シンジ「僕が?」

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115 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 14:34:21.77 ID:xddyXNiy0
- 初号機 弐号機 プラグ内通信 -

アスカ「シンジ。あんたは私が守ってあげるから後方で支援」

シンジ「えぇ⁉︎ 交互に近接なんじゃ?」

アスカ「怪我したらどうすんのよ! 私は日本でのデビュー戦なんだし……まぁ見てなさいって」

シンジ「命令違反はまずいよ! 僕独房に入ったことあるんだ!」

アスカ「……あんたがぁ?」

シンジ「その、二体目の使徒で………」

アスカ「……あんたも逆らうことあんのね」

シンジ「うん、まぁ」

アスカ「ファーストまではいかないけど、あんたも優等生だと思ってたわ」
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 14:39:19.30 ID:xddyXNiy0
第7使徒イスラフェル「……………」ググッ

シンジ「……くるよ!」

アスカ「チッ、通信中にしゃらくさいわねぇ!」

ザンザンッ ビュンッ

アスカ「どぉうりゃあぁ〜〜〜〜」ズパーン


第7使徒イスラフェル「」


シンジ「え? 終わった? ――お見事」

アスカ「ま、シンクロ率70%の私にかかれば当然よね。戦いは、常に無駄なく美しくよ」



シンジ「(なんだ? なにか違和感が………)」
アスカ「(これで、終わり、じゃないような……)」

第7使徒イスラフェル「…………」ギュルギュル

シンジ「――アスカぁッッ!!! まだ!」
アスカ「シンジぃッッ!!!」


ミサト「分裂⁉︎ ぬぁんてインチキッ!」
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 14:42:09.13 ID:xddyXNiy0
- ネルフ本部 モニター室 -

マヤ「本日午前10時58分15秒、2体に分離した目標甲の攻撃を受けた初号機は、駿河湾沖合い2キロの海上に水没」

マヤ「同20秒、弐号機は目標乙の攻撃により活動停止。この状況に対するE計画責任者、赤木リツコ博士からのコメント……」

リツコ『無様ね』

マヤ「……午前11時3分をもって、ネルフは作戦の遂行を断念、国連第2方面軍に指揮権を譲渡」

冬月「まったく恥をかかせおって!」

マヤ「同05分、N2爆雷により目標を攻撃」

冬月「また地図を書き直さなきゃならんな」

マヤ「構成物質の28%を焼却に成功」

アスカ「……………」

シンジ「……………」

冬月「再度侵攻は時間の問題だな」

加持「ま、建て直しの時間が稼げただけでも、儲けもんっすよ」
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 14:45:06.66 ID:xddyXNiy0
- ネルフ本部 ミサト デスク -

リツコ「関係各省からの抗議文と被害報告書。で、これがUNからの請求書、広報部からの苦情もあるわよ」

ミサト「ふ〜……」

リツコ「ちゃんと目を通しておいてね」

ミサト「……読まなくても分かってるわよ、喧嘩をするならここでやれ、って言うんでしょう?」

リツコ「ご明察」

ミサト「はいはい。いわれなくったって、使徒が片付けばここでやるわよ」

リツコ「副司令官はカンカンよ。今度恥かかせたら左遷ね、間違いなく」

ミサト「碇司令が留守だったのは不幸中の幸いだったけどさぁ」

リツコ「いたら即刻クビよ。この書類の山を見ることもなく、ね」

ミサト「……で、私の首がつながるアイディア、持ってきてくれたんでしょ?」

リツコ「一つだけね」

ミサト「さっすが赤木リツコ博士、持つべきものは心優しき旧友ね〜」

リツコ「残念ながら、旧友のピンチを救うのは私じゃないわ」

リツコ「このアイディアは加持くんよ」

ミサト「――加持の?」
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 14:46:16.63 ID:xddyXNiy0
- ネルフ本部 第三通路 自販機前 -

シンジ「(あの瞬間、なにかデジャヴみたいな――)」

アスカ「(ううん、なにか、もっとはっきりした――)」



シンジ&アスカ「(――なんだろう?)」



加持「二人とも、残念だったな」

シンジ「…………」

アスカ「…………」

加持「――どうした?」

シンジ「あ、いえ……なんでも」

アスカ「ミサトは?」

加持「大人は片付けがあるものさ」

アスカ「……そ」

加持「おそらく、2日は缶詰めだろうな」

アスカ「え? それって……」

加持「俺が二人の監督を頼まれてるんだが、あいにく、暇じゃなくてね。口裏を合わせてくれるかい?」

シンジ「え? でも――」

アスカ「――合わせる! 加持さんはうちにいたことにすればいいのね!」
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 14:48:11.44 ID:xddyXNiy0
- 夜 ミサト宅 -

シンジ「あ、あの…………アスカ」

アスカ「ん〜?」

シンジ「あの、ソファーでテレビ見るのはいいんだけど……ちょっとひっつきすぎなんじゃ」

アスカ「そぅ? 前に膝枕してたじゃない?」

シンジ「今日は僕が座って、あ、アスカがピッタリくっついてるじゃないかぁ!」

アスカ「…………だめ?」

シンジ「まずいよ! 胸あたってるよ!」

アスカ「当ててるって言ったら……?」

シンジ「………………」ゴクリッ

アスカ「いやらしい顔してるわよ……?」

シンジ「テレビ、見ないの?」

アスカ「シンジの顔見てる」

シンジ「(だめだ、だめだ、流されちゃだめだ!)」
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 14:49:03.70 ID:xddyXNiy0
シンジ「そうだ! 風呂はいらなきゃ!」

アスカ「え〜」

シンジ「あ、アスカもLCLの匂いついてるよね?」

アスカ「シャワーで洗い流すじゃない」

シンジ「あ……そうだった」

アスカ「でも、いいわよ。はいりたいんでしょ?」

シンジ「う、うん」

アスカ「……そ。なら入ってきなさい」
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 14:51:01.00 ID:xddyXNiy0
- シンジ 風呂の中 -

シンジ「(……なにか、すごい危機を感じる)」

シンジ「(はぁ……どう接したらいいのかな)」

シンジ「(アスカと向き合うには……)」

シンジ「(とりあえず、上がったら普通にしよう)」ザパァン
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 14:52:16.41 ID:xddyXNiy0
- ミサト宅 リビング -

シンジ「…………あれ? アスカ?」

シンジ「(いない、寝たのかな)」



ゴンッ!



シンジ「――痛っ!」

アスカ「……………」

シンジ「(頭、殴られ)………あ……(意識が)……アスカ」ドサァ

アスカ「……………」
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 14:53:22.17 ID:xddyXNiy0
アスカ「シンジ、やっと二人になれたね。今日はあんたが告白されるからびっくりしたわ。あんた、押しに弱そうだから抱きつかれた時は思わず止めに入っちゃった。
だいたいあの子――あの女もムカつくのよね。私たちみたいにエヴァパイロットじゃないのに勘違いしちゃってさぁ。
ありえなくない? 普通告白する? しないわよ。きっとあの女はシンジを騙そうとしてたんだわ。だから私が守ってあげたの」

シンジ「………」

アスカ「ヒカリも色々心配してくれて良い子なんだけどイラっとしちゃった。あぁ〜あ。せっかく親友になれると思ったのに。……でも、シンジがいればいい。私にはシンジがいればいいの。
とりあえず、あの女の自宅を今度エヴァで出撃したときにさりげなくふんずけとくわ」

シンジ「…………」

アスカ「加持さんのこと、本当にごめんね。でも私はもうシンジだけだから。シンジしかいないから。だから、もっと私を見て」

アスカ『私だけを見て』
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 14:55:06.13 ID:xddyXNiy0
- 翌日 ミサト宅 アスカ部屋 -

シンジ「――……う……うぅん」

シンジ「(この天井は……部屋の……昨日はたしか……)」

ギシッ ギシッ

シンジ「(……なんだよこれ⁉︎ なんなんだよこれっ⁉︎)」

シンジ「(ベットに縛りつけられてる! 手足が動かせない……っ! それに口もガムテープで……喋れない!)」



アスカ「…………シンジ。起きた?」



シンジ「ふごふご……んんぅーっ⁉︎」

アスカ「昨日はごめんね? 痛かった?」

アスカ「今日は学校は行かなくていいみたいだから、ずっと一緒にいましょ。本当は、ずっとこうしていたいけど、ミサトにバレたら一緒に住めなくなるし」

シンジ「(アスカ……! これほどいてよ!)」

アスカ「暴れちゃいけないから、縛ったの。一応、口も。でも安心して。今日一日シンジのことはなんでも私がやってあげる。もちろんトイレも。なにも汚くなんかないよ」

シンジ「(どこ見てるんだよ……アスカ……あれは? 古い………人形? なんだ?)」

アスカ「ずっと、ずっと、ずっとずっとずっとズット。こうなる日を待ち望んでたのかもしれないわ。――だって! 私はこれまでで一番幸せを感じてる!」

アスカ「エヴァと比べたら……まだわからないけど、でも、きっとこのままいけば………!」
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 14:57:18.17 ID:xddyXNiy0
シンジ「(アスカ………それは人形だよ!)」

アスカ「――私は、私は、よくわからなくなっちゃったの」

アスカ「どうしたらいいのか……ママは……私を見てくれない」

シンジ「(……! ママ?)」

アスカ「どうしたらママは私を見てくれたの? わからないのよ! シンジ! ねぇ! どうしたらママは私だけを見てくれたの⁉︎」

シンジ「(もしかして………アスカのトラウマって………! うっ!)」

ギュゥー ギリギリ

シンジ「(アスカッ……! 首を締めてきてる……!)」

アスカ「お願いだから私だけを見て! もうどこにも行かないで!」

シンジ「(い……息がッ……!)」
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 14:58:52.20 ID:xddyXNiy0
アスカ「――…………ッ⁉︎ ご、ごめん! シンジ!」

シンジ「げほっげほっ! ……ふーふー……」

アスカ「私……ママと同じこと……ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」

アスカ「息が苦しいの? ガムテープはがした方がいい?」

シンジ「ふーっふーっ」コクコク

アスカ「………でも、騒いだりしない?」

シンジ「…………」コクリ

アスカ「わかった……。首赤くなってる。ごめん。今はがすね」
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 15:01:50.72 ID:xddyXNiy0
シンジ「あ、アスカ……」

アスカ「…………」

シンジ「(ここは何て言うべきか、間違えちゃいけない気がする……でも、どうしたら……)」

アスカ「…………」

シンジ「その人形は?」

アスカ「――――ッ」ビクッ

シンジ「どうしても知りたいんだ。もしかしてお母さんに関係あることなの?」

アスカ「…………うん」

シンジ「(向き合わないと……! 逃げちゃだめだ。逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ……!)」

シンジ「………アスカ。お腹すいてない?」

アスカ「――――えっ?」

シンジ「お腹すいてるなら、なにか作るよ」

アスカ「縛ってるのをほどいてほしいの?」

シンジ「そうじゃないんだ。アスカが心配なだけで」

アスカ「うそっ! いきなりこんな状態で私の心配なんかするはずないっ!」
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 15:04:04.16 ID:xddyXNiy0
シンジ「……心配なんだ。アスカのことが」

アスカ「あんたバカァ⁉︎ 大バカよ! 私のこと嫌わないとおかしいじゃない!」

シンジ「(やっぱり、アスカはきっと揺れてるんだ。おかしいことがわかるってことは……)」

アスカ「シンジ! あんたまさか私を騙そうとしてるの⁉︎」

シンジ「(だけど、振り幅が大きい。不安になると信じられなくなって、疑って、傷つけようとする)」

アスカ「………もう私………」

シンジ「アスカ。本当なんだ。本当に心配してる」

シンジ「(だから、アスカには、気持ちで話すんだっ!)」

アスカ「嘘よ! だってまだ一週間もたってないじゃない! それなのに、こんなの信じられない!」

シンジ「……僕も、そう思う。だけど、ほっとけないのは本当だから」

アスカ「シンジ……私、あんたにはじめて会った時、懐かしいって思ったの。ねぇ、あんた、なんなの?」

シンジ「――それは僕にもわからない。けど、今は、そんなことよりもアスカのことが心配なんだ」

アスカ「…………」

シンジ「信じてほしいんだ。アスカ」

アスカ「…………」

シンジ「僕はどこにもいかないよ。お母さんと何があったのかも、話せるときに話してくれたらいい。アスカが話やすい時に」

アスカ「………ぅっ……うっ……」

シンジ「焦らなくていいんだ。だって僕たちはまだ子供なんだから」

アスカ「シ、シンジィ………」ポロポロ



加持『そうしてれば、アスカから全てをさらけだすだろう』



シンジ「これからの時間も、これまでのアスカのことも、ゆっくり解決していけばいいんだよ。アスカ」
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 15:06:43.47 ID:xddyXNiy0
――――
―――


