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【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【七輪目】 - SS速報R 過去ログ倉庫

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1 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/26(日) 19:27:40.41 ID:p6gfMlqFo
このスレは安価で

久遠天乃は勇者である
結城友奈は勇者である
鷲尾須美は勇者である
乃木若葉は勇者である
久遠陽乃は……である?

を遊ぶゲーム形式なスレです


目的


・一妻多妻


安価

・コンマと選択肢を組み合わせた選択肢制
・選択肢に関しては、単発・連取(選択肢安価を2連続)は禁止
・投下開始から30分ほどは単発云々は気にせず進行
・判定に関しては、常に単発云々は気にしない
・イベント判定の場合は、当たったキャラからの交流
・交流キャラを選択した場合は、自分からの交流となります


日数
一ヶ月=2週間で進めていきます
【平日5日、休日2日の週7日】×2


能力
HP MP SP 防御 素早 射撃 格闘 回避 命中 
この9個の能力でステータスを設定

HP:体力。0になると死亡(鷲尾、乃木) 友奈世代のHP最低値は基本10
MP:満開するために必要なポイント。HP以外のステータスが倍になる
防御:防御力。攻撃を受けた際の被ダメージ計算に用いる
素早:素早さ。行動優先順位に用いる
射撃:射撃技量。射撃技のダメージ底上げ
格闘:格闘技量。格闘技のダメージ底上げ
回避:回避力。回避力計算に用いる
命中:命中率。技の命中精度に用いる

※HPに関しては鷲尾ストーリーでは0=死になります


戦闘の計算
格闘ダメージ:格闘技量+技威力+コンマ-相手の防御力
射撃ダメージ:射撃技量+技威力+コンマ-相手の防御力
回避率:自分の回避-相手の命中。相手の命中率を回避が超えていれば回避率75%
命中率:自分の命中-相手の回避。相手の回避率を命中が超えていれば命中率100%


wiki→【http://www46.atwiki.jp/anka_yuyuyu/】  不定期更新 ※前周はこちらに

前スレ
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【一輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1464699221/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【二輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1468417496/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【三輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1472477551/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【四輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1477053722/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【五輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1481292024/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【六輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1484833454/
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ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713089503/

2 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 19:35:18.14 ID:QESmeY5iO
立て乙
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 19:40:42.90 ID:TGDrx/iRO
>>1
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 19:57:01.64 ID:pnmj6m94O
たて乙
5 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/26(日) 19:59:48.58 ID:p6gfMlqFo

風「まーた、何かしたわけ?」

天乃「したというか、されたと言うか」

風「?」

天乃「ふふふっ」

看護師が逃げ去ってからそこまで時間もおかずに、風が見舞いに来て

開口一番の問いが看護師をさしているのだろうと切り返した天乃は

疑問符を浮かべる風を差し置いて、苦笑する

したと言えばしたかもしれない

けれど、どちらかと言えば、された方だ

風「それで? 昨日、夏凜とは話せた?」

天乃「えっと」

風「話さなかったの?」

東郷と同様に、風もまた夏凜がここにお見舞いに来ている。と、思っていたらしい

天乃は「話さないと面倒よ?」と呆れ交じりに言う風に、改めて、夏凜が来ていないことを話す
6 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/26(日) 20:13:32.04 ID:p6gfMlqFo

風「なるほどねぇ」

風は夏凜ではないから、その考えが完璧に分かるとは言えない

けれども、似通った心を持っているから

そして、犬吠埼風と三好夏凜という別人ではあれど、

等しく少女であるがゆえに、風は理解を示すように、頷く

風「思えば、最初にあたしに見て来てくれって依頼する時点でおかしかったしね」

天乃「……会うのが恥ずかしいってこと?」

風「うわっ、鋭い」

天乃「何よその反応」

風「いや、今までならどうしてかしらね? 分からない? とかボケてただろうから……」

天乃「今までもボケてたつもりはないわよ」

それはすみませんねぇ。と

あからさまに皮肉を織り込んだような謝罪を述べる風を一瞥して、一息つく

そう言うことなら、まだいい

しかし、クラスメイトが暴動と言われるほどの大きな動きではないにせよ

大赦に対して反抗している以上、確信できなければ、それは【可能性の域】から出て来てくれない

それはたとえ、夏凜のことを信頼しているとしても。だ

いや、むしろ信頼し合っているからこそ、夏凜はなにかしらの行動を起こす可能性が高い

もちろん、夏凜は天乃の状態を良く知っているため、クラスメイトと同様の理由では変な気は起こさないはずだが
7 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/26(日) 20:27:10.64 ID:p6gfMlqFo

風「まぁ、そう言うことなら、改めてあたしからも連絡してみるわ」

天乃「ええ、悪いけれど宜しくね」

東郷の事だ。学校で会った際に話してはくれるだろうけれど

ぼかしたりなんだりする可能性がないとは言えない

だからこそ、風の協力も必要だった

風「で、あたしがここに来た要件を手短に伝えるわね」

天乃「?」

風「天乃はこのままの状態なら、明日にでも自宅療養に切り替えるって話になった」

天乃「……急ね」

風「まぁ、色々とあってね」

風は詳しく話すのを避けようとしているが

すでに学生による反抗は東郷から聞いており

天乃はだからでしょう? と、訊ねる

風「東郷ってば、まったく勝手に……」

困ったように、けれどどこか嬉しそうにぼやいた風は

そうよ。と、肯定して

風「大赦もこれ以上は暴動も起こる可能性があると危惧しててね、ま。体調も良くなってきているから、自宅療養でいいんじゃないかって」

天乃「一般病棟飛ばして自宅なのね」

風「向こうの方が、設備は良いでしょ。園子がいるし。それに、学生がお見舞いに押し寄せてきたら病院困るから」
8 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/26(日) 20:45:47.93 ID:p6gfMlqFo

天乃「私も大勢来られても困るんだけどね」

風「あらぁ〜? 一妻多妻を目指している御方が何を申されているのかしらぁ〜?」

天乃「わけのわからない話し方で挑発されても手は出さないわよ」

煽るような表情、声

それはとても癪に障るものだったが、天乃は平常心を保って

冷静におとなしい笑い声を溢して

天乃「手を出して欲しいならそう言いなさい。もちろん、そう言う強引な手が好きって言えば、そうするし」

風「なっ……や、そ、そういうんじゃないからっ!」

天乃「あらあら、顔が真っ赤よ? 犬吠埼の風先輩」

風「うぐぐぐ〜っ」

ふふふっと零れる愉快な声

不調を感じさせない―天乃基準では健康―色白な肌

喜楽を並々と注がれた器のように弧を描く眉と唇

それはやはり、風にとっては掛け替えのない――もの

天乃「…………」


1、昨日の今日でここに来たんだから。貴女の答えは聞かせて貰えるってことでしょう?
2、もう少し揶揄ってみる
3、そうそう。東郷は許可してくれたわよ?
4、ファーストキスを強奪する
5、何もしない


↓2
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 20:46:10.38 ID:TGDrx/iRO
3
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 20:46:23.37 ID:QESmeY5iO
4
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 20:47:20.27 ID:pnmj6m94O
1
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 20:49:25.68 ID:TGDrx/iRO
やりたい放題じゃないか、悪びれない久遠さん最強だな
…はやく夏凜と会わなきゃ
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 20:54:47.36 ID:pnmj6m94O
これ夏凛ちゃんが一妻多妻を拒否したらどうしよう…
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 20:56:08.43 ID:TGDrx/iRO
そうなったらもう悪五郎の言う通り落とすしかないのでは?
15 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/26(日) 20:56:30.13 ID:p6gfMlqFo

01〜10 
11〜20 抵抗という名のパイタッチ
21〜30 
31〜40 
41〜50 
51〜60 拒絶
61〜70 
71〜80 
81〜90 特殊
91〜00 

↓1のコンマ  

ぞろ目、特殊
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 20:56:38.88 ID:TGDrx/iRO
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 20:58:09.76 ID:TGDrx/iRO
W特殊!?
まあ普通に特殊か、なにはともあれやったぜ
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 20:58:19.98 ID:XebpbT2MO
キマシタワー!?
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 21:00:02.95 ID:pnmj6m94O
夏凛ちゃんどころか風先輩の方にフラグが…!
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 21:02:06.04 ID:QESmeY5iO
フ、フラグはもう既に前の時点で立ってたから……
21 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/26(日) 21:28:57.30 ID:p6gfMlqFo

風「はぁ……」

風は一際大きく、ため息をついた

昨日、あれだけ言ったにも拘らず、誘うような言動を抑えきれていない天乃に、呆れたからだ

けれど、心は強く脈打つ

平常心には戻れない

昨日だってそうだった。一日中、授業そっちのけで悩んだ

考えてしまった

夏凜を優先するべきと自分で言っておきながら

二番手三番手であることに、少しだけ悔しさも感じていた

だからこそ、夏凜のことを考える

大切な戦友、親友、部員である彼女の事を考えろと

天乃に言い聞かせることで、自分に言い聞かせようと

けれど――

風「!」

グイッっと、体が引かれた

思考する一瞬の空白、その虚を突いた誘う手に抗うことは出来なくて

驚きに見開いた瞳に映ったのは、天乃の笑み

潤んだ唇、近づく桃色の柔肌

そしてそれは、視覚を埋め尽くすだけでなく、触覚に触れる

いや

風「んんっ!」

唇に、触れた
22 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/26(日) 21:48:10.74 ID:p6gfMlqFo

天乃「んっ」

犬吠埼風への愛情と、欲情と

ほんの少しの悪戯心で、唇を重ねる

焦らされるのが嫌なわけじゃない

けれど、誤魔化すだけの態度は好めなかった

だから、「分かっているのよ」と、教えるために唇を合わせる

強引な接吻は押しつけがましく、力強く

押す天乃も押される風も、どちらも呼吸をする余裕はない

だが、天乃はすぐにはなれる予定だった

離れて、呆然とする風に笑って見せる。ただ、それだけの予定

しかし

天乃「ぅ――んぐっ!」

風の唇の抵抗が緩み、天乃の力との均衡が崩れた瞬間

勢い余った唇を割って、風の舌が天乃の口腔に入り込む

風「ん、ふ……んっ」

天乃「んっ、んゅ、っ!」

唇に唇を押し付けることで、唾液を塗り込み、引き潮のごとく咥え込む

濡れ合うぬちゅりとした艶かしい音が二人の間で弾ける

風の瞳は濁っていない、壊れてもいない、ただただ、まっすぐ、目の前だけを見る

そこにいるのは、久遠天乃と己の欲
23 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/26(日) 22:10:31.72 ID:p6gfMlqFo

天乃「ん、ふ……ぅにぅっ!?」

声にならない間の抜けた声が零れる。いや、押し出される

唇を弄ばれる天乃は、下半身が動かせない分、

上半身の力は風の抑え込む力には到底かなわない

それゆえに、風は天乃をベッドに押し倒して、覆いかぶさるようにまた――唇を重ねる

与えられたのは一瞬の呼吸だけ

天乃「んっ、っ、ぁ……んっ」

唇が触れ合い、踊る中で、唾液の擦れ合う音

そして、自分のものか、風のものか分からない熱っぽい吐息の重なりが耳に響く

風「はぁ……んんっ、んちゅ」

天乃「んっ、っ」

唇の奥に風の舌が潜り込む

呑み込めない自分の唾液に、喉の奥に風のそれが混ざり染み込み、流れ込む

それでもなお、口端からは、区別のつかない唾液が、溢れ落ちる

天乃「ふ――んぅっ」

言葉は、許可されない

ううん、許可するしないの問題ではなく

その時間さえ惜しいと、風は思っているのだ

夏凜に負けている部分があるから、何か一つででも、秀でることが出来るようにと。


1、手をつく
2、カウンターこそ久遠の流儀
3、身を任せる


↓2
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 22:12:52.14 ID:TGDrx/iRO
3
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 22:13:26.35 ID:pnmj6m94O
2
26 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/26(日) 22:37:27.53 ID:p6gfMlqFo

風がキスをし慣れているということはないらしく

激しく深く、淫らな交わりには僅かながら、緊張感を感じる

だからこそ、天乃は風が呼吸のために離れた一瞬を

あえて肩を掴むことで引き留め、唇を重ねる

風「んん゛っ!?」

息苦しさに呻く声が聞こえる

風の口元から滴る唾液が頬につく。しかし、天乃は手放さない

風の手順をまねるように唇で唇を横に割き、舌を捻じ込む

溢れる唾液が水嵩を増すが、関係なく、それを舐めとり飲み込む

味覚がなく味わうことはできない

だが、確かな熱と欲を感じる天乃は舌と舌を重ね、

飴を転がすようにぐるりと舐めつつ、唇を深く広げた風の唇を咥え込む

風「んっ……う……」

鼻は塞がっていないから呼吸は出来る

けれど、それをすれば口が無防備になる。無抵抗になる

そうなった後が怖くて

けれど、風は耐え切れずに鼻で呼吸をすると

普段は嗅ぐことのできない匂いを、感じた
27 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/26(日) 23:04:15.94 ID:p6gfMlqFo

清潔とは言えない、だが不衛生でもない匂い

人間そのもの、久遠天乃そのものの匂い

それがまた、風の情欲を逆なでする

もっとしたい、もっと、もっと……心が望み体が求める

天乃の絡めてくる舌に絡みたいと思う

それを吸い上げて、根元から自分のものにしてしまいたいと思う

ぴちゃぴちゃという音

にゅちゅり、にゅるりと口の中に広がる淫らな感覚

風「んっ、っ……」

一転してされるがままにされながら

しかし、風は自分がさらに高ぶり熱を帯び始めていることに気づき、目を見開く

微熱のような体の火照りではなく、癒された入浴後の体の火照り

一部も余すことなく全身から感じるその温もりは、冷めることなく、下腹部へと集う
28 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/26(日) 23:06:23.77 ID:p6gfMlqFo

風は天乃の体の両脇に立てた支柱

自分の両腕に込めた力を段々と抜き、体を少しずつ天乃の上に重ねていく

天乃「っ」

風はブラジャーゆえ、さほど鋭敏に感じ取ることはできないが

それでも、天乃の胸の柔らかさを、自分の胸に感じて、擦り合わせるように動く

下腹部を擦り合わせる模擬的な行為を彷彿させる動きだ

風「っは……はぁ……はぁ……」

天乃「はぁ……んっ……はぁ」

それは天乃が唇を離してもなお、続く

続くが、停滞はしない

刻一刻と、体が触れ合う面積は広く重くなって

風の両肩に添えた手が重みに耐えかねて下がり始める
29 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/26(日) 23:07:36.38 ID:p6gfMlqFo

風「……ごめん、天乃」

天乃「風……?」

風「少しだけ……やらせて」

天乃のせいにはしない

けれども、もう。抑えきれない

キスをされた時点で、した時点で

いや、もっと言えば昨日の時点であふれかけていた気持ちは

今はもう、少しだけ穢れてしまっている

天乃のような穢れではないけれど、情欲に浸かってしまったから

だから、求めてしまう、欲してしまう

天乃が病み上がりだと分かっているのに

それがいけない事だと分かっているのに

風と比べれば着ていないような患者衣

その合わせから、そっと手を滑り込ませる

天乃「んっ」

風「少しだけ、だから……」


1、止める
2、受け入れる


↓2
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 23:08:13.10 ID:TGDrx/iRO
2
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 23:09:15.19 ID:A50LF5Jv0
2
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 23:09:16.94 ID:FRkRIzAUo
2
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 23:11:36.11 ID:pnmj6m94O
欲望が…w
後々の展開気まずくならないといいけど
34 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/26(日) 23:41:53.36 ID:p6gfMlqFo

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


……久遠さんは運動厳禁です


大赦「な、なんですって? 久遠天乃がまた体調を崩した!? その理由は!? 分かっているなら対処・処置を施しなさい!」

大赦(このままでは、また讃州の学生が……)

医者「それが……犬吠埼の長女の性的要求の解消に付き合ったようで……」

大赦「…………は? はぁぁぁっ!?」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 23:43:25.01 ID:TGDrx/iRO

風先輩ハッスルし過ぎだろ
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 23:52:45.44 ID:pnmj6m94O

この調子だとあわよくばヒロイン全員分のHシーンがでてきそうだな
魅了の力が振り返してるようにも見えるが…
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/27(月) 00:19:06.81 ID:+NAH+My5O

愛の伝道師と化した久遠さんルートだからな今回
目標が目標だし常識はぶん投げていけ
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/27(月) 08:44:29.76 ID:6r9ReT3jO
でも話の中で出てることを無視しすぎてるから失敗するんじゃないか?
そして久遠さんはどう頑張っても誘い受けなんだなって
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/27(月) 15:09:52.07 ID:w+wGrSYTO
久遠さんのことだから例えハーレムがうまくいかなくても自分をみんなが溜め込んだ欲の捌け口にしそう
特に風は原作以上にストレスとかも溜め込んでるだろうし
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/27(月) 18:03:16.74 ID:+NAH+My5O
っていうかこちらとしても早く話したいんだけど全然夏凜と会えないんだよなあ
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/27(月) 18:57:27.41 ID:b1w18NrLo
東郷の時から察するに九尾使えば呼べると思うんだけどね
自主的に来る可能性は低いね
42 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/27(月) 22:15:01.19 ID:81CZPHo2o

では、少しだけ
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/27(月) 22:17:09.23 ID:wIRAZgWUO
かもん
44 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/27(月) 22:28:23.54 ID:81CZPHo2o

天乃「……今の私は、体、弱いから」

艶のある表情で囁き、

心地よさに身を委ねていないしっかりとした二色の瞳を温かく細めて、微笑む

天乃「少しだとしても、優しくして……ね?」

風「分かってる」

天乃の願いを耳に残しながら、

病衣の内側、キャミソールの上から天乃の胸をやんわりと揉む

ブラの隔たりがないその程よく実った果実は握りつぶせてしまいそうなほどに柔らかい

天乃「んっ」

揉み解すようにしながら、通り道にある突起を親指で潰すと天乃の可愛らしい声が聞こえて

それがより情欲を刺激して、ごくりと喉が鳴る

風「少しだけ、だから」

同じことを繰り返して、堪えるように目を閉じた天乃を一瞥した風は

汗臭さのない、天乃の匂いを辿って首筋に口づけする

天乃「んっ、ふ……っ、ぁ」

風「んっ、ちゅ……ぬちゅ……」

正直に言えば、、味はしなかった

けれど、風は自分好みのうどんの味に匹敵するほどのものを感じて、

唇で包むように舐め、舌で抉るように首筋を舐め、

おいしいご飯を食べ終え名残惜しく皿を舐める子供のように

卑しく貪欲に貪る何者かのように、鎖骨に舌を這わせる
45 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/27(月) 22:34:06.99 ID:81CZPHo2o

天乃「んっ」

風から見て右、天乃から見て左の鎖骨を執拗に味わわれながら

天乃は堪えるように右手を口元に宛がう

くすぐったい。でも、どこか心地よさがあるのだ

今朝、体を拭いて貰っているようなきめ細かいざらつきはない

けれど、ぬめりとしていて、温かく

極僅かながらざらつきのある風の舌は

這うたびに、心地よさを感じさせて。

天乃「ふぅぅ、んっくぅ……」

堪えきれない声が、こぼれだす

鼓動の早さゆえか、体が強く熱を帯び始める

そんな天乃の反応を横目に、風がにゅちゅりと艶かしく音を立てながら離れると

透明の糸が口元から伝いおちていく

風「……可愛い」

天乃「っ、可愛い、なんて」

耳元で囁くと、天乃は気恥ずかしそうに頬を薄紅色に染めて、目を逸らす

その仕草がまた一段と愛らしくて

風は天乃の左胸に触れる右手の小指から中指までを使って

天乃の胸を支えるように撫でる
46 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/27(月) 22:43:38.16 ID:81CZPHo2o

風自身、自分が決してなさ過ぎる人間ではないことは自覚している

ブラをつけるとき、外すとき

お風呂場で鏡の前に立ったとき

確かに実ったそれを、目の当たりにしているからだ

けれど、風は天乃の胸に触れたくて仕方がなかった

それを目に焼き付けたくて仕方がなかった

しかし、風はそれを押さえ込み、天乃の股に自分の股を重ねる

多少肌蹴てはいるが、天乃は病衣を脱いでいないし

風は制服も下着も何一つ乱していない

しかし、だからこそ、ショーツの布部分の擦れる感覚は、気分の高まった体にとっては

悪くない刺激だった。それも、天乃と重なっているのなら、尚更

天乃「風……?」

風「天乃、舌。出して」

天乃「……ん」

言われるがままに舌を出すと、風はゆっくりと近づいてきて

胸に忍び込ませていた手を引き抜き、天乃の暇をもて余した手に重なる

左手も、右手も

探るような手つきでふれあい、絡み合って、握って

その瞬間――

天乃「んんっ!?」

ぢゅるっっという奇怪な音をたてながら、舌を吸い上げて唇を重ねる

天乃は押しつぶすような圧迫感を唇に感じながら、

舌は唇に揉まれ、舌につつかれ、絡まれ、舐められていく
47 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/27(月) 22:47:05.05 ID:81CZPHo2o

天乃「んっ、っ、ふ……」

風「んっ、ちゅ……んっ」

そんな熱の篭った艶かしく一方的なキスをしながら、

風は繋いだ天乃の手から腕、肩、背中と滑らせるように手を回し、その体を抱きしめる

胸と胸が重なって、潰れていく

天乃の口元から、二人のものが混ざった唾液がこぼれて、病衣を濡らす

くちゅり、ぬちゅりと淫らな音を奏でる唇が離れると

つぅーっと交わりの糸が伸びる

天乃「はぁ……は……んっ」

こくりと、天乃の喉が動く

熱っぽい吐息が続く

それだけでも、色っぽいと風は思った

自分だけのものにしたいと、欲がどこからともなく湧き出してきた

どこまで受け入れてくれるだろうか

どこまでならさせてくれるのだろうか

風「っ」

そう考えた風は、ごくりと息を飲んで首を振ると

背中に回していた手で天乃の肩を掴み、離す
48 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/27(月) 22:55:15.84 ID:81CZPHo2o

風「……ごめん、ありがと」

本当はもっとしたい

叶うのならば、最後まで

けれど、天乃の体は天乃本人が言っていたように弱っていて

余り激しいことはできない

そしてなにより、夏凜が認めていない以上、じぶんはまだ、友人でしかないのだ

ここまでしておいて何を言っているのかと

内側の自分が不満をぶちまけるが、それでも、と首を振る

その風の表情は、悲しげで

天乃「……逆に、辛い思いさせちゃった?」

風「そんな、こと……あたしより、夏凜に悪いかなって」

天乃「……………」

風「だから、夏凜に、さ。話してから、続き。させて……許可がおりたらになるけど」

風はそう言うと、ベッドの上から降りて

少し罪悪感を抱く天乃に笑みを浮かべる

風「ここまでさせてくれただけで十分ありがたいって言うか、助かった。ありがとね」

そしてそのまま、足早に病室を出て行く

天乃「……それが、貴女の答えなのね」

夏凜が良いなら続きをやりたい

それはつまり、風もまた、受け入れてくれる。ということ

だからこそ、天乃は薄く笑みを浮かべて、唇に触れる

天乃「ここまでしたのは貴女が初めてなのよ? 風……私は……ううん、またね」

誰もいない病室。自分ひとりの病室

そこで天乃は寂し気に、独り言ちる
49 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/27(月) 23:01:33.53 ID:81CZPHo2o

√ 7月3日目 昼(病院) ※水曜日

01〜10 
11〜20 大赦
21〜30 
31〜40 
41〜50 瞳
51〜60 
61〜70 
71〜80 大赦
81〜90 
91〜00 夏凜

↓1のコンマ  
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/27(月) 23:01:48.92 ID:/HJ5xXPr0
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/27(月) 23:03:16.89 ID:wIRAZgWUO
ようやく来たか
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/27(月) 23:03:34.89 ID:KnTBrOQSO
おお
53 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/27(月) 23:12:13.37 ID:81CZPHo2o

淫らなのはうまくいかないですね……失礼しました
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



夏凜「なんで今日まで来なかったか、分かる?」

天乃「……禁欲は体に悪いわよ?」

夏凜「はっ、いきなり言い訳で来るとは言い度胸してるじゃない」

夏凜「あんたが浮気しないかどうかのチェック。それが私の目的……知ってんのよ。全部、この浮気者め」

天乃「私は浮気者じゃないわ。一妻多妻を夢見る夢想家よ」

夏凜「いやっ、そんなどや顔で言われても……」
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/27(月) 23:15:50.98 ID:/xYunP65O

久遠さんさすがだなww
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/27(月) 23:19:57.71 ID:wIRAZgWUO

いやはや本番なしで相変わらずのクオリティの高さ、流石です

そして次はいよいよ夏凛ちゃん…修羅場となるか否か
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/28(火) 03:25:18.27 ID:+xbxfR/4O

とうとう説得のターンか
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/28(火) 12:42:03.27 ID:SNEfWaheO
久遠さんを勝ち取るのか受け入れるのか、夏凛の判断に注目したいところ
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/28(火) 22:11:15.69 ID:8Cioa0bbO
樹ももんもんとしてるだろうな
59 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/28(火) 22:33:08.28 ID:bZ0zpMVXo

では少しだけ
60 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/28(火) 22:34:06.54 ID:bZ0zpMVXo

天乃「……暇ね」

昼間の検査を終えた天乃は病室に戻ってきてから、退屈そうに呟く

最悪を想定して集中治療室からはまだ出られないが

それも、今日までの話

明日になっても問題がなければ即日退院で自宅療養に切り替わる

そして、それでも問題なければ学校に登校させられるはずだ

天乃の体を考えているように思えるような流れだが

その実、それよりも生徒を抑えること、自分達の身の安全の確保が優先されているのだと

天乃は考えていた

一般の人々から見れば、それは捻くれた考えなのかもしれない

だが、久遠天乃としてはそう考えずにはいられないのだ

最も忌み嫌われ、恐れられているから。

天乃「!」

ふと、病室に近づく気配を感じて、目を向ける

扉は開かないし、ノックもない

だが、確かな気配を感じて「入って良いわ」と、声をかける

夏凜「……一昨日ぶりね」

天乃「夏凜……」

夏凜だった。罪悪感が滲み出る表情を庇うように逸らしていて

今までツインテールだった髪型はポニーテールに変わっているが

それでも、見間違えるはずのない、人
61 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/28(火) 22:37:06.07 ID:bZ0zpMVXo

夏凜「なんか悪かったわね、行き先くらいは言うべきだった」

天乃「ううん、別に気にしなくて良いのよ」

夏凜「けど……」

天乃「私は貴女の鎖になるつもりはないから」

夏凜が個人的な理由でどこかに行こうが

彼女であるのだとしても、制限をするつもりはない

会いにこないで何かをやっているのだとしても

それが夏凜にとって優先すべきことなら、非難はしない

けれど

天乃「……でも、心配は、する」

夏凜「……ごめん」

天乃「別に謝って欲しいわけじゃないんだけどね、ごめんなさい。なんか卑しい」

クスクスと、天乃は自分を嘲笑するように笑う

天乃は自分の言葉が、謝って欲しくないという割には

謝らざるを得ないものであること

鎖になるつもりはないと言いながら、縛りつけようとしているようなものだと自覚したのかもしれない

夏凜はそれは違うと言おうとしたが、それでは長引くことは明白で

堪えて言葉を飲み込み、通例通りに羅客用の椅子に腰掛ける
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/28(火) 22:38:35.11 ID:motEECWmO
何か訳ありのご様子で
63 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/28(火) 22:40:13.69 ID:bZ0zpMVXo

夏凜「特別何かしたってわけじゃないのよ。いつも通り鍛錬しただけ。まぁ、模擬戦の相手がいつもと違うって特例はあったけど」

天乃「へぇ、強い人?」

夏凜「強いって言うか、人間最強? 天乃でも、人間状態で相手するなんて真似は不可能でしょうね」

天乃「なるほど」

嘘をついている可能性、誤魔化している可能性は考えずに

天乃はほっと胸を撫で下ろすように息をついて、笑みを浮かべる

……たった一日で不安になって、たった一瞬でこんなにも安心する

天乃「…………」

恋をするというのはここまで弱くなってしまうものなのね……

それが分かっていても、抱くことを止められない

夏凜「……天乃?」

天乃「えっ?」

夏凜「ぼっとしてるけど、平気?」

物思いに耽っていただけなのだが、そんなことは露知らず

また体調でも悪くなったのかと、夏凜は心配そうな表情で顔を覗き込んでいて

天乃「う、うん……平気」

夏凜「紅くなっちゃって……熱出すわよ。馬鹿」

風との交わりのせいか、キスをするのかと、心が躍る

唇に、目が向かう

その気恥ずかしさに天乃が顔を伏せた瞬間、右頬に手が宛がわれて

天乃「ん……」

思わず反射的に目を瞑ったが、しかし、キスされることはなかった
64 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/28(火) 22:43:10.44 ID:bZ0zpMVXo

夏凜「……ここにくると、したくなる」

天乃「……………」

夏凜「でも、風に聞いたわ。昨日は体調崩したんでしょ? なのに、今日は平気だった」

それもまた風から聞いたのだろう

夏凜は悲しげに言うと、天乃の頬を手放して

乗り出していた体を引いて、椅子に座り直す

きぃっと、小さな金属音が医療機器の機械音に挟まる

天乃「それは……違うわ。関係ない」

夏凜「どうだか。結果が出てる以上は、それが真実じゃないの?」

天乃「違うわ」

夏凜「違わないわよ。だから昨日は体調を崩した。今日は平気だった。違う?」

天乃も夏凜も相手を見ない

そして、互いに自分自身の手を強く握り締める

それは、互いにほかの事を言いたいから

ほかのことをしたいから

けれども、夏凜はそれをすることが出来ない

なぜなら、それをしたらまた、天乃が体調を崩すかもしれないからだ

相手を思うがゆえに、二人は相手を見ることが出来なかった
65 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/28(火) 22:48:28.82 ID:bZ0zpMVXo

夏凜「来なかったのは、それが理由」

鍛錬に向かったのだってそう

手持ち無沙汰に暇でいたら、きっと寂しさを感じてしまう

きっと、思い出してしまう。きっと、求めてしまう

だから、自分自身を痛めつけることを目的として模擬戦を頼み、当然のように滅多打ちにされて

そして、迷いを看破された。思惑を見抜かれた

夏凜「………」

夏凜は唇を噛むと、顔を上げて天乃を見る

瞳には強い意志を宿しながら

夏凜「……天乃、私から言っておいて最低だとは思う」

天乃「! 待って」

夏凜「答えてもらってからで最低だと思う」

天乃「待って、夏凜!」

すぐに気づかれたことに驚きはなかった

天乃ならすぐにでも気づくだろうという、信頼があったから。

だから、天乃が嫌そうな顔をしていても

天乃が悲しそうな顔をしていても

夏凜は戒めるように強く握りこぶしを作って、続ける

夏凜「でも、無かった事にして欲しいのよ。天乃……ううん、無かった事にするわ」
66 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/28(火) 22:52:16.94 ID:bZ0zpMVXo

天乃に頼むような形ではなく

そう決めたことを告げるだけの言葉

天乃「待ちなさいって言ってるのよ。三好夏凜」

しかし、天乃は青き焔の光のような静かな怒りを感じる声色で言葉を紡ぎ、瞳を向ける

赤い瞳、橙色の瞳

穢れてくすんだ瞳と澄んだ瞳

その二つを受けて夏凜は思わず眼を逸らして

夏凜「私に拘らなくたって、あんたなら、すぐに相手が出来るでしょ……」

諦念を強く感じる夏凜の表情、声、言葉

対する天乃はギリッと歯軋りが聞こえそうなほどに強く歯噛みする



1、しないなら、してしまおうか、くちづけを
2、ええ、出来るわよ……東郷だって、風だって、沙織だって、五木だって、いるんだから
3、ふざけないで
4、いやよ……嫌、私の一妻多妻計画は貴女が欠けてはダメなの!


↓2
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/28(火) 22:52:41.86 ID:jylkJP2mO
4
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/28(火) 22:52:53.93 ID:8Cioa0bbO
1
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/28(火) 22:52:57.73 ID:motEECWmO
3
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/28(火) 22:54:40.36 ID:ImC0ianI0
悪五郎のアドバイスが吉と出るかどうかだな
頼むぞ悪五郎
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/28(火) 22:55:56.63 ID:/1X5+gwq0
4
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/28(火) 22:56:48.62 ID:VrmgJP5oO
そういやそんなのあったな
ガチで忘れてたわ
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/28(火) 22:57:58.87 ID:VrmgJP5oO
あれID変わってる
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/28(火) 23:01:25.27 ID:8Cioa0bbO
まああの場拒否したしな
75 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/02/28(火) 23:16:42.36 ID:bZ0zpMVXo

では、短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



夏凜「私に拘らなくたって、あんたなら、すぐに相手が出来るでしょ……」

天乃「馬鹿なこと言わないで」

天乃「人が星の数ほどいようが、その個所に当てはまるピースは一つ。貴女だけしかいない」

夏凜「っ……」

天乃「そう。何を隠そう私のハーレムパズルはこだわりぬいた至高の一品よ」キリッ

夏凜「嗜好の一品でしょうが――って、隠してないしその顔止めろ!」ダンッ
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/28(火) 23:19:38.26 ID:swiQLD4NO

夏凜のメインヒロイン感は異常
1周目2周目ダメでハーレムルートでもダメってかわいそすぎるからなんとかなってほしい
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/28(火) 23:22:02.14 ID:8Cioa0bbO
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/28(火) 23:22:41.51 ID:motEECWmO

夏凛ちゃん…どうにか幸せにしてあげたい…
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/01(水) 21:25:01.49 ID:rGRAhmL1O
つーか夏凜ポニテになってんじゃんやったー!
80 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/01(水) 22:17:40.16 ID:o2AMOWDvo

では、少しだけ
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/01(水) 22:19:22.20 ID:9/66Ky05O
ばっちこい
82 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/01(水) 22:29:39.72 ID:o2AMOWDvo

夏凜「っ!」

ほんの一瞬だった

気落ちしているとはいえ、夏凜でさえ反応できないほどに、素早く

天乃は夏凜の胸倉を掴み、引き寄せ、唇を重ねる

それは、感情を押し付けたものだからか、痛みがあった

唇を挟んで、歯がぶつかる。重なるというよりも、押し潰すキス

互いにとって優しさも温もりもない

意味があるのかさえ不確かな接吻は短くも長い刹那の繋がりを終えて

夏凜「ばっ――」

天乃「貴女は私を傷つけたくないって言った……」

夏凜「っ、……そうよ」

馬鹿じゃないのか、ふざけてるのか、危険なのに

そう怒鳴ろうとした夏凜だったが

目の前にある天乃は顔が俯きがちな上に、前髪が影を作っていて見きれず

声は怒りか悲しみか震えていて

夏凜は多少に収まらない罪悪感を持って、怒りを飲み込み、そして自分の言葉を覆さずに肯定する
83 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/01(水) 22:32:31.75 ID:o2AMOWDvo

それが正しいと信じて

それこそが互いのためになると思って

天乃には生きていて欲しいのだ。苦しむことなく、辛い思いをすることなく

たとえ、傍にいるのが自分ではないのだとしても、夏凜は天乃が苦しまず幸せになれるだろうと――だが

天乃「だから、離れるって言う?」

夏凜「……そう」

天乃「ふざけないで!」

上がった顔、見せられた顔

そこには怒り以上の悲しみがあった

傷つけまいと遠ざけようとした彼女は

深く傷ついた事を表す流血のように、涙を零していた

天乃「貴女にとっての私は……久遠天乃は、この体だけでしかないの? 貴女はこの体だけ守れればいいの?」

夏凜「っ」

天乃「だったら私の邪魔しないで……力を使い果たしたって体は残るんだから……それで満足しなさいよ」

なんで力を使うことを拒むのか

なんで犠牲になることを阻むのか

体だけが欲しいなら

その程度のものなら、邪魔をしないでくれと、天乃は怒鳴る
84 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/01(水) 22:34:21.99 ID:o2AMOWDvo

みんなが無事を願うから

みんなが共に在ることを望むから

だから、自分の不安を信頼で押さえ込んででも戦いから退こうとしているのに

なのに、それなのに

体の為に心を諦めるのなら、戦ったっていいじゃないかと……

天乃「…………」

暴論だ。最低な言葉だ

天乃はそれを分かっていながら、耐え切れずに吐露する

今までの天乃なら適当に誤魔化して押さえ込めたはずだが

それを出来なかったのは弱くなったから――ではない。

どうしても手放したくないからだ

それはやはり――恋ゆえに。

天乃「体だけが欲しいなら……好きだなんて。言わないでよ……」

夏凜「……」

無かった事にしたい。すると言った言葉

だが、どれだけ覚悟を決めようと、決意しようと、忘却に努めようと。

心に染み渡った言葉は拭えない

そしてそれはやはり――愛ゆえに。
85 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/01(水) 22:37:46.23 ID:o2AMOWDvo

夏凜「……私じゃなくたって、人はいるでしょ」

天乃「どれだけ沢山の人がいても。三好夏凜は貴女だけ」

先ほどまでの怒気の篭った声色ではなく

穏やかな声で、優しい声で

胸倉を掴む手は砂の城に触れるような静けさで夏凜の頬を包み、引き寄せて――唇を重ねる

痛みのないキス。感情ではなく想いを紡ぐ交わり

それはすぐに離れて、視線が交錯する

天乃「私が恋した三好夏凜は――貴女だけ」

天乃はそう言うと、夏凜の頬を手放し、笑みを浮かべて

天乃「怒鳴って悪かったわ。貴女も考えて、悩んで、決めたことなのにね」

だから卑しいのよ。と、

天乃は自分自身を嘲笑して、俯いた視線の先

自分の右手を左手で握り締めて、言葉を絶つ

天乃「だけど……これだけは教えて」

夏凜「なに?」

天乃「自分の行為が私を傷つける辛さは、私を手放す寂しさよりも上?」

夏凜「そんなの……」

決められるものか。と、思う

はっきり言って、どっちも辛い話だ。いやな話だ

だが、どちらかといえば――死ぬ可能性がある前者は我慢できる話ではない
86 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/01(水) 22:41:12.64 ID:o2AMOWDvo

だから、夏凜はごくりと生唾を飲み込むと

天乃の手を見て、滑らかに視線を上へと上らせて、沈みかけの顔を見る

夏凜「体が多少疲れるって程度なら、あっそう、じゃぁ明日は世話するからやるわよ。なんて言えるけど」

でも、血を吐くようなことになるとか

ICU利用が長引くなんていうレベルならば言えるはずがない

そこまで重症にさせるくらいなら、気持ちを押し殺す

そうすれば、自分とではないのだとしても

元気な姿を見ることが出来るから。幸せな姿を見ることが出来るから

それは、夏凜にとって確かに辛いことだ

けれども、夏凜は思う

夏凜「何にしても代償は付き物でしょ。あんたの無事の代償がたまたま私のこれだっただけのこと。満開でもしたと思えば――安い」

いっそ、満開でこの気持ちが散華してくれればいいのに

そんな冗談にはならないことを思い、口を閉ざす

言えば怒らせる。これ以上感情を昂ぶらせるのは、悪手だ
87 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/01(水) 22:44:24.44 ID:o2AMOWDvo

要約してしまえば、結局夏凜は天乃の事が好きなのだ

手放そうとしているくせに、手放したくない

失わないために、手放そうとしている。愛ゆえに、恋ゆえに

好きだからこそ、守りたいと思う

たとえ自分の心が傷つくことになっても

相手の心を少しばかり傷つけるとしても

死なせるくらいなら、その程度の嫌がらせは躊躇う余地はないのだ

天乃「……でも、貴女と私は今日もキスした」

夏凜「不意をついて。ね……最低だわ」

天乃「でも、だから……これで明日体調を崩したら貴女の言葉が正しいと証明できる」

夏凜「逆に崩さなければ、私の言葉は間違っていたことになる」

夏凜は天乃の言葉に続いて、呟く

それは夏凜が先ほどから言っていること、やろうとしていることとは真逆にも拘らず

どこか、希望が篭った声だった
88 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/01(水) 22:51:05.70 ID:o2AMOWDvo

夏凜「……分かった。明日の朝まで保留にする」

ただし。と、夏凜は続けざまに声を張ると

天乃の左肩に手を当てて傾かせ、目を向けさせる

夏凜「我慢したら承知しないわよ。そんなのが必要なら問答無用で別れるから」

天乃「……九尾の幻覚使えば誤魔化せるけど」

夏凜「ふざけんじゃないわよ」

天乃「分かってる」

かすかに怒りを感じる声だったが

天乃はそんなことも気にせずに笑みを浮かべる

優しい笑顔。子を見る母親のような慈愛に満ちた笑み

天乃「分かってるわ。夏凜。大丈夫よ。そんな心配しなくても、私は貴女の想い一つで壊れるつもりはないもの」

だからこそ、夏凜は自分が抱き寄せられたことに気づかなかった

目が天乃の笑みに釘付けで

その手の動きにまったく反応できなかったから。
89 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/01(水) 22:53:43.13 ID:o2AMOWDvo

夏凜「…………」

けれども、抵抗する気はなかった

もしかしたらこれが最後かもしれない

しかし、最後ではないかもしれない

諦めるつもりだった気持ちが片足を乗せた不気味な船が沈むか否か

その結果を見るまではまだ、自分は続けることが出来る

夏凜「……これなら沈んでもいいけど」

天乃「何か言った?」

夏凜「いや、なんにも」

布擦れは少しばかり不快ではあるものの

そんなことがどうでも良くなるような柔らかい感触を顔に感じる

緩んだ顔はもはや泥舟以下の脆さだが、仕方がないのだから仕方がない

しかし、ふと気になった夏凜は

埋めるように鼻を押し付けると、すんすんっと、匂いを嗅ぐ

夏凜「汗臭く……は、ないのね」

天乃「臭うほうが好き?」

夏凜「そんな特殊な頭してないわよ。っていうか、仮にそうだって言ったらどうするのよ」

天乃「ちょっと引く」

夏凜「おい」
90 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/01(水) 23:02:07.22 ID:o2AMOWDvo

天乃「流石に臭くなる努力なんてする気にはなれないし」

仮に。という言葉が建前などではないことを確信しているからか

天乃はそれを冗談として笑いながら、続ける

天乃「そんな事するくらいなら私自身の匂いを好きになって貰えるように頑張る」

夏凜「……どうしても無理って言われたら?」

天乃「斜め45度で――」

夏凜「止めろ」

天乃「ふふっ、冗談よ」

抱きしめる夏凜の頭を撫でながら、

天乃は夏凜に見えないままに声に出さず笑みを浮かべると

少しだけ強く、抱きしめて

天乃「こうやってぎゅーってする」

夏凜「ちょ……うま……」

天乃「それで臭いか、私か、選んで貰うしかないわよね」
91 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/01(水) 23:08:17.84 ID:o2AMOWDvo

むふふーっと

なぜだか自慢げに言う彼女に埋もれる夏凜は

息苦しさを感じない程度の隙間―ブラなしゆえの谷間―をしっかりと残していることに感謝しつつ身をゆだねる

触れれば触れるほど、失う惜しさがこみ上げてくる

だからこそ、願う

だからこそ、祈る

どうか、このまま無事にいてくれますように。と。だから――

天乃「今日は泊まっていってね」

夏凜「は?」

だから、聞き間違えたのかもしれない

素っ頓狂な声をくぐもらせながら聞き返すと

天乃は「無事かどうか見守ってもらわないと」と、言いつつ、

抱きしめる力を弱めて、夏凜を体から離すと、唇を重ねる

いつもと同じように浅い、だが、とても深い一瞬の接吻

艶かしい音を響かせることのないキスはある意味、美しい
92 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/01(水) 23:16:50.05 ID:o2AMOWDvo

魅了されたように呆然とする夏凜を真っ直ぐ見つめる天乃は

もう一度してしまおうかと考えて、首を横に振ると

天乃「見守る人を置くくらい、大赦も病院も許してくれるわよ」

そう言って、笑みを浮かべる

本来ならばそう簡単にいくわけがないのだが

天乃の体のことを考えれば、そばにいる人間はいた方が良い

そして何より、天乃の願いなのだ

それが不利益になる事ならばともかく、そうでないならば受けるべきなのは

大赦にとっては残念ながら―特例はあるが―ほぼ決まりごとのようなものになっている

というのも、機嫌を損ねたら恐ろしいことになる。というのは

穏健派も強攻派も共通認識していることだからだ。もっとも、それでも愚行を働くことはあるのだが。

夏凜「ま……まぁ、そう……ね。しょーがない。見ててやらなきゃいけないか」

言葉だけは不満そうだが、もちろん、そうでないことは明白で

けれども天乃は「お願いね」と、茶化すように言う

少しだけ蟠り―あったとも言えない―が解消された空気に、二人の苦笑が響いた
93 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/01(水) 23:24:37.13 ID:o2AMOWDvo


√ 7月3日目 夕(病院) ※水曜日

01〜10 
11〜20 大赦
21〜30 
31〜40 
41〜50 友奈
51〜60 大赦
61〜70 
71〜80 樹
81〜90 
91〜00 東郷

↓1のコンマ  
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/01(水) 23:24:44.99 ID:9/66Ky05O
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/01(水) 23:26:29.10 ID:3g2GOXunO
これはwww
96 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/01(水) 23:41:12.13 ID:o2AMOWDvo

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から

気づいたら非安価という問題




風(勇者部四天王が一人、東郷よ。あの空気を壊すのだ!)

東郷(御意)

樹(頑張ってくださーい)

友奈(……止めた方が良いんじゃないかなぁ)
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/01(水) 23:43:33.23 ID:3g2GOXunO

ここで東郷さん混じえて例の計画について話すのもありか
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/01(水) 23:51:08.18 ID:9/66Ky05O

この流れでハーレムの件とか話したら夏凜ちゃんすごく傷つくだろうなあ…
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/02(木) 00:01:24.76 ID:seL5gyqXO

話すタイミング難しいな
対面した流れによって判断ってとこか
100 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/02(木) 22:36:15.31 ID:1bzV8Uvko

では、少しだけ
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/02(木) 22:37:13.55 ID:YYVKh3DBO
はいよ
102 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/02(木) 22:44:39.55 ID:1bzV8Uvko

夏凜「もう夕方……?」

天乃が夕方の検診を終えてようやく、夏凜は思い出したように呟く

時間をまったく気にしていなかったのが一番の理由かもしれないが

集中治療室には窓はあっても外の様子は伺えない

それゆえに、時間感覚が乱れてしまうのだ

夏凜「…………」

……まぁ、それだけじゃないんだろうけど。

夕方だという言葉に同意して笑みを浮かべる天乃を一瞥して

夏凜はばれないように苦笑する

以前は馬鹿にした誰かの【幸せは一瞬という圧縮フォルダの中】という言葉は

全てではないにせよ、間違ってはいなかったのかもしれない

そんなことを考えられるくらいには落ち着いてきた夏凜は

自分の頭の中でやるべきことを思い返して、「あっ」と、声を漏らす

天乃「なに?」

夏凜「いや……」

最重要というわけではないが気になることがあったのだ

夏凜「あの――」

それを遮るようにノックが二回

東郷「こんばんは」

そして、昨日も来た―連れ去られてきた―東郷が

今度は自らの意思で、病室に入ってきた
103 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/02(木) 22:47:51.31 ID:1bzV8Uvko

天乃「あら、いらっしゃい」

東郷「今日は夏凜ちゃん来ていたんですね」

天乃「東郷は聞いてなかったの?」

東郷「はい。夏凜ちゃん。何も言わないで居なくなってしまったので」

東郷はそのときのことを思い出して、困ったように笑みを浮かべると

先生にもいわずに。と、続ける

朝に話した時からいくべきかどうか迷っていた様子だったが

1時間目を終えてすぐ教室を出たかと思えば、戻って早々に身支度を整えて早退してしまったのだ

一緒に居た友奈は東郷に対して「きっと会いに行ったんだと思うよ」と

嬉しそうにしていたが、大赦関連のことではないのだろうか。と

東郷としては不安だった

しかし、蓋を開けてみれば見舞い―逢引き―で、東郷はふふっと笑みを浮かべて胸を撫で下ろす

大赦関連の問題ではなかったこともそうだが

夏凜が天乃に会いに来ているというのが、心穏やかにする

夏凜「悪かったわね……気になったことがあったのよ」

東郷「気になったこと?」

夏凜「そっ、朝に天乃のところに行くって風から連絡あったんだけど、来たのは一限が終わってからだったのよ」

天乃「…………」

天乃は風が病室を出て以降は、何をしていたのかは分からない

けれど、自分が原因であることはほぼ確定なため

天乃は無意識に、そっと目を逸らす
104 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/02(木) 22:54:37.93 ID:1bzV8Uvko

東郷「それで、夏凜ちゃんは久遠先輩が心配になったのね?」

夏凜「心配って言うか……まぁ、考えも纏まってたから」

赤らめた頬を指で掻きながら、夏凜は呟き程度に答える

もっとも、考えたことを実行するか否かは

明日の朝まで持ち越しになってしまったのだが。

東郷「それで、久遠先ぱ――久遠先輩?」

天乃「な、なにかしら」

東郷「……………」

黙々と目を逸らしていただけなのに

東郷は何かを察したようにいぶかしげな目を向ける

じーっと、じーっと。沈黙を身にまといながら。

天乃「なに?」

東郷「あの……まさか。とは思いますが……」

東郷は口には出していないが、目が言いたいことを雄弁に語る

普段なら放課後に部室で風達と会っている東郷だが

今回は部室には寄ることなく、友奈に言伝のみを頼んでここに来たため

風が遅刻したことを、東郷は知らなかったのだ

それゆえに、天乃の反応と合わせて、考えて

まさか、風先輩にも手を出したんですか? と。言いたげに見つめていた
105 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/02(木) 22:59:28.18 ID:1bzV8Uvko
天乃の計画を成就させるのなら、やはり風も断られない限りは囲っておくべきだから

それ自体は非難できる事ではない

しかし、だ。今目の前に居るクラスメイトへと目を向けた東郷は

小さくため息をつくと、天乃へと目を向ける

天乃「そんな顔されても」

東郷「……ダメだった場合のこと、考えてます?」

天乃「一応」

東郷「なら、良いんですが……」

いや。良くない

そう思いつつも、よこしまな野望を抱いているくせに

純粋無垢に困り顔されては、言葉にしにくかった

その二人に置いてきぼりを食らう夏凜は

なんなのよ。と、話に割り込んで

東郷「…………」

東郷の瞳が、天乃を刺す



1、実は、夏凜……私、一妻多妻を目指そうと思うの
2、夏凜は、私が他の女の子にも手を出してるのは、嫌?
3、それで、風はどんな様子だったの?
4、夏凜は一夫多妻ってどう思う?
5、そういえば、暴動の件は?
6、ごめんね、夏凜。私……先祖が八岐大蛇だから八股しないとダメな呪いにかかってるの
7、そ、そういえばー、新しい精霊が増えたのよねー


↓2
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/02(木) 23:00:16.31 ID:j4J7pZI0O
7
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/02(木) 23:00:25.59 ID:I0w0TCF70
4
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/02(木) 23:00:32.10 ID:YYVKh3DBO
2
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/02(木) 23:00:39.52 ID:seL5gyqXO
1
110 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/02(木) 23:09:24.23 ID:1bzV8Uvko

では、短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



天乃「夏凜は、一夫多妻ってどう思う?」

夏凜「知らないわよそんなの。私は出来ないしやろうとも思わない」

天乃「どうして思わないの?」

夏凜「どうして、って……いや、そんなの私がそう言う意味で好きなのはあんただけだからだけど」

東郷(他にもいる場合は、どうなのかしら?)
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/02(木) 23:11:36.14 ID:seL5gyqXO

とうとうこの時が来たか
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/02(木) 23:19:48.64 ID:YYVKh3DBO

夏凜ちゃんが納得しなかったらみんな身を引くことになるのかな
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/03(金) 02:41:08.42 ID:/tNYSaIbO

なんとかなるさ
114 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/03(金) 22:50:59.25 ID:9Qtkti4Fo

では、少しだけ
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/03(金) 22:51:36.84 ID:u7SX0tXlO
あいあいさ
116 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/03(金) 22:52:07.62 ID:9Qtkti4Fo

東郷の視線を見返すことなく

ただ純粋に疑問符を浮かべる夏凜へと、天乃は目を向けた

夏凜「なに?」

天乃「ちょっと気になることがあって」

夏凜「何かあった?」

天乃「そう言うわけではないけど……」

天乃の気になること。というのが

何か恐ろしいものなのかもしれない、危険なものかもしれない

そう思ったのだろう。体を一瞬だがこわばらせた夏凜に、天乃は努めて穏やかに否定する

完全に個人的なことだ

もっとも、不安の種であるのは変わらないかもしれないが。

天乃「夏凜って、一夫多妻とか、どう思う?」

夏凜「は?」

天乃「だから――」

言いかけた天乃を手で制し、夏凜は「それは分かってる」と困惑した様子で首を振る

夏凜が思わず間の抜けた声を漏らしたのも仕方がないことだ

天乃自身が危険なことではないと否定したとはいえ、

天乃が気になること、というのがそんなものだったのだから
117 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/03(金) 22:54:40.29 ID:9Qtkti4Fo

夏凜「一夫多妻……ね」

天乃「ええ」

夏凜は神妙な面持ちで繰り返して、考え込むように自分の下唇に触れる

夏凜の答え次第で風や東郷にしてしまったことは取り返しのつかない罪になる

風や東郷達だけでなく、夏凜に対しても……

ゆえに、天乃の行動は軽率だったのだと、見守る東郷は苦悶の表情を浮かべ、息を飲む

そして夏凜の視線が東郷へと流れていく

夏凜「……なんでそんなこと聞いてくるのかは、大体想像つく」

東郷「…………」

夏凜「で、私がどう思うか。だっけ?」

天乃「そう、なんだけど……」

夏凜には酷いことかもしれないが

もう少し慌てふためくかもしれない

激高さえ、するかもしれない

そう思っていた天乃は、夏凜が冷静である方が助かるのだが

逆に奇妙にも思えて、緊張する

冷静沈着、ゆえの鋭利さがあるからだ
118 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/03(金) 23:03:34.41 ID:9Qtkti4Fo

夏凜「…………」

考えなかった。といえば、嘘になる

天乃に自分の気持ちを告げる以前から、

天乃は男女関係なく恋愛的な告白をされていたし

それに対して、「馬鹿じゃないの」と言いたくなるほど真剣に考えているのも

きっと、みんなと比べれば一番近くで見てきたから

だから、一人だけじゃなければ悩まなくて済むんじゃないか

いっそ全員選んでしまえば良いんじゃないか

そう思って、考えて……

夏凜「天乃は、どう思うのよ。東郷は?」

東郷「私は……」

たずねて、答えを先延ばしにする

参考にする気はない。自分の意見は必ず言うようにすると決めている

それは、天乃に告白した時から

もしかしたら、それよりも前からの、自分の在り方

それでも、東郷の意見を聞きたいと思った

この場に居る時点で、あの言葉に驚いていない時点で

それは聞くまでもないことかもしれないが
119 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/03(金) 23:12:29.90 ID:9Qtkti4Fo

東郷「私は……夏凜ちゃんには悪いけど。賛成」

夏凜「……でしょうね」

東郷「正直に言うと、もし私が選ばれていたのだとしても、賛成。する……と、思うわ」

暗い道、壁に手をつきながら歩いているかのような

迷いながら迷っていない言葉を聞いた夏凜は

表情を変えることなく瞬きして、天乃を一瞥する

天乃「わた――」

夏凜「私は、そうね……まぁ、多分、東郷は私が考えてること分かるんじゃない?」

東郷「私が夏凜ちゃんの立場なら。私が私の立場なら」

東郷の答えになっていない言葉に夏凜だけが肯定して頷く

そして

夏凜「私は、出来るならそれでも良いって思ってるわ。天乃」

天乃「良いの……?」

夏凜「天乃が見出した苦渋の選択とか、強制されたことじゃないなら。私はそれでも良いと思う」

夏凜はどこかおどけたような笑みを見せた
120 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/03(金) 23:22:50.31 ID:9Qtkti4Fo

体がボロボロになるまで頑張ってきた人生

もう、いつ死んでもおかしくないような状態

そこまで世界に尽くしてきたことの報酬としては【一夫多妻】など、おつりが来ても良いくらいのものだと

夏凜は苦笑する

そもそも、今ここで命があるのは

先の戦いでもそうだが、体を張ってくれたからこそで

そう考えれば、命を助けてくれたご恩に〜などといっても良いかもしれない

夏凜「それで、あんたは幸せになれるんでしょ?」

天乃「夏凜は、嫌じゃないの?」

夏凜「どこぞの馬の骨が紛れ込んでるならともかく、風だの東郷だのなら別に」

どうせもう手は出したんでしょ?と夏凜は続けて

驚く二人を見つめて呆れたように息をつく
121 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/03(金) 23:39:51.12 ID:9Qtkti4Fo

夏凜「それに天乃を独り占めするよりは、互いに幸せになれるでしょ」

天乃「そんなこと――」

夏凜「ある」

トンッっと、俯きかけた天乃の額を夏凜は小突く

長く見てきた自負はない

完璧に理解できている自信もない

それでも、夏凜は思うのだ

夏凜「振ったら終わり。勇者部は特に、そう言う見捨て方を出来る性質じゃないでしょあんたは」

天乃「…………」

夏凜「我侭になりなさいよ。この程度の我侭ならいくらでも受け入れてあげるから」

ここまで、命を懸けて尽くしてきてくれたのだ

だからこそ、天乃のそんな我侭に嫌悪感は沸かない

次から次へと手を出す手癖の悪さというべきか……そう言うのは

もちろん、常識の範囲内に留めて欲しいとは思うが。
122 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/03(金) 23:43:21.75 ID:9Qtkti4Fo

夏凜は余りにも簡単に受け入れていて

天乃は思わず呆気に取られて目をそらす

もう少し何か言われると思った

最悪、ダメだと言われることすら考えていた

なのに、夏凜はすんなりと許可し、笑みを浮かべている

強制はない、無理もない

全て納得した上での同意を示す夏凜に、天乃はなにも言えなくて

夏凜「……天乃」

天乃「!」

夏凜はそんな天乃の体を抱きしめる

抱きしめて、耳元に口を近づけて

夏凜「だから、みんなの我侭をさ。生きて欲しいって我侭を聞いて」

天乃「……………」

夏凜「……条件があるとしたら。それだけ」

夏凜の言葉を聴き、東郷へと目を向けると

その言葉を裏付けるように、東郷は頷いた



1、分かった
2、……どうせ、これ以上無理したら死ぬって宣告されたし、ないような条件だわ

↓2
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/03(金) 23:44:50.67 ID:jPQyAXbvO
1
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/03(金) 23:45:48.34 ID:/tNYSaIbO
1
125 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/03(金) 23:50:21.48 ID:9Qtkti4Fo

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/03(金) 23:53:49.08 ID:jPQyAXbvO

これは夜燃え上がりそうですねえ
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/04(土) 00:21:41.74 ID:0jwGQRxsO

あとは樹園子沙織(友奈)か
たしかにここらが限界だな
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/04(土) 03:48:50.09 ID:n1KY3u5xO

受け入れてくれるとは夏凜ちゃんマジ理解者だな
129 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/04(土) 22:31:23.48 ID:esUNzqVao

では、すこしだけ
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/04(土) 22:32:16.24 ID:zm0hGpyuO
よしきた
131 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/04(土) 22:48:06.41 ID:esUNzqVao


天乃「分かったわ」

天乃は一息つくと、夏凜と東郷を緩やかに見渡して、頷く

この様子だと、まだ聞いていないかもしれないが

天乃は次やれば最悪死ぬ。しかも高確率で

という忠告を受けており

元々、戦いは以前の予定通り、緊急用の補欠になるつもりだったのだ

だから、夏凜には申し訳ないが

天乃としてみれば得しかない取引だったと言えるだろう

東郷「今後は、私達もバーテックスに劣らぬよう、力をつけていきますから」

夏凜「今までも、これからも。だけど……」

東郷の言葉に続けて言った夏凜は

天乃の手を軽く握ると、笑みを浮かべる

照れくさそうな、困り顔だ
132 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/04(土) 23:06:48.71 ID:esUNzqVao

東郷がいる。だから、気恥ずかしいのかもしれない

手を出せないかもしれない

その天乃の視線を受けた東郷は、

穏やかにほほ笑むと、夏凜の後ろから天乃の手に手を重ねる

間に手を挟まれつつも

夏凜は無理に引き抜くことなく息を吐く

夏凜「私や友奈、樹は全力で頑張ってるわよ。東郷」

東郷「……その点では、おとるかもしれないわ」

夏凜達が頑張っていることは

友奈を通してしっかりと聞いている東郷は

自分の動くことが出来ない体を悔やみ、しかし

それが守ることの出来たあかしだと考え、天乃を一瞥して

東郷「ねぇ、夏凜ちゃん」

夏凜「なに?」

東郷「私は鍛錬積めないから、久遠先輩と一緒にいるわね」

夏凜「は、はぁ!?」

東郷「……冗談よ」

夏凜「冗談じゃないわよ!」
133 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/04(土) 23:20:01.35 ID:esUNzqVao

一夫多妻

一妻多妻の許可を出したとはいえ

自分が頑張っているときにそういうことをする。と

堂々と宣言されては、夏凜も腑に落ちない―純度100%の嫉妬―ようで

それを見た天乃と東郷は顔を見合わせて笑い声を溢したが

東郷はすぐに心を切り替えて

東郷「なら、夏凜ちゃん」

夏凜「なによ」

東郷「今から少しだけ……3人で触れあってみない?」

練習として。と

東郷はしっかりと付け加えて

夏凜は最初こそ戸惑いの色を浮かべていたが

天乃へと目を向けて、ゴクリと、喉を鳴らす

天乃「……いや、待って」

東郷「?」

天乃「えっと、疲れることは禁止。分かってるわよね?」

東郷「もちろんです」

――それならひとまず安心。なのだろうか


1、場の空気に流されてみる
2、体が無事になるまでは、待ってくれない?


