恐ろしく気持ち良かった。

もいいや、逝ってしまえ。
僕は、彼女のブラウスを剥ぎとり、ブラをはぎ取り、その柔らかで形の良い胸を、揉んだ。その乳首は綺麗で、硬直していた。
ああ、気持ちいい。

僕「もうだめ・・逝っちゃう・・」

彼女は、そのまま、口を僕のアレに移動し、根元まで一気に包み込んだ。
喉の奥まですっぽりと入れ、小刻みに動いた。
手練れだ。完全に僕のアレを、びったりと包み込み、僕のアレ全体に刺激を与えた。

僕は、思いっきり果てた。
こんなに出たことがあるのか?というほどの液体が出た。

彼女は、すべて飲んだ。
しばらくの余韻を含め、その間中、僕のアレを咥えていた。

菜々子さん「・・・気持ち良かったでしょ・・?」
僕「・・・え、ええ。今まで、経験したことがないです・・・」

彼女は、口を綺麗にしてきた。

僕「ここまでさせておいて・・・あれですが・・・僕、その・・・菜々子さんと・・しませんからね・・・?」
菜々子「じゃあ・・・しない以外は・・・何してもいいですか・・・?」
彼女は、妖艶に笑った。

僕「・・わかりました。お付き合いします。」
菜々子「実は・・・・今日、アレの日なんです。見返りは求めませんから。。。好きなように、させてください。今日のことは・・・忘れて・・・いいですから・・」

彼女は、ガードルまでを残し、すべての服を脱いだ。こうして、僕と彼女の、挿入以外のありとあらゆる交わりが、始まった。
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/19(月) 13:45:17.81 ID:HG34zjagO
いいな
203 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/20(火) 10:10:10.57 ID:96ivlW+v0
僕は、ミニバーから洋酒を取り出し、口に含む。ピリピリとした舌触りだ。
そのまま、菜々子さんに口移しする。

菜々子さん「んっ。」
彼女は目を瞑ったまま、それを飲み込む。今度は、彼女が洋酒を口に含み、僕に飲ませる。
だんだん、感覚がマヒしてくる。一気に酔ってくる。

お互いの吐息が、唾液が、ツンとしたアルコールの匂いを発する。
明かりを消す。フットライトだけが頼りとなる。
僕は、朦朧とする意識の中、手探りで彼女の胸を鷲掴みにする。そして、胸元に、少し強めのキスマークをつける。

菜々子「んん・・・っ」
酔いも回ると、痛覚がマヒしてくる。手加減もできなくなってくる。
お互いが、お互いを貪る。

彼女は、僕の背中に、遠慮なく爪を立ててきた。
少し長めのネイルが突き刺さる。痛さより、気持ち良さが先に来る。
僕は、彼女の舌に吸い付き、押し倒し、手を頭の上でクロスさせる。それを、タオルで縛る。
思いっきり胸を鷲掴みにする。そして、乳首を噛んだ。苦悶の表情を見せる彼女。

菜々子さん「はぁ・・・はぁ・・痛っ」
僕は最後まで聞かず、その口に僕のアレを突っ込んだ。
酔っているのに、みるみる膨張するアレ。
彼女はむせながらも、一生懸命に舌を動かす。

僕は、ありったけの性欲を彼女にぶつけた。
もういい。
もういいや。どうにでもなれ。
嫌われたい。
会社もどうでもいいや。
訴えるなら勝手にしろ。

僕「はぁっ・・はぁっ・・・ナマイキっ・・なんだよっ!!」
菜々子さん「んっ。。んぐっ。。!」
僕「いい加減・・気づけ・・よっ!」
菜々子さん「んっ。。んぐっ。。!」

僕「次・・・誘ったら・・!! こんなんっじゃ・・・すまさ・・ないっ・・っから・・なっ!!」
菜々子さん「ぷはっ・・・はぁ・・はぁ・・ゲホっ!!げほげほ・・・」

僕は彼女の口をもう一度開け、クラクラする頭を呼び覚ましながら、僕のアレをもう一度入れ、自分勝手に果てた。
彼女は、それでも、僕の液体を飲み干した。

お互いが汗だく。
でも、こんなもの、合意とは呼べない。ただの、ストレス発散だった。
タオルをほどき、僕は一人でシャワーを浴びる。
鏡越しに僕を見ると、僕の体には彼女に付けられた赤黒い跡が大量に残っていた。しばらくは消えそうにない。
シャワーを浴びていると、彼女も入ってきた。

菜々子さん「・・・私も、浴びます。」
僕「・・・どうぞ。」


204 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/20(火) 10:21:38.64 ID:96ivlW+v0
僕「はー、シャワーを浴びると、少しスッキリしますね。」
菜々子さん「ええ。ちょっと酔いが残ってますけれど。洋酒はいけいないですよ!クラクラしました。」
僕「すみません。」
菜々子さん「ふふふ。私の体、竜也さんのせいで跡だらけです。」

彼女にも、僕が付けた跡が大量に残っていた。
僕「お相子です。」
菜々子さん「確かに。・・・あの・・」
僕「・・・はい。」

菜々子さん「・・・最後までは、したくないんですか?」
僕「ええ。しません。それから・・・ひどい男だと思いますが、やっぱり、付き合う付き合わないというのは考えたくなくて・・」
菜々子さん「腹を割りましょうよ竜也さん。私と付き合いたくないけど、振って仕事に支障が出るのがイヤなんですよね?」

僕「・・・すみません。その通りです。」
菜々子さん「私も大人なんで、そのあたりはわきまえてますよ?」
僕「・・・」
菜々子さん「私は、相手をしてくれるなら、都合いい女でもいいよ?」
僕「それはダメでしょ。失礼すぎる。」

菜々子さん「それなら付き合って。」
僕「ごめんなさい。正直、彼女とかしんどいです。」
菜々子さん「なら!私が、私の欲求を叶えようとしたら、都合いい女になるしかないじゃないですか!」

僕「・・・できないと言ったら、どうしますか?」
菜々子さん「このまま今から病院に行って、体を見せて、診断書を書いてもらってきます。」

僕「・・・脅迫ですけどそれ?」
菜々子さん「はい、そうなりますね。」
僕「そんなことしても、余計に僕が遠ざかると思いますが。」
菜々子さん「その通りですね。だから、お互いOKなラインを探しませんか。」

僕「・・・考えさせてください。条件は僕が決めます。勝手ですが。」
菜々子さん「私は、竜也さんを独占できる時間があれば、それで満足。それ以上は求めません。たとえ・・彼女ができても。それがたとえ奥さんができても。」
僕「逆も然りで、菜々子さんは、彼氏・結婚相手をちゃんと探せますか?僕にそれを求めず。」
菜々子さん「・・・今は、考えたくないですが・・・もし、竜也さんと無理ということでしたら、そうします。」

僕「僕は、最後までしませんよ?」
正確には、できない。それがばれることだけは避けたい。

菜々子さん「はい。それでもいいです。」


僕に、もう一人、都合のいい女というのができてしまった。
205 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/20(火) 12:53:40.35 ID:96ivlW+v0
お盆に入る。
僕は帰省し、京介・堅・玲奈・絵里奈と飲みに出かけた。
玲奈は会社を辞めていた。僕ほどではないが、相当な残業を強いられ、精神的に参ってしまったようだ。

玲奈「ごめんね。みんなにもつらく当たっちゃってた。」
堅「ったく。もっと早く言ってくれれば、もっといろんな選択肢があったんだぞ?」
玲奈「もういいの。私は、マイペースに頑張るから。」