アスカ「シンジ、縛ってたところ、痛くない?」

シンジ「うん」

アスカ「本当? 頭も、病院行かなくて平気?」

シンジ「血はでてないし、大丈夫だよ」

アスカ「な、なんでもするから。なにかあったら言うのよ?」

シンジ「大丈夫だよ、アスカ」

アスカ「あの、シンジ……」

シンジ「ん?」

アスカ「私、少し頭冷やしてくる。ヒカリにも、告白した子にも、なんだか悪いことしちゃったから」

シンジ「え? けど、今日は学校行ってないからあんまり出歩かない方がいいんじゃ」

アスカ「少し、考えたいの」

シンジ「………そっか」

アスカ「体調大丈夫よね? い、いなくならないわよね?」

シンジ「うん……」

アスカ「わかった。それじゃぁ……」

シンジ「――いってらっしゃい」
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 15:12:12.18 ID:xddyXNiy0
- ネルフ本部 ラボ -

加持「よっ」

リツコ「あら、あの子達はもういいの?」

加持「俺の出る幕じゃないさ。多少余計な口出しはしてしまったみたいだがね」

リツコ「終わりよければすべてよし、とも言うわよ? それにシンジくんは理想的な成長をしているといえるんじゃないかしら?」

加持「…………」

リツコ「あの子、加持くん以上の女たらしになるかもしれないわね」

加持「ふっ。たしかに、シンジくんの働きぶりには感心させられるよ……アスカのトラウマは克服できそうじゃないか?」

リツコ「……四歳にして母親が首吊り自殺をしている現場を目撃するのは並大抵のことではない」

加持「深層心理にすりこまれているのは厄介だな」

リツコ「未来は不確定だけど、条件付きならば、はやい段階で――とは言えるんじゃないかしらね」

加持「フォースの選定に間に合えばいいんだが――」

リツコ「(おそらく、あの子たちの立場が逆転することになる)」

加持「マルドゥック機関には介入できないかい?」

リツコ「口出しすれば、碇司令が黙ってないわよ」

加持「……ふぅ〜」

リツコ「加持くん、あまり根を詰めすぎると死ぬわよ。これは友人としての忠告」

加持「ご忠告痛みいるよ。しかし、俺はなんでも自分で確かめないと気が済まないタチでね」

リツコ「(やるつもりなのね、介入)」

加持「それじゃリッちゃん、また今度」
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 15:14:46.50 ID:xddyXNiy0
- 第三新東京都市 繁華街 -

アスカ「(はぁ。今さらになって凄い自己嫌悪だわ……)」

アスカ「(冷静になってみると、痛いやつよね。私って)」

アスカ「(碇シンジ……。もうすぐ一週間だけど……普通に考えたらここまで心の距離が近づくなんてありえない)」

アスカ「(違う。そうじゃない。私から心を開くなんてありえないのよ………だけど――――)」


アスカ「(――――惹きつけられる)」


アスカ「(これまでの人生で、加持さんだって、ううん、出会ってきた中でこんなことなかった)」

アスカ「(シンジ………懐かしいことと関係があるの?)」


カップル男「なぁなぁ、あの子かわいいな?」
カップル女「どこ見てるの! 信じられない!」


アスカ「(……はん。バッカみたい。昼間からイチャつくとか。しかも男も薄っぺらいし、あんなのならシンジのほうがよっぽど………)」

アスカ「(――いつから? 屋上で私を守るって言ってくれた時から、ずっとシンジのこと見てた)」

アスカ「(………もしかして、はじめて会った時から?)」

アスカ「………はぁ」
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 15:16:20.91 ID:xddyXNiy0
- ミサト宅 -

ミサト「シンジくーん? アスカー? いるー?」

シンジ「――あれ? ミサトさん? 明日まで泊まりこみで仕事じゃなかったんですか?」

ミサト「えへへ、日向くんにお願いして切り上げてきちゃった」

シンジ「(昨日じゃなくてよかった)……はぁ、いいんですか?」

ミサト「まぁまぁ。それよりアスカは? ちょっと二人に話があるのよ」

シンジ「アスカなら今出てますよ」

ミサト「ん〜そっかぁ〜。帰りは遅くなるのかしら? あんまり時間がないのよねぇ〜」

シンジ「今日はすこし、時間を与えてあげてください。僕でできることならしますから」

ミサト「……なんかあったの?」

シンジ「いえ、仲直りしただけです」

ミサト「ふぅん。時間……必要なのね?」

シンジ「……はい」

ミサト「……わかったわ。今回の話は二人の協力が不可欠だし……どーんと! のんびりして待ちましょうか!」
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 15:17:17.65 ID:xddyXNiy0
- 第三新東京都市立第壱中学校 放課後 校舎前 -

ヒカリ「…………」テクテク

アスカ「ヒカリっ! ヒカリっ!」

ヒカリ「………? ――アスカ?」

アスカ「ずっと待ってたのよ。よかった」

ヒカリ「待ってたってここで?」

アスカ「うん、昨日のこと謝ろうと思って」

ヒカリ「ううん。もういいの」

アスカ「昨日の、あの子は……」

ヒカリ「あの子には、私から謝っておいたから大丈夫よ。私のせいなんだし」

アスカ「…………」

ヒカリ「…………」

アスカ&ヒカリ「…………あの」

アスカ「……あ」

ヒカリ「……えへへ。ねぇ、よかったら、うちに遊びにこない?」
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 15:18:39.77 ID:xddyXNiy0
- 洞木宅 -

ヒカリ「もうすぐしたらご飯だけど、アスカも食べてく?」

アスカ「うぅん。そこまでしてもらっちゃ悪いし、いいわ。シンジも待ってるだろうし」

ヒカリ「――ふふ」

アスカ「なによ?」

ヒカリ「本当にアスカは碇くんのことが好きなんだなぁって」

アスカ「ヒカリ、前もそれ言ってたわよね」

ヒカリ「うん、だってそうなんだもん」

アスカ「……はぁ。シンジのことは、たしかに、うん、これまでにないぐらいの人だとは気がついたわよ」

ヒカリ「――ほんとっ⁉︎」

アスカ「……私がこれほどまでに気になるなんて、悔しいけど、認めざるをえないわ」

ヒカリ「アスカ、前に碇くんのこと「気にかけてやってる」って言ってたのってやっぱり認めたくなかったから?」

アスカ「……ん。そうなのかも。私からいくのは大人の余裕のある人ばかりだったから」

ヒカリ「…………」

アスカ「受け入れてくれるっていう安心感がないとだめなのよ。だから大人を求めてたのかもしれないわ」

ヒカリ「うんうん。年上ってそういうところあるよね」
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 15:22:12.13 ID:xddyXNiy0
アスカ「だけど、大人はみんな私のことエヴァのパイロットとしてしか見てくれなかった。私のことを見てくれたのは加持さんだけ」

ヒカリ「…………」

アスカ「………そう思ってた。加持さんは私のことを女の子として扱ってたけど、子供としても扱っていた。そのことに薄々と勘づいていたけど見ないように、気がつかないふりをしてた」

ヒカリ「…………」

アスカ「加持さんしかいなかったから。シンジは、シンジは違う。私と対等に、エヴァのパイロットとしても、子供同士としても向き合ってくれた。見ないふりをしなくてもいいの」

ヒカリ「………なんだか、ずるいな」

アスカ「えっ?」

ヒカリ「恋愛って、自分と向き合ったり、人と向き合わなきゃできないことだから、アスカが大人に見える」

アスカ「そうかしら……」

ヒカリ「うらやましいよ。昨日はまったくそんなとこ見せなかったのに。気がつくことができたじゃない」

アスカ「…………うん。でも、ヒカリもそういうことわかってるってことじゃないの?」

ヒカリ「私は、少女漫画の影響だから……えへへ」

アスカ「…………ふふ」

ヒカリ「アスカも見たいなら言ってね? 少女漫画うちにたくさんあるから」
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 15:25:03.32 ID:xddyXNiy0
ヒカリ「……でも、よかった」

アスカ「ん?」

ヒカリ「アスカ、このままだとなにしでかすかわからない感じだったから」

アスカ「――――あー、うん」

ヒカリ「……?」

アスカ「ヒカリ、引かないで聞いてくれる?」

ヒカリ「もう夜中見てたとか言われても引かないわよ」お茶グビグビ

アスカ「――シンジを監禁したの」

ヒカリ「ぶふぅっっっ!!」

アスカ「うわぁっ⁉︎」
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 15:27:14.34 ID:xddyXNiy0
ヒカリ「あ、アスカァ⁉︎」

アスカ「も、もう大丈夫。解放してあるから」

ヒカリ「解放って――碇くんは大丈夫なの⁉︎」

アスカ「う、うん。なんともないっていつも通りしてくれてる」

ヒカリ「…………」

アスカ「さ、さすがにやりすぎたとは思ってるわよ」

ヒカリ「………すごいね」

アスカ「………うん。でもあいつバカだから。凄いと思ってないんだろうけど」

ヒカリ「…………碇くんってね、転校してきた時、孤立してたのよ」

アスカ「そうなの?」

ヒカリ「うん。エヴァのパイロットっていうこともあったけど、昼休みは一人でいることが多かった。だから、そんな人とは思わなかったな」

アスカ「鈴原から殴られたことあるって聞いたことあるわ」

ヒカリ「……鈴原は妹さんが巻き込まれたから」

アスカ「でも、それは事故よ。シンジがそんなことしたくてするわけない」

ヒカリ「……うん。私たちにはできないこと、碇くんやアスカたちはしてる」

アスカ「………」

ヒカリ「みんな感謝してるのよ。口にださないだけで。だから、鈴原のことあんまり悪く言わないであげて」

アスカ「……わかった」

ヒカリ「あのね、アスカ」

アスカ「うん?」

ヒカリ「ちょっと耳かしてくれる?」

アスカ「はぁ? だってここには誰も……まぁいいわ、なに?」

ヒカリ「実は、私――」コショコショ

アスカ「――――――よりによって、すずはらぁっっっっ⁉︎」
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 15:29:20.60 ID:xddyXNiy0
- ミサト宅 夜 -

アスカ「すぅー……はぁーっ。よしっ!」

ガチャ

アスカ「シンジ! ただい――」

ミサト「お帰りなさ〜い!」

アスカ「――ミ、ミサトっ? なんで玄関に」

ミサト「待ってたわよん」

アスカ「仕事は?」

ミサト「まぁまぁ。いいからいいから。それじゃ、はじめましょーか!」

アスカ「なにを?」

ミサト「今度の作戦準備。ほら、シンちゃんはリビングで待ってるからさっさと行って」



ミサト「――第7使徒の弱点は1つ! 分離中のコアに対する二点同時の荷重攻撃、これしかないわ」

シンジ「……荷重攻撃?」

ミサト「つまり、エヴァ2体のタイミングを完璧に合わせた攻撃よ。――そのためには2人の協調、完璧なユニゾンが必要なの」

アスカ「ユニゾンってそんな無茶な……」

ミサト「そ・こ・で、無茶を可能にする方法。二人の完璧なユニゾンをマスターするため、この曲に合わせた攻撃パターンを覚え込むのよ」

アスカ「…………」

シンジ「…………」

ミサト「使徒は現在自己修復中。既に2日ロスしたから第2波は4日後、時間がないわ。頼むわね」
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 15:31:09.63 ID:xddyXNiy0
- 翌日 ミサト宅 アスカ部屋 -

