【R18G】青葉「玉砕の島の艦これ?」

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43 : ◆wXiypAzK7g :2018/10/27(土) 02:53:57.99 ID:RUrV0N7N0
 厨房では、鳳翔と間宮、伊良湖が四六時中、忙しそうに動いている。なにしろ、毎日100人分の食事を朝昼晩に夜食の4回。これに加えて、保存食の仕込みや甘味の作業もあるのだ。本来、3人でも回せるはずのない仕事をこなせるのも、彼女らが艦娘だからということだろう。そんな忙しい最中に、好きな時間に食事をとることができるのは、ほぼ俺の特権だ。学生食堂のような四角い銀色のお盆を、厨房のカウンターに置くと、鳳翔が俺の姿に気づいた。

「あら、提督。おはようございます。すみません、朝の分が終わってしまって……ごはんはあるのですが」

「かまわない。飯をどんぶりに一杯。それに、漬け物とお茶を」

 それが、だいたいの俺の食事だ。この泊地で唯一幸いなことがあるとしたら、食糧事情のよさだろう。補給は日に日に不安になっていき、米の質も落ちている。とはいえ、量だけは十分だし、備蓄も食糧だけは半年は補給がなくても持つくらいは備えている。加えて、
あちこちに芋やほおっておいても育つ野菜を植えている。普段から米に雑穀や芋を混ぜたりしていることもあり、餓死する心配だけは少ない。大淀によれば、時折通信には食糧事情の逼迫した泊地からの悲痛な叫びが混じっているという。
<運が悪かったな>
 そんな悲痛な叫びなど、俺にとっては他人ごとだ。他人の同情をしている暇など、俺にはないのだから。
 塩辛い瓜の漬け物を添えた、どんぶり飯に熱い茶を注いだ飯をかき込んでいると、艦娘たちの歌声が聞こえてきた。
44 : ◆SSStEV.cX6 [sage]:2018/10/27(土) 02:54:53.35 ID:RUrV0N7N0
すみません、トリップを忘れてしまいましたが、本人です。
また、大変ながらくお待たせしました。
45 : ◆SSStEV.cX6 [sage]:2018/10/27(土) 02:55:27.36 ID:RUrV0N7N0
ルーズベルトのベルトが切れて
チャーチル散る散る
花が散る 花が散る

 戦前から流行した歌の俗な替え歌を歌いながら、入ってきたのは吹雪と睦月、夕立の三人だった。甲高い笑い声だしていた、三人は食堂に俺の姿を見つけて、びくっと震えて、駆け寄ってくると、揃って敬礼する。
「おはようございます!」

 一番真面目そうな吹雪が、挨拶をする。睦月は「やばい」といった表情で、こちらを見ている。

「ま、お茶でも持ってきて座りなさい。今日は、非番だったか?」

 睦月がお茶を取りに行き、吹雪と夕立が俺の向かいに座る。

「はい、本日はお休みを頂いております」

 吹雪が一番に口を開く。前の吹雪が轟沈してからすぐに補充されてきた吹雪。既に2年ほどになるか、生き残っているだけあって、
そこそこの戦力になっている。

「なにか、楽しそうなことがあったか?」

 睦月が運んできたお茶を飲みながら、俺は3人に語りかける。

「いえ〜、提督にいってもよいのか……」

 睦月が少し下を向いて語る。

「構わないだろう」

 俺が、そういうと、我慢できなくなったのか夕立が、ププっと噴き出した。

「朝潮ちゃんが、面白すぎたっぽい……ププっ」

 その姿に、我慢できずに睦月も噴き出し、吹雪も続く。

「えっと、ですね。なにをしたのか知らないんですけど……朝潮ちゃんてば、スカートがめくれあがったまま、四つん這いで廊下を這ってたんです」
「にゃにゃにゃ!ってガン見してしまったんですが、その姿がおマヌケ過ぎてぇ〜」
46 : ◆SSStEV.cX6 [sage]:2018/10/27(土) 02:56:07.78 ID:RUrV0N7N0
いよいよ、耐えきれなくなったのか、三人は揃って大声で笑い転げる。ひとしきり笑った後で、吹雪は真面目そうな顔に戻る。

「というわけで、自分たちは、ああはならずに勝利のために、気を引き締めてやらねばならないと思ったわけです」

 微妙に壊れている三人は、いつも俺との上下関係におどおどしながらも、あれこれと話しにくる。その肩ぐるしさのなさゆえに、つき合いやすい。

「提督さん、タバコ欲しいっぽい」
 改二になってから、身長だけでなく身体のメリハリも目に見えて立派になった夕立。相変わらず語尾が「〜ぽい」ゆえに、ちょっと足りない女のように見えるが、ひとたび出撃すれば戦果は人並み以上。けれども、それを誇ることもない。戦闘よりも血を見ることを求めて止まない狂犬といったところだ。

「配給分があっただろう。足りなければ、酒保で明石から買えよ」
「あるけどぉ〜。無駄遣いはしたくないっぽい」

 戦果を挙げてるからとはいえ、調子に乗っているのもどうだろう。まあ、目に余ったら別に対応すればよい。俺はテーブルの上に投げるようにタバコの箱を置く。

「へへ、頂きっぽい」

 すっと、取り出したタバコは3本。2本を
服の中にそっと隠すと1本を口にくわえて、マッチを擦る。大きく吸い込み、煙を吐く。

「ぷはあ〜。この瞬間だけは、生きている感じがするっぽい。で、提督さん、次の出撃は何時っぽい?」
「しばらくは、哨戒任務が中心だな。なにしろ、深海の動きも読めない」
「へへ、また深海のヤツら……それに、女子供が血みどろで泣き叫ぶ様子を見たいっぽい」

 前線と後方が複雑に入り組んだ海域ゆえに、戦闘員と非戦闘員は曖昧だ。以前にも深海側の泊地を襲撃したことがあるが、
そこは深海側の住民の集落もある島だった。集落側から攻撃を仕掛けたのは、この3人とあとは川内型の3人。
どいつもこいつも、まったく躊躇することなく弾丸を撃ち込み、後から報告してくるものだから、俺のほうが少し驚いた。
47 : ◆SSStEV.cX6 [sage]:2018/10/27(土) 02:58:04.35 ID:RUrV0N7N0
そんな汚い戦争のやり方に、青ざめた艦娘たちは、一人残らず生き残ってはいない。それを見て、俺も龍驤のいっていた「練度よりも重要なものがある」ことの意味を、すっかり理解した。

「しっかし、北上さんも相変わらずシゴキが激しいですねえ。朝潮ちゃんもいつまで、もつんでしょうか?」
「まあ、根性が足りないしぃ。前線に出しまくって鍛えたほうがいいしぃ」
 そう話ながら、吹雪と睦月は、俺に断りもせずにタバコを取りだして、火をつける。内地の鎮守府なら、あり得ないような光景も、ここでは当たり前だ。
「さてと……」

 俺が、立ち上がりタバコの箱をポケットにしまうと、三人は揃って恨めしそうな顔をする。その顔に負けて、俺がタバコの箱をテーブルの上に戻すと、今度は嬉しそうな顔をする。

「休日だからといって、あんまりダラけるな。あくまで、今日は業務を与えてないだけで、ここは戦場だ。緊急の出撃があれば、すぐに呼び出すからな」

「へへ、大丈夫っぽい。徹夜で飲んでても、タバコがあれば、大丈夫っぽい」

「私も大丈夫ですよ、司令官!」

 食堂を出て、練兵場のほうを見ると、川内型が3人並んで駆逐艦にシゴキを加えている最中だった。
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