【安価】オリジナル百合【エロ】

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84 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2017/03/17(金) 23:33:53.15 ID:VWOoE3Tx0
リトバス はるかな(お母さんの家で暮らしてます)



少し伸びた前髪を、人差し指と中指で挟まれた。

「伸びたねー」

ベッドに横になって本を読んでいた私は、指と指の間から活字を追いかける。

「そうね」

「鬱陶しくない?」

「別に、困ることもないし」

「でも、俯いた時とかさ、前髪が目にかかってるじゃん? あれで、こっち睨んだ時の目つき、めっちゃ怖いもん!」

妹――葉留佳がそう言ったので、

「じゃあ切るわ」

私はすぐにそう答えた。
85 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2017/03/17(金) 23:45:21.85 ID:VWOoE3Tx0
「ええ、心変わりするのはやっ」

「怖いと思われる方が心外だもの」

葉留佳に嫌われるくらいなら、切る。

「ごめんね、怒らすつもりじゃなかったんだよー?」

「怒ってない」

本のページをめくる。

「ホントに?」

「そう見えるのは、あなたが怒らすようなことを言ったという自覚があるからでしょ」

言いたいことをはっきり言う癖に、相手の反応が気になるのね。
気にしていないのに。言葉という手段は信用に足りない。

「さいです……やはは」

「罰として、あなたが切ってよ、葉留佳。ダメとは言わせないわよ」

「お! 任せてよっ! この野球によって磨かれた逞しい二の腕を見な!」

私は顔を上げて、ベッドの横で、むきっ、と力こぶをつくる妹を見る。
白くて細いだけ。
やや煽情的。

「バカなこと言ってないで、今からして」

「善は急げってやつですな!? にゃはは!」

嬉しそうに部屋を飛び出していく。
恐らく、道具を取りに行ったのだろう。
86 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2017/03/17(金) 23:53:57.63 ID:VWOoE3Tx0
葉留佳が不器用なことは知っている。百も承知である。
奇跡的に綺麗に切れたら、褒めてあげよう。
でも、もし失敗したら、言うことを一つ聞いてもらう。
私は、脳裏で都合の良い罠を張る。

散髪用具を一通り揃え、下に新聞を敷いて、
まるで床屋の店主のようないで立ちで、葉留佳がハサミをシャキシャキ鳴らした。

「おっきゃくさーん、かゆいとこないある?」

「前髪切るだけなのに、それを聞く意味ある?」

「ないある」

ないのかあるのかどっちよ。
胸中でツッこむ。

「さて、目を閉じなさい」

「はいはい」

葉留佳に言われた通り、瞼を閉じる。
シャキンと金属がこすれ合う音。
おでこに彼女の指が当たった。
眉の上に、熱が集中していく。
87 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2017/03/18(土) 00:11:27.24 ID:m8pNuSuU0
今、とても真剣な表情をして私を見ているのだろう。
そう思うと、体が熱くなっていく。
何を考えているの。
はしたない。
妹は、ただ純粋に私のためを思ってやってくれている(恐らく)だけなのに。

「お姉ちゃん、もうちょっと上向いてよ。どんどんどんどん、顔が下降してってる」

「ご、ごめんなさい」

頬を挟まれて、直接顎を動かされた。
彼女のお姉ちゃんと言う言葉に、私は弱かった。
何度聞いても弱かった。
慣れない。
生まれてきて、一番嬉しかったことは、彼女にお姉ちゃんと呼んでもらうことが、
もう一度できたことかもしれない。
言い過ぎかしら。呆れられるかしら。
いいじゃない、別に。

「いっきまーす」

チョキン。
パチ、パチ。
パチン。

「はい、終わり―」

「はやっ」

私は、そろそろと目を開ける。

「……少し、短くなったわね」

見たままの感想を述べた。
上手いとか下手とかとで判断しかねるレベル。

「いやー、この目にかかってるところが気になってただけだからさー」

ああ、やはりただの好奇心で切ったのね。
と、肩を落としていると、

「何かね、この前髪が目にかかってた時は、そこから覗く瞳に、言われてる気がした。近づくなって。触るなって。それで、あなたには、あなた達には関係ない。助けられない。ない、ない、ない。周りを否定しているみたいに見えた」


88 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2017/03/18(土) 00:31:32.81 ID:m8pNuSuU0
「葉留佳……私」