京介「ああ、そうだ。誰も、自分ができる以上のことに手を出したらだめだ。」
絵里奈「そうだね。」
僕「みんな、悟り過ぎだろ。」

玲奈「竜也先輩、仕事しすぎだよ。仕事以外の趣味ちゃんと持ってる?」
僕「うーん。一人でバーに行って飲んだり、女の子にちょっかい出したり、釣りに行ったり、料理したり、ドライブ行ったり、女の子にちょっかい出したり、スノボ行ったり、女の子にちょっかい出したり・・・」

絵里奈が、僕の鳩尾にエルボをかます。
思いっきりむせた。

僕「痛いんですけど?」
絵里奈「女たらし。」
僕「女性はみんな妹みたいなもんだよ。」
絵里奈「妹には、私にしたようなことするんだ?」
僕「おいここでそんな話する?」

玲奈「まあまあ。久しぶりに会うんでしょ?仲良くしなよ」
僕「ごめん。最近仕事関係の人間関係も殺伐としてて気が立ってるんだ。せっかくのお盆休みだし、笑顔でいたい」
絵里奈「はいはーい。」

堅「ところで俺、転勤が決まった。たまたま地元だ。」
僕「まじか。いいな。」
絵里奈「また一緒に遊べるね。」
堅「そうだね。これで、竜也以外は集まりやすいw」

ああ。
つまらない。

急に、仕事のことが馬鹿らしくなる。
いや、仕事は楽しい。信頼されている。
でも、菜々子さんはじめ、人間関係にいやになる。

うちの部署は、基本的に嫌われている。
社内から冷たい視線を浴び、数人の信頼おける同期以外の同期からも冷たい視線。
外注先は、年下の僕にペコペコし、こちらの顔色をうかがってくる。

何のために仕事してるんだろう。
初めてそう感じた。


僕「あー、なんだか疲れてきちゃった。僕なんのために仕事してるんだろう。」
京介「・・・俺は、家族のためだな。」
絵里奈「私は・・・いつ辞めてもいいけど、貯金したいから・・」
玲奈「・・・やりがいがないと、続かないもんだね。」
堅「俺は、やりがいを感じてる。竜也の姿勢を追いかけてね。」




僕「あー、」

僕「仕事、やめて、地元に帰ろうかなぁ。」

初めて、そう思った。
206 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/20(火) 13:44:55.48 ID:96ivlW+v0
大学のサークルの友達と、念願の横浜に来れた。

(森山未來似、以下未來)

未來「お疲れ様。久しぶりだね。」

未來は、サークルのリーダー的存在だった。そして大学院まで進み、有望な会社に就職した。
連絡はこまめに取り合っていた。
帰省の時は、ちょくちょく集まっていた。

僕「やっと来れたよ。みんな元気だった?」

(大石めぐみ似、以下めぐみ)

めぐみ「藤原君おひさしぶり!元気だったよー。体調良くなってうれしい!」

めぐみは、うちのサークルではアイドル的存在。とても可愛かったけれど、普通に参加するだけで目立った活動もしていなかったため、同期くらいしか知っている人はいなかった。今は、営業として頑張っている。当時よりも大人の魅力が増して、さらに美しくなっていた。僕も当時は憧れていた。

僕「あはは・・無理しちゃだめだねやっぱり。」
めぐみ「体は資本だよ?社会人は自分の体調管理を・・」
僕「はいはい。口うるさいのは昔からだね!」
めぐみ「ちゃんと話を聞きなさい!」
僕「へーい。」

(松たか子似、以下たか子)

たか子「藤原君?もう年なんだからwww」
僕「うっさい。同じ年齢だろ。」

たか子は、冷静沈着で、頭の回転の良い子だった。大手に就職した。自分のポリシーを曲げることのない子。
その代り、ポリシーに反しなければなんでもやる子だった。この当時は、数人の上司と関係を持ち、自分の社内の位置を確立していた恐ろしい子だ。

未來「まあまあ、竜也君も復帰できたし、楽しく観光に行こう!」
一同「おー!」

楽しかった。バカ騒ぎをした。
女性たちはホテルに泊まり、僕は未來のアパートに泊まった。
207 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/20(火) 15:49:46.51 ID:96ivlW+v0
未來「俺、祐希ちゃんに告白したんだ。」
僕「え?そうなんだ。まあ、人気あったものねぇ」

未來「でも、断られちゃった。『あなたには興味ない』だって。」
僕「そう言われるとツライな。」
未來「結構引きずってる。」
僕「もうちょっと言い方あるよなぁ。。」
未來「・・・ま、みんなが来てくれてうれしかったよ。気晴らしになる。」
僕「ああ。明日も遊びまくろう。忘れちゃいなよ祐希のこと。お前、モテるんだし、頭いいんだし、相手なんてすぐ見つかるだろう。」
未來「そういうお前はどうなんだよ?」

僕「んー、食事に行ったり、遊びに行ったりしてくれる子は何人かいるよ。」
未來「相変わらずのモテだな」
僕「嬉しいかと言われると、寂しさを埋めてるだけだけれど。」
未來「働き過ぎなんだよ。いざという時、会社なんて助けれくれないぞ。信じるのは自分だけなんだから。」
僕「僕の方が社会人歴長いよ。」
未來「それもそうだな。」

少しだけ、2人で飲み直した。
近くにある、小さなバー。
未來は、黒ビール。
僕は、アラウンドザワールド。

未來「相変わらず変なの飲んでるな。」
僕「グリーンミントチェリーを置いてある店なら、ちゃんとした所だよ。いいだろ何飲んでも。」

未來「・・・俺も、お前みたいな社会人になっていくのかな。」
僕「お前は、僕よりも世渡りが上手いし、よっぽど優秀じゃないか。ほどほどの残業で、ちゃんと出世していい人に巡り合えて、いい人生を歩くだろうさ。」
未來「そうだといいけど。」


翌日、また思いっきり遊んだ。
たか子とめぐみとも、連絡先を交換した。

この2人は、これから、もっと先になるが、僕の人生に関わってくる。

208 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/20(火) 15:50:53.07 ID:96ivlW+v0
今日はここまで。
年末は忙しいね。
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/20(火) 16:23:18.63 ID:MrrebolDO

疲れを出さないように
210 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/21(水) 10:28:53.08 ID:livU6Uc80
>>209
ありがとう
211 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/21(水) 11:10:11.12 ID:livU6Uc80
お盆明け。
慌ただしくなった。

僕の提案した事案が、他社の特許に抵触することがわかった。
しかも、情報はすでにリリースされてしまっていた。

もともとは、沢村さんの案件だった。
沢村さんは、自社の特許室に事前調査を依頼していた。そこまでは確認が取れていた。

だが、特許室とうちの部署との連携が悪く、特許室は「他社の特許に抵触するのでNG」と判断したのに、うちへの連絡がなかった。
僕は、菜々子さんに口頭で、確認を取っておくように伝えていたが、事前調査依頼を出した=特許室のOKを貰ったと勘違いして、それ以上の確認を取らなかった。
僕がしっかりチェックしていれば防げたミスだった。

僕「申し訳ありませんでした。」
部長「まず、代替案を3つ、早急に用意しろ。抵触するかしないかは、私が直接特許室に連絡を取るから。」
僕「今日中に用意します。」
部長「今日中?そんなに早くいけるか?」
僕「ストックは常に20以上あります。吟味して、今回に合致するのをピックアップし、少し修正すれば何とか用意できます。」