↓2
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/04(土) 23:21:04.79 ID:YsMeaBpfO
1
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/04(土) 23:21:32.20 ID:0jwGQRxsO
1
136 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/05(日) 00:19:33.12 ID:JXzbQ5vUo

では、短いですがここまでとさせていただきます
明日もできればお昼頃から
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 00:26:10.04 ID:pIqFmPveO

東郷さんいいタイミングで来たな
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 00:26:20.45 ID:bG5RZ6vXO

いきなり3Pとは…
しかも許可したってことは風先輩以上の行為も…?

久遠さん体持つのだろうか
139 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/05(日) 17:16:56.78 ID:JXzbQ5vUo

では、遅くなりましたが少しだけ
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 17:28:23.45 ID:N46pRBBpO
了解
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 17:31:09.13 ID:6nlcay5cO
やったぜ
142 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/05(日) 17:32:01.80 ID:JXzbQ5vUo

天乃「せ、節度を守ってくれるなら……」

ちらりと夏凜へと目を向けると

夏凜は一瞬だけ目を合わせたが、すぐに逸らして「なんで私を見るのよ」と

なぜだか、不満げに漏らす

天乃「別に、夏凜が激しいとかそう言うわけではないのよ?」

夏凜「そんなの解ってるわよ……自分のことだし」

そう言いながら、夏凜は静かに天乃へと近づいて、唇を重ねる

滑らかに、乱れもなく優しいキスは一度つながると

すぐに離れて、また重なる

東郷は、その不慣れでありながら慣れているキスを横目に、そっと天乃の体に手を伸ばす

天乃「んっ」

東郷「ぁ、すみません……」

天乃「っふ……気にしないで」

キスを中断しつつ、東郷に声をかけた天乃は

言ってくれさえすれば平気だから。と、落ち込む東郷の頭を優しく撫でると

空いた右手で夏凜の頬を撫で、引き寄せるようにキスをする
143 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/05(日) 17:45:28.81 ID:JXzbQ5vUo

夏凜「っ、んっ……」

唇同士を押し付け合うと、互いの力から逃れるように唇は道を譲り

噛むことを恐れ開く口腔に、天乃は舌を忍び込ませ、絡める

夏凜「んっ、っ、ぁ……」

リードする予定だった。なのに、気づけば流されている

どこで覚えたのかもわからないキスの仕方に、感覚が解されていく

微かなざらつきと、ぬるりとした感触、仄かな甘み

味覚、触覚が天乃を染み込まされていく中で夏凜は天乃の手を掴むと

ベッドに押し返すように押し付けて、自分の体をゆっくりと、

慎重に踏まないようにと気を配りながら天乃の上に重ねる

天乃「っ、は……」

目の前に見える、夏凜の熱を持った表情

離れても十数センチしかない唇からは、透明の唾液が糸を引き、天乃の口元に滴る
144 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/05(日) 18:02:43.11 ID:JXzbQ5vUo

夏凜「はぁ、はぁ、やるじゃない」

天乃「別に、勝負してるわけじゃないけど……んっ」

話の途中だなどと関係ないかのように

夏凜は再び天乃と唇を重ね、東郷に横目を投げて手招く

しなくて良いのか。触れなくて良いのか

そう、誘うようなそぶりに、東郷は一度は怖気づいた心を震わせ、息を飲む

自分から言い出したことなのに

こんなところで見ているだけで良いのだろうか

東郷「…………」

良くない。何もよくない

ドキドキとする強い鼓動、ゆえの体の熱

一人でどうにかすることもできる

いや、今まではそうしてきたこと

けれど、それはきっと……あまりにも切なく寂しいもので
145 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/05(日) 18:19:50.65 ID:JXzbQ5vUo

東郷「久遠先輩、触り。ます」

声をかけ、返事を聞かないまま天乃の病衣の上から胸に触れる

申し訳程度のキャミソールと、病衣

それしかない隔たりは熱こそ控えめに思わせるが、

弾力は隠しきれない。そして、その中途半端な隔たりは

東郷の情欲を刺激する

東郷「ん……っ」

ゆっくりと病衣の襟に手を滑らせて少しずつはだけさせていく

天乃「んっ、ぅ……んくっ」

夏凜「ふ……んっ、んちゅ」

上の方から聞こえてくる、ぬちゅりとした淫靡な音

それに導かれるように露になった白い布をかけられただけのような乳房

その先端はキスと緊張、高ぶりゆえか、僅かに存在を主張していて

東郷は強い欲求を体に感じたが、しかし、勢い任せに手は伸びなかった

針穴に糸を通すかのような緊張感と慎重さ、繊細さ

それをもって、隆起する乳首に人差し指の腹をかけ、織り込むように力を加える
146 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/05(日) 18:35:29.97 ID:JXzbQ5vUo

天乃「んっ!」

びくっと天乃の体が反応して、東郷は慌てて手を引いたが

しかし、興味は尽きず今度は人差し指と親指で抓む

天乃「んっ、ぅ……ふ……」

夏凜と繋がっているから声は殺されている

なのに、その声が触れる前よりも微かに熱を帯びているように感じた東郷は

左手で右の飛ぶ差を撫でるように揉み、右手で乳頭をキャミソールの生地で擦る

東郷「……感じ、ますか?」

天乃「んっ、ぅ、ぁ……んっ!」

強く摘まめば、ひときわ大きな反応を示す

それを見た夏凜と東郷は、一つ目の弱点なのだと

言い換えれば、敏感な場所だと記憶して笑みを浮かべる

天乃「っは……ぁ……はぁ……」

唇を開放すれば、零れる吐息

それはとてっも熱っぽく、見える瞳は潤んで輝く

口元から知ったる唾液はどちらのものなのか分からないが

しかし、ベッドに倒れたまま、胸を上下に揺らす姿は、妖艶で

夏凜と東郷は同時に、喉を鳴らした
147 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/05(日) 18:47:23.10 ID:JXzbQ5vUo

天乃「はぁ、はぁ……んっ」

東郷「っふ……夏凜ちゃんより不得手ですが」

天乃「んんっ」

唇を舐めるように先行した舌が、にゅるりと潜り込んで

閉じようとした唇は遅れて触れた東郷の唇が押し広げて、揉み潰す

舌の周囲を調べるようにぐるりと舐めながら、唇で唇を咥え

柔らかすぎない程よい肉質の唇を甘噛みする

東郷「んっ……んちゅ……ん……」

呼吸は断続的に行う。でなければ、息が続かない

それが分かっていても、強力な接着剤に繋がれたように離れがたく、

天乃「んっ、ぅ……んっ」

しかし、くちゅり、にちゅりと淫らな音を立てながら、離れ息を吸い込み

そのまま時間を置かずに唇を重ね、天乃の呼吸を飲み込む
148 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/05(日) 18:54:57.52 ID:JXzbQ5vUo

天乃「んっ、んく……っ!」

口腔を東郷に支配され、弄ばれる感覚

ぬるりとした中にある、微かなざらつきの絡まり

自分の意思とは無関係に舌がふれあうことを求め、

呼吸のために離れようとした東郷の舌に絡みつく

東郷は驚きつつも受け入れ、包み込むようにまた、キスをして

そんな、心地よさに埋もれていく天乃を

さらに強引に押さえつけるような感覚が、胸元から電流のように迸って

天乃は思わず、東郷の体に抱き着く

天乃「っは……はっぁ……ぁ……?」

びくんっと強く震えたことで、東郷も離れ

快楽の根源であろう夏凜へと、目を向ける

夏凜「ちょっと、きつかった?」

天乃「かり……それ……」

キスの連続で上手く回らない舌で何とか言葉を紡ぐ

夏凜の手は、露出させられた胸をわずかに歪ませていて

ぷくりと立つ桃色の突起は夏凜の唾液で艶かしく光っている

夏凜は咥えたのだ

それだけでなく、赤子のように味わった。時には、甘噛みした

溶けゆくアイスを潰さないような優しさで。
149 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/05(日) 19:09:19.36 ID:JXzbQ5vUo

天乃「ま、待って……待って。夏凜」

夏凜「ん?」

一人との行為は何度かやった

キス止まりがほとんどで

その先に足を半分ほど踏み入れた行為なら、一度だけ。だが

それでも、天乃の経験上なら二人相手でも大丈夫かもしれないと思っていたのだ

だが、そんなことはなかった

片方だけに集中する余裕がないのだ

キスだけをしているなら、完全に浸ることはないし攻勢にも出られる

しかし、キスをしながら胸をまさぐられ、

それ以上のことをされると、感覚を上回った感覚が流れ込んで来るため

どうにも、考え事が出来なくなりそうで

天乃「二人相手は、その……」

夏凜「何言ってんのよ。まだ序盤の序盤だってのに」

天乃「えっ?」

東郷「そうですよ。本当なら、ここから私と夏凜ちゃんもより強く絡み合うんですよ?」

天乃「う、嘘……」

夏凜「大体、どれだけ囲うのか知らないけど。勇者部だけでも園子抜いて5人、沙織いれて6人。園子いれて7人」

夏凜は呆れたように言葉を並べて

天乃「ひゃんっ」

天乃の耳元に口を近づけると、耳たぶをぱくりと咥える

東郷「その全員の相手する可能性もあるんですよから。二人程度でリタイアされては、困ります」

天乃「んっゃ……」

自分の選択はみんなにとって間違いではなかっただろう

だが、自分にとって本当に正しかったのか

押し寄せてくる悦楽の波に、考える隙は与えられなかった
150 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/05(日) 19:11:19.18 ID:JXzbQ5vUo

短いですが、少し中断
遅くても21時には再開します

二人以上の交わりは初めてなのでやや不足……鍛えておきます
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 19:12:13.17 ID:9rvivezqO

いやすごいよかったよ
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 19:20:39.28 ID:6nlcay5cO
一旦乙
二人だとさらに濃厚になりますな
できれば後々単独回もあるといいなあ
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 19:26:02.10 ID:P2Axpyd2O

これで自己満足してないのが凄いよなぁ…
確かに単独も見たいね
154 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/05(日) 20:57:43.61 ID:JXzbQ5vUo

では、再開します
155 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/05(日) 21:23:18.20 ID:JXzbQ5vUo


√ 7月3日目 夜(病院) ※水曜日


※東郷美森も残留を希望しています


1、残す
2、帰らせる

↓2
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 21:24:20.71 ID:6nlcay5cO
1
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 21:24:25.68 ID:IXoyIY660
2
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 21:25:57.47 ID:thei1FvtO
1
159 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/05(日) 21:33:23.04 ID:JXzbQ5vUo



√ 7月3日目 夜(病院) ※水曜日

01〜10 
11〜20 大赦
21〜30 
31〜40 九尾
41〜50 
51〜60 大赦
61〜70 
71〜80 
81〜90 歌野
91〜00 

↓1のコンマ  
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 21:33:46.11 ID:6nlcay5cO
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 21:36:11.79 ID:1QTIZBtsO
九尾とばったり会ってどんな反応すんのかも見たかったわww
162 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/05(日) 21:51:35.66 ID:JXzbQ5vUo

「どうも、ご無沙汰しております」

天乃「ご無沙汰って……貴方ね」

先日来た大赦の男性は、相変わらずの笑みを携えて、やってきた

もう、夜だと言うのに。

その来訪時間ゆえ、夏凜は敵意のある目を向けつつ

天乃を庇うように、前に進み出る

夏凜「どういうつもりよ」

「どうもこうも、お見舞いですよ」

夏凜「はっ、この時間に? 知り合い程度でしかなさそうな人が?」

普通なら、面会時間はとうに過ぎており

ここに来ることなど不可能だ

だが、大赦の人間ならばその程度の融通ならきかせられる

だから、それ自体に夏凜は何も疑問はない

不可解なのは、なぜ。こんな時間に来るのか。だ

時間がなかったと言われればそれまでだが

こんな時間でもくる必要がある要件があるという可能性が高い
163 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/05(日) 22:27:43.79 ID:JXzbQ5vUo

「私としましては、三好様がいらっしゃることの方が、疑問ですがね」

夏凜「何言ってんだか……聞いてるくせに」

「まぁ、伺っておりますが」

不敵な笑みを浮かべる男性は

すぐ近くにある折りたたまれた椅子に触れようとしたが

夏凜の殺意にまで思えそうな視線を受けて、手を上げる

そしてやはり、笑みを浮かべる

「元々、長居するつもりはありませんし、構いません」

天乃「……それで?」

「はい。予定通り、明日の昼には自宅療養に移っていただきます」

天乃「………そう」

「それと、これは我々も想定外なのですが……」

男性は困り果てた表情でため息をつく

「久遠様のご友人が同行されたいと」

天乃「友人? 勇者部。ではなく?」

「流石、目敏い」

皮肉のようにそうつぶやいた男性は

ええ、そうです。とほほ笑み頷いて

「正しく言えばクラスメイトの方です。当然、伊集院様でもございませんよ」
164 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/05(日) 22:43:07.05 ID:JXzbQ5vUo

天乃「……また、あの子たちは」

どういう経緯でそんなことになったのか

大体の想像が付いた天乃は男性の前であることも厭わずに、苦笑する

その笑みは年相応に少女らしく

夏凜は愛らしさを感じ、しかし、

その緩みかけた気を引き絞って男性へと目を向ける

その程度の連絡ならば、わざわざこの時間でなくても良いはずだ

そう、思ったから。

それは天乃も一緒だったらしく

夏凜が口を開きかけた瞬間、背後から「それで?」と

再び問う声が聞こえた

天乃「それだけを言うために、ご足労頂いたのですか?」

「……緊急の要件が一つ」

彼はそう言うと、笑みを崩し

男性には申し訳ないが、不釣り合いにまじめな瞳で

天乃をしっかりと見つめる

そして、告げたのは

次回の戦闘では園子を出すことが出来ない事

そして、また再び、戦いが近づいてきている。ということだった
165 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/05(日) 23:03:05.16 ID:JXzbQ5vUo

「襲来は近く予言……予測されています」

夏凜「だからこうして夜でも来たってわけ?」

「はい。現状、この一瞬後に行われても不思議ではありませんので」

男性は何かを案じているかのように唇を噛むと

布団に隠れた天乃の足から腰、胸元

そして顔へと視線を移動させて、天乃の目と視線が絡む

天乃「私のことを心配しているの?」

「心配……とは言えないかもしれませんが」

それでも。と続ける

「貴女は我々人類が持つ最高戦力です。最後の最後、切り札として残したいと思っています」

天乃「全員ではないんでしょう?」

「その通りです。残念ながら、久遠様は強さゆえに、恐れらていますので」

天乃「…………」

とはいえ、大赦がどう思っていようと

天乃には何の関係もない

何かをしてくるのなら、打ち破るだけだ

もちろん、以前話に出ていた【婚約】の話も
166 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/05(日) 23:33:14.78 ID:JXzbQ5vUo

そっと夏凜の服の裾を引き

何かと目を向けてきた夏凜に、その意味を込めた笑みを向ける

けれど、流石にそれは通じなかったようで

夏凜「どうかした?」

天乃「ううん、別に」

とはいえ、戦うのは控えるって決めたばかりなのよね。と

天乃は悩まし気に目を伏せて、息をつく

現実問題、戦えば死にかねない

だから、樹海の危機だからと言って

比較的危険度の低い戦いには参加するべきではない

そしてそれを、大赦は分かっていない

「ともかく、いつ襲撃が行われるかわかりませんので、警戒をお願いします」

天乃「……………」

言うべきだろうか?

ここまで体が壊れてなお、

戦いになれば出て来てくれと言ってくるような相手に

それを告げた程度で、考え直してくれるだろうか?

面倒な事にはならないだろうか……?


1、善処するわ
2、無理よ。私の体も限界だから


↓2
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:34:17.50 ID:1QTIZBtsO
2
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:34:40.48 ID:N46pRBBpO
2
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:34:47.90 ID:ZSlP48IY0
2
170 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/05(日) 23:40:11.35 ID:JXzbQ5vUo

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から




天乃「無理よ。私の体も限界だから」ナデナデ

大赦「なぜ自分の下腹部を……? ま、まさか!?」バッ

夏凜「普通こっち見ないでしょ!?」

天乃「毎日激しくて……」フィッ

夏凜「いい加減にしなさいよあんたァッ!」
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:42:40.86 ID:1QTIZBtsO

でもお泊まりするんですよね?
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:50:21.31 ID:6nlcay5cO

自分の体を労るようになってて久遠さんも成長してるな
一方で次の戦闘で園子様が不参加とはどんどんシビアな状況に…
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 01:23:52.02 ID:M851ybQoO

一応戦力増えたんだからたまには勇者部に期待しよう
ご褒美は久遠さんだぞ
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 06:04:37.48 ID:5seV0GBiO
なんかまた久遠さん子作りルート入った気がする>>165で婚約が出てきたのはそういうことでしょ?
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 08:36:14.15 ID:C6FcQUJgO
今回悪五郎いるんだからそれでよくない?
主目的が子作りだし
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 12:29:47.74 ID:H3O6G6cYO
久遠家にとってはかなり重要な事柄だし話としては避けては通れないところだろうね
前作で子作りに関わってた久遠家や春信さんが未だ未登場なのも気になるな
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 12:43:04.28 ID:mVgQfu0JO
またグダグダやるのめんどい、前はくっつくかくっつかないかのイベでまあまあ見れたけどさすがに2度目でハーレムほぼ完成となると大して面白くもないし
穢れ関連で通らなきゃいけないにしても今回は前回と違って子作りに何の後腐れもない悪五郎いるせいでそっちのグダグダ経由するの不毛極まりない
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 14:20:06.16 ID:5oBDlspYO
そこら辺は>>1も分かってるでしょ
だから序盤で安価なしに婚約なんてしてられないって切り捨てたんだろうし

ただ婚約云々の話へのフラグに踏み込んだっぽいからどうなるか分からないけどさ
179 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/06(月) 22:53:26.94 ID:YmK+/ROyo

では、少しだけ
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 22:54:55.21 ID:ujfPQ957O
よっしゃ
181 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/06(月) 23:00:38.37 ID:YmK+/ROyo

天乃「……無理よ。私の体も限界だから」

「それは、からかいのおつもりで?」

天乃「貴方の目に映る私の状態、目を通した私の資料を総合した上での言葉?」

だとしたら貴方はとても面白い人ね。と

天乃は今までになく冷たく言い放つ

本人はそんなつもりはなかったのかもしれないが

少なくとも、男性はそう感じて半歩退くと

頬に浮かぶ脂汗を指で払い、息をつく。完全な失態だ

「し、失礼した……確かに。君の状況はまるで良くない」

天乃「そう。だからと言って、襲撃してくる敵が生易しいわけでもない」

夏凜「天乃――」

振り返り何かを言おうとする夏凜を手で制し、頷く

死ぬか死なないかが目前にまで迫ってきている上に

我侭を聞いてもらったうえでの夏凜達との約束

そう簡単に、はい、そうですかと棄却出来るはずがないしする気もない

もっとも、手を貸さなければ数瞬のうちに世界が―勇者部含め―滅ぶというのなら話は別だが。
182 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/06(月) 23:09:49.42 ID:YmK+/ROyo

天乃「私の精霊の中の一部は独自に戦闘できる程度の能力はある。私と比べれば質は落ちるかもしれないけど」

それでも、通常の勇者としての実力は申し分ない

今の大赦の人間全てが知っているのかどうかは疑問だが

先代の勇者である乃木若葉、土居球子、白鳥歌野がいて、巫女である藤森水都が居る

天乃「私が参加できない分、私の精霊が頑張ってくれる。それで、文句はないでしょう?」

「私としては……だが、やはり。君が居ない分被害は出るだろう……」

天乃「言いたい事は理解してるわ。貴方が、貴方のその目の裏に見ている人達の方針に納得がいっていないことも」

「!」

男性は天乃の完全に見抜いた言葉に目を見開いたが

しかし、すぐに納得したように薄く笑みを浮かべる

齢15とまだまだ幼さのある成長途中ではあるが、ある意味では自分を上回っていることを認めて。

天乃「私だって万能ではないのよ。全てを代償なしに救うことが出来るというのならやっても良い。でもね、違うの」

「……………」

救うことは出来ても、その分、体が傷ついていくという代償を支払わなければいけない

それを続けてきた天乃自身が、その力不足を嘆いて、苦笑する
183 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/06(月) 23:10:34.90 ID:YmK+/ROyo

「……だが決して、貴女は力不足などでは有りませんよ。久遠様」

本来ならば平伏すべきかもしれない

しかし、天乃がそんなことは望んでいないと知っている男性は、軽く頭を下げる

彼女は勇者だ。間違いなく。それは蛮勇と呼べるものなのかもしれない

誰かは化け物だというかもしれない

が、神話に語られる神々とて、人間から見れば化け物ではないだろうか

自分が理解できないから、到達できない位置に居るから、人の外、化け物であるというだけで……

男性職員はふっと息を吐いて切り替えると

先日と同じような余裕を感じる笑みを浮かべる

「先日申し上げたとおり、やはり。貴女はとても興味深い」

天乃「……ここでそれを言う?」

「失礼」

こほんっとわざとらしく咳払いをする男性職員から夏凜へと目を移した天乃は

その手が少しばかり拳を作りかけているのを見つけて、微笑を浮かべる

これ以上言えばあの手が飛びかねないのだが

それにまったく気づいていないというのが、実に男性らしいと思ったからだ
184 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/06(月) 23:16:12.66 ID:YmK+/ROyo

「私の用件は以上になる。君の限界に関しては伝えておこう」

天乃「よろしくお願いします」

「…………」

男性職員は不意に上げた手をさまよわせて、

何もすることなく一礼して、病室から出て行く

その後姿を見送った後すぐ「はぁ」と、ため息が聞こえた

夏凜「なんなのよ、一体」

天乃「……さぁ?」

手を動かしたことの疑問

それを口にする夏凜に、天乃は微笑みつつ首を傾げる

本当は何をしたかったのか分かっている

先日断った接触。その欠片でも行えれば。と、思ったのだ

よろしく。という意味を込めて

天乃から差し出せば受けてくれたかとは思うが

夏凜の怒り一歩手前ゆえに、そうすることも出来なかった天乃はただ笑って誤魔化す
185 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/06(月) 23:22:13.93 ID:YmK+/ROyo

夏凜「……あんたがなら戦うって言い出さなくて良かったわ」

不意に、余り似つかわしくない静かな声で言葉を紡いだ夏凜は

ゆっくりとベッドに腰を下ろすと、体ごと天乃へと振り返る

その表情には不安と恐れがあって

そして、その上に覆い被さった安心があって

天乃「まぁ、約束――」

天乃の頬へと、夏凜の手が伸びる

それを目で追いながら、天乃は抵抗することなく受け入れて

天乃「したことだから、ね」

近づく夏凜に笑みを浮かべると、夏凜は少しだけ驚き

小さく笑って「そうね」と口にし、天乃の唇に重ねる

乗り物に揺られ、ぶつかってしまっただけのような軽いキス

それでも離れた互いを見る目には、ほんの少しの熱が篭る
186 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/06(月) 23:22:41.50 ID:YmK+/ROyo

夏凜「……さっきの天乃。別人みたいだったわ」

天乃「怖かった?」

夏凜「格好良かった」

天乃「……ばか」

互いの体が動くのは、本能ゆえ

だからこそ、夏凜は普段の拒絶にも取れる言葉選びはせず

思いのままに言葉を紡いで

天乃はそんな夏凜こそ、別人みたいだと思い、

しかし、言葉も体も拒絶することなく受け入れる

天乃「夜までするのは、無理よ?」

夏凜「分かってるわよ。少しだけ」

天乃「さっき東郷としたのに」

夏凜「それは昨日の分。これは今日の分よ。言ってなかった?」
187 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/06(月) 23:24:05.28 ID:YmK+/ROyo

天乃を自然にベッドへと押し倒した夏凜は

胸元に伸びようとする手を制し、天乃の手と隙間なく結ぶ

夏凜「……ほんと」

人口の光さえ乏しい部屋の中

桃色の髪も白い肌も、橙と赤の瞳も

全てが、それ自体が発行しているかのように眩く見える夏凜は

月明かりがあればよりよかったのだろうか?と

小説で時折見る天開、描写を想起しつつ体をかぶせる

キスはしない。天乃の耳元に口を近づけるだけ

押し付けた胸が、自分よりも遥かに高い果実を潰す

その感覚を味わいながら

夏凜「ほんと、あんたは良い女よ」

天乃「……夏凜がそう言うと。なんか変な感じする」
188 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/06(月) 23:28:55.89 ID:YmK+/ROyo

物語の中の男の言葉

それを真似てみたのだが、作中の少女のように、天乃は照れた様子もなければ

顔を紅くした様子もなくて

夏凜「なによ。頑張って口説こうとしたってのに」

思わず不満をぼやくと

目の前の彼女は、クスクスと愛らしく笑う

天乃「普通で良いのよ。格好つけたって、そこに意識が分散されて心が薄くなるから」

夏凜「そ――」

だけど。と天乃は夏凜の首に腕を回すと唇を重ねて、微笑む

天乃「そんな貴女も好きよ。頑張ってる姿が愛らしい」

夏凜「んな……っ……」

からかっているのならそう言い返せるが

天乃の笑みが本心であることを物語っている

天乃「ふふっ」

本当に、心からそう思う

夏凜だけでなく、東郷も沙織も、樹も、風も、友奈も……

嫌な事は決して少なくない

けれども、その分、あるいはそれ以上に良いことがあるから

だからこそ、生きていたいと。思った
189 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/06(月) 23:32:15.20 ID:YmK+/ROyo

そんな天乃の笑みに笑みを返し、

負担にならないよう天乃に体を重ねた夏凜は

そのままぐるりと体を回して隣に並ぶように横たわる

シングルベッドは狭く、体は重なり合う

だから、夏凜は横向きになって、天乃を見つめる

この姿勢では下敷きにした腕がやや不満そうに痛みを訴えてくるが

それで天乃を見れるのなら、と

感覚を無視して、右手で天乃に触れる

天乃「……なに?」

夏凜「いや、別に」

天乃「そう……」


1、そういえば、あっさりと認めてくれたわね
2、私に死ぬなというのなら。しっかりと守ってね?
3、そういえば、新しい子が居るの(歌野・水都)
4、明日無事だったら……ね

↓2
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 23:32:57.92 ID:Cw78Ta50O
1
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 23:33:53.67 ID:5RMTMjEu0
3
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 23:34:16.86 ID:ujfPQ957O
1
193 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/06(月) 23:41:05.37 ID:YmK+/ROyo

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


歌野・水都紹介後まとめ。その後運命の体調判定
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 23:42:20.40 ID:Cw78Ta50O

ドキドキ
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 23:48:00.54 ID:ujfPQ957O

あまにぼコンビ本当に幸せそうだなあ
この平和を守ってあげたい
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/07(火) 01:30:03.53 ID:GdmJAmP3O

若葉たちとはもう会ったのかな新入り二人は
197 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/07(火) 23:36:09.63 ID:24Uj413No

では、遅くなりましたが、判定までは進めたいと思います
198 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/07(火) 23:37:00.32 ID:24Uj413No

夏凜が何か言いたげなのは感じたが

しかし、天乃は問いかけることなく微笑み、

自分の頬に触れる夏凜の手に、自分の手を重ねる

天乃「そういえば、新しい子が増えたの」

夏凜「新しい子?」

そう。と、天乃は軽くうなずいて

天乃「いる? いるなら出てきて頂戴。歌野。水都」

呼ばれて姿を現したのは、見たことはないが勇者装束に身を包んだ少女と

大赦のようで大赦とは少し違った巫女装束を着込んだ少女

巫女の方は、勇者の背中に隠れるようにして

夏凜の様子を伺う

歌野「はせ参じてまいりました。私が、白鳥歌野です」

水都「藤森……水都。です」
199 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/07(火) 23:38:39.24 ID:24Uj413No

お嬢様をモチーフとしているのか、どこか不慣れな言葉遣いの歌野に

天乃は苦笑して「普通でお願い」と手を振る

無理をしているというよりは

こうすべきだろうと試行錯誤してくれた感があったが

なんとなく、むず痒さがあったからだ

少なくとも、同年代の人に位の違う人間として扱われるのは、好みではないのだ

歌野「じゃぁ、よろしくね。三好夏凜さん」

夏凜「……知ってんのね」

歌野「九尾さんから聞いたんだよ。見ちゃいけないものがあるから話でもってね」

歌野はそういいながら天乃と夏凜を交互に見ると

照れくさそうに頬を掻く。指の触れる肌は、ほんのりと朱色だ

明らかに先ほどの件を知っている様子だが

天乃は「それなら話が早いわね」と、さらっと流す

精霊に見られている生活など、天乃には当たり前なのだ

もちろん、恥ずかしくないなんてことはないけれど。

触れなければ流してもらえるのだから、そうすべきだ
200 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/07(火) 23:42:46.05 ID:24Uj413No
天乃「九尾からどの程度の話を聞いたの?」

歌野「とりあえず、お嬢様の仲間の勇者について――」

……お嬢様?

今、お嬢様って言った!?

だれの仕業なのかは火を見るよりも明らかで

天乃はピクピクと怒りに繭を震わせながらため息をつく

その一息は、空気を滞らせ、歌野の言葉を止める

歌野「お、お嬢様?」

天乃「九尾に何を仕込まれたのか知らないけれど……それ、やめて?」

水都「う、うたのん。だからダメだっていったのに」

歌野「こういえば天乃が喜ぶって言ってたんだけどなぁ」

天乃「誰が?」

歌野「本能が」

夏凜「九尾じゃないの!?」

ばんっっと机を叩く勢いで身を乗り出した夏凜は

ギシッっとベッドを軋ませて、歌野を見る

その歌野は、満足げな笑みを浮かべていた

まるで、夏凜のそれこそが目的だったかのように。
201 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/07(火) 23:43:24.32 ID:24Uj413No

歌野「あーえっと、それで天乃」

天乃「うん?」

歌野「勇者部と、私達自身の能力とその使い方についてなら九尾に聞いたよ」

顔を紅くする夏凜から目を逸らした歌野は

どこからともなく薄く光を放つ蔓のようなものを出現させる

白鳥歌野が勇者として戦っていたときに扱っていた武器、藤蔓

今は稲荷神の力の一端を継承しているその武具は

生前とは比べ物にならない力を持っている

まぶしいのではなく、優しい黄色の光

それが消えるのと同時に藤蔓も消滅し、歌野は水都へと振り返る

歌野「私は最前線と中距離の戦闘スタイルが最適で、みっちゃんに関しては支援専門だね」

水都「ある程度の傷なら癒せます。あと、多少の身体能力強化」

傷を癒すのは、純粋に勇者がもと持っている治癒能力を

神樹様の力で高める。というもので

身体能力の向上に関しても同じことで、神樹様からの力の供給を

一時的に濃く―増加―させることで、スピードやパワーといった部分の能力を向上させられるのだ
202 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/07(火) 23:47:51.48 ID:24Uj413No

歌野と水都が能力説明をし終えると

黙っていた夏凜は気持ちを切り替えたのか、

軽く息を吐いて、歌野と水都を交互に見る

夏凜「あんた達……」

聞くまでもないことだろう

天乃が呼んだらどこかから姿を現した

若葉や球子と同じようなもの。なのだとしたら

夏凜「先代の勇者か」

歌野「知ってるんだ」

夏凜「まぁ……一応ね」

歌野「若葉さんやタマっち先生がいたんだから。それもそうか」

一人納得したように呟いた歌野は、

うんうん。とうなずくと、夏凜へと目を向ける
203 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/07(火) 23:51:56.87 ID:24Uj413No

歌野「私は先代勇者。白鳥歌野。本来守っていたのは諏訪の方らしいけど。一応、勇者だったみたい」

天乃「らしい……? それも九尾から聞いたの?」

歌野「水都が終始不安そうだったから、少しだけ記憶をくれたんだよ。良い記憶。とはいえないけど……」

歌野は言いながら悲しげに眉を潜めるとちらりと水都を一瞥する

守れなかった記憶。それが、今の歌野にはある

それは戻さなければいけなかった記憶

これから先、失うことがないように。

歌野は首を横に振って考えを振り払うと、夏凜に向けて手を差し出す

歌野「話は聞いたよ。天乃のこと、みんなで守ろう。三好さん」

夏凜「……夏凜で良いわよ。よろしく頼むわ。歌野」

これから天乃を戦わせることは出来ない

戦えないわけではないが

それは、本当にどうしようもないときだけ

だからこそ、天乃を思う人々、精霊、全てが手を組む

手を組んで、打ち勝つ

歌野「あ、私達はあまのんハーレムに入る予定は今のところないからね〜」

天乃「なに言ってるのよ。もう」

病室らしからぬ賑やかさは、ほんの少しだけ、続く
204 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/07(火) 23:53:55.88 ID:24Uj413No

纏めは、翌日出します
とりあえず、優先して判定だけ




01〜10 体調不良
11〜20 
21〜30 
31〜40 
41〜50 
51〜60 体調不良
61〜70 
71〜80 
81〜90 
91〜00 体調不良

↓1のコンマ  
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/07(火) 23:54:27.77 ID:I41KZGboO
206 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/08(水) 00:00:57.39 ID:EvkdNFAfo

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から

体調不良回避
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/08(水) 00:03:05.56 ID:WBm1Zs7YO

やったー
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/08(水) 01:00:03.87 ID:/Pg+djh8O

ひとつ心配事が減ったな
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/08(水) 08:04:09.76 ID:DWkKlhdTO
九尾の記憶写しは今作も健在なのか
可能なら若葉にも使って見たい気もするけど
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/08(水) 18:16:58.92 ID:+L//BN2KO
さてあと会わなきゃいけないのは樹園子沙織だな
211 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/08(水) 23:24:26.75 ID:EvkdNFAfo

では、少しだけ
212 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/08(水) 23:25:21.21 ID:EvkdNFAfo

1日のまとめ

・   乃木園子:交流無()
・   犬吠埼風:交流有(キス、特殊、カウンター、受け入れ)
・   犬吠埼樹:交流無()
・   結城友奈:交流無()
・   東郷美森:交流有(3P)
・   三好夏凜:交流有(キス、一夫多妻、了承、3P)
・   乃木若葉:交流無()
・   土居球子:交流無()
・   白鳥歌野:交流有(紹介)
・   藤森水都:交流有(紹介)
・ 伊集院沙織:交流無()
・      九尾:交流無()
・       死神:交流無()
・      神樹:交流無()



7月3日目 終了時点

  乃木園子との絆 54(高い)
  犬吠埼風との絆 55(高い)
  犬吠埼樹との絆 44(少し高い)
  結城友奈との絆 59(高い)
  東郷美森との絆 49(少し高い)
  三好夏凜との絆 70(とても高い)
  乃木若葉との絆 39(中々良い)
  土居球子との絆 27(中々良い)
  白鳥歌野との絆 22(中々良い)
  藤森水都との絆 13(普通)
     沙織との絆 57(高い)
     九尾との絆 45(少し高い)
      死神との絆 38(中々良い)
      神樹との絆 9(低い)

汚染度???%
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/08(水) 23:26:11.88 ID:xTKNouDfO
来てたか
214 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/08(水) 23:26:55.60 ID:EvkdNFAfo
7月4日目 朝 (病院)  ※木曜日


朝、目が覚めると病室の白い天井が見えた

そして、続くように

いつもと変わらない医療機器の電子音に混じって

隣から愛おしい寝息が静かに聞こえる

天乃「……ふふっ」

見守るといったくせに、可愛らしい剣士様はすやすやと眠っていて

天乃は起こさないようにと気遣った笑みを零すと、夏凜の前髪を指で払う

天乃「……どっちの方が、安心したのかしらね」

傷つけていないのだと安堵した夏凜

傷つかないと安堵した天乃

そのどちらの方がより深く心救われたのだろうか。なんて

無意味にも等しいことを考えながら、夏凜を見つめる

普段は見ることのない寝顔は

起きているときの激しさなど偽りであるかのように、穏やかだ

寝ているときまで、表情の変化が激しいのは

悪夢を見ていることが多いのだから、これはこれで良いのだが。
215 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/08(水) 23:28:01.91 ID:EvkdNFAfo

天乃「これで……自宅療養」

天乃は朝には手続きをし、昼には自宅療養となる

集中治療室から直接自宅療養というのは、異例中の異例

もう救いようがないから、せめて出してあげよう。という時くらいのものだろうから

大赦勤務ではない看護師は不思議に思うだろう

天乃「早く学校行かないと……授業まったくついていけないわよね。これ」

目が覚めてからはもちろん、

目が覚めるまでの日数も含めれば、授業の遅延は厳しいもので

しかも、テストが控えているというのだからなお酷い話だ

もっとも、大赦のお役目での欠席なのだから

免除とまではいかなくても、多少の融通は利かせてもらえるはずだけれども。

しかし、問題はテストだけではない

それどころか、テストなんて日常生活を気にしているような余裕さえ、ない
216 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/08(水) 23:28:32.81 ID:EvkdNFAfo

園子が戦えなくなったのだ。

もちろん、今後一切戦闘に参加できないというわけではないだろうが

天乃と同様、身体的・精神的負荷がかかるために

連戦での採用等は難しいと判断されたのだろう

天乃の精霊となっている

乃木若葉、土居球子、白鳥歌野、藤森水都が戦闘時には協力するため

以前と比べれば手数は多いが……

それでも、天乃に匹敵する乃木園子という戦力喪失はかなり大きい

夏凜達が頑張っていることを、天乃は良く分かっている

自分の思っている以上に頑張っているであろうことも

天乃はしっかりと考えているし、思っているけれど……だからこそ不安で

だからこその恐ろしさがある

戦いへ身を投じる勇敢さがいつか蛮勇へと変わった時

そのことに気づけないかもしれないから
217 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/08(水) 23:29:08.52 ID:EvkdNFAfo

夏凜「ん……」

もぞもぞと動いた夏凜の手が

天乃の腕に触れ、肩まで上り、下って胸元に落ちる

夏凜「ん? 目覚まし……?」

ジリリリリッっとけたたましく音を出す機械に触れたはずが

想像以上に柔らかく、そして温いものに触れたのだと

もにゅもにゅと幾度か感触を確かめた意識が、ゆっくりと覚醒していく

夏凜「あ……あー……」

やらかした。そう気づくのは早かったけど

そう気づいたのはもう遅かった

天乃「ふふっ」

夏凜「だ、黙ってなさいよ。いや、下さい……」

天乃の胸に触っていたのだと気づいた夏凜は顔を紅くして

布団の中に少しだけ顔を埋める
218 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/08(水) 23:30:30.79 ID:EvkdNFAfo

天乃「ええ、黙っててあげる」

夏凜「く……」

東郷含めてあんなことをしてしまったし

夜にだって、軽くとはいえ行為をしちゃったんだから

今更感はあるけれど

でも、寝ぼけた状態で触ってしまったのは、無意識だからこその恥ずかしさがあった

夏凜「別に、触りたくて触ったわけじゃないから」

天乃「別に、触りたくても触って良いけど」

夏凜「……良いの?」

天乃「むしろ、今のところだめな理由はないかな」

とぼけた声で誘うように言うと

夏凜がかすかに嬉しそうな雰囲気をかもし出したのを感じて

天乃は薄く笑みを浮かべて、夏凜の体を抱きしめる

寧ろもっと求めてくれたって歓迎するかな。と

天乃は思いながら、胸の中で呻く夏凜を手放す

全力で相手するのでなければ……という、条件付だけれど。
219 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/08(水) 23:32:00.89 ID:EvkdNFAfo

夏凜「せっかく治ったってのに……またここに戻りたいわけ?」

天乃「お医者様に笑われるわね。エッチしてたら過労で倒れました。なんて」

夏凜「勘弁して」

担ぎ込まれた患者はもちろん

その加害者―ある意味で被害者―もかなり恥ずかしい目にあうだろう

そして、大赦からは絶対に面倒くさいことを言われる

担ぎ込まれてしまうくらいなら、あんまり許したくはないが

まだ、その程度の羞恥は堪えることも厭わない。が、大赦とのいざこざはお断りだ

……まぁ、エッチの結果交際相手が疲弊したなんていうのも

相手……というか私はどんだけアレなんだって思われるから嫌なんだけど。

それさえ我慢すれば……とか言われたらちょっと考えるかもしれない

夏凜「いやいや」

天乃「うん?」

夏凜「考えるべきじゃないこと考えちゃったのよ。気にしなくて良いから」

ふっと息を吐いて、夏凜は気持ちを入れ替えた



1、ねぇ、どうして簡単に許してくれたの?
2、樹から告白されてるんだけど……先延ばしにしすぎちゃったわよね
3、多くても二人相手が限界よね
4、夏凜、私は戦わないけれど、樹海にはいる。何かがあったら参戦するから
5、大丈夫よ。お姉ちゃんに任せなさい
6、精霊を呼ぶ ※再安価
7、イベント判定

↓2
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/08(水) 23:34:34.19 ID:20CHApCf0
6
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/08(水) 23:34:42.10 ID:xTKNouDfO
1
222 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/08(水) 23:39:16.80 ID:EvkdNFAfo

では、短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間からの予定ですが
お休みをいただく場合があります

通常時間は安価消費と安価取得を目標とします


223 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/08(水) 23:46:06.85 ID:tmFE18juO

お泊まりなのに我慢できたのか夏凜
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/08(水) 23:47:48.91 ID:xTKNouDfO

朝から夏凜ちゃんの反応が微笑ましいな
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/09(木) 02:00:34.04 ID:X9MomTjgO

樹と風はセットでもいいかもなあ
226 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/09(木) 23:02:44.51 ID:8M8q9HJXo

では、少しだけ
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/09(木) 23:05:58.14 ID:iCLH+No1O
イエス
228 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/09(木) 23:07:13.48 ID:8M8q9HJXo

朝は手続きに加えて検査もあるのだが

そのどちらにしても、この起床時間は早すぎる

普段、鍛錬を毎朝行っている夏凜としては普通の時間だが

病院全体としては早すぎるし、集中治療室にいる人間としてはおかしい部類だ

しかし、二度寝をする気にはなれないし、体質的に無理

なら、昨夜の続きでもしようかと言いたいところではあるが

それは検査に影響があるし「したんですか?」みたいな質問をされるのは好めない

だから、天乃は夏凜を見ないままに「ねぇ、夏凜」と、声をかけた

天乃「どうして、あんなに簡単に許してくれたの?」

夏凜「ん? 何の話よ」

天乃「昨日の、ほら……」

夏凜「ああ、あの話? その理由はもう説明した気がするけど」

具体的な名前を出していないのに

夏凜は察したように伸びやかな声を出す

どこか、呆れ交じりで。
229 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/09(木) 23:12:54.27 ID:8M8q9HJXo

夏凜「まぁ、簡単に言えば。私が幸せにしたいのは天乃だからよ」

天乃「でも、それがどうして一夫多妻の容認に繋がるの?」

夏凜「……分かってて言う辺りが、意地悪いのよ。あんたは」

天乃「分からないから聞いたのよ……ううん、分かってはいるけど、夏凜の言葉で納得したいのかな」

ふぅ……と、夏凜の口から溜息がこぼれ出る

呆れたわけではなく、どきりと跳ね上がった心を宥めるためだ

けれど、ドキドキとする心は収まらず、すぐ隣に居る天乃の顔を見たいと思うが

それは不味い。と、踏みとどまる

見たら確実に好意のままに抱きしめるからだ

天乃がそれを嫌がることはないだろうしその恐れもないけれど

しかし、そこからさきに軽快なステップで進みそうだから。

夏凜「私は盲目的にあんたの我侭を聞いたわけじゃない。純粋に、自分と同じ――東郷達の立場でも考えた結果よ」

天乃「みんなの?」

夏凜「そ。あいつらって優しいから、私が天乃を独占したいといえば認めてくれるし祝福もしてくれると思う」

けれど、他人から見ては変わりなく見えるかもしれないが

自分達の距離は確実に開く、隔たりが出来る。と夏凜は思う

少なくとも、自分はそうすると思う。と、天乃に告げる
230 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/09(木) 23:16:44.44 ID:8M8q9HJXo

夏凜「本来なら、それが正しいんだろうとは思う。普通の人なら、その微妙な距離感の変化には気づかないだろうし」

結局、その諦めた人にだって

将来的には相手が出来るだろうし、そうなれば忘れることも出来るはずだ

前時代―恋愛小説で描かれているような世界―はそう容易い話ではなく、

ドロドロとした粘着質の恋愛劇が巻き起こる可能性もゼロではないが、

道徳教育がある程度行き届いているこの世界では

そういったことも可能性はきわめて低いので、気にする必要も無い

夏凜「けど、天乃は察し良いし……一言でその距離に気づく。で、天乃は本当に心から楽しめなくなる」

天乃「……だったら、夏凜は私の為に受け入れてくれたってことになるけど」

夏凜「――あぁ、否定はしないわよ。それが天乃の幸せに繋がると考えたし」

来ると思っていた言葉が飛んできたことに

夏凜は自分が少しでも天乃を理解できているのだと、嬉しくて、思わず含み笑いを浮かべながら答える

確かにそう、自分の考えていることは結局、天乃を主軸においているようなもの

それに関しては、天乃画すきなのだから、仕方がない。と、夏凜は諦めて苦笑する

夏凜「とはいえ、私は東郷の立場も考えたのよ。私は選ばれた側。選ばれなかった側はどう思うのかって」

天乃「……それは」

夏凜「そ。少し違えば、私も東郷と同じ側だったろうし、その覚悟―それ以上の覚悟―もしてたから」
231 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/09(木) 23:20:16.73 ID:8M8q9HJXo

選ばれなかった側としての覚悟

選ばれながらも、それを断る覚悟

本来取ろうとしていた後者の覚悟ほど、自他共に苦しむことはなかったはずだ

悲しませることはなかったはずだ。それでも、実行しようとした夏凜にとって

一夫多妻を認めるというものは、天乃には酷い話だが軽い問題に過ぎなかった

というのも、大変なのは夏凜ではなく、天乃だから

その天乃がそうしたいといっているのだから、心配も何もないのだ

話が逸れているのに気づいた夏凜は「それで」と、言葉をつなげる

夏凜「まぁ、望むことは間違ってるけど、選ばれなかった私は少しでも気持ちが欲しいと思っちゃうわけよ」

馬鹿らしい話だけどね。と言いながら

夏凜は笑うことなく真剣に続ける

選ばれた夏凜にとっては馬鹿らしくとも、選ばれなかった側にとっては

まったく、ばかげたことではないのだ

天乃「後々だれか別の人と幸せになれるとしても……しばらくは」

しばらくは忘れられない

恋しく思う気持ちは留まるところを知らない

だから、選ばれなかった側hsほんのひと欠片でも構わないから

気持ちを向けてはくれないだろうか。と

口にはしなくとも求めてしまう可能性はある
232 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/09(木) 23:24:30.88 ID:8M8q9HJXo

夏凜「そう。まぁ、何が言いたいかって言うと、天乃」

ここまで来て、夏凜はようやく天乃へと目を向ける

二種類の瞳が自分を見つめてきていたが

動揺することも、照れ隠しすることもなく

まっすぐ見つめて手を伸ばすと、天乃も同じように手を出し、

ギュッっと、心のように硬く繋ぐ

夏凜「私は天乃だけでなく、全員が幸せになれるであろう選択をしたかった」

天乃「私が、一夫多妻を言わなかったら?」

夏凜「……言えばあんたはそれを考えてくれる。でも、望まないから言わない。そう考えて言わなかったでしょうね」

天乃「……そっか」

少しだけ、手を強く握ると

夏凜もまた、呼応するように握り返してきて、苦笑する

夏凜は本当に、心から、考えてくれている。思ってくれている

それが嬉しくも、気恥ずかしくて。

夏凜「みんな天乃が好きだけど」

天乃「う、うん……」

夏凜「私が一番、あんたを好きだと自負してる」

嫌いな時期があったから

憎く思っている時期があったから

その点で言えば風も同じかもしれないけれど

自分は天乃の背中を追い求めた分の差があるからと、夏凜は考えて

照れくさく頬を染める天乃の唇に、唇を重ねる

傾きのないキスは鼻もぶつけてしまったが、その初々しさが、不慣れな姿が、また、恋しいのだ
233 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/09(木) 23:31:52.71 ID:8M8q9HJXo

7月4日目 昼(自宅)  ※木曜日


01〜10 
11〜20 クラスメイト
21〜30 
31〜40 
41〜50 巫女さん
51〜60 
61〜70 
71〜80 園子
81〜90 
91〜00  大赦

↓1のコンマ 
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/09(木) 23:32:04.13 ID:J/gn7MpAO
235 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/09(木) 23:34:48.51 ID:8M8q9HJXo

クラスメイトとの交流になります
交流相手は、男性職員の言っていた、付き添いの生徒


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/09(木) 23:38:12.33 ID:iCLH+No1O

久々の自宅、そしてクラスメイトの再登場か
色々心配かけただろうしまずは安心させてやりたいな
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/09(木) 23:38:40.41 ID:J/gn7MpAO

はやく他の勇者部も誘いたいな
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/10(金) 00:53:34.00 ID:9M7CGZhRO

家に帰ったんだな
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/10(金) 17:58:58.36 ID:ACc2aYjXo
ゆゆゆソシャゲ来るってよ!
このスレとはサヨナラだな!
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/10(金) 18:25:02.43 ID:9M7CGZhRO
ソシャゲ?割とどうでもいい
版権もののソシャゲって信じられないレベルのクソゲーってことが多々あるし
241 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/10(金) 22:38:02.91 ID:fq/dGjS9o

では、すこしだけ
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/10(金) 22:39:48.10 ID:HdcswyhjO
よしきた
243 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/10(金) 22:46:55.21 ID:fq/dGjS9o

「あっまの〜ん!!」

天乃「むぐっ!?」

自宅に着き、医療的警戒から若干解放された天乃は

ベッドの上で一息つくや否や、そんな大声と共に上半身を置き引きする勢いで抱きつかれた

回避は容易かったのだが、心配させたクラスメイトゆえに

天乃は見送り、抱きしめられて呻きつつも、振り払わない

二人とも、以前左目が使い物にならなくなった際に、教室で出会った女子生徒だ

眼鏡をかけている子―f抱きついた方―は、呼称こそなぜか変わっているが

見た目に変化はない。その一方で、セミロングのクラスメイトは、長さを維持したまま、内側にカールをかけていた

「よかったよ〜っ!」

「ほんと、久遠さんのことみんな心配してたんだから」

天乃「っは……それは聞いてるわ」

胸に抱かれるのを何とか這い出して、

二人のうち一人、冷静な方のクラスメイトに目をむけ、笑みを浮かべる

冷静じゃない方はまだ抱きついて頬擦りしているが、

嫌悪感は当然、なかった

天乃「貴方達だけじゃなく、大分心配させちゃったようね」

「うん。左目が見えなくなってからのコレ。だからね」
244 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/10(金) 22:51:36.90 ID:fq/dGjS9o

左目を隠す眼帯に目を向けてから、天乃の全身を見る

すでに、病院、大赦、天乃本人と

再三の説明を受けて体がどこか不能になったわけではないと納得しているが

それでも、不安がないとはいえない。そんな表情で

「久遠さんに適正があって。私達にはそれがない。そう、何度も言われたけど」

でもね。と、クラスメイトは残念そうに呟く

それは、抱く必要がないはずの罪悪感も感じられる声だった

「やっぱり、悔しいよ。ボロボロの久遠さんに任せるしかないなんて。なにもない私達じゃなく、久遠さんじゃなきゃいけないなんて」

天乃「それは違うわ。あるから、こうなったのよ。なければこうはならない」

「……それは言われなくても分かってるよ」

すぐ横からのくぐもった声に、天乃は目を向ける代わりに

その頭を抱くように手を回す

控えてる夏凜が「まーた増やす気か」とか何とか言っていたが

努めて平常心を保ち、息をつく
245 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/10(金) 22:52:56.12 ID:fq/dGjS9o

「それでも悔しいし、悲しいし、嫌だし」

「……まぁ、だからといって、反抗はやりすぎたと思ってる。ごめんね、久遠さん」

天乃「…………」

言わなければ自分から切り出す予定だった言葉を

クラスメイトが自分から口にしてくれたことに

天乃は少し驚きつつも、過小評価していたのだと自分自身に告げて、笑みを浮かべる

それが、自分達をとがめているのではないと気づいたクラスメイトは

しかし、より表情を暗くする

「言い訳はしない。止められなかった自分達が悪いから……どんな理由があったって」

憎しで動くべきではなかった。悲しいからと、怒りに任せて行動するなど

愚の骨頂だと、クラスメイトは悲しげに言いつつ、天乃を見つめる

「責任は取らなくて良い」

天乃「私は何も言ってないわよ」

「言わなくても久遠さんはそうする。いーちゃんも言ってたよ。久遠さんはその責任を取ろうとする。最終的には迷惑になるんだよって」
246 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/10(金) 23:03:23.19 ID:fq/dGjS9o
彼女が言う【いーちゃん】が伊集院沙織だと分かっており

それが本来の沙織でもないことを分かっている天乃は、喜ばしいようなそうではないような

少しばかり複雑な感情を、飲み込む

「……頭ではさ、分かってたはずなんだよね」

それでも、自分達以外にも多く居たその反抗は留まることが出来なかった

最悪の事態にまで助長することはなかったが、それでも……。

夏凜「はっきり言って、あ――」

あんた達。と、普段通りの言葉使いをしかけた夏凜は

慌てて言葉を呑みこんで、息をつく。

――切り替えろ

夏凜「はっきり言って、先輩方は間違ってた。だけど、それを利用しようとしてなかったかといえば、嘘になる」

「利用?」

夏凜「そう。私達がいくら言ったところで、向こうは動かないかもしれない。だけど、先輩みたいな絶対数の多い批判があれば……」

変わってくれると思った

夏凜のその言葉は、重力異常のものに引かれたように落ちる

利用しようとしたのを申しわけないと思ったから。ではないというのは

その場の誰もが理解して

天乃が口を開こうとした瞬間、天乃に抱きつくクラスメイトが「良いよ」と、呟く
247 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/10(金) 23:09:40.17 ID:fq/dGjS9o

