モバP「三船美優に選択を」

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1 : ◆NERDVAqS3I :2017/01/16(月) 22:57:49.87 ID:6j4Pz0iq0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1482479986/

三船美優「一歩、踏み出して」
の続編です。


蛇足です。
エロだけでいい人は>>9くらいまで飛ばしてください。
2 : ◆NERDVAqS3I :2017/01/16(月) 22:58:35.30 ID:6j4Pz0iq0
「トップアイドルを目指すか、それとも引退をして人並みの幸せを得るか。選べますか」

 自分でアイドルの世界に引きずり込んで置いて、こんなことを聞かなければならないことに憂鬱な気分になる。
 俺は担当アイドルである三船美優と肉体関係を持ってしまった。別にそれを今更悔いるつもりはない。言ってしまえば望んでやったことで、美優さんと関係を結べたことは俺にとってこれ以上ないくらいの幸せだといっていい。そして、それを手放す気は全くなかった。

 しかし、じゃあお二人お幸せに、とはならない。美優さんは今をときめく話題の人気アイドルで、おれはその担当プロデューサー、関係を暴露しようものならまともな生活は望めない。会社内、いや、部所内では二人惹かれあっていたことは察していたのかもしれない。もしかしたら、ようやくくっついたのか、だなんてのんきな事すら思ってすらいるのかもしれない。

 だが、世間はそれを許さないだろう。夢を売る立場である美優さんがそれを破壊することは許されないことで、少々の祝福と膨大な中傷を受けるに違いない。そんな被害を俺は担当プロデューサーとして出すわけはいかなかった。

 そして、俺は会社に許されない。これまで先行投資を行ってきてようやく利益を回収できる。言ってしまえば商品を傷物にしててあまつさえそれを自分のモノにしようとしている。もっと実力があるプロデューサーならばどうにでもしてしまうのだろうが、俺にそこまでの力はない。首を切られてしまえばそれまでで、そんな状態で交際結婚と考えられるほど楽観的な性格はしていない。
 どうしても円満に、安全に、ことを進める必要があった。

 それに。

「まだ、美優さんの意志を確認していないんだよな……」

 美優さんは俺が直接スカウトしたアイドルで、出会った当初は本当に悲観的な性格をしていた。
 まあ、俺はその儚げで、触れば壊れてしまうような、妖しい雰囲気に一目みて惚れていたのだが。

 以前、何があったかはいまだにあまり知れていないが、愛犬が亡くなって心の拠り所を失って。仕事もうまくいっていなかったのだろうか? 初めて話した時は変わろうと思っても変われないと言っていた。
 その時の美優さんは正直目も当てられない、と言ってもよかったとすら思う。人と距離を測るのが、幸福を感じるのが、極論を言えば生きるのが下手ですらあったのだ。
3 : ◆NERDVAqS3I :2017/01/16(月) 22:59:07.47 ID:6j4Pz0iq0
 だからこそ、アイドルだなんて世界に足を踏み入れる気になったのかもしれない。
 最初は戸惑うことも多かった。俺が突拍子もない仕事を持ってきて美優さんを困らせたことも数あったし、美優さん自身がどう動いていいのかわからず結果的に相手先に迷惑をかけてしまうこともあった。だが段々とキャリアを積み、実績を重ね、気づけばはや数年。じわじわと知名度を上げていき直近で行なわれたプロダクションの総選挙では3位になるほどの人気を得た。

 仲のいいアイドルも増えたようで、高垣さんや川島さんとお酒を飲みに行っている姿をよく見かけるし、事務所では年少組の世話をしている。
 最初のころなんかは、見知らぬ人が見れば怒っているとすら取られていた表情もすっかりなくなり、笑顔もよく見る。自然に出てきているという感じだ。

 そう、本当に楽しそうなのだ。アイドルという仕事が。ここにいることが。
 だからこそ、身勝手に動いて奪いたくはなかった。

 アイドルとプロデューサーが付き合っている例はなくもない。訳のわからないことにファンに認められているアイドルもいるし、外にはばれないようひた隠しにしている奴もいる。もしかしたら、本当に二人だけの秘密にして付き合っている例もあるのかもしれない。
 俺としてはそんなリスクは取りたくない。だが、美優さんは? まだまだ、この世界にいたいだろう。
 俺からやめてくれと押し付けることはできない。言う権利が存在していない。
 俺は、俺たちは。

「……はぁ、どうするべきかねえ」

「どうかしたんですか? Pさん」

 声に出てしまっていた。前の机にいる千川さんに声をかけられる。とはいえ人に相談できる内容ではない。

「あっ、すみません。声に出てましたか……なんでもないですよ」

「そんな溜息つかれて、なんでもないと言われても」

「……み、」

「み?」

 無意識で美優さんと呼ぼうとして思いとどまる。元々社内の人間は苗字でしか呼ばないよう心がけている(城ケ崎姉妹や年少組などの例外はある)ので一発で怪しまれるだろう、千川さんならなおさらだ。悪魔のように勘が鋭いのだ。

「……三船さんのこれからについて考えていたんですよ。本格的に人気が出てきましたからね。上司からもちょっと圧力を感じますし」
4 : ◆NERDVAqS3I :2017/01/16(月) 22:59:34.39 ID:6j4Pz0iq0
「はぁ……たしかにそうですね。最近はラジオのパーソナリティをしたり、ドラマにも出たり。いろんな方向を模索してる感じですね? そろそろ方向性を絞ってもいいかもしれないですね」

「個人的にもう少しゆっくりさせたいところなんですが……、グラビアなんかの仕事も安定してありますし。正直僕もびっくりしたんですが、役者としても結構地力ありますしね」

「なんていってると、あっという間に埋もれていく」

「!」

「なんてことを言われたんですか?」

 本当に勘が鋭いなぁと苦笑する。実際言われたことだ。
 しかし、今の俺にとっては人気が出ても落ちても都合がいいのだが。間違って口に出そうものならはたかれそうだ。

「私は一介の事務員ですから、口出しは出来ませんけど。一度美優さんと話し合ってはいかがです?」

「ん……。そうですね、そうしてみます。今まで舞い込んできてた仕事に手いっぱいで話し合う余裕なかったですからね」

「アイドルとのコミュニケーション不足は不和の元ですから。気を付けてくださいね?」

「ええ。アドバイス、ありがとうございます。……、そろそろ美優さんの迎えの時間ですね。ちょっと空けます」

 そういって席を立つ。

「そのまま直帰で?」

「時間は……もう四時半ですか。そうですね、そうします」

「分かりました。お疲れ様です」

「はい。では」

 千川さんと話しているとどこからどう弱みを握られるかわからないので、かなり無理やりだったが逃げることにする。今日は珍しく事務所に他のプロデューサーもアイドルもいない。入れ替わりで誰かくるのかもしれないが、それまでは俺に話しかけてくるだろう。普段ならうれしいが今悩みを抱えてる状態では勘弁願いたい。
 荷物を取りまとめて、PCの電源を落とす。コートを着込んでもう一度千川さんにあいさつした。

「それじゃあ、お疲れ様です」

「ええ、」

 そういって事務所を出た。
 千川さんが口を動かしていたがなんて言ったのかは聞こえなかった。まあ多分「お疲れさまでした」とかだろう。


「『美優さん』ですか。……へえ?」
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