部長「わかった。まかせる。・・まったく!特許室のやつら・・・調査依頼出してるんだから返事くらい出せよ・・」
僕「OKの場合は申請。あとで自分で特許庁に問い合わせろ。NGの場合は申請しない。特許庁に確認すれば申請してないことはわかるでしょっていうスタンスみたいですね・・」
部長「あそこの部長は、いつもずさんだからな。だがしかし、」
僕「はい。わかっています。今回は僕のミスです。早急に対処します。」

菜々子さん「すみません・・また・・・」
僕「いえ。社内プレゼンの時も、販促物を作る時も、リリースする時も、チャンスは何回もありました。社内連携と、僕の確認ミスです。とにかく、急いで対処しましょう。」
菜々子さん「はい!」
靖子さん「私は何をしましょう?」
僕「今回のことで今週は確実に僕は何もできないので、この案件以外のサポートをお願いします。」
靖子さん「わかりました。」

鈴木「俺もフォローに入る。他の案件こっちに回せ。」
僕「すみません。お願いします。」
鈴木「だーから言うんだよ。お前は他部署の仕事しすぎなんだよ。だから、特許のやつらが手を抜く。」
僕「・・・そうですね。鈴木さんの言うとおりですね。」
鈴木「ま、さっさと片付けようぜ。」

結局、対処に1か月を要した。
上期のまとめで慌ただしい中、僕は部署だけでなく、各部署を巻き込んで迷惑をかけてしまった。


事業部長「まああれだ。今回はリリースの段階で有耶無耶にできたけれど、発売にまで行っていたら、損害賠償請求される事案だぞ。」
部長「はい。おっしゃる通りです。申し訳ありませんでした。」
事業部長「特許室のまずさの方が問題だから、今回は特許室に責任がいく。だが、うちが確認していれば済んだことだ。ダブルでチェックしていかないとな。」
部長「ええ。肝に銘じます。」
僕「ご迷惑をおかけしました。」

事業部長「ん?ああ。藤原君だっけ?若いのによくやってるよ。そのフォローをするのが上司の役目だからな。気にするな。その責任は部長に取らせるからw」
部長「勘弁してくださいw」
事業部長「お前、俺はこの前の麻雀の恨みがあるんだからな!取り返すまでネチネチやってやるw」

最後は、僕への配慮だろう。
この部署の人たちは、温かい。

だが、他の部署からの視線は、ますます冷たくなっていく。
実は、今回の案件だけではなく、僕以外のことでも、他の部署とトラブルが増えてきていた。

業界自体が、市場規模の縮小とともに、赤字を計上する会社が増えてきたのだ。
うちの会社も、景気の低下とともに経費削減・業務見直しの風潮が強くなってきた。

よって、うちの部署も、展望や将来なんていうものに予算は割り振られず、経営改善・不採算部門の割り出し、ラインナップの見直しなど、経営テコ入れの案件がどんどん増えて行った。
他部署にとっては、利益を出そうと一生懸命頑張っている出鼻をくじく形で「はい、このラインナップ廃止ね」とうちの部署から突然通達される。

商品開発部「いやいや、それはおたくが言う話じゃないでしょ?」
経営企画室「我々のマーケティング調査の結果ですと・・・」
商品開発部「現場の声、聞こえてるの?この商品なくなったら信用失うよ?」
経営企画室「赤字の商品を抱える余裕は、会社にないですよ?」

こんなバトルはしょっちゅうだった。

212 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/21(水) 11:26:25.48 ID:livU6Uc80
結衣「実際、竜也君は、あのラインナップが消えて正解だと思ってるの?」

僕の部屋で、ソファに座りながら、ポートフォリオの資料を眺めながら、結衣は疑問を投げかける。
僕「客観的というか、経営的に見れば、不要だろうね。」

結衣「それを廃止すると、関連するラインナップもたぶん売れなくなるよ?」
僕「予測だと、3割減るね。そのラインナップ」

結衣「それでも、不要だと?」
僕「うん。作れば作るほど赤字になる商品だし、それを作るラインの維持も大変だし。一層のこと、売れ筋のあの商品のためにラインを開けた方が、トータルで見ると利益プラスになるよ。」

結衣「本当にそうなるの?」
僕「・・・・やってみないとわからない。ただ、現状のままだと、確実に首が締まっていく。」

結衣「難しいねぇ。私もこの本持って帰っていい?」
僕「いいよ。もう読む暇ないし。」

結衣「あれ?私がここに来て、ゴロゴロしてるのも、実は、時間の無駄だとか考えてる?」
僕「・・・え?全然?つかの間の休息だよ?リラックスできるからウェルカム。」

結衣「よかった。」

結衣は、たまに、僕の部屋に来る。
適当に資料をあさったり、勝手に調理器具を使って料理をしたりしている。奇妙な関係だ。
(当時は、自宅に会社資料を持ち帰ることなんて普通だった。今だったら完全に規定違反だろう。)

僕「コーヒー淹れて」
結衣「何にする?」
僕「カプチーノ。砂糖なし、シナモン少々。」

手慣れた手つきで2人分コーヒーの粉を詰め込んでセットし、ミルクをフォームする結衣。
耳障りだが心地よい音と、コーヒーの香りが充満する。

僕「ありがとう。この前、美味しいチョコが手に入ったんだ。」
結衣「あら・・?誰からのプレゼントかしら・・?」

僕「そんなんじゃないよ。ニヤニヤすんなよ。」

僕と結衣は少しビターなチョコをかじりながら、部屋でくつろぐ。

結衣「・・・ねえ、噂だけど」
僕「うん?」

結衣「経営企画室が取り潰しになるって、本当?」
僕「・・・・」
213 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/21(水) 12:10:16.91 ID:livU6Uc80
僕「・・・誰から聞いた?」
結衣「ちょっと怖い顔しないでよ。」
僕「あ、ごめんね。怖い顔してた?」

僕「僕も、噂で聞いてるんだ。でも、その話、上司は知らないと言ってる。」
結衣「そっか。じゃあ噂でしかないんだ。」
僕「もしくは、経営層だけの話で止まってるのか。」

ちょこんと、僕の横に座りなおす結衣
結衣「もし、もしよ?そうなったら、竜也君てどうなるんだろう?」
僕「・・・うーん、もともとは研究職希望だし、それ系の技術職に異動じゃないかな?」
結衣「ふーん。」

僕は、結衣の持ってるカプチーノをとりあげ、テーブルに置いた。
不思議そうな顔をする結衣。

結衣「ん?どうした」
そこまで言わせたが、残りの言葉は僕の唇が遮った。

結衣は目を瞑り、心地良さそうにしていた。
結衣の頭をなでる。サラサラな髪。バラの香りがした。

僕「ごめん。こういうことしないつもりでいたのに。」
結衣「うん?そうなんだ。確かに、今までそんなそぶりを見せなかったね。」

僕「なぜだろう。急にキスしたくなった。自分が怖い。・・・何やってるんだろう僕」
結衣「んー、私は、信じないよ?」
僕「信じない?え?どういうこと?」

結衣「私は、たとえ今、竜也君に襲われても、別に受け入れるし、襲われたことを、信じない。何かの間違いか、気のせいかなって思う。それくらい、竜也君のことを信じてる。」
僕「現に、急にキスしちゃってますけど?」
結衣「まあね。でもいいよ?しても。私は何とも思わないよ?強引とか、強要とか、無理強いはしないでしょ?竜也君は。私、嫌な時は嫌っていうから。」
僕「そこまで・・・なんで信用できるの?僕、結衣が思ってるほど、いい人じゃないよ?」