「勇者部が全員そうだったわけじゃないのは分かってるし、たとえそうでも。私達は自分で選んで行動したから」

「そうだね。私達の行動が、結果的にえーっと……三好さんの希望通りの効果をもたらしてくれるのなら。本望だね」

沙織の批判ももっともだが

夏凜の希望通りの流れにならない可能性だってないわけではなかった

だからこそ、頭では沙織と同様のことを考えながらも

心では希望的観測、それが結果に至ることを求め、止まれなかったのだから

そしてその責任を誰かに取ってもらうなんて、ありえない

天乃「渦中の人物を置いて分かり合われても困るのだけど」

「なにいってんのさ、久遠さんなら全部分かってるくせに」

天乃「そこまで頭良くないわよ。私は」

その優れていると信頼してくれているのは素直に嬉しいことではあるのだが

しかし、何の情報もなしに箱の中身を当てることは出来ない

九尾ならば、箱を用意した人物の性格、そのときの表情から

ある程度ならば推測するのだろうけれど。

天乃も出来ないとは言わないが、的中率は高くはない
248 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/10(金) 23:12:31.99 ID:fq/dGjS9o

夏凜「要するに、私達は協力することなく同じ目的を達成しようとしたってわけ」

天乃「……私をゆ――お役目から解放すること?」

「大正解、さすがはあまのん」

天乃「それで? 貴女達は望んだ回答を得られたの?」

そう問いかけるまでもなく、答えはわかっていた

それでも、天乃はあえて訊ねて

クラスメイトは首を振る。残念そうに、縦ではなく、横に。

「我々も心苦しく思います。しかし、これは彼女にのみ可能なことなのです。って」

僅かな苛立ちを感じる声

その発生源に目を向けた天乃は、やさしく微笑んで首を振る

クラスメイトがしようとしていることの先の先まで見通すことが出来たわけではないけれど

感じたその怒りの矛先は、尖らせたままではいけないと思ったからだ

「ねぇ、久遠さん。久遠さんは……ううん、久遠さん達は一体どんなお役目についてるの?」

聞かないという話だったけれど

ここまで来ては流石に聞かずには居られないのだろう

少し、罪悪感を抱きながら、クラスメイトは問う

「碌でもないことだけは分かる。でも、どんなことなのか……想像が付かない」

酷い外傷があるというのなら

何らかの闘争にまきこまれているという可能性がある

天乃は障害を負ってはいるが、反対に目に見えるような外傷が見られない
249 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/10(金) 23:13:54.03 ID:fq/dGjS9o

そんな状況だからこそクラスメイトの一人、

セミロングの女子生徒は、悩ましげに眉を潜めると

はっと気づいたように目を見開いて、窓を見る

「もしかして……さ。久遠さん。壁の外に行ってるの?」

天乃「うん? どうして?」

「いや、推測でしかないし……病気の可能性もあるけど」

セミロングのクラスメイトは

天乃の眼帯を軽くずらして、紅くなった瞳を見つめる

「大赦のお役目って大げさな理由があって、体が不自由になったりする。壁の外のウイルスに触れているなら、両方説明が付くよね」

天乃「……なるほど」

確かに、考え方としてはそこまで間違っていないかな。と

場の空気に似合わず、天乃は思い

夏凜の視線を感じて、天乃はくすりと笑う

どうするのかは任せる。好きなようにしろ

そう言っているのが、目を合わせてすぐに分かった



1、真実を話す
2、誤魔化す
3、誤魔化さずに、言えない。と答える


↓2
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/10(金) 23:14:35.88 ID:VqEk/pL4O
3
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/10(金) 23:15:00.45 ID:HdcswyhjO
3
252 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/10(金) 23:28:31.02 ID:fq/dGjS9o

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


天乃「その質問には答えられないわ」コクコク

「そっか……」

夏凜「いや、思いっきり頷いてるんだけど!?」

天乃「だって、ウイルスじゃなくてバーテックスだし、私勇者だし。なんて言うのも言えないわ」

「そう、だよね……無理には聞かないよ」

夏凜「便利な耳してるわねあんた!」
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/10(金) 23:31:48.77 ID:VqEk/pL4O

もう話せよww
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/10(金) 23:32:59.85 ID:5LSRPDYd0

安定のKAY(久遠天乃は勇者である)予告!!
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/10(金) 23:37:55.33 ID:HdcswyhjO

話したら大赦が余計に久遠さんを追い詰めそう
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/11(土) 02:30:28.10 ID:4V/dZCbkO

クラスメイトもいいキャラしてんな
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/11(土) 08:29:20.96 ID:9RUreX+oO
濃厚な会話してるけど名前すらないモブなんだぜコレ
久遠さんもだが春信や沙織に瞳と来てクラスメイト
キャラ作成能力高いよな
258 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/11(土) 22:25:16.31 ID:OhiU2eHKo

では、少しだけ
259 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/11(土) 22:27:06.17 ID:OhiU2eHKo

天乃「悪いけれど、その質問には何も言えないわ」

誤魔化さず、明確に拒否する

それを答えとするかどうかは彼女達に任せる

もはや、答えに近い位置に居るのだけれど。

「……そっか」

残念そうにではなく、悲しそうにクラスメイトは呟く

答えを貰えなかったからではなく、自分の嫌な予感が的中してしまったかのような……

「それなら、仕方がないね。前にも似たようなこと話した気がしなくもないけど」

「そうだったなー。で、言葉通り異議申し立てをしちゃってね」

困ったもんだと苦笑する真横のクラスメイトは

抱きしめる天乃の体をゆっくりと手放しつつ、ベッドへと寝かせる

その表情は満足そうで

「いやーあまのん成分ホクホクだよ」

「久遠さん病み上がりなんだから程ほどにしようね?」

前も一緒で、今も一緒

以前も思ったことだが、この二人はこの二人でセットなのだろう

呆れたように言うセミロングのクラスメイトに対して

眼鏡をかけている方は、罪悪感がひと絞りの笑みを浮かべている
260 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/11(土) 22:28:23.82 ID:OhiU2eHKo

「そうそう、あまのん今、ブラつけてないよね?」

天乃「え? ええ、検査もあるし、普通に着けたままではいられないし邪魔になるのよ」

女子同士だからなのか、差ほど気にする様子もなく

戸惑って答える天乃にクラスメイトはにやりと悪い笑みを浮かべ、耳元に顔を近づける

「……やわかったよ」

天乃「っ!」

ボソッと、囁く

瞬時に天乃の顔が赤くなって「なに言ってるのよ」と声を上げると

クラスメイトがしてやったりと笑みを浮かべて、まぁまぁ。と宥める

天乃「まぁまぁ。じゃ、ないわよ……」

「あははっ、ごめんねごめん」

夏凜「それで、大赦とはどう折り合いをつけるつもりなのよ」

「ん〜……正直に言っちゃえば、あまのん解放までは折り合いつけることなんてできないよね」

「守られてる。と、仮定しても、私達にだってまったく何も出来ないわけじゃないと思うんだ」

だからさ。と、天乃に再びちょっかいを出そうとする友人を抑えるセミロングの女生徒は

困ったように笑みを浮かべながら、続ける

「大赦に聞いてみる。久遠さんがどんな状況なのか、なぜそうならないといけないのか」

天乃「……知る覚悟はあるの?」

「ある。なんて簡単に言えることじゃないとは思ってるよ」
261 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/11(土) 22:30:41.09 ID:OhiU2eHKo

クラスメイトの女子生徒は、天乃が何をしているのかなど

正直言ってほとんど分かっていない

しかしそれでも、どんな難しい覚悟をするう上でも

彼女達は比較にならない比較をするようにしているのだ

天乃が歩けなくなって、左目の色が変わり、見えなくなって

そして、長期とはいえないかもしれないが、入院してしまうまで来たからこそ、考える

「私達……なんて、広くは言わない。でも、少なくとも私は、久遠さんが居なくなっちゃう覚悟するよりはましだと思ってる」

覚悟を決めた女子生徒の表情

その横で、眼鏡をかけた女子生徒は

少しだけ、笑い声を零すと「少なくとも、ここに居る私達」と、訂正しつつ

天乃へと目を向ける

「死んじゃ、いやだよ」

天乃「死ぬ……なんて」

本来あるべき勇者―夏凜達―であれば、

死ぬことなんてないわ。などと、余裕を持って答えることが出来ただろうし

天乃自身であっても、ここまで切迫していなければ

大丈夫よ。と、答えてあげられたことだろう

しかし今は、そんなことを言える余裕はない
262 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/11(土) 22:31:39.93 ID:OhiU2eHKo

天乃「……なるべく、心配かけないようにするわ」

「それでお願いしたいかな。ううん……わがままを言えば、二度とお役目なんてやらないって言って欲しいけど」

天乃「それは」

「分かってる。大事なことだって。学校で特例、大赦の対応から十分理解してるよ」

セミロングの女子生徒は、困ったように言う

先ほどまでのような笑みのないその表情は

本当に、悩ましく思っているのを感じて

夏凜は口を開きかけて……閉じる

分かっているのだ。大事だと、大切だと、簡単にやめて良いようなことではないと

そのうえで、先輩方は改めてそう言っているのだと

天乃のクラスメイトの瞳から、感じたからだ

「……ごめんね。これは無理言った」

天乃「良いわよ。心配させたのは私。文句を言う権利が貴女達にはある」

「そういう、年上みたいな感じ。あまのんらしいけど、なんか……変な感じがする」
263 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/11(土) 22:33:58.90 ID:OhiU2eHKo

齢不相応に大人びて見える

そういう人は、少なからず存在している

しかし、天乃とは違うのだ

明確な違いを上手く言葉にすることが出来ないもやもやとした感覚に

眼鏡の女子生徒は不満そうに息をつく

それを横目に、セミロングの女子生徒は小さく笑みを浮かべて

「私もそれは感じてたよ。ずっと。齢不相応なんじゃなくて、本当に年上みたいな……体を置いて心だけが成長しちゃったような。そんな感じ」

「まぁ、お胸の加速装置の影響かもね〜」

天乃「いちいちそこに触れないでよ」

「あっでもね、あまのん。あまのんは体ほっそいからより大きく見えてるだけだよ? いや、純粋に大きくもあるけど、そのせいで割り増しだよね」

天乃「その補足要らないからっ!」

j生真面目な空気が我慢できないと言わんばかりに

余計な言葉を挟み込んだ眼鏡の女子生徒は

夏凜へと目を向けて、頷く
264 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/11(土) 22:36:01.94 ID:OhiU2eHKo

「ねぇ、かりぽん」

夏凜「誰よそれ……なんですか?」

「あまのんをよろしくね? りんりん。私達は蚊帳の外。だからきっと、大したことはでき――」

夏凜「任されてはあげるわよ」

眼鏡の女子生徒が言い終える前に夏凜は口を挟み、瞳を閉じると悩ましげに眉を顰めて、ため息をつく

夏凜「でも、私達に諦めたようなことを言わないで欲しいわね」

「え?」

夏凜「成せば大抵なんとかなる。成して見せてよ。先輩。その覚悟があるのなら。蚊帳の内側に入ってきて見せて」

「………そう、だね」

「そうだよ。まぁ、とりあえずは出来ることをやっていこう。勉強だって。出来ないところにたどり着くために、出来る事をやっていくんだから」

ということで。と

セミロングの女子生徒は、学校のプリントと

天乃が休んでいた分の授業ノートを鞄から取り出して、机に置く

「頑張ってね。久遠さん」

もうそろそろ時間だから。と、二人は帰っていった
265 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/11(土) 22:38:20.61 ID:OhiU2eHKo

√ 7月4日目 夕(自宅) ※木曜日

01〜10 
11〜20 友奈
21〜30 九尾
31〜40 
41〜50 樹
51〜60 
61〜70 
71〜80 風
81〜90 
91〜00 大赦

↓1のコンマ  
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/11(土) 22:38:33.99 ID:pAVdPziTO
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/11(土) 22:40:59.61 ID:uhkZXfcyO
帰ったのを見計らったかのように来たな…
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/11(土) 22:41:04.84 ID:pAVdPziTO
大赦多い?多くない?
269 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/11(土) 23:07:11.00 ID:OhiU2eHKo

「無事、こちらに来られたようで何よりです」

天乃「あら……その紙袋は?」

「退院祝いですよ」

天乃「そんなの良いのに……でも。ありがとう」

夏凜「………………」

天乃は男性から紙袋を受け取って

中を覗くと、「見てみて、良さげな化粧箱」と

高級感のある箱を取り出して、夏凜へと差し出す

夏凜「なんで、私に渡すのよ」

天乃「夏凜は退院祝いくれないのかなーって」

夏凜「昨日の今日で準備できてたらすごいっての」

天乃「それもそうね」

もちろん、分かってて言ったことだ

天乃は笑いながらそう言って

夏凜が受け取らない化粧箱―恐らくは財布―を見つめる


1、気持ちは嬉しいわ。でも、これは受け取れない
2、有難う。大切に使わせてもらうわ
3、私にこんなものくれてどうするの? 経費で落ちた?

↓2
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/11(土) 23:09:51.32 ID:pAVdPziTO
1
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/11(土) 23:10:03.03 ID:Qh32UCMT0
3
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/11(土) 23:10:17.64 ID:uhkZXfcyO
3
273 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/11(土) 23:56:53.93 ID:OhiU2eHKo

天乃「私にこんなものくれてどうするの?」

有難迷惑に対するようなものではなく

大赦勤務の男性職員の懐事情を気遣っているような、雰囲気で

天乃「経費で落ちた?」

化粧箱、ブランド

そこから見てあからさま値が張るであろう物を購入した男性に問いかける

天乃と男性職員は、親戚でも何でもない

ついこの間知り合った程度の関係だ

ゆえに、こんなプレゼントを退院祝いとはいえ、与えられるべきではないはずで

「いや、個人的にだよ。経費で落とすこともできるかもしれないが……それは違う気がして」

天乃「いや、あの……これこそ違うわよ?」

「そうだろうか……いや、そうなのか?」

夏凜「天乃の味覚についてとか知ってるから食べ物避けたんだろうけど、違うと思うけど?」

天乃「お祝いくれない人がなんか言うー」

夏凜「なんか用意するから膨れないで!」

いちいち茶化すな! と

声を荒げる夏凜に、天乃は笑みを向けて「落ち着いて」と、言い放った
274 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 00:14:24.47 ID:qtWfNbFSo

天乃「…………」

茶化すつもり5割、財布についてどうすべきかという悩み5割で

少しでも時間が稼げればと、そんなことを口走っては見たが

対して、時間稼ぎにもならない

返品してきてください。というのは簡単だが

買った彼のお店での評価だったり、プライドを傷つけることになる

ただただ、貰わないというのもまた

彼を傷つけることになるだろう

そして、貰うと言う選択

これは彼にとって悪くはないかもしれない

けれど、経費で落ちたならともかく

自腹で購入してくれたものとなると

特別感が強くて……中々


1、返品させる
2、貰わない
3、何も返せないわよ? と、受け取る


↓2
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 00:15:05.92 ID:kZzZGV+nO
2
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 00:16:07.96 ID:FMsG6873O
1
277 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 00:21:51.72 ID:qtWfNbFSo

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



夏凜(なにが退院祝いよ)イライラ

夏凜(金に物言わせて……ふざけんな)イライライラ

夏凜(私達の彼女なのに。部外者が誘惑しようとして……ッ)ギリッ

天乃「えっと……」

夏凜(悩まないでよ。なんで悩むのよ……あーっ! 受け取ってぶん投げればよかったぁ!)ギリィッ
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 00:24:54.53 ID:kZzZGV+nO

夏凜かわいい
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 00:27:51.85 ID:aePafR0PO

最近出番の多い男性職員だけどなにが目的なんだろう?
大赦からの任務なのか、本当に久遠さんに惚れてるのか…
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 01:49:35.36 ID:GPwAMGsmO

返品させるんかい!
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 11:28:20.22 ID:2dWjVBJmO
クラスメイトのキャラ立ち過ぎ問題
照れてる久遠さん可愛い
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 12:46:58.04 ID:2dWjVBJmO
ソシャゲ化決定みたいだ
二年前からこのスレがやってることを後追いか…
それでもメディアミックスで久遠さん出ないかな
283 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 13:15:06.65 ID:qtWfNbFSo

では、少しずつ

良かったですね
ソーシャルゲームに久遠さんは出ませんが
ソーシャルゲームのキャラは久遠さんに出て来る可能性も一握り
284 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 13:32:51.59 ID:qtWfNbFSo

天乃「ごめんなさい」

「は……? なにが、です?」

天乃「申し訳ないけれど、これは受け取れない」

箱を紙袋に戻し、紙袋をまた

呆然としている男性に差し向ける

人として

子供として

女の子として

プレゼントを貰えることが嬉しくないと言えば嘘になる

当然のことではあるが、貰えないより貰える方が嬉しいからだ

けれど、それでも天乃にはある程度の線引きがある

天乃「せっかく購入してもらって悪いのだけど、返品して。そのお金を自分の為に使って頂戴」

「い、いや……待って欲しい。確かにこれは経費ではない。だが、私は十分に裕福だ。この程度の金額では響くことはない」

天乃「そう言う問題じゃないわ」

「なら、私自身の気持ちが不要ということか」

天乃「違う」

はっきりと言い切った天乃は、男性職員を真っ直ぐ見る

時折、男子生徒が向けてくるような劣情を感じるものではない

だから、そのくらいの安心は天乃にはあって。けれども、息をつく

天乃「私と貴方の今の関係。それを考慮すれば、これが相応しくないと分かるはず」
285 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 13:55:00.42 ID:qtWfNbFSo

「……私は久遠さんのデータを沢山見てきた。それでも、情報不足ということか」

天乃「なんか怖いこと言ってるけど、私個人というよりは女性の扱いね?」

もちろん、中には例外がいるだろう

喜んでプレゼントを受け取って

しっかりと交際を続けていく人

喜んでプレゼントを受け取るが、プレゼント目当ての付き合いしかしない人

後者は非常に稀ではあるが、道徳教育が行き届いているからと言って

いないわけではないと言うのが、人間だ

けれども、天乃は受け取らない

これも、天乃の年代では少し珍しいかもしれないが

精神的に加速装置使った―クラスメイト曰く―天乃なのだから同年代はあてにならない

「そうか、仕方がない」

残念そうに紙袋を受け取った男性は

天乃を一瞥すると、すぐ横の夏凜に目を向ける

その瞳は、天乃にむけていたものとは、違っていて

「三好夏凜」

夏凜「はい」

「君には、ここで久遠様と生活を共にしてもらう。役割としては身の回りの世話および、樹海化した際の警護だ」

夏凜「はい――ぃ、はっ!?」

思わず、素っ頓狂な声が響いた
286 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 14:08:06.75 ID:qtWfNbFSo

「どうした?」

夏凜「いえ、私でよければ」

「むしろ君しかいない。犬吠埼姉妹はもちろん、東郷美森、結城友奈はすでに配置済み。余りは君だ」

少々、世話の面で不安は残るが。と

男性職員は包み隠さずに本音を告げると

笑み絵を浮かべて、夏凜を見る

「春信および、晴海戦技教導官からの評価を信頼しよう」

夏凜「晴海さんが?」

「ああそうだが……なんだ。まだ敬称を外せていないのか。それでバーテックスには勝てるのかね?」

天乃「問題ないわ。夏凜はちゃんとやってくれてる」

「……信頼しよう。では、また近いうちに来る。次は、受け取っていただけるものを用意しよう」

男性職員はプレゼントを渡せなかったにもかかわらず、満足気な笑みを浮かべて、去っていく

きっと、天乃が無事に自宅療養に移れただけで

彼としては満足だったのだ


287 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 14:26:42.97 ID:qtWfNbFSo

夏凜「……あんな化け物に勝てるかっての」

天乃「え?」

夏凜「あ、あぁ……昨日言った人間最強の話よ」

夏凜は困ったように頬を掻くと

あんなのバーテックスの方が楽だっての。と

さらに続けてぼやいて、ため息をつく

晴海さん。晴海戦技教導官

どこかで聞いたことのある名前のような気がするが、上手く思い出せない天乃は

もやもやとした感覚にもどかしさを感じて、顔を顰める

そして一息ついて、気分を入れ替える

天乃「とりあえず、夏凜がここで暮らすのね?」

夏凜「そうなるわ……言ってなかったけど。というか言うつもりはあったんだけど、園子は別の病院に移動してるから」

まさか宛がわれるのが自分だとは思っていなかった夏凜は

辺りを見渡して、ほぼ一人分の家具しかない室内をみて、天乃へと目を戻す

夏凜「まぁ、そう言うことらしいから。よろしく」



1、ベッドに引き倒す
2、ねぇ、彼の目的。分かる?
3、その晴海さんとは会えないの?
4、みんなよりも抜け駆けできるわね
5、夜這いとか……しないでね?


↓2
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 14:27:01.63 ID:QRZfg4+lO
5
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 14:27:14.80 ID:GPwAMGsmO
1
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 14:29:07.16 ID:UxlrVD4jO
3
291 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 15:09:48.27 ID:qtWfNbFSo

夏凜から差し出された手を、じっと見つめた天乃は

そうね。よろしく、と言いながら受け取って

その瞬間、力いっぱいに引く

夏凜「!」

天乃「ふふっ」

ベッドへと引き倒すことが出来る

その悪戯が成功する。そう確信した天乃の笑みに

夏凜は驚きの表情を伏せ、笑みを浮かべる

その瞬間、ベッドが大きく揺れた

天乃「なっ」

ギシッ! っと、軋む

敷布が押し引かれていく

夏凜「甘いのよ!」

夏凜は、そうされることを想定したうえで、手を出したのだ

だから、ベッドには完璧に手を付けた。耐えるための力もうまく込められた

夏凜「そうそう、手玉に取られてやらないっての」

引き倒されることを拒み、逆に天乃を引き上げた夏凜は

その体を抱きしめて、唇を重ねる

天乃「……んっ」

夏凜「っ」

引き倒されたとしても、引き上げたとしても。行先は同じ

けれども、心の持ちようは、まったく違っていて

夏凜「私の、勝ちね」

離れた夏凜は勝ち誇った笑みを浮かべた
292 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 15:31:35.10 ID:qtWfNbFSo

天乃「……行けると思ったんだけど」

夏凜「そう何度も引っかかってやれないわよ」

天乃「………」

意表を突けたことが嬉しいのだろう

夏凜が満面の笑みを浮かべる一方で、

天乃は気恥ずかしそうな表情をかき消し、黙り込むと

天乃「でも、こうすれば貴女からしてくれるのね? 王子様っ」

夏凜「んなぁっ!?」

抱きしめられたまま、夏凜の首に腕を回して

天乃はキスをせず、さらに身を寄せる

天乃「嬉しいわ。夏凜からきてくれるなんて」

夏凜「い、いや……私からなんて、結構……」

天乃「……もう少し、ねっ?」

ぼそりと耳元で呟くと

触れる肌の熱がどんどん上がっていくのを感じて

天乃はくすくすと笑って、耳朶をぱくりと咥える

びくっと体が震えたが、関係ない

夏凜「あ、あま……やめっひっ」

天乃「私をからかった、おしおき。よ」

夏凜「っひぃぃぃぃっ」

数分間、みっちり楽しんだ
293 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 16:04:28.68 ID:qtWfNbFSo


√ 7月4日目 夜(自宅) ※木曜日

01〜10 
11〜20 沙織
21〜30 
31〜40 
41〜50 
51〜60 
61〜70 
71〜80 
81〜90 九尾
91〜00 

↓1のコンマ  
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 16:05:04.94 ID:QRZfg4+lO
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 16:05:18.43 ID:UxlrVD4jO
296 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 16:20:22.51 ID:qtWfNbFSo
√ 7月4日目 夜(自宅) ※木曜日

1、九尾
2、死神
3、若葉
4、球子
5、歌野
6、水都
7、悪五郎
8、夏凜
9、イベント判定

↓2
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 16:21:32.12 ID:QRZfg4+lO
1
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 16:22:15.78 ID:UxlrVD4jO
7
299 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 16:55:43.53 ID:qtWfNbFSo

天乃「五郎君、いる?」

悪五郎「どうした。俺ではなく、三好夏凜を呼ぶべきだと思うが?」

天乃「貴方に用事があるから、貴方を呼んだのよ」

分かっているくせに。と

天乃が呟くと、悪五郎は鼻で笑って首を振る

悪五郎「分からんさ。あの男がお前に抱いている心を知りたいと言われても、俺では答えられん」

悪五郎は同じ……というとやや語弊があるが

一応、性別で良い分ければ男性の部類に当たる

しかし、だからと言って

同じ男の心情が理解できるのかと言われれば、そうではない

分かることも確かにある

しかし、分からない事の方が多いのだ

悪五郎「まぁ、俺をお前の囲いの中に招きたいと言うのならば。話は二つ返事で受け入れるが?」

天乃「……早計ね」

悪五郎「違うのか?」

天乃「その自信は一体どこから来るのよ」
300 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 17:37:10.22 ID:qtWfNbFSo

悪五郎「……ふむ」

天乃「……………」

悪五郎は天乃が呼んだ理由にたどり着こうと

椅子に座り込んで、考え込む

見た目は子供のその姿はどこか愛らしさを感じるが

だが、中身は妖怪だ

悪五郎「まぁ、良かったではないか」

天乃「?」

悪五郎「お前の狙い通りに事が進んで」

天乃「その、私の計画通り。みたいな言い方止めて」

悪五郎「事実、そうであろう?」

天乃「否定はできないけど、言い方ってものがあるの」

九尾と似たようなところがある悪五郎は

九尾よりはつかみどころがある分、マシなのかもしれないが

やや、問題があるようだ


1、貴方が相談に乗ってくれたからこそ、よ
2、それで。本当に彼の狙いが分からないの?
3、ねぇ……貴方。人と子供を作ることはできる?
4、……貴方は、陽乃さんを知ってる?
5、これからどうなると思う?


↓2
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 17:37:52.69 ID:QRZfg4+lO
1
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 17:38:14.92 ID:GPwAMGsmO
3
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 17:39:00.41 ID:SIwDxblKO
1
304 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 18:10:05.35 ID:qtWfNbFSo

天乃「貴方に聞きたいことがあるのよ」

悪五郎「……ほう?」

こんなこと聞くべきではないと分かっていても

体の状態がここまで来てしまった以上

そして、沙織が押しとどめてくれていた理由である

戦闘メンバーだから。というものを崩してしまった以上

覚悟すべきことがある。だから、天乃は悪五郎を呼んだのだ

天乃「貴方。人と子供を作ることはできる?」

悪五郎「俺とお前で。か?」

天乃「それでもいいから」

むしろ、それしかないのだが。

天乃は問いに素早く答えて、悪五郎を待つ

悪五郎は少し考えてから、息をつく

悪五郎「不可能とは言い切れんな」

天乃「曖昧なのね」

悪五郎「当たり前だろう。俺は人間と同様に生殖行為を行うことはできるが、生命の源である精子を生み出せない」
305 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 18:35:46.95 ID:qtWfNbFSo

悪五郎「だが、不可能とは言い切れない。と言ったのはお前が特殊な力を持っているからだ」

天乃「巫女の力の事?」

悪五郎「それも含めた、霊的能力だ」

悪五郎はそう言うと

椅子から立ち上がって天乃へと近づき、下腹部のあたりを優しく撫でる

ここだと、示すように

悪五郎「お前が持っているその力を使えば、人ならざる者と交わり子をなすこともできるかもしれない」

天乃「……どうして、曖昧なの?」

悪五郎「やろうとした人間などいないからだ」

少なくとも。と

悪五郎は言いながら自分の頭を人差し指で叩く

悪五郎「俺の記憶の中にはいない」

天乃「…………」

悪五郎「だが、女狐と対峙した安倍泰成という人間。その母は妖狐だったと聞いたことがある」

天乃「そうなの?」

悪五郎「詳しくは知らん。だが、人間の男に妖怪の女。で可能だったのだ。お前と俺でも不可能とは言えまい」
306 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 19:00:53.34 ID:qtWfNbFSo

悪五郎「この件は俺よりも女狐に聞くべきだろう」

天乃「そうね……」

女狐、九尾

九尾は少なくとも300年前から生きている存在

その間に妖怪と子供を作ろうとした人間がいるとは思えないけれど

知りたいのはその間の記憶ではなく、それ以前の記憶

九尾が対峙した安倍泰成という人の母親、妖狐

九尾ではないことは確かだろうけれど……その母親がどうやって子をなしたか

それが分かれば、きっと……

その思考の沼に足を踏み入れようとした瞬間

体が意志に関係なく引かれたのを感じて

天乃はハッと目を開く

悪五郎「おっと……やはり敏感な女だな。お前は」

天乃「……なに?」

天乃の頬から手を放した悪五郎は

直前まで迫っていた顔をにやりと歪めて

悪五郎「そんなことを言い出したもんだから、受け入れてくれるのかと思ってな」


1、それはまだ駄目よ
2、……協力をしてくれるのなら

↓2
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 19:01:23.50 ID:w2h2nuQMo
2
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 19:02:13.09 ID:QRZfg4+lO
2
309 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 19:24:32.68 ID:qtWfNbFSo

天乃「……協力をしてくれるなら」

悪五郎「お前が拒絶ではなく協力……か。それはお前を孕ませる件か?」

天乃「似たようなもの……ううん。結果だけ言えば向こうが求めてくるのはそれだと思う」

天乃は目を伏せ、悪五郎の問いに答える

沙織から聞かされたこと

なぜ、今までは平気で今更なのか

全てを悪五郎に話したうえで

改めて「協力してくれるなら、しても良い」と告げる

悪五郎「なるほどな。確かに、お前の力が失われるのは人間として。いや、世界的に見ても多大な損害だな」

天乃「ええ」

悪五郎「しかし、お前は一妻多夫ではなく、一妻多妻の道を選んでいるわけだが?」

天乃「良いじゃない別に」

悪五郎「女ではなく、好きな男を探すべきだったな」

呆れ交じりに

まるで、話を聞いた家族、

両親、あるいは兄のように語る悪五郎は

ふと、ため息をついて天乃を見つめた

悪五郎「良いだろう。お前は俺の主だ、この体も捧げてやる」
310 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 20:00:46.20 ID:qtWfNbFSo

天乃「それなら……今度は拒まないから」

きゅっと、目を瞑る

夏凜がしてくれるのを待つように

悪五郎から近付いてくるのを待つ

10秒、30秒、1分、2分……

待っても、気配は動く様子は無く

近づいてくる感じは全くしなくて

目を開くと、悪五郎は困ったように、首を振った

悪五郎「屈服させるのは好みだが、今のお前のような哀愁漂わせた女は美味くない」

天乃「…………」

悪五郎「お前に余計な口出しをするような奴がいたら、俺を呼べ。突っぱねてやる」

天乃「良いの? 後悔しない?」

悪五郎「惚れた女は振り向かせるもんだろう。縋らせるもんじゃない」

悪五郎はそう言いつつ

子供の身ながら、天ん物球をポンポンっと叩いて笑みを見せ

そのまま姿を消す

そのはっきりとした意思表示に

天乃はすこしだけ、悪五郎も悪くはないと思った
311 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 20:01:22.17 ID:qtWfNbFSo
>>310訂正


天乃「それなら……今度は拒まないから」

きゅっと、目を瞑る

夏凜がしてくれるのを待つように

悪五郎から近付いてくるのを待つ

10秒、30秒、1分、2分……

待っても、気配は動く様子は無く

近づいてくる感じは全くしなくて

目を開くと、悪五郎は困ったように、首を振った

悪五郎「屈服させるのは好みだが、今のお前のような哀愁漂わせた女は美味くない」

天乃「…………」

悪五郎「お前に余計な口出しをするような奴がいたら、俺を呼べ。突っぱねてやる」

天乃「良いの? 後悔しない?」

悪五郎「惚れた女は振り向かせるもんだろう。縋らせるもんじゃない」

悪五郎はそう言いつつ

子供の身ながら、天乃の頭をポンポンっと叩いて笑みを見せ

そのまま姿を消す

そのはっきりとした意思表示に

天乃はすこしだけ、悪五郎も悪くはないと思った
312 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 20:04:08.10 ID:qtWfNbFSo


1日のまとめ

・   乃木園子:交流無()
・   犬吠埼風:交流無()
・   犬吠埼樹:交流無()
・   結城友奈:交流無()
・   東郷美森:交流無()
・   三好夏凜:交流有(どうして許したか、誤魔化さない、返品要求、引き倒す)
・   乃木若葉:交流無()
・   土居球子:交流無()
・   白鳥歌野:交流無()
・   藤森水都:交流無()
・ 伊集院沙織:交流無()
・      九尾:交流無()
・       死神:交流無()
・      神樹:交流無()



7月4日目 終了時点

  乃木園子との絆 54(高い)
  犬吠埼風との絆 55(高い)
  犬吠埼樹との絆 44(少し高い)
  結城友奈との絆 59(高い)
  東郷美森との絆 49(少し高い)
  三好夏凜との絆 75(とても高い)
  乃木若葉との絆 39(中々良い)
  土居球子との絆 27(中々良い)
  白鳥歌野との絆 22(中々良い)
  藤森水都との絆 13(普通)
     沙織との絆 57(高い)
     九尾との絆 45(少し高い)
      死神との絆 38(中々良い)
      神樹との絆 9(低い)

汚染度???%
313 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 20:04:55.36 ID:qtWfNbFSo

01〜10 
11〜20 夏凜
21〜30 
31〜40 
41〜50 沙織
51〜60 
61〜70 
71〜80 夏凜
81〜90 
91〜00 沙織

↓1のコンマ  

ぞろ目、特殊
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 20:05:30.72 ID:SIwDxblKO
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 20:09:18.21 ID:QRZfg4+lO
そうそうゾロ目は来ないね
316 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 20:33:22.95 ID:qtWfNbFSo

√ 7月4日目 深夜(自宅) ※金曜日


夜中なのに、どこが騒がしくしているのかと憤っててしまいそうな騒音が耳に響く

もちろん、それは今廊下に出たばかりの夏凜にしか聞こえない

夏凜「……うっさいわね」

ドキドキと激しく高鳴る胸に少し苛立ちながら

生唾を飲み、ゆっくりと足を上げて

上げていない方、左足の踵を上げる速度に合わせて

右足のつま先から慎重に下ろす

天乃の家は下手に軋む家ではないが

それでも、しんっと静まり返った家の中では

夏凜の寝間着の布擦れの音でさえ、嫌に響いてしまう

夏凜「……………」

辿り着いた先は、天乃の部屋の前

本来なら耳を押し当てて中の様子をうかがいたいが

そんな余裕はなく、引き戸の縁に手をかけ、その手に手をかけて

慎重にドアをスライドさせて、自分の体が入るか否かの微妙な隙間に体を滑り込ませて、ドアを閉める

下手に広く開ければ、その分。滑車の音が聞こえてしまうからだ

夏凜「……………」

――そう、これは。夜這いである。バレてはいけないのだ。たどり着くまでは
317 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 20:48:49.83 ID:qtWfNbFSo

天乃「すー……すー……」

夏凜「…………」

天乃なら、言えば部屋に招き入れてくれるだろうし

一緒に寝てくれることだろう

というより、昨日そうしていたのだから

今回が駄目ということなんてないはずなのだ

それでも夏凜が夜這いを決行したのには、理由がある

寝ている間の天乃の様子を見る事

そして、自分の気配を上手く殺すこと

晴海曰く、

好きな人に完璧に夜這いが出来て一人前。

だからこそ、夏凜はこっそりと天乃に近づく

部屋に入った段階で感じる好きな人の匂い

ただでさえうるさい心臓がよりうるさく聞こえて

体が熱く、火照って動きが鈍る
318 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 20:52:14.79 ID:qtWfNbFSo

01〜10 
11〜20 目を覚ます
21〜30 
31〜40 
41〜50 特殊
51〜60 
61〜70 目を覚ます
71〜80 
81〜90 特殊
91〜00 

↓1のコンマ  

ぞろ目、特殊

※空白は「やったれ夏凜ちゃん。夜這い成功だよっ!」
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 20:52:26.61 ID:QRZfg4+lO
はい
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 20:55:15.73 ID:SIwDxblKO
安定のうっかりん
321 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 20:59:20.75 ID:qtWfNbFSo

天乃「……夏凜?」

夏凜「……!」

静かだった部屋に、突然天乃の声が聞こえて

夏凜は思わず体をびくつかせたが

慌てて口をふさぐ

息を殺し、何も聞こえないようにと身をかがめる

オレンジ色の光も、月の光もない部屋は暗く

ばれることはないは――

天乃「そこにいるんでしょう? 感じるわ」

夏凜「……流石ね」

闇になじんでいない目には見えていないだろうが

それでも、存在を感じ取れていたらしく

堂々と近くに寄ると、天乃はすこし眠そうな表情で笑みを作る

天乃「何してるのよ……初めから。来てればいいのに」

夏凜「夜這いがしたかったのよ……って、ぁ、違っ」

夏凜は自分の発言のおかしさにすぐさま気づくが

訂正する間もなく、天乃はくすくすと、笑って

天乃「なら、失敗ね……残念でした」

子供のような、笑みを浮かべた
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 20:59:31.53 ID:QRZfg4+lO
夜這いでもへたれていくスタイル
323 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 21:09:12.66 ID:qtWfNbFSo

天乃「男の人に、嫉妬でもしたの?」

夏凜「そう言うわけじゃないわよ。鍛錬の一環」

眠いなら寝ればいいのにと思いながら

夏凜は天乃の問いに、嘘なく答える

そんな理由で邪魔をしたの? と怒られる可能性もあるが

嘘をつくよりはいいと思ったのだ

天乃「鍛錬……ね。まぁ、私は難易度高いから」

夏凜「自分で言う? いや、その通りなんだけどさ」

天乃「別の部屋に大赦の人たちがいるでしょう? そこにしたら?」

夏凜「ハードからイージーって……せめてノーマルが欲しいところね」

冗談っぽくいってみれば

天乃は「確かにそうね」と、楽しそうに笑みをこぼして

天乃「……それで?」

夏凜「?」

天乃「一緒に寝るの? 襲いたいの? それとも、戻る?」

夏凜「…………」

天乃は眠そうだけど……


1、一緒に寝る
2、襲う
3、戻る


↓2
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 21:10:13.90 ID:QRZfg4+lO
1
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 21:10:22.90 ID:GPwAMGsmO
2
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 21:10:53.34 ID:SIwDxblKO
1
327 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 21:42:14.60 ID:qtWfNbFSo

夏凜「……少しだけ」

明確な答えは言葉ではなく態度で

そう言うかのように、ベッドを軋ませた夏凜は

真下に見える眠そうな天乃の目元

浮かぶ涙を拭って、唇を重ねる

天乃「……退屈したら、寝ちゃうから。ね?」

夏凜「激しくやれって? 大赦の連中が何事かって起きるけど?」

天乃「そう言う意味じゃないわよ。でも、それでもいいかもね」

夏凜「なら、それでやってやろうじゃない」

男女の行為であれば

夏凜は多少なりと覚えがある―読書で―が

女性同士というのはまだまだ覚えがなく

しかし、言ったからにはと、天乃の寝間着のボタンを上から一つずつ外し

シャツの中、胸の上に手を滑らせて脇から押し上げるように、胸を揉む

天乃「んっ」

夏凜「クラスメイトにもまれて、どうだった?」

天乃「やっぱり嫉妬してるんじゃない……っ」

夏凜「してないわよ――男の方にはね」

言いながら、より強く胸に触れた夏凜は、そのまま天乃と唇を重ねる

夏凜の嫉妬は夜のように、長かった
328 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 21:58:06.55 ID:qtWfNbFSo
√ 7月5日目 朝(自宅) ※金曜日

1、九尾
2、死神
3、若葉
4、球子
5、歌野
6、水都
7、悪五郎
8、夏凜
9、イベント判定

↓2
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 21:58:17.64 ID:QRZfg4+lO
1
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 21:58:49.74 ID:SIwDxblKO
1
331 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 22:35:37.80 ID:qtWfNbFSo

天乃「九尾、いるんでしょう?」

九尾「うむ。居らんぞ」

ベッドの下からずるりと姿を現した九尾は

天乃が何かを言うよりも早く、それで何用じゃ。と

すぐさま要件を問う

九尾「悪五郎と話しておったことかや?」

天乃「……聞いてたの?」

九尾「聞こえていた。が、正しいがのう」

くつくつと笑った九尾は

女性体の姿のまま椅子に腰かけて、天乃を見る

何が聞きたいのか

それを早く言えと言われているようで


1、悪五郎との子供
2、歌野・水都について
3、陽乃の深淵
4、男性の行動について
5、女性同士性交渉特別講座

↓2
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 22:36:03.76 ID:uRFSOJCYO
3
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 22:36:20.36 ID:GPwAMGsmO
1
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 22:38:33.02 ID:SLo/wlqa0
3
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 22:42:49.57 ID:SIwDxblKO
どれも聞きたい選択肢ばかりだな
336 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/12(日) 22:44:31.80 ID:qtWfNbFSo

では、少し早いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



天乃「単刀直入に聞くわ。五郎君と子供は作れるの?」

九尾「不可能とは言わぬが……」

九尾「勇者の力で体組織を活性化させ、好みの女に生殖器を作らせればよいではないか」

天乃「えっ?」

九尾「精子は出ぬが、娘の遺伝子を主様の胎内に流し込めばあとは通常通り妊娠できるはずじゃぞ」


※できません
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 22:49:00.27 ID:uRFSOJCYO

くそーできないのか
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/12(日) 23:00:30.27 ID:SIwDxblKO

やっぱり夏凜ちゃんがメインヒロインしてるのが一番かわいい

あとはまあ穢れ率がエグいことになっている以上、ハーレムに加えとけば万が一の時に五郎くんの協力という選択肢も残して損はないと思うな
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/13(月) 00:30:02.92 ID:pdGTauv/O

夏凜のいちゃいちゃパート多めで本当によかった
でももうそろそろ久遠さん待ちのヒロインズと話しもしたいな
340 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/13(月) 22:31:47.08 ID:w8h+9Grko

では、初めて行きます
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/13(月) 22:32:31.84 ID:f6vQ97GAO
ばっちこい
342 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/13(月) 22:39:07.35 ID:w8h+9Grko

天乃はふと息を吐くと、

一端心を押さえ込むように自分の胸に手を当てて、目を瞑る

悪五郎は不可能とはいえない。という曖昧なものだった

だが、九尾はそれをより明確な答えとしてくれるはずだ

もちろん、絶対にとは言い切れない

九尾にだって、分からないことはある

自称分からない。というだけで、本当は分かっている可能性もあるのだが。

天乃「そうよ。五郎君との件」

九尾「……ふむ」

天乃「聞いていたのなら、改めて話すこともないでしょう?」

天乃は平坦な声で話す

無理矢理に強制しているのではなく

感情の昂ぶりなく話すべきことだと思っているからだ

それに対して、九尾は一息おいてまっすぐな紅い瞳を天乃へと向ける

感情を感じさせないような瞳

だが、天乃はひるむことなく見つめ返す

九尾のその瞳は、相手を怯えさせるためにしているのではないと分かっているからだ

といっても、九尾を知らない人からすれば、理解しがたく恐れるかもしれないが。
343 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/13(月) 22:46:00.97 ID:w8h+9Grko

九尾「結論を言えば、悪五郎と主様の間で子をなすことは可能じゃ」

天乃「……どうやって?」

九尾「無論、主様の胎内に悪五郎の力を注ぎ込めばよい。人間の生殖行為とさほど変わらぬ」

内容が内容ではあるが

九尾はもちろん、年頃の少女である天乃も羞恥心に彩られることなく

天乃は「それで?」と九尾に先を促す

九尾「これに関しての欠点は3つ」

1つ、妖怪と人との子である為、人ならざる者が生まれる可能性があること

2つ、母体が人間である為、体が妊娠・出産の負荷に耐え切れず絶命する可能性があること

九尾「しかし、後者に関して言えば。穢れに堪えうる体ならば問題はなかろう」

妊娠と出産によって

天乃の体がさらに穢れるというのならば話は変わるが

妖怪との子であれ、神聖なる生命の誕生というものは

穢れを癒しこそすれ、穢すことはない

もちろん、孕むものがもとより穢れた存在であれば別なのだが、悪五郎に限ってその心配はない

あれは多少の悪意ある存在だが、天乃の元での彼は悪霊のそれではないからだ
344 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/13(月) 22:49:42.78 ID:w8h+9Grko

九尾「そこで、問題1じゃな。それに関しては孕まねば分からぬ。その後で異形が生まれれば残念賞。というところか」

天乃「……待って。貴女、欠点は3つといわなかった?」

九尾「それに関しては、利点が絡む。利点は……そうじゃな。3つか」

九尾はすらっと伸びる綺麗な3本の指を立て

天乃へと見せて、左右に振る

1つ、強力な力を持つ子供が生まれる可能性があること

2つ、下手な人間と交わることなく済ませられること

またしても3つ目を言わなかった九尾は

天乃が横槍を入れるよりも早く、「この3つ目じゃが……」と、続ける

九尾「利点としては主様の力全てを犠牲にすることはない。ということじゃ」

天乃「……普通の人間ではなく、五郎君だから、その力をもらえるということね?」

九尾「いかにも。少なくとも半分。主様の負担が軽減されると言ってよかろう」

天乃「穢れに関しては?」

九尾「悪五郎は穢れの代替ではないからのう。問題ないはずじゃ」

それは天乃にとっても、世界にとっても

願ってもないことだろう

代々、娘一人にしか受け継がれることのなかった力が

母親と子供それぞれが持つことが出来る

子供を産んだからと戦線離脱させずに済む

継続してみんなを守ることが出来るのだから
345 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/13(月) 22:55:53.40 ID:w8h+9Grko
しかし、天乃は喜べない

九尾の言葉を受け止めつつ、思考の机に並べて、考え込む

本当にそれだけなのか。と

ありがたいことかもしれないが、不安がある。

だからこそ、窪み、まだ知らされていないデメリットの部分を求めて九尾に目を向けた

九尾「うむ。3つめの欠点じゃ。それをした場合、悪五郎は消滅する可能性が高い」

天乃「消滅って……それ」

九尾「悪五郎も理解しておるはず。やつは男。つまり、力を放出する側じゃからな」

安倍泰成の母である葛の葉が出産の際に死亡しなかったのは

彼女が母体であり、力を保持したままの状態だったこと

彼女が精霊という召喚された―言い換えればエネルギー体―ではなかったからだ

九尾「それでも、悪五郎は主様に捧げるじゃろう。言うておったではないか。身を捧ぐ。と」

天乃「…………」

九尾「そう暗い表情をするな。悪五郎はただ無駄に消滅するわけではないぞ」

天乃「私の役に立つってことは分かるわ。でも――」

九尾「違う。そうではない」
346 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/13(月) 23:01:34.34 ID:w8h+9Grko

天乃の感情の篭った声が大きくなる直前

九尾は金色の髪が乱れるほどにはっきりと首を横に振り、否定する

九尾「主様に流れ込む力は悪五郎そのもの。それは、主様と結びつくという事」

それは。と、

九尾はどこか遠くを見る瞳で天乃を見つめ、笑みを浮かべる

悪五郎が消滅する。それへの悲哀はなく

むしろ、それに対する羨望さえ感じる瞳で

九尾「体しか交われぬ人間では手に入れられぬ至高の結びじゃ」

天乃「至高……」

九尾「愛しき者とのそれは、霊体である妾らにとっての悲願」

霊体だからと、必ずしも行えることではない

母親が妖怪であれば、高確率で問題なく行えるが

母親が人間の場合は、九尾が言ったように、耐え切れずに死ぬ可能性がある

ゆえに、

想いとそれを受け止められる器と力があってこそのもの
347 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/13(月) 23:02:06.33 ID:w8h+9Grko

人はそれを憑依と混同して考えるが

憑依などという単純な結びつきではない

ただ消え行くだけではなく、愛しき者の子となれるのだから

男である妖怪が、愛しき者と同種の存在としてあれるのだから

それ以上に心から受け入れることの出来る消滅――いや、転生なんてものはないだろう

九尾「ゆえに、案ずることはない」

天乃「……適当なこと、言ってないでしょうね」

九尾「いう必要は無かろう。信じたくないのであれば、勝手にすればよい」

天乃「そう……」

良かった。と、言うべきなのだろうか

それとも、良くないというべきなのだろうか

九尾が正しければ、悪五郎の消滅は犠牲とは言わない

なら……良い。と、言うべきなのだろうか

いずれにしても、天乃が戦わないことは大赦には伝わった

そこからどうなるのか

それが分かってからでも、良いかもしれない

天乃「ありがとう、貴女を信じるわ」

九尾「うむ」
348 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/13(月) 23:02:32.01 ID:w8h+9Grko

√ 7月5日目  昼(自宅) ※金曜日


01〜10 
11〜20 大赦
21〜30 
31〜40 
41〜50 沙織
51〜60 
61〜70 
71〜80 夏凜
81〜90 
91〜00  大赦

↓1のコンマ 
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/13(月) 23:03:07.04 ID:HHcsEtJpO
350 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/13(月) 23:08:26.72 ID:w8h+9Grko
√ 7月5日目 朝(自宅) ※金曜日

1、九尾
2、死神
3、若葉
4、球子
5、歌野
6、水都
7、悪五郎
8、夏凜
9、大赦
0、イベント判定

↓2


※夏凜は様子見欠席中
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/13(月) 23:09:05.05 ID:HHcsEtJpO
1
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/13(月) 23:09:34.95 ID:vzjfYeFJ0
とう
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/13(月) 23:09:59.33 ID:f6vQ97GAO
4
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/13(月) 23:10:17.33 ID:vzjfYeFJ0
すまん安価下で
355 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/13(月) 23:19:58.47 ID:w8h+9Grko

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


球子「た、タマはハーレムに入らないからな!」

天乃「いや、誘うつもりはないけど……」

球子「いーや。その目は魔獣……獣の目だ!」

天乃「貴女の中の私っていったい何なのよ」

球子「人間版女子刑務所」

天乃「……球子。お仕置きのお時間よ」ニコッ
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/13(月) 23:23:39.21 ID:HHcsEtJpO

久遠さん刑務所脱獄不可能だわ
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/13(月) 23:26:48.73 ID:f6vQ97GAO

まさか五郎くんが久遠さんの救世主になりうる存在となるとはねえ
…これって今作はおねショタHも期待していいのかな?
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 01:38:26.22 ID:KN6hIg9YO

なにげにいい人な五郎くん
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 06:49:46.22 ID:xQGt7/lnO

人間版女子刑務所ってなにかと思えばハーレムだからか…
このオマケの勢いほんと好き
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 12:38:28.79 ID:9hhBowemO
球子たちも姿を出してないだけでここ数日の色々な場面見てたりするのだろうか
中学生には結構刺激が強い内容だと思うけど
361 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/14(火) 21:58:41.22 ID:YmprL+RNo

では、初めて行きます
362 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/14(火) 22:04:16.97 ID:YmprL+RNo

球子「色々と大変なことになってきたなぁ」

天乃「なによ。他人事みたいに」

球子「他人事だからな〜」

飄々と笑いながら言った球子は

天乃の目が鋭くなったの気づいて、「冗談だから」と

後から訂正して、息をつく

実際、悪五郎の協力が得られるのだ

なければ非常に厄介な問題に発展していたかもしれないが

今回ばかりは問題ないだろう

もちろん、それでも天乃からしてみれば

問題以外の何物ではなくて

球子はふと、自分だけが覚えている過去のことを思い出して、目を伏せる

球子「そういえば、陽乃も似たような問題があるって話ししてたな」

天乃「陽乃さんが?」

球子「陽乃も天乃と同じでかなりの力があったから、それを遺さないといけないって」
363 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/14(火) 22:07:25.23 ID:YmprL+RNo

球子「といっても、タマはそれを盗み聞きしたって言うか……」

偶々聞いただけだ。タマだけに。

ふと通りがかった丸亀上の一角で陽乃がそんな話をしているのを。

あの声は今でも覚えてる

今まで聴いたことがない、寂しそうな声だった

天乃「……そう。全部は知らないのね」

球子「いやなこと言えば、タマは途中で敗退したからな」

球子の複雑な感情の込められた笑みに

天乃は一瞬、口を開きかけたものの、きゅっと結んで、目線を下げる

すると、球子は「気にしなくて良いからな」と、快活な声を紡ぐ

天乃「しないわよ。他人事だからね」

球子「それはそれで傷つくぞ」

天乃「我侭なんだから」

そんなどうでも良いとも思えるようなやり取りをした後

苦笑して、息を吐くと、球子は「それで」と、零す
364 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/14(火) 22:08:44.90 ID:YmprL+RNo

球子「なんで球子を呼んだんだ?」

子供の件もそうだが

もろもろの相談事であれば、

球子ではなく、九尾達の方が有意義な話が出来るはずで

そうでなくとも、記憶はないが、若葉の方が全うな会話をしてくれるはずで

なぜ自分なのだろうかと考えた球子は天乃から少し離れて

天乃が「なによその怯えた目」というが、首を横に振って、息を呑む

球子「た、タマもろーらくするつもりだな!」

天乃「え?」

球子「ず、ずっと見てたんだぞ! わ、若葉なんて顔真っ赤にして不純だ! なんて言ってたし」

天乃「……あぁ、やっぱり。見てたのね」

九尾は常日頃から―最近は存在を感じるが―影でこっそりと見ているのは分かっていたし

それは九尾に限ることなく、精霊全員がそうできる

だから、球子達も見てておかしくないと思っていたのだ
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 22:11:11.11 ID:7Ou1iNicO
かわいい
366 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/14(火) 22:14:29.30 ID:YmprL+RNo

球子「きょ、教育に悪いんだぞ!」

天乃「キスくらいなら平気じゃない?」

球子「昨日それ以上のことしてただろ!」

天乃「あら……」

怒り心頭というよりは、羞恥心ゆえにどうしようもなくて怒鳴っている印象の球子を

天乃は微笑ましく見つめて、ゆるりと目を逸らす

天乃「あれはどちらかというと、夏凜と東郷が悪いのよ」

天乃自身、あそこまでされるとは思っていなかった

二人は行き過ぎないように配慮したつもり。と

口をそろえていっていたが

天乃としては、あれは少し行きすぎだった。ような気がする

球子「そう、だけど」

天乃「ねぇ、見ないことは出来ないの?」

球子「出来る。別の場所に移動するってだけだけど」

天乃「なら、そう言う雰囲気になったときは、離れて欲しいかな」

天乃だって、見られて恥ずかしくないわけがないわけで。
367 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/14(火) 22:17:32.62 ID:YmprL+RNo

球子「分かった。そこは若葉にも話しておく」

天乃「ええ、よろしくね」

良く分からない逸れ方をしたし

球子はまだ、顔を紅くしているけれど

話を戻すことは出来るだろう

というか、戻さなければ呼んだ意味がない

いや、何もなくても呼ぶ事だってあるのだが。

天乃「…………」



1、球子って私と子供作れないの?
2、あの男性、何を考えてるか分かる?
3、球子はどれくらい知識あるの? 昨日してたような行為に関して
4、西暦時代の九尾について
5、西暦時代の歌野・水都に関して


↓2
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/03/14(火) 22:17:57.15 ID:7zBUwh+kO
4
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 22:18:21.68 ID:7Ou1iNicO
4
370 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/14(火) 22:25:57.45 ID:YmprL+RNo

天乃「貴女、多少は陽乃さんのことを知っているでしょう?」

球子「ん? まぁ……でも、あんまり詳しくは知らないぞ」

陽乃と出会ってから死ぬまで

決して長いとも言えない時間だったが、短かったわけでもない

しかしそれでも、多くを語ってくれなかった陽乃のことは殆どわからなかったと言っても良い

困ったように頭を触る球子に

天乃は「違うわ」と、答えて首を振る

天乃「知りたいのは九尾の事。西暦時代の九尾」

球子「九尾? なんでまた」

天乃「本人に聞いても答えてくれない部分があるだろうし、情報収集?」

球子「陽乃以上にわけわからない存在だぞ。アレ」
371 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/14(火) 22:38:32.71 ID:YmprL+RNo

球子は困ったように言うと、

天乃を一瞥して、警戒しながら椅子を少しだけ引くと

それに座って、ホット一息つく

天乃「なによそれ」

球子「気にしないでくれタマえ」

夏凜へのちょっかい、東郷へのちょっかい

その他もろもろ。色々とみてきた球子としては

天乃の一挙一動だけでなく

危害―悪戯的な意味―を加えられたくないなら

自分自身の行動にも細心の注意を払うべきだと考えていたのだ

天乃「そこまで警戒しなくても――」

球子「コホンッ」

あーあーっと喉のチェックをするふりをして会話を断ち切り

遥か昔、しかし、つい最近のような記憶を掘り起こす

九尾が語るのを拒むような裏話は聞けた覚えはないが……

球子「九尾は今と比べて大分狂暴だった気がするな」

天乃「例えば?」

球子「実際に見たわけじゃないけどな。陽乃が【無暗に人を食べないで。汚いから】って、言ってたんだ」
372 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/14(火) 22:50:13.26 ID:YmprL+RNo

天乃「は?」

自分らしくない声が漏れたことに気づいた天乃は

すぐさま口をふさいでフルフルと首を横に振ると

息を飲んで、ため息をついて球子を見つめなおす

しかし、その瞳には動揺が見て取れた

天乃「どういうこと? 実際に見てないんでしょう?」

球子「食べてるところはなー。ただ、人を見る目がそれをしててもおかしくない感じだった」

天乃の元で普通に生活しているとはいっても

流石に、そんなものを目撃していたら

ここまで平穏無事な共同生活は送れていない

球子「なんというか、陽乃の裏側。みたいな感じだな」

天乃「陽乃さんの?」

球子「前に、普段ニコニコしてて、時々寂しそうだ。でも、怒ったときはやばい奴。って話しただろ?」

天乃「ええ」

球子「そのやばい奴。の、部分がそのまま九尾と似たような感じだった」

いや、むしろ……

球子「陽乃が九尾に。じゃなくて、九尾が陽乃に……みたいな?」
373 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/14(火) 23:19:28.76 ID:YmprL+RNo