アスカ「な、なによこれぇ〜〜〜⁉︎」

ミサト「あら? 気に入らなかった?」

アスカ「こんなダサいTシャツを私に着ろってゆーの⁉︎ しかも下はスパッツゥ⁉︎」

ミサト「シンちゃんとペアルックよん?」

アスカ「――ほ、ほんと?」

ミサト「もちろん、シンちゃんは今自分の部屋で着替えてるから」

アスカ「は、はん。ま、まぁ。しかたないわね!」

ミサト「アスカ、あんた素直になったりつんつんしたり忙しいのね」

アスカ「どういう意味よっ⁉︎」

ミサト「ご覧の通り見たままの意味よ、さ、ちゃっちゃと着替えちゃいなさい」

アスカ「む、ムカつく……っ!」
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 15:49:48.37 ID:xddyXNiy0
- ミサト宅 リビング -

ミサト「さて、それじゃ今日から本格的に特訓スタートよ! はりきって――どうしたの? 二人とも」

シンジ「(こ、この服は……予想以上に)」
アスカ「(恥ずかしい……っ!)」

ミサト「ちょっと、大丈夫?」

アスカ「な、なんでもないわ! 続けて」

ミサト「……まずは、リズムを覚えるところから。曲に合わせてゲーム感覚でやってもらいます」

シンジ「ゲーム……ですか?」

ミサト「シンちゃんはゲームセンターとかいかない? ネルフスタッフがダンスゲームみたいに作ってくれたのよ」

アスカ「ふぅ〜ん」

ミサト「まずは、合わせてみましょうか」

シンジ「はい」

ミサト「それじゃ! ミュージックスタートォゥ!」
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 15:51:25.75 ID:xddyXNiy0
- 3日後 ミサト宅 玄関前

トウジ「しかし、シンジの奴どないしたんやろなぁ」テクテク

ケンスケ「学校を休んで、もう三日だもんなぁ〜」テクテク

トウジ「この間の出撃となにか関係あるんやろか?」テクテク

ケンスケ「さぁ〜?」テクテク

トウジ「あれ? あそこにおるんは、委員長やんか」テクテク

ヒカリ「す、鈴原、相田くん」テクテク

トウジ「なんで委員長がここにおるんや?」テクテク

ヒカリ「私はアスカのプリント渡しに。あなたたちこそどうしてここに?」テクテク

ケンスケ「碇のプリント渡しに」テクテク


ヒカリ「そうなんだ」ピタッ

トウジ「……なんでここで止まるんや?」ピタッ
ケンスケ「……なんでここで止まるんだ?」ピタッ


ヒカリ「え? えーと、その………(二人はアスカと碇くんが一緒に住んでるって知らないの……?)」

トウジ「……ケンスケ、ほれ、チャイム」

ケンスケ「あ、あぁ……」



ピンポーン



シンジ&アスカ「はぁ〜〜〜い」



トウジ「…………おまっ⁉︎ まままままままぁっ⁉︎」

ケンスケ「……………いやぁ〜んな感じ」

ヒカリ「……………はぁ」
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 15:52:54.79 ID:xddyXNiy0
- ミサト宅 リビング -

トウジ「――それならそうとはよう言うてくれればよかったのに」

アスカ「…………学校でいいふらしたら承知しないからね」

トウジ「するか! シンジもいい迷惑やろ!」

アスカ「なにが迷惑なのよ⁉︎ いいふらしなさいよ!」

トウジ「どっちやねん!」

ヒカリ「……それでユニゾンはうまくいってるんですか?」

ミサト「それが――」

ケンスケ「うまくいってないんすか?」

ミサト「うまくいっちゃったのよね……」

アスカ「またその話?」

ミサト「だぁってこんなに合うとは思わなかったんだもの! 時間があまりまくっちゃってさぁ」

アスカ「昼間からビール飲めていいじゃない……」

ヒカリ「(……アスカ、うまくできてるんだね)」

トウジ「なぁなぁ、シンジの部屋はどこや?」

シンジ「それなら、あっち――」

ケンスケ「碇! 今日は俺たちからプレゼントがぁ⁉︎」

アスカ「なに? これ」ヒョイ
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 15:54:16.14 ID:xddyXNiy0
トウジ「そ、そそそそそれはぁ⁉︎」

ケンスケ「と、トウジ! 緊急事態だ! 取り返せ!」

トウジ「よしきた――! ぐへぇ⁉︎」バキッ

アスカ「――フンッ。エリート育ち舐めんじゃないわよ」

ヒカリ「アスカ、それなんなの?」

アスカ「ちょっと待って……なんか……ケースみたいな………⁉︎」

ヒカリ「――ど、どうしたの? アスカ」

アスカ「ヒカリも見てみたら?」

ヒカリ「うん…………こ、これは⁉︎」

ケンスケ「…………碇、部屋に行かせてくれ」

シンジ「部屋なら、そこまっすぐいって左手だよ」

ヒカリ「ちょっと鈴原と相田くん!! アンタたちっ!! そこ座りなさいよっ!!!」

ミサト「(思春期と言ったら、どうせエロ絡みね……)」
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 15:56:04.38 ID:xddyXNiy0
――――
―――


ヒカリ「わかった⁉︎ 碇くんはあんた達とは違うんだからね!!」

トウジ&ケンスケ「…………はい」

アスカ「………サル」

トウジ「ぐっ⁉︎ ゴミを見るような目で……!」

アスカ「ゴミに失礼ね」

ケンスケ「………はぁ」

シンジ「あ、あの………そろそろ」

トウジ「シンジだって溜まるもの溜まってしょうがないに決まっとるやろがいっ!」

ヒカリ「す、鈴原ぁっ⁉︎」

トウジ「見てみいや! 家に帰ればミサトさん! ……とゴリラ女がおるんやで!」

アスカ「――誰がゴリラですってぇ⁉︎」

トウジ「シャラップッ! ミサトさんのこんなあられもない姿を見たシンジがワシはあわれであわれで……」

ミサト「あはは」

アスカ「遺言はそれだけ?」
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 15:57:42.73 ID:xddyXNiy0
トウジ「センセも男ならわかるよなぁ⁉︎」

シンジ「いや、えーと」

アスカ「…………」

ヒカリ「…………」

ミサト「(さぁ、シンちゃん。どう切り抜けるのかしら)」

シンジ「うーん、まぁ、少しはあるよ」

トウジ「ほら見て――ぐっ」バキッ

アスカ「シンジッ! 私とミサトどっち⁉︎」

シンジ「あー。んー………」

ヒカリ「ちょ、ちょっとアスカ」

アスカ「……………」

ミサト「(身を乗り出しちゃってまぁ)」

シンジ「アスカ、かな」

アスカ「ほんとっ?」

シンジ「うん」ポリポリ

アスカ「じゃあ部屋行きましょ!」

シンジ&ヒカリ&ケンスケ&ミサト「えぇっ⁉︎」

アスカ「……なによ?」
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 15:59:34.18 ID:xddyXNiy0
ヒカリ「アスカっ! ぜんぜん変わってないじゃない!」

アスカ「私は何事も焦らないようにしただけよ。シンジはいなくならない。それはわかったわ。だけど、そういうことに興味もあるし――」

ミサト「それはちょぉっとストップ!」

ヒカリ「はじめては大切なんだからもっと雰囲気とかあるじゃない!」

アスカ「シンジと私の邪魔する気……?」

ケンスケ「…………いかりぃ。感想はきかせてくれよなぁ」

シンジ「そ、それははやすぎるよ!」

アスカ「シンジなら嫌じゃないし私のことでしょ!」

ヒカリ「アスカはまだ気持ちに気がついたばかりじゃない!」

シンジ「え? 気持ちって?」

アスカ「――ヒカリっ⁉︎」

ヒカリ「え? ――うそ⁉︎ 碇くんまだ知らないの⁉︎」
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 16:00:52.02 ID:xddyXNiy0
アスカ「その、シンジは――」

ケンスケ「(普通、ここまであからさまなら気がつくけどなぁ)」

シンジ「アスカ、ゆっくりでいいよ」

アスカ「…………う」

ヒカリ「(知らないんだわ。アスカがもう受け入れてること……碇くんはアスカを待ってるつもりなのね……でも、待って。碇くんの気持ちは?」

トウジ「いつつ〜」

ヒカリ「(碇くんがアスカを友達だと思ってるだけだとしたら……? きゃーっ! なんか少女漫画っぽい!)」

アスカ「………ヒカリ?」

ヒカリ「――え? な、なに?」

アスカ「鈴原はいいの?」

ヒカリ「え⁉︎ あ、アスカぁっ⁉︎」

トウジ「…………なんや?」

アスカ「ふん……お返しよ」

ミサト「とにかく、これで戦闘準備は万端ってことで」
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 16:08:42.06 ID:xddyXNiy0
- 作戦決行日当日 発令所-

第7使徒イスラフェル「……………」ズシンズシン

シゲル「――目標は、強羅絶対防衛線を突破!」

ミサト「……おいでなすったわね、今度は抜かりないわよ」

ミサト「音楽スタートと同時に、A.T.フィールドを展開。後は作戦通りに。2人とも、いいわね?」


シンジ&アスカ「了解!」


シゲル「――目標は、山間部に侵入!」


アスカ「準備はいい? 最初からフル稼動、最大戦速で行くわよ」

シンジ「分かってるよ。62秒でケリをつける」

アスカ「(こういう時は、かっこいいのよね……)」


シゲル「――目標、ゼロ地点に到達します!」

ミサト「外電源、パージ」

マヤ「了解」

ミサト「期待してるわよぉ。発進っ!」
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 16:10:46.20 ID:xddyXNiy0
- 作戦決行から1日後 第壱中学校 屋上 -

シンジ「アスカはネルフだし、なんだか、久しぶりに一人の気がするや」

シンジ「(短い期間に色々とあったけど……)」

シンジ「(アスカは、トラウマを話てくれるようになってはじめてきちんと向き合うことになるのかな)」

シンジ「(今は、アスカはきっと勘違いしてるだけなんだ……)」



〇〇「どいて、どいてぇ〜〜〜〜!!」

シンジ「――えっ?」


ドカンッ


〇〇「……………いたたぁ〜〜。………ねぇ⁉︎ ちょっと大丈夫⁉︎」

シンジ「……………」

〇〇「あっちゃぁ〜〜。こりゃ完全にオチちゃってるじゃん!」


ピリリリリ
――ピッ

〇〇「――Hello? あぁ。なんだ加持くんか。こちらマリ。予測地点から5kmも離れてるよぉ〜」

マリ「うん………うん………ゲンドウくんには気がつかれてないのね……了解」

マリ「――あぁ〜〜まった! それと、1人処理お願い。中学校の屋上でのびてるから」

ピッ

マリ「さぁてと――」
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 16:13:53.78 ID:xddyXNiy0
- ネルフ本部 ラボ -

リツコ「――月経ね」

アスカ「……女だからってなんでこんな思いしなくちゃならないのよ。生理なんかなくなればいいのに」

リツコ「人という種を残すため。痛み止め、飲んどく?」

アスカ「……ちょうだい」

リツコ「3日もすれば痛みはだいぶなくなると思うわよ。その間はプラグテストもしなくて大丈夫」

アスカ「……………」

リツコ「シンジくんとの生活は慣れた?」

アスカ「……えぇ。問題ないわ」

リツコ「ミサトからかなり親密な関係だと聞いたけれど」

アスカ「ミサトってそんなことまで話すの……」

リツコ「一応、私はパイロットのカウンセリングも仕事なの。アスカにとってシンジくんはどんな存在?」

アスカ「…………」

リツコ「報告させたくはないんだけど?」

アスカ「…………っ! プライベートはないの⁉︎」

リツコ「あなたの精神面に問題がなければ聞きはしないわ」

アスカ「…………」

リツコ「ふぅ。キョウコ博士についてなんだけど――」

アスカ「――やめてっ!! わかった! 言うわよ!」
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 16:15:21.33 ID:xddyXNiy0
リツコ「それで?」

アスカ「…………シンジは、私にとって大切な人よ」

リツコ「具体的には?」

アスカ「そ、それは……」

リツコ「異性として見ている、ということ。かしらね」

アスカ「…………」

リツコ「沈黙は肯定とするわよ」

アスカ「…………」

リツコ「必要なことだから聞くけど――」

アスカ「…………」

リツコ「――シンジくんが死んだらどうするつもり?」

アスカ「――っ⁉︎ シンジは死なないわっ! 私が守るものっ!」

リツコ「なぜそう言いきれるの? 彼もエヴァパイロットなのよ? 常に危険は隣り合わせにある」

アスカ「そんなことないっ! 絶対に死なせない! シンジが死んでほしいの⁉︎」
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 16:16:56.89 ID:xddyXNiy0
リツコ「論点のすり替えね。誰も彼に死んでほしいなんて言ってないわよ?」