結衣「んー、感覚でしかないよ。竜也君は、自分の意見をしっかり言うし、自分の興味あることしかしない。そして、誰にでも公平だし客観的。でも、熱中すると子供みたい。」
僕「そうなのかな。」
結衣「波長が合うのよ。私は。だから、隣にいても緊張しないし、ゴロゴロできる。しないけど、きっと、オナラも鼻かみもできるよw」
僕「やめなさいw」

結衣「だから・・・」
急に彼女は、僕の顔を両手ではさんだ。
結衣「こんなキスも・・・平気・・・」

彼女は、僕の口を塞ぐと、その小さくて柔らかな舌で、僕の舌を、くすぐるように舐めた。

僕「結衣って、不思議だね。もっと、貞操観念がしっかりしてると思ってた。」
結衣「失礼ねw。彼氏にしかしないわよ。あとはすべて拒絶してる。でもなんでだろう。竜也君になら、いや、竜也君にしか、こんなことできない。」

僕「嬉しいけど・・・その・・・僕は、仮にだよ?仮に最後までする流れが万が一おこったとしても、・・・その気に・・ならないと思うというか・・」
結衣「・・・竜也君らしいね。それでいいよ。」

僕は、もう一度、優しくキスをした。

僕「今日はもうお帰り。送ってくよ。」
結衣「・・・うん、でもいいの?今日だったら・・・私、けっこう乗り気だよ?w」
僕「一回冷静になれw」
結衣「はいw」

僕はもう一回キスし、派手に押し倒し、控えめな胸を、軽く揉んだ。少し華奢な体つき。そして柔らかな肌。
結衣「こらw話が違うw」
僕「あははwよっと!」

そのまま抱き起し、少し抱きしめる。
結衣「んっ・・」
僕「結衣は華奢だな。ちゃんとご飯食べろよ。」
結衣「竜也君もね。」
僕「ああ。じゃあ送ってく」
結衣「はいー。お願いね。」

こうして、菜々子さんとは全く別の、ソフトな関係の子ができた。
214 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/21(水) 14:46:11.11 ID:livU6Uc80
結衣は純粋だった。
彼氏とも、正常位でしかしたことがなく、フェラもしたことがないし、クンニをされたこともないという。

結衣「それで、満足だし。」
僕「そっか。満足ならそれで良しだなぁ。」

結衣「竜也君は?」
僕「んー、どうだろ。満たされればそれで。ただ、やっぱり、男としてはフェラされたいなぁ。」
結衣「なんで?そっちの方が気持ちいいの?」
僕「そんなことはないよ。確かに気持ちいいし、大好きだけれど、んー、相手が自分に従ってる感というか、心を許してる感が出るというか。」
結衣「でもそれって、エッチしてる時も同じじゃないの?」
僕「それはそうだけど・・自主的に咥えてくる行為が・・って僕はイタイケな女の子に何の話をしてるんだ。」

彼女は、小奇麗なニットから少しだけ谷間を覗かせながら、ニッっと笑った。
結衣「ねえ、してみてもいい?」
僕「性欲MAXの女子高生か!」

結衣の小さくてすべすべの手が、僕のシャツをめくり、トランクスの隙間に入ってくる。
僕「んっ・・・ちょ・・・」

僕は、ベルトを外し、ジーパンのボタンを外し、ファスナーをおろす。
みるみる、僕のアレは膨張する。

彼女は、僕のズボンとトランクスをずりおろした。
結衣「お、なかなか元気じゃん」
僕「もうちょっと乙女らしく恥じらえ」
結衣「いやん」
僕「お、おう。」


僕「じゃあ、その手で僕のを優しく上下して、左手で玉の部分を優しく受け止める感じで。」
結衣「・・・こう?」

上目づかいが可愛い。そして罪悪感が半端ない。
僕「う、うん・・結衣、可愛いから・・その・・・襲ったらごめん」
結衣「竜也君は襲わないって信じてるからw」

僕「根元から、先にかけて、舌に力を入れないで、優しく舐めてみて」

彼女の美しい顎のライン。綺麗な唇から、小さな舌が少しだけ出てきた。ニットの隙間から垣間見える白いブラと白い膨らみ。
恐る恐る出てきた舌は、僕のアレを刺激する。

僕「んっ」
結衣「このまま、続けてもいい?」
僕「あ、ああ。いいよっ・・・あっ・・」

僕「先っぽの、柔らかいところ周辺を、ねっとりと舐めまわしてみて・・・」
結衣は、真剣に、口と舌を使い、先端を攻めてきた。ぎこちないが、むしろそのぎこちなさがイレギュラーな気持ち良さを誘う。

僕「結衣・・・気持ちいいけど・・・テクニック磨いたら・・・彼氏に・・んっ・・・ばれちゃうような・・・」
結衣「・・・大丈夫・・・ちゅっ・・レロ・・・彼には・・・しない・・・」
・・・
・・・

(すみません。書いていて罪悪感がでてきました。)


僕は、ヤりたくなる気持ちを抑えた。ばれたくない。当時はそれだけを考えていた。
結衣は、それ自体にはこだわりはなかったようだ。

理由は不明だが、時折、思い出したようにフェラしてくれた。その見返りは求められたことはない。
僕はたまにキスし、たまに胸を拝み、ごくたまにアソコを刺激させた。

僕たちの関係は、基本的に、うちに遊びに来る同僚だ。仕事の話や彼氏の話、好きなものを飲んで好きなものを食べる。そんな関係の一環で、ちょっとしたスキンシップのつもりで、イロイロなことをする。

こんなにかわいい子が、なぜ僕に無償でそんな行為をしてくれるのかは分からない。
彼女なりのストレス発散方法だったのかもしれない。

内容は伏せるが、結構過激なこともしてくれたこともある。

今思えば、健全に見える、不健全な付き合いだった。
結衣との関係は、危うくも絶妙なバランスで、翌年彼女が結婚・地方へ異動するまで続いた。

215 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/21(水) 15:03:07.15 ID:livU6Uc80
急に思い出した翼とのエピソード。

豊「なあ、俺、急に翼に呼び出されたんだけど。」
僕「同じく。豊と一緒に来いだってさ。なんだと思う?」
豊「さあ・・なんか俺たち悪いことしたか?」
僕「すくなくとも、翼にはしてないと思うけど・・・」

深夜ファミレス。
目の前には、翼。小奇麗に整えている。

翼は、まあ、見た目は可愛いが、プライトが高く、最近は部署内でトラブルばかりを起こしているらしい。
風のうわさでは、とうとう部長にもかみついて、泣きわめきながら罵倒したという。
翼にはかかわらない方がいいよ、と、影で言われていた。結衣も、同じ部署だけれど、距離を置きだしていた。

翼「実は、報告があります。」
僕「うん。どうしたの?仕事の悩みなら・・・」
翼「違うの。あのね・・」

彼女は、いろいろ思案したそぶりを見せ、豊と僕をじっと見据えた。

豊が怪訝そうな顔をする。

豊「・・・何?」
翼「私、彼氏と別れました。それだけが言いたくて。」
豊「・・・」
僕「・・・」
翼「・・・」

僕「・・・は?それで?」
豊「・・・それで?え?それだけ?は?」

彼女は、それだけを注げ、ファミレスの支払いもせず、帰って行った。
取り残される2人。

僕「えっと・・それで??なんで僕たちにそれを告げるためだけに?ここへ??」
豊「全く分からない。どういうことだ?ファミレスで何か食べたくて、食い逃げしたかったのか?」