天乃「……………」

精霊が主人に似る。という話は聞いたことがない

いや、精霊が大赦によって正しく支給されたのは友奈達の世代からなのだから

情報力に乏しいのは必然だ

けれど、九尾は支給される? と、一概に言っていいのかは分からないけども

そう言った精霊とはかけ離れた存在だ

無論、天乃の精霊として存在する精霊が大体、そんなものなのだが。

球子「一番わかりやすく言えば、今みたいに人を助けるような精神はこれっぽっちも持ち合わせてなかった。ってことだ」

天乃「……今でも十分、おちゃらけているけど。もちろん、そう言う意味ではないのよね?」

球子「ああ。ただ、変な感じがするけどな。タマたちが死ぬくらいの頃には大分懐柔されてた気がする」

天乃「陽乃さん?」

球子「どうだろうなーただ、【あの娘は理解できぬ】が、いつの間にか【あやつはそう言う娘じゃ】になってた」

ああなるほど。と

球子の言葉に天乃は頷いて、息をつく

陽乃にはまだまだ謎が多いけれど

それでも、本質的には優しい子だと天乃は思う

だからこそ、球子の言葉が曖昧であろうと、中途半端だろうと

そうなのだろうと、思えた
374 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/14(火) 23:33:00.71 ID:YmprL+RNo

球子「まぁ、無関係なタマが分かるのはそのくらいだな」

天乃「……そう」

球子「役に立てなかっただろ」

天乃「そんなことはないわ」

九尾が自分は過去、粗暴な存在だったと自白する可能性は

球子には悪いが、比較的高い。と

天乃は考えて、首を振る

けれど、知っているのと知らないのとでは、手札が違う

今も、部屋の片隅に九尾の存在を感じるから

話はもう、通っているはずだ

その上で九尾がどう動くのか……

天乃「有難う。球子」

球子「気にすんな。過去の話が出来て、ちょっとだけ嬉しかったよ。ただ、若葉の記憶があれば、一番詳しかったかもな」

天乃「……そう。ね」

しかし、若葉の記憶は失われている

ゆえに、それは望めない事

後は九尾に聞くしかないだろう
375 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/14(火) 23:33:46.63 ID:YmprL+RNo

√ 7月5日目 夕(自宅) ※金曜日

01〜10 
11〜20 大赦
21〜30 
31〜40 友奈
41〜50 九尾
51〜60 
61〜70 
71〜80 九尾
81〜90 
91〜00 樹

↓1のコンマ  
376 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 23:34:17.27 ID:yeJrOmucO
377 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/14(火) 23:35:42.95 ID:YmprL+RNo
√ 7月5日目 夕(自宅) ※金曜日

1、九尾
2、死神
3、若葉
4、球子
5、歌野
6、水都
7、悪五郎
8、夏凜
9、勇者部の誰かに連絡 ※再安価
0、イベント判定 ※再安価

↓2
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 23:36:10.76 ID:yeJrOmucO
9
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 23:36:44.68 ID:DkvuZwLZ0
9
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 23:36:52.31 ID:KN6hIg9YO
9
381 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/14(火) 23:42:56.36 ID:YmprL+RNo
1、風
2、東郷
3、友奈
4、沙織
5、東郷
6、クラスメイト
7、昨日の男子生徒
8、一年生の女子生徒

↓2
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 23:43:41.02 ID:FznUZuYMO
樹がおらん…
4
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 23:43:58.14 ID:7Ou1iNicO
4
384 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/14(火) 23:46:12.67 ID:YmprL+RNo

>>382
失礼しました
樹が良ければ変更しますが……

そのまま沙織で良いですか?
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 23:47:02.84 ID:FznUZuYMO
あ、いいっすいいっす次出してもらえれば
安価とったの自分でもないんで
386 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/14(火) 23:53:32.89 ID:YmprL+RNo

では、とりあえずここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


>>383の方がこのままでよければ、沙織で進める予定です
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 23:55:07.26 ID:7Ou1iNicO

このままで大丈夫ですよ
388 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/15(水) 00:05:27.20 ID:blrnNT3iO

今作の九尾はどういう過程で丸くなっていったのか気になるな
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/15(水) 00:13:26.34 ID:inPnko4QO

沙織もハーレム入りだな!
390 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/15(水) 00:45:50.03 ID:XmJ4xfx0O

沙織は憑依さおりんモードの身体共有で行くのかな?
391 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/15(水) 22:10:44.09 ID:/THwczQ+o

では、少しだけ
392 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/15(水) 22:12:23.17 ID:/THwczQ+o

天乃「そういえば……」

おおきな問題を起こしたりはしないから。と

そう言っていた言葉を信じて気にすることのなかった沙織と猿猴の問題

それをそろそろ話すべきだ

時計の時間を見て、確実に放課後であることを確認してから

端末を手に、沙織の番号を探して電話をかける

沙織『はい、もしもし』

天乃「電話に慣れてるのね……天乃よ。声で分かる?」

沙織『うん、分かるよ。久遠さんの声なら変声器つかっても当てて見せるよ』

電話越しでは在るが、

ぐっと握りこぶしを作っているのがなんとなく想像できた天乃は

流石にそれは。と、苦笑して「沙織」と名前を呼ぶ

天乃「貴女、まだ猿猴よね?」

沙織『うん。そうだよ』

沙織はそう答えると

もう治ったなら話すべきだよね。と続けて

沙織『そっちにいくから少し待ってて』

そう言って、電話を切った
393 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/15(水) 22:23:09.01 ID:/THwczQ+o

沙織「おまたせ〜」

天乃「そんなに待ってないわよ? どこに居たの?」

沙織「学校だよ。体は人間だから瞬間移動は無理だけど」

それでも、多少の力を使えば

下手な交通機関よりは断然早いからね。と

沙織―猿猴―は自慢気に語って、笑みを浮かべる

沙織「それで、あたし達のことに関して。だよね」

沙織は椅子に座ることなく、自分の胸元に手を宛がう

それは、今体を動かしている猿猴と

その内側に居るであろう沙織とが心を繋ぎあっているかのようで

沙織「あたしはこの子を解放することに異論はないよ。でもね、久遠さん」

天乃「…………」

猿猴がその先を言うよりも早く、天乃は沙織の考えが分かった

いつからか分からない

いや、こうなるよりもずっと前から

沙織はそれを決めていた

そうあれることを望んでいた

沙織「この子はこのまま、久遠さんと一緒に戦いたいって思ってるんだよ」
394 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/15(水) 22:28:25.66 ID:/THwczQ+o

巫女として、沙織は十分仕事をしてくれていると思うし

その点で言えば、ある意味では一緒に戦ってくれているといえるだろう

だが、沙織はそれでは納得していないのだ

裏方で、何事もなく

ただ安全に祈りを捧げてお告げを授かるだけの自分の働きが

天乃と同様に戦っているなどとは、絶対に言いたくないのだ

沙織「危険性はもう話してあるし経験もしたんだよ? それでも、ね」

いや、だからこそなのかな。と

沙織はどこか悲しげに呟き、首を横に振る

それは、どちらのものなのだろうか

沙織「あたしは戦いと言う。あたしはその心を指示しても良いと思ってる」

天乃「……つまり、このままってことね?」

沙織「うん。もちろん、この子にもちゃんと主導権は譲る。時々、借りるかもしれないけど」
395 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/15(水) 22:30:50.63 ID:/THwczQ+o

それはつまり、勇者未満の勇者になるということだ

そして、沙織をより危険なことに巻き込むということ

天乃「……………」

沙織はそれが良いといっている

それを望んでいる

危険性を知り、経験した上で、それでも……

だけど、天乃はもう戦わない

絶対ではないけれど、基本的には戦わない……


1、良いわ。沙織と貴方がそれで良いのなら
2、ダメよ。認められない


↓2
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/15(水) 22:31:17.74 ID:NgHnSZQDO
1
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/15(水) 22:32:42.87 ID:EL+NoGkGo
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/15(水) 22:33:25.28 ID:Ma89Dyy6O
2
399 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/15(水) 22:59:36.46 ID:/THwczQ+o

天乃「……たくさん言いたいことは、あるのよ」

そんなのは危険だとか

そんなのは認められないだとか

広義的な言葉ではなく、もっと事細かに言えば

膨大な時間がかかるかもしれない

それほどに、天乃にとって沙織は大切な位置にいる

もちろん、沙織だけでなく勇者部のみんなに対しても。

天乃「でも、聞きたいことは一つだけよ」

沙織「一つ?」

天乃「そう。猿猴である貴方も、その体の持ち主である沙織も。二人とも、同意のうえでのものなのね?」

沙織「そうだよ」

質問の意味を考えない

天乃の言葉に対して、沙織はまっすぐに目を向けて即答する

それが答えだ。二人で話し合った……と言えるのかは分からない

でも、そう決めたことは確かで。

天乃「なら、良いわ。沙織と貴方がそう決めたのなら」

沙織「良いの? 本当に?」

天乃「駄目って言われたいなら、言ってあげるけど?」
400 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/15(水) 23:11:37.13 ID:/THwczQ+o

勿論、本気ではなく意地悪で言ったのだが

沙織は慌てたように首を振って

そんなことないよ! と、否定する

その必死さはまさしく伊集院沙織そのものだった

今はどちらなのだろうか

沙織か、猿猴か

主導権を返すと言っていたのだから

もう、返しているのだろうか

考える天乃は、沙織から感じる自分と似たような気配が

段々と薄れていくのを感じて、息をつく

天乃「沙織」

沙織「……うん」

天乃「あれから大分、時間かかっちゃったわね」

沙織「ううん、そんなことないよ」

天乃が無意味に過ごしていたのなら

文句の一つでも言えたかもしれないが

天乃は無意味さなどかけらもない濃密な時間を過ごしてきたのだ

それになにより、猿猴に体を差し出したのは自分から。だから

沙織「ごめんね、久遠さん。余計な事……だったよね」
401 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/15(水) 23:36:49.85 ID:/THwczQ+o

罪悪感しかなかった

だからと言って、泣くことが許されるとも思わない

何もかも自分が悪いのだから

勝手に望み、願い、行ったことだから

天乃に迷惑をかけた自分自身を戒めるように

沙織は強く、自分の感情を押さえつけて天乃へと目を向ける

沙織「久遠さ――」

天乃「別に謝らなくていいわよ」

沙織「で、でもっ」

天乃「誰よりも無茶してきたのが私だもの」

このくらいのことで

いちいち目くじらを立てていたらカウンターの貰い放題というもので。

天乃「気にしないで。気持ちはよく、分かるから」

天乃は笑みを浮かべて、沙織の罪悪感を拭うように、抱きしめる


1、猿猴が主導の時の記憶は全部あるの?
2、ねぇ、沙織。私……勇者部のみんなが欲しいの。もちろん、貴女も
3、私、大赦には戦わないことを話したわ
4、それで、学校の様子は分かってる?
5、沙織。体は本当に大丈夫?

↓2
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/15(水) 23:37:41.78 ID:NgHnSZQDO
2
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/15(水) 23:37:54.77 ID:Ma89Dyy6O
2
404 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/15(水) 23:45:30.34 ID:/THwczQ+o

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


天乃「ねぇ、沙織。私……勇者部のみんなが欲しいの。もちろん、貴女も」

沙織「うん、知ってるよ。久遠さん」ギシッ

天乃「……ん?」

沙織「精霊さんと一緒になって。人並み外れた体力とある程度の知識は手に入れたから。全部。任せてねっ」

天乃「ぇ、あっ――」
405 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/15(水) 23:47:07.44 ID:NgHnSZQDO

結局受けに回ってしまうのか
406 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/15(水) 23:54:40.67 ID:Ma89Dyy6O

ついにさおりんが猿猴から実質解放されたか
さてさて得た知識をどれほど久遠さんに活かせるか期待
407 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/16(木) 00:53:38.75 ID:P0Zt80cMO

さおりんと猿猴が交互に飴と鞭を与えることで久遠さんが敗北してしまう本ください
408 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/16(木) 22:36:54.12 ID:EJzRhTVio

では、少しだけ
409 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/16(木) 22:37:53.30 ID:UrypxxW/O
あいよ
410 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/16(木) 22:40:45.03 ID:EJzRhTVio

天乃「ねぇ、沙織。私……勇者部のみんなが欲しいの。もちろん、貴女も」

抱きしめる沙織の耳元で囁く

猿猴に体を奪われているときに何度かキスをしたが

伊集院沙織本人とのこの会話は初めて。の、はずだ

けれども、沙織の表情に大きな驚きはなかった

沙織「……知ってる」

天乃「え?」

沙織「あたし。久遠さんの精霊と一緒になってたんだよ? 全部、知ってるよ」

余裕のある微笑を携えながら、

沙織は天乃の胸から離れると、その両肩に手を伸ばして

ぐっと、力を込める

天乃「ちょ、沙織……?」

沙織「良いから、ね? ベッドに横になって?」

天乃「いや、東郷と夏凜の時二の舞は回避したいというか」

沙織「大丈夫。巫女は舞を踊りなれてるから」

天乃「違うから。全然違うから。ね?」
411 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/16(木) 22:44:15.27 ID:EJzRhTVio

雰囲気的に―ただの自滅だが―東郷と夏凜の時のように

一方的な蹂躙になることを予期できてしまった天乃は

自分の軽はずみな発言を少し悔いながら

沙織の押し倒そうとする力に抵抗する

天乃「一端落ち着きましょう? ね?」

沙織「大丈夫、冷静だよ。痛い思いはさせたくないから」

天乃「冷静に暴走してるから」

沙織を誘惑しようとしたのは事実だけれども

別に今すぐこういうことをしたかったわけではない

あくまで、自分はそう言うのを目指しています。という説明のつもりだった

しかし、こういうことに関しては上手くいかないようで

沙織をただ誘惑するだけで終わってしまったのだ
412 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/16(木) 22:53:54.52 ID:EJzRhTVio

しばらく押し続けても微動だにさせられないことを理解した沙織は

ふといきを吐いて首を横に振る

いくら身体能力に多少の補正がかかったとしても

元から桁外れの天乃には勝ち目がない

沙織「……久遠さん。あたしは久遠さんの精霊だけど。どちらかと言えば、宿主に力を貸したいと思ってる」

天乃「猿猴、死神に真っ二つにさせるわよ」

沙織「あー、だから言わない方がって言ったのに……」

あくどいことを平然と言った沙織は

冗談だけどね。と笑みを零して、椅子に座りなおす

どこからどこまでが冗談だったのだろうか

深く考えると疑心暗鬼へと誘われそうな問題を

天乃はため息に吹き飛ばさせて、苦笑する。冗談なら。と。
413 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/16(木) 22:57:20.83 ID:EJzRhTVio

天乃「貴女、猿猴と随分仲が良いようね」

沙織「仲が良い……のかな。良いんだろうね。うん、きっと……一緒になってたからだね」

その分、普通の人間よりは結びつきが強く深い為

互いのことを理解できているのかもしれない

そして、だからこその絆が出来ているのかもしれないと

天乃は考えるだけに収めて、笑みを浮かべる

この分なら、本当に心配はいらなそうだ

沙織「久遠さんがしようとしてることはもう伝わってる。本当なら、久遠さんは本当にそれで良いの? って聞くべきなんだと思う」

問題が沢山あるのだと

婚約の話、結婚の話、子供の話

今の年齢では縁の殆どないような話が

けれど、それに関しても考えた上であることを

沙織は猿猴といたjことで全部伝わってきているから

だから、笑みを見せる。困った人だなぁ。と、どこか嬉しそうな笑みだ
414 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/16(木) 22:57:51.65 ID:EJzRhTVio

沙織「あと重要なのは、悪五郎さんっていう恋人がいることを示さないといけないことだね」

天乃「そんなこともしなくちゃいけないの?」

沙織「それはね。名前だけ借りてる可能性も考えられるだろうし……あ、でも」

天乃「なに?」

沙織「あたしの力か、九尾さんの力を使えばある程度なら誤魔化せるよ。幻惑の力だから、一緒にいる人を恋人だよーって」

幻惑の力は

使い方によっては相手を意のままに操ることが出来る

九尾なんかは特にその傾向が強くかなりの万能型だといっても良いかもしれない

しかし、幻惑は言ってしまえば惑わす力だ

使う側に問題はないとしても、使われた側は、行使され続けることで

ふと現実へと返されたときに、その差によって崩壊してしまう可能性がある

もちろん、今回のような

実際に恋人はいるが、恋人の情報を誤認させる。というような

大きな差がないのであれば、そこまでの問題はないはずだが。
415 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/16(木) 23:01:11.77 ID:EJzRhTVio

天乃「ねぇ、今あたしの力って言ってたけど……」

沙織「うん。猿猴の力を多少なら扱える。もちろん、猿猴自身が扱うよりは大分不得手ではあるけど」

それでも、使えるか使えないかといえば、使えるほうだ

天乃達が勇者として変身することで力が使えるのと同じように

沙織もまた、その身に宿しているので力が使える。というわけだ

沙織「少しずつ、マスターしていこうかなーって」

天乃「……あんまり無理はしないでね?」

沙織「うんっ」

沙織が巫女だから、元々素質があってそんな勇者まがいのことが出来るのか

それとも、誰であろうと勇者としての力を行使できるのか

もし、後者なら……

そう考えた天乃は少数だからこその利点を思い浮かべて考えを打ち消す

それは余りにも危険なことだ

沙織「あ、ねぇ……久遠さん」

天乃「なに?」

甘えようとしている子供のような瞳を向けてくる沙織に

天乃はアレでしょうね。と、決め付けながら、訊ねる

沙織「……東郷さん達ともしたのに。あたしはダメなの?」



1、手加減。してね?
2、下腹部はダメ。これが条件よ
3、今日は。ちょっと……


↓2
416 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/16(木) 23:01:39.83 ID:ntlG2tDaO
1
417 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/16(木) 23:02:46.77 ID:RjeaMTIs0
1
418 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/16(木) 23:04:29.26 ID:UrypxxW/O
1
419 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/16(木) 23:05:14.58 ID:EJzRhTVio

では、短いですがここまでとさせていただきます
明日も、出来れば通常時間から
もしかしたらお休みになる可能性もあります


天乃「手加減。してね?」

沙織「うん」

天乃「絶対よ?」

沙織「うんっ」

沙織(あたし基準……だけどね)
420 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/16(木) 23:08:27.91 ID:ntlG2tDaO

実質3Pだな
421 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/16(木) 23:09:31.06 ID:UrypxxW/O

夏凜ちゃん達よりもさらに踏み込んで行く気か…流石さおりんだ
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/17(金) 00:57:49.20 ID:nk74W+yFO

わっふるわっふる
423 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 00:04:00.43 ID:QJVGnTQ0o

非常に遅いですが、少しだけ
424 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 00:07:07.79 ID:QJVGnTQ0o

どうしてそこまでしたいのかというのは、天乃には謎だったが

しかし、沙織が言う「東郷さん達とは……」という言葉は理解が出来る

等しく愛すると宣言したわけではないけれど

それと同じようなことを言っておきながら貴女はダメ。なんていうのは

酷い話という程度のことではないだろう

かといって……と考えた天乃は

小さくため息をついて「分かったわ」と零す

諦めたのではなく、沙織の熱意に半ば呆れるような感じだ

天乃「ただし、手加減。してね?」

沙織「うん、するよ。大丈夫、久遠さんが東郷さん達としたのがいろんな意味で初体験なのも知ってるから」

天乃「えっ?」

沙織「小学校の時からずっと、久遠さん忙しかったもんね。余計なこと、覚える余裕がないくらいに」

天乃は覚えていないだろうが、

沙織は天乃が小学生のころから知っている

勇者として戦うための技能を小さい頃から鍛錬し続け、

戦闘が始まってから慌てることがないようにと、普通の勉強だって周りを追い抜いて行って

省略するが、ちょっと面倒な身内の相手―撃退―もしなければいけなかったのだ

性知識なんてつける暇など塵ほどにもなかっただろう
425 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 00:09:42.70 ID:QJVGnTQ0o

沙織「……まぁ」

そういうことから徹底的に守り抜いてきた自称性戦士―他称:変態―がいたのだから

時間があったとしても知識をつけることは無理だったかもしれないが。

あの頃を懐かしく思い、それらの日々の殆どを奪われてしまった天乃のきょとんっとした表情に

沙織は、悲しげな笑みを携えて、「何でもないよー」と、笑う

沙織「久遠さん、キス、好き?」

天乃「好きか嫌いかといえば……そうね。好き」

沙織「じゃぁ、目。瞑って」

囁くように指示を出し、天乃をまたぐようにベッドを軋ませた沙織は

そのまま天乃の横に体を預けて、体を折り曲げていく

目の前に見える閉じた瞼、緊張からか、震える唇

そこからさらに下がった呼吸に揺れる胸

どうしても胸に目が良くし、気づけば手が伸びているが

沙織はぐっと堪えて天乃の唇に重ねる

訪問を知らせるようなトンッと接触させただけのキス

天乃「ん?」

沙織「開いたね」

天乃の瞼が開かれたのを確認し、もう一度唇を重ねる

今度は入り込むように深く唇を変化させながら、紡ぐ
426 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 00:10:28.36 ID:QJVGnTQ0o

沙織にとって、キスはただのキスではなく、入り口

性的な関係、性的な行為。それを行う一歩手前

扉を叩くようにキスをして、応じてくれた相手に挨拶を

天乃「んっ! ふ……ぁ」

舌をゆっくりと伸ばして忍び込ませ

天乃の舌、家主に挨拶をする

最初は突き、突き返されてから裏を舐め、側面を舐めて――離れる

沙織「っは……は、ふ」

天乃「ぁ……はぁ……んっ」

ごくりと、天乃の喉が音を鳴らし

沙織の口を割って伸びる舌先から、唾液が天乃の口元に伝う
427 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 00:11:12.66 ID:QJVGnTQ0o

それを追うようにもう一度唇を重ねて

唇が自分のものだと示すように唇で唇を舐める

天乃「んっ、っ、は……んっ」

唇が抜けていくたびに漏れ出る吐息

だんだんと熱の篭っていくそれを音に聞きながら

探るように持ち上がった天乃の手を握って止めると、少し強く握られて

沙織はキスをしたまま笑みを零す

怒ってるのなら、解放する。でも、そうではないと分かっているから

自分の口からも淫靡な吐息がこぼれるのを感じながら、深く、広く、長く

天乃の体と心をじんわりと解す

天乃「っは……ぁ、はぁ……はぁ……」

沙織「まだ、序盤だよ」

口をふさがれたことで淫らに乱れる呼吸をする天乃の口元から伝う涎を指で拭い、

普段は絶対に見せないような幻を見ているような瞳を見つめて沙織は微笑む
428 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 00:13:35.30 ID:QJVGnTQ0o

沙織「キスは一旦終わり。胸に触るよ」

天乃「ま、て……待って」

沙織「手加減はするから安心して」

天乃の覚束無い蕩けた声に返し、服の上から胸に触れる

自宅療養となったとはいえ、検査がある天乃の体はブラの感触なく

二枚程度の布の隔たりしか感じないが、それでも邪魔であることには変わりない

沙織は天乃の胸に触れる右手に少しだけ力を込めながら、

根元に指先がくるような、もぎ取ろうとしている手の形で熱していく

寝巻きが邪魔だ。中のキャミソールが邪魔だ

そう思わないといえば嘘になるのだが、

沙織は慌てることなく根元から先端まで

天乃に感覚が伝わるように強く、しかし豆腐を握るような優しさで撫でる

天乃「っ……んっ」

沙織「久遠さん、意外と敏感?」

天乃「っ」

天乃は空いた右手の指を咥えながら声を押し殺し、首を横に振る

誤魔化しているつもりなのだろうか

それで、そうじゃないと思うと思ってるんだろうか

悪戯心が生まれ――それをすぐさま押さえ込む

手加減する。その約束だから
429 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 00:14:28.60 ID:QJVGnTQ0o

沙織「……可愛いよ」

天乃「ば――んっ」

言葉を発しかけた唇をふさぎ、右手で寝巻きのボタンを外す

服の上からでも火照りを感じる体

服の上からでも存在を感じる乳頭

むき出しにしてみれば、白い肌の中、紅一点

初々しい桃色の―今は―大人用のおしゃぶりが存在感を主張していて

や……っと、愛らしい声を漏らす天乃の頬をやさしく押さえてキスをする

ピクリと胸が揺れる。唇が蠢く

飲み込んだ唾液が喉を潤し、

飲み込めない唾液が唇を潤して、口元を汚す

唇を離しただけなのに、ぬちゅりと艶かしい音がする
430 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 00:15:14.91 ID:QJVGnTQ0o

空気に触れる唇の寂しさと、切なさ

天乃「んくっ」

それを埋めるために、ぷっくりとした乳首にキスをする

唇へのキスと同じように、初めは軽めの接触

次に、唇でソフトに挟み、舐め上げるように離れてまた咥える

天乃「んっ」

触れ合うたびに、体が震える

心地よさの嬌声がかすかに零れる

そんな愛おしい人を横目に、沙織は咥えたまま舌先で乳頭の根元を舐め上げ、

舌でくるりと巻き付き、絞り上げるように舐めて、

傷をつけないように唇を挟みつつ歯で甘噛みする

天乃「っはっ……ぁ、ぅっ」

左手で自由な状態の左胸に触れると

空気に曝け出されて冷えているはずの体は熱っぽく

刺激を与えるたびにぴくんっぴくんっと可愛らしくもだえる
431 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 00:15:54.28 ID:QJVGnTQ0o

沙織「んちゅ……んっ、ちゅ」

好きだ。大好きだ……堪らなく愛おしい

それはどんなに魅惑的なものなのかと問いかけてくる自分の中の精霊に

沙織は「砂漠の中の雨」と答えて一心に天乃の体に吸い付く

天乃「んっ、っ、ゃ……さお、さ、沙織ぃ……」

沙織「胸が弱いんだね……可愛いよ。可愛い」

天乃「っ、ゃっぁっ……言わないで……」

白い肌を朱色に染めた天乃の訴えに

沙織はただ微笑みを返して下腹部へと目を向ける

……手加減。でも、ここで終了は手加減というより、あれだよね

沙織「体は小さくてもここだけ育ったのはそれが理由かもしれないよ」

天乃「ぅ……んっ」

乳房と乳頭を頬張るように口に収めて、

わざとらしく大きな音を立てて吸い上げる

弾けた空気の音は、唾液によって色っぽく

漏れ出す嬌声は淫らに美しい。蠱惑的な曲
432 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 00:16:37.87 ID:QJVGnTQ0o

沙織「……ここで止めてもいいけど。どうする?」

天乃「え? んっ!」

参考までにと服の上から下腹部を撫でると

天乃はびくんっと体を震わせて

沙織はまだしないよ。と言いながら、「ここ」と続けて

沙織「体の熱が段々と集まって言ってるはずだよ」

天乃「ぅ……」

ふいっと顔を背けたけれど

言葉通りであることは明白で

だからこそ沙織は、急かすことなく穏やかに続ける

沙織「その冷めていく熱はなによりも寂しく切なく心をあざ笑う。久遠さん、一人で満足できる?」

あたしは出来ない

天乃「そんなこと……聞かれたって……っ」

沙織「ごめん……でも。デリケートな部分だから。あたしが最初で良いのかなって」


1、うん……お願い
2、そう……ね。これ以上は、止めておきましょう

↓2
433 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/18(土) 00:25:51.44 ID:2HIMsKnGO
1
434 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/18(土) 00:27:55.38 ID:waf0+VY0O
1
435 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 00:31:34.92 ID:QJVGnTQ0o

では、ここまでとさせていただきます
流石に遅かったですね、失礼しました

明日もできれば少し早めの時間から
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/18(土) 00:36:13.97 ID:2HIMsKnGO

いえいえ更新ありがとうございます
437 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/18(土) 00:38:33.99 ID:waf0+VY0O

流石やな相変わらず
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/18(土) 01:24:56.65 ID:yUW7oqY1O

さおりんエロいなあ
439 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/18(土) 05:48:21.90 ID:jnZeLy3/O

久遠さんもさおりんもかわい過ぎるぜ
440 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/18(土) 18:13:12.40 ID:hzCo4xx9O
少し早めってことはそろそろ?
毎回エッチの描写するけど毎回例えが違う>>1の情熱好き
441 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/18(土) 18:32:54.29 ID:3bVe6KR90
やはり2年もほぼ毎日書き続けてたらすんごいうまくなるってはっきりわかんだね、もはやそこら辺のラノベ作家とそんなに変わらないと思う
442 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 18:59:28.58 ID:QJVGnTQ0o

では、少しずつ初めて行きます
443 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 19:12:53.38 ID:QJVGnTQ0o

天乃「うん……お願い……」

沙織が言うように、体が熱っぽい

頭痛はしないのに、風邪っぽくないのに

全身が火照って、思考には霞がかかる

恥ずかしい話だが

何度も経験した粗相一歩手前のような

あと少しなのに、戻っていってしまう

不快感と快感の絶妙な狭間にいる感覚を下腹部に感じて

天乃は沙織へと手を伸ばすと

沙織は微笑みながらその手を取り、自分の左頬に宛がうと、頷く

沙織「久遠さんに教えてあげる。愛は火よりも熱いこと。打ち鍛えられた熱した鉄の心地よさを」

右手の人差し指で天乃の首元から、胸の谷間、腹部へと指を滑らせ

寝間着のズボンのウエストゴムを指に引っ掛けて、引きずりおろしていく
444 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 19:26:26.40 ID:QJVGnTQ0o

天乃「ゃ、ちょ……沙織っ」

沙織「一気に脱がされるよりも、恥ずかしいかな……でも。だからこそ良いんだ」

一気に脱がすのも悪くはない

けれど、ゆっくり脱がすのが、不慣れな交わりにとっては大切で

焦らすわけじゃない。【相手に脱がされている】という感覚を

じっくりと体に教えてあげるのだ

そうすることで、体の芯まで羞恥心という火が通る

天乃「なんか、や……んっ!」

沙織「……ちゅっ。んっ、ペロッ」

天乃「っ!」

見えた小さな臍にキスをして、周囲をぺろりと舐めてから

中心に舌先を捻じ込んで腹部に舌を這わせる

びくびくと

緊張感と心地よさに震える天乃の体を一瞥し、もう一度胸に手を伸ばす
445 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 19:41:22.26 ID:QJVGnTQ0o

曝け出され、空気に触れた乳房は

手の熱が失われた分の寂し気な冷たさがあって、

自分のものか天乃のものか分からなくなった淫らな水気が、左の乳首をてからせる

天乃「沙織……」

沙織「分かってるよ」

天乃「んっ……っ、ふ……ぁ」

右手で臍のあたりや、わき腹の部分を

無意味な刺激を与えないように撫で解しつつ

左手でまだ無垢な右胸を愛撫し、唇同士の照れくさい交わりの中で

舌と舌を絡め合い、つつき合うような熱烈な接吻を交わす

離れれば、透明の唾液が糸を作る

健康的な桃色の舌が天乃の口元から伸びる

橙と赤。風変わりな二色の潤んだ瞳

それらが形作る、物欲しげな表情に

沙織はもう一度自分の全身を下ろして唇を重ねる

舌を押し戻すように強く、引き抜くように滑らかに

ぬちゅり、くちゅり、ちゅぷりと

艶かしい音を響かせながら、右手をさらに下げて、ズボンをさらに脱がしていく
446 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 19:43:38.71 ID:QJVGnTQ0o

見えてきた白く純白のショーツは

クロッチの部分が淫らな汗を含んで色濃く主張をし、

風が撫でるのだろう。それに気づいた天乃が「ごめんなさい」と声を漏らす

沙織「大丈夫だよ。汚くない」

天乃「んきゅっ! っぁ……は、ぁっ」

罪悪感を払拭するように、滑らかに滑らせた人差し指で下着の上から割れ目をなぞると

一際甘美な声が天乃の口から零れ落ちて、口元から唾液が伝う

沙織「……淫らに乱れても。綺麗だよ。可愛いよ」

天乃「んっ、ぁっ、んんっ」

手の位置は固定し、中指だけで迷い箸

食事の時はしつけがないと言われるかもしれないけれど、性的な食事ではしない方が【経験が】ない

指でこすっていると、だんだんと指先にまで淫猥な水気が染み出し始め

強く感じた肌と布のスレ感も、ぬりゅりとした滑りを交えていく
447 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 19:46:18.57 ID:QJVGnTQ0o

沙織「ほら、久遠さん。見て」

天乃「ん……っ、な、なにして……」

沙織「久遠さんの……えっちな涙を拭ったんだよ」

沙織は天乃の下腹部への刺激をやめると

右手の指のみだらな艶を天乃へと見せる

指を擦り合わせると、嗅いだこともないような匂いが微かに生まれたが

何一つ不快感を感じず、それどころか自分の性的欲求、下腹部の疼きがより強くなるのを感じた沙織は

頬を赤く染めながら、その指を咥える

割とマニアックなことなのだけれど、汚いものだと思わせないためには目の前で実演するのが一番だから

……もちろん、それがなくてもしたかもしれないが。

沙織「口に入れても、平気なんだよ」

天乃「平気とか……そうい……んっ、っぁっはっんくっ!」

股の間に人差し指から中指までを潜り込ませて、

中指以外の指で付け根を押すことで、僅かながらに愛欲の受付を開き

下着の上から指先数ミリを挿入し、滑らせて敏感な突起を爪弾く
448 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 19:48:39.28 ID:QJVGnTQ0o
沙織「我慢しないで声を出していいんだよ?」

天乃「んーんーっ」

手で口を押えて何もかもを押し殺しながら首を横に振る天乃は

普段の凛々しさなど欠片もないのに、

沙織の好感度は上がるばかりで、情欲は募るばかりで

何一つ、退くことを知らない

自分の女も、女の子も何も知らない無垢な体と心はただただ愛らしく

沙織は、自分の隙という言葉の広さを再確認してほほ笑む

天乃「んっ、っ、んっ、んんぅっ!」

右手の人差し指で陰核を撫で繰り回しながら

右胸の乳首を甘噛みし、吸い上げて、甘噛みしながら引っ張る

天乃「んっ、ふっ……んんっっあっあぁっ」

殺しきれない声が零れる

涙を伝わせた頬が光る

でも、痛みじゃない、悲しみじゃない

それが分かるからこそ、沙織はおしゃぶりを止めて天乃の手をどけて唇を重ねて

沙織「最後まで行ってみよっか……癖にはならないようにする」

天乃「ぇ……」

沙織「でも。一人じゃもう、満足できなくなったらごめんね」
449 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 19:50:25.55 ID:QJVGnTQ0o

言うだけ言って唇を重ねて、吸い上げていく

天乃の体がびくびくと震える

吸い上げた舌が少しばかり苦し気に動く

天乃「っは、ぁ……んっ」

それでもなお、少しだけ我慢して。とキスを捻じ込み

一旦離れて、もう一度キスをする。優しさと強引さの入り混じったフレンチキス

天乃「んっ、きゅっ……ふぁっ……はっあっ……ふ」

そのままに、左手で右胸を捩じるように揉みながら

人差し指で先端を織り込み、潰し、擦ってつつく

天乃「んくっ、っぁ……ぁっは……あ……」

沙織「全身に広がった感覚が、一か所に集まっていくんだ」

唇を離すと、唇が切なげに動く

手を放すと、胸が寂し気に動く

そして、右手で陰唇の周囲をゆっくりと撫でると

さっき以上の隠微な湿り気と、淫らな匂いが立ち込めて

天乃の瞳が見開かれる
450 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 19:54:40.62 ID:QJVGnTQ0o

天乃「ゃ……ぁ」

ドキドキと、胸が高鳴る

体中を火傷しそうなほどに熱していた物が、下腹部に集まっていく

それは神経だ。快楽を迸らせる神経

そのすべてが期待に導かれて、体の奥を疼かせる

溜まりに溜まったものがはじけるのだと

経験不足でも、天乃は分かった

それは恐ろしく、けれども止めてと口が動かない

そして、沙織の人差し指が張りつめた緊張の糸を弾くように

隆起した突起を抓み、捩じった瞬間

天乃「んっっあぁぁんんんぅぅぅぅ!!」

殺しきれな嬌声が溢れ

今まで感じたことのない強い快感が下腹部から一直線に脳を痺れさせ

ぐっしょりと濡らした下着に音こそ押し殺されたものの

淫らなものをあふれ出させて……

天乃「んっ……っぁ、あぁっ、やっ、あぁぁぁっ!」

沙織「ぁ……あはははっ。ご、ごめんねっ?」

生理現象ゆえのものまで一気に流れ出ていくのを感じた天乃は

振りきれた羞恥心に嗚咽を溢し、真っ赤な顔を両手で覆った
451 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 19:57:10.22 ID:QJVGnTQ0o

沙織「は、初めての時はたまにあるから……」

天乃「っ……ごめんなさい」

沙織「ぁ、いや、ううん。その……正直眼福だったし……」

天乃「眼福って何がよぉっ……もぅ……あぁ……うぅ」

後始末を一通り終えて、入浴も終えた後

ほんのりと気まずい空気の中で湯上りではない赤さの天乃は

沙織をちらりと見て、首を振る

天乃「御願い……誰にも言わないで」

沙織「う、うん。それは約束する」

天乃「ありがと……」

初めての迸る快楽を学んだ体は

まだ、時間の経過が足りていないからか

下腹部の奥では微かに疼いていて、天乃は沙織を手招くと、唇を重ねる

天乃「良かったら……また、教えて?」

沙織「う、うんっ。うんっ……」

自分の顔が一瞬にして真っ赤になって、心臓が壊れることを前提とした早鐘を打つのを感じて

沙織は顔を背ける。懇願するような上目遣いのその言葉は

淫らな言葉選びが一切ないにもかかわらず蠱惑的で

沙織「ねぇ、久遠さん」

天乃「なに?」

沙織「この部屋、と、泊まっていいかなっ!?」

思わず、声が裏返った


1、……良いわよ
2、駄目よ
3、ほかに誰かが来ても良いなら

↓2
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/18(土) 19:59:42.59 ID:p2ykLcusO
2
453 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/18(土) 20:06:47.92 ID:EJX2K1nC0
3
454 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 20:32:04.81 ID:QJVGnTQ0o

天乃「他に誰かが来ても平気なら、良いけど……」

沙織「東郷さん達みたいなことする? 三好さん呼ぶ!?」

天乃「なんでそんな目を輝かせてるのよ……」

自分以外の誰かが来ると言うのに

二人きりの邪魔をされると言うのに

そこまで考えてから、その程度を気にするなら

そもそも一妻多妻なんて認められるわけがないことに気づいて苦笑する

愚問だったのだ。誰かが来て良いのか。など

そしてむしろ、誰かが来たら困るのは自分だと、至る

天乃「それは許して。呼ばないで」

沙織「もっと気持ちいこと出来るよ?」

天乃「だから嫌なの! ……怖いから」

沙織「そっか……そうだね」

残念な。というよりも、優しい声で言うと

沙織は天乃の体をぎゅっと抱きしめる

誰もが経験するであろう初めての快楽

一人での行為を経験していなかったから、あの大きな刺激が始まりに過ぎないのではないか

それに溺れてしまうのではないか。そう、怖いんだろうと沙織は考えて

沙織「……久遠さん、可愛い」

優しく唇を重ねる。宥めるように、緊張を、恐怖を。受け取るように
455 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 20:35:07.34 ID:QJVGnTQ0o

√ 7月5日目 夜(自宅) ※金曜日

1、九尾
2、死神
3、若葉
4、球子
5、歌野
6、水都
7、悪五郎
8、夏凜
9、沙織
0、イベント判定 ※再安価

↓2
456 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/18(土) 20:35:34.22 ID:zoCTsqDPO
0
457 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/18(土) 20:37:15.31 ID:p2ykLcusO
1
458 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 20:51:06.87 ID:QJVGnTQ0o

天乃「九……って、何にやにやしてるのよ」

九尾「くふふっ、いや、なに。主様が見事にこう、のぅ?」

厭味ったらしい笑みを浮かべながら

挑発するように言う九尾に

天乃は顔を赤くして下腹部を抑えると、睨む

言っていることは事実なので

反論の言葉はないのだが……それでも

恥ずかしかったのだ

それを掘り起こされるのは、気分がいい話ではない

天乃「なによっ、良いじゃない……初めて。だったんだから」

九尾「……くふふっ。あの娘には数々の経験をした猿猴がおるからのう。齢不相応には、手慣れておる」

それでいて、愛にあふれているのだから

中々に手が付けられない

もちろん、悪いようには全くしないので放っておいても良いのかもしれないが

それに、自分のことは後回しで天乃の性知識を優先させたのだ

今どこで何をしているのか。というのも、語る必要はないだろう
459 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 21:00:50.27 ID:QJVGnTQ0o

九尾「心地よかったかや?」

天乃「それは……うん」

九尾「そうか」

気恥ずかし気ながら、小さく頷く愛らしく初々しい主人を横目に

九尾は優し気に頷いて、息をつく

伊集院沙織と久遠天乃

この二人が愛を紡ぐほどの関係になっているのは

九尾としては、喜ばしいことで

もしかしたら。と

どこか遠くを眺めて、笑みを浮かべた

天乃「なに笑ってるのよ……茶化すならせめてアレ以外にして」

九尾「しばらく、主様は妾には逆らえぬな」

天乃「う……」

九尾「妾にも手を出させろ。とかのう?」

天乃「あ、貴女は怖いから嫌よ。これに没頭しちゃったら……私。駄目になる気がするから」

九尾「ある程度、色々な事柄の発散方法は取得しておくべきじゃぞ」

もっとも、今回のことで

時々は一人でしたくなってしまうようになってしまったかもしれないが。

九尾「それで? 妾に用があるから、呼ぼうとしたのじゃろう?」


1、歌野と水都
2、陽乃の深淵
3、男性の行動
4、教えて、九尾先生! 保健体育の章
5、どうせ見てると思ったから呼んだの


↓2
460 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/18(土) 21:03:50.39 ID:p2ykLcusO
ksk
461 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/18(土) 21:04:05.28 ID:IJROmfcGO
4
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/18(土) 21:04:07.96 ID:EJX2K1nC0
2
463 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 21:16:23.93 ID:QJVGnTQ0o

では、いったんここまでとさせていただきます
もしかしたらこのまま終了の可能性もありますが、可能であれば22時30分ごろ。通常時間に再開します


並行してwikiを追いかけます。
映画の設定も一部捻じ込みます
464 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/18(土) 21:20:39.72 ID:g+8OEkqjO
一旦乙
465 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/18(土) 21:22:21.27 ID:p2ykLcusO
一旦乙
映画も見に行ったのかw
今作は特に色々な要素がてんこ盛りだし応援してるで
466 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/18(土) 21:37:03.43 ID:yUW7oqY1O
たんおつ
467 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/18(土) 21:38:04.02 ID:hzCo4xx9O
久遠さんのクラスメイト個性的過ぎるだろ
下手したらさおりんよりも凄いぞ
468 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 22:45:54.58 ID:QJVGnTQ0o

では、始めますがここはルールにのっとって2で進めます
469 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/18(土) 22:50:59.69 ID:nOXamI6IO
かもん
470 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 23:04:11.45 ID:QJVGnTQ0o

天乃「陽乃さんについて、教えて欲しいの」

九尾「陽乃について……? 主様、先日夢を――」

天乃「それよりもさらに奥の事よ」

陽乃と伊予島杏の会話を夢に見たが

それよりも前に、天乃は陽乃が親類縁者をすべて失う夢を見た

だが、天乃が知りたいのはそれよりも後のことだ

もちろん、それだけで壊れてしまった。と、言われても十分に納得できる話ではあるのかもしれない

けれど、それだけではないような気がするのだ

もっと深く、力強くどす黒いものがある気がしてならない

だからこその問いに、九尾は深く息を吐いて、天乃を見る

九尾「知らねば良かった。そう思うことやもしれぬぞ」

天乃「知らなければいけない事だと思うわ」

九尾「なにゆえ」

天乃「私の御先祖様のことだから。誰かが、しっかり覚えてあげるべきことだと思うから」

忘れ去られたものにすべきではないと

そう思い、そうあれと願う

天乃の言葉に九尾はしばし黙り込み、「よかろう」と、呟く

九尾「しかし、後悔するでないぞ。我が主。陽乃は主様のような生き方はしておらぬ」

それは大赦に嫌われている。ということも含めて……だ
471 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 23:17:20.69 ID:QJVGnTQ0o

九尾「主様は親類縁者が食い殺された部分は知っておるのじゃろう?」

天乃「え、ええ……」

九尾「ふむ……」

かなり凄惨なことだったのだが

流石は妖狐というべきか

球子の言っていたことが現実味を帯びるように

九尾はさほど重苦しさを持たせずに言葉を紡ぎ、一息入れる

自分の中でどう話すべきかと悩んでいたのだろう

少ししてから、口を開いた

九尾「陽乃はそこから生き延びた。逃げ延びたと言っても良い」

天乃「……そこで貴女と?」

九尾「いや、安全圏に戻ってから陽乃は他人の車を乗り継いで自宅にまで戻った」

そして、真っ黒な燃えカスになり果てた自宅

その残骸をさらに蹴り砕く親しくしていたはずの人々の姿を見た

九尾「きゃつらは口々にこういった。お前たちのせいだ。お前たちがいなければ。お前たちのせいで」

異形の者どもは理解が及ばないがゆえに

その怒りの矛先にはできなかった

憎しみをぶつけて壊すようなこともできなかった

だから、手ごろな久遠家の残骸に当たり散らし、もはや取り戻すことのできないものをさらに追い打ちをかけて、壊した

九尾「人間とは小さく、あさましく、醜い。理解が出来ぬ異形よりも、理解の出来る贄に矛先を向けるのは必然じゃった」
472 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 23:28:01.44 ID:QJVGnTQ0o

そもそも、親類縁者含めて誘拐のように連れ去られ、いけにえに刺された陽乃は

その程度のことで怒りを覚える事すらなかった

燃えるものがなければ火は付かないように

九尾「絶望から逃れてきたばかりの陽乃にとって、それはもはや何かを言えるようなものではない」

思い出が燃やされ、壊され

愛していた人たちが、愛してくれていた人たちが

自分を憎み、恨み、怒りをぶつけて口汚く罵る言葉が響く世界

いくら他と比べて巫女としての苦行に耐えてきたと言っても

それは小学生の女の子に耐えられるような物であるはずもなく

九尾「陽乃は人の寄り付かないような場所に隠れて、ただ。膝を抱えているだけだった」

このまま死ぬかもしれない

体の衰弱を感じて、そう思っても

陽乃はそれでもいいと考えるまでに心を砕かれていた

逃げないで、立ち止まって、みんなと一緒に食い殺されていればよかった

被害が収まらないと知った人々からの久遠家への止まない罵倒に苦しむ陽乃は

衰弱死を選択しようとしていた

九尾「何もできない。守る力もない。目を閉じれば目の前で食われる大切な人々の姿が蘇り、なぜお前は生きているのかと呪う」

そんなもの、生きていたいと思えるはずがなかったからだ
473 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/18(土) 23:44:27.27 ID:QJVGnTQ0o

九尾「そんな陽乃を見つけたのが、陽乃の一番の友人だった少女じゃ」

天乃「陽乃さんの……」

伊予島杏との記憶では

あの段階ですでに亡くなっていると言われた少女

そこで救われたのだろう。と

天乃は重く沈んだ心を慰めるように笑みを浮かべたが

しかし、九尾は首を横に振って

九尾「それから三日後。陽乃はその少女とその家族によって、再び生贄に連れ出された」

天乃「え?」

九尾「出会ってから少女は陽乃に食事を持ってきていたのじゃが、三日目の食事には睡眠薬が含まれておってな」

一番の親友

出会ってからも変わらない態度に安心して

この子の為にも生きるべきだと思い始めたところで、裏切られたのだ

九尾「妾が会ったのはその時じゃな。陽乃が戦う理由」

【二度と安心して生きていけない世界にするために生きる】

九尾「それが出来た日でもある」

人を助けるのだって、死んでいた方が良かったと思わせる為だと言うのだから、恐ろしい

もっとも、心の奥底に根付いた優しさのせいで、自分自身の壊れ切った考え方などに苦悩することもあったのだが……

そのたびに、自分たちを贄とした人々の裏切り

親友であったはずの少女の裏切りが、その優しさをねじ伏せていた
474 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 00:03:18.61 ID:xBYK8QyTo

天乃「それでも……それでも陽乃さんは優しい人だって」

九尾「球子が陽乃の全てを知っているならば、まったく違うことを語っておったはずじゃ」

天乃「………………」

九尾「優しさに折れて、大社の願いを受けて勇者として人々の前に出たこともあったが」

結果は言うまでもない

救い出した人々からは言葉だけでなく物が投げつけられた

感謝など一切ない、お前が死ねばそれで済む話というものもあった

どれだけ頑張ろうと、人々は自作自演のようにしか考えなかった

そしてそれは、インターネットと呼ばれる箱の中、電子の中で広く知れ渡り

陽乃の味方は、数えるほどにしかいなくなった

九尾「その人々の前に出た際、陽乃単体ではなくほかの者も連れておれば、また違ったかもしれぬが」

それはもう、いまさらの話

陽乃は裏切られ続け、傷つけられ続けた

それでも捨てきれない優しさに苦しみながら

守る価値のない人々を守っては、感謝なく怒りと恨みと憎しみをぶつけられる

そんな人生だった

天乃「……………」

九尾「そして、その裏切った少女の末裔が、伊集院沙織」

天乃「え……なっ」

九尾「伊集院家がなぜ、主様の名の由来を知っているのか。先祖について詳しいのか。それは、大赦にいるからではない」

陽乃から逃れるように別の場所で生き延びた少女は後々にまた再会するのだが

その時に、陽乃は少女から告げられた言葉を信じて、自分の子供のうち一人を託した

九尾「だからこそ、大赦は初めから主様に沙織を付けた。そう言う、決まりだったから」
475 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 00:13:14.08 ID:xBYK8QyTo

もちろん、ここまで深い事情は

沙織自身も知らない事

九尾が話さなければ、世に出ることはなかったこと

話し終えた九尾は人一息ついて、

呆然とする天乃の頭に触れる

九尾「絆は人を強くするが、もっとも人を弱らせるものでもある。切れることのない強き絆を築け。我が主」

それはもう、今の状態を見ていればいう必要がないことではあるのかもしれない

陽乃が本当に夢見た世界

戦いもなく、平和で、子供たちが何の隔たりもなく仲良く生きていける世界というものには程遠いかもしれないが

それでも、虐げられることなく天乃が生きているこの世界は

陽乃が命を賭した価値があるものだと、九尾は想い、笑みを浮かべる

九尾「今はもう、関係のない話じゃ。忘れてよい」

天乃「……それは、分かってる」

沙織の先祖が……という話も驚きだが、信頼はある。だから問題ない

一番は、陽乃の人生の酷さだ

そんな人生を歩むしかなかった陽乃のことを

興味本位で聞いたことを、悔いた
476 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 00:14:12.65 ID:xBYK8QyTo

√ 7月5日目 夜(自宅) ※金曜日

01〜10 
11〜20 沙織
21〜30 
31〜40 
41〜50 夏凜と沙織
51〜60 
61〜70 
71〜80 夏凜
81〜90 
91〜00 特殊

↓1のコンマ  

ぞろ目、特殊
477 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 00:15:11.27 ID:Mk6pXVLUO
478 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 00:17:28.18 ID:xBYK8QyTo

では、ここまでとさせていただきます
明日は出来れば昼頃から
再会時に一日のまとめ



陽乃さんは生易しい生き方はしていません
クラスメイトに関しては後日また修正が入ります
479 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 00:26:28.54 ID:Mk6pXVLUO

濃厚なHシーンからのシリアスな過去
これ記憶がある球子が聞いてたらかなりショック受けるだろうな…

あとでみんなに癒してもらおう
480 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 00:55:02.02 ID:7BbipVj+O

滅茶苦茶エグいんですが陽乃さんの過去…救いたい
481 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 06:46:16.11 ID:f7786j5ZO

犬姉妹に会いたいぞよ
482 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 14:13:53.30 ID:xBYK8QyTo

では、少しずつ
483 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 14:18:38.36 ID:xBYK8QyTo

1日のまとめ

・   乃木園子:交流無()
・   犬吠埼風:交流無()
・   犬吠埼樹:交流無()
・   結城友奈:交流無()
・   東郷美森:交流無()
・   三好夏凜:交流無()
・   乃木若葉:交流無()
・   土居球子:交流有(西暦時代の九尾)
・   白鳥歌野:交流無()
・   藤森水都:交流無()
・ 伊集院沙織:交流有(皆が欲しい。行為、継続、お泊り)
・      九尾:交流有(悪五郎との子供、陽乃の深淵)
・       死神:交流無()
・      神樹:交流無()



7月5日目 終了時点

  乃木園子との絆 54(高い)
  犬吠埼風との絆 55(高い)
  犬吠埼樹との絆 44(少し高い)
  結城友奈との絆 59(高い)
  東郷美森との絆 49(少し高い)
  三好夏凜との絆 75(とても高い)
  乃木若葉との絆 39(中々良い)
  土居球子との絆 28(中々良い)
  白鳥歌野との絆 22(中々良い)
  藤森水都との絆 13(普通)
     沙織との絆 60(とても高い)
     九尾との絆 46(少し高い)
      死神との絆 38(中々良い)
      神樹との絆 9(低い)

汚染度???%
484 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 14:23:38.46 ID:xBYK8QyTo

√ 7月6日目 朝(自宅) ※土曜日

01〜10 
11〜20 沙織
21〜30 
31〜40 
41〜50 夏凜
51〜60 大赦
61〜70 
71〜80 風・樹
81〜90 
91〜00 友奈東郷

↓1のコンマ

ぞろ目特殊  
485 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 14:26:10.20 ID:DbpiHx3Xo
さて
486 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 14:44:03.66 ID:xBYK8QyTo

沙織「むふー」

天乃「……ごめん。さすがに暑いわ」

寝ぼけているように抱き着いてはいるものの

起きていることが明白な沙織尼僧告げて、身体を少しだけ引き離す

沙織「今日は学校休みだし、このままでもいいかなと」

天乃「起きないわけにはいかないでしょう」

今日は土曜日だが休み

ということは来週の土曜日は学校がある。ということ

長期の欠席のせいで

曜日感覚こそズレなかったものの

そういう細かい部分に関しては、把握できていなかった

沙織「久遠さんは一応、昨日今日明日と様子を見て、問題なければ月曜日から登校だね」

天乃「それでもすぐ、夏休みなのよね……補習あるかしら」

沙織「久遠さんは免除されるんじゃないかな? テストに関しても、久遠さんだけ別枠で習った部分だけ。とかもありそう」

普段から天乃は成績に問題はない為

先生としては自習でも問題はないだろうと考えて

欠席分の補習の有無は天乃に決めさせる可能性もある

天乃「テスト範囲が別となると、テスト成績順位はランク外かしら」

沙織「ん〜多分ね。あれに関してはただの結果だから点数自体は評価されるはずだよ」
487 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 14:53:08.18 ID:xBYK8QyTo

天乃自体は、成績優秀者として名前が書かれようが書かれまいが

テスト結果さえ問題なければそれでいいと言う考えだが

それだと、お見舞いにも来ていた眼鏡の女子生徒の方が悔しがりそうなのだ

別に強く対抗意識があるわけではないのだが

テストのたびに、成績を競ってくる

沙織「今回ばかりは、あの子が一位だね」

天乃「このままだとそうなるでしょうね」

申し訳ないけれど。と

天乃は苦笑して、澄み渡る青空を見上げる

雲のない空は、バーテックスの襲来がないかもしれないと言う安心感を抱かせる

たとえあったとしても、勝てばいい

今まではそう思うだけにとどめていたことも

戦えなくなった今は、どうか襲撃がないですようにと、思わずにはいられない

沙織「久遠さん、久遠さん」

天乃「うん?」

沙織「一人エッチの仕方、教えてあげようか?」

天乃「はっ!?」

沙織「あははっ、久遠さん顔真っ赤だね」
488 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 15:01:17.05 ID:xBYK8QyTo

天乃「お、起きたばかりで何を……」

沙織「あたし達がいない時も気持ちいいこと出来た方が良いと思って」

天乃「そんなのっ」

沙織「それに、誰かにされる気持ちよさしか知らないと、身体が凄くエッチになるよ?」

沙織は人体の構造に詳しいわけではないので

ただの口から出まかせでしかないが

昨日のことを思い出してか

顔を赤らめて、目だけを伏せる天乃の初々しい仕草には

どうしても悪戯心がわいてくる

沙織「…………」

……まぁ。久遠さんは体自体がエッチだけど

沙織「胸もまた大きくなったよね? ウエストは相変わらず筋肉凄いし引き締まっちゃって相変わらずなんだけど」

天乃「知らないわよ。測定したわけでもないし」

沙織「じゃぁ測る? いいよ? 一人エッチのお勉強でもスリーサイズ測定でも」

天乃「貴女、沙織じゃなくて猿猴でしょう!」

沙織「あははっ、違うよ。ただ……なんていうか。こうやって問題を抱えずにお話とか。最近全然できてなかったから」

天乃「それは……」

沙織「周りのみんなは普通にやってることだけど。あたしたちにとっては。こういうのってすごく貴重な時間なんだよね」
489 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 15:16:38.96 ID:xBYK8QyTo

天乃「それはそうね」

寂しさを纏いながら、その時間が得られた嬉しさに笑みを浮かべる沙織に対し

天乃は優しく答えて、ほほ笑む

その貴重な時間を一人エッチだの、スリーサイズ測定だの

少しばかりいけない事をしようとしていると言うことには

あえて、触れない

沙織「お出かけでもする?」

天乃「デートってこと?」

沙織「うん、そうなるかな。勇者部のみんなも誘ってみて。出来るならお昼から」

天乃「…………」

まだ友奈には一妻多妻の件を話していないし

樹に至っては、告白されっぱなしだ

友奈はともかく、樹はそのままで全員でお出かけなど

気まずいというレベルの話ではない


1、夏凜と沙織と3人で
2、沙織と二人で
3、伊集院家について聞く
4、全員で
5、大赦の状況を聞く
6、スリーサイズを測る

↓2
490 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 15:22:12.73 ID:IHhG2QPlO
4
491 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 15:23:11.16 ID:qaJJXhfwO
4
492 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 15:55:51.50 ID:xBYK8QyTo

天乃「……そうね。みんなを呼びましょう」

友奈は来てくれると思うけれど

樹はもしかしたら難しいかもしれない

けれど、向き合わなければいけない事だから

沙織「じゃぁ、勇者部の連絡網に回すよ?」

天乃「うん……いや、待って。私が自分で送るわ」

沙織「そう? じゃぁ、はい」

手に持っていた天乃の端末を沙織から受け取った天乃は

その画面に表示された【デートいこっ】という言葉と

二個ほどついたハートマークを凝視して、沙織へと目を向ける

沙織「ダメ?」

天乃「当たり前でしょう」

悪気のない沙織の笑みに

天乃は困ったように答えて、新しく打ち直し、送った
493 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 16:06:45.85 ID:xBYK8QyTo

勇者部のグループ連絡網の為

それは夏凜にもいったのだが

夏凜は直接言いなさいよ。と、直接言いに来て、「当然行く」と言い

東郷は「是非参加させていただきます」

友奈は「久遠先輩外出して大丈夫なんですか?」と

最初こそ心配していたが、風と夏凜、東郷からの

相次いだ「大丈夫」という言葉に

少し驚きながらも、「ならぜひ!」と、嬉しそうで

ただ、樹だけは数分の沈黙の後

皆でなら。と

そんな前置きを付けて、参加を示す

天乃「……樹、ちょっと不服そうね」

沙織「犬吠埼さんはまだ何も言ってあげてないもんね」

天乃「それも知ってるのね」

精霊と同期しているため

知っていても不思議ではないのだが

疑問なく問うと、沙織は「うん」と、答えて

沙織「犬吠埼さんへの対応は問題なく出来るよね?」

天乃「……自信はないけれど。私がやらなければいけない事だから、沙織の手はかりないわ」
494 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 16:25:38.84 ID:xBYK8QyTo

沙織「別に借りちゃダメってことはないと思うけど……」

天乃「先延ばしにしたのは、私だから」

一妻多妻

それは正直、解決策と言ってはいけないことかもしれない

けれども、それを考える切っ掛けとなったのは

樹の告白だ

樹を悲しませたくない、夏凜も悲しませたくない

それならいっそ……と

であれば、一番初めは夏凜だとしても、時点で樹に話すべきだった

とはいえ、それはもはやいうだけ遅い話

天乃「樹がふざけないでください。と手を振り上げるのなら、甘んじて受けるわ」

沙織「ん〜……」

そんなことにはならないと思うけどなぁ。と

沙織は思いつつ言葉にはしないで、苦笑する

沙織「そうならないと良いね」

天乃「ええ」

沙織「犬吠埼さんが駄目だと風ちゃんまでだめになっちゃうからね」

天乃「……確かに。それもそうなのよね」

なまじ風を誘惑してしまったばっかりに

責任がさらに重くなったのを感じて、苦笑した
495 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 16:43:34.70 ID:xBYK8QyTo

√ 7月6日目 昼(自宅) ※土曜日


友奈「伊集院先輩、交代しませんか?」

沙織「良いよー」

天乃「貴女達、私達で遊ばないでね?」

友奈「そんなことしないですよ」

沙織「東郷さん、飛ばすよー」

東郷「えっ、ぁ、いじゅ――友奈ちゃぁぁぁぁぁぁ」

だだだだっと

車椅子を押しながら全力で走る沙織のすぐ手前から

東郷の叫び声が伸びて、友奈が困ったように笑う

基本的にはおとなしい東郷も、時々は奇抜で、明るくて

けれど、ああいう姿は、とても貴重で

風「沙織ー! 東郷を落っことさないでよー?」

夏凜「というか、車椅子押しながらあの速さってなんなの?」

天乃「まぁ、東郷に対する配慮がないから」

夏凜「それ駄目なやつじゃ……」

重苦しい問題がない勇者部

日常を歩く少女たちの会話は、誰かがしていてもおかしくない、普通の会話

少女たちにとっては、掛け替えがない。貴重な時間
496 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 17:00:01.69 ID:xBYK8QyTo

風「しっかし、学校は行かないくせにこうしてるって。なんか狡いわよねぇ」

天乃「仕方ないじゃない」

風「それはそうなんだけどねぇ。学生としては、サボタージュに憧れるもんよー」

夏凜「憧れるかっての」

真面目にやりなさいよ。と

呆れたように声を上げる夏凜と、その横で楽しそうに笑う風

少し先で立ち止まって手を振る沙織と胸元に手を宛がって蹲る東郷

天乃の後ろで「いい天気でよかったです」と

嬉しそうに話しかけてくる友奈

そして……天乃の左側にいる、黙り込んだ樹

樹は何かを言いたそうな顔をしているが

天乃を一目見ては、首を横に振る

友奈「樹ちゃん、どうかしたの?」

樹「いえ、その……」

ちらっと天乃を見た樹は「大丈夫です」と、続けたが

何を勘違いしたのか

あるいは、樹と天乃の何かを想像したのか

友奈「樹ちゃん。車椅子交代しよっ」

樹「えっ、あ……」

友奈は天乃と樹を置いて、風と夏凜に混ざっていく
497 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 17:17:46.94 ID:xBYK8QyTo

樹「…………」

天乃「…………」

余計なことしてくれたと言うべきか

助け舟を強引に押し出してくれたと言うべきか

ともかく、意図せず二人きりなった天乃と樹は

友奈達の空気とは一転して、暗い

それもこれも、会話がないからだろう

皆の楽し気な会話、車椅子のキュルキュルという音

砂利を踏む音こそあるのだが……

樹「……久遠先輩」

その沈黙に最初に耐え切れなくなったのは、樹だった

小さな声ではあったが、天乃にしか聞こえないようにしているのなら、十分な声で

樹の足が止まり、車椅子が止まって微かに揺れる

天乃「……樹」

なに? なんて聞いてはいけない

樹がなぜそんな表情をしているのか

会話がしにくくなってしまっているのか

自分たちの間で何があったのかを、覚えていないことになるからだ



1、私……ここにいるみんなと幸せになりたいの
2、樹は、一妻多妻というものを認められる?
3、キスを求める
4、樹の言葉を待つ

↓2
498 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 17:21:25.75 ID:XjLln+d/O
2
499 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 17:22:19.60 ID:DbpiHx3Xo
500 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 17:26:11.61 ID:qaJJXhfwO
2
501 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 17:43:16.08 ID:xBYK8QyTo

天乃「樹」

名前を呼んで以降言葉を発しない樹に振り向いて

沈んだ顔をその目に焼き付けながら、天乃は手招く

もう少し近づいて。と

天乃「樹、キスを。しましょう」

樹「え?」

予想していなかった言葉に驚いた樹は

辺りを見渡して

運よく、手前にいる風達しか人がいないのは分かったが

しかし、思わず一歩後退る

天乃「どうしたの?」

樹「く、久遠先輩はどこでもこういうことが出来るんですか?」

天乃「そんなわけないわ。でも、私はこれが好き。これが一番、心を伝えられるものだと思ってるから」

初めてのキスこそ、辛いものだった

けれど、それがあったからこそ、夏凜や園子達ともキスをすることになって

そのおかげで今がある

始まりがキスだから、天乃にとってはそれこそが思いを伝える有効手段
502 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 17:52:46.84 ID:xBYK8QyTo

樹「うぅ……」

天乃「ここが無理なら、どこか別の場所でもいいけれど」

天乃はそう言いながら

辺りを見渡し、先を歩く勇者部のみんなと沙織を一瞥し、

樹へと向き直る

その表情は優し気で、そして、仄かに赤い

天乃「私、自分の気持ちを言葉にするのってあんまり得意じゃないの。特に、誰かを口説くなんて言うのはね」

樹「えー」

そんなことはないのだが

本人は大まじめにそう思っているのだから、大変だ

キスをしたらそれで終わり

先延ばしにした代価として受け取って欲しいと言う程度の可能性を考えていた樹は

余りにも拍子抜けな言葉に、間の抜けた声を漏らして

樹「なら、久遠先輩」

天乃「うん」

樹「口説いてみてください」

天乃「え?」

樹「久遠先輩のその言葉を、聞いてみたいです」
503 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 18:13:33.00 ID:xBYK8QyTo

苦手だと言ったはずなのに

それを求めてくる樹に目を向けると

さっきまでの沈んだ表情はどこへ消えたのか

悪戯心を感じる笑みが見えた

樹「お願いします」

天乃「お願いって」

散々待たされたのだから

このくらいの我儘を言っても良いじゃないですか。なんて

樹は考えながら、笑みを浮かべる

言葉に困って、

恥ずかし気な表情を見せる天乃の姿

それだけで、樹としては満足だと言えるけれど

どうしても、言葉が聞きたくて


1、私は少なくとも、この場にいる全員を幸せにしたいと思ってるわ。当然、貴女も
2、貴女の瞳が好き。声が好き。怖がりであり、その分の強さのある心が好き
3、好きよ。樹
4、私は貴女ただけでなく、みんなとも関係を作ろうとしている。貴女は、それを認められる?