アスカ「………っ!」

リツコ「ただし、私達にはいつでも代替え案が必要だとは言っておくわ。人が生き残るためにはね」

アスカ「使い捨ての駒にするつもりっ⁉︎」

リツコ「――いいえ。そうできるほどあなた達パイロットに価値がないわけではない。エヴァパイロットを選ぶのはそう簡単ではないのよ」

アスカ「……………」

リツコ「あなた、加持くんはもういいの?」

アスカ「……………」

リツコ「恋愛はロジックではないわ。しかし、簡単に乗り換えるのはシンジくんに不誠実だと言えるのではないかしら?」

アスカ「――――っ⁉︎ 違うわ! 加持さんは私が勘違いしてただけよ! シンジみたいに本当に見てくれてたわけじゃなかった!」

リツコ「加持くんになにを求めようとしていたの?」

アスカ「…………」

リツコ「大人の余裕、かしらね?」

アスカ「くっ………」

リツコ「人は分析をしていても、その分析が間違っているか正解かどうかなんてわからないものよ。自分で判断している」

アスカ「な、なにが言いたいのよ⁉︎」
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 16:19:33.93 ID:xddyXNiy0
リツコ「あなたは周囲から認められなければいけないという強迫観念に囚われているんじゃない?」

アスカ「…………」

リツコ「そう考えれば、加持くんへ……大人達への強い憧れも一種の自立性と見えなくもないわね」

アスカ「…………」

リツコ「シンジくんに依存しすぎるのはやめなさい」

アスカ「――っ! な、なんでそんなこと言われなくちゃならないのよ!」

リツコ「正常な判断ができなくなる。危険だからよ」

アスカ「私はシンジに依存なんかしてないっ! 対等に向き合ってるだけよっ!」

リツコ「……………」

アスカ「こんなカウンセリング意味ない! 不快なだけだわ!」

リツコ「パイロットとして機能しなくなれば、シンジくんにしろあなたにしろ、どうなるかわからない?」

アスカ「今はうまくできてるじゃない! シンクロ率だって私は70%なのよ⁉︎」
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 16:20:33.69 ID:xddyXNiy0
リツコ「…………今はそれでいいかもしれないわね」

アスカ「そうよ! 嫌なことがあっても乗り越えて見せるわ!」

リツコ「失うものが大きすぎるほど失った時に辛いわよ。失った時に、それがわかるわ」

アスカ「わかってるわよ! ママみたいになるのはもうたくさんっ!」

リツコ「…………そう」

アスカ「――もう帰るわよ」

リツコ「またカウンセリングが必要になった時はいつでもいらっしゃい」

アスカ「よくも……っ! 二度とくるわけないでしょ⁉︎」

リツコ「(――いいえ。あなたは来るわ。必ずね)」

アスカ「……………ふんっ!!」
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 16:21:48.31 ID:xddyXNiy0
- 第三新東京都市 繁華街 -

加持「のびてるのがシンジくんだと聞いた時は驚いたぞ」

マリ「……あぁ。彼がネルフのワンコくん?」

加持「なんだあ? 知らなかったのか?」

マリ「にゃはは。資料では見たけどあんまり興味なかったから気がつかなかった」

加持「……はぁ」

マリ「それより、ゲンドウくんは本当に気がついてないの?」

加持「おそらく、ね。泳がされてるだけかもしれないが」

マリ「可能性は?」

加持「五分五分といったところかな。分の悪い賭けかもしれないが」

マリ「ふぅ〜ん。あぁ〜ぁ。大人たちを巻き込むのは気後れしちゃうな」

加持「……よく言うよ」

マリ「それで? シナリオは?」

加持「ゼーレと碇司令のシナリオはいずれ剥離するのは確定済みさ」

マリ「それじゃ、『こっち』のシナリオは?」

加持「…………なんとも言えないね」

マリ「頼りないなぁ〜」
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 16:23:32.93 ID:xddyXNiy0
加持「ま、なんとかなるさ。命ある限りは」

マリ「ふふん。そっちの方が頼り甲斐あるかも」

加持「そいつはどーも。……マルドゥックにはこのまま?」

マリ「……それしかないっしょ〜?」

加持「……愚問だな」

マリ「よいしょっと。さぁーて、それじゃはじめますか」

加持「わかってるだろうが、派手にやるなよ?」

マリ「だぁいじょーぶ! どんな物語にも種明かしは必要なのだよ!」

加持「……ふっ。違いない。その時が来ればだけどな」

マリ「それじゃ、また!」

加持「あぁ」





マリ「しっあわせわぁ〜♪ 歩いてこない♪ だぁから歩いてゆくんだ!よっと!」
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 16:25:05.78 ID:xddyXNiy0
- 夜 ミサト宅 -

シンジ「アスカぁ。今夜は炒め物でいい?」

アスカ「うん」

シンジ「……どうかした?」

アスカ「え? な、なんで?」

シンジ「落ちこんでるように見えたから」

アスカ「な、なんでもない! 私は元気よ!」

シンジ「……そっか」

アスカ「…………」

シンジ「(えーと、あれ? コショウきれてたかな……?)」

アスカ「…………」

シンジ「(後でミサトさんに電話して買ってきてもらおうかな?)」

アスカ「…………ねぇ、シンジ」

シンジ「ん? どしたの?」

アスカ「――もしも、もしもなんだけど、私たちってエヴァパイロットじゃなくても仲良くなれたかな?」
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 16:27:15.45 ID:xddyXNiy0
シンジ「…………」

アスカ「…………」

シンジ「…………どうだろう」

アスカ「そ、そうよね。わからないわよね」

シンジ「うん……。だけど、僕はアスカと仲良くなれて嬉しいよ」

アスカ「…………うん」

シンジ「エヴァパイロットであることに嫌な気持ちしかなかったけど、アスカには助けてもらってるから」

アスカ「…………うん」

シンジ「今はパイロットだからわからないけど、そうじゃなくても他のことで仲良くなってたんじゃないかな」

アスカ「……そ、そう?」

シンジ「うん。わからないから仲良くならなかったかも、じゃなくて、仲良くなってた未来もあるはずだから」

アスカ「…………シンジ」

シンジ「………アスカ? どしたの?」

アスカ「…………」

シンジ「…………」

アスカ「エヴァパイロット……やめてもいいかもね」
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 16:28:04.08 ID:xddyXNiy0
シンジ「アスカ……?」

アスカ「……ううん。なんでもない!」

シンジ「……?」

アスカ「シンジ! 私料理覚えるわ!」

シンジ「えぇ⁉︎」

アスカ「……そこってそんなに驚くこと?」

シンジ「え、でも、アスカ。包丁握ったことある?」

アスカ「ない、けど」

シンジ「…………そうなんだ。じゃあまずは包丁の扱い方からだね」

アスカ「教えてくれる?」

シンジ「もちろん――」

アスカ「――シンジは、絶対に死なせない」ボソッ

シンジ「……え?」

アスカ「なんでもないの! さぁ! やるわよ!」
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 16:42:17.09 ID:xddyXNiy0
- ネルフ本部 ??? -

キール「我々にはないシナリオがあるようだが?」

ゲンドウ「……問題ありません。とるにたらない出来事です」

委員会01「しかし、弐号機の艦隊戦はなんとかならなかったのかね。あの遭遇戦で、米艦隊は戦力の1/3を失ったよ」

委員会04「失ったのは君の国の艦隊だろう。気にすることでもない」

委員会03「左様。この程度で済んだのは、むしろ幸いと言える」

委員会02「碇君。本当に問題はないんだろうな?」

ゲンドウ「……はい。ネズミはいずれ罠にかかり自滅します」

委員会01「この場所での虚偽の発言は死に値するよ?」

ゲンドウ「……わかっております。皆様方には結果をもって成果を」

キール「よろしい。碇……余計な考えはおこすなよ?」

ゲンドウ「はい。全ては……ゼーレのシナリオ通りに」



冬月「……通信終了か。老人達はあの男、加持と言ったか。やつを疑っているようだな」

ゲンドウ「…………ああ」

冬月「ゼーレに対するスケープゴートにするつもりか」

ゲンドウ「……時期がくれば処理する。それまでは好きにさせておけばいい」

冬月「我々のシナリオの障害になりえはしないだろうな」

ゲンドウ「マルドゥックに介入したのは把握してある。なにも問題はない」

冬月「今のうちにダミーを急がせるか?」

ゲンドウ「今はまだ、待つだけでいい。何も焦る必要はない」
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 16:45:19.19 ID:xddyXNiy0
- 翌日 第三新東京都市第壱中学校 昼休み -

ケンスケ「いよいよ来週は修学旅行だぁ〜!」

トウジ「いやっほーう!」

ケンスケ「なぁ、どこからまわろうか?」

トウジ「そら決まっとるやろ! 沖縄ゆうたら首里城や!」

シンジ「うん、いいね」

ケンスケ「首里城か〜! カメラで撮ろうかな〜」






ヒカリ「――鈴原たち、すごくはしゃいでるね」

アスカ「……そうね」

ヒカリ「アスカ、悩み事?」

アスカ「……ううん。でも、なんだか頭から離れないことってない?」

ヒカリ「……? 水着のこととか?」

アスカ「…………」ガクッ

ヒカリ「ど、どうしたの?」

アスカ「なんでも。……そうね。いい加減切り替えなくちゃ。私らしくないわね」

ヒカリ「アスカ。悩み事があるなら、聞くよ?」

アスカ「……ありがと。――それはそうと、鈴原とは進んでるのぉ?」

ヒカリ「えぇ⁉︎」

アスカ「どうなの?」
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 16:47:55.87 ID:xddyXNiy0
ヒカリ「………その、まだ、なにも」

アスカ「はぁ? 少女漫画知識はどうしたのよ?」

ヒカリ「あ、あれはっ! 漫画だから……実際にできるわけじゃ……」

アスカ「……はぁ。私の時はすぐお節介するくせに」

ヒカリ「う、うぅ……」

アスカ「――いいわ。それじゃちょっと、私がお節介してあげる!」

ヒカリ「え⁉︎ アスカッ⁉︎」

アスカ「いくわよ、ヒカリ」グイッ



アスカ「…………」スタスタ
ヒカリ「(ちょっ、ちょっとアスカァッ!)」



トウジ「それと――なんや? ゴリラ女やないか」

アスカ「いい度胸ね。でも殴るのは話を聞いてからにしてあげる」

シンジ「……?」

アスカ「鈴原。あんたいっつも購買パンよね? なんで?」

トウジ「はぁ?」

アスカ「答えるか死ぬかどっちかにしなさい」

トウジ「簡単に[ピーーー]るか! ……ワシは妹の見舞いがあるからな。弁当を作る時間がないんや」

アスカ「ふぅ〜ん。購買パンって飽きるわよね?」
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 16:48:53.86 ID:xddyXNiy0
トウジ「あぁ、まぁ。そやなー」

ケンスケ「トウジはいつも同じパンだもんなー」

アスカ「……ですってよ? ヒカリ」

ヒカリ「え、えぇ⁉︎ ここで私っ⁉︎」

トウジ「……はぁ? 委員長? 」

ヒカリ「――あ、あの!」

トウジ「……?」

ヒカリ「わ、私! 妹とお姉ちゃんのお弁当作ってるんだけど!」

トウジ「はぁ……それはえらいなぁ」

ヒカリ「い、いつも、作りすぎて、あまっちゃうんだ」

トウジ「………はぁ、そら大変やなぁ」

ケンスケ「…………」

シンジ「…………」

ヒカリ「だ、だから、食べてくれる人を、探してるんだけど」
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 16:49:42.11 ID:xddyXNiy0
トウジ「…………はぁ?」