・・・
・・・

豊「話し合った結論はあれだな」
僕「お、おう。やっぱそうなるよね。」
豊「翼は、俺と竜也が、翼を狙ってると思い込んでるんだな。」

僕「ありえないだろ・・・どうやったらそんなポジティブシンキングになるんだ・・・」
豊「部署内でも、思い込みが激しくてプライドが高くて扱いきれないって言われてるやつだぜ?甘く見ちゃだめだ。」
僕「あの目つきはヤバいな。『さあ、2人でどっちが先に私を落とせるか、競争してもいいのよ?』って顔か。」
豊「怖いなそれ。」
僕「連絡するのも受けるのもやめよう。ヤツとかかわるとヤバい。」
豊「ああ。世の中には自己中なヤツもいるもんだな。気を付けよう。」

以来、僕と豊は翼と連絡を取ることをやめた。
翼は、その後、風の便りで、辞めたと聞いた。

216 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/21(水) 15:29:53.62 ID:livU6Uc80
菜々子さんとは、執拗に迫られて、やむなく、たまに会った。
僕の部屋はイヤだったので、ホテルで会った。

菜々子さんは、貪欲だった。
バ〇ブ、〇ーター、ア〇ルビーズまで用意した。

菜々子さん「普段は・・・我慢してるんですから・・・今日だけは・・・好きに・・・」

普段の明るい彼女の姿なんて全くない状態。
心の底から、何か欠けているものを、激しく求めている。そう、渇望・切望しているのだと思う。

それでも、どうしても、ロウソクだけは僕は使えなかった。
あの熱い液体を、彼女にかけたときの、悲痛な叫びと、残った跡は、僕には耐え難かった。

彼女は器具で何度も逝き、僕は吸い尽くされる。

僕は、この時だけは、悪魔だったと思う。
ありとあらゆる言葉で罵倒し、彼女を痛めつけた。

彼女を痛めつければ痛めつけるほど、僕の心は蝕まれた。



季節は、12月。
もうすぐ、新年だ。

僕の心は、限界を迎えていた。

菜々子さん「・・・はぁ・・・はあ・・・どう・・しました・・・?」
僕「・・・」
菜々子さん「・・・?・・・もっと・・・して・・いいのよ・・・?」
僕「・・・もう・・・」

彼女は、察した。

菜々子さん「・・それ以上。。言わないで!」
僕「もう無理だよ、菜々子さん。もう、できないよ・・・僕には・・もう無理だ。」
菜々子さん「どうして?仕事も上手くやってますよ?!私は、今までも、これからも、今のままで満足だよ?!」

僕「菜々子さんも・・・わかってるでしょ?・・僕は・・・」

手に持った器具が、今まで以上に汚らわしく見える。
その手も、穢れた。僕は、汚らしい、化け物だ。

菜々子さん「嫌!もっと・・・もっと一緒に・・・」
僕「好きなようにしなよ、菜々子さん。訴えたかったらどうぞ・・・もう無理だ。限界だよ。」
菜々子さん「・・・」

僕「最近、何のために働いてるのかわかんない。仕事のために仕事してる。」
彼女は、息を整え、下着をつける。

僕「ごめんはっきり言いますけれど、好きでもない女性に、自分の心を殺して奉仕してる。」
彼女は、目に涙を蓄える。

僕「僕は沢村さんじゃないって言いながら、沢村さんと同じことをしてる。」
菜々子さん「竜也君・・」

彼女は、僕を、優しく包み込む。
僕は、強引に跳ね除ける。

僕「もうやめてくれ!もう無理だ!」

そう言っても、彼女は抱きつくのをやめようとしない。

菜々子さん「待って!落ち着いて!大丈夫だから!ねえ!」

僕は、菜々子さんを強引に突き飛ばした。
小さな悲鳴とともに、彼女は何かにつまずき、その場にうずくまる。
僕は、最低だ。

最低な僕は、素早く服を着て、支払いをし、菜々子さんを置いて、逃げた。

217 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/21(水) 15:50:37.01 ID:livU6Uc80
菜々子さんは、翌週から普通に出勤し、今までどおりに仕事をした。
僕も、普通に接した。

乗り切ろう。あと数日で年末だ。
帰省しよう。逃げよう。


年末を迎え、最終日に有給を取り、さっさと帰省した。
菜々子さんは、一切、連絡をしてくることはなかった。
ただ、年明けから、物がなくなる・無言電話・意味不明な手紙の投函などが出てきた。
確認を取っていないが、きっと菜々子さんの仕業だと思っている。

今となっては、確かめようとも思わない。


年末、帰省し、大学のサークル仲間と会うことになっていた。

未來、たか子、めぐみ、祐希、僕で待ち合わせて飲みに行く予定だった。
直前になり、続々とキャンセルすると連絡が来る。
なぜだか、めぐみと2人で飲みに行くことになってしまった。

めぐみは、もともとアイドルみたいな子で、学生時代もドキドキしてしまって話したことも滅多にない。
どうしよう。何を話そう。

僕「あれ・・なんかごめんね。まさか2人になるとは思わなくて。」
めぐみ「うふふ。新鮮でいいじゃない。行きましょ。場所はお任せするわ。」
僕「もう、地元じゃないから、殆どお店も知らないよ。あ、あそこのビルの最上階にオシャレな所があるから、そこに行こうか。」
めぐみ「いいよ。私飲めないけどいい?」

僕「ん?いいよ。ノンアルコールのカクテルもいろいろあるからね。」
めぐみ「ごめんね。うちは、両親が厳しくて、いまだに門限もあるし、アルコールなんてご法度だよ。」
僕「そうなんだ。愛情あふれてるね。」
めぐみ「今日だって、女子会で食べに行くだけだって言ってあるの。だから、終電には間に合わせないと。」

暗に、アルコールで酔わない。それと、誘っても無駄だよと言っているようなものだ。

僕「信用されてないなw」
めぐみ「あ・・そういう意味じゃないの!ごめんw」

彼女は顔を真っ赤にした。可愛いかった。

営業の苦労話、業界の動向、今の夢。両親のこと。
学生時代には知らなかった、彼女のこと。
久々に訪れた、安息だった。

ああ、これだ。僕が求めている。普通の光景。
下心もなく、駆け引きもなく、つまらなくもなく、純粋に、笑って楽しめる時間。

めぐみ「・・もう、こんな時間なんだ。」
僕「あ!電車大丈夫?・・・ゆっくり言っても間に合うな。改札まで送るよ。」

めぐみ「ありがとう。楽しかったなぁ。また誘ってくれる?」
僕「・・・んー、そうだね。また連絡するよ。」

クラスに残ったドライマティーニを飲み干して、僕はめぐみの手を取る。
にっこりと笑って、それに続くめぐみ。

帰り道、またみんなで遊びたいねと話し、別れた。

めぐみ、彼氏いるのかな。いるよなぁあんなに素敵な子だもの。
はぁ。いいなぁめぐみの彼氏。

心の諦めと相反して、この日からめぐみとのメールのやり取りは格段に増えていく。

218 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/21(水) 16:06:47.67 ID:livU6Uc80
新年が明け、僕は、絵里奈と2人で出かけた。