↓2
504 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 18:17:31.56 ID:sZWvI6LrO
1
505 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/03/19(日) 18:19:38.65 ID:KD8oVGKYO
2
506 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 18:23:59.51 ID:qaJJXhfwO
4
507 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 18:33:48.54 ID:xBYK8QyTo

天乃「ねぇ、樹」

樹「はい」

天乃「その前にとても大切な話があるの」

樹の気持ちを聞いたのは

こんな考えを持つよりも前の事

だから、この話をしたことで樹の気持ちが変わってしまう可能性も0ではない

だとしても、避けるべきではない話

それを適当に頭の中でまとめた天乃は

緊張が見える樹を、まっすぐ見つめて

天乃「私は貴女ただけでなく、みんなとも関係を作ろうとしてる」

樹「え?」

天乃「聞き馴染みあるかはともかく、分かりやすければ一夫多妻。貴女は、それを認められる?」

樹「みんなって……お姉ちゃんたちの事ですか?」

頷く。友奈にはまだ話していないが

それ以外の全員には、もう。話を通している

天乃「そうよ。みんな」
508 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 18:45:51.73 ID:xBYK8QyTo

樹「……………」

樹が顔を伏せても、

その瞳が揺らいでいるのが、天乃にはギリギリではあるが。見える

樹には失礼なことを言っていると、天乃は自覚している

だって、ここまで先延ばしにしておきながら

貴女が一番ではなくてもいいのなら。という言葉を向けたのだから

しかし、これは決めてしまったことだ

沙織達を誘惑して、夏凜にも話して、それでここまできた

樹がそれは認められないと言うのなら、樹には御免なさいと

そういう他、ない

そう思うと心が痛む

けれど、天乃は樹から目を背けない

沙織にも言ったが、これは天乃の問題だから

天乃が背負うべきことだから
509 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 18:51:14.12 ID:xBYK8QyTo

樹「お姉ちゃん達には、もう話したんですか?」

天乃「友奈にはまだだけれど。他はみんな」

樹「……そうですか」

それでなおこうして皆での集まりに顔を出して

普通に会話をしたりしているということは

その話にみんなは乗り気なのだと、樹は分かって

そして……

樹「結局。みんな、久遠先輩が好きなんですね」

好きだから、手放したくない

好きだから、一夫多妻なんていうのも受け入れられる

自分が一番になりたいと思うのは

誰かを好きになってしまった人としては当然の考え方だと言っても良い

けれど、勇者部はみんな元から仲が良くて

互いの気持ちも、ある程度は理解できてしまう

それが、好きになった相手が同じならば、なおのこと
510 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 19:13:42.14 ID:xBYK8QyTo

樹「一夫多妻。かぁ」

皆を幸せにしたい

天乃のそんな考え方が、樹にはよくわかる

自分が選ばれたときの喜びと、選ばれなかった友人の悲しみ

自分が選ばれなかった時の悲しみと、選ばれた友人の喜び

どちらにも存在する悲しみ、見ていられないと言う気持ち

それがあるのだと知れば、みんなを。という気持ちにもなってしまう

そして、天乃が複数人に告白されたり、

複数人の気持ちを知ってしまった場合、

そんなことを目指すのは、分かっていたことだった

だが、それも絶対ではなくて、選ばれない可能性があって、不安な気持ちが増すばかりだった時間を考えた樹は

天乃のことを見つめて、首を横に振る

樹「どうしてもっと早く、それを言ってくれなかったんですか?」

天乃「どうしてと言われても……私、ICUから出られなかったし」

樹「う……」

天乃「貴女が会いに来てくれれば、もう少し早く話せたの。かな?」

樹「……ごめんなさい」

天乃「別に怒ってるわけでも不満があるわけでもないから」

まぁ、多少寂しさはあったが

それを埋めるくらいには、お見舞いをしてくれる人がいたために

天乃としては、気がかりだったのはこの回答くらいしかない
511 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 19:28:20.72 ID:xBYK8QyTo

樹の半夏近似思わず反撃したことに気づいた天乃は

苦笑しながら、自分の言葉から棘を引っこ抜いて、

車椅子の持ち手に触れる樹の手に、手を重ねる

樹「!」

ピクリと、身体が反応したが樹は目を見開いただけで

近づくことも、離れることもなく驚いたように開いた口からは

吐息が零れ出し、ゆっくりと一文字に結ばれる

天乃「……どう?」

周りの音がかき消えたような風のざわめきからの、静寂

静かな天乃の一言が、鼓膜を揺らし

天乃「樹。貴女は……私と一緒にいてくれる?」

恥ずかしさも、緊張感も

恐らくは、思慮深さも何もない心が紡いだであろう言葉が

心を揺さぶる

樹「……なにが、苦手なんですか」

これは自分が好意あるからかもしれないが

樹「こんなの、振り払えるわけないです」

少なくとも、自分位は効果覿面だと樹は思った
512 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 19:47:53.82 ID:xBYK8QyTo

樹「久遠先輩がみんなを幸せにしたいと言うなら、私も……幸せにして欲しいです」

天乃「……当然よ」

自分の手の下にある、樹の小さな手

それを優しく握り、樹の嬉しそうに恥ずかしそうな笑みを瞳に移した天乃は

不意に、力強くその手を引く

樹「ゎ――」

鍛えているはずの瞬発力

けれども、警戒する必要のないこの場での不意打ちは

樹のその特訓をまるで、無意味なものにして

容易く引かれた樹がバランスを崩して車椅子に突っ伏した瞬間

樹「んっ」

ほんの軽い接触程度ではあったが、天乃は唇を重ねて

そっと、手を放す

樹「ぁ、わわわわわっ」

天乃「ふふっ。貴女の唇は、特に柔らかいのね」

樹「うぅぅぅぅっ、わぁぁぁぁぁぁぁっ」

破裂する勢いで顔を真っ赤にした樹は横を抜け、一人、駆け抜けていく

その後ろ姿を見つめる天乃は、

天乃「可愛い」

自分の唇を指でなぞり、ほほ笑んだ
513 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 20:03:06.72 ID:xBYK8QyTo

風「樹と話したのね」

樹が天乃から少し離れ

沙織に隠れるようにして歩くのを見た風は

夏凜と交代して車椅子を押しながら天乃へと問いかける

天乃「ん」

風「話す以外にも何かしたでしょ」

聞くまでもない事なのだが

なんとなく訊ねた風に天乃は振り向くと

唇に指を宛がって、笑みを浮かべる

天乃「美味しくいただきました」

風「んなっ……ちょ、あんた……」

あれやこれやと言いたい言葉があふれ出し

それらを飲み込んだ風は

ただ一息、ため息だけをついて、呆れたように顔を顰める

風「ほどほどにしなさいよー? 樹はまだ一年生なんだから」

天乃「大人の味を教えてあげるわ」

風「つい最近知ったばかりの淑女が何言ってんだかねぇ」
514 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 20:15:51.36 ID:xBYK8QyTo

天乃「えっ?」

風「夏凜と東郷。二人の相手したんでしょ?」

天乃「ぁ、う、うん」

離れている間にどんな話をしていたのかと思えば、

日中とは思えないような会話で

けれど、渦中にいたはずの沙織が本当に話していないことに感謝をしつつ、眼を逸らす

天乃「そう言う風は経験豊富なわけ?」

風「そりゃぁ、まぁ。相手がいる居ないの話を除けばね」

天乃「あの、例の一人でってやつ?」

風「……お嬢様よね。ほんと」

内容が内容だけに

恥ずかしそうに言葉を紡いだ天乃に

風はすこし嬉しそうにそう言って、笑う

風「そっ。ストレスの多い時期もあって……何かで発散したいなって考えて。見つけたのがそれだった」

運動や食事

それだけでは賄えないような体と心の疲れ

それを癒すには、迸るその心地よさはとても役立った

もちろん、それをした後にも多少の疲れがあるのだが

閉鎖的ではなく、開放的なその疲労感は虚しくて

心が濁っていくことへの抑止力としては、十分だった
515 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 20:27:03.92 ID:xBYK8QyTo

天乃「友奈もしてるのかしら」

風「いやぁ……どーかな」

多分してないんじゃない。と

風は困ったように言って、友奈へと目を向ける

むしろ、友奈がそういう知識を持っていたら

驚いて腰を抜かす可能性さえあるなと、考えて

風「天乃も淫らな割に純粋無垢だし。その逆もあるのか?」

天乃「私が淫らって何よ。淫らって」

風「艶かしいって言えばよかった?」

天乃「どっちも意味変わらないから」

風の茶化す言い方に

天乃はすこしだけ強く言葉を返してため息をつく

こういう話題ではどうしても勝ち目がない

夏凜「そう言えば、天乃」

天乃「え、な、なに?」

夏凜「なんでそんな赤い顔してるのかはあえて聞かないけど……」

ちらりと風を見れば、大体察せる

夏凜「友奈がせっかくならみんなでお泊りしたいねーって言い出したのよ。東郷も樹も乗り気だけど。あんたは?」

風「あたしには聞かないの?」

夏凜「どうせ来るでしょ。犬先輩は」

風「なんだとーっ!」


1、良いわね。面白そう
2、なんだか嫌な予感がするのだけど。友奈はまだ健全よ?
3、場所がないからそれは無理よ。残念だけど


↓2
516 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 20:28:05.16 ID:QtWd4iWsO
2
517 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 20:28:17.46 ID:UGqkAdlz0
2
518 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 20:31:50.05 ID:sZWvI6LrO
1
519 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 20:48:41.04 ID:xBYK8QyTo

では、いったんここまでとさせていただきます
22時までには再開予定ですが、このまま終了の可能性もあります




友奈「あ、あれ……みんなで何してるんだろう?」

九尾「くふふ、知りたくば入――」

友奈「あっ、私と久遠先輩……ううん、天乃先輩としてたことだ!」

九尾「!?」

友奈「ついにみんなで出来る……やったー! 私も混ぜて下さーい!」
520 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 20:51:00.74 ID:qaJJXhfwO
一旦乙
平行世界の友奈ちゃん懐かしいな
521 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 20:51:52.77 ID:sZWvI6LrO
たんおつ
522 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 20:57:19.85 ID:XuqqOggm0

1周目か懐かしいな
思えば久遠さんの最初の行動って学校サボって二度寝とかじゃなかったか?奇しくも最近似たような状態だったよな
523 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 21:16:28.57 ID:1/FEEAw+O

今の設定をフィードバックして一週目設定(引きこもりの巻き込まれ勇者)で始まった場合どうなるか個人的に気になる
524 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 21:47:14.60 ID:B+uaiZlqO
>>523
多分死ぬよ
久遠さんは一貫して自己犠牲精神が強すぎるんだよ
一番最初の友奈の章(ルート的な意味)ではバッドでもハッピーでも死ぬし
展開は大分変わってくるだろうけど
525 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 22:33:14.05 ID:xBYK8QyTo

では、また少しだけ
526 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 22:37:04.09 ID:1/FEEAw+O
きた
527 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 22:38:59.76 ID:xBYK8QyTo

天乃「良いわね。面白そう」

風「面白そうって、天乃」

夏凜「いいじゃない。天乃が乗り気なら」

心配そうな顔をする風に、

夏凜は口止めするように口を挟んで、にやりと笑う

友奈という懸念事項はあるが

最悪巻き込んでしまえばいい

友奈が天乃に対してそれほど好意がないのなら話は別だが

そうではないのであれば、未経験者が一人から二人になるくらいで害はない

むしろ、五人の相手を一人でするよりも

五人の相手を二人でする方が良いはずだ。慣れていないのなら、尚更

……もちろん、やるとは限らないけど
528 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 22:53:50.26 ID:xBYK8QyTo

風「はぁ」

天乃「どうかした?」

風「いや、天乃はこれだからって思っただけ」

天乃「……それってどうかしてるんじゃないの?」

風「いやいや、別に」

追及する視線から眼を逸らした風は

どんなことになるんだろうかと考えて、空を見上げる

二人きりのシチュエーションならば、一人の時に考えたことはあるが

大人数の場合を考えたことのない風としても

それは未知数で

夏凜「沙織がうまいやり方知ってるって話だから。任せればいいだけよ。風」

風「そうなの? やっぱ、巫女だとそう言う所は優れてるのねぇ」

天乃「ねぇ、なんの話?」

聞いても答えてくれない二人に

天乃は湧き上がる不安を感じて、頬を冷汗が流れる

もしかして、軽率な発言をしてしまったのではないか。と

天乃「ねぇ、ちょっと。夏凜、夏凜ってば!」

夏凜「さっさと行くわよ、天乃」

天乃「答えなさいよ!」
529 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 23:02:20.06 ID:xBYK8QyTo

√ 7月6日目 夕() ※土曜日

01〜10 
11〜20 大赦
21〜30 
31〜40 
41〜50 戦闘
51〜60 球子
61〜70 
71〜80 友奈
81〜90 
91〜00 

↓1のコンマ  
530 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 23:02:56.87 ID:1/FEEAw+O
531 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 23:11:38.45 ID:xBYK8QyTo

√ 7月6日目 夕() ※土曜日

1、砂浜
2、公園
3、天乃の自宅


再会位置選択

↓2
532 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 23:13:53.17 ID:1/FEEAw+O
533 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 23:14:06.72 ID:XuqqOggm0
2
534 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 23:39:44.67 ID:xBYK8QyTo

夕方になると、高い建物から遮られることのない公園は夕日が差し込んで綺麗に映える

けれど、昼間は遊んでいた子供たちは家に帰って

時折ベンチに座っている人たちも居らず

見ている人の少ないオレンジ色の公園はどこか、寂しさを感じさせる

天乃「…………」

こんなことを言えば、きっと誰か一人は怒ると思う

でも、普段は存在しているものが

途端に失われた世界を想起させる公園の風景は

活発で、熱血で、男勝りで、誰にでも優しく

トラブルメーカーでもないのに、トラブル続きの親友を失ったときの気持ちを掘り返してしまう

だから――

夏凜「なに暗い顔してんのよ。あんたは」

天乃「……そんな顔、してる?」

夏凜「普段のあんたと比べると、そう見える」

天乃「そっか」

砂の城を建設する東郷と友奈

その横で細々と城にダメージを与える風と、それを呆れたように見つめる樹

沙織はと言えば、滑り台の上に上がって、統べるわけでもなく、世界を眺めていて

それらに視線を流した天乃は、すぐ横の夏凜へと、目を向けた
535 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 23:46:49.29 ID:xBYK8QyTo

天乃「……あんまり似てない」

夏凜「何の話よ」

天乃「私の話」

冗談めかしてそう言ってみると

夏凜は昼間の仕返しか。と

不服そうに言ったものの、余計な追及はせずにため息をついて

夏凜「言いたくないなら別に聞きはしないわよ」

普段よりは3割増しで、優しい声を出す

気落ちしている理由は分からない

けれど、分からないからこそ

下手に刺激だけはしたくないのだと

夏凜は声とは裏腹に、緊張する心を抑えるように、カフェオレを飲む

夏場だと言うのに、なぜか売っていた自販機のホット缶

悪戯で買ってきた風には最初こそ怒りを覚えたが

くしくも、冷静さを取り戻してくれた事に感謝をして、もう一口

天乃「美味しいの?」

夏凜「美味しいと言えばおいしい。けど、この時期で言えば熱いから飲んでられない。なんの罰ゲームだっての」
536 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/19(日) 23:56:33.73 ID:xBYK8QyTo

天乃「そんな律儀に飲まなくてもいいのに」

夏凜「せっかくだし。捨てるのはもったいないわよ」

一口一口しか飲めないので、減りは遅いが

軽く振ると、確実に減っていることが分かった夏凜は困ったように笑みを浮かべて、風を見ると

丁度、悪戯を加えていた部分がほんの少しだが欠けて、崩れていくのが見えた

夏凜「あ、崩れた」

天乃「東郷が次やったら今日は肝試しに一人で行かせるって言ってるわよ」

夏凜「全力で謝ってるし……何やってんだか」

夏凜の先輩、天乃の同級生

その子供じみた悪戯の末路に二人そろって苦笑して

夏凜「飲む? ホットだけど」

天乃「この時期にお湯を飲めって?」

夏凜「……ごめん」

忘れていたわけではないが

思わず間繋ぎに出てしまった言葉を後悔して

差し出した飲みかけの缶を引き戻す


1、銀がいたころを思い出してたの
2、誰も……失いたくないわね
3、頂戴。そのカフェオレ
4、ねぇ、それを飲みながらキスをしたら、甘いと思う?


↓2
537 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 23:58:04.56 ID:UGqkAdlz0
2
538 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 23:58:10.55 ID:qaJJXhfwO
1
539 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 23:58:16.74 ID:bGYOb13yO
1
540 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/20(月) 00:07:39.73 ID:kJpIShTho

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から





風「ヤバ……崩れ」

東郷「風先輩? 次やったら肝試し一人で行って貰いますよ?」

風「ひぃぃぃぃっそれだけはどうかお許しを〜っ!」

友奈「まぁまぁ、東郷さん。また作ろうよ!」

樹(だから止めた方が良いって言ったのに……)
541 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/20(月) 00:20:33.75 ID:Dq7ynZIZO

忘れてたけど銀のトラウマは解決してなかったな
となると久遠さんの無茶ルートはまだ油断できないかも
542 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/20(月) 00:43:48.92 ID:TowPFX8K0

銀を復活させるとかは厳しいか
543 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/20(月) 00:45:03.30 ID:bkDlPw/IO
544 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/20(月) 15:24:49.38 ID:8WdxetB0O
今見て思ったけどさおりんとした時に久遠さんおもらししてるよね…
久遠さんはエロいなぁ

>>542
満開すればリソース割いて出来るかもしれないけど満開すると久遠さん死ぬからほぼ不可能かな
545 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/20(月) 18:16:03.79 ID:FK74vfyFO
満開するとむしろ汚れそっちに逃がせるんじゃなかったか?
まあどのみち出れる状態じゃないけど
546 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/20(月) 22:28:47.04 ID:kJpIShTho

では、少しだけ
547 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/20(月) 22:30:16.81 ID:+KTxK6bMO
よっしゃ
548 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/20(月) 22:54:02.56 ID:kJpIShTho

夏凜が引き戻した缶を目で追うと

天乃はゆっくりと自分の手元に視線を戻して、ぎゅっと、握り締める

天乃「銀がいた頃を思い出してたのよ」

夏凜「ん?」

天乃「さっき、暗い顔してるって言ったとき」

天乃としてはそんなつもりはなかったのだが

夏凜が言うのならそうなのだろうとそう言って、苦笑する

天乃「私は、誰かと仲良くなるたびに銀のことを思い出す」

人によっては馬鹿らしいことかもしれないし

人によっては後ろ向きなやつだと言うかもしれないし

人によっては、面倒なやつだと思うかもしれない

けれど、守ることの出来なかった後悔は

力が有りながら救うことの出来なかった絶望は

どれほど力のある今でも、心を蝕むことを怠らない

天乃「……みんなは私を強い子だと思ってるんだろうけど、そんなことはないのよ」

夏凜「……銀。三ノ輪銀。あんたと園子。それと今あそこにいる東郷と一緒にいた勇者のことよね」

天乃「うん……」
549 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/20(月) 23:03:00.48 ID:kJpIShTho

夏凜「…………」

前にも、似たような話をした覚えがある

あれは確か、自己犠牲精神があまりにも酷い時期で

勇者部が崩壊したり、風が端末を取り上げられたりと

色々な問題が起きていたなと、

夏凜は懐かしく思って、ため息を付く

天乃だって変わっていないわけではないはずだ

今では信頼して戦いから退くという選択をしてくれた

あの頃なら絶対にしてくれない選択を。だ

けれど……

夏凜「あんたはダイヤモンドみたいよね」

天乃「そう?」

夏凜「硬いくせに、ハンマーで叩けば砕けるっていうじゃない。アレと一緒」

基本的には強いのにある一点においてはとても弱い

それが天乃だと夏凜は言うと、カフェオレを一口啜って

熱そうに、ふぅ……と息を吐く

冬場ならあうのだろうが、この時期では少々似合わない
550 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/20(月) 23:15:01.94 ID:kJpIShTho

夏凜「だから、私はあんたを強いと思ってるけど。弱いとも思ってる」

特に、自分以外の誰かに関して

極端なことを言ってしまえば、天乃は一人きりというのが苦手だと思っている

知らない人が聞けば、臆病だなんだというかもしれないが

昔はともかく今の夏凜はそう思わない

であって早くも3ヶ月が経過した付き合い

決して長いとはいえないようなこの時間

しかしながら、非日常と日常に生きる夏凜達は

とても濃密な時間をすごしていて

夏凜「あんたが守れなかった親友のことで悩む気持ちは、本当は言うべきじゃないんだろうけど。分かる」

天乃「…………」

夏凜「私だって、守りたいものが在るから。もしもそれが守れなかったら……いっつもそう思ってるし」

本当に最悪なときはそれの夢だって見る始末だ

自分の力不足で戦いきれず、戦わせるべきではない人を戦わせることになって

けれど、彼女は笑うのだ。嫌な顔をせず、恨み言の一つも言わないで

ただ一言、「ありがとう」と言うのだ

思い出しただけでも心を握りつぶされるような感覚を覚える夏凜は

顔をしかめて、カフェオレを飲み下そうとして空だと気づく

夏凜「……そんな最悪なことを経験したあんたの弱音は、もう聞いたから」
551 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/20(月) 23:23:00.50 ID:kJpIShTho

スチール缶を握り締めて、備え付けのゴミ箱に投げ入れる

カコンっとした音は缶同士ぶつかって、消えていく

夏凜「私は、あんたにあの弱音は吐かせたくないって思った。二度と、もう二度と。絶対に。だから……」

そのために努力をしてる

友奈や樹を巻き込み、みんなで勇者部としての活動を行いながら

確実に鍛錬を積んでいっている

自分でも十分だと思えるほどの成長はできていない

いや、きっと……満足できる成長は生涯を費やしても出来ないかもしれない

それでも、日々確かな一歩を感じている

まだ胸を張れるようなことではないけれど

安心してくれといわれて安心できるレベルではないかもしれないけれど。

夏凜「だから――あとは任せろ」

天乃の隣から進み出て、遊ぶ勇者部の面々に向かいながら、後ろの天乃に言葉を投げ込み、振り返る

夏凜「私が、私達が。あんたの夢を叶えてやるから」
552 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/20(月) 23:24:52.66 ID:kJpIShTho

天乃「……スチール缶も握り潰せないくせにっ」

夏凜「それは関係な――」

天乃「でも、ありがと」

夏凜「………ん」

どうか雲が出てきませんように

どうか陽が沈みませんように

どうか、どうか、どうか……

きっと見られたら恥ずかしいであろう今の顔が、

誰にも見られる事がありませんようにと

二人は、言葉を閉ざして、靡く風を肌に感じ……微笑む

天乃「……貴女の力を貸してあげて、銀」

名前に同じく三が入っているだけの

勇者装束が同じく紅いだけの

同じ端末を使っているだけの

同じく私の親友になってしまっただけの夏凜を

天乃「お願いね」

夕日を遮る夏凜の背中を見つめて、天乃はそう、祈った
553 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/20(月) 23:27:07.57 ID:kJpIShTho

√ 7月5日目  夜(自宅) ※土曜日


01〜10 
11〜20 友奈
21〜30 
31〜40 
41〜50 風
51〜60  全員
61〜70 
71〜80 沙織
81〜90 
91〜00  友奈

↓1のコンマ 
554 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/20(月) 23:27:49.25 ID:Gd1jNbD6o
ほい
555 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/20(月) 23:43:07.01 ID:kJpIShTho

√ 7月5日目  夜(自宅) ※土曜日


1、風
2、東郷
3、友奈
4、夏凜
5、沙織
6、東郷
7、樹
8、精霊の中から誰か ※最安価
9、イベント判定
0、全員

↓2
556 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/20(月) 23:45:53.18 ID:+KTxK6bMO
557 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/20(月) 23:46:03.35 ID:s3us3Vn50
558 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/20(月) 23:47:58.80 ID:FK74vfyFO
0
559 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/21(火) 00:01:46.23 ID:axymG14Uo

では、ここまでとさせていただきます
明日も出来れば通常時間から


夏凜が主役っぽいですが、天乃が主役です
天乃が主役で、夏凜がヒロインです
その逆ではありませんので、ご注意ください
560 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/21(火) 00:13:29.63 ID:QQNiiPmHO

一応ハーレムルートではあるけど実質夏凜ルートも兼ねてる感じかな
ただ犠牲者が出たら久遠さん二度と立ち直れなさそうだしうまく事が運ぶのを祈るしかないな

あと今は6日目ですよ
561 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/21(火) 00:22:08.35 ID:lmG8N2bJO
562 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/21(火) 07:15:43.82 ID:aOa0xCOpO
戦いでのトラウマを持つ先輩勇者のヒロインと先輩勇者に惚れた後輩勇者の主人公…あれ?違うの?

こういうとき夏凜ちゃん滅茶苦茶カッコいいよね
地の文濃厚だから銀に似た背中を見せる夏凜ちゃんが目に浮かぶわ
563 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/21(火) 14:24:22.88 ID:zI2WN8lTo
初期のスレで天乃の満開の副効果でみんなが倒れた後の夏凜ちゃんも格好良かったな
戦闘で激熱は良くあるが絵の無い文字媒体のみであそこまで燃えたのは凄かった

夏凜ちゃんはやっぱりヒーローだ
564 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/21(火) 20:02:50.70 ID:PzFneKNiO
全員だけど友奈はどうなるんだろう
565 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/21(火) 20:43:45.94 ID:674AH4FWO
くめゆ とかいう くあゆ(このスレ) から一本抜いた公式作品
九尾の件といい煽ってるのかな?

>>564
初な友奈ちゃんと久遠さんをみんなで(性的な意味で)食べるんだよきっと
566 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/21(火) 21:55:07.90 ID:ZZKFrzte0
裏ボスの友奈ちゃんが主人公の意地を見せて逆に友奈ハーレムを完成させる可能性...
567 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/21(火) 22:52:42.65 ID:axymG14Uo

では、少しだけ
568 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/21(火) 22:54:21.21 ID:QQNiiPmHO
あいよ
569 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/21(火) 22:57:04.90 ID:axymG14Uo

7月6日目 夜(自宅) ※土曜日



沙織「大赦の人たち、困惑してたね」

天乃「事前に申請も何もしてないから……仕方ないわね」

夏凜「仕方ないって、あんたが言えたことじゃないでしょ」

呆れるように言った夏凜だが

夏凜自身もあの話の後に申請しなかったのだから、同罪だ

とはいえ、申請なんてしたら却下されるのは目に見えている

それならば、もういっそ無許可で集まって追い出せなくしてしまえば良い。という

学んだ道徳観念はどこへ消えたのかと疑問にも思う作戦

通称、なせば大抵何とかなる作戦を決行したのだ

聞き入れてくれない大赦が悪い……よね?と

少し不安を感じながら考える友奈は、天乃の部屋を見渡して、一点を見る

少し前は園子がいた空間

全員の布団を敷く用意をし始めていて、

7人+天乃ともなればいくら広い部屋でも手狭になるはずなのに

誰が言ったわけでもないが。しかし、みんなにはそこに園子がいるように思えているのだろう

その部分だけは、しっかりと空間が残してあった
570 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/21(火) 22:59:02.01 ID:axymG14Uo

東郷「私は車椅子なので、久遠先輩とベッドで寝ますね」

天乃「車椅子に移るならベッドよりも床からの方が転倒の心配がない分安全よ」

風「って、言うけど?」

東郷「……つまり、久遠先輩も床で寝るということです」

逡巡した後に閃いたように言う東郷に天乃は苦笑を向けて、小さく息をつく

面白そうだと許可したものの

友奈が抑止力になってくれる気がしない

だとしたら、非常にまずいことを言ってしまったのではないか

半分悔やみながら目を逸らすと、友奈と目が合った

友奈「久遠先輩と東郷さんって、仲が良いですよね」

天乃「まぁ、色々とあったけど。【東郷】との付き合いは友奈と同じだから」

友奈だって、十分に仲が良いと思うけど

そう続けると、友奈は少し照れくさそうに、笑みを浮かべる

純粋な穢れのない笑みは、とても愛らしい少女の笑みだ
571 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/21(火) 23:06:18.62 ID:axymG14Uo
友奈「私は」

天乃「?」

友奈「私も……えへへっ、仲良いですよーっ」

そう言った友奈は

すぐ近くの布団の上に座り込む東郷に、後ろから飛びつくようにぎゅっと抱きついて

ニコニコと、嬉しそうな笑みを浮かべる

天乃「…………」

沙織「久遠さん」

天乃「……え、あ、なに?」

沙織「あたし、一応大赦の人たちにお話してくるね?」

天乃「ええ……大丈夫?」

沙織「何かあったらこの子がいるから大丈夫」

心配そうな声に、沙織は快活な笑みを見せると自分の胸元に手を宛がう

この子。というのは猿候のことで

猿猴は契約―もうなくても平気かもしれないが―で沙織を守る

ゆえに、心配するべきは手加減のない猿猴を相手にすることになるかもしれない大赦なのだが。

猿猴が出てくる羽目になるようなことをしたのなら

それはもう、同情の余地はない
572 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/21(火) 23:15:47.46 ID:axymG14Uo

風「天乃、布団敷いたから床下ろすわよ」

夏凜「私一応足持つから、落とすんじゃないわよ。風」

天乃「うん――ん? え、ちょっ」

ぐいっとした浮遊感の後、

全身の支えが消失し、体が僅かに左右に揺れて、

ぼふっと柔らかい者に全身が包まれていく

布団の上に下ろされたのは確実で、若干もがいて体を反転させて座り

下ろした二人、困ったような顔をする二人、満足そうな一人にそれぞれ目を向ける

天乃「本気?」

樹「せっかくですから」

天乃「せっかくって……布団は貴女達の分しか敷けないのよ? 狭いわ」

風「多少なら平気でしょ。シングルベッドだと思えば全然」

問題ないという風に続き夏凜が「言われてみれば」と、呟いてうなずく

天乃「貴女が納得してどうするのよ……」
573 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/21(火) 23:17:39.47 ID:axymG14Uo

そうぼやき、ため息をつきながらも

天乃は「仕方がないわね」と、困ったような笑みを携えて、認める

本当に仕方がない。許可をしたのは天乃だし

こういったことはそうそう出来るものでもないのだから

みんながこうやって楽しく、幸せそうにしているのだ

それに水を差すのは、天乃としても本意ではない

友奈「やったー」

樹「やりましたー」

友奈と樹は、天乃が認めてくれたことがよほど嬉しかったのか

手と手を合わせて、喜びの声を上げる

最年少二人―友奈は違う―のそんな日常感じる愛おしさに

天乃だけでなく、夏凜も、風も、東郷もみんなが、優しげな笑みを浮かべた
574 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/21(火) 23:23:58.62 ID:axymG14Uo

東郷「ですが、場所決めが必要ですよね」

友奈「なら、ゲームで決めようよ。みんなでやれば楽しいし!」

夏凜「ま、純粋な力比べなら私と天乃の圧勝だし。それでも良いわよ。くじ引きでも良いけど」

風「ゲームで勝つ自信がないのねぇ?」

ここぞとばかりにニヤリと笑った風は

夏凜の一番無難な提案を潰すように煽って、案の定「なんですってぇ〜!」と、挑発された声が聞こえた

夏凜「やってやろうじゃないの! コテンパンにしてやるわ!」

風「ぬはははははッ! 返り討ちにしてやるわ!」

天乃「…なんで煽っ」

ドンッと一瞬だけ衝撃が体を揺らし

すぐにその衝撃を打ち消すような柔らかさが背中に当たって、振り返ると

いつの間にか戻ってきていた沙織が満面の笑みを浮かべていた

沙織「問題なく話は通してきたよ。出来るだけ申請してくださいって、ちょっと怒られたけど」

天乃「ありがと」

沙織「それで? 久遠さんとしてはどうやって決める?」



1、大富豪・大貧民
2、くじ
3、ばば抜き
4、神経衰弱


↓2
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/21(火) 23:24:31.65 ID:aGU9ZsBRO
3
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/21(火) 23:24:41.94 ID:32cI/0X7O
2
577 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/21(火) 23:56:56.61 ID:axymG14Uo

天乃「ここはやっぱり、公平にくじ引きが良いわ」

友奈「くじ引き、ですか?」

天乃「ええ」

そうじゃないと、トランプでは洞察力に優れた東郷や

人との付き合いによってある程度成長した夏凜、部長である風が有利になっていくだろうし

逆に、友奈や樹は誤魔化すのが苦手で……

少し不公平だろうし。と

色々と考えながら言葉にはせず答えを出す

樹「久遠先輩が言うのなら、決まり。ですね」

風「まぁ、しかたないか。夏凜をメッタメタにしてあげようと思ったのに」

夏凜「模擬戦で相手してあげるわよ」

仲が悪いわけではないのに

張り合う二人をみんなで宥めて、沙織が適当に作ったくじを引く

沙織「恨みっこなしだよ」

天乃「……沙織、私の分は?」

沙織「久遠さんは真ん中だから」

天乃「うん、引かせてね?」

沙織「むーっ、はい」
578 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/22(水) 00:07:11.72 ID:3I51WOHpo

コンマ判定↓1〜7

※多いので連取あり


上から 天乃、風、樹、友奈、東郷、夏凜、沙織

数字の小さい順で左から寝ていく
579 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/22(水) 00:07:35.20 ID:LH9AbibuO
580 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/22(水) 00:07:51.47 ID:9AK5xq7J0
581 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/22(水) 00:09:28.71 ID:jxInrALLO
582 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/22(水) 00:09:41.36 ID:WIkO3QpeO
はい
583 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/22(水) 00:10:22.51 ID:WIkO3QpeO
584 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/22(水) 00:10:43.28 ID:LH9AbibuO
585 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/22(水) 00:10:52.61 ID:jxInrALLO
もう一丁
586 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/22(水) 00:13:38.64 ID:WIkO3QpeO
これ夏凜といちゃついたらさすがに友奈にバレるな
まあバレたところで問題なんて何もないけど
587 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/22(水) 00:14:48.01 ID:3I51WOHpo

天乃(20)
夏凜(28)
友奈(36)
  風(47)
東郷(51)
沙織(61)
  樹(71)

結果

順番入れ替え済み
588 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/22(水) 00:21:56.52 ID:3I51WOHpo

寝る場所と関係ありませんが、イベント判定だけ

01〜10 
11〜20 あり 
21〜30 
31〜40 
41〜50 あり
51〜60 
61〜70 
71〜80 
81〜90 あり
91〜00 

↓1のコンマ  

ぞろ目、特殊
589 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/22(水) 00:23:01.92 ID:LH9AbibuO
590 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/22(水) 00:25:47.43 ID:3I51WOHpo

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から




天乃「っ、ちょ……やっ」

風「しーっ、友奈を起こしてもいいの?」チラッ

天乃「っ……んっ」フルフル

夏凜「なら大人しくしてなさい」ギュッ

東郷「我慢してる久遠先輩可愛いです」ギュッ

沙織(……って、なる予定だったんだけどなぁ)
591 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/22(水) 00:27:50.47 ID:LH9AbibuO

久遠さん左端なのがなあ
夏凜ファイト
592 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/22(水) 00:36:03.91 ID:jxInrALLO

寝ている久遠さんをまさぐれるチャンス到来の夏凜ちゃん
はたして友奈ちゃんの隣でヤっちゃうのかヘタレるのか
593 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/22(水) 01:12:53.99 ID:WIkO3QpeO

残りは友奈と園子?でいいのか?
594 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/22(水) 22:47:06.30 ID:3I51WOHpo

では、少しだけ
595 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/22(水) 22:48:09.99 ID:3I51WOHpo

天乃「あら、私一番左側ね」

風「ぐぬぬ」

樹「お姉ちゃんはまだ近い方じゃないかな」

沙織「犬吠埼さんは私とぎゅっしよう」

一人満足げに樹をぎゅっと抱きしめた沙織は

その頭を撫でながら、すりすりと、頬を擦る

中身は沙織のはずなのだが……少し、影響を受けているのかもしれない

苦しいですよとそこまで満更でもなさそうな樹から、

隣の夏凜、そのおくの友奈へと目を向ける

友奈「意外とばらばらになったなぁ」

天乃「夏凜の上に乗っかってこっちきても良いのよ?」

友奈「え、あ」

夏凜「それなら私と場所変わりなさいよ。天乃」

上に乗っかってこられるくらいなら。と

呆れたように言う夏凜に天乃は冗談だから、と、苦笑して

友奈「わ、私は大丈夫です」

天乃「そう?」

友奈「はいっ、くじで決めたのに、ズルになっちゃいますし」
596 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/22(水) 23:15:25.16 ID:3I51WOHpo

天乃「………」

本心でそう思っているのは分かる

けれど、それと同時に来たかった。という思いがあるのも、天乃には分かった

もしかしたら、それは夏凜でも分かっているのかもしれない

そう思って夏凜に目を向けると

夏凜は「どっちでも隣だし良いんだけど」と

どちらとも取れる言葉を呟いて、目を瞑る

天乃「……」

相手の考えは、前々から大体だけれど分かる人間だった

でも、自分への好意に関してだけは

色々な事を経て信じられなくなったというか、そんなはず無いと考えを切り捨ててしまっていたけれど

夏凜や、勇者部、沙織……みんなと関わっていく中で

それらが全て嘘ではないと、実際に愛してくれているんだと

そう感じることが出来るようになって、信じられるようになって

……だから

友奈が今何をどう思っているのか

自分に関してどんな思いを抱いているのか

押さえ込もうとしている友奈に対しては悪いかもしれないけれど……分かってしまう
597 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/22(水) 23:18:23.60 ID:3I51WOHpo

思えば、入院中に友奈だけ会わなかった

夏凜は来てくれた

樹も、東郷も、風も、沙織も

みんなが来てくれた中で、友奈だけが。

天乃「…………」

来てくれなかったのではなく、

集中治療室に大勢で行くのは迷惑だから、誰か一人

そうなって、友奈の性格だから、周りに譲っていたのかもしれない

ううん、かもしれないではなく、きっとそう

天乃「……もう、寝る?」

風「恋愛の話って言っても。天乃の生々しい話が出てきちゃうし」

天乃「確かに現実の話だけど生々しいって……」

東郷「好きな人の話も。アレですから」

そう言う東郷の目は天乃へと向けられていて

樹や、風たちの視線もまた一部恥ずかし気ではあるけれど天乃へと向く
598 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/22(水) 23:24:35.67 ID:3I51WOHpo

沙織「じゃぁじゃぁ、ゲームする?」

夏凜「枕投げ?」

天乃「私と東郷が動けないんだけど」

夏凜「天乃は問題ないでしょ」

とはいえ、東郷が上手く動けないし

広いとはいえ一軒家の一つの部屋で枕投げなんていうのは

危なっかしいことこの上なくて

天乃「却下ー」

樹「私の占いとかどうですか?」

友奈「樹ちゃんの占い…私は、やりたいかな」

風「ん。友奈が一番に乗るなんて珍しいこともあるわねぇ。どうする? 寝る前に良い夢見れるかー的な占いでもしてさ」

天乃「ん〜」


1、樹ちゃんの占いにのる
2、大人しく寝る
3、友奈と二人きりで話す
4、ゲームする


↓2
599 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/22(水) 23:25:02.24 ID:3bSSyLMKO
4
600 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/22(水) 23:25:11.54 ID:WIkO3QpeO
3
601 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/22(水) 23:26:13.93 ID:pb/frdCGO
3
602 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/22(水) 23:26:50.54 ID:3I51WOHpo

では、短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



友奈ちゃんといっしょ
603 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/22(水) 23:30:23.24 ID:3bSSyLMKO

ついに勇者部制覇か
604 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/22(水) 23:31:42.06 ID:9AK5xq7J0
友奈ちゃんが堕ちるのも時間の問題...あとは先代勇者達か
うたのん達が手強いな
605 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/22(水) 23:36:02.35 ID:pb/frdCGO

友奈ちゃんとの絡みは久々だな
606 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/23(木) 01:29:26.47 ID:K7ya5oQTO

とりあえずこれが終わればまったり勇者部でいちゃいちゃできるかな
607 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/23(木) 23:10:46.66 ID:oD7VGWovo

では、少しだけ
608 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/23(木) 23:13:50.79 ID:n/v9DeapO
よしきた
609 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/23(木) 23:19:47.25 ID:oD7VGWovo

天乃「友奈、ちょっと手伝ってくれない?」

友奈「私ですか?」

天乃「そう。友奈の丁度近くに私の車椅子あるから。お願い」

都合よくある車椅子を使って、友奈にお願いをすると

友奈は少し躊躇したけれど、

断る理由というか、私情で断るということが出来なかったのだろう

分かりました。と、平常を装った声で言って車椅子を動かす

天乃「ありがと、連れてってもらって良い?」

友奈「は、はい……あ、でも。どこにいくんですか?」

天乃「……聞かないのっ」

むっと頬を膨らませて、困った顔をする天乃に

友奈は慌てて「ごめんなさい」と、車椅子を押して部屋の外へと連れ出す

こんな時間に、手伝って欲しいと連れ出させる理由なんて

東郷や天乃と長くいる友奈なら

いや、もう自覚ある年齢なのだから、分かるはずなのに……

友奈「……はぁ」
610 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/23(木) 23:35:30.99 ID:oD7VGWovo

天乃「どうかした?」

友奈「え?」

天乃「失望を感じたわよ。今の」

友奈「あ……いえ」

ため息をついたのは間違いない

友奈の耳にもそれは確かに聞こえていた

けれど、それが天乃のため息ではないと分かり切っているのに

自分のものでもないと、友奈は思っていたのだ

言ってしまえば、本当に無意識なため息だった

友奈「……………」

ぐっと、下唇を噛む

ここでそのまま流すことも、天乃なら許してくれるだろう

何かがあると分かっていながら、下手に聞くことなく……


     【 ま た 心 配 を か け る 】


友奈「っ」

誰に言われたわけでもない言葉が胸を締め付けて

友奈は思わず足を止めた
611 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/23(木) 23:44:58.55 ID:oD7VGWovo

天乃「友奈?」

友奈「その……私」

言わないで困らせるくらいなら

正直に自分に失望したことを言うべきなのだと

振り返らない天乃の見えないところで、自分の胸元を握り締める

ギュッっと掴んだ服にシワが伸び、布が擦れていく

友奈「久遠先輩のこと、全然分かってないなって」

天乃「あら、どうして?」

友奈「だって、今だって。夏凜ちゃん達なら何も聞かなかった。きっと……分かってました」

天乃「…………」

そんなのは、別に悩む必要のないことだ

天乃からしてみればくだらないことで

真っ正直に、そんなくだらないことで悩んでも仕方ない。と

普通ならいうかもしれない
612 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/23(木) 23:46:49.37 ID:oD7VGWovo

けれど、友奈にとってはくだらなくはないのだ

目は見てない、表情も見ていない

だが、聞こえてくる声が罪悪感に乗られて沈んでいく

それだけで、天乃は友奈にとって今話していることの大きさが

自分とはまったく違うものだと、分かって。

友奈「それにっ、それに……」

天乃「…………」

だから、くだらないことだと一蹴しない。夕なの言葉を最後まで、大人しく聞く

言葉に詰まっても、催促しない

後ろで服を握り締める音が聞こえても

弱弱しい吐息が聞こえても

天乃は振り返ることなく、ただ、黙り込む

沈黙は恐ろしいかもしれない

もしかしたら、このまま黙り込んでしまうかもしれない

もちろん、何か危険なものなら言わずとも強制的に介入することも厭わない

しかし、そうではないのなら。それは、【自分で言えなければいけない事】だから。
613 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/23(木) 23:48:38.29 ID:oD7VGWovo

友奈「私……東郷さんと同じ時に久遠先輩に会ったのに……」

みんなが、自分を追い抜いていく

元から知り合いだったであろう、風、樹、沙織は仕方がない

東郷事態に記憶はなかったが、先代として関係のあった東郷も仕方がない

しかし、自分よりも後のはずの夏凜が

一番理解している。一番身近にいる

友奈「全然……遠い」

その自分以外のみんなが天乃の傍にいるのに、

自分も傍にいるはずなのに、おいていかれている気がして

それが、なぜだか無性に……気になってしまう

なのに、みんなが行きたがったお見舞いのとき

大人数は迷惑だから。という話の中で、自分は立候補できなかった

みんなが行きたがっているから譲ったなんていうのは

みんなが良く考えてくれただけで。
614 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/23(木) 23:52:18.70 ID:oD7VGWovo

友奈「久遠先輩に迷惑をかけるのが怖かったんです。余計なことをするのが怖かったんです」

天乃「……………」

友奈「……自信が無かったんです。体調を崩した久遠先輩に出来ることがあるのかどうか」

自分が行くくらいなら

ちゃんと理解しているほかの人が行ったほうが良い

考えは、すぐにそこに向かって突き進んだ

友奈「でも……久遠先輩が良くなって、みんなが嬉しそうで。こうやって、みんなで集まって」

体が酷く熱っぽくなっていくのを、友奈は感じた

その中でも顔は、瞳は、集中的に熱が篭って

ふと、意識下にない何かが頬を伝って、友奈は顔を伏せた

友奈「自分が遠いのなんて当たり前だって……思い知りました」

天乃「……だったら。友奈」

頃合だと判断した天乃は

友奈の言葉が途切れた瞬間に振り返って、呼びかける

天乃「貴女は諦めるの?」

友奈「っ」

天乃「昼間、口を閉ざして誤魔化したように。ついさっき、夏凜の善意を断ったときのように。目を背けるの?」
615 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/23(木) 23:53:14.42 ID:oD7VGWovo

友奈「わたっ……しは」

伝うだけだったものがポロポロと零れ落ちていく

友奈の俯いた視線と天乃の視線が交錯する

力強く、それでいて優しい天乃の瞳は、今の友奈には直視できるものではなくて

友奈「私は……」

天乃「…………」

気持ちはわかっているのだろうが

そこから波状した気持ちが、友奈は理解できていないのかもしれない

夏凜達への嫉妬

光には影が生まれるように、美しいものの影には醜いものが生まれる

だからこそ、図書館などでほこりを被っているような本には、【愛憎劇】なるものが存在する

そして、天乃が勇者部から取り去りたいもの。自分の周囲に抱かせたくないものがそれだ

切磋琢磨するためにある多少の嫉妬という名の対抗心は構わない

けれども、たった一つのこと―恋愛に限らず―で親友の関係が崩壊してしまうこと

それは、絶対に避けたいことだ。誰かが誰かに遠慮して、気持ちを押し殺して

開いていない距離を、開けていくと誤認して……それは、ダメだ



1、キスをする
2、貴女が遠慮する必要はないわ。だって、私は我侭なんだから
3、貴女はそれで良いの? 本当に……それでいいの?
4、涙を拭う


↓2
616 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/23(木) 23:53:41.18 ID:hL14P89MO
4
617 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/23(木) 23:53:50.52 ID:K7ya5oQTO
1
618 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/23(木) 23:54:13.50 ID:n/v9DeapO
4
619 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/24(金) 00:03:02.06 ID:nD90OUgqo

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


挨拶のようにキスをする久遠さん
620 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/24(金) 00:05:23.33 ID:vWZPIbOz0
はい、攻略完了
久遠さん...いや、久遠姐さん流石ッス!
621 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/24(金) 00:06:39.47 ID:/1Mf+lC4O

キス魔なところあるよね、かわいい
622 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/24(金) 00:11:54.92 ID:hRo4fSHNO

思えば友奈ちゃん今作は序盤から久遠さんへ色々フラグ立ててたな
なでなでしてあげたい
623 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/24(金) 00:58:35.25 ID:G3uxXzccO

好意を自覚した久遠さんは落とすまでは最強だからな
それ以降のベットじゃ弱いけど
624 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/24(金) 20:54:23.33 ID:v8iTKyGPO
どうせ今日の投下でイケメンな口説き文句と名言使うんだろ?知ってる
こういう時の久遠先輩最強だもんな

そしてそれを編み出す>>1の語彙力よ
625 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/24(金) 23:16:25.81 ID:nD90OUgqo

では、少しだけ
626 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/24(金) 23:17:00.62 ID:vWZPIbOz0
よしきた
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/24(金) 23:17:42.06 ID:PIBLGK7LO
かもん
628 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/24(金) 23:17:55.88 ID:nD90OUgqo

言葉を紡ぎきれない友奈の手を引き、体勢を崩させる

昼間も似たようなことをした気がしたが

天乃は関係ないと、近づく友奈の唇を奪う

グッっと車椅子に与えられた抵抗が一瞬で抜けていく

友奈の涙を流していた瞳が大きく見開かれて

そして、十数秒もせずに離れて、友奈の頬を指で拭う

天乃「知らなかった? 私って、実は凄くわがままなのよ」

動揺に唇を震わせて、そっと指で自分の唇を確認する友奈に

天乃は笑みを浮かべながら告げる

優しく、穏やかで、どこか、茶化そうとしているかのような表情だ

天乃「だから……夏凜達勇者部のみんなも、沙織も……貴女も。誰も手放さない」

友奈「っ」

キスをしたという理解が、感触の名残のように浮かび上がって来て

初めて、友奈は顔を真っ赤に染めた

そして、耳から抜けていた言葉が戻っていく
629 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/24(金) 23:25:53.90 ID:nD90OUgqo

友奈「く……久遠、先輩が……」

久遠先輩がわがままなんて、今に始まったことじゃない

もしもわがままじゃなかったら、頑なに自分を犠牲にしない

散々お願いをしても、自分の体を削って誰かを守るなんて事はしない

誰も手放したくない。そんなわがままだって、ずっと言ってきたこと、してきたこと

友奈「っ……」

本当に、何にもわかっていなかった

分かっているつもりで、わかっていなくて

だから、望みを叶えるどころか、叶わなくしようとしていた

その罪悪感が、底知れない深みを増して

天乃「理解できていないと分かって、怖くなった。不安になった。その気持ちはわかる。それで、離れる道を選んでしまうのも」

大好きで、大切で、尊敬する人の声が、沈みゆく心を掴む

天乃「好きだからこそ。本当に、心から相手を思うからこそ。その空白が相手の不利益になるかもしれない可能性が、無視できないのよね」

優しければ、尚更

自分以外にも、相手に好意を持っている人がいて

その人のほうが理解していると感じてしまったら、余計に。
630 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/24(金) 23:53:13.68 ID:nD90OUgqo

天乃「でも、大丈夫よ。全ての人がそうだとは限らないわ。けれど、少なくとも貴女が好きになった人は、貴女の頑張りを評価する」

友奈「っ」

天乃「そして私は……そんな一途に頑張る貴女が好きよ」

その声は静かで

それ自体には暖房器具のような効果なんてないはずなのに

温かみを感じて、留まりかけた涙がまた伝う

今度は自分への失望ではなくて、嬉しさと悲しさの入り混じった複雑なもので

天乃「泣かせるつもりはなかったんだけどね」

友奈「だ、だって……っ、私……っ」

天乃「うん。待たせてごめんね」

少し無理矢理に体を振り向かせて、友奈の手を引きその体を抱きしめて

後頭部に回した手で、優しく撫でる

天乃「でもさっき言った通り。私はみんなと……そうね。一妻多妻の関係になってる。貴女はそれで良い?」

友奈「久遠先輩と、みんなと……離れるのは嫌です」

天乃「……なら、よろしくね」
631 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/25(土) 00:16:50.35 ID:Q4vhnYS4o

耳元で囁き、真っ赤な顔の友奈を視界に納めた天乃は

その唇に唇を重ねて、今度は少しだけ長く……

そして一分んは満たない長い時間が経過して、離れる

友奈「っは……ぁ、くお、久遠先輩」

天乃「ん?」

友奈「あの、お手洗いは……」

天乃「それは友奈と二人きりになるための、嘘」

にっこりと満面の笑みを浮かべた天乃は

友奈の涙の残りを拭って、前に向き直る

その仕草に友奈は思わず、後ろから抱き着いて

友奈「……………」

天乃「……………」

友奈「……すぐ戻ると、ばれちゃいます」

天乃「うん」

だから。もう少しだけ良いですか?