アスカ「(――ぐっ! この鈍感!)」

ヒカリ「あ、あの……だから、その………」

ケンスケ「それなら、トウジがぴったりだなぁ〜。碇もそう思うだろ?」

シンジ「……うん、そうだね」

トウジ「………ワシが?」

シンジ「うん、だってトウジ、パンに飽きてるんだろ?」

アスカ「(ナイスよ! シンジ! 相田!)」

トウジ「…………そうなるな」

ヒカリ「……………」

トウジ「…………それなら、委員長。ワシ、食べてもええんやろか?」

ヒカリ「――うんっ!」

ケンスケ「なぁ」コショコショ

シンジ「うん?」

ケンスケ「俺に春はいつくるのかなぁ〜」
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 16:51:01.31 ID:xddyXNiy0
シンジ「……ケンスケって自分のこと僕って言ってなかった?」コショコショ

ケンスケ「雰囲気だろ! ていうか、ツッコむとこそこかよ!」コショコショ

アスカ「……よかったわね。ヒカリ」

ヒカリ「…………べ、べつに。鈴原に作るのはついでだから」

トウジ「そらえろうすんません」

ヒカリ「――ち、ちがうの! ちがわなくて! あ、アスカぁっ!」

アスカ「はいはい、わかったわよ」

ヒカリ「もう! ……でも私、料理できるなんて言ってた?」コショコショ

アスカ「いいえ」

ヒカリ「じゃ、じゃあどうして?」

アスカ「だって委員長ですもの。できて当たり前じゃない」

ヒカリ「…………」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 16:52:16.66 ID:xddyXNiy0
- 第三新東京都市 繁華街 デパート -

アスカ「ねぇねぇ、シンジ! こんなのはどうかな〜?」

シンジ「あ、え、えと。その。いいんじゃないかな」

アスカ「……もう。ちゃんと見てくれてる?」

シンジ「だ、だってここ、女性の水着売り場じゃないかぁ」

アスカ「……恥ずかしい?」

シンジ「う……。みんな僕たちのこと、その、カップルだって思ってるよ」

アスカ「それでもかまわないけど?」

シンジ「……………」

アスカ「シンジももうちょっとな部分があるのよね。でも私たち子供だからしかたないけど」

シンジ「…………うぅ」

アスカ「シンジ? まわりはまわりよ? なんとでも思わせておけばいいのよ。どうせ会うこともないんだし」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 16:53:10.23 ID:xddyXNiy0
シンジ「た、たしかに、会うことはないんだろうけど……」

アスカ「でしょ? 他人は他人。みんなそうやって生きてるのよ――あ、ほらほらっ! これは⁉︎ どう⁉︎」

シンジ「ちょ、ちょっと面積が少なすぎるんじゃないかな」

アスカ「えぇ〜〜。かわいいのに。シンジ。私がこんなの着て他の男に見られるのヤダ?」

シンジ「…………えぇと、どうかな」

アスカ「はい! そこも! そういう時はちゃんと嫌だって答えてくれなくちゃ!」

シンジ「あ、そうなんだ」

アスカ「そうよ? 私から指摘させたんじゃ、言わせてるってことになるでしょう?」

シンジ「……うん。そうだね」

アスカ「シンジもゆっくりいきましょ」

シンジ「……ありがとう。アスカ」

アスカ「いいのよ。それじゃこれは――⁉︎」
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 19:25:24.66 ID:xddyXNiy0
- 夜 ミサト宅 -

ミサト「ぷはぁ〜〜〜っ! くぅ〜〜! なんだかこの声あげるのも久しぶりな気がするわ〜!」

アスカ「ミサトは家にいる時、基本的に飲んでたでしょ」

ミサト「気にしなくていいのよん」

アスカ「……?」

シンジ「ミサトさん、来週、修学旅行なんですけど。知ってますよね?」

ミサト「あぁ〜。えっと沖縄だったかしら?」

アスカ「そうよ! まさか、行くな、なんて言うんじゃないでしょうね〜?」

ミサト「う〜ん。そのまさか」

アスカ「ふっ、ふざけるんじゃないわよ!!」

ミサト「仕方ないじゃなぁ〜い。エヴァがいつでも発進できるようにパイロットは必要なんだもの」

シンジ「……でも、僕たちの修学旅行ですよ?」

ミサト「私としても行かせてあげたいのが心情なんだけど、これも仕事なのよ」
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 19:26:06.91 ID:xddyXNiy0
アスカ「なんでもかんでもエヴァエヴァエヴァエヴァって!!」

ミサト「…………」

シンジ「アスカ……」

アスカ「私たちに人権はないの⁉︎」

ミサト「……申し訳ないと、思ってるわ」

アスカ「口ではなんとでも言えるわよっ!」

ミサト「……そんなに楽しみにしてたのね。ごめんなさい」

アスカ「私が欲しいのは謝罪じゃないわ! 許可よ!」

ミサト「…………」

アスカ「あぁ、もう! せっかく気分転換できると思ったのに!! なんなのよ!!!」
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 19:26:36.48 ID:xddyXNiy0
ミサト「…………謝ることしかできない。ごめん」

アスカ「…………」

シンジ「…………」

アスカ「…………大人ってゴミね」

シンジ「アスカ……言いすぎだよ」

アスカ「シンジだってそう思うでしょう⁉︎ ずるいわよこんなの!」

ミサト「……厳しい言い方をするようだけど、あなた達の住まいやその他の待遇は、エヴァパイロットだからってこと忘れないで」

シンジ「――っ! み、ミサトさんっ!」

ミサト「シンジくんも。よく聞きなさい。あなた達は人類を守れる力がある。………そしてその義務も責務もある」

アスカ「…………」

ミサト「甘ったれたことばかり言ってちゃだめなのよ」

アスカ「…………ゴミに申し訳なかったわ。クズね」

ミサト「なんとでも言っていいわ。だけど、修学旅行は、ごめんなさい」

シンジ「……………」
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 19:27:05.16 ID:xddyXNiy0
アスカ「………ミサトとは一緒にいたくない」

ミサト「…………」

アスカ「…………シンジ、部屋いきましょ」

ミサト「…………二人で部屋に行くの?」

アスカ「そうよ! 悪い⁉︎ 文句あんなら言ってみなさいよ!!!」

ミサト「いえ……ないわ」

アスカ「……行きましょ、シンジ」

シンジ「…………」
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 19:27:40.25 ID:xddyXNiy0
- ミサト宅 アスカ部屋 -

アスカ「…………」

シンジ「…………」

アスカ「…………あぁ〜ぁ。シンジが選んでくれた水着きたかったなぁ」

シンジ「……また、機会はあるよ」

アスカ「シンジはムカつかないの?」

シンジ「しかたないことなのかなって思うから」

アスカ「ふぅん。やっぱりシンジは優等生なんじゃない? 本当に命令違反で独房に入ったの?」

シンジ「それは、本当だよ。……ごめん。やっぱり腹は立ってるのかもしれない」

アスカ「……シンジって、少し内罰的よね」

シンジ「そうかな?」

アスカ「シンジっていうか、日本人? なんでも自分が悪いんだ、しかたないことなんだぁって思いこもうとしてるでしょ?」

シンジ「……そう……かもしれない」
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 19:28:25.94 ID:xddyXNiy0
アスカ「ムカつくことがあったら言い返していいのよ。だって私達はエヴァパイロットなんだもの。モチベーション管理ってもんがあるでしょーが」

シンジ「……うん」

アスカ「…………シンジ、もうちょっと男らしかったらいいのに」ボソッ

シンジ「……そうだね」

アスカ「――あっ……聞こえてた? ごめん。今のは私が悪かったわ」

シンジ「いや、いいんだ。男らしくないのは事実だから」

アスカ「だから、そういうとこがぁ……ごめん。イライラしてるみたい」

シンジ「……僕も男らしくなりたいと思ってるんだ。だけど、これまでこうやって生きてきたから、なかなかすぐにはできなくて」

アスカ「……うん」

シンジ「でも、いつかは、男らしくなってみせるよ」

アスカ「シンジなら、できるよ」

シンジ「ありがとう、アスカ」

アスカ「ううん。私こそ感謝してるの。してもしきれないぐらい」

シンジ「……約束したの覚えてる?」

アスカ「――私のこと?」

シンジ「そう。アスカのこと守るって言ったの」

アスカ「うん。あれがあったから私は変わるきっかけを手に入れた。もちろん、覚えてるわよ」

シンジ「――アスカのことは、守ってみせるよ」

アスカ「シンジ……」

シンジ「水着はのことは――……そうだ」

アスカ「……?」

シンジ「アスカ。なんとかなるかもしれないよ?」

アスカ「……え?」
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 19:29:50.77 ID:xddyXNiy0
- ミサト宅 リビング -

ミサト「…………」

シンジ「――――あの、ミサトさん」
アスカ「…………」

ミサト「……シンジくん?」

シンジ「修学旅行の件は――」

ミサト「――ごめんなさい。行かせられないわ」

シンジ「……最後まで聞いてください。ネルフにプールありませんか?」

ミサト「……プール?」

シンジ「はい。実は、僕たち、修学旅行の準備で水着を買ったんです。それで待機するにも、少し遊べたらいいなって」

ミサト「プール、ね」

シンジ「どうですか?」

アスカ「…………」

ミサト「なるほど。それなら、協力できるかも、いえ、協力させてもらうことができるかもしれないわ」

アスカ「……ふん、当たり前よ」

シンジ「……よかった」

ミサト「もちろん、貸し切りで準備させてもらうわ。期待してて」
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 19:30:33.33 ID:xddyXNiy0
- 修学旅行日 ネルフ本部 プール -

レイ「……………」

アスカ「……なんでファーストまでいるのよ」

シンジ「綾波だってパイロットなんだから、いてもいいんだよ」

アスカ「私はシンジと二人がよかったのに!」

レイ「…………」

シンジ「あ、その、アスカはお土産頼んだの?」

アスカ「もっちろんよ! ヒカリが買ってきてくれるって!」

シンジ「……そっか。綾波も、修学旅行に行けなくて残念だったね」

レイ「…………別に」

アスカ「〜〜〜っ! ほんっとーに愛想がないわねぇ! シンジが提案しなかったらプールもないのよ⁉︎」

レイ「…………碇くんが、言ったの?」

シンジ「……まぁ、そういうことになるかな」

レイ「…………そう」

アスカ「はぁ……。シンジ、こんな人形ほっといてむこうで遊びましょ」

レイ「…………」

アスカ「私のスキューバー仕込みのバックスクロールエントリー見せてあげる!」

シンジ「わかったよ」
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 19:31:38.73 ID:xddyXNiy0
――――
―――

アスカ「――ぷはぁっ!」

シンジ「はぁっはぁっ」

アスカ「シンジ、大丈夫?」

シンジ「ちょ、ちょっと休ませて」

アスカ「もうちょっと体鍛えた方がいいわよ?」

シンジ「はぁっはぁっ……。そ、そうだね」

アスカ「………ねぇ、シンジ。なにか忘れてない?」

シンジ「ふぅ…………。……えーと……」

アスカ「ヒントはあげないわよ。前に教えてあげたから」

シンジ「……? ………あっ! ……アスカ。水着、似合ってるよ」

アスカ「正解! まぁ、本当は一目見たら言わなくちゃだめなんだけど、指摘させなかったから及第点をあげるわ」

シンジ「…………気がきかなかったね」

アスカ「次はもっとうまくできるように期待してるわ!」

レイ「……………」スィー

アスカ「……うわぁ⁉︎」

シンジ「あ、綾波?」

レイ「……………」

アスカ「な、なによ。邪魔しにでもきたの?」

レイ「……………ここ、レーンだから」

アスカ「…………あぁ、そう」
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 19:32:31.21 ID:xddyXNiy0
- ネルフ本部 男子ロッカールーム -