ホテルのラウンジ。

僕「どうしたの?珍しいよね。絵里奈の方から連絡くれるなんて。」
絵里奈「・・・うん。一番最初に、どうしても、竜也先輩に言いたかった。」

僕「・・・」
絵里奈「・・・」

僕「よし。心の準備は、出来た。」
絵里奈「・・・私、年末に、プロポーズを受けた。」

そんな気がしていた。
僕は、後悔した。

あの時、ああしていれば。こうしていれば。

今の僕は、もう、きっと絵里奈を抱くこともできない。行為はもうできない。ばれたくない。
男性としての自信は、とっくになかった。

僕「そうか・・・寂しいけれど、良かったな。」
絵里奈「・・・それだけなの?」

わかってるよ。喉まで出てる言葉くらいあるよ。でも、言えないんだよ。
断れ。体裁?知らないよ。僕のものになれよ。僕が幸せにするよ。そんな男がかすんで見えるくらい、心から愛すから。
いや、そんな上からじゃないよ。お願いします。プロポーズを受けないでください。絵里奈のこと、失いたくないんです。

言えないんだよ。怖いんだよ。

僕「・・・言ったろ、絵里奈のことは、本当に、大事な・・・・い・・いもうと・・なんだから・・・」
上手く、笑えたと思う。

絵里奈「そう。じゃあ、祝福してくれるのね?・・・本当に、それでいいのね?」
僕「ああ。だから、婚約してる子が、独身の男と、2人で会うもんじゃないよ。」
絵里奈「えー、お兄ちゃんとなら、会ってもいいでしょw」
僕「ダメだ。もう会うのをやめよう。けじめをつけよう。」

僕は、この日以来。絵里奈と2人で会うのをやめた。

僕の心は、新年早々、完全に、死んだ。


219 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/21(水) 16:25:12.69 ID:livU6Uc80
また、味気ない業務が始まる。
僕の心は、もう、限界に近づいている。

仕事は、おそらく、まじめにやっている。
でも、もう、情熱も失われつつあった。

早々に、課長に呼ばれた。

課長「ちょっと、1時間ほど時間取ってくれ。」
僕「はい。菜々子さん、靖子さん、あと頼みます。」
「「はい。」」


課長「・・・さて。唐突だが・・・」
僕「はい。」
課長「・・・経営企画室は、今年度を持って、その機能を別の部署に譲ることになった。」
僕「つまり、お取り潰しですね。噂には聞いてました。」

課長「まあ、聞こえてくるよな。でもまだ、皆には内緒だ。」
僕「でしょうね。」

課長「で、だ。俺は、別部署に部長職で打診を受けている。」
僕「課長、優秀ですからね。当然です。」
課長「何言ってるんだ。お前の案件が評価されての栄転だ」
僕「栄転? ・・ということは、あの支店の、あのポストですね。凄いじゃないですか。出世街道ですよね。」

課長「ああ。そうなるな。それで・・・」
僕「それで?」

課長「お前も一緒に来ないか?」
僕「・・・」
課長「・・・・」
僕「・・・へ?」

課長「事業部長も、最大限にお前を評価してる。このままいけば、またA判定だ。春から俺と向こうに行けば、役職も俺の裁量で付けられる。次からは主任だ。」

その歳での主任。目標にしていた沢村さんよりも、ひょっとしたら早いかもしれないほどのスピードだ。

僕「・・僕は、そこまで評価されるような人材では・・」
課長「俺としても、俺の息がかかったヤツが一緒に来てくれると動きやすい。」
僕「それは、間違いなくそうですね。」

課長「即答しなくてもいい。異動は4月だ。あと2か月くらいのうちに結論を出してくれればいいから。もし、別に異動したい場所があるなら、最大限協力するからな。」
僕「ありがとうございます。少し考えます。」
課長「ああ、良い報告を期待しているよ。」

僕の考えは、この時、実は決めていた。




堅「もしもし。どうした?」
僕「夜遅くごめん。」
堅「うん。」
僕「あのさ・・・」
堅「おう。」


僕「会社、辞めることにした。」
220 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/21(水) 16:29:02.37 ID:livU6Uc80
今日はここまで。やっとここまで書けた・・・
まだ先は長いなぁ。

年末忙しいので、更新遅れたらごめん期待してる人がいるかどうかはわかんないけれど。


登場人物多すぎてごめんねこれでも簡略化してるんだ。
質問か疑問があったら書いておいて答えられる範囲で書きます。

それではお疲れ様でした。
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/21(水) 17:41:15.49 ID:ZB+IDcs/O
俺はいつも楽しみにしてるよ
お疲れ様
222 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/22(木) 11:09:11.25 ID:u81WikAW0
>>221
いつもありがとう。
223 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/22(木) 13:27:19.18 ID:u81WikAW0
堅「唐突だな。」
僕「うん。今日、決めた。」
堅「なぜ辞める?」
僕「うちの部署、なくなるんだってさ。もう、やる気も起きない。」

堅「辞めて、どうする?」
僕「まだ決めてない。」
堅「せめて、次の就職先をきめてからやめなよ。」
僕「正直、そんな暇はない。2月いっぱいまで働いて、3月はたまりにたまった有給休暇消化して、リフレッシュしてから適当に考える。」
堅「・・・戻ってくるのか?」
僕「ああ。そのつもり。この地域に未練はない。」

僕は、退職願を書き、翌週に提出した。

課長「・・・まあ、そうなるわな。」
僕「すみません。もう、仕事への情熱が、限界です。2月までは、しっかり働いて引き継ぎをします。」
課長「引き継ぎはいいよ。2月までに終わりそうな案件だけ処理してくれ。それ以上長引きそうな案件は引き受けないでいいから。」
僕「わかりました。ご迷惑をおかけします。」

僕は、2月いっぱいまで、通常通り働いた。
誰もが、僕の顔色を伺っているのが分かる。誰もが、僕を軽視していくのが分かる。
「あいつは、どうせやめる奴だから」
そんな雰囲気があった。

菜々子さん「そういうことだったんですね・・・地元に戻られるんですか?」
僕「そのつもりです。隠していて申し訳なかったです。」
菜々子さん「・・・・いいえ。未練がましくてすみません。もう・・・会えないんですね・・・」
僕「はい。会えません。」
きっぱりと言った。

靖子さん「はー。どんどん、いい人が去っていきます。沢村さんもそうだった。」
僕「沢村さんは、引き抜きです。僕は、過労ですw」
靖子さん「体は大事ですから、ゆっくり静養なさってください。」
僕「ありがとうございます。・・・靖子さんには、本当に助けられました。」
本音だった。

鈴木「お前は本当に成長したよ。入ってきた頃は、こいつは使えないと思ってた。」
僕「成長しましたか?自分ではよくわからないです。」
鈴木「ああ。お前がいなくなるってことは、俺の右腕と右足を奪われるくらいのダメージだよ。」
僕「・・・買いかぶりすぎですよ。」
鈴木「本音だよ。寂しくなるな。」
僕「鈴木さんにはお世話になりっぱなしでした。ありがとうございました。」

河村「よー。今日で最終か?」
僕「はい。」
河村「お前の送別会だから、ちゃんと顔出せよw」
僕「当たり前ですw朝までお供しますよw」
河村「俺は明日も会社だろw」
僕「知りませんw」

送別会は、部署を挙げての、大きなものだった。
沢村さんも駆けつけてくれた。
ルイ君もいた。

沢村「久しぶりだな。」
僕「お久しぶりです。わざわざいらしたんですか?」
沢村「まあな。でもまあこっちに彼女もいるし、そのついでだ」
僕「ええ・・・」
沢村「地元の彼女とは別れた。今の本命は、こっちの彼女だ。」
僕「ええ・・・」
沢村「お互い愛し合ってるのに、別れるってつらいよな・・・」
僕「ええ・・・」