「こうやって、お母さんの家に住むようになってから、やっとスタートした生活は本当に幸せで……泣きそうになっちゃうくらいだよ?」

葉留佳はハサミを置いて、私の顔にかかった髪を払う。

「でも、ふと思うの。私はお姉ちゃんを……」

落とした髪を新聞紙に包んで、ぐしゃりと丸め込んだ。

「ハッピーな気持ちにできてるのかなってさ、えへへ」

自分の言葉の照れくささを隠すためか、笑う。

「それで、どこかでやっぱりみんな私を『アレ』と影では呼んでるんじゃないかって、全ては同情でしかなくてね、お姉ちゃんはやっぱり無理に着き合ってくれてたりするの。この幸せそうに見える世界を、支えてくれてるだけなんじゃないかって―――そう思うと、思うと……」

「葉留佳、また、怖い夢でも見たの?」

小刻みに震える手。
妹は小さく首を縦に引いた。
私は彼女の手を、両手で包みこむ。

「うん、そう、どんな夢か――言えないけど」

「言わなくていいわ。早く、忘れなさい」

この子は、もしかしたら、悩むこと恐れることで自我を保っているのかもしれない。
だって、今までだって、誰かを憎むことで自分を保っていた。
そう仕向けたのは間違いなく私達だった。
それが、急に、世界から悪者がいなくなったのだとなれば、全ては自分の中の物語。

89 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2017/03/18(土) 02:03:44.59 ID:m8pNuSuU0
自分が受け止められるキャパシティが増えたわけではないし、昇華能力が向上した訳でもない。
これまでの劣悪な過去に何らかの耐性がついたということもない。私は私で良かったという答えは、目の前の何もかもを内包してしまう危険性が大いにある。
恐怖は、その危険の予防線。

「葉留佳? 今日も、一緒に寝た方がいい?」

彼女に、私は助け舟を出す。

「……あ、ごめんね。迷惑じゃなければ」

「分かったわ。お風呂に入ったら部屋においで」

「うん、ごめん、お姉ちゃん」

そこで、漸く妹はほっとした表情を見せる。
最初から、一緒にいたいと言えないのが、葉留佳。
違うか。
分からないだけか。
側にいて欲しいのに、どうやったらそれをしてもらえるのか、彼女はやり方を知らない。
甘え方、大人の喜ばせ方、そういうことは妹の方が他の姉妹を見ていると上手いように思う。
でも、それについては私の方が、よく心得ている。
彼女はじっと耐えることを、よく心得ている。
身に鋭いナイフが突き刺さろうとも、罵りを受けようとも、何ともないけれど、妹の弱弱しい謝罪の言葉は私の臓腑をえぐるのだ。
90 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2017/03/18(土) 02:33:41.54 ID:m8pNuSuU0
彼女は、私の幸せを願っているくせに、本当は自分のことでいっぱいっぱい。
私も同じようなものだけれど、私は、あなたより少しお姉さん。唯一それだけが、私があなたに誇れるもの。私があなたに示したいこと。
私の葉留佳、謝らないで。謝らないでよ。悪くないって言ったでしょ。
私の――。

数時間経って、先にお風呂に入って、私の部屋で待っているはずの葉留佳が、予想通り過ぎた。
ベッドの端っこ。壁の方に身を寄せている。
大きなベッドだ。これだけ縮こまっているなら、二人位やすやすと眠れる。
91 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2017/03/18(土) 02:34:31.96 ID:m8pNuSuU0
眠いのでまた
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/18(土) 07:12:37.59 ID:dEbX5F3w0
よいです。
93 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2017/03/19(日) 09:11:35.61 ID:RgoVtEWv0
すみません。トラブルがありましたのでこちらのスレで書き続けるのが難しくなりました。
またいつか改めて書きたいですが、しばらくVIPには戻れません。安価して下さった方、大変申し訳ありません。
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 13:04:19.10 ID:m2sj85IKo
まじか
あなたの作品楽しみなんでまたいつか書いてほしいです
とりあえず乙でした
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 23:01:17.56 ID:NK1ZfzNO0
作品いつも楽しませてもらってます
また帰ってきてくださるのをお待ちしています
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/30(木) 19:15:15.20 ID:yt88ggZRO
むむ
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