シンジ「(えぇ〜と、タオルは…………)」

〇〇「――……そのまま、ロッカーを見たまま話して」

シンジ「――えっ?」

〇〇「――こっち向くなッ!!」

シンジ「えっ! あっ、はい!」

〇〇「……ふふん。よろしい。素直なワンコは好きだよ?」

シンジ「――だ、誰?」

〇〇「名前ってそんなに重要かにゃ?」

シンジ「……自己紹介をするのは、当たり前だと、思います、けど」

〇〇「にゃるほど。たしかにそれはそーかも。……じゃあ1つだけ約束。私のこと誰にも言わない?」

シンジ「……?」

〇〇「簡単なこと♪ それができるならはれてキミは私の名前ゲットー♪ ってね!」

シンジ「…………」

〇〇「さぁーて、どうする? もうあまり時間はないよー?」

シンジ「……わかり、ました。……誰にも言いません」

〇〇「ふぅん。どーしよっかなー。信用があるわけじゃないし」

シンジ「え? でも、いま」

〇〇「キミは選択をした。でも、私にも選択権があるのよ♪」

シンジ「…………それで?」

〇〇「ふふん。まぁ、ごーかく点をあげましょう! 私はマリ。真希波・マリ・イラストリアス。長いから省略してマリって呼んでね」

シンジ「マリ、さん。僕は――」

マリ「あぁ、いいのいいの。君のことは知ってるから。姫のボーイフレンドだよね?」

シンジ「(姫……?)」
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 19:38:31.29 ID:xddyXNiy0
マリ「お楽しみ中のところもうしわけないにゃー」

シンジ「あの……いったい?」

マリ「今日は顔合わせに来たのだ。ワンコくんにとっては声だけだけど」

シンジ「…………は、はぁ?」

マリ「うんうんっ。これから色々とキミは大変な思いをするからねぇ〜。それを思うと泣いてしまいそうだよ」

シンジ「……………」

マリ「あ? 信じてない? 私の言うことは信じたほーがいいよ〜?」

シンジ「…………(す、すごいマイペースな人だな)」

マリ「戸惑っちゃってるかにゃ? まぁどう思おうが、勝手だけど」

シンジ「…………」

マリ「さぁて、それじゃ私は行こうかな。名前、忘れないでね?」

シンジ「…………えーと」

マリ「あと、姫にもよろしく、じゃなかった。誰にも言わないでね? それじゃまた今度ー!」

シンジ「……………」

シンジ「…………あの、マリさん?」

シンジ「………振り向いてもいいんですか?」



アスカ「――……シンジ、なにやってるの?」



シンジ「うわぁ⁉︎」

アスカ「…………どうしたのよ?」

シンジ「アスカ! ここ男子ロッカーだよ!」

アスカ「私達の貸し切りだし、シンジがなかなか戻ってこないからきちゃった」

シンジ「…………そ、そうなんだ」

アスカ「…………シンジ、なんかひとり言いってたの?」

シンジ「……いや、なんでもない」
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 19:54:17.79 ID:o4l3QN22O
おつかれ。続きが楽しみ
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 14:16:02.01 ID:LKBrugS8O
なんだこれクソ面白いな
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 15:17:10.58 ID:OrkXDdVuO
とても面白い
久しぶりに惹かれるSSに出会った
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 17:01:20.97 ID:qixoa+vO0
- ネルフ本部 発令所 -

オペレーター「警戒レベル移行します。浅間山の観測データは、可及的速やかにバルタザールからメルキオールへ、ペーストしてください」

冬月「――……これではよく分からんな」

シゲル「しかし、浅間山地震研究所の報告通り、この影は気になります」

冬月「もちろん、無視はできん」

リツコ「――マヤ。MAGIの判断は?」

マヤ「フィフティーフィフティーです」

冬月「ふぅむ。現地へは誰が行っている?」

シゲル「報告のあったヒトヒトマル時に出発して、すでに、葛城一尉が到着しています」

冬月「……忙しくなるかもしれんな。パイロットは?」

リツコ「待機させております」

冬月「よろしい。では、葛城一尉からの報告を待つこととする」
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 17:08:47.98 ID:qixoa+vO0
- 浅間山 山頂 地震研究所 -

所員「も、もう限界ですっ!」

ミサト「……いえ、後500、お願いします」

アナウンス『深度1200、耐圧隔壁に亀裂発生』

所員「葛城さん! か、勘弁してくだ――」

ミサト「――壊れたらうちで弁償します。日向くん、後200」

マコト「っ! モニターに反応!」

ミサト「……解析開始」


ピピピ


アナウンス『――観測機圧壊、爆発しました』

所員「…………あ………あぁ…………」

ミサト「どう? 解析は?」

マコト「ぎりぎりで間に合いましたね。パターン青です」

ミサト「………ビンゴ。使徒だわ」
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 17:25:53.46 ID:qixoa+vO0
- 2時間後 浅間山 山頂 地震研究所 -

ミサト「――A.17の発令ぃ⁉︎」

リツコ「碇司令の指示よ」

ミサト「それって……生け捕りにするってことじゃない……」

リツコ「現資産の凍結。すなわち、そういうことになるわね」

ミサト「わけのわからないモノを生け捕りって……大丈夫なの?」

リツコ「使徒は休眠状態にあるわ。で、あるならば生態系を解明するサンプルとして理由は充分よ」

ミサト「…………」

リツコ「ミサト、あなたの個人的な復讐の為に必要な試みを潰すことはできない」

ミサト「………わかってるわ」

リツコ「…………」

ミサト「…………了解。エヴァは?」

リツコ「戦略自衛隊が空輸中。――そろそろ着く頃じゃないかしらね」
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 17:37:44.23 ID:qixoa+vO0
- 空輸中 エヴァ初号機 弐号機 プラグ内通信 -

アスカ「結局、使徒がきたのね」

シンジ「そうだね……」

アスカ「……はぁ。なんで毎回待ちの姿勢ばっかりなのよ。こっちから攻めてしまえばいいのに」

シンジ「…………」

アスカ「シンジ? なに考えてるの?」

シンジ「今回の使徒、なんか……気をつけた方がいい気がする」

アスカ「……?」

シンジ「作戦はまだわからないけど、僕が先行してもいいかな?」

アスカ「――だめよっ! それはだめ!」

シンジ「アスカの活躍を邪魔しようってわけじゃ――」

アスカ「違うのっ! シンジを守れなくなる!」

シンジ「…………アスカ?」

アスカ「――っ! と、とにかく私が先行! いいっ⁉︎ わかったら返事は⁉︎」

シンジ「…………わかったよ」
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 17:59:17.78 ID:qixoa+vO0
- 30分後 浅間山 山頂 地震研究所 -

ミサト「今回の作戦内容は使徒の捕獲よ」

アスカ「捕獲ぅ?」

ミサト「できうる限り原型をとどめ、生きたまま回収すること。……赤木博士、お願い」

リツコ「作戦は浅間山、頭部より開始してマグマの中で行われます」

シンジ「マグマの中って、エヴァはフィードバッグがあるのに大丈夫なんですか?」

リツコ「安心して。暑さに耐えられるように対局地用装備を用意してあるわ」

レイ「…………」

リツコ「ただし、潜るのは1人のみ。他のエヴァは万が一に備えて待機してもらうことになるけどね」

アスカ「…………」

リツコ「……パイロットは、シンジくん。あなたにお願いできるかしら?」

シンジ「わかり――」
アスカ「私がでるわっ!」

リツコ「あなたは待機をお願いしたいのだけど?」

アスカ「シンジじゃ不安でしょ? 私の方がシンクロ率が高いし、作戦成功率は高いわよ」

リツコ「…………シンジくんのシンクロ率でもなにも問題はありません。アスカはサポートをお願い」

アスカ「…………私がサポートにまわる明確な理由がなければ、どっちでもかまわないでしょ? それとも理由があるの?」

リツコ「…………」

アスカ「…………」

リツコ「…………今回に限り、作戦の変更を許可します。次があるとは思わないことね」

アスカ「そっちこそ。次はちゃんと理由まで用意しておきなさい。詰めが甘いのよ」

シンジ「あ、アスカ……」

リツコ「この前の話、覚えてるわよね?」

アスカ「その台詞、そっくりそのままお返ししてやるわ」
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 18:10:35.83 ID:qixoa+vO0
- 浅間山 山頂 地震研究所 ロビー -

ミサト「……アスカとなにかあったの?」

リツコ「いいえ」

ミサト「そう? そんな風には見えなかったけど」

リツコ「……弐号機と初号機の会話ログ、回収させてもらうわよ」

ミサト「それはかまわないけど。でも空輸中はエヴァの電源もろくにないし、たいした会話してないと思うわよ」

リツコ「予備を使い切ってあるのはどうにも腑に落ちないからよ」

ミサト「…………ふぅん」

リツコ「なにか問題があれば提出するわ」

ミサト「……わかったわ」

リツコ「ミサト」

ミサト「……?」

リツコ「あの子たち、そろそろ一度考えた方がいいかもしれないわね」

ミサト「…………」
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 18:33:02.10 ID:qixoa+vO0
- 浅間山 山頂 弐号機前 -

アスカ「あ、あたしの弐号機がぁ! いやぁー! 何よ、これぇ!」

リツコ「あなたが言い出したことでしょ? 耐熱・耐圧・耐核防護服。局地戦用のD型装備よ」

アスカ「こんなのダルマじゃない! ネルフの技術力でなんとかしてよぉー!」

リツコ「……プラグスーツの右手首を押してみて」

アスカ「……?」カチッ


モコモコモコッ


アスカ「いっ⁉︎ いやぁあぁああっ!」

シンジ「……うわぁ、風船みたいだ」

アスカ「し、シンジぃ! たすけてぇ〜〜!」

リツコ「ご覧の通り、プラグスーツも耐熱仕様になってるわ」

アスカ「こんなのただの[ピザ]みたいじゃなぁい!」

リツコ「全てあなたが言い出したことよ」

アスカ「ぐ、ぐぬぬっ」

シンジ「アスカ、やっぱり代わろうか?」

アスカ「い、いや! 私がでる!」

レイ「…………私がでます」

アスカ「……ふ、ファースト?」

リツコ「レイの零号機は装備が規格外なのよ」

レイ「…………それなら、私が弐号機で」

アスカ「――っ⁉︎ あんた何言い出してんのよ!」

レイ「…………シンクロできれば問題ないわ」

アスカ「悪いけど! あんたには私の弐号機に触れてほしくないの!」

レイ「…………」

リツコ「あまり時間的な猶予はない。問題ないのならはやく弐号機に搭乗してちょうだい」
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 19:24:26.19 ID:qixoa+vO0
- マグマ内 弐号機 プラグ通信 -

アスカ「現在、深度170、沈降速度20。各部問題なし。視界は……ゼロ。何にも分かんないわ。CTモニターに切り替えます」

アスカ「(これでも透明度120か)」

マヤ『深度、400、450、500、550、600、650、900、950、1000、1020、安全深度、オーバー』

マヤ『深度1300、目標予測地点です』

ミサト『聞こえたわよねーアスカ、何か見える?』

アスカ「反応なし。……いないわよ?」

リツコ『思ったより対流が早いようね』

マコト『目標の移動速度に誤差が生じています』

ミサト『再計算、急いで。作戦続行。再度沈降、よろしく』

アスカ「…………了解」

マヤ『深度、1350、1400』

オペレーター『第2循環パイプに亀裂発生』

アスカ「……っ!」ミシミシ バコンッ

オペレーター『弐号機。プラグナイフ消失』

アスカ「あっ……!」

マヤ『深度、1480、限界深度、オーバー! 危険です!』

ミサト『……アスカ? 目標とまだ接触していないわ。続けて』

アスカ「…………」

ミサト『近くにいい温泉があるわ。終わったら行きましょ。もう少しがんばって』

マヤ『限界深度、プラス120。も、もうこれ以上は……!』

アスカ「――――…………いたっ!」
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 19:33:43.28 ID:qixoa+vO0
第8使徒サンダルフォン「…………」

アスカ「なに? あれ……繭?」

リツコ『まだ孵化してないのよ。つまり、まだ卵の状態』

アスカ「だから捕獲ってわけね。――……ちょ、ちょっとまって? 動いてない?」

ミサト『……え? なんで――』

オペレーター『マグマ内で異常な膨張を感知!』

ミサト『――まさかっ⁉︎』

リツコ『ありえないわっ! 計算よりも全然はやい!』

アスカ「ど、どうするのよ? こんなの聞いてないわよっ!」

第8使徒サンダルフォン「…………!」ググッ

マヤ『――使徒! 完全に覚醒しました!』

ミサト『まずいっ! 日向くん! アスカを引き上げて! 大至急!』

アスカ「プラグナイフもなにもないわよ――きゃあ⁉︎」ドカンッ

第8使徒サンダルフォン「………!」
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 19:44:18.31 ID:qixoa+vO0
ミサト『初号機っ! プラグナイフ投げて!』