ルイ君「・・・駆けつけました。」
僕「律儀だなぁルイ君は。どう?元気にやってる?」
ルイ君「順調です。本当に、藤原さんが教えてくれたことが、すべて自分の役に立つことばかりで・・・」
僕「それは言いすぎだよ。・・・元気でな。僕みたいに燃え尽きないようにね。」
ルイ君「・・・はい。あの・・・」
僕「うん?」
ルイ「僕、藤原さんを追いかけて頑張ってきました。・・・寂しいです・・・」
僕「・・・ありがとう。」


224 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/22(木) 13:48:34.23 ID:u81WikAW0
有給消化の間、マンションでゴロゴロしていた。

契約は3月末まで。引っ越しの準備もある。とりあえず実家に帰ろう。
ここには、最低限のものしかない。
いっそのこと、全部捨ててしまおうか。

役に立ちそうなものは、後輩や淳にあげた。

結衣が来た。

僕「ああ。いらっしゃい。」
結衣「あらら。殆ど何もないのね。」
僕「うん。あ、本いる?あげるよ。」
結衣「私、4月から異動よ?彼氏と同棲するの。」
僕「あ、それもそうか。式はいつだっけ。」
結衣「うーん、秋くらいかなぁ。」
僕「そっかそっか。よかったな。」

結衣「ここにも、よく来たなぁ。」
僕「独身の男の部屋に、よくもまあ入ってきたよね。」
結衣「それなりの奉仕はしましたw」
僕「まあねwごちそう様でしたw」

彼女は、僕に、優しくキスをした。
明るい日差しの中、綺麗な素肌を見せる。

僕「結衣?」
結衣「私って、綺麗なのかな?」
僕「ああ。綺麗だよ?」
結衣「ねえねえ。もうこれから会えなくなるわけだから、最後に、思いっきり、してみない?」
僕「・・・ごめん、そんな気にはなれないよ。」

結衣「・・・そうだよね。そういう仲だものね・・・・」

ごめん結衣。そうじゃないんだ。

僕「もう帰る?」
結衣「帰った方がいい?」
僕「いや?暇だからいいよ?」
結衣「じゃあさ、一度やってみたかったんだけど、」
僕「何?」
結衣「服も下着も何も着けずに、一日過ごしてみたい。いい?」
僕「え?ああ。いいよ?」

なんとなく、僕も脱いで生活してみた。
裸同士で、普通に過ごしてみた。

なぜか、トイレも一緒についてきた。
逆に、彼女のトイレにも同行してみた。

抱き合いながら、料理を作り、一緒にお風呂に入り、同じベッドで寝た。
結衣はとても綺麗だった。

ありがとう。結衣。
さようなら。
225 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/22(木) 14:15:54.69 ID:u81WikAW0
僕は、一通り、女性関係を清算した。
女性関係とは言っても、体の関係だけはない。

地元に帰るから、もう会えない。
いろいろありがとう。さようなら。

一つ一つの縁を、切っていく。

もういいんだ。
もういい。

僕は、燃え尽きた。
地元に帰って、適当に就職して、適当に人生を終わらせよう。
僕は、生き急ぎ過ぎた。
もうやめよう。

僕は、地元の、中小企業に就職した。
技術営業なる、良くわからない職種だった。
給与が以前とあまり変わらないことと、残業が少なそうという理由だけで決めた。

226 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/22(木) 14:45:56.85 ID:u81WikAW0
驚いた。この会社、全く働かない人たちだらけだった。
そして、やたら経費を使う。そりゃあもう、赤字になるのは当たり前の体質だった。

赤字だからボーナスなしなんて言われたらたまったもんではない。

僕「・・・えと・・・僕の仕事は何をすれば・・・」
社長「え?うん。重役の付き人ね。君世渡り上手そうだから。適当にお客さんのご機嫌取ってくれればいいから。」

重役。ああ、あの人か。
社長よりも偉いらしい。この会社の古株だった。

入社して2週間もすると、この会社のことが分かってくる。
重役は、偏屈だった。
お客さんとのトラブルが絶えない。
僕が間に入り、その場を収める。すると、取引が上手くいく。

また、経営に関しても、重役が決定権を持っていた。
そしてこの重役、浪費家だった。
ただし、この会社のことを知り尽くしているキレ者でもあった。

そういうことね。
重役が円滑に仕事ができるようにサポートをしろってことか。細かい技術的なことは、僕がフォローするわけね。

重役が出かけるときは、車を運転する。
重役の名刺を管理する。書類は僕が目を通し、その書類の趣旨を説明する、そして判子をもらう。

(重役:市村正親似、以下市村さん)

市村「お。今日もお疲れ。」
僕「え?もう終わりですか?」
市村「ああ。もう今日はやることないから、遊びに行くぞ。〇〇まで送って行ってくれ。お前も付き合え。」
僕「・・・まだ14時ですよ?」
市村「気にするな。」

僕「ダメですよ。もう一か所だけでも回りましょう」
市村「若いなぁ。じゃあ〇〇に行ってくれ、そこ行ったら今日はもう働かないからな。」
僕「はい。そこ行ってくだされば、17時までなら付き合いますから。遊び。」

市村「(苦笑)俺に指図するヤツなんていないから新鮮だ」
僕「そんなこと知りませんよ。嫌なら首にしてください。」
市村「わかったわかった。早く行くぞ。」

僕はもう開き直っていた。
給料をもらう以上はちゃんと働くよ。
でも、嫌になったら辞めよう。
227 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/22(木) 15:04:51.60 ID:u81WikAW0
僕が口出しを始めてから、この会社の経営はV字回復をした。

無駄な経費をちょっとだけ止めさせ、暇で仕事のない人に自己啓発を兼ねた勉強をさせ、ちゃんと定時出勤してもらうようにしただけ。
それだけのことで、この会社はあっという間に立て直った。
マンネリだったのだ。たまたま僕が入り、ちゃんとした勤務体系になった。それだけなのに。会社とは不思議なものだ。

僕は、基本的に社員と関わらないようにしていた。
面倒だったからだ。この会社に長居するつもりもなかった。

市川さん「よし。遊びに行くぞ。」
僕「どこへですか?」
市川さん「スロット。」

市川さんは、暇があればスロットを打ちに行く。
当時は4号機。これで破産した子は多かったと思う。

僕も、すっかりはまってしまった。
休みの日、終日打っていた時期もある。
一日一万回打ったと言えば、好きな人ならどういうことかわかるだろう。

今はもう打たないけれど、当時は月の収支が50万マイナス、50万プラスということもザラだった。

隣の台の子が入った。
当たり前のように、僕が目押しする。
当たり前のように、その子がコーヒーをくれる。
仲良くなり、そのあとにご飯を食べに行ったりもした。
女の子「・・・この後、どうする?予定がないなら・・・あそこ・・行ってもいいよ?」
僕「・・・いいよ。」

入ってすぐ、強引にキスをする。
たばこの味がする。
女の子が、アレを咥えてくれる。
ああ。何やってるんだろう僕。自分勝手に果てる。

僕「飽きた。帰る。」
女の子「え?ちょっと、そりゃないよw」
僕「・・・うっさいなぁ・・金は払っとくから一人で泊まってってもいいよ。あ、誰か呼べば?」
女の子「・・・なにそれ・・・」

涙声。ごめん。

ごめん。もう、どうでもいいんだ。
何に対しても本気になれない。
誰に対しても、好きになれない。

228 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/22(木) 15:25:01.49 ID:u81WikAW0
堅「だいぶ落ち着いたみたいだな。」
僕「ん?ああ。」