その言葉にしなかった望みさえも、天乃は受け入れてくれたのだと

友奈は言われずに感じて、天乃を感じる感覚に心を寄せていく

ずっと触れていなかったからか、それとも、ようやく叶ったからか

その両方、それ以外、その全てなのか分からないが

果てのなさそうな幸福感を、友奈は感じて。微笑んだ
632 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/25(土) 00:24:48.31 ID:Q4vhnYS4o

1日のまとめ

・   乃木園子:交流無()
・   犬吠埼風:交流有(デート、お泊り、くじ)
・   犬吠埼樹:交流有(デート、キス、一妻多妻、お泊り、くじ)
・   結城友奈:交流有(デート、お泊り、くじ、呼び出し、キス、)
・   東郷美森:交流有(デート、お泊り、くじ)
・   三好夏凜:交流有(デート、公園、三ノ輪銀、お泊り、くじ)
・   乃木若葉:交流無()
・   土居球子:交流無()
・   白鳥歌野:交流無()
・   藤森水都:交流無()
・ 伊集院沙織:交流有(デート、お泊り、くじ)
・      九尾:交流無()
・       死神:交流無()
・      神樹:交流無()



7月6日目 終了時点

  乃木園子との絆 54(高い)
  犬吠埼風との絆 57(高い)
  犬吠埼樹との絆 50(高い)
  結城友奈との絆 64(とても高い)
  東郷美森との絆 51(高い)
  三好夏凜との絆 79(とても高い)
  乃木若葉との絆 39(中々良い)
  土居球子との絆 28(中々良い)
  白鳥歌野との絆 22(中々良い)
  藤森水都との絆 13(普通)
     沙織との絆 62(とても高い)
     九尾との絆 46(少し高い)
      死神との絆 38(中々良い)
      神樹との絆 9(低い)

汚染度???%
633 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/25(土) 00:38:43.96 ID:Q4vhnYS4o


01〜10 
11〜20 友奈
21〜30 
31〜40 
41〜50 夏凜
51〜60 
61〜70 
71〜80  夏凜
81〜90 
91〜00 友奈

↓1のコンマ  

ぞろ目、特殊
634 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/25(土) 00:39:10.64 ID:90NiV5BFO
635 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/25(土) 00:50:16.54 ID:Q4vhnYS4o

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


久遠さんの友奈ちゃん口説き落としからの普通のお目覚め
636 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/25(土) 00:51:34.39 ID:90NiV5BFO

もうみんな久遠さん邸に住もう
637 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/25(土) 01:09:45.95 ID:T4UfKPGQO

これで勇者部はお互いの気にせず好きなだけえっちぃこと出来るのか
部室が熱くなるな
638 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/25(土) 07:54:37.40 ID:7N5/odVVO

たまには久遠さんも受けから攻めに転じてもいいのよ?
639 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/25(土) 23:00:26.98 ID:Q4vhnYS4o

本日はお休みとさせていただきます
明日は出来れば昼頃から

そろそろ散華する前に週一程度で不定期の休みを入れるかもしれません
640 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/25(土) 23:07:11.73 ID:t9UOAUFyO

そりゃ毎日更新なんてとんでもないことだしな
ゆっくり休んでください
641 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/25(土) 23:07:29.84 ID:ZqXjcNX7O

最近遅めだし、しゃーなしだな
642 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/25(土) 23:27:39.32 ID:i0wVR+z9O
ありゃないのか
最後に休んだのいつだっけ…ずっと休みいれてなくないか?
643 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 00:27:27.12 ID:XMhIlvV4O
むしろもっと休んでもいいくらい
お疲れ様っす
644 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 12:21:33.93 ID:ym49Zd5to

では、少しずつ進めていきます
645 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 12:39:19.49 ID:ym49Zd5to

√ 7月7日目 朝(自宅) ※日曜日


天乃「ん……っ」

急激な変化も何もなく

川の流れが終着点に行き着いただけのようななだらかな目覚め

周りから聞こえる寝息を止めないようにと息を殺して体を伸ばす

といっても、天乃の場合は伸びるのは上半身くらいで

下半身はピクリとも動かない

半分の心地よさにも慣れ、文句なく上体を起こし、隣を見た天乃は

夏凜と友奈が同じ布団に入っているのが見えて

友奈の布団の大部分、自分の布団

大きく場を取る風にほんの少し、ため息をついて、笑みを浮かべる

天乃「……今度から風は左端ね」

樹と沙織に関しては、

寝る前の宣言通り、二人仲良く抱き合っていて

髪の色さえ同じなら、きっと。沙織と樹の方が姉妹に見えていたかもしれない

天乃「東郷は……まぁ、相変わらず綺麗ね」
646 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 12:50:16.09 ID:ym49Zd5to

普段なら絶対に見ない光景

その全貌を記憶に収めて、ふと、息を吐く

今日は七月七日

世間一般では七夕と言われる日

九尾「とはいえ、古き良き七夕というものの神事は、明朝。つまりは約5時間ほど前に行われるものじゃ」

天乃「……貴女も起きてたの?」

九尾「妾に睡眠は不要じゃ。惰性で取ることもあるがの」

心を読んだのか何なのか

考えていたことに対して的確に横槍を入れる九尾に横目を向け、記憶を探る

七夕の記憶はあるが、どれもこれもボロボロだ

供養するために火をつけた写真のように、黒焦げで、穴だらけで、得られる情報は塵もない

天乃「大赦は行うのかしら。今年までは行事なんて全く気にしてないから。知らないのだけど……」

九尾「行うぞ。世間一般の人間たちが行うのとは中身も意味も違うがな」

天乃「そうなの?」
647 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 13:00:38.35 ID:ym49Zd5to

ベッドの上に座る九尾の黄金色の髪は

カーテンから漏れる光に当てられて、より神々しさを増す

白すぎる肌は不健康にも見えるが、綺麗だ

そんな九尾は天乃の言葉を受けて、うむ。と、退屈そうに頷く

話を振ってきた割に、この話題はさほど好きではないのかもしれない

九尾「世間一般的には、天の川に隔てられた惨めな男女に願いをかなえてくれ。と追い打ちを――」

天乃「曲解が過ぎてる」

実際、九尾が言っていることも間違いではないのだが

事実は違って、その二人が出会うことが出来れば願いがかなう。という

なんとも運任せな祭事。いわば、年始のおみくじや賽銭を投じるようなもので

別に織姫と彦星に出会わなきゃいけないという重圧を加えるようなものではない

九尾「ふむ……まぁ、世間の話はどうでも良い。重要なのは大赦の方じゃろ?」

天乃「まぁ、一般的な方は私でも記憶にあるからね。何をしてたのかは……ボロボロだけど」

それだけ家族と関わっていた。ということだが。
648 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 13:14:12.63 ID:ym49Zd5to

九尾「大赦の七夕は、300年前から続く、鎮魂の儀じゃ」

天乃「300年前……って言うと、始まった年。よね?」

九尾「うむ。奴らは天から降り注いだ。そして、数多の命を奪いつくした」

ゆえに、七夕に見える天の川をバーテックスとし

織姫と彦星を、分かたれた人々に例え

その浮かばれない命が、悔恨が、怨念が

穢れとならないよう、悪意とならないよう

そして、遥か高き現世の外側で

再び出会うことが出来るようにと、祈る儀

九尾「願いなどする祭事ではない。祈りを捧げる儀。それが、大赦の行う七夕という祭事」

天乃「……その意味はしっかりと残っているの? 意味の消失した祭事はいくつもあるのだけど」

九尾「伊集院家が取り締まっておる。問題はない。心配も無用じゃ」

天乃「そう……なら安心ね。なら、今日の夜は――」

沙織「んーん。今日はお昼にはお別れかな。準備もあるし」

唐突に言葉が割りこみ、その声の元へと目を向けると

樹の体を戻し、布団をかけた沙織が、ちょうど天乃へと目を向けた

天乃「……起こしちゃった?」

沙織「ううん。猿猴と一緒になってから疲れにくいと言うか。睡眠がそこまで要らなくなって。早起きできるようになっちゃった」
649 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 13:27:35.51 ID:ym49Zd5to

困ったように言う沙織に

体への負担はないのかと天乃が問うと

沙織は「問題ないよ」と、明るく返す

その言葉には、嘘っぽさはなかった

沙織「それにしても、凄いねぇ」

天乃「友奈は逃げただけでしょ。夏凜は意外と寝相は悪くないみたい」

沙織の視線を辿って答えた天乃の笑みに、

沙織もまた笑みをこぼして、手招きする

天乃「?」

沙織「車椅子乗る? お手洗い平気?」

天乃「ん……」


1、大丈夫よ
2、そうね。車椅子だと起こしちゃうから。抱っこ。して?
3、そうね、部屋を出ましょうか



↓2
650 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 13:28:07.26 ID:Zy5tkIz8O
1
651 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 13:31:16.96 ID:QCDDaU8qo
2
652 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 13:58:10.91 ID:ym49Zd5to

天乃「そうね……」

寝ているみんな、車椅子

それらを一通り見た天乃は不意に笑みを浮かべて

何かの悪戯の前兆だと感じた沙織は、

ごくりと飲み下して、言葉を一つ用意する。そして

天乃「車椅子だと起こしちゃうから。抱っこ。して?」

沙織「良いよ」

天乃「えっ」

沙織「じゃぁ、動かないでね」

天乃「あ、ちょっ……」

間を置くこともなく即座に頷いた沙織は

風達を踏んだり蹴ったりしないように

けれど素早く天乃の横に移動すると

ゆっくりと膝をつき、驚く天乃の背中、まっすぐ伸びた膝裏に手を滑り込ませて、

全身に少しだけ猿猴の―精霊の―力を流し込んでグッと一気に持ち上げる

天乃「っ!」

沙織「久遠さんが言い出したことだから。止めないよ?」

天乃「……ズル。してるでしょ」

沙織「久遠さんの為に精霊の力を行使する。これほどまっとうな使い方はないよ〜」
653 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 14:29:03.19 ID:ym49Zd5to

助けようともせず苦笑しながら手を振る九尾と眠る勇者部を置いて

天乃と沙織は部屋を出て、リビングへと向かう

リビングでは当直の大赦職員の女性が

自前の本を読んでいて、沙織が「おはようございます」と声をかけると

一瞬絶句して、眼を逸らしてから「おはようございます」と、返す

動揺を押し隠せていない返事なのは、言うまでもなくて。

「あの、車椅子はお使いになられないのですか?」

沙織「まだみんな寝ているので。車椅子の移動の余裕がそこまでないのと。音も立てちゃいますから」

「はぁ……そう言われてみれば」

納得しないで。と

天乃は言おうかとも思ったが、言い出したのは天乃自身なので

拒否するのはおかしいし、沙織に失礼だ

本当にされるとは思っていなかっただけで

そもそも、そこまで嫌な気もしない

……恥ずかしいか恥ずかしくないかと言われると。困るけども
654 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 14:37:27.30 ID:ym49Zd5to

「伊集院様、本日のご予定は――」

沙織「大丈夫です。把握してます」

「畏まりました。よろしくお願いします」

上の立場の人間として

普段の声色ではなく、落ち着いた声色で話した沙織は

一礼して去っていく職員の女性から天乃へと目を向け、ほほ笑む

沙織「上の立場って言うのも、面倒だよね」

天乃「あんな話し方、久しぶりに聞いた気がする」

沙織「普段はこっちだからねぇ」

普段は。そう【普段】は

けれど、本当の伊集院沙織はどちらなのだろうか

天乃と接している方が本当であり、大赦と接する時が偽り

きっとそれで間違いないのだけれども

なぜだか、好奇心はそんな余計なことを考えたがる

沙織「それに、好きな人の前では高貴だろうと高潔だろうと、乙女でいたいよ」

天乃「貴女は十分、乙女よ」

沙織「……このまま外に連れ出せば、久遠さんもすっごい乙女になれる気がする」

天乃「やめて」
655 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 14:50:16.99 ID:ym49Zd5to

沙織「でも久遠さんって、基本的には乙女っぽくないと言うか……可愛いんだけど。なんか違うと言うか」

天乃「何が言いたいのよ」

沙織「基本的に主人公だよね。みたいな」

自分でも何を言っているのか分からなそうな沙織は

苦笑しながらそう言うと、

天乃を抱く力をより強くして、自分との密着度を高めていく

それでも、天乃は「どうかした?」と、言うだけで

沙織「そこだよ。そこ」

天乃「?」

沙織「もっとこう……えっ、なに? どうしたの? 的な反応で赤くなるのが乙女だよ」

天乃「乙女な反応を押し付けないで」

少しばかり呆れたように言うと

沙織はごめんごめ。と言いながら

沙織「久遠さんは今のままがいい」

そう言って、耳元に口を近づけて……

沙織「その分。ベッドでは乙女全開で愛しいもん」

天乃「っ! さ、沙織っ!」

沙織「あははっ、真っ赤になった。かーわいーっ」
656 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 15:10:11.38 ID:ym49Zd5to

天乃「ば、馬鹿にしないで……慣れてないんだから。仕方ないじゃない」

沙織「馬鹿にはしてないよ。ただ、普段は格好いい久遠さんが凄く乙女なのがいいなぁってだけで」

沙織は近くのソファに腰かけると

天乃の頭を自分の膝上に乗せて、そっと頭を撫でる

普段はこうされる側だしされたい側だが

普段は出来ないからこそ、してみたかった

沙織「男の子だと絶対に味わえないよね。そう言うのって」

天乃「そうなの?」

沙織「可愛い男の子が、ベッドでも可愛いとか。そこでだけ強気っていうのはまぁ、あると思う」

でもさ。と

沙織は変わらない声で溢して、苦笑いを浮かべた

沙織「格好いい男の人がベッドで可愛いって、それなんか違う気がするんだよね」

人によってはそう言うのもあるだろうし

人によってはそう言うのが良いって人もいるとは思うけど。と

沙織は普通の会話をしているときのように

表情を崩さずに言い終えて、ふっと。息を吐く

沙織「女の子が好きな私の意見は多分世間の声とはズレちゃってるんだろうなぁ」

天乃「だとしたら私もずれてる気がする」

沙織「久遠さんは男の人に告白されても可愛いでしょ。なら平気だよ。私は……なんか違うなぁって反応しちゃうもん」
657 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 15:27:38.64 ID:ym49Zd5to

天乃「……されたことあるの?」

沙織「ないこともないかな……大赦って内々の組織なのは久遠さんも知ってるでしょ?」

天乃「まぁ、ね」

世界を守るための勇者

そんな重要な役割を、二年前は自分たちの関係者のみから選ぶくらいには

内々でとどめようとしていた組織だと言うのは

天乃もはっきりと、覚えている

沙織「そう言うわけで、あ、もちろん。結婚だの婚約だのお見合いだのの話が来てるわけではないんだけど……」

それでも、大赦関係の家柄の男の人とは

上下に年齢差はあるものの、それなりの付き合いはある

そして、多くの付き合いがあれば、一つは二つはそう言った声をかけて来てくれる異性もいるのだ

沙織「大赦の集まり関係なしにお会いしませんか。とか、今度お食事行きませんか。とか」

天乃「……いかないの?」

沙織「久遠さんは私が浮気しても良いの?」

天乃「勇者部を股にかけてる私には辛い質問ね。でも、沙織がその必要があると判断したら止めないと思う」

沙織「………」

天乃「けど、その意思決定が何らかの強制力によって行われたのだとしたら。私はそのすべてを壊して貴女を奪うわ」
658 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 15:53:02.06 ID:ym49Zd5to

沙織の顔に何かを感じた

けれど、それがなくても言うつもりだった言葉を言った天乃は

沙織の頬に手を宛がい、笑みを浮かべて見せる

天乃「自分の意思で抜けていくのなら、それは私の不甲斐なさのせい。でも、理不尽な強奪は納得できない」

沙織「久遠さんの傍からそう簡単にはいなくならないよ」

本当に何かがない限り

世界の命運を左右するような

そんな強制力が働かない限り

きっと、誰一人として離れてしまうことはないはずだ

夏凜「居ないと思ったらここにいたのね。あんた達」

天乃「あら、夏凜」

沙織「おはよう、三好さん」

会話が途切れかけた瞬間に介入した声に

二人そろって目を向ける

夏凜「ん」

夏凜は適当なコップに水を注いで喉を潤し、息をつく

夏凜「今日だけど、私達昼に行くところあるから解散でもいい?」

天乃「どこ行くの?」

夏凜「鍛錬。昨日しなかった分、今日するって約束だから」


1、私も見学していい?
2、そう……なら仕方がないわね
3、なら、私は今日は沙織と居ようかしら


↓2
659 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 15:54:15.02 ID:Zy5tkIz8O
1
660 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 15:54:41.99 ID:XMhIlvV4O
2
661 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 16:12:59.10 ID:ym49Zd5to

天乃「鍛錬なら、仕方がないわね」

夏凜「強くならなきゃ、守りたいものも守れやしないからね」

夏凜は膝枕して貰っている天乃を見下ろすと

ソファの背もたれに体を乗せ、そのまま身を乗り出して天乃に口づけする

天乃「なっ」

沙織「三好さん抜け駆けズルい」

夏凜「したければすればいいだけでしょ」

さっと離れて、沙織の頭を軽く小突いた夏凜は

してやったりと、笑みを浮かべて

顔を赤くする天乃を見下ろす沙織は

更に体を追って天乃の唇に唇を重ねようとして――

沙織「うっ」

つっかえた胸に悪態をつく

けれども、

沙織がそれで諦めるわけもなく

天乃の体を少しだけ持ち上げた沙織は

やっぱり、キスをした
662 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 16:26:45.21 ID:ym49Zd5to
√ 7月7日目 朝(自宅) ※日曜日

1、風
2、東郷
3、友奈
4、夏凜
5、沙織
6、東郷
7、樹
8、精霊の中の誰か  ※再安価
9、クラスメイト
0、イベント判定

↓2
663 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 16:27:11.30 ID:Zy5tkIz8O
0
664 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 16:28:05.97 ID:QCDDaU8qo
1
665 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 16:40:24.25 ID:ym49Zd5to

風「あ、聞いたんだ」

天乃「ええ、鍛錬するって」

風「天乃がいないあの戦闘が、あたし達にとっては良い経験だったのよ」

寂しそうな顔で

でも、どこか嬉しさを感じる声でそう言った風は

ふと息を吐いて、天乃に微笑みかける

風「不安と恐怖ばっかりで、あたし達を安心させてくれるものがなかった」

天乃「……私は、そこまで重要ではないはずなんだけどね」

風「そんなことないわよ。天乃がいてくれさえすれば。あたし達は守り切れると言う安心感があった」

それは誇張でも何でもなく誰もが感じていたこと

だからこそ、それまではバーテックスという化け物が相手だろうと

戦うことが出来ていたと言っても、過言ではない

でも、あの時はそれが失われた。死んだわけじゃない

けれど、すぐそばにいると言う安心感のないあれは、恐怖と不安ばかりが先行していた
666 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 16:51:42.50 ID:ym49Zd5to

けれども、その中で風達はそれぞれがそれぞれの思いを胸に

強くなることが出来た

それは決して、単純な力というわけではないけれど

しかし、単純な力よりも得難い強さを身に付けることが出来た

それはやっぱり

風「天乃を失いたくないって言う、想いよね」

天乃「その気持ちは嬉しいんだけど……私がしんだら世界を守らないの?」

風「さぁ? 守るかもしれないけど、モチベーションはがた落ちするんじゃない?」

天乃「怖いこと言わないで」

あっさりと言う風に天乃が引き気味に言うと

風は笑みを浮かべて、深くため息をつく

どこかあきらめ交じりのそれに、天乃はすこしだけ、不安を抱いた

風「というわけで、久遠さんには出来る限り長生きしてほしいわけですよ」

天乃「何よその話し方」

風「だって、改まって真面目に言うのは……なんかこう、恥ずかしいって言うか」

気恥ずかし気に頬を染めて

風は困ったように、はにかんだ


1、今日は七夕だけど、勇者部は何かあるの?
2、ねぇ、風。風は男の子と付き合いたいって思わないの?
3、風達も鍛錬に参加するのよね? どんなことするの?
4、友奈も口説き落としちゃった


↓2
667 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 16:52:10.80 ID:1mrsLzL3O
1
668 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 16:53:12.21 ID:XMhIlvV4O
4
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 16:53:55.14 ID:oV7YxDkUO
1
670 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 17:18:55.60 ID:ym49Zd5to

天乃「そう言えば、昨日ね。ようやく友奈も口説き落としちゃった」

風「あーうん。知ってるー」

天乃「えっ?」

風「あの後もどってきた段階で、みんな理解したわよ」

むしろ分かってないと思ってたのか。と

風はすこし呆れ気味に言うと小さく息を吐いて

風「出ていった時点で、口説きに言ったね。って、沙織が言ったし」

天乃「えー」

風「夏凜は夏凜で、あの様子なら陥落でしょ。って」

あんまり似ていない声真似

無駄に誇張したジェスチャー

そんな風の言動から眼を逸らし、天を仰ぐ

言うつもりだったのだから

無駄な手間が省けた……と、言うべきだろう

風「純情無垢な友奈を手玉に取るのは天乃なら楽勝だったろうし、元々。ほら、友奈って天乃に憧れてたじゃない」

天乃「………」

風「天乃が気づかなかったのか、気づいてたけどそう言う意味じゃないって振り払ってたのかは、知らないけどさ……」
671 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 17:36:37.34 ID:ym49Zd5to

風「だから、天乃がその気になって手を出しに行ったら。恋愛に疎い友奈も陥落するでしょ」

天乃「その、なんか私が口説き慣れてる。みたいな言い方は、なんなの?」

風「少なくとも6人は口説いてるくせに、なーに言ってんのよ」

今目の前にいる風、その妹の樹

夏凜に友奈に、沙織に東郷

確かに、もはや風の言葉を否定はできないだろう

その考えに至って

天乃も困ったように笑いながら眼を逸らす

これが口説き慣れていないのなら何なのか

その言葉を見つけられなかったからだ

風「まぁ、何はともあれ。おめでと。天乃」

眼を逸らす天乃の下顎をクイッと持ち上げて

ふわりとかぜを押しのけるように体をかがめた風は

唐突な流れにその先を理解しながらも戸惑う天乃の唇を、奪う

風「…………」

天乃「ん……」

天乃が好きでよく行うことだから。だろうか

風達も皆、それが好き

そうすることで伝え伝わる心が、温もりが、好きだった
672 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 17:58:23.19 ID:ym49Zd5to

風「大事にしなさいよ? 勇者部」

天乃「……貴女もよ」

離れ、囁くように紡がれた言葉に言葉を返し

そのまま、天乃の方から唇を重ねる

風が抱いている想い、そこにある考え

それはもう、天乃が通ってきた道だ

その天乃が今もまだここにいるのだから

風もまた、歩んでいくことは可能なのかもしれない

けれども、それは許されないことだ

天乃「貴女は勇者部を置いて行っては駄目よ。私がいれば勇者部じゃない。みんながいてこそ勇者部なのだから」

風「……お見通し?」

天乃「当然」

勇者部を守るためなら散る事さえ厭わない

そんな覚悟を奪い取った唇を動かして、浮かべる笑み

風は小さく笑って「流石ね」と、言うだけだった
673 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 18:12:40.74 ID:ym49Zd5to
√ 7月7日目 昼(自宅) ※日曜日

1、九尾
2、死神
3、若葉
4、球子
5、歌野、水都
6、悪五郎
7、クラスメイト
8、外出
9、イベント判定 ※再安価

↓2
674 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 18:14:13.36 ID:ZoOHnIuX0
8
675 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 18:14:20.52 ID:oV7YxDkUO
8
676 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 18:14:37.38 ID:1mrsLzL3O
6
677 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 18:25:47.26 ID:ym49Zd5to

「お出かけですか?」

天乃「ええ」

「では、私も同行いたします」

天乃「必要ないわよ。車移動になるし、そうなれば瞳がいるから」

「そうですか……では、念のため玄関先までお送りいたします」

いつでも出かけられrうようにと準備を終えていた職員の女性は

天乃の車椅子を押し、外へと連れ出して辺りを見渡す

「まだ、夢路さんは来られていないようですね」

天乃「呼んだばかりだから」

「では、久遠様。本日はいつ頃、どの程度の人数でお戻りになられますか?」

いつもならいつ戻ってくるのか。という質問どまりなのだが

昨日の件もあってか、人数まで増えていることに若干、嫌悪感を覚えながら息を吐き

外の空気を感じて、目を閉じる

木々を撫でていく風の音、それが運ぶ夏の匂い

肌を焼こうと必死な太陽の光も

どことなく、匂いがあるようにも感じて

天乃「戻りの人数は分からないわ。でも明日は学校だからみんなが止まるなんてことはないから安心して頂戴」

「そうですか。では、お戻りは?」

天乃「ん……七夕のお祭りもあるだろうし、それに参加しなければ夕方ね。したら夜」

「畏まりました。ですが、可能な限り夕方にお戻りください。何かありましたら必ずご連絡を」
678 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 18:36:25.06 ID:ym49Zd5to

瞳の車が迎えに来て、天乃が乗り込むと

職員の女性は一礼して「行ってらっしゃいませ」と

どこかの使用人みたいなことを言って、手を振る

お嬢様なつもりはないのに

なぜだかそんな気分になってしまいそうな光景から眼を逸らすと

運転席から丁度振り向いた瞳と、目があった

瞳「最近、夏凜ちゃんはどうです?」

天乃「会ってないの?」

瞳「電話やメールでのやり取りはしますが、会う機会は以前よりは減っちゃいましたね」

猿猴を警戒するために天乃の家で生活することになったり

天乃のお目付け役として天乃と生活することになったり

確かに、最近になって瞳の家から連れ出していることも多い

瞳「元気で、楽しくやっているのは分かっているので、構わないんですけどね」

天乃「……あなたにとって、夏凜ってどんな存在?」

瞳「可愛い妹。ですね。大赦の人にこれを言うと怒られちゃいますが、夏凜ちゃんは認めてくれていますし」
679 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 18:48:09.69 ID:ym49Zd5to

嬉しそうに語った瞳の笑みは

本当に、妹のことを思っている姉のようで

自分の姉は、兄は、母は、父は

自分が空白になってしまったことをどう思っているのだろうか

そんな空白になった自分を、どう思っているのか

なんとなく、知りたいと思ってしまう

瞳「久遠様?」

天乃「……気にしないで」

疑問を抱く声に首を振って、追及を拒む

なぜそんな顔をしているのか

そんなことを聞かれたら、困るから



1、特訓を見に行く
2、久遠家の神社へ
3、お祭り
4、イネス
5、銀のお墓
6、瀬戸大橋


↓2
680 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 18:48:50.50 ID:1mrsLzL3O
6
681 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 18:49:02.02 ID:evPG+xMeO
3
682 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 18:49:10.21 ID:ZoOHnIuX0
2
683 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 19:07:23.39 ID:ym49Zd5to

天乃「瞳、神社……久遠家のあの神社に連れて行ってくれる?」

瞳「解りました。お久しぶりですね、行かれるのは」

車を動かしながらそう言った瞳は

まだ数ヶ月も言えないですが。と、嬉しそうに溢して、小さな吐息を漏らす

カチッカチッカチッというようなウインカーの音が

どこか、心地いいリズムを取って

瞳「丁度、大きい神社ということもあって七夕のお祭りも行うんですよ」

天乃「……そっか、忘れてる」

瞳「仕方がないですよ。過去は覚えているものではなく、忘れるもの。そして、未来に上書きされていくものですから」

絶対に忘れないと記憶したことも、いつしか、忘れてしまう時が来る

けれども、記憶ではない記憶は、それをしっかりと覚えていてくれる

そういうものなのだと、瞳は語って、笑う

瞳「記憶は、どこかにしまったノートのように。忘れたころに掘り返してこそ。記憶ですしね」

天乃「経験者が語っているみたいね」

瞳「あはははっ……はは……ふふふっ」

まるで経験者だと思ったからこその直球の言葉に

瞳はひとしきり笑った後に深々とため息をついて、青信号で車を動かす

瞳「経験者ですから……まぁ、私の場合は良い記憶というより。悪い記憶を掘り起こしちゃいましたけどね」
684 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 19:14:55.38 ID:ym49Zd5to

瞳「つきましたよ」

天乃「ありがとう」

天乃が現在住んでいるところから

車で大体30〜40分程度走ったところにある、神社

周りの建物と比べて遥かに大きなこの神社は、

祭りの準備をする人たちや

その祭りに参加すべく下見を行っている子供たち

沢山の人で、もうすでににぎわい始めていた

天乃「お祭り……まだ。なのよね?」

瞳「予定ではそうですよ。ただ、もうすでに始まっているお店もあるみたいですね」

天乃「まだお昼よ?」

瞳「それだけ、祭事が好きってことじゃないでしょうか」

はしゃぐ子供を遠目に見た瞳は

車椅子に座って、自由に駆け回ることもできない天乃を見て、唇を噛んで、首を振る

言いかけた言葉。それは、行ってはいけないことだと戒めるように。

瞳「では、本殿に向かいますね」

天乃「……ええ」
685 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 19:33:18.95 ID:ym49Zd5to

一度見たことのある巫女ではなく

雇われの販売員のような巫女に導かれながら、本殿の奥へと進んでいく

土だろうと泥だろうと構わず進む車椅子のタイヤは一応、拭いたとはいえ

綺麗にしている床板を土足で進んでいる感覚は、拭えない

しかし、それ以上に天乃が気になるのは、巫女の女の子の反応だった

まるで、来るとは思っていなかったかのような、怯えも混じった驚愕の表情

隠し慣れていない素人のその反応は、

天乃だけでなく、瞳でさえ見抜けるほどに明確だったのだ

天乃「ねぇ」

「は、はひ!」

天乃「私は指名手配されてる犯罪者か何かなの?」

「し、指名手配……?」

天乃「あー……いや」

失われた古き悪しき呼び名。それを口に出したことを悔いつつ

気にしなくて良いから、手を振り息をつく

それでまたビクビクと震えられてしまうのだから、質問さえしにくい
686 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 19:45:32.11 ID:ym49Zd5to

天乃「貴女、私のことを知ってるの?」

「い、いえ」

天乃「なら、どうしてそんなに怯えてるのよ。私、何かしたかしら」

「そ、そのようなことは……ないでしゅっすっ!」

はぁ……。と

女の子―と言っても高校生くらい―の巫女には聞こえないように気を付けながら

こらえきれないため息をついて、目を背ける

本殿の通路から見える中庭は

夏らしい緑と、蝶などの虫、

太陽の光を受けて光るため池とその中を泳ぐ鯉

色とりどりに、綺麗で

そっちを見ている方がまだ落ち着く

「こ、こひらです」

天乃「大丈夫? 一応手当てしなさいね」

「は、はぃ」

自滅で舌を噛んだ巫女の一礼を横目に

促された部屋へと入っていくと

丁度着替えを終えたであろうまだ若い女性が、振り向く

「よく来ましたね。二ヶ月ぶりでしょうか」

天乃「たった一度来ただけだけれど……」

「よく覚えていますとも。ええ……もちろん。忘れるはずがありません」
687 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 20:08:14.38 ID:ym49Zd5to

天乃「……………」

巫女服を着込んでいて多少は化粧を施している

けれども、白と赤の巫女服に色を付けるような桃色の髪が

天乃の近親者であることを、明確にする

そしてはっきり言ってしまえばこの女性こそが、天乃の母親で

天乃は記憶がないが、そうであることを確信していた

「あの子たちがいないのが残念です……いえ、いれば逆に騒がしく迷惑だったかもしれませんね」

他人行儀

向こうも忘れているのだろうか

それとも、必死に、他人であることを貫こうとしているのか

本当はしたい事、話したいことがあるのに

天乃の記憶がないばかりに

他人との会話、他人とのふれあいでしかないから

傷つける事、傷つくことを恐れて、身を引いてしまっているのだろうか


1、お母さん……なのよね?
2、七夕は、大赦の形式で行うの?
3、私ね……今は幸せよ。すごく……失ったものもあるけれど。幸せだから
4、いつかきっと、取り戻すわ
5、結婚式がしたいの。特殊な結婚だから、内密にここで行えないかなって


↓2
688 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 20:08:46.98 ID:Uvp2XfFQO
5
689 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 20:09:41.50 ID:evPG+xMeO
5
690 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 20:11:46.14 ID:oV7YxDkUO
1
691 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 20:23:43.32 ID:VDQ8Zt95O
天乃の母ちゃん出てくるの初めて?
692 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 20:24:52.15 ID:VDQ8Zt95O
あれ?ID変わってる?
693 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 20:30:07.19 ID:ym49Zd5to

天乃「結婚がしたいの」

「けっ……こほん。結婚ですか? その歳で?」

天乃「ええ、特殊な結婚だから、内密にここで行えないかなって思って」

務めて平常心を保つ母親をまっすぐ見つめて、天乃は続けて言葉を放つ

記憶が無い為、推定でしかないが

自分の年齢の娘がいることを加味すれば若い

そんな母、そうさせた久遠家という血

を想いながら、天乃はふぅ。と、小さく息を吐く

「特殊。とは? やはり、年齢的な問題ですか?」

天乃「いえ、年齢は同年代ですが、同性です」

「同性ぃ!?」

生真面目な大人の巫女から一変、声を張り上げた巫女から

天乃へと視線を移した瞳は「こらこら」と

天乃にだけ聞こえるような声で呟く

天乃「大丈夫ですか?」

「けほっけほっ……え、ええ。失礼しました。そうですね、同性婚というのも――」

天乃「あと少なくとも6人の妻がいます」

「ろっっろくぅっ!?」

もはや、巫女が母親というものを隠すのは、不可能な叫び声だった
694 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 20:43:58.66 ID:jCy9GqR60
そら驚くわな
しかも今後増える可能性まであるし
695 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 20:45:31.51 ID:EboxdWxLO
園子入れたら七人だな
七人の花嫁
696 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 20:50:19.71 ID:ym49Zd5to

「六人!? 妻!? しかも同年代!?」

天乃「うん」

「うんじゃなくて……うん。じゃなくて。そんないい顔で頷かないで」

困ったなぁ。もう。と

年齢にそぐわない子供っぽい声を溢した母親は

左目に手を宛がって天井を仰ぐと

「はぁ……」

大きくため息をつく

それだけで雰囲気がさらに変わったのを天乃は感じた

「百歩譲って同性は許します。私も若い頃は親友の着替え中に舌なめずりしましたからね。はい。水泳は一番好きでした」

天乃「えー」

「ですが、流石に6人は許可できません。私はともかく、相手方の親の気持ちを考えてください」

天乃「……世界を守ってあげるから。娘を私にくださいって挨拶する予定なんだけど」

「………………」

天乃「大赦のお役目なら、仕方がない事。なんでしょう?」

「それは略奪と同じことです。双方が納得できる言葉を用意しなさい。出なければ、結婚は認めません」
697 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 21:19:09.31 ID:ym49Zd5to

天乃「なら、納得できる言葉が用意出来れば、何人と交際しても良いの?」

「双方が納得したのなら、私から言える言葉は何一つありません」

瞳「……えー」

それは明らかにおかしいのでは? と思ったのだが

天乃の母親という時点で色々とあれなのだから

この家族、この場においておかしいのは自分なのだろう。と

解釈して、瞳は言葉を飲み込む

「戦いに身を投じる幼き子。私達が禁じることなど、本来はあってはいけません」

天乃「……戦いは強制されていないわ」

「いえ。その心の優しさに、我々は祈り、願い、強制している。貴女達の記憶にある私達人間の行動。生み出された記憶が、訴える」

それは無意識という言葉さえ不釣り合いなほどに

誰も考えていない、思っていない

理不尽な流れに生み出された砕けぬ鎖

それは誰にも咎められないことだと分かっているだろう

しかし、母親として、それは見逃せないのかもしれない

「だから、私は貴女が何人の妻と交際しようが、失敗しなければ構いません」

天乃「……そう。ありがとう」
698 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 21:32:34.44 ID:ym49Zd5to

「もっとも」

天乃「?」

「親としては、真っ当に恋愛をして欲しい。という気持ちがないと言えば嘘になるでしょうが」

母親は母親と名乗ることなく

そろそろ時間なので。と一礼をして、襖を開ける

「……今夜は祭事です。よければ、楽しんでいってくださいね」

振り返らない

それだけ言って、母親は立ち去り

入れ替わるように入ってきた巫女―来た時とは違う―が一礼し、こちらへ。と、促す

天乃「…………」

親としては。

それはそうだろう

天乃にはほかにも兄や姉がいるが

力の継承が出来るのは自分ひとり

友奈や東郷もそう。風や樹だって、二人が子を遺さなければ

犬吠埼の血は絶えてしまう

天乃「……難しい話ね」

瞳「そういうものですよ。人生は」

適当にぼやいた言葉には、瞳の言葉が、返ってきた
699 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 21:35:24.94 ID:ym49Zd5to
√ 7月7日目 夕(神社) ※日曜日

1、お祭りを見ていく
2、帰宅
3、電話
4、精霊と交流

↓2
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 21:35:49.15 ID:EboxdWxLO
1
701 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 21:39:31.40 ID:oV7YxDkUO
1
702 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 21:51:40.49 ID:ym49Zd5to

01〜10 クラスメイト
11〜20 
21〜30 チャラい奴
31〜40 
41〜50 勇者部
51〜60 
61〜70 兄
71〜80 
81〜90 男子生徒
91〜00 

↓1のコンマ  
703 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 21:52:15.40 ID:ehukWEZjO
704 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 22:26:08.67 ID:ym49Zd5to

お昼はまばらだった屋台も、

夕方にもなればほぼすべてのお店が準備を終えていて

焼きすぎ一歩手前の焦げ臭いにおいや焼きそばのほんのりと甘いにおいがするし

いたるところから、ジュージューっと

思わず目を向けてしまいそうな音がする

もちろん、甘いデザート系のお店もあって

放送しているアニメキャラをかたどったお面屋

射的、輪投げ、水風船や金魚すくい

色々な屋台が本殿へと続く道の途中に散らばり

二本の足で歩いているとしても進めないほどの人が、蠢いていた

天乃「……お祭り、流石の人ね」

瞳「近辺で行うのはここだけですし、大々的なので、少し遠方からも来るようです」

天乃「なるほど」

その大々的でも、過多な人の数

それはきっと……300年の賜物


1、射的
2、水風船
3、金魚
4、輪投げ
5、電話
6、精霊

↓2
705 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 22:29:15.40 ID:ehukWEZjO
1
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 22:29:36.76 ID:ZoOHnIuX0
6
707 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 22:32:23.88 ID:ym49Zd5to

1、若葉
2、球子
3、水都
4、歌野
5、九尾
6、死神
7、悪五郎


↓2
708 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 22:32:50.85 ID:ym49Zd5to

安価取り消し

再安価
709 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 22:33:17.39 ID:ym49Zd5to

1、若葉
2、球子
3、水都
4、歌野
5、九尾
6、死神
7、悪五郎


↓2

※複数可3人まで
710 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 22:36:20.49 ID:ZoOHnIuX0
1 5 7
711 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 22:36:22.34 ID:ehukWEZjO
7
712 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 22:36:32.72 ID:oV7YxDkUO
1 3 4
713 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 22:44:21.32 ID:ehukWEZjO
複数人のが良かったかな?
踏み台のつもりだったのもあってちょっと申し訳ない気持ちに
子作りみたいな内密の話もあるし二人きりで祭りも悪くないよね?
714 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/26(日) 22:48:15.16 ID:ym49Zd5to

では、五郎君の両手に花のお祭り参加が決まったところで
ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



天乃「うちって、代々女の子が好きになる呪いにでもかかってるの?」

九尾「……契約者である妾がうら若き乙女を欲するがゆえ」

九尾「その渇望が逆流している可能性は否定できぬ」

天乃「つまり?」

九尾「妾のせいやもしれぬな。うむ。間違いない」
715 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 22:51:01.53 ID:ehukWEZjO

陽乃はどうだったんだろう
716 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 23:04:07.34 ID:oV7YxDkUO

次は五郎くんのターン
子作りのための親睦を深めるのですね、分かります

あと兄貴の変態さはお母さまの遺伝だった疑惑が…
717 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 23:43:42.92 ID:uJAndfoVO

「百歩譲って同性は許します。私も若い頃は親友の着替え中に舌なめずりしましたからね。はい。水泳は一番好きでした」←これお母さん真面目な顔で言ってるんだろ?
笑うわこんなの
718 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/27(月) 00:06:14.66 ID:zvaWcsI80
五郎ちゃんと悪魔合体する話の方が大事な気が
719 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/27(月) 00:19:39.16 ID:2/KoxGYwO
久遠さんベッドの上じゃ乙女って言われて赤くなるとか激かわ
さおりん発言エロすぎ
720 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/27(月) 01:24:46.38 ID:0kbPp6T1O

ぶっちゃけ認められなくても結果は籍入れない事実婚なんだろうけど目標としては悪くないかな説得&式決行も
721 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/27(月) 14:27:23.11 ID:iEopj9BLo
さおりんも異性関係大変なんだな…まるで興味無さそうだけど
そしてさおりんを奪うと断言する久遠さんイケメンかと
722 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/27(月) 22:03:53.92 ID:2Q1hvBC0o

では、初めて行きます
723 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/27(月) 22:10:48.14 ID:2Q1hvBC0o

天乃「五郎君、出てきてくれる?」

悪五郎「こんな場所で呼び出すとは……珍しいな」

瞳「……どうも」

どこからともなく姿を現した少年に、瞳は一礼をして一歩下がる

天乃の目の前で、精霊が自分に危害を加えるかもしれないと考えたわけではなく

単純に、自分がその場にいる必要性が薄まったのを感じたからだ

そもそも、瞳が今同行しているのは

天乃が一人では行動に制限がかかるがゆえだ

車椅子での移動の補佐だけでなく

単純な護衛としての力を併せ持つ精霊がいるのなら、寧ろ自分よりもその精霊にゆだねるべきだ

というのが、瞳の考えだった

悪五郎「どうした。この女がいるなら、付き人は要らんだろう」

天乃「逸れはそうだけど、瞳だってお店回りたいでしょう?」

瞳「それは……その、まぁ……えっと」

本音を言えば、回りたい

こんな目も耳も鼻も、五感全てを引っ張る屋台の数々を前にしたら

職員としては比較的若い部類の瞳がはしゃぎたくなる気持ちがないなんてことはないだろう

だが、天乃といる。ということが

歩くことが出来ない、味覚もない

天乃に科せられたそれらの障害が瞳のそれさえも、抑制してしまう
724 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/27(月) 22:11:06.94 ID:1WL+h53CO
おk
725 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/27(月) 22:16:13.45 ID:2Q1hvBC0o

天乃「せっかく来たんだもの。お酒以外は楽しんできた方が良いわ」

瞳「良いんですか?」

天乃「ええ。ただ、大赦の人には内緒よ」

瞳「流石久遠様っ!」

友奈たちのような子供っぽい反応こそしなかったものの

大人と子供の中間のような嬉しそうな反応を見せた瞳は、

お帰りの際にはご連絡ください。と言い残して、人ごみの中に消えていく

悪五郎「まったく、お前がここから逃げることは考えていないのだな」

天乃「その理由がないことを、瞳は良く分かっているもの」

せわしなく動きながらも停滞する人の流れ

それを遠巻きに見つめる天乃は、小さくため息ついて端末を取り出す

天乃「今電話したらどんな反応するかしら」

悪五郎「意地が悪いな。お前は」

天乃「冗談よ」

すぐ横の悪五郎は見た目こそ子供だが

中身は遥かに年上だからか、くすりとも笑わずに辺りを見渡す
726 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/27(月) 22:22:25.09 ID:2Q1hvBC0o

悪五郎「とりあえず紛れてみるか?」

天乃「そうね……五郎君が何か食べたければ、それ買っても良いし」

悪五郎「俺には必要ない。気にするな」

悪五郎がきびすを返して視界から消えると

ぐっと車椅子が押し込まれ、体が揺れる

瞳と違って異性らしく力強い推進力では在るが、

不慣れな力加減は安全性に欠けていて、思わず肘掛けを掴む手に力が篭る

悪五郎「人間は祭事が好きだな」

天乃「妖怪は好きじゃないの?」

悪五郎「賑やかな空気を好む奴もいる。好まない奴もいるがな」

天乃「貴方は?」

悪五郎「……比較的、好きな部類だろうな」

懐かしそうに、屋台や屋台に集まる人を見て

どこか楽しげに笑みを浮かべた悪五郎が天乃の視線に気づくと

天乃は「良いのよ」と、嬉しそうに笑みを浮かべる
727 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/27(月) 22:29:48.61 ID:2Q1hvBC0o

悪五郎は妖怪だ

そして、どちらかと言えば悪戯などを行う悪い妖怪

天乃が出会ってから、その印象は行ったりきたりの右往左往を繰り返して

今は、比較的優しい妖怪に留まっているが、それでも妖怪は妖怪で。

だから、見た目相応とは行かなくても

人の世に少し馴染んで見えたのが、天乃としては嬉しかったのだ

悪五郎「女狐も似たようなものだろう」

天乃「九尾はちょっと特殊よ」

悪五郎「似たようなものだ」

意地を張ったように言って目を逸らす悪五郎を見つめたまま

天乃は「はいはい」と、茶化すように言ってくすくすと笑う

悪五郎「笑うな」

天乃「ふふっ、ごめんなさい」

悪五郎「笑うなといっているだろう!」

天乃「わぁっ!」

がたがたと車椅子を揺らす―落ちることはないように―悪五郎と

笑いながらごめんなさいという天乃

そんな二人を、一部は羨ましそうに

一部は微笑ましそうに、眺めて

「おーおー喧嘩すんな喧嘩すんな」

たこ焼きを一舟もったおじさんの声が、割り込んだ
728 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/27(月) 22:37:25.35 ID:2Q1hvBC0o

悪五郎「邪魔をするな。この女が俺を愚弄――」

「その歳でガールフレンドを女呼ばわりとは気のでけぇ子供だな」

悪五郎「……ほう? ならば、お前は自分の女をなんと呼ぶ」

「一応、俺の方が年上のはずなんだがなぁ」

悪五郎の素性を知らなければ、

おおめに見ても中学生、普通に見れば小学生の男の子

そんな子の口調の荒々しさに、おじさんはがしがしと頭をかいて、

天乃の方へと目を向ける

「こっちには勿体無いほどのかわいこちゃんだ」

天乃「ふふっ、どうも」

悪五郎「お前は自分の女をかわいこちゃん。と、呼ぶのか?」

「いやいや、俺は……そうだなぁ。外では嫁さん、女房。そう言うのが多いかもしんねぇなぁ」

どこか気恥ずかしそうに言ったおじさんは

この歳になると名前を呼ぶのが妙にこっぱずかしくなっちまってよ。と

お酒を飲んでいるのだろう、赤らめた表情で、苦笑いを浮かべる
729 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/27(月) 22:43:29.84 ID:2Q1hvBC0o

悪五郎「……ふむ。嫁、か。だが、俺と天乃はまだ結婚はしてなくてな。生憎、嫁とは呼べん」

「だろうよ」

ぽんぽんっと悪五郎の頭をおじさんが叩いた瞬間

その腕を切り落とす速さで動きかけた手を、天乃が掴んで止める

人間の分際で気安く触れるな

そんな怒りが見えたが、天乃が「ダメ」と、囁くと

腕からは力が抜けて

「お前さんはまだ子供だろう。なら、今みたいに名前で呼んでやんな。名前で呼ぶのはよ。初々しい男女の特権だからな」

悪五郎「……そうか。その言葉、覚えておこう」

「おーいおやじ。この子らにたこ焼き一舟くれてやってくれ。俺のおごりだ」

それだけ言ってお金を屋台に置いて行ったおじさんに

天乃は申し訳なさそうに目を向けて

たこ焼きの屋台のおじさんから「熱いから気をつけるんだぞ」と、たこ焼きを受け取る

天乃「名前も知らないのに奢って貰うなんて、悪いわ」

「酒に酔った男の見栄っ張りってやつだ。受け取ってやってくれ」

悪五郎「さっきのとは知り合いなのか?」

「祭りでは良くあることだよ」

悪五郎「そうか……」
730 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/27(月) 22:52:54.18 ID:2Q1hvBC0o

チラッと目が向けられたのを気づいた天乃は

良く見せる笑みを浮かべて、屋台のおじさんに「いただきます」と返して、一礼

それを区切りに悪五郎が車椅子を押し、人ごみから外れた場所で止まる

天乃「……一般人には手をあげたらだめよ」

悪五郎「次からは自制しよう。だが、知らないとはいえ不敬だな」

天乃「貴方に? それとも私に?」

天乃の手に収まるたこ焼きを乗せた一つの舟

天乃も、悪五郎も、目をそれへと向けて……悪五郎が一つだけ爪楊枝の刺さったたこ焼きを口に放り込む

ぐじゅりと潰れたたこ焼きは

極限まで熱されたどろりとした中身を口腔を焼き尽くすべく噴出させたが

悪五郎は気にせずに噛み砕いて飲み込む

悪五郎「こんなもの、奢られたところで天乃には不要だろう」

天乃「それでも、あの人にとって私はただの車椅子の女の子だったのよ」

悪五郎「……ふん。食べられるか?」

天乃「…………」


1、食べて良いわ
2、頂くわ
3、あら。食べさせてはくれないの?


↓2
731 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/27(月) 22:53:12.76 ID:jveDFNBEO
3
732 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/27(月) 22:54:16.16 ID:1WL+h53CO
3
733 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/27(月) 23:07:51.12 ID:2Q1hvBC0o

では、ここまでとさせていただきます
明日も出来れば通常時間から

普通に見せた普通じゃないデート
734 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/27(月) 23:10:04.49 ID:cseiONM5O

雰囲気良くなってきたな
735 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/27(月) 23:19:24.32 ID:1WL+h53CO

思いの外久遠さんからの好感度が高めな五郎くん
今までに告白してきた男子たちと何処で差がついたんだろうか
736 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/27(月) 23:25:57.05 ID:aoYROS/CO

このスレは相変わらず名言っぽいの出してくるな…おっさんの台詞凄い

>>735
久遠さんは誰にでもこんな感じじゃないのか?それで勘違いさせまくったはず
737 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/28(火) 01:08:45.02 ID:iSRXmgUZ0
悪五郎に魅了は効いてんのかね
738 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/28(火) 01:10:54.49 ID:D1Y4UPtpO

おねショタよいよよいよ
739 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/28(火) 23:07:34.04 ID:STFCVmc9o

では少しだけ
740 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/28(火) 23:08:27.08 ID:STFCVmc9o

天乃「あら、食べさせてくれないの?」

悪五郎「はぁ? 何を言っている」

天乃「たこ焼き。こういう場合って食べさせてくれるものじゃない?」

冗談で言っているのか

本気で言っているのか

悪五郎の目を持ってしても判別しにくい笑みを浮かべる天乃は

じっと目を向けても「ん?」と小首を傾げるだけで

悪五郎は困ったように地面へと視線を落とすと

はぁ。とため息をつき、頭をガシガシと掻く

そこだけ見れば少し粗暴な男の子。だろうか

悪五郎「人前ですべきことではないだろう」

天乃「そうかしら。ほら、良く見ればやってる人いるじゃない」

悪五郎「…………」

辺りを見渡してみれば

確かに、来客に比べてかなりの低確率ではあるが

そういったことをしている二人組みは所々にいる

親子という点を差し引いても……だ
741 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/28(火) 23:15:35.71 ID:STFCVmc9o

悪五郎「あれはそういう関係の人間達だろう。俺達はそう見られても良いのか?」

天乃「あら。私はガールフレンドって言葉を否定しなかったのに」

悪五郎「お前は少々戯れが過ぎる」

こういうとき、天乃は本当に楽しそうに笑う

悪戯しているからかもしれないが

旗から見ればそれはとても良い笑顔で

悪五郎は少年心―のようなもの―で見れば悪くはない。と、首を振る

悪五郎「本気にするぞ」

天乃「……そもそも。貴方の子供を産むのに。ガールフレンドですらないの?」

悪五郎「それはずるい言葉だな……まったく。本当に、ずるいな。女という生き物は」

誰に向けたのか、天乃に向かないその言葉が消えていくのに続いて

悪五郎は「少し待っていろ」と、少し離れた屋台の一つへと歩いていく

たこ焼きを乗せた舟からの熱を避けようと手をずらすと

ワンピースのスカート部分を含んだ膝上に熱が広がる

祭りの中にいるのに、その喧騒においていかれたような感覚を覚えて

ふと、息を吐くと、吹いた風に髪が靡き、どこかで「落ちたーっ!」と、子供の悲鳴が上がる
742 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/28(火) 23:18:58.07 ID:STFCVmc9o

輪の中にいるのに、居ない感覚

慣れ親しむべきではないなれた感覚に

天乃は小さく笑みを浮かべて――

「一人で来てるの?」

天乃「え?」

「せっかくだから一緒に回ろうぜ、奢るからさ」

天乃「お誘いはありがたいのだけど……彼が居るので」

車椅子に乗っているとはいえ

本気で怒らせることさえなければ優しい女子中学生の天乃は

はたから見れば、先ほど言われていたように「かわいこちゃん」でしかなく

一人になれば、当然。お祭りに来ている年齢層の近い異性からは、誘われる確率が極めて高い

そして、そう言うときに決まって言う言葉はもはやテンプレートというもので

その一言で引いてくれるかといえば、そうでもなく

「でも、一人だよね?」

天乃「今、屋台の方に行ってて……だから、お願いだから私にちょっかいは出さないで欲しいの」

「ちょっかいって、俺達は」

天乃「彼、怒らせると――」

自分の精霊に対して感覚が鋭敏になった天乃は、

二人組の男性に阻まれていてなお、

今すぐにでも二人の首を跳ね飛ばし

見るも無残な血祭りを始めそうな雰囲気を身にまといながら近づく存在に気づき、苦笑いを浮かべる

そして――

悪五郎「おい……それはお前達が手を出して良い女じゃない。今なら見逃してやるから。失せろ」

なぜか焼きそばを買った悪五郎が、低い声で威嚇した
743 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/28(火) 23:20:50.42 ID:STFCVmc9o

「お……おう」

「本当に居たのか、すまん」

天乃「いえいえ」

殺気の気づいたわけではないのだろうが

自分よりはちっぽけな存在から浴びせられる圧迫感に緊張してか

冷や汗を流す二人はそそくさと、逃げていく

欲もあったのだろうが、悪意はなかっただろうに。と

天乃は少しだけかわいそうに思いながら

ばいばーいと、明るく声をかけて、手を振る

悪五郎「この時代でも、油断も隙もないのか? 人間は」

天乃「貴方の参考にしている時代は分からないけど、あの人たちに悪意はなかったわよ」

悪五郎「願わくばお前を自分の女に……そんな思惑が見えたが?」

天乃「あら。勝手に人を自分の女にしようとしてた人の言葉とは思えないわね」

そのときのことを問題と考えていない

ただ茶化すためだけに引っ張り出してきたというような天乃の笑みに

悪五郎は開きかけた口を閉じて、息をつく

自分の方が分が悪いと分かっているからだ
744 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/28(火) 23:29:12.88 ID:STFCVmc9o

天乃「それで? どうして貴方は焼きそば買ったの?」

悪五郎「箸を寄越せと言ったらこれを渡されてな」

天乃「お金は払ったの?」

悪五郎「古銭だが、大判三枚支払ったぞ。驚いていたが、何も言わぬのでそのまま戻ってきた」

参考にとどこからか取り出した黄金に輝く大判は

偽物か本物かと聞かれたらまず間違いなく偽物と言いたくなる

なにせ、一部たりとも劣化していない旧世紀よりも旧世紀な

歴史のある大判なのだから、本物と即断する方が異常と言える

しかし、悪五郎が持っているものなのだから

悪五郎が騙されてさえいなければ……本物だろう

天乃「とりあえず、お金渡すから大判を回収して来てくれる? 多分、バレたら問題になるから」

困った笑みを浮かべる天乃は千円札を手渡し、

よろしくね。と、悪五郎を送り返した
745 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/28(火) 23:34:38.95 ID:STFCVmc9o

悪五郎「そのたこ焼きというやつの皿を貸せ」

戻ってきた悪五郎は

焼きそばのパックと交換で天乃からたこ焼きを乗せた舟を受け取り

五個に減ったたこ焼きの一つを箸で半分に割ると

その半分を天乃の口元へと持っていく

悪五郎「人間は脆弱だ。丸呑みは出来ないだろう?」

天乃「……それでわざわざ。ありがと」

貰ってから時間の経ったたこ焼きの外側は少し冷めていたが

むき出しにされた内側の熱が程よく口の中を暖めながら

どろりと舌の上に広がっていく

鰹節が歯につく感触、たこ焼きよりもぬるっとしたソースの感触

感触と熱だけが口腔を満たし、喉を流れ落ちていく

想像するしかない味を記憶から掘り起こしているうちに空っぽになっている口を開くと

意図を酌んだ悪五郎がもう半分を口の中に入れて

割り箸のざらついた感触が唇を擦って、ほんの少し口元が汚れる

悪五郎「思い出せるのか?」

天乃「ん……んくっ……ん」

ごくりと飲み込み、自信なさそうに頷く天乃から目を逸らし

悪五郎もまた、たこやきを一つ、箸で摘んで口の中に放り込む
746 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/28(火) 23:39:27.76 ID:STFCVmc9o

カリッっとした外皮、どろりとした中身

ぐにゅりと潰れるたこの足、本当に微かな塩っけを感じる鰹節、

その全てに甘しょっぱく絡みこんでくるソース

噛めば噛むほど食感と味が広がっていくこの感覚こそ

食事といえるのだと悪五郎は思い、その半分を喪失した天乃へと目をむけて

悪五郎「やきそばも食べるか?」

天乃「あら、食べさせてくれるの?」

悪五郎「天乃が望むのなら……いや、その方が楽しめるのなら」

ならお願い

そういった天乃に、悪五郎は小さく頷いて

悪五郎「仕方のない姫君だよ。お前は」

子供っぽく、しかし、子供では出来ないような笑顔を浮かべて見せる

悪五郎「それで、このあともまだ食べる。そんな気にはならんだろう?」

天乃「そうね……」

流石に焼きそばを食べさせられて口元を汚さないのは不可能で

天乃らしくなく汚れた口元をティッシュで拭う天乃は、小さく零して、お祭りを見る


1、本殿の演舞
2、射的
3、金魚すくい
4、水風船
5、遅くなると困るから、帰宅
6、ねぇ……キス。してみる?