マヤ『――待ってください! 初号機! 既にマグマ内部へ潜水!』

リツコ『なんですって⁉︎ 装備をなにもつけていないのよ⁉︎』

アスカ「――シンジィッ⁉︎」

ミサト『どうなってるの! 初号機と回線繋いで!』

シゲル「初号機! 回線遮断! こちらからの信号受け付けません!」

アスカ「ちょっと! ミサト! ――きゃああっ⁉︎」ドカンッ

第8使徒サンダルフォン「…………」シュルシュル

アスカ「――このっ! スルメがぁ!」

ガキンッ

第8使徒サンダルフォン「…………!」ヒョイ

アスカ「はやいっ!」

第8使徒サンダルフォン「…………」スイーッ

アスカ「チッ…………ミサト! どうなってるのよ! シンジはどうしちゃったのよ! 回線をこっちにもまわして!」

ミサト『つながらないのよっ! シンジくんがそっちに向かってるのはたしかよ!」

アスカ「なんですってぇ⁉︎ 装備は⁉︎ 今でサウナみたいなのに! 死ぬわよっ!!」

ミサト『アスカ! ちょっと黙って!』

アスカ「どういうことなのよ! あんた達の仕事しっかりやりなさいよっ!!!」
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 19:52:19.13 ID:qixoa+vO0
リツコ『マヤ! 初号機の位置は⁉︎』

マヤ『震度1000! 尚も降下中! パルス異常! プラグ内の温度がみるみる上昇しています!』

ミサト『シンジくん! 死ぬ気っ⁉︎』

マコト『――生体反応グラフがっ! プラグ内温度上昇! とても生身で耐えられる温度ではありませんっ!』

リツコ『だめっ! それ以上の深度は火傷じゃすまなくなるっ!』

アスカ「ちょっとあんたたち! 慌てまくってんじゃないわよ! LCL濃度を――ぐっ!!」ドゴン

第8使徒サンダルフォン「…………」

マヤ『弐号機! 3番ケーブル断線!』

ミサト『厄介ごと起こるならひとつにしてよっ!』
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 20:06:06.63 ID:qixoa+vO0
マヤ『初号機! 装甲板が第7まで融解! まもなく弐号機と邂逅します!」


ミサト『………潜行速度がはやすぎる! まさかっ!』

リツコ『――マグマの中を泳いでる⁉︎』


アスカ「…………シンジ」

マコト『初号機! 生体反応に異常! こ、これはっ――』

第8使徒サンダルフォン「…………!?」

マヤ『初号機! 使徒と会敵! そんなっ⁉︎ シンクロ率! 上昇しています!』

初号機「――――…………」

アスカ「…………もういいよぉ、シンジ。逃げて」

第8使徒サンダルフォン「…………!」

リツコ『まさかっ!本来なら動けるはずないのよ!』

シゲル『プログナイフ! 展開!』

初号機「…………ヴゥ」ガキンッ

アスカ「………うぐ………ぅぐ………な、なんでここまですんのよぉ」

ミサト『使徒は弐号機を追っているわ! 今のうちにはやく引き上げて!』

マコト『し、しかし初号機は……⁉︎』

ミサト『弐号機が上がればついてくるっ! 弐号機を救うことが先決なのよ!』

マコト『り、了解!』
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 20:24:51.30 ID:qixoa+vO0
シンジ「――……アスカ、熱膨張だ」

アスカ「……………え? し、シンジ? 回線? だ、大丈夫なの⁉︎」

シンジ「うぐぅぅうぅぅッッッッ! もう持ちそうにない! はやくッッ!」

第8使徒サンダルフォン「………!」

アスカ「まって! えーとえーとえーとえーとえーとえーと……! 熱膨張!! わかったわ!」

ミサト『アスカ⁉︎ シンジくんからなにか回線きたの⁉︎ ――極秘回線ね⁉︎』

アスカ「今はそんなことよりシンジが危ない! 冷却液の圧力を全て2番にまわしてッ! いそいでよ!」

ミサト『なにをするつもり⁉︎』

アスカ「熱膨張よ! ここまで言ってわからないなら中学校からやりなおして二度と顔見せないで!」

リツコ『…………っ! 急いで言われた通りにして!』

マヤ『了解!』

第8使徒サンダルフォン「…………!」グイッ

シンジ「アスカァ! プログナイフを――!」

アスカ「――キャッチ! シンジはもう上がって! さぁっ! 来なさいッ!」
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 20:43:27.39 ID:qixoa+vO0
マヤ『深度700! 引き上げ作業順調です!』

レイ『…………私も行きます』

ミサト『――はぁ⁉︎』

レイ『…………碇くん、守るって約束したから』

ミサト『レイ⁉︎ ちょっと待ちなさい!』

アスカ「優等生ぃ⁉︎」

マヤ『ぜ、零号機。マグマに突入』

ミサト『なんなのよこの子たち!』

第8使徒サンダルフォン「……………!」ドゴンッ

アスカ「――っ! このっ! くらいなさいよぉっ!」

第8使徒サンダルフォン「……………⁉︎」

アスカ「よくもっ! このっ! この! シンジになにかあったら焼きイカにして食ってやる!」プシュー


第8使徒サンダルフォン「…………!」ボコボコ

第8使徒サンダルフォン「」


シゲル『――使徒、活動停止!』

ミサト『やった⁉︎ アスカ! シンジくんに回線開くようにいって!』

アスカ「シンジ! はやく上がりましょ! 先にいっていいからはやく!」

マヤ『初号機! シンクロ率低下! 生体反応が――』

マコト『微弱です! このままでは、自力であがれませんっ!』

アスカ「――ちょっと⁉︎ シンジ⁉︎ 回線は⁉︎ 」

レイ『碇くんは私が助ける。あなたははやく上がって」

アスカ「…………っ!」

レイ『……………』

アスカ「貸し1よ! …………シンジのことお願い! なんでもいいから助けだして!」
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 22:28:39.25 ID:qixoa+vO0
- 1時間後 第三新東京都市 総合病院 -


ガラガラッ


看護師「――道を開けてくださいっ! 碇さん! 聞こえますか? 碇さん、返事できますか?」タタタッ

医師「URに連絡を。患者は二度、30%の全身火傷とみられる」タタタッ

看護師「碇さん? 反応できますか――」タタタッ



リツコ「…………」

ミサト「…………」

リツコ「――あの子は?」

ミサト「アスカは暴れるのを取り押さえて鎮静剤を投与してあるわ」

リツコ「そう。シンジくんの結果によっては自殺しないように拘束具つけといた方がいいわよ」

ミサト「……っ! 碇司令からなにか連絡は?」

リツコ「初号機の修繕を最優先させるそうよ」

ミサト「――まさか第7装甲板まで融解するなんてね」

リツコ「泳いだせいね。水流を搔き回したから」

ミサト「…………こんなことになるなんて」

リツコ「プラグ内の温度まではどうしようもないもの。後遺症…………残らないといいけどね」

リツコ「……さて」

ミサト「どこ行くの?」

リツコ「仕事よ。ここで待つつもり?」

ミサト「――……いえ。私も仕事に戻るわ」
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 22:42:48.67 ID:qixoa+vO0
- ネルフ本部 独房室 -

アスカ「んむぅーっ! (シンジ、シンジ、シンジ、シンジ、シンジィッ!)」ジタバタ

アスカ「ふぅーっふぅーっ(拘束具……っ! こんなのっ!)」ギチギチッ

アスカ「むぐぐぐぅっ!(このぉおぉっ)」ギチギチッ


カシュ


アスカ「…………っ!(まぶしっ! 誰かきた?)」

マリ「やっ!」

アスカ「………ふ、ふむっ?(だ、だれ?)」

マリ「にゃはは。みの虫みたいだね」

アスカ「ふむっふむっーふぅ!(外して!)」

マリ「え? なに? なに言ってるかわかんないにゃー」

アスカ「…………ふぅーっふぅーっ」

マリ「姫ぇ。こんなことでつまづいてちゃだめだよー? 計画がパァーじゃん!」

アスカ「……ふむぁ?(はぁ?)」

マリ「まぁ、ワンコくんは頑張ったみたいだからいいけどさぁ」

アスカ「むぐっむぐっ(犬なんかどうだっていいのよ!)」

マリ「…………とってほしい〜い?」

アスカ「――……っ⁉︎」
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 23:08:10.61 ID:qixoa+vO0
- ネルフ本部 -


タタタッ


アスカ「…………はぁっはぁっ」

マリ「ほらほらぁっ! もっと急ぐ! 安全なところなんてないよー!」

アスカ「……ぜぇぜぇ、な、なんなのよ、あんた。あ、あたし、体力には、自信あんだけど」

マリ「王子様に会いたいんでしょー? だったら急ぎなよー!」

アスカ「……王子様って」

マリ「第7装甲板まで融解したんだってぇ?」

アスカ「な、なんで――」

マリ「――エヴァってさぁ、そんなにヤワな作りじゃないんだよねぇ」

アスカ「…………ど、どういうこと⁉︎」

マリ「NASA顔負けの特殊装甲なんだよぉ? ジワジワ溶けていくっていってもそんなに損害でるわけないじゃん!」

アスカ「……?」

マリ「……もし融解した理由を赤木博士から聞いてもそれは嘘ついてるかも。なぁーんちゃって」

アスカ「…………あ、あんた、いったい」

マリ「おっと、いけないいけない。ついついサービスしちゃった。あとはセルフサービスね」

アスカ「…………」

マリ「休憩おわり! いくよー! 姫が寝てた間に2日たってるんだからね!」

アスカ「――ふ、ふつかぁ⁉︎」
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 23:34:18.42 ID:qixoa+vO0
- ネルフ本部 車両駐車場 -

アスカ「……ぜぇぜぇっ」

マリ「――んーと、あ、いたいた」

加持「よっ」

マリ「加持く――」
アスカ「加持さん⁉︎」

加持「いろいろと事情が立てこんでてね。乗ってくかい?」

アスカ「……まって! シンジは無事なの?」

加持「一命はとりとめているよ。全身火傷だから油断はできないが」

アスカ「ど、どういうこと? 危ないの?」

加持「火傷でこわいのは時間経過でもあるのさ。皮膚の感染症とかね……詳しくは車で話そう。どうする?」

アスカ「――乗るに決まってるわ!」
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/20(月) 00:33:33.01 ID:3wdkSYbpo
おつ
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/20(月) 13:06:45.84 ID:JsiGhyiM0
- 第三新東京都市 車内 走行中 -

加持「――シンジくんは、後遺症が残るようだ」

アスカ「後遺症⁉︎ なに⁉︎ どういうこと⁉︎」グイッ

マリ「うわわっ、ちょっと落ち着きなよー」

加持「痺れがあるようでね。麻痺とまではいかないが日常生活にちょっとした支障をきたすかもしれない」

アスカ「そ、そんな……私のせい」

加持「…………」

アスカ「私が守るって言ったのに……見てることしかできなかった」

マリ「…………」

加持「くやしいかい?」

アスカ「決まってるじゃない……こんなに自分で自分が許せないのは久しぶりだわ」

加持「シンジくんを支えるつもりは?」

アスカ「聞かれるまでもないわね。私がシンジの手足になって全部やる」

マリ「あれぇ? そんなに落ちこんでない?」

アスカ「やることがわかってるなら、落ちこんでもいられないのよ」

マリ「ふぅ〜ん。恋する乙女は強いねぇ」

加持「なんにせよ、シンジくんは心配なさそうでなによりだ」

アスカ「……加持さんはどうしてここに?」

加持「アスカ達が浅間山にいっている時からこの2日間に色々とあってね。密度の濃い時間だったよ」

アスカ「……?」

加持「すまない。詳しく話せないんだ。話せば、アスカを危険に晒すことになる。エヴァパイロットだろうとな」

アスカ「加持さん、なにやって……」

加持「アルバイトがバレてたらしい。心配しなくていいよ、俺はシンジくんとアスカの味方さ。あと、ついでにマリも」

マリ「はぁ〜い」

加持「俺は姿を消す。これからはマリがサポートにはいるから仲良くやってくれ」

アスカ「……サポートってなに?」

加持「……アスカ。よく聞いてくれ」
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/20(月) 13:17:35.22 ID:JsiGhyiM0
加持「――五年前。俺はヨーロッパのある国で内偵調査を行なっていた。スパイってやつさ。その時にマリと知り合ってね」