帰省してから、僕は堅とはよく出かけていた。
平日でも、堅は飲みに付き合ってくれてた。
唯一の、心休まる時間だった。

堅「あー、ここもいっぱいかぁ。どこ行こうな。飲み直したいのに。」
僕「あ、あそこは?店っぽいよ」
堅「本当か?なんかただの家みたいだけれど。あ。たしかに看板あるな。入ってみるか。」

(優香似、以下優香)

優香「いらっしゃい。お2人?」
僕「うん。空いてる?」
優香「ええ。どうぞ。」

堅「オシャレな店だな。ここに決めた。ここに通おう。お姉さんも綺麗だし。」
優香「いっつも暇だから、いつでもどうぞw」

僕「不思議だ。」
優香「何がですか?」
僕「いいお酒がそろってて、お値段も高くなくて、出してくれる品も手が込んでて美味しいのに、人がいない。」
堅「そうだなぁ。今日が平日だからだろ?」
優香「週末も暇なんですw」

不思議だった。

僕と堅は、ちょっと飲みに行く時は、そこに行くようになった。

堅「また来たよ。」
優香「あ、いらっしゃい。」
女の子「(ニコニコ)」
僕「ん?その女の子は?」
優香「私の子ですよ。」

堅「ええ?ママ、子供いるんだ!若いのに!」
僕「失礼だろ。こんばんは。」

女の子は、優香の後ろに隠れた。まあそうだろう。急に知らない人が来たら怖いよなぁ。
それでも、30分もすると慣れてきたようで、キャッキャと遊んでくれた。

優香「ごめん、10分ほど見てもらってていいですか?すぐに帰ってきますので!」
僕「え?いいけど、誰かお客さん来たらどうするの?」
優香「大丈夫です!どうせ誰も来ませんから!」
堅「それはそれで問題だろう!」

本当に、不思議な店だった。

229 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/22(木) 16:18:48.56 ID:u81WikAW0
何気なく進んでいく毎日。
絵里奈の結婚式当日になっていた。

僕は、式には呼ばれなかった。
それはそうだろう。二次会から参加した。

綺麗だった。
優しそうな旦那さんだった。

不思議だった。
もう、何の感傷にも浸らないと思っていたが、その日は、荒れた。
僕はその日、一人で、飲み明かした。

優香「藤原さん?それくらいにしておいたら?」
僕「いいだろ?別に。僕だって飲みたい日くらいあるんだから。」
優香「意外。まじめで冷静な人だと思ってた。」
僕「・・・ああ。そうだ。そうだったね。」

優香「あ、またあとでね。はいはーい。今行きますよー。」

優香のお店は、気づけば人だらけになっていた。
それもそうだろう。
店の評判は口コミで広がり、いつの間にか繁盛店になっていた。

優香一人で切り盛りしていたのに、いつのまにか2人も従業員さんがいた。
時代は変わる。
ここももう、来れなくなるなぁ。

ああ、なにやってるんだろう。僕。
僕はあの時のまま止まっている。
絵里奈「・・・私、年末に、プロポーズを受けた。」

あの時のままだ。

僕「ねえ、優香ちゃーん。おかわりー。」
優香「はいはーい。じゃあ、この一杯、サービスしてあげる!」
僕「ありがとう。」

ありがとう。
ありがとう。


気づくと、お店には誰もいなかった。

僕「ああ、気持ち悪い。。。ここどこ・・・あ・・・」
優香「・・・起きました?」

僕「・・・ごめん。起こしてくれて良かったのに。」
優香「・・・これどうぞ。」

ハンカチ。僕は、泣いていた。
僕「うっ・・・・うううっ・・・」

僕は、優香の膝の上で、泣いた。
優香は何も言わず、優しく頭をなでてくれた。

僕「ふぅ。帰る。」
優香「私はまだ片づけものとかもあるし、明け方までいてもいいですよ?」
僕「そんな失礼なことできないよ。タクシーだけ呼んでくれればいい。」
優香「・・・そう。じゃあ気を付けてね。」

僕「ごめんね。ありがと。」

何やってるんだろう僕。


僕は、ふと思い出し、サークルの同期だっためぐみにメールを送った。

「あー、やっちゃった。飲み屋さんで寝て起きたらこんな時間」
「あちゃー(笑)大丈夫?」
「うん。ごめん寝てた?」
「ううん。仕事の資料作ってた。」
「うわぁ、自分がさらに情けない(笑)」
「お疲れ様(笑)」

めぐみちゃん。君みたいな子、なかなかいないよ。
相手をしてくれてありがとう。
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/22(木) 19:07:30.24 ID:ofi8oPBiO

好きな様に書いてよ
本当に楽しい
231 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/23(金) 09:18:03.42 ID:m3kLTdjV0
>>230
まあ気楽にいくね
232 :テスト ◆71vVbFpf.c [saga]:2016/12/23(金) 10:07:32.23 ID:m3kLTdjV0
沢村「久しぶり。元気だったか?」
僕「まあまあです。沢村さんも、出張お疲れ様です。」

沢村「ん?まあただの市場調査だからな。たまにこっちにも来るから、その時はまた会おう。」
僕「そうですね。僕の会社、若い人がいないから、会ってもらえてうれしいです。」

優香「平井さん意外と来るなんて、初めてですね、藤原さん。」
僕「そうだね。この人沢村さん。もし顔出したらよろしくね。」
沢村「宜しくお願いします(キリッ)」
優香「イケメンですねw」
僕「この人変態ですから気を付けてくださいね。」
沢村「何言ってるんだ。世の中の男性が異常なんだよ。俺は正常だ。」
僕「ええ・・・」

沢村さんは、僕の地元にも出張に来る。
日帰りが多いから本当にたまにしか飲みにいけないが、日程が合う時は、僕に付き合ってくれた。

沢村「じゃあ、その子、もう結婚しちゃったんだな。」
僕「はい。なんかもう、仕事も恋愛ももういいです。生き急いじゃいましたよ。」
沢村「お前、大事なことを忘れてるぞ?」
僕「・・・」

沢村「いいか、人の魅力っていうのはな。」
僕「・・・はい。」
沢村「人妻になると、さらに魅力が増すんだ!いいぞ人妻は!」
僕「ええ・・・ちょっとでも沢村さんに期待した自分が馬鹿でした・・」

沢村さんは、ドライマティーニを一気に飲み、もう一杯注文する。

沢村「まあ、それは冗談としても。」
僕「冗談なんですかね。。」
沢村「お前は「人妻だから駄目だ」だし、俺は「人妻だからこそ良い」だ。今のはあくまで例えだが、他の事でも同じだ。お前は基本的にマイナス思考すぎる」

僕「否定できません。」
沢村「お前は、自分に自信がないんだよ。」
僕「・・・はい。男として、自信がないです。」
沢村「いいか、人は、見た目で相手を判断する。お前は、まあ、見た目は悪くない。その自覚はあるだろう」
僕「まあ、そうですね。」
沢村「そうすると、それ以外の所に問題があるということになるよな。」
僕「・・・ええ。沢村さんにも言えませんが、あると思います。」

沢村「お前、テレビショッピングで、「この商品は、欠点があります。それでも良ければ買ってください」って言われて、買うか?」
僕「・・・意味は分かりますよ。自分のことに自信のない男は、魅力も何もあったもんじゃないです。」
沢村「分かってるなら、もう一歩、踏み出すべきだよ。お前は。」


あいかわらず、沢村さんは沢村さんだった。
僕は・・・

どうなのかな。
変わったのかな。

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