↓2
747 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/28(火) 23:39:46.18 ID:3KrA7OQ+O
4
748 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/28(火) 23:39:54.64 ID:D1Y4UPtpO
6
749 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/28(火) 23:41:31.18 ID:x6qodbwpO
1
750 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/28(火) 23:44:17.90 ID:STFCVmc9o

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


天乃は怒らせたりさえしなければ、優しい女子中学生
ただし、周りの厳しい審査があります
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/28(火) 23:46:17.66 ID:3KrA7OQ+O

悪五郎くんの猛アタックがようやく結実するのか
752 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/28(火) 23:54:44.24 ID:x6qodbwpO

百合ハーレムとは別のもう一つの恋物語か…それはそれで悪くないな

久遠さんの誘い受けなら祭りの最中に押し倒されたらそのまま流されそう
753 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/29(水) 00:38:16.16 ID:OfW0BhOGO

これで久遠さんの恋愛事情はだいたい終わりかなって思ったけど園子忘れてるわ
一人だけハブ状態じゃかわいそうだから早く会ってあげたい
754 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2017/03/29(水) 01:07:00.89 ID:ytYGzJLU0
悪戯される側になって、魔王も形無しだな
しかも自宅周辺だから、厳しい審査不可避だろ
755 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/29(水) 21:40:27.55 ID:ATcJSBqzo

では、少しだけ
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/29(水) 21:45:38.56 ID:wwKmmyqPO
やったぜ
757 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/29(水) 21:48:16.47 ID:ATcJSBqzo

天乃「ねぇ……キス。する?」

お祭りの喧騒の中、

天乃のその声は、はっきりと悪五郎の耳に届いた

目を向けない、体も向けない

そんな状態での、問い

見た目は子供だが、中身は遥かに長く生きた悪五郎でさえも

意表を突かれたその言葉には戸惑い、言葉を無くして

天乃「五郎君?」

不思議そうに振り向いた天乃に、

少年は複雑な顔を向けて、目を逸らすと

顔の右半分を覆うように右手を被せる

それはどこか、呆れてしまったような姿で

悪五郎「お前は馬鹿なのか?」

悪態をついた悪五郎は正面から車椅子を押して、揃って、木陰へと消える
758 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/29(水) 21:54:59.85 ID:ATcJSBqzo

悪五郎「ここは外だぞ。周りを見てみろ。そんな人間がいるか?」

天乃「見ている人も居ないわ」

悪五郎「だからと……」

天乃「したいと思わないの?」

話を聞かず、言葉を遮る天乃の変わらない優しげな表情に

悪五郎は怒鳴りかけた口を閉じる

したいのかしたくないのか

それだけを言えば、したい。それは間違いない

夏凜や東郷、友奈や風、樹、園子、沙織

様々な少女達との行為を見てきた悪五郎は

異性に当たる存在として、嫁に欲しいと思った存在として

普遍的な少年としての思考でも、したいと思う

けれど――

天乃「恥ずかしいの?」

天乃は悪五郎の躊躇い

その理由を的確に突き、必然的な上目遣いで見据える
759 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/29(水) 22:05:42.44 ID:ATcJSBqzo

悪五郎「な、は、恥ずかしいなどと」

天乃「あら。意外と可愛い反応をするのね。まぁ、さっきで分かってはいたんだけど」

口での否定をもみ消すように、

体が動揺に揺らぎ、体が熱を帯びていく

自分の顔がどうなっているのかも考える余裕もないまま

ただ、天乃の目から逃れようと左手で顔を覆う

天乃「そうしてると、本当に子供みたい」

楽しんでいる笑い声

馬鹿にしているというよりは、反応が見れて嬉しいというような明るい声

それは悪五郎の羞恥心を震わせると共に

なぜか、嬉しさを覚えさせた

悪五郎「……楽しいか?」

天乃「え?」

悪五郎「俺をからかって、楽しいのか?」
760 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/29(水) 22:11:19.98 ID:ATcJSBqzo

目を合わせない悪五郎の少年のような態度

女の子をまっすぐ見れない男の子の少し頑張った強がりにも似たそれに、

天乃はクスクスと笑って「ううん」と答える

天乃「嬉しいの。貴方が少しでも人というものを理解してくれていることが」

悪五郎「…………」

天乃「それに、私の傍にいたのなら。私がキスする理由は分かっているんじゃない?」

言われれば言われるほど、視線は天乃の唇へと向かう

話すたび、呼吸するたびに動く唇

食事の後でも、拭われたそれは健康色に美しく、清潔で

それゆえの豊富な水分が、祭りの熱狂的な明かりを映し魅惑的な輝きを増す

天乃「少し恥ずかしいけれど、言葉にするなら。貴方の想いを受けても良い。そう思ってるってこと」

悪五郎「……だが、独り占めは出来ないのだろう?」

天乃「ええ。あとは貴方がそれを受け入れてくれるのかどうか。そんな私でも、好きでいてくれるかどうか」

ちょっとずるいけどね。と、天乃は困ったように笑みを浮かべる

本当にずるい

要するに、いずれにしろ一番にはなれないのだ

そして、与えられたのは枠の中に入るか、外に出るかの二択
761 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/29(水) 22:16:38.80 ID:ATcJSBqzo

悪五郎「お前は本当に良い女だ」

ここまで来てなお、独り占めしたい。そう思うほどに

けれど、独り占めできない

この腕に納まろうとしない

人質でも取らない限り「貴方だけのものになります」という言葉は

絶対に、天乃の口からは零れない

そして、それを言わせたが最後

欲しいと望んだ天乃の心は見向きさえしてくれなくなる

悪五郎「……お前の問いに答えよう」

車椅子ゆえ、逃げられない天乃の下顎を左手の指で持ち上げ

押し付けるように唇を重ねる

天乃「ん……」

みんながしていたように

最初のキスは熱っぽさを引き出さない接触の方が正しい軽いキス

離れて、ほんの数センチの距離で目と目を合わせて、言葉を紡ぐ

悪五郎「俺の時代は何人の女が居ようが問題はなかった。側室というものさえあった。ゆえに、気にはならんよ」
762 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/29(水) 22:23:39.12 ID:ATcJSBqzo

そして、もう一度唇を重ねる

大人ではなく、子供の戯れのように

唇同士を触れ合わせる程度のキス

祭りゆえの騒がしさ

その傍らにある木陰で人知れず行うキスは

室内で行うものよりもドキドキと、心臓を強く波打たせる

天乃「んっ……っは……」

離れると、

思わず熱の篭った吐息が溢れ、白い肌がゆっくりと赤く染まり

悪五郎は笑みを浮かべて「愛おしいよ。お前は」と、囁く

両肩を掴んで唇を重ねれば

このまま時間が止まっても良い

このまま何もかもが終わっても良い

そう思えてしまいそうな多幸感が全身を満たしていった
763 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/29(水) 22:31:31.81 ID:ATcJSBqzo

√ 7月7日目  夜(自宅) ※日曜日


01〜10 
11〜20 沙織
21〜30 
31〜40 
41〜50 夏凜
51〜60 
61〜70 
71〜80 九尾
81〜90 
91〜00 

↓1のコンマ 

ゾロ特殊
764 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/29(水) 22:32:58.26 ID:wqNn0abZO
765 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/29(水) 22:35:36.78 ID:ATcJSBqzo

√ 7月7日目  夜(自宅) ※日曜日

1、九尾
2、死神
3、若葉
4、悪五郎
5、歌野・水都
6、球子
7、沙織
8、夏凜
9、イベント判定

↓2
766 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/29(水) 22:36:14.87 ID:wqNn0abZO
9
767 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/29(水) 22:36:35.88 ID:wwKmmyqPO
3
768 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/29(水) 22:51:57.24 ID:ATcJSBqzo

天乃「ねぇ、若葉」

夜、祭りから天乃が帰宅したころには

夏凜はもうすでに寝ていて

一人部屋に戻った天乃は名を呼び、若葉を呼び出す

若葉「な、なんだ?言っておくが……わ、私はしないぞ!」

呼びかけに応じながらも

顔を赤く染める若葉は天乃から十分な距離を取って、拒否する

……まだ、何も言っていないのだが。

天乃「相変わらず、精霊は覗いてるのね」

若葉「ふ、不可抗力だ! 決して……覗きたくて覗いていたわけではないぞ」

天乃「あら……でも、興味があったんじゃないの?」

若葉「…………」

ふいっと、顔を逸らす

つまりそう言うことらしい

破廉恥だとは思いつつも

目を背けつつも、

顔を覆う手の隙間から覗いてしまうように

好奇心は、抑えられなかったのだ
769 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/29(水) 23:13:39.96 ID:ATcJSBqzo

若葉「……た、確かに。多少の興味はあった。認めよう」

だが、それでもする気はない

私達はまだそんな関係ではない。と

口早に拒絶した若葉は

頬を赤く染めたまま、コホンっと咳払い一つ

空気を入れ替え、生真面目な瞳を天乃に向ける

若葉「天乃はそんな話をするために私を呼んだわけではない。はずだ」

天乃「……その根拠は?」

若葉「私と天乃はそんな関係ではない。それを天乃が分かっていないはずがない」

それならば、

そんな話をしたところで意味がない、まだ手は出せない

そう、考えたからだ




1、園子の事。貰っていい?
2、九尾に記憶を貰えるかどうか。聞いてみたら?
3、どう? 他の精霊勇者とは仲良く出来てる? 水都さんとか
4、あら、私は若葉の照れた姿が見たいと思っただけよ
5、私と一戦。やってみない? 勝者は敗者に一つお願い出来るって条件で


↓2
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/29(水) 23:16:49.08 ID:wwKmmyqPO
2
771 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/29(水) 23:17:00.23 ID:RErJBSUB0
2
772 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/29(水) 23:17:47.38 ID:HT+1O1KvO
2
773 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/29(水) 23:28:50.89 ID:ATcJSBqzo

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


天乃「九尾に記憶がもらえるか聞いてみたら?」

若葉「記憶……? あ、ああ。記憶か」

天乃「どうかした?」

若葉「いや……」

若葉(そこは犬吠埼妹のように手を引いて接吻をするのではないのか……天乃)グスッ
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/29(水) 23:29:29.34 ID:HT+1O1KvO

期待してたのかよwww
775 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/29(水) 23:37:24.20 ID:wwKmmyqPO

若葉様がすっかりムッツリキャラに…w
でも彼女も後々子作りすることになるんだよな
776 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/30(木) 00:27:06.82 ID:c8qRRdMeO
下巻読んだけど何でこのスレは展開の先を行ってんだよww
久遠陽乃という存在の介入が大きいけど大体史実通りじゃないかww
777 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/30(木) 01:39:52.58 ID:QWp7y4P6O

九尾とはちゅーできるぞ
やったね若葉さん
778 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/30(木) 22:37:06.37 ID:CgKFYoE8o

では、少しだけ
779 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/30(木) 22:41:26.24 ID:5cuO9CHaO
あいあいさ
780 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/30(木) 22:49:00.20 ID:CgKFYoE8o

天乃「そのことなんだけど……九尾に記憶の件を聞いてみない?」

若葉「記憶の件か……確か白鳥さんたちがして貰っていたな」

水都があまりにも不安そうだったため

歌野がそれを九尾に相談したのだ

そこで行われたのが、記憶の譲渡

譲渡といっても、九尾から記憶がなくなるわけではなくコピーのようなもので

歌野たちから消えた記憶そのまま復元ではないため完璧ではない

それでも、何も知らないよりは安心できること

そのはずなのだが。

若葉「実はな。私もどうか。と、九尾には尋ねられたのだ」

若葉はそう切り出すと目を伏せて、薄く笑う

それは、まるで自分自身を嘲笑しているようで

若葉「私は怖いんだ……自分が球子達と同じ世代であることは分かっているのに」

いや、だからこそだろう。と

若葉は小さく自問すると、首を横に振る
781 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/30(木) 22:52:47.22 ID:CgKFYoE8o

若葉「自分の最期を知るのが怖い」

天乃「…………」

若葉「卑怯だと思う……だが、勇者として戦った私の死は、穏やかではなさそうでな」

情けない話だよ。と若葉は笑う

やはり、それは嘲笑だった

自分自身を嘲り笑う、笑み

天乃「誰だって、自分がどう死んだのか知りたいと思わないわ」

無神経だった。と、思う

だって、平和な世界でだって

自分がどうやって死んだのかを知りたいかと聞かれれば、知りたくはないと答えるだろう

普通は自分の未来を知ることになるから当然かもしれないが

過去を知るのだって十分に恐ろしい話だ

孤独に死んだ。幸せに死んだ。事故、病気で死んだ

バーテックスに殺されて死んだ。人間に殺された可能性だってあるのだから
782 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/30(木) 22:59:41.63 ID:CgKFYoE8o


天乃「酷いことをいったわね……ごめんなさい」

若葉「いや、良いんだ」

若葉は天乃の謝罪を拒絶すると

いつかは立ち向かわないといけないことだから。と

嘲笑とは違う、安堵を抱かせるような柔らかい笑みを浮かべて

瞳はまっすぐ、天乃を捉えた

若葉「九尾と掛け合ってみるよ」

天乃「……強制はしないわ」

若葉「ああ」

そこで本当に良いのか

やめたほうが良いんじゃないか

覚悟に干渉するそんな言葉を投げてこない主に感謝をして

若葉は少し躊躇いながらも、口を開く

若葉「良ければ、天乃も一緒に知るか?」

天乃「え?」

若葉「陽乃……天乃は時々気にしているだろう?」



1、ううん。大丈夫。気遣いありがとう
2、若葉が良いのなら


↓2
783 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/30(木) 23:00:14.56 ID:lvqOzCTTO
2
784 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/30(木) 23:00:34.88 ID:5cuO9CHaO
2
785 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/30(木) 23:04:05.89 ID:PUlSGoVjO
2
786 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/30(木) 23:14:54.29 ID:CgKFYoE8o

天乃「若葉が良いのなら」

若葉「構わないさ。接吻はともかく……過去を知られても良いくらいの関係だとは思っているからな」

堅物というよりは

恋愛に関してはまだまだ初々しいだけなのだろう

若葉は自分で言いながら照れくさそうにはにかみ、

耐え切れなくなったのか、天乃に背を向ける

若葉「九尾、九尾はいるか?」

九尾「うむ……じゃが、良いのか?」

若葉「ああ」

九尾「……お主も。良いのか?」

若葉の返事を聞き、目を向けてきた九尾に

天乃は「ええ」と、笑みを浮かべずに答える

茶化す隙も無い九尾の表情

先日聞いた久遠陽乃という少女の過去

ゆえの緊張感が、あったからだ

九尾「良かろう。だが、あえてこれだけは言おう。これはあくまで妾の記憶じゃ。信じたくないものは信じなくとも良い」

九尾の右手が若葉の頭の上に置かれ、左手が天乃の頭の上に置かれる

その瞬間、眠気とも疲労とも言えない不可解な圧力に押し込まれ

天乃の意識は暗闇の中に落ちていった
787 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/30(木) 23:20:21.79 ID:CgKFYoE8o

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



九尾「……良いのか?」

若葉「ああ」

九尾「女を孕ませていてもか?」

若葉「ああ……はぁっ!?」

九尾「男に抱かれたくはないからと女を抱く女になるとは。見事じゃった」

若葉「ま、待て……何の話だそれは!?」



788 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/30(木) 23:21:56.55 ID:lvqOzCTTO

陽乃編突入?
789 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/30(木) 23:27:00.82 ID:5cuO9CHaO

ついに過去が明かされる時が来たか…
のわゆ下巻も出たことだし丁度いい頃合いかもしれんな
790 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/31(金) 00:10:24.27 ID:/iY4x0fBO
週一で休むとか言いながら約一週間休まない無能乙

陽乃編は地の文でちょろっとだけじゃないの?記憶移すだけだし
791 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/31(金) 02:02:15.03 ID:qXobHidoO

追体験みたいな感じになるのかな?
792 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/31(金) 20:44:44.31 ID:IQxC6qATO
若葉の記憶だし若葉視点で進むと見た
793 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/03/31(金) 23:34:06.36 ID:Ejpdf9TOo

遅い報告ですが今日はお休みです
もしかすると、毎週金曜が休みの可能性があります
794 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/31(金) 23:37:49.63 ID:dR0/XSkoO

了解ですー
お休みでも連絡してくれるとはありがたい
795 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/31(金) 23:38:51.82 ID:+is0kfs00

ほぼ毎日更新だったし偶にはゆっくり休んだ方がいいよ
これからも頑張って!
796 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/01(土) 01:56:50.63 ID:lYoSgLRLO

週6日更新なんてなかなかできることじゃないよ!
797 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/01(土) 22:11:01.90 ID:XZRHJytiO
はい
798 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/01(土) 22:11:57.05 ID:XZRHJytiO
ごめん誤爆
799 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/01(土) 22:54:37.86 ID:YYaBC5oWo

では、少しだけ
800 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/01(土) 22:56:20.31 ID:Q80FYV9BO
よしきた
801 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/01(土) 23:11:16.67 ID:YYaBC5oWo

ひなた「急いでください、大橋が絶対に守りきれるとは限りません」

若葉「大橋……」

自分達を先導する幼馴染である上里ひなたの言葉に、

ひなたとひなたが率いる一団の唯一の守護者である若葉は、四国へと通じる瀬戸大橋を見つめる

どこか遠くで悲鳴が聞こえる。どこかでやつらが建物を破壊する音が聞こえる

どこかで……

若葉「っ」

脳裏にこびりついた凄惨な出来事がフラッシュバック思想になるのを堪え、

若葉は激しく首を振る

今ここで自分が錯乱したら、みんな殺される

普通の人々だけでなく、ひなたも

若葉「それはダメだ……絶対に嫌だ」

友達になったばかりの、クラスメイトを失った

自分が力を得るのが後一歩早ければ……そんな自責する暇さえない生きるための逃走

それゆえに

今はたどり着くことだけを考えろ。そう、刀の柄を強く握り締めた瞬間

ひなた「止まって下さい」

ひなたが足を止め、静かに。しかし、全員に届くような声で促す
802 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/01(土) 23:37:30.65 ID:YYaBC5oWo

若葉「やつらか?」

ひなた「はい。ただ、戦ってる人が居ます。彼女の邪魔になるのは好ましくありません」

建物の残骸

その影に隠れた若葉たちは

こっそりとひなたが見つめる大橋の付近へと目を向ける

そこには大量の白い異形が群がっては爆発したように散り散りになり、

また群がって、吹き飛ぶ

数が圧倒的過ぎて何も出来ていないように見えるが、確実に個体数は減少しつつあるのが分かる

若葉「彼女……ということは一人なのか? 一人で大橋を守っているのか?」

ひなた「大橋を守る。という目的かどうかは分からないです。でも、一人で戦い、結果守られていることは確かです」

自分も一人だが、自分が守っているのは人間だ

いざという時は自分で逃げてくれる。

それに、これを言うのは酷かもしれないが、希望も期待もないが、最悪戦ってくれる

その一方で、大橋は微動だにしなければ、戦ってくれることもない

そして人間などちっぽけな存在であるかのごとく、巨大だ

それを防衛拠点として大量の敵と戦うなど、簡単なことのはずがなかった
803 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/02(日) 00:00:28.87 ID:kNUFHwNIo

若葉「…………」

チラリと自分たちの後ろに控える大人や子供を一瞥し

若葉は目の前のひなたへと視線を戻して、歯噛みする

力が圧倒的に足りない

若葉自身の力もそうだが、戦闘員という意味でも。

せめて大人が自分あるいは子供を守れるような屈強な存在であれば

若葉は今すぐにでも場を委ね、大橋付近で戦う英雄とも呼ぶべき存在へと駆け寄りたかった

しかし、それは出来ないのだ

それをすれば、この場の人々が無残に殺されることになる

ひなたの案内がある分可能性は低くはなるが

それでも、出会わないことが約束されているわけではない

あくまで【比較的遭遇しないルート】というだけでしかない

若葉「……ひなた。どうする」

ひなた「とりあえずこのまま進みます。建物の影に隠れながら。慎重に。です」
804 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/02(日) 00:24:38.96 ID:kNUFHwNIo

ひなたの指示に従い、

崩れた建物を壁にしながら、うようよと浮遊する異形の横を抜けていく

泣きそうになる者、叫びそうになる者、座り込む者

年齢性別に関係なく、誰もがそんな死に物狂いの表情を浮かべて、息を殺す

少しでも失敗をすれば、刺激してしまえば。

その瞬間から大量の化け物が襲い掛かってくる

若葉「…………」

張りつめた緊張感の中を生きるために必死に進む一般の人々を見ながら

若葉は微かな安堵を胸に抱く

このまま問題なければ全員が助かる

このまま問題なければ到着後すぐにでも引き返せば、救援が間に合うだろう

そうすれば――


――カンッ……カンッカッカカッ……


若葉「!」

若葉の後方、子供たちの列の一人から、そんな小さな音が【轟いた】ように聞こえた

「ぁ……ぁ……」

クラスメイトではない。だが、若葉達と同じ学校の女の子が

一人、青ざめた表情で目を見開き、首を横に振る。

唖然とする周囲の人々。

それを見る若葉の瞳の中で

遥か上空から、壁にしていた建物の残骸の影から、

無数の白い塊が――一直線に群がり始めた
805 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/02(日) 00:25:35.03 ID:kNUFHwNIo

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば昼過ぎから


予定では陽乃との初対面まで
806 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/02(日) 00:27:51.77 ID:1o8fAgpSO

ハードだな……
807 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/02(日) 00:33:38.79 ID:O5kit2ZwO

まあいきなり全部はキツ過ぎるから少しずつ明らかにしていく感じか
緊張感あふれる過去の記憶だな
808 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/02(日) 01:38:00.24 ID:vTFrFD+qO

陽乃さんハード
809 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/02(日) 07:48:08.77 ID:jHRHNSF/O
のわゆか…朱白さんは流石プロだからお世辞にも匹敵するとは言えないが下手ではないからな

ifを見れるってのは凄いありがたい
810 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/02(日) 18:03:25.09 ID:kNUFHwNIo

では、遅くなりましたが少しずつ
811 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/02(日) 18:13:16.74 ID:etzV4bEvO
きてたか
812 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/02(日) 18:34:24.71 ID:kNUFHwNIo

生々しく、鈍い

言葉にするならばそんな音がすぐ近くから聞こえる

それは、始まりの時に聞いた絶望の音

狂気に満ちた宴の幕開け。しかし、その一瞬は静寂

人々顔は少女が音を立てた驚愕のままに瞳だけが動き、その音の発生源を見つめる

そして数々の人を食い荒した異形の口のような器官が開いた瞬間

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

誰かの狂った叫び声が上がる

それを皮切りに大人たちが一目散に駆けだす

自分とは縁もゆかりもない子供を置いて、女性を置いて

自分だけは助かろうと、醜く、みじめに。

力を入れすぎた足、その靴底がじゃりじゃりと音を立てて破片を蹴り飛ばす

先導していたひなたさえも押しのけて……

若葉「くそっ!」

置き去りにされた女子供、老人

駆け出し、孤立していく大人達

一人分の体しか持たない若葉は逃げ出す大人に背を向けて、真っ先に降り立った異形と対峙する
813 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/02(日) 18:58:48.31 ID:kNUFHwNIo

若葉「動かないでくれっ!」

元々動けていない子供達に目がけ、荒々しく言葉を投げて駆け出す

何もしない場合は動いてくれた方が良い

だが、戦う今となっては、この瞬間だけは動かれたら困るのだ

異形をも屠る神の力が宿った居合術

だとすれば、一般の人間の体など容易く壊してしまうから。

座り込み震える子供や女性、老人

その合間を全速力で突破し、異形の目の前で突き出した右足に全重心を負荷する

呼吸さえも止め、左半身は刀の下緒を掴むのみにとどめ、

柄を握る右手、踏み込む右足に力を込める

若葉「………っ」

ゆっくりと、右足の踵が浮いていく

つま先に力が集中していく

その瞬間、左手の親指で鍔を押し出し、刹那の間もなく右手で刀を引き抜き――

若葉「消えろッ!」

――一閃

光速とも呼べる一撃は光なき輝きをもって異形を両断、消滅させる

しかしそれでも、安息のため息は零れず頬を冷汗が伝う

若葉「立て! 動け!」

急かすべきではない。そう分かっていても、若葉の言葉はきつく、身動きの出来なくなった人々を脅迫する
814 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/02(日) 19:11:08.71 ID:kNUFHwNIo

ひなた「若葉ちゃん!」

若葉「!」

動くことのできない子供たちへと向いていた目が、叫ぶように呼ぶひなたへと移る

恐怖と、焦り、ただならない緊張感に満ちた表情のひなたは

言葉の続きなく、逃げていく大人たちへと向かう

それを目で追った若葉は思わず歯ぎしりする

若葉「くっ……」

幸か不幸か。など絶対に言っていけない

だが、残された子供たちからしてみれば幸運なことに

そして、弱きを見捨てた大人たちは不幸なことに

けがらわしい白き異形達は、一目散に逃げだした大人たちを標的にしていた

若葉「……ここは安全か?」

踏み出しかけた足。

けれど、それは一歩しか進むことが出来ず、ひなたへと問う

ひなた「若葉ちゃんがいれば」

若葉「……どれだけ持つ」

ひなた「良くて一分でしょう」

若葉「くそ……っ!」

今ここで動かなければ、ここまで助けてきた大人たちが食い殺される

だが、ここで動けば弱者が食われるだろう

それは、幼馴染であるひなたも免れることのできない絶対的な死

それゆえに、刀を強く握りしめる若葉は、口汚く、言葉を吐き捨てた
815 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/02(日) 19:22:42.84 ID:kNUFHwNIo

ひなた「……若葉ちゃん」

若葉「分かっている……解っている……だがッ!」

ひなた達は【今は】安全だ

だからこそ、人を救いたい、守りたい

そう思うのであれば、今すぐにでも思考を破棄して駆け出すべきなのだ

しかし。その安全は保証されない

むしろ、

駆け出し、大人を救う

そのあとに見える後ろの光景には、誰も居なくなっている事が約束されている

それどころか、助けに行っているその合間にも悲鳴が轟く可能性がある

若葉「だが……私はひなたを。置いていけない……っ」

「助けてくれー!!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

若葉「くっ……ぅ……」

絶叫、救いを求める声に、若葉は耳をふさがない

逃げながら、恐怖に駆られた絶望の表情、救いを願う瞳から、若葉は目を背けない

自分の意思で見捨てると言う決断をしなければいけない重責が、噛み締めた唇から血を流させ、力を籠めすぎた手は震え、充血する

そして化け物達は逃げ惑う大人たちを喰らう寸前――風船のように炸裂して消し飛ぶ
816 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/02(日) 19:46:33.81 ID:kNUFHwNIo

若葉「まだ――」

まだ化け物が残っている

そう叫ぼうとした瞬間、ほんの一瞬、光が空中を駆けた。青白く細長い光だ

それはどこからともなく飛来し、異形を撃ち貫いて破壊する

そして、恐怖に立ちすくむ大人達のすぐそばに、黒と白の異様な服装の少女が舞い降りた

「呆けてないで合流して! 次は助けないわよ!」

その少女はまるで知っていたかのように若葉達に目を向けると

怒気の籠った声を上げ、片手間のように握った弓で敵を撃ち滅ぼす

ひなた「若葉ちゃん!」

若葉「わ、分かった! 全員ついてきてくれ! 誰も置いていくな!」

恐怖にすくみ動けない子達をそれぞれ補佐しながら、

見知らぬ少女のすぐそばで腰を抜かし、頭を守るように抱え込む大人たちと合流する

「あっあっ……あぁぁ……」

精神の崩壊が、見るまでもなく明らかだった

食い殺される寸前までいったのだ。希望―若葉―に見捨てられたのだ

その必然ともいえる状況を前に、現れた少女はため息をつくと

頭を抱える男性の胸倉を掴み上げ、無理矢理に立たせた
817 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/02(日) 20:00:42.07 ID:kNUFHwNIo

「死にたい? 生きたい?」

「うっ、ぁ……」

男性は言葉にならない声を漏らし、涙を零すばかりで

若葉「な、なにを!!」

明らかに異常な力を持っているのは同じく神から人を救うべく力を与えられたからのはずだ

しかし、明らかに苛立った表情を見せた少女は

若葉の目の前で迫りくる異形の傍に、大人の体を放ると

怒鳴り駆け出そうとした若葉の喉元にいつの間にか手にした刀を宛がう

「あれが貴女達の生きるための時間の一部になるわ。生きたいなら行きなさい。私はもう、助ける気はないわよ」

若葉「ふざけるな! 助けられるなら助けるべきだ!」

「すでに【見捨てたもの】を気遣う偽善はやめて。殺したくなる」

男性と男性に迫る異形、それに向いていた橙色の瞳が自分へと向けられた瞬間

若葉「!」

若葉は足が無くなったかのような感覚を覚え、気づけば膝をついていた

それほど、少女の瞳に宿った殺意は大きく。

若葉「な、なぜ……なぜだ。なぜ……助けるための力だろう!」

恐怖、絶望そんな言葉にとどまらない冷え切った冷酷な瞳

それを持つ少女は、場に相応しくない。しかし、ある意味では相応しい笑い声を溢す

「馬鹿言わないで。これは復讐するための力よ。少なくとも私は、誰かを守る気なんてさらさらないわ」
818 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/02(日) 20:14:12.90 ID:kNUFHwNIo

「話せば話すほど、彼を食べてる時間が無駄になるわよ」

若葉「くっ……」

喉元に宛がわれた刀身、その刃が僅かに若葉の喉を傷つけ

赤い血が流れ出していく

歯向かえば殺される。助けにこうとすれば殺される

ここまできたすべてが無駄になる。何も守れなくなる

若葉「……ふざけ、ふざけるな……」

強く、強く刀を握りしめ、生きたいと力強く思う人々へと振り返る

置き去りにされた子供、、女性、老人、そして上里ひなた

生きたいと願い、しかし若葉が居なければ生き延びることのできない人々

ここで若葉がするべきなのは動けない大人、生きたいと言えない大人を無理に救うことではない

生きたい。そう願う人々を無事に連れ帰ることだ――

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

投げ捨てられた男性の絶叫

救いを求める視線が若葉達にむけられ、空を掴む手が伸びる

必死に立とうと、逃げようと、もがき

けれども恐怖に掴まれ動けない男性に異形はさらに迫り、口を開く

「助けて――」

男性の口が、小さく――願う
819 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/02(日) 20:37:26.52 ID:kNUFHwNIo

その瞬間、風が吹く――否、巻き起こされ

そして目の前で男性に襲い掛かろうとしていた化け物が両断され、消滅していく

何が起こったのか誰も分からない

その呆然とした静寂の中で、食い殺されかけた男性の体が強引に持ち上げられ、投げ出される

地に足の着いた男性はフラフラとして

けれども、確実に足を動かして迫りくる化け物共との距離を開いていく

「次の餌は?」

そして、少女の冷徹な言葉、冷酷な瞳が向けられると

座り込んでいた大人たちも怯えたように立ち上がって、首を振る

「生きたいなら行かせてあげる」

若葉「な……」

死に物狂いで逃げようとする男性が若葉達と合流するのを見届けた少女は

若葉達に背を向け、飛来する化け物へと向き直る

「化け物とは戦えなくて良いから。動けない弱さと、竦む恐怖と。生きたいと願うのなら。その意志を持って――戦いなさい」

ひなた「若葉ちゃん!」

若葉「っ」

ひなたの声に気を持ち直した若葉は慌てて立ち上がり、ひなたを見て、少女へと目を向けて

若葉「一緒に――」

「行かないわ。私はアレを殺したいし、誰かの護衛なんて謹んで辞退する」

少女はそう言い残して、異形の群れの中に消えて

若葉が力を込めた握りこぶしを解き、大橋へと刀を向ける

若葉「急ぐぞ!」

若葉の言葉に全員が応え、確かな統率を維持して大橋へと確実に歩を進める

若葉「殿を務めるようなことをしておきながらなにが辞退だ……生きててくれ。必ず戻る!!」

集団から一足出遅れた若葉は後ろで戦う少女に声を投げかけ、人々と合流し、引き連れて大橋とその先の四国へと向かった
820 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/02(日) 20:51:20.02 ID:kNUFHwNIo

――――――――

――――

――


若葉「っ……」

天乃「…………」

意識が急激に覚醒していく中、

合わせて感じる不快な汗を拭うこともなく、二人は大きく息をつく

ただ記憶を与えられた

言うなれば、夢を見させられたようなものなのに

追体験したかのような恐怖、絶望、緊張感が体にまとわりついていた

九尾「記憶を植え付けるこれはお主たちが今感じたように、記憶の中の感覚を現実に引き出させることもある」

天乃「……これ、あとどれくらい続くの?」

九尾「まだまだ長いぞ。あとは一気に流し込む。案ずるな。死ぬと判断した場合は中断する」

若葉「さっきのが、陽乃。という少女なのか?」

手の甲で汗をぬぐった若葉は、ごくりと息を飲んで九尾へと目を向ける

その戸惑いの瞳に、九尾は頷く

九尾「いかにも。最初期の久遠陽乃。じゃな、しばらくすれば名も思い出せるじゃろう……いや、聞く。というべきか、とにかくゆくぞ」

九尾の手の圧迫感に、天乃はベッドに横になり、若葉も並んで横になる

そしてまた、記憶が流し込まれ――闇の中へ落ちていく
821 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/02(日) 20:57:20.23 ID:kNUFHwNIo
1日のまとめ

・   乃木園子:交流無()
・   犬吠埼風:交流有(友奈も口説いた)
・   犬吠埼樹:交流無()
・   結城友奈:交流無()
・   東郷美森:交流無()
・   三好夏凜:交流有(キス)
・   乃木若葉:交流有(記憶復元、記憶共有)
・   土居球子:交流無()
・   白鳥歌野:交流無()
・   藤森水都:交流無()
・ 伊集院沙織:交流有(抱っこ、仕方がない、キス)
・      九尾:交流有(若葉の過去)
・       死神:交流無()
・      神樹:交流無()



7月7日目 終了時点

  乃木園子との絆 54(高い)
  犬吠埼風との絆 58(高い)
  犬吠埼樹との絆 50(高い)
  結城友奈との絆 64(とても高い)
  東郷美森との絆 51(高い)
  三好夏凜との絆 79(とても高い)
  乃木若葉との絆 42(中々良い)
  土居球子との絆 28(中々良い)
  白鳥歌野との絆 22(中々良い)
  藤森水都との絆 13(普通)
     沙織との絆 63(とても高い)
     九尾との絆 47(少し高い)
      死神との絆 38(中々良い)
      神樹との絆 9(低い)

汚染度???%
822 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/02(日) 20:57:57.70 ID:kNUFHwNIo

では、少し中断します
22時までには、再開予定です
823 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/02(日) 21:00:15.68 ID:YXVQKQTKO
一旦乙
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/02(日) 21:05:16.39 ID:etzV4bEvO
一旦乙
陽乃さんの立ち位置が若葉のライバル関係のように見えた
825 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/02(日) 21:05:17.56 ID:1+O3IfiAO
陽乃さんの人格ぶっ壊れてるって思ったけど
なんとなく強ツン弱デレにも見える
826 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/02(日) 21:31:54.38 ID:7fdWmWl9O
たんおつ
827 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/02(日) 21:59:09.23 ID:kNUFHwNIo

では、再開
828 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/02(日) 22:00:23.82 ID:kNUFHwNIo

√ 7月8日目 朝(自宅) ※月曜日

01〜10 
11〜20 若葉
21〜30 
31〜40 
41〜50 陽乃
51〜60 
61〜70 
71〜80 九尾
81〜90 
91〜00 若葉

↓1のコンマ  

ぞろ目、特殊
829 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/02(日) 22:01:32.21 ID:dPo/NxmyO
830 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/02(日) 22:24:45.61 ID:kNUFHwNIo

√ 7月8日目 朝(自宅) ※月曜日


天乃「……ふぅ」

一息ついた天乃は、精霊でありながら姿を消すことを忘れ

人のように眠る若葉に目を向け、眠っていた間も負荷のかかっていた頭に手を宛がう

不思議と痛みはなく、気だるさも感じない

それどころか、何の問題もなく爽快感さえある

しかし……確かに記憶は刻み付けられていた

天乃「陽乃さん……」

陽乃がどういう人物なのか

若葉の視点という限定的なものではあったが、多少は分かった

久遠陽乃という人物は一言で言えば、人格破綻者だ

人を容易く切り捨てる冷酷さを持ちながら

人を見捨てきれない優しさ―弱さ―を持ち合わせてしまっている

いや、その部分を捨てきれなかったと言うべきかもしれないが。

それゆえに、自分で自分をひどく傷つけて追い込んで

なのに、誰からも賞賛されることなく、恨まれ、憎まれ、蔑まれ、迫害され、否定され、拒絶されて

それでもなお、自分の在り方を変えることが出来ず、ある意味では真っ直ぐに生きていた

天乃「……馬鹿な人」

誰にも愛されなかった。勇者の仲間内ですら心を許しきれず

最後の最後、自分が死ぬその瞬間まで、一番の仲であろう若葉にですら心を開かなかったのだ

馬鹿だ。愚かだ。そういう他、なかった
831 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/02(日) 22:58:28.51 ID:kNUFHwNIo

若葉「ん……」

天乃「若葉」

すぐ横で寄り添う若葉の頭を優しく撫でて

天乃は嫌な考えを振り払う

解らなければよかった

知らなければよかった

そんな最低な考えを持ってしまいそうだったから

天乃「若葉、起きて」

若葉「ん……ひ……なた……?」

天乃「ごめんなさい、違うわ」

寝ぼけ眼の若葉に優しく答えて

握られた手を握り返すと、若葉は「すまない」と呟いて

そのまま姿を消す

きっと、無意識に呼んでしまったのだろう

きっと、それが申し訳なかったのだろう

温かさの失われていく手を一度握りしめた天乃は気配を感じて、扉を見る

夏凜「おはよ……無事そうね。今日から学校よ」

天乃「ああ……そう。だっけ」
832 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/02(日) 23:21:41.11 ID:kNUFHwNIo

夏凜「なんかあんまり元気なさそうに見えるけど?」

天乃「ううん。大丈夫よ」

夏凜「……そ」

天乃の大丈夫。という言葉に少し間を置き

夏凜は小さく呟いて無かったことのように笑みを浮かべる

夏凜「まぁいいわ。着替え……の前にまずお風呂入りたいなら入れるけど?」

天乃「夏凜も一緒に入る?」

夏凜「あんた一人で平気でしょ」

冗談だと分かっている夏凜は手慣れたもので

笑いながらそう答えて「さっさとしなさいよ」と

天乃を車椅子に乗せて、下着と制服だけは準備して風呂場へと連れていく

夏凜「大丈夫だろうけど、必要なら呼ベば行くから」

天乃「じゃぁ、一緒に入る?」

夏凜「…………」

天乃「付き合ってるんだから平気でしょ?」

にっこりと満面の笑みを浮かべるその姿に

夏凜はしばらく黙り込んで――ため息一つ

夏凜「分かったわよ」

そして、二人でお風呂に入ることにした
833 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/02(日) 23:23:48.41 ID:kNUFHwNIo

√ 7月8日目 朝(学校) ※月曜日

1、風
2、東郷
3、友奈
4、夏凜
5、沙織
6、樹
7、クラスメイト
8、イベント判定

↓2
834 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/02(日) 23:24:21.79 ID:N0l1e+kCO
8
835 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/02(日) 23:26:24.42 ID:dPo/NxmyO
8
836 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/02(日) 23:28:07.00 ID:kNUFHwNIo


01〜10 先生
11〜20 クラスメイト
21〜30 女子生徒
31〜40 友奈
41〜50 若葉
51〜60 先生
61〜70 沙織
71〜80 風
81〜90 友奈
91〜00 夏凜

↓1のコンマ  
837 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/02(日) 23:28:46.48 ID:N0l1e+kCO
838 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/02(日) 23:42:26.61 ID:kNUFHwNIo

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



若葉「天乃。少し良いか?」

天乃「え? な、若葉……」

沙織「!」

「さおりんが驚きあまのんが戸惑ってる……これはさおりん現地妻疑惑発覚の修羅場!」

「いや、実際あの子知らないんだけど、この学校に居たっけ?」
839 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/02(日) 23:44:25.93 ID:JySM5HlTO

学校まで来たのか
840 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/02(日) 23:49:02.97 ID:dPo/NxmyO

そういやちょっと前の久遠さんも心を閉ざしてたな
あと一歩でも間違えてたら久遠さんも陽乃さんの二の舞になってたのかも…
841 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/03(月) 00:20:08.60 ID:uyqFc3fAO

陽乃さんはハード過ぎて貫いちゃった感じか…それでも優しいってのはやっぱ人格破綻してるってことなんだろうな
842 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/03(月) 20:03:48.38 ID:rIh6AVNgO
園子ずっと放置なのが気になる…
843 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/03(月) 23:12:20.13 ID:A51VIPvdo

では、少しだけ
844 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/03(月) 23:13:31.18 ID:d/anPoywO
いえす
845 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/03(月) 23:21:15.66 ID:A51VIPvdo

7月8日目 (学校) ※月曜日


「われらが皇女の帰還だぁぁぁぁぁぁ!!」

天乃「ひゃっ」

教室のドアを開けた瞬間、

女子とは思えない雄たけびにも似た声が教室を抜け、学校中に響き渡ると

クラスのみんなが後を追うように消しゴムだの紙だのを空へと投げ出す

「ずっと待ってたよーあまのん!」

つい先日とまったく同じように、

眼鏡をかけた女子生徒が飛びつくように抱きつく

そんな姿に呆れながら、クラスメイトの男子も女子も

誰もが笑みを浮かべて、お帰り。と、口にする

みんなが、嬉しそうだった。みんなが、喜んでいた

たった一人の女子生徒の復帰、ただそれだけなのに

天乃「大げさなんだから……」

もっとも教師のみならず、大赦に対してすら反抗したクラスだ

この場に居るみんな、この場にはこれない他クラス他学年の生徒の一部

みんなにとっては、まったく大げさなことではないのだろうと、天乃は苦笑する
846 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/03(月) 23:26:23.57 ID:A51VIPvdo

天乃「それで? 皇女ってなんなのよ」

「それらしい言葉が見つからなかったんだよ」

天乃「だからって皇女なんていわれると反応に困るわよ。独立国家でもあるまいし」

「独立国家……建国しちゃう?」

天乃「しません」

面白いことを思いついた子供じみた満面の笑みを浮かべるクラスメイトに対して

天乃はキッパリと言い切って、息をつく

流石に独立国家とかいう途方も無いことをするとは思えないけれども。

勢いだけでそう言い出さないとは言い切れない。

その点、天乃がしっかり拒否しておけばやることは無いはずだ

……恐らく。だが。

「で、あんたはいつまでそうしてるつもりなの?」

「えへへ〜HRが始まるまで」

「久遠さんに迷惑だから離れなさい」

保護者のような口調で眼鏡の子の襟首を掴んだ女子生徒だが、

当然、眼鏡の子が譲るわけも無く、しがみつかれた天乃は胸元を圧迫するクラスメイトの密着感に

怒ることも出来ず、困ったように顔をしかめると

首根っこを掴むセミロングのクラスメイトは、深くため息をつく

一度こうなるとなかなか、離れてくれないのだ
847 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/03(月) 23:39:32.66 ID:A51VIPvdo

天乃「それにしても……」

悦びを隠しきれないクラスメイトを見渡しながら

床に舞い降りていく紙の一枚、そこに書かれている文字を素早く読み取る

流石の天乃にも全文を見るなんて芸当は出来なかったけれど

それが【反省文】だということだけは、分かった

天乃「今書かされてるの? 反省文」

「当て付けというかなんというか、連絡網が回ってきて、私達は教室の前に職員室行かなくちゃいけなくて。その時に」

出来ればこういうのは見せたくなかったんだけどね。と

女子生徒が呟くと、周りのクラスメイトもやや不満そうに眼を逸らして

投げ出した紙や消しゴムを拾って、机の上に置く

出さないと言う反抗も可能だが、天乃が戻ってきた以上

余計なことをしようと言う気は、起きなさそうだった

「久遠に見せようって魂胆が見え見えだったもんな」

「担任の先生はあんまり乗り気じゃなかった。と、思うけどね。どちらかというと生活指導の先生が教育のやり直しだーみたいな感じだったよ」

「俺たちがあんなことしたんだ。大赦から指導が出来てないって言われたのかもしれないな……でも、だからって」

不満を口に出す男子生徒に、

すぐ隣の席の女子生徒が「言っても仕方がないよ」と、口を挟む

それでも、分かってるけどさ……と、男子生徒は不満げに呟き、口を閉ざした
848 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/04(火) 00:24:49.97 ID:AGspG3geo

そんな気まずいとも思える空気が流れかけたときだった

開いたままのドアがこんこんっと叩かれて、全員の目が集中する

若葉「取り込み中に済まない。天乃を貸していただけないだろうか」

「……え、誰?」

天乃に抱き着いていたクラスメイトの不思議そうな声に、

他のクラスメイトもみんながざわざわとし始めて

その言葉のどれもこれもが、あの子を知ってる? 誰? 同じ学年じゃないよね? 転校生? というような

当然ながら、若葉に関する疑問だった

天乃「貴女、どうして」

若葉「すまない。だが、どうしても……来たかった」

若葉はどこから調達したのか

讃州中学の制服を身に付けており

傍から見れば、それはこの学校の生徒に他ならない

その表情は寂し気で

沙織「行ってきて良いよ。先生にはあたしが何とか言っておくから」

「正妻の余裕?」

沙織「あははっ、そんなんじゃないよ」

クラスメイトに笑みを向け、急かす沙織によろしくと告げて、

天乃は若葉と一緒に教室を後にした
849 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/04(火) 00:27:27.24 ID:AGspG3geo

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


「皇女殿下ー神様ー」

天乃「や、止めてよ……恥ずかしいからっ!」

「あまのんが苺マシュマロみたいになってる」

「その雪見大福、私にも触らせて」

天乃「どこ触ってるのよっ!」
850 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/04(火) 00:28:30.81 ID:ZFPOy1l+O

よっしゃ四国を久遠さん王国にしよう
851 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/04(火) 01:08:10.76 ID:JEEeC2yxO

棒があれば20人以上子孫残せそうなんだよなあ
852 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/04(火) 07:08:58.55 ID:o5Xb1S7cO

どういう訳か今作は特に棒に恵まれない久遠さん
853 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/04(火) 10:02:06.10 ID:c7NiA2KBo
苺マシュマロと雪見大福とかいう完璧な例え
久遠さんまじかわ

久遠さんは入れる方じゃなく入れられる方だからなぁ…そんなに残せない(残させられないとは言ってない)
854 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/04(火) 14:01:36.04 ID:3eJMx5fbO
残させられたら強い女の子達までブチキレるから国家崩壊不可避だな
855 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/04(火) 21:49:50.41 ID:SgApTogUO
薄い本が厚くなるな
856 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/04(火) 22:10:55.03 ID:AGspG3geo

では、少しだけ
857 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/04(火) 22:12:10.34 ID:8/V3c3aSO
おk
858 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/04(火) 22:14:46.19 ID:AGspG3geo

若葉「学校生活に干渉するつもりは無かったのだが……すまない。急ぎの件があってな」

若葉は天乃の車椅子を押し、勇者部の部室へと連れ込む

朝のHRの時間なら、この付近に人は居ない

別に盗み聞きされても、一般の人にはなにも出来ないし分からないため

そこまで気にする必要は無いのだが。

邪魔されないためには、必要な移動だった

天乃「それで?」

若葉「ああ……自分とひなた。出来れば陽乃たちの墓参りに行きたいと思ってな。天乃の護衛だから離れるべきではないと分かっているが」

それでも、どうしても一度は行っておきたい。と

若葉は寂しそうな声を絞り出す

死は唐突ではなかった。殺されたわけでもなく

ただ、平穏とはいえない世の中で穏やかに流されていった死だった

だが、なしたいことがなせないまま、その思いを遂げられないままの死だった

そして、

未来に託すとしたそれが今、再び自分の元へと巡ってきた

だからこそ、若葉は旧友に会いたいのだ

今一度、その心を持って戦うと宣誓する為に。
859 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/04(火) 22:21:03.09 ID:AGspG3geo

天乃「球子とは話したの?」

若葉「ああ……先に行ってごめんな。と、そう言われたよ」

哀愁漂う薄い笑みを浮かべた若葉はそんな必要は無いんだがな。と、首を振る

若葉の記憶の中の過去では、

陽乃が戦闘不能に陥ってしまうという大幅な戦力低下もあったが

そのすぐ後、伊予島杏と土居球子が同時に失われるという悲劇が、崩壊の始まりだった

球子はその謝罪のつもりだったのかもしれないけれど、若葉は恨みも憎みもしない。

勇者として戦っていた頃、穢れに満たされていくだけだったあの頃のままなら

球子に対してなにかあったかもしれないが、今はもう無い

若葉「球子も杏のところに行きたいと言っていてな」

天乃「出来れば連れて行きたいって? お墓の場所はわかってるの?」

若葉「正式な墓は乃木家などの大赦が管理しているが、そこには一人足りないからな」
860 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/04(火) 22:26:28.11 ID:AGspG3geo





足りないのは郡千景という勇者。

人間という存在に翻弄され、歪められて

傷ついて、傷ついて、傷つき続けた少女は

人々に対して反旗を翻し、勇者だった若葉とさえ争い、力を奪われた

その結果、若葉たちと同様に供養されることは無く、

大赦が管理してる正式な場所には、無いのだ

本当はそこに並べてあげたかった

いや、並びたかった

しかし、反旗を翻してしまった千景を同様に扱うことは許されなかった

ひなたも、心苦しそうに目を閉じた。郡千景という名は、【消滅】させた

若葉「私達が個人的に作った……今はもう無いだろうが、墓場がある。そこに行くつもりだ」

天乃「……そう」

本来なら天乃も行きたいところなのだが、

下手に付いていけば大赦にその存在が見つかってしまうことになる

そうなれば、消されてしまう可能性だって出てきてしまう



1、良いわよ
2、良いけど……ごめんなさい。若葉だけで行ってもらえる?
3、ダメよ。私も行きたいわ


↓2
861 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/04(火) 22:27:56.82 ID:8/V3c3aSO
3
862 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/04(火) 22:28:31.77 ID:DwPKwvQeO
3
863 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/04(火) 23:04:36.61 ID:AGspG3geo

これは我儘

しかし、若葉だって言われることは分かっていたはずだ

そのうえで、わざわざHR前の教室に来てまで

墓参りに行くと、言いに来たのだ

天乃「駄目よ。若葉」

若葉「…………」

天乃「私も行きたいわ」

若葉の垂れ下がった手を掴み、求める

若葉の瞳に驚きはなく、来ると思っていたことが来た

そんな、複雑でありながら単純な表情を見せて、小さく笑みを浮かべる

若葉「大赦になんて言えば良い。先代の墓参りなどと言ったら、千景には会えないぞ」

天乃「瞳なら問題なく連れて行ってくれる」

若葉「その後が少々問題だ。さっき言ったようにもう残っていないだろうが、個人的に残していたことがばれれば。面倒な連中が動く」

面倒な連中。と言っても

どこかの秘密組織などではなく、大赦だ

未来のためにと隠すべきだったこと、消すべきだったこと

それを仲間である大赦にすら極秘裏に郡千景という反逆者のことを

勇者として、友として、弔ったのだから。

きっと、その点を利用して乃木家の上に立とうとする人間が出てくるだろう

人は力を持つがゆえに、際限なく。力を求めてしまうものだから
864 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/04(火) 23:31:56.03 ID:AGspG3geo

若葉「昔は……そう。昔はただ一つの目的があった。一つの意思に集う者達だったんだ」

天乃「……でしょうね」

バーテックスの強大さを身と心にしみこませた人々

それを守るためにと、新たな形へと切り替わった大社という組織

その当初は何も問題はなかった

しかし、バーテックスを欺くための隠蔽が自分たちの目をも覆ってしまった。と、言うべきかもしれない

大赦は次第に歪み始めた

それが正されることなく今に至ってしまったからこその

戦いの始まりだと断言はできない

しかし、その可能性を否定することもまた。出来ない

若葉「悔しいな……強く皆で決意したはずのものが、時というものに身包み剥がされ。見る影もないとは」

天乃「それを貴女が。そして私達が――受け継ぐのでしょう?」

握っていた手をより強く握り、少しだけ引いて若葉の暗く陰った瞳に自分を映らせる

天乃「それをみんなに教えてあげる為にも、行かないといけないわ」

若葉「……………」

天乃「貴女も、私も」

若葉「……狡い。な」

若葉は天乃から眼を逸らして呟くと、「分かった」と、頷く

若葉「行こう。彼らが阻むと言うのならば押し通るまでだ……そして必要ならば正す。未来のために」
865 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/04(火) 23:34:14.66 ID:AGspG3geo


√ 7月8日目 昼() ※月曜日

01〜10 
11〜20 九尾
21〜30 
31〜40 死神
41〜50 球子
51〜60 
61〜70 陽乃
71〜80 
81〜90 
91〜00 若葉

↓1のコンマ  

ぞろ目、特殊
866 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/04(火) 23:34:40.49 ID:8/V3c3aSO
867 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/04(火) 23:34:43.16 ID:DwPKwvQeO
868 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/04(火) 23:37:13.10 ID:AGspG3geo

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
869 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/04(火) 23:38:02.02 ID:DwPKwvQeO

学校はおサボりだな
870 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/04(火) 23:44:46.24 ID:8/V3c3aSO

千景の魂を救うためのもうひとつの戦いが始まる感じがするな
久遠さんと大赦はやはり対立するのは定めなのだろうか
871 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/05(水) 00:14:40.28 ID:+7+WhXtrO

隠蔽体質が自分達の目も覆ったってのはあり得るかもな
そして久遠さんがカッコいいいと再認識出来る回だな
872 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/05(水) 12:44:46.56 ID:beOdlmJkO
信じられるか?
これだけ凛々しくカッコいいのにさおりんとのHでおもらししちゃった子なんだぜ…?