アスカ「…………」

加持「そこで、マリからゼーレと碇司令にシナリオがあることを知った。セカンドインパクトの真実も」

アスカ「真実って、巨大隕石の衝突じゃないの?」

加持「――全ては仕組まれていたのさ。人類にとって必要な試練であるというバカげた理由でね」

アスカ「…………」

加持「俺はそんなことは許せない。そこでマリと協力して秘密裏に準備にはいった」

アスカ「…………」

加持「君たちチルドレンの運命も仕組まれている。全ては点と点だよ。いつかは線で繋がっていく」

マリ「そゆこと♪」

アスカ「…………大人の都合なんてどうでもいいわ」

マリ「あっ! ひめぇー! 気が合うね!」

加持「……全ての鍵は初号機に集約する。ゼーレのシナリオも碇司令のシナリオも初号機をトリガーとしているからね」

アスカ「…………」

加持「アダム。そしてリリス。人類はノアの方舟に乗るつもりなのさ」

アスカ「…………神話?」

加持「あくまでも呼称と考えてくれていい。これから、シンジくんには辛い出来事が待っている」

アスカ「――っ! 私が守ってみせる!」

加持「頼もしいな」
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/20(月) 13:27:03.82 ID:JsiGhyiM0
アスカ「なんだかよくわからないけど、シンジになにかあっても私はシンジの味方よ!」

加持「…………強くなったな、アスカ」

アスカ「子供でいることを認めただけよ。もう背伸びなんかしなくてもいい」

加持「リッちゃんには注意をしておいてくれ」

アスカ「赤木博士?」

加持「立ち位置が曖昧だったんだが、どうやら、碇司令につくことを決めたらしい」

マリ「加持くんがこうなったのもそのせいだしねー」

加持「女ってのは難儀なもんさ」

アスカ「……わかったわ。ちょうどやりあった後だったし。要するに陰謀があるってことよね」

加持「理解がはやくて助かる」

マリ「………おっ! そろそろ着くよー」

アスカ「あ! 私を逃したの……大丈夫なの?」

加持「心配ない。俺の置き土産ってことにしておくさ。――元気でな」
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/20(月) 14:47:20.30 ID:JsiGhyiM0
- 総合病院前 -

ブロロロロッ

アスカ「……加持さん。大丈夫なの?」

マリ「心配?」

アスカ「当たり前でしょ」

マリ「すぐ死ぬようなタマじゃないっしょ。それに仕込んでたモノもあるし」

アスカ「……あんた、何者なの?」

マリ「むっふふ〜♪」

アスカ「加持さんは、あんたから聞いたって言ってたわよね。そんなに歳変わらないように見えるけど」

マリ「いっぺんに知っちゃうと混乱しちゃうだろうから、今はそれでいいじゃん?」

アスカ「…………」

マリ「ワンコくんのとこ行かなくていいのー?」

アスカ「ワンコくんってシンジのこと?」

マリ「そ。ネルフのワンコくん」

アスカ「……信用できない」

マリ「信用する、しないじゃなくて私しか頼れる人いなくなっちゃったんだよ〜」

アスカ「…………」

マリ「全て明らかになるよ。最後にね♪」

アスカ「…………」

マリ「本当はまだまだだったんだけど、こうなっちゃったから」

アスカ「…………いいわ」

マリ「……それじゃ私ももう行くから、また今度ね♪ 王子様とお姫様でごゆっくり♪ 脇役の小人は退場することにするよ」
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/20(月) 14:59:42.77 ID:JsiGhyiM0
- 総合病院 病室 -

バタンッ

アスカ「――シンジッ!」

レイ「…………」

シンジ「あ、あれ? アスカ?」

アスカ「ファースト? あんたなんでここに――シンジッ! 大丈夫なの⁉︎」

シンジ「あぁ。うん、大丈夫だよ」

アスカ「――でも、包帯ばっかりじゃない!」

シンジ「火傷が少し、ひどかったらしくて化膿しないようにこうなってるだけだよ」

アスカ「ご、ごめんねっ! シンジ! 私のためにごめんなさい!」

シンジ「アスカのこと守るって約束したから。それに、なんだかあの時――」

レイ「…………碇くん」

シンジ「――ん?」

レイ「……もうすぐ、抗生剤の時間」

アスカ「……ファーストはどうしてここに?」

レイ「…………碇くんの世話。葛城一尉から頼まれたから」

アスカ「――ミサトが?」

シンジ「そういえば、アスカこそ体、大丈夫なの? ミサトさんからは調子が悪くて自宅療養してるって聞いたけど」

アスカ「(……どいつもこいつもっ!)」ギリッ

レイ「…………」

アスカ「ファースト、ちょっと席はずしてくれる?」

レイ「…………それはできない」

アスカ「――なんで⁉︎」

レイ「さっき、連絡があったから」
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/20(月) 15:12:01.84 ID:JsiGhyiM0
アスカ「……っ! ……お願い」

レイ「…………」

アスカ「癪だけど、あんたには貸しがあるからきつく言いたくない」

シンジ「…………綾波、僕からもお願いできないかな」

レイ「…………わかったわ」

アスカ「あんたにも、少し話があるから部屋の前で待っててもらえる?」

レイ「…………」


スタスタ
バタン
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/20(月) 15:21:44.76 ID:JsiGhyiM0
アスカ「――シンジッ」ダキツキ

シンジ「うわぁっ⁉︎ ど、どしたの?」

アスカ「お願い。お願いだからもうあんなことしないで」ギュウ

シンジ「え、でも――」

アスカ「次にああいうことになったら見捨ててほしいの」

シンジ「…………」

アスカ「私はエヴァのパイロットよ。死ぬ覚悟はできてる。だから――」

シンジ「それはできないよ。もし、次があっても僕はそうする」

アスカ「…………」

シンジ「守るって約束したから。違う、僕がそうしたいんだ」

アスカ「…………シンジィ」

シンジ「痛いのは嫌だけど。こわいけど、そうしなくちゃって、思うから」

アスカ「……うっ……ぅぐ……」ゴシゴシ

シンジ「それに、なんだろう。あの時、いや、作戦が始まる前からなんだか、こうなることがわかってたような気がするんだ。だから躊躇なく飛び込めたのかもしれない」

アスカ「……?」

シンジ「……アスカ、もしかして、僕たちって前に――」


バァンッ


ミサト「――アスカァ⁉︎」

シンジ「…………み、ミサトさん?」

アスカ「…………」

ミサト「あ、あら? なんだか邪魔しちゃ悪い雰囲気?」
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/20(月) 15:28:00.83 ID:JsiGhyiM0
ミサト「シンジくん。アスカをちょぉっと借りてもいいかしら?」

アスカ「…………」

シンジ「えーと、僕はかまいませんけど」

アスカ「大切な時間を邪魔されるほど暇じゃないんだけど。話ならここでできないの?」

ミサト「……懲罰対象になるわよ?」

アスカ「――っ⁉︎」

シンジ「……え? アスカはなにも」

アスカ「シンジ。ちょっとミサトと話してくるね」

シンジ「あ、うん」

ミサト「ごめんねぇ〜シンちゃん。すぐ済むから」

シンジ「(なんだろう。なにかおかしいな)」
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/20(月) 15:37:27.42 ID:JsiGhyiM0
- 総合病院 通路 -

ミサト「…………それで、あんたを逃した加持は今どこ?」

アスカ「知らないわ」

ミサト「知らないわけないでしょ⁉︎」

レイ「…………」

アスカ「本当に知らないのよ。なんなら自白剤でも投与してみる?」

ミサト「そ、そんなこと……できるわけ……」

アスカ「2日も昏睡させておいて今さらなに言うのよ! おまけに起きたら拘束具! やってくれたわね!」

ミサト「必要な処置よ! 職員を3人も気絶させて、あのままだとあなた、なにするかわからなかったから」

アスカ「これ以上ない裏切り行為だわ!」

ミサト「――シンジくんの経過が落ち着いたら、会わせるつもりだったのよ!」

アスカ「必要なことならなんでもやるってことでしょう⁉︎ はっきり言いなさいよ! あんた達の勝手な言い分はもうたくさんっ!」

ミサト「…………っ!」

アスカ「人類のためぇ? はんっ!そんな大義名分を掲げて! 結局はやりたいようにやる! 押しつける! そうじゃないの⁉︎」

ミサト「……………」

アスカ「言っておくけど、私はもうエヴァだけの女じゃないわ。いいえ。エヴァが一番じゃない」

ミサト「……………」

アスカ「人類の未来も、あんた達の都合も! 全部どうだっていい! 私にも守りたいものがあるのよ」

ミサト「…………エヴァには乗るのね」

アスカ「そうしなければ、守れないものがあるならば、エヴァにだってなんだって、悪魔にだって魂を売ってやるわよ!」
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/20(月) 15:52:36.60 ID:JsiGhyiM0
ミサト「…………」

アスカ「…………」

ミサト「…………いいわ。ただし、あなたにはこれから24時間、監視の目がつくことになる。忘れないで」

アスカ「自白剤はしないの?」

ミサト「私たちは、これまで一緒に暮らしてきたわ。短い期間だけど。それはしたくない」

アスカ「パイロットとして機能しなくなったら困るからじゃなくて?」

ミサト「…………」

アスカ「…………」

ミサト「………先に家に帰ってる。――遅くならないうちに、帰ってくるのよ」

アスカ「…………待って」

ミサト「……なに?」

アスカ「シンジの処置は? 命令違反、独断専行。なにかあるでしょ?」

ミサト「シンジくんには、何もない。碇司令が処置なしと判断したわ」

アスカ「……?」

ミサト「私にもわからないのよ。親子の情ってことはないと思うんだけど、碇司令がそう発令した以上は彼のことは、心配いらない」

アスカ「…………そ」

ミサト「レイはどうする? 帰るなら送っていくけど」

レイ「…………まだ、ここにいます」
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/20(月) 15:57:42.71 ID:QG7AMwTAO
うほー面白い
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/20(月) 16:11:20.06 ID:JsiGhyiM0
- 総合病院 ロビー -

アスカ「…………あんたとこうやって落ち着いて話するのもはじめてね」

レイ「…………」

アスカ「――お願い。力を貸して」

レイ「…………」

アスカ「シンジになにかあるのが嫌なのよ」

レイ「…………なぜ?」

アスカ「なぜって、その、大切な人だから」

レイ「命をかけて助けてもらったのが、嬉しいの?」

アスカ「う、嬉しくない女なんかいるの?」

レイ「……あなたは、人に褒められるために乗ってると言ってたわ」

アスカ「…………」

レイ「……人に褒められなくてもいいの?」

アスカ「……何事も優先順位よ。そりゃぁ褒められるにこしたことはないけど。それでシンジがいなくなるならいらない」

レイ「…………」

アスカ「私ができないとき、シンジを守ってほしいの。あのバカ、きっとまた無茶するかもしれないから」

レイ「…………」

アスカ「あんたが碇司令のお気に入りなのは知ってる。だけど、シンジのことも気にかけてやって」

レイ「…………」

アスカ「あんたは、なんのためにエヴァに乗ってるの?」

レイ「…………絆、だから」

アスカ「……誰との?」

レイ「…………人と人との」

アスカ「……ほんと、変わってるわ」

レイ「あなたに、言われたくない」

アスカ「……な、ななっ⁉︎」

レイ「…………碇くんに守られたのはあなただけじゃない。碇くんは、私が守る」
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/20(月) 16:18:06.26 ID:JsiGhyiM0
アスカ「守られたぁ? あんたが?」

レイ「……ヤシマ作戦の時、少し」

アスカ「ヤシマ作戦……っていうと私がネルフに配属になる少し前……」

レイ「家で裸を見られたわ」

アスカ「――な、なななぁっ⁉︎」

レイ「あなたも知らない碇くんがいるということ」

アスカ「………っ! ふ、ファーストっ! こいつ!」

レイ「碇くんに、幻滅した?」

アスカ「べ、別になにもなかったんでしょ⁉︎ ヘタレなあいつがそんな度胸あるわけないし」

レイ「…………そう」

アスカ「あ、あんた。意外といい根性してるわね」

レイ「…………別に」
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