ほんと久遠さんってギャップの破壊力すごいな
873 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/05(水) 17:51:04.50 ID:vYgcghOlo
久遠さんはベッドの上では乙女だって沙織言ってたしな(>>655)
オネショタ捗るギャップだよねまじかわ
874 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/05(水) 20:31:55.35 ID:7za8ybyPO
樹のときもしてたような気がするし
下はゆるいぞ久遠さん
875 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/05(水) 22:17:45.96 ID:zBlle6Veo

では、少しだけ
876 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/05(水) 22:23:38.89 ID:BM2h041OO
ばっちこい
877 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/05(水) 22:33:55.82 ID:zBlle6Veo

 7月8日目 () 昼 ※月曜日


待ち人が来たことを喜ぶように、木々がさざめき立ち

風は招き入れるように、追い風を吹かせる

夏場の青臭さと、潮のにおいと土臭さ

自然を詰め込んだその空気に天乃がふと、自分を織り込むと

車椅子ががくんっと揺れて、後ろから「着きましたけど」と、声が通り過ぎる

瞳「良いんですか? 学校は」

天乃「沙織が手回ししてくれてるから平気よ」

瞳「だと良いですが……サボってまで丸亀城に来るのは大赦も良い顔しませんよ」

主に、反旗を翻した人達にまたお役目か。と捉えられる可能性があるからだ

もちろん、沙織がクラスには居るのだから

お役目では無いことは説明してくれるだろうし、それで問題はなくなるはずだけども。

天乃「元々してる記憶が無いのだけど、記憶喪失かしら」

瞳「私も一応は大赦の人間なんですけどね」

いつもの変わらないやり取り

それも懐かしく思いながら、復帰したばかりの天乃の車椅子

そのグリップを少し強く握り、感触を確かめてブレーキをかける
878 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/05(水) 22:42:52.96 ID:zBlle6Veo

瞳「それでは、若葉様、球子様。よろしくお願いいたします」

球子「その様付けはなんかなぁ……」

低く見られることを好ましく思わない球子だが

流石に、【様】という敬称はいささか気に入らないようで

球子「球子さん。またはタマっちさんと呼ぶように!」

ビシッと指差された瞳は

やや困ったように笑みを浮かべて、「分かりました。タマっちさん」と、答える

球子「よしっ、若葉が案内してくれ。天乃はタマが連れて行くから」

若葉「分かった。こっちだ」

一礼し、手を振る瞳を車の横に置き3人だけで丸亀城の敷地を進む

球子「懐かしいなぁ……あの宿舎は面影も何も無いけど」

若葉「戦いを終えた後、すぐに取り壊されたんだ。勇者は反抗の象徴。その宿舎の存在が目につけられる可能性もある。となってな」

本当は遺しておきたかったが、一人の人間の存在を抹消するよりはずっと容易く若葉達は諦めた

そうしなければ目をつけられる。なんていうのはもはやクレーマーに怯えるようなもの

しかし、そこまでしなければ未来が潰えると言われれば、嫌でも行うしかない

落ち込むように顔を伏せた若葉に、球子は「気にすんな」と言葉をぶつけて

球子「宿舎は残って無くても、この世界は残ったんだからな」

若葉「ああ……そうだな」
879 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/05(水) 22:49:42.00 ID:zBlle6Veo

春ならば桜が咲き誇っているであろう青々とした木の植えられた道を進むと

若葉が「ふむ」と、残念そうに声を漏らす

若葉「やはり、見当たらないな」

天乃「大赦に撤去されちゃったのかもしれないわね」

若葉の記憶の中の世界では、

ここからでも見える小さな祠のようなものがひっそりと設置してあったのだ

人気が少なく、立ち入り禁止も近いこの場所ならば。という考えでの設置だったが

一般の人相手はともかく大赦相手には考えが甘かったらしい

若葉「なら、せめてアレくらいは……」

丸亀城の城壁横で若葉は少し待ってくれ。と、城壁の端から一歩一歩正確に歩き

横の木を見て、後ろの木を見て少し困ったように息をついて半歩下がる

若葉「恐らく、ここだな」

若葉は足を止めると土を軽く蹴って固さを確かめ、どこからともなく取り出したスコップで掘り出す

球子「あの若葉が土いじりするとは……」

天乃「平和な世界だったらやってたのかもしれないわよ?」

球子「泥団子作ってひなたとおままごととか?」

天乃「ありえるかも」

若葉「ありえるか!」

わざとらしく大声で話し、求めたとおりの怒鳴り声が聞こえると

天乃は嬉しそうに笑って「そういうことにしときましょ」と、苦笑する
880 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/05(水) 22:59:54.18 ID:zBlle6Veo

球子「なぁ、天乃」

天乃「うん?」

談笑から一転、変わった空気

けれども天乃は調子を崩すことなく、弾むような返事を返す

球子の表情が暗くなって、話題が重くなっても

それを支えるだけの余裕はあるのだと、示すように

それはある意味で空気が読めていないものだが

しかし、その計算された空気の読めなさは

少なくとも、今の球子にとっては、救いだった

球子「陽乃は、笑って逝けたのか? 嘘じゃなくて、偽者じゃなくて。なんていったら良いか分からないけど。そう言うのじゃなく」

ちゃんと、笑って死ねたのか

そう問いかけてくる球子に、天乃は小さく息をついて、首を縦に振る

天乃「陽乃さんは最期、心のそこから笑みを浮かべていたわ」

それに続いた言葉は「私って馬鹿ね」という嘲笑に続くようなものだったけれど

しかし、そのとき陽乃は笑顔だった

生まれてからまだ一年、二年の我が子を腕に

若葉へと向けたそれは間違いなく……

球子「……そうか。そっか、杏が願ってたこと、最期の最期で叶ったんだな」

天乃「伊予島さん?」

球子の口からこぼれた名前に、天乃が疑問符を浮かべると

球子は「そうだ」と、答えて、にやりと笑い、自分を指差す

球子「タマの大事な後輩だ!」

守れなかった後悔が、ちくりと胸を指す。机上に振舞った笑顔が、言葉が

目に見えない壁にぶつかって、自分へと跳ね返ってくる

球子「大事な……」

その大事な人を自分は守れなかったという、後悔として。
881 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/05(水) 23:03:40.33 ID:zBlle6Veo

若葉は気にしないでくれと言った

けれどあの時、杏だけでも守れていればという後悔はせずには居られない

何かに影響があったからというものではなく

それは単純に、自分が守りたかったものを守れなかったから

力が有りながら、守るといいながら、守って上げられなかったこと

その後悔は、若葉が許すことの出来るものではなくて

球子「っ……」

ざくざくと砂遊び―穴掘り―する若葉の後ろで

明るい空とは裏腹に二人を包む空気は重いものになっていく

天乃「…………」


1、手を握る
2、手を引く
3、その気持ち、私も分かるわ
4、それは貴女だけが抱えることではないわ


↓2
882 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/05(水) 23:04:00.68 ID:fhrfEAoAO
3
883 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/05(水) 23:04:43.93 ID:BM2h041OO
4
884 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/05(水) 23:18:31.37 ID:zBlle6Veo

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


責任を負い続けてきた天乃と
責任を追い続ける球子
885 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/05(水) 23:18:58.24 ID:fhrfEAoAO

タマ回か
886 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/05(水) 23:24:36.59 ID:BM2h041OO

何か方法があれば杏に会わせてあげたいなあ…
887 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/06(木) 00:25:17.72 ID:4Pp2G2aSO
888 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/06(木) 00:48:26.55 ID:ysTLXCgJO

そういえばゆゆゆいみたいな状況のときってW久遠さん呼ばれるのかな...神樹自らハブってきそうな気がしないでもない
889 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/06(木) 04:35:11.20 ID:CmYAfkkX0

>>888
むしろ造反神の方に利用されそうですらある
890 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/06(木) 07:14:32.92 ID:WAOW1vyfO
鷲尾時空の久遠さん(天乃)
結城時空の久遠さん(天乃)
乃木時空の久遠さん(陽乃)

ちょっと色んな意味でやばすぎんよー
第三勢力化不可避の最強にして最凶のチームじゃん
891 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/06(木) 21:39:42.03 ID:Aj/suhBZo
結城時空の久遠さんが一週目の方なのかそれ以降の方なのか…私気になります
892 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/06(木) 22:00:17.12 ID:cV7v1SChO
むしろ1周2周も合わせて久遠さんレンジャーでいいぞ
893 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/06(木) 22:30:17.82 ID:J4MzrlcUo

では、少しだけ
894 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/06(木) 22:31:44.21 ID:QtcHOZ7tO
かもーん
895 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/06(木) 22:40:34.28 ID:J4MzrlcUo

天乃「それは貴女だけが抱えることじゃないわ」

球子「そんなこと無い。タマはいたんだ。タマだけがいたんだ。そこに、杏の目の前に……」

それなのに、守れなかった

むざむざと殺されてしまった

それのどこが、自分の責任ではないという余地があるのだろう

誰かも悪いということが出来るのだろう

悔しさに握り締めた拳が震える

けれども、天乃は優しい瞳をしていた

球子を決して責めない。そんな、安心を見出せる雰囲気で。

だから、球子は首を振る

何も言われていなくても「タマが悪いんだ」そう、続けてしまう

天乃「責任を一人で背負ったって誰も幸せにはならないし、貴女が守れなかった伊予島さんにも、罪悪感を抱かせる」

球子「そんなつもりは」

天乃「無くてもね。貴女のその身勝手な責任の請負は、みんなを傷つけちゃうの」
896 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/06(木) 22:50:50.72 ID:J4MzrlcUo

たとえその場で二人きりであったとしても

その戦いに参加できなかった、参加しなかった。その罪悪感、後悔がみんなにはある

選んだのが一人でも、実行したのが一人でも

それを成し遂げることが出来なかったとき、選んだ一人、実行した一人。それ以外の誰かが、責任を感じる

天乃「はっきり言っちゃえば、身勝手なのよ。みんな。自分の責任は自分で背負う。みんなそうしようとするくせに、誰かのそれは見逃せないの」

それとは正反対に押し付けようとするような人が居ないとは限らないが

少なくとも、現世に居る勇者部のみんなは、許せない人たちだ

そして、先代、若葉たちと同世代の勇者だって、そう言う子達だったはずだ

少なくとも、戦いに参加できなかった久遠陽乃という少女は、心臓を握りつぶすような罪悪感を、抱いていた。責任を感じていた

天乃「私もそう。というより……私は私の責任のはずなのに、みんなは認めてくれなくてね」

場の暗い雰囲気をものともせず

困った子達でね。と、楽しげに苦笑した天乃は、球子へと目を向けて

天乃「まぁ、私自身、そういう人間なんだけどね」

球子「…………」

明るい笑顔だった。場合によっては馬鹿にしているのかと言いたくなるような

そんな、相応しくない笑顔

しかし、天乃の「そういう人間」というのが傷つけてしまっていた側であり

誰かが一人で背負うことを許せない身勝手な側であるというのを分かっている球子は、口を閉ざす

天乃は未経験者の戯言を語っているのではなく、経験者の愚痴を呟いているのだから。
897 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/06(木) 22:57:09.52 ID:J4MzrlcUo

天乃「球子がまったく悪くないなんて言わない。守れなかったのは貴女だから。でも、貴女達を守れなかった責任が、他の勇者にはある」

球子「けど……」

天乃「貴女だって、陽乃さんのことを救えなかった後悔があったから。陽乃さんの最期を聞いてきたんでしょう?」

杏の願いだったこと

しかし、それは杏のものであるのと同時に、自分の望みでもあって

だからこそ、成し遂げられずに死んだことの後悔があった

だからこそ、天乃に陽乃のことを聞いた

球子「言うとおりだ」

天乃「でもそれは、伊予島さんや若葉達だって責任を感じてること」

つまりね、と

天乃は「これか!」と、嬉しそうにする若葉を一瞥し、

球子へと微笑みかけて、続ける

天乃「本当の意味で手を取り合うことが出来た仲間は誰かが言うまでも無く支え合い、一つをみんなで抱えてくれるものなのよ」

それを私は身をもって知ったし

だれかのそれで有りたいと思ってるわ。と、目をまっすぐ見つめる

天乃「もちろん、精霊である貴女達に対してもね」

球子「は、陽乃とは違うなっ」
898 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/06(木) 23:10:15.70 ID:J4MzrlcUo

なんとか搾り出せたそんな言葉が向かうのは明後日の方向だった

好意があるのは間違いない

けれども、そんな意味合いではないはずなのに

見るのが気恥しく思えたのだ

球子「天乃は、陽乃とはやっぱり違う」

天乃「私は私だもの」

球子「そう、だけどさ」

そうだけれど、そうではない

言葉にし難い何か

きっと、それは一言で言い表すことが出来るもの

けれども、度忘れした時のように見当たらない

球子はポリポリと、頬を掻き

視線は若葉へと向いて「まだか」と、意図せず口に出す

天乃「何が出てくるのかしらね。あの中身は上里さんが用意したらしいから。私も知らないのよ」

球子「…………」
899 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/06(木) 23:13:23.03 ID:J4MzrlcUo

先ほどまでのことが無かったかのように

天乃は追及することなく、球子の言葉に乗っかって口を開く

そんな車いすに座った主人の後姿を球子は見つめ、声に出さずに笑みを浮かべる

杏がこの場にいたら何を考えるだろうか

いつかの演劇のようなことを考えて、求めてくるのだろうか

それとも、ただ大人しく見ているだけなのだろうか

球子「……杏」

守れなかった大切な人の名を呟き

しかし、悲しみに暮れることなく、弱音を飲み込んで

天乃「!」

そっと、車いすごと天乃に寄りかかる

球子「少しだけ、このままでいさせてくれ」

天乃「…………」

天乃は何も言わなかった。振り返らなかった

ただ、自分の前身に伸びてきた球子の小さな手を優しく包み込む

球子「ありがとな、天乃」

最期まで感じ、しかし最期に失った感覚

それとはやはり違うものではあったが、それでも、球子は強く握り返す
900 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/06(木) 23:25:36.60 ID:J4MzrlcUo

杏を守れなかった後悔は拭えない。責任は今でも強く感じる

しかし、それで沈み込んでいたらきっと、みんなに叱られる。杏にだってきっと。

【杏「タマっち先輩らしくないよ」】

怒っているのに、怒っていないような

そんな愛らしい怒り方をするのだ

球子「……そうだな」

タマらしくない

落ち込むことはあるし

絶望することだって、後悔することだって

絶対にないことはない

今体に温もりをくれている人だって

絶望し、後悔し、嘆き、悲しみ、それでもなお、前を向いて生きている

だからタマは、ここで立ち止まってたらいけないんだ

ここにはいないが、千景がいる。友奈がいる。ひなたがいる。杏がいる

そして、ここには若葉がいる。会うことは出来なかったけれど、でも、確かな仲間である歌野と水都もいる。だから

球子「守る。今度こそ、天乃も、勇者部も。タマでは無理かもしれない。でも、タマ達が必ず守って見せる」

いつの日か再会した時に、「ごめんな」と、正しく言葉を扱えるようにする為に。

若葉「待たせたな!」

天乃「おっそーい」

若葉「すまなかった……が、なんだ。球子もそう言う関係の仲間なのか?」

球子「違うぞ……ちょっとだけ、それもアリだと思ってるけどなっ」

今はこの与えられた【生】で全力を尽くしていこうと、心に決めた
901 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/06(木) 23:29:35.20 ID:J4MzrlcUo

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から

次は安価まで行けるかと思います。おそらく


経験者の偉大なる愚痴
902 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/06(木) 23:30:57.78 ID:nj/xSDmWO

タマもいいキャラだな
903 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/06(木) 23:40:09.15 ID:QtcHOZ7tO

球子にああ言った以上、久遠さんもこれ以上抱えこまないようにしないとな
904 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/06(木) 23:46:06.21 ID:n+X2rWGsO

久遠さんはもうどうしようもない時しか力を使わないって決めてるぞ

それにしても相変わらず久遠さんは良いこと言うし頼れて凛々しくてカッコいいなぁ
そりゃクラスメイトからの人気も高いはずだわ
905 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/07(金) 01:19:33.49 ID:A82kD5mhO
906 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/07(金) 14:46:11.50 ID:O/Zy1oqGO

タマっち先輩は何というか...ハーレムモノのアニメでいうところのヒロインズには入ってなくてヒロインズの手助けとかするんだけどたまーにOVAとかメインじゃないストーリーとかでスポットが当たる感じの立ち位置のキャラっぽい...伝わる人いるかな
907 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/07(金) 20:20:13.19 ID:Uikzvg+yO
それって要はファンディスク要員?
908 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/07(金) 22:30:31.51 ID:rq1onyVa0
<<907そうそうそういうキャラです言いたかったの!
909 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/07(金) 22:33:56.29 ID:RlldzeM6o

では、初めて行きます
910 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/07(金) 22:38:02.17 ID:PAR/O/KPO
よしきた
911 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/07(金) 22:38:23.01 ID:RlldzeM6o

若葉「これがひなたの言っていたものだ」

天乃「意外と大きい入れ物なのね」

若葉が掘り出したのはタイムカプセル

良くある入れ物ではなく、ステンレス製のもので

何かが記してあったのか、その薄っすらとした跡だけが残る容器

若葉が軽く動かすと、カタカタと音がした

天乃「開けられるの?」

若葉「道具は持ってきてる。ひなたに聞いておいたからな」

どうやって開けるのか。というのを聞いたわけではないが

本当に状態を維持できるのかと聞いた際に、

ひなたがこうして開けるくらいに頑丈ですから。と、なぜだか自慢げに語っていたのだ

若葉「開けるぞ」

容器の土を払い除け、容器を硬く閉めるボルトを一つずつ丁寧に外していき、

そして、上蓋を外すと真っ先に見えたのはゲーム機だった
912 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/07(金) 22:47:03.07 ID:RlldzeM6o

劣化したりなんだりしないようにと丁寧に行われた包装を外して、裏を見る

名前は書かれていないが、目線が向けられてない―要するに隠し撮りした―千景の写真があり

所有者が郡千景であることを示す

他には、杏の写真が挟まれた恋愛小説、自転車の鍵と自転車と球子の写真

若葉の写真と一緒に、若葉の使っていた髪留め

友奈の写真と一緒に、友奈の使っていたヘアピン

これの為だけに容器を長方形にしたと思われる一冊のアルバムには、ひなたの写真

そして、それに隠れるようにして同封されていた便箋には、黄昏ている陽乃の写真

それもやっぱり、隠し撮りで。

若葉「だから私に秘密でやったのか……っ!」

天乃「ふふっ、探してたアルバムもここにあったみたいだしね」

自分の写真は没収する。若葉がそう言った際、

ひなたは絶対に見つけられませんよーと、余裕綽々に言い切って

実際問題、若葉は見つけることが出来なかったのだ

当然だ、そのときにはもう地中深くに埋められていたのだから。
913 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/07(金) 22:53:05.44 ID:RlldzeM6o

球子「タマの自転車……は、流石に無理だったんだな」

若葉「分解しても難しいだろう」

球子「分かってるよ」

 若葉の横槍に球子はさっと返して、自分の鍵ではなく、

杏が読みかけの小説を手に取る

完璧に保存してあったとしても

300年という年季はその本を確かに傷つけていたが、読めないほどではない

なんとなく、杏のにおいがする

食事中に読んでいるから、それをやめさせようとしたときの

あの切なそうな、残念そうな、なんとも言えない声が聞こえる

――ような、気がする

球子「っ」

精密機器ではないし、割れ物でもない

けれど、壊してしまわないようにと気遣いながら、球子はそれを胸に抱く
914 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/07(金) 22:56:57.06 ID:RlldzeM6o

若葉「……懐かしいな。千景とも、これでゲームをしたことがあった」

天乃「時々オンラインに割り込んで場荒らしする陽乃さんに怒った千景は凄かったわよね」

若葉「あれは私でも頭にきたというか……無駄に強力なPK狙いのフル装備はなんの嫌がらせだと怒ってしまったな」

モンスターを倒すはずのゲームなのに、モンスターではなく千景や若葉を切り殺し

その横でバーベキュー始めるのだからたちが悪いという話ではなかった

それで千景との距離が縮まり、妥当陽乃チームを結成して二人でPK戦を行い、

それに成功して喜んだのも、今では懐かしくそしてとても心地良い思い出で

若葉は小さく笑みをこぼして、ゲーム機の電源を入れようとしたが、入るわけはなく

若葉「今思えば、自分を含まずに関係を良くする為だったのかもしれないな。あれは」

天乃「どうかしら。ただのストレス発散だった可能性もあるわよ」

若葉「……一理あるな」

逡巡、そして肯定

考える前も無く肯定できてしまいそうな人と関わるときの陽乃の姿に

困ったように若葉が笑うと、天乃もつられて笑みを零す
915 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/07(金) 22:59:36.81 ID:RlldzeM6o

若葉「…………」

懐かしい。何もかもが懐かしい

本来ならば感じることの出来なかった感情

そこには、辛さもあれば悲しさもあって

若葉はひなたの個人的なアルバムを手に取る

撮られた覚えのあるものから、無いものまであり

その一部、

ひなたが居なかったはずの勇者の鍛錬中の写真は、共謀していた陽乃の仕業だろうか

若葉「取り返したぞ。没収、したぞ……」

ひなたが居るころなら、迷わず処分していたかもしれない

しかし、若葉はそのアルバムを大事そうに撫でて、抱きしめる

それをひなたとみているかのように、守るように

若葉「ひなた……私はまだ、頑張ってみせるぞ」

若葉は決意の言葉を囁く
916 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/07(金) 23:04:57.17 ID:RlldzeM6o

二人が過去に思いを馳せる姿を見つめる天乃は

記憶があってもその場に居たわけではないという違いに置いていかれていたが

優しく笑みを浮かべるだけで、文句の一つも呟かない

自分が同じ立場なのだとしたら、きっと

そうしてしまうということを分かっているからだ

天乃「陽乃さんのこれ、誰に宛てたものなのかしら」

この手紙をタイムカプセルに入れたのは、ひなただ

ゆえに、ひなたならば誰に、なぜ手紙を残したのかを分かるはずだが

若葉にそのことは話さなかったために

記憶を共有した天乃でさえも、その理由は分からないままだ

開けて良いのだろうか

そもそも、手にしていいものなのだろうか

あと少し伸ばせば触れられる久遠陽乃からの手紙

けれど、天乃の手は、動かない


1、読む
2、とりあえず、預かる
3、取らない

↓2
917 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/07(金) 23:05:21.77 ID:9n5lZtirO
2
918 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/07(金) 23:05:41.30 ID:PAR/O/KPO
1
919 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/07(金) 23:13:29.46 ID:RlldzeM6o

01〜10 あり
11〜20 
21〜30 
31〜40 
41〜50 あり
51〜60 
61〜70 
71〜80 
81〜90 あり
91〜00 

↓1のコンマ 

ゾロ目 あり
920 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/04/07(金) 23:15:20.25 ID:9n5lZtirO
921 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/07(金) 23:26:37.39 ID:RlldzeM6o

無しのルートで
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から




千景「また……また……キル、された……ッ!」イライラ

若葉「な、なぜ私まで!? この、なん……またかッ!?」ダンッ

千景「……乃木さん」

若葉「なんだ?」

千景「不本意だけれど……協力。して。本気でPKする」

若葉「物騒なことに加担したくはないが、そういうゲームなら望むところだ。やってやるぞ!」
922 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/07(金) 23:27:40.45 ID:9n5lZtirO

何が無しなのか?
923 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/07(金) 23:33:45.87 ID:PAR/O/KPO

流石元祖イタズラ好きの陽乃さんw
でもこうして見ると陽乃さんの行動によっては千景の生存ルートもあったのかな…?
924 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/08(土) 23:05:20.91 ID:Rk1mlBgco

では、遅くなりましたが少しだけ
925 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/08(土) 23:06:08.50 ID:DXbordWWO
はいよー
926 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/08(土) 23:18:33.29 ID:Rk1mlBgco

経年劣化が若干見られる便箋を手に取った天乃は

不思議だが、決して不安のない何かを感じつつも封を切る

天乃「……?」

中には何枚かの紙と、束ねられた少量の髪の毛が同封されており

なんらかの力が施されている桃色の髪は

つい先程切ったばかりのような新鮮さが感じ取れたが……

天乃「もう、なにかをするには力が損なわれすぎてるわね」

それには状態を維持するくらいの力しか残っていなかった

手紙が必ず読まれるように術式を施したのか

それとも、何か別の理由があったのか

今では発動することの出来なくなってしまった髪を便箋に戻した天乃は

代わりに手紙を一枚、取り出す

天乃「……私、宛て?」

手紙の一枚目、その冒頭には

色々略、久遠天乃様。と

字は綺麗ながら適当な前置きと宛名が書かれていた
927 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/08(土) 23:43:21.46 ID:Rk1mlBgco

────────────────────────────────────────────────
色々略、久遠天乃様

貴女がこの手紙を読んでいるということは

私が最後に施した術式は効力を失って、ただの髪の毛しか残っていなかったか

ひなたが「この泥棒猫」とか呪詛を込めて髪を藁人形に込めてしまったかの二つに一つ

高確率で後者だと思うけれど、手紙での話になるので、理由は略

そして前者だった場合、貴女は身長が低くなり胸が大きくなる呪いによって羨ましい姿になっていることでしょう

やったね。天乃ちゃん

――――――さて。本題になります。

まず、貴女がこの手紙に目を通している場合、バーテックスとの戦いが再び起きたかその最中ということで

貴女は私が狙った通りに千景あるいは若葉を手元に呼び寄せていることだと思います

そして、ある程度のことを九尾または千景や若葉から聞いた・見せられた事でしょう

だからこの手紙の丁寧な書き方にも違和感を覚えるのでしょうが、貴女が年上だと気まずいので悪しからず。
────────────────────────────────────────────────

天乃「本題が4行持ってない気がするけど……三日坊主どころか三行坊主よ。これじゃ」

久遠陽乃という人物のいい加減さ。それを見せつけられたような気がする

まだ半分にも満たないと言うのに、若干ではあるが

心を煽られてしまったからだ。もっと言えば、前半の時点で。

天乃「はぁ……」

天乃はため息をつくと、次の行へ視線を移動させていく
928 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 00:29:05.89 ID:fFG18GxWo
────────────────────────────────────────────────

さて、率直に言うと、もう自覚しているかと思いますが貴女の純粋な能力は私よりもはるかに上です。

一つ、死を起点とした穢れ

一つ、生を起点とした清さ

それはその水と油のような二つの性質を生まれながらにして併せ持ち、適応することが出来ているからですが

当然の事ながら、その均衡を保つことが出来なければ体は蝕まれていき死に至る

現に、私はそのおかげでもうすぐ死ぬので見事なまでの副作用は命を懸けて保証します。

そして。

穢れは完全に拭い去ることはできません。なぜなら先ほど言ったように元々、貴女の一部だからです。

樹海や付近の勇者に被害が出てしまいますが死神あるいは千景の力を用いれば多少は放出することが可能ですが

失いすぎれば逆に貴女の体はバランスが乱れて苦しむことになる。これはいわば、一種の呪い

貴女は清い体にはなれないし、穢れきる事も出来ない

貴女は誰かを救いたいと願うことでしょう。ですが、それは貴女自身を苦しませることになる

要するに、救う人間は選べ。万人など守ろうと思う必要などない。ということ

……私は私の憎しみゆえに、久遠家と貴女にその呪いをかけました

とはいえ、この手紙を読んでいる貴女は久遠家の……私の血をひいてしまっていますから

無茶をせずにはいられない、とてもおバカな子なのでしょう。

外出は出来ますか? 目は見えていますか? 耳は聞こえていますか? 食べ物は美味しいですか?

どうせ、良くても出来るけど不自由で、悪ければ全部だめ。というレベルに陥っているのでしょうね

この大馬鹿子孫め。さっさと子供を産んでしまえ

────────────────────────────────────────────────
929 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 01:05:33.87 ID:fFG18GxWo


────────────────────────────────────────────────

子供を作る。というのは、新たな命をはぐくむと言うこと

それは貴女の体の穢れと清さを織り交ぜて調和し、胎児の中で均衡を保つ

それゆえに、貴女が誕生するまでの久遠家の女はみんな、子供を作っています

というのも、耐性と共に均衡が整うのは難しい為、どうしても体は不調をきたします。それが基本です

良いですか? 久遠天乃という人間が特別なだけであって、久遠家がみな頑丈なわけではありません

そのための、早期出産です。

もっとも、人間は生きているだけでも少しずつ穢れをため込むせいで

久遠家は総じて体を壊しやすいという理由もありますが。


――そして、これが本題です。


私はある子を医療的に救うため、血液の提供を行いました

その子が無事に生き延びることが出来、未来を紡いでいるのであれば

貴女ほどの力はありませんが、貴女の力を多少なりとも抑制あるいは強化あるいは肩代わりすることが出来るはずです

そしてきっと、存在するならば少女は勇者となっていることでしょう

もしかしたら、薄いとはいえ私の血ゆえに、恵まれない世界を生きているかもしれません

貴女達が出会うことは約束されていません。

ですが、世界が歪んでいなければ貴女は出会い、そして貴女が私の子ならば共に生きていることでしょう

触れ合った際、私の事が流れ込んだのならば、その子が子孫。

心当たりがあるのなら私の髪を束ねたリボンでその子と繋がってください。

効力が残っているのかは定かではありませんが少しでも、貴女の力になるはずですから。


                               願わくば、みなに久遠の幸があらんことを

────────────────────────────────────────────────
930 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 01:13:12.97 ID:fFG18GxWo

本題と言いつつ本題ではなく

無駄話のような何かを長々と書き記して

結局、最後の最後でこれこそが本題だと追記のように書き記した手紙

それを読み終えた天乃は

弱弱しい力を感じる髪を束ねたリボンを手に取る

天乃「陽乃さんの事……」

ふれあうことで陽乃のことが流れ込んできた経験

苦しい思いをしたのだ、二人で辛い思いをしたのだ

考え、悩み、悲しむことさえすることになったのだ

忘れることなど、ない

天乃「きっと、夏凜……の事よね」

確証はないが、陽乃の手紙が間違っていたり適当なことを書いていなければ

きっと、それで間違いはない

天乃「夏凜が私の力に……それはもう。なってくれているけれど」

今以上に支えになってくれるのだとしたら

それが夏凜の負担にならない事なのなら、望むところで。

天乃「頃合いを見て、話した方が良いかもしれないわね」

中身を元に戻した便箋を、天乃は大切に鞄へとしまった
931 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 01:16:22.44 ID:fFG18GxWo

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば昼頃から


久遠さんの容姿は陽乃さんのせい。かもしれない
932 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 03:44:08.27 ID:J/UUiwe9O

やはり種の子の末裔は夏凜だったか

そういやスゴい今更だけど久遠さんって実は血液型の設定ないよね?
夏凜と同じなのかな
933 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 06:18:05.14 ID:iEGp0ff+O

夏凜と繋がる(意味深)
934 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 09:46:17.48 ID:j89RG1CmO
このはっちゃけ具合が本来の陽乃さんなんだろうなぁ…そしてひなたが藁人形は冗談だろ?冗談だよな?
935 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 14:31:53.18 ID:fFG18GxWo

では、初めて行きます
936 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 14:40:50.74 ID:fFG18GxWo

√ 7月8日目 夕() ※月曜日

01〜10 バテクス
11〜20 風
21〜30 
31〜40 友奈
41〜50 
51〜60 東郷
61〜70 
71〜80 樹
81〜90 
91〜00 みんな

↓1のコンマ  
937 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 14:44:16.19 ID:0UadAMTGo
ほいさ
938 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 15:14:29.37 ID:fFG18GxWo

√ 7月8日目 夕() ※月曜日


風「なにやってんのよ」

天乃「学校サボったのよ。ふふんっ」

風「いや、胸張ることじゃないから」

大赦から厳重注意をされたわけではないが

天乃と同じ勇者ということもあってそれとなく、風には文句を言ったらしい

とはいえ、風も風で怒る気はさらさらないようで

呆れたような表情ながら、笑みを浮かべていた

風「大赦はどうでもいいけど、クラスのみんなが寂しそうだったわよ」

天乃「沙織がフォローしてくれたと思うんだけど……」

風「そりゃ、危ないことをしに言ったわけじゃないっていうのは納得してたわよ? でも、それとこれとは違うのよ」

天乃「まるで夫を待つ妻のようね。仕事だと信じ――」

風「実は不倫してたとか言うの止めなさいよ」

天乃「…………」

風「こらそこ! 目を逸らさない!」
939 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 15:33:01.12 ID:fFG18GxWo

風「納得は出来るけど認めたくない。みたいなものよ」

天乃「私、クラスでそんなに重要な役職についてるわけでも無いんだけどね」

風「本気で言ってる?」

天乃「分かってて行ってるつもりでは、あるけど」

それが嫌というわけではないし

自分が今までしたことの積み重ねが作り出したことなのだから

それを否定する気も天乃はない

しかし、実際問題、天乃はクラスメイト全員の彼氏はもちろん、彼女でもない

そしてもちろん、家族でもない

……ある意味では家族と言えるのかもしれないが。

天乃「私一人の行動をそんなに気にしてたら、落ち着いてられないわ」

風「だから早い話が、おとなしく学生生活を送ってくれってこと」

結果的に大赦から望まれたことを告げた風は

無理強いはしないけど。と後付けして

風「出来ればというか、少なくとも私はそれを望んでる」
940 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 16:17:08.16 ID:0UadAMTGo
それができたら苦労してねえんだよなぁ…
941 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 16:19:34.10 ID:fFG18GxWo

ここまで来たのだから

そして、せっかく一時的なものとはいえ、平和に過ごせているのだから

その間だけは余計なことを考えず、せず

みんなに任せて学生として生きていて欲しいと

そう思い天乃を見つめるその瞳には、不安が隠れていた

天乃「貴女は、ね」

風は自分だけがそう考えているかのようにいったが

そう考えているのは、もはや、クラスメイト含んでも増える一方だ

天乃「………」

天乃は十分頑張ったのだ

これ以上頑張ってしまえば死ぬほどに

だから天乃が以降戦いを控えるのではなく

以降バーテックスなどのことを考えるのをやめても

勇者は誰も、恨むことはないだろう

天乃「どのみち、今の私には普通の学校生活は無理よ」

風「それでも、出来る限りは出来るでしょ」
942 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 16:53:08.00 ID:fFG18GxWo

今日みたいに学校サボらないとか……

そんな風に呟く声が聞こえて、天乃は目を伏せる

戦いではないと分かっていても、不安になってしまうのかもしれない

納得は出来ても認められないと言うのは、つまり

天乃が個人的に動くというのが、暗躍しているように思えてしまうということかもしれない

だからこそ

風はわざわざ会いに来て、確認しに来たのだ

天乃「……若葉と球子」

風「?」

天乃「二人とお出かけしただけよ。あの子達と、お墓参り。夕方だと暗くなっちゃうからってね」

放課後では、夏場でも少し大変になってくる穴掘り―行ったのは若葉だけだが―をするには

やはり、朝方の方が良かったのだ

車椅子の天乃を連れまわすのなら、余計に。

それなら次の休みまで待てばいいじゃない。という言葉は

風の口からは零れなかった

風「……そか、お墓、参りか」

天乃「ええ」

正式に墓前に行ったわけではないし、そもそもお墓などない場所だったが

それでも、みんなにとってはあの場所が、千景も含めたお墓なのだ
943 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 17:17:28.21 ID:fFG18GxWo

いつ戦いが起きるか分からない

だからこそ、やりたいと思ったことはその日のうちに行う

でなければ、出来なくなってしまう可能性さえあるからだ

風「でもせめて、あたし達にはおしえてよね」

天乃「そうね、次からはそうするわ」

仕方がないと言いたげな表情を浮かべる風を一瞥し、

天乃はそう答えて、小さく息をつく

今回は少しばかり軽率だったかもしれない

だからと言って、後悔はしていないけれども。

風のみならず

勇者部はみんな、天乃と特別な意味でも付き合いがあるのだから

風「けど、何か危ない事じゃなくて本当に良かった」

天乃「むしろそれなら、沙織も一緒にいないわよ」

風「まだ猿猴なの?」

天乃「ううん、猿猴ではないんだけど……半精霊状態って言えば良いかしら。まだ沙織の中にいるのよ」
944 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 17:39:27.86 ID:fFG18GxWo

風「なるほどねぇ……でも天乃の場合。怪我させたくないからって理由で置いていくでしょ」

天乃「場合によっては」

風「ほらやっぱりー!」

安心できないじゃない。となぜだか元気な声になって

天乃は困ったように笑いながら「でもね」と、口を挟む

天乃「でも、半精霊でも情報は伝わるから。その場合は必ず沙織が情報を持ってる」

そしてその場合

沙織が風達に嘘をつく理由は皆無だ

例え天乃から秘密にしていて欲しいと言われたとしても

天乃が危険なことに首を突っ込むことを黙って見逃すような子ではないから

だから、必ず風達にそれは伝わるはず

天乃「だから沙織がそこにいて、沙織が何も言わないのなら大丈夫よ」

風「んー……まぁ、それなら信頼できる。かも?」

天乃「して頂戴。私がいないだけで不安になられるのは嫌よ」

風「ん。分かった。みんなにもそう連絡しとく」

天乃「ええ、お願い」
945 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 17:48:19.82 ID:fFG18GxWo

風「……それで、さ。天乃」

天乃「?」

風「その、さ」

さっきまで色々な表情にころころと変わっていた風は

今度は照れくさそうに目を合わそうとしなくなって

天乃は首を傾げたものの

何を求めようとしているのかは、すぐに分かってしまった

風「せっかく二人きりなんだし、良い?」

ちらりと向けられた瞳を

わざと、躱して

天乃「ん?」

風「そうやって焦らすの。夏凜だけにしなさいよ。友奈にやったら泣くわよ。あの子」

純粋なんだから。

そういう風に、貴女はどうなの? と聞きたい気持ち半分

それを飲み込んで


1、する
2、何の話?
3、うん。しても良いわよ
4、私から? 貴女から?


↓2
946 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 17:50:26.44 ID:TWVAdyCmO
2
947 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 17:52:52.02 ID:bWjBMVV60
1
948 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 18:25:23.89 ID:fFG18GxWo

風の手をぐっと引いて、唇を重ねる

一瞬驚きに見開かれた風の瞳が

ゆっくりと穏やかに細くなって、瞼に覆われていく

風からの動きは一切ない

同じ女の子、同じ唇という場所、同じ柔らかいという感触

けれども肉質の違う、その似て非なる感覚

それをより強く感じるために集中しているのだろう

天乃は風の手を掴む左手をそのままに、右手で風の左わきから手を滑り込ませ、抱きしめる

風「んっ」

驚きに割れた唇が阻んでいたほんのわずかな距離

しかしキスにおいては大きな距離を詰めて

より強い密着へと切り替わる

天乃「……」

風「っ……ん」

唇が塞がっているため、鼻での呼吸をすると

匂いにおいての表現では不適切かもしれないが

柔らかく、甘く、優しい、身を委ねたくなるようなものが染み込んできて

風は無駄に深く、深呼吸をする
949 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 18:43:46.51 ID:fFG18GxWo

天乃「っは……」

ほんの一瞬、時計を見れば1分程度の時間のキスだった

しかし、それは風の心に沁みこむには十分な時間で

天乃との交わりゆえか

艶やかな光沢を見せる唇を味わうように閉じた風は

どこか大人びた横目で天乃を一瞥すると

気恥ずかしそうな笑みを浮かべて

天乃「!」

圧し潰された枕が、ため込んだ空気を派手に吐き出したが

空気を一切乱すことは出来ず

天乃の唇を、風は重ねて奪う

自分という存在を塗り込むように

久遠天乃という愛しい存在を味わうように

押すように、伸ばすように、吸うように、唇を重ねる

天乃「んっ……はぁ……はぁっ」

風「……キスすると、なんかこう。もう、あれね」

天乃「なに?」

風「もっと……天乃のことが欲しくなってくる」

天乃「……魅了の力。じゃ、ないわよね?」

風「そんな歪なものであってたまるか。これは、あたしの気持ちだよ」

それを証明するかのように、風は天乃に負担をかけないよう

体と体を重ね合わせて、キスをした
950 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 19:18:45.91 ID:fFG18GxWo

風「はぁ……ん……」

天乃「ん……ちょっと、やり、すぎ」

零れる事を拒んで口元を拭う天乃は両手こそ自由だが、

組み伏せられたかのような乱れた髪と寝間着は風の情欲をそそらせる

――いや、違う

風「だって」

天乃「…………」

魅了の力など関係なく

ただ、天乃のことを好意的に想っているだけ

友達として、人として、女として、異性ではないが、異性として

しかし、思うのだ

自分はみんなと比べて、出遅れているのではないか

皆と比べて、自分は天乃に想って貰えていないのではないか。と

恨む必要のない恨みを抱き続けた二年間、

一線を引いたうえで育んだ関係

それで、自分が今ここでこうすること、天乃から施して貰うことは

正しいことではないのではないか。と

風「……あたしは、天乃に、好きになって貰う資格はないんじゃないかって」

皆を平等に扱おうとしてくれる

だからこそ、平等ではない自分という存在が、堪らなく不安だった


1、抱きしめる
2、キスをする
3、私は気にしてないわ。貴女が私に対してどんな感情があったとしても。一緒にいた二年間は、変わらない
4、……なら、人殺しである私は誰も愛する資格がないわ。愛される資格も
5、私は別に、優しくしてくれるのなら貴女にこのまま先に進まれても良いと思うほどには好きなのだけど


↓2
951 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 19:19:35.53 ID:TpaRa0PcO
5
952 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 19:22:24.33 ID:aFW9Zi1WO
2
953 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 19:28:59.38 ID:TWVAdyCmO
3
954 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 19:39:00.93 ID:fFG18GxWo

では、少し中断します
途中落ちたため、もしかしたらこのまま再開しない可能性もありますが
再開する場合は、21時までには再開予定です


この場合は、通例通り3で進めていきます
955 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 19:44:35.31 ID:TWVAdyCmO
一旦乙
956 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 19:47:16.97 ID:TpaRa0PcO
957 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 21:02:38.99 ID:fFG18GxWo

では、再開していきます
958 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 21:16:35.92 ID:fFG18GxWo

天乃「でも、私は気にしてないわ」

風がどれだけ気にしていようと天乃は気にしてはいない

もちろん、犬吠埼姉妹の両親を死なせてしまったことは前ほど気にしていないにせよ

やはり、心の奥底で忘れることなく抱いているが、それとこれとは話が別だ

天乃「貴女が私に対してどんな感情があったとしても。一緒にいた時間は変わらない」

恨みを持っていたとしても

憎しみがあったとしても

してきたこと、そこで感じたことは、何も間違いではないはずだ

天乃「見せてくれた表情が、現した感情が。たとえ、貴女の本心ではなく嘘だったとしても」

その内側には本当の感情が確かにあったはずで

そして天乃はその嘘も、本心も

ひっくるめて、自分の候補の中に招き入れたのだから

天乃「風、貴女は自信を持っていいわ」

風「…………」

天乃「もし、どうしても持てないなら。私が愛してる貴女を信じて」

風「天乃……」

天乃「貴女もみんなも何も変わらない。二年間を一緒に過ごした仲間で、友人で、今では大切な恋人なのだから」
959 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 21:39:30.42 ID:fFG18GxWo

風「……変わらない。本当に、変わらない?」

天乃「ええ」

風「あたし、ずっと憎んで、恨んで」

天乃「それはもう、解決した話だわ」

恨んでいたこと憎んでいたこと

自分が両親を死なせた人間であること、それは自分の罪であること

二人はそれぞれが抱えるその問題を話して

だからこそ、今の関係にまで至った

いや、それでも、今の関係に至った

結果が良ければ全ていい。それを使うにはやや重い話しなのだが

言ってしまえば、そういうことだ

風「……じゃぁ、抱き着いて良い?」

天乃「うん」

風「キスしても良い?」

天乃「何度もしたわ」

風「エッチなことしても良い?」

天乃「ん……まぁ、優しく、してくれるなら」

かぁっと赤くなって、顔を背ける天乃を見下ろしたまま

風は小さく笑みを浮かべる

風「今日は止めておく。でも、今度……させて貰うから」
960 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 21:53:33.38 ID:fFG18GxWo

√ 7月8日目夜(自宅) ※月曜日

01〜10 
11〜20 沙織
21〜30 
31〜40 
41〜50 
51〜60 夏凜
61〜70 
71〜80 九尾
81〜90 
91〜00 死神

↓1のコンマ  
961 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 21:54:00.54 ID:TpaRa0PcO
962 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 22:28:08.76 ID:fFG18GxWo

ギシッっと、ベッドが沈む

帳の下りた夜

この家だけでなく世界自体が静まり返った時間に響いたその音は

思いのほか大きく

しかし、音の主は気にも留めず楽器と化した寝具をもう一度4本の足で踏む

天乃「……また来たの?」

夏凜「今度は堂々と来たわ」

天乃「風の匂いがする?」

夏凜「んな嫉妬で襲うような真似はしないっての」

天乃の茶化す一言に夏凜はいつも通りを感じて、苦笑する

そして一息で空気を正す

重苦しさのない、軽くしかしながら切なさの籠った空気

どこかで時間を間違えたセミの声がする

夏凜「昼、一緒に食べようと思ってたんだけど」

天乃「ごめん、デートしてた」

夏凜「堂々としてんじゃないわよ」
963 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 22:56:50.40 ID:fFG18GxWo

夏凜「若葉と球子でしょ。聞いてるわよ」

風からの連絡が来ている夏凜は問題なくあしらって

はぁ。と、ため息をつく

夏凜「私達も聞かれたのよ。久遠天乃が何かしようとしている可能性はないのか? って」

天乃「ただお墓参りに行っただけなのに?」

夏凜「向こうにとっては、そうじゃない」

大赦にとって

いや、勇者を含めた世界にとって

久遠天乃という存在は味方であり、敵なのだ

敵の敵は味方。という言葉が一番似合う言葉かもしれない

だからこそ、自分たちの視界から外れたとき

彼らは恐怖を覚えて警戒してしまう

それで勇者に聞くと言うのは見事なまでの失策だが

似たような力を持っていて、確実に戦うことが出来るのは勇者くらいなのだから

仕方がないかもしれない

夏凜「気を付けなさいよ。ほんと」

天乃「……うん」

夏凜「この家にいられなくなる可能性だってあるんだから」
964 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 23:18:29.94 ID:fFG18GxWo

天乃「心配?」

夏凜「連れ戻されたら会えなくなるし」

ベッドの上に投げ出された小さな白い手をそっと握り締める

小さな手なのに握り返す力は、強い

子供みたいな先輩はだた月明りのような怪しさを醸し出しながら

薄く、笑って見せる

天乃「夏凜なら、私を連れ戻してくれるって信じてる」

夏凜「……その信頼、裏切られる心配しておきなさいよ」

天乃「信頼に裏切られたとしても。夏凜に裏切られたりはしないわ」

触れ合わせるように重ねた体は、思いのほか、熱い

夏の暑さではなく、身体自身が作り出すのその熱は

合わされば合わさるほど熱くなって、けれども決して不快ではなく

広い視野が狭まって、鋭い聴覚が鈍くなって

でも、肌に触れる感触だけはいつもの何倍にも敏感で

夏凜「なら、今ここで裏切ってみても面白そうじゃない?」

天乃「やってみなさい、泣いてやるんだから」

夏凜「馬鹿言うなっての」

声はどんどん小さく細く、数pに満たない二人の距離にはそれで十分で

ごく普通に、自然に、音もなく、繊細で綺麗なキスをする



1、陽乃からの手紙について
2、余計な話はいらない。今はただ、触れ合うのみ
3、優しくしてね?


↓2
965 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 23:19:42.79 ID:TpaRa0PcO
1
966 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 23:20:06.88 ID:bWjBMVV60
1
967 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/09(日) 23:34:56.73 ID:fFG18GxWo

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間からですが
来週は二回ほどお休みがあるかもしれません




天乃「夏凜、実は陽乃さん――」バシッ

夏凜「今、ほかの女の話なんてすんじゃないわよ」ググッ

天乃「え、ちょ、ちょっと。待って勘違い、それ勘違――ぃんっ」

夏凜「今だけ。私以外の事、考えられなくしてやるんだから」


杏「とかですね!」

園子「有りだね〜」

夏凜「ないっての!!」
968 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 23:38:50.29 ID:Qd/ToooOO

夜は長いぞ
969 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 23:47:12.80 ID:TWVAdyCmO

過去二作で涙をのむ結果になってた分、今作は完全に夏凜ちゃんが主役だな
それにしても久遠さんがこれだけ頑張ってたのに未だに敵扱いするとかまたもや大赦との衝突フラグが…
970 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/10(月) 09:12:44.67 ID:5rtjKE8wO
971 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/10(月) 12:33:34.18 ID:pmkiTguxO
もしものわゆ時代で生前の若葉たちが陽乃さんの過去に気付いてしまったらみたいなIFストーリーもいずれ見てみたいな
972 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/10(月) 19:48:46.39 ID:Dr3eSnIPO
のわゆ時代からゆゆゆ時代って何年離れてるんだっけ?
973 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/10(月) 22:34:58.23 ID:NqC/9dW9o

では、少しだけ
974 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/10(月) 22:37:16.41 ID:VcMDpWSuO
あいよ
975 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/10(月) 22:39:17.47 ID:NqC/9dW9o


天乃「……お墓参りでね、タイムカプセル的なものを掘り起こしたの」

夏凜「今話すこと?」

天乃「ん……まぁ、夏凜のことも関わってくるから」

言葉のみの不満に変わらず答え、天乃が傍においてあった便箋に手を伸ばすと

夏凜の手が先回りしてそれを取り、中を見る

夏凜「……なにこれ」

天乃「私のじゃないわよ。陽乃さんのもの」

夏凜「陽乃って……300年前の?」

冗談言わないでよと夏凜は言いかけたが

天乃が追撃してこないことを気にして、言葉を呑む

便箋から出され、夏凜の手の平に置かれた髪は

月明かりに照らされて、妖艶な輝きを放つ

心なしか宿った力が見えるような気さえ、する

夏凜「それで? 陽乃……さん。だっけ? それと私に何の関係があるのよ」

天乃「それなんだけど――」
976 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/10(月) 22:59:39.18 ID:NqC/9dW9o

夏凜「なるほど……いや、納得したわけじゃないけど」

天乃の話は、おいそれと納得できるような話ではなかった

300年前からの手紙

そこに書かれているものは、未来を言い当てたようなもの

自分という存在を理解したうえでの

300年後の自分の子孫がそういう人間だろうという予測からの、偶然の一致だけれど

理解したが納得していないのは、そこではない

夏凜「でも、いや……まぁ、そう。考えられるか」

ギシリとベッドを軋ませながら、縁に足を投げ出して天乃へと背を向ける

自分の体の中に、久遠陽乃の血が薄く流れ込んでいる

そう考えると、血液の流れが感じられるようだった

夏凜「私はあんたのパートナーってわけね」

天乃「言い換えればそうなるかしら」

夏凜「そっ、まぁ。でしょうね」

どことなく素っ気ない

自分でもそう感じてしまうような声

夏凜「パートナー……ね」
977 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/10(月) 23:09:58.99 ID:NqC/9dW9o

それが嫌かと聞かれれば、そんなことはまるでない

唇を重ねるような間柄で

体を重ねるような間柄で

心を重ねるような間柄で

パートナーという立場が嫌なわけあるはずもない

けれども……

夏凜「はぁ」

自分自身にため息をつく

自分はこんな面倒な人間だっただろうか。と

自分に自信が持てない人間だっただろうか。と

後者は否定できない。できる自信がなかった

あるなら、何よりも鍛錬を優先してきた人生であるはずがない

努力は今の自分を変えたいから行うもの

自分自身に満足できていないから行うもの

だからそう、自分に自信がないのは認めるほかない

天乃「どうかした?」

夏凜「ん、いや……天乃は、納得してるわけ?」

天乃「……? 今のコレの話?」

夏凜「そう」
978 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/10(月) 23:21:49.27 ID:NqC/9dW9o

天乃「……私は別に、そこまで深くは考えてないわよ」

夏凜「……………」

天乃「相手が夏凜なら、それ以上を考える気もそうする理由も何もない。納得する必要だってきっとない」

覚悟する必要なんて、もちろん欠片ほどもない

天乃はそこまで言葉を続けた

一つ先、二つ先。先を見通した否定の言葉は天乃が良くやることだった

特に、真面目な話をしている時

相手の話を聞きおえたと判断した時

畳みかけるように言葉を投げかけてくる

それは否定させない威圧感を持った、母性のようなもの

否定しても、否定しなくても

それが相手の意思ならばよほどのことが無い限りその心を折らず

受け止めてくれる。

そう、相談を受けた学生が照れくさそうに言っていたことを思い出す

夏凜「陽乃さんは定められてないとか書いてるけど、でも。なんて言うか」

天乃「運命的?」

夏凜「それでいて理想的。最初は敵対した、嫌いな関係だったはずなのに……気づいたら、こんな関係に落ち着いてた」
979 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/10(月) 23:40:06.29 ID:NqC/9dW9o

出会ってからの時間はまるで、型を押されるクッキー生地のように

抵抗する隙もなく、久遠天乃という存在にかたどられていき

そして、今はもう焼き焦がされてしまった

よく言えば夢のよう

悪く言えば運命的な出会いから今までの時間は

300年前からの手紙を見てしまうと、どうにも切なさを帯びてくる

天乃「魅了の力は認めないのに」

夏凜「これだって納得したくない」

けれども、そのありがた迷惑なルート検索に

無意識に従っていた可能性は、否定できない

天乃「下手に小説なんて読むから、そんな悩みを考える羽目になるのよ」

呆れた声に振り向く

上体を起こした天乃の左半身を、月の光が照らし出す

その眩しさは夜目に慣れたからでは、きっとない

天乃「でも、悩む方がむしろ簡単なのかもしれないわ」

夏凜「どうしてよ」

天乃「だって、私への気持ちが偽りだと思いたくないから悩むんだもの。悩むことこそが、その疑問への答えになるから」

こういう時の、ただ一年上というだけでは口にしないような考えと

そよ風のように穏やかで優しい笑みを携えている天乃は、強いあこがれを感じさせる

夏凜「……恋は盲目、灯台下暗しとはよく言うものだわ。その中に何があっても、私が抱いたこれは本物か」
980 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/11(火) 00:09:00.95 ID:iSiGsTCXo

結局のところ、自分が好きであることには変わりはない

固く作り上げられた心は砕かれるのみ

天乃は下手に小説を読むから。と言ったけれど

下手に読んでいないであろう天乃の方が、悩むことは多い

一人で悩んで、抱え込んで、破滅一歩手前まで来たのは誰の事か

もっとも、手を引けばそれが自分の元へと手繰り寄せられていくように

落ちる我が身との心中を天乃が望まなかったからこその、独り身だけど。

引かれた側が逆に引く。チェス盤をひっくり返すようなそれは

天乃に対する見事なまでの反則業だった

そして結局、互いに引き合い調和を保つようになった

誰かが死ねば枷が外れてしまうだろう

天乃の精霊、古き幻獣。九尾はいつだったか、天乃のいない場所でそんなことを言っていた

夏凜「……で。リボンで繋がるって。どうすりゃいいのよ」

天乃「納得は出来たの?」

夏凜「考えるのは面倒くさいから単純に考えることにしたのよ。悪い?」

天乃「ううん、夏凜ちゃんはついに脳みそまで筋肉になっちゃったなぁ。と――ひゃんっ!」

夏凜「……朝までいじり倒してやるわ。私は脳筋だから嫌がってるとか理解できないのよ。悪いわね」

天乃「ま、待って。冗談だから。落ち着いて、ね? ほら、まだ話は終わってないから」


1、繋がる方法はリボンを使うというくらいで、分かってないの
2、試しに赤い糸宜しく互いの指に括りつけてみる?
3、二人の手でリボンを挟む
4、リボンに関しては良く分かってないし、私の力の強化だから。必要な時にしておこうと思うの


↓2
981 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 00:09:40.78 ID:z3/Pw4f6O
1
982 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 00:10:31.17 ID:feSB6YE0O
1
983 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/11(火) 00:15:56.74 ID:iSiGsTCXo

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


若干夏凜視点に……
984 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 00:28:09.12 ID:feSB6YE0O

久遠さんと夏凜ちゃんとの関係は最早恋人や親友以上の言い表せない仲になってきた気がする
さおりんたちと違っていやらしさもあまり感じないしな
985 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 00:41:08.24 ID:8Il3kvp1O

東郷さんと3Pもどきやってたでしょ
愛情表現ゆ愛情表現
986 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 07:15:44.90 ID:HqrzUschO
夏凜が久遠さんを責めて
東郷が久遠さんを責めて
久遠さんは責め手を塞がれて…

あれ?これってもしかし(ターンッ
987 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 08:49:40.60 ID:MIK9TQKWO
988 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 21:56:42.57 ID:p94RhXmzO
次スレの季節だけど目標に「結婚式の開催」とか入ってくるかな?
989 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2017/04/11(火) 22:54:59.82 ID:iSiGsTCXo

では、少しだけ始めますが

続きは次スレとなります

【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【八輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1491918867/l50
990 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 22:55:38.57 ID:pNG7lcwQO
了解
991 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 23:48:53.67 ID:0A2Pr2drO
じゃ埋めるか
992 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 23:49:21.13 ID:0A2Pr2drO
埋め
993 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 23:49:55.79 ID:0A2Pr2drO
994 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 23:50:26.17 ID:0A2Pr2drO
埋め
995 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 23:50:54.87 ID:0A2Pr2drO
埋め
996 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 23:51:23.17 ID:0A2Pr2drO
埋め
997 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 23:51:51.09 ID:0A2Pr2drO
埋め
998 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 23:52:20.99 ID:0A2Pr2drO
埋め
999 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 23:52:48.13 ID:0A2Pr2drO
埋め
1000 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 23:53:18.37 ID:0A2Pr2drO
では乙
1001 :1001 :Over 1000 Thread
    ´⌒(⌒(⌒`⌒,⌒ヽ
   (()@(ヽノ(@)ノ(ノヽ)
   (o)ゝノ`ー'ゝーヽ-' /8)
   ゝー '_ W   (9)ノ(@)
   「 ̄ ・| 「 ̄ ̄|─-r ヽ
   `、_ノol・__ノ    ノ   
   ノ          /     
   ヽ⌒ー⌒ー⌒ー ノ      
    `ー─┬─ l´-、    
        /:::::::::::::::::l   /77
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       l;;ノ:::::::::::::::l l;.,.,.!  |
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モバP「はあぁ……雫可愛すぎる…………」ちひろ「……………………」 @ 2017/04/11(火) 23:50:47.30 ID:Uv7yiksYo
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【リトルバスターズ!×Rewrite】理樹「リライトクエスト!」 @ 2017/04/11(火) 23:04:31.18 ID:5Bn8Agd80
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穂乃果「めざせポケモンチャンピオン!」 @ 2017/04/11(火) 23:00:23.48 ID:fR1Tt0yz0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1491919219/

安価で紡ぐグラブル @ 2017/04/11(火) 22:59:06.75 ID:onHb3FTE0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1491919146/

【艦これ】大井さんの女子力事情 @ 2017/04/11(火) 22:44:58.98 ID:tfQ5cg2u0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1491918298/

「······あいつの愛は重すぎる」 @ 2017/04/11(火) 22:21:28.93 ID:vFMaouvS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1491916888/

サーバル「これはなに?」最上静香「うどん」 @ 2017/04/11(火) 21:53:01.75 ID:o4jeux1X0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1491915181/

モバP「フツウの花見」 @ 2017/04/11(火) 21:27:56.94 ID:w3AWsgcqO
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